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1964-03-25 第46回国会 参議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)    午前十時二十五分開会   ————————————— 昭和三十九年三月二十四日予算委員長 において、左のとおり本分科担当委員 を指名した。            江藤  智君            河野 謙三君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            田中 啓一君            平島 敏夫君            羽生 三七君            安田 敏雄君            矢山 有作君            浅井  亨君            高山 恒雄君            奥 むめお君   —————————————   委員の異動  三月二十五日   辞任      補欠選任    矢山 有作君  藤田  進君    安田 敏雄君  大倉 精一君   —————————————  出席者は左のとおり。    主査      田中 啓一君    副主査     高山 恒雄君    委員            江藤  智君            河野 謙三君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            平島 敏夫君            大倉 精一君            羽生 三七君            藤田  進君            矢山 有作君            安田 敏雄君            浅井  亨君            奥 むめお君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君   政府委員    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農政局長 昌谷  孝君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 桧垣徳太郎君    農林省蚕糸局長 久宗  高君    農林省園芸局長 酒折 武弘君    農林水産技術会    議事務局長   武田 誠三君    食糧庁長官   齋藤  誠君    運輸大臣官房長 佐藤 光夫君    運輸大臣官房会    計課長     上原  啓君    運輸省海運局長 若狭 得治君    運輸省港湾局長 比田  正君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    運輸省観光局長 梶本 保邦君    建設省河川局長 畑谷 正実君   説明員    警察庁交通局運    転免許課長   藤森 俊郎君    日本国有鉄道総    裁       石田 礼助君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————   〔年長者平島敏夫主査席に着く〕
  2. 平島敏夫

    平島敏夫君 ただいまから予算委員会第三分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条により、年長のゆえをもって私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平島敏夫

    平島敏夫君 御異議ないと認めます。  それでは、主査田中啓一君、副主査高山恒雄君を指名いたします。   —————————————   〔田中啓一主査席に着く〕
  4. 田中啓一

    主査田中啓一君) ただいま皆さまの御推挙によりまして主査に指名されましたが、何分にもふなれでございますので、皆さまの御協力をいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、これより審議に入りますが、その前に議事の進め方についておはかりをいたしたいと思います。  本分科会は、昭和三十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林省運輸省郵政省及び建設省所管を審査することになっております。議事を進める都合上、主査といたしましては、本日午前中、農林省、午後、運輸省、明二十六日は午前中、建設省、午後、郵政省という順序で進めていただきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中啓一

    主査田中啓一君) 御異議ないと認めます。  なお、二十七日の委員会において主査報告を行なうことになっておりますので、御了承を願いたいと存じます。   —————————————
  6. 田中啓一

    主査田中啓一君) それでは昭和三十九年度総予算農林省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。赤城農林大臣
  7. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 昭和三十九年度農林関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  最初に、各位の御協力を得て御審議をいただくにあたりまして、予算の裏づけとなっております農林水産施策基本方針について申し上げたいと存じます。  まず、わが国農業の最近における動向は、一月二十四日にこの国会に提出いたしました「昭和三十八年度農業動向に関する年次報告」にも明らかなように、昭和三十七年度におきましては、米の増産、畜産物生産の著しい伸長等による農業生産の増大と需要伸びによる農産物価格の上昇などを反映して、農業所得は前年度に比較して相当の増加を示し、農業従事者生活水準は、農外所得増加もあっておおむね順調に向上しております。  また、農業経営を積極的に高度化し、高い所得をあげる農家が次第に力強く形成されつつありますことも、注目されるところであります。  一方、製造業等産業伸び景気調整の影響で鈍くなったこともありまして、農業のこれに対する比較生産性も、近年の傾向と異なりやや上昇し、生産性格差がわずかながら縮小いたしました。  このように、農業生産性および農業従事者生活水準は、おおむね順調に向上いたしておりますものの、なお、農業と他産業との生産性及び生活水準格差は相当著しいものがあります。  このような動向に対処して、農業の一そうの発展をはかるためには、生産性の向上と経営合理化を指向して、農業近代化を強力に推進することがきわめて重要であると考えられるのであります。以上の点は、事情に若干の差はありましても、林業及び漁業についてほぼ同様であると思われます。  さらに、農林漁業をめぐる国際情勢に眼を転じますと、IMF八条国への移行をはじめ、ガット、国連等での関税一括引き下げや低開発国貿易の促進の動き等開放経済体制への移行を求める国際的要請が強まりつつある現状にかんがみまして、今後農林水産物につきましても、輸入の自由化拡大関税引き下げなどの要請が強くなると予想されるのであります。  このような情勢に対処するためには、国際交渉の場において、わが国農林漁業特殊性現状について十分説明し、諸国の理解協力を得られるよう努力いたすのはもちろんのことでありますが、基本的には農林水産物生産流通加工の各部面を通じ、早急にその生産性を向上し、国際競争力を強化することが必要であると考えます。この意味におきましても、農林漁業構造改善をはかり、その近代化を強力に推進することが重要な課題となるわけであります。もとより、農林漁業近代化施策は、その性格上、短期間に成果が容易にあらわれるというものではありませんが、近代化が推進されることによって、農林漁業が青少年の夢を託するに足る産業となり、また国民に良質な食糧等を豊富に供給するという重要な使命を果たすことができると信ずるものであります。  以上のような考え方に基づきまして、昭和三十九年度におきましては、農林漁業生産基盤の整備、生産選択的拡大経営近代化価格の安定、流通合理化等農林漁業近代化をはかる上において重要と考えられる諸施策を相互に連繋をとりつつ推進することとし、農林漁業者が安んじてその経営改善に邁進できるよう基本的諸条件を着々整備いたしてまいりたいと考えております。  以下、できるだけ簡潔に農業林業及び漁業施策について触れてまいりたいと存じますが、お手元に資料を配付してあり、御質疑の御予定もございますでしょうし、以下は速記録にとどめて、朗読は省略させていただきたいと思いますが、主査のほうでお取り計らい願いたいと思います。
  8. 田中啓一

    主査田中啓一君) ただいま農林大臣の御発言中にもありましたとおり、説明の時間をなるべく短くいたしまして、質問の時間にしたいという趣旨をもちまして、御発言どおり農林大臣の以下の発言速記録に載せるということに取り計らいたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 田中啓一

    主査田中啓一君) さよう取り計らいます。  それではこれより質問に入りますが、すでにお申し出のありました方、五人ございまして、これを午前中にやるのは相当のことでございますので、なるべくお一人往復三十分以内くらいのところでやっていただきますように、希望いたす次第でございます。なお、農林省のほうは、各局長ほとんど出席をいたしております。  速記をとめて。   〔速記中止
  10. 田中啓一

    主査田中啓一君) 速記を始めて。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 それではお伺いいたしますが、時間の関係がありますので、しぼって御質問をさせていただきたいと思います。したがって、御答弁のほうも簡単明瞭にひとつお願いしたいと思います。  第一番は、いま畜産物価格安定審議会が開かれておりますが、そこで政府諮問案をめぐって、今年度の原料乳価、その他の安定価格を決定するにあたりまして、留意すべき事項についての議論がかわされております。この審議会の成り行きというのは、酪農民養豚家はもちろんのことですが、全国の農民が私は注視しておると思うのです。それはなぜかといいますと、この審議会を通じて、農業基本法下におけるいわゆる開放経済体制に向かう中にあって、日本農業をどういうふうに考え、将来これを日本経済全体の中で、どういうふうに位置づけようとするか、そういう政府考え方をうかがい知ることができる。したがって、私は非常に注目の的になっていると思いますので、まず第一にお伺いしたいのは、事改まったことを聞くものだというふうにおとりになるかもしれませんが、現在の畜安法農業基本法との関係を、どういうふうに考えておられるか、また畜安法は何を目的として定めたものであるとお考えになっておるか、このことをまず第一にお伺いしたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農業基本法は御承知のように農業全体に対する基本的な方向づけといいますか、方針を各方面にわたって規定しておることは申し上げるまでもないと思います。その農業基本法によりまして、一つ採用しておりますことは、選択的拡大というような面におきまして、畜産方面に重点を持っていこうという方向づけ一つございます。それを受けまして、畜産物価格、これは農業基本法にも価格の問題がございますが、それを受けまして、畜産物価格安定等に関する法律ができておるわけでございますが、その法律目的は、第一条に掲げてありますように、「主要な畜産物価格の安定を図るとともに乳業者等経営に必要な資金の調達を円滑にし及び畜産振興に資するための事業助成等のみちを開くことにより、畜産及びその関連産業の健全な発達を促進し、あわせて国民の食生活の改善に資する」と、こういう目的でございます。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 農業基本法もとでただいま大臣お答えになったような目的をもって畜産物価格安定法というものが設定をされておるわけです。ところが、これが三十六年の十一月に公布されて三年になります。ところがこれを、いままでの経過を振りかえってみましたときに、先ほど大臣がおっしゃったその法律目的というものがはたして十分にその目的を達成しておるというふうにお考えになっておられるかどうか。これまで本院における農業水産委員会等質疑の中で、私どもは大臣が現在日本には農産物価格安定のためのいろいろな法律があるけれども、必ずしも十分に効果をあげておらないというような意味のことをおっしゃった記憶がありますので、あえて畜安法についていまの点をお尋ねしたわけですが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 畜安法が果たしてきた役割り等につきましては、時間がかかりますから申し上げません。しかしその役割りを果たしてきたかどうかということでございますが、私もかねがね申し上げておりますように、十分に果たしておるというふうには私も考えておりません。しかし牛乳等につきましても、あるいは指定食肉等につきましても、徐々に、またおおむねその目的に沿うて役割りは果たしつつある、十二分とは申し上げませんが、果たしつつやってきておる、こういうふうに考えております。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 大臣もいまお認めになったように、私も畜産物価格安定法が第一番に、現在の乳価の安定あるいは食肉の安定について十分の効果を果たしておらぬ、こういうふうに認識をしております。その例を一つあげますというと、たとえば三十七年の十二月に、畜産振興事業団による乳製品買い上げ措置がとられましたが、これが乳価復元にはたして役立ったかどうかということを考えてみまして、その当時の経過を振りかえってみますと、乳製品買い上げ乳価復元に何らの効果を果たしておらなかったと私は考えざるを得ませんし、さらにまた、昨年の十二月からことしの二月にわたってバターの買い上げが行なわれました。ところが、これも乳価安定については何らの効用を発揮していないということは、これは現実状態を見て、大臣もよくおわかりだと思うのです。さらにまた、豚肉の場合を考えてみますというと、畜安法が制定されてからのほうが、より激しく価格の変動が行なわれておる。こういう実態に照らして、私は畜産物価格安定法が、その所期の効果を十分に発揮しておらない、こういうふうに考えざるを得ませんし、大臣のほうも、そういう意味のことを、ただいまの御答弁の中で申されたと思うのですが、それでは次にお伺いしたいのは、なぜ畜産物価格安定法というものが、その機能を十分に果たしておらぬのか、その理由は何であるかということをお伺いしたいと思います。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、牛乳あるいは肉類等が、原則としては自由取引という立場の上に立って、それに対しまして政府が介入いたしまして価格の安定をしていこう。こういうたてまえでございますので、政府は、かりに申し上げますと比較的に米のように把握してない、こういう点があろうかと思います。こういう基本的な問題があります。しかし、そうせよというわけでございませんけれども、そういうむずかしい基盤の上に立っての価格の安定だと、こういうことが考えられております。  それから組織の点でございますが、酪農発達といいますか、最近非常に異常に成長をいたしております。そういう関係で、生産者組織等につきましても、十分組織化されておらん、こういう弱さといいますか、そういうこともありますので、政府が介入する前に、当事者同士価格協定等につきましての働きが十分でない、こういう面もあろうかと思います。その他いろいろあろうかと思いますが、大体そういうふうに考えております。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 基本的な問題は、いま大臣お答えになった点にあると私も考えております。ところが、それをさらに具体的に掘り下げて考えてみますというと、たとえば牛乳の場合には、加工用原料乳が対象になっておるだけである、生乳全般というものをとらえておらないという点、さらにその価格安定の方策が、乳製品買い上げという手段によって間接的になっておるという点、さらにまたもう一つ、より重大な問題は、安定基準価格のきめ方の問題、さらに事業団を運営する運営上の問題、こういったものに具体的にいえばなってくると思うのです。そこでそれらの具体的な問題について、ひとつお伺いしたいのですが、大臣も御承知のように、安定基準価格というのは、過去の市場価格、つまり農家庭先価格というものをもとにして算定をされております。ところが、この算定方式大臣は正しいというふうにお考えになっておるかどうか、この点をまずお伺いいたします。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 算定方式等につきましては、畜安法の三条にも規定されておるわけでありますが、的にそれをあてはめる場合に、何といいますか、方程式で言えば方程式一つのファクター、要素の取り方等にいろいろ議論があろうかと思います。そういう点におきまして、過去の実績ということはどうしても基準にならざるを得ないと思います。でございますが、その他過去の実績とかあるいは統計とか、そういうものが基礎となると同時に、この法律で規定してあるところの考え方というものも——方針というものも入れて決定するのが正しいと、こういうふうに考えております。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 私は算定方式では非常に複雑な要素を取り入れて算定をしておりますが、その算定の場合の一番のもとになっておるのは、先ほど言いました農家庭先取引価格もとになっておる。ここに適正な安定基準価格というものが算定をされてこない大きな原因があると考えております。このことを大臣もおそらく十分御認識の上だと思うのです。なぜその農家庭先取引価格基準にして、基準といいますか、基礎にして算定をするやり方が間違っておるのかと言いますと、それは牛乳にしても、豚にしても非常に腐りやすいものです。しかも生産者は個々に非常に分散をして何の力も持っておりません。たとえば牛の乳だったら、乳をしぼって乳ぶさを離れたならば生産者のものじゃないというのがいまの現実なんです。つまり、取引の相手方は大きな資本力を持ったいわゆる独占資本なんです。その独占資本支配機構の中で生産者というのは何らの力を持たぬ、隷属的な立場に立たされておる。一方的に押しつけられたそういう形で過去の農家庭先価格というものは形成されてきておるわけです。したがって、これを基礎にしていろいろな要素を加味して算定をされていこうとするこの安定基準価格というものは、きわめて不合理なものであるということを私は申し上げたい。この点について大臣はどういうふうにお考えになっておるのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は不合理だとは思いませんけれども、価格決定方式についてはなお改善といいますか、すべき面が相当あろうかと、こういうふうに考えておりますので、実は価格審議会のほうにも諮問しておる、意見を求めておる、こういう実情でございます。
  21. 矢山有作

