○
国務大臣(
宮澤喜一君) お尋ねの問題が、いま私
どもの一番関心を持って事態を見ておるまさに焦点でございます。しかし、お尋ねに対して幾つかのことはお答えができると思います。
第一は、鉱工業生産指数というものと輸入との間には、過去十何年見ておりましても、函数
関係がどうも発見しにくいということであります。これは、
一つには、やはり
経済が当然サイクルを描くわけでございますから、あるところまでいけば生産というものは在庫なんかの
関係で一定の下降に転ずる。始まったものがいつまでも同じ傾向にいくわけではないということが
一つ考えられることだろうと思います。
それから素原材料の在庫水準が現在決して高くないということは御指摘のとおりと思いますが、他方でほとんど自由化されたということは、原材料からいつでも買えるということでもございます。また、電子計算機等によって在庫管理
技術がじょうずになったということもございますので、従来の自由化される以前の在庫水準からいまの在庫水準が非常に低いものであると一がいに断定できるかどうかという問題がございます。
それからもう
一つ考えられますことは、そういったような生産活動がはたしていつまで続いていくであろうか、それが輸入の素原材料がどこまで需要がふえ続けるであろうかというその見当のところがこれは一番問題で、ことに生産品在庫、流通在庫がかなりふえておりますところから、そういうことが
考えられるわけであります。でございますから、基本的にはやはり
経済引き締め基調に運営をして、利潤以外の動機でやむを得ずとにかく生産をしているのだというような生産側の態勢というものを
考えてもらわなければならないということがただいまの問題であると思うわけでございます。
それから
昭和三十八
年度の輸入が予想よりもかなりふえました
一つの原因は、将来繰り返さないであろうと思われるような原因、すなわち、
わが国の異常な天候でありますとか、世界的な寒波でありますとか、そういったようなものを直接間接の原因とする要素が五十七億五千万ドルの中に二億四千万ドルぐらいあるというふうに私
ども見ているわけでございます。そのうち、一部は、たとえば砂糖の価格のように、三十九
年度もある
程度までは持ち越すであろうと思われるものもございますが、その他のものは繰り返さないであろうと推定される要素でございますから、そういう特殊な要素を引きますと、六十二億ドルというのは、大体三十八
年度の輸入に比べてほぼ一割くらいの増加——これが鉱工業生産に直接
関係がある部分でございます。そのくらいの増加に異常要因を引きますとなります。したがって、必ずしも低い水準と見ているわけではない。
まあいずれにしても、
経済全体を引き締め基調に運営をして、生産が正常なところの水準に落ちつくということを
政策努力としても
考え、また、
企業家にも
考えていただくということがただいまのこれは
政策上の一番大切な問題であると、こういうふうに見ております。