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1964-03-16 第46回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十六日(月曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————   委員の異動  三月十六日   辞任      補欠選任    鹿島守之助君  櫻井 志郎君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            櫻井 志郎君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            羽生 三七君            安田 敏雄君            米田  勲君            牛田  寛君            渋谷 邦彦君            須藤 五郎君            林   塩君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    通商産業大臣  福田  一君    自 治 大 臣 早川  崇君   政府委員    経済企画政務次    官       倉成  正君    外務省移住局長 白幡 友敬君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    文部省体育局長 前田 充明君    厚生省環境衛生    局長      舘林 宣夫君    厚生省社会局長 牛丸 義留君    厚生省児童局長 黒木 利克君    農林政務次官  松野 孝一君    農林省畜産局長 桧垣徳太郎君    通商産業省企業    局参事官    馬郡  巖君    自治大臣官房参    事官      宮澤  弘君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    海外移住事業団    理事長     広岡 謙二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣 提出衆議院送付) ○昭和三十九年特別会計予算内閣 提出衆議院送付昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、引き続き質疑を行ないます。  この際、おはかりいたします。渋谷邦彦君から、本日の同君の質疑に、参考人として、海外移住事業団理事長広岡謙二君を出席されたいと言っておりまするが、これを認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  4. 太田正孝

  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、三十九年度の国税及び地方税を通じての歳入面焦点をしぼって質問をいたしたいと思うのであります。予算委員会では比較的、歳入面質疑が少ないようでございましたので、歳入面焦点をしぼって質問をいたしたいと思うのです。  三十九年度の歳入予算特徴として、四つの点をあげることができると思うのです。その第一は、自然増収が国の予算及び地方財政計画を通じて著しく大きいということであります。これはもう、いままで前例がない画期的な巨額な自然増収が見積もられているということであります。第二は、それとの関連におきまして国民所得に対する税負担率が非常に大きくなっているということであります。第三は、前年度の剰余金の繰り入れが激減しているということであります。第四は減税でございます。国税地方税を通じて、これが実質的減税であるかないかは、これから質問してまいりますが、減税政策がとられているということ、この四点に特徴があると思います。したがって、私はこの四点について、これから質問をしてまいりたいと思います。  第一は自然増収でございますが、国税におきましては三十九年度六千八百二十六億の自然増収が見積もられております。前年度は三千百三十一億でございますから、前年度の倍以上の自然増収が見積もられておる。地方財政計画におきましては二千五百八十九億の自然増収が見積られております。三十八年度は千二百七十四億の自然増収でございますから、これまた倍以上の自然増収が見積もられておるわけです。この自然増収については過大な見積もりではないかと、こういう批判があるわけです。もし過大に見積もられたといたしますれば、徴税強化の問題が起こってくると思うのです。歳入予算として、一応これだけ見積もれば、どうしたって、これだけを確保しなければなりませんから——歳入欠陥が生じてはたいへんでございますから、どうしてもそこに無理な徴税強化が起こる危険もあるわけです。そこで、そういう点を明らかにする必要があると思いますので、このような画期的な、国税地方税を通じての自然増収が可能であるという見通しですね、その根拠を大蔵大臣並びに自治大臣から具体的に御説明を願いたいと思います。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国税に関して、私からお答えを申し上げます。三十九年度の自然増収六千八百二十六億は、前年に比べて非常に大きいように思われますけれども、御承知のとおり三十八年度の第二次、第三次補正財源としました自然増収が二千億ばかりございます。でありますから六千八百二十六億という数字になりますけれども、当初に比べまして三十八年度のベースが二千億余大きくなっておりますので、三十八年度決算額からみますと、四千八百億程度自然増収を見込んでいるわけでございます。この四千八百億程度見積もりに対しましては、適正な見積もりだと、このように政府考えているわけでございます。それは三十八年度の下半期の経済成長率が非常に高いということでありますので、三十九年度の成長率名目九・七%とみましても、三十八年度下期の成長率の高いときの税収が三十九年度の上期の税収にずれ込むわけでありますので、そのような立場から計算をしますと、実質四千七、八百億の自然増収は見込めるというふうに考えているわけでございます。なお、税目別十分積み重ねをいたして計算をいたしたものでございまするので、これが財源確保のために、徴税強化を行なうというようなことは絶対に考えておらないわけであります。
  7. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 昨年、三十八年度に比べまして、三十九年は二二%自然増収がふえている計算になるわけでございます。この基礎は主として事業税住民税増収による見込みでございますが、国税法人税所得税算出基礎、また最近までの課税及び収入状況、今後の経済情勢推移等を考慮して見積もったものでございまして、この程度税収入は確保できるものと自治省といたしては考えているわけでございます。なお、個人所得課税関係法人所得課税関係並びに財産課税関係につきましては、大蔵当局見積もりました所得税あるいは法人税その他の算出基礎に勘案をいたしまして、地方税を算定いたした次第でございます。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、ただいま各税目別に積算をして積み上げたものである。その点、もう少し具体的に説明してもらいたい。  それからもう一つ租税自然増収見積もりの場合ですね、いろいろな見積もり方があるわけですね。弾性値を見る場合、あるいは限界租税函数、そういう計算のしかたがあるわけです、見積もりについては。したがって、三十八年度と三十九年度の弾性値をとった場合どうなるか。それから限界租税函数をとった場合どうなるか、三十八年と九年と。この二つについて御答弁願いたい。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知の、名目九・七%、実質七%のGNPの伸びを見ておるのでございます。国民所得に対して一〇・六%増、鉱工業生産九%、それから物価は、卸売りはほぼ横ばい、また消費者物価は、対前年度四・二%、年間を通じて三%、このように見ておるわけでございます。個人消費が一一・七%、こういうふうに見まして、雇用が大体四%増、それから申告所得税につきましては、営業が約一〇%、農業が五・八%、その他事業が一三%。法人税——法人につきましては、生産伸びが一五・一%、九%伸ばして大体そういう規模になるわけであります。そういうような見方で見まして、直接税関係につきましては、いま申し上げましたように、三十八年に比べまして、雇用が約四%増、賃金水準九%の上昇を見ておるわけであります。申告所得につきましては、個人営業所得が三十八年——前年に対して約一〇%増、農業所得に対しましては、いままで申し上げたとおりでございます。法人税につきましては、三十九年度の申告所得につきましては、三十八年度に対して一八%程度増加するものということで計算をしております。相続税等につきましては、最近における財産価格推移を換算して計算をしたわけでございます。  間接税その他印紙収入等につきまして申し上げますと、酒税につきましては百二十六万キロリットル、対前年度比八・二%増、ビールにつきましては百九十二万キロリットル、対前年度比一三%増と見込んで計算をいたしました。砂糖消費税及び揮発油税につきましては、砂糖については百六十九万トン、揮発油税につきましては、地方道路税を含めて九百七十五万キロリットルと見込んでおるわけであります。物品税につきましは、小型乗用車、テレビ、耐久消費財の売れ行きのしさいを見ながら三十九年度の動向を推算して決定をしておるわけでございます。入場税その他の諸税、印紙収入等につきましては、最近の実績を元にして計算をいたしてございます。関税については、最近における課税実績と今後の状態というものを基礎にして計算をいたしておるわけでございます。  税目別数字は、必要であれば、政府委員からお答えいたします。
  10. 木村禧八郎

