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1964-02-13 第46回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十三日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————   委員の異動  二月十三日   辞任      補欠選任    加藤 武徳君  高橋  衛君    塩見 俊二君  野田 俊作君    河野 謙三君  西田 信一君    小山邦太郎君  高野 一夫君    江藤  智君  徳永 正利君    中田 吉雄君  加瀬  完君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            加賀山之雄君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            高野 一夫君            高橋  衛君            館  哲二君            徳永 正利君            鳥畠徳次郎君            西田 信一君            野田 俊作君            山本  杉君            吉江 勝保君            阿具根 登君            加瀬  完君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            安田 敏雄君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            林   塩君            天田 勝正君            田畑 金光君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    総理府総務長官 野田 武夫君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    警察庁警備局長 後藤田正晴君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁人事局長 小幡 久男君    防衛庁経理局長 上田 克郎君    防衛庁装備局長 伊藤 三郎君    防衛庁参事官  麻生  茂君    防衛庁参事官  志賀 清二君    法務政務次官  天埜 良吉君    外務政務次官  毛利 松平君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    厚生省医務局長 尾崎 嘉篤君    厚生省医務局次    長       大崎  康君    農林政務次官  松野 孝一君    運輸省鉄道監督    局国有鉄道部長 向井 重郷君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    建設省計画局長 町田  充君   建設省道路局長 尾之内由紀夫君    建設省住宅局長 前田 光嘉君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道副    総裁      磯崎  叡君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十八年度一般会計補正予算  (第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十八年度特別会計補正予算  (特第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十八年度政府関係機関補正予  算(機第3号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 開会いたします。  本日の議題は、昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)並びに昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)であります。  きのうに引き続いて質疑を行ないます。林塩君。
  3. 林塩

    林塩君 私は社会保障を進めていきます上に非常に関連のございます医療保障関係につきまして総理にお伺いしたいと思うことがございます。  最初にお伺いいたしたいと思いますのは、総理は常に、社会保障施策を進めていくということを表明しておられたのでございますが、社会保障施策を推進していく上にどういうふうな考え方をお持ちになっておりますか、特に社会保障医療保障は非常に関連がございますが、これにつきまして、現在の医療保障あり方、それについてどういうふうにお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 社会保障根本医療並びに所得の保障にあるわけですが、戦後、急速にこういう方面施策が向けられたために、医療保障につきましても、なかなか全国民が同様の立場医療保障を受けるということに相なっていない点が遺憾なところでございます。行く行くは国民健康保険等も拡充強化いたしまして、平等な立場医療保障が受けられるように進めていきたいと考えておるのでございます。
  5. 林塩

    林塩君 ただいまおっしゃいました平等の立場国民医療を受けていくことは大事だ、こうおっしゃいましたがまことにそのとおりでございますが、現在の健康保険制度あり方が非常に問題だと思うのでございます。最近、健康保険の、いわゆる健康保険とそれから国民健康保険との間の格差状態が非常に激しくなってまいりました。これに対して、いまおっしゃいましたのは御理想でございましょうけれども、何らかの形でそれを是正していこうとする配慮がおありでございますかどうか、お伺いします。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、健康保険発生は古く、またその組合方々の能力も高いのでございます。国民健康保険はその発生がおそく、また、その組合員生活状態も十分でございません。したがいまして、健保政府管掌保険国民健康保険の間には非常な差があるのであります。しかもまた、健保に入っておった人が定年になって出ますというと、今度は国保のほうになるのでございます。その間にいろいろの問題がございます。きのうも問題になったのでございますが、昔は健保受診率国保受診率とは非常に違っておりました。国民健康保険事務費を全額負担するという昭和二十七、八年ころは、健保受診率が二・二で、国保受診率は一・一くらいだったと思います。私はその記憶をきのうも思い出しまして、最近の国保が二・〇をこえるということになりますと、これは非常にたいへんな問題だということを自分でつくづく感じたわけでございますが、こういういろんな問題が、もう三保険の間に格差が非常に出てまいる。この問題を解決するために、今度、医療給付組合員以外の家族を七割にして国保のほうをだんだんよくしていくことがこの三つの問題を解決する一つの手段ではないかと私は考え、七割給付を実行することにしたのでございます。この三つの間の不権衡是正がいつまでかかるか、またできるものかできないものかということにつきまして自分相当考慮をめぐらしております。しかし、理想といたしましては、社会保障趣旨から申しまして、こういう格差があるということは好ましいことではない。私はやはり国民全部がこの問題を十分検討していかなきゃならない時期がもう近づいてきておるのではないかという気持がいたしております。
  7. 林塩

    林塩君 ただいまおっしゃいましたように、医療費がたいへんにかさんでくる、それをどういうふうにしたらいいかということで、これは大事な問題だと思うのでございますが、私がお伺いしたいと思いますのは、ただ医療費がかさむだけという解釈でいいかどうか。もちろんいままで受診をしていなかった、診療を受けていなかった人たちが、やはり意識が高くなってまいりまして、そして受診をしよう、そして医療を受けようとする傾向がございますので医療費がかさんでくることはわかりますけれども、しかしただ、それでいいかということ、もう少し予防の面で考えられることがあるのじゃなかろうかと思うのでございますが、それに対して何か国として施策がおありでございましょうか、お伺いしたいと思います。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は医療費がかかるということをおそれているのじゃないのであります。医療費がかかるにいたしましても、全体の国民の間に差等があり、しかもまた、健保に入っている人が今度国保になって、そうして、いままでのいろいろの優遇が受けられぬという状態を何とか直さなければならないということを私は問題にしておるのであります。医療費がかさむということを主体に考えておるのじゃないのであります。それから医療費のかかる前にこれを予防するという問題でございますが、これは社会保障制度全般について言えることでございます。生活保護費なんかを出すことはもちろん必要でございますが、生活保護費を出すまでに、いわゆる救貧というのでなしに、防貧——貧困になるのを前もって防ぐことは、これは社会保障制度の前にくるべき問題で、したがいまして、たとえば生活保護を受ける方々原因はやはり病気その他からくるのでございますから、そういう病気が起こらないように予防するということが、これは社会保障制度根本であり、その前提であることは十分承知いたしておるのであります。したがいまして、医療関係におきましても、伝染病その他につきましては、早くこれを伝染しない前において措置するということをしなければならぬことはこれは当然のことであります。
  9. 林塩

    林塩君 それでは私は次に厚生大臣にお伺いしたいと思うのでございますが、この医療をよくしていきます上にも、また予防方面に力を尽くしていきますためにも、医療関係者の使命は非常にたいへんだと思うのでございますが、その方面についていろいろ施策がおありになるかと思います。お伺いしたいと思います。たとえば医療関係者の数の問題、ただいま医療関係者の数が非常に少なくなって医師が非常に少なくなっている、それからまた看護関係が非常に少なくなっている、そういう問題に対しまして、厚生大臣としてどんなふうな対策をお持ちでございますか、お伺いしたいと思います。
  10. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 医療担当者が少ないのではないか、こういうお尋ねでございますが、私どもはまあ絶対的に医者不足しておるという、こういうことよりか、医師が偏在しておる、こういうふうなことが大きくまあ響く、こういうふうに思うのでありますが、医師自由職業である以上は偏在をできるだけなくしたいと思いまするが、なかなか困難な問題だと思います。したがって、私どもは僻地にもお医者さんが行かれるような施設をしていきたい、こういうふうに考えております。なお、看護婦さん等は、いまのところあちこちから不足を訴えられておりますが、これはまあ一般的に弱年労働者がいま不足しておる、こういうふうな影響もあるし、また一方、学校を長くやった割合には待遇、身分等においても恵まれない、こういうことで看護等についてはだんだん魅力が失われてくる、こういうことも一つの大きな原因であると思いまして、この方面の欠陥を是正する、こういうことにつとめておるのであります。ことに看護婦等につきましては、いままでと違いまして、従来も施設しておるものが自己の費用においてこれを経営しておる、こういう形態であったのでありますが、昨年来、これらの施設にもひとつ国が補助してやる、こういうことで、昨年もまた来年度も施設あるいは教材整備等について国は補助金を出す、また、看護婦制度については国からして奨学貸費をする、こういうふうなことも行なわれておるのでありまして、非常にこれらの施策はおくれておると思うのでありますが、当分続けてこれを拡充していきたいと、かように考えております。
  11. 林塩

