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1964-03-12 第46回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十二日(木曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————   委員の異動  三月十二日   辞任      補欠選任    浅井  亨君  渋谷 邦彦君    鬼木 勝利君  牛田  寛君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            亀田 得治君            木村禧八郎君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            羽生 三七君            米田  勲君            浅井  亨君            牛田  寛君            鬼木 勝利君            渋谷 邦彦君            基  政七君            須藤 五郎君            林   塩君   政府委員    大蔵政務次官  斎藤 邦吉君    大蔵省主計局次    長       中尾 博之君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   公述人    立教大学教授  藤田 武夫君    農業総合研究所    研究員     並木 正吉君    中小企業団体中    央会専務理事  稲川 宮雄君    東北大学助教授 高松 和男君    長野県上郷村議    会議員     北原 謙司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————   〔理事斎藤昇委員長席に着く〕
  2. 斎藤昇

    理事斎藤昇君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  公聴会の問題は、昭和三十九年度予算でございます。  本日午前は、お二人の公述人の方に御出席を願っております。これから順次御意見を伺いたいと存じますが、その前に、公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員一同にかわりまして厚くお礼を申し上げます。  当委員会は、昭和三十九年度予算につきまして、本月三日から慎重なる審議を重ねてまいりました。本日及び明日にわたる公聴会におきまして、学識経験者たる皆さまから有益なる御意見を拝聴することができますならば、今後の審議に資するところきわめて大なるものがあります。  これより公述に入りますが、進行の便宜上、お手元にお配りしてございます名簿の順序に従いまして、お一人三十分程度で御意見をお述べ願いまして、そのあとで委員から質疑がありました場合にはお答え願いたいと存じます。  それではまず、藤田武夫先生にお願い申し上げます。
  3. 藤田武夫

    公述人藤田武夫君) 私に課せられました公述は、本年度予算並びに地方財政計画を通じて地方財政の問題の話をするようにということでございます。それで、主として過日発表されました地方財政計画中心に、主要な問題点だけを拾って、なるたけ簡単に意見を申し上げたいと思います。  今度の地方財政計画規模は三兆一千三百八十六億円、大体国の予算に匹敵しておりますが、膨張率は一九%をこえておりまして非常に大きな膨張予算であります。そのこと自体にもいろいろ問題があると思いますが、まず歳出の内容の上から問題になる第一点といたしまして、御承知のように、これは国の予算でもそうでありますが、非常に各種公共投資が国の予算で増大している。その影響地方財政においても公共投資が非常に大きくなっております。災害関係を除きました普通公共事業費が五千二百三十五億円、昨年に比べて二一%増額されております。特に道路、港湾、農業基盤整備といったような産業基盤強化関係し、あるいは地域開発関係した公共投資が、金額も、あるいは伸びも非常に大きいのであります。特に、そのうちでも道路整備費が、補助事業だけでありますが、二千百三十三億円、二四%という増額でございます。これは御承知のように、国で道路整備五カ年計画が二兆一千億円から四兆一千億円に大幅に倍増された、その影響であります。  それから、一方生活基盤整備関係厚生施設文教施設あるいは公営住宅、こういうものに関係しまして膨張率は二二%、あるいは厚生施設は五四%というふうな増額を示しておりますが、金額は大体においてわりあいに少額でありまして、一番大きな膨張を示しました厚生施設も二百二十三億円で、道路整備費の約十分の一程度であります。こういうふうに公共施設が増大しましたが、それに伴って地方財政の問題では、地方負担が非常にふえてきているということであります。この先ほど申し上げました普通公共事業費増額に対して、地方負担が二四%昨年に比べてふえております。金額は二千百四十八億円でありますが、これは公共事業費全体の増加率よりも一そう大きな増加率であります。そして、こういうふうに地方負担が増大いたしますことは、これは地方負担がそのように二四%増額いたしておりますこと自体、地方財政にとっては非常に大きな問題でありますが、ところで、補助事業につきましては、従来からよく言われておりますように、補助単価あるいは補助対象地方の実態からかけ離れている、そのために地方団体超過負担が非常に多額に上るということが言われておりますが、今年度——三十九年度におきましても、建築単価が六%ないし七%しか引き上げられていない。そういうことと考え合わせますると、先ほど申し上げました地方負担の二四%の増額ということは、実際の地方団体で実施いたしまする場合には、さらに計画以上に地方負担が上回るのではないかというふうに思うわけであります。それからこの公共投資の増大に伴う地方負担増額でありますが、何しろ先ほど申しました産業基盤地域開発あるいは生活基盤整備の国の公共投資等は、いずれも五カ年計画等によっておりまして、しかもその計画の後年度において、だんだんその経費額が増大するような仕組みになっております。そういう意味におきまして、地方負担が将来ますます継続的に膨張するおそれがある。こういう意味で公共投資の増大に伴う地方負担の激増、それが将来に至るまで非常に大幅に増大するであろう。これがことしの地方財政計画を見まして、第一に気のつきました、地方財政上からいえば、今後どうするかという重要な問題点であろうと思われます。  それから二番目の、歳出面における重要点は、単独建設事業費が非常に著増している点であります。単独の普通建設事業費は四千二百四十三億円で、三六%という非常に大きな増率であります。しかも昨年に比べての増加額の一千百五十億円のうちの五百三十四億円というものは、先ほども触れました単独道路整備費による増であります。この道路整備費の五百三十四億円の増と申しますのは、新道路整備計画におきまして地方単独事業費が、五年間で、前の計画でありますと三千五百億円であったのが、一挙に八千億円、二・三倍増している。これは新道路整備計画全体の増率よりも、さらに上回った増率であります。そしていろいろ内情を聞いてみますると、最初は、地方単独事業の増は六千億円であったものが、にわかに編成過程で八千億円になったというふうなことも聞いております。結局これは、国のそういった膨大な計画を実施する上において負担地方にしわ寄せされている。それによって地方負担の増大が起こっているというふうに思うわけであります。こういう道路整備計画だけでなしに、港湾その他の中央の計画に基づく単独事業費というものも非常にふえておりましてその結果、地方独自で自主的にやります建設事業費というものは、まだ正確な数字は出ておりませんが、ごくわずかなものではないか。そういう点において地方団体の自主的な活動が今後あまり伸びることができないのではないかというふうに思うわけであります。  以上、歳出の面のおもな点として二点申し上げたわけでありますが、地方負担が今後どんどん増大していく、特にそれが単独事業というふうな形で、つまり補助を伴わない形で非常にしわ寄せされている。しかも今後物価騰貴等がありますれば、そういう負担がさらに増大する傾向がある。こういうことを非常に心配するわけであります。  それから、歳入面の問題に移りたいと思いますが、歳入面において何といっても中心の問題になりますのは、地方税の問題であります。特に、ことしの地方財政計画地方税収入見積もりについて、私は若干疑問を持っております。地方税収入は新年度において一兆二千九百八億円、二二%という増率を見積もっているわけであります。昨年は一三%であったわけであります。ところで、これだけの税収入を見積もるにつきましては、一方で御承知のような地方税制の改正、あるいは国税の改正に伴う減収、そういうもので差し引き——まあ増税もありましたが、差し引き三百三十八億円の減収でありますが、それを差し引きまして、自然増収が二千五百八十九億円というものを見込んでいるわけであります。昨年の自然増収の大体二倍——二倍ちょっと上回りますが、大体二倍の自然増収を見込んでおります。そして、その地方税増収をどういう税金に求めているかと申しますると、もちろん不動産取得税だとか、料理飲食等消費税とか、自動車税、そういったものにもかなり伸びを見ておりますが、何といっても大きな伸びを認めておりまするのは、道府県においては法人事業税、これは中小法人に対して若干負担の軽減をしておりますが、そういうものを差し引いて、なお昨年に比べて三一%、こういう大きな伸びを見ております。これは昨年は九%であったわけですが、三一%。それから道府県民税法人税割りにつきまして三〇%、それから道府県民税所得割りについて二九%といった大幅な伸びを見ております。それから市町村につきましては、一番大きな伸びを見ておりますのは、住民税法人税割りの三〇%、それから所得割りの二三%、これは御承知住民税課税方式統一等による百五十三億円の減収を差し引いて二三%の増を見ているわけであります。このようにいたしまして、法人課税並びに所得課税中心に二三%ないし三一%という大幅な税収の伸びを見ておるわけであります。  このような大きな伸びを見ましたことの原因にはいろいろあると思いますが、一つは国のほうにおきましても、新年度の国税の自然増収かなり目一ぱいに見積もっている。その影響が当然あらわれているわけでありますが、しかし、はたして先ほど申しました二三%から三一%という多くの伸びが期待されるかどうか。この点を問題と思うわけであります。御承知のように地方税の税収に対する国民所得あるいは景気変動影響は、大体において一カ年度おくれるわけでありますから、したがって昭和三十八年度の三十七年度に対する伸びを見てみますると、法人所得において、これは国の法人税課税対象になる課税所得でありますが、法人所得伸びが一八%、それから個人所得、これは国の所得税の対象になる課税所得でありますが、一一%であります。それから経済の成長率は名目で一三・六%、こういうことから見まして、はたして三〇%近くの法人課税伸び、あるいは個人所得の二三%から二九%の伸びというものが実際上実現できるかどうか。これはかなり強気な、むしろ過大な見積もりではないか。私は、まあ少し言い過ぎかもしれませんが、先ほど申しましたような地方公共投資、国の公共投資に伴う地方負担の激増ということが、地方税収入のこういった過大な伸び見積もりに拍車をかけているんではないか。そういう点が、地方財政計画の上で一つの大きな危険な点ではないかというふうに思うわけであります。  それから、歳入面の第二の問題といたしまして、地方債の激増と、そのいろいろな問題点をあげたいと思います。地方債は新年度におきまして三千九百八十四億円、二六・五%と、非常に大きな増額であります。この地方債につきましてはいろいろな問題がありますが、一つ公営企業債優先という趣旨が、これは二十九年度以来そうでありますが、今度も貫かれておりまして、一般会計債は、減税補てん公債を除きますと、伸びは一五%でありますが、準公営企業債あるいは公営企業債は二三%ないし二六%の伸びを示しております。こういうふうに企業債を有利に扱うということになりますと、どうしても、いままで税収入でまかなっておった、一般会計でまかなっておった行政企業会計のほうへ組み入れる。それによって行政企業化が進められる。この傾向は、国家財政における一般行政財政投融資への切りかえの傾向に非常によく似ておりますが、こういうふうに行政企業化されますると、どうしてもその起債にはたとえ便利であっても、元利の支払い額というものが地方団体の大きな負担になってまいります。そうしてそれに伴って使用料、手数料を引き上げるというふうなことで、地方住民負担を増大する傾向を促進するように思うのであります。  それから地方債の第二番目の問題ですが、今度御承知のように、市町村民税減収補てん債というものが百五十億円地方債計画に計上されたのであります。これは国家財政にもいろいろ影響があって問題とされおりますが、もともと住民税の減税はそれだけ減収になるわけですが、それは結局そのままにしておけばさらに欠陥が生まれる、それを補てんする公債であるので、結局はその性質は赤字公債だというふうに考えていいと思います。こういう赤字公債収入歳入に掲げて、そうして歳出とバランスをとっている、こういうふうな地方財政計画というものがはたして健全な財政計画であるかどうか。この政府の発表しました地方財政計画の冒頭に、ことしの財政計画健全均衡財政を堅持していくというふうにうたわれておりますが、はたしてこの点から見てそういうことが実質上言えるのかどうかというふうに思うわけであります。  それから地方債の第三点でありますが、これは地方債の消化の問題であります。地方債資金源政府資金その他いろいろありますが、最近だんだん公募債というものがふえてきておりますが、新年度においては公募債が一千四百六十三億円、全体の三七%、つまり起債総額の三七%を占める。これはかなり大きな割合を公募債に依存しているわけであります。で、そのうちで一般の金融市場で公募するものが三百六十億円で、これは昨年に比べて三九%、四割近い増加を予定しております。しかし、最近も財界等からも要求されておりますように、また、政府もその方針をとろうとしておりますように、金融引き締め政策が行なわれようとしておる。こういう金融引き締め政策のもとで、はたして昨年の四割増に近い市場公募債というものが完全に消化されるかどうかということに懸念を抱くわけであります。さらに公募債の一種といたしまして縁故債、これは地元の地方銀行とかあるいは地域開発をやる場合の誘致企業から金を借り入れるものでありますが、これが五百四十一億円で、昨年に比べて四八%、非常な五割近い増額を見積っております。これも金融引き締め方針のもとにおいて、はたして注文どおりに消化され得るかどうか、かなり疑問を持つわけであります。今年の地方財政計画を見ますると、補助事業単独事業等を通じて、歳出が非常な膨張を来たし、そうして、まあその結果をつけるために、起債事業というものが非常にふえてきておりますが、それがいま申しましたような資金源の状況によって消化難におちいるということになると、これは地方財政計画全体に非常に大きなひびを入れるという結果になるのではないかというふうに思うわけであります。  以上、歳出歳入について、大体気づきましたおもなる点だけを申し上げたのでありますが、かいつまんで申しますると、各種公共投資民生行政も幾らか伸びておりますが、そういうもので歳出が非常に膨大化した。それに対応しての歳入の面において、地方税収見積もりに過大なきらいがある。また、地方債消化難ということが憂えられる。こうなってまいりまして、もし、私の心配が実現すると、これは地方財政の非常な窮迫を告げることになるわけであります。それから、そうでなくても、最近非常にこの地方財政計画よりも、実際の地方歳出の決算が非常に上回るという傾向が出ております。三十七年度の決算が最近発表されましたが、それと同じ三十七年度地方財政計画の額を比べますると、三一%も上回っております。従来は大体一割から二割程度の食い違いであったのが、最近は一二%も上回っている。ことに物価騰貴等を考える場合には、三十九年度において、はたして計画どおり歳出でおさまるかどうかということに不安を持つわけであります。こうなってくると、歳入がそれに伴って、はたして上がってくるのかどうかということがますます大きな問題になるわけであります。ところが一方、地方財政の実情を見てみますると、三十七年度の決算が発表されましたが、百五十九億円の全体で赤字を出しておる。そうして、赤字団体の数が四百八団体に上っている。三十八年度はなお一そう悪化するだろうというようなことが言われておる。三十九年度には前からの持ち越し財源というものがほとんど消耗されることになるので、ますます地方財政の実態というものは苦しい状態になり、そこへ持ってきて、いままで申しましたような三十九年度歳入、それから歳出との関係を考えますると、地方財政の危機というふうなことが心配されるわけであります。ところが、経費膨張の要因を見ますると、各種公共投資はますます今後膨張する、生活基盤整備にいたしましても、ようやく緒についたばかりで、今後ますます拡大しなければならないと思います。こうなってくると、単なる一時的なびほう的な措置だけでは、とうていこのような地方財政の難局を切り抜けることは、一時はできるにしても、将来を見通した場合にむずかしいのではないか。この際根本的な対策を立てる必要があるのではないか。たとえば、各種公共投資につきまして、国と地方負担分担関係を再検討する。これにつきまして、私ちょっと考えておりますことは、たとえば産業基盤強化関係公共投資、あるいは地域開発にいたしましても、直接に産業基盤強化公共投資というものについては、できるだけ国で多くの負担をする、もしできれば国が全額国庫負担をする。それで、地方団体生活基盤強化とか、民生行政の充実とか、そういったことに地方団体の仕事の重点、そこに全身、力を入れる、財政上そういうたてまえが必要ではないかというふうな気がするわけであります。その他、国、地方間の行政事務の再配分とか、財源の再配分とか、いろいろの根本問題を検討しなくてはならないのではないか。  以上申しました三十九年度地方財政計画を見まして、私は地方財政というものが三十九年度、それから近き将来にわたりまして、非常に重大な局面にきているんではないか、そういった、いま私が申し上げたような根本的な対策を考えていただかなければならないような段階にきているんではないか、そういう感じを持つわけであります。  以上で私の、ちょうど時間が参りましたので、公述を終わりたいと思います。
  4. 斎藤昇

