○国務
大臣(
灘尾弘吉君)
昭和三十九
年度文部省所管の
予算案につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
まず、
昭和三十九
年度文部省所管の
一般会計予算額は、三千九百一億九百一万二千円、新設予定の国立
学校特別会計の
予算額は、千三百九十四億五千九百三十七万六千円でありまして、両者を加えた
文部省所管予算額の純計は、四千百五十億五千四百二万九千円となっております。この純計額を前
年度当初の対応
予算額に比較いたしますと、六百四十三億円余の
増額でありまして、この増加率は、一八・三%となっております。
以下、
昭和三十九
年度予算案において、特に重点として取り上げた施策について御
説明申し上げます。
まず第一は、初等中等教育の改善
充実でありますが、この点につきましては、公立義務教育諸
学校における学級規模の適正化、教職員定数に関する算定標準の改善及び
学校施設の
整備を推進することを重点といたしましたほか、小
学校第一学年から第五学年までの児童に対する教科書を無償
給与するために必要な
経費を計上いたしております。すなわち、義務教育費国庫
負担金につきましては、学級規模の適正化をはかるため、
昭和三十九
年度においては学級編制の基準を、小、中
学校いずれも四十九人とし、また教職員の定数増をはかるほか、充て指導主事の増員、
給与改定の実施、諸手当、旅費及び教材費の
増額等を行なうこととし、
総額二千四十六億円余を計上いたしております。
次に、公立文教施設につきましては、引き続きその
整備を推進することとし、小、中
学校校舎の
整備、危険校舎の改築、屋内運動場の
整備、
学校統合に伴う校舎等の
整備、工業
高等学校の一般校舎の
整備を行なうほか、新たに小
学校屋内運動場及び
高等学校寄宿舎の
整備等を行なうため、公立文教施設
整備費百八十億円を計上いたしました。
また、
本年度においては、小、中
学校校舎の施設基準の
改定を行ない、これまでの児童、生徒一人当たりの基準坪数を一学級当たりの基準坪数に改めることとしたほか、実情を勘案して、国庫
負担対象の割合を八〇%に引き上げ、建築費
単価及び構造比率の
改定等を行なうことといたしました。
次に、義務教育教科書の無償
給与につきましては、これに関する法律の成立に伴いまして、国・公・私立
学校を通じ、小
学校及び特殊教育諸
学校の小学部の第一学年から第五学年までの児童に、全教科書を国の
負担において無償
給与することとしたのであります。
なお、教育内容の面につきましては、前
年度に引き続き小
学校及び中
学校における道徳教育の
充実強化をはかるために必要な
経費、各種教育研究団体助成のための
経費等を計上したほか、中
学校における生徒指導の強化、幼稚園教育
振興等に必要な
経費を
増額計上いたしております。
第二は、科学技術教育及び学術研究の
振興であります。
科学技術に関する教育研究の拡充強化をはかることは、現下の急務であり、かねて努力を続けているところでありますが、
昭和三十九
年度予算案におきましても、さらに力を注ぐこととし、初等中等教育、大学教育等、各面にわたって
所要経費を
増額計上いたしております。
まず、初等中等教育の分野につきましては、中央産業教育
審議会の答申の趣旨に従い、産業教育
関係の施設設備の改善
充実をはかるため
補助金を大幅に
増額し、また、
高等学校における農業教育の近代化
促進にも配意し、
所要経費を
増額するとともに、新たに自営者養成のための農業
高等学校の寄宿舎、実習施設等を拡充
整備するため必要な
経費を計上いたしたのであります。
科学技術者の養成については、
昭和三十八
年度をもって二万人の養成
計画を一応終了したわけでありますが、
昭和三十九
年度におきましても、引き続き理工系学生の増募を行なうため、大学及び高等専門
学校の
充実整備をはかることとしております。すなわち、国立
関係におきましては、二学部の創設、十三学科の増設、二十学科の拡充改組、十二の工業高等専門