    林塩君 私は、医療関係者、中でも国民の健康を守り、それからまた、予防方面にも非常に努力していかなきゃならない、むしろそういう面におきまして医療保障を進めていく上に一番重点の施策が行なわれなきゃならないところのこの看護対策が、非常におくれていると思う。それで、それに対しまして、いま厚生大臣にお答えいただきましたが、それでは非常に不十分だと思います。といいますのは、そういうことに対し数がどのくらいあるか、それからまた、それに対してどういう具体的なものを持てっおられるかということを伺いたいと思うのございますが、申し上げておきたいと思いますことは、社会保障を進める上に非常に大切だということにつきまして、政府認識が足りないのじゃないかと思う点があるわけでございます。試みに、英国社会保障の理念を導入しますときに一番最初に手をつけたのが看護婦の問題でございます。それで、当時早くから看護婦法を制定いたしまして、有資格者でなければ患者さんの看護に当たってはいけない、あるいは保健指導をしてはいけないというようなことまではっきりきめております。そうしてその数についても、非常に真剣にこの確保につとめております。二十年の間に英国人口は二%しかふえておりませんのに、看護人口は実に五〇%ふえているというこの事実を見てみましても、はたして日本政府がそういうふうな対策を講じたであろうかどうかということを思うわけでございます。将来十分にこの対策を講じなければ、社会保障を進めていくの何のというようなことはいわれないのじゃないかと思いますので、この点について特に注意をお願いしたいと思うわけでございます。  それで、いま病院で非常に困っている問題、この困っている問題はどういう問題かといいますと、病院は一ぱいふえていきますのに、その一番大切だと考えられますところの看護婦が足りません。そのために病院を開くことができないという状態さえあるのでございますが、この事実を大臣御存じでございましょうか。それから、病院を建設していきますときに、それに対していかがでしょう。看護関係者の数をふやしておかないで、それでただむやみに医療機関である病院をふやしていくことがどんな結果になるかということについて、何かデータをお持ちでございましょうか、当局としてはどういう対策をお持ちになっておられるか、伺いたいと思います。
  12. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 現実に看護婦に困っておられる、また医療法上の条件を満たしておらぬ、こういうものも実際問題として見かけておるのでございます。これが、まあここ二、三年こういう傾向が非常に強く出てきておるのでありますが、昨年度あたりの看護婦養成所入学志願者、こういうものは多少予定がふえてまいっておりますので、政府がいろいろ施策を進めていけば、私はそう遠くないうちにこの問題がある程度緩和される、こういうふうに思っております。いま私ども、たとえば施設に対して補助金は一億八百万円、これだけ出ておりますが、全国に施設が二百数十カ所ある、こういうことについて見ますれば、きわめて少ない。また、おそらく生徒も全部で四、五万人おると思いますが、これに対する貸し付けが三千人か幾らか、こういうことでやってはおりまするが、非常に不足だ、足りないということは十分認識をいたしておりますので、これらの問題は十分私ども実情に沿うように解決をしなければならぬ、大蔵大臣もおいでになりますので、この面の認識は十分持っていただける、このように考えております。
  13. 林塩

    林塩君 お答えでございますけれども、数が足りないということは十分に御認識のようでございますので、それ以上申しませんが、現在看護婦養成所並びに准看護婦養成所その他のところがどのくらいあるかということでございます。それで、私が調べましたところでは、看護婦養成所が二百四十二カ所、それから准看護婦が五百七十カ所。毎年出ています数が、看護婦のほうが四千人、それから准看護婦が二万二千、こういうふうになっております。で、病院はどのくらいふえていっておりますかといいますと、過去七年の間に三万以上ふえております。で、そういうことに対しまして、数がなぜふえていかないか。学校もございますが、養成所の問題があると思うのです。で、ただでさえ低廉であるところの医療費の中からこれが運営されているという、こういう事実でございます。国は社会保障を進めていく上に医療保障が非常に大事だ、その医療保障確保のために看護関係が大事だということはおわかりのようでございますが、それならば、なぜこういう大事な看護関係養成所医療費の中でまかなうようなシステムになっているかということでございます。これに対して厚生大臣はどのような御見解でございますか、お伺いしたいと思います。
  14. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 養成所の数は、ただいまお話しのように、正看護婦養成所が二百四十二カ所、准看護婦が五百五十四カ所、こういうふうになっておりまして、三十八年度は入学予定者が、いま私は正確な数字は申し上げかねますが、相当予定がふえておる。こういうことで、現在は看護婦さんの数が大体十八万人、こういうことになっておりまして、私ども昭和四十五年ですか、これを目標といたしまして、一応の看護婦さんの養成計画というものを樹立いたしております。ただいま申し上げましたように、こういう大事な仕事をしておるにかかわらず、国の施策が十分でなかった、こういうことは私ども率直に認めます。しかして、看護業務は非常に大事だ、こういう認識に立ちまして、昨年初めて厚生省の中にもこれを専管する看護課というものを設けまして、この方面施策を拡充いたしたい、こういうふうな努力をいたしております。  なお、お話のように、病院施設補助とかあるいは看護要員教育に対する補助とか、こういうととは始めたのでありまするが、いまお話しのように、病院看護婦養成施設というものは、養成施設そのもの負担をして運営をしておる、こういうことで、設備と看護要員に対しましては多少国で手を差し伸べましたが、この養成所運営するいろいろの経費が国ではまだ見ておらない。このことは私どもも非常な一つの誤りだ、こういうふうに考えて、実はことしの予算にもこの向きの予算を計上いたしたいと思いましたが、いろいろの都合でこれは間に合わなかった。しかし、お話のように、運営費病院の利益でもってまかなうということは、私はこれは妥当でない、こういうふうに考えますので、これらの補助金等もぜひひとつ次の機会には考えていきたい、かように考えております。
  15. 林塩

    林塩君 厚生大臣医療費の中から看護婦等養成をすることはこれは非常に合理的でないということをお認めになりました。それで、国がどうしても、こういう大切な看護要員に対しては、教育の上あるいは養成の上に補助をせねばならないということはおわかりのようでございます。これに対しまして、大蔵大臣、いかがでございますか。これが国費からこういう養成補助を出す御予定はございますでしょうか、あるいはそういうことに対して御意見がございますでしょうか、お伺いしたいと思います。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま厚生大臣お述べになりましたとおり、看護婦及び准看護婦については、従来は個人負担ということでありましたけれども、それを、非常に人員が少なく、国家としても看護婦准看護婦養成が急務であるという考え方に立ちまして、三十七年度から補助の道を開いたわけであります。三十八年度、三十九年度と、今年度の国庫補助におきましても、大幅な増額という考え方でやっておるわけであります。看護婦等養成所整備費補助金施設整備費教材等備品費看護婦等貸費生貸与補助というようなことをやっておりますが、これから時代の要請もだんだん強くなりますので、これらのものに対しては積極的な態度で対処いたしたいという考え方であります。
  17. 林塩

    林塩君 そうすると、将来に対しましては、国が看護関係者に対しましては責任を持って養成をしていこう、そうしてまたそれに対して対処していこうという御意見でございますか。そう受け取ってよろしゅうございますか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 考え方といたしましては、非常に必要な職務でありますから、看護婦及び准看護婦養成に国も力をいたしてまいりたいという考え方でありますが、これが全額国費養成しなければならぬというふうにおとりになられると問題がありますが、医者学校を卒業し医者を開業しておるということと同じように、看護婦も、また准看護婦も、自費でやっております者に対して国費負担を増してきつつあるのでありますから、国家財政が許す範囲内において前向きで積極的にこれらの事態に対処したいという考え方であることを申し上げておきます。
  19. 林塩