    矢山有作君 おことばを返すようですが、私は不合理だと申し上げたい。なぜかというと、基礎になっておるものが過去の実勢価格、その過去の実勢価格は先ほど私が言いましたように、何ら生産者農民生産実態というものを反映しておる価格ではないのです。その価格もとにしていろいろな要素をかけ合わせてみたところで、そこに出てくるものは生産実態を踏まえて農民に納得のいくような合理的な価格が出てくるはずがない。このことを私は、大臣は法の運用の上において十分御認識をいただかなければならぬと思うのです。ところがその御認識がないというのは私は、畜産物価格安定法に対する解釈運用の問題に問題があると、この問題はこれまでも審議会でも問題になり、さらに予算委員会でも取り上げられております。あるいは農林水産委員会でもたびたび取り上げられております。ところがこの問題が解決されぬから、審議会における審議というものが回を重ねるに従って農民から無関心の目をもって見られるような状態になり、そうして審議会自体審議の態度というものもその熱意が喪失されてきたかのごとき感を与えるような状態になっておると思う。そこで私は法の解釈運用が間違っておるという点について申し上げたいのです。そこに法律をお持ちでしょうからごらんをいただきたいと思います。畜安法の第三条の四項には、「安定価格は、原料乳又は指定食肉当該家畜を含む。)については、これらの生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保することを旨とし、……定めるものとする。」こういうふうになっておるわけです。そうしてこの点は衆議院における審議の過程において改正をされた経緯があります。その改正経緯から考えた場合に、ここに言う「安定価格」というのは、原料乳なり指定食肉については、それは再生産を確保することを旨として定めなければならぬ価格である。もちろん、法文にありますように、生産条件需給事情その他を勘案するということはありましょう。しかしながら、究極的には再生産を確保する、こういう価格でなければならぬ。こういうことがはっきりと修正の中で出てきておるわけなんですが、その点をどういうふうに理解しておるのか。そこの理解のしかたがはっきりしないから、私はいままでの畜産物価格審議会諮問が二様になる。そうしてまた、それに従って二様の答申が出てくる。こういう結果になっておると思いますけれども、そういう点についての大臣法律に対するお考え方というものを承りたいと思います。
  22. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほど私は、合理的——不合理だとは申し上げかねるが不十分だということを申し上げたのでございます。というのは、過去の実勢価格ということを考えてみましても、やはり生産条件、いまの四項の生産条件需給事情及びその他の経済事情、こういうものがやっぱり過去の価格の中に反映していると思います。ただ、いま御指摘のように、牛乳生産者等は、独占資本ということばはよく皆さんのほうで使うことばでございますが、独占資本ということばを使うか使わないかは別にいたしましても、売る場所がもう一定しておりまして、どこに売ってもいいというようなわけにはまいらぬような生産事情にあるわけでございます。そういう点が一般の商品とは違うというふうには、私も認識いたしております。しかしながら、やはり消費がふえるというようなことは、やはり価格の上におきましても非常に反映するし、消費が行き詰まるということになると、これまた価格の面に反映するということでございますから、その需給事情等十分価格に反映しなければなりませんし、また生産条件需要に合ったような生産、こういうようなことも価格に影響してきますから、生産条件とか需給事情をくみ入れた過去の実勢価格というものが、そのことだけで不合理だというわけにはまいりますまい。こういうことを申し上げたわけでございます。  そこで三条の四項の解釈でございますが、私は安定価格原料乳及び指定食肉については、これらの生産条件及び需給状況、その他の経済事情を考慮してきめられている価格が、再生産を確保するものでなければならぬ、再生産を確保するために、初めから将来を考え生産費所得補償方式というような形できめるという方式ではなくて、需給事情とか生産条件とかその他の経済事情考えて一応やってみた。しかし、これは再生産を確保することを旨とする以下であっては、これはまずい、こういうふうに私は解釈いたしますけれども、なお過去のいきさつ等につきまして私の申し上げることが十分でなかったならば、事務当局から説明させます。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 事務当局からの御説明は、あとでいただきたいと思います。一つのところに論議がとどまるようで恐縮なんですが、私は大臣がいま過去の実勢価格もとにして、安定基準価格を算出するのが不合理でないという御認識を持っておられるのは、これは改めていただかなければいかぬと思うのです。なるほど生産事情というもの、あるいは需給事情というものも多少は作用しているかもしれません。しかしながら一番根本的に考えなければならぬのは、先ほども大臣自身が御指摘になったように、現在の取引機構の中で生産者が何の力も持っておらぬということです。何の力も持っておらない中で価格がきめられてきた。したがって生産事情需給事情というものを正しく反映したものということはまず言えないということが一つ。まして、いわんや生産実態を反映しておるというようなことはとうてい考えられない。それはなぜかといいますというと、その農家庭先価格というものを調査する調査のやり方を一つ考えていただいたらわかるのです。いわゆる農村物価賃金調査でやっておられるのでしょうが、その調査のしかたというのは、われわれが知っておるところは、たとえば極端な場合、豚の場合なんかの調査というのは、農家に行っての聞き取り調査なんです。農家の売る——まあおやじが売る場合もありましょうし、女房しかおらぬ場合もありましょう。それに聞いて、それでやっていく。そうすれば記憶間違いもあろうし、いろいろの問題がある。しかも豚のごときものの価格というのは、これは間に家畜商というものも介在をしておる。さらに芝浦の屠場の相場というものが非常に大きな影響を与えている。ところがその影響が正しく与えられておるのならいいけれども、いま言ったようないろいろな複雑な仕組みの中で、必ずしも正しく反映されておるとは考えられぬわけです。そういう点を考えたならば、私は過去の実勢価格もとにしたきめ方というのは、これは何といっても不合理です。  第一番の理由は、生産実態というものを踏まえておらぬということが一番問題。なぜそのことを申し上げるかというと、先ほど大臣お答えになったように、農業基本法というものの大きな目的というのは、農工間の格差を是正するということにあるはずなんです。それを具体化する一環として畜安法が生まれてきた。畜産物振興をはかろう。そしてその畜産物振興をはかることによって農工間の所得格差を縮めよう、そういう目的の達成の一助にしたい、こういうことで生まれてきたはずなんです。そうするならば、当然畜安法解釈運用においても一番重点を置いて考えなければならぬのは、再生産を確保するということが中心になってくる。付随して生産事情需給事情というものも勘案されるでしょう。しかしながら中心は、あくまでも農民の再生産を確保するというところにはっきり法律でもうたっておるわけなんです。その点を踏まえて解釈運用をやられないというと、十分のこれが効果を発揮するというところにいかないということを、私は御指摘申し上げたわけなんです。  で、次にこれは解釈運用の問題になりますから、当局のほうからお答えをいただいてもよろしいが、第三十九国会でこの畜安法の修正が行なわれております。その修正の説明が参議院においてなされております。そのときにこういう説明をしているわけです。修正点等につきましてはもう大臣もよく御承知だと思いますので、肝心なところだけを申し上げてみます。「政府原案第三条第一項第一号の「安定下位価格」のうち原料乳及び指定食肉については、これを「安定基準価格」とし、これに関連する条文の整理がなされたことであります。原料乳及び指定食肉につきましては、今後これらの生産拡大し、畜産振興をはかるためには、価格がそれ以下に低落しないことを目的とする安定価格の水準は、これらの再生産を確保するに足るものとする必要があり、そのためには、安定下位価格とするよりも、安定基準価格とするほうが妥当であるとされたものであります。」、この点が一つです。  それからもう一つは、「第三条第四項の安定価格は、政府原案では一律に「生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して定めるものとする。」とあったのに対し、原料乳または指定食肉安定価格については、「これらの再生産を確保することを旨とし」て定めるという規定が加えられたことであります。」、その理由は、「前述の安定下位価格安定基準価格と修正された考え方とも関連しまして、畜産振興及び農業所得の安定をはかるという観点からの修正であります。」、こういうふうに明らかになっておるわけです。  そうすると、私が言いましたように、第三条第四項の安定価格という場合には原料乳及び指定食肉についてはそれは安定基準価格のことであり、しかもそれは再生産を確保するということに重点が置かれておる。そういう立場から修正が行なわれたわけです。だからその点からするならば、いわゆる安定基準価格というものは、当然再生産を確保する価格でなければならぬのだから、したがって農民生産実態というものを踏まえて生産費というものを基準にして拡大生産が可能な、そういう価格にきめられなければならぬ、こういう解釈になるはずなんです。その点の解釈についてどういうふうにお考えになっておるかお伺いしたいと思います。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は先ほどから申し上げておりますように、安定基準価格はやはり安定価格ということと同様にとっておりますが、この原料乳及び指定食肉につきましては、「生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保することを旨とし、」こういうことに決定されておりますが、指定乳製品については再生産を確保するというようなことはございません。これはやっぱり原料乳及び指定食肉というものは畜産農家生産するもので商品としての特殊性がある。指定乳製品一般商品としての範疇に入りますけれども、——もちろん原料乳及び指定食肉一般商品の範疇ではございますが、生産の状況が違う。こういう意味におきまして、生産農家といいますか、そういうものの立場を考慮して再生産を確保することを旨とする、こういうふうにつけ加わったと思います。そこでこれが重点で、生産費所得補償方式ということに変わったのだと、こういうところまでは私は考えておりません。私が先ほど申し上げましたように、いまいろいろお話がありましたが、生産条件等につきましても、農家の庭先で聞き取るような統計で十分とは申し上げられませんが、そういうような統計のしかたもいたしておりまするし、大体畜産関係全体の統計の資料というものも率直に申し上げて十分ではございません、だんだん整備されてきましたが。しかしそれにいたしましても、やはりこれらの生産条件とかあるいは消費関係もございますから、需給事情その他の経済事情等を考慮しまして、そうしてそれで算定をしようとする場合に、それが再生産を確保することでなかったという場合には、これはまずいと思います。でございますから、再生産を確保することを旨とした、それ以上でなければならない、こういう規定のしかたであるというふうに私は解釈しております。でございますので、いまお話しのように、生産費補償方式に変わったのだというところまでは私は考えません。再生産を確保することを旨とするのだ。でありますから、再生産の確保ができないような算定方式では——価格の決定方式ではまずい。こういう一つの限度というものをここではっきりつけ加えたのだと、こういうふうに私は解釈しております。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 生産費所得補償方式に変わったというところまでは解釈をしておられぬ、こうおっしゃるのですが、それでは安定基準下位価格というものを、どんずばりと言ってどんな価格だとお考えになっておるのか。そのことを率直にお答え願いたい。
  26. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それ以下であってはならない、こういうことであります。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 それ以下であってはならぬということになりますと、それは大きな間違いになってくる。それはなぜかというと、「安定基準価格及び安定下位価格は、その額を下って原料乳、指定乳製品及び指定食肉価格が低落することを防止することを目的として定める」、その限りにおいては、それ以下に下がってはならぬ価格だということは言えます。しかしながらそれを受けて第四項で、その安定基準価格というのはいろいろな要素がありますが、中心は再生産を確保する、こうなっておるのですから、安定基準価格が再生産を確保する価格でなければならぬはずです。再生産を確保する価格であるということになりますならば、農民生産実態を踏まえての価格でなければならぬし、生産実態を踏まえて価格算定されなければならぬということになるわけです。過去の不合理な不公正な取引価格というものを中心にして算定をしておったのでは、再生産を確保する価格算定はできない。このことを申し上げておる。それを実証的に申しますと、現実農林省が三十七年の審議会において示された資料によりまして毛、また今回示されておる資料によりましても、その算定のしかたそのものについてはわれわれは全面的に賛成をいたしかねますけれども、生産費を基準にした場合、あるいは生産費所得補償方式によった場合の価格というものは、現実にきめられておる三十七年の五十二円、三十八年の五十三円という安定基準価格よりもはるかに上回っておるということ、このことをどうお考えになっておるのか。このことを考えてみると、安定基準価格は、農民の再生産ということを全然考慮にいれないで、ことさらに低い価格というものを故意に算定したとしか考えられない。こういうことになりますが、いかがお考えになりますか。
  28. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは生産費所得補償方式ということ一本でいきますというと、米のような場合に、一つの相当高い価格ということになろうと思います。その基準のとり方等にもよりますけれども、そういうことになろうと思います。しかし私はやっぱり過去の実勢というものが、再三申し上げておりまするように、取引といたしまして不利な立場にある取引ではございますけれども、しかし生産条件とかあるいは需要の状況というものを全然考慮にいれないで、安定基準価格というものを決定するということであってはいけないし、及びそれらの経済事情を考慮した、その算定と同時に再生産を確保するという二つのものさしによって、これをきめていかなければならないのじゃないか。過去の経済事情あるいは生産条件及び需給事情というものを全然無視して、理想的なあるいは再生産確保というような形で、何といいますか、基準の取り方等、これは非常に問題がございますけれども、基準の取り方等によって、それのみによって計算するということであっては、やはりこの法律の趣旨に沿うたものでない、また実情に沿ったものでない。両面から考えて、少なくとも再生産は確保できるようなものでなければならない、こういうふうに考えております。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 どうも大臣の御答弁が回りくどくて、私の頭が悪いせいかよくわからぬのですが、先ほど私が読み上げた修正のときのいきさつからして、安定基準価格というのは再生産を確保することが中心なんでしょう。もちろん、あなたのおっしゃるように生産事情需給事情を勘案するのかもしれないが、それを勘案してもなおかつ再生産を確保する、それが安定基準価格ではないですか。話が回りくどくなりますから、その点にしぼってお聞きしたいのです。
  30. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そのとおりです。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 そのとおりですね。
  32. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ええ。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 それでは私は申し上げたいことがある。大臣は、ただいまの答弁によりますというと、安定基準価格はいわゆる再生産を確保する価格であると、こういう御認識に立っておられる。このことは農業基本法を受けた畜安法の立法趣旨に沿う私は考え方だと思うんです。したがってその再生産を確保する価格は当然農民生産実態をふまえて算出されてくる価格でなければならぬ。ここまで理論としては進んでまいると思います。ところが現実にはどういうことが行なわれておるかといいますと、いま大臣が正しく法律解釈なさったその解釈のしかたと違う解釈運用現実になされておる。そのことは国会においても重政農林大臣も言われました。さらに政府委員も言われました。また審議会における政府の当局者もそれを言っておられる。そうすると、大臣がいまおっしゃった立法府できめた正しい解釈を曲げて、行政の上において行政府運用をしておると、こういう重大な問題が起こってまいる。そのことを事実をもって指摘を申し上げたいと思います。その具体的な例を申し上げます。第四十三国会における三十八年三月二十六日の農林水産委員会で、重政農林大臣がこういうふうにお答えになっております。私は——標準価格という言葉を使っておりますが、これは安定基準価格の誤りだろうと思うのです。安定基準価格が再生産を保障する価格であると言うのではありません。私は下位価格と上位価格との間に一つのここに幅があります。その幅が再生産を確保する価格になればよろしいのだ、こういうふうに考えておりますというきわめて立法府の修正のときの考え方、また赤城農林大臣が率直に御答弁になった考え方よりも誤った解釈をしておられる。  さらにまたもう一つ問題になりますのは、三十七年六月十三日に畜産局長通達というものが県知事宛に出ております。それは「畜産物価格安定等に関する法律の施行について」、こういう文書でございますが、それの九ページによりますというと、こういう書き方をしております。「安定価格のうち原料乳及び指定食肉については、その額を下って価格が低落することを防止することを目的として定める価格が、安定基準価格となっており、指定乳製品のそれが安定下位価格となっているのとは名称を異にしており、安定価格を定めるに当ってもこの両品目については特に「これらの再生産を確保することを旨と」することとされているが、その場合においても、再生産を確保するのは安定基準価格のみによってではなく、安定上位価格原料乳にあってはこれに相応する観念的な安定上位価格)をも含めた「安定価格」の幅全体で、今後の需要動向に即応して対象畜産物生産を長期的に確保することを基本的なねらいとするものである。」こういうような通達を出しておられる。これは明らかに立法府が修正をしたときの意図というものを無視し、しかも赤城農林大臣がいま率直にお答えになった安定基準価格が、いわゆる農民の再生産を確保する価格であるという思想と、明らかに変わっておる考え方なんであります。このことは、立法府において定められた法律を、実定法として解釈をする場合、行政府がかってに解釈をしているということになる、その点も大臣はどうお考えになりますか。
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いきさつ等のお話もありましたので、なお事務当局から答弁させますけれども、私が先ほどから申し上げているのは、立法府で「再生産を確保することを旨とする」ということばが加えられましたが、これは生産費補償方式というものに切りかえたというところまでいっているというふうには私は考えておりませんということを、先ほど申し上げております。それは生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、しかもその考慮したものが生産費を確保することでなければならない、こういうような考え方でこれは修正されている、またそういうふうに解釈している。でありますので、そういうように御了解願いたいと思います。  なお、いままでのいきさつで、畜産局長の通達とかその他いろいろありますので、事務当局から答弁いたさせます。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 私は直ちに生産所得方式によって算定するとかせんとかというところまで論議をまだ発展さしてはいないのです。問題は、端的に私が、安定基準価格は再生産を確保する価格なのかどうかというお尋ねをしたときに、大臣安定基準価格は、再生産を確保する価格であると明確に御答弁になった、その御答弁を変えてもらっては困るのです。で、再生産を確保する価格ということになれば、もちろん副次的に生産事情需給事情は考慮されましょうが、あくまでもその価格算定基礎になるのは農民生産実態現実生産費をふまえて算出されなければならぬということ、このことを私は申し上げておる。ところが大臣のすなおな、正直な御答弁に対して実際の行政府解釈適用は非常に大きな隔たりを持っておる。法律に書いてない原料乳のごときについては上位価格までをも想定をして、そして一定の幅をこしらえて、その中で再生産が確保されればいいのだから、安定基準価格が再生産を確保する価格である必要はない、こういう解釈をしておる、そこに私は問題がある、こういうふうに言っておるのです。
  36. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 事務当局から答弁させますけれども、私は幅をもって解釈するのは間違っておると思います。原料乳等には上位価格というのはありません。そういう点で、事務当局から少し答弁させます。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 ありがとうございました。私は幅を持って原料乳のごときについて解釈するのは間違いであるという大臣の御答弁は、全く法律を正しく解釈された御答弁だと思う。それを幅を持たして解釈しようという行政府解釈というものは、立法府の意思というものを全く無視した解釈なんです。これは今後大臣によってきびしく監督してもらわなければならぬし、まして三十七年の六月十三日に出されたこの畜産局長通達のごときは撤回をされなければならぬ、そしてあらためて原料乳あるいは食肉安定基準価格はそれによって再生産を確保する価格であるということの通達のし直しをされますかどうか。
  38. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その前にちょっと事務当局から。
  39. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 事務当局から大臣お答えに対する補足的な説明をさしていただきます。  まず、法律解釈論の問題、すなわち法律のテクニカルな面から御説明を申し上げたいと思いますが、矢山先生の御指摘にもありましたように、法律第三条の「安定価格の決定」というところで「農林大臣は、」云々とありまして「次の安定価格を定めるものとする。」その安定価格の中に「原料乳及び指定食肉安定基準価格」というものが第一号、それから「指定乳製品の安定下位価格」というのが第二号、第三号が「指定乳製品及び指定食肉の安定上位価格」、この三号があるわけであります。その安定価格を定める場合の法律上の要件として、四項で「安定価格は、原料乳又は指定食肉当該家畜を含む。)については、これらの生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保することを旨とし、」て定めるべきであるというふうに書いておりまして、指定乳製品については、その生産事情及び需給状況その他を考慮して定めるということで、再生産確保を旨とするという規定じゃないわけであります。したがいまして原料乳については安定基準価格のみが法律上あげられておるのでありますから、実定法解釈原料乳については安定価格は三条でいう安定基準価格だけしかないという点は御指摘のとおりに私どもも解釈をいたしております。指定食肉については別に第三号に「指定食肉の安定上位価格」というのがありまして、これも安定価格ということばで呼ばれておりますから、したがって四項の安定価格は、指定食肉には安定基準価格と安定上位価格というものがある、それを定める際にただいま申し上げた法律上の決定の要件が働くということになるということが実定法上の考え方だと思います。そこで指定食肉につきましては、明らかに安定価格の中に基準価格と上位価格があるのでございますから、その安定帯の幅の中で第四項の再生産の確保を旨とするというその前の条件もございますが、そういうことを受けることは実定法解釈として当然である。したがって原料乳基準価格については法律上の上位価格がないのでありますから、それを定める場合の考慮事項が、第四項が働くことも、これも当然のことであると思っております。ところがその安定基準価格という、これもお話に出ましたが、第三項で、安定基準価格及び安定下位価格は、その額を下って価格が低落することを防止することを目的とする価格である、つまり下ささえの価格であるという性格を、これは原料乳基準価格につきましても、指定食肉基準価格についても同様の性格を持たしておるわけであります。そこで法律上の解釈、実定法上の解釈としてさようなことに相なってまいるわけでありますが、この基準価格を定めます場合に、この法律上いささか何といいますか、必ずしも安定基準価格の定義と申しますか、そういうものが明確にされていないというところは、これは制度全体のたてまえというものからの合理的な解釈というものを実定法解釈としては要求されるものと思うのであります。そういうたてまえに立ちますと、この水準の基準価格、つまりそれ以上下げてはならないという基準価格を定める場合には、そういう下ささえの価格を置くことによって再生産の確保を目途とすることができるという、そういうことであれば、法律上の解釈としても無理はないのだろうというふうに考えられるわけであります。で、畜産局長通達の中で原料乳については安定基準価格のみが設けられておるが、それに観念的に想定される安定上位価格というものがあって、というようなたしか文字があったと思います。手元に私通達を持っておりませんが、そのことは安定基準価格というのが固定的な価格というものを示すものではなくて、それ以下に下がることを防止する価格であって、したがってそれ以上の取引が行なわれる場合もあり得るという表現を、あのように通達の上であらわしたものと思いますが、私もその表現自身は必ずしも適切とは思いませんけれども、原料乳安定基準価格の性格の表現の方式としてあのようなカッコ書きの中での注を加えたものと思われるのであります。そういう考え方に立ちまして価格算定現実にいかなる方法をとるか、とることが妥当であるかということが行政上の任務というふうに考えておるわけであります。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 まず、一番わかりやすい原料乳の問題にしぼって先に申し上げたいのですが、先ほど第三項によって下ささえの価格であると、こういうふうにおっしゃった。ところが、その下ささえの価格は第四項に移っていくというと、原料乳の場合には再生産を確保することを旨として定めた価格でなければならぬと、こういうふうにすなおに解釈するのが——当然そういうふうに解釈するのが正しいということは、これまた、第四十三国会で今枝法制局長もそのことをはっきり農林水産委員会で表明をしております。したがって、下ささえの価格ということが重点なのでなしに、下ささえの価格であるとともに、原料乳については安定基準価格は再生産を確保する価格なんだと、その再生産を確保する価格であることにはもちろん生産事情需給事情も加味されましょう。されますが、それを加味したって、なおかつ再生産を確保する価格、そうしてそれは、それ以下に下がってはならぬ価格、こう解釈するのがあたりまえの解釈のしかたなんです。それが一つ。  それから原料乳について上位価格を云々ということばがないからというようなことで、食肉の場合と引っかけてのお話がありましたが、原料乳の場合には上位価格考える必要はない。なぜかというと、乳製品に対して上位価格と下位価格とが決定されているんですから、原料乳の上位価格というものは、これは全然考慮する必要がないんです。それで調整できる。  ところが、今度は第三点の食肉についてでございます。食肉については、なるほど上位価格というものがここに明白に出ております。この上位価格というものをこしらえたのは、食肉については、それ以上に大幅な値上がりがあった場合にそれを規制する措置がないから、したがって上位価格を、一応暴騰した場合の措置として規制しようというので、上位価格というものを設定したわけなんです。ところが、安定基準価格というのは、先ほど来申しておりますように、原料乳と同じであって、下ささえの価格であると同時に、それは再生産を確保する価格でなければならぬ。だから通達にあらわれているように、一定の幅の中で再生産を確保すればいいんだとか、あるいは政府委員が国会や審議会答弁をしているように、一つの幅を想定して、その中で再生産を確保すればいいんだ——そのことはもっとつき詰めていえば、安定基準価格は再生産を確保する価格でなくてもかまわない、こういう思想は法律を曲げて解釈して運用するものだということを申し上げたい。そのことは畜産局長は御確認になりますか。
  41. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 指定食肉につきましては、これは法律上、明確に基準価格と上位価格とがあるわけでございますから、その間の価格の変動というものは、法制的にもいわば自由に上下してしかるべき価格帯であるということを認めているわけであります。したがって、この問題について、基準価格及び上位価格を決定するにあたって、その安定帯の幅のきめ方というものが再生産を確保することを旨として定めるべきものであるということは、これは明瞭であると私は解釈しております。原料乳につきましては、そのような幅の規定が法律にございませんから、下ささえの価格をきめる場合に、その下ささえの価格が再生産を確保することを目途として定めたものでないということであれば、これは法律の趣旨に沿わないということでありますが、下ささえ価格は、私どもの解釈としては、長期的に社会的な需要を充足するに足る再生産を確保することを目途として定められたものであるということであるならば法律の趣旨に反するものではないというふうに解釈いたします。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 あなたは、赤城農林大臣が立法府の趣旨を尊重して正しく法律解釈されようとしているのに、それをあえてこじつけて、それと微妙な食い違いを見せるような答弁をしておられる。その思想がいまだに行政府の中にあるということが私は問題だと思う。食肉についておっしゃいましたが、食肉については私が先ほど見解を示したとおりです。幅の中で再生産を確保するんじゃない。安定基準価格——それ以下に下がってはならぬ安定基準価格、それが再生産を確保する、その上に立って、暴騰してはならぬから、暴騰を押えるために方法がないから上位価格を設定した、こう正しく解釈しなさい。そのことが今枝法制局長解釈とも合致する解釈であり、赤城農林大臣のただいまの解釈とも合致する解釈なんです。  それから原料乳の問題については、明らかに安定基準価格しかないのですから、これが下ささえの価格であるとともに、再生産を確保する価格である、このあなたのいまのおことばは正しいと思う。ただその場合に私は一つ問題になると思いますのは、長い目で見たときに再生産を確保していけばいいじゃないか、こういうような意味の御発言にとったのです。ところが、それについては私は問題がある。そういうお考えの表明は、もう資料を一々あげません、時間がありませんから。農林大臣がかつて農林水産委員会でも、予算委員会でも言っておられますし、また、審議会における政府の参事官のほうからも言っておられる。それはどういうことを言っておるかというと、現在の価格農民生産拡大してきているではないか、乳牛の頭数はふえた、生乳生産量はふえた、これは再生産を確保しておる証拠じゃないか、こういう意味のことを言っておられます。それはきわめて私は酪農民実態酪農経営実態を知らない役人の机上における考え方だと申し上げたい。なぜかといいますと、現在の酪農実態をお考えになってごらんなさい。ここに「農林金融」という刊行物があります。これで見ると、もう私は詳しく申し上げませんが、三十四年、三十五年までの生産費と乳価の対比が出ております。その中で、たとえば、乳価生産費を上廻っている、わずかに上回っているのは四頭以上の場合である。地区別に見た場合には、販売乳価生産費をわずかに上回っているのは北海道においてだけと、こういう統計が出ておる。しかも、三十六年に農林省が発表されている生産費調査というものがあります。それによって見ましても、また三十七年の生産費調査も発表されておりますが、それによって見ましても、現在定められておる安定基準価格というのは明らかに生産費以下だ、この現実をあなたはどういうふうに御解釈になるのか。ここに大きな私は運用上の誤りがあるし、法律解釈を故意に曲げて、安い乳価算定しようとする行政府考え方がはっきり出てきておるということを指摘したい。
  43. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 矢山先生のお手持ちの資料を私持っておりませんので、そのことに即して申し上げることができないことは申しわけないのでありますが、まず原料乳基準価格をきめる際の私の考え方は、同じ法律の中で安定基準価格という法律上の用語を用いております食肉基準価格についても同様の考え方でしかるべしというふうに解釈をいたしておるのであります。で、生産費を……。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 いまのところ、もう一ぺんちょっと言ってください。
  45. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 原料乳について安定基準価格を定める、で、その安定基準価格を定める考え方というのは、同じ法律の中で安定基準価格という言い方をいい、その安定基準価格というものの性格を第三項で同じ性格づけをいたしておるということから考えまして、原料乳安定基準価格考え方の基本的なものの考え方と、指定食肉安定基準価格考え方というものは、これは同様であるべきであるというふうに解釈をいたしております。  それから、現在の現実乳価生産費調査の結果によって見れば、生産費を割っておる場合が多いではないかということでございますが、そのことは、どの程度までということは、私の手元に資料がございませんので申し上げませんが、そういう事実が現在の統計資料の結果からは出ておることは認めざるを得ないと思います。御承知のように、日本酪農経営が一、二頭飼いの純然たる副業的な経営から、四、五頭に至ります酪農家らしくなった形のもの、さらに十頭以上のような主業的なあるいは専業的な酪農家というものが存在をいたしまして、しかもその経営の形態というのは非常に激増をいたしておる段階でございます。また、その生産費についても非常にばらつきがあるというような状態でございますから、生産費というものを、これを将来の、現状における平均生産費的なもの、そういうものが酪農の将来を決定するようなものであるかどうかというようなことにも疑念を持たざるを得ない。ただ将来の酪農考えます場合に、われわれ政府として育成すべき形態の酪農業というものが、生産費を償わないというようなことでは、これは酪農振興を期するわけには参らないということでもりまして、価格の上昇とともに、また、生産性の向上というようなことによる酪農経営の安定ということをはかるべきであるというふうに考えております。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 一つところで議論が進展しないので私も困っておるのですが、このことをはっきりさせませんというと今後の審議会審議価格の決定に非常に支障がありますので、ひとつお許しをいただきたいと思います。  いま私は、前段で御説明になったことはどうもはっきりわからぬのですが、これも大臣にお尋ねしたと同様に、もう端的に、私は行政府解釈をお伺いしたい。大臣解釈を尊重してお答えにならぬというと、またそこに立法府の考え方、それを受けた大臣の正しい考え方と行政府解釈の相違が出てくると思いますので、注意して御答弁を願いたい。特に原料乳につきましては、安定基準価格は、この法文を全般的に見ました場合に、下ささえの価格であり、それは再生産を確保しなければならぬ価格である、こう解釈するかいなか、これが一つ。  もう一つ食肉についても同様でございます。食肉についての考え方は、私が先ほど申し上げましたのでもう繰り返しません。安定基準価格原料乳と同じように解釈すべきである。上位価格がきめられたのは別個の観点からきめられた、つまり、豚肉の暴騰を防ぐという別個の観点からきめられておる。これに御賛成かどうか。  それからもう一つ酪農経営実態が云々というお話がありました。これは「農林金融」の資料はあなたのお手元にないから、これはもうこれ以上申し上げません。三十六年に牛乳生産費調査の結果が発表になっております。三十七年のももう発表になっておるはずですが、残念ながら私の手元にありませんので、六二年の分で申し上げてみたいと思います。そうしますというと、大体全国平均にして、乳価は一升に直しますというと生産費が六十二円十銭についております。ところが、三十七年にきめられた価格は五十二円でございます。三十六年の生産費よりも、物価動向からして三十七年の生産費のほうが上がっておるということは予測される。ところが、それを抜きにしても、三十六年の生産費よりも三十七年にきめられた原料乳安定基準価格が十円以上下回っておる。この現実は率直に御認識をいただかなければならぬし、そのことは私が先ほど指摘しましたように、安定基準価格というものがことさらに低位にきめられておるということになる。これに御同意かどうか。  それからもう一つは、先ほど農家経営規模が非常に階層が複雑だとおっしゃいました。なるほどそのとおりです。したがって、将来どういうところに目標を置いて、再生産確保の安定基準価格考えるべきかということについての問題点もあるということの意味の御発言もありました。それは私はそのとおりだと思う。しからば、私が聞きたいのは、五十二円という安定基準価格、三十八年は五十三円ですが、これがただいま私が申し上げたように、農民の再生産を確保する価格とするならば、その五十二円、五十三円という安定基準価格というものは、一体具体的にはどういう経営農家というものを標準にしてはじき出されたものであるか。そうしてまた、その標準に持っていくために、当局は具体的にいかなる努力をしておるのか。何の努力もしないで架空の目標だけ掲げて、そうして五十二円だ五十三円だという低い安定基準価格をきめて、これで再生産を確保しろというところに大きな矛盾があるということが一つ。  もう一つは、なるほど将来の目標をきめられることもいいかもしれません。しかしながら、現在の酪農民実態経営実態というのは、酪農民みずからが好んでつくり上げたものではございません。これは政府選択的拡大という激しい宣伝に乗って、酪農によって何とか生きていこうとする農民酪農に取りついた。そうしてその中で四苦八苦して、酪農の発展をはかろうとしておる。ところが、幾ら苦労しても一、二頭飼いの零細な状態から脱却できない政治経済的な環境に置かれておる。このことは私は酪農民の責任ではなしに、政治の責任だと思う。そうするならば、一定の目標を定めて、それに基づいて再生産を確保する立場から安定基準価格をきめられるということも、一つの方法であるかもしれませんが、その前段において考えなければならぬのは、いまの日本酪農経営実態を踏まえて、そうして苦労しておる酪農民の再生産を確保するという価格をまず決定をして、その上に立って、将来農林省が適正であると考えておる方向に向くような施策をやっていく。そうして、生産費の逓減をはかっていく。そうして事実、生産費が下がり、安定基準価格を下げても農民所得確保には差しつかえないという段階が実現したときに、そのときに安定基準価格というものが下がってくるということはあり得ると思う。そういう点をいかにお考えになるのか。あなたのおっしゃるような目標を先に設定して、現状を無視した安定基準価格を設定するということは、これは理想としては言えるけれども、対策として、現実の政策としては本末転倒だ、こういうことを申し上げたい。これに対しては大臣と当局と両方からの御答弁をお願いします。
  47. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法律解釈問題から申し上げます。第三条の四項の安定価格でございますが、法律的に見ますならば、この安定価格の中には安定基準価格及び安定下位価格、安定上位価格と含まれております。しかし、なま牛乳等につきましては、安定下位価格、上位価格というのはございません。安定基準価格安定価格は一致する、こういうふうに解釈されます。そこで第三条の三項にありますように、安定基準価格及び安定下位価格、こういうふうになっておりますので、それを受けた四項の安定価格はすなわち安定基準価格、すなわちなま牛乳にいたしますれば安定基準価格、それから指定食肉につきますならば安定下位価格、これが「生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保する」……。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 指定食肉についても安定価格でしょう。
  49. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 食肉についても安定下位価格、こういうふうになっております。これがあなたの言っているとおりの解釈で、その幅を持っての解釈でないと思います。しかし、安定価格というこのことばから見れば、これは上位価格も下位価格も含めて安定価格法律で規定してありますけれども、価格の決定の基準としては、食肉については安定下位価格は再生産を確保する——それは上位価格はもちろんでございますけれども、従来の下位価格でも再生産を確保することを旨とする、そういうふうに解釈されます。また、それが立法の趣旨だと、そういうふうに考えております。  なお、現状に対する畜産方向づけにつきましては畜産局長からお答えいたします。
  50. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 法律上の解釈について大臣からお話がありましたが、いずれも安定価格という名前で呼ばれております基準価格、下位価格あるいは上位価格というもの、いずれも安定価格であるわけでありますので、いわばその下ささえになります安定基準価格というものの決定につきましては、四項の条件法律上の要件としておるということについては、大臣の御解釈に私ども毛頭相違はございません。  将来の問題の前に、過去の三十七年の原料乳安定基準価格五十二円、それから三十八年の安定基準価格五十三円というものが現実農林省の統計調査による生産費の結果というものに対して不当に低いのではないかという御質問であったと思うのでありますが、確かに三十六年の生産費の調査の結果を見ますと、三十六年については、私の手元の資料では一升当たり全国平均の第二次生産費が五十九円七十八銭ということになっております。三十七年のものはこれは最終の集計が終わっておらないのかとも思いますが、私の手元であらかじめ統計調査部のほうから通知を受けましたものでは、一升当たり六十二円四十九銭という第二次生産費になっておるわけであります。ただ、この生産費は、これはもう矢山先生も御承知の上でお話があったと思うのでありますが、これは飲用乳自体の生産費も含めて、なま乳の生産費をとったものでありまして、それと安定基準価格の水準とを比べまして、直ちにその差額をもって、不当な差があるというふうにも言いかねるかと思うのであります。安定基準価格の当不当に関しましては、これはまあ、いろいろ御見解も分かれるところかと思いますけれども、これまた先生御承知のように、昨年の安定基準価格を——三十八年の安定基準価格を定めますまで、過去におきます実現されました農家庭先価格というものの、基準期間中における総平均乳価というものを設定すべき年度の推定生産費指数というもので修正をいたしたものを用いて決定をいたしたのでありまして、法律でいっております生産条件その他の事情も考慮されております。また、そういう基準期間中における……これもまた御見解の上では政府解釈は正当でないというお話でございましたけれども、その間に日本酪農というものは、需要の増大に不足をしながらも経営拡大しつつ、生産を続けてきたものでありますから、そういう実勢価格を新しい年度の想定される生産費の指数で修正をして、下ささえ価格を用いるということも、これはまた方法としてしかるべき方法であるというふうに考えておりますから、その結果として、私どもとしては、この価格が不当に安過ぎたというふうにも考えないのであります。ただ法律上の解釈あるいは制度全体の運営の上で今後いかなる方法を用いて算定することがいいかということは、これは必ずしも私どもとしても固定的に主張すべき問題であるというふうにも考えておりませんので、現在御承知のように、畜産物価格審議会諮問をいたしまして、留意すべき事項として御審議を願っておるということでございます。  なお、将来の日本酪農経営というものの目標をどうするかという問題でありますが、先ほども触れましたように、現在御承知のように、経営農家戸数というものは四十一万戸程度を中心といたしまして、ここしばらく停滞の傾向をたどっておりますが、その中で二戸当たりの飼養頭数は増大をして、いわゆる多頭飼養の傾向をかなり強い勢いで進めておるのでありまして、この段階で直ちにどのような経営をもってわれわれの目標とする経営をすべきかということはにわかに断定をしにくいという事情にあるわけでありますが、私どもも将来の酪農のあり方というものについては、現在も検討を進めておるわけであります。中間的な一つのめどといたしましては、畜産経営拡大資金の融資にあたりましてある程度のことを考えて、その育成をはかっておるというようなことを考えておる次第でありますが、そのことと現在の安定基準価格の水準をどうするかということを直ちに結びつけて考えるという考え方はただいまのところとっておりません。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 非常に時間を急がれておりますので、もう終わりたいと思います。  そこで明らかになった点だけをだめ押しをして今後の審議会における審議の素材にしたいので申し上げます。  まず、畜産局長答弁の第一点、現実生産費より安定基準価格が非常に低いという問題を指摘しました。その際に、私は六十二円十銭、三十六年に生産費がかかっておると申し上げた。それは第二次生産費ではありません。租税公課算入の生産費です。租税公課算入の生産費をとっていくのが私は正しいと思ったから、六十二円十銭と申し上げた。それを除いた第二次生産費で考えられるならば、五十九円七十八銭、こうなるのでしょう。私は現実に計算をしておりませんから、おそらくそのことばを信用いたします。しかし、それに比較いたしましても、三十七年にきめられた五十二円という安定基準価格は非常に低いということ。  その次に、それが必ずしも低くないんだという理由で飲用乳自体の問題を持ち出されました。しかしながら、原料乳自体におきましても、その乳価はこの三十六年に算定された生産費よりも下回っておるということ、このことを当局はよく御認識をいただかなければならぬということです。だから、原料乳自体においてすらそういう生産費を下回っておるようなそういう低位な安定基準価格をきめておる。このことを十分御認識をいただきたい。  それからその次の点でございますが、過去の実勢価格の平均をもとにしていろいろな修正を施して安定基準価格を算出する、こうおっしゃる。しかしながら、その考え方は、私は再生産を確保するという法のたてまえから言うならば、誤りだと思う。何のために三十六年に牛乳生産費調査をやって、三十七年に生産費の調査をやっているのですか。その生産費の調査をやっているのならば、最近時の、現実生産費調査は三十七年度の生産費調査なんですから、それをもとにして三十九年度の生産費というものを推定をして、その基礎の上に立って安定基準価格をきめていくというのがこれが当然の考え方であるはずなんです。  それから第四点、今日非常に低い価格の中でも経営拡大してきたとおっしゃいます。このことは先ほども指摘を申し上げましたとおりに、当局の認識が足らない。酪農民は、戦後において非常に急激に伸びた事態においては就業の機会がない。したがって、労働の完全燃焼ということをねらって酪農に飛びついた。そうして、そのときの実態というものはもう調査して御存じでしょうが、おそらく七割近い農民が、自己資金でなしに、借入金によって乳牛を導入してやっておる。したがって、乳価情勢が悪くなったからといって早急に酪農をやめるというようなことに踏み切るわけには参らない。したがって、自分の生活を切り詰めながら生産を続けてきた。そういう状態の中で、農基法が生まれ、畜安法が生まれ、選択的拡大だという宣伝が行なわれた。だから、農民はこれにすがりついておれば何とかなるということで、血の出るような苦しみを続けながら生産を続けてきたということ、そのことは、資本主義経済のもとにおける再生産、つまり拡大生産ではなしに縮小再生産であるということ。農民の犠牲の上に立った再生産であるということ、このことを十分に認識をして、今後審議会にも臨み、乳価安定基準価格を決定していただかなければならないと思います。このことは、私の考えとして、行政府のほうでも十分御認識をいただきたいと思います。  それから確認いたしたいのは、先ほど来の赤城農林大臣答弁なり、さらに行政府答弁で、今度の場合につきましては、安定基準価格に対する解釈というものがいままでの間違った解釈を脱却して、私は改まってきたと思うのです。それは通達等に見られますように、一定の幅というものを考えて、その上下の幅の中で再生産を確保すればいいという考え方を捨てて、国会において畜安法が修正された。その修正の趣旨に沿って安定基準価格は下ささえの価格であるとともに、それが再生産を確保しなければならぬ価格である。このことはいま明確に答弁の中で出てきたわけです。私はこの答弁を踏まえて今後の審議会等におきましても、安定基準価格を決定していく論議にしたいと思いますし、当局のほうもそういう姿勢を持っていただきたい。特に赤城農林大臣にこの際申し上げたいのは、農林大臣はいま行政府におられます。しかしながら、畜安法をつくったときには立法府の責任者であったはずなんです。立法府において行なわれた行為は、行政府において故意に曲げられて解釈運用されておるということについては、あなたいま行政府に入られて、その誤りを十分にただしていく努力をしなければならない。やがてあなたもまた立法府に帰ってくることがあるかもしれぬ。そうするならば、それが当然の責務であるし、そうしなければ立法府が行政府によって軽視をされるという問題が起こってきます。少なくとも国会が国権の最高機関、そこにあってきめられたことが、行政府によってそのまま忠実に守られるということが絶対必要不可欠の条件です。これがなくして日本の民主主義は成り立たない。もしそれを破壊するならば、官僚独善政治になってしまう。あなた方は議会民主主義を尊重されるならば、この立法府の国会修正の趣旨、そうしてそれを正しくいま解釈されて御答弁なさった、その御答弁の趣旨を今後の法解釈の上に絶対に生かしていただきたい。  それから最後に、この三十七年六月十三日に出されたこの誤った通達は、これは修正してあらためて通達を出していただきたい。そうしないというと下部においては混乱が起きます。さらにそのほかに畜安法解釈適用の問題については、畜産振興事業団の運営の問題等についても幾多の指摘すべき問題があります。さらに畜産振興の問題については、いま政府は飼料審議会を終わりまして、飼料の値上げをやると言っていると聞いておりますが、これについても一方では飼料が上がってくる、一方では乳価引き下げが行なわれる。もちろん夏場にかかりましたからまた上げようと言っておりましたが、しかしながら、上げたにいたしましても、えさ代が値上がってきて、いままですら生産費を償えない乳価現状で、これが生産農民生産費を償って、経営の安定がはかり得るとは考えられません。したがって、飼料問題との関連においても非常に大きな問題があります。さらにもう一つの問題は、自由化をしないと言いながら、現実には自由化をされたと同じように、脱脂粉乳のごときは学校給食に採用されて、国内生産量の四割以上に及ぶようなものが輸入をされてきておる。チーズの輸入にしても増大をいたしまして、これを加工してプロセス・チーズとして出しておる。そのことが日本酪農民に対して非常な圧迫の一つ条件にもなっておる、こういう点もあります。したがって、これから開放経済体制に向かう時期において、日本農業というもの、酪農というものをどう考えていかなければならぬかという重大な問題もありますが、これは実はやりたいと思っておるのですが、私の時間が長過ぎていまおしかりを受けましたので、これでやめます。しかし、これらの論議は、さらに今後農林水産委員会等を通じて徹底的にやっていきたいと思っておりますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  52. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法律解釈あるいは方針等は先ほど申し上げたとおりでございます。立法府であると、行政府であると、法律解釈に違いはないと思います。ただ、矢山さんもお認めのようでございましたが、この法律の修正が生産費所得補償方式という方式にいったのじゃないか、再生産を確保することを旨とする、こういうことからこの法律の趣旨に沿うた措置をとっていきたい、こういうことを申し上げておきます。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 それは私は法律改正の趣旨から、すぐ生産費所得補償方式の論議は私はしなかったわけです。しかしながら、質問の中でも指摘しましたように、再生産を確保するということは資本主義経済のもとでは常識として拡大生産、それが農民の犠牲の上に立って生産が続けられておるということではならぬわけです。そうするならば、再生産を確保することを旨とするという法の趣旨は、私どもは生産費所得補償方式によって算定をされた価格でなければ、その達成が不可能だと考えますとともに、農業基本法の農工間の所得格差をねらうという大目的、さらにそれを受けて畜安法ができておるという立場からいたしましても、再生産確保の価格というのは、生産費及び所得補償方式によって算出をされるのが当然の常識、経済の常識、このことを私は申し上げておきたい。ただ再生産を確保する価格が具体的にどういう価格かという論議は、きょうはするひまがなかったから、それに触れなかっただけであって、そこに誤解があっては困りますので、さような再生産を確保する価格は資本主義経済のもとの常識として、生産費及び所得補償方式による価格であると、われわれは考えます。
  54. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私はそこまでいくのはどうかと思います。生産費所得補償方式という一つ方式がございます。米等におきましても方式がございます。そうだというと、これは非常に違ってきます。生産費をやはり補償するということにつきましては、これはもちろん当然この法律の趣旨から考えていかなければならぬ、生産所得方式というのは生産所得方式として別にこれはあるわけです。たとえば御承知のように、米等につきましてもそういう方式が大体あります。でありますから、いまおっしゃるように、これは生産費所得補償方式をとったということになれば、当然その方式に従う算定方法をとります。生産費を補償する、あるいは再生産を確保するといいましても、おのずから違っていることは御承知だと思います、でございますから、直ちにこれは俗というか、一般的にいって生産費所得補償方式をとったのだということに……。
  55. 田中啓一

    主査田中啓一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  56. 田中啓一

    主査田中啓一君) 速記を始めて。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 先ほど生産費所得補償方式による米と同様にできないとおっしゃいました。私の考え方選択的拡大一つとして取り上げて、将来米に次ぐ主食の地位にのし上がらせようとしておる、その政府立場からいうならば、生産費所得補償方式をとるというのが、再生産確保の上から正しいと思う。しかしながら、それをあなたは否定されたにしても、生産費を償う価格でなければならぬということだけははっきりおっしゃった。このことだけは私はだめ押しをしておいて、答弁は要りませんから、われわれは今後生産費を償う価格安定基準価格であるということの上に立って論議を進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。
  58. 安田敏雄

