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1964-03-05 第46回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月五日(木曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————   委員の異動  三月五日   辞任      補欠選任    加藤 武徳君  鹿島守之助君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            阿具根 登君            亀田 得治君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            安田 敏雄君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            田畑 金光君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    憲法調査会事務    局長      西澤哲四郎君    総理府総務長官 野田 武夫君    行政管理政務次    官       川上 為治君    北海道開発政務    次官      井川 伊平君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁教育局長 堀田 政孝君    防衛庁人事局長 小幡 久男君    防衛庁参事官  麻生  茂君    法務政務次官  天埜 良吉君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君    法務省入国管理    局次長     富田 正典君    外務省アメリカ    局長      竹内 春海君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    大蔵省主計局法    規課長     相沢 英之君    文部省調査局長 天城  勲君    厚生政務次官  砂原  格君    厚生省医務局次    長       大崎  康君    厚生省社会局長 牛丸 義留君    厚生省児童局長 黒木 利克君    通商産業省企業    局参事官    馬郡  巌君    通商産業省鉱山    局長      加藤 悌次君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    通商産業省鉱山    保安局長    川原 英之君    運輸省港湾局長 比田  正君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    労働政務次官  藏内 修治君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    建設政務次官  鴨田 宗一君    自治政務次官  金子 岩三君   説明員    憲法調査会副会    長       矢部 貞治君    日本国有鉄道総    裁       石田 礼助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 開会いたします。  まず、理事補欠互選を行ないます。現在理事が二名欠員となっております。その互選につきましては、先例により委員長の指名をもって行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。それでは高山恒雄君及び奥むめお君を理事補欠に指名いたします。     —————————————
  4. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。亀田得治君。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 私は憲法日韓、国鉄の問題等について質問をするわけでありますが、その初めに、昨日総理並びに外務大臣が、日中問題に関するわが党の羽生委員質問に対しまして、従来衆議院その他で総理が答えていた答弁をずいぶん後退させておるわけです。で、いままでは総理答弁外務大臣答弁いずれにいたしましても、いわゆる友好国意思というものを考えて、日中国交回復結論づける、こういったようなことは言っておらなかった。それまでは、国連総会加入承認があった場合には当然中国との国交回復承認ということは考える、これははっきり言っておるわけです。それをわずかの期間の間にこれほどはなはだしく後退させるということは、はなはだ理解ができない。一体どういう事情があるのか、その辺を明らかにしてほしいと思います。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何も前進したり、後退したりしておりません。私の所信を申し上げただけでございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 前進後退もないと言っておられますが、世間ではだれも、日中問題に対しては非常に消極的な、うしろ向き答弁になった、私は総理速記録をごらんになればだれでもそう感ずると思います。その前に言ったことと、昨日羽生さんにお答えになったことと前進後退もないと、そういうふうに断定できますか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 衆議院予算委員会で、横路君の質問に対しまして答えた速記録を初めからしまいまでずっと読んでいただけば、きのう羽生さんにお答えしたことと同じです。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、衆議院段階でいわゆる友好国意思といったようなことは触れておられますか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外交をする上において、やはりわが国関係している国々の意向も十分聞かなければならないことは当然のことであります。当然ひとりよがりはいけません。しこうして、私は、中共平和愛好国で、世界の繁栄に協力すると自他ともに認められるような状態になって入ったということを前提にしております。だから、あなた方はあとの分だけを読んでみて、自分らの都合のいい意見に合うところだけをとってこれでいいのだ、こういう解釈は私はごめんこうむりたいと思います。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 総理はいつも国連外交というものは日本外交一つの柱、こう言っておられます。そうしていつも多数決主義ということをおっしゃっておる。社会党に対してもずいぶんそういうことをおっしゃいました。ところが、国連総会の場で中国加入承認があった場合に、その意思を尊重しないということは、一体国連中心外交矛盾するじゃありませんか。それは必ずしも国連総会で加盟承認された、直ちに中国承認することが尊重と結びつかないというふうにおっしゃるだろうと思いますが、常識的には私はそういうことにならないと思う。世界の多数の国が国連に入ってもらおうじゃないかと言えば、その気持に立って考えれば、当然日中の正式国交回復ということを日本も考えるのが、国連全体に対する私はあり方じゃないかと思うんです。国連中心主義ということを絶えずおっしゃっておられます。そして多数決ということも絶えず言われます。それとの矛盾というものをお感じになりませんか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それが自主外交でございまして、国連に入る入らぬ、代表権を認めるということにつきましては多数決でやります。しかし国連に入ったからその国と何でもかでも友好関係を、条約を結ばなければならないということは理論的には出てこない。ただ、代表権を認められて国連一員となれば、日本中共との国交正常化一つの大きい目安ではあります。一つ材料にはなりますが、直ちにそれが友好関係条約を結ばなければならぬという理論は出てこない。これはもうだれでもわかることなんです。一つの大きい材料にはなります。しかしそれが当然承認とかあるいは友好関係を樹立しなければならぬというものじゃない。それはわが国立場でいろいろな友好国関係もございますから、私はそのときはそのときで考えなければならぬ、こう言っておるわけです。だから入った場合には、条約を結びますという、こういう条件が整わなければならぬということを私は言っておるのでございます。速記にはっきり載っております。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 そのときはそのときでお考えになるという程度ならまだいいわけですが、明らかに昨日は米国、フィリピン、タイ、韓国これらの国の意思というものを無視しては行動はとらない意味のことをおっしゃっておるわけです。それは行き過ぎじゃないですか、それこそ自主外交じゃないじゃないでしょうか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 友好国考え方を参考に聞くということは、自主外交を阻害するものではございません。日本日本だけの行動じゃない、やはり世界一員とし、アジアの先進国として、いろんな関係国といわゆる歩調を保ちつつ、自分意見に合わないところはこれを説得するとか、いろんな方法で協調していくところに外交があるのでございます。私は、そういうように形式的に、中共代表権を持ったから、すぐ日本がこれを認めなきゃいかぬのだという簡単なものじゃないということは、もう国民みなおわかりになっていると思います。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 総理並びに外務大臣は、当初はそういうふうなことをおっしゃっておらない。国連加盟承認があった場合には、当然この日中国交回復というものは考えられる問題だと、何か直結しているような印象を与える答弁をしているわけです。だから、矛盾があると聞いておるわけです。  じゃ、外務大臣にお聞きしますが、この問題につきまして、どうも総理なり外務大臣答弁が先ばしり過ぎるといったようなことで、アメリカあたりからあなたのほうに御注文があったわけじゃないでしょうか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようなことは全然ありません。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 何らの情報交換もありませんか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申し上げたとおり、全然ございません。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 台湾のほうはどうですか。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 同様に全然ございません。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 情報交換がないなんというのはおかしい答弁です。台湾にとっても重要な問題でしょう、台湾自体立場から考えたら。私たちは、なかなかそういう裏の動きというものを確認はできませんが、単なる党内の突き上げだけじゃなしに、そういう国際的な動きというものに皆さんの答弁というものが変わってきておると私たちは考えておるわけです。しかし、きょう私はこの問題で主として質問をする予定でありませんでしたから、また後日の問題にいたしまして、昨日のお二人の答弁には、社会党としては了承できない、こういう点だけを申し上げて次に移ります。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 関連。
  23. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単でございますか。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 簡単です。ちょっと総理と外相に伺いたいんですが、祝福された場合ということですね、これの内容をもっと明確にする必要があると思うんですが、これは満場一致で国連加入を認められた場合をさすのか、それから日本が反対しても入った場合には、祝福された場合にはならないのか、それから友好国——きのうあげたほかにもあると思うんですが、これらの一つでも反対した場合には、これは祝福された場合にはならないのですか。これは今後の国連における日本政府態度として非常に重要な問題だと思いますので、この内容を明確にすることが必要だと思います。どういった見解ですか、はっきり答弁願いたいと思います。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう、羽生先生の御質問に対してお答えしておいたわけでございますが、祝福された状態というものの内容を規定する材料はいまないわけでございまするので、どういう状態かということを具体的に言えということは無理でございます、ということをお答え申し上げたので、それで御了解いただきたいと思います。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、憲法問題を最初に総理にお伺いをいたします。前にも、私、一度、予算委員会で尋ねたことがあるんですが、非常に重要な根本問題でありますから、重ねて明確にしてほしいと思いますが、憲法改正をやる、行なうということについては、自民党としては、立党精神としてきめておる。これは私たち社会党見方なんです。見方というよりも、いろいろな文献等をもとにしての結論なんです。その点はどうなんですか。こまかい個々の点とか、その時期とか、そういうことはまだきまっておらぬでしょう。検討中でしょう。立党立場というものを私はお聞きしておるわけです。明確にひとつ答えてほしい。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法というものをいかに考えるか、改正する要ありやいなやということは、憲法調査会を設けまして、その答申報告を待って、そして、それを国民によく考えていただく、そして結論を出したい、こういうことでございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 今年度の自民党の一月の党大会運動方針書第三の憲法問題のところの冒頭に、これは総裁自身大会のことですから、よく御記憶でしょうが、読んでみます。「わが党は、昭和三十年十一月十五日結党と共に制定した党の政綱、第六章独立体制の整備の項で、「現行憲法自主的改正をはかり」と規定し、憲法改正をその重要施策一つとして公約してきた。」、この文章を読んで憲法改正をやるんだというふうに、だれでも私は解釈すると思うんですが、どうなんですか。前回私がお聞きしたときに、総理は、結党大会のときにそういう宣言なり政綱のあったことをよく御存じでなかったようでありますが、しかし、今回のこの運動方針書を見ても、前の政綱を確認し、さらに「憲法改正をその重要施策一つとして公約してきた。」——公約じゃないですか。これを見て、憲法改正方針をいまだきめておらぬのだ、そういったような解釈になるでしょうか。この文章についておっしゃってください。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど中共国連加盟の問題で、ずっとお話ししたことの一つところだけをおとりになって議論なさることは適当でないと申し上げたと同じように、今年のわが党大会におきまして、憲法改正の問題について書いておる全部をお読みいただきたい。これは、われわれがそういう改正をすべきであるか、すべきでないか、調査会答申を待ちまして、そして国民意向を十分参酌して考える、こういうことになっておりますから、ずっと全部読んでみてください。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 まあ総理にこういうものを読ますのはちょっと失礼ですから遠慮しますが、私は何べんも十分読んでいる、私の専門の問題なんですから。しかし、幾ら読んでも、根本方針はきまっていて、総理自身としてはなかなか慎重にやろうとしておる気持ちはわかりますが、党自体根本方針というものはきまっておるんだということだけは、私ははっきりしていると思う。  矢部さんに御質問いたしますが、憲法調査会の三十三年度の年報の三ページの二行目から四行目までをひとつちょっと資料として御披露願いたいと思います、私のほうで読むと時間がかかりますから。
  31. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 私が読み上げるわけですか。——それはどういうことでしょうか。それはあなたのほうが御質問なさるのに要るというんだったら、あなたのほうがお読みになるのが筋じゃないでしょうか。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ昭和三十三年度の年報の三ページの二行目から五行目までに、自民党憲法改正問題に対する態度を書いておるわけですが、この点を明らかにしてください。
  33. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) これは事務局がつくった年報でございますが、調査会が生まれるに至りました政治的背景を、事実に基づいて書いてあるわけです。鳩山総理のときに憲法改正ということを言い出して、そしてその考え方自由民主党ができたときに、憲法改正ということがやはり一つの党是として取り上げられておった、そして党内にも憲法調査会というものが設けられた、そしてまあそういうような背景から、調査会法というものが出てきたという趣旨が書いてございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 要するに、この自由民主党では、結党の際に、現行憲法自主的改正をはかることをきめた、こういう考え方に立っておるわけですね。
  35. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) そう思いますが、そういうふうな政治的背景があったことは、これは私どもも存じておりました。しかし憲法調査会法そのものができましたときには……
  36. 亀田得治

    亀田得治君 それはまた別に聞きます。
  37. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) それから改正論擁護論もあるというのが事実でした。そこで、それが結論を先にきめてスローガンを投げ合うというような憲法論議でなしに、共通の場でひとつ話し合うということが望ましいと考えておりましたが、そこに憲法調査会というものができたので、私どもそういうものとして期待したわけでございます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 いま矢部会長からも、はっきり憲法調査会における文書の御説明をいただいたわけですが、これは、だれでも自民党結党の際に立党精神として憲法改正というものを取り上げたんだ、こう解釈しておるわけです。この文書はこれは間違いですか、どうなんでしょう。総理、答えてください。この文書内閣憲法調査会から出ておる文書です。こういう文書をあなたは否認されるわけですか。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はまだ見ておりませんので、正確なお答えはできませんが、わが党の憲法に対する態度は、本年の大会で確認したとおり、憲法調査会報告を待ちまして国民とともに考えていこうということでございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの点は、総理は絶えずそういうふうにおっしゃるが、ただいたずらに時間をとるだけですよ、はっきりとした文書があるものを認められぬわけですからね。いま矢部会長も、ちゃんと事実のいろいろな資料等に基づいて、これはつくられたものだと。これは当然なことでしょう。  もう一つ資料を示しましょうか。これはもう幾らでもある。切りがないのです。憲法調査会法がこの参議院を通過するときの青木委員長報告です、参議院における。この中に「自由民主党並びに政府においては、現行憲法改正の必要のあることを認めておる点は双方意見が一致しておるが、」云々と、あとは、調査会調査会として、かくしてやるという意味のことを書いてある。だから自民党根本方針というものをあいまいにされるようなことでは、これはちょっと困るんじゃないですか。そうして、何か社会党がいたずらに自民党に対して改憲派だという悪罵を浴びせておるというようなことを自民党の人は言う場合がありますね。それなら、はっきり聞きますが、この立党の際の憲法改正を取り上げるという決定は、取り消すべきじゃないですか。ほんとうにこう憲法調査会のような立場白紙検討するというなら、これまた別な問題で、それならそれとして、世間に対して公党の立場としてははっきりすべきでしょう、その点。その点は少しも取り消さないで、そのままで、先ほどのような答弁を続けられるということは、どうもふに落ちないわけなんです。これは青木委員長報告にしても、うそを報告していることになりますか。どうなんです。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法改正するといっても、なかなか憲法というものはほかの法律とか政令とは違いまして、非常な特別の手続を要するものでございます。したがいまして、憲法改正するという気持ちになりましても、やはりおいそれとはいかない。やっぱり調査会を設け、そうして国民気持ちを聞かなければならぬ。私は、よく、三分の二以上取ったならばすぐ憲法改正するというふうなことはすべきでない、やはり国民大多数の気持ちをくんで考えなきゃならぬ、改正するにいたしましても、そういうことを言っておるのであります。憲法改正しないとは言いません。するとも言っておりません。これはやっぱり国民とともに検討していかなければならぬ問題で、その検討を始めようという精神であるのであります。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、憲法改正するとも、しないとも言わない。これでしたら、第三者が聞けばこれは全くの白紙ということになりますね。当然これは立党宣言なり政綱というものを取り消すべきじゃありませんか、国民にわかりやすく。私たちもその点に疑惑を持っておるわけですからね。社会党だけじゃないですよ、それは。しないとも言わぬ、するとも言わない。そういうふうに、はっきりおっしゃるなら、そういうふうに明確に党の文書なり中身というものを再度明らかにする必要があると思いますが、どうなんでしょう。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今年の大会宣言決議にもありますとおりで、するともしないとも言わぬというんじゃない。これを検討していこうということ、憲法改正検討していこうということが方針であるのであります。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの点であまり時間をとるのもなんですから、この程度にしておきますが、これはまあ非常に総理の言うことはへ理屈なんです。正規の文書等中心に考えた場合には、了承できません。そこで運動方針書に関してなお二、三確かめておきますが、これによりますと、「適当な時期に国会憲法調査機関を設置すべきだ」と、こういうことが書かれておりますが、報告書はこの内閣にも出るわけですね。内閣関係にはこれは触れておりませんが、これは積極的に何もしないという理解でよろしいわけでしょうか。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは党のことを書いておるので、内閣のことは書いておりません。内閣のほうにおきましても、報告がありました場合におきましては、調査機関を設けるか、あるいはどの程度の規模にするか、報告がありましたならば、そのときに考えてみたいと思っております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 内閣でこの報告書を受け取って、たとえばいつか内閣憲法改正の原案の提案権があるかないかといったようなことが国会論議になったことがあります。政府解釈はあるという解釈でありますね。そういう立場に立ちますと、この内閣においても、この報告書を受け取って提案に結びつくような準備をするということも心配されるわけです。そういうことは考えておりませんか、全然。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全然考えていないことはない。考えております。だから報告を待ちまして、内閣としてどういうふうな機関を設けるか、あるいは既設の法制局に人員をふやすとかいう考え方もあるようでありますが、内閣としても検討していきたいと思います。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 それは少し池田総理考え方は間違ってやせぬでしょうか。提案権の問題が問題になった場合に、憲法提案権があるというふうに解釈されても、だからどんどん行政府がその仕事を進めるのだというふうには、私たち理解しておらないわけです。だからどうしても皆さんが仕事をやろうというのであれば、この運動方針書に書いてあるように、国会というものがやはり中心になるべきものじゃないでしょうか、性格的に。そこをどう考えているのですか。今の御答弁ですと、どうも内閣においてどんどん憲法改正の原案の作成の準備もやりかねないようなお答えのように聞いたわけですが、どうでしょう。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 両方でやってけっこうだと思います。国会においてもおやりになり、内閣としても考えたい。こういうわけであります。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 どちらを重いと考えておるのですか。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 重い軽いの問題じゃございません。やはり国会としてもお考えを願いたいし、内閣としても考えるということでございます。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 関連。いまの亀田さんの質問に対する池田さんの答弁というものは、きわめて重要な問題をあいまいにしておると思います。一昨年私が高柳憲法調査会長並びに池田さんに質問した点はその点であります。時間が十分ないために、とことんまで究明できませんでしたが、きょうは矢部博士もおいでになっておりますし、この問題を明確にしなければならないと思います。日本の国の憲法は、明治憲法的な解釈でなくて、人民主権の上に立ち、国会は国の最高機関と規定せられ、内閣は行政府の最高機関にすぎないのである。国の基本法としての憲法改正に対する発案権というものは国会以外にないことは、憲法改正は、日本憲法では、第九章に改正というものが特に設けられ、第九十六条で明文化されていることでも明らかなのでありまして、このことをはずして、そして明治憲法の七十三条ですか、それに含まれているようなものを、現憲法の七十二条なり七十三条に、混同的な解釈を法制局長官などにやらせて問題をあいまいにしておりますが、憲法調査会憲法調査会として、高柳さんなり矢部先生のような学者的良心を持っている人は、非常に自制してその機能の逸脱を防ごうとして努力しておるようでありますが、いま国民が一番心配しているのは、日本現行憲法の趣旨というものをゆがめて、あたかも憲法改正の発議権が内閣にもあるような印象をどんどん積み上げてきているということは、けしからぬことでありまして、この際、池田総理矢部教授——法制局長官は、無用の答弁は必要といたしませんから拒否します——この権威あるお二方から答弁をお願いしたいと思います。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は、先般高柳会長がお見えになりまして、また私からもそのとき答えたとおり、政府にも発案権がありますと、こういうことははっきりしているのであります。
  54. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 私は憲法学者ではございませんので、その点の解釈について憲法学者としての見解を持っているわけではございませんが、しかし「発議」と九十六条にありますのは、国民投票にかける場合のことを意味しております。国会で原案がつくられる、その原案を準備する、あるいは原案を出す、こういう発案権は内閣にもある。こういうふうに私ども解釈しているわけでございます。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 池田さんは、当時の高柳憲法調査会長の見解を曲解しております。高柳会長は発案権と発議権について、発案権というのは、憲法に関する限り法令上のことばである。憲法で「国会の発議」というのは、国会議員三分の二の賛成で憲法改正案が可決された後、国民提案するという行為を言うので、憲法改正の原案を国会提出すること自体を発案だというようなことはないと思う。発議と発案の二つのことばを混乱させてはいけない、こういう見解を述べているのであります。矢部博士は政治学者でありますが、いま必要なのは、ほんとうは既存の権力に従属してさまざまなものを考える能力しか持たなかった過去の憲法学者を一掃し、日本のこの人民主権の憲法に沿うた憲法解釈というものが、人民の意思によってなされるような時代が来なければならないので、鈴木安蔵博士は、憲法改正についての「発議」とは、国会においてある一定の改正案について、それを国会提案することが可決されることを言う。普通の立法におけるがごとき国会両院にのみ改正案が提出されることを言うのではないと述べている。この発議権は国会のみが有する、内閣には権限がない、憲法改正国会の発議、国民に対する提案国民承認によって完成する。国会において改正案と国民提案することが可決されたとき改正の発議がなされたのである、こういうふうに述べております。これは憲法学者として人民主権の憲法というものを正しく理解した憲法学者の一つの見解だと思うのでありますが、明治以来プロシャ憲法に対して従属し、時の権勢に対してつごうのいいような解釈をする御用学者に取り囲まれて一国の内閣総理大臣というものが動いてきたから、その惰性で、いまだに日本の新憲法というものを理解することができないのだと思いますが、池田さんの解釈と高柳さんの解釈なり鈴木教授の解釈なり、みな異っていると思いますが、池田さんは慎重にやるという一点では若干良心的なものを持っておりますが、見識がそれに伴っていないところに、政治家としてあぶなっかしさを感ずるのですが、その慎重の内容に対しても、もう少し明快に説いてもらいたい。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりいたしませんが、いま憲法改正の発案権の問題ではございませんか。先ほどお答えしたとおりでございます。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 そこが一番大切なんだ。きわめて重要な……これによって憲法改正の外堀が埋められるのです。きわめて重要な問題をあいまいもことして一国の総理大臣が答弁することができないで、憲法改正の既成事実をつくるということは許されない。憲法調査会でも何でも、前進を阻止してもらわなければならない。若干の少数の良心的な学者がいても、多勢を頼んで改憲盲動、つくり上げているのが憲法調査会の現状であり、私たち憲法調査会の成立に反対したその憂いが、現実において露呈しておるのでありまして、こういう形において人民の意思というものが権力によってじゅうりんされるということは耐えられないことである。しかもその国会——人民を代表するわれわれの質問に対して、一国の総理大臣が明快な回答ができない、というような人の手に、憲法改正の問題をゆだねることは断じてできない。もっとはっきり池田さん答弁願いたい。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法の発案権は国会議員並びに内閣、両方にある、こう考えておるのであります。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 この運動方針書の中の「適当な時期に国会憲法調査機関を置く」この「適当な時期」ということの意味ですね、どういう条件なりを言うのか、明らかにしてほしい。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 「適当な時期」とは、やはり憲法調査会報告がありまして、そしてその報告によって審議する必要がございますので、「適当な時期」と言っておるのであります。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 それは全く適当な答弁でたよりないのですが、もう少し積極的に聞きましょう。この運動方針書ができる過程で、池田総理と中曽根運動委員長との間で、最終段階で話し合った後、各党、各派の協力のもとに国会調査機関を置く、そういうことばが入ることになったのに、ところがその後、それがまたさらに消されておるわけです。結局自民党だけでも押し切ってやっていこうという気持ちが、そこにあるのではないかと考えるわけですが、どうでしょう。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はこういう問題は、やはりわが党だけでなしに、各党が話し合ってつくるということが適当であると思って、そういう文句を入れたのでございます。しかし実際問題といたしましては、国会にそういう調査会を置くというときには、議運にかかります。議運には各派が出ておられます。しいてそれを言わなくてもということで消したと思います。私の気持ちはそういう気持ちであります。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 総理の考えから言うならば、各党各派の協力のもとにということばを置いておくほうが自然なんであります。自然の姿というものをなぜ消したわけですか、そこの事情がわからない。初めからそういうものが出なかったなら別なんです。一たんそれを総理意向によって挿入することにしながら、特別消すというところに、いろいろ疑惑を生むわけなんであります。そのいきさつを、もう少し明確にしてほしいのです。
  64. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私と中曽根君とのときには、そういうものを入れたらどうかと中曽根君に言ったのでございます、そうしましょうかと言って帰りましたが、あと消えていることを聞きました。私思うに、やはり国会にそういうものを置く場合には、議運でいろいろ相談しますから、しいて入れなくてもいいのだというふうに聞いておったのであります。中曽根君から直接に消した理由は聞いておりません。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの総理答弁を総合しますと、こういう懸念があるわけです。国会調査機関の設置がなかなかむずかしい、こういうことになると、この内閣のほうの機関ですね、どういう機関になるのか、こっちが置くわけじゃありませんからわかりませんが、それを動かしていく、こういう懸念が感ぜられるわけですね。それで、一体どちらを重視するのかという点を当初お聞きしたわけなんです。こちらのほうを眠らして、そうして内閣のほうをどんどんお進めになる、そういうことが懸念されませんか、またそういうことになっては、はなはだいけない状態であると思うわけですが、どうなんです。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろ御心配のようでございますが、この問題は、結局国民の大多数の総意とも言いたいくらいな気持ちで取り扱っていかなければならぬ。したがいまして、内閣においても検討いたしますし、国会においても御検討願いたいと思います。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 内閣機関国会機関よりも先に動き出す、そういうことは少なくともないということは言えましょうか。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どちらとも言えません。国会のほうで先におつくりいただいてもけっこうです。あるいは国会のほうがなかなかできないというなら、内閣のほうが先になることもありましよう。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ内閣のほうが先になるという心配を肯定されているじゃないですか。  矢部先生にちょっとお伺いしますが、いま内閣国会における、報告書を受け取った後の問題について、多少やりとりしたわけですが、私たちは、この民主憲法のたてまえからいって、国会機関が動かぬうちに、内閣機関がどんどん動いていくということは間違いである——法律論じゃないですよ——と考えているわけですが、矢部先生のお考え方を参考に……。
  70. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) これは全く私個人の考えでございますが、報告書が出た場合に、私としましては、国会機関を設けて検討していただきたい、こういう希望でございます。しかし、それが実際問題として、なかなか困難だということであるならば、法制局のある部局などで報告を整理するということもあってしかるべきではないか、こう考えております。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 まあこのいまのお答えのほうが私は、だれが見ても筋が通っていると思うのです。総理のひとつ反省をこの点で求めておきます。  次に、憲法調査会関係に若干入ってお聞きします。  現在欠員が相当あるわけですが、その事情はどういうことでしょうか。
  72. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) これは御承知のように憲法調査会の発足しました当初から、社会党から出るべき委員が出されておりませんので、その社会党に割り当てられているポストは全部あいたままになっているわけであります。それから先般学識者の委員の一人として出ておられました金正米吉さんがなくなられました。しかし、これほどういう理由か、もうおそらく最終の段階にきているという意味でありましょうか、これは後任が任命されておりません。それから、かつて緑風会、続いて参議院の同志会から一名出ておられたのでありますが、議席の変化によりまして、これが公明会のほうに割り当てられる、こういうことになったようでございますけれども、公明会のほうからは、委員を出されなかったとか聞いておりますが、これも欠員になっております。そういうわけで、まあ当初五十名ということが予定されておりましたのが、ただいまは十人余り欠員になっている。こういう状況でございます。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 公明会が委員を出さないのはどういう理由ですか。
  74. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) これは私全く存じません。これは聞いておりません。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 この報告書提出がいろいろうわさされているわけですが、確実なところ、いつごろになるのか、それからどういうていさいで行なわれるのか。
  76. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) ただいまのところ、これは一応のめどでございますけれども、六月の下旬にはおそくとも報告書を完成したいと、しかし、これは審議の模様によりまして、多少早くなったりおそくなったりすることはあり得るかと思っております。  それから報告書の構成は、おおよそ現在のところ五編からなる予定でございまして、第一編には、憲法調査会が成立したいきさつというようなものが客観的に書かれる。第二編には、憲法調査会の構成というようなものでありまして、つまり委員会とか部会とかいうようなものがどういうふうにつくられたか。第三編は、調査審議の経過と内容というのがまいりまして、憲法制定の経過の調査、それから憲法運用の実際の調査、その経過と内容が簡単に要約して書かれます。詳しいものは、すでに報告書が出ておりますので、これが付属文書となってついて出るわけであります。それから、審議の経過と内容、これも要約して書かれるのでございますが、これもすでに各部会の報告書というものが出ておりまして、これが付属文書になる予定でありますから、最終報告はかなり要約されたものになるはずであります。それから公聴会と海外調査の経過と内容というものが簡単に要約して書かれます。これも公聴会の記録と海外調査の記録というものは、付属文書として提出される予定であります。その次に第四編というものがまいりまして、ここで憲法に関する基本的な問題と重要事項について憲法調査会で行なわれました審議の模様というものがかなり集約的に出される。第五編では、各委員意見を並べて書く、こういう予定になっております。  そこで第四編の書き方というのが、目下審議中の問題でございますが、これに対しましては、いろいろの委員の間から要求が出てまいっておりまして、多数意見をはっきり出せとか、少数多数の別を明らかにしろとか、あるいは共同意見書というものを一番重視せよとか、いろいろな意見が出ておりますが、私ども運営にあたっている側といたしましては、多数少数というようなことはたいした意味はない。なぜならば、改正論が多数を占めるということは、社会党が参加されなかった関係もあって、初めから明らかなことでありますし、それから自民党でも、出ておられる委員は、いろいろな事情でかなりひんぱんに更迭しておられます。そうすると、延べ人員というものは相当数にのぼるわけであります。そういうものを集めて、これが多数だ、こういうことを言ってみても、たいした意味はない。そこで、むしろ私どもは、多数少数というようなことは出す必要はない。むしろ改正を是とする意見改正を否とする意見との論拠というものを重視して出したい、こういう方針で目下努力している段階でございます。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 大体わかりましたが、たとえば昨年の九月上旬でありましたか、憲法改正の方向をとっている十七人の委員の方が共同意見書を出された。あるいはまた、けさの新聞を見ますと、昨日の調査会に、今度は二十九人の方が押しつけ論の問題につきまして共同意見書を出しております。こういうものの扱いというものは、一体第四編の報告においてどういうふうに扱われるのでしょう。
  78. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 調査会は、最初に多数決でもって意見をしぼるということはやらないという方針を立てまして、今日までそれを貫いてきております。それがために、大体審議は一人一党という形で行なわれてきておりまして、各委員意見というものが出ているのであります。ところが昨年の九月に、突如として共同意見という形が出てまいりまして、昨日もまた、制定経過に関する共同意見というものが出てまいった。これは今までの憲法調査会のたてまえからいうと例外に属することでございます。そこで、これをどのように取り扱うかということで、調査会の中にはいろいろな見解がございます。共同意見書というようなものは取り上げるべきではないという意見もございます。しかし、これだけの委員が共同して出された意見を、調査会として軽く見るということは間違っているという意見もございます。そこで、一応ただいま審議しております第一次案というものには、共同意見書からの意見が引用されております。それからもう一つの、制定経過のほうの共同意見は、昨日出たところでございまして、これをどうするかということは、今後検討しなければならない。しかし、初めに出ました憲法改正の方向という共同意見書も、最終的にどういう形で取り入れるかということは、まだきまっておりません。これはいろいろとこれから調査会の中でもんでいかなければならぬ問題だと、こういうふうに考えております。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 憲法調査会の当初からの、多数少数ということにはこだわらないというたてまえと矛盾しないような扱いをひとつ今後とも私は要望しておきます。  それから多少これは性質は違うわけですが、広瀬委員、神川委員から改正私案というものが出されて、そうしてこれを報告書につけるような要求が出ているやに承っておるわけですが、こういうものの扱いは一体どうなるわけですか。
  80. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 先ほど申し上げましたように、調査会は一人一党というような形で出てまいったものでありますから、第五編には、各委員を単位にいたしまして、各委員意見を要約して載せるという方針になっているわけであります。そこで、神川、広瀬、もう一人大石義雄さんという委員がおりますが、この三人はこれはまあ最も積極的あるいは戦闘的な改憲派でありまして、この憲法の条章全部について自分が書きおろされたものがある。それが憲法改正試案といわれているものでありますが、それは個人単位に意見を要約しますと、これらの人たちは、自分たち一つの体系的な一体として改正案というものをとっておるのだ、しかるに、それが天皇の項目とか、戦争放棄の項目とかということでこま切れのようにされると、自分たちの体系というものがくずれてしまう、だから、改正試案の条文だけはひとつ参考資料としてつけてもらいたい、こういう要望が出ておるわけであります。しかしながら、調査会の中にはそういうものを出す必要はないのではないかという意見もございますし、個人の改正試案というようなものを出すということになると、かえって誤解を受けるということもあり得るし、これはどうだろうかというようなこともありまして、先般これはだいぶ激論になりましたけれども、結局まだ決着はついておりません、これから決着をつけなければならぬ問題であります。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 関連……。
  82. 太田正孝