    林塩君 看護婦病院で勤務しております状態御存じなくていろいろなことをきめられているという事実があるわけでございます。それについて伺いたいのでございますが、医療法施行規則の十九条に病院のことがきめられておるのですが、その中に、入院患者四人に対して看護婦一人、こういうことになっております。これは看護するというものの立場御存じなくてきめられているのじゃないか、こう思うのでございますが、たとえば四人に一人ということは、患者は一日じゅう病気でございますので、夜もつかなくちゃならない、こういうことになりますと、実際は、労働基準法によりまして三交代をいたしておりますと、十人に一人という割りになるわけでございます。それでございますが、相変わらずこの四人ということがいつまでも施策の上にこびりついておりまして、そして数がなかなかふえませんというのでございます。それにつきまして、医療法施行規則十九条の改正について必要と思うのですが、これにつきまして厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  20. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これの問題も、その実情に応じて考えなければならぬ。しかして、看護の態様もだんだん変わってきますし、これがこのままで固定していいというふうな考え方は持っておりません。したがいまして、十分検討をして実情に合うようにいたしたいと思います。
  21. 林塩

    林塩君 それで、この考え方がやはりどこまでもついて回りまして、医療報酬の中の点数がきめられますときに、病院等看護をよくしていくという趣旨をもってきめられているのでございますが、数は魔ものでございまして、このきめられております、いわゆる基準看護の中に盛られました思想もやはりそれと関連いたします。このために、たいへん病院看護上の不備を来たしているというのでございます。たとえて申しますと、基準看護の内容も一類、二類、三類となっております。そして一類の場合は四人に対して一人、二類の場合は五人に対して一人、三類の場合は六人に対して一人、こういうふうになっております。しかし、これを実際の場になりますと、看護婦病院等では三交代をしております関係で、十二人に一人というのがほんとうなんです、そして休み等をとりますために、一人の受け持ちが二十人に一人、こういう割合になるわけです。それから、しかもその十人の中の内容を見ますと、看護婦が四人、准看護婦が四人、補助者が二人というふうな、まことにお粗末な内容になっております。それで、そういう内容の看護関係の質で、二十人の患者を一人で見ていくというようなことが、はたしてこのいわゆる看護状態をよくして医療保障を進めていく、患者にはよい看護をして早く回復をするように、生命を預かるのだ、健康を預かるのだというような、そういううたい出し文句と、こういう実態を考えてみましたときに、まことに私は寒けがするような気がいたしますが、これに対しまして、基準看護医療報酬の中にきめられておりますところの基準看護の改定を迫るものでございますが、これに対して厚生大臣いかがすか。
  22. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまの四人に一人、こういうことも必ずしも守られておらないということは、先ほど申し上げたとおりでございまして、お話のような事態が間々あるのでございまして、したがって、これをできるだけ法規に合うようにやっていく、同時に、いまは絶対数がお話のように看護婦は足りない、こういう事態もあって、やむなく別なことばで大目に見ておる、こういうこともありますので、お話のようなことが世間において認識され、この方面の改善をされていくということを希望、期待いたしておるのでありまして、御趣旨に沿うように検討いたしたい、かように考えております。
  23. 林塩

    林塩君 それで、看護婦志願者が非常に数が少なくなっている現状で、だれもそういうような状態の中にやらない、他の条件が非常にいいところに行くのはあたりまえでございます。  それからまた、この状態医師不足というものと一緒になりまして、看護関係者に与えられておりますところの診療の補助業務というものもやむなくせねばならないという状態になっております。それで、この診療の補助業務が六〇%というのが実情でございます。ただいま厚生大臣が言われましたが、やむなく看護関係の絶対数が少ないから、それでいまのような状態だと、絶対数が少ないからこういう状態にますます追い込まれまして、ますます状態が悪くなる。どこかで何らかの画期的な対策をとらない限り、私は、患者は守られないし、看護関係者はますます苦しい状態に陥る、家族は非常に不安になる、こういうふうに思うのでありますが、つけ加えて申し上げておきますことは、こういうことでございます。静脈注射の問題、静脈注射は、これは医師の仕事であると厚生省は通達しております。にもかかわらず、現在静脈注射のようなともすれば危険を伴う仕事までも、質量ともに不足しております病院の中の看護関係者がやっている状態です。これについて大臣いかがですか、どういうふうにお考になりますか。
  24. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのお話のこともございますので、これは私はいいこととは思いません。しかし、やむを得ないでそういうことをやっているものを間々見受けるのでありますが、これらの点は十分法規に合うように正していきたいと思います。その看護婦の待遇の問題が、やはり長い教育を受けながら待遇がわりあい悪い、こういうことも事実でございまして、この待遇をよくしていくということもぜひやらなければならないと思います。  いまのように、看護婦の絶対数が不足している、こういうことで、私ども厚生省におきましても、これも一定の養成計画をもちまして、そうして昭和四十五年度までの毎年の入学等の計画を立てておりまして、大体私どもは四十五年末には現在の十八万人、この数を二十五万人にまで持っていきたい、こういうことで年次計画を立ててやっておるということも御了承願いたいと思います。
  25. 林塩

    林塩君 それから、もう一つ労働大臣にお伺いしたいのでございますが、看護関係者は特別の職務であるからという意味で、労基法の六十二条には、夜勤、女子の深夜業を禁止しておりますが、それはやっております。やっておるのでありますが、それはいつまでもそういう状態でいいかどうかということと、それからいま言いましたように、数が非常に多く、受け持ちの数が非常に多いものですから、労働強化の問題、そういうことでそれもこれもみんな一緒になりまして、看護関係の数が減っていきますが、ところで特別に特別のゆえをもって許可しておりますところの深夜業をしておりますことに対しまして、手当ての問題については何の考慮も払われていない、こういうことは許されていいものかどうか、労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  26. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 病院、診療所等におきまする看護婦などの労働条件につきましては、労働時間についてまず問題がありますが、従来とも監督、指導の重点といたしましては、長時間労働及び休日労働の排除、割り増し賃金の適正な支払いということ、就業規則の作成整備というような点を取り上げて労働条件の改善につとめてまいったところでありまして、近年次第にその実効が上がりつつあると考えておりますが、今後とも関係機関と協力いたしまして、一そう努力してまいりたいと思っております。特に残業あるいは深夜勤務の問題でございまするが、一般に女子、年少者の深夜業は、労働基準法で禁止をしておるのでありますが、看護婦等につきましては、その職務の特殊性から見まして、例外として深夜業が認められておるわけであります。しかしながら、女子の中でも特に年少者につきましては、休日労働というものは、現在でも全面的に禁止をいたしておりまするし、また時間外労働を行なう場合におきましても、その長さについては特に制限をいたして保護をはかっておるのであります。先ほど申し上げましたごとく、労働省としましては、病院、診療所を監督、指導の重点の一つとして取り上げておるわけでございまして、今後ともこの辺に留意をいたしてまいりたいと思います。
  27. 林塩

    林塩君 いま、大臣は特別に気をつけているとおっしゃいますけれども、ほんとうはそうではありません。今後とも労働省としては、医療関係、ことに女子労働者でありますところの看護婦、保健婦というようなことの労働問題について興味がわりあいに少なくしておられるのじゃないかという感じがいたしますが、これに対して方針を伺いたいと思います。
  28. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましては、病院及び診療所については、まず厚生省で業務上の監督をいたしておりまするが、これらの関係従業員の労働条件の問題につきましては、労働省でやはり労働基準法に従って責任を持たなければならないという考えを持っておるのでございまして、今後ともこういう考えのもとに施策を進めてまいりたいと思います。
  29. 林塩