    安田敏雄君 議事進行……。
  59. 田中啓一

    主査田中啓一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  60. 田中啓一

    主査田中啓一君) 速記を始めて。
  61. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 私時間がありませんので、ごく簡単に大局的な問題だけ大臣にお伺いいたします。ちょっと歯を抜いておりますので聞きとりにくいかと思いますが、その点はお許しください。  大臣が、先ほどもお話しになりましたし、いままでいろいろ御説明もございました農業近代化について、非常に政府が御努力になっておることは万々承知いたしております。かつ、その近代化実績をあげるということについては相当の長期を要するということも私どもよくわかります。わかりますが、この近代化の手段として日本農業考えるならば、一番のウイーク・ポイントだという問題は何といっても西欧の先進諸国に比べて経営面積が非常に小さいという問題点が一つあろうかと思うのであります。その他の問題については相当の成果をあげつつあるということは私どももよく承知をいたしておりますが、日本農業としての宿命的なこの一番のウイーク・ポイントに対する政府施策、この問題を取り上げて考えますと、力の入れ方が十分でないのではなかろうか、こう考えるのですが、大臣いかがでございますか。
  62. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 全く御説のとおりでございます。日本農業の脆弱面というのは二つあったと思います。一つは戦前自作農が少なくて、小作農家が非常に多かった。これは土地解放で解消されました。解消されましたが、そのままで解放になりましたから、いま御説のとおり、経営面積が従来とあまり違わないままで農地解放がされた、こういうことでございますから、世界のほかの国と比較いたしまして、日本農業の脆弱性の原因がそこにあろうと思います。したがいまして、国際的に見ましても、日本の農産物のコストが高いあるいは労力等も非常にかかる、いろいろな面において脆弱性があるということは御指摘のとおりであると思っております。
  63. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 その対策として、政府ではあるいは開拓とかあるいは農地信託制度とか、それからただいま審議中の財政投融資で農林漁業金融公庫から百七十五億でありますか、一応土地の取得対策としていろいろ組んでおられますことは承知いたしております。いたしておりますが、相当期待をもって臨んだ農地信託制度につきましてもあるいは小作料の問題とかあるいはそれを受けて経営拡大しようとする人が非常に不安定な条件もとに委託を受ける、委託をするという立場等もあって、この制度が実際には期待どおりは全然伸びておらない。たとえていいますと、予算では三十八年度は八千何百万ですか、お組みになりましたが、三十九年度は二千何百万という三分の一以下の予算案を御提示になっておりまして、農地信託制度については非常に期待薄だ、一方、相当革新的に大臣が御努力になって、いま提案になっておる財政投融資、土地取得百七十五億という財政投資案も、これは相当革新的ではありますけれども、かりに反当十何万五千円とすれば一万町歩分にしか当たらない、こういうことも言えると思うのであります。政府がかつて考えた二町五反自立経営農家百万戸の設定という問題から見ますと、こうした諸般の対策がまだまだ非常に不十分だというふうに考えるのでありますけれども、どうしても日本農業近代化していくというその中心になるものは、自立経営農家の育成であるということはこれは当然であろうと思います。そういう方向に持っていくための農地の流動という問題について、大臣はいまの対策、将来の対策という点でどういうふうにお考えになっておりますか。
  64. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話の実態等につきましては、全くそのとおり考えております。いろいろ土地取得資金とか、あるいは財政金融面、その他農地法の改正による農業法人あるいは信託制度あるいは上限の撤廃、こういうような方法をとりましたが、思うようにいっておらぬことも御指摘のとおりでございます。どうしても私は経営面積を広げて自立経営農家を安定させるということが大体中心だと思います。そのためには、一つの方法としては、御承知のように、基盤の整備ということを強くやっていく過程において経営面積等を広げていく。すなわち、土地改良等によりまして換地処分まで進める過程におきまして、できるだけ集困化あるいはまた、少ない面積のものが換地処分の際にその土地を金でもって清算を受けていくというような面も出てくると思います。でありますので、土地改良等におきまして、国営事業等を施行する場合にも末端まで換地処分までやって、経営を集団化し、あるいは拡大していく、こういうことも一つの方法だと思います。あるいはまた、兼業農家が非常にふえておりますが、やはり農業で立っていこうというものに対する共同化というものの考え方も、私は、自分一人だけの自立じゃなくて、共同して自立的な方向へいくということでありますならば、これは共同化というようなこと、すなわち農業法人等による進め方をしていくということも方法の一つだと思います。さらに農地法との関連がございまして、農地法が御承知のように、三十七年に改正になっております。なっておりますが、なおこの集団化といいますか、経営面積を広げる点におきまして所有権を取得して経営面積を広げていくと、こういう意味でいまお話がありましたように、取得資金なども百七十五億というような金を出すことにいたしておるのでございますが、所有権だけではなく賃貸借といいますか、借りて経営面積を広げると、こういうことも考えられると思います。でありますので、農地の流動化につきましては、所有権による流動化によって経営面積を広げるという方法と同時に、賃貸借等によって流動化が促進されて、それによって経営面積を広げられるかということも実は検討いたしておるんでございます。これにつきましては賃借料といいますか、そういう面とのにらみ合い等もありますが、そういう面での流動化による経営面積の拡大ということ等につきましても当局に検討させておりますし、また、部外のいろいろな方面等の調査等もいたしております。そういうような方向で経営面積等も広げていきたい、こういうふうに考えております。
  65. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 大臣はいま賃貸借の問題にお触れになりましたが、賃貸借のほうからいいますと、もちろんそれは小作料の問題とか、あるいは現在の農地法にきめている非常にいわば窮屈な賃貸借関係、これは貸すほうからいうと、農地の潜在価値というもの等を考えた場合に、貸すほうからいうと、いまのきびしい小作権というものではなかなか貸したがらない。それを今度はゆるめれば、借りるほうからいえば非常に不安定な借り方になる。賃貸借の問題は私はあえて排斥するわけではありませんけれども、賃貸借の問題にこの解決の相当の柱を持たしていこうと考えられるならば、これはかえって非常にむずかしい問題ではなかろうか。やはり同時に所有権の移転を中心にした流動、もちろん、それは売る相手がなければ話になりませんけれども、第二種兼業の方々がみずからの自由な意思によって離農するという場のためには、もちろん労働雇用条件とか、社会保障とか、いろいろな問題がもっと固まっていかなければならないことは当然でありますけれども、農業動向にも報告しておられますように、そういう方向が若干出つつありますし、たとえば西ドイツあたりでも、昭和三十年から三十六年までの間に経営面積が約一町歩ふえている、農地の流動というものが相当の速度をもって流動している。それ以上にその経営面積という点から見たらはるかに劣悪な日本農業というものを考えた場合に、どうしても農業近代化していくという立場から見れば、流動化に対して私はもっと根本的な力の入れ方が必要ではなかろうか。それにはいろいろ世上意見を出されている方々がございます。あるいは二重価格制の問題、いろいろな問題もありますが、なかなか国の財政負担でそういうことを積極的にやるということは、これは現在の国民経済力からいっても、近い将来の国民経済力からいっても、それによって起こる国の財政からいってもなかなか至難なことでありましょう。そういう点を煮詰めていきますと、もっと違う方法で大臣がこの流動化という問題について積極的にお考えなさらないと、私は近代化という問題が非常にこの点で壁にぶつかるのではなかろうかというふうに考えるのですが、いかがでございましょうか。
  66. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 賃貸借による流動化、それを進めていくことによっての経営面積の拡大、これは非常にいまおっしゃられますように、貸すほうでも、借りるほうでも、賃借料というような問題と土地に対する愛着というような問題等もありまして非常にむずかしいと思います。でございますので、これはそれでやっていくというわけじゃございませんが、それも一つの方法であるので、どういうふうにそれを持っていくかということにつきましての検討をしておるのでございますので、いまそれが結論だということを申し上げておるわけじゃございませんが、その点は御承知だと思います。根本的にはやはり所有権によることが最も必要な条件といいますか、所有権による経営面積の拡大ということが私は筋道だと思います。そういう意味におきまして、先ほどもちょっと触れましたが、経営面積がふえないといたしましても、集団化ということは最も必要だということで、ことしの予算等におきましても、圃場の整備につきましての予算面では、相当、昨年に比較いたしまして、大幅に計上いたして御審議を願っておるわけであります。これは拡大にはなりませんけれども、一つの実質的な拡大にひとしいような効果をもたらすことになると思います。また、土地所有権による経営面積の拡大、こういう点につきましても、いろいろ意見もありますので、私もどういう方向でなお一そう進めるべきかということにつきましては研究中でございますので、申し上げる段階には至っておりませんが、まあこれも適切なことかどうかは私もまだ結論が出ておりませんが、いわゆるこれは根本的な問題とは違いますが、流動の速度を早めるというような意味におきましては、いまの登記制度等との関連において、地券といいますか、明治の初めごろに株券のような地券というもので登記にかわるような制度等もありました。そういう地券の制度などというものも、これは根本的な問題ではございませんが、ひとつ考えてみる方法じゃないかというようなことがございます。しかし、何といたしましても、基本的には土地を手放す人がほかへ入る場合に、安定してほかの仕事についていける、こういう保証がございませんというと、土地を手放すということに相ならぬと思います。そういうことが確立されて、また確立するようにいたしまして、所有権による経営面積の拡大という方向に持っていきたいと考えておりますけれども、なお根本的に、進める上においてどういうふうな方策がいいのかということにつきましては、いま直ちにこういう方法がよかろうという案はまだ持ち合わせておりません。研究中でございます。
  67. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 まあ大臣はその集団化の問題、圃場整備の問題、土地改良の問題等お取り上げになりましたけれども、それはそれで近代化としては確かに最高の手段の一つではありますけれども、これはいわゆる労働の生産性を上げるという点についてはまことに適切な手段でありますが、労働の燃焼の場をふやすということにはならぬ。生産性を上げる労働力、そこに投下する一定の面積に対する労働時間というものは減ってくる。減ってきた労働力を、農業以外の部分で、二次産業、三次産業で労働の燃焼をはかるという点では非常に有効で、農家所得を上げるという点については確かに非常に有効でありますけれども、農業そのものの所得を非常に上げていく手段としては、必ずしも大臣のおっしゃる点とは、私は若干の違った考えを持っておるわけです。どうしてもそれは温室農業とか、隔離農業とか、いろいろな問題点の場合は別でありますけれども、耕種農業を中心にして考えた場合には、どうしても経営面積の拡大ということが、くどいですけれども、私、どうしても必要なんだ。もっと政府に力を入れていただきたい。私も若干の試案はありますけれども、政府でまだこれという試案ができていないとおっしゃるなら、早急に、でき得べくんば次の通常国会あたりまでに、そうした成案を固められて、この流動化、自立農家の育成のための経営拡大——もちろん第二種兼業等で、進んで農地を手放そうという人がなければこれは話になりませんけれども、そういうものが一方にあって、そういうものがあるのに、それを容易に経営拡大のほうに入手していけない場があったのでは、これは政策として非常にそこにネックが出てくるわけですから、そういう点で私申し上げているわけです。大臣が、ただいまのところは成案がないというお話でありますが、どうか早急にこの問題についてひとつ御検討をお進め願いたいと思うのであります。  大臣は、御答弁の中で、農地の集団化その他の問題に触れられましたので、私それから思いついて御質問をいたしたいのでありますけれども、一月の農業動向報告で、農業と他産業比較生産性というものをあげていらっしゃいます。そうして、農業はこの程度に上がったけれども、まだ低いのだということを言っていらっしゃいます。ところが、その対象となる二次産業なり、三次産業なりというものは、年間を通じておおむね所定の勤労というものを、労働というものを燃焼して、それによる所得というものが一方にはある。農業では、たとえば第一種兼業、第二種兼業農家というようなものは、農業によって労働燃焼というものの場が相当少ないか、非常に少ないか、そういうものと、他のものと比較して、比較生産性を比べていらっしゃるということ自体が、先ほど魅力ある農業という方向に持っていかなきゃならぬというふうに大臣はおっしゃいましたけれども、異質のものを比べて、そうして農業というものは実態よりももっと低いのだというような形に読み取られる政府報告自体が、魅力ある農業にかえって水をさすものではなかろうか。私は年間の比較生産性ということを取り上げられるならば、専業農家と他の産業従事者というもので比較されるなら、これは話はわかるけれども、第二種兼業までひっくるめて比較なさるということは、非常に間違った印象を国民に与えるのではなかろうか、こう思いますが、いかがでございますか。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私もそう思います。しかし、まあ他産業との格差是正というようなことがありますので、他産業の主として製造業の場合をとって比較しておりますけれども、農業はいま御指摘のように、年間を通じて農業そのものをやっているわけでもございませんし、農業の形態等によりましてもいろいろ違っております。でございますから、年じゅう雇用されているものとの比較というようなことが、はたして当を得ているかどうかということには疑問があろうと思いますけれども、他産業との関係ということでその比較をとっております。その結果、魅力ある農業でなくて、何か、もう農業というものはつまらないものだ、もう将来性もないのだ、というような風潮や感じを抱かせておる面も、これは否定できないかと思います。そういうような面もございますので、実は農政審議会で相当あれを検討して、二回か、三回にわたって案を練り直したりなんかしましてつくったものでありますけれども、いまの御指摘の点等も考慮に入れまして、なお農政審議会等で検討いたしてみたい、こう考えております。
  69. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 私は比較なさるなら専業農家と製造工業なら製造工業と比較なさい、こういうことでもって初めて同質のものを比較するということになると思う。この点はひとつ大臣真剣にお考えくださいまして、次の年次報告等の場合には、十分理論的な比較のある立場で、ものを考えて御報告くださることをお願い申し上げておきます。  それから時間もありませんから、私質問したかったこともやめますけれども、もう一つ内閣の実力ある大臣として農林大臣直接の問題もありますけれども、お伺いしたいのであります。  今度の予算案に国産品愛用ということで二千八百万ですか、予算を組んで、国産品愛用向上本部ですか、何か財団法人、そういうところへその補助金を流して国産奨励をやろう、こういうことが出ておりますけれども、現在の日本の、たとえば輸出入のあのアンバランス等から見ましても、国産品愛用という問題をもっと政府がほんとうに本腰を入れて、力を入れてやってくださらないと、特にこの四月から開放経済に向かってその点非常に私は憂慮にたえない感じがするのであります。二千八百万ですか、予算を組んで国産品愛用ということについて政府がやるのだというふうにおっしゃるかもしれませんが、その財団法人にその仕事をまかしていくことあるいはテレビ放送なり、あるいはその他の報道機関を使ってやるという計画等いろいろございますけれども、政府がいまの国際収支から見ましても、ほんとうにもっと本腰を入れて国産品愛用、もちろんその中には大臣の直接の御所管の食糧問題も包含いたしておりますが、内閣の首脳部としてこの問題について、政府のもっと前向きな姿勢というものが私は絶対必要ではないか、こう考えるのでありますが、いかがですか。
  70. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) もう御説を承るまでもなく、そのとおりだと私ども信じております。国産品の愛用のために予算を組んでおりますが、それは一つのPR用のあれだと思います。予算の額というような問題は別といたしましても、あらゆる面におきまして開放経済体制下に直面しなくてはならない日本現状から、ことに国際収支面から見ましても、国際収支の赤字というものが問題になっております。その赤字の問題はまた離れましても、やはり日本の製品等も非常によくなっております。また、その国のものを使うということは当然好ましいことでございます。御趣旨の点につきましては、私どもあらゆる機会を通じてその方向に強く推進するようにいたしたいと、こう考えております。
  71. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 私はまだ持ち時間がありますけれども、たいへん時間が迫っておりますから、やめます。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 私も時間がありませんので、質問はたくさんありますが、一点だけお伺いいたします。  これは私さきに予算の本委員会でお尋ねしたこと並びに他の委員質問に関連してお尋ねしたことを若干繰り返すことになりますが、いまも櫻井委員がちょっと触れられましたように、所得倍増計画が、特に農業部面においては二・五ヘクタール、農家百万戸を十年間に創設をすることによって所定の目的を達成することになっておるわけでありますが、それが所定の目的を達成するような方向に必ずしも進んでおらないことは、すでに御承知のとおりであります。それで根本的にはいまも大臣の御答弁にありましたし、私がさきに措置したごとく、他の職種に就業する人がその給料だけで生活できる条件が整えば農地を手放すこともありますので、したがって、他の人がこれを買い入れて二・五ヘクタールの、あるいはまた、それ以上の農地を、自家所有農地を確保することは当然できますが、いまの現状ではなかなかそれが困難であります。そこで、そういうことからいろいろ問題があるのですが、もうすべて省略をしてお尋ねしたいことは、そういう、それでは所得倍増計画が所定の昭和四十五年差でに達成できないではないか、農業部面においては。一部にはもちろん、そういう所得倍増を達成しつつある人たちも農家の中にはあると思いますが、全体として私は申し上げているのですが、全体として考えてみますというと、なかなかその達成は困難だ。そこでそういうお尋ねをした際に、あのときは宮澤長官がお答えになりました。それでこう答えております。「倍増計画で考えられておったような数年間の過渡的な現象であるのか、あるいはそうではなくて、やや二十年とかなんとかいうもう少し長い期間しばらくそういう姿でとどまるであろうか、そのどっちであろうかということが問題でございます。私どもは、少なくとも当初考えておりましたような、六、七年間の過渡的な現象でやがては田地を売っていくのだというような、一般的な想定は現在の趨勢からは必ずしも読み取れない、この点は所得倍増計画の検討及び収支計画を立てますと声に、もう一ぺん根本から検討し直す必要が少なくともある問題である、そういうふうに考えております。」宮澤企画庁長官はこう答えております。それから先日、他の委員質問に関連して、私が池田総理にお尋ねした際に、総理は、倍増計画十年という目標がたとえ十五年、あるいは二十年になるかもしれない、そういう答えをされておるわけであります。したがって、宮澤長官も、総理も、十年ということの一応のめどというものは的をはずしたという感じであります。  それからもう一つは、ついでにお尋ねをいたしますが、政府考えておる農業所得倍増の場合に、これもさきに触れたことでありますけれども、純然たる農業所得で倍増の達成はほとんど目標年次までには困難だ、兼業収入を含めるというと、その目的達成にやや近づく条件も若干あると思います。そこで私のお尋ねしたいことは、これは非常な根本的な問題ですが、まあ選択的拡大があるとか、あるいは中には一部一町五反歩、あるいは二町以上の農地を保有できるようになった農家がどの程度あるとか、そういうようないろいろな条件はすべて抜きにして、全体として考えてみて、所得倍増計画の農業部面における計画というものは、根本的に再検討を必要とするのではないか、ある意味においては私は破綻だと思います。でありますから、私の農林大臣からお答えをいただきたい点は、そういう面がまことに明白になってきたので、所得倍増計画の農業計画は根本的な再検討を要するのではないか、これが一点です。  それから純然たる農業収入で所得倍増計画が達成できるとお考えになるかどうか、だんだん政府の、総理もそうですし、企画庁長官の答弁もそうですし、承っておりますと、兼業収入を含めれば、という答弁にだんだん重点が移行しております。これは非常に私問題だと思います。やはりこの場合は、兼業収入でなしに、純然たる農業として目標年次に所得倍増が達成できるかどうか、これが問題であろうと思います。したがって、この二点、倍増計画、農業部面は根本的な再検討を必要とする段階にきたのではないか、これが一点です。これはもう根本的に再検討を必要とする。それからいま申し上げた農業所得倍増の場合には、農業収入で考えるのか、農家の兼業収入も含める農家所得で今後の倍増計画の基礎とされるのか、そのいずれか、この二点だけ御答弁をいただきたいと思います。
  73. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに御指摘のように、農業人口が減っても農家戸数は減っておりませんから、所得倍増計画の中の二・五ヘクタール、百万戸、労働力三人ということを中心とした計画が十年以内に達成される見通しはいまないと思います。でありますから、長期にわたって十年とか二十年とかいうふうに延ばしていけば、また考え方は別でありますが、十年内にそういうふうにできるという見通しは、いまのところ残念ながらございません。そこで、国民所得倍増計画につきましては、もう御専門でございますが、全体としては、私は非常に速度が早まっておると思うのですけれども、農業面におきましては、私はこれは速度が早まっているというよりも、むしろなかなか目標どおりにいきかねる情勢だと思います。アフターケアといいますか、いろいろ中途の中間検討をいまいたしておりますけれども、非常に農業における所得倍増計画の基準をどこに置くか、すなわち経営面積だけの基準ばかりではいけません。価格の問題もありますし、いろいろな総合的な面から計画、見通しも立てなければならぬと思いますが、そういう面におきましては、この当初の倍増計画の農業面におけるものは非常にラフだと思います。したがいまして、その進度等につきましても検討し直さなければならないものが非常に多いのじゃないか、現実にそういうところに直面いたしております。でございますので、農業面におきましては、これの再検討を審議会その他におきましてもしていかなければならぬ、こう考えております。その場合に、個人々々の農家所得の場合を、専業農家に限って目標を立てるのか、あるいはまた、兼業農家ならば、最近における所得は相当ふえていますので、相当目標に近いものにもなるから、兼業農家を主体として考えておるかということでございますが、私といたしましては、やっぱり農業農業として、専業農家の場合をとって、これが目標に到達するような計画、目標をつくっていくべきものだと、こういうふうに考えております。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 もうこれで、これ以上お尋ねいたしませんですから……。私の申し上げたことは、農業における所得倍増計画全般を必ずしも言っているわけではありません。いまの経営面積の点を中心にして申し上げたわけです。そこで、やはり十年という目標があるので、その目標を達成するために、われわれが論議しているわけです。したがって、この部面に関する限りは検討とかいうことでなしに、根本的に改定をしなければいかぬわけです。ここに中間検討報告書を私持っております。また、長期計画を立てていることもよく承知しております。ですからそれは検討ということでなくして、少なくとも経営面積から見た農業所得倍増計画というものは、もう検討でなしに根本的な改定を必要とすると思います。
  75. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御意見等も非常に貴重な御意見とお伺いしまして、改定しなければならぬと思いますが、その際の御意見、いまの御意見を頭に入れて、また私どもとして進んでいきたいと思います。
  76. 浅井亨

    浅井亨君 だいぶ時間がおくれましたので、私も簡単に二、三の点だけ質問さしていただきたいと思います。  今年度の飼料需給安定法によりますと、現在トウモロコシ、またはコウリャンというようなものに対する輸入量がゼロになっておるのですが、これはどういうわけでゼロになっておるのでしょうか。
  77. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは政府管理でございませんで、民間でやっております。そういう関係から需給計画の中にゼロになっておる、こういう事情でございます。
  78. 浅井亨

    浅井亨君 しかしながら、いまの飼料問題を考えてまいりますと、トウモロコシとか、またはコウリャンというものが非常にたくさん輸入されておるように思うのですが、そういうものは政府のこの安定法の中には入っていないのですか。入っていない。だけれども、これが非常にたくさん輸入されまして、現在飼料の中の約六割がトウモロコシまたはコウリャンだと、このように聞いておるのですが、そうしますと、こういうものを野放しにしておきますと、そこに、飼料の問題について蹉跌を来たすのじゃないかと、こういうふうに思うのですが、こういうことはどういうふうにお考えになっていますか。
  79. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの飼料需給安定法が、おっしゃるとおり、たてまえが輸入飼料というようなことで政府が扱っておるような関係だけでありますので、需給計画としてはトウモロコシ、マイロ等が入っておりません。入っておりませんが、いまのお話のように、飼料の問題としてはウエートが非常に多いので、これは全体として考えた場合には、これは考慮に入れて考えなくっちゃならぬと思います。しかし、いまのところ、輸入が民間で順調にいっておるものですから、政府のほうであえてこれを輸入するということにはしておりませんけれども、飼料問題を考える場合におきましては、これを入れて考えていきませんければ、飼料問題についての考え方というものが出てこないわけでございますので、お説のとおりに考えております。
  80. 浅井亨

    浅井亨君 いまとにかくこの飼料の問題で畜産業者は非常に困っておるわけなんです。だから需給の問題だけだと、こう言いますけれども、需給とこの価格というものは、これは不即不離のものだと思うのです。そこで需給だけの面を見ていくと、しかしその中にいわゆる価格の安定というものをやはり根本に入れていかなければこれは何にもならぬと思うのです。こういう点に対して、需給計画並びにその中にいわゆる価格の安定というものを入れて考えていく問題があるのじゃないか、こういうことになりますと、この需給安定法というのは、これは何ら畜産業に対して利益を及ぼすものではないと、このように私は考えるのですけれども、ただ需給の問題だけであって、価格の安定というものがなければそこに何ら意義がない、から回りじゃないかと、このように思うのですけれども……。
  81. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) まあ飼料需給安定法は飼料需給安定法としてやはり存在の理由といいますか、輸入飼料を政府管理いたしまして、それの価格等につきましての操作をいたすことにしておりますから、その操作の影響をほかに受けますから、そういう関係から価格の安定とか、あるいは需給の見通しというような点で、それはそれなりに私は役割りを果たしておる、こういうように考えております。
  82. 浅井亨

    浅井亨君 いわゆるこの飼料の問題ですが、これは民間と政府と両方ある、こういうわけですが、いま民間のほうで、日本飼料協会というのができておりますが、この内容ですか。
  83. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは私もちょっとは聞いておりますが、あまり詳しくまだ調べておりませんので、畜産局長からお答えいたさせます。
  84. 浅井亨

    浅井亨君 この間、公明会の牛田議員から、この問題についてはよく研究して後刻報告する、このように聞いておるのですが、いまもってそれをお知りにならぬとすると、これはあまりにも畜産業に携わっておる農民を無視しているのじゃないか。ほんとうにいまこの畜産にかかわっている農家は、いわゆる飼料が自分の収益の半分以上使われておる。非常に困っておる。なおかつその飼料がだんだん値上がりしておる。このように聞いて非常な苦しい生計を立てている、こういうことですが、そういうことに対して、こういう日本飼料協会というものができているのですが、それに対して後刻報告いたしますと、そのようなお話がありながら、なおかつ今日まだわかっていないようでありますと、これはだれがお聞きになってもあまりにもずさんではないか、このように私は思うのですが、この点いかがですか。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料協会のどういう点を調べろというのか、私もよく承知しておらなかったのでございますが、率直に申し上げますと、私もほかの方面に非常に忙しくてかけ回っておったものですから、数日前で、詳しいことはなお十分に調べていない、こう申し上げたのでございますが、内容を申し上げますならば、これは三十六年の五月に、畜産振興と飼料関係業界の健全な発達に寄与することを目的として設立された。飼料の貿易事情改善とか、飼料の加工及び製造の改善あるいは未利用飼料資源の開発及び飼料の利用効率の向上、畜産物消費の増進、国内及び海外における飼料及び畜産に関する資料の収集及び紹介に関する事業を行なう社団法人として設立されておるものでございます。この協会の会員は、定款上飼料及び畜産に関する事業を営む者またはその団体とされておりますが、現在これに関する主要な団体はほとんどが加入しておる。三十九年三月現在で、正会員数が三百三十一、三十八年度の事業といたしましては約一億五百万円の予算によりまして、海外主要国における飼料畜産事情の調査、配合飼料工場の経営、講習会の開催、鶏卵、肉祭りの開催、牛乳乳製品の展示事業、飼料試験研究及び展示センターの設置、機関誌の発行等を行なっておる。なお、同協会の行なっております事業のうちで飼料穀物の消費の増進に関する事業につきましては、アメリカの飼料穀物協会が事業費の六五%に相当する金額を負担しておりますが、これは三十八年度予算において約四千九百七十五万九千円を計上しておる、こういう内容でございます。
  86. 浅井亨

    浅井亨君 いま、この日本飼料協会と、アメリカの飼料穀物協会、これがタイアップしてその資本はアメリカから六五%出ている、こういうことなんですが、そこから入った飼料はいわゆる現金で取引せられているのでしょうか、それとも……。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これはいまお尋ねでございますが、飼料のえさそのものの取引ではございませんで、私が申し上げましたように、事業費の六五%に相当する金額をアメリカの穀物協会ですか、それが負担している、こういうことでございます。
  88. 浅井亨

    浅井亨君 融資しているということですね。
  89. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 事業費の六五%を向こうで負担している、出しているということです。
  90. 浅井亨

    浅井亨君 それは出資とは違うのですか。
  91. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 出資とは違います。事業費がございますから、毎年度の事業費でございますから、出資とは違います。出資は先ほど申し上げましたような三百三十一の会員が出資しておるわけであります。
  92. 浅井亨

    浅井亨君 新聞にちょっとこう出ているのですが、「たとえばGSM方式による三十八年のマイロ輸入量は三〇万トンとなっているが、その輸入金額はトン当り五六ドルとすれば一、六八〇万ドル、邦貨に換算して約六〇億円である。ところで、GSM方式による輸入代金の決済は三年後で、したがって、他の輸入飼料と同じ条件で配合会社が商社に代金を決済した場合、金利差二%、金額にして一億二千万円、三年間であるから三億六千万円は商社から配合会社に還元される。商社は配合会社から支払われた代金を実際にCCCに支払うのは三年後で、その間商社は自由に運用出来、その運用益は商社に帰属する仕組みになっている。」と、このように出ているのですが、この事実はどうなんでしょうかね。これはうそ——近ごろはこう言うとおこられるかもしれませんけれども、新聞の記事はあてにならぬと、戦争のときはずいぶんだまされてきましたが、こんないわゆる日本畜産業に毎日あえいでいるところの国民が、こういうようなものを読まれて、そうしてどんなに嘆いておられるか、このように私は思うのですよ。こういうようなことを考えますと、これはどうしてもこういうふうに出ている以上はこれに対するお考えがあり、またそれをよくのみ込んでおられるのがその当局者である大臣じゃないかと、こういうふうに私は思うのです。この点をひとつきょうは明らかにしていただきたい。もう先日この日本飼料協会のことについては牛田議員からちゃんとその内容またはその構造はどうなっておるのですかということはお聞きしてあるので、後刻お知らせする、このように仰せられておったのですが、その点をひとつ明らかにしていただきたいと、このように思うのです。
  93. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 新聞の記事等につきましての調査したことにつきまして、畜産局長からお答えいたします。
  94. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 大臣のお話のように、日本飼料協会は、これは先ほど申し上げましたような事業を行なう公益法人でございまして、飼料の取引そのものに介入をいたしておるものではございません。GSM方式といいますのは、アメリカのCCCの持っております飼料、マイロでございますが、それを日本の商社が輸入いたします場合に、その支払い期限を一年間猶予をいたしまして、三年間継続をするというやり方で、そういう約款の取引契約をしたということがGSM方式なのでございます。でございますから、当初初年度入れますと、支払い代金は順次三年間回転いたしますから、三年間は、これは日本の内部で資金としての利用が可能であるという、いわば輸入としては有利な条件であるわけであります。そのうち回転資金の金利が、たしか四分か四分五厘であったと思いますが、そういう資金の有利性がありますので、その資金の有利性の一部を輸入価格引き下げに充てるということで、農民も、最終的にはその金利差による一部の恩典を受けるという方法で、これは適当な方法ではないかということで、前大臣のときにそういうような方式がとられまして、現在たしか本年度まで継続をして行なわれることになっておるはずでございます。
  95. 浅井亨

    浅井亨君 日本飼料協会は、どういうお方がメンバーになっていますか。会長はだれですか。
  96. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) メンバーは、先ほど大臣からお話がありましたように、飼料を取り扱います業者及び飼料を取り扱います団体をもって構成されております財団法人でございまして、その会長は、最近まで畜産振興事業団の理事長をしておられました蓮池公咲氏、副会長は全購連の会長三橋誠氏、それから飼料輸入協議会という、商社の任意的な協議会の会長であります松井氏、名前はちょっと忘れましたが……、それから飼料配合工場の中小企業協同組合であります飼料工場会の会長の河田氏と、この三人でございましたが、数日前に総会で役員の交代があったと聞いております。結果を聞いておりませんが、役員の交代で、会長は蓮池氏にかわって安田善一郎氏、それから副会長三橋氏にかわりまして全購連の織井専務がかわることになっておるということを聞いております。
  97. 浅井亨

    浅井亨君 これは、三十六年に創立されていますね。代々の会長の名前を……。
  98. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 三十六年創立以来、会長は蓮池公咲氏であったと聞いております。
  99. 浅井亨

    浅井亨君 先ほどお話がありましたとおり、この中の構造は、いわゆる飼料輸入業者と、それから配合飼料メーカーと、これが主になっておりますね、そうなんでしょう。
  100. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 飼料の輸入業者、それから配合業者及び飼料を扱います農業団体、それらのもので構成されております。
  101. 浅井亨

    浅井亨君 これができ上がって、それから以後、不思議にもアメリカから入ってくるトウモロコシ、こういうものがどんどんふえているのですが、これはどういう理由なんでしょうか。
  102. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お話のように、三十六年ころから全体の輸入も激増をいたしまして、アメリカからの輸入もふえたことは事実でございますが、それはちょうど日本畜産が非常に伸びた時期に当たり、かつまた濃厚飼料を必要とする養鶏、養とん等の伸長ということの背景があって伸びたのであります。それから国別の問題は、そのころからトウモロコシ、それとマイロはごく最近でございますが、自由化をいたしたということで、商業活動としての結果から、買いつけの容易あるいは価格関係についての優位性、そういうものに従って輸入をされておりましたので、飼料協会との関係でどうというふうに、私どもはどうもその必然性を判定することは、はなはだ困難でございます。
  103. 浅井亨

    浅井亨君 特に三十五年度以降、このトウモロコシとか、こういうものの輸入は、どのくらい伸びていますか。
  104. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) これは国別のものは、手元にございませんが、トウモロコシにつきましては、三十六年には合計百八十四万トンという数字でございますが、三十八年には、これはまだ最終の数字になりませんけれども、ほぼ三百五十万トン程度になるかと思います。それからコウリャンについては、三十六年には十九万四千トンという数字でございますが、三十八年に推定をいたしますと九十七万トン程度には達するのではないかということであります。
  105. 浅井亨

    浅井亨君 私どもの知っているのは、三十五年度以降、トウモロコシとかコウリャンですね、約二十倍に伸びている、このように聞いておるのです。ということは、結局民間貿易にこれをまかしてしまって、そうしてこちらのほうの需給計画にはゼロになっている。だからトウモロコシ、 コウリャンというものについては、これは民間貿易にまかしてしまったらどうだ、それで、おまえらかってにやれと……。そこで日本の飼料業界と——アメリカの余剰物資であるトウモロコシ、コウリャン、これを日本の市場にまかして、先ほど言ったGSMの方式によって輸入業者とかそういう者が、利益を受けている、そこにうまみがあるので、このほうがどんどん伸びていく、こういうことになりますと、需給安定法というものがありながら、これは価格の安定もできなければ、何にもならぬ。ただ需給だけの問題になって、何か農民を守っていくという方式にはなっていない、こういうふうに思うのですよ。この需給安定法というのを改正して、その価格の安定をはかるというような方式を立てていこうという気持ちはないのですか。
  106. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) いま御質問がございましたわけですが、トウモロコシにつきましては、三十五年にも百四十六万トンの輸入がされておりますから、これは二十倍というようなことではございませんが、コウリャンは、当時まだ日本でも、需要というものがそれほどございませんで、五万七千トン程度の数字でございましたから、先ほど私が申し上げた本年の推定輸入量九十七万トンというものは、非常に増大をしていることは事実でございます。なぜそういうことになったかと申しますと、日本畜産は、元来は、いわゆる濃厚飼料を糟糠類——かす、ぬかの類に求めておったのでございます。ところが、かす、ぬかの類は、それの本体であります食糧というものの需要によって数量に限界が出るのでございます。したがって、日本畜産伸びていくためには、糟糠類による飼料供給というものが、とうてい間に合わないということになりまして、これは必然の結果でありますが、そうなりますと、最も日本畜産農家にとって割り安な飼料の供給を行なう必要があるわけでございます。その際、国際的にも飼料価値の点から、相対的に考えますと、トウモロコシが給与慣行も比較的よくございますし、価格的にも有利な飼料であるということから、まず、トウモロコシの輸入がふえたのであります。ところが、コウリャンは多少違いはございますが、トウモロコシに類するような穀類飼料でございまして、したがって、このコウリャンが割り安であります限り、やはり日本畜産に対する穀類飼料提供対象としては適当なものであるということは、これは私どももそう思いますし、また、需要者側にもそういう見解があるわけでございまして、そういうことから、コウリャンの割り安性ということから輸入が急増をしてきたというのが実態であると思います。もちろんその間、商業活動のことでございますから、損失があって輸入するということではなく、その間に適正な商業活動による利益というものも確保されたでありましょうし、またそれは認めざるを得ないのではないかと思うわけであります。  そこで、自由化の問題でございますが、自由化の問題につきましては、最初は政府が若干管理を計画いたしたということもあるわけでありますが、現実にはトウモロコシ、マイロ等を操作したことは、たしかなかったように私は記憶しております。したがって、現実には外貨の割り当て方式で民間輸入にまかしておったのでございますけれども、需要の著しい伸長に対しまして、しかも、国内に対する同種の競争農産物が少ないというような事情もとで、外貨割り当て方式をとりますことは、むしろ需要者側にとっても、需給の円滑をはかる観点からも、適当でないという観点があるわけでございまして、事実農業団体等からも、トウモロコシないしコウリャンについて、早期に自由化をしてほしいという要請が強かったわけでございます。そういう観点から、政府としまして、トウモロコシ、コウリャンの順に自由化をはかっていった、そこで、そういう自由化をいたしますと、結果としまして、いずれもかなり海外市場に供給余力のあるものでありますから、きわめて順調に輸入が現在までのところ行なわれてきておるということでありますれば、政府が数量的な調整をするための、需給安定法に基づく需給計画の対象品目にあげることは必ずしも必要がないということで、昨年の計画にはあげておりましたが、操作はしなかったというような事情にもかんがみまして、本年三十九年度からは、需給計画の中からはずしたのでございます。ただ何らかの事情で、トウモロコシなりコウリャンについて、政府の操作を必要とする場合に備えましては、現在御審議中の食糧管理特別会計の中の飼料勘定に予備金のワクを設けておりまして、必要によっては需給計画の改訂ということになりますが、政府が操作する場合もあり得るというふうに備えておるのであります。  飼料需給安定法の改正問題につきましては、これは飼料需給審議会におきましても、飼料の根本的な対策を、飼料審議会にもはかって、早急に立てるように努力せよというお話がありますので、飼料審議会の御意見等も伺い、また、われわれも政府部内で検討して対処すべきであるというふうに思っておるのであります。
  107. 浅井亨

    浅井亨君 この日本飼料協会ですが、これが、こういうふうなことがうたってあるのです。「昭和三十六年度及び三十七年度における飼料添加剤の生産販売状況を調査するとともに、トウモロコシ、マイロ等飼料穀物の将来の輸入とにらみ合わせた飼料添加剤の需給見込みの検討を行なう」、こういうふうになっておるのですが、ということは、どうも、この日本飼料協会とアメリカの飼料穀物協会と一緒になって、そうしてそこにだんだんとこのトウモロコシまたはコウリャンが多くなっているのです。そういうふうにどんどんとそのほうに吸収されていくために伸びているのじゃないか、そうすると、自由経済であるにもかかわらず、そこのほうに一本に集まっていく、こういうふうになるわけなんです。で、先ほど大臣のおっしゃるのには、日本飼料協会ということについては、研究していなくてまだ知らなかったと、こう言っておりますけれども、これは当局の方が、このアメリカと日本の協会の調印ですか、このときに参画しておられると私は思うのですが、何かこう目がかすんでおりますから、はっきり見たとは言いませんけれども、私の目には映ったのです。写真もあります。知らぬというのですが、私は憂うるのは、何かというと、そういうところに一本に結集してしまって、そこで、いわゆる日本の輸入業者またはこの配合飼料業者、そういうものが一緒になって、そうしてこれと協定してやっていくということは、結局この飼料の独占的な立場になりまして、いわゆる独禁法に触れるのじゃないか、ここまでつたない頭ですからすぐ考えるのです。やはり農民を思うがゆえに、これがそうでなければいいと思うのですけれども、それでこのままで放置しておくならば、日本のこの飼料は全部アメリカさんに牛耳られてしまって、その畜産生産費の半分を飼料代に要するというようなことになってしまう。わが日本畜産に対する政府施策はいかようにあるのだろうか、また、いかようにしていって、この農民を救っていくか、そういう情熱があるのであろうか、こういうふうに私は憂うるのでありまして、これに対するはっきりした線を出していただきたい、このように思うわけなんです。それは時間もだいぶたちましたことだと思いますけれども、国民のあすをも知らない、どうしようかというような方々のことを思えば、これはわれわれとして、その責任においても、また義務においても、信頼されたわれわれならば、どこまでも審議を尽くしていかなければならない、また、国民の前に明らかにしていかなければならない、このように私は思うのであります。
  108. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 内容のお尋ねの点につきまして、私もどういう口出しをするかというようなことにつきましては、なお検討してみなければなりませんし、そういうことは別といたしまして、飼料が片寄って、一面的といいますか、一方的といいますか、独占的といいますか、そういう形で入ってくるというのは、やはり自由競争の自由社会においてもあまりいいことじゃないと思います。自由契約でございますから、それをどうこうということは言いませんけれども、政府として考えていますことは、やはり安い、そして成分のいい飼料を国内でまかなえればぜひまかなう、まかなえなければ輸入もいたしますけれども、その輸入も、一面というか、一方とか、一会社とか、一法人とかということでなくて、安くいいものが入るような方法をもって輸入の指導に当たるということは当然やるべきことじゃないか、こういうふうに考えております。
  109. 矢山有作

    矢山有作君 いまの問題で、私はもう答弁は要りませんから、これはあとで農林水産委員会等で十分論議をしたいと思っておるので、関連してちょっと申し上げておきたいと思いますのは、輸入飼料の中で主要の地位を占めておるトウモロコシですね、その輸入動向をずっと調べてみたわけです。そうしたら、アメリカのトウモロコシの輸入というのは一九五三年、昭和二十八年ですね、総輸入量の八七・九%であったわけです。ところが、総輸入量がふえるとともに、アメリカの輸入も絶対的にはふえてきたわけです。ところが、全体の中の相対的な地位はずっと低下してきた。つまり一九五八年、昭和三十三年には五二・六%になった。それから畜産拡大過程に入りかけた一九五九年、三十四年ですね、これを転機にして米国からの輸入というのは相対的にも絶対的にも減少した。一九六〇年、三十五年にはその比率は一四・五%になってしまったのですね。かわってふえてきたのは何かというと、この統計で見ると、タイ、アルゼンチン、南ア、こういうところの市場からの輸入が非常にふえてきた。しかもタイからの輸入というのは、アメリカのものに比べて安い。それともう一つは、そのアメリカからの輸入が絶対的にも相対的にも減り出したそのちょうど時期に、一九六一年、三十六年に安田善一郎氏が飼料使節団長になってアメリカへ行った。で、日本飼料協会というものを設立された。で、六五%はアメリカが負担する、こういう形で急激に今度はアメリカからの輸入がふえてきた。その数字は一九六二年で見ると、総体の中の今度は四四・六%を占めるほどに急激にふえたわけです。つまり協会が設立される前の一九六〇年に一四・五%であっのたが、協会が設立されたら四四。六%にふえてきた。しかももう一つ問題は、ちょうどそのときにタイ・メイズ輸入協議会というものが設立された。その設立の趣意はあなたも御存じのように、貿易業務の合理化、こういうような趣意である。ところが、このタイ・メイズ輸入協議会が設立されてからマイロの輸入というものが、今度はアメリカマイロの輸入が非常にふえてきたわけですね。そして一方では、タイからのトウモロコシの輸入が減った。その当時マイロは自由化されていない。自由化されていないのに、その日本飼料協会の設立とタイ・メイズ輸入協議会が設立された後、一九六二年にはマイロの輸入が四十二万二千四百六トンというほど前年に比べて三倍からの増加を示してきた、こういう問題があるわけですね。それから、それと符節を合わしてもう一つは、一九六一年には配合飼料の設計基準が変わってきております。それは、それまではつまり高たん白低カロリーということですが、それが低たん白高カロリーと改善された。その理由は何かというと、糟糠類の需給が逼迫した。逆に穀類が非常に世界的に過剰になった。特にアメリカにおいて過剰になった。したがって、その穀類に切りかえたほうがいいということで、配合飼料の設計基準まで変わってきたわけです。だから、日本飼料協会の設立と、タイ・メイズ輸入協議会の設立と、配合飼料の設計基準が変わったということは、全部が同じ時期に行なわれている。しかも、その結果としてトウモロコシはアメリカからの輸入が急激にふえ、自由化されていないマイロの輸入もアメリカからのものが急激にふえてきた。価格の点は、トウモロコシの場合は、タイのほうが安い。そういうような状況があるわけです。これがわれわれは非常に疑問に思っている点なんです。しかも一方において配合飼料の設計基準が変わって、穀類中心になったからといいながら、そういったアメリカのトウモロコシあるいはマイロの輸入に重点を置いてばく大な輸入をやりながら、一方においてはどういう現象が起こったかというと、麦作転換で日本における大麦なんかの生産量がどんどん減ってきた、こういうようになっているわけです。  これらの経過をずっと総合して考えたら、日本の農政というのはアメリカに追従した農政、日本農林省は、極論すればアメリカの出先の機関の役割りを果たしているのじゃないか、こういう極論も出てくる。このままの情勢で推移したら、日本畜産業はアメリカの加工産業に成り下がりますよ。この点については答弁は要りません。私は、これはもっともっと重大な問題だから徹底的に、ある場を得て追及したいと思っておりますが、そういうことがあるということをお考えになって、赤城農林大臣は詳しい事情を御存じないようですから、そういうかってなことがどこかで行なわれている。そのことを十分踏まえて、今後飼料の問題については、輸入飼料も国内産飼料も、一体どうして需給を安定させて、価格を安定させて、農民の利益になるような形で飼料を出していくかという問題を真剣に御検討いただきたい。このことだけ申し上げて、答弁は要りません。
  110. 浅井亨