    委員長太田正孝君) あなたの御質問の時間もございますから簡潔にお願いいたします。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 この間、高柳先生が丁寧に憲法調査会の性格をこの予算委員会答弁しておりますが、いまの話を聞いていると、非常に心配なのは、憲法改正というのは、端的なことばで言えば、反革命行動ですから、学者の名を借りて、反革命行動隊が自分たち意見を、この憲法調査会の牙城に立てこもって反革命行動をするということに対しては、現行憲法を守るというたてまえからするならばゆゆしき重大事です。学者の名によって、研究調査の名によって、一個の圧力団体を形成している政治行動というものが憲法調査会でやられるということは逸脱行為ですよ。そんなことまで国会は許していないことは、明らかに憲法調査会会長がここで答弁しておるのですから。このごろのほんとうに日本の憂うべき現象というものはそこにあると思います。矢部さんのような常識人はよくわかっておると思いますが、池田さん、これは聖徳太子の憲法十七条がくずれたとき、大化の改新の武力革命が蜂起したということを思い出してください。単なる憲法改正じゃないですよ。圧力政治によってあの理想的な憲法が踏みにじられたとき、次には絶望的な武力革命が誘発された。憲法改正をこういうような形によってだんだんやっていくということは、それ自体が国内における危機を私は激化していくと思う。非常にあぶないと思う。この憲法調査会の名による逸脱行為は、これからどしどし列挙されると思いますが、この機会に、このゆゆしき重大事に対してどう対処するか、どう自制するかについて池田総理大臣の答弁をお願いいたします。
  84. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法調査会の運営につきましては、私はとやこう言うべきではないと思います。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 調査会はほんとうに調査の機関であって、そういう性格から言ったら、改正試案なんというものは個人の自由だと言えば自由だが、そういう立場からも慎重に扱ってほしいと思いますね。誤解を与える云々とおっしゃいましたが、確かにそうです。そんなところまで扱うのはそれは全く行き過ぎですね。それで、これは多少むずかしい質問になるかもしれませんが、この委員三十八名ですね、色分けすると大体どういうことになるのでしょうか、改正について。賛成、反対と……。
  86. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 一々名簿を出して申し上げてもよろしいのですが、そこまで必要はなかろうと思いますが、まあ幾つかのグループがおのずからできております。改正に反対である、あるいは改正する必要ない、そういう意見の方が七名くらいおられます。その中には、いわゆる護憲論に近いような方もあれば、解釈運用によってやれるんだから改正の必要はないという、こういう御意見もあって、必ずしも一致してはおりませんが、大体そういう方が七名くらいおられます。名前をあげますならば中川善之助委員、それから真野毅委員、坂西志保委員、正木亮委員、蝋山政道委員、高柳賢三委員、それから水野東太郎委員というような方がそうであります。それからそういうのに対して、先ほど申し上げました最も積極的な改憲論で、自分で条章全部を書いたという人が三人あります。広瀬久忠委員、それから神川彦松委員、それから大石義雄委員。それからそれ以外の十七人の方が共同意見書に参加しておられますが、これはやはり全面的な改正論であります。これは名前が多過ぎますから省きますけれども、ただ自民党から出ておられる委員でも共同意見書に参加しておられない委員があります。井出一太郎さんとか、あるいは古井喜實さんとか、中曽根康弘、稻葉修なんという委員はこれは参加しておりません。で、井出、古井両委員などはかなり慎重論です。中曽根、稻葉両委員はむしろ首相公選論ということに集中しております。それからさらに新しく委員になられまして、まだ意見の表明のない方が中垣國男委員とか、周東英雄委員とか、あるいは迫水久常委員というような方があるし、それから椎熊さんもおそらく共同意見が出たときにはまだ委員でなかったのではないかと思います。参加しておられません。それから学識者の中でごく部分的な改正論というものを述べておりますのが、細川隆元委員と植村甲午郎委員、それに私も属します。ごく部分的な改正意見、そういうような色分けでございます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 昨日出されました二十九人の共同意見書、これに署名をされておられない方が九名おられます。これはどなたとどなたでしょうか。
  88. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 名簿見ながらでないとわかりませんが、先ほど申し上げました改正の要なしという七人の方に、私とそれから細川隆元さん、これだけであります。それが参加しておりません。二十九人が署名して九人が参加しておらない、こういうことですね。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、矢部さんはいわゆる押しつけ論には署名しなかったということになるわけでありまして、大いにその見識を評価するわけでありますが、その全部について、いまいろいろお尋ねするわけにもまいりませんので、ただ、一番問題になっている憲法第九条ですね、この点についてだけ若干お聞きしたいわけですが、つまり憲法第九条は、いろいろ言われておるが、もとは幣原総理提案したものだと、こういうふうに、私たち当初いろいろなうわさは、そういうことは聞いておりましたが、憲法調査会関係のいろいろな資料等を見せてもらうと、なお一そう私たちそういうふうな確信を実は現在では持ってきておるわけでありますが、この点についての憲法調査会内における結論といいますか、模様をお聞きしたいわけです。
  90. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) 憲法調査会の制定経過に関する事実調査から浮かんできておりますのは、いま亀田さんの言われたように、これは幣原首相の発想によるものだと思われる証拠が非常に強うでございます。ただし、これはそうだと断定することができるところまではなかなかいっておりません。それは反対の証言もかなりございます。それで、まあ私は幣原さんの発想だと私自身は見ておりますけれども調査会意見としてそこまで断定しておるわけではございません。中には、そういうことは全然間違いだと言っている人もございます。なぜそういうふうな御意見が出てきたかといいますと、当時マッカーサー草案の指針になりましたアメリカ政府文書、これはSWNCC二百二十八号というのでありますが、これによりますと、当時のアメリカ政府は、日本の軍備を否定するというような考えは毛頭示しておりません。日本が軍備を持つということは当然の前提として、ただ、シビル・コントロールを要求する。したがって、閣僚はシビリアンでなければいけないとか、あるいは天皇は軍事上の権限を一切剥奪されるというようなことが述べてある。これはつまり軍隊があるということを前提としてのことでありますから、第九条のようなものがアメリカ政府の意図であったということは、これは言えないということは明らかだと思います。そこで、そういうものが出てきたのは何だというならば、結局、占領軍最高司令官が決断を下したと、こう見るよりほかない。ところが、だんだん調べてみますと、占領軍最高司令官自身がそういうことを言い出したというよりも、むしろ当時の幣原首相が、天皇制を保持することに全力を注ぐという目的で、あの九条二項のようなことを考え出された、こう見るべき証拠のほうが強い。これは幣原さんは調査会ができたころもうなくなっておられまして、直接にお聞きすることはできなかったのでありますけれども、しかし、マッカーサー元帥のほうは、例の一九五一年の五月五日でございましたか、アメリカに帰還を命ぜられて、アメリカの上院で行なった証言の中でも、それから一九五五年のロサンゼルスでやりました演説でも、あるいは憲法調査会が派遣しました調査団の質問に対する回答においても、みなこれは幣原が言い出したことだという趣旨のことを言っております。そうして、先般、朝日新聞に載りました回想記によりますと、自分は、幣原からこういう構想を持ちかけられたときに、腰が抜けるほど驚いたというようなことを言っております。とにかく、直接証拠というべきものは、生きたマッカーサー元帥以外にはちょっとないわけでございますので、そっちを信ずるよりほかないわけです。また、幣原さん自身も、いろいろな人に、あれは自分が言い出したことだということを語っておられるということは、間接証拠ではございますけれども、たくさんございます。そういう意味で、私どもは、どうもこれは幣原さんの発想にかかるものだと、それを最高司令官が認めたもの、こういうふうに解釈しております。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 非常にはっきりいたしましたが、結局まあその証拠の関係からいいますと、マッカーサー自体も認めておる。それから各種の文書が相当調査会に出ておるわけですね。ところが、それに対してそうではないのだという意見が一部ありますが、私も若干それらを勉強さしていただいたが、しかし、これはもう自分の希望的な観測ですね。間接的な書類とか、そういったようなものは一つもない。ほんのこれはもう主観的な考えだというふうに私感じているのですが、反論のほうは。ともかく幣原説については生証人もあるし、それからいろいろな文書がある、いまお示しになったように。一方のほうはそんなものは一つもない。その点だけははっきりしておると思いますが、どうでしょうか。
  92. 矢部貞治

    説明員矢部貞治君) その幣原さんがそういうことを言い出したはずはないと言われる方々は、一つは、たとえば神川委員のような立場からは、つまり、当時のアメリカの占領政策、日本のみならずドイツも含めての占領政策というものからみて、いわゆる非武装化、非軍事化という大きな政策があったのであって、この憲法はそれに基づいて出てきている。幣原さんのほうから言い出したにせよ言い出さないにせよ、結局アメリカとしてはこういう憲法に持っていく予定だったのだ、それは客観的にそうだと、こういうようなふうに言われる方もある。それから、あるいはなくなられました松本烝治博士、それから芦田均先生などは、自分は当時幣原内閣におったけれども、そういうことは一度も聞いたことがない。むしろ幣原首相はマッカーサーのほうからそれを言い出したので、これはどうもやむを得ないと、こういうふうに言われておると言われるのです。だから、これは幣原が言い出したものじゃないと、しかしこれは私はまあこういうことを断定するわけではありませんが、マッカーサーのほうから出てきたんだと言わなければ、ああいう憲法はとてもできないと考えて幣原さんがそういう態度をとられた。まあ言いかえますと、閣僚が幣原さんに、まあだまされておったと言っちゃ悪いかもしれませんが、一ぱい食わされたと、こういうことだと私は思っております。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 調査会関係いろいろまだあったわけですが、時間が詰まってきましたので省略しまして、次に、憲法第九条に関して総理に若干確かめたいわけですが、一つは、この自衛に必要な核武装は憲法違反にならぬ、こういうふうに総理は前にお答えになっているわけですが、いまでもそうでしょうか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自衛に必要な核武装は憲法違反にならない。私はそれが、自衛権が日本国にありますから、自衛権のための核武装なら必ずしも憲法違反にならぬ、自衛の範囲ならば。こう言っている。これは理論上でございますよ。しかし、政府といたしましては、法理上可能であろうとも核武装しない、こういうことにしておるのであります。理論的にいえば、私は自衛の範囲ならばそれは何でもいいと思います。しかし政治的な考え方としては持たない、こういうことでございます。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 ときどきこれも論議されておることですが、どうもはっきりしないから再度聞きますが、自衛に必要な核武装とそうでない核武装というものの区別は、兵器からくるのか、目的からくるのか、どっちなんです。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はそういうこと、核兵器の性質あまり詳しく存じませんが、私としては理論的には自衛の範囲ならば何でもいい。しかし政治的にはそういうことはしない、こう言っているのであります。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、いまの、防衛庁長官、あなたの所管です。
  98. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 核兵器と自衛権の問題でありますが、いま総理お答えいたしましたとおり、純法理的には自衛権の範囲内では持ち得る。しかし政策的には絶対保有しないということでございます。なお、攻撃的並びに防御的兵器の識別でありますが、これは目的なり、あるいは環境等いろんな条件がございますので、総体的な問題でありまして、これを具体的に、あるいは数字的に、防御的である、あるいは攻撃的であるというはっきりした区別はなかなかむずかしい問題でございます。ただ常識でいえば、たとえば防空兵器のごときは他国に脅威を与えませんし、これは防御的兵器ということが明らかであります。また、ICBM等誘導弾のごときは、他国の領土の破壊を目的とする脅威、これは明瞭に攻撃的兵器でございます。ただ、ほかのいろいろな兵器を個々的に区別して述べるということになりますと、非常にむずかしい状況でございますので、困難でございます。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 もう一点聞きますが、総理は前に、国連警察軍に参加する場合は違憲でないと、こういうことも言っているわけです。自衛隊が国連警察軍に参加するのは違憲ではないと、この考えは同じですか。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連警察軍というものの性質によりますが、単に平和確保とかなんとかいう目的であれば、私は憲法違反ではない。しかし、防衛庁設置法にはそういうことは規定しておりませんから、実際問題としていま考えておりません。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 それから、防衛庁長官に聞きますが、これも前に国会論議になったのですが、万やむを得ない場合には自衛隊が海外の基地をたたく、これもやむを得ないと、こういうふうに答えておるわけですが、これも変わっておりませんね。
  102. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 外国から来る急迫の侵略に対しまして、他に手段が全くないとき、万やむを得ない場合には、座して死を待つべしというのがわが憲法の趣旨ではございませんので、法理論的にはこの基地をたたくということも許されるものである、法理論的にはそう考えております。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 以上の政府答弁を総合しますと、私は憲法第九条というものは実質的に破壊されていると思うんです。第一は、この核兵器の問題にいたしましても、兵器では区別がつかないで、目的によると、目的上必要ならば何でもいいんだと、こう答えておるわけです。何でもとおっしゃった、さっき総理は。それから、この海外出動の問題にいたしましても、国連警察軍と、いわゆる国連軍と、これも目的による区別、目的による。目的なんというものは、これはどうにでもつけられるわけなんです。実力部隊自体は同じものなんだ。敵の基地をたたくということも、万やむを得ないかどうかということは、これは目的なんだ。主観的なものだ。自衛に必要な武器といいましても、これも主観的。そういたしますると、憲法第九条に関連して一番国民が心配しておる海外派兵とか、あるいは核武装、こういう問題は部分的には自衛隊法の改正等をすれば現行憲法下でもやれるということになっていくじゃありませんか。池田さんが憲法改正に慎重な姿勢というものは私たちも感じておりますが、しかし、実際は解釈によってこれを変えてしまっておるというふうに感ずるわけであります。そういう受け取り方は間違いでしょうか。そういう目的によってですね、大事な兵器なり、出かけるかどうかといったような問題を区別する程度では、たいへんあぶないわけなんです。実質的には少しも変わらぬじゃないですか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 目的によっていろいろ解釈を変えるというお話でございますが、やはり内容、客観性を持たなければなりません。私はそういうふうに感ずるという亀田君のお話ですが、そういうことを感じないようにひとつまっすぐな見方でいこうじゃございませんか。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、総理に、じゃ、そのうち一点お尋ねしますがね、侵略戦争と自衛戦争というものは現実に区別できますか。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 侵略戦争あるいは自衛戦争、これは私はやっぱり客観的にきまり得るものだと思います。だから、憲法の規定しておりまする戦力は持たぬ、他を武力によって威嚇しないというこの憲法精神と、われわれのいまやっております自衛権というものは、はっきり分かれて客観的にきまってくると思います。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 実際の場を私は考えて申し上げておるわけなんです。たとえば大東亜戦争すら、この自衛戦争という名前で日本はその当時行動したじゃありませんか。その点、どういうふうにお考えでしょうか。あれを侵略戦争と考えないのですか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨日ですか、一昨日ですか、そういう質問がございましたが、これは後世史家の考えるべき問題だと思います。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 後世史家を待たなければ大東亜戦争の性格というものはわからぬということで、一体済みますか。
  110. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、自衛権の、あるいは自衛権の発動といいますが、しかし、自衛権の発動とはなかなか私は言いにくい場合もあると思います。しかし、自衛権の発動という人もおりますので、いまは私は大東亜戦争の状態を何だと断定するだけの気持ちは持っておりません。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 大東亜戦争のようなあれだけ明確な侵略戦争に対してすら、はっきりとこれは悪かったと言えぬような人に、先ほどのような憲法第九条の拡大解釈をされたんでは、これはたまらぬわけです。そんなことで済みますか。外務大臣、どうなんです。
  112. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま総理大臣がお答えしたとおりに考えております。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣の答えが不明確ですから、あなた自身の考え方を言ってください、大東亜戦争に対する。
  114. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大東亜戦史の細部に至るまで精通をいたしておりませんので、権威がある国会で私の見解を申し述べる自信がございません。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 大体、核武装の問題についても非常にルーズになってきておる、考え方が。それで、関連して確かめますが、例の原子力潜水艦の問題ですね、外務大臣に聞きますが、どうなっているのですか。アメリカ海軍ではサブロックを積むと、ノーチラスに、そう昨年の暮れ発表しておるわけなんです。アメリカとの交渉はどうなっているのですか、その後。
  116. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安全性の問題につきまして、日米間で折衝を続けておるわけでございます。それがまだ完結するに至っておりません。完結いたしますると、国民に公表をいたしたいと考えております。それから、サブロックの問題でございますが、公式にはまだ開発の途上にあると聞いておるのでございまして、これが現実に実用されておるとは聞いておりません。しかし、これが実用の段階になることと日本にこれを持ち込むということとは、全然別問題でございまして、先ほど総理大臣もお答えいたしましたとおり、私どもといたしましては、核兵器の持ち込みということはわが国として認めないという既定の方針を堅持いたしております。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 廃棄物の基準等については、これは若干時間がかかると思う。しかし、サブロックを、一方は積むと、こういう公表をしておるのに、積むか積まぬか——折衝はそんなに長くかからぬじゃないですか。積むと言っておるのですか、積まぬと言っておるのですか。どっちなんです、それは。
  118. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) サブロックの装備搭載の問題でありますが、これは委員御存じのとおり、十二月四日の国防省の発表に詳しく出ております。なお、そのときに、記者との質疑応答におきましてアドミラルが説明しておりますことは、現在まだ開発研究途上にある、大体本年中に約三十発のテストが必要である、したがって、専門筋の観測では、本年末かあるいは来年になるのじゃないかというのが専門家の観測でございまして、海軍省辺では、大体そういう場合には二十五隻を考えておるというのが事実のようでございます。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 きちんと開発されたら、どうなるのです。結局、積まないというのですか。これは何もそういう汚染度とかといったような問題と違うわけですから、アメリカ政府方針というものを確かめたらいいわけでしょう。その点はどうなっているかということです。
  120. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) サブロックが実用化されて、そうしてそれを積む積まぬの問題はアメリカの問題だと思うのでございます。で、それの持ち込みを認めるか認めないかの問題は日本の問題でございまして、私どものほうとしては認める意図がないということを再三繰り返して申し上げておるとおりでございます。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 そういうわかり切った、きちんと確かめればすぐわかることを、のらりくらり言っているところに、私が、ルーズさが出てきているということを申し上げているわけなんだ。  それから、もう一つ、昨年の十二月七日に、東京地方裁判所で、長崎、広島に対する原爆攻撃は国際法違反だという意味の地裁の判決が出たのに対して、官房長官は、どうもその部分は賛成しがたい旨しゃべっているわけですが、一体これはおかしいじゃないですか。どうなんです。もう一ぺん答えてください。
  122. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 十二月の七日でありましたか、判決ございまして、新聞記者の方々から政府のコメントを求められて、いまの原爆の投下ということは非常に遺憾なことでありますが、まだそれを禁止する実定法規もないので、国際法違反と言い切るのはいささか言い過ぎではあるまいか、このような見解を述べております。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 つまり、そういう談話の中に、政府というものが核武装というものを非常にルーズに考えている性格があらわれているわけなんです。あれほど明確な判決ですね、しかも、ほとんどのやはり関心を持っている学者があの判決の部分は支持をしているのです。原爆投下についてそれまでに条約がないからというようなことをいまおっしゃるが、全くこれは子供のような議論ですね。初めての原爆投下でしょう。それまでにそんな条約ができるわけがないでしょう。ところが、御存じのように、国際法ではマルテンス留保条項というようなものがちゃんとあるわけですね。条約に実際書いてなくても、非人道的なことはよろしくないぞと、条約では一々全部は書けるものじゃないのだ、こういう取りきめまであるわけでしょう。それを初めての問題について、条約がないから国際法違反だというのはちょっとおかしいというような、そんな程度の低い談話を発表されては、これは政府の核問題に対するきわめてルーズな性格を出している。先ほどの九条に関する総理の見解等とも、これはそういう点では一致する。だから、私たちが危険性を感じる。ほんとうにあの原爆被害者の立場というものを考えたら、そんな変な談話などは出てくるはずがない。総理大臣、どういうふうにお考えでしょう。あの原爆判決について感想をお聞きしたい。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、国際法違反だとか違反でないとかという議論はさておいて、こういうものは二度と、ノー・モア・ヒロシマでなければならぬ、こう考えているのであります。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 それほど力を入れるなら、なぜ国の正規の機関が、裁判所が国際法などを研究して、これは国際法違反だと、こうやっているのだ。その気持ちからいうたら、それを支持するのがほんとうでしょう。しかも、何もそれを支持するのが、理論的にそれほど間違った問題じゃない。総理のその気持ちからいうたら、官房長官のあの談話は矛盾する。長官、ああいう談話は取り消す必要がありますよ。恥辱ですよ、日本の。どうなんですか、長官。総理のいまの気持ちから考えて、おかしいじゃないですか。
  126. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いま総理からお答えしましたことは、かく望ましいと言いますか、祈りたい気持ちでおっしゃった。現実の問題は、まだまだ世界各国の情勢そこまでいっておりません。いろんな学説も区々でございまするし、また実定法もない。国は被告といたしましてそういう議論を展開してまいりましたが、裁判所の判決においてはその点を否定された。私どもとしては、この点はいささか、現状からいえば、客観的に行き過ぎではありますまいか。ただ、ほかの二点におきましては、政府、被告の立場が認められて、まあ結論的には妥当な判決であろう、かように申しております。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 自民党運動方針書を拝見しますと、徴兵制はとらない、こう明快に書いてある。これは総理にお尋ねしますが、たとえ自衛隊の応募者が少なくなっても、絶対にその方針は曲げませんか。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) もうそういうことを考えること自体が、憲法をおろそかにしているのじゃございますまいか。そうしてまた、私はいま、自衛隊の応募者が少ないから徴兵制度をしこう、これは夢にも考えておりません。こういうことはすべきじゃないと。そういうことを議論することが、もうちょっとどうかと思います。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 そういう議論をされる方があなたの中にあるわけなんです。私に対してそんな開き直るよりも、内輪に対してもっとしっかり取り締まってもらわなければならない。  防衛庁長官に聞きますが、自衛隊のなかなか集まりが悪くて、お困りのようだが、現在の定員の充足率、それから来年の採用数と募集者数との比率、こういう点を、最近の点を明確にしてほしい。
  130. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 自衛隊の自衛官の充足の問題でありますが、これは航空自衛隊並びに海上自衛隊は九割以上常に上回っておりまして、支障を来たしておりません。ただ、陸上自衛隊のほうも、基幹幹部、いわゆる曹までの階級は、これまた充足が十分に近いわけでございます。問題は二士の募集でございます。これはなかなかたいへんな問題でありまして、御指摘のとおり、いろいろ苦労をいたしておりますが、大体毎年、過去三年の平均について見ますると、約四倍の応募率がございますが、体格検査で約三分の一は振り落としまして、いろいろな意味で厳密に長期勤続にたえる質のいい者を考えますと、どうしても穴があいてまいるわけであります。三十九年度の陸上自衛隊は八四%充足率を、定員はあれとして要求申し上げておるわけでありますが、この二士の問題につきましては、私どもあらゆる募集方法、あるいは生活環境、あるいは職業教育その他各般の改善を努力いたしまして、ぜひともいい質の者を充足いたしたい。質をかまわなければ十分採れるわけでありますが、いま申し上げましたとおり、応募率は多いのでありますが、なかなか適格者が見出しがたいのであります。これも御案内と思いますが、英国あたりも、二百四十の募集事務所を有しまして非常に努力いたしておりまして、わが方では、まだ残念ながら七十九ヵ所しか地方連絡部がございません。こういう点も機構を拡充し、研究する必要があろうと思います。なおただいま御質問になりました数字の点につきましては、政府委員から御答弁いたします。
  131. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答え申し上げます。  最近三年間にわたります採用者に対する応募者の倍率は、昭和三十六年度は六・二倍であります。昭和三十七年度が四・三倍でございます。なお昭和三十八年度、これはまだ第四次が終わっておりませんが、第三次までの募集成績は、応募率四・五倍でございます。それから現在どれぐらいの充足率であるかという御質問ですが、本年の一月の現在の状況は、陸上自衛隊が八二・二%でありまして、海上自衛隊は九三・五%、航空自衛隊は同じく九三・五%でございます。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 この応募者数の適正な倍率というものは、どういうところなんでしょう、長官。
  133. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。  適正な倍率と申しますのは、二倍、三倍、四倍と確定するのはなかなか困難かと思いますが、私が昨年イギリスへ参りましたときの状況によりますと、二倍で充足をしております。したがいまして、応募者の質によると思います。この点は、防衛庁といたしましても、十分イギリスの制度等を参考といたしまして、将来は選考方法を相当考慮いたしまして、良質の入隊意思のかたい者を採りたいというふうに選考方法を変えたいと思っております。そういたしますと、直ちに三倍がいいとか四倍がいいとかということじゃなくて、そういった応募者の質の選択によるというふうに考えております。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 従来、日本では大体五倍が適正だというふうにいわれてきているんじゃないですか。長官どうなんです、これは大まかな根本問題。
  135. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) これは十分応募の方法に習熟しない初期におきましては、そういうことも申し上げたこともあろうかと思いますが、いろいろ国際的な調査をいたしました結果、必ずしも応募者の倍率が五倍であるからいいとか、あるいは三倍であるから悪いということにはならずに、結局は入隊意思のかたい隊員を、どうして応募せしめるかということが中心でありまして、そのことが確保されれば、三倍でもよいかという判断を現在持っております。現にイギリスは二倍で相当勤務意思の強い者を募集しておる状態であります。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 まあきのうの、なんですね、大蔵大臣との議論みたいなもので、基準ということになると、なかなかむづかしいかもしれませんが、従来五倍といわれてきましたが、最近はずっと倍率が低くなってきているわけなんです。それだけ応募者がだんだん減っていっているわけです。昨年度は三倍ちょっとでしょう。そういうふうに下がってきておるので、それに合わすようにイギリスがどうじゃとかそういう説明をしておる。きのうの大蔵大臣の答弁と一緒です。  それで、それじゃ具体的に聞きますがね、第一線部隊で約五〇%くらいしか定員のいないところがあるはずですが、これはどこですか。
  137. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。  先ほど申しましたように、陸上自衛隊全体の充足率が八二でございますが、前線におきましては、たとえば、新隊員が入隊いたしますと、それは教育隊へ入れます。したがいまして、その新隊員の教育とか、さらに下士官等の教育とかいうことで、相当人数がいつも前線から抜けておるという状態もございまして、ところによっては、いま御指摘の五〇%の部隊もあろうかと考えております。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 それはどことどこです。説明は要らぬから場所をきちんと言ったらいい。
  139. 海原治