    林塩君 次に、文部大臣にお伺いしたいのですが、医療制度調査会の答申によりますと、将来看護関係教育学校教育法によるところの大学、短大あるいは高校というふうに入れるべきであるというふうに出ておりますが、これに対して大臣の御所見を伺いたいと思います。
  30. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 看護婦の充足ないしは養成につきまして、学校教育法のいわゆる正規の学校養成したらどうかという御意見が各方面からあるわけでございます。お話のとおりに、医療制度調査会においてもそのような御意見がございました。で、現在の看護婦の充足の関係につきまして、すべての看護婦養成を正規の学校でやらなければならんかどうかということにつきましては、なお検討の余地もあろうかと思うのでございますが、長い目で見ました場合に、看護婦の重要な任務にかんがみまして、その一般教養の点におきましても、もっと高める必要がありはしないか。あるいはまた、技術も進歩をいたしておることでございます。進歩した技術を身につけてもらうことも必要ではないかと思うのでありまして、また、看護婦の社会的な地位、あるいは経済的な地位、こういう問題についても大いに改善する必要があるのではないか。このようなことを考えます場合に、お話しのように、学校教育法の第一条のいわゆる学校、これによって看護婦を育成するということは、まことに私は有意義ではないかと思うのです。文部省としましても、この点につきましてはその必要性を認めまして、現に具体的にいろいろ検討いたしておるわけでございますが、将来正規の学校看護婦養成する道がもっと拡大せられるように検討、努力をしていきたいと存じております。
  31. 林塩

    林塩君 最後に、総理大臣にお伺いしたいと思うのでございますが、こういうふうに非常に大切な看護関係教育その他の問題、身分の問題、あるいは業務の確立の問題というようなことになりまして、社会保障医療保障を進めていく上に重要な施策であろうと思うのですが、これについて抜本的な法律改正ということが望まれるのですが、総理大臣、どういうふうにお考えになりますか。お伺いしたいと思います。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 関係各大臣がお答えいたしましたように、看護婦教育、また身分、経済的地位等、万般につきまして十分検討していきたいと考えております。
  33. 林塩

    林塩君 それで、それについてさらに厚生大臣にお伺いしたいのでございますが、ただいま抜本的の改正ということについて、総理大臣もしていきたいというふうな御意見でございますけれども厚生大臣としてはいかがお考えになりますか。いまいろいろ申し上げましたような、非常に大きな問題を控えているときでございます。将来の日本国民の健康の守り、それからまた、ますます豊かで、そして健康な国づくりのために、これをつくる人のつくり方というのが非常に大切であろうと思うのですが、法律をこのような方面に改正していきますことが、また人をつくることになり、この方面の業務を進めていくことになりますので、それについて厚生大臣として特に御検討願わなければならないと思うのでございますが、厚生大臣の御意見はいかがでございますか、承りたい。
  34. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 総理大臣から申し上げましたように、この問題を新しいまた視野に立って考える。現在、保健婦、助産婦、看護婦法という法律がありまして、この法律をこれからの方向に合うような改正をしたいという、こういう意見があるのでありまして、これらにつきましては、関係者が非常に多いので、いまいろいろの御意見を承っておる。また、看護婦審議会がありますので、ここにも十分御相談申し上げまして、そして時勢に合うような方向に改正をいたしたい。この国会にそのものが間に合うかどうかということはいま申し上げられませんが、そういう方向で今後の問題として改正をはかりたい、こう考えております。
  35. 林塩

    林塩君 最後にお伺いしたいのでございますが、いろいろな問題と関連いたしまして、医療費の問題でございます。で、医療費がどういうふうにきめられていきますか、その段階がございますが、先ほど申し上げました基準看護の問題にいたしましても、病院看護のいろいろな問題にいたしましても、それは医療費につながる問題でございますが、いま医療機関あたりで非常にこの運営に困っておる。看護教育の問題も、現在のところ、そういうところと大きな関連を持っておりますが、この医療費の問題について、値上げはいつごろできるものかということについてお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、ついでにお伺いしたいのは、医療報酬を決定いたしますところの中央医療協議会の問題でございますが、その中に、見ておりますと、そういう事実のところをよくわからないで、ただ、何かそういう報酬が実際の問題とは切り離して、どこかで、何か国民の健康だとか、国民医療だとか、看護、それに関連する人々の意見とかいうようなものはいれられないで、どこかでから回りをして医療費問題が運営されていく、きめられていくような感じがいたしますが、これについて厚生大臣どうお考えになりますか、私の納得のいくように御説明をいただきたいと思います。
  36. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 医療費の問題は、三十六年に一応改訂になりまして、その後そのままになっておる。したがって、その後、世間で客観的に消費者物価とか、人件費とか、客観情勢に変化がある。その変化に対応するものについて、何か緊急に是正すべきでないかというようなことを、私から中央医療協に諮問を申しておるのでありまして、私どもはこの諮問の答申を待って、政府としても適当な措置をしたい。先般も衆議院の予算委員会でも総理大臣からさようなお答えがあったのでありまして、これは緊急是正と、すなわちそういうふうな客観事態に対応して、何かをしなければなるまいかと、こういうことでお尋ねをしておるのでありまして、それで足れりとはしておりません。すなわち、医療費が点数、項目等がきまってから相当な月日がたっておりますので、これを根本的に適正化をはかる必要があるのではないかと私どもは考えておりまして、適正化をするためには、どうしても医療の実態調査というものをして、客観的の事実、資料をもとにしなければ、これが結論が出ない、こういうふうな考え方持ちまして、私ども医療費そのものについては、医療費の基本問題調査員というものを委嘱させまして、医療費全般の社会的、経済的における立場と申しますか、地位と申しますか、こういうことを検討をいましてもらっておる。同時に、来年度の予算で五千万円の医療の実態調査費というものを一応御審議を願うことになっておりますので、実態調査をして、この両者をあわせて医療費の適正化というものをはかっていきたい。ただいまお伺いしておるのは、その前に、緊急に何かする必要があるかどうかということを承っておるのでありまして、現に中央医療協では、いまの支払い側、医療担当側、あるいは中立委員の堪能な方にお願いをして、ここでひとつ国民の声の反映するような審議をしていただきたい、こういうことになっておるのでありまして、お話のように、国民の知らぬ間にどうこうということでなく、この協議会においてガラス張りの中でひとつ皆さんが十分討議を尽くしていただいて結論を出していただく、こういうことにいたしておるのでありまして、いま申すような緊急の是正の問題については答申を政府はお待ちをしていると、こういう状態であります。
  37. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 林君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  38. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 天田勝正君。
  39. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、同僚議員諸君の質疑に重複しないように質問をいたしたいと思います。  まず第一に、沖繩の援助問題について総理大臣にお伺いいたします。わが国は、沖繩には潜在主権があるのでありますから、貿易等の面でいろいろ優遇措置を講じてまいりましたが、これが正式に援助できることに相なりましたのは、三年前の池田・ケネディ会談からであります。この会談におきまして、日米協力して沖繩を日本本土の県水準に引き上げる措置を講ずるということが確認されたのであります。この確認に基づきまして、翌六二年にはいわゆる沖繩新政策なるものが発表されまして、これによって沖繩は日本本土の一部であると外国も認め、しかし残念なことには、米国の継続統治の意思が明らかにされました。けれども、一方においては、特に沖繩援助については協議機関を設ける、すなわち日米協議会、技術協議会等を設ける旨が明らかにされたのであります。しかるところ、その後の推移を見ますると、これらの協議機関は全く設けられません。県並み水準に引き上げるという六つの措置につきましても、後刻その一つ一つを指摘したいと存じますが、もし池田・ケネディ会談によって出発しましたこのことが、私から見るならば、ほごにされたと存じますけれども池田総理は幾たびか、沖繩の関係は、私とケネディ氏との会談によってよくなったと言われておるのでございまして、そのよくなったという、有効な措置は何がなされたかをまず承っておきたいと存じます。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖繩の方々に対しましては、日本国内と同様な取り扱いをしたいということは、年来のわれわれの考えでございます。こういう点で、ケネディ大統領とも相談し、今お話しの日米協議会、また日米琉技術協議会、こういうものを設けることにいたしたのであります。その後日米間におきまして、協議会の運営その他につきまして、今話をして、最近これが妥結するものと思っております。またその協議会のみならず、すでに御承知のとおり御審議をいただきまして日本からの沖繩への援助、これも三十九年度においては二十億余り、三十八年度も十九億、またその前年も十億とだんだんふやしております。またアメリカにおきましても、プライス法その他の関係、あるいは農産物援助等によりまして、沖繩島民の生活水準の向上をはかってくれておるのであります。最近の調べでは、沖繩の方々の一人当たりの所得は大体三百ドル近く、二百九十数ドルと相なっておると思います。そういたしますると、日本の平均が四百四、五十ドルでございます。私は、鹿児島、宮崎県並みになりつつあるのではないかというふうな気持を持っております。だんだんこれを上げていきたいという念願で、いろいろな施策を考えておるのであります。
  41. 天田勝正