  11. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お答えいたします。弾性値につきましては、国民所得に対する弾性値昭和三十八年は補正後一・二九となっておりますが、三十九年度の予算は一・七九となっております。なお、念のために申し上げておきますが、租税全体の収入弾性値なりあるいは限界負担率で算定することは、一つの方法ではございますけれども木村委員承知のとおり、国民所得に対する税収弾性値は、そのときどきの経済情勢によりまして、はなはだしく動くのでございます。過去の例から申し上げましても、いま申し上げました弾性値昭和三十一年には一・八一、三十二年には二・五九、それが三十三年には〇・四三、三十四年には一・一八、三十五年には一・七七、三十六年には一・五九、三十七年には一・四九、このように非常に変動いたしますので、これを用いまして、税収見積もりをいたすことは困難ではないかというふうに、私どもは感じておるのでございます。私どもは各税目別積み上げ計算をいたしまして、——ただ、全体の税収も、はたしてそういった積み上げ計算が適正であるかどうかという一つチェック材料といたしまして、弾性値なり、あるいは限界負担率を用いまして検討をいたしておるというのでございます。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、限界租税函数はどうですか。
  13. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 国民所得に対する限界負担率は、昭和三十八年度補正後で申し上げますと、一八・一五でございます。これが三十九年度におきましては、二五・三四になります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この自然増収見積もり基礎になっている名目成長率九・七%ですか、それから物価四・二%、そういうものをもとにして計算すると、弾性値なり、あるいは限界租税函数から見ますと、このような大きな動きは出てこないように思われるのです。  そこで、さっき大蔵大臣が言われましたが、三十八年は予想以上に景気がよかった。したがって、三十八年下期から三十九年の上期にかけての法人税等増収があるわけですね。そういうものを見込むと、多少三十九年度の成長率なり、あるいは物価騰貴率基礎にして計算した場合に比べて、少しずれるわけですね。それで大きな自然増収が可能であると、こういう御説明であったわけです。ですから、機械的にいまの弾性値や、あるいは租税函数だけでは、三十九年度の一カ年分の平均値だけで計算はできないということはわかっておる。そこで、問題なのは、これは四十年になるとすると、今度は自然増収はそれと逆のことが起こってくるのではないか。三十八年の下期から三十九年の上期にかけての、非常に国民生産も高い。そこでかなり法人所得もあった。そこで三十九年度の自然増収もかなり多く見積もられる、ということはわかります。そうなると、今度は四十年度の自然増収を見積もる場合、今度は逆のことが起こるのであって、四十年度は自然増収はかなり減るのではないか。こう思われますが、その点はどういうふうに……。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 理屈からいいますと、三十八年度の下期の高い成長率の分が三十九年度にずれ込んでおりますので、税収上は六千八百二十六億という数字が出るわけであります。そのためには、四十年度になると、今度そういう高い成長率ではない。九・七%、実質七%ということでございますから、自然増収は減るという議論になるわけでございますが、まあそれは率において減るということでありまして、対前年度比の金額から見ますと、前年度の決算ベースが大きくなっておりますので、七%ないし所得倍増年次計画である平均率七・二%程度の正常な経済成長を続けるとすれば、私は、財政上必要な資金は確保できるという立場に立っておるわけであります。また同時に、三十九年度は特殊事情、いわゆる前年度剰余金が千八百億余の減になっておりますので、これは今年度の特殊な状況でございます。三十九年から四十年に、今度参りますと、この対前年度剰余金の千八百億余の減がないわけでございますから、今年度に見込んだ数字ほどのものが出ないとしても、予算編成上必要な財源は確保できるだろうということが常識的な見方でございます。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その前に、もう一つ伺っておきたいことがあったのですが、今度の自然増収見積もりは、従来の見積もりと違って、従来は補正財源を残すためにかなり余裕をもって見積もったように伺っておりますが、今度は、目一ぱいぎりぎり見積もったと、こう言われているのですが、そうしますと、補正財源についてはどういうふうにお考えなんですか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の予算で新しく百億の災害予備費を設けたわけでございます。でございますから、災害等に対する予備費は、支出が必要であるという場合には、この予備費の中でおおむねまかなってまいりたい、このように考えているわけであります。しかし、そのほかになおいろいろな補正の要因が出てきた場合にどうするかということは、これは将来に起こる問題でございまして、まあ物価を押えたいという考えでございますし、そういう意味から考えて、いまの段階において補正の事態を予測して、補正が起きたらどうしますかということは申し上げられる段階ではない。とにかくいま三十九年度の本予算を審議をしていただいているのでございますから、補正等に対して的確に申し上げられる段階ではございませんし、補正に対するお答えを申し上げることは、本予算を審議していただいておる状態からいえば、申し上げるべきではないというふうに思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 例年必ずと言ってもいいほど補正が出る、また、今後物価その他を考えますと、補正の問題も起こらざるを得なくなってくると思う。四・二%物価が上がるということになっておりますが、三十九年度の予算については、四・二%の補正は行なわれておらないのです。いままで騰貴した物価に対する補正が行なわれておりますけれども、三十九年度自体の物価の値上がりについての補正は、税制の問題でも考慮されておりませんし、これまでの物価騰貴の分が補正されているのですから、当然三十九年度内の物価騰貴の調整の補正等も出ると思うのですが、当然補正財源が問題になってくると思う。しかし、本予算を審議している際に、補正のことについて大蔵大臣は言えない、それはお立場上言えないかもわかりませんが、そういう点は必ず私は問題になってくると思う。ここで私が問題にしたいのは、歳入面との関連において歳出の面が御承知のように非常に硬直性を帯びてきております。なかなかこれが弾力的な財政編成ができないことになる。毎年々々自然増が非常に大きくなってくる。  そこでこの際、大蔵大臣に伺いたいことは、これは大蔵委員会でも一応伺いましたけれども、毎年非常に硬直的に財政が膨張してきている原因は一体どこにあるか。今後この原因を明らかにして、これについての適切な措置を講じなければ、これは将来重大な問題になってくると思います。ですからこの際、この硬直的になってきて、非常に弾力性が失われてきている歳出の年々の自然増加が繰り返されているのですから、その原因は一体どこにあるか。それと今度は歳入との関係が問題になってくるわけです。そうしますと、普通の歳入ではまかなえないという問題が必ず起こってくると思う。そういうことについてやはりこの際われわれは、当面のこの予算ばかりでなく、かなり長期的な立場に立って、この三十九年度の予算も、その歳出についても歳入についても検討しなければならないと思いますから、その点についてこれは各方面でも非常に問題になっておりますから、はっきりと御説明を願いたい。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算硬直性というものが、旧来だんだんと議論をされきつつあるということは、御説のとおりでございます。この原因は一体何かということでございますが、俗に当然増経費といわれているようなものに関してでございますが、この一つは、人事院勧告におきましても、十月一日から施行いたしましたベース・アップが平年度化されるという問題が一つあります。  それからもう一つは、法律に基づいて各種公共事業に対する五カ年計画を行なっております。道路五カ年計画、住宅の五カ年計画、それから下水道等の五カ年計画、港湾五カ年計画、治山五カ年計画、治水五カ年計画、こういう五カ年計画法律で決定いたしましたものが非常に近来多くなっておるわけであります。でありますから、これらのものに対しては、年次計画どおり予算を配分しなければならないという意味からいうと、相当制約を受けておるわけであります。  それからもう一つは、戦後新しい憲法もと国会重点主義になりましたので、まず税制等に対しては、税は法定主義であるということは、もう御承知のとおりでございますが、その他のものでもいわゆる予算編成というものを法律によって縛る、こういう風潮が非常に戦後とみに発達をしてきておるわけであります。そういう意味で何でも法律政府予算を盛らなければならない、また、その中でもって二分の一の補助をしなければいかぬ、この補助率は三分の二であるというふうに法定をされますので、そういうものが非常に予算硬直性にするものだと、こういうことが言い得るわけであります。しかし、これは新しい憲法あり方国会及び行政府あり方予算編成権国会とのあり方等の根本的な問題がありますので、方向としては非常にいいことであり、また、私のほうからいえば、予算編成の当事者は困ったことである、こういうことになるわけでございますが、これはまあ戦後の趨勢であって、私たちがどうすることもできない問題でございます。そういう意味で、だんだんと大蔵省でもってやり得る範囲というものは確かに少なくなっておるということは事実でございます。それだけではなく、ガソリン税のように目的税にする、こういう特別な制度ができてこようと、大蔵省は、その歳入財源に対しては何もすることができないということになるわけでございます。そういう意味でいろいろな問題はございますけれども、いま木村先生が言われたように、もう政府予算を組めないような状態になるかというと、私は必ずしもそうではないというふうに考えます。ことしは六千八百二十六億のうち、前年度剰余金減分千八百億を除いた約四千八百億の中で硬直性と俗に称されるものが一体どのくらいあるか、大体半分ぐらいある。こう言っていいと思います。特に法律でもってことしも医療費等を年度の途中から国庫負担率を上げる、こういうようなことになりますと、今後は国民健康保険、その他の家族給付というようなものが来年度は平年度化するわけであります。こういう意味大蔵省としてはたいへんでございますが、可能な歳入一ぱい努力をして予算編成をしておるわけでございます。木村さんのような御発言を契機にして、予算弾力性効率性というようなことに対しては、やっぱり国会でも相当考えていただければはなはだ幸いだと、私自身も国会議員でありますから、なかなかむずかしい問題だと思います。しかし、どうにもならぬほど予算が硬直しているとは考えておらないわけであります。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは認識程度で、そのくらいの認識程度でいいかどうかは、問題だと思います。それは非常に大きな問題になると思います。いま大蔵大臣がおあげになった原因のほかに、物価騰貴の問題があります。これは非常に年々自然増収を大きくすると同時に、歳出のほうも毎年大きくしているわけです。あるいはまた、国庫債務負担行為が多くなる、継続費が多くなる、いろいろございます。この点については、もっと根本的に、たいしたことがないぐらいに考えるような御認識じゃ困ると思います。私は、予算が組めないほど歳出が硬直的になっていっているわけではございません。それは組めるでしょう。しかし、その結果、しわが寄るところがある。そうなると減税が困難になるという問題があります。社会保障のほうにしわが寄ってくるという問題もあるわけです。そういう問題意識質問しておるわけですが、しかし、言葉じりをとらえて悪いようですが、あとで質問しようとしておったのですが、いまちょっと、ガソリン税目的税であるとはっきり言われました。最近大蔵大臣は、この減税についても、ガソリン税目的税だ、目的税だから別なんだということをしょっちゅう言われております。この際明らかにしてください。目的税じゃありませんよ。あなたがもしそう言われるならば、これは違法ですよ。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 舌足らずでありましたから訂正いたします。ガソリン税目的税ではございません。目的税式な税でございます。それから道路譲与税等は、これは目的税である、軽油引取税等地方税目的税になっておりますが、国税としてのガソリン税は、道路整備財源相当額を盛らなければならないということでありますから、目的税ではないということだけは申し上げておきます。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ訂正されたからいいですけれども、あなたはしょっちゅうよそへ行って目的税目的税と言いますけれども、これは目的税以外だ、減税以外だといま訂正されましたから了承しておきます。  次に減税の問題に移りたいのですが、まず最初に、いまの日本の、現時点での税負担は重いのか軽いのか、まずこの点大蔵大臣に伺いたい。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ税負担は軽いにしくはないという気持ちであることは毎度申し上げておるとおりでございます。ヨーロッパの先進工業国等に比べればまだ重いということが正しいと思います。しかし、戦後何もない無資本の状態から、十八、九年の間にここまで国民の努力によって築き上げてきた日本の情勢、また、一般会計その他歳入要求が非常に強い、またそうすることによって将来への道を開こう、また開かなければならないという特殊な事情にある日本の状態を静かに見るときには、おおむねやむを得ざる妥当な行動であろう、このように思考しておるわけであります。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、税制調査会の答申を尊重されるのか、しないのか、この点を伺いたい。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府税制調査会の答申は尊重するというたてまえでございます。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとですね、いまの税負担が大体おおむね妥当だということを言われました。税制調査会の答申ではそういうことを言っておりません。戦前に比べても、諸外国に比べてもまだ日本の税負担は重いと、であるからかなり継続的に所得税減税は行なっていかなければいけないという答申をしておるのです。三十五年度の答申もそうです、今度の答申もそうです。そうすると、大蔵大臣は一体税制調査会の答申をお読みになっているのですか。何か尊重していると言いながら、実際にはちっとも尊重しておらないのです。ただいままあ適当だ、妥当であるなんという、そんな考え方ですね。戦前と比べて——戦前は一二・九%じゃありませんか。そうでしょう。最低課税限だってうんと違うのですよ、うんと開きがある。私はそういう御認識では非常に問題があると思うのです。ちっとも答申を尊重してはおりませんよ。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 答申は読んでおりますし、尊重いたしておるつもりでございます。戦前との問題でございますが、まあこれを、早く戦前並みになりたいという気持ちは木村さんと同じ気持ちでございます。しかし、戦前は世界の一等国といわれるような状態でございましたし、戦後は御承知のとおり、全くあの荒廃の中から立ち上がってきておるのでございます。確かに戦前の予算と戦後の予算は一体どうなのかということに対して、自分でもまじめに読んでみましたし、検討もしてみましたが、戦前には確かに二つの問題があります。一つは、非常に健全財政を貫いたということであります。もう一つは、その健全財政の乏しい予算の中の最もウエートを置かれたものが軍事費であったということであります。そういう二つの特殊性から、道路も、港湾もずたずたになってしまってどうにもならないような状態になったことは御承知のとおりであります。でありますから、戦後は、苦しい中からも、先進諸国になるべく早く追いつくように、社会保障もできるだけ拡充しなければならないし、その他いろいろな国の歳出負担になるようなものも、将来の日本のためにやらなければならないという特殊な歳出要求が出ておりますので、そういう意味では国民全体がある時期税負担が重いということは確かにあると思われますけれども、お互いが物価を抑制したり、日本の正常な経済成長率がだんだんと続いてまいりましたり、国際競争力がついたり、そうすることによって、将来、戦前にも劣らない、戦前より以上な軽い税負担まで持っていかなければならないという、そのためにこそ歳出もあるのでありますから、まあ、その間の事情は私が申し上げるよりも、木村さんのほうでよく御存じのはずだと思います。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、事実を知っているとかいないとかという問題ではないのです。これによって国民の生活に非常に大きな影響があるから、その事実の認識のしかたが問題になる。大蔵大臣、戦前のことを言われましたが、もう一つ落としている。戦前の税負担率の軽かった一つの大きな原因は、公債に財源を求めておったということが一つあるわけです。したがって、今後御説明されるとき、そういう点もひとつお加えする必要があると思います。それだからといって、私はいまの税負担が、決して公債発行せよということじゃないのであります。戦前戦前と大蔵大臣仰せられますけれども、いまは戦前水準をはるかに鉱工業生産も抜いておるわけです。池田さんがしょっちゅう自慢するように、日本の成長率は世界にまれに見る大きな成長率を遂げ、資本の蓄積は非常に大きくなっているわけです。にもかかわらず、税負担が戦前よりも著しく重いわけです。それが問題です。十分にあなたは税制調査会の答申をお読みになっていると言いますけれども昭和三十六年の答申をごらんになりますと、税制調査会の答申は、社会保障の点にも十分考慮を払い、諸外国の税制とも比較をいたし、各税目別に全部調べて、そうして総合的に判断した場合、大体二〇%程度税負担率が妥当ではないかという結論を出しているわけです。もちろん機械的に二〇%にくぎづけすることは正しくないと言っております。実質的に所得がふえれば、税負担率もふえるのも妥当かと思われるけれども、しかし、現在の日本の税負担は、戦前に比べても、諸外国に比べても、著しく税負担が重い。だから当分の間は、大体二〇%程度税負担率でいくべきであるということを言っておるのであります。しかも中山伊知郎氏は、三月六日の衆議院の大蔵委員会におきまして、自分は日本の国民所得に対する税負担が二〇%、この線を何も変えておらない、やはりその程度が適当であるということをはっきりと言われておるのです。ところが、三十九年度は、二二・二%、三十八年の二一・五%よりもかえって負担率が重くなっているのですよ。これは単に国民所得税負担率とを機械的に比較をして言っているのじゃないのです。税制調査会では、各税目別全部洗っておる。社会保障との関係もちゃんと考えて、なおかつ、日本経済の現状では租税負担率は重過ぎるということを言っておるのです。ちっともこの答申を読んでおらぬじゃないですか。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 答申はよく読んでおりますが、しかし、税制調査会の立場でお考えになったものと、ただ私たちのほうでは——税制調査会は歳出のほうは考えておらないのです。私は三十五年から確かに私も答申をずっと読んでみましたが、二〇%程度という答申に沿いたいということでございますが、今年度はこのままにしておきますと二二・八%になるわけであります。それを二千二百五十六億円——だんだん大きくなったわけです。初めは二千億に近く、二千億、二千億以上、二千百億、二千百八十億、こう御報告しているうちに、こうしてだんだんと御発言等もありますので、いろいろのことを検討しながら、三十九年度の減税でもって平年度二千二百五十六億円ぐらいになると思います。そういうふうになっておるのでございますから、私は税制調査会の、こういう減税案を提出しておる税制調査会の答申をまじめに尊重されておらぬ、こういうことを言えば言えると思いますけれども、私のほうから考えますと、このほかにたくさんの歳出要求を健全財政を守りながらまかなっていくのでございますから、二〇%でなければいけぬ、こういうふうにおとりいただきませんで、歳出の内容等も十分検討しまして、社会保障費も対前年度一般予算のワクが一四・二%しか伸びておらぬのに、社会保障費も二〇%以上も伸ばさなければいかぬし、道路とかその他も二〇%以上にしなければならぬし、住宅も一七%から二〇%にふやさなければいかぬしという、こういう状態を十分比べていただきますと、税制調査会の二〇%程度にとどめることが好ましいと、望ましいと、当時こういうことを言われたものと、今年度二二・一%税負担率がなっておるということがまあそう違わないのだなということをひとつ御理解いただければはなはだ幸いだと思います。私はやはり三十五年に二〇%と言われた税制調査会の答申に基づいて、この間中山さんが、いや、いまでも二〇%が好ましいと、こういうことを言われましたが、言われることはよくわかります。私もそうありたい、こう思っておるのですが、財政の事情その他を十分考えて、これが国民自体の将来のための投資でありますから、ある時期、私は二一%になり、二二%になるということはやむを得ないことではないか。私はまあ大体二〇%というものが二一、二%と、こういうところにお考えいただければまあいいのではないかというふうに考えます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はなぜ租税負担率を問題にするかといいますと、税制調査会の答申の説明がありましたが、この負担率がきまって減税の規模がきまってくるのですよ。ですから一番これは基本なんです。減税考える場合一番基本なんです。しかし、それも機械的に何も国民所得の何%というのではこれはまたあまり意味がないと思うのです。しかし、各税目別に洗い、しかも歳出考え社会保障のことも考え、あらゆる要素を考えて、なおかつ二〇%程度が、諸外国の税負担なり戦前の税負担を考えてその程度が適当だという答申なんですよ。ただいま、大蔵大臣は、税制調査会では、歳出のことをちっとも考えていない、というようなことを言われるが、ちゃんとやはりこの答申に書いてあるのですよ。たとえばですよ、公共投資の拡充や社会保障の充実といった財政支出の増加は、直ちに国民経済の発展や国民生活の安定につながるものであるから、その結果ある程度の税負担の増加をもたらすことも納税者としては忍ぶべき筋合いのものであろうということも書いてあるのです。政府が、少し税負担が重くなってもよろしいという根拠としてあげていることも、十分に全部総合的に勘案して、しかも税負担率は大体日本のいまの現状としては二〇%程度がここ当分の間は、その程度が適当であるという答申なんです。十分読んでおらないじゃありませんか。支出のこともちゃんと考えておるのです。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 木村さんのお考えは、私は十分わかるのです。私のほうを少し御理解いただければいいと思うのです。それは確かに書いてございますよ。ございますけれども、あの膨大な歳出要求を款項目別に全部見て、なるほどこれは出さなければならぬわいと、こういうところまではなかなか見ておられないわけであります。でありますから、私はやはり税制調査会は税負担率というものを中心にしながら税の面に重点を置いてお出しになるわけでございます。私たちも、政府としましては、各調査会、審議会の答申は全部尊重したいということでございますけれども、やはり社会保障制度審議会から出るものはやはり社会保障に重点を置くし、道路はといったら、道路の審議会から出るものは、道路はとにかくすべてのものを犠牲にしてもやるべきだというし、大体調査会、審議会から出るものはこれは全部予算要求であります。私はあらゆるものを見てみたのですが、これはどうしてこういうことになったのか、こう思って私も、これは一時政府が新憲法下において審議会とか調査会というものを通すことによって、答申をもらうことによって、国会に対して隠れみのに使ったという事実はあると思うのですよ。ところが、現在になって、補助金等の整理統合の審議会からくるものだけはきついものでありますし、行政調査会もまあそのような線に沿っておりますが、その他の審議会、調査会というものは、やはり自分が審議をしておるものを最重点だという考え方から勧告をされているわけでありまして、もちろんそうであっても、法律に基づいてつくられておる審議会、調査会の答申でありますから、政府は基本的にこれを尊重するというたてまえはもちろんでございますけれども、やはり予算を組む場合には取捨選択をしながら、もちろん税利調査会の答申が非常にいいということを前提にしながらも、ある時期このほうもやらなければいかぬということになれば、限られた財源の中で、可能な最大限一ぱいの予算を組もうというのでありますから、これはひとつ事情を御理解賜わりたいと思います。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府は何のために税制調査会というものを設けたのかですね。やはり公正な妥当な意見を求めようとして税制調査会を設けているわけなんです。その答申を尊重せよで、一から十まで全部そのとおりに政府が実行しなければならぬという拘束はないわけなんです。しかし、その筋となる、基本となるものは大蔵大臣が尊重するという以上は、これは政府がこれを実現をさせる責任があると思うのです。負担率の問題は、これは単に国民所得所得税数字的に計算した、そう簡単なものじゃないのです、税制調査会の答申はですよ。もっとやはりずっと基礎から洗ってそういう結論に到達しているのであって、これまでの衆議院の大蔵あるいは参議院のこの委員会での負担率に対するあなたの御答弁は、非常に私は上つらの御答弁だと思うのです。税制調査会の答申をよく読んでごらんなさいよ。そんな社会保障のほうが必要だから、政府歳出が多いから、あるいは国民所得実質的にふえるから、税負担率が重くなるのは当然だと言っている。そういうことを十分考えて、なおかつ二〇%程度必要だという答申をしているのですよ。単に機械的に数字を出しているのじゃないのです。弔う一度十分にお読みになって、これが妥当なやはり結論として出されておるので、もっと真剣に尊重する必要があるのです。でないと世論を無視することになると思うのです。何のために税制調査会をつくったのか。また、これから具体的な内容についても質問してまいりますが、非常に重要な点について尊重していない。重ねてこれから伺いますが、政府は……。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ただいまの木村さんの御質問関連して、この前私がお伺いしたことで非常に関連があったのでお伺いしますけれども、先ほど木村さんが指摘されたように、歳出硬直性が高まってきて、当然増経費がだんだんふえてくる、自然増収もいまの七・二%程度の平均経済成長率がほぼ達成できれば予算編成に差しつかえるようなことはないと、こうおっしゃいましたが、そこで当然増経費がどんどんふえてきて、歳出硬直性がなかなか解消されず、しかも減税をやっていく、二〇%程度の、国民所得税負担率との関係ですがね、これは私この前お尋ねしたのは、単年度でなしに、今後恒常的に二〇%という拘束から離脱したとお考えになっているのではないかということをこの前お伺いしたのですが、そこでいま二〇%は望ましいが、いまはちょっと無理だろうけれども、いずれはまた税制調査会の答申の二〇%の線というものをもちろん尊重しないというわけではないと言われましたけれども、二〇%に一いま現に問題になっておるような歳出の増加、当然増経費の負担増、こういうものはどんどんふえていった場合に、その場合に二〇%ということが近い将来可能でありますか。そこが問題だと思うのです。ことしのことは言いません。今後いまの経済のあり方を見て、しかも公債の発行は四十年度もされぬと言明されておる。こういうような条件の中ではたして税制調査会のいう二〇%というようなことを——今後二二・二%から二〇%の線に沿って引き戻すような条件が存在しておる。それがどういうときに二〇%にまでたとえば引き戻すことが可能か、どういう条件のときに可能か、少しむずかしいのではないかと思うのです。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 税制調査会の答申の二〇%は将来好ましいと——将来というのは私は一、二年度のうちにというような考え方は持っておりません。私は二〇%という答申に対しては十分政府も尊重いたしておりますし、基本的には二〇%、一九%、一八%というように、戦前に近いものにできるだけ早い機会になりたいという考え方を申し述べておるのでありまして、私は、税制調査会の答申二〇%前後ということを土台にして言うならばそれは二一、二%というふうに置きかえていただいたほうがいいと、こういうふうな考え方を持っておるのであります。私は少なくとも三年、五年のうちに二〇%まで引き下げるというようなことは現在の状態ではむずかしいのじゃないかというふうに考えます。これはまあいずれ……そこまで申し上げます。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣全然落第ですよ。税制調査会の答申を読み違えておるのですよ、あなたは。税制調査会は、将来は二一、二%になるかもしれないけれども、ここ当分は二〇%程度というのですよ。あなたは、税制調査会の二〇%程度、将来それに近づくことに努力するようなことを言われておるのですよ。それは好ましいことだと言われておるのですよ。税制調査会はそうじゃないのです。大蔵大臣が言わんとするようなことを言っておるのですよ、税制調査会のほうは。国民所得がふえていけば税負担率はふえるでしょう。歳出もふえてくる。社会保障もふえるから負担率はふえるかもしれないけれども、ここ当分はまだ戦前に比べ、諸外国に比べて著しく税負担率が重いから大体二〇%程度でいけ、こういうことなんです。あなたは逆じゃないですか。ちっとも読んでいない。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうもあげ足を取らぬと、こう言われておりながらどうもあれですが、私は税制調査会が二〇%ということを言いましたけれども財政の当局からしますとそれは二一・二%と読んでいただきたいと、こういうことを申し上げておるのでありまして、確かに理論から言いまして国民所得もだんだんふえてくるということになれば、先進工業国のように、税負担率は二五%、二六%、三〇%、三十何%という国もあるのでありますから、アメリカのような状態になるという理論上のことを税制調査会は言われておるのであります。私はしかし戦前の税負担率に比べても非常に高い税負担率の現在でありますから、早くできる限り日本の国がよくなって税負担率がだんだん下がっていくことが望ましい、こういう政治的高い立場における政治家の姿勢を申し上げておるのでありまして、これは御理解いただけると思うのであります。私はいま二〇%と税制調査会が言われても、現在の予算状況歳出要求の事情等を考えますと、まあ二一・二%というふうに読んでいただくほうが好ましい、政府としてはそういう状態でありますということを申し上げておるわけであります。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私がこれをやかましく取り上げておる私の考えの基本には——税負担率を安易にどんどんふえてよろしいと考えるなら、歳出のほうについても、もっと歳出を効率的に使うという意欲、努力が少なくなってくるのですよ。さっき言った下方硬直性で毎年々々膨張していくでしょう。公共事業費もふえる、社会保障費もふえる、税負担が高くなってもいい、そういう安易な気持ちになっていると、歳出のほうについての効率的な使用、そういうものに対する努力が足りなくなるのですよ。そういう意味では私は、大体税負担率はこの程度だということをある程度きちんときめることが必要なんです。それがきまってから減税はどのくらいにする、社会保障はどうする、ただ金額をきめるだけでなく、その金額の中でいかに効率的に使うかという努力がこのごろ非常に薄らいできておりますよ。この点非常に問題であります。歳出についても、国民の血税であります、もっともっと真剣に、それこそオーソドックスな——アダム・スミス的な議論を言い出しますとそれは古いと言われるかもしれませんが、やはり出ずるをはかって入るを制するというようなそういう考え方が必要なんですよ。そうしないと、このごろはムード的に予算ばかりどんどん膨張してしまう、安易な気持ちになるでしょう。そういう点から私はどうしても問題にすべきなんです。そこで問題にしていきたいのですが、大蔵大臣はあげ足取りと言われましたが、あげ足取りをしておるわけじゃありません。やはり財政の基本的な問題ですよ。考え方、姿勢の問題ですよ。この点は十分に——単にあげ足を取るために質問をしておるのではないのです。お互いにですよ、ほんとうに正しい意味での健全財政にしなければならないですね、そういう意味質問しておるのですから、誤解のないように。  次に伺いますが、政府は二千億以上の減税を公約しましたが、われわれ政府から発表されました内容を見ますと、二千億以上の減税になっておりません。何を根拠として二千億以上の減税というふうに言われるのか。これは公約違反ですよ。その点、二千億以上の減税と言われるなら、どうしてそうなるかですね。これはガソリン税は入れてですよ。これはあなた目的税ではないとはっきり言われたのですから、入れて計算して示していただきたい。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 初めは、御承知のとおり、二千億に近いと、こういうことを言っておったわけでございます。選挙をやっておるうちに、二千億にいつの間にやらなってしまいました、選挙後は二千億を確保しよう、こういうことであります。それから、税制調査会は二千三百余億円の減税案を答申をされましたが、その中には輸出所得控除の金額は差し引いてない金額でございますので、これを差し引きまして計算をして、大体税制調査会の答申を上回る、まあ初めは五十億ないし六十億——五十五、六億上回るという案をつくったわけでございますが、その後の状態から、十分計算をしますと、百億以上上回るというふうに考えておるわけでございます。国税地方税を合わせまして、二千二百五十五、六億だと考えております。大体その程度——まあこの間までは二千百八十億、こういうふうに申し上げておったわけでありますが、計算をしてみると、二千二百五、六十億の減税になっておるわけでありますから、公約違反というよりも、公約よりはるかに大きな減税をしたと、政府はこのように理解しております。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その内容を示して下さい。私の計算ですと、平年度千七百八十二億、初年度千百二十六億です。
  40. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お答えいたします。木村先生のおっしゃるように、揮発油税地方道路税及び軽油引取税の増収分を差し引きいたしますと、二千二百五十六億から、そういった合計の平年度額を差し引きますと、千八百九十億ぐらいの減税になるわけでございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃありませんか。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はこの前、木村先生だったかどうかわかりませんが、予算委員会で二千億の減税の中にガソリン税の増徴分は含むのかと、こういうことの御質問ございましたが、含みません。こういうことをお答えしてございますから、当然そのような考え方に立っておりますので、ガソリン税の増徴分は含まないということでございますので、二千億以上の減税をしている、政府はこの立場に立っているのであります。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あのときは、ガソリン税目的税というふうに言われました。さっき目的税ではないと言われた。ガソリン税は消費者負担になるのでしょう。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ガソリン税は消費者負担に最終的にはなるわけであります、消費税でございますから。しかし、いままでは蔵出し税ということで、大体蔵元で負担をしておりましたものが、このごろだんだんと末端のほうに参りまして、現在は町のガソリン販売所等に対しても増徴分等に対して分担をするようにというふうにいわれておるようであります。まあ、最終的に考えれば消費者に負担をするということは当たらないものではないと思います。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは当然増税分に含めるべきであって、これは政府のごまかしですよ。目的税ではないとはっきり言いながら、そうして、これを差っ引かないのですね、減税の中から。で、いまガソリン税を増税分として見れば、二千億以下であるということは、泉主税局長ははっきり言われたのですから、これはもうごまかしであるということで、この点、もっとやっていると時間がなくなりますから、次の問題に移ります。政府は公約違反である、国民をごまかしたのであるということは、非常にはっきりしました。  次に伺いますが、三十九年度の自然増収の六千八百二十六億のうち、物価騰貴によって名目的に所得がふえたわけですね、それによる増収分はどのぐらい見ておるか。
  46. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 物価騰貴による増収でございますが、各税の収入見積もりは、先ほど大臣から申し上げましたように、たとえば所得税で申し上げますと、雇用の増が四%、賃金の増が九・一%ということで算出いたしております。それからまた、申告所得税につきましては、物価騰貴——小売り物価は四・二%、それから、卸売り物価のほうはあまり騰貴しないという前提ではじいておりますが、物価騰貴だけの要因からどれだけの増収になるかという計算は、実はいたしておりません。生産物価双方の相乗と、それに所得率が加わって税収が出てまいりますので、物価騰貴だけからどれだけの税収ということは、ちょっと計算いたしかねるのでございます。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十八年度、税制調査会が減税について答申しておりますが、その資料によりますと、こういうふうに言っております。三十八年度の所得税弾性値を用いて計算すると、来年度自然増収のうち一、つまり三十八年度です。増収のうち、実質上の負担増加額が約三〇%にのぼると思われる。もっとも、この場合にも、物価上昇が各所得者に一律に影響すると仮定しているので、これよりも若干少な目になるであろうという答申でございますが、自然増収のうち、大体三割くらいのものは物価騰貴によって名目的に所得がふえた、実質的な負担増である、こういうふうに答申しているのです。これについてどうお考えか。それで、三十九年度については、こういうやり方によって、どの程度にこの物価値上がりで名目的に所得がふえ、累進課税がかかる。それによって負担増になる部分をどの程度に見ているのか。これを大体見なければ、物価の調整のための減税はできないはずだ。どの程度に見ているか、大蔵大臣
  48. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 所得税について申し上げますと、お話しのように、三十九年度におきましては、名目所得の増を九・一%と見込んでおるわけでございます。そして実質所得のほうは、消費者物価が四・二%騰貴するものと見ておりますので、そこから出てくるわけでございますが、それを独身者、夫婦、あるいは夫婦子三人といった各世帯別に見まして、名目所得が上がりますると、それだけ税負担が上がるわけでございます。しかし、実質所得はそれだけふえておらないわけでございますから、その分だけ実質所得がふえた分に対応する税負担の増はともかくとして、名目所得がそれ以上にふえた分についての税負担が上がるわけであります。それを減税によって調整するにはどうしたらいいかという検討をいたしておるわけであります。これは結局、そういった各世帯構成別の、また所得金額別の問題になってくるわけでございますが、それによって見ますと、独身者の場合でございますと、三十八年の所得が百万五千七百円ぐらいのところまでは、実質的に、今回の減税によって負担が軽減される。夫婦者でございますと、それが百十万五千円、夫婦子三人の場合でございますと、二百十五万円のところまで実質的に負担が軽減される、こういうふうに計算いたしまして、今回の減税案を企画立案いたしたのでございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかりますけど、全体として税制調査会のこういう答申があるのでしょう。そういうので、これに対応して、三十九年度の場合を見ると、大体どのぐらい実質の負担増加をおやりになっているか、大体二〇%程程なのか、あるいは三〇%度程なのか。
  50. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 三十八年度の答申のときには、お話しのように、所得税収入のうち、まあ三〇%程度名目所得の増加によるところの増収だというふうに、これはきわめて荒らっぽい計算でございまして、正確に三〇%ということは、所得階層が違うことによって、また世帯構造が違うことによって、いろいろ違った数字が出てまいりますので、必ずしも三〇%というのを一律に申し上げるわけにまいらないと思うのでございますが、三十九年度におきましては、その点につきましては三〇%までに行かない、二〇%と三〇%の間ぐらいじゃないかという観測はいたしておりますが、そういった数字は、三十八年の数字を発表したときいろいろ紛議の的になりまして、先ほど申し上げましたように所得階層別また世帯構成別でいろいろ違っておりますので、必ずしも一がいに言うことはできないということから、三十九年度の場合には、そういったことを入れなかったのでございます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体、所得階層別はあとでまた聞きますけれども、三〇%程度と見れば、六千八百二十六億の三割、約二千億ですよ。そうでしょう。そのぐらいは国民に返さなきゃ、そのぐらい減税して、そうしてこれは物価騰貴に基づく名目所得の増加、これに対する実質的な増税を調整できるんであって、これはそれ以上に減税しなければ、ほんとうに実質的な減税にならない。それだから考える。所得階層別の問題は一応別にしまして、その理論からいけばそうですよ。それともう一つ、三十八年度の減税考える場合に、三十八年度の減税は、確かに画期的な減税をやりました。というのは、物価調整ということをやったわけです。減税について物価調整をやった。物価が上がる。名目所得がふえる。それに対して累進課税がかかる。そこで名目所得がふえた場合、税制をそのままにしておけば増税になるんだと、だから増税にならぬように調整した。これが画期的な僕は調整だと思うんです。しかし、三十八年度は、ほんとうの意味では、所得階層別には実質的減税になっている面もありますけれども、全体から見れば、むしろ減税ではない。三十八年度の物価調整をやるときに物価を何%に押えたか。資料によりますれば、五・三%に押えて計算しております。ところが、三十八年度は物価は八%に上がっているわけです。したがって、五・三%の物価値上がりを前提として物価調整をやりましたけれども物価は八%に上がっているのですから、物価調整し切れないわけです。五・三%の物価値上がりによって調整している。実際は八%になっておるのですから、再調整をしなければならぬわけです。ところが、それが全然再調整されてない。しかも、あとで質問しますが、三十九年度の四・二%の物価騰貴も調整されていない。そうなると、名目的には減税ですけれども実質的には増税になる。その点ひとつ、政府委員でもけっこうです。
  52. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 先ほど申し上げましたように、所得税の場合、物価騰貴による名目的な負担の増ということが計算されますが、それだからといって、自然増収六千八百二十六億全体の中に、物価騰貴による自然増収が二割五分もあるという御判断はいかがかと思うのでございます。所得税自然増収は、御承知のとおり二千十六億でございまして、その中の二割五分ないし三割ということでございますれば、お話しのとおりと思いますけれども、六千八百二十六億全体にお考えになるのはいかがと思うのであります。それから、先ほど木村先生は、昭和三十八年は物価調整のための画期的な減税をやったとおっしゃいますが、これはもう減税の規模からごらんになってもおわかりになりますように、三十八年の場合の所得税減税は五百四十億でございました。しかも、その中には利子所得の特別措置などもございまして、実質的な基礎控除の引き上げ、扶養控除の引き上げ、配偶者控除の引き上げ、専従者控除の引き上げによる減税額はそれほどなかったのでございます。それに比べますと、今回の所得税基礎控除の引き上げ、配偶者控除の引き上げ、扶養控除の引き上げ、専従者控除の引き上げ、給与所得控除の引き上げというのは、より大きな数字でございまして、実質的な調整は、むしろ三十九年度の予算でこそ行なわれておるのでございまして、お話しのように、三十八年度のときにおきましては、物価の予想が実際と違っておりまして、その調整が十分とれておりません。そこで、三十九年度におきましては、それを含めまして、物価調整による負担の増をカバーするだけの減税を行なうということにいたしたのでございます。先ほど申し上げましたように、世帯構成によりますと、所得の金額によって違いますけれども、独身者の場合には百万円程度、夫婦者の場合には二百十五万円ぐらいの所得までは、実質的に負担が軽減になるということを目途にいたしたのでございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が画期的と言うのは、物価調整という考え方ですね、物価調整という考え方を出したことが画期的と言うのですよ。いままで、物価調整についての減税のしかたを、いままでそういう問題にしてやったことはない。ですから、物価調整は、これは減税ではないと言っているのですよ、中山税制調査会長は。それ以上に減税した分が実質的な減税になる、こういうことなんですね。そこで、さっき伺ったのですが、三十八年は五・三%の値上がりを前提にしてやったのが実質八%になった、それはどういう調整をされたのですか。
  54. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話しのように、従来減税を行ないます場合に、物価調整による減税であるか、実質的な減税であるかという点について、必ずしも明らかでなかった点がございましたのを、三十八年の税制改正の際問題にしたという点はお話しのとおり。三十八年の減税の際に、そういう問題が提出されたわけでございます。ただ、その場合の前提となりました物価騰貴率が、予測と実績と違って、三十八年度の物価は、御承知のように、八%程度上がったわけでございます。したがって、三十八年に予想しておったほどの調整が十分できなかったという点は、お話しのとおりでございます。したがって、三十九年度におきましては、名目所得が九・一%増加するという前提に立ちまして、それから物価が四・二%、これはまあ経済見通しにあるとおりでございますが、騰貴する。したがって、実質所得の増加が五・三%という計算でやっておるわけでございます。それから、それでは実際減税の額のうち、いわゆる物価騰貴を調整するための減税額は幾らで、実質的な減税額が幾らかということ、これはなかなか、お話しのように、経済上はそういう概念として構成できるわけでございますが、実際の数字をはじく段になりますと、非常にむずかしいのでございます。しかし、単に減税々々と言うだけでなしに、その内容がいかなるものであるかということを分析して、その意味を検討していくことは必要であろうと、かように考えておりまして、実は税制調査会の基礎問題小委員会のほうにおきまして、そういった検討を今後やっていくという予定にいたしておるのでございます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの泉主税局長説明によっても、この減税の中には、物価騰貴によって名目的に所得がふえた、したがって、累進税率がかかって事実上増税になるのを調整する部分があるわけです。ですから、政府は二千億減税とはただ総額で減税と言いますけれども実質的な減税を国民は要求しているわけです。減税はむしろ実質的な減税でなければならぬわけであります。そういう点をこれからもっと正確に、それは算定むずかしいかもしれませんが、そういう点はやはり明らかにしなければごまかしですよ。そういう点は、そういう努力をしていただきたいです。大蔵大臣、いかがですか。そうしませんと、単に名目的だけ二千億以上の減税と、これは子供だましみたいのものですよ。その中で物価調整分はどのくらいなんだ、ほんとうの減税はこのくらいだということも、このくらいのことは政府は明らかにする義務があると思いますが、いかがですか。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 減税の参考資料として、あなたがいま言われたようなものまで、あまり正確じゃないと思いますが、提出をするような努力をすることはいいことだと思います。しかし、減税というのは、実質的に減税されないから減税でないということは、少し荒らっぽい議論だと思います。現在の率でいけば、現行でもってずっと調整するのでございますから、それを税率を引き下げるから減税であることは、これはもう減税論は私よりも木村さんのほうが専門でございますが、やはり減税でございます。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がないから……。そういうことを言われると、また税制調査会の答申を言わざるを得ない。これは政府が出した資料ですよ。税制調査会の所得の伸びとか大小とかいう問題の比較は、所得の名目額ではなく、実質額で行なうのが当然であるように、所得税の負担が適正かどうかも、当然実質所得を基準に考えるべきであるということを、政府の資料ですよ、税制調査会の出した——あなたは、実質的に考えるのはどうかと思うなんて、そんな軽率な御答弁をされちゃ困りますよ。われわれもちゃんとこれを読んできているわけですからね。そんないいかげんな答弁では困りますよ。それは、あげ足をとるようで悪いようですから、御容赦しておきます。  次にお伺いしますが、今度は、三十八年度で最初物価を五・三%と前提した八%は、調整されてないと言われましたね。それで、税制調査会では、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、専従者控除、各一万円ずつ引き上げて、総額三百九十二億減税すべきであると答申をしたのです。これに対して政府は、基礎控除だけ一万円上げました。しかし、あとはみんな五千円に切り下げまして、二百七十五億しか減税してない。税制調査会の答申との間に百十八億もの開きが——少なくなってしまったのです。これはどういうわけですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この税制調査会の答申は、いま御指摘になったとおりでございましたが、御承知のとおり、開放経済に向かう日本といたしましては、他にも減税をしなければならないものがたくさんあるわけでございます。そういうような立場から、今年度は妻に関する面等五千円しか引き上げなかったというような面がございますが、家族の問題に対しては、将来の税制改正でまた十分考えていくべき問題であろうというふうに考えるわけでございます。