    理事斎藤昇君) ありがとうございました。  それでは藤田先生に御質疑のおありのお方は、順次御発言を願います。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に貴重な公述、参考になりましてありがとうございました。三点について簡単にお伺いいたします。  ただいま先生公述をお聞きしまして、地方財政計画による地方財政規模が非常に膨張しているということを伺ったんですが、三十九年度予算編成にあたりまして、政府景気を刺激しないような予算を組むんだと、こういうことを申されまして、一般会計においては一応三十九年度の国の予算規模は、三十八年度伸びが一七・四、これに対して三十九年度は一四・二だと、財政投融資においても、三十八年度伸びが二二・四に対して、三十九年度は二〇・二であるから景気刺激的でないと、こういうふうに説明しているわけです。しかし、この財政の問題は、先生十分にもう御承知のごとく、国の財政だけでそれが景気刺激的であるかどうかということを判断するのは、これは正しくない。地方財政計画をも含めて、一体としてやはり見なければならないと思うのです。そうしますと、地方財政計画を含めてみますると、たとえば交付税とか、国庫支出金等重複勘定を差し引いて、純計で計算してみますと、三十八年度の国、地方財政規模伸びは一五・九%ですね。三十九年度は一六・八%になるわけですね。ですから国、地方両方財政規模を寄せて、重複勘定を差し引いて計算しますと、非常に伸びるわけなんです。で、三十八年度より伸びが少ないとは言えないわけだと思うのです。また、財政投融資についても、政府はいろいろ計算の操作をしまして、前年度より伸び率が少ないように見えますが、私は財政投融資三十八年度の補正を含めた国庫債務負担行為四百億あるのですが、そういうものを含めまして二七%の増になるのですね。そうしてみますと、決して景気刺激的な予算ではないと言えないのです。先生からいま地方財政が非常に伸びたというふうに承りましたので、やはりそういうふうに地方財政も含めて総合的に考えなきゃならないんじゃないかという点ですね。その点について伺いたいのです。政府が国の予算だけについて景気刺激的であるかないかということをいつも説明しているものですから、それは正しくないんではないか、地方財政も含めて考えなければならぬという点についての御所見を、まず第一に承りたいのです。  それから地方税見積もりが非常に過大ではないかという御意見でございましたが、私は過大であっても、おそらく徴税強化すればそれだけ取れると思うのです。一応予算に計上した以上は、どうしても取らなきゃならぬのですからね。非常に徴税強化という問題が起こりやしないかという問題が一つですね。もう一つは、地方税につきましては、基礎控除ですね。名目的に所得がふえておるわけです。それに対して昭和三十六年以来一つも引き上げてない。国税のほうはずっと上げておりますが、九万円据え置きそのままです。そうしますと、名目的所得がふえますと、市町村民税につきまして所得割り累進課税ですから、どうしても実質増税になる、そういうところからも非常に増収が見込まれる点があるのではないか、こういう増収が見込まれているものは、実質的な増税ということを意味している面がないかどうか、これは第二点です。  第三点は、先ほど公共事業につきまして、補助事業について、単価とか対象等について地方実態からかけ離れている、こういうことがございますが、これは交付税についてもこういうことは言えないか。先生の御著書を拝見しまして、交付税役割りというものは非常に変わってきている、それで、交付税産業基盤強化的な性格を帯びてきて、大企業の設備拡張をすると、それにつれて道路港湾、そういう整備が必要である。そういうほうに交付税が多く流れているような傾向が非常に強くなってきておる。たとえば、交付税配分基準になる基準財政需要の算定につきましては、測定単位とか、単位費用、そういうものについて、補助事業と同じように産業基盤に非常に傾斜するような傾向が強くなってきておるということですが、三十九年度予算についても、やはり三十九年度地方財政計画についてもそういう傾向交付税についても強くなってきておるように思うのですが、そういう点、この三点についてお伺いします。
  6. 藤田武夫

    公述人藤田武夫君) 時間の制限がありましたので、詳しく申し上げなかったのですが、先ほど、最初に申されました地方財政財政全体の規模、それと景気変動、その他経済との関係を問題にする場合、国と地方含めて考えなければならないのではないか、これは私も全く同感で、そうしていまおっしゃったような計算をしてみて、その膨張自体にも問題があるということで簡単にやってしまったのですが、事実そのとおり、昨年に比べて両方ダブったものを引いて計算しても一六・五%ですか、そういうことで昨年よりも上回っております。そして何といってもやはり財政需要と市場経済との関係を考える場合には、もちろん地方団体財政需要を考えなければいけないので、これはおっしゃるとおり、財政と経済の関係を考える場合は、従来、ともすると、地方財政というものは無視されておったのですが、それでは非常に片手落ちであって、やはり両方の財政規模を問題にすべきだというふうに思います。  それから第二点の税収見積もり過大、その結果徴税強化、これも私はほかの論文なんかにも書いておりますが、そういうことも十分心配されます。それから、つまり国の所得税といわれているところの一般減税を、地方税、ことに住民税で行なうべきではないか、これは昨年来からそういうことも問題になり、私もそういう主張を述べたこともしばしばございますが、全くそのとおりで、同じ税金の負担を、やはり国のほうは物価の引き上げに従って所得その他扶養控除を上げるということになれば、地方税についてもそういうことは当然にすべきだと思いますが、そして、それにちょっとつけたりでありますが、今度住民税課税方式の統一で、それで住民税が約百五十億ばかり減税になる、それでかなり減税を行なった、その限りでは減税であると言われておりますが、御承知かと思いますが、今度問題になっておりますただし書き方式を採用してそれによって住民税を納めている人間の数というものは、住民税を納めている人間全体の数の約四割です。したがって、四割についてだけ減税をしたので、四割減税でして、あとの六割の住民税を納めている者は、何ら影響はない。その点は、先ほどおっしゃったように、物価の騰貴によって名目所得がふえれば、かえって増収になると申しますか、そういうことになるだろうと思います。  それから地方交付税、これも、いまお話しの点以外にも四つぐらい問題点があるんですが、これも、時間の関係でおもな点だけをひろって申し上げたんで省きましたが、地方交付税については、さっきお話しのように、最近、産業基盤強化あるいは地域開発等に対する基準財政需要額を、単位費用の引き上げ、補正の強化、そういうことによって非常に大きく見ております。これはことし始まったことではないので、三十二年の当時からだんだんそういう傾向が強まっております。今度、住宅あるいは清掃事業等の単位費用をある程度引き上げましたが、しかし、全体の金額からいえば、やはり産業基盤強化といった方向に交付税が傾斜的に配分されるという傾向があるのですが、このことは、実を申しますると、地方交付税をむずかしく言うと、機能の上からいって非常に問題があるのです。つまり、地方交付税というのは、貧弱な団体財政を援助して、それによって、経済の地域的な不均等からくるいろんな財政上の困難をやわらげていこう。つまり、不均等の緩和ということが目的であります。ところが、産業基盤強化交付税配分が傾くと、それはむしろ、先進工業地帯あるいは既成工業地帯にどうしても配分がよけいになって、かえって地域的な不均等を激化する結果が出るかと思います。そうなると、交付税役割りがそこで性格的に転換をするわけで、これは非常に大きな問題だろうと思うわけであります。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 データを持ってこずに失礼な質問でございますが、先ほどからいろいろ地方財政についてお話がございましたが、池田内閣ができた昭和三十五年からいわゆる経済政策が高度経済政策ということをやられまして以後、地方財政の構成比をずっと調べてみますと、投資的経費というものが相当急角度に伸びてきておると思うんです。実はノートを忘れてきたので、失礼でございますが、大体記憶をたどりましても、昭和三十五年度地方財政総額は一兆五千何がしかだったと思います。それから三十六年が一兇九千、それから三十七年が二兆二千、それから三十八年が二兆六千、それから来年度は三兆一千億、こういうことでありますが、投資的経費の伸びが、三十五年度は総額の二一%程度だったのです。それが来年度は三六%になっておる。その間、三十六、三十七、三十八ということで累増しておると思うんですが、その投資的経費のうちで、先ほど先生が言われましたいわゆる産業基盤強化に対する経費というものは、どういう割合で伸びておるか、データをお持ちであれば、ひとつお聞かせ願いたいと思います。そこで、もしそういうものがなければ、投資的経費が伸びていくという原因が、やはり先ほど言われました公共投資というものが非常に年々累増しているというところに基因していると思うんですが、その点データを持っておられたら、ひとつ御説明願いたいと思います。  それからもう一点、地方税の中の住民税の問題です。先ほどいろいろ触れられましたが、角度を変えまして、これも各地方税の構成比から見ますと、住民税、これは都道府県、市町村を合わせてのことでございますが、この数字も、実は三十五年の数字は、大体法人割りと所得割りの区別をいたしまして、いわゆる個人の負担と法人の負担という分け方でお聞きをしたいんですが、個人の場合は、たぶん八百何億かと記憶しておるんです。失礼でございますが、割合だけを申しますと、三十五年度の個人負担、いわゆる所得割り負担は五四%だと思っておるんですが、法人割りのほうが四六%。五四%に対して四六%。それが年々その割合が変わりまして、来年度、三十九年度地方財政計画を見ますると、個人の所得割りが六二%、それから法人のほうは三八%程度に落ちてきておると思うんです。この法人割りのほうが非常にウエートが少なくなってきておるその原因ですね、そういう点について、もしお調べでありましたら、二点だけひとつお聞きしておきたいと思います。私のいま言った数字は記憶でございますので、ちょっと若干の違いがあるかもしれませんが、そういう点を、三十五年度から三十九年度における地方財政計画の構成比の中を分析したのが、そういう数字が出ておりますので、その点ひとつ御説明願えればけっこうだと思います。
  8. 藤田武夫

