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1964-03-06 第46回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月六日(金曜日)    午後二時六分開会     —————————————   委員の異動  三月六日   辞任      補欠選任    田畑 金光君  天田 勝正君    高山 恒雄君  赤松 常子君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            鈴木 一弘君            奥 むめお君    委員            植垣弥一郎君            江藤  智君            鹿島守之助君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            阿具根 登君            加瀬  完君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            安田 敏雄君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            田畑 金光君            山高しげり君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    行政管理政務次    官       川上 為治君    北海道開発政務    次官      井川 伊平君    科学技術政務次    官       鹿島 俊雄君    法務政務次官  天埜 良吉君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      齋藤 鎭男君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農政局長 昌谷  孝君    通商産業政務次    官       竹下  登君    建設省計画局長 町田  充君    自治大臣官房参    事官      宮沢  弘君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、三案を一括して議題とし、引き続き質疑を行ないます。  鹿島守之助君。
  3. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 当面の重要な政治外交問題につきまして、総理大臣、または外務大臣に若干の質疑を行ないたいと存じます。  まず、超党派外交についてお伺いいたしたいと存じます。超党派外交については、衆参両院においてしばしば論議された問題でありますが、最近民社党西尾委員長が「外交の争いは水ぎわまで」とのスローガンのもとに、超党派外交を強く主張され、去る一月二十五日の第六回民社党全国大会においても、この点が強く打ち出されております。西尾氏は超党派外交の手始めとして、「一、外交の重要問題について、各党党首は時に触れて話し合い、重要な情報について共通認識を常に得るよう努力を行なうこと。二、儀礼的外交については、野党もこれに参加せしめること。三、国際会議出席に際しては政府外交権をそこなわない形と限度において野党参加を求めること。」以上の三つを提案されておりますが、これに対する総理大臣、または外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 基本方針につきましては、総理大臣から御答弁があると思いますが、私ども超党派外交につきまして考えておりまする問題点につきまして御報告いたします。  超党派外交は、外交政策に対する国民的な基盤をより広く確立する意味におきましても、外交政策継続性を保障する上から申しましても、また、外交折衝にあたりまして、わがほうの立場を強くする意味から申しましても、また、外交政策が過激にわたらぬように保障する上から申しましても望ましいことでございますが、他面、機密の保持とかあるいは責任の所在でございまするとかいうような点において若干のデメリットを伴うものだと思います。英国、ドイツフランス米国等、各先進国の実情を調べてみますと、超党派外交の特に機関と申しますか、マシナリーと申しますか、そういうものはないようでございまするが、与野党党首、あるいは外交責任者野党の首脳との間の個人的な接触で、情報の提供、協議というような形において行なわれておることは御承知のとおりでございます。もとよりイギリス米国等におきましては、外交の基本的な基調におきまして与野党の間に大きな差異がございません事情もございまするし、また、野党も政権を担当した経験もございまするし、したがって外交政策差異というものは、自然狭いものに相なっておる事情にも助けられまして、こういったことがきわめて自然な形で行なわれておるわけでございます。ドイツにおきましては、たとえばドイツの統一問題、あるいはヨーロッパ、特に対米協調問題あるいは独仏協定を通じての独仏協力問題、そういった基本的な問題につきましては、与野党の間に外交政策差異がないということは、党の綱領の上にはっきりいたして、政策の上にはっきりうたわれておりますが、いずれの国も制度的に特に機関を設けているところはございません。ただ、アメリカの場合は、憲法上、外交権に対して立法府が非常に強い権限を持っておる。立法府行政府がさい然と分かれておるというような事情もありまして、どうしても超党派外交をやらなければ国の外交を推進できないような仕組みも手伝いまして、現実にはいろいろな形における協議が行なわれておるわけでございます。わが国の場合は、不幸にいたしまして、そういう事情、そういう条件がまだ成熟いたしていないわけでございまするが、いま御指摘のように、与野党の間に、西尾さんが御提唱に相なるような方向において信頼を樹立してまいる必要があり、また、それが国民の多くの支持するところであると思います。去年の秋、私ども国連総会与野党方々の御参加を求めたのもその趣旨でございましたが、これは国連代表野党の方をお願いするというのでなくて−そういたしますと、政策についてコミットメントを与えたことになるという野党の御心配はもとよりございますので、代表でなくて、代表顧問団というような形でいかがでしょうと御提案申し上げたことは事実でございまするが、日本社会党の御同調を得られなかった。その段階におきましては得られなかったのでございますが、いまなお、そういうことの必要を、私自身としてもまだ依然として感じておるわけでございまして、今後もそういう方向でできるだけ努力してまいりたいと思います。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣から詳しく申し上げたとおりでございます。私自身といたしましても、外交水ぎわまででありたいという気持ちを持っております。私が組閣いたしましたときにも、外交問題懇談会というものを設けまして、民間、学界の有識者をお集まりいただいて、一年余り語り合ったのでございますが、その点におきましても、なかなか意見の初めから違っておる方はお入りにならないという状況です。また、組閣当初におきまして、野党方々とライスカレーを食べながら話し合ってみよう、こう言ってみたのでありますが、なかなかうまくいかない。ことに外交問題は、御承知のように左か右かというふうに分かれてしまっておるものですから、実現したくても、なかなかいまのところむずかしい。したがって、そういう機運を進めていきたい。いまお述べになりました儀礼的の問題につきましては、これは外国の元首あるいは著名な政治家がお見えになって、私が招待するときには、野党の方にもおいで願うようにして、これは実現いたしている。それから国連の問題につきましては、外務大臣が申し上げたとおり、われわれは代表としてでなくても、やはり御一緒に行っていただくといいという気持ちはまだ持っておるのでございます。今後、秘密の守れる程度におきましては、なるべくそういう方向で進んでいきたいという気持ちは持っておるのでございます。
  6. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 そうすると、以上三つのうち、「儀礼的外交については、野党も加わる」、それから「国際会議顧問団として加わる」、これはいいので、最初の「外交の重要問題について、各党党首は時に触れて話し合い、重要な情報について共通認識を常に得るよう努力を行なうこと。」この点はいかがでございますか。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは先ほど冒頭に申しましたように、与野党の間の信頼関係というものを漸次樹立してまいりまして、そういうことが安心してできるような雰囲気になることを、私どもは心から希望いたしております。
  8. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、新聞の伝うるところによりますと、大平外務大臣は、中国代表権問題が討議される国連総会超党派国会議員顧問団を送りたいお考えで、近く社会党に再び参加を呼びかけられるそうですが、この構想は、昨年秋の国連総会を前にして、自民、社会、民社、三党に参加要請が行なわれ、自民民社両党から賛成されたものの、派遣の形式について社会党の反対にあって実現しませんでした。しかし、社会党内でもことしの国連総会の最大の議題中国代表権問題であることから、超党派日中国交正常化を現実的に促進する意味で、外務大臣構想に積極的に賛成している向きがある由でありますから、ぜひともそれが実現を期待するものであります。それに対する外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。最初お話を伺ったようですが、もうちょっとはっきり……。交渉されておられますか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第十九国連総会代表団構成をどうするかというまだ人選にかかっていないのでございまするが、そういう構想を私ども考えるにあたりまして、去年以来野党参加の問題もまだ実現を見ずにおりますので、その問題も合わせて代表団構成とともに考えさせていただきたいと思っております。いまのところまだ結論を持っておりません。
  10. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 アメリカその他ヨーロッパ等超党派外交について外務大臣から御説明がございましたが、私は私なりにちょっと考えている点がございますので、あとのほうの質問の関係上、ちょっと私の見解を述べさせていただきます。  いまや、国家の安全及び外交一貫性並び継続性の見地から、超党派外交アメリカでもヨーロッパでも一般に行なわれておるのが慣例でございます。米国におきましては、ウィルソン大統領がみずから国際連盟を提案しながら、ベルサイユ講和条約米国上院で三分の二の多数が得られず否決されて以来、この苦い経験にかんがみ、トルーマンが一九四五年二度目の大統領に当選した際、野党であった共和党の上院外交委員長バンデンバーグと密接なる連携をはかり、重要外交問題については、いわゆる超党派外交実現したのであります。彼の死後はワイリー上院議員、次いでダレス上院議員と密接な連絡をとり、ダレスのごときはこれを国務長官に起用し、ますます超党派外交の実をあげたことは、とくと御承知のことと思います。その後ケネディはハーター及びジロンを起用し、現ジョンソン大統領もこれを引き継いでおるような事情でございます。米国においては単に党派間の調整のほか、行政府議会との意見調整に重点が置かれていて、最近ではこの傾向を非党派外交、ノンパルチザン・フォーリン・ポリシーと呼び、あるいはトータル・ディプロマシーと言われています。この外交によって、アメリカナショナルインタレストが確保され、安全が保障され、外交一貫性並び継続性が確保されている次第であります。これなくしては、米国が繁栄するどころか、生き残ることすらできないものと認められているのであります。イギリスにおきましても、全く同様に超党派外交実現されていることは、いまさら申し述べる必要もないことであります。イギリスの著名な政治学者であったラスキは、イギリスの政党はどんなに対立しても、ナショナルインタレストについては共通考え方を持ち、そのためには党利党略を押さえて協力する態度があることが、イギリス議会政治を健全ならしめている根本原因だと言っておりすす。さらに欧州においても、いま外務大臣が申されたように、ドイツフランスイタリア諸国は、極右、極左を除いた中央の諸派がこれまた超党派外交を行ない、NATOや、EECへの参加協力等の重要問題については、一致せる外交政策をとっております。これが欧州の非常な私は強みだと思っております。しかるに、わが国においては国防問題、重要な外交問題、特に安全保障の問題については、わが党と野党たる社会党との間にきわめて大きい意見相違のあることは、国家国民の重大なる損失であるばかりでなく、あの安保騒動に見られたような事態が、将来も繰り返される可能性があるとすれば、わが安全は致命的な脅威をこうむり、やがては、わが国及び民族が生き残ることができないのではないかと心配するものであります。超党派外交困難性については、十分承知してはおりますが、これに対して最善を尽くすことが政治家の義務であると思うのであります。総理大臣の御所見をはなはだ恐縮でございますが、もう一度伺いたいのでございます。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外国の例を引用されましてのお話は、まことにそのとおりでございます。われわれとしては実にうらやましい限りでございます。したがいまして、お話超党派外交につきましては、先ほど申し上げましたように、お互いの信頼を深め、そして超党派外交のできるよう努力いたしたいと考えます。戦前においては大体話し合いが相当ついたようでございます。いわゆる外交問題につきまして、党首会談等々が行なわれた例が多かった。戦後におきまして、全く相対立の状態になっているということは、まことに遺憾であります。しかし、今後におきましては、その方向で自分としても努力していきたいと考えます。
  12. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 超党派外交が取り上げられるとするならば、いかなる問題がまず検討されるべきであるか。まず重要なことは、わが国論を分裂せしめている国防及び安全に関する諸問題を、長期的視野から取り扱うことが必要と考えられます。すなわち安全保障条約の運用の問題、韓国問題、中国問題等解決をはかるべきではないかと存じます。もし、わが党と社会党との間に了解が困難とするならば、超党派外交を提唱する民社党との間にだけでも、何らかの了解に達することができれば、現在の緊張緩和に役立つものと思考いたします。総理の御所見を伺います。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点も考えられます。民主社会党方々のお考えと、われわれとは、社会党さんほど違っているとは思えません。しかしいま、この際、われわれと民社党だけでやりますということになると、そこに意見相違に感情まで加わってくるようになりましても、これはまた、元も子もなくなることでございます。やはり超党派外交のたてまえだとすれば、全部が一緒になるということに向かっていったほうが、目的が早く達し得られるのじゃないかと、私は考えておるのであります。
  14. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 超党派外交実現する上に、西尾氏が言われるごとき党首会談はきわめてけっこうと存じますが、それを行なう準備をするための事務局、あるいはもっとゆるやかなものがよいとするならば、さしあたり懇談会審議会調査会というような、どんな名称でもよろしいが、そういう機関を設けることが必要であると思います。かつてわが国には、第一次世界大戦が終末に近づきつつあるころ、講和会議に対処する重要外交案件につき国論を統一するために、大正六年、寺内内閣当時、臨時外交調査会が設立されました。また、近くは昭和三十五年七月、池田内閣成立後、閣議決定により、外務大臣諮問機関的性格を持つ外交懇談会が設けられました。いずれも当面の問題を処理するための機関たるにとどまり、五年先、十年先、さらに二十年先のわが国家及び国民の安全や、その利益を確保するというような遠大な目的を持つものでなかったために消滅した次第でありますが、前に申しましたような超党派的な外交目的実現するためには、前申しましたような何らかの機構なり組織が必要でないかと存じますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、私も先ほど来お答え申し上げました方向努力していますが、私は、国会において各党派でこういうふうなことを御相談なさったら、これは、政府が主宰するよりももっと早道じゃないか。世界議会同盟なんかへみな、各党一緒に行かれまして、いろいろああいうふうになりますと、議会方々だけのほうが非常に話が早くつくのじゃないか、私はそういうことも考えたことがあるのであります。政府も今後努力していきますが、国会内部においてひとつおやりになっていただければ、非常にスムーズにいくのではないかとも考えておるので、鹿島さんにおかれましてもひとつ御一考を願いたいと思います。
  16. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 よくわかりました。次に、日韓国交正常化の問題について伺いたいと存じます。賠償問題を初め、終戦後の日本における重要外交案件の大部分は、すでに解決をみた次第でありますが、残された処理案件日韓並び日中国交正常化の問題だと思います。国民日韓国交正常化を待望しております。最近、日韓の交渉もようやく進展を見せ、近々懸案問題も妥結するように報ぜられておりますが、お差しつかえない限り、総理または外務大臣にその状況見通しを承りたいと存じます。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓の間の正常化の前提としての懸案処理でございまするが、第一の問題である請求権問題は、一昨年の冬、大筋の合意をみておりますが、ただ、若干の細目につきましてまだ合意をみていないのでございます。すなわち、焦げつき債権の返済方法の問題、有償経済協力返済期限の問題、二つがまだきまっておりません。その他の問題といたしましては、漁業問題これはこの十日から農林大臣レベル会談が行なわれますが、専管水域設定の問題、その外における共同規制の問題、日韓双方漁業技術の格差を緩和するための漁業協力の問題、こういった問題が討議の対象に相なっております。文化財の問題といたしましては、対韓返済文化財範囲の問題がまだ最終的には合意をみておりません。法的地位の問題といたしましては、永住権をどの範囲において認めるかという、これもだんだん理解は進んできておりますが、最終的な煮詰めにはまだ至っておりません。永住権をかつて認められた者の処遇の問題、これも各般にわたる問題でございまするが、デテールに至るまで煮詰まっていない状況でございます。その他、船舶の請求権双方にございます。あるいは朝鮮海峡のケーブルの処理の問題、そういった問題がいま残されているわけでございまして、十二日からの本会談におきまして、こういった残された問題をあわせて双方意見調整を促進してみたいと考えておるわけでございます。これの見通しがどうなるかということは、この会談をやってみないと何とも申し上げられませんが、長い懸案でございますので、私どもといたしましてもできるだけ早く合意的な妥結を見たいものだと念願いたしておる次第でございます。
  18. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、中国問題について伺いたいと存じます。フランス中共との国交正常化して以来、中共問題は外交の舞台に大きくクローズアップしてきた次第でありますが、まず第一に伺いたいことは、中共国連加盟の時期の問題であります。この点は従来中国代表権問題として取り扱われておるのでありますが、特に問題の実質面よりして中共加盟問題として取り上げたいと思います。一般中共は来たるべき秋の国連総会において加盟が認められ、国民政府にかわって安保常任理事国の議席を獲得するような予想さえ行なわれておりますが、最近にいたってはアメリカ初め、自由主義諸国フランス中共を承認したからいって、必ずしも中共国連加盟を認めるものではなく、いわんや安保常任理事国たる地位を与うべきではないの説が広く広まりつつあるやに思われますが、中共国連加盟または中国代表権問題についての成り行き並びに見通しについて、さらにお差しつかえなければ、これに対するわが国態度総理大臣または外務大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは鹿島先生も御承知のように、中国代表権問題、俗に加盟問題と称しておりますが、この問題はわが国といたしましてはアジアの平和、世界の平和から見まして非常に重要な問題であるという実態認識を持っておるわけでございまして、世界の世論に照らして十分に実質的な審議を遂げて、公正な解決を見るように希望し、また国連のメンバーといたしまして日本も応分の努力をしなければならないと考えておる問題でございます。最近御指摘のようにフランス中共を承認するという挙に出たのでございますが、私どももこの動きが世界的にどのような反響を呼ぶかということに注目をいたしておったのでございまするが、ただいままでのところ一応世界は比較的平穏でございまして、その後コンゴーが中共を承認するということを表明した以外、いずれの国もまだ何ら意向を表明いたしておりません。したがいまして、今度の来たるべき総会におきましてこの問題がどのような姿において取り上げられるか、そして取り上げられた場合にどういう様相を呈するであろうかということを論断、予想いたしますには、たびたび申し上げておりまするように、まだデータがきわめて不足でございまして、国会で御報告申し上げるような自信はない状況でございます。わが国といたしましては、従来から持っておる基本方針に従いまして、こういう状況も十分見きわめながら、来たるべき国連総会対策というものを慎重に練ってまいらなければいかぬと思うのでございますが、この国連対策をいま申し上げるには、まだそれを打ち立てるには——十分の材料を集めて、日本の国益の立場から、アジアの平和の立場から、十分慎重に討議した上で打ち立ててまいらなければならないと考えておるのが現在の立場でございまして、それ以上申し上げられる用意がいまの段階ではございません。