  59. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 三十七年度の実績ベースにいたしまして、それに三十八年の所得がふえ、また物価が騰貴し、さらに三十九年度の所得がふえ、物価が若干上昇するという前提のもと計算した場合に、各世帯別に見まして、三十八年度の減税プラス今回計画いたしておりまする三十九年の減税を合わせまして、実質的な減税がどの程度はかられているかという点を申し上げてみたいと思うのでありますが、それによりますと、三十七年度の実績に対しまして、名目所得の伸びは二二・三%でございます。で、実質所得のほうは、物価の騰貴を合わせまして一一・七%になりますので、二二・三を一一・七で割って計算してございます。それによりますと、独身者の場合でございますと、先ほど百万と申し上げましたが、三十六万四千五百円のところまで実質的に負担の調整が行なわれております。それから、夫婦・子一人の場合でございますと、五十万六千円のところ、夫婦・子三人でございますと、先ほどは二百万と申し上げましたが、百九万三千五百円のところまで実質的に負担の調整が行なわれているという計算になっております。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど三十八年度の減税につきまして、政策減税とか、あるいは所得減税ですか、実質減税、一般減税ということが問題になっているそのときに、所得税のほうにつきましては、三百九十三億減税せよという答申に対して、二百七十五億に減税を減らしてしまった。それにもかかわらず、今度は不労所得について、利子所得につきましては一割の課税を五%に下げた。七十六億円減税したわけです。配当所得課税については、一割をまた五%——半分に引き下げまして、百二十六億減税したわけです。ところが、この利子所得につきましても、配当所得にしましても、すでに租税特別措置で十分減税しているわけです。それまでの減税によると、三十八年度の利子所得の減税は二百十億の減税になっているのです。その上に七十六億また減税した。それから、配当所得は百億減税になっているのに、また百二十六億減税したのです。所得税のほうの扶養控除あるいは配偶者控除、専従者控除の引き上げ分を削って、利子所得とか配当所得のほうの減税を大幅にやったのですよ。そこで、私は伺いたいのは、この利子所得に減税する目的、配当所得に減税する目的は何であるか、何のためにこういう減税をしたのであるか、大蔵大臣に伺います。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 答申にない事項で政府案として取り上げましたものの中に、損害保険料控除の創設、配当軽課措置の拡充、証券投資信託の収益分配金の分離課税、新築貸家住宅の特別償却割合の引き上げ、特別法人の課税の改正、国産第一号機の特別償却制度の創設、特定の医療法人に対する税率の軽減、生前贈与の農地にかかる贈与税の納期の延長等々があるわけでございます。この問題につきまして、特に利子課税の問題、配当課税の問題に対しての御質問でございますが、開放経済に向かっていく日本の国情を考えますときには、いつでも御指摘になるように、健全財政を貫き、物価を抑制せよ、また、外国からの借り入れ金に頼らない自己資本で、できるだけ国際競争力に対応するような長期的な施策を行なえ、これはもうすべての国民がそういう目標で考えているわけであります。そう いう意味から考えまして、いまの日本の金融機関の状態考えますときに、日鉄からの借り入れが非常に大きい、オーバー。ローンの解消、そういう問題が長く唱えられているわけでございます。また、特に貯蓄の増強というものが、金融の正常化をもたらすものでもあるし、また、一つには、消費の抑制となって物価を押える役目にもなるわけでありますし、外国から金を借りないで、自己資金でまかなうという、国としての大きな目的を持つものであることは言うを待たないわけであります。もう一つの、問題の配当軽課の問題でございますが、かかる問題に対しては、もう皆さんが御存じのことでありまして、戦前六一%の自己資本比率でございましたものが、戦後十八年間で、もちろんあの荒廃の中からの資本で立ち上がった日本の産業であるからやむを得ないとは言いながら、三〇%自己資本比率が二九%になり、二五%になり、現在二五%を割り込んでおる状態でございます。そういう状態から考えますと、自己資本比率を引き上げて資本蓄積を行なうことと、貯蓄を増強することによって物価の安定をはかったり、正常な経済成長を遂げるために必要欠くべからざる政策でありますので、あわせてこれらに対しても、税制上特例を設けたわけであります。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 利子所得に対する課税減税して貯蓄の増強になるか。それと、貯蓄増強との関係を伺いたいのです。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、いつでもそういう御質問がございますが、優遇をして一体効力があるかということでございますが、優遇すれば必ず効力があるわけでありますが、これはしかしはっきりと、どういうふうに減税をしたから、どのようにしてこれに対応してふえたかと、こういうことはなかなか実際の数字としては証明しにくいのでございます。一部の学者は、そういう優遇措置をやっても貯蓄増強などに資さないという議論をなす方も一部にございますけれども、私は、優遇すれば必らず貯蓄の増強、資本蓄積等に対しては効果がある、長い目で見て、当然政府はかかる施策に対しては必ず対応する状態はあらわれるという考え方でございます。去年なども、あんなことを言われましたけれども、去年一年間を通じて戦後最大の貯蓄の伸び率があった。一体そのうちどれだけが減税分による、特例分によるものか、これはなかなかむずかしい話でございますけれども、優遇措置をとって政策的効果がなかったというふうには考えておらないわけであります。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 主税局長に伺います。いままで主税局ではこういう調査をしてきているはずであります。大体昭和二十二年ごろから利子課税、ずっと問題になってきておりますが、その後、二十二年から、ずっといままでこれを廃止したこともあります。課税したこともあります。それと貯蓄増強との関係ですね。具体的に御調査あるわけです。この前の減税のときには、大蔵省主税局は反対したわけです。貯蓄を増強するには、可処分所得がふえることによって貯蓄がふえるんだ、利子課税減税しても貯蓄はふえないんだということになっているわけです。なぜそれを、利子課税減税して、しかも、これを、一般の勤労者のほうの減税分を減らして、そっちへ向けているのです。しかも、これは不労所得じゃありませんか。配当所得についてもそうです。で、私はこの際、賀屋法務大臣をわずらわしたんでありますが、賀屋法務大臣は、政調会長をおやりになっていたころ、私は新聞でも拝見したのであります。それは、減税の問題につきまして、所得税を納める人はまだ余裕のある人である、したがって、減税よりは社会保障のほうに財源を振り向けるべきであると御主張されたことを、私は承っております。新聞でも論文を見ました。いまでもそういう御意見は変わりないんでございますか。
  65. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) お答え申し上げます。簡単に、所得税を減すよりも、社会保障に向けたがいいと申しましても、多少誤解を招く気がします。所得税減税、特に小額所得税納税者の減税は、私は非常に必要だと思っております。恐縮な言い方ですが、われわれもそういう生活をずいぶん長い間やっておりました。身につまされて必要を感じております。ことにこの階層は比較的知識階層が多いのであります。そして文化的欲望の高い人です。それに比して、標準家族、年所得五十万円、六十万円というところは、ずいぶん主観的には生活が苦しい、負担を軽減したいというような、私も同感をいたしておるのでございます。しかし、いまも木村委員のおことばにありましたように、日本の所得層というものは、率直に申しまして、統計その他そう正確にわかりませんが、大体において、所得税の納税者、その家族と、納めない者、その家族とに分けてみますと、ごく大ざっぱに申しまして、半々でございましょう。数年前までは、所租税納税者及びその家族のほうが少なかった。昨今は一般に所得のレベルが上がりましたから、基礎控除その他がふえましても、あるいは所得税納税者及びその家族の数のほうが五割——六割近くになっているかもしれません。しかしながら、国民のうちの大体半分前後というものは、所得税を納めるに至らない所得を持っておる。これは税法のひずみもございますから、納税者のほうが常に所得が多く、非納税者が少ないと、例外なく断定するわけにいきませんが、大勢はそうだろうと思うのです。そうしますというと、所得の少ない低所得の層、こういう層に対してどうするかという問題になりますと、私は、大いに努力しましてその生活を改善しなければならぬ、こういうふうに痛切に考えております。そこで、率直に申し上げまして、一部の、所得税減税が最も緊要であるというふうに強く主張される方々よりは、私は、もっと社会保障その他低所得層対策によけい使うほうが政治として適当ではないか、こういう考え方を前から、今日もいたしておる次第でございます。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、三十八年度の減税をやったときには、賀屋法務大臣は政調会長であられたのです。その御主張によりますれば、所得税三百九十三億を三十八年度減税せよという税制調査会の答申に対して、二百七十五億に削った。百十八億を削った。それを社会保障費のほうに向けるならば、われれわ納得できます。ところが、それを利子所得の減税、配当所得の減税のほうに向けたんです。約二百億向けたわけです。そのほかに、すでに利子所得、配当所得は三百十億も減税されているのです。租税特別措置によって、その上さらに約二百億減税した。その減税財源は何かといえば、所得税減税を削って、つまり扶養控除、配偶者控除、専従者控除を一万円上げろというのを五千円に削っている。そして、そういういわゆる政策減税、企業減税のほうに向けた。これは論理が合わぬと思う。賀屋法務大臣の言われる御趣旨はわかります。それについてはもう一つ議論があるのですが、これはいま詳しく御弁明になりましたから納得はできましたが、所得税を納めている階層といっても、ずいぶん苦しい階層があるのです。というのは、課税最低限が非常に低いわけです。三十九年度の課税最低限は、独身では十七万二千九百円です。戦前に比較しますと、戦前は五十八万五千円です。これは、賀屋法務大臣は前に大蔵大臣をやられたですから、よく御存じのはずです。戦前は五十八万です。それと比較すると、いま十七万です。夫婦子供三人の場合は、戦前は七十八万です。現在は五十三万です。これは三十九年度の改正によりますと、戦前に比べて最低課税は非常に低いのです。著しく低い。ですから、そのほうの減税もやはり私は必要であるということを言っていただきたいのです。それと同時に、やはり社会保障に重点を置かれるという御趣旨は全く賛成なんです。それならば、三十八年度の減税のとき、どうして社会保障にこれを向けないで、そうして企業減税のほうに、いわゆる不労所得のほうに資本蓄積の名によって振り向けてしまった。しかも、いま伺いますと、必ずしも利子所得の減税と貯蓄との関係ははっきりしていないんですよ。可処分所得、減税した残りの所得がふえたときに貯蓄がふえるのであって、利子課税減税したからといって貯蓄がふえるという相関関係はない。ずっと大蔵省でちょうだいしたものがある。ですから私は、その点はおかしいのではないか、こういうふうに考える。その点、法務大臣はいかがお考えか。
  67. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ただいまの御質問には、私個人としては喜んでお答え申し上げたいと思います。  一言にして言えば、政治は、目前のみを考えるか、将来を考えるか、私どもは経済の繁栄ということを考えます。これは少しく別問題ですけれども、たとえば、安保条約の締結にも私は非常に熱心でございました。こういうことは、安保条約は経済理論の大きな問題を控えている。経済的に非常に関係がある。わが党が経済の繁栄ということを非常に力を入れて申しますのは、経済自体の繁栄が目的ではない。総理大臣も始終言っておられると思いますが、それによって国民生活を向上改善する、こういう大きな見地から出ております。そこで、低所得層に対してよけい配分資源を求めたいという考えがありますが、それはその年限りの考え方でなく、いわゆる国民所得の総額を増加しまして、国民階層全体に所得がふえるように、そのふえるようにというその中の配分は、私は、低所得層に非常にたくさんの割合を持っていきたいと熱心に考えていますが、何としましても国民所得の総額をふやさなければ、よくいわれますように、貧乏の分け合いになるのであります。幾ら配分が公平にわれわれの考えで行きましても、少ない資源で、それを多数の国民に分けるというのでは、これは、ほんとうの福祉国家も何もできないのであります。そこでわれわれは、将来の経済繁栄によりまして、今後の経済繁栄によりまして、国民所得の総額を増すということにきわめて熱心であり、努力をいたしておる次第でございます。いわゆる昨年は政策減税ということばで一般にいわれましたが、ことしはあるいは企業減税ということばが使われているかもしれません。これらに対する命名はそう明らかな観念はございませんが、私どものねらいは、将来の経済繁栄の基礎になる施策をしたい、国民所得の総額を今後増していきたい、それには何が必要であるか、つまりそれは、将来における低所得層に対する配分資源を非常に増加するという観点からそれを考えているのでございまして、問題は、要するに、いろいろな配分資源を現在のために使うか、将来のために使うか、これからきておる問題でございまして、その意味から申しますと、わが国の経済繁栄に二つの大きな重大点がございます。これは二つには限りませんが、その著しいものは輸出の振興であり、もう一つは資本の蓄積でございます。日本の経済におきまして、原燃料その他の輸入も、資源の少ない国で盛んにやらなければ、国の経済も伸びっこない、国民生活は向上しないのであります。その意味におきまして、輸出振興その他の産業等についてその基盤が強固になり、これが大いに結果論として増大されますような施策をやりたい。税制の面にもそれをやりたい。これで私どもは、いわゆる租税特別措置などにつきましても、一がいに悪いと思いません。いいものはどしどしやるべしという考えでおるのであります。資本の蓄積にいたしましても、御承知のように、日本の経済の高度成長は著しいものでございます。これには、どうしても生産構造ないし生産規模の拡大改善が伴わなければならない。構造的にバランスを見まして、結局経済力を増大して、国民の生活を豊かにするような経済構造にならなければいかぬ。規模が拡大しなければいかぬ。それにはどうしても資本の蓄積が必要であります。日本の経済成長率は、おおむね世界各国の平均の二倍以上、三倍にもなるんじゃないかと思うのであります。日本の資本の蓄積率は高い、各国よりも高いといわれますが、その必要には私は追いついていないと思う。将来国民の生活を向上発展して、低所得層を少なくともわれわれはいまの中産階級の概念まで持っていきたい。それをやるためには、どうしましてもいま相当に苦労しても資本の蓄積が必要である。その資本の蓄積としまして、昨年とりました税制措置につきましては、いま木村委員より御批判がありましたが、われわれは、あれが有効なりと信じておるのでございます。そういう観点からいたしましたので、私どもは、さっき申しました基礎観念を実行するためにさような措置をとった。こういう次第でございます。何とぞ御了承願います。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は、日本の資本蓄積には、至れり尽くせりの保護政策がとられているわけです。たとえば、租税特別措置につきましては、昭和三十八年大体二千億です、国税において。地方税において千百億、三千百億も租税特別措置によって税制上の優遇措置がとられているんです。全然ほかにとられていないわけじゃないんです。その上に、利子課税あるいは配当課税において一割を半分にまけておる。いままでうんと減税してあるわけなんです。それの措置をしなくても、平年度利子課税では二百十億、配当では百億減税になるのです。それ以上に減税をして、それも一般勤労者のほうの減税に向ける分を削ってやっておる。そこに問題がある。ただいまの法務大臣の一般的な御議論については、われわれは何ら反対するものじゃございません。しかし、いかにも全体のバランスを考えて、あまりに非常識じゃなかったかと思う。それから、本年度につきましても同じ問題が起こっております。税制調査会では、給与所得について、中山税制調査会長も非常に不満の発言をしております。最高十五万円に上げるべきを十四万円に下げた。それで、初年度二百八十億減税せよというのを二百億に減らしているんです。八十億減らしている。平年度三百二十億減税せよというのを二百二十六億に減らしている。九十四億減らしているわけです。その分、支払い配当の法人税の軽減措置によって三十億減税に向けている。証券投資信託の分離課税に六億向けている。この二つ、支払い配当法人税と証券投資の配当分離課税は、税制調査会は全然答申していないんです。それを振り向けておる。三十八年度も同じことが行なわれている。しかも、給与所得については非常に申告納税に不利な点があるんです。たとえば、必要経費がないとか、あるいは金利分を損しているとか、あるいは捕捉率が一〇〇%捕捉されるとかで、いまの給与所得の控除では非常に不公平があるわけなんです。それなのに、なぜ勤労所得減税すべきものを削って、そうして不労所得であるところの、寝ころがっていても入ってくる所得のほうに減税をしたんですか。それも、資本蓄積で必要であるという立場なら、私も別にそれが必要でないとは言いませんけれども、もう至れり尽くせりの方策をやって、諸外国に比べても決して法人税は高くありませんです。税制調査会の答申もありますよ。実効税率で比較してごらんなさい、高くないんですから。こんなに至れり尽くせりの保護措置を講じて、それで今度は設備投資が行き過ぎてしまった。こんな矛盾を来たしておるんです。ところが、なぜ今度そういうことをやられたのか。三十八年度も同じことをやっておる。それと、もう一つ、妻の座をどうしてまた引き下げてしまったか。三十六年にせっかく基礎控除と配偶者控除を九万円、同じにしたんです。同じにしたところが、またずっと差別をしてしまいました。これは全く公約違反ですよ。私は、三十九年度のこの税制について、妻の座を基礎控除と同じに引き上げるように修正すべきである、そうしなければこれは非常な公約違反で、無責任です。あのとき何と言ったか。妻と夫の座を同じにするために基礎控除と配偶者控除を同じにするんだ、三十六年度の税制改正でははっきり言っておる。ところが、国民が知らない間にだんだんずらして、本年度は一万円も減らしてしまった。これもぜひ修正すべきです。どのぐらいの予算が要るか、修正するについて。それからまた、基礎控除、給与所得控除について、これを十五万円にするには、どのぐらいの予算が要るか、それから申告納税との間に私は三割ぐらいは開きがあると思うのです。これがしょっちゅう問題になる、負担の不均衡として。ですから、三割ぐらいまでに上げる意思があるか、三割上げたら、どのぐらいの財源が必要であるか、この点伺いたいのです。
  69. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お答えいたします。  配偶者控除につきましては、木村委員のおっしゃるとおり、三十六年の税制改正で、基礎控除と同額にいたしたのでございますが、三十八年の改正のときに、基礎控除を一万円引き上げ、配偶者控除は五千円引き上げることを認められまして、五千円の開きが出たのでございます。今回の税制改正におきましては、その昨年の税制改正でやり残した点をまず最優先的に考えまして、配偶者控除の五千円引き上げ、扶養控除あるいは専従者控除の五千円のやり残しを上げるということを考慮いたしたのでございますが、それでは、なお物価上昇に伴う税負担の調整ができませんので、基礎控除の引き上げ、それから、お話のように、給与所得者と他の所得者との負担の均衡の問題がありますので、給与所得控除の引き上げ、こういった減税をやるということにいたしますと、所得税で平年度七百五十億ぐらいの減税になると思います。そうしますと、配偶者控除と基礎控除の間に一万円の差ができます。しかしこれは、木村委員のおっしゃるとおり、理論的には、両者は区別すべきでなく、できるだけ一致することが望ましいということは、お説のとおりと思っております。しかしこれを、さらに配偶者控除を一万円引き上げますには、平年度百億円の減税財源が要るわけでございます。そこで、今回の減税財源が相当大きくて、歳出との関連から、これ以上減税財源をふやすことは困難ということからいたしまして、配偶者控除の引き上げは、今回は五千円引き上げにとどめざるを得なかったのでございます。将来におきましては、衆議院の大蔵委員会で、中山調査会長が言われておりますように、配偶者控除と基礎控除とは同額に持っていくように今後考えていきたいと、かように考えておるのでございます。  それから、お話のように、給与所得控除の引き上げにつきましては、税制調査会の答申は、内容が二つございます。一つは、最高限度を十五万円に上げるという問題と、いま一つは、定期控除二万円を引きましたあとの給与の収入全額五十万円まで二〇%の控除をする、これが政府案におきましては、最高限度を十四万円ということに、一万円縮小いたしまして、また、定期控除二万円を引きましたあとの給与の収入金額四十万円まで二〇%ということで、そこで十万円違っております。この両者を合わせまして、平年度九十四億の減税財源が要るわけでございます。それでは、その二つのうち、どれにどれだけかと申し上げますと、定額控除後の給与の収入金額五十万円まで二〇%にするほうで約六十億、それから、最高限度の十四万円を十五万円に上げることで約三十四、五億、合わせまして九十四億の減税財源が要るわけでございます。  なお、木村委員のおっしゃいました給与所得控除を三〇%という場合、最高限は幾らになさるのでしょうか。その最高限のあれによって、かなり違ってくると思いますが、この給与所得控除につきましては、お話のように、給与所得の場合経費の控除がございませんから、概算的な経費の控除をする。それからまた、毎月源泉徴収されるので、申告納税の場合と利子分が違う。これは、一年間の計算をしますと、たいした金額になりませんけれども、それと、給与所得の性質が、担税力からみて、他の資産所得なりあるいは事業所得に比べて低いということ、それから、これは実際問題として、木村委員の御指摘のとおり、他の所得の把握と、給与所得が源泉徴収される場合とでは違うという点がございます。しかし、税制の問題として見ますと、それだから給与所得のほうを軽くするということになりますと、堂々めぐりになるおそれがございます。しかし、実際問題として、所得の把握に差があるという点は考慮しなければなりませんので、そういった点をも加味して給与所得控除は設けているわけでございますが、さりとて、これをあまりに大きくすることがはたして適当かどうかという点は、検討しなければならない問題であろうかと思います。いずれにしましても、三〇%に引き上げる場合の減税財源は、最高限をどの程度にするかということも関連しますので、いろいろの試算をいたしてみたいと思います。ただいま手元にその数字を持っておりませんが、後日お知らせ申し上げます。
  70. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 木村君、実は持ち時間は来ましたが、少し延ばそうという考えでございまして、その時間ももう一分しかありませんので、なお、厚生大臣に対する御質問もあるようでございますから、しかるべくお取り扱いを願いたいと思います。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも恐縮です。ただいま主税局長の言われたことは、これは大蔵大臣、来年度で当然やるべきだと思いますが、当然修正すべきですよ。前にそんなに公約しておいて……。ことに基礎控除と配偶者控除の財源がないわけじゃありません。片ほうにあるのです。利子所得とか、あるいは分離課税ですか、法人の配当の課税とか、これは資本蓄積にそんなに役立たないのですから、そういう方法によっては役立ちません。ですから、もう本年度と言っても無理かもしれません。じゃあ百歩譲って、来年度にはおやりになるかどうか。  それから、厚生大臣に長らくどうもお待たせして恐縮ですが、二点伺いたいのです。  その一つは、所得税を納めたくても納められないほどの低所得層があるわけです。その中で、社会保障を受けている人は、減税より社会保障に回せという議論の対象になるわけです。なお、所得税も納めてない、社会保障も受けてないという、いわゆるボーダーライン階層はどのくらいあるか。こういう人たちにはどういう厚生施設をやるのか。減税の恩典もこうむらない。社会保障の恩典も受けない。しかも、物価はどんどん上がって、その被害を受けているという人が相当あるわけです。これは厚生省の御調査にあるわけです。その人たちは、どういうふうに厚生行政の対象にされておるのか。具体的にどういうふうにせられるか。これは、ほうっておけば、どんどん生活保護階層に転落するという可能性は十分あるわけです。こういう人たちがどのくらいあるかということ。  もう一つは、国民の栄養水準です。これはどうなっているか。厚生省の発表ですと、昭和三十六年でしたか、国民の四人に一人は栄養障害を起こしている。所得倍増計画をやって、世界まれに見る大きな成長率を遂げながら、日本の国民栄養については、むしろ倍増政策の段階に入って栄養が低下している。こういう御調査が発表されておるはずです。そういう栄養の低下については、どういうふうにお考えか。  それからもう一つ。家計の調査などを見ますると、かなり貯蓄が大きいのであります。日本の勤労者の貯蓄率は二〇%ぐらい、先進国としては、世界まれに見る大きな貯蓄率です。この貯蓄は、余裕があって貯蓄されているのかどうか。それは、日本銀行に国民貯蓄推進本部というのがございます。あそこの発表によりますと、余裕があって貯蓄する場合よりも、むしろ社会保障が不十分であるからやむを得ず自己保障、低い所得の中から生命保険に入ったりその他のいろんな貯蓄をしておる、こういう問題があるわけです。社会保障が不十分だから、そうして食を節してまでも貯蓄をしておる。それだから栄養が低下してくる、こういう問題が提起されているわけです。それについてはどういうふうにお考えか。非常に貯蓄率が高いと言われますが、それは社会保障が不十分だという問題があるわけです。その点をどういうふうに把握されまして、これを厚生行政の上にどういうふうに反映されようとしているか、この二点について伺いたいと思います。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 来年度の財源の問題を今日ここで申し上げるわけにはまいりませんが、来年度減税がまたやれるような状態であれば、いまのお説のようなものは優先的に考えるべきだというふうに考えるわけでございます。昨年の場合の答申を五千円削ったことがございますが、同じ質問がございまして、来年度減税を、もしするとなればこの分は考えなくちゃいかぬと思いますという答弁をしましたから、ことしその分やったわけでございます。来年度の問題を現在の時点において申し上げることはどうかと思いますが、お説の趣旨は十分熟慮いたします。
  73. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) いわゆるボーダーラインと称せられるものが最近の調査では約五百五十万人くらいの結果が出ております。これは昭和三十年ころの同じ調査では大体九百万人くらいあったのが、漸次低下して、いまでは五百五十万人くらい、こういうふうに統計が出ております。これらの問題につきましては、お話のように減税の恩典もない。したがって物価騰貴というふうな波をまともにかぶる、こういうことがいわれておりまして、これらに対しては社会保障の制度でもってできるだけ補っていきたい。従前の方法としましては、国民年金だとか、あるいは結核だとか精神病の場合の費用を軽減するとか、あるいは健康保険料を減免するとか、あるいは保育園の措置費を減免するとか、いろいろなことが行なわれておりますが、何といたしましても社会保障として一番大きな問題は、私どもは医療給付の問題と所得保障の問題である、こういうふうに存ずるのでありまして、御案内のように昨年十月から、その具体的な問題でありますが、世帯主の給付を七割にした。ことし三十九年度は、国民健康保険の給付の改善ということは非常にむずかしかったのでありますが、私は、とにかく低所得者については医療給付をよくするということが社会保障として一番大きな問題であるというふうに考えまして、大蔵省ともいろいろ相談しまして、政府としては最後に来年度からやはり家族の給付も七割まで上げるというような決定をしてお願いをしておるのでありますが、こういうことが私は一番大きなこれらに対する対策であると考えておるのであります。なおまた、いまの医療給付の問題と、それから所得保障の問題としましては年金の問題がありますが、国民年金の支払いも、いまではやはり三千円ちょっと、こういうことで、これらもどうしても将来の問題として直さなきゃならぬ。それに先がける問題として、まず厚生年金を、ひとつ給付の改善をいたしたい、こういうことで、昭和四十年度から厚生年金を一万円まで持っていきたいということで、いまこれを検討していただいております。したがって、これができますれば当然国民年金の改善というものに移行せざるを得ない。医療給付と所得保障、こういうふうな方向でもってひとつこの問題に対処したい、かように考えておる次第でございます。そのほかこまかいことはいろいろやっておりますが、大体一番の大筋はそういうところにある、こういうふうに考えております。  それから栄養の問題でありますが、これは最近の調査におきましても、私はここで詳しく数字を申し上げませんが、相当に改善をされてきておる、こういうことが顕著になってきておるのでありまして、数字等は、また必要がありましたら申し上げたいと存じます。しかし、まだここで十分栄養障害等による者がないと言うほどにはまいっておりません。  それから次の、貯金が非常に大きい、これはお話のように、世界にもまれのような、貯蓄が非常に大きくなっておりますが、これは日本人が従来からの習慣性もあって、相当貯蓄がよその国に比べて率が大きいということでありますが、しかし、一般的に見まして社会保障が乏しい、したがって自己防衛の必要から貯蓄がやはり相当によそに比べて大きい、こういうことは言わざるを得ないのでございまして、その率がどのくらいに当たるかということは、ちょっと調査もできませんが、一般的に把握いたしまして、社会保障が乏しいために、自己防衛のために相当な貯蓄心というものが養われている、こういうことはいなめ得ない事実である、かように考えております。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 社会保障が不十分だからやむを得ず自己貯蓄をする、自己貯蓄が銀行に行って大資本のほうにこれが利用されている、それで高度成長をもたらしている、こういうような矛盾がある。諸外国で貯蓄率が低いのは社会保障が非常に発達しているから無理して食を節してまでも貯蓄をする必要はない、こういう点があると思います。この点も十分お考えの上で厚生行政をやっていただきたい。  それからそうやって苦心惨たんをして汗水たらして涙ぐましい貯蓄をして、その貯蓄が、物価がどんどん上がって減価しておるのですよ。貯蓄の値打ちが下がってきておる、これも重大な問題だと思います。それからこの間の公聴会で公述があったのでございますが、久保まち子さんという方が、日本フェビアン研究所の方ですが、社会保障についての公述があったわけです。所得保障等について、年金とかいろいろお考えのようでありますが、その掛金等は逆進課税的になっている、低所得の人が不利のような状態になっている、こういう点も十分考えなければならぬという公述があったのです。こういう点も今後留意していただきたいと思うのです。  次に、最低課税限について大蔵大臣に伺いますが、今度最低課税限を引き上げました、引き上げましたけれども、三十九年度に四・二%物価が上がりますと、また夫婦子供三人では、いわゆる基準生計費に所得税が食い込んでしまうのです。ですから、もう一度これは調整しなければならぬわけです。いままでの最低課税限につきましては、前年度の物価調整をやっておる、本年度の物価値上がりは調整しない、これはまた来年度でやる、こういうことになっております。時間がありませんから計数的には申しませんけれども、そういう矛盾があるわけです、大蔵大臣。今度の最低課税限の引き上げだけでは足りないわけです。この点をどういうふうにお考えか。  それからもう一つ、これは大蔵大臣に対する最後の質問であります、時間がなくなりましたから……。これまで質問してまいりましたように、日本の税制には非常な矛盾があるわけです。そこで税制調査会も諮問に答申をしておるようでありますが、今後、シャウプ税制改正以来の混乱した税制を根本的にどういうふうに改正しようとしているか、シャウプ税制一つの体系を持っており、あれ一つを動かしたのでは、全体の体系がくずれる、こういうことだったのです。ところが、たとえば富裕税はやめてしまう、譲渡所得税はやめてしまう、税体系がすっかりくずれちゃっているんですよね。それで、まあわれわれの立場からいえば、大企業とか大資本に有利なような税体系にどんどんいっちゃっている。そして減税と言ったって、これは名目的な減税です、実質的な減税ではないです。実質的な減税があっても、政府が誇張するように、二千億とかなんとか言っているけれども、そうじゃないですよ。もっとこれはそういうところを正確にする必要がある。どういうふうにシャウプ税制改正以来、非常に混乱してしまっている税体系を、根本的に整えようとしておるのか、この点。  それから自治大臣に最後に質問いたしますが、これまでずっと質問してまいりましたことでおわかりになりますように、国の税金、国税では、基礎控除を昭和三十六年以後ずっと引き上げているわけです。ところが地方税は、御承知のように三十七年の税制改正ですか、このオプション・ワンですね、第一課税方式から第二課税方式に統一したわけですね。つまり、所得税を基準とする住民税所得割りの課税の仕方から、所得額を基準とする課税方式に変えました。そこで、基礎控除というものがあるわけです。ところが三十六年に九万円の基礎控除が、そのままいまだにずっと九万円です、本年度も改正されてない。国税のほうは十二万円であります、今度は十二万円になるのです。どうして国税のほうにおいて基礎控除をずっと上げているのに、地方税のほうで基礎控除がそのままにしてあるのか、基礎控除を三十六年以来そのまま九万円にしておきますと、市町村民税の所得割りは累進課税ですよ、十三段階か何かですね、御承知のように十三段階。府県民税は二段階になっています。そうすると、調整しませんから増税になるわけですよ。地方税においては明らかに増税になるのです。ですから、先ほど自然増収が非常に大きくなる一つの大きな原因として、特に地方税においては物価が上がって、名目所得がふえるのに、基礎控除をそのまま全然引き上げない、そのまま据え置いておる。基礎控除だけではございません、あるいは専従者控除におきましても、医療費控除におきましても、その他の控除についても、ちっとも引き上げないのです。ですから実質的な増税になるわけです。名目的には減税減税と言われますけれども、しさいにこういうように調べてまいりますれば、政府減税というのは、実質的には増税ですよ、減税になっておらないです。かりに国税実質的に多少減税になるものがあっても、地方税のほうの増税によって私は相殺されてしまうと思う。それに今度は固定資産税でしょう。固定資産税は、どうして宅地の分において引き上げるのですか。固定資産税の引き上げが今度は物価にはね返りますよ。物価政策との関係をどういうふうに考えておるか、この点、今後自治省においては地方税住民税、所得割りの基礎控除を、国税と同じように調整するかどうか、これについては、地方税国税と違って負担分任だからどうこう云々という申しわけがありますけれども、しかしそれは私は理屈に合わぬと思う。基礎控除というものを置いた以上、これはいわゆる最低生活を一応保障するものなんですから、国税のほうはやって地方税をやらないというのはどういうわけなんですか。非常な矛盾があると思いますから、最後にこの点を御質問いたします。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年度物価が四・二%上がると、こういうことになりますと、基準生計費で勘定しますと、五人家族で課税最低限を幾らかこすじゃないかというお話でございますが、まあ一人・二人、三人、四人まではそういう数字が出ませんが、五人になると幾らかこすということであります。しかし、これは御存じのとおり基準生計費といいますのは、理論的につかんだ理論生計費とも言うべきものでありまして、これが最低生活費ということではないわけでありますので、こさないにしくはありませんが、この基準生計費が最低生計費であるということで、課税最低限というものと一緒に論ずるということは、ちょっとおかしいじゃないかというふうに考えます。まあ密接な関係はあると思いますが、五人家族において一万円余、四十八万五千円で、四十七万一千円でもってこすわけでありますが、その問題で課税最低限が生計費に食い込んでいるということにはならないというふうに考えます。  それからシャウプ税制後の現行税制に対してどうかということでございますが、これは私にもいろいろな考えはございますが、おおむね見て各税間のバランスはとれているというふうに考えておりますが、どうも、もう少し変えてもいいというようなところ、いわゆる物価上昇等の面から考えますと、取引高税でもって失敗はいたしましたが、消費をする人そのものに対して消費税というようなものがもう少し考えられれば、源泉徴収の制度をとっておるものに対して、もっと弾力的な面も考えられるというふうにも考えたことはございますが、しかし、これはもう最低生活をやっておる人にも税金がかかるじゃないかという議論もありますし、なかなかむずかしい問題のようでありますので、税制調査会に、税法はまず納めるほうがわかるような税法にするにはどうするか、税制も専門家だけでもってわかっておって、なかなかわかりにくいということでは困るので、そういうものも含めて、将来の日本の税制はどうあるべきか、こういう諮問をいたしておるわけでございます。この三十九年度の予算に対しては、三十九年度予算編成に関する臨時答申という形で答申を願いましたわけでありまして、税制に対しては抜本的な問題まで含めて税制調査会の検討に待っておるわけであります。税制調査会の答申が出たら、ひとつ尊重してやりたい、こう考えております。
  76. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 御承知のように昭和三十七年度に負担分任の原則で国税の増税あるいは基礎控除の引き上げ等、地方税との関連を遮断したわけであります。これについては地方財政と国の政治との根本的な性質の問題がございまするので、これは今後の検討に待つといたしまして、われわれといたしましては、さしあたり切実な問題の、ただし書き方式という、本文方式の市町村民に比べまして二倍、三倍の住民税を負担している、これをひとつ根本的に解決しようではないかという観点に立ちまして、二カ年間でただし書き方式を廃止し、また準拠税率を標準税率に改めるということによりまして、扶養控除や専従者控除その他の改善をいたしまして、主として低所得者の住民税減税に踏み切ったわけであります。なお、御指摘の基礎控除の引き上げはどうかという問題は、一応住民税の本質とも関連いたしますので、その後に検討すべき問題と考えておるわけであります。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや検討……。ちょっと待ってください。その検討だけで、ただそのままほうっておくんですか。
  78. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 昭和三十七年度に負担分任の方式で国税基礎控除の引き上げと遮断をいたしました。それ相当の理由があるわけでございます。したがって、この問題は地方税国税との根本的な問題に関連いたしますので、お答え申し上げましたのは、この二カ年間は、ただし書き方式というものを本文に改めるということで三百億円近い減税を行なうということでございまして、基礎控除の引き上げの問題については、将来十分検討すると、こういう意見でございます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 検討だけですか。  それから固定資産税の答弁ないです。固定産資税の御答弁……。
  80. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 固定資産税につきましては、御承知のように農地におきましては上げない。それから住宅、償却資産につきましては九七%程度になって、むしろ現状より下がるのも出てまいる。ただ、宅地と山林だけは、御承知のように評価が非常に上がりますので、これは二割以内の、一・二倍に最高を押えるということでございますから、全体としては大体一割程度の固定資産税全体の自然増収ということになるわけであります。その程度増収というのは、従来とも評価がえ三カ年ごとの実績を見ましても、大体普通の状態における自然増収という程度にとどまりますので、全体といたしましては大きい増税ということにならないように措置をいたしたと私は思っておるのであります。
  81. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ちょっと外務大臣の質問の都合がありまして、もうほんのわずかの時間しかありませんから……。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまのに関連して一言だけ。  固定資産税につきましては、本会議におきましても三十八年度と総額は変わらないんだということを何回も答弁しているんですよ。こはれ私食言だと思うのです。三十八年度の税額よりふやさぬということを答弁している。そしてその中身が問題であったのですが、いま固定資産税のほうは若干下がる、減るというのですよ。そして宅地のほうはふえていく、しかし総額としてふやさぬと今まで答弁してきたのです。自然増収であれ何であれ、ふやさぬということになっておったのです。そしてあなたもそういう答弁をしていたのです。それがふえるということについては問題です。食言です。
  83. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 農地は、はっきり法律で上げない、宅地は二割程度上がるが最高は押える、それから住宅、償却資産は、御承知のように少し減るのではないだろうか。してみると、大体新しい固定資産も生まれてきますから、財政計画上、前年に比べて、一割程度上がるということは、厳密に言えば、一切上がらぬという意味におとりになれば、あるいは御指摘のとおりかもしれませんが、大体一割程度というものは、平年度評価がえの年には上がっているという意味において、大きくは増税と言えないと私は思うので、まあこの程度のものは、評価がえ年度で常にいままで一割程度は上げた財政計画になっているわけでありますから、そういう意味では増税と言えない、こういう意味であります。自然増収程度のものである、こういう意味でございます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点については問題がありますが、時間がありませんから、私の質問はこれで終わります。
  85. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 木村君の質疑は終了いたしました。  委員各位にまことにお気の毒でございますが、午後外務大臣の答弁の都合がありまして、一時半から正確に開きたいと思います。御努力を願います。  暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  86. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまより予算委員会を再開いたします。休憩前に引き続き質疑を行ないます。渋谷邦彦君。
  87. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最初に移住の基本的な問題につきまして外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  近年における経済の高度成長の陰に、すぐれた素質あるいは技術を持ちながら、機会と所を得ず、不遇な生活を余儀なくされている人たち、とりわけ青年が多数いるであろうということは否定できない事実であると思います。これらの人々の中に、あるいはその希望に応じ、海外に雄飛して十分にその天分や素質を伸ばしながら戦っていきたいということは、本人の希望はもとより、またひいては相手国の経済協力の上においても、その国の発展の上においても多大の貢献をすることができるであろう。こうしたことが基盤になって、世界平和の上に寄与するということが十分考えられると思います。また反面に、日本人としての成果を国際的にも高めていくという、きわめて有意義な要素が含まれているのではないか、このように考えられるわけであります。また同時に、さらに開放経済への移行とともに貿易の振興というものが大いに高められようとしております。この際に未開発のマーケットを開発するとか、あるいはすでに行き詰まっているようなマーケットを新たに開発していこうという、そういう意味においても、今後の移住というものが、きわめて重要な意義を持ものではないか、このように考えられる次第であります。そこで、政府当局としては、今後の移住対策についてどのような考えを持ち、また、どのように強力に推進され、そうして、その移住というものの振興にあたっては、具本的にどのような対策をもって臨まれるか、まず、その大綱についての見解を伺いたいと思います。
  88. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま渋谷委員からお話がございましたような構想、それが、先年から海外移住審議会におきまして、すぐれた委員各位によって打ち出された移住の基本方針でございます。政府にも御答申いただきまして、政府はそういった方針を体して移住行政の推進に当たる決意で当たっておるわけでございます。その一環として、去年発足を見ました海外移住事業団があるわけでございますが、これは中央、地方、そして移住現地を通じまして、一貫して移住行政、移住事務の一元的な推進機関として砕けたものでございます。御承知のように、従来、移住関係機関が多岐に分かれておりまして、また、政府のほうの権限も各省にまたがっておりまして、移住行政を推進する上におきまして、必ずしも能率的にまいっていなかった、また、責任の所在も明確でなかったうらみがございましたので、国会の御承認を得まして移住事業団を発足いたしまして、中央、地方、現地の実務機構を一元化する方向を打ち出したわけでございます。もっとも、この事業団はまだ完全な一元化の具現を見ているわけではないのでございまして、地方のほうにおきましては、これから地方庁その他関係団体と協議いたしまして、なお調整しなけりゃならぬ問題が若干残っているわけでございますけれども、方向といたしましては、一元化の方向に進めてまいり、政府としては、実務はこの機関にまかせ切って責任の所在をはっきりさせたい、政府は大綱の指導に誤りのないようにしたい、それから移住事業団の一元的な移住事務の遂行にあたりまして、政府が援助し助言し補助し指示いたしますことは、十分これを実行いたすつもりでございますけれども、実務機構は、少なくともこの機関を通じまして一元的にやってまいるという決意で当たっているわけでございます。一般民衆の移住意欲の問題でございますが、御指摘のように、経済の成長に伴いまする労働力の不足もございましたし、また、現地のインフレの高進等の事情もございまして、最近、移住実績が思うにまかせず、低水準を保っておりますことは非常に遺憾でございます。しかしこれは、これだからといってわれわれは勇気をくじかれることなく、いま渋谷委員からお示しになりましたような高邁な理念を持ちまして、今後、移住意欲の涵養に十分の啓蒙もやらなければいけませんし、御相談にも応じなければなりませんし、また、いよいよ決意されました方に対しましては、可能な限りの補導をしてまいるつもりでいるわけでございます。  以上のような決意でただいま当たっております。今日までやっておりますことは決して十分ではございませんけれども、少なくとも、お示しの方向に向って私どもは鋭意取りかかっておるということは御了承いただきたいと思います。貿易との関連におきましては、移住者が出たことによって、日本並びに日本製品に対する関心、評価が高まってまいり、日本との貿易の道がだんだん開けてまいりました事例も具体的にいろいろございますので、これは移住の本体の問題ではございませんけれども、それが当然もたらす結果として、私どもも海外貿易政策上、移住政策の持っておる意義、役割りというようなものも十分頭に入れて推進に当たっておる次第でございます。     —————————————
  89. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいま委員の変更がございました。鹿島守之助君が辞任され、櫻井志郎君が選任されました。     —————————————
  90. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただいまの大臣の御答弁によりますと、今後の国の施策として移住問題は強力に推進していくというふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
  91. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  92. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただいまの御答弁によりますと、今後は非常に力を入れてこれを推進されるということでありますが、昭和二十七年に海外移住が再開されまして今日まで約十年、その間において移住問題もいろいろな変遷をたどってきたと思うのであります。ところが、いまも大臣の答弁の中にもございましたように、昭和三十五年をピークといたしまして、当初立てられた年間一万人の移住というその目標がだんだん減退いたしまして、ことに昭和三十七年のごときは、当初の目標をはるかに下回りまして、二千名足らずに終わってしまったという、こういう結果を招いておるようでございます。それについては、いろいろな原因があると思うのでありますが、たとえば、いまお話がありましたように、関係する機関があまりにも多元的であった、あるいは受け入れ国のいろいろな経済事情が云々ということがございました。確かにそれも一理あると思うのでございますが、もっと根深いところに、この移住自体が推進されなかったという根本的な欠陥があるように思われるのでありますが、それについて政府はどのように判断をされて、そうして、その是正に対してどういう決意をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思うのであります。
  93. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 移住が近年、先ほど申しましたように、低水準にあるということはきわめて遺憾でございますが、労働力の不足という事情も確かにございましたし、現地の事情もございましたし、さらには移住の潜在層と申しますか、海外からお引き揚げになられた方々が再び海外に活路を求められるという、そういう方々が戦後、相当多数もう移住されてしまった、そういう潜在層が枯渇したと申しますか、そういった事情もございまして、思うにまかせなかったわけでございます。ところが、最近私どもが受けておる報告によりますと、内地で生活に困るとか、あるいは職業がないとか、不遇であるとかいう方々が、未来を新しいフロンティアに求める、こういう方ではなくて、むしろ内地では一流の会社におつとめになっておられる方、内地でりっぱに将来をもっておられる方々が、進んで海外に自分の未来を切り開こう、こういう意欲が出てきたということ、そうしてまた職業別に見ましても、農業ばかりでなく、技術を身につけた方々の移住意欲というものが相当出てまいっておるということ、これはわが国の移住政策に希望を与えるものであると私は思います。したがって、政府は、まず現地の実情というものを正確に国民にお知らせする、それから現地の移住計画なるものを十分そしゃくし、それをお知らせするという広報活動を十分やってまいらなければならぬと思うのでございます。これは府県庁等と連絡をいたしまして、一番力点を置いて解決すべき分野であろうと思うのでございます。  それから、事業団が実務を一手に引き受けて、お役所方面にあまり一々はしの上げ下げまで御相談するということなく、独自の責任でどんどん進めてもらうように私は希望をいたしておるわけでございます。現にそういう方面に馴致してまいりたい。要するに、移住というものは国民の仕事であるということで、政府は権力をもってあれこれ指図がましいことをやる限界というものを心得てやっていかないといけないのではないかと私は考えておるわけでございます。国民のほうはいとした移住意欲なるものを、事前に正確な情報、資料の上に立って出てくるような状況をつくってまいるということに力点を置いて今後努力をしてまいりたいと思っております。
  94. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 移住振興についての費用の面は、国の予算から考えますと、三十六年度は十三億三千七百万、三十七年度が十三億八千六百万。ところが、ただいまも少々触れて申し上げたのでございますが、送り出しの移住者が三十六年には六千二百、三十七年はわずか二千、こういう非常に移住者の数は激変があるわけであります。しかも、来る年来る年、大体同額の予算を組んでおられるようでございますが、その予算のいろいろな振り分けと申しましょうかについて、どのように一体考えられた上でこういう予算を組まれたのか。  また三十八年度においては十億五千七百万、三十九年度は十四億五千四百六十三万という非常に予算の内容がちぐはぐのような感じを受けます。いま、大臣の御答弁にありましたように、今後の施策として強力に推進されるとするならば、むしろこの移住振興に使われる費用というのは漸次増加の傾向をたどるということが一般的な常識として当然考えられるのではないか、このように思うのでございますが、その見解についてお伺いしたいのでございます。
  95. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、年々歳々予算計上して、それが繰り越しになっている状況でございまして、しかし、それでは新年度の予算の計上を見合わすかと申しますと、私どもといたしましては、繰り越された予算の消化を必要とする事情も考えられますので、新しい予算の御承認を御遠慮するということはいたさないつもりで今日までやってきたわけでございます。ただ問題は、金が多ければ移住振興ができるという性質のものでは私はないと思うのでございまして、問題は、これを有効に、しかも非常に親切に、行き届いた気持ちをもって実行することに力点が置かれなければならぬと思うのでございまして、予算の細目につきましての説明は、移住局長のほうからお願いしたいと思います。
  96. 白幡友敬