    浅井亨君 時間も参りましたので、前の委員会で牛田議員から質問があって、なおかつきょうこの日本飼料協会というものについてはっきりした御回答がないというようなことでございました。いま、さらに突っこんでお聞きしたいことはたくさんありますが、それをやりますと、ずいぶんと時間がかかると思います。皆さんにも御迷惑と思います、やめたいと思います。次の委員会でまたずいぶんと質問をされることと思っております。  そこで最後に一つ申し上げたいことは、先ほどから申し上げましたとおり、この日本の飼料協会なるものとアメリカの協会とタイアップして、そうしてそこで飼料が独占されていくというような姿があって、そこからいわゆる値段の、値上がりにしても全くたいへんなことになるのじゃないか、このように考えるのが一点。それから、アメリカの資本によりまして日本の飼料が全部占められていくというような姿が考えられますが、日本のいまの政府といたしまして、この畜産に対する飼料はいわゆる自給自足でいけるように、その方式はどのようにお立てになって、またどれをどのように推進されていかれるかという、その決意のほどをお聞きしたいと思うのであります。そうでなければ日本畜産業はアメリカの資本によって牛耳られていくというような姿になるのじゃないか。この点を非常に憂えるものでございますので、この点を一点御回答願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本の飼料界がアメリカに牛耳られるという御心配につきましては、私も同感でありますけれども、自由取引のときでありますから、私は独占されるというようなことはあり得ないことだと思いますけれども、独占されるというようなことは好ましくないし、そういうふうにしたくないと思います。全部を自給しろと言っても、これはなかなかむずかしいと思います。自給飼料等におきましては、御承知のように、非常に進めていかなければならないと思いますので、予算面等にも、それぞれ予算を計上し進めていきます。また、濃厚飼料等につきましても、できるだけ自給度を増していく、こういう方針予算その他の奨励をいたしていくつもりでございます。
  112. 浅井亨

    浅井亨君 いま御回答をいただきましたが、前進する、進めていくと、こういうわけでございますが、それを如実に示していただきたいと思います。このように思いますので、その点、重ねてお願いしたいと思います。
  113. 安田敏雄

    安田敏雄君 今年度のこの飼料需給安定法関係の需給計画の輸入飼料の赤字ですか、これが三十六億、飼料勘定としてまた一般会計から財源を繰り入れるわけでございますが、その中の説明を見ますと、ふすまは、いままで三十キロ当たり六百十七円であったのが、輸入ふすまについては六百四十円、専管増産ふすまについては六百六十五円と、それぞれ二十三円、四十八円とかなり大幅に値上げされております。また、大麦につきましては、トン当たり二万二千九百円が二万三千四百三十円と、五百三十円ほど大幅に値上げされているわけです。これが飼料審議会でも問題になりましたが、その際農林大臣は、予算執行についてはできるだけ善処するという趣旨の答弁をしておりますし、また、審議会の答申は、政府飼料の売り渡し価格については、畜産経営上に支障を来たさないように善処するという、これを与党側の委員まで含めましての強い要望書をつけたわけであります。したがいまして、畜産物価格審議会がきょうあたりから三日ぐらい開かれるでしょうと思いますが、そういう中で畜産物価格をきめる上において、この飼料の値上げというものは非常に大きな論議を呼び起こすものであると、こういうように私は判断いたします。したがって、はたして、その善処するというようなぐあいにこれを値上げしないでいくのか、その審議会へはかったように値上げしていくのか、こういう最終的のいろいろ意見はありますが、時間等もありませんから、農林大臣の御意向をひとつお聞きしたいと思います。
  114. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、予算価格は昨年より上がっています。これは他の成分等の比較からそういう積算をして上がっております。しかしながら、現実には、これは法のたてまえから見れば、競争入札で払い下げるというたてまえになっておりますから、予定価格をきめなければならない。予定価格をきめるにつきまして、いまの需給安定審議会の意見もあり、各方面の意見もありますので、予算に掲げた価格よりは安い予定価格をつくるように、私は事務当局にも指示しておるわけでございます。しかし、昨年と同じような価格になるかどうか、これにつきましては、なお検討を要する問題があろうと思います。しからば、新しい価格をきめるまではどうなるんだと、こういうことなんでございますが、新しい価格をきめるまでは昨年度と同じだ、こう申し上げて差しつかえないと思います。そういうふうな方針事務当局に検討をさしておる段階でございます。
  115. 安田敏雄

    安田敏雄君 従来の経緯は私はよく知らないのですが、予定価格というのが直ちに予算価格になっておるということがあるわけですね。そうすると、これからいきますと、予算価格で予定価格を示すということになりますと、結局、値を上げたという問題になろうと思うのです。ですから、そういう意味において、予算価格をはるかに下回り、去年と同じような予定価格をつくって、その中でひとつ運営をしてもらわないというと、畜産物価格審議会の中でも非常に問題が起きてくるのじゃないか、こういうように考えておりますから、できるだけひとつ善処をお願いいたします。  時間がありませんから、それからもう一つ。この審議会の構成ですが、農林大臣審議会諮問して、会長が農林大臣になっておって、会長がこれを答申するという、きわめてまことに矛盾した構成になっておるわけですね。したがって、この問題と、さらに三十七年度には、飼料審議会では、最近の畜産の状況にかんがみまして、今後の飼料の基本的な方針を検討するということになっておりましたが、今年もこれは見のがされております。したがって、最近の飼料需給を見ましても、すでに今年あたり二千二百億円ぐらいは飼料が使う。肥料のほうは千五百億円ぐらいでありますから、相当大幅に肥料よりも飼料のほうが、農業資材としてはウエートが大きくなっておるわけでございます。そういう点からいきましても、今後、畜産選択的拡大の農産物として伸ばしていくというためには、どうしても飼料需給安定法というような問題を抜本的に検討し、これを改変していかなければならぬ、こういうように考えますが、審議会の構成の問題を含めて変えていく意思があるのかどうか、その点をお聞かせ願いたいと思います。  それからなお、飼料審議会は輸入飼料だけについて審議するわけでありまして、その他の飼料の全般的な問題につきましては、ほとんどまあ審議権がない、こういうようなことであってはならないと思います。したがって、もし、現在の状況の中で、法改正の前に審議会をやるとすれば、やはり飼料審議会を開催するときと、それから畜産物価格安定審議会のほうの開催を、時期を同じうしてやらないと、いろいろ問題点を審議する上においてずれてくる。こういう問題等もありますので、法改正の意思があるかどうか、お聞きしたい。私としては改正すべきである、こういうふうに考えておりますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。
  116. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 審議会が、農林大臣諮問して農林大臣が会長で答申する、これはたくさんあることはあるのです、ほかにも。総理府にある審議会で総理大臣諮問して総理大臣が答申する、こういう例もあります。あるからそれはいいというわけじゃございませんが、少し私もおかしいと思うのでありますが、これは御検討の上、議員立法でもございましたが、改めるならば改めたほうがいいのじゃないかと私は思います。それを離れまして、全体として飼料需給安定法とか、こういう法律につきましても、畜産が非常に進んできておる、あるいはまた、肥料よりも、農家における飼料のほうの消費といいますか、に支出する金額のほうがはるかに大きくなっておる、ウエートが重くなってきております。こういうことから考えましても、いろいろ法律の内容等につきましてよく検討して、改めるべきものがあれば改めていくべきだと私は思っております。しかし、どの点を改正するかというようなことの結論は持っておりませんけれども、検討の上、改めるべきものがあればぜひ改めていきたいと、こう思っております。  それから、需給安定だとか、価格の問題とか、あるいは自給の問題とか、いろいろ開催の時期等を同じような時期にして、何といいますか、調整をとるといいますか、こういうことが必要じゃないかというような御意見でございますが、そういう点も十分事務的に検討いたしまして、できるだけズレがないような形で審議会等を開くという方針を進めていきたい、こう思っております。
  117. 安田敏雄

    安田敏雄君 実際問題として飼料審議会のほうへは会長である農林大臣ほとんど来ないですよ。まあこちらは良心的ですから、赤城農林大臣は最初ちょっと来たんだが、あとの審議のほうではほとんど入っていない。審議状態がわからなくて、そうして自分で諮問の答申を出すということは、これは非常に矛盾が起きるわけですよ。それからもう一つは、そういう意味からいたしましても、飼料の現段階の情勢の中で、抜本的にひとつ改定をしていただきたいということを重ねて要求いたします。  それから問題を変えまして、時間もありませんから、米の需要量の問題でございますが、外米はことしじゅうにどのぐらい輸入するのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  118. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 本年度といたしましては、準内地米を十三万トン、それからそれ以外の普通外米、それから砕米、これは主として工業用に充てるものでございますが、十二万トンを輸入するということに相なっております。
  119. 安田敏雄

    安田敏雄君 ちょっとこの十三万トンは、何ですか、緊急輸入のほうで入っているのですか、最近の。
  120. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 十三万トンはことしの輸入計画として当初立てたものでありまして、昨年度は十万トンを予定しておったわけでございます。緊急輸入につきましては、おそらく先般大臣が、本年度の端境期に万全を期する意味で繰り上げ輸入をすると、こういうことの意味かと存じますが、年間十三万トン入れるべきものを、できるだけこの十月までに繰り上げ輸入しよう、こういうものでございます。
  121. 安田敏雄

    安田敏雄君 大臣説明には二十五万五千トンとありますが、これを上回ることはないのですね。
  122. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 現在のところそういうことで進めてまいりたいと思っております。
  123. 安田敏雄

    安田敏雄君 実は先日新聞に、中国から日本の伊藤忠商店その他十三社を通じて、日本の米の需給逼迫の情勢にかんがみて、天津米をひとつ日本のほうへ売ろうではないかというお話がありまして、そういう中で、商社のほうが、食糧庁並びに農林省当局に働きかけてきておる、こういうような記事が載っておったのですけれども、これは事実ですか、どうかお伺いしたいと思います。
  124. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 情報としてはそういう情報を受けております。
  125. 安田敏雄

    安田敏雄君 情報だけですか。
  126. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) まだ情報の程度にすぎません。
  127. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうして、さらにそれに対しまして、政府の一部には台湾問題がこじれているときだけに、いま中共から大量の米を輸入しては国民政府を刺激しやしないかというような慎重論が論議された、こういうことが出ておるので、この点については農林大臣いかがなものでしょうか。
  128. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 情報として聞いておるだけでございますので、どうこうということはまだ意見も出したことはございません。いまのところでは、従来の計画で輸入を進めていくことで間に合うといいますか、そういうことでございますので、いまの中国からの話は、私は聞いていないのですが、情報だけでございますが、いままでの計画で間に合う、こういうふうに私は考えております。
  129. 安田敏雄

    安田敏雄君 しかし、政府筋としては、信頼すべきこの商業新聞にこういうものが載っておったのですよ。ですから、一般国民がこれを見ますというと、これはどうもそうかなという感じを受けるわけです。単におそらく情報だけではないだろうと思うのですよ。私は、だからそういう情報があったら、はたしてそういうのが実際どういうような方向に動いていくのかということを、単に情報ということで、差しさわりないからいいのだというようなことでいるのではなくて、やはり質問があったらもっと的確に報告すべきだろう、こういうように思うわけでございますが、これはまた後ほどでけっこうでございます。まあ非常に重要な問題でございますから、こういうことが、いま末端においては配給米が確かに不足していることは事実なんですよ。これはもう明らかに不足しております。で、やみ米が大体去年の一割五分以上みんな上がっていることも事実なんですよ。ですから、そういう需給の逼迫状態というものは漸次国民の中に、こう何か足りないじゃないかというような危惧感を与えておりますから、特にこれからは観光が非常に活発になってくる、あるいは各建設が非常にオリンピック等を控えて何とか締めくくりをしなければいかぬというので活発化してきますと、ますます消量費が増加するという情勢もありますから、政府といたしましても、端境期について農林大臣が万全を期すというような予算委員会答弁をしておりますけれども、ただ単に万全を期すということだけでなくて、需給計画についてもっとはっきりした数字を公表すべきだろうと思うわけですね。でないと、安心しない、こういうように思いますが、農林大臣いかがでございますか。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そう思いますので、この間予算委員会等におきましても、私需給計画を数字をもって申し上げた次第でございます。なお、不徹底でございますならば、さらにそういう面をよく国民承知してもらいたいと、こう考えます。
  131. 田中啓一

    主査田中啓一君) 以上をもちまして、農林省関係に関する質疑を終了したものと認めます。  午前の審査はこの程度にいたしまして、午後は運輸省所管につきまして審査をいたします。再開時間は二時半。  休憩をいたします。    午後一時五十九分休憩    ————・————    午後二時三十九分開会
  132. 田中啓一

    主査田中啓一君) これより予算委員会第三分科会を、午前に引き続き再開いたします。  昭和三十九年度総予算運輸省所管を議題といたします。  まず、政府側から説明を求めます。綾部運輸大臣
  133. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 昭和三十九年度の運輸省関係予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計の規模について申し上げますと、歳入予算総額は十五億九千七十一万三千円、歳出予算総額は八百六十七億三千七十九万七千円であります。この歳出予算総額を前年度予算額と比較いたしますと、三十八億九千三十一万五千円の増加となっており、約五%の増加率を示しております。  この増加額の内訳を見ますと、行政部費では三十六億三千十六万二千円、公共事業費では二億六千十五万三千円の増加となっております。なお、ただいま申し上げました歳出予算総額のうちには、他省予算に計上され当省に移しかえて使用される予算七十八億四千四百二十一万二千円が含まれております。  次に特別会計について申し上げます。まず、木船再保険特別会計の歳入歳出予算額は三億五千四百六十二万九千円で、前年度に比較して約一千四百万円の増加となっております。自動車損害賠償責任再保険特別会計につきましては、保険金の支払い限度額を大幅に引き上げましたことと、自動車数の増加に対応いたしまして歳入歳出予算額を前年度予算額の約三倍に当たる三百億三千七百九万三千円といたしております。港湾整備特別会計の歳入歳出予算額は、港湾の整備を推進するため、前年度より約四十二億七千四百万円増額され、四百七十二億九千六百十一万六千円となっております。また、三十九年度より新たに設置する自動車検査登録特別会計の歳入歳出予算額は十五億二千四十二万四千円となっております。なお、以上の経費のうちには、一般会計、特別会計を通じ、定員三百四十四名の純増に伴う経費が含まれております。  このほか、昭和三十九年度財政投融資計画中には、当省関係分といたしまして、約二千六百九十一億円が予定されております。  次に、日本国有鉄道予算について申し上げますと、損益勘定において収入支出予算六千二百六十六億円。資本勘定において収入支出予算二千八百五十億円。工事勘定においては収入支出予算二千三百九十七億円を計上いたしまして、国鉄の輸送力の増強及び輸送の近代化並びに保安対策の強化をはかってまいる考えであります。  運輸省予算の部門別の重点施策の概要につきましては、お手元に配付してあります昭和三十九年度運輸省予算の大綱及び昭和三十九年度日本国有鉄道予算説明書によりまして御承知を願いたいと存じます。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  なお、お手元に配付してあります予算説明につきましては、主査におかれまして、会議録に掲載していただくよう御配慮をお願いいたします。  以上でございます。
  134. 田中啓一

    主査田中啓一君) ただいま運輸大臣から御説明がありました配付資料を会議録に掲載することにつきましては御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 田中啓一

    主査田中啓一君) 御異議なしと認めます。さように取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のあります方は、順次御発言願います。
  136. 羽生三七

    羽生三七君 国鉄総裁にお尋ねをいたします。総裁、時間の御都合がおありのようでありますから、なるべく簡潔にお尋ねをいたすことにします。
  137. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 別に、時間はあと約束ございません。
  138. 羽生三七

    羽生三七君 そうですか。  それでは、総裁は、国鉄の今日の経営状態から見て、四十年度には国鉄運賃、定期代の値上げを考えなければならないと去る十三日の記者会見で語っておられます。そこで、きょうは主として国鉄の公共性と企業性の問題についてお尋ねをしたいと思うわけであります。本問題については、つまり国鉄の公共性と企業性の問題については、そのつど予算委員会はじめ運輸委員会、あるいは本会議等でしばしば論議をされながらも、なかなかその基本的な考え方が明白になっておりませんので、きょうはこの点を中心にお尋ねをしてみたいと思っております。  それで、御承知のように、日本国有鉄道法の第一条では、「能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。」と、こうなっております。まあその後、昭和二十四年、いわゆる企業体としての変更もあったようでありますが、依然としてこの国有鉄道法第一条の精神は基本的には変わっておらないと思います。そこで、公共性か企業性か、そのどちらかということをここで論議してもなかなか決着はつきません問題でありますが、公共性と企業性のどちらに重点を置かれるのか、これはお答えをいただける問題だろうと思います。したがって、この第一条にあるように、「能率的な運営により」ということを冒頭にうたってはおりますが、さらにその後段において、「もつて公共の福祉を増進することを目的として」国有鉄道が設立されておるのでありますから、私としては、やはり公共性に重点がある。もちろん企業性というものを無視するわけにはいきませんが、その重点は公共性にあると判断をしておりますが、まず最初にこの点に関する総裁の御見解を承らせていただきます。
  139. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。公共性か企業性かいずれかということなんでありまするが、国鉄の事業というものはどこまでも公共性、ただこれを経営するのに企業精神をもって経営する、つまり能率的に経営する、投資効果をあげるというのがつまり企業性でありまして、両方対立した問題ではない。公共性が目的であって、企業なんということはこれは手段なんだ、できるだけ企業性を発揮して投資効果をあげて、それによってできるだけの公共事業をやるということが国鉄の目的だと存じております。
  140. 羽生三七

    羽生三七君 公共性が重点であるということは、いま総裁もお答えになりましたが、企業性も発揮して、能率を十分に発揮してと言われますが、これはあえて国鉄のみならず、どんな産業であろうと、能率を発揮するのはあたりまえであって、あえてそれは非能率でいいという理由はないわけですから、能率的な運営ということは当然なことだと思います。したがって、やはり国有鉄道法からいえば、依然としてやはり公共性が優先すると考えて差しつかえありませんか。
  141. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) これはもちろんのことで、どこまでも公共性に徹しなければならぬ。ただ、公共性を発揮するためにはやはり財源が要るわけで、その財源をできるだけ得てはじめてそこに公共性を発揮することができる。その財源を得るにはどうするかというと、国鉄の投資効果というものをあげて、能率的に経営して収益をできるだけふやして、それによって公共事業というものをできるだけ発展させるという、こういうことなんで、これは対立する問題ではなくて、企業性ということは全くこれは手段なんだと思います。
  142. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね、そういう公共性という立場から見た場合に、国有鉄道でありますから、当然国が相当のめんどうを見にゃいかぬわけです。それが国有鉄道です。ところが、実際問題として国がどの程度の役割りを国鉄に果たしておるかといいますというと、たとえば、財政投融資においては、あるいは財政投融資あるいは公募債等ではある程度の役割りは果たしております。ところが、一般会計からの繰り入れを見ますと、昭和三十五年にはわずかに四千五百万、昭和三十六年には三億八千八百万、三十七年には五億九千万、三十八年は七億二百万、三十九年度が九億八千五百万、十億に足りない。だから、国鉄へのこの一般会計からの繰り入れば、昭和三十九年度、国鉄が今日かような大きな、かようなといいますか、つまり今日当面する重要な問題をかかえておる際においてすら、なおかつ十億に満たない、これは一般会計からの繰り入れです。財投はもちろんある程度あります。しかし、財投のことは私きょうは多く触れようとは思いませんが、これはある意味においては固定資産であり、あるいは運転資金みたいなものでありますから、実際のやはり政府直接援助といえば、一般会計からの繰り入れになる。これはいま申し上げておるとおり、まことに少額にすぎない。ところが、今日のこの予算委員会でしばしば論議された過密ダイヤの問題も、私は国鉄だけの責任じゃないと思う。最近の人口増加、特に大都市周辺の過度の集中化、これは日本の経済構造上の諸矛盾の集中的な表現だと思う。したがって、国鉄自身が相当ある程度責任を負うことは当然であるけれども、国自身が相当の責任を負うべきだと思う。その責任を負う必要があるがゆえに国有鉄道と私は呼ぶんじゃないかと思う。そうでなければ私鉄と私は変わりないと思う。したがって、私のお尋ねしたいことは、その経営するものが能率的であるかないかという論議はしばらくおきます。私は非能率であっていいなんということは毛頭考えませんから、徹底的な能率を必要とすると思いますが、それにもかかわらず、なおかつ今日当面しておる問題について、国有鉄道の名に値しないのが、いまの政府の国鉄に対する、特に一般会計におけるあり方ではないか、こう思いますが、この点はいかがですか。
  143. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 一般会計からの繰り入れというものは、御承知のとおり、新線建設に関して七十五億政府から国鉄に融資しておるのでございます。これに対しては、御承知のとおり、新線の運用というものは、これは国鉄からいえば非常な負担がありまして、その利子のつまり補給という意味で三、四億ばかり一般会計から繰り入れておるのでありまして、そのかわり、財政投融資にしましても、これは全く政府から借りる金である。したがって返さにゃならぬ金である。利息を払わにゃならぬ金である。で、国鉄というものは、御承知のとおり、これはもうこれまで独占事業である。それで相当の運賃を取ってきておったのでありまするからして、別に、政府から一般の役所が金をもらって、そうしてつかうということとは違って、自分で収入をあげてそれで支出をまかなっていくということができたんでありまするが、これも、しかし最近の情勢はだいぶ変わってきております。それから、ただいま申しました過密ダイヤの問題でありまするが、これは私がたびたび申し上げまするとおり、これは何もいまに始まったことではないのです、この原因は。要するに、戦争のために国鉄というものはすっかり——大部分こわされた。しかし、その後、終戦後になりましてからも、進駐軍というものは一般的な思想、つまり鉄道業というものは斜陽産業であるというようなことに考えまして、国鉄というものに対してあまりに気入れでなかった。そのために国鉄に対する力の入れ方が少ない。そこで国鉄としてはとにかく修理もせにゃならず、それからまた、一般のこの輸造需要増加に応ずるために、輸送力もふやさねばならぬと、こういうことで、政府に対して融資を懇請し、同時にまた、自己収入をふやさんがために運賃の値上げを国会に要請する。ところが、政府のほうでは、なかなか財政の都合でもって、それだけの融資もしてくださらぬ。それからまた、運賃に関しましては、これは国鉄はどうも慎重審議のせいかしらぬが、すこぶるスローモーだ。もう一般のものが値上げしたあとでいくものですから、そのときにはすでに政府なり議会としてはインフレーションに対する対策をどうするかということが問題なんで、そこへ国鉄が運賃の値上げを持っていく。その結果たるや知るべし。運賃の値上げというものは、かりに六割を請求してみたところで、それが半額に減るとかいうようなことで、運賃の値上げの要求もいれられぬ。そのために収入も思うようにふえぬ。そこで、結局ろくすっぽ修理もできなければ、また輸送力の増強もできぬ。しかも、一般の経済の情勢というものはますます発展してきて、輸送需要というものがふえてきたというようなことで、つまり、この非常に限られた輸送力をもってして膨大なる輸送需要に応じにゃならぬ。そこでどうしたらいいかということで、つまりこれは必要の法則が国鉄をして過密ダイヤというものに追いやった。同時に、スピードアップ——スピードをあげて、そうしてダイヤを密にする、つまり両刀を持ってして結局難関を切り抜けようとしたということが、つまりこれまでの国鉄のやってきたことであり、また現在すでにやっておることでありまして、これはぜひとも何とか解消せにゃならぬと考えております。
  144. 河野謙三

    河野謙三君 公共性、企業性の問題で、公共性を第一義として当たっておると、これはほかでない国鉄総裁のことでございますから、あなたの人柄からいって疑う余地はない。気持ちはそのとおりでしょう。しかし、私はおっしゃることはわかりますけれども、やっておることはちょっと違うと思うのですよ。たとえばダイヤの組み方一つ見ましても、公共性を第一義に、ダイヤの組み方は私は組んでおるとは思っていない。もうかる、急行だとか準急だとかいうものはどんどん出して、むしろ急行とかもうかる列車のために、ほかの部分を犠牲にしておるという現実を総裁は認めざるを得ないと私は思うのです。これはまあ就任まだ浅いのですから、この次にダイヤを改正されるときには、ほんとうに公共性第一義でやられるということであれば別ですけれども、お認めにならざるを得ないでしょう。現在はもうけ第一主義でダイヤを組んでおる。のみならず、ここでいま羽生さんの質問に関連して具体的にひとつ御答弁願いたいのは、過日の運輸委員会で、これだけ輸送が逼迫しておる、百人のものが百人運べないから、その百人の中には通勤者もおれば、旅行者もあれば、団体旅行者も、いろいろある。その中で、働く者を第一義にするのか、その順位はどうだと言ったところが、順位はありませんと、こう言う。あなたのところの営業局の何とかいう人です。働く人も団体で旅行する人も、遊びに行く人も順位はないのだと、こう言うのですよ。そういうことをあなたのほうの部下の人が言っておるようじゃ、おっしゃることは、公共性を最も重点を置いてやっておると言われるけれども、言うこととやることとは違うですよ。言うことは達者で、やることはとんまというのはそのことなんだ。この点は、一体総裁は、あなたの公共性を第一義にやる、それを現実に具体化するという場合に、一つの例が、ダイヤ等も、来たるべき時期には、そういうふうな公共性を第一義にしてダイヤの編成をやるという御決意であるかどうか。私はそれを伺っておきたい。
  145. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 河野さんは平塚から通っておられるので、普通のローカル列車が、急行を通すために五分も十分も待たされる。全くこれは通勤者を犠牲にして遠距離の人に幸いするものであるということは、ひとつ私もこの点は自分で体験しておるので、その事実は認めますが、これも結局やはり企業性の私は発揚が事ここに至ったのだと思う。要するに、いかにしてこの過密ダイヤというものを実行するかということになれば、やっぱりスピード・アップということにならざるを得ない。スピード・アップということになれば、急行列車がふえて乗るほうが減る、こういうことなんで、目的は公共性なんだけれども、たまたま地方の人が迷惑する。こういうことなんで、これを、おっしゃるように、通学する人のためにするか、遠距離の旅行者のためにするかどっちにするかという部面で、国鉄としては両方のためにやりたいのだ。ところが、両方立てれば身が立たずで、どうもやっぱりそこにダイヤの組み立てにおいてうまくいかぬところがある。これは、それですからして、国鉄は、とにかくいまのところでは、財政的に、どうしたってこの公共性を発揮するためには大いに収入をふやさなければならぬと、こういうことで、やっぱりスピード・アップだ、それでとにかく急行列車をふやすと、こういうことなんです。目的は公共なんだ。決して公共事業、公共性ということを忘れたものではないのだ、こういうことはどうぞひとつ御了承願いたい。
  146. 河野謙三

    河野謙三君 いつの間にか非常に国会答弁じょうずになられてね。——私が伺っていることは、具体的なんですよ。百人のものを百人運べない場合には、働く者を先運ぶのか、遊ぶ者と働く者は同じ順位なのか、これはどっちだということを伺っているのです。それは、スピード・アップけっこうですよ。能率あげるのもけっこうですよ。それでなければ、百人のものが百二十人運べませんから。百二十人運ぶにしても、なおかつ輸送し切れない場合に、働く者と遊ぶ者とどっちだというのですよ。その順位を国鉄総裁ははっきりとされなければ、いかに公共性第一義だと言われても納得しませんよ。それは一体どうなんですか。
  147. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 一体国鉄は遊ぶ者に手をあげるのか働く者に手をあげるのか。これは私は神さんに聞いてみなければわからぬ。なぜなれば、結局河野さんのおっしゃることは、急行列車のために地方の通勤列車というものが待たされると、こういうことからそういう御発言をなすったのだと思うのだが、遠距離から急行列車で来る人必ずしも遊ぶ人じゃない。また通勤列車で通う人必ずしも働く人ばかりでもない。これはわれわれにはわからぬ。いずれにしても、とにかくやはり需要のあるところにできるだけ力を集中すると、こういうことが能率をあげるゆえんだ。そこに、つまり国鉄というものは、決して公共性はどこまでいったって忘れやしない。この点はどうぞひとつ、まあ通勤列車待たされまして御迷惑と思いますが、御了承を願いたいと思います。
  148. 河野謙三

    河野謙三君 もう一つ。私が通勤者であるから、その立場からばかりものを言っておるというように曲解されておりますが、そうじゃないのですよ。いまの羽生さんが言われた、もう少し公共性に徹してもらいたいと、その趣旨なんです。それにはちょっと疑いがあるのですよ。私はこれは関連質問ですから、これ以上申し上げるのも失礼だから言いませんし、また運輸委員会でお尋ねいたしますが、一言国鉄総裁に申し上げますが、これは、この間、国鉄の職員は命をかけて勤務をしているのだ、専売局のたばこを巻いておる職員とは違うのだということを待遇問題で大いに強調されましたが、私もその意気で国鉄総裁は事に当たらなければいかぬと思う。それでなければ士気は高揚しないと思う。しかし、片手落ちですよ。国鉄の職員が一日に犠牲者が何人出ようが、それに数倍する犠牲者が乗客に出ますよ。運転している人も、車掌さんも命がけなら、乗っている人も命がけですよ。われわれ乗客のほうが——国民全体の乗客のほうが犠牲が多いですよ。国鉄の職員にそれだけの思いを及ぼすならば、もう少し公共性に徹して、一年に乗客にどれだけ迷惑をかけ命がけで乗っているか。このごろ少し幾らを気が楽になりましたが、鶴見の事故その他の事故がありますと、家族全部が無事に帰ってくださいと祈ってうちを送り出す。乗るほうも命がけだ。貨車とすれ違うときにはほんとうに不愉快な気持ちで危険を考えながら汽車に乗っておる。決して過大な表現じゃありませんよ。命がけで乗っておる。国鉄の職員にそれだけの思いを及ぼしている人が、命がけで乗っておる乗客に思いを及ぼす、そういうことになってくれば、自然いまのダイヤの問題なんかも——これは何も急行に乗っている人が全部遊んでおるとは言いませんよ。レジャー・ブームかどうか知りません。これもけっこうですけれども、総裁御存じのように、相当数の人が遊びに行く人がある。遊びに行く人に汽車に乗ってはいかぬということは言いませんよ。言いませんが、順位ははっきりつけてもらわなければいかぬ。そういうことをやらなければ、あなたの言われる公共性の問題に、あなたのような人柄の人にさえも疑いを持たせる。私はこれ以上申し上げませんが、この次また伺いますが、私は世論を代表しておるつもりです。国会でございますから、自分の利害とか局部的なことを申し上げておるのじゃない。そういう気持ちで、少なくとも国民全部とは申しませんけれども、非常に多くの人が、私がいま申し上げたような気持ちで国鉄に望んでおるということだけはよく御理解願いたい。神様に聞かなければわからないというような国会の答弁じゃ困りますよ。私はあえて答弁を求めませんけれども、どうぞひとつお願いします。
  149. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) どうも河野さんの鋭い御質問にはちょっと困るのだが、レジャー・ブームで、遊ぶために旅行する人間だから汽車に乗るべからず、おまえは勤務する人間だから乗せてやるというようなことの区別は、これはまたむずかしい。実際国鉄が輸送上、鶴見事故のごとき、あるいは三河島のごとき事件を起こしたということは、実に何とも申しわけないことなんです。これも、国鉄が限られたる輸送力をもって増大する輸送、増大する需要に応ぜんがためにスピード・アップをし、過密ダイヤをつくったということになるのでありまして、決してそのほかの公共性を忘れたということじゃないのであります。これをつまり何とか解決しなければいかぬ。そこでつまり、ひとつ新年度であるから気を新たにして、河野さんの言われたように、ほんとうに安心した上で国鉄に乗せることができるようにしたいというのが私の職務でありまして、どういうふうにできますか知りませんが、決して公共性を忘れたわけじゃない、できるだけ公共性に徹してやろうという精神であるということだけはどうぞひとつ御了承願いたいと思います。
  150. 羽生三七

    羽生三七君 私は、この過密ダイヤの問題とか、あるいは国鉄職員の待遇の問題とか、そういう一つ一つの問題についてきょうはお尋ねする意思はないのですが、基本的な問題だけに限定しておるわけです。そこで、総裁もすでに御存じのように、日本国有鉄道諮問委員会が昨年八月に答申しました「国鉄経営の在り方について」、これを見ますと、こう書いております。「“国鉄経営の完全破綻とは、そのもとを正せば、「すでに巨大でありこれからいよいよ巨大になって行く公共負担」を、政府が引続いて国鉄に負担させ、国鉄はその尻を全部「借入金」に持って行くからこそ起る現象だ”といえるのである。しかもその「公共負担」とは、本来「独立採算制の企業体」たる国鉄が負担すべきものでない以上、いま当諮問委員会が求めているところの政策の骨子は、ここに明瞭になったものと考える。」と、こう書いてあります。そこで、私は先ほど申し上げたように、それでは今日まで政府がこの巨大な国鉄について、国有鉄道と称するからには、どの程度の実際上の役割りを果たしておるかということを数字をあげて申し上げたのです。他のいろいろな事業に比べて、それは財政投融資等では相当額の役割りを果たしておりますけれども、一般会計では、さっき申し上げたとおり、全然問題にならぬ、これが実情であります。  そこで、そういうことから、総裁は先日、この公共性と企業性の場合、特に能率的な運営をし企業性を十分に発揮していかなければならないが、その隘路になっておるものは、やはり運賃あるいは定期代等だ、こういうことで、四十年にはこの引き上げもやむを得ない、こういう結論を新聞記者会見で発表されておるわけです。ところが、この諮問委員会の答申にもあるように、これらの重大な問題をほとんど国鉄自身に負担させて、国鉄はそのしりを全部借り入れ金でまかなっていることから、今日の国鉄の経営の破綻——と言うと語弊がありますが、混乱性を招来しておる。そうであるならば、政府自身がもっとこの点に——私ははっきり言えば、もう公共企業体なんというより、国有鉄道本来の姿に返ったほうがいいと思う。昭和二十四年の改正前のように、本質的に国有鉄道になったほうがいい。能率的な運営は能率的な運営で十分考えられる。そういう段階に来ておると思うんです。  ついでに私、もう少し続けて申し上げますが、たとえば国鉄が負わされておる任務の中に、後進地域といいますか、おくれた地域の開発というか、そこへ線路をどうするかという、そういう問題もある。答申にはこうなっておるんです。「“もしいわゆる低開発地域の開発が国策であり、その国策を進めるためには、たとえ採算に合わなくとも鉄道を敷設すべきだとするなら、国鉄は進んでその国家的要請に応ずべきではないか。”という疑問に国鉄はどう応えるかである。」、こう言っておる。ところが、これは今度公団でこの部分を一部担当するようになったようでありますが、この場合でも、これは採算だけを言っておれば、結局公団をつくらなければいかぬ、ここにもこういう矛盾があらわれておる。  それからさらに、公共性の定義を見ますというと、これはもう総裁が一番御存じのように、「“国鉄は、日本国の陸上輸送機関の根幹をなすものとして、安全・確実・迅速・便利なる輸送サービスを、最低廉なる運賃をもって国民に提供するというその当然の任務を、株主の利益のためという考慮なしに、国家国民の利益だけを目標として遂行していくこと”」、こういうふうに公共性の基本を説明しております。こう見てくると、本来、国鉄が公共性に、先ほど総裁のお答えになったように、重点を置かれるならば、単に財投で一部を政府がめんどうを見るというだけでなしに、国家それ自身がもっと国鉄に対して責任を負う必要があると思う。そうだからといって、私は、非能率な運営をしていいと言うのじゃないのですよ。能率的なことはあたりまえな話なんですよ。そういう前提のもとに、国家がもっと責任を持った日本国有鉄道に対する基本的な態度をきめないと、もう公共性か企業性かという論議を何回も繰り返し、依然として問題の解決が一向に進まない、そうなっている。そこで、一番重要な問題なんですが、そういうことから考えていくと、運賃あるいは定期代の値上げを四十年度からやるという総裁の談話は、私は適当でないと思う。この前総裁は、予算委員会の本委員会質問に対して、私鉄と関連さして御答弁なさっておられましたが、私鉄と違うがゆえに公共性なんです。特に地下鉄との比較の問題で総裁はお答えになっておられましたが、これは地下鉄運賃と同じにするなら、何も国鉄と言う必要は全然ない。だから、そういう立場から考えていくと、それは私は、永久に、いつの世までも運賃を上げてはいかぬ、定期代を上げてはいかぬと、そんなことは言いません。やはり一番の問題点は、日本国民全体が、国民総収入としてはある程度高まってきておるけれども、個人所得としては必ずしも十分ではない。そういう時期に、しかも、物価問題が当面の大きな課題になっておるときに、たとえ本年度でなしに、明年度にしても、運賃値上げ、あるいは定期代の引き上げ等も、そうしなければ国鉄はどうにもならぬというような考え方が、私は間違っておるのじゃないかと思う。それは、私はいまもう一度繰り返しますが、永久に上げてはいかぬとは言いません。個人所得が相当ふえておる。あるいは、ある程度物価問題が落ちついたときに上げるということはあり得る。私は永久不変の原則を言っておるのじゃない。当面そういう立場で運賃問題あるいは定期代を考える場合には、もし、そのことによって国鉄に何らかの財政上の必要があるならば、これは国家がめんどうを見て、それを乗客の運賃や定期代の負担によって解決を求めるべきものではない。これがくずれるならば、公共性というものは一体何か、私鉄とどう違うかという問題になってきます。ですから、この基本的な立場から、あるいは総裁が言われた四十年度から定期代引き上げ、あるいは運賃引き上げということは、もう一度根本的に再検討される必要があるのじゃないか、こう考えますが、いかがですか。
  151. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 御承知のとおり、国鉄は独立採算制というものにしばられておる。収支償うように経営しなければならぬ、こう考えております。それで、ただいま国鉄というものは公共企業である以上には、できるだけ安い運賃、できるだけいいサービスということなんですが、これはごもっともだと思います。ただしかし、そこには私は程度があると思う。安いといったって、つまり、これはもうある程度安く、つまり、合理的の運賃ということに解釈してもらわなければならぬものだと私は考えておる。ところが、実際国鉄の運賃というものはどうか、こういうと、国会がこれは運賃の決定権を持っておるのでありますが、昭和十一年を一とすると、諸物価というものは三百五、六十倍にもなっておるのに、国鉄の旅客運賃というものはわずかに百五十九です。これは物価と比べてあまり安過ぎるから、ひとつ適度のものにしてくれということがわれわれの主張です。合理的な運賃にしてくれ、公共性という立場から見てですよ。これは高い運賃を取ろうというようなことは決して考えてはおりません。合理的な運賃というものにしたいというのが、われわれの念願であります。それには、現在の運賃というものが安過ぎるから、これを適当なときに引き上げる。割引率にいたしましても、鉄道法によれば六〇%までは、通勤者、通学者に対して割引しよう、こういうのが、日本の文教政策か何か知らぬが、通勤者に対しては八二%も割引する。それからまた、通学者に対しては九二%も割引する。割引も、これも程度がある。九二%というのは、ほとんどただということです。国鉄というものは独立採算制というものを堅持していかなければならぬ。そうして、できるだけ公共性を発揮して輸送の使命を達しなければならぬ。こういうことである以上には、借金ばかりやっておった日には、利息に食われて国鉄は破産してしまう。独立採算制という立場でありますので、これはやはり適度に運賃の割引率を是正する。公共負担の問題でありまするから、ただいま言った学生に対する九二%の割引率にしましても、あるいは通勤者に対して八二%の割引率にしましても、世界中でこんなことをやっているところはない。ベルギーあたりは通学者に対しては非常な割引をやっておりますが、これは国家が補償しておる。鉄道の勘定においてこれだけの割引率をしているところはどこにもないということになる。これはつまり国鉄というものの負担において政府の政策を遂行しておるということで、ある意味において国鉄というものが犠牲になっておる。犠牲なんということばをつかうとはなはだきつ過ぎますと思いますが、要するに、国鉄がそれだけの苦労をしておるということなんです。これを是正してくれというのがわれわれの考えなんです。ことに、鉄道というものは独占性というものがだんだん薄れてきている。たとえば貨物からいえば、トラックの発達、特に最近における道路の発達ということを考えるというと、この際貨物運賃を上げるということが増収になるか減収になるかこれはわからぬ。いずれにしても、貨物なんというものは、その運賃なんというものはある程度の限界に近づきつつあるということは事実なんです。しかし、旅客においては、これはまだ私は普通の、つまり物価その他から見て相当に上げても決して公共性というものに反するわけじゃない、こういうふうに考えておるのでありまして、どこまでも、国鉄は安くいいサービスを提供するという公共性を忘れるという意味じゃ決してありませんので、この点は御了承を願いたい。   —————————————
  152. 田中啓一