    政府委員(海原治君) 先生御存じのように、部隊の数は非常に多うございまして、各部隊につきましての資料の持ち合わせはございません。ただ、師団単位で申し上げますというと、たとえば、昨年のこれは三月三十一日現在の数字でございますが、北部方面隊におきます第五師団、第七師団等は平均充足率は六〇%であります。東北方面隊におきましては六八%以上でございます。東部方面隊におきましては六九%以上、中部方面隊におきましては各師団の平均で六二%以上、西部方面隊が六七%以上、こういう数字になっております。したがいまして、半分しかないというところは、ごくまれな部隊であると思いますし、先ほど人事局長が御説明しましたように、入校しておりますときとかいう一時的な現象と思います。一般的に申しますというと、第一線の部隊は大体六割から六割五分程度の充足率を現在保っております。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 まあ入隊して早くやめる人なり、いろいろな問題があるわけですが、いずれにしても、まあ総理もお聞きのように、はなはだもってこの自衛隊は評判が悪い。なかなか若い人が入ってこないわけなんです。これで一体徴兵制をやらないでやっていける自信があるのですか。しかも、年々その状態というものは悪化しているわけなんです。どうなんですか、まだそこまでいっておらぬから、総理はそういうのんきなことをおっしゃっておるが、もっと悪くなってきたら、やはり問題が起きてくるんじゃないですか。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は徴兵制度などは全然考えておりません。やはり国民が自衛の必要を感じてくれば、あなたの御心配のようなことはないと思います。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、次に日韓会談に移りますから、どうぞ憲法関係けっこうですから……。  けさの新聞によりますと、十二日から日韓問題についての本会議を開く、こういう報道が突如出てきておるわけです。十日からのこの閣僚会議というものの話だと昨日は思っておりましたところが、その場ですぐ閣僚会議の推移を待たないで十二日から本会議を開く、こういうふうに何かおきめになったようでありますが、これは報道どおり間違いないわけでしょうか。間違いないとしたら、なぜ突如としてそういうふうなことになってきたのか明らかにしてほしい、外務大臣
  143. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のとおり事実でございます。理由といたしましては、一昨年三月まで本会談が続けられてまいりましたが、それが中断いたして予備交渉に移っておりましたが、諸般の状況等を考えまして本会談を再開すべしという判断に立ちまして十二日から本会談に切りかえようということにいたしました。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 十日からの農林大臣が出席する閣僚会議の見通しというものがまだないわけでしょう。もう裏ではちゃんと妥結しているのですか。それも始まるか始まらぬに全体会議を、本会議を開く。これははなはだ唐突じゃありませんか。しかも、きのう先方の代表と外務大臣がお会いになる主たる目的は、十日以後の閣僚会議をどうするかということであったはずなんです。その点は間違いないでしょう。
  145. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 前々から閣僚会談の問題と、本会談以降の問題とが検討されておったわけでございます。私どものほうから先方の御提案に対して返事をいたしました。きのう夕刻先方から返事がございまして、私は向こうの私どもの返事に対する返事に対して応諾を与えたわけです。これは突如としてそういうことが行なわれたわけでなくて、いままでがおかしいので、予備交渉という形で行なわれておるのがおかしいので、本来ずっと本会談であるべきはずなんでございますが、不幸にいたしまして、一昨年の三月から予備交渉という形になっておりましたのを、今度漁業問題ばかりでなく、ほかの問題の煮詰めも合わせてやるという空気になってまいりましたので、本会談に切りかえるのが、正当な道行きだと判断いたしたわけでございます。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく今度の閣僚会議にいたしましても、あるいはその本会議の開催にいたしましても、すべて向こうから言われて結局応じていっておるわけなんです。しかも、事務的レベルの話し合いというものはまとまらんままなんですね。たいして進展しているように聞いておらない。  そこで私たち端的にお聞きしたいのは、この韓国内の朴政権の事情から、この日韓会談の妥結を急ぐ必要がある。そういうことが率直に皆さんのほうに言われておるのだろうと思いますが、そういうことならひとつやろうということでこういう唐突な、閣僚会議と並行して本会議を開くといったようなことになっているのじゃないかと思うわけですが、ざっくばらんにその辺の事情を明確にしてほしい。そうでなきゃ普通は十日から農林大臣が出てやるのに、それが時を同じゅうして本会議だと、そういうことなら、それはもっと総理とも相談してみたいということになるはずです。あなたはきのう出ていって、そこで約束しておるわけです。その手続的な面も疑問がありますし、もっとその韓国内における事情というものがそのようにさせておるのではないか、どうでしょうか。
  147. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国側の事情は、知るよしもございませんが、先方から閣僚会談を開きたいという申し入れがございましたので、私どもは応諾すべきだと判断して、そのような処置をいたしたまででございます。  それから本会談のほうは、漁業問題は閣僚会談に移って討議されますので、その他の問題というものについて、もっと討議を進めよう、そういう考え方でございます。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 入口であまり議論していると時間がたちますから、ここでひとつ総理にお聞きしますが、日韓会談に対して積極的に出られるようでありますが、朴政権の安定性ですね、経済的にあるいは政治的な面から見て、こういう点をどういうふうに評価されておりますか、お聞きしたい。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民主的に大統領に選ばれ、そうしていま議会も構成されており、そうしていまの与党が議会内におきましても、大多数をもって安定していると私は考えております。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 そういう形式的なことでは安定性の基礎づけにはならない、そこでいま総理が選挙のことを言われましたが、これは外務大臣のほうでお答え願えればけっこうですが、一体選挙の得票状況はどうであったんですか、大統領選挙。
  151. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昨年の大統領選挙でございますが、有効投票数千八万一千百九十八票、朴正煕氏がそのうち四百七十万二千六百四十票、四六・六%、ユン・ポソン氏、民政党四百五十四万六千六百十四票、四五・一%その他となっております。国会議院選挙有効投票数が九百二十九万八千八百三十票、民主共和党が三百十一万二千九百八十五票、三三・五%、民政党が百八十七万九百七十六票、二〇・二%、民主党が百二十六万四千二百六十五票、一三・六%その他となっております。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 大統領選挙も過半数をとっておらない、野党の四名の候補者のだれか一人がやめたらユン・ポソン氏が当選したろう、これはもう向こうの通説です。それから投票の中身を見ましても、本来朴政権を支持すべき軍人街等では票がうんと減っている、また知識層の多い京城などでは半分しか民主共和党がとっておらないわけです。ユン・ポソン氏に対して半分しかとっておらない、もう一つは、非常な不正選挙が行なわれておる。いま韓国の大法院で選挙訴訟が起こされておるわけですが、その内容外務大臣知っておりますか。
  153. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の選挙訴訟の関係でございまするが、大統領選挙におきまして、野党が、朴正煕氏の民主共和党への入党、総裁就任の非合法性、違憲性を理由として、中央選挙管理委員会に訴訟を提起したということでございますが、ソウルの高等法院では、十月七日、選挙で朴正煕氏が当選した場合、提訴が行なわれるならば検討するが、そうでないからという理由で却下いたしております。そういう候補者としての資格に関する法律上の問題を理由として訴訟が提起されておることはございますが、不正事件を理由として訴訟が提起されたということはないと承知しております。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 そういう認識では困りますね、日韓会談を進めようと言っているのに。これは向こう側の新聞でありますが、十一月十四日に、選挙後です。いま外務大臣のおっしゃったのは選挙前のことです。選挙後、約四十五万票が開票の中においてごまかされた、中身はいろいろこまかく書いてあるのですよ。そういうことで大法院に訴状が出されておるわけなんです。中身は、四十五万開票の過程においてごまかしがある。野党の代表的な政党が出す問題なんですから、そんなにうそっぱちは出せるものじゃない。そんなことを知らないのですか。
  155. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大統領選挙に関しまして提起された訴訟事件として承知いたしておりますのは、私がいま報告申し上げたとおりでございます。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 訴訟問題は聞くからと、ちゃんと通告してあるじゃないですか。通告せぬでも、このくらいのことは、やはり日韓会談をやる以上は知っていなきやならない。そうして、この訴状を出すと同時に、ユン・ポソン氏は、なるほど形式的には朴正煕は大統領だが、自分精神的大統領だとここに書いてある。精神的大統領——実質的にはおれのほうが勝っているのだ、公然とこう言っているわけです。それから、国会の選挙でも、普通は大統領選挙で勝てば国会選挙の票がずっとふえなきゃならぬのに、わずか三三・五%国会議員の数はよけい出ております。これは野党の乱立、小選挙区制といったような関連からそうなっておる。得票率がぐんと下がっているわけですね、与党の。一体こういうものを政治的に安定しておるというふうな評価ができるでしょうか。日韓交渉をやる以上は、もっと向こう側の内部事情というものを検討する必要がある。まあ知っておられるはずなんです。どうなんです。こういう選挙の上に乗った政権なんです。
  157. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは、いま御指摘のような得票にあらわれました民意というものをどのように判断をして施政をすべきかという問題は韓国政府の問題でございまして、私を御追及いただくのは筋違いかと思います。問題は、私どもは外国とおつき合いをいたす場合に、そのそれぞれの国の国民が選んだ政府に対して敬意を持ちまして、誠心誠意外交交渉を重ねる立場におるわけでございます。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 政治的な面から見て安定性があるかどうかというぐらいのことは、これだけ問題になる外交案件を扱おうとするわけなんですから、当然これは外務大臣として検討する必要があることなんです。それはちょっと軽い問題を扱う場合に、一々相手方の事情がどうだろう、そこまで私は申し上げているわけではない。いま私指摘したような選挙であるわけですが、これでも韓国の大衆の意思の上にきちんと乗った安定した政権というふうに言えるわけでしょうか。この点もう一ぺん総理大臣にお答えを願います。
  159. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 正確な数は存じませんが、百七十何人の中で百十七名ですか、大体日本衆議院と同じように、三分の二まではいきませんけれども、相当強い過半数を持っているので、私は安定していると見ております。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 きわめて形式論です。私は実質を申し上げているわけです。とにかく落選した候補者から、おれが精神的大統領だというふうなことを堂々と言われなくちゃならぬ、そんなものが一体安定した政権と言えますか。  経済面を若干お尋ねします。韓国の物価、食糧、あるいは外貨、あるいは企業の操業度、こういったようなものは非常に悪化しているとわれわれ聞いているわけですが、実情はどうなんです。
  161. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済状態は、いま御指摘のような指標によりまして判断いたしましても、困難な状況にあると私は承知いたしておりますが、数字的にはいま手元にございませんが、調べまして後刻御報告いたします。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 大蔵大臣もわかりませんか。
  163. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、わが国に比べて、あまり良好な状態にあるとは思っておりませんが、しかし、日韓間の貿易その他の代金決済等は、オープン勘定を除いては、きちんと整理されていると心得ております。これが数字等必要であれば本省にありますから……。
  164. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 物価は上昇傾向をたどっておりますが、最近の騰勢はやや著しいものが見られます。したがって、また、通貨の増発というものも相当顕著に見られるところでございます。外貨の保有高は、年末の保有高は約一億三千万ドル程度ではないかというふうに見られております。貿易面は、去年の一−九月、輸出が六千四百三十万ドル、輸入が四億一千百万ドルというバランスの状態になっております。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 食糧と企業の操業度——まあいいです。これは詳細な資料を別個に出していただきます。  それから、もう一点お聞きします。この統一問題ですね、最近韓国内にも非常に世論が高まってきておるわけです。総理は、前に、そんなものを待っておったら十年たったってらちがあかないというような意味もこともおっしゃったように記憶するわけですが、そういう状態じゃない。たとえばせんだって十二月二十七日の韓国の国会で姜氏、これは保守的な人のようですが、姜という議員の人が国土統一に関する自由な討議の保障ということを要求して迫っておるわけです。いままで韓国内では統一という問題は禁句だった。これが堂々とそういう討議の対象になってきているわけです。非常に空気が変わってきているわけです。この点をどういうふうに評価しておりますか。これも総理並びに外務大臣
  166. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは韓国の問題であると思います。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 評価だよ。そういう空気が出ておることを認めるかどうか。
  168. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 民主体制をとっております以上、いろいろな論議が自由に行なえることは当然あり得ることでございます。先ほど申しましたように、そういう問題をどのように評価し、どのように対処するかという問題は、韓国の問題であると思います。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 時間がありませんので、あと漁業問題並びに法的地位の問題について若干触れたいと思ったのですが、法務大臣わざわざ病気を押してこられたのですが、時間の関係で、これはまた別な機会にいたします。  最後に一点、結局だれが見ても不安定なこれは政権なんです、韓国の現在の政権は。それに対するてこ入れ、こういう性格をこの日韓会談というものが持ってきておるわけです。その点はどうなんですか、率直に言ってもらいたい。向こうが弱いなら弱い、それを助けるのだ、あるいはそういうことはおかまいなしに、ただ筋としてやるのだ、一体どっちなのか。総理から高い立場で。
  170. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本と韓国とが国交正常化しなければならぬということは、十年来のわれわれの念願でございます。私は、そういう念願のもとに努力いたしておる状況でございます。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 韓国の非常に困難な国内事情とは無関係だ、こういう御説明でしょうか。
  172. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一国の経済事情は常に動くものでございます。私は、韓国の経済がよくなることを念願するものでございます。それ以前において日韓国交正常化すべきだ、こういう重大な使命に向かって私は進んでおるのであります。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 結局韓国政権に対する援助、こういうことになろうと思います。  次に、最後に国鉄問題に若干入りかいと思いますが、まず最初に、総裁にお聞きします。せんだってから衆議院等においても問題が出ておるわけですが、国鉄の安全輸送は国民の非常な念願であるわけですが、これに対して一体どう対処するつもりか、具体的な方策というものを示してほしい。今年の予算というものは、一体そのあなたの考えておる基本的な立場から見て十分なのかどうか、その点もあわせて。
  174. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。本年度のわれわれの鉄道の改良費二千七百三十三億に対しまして、補正予算その他におきまして、約五百億削られたのであります。国鉄のいまのつまり悩みというものは、過密ダイヤというものは、一たん事故が起こるというと、連鎖反応を起こして大きな事故になる、そこにわれわれの非常に心配するところがあるのであります。それでは、ことし約五百億予算を削られたことによってどうなるかというと、要するに、この過密ダイヤの解消というのは、五百億や千億の問題じゃない。私は、現在のわれわれが考えておるように理想的にやろうとするというと、どうしたって三兆か四兆円は要るだろうと思う。だからして、ことし五百億切られたからといって、過密ダイヤが解消できるとかできないとかいう問題じゃない。これは、かすにやはり七年、八年の歳月をもってしてやるのだ。これは亀田さん御承知のとおり、なぜ一体こういうふうになったかというと、戦争において鉄道というものはぶちこわされた、その後における修理及び輸送力の増強というものに対しては、実に貧弱な予算をもってやらにゃならぬ。ようやく三十二年になってからして本式にやり出した。ところが、一方には経済の発展というものが非常な勢いでふえてきたために、輸送需要というものがふえてきた、三十二年度の五ヵ年計画をもってしては、とてもこれに追いつけぬというようなことが事ここに至ったゆえんでありまして、ことしの予算は五百億切られたからどうだとかこうだとかいうような、このような簡単な問題ではないのでありまして、ただ、われわれとしては、じゃあこの間にどうするかと、こういうことでありまするが、要するに問題は、ちょうどこれは火事のようなもので、火元があって、その近所が非常に稠密しておるから大火事になる、その点から考えまして、われわれがこの過密ダイヤを解消するについて一番力を入れなきゃならぬのは東京近在であります。なぜなれば、東京近在における輸送の需給というものは全体の三割を占めておる、大阪が一割である。それから、東京と大阪のこの過密ダイヤを解消するということは、即、鉄道の大体の過密ダイヤを解消するということになる。そこで、私は、七〇年からはひとつ方針を変えて、まず重点をそこに置いてやっていく、それがためにはいままでのやり方を変えて、つまり計画というものを国鉄だけの計画にしないで、政府の計画としてもらう、即、つまり予算の裏づけのある計画にしてもらって、何とかこの問題を解決したい。ところが、これがなかなかたいへんな問題なんです。御承知のとおり、東海道新幹線あたりでわれわれが一番苦労したのは土地の買いつけですよ。その土地の買いつけに当たった人間をして言わしめれば、人間生まれて再び土地の買いつけなんかやるものじゃないのだと、こういうことを言っておる。これは、ことに東京近在における過密ダイヤの解消ということになれば、土地の買いつけということが自然に起こってくる、これは実にいやなものであります。むずかしい問題なんです。非常に金のかかる問題です。それで時を食うということで、要するにことしの予算と過密ダイヤの解消というようなことも、これはサムシングだけれども、たいした問題じゃない。それで根本は、いま言ったようなところに腰を落ちつけてやらにゃならぬ、こういうことに私は考えておりまするが、とりあえず、とにかく大火事になるもとは小さな事柄で、その小さなことが起こらないように、何とか従業員のひとつ指導、訓練というものを厳格にする、さらに輸送安全設備の問題、さらに事故の大部分をなしておる踏切の問題、こういうようなものについて、ひとつ火事の起こるのを消す——消すのじゃない、起こらせないようにするということに、まずするということが、軽重の点から考えて、私どもとしてやるべきものじゃないか、こういう方針で着々として、その方面には進んでおるのでありまして、大きな輸送力を、まして過密ダイヤを解消するということは、これは四十年から、まずかすに六、七年のときを見ましてやりたい、こういうことに考えておる次第であります。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 その根本対策に力を入れられたわけですが、非常に大事な点だと思うのです。そこで、あなたのいま説明された六、七年、三兆円ということを中心にした根本構想、これは一体、総環なり大蔵大臣なり了承しておるわけですか、どうなっているのです。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国鉄の五ヵ年計画につきましては二つありまして、その一つ、第一次五ヵ年計画からいたしますと、大体計画どおり進んでおるわけであります。しかし、数字の問題でありまして、御承知の東海道新幹線の増額が千数百億円ありましたので、数字上は進んでおるということでありますが、これをもって足れりと考えておるわけではありません。第二の現在国鉄が持っております五ヵ年計画は、国鉄がおつくりになったものでありまして、大蔵省がこれを承認しているものではありません。が、しかし、この第二の五ヵ年計画の中の保安対策費につきましては、六百余億のうち今年度分二百七億は総額認めておるわけでありまして、保安対策費の四十年度に残る額は百六十五億でありますから、認めておらない新五ヵ年計画に対しても、保安対策に対しては、全額これを消化できるという見通しでございます。  それから三十九年度まで、新五ヵ年計画で考えておりました三十九年度完成の工事に対しては、予算上の配慮をいたしたわけであります。しかし、長大隧道その他四十年度以降にまたがるものにつきましては、債務負担行為が四百億、今年度の追加財投百億によって処理をしていくということにしておるわけであります。四十年度以降はどうなるかということでありますが、六百五十億余に上がる新幹線のワクが来年からあくわけであります。でありますから、この四百億の債務負担行為のこの追加等は、四十年度以降支払っていけるという考え方で、工事に穴があかないような措置をしたわけであります。  現在、国鉄総裁が言われておるものは、第三の五ヵ年計画であります。第三の五ヵ年計画は、一体どう対処すべきかということでありますが、この問題に対しては、三十九年度予算編成の段階において、国鉄基本問題調査会というものをつくりまして、ここで四十年度予算編成までに十分検討して、所得倍増計画の後年度五ヵ年計画において、道路は四兆一千億になったわけでありますし、港湾に対しては三十九年度を初年度とする五ヵ年計画を現在策定中でありますので、一体鉄道輸送の状況、海運によっての運輸の状況、道路によって運べるもの等、十分想定しながら、国鉄に対処したいという考えでありますので、国鉄総裁の言われましたとおり、三十九年度は、たいへんなことだとは思いますが、昨年度に比べて二七%も予算をふやしておるのでありますし、何とかうまくやっていただきたい、このように考えておるわけであります。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 総理はせんだって、辻原委員質問に対するお答えだったかと思いますが、東京や大阪の人口がふえるのをとめる、あるいは運賃の問題等についても考えるべきではないかというふうなお答えがあったようですが、一体、東京や大阪の人口増をとめる、あるいは積極的に少なくするとか、これはなかなか速急に効果のあがる方法というものはないのじゃないか。もし何か具体的に考えておられるのでしたらお示しを願いたい。安全運転という立場から、そういう問題が総理の口から出ているわけですが、具体的にどういうことをお考えなのか。  それからもう一つは、せんだってのお答えですと、来年から国鉄運賃が引き上げられるのではないかという印象も受けるわけでありますが、もう少し、その辺も具体的にお答えを願いかい。
  178. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東京、大阪の人口の集中は、以前から非常にわれわれの悩んでいるところでございます。工場を東京側へもってくるとか、あるいは学校の問題等は、一応これは差しとめるような措置をとっております。また、入ってくるのをとめるということ以外に、すでに御承知のごとく、各研究機関を筑波山方面へもっていって新しい都市をつくったらどうか、こういうので一応計画を立てて進めておるのですが、予定の候補の土地の買収ができない。極力努力はしておりますが、予定の半分程度しかいまできていない、こういうことを聞いております。まあ首都圏整備のほうにおきましても、できるだけ衛星都市に移すように、また、いまの中小企業団地も郊外に出るようにと、こういうので努力しております。  しかし、この程度の問題ではなかなか解決がむずかしい。私は学校その他を特定の場所に移すことはできないかどうかという点をいま考えておるのでございます。これも一つの学校だけではだめでございます。やはり大部分の学校を、いわゆる学園都市というものをつくることができないかどうか、研究をしていきたいと思っております。これは大阪におきましては一部大学の郊外への移転の問題も、私は相談を受けていますが、こういう方法をとるべきではないか。あるいはまた、ブラジルとかあるいはパキスタンのように、政府自体を動かしたらどうかということもございます。これはなかなかむずかしいことで、とにかくいろいろな検討は、私はしていかなければならぬ問題だと思います。移しやすいものを移すことができるかできないかという点を考えて、まあ学校を移すとすれば、校舎のみならず、やはり寄宿舎も建てなければなりませんし、学生のアルバイトも、東京にはアルバイトはございますけれども、学園都市ではアルバイトがないということで、寄宿舎で何か金のかからぬような方法を考えられないか、というような点を十分考えているわけでございます。特別に政府に、こういうことを調査しろというところまでいっておりませんが、いろいろ意見を聞きますので、自分として策をめぐらしていることは事実でございます。このままにほうっておけないと思います。  それから鉄道運賃云々の問題でございますが、いまの状況から申しまして、賃金を上げずに、あるいは国鉄の公債でいくか、運賃を上げるかという問題になるのでございますが、これはやはり、みんなで検討しなければならぬ。そうして新しい五ヵ年計画の場合につきましても、やはり鉄道の基本問題調査会で十分検討してもらいたい、こう私は考えているわけでございます。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 まあ運賃問題は、軽く触れたというようなことのようでありますから、その程度にしておきますが、総裁が国鉄の総裁を引き受けられるときに、たしかあなたは、池田総理にお会いになって話し合いをされたはずです。国鉄の現状は非常に困難なわけですが、それを引き受けるという以上は、よほど覚悟があったろうと思います。そういう立場からお会いになったんだろうと思います。そのお会いになったのをわれわれ漏れ聞いておるわけでありますが、ともかく困ったときには、池田のほうへ言うてこい、引き受けると、こういうお話し合いがあって、あなたも御老体にむち打って就任されたやに聞くわけです。この第三次五ヵ年計画というものは、まさに、そういう私は問題でなかろうかと思うのです。  で、そういう点について、あなたが池田総理に、ほんとうにこの第三次五ヵ年計画をものにしてくれという強い要請等をしておるのか、また池田総理のほうでは、約束どおり、よしというふうな積極的な前向きな姿勢で向かわれておるものなのかどうか、そこら辺のところをひとつお聞きしたいと思う。両方にひとつお聞きをします。
  180. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。私が国鉄総裁を引き受けましたことは、御承知のとおり三河島事件というものがあった。ところが、その後御承知のとおり東海道新幹線というようなものにつきまして、実に国鉄は重ね重ねのへまをして、国民政府国会に対して、非常な信用を失うようなことがあった。国鉄というものは、実にもうどっちからみても、一向に煮え切らない国鉄である。もしもこれを、そのままにしておくにおいては、またぞろ第二、第三の三河島事件が起きるのじゃないか。私は御承知のとおり、六年間監査委員長をやっておりましたので、国鉄の内情については、多少の知識はあった。これはこのままに置くということは、まことにこれは国鉄のためにいかぬし、そうして一般の国民に対して非常な迷惑なことで、大きな事故が起こってからではおそい。これは何とかひとつ、やらにゃならぬということで、たまたま総理から国鉄総裁を引き受けぬかというお話がありましたので、じゃ引き受けましょう。実は私から買って出たというようなものです。そのときにあなたは、総理大臣からして私の要望をいれるようなことを私から申し出て、総理は、それを引き受けたかと言う。これは約束手形と少し違うので、ただ、私が希望を述べただけです。こういうことを引き受けるについては、できるだけこういうことをやるように御心配を下さいと、こういうことで、まあ考えましょうということで、約束手形じゃない、これは。私の希望なんです。だから、その点はひとつ亀田さん、よく法律的に見た約束手形というようなことにお考えにならぬようにぜひお願いしたい。  第三次五ヵ年計画の問題でございまするが、私が国鉄総裁に、いま言った総理に対するお願いでありまするが、いわゆる第二次五ヵ年計画というものは、三年をたったにかかわらず、僅かに四割しか達成していない。あと二年で六割をやらにゃいかぬ。それで過密ダイヤ解消というものは、相当にいく。できるだけこれをひとつ達成できるようにしたいと思いますから御援助願います、こういうことで、私からお願いしたので、約束手形をとったわけじゃないので、こういうことは、くれぐれも誤解のないようにひとつお願いしたい。  それから第三次計画の問題でありますが、私は五月の末に、この国鉄総裁を引き受けましたので、実際の過密ダイヤの解消というような、ほんとうの進展については、どこにどういう手を打ったかということはわかっていない。とりあえず第二次五ヵ年計画というものは三ヵ年を経過したにかかわらず、僅かに四割しか達成していない。あと六割というものを二年間にやらにゃならぬ。そこで、まずこれをぜひひとつ総理大臣に、この六割をニヵ年で達成できるように予算措置について御援助を願いたい、こういうことを三拝九拝してお願いしたわけで、約束手形ではないのだ、こういうことはぜひひとつ御了解願いたいと思います。
  181. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄総裁をだれに引き受けてもらうかということで、いろいろ苦慮いたしました。石田さんがお受け下されば、これにこしたことはないと思っていたんですが、なかなか引き受けられぬだろうと思ったんですが、まあ当たってみようというので当たってみましたところ、いまお話しのように自分で買って出るような気持で、よし引き受ける、こういうことでございます。万事私は、そういう国鉄に対する石田総裁の気持を汲んで、できるだけ協力していきたいという気持でおるわけであります。いろいろ問題がございますので、ときどきはお出でになりますが、私は常に石田総裁の気持につきましては非常な敬意を払って、そして協力するつもりでおるのであります。
  182. 亀田得治