  20. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、中国との国交正常化中共承認の問題について伺いたいと思います。わが国中共承認の時期についてお伺いいたしたいと存じます。この問題については、最近、政府においては「中共国連に祝福された形で参加した場合は国交正常化を考慮する」と意見を統一されたやに報ぜられておりますが、結局のところ、いつごろ中共を承認し得られるようになるお見通しでしょうか。総理または外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承認の時期という問題について、明確に政府として意思を表明したことはないのでございます。国会における御質問が、国連中共加盟するような状況になった場合にどうするのだ、こういう御質問でございますので、そういう事実は、これをそういう事実の上に立って、日本といたしましては、中国との国交正常化の問題は考えざるを得ないだろうということを答えておるわけでございます。問題は、先ほども申し上げましたとおり、中国代表権問題という問題は、アジア並びに世界の平和にとって重要な問題でございまして、中共国連加盟することによって、正義に基づく世界の平和が維持され、一段と平和が保障されてまいるという祝福すべき状態になることは、私は世界の皆さんが希求しておることであろうと思うのでございますし、日本国民も例外なくそのことを私は望んでおるだろうと思うのでございます。そういう状態になった場合に、日本がこの事実の上に立って中国との国交について考えなければならぬのは当然じゃないかということを申し上げておるわけでございまして、時期等につきまして具体的に申し上げるというようなことは、先ほど申しましたように、この問題の成り行きがまだ未確定の要素ばかりでございますので、大体の時期を申し上げるというような段階で私はないと思います。
  22. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 米国アジア政策について伺いたいと存じます。わが国中共承認を考慮するとしても、米国を初め、その他の自由主義諸国の一部から、中共は今日なおもって平和に対し重大なる脅威を与えるものと認められており、米国のごときは一九五七年六月二十八日国務長官ジョン・フォスター・ダレスがサンフランシスコで行なった演説及びその翌年全在外公館に送った「中共不承認に関する米国政策」と題しまする国務省の覚え書き以来、中共不承認の論拠をきわめて明確にし、私の承知する限りその政策を変更しておりません。その中には、米国の北京政権の承認はアジアの非共産国全体の立場に、広範囲にわたって悪影響、おそらく悲惨でさえあるような影響を与えるであろうと断定しておるのであります。したがって、たとえフランス中共を承認したからといって、軽々に米国は従来の態度を変更しないだろうと思われるのであります。ニューヨーク・タイムス紙のレストン記者は、二月二十八日、朝日新聞のワシントンの篠原アメリカ局長に次のように語っております。「「七億の人口をもつ中共の存在を無視できない」というドゴール大統領態度について検討はしなければならないが、封じ込め政策は再検討の必要はない。封じ込めば決して時代遅れではない。現在は集団安全保障時代で、中央アジア条約機構、北大西洋条約機構など、みんな同じ考え方により封じ込め政策をとっている。」また、「もし米国が封じ込めをしなかったら、東南アジアは共産化していることだろう。そのかぎりでは封じ込め政策は必要だと思う。」と言っておるのであります。私は、米国の極東及び東南アジア政策には当分変更はないと思いますが、総理または外務大臣のこの見通し、御所見を伺いたいと思います。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカにおきましても、民間の世論というものは、新聞雑誌、その他にいろいろな論説が掲載されておりますことは、鹿島先生も御承知のとおりでございます。けれどもアメリカ政府中国政策というものは、いま御指摘のように、以前と何ら変わっていないと私どもは見ております。変わった徴候は何ら見せておりません。そうして、これをどう見るかの見方につきましては、この前の本委員会におきまして、羽生先生に対して答えました私の答えにもありますように、アメリカの極東政策というものをどう評価するかの問題は、これはいろいろ評価のしかたがあると思いますけれども、しかし、アメリカの東亜の安定と繁栄に関与しておる力と役割り、成果というものは、正しくこれは評価すべきであると存じております。もとよりアメリカも万能ではございませんから、個々の政策につきまして私どもがいろいろ気づいた点がございましたならば、これは当然。パートナーとしてアメリカに伝えることはいたしたいと思いますが、政策の評価につきましては、客観的に冷静に、これは評価すべきものだと存ずるのでございまして、もしアメリカの東亜、アジアに関する関与がなければ今日のアジアはどうなっておったかということは、これは想像するだにりつ然たるものがあると私は思います。
  24. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 もし米国政府態度にあまり変更がないとするならば、フランスや若干の小国が中共を承認したからといって、日本は従来の態度を変更する必要はないと思います。さらばといって、永久に中共を承認せず、また、国交正常化しないというようなことは不自然であり、よろしくないと思います。いな、われわれも、故ケネディ大統領が言ったように、中国本土の住民と太平洋地域の諸国民が隔絶しているのは近代世界の大きな悲劇であり、一時的現象に終わることを切望するものであります。特に、わが国民と中国人とは同種同文であり、古くより政治、経済、文化において切っても切れぬ関係にあったものでありますから、わが国独自の立場から、一定の前提条件が満たされるならば、これが承認、国交正常化に踏み切るべきものと存じます。しかし、日本外交路線は、国際順応主義やあるいは中共立場に立った日中国交回復論に軽々しく応じてはならないと思います。  私は、中共承認の前提条件として、まず第一は、中共が日米安全保障条約を承認することであります。第二は、日華平和条約を尊重することであります。第三は、対日賠償請求権を放棄することであります。第四は、内政不干渉主義に基づいて、わが国に対し共産主義の破壊宣伝を行なったり、間接侵略を行なわないことを約束することであります。以上の見解に対し、総理または外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 鹿島さんの御意見、大体私と同意見でございます。こういう点につきましては、去る衆議院予算委員会で横路君の質問に対しまして、中共が好戦国でなしに、ほんとうにアジアの平和と世界の平和に進んで協力するということを自他ともに認められるような喜ばしい状態があるならば、自分らも考えるにやぶさかでない、こう言っておるのでございます。私はいまお話のような基本的考え方で進んでいきたいと思っております。なお、フランス中共を認めましたあとのせんだってのWHO——世界健康会議におきまして中共加盟問題が論議せられ投票が行なわれた結果は、前年のそれよりも台湾政府支持のほうが非常に多かったように聞いております。したがいまして、ドゴール大統領中共承認後の世界の情勢は、そう急激な変化はいまのところは見られません。われわれは、今後十分世界の情勢を見きわめながら、誤りなき外交を続けていきたいと考えておるのであります。
  26. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、日本国連安保常任理事国となる要望について申し述べたいと存じます。  中共国連に祝福されて加盟する場合には、単に加盟するだけでなく、安全保障理事会の常任理事国となるものと一般に予想されておりますが、その場合、日本が依然として国連の一員たるにとどまり、安保常任理事国地位一が得られないならば、中共より政治上、経済上、社会上きわめて劣等なる地位となり、とうていわが国民の自尊心並びに医家的利益が確保されないものと思います。日本は、中共国連安保常任理事国となる前に、少なくとも同時に安保常任理事国地位を獲得しなければならないと存じます。これは国民的理想であり、また、実現可能と思います。すでに一九五九年九月、米国上院外交委員委員長にあてたコンロン報告の中には、「国連安保理事会の変更が考慮されるような場合には、アメリカ日本に常任理事国の地位を与えるよう率先して提唱すべきである。現在アジア代表は少な過ぎるという悲しむべき状態にあり、日本とインドが明らかに候補者となる資格がある」と記述しております。この報告に基づいて、日本政府は何らかの措置をとられましたでしょうか。日本の安保理事会の議席について、アメリカ政府の意向をただしたことがあるでしょうか。この点、外務大臣に御説明をお伺いいたしたいと存じます。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘の問題は、いま国連が当面しておる諸問題の一つでございまして、最近のアジア、アフリカの諸国多数の国が国連加盟いたしましたので、安保理事会のような国連の主要機関構成を現状のままにしておいていいかどうかという問題が起こりまして、昨年の総会におきましては、現行の安保理事会の十一議席を十五議席に拡大する決議が採択されましたことは御案内のとおりでございます。ところが、右決議におきましては、常任理事国五カ国につきまして何らの変更を加えることなく、従来のままとなっております。で、安保理事会における議席の単純増加の問題についてすら、議席の地域的な配分をいかにするかについて、各地域間の利害の先鋭な対立が見られたわけでございますが、安保理の常任理事国変更というような問題になりますると、これは国連創設の根本体制の変更を意味するものでございまして、議席の単純増加の問題とは比較にならない程度の重要性を持って、かつ多大の困難も予想されるところでございます。もちろんわが国といたしましては、それにもかかわらず、安保理事会常任理事国が、今日に至るまで国連創設当初のままであり、その後の世界の実情を必ずしも反映していないことは、その任務と責任がきわめて大きいだけに、国連加盟国すべてが真剣に考慮しなければならない問題と考えております。わが国が常任理事国となることについても、大多数の国がこれを歓迎し、その機が熟するに至りまするならば、でき得る限り実現努力したいと考えておるところでございますが、そのためにも国連の活動に対するわが国の協力、寄与を実質的に一そう拡充してまいる必要があろうと思います。いずれにいたしましても、この問題は、今後とも各国の動向を勘案しつつ、引き続き真剣に検討を加えてまいらなければならない問題と考えております。
  28. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、国連憲章改正の必要について申し述べたいと存じます。  国連は、創立以来すでに十八年以上を経過し、当時の五十一カ国の構成国から、現在は百十三カ国に増加しているのですから、憲章の改正は当然必要であり、特に安保理事会の常任理事国並びに非常任理事国の数を増加することも、当然の措置と考えます。大平外務大臣も、昨年の九月二十二日の国連総会での一般討論演説で、「著しく増加した加盟国が国連の各方面の活動に一そう全面的、能率的に参加し得るよう考慮を払うべきである」と、わがほうの正当な希望を申し述べられております。しかしてまた、国連憲章第百九条三項には、「憲章が発効してから十年経過しても、憲章改正のための加盟国の全体会議が開かれなかった場合、これを招集する提案を総会の議事日程に加えなければならない」との規定があります。しかるに、憲章発効十年後の昭和三十年には、主としてソ連の反対により全体会議は開かれませんでした。その後全体会議開催のための準備会議は、通常会議開催前に毎年行なわれておりますが、延期々々を重ねて今日に至っておる状態であります。日本としては当然、これが会議開催を要求すべきものと思います。また、国連憲章改正の要求は、AAグループを中心として高まりつつあり、この事実は、ソ連その他共産側の従来の反対態度を変更させるものと観測されます。日本は、単独にまたは友好国と共同して、国連憲章の改正を提議すべきものと思います。  以上の点につきまして、総理または外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せごもっともでございます。機構改正の問題は、先ほど安保理について申し上げたわけでございますが、その他の機構の拡充、発言機会をできるだけ広く均等に与えるという意味から、なお検討すべき問題も多々あるわけでございます。そのために憲章改正という問題につきまして、いま鹿島先生の御提言でございますが、お気持ちは、全く私どもも同感に存ずる次第でございまするが、遺憾ながら中国代表権問題等とのからみ合いで、ソ連がただいままでわれわれに同調する動きを見せていたい、きわめて実情が困難でございまするが、そういう方向世界世論の熟成と相まって努力してまいることは、当然のわれわれの責務であると考えます。
  30. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、国連憲章にある旧敵国条項の削除について申し述べます。  国連憲章の改正に際して忘れてはならないことは、いわゆる旧敵国条項削除の問題であります。すなわち憲章第五十三条と第百七条とは相関連するもので、結局、地域的取りきめまたは地域的機関による強制行動は、いかなるものでも、安全保障理事会の許可を必要とするという原則に対して、重大なる例外を認めたものであります。一、旧敵国に対する行動で、責任ある政府が第二次大戦の結果としてとったか、または許可した行動。二、旧敵国における侵略政策再現に備える地域的取りきめによる行動。この二つの例外、特に後者によって、一九五〇年二月十四日の中ソ友好同盟相互援助条約は、合法的であり、この同盟条約が、日本国を仮想敵国として明記していても、その合法性を失わないと解釈され得るのであります。よって、わが国としては、国連目的及び原則を受諾し、憲章から生ずる義務を受諾して国連に加入した以上、この第五十三条及び第百七条の適用の排除を求めるのみならず、進んでこの両条の廃棄を提議すべきものと思われます。もともとこれらの条項は、過渡的規定にほかならないのでありますから、今日これが廃棄を主張するのは、当然過ぎるほど当然と存じます。本問題については、一昨年八月十一日の衆議院本会議において、民社党の佐々木良作氏は、「わが国にとって、きわめて不愉快な存在である中ソ友好同盟条約の法的根拠となっている同条項の削除要求は、全国民の期待と希望に沿うものと信ずる」と申しておるのでありますので、この問題は、さきにも申し述べました日本が安保理事会に常任理事国の議席を要求する問題とともに、超党派的に、いな全国民の熱烈なる支持を得るものと確信するものであります。総理または外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 旧敵国条項は、今日におきましては、わが国にとって適切でないと私も考えます。機会を見て、これが削除につき検討いたしたいと考えます。その手続といたしましては、憲章再審議のための全体会議準備委員会が、国連に設けられましてこれは、第二十回総会のときでございますが、国連憲章再審議の時期、方法等について検討することとなっておりますので、この問題を憲章再審議が行なわれる際に、憲章全体のワクの中で検討するのが、最も妥当ではないかと考えております。もっとも憲章の改正は、通常の改正手続によることも一応可能ではございますが、かかる手続によりますと、憲章再審議のための全体会議開催の方法によるとを問わず、ソ連が中共中国代表権が認められない限り、絶対に反対であると、先ほど申しましたようにその態度を堅持いたしておりますので、実際問題として、現在のところ、その実現がきわめて困難な状況にあることは、きわめて遺憾でございます。しかし、先ほど申しましたように、国際世論の成熟を見ながら、そういう方向努力してまいることは、当然と考えます。
  32. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 最後に、私の持説でありますアジア太平洋共同体について、申し述べたいと存じます。  科学技術の発達、これに伴う交通通信技術の顕著なる発達により、地球は著しく狭小となりつつあるのでありますが、世界的機構である国連と民族国家との中間に地域的共同体が生れつつあります。その最も顕著なるものは欧州共同市場、すなわちEECであります。これに米、英、カナダなどが加わって大西洋共同体の構想が具体化されつつあります。これに呼応して、日本と東南アジア諸国、豪州、ニュー・ジーランド及び米国、カナダを加えた地域を、政治的に経済的に、また文化的に組織化しようとするアジア太平洋共同体の構想が生まれてくるのは当然のことと思います。昨年八月マニラで開かれたマラヤ、フィリピン、インドネシア三国首脳会談で、歴史上初めて一億五千万のマレー人を結合する連邦計画の取りきめが調印され、いわゆるマフィリンド構想実現の緒につきました。その際スカルノ・インドネシア大統領は歓呼する民衆に向かって、「マフィリンドはわれわれの目標の第一歩であり、アジアは一つである、」と声明しました。昨秋池田総理大臣は、東南アジア及び西太平洋諸国を訪問されましたが、この目的は、単なる親善だけでなく、また、日本とこれらの諸国との懸案解決だけでもなく、多年アジア国民の待望する繁栄のための組織化、統合化、平和化を目ざす第一歩を踏み出されたものと思考いたします。すなわち、わが自民党の立党精神であるアジア諸国との善隣友好の関係を一段と促進されたことに非常な喜びと満足を感ずるものであります。ここに、総理大臣の甚大なる御努力に対し深甚なる謝意と敬意を表して、私の質疑を終わります。別に回答は求めません。御所見があれば伺いたいと思います。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 西太平洋の問題、あるいはいまお触れになりました太平洋を中心としての問題、これはアメリカにおきましても、またアジアにおきましても、いろいろ議論のあるところでございます。何ぶんにも、いまの状態は各国相当民族主義的な気持ちが多いのでございます。経済的な封鎖的の考え方もございます。なかなか直ちにすぐ実現というわけにはまいりませんが、私は昨秋西太平洋を歩きましたとき、フィリピンの大統領マカパガル氏から、西太平洋における日本、フィリピン、インドネシア、豪州、ニュー・ジーランド、この西太平洋の島々は、天の与えた恵みある土地だ、西太平洋諸国は、いまお話しのような気持ちで親善を強化する、お互いに繁栄しようということばを聞いたのであります。私は、私のみならず、西太平洋諸国はそういう気持ちが非常に高まってきたことを感じましてうれしく思いました。この意味においてわれわれは努力を続けたい。いまスカルノ大統領は、マフィリンド連邦、これはわれわれも非常に同感に思う、その達成を熱望しておるのでございます。また、いまの北ボルネオ、サラワクの問題等で、冷戦とまで申しませんが、相対峙している不幸な状態があるのであります。われわれといたしましては、こういう不幸な状態を一日も早くなくして、そうして西太平洋諸国、あるいは太平洋を中心として、あるいはアジアの諸国も加えて、ひとつ地域的の団結強化に今後努めてまいりたいと考えております。
  34. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 どうもありがとうございました。
  35. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 鹿島君の質疑は終了いたしました。  羽生君から鹿島君に対する政府の答弁に対しまして関連質問がございます。これを許します。羽生君。
  36. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど鹿島さんの御質問の中に、日中間の国交回復をするときの条件として、中国が日米安保条約を認めること、その他三項目をあげまして、この条件が満たされない限り国交を回復すべきではないと言われた際、総理から、私もそのとおりと思うと答えられましたが、私は、これは適当でないと思います。そういうことを御検討なさるのはけっこうだが、そのとおりだと断言されることはいかがかと思いますので、この点だけあらためて御感想を承りたいと思います。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体において同感でございますと言っておるのであります。問題は、そういう考え方、私はいまの賠償の問題にいたしましても、日米安保条約にいたしましても、日本の独自の考え方でいっておる。これを北京政権が認めることは当然のことだと考えております。
  38. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 羽生君よろしゅうございますか。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 はい。     —————————————
  40. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 質疑を続けます。加瀬完君。
  41. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、固定資産税、地方税の補てん並びに財政計画その他二、三の点について質問をいたします。  総理並びに大蔵大臣にまず伺いますが、固定資産税の評価がえは、税の適正、負担の公平を期するためだと衆議院でお答えになっておられると思います。そのとおり了解してよろしゅうございましょうか。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今回の固定資産の評価がえは固定資産評価審議会の答申に基づきまして、土地、家屋及び償却資産の各資産を通ずる評価の均衡を確保するとともに、市町村の評価方法の統一によって従来の不均衡を是正し、適正な評価額に基づいて課税することによりまして、税負担の公平をはかることにあるわけであります。
  43. 加瀬完