    政府委員(白幡友敬君) お答え申し上げます。ただいま渋谷委員からお話がございましたように、予算の面ではそう極端にふえてはおりません。しかし、これを移住事業をいたします上で、移住者の数がふえてまいります場合に、直接金額の上に影響してまいりますのは、移住者に対する旅費と申しますか、船賃などに対する貸し付け資金その他でございます。これがただいま、先刻から大臣からもお話し申し上げましたように、三十五年がピークでございましたが、その後若干減ってまいりましたために、この送出人数に対する予測をいたしまして、本年度もそれほど大ぜいは期待できないのじゃないかというところから、この辺の金額がむしろ押えぎみになっております。しかしながら、移住事業全般といたしましては、この政府が移住事業団に対しまして出しました交付金その他、私ども外務省に割り当てられました移住関係予算以外に、国庫から事業団に対する出資金及び資金運用部資金から借りました融資金というものがございますが、これが移住者に対する現地におけるいろいろな事業を営む上の資金源になるわけでございます。これは昨年度が八億ぐらいでございましたが、三十九年度、来会計年度では十二億円に増額いたしております。かように金の面でも逐次増加しつつあるわけでございます。
  97. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 予算の面から見ましても、多額の予算編成されているのでありますから、移住業務推進にあたっては、十分な配慮をもちながら進めていっていただきたいと思うわけでございますが、いままでこの移住という考え方については、特にその移住先でありますが、明治以来今日に至るまで、大体その傾向としては中南米中心とするところが主たる地域である、このように考えられてきたような感がございます。また、事実今日においてもその傾向は一向にかわらない。しかしながら、やはり日本は地理的に歴史的に、そういう関係から考えますと、東南アジアという国々を度外視することはとうていできない。また、相当広大な地域を有しながら、未開発の資源をたくさんかかえている。こうした点を考慮しながら、東南アジアに対しても中南米と同様な考え方をもって、並行的に今後の移住を強力に推進し、またそれぞれの国と移民協定を結ぶ用意はないか、またその対策についてお伺いしたいと思います。
  98. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 過去におきまして、ビルマ、ベトナム・カンボジア等からお話があったことは事実でございます。わが国から調査団を派遣いたしましたところが、これは相手国が技術指導のため日本人の受け入れを考えていたものであって、エミグレーションを考えておったものではないということが判明いたしたわけでございます。私どもが東南アジアの指導者の皆さんにお目にかかった場合も、エミグレーション、日本人の移住という問題はあまり感情が強く響き過ぎて、またそれ受けを入れるという精神状況にはまだ東南アジア方面はなっていないのが実情でございます。移住先を考える場合には、移住者とその子孫が定住の地として好適かどうかということを十分考えておかなければならぬわけでございます。その意味で、東南アジアの諸国におけるただいまの民族感情から申しますと、まだ日本としてこういう地域に対して移住を考えるというような状況ではないと私どもは判断しております。ずっと将来の課題ではないかと思います。
  99. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そういう客観情勢の上から判断をいたしますと、やむを得ないといえばやむを得ない問題が多々あると思いまするが、いま大臣は将来において考慮すべき問題であると申されております。将来といっても非常に抽象的、まことにばく然的な御回答でありまして、一体いつごろを目標としてその点を考えておられるのか、その点重ねてお伺いいたします。
  100. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 東南アジアの諸民族が日本人を快よく受け入れる、またそうしてそれをささえるだけの経済的その他の諸条件があるというような事情が成熟した段階でございまして、いま当面そういう時期はいつかということは直ちには考えられないわけでございます。
  101. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最近の移住の激減に伴いまして、移住に最も必要な問題でございます移民船というのがございます。今日まで大阪商船が移民船の提供をして、相当大きな使命を果たしているように聞いております。ところが、先ほど来申し上げてございますように、昨今の移民の数が激減したことに伴いまして、大阪商船としましても採算が合わない。特に五隻ほど移民船として所有しております船のうちから、一隻売却しなればけならないという話が過去において起こっております。こうした問題は、先ほどの問題に関連いたしますと、非常に重大な将来の障害となるべき要素を含んでいるように思われるのでありますが、こうした輸送力確保という面から、このような採算の合わない状態政府として黙視するのか、あるいは何らかの方法によってこれを援助し、そうして将来予想されるところの強力な移住の推進にあたってこれを使用しようというふうに考えておられるのか、この点についてお伺いするわけでありますが、特に、最近と申しましても、昭和三十七年のごときは、大体年間輸送能力が八千人に対して、二、三百人しか輸送できなかったという結果が報告されておるわけです。三十六年度の政府補助を一億三千万、その前年でありますが、一億三千万を受け入れても、なおかつ二億数千万という赤字を出しておる、そういう実情があったわけであります。今後そうした問題について、国としてその移住船に対してどのような助成をされるのか、お伺いをしたいと思うわけであります。
  102. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 移住局長から御説明させます。
  103. 白幡友敬