学校の新設を行なうこととし、計二千二百五十五人の理工系学生の増募を行なうことといたしております。また、公立大学、私立大学に対しましても、理工系学部学科を
整備する等のための
経費を
増額いたしたのであります。
学術研究につきましては重要
基礎研究の
促進をはかるため、科学研究費
交付金等の
増額を行ない、また、国際的な学術研究の協力体制を推進するため、日米科学協力研究
事業に必要な
経費を
増額計上するとともに、南極地域観測
事業を再開するために必要な準備費の計上を行なっております。
第三は、国立
学校の運営及び拡充
整備に必要な
経費であります。
国立
学校の拡充
整備を
促進し、その円滑な運営をはかり、かつ、国立
学校に関する
政府の経理を明確にするため、国立
学校特別会計を
設置し、従来、
一般会計に計上しておりました国立
学校運営費、国立文教施設
整備費等の
経費を新たに
特別会計として経理することといたしました。この国立
学校特別会計の
予算額は、千三百九十四億五千九百三十七万六千円でありまして、その
歳入予定額の内訳は、
一般会計からの繰り入れ千百四十五億円余、借り入れ金十億円、附属病院等
収入百七十四億円余、授業料及び入学検定料三十一億円余、
学校財産処分
収入十五億円、並びに雑
収入十八億円余でありまして、
歳出予定額の内訳は、国立
学校運営費千百二十億円余、施設
整備費、二百七十三億円余その他であります。
すなわち、国立
学校運営費は前
年度に比較いたしますと、百七十二億円余の大幅な
増額となっておりますが、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費等基準的諸
経費の
増額をはかりましたほか、公立三医科大学の国立移管を含む七学部の創設、理工系の学生増募を中心とする学科の新設拡充、国立図書館短期大学及び工業高等専門
学校十二校の創設、新制大学における大学院修士課程の拡充等のほか、原子炉工学研究所、アジア・アフリカ言語文化研究所及び宇宙航空研究所の創設を行なうことといたしております。
次に施設
整備費につきましては、財政投融資
資金及び不用財産の処分
収入を
財源の一部に含めまして、
予算額の大幅な
増額をはかり、施設
整備の
促進をはかることとしたのでありますが、なお、後
年度分について、三十億円の国庫債務
負担行為を行なうことができることといたしております。
第四は、教育の機会均等の確保と人材の開発であります。
優秀な学徒で
経済的に困窮している者に対して、国がこれを援助し、その向学の志を全うさせることは、きわめて重要なことであります。このため
昭和三十九
年度予算案におきましては、大学院奨学生の増員並びに教育特別奨学生制度の新設を行なう等、育英奨学制度の拡充をはかることとし、さらに日本育英会の奨学金返還
業務を推進することとして、合計八十五億円余を計上いたしております。
次に要保護・準要保護児童生徒
対策及び僻地教育、特殊教育等恵まれない
事情にある児童・生徒に対する援助並びに教育につきましては、教育の機会均等の趣旨にのっとり、従来からも特に留意してまいったのでありますが、
本年度におきましても、一段とその
充実をはかることといたしております。
すなわち、要保護、準要保護児童生徒
対策につきましては、
補助単価の
改定をはかり、僻地教育の
振興につきましては、引き続きスクール
バス、ボート等について
補助を行なうとともに、教員住宅建設の
補助戸数の増加を行なうほか、新たに公立中
学校寄宿舎運営費並びに視聴覚教育設備についても
補助を行なうことといたしました。また、特殊教育につきましては、養護
学校及び特殊学級の普及並びに就学奨励費の拡充等について、
所要経費を
増額いたしますとともに、盲
学校、ろう
学校弱視難聴教育設備及び盲
学校リハビリテーション課程設備について
補助を行なうに必要な
経費を新たに計上いたしております。第五は、勤労青少年教育、社会教育及び体育の
振興普及であります。国家社会の発展は健全な青少年の育成にまつところ多大であり、働きながら学ぶ青少年の教育問題は、