    ○加瀬完君 固定資産税の増徴を一・二倍まで押さえた。しかし評価がえはする。評価がえはするけれども、税金はあまり上げない。これがどうして税の適正であり、あるいは負担の公平ということになりますか。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、固定資産税は非常に不均衡であるという事実は、厳然たる事実でございます。でありますから、これをできるだけ不均衡をなくするように是正をしようということは必要であるわけでありまして、答申に基づいてさようなことをするわけであります。しかし、これが住民負担を引き上げるというようなことになりますと、不均衡はなくしなければならないということと、住民負担を軽減しなければならない。できるだけ負担が重くならないようにということは当然考えなければならない問題でありますので、農地等に対しましては増徴にならないように、他の宅地等につきましてやむを得ざるとしても、その限度額二割をこえてはならないというふうに配慮をいたしておるわけであります。
  45. 加瀬完

    ○加瀬完君 同じ問題、自治大臣もお答えいただきます。
  46. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 評価額の適正ということと、また税をそれに伴って適正にするというのが意図でありまするが、そういたしますと、一挙に税の激変を生じまするので、税政策上最高一・二倍までにとどめたわけであります。
  47. 加瀬完

    ○加瀬完君 非常に固定資産税が不均衡である。でありますから評価がえをしたわけであります。評価がえをするならば、評価がえに従って税を課することが適正ということに、理屈からいえば、なるわけであります。評価がえはしましたけれども、税金は上げない。何のためにそうすると評価がえをしたのかということになろうかと思います。いまのお二人の大臣のお答えでは満足できません。もう一度御説明いただきます。
  48. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 評価がえと税金のアンバランスの是正が完全にマッチすれば理想でありまするが、先ほど申しましたように、あまりの激変を避けるために、農地その他は一・二にとどめたわけでありまして、さればといって、この評価がえが意味がないというわけじゃないわけでありまして、市町村間の評価のアンバランスがこれで均衡化されまして、しかも、一・二倍と二割まではたいしたことないといいますけれども、その範囲内におきましては、やはり不均衡が是正されると見ていいのではないかと思うわけであります。しかし、根本的にこれは三年後の評価までにこの固定資産税の根本的なあり方というものにつきましては、税制調査会で御検討願いまして、税率をどう下げるか、あるいは補正係数をどう見るかという根本的な問題は、税制調査会で御検討願うことにいたしておるわけであります。
  49. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大蔵大臣、ありますか。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 固定資産の評価がえに伴う税負担の恒久的な問題としては、いま自治大臣が申し述べたとおり、税制調査会の慎重な検討にまつべき問題だと思います。でありますが、次の評価がえの時期に至るまでの暫定として今度の処置を考えておるのでありまして、不均衡を是正するということは必要なことであり、答申もいただいておるわけでありますので、これを暫定的に行ない、しかし、それによって、あなたがいま言うように、評価がえをしたならば、評価がえどおりの税金を取るというようなことよりも、事実に応じて、かかる評価がえに基づいて急激な税負担が行なわれないようにということで、暫定的措置といたしまして、農地以外に対しては二割をこえてはならない、農地に対しましては、評価がえの額のように急速に農産物の収益が上がるわけではないのでありますから、このような問題に対しては実際に即応するように、いままでの税額以上にこれを徴収しないという措置をとっておるわけであります。
  51. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは税政策上からいえば最も拙劣な方法だと思う。評価が変わったのですから税が当然上がるべきだ。上がってならない税ならば、控除基準なりあるいは補正基準なりというものを設ければ問題がない。一・二倍で押えるということは、場所によってはそれで一応公平が期し得られるかもしれませんけれども、評価がまちまちなんですから、一・二で押えるということは、結局評価に対しては適正でもなければ公平でもない、こういう結果になると思いますが、自治大臣いかがですか。
  52. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御指摘のように、評価がえどおりということになりますと、五倍、六倍という税金を取らなければならないわけでありますが、しかし、それはあまりにも大きい税の激変を来たすわけでありまして、税全体にとりまして、税政策全般にとりまして、この際は根本的な税率引き上げというようなことを御検討願うということにしたわけでありますが、一・二倍の範囲で完全なる均衡化ということは言えないと思いますけれども、しかし、町村問のアンバランスの均衡については二割までの範囲内において是正されることになりますので、やはり私はかなりの意義を認めざるを得ないのではないかと、かように思っております。
  53. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵、自治両大臣に伺いますが、固定資産税の増徴はいまのように一・二倍に抑える。これはいつまで続けるのですか。暫定措置と聞いておりますが、いつまでの暫定ですか。
  54. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 三年後の評価の時期までの暫定措置でございます。
  55. 加瀬完

    ○加瀬完君 某県の歳入では固定資産税を三十八年度の収入に比して八〇%減としておる。これはどういう理由でしよう。
  56. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 八〇%減というのはちょっと理解できないのですが、自治体全体の固定資産税二千数百億の約一割程度は財政計画におきまして減と、こういう全体の見積もりを立てておるわけであります。八割も減ということは理解しにくいのでございますが、どこの県でございますか。
  57. 加瀬完

    ○加瀬完君 千葉県の歳入を見ますと、三十八年度の固定資産税の収入は一億一千二百十五万七千円、それで三十九年度の減が九千四十万六千円、こうなっておる。八〇%ですね。固定資産税の評価が上がってそれで県税における固定資産税の収入が八〇%減るというのはどういうことでしょうか。
  58. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 政府委員から……。
  59. 宮沢弘

    政府委員(宮沢弘君) ただいまの加瀬委員の御指摘は、県に配分をされます大規模の償却資産にかかわる固定資産税の問題であろうと思います。全般の趨勢といたしまして、償却資産自身も評価額自身はふえてまいります。ただ、御指摘の千葉県の例はなお精査をする必要があろうと思うのでございますが、京葉工業地帯の造成に関連をいたしまして千葉市なりその付近の町村はかなり償却資産にかかわる税収入があるわけであります。御承知のように、現在の大規模の償却資産、一定限度以上のものを県が徴収をいたしまして税収入の公平と申しますか、公正な使用をはかる、こういう制度でございます。  御指摘の点は、千葉市におきまして合併が多分に行なわれましたし、それから近隣の町村におきましてやはり数市町村が合併をいたしまして市をつくりましたことであろうと想像をされるのでございます。御承知のように、現在の制度でございますと、市町村の課税限度額を算定をいたします場合に、その市町村の財政需要額を一つの基準にいたしております。千葉市なりあるいは近隣市町村の合併が行なわれますと、その市町村の財政需要額がふえてまいりますから、市町村に残る部分が多くなりまして、したがいまして、県が課税し得る額というものが減ってまいる、こういうことであろうというふうに推定をされるわけでございます。
  60. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは、いま宮沢さんの御説明のように、理屈からいえばそうです。しかし、一応固定資産税の評価が上がって、一・二倍におさめても何でも固定資産が一応ふえてくるという実情において、八〇%の減というものは、計算上条件があまり変化がないところに出てくるはずがない。  そこで、さらに伺いたいのは、一体大償却資産というものは、今度の改正でこのようにうんと減ってくるものなのかどうなのか、自治大臣。
  61. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 大償却資産は新規の分も相当出ておりますから、固定資産税収入の計画ではそう減りませんが、その現にあるだんだん古くなっていくそういう償却資産につきましては、現在よりも減額するような傾向であろうと私は思います。
  62. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは、古くなれば、償却資産ですから、だんだん減ってくるのはわかりますよ。あらためて伺いますが、宅地、農地、山林、原野、一般住宅、工場等の大償却資産等に分類をして、三十九年度の固定資産の増減額及び増減率をお示しいただきたい。
  63. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 数字等は政府委員から答弁いたさせます。
  64. 宮沢弘