    亀田得治君 まあ石田さんは、約束手形じゃない、お願いだと盛んにおっしゃるわけですが、聞いておるほうは、約束手形に近いものという印象はやはり受けるわけでございまして、ともかくこの国鉄問題というものは、なかなか国鉄だけで、とてもやれるものではありません。国なりあらゆる関係者が全部そこに力を集中して、この解決に努力しなければできないわけですから、ともかく先ほどのようないきさつにもかんがみて、総理のほうでも一そう力を入れてほしいと思うわけです。  そこで、最後に、あと五分でありますので、多少違った角度から総裁に御検討を願いたいという点があるわけです。それは、いろいろな設備関係というものが、安全運転を完成するのに、もちろんこれは必要なことでありますが、そこに働く人ですね、人の関係というものを、もっと研究する必要があるのではないか。そういう点が案外抜かっておるのではないかという感じがするわけですね。それで、人というと、すぐ締めつけばかり考える傾向がある。ところが一方のダイヤは、どんどん混んでくるわけなんです。そこに人を当てはめて、このダイヤに合うようにお前しっかり働け、こういうしりたたき式なことしかあまり見られないわけです。この点について、もっと検討する必要があるのではないか。大事な人命を扱っておる乗務関係の人なんですから、ほかの人命を大事にしてくれと要求する以上は、まずその人たちの人命を国鉄総裁が、これだけ考えているのだと、そういうあたたかいものが私は出てこなければいかぬのじゃないかという感じを持っているのです。そういう点について、基本的に、どう考えておられますか。
  183. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私はこれは、ごもっともの質問だと思います。やはり事業は人なり、いかに運転、保安の設備を整えてみたところで、あるいは踏切の問題を解決してみたところで、やはり結局は人なんです。そこでですね、第一に国鉄は昭和二十七年以来人間というものは、ほとんどふえていない。四十五万であります。しかもその間に、輸送需要というものは非常にふえている。それを人間をふやさないで、いろいろな合理化の手を打ってやってきたということは、御承知のとおり、国鉄は人件費が一ヵ年に約三百億近くかかる。これはもうとてもやっていけない。だからして、できるだけ合理化の手を打って、人間をふやさないでいくということにやってきたのでありますが、しかしこれも、いまや極限に来ておる。これはもう四十五万なんという数字にこだわらないで、必要に応じてやっていかにゃいかぬということが一つ。  それから、それじゃそれに対する人間をどうするかということになりまするというと、御承知のとおり国鉄の仕事というものは、相当にこれは訓練を要する仕事なんです。年寄りじゃだめなんです。若い人間。ところが若い人間なんていうものは、いまや東京近所じゃ、なかなか手に入らなくなった。そこで、ことしからまず、東北とか九州とかというような、人の余裕のあるところにおいて、募集する。そしてこれも、高等学校の卒業生というようなことじゃなくて、中学校の卒業生でよろしい。それをわれわれが、みっちりひとつ仕込んで、そして働かせる。  それから、その次に私が考えておることは、これはまだ総理大臣の了解を得てないんですが、待遇の問題です。私は、いまの国鉄の職員に対する待遇というものは、いわゆる三公社並みということになっておりますが、これははなはだ不公平だ。一体、専売公社の人間と国鉄の人間と、同じように取り扱うなんていうのは、これは職務給というものを全然無視した考え方だ。これは、私は、今度の仲裁裁定に持ち出す考えであります。とにかく運転士なんていうものは、これは命をかけておる。専売公社の仕事なんというものは、たばこをつくって売れば、それでいい、これは、政府はやはり考えてくれにゃいかぬと私は思う。大蔵大臣がここにいらっしゃいますから、まず第一に私は、こういうことを言ってさしつかえないと思う。国鉄の総裁と専売公社の総裁と同じ給料なんて、そんなことがありますか。こういうことは、私一文ももらってないから言うんですよ。私はほしいから言うんじゃない。決してこれは、公平な取り扱いじゃないと思う。たとえば、専売公社の給与と国鉄の給与と比べてごらんなさい。ほとんど変わりありません。ところが、向こうは、男八〇に対して、女二〇でしょう。国鉄は、男九七に対して女三だ。その平均が、ほとんど変わらぬ。しかも、その仕事たるや、とにかく運転士やなんかの仕事を見てごらんなさい。夜よなか弁当を下げて、そして夜と昼間と間違えてやっておるような仕事だ。これを全然、無差別悪平等式の取り扱いをするというところが、人を使う道として間違っている。これは私は、国鉄総裁の責任において、ぜひとも是正せにゃならぬ問題だと考える。  それで、たとえば運転士が引き継ぎに行って、泊まってくる、そしてまた帰ってくるという場合の休養設備その他の点についても、着々として改善をして、できるだけ彼らが、ほんとうに気持よく責任をもって仕事をできるようにしたいと、こういうようなことに考えておる次第であります。
  184. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。いま、総裁から御答弁ありましたが、先ほどの亀田議員の質問の際——これは防衛庁関係質問の際に、自衛隊の志願者が、たいへんに減っているという話がありました。ところが今度は、国鉄の職員の場合も、同様に、最近は志願者が非常に減っているということを聞いたわけです。  いま総裁の御答弁によりますと、東京近辺じゃとれないから、東北とか九州へ行ってさがしてくる、こういう話があったわけです。しかし、かりに東北なり九州からさがしてきたとしても、東京周辺に来て就職をした場合に、他の職業との比較というものは、おのずから出てくる。比較をしてみて、これはとても割りに合わないと思えば、またやめて出て行ってしまう、こういうことになるのじゃないか。そういう面で、要員不足の対策というものは、これは当然深刻な問題になってきておると思うのでありますが、現在要員をなるべくふやさないようにしていくということですが、ふやさないようにしていって、なおかつ、安全を確保するということが、国鉄として一体できるのかどうか。できないとするならば、思い切って要員を安全を確保するに足るだけふやすという意思が、国鉄総裁におありになるのかどうか。  それから、先ほどの政府からの答弁によれば、四十年度からこれは、政府としても腰を入れて考えなければならぬという意味の御答弁がございましたけれども、じゃ、ことしは、一体どうなのか、こういう問題があります。ついこの間、事故の起こりました三河島事件以後も、依然として、たとえば京浜地区においては、一日千四百本という電車が、超満員のお客を詰めたまま走っているわけです。踏切の開閉は、五分間締めっぱなしにして、十五秒くらいしか開けられない、こういう状態が続いているということになれば、鶴見事故と同様の事故の危険性、可能性は、依然としてはらんでいるということになると思う。この問題に対して、大蔵大臣の答弁によりますと、ことしの対策は、二七%ふやしたから、これで何とかうまくやってもらうという御答弁がございました。何とかうまくやってもらうといっても、事故の危険性というものは、ちっとも変わってないし、東京周辺の人口は、やはり年々歳々、これは物価と一緒に上がっているわけである。  そうすると、この問題を当面、あるいは今日ただいまの問題を一体どうするのだ、この危険な状態をどうするのだという覚悟が、やはり政府自身の責任において、明らかにされなければならないというふうに思うのでありますが、それらの問題に関して、総理大臣はどのようにお考えになっておるか。大蔵大臣の予算措置というものは、どういうふうに考えておられるのか。それから、国鉄総裁には、先ほど申し上げました、要員の対策の問題、待遇の問題等について、どのようにしようとお考えになっておるのか、見解を承りたいと思います。
  185. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本国有鉄道の五ヵ年計画による保安関係費の総額は、六百二十一億円であります。この五ヵ年計画は、大蔵省として認めておるわけではありませんけれども、しかし、保安対策の必要性を感じまして、この六百二十一億だけは確保したいという考え方で予算を考えたわけであります。今年度二百七億、要求どおり予算を配分したわけでありますが、これによって、計画に対して、進捗率が七三%であります。四十年度に残りますものは、百六十五億でございます。でありますから四十年度には、百六十五億は確実に確保したいという考えでありますので、この保安関係費に対しては、国鉄が言われておる全額をつける、こういうことでございます。  それから他の面につきましては、先ほど申し上げましたように、昭和三十八年度の予算に比べまして三百九十四億円増の千七百五十四億、二七%でなしに二九%の増ということになっておるわけであります。しかもその上に、今年度補正といたしまして百億の追加をいたしたわけでございます。それから、なお債務負担行為を四百億認めたわけでございます。でありますから、本年度は、三十九年に竣工を予定しておりました国鉄の原案どおり、三十九年度のものはみなできる、こういう立場をとっておるわけでございます。  で、来年度以降に引き継がれる工事、すなわち長大隧道とか、そういうものに対しては、四百億の債務負担行為で措置をしていただくということにしたわけであります。それは来年の先食いじゃないかという議論になると思いますけれども、緊急やむを得ざる措置として、そのような特別な措置を認めたわけであります。しかしそれは、三十九年度で新幹線の工事費があくわけであります。新幹線の工事費は、六百四十二億だと思いましたが、約六百五十億ばかりの新幹線のワクが、来年度になればあきますから、四百億で債務負担行為の分は、来年度十分支払える、こういう態度をとっておるのでありまして、現在、国鉄が立てております計画に対しては、国鉄総裁が述べられましたとおり、国鉄が自主的におつくりになった五ヵ年計画というものの数字を、そのまま積み重ねてまいりますと、四〇%余りしかできておらぬ、こういうことを言われましたが、あとの二ヵ年で残りの六〇%をやれるのかということを言われておりますが、いずれにしても、国鉄は、今年度まで考えておる仕事に対しては、十分対処できる予算を配分した、こういうことを言えるわけであります。しかし事故の現況等にもみまして、これでいいという考えではありませんので、内閣も本腰を入れて、国鉄基本問題調査会をつくって、国鉄の計画等をしさいに検討して、内閣として基本的な態度をきめようという姿勢をとっておるわけであります。国鉄だけではなく、これは今度道路、地下鉄、国鉄、内国海運というものに対して、相当こまかい数字をつかんで、その年次計画を合わせるわけでありますから、そういうことに政府も踏み切ろうという前向きの姿勢をつくっておるのでありまして、今年度は、国鉄の努力に待ちながら、政府としても将来の財政計画その他に対しては十分検討してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  186. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 要員の問題につきましては、さっき申し上げましたが、昭和二十七年から今日まで、ほとんど変わっておらぬ。これは何も四十五万に永久にということじゃなくて、ここにはやはり弾力性を持たせなければいかぬということで、現に、現在におきましても国鉄職員というものの数はふやしませんが、しかし、ある仕事はこれは請け負いにさせるとかいうぐあいに、ほかから引っ張ってきてやるというようなことにしております。しかしながら、それだけではもう、いまじゃいかぬ、いわんや国鉄の仕事というものは、相当に熟練を要し、訓練を要する仕事でありますので、ことしからは、少し要員をふやすという方向に進みまして、これを養成することに考えております。  それから予算の問題でありますが、さっき私がちょっと申し上げたのですが、この予算の問題につきましては、御承知のとおり東海道新幹線で大蔵省に非常な御迷惑をかけている。ことし五百億ばかり切られましたが、私、心臓決して弱いほうじゃないのだが、どうもやはり、あんまり大蔵大臣に、これ以上しりをまくるわけにもいかぬということで、これでひとつ、できるだけのことをやってみよう。それでまず第一に火事の原因をつくらぬ、こういうことについては、大体幸いに大蔵大臣が十分の保安対策費を下さいましたので、これで私はやっていける、たとえば踏切のごときは、四十年三月までには、まあ複線のところは、大体相当な整備ができるようになっていくというようなことで、まず、これで目先の対策というものはできるのじゃないか。  で、根本の問題は四十年から先、総理大臣も申されたとおり、政府と国鉄の計画というより、政府の計画ということで特につくっていただいて、裏に予算の裏づけのある計画にしていただいて、六、七年の間に、この過密ダイヤ——特に東京、大阪を中心にした過密ダイヤというものに、まず第一に手をつけて、事に当たっていきたいと思っているのでありまして、人の問題は、これは言うまでもなく、何といったって事業をしているのですから、大いに努力することに考えております。
  187. 藤田進

    ○藤田進君 関連。特に、国鉄総裁の石田さんの発言というのは非常な影響を持つわけでございますが、先ほど御発言の中に例示されて、三公社五現業の中で、特に大蔵大臣所管の専売公社を取り上げられまして、内容説明せられ、これと比較して国鉄は低いということを言われた、その真意は、大蔵大臣、非常に敏感な人でありますから、所管の専売がどうも給与が高い、それをこれから、ひとつブレーキをかけなければならないという作用を期待されているのじゃないだろうと思うのであります。今日、いわゆる可処分所得について論じられ、最底生活ということが、むしろ論争になっているときで、専売公社の職員なり、あるいはまあ総裁を含めてもけっこうですが、これが高いのだ、下げろという趣旨じゃなくて、そういう比較論から見ても、なおかつ国鉄のほうが劣る、質的にも危険率から見ても。  したがって、国鉄のあなたの傘下の待遇について論じられたのであって、専売が高くて困るというのじゃなくて、そういう点に力点があったと私は思うわけですが、非常に将来問題を残しますので、この点の真意をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  188. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私がさっき申し上げたことは、これは言い過ぎかもしれぬ。決して私は、専売公社を下げて国鉄を上げるというのではない。いずれにしても、国鉄の給与というものは、いかに三公社に比べて劣っているか、要するに、これを上げにゃいかぬということのために、はなはだどうも専売公社を佐倉宗五郎のように言って、相済まなかったのですが、申し上げたのであります。どうぞその点を御了承願いたいと思います。
  189. 亀田得治

    亀田得治君 総理にちょっとお伺いしますが、先ほど石田総裁から、国鉄の人命を預かっているという、その職務の特質ですね、こういうものを見なきゃいかんというふうに、これは根本的な問題としておっしゃったわけでしょう。特にいま給与体系をどうこうというこまかいことじゃなしに、基本的な問題として、そういう特質を見て待遇をしなければいけないというふうに言われたわけですが、この点、総理大臣として同感でしょうか。
  190. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 仕事に上下はございませんが、しかし性質上、そういうことも考えていかなければならぬ問題と私も思います。どの程度かということになりますと、これはまた、いろいろ議論があると思います。
  191. 亀田得治

    亀田得治君 総裁から、人の問題について、ずいぶん積極的なあたたかい御答弁を伺いましたので、実は多少準備しておったわけです。人の問題について、あなたが非常に人というものを無視しておられるようなことをおっしゃれば、もう少しお伺いしなければならぬと思っておったのですが、どうも逆のようでありますから——ただお話の中にも若干あったことと重複しますが、転轍手とか操車係ですね——もう時間がまいりましたので、これで終わりますが、こういうところに、ずいぶん、臨時の雇いの方が相当おられます。こういうものはやはりきちんと、定員をふやすならふやして、きちんとしたやはり就職にしていくことと、また、この指導訓練ということも言われましたが、私たちが聞いているのでは、毎日の乗務の前後に一日二分間、訓練やっているようですね。一ヵ月二時間ですか、その乗務の前後の二分間の訓練というようなことは、訓練をするほうも耐えられないことだし、効果もない。それよりも、一ヵ月の中でどの日を訓練日とする、完全にそういうふうなことのほうが、やはり訓練されるほうも、またするほうも、これは効果があがるわけであります。こまかい点をいろいろなことを私たち聞いているわけですがね、もっと人間というものは、やはり大事にしてほしい。特に運輸大臣もお越し願って、私は、たとえば個人タクシーと会社タクシーの事故率の比較ですね、これはもう非常に違うわけなんです。これは総理御存じかどうかしりませんが、もう天と地の差があるわけです。事故率の比較というのは、これはもう五十対一ぐらいの開きがあるわけですね。中身もまた非常に違う。死者なんていうのはほとんどない。一方は何十という数字がやっぱりあるわけです。で、これは個人タクシーの人に私たちたびたび開くんですが、ともかく会社タクシーで、ノルマ、ノルマで追いまくられて、もう一日交代に家に帰らされたって、ともかく夜中に帰ったって何にもならぬし、ところが、個人タクシーをやって初めて人間らしい毎日生活になった。適当な時間に家に帰って、子供と一緒に食事もできる。これですよ。やはりほんとうに人命を頂かる職場という人に対しては、そういう立場検討というものは、私、非常に必要なんじゃないか。ものという立場からの合理化一本やりでは、これはもうかえって、それは大きな損害を起こして、ほんとうの合理化じゃないですよ。そういう点を実は感じておるわけでして、その人間の扱い方ですね。人つくりということをちょいちょい聞かされるわけですが、具体的に、私、その職場に働く人たちについての扱い方というものについて、総理考え方を聞きたいと思う。危険な場所に特に働く人、あるいは炭鉱なんかでもそうですよ、こういう人たちに対しては、普通の労務管理とは少し違った角度の考え方が要るんじゃないかという感じを持っておるわけです。どうですか、これだけお聞きしておきます。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全く同感でございます。
  193. 戸叶武

    戸叶武君 議事進行。
  194. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 関連ですか。
  195. 戸叶武

    戸叶武君 議事進行について。亀田君の質問に対する池田総理大臣、福田防衛庁長官の答弁は、一、核武装の問題について、二、自衛上の基地攻撃は辞さない、三、太平洋戦争は自衛戦争なりや、の質問に対する答弁において、これを海外の人が聞くときに、日本が戦前に逆戻りしていくのじゃないかという印象を与える危険性が非常にあると思います。私たちは、速記録を調べて、あらためて追及いたしますが、政府当局も、開放経済体制に入る前の非常な微妙な段階において、その言動というものは慎重をきわめなければならぬと思いますが、このあとでも、適当に、よく調べて、統一的見解を私は示してもらいたいと思います。
  196. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 亀田君の質疑は終了いたしました。  休憩します。    午後一時二十二分休憩      —————・—————    午後二時十六分開会
  197. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 再開いたします。  質疑を続けます。岩間正男君。
  198. 岩間正男

    岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、外交、防衛問題を中心に若干の質問をしたいと思います。  まず外交問題ですが、その中で、今日大きな関心が持たれているのは、ベトナムの情勢であろうと思います。これについて、おとといから、同僚議員からもしばしば質問が展開されました。しかし、これに対する政府答弁は、はなはだ抽象的で、国民を納得させることができない。もっとはっきりベトナムの最近の情勢について述べてもらいたい。総理に伺います。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣からお答えいたします。
  200. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナムはクーデターがございまして、新しい政権が民心の掌握と治安の確保にいま努力いたしておる段階でございまして、これの成否は、いまの段階において判断評価するのは早計であると思います。私どもは、一日も早く南ベトナムの情勢が安定に向かうことを希望しております。
  201. 岩間正男

    岩間正男君 いまの段階では、これはあまりたいしたことはないというような答弁ですが、この点いかがですか、最近のアメリカの動きとも関連して、この点もっとはっきり御答弁願いたい。
  202. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカにおきましては、最近、国防長官が現地を視察するということになっておるようでございまして、現地の情勢の検討をいたしておるものと思いますが、アメリカの政策につきまして私どもはうかがう余地はございません。
  203. 岩間正男

    岩間正男君 まるで、よそごとのような御答弁を繰り返していられますが、これは、とんでもないことだと思うのです。この問題は、へたをすれば日本はベトナムの戦争に巻き込まれる危険が非常に多いのであります。私たちの手にした情報によるというと、すでに横須賀では、いま第七艦隊の主力が全部出払っておる、からっぽである。また岩国では、岩国を基地とするアメリカ第一海兵隊は、最小限度の兵力を残してみな出動しておるようです。この岩国の海兵隊が常時インドシナ半島の作戦に従事しておることは、天下周知の事実であります。このような二、三の事実から考えてみましても、日本が南ベトナムの戦争の足場になっておることは明らかであろうと思います。このことを国民は非常に心配しておる。私は、そんなよそごとのような御答弁でなくて、日本との関連でこの問題をもっと明確に説明してほしいと思う。
  204. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナムの軍事情勢とわが国とが、特に関連があるものとは私は考えておりません。
  205. 岩間正男

    岩間正男君 防衛庁長官に伺いますが、いまのような情勢、どうですか、あなたのほうで。
  206. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 外国における情勢分析並びに判断は、外務大臣からお答え願いたいと思います。  軍事的な面だけを御報告申し上げますと、第七艦隊は、ただいま台湾国民政府と合同演習に行っておるという情報を受けております。なお、米軍の軍事顧問団は、ベトナムにおいて、約千五百五十人のアドバイザーがおるという通報を受けております。
  207. 岩間正男

    岩間正男君 いまのような、ちょっと端的な防衛庁長官の説明でも、これは相当関連が深いじゃないですか。外務省は非常にこれは怠慢だと思うのですね。池田総理も、まるで人ごとみたいな話じゃ、これはまずい。この事情をもう少し明確に答弁してほしい。あなたはどうつかんでおられますか。
  208. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣答弁したとおりでございます。
  209. 岩間正男

    岩間正男君 たよりにならない答弁なんですね。日本国民は心配している。それに対して答えるということが、当然これは政府の任務です。ところが、そういうことになってない。私は、ベトナムの今日の事態というのは、まかり間違えば第三次大戦の危険さえ内蔵しているといっても過言ではないと思う。アメリカは、いま沖繩に対してどういうことをやっているか。いま北ベトナムへの攻撃を考えて、そのゲリラ進攻の中核になっているのが、御承知のように、沖繩の第一特殊部隊です。アメリカ本土を除けば、世界に三つしかないといわれているこの特殊部隊の一つ、しかも、その半数の二千人がいま沖繩の嘉手納基地に集結し、東南アジア、特に南ベトナムを舞台に謀略、ゲリラ破壊活動に従事しているのが実態です。彼らの大部分は、日本中国、タイ、インドネシア、フィリピン系の二世、三世で、現地生活順応にもたけており、外観だけでは現地人と全く見分けがつかないといわれています。この特殊部隊が現に使われているし、北ベトナムのゲリラ進攻の中心部隊にもなっていることは明らかです。これについて、どう考えますか。外務大臣
  210. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカ軍の訓練につきまして、私は答弁する責任はございません。
  211. 岩間正男

    岩間正男君 防衛庁長官。
  212. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 外務大臣が答えたとおりでございます。
  213. 岩間正男

    岩間正男君 この特殊部隊について、あなたは情報として持ってないのですか。防衛庁長官としては怠慢じゃないですか、いかがですか。
  214. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 先ほど申し上げました軍事顧問団、数字を言い違えたようでありますが、一万五千五百名でありますが、いま御指摘の特殊部隊につきましては、私ども情報を得ておりません。
  215. 岩間正男

    岩間正男君 国家の機関、しかも、防衛とかなんとかいって、あなたたちはしょっちゅう言っている立場から考えて、いまのような答弁じゃまずいじゃないですか。ここに第一特殊部隊の写真があります。これは本部ですが、本部の写真なんです。第一特殊部隊の沖繩における本部がちゃんと明確に規定されています。それから、これは第一特殊部隊のパラシュート小隊、ちゃんとこれはもう看板が出ています。こういうのをあなたたちはっきり、われわれの手にさえ入っているのに、防衛庁長官知らない、これで日本の一体防衛できるのですか。外務大臣はこのような情報について、これは知らない。おそらく知っていても知らぬ存ぜぬというのが、いまの池田内閣のほおかぶり政策じゃないか、こういうことではこれは話にならぬ。さらに、ここには現地の南ベトナムにあるゲリラ部隊の、特殊部隊のちゃんと写真がありますよ。これは戦う南ベトナム、この映画に出たのですが、もうはっきりこれは出ています。それからここに「スターズ・アンド・ストライプス」紙に載った写真がありますが、特殊部隊のB中隊のロバート・E・ファーマン中佐、その説明の中で、ファーマンが、サイゴンの特殊部隊連絡分遣隊に配備されたのは、一九六三年二月であった云々という、はっきりした、こういう注釈までついて、このファーマンのなにが出ているんです。どうです。こういうような事実を、具体的のこういうものをわれわれは持っているんです。これは、おそらくわれわれの持っているのは、あなたたち情報のこれは何分の一かもしれない。それでもこういう事実を指摘して、私は、はっきりこういう証拠をあげて、そうしてあなたにお聞きしているんです。ところが、知らぬ存ぜぬ、アメリカのことだから知らぬ存ぜぬ、これでは話にならぬじゃないですか。必要があるところだけ、あなたたちは言う。さっきは韓国の問題、これをやったときは、選挙の票数まで詳細にこれは読み上げた。必要なところだけは読み上げる。ところが、日本国民に知らせなければならない重要な問題になるというと、全く知らぬ存ぜぬ、このほおかぶり外交ではこれは重大だと思います。池田総理、どうですか。こういう事態に対して、知らぬ存ぜぬではぐあいが悪いですから、はっきり答弁してください。
  216. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 知らないことを知ったように言うわけにはいきません。
  217. 岩間正男

    岩間正男君 怠慢ですよ、あなたも。何のために一体防衛庁を持ち、何のために一体情報機関をたくさん持っているんです。内閣情報機関もあれば、外務省の情報機関だってあるでしょう。何のために、国民の血税を一体空費しているんです。そんなことでは話になりません。  で、まあこの特殊部隊ですが、このような部隊を使って、北ベトナムから介入をでっち上げて、口実をつくって戦端を開く、これがいつもながらのアメリカの常套手段です。アメリカはいま軍事優先の方向を明確に打ち出していると思いますが、いかがですか。
  218. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカといたしましては、アメリカの定立した国是に基づいて、それぞれの国策を推進いたしておるのでございまして、私の立場から、それをとやかく論議をするということは、評論家ではございませんから、御遠慮申し上げます。
  219. 岩間正男

    岩間正男君 最近任命されたウィリアム・バンディの経歴について、御存じでしょう、いかがです。
  220. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま手元に持っておりません。
  221. 岩間正男

    岩間正男君 委員長、これはちょっと注意してほしいと思うんですがね。予算審議は、これは差しつかえますよ。私たちは、いま日本のやはり方向を明らかにするためにやっておる。知らぬ存ぜぬという答弁で許していいんですか。委員長にこれは要求します。これはちょっとこんな怠慢ではだめです。
  222. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 質問で御要求なさるときには、やっぱり相手の大臣の名前をおっしゃっていただきとうございます。それから、みんながわかるように御説明を願いたいと思います。あなたの知っていることで、不幸にして私ら知らぬことも多うございますが、やっぱりみんなして聞くのでございまするから、予算委員会の審議のためにも、そこは御注意なすっていただきたいと思います。どうぞ、みんなで協議するんでございますから、みんなのわかるようにひとつお話し願いとうございます。それから相手の大臣はだれかということを御要求なさらないと、私から指示するわけにはまいりません。今度はだれを——防衛庁長官の御返事でございますか。
  223. 岩間正男

    岩間正男君 外務大臣です。お聞きになればわかるでしょう。ウィリアム・バンディの……。
  224. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 外務大臣、一度御答弁なすったんですから…−…。
  225. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ではもう一度……、バンディ氏の前職は、国防省国際安全保障担当次官補であります。
  226. 岩間正男

    岩間正男君 その前に、これはCIAの最高首脳、それから国防次官補になり、さらにまた国務次官補に早変わりした。これがバンディのいままでの経歴でしょう。この点ははっきりしている。今度新たにアメリカの国務次官補に起用されたのですが、国務、国防両省をはじめCIA、海外情報局、その他関係各省のベトナム対策合同委員会の中心的な責任者になったことは、これは明らかなことです。こうしたアメリカの最近の人事から見ても、アメリカの対ベトナム政策は非常に謀略的だ。軍事優先の方向が一そう露骨になるように思われるのですが、この点について、どういう見通しを持っておるか、承りたいと思います。
  227. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカといたしましては、ベトナムとの間の相互防衛援助協定によりまして、ベトナムの治安を回復し、その政治的安定を企図するために、いろいろ施策をいたしておることと思うのでございます。これは、政治面と経済面にわたった施策が行なわれておると思うのでございます。どういう点に重点を置いてやっているかということにつきましては、これはアメリカ政府の考えておられることでございまして、私どものうかがう余地のあるところではございません。
  228. 岩間正男

    岩間正男君 私は、何もアメリカのことを単に批判しているのではない。これで日本がどう影響されるかということを聞いているのです。わが日本、沖繩がいま新しいアメリカの北ベトナム侵略作戦の足場にされることを国民はみんな心配している。しかも、政府国民に事実を知らせようとしない。真剣に対処しようともしていない。ラオスやキューバのあのときもそうです。全く同じような態度だ。私は、ラオスの問題について、四年ほど前に当委員会で聞いた。知らぬ存ぜぬだ。そうして事態がどんどん変わっていくのに何らの対処もできなかった。これがいまのあなたたちのやり方じゃないですか。国民が実情を知ったときには、あとの祭りだということでは、これは許されない。この問題を明らかにするのは、当然われわれ国会議員の任務です。こういう立場から聞いている。これに対して、もっと真剣に答えていただきたい。池田総理、どうですか。
  229. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣が答えたとおりでございまして、いま南ベトナムに対しまするアメリカの政策決定に、非常にアメリカは、何といいますか、検討を加えておるようでございます。それよりほかにはわかりません。
  230. 岩間正男

    岩間正男君 私は、ベトナムに対する世界の世論が一体どうなっているか、こういうこともあなたたちは十分検討する必要があると思う。世界はいまあげてアメリカの軍事冒険に反対し、アメリカ軍の撤退と中立化の方向で南ベトナム問題の平和的解決を望んでいます。アメリカ本国でさえ、たとえば「ニューヨーク・タイムス」を見ますと、南ベトナムの軍事的勝利がまぼろしであるのと同様に、米軍の戦闘参加が急速に戦争終結をもたらすという見方は間違っていると指摘し、交渉によって平和を確立すべきであると論評しています。ソ連、中国、北ベトナム等の社会主義国はもちろんのこと、カンボジアや、その他東南アジアの国々も、あげて、ジュネーブ協定の完全実施を基礎にして南ベトナムの中立化を支持し、その保障を約束しているのです。このような世界の情勢は、御存じないことはないと思う。ですから、こういう点から、私は日本のこれに対する対策というものをはっきり明確に打ち出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。これはやはり総理にお聞きいたしたい。外務大臣でも……。
  231. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナムに対する政策といたしまして、いま御指摘のように、中立化政策というものが、一部の人々によって提唱されておることは承知いたしております。しかし問題は、これは長期の見通しとして、あるいは考え方として検討に値する一つ提案であるというように、私どもも考えますけれども、しかし、それをどういう時期に、どういう方法で、どういう条件のもとにやればいいかという検討は、十分しなければならないのではないかと存ずる次第でございます。それから、中立化をすれば、それであの地域に安定と平和が帰るかという保証もないわけでございまして、殷鑑遠からず、ラオスにあるわけでございまして、中立化をやれば平和と安定が帰ってくるという保証をする、そういう政策以前の段階で関係当事国がみな苦心をいたしておるのが、いまの段階であると承知いたしております。
  232. 岩間正男

    岩間正男君 ラオス中立問題は、これは背後から破壊するものがあるからです。だから、こういう問題も、これはベトナムと関連して再検討しなければならぬ問題ですが、私は、このような中立の条件というのは、非常にもう大きくなってきている。ことに、ここではっきりしなくちゃならないのは、ベトナム内部の状態です。南ベトナム全人口の半分と全国土の三分の二を解放し、そういう事実上の政府になっている南ベトナム解放民族戦線中央委員会が、南ベトナムが独立すれば、中立政策を実行し、いかなる軍事ブロックにも参加せず、その国土にいかなる国の軍事基地をつくることも許さないだろうと言明している。また、南ベトナム、カンボジア及びラオスとともに、インドシナ半島に中立地帯をつくる用意があるとはっきり宣言して、綱領にも、これを明示している。中立化の方向で南ベトナム問題の平和的解決ができる客観的条件が、すでにこのように国際的な世論から、また、国内的な情勢からも、内外ともに熟している。ですから問題は、アメリカがジュネーブで協定を尊重してその軍隊を撤退させること、さらに基地を撤去すれば、この問題は大きく解決の方向にあるのです。これ以上平和解決の道はないと思うのですが、中立政策に対して、明確な態度をもう一度伺いたいと思います。
  233. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の委員会が、そういう綱領を持っているという御指摘でございますが、北越政府のほうは、中立化に反対しているということでございまして、したがいまして、問題は、私が申し述べましたように、中立化以前の問題が非常に大事である。平和と安定をかち得るためには、そういう条件をどうしてつくり上げるかということが現実の課題であると思います。
  234. 岩間正男

    岩間正男君 中立化に反対なんですか、賛成なんですか、この点を端的に言ってください。
  235. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 問題は、インドシナ半島に安定と平和がよみがえってくることにわれわれは賛成なんでございまして、そういう条件をどうつくるかということでありまして、いま唱えられておる中立化政策というものが万能薬で、そうすれば平和と安定が帰ってくるかというと、そういう保証はないじゃないかということを申し上げておるわけです。
  236. 岩間正男

    岩間正男君 いまの御答弁は、中立化に反対しておる、こういうふうにとっていいのですか。中立化は、平和を回復する具体的な保証としてもう全世界的に討論をされているのですよ。あなたたちのいまのような答弁で、ずるずる逃げ回っていてはわからない。これは総理、いかがです。
  237. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣が答えたとおりです。
  238. 岩間正男

    岩間正男君 これは反対ととっていいですか。
  239. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの時点において直ちにそういった中立政策を実行すれば、インドシナ半島が平和になり、安定がよみがえるというように私は簡単に考えません。
  240. 岩間正男