    主査田中啓一君) ただいま委員の変更がございましたので、御報告いたします。  矢山有作君、安田敏雄君が辞任されまして、その補欠として藤田進君、大倉精一君が選任されました。   —————————————
  153. 羽生三七

    羽生三七君 ここで私は当面の問題以外の議論をする意思はあまりないんですが、しかし、必要上一言触れておきたい。ということは、池田総理がよく、物価が少しくらい上がったって収入がふえればいいじゃないか、収入がそれより上回ればいいじゃないか、これでいまの物価値上がり問題に反論をしておるわけですね。それは一般論からいえば、物価が五千円かりに月に上がって収入が一万円ふえれば、五千円実収入がふえるから、そういう議論になる。しかし、総理の言うのは、すべて平均数字なんです。そこで、月に千円か千五百円しか給料が上がらぬ人に、物価が二千円も三千円も上がればマイナスでしょう。そういう人は日本にたくさんおるんです。そこへ定期代が上がれば、月千円なり千五百円なり上がるような場合、これはたいへんなことになる。だから、平均数字で言う生活水準の向上なんというものは全然意味がない。だから、いまもベルギーの例を引かれましたが、足りない部分は国家が補償する。だから私の言うのはそれなんですよ。こういうものを国家がめんどうを見るならば、何もこの物価値上がりの激しい時期に、あるいは西欧の生活水準に個人が接近しておらないこの時期に、総裁が四十年にどうしても運賃値上げをするなんということを言う必要は何もないと思う。  それからもう一つ重要なことは、国鉄と他の一般産業と混同してはいかぬと思う。これは前々から思っていることですが、たとえば国鉄の場合は人件費が圧倒的に多い。これは総裁が何かの機会に言われた。これはそのとおりですが、他の産業のように、機械で物を生産したり、あるいは機械の設備や、近代化合理化で高度の生産性をあげる産業とは違うんですよ。これを忘れると、これは、能率化とか近代化とかというようなことだけでは非常なあやまちを犯すと思う。能率化、近代化、もちろんよろしいですよ。私はめちゃくちゃにこれに反対するわけじゃない。しかし、他の産業のように、機械で物をつくってどんどん値を上げてくるのとは全然違っている。生産するわけじゃない。物をつくるわけじゃない。若干の生産面というものはあっても、本質的な近代化合理化と基本的な点が違う。そういう問題もあるので、企業性というものも他の一般の企業に比べて一応国鉄には限界があると思う。その限界を破って、ほかの産業と同じように、企業性なりあるいは近代化合理化の性格を発揮しようというと非常な無理がかかる。そういう意味で、私は他の産業と区別しなければいかぬと思う。それから、もし足りない点があるならば、政府が借り入れ金の利子補給ということでなしに、もっと思い切ったことをやるべきである。それに甘んじて国鉄が非能率の運営をしていいというわけじゃありませんよ。これは徹底した合理化の運営をしなければならぬということは当然であるが、それにもかかわらず、国有鉄道法の中に、公共福祉のためにということを第一条にうたっているならば、これはいまの精神を生かして、運賃値上げなんというものは、物価が落ちついて、もっと個人生活の水準が上がるまで私はしばらく待ったほうがいいんじゃないかと思う。それで足りない点があったならば国家がもっとめんどうを見るべきではないか、こういう立場で私はきょうにお尋ねしているわけです。だから、はなはだ恐縮ですが、ことばのあやでごまかされると言うと悪いけれども、ごまかすんでなしに、もっと基本的な姿勢で御見解を披瀝していただきたい。必要があれば、私はまた政府自身にわれわれの見解を披瀝いたします。
  154. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) この国鉄の人件費ですが、鉄道というものは、これは非常に人件費のかかる、人手を食う仕事であるということは、これは世界共通の事実でありまして、国鉄のごときも年々歳々人件費の増ということについて相当に頭を悩ましているのでありまして、たとえば三十九年度の予算案は、実際においては人件費が三千億くらいにのぼっておる。私はそれ以上になると思う。国鉄の収入がかりに六千二百億とすると、そのヒィフテー・パーセント以上というものは人件費ということになる。ということで、人件費というものの合理化をできるだけはかるということは、国鉄が独立採算制を維持していく上において必要なんだ。といって決して過重な労働を職員に課しているわけじゃない。もうだれが見ても合理的であるという、たとえば機械化であるとか、あるいは蒸気機関車を電気機関車にかえるとか、あるいはディーゼルにかえるとか、だれが見ても全くもっともだというような合理化によって人手をふやさない——減らすんじゃなくふやさないということでやっておるのでありまして、この点は私は御心配になることはないと思います。それで、そのほかに、そういう点に関連して企業性にも限界がある、全くそれはそのとおりだ。企業性に限界があるということはもっともでありまするが、御承知のとおり、国鉄というものはもとは官僚なんです。それが昭和二十四年から企業体に変わってきたのでありまして、つまりお役人が仕事を、営業をする。そこで私は、監査委員長として官僚センスを払拭しなければならぬ、うしろに日の丸の旗が立っているような不沈艦センスを払拭しなければならないということを盛んにやかましく言ってきたのでありますが、それでは国鉄の職員というものはどうかというと、最近は私は非常に企業性がつまり満ちてきている。といって、これは民間に比べれば決して何も企業性が民間より職員の精神において豊かであるということは私は言えないと思います。  それから、物価と運賃の値上げでありまするが、公共性の立場からして、運賃なんというものを上げるということは、これは物価というものに影響してくるから上げないほうがいいという御議論のようでありますが、これも程度問題。要するに、いまの国鉄の旅客運賃というのは安過ぎるのであります。それを適当のところへ持っていこう、こういうことが運賃値上げの問題であります。また、御質問にはありませんが、私が企図しておるところは公共負担の是正である。これはつまり、政府の政策を国鉄の負担においてやっているということは、これはおもしろくない。どこまでも政府の仕事は政府の費用でやったらよろしい。何も国鉄を佐倉宗五郎にする必要は私はないのじゃないか、こういうことで、この公共負担の是正ということもぜひこれはやらにゃならぬということに考えておるのでありまして、企業性に徹するのあまり公共性を忘れるというようなことは絶対にしないつもりであります。その点はひとつ御安心願いたいと思います。
  155. 羽生三七

    羽生三七君 時間があまり……私だけでやっていてもいかぬから、もう少し、簡単にして終わりますが、誤解のないように願いますが、私は、人員はあまりふやさぬようにするとかなんとかいまお答えがあったが、近代化合理化を人員の削減に求めているわけじゃないのです。それは時間短縮なり休養の時間に充てればいい。私はそういうことを言っているのではないから、誤解のないように願いますが、どうも総裁の御答弁がはっきりしないんですが、先ほど来私が言ってきたことから、運賃、定期代等の値上げはしばらく——十三日の記者会見で述べられた引き上げるということは再検討し直して、お考えし直しになったらいかがですか、これが主要な問題点です。その上であらためて私は論議することがあったら幾らでも論議しますが、どうも結局先ほど来述べてきたいろいろな矛盾、国鉄の当面しておる今日の困難性を、結局国鉄自身が一人でしりぬぐいしておるようなかっこうになっておるのに、国家がさらに一段の努力をして、そういう矛盾を解消することによって、当面現在のように物価値上がりの時期には——私は永久ということは言いませんから——この時期においては、明年度から運賃を上げたり定期代を上げるというようなお考えは、一応撤回されて再検討されてはいかがかと、こういうことを申し上げているわけです。したがって、それが実現不可能な場合は、いま安過ぎるからもっと上げると言うのなら、それなら、たとえば、五百円なり千円定期代を引き上げた場合、その場合ベースアップをそれだけして、通勤者に補償を政府がするというのならこれは別ですよ。しかし、それは可能でしょうか。だから、そういう意味からいって、そういうことは政府がめんどうを見るべきで、国鉄自身が全部責任を負うことはないと私は思います。さらに、そればかりでなしに、まあ簡単にしておきますが、最近国鉄の事業が必ずしも所期の目的を達成しない事由に、その条件に、やはり物価値上がりの問題と土地価格の高騰があると思う。これだって、国鉄自身が責任を負う問題でないのです、全部。そうかといって、私はずさんな経理を認めるわけじゃありませんよ。それはそれで別な話です。だから、物価騰貴なり土地の高騰なりそういう条件から、たとえば補正予算を組まざるを得ないような条件が起こってきている。これは不手ぎわもありますけれども、これはまあ別の問題です。だから、そういう際に、そういう諸般の、国鉄自身以外の他の諸条件の累積で問題が起こっておるのに、それを通勤者の定期代の値上げや運賃値上げにのみ解決を求めようとするのは、私は筋違いじゃないか。そういう意味で、十三日の記者会見で述べられた運賃値上げ、定期代引き上げのお考えは、もう一度再検討されてはいかがかと、こういう提案をしているわけです。あくまで引き上げられるのですか。
  156. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 運賃の値上げ及び通勤通学の割引の問題について非常に御心配のようでありまするが、まず通勤の割引のことについて申し上げますが、通勤の割引が今のように八割二分にもなったというようなことは、通勤者が自分で通勤代を払っておった時分です。ところが、その後日本情勢は変わりまして、現在における通勤者の大部分というものは、官庁の負担なり雇い主の負担である。そこで私がこの通勤の割引を是正したいと考えておることは、それは中には自分のふところから出している者もありまするが、大部分はこれは雇い主の負担であります。雇い主の負担というものは、半分は大蔵省の負担であります。何となれば、雇い主からいえば、これはもう経費勘定として落とすことができますので、それでそれだけ利益が減る、それだけ法人税が減ると、こういうことになりまして、半分は雇い主の負担、こういうことで通勤者は、例外はありまするが、大部分は別に自分の負担になっていることはない。また、運賃の値上げということについて非常に御心配のようでありまするが、国鉄は独立採算であくまでも経営していかにゃならぬ。しかも、一方には輸送の安全のために相当の経費がかかる、ことにこの過密ダイヤの解消に対してはだいぶこれは金がかかる。それじゃこれをいかにしてまかなっていくかという問題になりますが、もしも運賃の値上げをせずに、また通勤、通学その他の公共負担の是正をしなかったら、結局借金にたよるほかない。それは、ただいまあなたがおあげになった例の諮問委員会の答申にありましたように、非常な借金になっちゃう。これを返さにゃならぬ。利息も払わにゃならぬ。結局その結果はどうなるかといえば、国鉄がとにかくブレイクすると、こういうことであります。これは少なくとも国鉄法が変わって、そうしてそういう穴があいた時分には政府が補償するという場合にはそれでよろしい。しかし、独立採算でいかにゃならぬと、こういう場合には、その借金の返済の利子の負担のために国鉄はどういうことになるか。結局、これはもうブレイクする以外にない。そこに国鉄の悩みがある。それから、これは合理的である。合理性を失わない範囲において運賃の値上げもし、そうして通勤、通学そのほかの公共負担の是正も必要だと、こういうことになるので、私の言うことは最も合理的ではないかと確信しているのであります。いまのところで、あなたに対して私は運賃の値上げをしないというようなことで押し返すことはできぬ。やはり、それらのことをやってみてもこれはやらざるを得ない、ある程度まで。こういうことに考えておるのでありまして、はなはだ御意に沿うことができないで残念でありますが、どうもまことにやむを得ない事情だと思います。
  157. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いまのお答えを承っていると、結局、この独立採算制ということに重点を置いておられる。そのためにやむを得ないと言われた。そこで、それだからこそ、私が国有鉄道法の第一条を引用して公共の福祉ということに重点を置くべきではないか。したがって、その後昭和二十四年からの変更がありましたけれども、この際この答申の機会に、毎年毎年同じような論議をしておって、さっぱりすっきりした解決策がないわけですが、政府と国鉄との間でもう一度この答申なんかを中心に何らかの——独立採算制、企業性と公共性の問題について一種の統一見解というか、今後の国鉄のあり方の基本的な問題について何らかの判断をされてはどうか。   〔主査退席、副主査着席〕 そうしないと、これは国有鉄道法第一条は存在しておっても、実際にはいまの御答弁もあるように、結局独立採算制のほうが優位に立つような印象を受けるのでありますから、これはやはり適当な時期に根本的な、政府と国鉄側との統一見解といいますか、時間をかけてでもいいから解決策をはかって、そうしてすっきりした国鉄のあり方というものを考えられてはどうか。ある意味においては、私は本来の日本国有鉄道に戻ったほうがいいと思う。そういうこともあるので、そういう観点から考えないと、いまの独立採算制ということにだけ総裁は重点を置いて、公共性ということは一応は言われながらも、だんだんとやっていくということ、結局独立採算制にウエートを置かれますので、結局運賃値上げもやむを得ないという結論になります。重ねて私は基本問題点を政府、国鉄間で根本的な話し合いをされて、そうして当面四十年度からの運賃値上げというようなお考えは、少なくとも見送られることを重ねて私は要望いたします。いかがですか。
  158. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) これは国鉄の運賃が世間のほかのつまり輸送機関に比べて非常に高くなるとかというようなことでしたら、これは別問題ですが、とにかく私鉄あたりに比べると、国鉄の運賃は非常に安いということ、とにかく一般のレベルに比べて非常に低い。それ以上に何も低くしなくてもよくはないか。合理性というのは、適度に低いというところにそれで合理性というものが保たれるんじゃないかということに考えております。これを政府管理に移して、とにかくできるだけ安くやる。そうしたら政府が負担をしよう、こういうふうなことは、一体国の政策としてどんなものか。少なくとも現在の国鉄の法によって私が国鉄を経営するという立場に置かれている以上は、やはり独立採算制と、そうして運賃を値上げしても決して公共性に反しない範囲においてやる、こういうことでひとつ御満足願うようにいくよりほかに方法がないと思います。そのほかの問題については、これは根本的の問題でありまして、これは国鉄総裁としていかんともすることができない。
  159. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、基本問題についてはまたいずれ時期を見て……。総理に私がこの前お尋ねしたときに、総理も企画庁長官も、これは国鉄だけで決定することでないので、政府自身が最終的な判断を下すと、私にはっきり確約いたしております。ですから、また適当な機会に私は総理にやりますから、これは運輸大臣もそうですが、企画庁長官には物価問題との関連でやりたいと思いますので、これ以上は申し上げませんが、しかし、先ほど来述べ来たったことをもう一度よくお考えいただいて、これは来年から上がると言っても、なかなかそう簡単にいきません。
  160. 大倉精一

    大倉精一君 時間がないようですから、きわめて簡単に関連して質問しますけれども、長いずっと質疑応答を聞いておりますと、結局、営利企業と変わりがないというところに落ちついてまいりますね。これは私はいつか運輸委員会で総裁から企業性を発揮するという答弁がありましたので、その企業性を発揮するということは、いずれかの機会に論議しましょう、こう言っておきました。きょうは時間がありませんから、一々こまかく掘り下げて答弁を求めようとしておりませんが、第一番に根本的なことをお尋ねしたいと思いますが、赤字線、赤字線とあなたはおっしゃるけれども、私は昔から、運輸委員会におきましても、国鉄に関する限りは赤字線ということは言うべきじゃない、政治線というものは私は反対する、反対するが、赤字線というものは必要であればこれは敷設すべきである、こういうことを言ったのですが、国鉄に関する限りは、私鉄と同様に、レールの上オンリーの収支だけを考えて、赤字、黒字ということは言うべきじゃないと私は思います。つまり、長い目で見て、いわゆる地域開発の効果、この果実がプラスであるか、マイナスであるか、これによってそこにつぎ込んだ、敷いた鉄道というものが、路線というものがプラスであるか、マイナスであるかということを考えることが、これが国の行なう鉄道です。私企業の場合におきましては、レールの上オンリーであって、収支を計算して赤字、黒字と言います、言いますが、少なくとも地域開発の使命を持って、そうして政策的な使命を持っておる国有鉄道に関する限りは、赤字、黒字ということは言うべきじゃなくて、地域の開発の果実、成果、これを長い目で勘案をして、この線の価値判断というものをすべきである、こう私は思うのです。国鉄に関する限りは、いまあなたのおっしゃる赤字だ、黒字だということ、私鉄の、私企業の鉄道と何も変わった観念じゃないです。私は、国鉄というものは政策路線だと思う。その点はどうですか。こういうことは総裁に独採制のことを聞くのは無理かと思いますが、あなたの見解をひとつ聞きたい。
  161. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私も、何も赤字線の経営を国鉄がやるべきものじゃない、こういうことは決して言わぬ。国鉄は公共性である以上には、その独立採算制の立場から見た収支が合う範囲においては赤字線の経営また可なり、これによって国の発展が得られる。それだけの犠牲をするということは、これは喜ぶべきことなんです。しかし、問題はそこにも限度がある。いわゆる独立採算制という問題、それからして、収支のとれる範囲において赤字線の経営というものは、これは勇んでやったらよろしい、ことに、国鉄の東海道線なんか非常にもうかっている線を持っておる。もうかる線だけをやって、赤字線は知らぬというようなことは、国鉄は公共性の立場にあって絶対に言うべきじゃない。ただ、問題は、限度があるということで、独立採算制ということに縛られているから限度があるのだ、こういうことを私は申し上げておるのであります。
  162. 大倉精一

    大倉精一君 ちょっと私の質問とは違うと思うのですけれども、きょうはあまり深くやりません。やりませんが、新しく敷く路線というものは、その地域の路線から受ける利益というものは直ちに出るものじゃないのですよ。その路線によって地域が開発され、総合的な一つの利潤というものは鉄道にくっついている地域の開発ですよ。東海道線あたりは開発されちゃって、だれがやっても赤字になんかならないにきまっている。ああいうものは私経営にまかせてやったらよろしい。国鉄というものはそうじゃなくて、いま言ったような政策路線ですからね、まあ、これは総裁、いまのシステムであなたに要求するのは無理であって、ただ考え方を聞いただけでありますけれども、これはまたいずれかの機会にいろいろ論争いたしましょう。  それから、いまの非常に気にかかることは、定期運賃について総裁言われましたけれども、大部分が雇い主負担であるから差しつかえなかろうという、こういう発言のように思うのですね。そうかもしれません。しかし、その他たくさんの、毎日の労働だけを頼りにして生きている人がおいでになる。たくさんおいでになる。これらの人々を、いわゆる大部分が定期は雇い主の負担であるからという名のもとに、ほんとうに定期を安くしてもらいたいという気持ちの人たちを忘れてはならぬと思う。たとえば厚生省のいつかの発表を見ましても、ボーダー・ラインに一千万人おる。八千万人として、十人に一人はそういう人がおいでになるわけです。だから、いまのあなたの論法で、ほんとうに定期を安くしてもらいたいという人はやはり負担しなければならぬ。雇い主の負担ということはほとんどそうたいした関係はない。だから、もう少し、一体雇い主負担でないという人の定期というものは、区別してこれは扱うことができるのですかどうですか。
  163. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 実は大倉さんの言われることは、われわれの悩みなんです。要するに、この割引率を是正することによって相当の人というものが自分のふところをいためるかというと、必ずしもこれは雇い主なり、官庁の負担にはならぬ。こういうことはわかっておるのでありまして、そこにはなはだどうも一刀両断にできないところがある。しかし、大勢のどうも動くところ、涙をふるってやっぱりやらざるを得ないのじゃないかと、こういうことを私は言っておるのであります。
  164. 大倉精一

    大倉精一君 涙をふるってという表現がありましたけれども、だれのために涙をふるうのかわかりませんが、これはまあ矛盾とおっしゃれば矛盾に違いないでしょう、あなたのそういう制度を押しつけられている立場からいえば。しかし、さっきも言ったように、これはやはり私鉄と違うのですよ。これは公共なんです。だから、政策的な経営でなければならぬはずなんですから……。そういう点が違うということは、きょうはこれ以上言いませんけれども、頭に置いてもらわぬと、これをやるのだということになるというと、たくさんこれによってほんとうに涙を流す人があるのですから、これは十分ひとつ総裁としてお考えを願いたいと思う。  それから、運賃の問題が羽生さんからいまいろいろ質問がありましたけれども、これは何も国鉄だけの悩みじゃない。あとから私は質問しようと思っておりますけれども、気息えんえんの路面交通の部面においても一年間ストップになったということは、確実にこれは消えてなくなる運命にあるのです。そこへもっていって、確かに国鉄の運賃は私は高いとは言いません。言いませんけれども、この運賃値上げをやってもらわなければどうしてもいけないのだ、こうおっしゃる。そこで私は心配になることは、それじゃ、もしこの運賃値上げということが国会で審議されて、総裁の手を離れることでありますけれども、総裁の手を離れてこの運賃が否決された場合には、総裁は一体国鉄に対して責任が持てますかということ、これは私は大きな問題だと思うのですよ。かつて私は国鉄運賃値上げのときに、国鉄は、一割七分でしたか、一割八分でしたか運賃値上げをして、これによって五カ年計画をやるんだと、こう十河さんがおっしゃった。どのくらい五カ年たったらやれるのだと言ったら、新聞が読める程度にするのだと、こうおっしゃった。それで今度自民党さんでがたがたやられて、国会に対して出したのが一割三分。それで私は総裁に聞いたのです。あなたのほうは一割七分でもって五カ年計画を完遂するという責任を持って出しておられたのだが、一体一割三分で責任が持てますかと言ったら、やむを得ません、一生懸命やりますということで、結局五カ年計画は完遂できませんでした。でありますから、先ほどあなたの非常に自信に満ちた答弁を聞いておりますると、運賃を値上げしなければ、国鉄総裁は国民に対して責任を持てないということを言われるのではないかという心配が出てきたものですから、念のために聞くのですが、どうでしょうかね。
  165. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 大倉さんも御承知のとおり、いま物価が上がり、人件費が上がっている。国鉄だけでも人件費だって一年に二百億以上上がっておる。物価だってえらい勢いで上がっておる。物も上がり、人件費も上がる中に、それを土台にして経営しておる国鉄だけが旧態依然としてそのままにおるということは、ちょっとこれはどうでしょうかね。私はこれはそういうこともお考えくださってしかるべき問題じゃないかと思うのです。これは、ただ問題は程度の問題、決して、物価が上がる、人件費が上がる、それ以上に上げようというわけじゃないのです。その下に置こうと、こういうわけなんですから、これはひとつどうか、いよいよ問題になりました場合には、あまり反対しないようにお願いしたい。
  166. 大倉精一

    大倉精一君 これは心配になったからお聞きしたのですけれども、あとから運輸大臣一般の公共料金値上げと含んでお尋ねしようと思っていますけれども、当然上げなければならぬものを国家の権力によって押えた場合においては、コントロールした場合においては、これはもう政策運賃ですよね。政策運賃なれば、これは政府が責任を持たなければならぬ。これは総裁大いにその責任を政府に追及してくださいよ。そうでなければ、精神訓話だけで公共料金で押えられたら、総裁たまったものではない。民間もそうだと思うけれども、これはあとからそういう問題と関連して大臣にお聞きしましょう。  それで、総裁の質問はこれで終わりまするが、あと関連をして、運輸大臣の所見を一応聞いておきたいと思います。
  167. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと国鉄総裁にもう一問だけ。それで、私の質問はこれで終わりますが、先ほど来の総裁の御答弁は、結局国鉄を独立採算制で見て、そうすると運賃値上げということも出てくるということを言っておる。それには違いないが、しかし日本国有鉄道法の沿革から見て、それから日本の歴史的な国鉄の沿革から見て、しかも諮問委員会の答申等を参照して、政府、国鉄内でもう一度この問題について基本的な解決というか、統一見解というか、それをはからなければ、いつも企業性か公共性かというようなことで、さっぱりわけのわからぬことになってしまう。だから、私はもう前の楢橋運輸大臣のときにこの問題かなりやりました。それで一応の見解を楢橋さん出しましたが、その後数年たってしまって、今度の運輸大臣にはお尋ねしてありませんが、きょうは国鉄総裁にちょっとお尋ねしました。そこで、何らかの機会に何らかの検討をなさらぬと、依然としてあいまいで、しかも、この現状を打開するのはなかなか困難である。だから、政府、国鉄相互間で何らかの基本的な見解の統一をはかって、すっきりした割り方をされて、その上に立って年度予算考えていく、こういうやり方が正しいのじゃないかと思います。その点ひとついかがですか。
  168. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 御承知のとおり、いま国鉄が直面しておる大きな問題は輸送の安全、それには一番大きな問題は過密ダイヤの解消をどうするか、こういうことです。もしもこれをやらなかったら、さっき言われたように、お客としては安心して国鉄に乗れないということで、この過密ダイヤの解消、それから輸送の安全を保つということのためにはどうするか。要するに、輸送ということは、結局安全に対するいろいろな施策をやると同時に、まずもって輸送力をふやす。これはつまり過去における寡少投資の累積が事ここに至ったのだ。これをやるには非常な金がかかる。しかし、これはやらなかったら、いつまでたっても輸送の安全というものは私は期待できぬと思う。そうするにはどうするか。それには非常な投資をしなければならぬ。投資をする場合に、さっきもごらんになった例の諮問委員会のあれにもありましたように、つまり公共負担というものが年々ふえてくる。これをそのままほうっておく。それからさらには、それには書いてないのですが、運賃の値上げというものも、運賃の是正というものもしない、こういうことになっていけば、結局どこに一体頼ったらいいか。借金だ。その結果はどういうことになりますか。その諮問委員会のあれだと、国鉄は破産になるということなんで、これはやはり合理性を欠かない範囲において運賃の値上げをし、また公共負担の是正をして自己資本をつくる。足らぬところは借金でいく。こういうことが一番国家的に見て合理的な経済的な国鉄の経営方法じゃないかと思う。これは、運賃の値上げというようなことについては御反対かもしれぬが、この点は、要するに、国鉄を破産させるか、あるいは運賃の値上げをするか、こういうことにひとつてんびんにかけてお考えくださることだ。ことに、さっき大倉さんが言った御質問にもあったのですが、そのときに私が申し上げたように、物価が上がる、人件費が上がる中に、ひとり国鉄の運賃だけを依然としてそのままに置くというようなことがはたして合理的なものであるかどうか。こういうことはまじめにお考え願わにゃならぬことだと考えております。
  169. 羽生三七

    羽生三七君 それは総裁は答弁をすりかえられているのです。そういう運賃の値上げをしなければ、結局国鉄は破産のところに行くと言っておりますが、それだからこそ、独立採算制だけで考えておってはだめだから、公共性に重点があるというなら、国家がもう少し財政的にめんどうを見なければならぬということを申し上げているわけです。しかし、これは全くの余談ですが、年々増大している歳出の硬直性から見て、新規事業を伴う国家予算というものは非常に少ない。だから、なかなか新しく、今後国鉄の発展に照応して、国家でどれだけの予算が組めるかということは前途必ずしも楽観を許さない。しかしおそらくこれは、私、大蔵大臣考え方をいずれはただしたいと思っておりますが、将来必ず大蔵省の財政の基本方針は財政投融資の方向に重点を、つまり新規事業の重点をだんだん置いていくのではないかという気がすると考えている。それ以外に、もうこの歳出の硬直性と自然増収の減収、それから当然増経費の増大等を見るというと、予算の編成は限界に来る。そこで私は一応調べたところが、おそらくこれを使うだろうと思うのですが、たとえば厚生年金ですね。厚生年金は昭和三十九年度の当該年度だけで見ると二千百八十億円、ところが累計していくと一兆一千五十三億円、それから国民年金も今年度は四百五十六億を組んでおりますが、累計では一千五百三十四億、これだけで総計一兆二千五百八十億なんです。だから、これを使うようになりますよ。大蔵省は必ずそれで予算編成をカバーしていく。だから、そういう面で金がない、金がないと言われますが、国家がその気になればある程度やれるのですよ。しかも、これは一般会計だけではない。財投から見れる。それを何でも独立採算制で運賃値上げをしなければ国鉄はつぶれちゃうというようなそういう考え方は、広い財政的な視野から見て、私は必ずしも適当ではない。しかも私は永久とは言っていない。はっきり物価問題が落ちつき、しかも個人生活水準が一応の限度に来たときは——私たちは永久不変の原則を掲げて問題提起するわけじゃないですから、いま四十年度から上げますなんということをはっきり総裁が言うべき時期じゃない、こういうことを申し上げた。
  170. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 実はこの国鉄の経営をどうするかということは、これはもう大きな問題です。いまのような過密ダイヤのもとに非常なスピード・アップしていくにおいては、必ず大きなまた事故が起こりやせぬかということで、全然頭を変えて、四十年度からは、国鉄だけでなく、政府委員によっても国鉄の経営予算をどうするかということを検討してもらうために、近く委員も出ていただきまして、そしてこの問題の検討が始まると思いますので、いまのこの運賃問題なんかも出ると思いますが、しかし、いま申し上げたような金が一兆何ぼ大蔵省にあると申されても、大蔵省は決してあるとは言わぬ。なかなか出してくれぬ。かりに大蔵省、ふところが豊かならばこっちに貸してくださいと言ったって、これはもらう金じゃないのだ。借りる金ですよ。返さなければならぬ。利息を払わなければならぬ。だから、その諮問委員会の答申の中にも、借金してばっかりやっておった日には破産するぞと……。
  171. 羽生三七

    羽生三七君 利子補給で……。
  172. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 利子補給も、これはあなた方が大いに国会で大声疾呼して利子補給してもらう、こういうことでやってもらうよりほかありません。
  173. 羽生三七

    羽生三七君 運輸大臣、国鉄総裁が来年運賃を上げるというのを、あなたはいいですか。
  174. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は、今年度の予算が決定する最終の与党首脳との段階におきまして、この予算は国鉄の使命から考えまして、安全、正確、迅速という使命にほど遠い予算だから、来年度におきましては要るだけのひとつ予算を出すようにしてくれなければ、いまの国鉄の使命である迅速、正確、安全というのは期しがたいから、ぜひひとつそういうことを考えてもらいたいということを予算決定の閣議において強く要望いたしました。その結果、今年すなわち四十年度の予算編成期までに、そういう、ただいま総裁が申したように、国鉄の基本の問題について委員を設けて、それには政府全体の考え方をまとめる意味におきまして、基本的な問題を検討してその委員会でやろうということになっておるのです。それのときに私は、やはり公共性と企業性の問題、あるいはただいま羽生さんが御指摘になったような財投などを使ってその利息を政府が補てんするというこの根本問題について論議をして、国鉄をして国民の信頼するような国鉄にするように努力をいたしたい、かように考えております。そのめどが、私は政府としても、もうどうしてもやらねばならぬ段階に来ておりますから、必ずや相当の成果をあげるということを期待して、そして、その委員会の成立を一日も早くやってくれということを政府部内に私は要望いたしております。それによりまして衆知を集めまして、どういう方法がいいかひとつ検討して、そして善処いたしたい、かように考えております。
  175. 羽生三七