    公述人藤田武夫君) 最初の御質問の投資的経費の内容の問題ですが、投資的経費が地方の経費総額の中でだんだん比重を高めてきておる。これは間違いのない事実で、私がちょっと調べたのでも、昭和三十二年には二九%であったのが、今度の三十九年には三六%になっているという数字が出ておりますが、その中で、産業基盤強化関係がどれだけかという、その数字は、ちょっと計算したのがないのですが、しかし、大体道路とか港湾とか、そういったものの経費の伸びが非常に大きいので、まあ、そういう産業基盤強化関係伸びだけでなく、金額も非常に大きいので、そういった産業基盤強化関係の経費が中心であるというふうに思います。最近幾らか、さっきの公述でも申しましたように、生活基盤整備のものが幾らか出てきておりますが、これはさっきも言いましたように、道路整備の経費の十分の一、公共施設の十分の一だというようなことから見ても、中心産業基盤強化の経費であるというふうに思います。  それから住民税の構成の問題ですが、これもいま御質問のとおりのものを計算したことはないのですが、この三十九年度地方財政計画を見ますると、道府県民税では、所得割りが百九十億、それから法人税割りが百二十二億というふうに出ているのです。そうして法人税割りは、先ほども申しましたように、一二%の伸びで、所得割りが二九%の伸びだ、だんだん所得割りのほうに比重がかかってきておるかどうかということは、これは道府県民税の場合には、御承知のように、三十七年に府県民税の所得割り課税方式が変わって、非常に低額所得者に重くなってきて、あのときからずっとふえてきておる。したがって、所得割りの比重が大幅にふえてきておると思います。それから市町村民税は、三十九年度のなにでは、所得割りが二百五十五億、法人税割りが百八十五億ですが、これは先ほど申しましたように、法人税割りは三〇%の伸び所得税割りは二三%の伸びですが、この比重がどういうふうに動いてきているかということをちょっと計算したものがございません。法人に対する負担が三〇%の伸びを見ている、あるいは三一%の先ほど言いました伸びを見ているというところから見て、伸び自体が非常に所得割り負担を重くかけているということはちょっと考えられないんですけれども、しかし、所得割りのほうに全体として重みがかかってきているかどうか。これは正確な計算を、最近の動きを計算をしてみないとわからないと思うんです。これはちょっとデータが正確なものがありませんので、残念ですがお答えできないわけです。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 藤田先生、その点、三十八年度は三十九年度だけと比較すると、三十八年度所得割りと法人割りは六五と三五になっておる。三十九年度はそれが若干変わって、下がっております。これは税制の関係だと思うんですが、それが全体に三十五年からずうっと累年見てきますと、そういう数字が出ましたので、それでちょっとお尋ねしたんでございますが、けっこうでございます。     —————————————
  10. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) 次に、並木正吉先生にお願い申し上げます。どうぞ。
  11. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 私は農業について申し上げるわけでございますが、きょうの趣旨から申しますと、少し具体的な予算についての私の考えを申し上げるのが適当かと思いますけれども、私の専攻しておりますことから申しまして、むしろそういう具体的な問題よりは、長い目で見ました、あるいは広い目で見た農政の重点というようなことについて平素考えておりますことを申し上げてみたい。そして、何らかの御参考に供したい、このように思います。  農政がいろいろな形でやられておりますけれども、このごろ痛感いたしますことは、農政の行なわれ方が少しこまかくなってきておる。もっと別なことばで申しますと、農民が農業をやっていくための基礎的な条件、基礎的な環境、この整備の点について国としては一番力を注ぐべきものでございまして、その基盤の上でどのような農業を農民がやっていくかということについては、農民の創意と責任と危険負担というものに私はまかせていいのではなかろうか。このことがかえって日本の農業をよくしていくというふうに思います。  かように考えます理由をこれから少し申し上げてみますが、一つは日本の農業が国民経済の中でどのように位置づけられていくか、あるいはどのような役割を今後果たしていかなければならないか、こういう問題でございます。この問題につきましてはいろいろ人によって意見が分かれておりますけれども、私は二つの点について——この二つが非常に私は大切だと思いますが、その二つの点について私なりの考えをまず申し上げてみたい、このように思います。  一つは、農業就業人口、農家戸数が国民経済の中でどのような位置を占めるようになるか、こういう問題でございます。現在四千六百万の就業人口がございますが、その中で農業がおもだという農業就業人口は千二百万になります。農業人口の割合ということばで言われるものは二六%ということになります。十年前の二十八年度には農業就業人口は千六百万、農業人口の割合が四〇%でございましたから、かなり大きな変化が起きたわけでございます。もし今後このような変化が続くといたしますと、十年後には農業人口の割合は一七%、二十年後には一一%に減るということが予想されます。実はこのような予想は、ただ空理空論と申しますか、当てずっぽうのような推測ではございませんで、かなりの理由があるのではなかろうか、このように思います。その一つは、農業人口が減ってまいります場合の主役をつとめております若い世代の動きでございます。中学校、高等学校、大学を卒業いたしまして新しく就職する人たちは、ここ三、四年では百四十万ないし百五十万ずつ毎年生まれておりますが、その中で農業をやるという農業一年生は八万人前後、したがって、就職一年生の中の農業一年生は大体六%ということになっているわけでございます。したがって、もしこのような状況が続いていきますと、二十年あるいは三十年たたないうちに農業人口の割合は全体として一割を切るということが想定されます。こういうこが一つでございます。  それからもう一つの点は、ヨーロッパ各国のこれまでの経験でございます。農業人口の割合が三割から一割に減りますのに要しました期間は、アメリカが五十年程度、スウェーデンが三十年、西ドイツはまだちょっとそこまで行っておりませんけれども、まず四十年前後と想定されます。このように考えてみますと、日本の場合も農業人口がやがて一割台を迎えるということは、私は当然前提にしなければならないことではなかろうかと、このように思います。問題は農家戸数の動きでございますが、農家戸数は農業人口が減るほどには日本では減っておらないわけでございますが、実は農業人口と農家戸数の動きは、ヨーロッパにおきましてもある程度開いております。特に農業人口が減り始めた当時は、ヨーロッパにおきましても農家戸数は減ってはおりません。農業人口が減りましてから、十年ないし二十年おくれて初めて農家戸数も——向こうは農場数でございますが、これが減ってまいる。こういうプロセスをたどっております。そのような意味におきましては、私は、日本も今後それに似たような動きをするのではなかろうか、こう思っているわけですが、もう少し中身を申し上げますと、ヨーロッパでは農業人口が減りましたのは一九一〇年ごろからでございます。イギリスは例外で、もう少し早いわけですが、その他の国々は大体一九一〇年から一九三〇年ごろをピークといたしまして、それ以降頭数を減らす、こういう形になりますが、まず最初に減りますのは農業労働者でございます。それに続きまして家族従事者が減ってまいります。農業従事者が減り始めましてから十年ないし二十年たちまして、はっきり目立ってまいりますのは、農業経営主が農業から離れる、こういう動きでございます。この農業経営主が農業から離れます場合の大部分は老齢による引退を理由にしており、農業から三十代、四十代で他産業に転職をするというプロセスは、ヨーロッパ、アメリカにおいてもきわめて少ないというように思われます。そのような動きをとりながら農業人口の減少に幾らかおくれて農家戸数が減りますが、その農家戸数も、ある程度時間、年代がたちますと、減少の速度が少しふえてくる。年率一%とか二%、多い国では三%というふうになりますが、私は日本で今後一%から二%台の減少率というものはおそらく起こるだろうというふうに思います。そのような動きを通じまして、ヨーロッパの農業が、他産業の従事者との所得の格差の問題あるいは他産業との生産性の問題——比較の問題でございますが、長期的な過程でございますけれども、いまのような動きを通じまして農業と他産業との間の格差が回復してくるという大きな流れをとっておるように思います。そのような意味におきましては、私は日本においてもかような動きを期待することは可能だというふうに思います。  ただ、その場合に問題になりますのは、農家のふところ工合という意味で申しました所得均衡という点では回復という点が考えられますけれども、もう一つの問題であります生産性をあげるという点につきましては、これは大きな機械、大型機械化農法を導入していかなければならないわけでありますが、その点になりますと、私は、日本の農業がこのような変化を起こす出発点の現在が、いかにも小さい平均一ヘクタール前後であるということが最後まで響きまして、一経営で大型化、大型農法を導入することができるほどに経営規模を拡大できる条件が今後二十年、三十年の間に与えられるということは、例外的な場合を除いては考えにくいのではないかと、このように思います。もう少し具体的に申しますと、現在の六百万農家の中で、農業所得だけで家計費をまかなっておる農家が約九十万戸ございますが、その家計費の家計支出の水準が都市勤労者並みという農家が大体三十万から五十万、こういう状態にございます。このような状態がもう少しよくなるということは可能でございますけれども、いまの平均一戸当たり一ヘクタール、大きい農家で二町三町という状態が、ヨーロッパで見られます二十ヘクタール、三十ヘクタールのヨーロッパ水準で申します技術経営に行くということは困難ではなかろうかこういう意味でございます。したがって、機械を入れていくという点につきましては、どうしても機械の共同利用とか、あるいは農協による請け負いとか、いまの政府の言っておりますことばで申しますと、協業組織というものと個別経営とがそのそれぞれの長所を組み合わせるという形がどうしても必要だ、このように考えております。  そういう形で一つは日本の農業をになっていく農家が生まれていくというふうに私は思いますが、もう一つの点は、食糧の自給度をどう考えたらよいか、あるいは選択的な拡大という問題をどう考えたらよいかということでございます。この点につきましては、いろいろ意見があるわけでございますけれども、その際に注意しなければならない点は、今後想定されます、また現在進んでおります食生活の変化が、日本の農業あるいは国際収支に及ぼす影響が非常に大きいという点でございます。政府が一昨年出しました「農業生産と需要の長期見通し」というものによりまして、その程度の需要がかりに起こるといたします。その際の国民が消費いたします需要をまかなうことをかりに全部国内でまかなうといたしました場合には、大づかみに申しまして、現在の反当たり収量に大きな変化がないといたしますと、水田程度の生産力を持っております耕地を三百万ヘクタール、三百万町歩ふやさなければ、その今後ふえるであろう食糧需要をまかなうことはできない、こういう計算になります。また、それを国内でまかなうことを一切やめまして、外国からそれを輸入するといたしました場合には、少なく見積もりまして十八億ドル見当、少し多目に見ますと二十億ドル程度の食糧を輸入しなければ、今後ふえるであろう農産物食糧に対する需要をまかなうことはできない、こういう計算になります。これが昭和四十六年ごろを目ざしてやった計算に基づいてやってそういうことでございますから、今後十年とか二十年というもう少し長い目で見ました変化を考えました場合には、いまの問題はさらに大きいことになります。  少し申しおくれましたが、この政府の「長期見通し」では、現在の国民が食べております食糧は一日二千二百ないし二千三百カロリーでございますが、それが昭和四十六年に二千五百ないし二千六百カロリー、つまり、その問三百カロリーふえるという計算をしているだけでございますが、その三百カロリーがこれまでのように米その他の穀物から得られるのではなくして、主として畜産物あるいはくだもの、野菜というような、単位当たりのカロリーを供給するのに必要な耕地面積あるいは農業労働力が穀物と比べて数倍必要なものを消費するようになる、こういうことからいまのような従来の食生活の体系をそのまま伸ばした場合には、ちょっと想像もつかないような変化が生まれてくるわけでございます。  そのようなことを考えてまいりますと、食糧自給を今後高めるべきか、あるいは外国からの食糧を輸入することになるべきかということの二者択一的な考え方は、どうも日本の実情には合わないのではなかろうか。農業生産はその作物による選択はもう一度考え直さなければいけませんけれども、ここで考え直すという意味は、農業基本法ができましたときの選択的な拡大の基準は主として需要のふえるものという点に基かれておったと思いますが、今後は国際競争力という点ももう一つ加味しなければいけないという意味で考え直すべきだと思うのでございますが、そういうふうに考えましても、全体としてはやはり日本の食糧はふやすべきものである。また、全体として日本の食糧生産はふやしながら輸入はなおかつふえるであろう。こういうことが私は日本の農業が置かれている位置ではなかろうか、また、そういう中において日本の農業の役割りがあるのではなかろうか、このように思います。  この日本の農業の位置づけをいまの食糧の自給という点で考えました場合に、特に作物として問題になりますのは、私は、畜産、その中でも酪農ではなかろうか、このように思います。生鮮食料あるいは野菜、くだもの、それから米、養蚕等につきましては、これは原則として自給すべきものだということについては、おそらく大きな異論はなかろうかと思います。また、麦類、大豆、てん菜等につきましてはかなりの部分を輸入しなければならない状態だということについても、おそらく大きな異論はないかと思います。ただ、問題になりますのは畜産物でございますが、その中でも酪農が問題でございます。この酪農につきましては、今後ふえるであろう需要を日本でまかなっていくということがだんだんむずかしくなってくる。それは、非常に多くの努力を要する。つまり、飼料の作付面積を画期的にふやし、そういうことをしても、なおかつ今後ふえるなま乳ですね、牛乳、酪農に対する需要というものをまかなうということは困難になってくる状態にあるのではなかろうか。そういう状態を考えてみますと、どうしても飲用乳と原料乳の値段が近づくということは避けがたいように思われます。各国の飲用乳と原料乳の値段を調べてみましても、一九六一年現在、脂肪率を三・二%といたしまして、日本の飲用乳は大体三十円、加工乳が二十七円、それに対しましてデンマークは飲用乳が十七円、加工乳が十四円、こういうことになっております。デンマークは圧倒的に加工乳をつくっておる国でありますし、日本は飲用乳に対する比重がかかっておる国でありますが、日本は両方おしなべて高い国であり、デンマークは両方が低い、こういうことになっておりますが、この問題を英国は加工乳はデンマーク並みにいたしまして、飲用乳は日本よりも高くする、こういう形で問題を処理してまいりました。そういう形をしておるわけでありますが、私はこの英国のやり方が今後の日本の酪農を考える場合に参考になるのではなかろうか、このように思います。  非常に簡単に申しましたので、ことばが足りませんけれども、いま申しました日本の農業の位置づけとか役割りとかというものを前提にいたしまして、今後国としてあるいは政府としてとるべき政策の重点ということについて私が考えておりますことを五つの点について簡単に申し上げてみたい、このように思います。  第一点は、土地基盤の整備というふうに言われるものでございます。この際一つ問題になりますのは、将来農業地帯として発展さすべき地域的な重点を考える必要があるのではなかろうか、こういうことでございます。さらにもう一点は、土地基盤をやる場合には、どうしても農業の場合には河川の水系と結びつけてやりませんと効果があがらない。一カ所だけを小さくやりましても効果があがりにくいという点があるわけですから、どうしても広域にわたってやる必要がある。しかも、その広域にわたってやる場合に、それが今後要求される農業構造改善に役立つように、つまり構造改善と表裏一体という形でこれがなされる必要がある、このように思います。もう一つ、現在起きております土地基盤のやり方についてあるいは問題ではなかろうかと思われる点がありますので、申し上げてみますと、それは区画整理と農道、かん排水を含めた土地改良費が反当五万から六万円かかっておる。これは現在の政府のやっております構造改善事業の平均的な経費でございます。現在やっておりますところは比較的条件のいいところをやっておるわけでありますから、もう少しこの範囲をふやした場合には、反当たり十万という線がおそらく普通だというふうになるのではなかろうかと思います。そういたしますと、反当たり五万から十万かけるような土地改良というものは、一体機械を入れてるために必要な投資であるかどうかということについて私はもう少し根本的な研究をやってみる必要があるのではなかろうか、このような点を感じます。  第二番目には、それと関連することでございますが、これから大型機械を入れていくということになりますと、日本にとっては初めてのものが多いわけでございますから、この点についてはどうしても国あるいは県の立場における先行投資といいますか、これがどうしても必要である。現在は幾らか部分的にそれを農家と一緒に実験しておるというようなかっこうになっておりますけれども、しかし、その場合の多くは補助事業という行政手段でなされておりますから、そこで生まれますいろいろな危険とか損失についてこれを負担するという手段がないわけでございます。そういう点につきまして、もっと政府の責任においてやるような新しい農機具についての先行投資が必要かと思いますが、この際一つ問題になりますのは、現在日本で入れておりますのは主としてアメリカの機械でございますけれども、これは平たんなところで生まれた機械でございます。平たんな耕地条件を前提として生まれた機械でございますが、もう少し日本の地形に近寄ったヨーロッパにおける機械の体系、こういったことについてももう少し検討する余地があるのではなかろうかというふうに私は思います。つまり、機械の問題につきましては、機械に農地を合わせるという面も一面必要でございますが、同時に農地に合った機械を考えてみる、この二つの点をやはり検討する必要があるように思います。このような点について十分な投資をしていただくことが私は必要かと思います。  第三点は、価格の問題でございます。現在の価格制度は主として所得補償という観点から論ぜられる場合が多いわけでございますけれども、今後の日本の農業を考えてみました場合に、農業全体として輸入をふやしつつもやはり農業生産はふやさなければならない状況にあるということを考え、さらにその農産物をふやすにしても、そこにおのずから選択性といいますか、伸ばすべきものとそう伸ばさないでもいいものとの差があるということを考えますと、価格に対しましては需給調節的な機能、さらに選択的拡大に役立たせるという機能を与えるということが必要かと思います。この点の一つといたしまして、先ほど申しました酪農についてイギリスの場合をちょっとふえんして申し上げてみたいと思います。まず、イギリスの場合には、加工乳と飲用乳は先ほど申しましたように離してきめておりますけれども、農家に対しましてはプール計算で支払うという形をとっております。牛乳販売公社が農家から一括して集めました牛乳に対して、販売公社がメーカーあるいは市乳業者にいま申しました値段で売りまして、その売った値段をプールしたものを農民に渡していく。そうして、一方、消費者のほうにつきましては、学校給食、老齢者、乳幼児に対する補助金のついた安い牛乳を与えるということで消費の確保をはかっておる。このような考え方が私は今後日本においてももっと急いで採用される必要が——急いでとい意味は準備なしにという意味ではございませんけれども、もっとこういう経験は学ばれてよろしいのではないかと思います。  第四番目は融資の問題でございますが、融資については制度資金がかなりふえてきております。今度の予算でもふえてまいっておるわけでございますが、これの使われ方の実情を見ました場合に生じております問題といたしましては、どうしても最後の返済責任者が単位農協になっておるという点から生ずる制約でございます。理事の連帯保証ということになっておりますので、部落を代表してくる理事さんの中には、一定の部落に対してのたくさんの融資をすることについて、どうしても消極的になる。あるいは長期の融資に対しては、お年寄りの理事の方は、目の黒いうちには責任が持てないということで、消極的になる。こういう点がございますので、こういう途中でパイプの詰まらない形の制度金融というものを考えることが必要ではないか。それではどのような形でそれを考えるべきかと申しますと、それは次の問題に移るわけでございますが、農業における人材の確保と申しますか、農民の再教育ということと結びつけた融資を考える必要があるのではないか、このように思います。  日本の農業教育はいろいろな形で改められつつありますけれども、大きく申しまして、やはり学校を出るまでの教育が基本になっておりまして、学校を出たあと何回も自分で自分を訓練できるという再教育の機会が非常に少ない。また一たん世の中に出て農業をやった人たちが上がる学校というものが少ない。これはデンマークにいたしましても、スイス、ドイツにいたしましても、農業関係の学校はそういう経験者を入れるのがたてまえになっておる。こういう点から申しまして、私は今後再教育の機会というものをもっとふやすように考える必要があるというふうに思います。そのことを通じまして、農村に、それぞれの年度においては一人とか、あるいは一人も残らない、その次には二人残ったという、孤立分散的に残る若い経営者が、仲間意識をもって農業に自信を持っていくことができるようになる、そのための大切な機会だというふうに思います。こういう仲間を持ち、自己を再教育する人たちに対して、途中で話まらない金融を考えるということが政府のなすべき大きな仕事ではなかろうか。こういう意味におきます環境とか、広い意味におきます環境、あるいは農業をやっていきます場合の基盤を整備いたしまして、その上で農家がどのような作物をどのような程度つくっていくかということにつきましては、それは農民の自主性と責任、そしてその危険負担も農民が負う。そういう形でいくほうが全体としての能率がやはりあがるのではなかろうか、このように思います。  大体時間がまいりましたので、私の御説明をこれで終わらしていただきます。     —————————————
  12. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) ただいま委員の変更がございました。  鬼木勝利君及び浅井亨君が辞任され、牛田寛君及び渋谷邦彦君が選任されました。     —————————————
  13. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) たいへんありがとうございました。  それでは並木先生に御質疑のおありの方は順次御発言願いとうございます。
  14. 戸叶武