    政府委員(宮沢弘君) 三十八年度に比べまして、三十九年度の固定資産税の各資産区分別の増減額の御質問でございます。土地、家屋、償却資産、こういうふうに分けて申し上げます。  土地といたしまして、三十八年度に比べまして四%の増でございます。評価見込み額が三十八年度が五百二億一千万円、三十九年度が五百七十二億五千七百万円ということで、一一四%の増でございます。  それから家屋につきましては、三十八年度が八百四十三億六千八百万円、三十九年度が九百二十五億七千五百万円、一一〇%、こういうことに相なっております。  それから償却資産といたしまして、三十八年度が六百六十億二千八百万円、三十九年度が七百二十七億九千四百万円、一一〇%をこえる。  以上現年度分を総計をいたしますと、一一一%、増はそういうことに相なっております。
  65. 加瀬完

    ○加瀬完君 一・二倍に押えて二、三年は暫定措置で過ごすというわけでございますが、この一・二倍に押えるということは、増税の総ワクを一・二倍に押えるということなのか、それとも、個々の対象について一・二倍以上は取らないということなのか。
  66. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、農地のように据え置くのもありますし、家屋なんかは、新築は別といたしまして、平均九七%くらいになっておりますし、最高が一・二倍になるものもあると、こういう意味でありまして、固定資産全体を押えると、こういう意味ではございません。先ほど御説明いたしましたように、一一%を現在としては普通でふえる程度の増加にとどめたわけであります。
  67. 加瀬完

    ○加瀬完君 農地以外の土地については、今回登録をした土地課税台帳は評価がえそのものではないわけですね。これはいつまで続けるのですか。
  68. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 政府委員から……。
  69. 加瀬完

    ○加瀬完君 大臣答えてください。そんな基本的なことを大臣が答えなくてはおかしいです。
  70. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 次の基準年度までであります。
  71. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、次の基準年度にはそれが変わるということは、評価がえがだんだん生きてくるということになります。そうすると、いま政府は物価の抑制対策を立てておるわけですが、これとの見合いはどうなりますか。これは大蔵大臣に伺います。物価との見合いだから。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと相すみませんが、いま別なことを考えていましたから……。どうも恐縮です。
  73. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 三年後のことは、あるいは税制調査会で根本的に税率を下げるか、あるいはどうするかという問題を御検討願っておるわけでありまして、三年後の見通しはわかりませんが、政治常識として、評価そのもののように七倍も八倍も増税するということは考えられません。したがって、物価というものを十分考慮しながら考えるべきものと思っております。
  74. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、宮澤長官に伺いますが、物価対策の中で地価対策というものをどうお取り扱いになっておられるか、伺います。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これが、先般来国会で御質問のありますように、一番困ったむずかしい問題であります。結局、しかし、国が場合によっては必要な権力も発動いたしまして財政資金その他を使ってどれだけ土地造成をやるか、国ばかりでなく、これは地方団体もさようでございます。それが一つと、それから民間で土地造成をする人々にどのような資金的な援助を与えるか。基本的には、やはり需給の関係と、それからもう一つは公共の用に供します土地について公権力をどれだけ適正に使うか、こういうことにかかると思います。
  76. 加瀬完

    ○加瀬完君 昭和三十年を基準年度として、三十八年の物価の上昇率、そして地代、家賃の上昇率、この関係をお示しいただきます。大きいものだけでけっこうです。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十年を基準といたしまして物価の上昇率でございますね。
  78. 加瀬完

    ○加瀬完君 ええ。大きいものだけでけっこうです。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、ちょっとにわかなお尋ねでございますから、三十年と申しますと、九年前でございますから……ちょっといま個々の物価についてお答え申し上げる資料を持っておりませんが、たとえば市街地の価格につきましては、これは不動産研究所の調べでございますが、三十年を一〇〇といたしますと、昨年の秋あたりで六三〇というような指数がございます。その他のものは、恐縮ですが、調べまして後ほど資料で申し上げます。
  80. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、昨年、一昨年ですね。三十七年の十一月と三十八年の十一月では家賃、地代、それから問題の食糧の合計の上昇率はどうなっておりますか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十年を基準にいたしまして、卸売り物価は一〇三・八でございますから、問題がございません。消費者物価は二二〇、これは三十八年の歴年の平均でございます。——食糧と言われますと、こういうものをとりましょうか。
  82. 加瀬完

    ○加瀬完君 いわゆる問題の生鮮食料とかいろいろな食糧の合計です。問題の生鮮食料だけではなくて、食糧関係の合計は。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十年を基準といたしまして…。
  84. 加瀬完

    ○加瀬完君 ええ。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 後ほど資料であるいは口頭で申し上げます。
  86. 加瀬完

    ○加瀬完君 家賃、地代は。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはただいま資料を持っておりません。統制になっておる部分は問題はないと思いますが、それ以外の部分についてお尋ねだと思いますが、後ほど調べましてお答え申し上げます。
  88. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の調べですと、家賃、地代は一二九・九に三十年を基準とすると上がっているんですね。上昇率が一番大きい。この一二九・九、三十七年の十一月と三十八年の同月を比べても、食糧の合計が一〇・八に対して家賃、地代は一二%、こんなに上がっているものを一体物価対策の中で等閑視していっていいのかどうか。というのは、固定資産の評価がえをするということは、あとで御質問いたしますが、家賃、地代にはね返らざるを得ない。そこで、政府の物価対策の中には、一体地価あるいは地代、家賃というものをどれだけ大きく取り上げているかどうかということを伺いたかったわけでございます。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、前々申し上げますとおり、物価対策の中で一番金のかかる、しかも時間のかかる部分であります。確かに過去数年間なかなか適正な手が打てませんで、片方で需要が非常に堅調であるということ、造成いたしました土地にしても相当コストが高いといったようなこと、それからの問題から、なかなか適正な手が打てずにおったわけであります。先刻申し上げましたように、少なくとも公の目的に供するものについては、政府として、法律の改正等、あるいは現在の土地収用の行政を強化するといったような方面から、まあこれから将来に向かってでありますけれども、これを規制していこうという考えで来ておるわけであります。過去においてなかなかこれに十分な手が打てなかったということは、残念ながら御指摘のとおりだと思います。
  90. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣に伺いますが、農地、特に水田の固定資産評価額が上がりますと、当然米価が上がってくることになろうかと思いますが、この点はどうでしょう。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地に対しては評価は上げないということでありますから、米価にこれが響くというようなことは全然考えておりません。
  92. 加瀬完

    ○加瀬完君 評価は上げないじゃないでしょう。暫定期間を設けて評価額のとおりの課税を上げないということでしょう。二年たてば評価は上がるでしょう。そうすれば、米価に響いてきませんか。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、先ほどから申し上げておりますように、農地に対しましては、まあ答申を待たなければなりませんわけでありますが、暫定としてはこれを増徴しないような状態を続けておるわけであります。しかも、この問題はいろいろ議論がありまして、農地の評価を上げて税率を上げますと、反収はそんなに上がらないのでありますから、そういうものに対しては税はなるべく上げないようにと、こういうことが原則になっておりまして、政府もそのような処置で農地等に対しては増徴をしないという原則をきめておるわけであります。私は、その意味で、まあ特別の不均衡があるということであれば別でありますが、いずれ調査会が答申をする場合でも、そのような状況を十分考えながら次の基準年度までには答申があると思うわけであります。また、政府もそれを十分尊重してまいるということでありますから、米価が上がるような農地に対して固定資産税を上げるというような考え方は持っておりません。
  94. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問が、私の言い方が悪かったようでございますが、税金が上がるか上がらないかということを私はいま問題にしているのではない。評価額が上がれば米価が上がるのではないか、こう質問しているわけであります。自治大臣、評価額は上がりませんか、農地の評価額は。
  95. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 評価額の上がる農地もございますが、それが直ちに税金が増徴されるわけじゃありませんから、米価にはね返ってくるというようなものではないと考えます。
  96. 加瀬完

    ○加瀬完君 農林大臣が来なければ質問が的をはずれるかもしれませんけれども、それでは自治大臣に伺いますが、米の生産費の調査というのは、どういう方式で算式でおやりになっておりますか。固定資産の評価額が関係ございませんか。
  97. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 農林大臣に聞いてください。私ちょっと存じません。
  98. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣知らなければならないはずだ。米の生産費の出し方ですから。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 生産者米価は、御承知のとおり、生産者所得補償方式をとっておるわけでございます。でありますから、農地の評価額が一部上がったといたしましても、実際の生産者所得補償でありますから、税額が上がらないという場合に、生産者米価に響くということはないわけであります。
  100. 加瀬完

    ○加瀬完君 それじゃ、その計算の中に土地資本というものは入りませんか、大蔵大臣。調べてからでもいいですよ。
  101. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) お答えいたしますが、御承知のとおり、米価の算定に用います生産費をはじきます場合の地代は、実際の支払い地代でございますし、また、税金その他の織り込みも実際に支払いました税金を生産費調査によって調べておるのであります。したがいまして、評価額が変わっただけでは、そのための関係では変更ございません。
  102. 加瀬完

    ○加瀬完君 その土地資本利子の計算として、評価額に国際利子の五・五%をかけるということをやっているんじゃないですか。評価額が変われば、当然五・五%は変わらないのだから、上がるじゃないですか。生産費は上がりますよ。したがって、米価が上がらざるを得ないという仕組みになっておるわけです。——農林大臣来てからでもいいですよ。わからなければ答えなくていい。
  103. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ちょっと、農林大臣は四十分までというお約束で、それで参りますから。
  104. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 資本利子を米価の生産費に算入はいたしておりますが、これは米価の生産費調査に基づきます約束によってきめておりますので、それを今回の評価がえによって直ちに動かすかどうかといった点は、一応別個の問題というふうに心得ます。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 たてまえが、評価額に国債利子の五・五%を掛けるというのが算式の中に入っているんですから、それは変わらざるを得ないんです。私がこういうことを申し上げますのは、あまりにも固定資産税のやがての——いまは押えているんですが、その値上がりが物価にいろいろ響いてくるということを政府が考慮の中に入れておらない、こういうことを問題にしておる。宮澤長官、いかがですか。こういう固定資産の評価がえが地価をつり上げるというような原因にもなっておれば、あるいはまた米価に響くというような原因にもなりかねない状態にあるということを御認識ですか、御対策を伺います。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 米価のことにつきましては、後ほど事実をはっきりさせましてから申し上げることがあれば申し上げなければならないと思いますが、それは一般論といたしまして、私は、土地の評価額が時とともに変化するということは、これは当然だと考えます。そうしてそれが消費生活なりいろいろなものの生産費なりに影響があるということも、これも疑いのないところだと思います。で、ただいまいろいろなことで物価対策をいろいろに講じておりますが、それ自身は、経済法則を無視して物価対策を講じるということは、とうてい永続的な対策にはなり得ないわけでございますから、したがって土地の価格が上がると。したがって、評価額が上がるということが直接、間接に物価に影響があるということは、これは私は経済現象として、それとして受け取らなければならない問題である。ただ、それが急激であるとか、ある時点において不適当であるとかいいます場合に、暫定的にこれに対応する対策を立てる、こういうことに尽きるのではないかと思います。
  107. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的な評価の方法等について、自治大臣、大蔵大臣に伺いますが、評価方法は、農地の場合を例にとりますと、標準田、比準田、そうして比準割合、こういう算式で計算するわけであります。で、田にすれば日照条件とか、耕作条件とか、あるいは災害条件とか、その他いろいろの諸条件をつけるわけです。で、水田所有者が、日照条件とか耕作条件とかが違うといって、わんさと異議の申し立てをしたときに、市町村がこれを処理し切れますか、こういう繁雑な方法で。
  108. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) いろいろ技術的にむずかしい評価方法でございますが、自治省といたしましては、市町村を指導いたしまして、今回の固定資産税評価につきましては、おおむねそういった面において支障を来たしていないように承っているわけでありまして、十分この固定資産税評価は順調に行なったものと考えます。
  109. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、具体的に私は例を出しているんですよ。この水田の乾湿状態、これは市町村の判定に違っておる、耕作条件でも違っておる、そういうもろもろの条件を分析して異議の申し立てをしたときに、処理し切れますかと、こういうことを言っておる。どうして処理しますか。賃貸価格で一律にやるような方法にはいきませんかね。
  110. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) そういう具体的な異議がありました場合には、その異議によりまして審査委員会でそれを審査するということになっておりますから、具体的なそういう問題が出ましたときにそういう処理の方法をやるわけであります。
  111. 加瀬完

    ○加瀬完君 審査委員会で処理するといったって、審査委員会が処理できますか、あんな繁雑な方式を。いかに繁雑かということは、大臣がすぐにお答えできないほど繁雑なんです。あんなもの何回読んだって、異議の申し立て処理できませんよ。どうですか。
  112. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 政府委員から……。
  113. 宮沢弘

    政府委員(宮沢弘君) ただいまの固定資産の評価をいたします場合は、御指摘の土地の場合でございますが、御指摘のように、確かにいまおっしゃいました、比準表ということをおっしゃっておられるのだろうと思うのでありますが、日照の状況でありますとかその他の状況を基準田なり基準畑に比準をいたしまして、一般田畑を評価いたします、その場合の比準表のことであろうと思うのであります。きわめて精緻でございますから、したがいまして、実際の市町村の職員がそれを扱う場合に、かなり習熟することが必要であるわけでございまして、確かにこの辺は今後いろいろ訓練、教育を続けていかなければならない問題であろうと思うのでございますが、ただ、固定資産税のほうも、制度が発足をいたしましてすでに十数年になっておりまして、次第になれてきておりますので、この辺の処理も適切な処理を私どもは期待をいたしたいと思うのであります。ただ、おっしゃるように、こういう評価制度をそれほど精緻にするのがいいのか、あるいはもっと簡単にしたほうが実情に適するのかどうかということは、御指摘のように、私どもといたしましても、なお検討をいたしたいと思っております。
  114. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは各町村が困り切っておるわけです。しかし、問題を進めて、それでは自治大臣にさらに伺いますが、評価がえの結果、時価主義をとるわけでございますので、評価額は相当にはね上がっておるはずです。そこで、特に土地について上昇の激しい東京、大阪近郊の、いずれでもいいです、平均価格の上昇率、標準宅地の上昇率、農地、原野、山林の上昇率、これをお示しいただきたい。
  115. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 評価額だけをとりますと、東京、大阪付近の宅地等は十倍近く上昇しておるところもございます。農地につきましても、都市近郊に来れば来るほど評価が高くなっておるのであります。国全体としてなべていけば、農地はそんなに評価は上がっておりませんが、御指摘のように、大都市近郊は上がっておるわけであります。
  116. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 加瀬君、農林大臣、出席しました。
  117. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、具体的に東京、大阪の近郊の土地を押えて、そこでのいま申し上げました平均価格その他の上昇率を示していただきたいと申し上げたわけです。
  118. 宮沢弘