    羽生三七君 これで私終わります。
  176. 大倉精一

    大倉精一君 運輸大臣にいまの問題と関連をしてお伺いいたしますけれども、たった一点だけ新線というものの考え方について大臣としてのお考えをこの際聞いておきたいと思うのですが、先ほども総裁に聞いたのですけれども、赤字線、黒字線ということをよく聞くのです。前からそういう表現を私問題にしておりましたが、本来ならば、国有鉄道というものは、これは私企業と違いますから、地域の開発のために鉄道を敷くのですから、だから、レールの上だけの直接の収支を計算をして黒赤ということを言うべきではない。これはあくまで政策路線でありますから、その地域の開発の成果というものを長い目で見て、そうしてこの路線の価値判断をすべきである、こういうぐあいに私は考えておるのですね。大臣、いかがでしょう。新しい線の考え方ですね。
  177. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 全く同感でございます。私はこの前あの新線建設の委員会でも御答弁申し上げたように、いまわれわれは決して政治路線とは思っておりませんけれども、新線建設をややともすれば政治路線であるというようなことを非難されますからして、その非難のないように、日本鉄道建設公団が新線を建設するにあたりましては、運輸審議会の答申等を——運輸審議会に案をかけまして、いまの大倉さんの御心配になっておるようなことのないような建設をやっていきたい、かように考えております。
  178. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、新しい地域に新しい線路を敷いた場合、これはすぐ翌日から利益が出るものではございません。一年、二年、三年、四年、長くは十年、こういう地域開発によってはじめてこの路線の価値が出るわけであります。したがって、これを独算制を基本として国鉄に直接経営をまかせるということは、これは少し筋が違っていはしないか、やはり国家の責任においてこれは経営すべきじゃないかという、こういうことに落ちついてくるわけですが、そうしてみますというと、やはり鉄道というものは公共企業体というより、この際国有鉄道にすべきじゃないか、性格をはっきりすべきじゃないかと、こういうことを考える。先ほど羽生さんからそういう御意見ありましたけれども、全く同感だ。ですから、どんなに言い回しても、企業性と公共性とは相反するんですよ。相反するものを、知らぬ顔をして並べて、公共企業体だ、公共企業体だと言って、何もふしぎに思わぬところに今日の国鉄の姿があると思う。ですから、鉄道建設公団というようなものもつくらんならんということになるのですから、そういう点を抜本的にこの際国鉄について検討される意思があるか、先ほど、何か委員会をおつくりになってということですけれども、そういう委員会において、今度のようなあいまいな結論じゃなくて、ほんとうに国有鉄道としてしっかりした基盤の上に立つ、日本産業、文化、社会のほんとうの公共的な一つの機関としての国鉄、こういうことが必要じゃないかと思う。そうでないと、しまいに、いまでもそうですが、私企業と何ら選ぶところがない。これはたいへんな害があると私は思う。もう一回この点について。
  179. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろんそういうことを根本的に考えたいと思っております。企業体であるか、公共性を重んずるか、企業を重んずるかという議論を徹底的にいたしまして、そうして国鉄のあり方について国有鉄道がいいかどうか、そういうことまでひとつ論議していきたいと思っております。と申しますのは、日本のいまの日本国有鉄道のなにができた沿革は、御承知のように、マッカーサー指令によりまして日本の、何と申しますか、大きな産業である日本の国有鉄道を現状のままにしておくことは占領政策にどうかというような意見がありまして、日本国有鉄道という、何といいますか、半官というのか、半民といいますか、公共性と企業性とをむやみに結びつけた組織をこしらえたのでありますが、いまやそれを是正すべき時期にあるということは同感であります。それをどっちにするか、予算とからみ合いましてほんとうに検討しなければいかぬ時期になっておると私は確信いたしております。
  180. 大倉精一

    大倉精一君 次に、お尋ねしますけれども、実はきょうは労働大臣がおいでにならぬので意を得ないと思うのですけれども、一応お尋ねしておきたい。というのは、御承知のように、今月の五日に港湾労働者対策審議会の答申が出ました。この答申を拝見しておりますると、確かにこれは日本の港湾の非常に前時代的な複雑な現状というものを相当私は正確に分析しておるものだと思うのです。これについては私はおそらく大臣として、あるいは当局者も異論がないと思う。したがって、この現状を現在どうしても打破しなければならぬ段階に来ておると思います。特に開放経済に向かって港湾荷役の重要な役割りをになう、さらにまた海運の再建整備も緒についたと、こうなってまいりますれば、それとうらはらになる港湾の問題は、やはりこの際抜本的に解決すべきじゃないかと、私はこう思うのですが、大臣の港湾に対するお答えはどうでしょうか。
  181. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私もあの答申を読みました、大いに得るところがございまして、漸次あの線に沿って善処いたしたいと考えております。
  182. 大倉精一

    大倉精一君 あの答申は確かにそう急にはやれないかもしれないが、独立してやれるものはどんどんやっていけと、こういう趣旨だと思うのですね。が、しかしながら、すぐにはやれないからといって、じゃいつまで延ばしておってもいいかというものではないか。答申にはいついつまでにやれという期日はついておりませんけれども、問題はやろうという意思が大事だと思うのですね。ですから、いま大臣が現在の港湾の現状分析というものを一応答申のとおりに賛成されるならば、万難を排してこの答申というものを実現していく努力をする。   〔副主査退席、主査着席〕 しかも、早急に努力をする。むろんこれは画期的なものでありますから、相当な抵抗もあるだろうし、あるいはまた困離な点もあるでしょう。不可能に近い点もあるかもしれぬけれども、それを乗り切らないと日本の港湾というものは直っていかないという仕組みになっておると思います。そういう点いかがですか。これはやれるものからやっていこうという決意ですが、どうですか。
  183. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 全く同感であります。あれをできる限り——港湾の荷役のあの企業そのものが大体中小企業——中小と申すより小企業ですから、あれをまず合同せしめるようにやるというふうに答申にも書いてありますから、そういうこともやり、今年度はもう御承知のように予算は編成が済んでおりますから、本年度、三十九年度にやれと言ったってなかなか困難でございますから、労働大臣とも協議いたしまして、あなたのおっしゃるように、あの答申は非常に私は有益でもあると考えて、それに対決していくことに努力することをここで申し上げて差しつかえないと思います。
  184. 大倉精一

    大倉精一君 非常に積極的な答弁がありましたけれども、ただいままでの運輸省の行政のやり方を見ておりまするというと、設備とかあるいはその他の問題にはいろいろ五カ年計画等がございますけれども、肝心の人の問題に対する配慮が少ないのじゃないかと私は思う。人に対する問題で、ここで一例をあげれば、今度はあの答申によって船内居住を禁止をするということになっております。これらも考えによれば、禁止をすると言ったって、住宅がなければできぬじゃないかと、こうおっしゃるかもしれませんけれども、やる気になれば、そんなに大きな予算でなくても簡単にできるのですね、あれは。しかも、今度は港湾の新五カ年計画ですか、それにはそういう予算はちょっとも組んでありません。そういう計画がない。ですから、結局人間に対する計画が抜けておるということ、しかも、港湾で一番大事なものは、答申にもありますように、港湾労働の問題、港湾運送事業の問題、この二つが答申の骨格になっておる。あとは施設の問題、管理、運営等の問題もあるでありましょう。この二つを加味しなければならないでしょうが、実にこの二つの問題は、長い歴史と伝統があってなかなかうまくいくものではないと、こう思うのです。ですから、大臣に聞きたいのは、あなたは運輸省の所管でありますけれども、人間の問題、労働力の問題を解決するという熱意をまず第一番に持たなければならないということと、それから、この労働力の問題と港湾運送事業の問題とは密着不離なものです。本来ならば、これは所管庁を分けるのが間違っておるくらいに思うのです。両方とも一緒に解決しなければできないくらいに思うのです。そういう点についてお考えはいかがですか。
  185. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は常平生から、幾ら文明が発達していろいろなことをしても、結局人の力がその文明の機械を使い、やることでありますから、人間の問題に重点を置いて政治をやるべきだということは、私のかねての持論です、それで、なるべく労働大臣とも相談いたしまして——私は、荷役の問題についてはとにかく古い、何といいますか、やくざのような考え方のなにがありまして、非常に港湾労働というものをディスターブしているように思うのです。そこで私は、それを根本的に労働大臣ともひとつ協議いたしまして、近代化した港湾荷役業というものをつくっていくべく努力していくつもりでございます。
  186. 大倉精一

    大倉精一君 そのまま信じたいとは思います。が、現実にはすでに昭和三十二年の七月十九日に一応答申が出ておりますね。これは港湾対策協議会ですか、この答申が出ておりますけれども、この答申の中身すら今日までほとんどやられていない。あるいは港湾局長は、いやこれもやった、あれもやったと言われるかもわかりませんけれども、九牛の一毛ですよ。肝心の中身は何もやっていない。ことほどさようにこの問題は容易なことじゃない。たとえば、私が芝浦あたりに行って、朝の六時ごろ行って、見たいと思って行ってみましたけれども、なかなか一日じゃわかりません。今度国会から行こうかということで、先に通告してやればさっときれいになってしまって、ほんとうのところは見られません。ほんとうに見ようと思うならば、あそこに菜っぱ服を着て一週間か十日間あそこで働いて、そうして親方につかなければほんとうにわかりません。そうして中身を調べてきた、どこかに発表するということになると、どこからかぐさっとやられる。こういうような港湾の実情なんですね。ですから、経済が非常に発展した、世界の三本の柱と言ってみても、一たび港湾に行ってみるというと、全く前時代的な労働状態その他の状態があるのですから、あそこに働いている者は、やくざの親方のところに行って、一体きょうは幾らもらえるかということはわからない。働いて帰るときに、おい、おまえは幾ら、きょうはよくやったからおまえはこれだけだということで二百円あたり突っ込まれる。これが関の山です。きょうは中身はやめますけれども、労働基準法は全然守られていない。全然現行法さえ守られていない。こういうことですね。これを大臣がやるには、相当の勇気と決意が私は要ると思うのですよ。ですから、せっかくこういう答申が出た。しかも、この答申の石井さんは、港湾の問題はばらばらであって、とても政府は統一したことをやらぬから、私がやってやるのだと、こういう意気込みでもってやっておいでになるのですから、それがためには、全くこれはほんとうに命がけの覚悟でなければできぬと思いますが、どうでしょうか。そういう状態というものを十分御承知になっておるかどうか。できれば現地に行って、大臣みずから乗り込んで調べる、そういう意気込みを持つ必要があるのではないか。これは、大臣が行かれればきれいになっていますよ。なっていますが、それでもいいんです。それでも一般世論は、そうか、大臣まで港湾問題にこんなに熱意を持っているのか、こういうことでうんと違ってくる。二、三日前、私テレビを見ませんでしたけれども、何か船内居住の問題や何かテレビに出ておったらしいのですけれども、ことほどさように、この答申によってやはり一般国民の目もそれに向いてきておるときですから、このときにこの答申案の線に沿ってこの港湾問題を解決するよりないと思うのですが、いかがでしょうか。
  187. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) ただいま申し上げたように、主として労働省の所管のものがずいぶんあると思いますから、労働大臣ともよく相談いたしまして——私の根本的な考え方は、すべて人間がやることであるから、人間に対する行政を合理的にやらずんば、いろいろな経済の発展も、あるいは国家の繁栄もあり得ないというのが根本観念でいたしておりますから、御趣旨のようにひとつやっていきたいと考えております。
  188. 大倉精一

    大倉精一君 きょうはこの程度でやめますけれども、港湾局長大臣にお願いしたいことは、根本的に検討しなければならぬものは検討してもらって、少なくともこの次の国会には、予算要求のときには、これに関したものはやっていただきたいということと、同時に、答申にあるように、当面独立してやるべきものはやるのだということ。ですから、こういうことは答申の中で何と何がやれるかということを拾い出して、この次の運輸委員会にひとつ報告を願いたいと思います。いかがでしょう。
  189. 比田正

    政府委員比田正君) 承知いたしました。ただいまの、答申に基づきましての拾い出しの勉強はいたしておりますので、さしあたりできるものはこれである、この次の段階はこれである、こういうものには長い時間がかかるだろうということを、ごく近い機会にまたあらためまして御説明申し上げたいと思っております。
  190. 大倉精一

    大倉精一君 次に、港湾関係に移るわけでありますが、その前に、いまの問題で最後に要望することは、これは労働省の問題だ、これはおれのほうの問題だということだけでは、この問題は解決つかない。あなたのほうで幾らりっぱな対策を立てられても、人間の問題が伴わなければだめだし、また労働省のほうで人間の問題の案を立てても、運輸省の対策がこれに伴わなければだめだ、表裏一体のものであるということをどうか頭に入れてお願いすることを要望しておきます。  次に、関連いたしまして、先般来名古屋の伊勢湾の高潮防潮堤の問題についていろいろ陳情受けたり何か私はしておるのですけれども、さらにまた、愛知の県議会によるところの速記録も読みました。さらにまた、先般は陳情者を連れて大臣にも私も会っていただきましたが、この問題は、私陳情のときよく聞いておりますというと、これは非常に重大な問題を含んでおると思いますね。それで、まずきょうは建設省の河川局長おいでになりますか。
  191. 田中啓一

    主査田中啓一君) 建設省は畑谷河川局長出席しております。
  192. 大倉精一

    大倉精一君 それで、しろうとでよくわからないのですけれども、愛知県議会の会議録やら、あるいは衆議院の会議録等を見ておりますというと、建設省のほうでは大体主開口三百五十メートルということで背後の施設の高さ等をきめられておるということを言われておりました。そうして今度いろいろな問題があって、それを運輸省のほうでは、五百メートルにする、いやこれは張り合って三百五十メートルにするといういきさつがあって、最終的には一応三百五十メートルできめて、それで鍋田干拓のほうが終われば五百メートルにするのだ、こういうようにきまったそうですけれども、さきに三百五十メートルで背後の施設計画をやって、そうして今度は五百メートルに広げても差しつかえないのだ、末は。そういうことが言えるのですか。ちょっとしろうとじゃわからぬので、非常に不安ですから、お聞きしたい。
  193. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) いまのお話しでございますが、御承知だと思うのですけれども、三十四年に台風を受けましてあの辺一帯ひどい災害を受けたときに、その海岸一帯をどういうふうな工法でもって守るべきかという検討をいたしたわけでございます。そうして、いまの伊勢湾台風に対応するような、それに匹敵する台風が来ても絶対守れる。それにはいろいろな工法があるわけであります。たとえば、当初は防潮堤というものが全然ない。ないとした場合に海岸をどういうふうな堤防の高さにするか。ところが、その後運輸省のほうのいろいろな御計画で、これでは海岸堤防に並行して防潮堤をつくろうじゃないか。そのときに計算いたしましたのは、防潮堤を所定の位置につくり、なおかつ内部は海岸堤防で守り、それからそこの通航路は、これだけの長さにした場合に内部の高さがどういうふうな高さになるか、こういう計算をいたしまして、その所定の工程によって仕事を現在まで進めて来、最終的には本年度をもって一応完結する、こういうことになっております。  そこで問題は、その河口といいますか、港口口をいろいろな状況によって変えるという問題でございまするが、ただ変えただけでは、波が高くなりますと、堤防の高さがそれに合わなくなる。それにかわるべき施設ということになりますと、埋め立て——いまのわれわれがやっております海岸に沿うての埋め立て計画ができることによりまして、この波の高さが変わってくるわけであります。この埋め立てができますと、それに従ったような河口の広さが所定どおりにできる。それでいろいろ運輸省の御意見も聞きまして、埋め立て計画が十分でき、港口口が広くなるということになれば、その期間がちょうど合えばけっこうなんですが、埋め立て計画はなかなか進まぬ。その間において災害が起こった場合にどうするかという問題が現状でありまして、いまのところは埋め立て計画が進まないわけでございますが、所定の工程によってやっております。ただし、埋め立て計画が進みますと、これは波の高さが違ってきますから、現在の堤防の高さでもよろしい、港口幅をそれに従ったような広さにする、こういうことになります。
  194. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、大体三百五十メートルの港口口、こういう予定でもって、まあ地元では波返しと言いますね、この海岸堤防。波返しになる高さがきめられておるのだが、しかし、今度は五百メートルになった場合に、波返しの高さをやっぱり上げなければならぬ、こういう心配をしておるのですね、地元では。それはないですか、そういうことは。
  195. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) いま御説明したのですけれども、いまの波返しのある堤防の前面、海側のほうにずっと埋め立てをするわけです。そうすると、波がすっかり変わってくる、この埋め立てができますと。したがって、それだけの高さはこっちの幅を広げても低くて済む、こういうことなんです。
  196. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、建設省のほうでは、最後には五百メートル上げると、こういう計画を初めからお持ちになっておったのですか。
  197. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) そういう計画は当初から私全然存じ上げておりません。当初においてはやはり三百五十メートルでその港口をやる。それに従ったような海岸堤防の高さをやるということで打ち合わせの上、そういう操作をいままでやってきたわけであります。港口の問題については、最近そういうお話を承っております。
  198. 大倉精一

    大倉精一君 そうすると、当初三百五十メートル、五百メートルとは予想していなかった。三百五十メートルで波返しの幅をきめた。その当時埋め立てのことは予想されておったのですか、やはり現在のようなかっこうの埋め立てを。
  199. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) 埋め立ての実現性の問題については、見通しがついていなかったのであります。
  200. 比田正

    政府委員比田正君) 埋め立ての点につきましては、運輸省のほうから申し上げます。  いま河川局長説明されましたように、この計画を各省が集まって練りましたときは、伊勢湾台風の直後の大騒ぎというときでございまして、そのころはまだ名古屋港の中に埋め立てをつくるという計画は確定はいたしておりませんでした。現在の計画では、名古屋港の防潮防波堤の中の水面の大体半分埋まる。四分の一は東の側のほうにできました。これは東海製鉄等が来るところでありまして、ほとんどできております。それからさらに、その後急速に鍋田干拓の前のほう、西のほうでありますが、これも急いでやらなければならぬということに計画が早まりましたので、当初とは様子が変わっております。この計画をきめましたときには、東部のほうは近き将来にやる、西部のほうはもうちょっと延びるかもしれない。比較的あいまいな計画でありましたので、一応ないものとして考えてきた。それから四年たちました間に、名古屋港の様子は非常に発展しました。新たに西のほうの埋め立てを急速にやらなければならぬということで、このほうは昨年から着手しております。ただいまはまわりの護岸等をつくっておりますけれども、来年度以降は中に土を引き込みますので、急速に地面の高さが上がっていって、ただいま河川局長説明されたように、建設省でおつくりになった防波堤の前の土地ができるわけであります。これがある程度できましたならば、建設省も口を開くことに対しては賛成であるということは、すでに打ち合わせ済みでございます。
  201. 大倉精一

    大倉精一君 どうもその辺が、しろうと考えで見ておりますと、建設省運輸省とチーム・ワークが何もうまくいっていないのじゃないですか。初め運輸省は三百五十メートルですか、三百五十メートル。それで、埋め立ての計画はそのときにはなかった。今度は運輸省が五百メートルということを発表をして、さあ大騒ぎをした。そこで建設省は反対をしたということですね。もう一ぺん三百五十メートルに変わった。五百メートルと発表する時点における埋め立て計画はどうなっておるか。それは建設省は御存じでなかったのですか。
  202. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) いまのお話ですけれども、これは港湾局長からお話しのように、三十四年に災害がありまして、これは非常に大きな問題でありまして、所管も運輸、農林、建設ということで、連絡については十分密にする。もちろん施工の問題につきましても、工事の進捗状況におきましても、密接な連絡をとらなければならないというので、いわゆる三省連絡協議会というものをつくりまして、その間に逐次連絡をいたしましてやったわけでございまして、運輸省を初め、建設省、その間にそごがあったとは思わないのであります。ただ、その後の状況の変化によって変わっておることでございまして、しかし、その当時の埋め立て計画云々ということは、その当時におきましては、そういう実現の見通しがはっきりついていなかったということで当初は出発したということでございます。
  203. 大倉精一

    大倉精一君 そういうお役所のチーム・ワークがうまくいっていないというというところに、地元の一番関心のあった三百五十メートル、五百メートルというものが一転、二転するということによって、地元としては非常に不安を感じておる。さらにまた、地元の人の不安の中身を聞いてみますと、外の海と中の海との落差は、大潮のときに非常に高くなってくる。そのときには、防潮堤はその高潮を防いでくれるかもしれないけれども、一たん入ったものは逆に出ていかない。いつまでも水に浸っておる。そういう心配も地元では持っておる。これは技術的な専門家でなければわかりません。あるいはまた、さらに三重県とか、こちらのほうですね、これは防潮堤ができることによっておれのほうに来やしないか、こういうことがありまして、そういうことに対する地元の不安というものは、もっと徹底して、もっと懇切に解明すべきじゃないかと思うのですが、そういう点がどうも運輸省建設省と歩調を合わした解明になっているかどうか。これは私は非常に問題じゃないかと思うのです。これはどちらからでもいいんですが、チーム・ワークはうまくいっておりますか。
  204. 比田正

    政府委員比田正君) チーム・ワークにつきましては、私ども十分、御承知のとおり、うまくいっていたと思いますけれども、あの当時何が何でも高潮を防げという思想は、四年後の今日において、災害がもうだいぶほど遠くなりましたので、むしろ港を多くして盛んに船を入れようという利用意欲のほうが非常に高まってまいりまして、土地の造成も非常に高まってきた。四年間の間に地元の方のお考えも変わったと思います。当時はそういう問題は出なかった。こういうものをつくってよろしいかということはもちろん地元のほうにもお話したわけでありますけれども、とにかく地元では、潮が来ないようにしてもらいたいということでやったわけであります。その後において、こういうものをつくったけれども、入口をもっと幅広くしたい、こういう議論が出まして、西のほうの埋め立てを早くしてくれということで、途中から話が変わってきた。その間で、建設省にお話をいたしましたところが、先ほどお話しいたしましたように、できるまで約束が違うじゃないかというお話でありました。それはごもっともでありまして、私どももその交渉をいたしました際に、これは中央で単独ではできませんので、現地で私どもの運輸省の出先にも話しましたし、港湾の管理者にもお話をいたしました。たまたま港湾の管理者は一部事務組合でありまして、県会議員さんも、市会議員さんも入っております。そこで、議会からそういう話がたまたま出たと思います。そこで、県会の質問になってあらわれてまいりました。私どもはそのときにそれを発表したわけではないのでございます。実はひそかに——と言っては語弊がございますが、現地の意見を体して、中央同士の折衝をやっている最中に、こういうように五百メートルに広げることにきまったということで新聞に出たわけでありまして、それで大騒ぎをしたわけであります。初めの計画は三百五十メートルで、一ぺん五百にしてそれを三百五十にしたのではございません。五百の途中の交渉中の経過が非常に大きく取り上げられていろいろ御心配をかけた。その点につきましては、他の委員からの御質問もございましたので、私が、責任上港湾局長が一番悪いのだということで、陳謝申し上げておる次第でございます。
  205. 大倉精一

    大倉精一君 これは過ぎたことですから、大臣によくひとつ聞いてもらって——どういうぐあいに申されましても、チーム・ワークが悪かったということは事実です。これは今後ないようにしなければならぬが、そこで運輸省は五百メートルというぐあいに、一応そういったふうに内定ですか、されたということは、やはり五百メートルなければ、あそこは小さい船の出入りは危険であるという前提のもとでなったのでしょうな。
  206. 比田正

    政府委員比田正君) 私どもが申し上げたのは、五百メートルと伝わっておりますけれども、メインの入り口ですね。主たる入り口のほうは三百五十メートルの計画ですが四百五十ないし五百メートルまでは、埋め立てが全部できれば、あるいは埋め立ての高さが上がってくれば、広げられるというふうに申し上げたわけでございまして、ただいまの計画では小さいほうの副口というのもございます。このほうも広げることになっております。両方合わせまして現在では五百なんです。これを八百あるいは七百五十まで広げれば、小さい口のほうも、大きい口のほうもできるじゃないかということでございます。先ほどちょっと誤解があったようでありますが、いろいろ御心配の中で、高潮がずっと押し寄せた場合に、中へ入ったやつが出ていかないというお話がございましたけれども、伊勢湾台風のような高潮が参りましたときには、ただ高潮を防ぐのが精一ぱいでありまして、その次のときには船は出入りをいたしません。また、いたせるような状況でございませんから、われわれが心配いたしておりますのは、そういう非常災害のときは船はもう全然動けません。ですから、それを除外いたしまして、そのときには海岸を守れるような高さの防波堤の役目をしまして、ふだんは、ふだんにも潮がございますから、常時の潮のときの入り口の流れが早くなると困るということを心配しているわけでございます。
  207. 大倉精一

    大倉精一君 むろん、いま私が言っていることと地元の言っていることとは、常時の潮の流れが早くなることを心配しておる。そういうのを心配しておるのですね。そこで、港湾局のほうでは、現地の漁船に対して、一年か二年だから、しかも、一日二時間かそんなものだから、一年か二年待ってくれ、こういう要望だったらしいですね、この前の要望は。現地のほうでは、これはわしらの生命だから、毎日一時間か二時間だろうが待てない。しかも、待っておれば、この潮の緩慢のときにおいて、ずっと一ぺんに船が来るから困難じゃないかというような陳情もありました。そこで、きょうは時間がありませんから、現地のいまの要望では、何メーターにしてくれということは言わぬ。われわれが現在つくりつつある、千何百メートルあいているのを逐次締めていく。そうした場合に、ある程度まで来た場合に、これはこれ以上危険だということを現地で感じたのなら、これはひとつ運輸省の責任において判断してくれ、そういう時点において建設省と話し合ってくれ、こういうことなんですよ。この前局長さんも了承されましたけれども、どういう基準でそれを認定するかという問題が残っておりますけれども、これは毎日あそこを通っておる漁船が一番よく知っていますよ。だから、千何百メートル離れた海峡を全部逐次工事やっていって、これはこれ以上やったら危険だというその幅が三百メートルか、四百五十かわからぬ。わからぬが、その時点で一応工事を、中止じゃなくて停止をして、どうしたらいいかということを建設省へ相談をするということを地元で要望しておるのですが、無理ないと思うのですが、建設省いかがですか。
  208. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) 先ほどチーム・ワークがとれないとおしかりを受けたわけでありますが、私のほうも、その港口を広げるということに反対しているわけじゃございません。ただ、計画として三百五十メーターとること、その高さが問題でございまして、もしそれを変えるならば、先ほどお話しの埋め立てをするなり変える方法をしまして、内部に高潮が入らないように動作すればそれができるわけであります。それでいまの埋め立ての計画が問題であります。当初はこれがなかったわけでありますが、最近どんどん埋め立てが進みまして、この埋め立てが急速に進めば、これはまた港口の幅と関係があるわけでございます。いまお話のとおりに、一応いまのところはすでにわれわれのほうの堤防もできてしまいますし、その間に災害ということが起これば、やはり内部を守るというものに対しての配慮もしなくてはいけませんが、また一面、そういう問題についていろんな点があれば、いまのそれに対応する動作を考えながらいろいろ相談することは差しつかえないと思います。
  209. 大倉精一

    大倉精一君 そうすると、あそこの開口部は三百五十メーターまできておるんですか、そうじゃないでしょう。
  210. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) 行っておりません。
  211. 大倉精一

    大倉精一君 いまどのくらいまで来ておりますか。
  212. 比田正

    政府委員比田正君) ただいまはっきり記憶いたしておりませんけれども、あとまだ二百メートルか百五十メートルくらい残っております、予定に対しまして。  それから、いま問題になっておりますのは、大きいほうの入り口の問題もございますけれども、小さい口のほうがむしろ問題になっているように思います。両方ともまだあと百メートルずつくらい残っていると思います。
  213. 大倉精一

    大倉精一君 それで、両方とも百メーター残っている。それを縮めていくんでしょう、これから予定どおり。その過程において、あるいは四百メーターまでか、あるいは五百メーターかわかりませんけれども、これでやったらどうも危険だという、そういう心配があった場合、これを建設省運輸省のほうで、これはこれ以上心配だということで相談をしてもらいたいということ。局長さんもそれはいいだろうと、こうおっしゃった。地元の人もそうしてもらえれば一応安心だと、こう言ったんですが、その時点になって建設省は相談に乗らぬぞと言ったら困るんですが、それはいかがでしょうな。
  214. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) それはちょっと前段でお話ししましたけれども、一応堤防というものは埋め立てができることによって幅が広げられるということでございます。やはりそういうものとの関連をよく調査をいたしませんと、ただ危険だから広げられぬということじゃなく、危険ならそれに対する対応策をどうするかということを並行して御相談申し上げて、それに対する処置をしたい、こういうわけであります。
  215. 大倉精一

    大倉精一君 それは、建設省としては入り口の安全を考えておられると思うんですね。運輸省としては、当然所管事項からいって、航行の安全を考えられるでしょう。それに調節ということが出てくるんですね、調節が。そこで、対応策ということは、たとえば船だまりをつくるとか何かあるでしょう。あるでしょうが、現地のほうのそれでもってめしを食っている連中は、それだけじゃとてもわれわれは困りますと、こういう陳情なんですよ。ですから、無理のないところで、私もそう言ったんですけれども、何百メーター、何十メーターということじゃなくて、逐次これを縮めてくる過程において、これ以上はあぶないといったときには、たとえば三百五十なけりゃならぬとおっしゃるが、これは四百メーターあるいは四百五十あったらここが危険になるのか。そんなことはないと思うんですよ、わずか百メーター、五十メーターくらいのことは。これ以上やったら危険だというときには、運輸省建設省と相談をしてもらって、そうして工事について地元に心配のないようにひとつ措置をする、これはできるでしょう。そのくらいのことは差しつかえないでしょう。
  216. 畑谷正実

    政府委員(畑谷正実君) それは十分に相談いたしまして、そういうような動作をしたいと思います。
  217. 大倉精一

    大倉精一君 これは、運輸大臣、地元の人は非常に微妙な心境を持っておりますから、なかなか理屈や、あるいは専門的な説得ではいかぬところがあると思いますけれども、いまお聞きになっているように、工事の過程においてそういうような判断は、これは運輸省が責任を持って判断すると思うのですけれども、そういう場合には、ひとつ工事の中断についてやってもらいたい。これは大事だと思うのです。建設省とも十分御連絡を願いたいと思う。いかがでしょう。
  218. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は技術的な面がわかりませんから、そうするかしないかということは技術者の意見に従って善処するより方法がないと思っております。
  219. 大倉精一

    大倉精一君 これは技術問題じゃなくて、技術者がそう判断した場合に、むろん大臣にそう御心配を願わなくてもやれればけっこうなんですけれども、そうじゃない、いろいろな意見のこんがらがりができたような場合には、十分ひとつ大臣も関心を持たれてそういう相談を進めていくように御配慮願いたいと、こう思うのです。技術的な判断は、これは技術者がやりますから。
  220. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は、地元の人のその陳情をよく聞いたのでございますが、地元の人の言う、たった一人の人が何かがんばっておるような印象を受けたんですがね。それでやれぬことはない。技術的に言うてちっとも無理を言うてないのだけれども、おれが困るから困ると、こういう陳情のように聞いておりまして、陳情者の言うとおりで、そうすればいいというようなことを私はここで軽々に申し上げかねるのです。
  221. 大倉精一

    大倉精一君 これは、ただあの人は声が大きかったので、それでどう思われたか知らぬけれども、そうじゃなくて、私もよく聞いておりました。初め、ずいぶんきついことを言うなと思いましたけれども、だんだん話を聞いておりまするというと、無理からぬことなんです、つまりどれだけにせいと言ってないんだから。あれをずっとどうぞおやり下さい。おやり下すって、これ以上はあぶないというときには、これはひとつ一生懸命建設省運輸省は相談してもらいたいと、こういうことなんですから、そうむずかしくないと思うのですね。
  222. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私が聞いたのはそうでなくて、あなたもお聞きかも知れぬが、船の航行の安全、それからあの人の言うように、一日のうち二時間か何ぼかの間で、一応危険ということはないというように私は判断して、それで結局技術上の問題だから技術者でひとつ相談をしていいようにやってくれと、こういうのが私の考えなんです。
  223. 大倉精一

    大倉精一君 ということだから、あなたが退席をされまして、そのあとで局長さんといろいろひざを突き合わして話をした結果、それじゃそういうふうなぐあいにしようじゃないかということで、私も一応聞いて、それじゃあこうやってきて縮めてきて、これはあぶないなと思ったら、この判断は運輸省がするということにして、建設省とさあこういう状態だからどうですかと相談をしてもらう、これは差しつかえなかろうと、こういうことを言っておいたんですね。むしろ局長も、そういうふうにすると、こういうことだったのです。むずかしくないですよ。大臣、別に心配することない、相談すればいいのだから。そういうぐあいにひとつ大臣も了承してもらいたいと思います。  港湾の問題はこの程度にして、先ほど国鉄の総裁に羽生さんのほうから公共料金運賃の問題が出ましたけれども、私は、時間もありませんから、簡単に質問をしますけれども、公共料金の画一的に一年ストップということは、これは相当下のほうでは波紋を起こし、動揺をしておると思う。しかも、特に運輸省関係ですね、路面交通なり、あるいはバスなりというものに対しては、これはやはり運賃値上げというものにはそういう要素はあると思う。私も社会党としては、個人としても、物価の事情から、いま運賃上げちゃいけないと、こう考えております。そういう要素を省けば、それはそういうような運賃値上げしなければならぬというものはたくさんあると思うのですね。これは大臣どうお考えですか。
  224. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 自由経済のもとにおきましては、採算がとれるように、企業意欲に従うようにするのが当然だと考えて、何でもかんでも運賃を政府の力でとめるということは、経済の常識からいって私はいかがかと思います。ところが、池田内閣方針といたしまして、それはもうまことに忍び難きを忍んで、この一年間だけは待ってもらいたい。そうしてそれによって起こるところの被害を、被害と申しますか、損失をカバーするためにはあらゆる考え方をして、その損失、地方財政の負担をなからしむるように努力するというのが現況でございます。それに従いまして、無理ではあるが、ただいま申しましたように国の方針でございまするので、それに従ってもらいたいというのが現状で、その間のどれだけ損害があって、どれだけ補助すればやっていけるかということについて、自治省、運輸省、大蔵省といま相談をいたしているというのが現状考えております。  それから私営の公共バスにつきましては、幸か不幸か、六大都市のバス業者はいろいろ付帯事業、関連事業をやっておりまして、そのほうが黒字でようやくとんとんか、忍び得る赤字でやっておるのが現状でございますが、それでももうだんだん切迫——日が長くなるから、値上げをストップしたことによってどれだけの被害があるか、それを金銭的に見積もればどの程度のものであるか調査をして出してくれということを私営のバスについては要求いたしておりますが、まだ数字が出ておりません。そこで、出てきました場合に、やはり公共企業における公営バスと同じような配慮を当然私営のバスに対してもやるべきであると考えて、いませっかく調査中でございます。
  225. 大倉精一

    大倉精一君 何かこう歯切れの悪い内容なんですけれどもね。元来、宮澤経企長官に言わせれば、非常手段だと言います。全くこれは池田さんの経済政策がここまでやってきたわけなんですけれども、地方のバスとか私のバスあたりは運賃値上げ申請はしておらないのですか、しておるのですか。
  226. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 地方のバスにつきましては、その大半が申請を出しておりまして、必要なものにつきましてはそれぞれ認可いたしております。現在のところ、九割までは認可いたしておりまして、あと六大都市の公営等を含みまして大体業者数でいいますと二十社内外が残っておる、これがいまの実情でございます。
  227. 大倉精一

    大倉精一君 そういう申請があって検討されておるなら、いま大臣が言われるように、料金ストップでもって損害が幾らあるか出せと言わぬでも、運輸省は知っていなければいかぬはずですよ。それじゃなければ運賃問題は裁定できぬじゃないですか。
  228. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) これらの申請の処理につきまして、実は昨年の初めごろからずっと作業しておりましたので、ほとんどこの作業は昨年でございます。したがいまして、用いました資料が一昨年度の資料になっております。今年に入りましてストップ令が出ましたので、現在要求しておりますのは、三十八年度の、まだ年度が終わりませんが、推定を含めましてこれを考え、そうして三十九年度歴年一年ストップするわけでございますので、三十九年一年間ストップしたらどういうふうに資金計画、あるいは収支の赤字がどうなるかという資料を要求しておるわけであります。
  229. 大倉精一

    大倉精一君 何か聞きますというと、公営バスについては四十八億か何かのワクができたそうでありますが、これはその後どういうことになりましたか。
  230. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 公営バスにつきましては、ただいま大臣が申し上げましたように、六大都市の公営バスでは約四十九億赤字といいますか、になるわけでございます。それから、公営と関連いたしまして、たとえば東京のごとき、東京都と競合しております民営の九社、あるいは大バス会社で運賃値上げの申請が出ておってやっておりませんたとえば名古屋鉄道のバスあるいは西日本鉄道のバス等を含めました大手の民営バスの赤字が、大体四十一億と想定いたしております。その他、いまだ運賃改定ができない他のもろもろの業者については大体合計十七億程度、三つ合わせましてほぼ百億程度の赤字になる、こういうふうな推定をいたしております。
  231. 大倉精一

    大倉精一君 公営バスの点については、運輸省、自治省、経済企画庁、大蔵省の次官が集まっていろいろ話し合ったらしいのですけれども、四十八億というのはきちっと中身、形ができたのですか。まだワクができただけで、中身、形はできておりませんか。
  232. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) いま申し上げましたのは運賃値上げストップによる赤字の額でございまして、運輸省といたしましては運賃のストップのために各業態でこういうふうな赤字になりますということを申し上げたのであります。
  233. 大倉精一