    戸叶武君 ここ数年来の酪農の伸び、その中において乳牛、豚、養鶏、そういうようなものは三倍以上にもなっているような状態でありますが、あなたが力説した酪農重点といわれましても、乳牛の問題でも、去年がたしか二・八頭、ことしが三頭をこえたというような、まだ発展段階でありまして、農家経営の実態からして、乳牛は四頭以上にならないと経営としてマイナスの面が多いのでございます。そういう点を伸ばしていくのにも、やはり資金の面において農民が詰まっている。それに対しての処置をみなければならない点が一点。  もう一つは、政府の草地改良とか、いろいろな国有林払い下げとか、思い思いの施策は述べておりますが、実質において自給飼料というものが足りない。結局濃厚飼料に依存しなければならない。その濃厚飼料が日本においては絶対量が不足している。二千二百億くらい農家は買い入れなければならない。そうすると、この不足からきて、値上げにより二百二十億ぐらいの今度は負担が一年間においてふえてくる、そこに一つの日本の酪農の伸びを押えている面がある。そればかりでなく、農林省当局の検査機構というものが非常に貧弱であって、抜き打ち検査などと言っておりますが、飼料は昔ごまかしが多いので有名だが、えさなんかほとんどろくなものはない、これは抜き打ち検査を見ても、不合格品が非常に多いばかりでなく、夏場になると、農民の知識が足りないので、ほかから栄養をとっているというので、えさの質を落としているというのは当然の事実なんだ。この米麦本位から酪農へという選択的拡大の名によって、また食生活の変化に沿うて対応しろという名のもとにされていながら、農民は実に苦しめられている。それはあなたが指摘している価格の面においても不安定な状況にある。特にこれはえさの問題ですが、あなたの指摘されたように、草資源の確保ということを言っているけれども、実質的にほとんど見るべきものがない。そうすると、当座においては濃厚飼料を海外から買わなくちゃならない。トウモロコシの問題、フスマの問題、コウリャンの問題、しかも、それが農家に渡るときには非常に高い値段で売られている、飼料審議会だのなんだのはおざなりで、ほとんど見るべき実績をあげていない。こういう点でもって、特に畜産の問題ではえさの問題にしぼって今後どうしていくか。それから輸入に待たなければならない点が大であるけれども、これが安く海外から入っても、末端の農家にあんなに高く売りつけられ、しかもその品物が劣悪なものが押しつけられている。こういう点において、日本の農政というのは非常に罪悪に満ちている。この不明朗な農政をどういうふうに直していくかということが第一点。  それから第二点は、あなたが先ほど言っているように、デンマークは御承知のようにいま危機に立っている。この十年間にあれほど理想的と言われたデンマーク農業が、酪農関係が、工業関係における所得並びに賃金と比較し三〇%も低く落ち込んでしまった。イギリスの五%の農業補助金よりも高い六%補の助金をデンマークは、特に輸出面において非常にウエートの高い酪農関係者に対して、補助金によって具体的に牛一頭に五千円とか一万円とか、そういうふうに当座間に合わないから、そういう素朴な形においての補助金政策でもって酪農を維持するためにつとめている。先進国のデンマークでも、そのように高度経済成長政策の世界的な波濤の中において、成長率の低い農業をどうやって保護するかということに専心しているときに、日本の農業基本法というのは、何らそういう施策がなされていない。こういう面において、価格の問題とも関連いたしますが、いろいろな農業に対する補助金政策が二階からの目薬のように役に立たないというような面を、こういう形で整備された面はいいのですが、やはりあなたが言っているような、進んでいこうとするところの、これから芽ばえて発展していこうとする農業に対して、デンマークでもイギリスでも行なっているような、あるいは西ドイツでもフランスでも行なっているような、立ちおくれている農業に対する保護政策、新しい保護政策というものが当然要請されなければならないが、これをどういうふうにしていくか。それはあなたは、融資の面で政府も今度はだいぶ力を入れたと言いますが、系統関係の金融の面においても、農民から吸い上げた金がどこに持っていかれるのか、ほんとうにわからない、こういう形において、農業に対する投下資本というものは非常に劣弱、農林予算というものが御承知のように一割程度低迷している。こんなばかな形において日本農業は実際私は進む方向を失っておりますと思うのですが、私のいま大ざっぱにあげた二、三点に対するお答えを願いたいと思います。
  15. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 四頭以上の酪農がふえなければ、どうも酪農としては経営として成り立たないという、これはまあ実は小さな問題だったかもしれませんが、これは統計がございますので、簡単にだけ申し上げます。昭和三十七年一カ年で乳牛がふえましたもののうち、八割くらいまでは五頭以上飼っておる農家でふえてきたというようでございます。したがって、現在ふえておりますのは、基本的には五頭以上飼わなければ採算がとれないということがあるんだと思いますが、現在ふえておるのは、もっぱらそのところでふえてきておる、こういう状況になっていると思います。  で、その問題は別にお答えをする必要もなかったことかと思いますが、その次に申されました、草地飼料の基盤を確保する作付面積をふやし、飼料の供給を確保していくという点につきましては、私は従来の既耕地だけではどうしても不十分でございますから、いまの六百万町歩以外の、主として現在森林とかあるいは原野になっておりますところの重点的な開発ということがどうしても必要だというふうに思います。で、その際に、どういう形で重点的に開発するかということについて、やはり一定の方針がなければいけないと思いますが、国有林を含めまして、山林を草地資源として開発をしていく必要は私はこれはまず間違いのない点だというふうに思います。  それから外国から入ってまいりましたえさが、農家に渡ります場合に非常に高くなっておるという点はよく聞くわけでございますけれども、それが途中でどれだけのマージンがどういう形でとられるようになっておるかということにつきましては、私実情をこまかく知っておりませんので、この点については私からお答えすることはちょっとできませんが、そういう不満といいますか、不平は私たち農村でよく聞かされております。  で、もう一つは、農業に対する補助の問題でございますが、私は今後の農業につきまして、先ほども申しましたように、外国からの輸入はふえるということは避けられないけれども、しかし、そのことによって、日本の農業を今後減らしていいという状況にはない、日本の農業は全体としてふやさなければ、国民経済全体の立場からいってもまずい状態にあるということを申し上げたわけですから、そういう形で農業を保護していくという必要は私先ほど強調したつもりでございます。ただその補助の仕方について、全体の補助金額そのものについて、不十分な点があるということはもちろんでございますけれども、その補助の仕方とあるいは補助——つまりどこへどういう補助をするかという点につきまして、もう少し御検討いただく点があるのではなかろうか、こういうことを申し上げた次第でございます。
  16. 田中啓一

    ○田中啓一君 たいへんに貴重なお話を伺いまして、まことに啓発されるところ大でございました。ことに農業政策を五点、御指摘になりました点も全く同感でございます。そこで少し先生にお伺いしたい点が残るわけでありますが、いま経済界の一部——学者の一部もあろうかと思うのでありますが、どうもこのままでいくと、日本農業は日本国民に高い食糧を食わせそうだ、その発頭人はわれわれのような農林関係議員のほうにもっぱら向けられておるわけであります。そこで、先生のおっしゃるような、将来できるだけ日本農業の総生産も上げていかなければならぬとは思うが、それは国際収支から考えてもそうなる。なるが、どうも高い値段の食糧になってしまいそうだ、これをひとつそうならないように考えてもらわなければ、第二次、第三次産業は困る、こういう意見が非常に強い。したがって、輸入依存度が高くてもいいじゃないか、どちらかといえば、輸入のほうに重点があるような意見が出かかっておる。これには学者の一部と申しましたが、学者も参加しておられるから、私はそう申しておる。そこで、先生がいま乳牛の値段についておっしゃったのですが、十何円とか二十何円というのは単位は……。
  17. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 一キロでございます。
  18. 田中啓一

    ○田中啓一君 一キロでございますか。そこで単位次第で、金額のことは一合を単位にするか一キロを単位にするかで、そのように違うことは当然のことでございますが、要は比較の問題で、先生のおっしゃるように、むろん現在の六百万町歩既耕地は若干減りましょうが、それに対して、さらに森林、原野等をできるだけ農用地にするということは、ほんとうにやらなければならぬことだと思っておりますが、その暁ですね、しかも、それが農業構造改善と一つになって進んでいって、そこで主として乳製品、加工牛乳のことになろうと思うのですけれども、外国から入ってくるであろうと思われる値段の同等以下でやれる見込みがございましょうか。この点をひとつはっきり御意見を伺えれば非常に幸いと思います。
  19. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 実はその点申し上げたつもりでありましたが、私のことばが足りなかったかと思います。大体昭和四十六年ごろまでに、政府ではいまの乳牛、現在大体百二十万頭ほどおりますが、ところが二百五十万ないし三百万頭くらいにはふえるだろうという見込みを立てておるわけでございますが、なおかつ、その当時必要とされる牛乳の消費に対して不足するという見込みになっておるわけであります。現在百二十万頭近くふえましたのは、私は大部分は戦前における大家畜の間の大体変化であったと思います。ヨーロッパでも乳牛がふえてまいりましたプロセスを調べてみますと、人間が食べておりました耕地の反収が上がりまして、そして余った農地に乳牛のえさを植えることができるようになるという点が第一点と、もう一つは、機械が入りまして、役畜が排除されまして、この排除された役畜が食べておりましたえさを乳牛のほうに回す、こういう形でえさが確保されてきたというふうに思います。日本においても現在までのところまだそういう形で進んできたと思いますが、戦前大家畜、馬が百五十万頭、役肉牛が百五十万頭合わせて三百万頭あったわけでありますが、馬は現在四十万頭に減りまして、大づかみに申し上げますと、馬の減った分だけ乳牛がふえたというかっこうになっております。役肉牛はもう少しふえておりますけれども、大体そういうかっこうでふえておる、そういうふうに考えてみますと、これから乳牛の頭数をふやし、かつ、牛乳生産をふやしていくということは、これからが新開発になるというふうに思います。そのようになりますと、私は、いままでは、ときには起きました牛乳生産の過剰という問題が、だんだん不足基調の状態に入ってくるのではなかろうか、そういうこともありますので、いろいろな手当てをして飼料をつくり、乳牛をもっとふやすようにしなければいけないというふうに思いますが、そのようになりましても、全体としての不足基調はなかなか解消できにくい状態ではなかろうか。そういうふうになりますと、飲用乳の値段は、どうしても上がりぎみになっていく。しかし、生産者価格は上がりぎみになりましても、全体の生産がふえまして、途中の処理は能率的になりますから、消費者の口に入る値段は、必ずしも上げなくてもいいという条件がそこに生まれる、そういうことで、牛乳の生産をふやしていくということになるわけですが、もしそうなりますというと、不足基調の中で、生産者の乳価が、現在一キロ当たり三十円ですから、一升に直しますと、大体三十円ですから、六十円くらい——六十円弱ということになりますが、そういう状態にきまりますと、加工乳の値段も、どうしてもそれに近づいていくということに私はなると思う。農林省が十年ほど前に、集約酪農地帯の構想を出しましたときには、一升三十円の原料乳を供給するという前提がございました。その前提のもとに、外国から入ってくる乳製品に対して、大体太刀打ちのできる乳製品ができる、こういう構想をとっておりましたが、現在は、一升三十円ではなくて、一升六十円近い原料乳価になりそうな形勢にある、そういう中で、私は、外国から入ってくる乳製品と太刀打ちをしていく状態に持っていくのは困難だというふうに思います。したがって、乳製品は外国から入れながら、日本の酪農は、飲用乳重点で伸ばしていく。ただ、乳製品を入れることが、飲用乳に対していろいろな影響が及ぶことがあり得るわけですが、その点は、先ほど英国で申しましたような、加工乳の値殿が飲用乳に及ぶのを遮断するような政策をそこにとるべきである、そういう点で、英国の現在とっておる政策について学ぶべき点があるのではなかろうか、このように申し上げた次第でございます。
  20. 羽生三七

    ○羽生三七君 お尋ねしたい点が二、三点あるのですが、その一つは、日本の耕地面積が非常に零細だということから、外国の一戸当たり保有面積が数十町歩、多くは百町歩をこすような外国農業と比較した場合に、先ほど御指摘もありましたが、零細耕地ほど生産性が低いわけでありますけれども、日本農業が将来共同化、協業化あるいは自家保有農地の拡大、いろいろ条件はあるでしょうが、そうしていっても、大局的に見て、非常な国家財政の保護を必要とするのではないか。つまり、農業自身で、普通の企業と同じように、採算ベースに乗る、そういう企業としての、農業としての発展というものに非常に大きな制約があるのではないかという感じがするわけです。そうかといって、私は、永久に国際競争力に対応できないようないまの条件を、依然として温存させておいていいという議論はとりません。これは、それこそ前向きの発展的な姿勢を必要とすると思いますけれども、それにもかかわらず、なおかつ、日本のこの零細耕地という制約は、相当国家財政の保護を必要とする条件が、今後相当長期間続くのではないかと思いますが、これが第一点であります。  それからもう一つは、第二点は、先ほどもお話ありましたように、最初に農業労働者、次に家族、続いて一家あげて離農という、こういう形で、まあ今後二、三年すれば、日本農業農家人口が約一割と——農業人口一割ということになる想定は、ほぼまあそうだろうと思います。その場合、その離農していく条件というものは、先日私、政府に述べたのですが、これは、日本の産業構造からいって、他産業へみな移行していく場合です。農業者から他産業へ、また、新規農業人口の場合ですが、移行していく場合に、他の給料です。農業以外の、つまり給料だけで生活できる条件が整うならば移行すると思うのです。ところが、日本のいまの一般給料生活者が、はたして全部農地を手放して、一家あげて離農していくような条件が急速に整うかどうか。これに非常に制約されると思うのですが、先生のいまの今後二、三年で農業人口一割とお考えになる場合には、そういう条件を考慮に入れて御想定なさっておるかどうか、これが第二番目であります。  もう一点は、先ほど反当五、六万円という程度のいまの土地改良、まあ農道その他含めまして。まあ将来反当十万円というようなことになる場合は、というところまでお話しあったが、そのときにそれをどうするか。自己負担でやるのか政府が見るのか。自己負担でやれば採算ベースに合いませんから、これは問題にならぬと思いますが、その辺はどういうふうに御指摘をなさったのか。その三点をひとつ伺いたいと思います。
  21. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) いまの零細性という、こういう変化が起きます場合の初期条件における限定があとあとまで響くであろうという点については、私はそう大きな意見の違いはないのではなかろうかと思います。ただ、もう少し具体的にどの程度の保護とか、どの程度の生産性ということになりますと、幾らか違ってくるかもしれませんが、その点は、第三点を申し上げて幾らか御参考に供したいと思います。  で、この離農というのは二つ意味があるわけですが、世帯主が農業から離れます場合は、私、先ほども申しましたように、その大部分が老齢による引退である。したがって、他産業に就職をする、転職をするという形は、原則として起きてはおらない。これはヨーロッパでもそうでありますし、日本でもそうである。そこで問題になりますのは、学卒新規学働力が就職をした場合の問題になりますが、この場合でも、離村をした場合には、私は、大体ヨーロッパでも起きておるようなことが日本においても起こるだろう、こう考えてもいいんじゃないかと思います。つまり、あと取りの人がほかのところへ出ておるわけでありますから、世帯主の老齢による引退ということが、戸数減に結びついていくという公算が非常に大きい、こう思います。問題になりますのは、世帯主が老齢化して引退いたしましたときに、むすこは通勤をしておる。で、家では奥さんが農業をやり得る状態になる。このときに農家戸数が一体、ヨーロッパにおいて減ったような形において減るであろうか、これが一番問題になる点だと思います。そこで、その問題は、これは将来に属しますので何とも申し上げられないという点があるわけですけれども、私は、新卒の就職先ということを考えてみますと、これは農家出身者を含めまして、現在のところ、中卒、高卒、平均して製造業に就職する場合は、その七割五分までが、従業員百人以上のところへ就職をするようになっておる、これが現状であります。さらに、就職した場合の身分は、常用工ということが普通になっておりますし、新卒につきましては、皆さまよく御承知の求人難ということが——新卒の供給増加ですね、学卒新規労働力は非常にふえてきております現在においてさえ、これだけの求人難が起きておるという状態から考えまして、いまのような点はもっと改善される見込みがある。  そこで問題は、そういう人たちが中年齢になったときに一体どうかということが最後に残るわけですけれども、私は、全体としての新卒がますます不足していくという状態は、全体としての労働力不足はやはりもう少し強くなっていくという状況だというふうに考えますから、この離農条件という点につきましても、私は、日本は日本なりに、ヨーロッパについて現に起きておる程度のものは起こり得る条件を持っておる、このように思います。その場合に、ヨーロッパにおいても非常に差がございます。アメリカのように、農業就業人口の減少以上に農家戸数の減るところもございますし、ドイツのように、大体農業就業人口の減少率に対して、農場数が半分程度のところもございますし、スウェーデンは大体三分の一とか、四分の一程度の減少率です。日本は、現在は五分の一ないし十分の一程度の減少率になっておる。非常にその差が開いておるわけですけれども、それが、いまのヨーロッパ並みといっても、ヨーロッパにはかなり幅がございますから、その中に入る程度の減少は、私は可能だというふうに申し上げておるわけです。ですから、何かとてつもない変化が起こるように申し上げておるわけではないわけでございます。その点がもし御理解いただければ、私が一割程度というふうに申し上げた想定も、何かとてつもない変化が起こりそうだというふうに考えておるのではないということを御理解いただけるんじゃないかと思います。  それで、第三点の反当たり五万円から十万円になった場合、これは現在でも、交付税を使いまして、二割かさ上げして、七割補助でやっておるわけでありますから、だれが負担するかということになれば、私は、土地改良は原則として国がやるべきだと考えておりますが、ただ、国がやるといたしましても、反当たり十万かけてやる。その十万かけておる中身が、これからいろいろな機械を入れていく場合にどうしても必要な区画整理であるかどうかということになりますと、もう少し日本の条件に合わせた機械の入れ方なり、区画整理のしかたというものがあるんじゃなかろうか。現在の場合は、等高線耕作という考え方をあくまで貫くということよりは、いままでの一反歩区画というものをそのまま大きくするという考え方になっておりますから、大きい機械を入れるための区画整理という考え方が、何となく従来の小農主義の区画整理を延長してみるということで、少しそこに金をかけ過ぎておる面があるのではなかろうかという点について研究、試験所その他で私は重点的にこの点については検討していただきたい点だという意味で申し上げたわけであります。
  22. 戸叶武