    政府委員(宮沢弘君) ただいまの具体的な数字は、ただいまちょっと時間がかかりますので、後刻お示しをいたします。
  119. 加瀬完

    ○加瀬完君 農林大臣いらっしゃったようでございますから、伺います。  この農業用地の固定資産税は二年の暫定期間だということでありますが、農林省はそれで了承をしておるのでありますか。
  120. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農林省は了承いたしております。
  121. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、この山林の評価は、山林の所在地制というものを基本にしておりますね。これを合理的なものだと農林大臣はお考えになりますか。
  122. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ちょっと私、了解できないのですが、あとでまた。
  123. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣。
  124. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 合理的と考えております。
  125. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 加瀬君、いま宮澤長官が数字がわかった、資料がわかったということですから、ちょっとその間に御報告させます。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 問でまことに恐縮でございますけれども、先ほどの数字でございます。食糧の総合は、三十年を一〇〇といたしまして、三十八年に一三二でございます。地代家賃は、三十年を一〇〇といたしまして、これはあまり完全な調査ではございませんで、全国を幾つかのブロックに分けまして、そのブロックの中で、その年の平均の地代家賃をとるわけでございます。したがって、新築の家屋がだんだん建ってきて上がっていくということになっておりますが、二一九でございます。総理府の統計局の調べでございます。
  127. 加瀬完

    ○加瀬完君 所在地制といいますか、結局、赤城さんの村なら村にある山林は、その村の山林として同等に考えるわけです。しかし、林業関係から見れば、林業に純粋に使っているものと、思惑で買った土地というものは、これは考え方を別にしなければならぬのじゃないか。しかし、いまは一緒くたに固定資産を評価する、こういう考え方に御賛成かということです。
  128. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 思惑で買ったのと同じにするというのは、私はよくないと思いますけれども、これは課税上のいろいろな問題があろうと思いますので、検討してみませんと、私にはちょっと返答できません。
  129. 加瀬完

    ○加瀬完君 さらに農林大臣に伺いますが、工場等の再評価した資産から生まれる果実と、農地のようなものから生まれる果実というのは、非常に違いがあるわけですね。しかし、固定資産としては同様のような率の課税をするということには、いかがですか。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ちょっとお尋ねの点、よくわかりませんでしたが、工場用地等は宅地としての課税だと思いますが、また評価も工場用地であれば高いと思いますので、農地とはおのずから違った評価になっておると思いますけれども、それでその評価の均衡がとれていれば別に差しつかえないと思います。
  131. 加瀬完

    ○加瀬完君 均衡がとれておらないのじゃないかと思いますから、伺うんです。大工場の資産というものに対しましては、これは資産も大きいけれども、利潤の生み方も激しいのです。しかし、農地というものはそんなに生産性が高いものではありませんね。そこで、生産性の高くない農地などを工場等の償却資産と同様な考え方で課税をすることは不合理ではないか。農林大臣としてはどうお考えになりますか。
  132. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうことでありますので、農地には調整率といいますか、評価に対してはちょうど五五%ぐらいを掛けて評価したものを引く、こういう均衡をとっております。
  133. 加瀬完

    ○加瀬完君 農地は、いまそういう措置をとっておりますね。それならば、山林はどうですか、原野はどうですか。原野はその場所の時価によって評価をするわけでしょう。そうすると、その農家の宅地よりも原野のほうが高い固定資産税を払わなければならないというようなことになる。しかも、その高い固定資産税を払うものが、林業用や農業用に使っておりますれば、これは思惑で買った土地と同様に考えられてはならないものですね。しかし、その不合理というものは今度の固定資産税では是正されておらないのです。農業経営の立場で、固定資産税というものに農林省はもっとにらみをきかすべきじゃないでしょうか。
  134. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 山林原野は、もとの賃貸価格からいいましても、いまの固定資産税の評価からいいましても、むしろ低い面もあろうと用います。農地に比較してはわりあいに税制上恵まれている面もあろうと思います。しかし、いまのような工場用地になるとか、そういう面で、実際には何といいますか、取得価格あるいは声買価格が高くなっている。これはやはり評価の点におきましてそういう面々勘案していくように指導されるのが、適当だと考えます。
  135. 加瀬完

    ○加瀬完君 農林とか牧畜のような目的で使用をする土地と、そうでなくて単なる土地需要のために思惑で買ったりなんかしたような土地と、目的が違うんですから、目的別に課税をするという方法が固定資産税においても考えられていいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
  136. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうことを考えることも適当であろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、課税上どういうふうにそれをやっていくかという技術的な問題があろうかと思います。私どもとしては望ましいことでございますけれども、そういうふうなことにつきましては、なお自治省とも協議していきたいと思います。
  137. 加瀬完

    ○加瀬完君 どうも、農地がどういう立場の固定資産税のかけられ方をさせられておりますか、御認識が薄いようでございますから、具体的な例を出します。純農村に集団の、団地といいますか、住宅の団地がありますね。坪五百円のものが二万円にはね上がりました。したがって、宅地は近傍類地の適正価格ということでございますから、これは五百円でなくて、二万円に近い線で農家の宅地も評価額としては決定される方向に向かうわけです。しかし、農家自身は五百円のときと二万円になったときと、一つも利用価値が違わない、こういう矛盾がある。ですから、農業経営をする宅地とか、あるいは倉庫、あるいは水田、畑、山林というものには、固定資産税の免除規定あるいは補正基準というものを農林省のほうとして、これはつくらなければ不合理じゃないか、この点どうですか。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私のところではそういうことをしておりません。
  139. 加瀬完

    ○加瀬完君 これからされるんですよ。
  140. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私のところでは、やはり農業用地は農業用地で、近傍に工場等ができて宅地用になって非常に高い評価があるからといって、近傍と同じようにという、農地は農地として……
  141. 加瀬完

    ○加瀬完君 農地じゃないんですよ。宅地のことを言っておるんです。まわりに、五百円のものが二万円にはね上がるようになってくると、五百円も五百円でおさまらなくなる。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 東京近郊等においては、あるいはそういうことがあり得るかもしれませんが、一般的なそういう農業が主として行なわれておるところでは、宅地におきましても、近傍が高くなったから、農業用の宅地をそれと比例をとって高く評価しなくちゃならぬ、こういうことはやっておりません。私の知っておる範囲では、そういうことはありません。
  143. 加瀬完

    ○加瀬完君 よく御勉強なさっておらないようですから、もう少しいろいろ御調査の上、私は重ねて伺いたいと思います。農林省がやっておるということではないんです。固定資産税の評価がえということが具体的にあらわれてくると、そういう結果も場所によっては起こる。これに対して農林省として保護対策考えていただきたいということでございます。  総理並びに大蔵大臣に伺いますが、固定資産税が上がっても家賃地代には響かない、こうお答えになっておられますが、さようでしょうか。
  144. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地等に対しては増収を行なわないということでありますし、それから宅地等につきましても、三十八年度の二〇%をこえてはならない、こういうことであります。固定資産税そのものがそう大きな金額であるわけではありませんから、その上に建っておる住宅、その家賃に響くような率ではないというふうに考えておるわけであります。  しかし、まあ気分的には、上げたくて困っておる人もありますから、そういう人たちは、固定資産税が幾らかでも上がったんだからということで、われわれも家賃を上げる、強弁して上げたいという人もあると思いますけれども、そういう人はごく一部であって、そういう人がないことを期待いたしておるわけであります。しかも、実際の金額からいったら、値上げになるほどの税負担ではないのでありますから、そういうような不心得の人がないように私も期待しておるわけであります。
  145. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは、暫定期間の間はという説明をつけなければ、私はお話の筋は通らないと思います。しかしながら、固定資産税の評価がえの影響は三十九年度だけではないわけですね。暫定期間がはずれれば、将来に影響するわけですね。そうなってまいりましても、一体、家賃地代に響かないという保証が成り立ちますか。
  146. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう、あなたがお考えになることを政府考えておりますので、次の基準年度までは暫定的に、いやしくも家賃等にはね返ってはならないということを措置いたしておるわけであります。あなたが先ほどから、農地に対しても、林野に対しても、いろいろなことを言われておりますように、実際、政府もそういう問題に対して細心の配慮をいたしておるわけであります。でありますから、特に政府が一方的な考え方で、これでいいんだというようなことではなく、非常に慎重にものを考えなければならぬ、衆知を集めて十分実情に合うことを考えないとたいへんなことになるということで、慎重の上にも慎重にやっておるわけであります。  東京の近郷のように、非常に安い、千円のものが四、五年間のうちに二万円になったという例もあります。しかし、そこにある農家というものは、ずっと先祖伝来からそこに住んでおって、収益はふえておらぬのであります。これを他に転売した場合、初めて収益を得るということでありますので、こういう非常にむずかしい問題に対しては、より慎重にやらなければいかぬということで、暫定的にやっておるわけでありますので、これから二年切れても、切れたからすぐ自動的にやるというのではなく、その間にも、より現実に対処できるようなことを答申を願いたいというふうに考えておるわけであります。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣は、衆議院の予算委員会で、百万円の資産でも、月額にすれば二百五十円足らずだ、だから影響がない、こうお話しになった。三十九年度においてはそのとおりであります。しかし、いま申し上げましたとおり、暫定期間というものがはずれて、全面的に評価額が発動することになれば違ってまいります。そこで百万、二百万、三百万の現在の固定資産はどれだけの増税額になりますか。あるいは月割りの上昇率は幾らになりますか。
  148. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 宅地が、よし一・二倍まで税金が上がったといたしましても、千分の二割上がったことによる固定資産税評価がえ増加は千分の二・八にすぎないわけであります。したがって、百万円の場合にはそれの千分の二・八倍程度のものが税金として上がる。それが直ちに家賃全体に大きく響くとは私は考えておらないわけであります。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと質問を私一言抜かしました。現在の百万、二百万、三百万の資産が、A市においては五倍に評価が上がったとした場合、五倍にはね上がった場合、一体月割りの上昇額は幾らになりますか。
  150. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 暫定措置で、三年間は、評価が七倍、八倍に上がりましても前年度の一・二倍に押えるわけであります。したがって、そういう御心配はない。ただ、加瀬さんの御意見で私は少し異議があるのは、三年後は必ず評価に従って五倍、六倍に上がるのだという前提で論じられておられますが、そうならないように、もっと根本的に地方の固定資産税の税制を考えるというのでありますので、三年後は税率がうんと下がるなり、いろいろ生計指数を考えて、減税になる場合もあるわけであります、地方財政が豊かになれば。ですから、一がいに評価が上がったから非常に上がるのだという前提は、三年後の見通しとしては正しいのではないと私は思っております。
  151. 加瀬完

    ○加瀬完君 暫定期間がはずれた場合に、そのまま発動すれば、一体百万、二百万、三百万というものが幾らに上がるのだという計算が成り立たなければ、幾ら税率を下げて、どれだけ控除規定をつくらなければ、いまととんとんになるかならないかということは見当がつかない。だから、自治省の作業としては、当然暫定期間がはずれた場合、そのままいまの税率が発動したら、どれだけの一体地代、家賃に及ぼすもとの固定資産税が上がるかという計算がなければおかしい。それを聞いておるのです。
  152. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) ただいま御審議願っておりまする固定資産税の暫定措置の法律がない場合にはどの程度上がるか。評価が上がっただけ上がるわけでありますが、そういうことを三年後やるのだという意味ではもちろんないわけであります。
  153. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問に答えてください。数字を聞いておるのだから、数字を答えてください。  もう一度質問を重ねるならば、じゃ千分の十四を幾らに下げれば一・二倍くらいにとんとんにいきますか、その数字も出してください。
  154. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) これは固定資産税全体の税制の根本的検討を税制調査会で御検討願うことになっておりますから、その結論を待たなければならないわけであります。
  155. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなた方は結論が出ないうちに一・二倍に押えるということだけれども、一応固定資産税の評価がえを一部適用している。そんなら政府責任において、答申があろうがなかろうが、将来固定資産税を上げないなら上げないという対策を持っていなければならないはずです。持っている前には、つくり出す前には、このままの評価額が発動した場合にはどういう結果になるという数字がなければおかしいでしょう。
  156. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 百万円に対して一万四千円が現行税率でございますから、五倍になって五百万円という評価になれば一万四千円の五倍になるということです。しかし、そういうことは全然考えておらないのです。そういうことになっては困るので、三十八年度の二割で押える。でありますから、また二カ年たっても、さっき言ったように、農地等に対しては収益を生まない。生まないものに対して固定資産税を上げる、評価がえすること自体がおかしいという議論もあるわけでありますし、実際的にも、都会の近郊であって、実際売ったときには高く売れても、売らない場合には何も収益があがらないのでありますから、そういうものに対して十分考えなければならないという税制調査会からの暫定措置としての答申がありましたけれども、実際、将来に対する根本的な問題はこれから答申があるわけであります。でありますから、もう五倍になったから五倍にしようなどという考え政府には毛頭ないのでありまして、以上申し上げます。
  157. 加瀬完

    ○加瀬完君 わかりました。じゃどうして五倍に上がったものを五倍にしないで、一・二倍なら一・二倍に落とすか、それは税率を変えることによってするのですか。
  158. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは恒久的な措置として、税制調査会が、評価は上げるけれども、実際の税負担は上げるべきでないということになれば、税率を変更するということも当然考えられるわけです。
  159. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、私は税率を計算いたしましたから伺います。  税率を千分の十にした場合、千分の八にした場合、千分の五まで下げた場合、それでも一体固定資産税は上がりませんか、どういう結果になるか。百万、二百万、三百万にして、評価が五倍に上がった場合。
  160. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたの言うことは非常によく理解できるのであります。政府も同じ立場に立っておりますから、三十八年度の二〇%をこしてはならない。しかも、全国平均しますと一一%余であるというふうに、非常に低く押えているのであります。将来、ここ二年、二年後といえども、やはり同じような考え方と配慮、思想に基づいて、税負担が大きくならないようにということを考えるわけでありますから、あなたが言われるように、税率をうんと下げても、いまよりも多くなるということは、これは計算上の問題でありまして、多くならないように考えようというのでありますから、ひとつ御理解ください。
  161. 加瀬完

    ○加瀬完君 だから、税率をいじっても、固定資産税の宅地等における農地以外の固定資産税は下がらぬ、税率以外のことで。とにかく上げないように考慮する、こう了解してよろしいか。税率もありましょうが、税率以外でも、とにかく上げない線というものを確実に守る、こう了解していいですか。
  162. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 税制調査会の答申も待ち、しかも、慎重に対処したい、こう考えます。
  163. 加瀬完

    ○加瀬完君 税制調査会の答申を待つことはけっこうです。しかし、政府自体としても、地価対策というような意味からも考えなければならないときに、固定資産税の影響というものを少し計算をしなさ過ぎるような感じが私には持たれる。もう少し緻密に計算して、とにかく上げない、そう激変するような上げ方はしないということだけはお約束いただきたいのですが、いかがですか。
  164. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 激変するようであってはならない。納税者の立場を十分考えながら、急激に税負担がふえるような措置は政府考えておりません。
  165. 加瀬完