    ○天田勝正君 いま総理の答弁でも、アメリカ側もプライス法を改正してだんだん措置をしておるというお話がございました。そもそも、ここから私は違約されておると思うのであります。それは新政策によって要請された援助額は二千五百万ドルでございましたが、さてプライス法の改正となりますと、この現在付与のワクが半分以下の一千二百万ドルに削られました。そして、これがすんなり支出されたのではなくして、実際には昭和三十八年は六百九十五万ドル、三十九年分は過日決定したのでありますが、これは八百万ドルであります。はっきり、これは一方的にアメリカが声明したものとは言いながら、違約であることは私は間違いないと思います。こういうことからいたしまして、民政府の策定いたしましたブランは立ち消えに相なったのであります。このことは一体どうお考えでございましょうか。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私とケネディ大統領との間の話では、金額までは話しておりません。しこうして、これはアメリカ政府のつくった文字でございます。多きに越したことはございませんけれども、やはり向こうとしても都合があることでございまして、政府としては二千五百万ドルの要求があったと思いますが、これが千二百万ドルに削られたようでございます。しかし、われわれとしては、これが多額であることを望み、また、その方向で努力しておることはいたしておるのであります。
  43. 天田勝正

    ○天田勝正君 それは、確かに金額までは約束しないでありましょう。しかし、もともと池田・ケネディ会談によって、両者協議して援助するということからこの発表になったものでありますから、これは要求というよりも、ぜひこれを実行してほしいという要請は重ね重ねにも私はいたすべきだと存じます。  さて、さっきの答弁の中にもありましたが、農業借款等でいろいろ援助されておる旨の御答弁がありましたが、これについては、確かに三年間一千二百万ドルの長期借款、こういう形で実は先に私が指摘したものを肩がわりをしたという、そういうかっこうになったわけであります。時間が足りませんから、先を急ぎますが、この沖繩援助の問題が、さっき申しました正式の日米交渉の場に移そうというのに、自後一年三ヵ月経過したのでありますが、交換公文さえ取り交わされておりません。したがいまして、施政権の返還の問題や自治権拡大の問題、こういうものは米側の意向に押されまして、この委員会においては取り上げられないというような決定になったと聞くのでありますが、この経緯を御説明願いたいと存じます。
  44. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) お答えいたします。日米協議会と日・米・琉技術協議会の問題でありますが、これは総理大臣からお答えのとおり、もうほとんど話し合いが煮詰まっております。ごく最近交換公文が実現すると思っております。内容につきましては、いまお示しの問題でありますが、もともと一昨年アメリカから協議会の提案がありましたが、その際も、その協議会の内容といたしましては、主として沖繩援助に関する検討をしよう、こういうことでございまして、施政権の返還とかその他につきまして、これに対する協議事項とするということは聞いておりませんし、したがって、協議会が実現いたしましても、主として沖繩援助に関する問題を取り上げると思っております。しかし、いずれにいたしましても、いまお話の施政権返還の声は、日本としましても希望いたしておりますし、沖繩住民も熱望いたしているのでございますから、議題外としての話し合いは、またそこで出るか出ないかということは、おのずからそのときによって違ってくるのではないかと思っておりますが、内容といたしましては、お示しのとおりでございます。
  45. 天田勝正

    ○天田勝正君 煮詰まっているというお話でありますから、この際公表はできませんか。  それから、さらにあなたは、この協議機関によって施政権の問題は出るか出ないかわからないというお話でございましたけれども、かねがね総理は、施政権返還の問題については、引き続き努力される旨を明らかにされておりますから、向こうが出さなくても、こちらが当然出していくべきじゃございませんか、いかがですか。
  46. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) 施政権返還についての交渉は、もちろん今後も政府としては続けます。特に、一昨年の池田・ケネディ会見におきましても、強くこの点は問題にされまして、いろいろ意見の交換があったと聞いております。したがって、今後日米協議会が実現いたしました場合も、議題は援助計画でございますが、やはり高度の政治問題として、この問題に絶対触れないというような考えではございませんので、私どもは、できるだけ機会を見まして、いまお話の施政権の返還については希望を述べたいと、こう思っております。
  47. 天田勝正

    ○天田勝正君 不満足ですが、先へ進みます。  私の見るところ、この六項目のうち、一つだけ実現されたようであります。それは昨年の秋に、琉球電力公社、水道公社、これの最高人事に現地人を起用する、こういうことになりました。ところが、これは元来潜在主権が生じてからでも十三年も経過している間に、実にそうした現地人起用が行なわれなかったというところに問題がある。わが国の満洲支配がいろいろ非難されておりますけれども、それでも、あらゆる機関の最高人事というものは満洲人で占めたのであります。しかるところ、いま指摘したように、いまごろになってようやくこうした電力とか水道とか、公的な機関の人事に現地民が許される、このことを一体十三年間も放置したということは、私は問題だと思います。このことについて総務長官、どう考えられますか。
  48. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) 電力、水道、これは米政府の機関でございまして、特に、御承知と思いますが、電力も水道も、特に水道のごときは、従来の沖繩といたしましては、水は大体川に仰ぐとか、あるいは井戸とか雨の水というものを利用しておりましたが、アメリカが入りまして、アメリカが、どうしてもこれは自分たちも必要であるが、同時に、沖繩住民のためにもひとつ水道をつくってやらなければいかん、こういうことで軍の施設としてやったことでございまして、電力、水道ともに、アメリカのいわゆる機関としてこれを設置されたのでありますから、したがって、その人事につきましても、やはりアメリカの考え方によっていままで行なわれております。しかし、これらにつきましても、御趣旨はよくわかりますから、今後日本政府といたしましても、できるだけ琉球政府と話し合いまして、その点をひとつ希望いたしたいと思います。
  49. 天田勝正

    ○天田勝正君 いま一つの例をあげたわけでありますが、時間もありませんから、たくさんの例を申し上げられませんが、ひとつこの際、政府に私は要請しておきたいのは、たとえば父親が革新陣営に属しておる。その子供が日本の大学に進学しようとしても、学校へ行くことはとめないけれども、渡航自体をとめる、こういう事実もあります。あるいはまた、そうした革新系の人が移民しようとしましても、これが渡航の面でとれなくなる。いろいろ資料はありますけれども、これを議論している時間はありませんが、いずれにしても、かかる状態が起きた場合には、さっそく政府は今後手を打ってもらいたいと存じます。いかがですか。
  50. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) お答えいたします。渡航の問題も、しばしば日本政府から、無条件に渡航許可があるように折衝いたしております。大体しかし、いままでのここに数字もございますが、たぶん御承知と思いますから申しませんが、ほとんど許可になっておりますが、一部渡航者、日本に参ります場合には、渡航者の身元引き受け人の関係から、あるいは渡航者の身元引き受け人の住所が不明、そのほか二、三の理由になっておりますが、きわめてこの渡航許可が、つまり不許可になったのはきわめて少ないのでございまして、大体は許可になっておるようでございます。
  51. 天田勝正