    戸叶武君 牛乳の価格の問題にしぼって質問いたします。  イギリスでは牛乳は非常に安い、パンと飲用乳は。イギリスの場合は、この加工製品の保護のために飲用乳のほうに犠牲を払わせるというのは、非常に加工製品がデンマークその他から多く入り過ぎているので、その国の施策の一つだと思いますが、日本の場合は、イギリスの場合と非常に違うと思うのですが、問題は、昨年度の、たとえば半期の利益を見ましても、明治乳業は半期で六億円もうけておりますし、森永は五億六千万円ぐらいもうけている。雪印なりなんなりが落ちているのは、やはり北海道のような基盤を持ち、それから酪農製品をつくっておったから、バターやチーズが、開放経済体制になっては競争にならぬというので収益は少なくて、結局は、雪印なり協同乳業は合併し、また、東京の周辺にひとつの自分たちの力を注ぐというような事態が今日出ております。いずれにしても、どこの国を見ても、先進国において、市販される牛乳の値段の半分は農家の手取りになっていると思うのです。あなたが指摘している面で一番問題は、やはり農家の、市販される末端価格の半分が農家にいっているかというと、日本は三分の一程度です。しかも、集約酪農をあなたが指摘したとおりに設定するようなときにおいては、三十円牛乳にするったって、市販においても十円牛乳というのがあらわれたのです。このごろは、市販が十六円なんといわれておりますが、われわれの家庭に配られるのは二十円以下というのはないと思います。一合十六円とすれば、農家は八円、一升ならば八十円という手取りにならなければ、とにかく乳牛を飼って、飼育して、しぼって出す農家の犠牲というものはかなり知れないものがあると思うのですが、たとえば一合十六円としても、農家の手取りは、いま六円以上になっております。あなたは六十円と言っておりますが、六円以上になって、もう長野県では八円、岩手県のような遠隔の地においても、たしか七円六十銭ぐらいの、農民は、スローガンをあげて戦っておると思います。しかし、いずれにしても、農家の手取りというものが、六円から少し上くらいのところで、しかも、メーカーのところだって、メーカーのところに入って、たしかメーカーが十円か十一円程度、そして市販業者に渡すと、市販業者が十六円なりあるいは十八円、あるいは二十円、二十二円という形で売りつけている、こういう問題に流通機構のそのプロセスにおいて非常な矛盾があり、非近代的な矛盾があって、それが事実上における価格を決定しておる。この問題点というのはどこにあるかといえば、幾ら言ったって、日本の農林官僚は怠慢で、どっちかと結託しているのか、具体的なデータを出さない、とれないはずはない。われわれがずっと歩いて、各地域によって違いはありますけれども、いろいろなデータをとりつつあることと、もう一つは、酪農協同組合のあり方が、農協から特殊農協として酪農協同組合、あるいはたばこ耕作組合、あるいはビール麦耕作組合、ほとんど下請的なボス支配になっておって、生産農民の利益を戦い取るだけの力というものが、日本の協同組合にはできていない、これが私は非常に日本の酪農の前進を妨げている、日本の農政の貧困、一つには、生産者を結集しているところの協同組合のボス支配、そうしてこの価格の問題に対して、明確な回答がもたれていない。この不明朗な形が日本の酪農をむしばんでおる大きな原因の一つだと思いますが、あなたは、その点はどういうふうに見ておりますか。その飲用乳は外国から来ないのですから、開放経済体制といっても、いま明治でも森永でも、もうかっているのは、市販の飲用乳にアイスクリームですよ。夏場におけるアイスクリームのもうけなんというのはべらぼうなもうけですよ、これは。日本のような、まだ酪農品のバターやチーズ、若干は伸びてきたけれども、イギリスの場合と違って、それを保護するという名のもとにおいて、この生乳の飲用乳の伸びを阻害するようなことは、政策としてはおよそ愚であって、もっとどうやって日本の酪農を伸ばすかという点においては、学校給食なり、あるいは工場における集団飲用なり、そういうものを盛んにして、飲用面におけるところの需要と供給の関係をずっとあおって、日本の酪農を伸ばしていくことと、さっき言った海外から入ってくる農構飼料というものを安くしていく施策というものがなければ、とにかく先進国としてのイギリスと日本の今日おくれておる段階とは違うのじゃないかという点が一点。  もう一つは、あなたが言っておるように、六百町歩の土地面積を、さらに三百町歩の草地を中心として伸ばしていかなけばならないというのはお説のとおりです。われわれ社会党は長年主張してきても、政府怠慢にしてこれをやっておりませんが、三百町歩と一言に言いますが、ちょっとやそっとでできません。これは機械化されて、いまの自衛隊は全部国土開発隊にしろと言っても、政府はなかなか聞かぬでしょうが、少なくともあれくらいの規模のものが、機械を——しかし、それだけに人を動員することはできないかもしれませんが、国土開発隊なり何なりが機械力をもって開発していかなければ、三百町歩もの開発というものは、口で言うのは簡単だが、実際にはできない。しかし、日本において山岳地があるという理由で、二〇%程度——十七、八%ないし二一%程度の、統計によっては荒地ないし草地の開拓がなされていない。デンマークにおいては五二%以上の開拓がなされている。デンマークは不利な山岳条件を持っていてもこれだけできる。それは、草資源というものがそれだけに豊富に供給できるというような態勢ができているのは、国の施策がそれだけ伸びているからだと思いますが、そういう点においての御所見を承りたい。
  23. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 第一点は飲用乳の問題でございますが、おそらくお考えになっておられたのは脱脂粉乳のことかと思います。学校給食は、これはどの国でも、その国の酪農を伸ばすということをたてまえといたしまして、それから学校の生徒の体位を伸ばす、そのことによって将来の需要を確保する、つまり若いときに胃袋、舌を牛乳にならすという二つの効果をもってやっておるわけでございますから、日本においても、それは今後強力に進めらるべき対策だ、その点については私は全然異論はございません。その点は、先ほど英国のことを申し上げましたときに、学校給食のみならず、老齢者、乳幼児に対する補助牛乳ということを申し上げて指摘したつもりでございます。  第二点のえさの問題につきましては、私先ほど申しましたように、事例を持っておりませんので、その点はお答えいたしかねますが、第三点の新しく草地をふやす場合の問題でございますが、それはいま御指摘になりましたように、機械化開墾し新しい農法でやらなければいかぬという点については、これももう異論のないことかと思います。ただこの際問題のありますのは、そういう政策を打ち出します場合の、何といいますか、全体としての行政の手段といいますか、行政組織の整備ということになりますが、御承知のように、国有林ということになりますと、中央から末端に至るまで非常に強力な組織ができておるわけでございますから、そういう中から畜産に対して資源を再配分するということを考えます場合には、これは長い間の年月を育て上げてきた一つの組織に対する改変と申しますか、手をつけるということがどうしても問題になってまいりますので、これは、そういう点について私は配慮をしなければ、実際問題としてはなかなか実施しにくいことではなかろうかと、その点についてもおそらく大きな異論はないのではないかと思います。  第三点の——順序が間違いましたが、二点で申されました、メーカーその他の利潤が高過ぎるのではないかという点でございますが、私は、農民と乳製品メーカーというふうに対比いたしましたときに、それが高過ぎるという点はおそらくだれもが否定できないだろうと思います。ただ問題は、政府がそういう場合に手を打つ場合の打ち方といたしまして、つまり日本の酪農メーカー、乳製品メーカーだけがそのような高い利潤を上げておるのであれば、おそらく幾らか手は打ちやすいと思うのでありますけれども、資本はやはり水の低きに流れるがごとくに利潤の高いところへ流れておるわけでありますし、また全体としての利潤率が日本においては高いわけでございますから、ここだけ手をつけるということは、政策の具体的な効果ということを考えましたときに、もっと全体的な態勢を考えませんと、なかなか手をつけにくい点があるのではなかろうか。そういう点で申しますと、そういうことについて政府が怠慢であっていいという意味ではありませんけれども、政府としてやり得る点がほかにまだある。それは何かと申しますと、一つは、農家に安い値段で優良な子牛を供給するための施設、あるいはそういう措置を講ずる。これは具体的に個々の農業協同組合その他で自主的にそういう措置をとってきておりますけれども、そういう措置をもっと大きな規模で実施することがもう一つの酪農を育てるための方法ではなかろうか。そこと価格と両方を政府のほうで手をつけまして、その間における利潤の分配ということになりますと、これはいまのところはある程度いわば自由にまかせるというかっこうになりますけれども、子牛の供給と、乳牛の牛乳の値段、その両端に対してしっかりした対策がとられれば、よほど事態は違うのではなかろうかと、このように考えております。
  24. 牛田寛

    牛田寛君 大体問題は出尽くしたようでございますが、価格政策の問題について、それから酪農の問題について、お伺いしたいと思います。  先ほど、価格政策の問題について、選択的拡大を助けるような価格の政策をとるべきである、こういうお話がございましたが、それについてもう少し具体的なお考えを承りたい。それに関連しまして、現在日本の価格支持に対する財政資金というものは非常に割合が少ないように思います。食管会計を除いては、ほとんど皆無に近いといった状態ではないかと思います。外国の例を見ますと、非常に多い。特にアメリカなどは六〇%あるいはそれ以上のものを価格支持においてやっているということで、これからやはり量的にも強力な価格支持に踏み切るべきではないかと思うのでございますが、この点についての御意見を伺いたい。  それから、基盤整備の問題がお話ございましたが、反当五万から十万くらいの金をかけたのではペイしないかということでございますが、なぜこのように反当の基盤整備の費用がかかるのか、その点についてもし具体的に御研究があればお伺いいたしたい。  それからもう一つは、農機具の導入の問題でございますが、現在の農機具導入のしかたは、むしろ農機具メーカーの動向に引きずられているのではないか、もっと農機具の使用については基本的な研究が必要ではないか、現在においてはその研究が足りないのではないかというふうに私は考えますが、その点についての御意見を伺いたい。  それから、酪農の問題もだいぶ出尽くしたようでございますが、ただいまのお説のように、酪農としては生乳のほうに重点を置くという方向に持っていった場合に、いわゆる草地自給飼料と、それから濃厚飼料、これの依存度をどの程度の割合に持っていくか、また濃厚飼料については、需給、あるいは輸入飼料に対するその依存度、それに対してはどの程度のお見通しをお持ちであるかどうか、この三点についてお伺いいたします。
  25. 並木正吉

    公述人(並木正吉君) 実は、価格支持についての農林予算に対する比重の問題でございますが、これは御指摘のように、日本の場合には、価格支持に対する比率が少ないという点がございます。ただ、私が先ほど来申し上げましたことは、ヨーロッパの場合の価格支持というのは、考え方といたしまして、農産物が過剰になっている国の価格支持でございますから、日本の場合には、私は国内でまだ農産物をふやさなければならない状態において価格を考えるということが必要ではなかろうか、このように申し上げたわけであります。  その次の反当五万ないし十万というのが、なぜそのようにかかるかという点について、詳しい分析をしたことはございませんけれども、大部分はやはり土を動かす費用のようであります。しかも、その土を動かすときに、表土をもとのところへ戻すということをやらなきゃいけませんから、大多数のところでは表土を一時預けする、表土だけをどこかへさらっておきまして、ためておきまして、そうして基盤を整備して、また表土をもとへ戻すというやり方を普通とっておると思いますが、そういうことをかなり大幅にしなければならないような状況になっておる、そのことがこのような価格になるのではなかろうかというふうに考えております。その意味で、先ほど等高線耕作という考え方をもう少し徹底して考える余地があるのではなかろうか、このように申し上げた次第でございます。  それから、農機具の問題でございますが、農機具について、メーカーに引きずられておるかということは、私存じませんけれども、どのような農機具を日本の農業に入れていいかというその基礎的な研究については、非常に不十分であり、おくれておるという点については、先ほど来私強調したことかと思います。  酪農の場合の粗飼料と濃厚飼料の割合をどう考えるか、あるいは、粗飼料は原則として国内で自給するとして、濃厚飼料については一体どう考えるかという問題でございますが、これは、濃厚飼料は、現在のところ外国から入っておりますのはその七割五分までが鶏が食べております。その残りも大体豚に行きまして、現在のところ牛の食っておる部分は、たしか、ほとんどとは言えませんけれども、おそらく一割内外程度に少ないかと思います。そういう状態が維持できていくということであれば私は非常にいいのではなかろうか、そういうふうに考えております。少なくともその程度のいわば状態に、何といいますか、現状を維持したい。へたをしますともっと入れるということが起きてまいるわけでありますから、濃厚飼料につきましても、現在は大体五百万トンないし六百万トンにいろいろなふすまも入れましてなっております。行く行く千万トンということも、どうも近い将来において起こりそうな勢いがあるわけであります。大体そのように思います。
  26. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) 藤田先生、並木先生には、御多用中、有益なお話しを承りまして、ありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  午後一時十五分から再開することにして、暫時休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  27. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) これより予算委員会を再開いたします。  午後は三人の公述人のお方に御出席をいただいております。その意見を拝聴する前に、公述人の皆さまに一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、本委員会のために御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員一同にかわりまして厚くお礼を申します。公述の時間は御一人三十分程度にお願いいたします。  それでは最初に稲川宮雄先生にお願いいたします。
  28. 稲川宮雄