    ○加瀬完君 あわせて大蔵大臣、相続税、贈与税などに対しましては、この評価がえの影響はございませんか。
  166. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在のところ、ないという考えであります。御承知のとおり、いま地方税の評価基準と、それから国税におけるものとは違うのでありますから、評価がえをやるならば、国税も地方税も一本にしてわかりやすくしたほうがいいじゃないか、より合理的じゃないかという議論もございますが、なかなか問題は複雑でありまして、そう簡単に一本になるとも考えられませんので、国税としては現在の基準をとっておりますので、地方税が上がっても、相続税の基準が上がるということは考えておりません。
  167. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、いま農地は上げない、宅地もあまり上げないといいましたので、その具体的な方策としてお考えになっている点をお示しいただきたい。
  168. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、地方税法の改正で、農地は三十八年度並みに押える、例外は一・二倍までに最高を押えると、こう法律で措置することになっておるわけであります。
  169. 加瀬完

    ○加瀬完君 私がいままで議論を進めましたのは、三十九年度より一、二年間一・二倍で押えることは了承いたしておるわけです。しかし、評価がえをして、それがもろに発動する三年後なり四年後なりというものにどういう対策を持たれるか、このまま発動をすれば、それは一・二で押えるわけにはいかない。で、農地はどう扱うのか、宅地はどう扱うのか、それを聞いているのです。
  170. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先ほど大蔵大臣がお答え申し上げましたように、子の固定資産税の税制度全般につきまして、税制調査会で慎重に御検討願っておるわけであります。その結論が出すして、大筋としては、大蔵大臣の言われましたように、納税者に負担の激怒を与えないように何らかの答申が出るものと期待いたしておるわけでありまして、いまからどういうようにするのだということは申し上げられないような次第でございます。
  171. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは意見になりますけれども、無責任きわまるじゃありませんか。一・二倍でも何でも、評価がえをして、その発動が三十九年からあるわけですよ。で、農地は二年間暫定期間ということが政府ではっきり言明されている。三年目に上がる、上がらせないという対策は、一応こういう大筋で考えるというふうな言明がなければ、これは不安きわまりない。自治大臣に幾ら言ってもわからないので、それじゃあ、ひとつ土地対策ということで、建設大臣に伺います。  地価がウナギ登りに上昇して、これを押える方法は現状においてはあまりないわけですね。そこで、固定資産の評価が上がれば、これは当然また地価にはね返って、悪循環で、また地価が上がるということになる。こういう見方が常識だと思いますが、建設大臣はどうお考えになりますか。固定資産税の上がることをこのまま見過ごしておって地価の抑制対策ということは成り立つとお考えですか。
  172. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  御指摘のような考え方もあるかもしれませんが、現に地価が上がっておりますのは、先ほどからお話にありますとおりに、需給の関係、仮需要というようなことが主たる原因でございまして、いま地価の変更をすることによって、すぐそれが地価に刺激を与えるというふうには、私は考えておりません。
  173. 加瀬完

    ○加瀬完君 固定資産の評価が上がれば、あなた方の公共用地なんかの買収の基準である適正価格というのも当然上がってくる。そうなってまいりますと、公共用地の取得などもいまよりも困難になってくる、こうほお考えになりませんか。
  174. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 公共事業を実施いたします際に取得いたします土地は、いずれも時価で取得いたしております。したがって、いま地価が決定して、それによって時価よりも高く決定になるということは絶対ないことだと私は思いますので、そのために取得いたしますものが高くなるというふうには考えられません。
  175. 加瀬完

    ○加瀬完君 固定資産の評価が上がって、やがては固定資産税も上がってくるということになれば時価は上がるわけですよ。必然的に時価が上がるわけです。そうすると、適正時価といっても、適正時価は、昭和三十九年の三月と昭和四十二年の三月というものを比べれば、うんと違ってくる。それを刺激したものは固定資産の評価がえだということになる。そういう影響を及ぼすということはお考えにならなくてよろしいかということを伺っている。
  176. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまも申し上げましたとおりに、私ども買う場合は、時価そのものですよ。
  177. 加瀬完

    ○加瀬完君 時価が上がる可能性がある。
  178. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) それは私がお答えしましたように、それによって刺激を受けて時価が上がるとは私は考えられませんと言うのです。
  179. 加瀬完

    ○加瀬完君 評価が上がるのですよね。いままで坪一万円といっていた評価が、これが一万五千円なり二万円なりというふうに評価額が上がるのですから、時価はいま一万円であっても、評価額が上がって一万五千円のときには、時価は一万五千円という見方を、これは公平な立場でもしなければならない。それを刺激をしているものが固定資産税の評価がえだ。だから、これを慎重に考えないと、公共用地の取得にも非常に困難な問題を生ずると私は思いますので、建設大臣のこういう地価の暴騰を押える対策というものは今日何か考えられてしかるべきではないか、御腹案でもありましたらお聞かせいただきたいと伺っているわけです。
  180. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほど宮澤さんからもお答えいたしましたとおりに、鋭意努力はいたしておりますけれども、需要供給の関係と申しますか、仮需要等も加わりまして、非常な高騰をいたしておりますことは遺憾なことだと考えております。これが抑制のために、実は私は、いま道路交通等の事情、もしくは新市街地等、広範にわたって供給を増大いたすことに鋭意努力をいたしております。数年ならずして、一両年のうちに、たとえば東京にいたしましても大阪にいたしましても、これら大都市の周辺が、道路の改修によりまして、相当に広範囲に利用される土地は多くなると思います。いまちょうどその過程で、たとえば団地を造成するとか——地価が上がる刺激をするほうにばかり問題がいっておりますために、非常に遺憾な状態が出ておりますけれども、これらがいずれも造成ができ、もしくは、また、新しい道路が開通し、そして、この方面に宅地もしくは団地の適性地が非常に広範囲にふえてくるというふうに私は考えますので、供給の面がいまは一番悪いときであって、これが今後そういうふうな点が非常に増してまいりますから、そういたしますと、ある程度適正な地価というものができるのではないか。いまは私は、むしろ需要供給の関係以上に、仮需要、思惑、もしくは、しいて申せば、土地のブローカー等がいたずらに刺激してはね上がっておるということではなかろうかと思います。
  181. 加瀬完

    ○加瀬完君 この固定資産税の問題で、総理に今後の取り扱いについての御所見を伺いたいのでございますが、学者の中には、この土地利用区分というものをすべきではないか、農業に使うなら農業、あるいは一般団地として提供するならば宅地提供の土地というふうに、利用区分をして、目的を見て課税すべきではないか。たとえば農地は生産も上がらないし、目的目的だから、これはうんと控除規定をつくる、あるいは免除規定をつくる、思惑の売買の土地に対しては、これは初めからもうけ仕事でやっているのだから、それはもうかったものの何割というふうに課税をするという方法をとれば、地価の抑制、あるいは土地の対策というものに効果があるのではないかという説がございますが、とにかく目的をよく見て、大蔵大臣のおっしゃるように、課税が不公平に、不適正にならないような何らかの固定資産税の免除規定、あるいは補正基準というものをお考えいただけるものなのかどうか、この点を伺いたい。
  182. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 加瀬さんの御質問をずっと前から聞いておりますと、非常に御心配の点が多いようであります。明治八年に設けましたいわゆる地租というものが、昭和二年の若槻内閣のとき賃貸価格に改められた。私は若いときでございましたが、全国一億二千万筆でございます。それにつきまして調査をいたしましたところ、お話のように、不公平だとか何とかいうことがございますが、あまり異議の申し立てばございません。それだけいわゆる土地の賃貸価格にいたしましても、相当低目に見ております。そうしてまた、私は、賃貸価格を昭和十何年に全国千数百万をやりました。これも、あまり異議はございません。しかく、いわゆる課税標準というものは低目にとります。そうして均衡もよくとれております。そうして税率は非常に低くしておる、千分の十四とか、社屋は千分の十七・五ときめておりましたが、いま十四、五ぐらいでありますが、そういう状況でございまして、あまり心配はございません。それからまた、土地の分につきましても、私は全国の各都市の最高地をみんな見て回りましたが、非常に昔から均衡のとれたやり方を税務署でやっておりまして、それがずっと続いております。それから団地ができたから、その近くの農地を隣地基準ということではやっておりません。これは、やっぱり農地は農地としての隣地基準で昔はやっておりますが、いまも、そうやっておると思います。したがって、今度の調査で宅地等は相当上がりましょう、上がりましょうが、二年間は一・二倍で、農地は上げない、負担をふやさない、こういうことであります。  そこで大体、物税でございますから、人税ではございませんから、物税でございまするから、一応課税標準はきめますけれども、税率はあくまで低いので、しからばそこでも問題もありましたが、宅地は非常に上がっていっておる、農地は低い。そうして地目別の税率の変更なしにやったならば、これは宅地のほうで上がったならば、農地のほうで下げていいじゃないか、こういう理屈もありましょう。多分明治から大正にかけては、地目別の税率が違っておったかに私記憶いたしております。一つの方法でございましょうが、新しい租税理論としては、地目別をやらないのが一般の観念だと思います。特に収益率その他で変える場合もあるかもわかりませんが、 いままでの、最近の思想は、地目別のあれはしないのが普通のやり方じゃないかと思います。しかし、これは地方の財政その他から考えまして、一応課税標準をきめた場合に、将来のあれによって地目別の税率の変更ということは考えられないかといったら、実は考えられないこともございません。しかし原則は、私は一本でいくのが至当じゃないかと考えております。  そうして非常に御心配のようでございますが、こういうものは、先ほど申し上げました物税でございますから、課税標準が五倍になった、十倍になったからといって、すぐ、そういうふうなものを倍とか三倍にするということは課税上、税制上の常識からはずれております。だから、私は御心配は要らないと思っておるのであります。
  183. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。一点ちょっと基本的な問題について、お尋ねしたいわけです。ことに私、農地の関係についてお尋ねするわけですが、農地につきましても、新しい評価を売買方式でやろうというのが調査会から出まして、そして政府も、その方針でずっとやってきた。それに対して農業団体関係からは、それは困る、基本的にその考え方は、やはり従来の収益を基礎にした考え方をとってもらいたい。ことに今後、農業の発展ということを考えるならば、特に、その必要があるんじゃないか、こういう主張がなされてきたのですね。これは私当然ですね、この農地の収益はそれほど上がらないのに、実際は、いろんな要素で売買時価のほうが先行していっているわけですね。そういう事情等が背景になって、そういう農業団体からの主張というものが出ておるわけなんです。  そこで私は、これは実際は政府も腹の中では、なるほどというふうに反省をされたと私は思うんです、この経過において。そこで、新しい評価の方式はとるけれども、二年間は、具体的な税金は上げない、こういう措置をされようとしておるわけですね。ところが、そこまで考えていただくのであれば、やはり少なくとも、この農地の問題については農業政策の基本的な考え方とも、これはからまっておる考えなんですから、再検討するのがほんとうじゃないか。しかも二年間余裕があるわけですね。二年間、それじゃそれほどおっしゃるなら再検討しましようということをおやりになっても、何も自治体の収入が、それによって上下するわけじゃないし、差しつかえがないわけなんですね。だからざっくばらんに、どうしてそこまで再検討する態度をとってもらえないのか。元来、新しい制度をとりながら、二年間たな上げだなんという、そんなこと自身がおかしいわけです、実際は。それなら二年先になって、議論のある問題だから、ひとつその間、よく国会等でも討議をして、二年先に結論を出そうじゃないか。私は、それこそほんとうに民主的なやり方だと思うのです。だから、もうちょっとというところなんです。なぜ踏み切って、じゃ農地問題については、どっちからいったって、この二年間一緒なんなら、基本的な問題については、もう少しひとつお互いに検討しようという態度がとれないのか、この点が非常に残念に思っておるわけなんです。ぜひそういう、ひとつ態度をとってもらいたいと思っておるわけですが、それがどうしてできないのか、できない理由が納得いかぬわけです。何かメンツだけに、ここまでくるととらわれておる。あるいは各府県なり市町村に、新しい方式についての準備作業というものをやらしたわけです。そういう立場等から考えて、方式だけはひとつ了解してくれ、こういったような、私は、はなはだとらわれた感じを持っておるわけなんです。自治大臣と総理のひとつ考え方を、もう一度お聞きしたいわけなんです。ざっくばらんに、そういう態度をとれるはずなんです。
  184. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 売買価格だけで評価しておるのじゃなくて、限界収益率の五五%の耐用補正をやっておるわけでございまして、この収益換算でやるという方法につきましては、いろいろその道の専門家、審議会に御審議を願ったわけでありますけれども、投下資本の回転率の問題とか、いろいろな困難な問題がございましたので、非常に今回の評価のほうが適正であるという結論が出ました。これによって評価をいたしたわけでございまして、これをさらに、変えるという意思は持っておりません。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この不動産に対しまする課税につきましては、先ほど申し上げましたように、長い間、四十年近く地価主義でやっておった。それを先ほど申し上げましたように、賃貸価格主義に変えた、昭和二年に。そうして今度の調査は時価主義に収益率を加味していこう、こういうやり方であります。いま農地を問題にしておりますが、各地日別の基準をどうやってやるか、農地は収益主義、宅地は時価主義、山林はどうするか、原野はどうするか、家はどうするかということになりますと、なかなかむずかしい問題であります。そこで十分議論をいたしまして、いまの地価主義もとらないし、賃貸価格主義もとらない。大体両方を加味した主として時価主義をとったほうが適切じゃないかという結論が出まして、一たん調査したわけでございます。したがって、その調査に基づいてやっていくのだが、農地につきましては、いかにもこれは収益その他でふえるというものでもございませんから、経過的に一応負担税額は変えないということで、私は、これで進んでいくのが適当であると考えます。
  186. 加瀬完

    ○加瀬完君 固定資産税の問題は、私も亀田委員と同様に、もっと政府に研究対策のお願いを申し上げたいのであります。  次に、住民税の補てん関係について伺いますが、政府並びに与党は、住民税のただし書きを廃止して、不足財源は、政府責任で補てんすると選挙公約をなさったようでございますが、これは私の思い違いでしょうか。
  187. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度のやり方は、自民党の選挙公約の線に沿って処置をしたわけでございます。自民党の選挙公約を念のために申し上げますと、「住民税を本文方式に統一して、地域による負担の不均衡を是正する等、負担の軽減を行なうこと。」とうたっておりまして、補てんにつきましては触れていないことでございます。
  188. 加瀬完