    政府委員(白幡友敬君) ただいまお話しございましたように、移住者の数が最近特に減ってまいりまして、そのために日本の船会社で移民の輸送にもっぱら当たっておりました大阪商船が移住船といわれるものの数を減らすということを聞いております。ところが、移住者の輸送には、ただいまのところ大阪商船と、それからこれと並行いたしましてオランダの商船も利用いたしております。したがいまして、現在の状況からいきましては、特にその数にこの面から申しまして不足する状況ではございません。  それから、移住船に対しまする国の補助というのは、従来ともやっておりまして、これは運輸省から船会社に対して補助という形でやっておりますので、将来私どもが国内の体制を整え、また外地の準備を整えまして、移住者の数が相当大幅にふえる可能性のあります際には、あらためて関係庁並びに船会社とも相談いたしまして、移住者が完全に輸送できますように船隻を確保するように努力いたしたいと思います。
  104. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昭和三十九年度以降についての海外移住者の目標についてでありますが、従来と変わりがないのか、それとも現在の予算の上から見てあるいは減らすのか、ふやすのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  105. 白幡友敬

    政府委員(白幡友敬君) 先ほど来お話がございました、移住者が減っております最近におきましては、いろいろな事情がございます。対外的な理由もございますし対内的な理由もございますが、私どもが今後努力を払いまして、この移住者の数を増加しなくちゃならない。そのためにわれわれがとり得べき措置としては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国内にまだ隠れた移住希望者が潜在的にいるだろうと思いますし、そういう人に移住の知識、海外の知識というものを大いに今後普及することにつとめたい。これは外務省及び事業団ともども目下そのように考え計画を進めております。したがいまして、この数の上で、はっきりしたことは申されませんが、おそらく三十八年度が一番悪い状況であって、今後再び若干ずつでも数が上昇していくのじゃないだろうかというふうな私たちは考え方をいたしております。
  106. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの御回答でありますと、明確さを非常に欠くおそれなきにしもあらずと思うのでありますが、いま潜在移住希望者という問題が出たのでありますが、外務省としてはこの潜在移住希望者について一体どのくらいの人を見ておられるのか、それをお伺いしたい。
  107. 白幡友敬