    岩間正男君 どうもそういうあいまいなやり方、これは二月十八日の参議院外務委員会で佐藤尚武氏の質問に対して、政府は中立化に反対の意見を述べられておりますね。これを私は確認しておきたい。こういうことでは、池田政府が初めから南ベトナムの問題を平和的に解決しようとする意思も努力もないと言われても仕方がない、口先はどうあろうとも。第三次大戦の危険さえあるといわれているアメリカの不法な侵略に追従して、ますますどろ沼に日本をおとしいれるようなことは断じてこれは許されない。この点をあなたたちはもっと真剣に検討する必要がある。  次に、私は中国問題についてお聞きしたい。総理は、中国問題で前向きの姿勢をとるなどと言っていますが、きのうの答弁で、また、きょうの答弁でも、明らかにこれは後退した感じが見られます。今国会再開以来まだ一ヵ月足らずの間にも、右にゆれ左にゆれて、真意がどこにあるのか、国民は了解に苦しんでいます。はっきりと議場を通じて、あなたたちの真意を明らかにしてもらいたい。
  241. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、羽生委員の御質問お答えいたしましたとおり、政府方針は少しも変わっていないわけでございます。施政方針演説を通じまして内外に宣明いたした方針で終始いたしておるわけでございます。フランスが中共承認いたしまして、そういう新しい動きがあって以来、中国問題が内外にわたって、また、朝野において論議がかわされておる事実は認めまするし、その論議のやりとりを通じまして、将来の問題としていろいろの論議がかわされましたけれども、しかし、政府方針といたしましては、本国会の劈頭におきましてお示しいたしました域を出ておりません。
  242. 岩間正男

    岩間正男君 一ヵ月の衆議院論議と、参議院論議が始まったのですが、こういうものを無にするような議論ですね。いままでの全部御破算にする。ことばのあやで国民を欺瞞するというようなやり方です。こういうことは許されない。あなたは、中国が祝福されて国連に参加するようになれば、中国承認を考える、こういったことは事実だ。私聞きたい。祝福されて国連中国が入ることを望んでいるのか望んでいないのか、はっきりここで、この議場を通じて明らかにしてもらいたい。
  243. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が望むとか望まぬとかいう問題ではなくて、中国国連加盟の問題というものは、たびたび申し上げておりますように、アジアの平和にとりまして、世界の平和にとりまして非常に重要な問題である。世界の世論の向かうところをよく見きわめながら、わが国の国益を踏まえた上で慎重に考慮すべき問題でございまして、大平個人の希望とかという問題でなくて、いやしくも外務大臣でございますので、日本政府としての外交を担当するものといたしましては、この問題はそういう角度から慎重に対処すべき問題であると、そう心得ておると申し上げているわけであります。
  244. 岩間正男

    岩間正男君 答弁がそらされております。私は、望んでいるのか望んでいないのかと聞いたのだが、遠回りして、こうぐるぐるやって、わけのわからぬような大平論法でやってきておる。池田総理に伺います。端的に言って下さい。
  245. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣が答えたとおりでございます。
  246. 岩間正男

    岩間正男君 もう一度伺います。わからない。私が聞いているのは、中国国連に参加するのを望んでいるのか望んでいないのか。
  247. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 岩間さんも御案内のように、私は日本外交の責任者でございまして、この問題につきましては、いま申しましたような重要問題でございまするし、いま申し上げましたような観点から慎重に対処すべき問題でございますと、これで十分なお答えだと思います。
  248. 岩間正男

    岩間正男君 前近代的みたいな答弁がこの議場にはやってきているのに、いまの政治の問題がある。あなたの立場も私はわからないわけではない。しかし、まるで望んでおるようなことばのあやでやって、実際は反対のことをやっている。答えられないというのは、これは望んだということは言えないでしょう。これじゃだめだと思う。  私は次に聞きますが、吉田元総理に親書まで渡して台湾を訪問させた目的は、これは何ですか。そして、どんな成果を今度あげて帰ってきたか、池田総理にお尋ねいたします。あなたのお師匠さんのことですから。
  249. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本と中華民国との間の意思の疎通をはかり、将来ますます親善の度を増すために、吉田さんが行こうと言われたので、それではひとつ私の手紙もお願いします、こう言ったわけです。
  250. 岩間正男

    岩間正男君 どんな成果を……。
  251. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろの問題を話し合われたようでございます。日本立場も相当了解されたと聞いております。
  252. 岩間正男

    岩間正男君 私は、適当でなかったのじゃないか、時期からいって。元来吉田さんという人は、日中関係でどんな役割りを果たしてきたかということは、これはよく知られております。いわゆる吉田・ダレス書簡の当事者であって、中華人民共和国とは、二国条約を絶対結ばない、国交正常化は絶対やらない、こういう言明をした人なんです。こんな御老人をわざわざ引っぱり出して台湾を訪問させたのは、総理が詳しくはおっしゃらないのですが、しかし、結局、吉田書簡の亡霊で日台条約にてこ入れする、そして依然として、中国敵視政策を続けようとするこれは意図のあらわれだと言われてもしかたがないと思うのですが、この点、いかがでございましょう。
  253. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、日華条約を結び、蒋介石氏と親善の度を加えていきたいというのは、前からの考えでございます。
  254. 岩間正男

    岩間正男君 自民党内を見ますと、台湾ロビイストといわれるこの人たちが大きな力を持っているようです。池田総理に圧力をかけて、それをしも押し切って、人民中国との国交を正常化するという気もない、意思もない、そして引きずられていくというのが、残念ながら池田総理のいまの姿じゃないか。ここに素心会の会報があります。これには、台湾訪問から帰って、という、向こうにおられますが、賀屋法務大臣の講演の一節が長々と載っている。その一節を私たち読みましたが、賀屋法相はこう言っている。「台湾が共産圏の手にわたるということは、日本の防衛上、ひじょうに危険なことである。」「安保条約においても極東の平和と安全が脅かされるときには、日本の基地から、米軍がそこに出動することができる。」「極東は何かというと、少なくとも韓国や、台湾は極東の地域に入っているということは明らかなことである。」「だから台湾というものを否認することは日本としては絶対にとりえない方針である。つまり中共問題については台湾の必要性、重要性ということを認識するということが第一に肝要で、」、こういうふうに言っています。これが自民党右派の代表的な見解だと思いますが、これはいかがでしょうか、総理に伺います。総裁として伺います。
  255. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、中華民国とわが国とは条約を結び、親善関係を加えていっておるのであります。中華民国を重要視することは当然のことであります。
  256. 岩間正男

    岩間正男君 それは、賀屋さんの考え方は、いまそのとおりですか、変わっていませんか。御病体のようですから、どうぞ、そこからやって下さい。
  257. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 今の御質問の趣旨がよくわかりませんでしたが……
  258. 岩間正男

    岩間正男君 台湾は絶対に離せない、日本の防衛とかアジアの安全から。そういうことが基本のようですね、あなたのこれでは。
  259. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 台湾の地域は、日米安保条約でも、極東の平和、安全につきまして重要であると、その平和、安全を保つためには、日本の基地から出動ができると、日本の要請を要しますから、その範囲でありまして、日本の防衛上、きわめて重大なところと考えております。
  260. 岩間正男

    岩間正男君 意見に変わりないんですね。
  261. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 変わりありません。
  262. 岩間正男

    岩間正男君 はっきりしたのですが、台湾のロビイストの見解というのは、人民中国はあくまで認めない。台湾は、軍事目的のためには、あくまでもこれを確保し、反共体制を固め、台湾中国封じ込みのための前進基地として使い、日米安保軍事体制のために利用する、これが主眼であって、台湾中国から切り離して押えておけば、蒋介石でなければならないということでもない。蒋介石がじゃまになるなら退陣されもしかねない。これがこの人たちの考えで、本心ではないかと思います。全く得手勝手な考えだと思いますが、これに、総理は引きずられているのじゃないでしょうか。そうして、あのような右にゆれたり左にゆれた答弁を繰り返されているんじゃないでしょうか。いかがです。
  263. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 右にゆれる、左にゆれる考えは持っておりません。初めから、政府外交方針ははっきりしておるのであります。
  264. 岩間正男

    岩間正男君 妄言という言葉、国民を欺くような言葉は吐かないほうがいいようですね。私は、そんな答弁を繰り返していても、結局、台湾を含めた中国の人民から、その正体が見破られ、破綻することは明らかだし、日本人民の、これは、結果的利益にはならない。そういうふうに考えます。  そこで、私は最後にお聞きしたいのですが、日本人記者団に対しまして、最近、中華人民共和国の周総理が、次のように述べています。「中国と正常な関係を樹立した諸国は、すべて、中華人民共和国政府中国を代表する唯一合法の政府であり、台湾問題が中国の国内問題があることを認めている。」と言明し、そして、そのあとに、きっぱりと、  二つの中国一つ中国一つ台湾などという陰謀に痛撃を加えています。さらに、周総理は、「積み上げ方式には賛成であるが、両国の国交回復という目的を、すみやかに実現するものとはなり得ないから、日本政府が、現在の中日関係状態を変えるための断固たる諸方策をとるよう望んでいる。」と言明しております。私は、最後に、池田総理は、今こそ勇断をもってこれにこたえる、そのことが、同時に、アジアの平和を確立し、また日本の大きな前進のために役立つことだと思いますが、あらためてお尋ねします。
  265. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、中華民国政府と国交を結んでおるのであります。大陸に中国政権があるという事実は認めますが、今これを承認するという考えは持っておりません。
  266. 岩間正男

    岩間正男君 時間の関係で十分にこれを念を押しているひまないですから次に進みますが、次に日韓問題です。金鍾泌は先月の二十七日ソウルで、日本の実力者が韓国案に歩み寄った折衝案を示してきたので、会談の前途は明るいと語っています。その直後に、今度の政治会談のことがとりきめが行なわれた。で、すでに裏で話し合いがついた。それで政治会談で仕上げにくるだけのような印象を与えるのですが、この点いかがでございましょうか。
  267. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう事実は感知いたしておりません。十日から漁業につきましての閣僚会談が行なわれまして、私どもそこで十分討議をしていただこうと思っております。
  268. 岩間正男

    岩間正男君 まあ六者会談を押しのけるような格好でやられるので、何かの話し合いがついたというふうに考えております。  この問題はそれだけにしておきまして、私は次に移りますが、李ライン問題ですね、この李ラインは、今度の交渉で、一体どうする気なのか、非常に大きな国際的関心もあるのですが、どういうふうにお考えになっていますが、これをお聞きしたい。
  269. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもいうところの朝鮮水域におきまして、日韓双方の漁業者が安全操業を保障されて、そうして長きにわたって利益を享受してまいるような状況をつくり出すために、漁業交渉をやっておるわけでございます。その結果といたしまして、ただいままでありましたような不法な李ラインというような問題は、今後の漁業協定が成立いたしますならば、新しい漁業協定にとってかわられまして合理的な漁業体制ができると、確信をいたしております。
  270. 岩間正男

    岩間正男君 李ラインは撤廃されるのですか、どうなのですか。
  271. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今申しましたように、当然のことになるわけでございまして、漁業協定によって、漁業を規制してまいろうという考え方になるわけでございまして、李ラインというようなものを私どもは考えておるわけじゃございません。
  272. 岩間正男

    岩間正男君 赤城農林大臣に伺いますが、漁業交渉の過程で、これは季ラインと今度の規制ラインとの関係どうなんです。
  273. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 外務大臣答弁したとおりでございますが、季ラインは私のほうでは認めておりません。認めておりませんから、これは漁業の交渉ができますれば、当然そういうものは撤廃すべきものだ、こういうふうに考えております。
  274. 岩間正男

    岩間正男君 国際的にどうなるかという問題だと思うのですが、これはどうなんですか。
  275. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際的に認められるような措置ではございませんので、今度は国際的に合法的な措置を漁業協定という名においてやろうとして努力いたしておるところでございます。
  276. 岩間正男

    岩間正男君 この不法性は、私はここでくどくど繰り返しませんけれども、これは全く国際的にも、国際慣例を無視したものであることは当然ですから撤廃さるべきだ。これがやっぱり私は単に日本と韓国の外交問題として処理しただけではあとに問題残ると思う。当然国際的な立場に、アジアの平和、そういうような立場に立って、この問題を考慮するというのが、これはあなた方の立場じゃないですか。この点いかがですか。
  277. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど赤城農林大臣もおっしゃったとおり、政府としては認めていないものでございますので、認めていないものに対しての論議は差し控えたいと思います。
  278. 岩間正男

    岩間正男君 しかし、相手のあることでしょう。だからこれは交渉が長引いている。そうするというと、この点を日本との条約を結べば、当然に国際的には今までのこの領海線を取り消す、季ラインを取り消す、こういうようなことができなければまずいと、こういうふうに思う。そうすると、日本だけを特別扱いにするのかどうか、ここのところは非常にやはり私はおかしいのじゃないかと思うのですよ。日本だけよければいいという問題でもないわけです。これは先に問題があるのですが、これはいかがですか。
  279. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) したがいまして、私どもの漁業交渉も国際慣行をふまえた上で、合理的なものにいたしたいということでございます。日韓の間だけで取りきめていいとういものでございまするけれども、しかし、これは同時に第三国にも影響を及ぼす性格のものでございますので、そういう角度から私どもは漁業問題解決という問題にあたっておるわけでございます。
  280. 岩間正男

    岩間正男君 私は、どうもこの問題はやはり国際的に公明な立場じゃないんじゃないか。何かそこに陰に何かの密約があるじゃないか、軍事上のこれは。李ラインの問題は、反共軍事ラインですから、こういう点から考えれば、まあいろいろ国際的に影響があるとかなんとかいう話ですが、この問題を明確にされる必要があると思う。日本だけを特別扱いにしておる、こういう格好でこれを進めるのかどうか、この点もっと基本的にどう考えているかお伺いします。
  281. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもだてに漁問題について交渉いたしておるのじゃないわけでございまして、合理的な漁業協定を結ぼうというように努力いたしておるわけでございます。問題を残すようなことはしないつもりでございます。
  282. 岩間正男

    岩間正男君 向こうから聞いているのですか、この李ラインについては。向こうの意見を聞いているのですか、どうなのか。
  283. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、新しい漁業協定ができますと、それによって両国間の漁業が規制されるわけでございまして、その他のものによって規制されるはずはないじゃありませんか。
  284. 岩間正男

    岩間正男君 それは日本に関する限りはそういうことを言っておりますけれども、いまの問題非常に不明瞭です、了解できません。  私は、次に時間の関係で進んでお聞きしますが、現在米軍の在日調達部を通じて、トヨタ、いすゞなどの軍用トラック、新三菱重工の戦車をはじめ、弾丸、火薬などまで、さらにF104戦闘機まで朴一派に輸出されているということは、韓国の新しい新聞、雑誌に報道されています。政府は、これについてどういうふうにつかんでおられますか。国内の問題ですから、通産大臣に。
  285. 福田一

    国務大臣福田一君) 在日米軍が、日米安全保障条約に基づいてわが国で調達した物資を輸出する場合には、輸出貿易管理令の適用を免除されております。いわゆる地位協定によって、税関に対して輸出についての通告だけ行なえばよいことになっております。この通告については、通関統計中において、米駐留軍及び国連関係の貨物として、その総計のみが記載されておりまして、その内容は不明でございます。なお、自動車等については、アメリカの対外援助支出法に基づきまして、一九六三年会計年度以降、域外調達が禁止されたため、わが国においても一九六二年七月以降の契約は締結されていないので、少なくともそれ以後は在日米軍が日本において自動車を調達しているような事実はございません。
  286. 岩間正男

    岩間正男君 ございませんって、これはやられているんですね。この数量なんかも実は詳しく聞きたいんですが、まあ時間の関係から省きます。  戦車とかF104戦闘機などは、これは堂々たる近代兵器です。これはたとえアメリカの調達本部を経由しているにしても、明らかに日本の朴一派に対する事実上の軍事援助です。日韓会談が妥決しないいまでさえこういう軍事援助がなされている。日韓会談が妥決したら、これはもっと公然と大規模にやられる道が開かれるということは明らかだと思う。これを見ても、朴一派が日韓会談を急ぎ、政府がまたこれと歩調を合わせて、朴政権の軍事てこ入れをしているということは明確だと思いますが、いかがです。
  287. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどお答えしたとおりでございまして、この方針に基づいて今後も措置をいたしてまいりたい、そのように考えておるのでございます。
  288. 岩間正男

    岩間正男君 これはとにかく現在行なわれているのは事実なんですね。そういう問題について、あなたのほうでつかんでいないということじゃないですか。どうなんですか。
  289. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどお答えいたしましたとおりの日米間の関係においてわれわれが調達しているものはあるかもしれません。しかし、これについてそれ以上われわれがどうするということはできないと思います。
  290. 岩間正男

    岩間正男君 コンマーシャル・ベースですか。あるかもしれないって、どういう意味なんですか。
  291. 福田一

    国務大臣福田一君) コンマーシャル・ベースであります。
  292. 岩間正男

    岩間正男君 数量はわかるでしょう。
  293. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 立って言って下さい。私語は許しません。
  294. 岩間正男

    岩間正男君 はい。
  295. 太田正孝

    委員長太田正孝君) どうぞ。
  296. 福田一

    国務大臣福田一君) 数量等についても、それほどあなたがお考えになっているような数字は全然出ておりません。
  297. 岩間正男

    岩間正男君 時間の関係から、これも詳しく聞けばいいことですけれども、できない。  大橋労働大臣にお伺いしますが、非常に日本では若年労働力が不足しているという現状ですが、この実情について答弁して下さい。
  298. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御承知のとおり、所得倍増政策に伴いまして経済成長が進んでおります。その結果、新しい産業設備に必要な労働力の需要が大きいのでございますが、これに対しまして、中学、高校等の卒業生は近時上級学校進学者がますます多く相なりまして、いわゆる就職が求人に比較して著しく少なく相なっております。このために若年労働力が非常に不足をいたしておる。ことに中小企業におきましてはその事実が顕著でございます。政府といたしましては、中高年がこれに比較いたしましてわりあいに求人が少ないようでございますので、できるだけ中高年齢層をもって代替するような措置を講ずる必要があると存じまして、そのために必要ないろいろな施策を実施いたしておる状況でございます。
  299. 岩間正男

    岩間正男君 大体でいいですが、数量はどのくらいですか、不足している。
  300. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 大体中学、高校とも求人が三倍程度に相なっております。
  301. 岩間正男

    岩間正男君 これはたいへんな実情だと思うんです、私は。これは日韓会談を急いでいる問題と深い関係がある。日本の独占資本の共同調査機関である日本経済調査協議会は、南朝鮮への総合的な経済進出の具体的なプログラムをつくっております。経団連の植村副会長は公然とこう言っておる。韓国には、一千万人といわれる労働力人口に対して失業者数は二百五十万にのぼる膨大なもので、豊富な労働力がある。繰り返して言っております。若年労働力の圧倒的な不足に悩んでいる日本の産業界の経営者にとっては、南朝鮮の労働者によってその不足を補おうとする意図が、ここにもはっきり読まれるように思う。現に石炭協会の社長会議では、すでに通産省にこのことを相談に行っているという事実を聞いております。これはいかがですか。
  302. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましては、南朝鮮からの労働者の募集ということについては、まだ何も聞いておりません。
  303. 岩間正男

    岩間正男君 通産大臣。
  304. 福田一

    国務大臣福田一君) 石炭業界においてそのようなことを考えておるということは聞いたことがございません。
  305. 岩間正男

    岩間正男君 よく調べて下さい。  お聞きしますが、これは大平外相だと思いますが、南朝鮮の労働者の賃金、これは日本の労働者の賃金と比べてどういうことになっていますか。外務大臣……。
  306. 福田一

    国務大臣福田一君) 私からお答えするのはいかがかと思いますが、そういうような事情は、現段階における賃金の高低の問題等はわれわれとして調査をいたしておりません。
  307. 岩間正男

    岩間正男君 外務大臣いかがですか。
  308. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) では申し上げます。ソウル市の労働者賃金一九六三年……。
  309. 岩間正男

    岩間正男君 大まかでいいですよ。さっきの選挙の数字みたいなのは要らない。
  310. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一日当たり二百五十五ホワンという数字がございます。
  311. 岩間正男

    岩間正男君 日本の金に直してください。
  312. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一ホワンが日本の二・八円でございますから、二百五十五ホワンでございますと七百十四、五円というところでございます。
  313. 岩間正男

    岩間正男君 これは私たちも調べてみましたが、大体大まかに言って南朝鮮の労働者の賃金は日本の労働者の三分の一から五分の一です。これは低賃金。これをテコにすれば日本の労働者の賃金をさらに切り下げることができる。日韓会談の未来にはまさにこのようないわば一石二鳥をねらうそういう理由があるということは、当然いままでも問題になってきたと思う。どこに一体これは日本の人民の利益があるか、朝鮮の人民の利益があるか、どうも労働者のこういう賃金問題ということになると非常に情報としてうとい、ここに問題があると思う。これはどうですか。
  314. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私のほうといたしましては、隣国の韓国が経済的にも政治的にも安定して繁栄されることを希望するわけでございます。植村さんが指摘するまでもなく、韓国にはすぐれた労働力が豊富にあるわけでございまして、こういった労働力が生産力化いたしまして韓国が経済的に繁栄してまいるということは、わが国はじめアジア全体にとりましてもたいへんしあわせなことだと考えております。
  315. 岩間正男

    岩間正男君 そういう抽象的な答弁では問題を解明することになりませんよ。私は以上二、三の事実をあげたのですが、日韓会談のねらいというものははっきりしているじゃないか。一つは、先ほども問題になりましたが、非常に危殆に瀕している朴一派にテコ入れをする、そして事実上の軍事同盟をつくり、北朝鮮を敵視し、中国を封じ込めようとするアメリカの戦略政策に加担する、そうして日本の独占資本には帝国主義的復活の道を切り開くものではないか、これがいまの焦点になっている日韓会談じゃないか。ドゴールの中国承認によって、中華人民共和国の国際的地位はとみに高まり、アメリカの中国封じ込め政策は破綻している。南ベトナムをはじめ東南アジア全域で後退後退を重ねて、最後の一か八かの交戦を試みようとあせっているここ最近の情勢と全く歩調を合わせている。これが日韓の早期会談妥結じゃないか、こういうふうに思いますが、池田総理いかがでしょうか。
  316. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたのことばは私にはわかりません。われわれは独自の外交をやっておるのであります。
  317. 岩間正男

    岩間正男君 しかも、私は指摘したいのは、南朝鮮の朴一派と、それから日本の反動勢力の一部だけが賛成しているのです。日本国民の大多数が反対し、南朝鮮では、労働者も、農民も、漁民も、民族資本家も、また学生や知識人も、あげて反対している。韓国の全野党がまた反対していることは、御承知のとおりです。韓国内の主要な新聞は、連日日韓会談反対の論調を掲げている。韓国日報の世論調査を見ると、反対の世論は八一%、これがアメリカと朴一派の重圧のもとでの反対であるということを考えると、これで一体この会談を結んでもスムーズにいくとお考えですか、池田総理の御意見を伺いたい。
  318. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最近の韓国の世論調査の結果は、岩間さんが御指摘の数字と全然逆でございます。賛成のほうが断然多いと承知いたしております。
  319. 岩間正男

    岩間正男君 そんなさっきからあてにならない外務省の情報では話になりませんよ。私ははっきり考えていただきたいと思うのですね。いまこういう時期に何を急ぐ必要があるのか。南朝鮮の人民は、これは四月革命をやって李承晩内閣を倒した人民ですよ。ですから、たとえこれを強行しても、日本帝国主義の再侵略に反対して、南北朝鮮の統一とアメリカの撤退を要求して私はこれに大きく戦うだろうと思います。で、昨年の末に韓国の土地ブローカーが外務省をたずねてきて、大使館や通商代表部などの敷地を売り込みにやってきた。その際に開口一番言ったことがおもしろい。何と言ったかというと、いざというときには金浦飛行場がすぐだから逃げ出すのにいい場所です、こうしゃべった事実があります。いまの情勢を何よりも端的に示している。こんな火中のクリを拾うにひとしい日韓会談は即時私は中止すべきだと思いますが、いかがですか、この決意を最後にお聞きします。
  320. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあしばしば御高説を拝聴しておるわけでございますが、本日もあなたの御意見としてつつしんで拝聴いたしましたが、あなたの御意見に応ずるつもりはありません。
  321. 岩間正男

    岩間正男君 まああとで後悔しないようにしてください。池田大平外交がどういう結果をもたらすか。あとで火中のクリを拾ったと言ってほぞをかまないようにしてください。  私は次に防衛問題に移りたいと思います。私は以上、アメリカの中国封じ込め作戦が破綻しているアジアの現状、ベトナム、台湾、韓国等についてお聞きしたいのでありますが、アメリカの冒険的な巻き返しもこれとともに激しくなってきている。こうした中で、アメリカはドル防衛とも関連して軍事力の一部を日本に肩がわりさせようとしております。一月二十七日マクナマラ国防長官は米下院の軍事委員会で次のように証言している。「日本は現在経済的に自国の防衛力を維持することができ、またその自衛力を極東全地域の安全保障に貢献させるため拡大する能力を持っている」、こう言っています。この証言によれば、つまりアメリカは、日本の防衛力を自力で確保させるとともに、アメリカのアジア作戦にも使おうとしているのです。池田総理はアメリカのこのような期待と要請にどのようにこたえようとしているのか、またその実現のためにどのように努力しているのか、お伺いしたいと思います。
  322. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の防衛力の増強は、国の力、あるいは国の状況によりましてきまることでございます。日本政府の考えでやっていくことは当然でございます。で、国力の増加に伴いまして漸増の方針でいく考えでございます。
  323. 岩間正男

    岩間正男君 こういう要請に対しては、どういうふうに考えていますか。
  324. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう要請は私受けておりません。
  325. 岩間正男

    岩間正男君 先ほどマクナマラ国防長官の証言をちょっと読みましたが、防衛庁長官、いかがですか。
  326. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 岩間委員御存じのとおり、要請とか要求ということばを使っておりません。ホープ、希望するということばを使っております。
  327. 岩間正男

    岩間正男君 どう答えておるかということです。こういうものを加味して、防衛庁やあるいは陸海空三幕で目下この問題を検討し作業を進めているような事実はありますか、ありませんか。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕
  328. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) おそらく、御指摘の点は第三次防の計画の問題じゃないかと考えますが、この点につきましては、いま基本的な問題点のあり方につきまして関係部局で研究させております。
  329. 岩間正男

    岩間正男君 どの程度まとまったものですか、それはまとまっておるか。
  330. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) まだ研究を始めたばかりでありまして、まとまっておりません。
  331. 岩間正男

    岩間正男君 ここに航空幕僚監部の「防衛力整備に関する基本的見解」という資料があります。私はこの資料を詳しく読んでみたのですが、ここには日本の今後の国防方針上非常に重要な問題があると思うのです。  まず第一に目次を見ていったのですが、これに大体こういうことを言っている。「1、一般情勢と危機に対する考察」として、「ア攻撃手段、イ防禦手段、ウ秘密兵器の開発」などという項があり、また(2)のところを見ると「一般情勢と注目すべき傾向」、この章では「ア世界政治動向の改善は急速には望めない。イ周辺基地戦略後退、ウAA諸国の動向」等々とあります。(3)のところでは「日本として特に留意すべき情勢」、こういうところでは、アとして「極東のソ軍兵力の構成が変化する。」、イ中共の核開発が進んでいるなどというような、注目すべき数々の情報が記されています。この中で特に私は指摘せねばならないと思うのは、「わが国をめぐる冷戦の様相」という一節です。これは国内防衛に対する基本方針ではあるが、ここではっきりしていることは、国内防衛の中心を冷戦対策に置いており、そのためには、陸上自衛隊はおろか、航空自衛隊までがこれに組み込まれ、さらに産業、交通、通信と、あらゆる国内の組織をあげてこれに協力する態勢をとらせているということです。この事実を防衛庁長官は認められるのか、一体冷戦対策というのはどういうことなのか、これをお聞きしたいと思います。
  332. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) いま岩間委員がお読みになりましたものは、おそらく空幕のある幕僚の研究課題の私案だと思います。御存じのとおり、各幕でそれぞれあらゆる角度から常に研究いたしておりますが、これが一応まとまった場合には、最後は内局と調整いたしまして、案としてきまるわけでございます。おそらく研究段階の案ではないかと考えます。
  333. 岩間正男

    岩間正男君 冷戦態勢について答弁してください。冷戦。
  334. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) いまお読みになりました原稿を見ておりませんので、見解は申し上げることはできません。
  335. 岩間正男

    岩間正男君 冷戦に対するあなたのいままで言ってきたなには、どういう態勢です、冷戦に対していままでに両院で説明されたのは。どういうことですか、冷戦。これは国民は聞きたがっている。
  336. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 冷戦の定義でございますか、あるいは……。
  337. 岩間正男

    岩間正男君 定義と、それに対する態勢をとっているでしょう。
  338. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間委員、発言を求めてください。
  339. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 冷戦に対する対策と申しますか、検討と申しますか、そういう御質問ならば、現在幸いにして現実的なまだ侵略行為もありません。しかしながら、いろんな複雑な思想戦もあり、また各種の動きも激しいわけでありまして、これに対しましては、防衛庁といたしましても、いろんな角度から絶えず研究し、勉強していくことが必要だろうと考えております。
  340. 岩間正男

    岩間正男君 私はこれは資料として、要求したいと思うのですが、私は三年前の当委員会で「治安行動草案」をここで明らかにしました。その次の年、また第四十国会で、私は藤枝防衛庁長官に質問した、「治安行動草案」はどうなったか。そのとき、こういうふうにはっきり答えている。これは速記録にもちゃんと載っていることですが、「治安行動草案」はよく推敲を重ねて三十八年末までには完成する、こういうふうに答弁している。もう完成していると思うのですが、当委員会に資料としてこれは出してほしいと思うのですが、いかがですか。
  341. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 藤枝元長官が草案につきまして三十八年度ごろにできるだろうと答弁をいたしたようでございますが、そのとおりでございます。せっかくそれ以来検討いたしておりまして、近い将来にまとまる見込みでございます。まとまりました場合には、発表し得るものもあるのではないかと、こう考えております。
  342. 岩間正男