    ○加瀬完君 本文に統一して負担の均衡をはかるということだけであって、その補てん関係には触れていない。ですから補てんしなくてもいい、こういうことですか。
  189. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本来ならば、地方税でございますから、補てんを必ずしもしなければならないという議論は生じないわけでございます。がしかし、標準税率以上に徴収しなければならないほどの貧弱市町村でありますから、しかも、非常に大きな政策の一つとして、この住民税の減税を行なうわけでありますので、激減緩和と申しますか、ある時期、その当該市町村だけの負担においてやることは、事実上考えて無理であろう、こういう考えがあって三分の二元利補給を行なうということにしたわけであります。
  190. 加瀬完

    ○加瀬完君 全額補てんをなさらないのは、どういうわけですか。
  191. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本文方式ではなく、ただし書き方式をやっておって、同じような市町村の財政事情にあるような市町村でも、住民負担というものをなるべく軽くしなければいかぬという立場から、自分の力で自分で犠牲を払って本文方式になっておるところがたくさんありますが、しかしまた、ただし書き方式やむを得ずという事情もありまして、そういうことをやっておる市町村もあるわけでありますが、これはできれば統一されるのがほんとうなのでありますから、まあ地方税がある時期、あるやむを得ざる事由に基づいてただし書き方式で徴税をしておっても、これをやはりまけるときには、私はすべてのものが国が補てんしなければならないという理論はどうしても生まれてこない。私は率直に言うと、地方分権の制度からいっても、やはり地方税も、もう戦後十九年、二十年たっておるのでありますから、地方税の減税は、地方自治体がやはり主になってやるという考え方が、前提になるべきものだというふうに考えます。大蔵省で国税から何らかの処置をしなければ、地方税の減収になるような減税は行なえないのだという考え方から一歩も二歩も進めて、この問題に対しては、理論としては地方自治体がみずからの負担において減税をすべきものだという考え方をとっておるわけであります。がしかし、理屈だけで実際の行政政治が行なわれるものではないので、がしかし、国はその三分の二元利補給を行なおう、こういうふうに踏み切ったのであります。
  192. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣に伺いますがね。地方交付税法の二条、地方交付税法の十一条、十四条、この中に含まれる基準財政需要額、基準財政収入額、こういう計算方式によって交付税を地方に与えるということは、こういうたてまえといまの大蔵大臣の御意見とは、どういうことになりますか。
  193. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) ただいま言われますように、地方住民税も、自治体みずからの力で、その財源の中で処理すべきものが本筋かもしれませんが、御指摘のように、非常に画期的な減税でもありますし、しかも、ただし書き市町村は、貧弱市町村でありますので、そこで本年度三十九年度は、その百五十億のうち三分の二は国の元利補給、起債、三分の一は交付税で基準財政需要額に見込んでいく、こういう措置をとったのでございまして、あくまでこれは五カ年間のいわゆる暫定措置としてわれわれは考えておるわけであります。
  194. 加瀬完

    ○加瀬完君 三分の二を補てんされて三分の一を交付税で補てんするという方法ですね。交付税というものは、もともと地方の財源であります。地方の財源を政府が勝手に押しつけて、これで三分の三を補てんしたのだという考え方は、地方交付税法からいっておかしいじゃないですか。
  195. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私の考え方をすなおにお聞きいただけば御理解いただけると思います。これはもともと地方で減税をしたら、地方が全額負担をすることが理論上正しい、こういう理論になるわけであります。がしかし、そのようなことを言っても、標準税率以上に徴収しなければならない窮状を承知しておるのでありますから、暫定的に国が三分の二を負担しよう、こういうことになったのであります。同時に、そういう非常的な実情に即した処置をしますと、その残余の三分の一についても、また同じ問題が起きてくるわけです。残余の三分の一にぐらいは、当然これは当該市町村の責任においてなすべきである。こういう議論も出るわけでありますが、しかし政府も三分の二見たのでありますし、また貧弱市町村はやむにやまれず取っておったのであるし、まあ自分の自力でもって統一に努力をした市町村に対しては、まことに不均衡はあるけれども、問題として考える場合、やはりこれほどの画期的な問題に対しては、地方自治団体すべての財源である交付税全体の中で三分の一はまかなおう、こういうふうに、非常に譲り合った、幾らかいよいよ財源調整を自治団体同志でやり出したかと思われるくらいにものわかりのいい話ができたので、少なくとも五カ年間は、当該市町村はまるまる自分の責任でもって減税しないで済むというふうに、私は妥当なところへ来たのではないか、こう考えております。
  196. 加瀬完

    ○加瀬完君 地方交付税の自然増などというものは、当然地方財政計画の上でも地方の事業というものはふくらんでくるわけですから、そういう新規事業の財源というのは、地方税の伸びと交付税の伸びというもので、それに裏打ちされて計画が立つわけです。税金は減らしました、減らした分は当然ふえてきた交付税で相殺をしますわでは、地方財源というのはふえてこない、こういう点が一つある。で、これは交付税のほうの使い道から言えば、少しはずれている。どうしても交付税でまかなうというならば、交付税の税率そのものを上げて、自然増などということではなくて、現状において交付税の率が上がったから交付税がふえているのだ、ふえた分を埋めるという方法が、当然妥当な方法として地方団体側から見れば考えられるわけです。こういう方法は今度おとりになっておらない、これはどういうことでしょう。
  197. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 自治体側からいえば、お説のようなことはけっこうでありますが、もともと地方財政自身で減税をするという、住民税を減税をするということも、地方行政の大きい仕事なんです。橋をかけ、道をつくるのも仕事ですけれども、住民の住民税を減らすということも、地方行政の大きい仕事でありますから、全部国で補てんしてもらうということは、少し行き過ぎでありますので、われわれは三分の二を補てんしてもらったわけですが、これでも七百億以上の国の持ち出しでございます、五カ年間。そこであとの三分の一は六千億をこえる交付税がございますから、この何千という自治体の中でお互いに弱いただし書きの市町村を助け合っていとう、こういうことで交付税全体の中から措置をいたしたわけでありまして、また現在の交付税のワクから言えば、措置できないはどの金額ではないと考えておる次第であります。
  198. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣に伺いますがね。交付税というものの性格をどう御認識でございますか。いまのような考え方で、交付税というものは、便宜的に国から財源を仰がなければならないような面も、交付税で使えるならば交付税を一応使っていく、そういうお立場だと交付税法をお考えになりますか。
  199. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) これは地方自治体の共同財源、法律的には国税か地方税かという議論がありますけれども、学者の一致したのは地方財源であることには間違いない。ただし、ただし書き町村が出てきたという原因を探求してみますと、交付税の配分において若干足りない点があったということも言えると思うのでありまして、そういう意味では、交付税法では、そういった自治体の独立と、それから財源調整ということも、この交付税の大きい使命でございますので、そういう観点から——永遠というわけじゃありません、五カ年間にわたりまして、ひとり立ちできるまでの、ほかの自治体の穴にはなりますけれども、助け合って補てんするということは、決して交付税の精神から逸脱するものではないと考えておるわけであります。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 助け合ってとおっしゃいますが、地方団体側からすれば、今日の地方財政計画においては、ただし書きを廃止して財政的にバランスがとれるという町村ばかりはないわけです。八〇%近いものはただし書きを採用しなければバランスがとれない、歳入歳出が組めないという状態でしょう。しかし、これをただし書きを廃止して本文にしろという方針を出したのは、これは政府です。それならば、ただし書きを廃止していい財源措置というものは、当然国の責任としてこれは行なわなければならない。自民党もこれは公約している。で、三分の二は補てんをした。あとの三分の一は交付税だということであれば、当然地方の財源として、いままで受け取っておった交付税のうち頭を切って、それは三分の一分は、ただし書きを廃止して、あるいは廃止に近づいて生まれた不足分の補いにするということなんです。タコ配みたいなものです。自分の足を食っているようなものだ。それでは政府の公約と違うじゃないか。交付税というものは、そんなものに使われるような性格のものじゃない。交付税法にそう書いてある。ですから、ちょっと便宜的に交付税をこのごろ使い過ぎると思いますが、いかがでしょうと伺っているわけです。
  201. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 国の政策できめたのだから国で補てんしろというのが本筋だという御議論でありますが、先ほど私も申し上げましたし、大蔵大臣も申し上げましたように、根本は自治体自身の中でこういうただし書き方式をやめて住民の負担を軽くしていくべき筋合いでありましょう。そこで、ただし書き町村が本来ならみずから長期にわたってただし書き方式を本文方式に直していけばいいのですが、今回は一挙に二カ年でやろう、こういうわけでありますので、先ほど申し上げましたように、国の三分の二の補てんということに対応いたしまして、地方交付税からもやると、こういうことになったわけでありまして、私の考え方は、やはり自治体自身がやるというのが本筋で、国のほうで押しつけられたと、こういうのは少し地方行政の立場からいえば私のとらないところであります。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたがおとりにならなくても、あなたは国会の答弁でも、ただし書きは来年度から廃止いたしますと、財源はどうするのだ——財源は政府で補てんしますということをお答えになっておる。交付税で補てんすることは、政府の補てんしたことになりませんよ。まあこのことは、これだけで議論をしておってもしかたがありませんから、次に移ります。  とにかく自治大臣に重ねて伺いますが、地方財政計画などにおいても、歳入の見込みというものは少しずさんではありませんか。具体的に伺いますが、電気ガス税を減らしましたね。その見返り財源として、たばこ消費税を一・六%上げました。これでバランスが合うとお考えですか。
  203. 早川崇

    ○国務大里(早川崇君) バランスが合うと考えて計画を立てております。
  204. 加瀬完

    ○加瀬完君 たばこ消費税は、もう伸びのとまった財源ですよ。電気ガス税は相当伸びのある財源ですよ。伸びのある財源を伸びのとまった財源で肩がわりができますか。
  205. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 一年間の年度をとりまして、大体見合うものとして計算をいたしたわけであります。
  206. 加瀬完

    ○加瀬完君 三十九年度はバランスを合わせているから合いましょう。四十年、四十一年と進んでいったときに、電気ガス税は現状のまま広がっていく、需要もふえてくるわけですから。たばこ消費税は頭がつかえている。やがてバランスがとれなくなってくるということはお考えにならないですか。財源の補てんにならないですよ。
  207. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 今後の問題としては、なるほど、御指摘のように、電気ガス税はどんどん伸びがいいですから、明後年度のことを考えますと、あるいはそういった議論も出てくると思うわけであります。しかし、たばこも最近はフィルターづきとかなんとか相当伸びてきているようでありますから、全然伸びてないというのは少し言い過ぎではないでしょうか。
  208. 加瀬完

    ○加瀬完君 全然伸びてないとは申しませんよ。伸び率が違う。ですから、伸びのいいものと伸びの悪いものと取りかえっこするのは、競馬の馬とびっこの馬を取りかえるようなもので、そういう取りかえ方は不見識だと申し上げている。  次に、地方税の見込み率が非常に私は過大だと思う。前年度に比べて地方税は二二%の増率ですね。普通税だけでも二〇%。ところが、三十八年度に比べて交付税は四。七%減ってますよ。増減率が、歳入構成でも一%減っていますよ。国税のうちの三、税を占める大きい交付税が減っておって地方税だけが二〇・八%も——目的税を除いて二〇。八%もとれるという見込みは、これはどういう計算ですか。
  209. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 地方税の見積もりを立てる場合には、国税の状況あるいは経済の政府の試算その他を検討いたしまして算定いたしたわけでありまして、その見積もりにおいては大きい誤りはないと思います。
  210. 加瀬完

    ○加瀬完君 誤りがないじゃないですよ。交付税は減っているのに、それに反して地方税が非常に増徴になるという見方が、どういう計算で成り立つのかというのです。
  211. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 私からお答え申し上げます。  交付税が減っておりますのは、昭和三十七年度分の国税三税の清算分が三十九年度に入るわけですが、これが四百五十億ばかり減っております。その関係で伸び率が落ちております。
  212. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう交付税のもとの主税が減る現況であって、地方税だけが二〇・八という伸びをするというのは、どういうわけですか。
  213. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 正確な計算をいたしますとはっきりするのでございますが、交付税の国税三税の伸びは国の伸びを基礎にして計算しておりますので、清算分のことを考えません場合は、やはり相当伸びておる。清算分の関係で非常に大きく落ちますので、その関係で伸び率が落ちる。地方税につきましては、法人関係の伸びが非常に大きゅうございます。これは国の税収入の見積もりと基礎を合わせておりませすので、同じ考え方に立っておるわけでございます。
  214. 加瀬完

    ○加瀬完君 結局まあ、財政計画は予算ではありませんからしかたがないとは言い条、これは地方税の伸びということで——あとで質問をいたしますが、歳出の伸びというものをカバーしている、そういう私は一つの創作だと考えざるを得ません。  そこで、これは総理大臣にあらためて伺いますが、先ほど、自民党は本文をやめて、それから住民の負担の不均衡を直すということだけを約束したのだというお話でございましたが、それでは、地方税とは申しません、所得税等をかける場合、この前に木村委員からの質問もございましたが、基準生計費というものを一応押えて、それ以下は課税の対象からはずすと、こういうお立場をおとりになっていらっしゃるのですか。
  215. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得税をなるべく減税したいと、そして毎年やってきたわけでございます。住民税のような、ただし書き方式は、絶対に亜流であるから、これは敬遠したい。そこで、一応、大蔵省で調べました基準生計費四十七万一千円、この程度のものの減税をはかっていこうと、こういう考えでいっておるのであります。
  216. 加瀬完

    ○加瀬完君 では、これは総理・大蔵両大臣、いずれにお答えいただいてもけっこうですが、基準生計費の標準価額の四十七万一千百八円、この基準は、所得税の場合には適用されているわけですね、一応基準として。地方税の場合は、この基準ははずされておるわけですか、政府の方針として。
  217. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 地方税の場合には、課税の最低限は四十七万一千円という、国税——所得税とは異なっております。
  218. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは大蔵大臣に伺いますが、所得税のかからない階層に住民税の所得割りをかけるというたてまえは、政府としてこれは永続させるべき妥当な方法だとお考えになりますか。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得税と住民税とは、同じように人税でございますが、住民税は負担分任の精神でいっておるのでございます。したがいまして、課税最低限が非常に低うございます。ゆえに、雇われておる女中なんかにも、住民税がくるようになっております。これは負担分任の精神でございます。税のあれが違うのであります。だから、同じ人税にいたしましても、やはり所得税と負担分任の住民税とは、創設の趣旨から申しても違うので、課税最低限が違うことは当然でございます。
  220. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは人頭割りでございますよ。人頭割りを問題にしているのじゃなくて、所得割りの問題です。所得が四十七万にも達しないような、所得税を納めない者にも、三十五年の地方税法の改正では、当然本文方式でも住民税がかかるようになっておる。生計を得られない所得の者にも所得割りをかけるということは、妥当かと言うのです。人頭割りは別です。
  221. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 住民税には、人頭割りと所得割りと二つあるのでございます。したがって、住民税の性質から申しまして、所得税のかからない人に対しても住民税はかけるということが、地方の分任制度から、また地方財政からいって、適当であるというたてまえになっておるのであります。
  222. 加瀬完