    政府委員(白幡友敬君) 統計的な数字だけでこれのみに依存するわけにいかないのでございますが、ちょっと統計の時期が古くなりますが、昭和三十五年に総理府で移住希望者の数を抽出方式でもって統計をとりましたときに、全人口の一・四%ぐらいが移住を希望しているという数字が出ておりますので、まだまだ国内にはそういう希望をしておる人が、数としてはおるのだろうと思っております。
  108. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 移住の希望者が非常に少ないという問題でありますが、これは一つには、先ほどもちょっと触れたかと思いまするが、その指導、啓蒙、あるいは宣伝という、こうした問題の欠陥というものがあると思うのであります。むしろ実務的なことは、きよう事業団の広岡理事長も見えておられますので、追ってそのことを伺いたいと思いますが、政府としてそうした問題についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、まずそれを最初に伺っておきたいと思います。
  109. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 従来の移住行政の欠陥の一つは、御指摘のように、正確な現地の事情、それから移住先における営業その他の計画の周知徹底を欠いた点にあったと私は率直に思います。したがって、事業団の最大の任務の一つは、そこにあると思うのでございまして、事業団を督励いたしまして、その点につきましては、特に力を入れて御推進いただくように措置いたしたいと思います。
  110. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いままでの移住を阻害している問題の一つに、海外協会連合会であるとか、あるいは移住振興株式会社というようなものがございまして、その運営にあたっても非常に複雑多岐をきわめていたでゆえに、その前進が大いにはばまれた。そうして昨年海外移住事業団というものの設立を審議会の答申と相まってできたわけでありますが、しかしながら、今日なお不思議に思いますことは、全国拓殖農業協同組合連合会、あるいは地方海外協会、あるいは農業労務者派米協議会というようなまだ団体が存在しているということは、まことに不思議だと思うのです。この事業団との調整というものを、当然はかってまいらねばならない、こういうふうに考えるのですが、それについて政府はどのようにこの問題を調整し、そうして事業団の運営に万全を期しておられる御計画があるか、お伺いしたいと思います。
  111. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、事業団といたしましては、中央、地方、現地を通じた一元的な移住推進機関として育て上げたいと私どもは念願いたしております。しかし、先ほどもお断わり申し上げましたように、いまの時点におきまして、あるがままの事業団というのは、まだ御指摘のように、そういう目標に達しておりません。いままでできましたことは、中央機構は、ともかくも一元化の方向に参ったわけでございますが、地方におきましては、まだそういう段階に参っていないわけでございます。しかし、ただ御了解いただきたいのは、移住目的を果たすということが目的でございますが、各機関の間に確執が続くというようなことではいけないわけでございまして、事業団の設立にあたりましても、ほかの移住推進機関との連絡協調を十分とれるようにしようと、そうして、移住が大事であるということで、各機関が一致してこれを能率的に推進するためには、これは事業団に固まろうというような自発的な気運が出てまいりますれば、そういう方向に施策してまいることが、一番自然じゃないかと思っておるわけでございます。いまの段階で無理やりに一元化をはかるということに伴う摩擦ということは、移住事業の推進を阻害することもおそれますので、各地域の実情に応じまして、漸次、漸進的に各機関の協力を得まして、理解を得まして、移住の仕事が能率的にまいるように実情に即して施策してまいりたいと私は思っております。
  112. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただいまのお話でありますと、まあ、地方機関においては、まだ一元化の段階に来ないいろいろな事情をいま述べられたわけであります。しかし、非常におかしいと思いますことは、せっかく中央機構が一元化されてまた軌道に乗ろうとしておるときに、当然考えられる地方の機構というものが一番大事じゃないかというふうに考えるわけであります。まあ、地方の機構を一元化するためには、まだまだいろいろな紆余曲折を踏まなければならない。やはりできるだけ摩擦をなくして、そうしてまた各関係機関とも協調連絡をしながら進めていきたいというお話でございましたけれども、いままで各機関との連絡協調ができなかったために、この一元化ということをおやりになったはずだと私は思うのです。また実際に、たとえばこの前にございました海外協会連合会、これはもちろん日本の中にも各支部がございます。また、海外にもその支部があることを知っておりまするが、ことに海外における支部の機構なんかを考えましても、非常に外務省との関係、出先機関との関係考えましても、その協調がうまくいっていない。いろいろなそういう問題があるわけであります。したがいまして、いま大臣がおっしゃいました、どの程度まで時期がかかるのか私はわかりませんが、いまこそ地方におけるそういう機構というもの、機関というものも当然整理統合すべきところは統合しながら、先ほど来大臣がおっしゃるその方向に向かって、その対策を確立されることが望ましいのじゃないか、このように私ども考えているわけであります。くどいようでありますけれども、いままでが各機関ともばらばらであることが話し合いがつかない。何と申し上げたらいいか、まあ卑近なことばで言えば、セクト主義あるいは官僚主義的な、そういうような根強い感情が対立してそれを阻害していた。おそらくそういう世論と相まって、そういうことを除去して、とにかく正しい姿にそれを戻さなければならない。おそらくは政府としても、そういう考え方のもとに一元化されたはずだと思うのです。今後できるだけ早い機会にこの問題の地方機構についても、強力に整理統合される用意をされる必要があるのじゃないか、このように思いますので、大臣としての見解を私は伺っておきたい。
  113. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これまでの経過を見まして、第一に外務省と農林省の間がうまくいくようになったということが、一つの成果であったと思うのでございます。中央の官庁の間でいがみ合っておったのでは、これは事柄が末端にまで一々響いてまいりますので、この両横綱が仲よくなったということが、まず第一の成果であったと思います。そうして、今度事業団のほうでは、地方に今度の予算で事務所も、地方の事務所も設けられるように、これは農林省も了解しまして、そういう予算もついたわけでございます。したがって、この事務所をどういう中身のものにしてまいるかということは、これから各地方にある地方庁はじめ、各移住関係の団体の御協力を得て、理解を得てやっていかなければならないと思っておるわけでございます。私どもがおそれるのは、一元化を急ぐあまり、また新しい摩擦を起こしてはいかんと思っておるわけでございまして、こういう問題はより用心深くやらなければいけませんので、十分な理解と了解の上に立って前進していこう、こういうことで、多少ごらんになっておってまだるっこしい感じがされるかもわかりませんけれども、実はそのほうが手がたくいくのじゃないかというように私は思います。
  114. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 海外移住事業団の機構を考えましても、まあ広岡さんを前にしてたいへん恐縮だと思うのですが、非常にいままで長らく官吏として生活された方が多い。いま大臣が言われたように、新しい摩擦をできるだけ避けたほうがいい、これもまた私は非常におかしく感ずる。なぜ摩擦が起こる必要があるか、摩擦が起こる自体がおかしいのじゃないか。国の施策として一本筋が通っておるなら、当然それに対する協力がなされて妥当ではないか、このように思うわけであります。したがって、私はここでひとつ提案したいことは、むしろそういうお役人の方よりも、できるだけ海外事情に明るい民間人の起用をして、その機構の改善をはかり、そうして熱情と正義感に燃えて、これを推進することのほうが、むしろ効果的なように考える。それは私は先年南米を回りましたときにも、強くそのことを要望されてまいりました。どうしても事務的に流れると申しますか、真剣に移住そのものに対する目標あるいは考え方、またその推進にあたっての真心といいましょうか、やはり親身になってやる場合には、単なる事務的な流れ作業ではなくして、やはり心の触れ合うあたたかい施策が必要じゃないか、このように思っておるわけです。大臣としてそういう点についてのいわゆる現在の海外移住事業団というものの強化をはかるためにおいて、何といっても幾らいい機構ができましても、それは人によってきまるわけであります。そういう人材の登用というものについても、営々御苦心はあると思いますけれども、いま私が申し上げたような提案については、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  115. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは事業団の理事長からもお話があると思いますけれども理事長といたしましても、いま渋谷委員御指摘のように、民間の方々の御助力を得なければならんということで、諮問機関として審議会を設けて御苦心されておるようであります。しかし、あなたの御指摘されたとおり、やはりこれは、移住に対する熱意、親切さが徹底しなければ、徹底することがすべての問題を解決する根本の原動力になると思います。したがって、私は政府としては大きな政策を示し、予算を配賦して、そうしてそれから先はあげて事業団中心に、いま御指摘のような諸問題も、その熱心さでだんだんとときほぐしていただいて、移住行政がともかく移住者のためになるように、移住政策を能率的に推進できるようにすることのために、最善を尽くしていただくことを期待しておるわけであります。問題は人だと思うのでございまして、いまの事業団の首脳部は、そういう決意で当たっておると思いますし、そのために、現在の事業団の首脳を選任することにあたりましても、地方との連携が十分とれるように私どもとしても配慮したつもりでございます。
  116. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 少しく論点を変えてお伺いしたい点があるのでございますが、今日までのわが国の移住状況考えてみますと、特にヨーロッパの国々の移住政策といいましょうか、非常に顕著な相違点がございます。その最も大きな問題は、日本の場合には港を出るまでは、国として十分とまではいくかどうかわかりませんが、めんどうを見て、あとは船が出てしまえばどうなってもかまわない、移住先におけるその移住者の生活の保護であるとか、あるいは仕事の上におけるいろんな対策については、全然援助の手が差し伸べられていない。大臣も十分御承知だと思いますが、イタリアにその例をとってみましても、イタリアは十分国として移住後においては、金の問題であるとか、特に必要であるのは、金の問題だと思うのでありまして、金の問題にいたしましても、いろいろな機械器具の貸与にいたしましても考慮が払われて、そうして日本人と比較してみた場合に、ヨーロッパの移住者が成功しているというふうなそういうことが言われております。今後やはり一番問題になるのは、この問題ではないかと思うのでありますが、現地に参りますと、まことに想像以上の忍耐と困難が要求されます。そうしたところへ行って、全くだれをたよりにして戦っていいのかわからないその移住者に対して、国としてもっともっとあたたかい施策を与えてあげることが必要ではないか。非常にばく然たるいま質問を申し上げているようで恐縮でございますが、まあその大綱について大臣からお伺いしたいと思います。
  117. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) お断わり申し上げておかなければいかぬ第一は、移住者は現地の移住先の国のよき市民になって、その国の発展に寄与するというのが、最高の目標だと思うのでございます。したがって送出国といたしまして、自国から送出いたしました方々だけに特別のことを考えるということだけを考えるべきではなくて、やはりその国の政策全体との融合というものを、十分私は考えて移住政策は推進していかなければならぬと思います。そういう大前提に立ちまして、いま御指摘のように、現地で営業、あるいは営農を指導する場合におきましても、その資金、あるいはその施設に対してどのように日本政府として援助するか、あるいは現地の衛生状況、非常に人跡まれなところに踏み分けて入られるわけでありますから、そういった場合の衛生管理の問題等につきましては、いま御指摘のとおり、できるだけ現地の政府と十分の連絡をとりながら配慮してまいらなければならぬと思います。現に事業団自体も、そういう方面の融資、あるいは設備の貸与等をやっておりまするが、現地の公館といたしましても、医療であるとか、あるいは非常に集団している地域に対しましては、診療所を設けるとか、あるいは現地から日本に、移民の方々で医学を学んだ方々を、日本の研修生として受け入れるとかというようなことはいたしておるわけでございます。しかし仰せのように、まだ規模がとても小さくて、誇るに足るものではないわけでございまして、そういう方面の拡充充実という問題につきましては、十分政府として考えてまいらなければいかぬと私は思います。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  118. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの点については、大臣の御答弁のとおり十分ひとつ御配慮いただきたいと、このように考える次第であります。もちろんそれ以外に、海外移住後にあたって、国としても十分その活動の場を与えてやるということも必要じゃないかというふうにも考えるわけでありますが、特にやはりここで一番大事な問題になってきますことは、外務省のいわゆる出先機関である大使館、あるいは公使館、あるいは総領事館、そこに勤務されていらっしゃるところの在外公館の方々の移住者に対するいろいろな指導というものは、移住者に対する新しい希望を与える、そうして、また、いろいろな面で相談にも乗っていくことができるでありましょうし、また、いろいろな問題に遭遇しても、よき相談相手となってくれるというような安心感も持てると思う。しかしながら、実際に現地において聞いてみますと、とかく在外公館の方々は、全部とはもちろん申し上げませんけれども、きわめて冷淡であるということを例外なく聞くわけであります。もちろん当局としても、そういうことのないように万全の方法は講じられていらっしゃると思うのですが、その移住担当官として特にきまっているかどうかは私はわかりませんけれども、そうした在外公館のいわゆる外務省の方々ですね、移住者に対してもっともっと熱意を持って対処していただきたいという、こういう希望があるわけなんです。当然それを申し上げれば、大臣としては善処されるというふうにおっしゃるかもしれませんが、今後のこともございますし、また、いままでのことを反省しながら、そういう問題に対して、やはり遠く国を離れてまいる移住者の方々であってみれば、たよるところといえば、最後はやはり日本の在外出先機関である、こうなると思うのです。もちろん、それは特に中南米ばかりでなくて、ヨーロッパにおいてもそういうことを聞いてまいりました。私は非常に遺憾に思います。同じ日本人でありながら、どうしてそういう困却している人たちに対して援護の手を差し伸べたり、あるいは指導や相談の相手になってやることができないのか、非常に残念に、また、くやしく思ったことでございます。そういう点について、大臣としては今後どのように善処していく決意がおありなのか、お伺いしたいと思います。
  119. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま御指摘の問題は、官庁の仕事全体の通弊に対する一つの御警告ともとれるわけでございまして、官庁の仕事というのは、どうも親切さが足らないとか、あるいは隷属的におちいるとか、民衆のために運営されていないうらみが多いということ、これは私どももいろいろ痛感しておるところなんでございます。私が外交官の方々にお願いいたしておるのは、諸君が外交官になられて、外交官特権に恵まれて、海外に非常にそういう特権を持って勤務できているということは、これは総じて日本国民のおかげであるわけでございますから、そういうことに対する十分の責任感を持って御奉仕いただくようにお願いをしておるわけでございます。ひとり移民の方々ばかりでなく、在外商社、メーカーその他に対するサービスにおきましても、いろいろ民間からそれに似た苦情を聞くわけでございます。これは役人といたしましては、あまり一つの会社のもうけ仕事に自分が深く入るということは、日本の役人というのは多少ヘジテイトする気持があるわけです。そういうことをしちゃいかぬというように教えられた傾きがあるわけでございますが、しかし、もうそういう時代ではないわけでございまして、非常にきびしい経済競争の中におるわけでございますから、その点はもう遠慮なく、現地におきましてはどういう困った事件でも、それから大小いかんにかかわらず、ひとつ親身になって御相談に乗って、一緒に苦労しようじゃないかというようにお願いしております。ただ、私どもから逆にお願いしたいのは、その場合に、現地の公館が親切に相談に乗る場合、おていさいだけでなくて、真実をこちらに知らせてもらわなければならぬと思うのでございます。言っておることは間違いないにしても、全部の真実を言わぬものだから、あとでまた向こうの政府といろいろ折衝してこっち側は恥をかくということになりますから、したがってお互いに緊密に協調する以上は、お互いに信頼し合って、すべての真実をよく話し合って、いいことも悪いことも。その上で一緒に協力していくというような基盤をつくることに努力いたしたい、そのように私は現地の方々に機会あるごとにお願いをいたしておるわけでございます。今後も努力をしてまいる?もりでございます。
  120. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大臣何か用件があるので国会を出られるそうでございますから、あと広岡さんにこれから質問をしてまいりたいと思います。その前に、移住者が一番困っておる問題については、金、あるいは仕事の上での設備に要するやはり費用になりますが、あるいは機械そのもの、これが一番要求されると思います。確かに移住はしたものの、その行った先の土地がまことに疲弊しておりまして、耕すにも、今度は高価な農薬を買ってその土地を耕やさなければならない、こういう問題がございます。サンパウロの郊外といえば、非常に日本人を中心とした移住者が多いわけであります。あの辺は最近は非常に土地が枯れている。結局その周辺にいた日本人は、せっかくその土地を耕しても、その土地に与える化学肥料であるとか、そういうものが買えない。やむを得ず地味の肥えたアマゾンの奥地を目ざしてさらに奥地に入って、できるだけ金のかからない方法でもって営農をしよう、こういうことが随所に見られておるわけであります。そこで、やはり農薬を買うにいたしましても、金さえあればと、この感を深くするわけでありますが、そこで、ひとつ伺いたいことは、これは大蔵大臣にお伺いしたほうがよろしいかと思います。これはブラジルにおいて見られた一つの問題でありますが、現地に日系の銀行がございます。そこの専務の人に話を聞いてみますと、今日まで自立でもってそれを経営してきた。また、非常に日本人の利用者が多い。ところが、最近いろいろなブラジルの経済事業が影響いたしまして、だんだんその経営が苦しくなってきた。むしろ預金する人よりも貸し出しするほうが多いということで嘆いておりました。まあそれだけ利用価値のある銀行でありますので、将来とも、おそらく日本人のためにはなくてはならない存在だろうと。このように考えられるわけでございます。国として、そうした銀行に対して、あるいは一つの方法は——いま浮かばないのでありますが、何か考えられるんじゃないか。援助の方法が考えられるのじゃないか。あるいは融資でもいい、何ででも、そういうような具体的方法をもって、日本から参りました移住者に対してあたたかい恩恵を与えてあげるという意味からも、現地の銀行に対する国としての援護政策というものが必要ではないか、このように考えられる次第でございますが、政府としてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日系銀行等がございますから、その銀行等に政府が資金を流せないかという問題は考えられた問題でありますが、現実になりますと、なかなかむずかしいのであります。これは資金量が非常に小さいということがございます。もう一つは、現地のインフレが非常に急速に深刻になっておりまして、金を貸しても為替の差損が非常に大きく出るわけでございます。そういう意味で、いまのウジミナス製鉄所などもなかなかむずかしいだろう、こういう問題にぶつかっているわけでありまして、そういう現実に徴して政府が金を貸したり資金を供給したりということはなかなかむずかしいということで、それを解決するためにもということで昭和三十八年に移住事業団ができたわけでありますので、移住事業団の運用によってやるべきだろう、こういうふうに考えております。
  122. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまのお話ですと、例としてブラジルがあがったわけでありますが、確かにブラジルはインフレの最も高進している国でありますから、わが国としても、非常にその点は用心してかからなきゃならない、その事情はよくわかります。それならば、その受け入れ先の国の経済事情が許せば、政府としては十分考える用意を持っていらっしゃるのかどうか、これについてお伺いしておきたいと思います。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いろいろ考えてみたのでございますが、政府が資金を流すということはなかなか適当でない。結局その意味で移住事業団を設立したのでございますから、移住事業団の活用によっていろいろ措置すべきだ、このように考えておるわけであります。
  124. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 特に審議会の答申の内容を見ましても、国として十分融資、援助をすることが大事ではないか。つまり現地の金融機関が、利用可能な地域では、これを最大限に活用するようにあっせんして、また、場合によっては十分現地の実情を検討の上、合理的な保証をすべきである、こういう旨のことが答申の中にうたわれてあったと思うのでございますが、いま大臣の御答弁によりますと、たいへんむずかしいというわけでございますが、やはり答申を尊重するという、その最大原則の上に立てば、答申案もあらゆる角度から検討された上で結論が出たわけでございましょうし、また、国としても当然そのことを考えてもよいのではないか、その答申の上から。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは御承知のとおり、移住事業団から貸し付けた金が回収できないというような場合、事情によって回収はむずかしいというような場合、これを延期をしたらというようなことを意味するものだ、このように考えておるわけでございます。
  126. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 さらに、いまの金のことについて申し上げたいわけでありますが、これは広岡理事長にお伺いしたほうがよろしいと思います。もちろんブラジルばかりじゃなくて、あるいはボリビア、その他パラグァイ等においても起こっておる問題でございますが、営農資金としてどうしても必要である。ところが、その営農資金は借りたはいいけれども、その利子がまことに高い。そのために元金の返済はもとより、その利子を払うことすら非常に困難である。中には、その返済をめぐって、現地においていろいろなトラブルが起こっておるというような事情も聞いております。こういう観点から、現地の人に言わしむれば、何としてもお金は命の次だ、これはだれでもそうでございましょうけれども、むしろそれ以上にほしがっていると思う。ただ、利息が高いばかりに、また、貸し付け期間が短いためにどうしようもない。最後には土地も売らなければならない。そうしてほかの人の経営する会社であるとか、あるいは農場へ行ってそこの従業員になって働かなければならないという、そういう窮状を至るところで聞くわけであります。現在そうした問題について、利子補給をしてもらえないかという声すらも起こっておるわけです。こうした点について、ちょっと順序が前後いたしましたけれども、いま金の問題が出ておりますので、まずこの点から伺ってまいりたいと思います。
  127. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) ただいま御質問のありました現地におきましても、長期、短期の営農資金を貸し付けておりまして、あるいは農薬でありますとか、肥料でありまするとか、飼料、資材というようなものにつきまして、また、短期の運転資金等につきましてもその資金の貸し付けをいたしております。ただ、これは融資でございますので、何年かのうちに償還してもらわなければならないというたてまえでございますので、ただいま仰せられました利子の問題も、現在は手取り五%、五分ということになっておるのでありますが、これは御承知のように、南米におきまする各国が、それぞれその法制に基づきまして、貸し付けた利子に対してさらに課税をするということになっておりまするために、事業団といたしましては、少なくとも五%に回る利子でもってやっていかなければならぬという実情になっておるわけでございます。ただ、その償還期限がまいりましても、その借りた方々の営農の状況でありますとか、その他の事情等によりまして、期限どおり返済ができないという事態も往々あることでございますが、この点につきましては、そのときどきの実情等を加味いたしまして、なるべく移住者の都合のいい方法でもってケース・バイ・ケースでいきたいという考えに立っております。
  128. 牛田寛

    ○牛田寛君 関連。ただいま営農資金の貸し付けの問題が出たようでございますが、理事長のお話でございますが、現実にはそうなっておらないようであります。一例を申し上げますと、南米のボリビアのサンファンというところ、私、現地へ行ってまいりました。非常に貸し付け金の問題でトラブルが多い。実情を聞いてみますというと、移住者の手元では一割以上の金利です。大体内地の営農資金の六分五厘があまり高いので三分五厘にするという、こういう時代、しかも、ああいうボリビアのサンファンというジャングルの中に入植させられて、しかも、経済的なバック・グラウンドがない。そういうところで営農の現状はオカボをつくっておる。米の値段は非常に不安定、そういうところで一割以上の金利で貸し付けておいて返済できるとはとうてい考えられない、常識で、まだ事業団が着く直前でございますから、ちょうど過渡期でございました。移住振興会社の方に伺ったところが、やはり計算してみますと一割以上に高くなる。そこで、実際あなた方は、これを返せると思っているのか、返すことをたて支えにしていらっしゃるのか、それとも返さないでいいとお考えになりましたか。やはり貸し付け金であるから、われわれのほうも株式会社であるから返済をたてまえとすると、こう言うし、それでは、金を貸しておいて移住者の首を絞めることになります。  この点について、一体どういう措置を今後とられるのか、私伺いましたところが、いやそれは日本のほうへ、この利子を少なくするように、何とか利子補給の方法を講じてくれないかということをお願いしたいのだ、こういうことなんでございます。どうもいまだに、その解決がついておらない、そういう問題について、理事長は御承知であるかどうかお伺いしたいと思います。
  129. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) ただいまのお話は承知いたしておりまして、私どもも、それを聞いております。五%——五分といいますのは、事業団の取る、それを下回らないようにということを申し上げたんでありまして、先ほども申し上げましたように、各国それぞれそのパーセンテージは異なりまするけれども、その利息分に対しまして、さらに、その国の税金がかかるわけであります。したがって、それだけの分が、この移住者の貸し付けのほうにかかってまいるということで、実情は、それを上回った、中には、その国によりましては一割近い、一割前後というようなものもございまするし、あるいはそれが七分、八分ということになるところもあるわけでありまして、これはやはり、いま申しました、それぞれの国におきまする法制上の扱いによって、そういうことになっておる次第でございます。
  130. 牛田寛