    大倉精一君 そこで、まあ地方公営バスあるいはその他のものについては国でそういうめんどうをみるというのだが、やっぱり私企業の場合ですね。たとえばトラックであるとかあるいはバス、通運というものですね、これは料金をストップされる。  それから、できるだけ被害のないようにと大臣おっしゃったけれども、その上にガソリン税は一割上がっちまう。軽油引取税は上がる。損害賠償保険料は三倍に上がる。あれも上がるこれも上がる、運賃だけは一年間協力せえがまんせえという精神訓話だけではこれはいかぬと思うのですがね。何かそれに対して手を打っておられますか。
  234. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お説のとおりな状態でございますから、ただいま申しましたように、何とかこの一年だけはこの物価騰貴の趨勢、ムードを押える意味でやってもらいたいと、もうこれはひたすらお願いするより方法ない。私企業としてはこんなことはあり得ないことなんですが、自由経済のもとではあり得ないことをやろうという、それは大きな目的のために、すなわち物価全体の値上げムードを押えるということのためにやむを得ざる措置としてわれわれはいまがまんしていただいておるのであります。ただ、しかし、がまんできないようないわゆる中小企業については、その例外といたしまして順次その状態を調べまして、経済閣僚懇談会に付しまして値上げを認めざるを得ぬと、かように考えております。
  235. 大倉精一

    大倉精一君 ますますもって私は政治の混迷と思うのですがね。まあこれにがまんできない部面は考慮しようと、こうおっしゃいますけれども、たとえば通運のような場合を想定しますと、まあ日通は大きいでしょうが、小さいところはがまんできぬ。ここを一つ料金を上げますか。それで料金を上げたらどうなりますか。料金を上げたら、日通のほうが安いというので、みな日通へ行ってしまいます。みなつぶれますよ。そういうようなことは私はできぬと思いますね。これをどうやる。どうやりますか。いまお話しのがまんできない部面は何とかめんどうみるということは、どうしたらめんどうみれますか。
  236. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 例を通運にとって申し上げますと、なるほどお話のように、事業者別に運賃を改定して、高い運賃を収受する事業者、従来の運賃を収受する事業者というものが並んでおりますというと、お話のようなことになるわけであります。そこで、通運につきましても新免の零細な事業者が非常に多いのでありますが、それらの事業者の中で真に著しく経営が悪いというものにつきましては、ただいま大臣が申し上げましたように、特例として経済閣僚懇談会の了承を得て値上げを認めてやっていきたい、こう考えまして、現在作業を進めておりますが、その場合に、かりにこれが認められました場合には、通運につきましては駅ごとに考えるわけでございますので、ある駅に数業者おりまして、その一業者がただいまのような運賃の値上げを認めてもらった業者がその駅に出入りしておりますと、運賃調整上、その駅につきましてはあらゆる事業者が同一の新しい通運料金でもって仕事をするということに運賃調整上やらなきゃいけない、かように考えております。それによりまして、御指摘のように荷物が片寄ってAの通運業者に行ったりBの通運業者に行ったりすることのないように、駅ごとにこれをやる、かように考えておりまして、通運の場合は、いま私の手元で至急改定してやる必要があると思われます業者が、取り扱っております駅数でいいますと、大体全国の一割の駅がそういうような業者が出入りしておる駅でございます。
  237. 大倉精一

    大倉精一君 それは、局長、個別に企業体を選んで、この企業体を上げてやる、この企業体は上げてやらないということになると、これは大小は別にして、真にやむを得ないものといっても、真にやむを得ないというのはどこに線を引くか、これはむずかしい問題になりやしませんか。しかも、業界の対立混乱が出てきやしないかと思うのですよ。ですから、そういうことは私は技術的にもむずかしいと思うのですが、特に通運料金等につきましては、何か仄聞するところによれば、局長権限によって上げようとしている、こういうことを聞いておりますが、それほど非常な措置をやっておいでになるときに、何か抜け穴的のそういうこれまた超重要措置をやられるということは、将来に禍根を残しやしないか。これはもっとほかに考えられませんか。
  238. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) もちろん、運輸行政をあずかる者といたしましては、通運料金のごときも全国一律であるべきであると私は考えます。しかし、このような非常の事態でございまして、そういう普通の運輸行政上の運賃行政というものができない中におきましては、最小限度の範囲内において困っておる業者を救ってやらなければいかぬという限定の中で、やむを得ずさような考えを持っておるわけでございまして、その限界が非常に困難であろうというお話でございますが、一応私たちといたしましては、通運事業者も他に兼業いたしておりますが、兼業を含めまして全部が赤字の会社、それから通運事業だけなら赤字であるが、兼業が加わればどうにか収支とんとんという会社、それから通運事業も兼業も大体収支相償っておるという、この三つのグループくらいに分けまして、第一のグループが一番苦しい状態でありますので、これを救ってやる。これはやむにやまれぬ分散作戦的な措置として考えておるわけでございまして、決してこれは運輸行政上好ましいやり方とは毛頭考えておりません。
  239. 大倉精一

    大倉精一君 これは好ましいどころではなくて、私はたいへんなことになると思うのです。たとえば兼業をやっておってまあ総合的な利潤があるからというお話がありましたけれども、極端な例を言うならば、いなかの運送屋がパチンコ屋をやって、パチンコはよくもうかる。総合的にいいから見合わせようということになりますですね、極端は言えば。私は、こういう思想を推し進めていきますと、はたして通運料金というのを全国一本できめるのがいいか悪いかということになってくると思う。やはり、地方の経済事情によって、地方の経済原則に従って地方地方の通運料金をきめるということになってきやしないかと思うのです。ですから、通運料金のきめ方自体に大変革を来たすという、そういう前提が一つありやしないかと思うのです。それならそれでまたやっていけるわけだ。いまのようなお話の振り分け方をされると、どうも議論の持っていきようがない。これはいかがですか。
  240. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) その前提といたしまして、御承知のように、その業者を中小企業者に限るということになっておるのでございますからして、中小企業者に対するその大きな線を一つ引いてございますから、その線でいって、いま局長が申しましたように、個別的にやるより私は方法はないと思っております。
  241. 大倉精一

    大倉精一君 中小企業といいますけれども、たとえば、いま通運を例にとっておられますが、通運でもって、大体全国で合わせて一千の業者が存在するそうで、このうち資本金の五千万円未満、または従業員三百人以下のものが九九%ですね。全部ですよ。線を引っぱるも引っぱらぬもない。もっとはっきり言えば、日通以外ということになるわけですね、簡単に言うならば。日通以外のものも、ピンからキリまであるということになるわけですね。ですから、これは非常にむずかしいと思いますけれども、ひとつ大いに工夫してももらいたいと思う。  これは、それならそのように通運料金をきめること自体抜本的に考えるべきである、こういうようなことになると思いますけれども、私は別の考えを持っておるのです。ということは、まあさっきおっしゃったように、政府が精神訓話だけでやろうとするからそういうことになる。何か具体的に、極端に言うならば、本来、通運料金なり、トラック料金なり、バス料金なり、ハイヤー、タクシー、あるいは港湾料金も国鉄の運賃もそうでしょう。これは自由経済の原則に従って上がったり下がったりするものです。公共性を加味するから政府が若干干渉するのであって、不当権力によって規制するということになれば、これは政策的運賃であり、政策料金ですよ。でありますから、自由主義経済の原則から離れたものということになると、その対応する政策がなければ、精神訓話のようにいきません。そこで考えられることは、政府によってやられることは、ガソリン税の一〇%を上げるということじゃなくして、この一年間はガソリン税を免除しよう、こういう線が出るでしょう。それでも足らないときには、軽油引取税を免除する、自動車税を軽減する、これも非常手段ですよ。そういうのは免除軽減すべきじゃないとおっしゃるかもしらんが、それなら運賃をストップすべきではないというのですが、すべてが非常手段になってくるのです。だから、むしろそういうことを、ガソリン税も上げておいて、それから自動車税も三倍に上げておいて、あっちも上げておいて、それで精神訓話をやって、そうして中小企業云々のこまかいところになるというと、どうも議論のしかたがないのですね。ですから、きょうは経審長官見えるらしいのですけれども、そういう配慮があってしかるべきだ。公営企業の場合は補助金も出せるでしょう。しかし、企業はそうはいきませんね。しかも、この振り分けはむずかしいですよ。ですから、そうなれば、小さい業者、大きな業者も一応は均等される、均等した政策の恩典が受けられる、こういうことになるのですけれども、そういうことを一ぺん検討していただく道はありませんか。
  242. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) たびたび申しますように、自由経済の原則では無理なんです、その無理は承知の上でやっておるのです。そこで、いまのようなことを考えることも一つの方法でございましょうが、中小企業が九九%であるならば、順次実情を調査いたしまして、それは例外に認めるということになっておるのでございますから、数字の示すとおりに従いまして、どうしてもやっていけぬというものは値上げをしてやるよりほかに方法はないと思っております。それもまた可能なんです。それは中小企業に限って例外を認める。九九%が中小企業であるならば、その中小企業のものにつきましては、数字を、採算をよく検討いたしまして、順次経済閣僚懇談会にはかって許していくという考えに立っておるのでございます。
  243. 大倉精一

    大倉精一君 議論もとに戻しまして、非常に極端な例を申し上げますと、Aという駅に日本通運という支店があって、片一方のほうには零細な業者がある、こういった場合に、日本通運は大きいからいいが、零細企業は気息えんえんとしておる。これは中小零細企業であるから例外として認めてひとつ運賃上げてやろう、こういうことですね。そうすると、その駅の荷物はどっちに動いていきますか。ああいうものは高いところから低いところへ、水のように流れますね。日通のほうが安い、信用もいい、じゃこっちへ行こう。つぶれますよ。それはそれでいいのですか。
  244. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) その点、ちょっと先ほど申し上げましたが、そういう場合には、今度の改定した運賃認可をもらった事業者と同一の運賃に日本通運もその駅においてはそろえるという立場をとるわけであります。
  245. 大倉精一

    大倉精一君 それじゃ、中小企業に限るという申し合わせと違うじゃないですか。
  246. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) これは閣議の申し合わせ等とは違いまして、運賃調整、輸送調整の関係上やらざるを得ないことであります。
  247. 大倉精一

    大倉精一君 そういう考え方になれば、日本通運というような大きな通運はいいけれども、駅々には小さなものばかり集まるというそういう考え方もあるわけですけれども、これはこれ以上議論しませんが、どうもあまり昔から例がないことだと私は思いますがね。これはどう思いますか。
  248. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 全くそのとおりでありまして、私もたびたび申し上げているように、要するにこれは経済の原則からいえばあり得べからざることを、ただいま申し上げましたように、物価値上がりのムードを押える意味で、政府のできる範囲のことをやってムードを押えようというのが根本の趣旨でございまして、その点は、経済論争からいえば、大倉さんの言われるとおりでありまして、私は承服しかねるのでありますけれども、政府の政策としてきまった以上、それに従っているというのが現状でございます。
  249. 大倉精一

    大倉精一君 きょはこれで締めくくりますが、きょうは経企長官に来ていただいて、経企長官を相手にやりたいと思っておったのですが、いま行くえ不明でわからぬというから、けしからぬと思うが、それで木村さんもせっかくの御懸案かもしれませんけれども、これはひとつよく御検討願いたいと思います。できれば通運料金の決定の根本問題までさかのぼってやるなら、これはまた別なんですが、やはりガソリン税、軽油引取税、自動車税の減免等についてはひとつ考えていただきたい。特に衆議院において今度井手以誠君が農業用のガソリン税について論議しておりましたが、あれも四十年度から免税するようにひとつ考慮しようという大蔵大臣答弁がありましたけれども、ガソリン税といっても一律にやるべきものでなくて、そういう非常手段を考える。これは大臣幸い賛成だという話がありましたから、ひとつ経企長官にお話しください。これはあとでまた別の機会に……。  最後に一つ。もう一つ聞こうと思って来たのですから、これは局長一つ質問したいのですけれども、タクシーの乗車拒否の問題ですね。これはいろいろ前から国会でも論議されておりますけれども、たくさんの要因があると思います。その中の一つの要因として、運転手事情を考慮せずに申請に従ってどんどんと車を増していくという、こういうやり方はどんなものでしょうかね。私は車を増すなというのじゃないのですよ。増してもいいですけれども、運転手事情を考慮することなしに車をどんどん増していって、将来は運転手を確保せいという、こういうやり方は、将来運転手を確保するまでは車が遊んでおるのですが、ここに万般の原因があるのではないかと私は心配するわけですが、どうでしょうか。
  250. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 運転手不足の問題はいろいろ深刻な状態になっておりますが、タクシー行政をあずかる者としましては、一方においてタクシーの利用者であるお客の急増に対して必要な輸送力をつけるためにどうしても車をふやさなければいかぬというのが一つの使命であります。車をふやしますと、運転手が足らぬ。運転手が足らぬと、悪いやつまで無理して雇う。そうすると乗車拒否等も起こるというような非常な悪循環をやっております。しかし、とにかく大都市におきましては、年々人口も増加しますし、需要もふえてきますので、どうしてもこれに対して輸送力をつけなければいかぬということから、輸送力をつけます場合に、運転手の確保ということにつきましては、相当陸運局といたしましても苦心をいたしております。いままでやっております方法は、かりに五千両まだ車が必要だというふうな場合であるといたしますと、これを三回なり四回に分けまして、そしてそのために運転手が確保できるかどうかということをよく確認いたしまして、このとおり運転手を十分確保できて、これだけ許可をもらった車を稼働させますということが明白になった場合に増車を認めるというやり方をやってきております。しかも、その間に運転手の奪い合いということのないように、これもこちらで確認できる限りはそういう方法による運転手の確保は認めないということで、必要な輸送力の増強を逐次やってきてまいっておりますが、総体的にはどうしても運転手が不足いたしまして、現在でも、少し前の調査でございますが、東京都内では二万五千両の、三万両に近い車が動いておりますが、千両近くの車が運転手の不足のために休んでおるという状況でございますが、一時よりだいぶその点は解消はされてまいっております。そういうふうに、運転手が不足しておるから輸送力を全然つけないというわけにもいきませんので、運転手の確保ということをよく見ながら輸送力をつけていくという方法をとらしております。
  251. 大倉精一

    大倉精一君 それは、局長、輸送力が不足しておるから車を増してやるのだと言いますけれども、車は自分ひとりで動いちゃいかない。やっぱり人間が動かさなくちゃしょうがない。人間さえあれば、車は買ってくればいくらでもある。人間はそうはいかないんですよ。ですから、それが逆になってやしないかと思うんですね。ですから、いまあなたおっしゃったように、一千台遊んでいるかどうかしりませんけれども、もっと遊んでいるかもしれません。それで、許可するときには運転手が確保できるということを見当をつけて許可するとおっしゃるけれども、それはどういう方法で確認されるかわかりませんけれども、これは全然現実と離れておりますね。そこで、中にはハンドル貸しというのがあるそうですね。これは、会社に臨時で入って、きょう一日の日雇で入って車を持っていく。今度はその車を他人に貸して、自分のハンドルを貸して遊んでいる、こういう商売も最近できたらしいのです。あるいはまた、運転手のたまり場をつくって、供給場をつくって、交通違反をやって引っぱられて出てくるやつを待っておって、おまえ会社を首になるなら世話してやるから来いというのがたくさんいるらしいですね。ですから、こういうのがおって、会社のほうで五名回してくれ、よろしゅうございますといって回ってくる。こういう状態が続いているということを聞いたり見たりしております。これは非常に重大な問題であって、汽車もずいぶん事故が起こりますけれども、あれはレールの上を走っておる。ところが、タクシーというのは、これは無軌道です。文字どおり無軌道です。しかも、そういうような状態であるから、非常に運転手が悪質になってくる。というのは、大部分の運転手が悪質ではないのです。そういう足らぬところに入ってくる運転手ですね、これが乗車拒否をやる。あるいはチップを強要する。場合によってはいたずらをする、こういうのです。これは、局長、自動車行政の大きな社会問題だと思うんですね。何とか自動車の増車について抜本的にひとつ検討を加える必要があるんじゃないですか。これをやらなければ、私は乗車拒否はなくならないと思う。まだほかにもありますよ。乗車拒否の問題は、給与の問題その他たくさんあります。たとえば給与の問題で依然として歩合が多い。多いから、夜おそく上野の駅で待っていると、車が向こうに行っちゃう。来ない。来ないけれども、たまたま来た者に聞いてみると、無理もない。わしも食わなければならない。きょうはもう少しかせがなければならぬから、銀座のほうに行かなければならない。こっちのほうにうっかりとまると、反対のほうに行く人だ。だめだと言うと乗車拒否になるので、向こうのほうを向いてとまっているのだと、こういうのですね。これは生活の問題とくっついているので、だから、私はいいとは思いませんけれども、そういう要素もありますけれども、そのほかのもっと悪質な要素として運転手不足という要素があるんですね。いまあなたのおっしゃったように、運転手が足りないけれども、輸送需要があるので車はふやさなければならぬとおっしゃる。が、車をふやしても車は動かない。逆に人間さえふやせば、車は幾らでも売っていますから持ってこい。これは逆じゃないですかね。
  252. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 御指摘のとおりでございまして、運転手さえ確保できれば、車はふやすことができるわけです。問題は運転手をどうやってふやすかということでございます。養成等につきましても、業界を指導いたしまして、業界みずから養成所を設けて養成をさせておりまして、年々千名以上の養成機関の卒業生もつくっておるというふうなことでございますが、それにいたしましても運転手が足らない。いま御指摘の給与あるいは労務管理、そういうものももっと整備するということも運転手を引きつける一つの大きな要因でございます。といって、運転手が皆無であるからということが事実はっきりすれば、これは幾ら需要があっても、運輸行政としてタクシーをふやすわけにはいきませんが、そうでもないようで、したがって、事業者も努力をして運転手が確保できる範囲内において増車を認めていこうという方法を講じておるのが現状でございます。歩合給その他給与制度におきましても、逐次改善するような指導を、増車等の機会をねらってもやっております。  それから臨時の運転手につきましては、これは実は当局としては、臨時運転手を雇うことによって増車をしてはいけないという方針でやっております。しかし、一つ一つ毎日会社に行って調べることができませんので、御指摘のように臨時運転手を雇って間に合わしておるところもございます。しかし、そういうものにつきましては、その結果がはっきりすれば、勧告もし、処分もいたしております。それから運転手自身にも悪質なのがいまして、Aの会社にちゃんと雇われた運転手が、非番の日にBの会社の運転手と仲よしになって、Bの運転手からその車を借りてかせぐというふうな、まことにひんしゅくすべき状況もわれわれは知っております。こういう問題は、一つはやはり運転手の、何といいますか、品性の問題にもあるわけでございます。問題は非常にたくさんございますので、その一つ一つを気長くきめこまかく対策を講じながら改善に努力していきたい、かように考えまして陸運局を指導しております。
  253. 大倉精一

    大倉精一君 これは一つ一つ片づけていきたいのですが、運転手不足の問題は、きめこまかく、まあどんなにきめこまかいかわかりませんけれども、これは一ぺん実情を、もし知っておいでにならなんだら、これは警視庁あたりとも協力をされて徹底的に調べて、運転手不足の状態から起こってきておる現象を調査をしてもらいたいと思うのですね。そうでないと、これは非常に大きな社会悪の養成場になるのです、社会悪の。ですから、これがひいてはタクシー運転手が足らぬから、向こうから引っぱってくる。トラックから引っぱってくる。トラックはダンプカーから引っぱってくる。ダンプカーはタクシーから引っぱってくるということになるのですよ。悪循環、こういう実情を検討してもらいたいのですね。それからさらにいま一番事故の多いのは、店員さんの運転手ですよ。店員さんが運転をする軽四輪ですね。統計によると、これが一番事故が多いのです。次が若い人の運転する白ナンバー、それからダンプカーという順序になっておりますね。ですから、こういう点についても、やはり運輸省として、これは免許を出すのはどこですか、警視庁のほうですか、こういう点についてよく連絡をとってもらわぬというと、非常に大きな問題になってくると思うのです。これはひとつ実情を調査してもらいたい。いずれまた私は報告してもらいたいと思います。私どもも実は調査しております。  それからもう一点は、東京のタクシーで、うしろのほうに、「運賃上がって賃金下がる」なんて書いてますな。書いてある。運転手に聞いてみるというと、タクシー料金は上がったんだけれども、いままで一万円揚げればこれだけもらえたやつが、一万三千円揚げなければこれだけもらえないようになったと、こう言うのですね。ですから率が下がったと言うんです。どうしてそういうことになるのですかね。やっぱり、私は、さっき言ったように、交通安全とか運転手の不足も給与の問題に大きな問題があると思うのですよ、給与の問題に。自動車の運転手は旧態依然たる給与である。しかも、将来の保障が何もない。ですから、いまあなたがおっしゃったように、ここの店から向こうへ行くと言いますけれども、普通のサラリーマンのように十年間つとめて自分の生活を安定するという保障は何もないでしょう。若いうちにかせいでおけ。やむを得ないと思います。いいとは思いませんよ。いいとは思いませんが、背に腹はかえられないと思うのです。運転手諸君は、中には悪い人もおるでしょう。おるでしょうが、一生懸命やってる人もある。それが伴わないから事故が起こる。運転手の不足の問題を解消するには給与を改善する。これは前から問題があるのですけれども、労働省の問題かわかりませんけれども、しかし、運輸行政にも大きな影響があるとするならば、この問題は当然立ち入ってそうして指導すべきであると思うのですね。この給与の問題に対する指導はどういうふうにやっておられますか。
  254. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) タクシー運転者の給与につきましては、一番従来とも問題になっておりますのは、給与の構成が、固定給と歩合給との関係でございまして、かっては、歩合給が六割以上を占めて、固定給が三割くらいであった。例の神風タクシーと言われたときがそういう状況でございました。その後順次指導をいたしまして、現在では、東京などのタクシーの平均給与の構成を見ますというと、六割が固定給で、四割が歩合給というところまでこぎつけてきたわけであります。今後さらにこれをもっと固定給をふやしていくように指導をいたしたい。その指導方法といたしましては、増車等の車の割り当ての場合、いまのは平均の比率でございますが、この平均より下回るような構成の賃金制度をしいております会社については、普通よりも割り当てを少なくする、平均より以上の会社には割り当てをよくするというふうなことで、徐々に平均の比率も上げていくという指導もいたして、なお、一般的には退職金制度も督励いたしておりまして、以前には退職金制度があるタクシー会社というものは非常に少なかったのですが、最近はまず六、七割までは退職金制度もできております。ただ、退職金の額等は、まだ満足なところまで行っておりません。そういう点も逐次よくするように指導するつもりでおります。  なお、今回の運賃改定で、ただいま御指摘のように、運賃は上がったが、われわれの賃金は下がったというふうな宣伝をいたしておる会社もございます。実情を調べてみますと、今回の東京のタクシーの運賃改定によりまして乗務員の給与が下がるということは絶対ございません。ただ、いままでの旧運賃のもとでかりに月四万円なら四万円という収入があった者に対して、運賃が上がりましても、なお四万円の同じ賃金にしようと思えば、歩合給の比率を下げるとか、そういうことをすれば同じ手取りの賃金になる。乗務員のほうは、運賃が上がったんだから、それだけスライドしてわれわれの賃金も上げてもらうべきだということで労使交渉をしておるわけであります。今回の運賃の改定は、多年にわたって諸経費の暴騰、人件費の高騰等によります現在のタクシー事業の収支のアンバランスを解消して事業の安定をはかるという趣旨で、一割五分の運賃改定をやったわけでございまして、乗務員の賃金をこれを機会に上げるために運賃改定をやったのではございません。運賃改定を機会に乗務員の賃金をどうするかということは、会社内において労使の交渉によってきめるべき問題であると考えております。  ただ、実情を申し上げますというと、実はこの運賃改定が、昨年の夏ごろ行なわれるであろう、あるいは昨年の秋には行なわれるであろうということで、昨年の春闘当時の交渉で、夏の運賃改定必至という前提で、労使交渉によってベースアップした会社もあるようでございます。そういうことで、秋には、正月にはなるだろうということで、すでに改定した会社もあるようであります。あるいは、運賃改定の実現を見るまでそのままに旧態のままに置いておる会社もあるようでございまして、会社によってまちまちであります。今回の春闘の機会にも、そういう会社によって実情は違いますので、ある会社によっては、この春闘の機会に、運賃は上がったのであるから、より一層ベースアップを要求しておるという会社もございます。そういうふうなことで、現在会社の内で労使間いろいろ折衝をいたしております。その労使の交渉なり何なりの状況の過程におきまして、市中に散見いたしますような車のうしろにいろいろと宣伝文句を書いて走っておる車もございます。そういうふうな実情でございます。  なお、この春闘を機会にああいう問題も一応片がつくのではないかと考えておりますが、当局といたしましても、できるだけ早くそういう問題を解決して正常な業務が運営できるように期待するわけでございます。
  255. 大倉精一

    大倉精一君 いまの御答弁の中でちょっと気になることがあるのですよ。今度の運賃値上げは賃金を上げるためにしたのじゃない、こういう御答弁がありましたが、これはちょっと私はまずいんじゃないかと思う。運賃値上げの理由というのはいろいろあるでしょうが、根本的には運輸行政の根幹である輸送の安全ということですね、その安全のためには経営がよくならなければならぬ、こういうことだろうと思うのですね。経営がよくならなければならぬということはどういうことかといえば、その従業員も含んで経営全体の状態がよくならなければならぬと、こういうことだろうと思うのですよ。特に交通の安全という面に寄与するというそういう精神があるならば、当然上がっただけはこれは運転手に歩合としてやっぱり上げていく、これによって運転手が——全部これでもって交通安全になるとは言いませんけれども、安全運転の一助になればそれにこしたことはない、こういうことだと思うのですね。ですから、局長がいまあれは賃金を上げるために上げたんじゃない、こう言ってしまうと、これは妙なものになりますよ。どうでしょう。
  256. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 賃金を上げるために運賃を改定をしたのではないということは実はそのとおりであるのでございますが、これは決してだから今回を機会に賃金を上げてはいかぬとか、あるいは上げられないという問題ではございません。今日までの東京のタクシーの収支の実情から見まして、あの程度の運賃改定が適当であるということで運賃改定をしたという意味でございます。したがいまして、御承知のように、従業員の賃金というものは毎年何がしか上がっております。おそらく今後も上がると思います。それらは、やはりあの運賃改定のもとに会社の経営合理化等をはかりまして、会社自体の判断と責任において賃金も上げるというふうなことに努力をすべきである、こういうふうに考えております。
  257. 大倉精一

    大倉精一君 ベースアップは、固定給の分は交渉して上げるかもしれぬが、歩合の部分は、これは収入によって歩合があるのですから、たとえば運賃が上がっても上がらぬでも一万円の場合は歩合はこれだけ、一万二千円あればこれだけ、一万四千円あればこれだけの収入と、こうなるのです。今度運賃値上げをして自然増収として一万二千円になるのに、一万円程度の歩合しかないと、いままでよりダウンすることになるんですね。これはやはり金額だけではなくて、精神的影響も大きいと思うのですね。ですから、先ほど局長は賃金あるいは退職金等々給与面についても重大な関心を持っていると、こう言われましたけれども、そうだとするならば、料金値上げの機会に実質的に歩合が下がるということは、こういうことはいけないという行政指導もすべきではないかと思うのですよ。しかも、運転手、従業員諸君の中には、うちの会社はプロパンガスに切りかえて燃料費は三分の一になってしまったのだ、それで運賃値上げでもうかっているのだ、われわれは下がってしまったのだ、こう言ってブウブウ言っているのがいるんですね。ですから、そういう点が、どうもあなた方行政指導の面で、さっきの港湾の問題じゃないけれども、人間の問題についての指導が少し足りないような気がするんですがね。もう少し積極的にそういう行政指導をやっていったらどうですか。労使関係に介入せよというのではないのですよ。ないけれども、少なくとも免許申請のときには、労働条件はこうします、これはこうしますというのがあるはずなんですよ。それがあるとすれば、免許等においてもそういう指導はなすべき責任はあると思うのですがね。どんなもんでしょう。
  258. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 決してその問題を無視しておるわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、歩合と固定給の率の向上等につきましてもいろいろ努力しておりますのもその一つのあらわれでございます。  それから今回の運賃改定は、先ほど申し上げましたような趣旨で改定したのでございますが、会社によって一五%の値上げが、これでも足りないという会社もございますし、ちょうどこれでいいという会社もございますし、これでは相当もうかるという会社もあって、区々でございます。したがいまして、会社の経営は会社自体においてそれぞれ違いますので、従業員の給与等におきましても、それぞれその事業体の実情に応じまして経営者が従業員の給与制度を改善してよくしていくというふうに努力すべきであることは当然でございます。ただ、当局といたしまして、今回運賃を改定したから一律にその程度に賃金を上げるべきだということは言えませんし、また、そういう趣旨ではないということの筋をはっきり申し上げたわけでございます。
  259. 大倉精一

    大倉精一君 これはくどいようですけれども、何もこれだけ上げろというそういう指導をする必要はないと思うのですけれども、上げた分が歩合がマイナスということは好ましくないが、会社側と十分ひとつ話し合いをしてどうこうせいとか、さらに積極的な指導が要るのではないかと思うのです。さっきのように、賃金値上げのために料金改定をしたのではない、こういう工合に言い切られると、これはなかなか問題がありますよ。ですから、逆に賃金を上げろということは言えない。言えないとするならば、上がった分はこれは安全運転の一助として配慮すべきであると、こう言えば、その中に当然賃金は入ってくるわけです。ですから、そういうようなやはり指導をさらに強化をする必要があると思うのですが、そういう面についての積極的な指導をする御意思はありませんか。表現の上では賃金を上げろと言うことはできないでしょうが、安全運転の一助とするように配慮すべきであるというような、そういう指導はできないもんですか。
  260. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) くどいようでございますが、今回の運賃改定は、収支のアンバランスをここで直すという意味で運賃改定をいたしたわけでございますので、あと従業員の給与制度の改善等につきましては、やはりこれは労使間の問題として、企業内の問題として私は解決してもらうことを期待しているわけでございます。
  261. 大倉精一

    大倉精一君 最後に、これはスムーズにいけばけっこうですけれども、これがこじれてしまってストだの何だのといって都民の足が奪われるようになれば、これは単に労使関係だけといってほおっておくにはあまりに公益性の大きい問題です。免許事業ですからね。自由営業じゃないんですからね。そういう段階になれば、当然ある程度の指導といいますかね、経営者に対する指導といいますか、私はこれはやらなければならぬと思う。と同時に、給与の面について、大きな会社よりも小さな会社、小さい会社の給与、労働条件というものは実にひどいものがある、こういう実にひどいのがやはり大きな会社と同じように町を走るわけですよ。ですから、そういうところに弊害があるとするならば、これはやはり同様に注意しなければなりません。特に小さい会社の労働条件なり経営状態なんというものは関心を持って十分注意をする必要があると思いますが、いかがでございますか。特に小さい会社ですね。
  262. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 給与の問題につきましては、陸運局のほうで会社ごとにいろいろ実情も調べております。したがいまして、適切な指導をやるわけでございますが、あくまでこれは従業員と会社との企業内の問題として、両方とも良識をもって改善をし、話をして解決をしてもらいたい、かように考えております。その結果、公衆に非常に不便をかけるというような事態にならないように良識をもって対処してもらいたいという気持ちでおります。
  263. 大倉精一

    大倉精一君 きょうはこれでやめますけれども、きょう指摘した問題は、第一番に公共料金のストップという問題に付随する政策についていろいろ要望もし、なにもしました。それから今度は運転手の不足から生ずるいろいろな問題についてその改善考えてもらいたいということもありました。それからまた労働者の給与ですね、運転手の給与等の問題について格段の関心を持ってもらいたいということもお話ししたわけですが、これらの点について、またの機会、運輸委員会等においてその後の推移についてお伺いしたいと思いますから、格段なひとつ御努力を願いたいと思います。
  264. 高山恒雄

    高山恒雄君 これは局長に聞きたいのですが、先ほど局長のお話によりますと、新しく認可をする場合、まず運転手の確保ができたのちに許可をしていくんだ、こういうお話ですが、それから起こってくるむしろ逆に運転手は確保したわ、許可はなかなか得られないわ、こういう欠陥が出ておることを聞くのですが、そういう事態はないのですか。
  265. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 増車の認可につきましては、運転手の確保が非常に大きな要件になっておりますが、それだけではございませんで、車庫の問題、あるいは休養施設、そういった施設、いろいろあるわけでございます。したがいまして、その他の点が満足されないで、運転手だけ雇ったから、じゃ認めてくれといっても、これはできない。しかし、その他の点も充足されまして、しかも運転手が確保できたということがはっきりすれば、みんな認めております。
  266. 高山恒雄

    高山恒雄君 その他の問題もむろんそうでしょうけれども、かりに運転手の確保ができますね。そうして三カ月も四カ月もそれを認可しないと、その他ができぬために、そうするとそれだけの負担を業者としては遊ばすということになるわけです。また、協定をした人も、雇用関係を結んだ人も、それだけ遊ぶことになる。こういう点は運輸省としてのこれは一つの運営に関する大きな問題だと思いますけれども、二カ月も放任されておるという事態が起こっておることを私は聞くのですよ。そういう事態がなければいいのだけれども、これはよほど、その他の条件もありましょうけれども、そういう面についてはやはり雇用関係を結んだ限りにおいては働かすのが経営者としてはこれは当然なことでありますし、また、雇用関係を結んだ運転手も、当然働かなくちゃ給与はもらえぬということになりますね。その点は運営のよほどの妙味を生かしていただかぬと、せっかくやられたことがマイナスになっておるこういう実例がなきにしもないのじゃないかということを私は聞くのですよ。なければけっこうですが。この点はひとつそういう面に対する運営に努力をしてもらいたいと私は思うのです。  それから、私は時間がありませんから、簡単に御質問したいのですが、一体三十八年度の自動車事故における死亡者というのはどのくらいあるのですか。死亡者と負傷者。
  267. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 実は三十七年までの資料しか手元に持っておりませんので、三十七年の数字で申し上げたいと思います。三十七年で言いますというと、自動車事故による死傷者合わせまして……
  268. 高山恒雄

    高山恒雄君 別々にございませんか。死者と負傷者と。
  269. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 死者だけが七千八百三十一名であります。
  270. 高山恒雄

    高山恒雄君 負傷はどのくらいですか。
  271. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 負傷者が二十万九千七百十六名であります。
  272. 高山恒雄

    高山恒雄君 それで、負傷者は膨大な数字になっておるわけですが、三十八年のそうした災害の実態はまだできてないのはどういうことですか。
  273. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 自動車事故の死傷者の総数につきましては、警察のほうでずっと統計をとっておられまして、私ともそれをもらっているわけなんでございます。三十八年におきましても、たしかある程度の数字は警察では把握しておられると思いますが、交通局長がいまおられませんので、わかりません。
  274. 高山恒雄

    高山恒雄君 三十四年度以降くらいの統計は皆さんのほうにあるわけですね。私は年々ふえておると思うんですが、ふえておることは間違いありませんね。
  275. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) ここ数年間の傾向を申し上げますというと、年々絶対数はもちろんふえております。しかし、自動車のふえてくる率と、それから自動車事故による死傷者の数のふえ方の傾向をみますというと、三十六年ごろからやや横ばいから多少下向きの傾向になっております。つまり、千両なら千両当たりの死傷者でみますと、そうなっております。絶対数はふえております。
  276. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこで、死亡した場合の損害補償というものは、最高百万円で、最低が三十万円、そうですね。強制加入保険ですよ、これは。
  277. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 強制保険によります自動車事故の補償は、御指摘のように、ことしの二月一日から改まりまして、死亡の場合に五十万円が百万円、それから従来重傷と軽傷と分けて十万円、三万円でございましたが、傷害一本にいたしまして三十万円に上げたわけでございます。  なお、後遺症につきましても、いままでは後遺症は負傷なりあるいは死亡の中に含まれておったわけでございますが、後遺症というものを別に立てまして、後遺症による損害額も最高百万円というふうに改めたわけでございます。
  278. 高山恒雄