    ○天田勝正君 次に、わが国からの沖繩の援助の問題についてお聞きいたします。わが国は、さきの池田・ケネディ会談によって、大手を振って援助ができることになり、その結果といたして、三十七年度は総額十億だと記憶いたしますが、そのうちの七億二千万円は、これは琉球政府の財政に繰り入れられるべきものとして予算に組んだのであります。しかるところ、これは一銭も使わずして繰り越し明許となりました。さらに三十八年度、今年度でありますが、この予算は十八億三千六百万円、そのうち、琉球政府の財政に繰り入れられるべきもの十四億であります。合わせて二十一億五千万円のうち、いままで使われたものは三億五千万円だと記憶いたします。こういうことが日米折衝のうちで、日本自体が自分の潜在主権のある住民を救おうとして出す金さえもとかく出せない。これは一体どうしたことでありますか。こうすれば、もうすでに二月でありますから、私はまたこれが、から手形になって、沖繩住民とするならば、日本予算を見ながら喜び、その結果については嘆くという結果になると思うのであります。この予算の執行の遅延を今後も繰り返す危険があるのでありますが、これをどう打開されますか。
  52. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) ただいまの予算の繰り越しの問題でございますが、お話のとおりでございます。ただ、この問題を取り扱います場合に、その遅延になりました理由といたしましての、これは一つの理由でありますが、御承知のとおり、沖繩の会計年度は七月からになっております。同時に、アメリカの会計年度も同様でございます。そこで、実は三十七年度におきましては、それらの関係でアメリカと日本と交渉いたしておりましたが、アメリカの議会の関係がございまして、ようやく三十七年度は十二月に入ってこの覚え書きができたようなことでございまして、ほとんど繰り越しになりました。また、三十八年度は、アメリカの議会におきまして、十二月になってやっとこれがきまったのでございまして、実は今月の一月三日と思っておりますが、覚え書きができ上がったのでございますから、お話のとおり、相当繰り越しになっております。しかし、これらの繰り越し分は、いわゆる繰り越し明許を受けておりまして、ほとんど三十七年度の予算は本年の三月までにこれは使用できる。さらに三十八年度は、この明許に従いまして、四十年の三月、年度末までには全部これが消化できる、こういう段階に入っております。
  53. 天田勝正

    ○天田勝正君 そのいまの九割も残っておるわけですが、それはいまおっしゃったとおり、あと一カ月かそこらでほんとうにやれるんですか。
  54. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) 大体沖繩のいわゆる琉球政府におきましても非常に計画を立てておりましたから、大体これは消化できると言っております。  それから、三十八年度の、いま申しました来年の三月までにこれを消化することにいたしますから、大体これは可能だと思っております。
  55. 天田勝正

    ○天田勝正君 いずれにしましても、まことに遺憾なことが繰り返されております。さらに沖繩の外貨収入の一億七千万ドルのうち、一億ドルが基地収入という、まことに不健全な状態にあります。そこで、喜ばしいことではありませんけれども、米軍がもし引き揚げたらということになると、まことに不安定なものでありますから、いやしくも潜在主権があるものでありますから、どうかこの際、私は、池田・ジョンソン会談等を開いて抜本的な対策を立てるように望むのでありますが、いかがでありますか。
  56. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) 沖繩の経済がアメリカの基地経済に依存しているということはお話のとおりであります。もとより、将来日本に施政権が返還されることと思いますから、これらにつきましては、当然沖繩が米軍基地経済に依存しないで、いわゆる沖繩の自主経済でもって経済が確立する方向に私どもも今後何かと配慮するという考えでおります。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖繩の問題は、お話のとおり、内地とは違った気候、風土その他、あるいは資源その他非常に欠乏しております。われわれとしては、今後十分努力していかなければならぬ、また、アメリカにおきましても、日本復帰の場合を考えていろいろ施策をされておると思います。ただいま申し上げました一九六三年から六五年まで二千万ドルのいわゆる産業復興計画が沖繩の経済復興に相当役立つと私は考えておるのであります。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ちょっと伺いますが、先ほどの御答弁中、聞き取れなかったのでありますが、何か沖繩援助に関して日米間で交換公文か合意書か何かできるんですか。
  59. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) 援助についての交換公文ということではございません。つまり日米協議会が発足して、その日米協議会の議題の内容として援助の問題を取り扱う、こういうことでございます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 そのほかに取りきめができるのですか。
  61. 野田武夫

    政府委員野田武夫君) ええ。交換公文は、これはもうごく最近実現できると思っております。
  62. 羽生三七

    ○羽生三七君 もしそういう機会に、沖繩施政権返還に関連して、池田・ケネディ会談の経緯にかんがみ、今後施政権返還について、随時討議の対象とするというようなことは挿入できないのですか、これはどうなんですか。これは外務大臣、できませんか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日米協議会というのは、沖繩の住民の福祉増進、生活水準引き上げについての協議会ということでございまして、本質的に施政権返還の問題につきましては、それ以前の、またそれよりも大きい問題でございますので、ケネディ大統領との話し合いは、沖繩の経済開発、住民の福祉増進ということで、常に日米が協議していこう、こういうことでございますので、もちろん先ほど総務長官からお話がございましたように、この協議会におきまして、施政権返還ということを頭に置きまして、いろいろの議論はいたしますが、そのための協議会ではないと、私は了承しておるのであります。
  64. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間も半分費消しましたから先を急ぎます。  防衛庁の汚職関係とF102引き揚げの問題について聞きます。  まず、自衛隊については、賛否いろいろな意見があります。しかし政治的な立場はどうありましょうとも、純真な青年諸君が国を思うてその職務に精励おしてるということは、認めるにやぶさかでございません。特に災害出動には、いつも一人、二人の死者さえ出ております。こうした青年諸君の努力にもかかわらず、私の調べたところでは、ここにも持ってまいっておりますが、わずか二カ月で驚くべき汚職が続発しておるのであります。こういうことが隊員の士気の阻喪させる一方、政府の計画によりますと、来年十八万人に陸上をふやすといっておりますが、その充足率は従来八四%である、名目をふやしましても、実質は整わないのであります。そのことが幹部の汚職と無関係とは言えないと思います。この際、私は防衛庁長官は、せめてこの一年間ぐらいの間でも、防衛庁汚職の全貌を明かにしてもらいたいと思います。
  65. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) お答えいたします。国民から信頼される精鋭な部隊になり、かつ祖国を防衛するという、きわめて大切な任務を遂行するためには、御指摘のとおり、士気の高揚ということが一番大切でございますが、私どもも日ごろ、士気の高揚また規律を厳格にする、従来意を用いておったわけでございます。残念ながら最近、二件の規律違反の事故が発生いたしまして、一つは陸上自衛隊の小泉二佐の問題、もう一つは、航空自衛隊の山敷三等空佐の問題であります。前者の場合は、外部との会社、その他の関係におきまして、規律違反を犯しまして、私ども調査の結果、昨年の十一月三十日付をもちまして、懲戒処分にいたしました。また後者の場合も、非行問題が顕著でございましたので、これまた、昨年の十二月二十六日に懲戒処分にした次第であります。  これらの二件のいずれに徴しましても、私ども、今後自衛隊の性格から申し、任務から申し、厳格に査察の強化、あるいは今後あらゆる面からいたしまして、事故を今後絶対起こさないように厳に戒めてまいりたいと思っております。
  66. 天田勝正