    ○牛田寛君 そういたしますと、やはりそういう実情があるということはお認めになる、やむを得ない事情がおありであるということでございますが、事情のいかんにかかわらず、そういう高い金利の貸し付けを受けた移住者、これはその資金を借りて、それで、この営農を拡大していく、生活を安定させていくという方向には向かわないわけでございます。かえって移住振興会社——今度は事業団になりましたが、その資金の融通を受けて、そうして移住者が首を絞められる結果になるわけであります。  それをそのまま放置して、ただ、向こうの国の事情であるとか、あるいは税金を取られるから高くなるんだというふうな、そういう理由を御承知の上だけで、その解決を一体どうなさるおつもりか、やむを得ない事情もあるから、そのままにしておくとおっしゃるのか、あるいはそれに対して移住者を守るために、どういう手を打つか、大体、政府資金の貸し付けは移住者を援助するということが趣旨であろうと思います。これは事業団の定款にもうたってあると思います。その目的が果たされないのがはっきりしておるのでありますから、それに対して、そのままにしてほうっておくということは、私は事業団としては怠慢ではないか、どういう解決策をお持ちになっておるか、あるいはそのまま、将来やむを得ない理由として放置されるおつもりなのか。その辺を私はもう一度お伺いしたいわけであります。
  131. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) この問題は、実際問題といたしまして非常にむずかしい問題でございますが、融資いたしている以上は、これを償還をするというたてまえになっておりますることは申すまでもないのでありまするが、私といたしましては、就任いたしまして、昨年南米の関係各国を歴訪し、移住者にも会い、その実態をごく大ざっぱでありまするけれども触れてまいったのでございます。そうして今後、いろいろ検討をし、あるいは再検討するという問題も、若干あるやに伺いましたので、ただいまお話のありました融資の問題につきましても、現地におきましても、かなりの要望がございました。  したがって融資基準を改訂する必要があるんじゃないかというようなことも、一つの検討目標にいたしておるのであります。しかしこれを急にいまどうするというところまで至っておりません。と申しますのは、その移住地におきます実態、あるいは移住者の経営調査というような根本的な問題をさらに検討いたしました上で、総合的に、いろいろ関連いたします問題もございますので、総合的にこの問題を取り上げてみたいという私のいまの考えでございます。
  132. 牛田寛

    ○牛田寛君 委員長、もう一問よろしいですか。
  133. 平島敏夫

    理事(平島敏夫君) 関連質問ですから、なるべく簡単にお願いいたします。
  134. 牛田寛

    ○牛田寛君 私、いま関連して取り上げたんでございますが、これは、委員会で取り上げるべき問題かと思いますが、移住者にとっては、四年ごしの問題で、しかも、あすの生活をどうするか、しかも、先ほど理事長は、このような問題は国によって事情が違うから、なお話し合って、ケース・バイ・ケースで処理していきたいというお話でございます。ところが、ただいまのお話では、総合的に取り上げていきたい、こういうお話、都合によっては総合的になり、都合によってはケース・バイ・ケースでは、私は移住者がかわいそうじゃないか。移住事業団は、現在のところでは、海外へ送り出した人たちの保護ということが非常に大きな仕事の一つだと思います。そういう意味で、もう少し現地の移住者に対して、責任を持って早急な解決をひとつはかっていただかなければ、これは政府に対する不信感を招き、サンファンの移住地というのは、非常によくできたところと言われて、前高木移住局長なんかは自慢しておられた。ところが、この数年間になりまして、経済的な問題、いろいろな問題から、またドミニカの二の舞いをするのではないかという声さえ出ているのであります。  その一つの大きな原因として、ただいま申し上げました営農資金の問題があるのであります。それをいま理事長のお話で、総合的に解決していきたいというようなことでは、またドミニカの二の舞い、先ほど外務大臣からるるお話がありましたように、なかなか移住の数がふえない、行き詰まりの観を呈しているわけでありますが、その原因は、やはりそういうところに大きな根がひそんでいるのだと私は思います。  そういう点で、もう少し移住事業団が、現地の非常に不自由な荒地を開拓していく、そのために心身をすり減らして戦っている、そういう移住者のために、もう少し真剣になって、親身になってひとつ問題を処理していただきたいと私は思うので、もう少し責任のあるお答えをいただきたい。関連でありますから、これ以上言いませんが、ひとつ理事長の責任ある明確なお答えをお願いしたいと思います。
  135. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) 先ほどケース・バイ・ケースと申しましたのは、各移住者によりまして、それぞれ事情なり変わっておりますので、そういう個別的な移住者にとっての融資なりその償還については、ケース・バイ・ケースでやっていきたいということを申し上げたのでありまして、ただいま総合的にということを申し上げましたが、この融資の問題は、やはりその移住地それぞれの実情、実態によって異なるものがございますので、したがって、その実情に即した面から、これを取り上げ検討する必要があるという考え方を申し上げたのでございます。  サンファンの問題にお触れになりましたけれども、サンファンの問題は、またいろいろな事由があったと思います。これを何とかするということでもって、最近特にサンファンに経営調査団と申しますか、あそこを再建していこう、りっぱに移住地に仕上げていこうという立場から、専門家にお願いいたしまして、サンファンの診断を目的とした、経営診断を目的にいたしました調査団を派遣するということにいたしておるのであります。何らかの結論が出ると考えいおります。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  136. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの関連質問の中にもありましたように、これは広岡さん御自身が、就任後南米をお回りになって、その実情については、つぶさに御承知のはずだと思います。また、それを知ることが、最高責任者の責務でありますから、当然といえば当然であります。それならば、おそらくはだを触れ合ってきたものが理事長としてもおありになるのじゃないか。先ほどもお話がありましたように、強く要望されてきた、こういうお話であります。もちろんその国々の客観的な実情というものは違いがございましょうし、また、移住者それ自体も、各生活の内容を考えましても、それは違いがあることは当然であります。しかしながら、日本をあとにして、しかも全然未知の世界に参るわけでありますから、相当の不安を持って行かなければなりません。そのためには、相当の決意が要りますし、また、その決意を要求されるわけであります。  で、その移住者について考えてみた場合に、まず、ほとんどまじめな考え方をもって——昔と違いまして、単なる労働力の提供であるとか、あるいは日本を食いつめた者が向こうへ行って一旗上げようとかというようなふまじめな考え方をもって向こうへ行っておる人は、一人もいないのであります。ならば、向こうへ行ってからの想像もつかないような実情に立てば、やはり一番困ることは、先ほど来論議されてまいりましたように、金であります。ならば、いままでのその融資という道も開かれておるという、その現実の時点に立って考えてみた場合、移住事業団としては、いろいろな言い方があると思います。ケース・バイ・ケースにしても、また、いろいろな実情に即してという——同じようなことでございますけれども、しかし、私は、そういう実情の中にも、困っておる人には例外なく、そういう援護の手を差し伸べるべきが妥当ではないか。  先ほども申し上げましたように、利子のたな上げをやってもらいたいというぐらいの熱望があるわけでありますから、そうした融資の道全般について、移住事業団としては、今後において、どういう考え方をもって推進されようとされるのか。それをおそらくは現地の人も首を長くして待っておることであろうと思いますので、明確にひとつ、御回答をいただきたいと思うのであります。
  137. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) お答え申し上げます。融資の問題につきまして御質問でございますが、先ほど申しましたように、この融資の問題が、移住者諸君にとりましても非常に大きい問題となっており、これを償還するということが大きい負担であるということは、非常に安定をしておられまする方々は別といたしまして、入植早々の人でありますとか、まだその段階にあるという移住者の諸君におきましては、これが、かなり大きい問題になっておるということは、ただいま御指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、融資の基準をもう一度検討し直してみる、あるいは融資額、あるいはその償還年限でありますとか、各方面の関連において、これを検討して、なるべく実情に合うようにいたしたい。移住の再開が始まりましてから、この融資を受けて、もう償還期限に到達しかかっておる人も、すでに出ておるのでありますが、そのときの事情と今日の事業とでは、受け入れる国の政治経済等の変化もございまするし、そういうところを総合的に考慮いたしまして、これを実情に合うように解決いたしたいと考えておるわけであります。  現在、昨日私のほうの理事が、業務の担当と財務の担当をいたしておりまする理事、それと財務部長等が、これも南米移住地のほうへ参りますのは初めてでございますが、この両理事にも、実情について、よくその実態を聞き、これらの問題についても、十分調査をしてくるようにということを私は指示をいたしております。いずれ帰りましたならば、いろいろな意見が出ると思いますが、その点、今後十分に検討してみたい、こう考えます。
  138. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 時間がありませんので、いろいろ多岐にわたって、伺いたいことがたくさんございまするが、一応、金の問題は、この程度にしておきたいと思います。ただいま申し上げました移住事業団の問題に内容が入っておりますので、重ねて論点を変えて、次のことをお伺いしたいと思います。  今後、移住事業団に課せられた役割というものは、少なくとも移住事業に関する限りは、非常に重要な立場に置かれている、これは申し上げるまでもないことであります。昨年設立されて以来、まだ一年もたたないわけでございますが、いままでの行き詰まったようなやり方と申しますか、海協連、あるいは移住振興会社に見られたような行き詰まったような行き方というものを打破して、大いに事業団の今後に期待するものがあると思いますが、現在事業団において——いま金の問題は、大体大まかに伺いましたので、具体的にどのような、三十九年度においての計画を立てられて、それを進められていく方針があるか、それをまず大綱的に伺っておきたいと思います。
  139. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) 先ほど外務大臣からお話のありましたように、この事業団は、総理大臣の諮問機関でありまする海外移住審議会の答申に基づいて設立されたものと伺っております。また、今後、その進むべき方向は、その答申の中に、きわめて詳細に、あるべき姿、また、今後どういう方向でやることが望ましいかというような点にわたりまして、指摘をされておるのであります。私どもは、この答申の趣旨に沿いまして、前向きの姿勢でもって、しかも移住者諸君の立場、移住というものが、どういう意義を持つものであるか、また、これは国際的の観点から見まして、どう処置していくことが望ましいかという点につきまして、反省すべきものは反省し、改善いたさなければならぬ問題は改善を加えまして、移住事業の健全、円滑なる進展、発展のために努力いたしたいと考えるのであります。  ただいまお話のありましたように、移住の業務は、人を相手とする事業でありまして、ただ、通り一ぺんの仕事で済まそうというようなもので決してございません。したがって、私どもは常に移住者の問題なり、啓発なり、送出、あるいは安定に至るまで一貫して責任をもって、この事業に当たらなければならないという考えを深くいたしておるのであります。そのためには、総合的な考慮と周到なる計画が必要と考えます。したがって、来年度におきましても、この基本的な私の考えからいたしまして業務の運営に当たってまいりたいと思うのでありますが、当面の問題といたしましては、何ぶん設立早々でございまして、八カ月を経過いたしておるとは申しながらも、なお内外における、事業団内部におきまする体制の確立を急がなければならぬというように思うのであります。したがって、業務方法書その他業務の基準を確定するということも必要でございます。それに必要な諸規定の制定等も検討いたしておるのでありまするが、そうして公正な予算の執行と業務の効率化をはかっていくというように私は考えておる次第でございます。  先ほども大臣からお話しになりましたように、そのためにただいま御審議を願っておりまする予算の中に、七月から各都道府県に地方事務所を設置いたすことにいたしております。地方事務所を通じまして、地方団体、農業団体、また関係の諸団体と緊密なる連絡協調をいたしまして、その御協力のもとに、啓発、相談、あっせん業務の強化をはかってまいりますとともに、運営審議会で学識経験のある方などを網羅いたしておりますので、業務運営審議会の御意見等も十分尊重し、また移住に関心を持ち、熱心に今日までやっておられまする方々の貴重なる御意見等もあわせしんしゃくいたしまして、全般にわたっての進展に努力してまいりたいと、こう考えております。
  140. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 こまかいことは少々抜きにいたしまして、この海外移住事業団の仕事を強力に推進するためには、やはり職員の質的な問題、それから待遇の問題、そういうものがあると思います。現実に、現在海外に支部があるはずでありますが、その支部の職員に対する待遇というものはきわめて悪いと、それはそれぞれの国の経済事情もあることでありましょうが、それにしても、あまりにも冷遇されているという感じを深く抱いておりまして、そうしてその職員に対しては、こうもしろ、ああもしろ、こういうふうにしていかなければならぬという、ただ要望を一方的にされたのでは、まじめに現地において、移住者の指導あるいは激励、相談等に乗ってあげて推進している現地の職員は、あまりにもかわいそうではないか。そうした、特に海外におけるところの職員に対して、移住事業団として、どのようなこれからの対策を持っておられるのか。それをお伺いいたしまして、時間がまいりましたので、これをもって質問を終わりにしたいと思います。
  141. 広岡謙二

    参考人広岡謙二君) ただいまお話のありましたとおり、特に海外にありまする支部の職員、これは、従来の海外協会あるいは移住振興会社が一緒になりました関係もございまして、その間にはアンバランスがある。また、本部から派遣された職員と現地で採用された職員との間にもアンバランスがあるというような実情に実はなっておるわけでございます。私どもは、これをできるだけ是正いたしまして、待遇の改善のために、現在も関係方面と極力折衝をいたしておるわけでありまして、近くだんだんと是正されていくであろうというように考えます。また、そのように今後努力いたしてまいりたいと思います。
  142. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 渋谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  143. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、田中啓一君。
  144. 田中啓一

    田中啓一君 私は、なま牛乳の問題を中心といたしまして、学校給食問題の全面的解決に前向きの姿勢で質問をしたいと存じます。したがって、これは教育問題であることはもちろんでありますが、国民栄養の問題、民族の体質向上の問題、あるいは食品衛生の問題、それから経済、産業、ことに農業の成長、構造改善の問題、流通価格等の問題、したがってまた、財政及び地方行政等の問題ともなりますので、それらの関係大臣をわずらわしたわけでございます。  まず、それらの関係の方に、現在の学校給食状態はどういうものであるかということを認識していただかなければなりませんので、ひとつ文部省から、学童給食の、一口に言えば現状でございますが、完全、不完全給食の受給数でありますとか、あるいは脱脂粉乳の受給数でありますとか、なま牛乳のほうの受給数でありまするとか、それに対する国の補助予算あるいは地方費、父兄費の負担等がどうなっておるかというようなこと。また、要保護家庭あるいは準要保護家庭に対しては特別に補助をしておるわけでございますから、それらの数、金額はどうなっておるかというようなことを一通り御説明願いたいと思います。
  145. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 学校給食の現状につきまして、いろいろな点に触れてのお答えでございますので、まず、政府委員からお答えさせていただきます。
  146. 前田充明

    政府委員(前田充明君) 学校給食の、まず最初に現状のうちで普及の状態について申し上げます。  小中学校をあわせて一応申し上げますが、完全給食をやっておりますのは、学校の数といたしまして、一万七千四百九十九校、学校の子供の数にいたしまして九百五万四千人、それで、学校の数のほうといたしまして、全体の四五・九%でございます。子供の数といたしましては、五二・八%であります。次に、ミルク給食でございますが、ミルク給食は、いまの完全給食を含めまして、学校の数にいたしまして三万一千五百四十八校でございまして、八二・七%、子供の数といたしまして千四百六十万四千人、八五・二%でございます。それからミルクの受給数量でございますが、脱脂粉乳につきまして、昭和三十七年度で三万八千トンでございます。高等学校を入れまして三万九千トン、それから三十八年度小中学校で五万四千トン、夜間高等学校を含めまして五万七千トンでございます。来年度一応予想いたしておりますのは六万六千トン、夜間高等学校を入れますと六万八千トンでございます。なお、これに対しまして、国産牛乳の受給数量でございますが、昭和三十七年度におきましては百二十万人分、延べにいたしまして百二十万人分、十三万石でございます。夜間高校を入れまして十四万石、それから三十八年度におきましては、これはまだ完全に統計がとれておりませんので、大体約と申し上げるわけでございますが、二十七万石でございまして、二百四十七万七千人、夜間高校を入れまして二十八万石でございます。それから来年予定いたしておりますのは三十九万石、小中学校三百五十六万七千人、夜間高校を入れまして四十万石でございます。  それから要保護児童の数につきましては、要保護児童、三十八年度におきましては五十一万二千人でございます。準要保護児童が百十七万人でございまして、補助額は、要保護約九億円、準要保護十一億五千万円でございますので、おもな数字については以上でございます。
  147. 田中啓一

    田中啓一君 ただいま文部省から説明のありましたなま牛乳というのは、ほとんど農林省から見れば需給調節用牛乳の配給を受けておるということになるかと思うのでございますが、そこで、農林省にお伺いしたいのでありますが、現在並びに来年度の予定におきまして需給調節用牛乳はどれくらいになり、かつまた、これまでの経過にかんがみて、将来はどのようなふうにいくとお考えでございましょうか。説明をいただきたいと思います。
  148. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答え申し上げます。  戦後のわが国の酪農につきましては、非常な目ざましい発展を遂げておるのでありまして、二十五年度は二百七十万石であったと思いますが、現在三十七年度におきましては千四百七十万石というような数量にのぼっており、農業生産額の割合からいたしましても、二十五年度は一%程度であったのが、いま三十七年度におきましては三五%、非常なもう、いわゆる選択的拡大の農畜産物の花形となっております。いままでは、学校給食用に出しておる牛乳というのは、お話のごとく需給調節用でありまして、過剰牛乳の処理の対策として供給をいたしておったのでありまして、したがって、年によっては変動があり、安定したものではなかったのであります。昨年は、追加を合わせて二十八、九万石というような状況であるのであります。しかしながら、今後におきましては、この牛乳の消費の増進の一環といたしまして、また、学童の体位の向上の一つといたしまして、これを継続的に、需給調節という意味でなく、余剰乳処理という意味でなく、継続的に年間を通じて供給することにいたしまして、三十九年度の予算で御審議をお願いしておるのでありますが、三十九年度は四十万石を供給することにいたしまして、今後、逐年計画的に、生産、消費の状況を見まして増量をいたすことにして、漸次輸入脱脂粉乳を置きかえる考えでおる次第でございます。
  149. 田中啓一

    田中啓一君 そこで、文部省にお伺いするわけでありますが、来年四十万石の、需給調節用ではなくなったので、それだけは少なくとも一年間は需給のいかんにかかわらず学校に優先的に飲ます、こういうことになって、非常にけっこうなことだと思うのでありますが、それは一体何人分であり、現在の、一応中小学校だけにしぼって話したらいいと思いますが、中小学校の生徒数の何%に当たっておるのか、その辺のところを御説明願いたいと思います。
  150. 前田充明

    政府委員(前田充明君) なま牛乳につきまして、現在が何%に当たっておるかということのお話でございますが、数といたしまして、小中学校の子供が、日数が、学校によっても違いますしいたしますので、いますぐ何人分ということはちょっと申し上げかねますが、現状で申しまして、三十八年度で二十七万石と先ほど申し上げましたが、これが二百四十七万人分ということは言えるのでございます。で、もう少し現状をこまかく申し上げますと、牛乳を飲んでおります学校数で四千百八十五校でございます。それからその中で、牛乳のまんまで飲んでおりますものと、それから牛乳と脱脂粉乳を混合して飲んでおりますような方法もとっております。それで、それを内訳いたしますと、牛乳と脱脂粉乳の混入でやっております学校が二千八百八十でございます。牛乳全部で、いわゆる市乳と同じような牛乳で飲んでおりますのが、千三百五校、合わせて四千百八十五校、こういうような割り合いになっております。
  151. 田中啓一

    田中啓一君 実情の御説明はまことにそのとおりでございましょうと思いますが、将来の問題を考えていく際には、幸いにして需給調節用といわないで、三十九年度においては、四十万石の牛乳を小中学校の生徒その他に飲ます、こういうことになっておるのでありますから、これはおそらく一年を通じて飲むことになると思うのです、飲み出したら、生徒は。そうしますると、これはもうまことに簡単で、一年に何日飲むか、それが一人分で、それで一人が飲む一年分の分量で四十万石を割ると生徒数が出るわけです。かような勘定をしたら、およそどうなりましょうか。
  152. 前田充明

    政府委員(前田充明君) 日本全体の子供のうち、いま八五%ばかり飲んでおるわけでございますが、その飲む量は大体年間三百七、八十万石から四百万石というふうに考えてよろしいかと思うのであります。そういたしまして、四十万石ということになりますと、まあ大ざっぱにただ申し上げれば、一割程度ということはいえると思うのでございます。
  153. 田中啓一

    田中啓一君 それでけっこうでございます。結局三十九年度大奮発してやった結果は、約一割の人間がなま牛乳を飲める、こういうことでございます。そこで、何しろいま脱脂粉乳はいやだ、早くなま牛乳に切りかえろという声はほうはいとして起こっているわけです。これを実現するにはいろいろな問題がたくさんあって、先ほど申したように関係するところが多いから、かくも多数の大臣をわずらわしておるのでありますが、農林省から見まして、一体あと何年くらいたったらなま牛乳に置きかえることができるでありましょうか。財政問題のことはあと回しでけっこうであります。これはいまの五円の金が三百万石か、ないし四百万石に当たる牛乳に対して、全部出るということは、なかなかむずかしいことでありますから、その点は抜きにしても、酪農の成長度あるいは消費のだんだん伸びというようなものを勘案してのそういった問題の面から見て、一体どれくらいたったならばできるでありましょうか。
  154. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えいたします。どのくらいかかったら小中学校生徒全部に国産牛乳を供給できるかという問題については、まだはっきりしたことを申し上げかねますけれども、一応われわれといたしましては、まあ計画的に増加する方針のもと考えておりますので、現在の生産、消費の状況等から考えてみまして、三十九年度は四十万石ですから、それから十五万石ずつ一応増加して五年後には百万石まで増をやるという計画はいたしておるのでありますが、現在のわれわれが調べて発表したいわゆる主要農産物の需給の見通し等から勘案して、現在の牛乳の生産状態等から見てみますと、まだ年間の増加率が大きいように思うのでありまして、もっと百万石といわず供給できるというふうに考えております。
  155. 田中啓一