    公述人(稲川宮雄君) 全国中小企業団体中央会専務の稲川でございます。三十九年度予算案につきまして、中小企業の立場から意見を申し述べたいと存じます。  三十九年度予算編成の閣議決定方針によりますると、中小企業の近代化を重要政策項目に取り上げるということでございまして、そのせいでございまするか、予算案に出ました数字を見ますると、百六十五億円が計上されておりまして、これは前年三十八年度予算百十八億円に比較いたしますると、三九・八%の増加割合でございまして、予算総額の増加が一四・二%であることから考えますると、大幅の増加割合でございまして、また、その予算におきましても、商店街の造成でございまするとか、あるいは指導センターの設置でございまするとか、各種の新しい項目が取り上げられまして、こういう点におきましては、私どもは、この予算々編成していただきました関係御当局に対しまして深い感謝の念を持っておるのでございます。しかしながら、深い感謝の念を持っておるということは、この予算案に対して満足しておるということは全然別個でございまして、率直に申し上げまするならば、私ども中小企業といたしましては、はなはだ不満であると言わざるを得ないのはまことに残念でございます。なるほど増加の割合は四〇%になんなんとしておるのでございまするけれども、しかし、その総額がわずかに百六十五億円でございまして、しかも、これは中小企業庁だけではなくして、労働省あるいは大蔵省の関係予算を合わせた総額でございます。三十九年度予算総額は三兆二千五百五十四億になっておりまするので、それとの割合を見ますると、千分の四・七八でございまして、〇・五%にも達しないという金額でございます。租税収入に占めまする中小企業の納税割合というものは、相当高額になっておることは申し上げるまでもないのでございます。また、中小企業の数は、事業所統計によりますると、三百二十二万のうちに三百二十万ということでございまして、九九・四%を占めておるというこの中小企業に対しまする予算総額が百六十五億円であり、全体の予算の〇・五%にも達しない。こういう数字では、われわれは満足することができないのでございます。もちろん、予算だけが中小企業対策のすべてではないと存じまするけれども、中小企業政策を進めていただきまする基本は何といいましても予算でございますので、この予算がこの程度では、今後のこのむずかしい中小企業問題、あるいは中小企業対策を進めていくことはできないのではないかということを心配するのでございます。  私からあらためて申し上げるまでもなく、三十九年度という年は、中小企業にとりましてはまことに重大な困難な年であるというふうに考えるのでございまして、第一には、大企業と中小企業との間に存在しておりますところの格差というものをどうしても解消し、あるいは是正をしていかなければならない重要な問題を控えておるのでございます。消費者物価の問題から中小企業の近代化ということがいわれておりまするけれども、単に消費者物価の問題だけではなくして、輸出の振興、その他あらゆる面におきまして、日本の国民経済の均衡的な発展をはかってまいりますためには、大企業と中小企業の間に存在しておりますところの企業規模間の格差というものを解消しなければならぬということは、あらためて申し上げるまでもない重大な問題だろうと存ずるのでございます。  第二の問題は、いまや日本は経済上非常に大きな変動が来つつあるのでございまして、その変動は、言うならば構造的な変動でございます。開放経済でありますとか、あるいは技術革新でございまするとか、あるいは産業構造の高度化でありまするとか、あるいは生産の様式が変化し、さらに消費構造というものが大幅に変化していくその間にあって、いわゆる流通革命、言葉の適否はしばらく別にいたしましても、そういうことがいわれておる現状でございます。あるいはまた、労働事情も数年前とは非常に変わってまいりまして、労働の需給逼迫から非常に経済上の構造変動が起こってくるのではないか。どの問題一つをとりましても、まことに重大な問題でございまして、これらがすべて中小企業に対しては重大なる関係影響を及ぼしてくるという時期なのでございます。  さらに、三十九年度は、これまた申し上げるまでもございませんけれども、国際収支の悪化を防ぐために金融引き締め政策というものが継続して行なわれる公算がきわめて大でございまして、おそらくこの三月危機は無事に乗り切ることができましても、あるいは六月危機、あるいは八月危機というように、金融引き締め政策というものが相当継続されるのみならず、さらに強化されるのではないか、こういう見通しの中におきまして、中小企業に対しまするところの金融引き締めの直接の影響のみならず、間接のしわ寄せ影響というものがすでに御承知のとおり深刻にあらわれつつありまして、倒産が相次ぐというような状態でございます。三十九年度にもこれは解消するどころか、さらに深刻化が予想されるのでございます。こういうような構造的な問題、あるいは景気変動の問題、そういうような点を考えましても、三十九年度という年は、中小企業にとってまことに容易ならざる年であるというように私どもは観測するのでございますが、このような重大な時期にあたりまして、全体の〇・五%にも達しない百六十五億と、こういう予算によりまして、はたして十分なる中小企業対策というものが講ぜられるかどうかということに非常な不安を持つのでございます。  以上は総括的な意見でございまするが、項目的に二、三の点を申し上げますると、まず第一は、中小企業の近代化促進費でございます。この中小企業の近代化の必要であることは申し上げるまでもございませんが、この近代化を促進いたしまするために、中小企業の設備近代化資金助成というものが行なわれているのでございまするが、その金額は四十五億円でございます。これは半額を都道府県がつけまするので九十億になり、さらに回収金がございまするので総額にいたしますると百四十三億円になるのでございまするけれども、この百四十三億円というものが三百二十万に及んでおるところの中小企業の近代化に、はたしてどれほどの役割を演ずるかということが大きな問題であろうと思います。なるほど百四十三億という金額は少ない金額ではございませんけれども、おそらく大企業でございまするならば、二つか三つの設備資金にすぎないのではないか。それが三百二十万の中小企業に対する設備近代化資金であるという点から考えますると、決してこれは額として大さな額ではないというふうに考えるのでございます。  それから次は高度化資金、中小企業の構造を高度化するための資金といたしまして、たとえば工場団地でありますとか、あるいは商業団地でありますとか、あるいは協同組合の共同施設でありますとか、あるいは企業合同の資金でありますとか、あるいは商店街の造成でありまするとか、そういうものに対しまして高度化資金として四十三億円がつけられておるのでございまして、前年度と比較いたしますると大幅の増額にはなっております。しかしながら、これまた府県庁がこれにつけ加え、あるいはまた回収金がございまするから、これだけの金額ではございませんけれども、この中小企業の構造を高度化していくという中小企業基本法に盛られたこの重点施策を行なっていく上におきましては、決して多い金額ではないというふうに考えるのでございます。したがいまして、この工場団地なども非常な意気込みをもってやっておりまするし、全国各地で団地の計画が進んでおりまするけれども、その団地の実際というものは決して楽なものではございません。たとえば団地に新しく移りましても、古い土地を処分しなければ資金の用意ができないのでございまするが、その古い土地、建物を売るということは非常に困難でございまして、東京で考えておりますると、このごろの地価の値上がりでありまするから楽に売れるようでございまするが、なかなかこれが売れない、したがいまして、資金に非常な困難を来たしておる、こういうような状態でございます。これらの近代化資金あるいは高度化資金について特に申し上げたいと思いますることは、その償還の期限が大体におきまして、例外はございまするけれども、普通一年据え置きの四年年賦償還ということでございます。団地の土地につきましては、三年の償還でございましたが、今回法律を変えていただく予定になっておりまして、これが五年になるのでございますけれども、総じて言えば、五年の間にこの資金を返還するということになっておるのでございます。これは後ほど申し上げまする金融の問題についても同様でございまするけれども、一体、今日のこの税制のもとにおきまして、五年の間でこの設備資金というものをはたして十分に返還することができるであろうかどうか。はたしてそういうような税制になっておるであろうかどうかということにも非常な問題がございます。したがいまして、近代化設備をし、あるいは団地の造成をする、右手においていろいろ設備をしておりまするその左手において、すでに返還の期限が迫ってくる、こういうことで、設備資金を返還しなければならないために運転資金をこれに振り向ける、こういうことから資金のショートを来たしまして、非常な困難に遭遇するという例が非常に多いのでございます。こういう点から考えますると、諸外国における団地には、中には六十年の月賦償還というような例もあるそうでございまするけれども、私どもはそのような長い期間は適当であるとは思いませんが、どんなに少なく見ましても十年ぐらいの償還期限というものがございませんと、今日の税制のもとにおきましては、償還が困難ではないか、ここにまたいろいろな無理を生じてくる一つの原因があるのではないかというように考えるのでございます。  それからこの近代化政策の問題につきましてもう一つ申し上げておきたいと存じますることは、近代化促進法という基本法の関連法律が制定されたのでございまするけれども、この近代化促進法によりまする政策は、業種を指定いたしまして、その指定業種のみについて対策が進められているのでございまするが、その指定業種というものは、国際競争力の強化に役立つもの、あるいは産業構造の高度化上必要なもの、こういうことに限定されておるのでございまするが、今日、物価問題その他から最もその対策の必要なものは、そういう面以外の点に多いのではないか、消費者物資を扱っておりまするような面に非常にこの近代化が必要である、こういうことでございまするが、そういう点につきましては指定が行なわれないで、ただいま申しましたような国際競争力とか、あるいは産業構造の高度化という点に限定されておるということが非常に大きな問題ではないかというふうに考えるのでございます。いわゆる第二ラウンド論というものがございまするけれども、私どもは、第二ラウンド論からさらに進みまして、第三ラウンドというものが必要ではないかというようなふうに観察するのでございます。  次に、予算の項目の中で、これは私ども、てまえのことを申し上げてまことに恐縮でございまするが、私ども中央会も、全国中央会、また都道府県中央会、それぞれ政府の助成をいただいておるのでございまするが、一体、こういうような予算につきまして、はなはだ実情に合わないような予算をいただいておるような感じを抱くのでございます。と申しますのは、中央会ができましてからすでに六年も七年もたっておるのでございまするが、最初にいただきました指導員の予算単価が一万九千八百円でございまして、どんなに改定をお願いいたしましても、全然この改定は行なわれないのでございます。中小企業の指導をいたしまする者の単価が一万九千八百円ということで、はたしてどの程度の指導員が得られるかという点でございます。もちろんこれは自分のベースによりまして補給しなければならないのでございますけれども、りっぱな指導力のありまする職員は、どんどん離れていってしまう、こういう実情でございまして、やはり予算はもっと効率的に、実情に合うようにしていただきたい。これは自分たちの体験から、そういう点をまざまざと感ずるのでございます。  次の問題といたしましては、零細企業対策でございまするが、基本法におきましても零細企業対策はうたわれておりまするし、また予算におきましてもいろいろ御配慮はいただいておりまするけれども、総体的に申しまして、私どもは、中小企業対策の中で小規模零細対策というものが手薄である、こういう感じを抱くものでございます。中小企業の中でも、特に零細企業というものは、圧倒的に数が多いのでございまして、これらの圧倒的に多い零細企業というものに重点を置いた施策というものを考え、また予算の上においてもそういう措置が必要ではないかというように考えるのでございます。中小企業対策は、数の上におきましては非常にたくさんあるのでございまして、そういう面では、おそらく私どもは世界無比であろうと思います。世界どの国へ参りましても、日本ほど中小企業対策がたくさん打ち出されている国はどこにもないのでございます。しかしながら、その効果が十分でないということは、要するに最も圧倒的多数を占めております零細企業に重点が置かれてないということからくるのではないかと思うのでございます。もちろん商工会あるいは商工会議所に対しましては、普及員、指導員というような予算も相当額つけられておるのでございまするが、零細企業に対しましては、この際、よほど思い切った施策の手を打っていただかなければならないのではないか。従来の中小企業対策の基本的な考え方は、いわゆる経済的な合理性、合理的な中小企業のみが栄える、こういうたてまえがとられておるのでございまして、これは考え方として私は正しいと思うのでございます。しかしながら小規模零細企業に対しましては、単に経済的な合理性のみから一挙に解決することは困難であり、また、そこに零細企業対策のむずかしさがあると思うのでございまするが、ある程度社会政策的なものも考慮いたしまして、そうしてこれを経済政策のベースに乗せる、こういう施策がほしいと思うのでございます。そのためには、たとえば無担保、無保証の制度を零細企業のために新しく開くとか、あるいは従業員に対する施策につきましても、資金の借り入れによりまして施設を設ける、こういうことはできるのでございます。年金福祉事業団でありますとか、あるいは雇用促進事業団でありますとか、あるいは退職金共済事業団でありますとか、いろいろ資金の融通を受けまして、それによって宿舎でありますとかその他の設備を設ける道は開かれておるのでございますが、相当の中小企業になれば、これは独自の力でできまするけれども、零細企業は、資金を借りたいにも担保、保証の関係で、なかなか資金が借りられない。したがいまして、こういう零細企業に対しまする従業員の福祉施設というものは、国においてその施設をみずから講じていただきまして、これを中小企業に、もちろん有料でけっこうでございますが、貸し付ける、こういう制度をとっていただくことが必要ではないか、そうでありませんと、単に資金融通だけでは借り入れる力がないというのが現状ではないかと思うのでございます。特に零細企業対策として申し上げたいと思いますことは、零細企業もやはりある程度その企業規模というものを適正化していかなければならない。そのためには、もちろん強制ではございませんが、みずから進んでやりたいという零細企業に対しましては、この際、企業合同というものを促進していくということが大きな一つの政策の柱になるのではないかと思うのでございます。そういう零細企業の、進んでやろうという人に対しましては、企業合同というものをやりやすいような税制上の措置あるいは金融上の措置を講じていただきたいのでありますが、特にそのためには、中小企業等協合組合法の中に企業組合という制度があるのでございます。しかしながら、この企業組合というものは、かつて脱税のための組合であるというにおいがありましたために、非常に今日誤解を受けておりまして、企業組合というものは社会から白眼視されておるのでございまするが、私は、今日の事態におきまして零細企業というものをある程度合同せしむるためには、この企業組合制度というものをもっと活用するという線が必要ではないかというように思うのでございます。ところが、この企業組合に対しましては——普通の協同組合には特別法人扱いがあるにかかわらず——特別法人扱いが行なわれていない。また、その剰余金に対しましても、事業協同組合にはある程度損金扱いがあるにかかわらず、企業組合にはそういう特典もない。その他地方税におきましても、いわゆるまま子扱いになっておる。これは私どもは企業組合のために言うのではなくして、零細企業の合同というものをある程度促進ずるために、この制度をもっと活用するような政策を打ち出していただきたい、あるいはまた、予算的措置を御考慮いただきたいというように考えるのでございます。なおもう一つ予算的なわれわれの希望といたしましては、中小企業の問題というものは非常に複雑な問題でございまするから、この際、中小企業の総合的な研究所というものをつくるような、そういう構想を打ち出していただくことが必要ではないかと思うのでございます。中小企業は生産性が低いとか賃金が安いとかいうような非難を受けまするけれども、それはもちろん、中小企業自体の経営上の欠陥のあることはこれは認めなければならないと思いまするが、同時に、中小企業は、環境の不利、その取り巻いておりますところのいろいろな条件が非常に不利なために、中小企業の生産性が上がらないという問題が多いのでございます。たとえば、大企業の中小企業分野への進出でありまするとか、あるいは大企業の下請に対する支払い遅延でありまするとか、あるいは金融、税制上の不利でありまするとか、いろいなそういう中小企業の発展を阻害するような、あるいは発展できないような環境というものがあるのでございまして、そうい点を含めまして、中小企業の生産性の低さというものを分析し、研究し、どこにその根因があるかということなどを研究するというところの総合研究所というようなものをつくっていただくということを特に希望するわけでございます。  以上が一般予算に対する意見でございますが、あわせて財政投融資につきましてもごく簡単に触れておきたいと思うのでございまするが、最近における全国銀行の中小企業に対しまする貸し出しというものの額は、減ってはおりません。ふえつつあるのでございますが、その貸し出し割合というものが毎年低下しつつあるのでございまして、三十一年の終わりごろをとってみますると、中小企業に対しまする貸し出し、これは都市銀行でございまするが、大体三六%は中小企業に貸し出されておったのでございます。現在はそれが二六%台に下がっておるのでございます。一%下がりましてもこれは非常に大きな金額でございます。それが一〇%も下がっておるのでございます。もちろんこれは相互銀行とか信用金庫、信用組合というものによってカバーいたしておりまするけれども、こういうように銀行の中小企業に対しまする貸し出しの割合が非常に低下しておるのでございます。したがいまして、どうしても私どもは、財政投融資というものによってある程度これをカバーしていただかなければならないというふうに考えるのでございますが、その財政投融資の占めまする構成比と申しまするか、シェアというものが、最近またこれは低下しておるのでございまして、三十七年の三月には八・九%ございましたものが、三十八年の十月には八・四%というように、中小公庫、国民公庫、商工中金のシニアというものが下がってきておるのでございます。こういう点から申しましても、やはり財政投融資のみにたよるということはほんとうではないと思いますけれども、そのシェアは、少なくとも一〇%ぐらいは確保していただくということが必要ではないかと思うのでございます。  なお、金融問題につきましては——特にこの金融よりも前に、大企業の下請中小企業に対する支払い遅延というものを何とか解決しなければ、幾ら金融をつけましても、金利負担だけが多くなるわけでございまするから、金融政策とともに、やはり下請に対する支払い遅延というものの解消のための手を打っていただくということが必要であると考えております。  最後に、今回の予算におきまして、商工中金に対しましては三十億の政府出資が行なわれたのでございまして、商工中金の自己努力とともに、その金利が低下いたしまして、大体中小公庫あるいは国民公庫並みの金利に下がるということは、かねがね私どもが要望し、主張してまいりました点でございまして、この点が実現いたしました点につきましては、私どもは非常に賛意を表し、感謝しておる点でございます。  以上、要を尽くしませんけれども、私の公述を終わりたいと存じます。ありがとうございました。
  29. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) ありがとうございました。  それでは、稲川先生に御質疑のおありの方は順次御発言願います。——御発言ございませんか……。     —————————————
  30. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) 次に、高松和男先生にお願いたします。
  31. 高松和男