    ○天田勝正君 これはさっき私が指摘したところだけお認めになっておる。私はこれを一年間ぐらい見て御答弁願いたいと、こう申し上げたのです。それもおっしゃっていただきたいし、さらに厳に戒めると言ったところで、普通役所の汚職というものは、その内部である、あるいは業者との結託である、しかるところ今度は、とうとう外へ出て詐欺までやっておる。額はいずれであっても、これはとうてい防衛庁でなくても、すべての役所で許さるべきことではありません。その人だけ懲戒にして、そして今後の綱紀粛正はどうなさるおつもりですか。その対策を私はお聞きしたい。
  67. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 先ほど申し上げましたとおり、あらゆる内部の査察の強化、あるいは部隊の末端まで規律を厳格にするよう、各全自衛隊に対しまして、厳重に注意をいたしまして、事故発生を防ぎたいと考えております。  なお、一年間にわたる問題につきましては、政府委員から報告をいたします。
  68. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。過去一年間におきます調達系関係のこの種の事故の総計は八件でございます。三十五年度には十六件、三十六年度には十五件、三十七年度には十一件と漸減の傾向を示しております。先ほど長官から申し上げましたように、外部との非行のようなことは非常に遺憾なことであると思います。大体内容は、たとえば行事を行なう際に寄付金を集めてその使途が明細になかったとか、あるいはそれに類似した事故が多いわけでありますが、明白な調書を持っておりますのは、長官が申し上げました二件につきましては明白な調書を持っておりますが、それまでの数件につきましては、大体そういう関係の事故が多いのであります。必要な調査がございますれば、後刻報告いたしたいと思っております。
  69. 天田勝正

    ○天田勝正君 まことに歯ぎれが悪くてしようがないけれども、こっちの時間の制約がありますから次へ移ります。  それで、いろいろ言いたいことはありますが、現在F102は板付、三沢に主として配属されておるようであります。この機は、領空侵犯もしくはその侵犯のおそれのあるときに出動する。わがほうの86Dがこれについていく。ついていってみたところで、さっぱり力がありません。しかしそのあと、一体どうするかということを議論しますと、これも時間がなくなりますから先を急ぎまして、いずれにしても日本は、盛んにに104を作っておるようであります。ところが米側で102をおいておくから、これを買えと言っておる。もうこれは古物に属するのでありまして、いつでも防衛庁は、かってのパッカードエンジン事件のように古物を買って、のちに手を焼いておる、こういうことでありますが、やはり102を買うつもりでありますかどうか。
  70. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) お答えいたします。102の問題につきましてアメリカ側から、ある種の提案、申し入れがあったことは事実でございます。しかしいま御指摘のとおり、102の性能については相当まだ疑点、論点がございます。価格が安いからといって、直ちにこれを買うのは適当かどうかいろいろの問題があろうと思います。したがって、いま各幕僚におきまして、いろいろ検討さしておる次第でございます。
  71. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ私がきょう質問する主点は、次の点であります。いずれにしても102が引き揚げる計画は、逐次実行されるでしょう。104を二百機作ってみたところで、一スクオードロン十八機と、こういうような形で配属するようでありますが、一々これを指摘すると長くなりますが、どっちにしても、こうしたものを使って侵犯を排除すると言っても、日本が排除する場合には、これが不幸にして、今きておる東京定期便なるものが、わが国と国交を回復してない国でありました場合に、こちらが出動していっても帰らない。こういうことが想定されます。アメリカ軍なら自分の防衛範囲ということで帰してくれるかもしれないけれども日本の場合帰らない。ところが、残念なことに、今日の航空機は、その速度はマッハをもって数えなければなりません。また、そのレーダーの発達は、どういうことになっておるか知りませんけれども、艦隊のまん中ごろへぽかんと知らざる潜水艦が浮かぶ、エンター・プライスなどが浮くと、たちまちその上には知られざる飛行機が飛ぶということは、識者全部承知しております。そういうことでありますから、結局、全く見えないときに戦闘隊形に入らなければ間に合わない。こういうことになると思う。そうすると好まざるのに日ソ戦うなどということも起こり得るのであります。これは否定できません。  こういうことも想定されるがゆえに、私はますますもって、講和の必要が出てきた、こう思うのであります。一この点について、総理はいかがお考えでございましょう。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 最近の兵器の進歩は、お話のとおり、非常にめざましいものがあるのであります。したがいまして、米ソにおきましても、お互いの力を認識し合い、今も戦争回避に向かって努力しておる状況であるのであります。したがいまして、私はこの平和共存の動きが全世界に行き渡って、そしてお話のような戦争のないことを念願して努力いたしておるわけであります。
  73. 天田勝正

    ○天田勝正君 総理の気持はわからんではございません。ただ、わが国は今のところ、国際世論に訴えるしか道がないのでありますけれども、しかしこの平和が回復してない、つまり休戦が長引いているというような状態の中では、国際世論に訴えると言っても、向こうの言い分は言い分として別にあろうと思うのです。この平和交渉をどんどん継続していれば、さすがに国際世論に訴えることができる。私はそう判断いたします。何もノーズロで平和交渉に応じろというような無法なことは言いませんけれども、しかし、努力はずっと続けるということが、今のところ日本がなし得る最良のことではないか。こういう観点から、そこを伺いたいのです。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平和条約を結んでおりませんが、国交は回復いたしまして、そうして経済面におきましては、御承知のとおり、相当円滑に日ソの間は進んでおるのであります。また平和条約締結の問題につきましても、われわれは、少なくともこれを促進の気持に変わりはございません。またソ連のほうにおきましても、そういう気運があることは、私は察知できるのであります。
  75. 天田勝正

    ○天田勝正君 右翼の関係について、次に伺います。  この問題は取り上げますと、左翼だのやくざ団体だのというのは、やり方によっては点数稼ぎと、こういうことになりますから、私も実は考えたのでありますが、しかし、やはりお聞きしておいたほうがよいと存じます。  今までの右翼の動きというものは、大体、革新勢力に対する妨害やらいやがらせ、こういうものであります。ところが最近においては、それをこえて保守党の人であっても、日中友好とか、貿易促進とか、こういうような人には、なかなかいやがらせが激しくなってきております。ここにも私、わが党の諸君に配られたもの、自由党の諸君に配られたものを持っておりますが、この内容を一々申すのはやめます。ただ、わが党に来たこの文書の中に、あきれた文句があります。これは念のため、東京都の治安を守る警視庁もわれわれと気脈を通じている上に立っていることは伝えておきたい、こういうことであります。私も三十何年間社会主義運動をやってきまして、ずいぶん脅迫されましたけれども、時の取り締まり当局と気脈を通じているなんということを麗々しく言ったのは初めてであります。さらに自民党議員諸君に来た文は、これはやくざ団体が、どうも資金源を断たれたということから、今度は右翼的な動きをする、その証左であると私は思います。こういうことに対して一体、公安委員長はどう対処されるのか、考えておられるのか。  さらにまた、続いて伺いますが、私の見るところ、昭和四十二年、三年、これが維新百年祭ということで百年目に当たる時点であります。この時点に向かって大同団結するその一つが関東会の結成という形に進んでおると存じます。さらにさきにも言いましたが、資金源を断たれて、麻薬対策、これと暴力対策が、多少成功した結果でありますけれども、そのことのために、やくざ団体が右翼になだれ込んだ、こういう形をとってきているものと存じます。一ぺんに聞きますが、そういう中にあって、たとえば取り締まりの当局警視庁におきましては、公安十四の係がありますけれども、十三までは全部左翼関係、たった一つだけが右翼関係であります。こういうことで、一体、やっていけるでございましょうか、どうですか、公安委員長、御答弁を願いたいと思います。
  76. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 最初の天田委員の、民社党に対する脅迫文の中に、警察と気脈を通ずるという文句があるということ、いろいろ調べましたが、そういう事実は全然ございません。それから、維新百年祭を目途として右翼が何か起こすのじゃないか、というような御心配の御質問もありましたが、昭和四十三年ということを目途に大同団結ということは、右翼の機関紙に載っておりますが、具体的に何をやるか、危険な行動に出ることは、直接行動に出たりすることは、一切まだわれわれの査察ではございませんので、不穏な計画のないように、必要があれば査察をするという態勢を講じておるわけでございます。  なお、暴力団が政治結社に看板を塗り変えておるということは、これは事実であります。事実、政治結社となりましても、その実態におきまして善良な市民に対する恐喝、暴行、傷害を繰り返しておる構成員が依然としておるという実態は御指摘のとおりであります。したがって私は、本年度の警察の大きい目標として、交通事故を半減さして、もう一つは組織暴力を根絶する、そのためには警察の総力をあげる、そのために一時的に、いろいろ治安問題が起こるのもやむを得ない。ある時期には手術をしなければなりません。そういう強い決意で組織暴力根絶のための暴力取り締まり対策要綱を公安委員会でつくりまして、警察当局に指示をいたしました。そういたしまして、警視庁その他各府県が暴力根絶の本部を設置いたしまして、徹底的に善良なる市民の人権を侵す暴力に対しては、きびしい態勢で行動をすでに開始をいたしております。その場合に警察としてどういう対策かといいますと、まず実情の情報視察をやりまして、事前に暴力を起こさないようにする。二番目に事件が起こった場合には、迅速に検挙して厳重に処罰するということでございますが、同時に現在の立法で不備な点——暴力が引き合わないように処罰を厳重にするために刑罰を強化する法案も現在出しております、暴力行為等処罰法。そうすることによって、常習暴力、それから銃砲刀剣の持兇器暴力に対しては、現在のようにすぐ刑余者で出れる、また善良な市民がお礼参りにおそれるということのないように、下限を引き上げましてきびしい処罰が行なわれるという立法を政府から出しておるわけでございます。こういった手当てをしながら、総合的に組織暴力というものを根絶していく、こういう態勢で取り組んでおるわけであります。
  77. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 時間がきましたけれども、まだ質問が一つ残っているようでございますから、簡潔にお願いいたします。
  78. 天田勝正