    岩間正男君 まだできていないのですか。三十八年までにはできると言ったでしょう。
  343. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) それは見通しでございまして、少しずれたものと考えます。
  344. 岩間正男

    岩間正男君 ああ。まあその過程でもこれはいいのですがね。で、これはぜひ、その後どうなったか、明らかにしてほしい。  で、私は元へ戻って、「冷戦の様相」と題する一節を読んでみたいと思う。次のようなことを書いています。「現在既に我々は、国民に対し組織的に指向された心理戦の渦中にあると考える。この心理戦は世界と極東の一般情勢と日本国内の政治経済状態に応じ、状況に適した基地問題や労働問題をとり上げてフレキシブルに展開されて居り、デモ、ストライキ、騒じょう等は今後とも絶えないであろう。国際情勢の悪化、」、その次は「国内経済政策の失敗、」、これは池田総理よく聞いていただきたい。「天災等により国内不安が高まることは長期的には避けられないが、」云々とあります。これによれば、自衛隊の航空幕僚監部は、現在すでにわれわれは、国民に対し組織的に指向された心理戦の渦中にあると判断して、さらに国内の不安は、国際情勢の悪化や、天災とともに、国内経済政策の失敗によっても高まることを指摘しています。  そこで私は、池田総理にこの際お聞きしたい。すでに心理戦の渦中にあるというような、国民を敵視するような予定観念に基づいて自衛隊を運営することはさしつかえないのか。第二点は、また国内の経済政策の失敗、暗に池田内閣の物価倍増政策も冷戦の原因になると言わんばかりにこれは述べているのですが、そうなのかどうか、この二点をお伺いしたい。
  345. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はそういうものの存在を認めておりませんので、答える限りでないと思います。
  346. 岩間正男

    岩間正男君 あなたは国防会議議長でしょう。これは責任はないと、答えるなにがないとは、あなたがそういうこと言ってはまずいと思いますが、いかがですか。  もう一度伺いますが、まあ問題が何だったら、いまのような、国民を敵視するようなやり方、これはいいのかどうか。それから、経済政策の失敗でこれは非常に冷戦が起こると言っていますが、あなたの政策もあまり成功していないようだが、どうですか、この点ひとつ聞いておきたい。
  347. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 防衛庁から私に出た確定の意見ならば答えますが、一私人が書いたかどうしたか知らぬものにつきまして、総理が一々答える必要はないと思います。
  348. 岩間正男

    岩間正男君 とにかくこれは私案の、監部基本的見解と、今後の防衛問題については非常に重要な問題ですよ。こういうようにはっきりしたものがあるのですから、ものがあるのですから、これは私は今後の非常に重要な問題を含んでいるから、ここで明らかにしてほしいと思っているのです。で、そのあと特に読んでみると、どうです、こういうことを言っている。「大衆民主制政治形態の下で、冷戦を有利に展開するためには国の政治の中に総合された対策が特に巧妙に織り込まれねばならないのであって、今後国の政治の焦点はここに置かれることになろう。従って、今後社会面に現実に現れる冷戦の様相は、社会的現象の裏にかくれた国家の施策と敵性勢力の術策の激しい継続的な闘争の結果に規制されることとなろう。(この秘密戦の実体を分析究明して適切な策を講ずる事は政府各分野に課せられている現在の課題である。)」、ここで私は防衛庁長官にお伺いいたします。国の政治の中に総合された対策を巧妙に織り込むというのは一体どういうことなのか、社会的現象の裏に隠された国家の施策というのは一体何なのか、この点をお伺いします。
  349. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 先ほどお答えいたしましたとおり、そういうものができているとか、あるいは研究しておるとか、あるいは一切報告が出ておりませんので、それに対しては答えることはできません。
  350. 岩間正男

    岩間正男君 試作といっても、これは非常に重要ですよ。こういうものを放置されておいたのでは。どうです。たとえば、私はここで聞きたいのは、「この秘密戦の実体を分析究明して適切な策を講ずる事は政府各分野に課せられている現在の課題である。」、まるで総理大臣の言うようなことを一部の幕僚が言っておるのです。これは、再び日本の軍事体制が変わるということじゃないですか。これは私は非常に重要だと思うのです。議長としてこの点はっきりしてもらいたい。
  351. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど答えたとおりで、そういう文書を認めておりませんので、答える必要がございません。
  352. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間君、時間がまいりました。
  353. 岩間正男

    岩間正男君 認めておらないというのですが、こういうものが萌芽として出ていて、こういうはっきりしたものがここにあるのです。それに対して、こういう体制をはっきり明確にしておく必要がある。  さらに、その次に指摘しておかなければならないのは、これらの施策を総合的に推し進めることは当面の政治的中心であるということを言い、さらにこう言っている。このことは、私は新しい総力戦体制、国防国家へのスタート、その芽ばえだということが、その意図がここに隠されていると、こういうふうに考えるのです。非常にこれは危険きわまりないと思うのです。  さらにもう一つ指摘したいのは、この資料によりますと、六ページにあります。「非核戦に独力で対処し得る効率的な実力を持つこと。」、一節にこう言っておる。「日本の危急を見ても、米国が自国民の生命の安危を考える時、当方の希望するとおりには条約を守れない場合もあることは当然である。」、全く当てにならない米軍について述べているのです。池田さん、一体これはどうです。これは安保条約の正体ではないですか。あなたは安保をまるで金科玉条のようにここで繰り返して安保について述べておられる。それから所得倍増計画が成功したのは安保のためだなどと言っておる。そのとき、あなたの主宰する会議の幕僚監部はこういうことを言ってるのです。安保条約は一体当てになるのですか。これは、条約を守れない場合がある、そういうことを非常にこれは強調しておるのです。これはどうですか。
  354. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう認めてないものについては、私は答えることは差し控えます。
  355. 岩間正男

    岩間正男君 外務大臣はどうですか。
  356. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま総理お答えしたとおりでございます。
  357. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間君、時間でございますから、それ一回で結論に入って下さい。
  358. 岩間正男

    岩間正男君 このように時間がないから、私は間もなく終わりますけれども、航空幕僚監部の基本的見解というものは実に重大な数々の問題をはらんでいる。私は、時間の関係から十分に指摘することができない。しかし、いま指摘しただけでも、これは非常に重要なあれを持っていると思います。これらの意見を総合し、前後の関係を考えてみると、目下自衛隊の幕僚監部の人たちが、今後一体日本の防衛をどうするか。この計画に三つあると思うのです。一つには、国内的には、冷戦という人民弾圧の体制を国力のすべてをあげて総合的に強化する、第二には、米軍の極東戦略、とりわけ中国封じ込め作戦への協力体制をつくりあげ、第三には、自衛隊の核武装による攻撃的、侵略的な軍事体制の確立、この三点に帰着することができると思う。近ごろ再び防衛庁の国防省昇格の問題がやかましくなっているが、これと関係があるだろうと思う。それからまた、池田総理は、昨日の藤田委員質問に対しまして……。
  359. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間君、時間が過ぎましたから。
  360. 岩間正男

    岩間正男君 一九七〇年以後も安保条約を続けたい、と言っている。これは非常に重大な私は御答弁だと思います。これこそ、いま私が指摘したこういう問題とあわせ考えて、非常に今後の日本の行き先にとって重大な問題だと存じます。池田内閣は、憲法改悪、刑法改悪の作業も着々と一方で進めております。安保条約の単なる継続だけではなく、再改定を考えていると思う。私たちは、こう考えますというと、この国防国家、総力戦体制、こういうものが今後の日本の軍備体制の中に出てくる要素というものは非常に多い、こういうふうに考えます。こういうとき、私は、ここでは池田総理はこれについてどうされるのか、明らかにされる必要があると思う。  私は、ナチスのことを思い起こすのですが、公園のベンチで恋人同士が仲よくやっている。ところが、一夜明けてしまったら、次の日は、そのベンチはもう戦車のキャタピラの下であった、これは有名な逸話です。このようなかっこうで……。
  361. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間君、時間です。
  362. 岩間正男

    岩間正男君 いま、自衛力とかなんとかといって、日本のやり方も大きくアメリカの要請、それから日本の反動的な勢力の中で変わっていくという、こういう事態が起こるとしたら、非常に重大問題です。これがないという保証を明確にされるというのが、私はいまの政府の任務だと思います。池田総理、いかがでしょう。このことを私は最後に質問します。
  363. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきり私にはわかりませんが、私は、いままでずっとお答え申し上げたとおりの方針で進めていきたいと思っております。
  364. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 岩間君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  365. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 阿具根登君。
  366. 阿具根登

    ○阿具根登君 まず最初に、有沢調査団の答申後の問題について御質問申し上げます。  答申は、一昨年の十月十三日になされたはずでございますが、答申によりますと、四十二年度までに千二百円の炭価の切り下げ、人員が十二万人、個人能率が大体四十二年に三十八トンということであったと思います。現在、個人能率はすでに三十四、五トンになっておると思います。人員は十二万七千名程度と思っております。そうしますと、合理化のみが先に立って、そうして残された労働者が、当時の有沢団長の考え方と全く反した姿になっている。こういう状態に対して、総理大臣はどういうお考えなのか。  もう少し進めて申し上げますと、いまのままでまいりますと、四十二年にはおそらく十万名を切る労働者になると思います。そうしますと、再び合理化をやられるのか、その点についてはっきりした答弁を……。有沢調査団の答申がすでに今日は狂ってきておる。これはしかし、修正しなければならない時期に来ておるということをお考えになるかどうか、その点について御答弁を願いたいと思います。
  367. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 有沢調査団の答申は、私は、大体において行なわれつつある、実行されている、進んでいるのじゃないかと思います。いまの一人当たりのあれは三十一トンくらいではないか。それから人、あるいはまた鉱山の廃止等は予定以上にいっているようでございます。したがいまして、また、人の関係も予想以上に減っている。しかも、石炭の事情が、あのときの調査報告よりもちょっと変わってきた。大体の数字はあれでいっている。そこで、あの調査団の答申が、今後の問題としてどうなるか、変えていかなければならぬかどうかということについては、いましばらく私は情勢を見ていくべきじゃないかと思います。
  368. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣は、それでは、合理化はこれだけ進んだ、調査団の答申の線をはるかに上回って進んだ、その当時、この予算委員会におきましても、この答申案をそのまま実行するとするならば、おそらく企業競争で、より無理な合理化が進められて、今日の状態を惹起する、四十二年前に今日の状態になるということは指摘したはずでございます。とするならば、なぜに政府として、合理化だけ、これだけ先に進まないような指導をしなかったか。当時申し上げましたように、こういう競争をやるならば、企業競争で残ったものが非常に損をするというような立場から、合理化が非常に早められるということは指摘したはずでありますが、一体どういう御指導をなされたか。
  369. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、ただいま総理お答えになりましたが、企業の合理化といいますか、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの姿は、大体において当初予想したことと同じだと思います。ただ問題は、非常に労働者の数が減ったわけでありますが、この点は、われわれとしてもいささか予想とは違っております。ただしかし、そのよって来たるところをよく考えてみますると、いわゆる石炭企業というものが将来どれだけ有望な見込みがあるかどうかというようなことも、この一両年来非常に議論がされて、あまり見込みがないのではないかというような空気が石炭業界に伝わったために、自発的に退職されるような方が非常に多くなったということが、今日の労働者数の、いわゆる石炭産業に従事しておりまする労働者数の激減をもたらしたものであると考えておるのでございまして、そういう意味からいって、この調子でいけば、先生の言われるように、四十二年ころには十万人になるのではないかというお話でございますが、現実には、いま石炭会社は人が足りないというので、また、若年労働者を補充しなければならないというので、いろいろの手を打っていることは先生自体がよく御存じのところでございまして、私は、これから以上にそう労働者を減らす意図も石炭会社は持っていないし、また、減ることもないであろうと考えております。しかし、もしそういうような徴候でもございますれば、われわれとしても、また十分これに対する手当てをいたさなければならないと考えるのでございます。
  370. 阿具根登

    ○阿具根登君 三十七年からいろいろな手当てをして、そうして、炭鉱の労働者を職場から追い出して、今度は、通産大臣が言われたように、逆を金をつけて労働者を雇わねばならぬ。わずか二年の間です。二年前は、金をくれて炭鉱を出ていってくれと政府は言った。そして、二年後の今日は、金をつけて炭鉱の労働者集まってくださいと言わねばならぬような今日の情勢は正常な政治情勢であるか、政府としてどうお考えになるか、ですね。政府の言うことを聞いておけば、いつも一、二年後にはひっくり返ってしまうじゃありませんか。一体どういうような責任をお感じになるのか。
  371. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、いま先生の仰せになるような実際の実情が労働者の激減という姿になっておりますから、そういうお考え方もあるかと思いますが、しかし、あのままにほうっておいたら、どういうことになったろうか。やはり、石炭産業というものは、もう今日あらゆる面において破綻を来たして、より多くの労働者が、しかも低賃金で苦悩をしたであろうことは明瞭だと思うのであります。油の関係その他から見てですね、そうなったろうと思う。そういうことではいけないからというので、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの計画が立てられまして、そうしてこの合理化が進められておる。その段階において、労働者、離職者のお方に対しては、政府としても相当の手当てをいたしながら、また再就職問題等についてもいろいろお骨折りをいたしておる。そうして、残っておるお方々についても、私たちは、今後スクラップ・アンド・ビルドのいわゆるビルドの計画が順次進んでいくことによって、四十二年を目途にして、少なくとも高能率高賃金というようなりっぱな、いわゆるどこにもひけをとらない、りっぱな産業として成り立つような施策をいま進めておると考えておるのでございまして、あのままに放置した場合と今日の状態とを考えてみると、やはり大きく政治が石炭産業の合理化育成に相当な力を与えたと私は考えておるわけでございます。
  372. 阿具根登

    ○阿具根登君 あのままに放置しておったよりもいいじゃないかというのは答弁にならないと思う。あのままに放置しておくというならば、政治はないのです。日本の基幹産業だといってもてはやして、そうして日本の再建に一役も二役も買わせておってですよ、外国の例をいつも申し上げて済みませんけれども、ドイツではドイツの産業、これだけ復興さしてくれたと、ドイツの経済をこれだけ復興さしてくれたのは、終戦当時のあの苦しいときに炭鉱の労働者が地下で営々として働いてくれたたまものだと、こういうことを言ったことを御存じですか。それを、私がここで質問すれば、その質問に答えればいいだけの感覚で、あのままで放置していったならば、いま時分は炭鉱はとうなっておるか——私は、これでは答弁にならないと思うのです。  そこで、労働大臣に御質問いたしますが、今日プレミアムをつけて労働者を雇わねばならないようになった原因は一体何か。通産大臣は、炭鉱に魅力がなくなったといわれる。魅力のなくなったのは一体なぜか。こういうことを考えてみたいと思います。有沢調査団の答申の中には、たしか年間五%の賃金の上昇を答申されておったと思うのです。それは物価が横ばいであってですよ。ところが、物価は、御知承のように、三十七年に六・七%、三十八年に七・二%、こういうように上がっておるのに、賃金はほとんど上がっておらない。そうすると、合理化は進んだ、出炭能率は三倍近くなった、そうして労働者の賃金は下がった、災害は激発してきた、人が少なくなったから保安に手が抜かった、そうするとますます災害が大きくなる、そういうところに炭鉱に対する魅力を失って炭鉱を出て行くのです。一体いまのままの賃金の形態でいいのかどうか、労働大臣にお尋ねいたします。
  373. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 炭鉱労働者の賃金は、現金給与の総額で昭和三十六年は二万八千九百二円、三十七年は三万千四百九十六円、三十八年は三万三千八百七十三円、前年の賃金に対する上昇率は、それぞれ一〇・二%、九・〇%、七・五%、いずれも上昇と相なっておるのでございまして、物価が上がって賃金が下がったという事実はございません。今後の石炭産業の賃金につきましては、石炭産業の実態に即しまして労使の間で自主的に決定されるべきものと考えておりまするが、今後石炭産業の生産性を高め、そうしてそれに即応して賃金をよくしていくということは、やはり石炭業に必要な労働者を引きつけるためにも、将来業界において御検討いただきたい事柄の一つであると存じます。
  374. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの賃金の上昇率はどの範囲の炭鉱をとられたのか、それをお尋ねいたします。  それから基本的に考えてもらいたいのは、この合理化によって坑外に勤務しておる人々が非常に縮小されたわけなんです。非常に少なくなった。だから、坑内の人の平均が大きく浮かび上がっておる。中小炭鉱もまぜてこの賃金であるのか、あるいは一地域を見られた平均賃金であるのか、全炭鉱を見られたのであるか、そのときの人員構成はどうお考えになっておるか、その点をお尋ねいたします。
  375. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この労働統計は、三十人以上を雇用しておる企業全体を集計したものでございます。
  376. 阿具根登

    ○阿具根登君 私の統計では六%上がっておるようになっておる。かりに平均がいま言われたように、三万三千八百七十三円の平均をとっておるとするなら、ひとつ筑豊方面あるいは大牟田方面に行ってごらんになったらわかると思うのですが、炭鉱の坑内で仕事をしながら子供をうちに一人置いて、大部分の妻は内職をされておる。そういう現実を無視された私は平均だと思う。だからそういう条件の中で働かされておるから、炭鉱に対して非常な魅力を失っておる。さらには坑外と坑内の比較を一体どう考えられておるか。炭鉱にしろ、鉱山にしろ、地下産業労働者の賃金と太陽のもとで働かれる坑外の筋肉労働者の賃金とどういうような比率をお考えになっておるか。たしか一万三千円というのを勧告されたと思いますが、それで最低賃金がやっていけるとお思いになるか、以上の点をお尋ねいたします。
  377. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 坑内、坑外の賃金の比較は、最近におきましては、戦前の比率から見ますというと、だいぶ差がなくなってきておるように思います。また、他産業と石炭産業の賃金を比べた場合におきましても、かつて見られたほどの差異はなくなってきておる。したがって、相対的には他産業に比して、また、坑内賃金は坑外の賃金に比してかつての状態から見ると、最近においては割りが悪くなってきておるということは、統計上から帰納される状況でございます。
  378. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣に再度御質問いたしますが、労働時間の短縮というのが最近非常にいわれておるし、特に炭鉱に対しては、諸外国では六時間労働、五時間労働ということがいわれておるわけであります。日本は相変わらず八時間労働でございますが、ああいう条件の悪いところで八時間、しかも労使間の協定によって二時間残業十時間勤務ということがきめられておりますが、一体、坑内の作業が八時間でいいとお思いになるか、坑外でさえも、現在は週四十時間という問題が非常に大きく叫ばれておる。各国では実施されておるところが多々ある。そうすると、地下産業労働者が坑外の労働者と同じような労働時間で働くのが当然であるかどうか、お尋ねいたします。
  379. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在、日本の炭鉱におきましては、八時間労働が普及いたしております。これは御承知のとおり、坑口から入りまして切羽に着いて、作業を終わって坑口へ帰着するまでの坑内時間のトータルで八時間労働というやり方をいたしております。で、この八時間が長過ぎるかどうかという問題でございまするが、労働基準法におきまして一般の労働時間を八時間に制限しておるという点から見ますというと、条件の非常に悪い、労働環境の悪い坑内における作業については、もう少し時間を短くするのが適当ではないかという考え方も十分首肯し得るところでございます。ただ、御承知のとおり、労働時間につきましては、いろいろ沿革もあり、また、賃金その他にも関係のある事柄でございまして、労使間で話し合いで現在作業時間を決定いたしておるような実情でございまするので、政府といたしましては、希望といたしましては、逐次労働時間が短縮されることが望ましいとは思っておりますが、いま政策として直ちにどうこうということは考えておりません。労使間の話し合いによって、適当に調整されるように望んでおる次第でございます。
  380. 阿具根登

    ○阿具根登君 坑口から坑口まで八時間でございますが、御承知のように、三池の災害は斜坑で起こったわけです。そうしますと、坑底じゃなくて、途中にそういう大きな危険をはらんでおるのが炭鉱でございます。坑内でございます。そうしますと、坑口からすでに危険区域で作業状態に入っておる、こういうことになるわけです。そうしますと、いま労働大臣が言われましたように、坑外の勤務時間と坑内の勤務時間というものは、差をつけたほうがいいんだという気持ちは持っておる。しかし、現在政策として云々と言われましたけれども、それだけのお気持ちがあるならば、これは基準法を変えて、地下産業労働者は時間を短縮せにゃならぬ、あるいは坑内六時間なら六時間、あるいは七時間なら七時間、このぐらいのことをやって当然ではないかと思う。またそうしなければ、私は炭鉱の労働者はますます集まらないと思う。そういう現実が起きておる。しかも、各国では当然それが認められてやっておる。こういう現実を、なぜ炭鉱が不況だからということだけで、こういうひどい産業をやっておる人に対して政策がつくられないのか、その点についてもう一回御質問申し上げたい。
  381. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 申すまでもなく、炭鉱は非常な不況に当面いたしまして、目下、再建を目的として合理化の進行中であります。いわば炭鉱における経営状態は、いま非常な曲がりかどに差しかかっておるわけでございますので、この際、政府の政策として、炭鉱の労働時間に手をつけるということが、はたして、炭鉱に対する対策として適当かどうか。この点は十分慎重に考慮を要する点ではないかと、かように存ずるのでございます。もとより労働省といたしましては、労働条件は、逐次改善向上いたしますことは日夜望んでおるところでございますが、政策として取り上げるには十分適当なる時期、すなわち炭鉱の経営その他の点から見まして、最も適当なる時期を選ぶということが必要ではないかと、かように考えております。
  382. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がありませんので、あと、石炭対策特別委員会で質問することにしますが、きょうの発表によりますと、三十八年度中に七十四万四千件の産業の災害があった。六千四百人の死亡者があった。だから産業災害に対する抜本的な対策を考えなければならぬ。こういうことを労働省から発表された。どういう産業災害に対する抜本的な対策を考えておられるか、お尋ねをします。
  383. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 昨年の三池の事故並びに鶴見の事故、こうした相次ぐ重大なる産業災害の発生によりまして、産業安全についての世論が非常に高まってきていることは事実でございます。労働省といたしましては、当然、こうした世論にこたえるために、また、こうした事故に当面いたしまして、従来の安全行政そのものを反省する必要もあると考えまして、昨年以来、産業安全についてのいろいろな施策を検討いたしてまいったのでございます。これらの詳細につきましては、あるいは法令の改正を要するものもございまするし、また、法規の運用によって解決し得る問題もありますし、また、新しく立法を要する点もございます。これらの対策全般につきまして、一応の見込みをつけ、目下、これの具体策について、労働省として検討をいたしているところでございまして、これは適当なる時期に、具体的な内容についても、詳細、御説明いたしたいと存じます。
  384. 阿具根登

    ○阿具根登君 まだ、具体的なものがないようでございますが、産業災害に対する抜本的な対策を考えられるとするならば、いま言われました三池の四百五十人ですね。これは炭じん爆発でございまして、おそらく炭鉱を知るものならば恥ずべきこれは災害です。三十年前ならばいざ知らず、いま、炭じん爆発があるなどということは考えられない。当然、これは食いとめられる爆発であったということはこれはだれでも言っていることなんですが、その炭鉱に対して、労働省がどういう処置をおとりになりますか。こういう問題が起こった場合に、ただ、大臣から大臣に勧告される。局長から局長に勧告される。産業災害が七十四万四千件も起こっておって、その中で、一番みじめな災害が起こる炭鉱に対しては、なぜ労働省が所管することができないのか。これは通産大臣と総理大臣に、あとで御説明を願います。たびたび私はこの問題は質問いたしておりますが、私には、納得できる答弁を聞いておりませんので、この際、産業災害を考えられるという時期にあたりまして、なぜ炭鉱だけ、なぜ坑内だけ、その産業災害を適用する労働省が見ることができないか、その点を御質問申し上げます。
  385. 福田一

    国務大臣福田一君) これは、いままでもしばしば御質問に相なったことでございますが、従来、戦後におきましても、この問題は一度経済界、政界において、また国会において論議の対象になり、そして、政府においてもいろいろ検討をいたしました結果、今日のような法制になっておることは阿具根委員がよく御了承のところだと思うのでございます。そこで、なぜこれは石炭の場合にだけこの保安と生産とを切り離さないでやるかということになりますと、御案内のように、山を掘ります場合にはどうしてもその生産計画というものを定めていくわけでありますが、その生産自体は保安と完全にもう密接した関係にございます。これはもう実際鉱山でお仕事をなさった方はすぐおわかりになることでありますが、しかも、経営者の側から見れば、保安がうまくいかないということは経営がうまくいかないということであり、生産がうまくいかぬということになっておるわけであります。このように、生産と保安というものは切り離しては、これは考えられないものでございますので、ただいまのように、生産を監督しておる通産省で保安の問題を一応主として実施するといいますか、監督もいたしておる、こういうことでございます。もちろん労働省においても、時と場合により、またはその具体的な例等に従いまして通産大臣に勧告をする、局長に勧告をするとかというような措置もいたしておりますが、災害を防止するという見地から見ますというと、これは労働省のほうでやったらいいじゃないかという御議論もわかるのでございますが、先ほど申し上げましたように、生産と保安というものは非常に密接不可分であるということから、いまのような制度になっております。これはもう阿具根委員がよくおわかりかと思いますが、石炭鉱業における保安と労働関係を切り離しておるところは世界でも私の承知いたしておりますところでは、インドがあるだけだと思うのであります。世界各国とも日本と大体同じような構成でやっておられると承知いたしておるのであります。しかしながら、保安の重要なことは、これはもうもとよりわれわれも痛感をいたしております。したがって、今後は労働省とより一そう密接な関係をとりますと同時に、さらに保安問題について、必要があれば鉱山保安法等においてその改正等も考えてみたい、かように存じておる次第であります。
  386. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題はずっと以前からの問題でございます。私も、通産大臣としてたびたび質問を受けましたが、いま福田通産大臣がお答えしたように、やはり生産と保安とが一体どちらかというと、保安が第一のようなものでございます。私は、どちらでなければならぬというのではなしに、やはり保安が大事なんだということであれば、省のいかんを問わず、やはり生産体制ということを考慮しながらやっていくのがいいではないかという考えであります。
  387. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましては、鉱山保安についての所管の一元化という、産業安全の一元化という問題がございまして、これにつきましては、いろいろ省として検討は加えております。しかしながら、事は通産省との間の所管の問題でございまするし、国会の議決を要する、法律によって決定されるべき問題でございます。したがって、それとは切り離しまして、鉱山保安自体が非常に重要な問題でございまするから、現行法に従いまして、できるだけ保安のために通産省へ協力の労を惜しまない、こういうことで、通産省の所管の保安にお手伝いをするというような気持ちを一歩進めまして、むしろ保安というものは労働省として当然自分の責任でやっていかなければならぬものだというくらいの気持ちでこの問題に取り組んでいきたいと、かように思っております。
  388. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。保安関係総理以下言われるように、まあかまえの問題もあると思います。通産省鉱山保安局が担当する、あるいは労働省のしかるべき部局が担当するということには、そのかまえの問題ももちろんありますが、あまりにも日本の場合は炭鉱災害が多い。しかも大規模のものが最近出てきている。小さいものは所々にあるわけです。そこで、私ども具根委員も言っているように、何かどこかに問題がないだろうかというせんさくの結論一つとして、炭鉱保安のあり方、その監督行政のあり方ということをかなり前から指摘をしているところなんであります。わが国の一連のこういった災害関係を見ますと、数は多いが、こまかい問題では交通関係ですね。今日、公安委員会に対して、車券——乗用車において二年、一般トラック、貨物等においては一年間、車券を受ける場合にはこれは公安委員会としておやりになる。車券を継続する、しないをおきめになるその際には、必ず整備士の資格を持った人の整備記録というものをつけなければ、おかど違いからの調査の証明を受け、整備をしたという記録がなければ受け付けないでしょう、現在、実際問題として。今度出されようとする電気事業法においても、変更になれば御指摘ください。屋内保安については電力会社が従来見ていたものを切り離していこう。これは電力会社の責務を、これを幾らかでも軽くしようというのが本来の目的ではなくて、まあ諸施設がありますが、はずしたあとどうするか、屋内保安、つまり漏電その他による火災とか、非常に数の多いというような、保安対策上、施工者であり、また、供給義務者である電力からはずしていく。はずした場合に一番いいのは消防庁あたり、これで保安関係の点検をさせる。不備な点は設備責任者である電力会社にやらせたらどうか、あるいは公益法人をつくったらどうとか、法制上もだんだんいろいろな面でこういった監督行政については変わりつつあると思う。したがって、私はこれらの関連に立って真剣にひとつお考えをいただきたいし、これらの法体系変遷との関係を同じ通産大臣としてどうお考えなのか承っておきたい。
  389. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のように、電気事業の関係におきましては、ただいまそういう問題を検討いたしております。  鉱山の場合におきましては、今度出しました鉱業法におきましても保安というものを非常に重要視いたしまして、鉱業権者というものは、いままでは資力とかあるいはまあ技術とかいうような面を持っておるかおらないかという点を適格要件にしておらなかったのでありますが、御案内のように、今度の鉱業法では、そういうような技術あるいは資力等も十分考え、あるいはまた、災害を起こしたような場合には、不適格者として鉱業権もなくしてしまうというようなところまで踏み切って、保安という、これは非常に保安が大事だからという意味で、保安の見地から鉱業法自体も今度は大きく修正をする、こういうような立場をとっておるわけであります。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 したがって、今後鉱山保安の問題におきましても、先生の言われるところや、あるいは阿具根委員の言われるようなところも十分考えながら法制の整備をいたしていきたい、かような考え方で、われわれとしてはこれを改善していく。このままの姿でいいのだ、こういう気持ちではなくて、一歩々々これを改善をし、改良をしていく、そうしてよりよいところに持っていくという努力を今後も継続いたしてまいりたい、かように考えております。
  390. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣の答弁を聞いておりますと、坑内は生産と保安は切り離せないのだ、こうおっしゃるけれども、じゃよそのやつは保安と生産は切り離せるか、たとえば道路工事を盛んにやっている。三宅坂の下なんかみんなトンネルです。トンネルはこれはどこでやっているのですか、また、そのほかに災害の多い建設業はどこでやっているのか。みなこれは保安と生産は、これは表裏一体です、全部。生産のあるところに保安問題がある。だからこれだけの大きな地下道を掘っておる、トンネルを掘っておる、道路工事をやっておる、建設作業をやっておる、これは全部労働省の所管です。なぜそれじゃ坑内だけ生産と保安が結びついておるのだ。これは坑内だけが結びついているのじゃない。しかし、長い間の歴史はわかります。今日までやってきた通産省の所管において保安を担当されてきたことはわかるのです。しかし、こう災害が多くなってきた、しかも十年、二十年の昔と違うのです。人命がいかに尊重されねばならぬかということは、どなたの口からも言われない戦争中ならば、一人、二人死んでも問題なかったのですが、いまはそういう事態じゃないのです。そうするなら、いまこそやるべきじゃないか。たとえば労働時間の短縮やら最低賃金やら質問しますと、外国にあっても、日本はいまの環境じゃなかなかできないとおっしゃる。保安の問題を聞けば、外国もやっていないのだからやれない。どっちにしてもやれないということです。だからなぜ他の産業で、炭鉱とあるいはそれに似かよったところが全部労働省の所管の中にあって、これだけやれないかという問題について総理大臣も言われましたように、総理大臣が通産大臣のときから質問をしている。しかし全然進んでいない、くどいようですがひとつ御答弁願います。
  391. 福田一