    公述人(高松和男君) ただいま御紹介にあずかりました高松でございます。昭和三十九年度予算案につきまして意見を述べるようにとのことでございますので、財政一般につきまして、一学究としての立場から、忌憚のない意見を述べさしていただきます。  まず第一の点は、昭和三十九年度予算案の規模が、わが国の当面重要な問題となっております物価にどのような影響を与えるのであろうかという問題でございます。いまさら申し上げるまでもございませんが、予算の持つ財政政策的意味を考えてみましたときに、予算は、第一に経済構造の全般的な長期的な問題を考えると同時に、また、当面する応急対策としての短期的な問題、その二つをあわせて考慮した上で編成していかなければならないといわれております。この二つの観点から、国家の経済活動を通じまして国民経済の発展と国民生活の安定をはかっていくところに予算財政政策としての意義があると考えます。  ところで、わが国経済は、高度成長の影響を受けまして、物価の上昇によりましてかなり国民生活が圧迫されてきております。政府の経済の見通しによりますと、昭和三十九年度には消費者物価は四・二%上昇するであろうと言われております。しかし、経済専門家の総合的な意見を考えますと、もう少し高く、少なくとも七%ぐらいは上昇するのではないかと予想されております。したがいまして、このような物価上昇の予想がありまする限りにおきましては、予算の編成におきまして物価上昇の悪影響を除去し、景気対策を十分に盛り込んだ予算でなければならないということは当然のことであると思います。ところが昭和三十九年度予算案を見ますと、必ずしもそのような配慮が十分になされているとは思えない節がございます。たとえば景気刺激の効果が非常に大きい公共事業費伸びが前年度かなり上回っております。また、財政投融資も三十八年度当初予算に対しまして二〇・八%と、異常とも言えるような大きな伸びを見せております。このような予算規模の拡大と投資的経費の増大が、景気を刺激するであろうと考えることは、決して否定できないと思います。もしも物価の上昇を押えようとするならば、あるいは物価の上昇を現在水準にとどめようとするならば、財政支出を本年度と少なくとも同じ規模程度にするか、あるいはさらに積極的に財政支出を小さくしていく緊縮予算が望ましいことは、もちろん言うまでもございません。しかも、経済の成長率予算伸び率とを比較してみました場合に、予算伸び率が経済成長率を上回るということになりますれば、これは大きな問題でございます。このような観点から考えました場合に、三十九年度予算案は膨張予算であって、必ずしも物価の安定に効果的に作用しない予算ではなかろうかと、そういう批判があるのは、当然のことと思います。  このように、財政の面から物価を押えることができないといたしますれば、結局はこれからの金融政策に、より大きな比重をかけられざるを得ないと思います。本来、財政政策と金融政策は、ともに同じ目的に向かって働くべき性格のものであります。ところが、一方において財政政策面でかなり大きい支出があり、それをカバーするために金融の引き締めを行なうということになりますれば、それはいろいろな面で弊害が出たくると思います。特に企業の側から見ました場合には、やがて資金繰りに困り、倒産、そういう結果になる企業もやがて出てくるのではないか、また、そういう傾向が金融引き締めによって、かなり表面化しつつある段階でもございますので、予算の編成におきましては、このようなわが国の物価のあり方というものを十分に考慮した景気対策としての予算、これを十分に考えていかなければならない問題ではないかというふうに考える次第でございます。  次に、歳入の問題につきまして申し上げます。三十九年度予算案の全体を見まして感じますことは、新規財源が二千億程度しかないのに歳出かなり増加しているということでございます。特にその中心となっておりますのは、いわゆる当然増加の経費が非常に多く、予算全体といたしましては二千五百億円を上回っていることが指摘されております。それをまかなうためには、一般会計のワクでは不十分でございますので、結局これが財政投融資へのしわ寄せとなってあらわれていることは、否定できません。一般会計自身といたしましても、税収の一部を地方に譲ったり、あるいは特別会計を新設したりいたしまして、形の上では均衡の姿をとっておりますが、実質的には自然増加の経費、あるいは後年度負担がかけられる措置がいろいろとられておりますので、やがて予算編成かなり困難な時期が来るのではないか、少なくとも三十九年度予算におきましては、もはや身動きのつかない予算となってしまったのではないか、このような懸念がございます。したがって、この辺で予算のあり方を、もう一度根本的に考え直す時期に来ているのではないかと考える次第でございます。  歳入面で問題になりますことの一つは、いわゆる減税補てん債を新設したことであります。これは言うまでもなく、住民税減税の補てん策といたしまして、地方自治体に国庫が元利補給の形で地方債の発行を認めたものでございますが、これは実質的に公債発行の道を開いたものと考えることができます。したがって、やがてこれが財政難を理由に公債の発行、すなわち赤字公債の発行ということにつながってゆくとすれば、これは大いに警戒しなければならない問題であると思います。  それからもう一つは、いわゆる自然増収でございますが、経済成長に従いまして税の伸びがあることは当然でございますが、自然増収は特に三十九年度予算におきまして、史上最大といわれるくらいの大きな規模増収が見積もられております。財政の観点から考えますと、国民所得が一単位伸びれば、それに応じて自然増収の形で税の伸びが一・五あるといわれております。そういたしますと、経済の成長に見合った租税の徴収すなわち一対一の比率を保つことが、国民の税負担の均衡という点から望ましいわけであります。そう考えますと、自然増収のうち、少なくとも一・五のうちの〇・五の部分——三分の一の部分は、減税に回すべきであるという主張が出てくるわけであります。三十九年度予算案におきまして、自然増収六千八百億円のうち、三分の一に当たります二千三百億円をさらに減税しまして、国民の税負担を緩和し、税負担率を高めない措置をとることが望ましいという意見が、そこに出てくるわけでございます。  なお、先ほどの減税補てん債につきましては、地方財政の見地から、財源難という強い要望があったことと思いますが、ひとつその問題を解決する場合には、国政と地方行政との再配分という問題、特に地方自治体におきましては、新産業都市の建設をはじめといたしまして、さまざまな財政的要求が強くなってきておりますときでございますから、この際、国政と地方行政の事務の再配分の問題を、さらに一そう検討し、実施してゆくことによって、かなり大きな部分の問題が解決できると考えられます。  第三に、税制について、申し上げます。三十九年度の税制改正によりまして、国税地方税を合わせまして、平年度二千百五十三億円という、一応二千億減税の形が成立いたしました。しかし一方におきましては、揮発油税あるいは地方道路税の引き上げがございますので、その増収分を差し引きますと、実質減税額は平年度千八百九十八億円、初年度千二百十億円となり、二千億減税は必ずしも看板どおりではないという批判が出ておることは御承知のとおりでございます。国民にとりまして重要なことは、租税負担率でございます。すでに指摘されておりますように、国民所得に対する税負担率は、明らかに三十九年度におきましては二一・五%から二二・五%へとはね上がる計算になっております。この税負担率を横ばいにとどめるだけでも、先ど申し上げましたさらに二千億円程度減税が必要であるといわれておりますように、現在行なわれておりますこの減税は、決して税負担の軽減ということよりも、むしろ税金がさらに高くなるのを調整する性格のものであると考えられるものでございます。また、消費者物価の上昇が依然として考えられますので、所得税につきましては、減税が行なわれた上でありますが、もし三十九年度中に名目所得一〇%上がることによって、いままで課税免除されていた階層の人々が、かなり課税対象になることが予想されます。いわゆる物価の上昇につれて、大衆課税が三十九年度はより一そう強化されるのではないかというおそれがございます。特に国民が健康で文化的な生活を営むためには、少なくとも国民の最低生活費を割る課税は、ぜひとも何とか改善していただきたいと思うものでございます。  なお、租税特別措置について一言申し上げます。昭和三十九年度におきましては、国際競争力の強化中心といたしまして、輸出特別償却制度であるとか、あるいは技術輸出所得控除など、いろいろな特別措置の拡充が行なわれるわけでございますが、こうした減税政策のほかに、さらに積極的に企業そのものの経営基盤の強化のための強力な措置を要望したいのであります。現在わが国が当面しておりまする問題といたしましては、国際収支の改善という観点もございますので、輸出を振興して、経済の拡大発展をはかることが急務でございます。そのためには輸出産業はもちろんのこと、国内産業の経営基盤の強化充実が、何よりも先決問題であるといわなければなりません。御承知のようにわが国の企業は、経営の近代化のために設備投資を強く要求されておりまして、その資金は銀行からの借り入れをもってまかない、その重い金利負担に悩んでおります。こうした現状を改善するためには、企業にもっと大規模な減価償却を許し、資本蓄積を促進させるとともに、資本構成の是正をはかっていくことが必要であると思います。租税特別措置が、このような企業の資本蓄積に役立つものでありますれば、その存在理由はりっぱに認められると思います。それに対しまして、そのような政策目的のない特別措置は、租税負担の公平という観点から、全面的に再検討の上整理することが望ましいと考えます。資本蓄積と申しましても、実はそれは一朝一夕にできるものではございません。したがいまして、租税特別措置に見られますように、短期間の臨時的な措置としてだけではなく、むしろより継続的、より長期的な問題といたしまして、減価償却の拡大と、十分な資本蓄積ができるような制度的措置を講ずることをお願いしたいと思う次第でございます。  第四に、歳出について申し上げます。歳出の具体的な問題につきましては、他の公述人の方からお話があると思いますので、総括的に申し述べたいと思います。  歳出面を通覧して気づきますことは、歳出の重点が、必ずしも明確でないということであります。これは歳出の内容が、直接間接に国民の生活に結びついておりますために、異なる立場にある国民から、それぞれ自己の立場に立つ予算増額が要求せられた結果、調整的な予算編成とならざるを得なかったという事情によるものと考えられますが、一体、どこに焦点があり、どういう効果をねらって歳出が編成せられておるかということが、歳出を考えていく場合に最も重要な問題であると思います。予算が一カ年の国家の経済活動を金額的に表現したものであり、いわば国がこれから実施しようとする政策の一覧表としての性質を持つものである限りにおきましては、国家のなすべき経済活動の目標なりあるいは意図なりが、歳出にはっきりあらわれることが望ましいと考えます。たとえば農業改善事業にいたしましても、どのような問題をどのように処理していけば農業改善ができるであろうか、農業の体質改善ができるであろうか、また選択的拡大が達成できるであろうか、そのような具体的なビジョンが見失われているように考えられます。したがって、ただ予算さえふやせばいいという問題ではなく、むしろ予算以前の政策的な方向づけが、一そう大切であると考えます。そのように考えていった場合に、三十九年度予算案が政策的な裏づけの弱い予算ではないかと、そのような批判を強く受けるゆえんがあるわけです。予算の焦点の一つに、中小企業、農業対策がございますが、これも融資面の量的な増大が、その中心に置かれているように考えられますが、それだけで、はたして中小企業、農業の期待できるような体質改善、成長を果たすことができるであろうかということを考えた場合に、もっと重点的、集中的に予算配分をする余地があるのではないかと考えられます。中小企業の中におきましても、特に従業員九人以下のいわゆる小規模企業、零細企業が圧倒的に多く、製造業では七一%を占めております。また農業におきましても、二ヘクタール以下の階層が九五%を占めております。漁業におきましても零細沿岸漁家が八九%にのぼっております。これらの人々が新予算におきまして一体どれほど救われるであろうか。そうした観点が、予算に十分に盛り込まれていないという点が一つ指摘できると思います。  もし、そのように国民大衆の福祉向上を実現するという観点が、少なくとも具体的な問題として表現されていないとすれば、結局は国家的な観点からの保障の充実によって、それをカバーしていくしか他に方法はございません。新予算は、社会保障の強化かなり力を入れているわけでありますが、しかしその内容を見ますと、その水準は必ずしも理想的な水準に達しているとは言い得ないと思います。たとえば生活保護について考えてみますと、その標準世帯であります四人家族を例に、生活保護費はどのくらい引き上げられたかを考えますと、七大都市で一万四千二百八十九円から一万六千百四十七円に引き上げられたとはいいますけれども、これを一人当たりの食費に換算いたしますと、八十六円八十銭に過ぎません。町村ではさらに低く、六十三円四十五銭というみじめさであります。わが国の社会保障制度は、一応制度として整備はされておりますが、その実際運用面は、まだまだ不備であると申しても過言ではありません。したがいまして、予算の編成におきまして、国民大衆の福祉向上という観点から、さらに一そうの御努力をお願いしたいと存じます。  また、新予算の最大重点施策と考えられております公共事業につきましても、全般的に言えることは、一般的総花的な増額よりも、むしろ、重点的集中的な予算配分が強く要望されるところでございます。特に予算の使途をはっきりさせて、むだな使用を規制するよう、内部牽制制度を十分に確立し、いわゆる官庁機構の合理化、補助金の再検討を行なって、その投資効果を増大するよう配慮をお願いしたいと思います。  最後に予算制度について簡単に申し上げます。  現在の財政制度の中心になっておりますのが、予算制度でございますが、実は、予算制度そのものにも、いろいろな点で矛盾あるいは欠陥が見出されるところでございます。まず第一に、予算が非常にわかりにくいということでございます。予算は、国民経済の発展に伴いまして、かなり複雑多岐にわたることはやむを得ないと思いますが、国民としての立場から考えてみますと、予算書を一覧しただけでは、とうていその全貌をつかむことができないといううらみがございます。これはぜひ、国民のだれが見てもわかるような、明瞭な予算書に改善ができるならば、まことに幸いだと思います。  次に、予算の執行につきましても、幾つかの問題があります。予算がまず編成せられましてから、それぞれ各省の局部に配分されて、実際に予算が末端に流れるまでに相当時間がかかります。このため予算執行の時期が狂ってしまったり、また、その実質的な効果をあげることができないような場合がしばしば見られるところであります。また、予算配分も、少数の上級グループによって独裁的に行なわれたり、あるいはその予算の執行も、一部のごく少数の人の手に独占的に握られておったり、さらには相当無理な予算消化が強行されたり、その使い方に、かなりのむだがあると考えられます。  さらに、現在の予算制度に対しまして、もっと決算制度を重視すべきではないか、このように考えます。予算の持つ財政的、経済的効果に着目いたしますと、予算の執行によって、国民経済及び国民生活が、どのような影響を受けたか、その予算の効果を審査し、測定し、財政政策の妥当性を吟味することが重要であります。それを行なうのが決算制度でありまするから、決算制度をさらに強化し、予算使用の成果を測定、吟味し、次の予算編成の資料として、それは役立てていくといういき方が望ましいと考えます。これに関連いたしまして、現行の監査制度につきましても、再検討が必要であると思います。会計検査院の決算報告を拝見いたしますと、三十七年度の不当事項、不正事項は六百五十一件にも達し、批准金額はついに二十億円をこえております。その内容は実に広範囲に及んでおりますが、とりわけ例年やかましく言われておりまするほぼ同じタイプの不当、不正行為が、またあらわれているということは、まことに遺憾なことだと思います。特に補助金の交付と、その使用の乱脈は、今日では行政上のガンとも言えるほどの大きさとなっております。このような欠陥は、現在の会計検査が、もっぱら予算執行の結果についての監査であり、いわゆる期末監査であるというところに一つの原因があると考えられます。予算執行の効果を高め、不正や誤謬をなくしていくためには、むしろ期中監査にもっと力を入れるべきであると思います。すなわち、従来の監査は、財政年度が終わってしまってから、その支出が、はたして適法であったかどうかという、いわゆる不正摘発的な監査でありましたが、これを改めまして、年度内に予算が効果的に使われつつあるかどうか、それを確かめ、予算の使い方を指導していく、いわゆる能率監査の方向を強化することが監査制度の本来のあり方でなければならないと考えるのであります。  以上、非常に大きな問題でございましたが、五つの点を中心に私の意見を申し上げました。時間ですので、これで公述を終わらしていただきます。
  32. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) ありがとうごごいました。  高松先生に御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  33. 米田勲

    ○米田勲君 高松先生にわざわざおいでいただきまして、貴重な御意見を伺いましたが、先生のお話の中にありました中小企業と農業の革新的な近代化の問題ですね。先生のいまの御批判ですと、はたしてこれで、この予算で、そういうことができるかという疑問をつけられた消極的な表現でしたが、私は一般会計、財投含めて、今度の三十九年度のこの財政のあり方では、はたして近代化ができるであろうかという疑問よりは、最近の中小企業や農業の実情から見て、逆にマイナスの現象が、この予算執行に当たって起こってくるということを強く考えるわけですが、その点が一つであります。  それから、これは先生にお聞きできるのかどうか、ちょっと判断に困るのですが、何人かの公述の方もおられるのですが……。政府に質問すると、今度、この予算規模を提案しておるのですが、国際収支の問題について、われわれが触れると、どういうわけか、いろいろ理由があるのでしょうが、きわめて楽観しておるわけです。楽観した答弁をするわけです。われわれの側からいうと、手放しの楽観である。腹の中ではびくびくしているのではないかと思うのに、そういう答弁をするわけです。で、今度のこの予算、財投の規模からいって、いまのような状態で国際収支は、近い将来に楽観すべき材料があるのかどうかということが二番目。  それからもう一つ、三番目は、財界でも最近、ごく最近、このままの金融引き締め政策では、とても問題にならぬ、思い切って公定歩合の引き上げをすべきだというのが圧倒的な意見になってきているわけなのです。ところが、政府に質問すると、その点については慎重にということで、なかなか言を左右にして、はっきりしない。公定歩合の引き上げをやらなくても乗り切れるということが、客観的に見て先生の立場からも立証できるのかどうか。政府の態度や答弁は、われわれ納得できないわけです。それが三番目の質問です。  四番目は、この委員会で何人かのわれわれの同僚が質問をしたのですが、いま、労働者が賃金の引き上げ要求を始めておるわけです。ところが、政府も、財界の諸君も、口を開けば、労働者の賃上げをすると即物価が値上がりするのだ、物価の値上がりと賃金の引き上げは、常に悪循環をしておって、それでは解決がつかぬではないか。いかにも物価の値上がり即労働者の賃上げ要求というふうな印象を国民に植えつけるために、政府は努力しているように聞こえるのであって、われわれは、そういう端的な結びつけ方をして労働者の賃上げ要求を押えつけようとするのは、これはとんでもない考え方ではないか。物価の値上がりは、もっと根本的に違う重大な政府の施策から起こってきていると、われわれは考えているのですが、その点、答弁は、物価の値上がりは、労働者の賃上げにあるのだ、だから、春闘でまた賃上げをされては困るのだと、こういう考え方について、端的に先生の御意見をお伺いしたいのです。以上四点。
  34. 高松和男