    高山恒雄君 後遺症の場合は、五十万円と違うのですか。百万円ですか。
  279. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 百万円でございます。
  280. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこで、私は運輸大臣に聞くのですが、これだけの負傷者と死亡者がある。車の率からいけば、死亡者については率は減っているという見方をされまするが、そういう見方はおかしいと思うのです。やはり車が増大するということは、それだけひんぱんになるのですから、事故がふえてくるというのは、これはもう当然のことです。車に比例したパーセンテージというのは、問題にならない、人命ですから。そこで、保険の補償金額から見ても、非常にこれは人命尊重の考えを無視しているのではないかという私は考え方を持つのです。しかも、自分の事故で、みずからが起こした事故でなくなったという場合は、多少のこれは加味する点はあろうと思うんですね。しかし全然自分は違反を起こしてないのに、他の人の違反のため人命を落としたという人がこの中に三分の一以上あると私は見ております。幾ら保険がかかっておっても、細分化したもっと人命尊重の補償をすべきじゃないか、こういうふうに考えるのですが、大臣どうですかね。
  281. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) この保険の死者の五十万円を百万円にするというときに、諸外国の実例その他を考えまして、私どもは、非常に多いところは何千万円と出しているし、そのことを考えたので議論をして、結局まあ五十万円を百万円にしようじゃないか——もう御趣旨から言えばあなたのように私どもはやりたいのですが、大蔵省その他いろいろな審議会のようなのがございまして、その審議会議論の結果、今回は五十万円を百万円ということに相なったのでございまして、私は全く自分の過失でないのに死んだ者に対しては少な過ぎるというあなたの御意見と全く同意見であります。
  282. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこで、これはまあ火災保険がやっておるのでしょうけれども、車両損害保険というのがございますね。そこでみすみす違反という事実がありながら、その損害を受けたほうは、その保険に基づいて修正賠償費だけしか取れないわけです。これらは一体どうお考えになっておるのか。たとえば新しい車を百万円で買ったとします。翌日損害を受けた。自分は違反してないけれども、他の車で損害を受けた。そうすると、修繕した車はもう半値ですね。ところが、修繕費だけしか補償しない。こういう制度が黙認されておるところに、いまの運転をやる人は逆に保険さえかげておけばたいした問題ではないと非常に軽視した運転が行なわれておるというふうに私は感ずるのです。こういう点には政府当局としてはどうお考えになっているのですか。
  283. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) ただいま申し上げました自動車損害賠償保障法によりますいわゆる強制保険は、これは、人命、つまり自動車事故による死傷事故だけに対する保険でございます。したがいまして、いまお話しの自動車そのもの、物的損害につきましては、これは一般の損害保険として保険会社が自動車の持ち主と保険契約を結んでいるわけでありまして、一般の損害保険の中の自動車保険として扱っているわけであります。
  284. 高山恒雄

    高山恒雄君 そのことはわかっています。そのことはわかっているから、そういう保険のままで、その保険さえかけておけば、運転手自体は、もし人に迷惑をかけてもたいした自分は負担ではない、保険で支払ってくれる、そういう軽視をする傾向が運転手にあるのじゃないかということを私は聞いている。そういう問題はどう考えるか。保険のあることはそのとおり、あなたのおっしゃるとおりだ。そのことを聞いているのじゃない。その保険があるから、運転手自体としては、自分の負担というものは、保険をかけておけばたいした問題じゃない。保険会社が払ってくれる。そうすると、自分のその負担というものは少ないし、一方警察の罰則に基づく罰金による運転中止をやるか、あるいは罰金を取られるか、それだけで済むわけですね。非常に日本の場合はそれが個人の負担も少ないし、私は事故を起こしてもその責任観念というものは非常に軽いのじゃないかということを心配するのです。政府はどうお考えになっておるのですか。
  285. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 自動車につきまして損害保険をかけているから幾らこわしてもいいんだという一般的な風潮でないことを願うわけでございますが、人それぞれの問題でございまして、私が物を持っていて保険をかけているから自由に物をこわしていいのだという考えを持ってもらっては困ると思います。それから、まあかりにそういうふうな安易な気持ちになりまして、普通ならもっと注意すべきところを事故を起こすというふうな場合もあろうかと思いますが、そういう場合は交通事故として道路交通法による制裁を受けるということの取り締まりによってこれが防止をはかるという建前で参ることになっておるわけでございます。保険に入ったから非常に安易な気持ちで事故を起こしやすいという風潮は、これは厳に戒めなければいけないと思います。
  286. 高山恒雄

    高山恒雄君 それは、あなたのお話を聞いておると、私はさっきの給料の問題でもそれだと思うのですね。いわゆる固定給と請負給というものが従来は三対七だった。請負が七で、三が固定だった。それが七・三になったから非常に有利だと言われるけれども、絶対量が安ければ、やはりどうしたって逆にその率が少なくなればなるほど固定給がその比例で上がってないから、三〇%になればなるほど、それだけ自分が努力しなければならぬという形になるわけです、請負制度と固定給というものは。そうでしょう。それであなたは安心しておられるわけだ。それで減ったと、こう言われる。ところが、実際は固定給が満足する固定給であれば、それは私はあせらないと思うのですね。むしろ歩合のときのほうが収入が多かったという事実もこれはあるわけですよ。だから、そんなことで、こういう運転手の不足あるいは災害ですね、そういう問題が解決がつくとは考えられないのですね。災害でもそうですよ。保険をかけておるから、自分の負担としては、保険金さえかけておけば、一時に出すおそれはないからまあまあというような安易な気持ちがあるのじゃないか、私はそう思うのですよ。だから、私はこの問題はやはり根本的なもので、したがって、先ほど平均の賃金の問題でも私は関連して質問しようと思ったのですが、一体自動車運転手というのの最高給料を取っているというのはどのくらいですか。そういう調査されたことがありますか。平均は御承知でしょうけれども……。
  287. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 手元に持っておりますのが、自動車運転手の中でタクシーの運転手の給与状況の資料を持っておりますが、これについて申し上げます。  東京のタクシーの場合を例にとりますと……。
  288. 高山恒雄

    高山恒雄君 平均賃金の最高でいいです。
  289. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 平均を申し上げますというと、会社の大きさの規模によっても違いますが、三年から五年勤続しております者の平均が約四万三千円でございます。初任給で平均して高いのが四万一千円程度でございます。これは会社の規模あるいはその他によっても違いますが、大体そういう程度であります。
  290. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうしますと、大体最高五万円程度で最低が三万円程度だと私は思うのです。ところが、ある会社では七万円平均払って会社運営をやっている会社もある。それは都会じゃないです。それでも経営は成り立っている。だから、十二時間ぶっ通し作業をやってしかも平均賃金があなたのおっしゃるように四万三千円程度ということであれば、いかに固定給をふやしても、固定給自体にこの給料の安さがあるわけです。だから、むしろ固定給を少なくして、請負制度の自分の努力によって率が上がるならばそのほうがもうけておった、こういうことも一面には言えるわけですね。私はそれは安易な考え方だと思うのです。固定給と請負制度というものを、歩合制度というものをやめたからといって安全運転になるのだという考え方は間違いだ。それと私は結び付けるわけではないけれども、人によりましょうけれども、あなたのおっしゃるように人ということもありますけれども、車両保険というものをかけておるがためにむしろそうした注意をおこたる面が出てくるのではないか。したがって、私はこれは大臣に聞きたいのですが、ダンプ、トラックだとか何かの事故が多いわけですね、死亡者なんかの場合は。必らずそんなものは個人で運営しているはずはないと思うのです。これはほとんど会社だと思う。私は、そういう面からくる他の車に損害を与えた場合には、やっぱり会社もそれに対して損害賠償的な補償をする、こういう根本的なものを考えなければ、これ以上に自動車の増大ということはやらなくちゃならない事態に、私は災害の減少というようなことは考えられないと思うのです。やっぱり経営者にも一半の責任を負わすと、そうすると雇用関係を結ぶときにも相当の優秀な者をやっぱり雇わなくちゃいかぬという会社自体も深い関心を持ってくると、こういうふうに私は考えるのです。だから、個人だけの損傷に対する損害賠償、保険賠償だけではなくて、会社の負担を、そうして完全に損害を受けたほうには補償すると、こういう一つ政府の基本的なものを考えていかなければこういう防止は私はできないのじゃないかという気がするのですが、運輸大臣どうですかね。
  291. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) その額はあるいは被害者の満足を与えるか与えぬか知りませんが、会社の使用の運転手がそういう事故を起こした場合には、会社にもやはり賠償をせしむるような現在は制度になっておるのです。ところが、その金額は非常に少ないのじゃないかと思いますから、それは経済事情その他によってさらに上げるその他等を考えてみたいと思います。
  292. 高山恒雄

    高山恒雄君 もう一つお聞きしますが、今度の予算で、自動車検査登録特別会計というのを特別予算を組んでおられますね。これはいままではなかったのですが、新しくどういうことをやられようとするのですか。
  293. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 検査登録の仕事そのものの内容は従来と変わりません。ただ、いままで検査も登録も車がふえる率に応じまして業務量がふえるわけです。施設もふえるわけです。それをいままで一般会計でまかなってきておったのでございますけれども、なかなか思うようにいかない。設備も十分追いつかない。それから要員の確保も十分にいかないということでございまして、一方、車両検査も登録もそれぞれ手数料をとっております。で、私たちは考えましたのは、この手数料収入というものに見合って、車両検査登録の施設の充実等を今後はかっていく仕組みができますというと、車検場の整備その他につきましてもある程度長期の計画も立って充実できるということから、この際大蔵省と相談いたしまして、車両検査登録について特別会計制度ということで特別会計にいたしまして、この手数料の収入を財源として、この財源がよそに散らないでそのまま車両検査登録の施設の整備等に充実できるという制度に持っていったわけでございます。仕事の内容は変わりません。
  294. 高山恒雄

    高山恒雄君 最後ですが、そうすると、地域にあります登録組合というのに毎月かけていますね。これはどういうふうにお考えになっていますか。そこに入らなければ車検を受けられないということになっているのでしょう。
  295. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 登録組合というのはちょっと私存じておりませんが、おそらく、お話の点は、自動車関係で何といいますか、各地区の自動車組合的なものをつくりまして、そして、車両検査をいたします場合に検査場を各県で政府が直轄して持っております施設は、東京なんか別ですが、地方の県なんかへ行きますと、県庁の所在地一カ所でございます。その他の地区、県内に二、三の個所では民間の施設を借賃を出しまして借りまして、そこで週に何回か検査官が行って検査をするというわけでございます。この民間の施設をつくるにつきまして、自動車の保有者が組合等をつくりまして、そしてその施設つくって、運輸省が借賃を払って施設を借り上げて使っている。この施設をつくった組合が自動車の保有者から会費のようなものを取って、その施設の維持だとかあるいは検査を受ける場合のいろいろな手続等もかわってやってやるとか、そういうことをやっておるもののお話だろうと思います。これは、検査の手数料とは全然別個になっております。
  296. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうすると、なんですか、その組合に入らなくてもつまり車検はできる、こういうことですか。入らなくちゃならないという何も義務づけがないわけですね、政府が管掌していないから。
  297. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) もちろんそういうものに入っても入らなくても、検査は受けられます。
  298. 高山恒雄

    高山恒雄君 政府は、施設はその地方でつくった施設を借りておる、料金を支払って借りておる、こういうことになるわけですか。
  299. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) さようでございます。それを、今後特別会計になりまして、施設の充実の長期計画をつくりまして、必要なところは直轄の車検場をふやしていこうという考えも持っております。
  300. 高山恒雄

    高山恒雄君 もう一つ最後に。そうすると、結果的には、その組合に入らなくても車検を受ける場合には、手続さえとればかってにできる、こういうことですね。
  301. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) さようでございます。
  302. 浅井亨

    浅井亨君 だんだんと時間がおくれまして、もはやそんなに長いことたいへんだと思いますので、私のほうから飛び飛びであるかもしれませんけれども、一つ一つお聞きいたしまして、そして終わりたいと思います。  まず、第一番目に、ちょうどいま自動車のほうの関係のお話でございますが、近ごろオリンピックも近づいてまいりましたし、そのことによりましても、いよいよ自動車の数がふえてくるのじゃないかと、このように思うわけでございます。それで自動車はできますが、要するに問題は、現在の社会状態を見ましても、いろいろな事故が山積してまいりますということは、すなわち運転手のいかんによるのじゃないか。こういうようなことを考えてまいりますと、運転手に対する教習所というのがいろいろたくさんあちらこちら見受けられますが、その数はいまどれくらいあるのでしょうか、まず第一番目にお聞きしたいと思います。
  303. 藤森俊郎

    説明員(藤森俊郎君) 警察庁の運転免許課長でございます。昭和三十八年十二月末におきまして、指定自動車教習所の数が七百六十三校でございます。これは、道交法によりまして、自動車運転を教える施設の中から公安委員会が指定したものでございます。それ以外に、指定のございません教習施設というものがあるわけでございますが、これは公安委員会といたしまして格別これに届け出とかそういうようなことをいたしておりませんので、かつまた、その内容につきましても、単なる貸しコースのようなものでありますとか、そういう非常に簡単なものから、その中身が指定自動車教習所に非常に近いものを持っておるもの、多種多様でございますので、その数は私どもといたしましても正確に把握はいたしておりません。ちょっと時期がずれて恐縮でございますが、三十八年一月末におきまして、その指定のない自動車教習所の数は六百八十六校、かように数えておった次第でございます。
  304. 浅井亨

    浅井亨君 先ほどからの皆さん方の質問にもありましたが、技術の面とそれから本人の精神的なものと、この二つが加味されてそしていろいろな事故を起こす原因になる、こういうふうに私も思います。そうすると、こういうようないろいろな教習所がありまして、そこで練習するのでありますけれども、ややもするとこれが機械的に終わってしまうような教習所もなきにしもあらず。また、本人自身もそういうようなところで野方図にやった。ただ、一つの技術的天才といいますか、それを持ち合わせていたために試験には幸いにしてパスした。こういうようなことになってまいりますと、運転手の養成ということが一番問題になるのじゃないかと、こういうように私は考えるのです。そうしますと、そういう面に対しまして、いわゆる公認と非公認とあるとおっしゃいましたが、その監督はどのようにしておやりになって、どのようにしてまたりっぱな運転手をつくらんとするための方法を講じておられるのであろうかと、こういうことを非常に心配しておるものでございますが、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  305. 藤森俊郎

    説明員(藤森俊郎君) ただいま御指摘になりました点は、私どもといたしましても交通事故防止の対策の中心点と考えまして、指導の重点として考えておる次第でございます。第一番に、指定自動車教習所に対する指導の問題でございますが、御承知のように指定自動車教習所におきまして所定の教習を受けます。これを受けまして、かつ最後に公安委員会の行ないます試験と同じ基準に基づきます検定を行ないまして、この検定に合格した者にのみ卒業証明書を出しまして、それに対しては技能試験を免除すると、こういう形になっておるわけでございます。それだけのことがいわば特典のようなものが与えられるわけでございますので、指定自動車教習所に指定いたします際には、政令に定めております事務的な管理者でありますとか、あるいは指導員でございますとか、そういう事務的な面についての基準が定めてございますし、あるいはまた、教習をいたしますのに十分なコースでございますとか、そのほかの施設なり、そういうふうな施設的な基準を設けて、かつ第三には教習内容につきましては総理府令に詳細に定めておるそういう教習水準というものを内容的に確保したものでなければならない。こういう三つの基準を大体定めておるわけでございますが、そういう基準に合わなくなりましたならば、これは指定を解除しなければならない。こういうことで、教習水準が下がってまいりましたならば、これは指定を解除していくということでございます。  ただ、そういうふうな制度でございますが、われわれといたしましては、そういうふうに指定教習所の教習内容が低下しないように、これに対して平素からいろいろな指導を加えまして、教習水準が高く維持できまして優秀なドライバーが養成されるように心がけておる次第でございます。この点につきましては、各都道府県におきまして最近ではほとんどこの教習所を指導いたしますことを中心といたしますたとえば交通二課というふうな専門の組織も整備されてまいりまして、人的にもその指導体制というものを確立いたしましてこれに対処いたしておる状況でございます。
  306. 浅井亨

    浅井亨君 さっき申し上げましたとおり、技術の面は一応試験があります。だけれども、言いましたとおりに、生まれつきそれがじょうずだというような人もあり得るわけでございます。そういう人が免許をとったにいたしましても、精神的な問題において欠くるところがある。これは低能者というわけではありませんけれども、そういうような方があれば、私はそういう人はちょうど気違いに刃物を持たしたようなものであって、それが地上であちらこちらと横行して歩いたのではこれはたまったものじゃないと思うのです。今日までのいろいろな事故発生を見てまいりますと、酒を飲んだとか、または睡眠不足とか、いろいろな問題もありますけれども、ともするとそういうような精神的に異常とまではいかなくても、そういうような教養のないというか、素質の悪い人がなっておるように思うのです。そうしますと、これはたいへんだと思いますが、その精神的なもの、そういうようなものに対しての指導というもの、その教養というのはどういうふうにおやりになっておるのだろうか、その点を心配しておるのです。
  307. 藤森俊郎

    説明員(藤森俊郎君) たとえば指定自動車教習所の教習内容について申しますと、法令教習というものと構造教習というふうなものがございます。で、私どもは、現在、この法令、構造を考えます場合に、これを単に法令、構造を教えるというふうには考えておりません。運転者には当然必要な安全運転の心がまえというふうに、各法令につきましても、あるいは、単に物理的な機械的な問題を取り扱うと考えられます構造の面におきましても、そういう精神的な面と申しますか、心がまえの面と申しますか、そういうものが入ってくるのは当然でございますので、そういうふうな面を含めました教習をするようにということにつきまして指導をいたしておるところでございますし、幸いにいたしまして各教習所におきましても教習内容はおいおいさような面に御指摘のございましたような方向に向かいまして改善されつつある状況でございます。
  308. 浅井亨

    浅井亨君 いまのお話でよくわかりますが、それをほんとうに強力に推進していただきたい、このように念願いたします。  次いで、それに関連いたしまして観光バスでございます。これが夜を徹しての場合でありますと運転手が二名乗ることになっていると、このように思うんですが、これは私の思い違いですか。
  309. 藤森俊郎

    説明員(藤森俊郎君) これは運輸省の御所管の問題だと思います。
  310. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) 夜を徹して運行しますような場合に、連続運行時間が非常に長いような場合には、運転手を二名乗せて交代してやらしております。
  311. 浅井亨

    浅井亨君 私もそのように覚えておるんですが、実際の面においてはそうでないという場合を見受けるわけなんです。なぜかといいますれば、御存じのとおり、われわれの団体においては常はバスを使っておりますが、そのときに免許証を持っていないというのがあるわけなんです。そういうところから非常に懸念を持つわけなんですが、そういうことに対して強力にその面を御指導願いたい。人間というものは、言えばやりますが、言わないというと気がつかない場合もあるんじゃないかと、こういうふうに思うわけなんです。これはただわれわれの団体だけじゃなくして、ほかの面にもたくさんあると思うのです。われわれのほうはずいぶんやかましいものですから、そういうことはないのでございますが、ほかのほうにたまたまあるところに行くと耳にいたしております。こういう問題は、あの観光バスの事故というものは一挙にして大量の生命を奪っていく、こういう観点から、特にひとつこの方面を指導していただきたいと、このように思うのでございます。
  312. 木村睦男

    政府委員(木村睦男君) ごもっともでございまして、制度上は、労働時間その他あるいは労使の協約によりまして勤務時間等の制約がありまして、それを超過して運転に従事するというような場合には二名以上乗せてやるということになっておりますが、事実は守られていない場合も間々あることも知っております。そういう事実がはっきりいたしましたときには、監督官庁としては警告を発するなり、あるいはさらに聞かなければ処分をいたしております。実は、今日のような行楽シーズンに入りますと、えてしてそういう事例があるわけでございます。これが交通事故の原因にもなるわけでございますので、先日特にその点を注意いたしまして、陸運局長を通じて全国のバス事業者にきつく注意を喚起いたしたばかりでございます。御説のように、厳重な監督をしてまいりたいと思います。
  313. 浅井亨

    浅井亨君 次に観光局長にお願いしたいと思います。  前にも私から、いよいよオリンピックが近づいてまいりますので、外人客の来訪がふえてくる。これに対して、皆さんが喜んで帰国されるように、また、滞在中皆さんが喜んで日本の国柄を見ていくために、ガイドの問題でございますが、これを申し上げたことがあります。その以後いよいよもうあと二百日ぐらいに迫ってまいりました。その後の推移はどのようになっているんでしょうか、ひとつお答え願いたい。
  314. 梶本保邦

    政府委員(梶本保邦君) ガイドに対する国家試験は、昭和二十四年以来今日まで行なっておるわけでございます。現在までの合格者は、二千七百五十七名ということになっております。オリンピックを控えましてガイド対策ということは非常に大事な問題でございますので、今度は、特別に臨時試験を施行することにいたしております。例年の本試験のほかに、同じ日に、四月十二日でございますが、在外経歴二年以上の方につきまして臨時試験をすることになっております。こういうふうな対策を立てた次第でございまして、臨時試験の希望者を締め切りましたところが、全体で四百九十八名、それから例年行ないます普通の試験の受験者が七千四十一名ということで、合わせて七千五百三十九名というのが今年度のガイド試験の受験者でございまして、昨年度が六千三百九十五名でございますから、大体昨年度よりも約千二百名の増加と、こういうふうな数字を示しておる次第でございます。それで、大体毎年の合格率は八%ないし九%程度でございますが、本年度は少し率を多くしたい、かように考えております。したがいまして、本試験のほうは約七千人でございますから、一割合格いたしますと七百人、臨時試験のほうは、これはもう在外経歴二年以上の方でございますから、語学については御心配のない方々ばかりでございますので、これは大体八割程度合格になるんじゃないか、このような見通しを持っておりますので、全体の合格者は今年度は千名を突破するものと、かように考えておる次第でございます。そういうふうなことでオリンピックのガイド対策を考えておる次第でございます。  しかし、それだけではもちろん足らないわけでございまして、それで、いわゆる民間の善意ガイドと申しますか、英語なりドイツ語なりフランス語のおできになる方々に対しまして、いま考えておりますのは、英語のおできになる方にはたとえば英語のEならEというものを図案化したバッジ、ドイツ語のおできになる方にはドイツの国旗なりあるいはGということを図案化したバッジを胸につけてもらう。その方は、日常の生活を変わりなくしていただく。電車に乗ったりバスに乗ったり買いものしたりしていただく。ただ、バッジを見た外人が、この方は英語が話せる、この方はドイツ語が話せるというので、東京駅はどちらですか、あるいは帝国ホテルはどちらですかということを聞いた場合にお答えができるというような方法をとりたい、かように考えております。これがために計上いたしております予算が二百三十万円でございまして、これは四月一日から発足いたします国際観光振興会の予算として計上をいたしております。バッジは大体一個二百円でいま計画をいたしておりまして、一万個大体つくって配付したい、かように考えております。バッジをつけてもなおかつもう一つきめのこまかいサービスができないのじゃないかというので、今度は、小さなパンフレットと申しますか、手帳のようなもので、こちらに日本語を書きまして、こちらに英語なりフランス語なりを書きまして、そしてそれを羽田の空港なり観光協会が運営いたしております総合観光案内所に無料で備えつけて、そしてそれを外人に配付する。そして、その場合に、向こうはその手帳を開いて、そして指をさせば、一言も話さなくても、日本人に見せれば、それと同じことが日本語で書いてある。それを見てまた日本人がそれを押えればそれが直ちに英語になっていくというような方法を考えておりまして、これの予算といたしまして百二十万計上いたしております。つまり合わせて三百五十万をそういった意味のガイド対策の一環といたしまして国際観光振興会の予算へ計上いたしておる次第でございます。
  315. 浅井亨

    浅井亨君 そうすると、いま現在今度のオリンピックに来る数というものは大体の見当がつけられていると思うのです。そこで、その数に対して大体これくらいあればいいということもおわかりになると思います。また、各国語が違いますが、英語の方はどう、フランス語はどうというようなこともあるのですが、そういうのはどんなようにいま考えておられますか。
  316. 梶本保邦

    政府委員(梶本保邦君) 語学の試験といたしましては、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリー語、ポルトガル語、ロシア語の八カ国語についてただいま試験をいたしております。もちろん、一番多い需要は何と申しましても、英語が多いわけでございます。それで、どの国語はどのくらいあれば十分であるかということにつきましては、実は正確なデータはつかみにくいのではないかと考えております。と申しますのは、フランス人が来られましても、フランス語もできるが、それと同時に英語もできるという場合もございますし、それからここに申し上げました八カ国以外の出身者が来られましても、またあわせて英語もおできになるという方もあるわけでございますので、どの国語が何名というふうなわけには必ずしも正確にはいかぬのじゃないかというふうに考えている次第でございますが、大体英語とフランス語というのでカバーできるのじゃなかろうかというふうにも考えております。  それからもう一つは、ただいま先生の御質問にございますように、正確につかみにくい理由といたしましては、一対一でガイドがつきます場合にはなるほど来訪外客から算定はできるのでございますけれども、十人の団体客を一人のガイドが案内する場合もございますし、あるいは二十人一組で来られた観光客に一人のガイドが付き添って行きます場合もございますので、必ずしもそういった面からも正確な相関関係に立つ計数をつかみがたいという状況にもあるわけでございます。ガイドの試験には通ったけれども、実際にはガイドをやらないで、いわばガイド試験を通ったんだぞという一つの箔をつけて民間の商社等に就職していかれる方がかなりあるわけでございまして、こういった面が一つのガイドの悩みになっておるわけでございます。現在は、社団法人日本観光通訳協会というガイドの協会が、社団法人組織として現在運輸省の認可法人でございます。これに加盟いたしておりますのが八百十八名のガイドが加盟をいたしておるわけでございまして、その協会を通じまして、ガイドの素質の向上とか、あるいは講習会というふうな方法をとりまして、万遺憾のない措置をとっておる次第でございます。
  317. 浅井亨

    浅井亨君 もう観光局長けっこうであります。  では、海運局長にお聞きいたしますが、いま貿易外収支の赤字はどれくらいありまして、そのおもな原因についてひとつお話し願いたいと思います。
  318. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 三十八年度の海運関係の国際収支の見通しは、運賃収支におきまして二億一千二百万ドルのマイナスでございます。それから港湾経費におきまして二億一千六百万、合計四億二千八百万ドル程度の赤字になるであろうというように推定いたしておるわけでございます。  この原因といたしましては、まず船腹の問題でございますけれども、日本の輸入物量が非常に増加してまいりましたので、船腹の不足ということが非常に顕著にあらわれてきたということが一つの理由でございます。  それから、もう一つの港湾経費の問題は、従来からあったわけでございますけれども、日本の港湾経費と外国の港湾経費のアンバランスの問題がございまして、輸入物量の増加に従ってやはり港湾経費のアンバランスも増加するという関係になっておるわけでございます。同時に、港湾経費の中に含まれておりますところの船舶用の燃料油でございますが、これは船腹がふえてくるに従って燃料の消費が多くなるわけでございますので、しかも、これは国の中ではできないということでございますので、こういうマイナスはだんだんふえてまいっておるという実情でございます。
  319. 浅井亨

    浅井亨君 いまお聞きいたしますと、結局船腹が少ないということが一つの原因なんですね。そうすると、日本のいわゆる計画造船でいまやられておるのは、どれくらいおやりになっておりますか、その数字を……。
  320. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 本年度は第十九次の計画造船と申しておりますが、本年度は約五十七万総トン、それから明年度の計画としてわれわれのところで現在一応確定いたしておりますのは六十四万総トンでございます。なお、今後情勢に応じてさらに増加することを現在検討いたしておるわけでございます。
  321. 浅井亨

    浅井亨君 そうすると、日本の造船能力はどれくらいですか。
  322. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 明年度のすでに輸出船として受注いたしておりますものが約二百六十万トンでございます。それから国内船がそのほかにどの程度つくれるかという検討をいたしておるわけでございますが、大体百三十万トン、合計三百九十万トン、約四百万トン程度の建造能力があるものと考えられます。
  323. 浅井亨

    浅井亨君 いま船腹が少ないことによりましてのいろいろと赤字をなくすためには四十二年度までに約六百万総トンの造船が必要だと、このように運輸省の試案が出ているように思うのですが、これは間違いないでしょうか。そう思うのですが……。
  324. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 先ほど申しましたように、本年度の運賃収支の赤字が二億一千二百万ドルでございますが、今後輸入物量が増加するに従ってその赤字幅はさらに増加するということでございます。それで、われわれのほうで、四十二年度に運賃の支払いと受け取りをバランスさせるためにはどれだけの船腹量が必要であるかという一応の試算を行なったわけでございます。その結果、五百二十万トン余りの船腹があれば運賃面の収支はバランスするというこれは試算でございまして、別にこれを方針として五百三十何万トンつくるという方針を決定したわけではございません。
  325. 浅井亨

    浅井亨君 いまのそのことでわかりましたが、ここで一つ聞きたいのは、海運収支の赤字の港湾諸経費の中に、水先料、トン税、または岸壁使用料とか港湾労務者の経費、こういうものがあげられておりますが、聞くところによりますと、労務者の賃金ですね、これを上げなければならないというようなことをちょっと耳にいたしたのですが、これは事実でしょうかどうでしょうか。
  326. 比田正

    政府委員比田正君) 労務者の賃金は、港湾荷役料金の中に含まれておりまして、御承知のとおり、港湾荷役料金は、労務者を非常に使うものですから、その労務費の占める比率は非常に高うございます。したがいまして、港湾料金のほうが上がりませんと、従来支払っている以上の労賃は払えないという関係にございますので、そういうような問題がただいま起こっておりますが、この問題につきましては、ただいまいろいろ港湾料金の値上げの申請がございますが、政府の物価抑制等の方針がございまして、慎重に審議中でございます。審議の結果いかんによりましては、特に経済企画庁等とも相談いたしまして、場合によりましては経済閣僚懇談会にはかりまして処置いたすことになるかもわかりませんが、ただいま審議中でございまして、いまここで上げるとか上げないとかいうお答えは現在の時点では申しかねる次第でございます。
  327. 浅井亨

    浅井亨君 それはわかるんですが、じゃ、港湾荷役料金、この料金というのは公共料金でしょうか。どういうようなお考えでおられるのですか。
  328. 比田正

    政府委員比田正君) 先般の港湾労働対策審議会の御答申の中にも指摘がございますように、港湾料金というのは、公共投資を行ないましてつくりました港湾施設の場において行なう事業でございますから、これは公共料金とみなすべきであるということが御答申の内容にも書いてございます。ただし、御承知のとおり、中小企業で非常に経営が困難なものとか、料金を上げることによりまして大衆にほとんど影響がない、あるいは物価に影響がほとんどないというものにつきましては、例外として考えてもいいというような御趣旨になっておりますので、港湾料金はそれに該当するというふうに私どもは考えているわけでございます。
  329. 浅井亨

    浅井亨君 公共料金ということになりますと、政府はもうすでに、前に申し上げましたように、一年間据え置きだけれども、特別なものだったならばまたいたし方がない、いまこのようなお話になったように思うのです。で、公共性というのは、いま農産物が農家所得からその半分以上がいわゆる資材のために消費されていってしまっている、そうして非常に困惑しているという姿というものは、もう皆さんも御存じだと思いますし、ほんとうに日本としては農業政策の根本的建て直しをしなければならない。そこまで追い詰められていると思うのです。ところが、そこでつくられた物品が、こういうような料金の値上がりによりまして、一般大衆は高いものを買わなければならない。また、農村の人はそれによってまた受けるところの打撃が非常に大でなかろうかと思う。このように心配しているわけです。これは農業をやっておられる方々は非常にこのことについて関心を持っているというように私は聞いておりますし、事実その面については私に対しましてこれには絶対反対したらどうかという話があるのです。  そこで問題になりますのは、この労務者の賃金なるものが他の労務者と比べまして非常に安いのだということも聞いております。だから、片方を立てれば片方が立たず、賃金を上げたいのはこれはほんとうに心から上げたいと思います。しかし、といって、それのしわ寄せがまた農家に来たのでは、いま農村の人々は非常にかわいそうだ。こういう板ばさみになっている問題じゃないかと、このように私は思うのです。で、こういう点に対しまして、いわゆる当局の方々には、関係の労働省または農林省とタイアップをいたされて、いろいろな面で話し合い、そうして今後農民も救われる、またそこの勤労者も救われるというような抜本的なりっぱな施策をほんとうに真心をもってお考え願いたいと、また、考えられていると思いますけれども、それを一そう努力していただきたいというのが念願でございますが、現在のところ、この三省、関係の各省といろいろとお話しになってこんなようになっているということがあるならば、それをお答え願いたい、このように思うわけです。
  330. 比田正

    政府委員比田正君) 全くお説のとおりでございます。われわれといたしましては、農林物資につきましては農林省関係部門、それから通産省——商工物資でございますので、通産省の関係もございます。それから、これらを総括いたしましては経済企画庁でおやりになっておりますので、事務的には、われわれの実態調査と並行いたしまして、絶えずただいま意見を交換して相談をいたしておるわけでございます。それから、役所のほうはそういうような状態でございますけれども、港湾運送事業者と、荷主さんの団体がございますね、これはいろいろな団体がございまして、七十団体くらいございます。そういう方の代表と港湾運送事業をやっております者の団体がただいまいろいろ話し合いをしている最中でございまして、荷主さん方の御了承が得られる程度ならば、また役所のほうもいろいろ各省相談いたしまして対処したいというふうに考えますが、港湾運送事業の取り持っております面からだけは、卸売り物価等に影響します率は非常に少のうございます。〇・〇何%という、上げ方によって違いますけれども、オーダーでございますので、物価にはあまりたいした影響はないということは事実でございます。よく相談いたしまして処置いたすつもりでおります。
  331. 浅井亨

    浅井亨君 あまり影響がないと、そういうようなことでなく、影響があると言ったほうがいいのじゃないですか。国民はそれによってずいぶんとお困りになっておりますから、多少は影響があるがこれはやむを得ざることであるから御了承願いたい、こういうようなお答えをいただきたかったと思っているわけなんです。そういうわけでございます。  最後に、だんだんと時間も参りまして、いろいろと問題をお聞きしたいと思いましたけれども、国鉄のほうにちょっとお願いしたいと思いますが、それで終わらさせていただます、お気の毒ですから、何回も申し上げますし、お顔を見ると何かこうなんですが、国鉄のほうに一つお願いいたしたいのは、団体列車の設備といいますか、またそのことについていろいろとまあお骨折りは願ってまいりました。ただ、何回も申し上げてもできないことが一つありますので、その監督並びにそれはどうしてもやらさねばならない問題でありますし、そうするのにはどういう方法をとっておられるかということでございますが、それは一番問題になるのは水の問題なんです。水洗便所、朝起きて顔を洗う水でございます。さっと出たら赤い水が出たというような問題、この面に対してもう一つ強力にやっていただきたいのですが、前ほどから申し上げてだいぶん一年以上になりますが、改良されたとは思っておりますけれども、その点はどういうところに不備があってできないのか。これはもうやるとすればすぐできる問題だと思うんですけれども、その点をひとつお聞きかせ願いたいと、こういうふうに思うわけであります。
  332. 廣瀬眞一

    政府委員(廣瀬眞一君) ただいま御質問のございました洗面所の水の問題、あるいは便所の水の問題、これはまあサービスの一番基本的な問題でございまして、私ども常々非常にやかましく国鉄を指導監督しているつもりでございますが、ただいま御指摘のございましたように、間々あちこちに至らない点がございまして、また、御指摘を受けてまことに残念でございます。基本は、要するにやはり設備をきちんとやっておくということ、もう一つは、こまかい職員の指導といいますか、この点は逐次よくなっているとは考えております。今後もなおこまかく気を配りまして、指導監督を十分いたしたいと、このように考えております。
  333. 浅井亨

    浅井亨君 ひとつそれだけ要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  334. 田中啓一

    主査田中啓一君) 以上をもちまして運輸省所管に関する質疑を終了いたしましたものと認めて、本日はこれをもって散会をいたします。    午後六時五十分散会    ————・————