    田中啓一君 そうすると、どうやら現在の事の始まりが需給調整牛乳から起きたこの方式で、五年後には百万石、だんだん加速度がつきましょうから、もうあと五年もたったならば三百万石ないしは四百万石というような全数量でありますというようなことを考えておられるようでありますが、大体この補助金はそうなると一年に百五十万円ないし二百万円ほど要ることになるわけでありますが、一合五円と勘定すると、大体生徒が二百日飲むとして一年に千円でありましょう、そうすると、千五百万人の人間がいると百五十億になり、もうちっと人数が多いと増していくと、こういうことであります。まあ大ざっぱに百五十億前後といってけっこうであります。そういう数字を年々とにかく出さなければならぬということになるわけですね。そういう方式でやれという意見は実は世間にもなかなか多いわけです。けれども、私はどうも、この際一工夫しなければならぬ段階にむしろなっておるのじゃないか。安易にこの方式を拡大していくんだということでは、早く学校給食をやるわけに、なま牛乳でもって置きかえるわけにはいかぬじゃないか、こういうように実は考えるので、これは意見でありますから、いますぐ答弁をわずらわしませんが、私はここでひとつ農林省としては、もっとこの成長部門であるといわれておる酪農の生産を拡大を一つ軸として、構造改善、農業近代化を進める過程の中で、いまのように学校側としては一合十円以上も出さなければ飲めないので、政府が四円五十銭補助しておると、こういうことではなしに、学校へ安く牛乳を持ち込むような工夫はないものか、そういったことにつきまして私はお尋ねをしたいと思うわけであります。いま農林省は酪農の振興をはかっていろいろ苦心惨たんせられて、三十九年度予算にも、いろいろな面に振興策として、この対策費が出ておるはずでございます。ひとつそれを御説明願えませんか。
  156. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 各種類に分かれて予算を要求いたしており、また実施中のものもございますので、畜産局長よりお答えいたします。
  157. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お答え申し上げます。農林省といたしましても、畜産の振興のために、三十九年度におきましても、各種の施策を取り進めるべく、予算の要求を申し上げて、御審議を願っておるところでございますが、そのうち、酪農振興に関係します事項を御説明申し上げますと、第一に、飼料の自給基盤の確立ということで、草地の改良事業、それから耕地におきまする飼料基盤の整備事業、これらの関係で、約二十三億円の予算を要求を申し上げておる次第でございます。そのほか、先ほどお話が出ました学校給食に対します補助金を出すために、畜産振興事業団に交付いたしております金額が十八億円、それから、これは牛乳のみに限りませんが、畜産物の価格安定事業を畜産振興事業団が行ないます場合の経費を捻出するための資金として、出資四億円を出すことに予算を要求いたしております。そのほか、家畜の改良増殖の問題でございますとか、あるいは乳用牛の効率を高めるための諸施策におきまして、約四億八千万円ばかりの経費を計上いたしておるのでございます。そのほか、こまかい問題もございますが、大体、大きなものを申し上げますと、今のようなことになるわけであります。
  158. 田中啓一

    田中啓一君 ただいま、局長から、概略と言いたいが、その一端だけを御説明を得たわけでありますが、ともかくも、相当の多額の補助金融資をしておるわけであります。そして、そのもとに、ともかくも、酪農は伸びつつある、乳牛の頭数もふえておる、牛乳の生産量もふえておるということがいえるのでありますが、相当問題があって、中には、それらの問題を取り除いてくれなければ、酪農はやれない、やめるというようなことまで言う百姓がおるわけであります。どのような問題を置き、どうしなければならないと思っておられるのか、ひとつ、その点を、さらに御説明願いたいと思うのです。
  159. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 酪農は、先ほどお答え申し上げましたとおり、非常に選択的拡大の農産物としては、最も伸びておるわけでありますけれども、半面、また非常に問題があるわけでありまして、その一つといたしまして、やはり自給飼料の問題だと思うのです。これが、なかなか、農林省としても、先ほどお話もありましたとおり、草地改良事業を積極的に行なっておるのでありますが、まだ、十分、その成績を上げておるという段階には至ってない状況であります。まだまだ、大々的にやらなければならないものと考えております。それとやはり今までの酪農というのは、非常に零細な規模のものが多いのでありまして、いわば副業的な状況にあったかと思うのでありますが、これからはやはり相当飼養規模を拡大すると、いわゆる多頭飼育というものを奨励していっておるのでありますが、これも統計によりますと、三十年は二月当たり一・七頭が、三十七年は二・七頭まで増加をいたしておりますけれども、まだ十分とは言いがたい、この方面にもっと力を入れなくちゃいかんというふうに考えておるのでございます。なお、酪農の、いわゆる価格の問題、乳価の問題、これもずいぶん問題になっておるのでありますが、これは畜産振興事業団を設置しておりまして、それの乳製品を買い上げる等によって価格の安定をはかっていくと、こういうことにいたしまして、酪農の発展的な形態を整えていきたい、こういうふうに考えております。
  160. 田中啓一

    田中啓一君 だれが考えましても、実はおっしゃるような問題をはらんでおる。全く私も農林省と見解を同じくするのでありますが、飼料の自給ということ、したがって、飼料基盤を整えなければいかんということで、これまた相当な金をかけまして、相当な面積の草地開発を来年度も企てておられることはよく承知をいたしております。ところがこういうようなことを伺ったことがございますが、そうでございましょうか。実は山林原野、ことに国有地の開放は今日非常に問題になっておるわけでありますが、そういうところを大草地開発をやるとしても、そこで酪農をやらす人間を持っていく、そこへ牛を持っていくということは、なかなか困難だ、またかりに持っていっても、なかなか今度は生産物の販売に往生してしまって、現に開拓地が苦しんでおるような目にあわさなければならないことになって、そこのところはなかなかむずかしい問題もあると、このようなふうに私は承知しておるのでありますが、今もそのような感じを持っておいでですか。
  161. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 御指摘のとおりでありまして、大規模の草地改良等におきますと、どうしても山奥のほうに行かざるを得ないような状況でありまして、そうすると、家畜を飼養する農家との間が、つながりが不十分になってくるという点は非常な問題でありまして、われわれといたしましては、これはできるだけ問題は集乳路線というのが、乳を運ぶ問題、あるいは道路の整備という点も相当考えなければならぬというふうに思っておるわけであります。
  162. 田中啓一

    田中啓一君 その草地開発の問題、あるいは既耕地において飼料作物をもっと入れていくというような問題についても同じような問題があるということはよくわかりました。  次に、零細というところにいろいろ問題がある。多頭飼育につとめておると、こうおっしゃったのでございますが、これはなかなか一挙にはそう解決はできない問題でないかと思いますが、零細で因るという理由は、結局コストが高くなる、あまりにも小さいものですから、牛乳の生産費を勘定すると、とんでもない高い勘定が出てきて、こんな引き合わぬ酪農をやらしていくかというような非難をこうむることになる、そういうふうに思うのでございますが、何かこれを多頭にする具体策をお持ちでございましょうか。
  163. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お答え申し上げます。お話にもございましたように、現在の日本の酪農の経営形態というものは、徐々に多頭化の傾向をたどっておりますけれども、なお、零細副業的な経営が支配的なのでございます。これを多頭化にするように誘導いたしますためには、私は、にわかにはなかなかまいらないと思うのでございますが、現在私ども考え、かつ、措置をいたしております点を申し上げますと、第一は、やはり飼料自給の基盤を多頭化に即して進めていくということが第一であろうと思うのであります。これにもいろいろな困難が伴いますことは、先生から御指摘がございましたとおりでございますが、とにかく飼料の自給度を高め、飼料の自給を伴って多頭化を進めていくということに、一つの方向を目ざしておるわけでございます。  それからいま一つは、多頭化に伴います技術指導の問題がございますので、三十九年度以降、府県の事業といたしまして、畜産コンサルタント事業というものを予算化をお願いいたしておるわけでございますが、これは、多頭化に伴います飼料自給の問題から、飼育管理あるいは経営のやり方というような問題について、民間の有識者をもってコンサルタント団をつくりまして指導させるという考え方に出たものでございます。  それから多頭化をしようといたしますれば、当然新しい多額の投資を必要とするわけでございますので、畜産経営近代化資金という、三十八年度から発足しました資金を拡充をいたしまして、肉牛を含めまして四十億円のワクを拡大いたしますとともに、金利を、従前六分でございましたものを五厘下げまして五分五厘ということで、ただいま予算並びに法律の改正について御審議を願っておるというようなことでございます。  ただいま当面講じております対策というのは、以上のようなものでございます。
  164. 田中啓一

    田中啓一君 苦労をしておられるだけに、問題のあり場所は相当よくおつかみになり、解決の方向へ進めようとしておられるところは、よくわかるのでありますが、私は、大事なことを一つ忘れておられるのじゃないか、それは農業基本法でいう、農民が主体となって、その人が自立家族経営農家たり得るような規模になっていくように、政府や地方団体は援助するのだ、こういうことを相当徹底的にあれは書いてあると私は思っておるのであります。そこで私は、やっておられることは、そこそこまではいっておるようですけれども、暗やみを探っておるように、まわりは相当こう探っておるわけですが、思い切って一つの農家が多頭飼育になるように、草地の心配もしてやる、それから資金もそれだけ思い切ってよけい貸してやる、こういうところが非常に不徹底なのじゃないだろうか。開拓地なども、毎年毎年、とにかくそのような問題を繰り返しておるけれども、一向に進まないのは不徹底なんです。そこはもう自立家族経営農家というものを農業基本法がねらっておるように、他の産業に匹敵をし得る所得が得られるようなものに仕上げる、仕上げるには政府補助をするなり金を貸すなりと、こういうことになっておるはずのを、貸し方がちびりちびり、出し方がちびりちびりと、一向に成長できない、こういうような実は気もするのでありますが、そのようなことはございませんか。
  165. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) われわれといたしましては、この酪農の多頭飼育という点に関しては、設備の点、それから牛の購入資金等で相当資金を必要としておることはわかっておりますが、その点を漸次改善いたしまして、先ほど畜産局長のお話しありましたように、いままでは、あるいは御指摘の点もあったかと思いますが、今年度からは、その資金を大幅にふやしまして、その点改善を加えていきたい、こういうふうに考えております。
  166. 田中啓一

    田中啓一君 私は、一軒の農家が酪農を軸として自立家族経営農家になるためには、どうしても乳牛二十頭くらいは飼わなきゃならぬし、それには草地が十町歩くらい要るであろう、その他、いろいろ投資額を勘定しますと、一千万円はどうしてもかかる、このように思いますが、それくらいの一体決心がありますかどうですか。実は、自立家族経営農家の規模について、非常にちびっている。早い話が、政務次官の御郷里の秋田の八郎潟の農家の造成にしても、まだいまもって小さ過ぎる規模のところを堂々めぐりして議論をしておられるようにしか私には思えない。小さな農家をつくって何をなさるつもりか。よそでは早く大きく育成しようというのに、これからつくる農家を小さくつくるというのは、おかしなものだろうと、私は思うのですが、ひとつその辺のところを、おそらく政務次官も見ておって心配しておられるでしょうが、どのくらいまで補助なり融資なりをして、どのような農家をつくるつもりか、その決心のほどがもし言えるならば、たいへんに私は聞きたいことなのでございます。
  167. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 現状から推しますと、多頭飼育といたしましても、まあ六頭、七頭程度がねらいでわれわれやっているのでありますけれども、ただいま御指摘のように、さらに十頭、二十頭にすることは、それはけっこうなことと思いますけれども、なかなか、われわれが構造改善事業でこういう酪農を取り入れるにいたしましても、多頭飼育といいましても、よほどPR、指導というものは非常に必要なことと思います。畑作地帯酪農あるいは水田酪農をすれば、なお一そうそうであります。自給飼料を確保する一つの面積を得るには、労力の点等、なかなか限界があって苦労しているのでございます。しかしながら、生産コストを下げ、酪農として立っていくには、どうしても大規模の多頭飼育を考えなければいかぬ問題でありますから、御指摘の点は十分今後考えていきたいと思います。
  168. 田中啓一

    田中啓一君 私が二十頭と申しましたのは、例の一農家労働力二人半という勘定をいたしまして、そしてこの有畜機械化農業をやるとして、大体二十頭の牛は飼えるし、十町歩の飼料畑はつくれる、こういうことを考えて申したわけであります。そうすれば、所得勘定はいろいろありましょうけれども、一応農業生産物の金額は三百万円くらいになります。こういうことを考えたのであります。それだから申したわけであります。  もう一つ問題とされましたのは、流通価格の問題であります。ここにも問題があると思います。今日英国のように、もう一様に牛乳を政府が買い上げ価格を保証したらよかろうというような論も相当行なわれ出しております。そこで、一体いまの学童給食でどこで値段が高くなるか、こう申せば、百姓は現に六円で売っておるのだから、六円でもし学校が買い得るならば、これは六円で飲めるわけです。ところが、一たび流通機構にかけると、十二円でないと飲めない。だから、補助してくれ、こういうことになるわけなんです。そこで、私は、学童のごとく、ああいうきまった、小規模だけれども相当の規模の消費があるというところは、何らか生産者と直結するくふうをしたならば、これは六円で飲める勘定になりゃせぬか。今日生産者と直結してはならぬという憲法の禁止はないと私は思う。でありますから、それをひとつ考えられないか。  そこで、今度は、厚生大臣お見えになりましたが、かりに学校の近所に五円でも六円でも一つ生産者があって、そしてその牛乳を学校へ適時に供給をするということになりましたならば、厚生省の食品衛生取り締まりの面から見まして、今日大企業に要求しておるような、しかも不特定多数の多量の消費者に向けて配給をしておる牛乳ではないわけでありまして、すぐそこで飲む、集団的に飲むと、こういうことでありますから、何ぞ設備経費等を少なく簡易な殺菌方法等で飲めるくふうをしていただきたいものだと思うのでございますが、御考慮の余地はございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  169. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 御承知のように、牛乳は、たん白質、カルシウム、ビタミン等を含んで、学童の栄養にはこれ以上のものはないほど適当な食品であると、こういうふうに考えられておりまして、私どもはやはりなま乳が学校給食にも普及されることを心から希望しております。いまお話しのように、近所になま乳の適当な供給者がおると、こういうものについては、学校ごとにこれらの運び込まれるなま乳の保存について相当な衛生的な注意が払われると、こういうことと同時に、牛乳衛生に遺憾のないような殺菌の装置もある、しかもその装置をするについては相当低廉な価格のものがあると、こういうことでありますから、これらの簡易殺菌と申しますか、そういう施設が学校に普及される、こういうことも厚生省としては異存がなく、またこれをむしろ奨励してもいいと、こういうふうに考えております。
  170. 田中啓一

    田中啓一君 そこで、生産者から消費者へ直結の場合、一番問題になるのはその点であったのでございますが、いまの厚生大臣の御答弁で、そのような道が開かれるとすれば、私は、乳牛のおる村の牛乳を一般の流通機構にはかけないで、生産者価格で少なくとも学校は飲めると、こういうことに踏み切られると、これはまず、いまの補助金は要らぬでも、もらわぬでも飲めるという勘定になるのじゃないか。ちょうど流通機構の経費だけ国が負担しているようなものです、勘定してみますと。そこで問題は、どうやって生産者と学童という消費者が結びつくか、こういう問題になるわけでございますが、現在そういう統計はないでしょうから、御答弁はわずらわせませんが、おそらく乳牛のおらぬ村が相当ある。市町村合併でだいぶ区域は大きくなりましたが、それでもおらぬだろうと思われる村がございます。また、おってもきわめて少ないというようなのが非常に多い。なかなか、その村の学校の近くに乳牛がおって、たやすくなま牛乳がきれいなままで学校へ持ち込まれるという状態にはない村が非常に多いと思う。ところが、そういう村こそ、実は農林省がねらっておられる草地開発基盤の非常に広い村なんです。でございますから、この際ひとつ、農林省がこれまでやっておられた酪農振興方策を、具体的に、学校へ牛乳を出すためにそれだけはひとつ特定に開発してやろう、こういう気になれば、現在の予算に幾らか振興予算を増しますとできるわけです。そこで、私は、やっぱり自立家族経営農家という形で置かないと、コストが高くなってだめだろうと思う。せっかく国が補助金なり融資なりというもので徹底的に援助してやることでありますから、価格をひとつかりに国際価格、それも抽象的に言うことじゃわけわかりませんから、一応五円ということで農家が学校へ牛乳を出してくれて、そうしてしかも農家は二百万円、三百万円という農業生産価額を得る、こういうひとつ自立家族経営、酪農中軸の農家を、村ごとに、一軒でも、二軒でも、三軒でも、必要なだけ、つまり学童の数によることでありますから、それだけひとつおつくりになったらどうであろうか。これはもう結局全国の市町村にできるわけで、二戸ずっと考えても三千戸できるわけです。おそらくもう少しできるでしょう。そうすれば、ここに酪農を中軸とした自立家族経営農家あり、こういうことで、農業構造改善対策推進の上にも非常に意義があると私は思う。同時に、学校は五円で牛乳が飲めるということになる。この方策をひとつお考え願えぬか。ことに、これは一番国がいろいろ方針を定め、援助のことを考えなければなりませんが、具体的にこの計画をして仕上げてくれる人はおそらく市町村長であろう。現在市町村長は農業改善の計画者として主役をつとめておられるわけなんですが、この学童給食問題の解決にもそのようなひとつ主役をつとめてもらいたいと私は思うんでありますが、自治大臣おいででございますが、そのようにひとつ市町村長が大いに働いてくれることは望ましいことでございましょうか、そんなことまで押しつけられちゃ困るとおっしゃいましょうか、ぜひ私はやってもらいたいものと思うのでございますが、御意見はいかがでございましょうか。
  171. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 現在自治省関係の市町村といたしましては、文部省の方針にのっとりまして、学校給食のうち二分の一を市町村が負担し、市町村の父兄も負担しておるわけであります。また要保護者の分は地方財政のほうでまかなっておりまするし、また給食調整員の給与費、また施設費は、これは全額市町村の負担となっております関係上、いろいろな面でこの問題とは関係をいたしておりますし、また農村の酪農という、構造改善という面におきまして、市町村長は指導的役割りをしておるわけでございます。そういう面からは、自治省といたしましては、この問題にお手伝いする、こういう立場で市町村長を指導していきたいと思っております。
  172. 田中啓一

    田中啓一君 これが幸いにして、農林省がこれはどうしても指導的役割りをつとめないと——農業構造改善の中で学童給食という問題をやろうと、こういうわけでございますから、各省の協力を得て農林省が進めていただかなければなりません。おそらく一頭の牛で学童五十人ずつくらいの分の牛乳が出るでございましょうから、千五百万人に給食をするには、およそ三十万頭の乳牛は学童給食としてマークされることになるわけであります。私はこのような農業構造改善の中でこの問題を解決するのが最も日本としては各方面から見て適切な方法であって、もしこのようなふうに進まないと、ずいぶん端的な一本やりの論が世間では行なわれておるわけです。一挙に全額国庫負担で学童給食なま牛乳を飲ませろというような景気のいい話もございまして、悪いことではないのでありますが、なま牛乳を飲ませたいという熱意のほどはわれわれ買うべきだと思うのでありますが、まあえらい金がかかる、しかも年々かかる、こういうことでございますので、もうこれで最後でございますが、農林省としては何とかしてこのような方向であらゆる酪農問題の解決の一つの有力な一環としてお進めを願えぬか、ひとつお気持のあるところを伺うことができますれば幸いとするものでございます。
  173. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 田中委員のおっしゃるとおりになればまことにけっこうなことと思いますが、われわれといたしましても、いなかのほうにおきましては、ことに山村方面におきましては、学童数も少ないだろうし、またそこには草地も多いだろうし、その地方で生産したなま牛乳をもって学童給食に充てるということはけっこうなことだと考えて、つとめてそういうふうに関係当局とも相談してやっていきたいと思っておりますが、ただこちらも、いままでは五円八十銭とかあるいは六円何ぼとかいう程度生産者価格はなっておるのでありまするけれども、やはり加工処理、輸送費にも相当かかるので、いなかであってもそれは相当やはり見なくちゃいかぬのじゃないかとも思うのでありますので、はたしてその程度の価格で供給できるかどうかももう少し検討してみなければいかぬと考えております。また、いなかのほうになりますと、いまは低温殺菌の処理で供給しているのが大部分でございますけれども、そういうところと、簡易な殺菌——高温殺菌の問題も起こりましょうし、そういう施設の問題もあります。それについてもまた、ただいま厚生大臣からもお話がありましたが、相当貯蔵とかと関連して衛生上の問題も検討しなければならないと考えます。相当なおわれわれは検討を加えていきたいというふうに考えております。
  174. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。ただいま田中さんの御指摘の問題ですが、確かにわれわれも、将来全学童に完全なま牛乳や給食をやれば、これは百五十億や二百億の国家予算が要る。国家が全部負担せよと言っても、先ほど木村委員が午前中指摘されたように、予算もなかなか窮屈なおりから、そう簡単にはいかない。そうなってきた場合の問題は、いま御指摘の問題点だと思う。その場合に、私は、農協に学童給食の仕事を酪農者と直結させてやるか、あるいは、特殊会社をつくって、それでその資金は、酪農家なり、農協、あるいは特殊なあれをして、つくってやる。それで、配達のこともあるけれども、これは一本々々の配達じゃないから、学校にトラックで一回に持っていけばいいのですから、隣村に持っていくのだってそうたいして費用はかからぬと思います。まあ学校の休み中どうするかという問題はあると思いますから、これは検討を要しますが、そういうこともあるし、また低温、高温の処理の問題もありますけれども、具体的にもしそういうことをやった場合にはどの程度で学童の手に渡るか、メーカーのやっておるのとどの程度の差があるか、それからいま衛生上で許され得る範囲内で施設をしたならばどの程度の施設に費用がかかるか——一単位当たり、そういうことをひとつ研究をしておいていただきたいと思います。また適当な機会に御返事を承りますから、いまここでの大臣の答弁はいいです。
  175. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 田中君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたし、明日は午前十時より開会いたします。散会いたします。    午後四時十五分散会