    公述人(高松和男君) 第一の、農業の近代化の問題でございますが、結局、現在の考え方といたしましては、融資面の拡大によって農業の近代化をやっていこうという意図のように見受けられます。しかし、先ほども申し上げましたように、そういう予算の背後には、ビジョンがなければならない。一体、どこをどうすれば、体質改善ができるのかというビジョンがはっきりしておらなければ、予算というものは効果がないと考える次第であります。そういうビジョンが欠けた政策ということで、現在の農業政策のあり方を端的にあらわすことができるといたしますれば、三十九年度予算案の農業政策では、近代的な農業の体質改善はできないのではないかという心配を持っておるわけなんです。まあそのことを先ほど申し上げたわけです。  それから、第二番目の国際収支の問題は、確かに短期的な問題と、長期的な問題とございます。短期的に考えれば、いま国際収支は赤字じゃないか、また、来年、再来年と赤字が積もっていくのじゃないかという面が、一面においてありますが、また、長期的に考えた場合には、それを乗り切るだけの輸出を振興していけばいい、その基礎には、企業の体質強化、資本蓄積、それから資本構成の是正、それをやっていって、大いに輸出を振興していけば、長期的には、その問題は解決できるのだという見方もあると思います。で、国際収支の問題は、そのような短期的な問題と、長期的な問題と、両方常にあわせて考えていかなければ、その結論を出す場合に誤るのではないかと考えます。  それから、第三番目の、金融引き締めの問題でございますが、これもきょう申し上げましたように、あくまでも財政政策と金融政策は一体になって、一つの目的に向かって働くべきであると考えます。財政面で、もし、非常に規模の大きい財政景気刺激をどんどんしていく、それを今度は、金融面からしりぬぐいをさせるというのであれば、それは非常に困った結果になりはしないかと考えます。で、金融引き締めをする場合にも、あくまでも財政政策のしりぬぐいとしてさせるというのではなくて、財政と金融と、両方から、はっきり目標を定めて、まあその目標は、物価を安定させるという目標もございますし、また、国際収支を改善するという目標もあるわけでございますが、それに向かって両面から強力に働きかけるということがなければ、どうしても片手落ちの結果になるのではないかと心配をいたすわけであります。  それから、物価の問題、値上げの問題ですが、賃金が上がったから物価が上がるとか、あるいは物価が先に進んだから、賃金のほうは常におくれているのだという、まあいろいろな考え方があるわけです。ただ、言い得ることは、物価というものは、あらゆる経済活動のいわば結果としてあらわれてくるものでありまして、さまざまな生産活動、消費活動、そういう経済活動の総合的な形として物価が出てくるわけでございますから、物価そのものを動かしていくということは、もちろん危険だと思います。むしろ、ほかの経済活動の不均衡を是正していくことによって、物価を安定させていくということが何よりも大事な問題だと考えます。で、御指摘のように、政府は、なるほど労賃が上がり、公共料金が上がるから物価が上がるのだという、そういう説明をしておるようでございますが、やはりこれは私は、ひとつの解釈だと考えております。それ以外の解釈もあり得るし、したがって、もっと根本的な構造的な問題を研究していく必要があり、また、そういう面から物価というものを構造的に改善していく必要があるのではないかと考えております。意を尽くしませんが、以上で終わらせていただきます。
  35. 田中啓一

    ○田中啓一君 いまのお話のうちに、予算執行に関しまして、非常に少数者の独裁によって行なわれているようなお話がございましたが、実は私も、役人の経験がありますが、昔の話ですけれども。このごろは判この数がたいへんにふえましてそのために、非常におそいのではないか、あんなに判こを押さないようにできないものだろうかと考えておるのでございますが、どのような点をおっしゃったのでございましょうか。
  36. 高松和男

    公述人(高松和男君) 判を押すということは、結局は承認と責任の所在を明らかにするわけであります。判を押すからには、それを承認し、それについて責任を持つことに理論的にはなるわけでございますが、行政の現実は、必ずしもそうではなく、いわゆるめくら判なるものがかなり多く見られると思います。実質的には判を押すその数は多いかもしれませんが、その決定あるいは事務の遂行が、一部の人によって行なわれる。たとえば一係によって行なわれている。ほかの方は、それについて承認の印は押しますけれども、実質的には何も知らなかったという例が、かなり多いのではないかと考えます。行政機構の改革を必要とする面であると思いますが、行政機構は、いわゆる内部牽制組織をつくっていくところにポイントを合わせていかなければならないと考える次第です。すなわちある一つの事務が、一つ行政が、特定の一人の人によって、すべて決定せられてしまうということでなくして、常にそれを何人かの人が側面から、あるいは前から、あるいはうしろからチェックしていくという、そういう内部牽制組織をつくらなければ、行政事務の改革ということは、決して理想的な姿で解決できないと考えます。
  37. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 高松先生に、一つだけお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中に、新規財源のことに触れられて、当然増がかなりふえ、さらに、減税補てん債等の義務的な支出というものが、今後ふえていくということになるというと、非常に予算に対しての将来は拘束性が強くなって、自由裁量が非常に少なくなると、こういうお話がございました。このときに先生のほうからは、予算編成のあり方について、根本的に考えを改める必要があるのではないか、こういうような御意見でございましたが、この根本的な考え方というのは、先生どのようにお考えになっていらっしゃるか、その点を一つ伺えれば伺わしていただきたいと思います。
  38. 高松和男

    公述人(高松和男君) 予算編成の根本をどこに置くべきかということは、非常に当然、あたりまえの問題、議論済みの問題であるようでありますが、また、それが案外、こまかい問題に立ち至った場合に見失われることも多いと思います。予算編成が、あくまでも国民経済の発展と国民生活の安定という点から編成されなければならないことはもちろんでありますが、さらに長期的には、経済構造の改善をねらい、短期的には、当面の具体的な問題を解決することをねらう、そういう態度が必要であると思います。  で、その予算の編成、予算の執行を通じまして、それが国民生活に、どれほどのプラスの影響があったか。マイナスの影響が消されてプラスの影響のほうが多く残り、またそのプラスの影響を極大にしていくというところに、予算の編成の究極の目標があると考えます。     —————————————
  39. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) 次に、北原謙司さんにお願いいたします。
  40. 北原謙司

    公述人(北原謙司君) 私は長野県下伊那郡上郷村の村会議員でございます。社会保障制度の充実のための法改正について供述いたしたいと思います。  三十九年度一般会計予算額を拝見いたしますと、予算額三兆二千五百五十四億円に対しまして、社会保障費の総額は四千三百六億八千二百万円で、総予算額の一三%に当たっております。恩給費は千五百十二億八千三百万円でございまして、総予算額の四・六%にすぎません。双方合わせましても一七・六%でありまして、社会保障制度の先進国でありまするところの欧米諸国に比しまして、まだまだ見劣りがするような気がいたすのでございます。  政府は総選挙におきまして、欧米に追いつく社会保障制度の充実を公約されたのでありまして、福祉国家建設のために努力を払われているのでございますけれども、それにいたしましても、まだまだ気休め程度の感がございまして、不満足の印象を国民に与えておるのは事実だと思います。よって本年では、少なくとも総予算額の二〇%に相当する社会保障その他これに関するところの予算額六千五百十億円を組まれまして、六百九十一億五千万円の増額をはかられたいと思うわけでございます。したがいまして、これに伴うところの生活保護法とか恩給法とか各種年金法につきまして、法の不備や不完全な点については、いまこそ抜本的な改正を加えられまして、社会保障制度から取り残されておりますところの、あるいは恩恵を受けることの薄いこれらの不遇者に対しまして、救済の手を差し伸べられて、ひとしく彼らに余命のある限り、社会保障制度の恵沢に浴さしむるべきではないか、かような施策を講ぜられることを希望するものでございます。  次に私は、私の体験するところ、あるいは周囲に存在いたします見聞を通じまして、この法改正の要望の二、三の事例について申し述べてみたいと思います。  第一に、教育公務員につきましては、恩給法の一部を改正されたい点がございます。教育公務員の中には、特に戦時中の学制改革、これは東條内閣のときでございますけれども、たとえば商業学校というものは、計算の利益を追求することを教える学校であるから不必要だというふうなことが言われまして、これが工業学校に転換するために、それらの教職員は余ったのであります。あるいは出征兵士の補充などによりまして、私立学校の教職員から公立学校に転職した者が相当数あるのでございます。若い年齢の教職員には問題ではありませんけれども、中年の教職員になりますと、公立学校だけでは、十七年間の恩給年限に満たなないままに、一時恩給でやむなく老齢退職をする者が出てまいっております。公私校の勤務年教を通算いたしますれば、もちろん恩給年数に達するのでありますけれども、この教育経歴の実績を無視されているところに問題があるのでございます。政府は、しばしば恩給法改正を行ないまして、すでに、戦時中勤務した満州国の官吏とか、あるいは教職員とか、あるいは公社の職員に対しまして、その勤務期間を恩給年限に通算いたしまして、これらの人々を救済しておりますけれども、その理由づけは、一時、日本の国家及び地方公務員の地位を離れたにすぎないと、こういう御説明があるようでございますけれども、戦時中、私立学校の勤務の教育職員といえども、公立学校同様な使命と責任の上に立って、日本人の教育に従事したものでありますから、この期間を満州国の官吏、教職員、在外公社員と、経営の主体の違う点については、同一であるわけでありますので、教育という特殊な任務に携わっていた勤務期間が、この人々と差別されたというところに矛盾を感じないわけに参らないのでございます。政府は勤務上の公ということと、私との区別に対して、字句について、あまりにとらわれ過ぎはしないかと思うのでございます。経営の主体が違う点だけを重視されずに、もっと内容であるところの本質を見ていただきたいと思うのでございます。  私立学校教職員は私立学校教職員共済組合法ができまして、社会保障の救済を受けられるようになりましたけれども、公立学校、私立学校両校にまたがった勤務年数を持つ者につきましては、公私校の勤務期間を通算し、特に戦時中、このケースの多い人たちに対して、満州国の官吏、教職員同様に取り扱っていただきたいと思うのでございます。物価の高騰等によりまして、一時恩給などは一、二年の生活費にも足りません。それで、一時恩給を支給された人たちは、ただいま生活にも困窮を来たしておる現状でございます。一時恩給を支給されたゆえをもちまして、彼らが七十歳になって無拠出の老齢年金を受けるまでは、あらゆる社会保障制度から見放されているということは悲惨であります。教育という特殊な立場にあった人々を、この系列に入れまして救済を加えるということも、軍人恩給のごとく、一般国民諸君からも納得されるのではないかと思うのでございます。以上、述べましたことによりまして、政治的解決によりまして、教育公務員について、彼らが私立学校時代の勤務期間があったならば、恩給法の一部を改正して、彼らを救済していただけるように希望をいたす次第でございます。  第二といたしましては、三十九国会で成立いたしましたところの通算年金通則法でありますが、これは厚生年金に属しますが、本法は昭和三十六年四月一日以降実施されることになっておりまして、本法によりますると、これは今後若い人には非常にけっこうになりまして、若い人が各職場を変わったときに、この勤務期間が通算されまして、老後の生活保障が与えられていくようになったことは、まことにけっこうな救済策でございます。ところが、本法の最も遺憾といたします点は、施行前の過去の勤務期間というものが通算の対象から除外されていることでございます。このために、現に老齢によりまして恩給年数不足な公務員や商社員が、過去に他の勤務年数を持っておりましても救済されないという盲点を持っております。前述の私立学校に勤務期間を持つ教育公務員は、本法においても救済されないわけになっております。  各種年金の通算につきましては、過去の勤務時間を認める、これは膨大な予算措置を必要とするので、とうてい不可能な問題であると説明されておりますけれども、私は原資の欠けた分につきましては、当時の俸給に見合うところの率に従いまして掛け金に相当する元利総額を関係機関に拠出するか、すでに受けた一時金につきましては、返還することによりまして、同一条件とすることができるのでございますから、膨大な予算措置は必要とせずに解決される問題ではないか、かように考えるのでございます。要するに、このままでは、救済されないところの年数不足によるところの老齢退職者の現況を救済してこそ、本法成立の意義は全うするものではないかと存ずるのでございます。過去の勤務期間を通算の対象にする本法の改正によりまして、救済のワクから除外された広範囲な退職者に、社会保障の恩恵を受くべき機会を与えられるような施策を何とぞお願いいたす次第でございます。  次に、ちょっと農地報償問題につきまして触れてみたいと思いますが、戦後の自作農創設特別措置法によりまして、わが国の農村は画期的な、かつ飛躍的な発展を遂げたことは事実でございます。私はこれを喜ぶとともに、この政策を否定するものではございません。しかしながら、当時の買収価格は、反当、やみ米三升そこそこのものでありまして、この買収価格は、最高裁判所の判決はありましても、いかにも安過ぎるという旧地主側の受け取り方と世論は、一般化されている現状でございます。報償問題につきましては、本問題が取り上げられた当時から、甲論乙駁の論議が出尽くした関係がありますが、買収価格が不当に安かったことは、旧地主に対するところの財産権の一部剥奪ではないか。世論の一部には、戦災同様甘受すべきことではないかという説がありますけれども、戦災とは、日本国民がひとしく受けた災難であって、空爆や艦砲射撃の被害とは、おのずから違ってまいります。これが当時の国会において、法律によって行なわれたものでありますから、法律によって救済されるのが至当であるという説がございます。また、この農地改革は、地域によりましては、マッカーサー命令といたしまして、過酷に取り扱われたケースも、今日に至って多々浮かび上がっている現状であります。農地問題調査会におきまして、当時の取り扱い方の不当不満について、市町村機関に調査させておられることは、私の村においてはまだ聞き及びません。で、この点につきまして、どうか御調査をお願いいたしたいと思うのでございます。  なお、旧地主の最も不満といたします点は、保有地の問題でございます。旧地主の中には、村の公職などに携わったために、耕作していなかったか、あるいは耕作をしておりましても、ごく農家としては僅少な耕作面でありまして、とても現在では立ち行けない人たちが多いのでございます。平均——地域的の相違はありますけれども、五、六反歩から一町歩以内の許された保有地が認められたということは、旧地主にも、ひとしく自作農となり得る機会が与えられたものと解されるのではないかと思います。それで、農家として立ち設けない地主が、この保有地の返還を求める場合には、かりに返還を受けますについても、耕作者にその半分を無償提供しなければならない慣習が成立していることでございます。これに反して、市街地に隣接の解放地が宅地として高額に売買されても、旧地主側は、拱手してながめていなければならないという現状にあります。また、自作農創設特別措置法の精神に反しまして、解放地の売買の自由化は、甲の財産権を乙に移したにすぎない錯覚を旧地主側に与え、同時に政府が農村票を集めるためとの誤解を与えている原因ともなっております。政府におかれましても、今年度こそ、報償問題に対して決意を示されたことは、はなはだ歓迎されるのでありますが、私は民主革命の協力者といたしまして、この旧地主に対して、恩給または年金的な救済策であるところの法律を制定されまして、全国会の賛成のもとに、本問題に終止符を打たれるよう希望してやみません。  以上三点が、私、農村に在住いたしまして、四囲の状況に照らし合わせまして、早急に実現さしていただきたい要望の点でございます。  これをもって、私の公述を終わります。
  41. 太田正孝

    委員長(太田正孝君) 北原君に御質疑ございますか。——公述人の各位におかれましては、お忙しいところを、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  本日の公聴会は、この程度にいたしまして、明一三日午前十時から、公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時六分散会