    ○加瀬完君 その人頭割りをかけることまでだめだと私は申し上げておるわけじゃない。生計費にも及ばない収入の者に、所得割りを、所得税ではかけないのに、住民税では所得割りをかけるのは妥当じゃないじゃないかと、こう申し上げておる。
  223. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたは生計費とおっしゃいますが、基準生計費でございます。東京におきましては、五人家族で月に一万四、五千円の状態である人もおられるのであります。そうすると、年でどうでございますか、五人家族で二十万足らず、こういう人には、多分住民税はかけていないと思いますが、そういう方でない人、四十万とか四十二万とかいう人については、住民税は事の性質上課税するのが適当であるということできておるわけであります。いまになって、所得税をかけないで、住民税の所得割りをやめてしまえと言ったら、地方の財政はもちますまい。もともと、住民税をこしらえるときから、そういうたてまえになっておるのでございます。
  224. 加瀬完

    ○加瀬完君 もともとはそうなっておらないのですよ。もともとは、第一方式では、所得税のかからない者には所得割りは課さなかった。三十五年改正で、所得税がかからなくても所得割りをかけるようにしてしまった。だから、ただし書きをやめるというくらいなら、当然、所得税を免除される者には、地方税において所得割りをかげるということは妥当ではないという考え方が、私は出てくると思うのです。
  225. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 地方の負担の状況、財政の事情の点からいいまして、何もかけないにこしたことはございません。しかし、いかなるかけ方をするかという問題、だから人頭割りの問題と所得割りの問題、これはありましょう。また、われわれの言っているのは、所得割りはかけるのだ、所得割りにしてもただし書き方式で一般の控除なんかしないというのがいけないからと、こういうことなんです。ただし書きをやめようと言っているのであります。住民税のほうについて所得割りをやめたということになれば地方の財政もたなくなりましょう、では国から補給しろと言ったら、国は増税しなければならぬ、こういうことですから、お互いに、国も地方も話し合って、分け合って、そうして自治の発展と国の繁栄を期するということが私は適当であると思うのであります。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは、総理大臣の名前でお出しになる地方財政計画には、ただし書きなんかの所得を入れないでバランスが合うようになっている。なっておるけれども、事実合わないというところに問題がある。そこで問題を展開いたしますと、いま言ったような、ただし書きを廃止すると、廃止したとおっしゃいますけれども、三十九年の暫定措置はただし書きが廃止になっておりますか、自治大臣に伺います。
  227. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、完全に本文方式に転ずるためには、二カ年間の期限でやろうと言っておるわけでありまして、初年度は扶養控除、専従者控除という方向に重点を置きまして、主として低所得者の住民税の過重負担というものの軽減から始めていく、こういうことになっておりますので、完全に本文方式になるのには、明年度さらに百五十億減税しなければならないわけであります。
  228. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、あなたのおっしゃるように、ただし書き廃止町村を幾つかあげて、それで減収分と減収補てん分とどうバランスが合っているか、具体的に市町村をとって数字をあげてください。
  229. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 各市町村の個個の人の、そういったただし書きの住民がどうなっているかということは、完全な統計はすぐに出ません。大まかな全体的な視野から申しますと、大体ただし書きを直しますと市町村は三百億円穴があくのでありまして、本年度はそういう控除のほうを重点にやってまいりますと百五十億円という見当のお答えはできるのであります。個々の町村ということは、ちょっといますぐお答えできません。
  230. 加瀬完

    ○加瀬完君 負担の公平にはならないわけですよね。完全にただし書きをやめても、標準税率の一・五倍の幅を持たせてあるわけですから、A村とB町といった場合、これは一・五倍の幅を持たせてあるだけ、不均衡は残るわけです。そこで、こういうアンバランスがあるならば、当然交付税の税率を上げるという問題にぶつかってくる。自治大臣は、交付税の税率を上げるということについて、今度の補てん問題の交渉の中でどうこの問題をお取り扱いになりますか。
  231. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 地方財政は、私が十年前に政務次官をやっておりましたころに比べますと、画期的な増強を、充実をいたしておるわけでありますし、明年度を予想いたしましても、地方財源におきましても二千三百億円、交付税でも八百億円をこえる増収があるわけでございます。そういう意味から申しますと、いま直ちに交付税を引き上げるという考えは持っておりません。
  232. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治省の報告によれば、赤字団体がふえておるわけじゃありませんか。かりに、あなたが政務次官やっているときから数年たって、一応地方財政のバランスが合ったとしても、ことしは実質的にはバランスが合わなくなるわけですね。なぜならば、今度は基準税率七五%に上げた、それからただし書きで取れる金を取らなくしたことは、これは当然穴埋めをしなければバランス合わないじゃありませんか。だから、穴埋めは交付税の増率ということで自治省としては交渉するのが当然なんです。交付税の税率を上げなくてもバランスが合うという考え方はどういう根拠ですか。数字をあげてバランスの合う理由を示してください。うなずけませんよ。
  233. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 交付税法の改正で基準税収入のあれを七五%に上げますと、むしろ貧乏なただし書き市町村の財政収入が傾斜配分になるわけでありまして、それでも七十億程度は、むしろ、ただし書き市町村あたりは財源的に助かるわけであります。  さらに、交付税率を上げなきゃならぬという御意見でありますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、ただいまのところ、これを上げなきゃならぬほど地方財政というものは困っておるという考えを実は私はとっておりません。
  234. 加瀬完

    ○加瀬完君 傾斜配分をするということは、何回か自治省が繰り返して行なっている。傾斜配分をすれば曲線になるわけでありますから、いいところもあれば、中だるみで、中堅の団体というものは、むしろ交付税があまりふえないというところも出てくる。そういう団体は、結局ただし書きもとれないことになれば、財政収入がアンバランスになってくるということになる。  問題を先に進めます。今度投資的経費の増は、歳出ですね、二四・四%。内容は、直轄事業の負担金が二〇・二%増、公共事業が二〇%増、この中で、普通建設事業費は二一・二%の増、このほか、国庫補助負担金を伴わないものも、普通建設事業費三六・五%増となっている。いまの財源でこれがまかなえますか。
  235. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 財政計画にありますように、十分まかなえるという立場に立って計画を作成しておるわけでございます。
  236. 加瀬完

    ○加瀬完君 じゃ、もう一回聞きますけれども、財政計画上から検討した場合に、歳入の公共事業費の補助負担金の増率は一七・七%、普通建設事業費の補助負担金の増は一九・五%、歳出では、公共事業は一九・七%、建設事業は二一・二%、補助の伸び率よりも事業費の伸びのほうがはるかに大きいですよ。これでは地方の自己財源の持ち出しというものをしなけりゃならないです。自己財源がありますか。去年よりも、はるかに自己財源があるという計数が出てきますか。
  237. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) その数字だけから見れば、そうでございますが、これは、普通建設事業費の中でも、たとえば費用負担率の高い文教、厚生施設等の事業費の増加が著しい。他方、国庫負担率の高い高潮対策事業費なんかが事業が終わりまして、これがなくなっておるということで、建設事業費の増加率は二一・二%でありまするが、国庫支出金の増加率一九・五%と、こういうアンバランスの数字になっておるわけでありまして、事業の内容によってこうなったと、こう見ておるわけであります。
  238. 加瀬完

    ○加瀬完君 補助負担金その他の財源というものは伸びていないんですよ、あまり。それで、歳出のほうの公共事業費なり建設事業費なりというものは、うんと伸びているんですよ。しかも、歳入の、先ほどもいろいろな問題で出ましたように、ただし書きで税金をとるわけにはいかないですよ、七五%と基準率を上げたわけですから。あるいは交付税の伸びというものを期待できない市町村も出てくるわけですよ。どうしてバランスが合いますか。しかし、この問題は、あとでまた別の機会に譲ります。  次に、経済企画庁の長官に伺いますが、新産都市の計画は、国としての産業発展計画であったはずでありますけれども、そのとおり了解してよろしいですね。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、法律にもございますように、国の立場から申せば、いわゆる過度に密集した地帯から、経済を地方に広げていきたいという見地があるのでございますが、むしろそれよりも、あの法律が考えておりますことは、地域格差を是正していこうということに視点があると考えられます。したがって、どちらかと言えば、地方の振興のための拠点をつくる、その結果が、また、国全体として過度密集地帯の解消に役立つ、こういうふうな考え方であると思います。
  240. 加瀬完

    ○加瀬完君 地域格差の是正ということになれば、地域格差の低いほうに新産都市が指定されるという、どうしても傾向にありますね。地域格差の低いというのは、地方として独自の財源をあまり持っておらないところということにもなりますね。そうなれば、そういう貧弱な地方財源の地域に、新産業都市計画を進めるわけでありますから、当然そこには、政府の、ほかの地域とは違った援助計画というものがなければならないと思うのですが、具体的に、三十九年度の予算で新産都市に対する政府の援助計画というものをお示しいただきたい。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 格差の低いという意味は、格差のより多いという意味と思いますが、しかし、法律できめられておりますことは、地方開発の拠点を可能なところに求めるということでございますから、いかに格差が多うございましても、拠点性に乏しいというところは現実に避けなければならないということは、おわかりいただけると思うのでございます。  そこで、しかも、そういうところであるから、新産業都市建設のためには、必然的に中央の政府が地方に対して特別な財政援助を行なうべきであるということには、私は必ずしもならないと思います。公共事業なり、あるいは政府機関なりの投資を重点的に行なっていくということ、それからそれをまかなうために、地方債等のいわゆる資本投下が果実となってあらわれるまでの間のつなぎとして特別に考えられる、あるいはまた、開発銀行の地方開発融資が企業についていくということ、それらのことはございますけれども、特にそれらの地方の負担軽減のために特段の財政措置を講じなければならないということには、私は必ずしもならないと思っております。
  242. 加瀬完

    ○加瀬完君 長官のおっしゃるような方針で新産都市の計画というものは進められていると思うわけでございますが、その影響は、地方財政計画上どう把握されておりますか。自治大臣に伺います。
  243. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 実際問題といたしましては、新産都市の公共事業が大幅にふえてくるのは、昭和四十年度以降ではないかと思うのであります。三十九年度には、それほど大きい負担というものは現実に起こってこないのではないかと思う。したがって、われわれといたしましては、地方開発の起債というものが五百億ほどございまするが、そういった中でまかなえる程度のものではないだろうか。しかしながら、四十年度以降は大幅に事業量が増加いたしますので、これは政府全体の問題といたしまして、オリンピックも本年で終わります。あるいは新幹線等、いろいろ大きい事業が四十年度あたり終わっていくわけでありますから、そういった問題を含めて、大蔵大臣その他関係各省と折衝しながら、どうするかというような問題は、四十年度以降の問題になると私は見通しております。
  244. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣と折衝しながらということになると、起債のワクとか、あるいは交付税の点が当然問題になってくると思う。やがて新産都市が非常に投資的経費を大幅に必要とする事態になりましたら、交付税の配分といったようなものに、どういう変化を及ぼしますか。
  245. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) いまから想定することはできない状態でございます。
  246. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは、交付税で新産都市の経営の一部をまかなうということになりますと、また別な意味の格差が生じてくるわけでございます。財政局長に伺いますが、いまは考えておらないということで、新産都市の計画によって地方財政計画そのものが影響されないと言い切れますか。
  247. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 現在、まだ新産業都市建設計画の事業の内容がきまっておりません。したがいまして、その内容がきまりまして初めて、どういうような影響を及ぼすかということが具体的に出てくるわけであります。私どもといたしましては、一般的にいいまして、その事業の性格上、何らかの措置は要るんじゃないかという観点で検討いたしておりまするけれども、現在の段階におきましては、事業の内容が明確でございませんので、その点のところ明確にいたしておりません。
  248. 加瀬完

    ○加瀬完君 この新産都市のその都市における計画というものが進んでまいりますと、これは、一般の国の補助金やなにかを伴って社会保障費などが非常に上がってきたわけですけれども、その社会保障費に当するような義務的経費までも削らなければ新産都市の計画が進まないという事態が生じつつありますけれども、一体、こういう問題を四十何年以後だということで等閑視しておって、自治省の地方財政の健全化、あるいは地域格差の解消というものが成り立ちますか、自治大臣に伺います。
  249. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 新産都市は、地域格差是正のための国の施策であります。したがって、本来は先行投資という性格を帯びる、将来は収入がふえていくというわけでありますから、起債とか財政投融資が主になろうと思うわけであります。しかし、何ぶん、この新産都市の地方自治体の公共事業の計画がまだわかりませんので、十三カ所に一千億円づつくらい要るといったらたいへんな問題でございます。しかしながら、そういった問題は、今年度としては、われわれはこれを要るというわけじゃございませんで、よく明年度の地方財政という面において、どうあるべきか、真剣に取り組んでまいりたいと考えるわけでございます。
  250. 加瀬完

    ○加瀬完君 宮澤長官に伺いますが、地域の福祉行政の費用まではばんでくると——新産都市の計画のためにですね。そういう事態にいまなりつつあるわけでございますが、そういう事態が生じない前に、新産都市に対する国の財政援助というものを、もう少し地域あるいは都市の財政状態を見合って、計画をふくらますという考えはございませんか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま新産都市を次々に指定しつつございますが、そのときに、指定に際して財政建設基本方針を示しまして、今後各地方が建設基本計画を持って、いくわけでございます。基本方針の中では、くれぐれも無理をしないように——いろんな意味がございますが、ただいま御指摘の点との関係で言えば、地方の財政の負担能力というものを十分に考えてやってくれるようにということを申しているわけでございます。むろん、事業の建設基本計画がきまりますと、国と地方と、県と市町村との負担区分がきまってまいりますので、そこまで話が進みますと、どのくらいの負担を地方が現実にしなければならないかということが、かなりはっきりわかってくると思います。その段階で、建設基本計画を最終的に決定するわけでございますから、地方がそれだけの負担能力がはたしてあるかないかということは、地方御自身もおわかりになるわけであります。私どもにもわかりますので、ただいま仰せられましたような、結局、所期の目的を逆にそこなうような結果になりませんように、十分地方には御注意をしてございます。それでもしかし、いろいろな夢を持ちやすいのでございますから、私どもも、建設基本計画を各省でいわゆる査定をいたしますときには、なお十分気をつけていたすつもりでございます。
  252. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 加瀬君の質疑は終了いたしました。  本日は、この程度にいたします。明日は、午前十時から開会いたします。  これにて散会いたします。    午後五時十五分散会