学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を払うべきところであります。
昭和三十九
年度予算案におきましては、引き続き定時制
高等学校の設備の
整備、定時制及び通信教育手当の支給、通信教育用学習書の
給与等に必要な
経費を計上いたしましたほか、夜間定時制
高等学校につきましては、夜食費
補助金及び運動場照明施設
整備費
補助金を
増額計上いたしております。また、前
年度に引き続き青年学級、社会通信教育等の
振興に必要な
経費を計上いたしております。
次に、社会教育は、国民の教養の向上に大きな役割りを果たすものであり、その普及
振興は
学校教育の
充実と
ともにきわめて重要なものであります。このため、成人教育、婦人教育及び社会教育
関係団体の助成等につきまして、
所要経費を計上いたしましたほか、特に家庭教育を重視し、新たに家庭教育学級開設に対する助成費を計上するとともに、国立青年の家の増設、公民館、博物館等の施設、設備の
整備について
所要経費を
増額計上いたしております。
次に体育は心身ともに健全な国民の育成をはかる上にきわめて重要な意義を持つものであります。また、明
年度はオリンピック東京大会開催の年にあたり、その意義を高めるためにも、実施に遺憾なきを期することはきわめて重要であります。まず、オリンピック東京大会の実施につきましては、必要な施設の建設、
整備並びにその実施に一段と力を注ぐことといたしました。すなわち、国立競技場の
整備、屋内総合競技場の建設、日本武道館の建設、朝霞射撃場の
整備並びにオリンピック組織
委員会の運営、競技技術の向上等のため
関係予算の大幅な
増額を行なっております。また、国民一般に対する体育の普及奨励をはかるため、水泳プールの
整備に必要な
経費を大幅に
増額いたしますとともに、その他の体育施設の
整備並びにスポーツ活動の指導者養成、スポーツテストの実施、 スポーツ団体助成等に必要な
経費を
増額計上いたしたのであります。
また、
学校給食につきましては、小麦粉についての従来の
補助を継続いたすため、食糧
管理特別会計へ十六億円余の繰り入れを行なうとともに、ミルク給食につきましては、生乳の大幅な使用増加を前提として
所要の
補助金を計上いたしましたほか、
学校給食施設設備
整備費
補助金の
増額をはかるとともに、共同調理場に栄養職員を
設置するための
補助金を新たに計上いたしております。
第六は私立
学校教育の
振興助成であります。
学校教育における私立
学校の重要性については、あらためて申すまでもないところでありますが、
昭和三十九
年度予算案におきましても、私立
学校教育の
振興助成のため必要な
経費を計上いたしております。そのおもなものといたしましては、私立
学校振興会に対してさらに十五億円を出資いたしますとともに、財政投融資として四十億円の融資を行なうことといたしましたほか、私立大学理科特別助成費に十六億円余、私立大学研究設備助成費については、
補助率を引き上げることとして九億円余を計上し、科学技術教育
振興の趣旨にも沿うことといたしたのであります。
次に、文化財保存
事業につきましては、保存修理及び防災施設の
整備等につとめるとともに、平城宮跡の一部の買い上げ及び発掘
調査を引き続き実施し、国立劇場の建設を進め、新たに重要無形文化財保持者に対する助成を行なう等の
措置を講じております。
以上のほか、国費外国人留学生の増員及びその
給与の改善等国際文化の交流を進め、新たにユネスコ
関係団体に対する助成を行ない、また、文化
功労者年金の引き上げを行なう等
所要経費の
増額計上をはかったのであります。なお、沖繩の教育に対する協力援助費につきましては、前
年度と同様、別途、総理府
所管として
増額計上いたしております。
以上、
文部省所管予算案につきましてその
概要を御
説明申しあげた次第であります。何とぞ十分御
審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。