    国務大臣福田一君) これは私は度合いの問題だと思います。生産というものと保安とは、切り離せないのだということについては、これはお説のとおりだと思う。生産のあるところに危険が起きる、これは当然どこでもある。工場の中でもあります。ただし鉱山というようなところにおきましては、順次掘り進んでいきまして鉱床等が変化をしていく。その場合に、道路の場合なんかですと、非常に短い——短いといっても一キロ、二キロある場合もあるでありましょう。しかし、鉱山の場合においては、鉱床等は三キロ、四キロの先にあるものが多い。そういうものを対象にして生産をするという場合においては、私は生産と保安というものは、より非常に度合いがきついと思う。そういうような度合いのきついものであるから、やはり生産と保安は一応一緒にやっていったほうが事態に合う、こういう考え方で今日の法制ができておると思うのであります。私は海外においても大体同様な趣旨においてそういう法制ができ上がっておると思うのでありまして、全然これは異質のものである道路工事でトンネルを掘る場合も、あるいは電源開発工事で隧道を掘る場合も危険は伴う、仰せのとおりと思いますが、そこには度合いというものがある。仕事の内容が違う。したがって、今日のような法制でやっていくのがいいのではないか、こう私は考えておるわけでございます。
  392. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産大臣と私の間には、基本的な考え方が違うのです。総理大臣も私の答弁に、たびたび答えてくださるのは、生産よりも保安が先だと言われたのです。たしか岸さんのときだったと思いますが、車の両輪だとおっしゃった。ところが、どうも通産大臣の答弁を聞いておると、車の両輪のように考えておられるのではないと思うのです。保安をまず先に考えるなら、私はいまの論は成り立たないと思う。生産を先に考えられるのでしょう。だから生産が先で保安がこれにくっついておるのだと、離すことができないのだと、こう言っておられるのだと、私はこう思う。じゃ、諸外国でなぜそういうことを通産省でやっておるかということになってまいりますと、その考え方が違う。それじゃ、外国で死んだ場合のその後の処置、あるいは日本で死んだ場合の今度の処置、どうお考えになりますか。私はハワイに行きましたときに、自動車の運転手がこう言った。人一人ひき殺したら、私は一生、その人の家族の生活を見るために、一生私は働かなければなりません、だから、おそくなってもかんべんください。こう言っているのです。日本はどうですか。人間が一人死んでも、少ないので四十六万円です。四十六万円で終わりです。多い人は百二、三十万円ですね。もしもあなたがそうでなかったならば、なぜこういう問題について、人一人殺したならば、たいへんなことになるぞというくらいのことをやれませんか。特に炭鉱の場合は、ガス爆発等で、これは会社のミスだと言って罰したのが何回ありますか。三池の問題でも、だれが悪かったか、まだ結論も出ておらない。私はいまから聞いてみますが、一体どういうようにお考えになりますか。そういうことで、うやむやになっておるのが今日なんです。そうするならば、通産省が保安問題を所管されるなら、それだったら、もう保安問題を無視して人でも殺したらたいへんだぞというくらいのことをなぜ考えないか、罰則はどうお考えになっておりますか。私はいままで炭鉱問題で、数回こういう問題を体験いたしましたけれども、全然そういうものに行き当たったことがない、どういうふうにお考えになりますか。
  393. 福田一

    国務大臣福田一君) 私の申し上げておるのは保安と生産とは一体である、こういう考え方で申し上げておるのでありまして、車の両輪というと、車は一輪でも走る場合がありますから、いささか違うわけでありまして、その感じは切り離せないものだと、こういう感じで申し上げておるわけであります。したがって、保安は非常に大事でございます。保安は非常に大事でありますが、それではそういうような場合に、そういう災害の起きた場合に、これに対する手当が薄いのではないかということでございますれば、これはわれわれとしても十分考えていかなければなりません。また、事実災害が起きた場合に、責任に帰すべきものがあれば、これは当然場合によったら刑法の罪にも適用されるものでありまして、追及をどんどんしていかなければなりません。そういう意味において、手ぬるいではないかというおしかりであれば、これはわれわれとしても今後十分に考えていかなければならないと考えておるわけでございまして、そういう面をネグレクトして、そうして私たちが、生産と保安は一体であるから、まあいまのような法制で一応やるのだ、こういっておるのではない、やはり生産と保安は一体であるけれども、非常にこの保安ということは大事であるから、この面ももっと改善、改良をする工夫をしながら進めてまいりたい、こういうことを言っておるわけでございます。
  394. 亀田得治

    亀田得治君 関連。この保安問題に関して政府全体としてもっとしっかりとした統一を願いたいという考えを持っておるわけです。法務大臣はおられませんが、総理大臣にそういう立場から一点お尋ねをしたいのです。  それは、たとえば国鉄の事故等がありますと、必ず相当な被害があれば取り締まり当局は運転士なり、そういう関係の人を逮捕して、そうして前後の事情等をお調べになる。ところが、三池であれだけの大災害を起こしながら、そういう措置というものが一つもなかった。私も災害直後党から行ったわけでありますが、検察側の体制というものは、ほかの仕事を兼務しておる検事を一人つけてあるだけなんです。ああいう大災害、しかも問題点——専門的にいろいろな問題がある、一体そういうものに検事を一人つけて何ができるか。高検の検事長にも私は私なりの意見を言いました、そういう状態です。それから一体しからばどういうことを調べておるのか。警察と検察庁に聞きますと、その炭じん爆発に至る直接の原因をまず究明しておる、そういうことです。そうすると、それは炭じん爆発したすぐそばにいた人はほとんどなくなられて、おりませんし、現場はこわれておりますし、しかも専門家の調査が始まるとかいっておるわけでありますから、それは問題はそんなところに力を入れていたのではうやむやになるにきまっておるわけですね。そうじゃないので、物理的な直接の原因、その発火の原因というものは、これは別個に炭鉱行政として究明しなければならぬでしょうが、警察や検察の態度としては、炭じん爆発であれば炭じんがあったことは間違いないのですから、その点はこれははっきりしておるわけなんですね。しからばその炭じんをそこまでたくわえた責任というものはどうなんだと、なぜそういう点に重点を置いて、人の関係というものについてもっと力を入れた調査をしないのか。それを野放しにしてあるものですから、そういう炭じん関係について責任のある会社側の技術者なり、そういう諸君は、事件が起きた後に適当にいろいろな説明のしかたというものを考えて、結局うやむやになっておる、私も言ったのです。そんな角度から刑事責任というものを究明しておるのだったら、それはうやむやですよ。直接の発火の原因というものは、物理的にもっと別個な調査を十分にやったらよろしい。それをまるきりわざわざにがしてしまうようなかっこうの調査を、いま申し上げたようなかっこうでやっておるのです。だから現在もう何も出ぬでしょう。炭じんがたまっていて、あれだけの人が死んで、そうして日本のいまの法制から見て、刑事的な責任をだれも負わない、そんなばかげたことはあるものですか。こういうところに姿勢がなっておらぬと私は思うのです。そうでしょう。ところがあなたは、かわいそうな運転士さんとか、そういう人たちがいろいろ事故を起こすとすぐ逮捕する。安い賃金で、そうして寝不足が重なって、過密ダイヤで、そこへ持ってきて過密状態にさらに人を合わせるという、非常に無理な場面もあるわけですね。しかし、それはそれとして解決しなければならぬが、問題が起きたらその調べもけっこうでしょう、しかし、大三井ということになりますと捜査の常識をはずれたことをやっておる、それはけしからぬ話ですよ。総理大臣、こういう一体片寄ったへんぱなことでいいわけでしょうか。
  395. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、司法当局はやはり相当捜査検討しておると思っておりますが、詳しいことは通産大臣から……。
  396. 福田一

    国務大臣福田一君) 司法当局は事件発生後も取り調べをやっておりまして、いまもなお継続をいたしておるわけでありますが、ただ問題は、いま亀田先生の言われた意味は、炭じんがあるから発火するのだ、炭じんがたまったこと自体についてすでに責任があるのではないか、こういうことであると思います。その炭じんをためた責任をどうするか、こういうことでございますが、これは実を言いますと、炭じんはこれは石炭を掘っておる以上は、度合いの問題は別としまして、いつでもこれはしょっちゅうあることでございます。炭じんを全然皆無にして石炭を掘り出せということは、これは不可能でございます。そこで問題は、その度合いになるわけであります。空気中にどれだけ炭じんがあってはいけないか、こういうことについては各国においても調査をいたしておりますし、それから日本におきましても、その炭じんの量はどれだけあったら発火の原因になるかということで、実は原因をいろいろ究明をいたしておったのでありますが、今日までそれについて定説がないのであります。まだない。そこで通産省におきましても、炭じんがたまったということになればこれを押える、そういう基準をつくろうとして、ここ両三年来非常に努力をいたしておったのでありますが、できなかった。そこで私は、今度の三池炭鉱の爆発が起きたとき、私は現地に行きました。そうして、そういうような度合いの問題とか、あるいは一寸たまったからどうとか、空気の中にどれだけあるということと、あるいはたなみたいなところにたくさんたまったらどうかとか、いろいろあるのでありますが、そういうことについても何もないと言うから、そういうばかなことがあるものじゃない、そういう科学的な問題とかなんとかというのじゃなくて、もう大体常識的に五分なら五分ぐらいたまったらいけないのだという基準をなぜつくらないのだと言って、それを早くつくれということを実は現場で指示をしてきたわけでありまして、いま先生のおっしゃるような気持ちは、私としてはよくわかるが、いままではそこまでいっておらなかったということでございますが、今後はひとつそういう点はちゃんと基準、一応のめどというものをつくった厳重に監督をいたしてまいりたい、こう思っておるところであります。したがって、法律、いわゆる刑事上の問題につきましては、今日までそれがはっきりしておりませんような事態でございますので、これを司法的に追及するということはなかなか困難であるが、これは法律適用の問題になりますから、法務大臣からお答えすべきかと思いますが、私はなかなか困難だと思いますが、しかし、今後におきましては、そういうようなことはもうないように厳重に取り締まりをいたしてまいりたい、かように考えるわけであります。
  397. 亀田得治

    亀田得治君 私は決してそんな炭じん皆無というような状態を想像しておるわけでもありませんし、問題は、会社の保安の責任者というものがあるわけでしょう。それすらも逮捕の対象にならない。あれだけの大爆発を起こして、しかも、常識的には非常識な爆発、こう言われておるわけです。私は決して、軽率に人を逮捕したり、そういう意見を持っておるものじゃないんですよ。しかし、起きたこの人命の損失並びにその起きた原因といいますか、炭じん爆発、その二つを考えたら、ともかく責任者は一応逮捕する、それくらいの強い姿勢がなぜ出てこぬのか、それを言っておるわけです。私たちが現に会った場合にも、さあどうして爆発したのでしょうか、われわれもふしぎなんです、そんなことばっかり言っているわけです。責任のがれです。そういう姿勢を私は直すべきじゃないか。総理大臣はよく御存じないから、法務当局しっかりやっておると思うとおっしゃいましたが、そんなにしっかりやれるわけがないわけですよ、検事を一人なんかつけたって。大事件には必ず二名、複数をつけなければやれるものではないのですよ。複数であれば、相談をして、ない知恵も出てくるわけです。そこを言っているわけです。ああいう状態で、どうもいまの御答弁ですと、想像のとおり、刑事責任だれもなし、これは非常識ですね。非常識ですよ。そういうことでいいでしょうか。
  398. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどもお答えいたしましたが、その問題については、今日でもこれは一名では足りない、検事一名では足りない、二名、三名にして調査すべきではなかったか、こういう御質問も含まれておったと思いますが、これは一つ考え方でございまして、なるほど、そういう場合には二名にすべきだということもあり得るでありましょう。しかし、いまでも調査を続けているという段階であります。それから、すべて私はこれは責任——無過失の責任というものを認める、こういう場合において認めるということであれば別でありますが、この責任がはっきりしないのに刑罰を科せられるということは、私は法治国としてはこれはいかがか。それは亀田さんのほうが一番専門家でいられるから、よくおわかりのことだと思うのでありますが、しかし、責任をいま追及しておる。そうして、何とかしてそれをさがして制裁を加えなければいけないという態度をとっておることはお認めを願えると思うのであります。ただ、それは、そういうことでは手ぬるいではないかというおしかりであれば、これはよくその気持ちはわかりますけれども、現実にその責任がないのに、それでは社長をすぐ引っぱって取り調べる、あるいはまた、そこの鉱山所長をすぐに逮捕する、こういうことをやるべきであるのかどうか。私は、その場合においても、たとえば労務者の方——これは例でありますから、決して労務者を対象にして言うのではないが、労務者のミスであっても、たとえばそういう炭じん爆発が起きたような場合において、鉱山の所長をすぐつかまえる、こういうわけにはまいらぬでしょう。その責任がどこにあるか、那辺にあるかという捜査を完全にやらなければいけないという点では、私はごもっともの御意見として伺うのでありますが、その責任の所在が明らかにならないと、責任がいまのところ捜査で明らかにならないということで、そういうやり方は間違っておる、もっとだれかでも警察へとめ置くとか、あるいは取り調べするとかいうようなことをして、もっとやったらいいじゃないか。これは私は取り調べの方法論になると思うのであります。態度としては、いま現にやはり追及をいたしておる。ただ、どういう責任、だれにということがわからないうちから逮捕するということは、法治国としてはなかなかやれないことではないか、こう考えておるのでありまして、おしかりの気持ちはよくわかりますし、今後はそういうことのないように努力をいたしたいと思っておるわけであります。
  399. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ三池の問題はずいぶん質問いたしておりますが、少し通産大臣法規を御存じないと思うのですが、これは保安法規でちゃんと炭じんがどのくらいたまったならば措置しなければならぬときまっておるのです。あなたがいまさら行って、五分たまったから、一寸たまったからということではないのです。これはきまっているのです。それを守ったかどうかという問題ですね。それを守ったか守らぬかという問題です。それから、大体炭函が走ったというのが原因になっている。炭函は斜坑で走るということは、これは常識です。だから、そういうものを追及していく場合に、結局、いまおっしゃったように、無過失賠償みたいな姿になってしまって、そうして一番気の毒なのはその犠牲者なんです。何ぼ政府がやろうとおっしゃっても、あるいは会社がやろうとおっしゃっても、現実問題、未亡人がほんとうに子供を教育するだけの政策がありますか。ほとんどこの人たちは一生泣いて、子供の成長だけを楽しみにいくのだろうと思うのです。それを私は言うのです。一体だれが悪いのか。一番悪くない人が一番泣いているではないか。なぜそういう点でそれではもっとはっきりした賠償なりあるいは慰謝料なり、そういうものを考えないのか。それから、責任の所在というのは必ず突きとめなければならぬ。たとえば災害後私は坑内に下がったことはございませんが、テレビで見たのですが、いま設備しているだけの設備をしてあったならば、私は爆発はしなかったと思うのです。そう思うのです。あれは全くなかったのです。いまはあの斜坑の天井にほとんどたなをつるしてある。ほとんど岩盤を載せてある。もしもそういう設備があったならば、ああいう災害がなかったと思うのです。もう一転して考えますと、三池以外の炭鉱にあれだけの設備してありますか。してないとすれば、三池のような災害がまた起こらぬとだれが保証するでしょう。なぜこういう災害が起こったならば全炭鉱にこの種の災害防止のできるだけの手を指示しないか、私はこう思うのです。  それから、ここでは生産と保安は切り離せないとおっしゃる。その思想が今度は下部に行きますと、保安の責任は会社にありますと、こういうことになっておるのです。そうして労働者の言うことを聞かない。起こった場合は、ただいまのような現状です。保安の責任は会社にあると言うならば、そういう事態が起こったならば、会社はどういう責任をとるのかということをはっきりきめなければいかぬのです。だから、いまも申し上げますように、何で保安管理者が会社の幹部じゃなければできないのか。そうすると、会社の幹部は生産を第一に考えるのは当然です。生産をまず考えます。だから、あなたの考えは、人命尊重が先でそれから生産だということじゃないのにつながっておると私は言うのです。百歩譲っても、被害者になるべき労働者の代表がなぜ保安監督員になれませんか。危害を加えられる側の代表は一切——保安委員会に出るだけです。保安監督員にどうしてなれないか。そういう点ですね。これは少し研究されておるようですから、ひとつはっきりした答弁をお願いします。
  400. 福田一

    国務大臣福田一君) 保安に関して労働者が保安監督員になるかどうかという問題でございますが、この保安確保の問題につきましては、山々においてただいま保安委員会というのをつくりながら、この保安の問題を処理しておる。その保安委員会には労働者の人が半分、会社側が半分、議長は会社側ということになっております。いざというときには多数決——意見が半々の場合には会社側の意見が通るのではないかという問題があるわけでありまして、それはそういう姿がいいかどうか。あるいはどういうふうにしたら保安をうまく処理できるかという意味は、これは経営者も労務者も——経営者のほうも鉱害が起こればたいへんな損害であります。労務者は、いまあなたがおっしゃるように、一生の問題になるのでありますから、これはほんとうに密接に連絡をとりながら保安を十分考えて、そして生産をしていかなければならないということは、これはお説のとおりだと思うのであります。その場合にどういうふうな体制にしていったらいいかということが、今日われわれとして研究しなければならない問題であると思うのでありますが、これについてただいま鉱山保安法の改正等について、あなたも御承知のように、基本問題の小委員会等にも諮問をして、そうして結論を出そう、こういうふうに努力をいたしておるわけでございます。私は、いずれにしても保安というものを十分考えながら生産をやらなければいけない。また、生産をやるときには、逆に保安を十分考えて、いずれもこれは一体のものとして十分にこの点は研究をしながら、しかも、石炭産業というものがりっぱに高能率、高賃金の産業として育つようにやってまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。
  401. 亀田得治

    亀田得治君 関連質問ですから遠慮しておこうと思ったが、ちょっと食い違いがあるものですから。というのは、私調査に行ったときに、炭じんは幾ら幾ら以上ためてはいけない、そういうふうに思っておった。そう思って質問したところが、大臣がそんなことないとおっしゃるものだから、担当の大臣がおっしゃるから、これは私の勘違いがないと思っておったのですが、阿具根君の意見ですと、私の記憶のとおりです。そうすると、やはりそこに問題が出てくるわけなんです。そうでしょう。そういうものがたまっておることが爆発のもう一つ先の問題になるのですが、当然これは刑事責任の問題になってくるのです。しかも、たとえば書類の押収にしたって、一ヵ月くらい過ぎてからやっておるのです。一部分は前にやっております。あれだけの大災害を起こして書類の押収程度のことを全部すぐやれない、そんなばかげた弱腰ではとてもだめだという感じを強く受けてきておる。これは行った人全部がそう言うておりますよ。  それから、いまの基準の問題というのは非常に大事ですが、これはどうなんですか、基準があるのでしょう。
  402. 加藤悌次

    政府委員加藤悌次君) 計数的な問題でございますので、私からお答えさしていただきます。  炭じんにつきましては、石炭鉱山保安規則の中に、炭じんはこれを多量の集積してはならないというふうにきまっております。具体的にどれだけの量ということについて従来まだきめてございませんので、この量的な基準をきめるべく目下検討いたしておる次第であります。
  403. 阿具根登

    ○阿具根登君 坑内を全然知らぬ者の前ではそれは通るかも知れませんぞ。しかし、その規則というのは炭じんはためちゃならぬぞということなんです。それはおっしゃるとおり。毎日毎日炭じんはたまるのです。それは炭坑内におる人の常識、保安に従事する人の常識です。これは炭じんを堆積することはできぬということが規則にちゃんときまっておる。何尺とか何寸とかじゃなく、ちゃんと湿度もどのくらいかきまっておる。だから、炭鉱を知らぬ者には通るかもしれませんが、ここではそういうことじゃ通りません。  それから、先ほどの問題ですが、労働者が保安監督員になぜなれないか。いま言われた保安委員会というのは、一ヵ月に一回開く。あるいは場所によっては二ヵ月に一回開いておる。しかも、一日のうち一時間開いておるだけなんです。そうじゃなくて、保安監督員というのは毎日坑内に下がって、そうして先ほど言われたように、一日一日炭じんがたまっていく、そういうものを忠告したり、あるいはガスがあぶない、あるいは天井があぶないというようなことを注意するのが保安監督員なんです。その保安監督員を労働者からもなぜ出せないか。自分たちの仲間を守るために、自分のからだを守るために、なぜ自分たちの仲間から出せないか。今度は出すようにならないか。こういうことを言っておる。大臣がそうしたいとおっしゃれば、これはそういうことになってくると思うのです。だから、それはどうかということを言っておるのです。
  404. 福田一

    国務大臣福田一君) 炭じんの問題は、先ほど局長から申したように、それはためてはならない。どれくらいという問題が実はまだきまっていないということなんであります。(「常識じゃないか」と呼ぶ者あり)常識でありましょうが、これは議論の分かれるところで、あなたのほうがよくおわかりと思います。それを早くきめておかなかったということについては遺憾であり、また私どもも、早く考えなければならぬと思いますが、事実はそういうことだということを御理解願っておきたいと思うのであります。  そこで、今度は監督員の問題でございますが、これは保安を確保していくということで、保安委員会を一ヵ月一回しか開かない。一回じゃなくてもっと常時やるやり方もあるだろうし、保安委員会のうちでだれかが鉱山に入ってやるというやり方もあるでしょう。私は、そういうことは委員会の運営の問題もある。ただし、私は委員会の姿でやれという意味で言っているのじゃありません。しかし、いずれもいま鉱山の保安の問題について中央に協議会というものもあり、そうして、いまきょう今日でもいわゆる基本問題について相互が話し合っておるときに、やっぱりこれは労使双方がほんとうに仲よく手を握っていくという姿が望ましいと思う。その人たちがまた経験者も学者も入れていろいろ相談をしておるという段階において、私がこうせい、ああせいと言う必要はない。また言うべきではない。むしろその答申を待ち、あるいは答申が間違っておるとかいうことであれば、私の責任において裁断を下す必要はあるでしょう。しかし、いま審議しておる段階において、私がこうであれ、ああであれと言うことは、むしろ差し控えるべきが至当だと、こう考えておるわけであります。
  405. 阿具根登

    ○阿具根登君 どうも大臣の話を聞いてますますわからぬようになるのですがね。それじゃ、いまおっしゃった保安委員会を毎日やってもいいのだと言う、方法もあるとおっしゃるなら、それができますか。それこそできないのです。それができれば、ここでそうやるべきだとおっしゃってください。あなたは、それこそ、いままで私らがやったけれどもできなかった問題を、保安委員会を毎日開いたらいいじゃないかとおっしゃってもできますか。
  406. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、そういうようないろいろの問題を考えながら最終的の結論を、いろいろのケースを考えながら最終的結論を出したらいいのではないでしょうか、こう申し上げたので、それができるからそうせい、こう言ったのではございません。またやれと言った意味でもございません。
  407. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではそういう意味もあるという——保安委員会を毎日開いてもいいじゃないか、保安は大切かから。そういう方法もあるだろうし、あるいは保安監督員を労働者から出すという方法もあろう。そういう問題を審議会にいまはかっておるのだと、こう言わなきゃならぬのですよ。あなたはその点には触れないじゃありませんか。一方はできない相談を言っておって、できることは言わないのです。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。保安監督員を労働者からこれは出すべきである。労働者の生命を守るためには労働者から一人、二人くらい出すべきである。そういう方法もある。また、保安委員会を毎日開くという方法もある。その他にもいろいろあるでしょう。それをいま審議会にはかっておるのだと、こう解釈してよろしゅうございますか。
  408. 福田一

    国務大臣福田一君) 私たちは、いままああなたのおっしゃったおことばでありますが、前段のお気持ちならばよくわかるのでありますが、しかし、そういうような監督員に労務者をする方法もあるとか、あるいはこういう方法があるとか、こういう指示のしかたで意見を述べなさいと言っておるわけじゃない。どうしたら保安がよく守れるでしょうかと、こういう形で実は諮問をいたしておるわけでございますから、それについて委員のお方がいろいろのことをお考えになって、そうして公正な立場で御答申を願えるのではないか、こう考えておるわけでございます。
  409. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間をあまりこれにばかり食い過ぎましたから、最後に総理にお尋ねしておきますが、いままで論争しましたことは、もう総理が通産大臣のときから御承知のことなんです。そうして、しかも今日論争しなければならないほど災害がふえておる。しかも、かつてないような大災害が起こった今日、労働省に、保安問題の移管問題その他を含めてひとつ関係各大臣でもう一回検討していただく、そして炭鉱の保安の万全を期するように再検討するというようなお気持ちがありますかどうか、お尋ねいたします。
  410. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般来関係庁、すなわち通産と労働でお話しになったようでございますが、ひとつ私も加わって再度相談してみようと思います。なお、それもそれでございますが、やはり保安というものは絶対的なものなんでございます。いままでの鉱山における保安関係の人と鉱山の所長との関係、また、会社の首脳部とのつながり等につきましても、通産省で相当考えておると思います。この問題につきましては、もう一度自分も加わって相談してみたいと思います。
  411. 阿具根登

    ○阿具根登君 次に進みます。  そこで少しさかのぼるようですが、通産大臣にお尋ねいたしますが、最近油の規制をめぐって出光興産が出たり入ったりしてずんぶん社会面をにぎわしたようですが、その反面、有沢答申案では、重油の値段は七千何百円の横すべりと、こういうところで千二百円引きの単価がきまったわけなんです。ところが、一昨年石油業法ができるときにかけ込み増設といいますか、かけ込み申請といいますか、法律ができるときにはいつもこういうことなんです。御承知のとおり、百貨店法ができたところが、これは百貨店を規制するのでなくて百貨店を太くする法律だった。いつまでもこれが政府の手から国会に出されずに、すでに業者の手に回っていって、業者はさあいまのうちに太く出せとだんだんだんだん太くなっていった。薬事法でもそのとおり。いま問題になっているのは、さあ薬事法ができるから早くいまのうちに薬をつくれということになった。油もそのとおり、さあ石油業法ができるぞ、いまやれというところで増設がされた。こういうふうに私は考えるのです。そうすると、ばく大な投資をした。しかし、需要と生産のバランスがとれない。だからこれを規制する。規制すると、たくさんの資本をかけたのに七割や七割五分の生産をやっておったんでは赤字が埋まらないということで、出光さんが出たり入ったりしたのだとこの前私はちょっとお聞きしましたが、そうしますと、石油業法ができてから大体どういう会社が幾つぐらい認可になりましたか。そして需要と供給のバランスは一体どうなっておるのか。それから生産能力と実生産は何%になっているか、これをお伺いいたします。
  412. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。石油の事情については、ただいまあなたが仰せになったように、石油業法ができるときにかけ込み訴えというか、かけ込み増設というのが行なわれたのはお説のとおりであります。その数字等は、後刻政府委員から答弁をいたさせますが、いま現実には大体需要を一〇〇といたしますと一三〇前後の施設があるわけであります。そこに実は問題が存するところでありまして、そこで私たちは、その施設を全部フルに動かすようなことになりますといろいろな問題が起きますので、石油業法を運用しながら、これを是正しながら適正な運営をさせていきたい、かように思って処置をいたしておるところであります。
  413. 加藤悌次

    政府委員加藤悌次君) 石油業法の施行後における設備の許可の状況を私から簡単にお答え申し上げます。いままでに三十七年度と八年度の二回に分けて許可をいたしておりますが、第一回の三十七年度の許可につきましては、いまお話しのございました、俗に言うかけ込みの増設、これを検討の対象にいたしたわけでございますが、結果的に申し上げますというと、いろいろ需給の面から見て、完成時期をあとにずらしたりということで、相当当初のそれぞれの石油精製業者の希望から申し上げますというと、だんぶんそういった意味で抑制されたということになってまいりますが、一応出ておったものは全部認めたと、こういうことでございます。その数字が日産バーレルの能力でいいまするというと、四十三万七千バーレル、こういうことになります。昨年、つまり三十八年度、これはいわゆるかけ込みでございませんでして、昭和四十年度中に完成すると、そのときの需給状況から見ましてこれだけの設備が必要であろうという見地から許可いたしましたものが四十二万バーレルばかりございます。それで、この設備を許可する場合に、いま御指摘の将来の需給の見通しから見ましてどうしてもこれだけの設備が必要ではなかろうか。そのための設備がどうしてもつくる必要があるわけでございまして、そういった面から許可いたしておるわけでございますので、長い目で、将来この設備の許可が軌道に乗った場合は、おそらくその設備を正常に比較した場合に、大体において需給面の問題はなかろうというふうに考えておるわけでございますが、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、過渡的に認めた分について多少需給の面から見て過剰設備になるという問題があるわけでございます。私どもの指導によりまして、実際の需要に見合った生産をやるという考え方から生産調整を実はやっておるわけで、そこでまあ今回の出光のような問題が起きたわけでございますが、御質問の、現在の時点における全体の操業度といたしましては、大体八〇%ぐらいになっておるというふうに承知をいたしておるわけであります。
  414. 阿具根登

    ○阿具根登君 大体じゃなくて、八〇%になっておらないんですよ。来年度以降八〇%にしたい意向でしょうが、現在は七六%しかなっておらぬはずです。それで皆さんの考え方が八〇%までひとつ生産をしようじゃないかと、こういう考えだと私は思うんです。いま八〇%になっておらないはずです。七六%ぐらいだと思う。数字出してみなさい、私が出してみるから。時間とるからあまりしゃべらぬ。
  415. 加藤悌次

    政府委員加藤悌次君) お答え申し上げます。ただいま先生御指摘の七〇%少しというのは、内需用の石油製品を処理するための操業度でございまして、このほかに輸出用の原油処理があるわけであります。これが大体パーセンテージといたしましては九%程度近くある。これを合わせますと、トータルとしての操業度が七九・九%という、こういう数字に相なるわけでございます。
  416. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、それでは出光が出るときに一〇〇%ですか、何%操業すると言ったんですか、出光さんが出るとき。
  417. 福田一

    国務大臣福田一君) 出光が出る、出ないの問題は、これは石油連盟というのがございまして、民間の団体、これは御存じですね。昨年の二月に五万バーベル実はできまして、そしてそれを運用したいと思ったんでありますが、業界内部でそれはもうほとんど九月までの上期においてはこれを認めなかった。ところが、出光としては、自分は工場をつくったのにこれを認めないのはおかしいじゃないかというようなことから、実は争いというか、意見の相違が出ておりまして、しかし、まあ九月まではどうやらがまんをしたということでありましたが、一方十月以降の割り当て、下半期の割り当てをきめるときにも、なかなかこれを認めないというような空気になったので、出光が連盟から脱退したという事情であると了承いたしております。そこで、そういうことになぜなったかということになれば、出光がそれだけの能力をフルに発揮したいというと、いわゆる需要にマッチしない、供給が非常にオーバーするということになりますんで、そこで、業界内部でいろいろ議論が行なわれた。ほとんど出光の意見が通っておらなかったというのが実情でございます。
  418. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がないので打ち切りますが、かけ込みで業界がてんやわんやになりまして、そうして横ばいであるべき重油が、石炭に換算して三千二百円ぐらいになっています。そうしますと、何ぼ能率が、石炭が上がってきても賃金が上がらないという結果になってくるわけです。いま石炭の単価はきめておられますけれども、この三月の下期になってくれば、おそらくこれが大きなガンになってくるのです。油がこうだということになってきますから、こういうかけ込みで業界がてんやわんやしておるときは、新規の、新設の申請は当分これが落ちつくまで八〇%の内需なら内需でいいのですけれども、八〇%まで業界が落ちつくまでやはり生産過剰にならないように、設備過剰にならないように私は石油業法ができておると思う。その精神によって当分これの許可をお預けしたらどうですか。そうしなければ、ますますこういうのが出てくると思うのです。さらには、石油製品の自由化の問題が起こってくると思うのですが、いつごろ自由化にしますか。その対策はどういうふうですか。
  419. 福田一

    国務大臣福田一君) 新設の許可の問題でありますが、御存じのように、設備というものは、許可したら次の日にできるものじゃございません。大体まあ……
  420. 阿具根登

    ○阿具根登君 十ヵ月。業者に聞いてきた。
  421. 福田一

    国務大臣福田一君) いやいや、十ヵ月でございましょうが、土地の取得とか、いろいろ新設をする場合には会社形成、構成の問題もございます。でありますから、通産省としては、大体二年先というものを目途にして計画を立てながら許可をいたしておる、こういうわけであります。そこで、いまのようないわゆる設備が多いという状態は、この三年ぐらいのうちには解消してしまうという姿において、しかも、需要のある分についてはこれを満たし得るように設備の新設をやっていくと、こういうわけでありまして、去年いわゆる三十八年度に許可したのが大体四十年度に操業ができる設備を許可いたしております。でありますから、今度私は許可を取りやめたらどうかというお話でありますが、これは石油審議会というのがありまして、その審議会の意見答申を必ず経て通産大臣が認可するということになっておりまして、審議会の意見を云々しないうちに、聞かないうちに私が答弁するのはいかがかと思いますが、しかし、常識的に考えてみました場合には、審議会もやはりことしの四十一年度分について何がしかの設備を増設しなければならないという答申が出るのではないかと思っております。が、その場合においても、審議会自体においても私は過剰にならないようにということを十分考えられることと思います。同時にまた、不足しないようにということも考えていかなければならないと思うのであります。なお、石油製品についての問題は、これは自由化の問題はここでお答えをすることはすべての問題について差し控えさせていただいておりますので、お許しを願いたいと思います。
  422. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連して。池田総理、先ほど阿具根委員との応答の中で、石炭法案については総理みずからも参画して検討してみようと言う。私は非常にこの御発言なりその成果に期待をするものでありますが、この際関連いたしまして、一つお伺いしたいのは、総理が通産大臣以来石炭問題はなかなか国政の上でも大きな問題でありまして、通産大臣当時以来今日まで日本のエネルギー・ベースというものは、これは石炭であるということを標榜され、これに向かっての施策をやってこられたと理解していたのであります。しかるところ、先般通産大臣の所見を私は新聞紙上で見たわけでありますが、国際会談等において石油の埋蔵量というものの限界性が論じられたときに、これと違った、もっと埋蔵量はあるといったような議論の中で、通産大臣としては、そのようないろいろな説の中では、石油の埋蔵量というものはかなり将来性がある、大きいものだと、そこでわが国の将来のエネルギー源というものはむしろ石炭よりも石油に依存するのだ、石炭の埋蔵量についてはむしろ将来懸念があると、こういう趣旨の御発言でもあったようであります。今日の政府の施策の基本をなす、やがて原子力とかいろいろなことがいわれておりすけれども、当面ここ当分の国策としてのエネルギー・ベースというものは、これは石炭ベースを考えられているのか、先ほど指摘いたしましたような石油ベースに移行されようとするのか。石炭ベースという御所見に変わりなければ、総理からの御答弁はよろしゅうございます、通産大臣の御答弁をいただきたい。
  423. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 重大な問題でございまして、やはりエネルギーというものは、その国の産業また国際競争力ということも十分考えなくちゃなりません。したがいまして、産業構造調査会のエネルギー部会に諮問いたしまして、先般答申を得たような状況でございますが、やはり経済的に安いもの、そうしてその次には供給の安定したもの、こういうふうなことがうたわれておるようでございます。いま、エネルギーの根本は石炭にありとまでは言えない段階じゃないか。最近はだんだん変わってきつつありますが、以前はやはり石炭が主でございました。だんだん重油のほうに向いてくる。そうしてまた、将来は私は原子力というものも相当クローズ・アップしてくると思います。また、そうすることが日本の将来に役立つのじゃないかという気持ちを持っております。
  424. 阿具根登

    ○阿具根登君 厚生大臣に質問いたします。  中央社会保険医療協議会というのができまして、あるときは保険者側が入らない、あるときはお医者さんの側が入らない。やっと入ったかと思ったら、ぶち割れてしまった、そうして答申もなされておらない。一体どういう経過か、その経過をかいつまんでひとつ説明してください。
  425. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、先年、審議会の意見が合わないので、医師会が委員を出さなかった。こういうようなことのために中断いたしておりましたが、昨年の六月かお話がととのいまして、いずれの側からも委員が出て審議会が再発足したと、こういう状態でありました。それから昨年国会を通りました医療費の地域差撤廃あるいは結核の治療指針、こういうようなものが委員会の協議がととのいまして実行をいたしておる。昨年九月から医師会いわゆる診療担当者側から再診料というものをひとつ取り上げてほしい、こういうのが私ども厚生省と関係なしに医療協議会の中でそういう論議が行なわれて、私どもも自発的にこれらの協議が行なわれるということはけっこうであるということでそのままこれを静観しておりました。ところが、十二月になっても結論が出ない。こういうわけでありますが、一方、私ども医療の状態を見ますのに、必ずしもあのままでいいという状態ではないという判断をいたしまして、とにかくとりあえず緊急是正の必要があるかどうかということについて判断を求めたいということで、昨年十二月初めに諮問をいたしたのでありまして、私どもとしては、いずれにしろ予算に間に合うような結論を得たい、こういうことで期待をいたしておりましたが、昨年十二月二十六日に至りまして協議会の意見が全く不一致の状態にある、こういうことで審議がととのわなかったのでありまするが、協議会としては引き続いて審議をいたしたい、こういうことが会長から報告がありましたので、私ども、医療費というものをルールに乗せる、筋を通すためには医療協でぜひ結論を出してほしい、しかも一方、審議会においては自分たちは引き続いて審議をする、こういうお話でありますので、それにおまかせし期待をして今日に至っておるのでございます。ところが、一月二十五日でございますが、また審議会の内部におきまして、医師診療担当者側が自分意見が通らないというふうなことから声明かなんか読み上げて順次退場したということで、これがまた一応中断したというわけであります。その後いろいろないきさつを経たと思うのでありますが、また担当者が会長の招集に応じて出てきた、こういうことで、現在は審議が軌道に乗って継続をされておる、こういう状態であります。
  426. 阿具根登

    ○阿具根登君 一月の二十五日ですか、決裂されたそのときに、新聞で私の見たのが間違っておらねば、私はこういうふうに感じたわけなんです。中央社会保険医療協議会はこれは信用しない、こんなものは要らないのだ、おれたちは直接国会でやる、こういうことを医療者側は言って退席された、こういうような私は声明であったと思うのです。そうするとこの協議会は不信任、あなたの諮問機関は不信任である、あなたにも不信任だ、私はこう思うのですが、一体それはどういうことなんですか。
  427. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのお話のような事態があったということを私は報告を聞いておりまするが、それが継続的なものであるか一時的なものであるか、こういうことも見きわめたい、こういう考えを持っておった。ところが、診療担当者側が再びとにかく医療協に出て審議に応ずるということになったのでありますが、これを期待して待っておる、こういうことであります。
  428. 阿具根登

    ○阿具根登君 医師側は再診料が認められない限りは絶対応じられないということは、一貫した考え方だと思っておるのです。そうすると、これは私は結論は出てこないと思う。そうした場合に、一体どうされるつもりか。協議会から答申がなかった場合、一切予算は計上されないのか、それとも、厚生大臣自身も言っておられたようでございますが、医療費は上げなければならない、修正しなければならない、また、他のほうからでも入院料その他は上げなければならない、こういうような声も出ておるようでございますが、協議会の答申がない場合は、一切予算に計上されないのか、あるいは、いまごろやられてもおそらく、もう衆議院は通ってきたこの予算です、間に合わないと思うのですが、どういうお考えなのか、お伺いいたします。
  429. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、要するに審議会が審議を継続する——継続するということは、審議会として何らかの見通しを持っておやりになっておるので、私どもはそれをお待ち申し上げておる、こういうことでありまして、審議会から答申があれば適当な処置を講じたい、かように思っておりますが、いまは、ない場合を想定してお答えをするということはこの際としては差し控えたい、こういうふうに考えております。
  430. 阿具根登

    ○阿具根登君 いま予算を審議しておるのです。だから、あった場合はどうするのか、なかった場合はいまのように出されないなら出されない、あった場合はどうするのかということを聞いておるのです。
  431. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、衆議院予算委員会でも、総理大臣が、答申が出れば適当に考える、こういうことになっておりますので、これは政府全体の責任として答申が出れば考える、こういうことを申しておるのであります。
  432. 阿具根登

    ○阿具根登君 大蔵大臣、どうなりますか。答申が出たら政府全体の責任として考えるとおっしゃるが、考えるとは一体どういうお考えを持っておられるのか。予算はすでに衆議院は通ってきておるのですよ。どういうお考えであるか、お尋ねいたします。
  433. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 答申はまだ現在出ておらぬのでありますから、答申が出まして厚生大臣から予算要求されればその段階において政府全体として考えなければならない、こういうことを申し上げておるのであります。
  434. 阿具根登

    ○阿具根登君 こういうことが権威ある日本医師会雑誌に出ておるのですよ。それは会長の武見太郎さんが緊急報告として報告をしておって、それに今度はわざわざ同じ人が書いたとは言いませんけれども、同じ文句でまた違う人が書いておられる。ほとんど同じ文句なんです。これは川合常任理事という人が書いておられるが、私は同じものを読んだかと思ったところが、違うのです。それによりますと、これは非常にひどいことが書いてある。「小林厚生大臣の発言に対する信憑性は全くなく、一部赤色官僚と労組側の悪質な代弁にすぎない」、さらに、再診料が認められないということはそれこそ赤色国営方式である、これと対決をしなければならぬ、こういうことがたくさん書いてあるのですよ。そうすると、これは総理大臣にもお尋ねいたしますが、その思想でもってわずか二時間の間に何百名ですか——百名の人が集まって予算三百五億円を計上せいと言ってやったと、こういうことが出ております。これはおそらく厚生大臣、政調、三役のほうに出したとしてあるわけです。一体これはどういうことなんですか。
  435. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいまのいろいろの記事等は、もう非常な独断的なものが多くて、一々これを取り上げてわれわれがどうこうと言うような問題でありません。また、いまのたとえば何かある金額が出ておるということも、これは何にも政府にも私にも関係のないことでありまして、ただかってにそういうことが載せられておるのだろうと、こういうふうに思います。
  436. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、大蔵大臣もことばをにごしておられますが、この協議会で答申が出た場合は、予算を追加するわけですか、追加予算でやられるのですか。どうされるのですか。出た場合は一体どうするのか教えていただきたいのですが。
  437. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは出た場合のことでありまして、われわれもいろいろな考えがありますが、いまこれをこうこうするというふうな段階でない、こういうふうに考えます。
  438. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはおかしいです。予算をいま審議しておるのです。そうして、そういう答申があったならば考えねばならぬとおっしゃる。どうお考えになるのか、これをはっきりしてもらわぬとえらいことになるのです。はっきりしてください。
  439. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 答申が出たら考える、出ないから、いままだいつ出るかわかりませんので、私どもこれをどうするというふうな具体的なことを言う段階でない、こういうふうに考えます。これはいずれにしろ政府でも政府の責任として何か考えると、こういうことを申し上げておるのでございます。
  440. 藤田進

    ○藤田進君 委員長、関連。
  441. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単にお願いいたします。
  442. 藤田進

    ○藤田進君 率直に言われて議事進行に御協力いただきたいのですが、緊急是正に関する限りは何とか早く答申を求めこれが処理をいたしたいということはしばしば言ってこられておるわけです。したがって、出てくれば予算上の措置を必要といたしますが、その予算上の措置、すなわち何らかのことを考えるというその中身の問題、これについては、大蔵大臣は厚生大臣からの要求が出てくれば考えたいと。そこで、二つ問題があります。厚生大臣は来年の三月三十一日まで、この間にはむろん答申が出ることは予想されている。出ないとは予想していない。出ることを期待し予想しているという先ほど来の御答弁なんです。しかも、現在は正常な姿で医師会も入りやっている。こうなれば、もう時間的に言って出ることには間違いないとしてよろしいし、期待されている。厚生大臣はどういう大蔵大臣に対して要求をなさるのか、これが一つ。その考えというのがどういう形式でおやりになろうとするのか。その要求を大蔵大臣にどのように出そう——これは何日かということは無理でしょう。受けられた大蔵大臣としては、この予算措置を、厚生大臣の答弁あとで聞かれまして、そのとおりするのか、あるいはそうはできないとおっしゃるのか。予算審議と直接関係のある問題はやはりはっきりしてもらいたい。
  443. 小林武治

    国務大臣小林武治君) どういう方法とかという具体的なことは、いままだ考えておりません。
  444. 藤田進

    ○藤田進君 それは無責任じゃないか。大蔵大臣、ちょっと答弁しなさい。
  445. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政法のとおり、所管大臣から予算の要求があれば、それに対案をつくって交渉しましてから閣議の決定に持ち込むわけでありますから、所管大臣がお答えになっておりませんから、私が先ばしってお答えをするような前提がないわけであります。
  446. 藤田進

    ○藤田進君 小林さん、あなたはっきりものの言える人で、案外気骨のある厚生大臣と思ってやってきたのですが、答申があった場合にどうするか。その予算上の措置というものはまだ何も考えていないということで、いま客観的事情から見て、ああそうですか、なるほどいまの段階では何も考えないで、答申が出たら——そんなまるきり根拠のない過程を問題にしているわけじゃないのです。あれほど問題になっている。ですから、答申が出た場合にはしかじかかくかくの要求を大蔵大臣にする。大蔵大臣は、出てくれば相談して閣議にかけると言っているのです。閣議にかければ、その次は言わないけれども国会に出さなければ——ポケットマネーというわけにいかないですから、そこまで大蔵大臣言っている。あなたの答弁がないからやれない、こう言っている。はっきり言いなさい。そんなことで、この予算委員会が、予算を直接審議しないという世評のある中に、ああそうですかというわけにいきません。予算の中身の問題です。
  447. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもうそういうような場合はおのずからいろいろ方法はあろうと思うのでありますが、私もいま何も考えないということは私は申し上げませんが、考えがあっても、これをいま申す段階ではない、こういうふうに申し上げます。
  448. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 委員長……。
  449. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 関連ですか。
  450. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 関連です。
  451. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単にお願い  します。
  452. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 答申が出てきた場合、財源があるのですか。財源措置ができるのかどうか、財源があるのですか。
  453. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在の段階では、もう御審議願っているところで、正常な適正な予算をお願いしているわけですが、これから出てくるだろうということに対しては、まだいつ出るかわからないのであります。昨年の十一月には出るだろう。十二月の予算審議には出るだろう。十二月に出なかったから一月は出るだろう。もう三月であります。来年三月に出るかどうかわからないのでありますから、所管大臣の厚生大臣がわからないと言っているときでありますから、私がいま、出たらどうするかというのでありますから、政府答申尊重ということを何度も言っているわけでありますから、御相談があれば、その時点において財政法に基づいて対案を考える、こういうことを申し上げているのであります。いつ出るかわからないということに対して、財源があるかということにはお答えできないと思います。
  454. 藤田進

    ○藤田進君 財源はないのでしょう。
  455. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あんまりありません。
  456. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、非常にそういうふうにことばをにごされるので、言っておられることがほんとうに聞こえぬわけであります。読んでみましょうか。「予算措置として表面に金額を計上するときは厚生大臣の自由になるので、党が」——自由民主党ですよ、「党が再診料と指定すれば行政権に立ち入ることになる。」だから、「大野副総裁、三役の間で予備費として計上し、党の意向に副うときに出したらどうかと協議された」「この間小林厚相は辞職をほのめかして」「総理に対して圧力をかけ」た。が、しかし、「最終決定として、」ですよ。「最終決定として、「中医協の答申が出たら考慮する。」いまおっしゃったとおりです。お三方おっしゃった「中医協の答申が出たら考慮する。」と決定された。勿論予備費の考慮である。」、予備費の三百億の中から二百億の金をこれに組んでおられる、考えておられるということをはっきり言っておるわけであります。そうでないなら、はっきり予備費から一銭も出さぬということを言ってもらいたい、ここで。
  457. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 前段のことも、私何も関知しておりませんし、また、予算編成の際に予備費がそれに当たるというふうな論議もいたしたことはありません。予備費は通常の形において計上された、これは大蔵省が計上された、こういうことであります。
  458. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃ、大蔵大臣、財政法に従ってということをおっしゃっておる。まさかここで予備費からということはお言いにならぬと思うのですが、予備費から一切出さない、予備費はそういうものじゃないんだということをここで確約していただけますか。
  459. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはまだ全く未確定なものでありまして、どうも申し上げるわけにいかぬと思います。ただ、いま御審議を願っております三十九年度の一般会計に含んでおります予備費は、年々三百億も必要であるというふうにいわれておるにもかかわらず、昨年度まで二百億であったわけであります。でありますから、昨年とおり——まあ私は三百億くらいだんだんと計上しなきゃならぬということを考えておったわけでありますが、総額百億、そのうち百億は災害に充てて、残余の二百億は、例年計上しております予備費は二百億でありますから、でありますから、三十八年度の予算を見られるとわかりますとおり、二百億の予備費は残額十何億くらいしか残っておらないという状態でありますから、二百億は正常の状態において想定した予備費であるということであります。
  460. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではっきりいたしましたが、そうすると、この権威ある雑誌に、世間で有名な医師会の会長さんなりあるいは理事さんなりがもうほとんど字句も変わらぬくらいに、二人の方が、自民党の議員の方々の名前まであげて、そうしてこれは決定されたということをされておるわけです。だから、これをとると、そういう決定があったから自分たちはこの中央社会保険医療協議会に参加したんだと、こういうようになっている。そうでないと、いまおっしゃったので考えると、これはまるっきりうそをたくさんの医者に流しておられる。緊急報告で、特にこういうことだから、医師会の幹部の方は十分医師にこの意思を徹底するように伝えてほしいということをこれに書いてある。そうすると、一体これはどういうことなのか、さっぱり私はわからぬのですが、もう時間がまいりましたからこれでやめます、もう一つ二つあったんですが。
  461. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いま書かれておるようなことは、私どもも全くどうしてそういうことが出たかわかりません。少なくとも政府当局者がこの問題を論議した場合に、さような事実は絶対ありません。しかし、私は結果的にどうなるか存じませんが、いまのところそれを編成する場合においてはそういう議論は全然政府部内になかった、こういうことをはっきり申し上げておきます。
  462. 阿具根登

    ○阿具根登君 あまりしゃべり過ぎまして時間を食ってしまったから、質問はほとんど終わりましたが、もう一つだけ御質問申し上げます。  いわゆる水上勉さんの「拝啓総理大臣殿」で問題になりました——これは黒金長官がそこで笑っておられるけれども、あなたが返事をお書きになった。これが発端になりまして、重度精薄児童施設という問題に対することで厚生大臣も相当アドバルーンをおあげになったようですが、ふたをあけてみたところが、千円ということできまったわけですね。しかし、水上さんが言っておるのはそういう千円とか千五百円の見舞金的な金額でなくて、施設をもっとふやしてもらいたいということだったと思うのです。ところが、施設じゃなくて千円の金になって、要求されたのは社会局で要求されたと思っているんです。ところが、児童局になって小さいものだけになってしまった、こういうことが言われておるんですが、これで重度精薄に対する対策がいいかどうか、その点ひとつ御質問申し上げます。
  463. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のような推移もございますので、したがいまして、私どもが厚生当局として考えた事項がきわめて不十分な形において実現しておる。しかし、何といたしましてもこの制度は初めての発足でありまして、財政当局にもいろいろな議論があり、また財政の都合もあって、われわれ厚生当局としては政府部内の話としてはまず最初の段階においてはこの程度でやむを得ない、こういうことでやったのであります。私は、この席で、大蔵大臣もおいでだから申し上げますが、これだけではきわめて権衡がとれない。すなわち、今度は精薄の児童だけがこの対象になった。ところが、精薄の成年者については何らの特典がない。これは非常に不権衡でありますし、また一方、身体障害者としましても、成年者には障害年金があるが、未成年者には何らのいま措置が講じられておりません。これらにつきましても厚生当局としてはきわめて不満であるのでありますが、しかし、とにかく何もないところへこれだけのものが出発したということは私は非常な前進であり、これがあればやがていまのような不権衡も必ず私は解消すると思うし、また、来年度等においても強く厚生当局はこれを主張いたしたい、こういうふうに思っておるのでありまして、お話のように、私どもはこの制度自体にきわめて不満を持っておるのでございまして、さらに前進をせしめたい。また、施設につきましてもこれはできるだけ施設をやっていかなければならぬ。それで来年度もいまの重度の心身障害者、こういうことにつきましてもまあ不十分ながらも約三百のベッドを用意するということでこれらも進めていかなければならないということであります。さような意味で、おことばはまことにごもっともと存じまして、われわれもこれから十分これを補完するということをぜひひとつこの席でも申し上げておきたいと存じます。
  464. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう私の時間がないので、これ以上質問できないんですが、有名な作家が総理大臣殿で出したから有名になったということでなくて、やっぱり私は一番苦しんでおる人の心をつかんだから有名になったと思うんです。だから、こういう点について、もう少しやはり世間があれだけの同情の目をもって見たこういうものに対する施設はあたたかくやってもらいたい、こう思うんです。  文部大臣、せっかくいままでお待たせしましたから、ちょっとお尋ねいたしますが、先ほどの医者の問題で、最近インターンの問題でえらい騒いだようですが、大体大学の入学状況を見てみますと、医者になるには二百万から三百万の金がなければ学校にはいれない。そうして二十倍から三十倍の申し込みがある。そうしてどうかというと、医者が足らぬ医者が足らぬで無医村までまだある日本の現状なんです。そうすると、金持ちだけが医者になれるんだ。どんなに頭がよくてどんなに勉強したい人でも医者になれないじゃないか。医者に入る門があまりに狭いじゃないか。なぜもっと医者になる門が広げられないのか。そうして今度は、出たらただでインターンだ。これでいやだというなら、そういうところにいくよりも、なぜもう少し学校で今度は実際的な勉強を一年なら一年させるんだというようなことが考えられないのか。そうしなければ、私は先ほど論争いたしました医師会の問題等あとを絶やさないと思うんです。どうか、この医師の問題について、もっと国が大きく門戸を開いて、そうして医療に志す人、相当な知力のある人はどういう方でもはいれるように、もっとたくさんの医者をつくるように、そういう考え方はないかどうか。一体どうされるつもりか、お尋ねいたします。
  465. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日、教育費の関係におきまして、国立と私立の場合を比較いたしました場合に、学生側の負担が非常にバランスを失しておるということは御指摘のとおりでございます。これはまあ長い間の沿革ということもあろうかと存じますが、このようなアンバランスはひとり医者だけの問題ではございませんけれども、文部省におきましてもこれが是正につとめなければならない段階に差しかかっておるように思うのです。  そういう意味におきましては、私学の振興なり私学に対する助成という角度からもっと突っ込んだ検討をしてみたいと、かように考えておる次第であります。  医学生の問題につきましては、従来、国立、公立、私立につきまして医学研究者あるいは医師というものについての需要数を厚生省とも連絡いたしまして検討して、そうして大学の医学部の要請する学生数をきめておられるようなわけであります。この問題につきましても、いまのような問題がございますので、将来の問題といたしましては、国の側におきまして、もっともっと医学部の学生をふやすということは考えてまいらなければならない課題ではないかと思いますので、せっかくひとつ検討させてもらいたいと思います。  なおまた、インターンの問題でありますが、これは大学の側からいいますれば卒業生であります。それが医師免許を受けるまでの身分の問題でございますので、インターン制度につきましては各方面からいろいろな意見があるようでございますが、現在かなりやかましい問題になっておるようです。これにつきましては、インターン制度の存置、廃止ということまで含めて厚生省を中心に御検討願って、文部省といたしましてもこれには御協力いたしておるわけでありますから、その審議の進行に伴いまして医学教育のあり方についてもわれわれといたしましても考えなければならぬ、かような状態で今日おるわけでございます。
  466. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大蔵大臣から発言を求められております。
  467. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 重度精神薄弱児につきまして、昭和三十九年九月から扶養手当を支給することにいたしまして、これに必要な経費一億六千五百万円を計上いたしたわけであります。月手当は千円でありまして、三十九年度は四ヵ月分、対象人員は三万七百五人を予定しております。これは月千円ということと四ヵ月ということで御議論もございますけれども、私はしかしこの新制度に踏み切ったということは日本のいわゆる社会保障史の一ページを飾るものだと、そういう意味小林厚生大臣が最後まで粘られたということに対しては敬意を払っております。同時に、大蔵省もこれに踏み切った、これも一つ称賛願いたいとは申し上げませんが、ひとつ十分御理解いただきたい。手当の額につきましては、これで十分であるとは考えておりませんが、生別母子世帯に対する児童扶養手当の額が第一子月額千円であるということ等に勘案いたしまして定めたものでございます。  それから第二点の施設の問題でございますが、これは重度精薄児対策といたしまして扶養手当の支給だけで足るものではなく、所要施設の整備拡充が望ましいと思われますので、三十九年度の予算では、社会福祉施設等整備費補助金といたしまして前年度の二十億三千六百万円に対し、二五%増しの二十五億四千万円を計上いたし、その相当額がこれら児童の所要施設の整備に支出されるものと期待をしておるのであります。また、重度精神薄弱児を収容いたしております国立秩父学園の維持運営費といたしまして六千四百万円、精神薄弱児収容施設の運営費補助といたしまして十億九千四百万円の一部も重度精薄児童の収容のために計上されておるところでありまして、政府が熱意を持っておることは御理解いただければ幸いであります。
  468. 阿具根登

    ○阿具根登君 医者の学校ですよ、貧乏人がはいれるようにですね。
  469. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 入学金ですか。
  470. 阿具根登

    ○阿具根登君 入学金とか施設がないから貧乏人がはいれぬのじゃないか。しかも医者が足りないのじゃないか。
  471. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 文部大臣が御答弁いたしましたとおりでございますが、今度そのようなことも考えながら学校特別会計をつくりまして、できるだけ弾力的運営によってこれが施設の拡充計画的な建設をはかろうと、こういうふうにいたしたわけでございます。私学というよりも、やはり高度の技術を要ししかも費用が非常にたくさんかかるという技術者の、特に医学技術者等の養成に対しては、国立大学ができるだけ責任を負うという方向でいくべきだと考えます。
  472. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 阿具根君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  473. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございます。  加藤武徳君が辞任され、鹿島守之助君が選任されました。  本日はこの程度にいたし、明日は都合によりまして午後一時三十分に委員会を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会