    ○天田勝正君 わかりました。しかし委員長、いまので御注意願いたいのは、公安関係でも右の関係は十四分の一じゃないか、一体それで済むのかどうか、こういうことは抜けているのですよ。答弁のうちに、ずいぶんていねいに答えられましたけれども。だからやはり委員長、私も約束ですから一生懸命時間を守るようにいたしますけれども、そこは委員長、御寛容願って、事実私からすればずいぶん答弁されていないのをそのまま見過ごしてきたのです。これは御承知だと思うのです。いまのも一つお願いします。
  79. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 警視庁十四課で一課ということはございませんで、直接にこの右翼組織暴力関係の課を特につくりまして、百数十人を当てておりますし、警察庁でも従来の態勢をかえまして、右翼に相当な内偵員をいま養成しております。それから、やはりそういった組織暴力団が右翼に流れ込んでいますから、そういった刑事関係も一応そういうことで主力を注いでおりまして、決してそういう面を非常に軽視しているということはございません。
  80. 天田勝正

    ○天田勝正君 また違っていますけれども、諸君に迷惑をかけますから先に進みます。  いまILO八十七号条約は政治の日程にのぼっております。ところが池田内閣は、福祉国家の建設、こう選挙でも公約しております。しからば私は、ILO百二号、百三号——これは百二号は言うまでもなく社会保障の最低基準に関する条約であります。百三号は母性保護に関する条約であります。福祉国家を言うならば、八十七号とともにこの二つの条約も直ちに批准に踏み切るべきだと存じます。またこれに踏み切るにいたしましても国内の態勢、つまり百二号関係で言いまするならば、老人保障対策が全く日本はお粗末である。これを厚生当局においては直ちにつくる。百三号関係においては、いまのような戦争未亡人を対象にしてできたような貸し付け制度ではなくて、まるで新たな法益を用意しなければならぬと思いますが、この二つの点。最初の条約の締結の点は総理から、あとの点については厚生大臣から答弁願います。
  81. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 社会保障最低基準条約——百二号条約の問題でありますが、この条約は一九五二年にでき現在十五カ国だけ批准されております。この中に九つの項目がありますが、このうち三項目を満たせば批准ができる、こういうことになっておりまして、ただいままでのところは、傷病給付と失業給付は大体この条約を満たしておる。もう一つの問題は老齢保障の問題でありまして、ただいまのお話、これが日本では非常に条件が隔たっておる。したがって、政府としましては、この国会に厚生年金法の改正をお願いをしたい、かように思っておるのであり検して、この改正法の内容は、大体年金の定額部分の二千円を四千円に引き上げる、それから報酬比例部分を現在二十年勤務で標準報酬の一二%、また三十年で一八%でありましたのをそれぞれ二倍に上げる。こういうふうになっておりまして、条約の求めておるのは、大体勤務年数の平均の所得の四〇%を年金で支給できれば、この条件にかなう、こういうことになっております。私どもが今度お願いしようと思っておるものは、三十年で平均報酬額の三六%になる。これに定額分の四千円を加えれば、大体条約の求めておる基準を上回る、こういうことになりますので、この厚生年金法の審議が通過願えれば、この条約を批准できる状態になる、こういうふうに考えております。
  82. 天田勝正

    ○天田勝正君 百三号のほうはどうですか、また百三号のほうを落としておる。
  83. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お答えします。百三号は勤労婦人の保護、こういうことで所管が労働省の関係になっておりますので、そちらからひとつ。
  84. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ちょっといま労働大臣ほかの委員会に御出席なさっておりますので、私かわりまして答弁いたします。  御指摘のILO百三号条約は、女子に原則として十二週間の出産休暇を与えること、また生児を保育する女子に育児時間を与えることを規定するものでございます。その趣旨は原則的にはわが国においても実現されておるのでございますが、産後の休暇期間でありますとか、あるいは育児時間の取り扱いなどにつきまして、若干の相違があるわけでございます。そういった点につきましてなお検討の必要がございますので、現在のところではまだ批准できないような状態にございますけれども、今後とも検討を続けたい、かように考えておる次第でございます。
  85. 天田勝正

    ○天田勝正君 委員長もちょっと注意して下さいよ。その準備ができたら厚生大臣のように、そうすれば条約を批准いたしますというならなにだけれども、それは内容を議論しません、私は。別の機会にやりますよ、全く違うんだから。違うんだけれども、それをどうするんですか。いま厚生大臣はこれができたたら批准しますとこうおっしっゃた。片方はただ説明だけで、私も皆さんに時間長くなって申しわけないと思うんです。思うけれども、十分答弁されていないから。
  86. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 天田君の御質問については、後刻労働大臣から答弁することにいたしたいと思います。
  87. 天田勝正

    ○天田勝正君 ありがとうございました。  それじゃ、もう一問だけで終わります。公共料金のことを申しますとこれまた長くなりますから、さしあたっての問題だけ聞きます。  政府は、閣議決定はともかくとして、四十四国会あたりから公共料金を上げないといってきました。ところがその後軍車はもう東京ほか十二都市で上げ済みであります。バスは東京、横浜、名古屋、大阪、京都、神戸、秋田、浜松、北九州、これは各議会で議決しています。さっそく問題になってくると思います。さらに行政訴訟までやる、こういうことでございます。授業料は東京、大阪を除けば、二月中に全部出そろうでありましょう、値上げは。これは交通関係は運輸大臣に答弁願いたいですが、授業料のことは本来文部大臣でありましょうが、物価を扱っておりまする経済企画庁長官に答弁を願いたいのでございますが、そのことは、要するに公共料金は上げないというので、政府はまことにきれいごとで済みます。しかし、その結果は地方公共団体にしわ寄せされる。それに対するしわ寄せの後をどうするかという対策というものは、ここに政府から出ております当面行なうべき物価安定の具体策についてという文章全部見ましたけれども、何もそれは載っていない。結局地方公共団体がおもでありますが、そういうものあるいは民営というものに全部おっかぶせてしまう、こういうのはイージー・ゴーイングであろうと思います。けしからぬ話だと思います。ことに交通機関においては、その企業の無理というものが、公営でやってやろうと、私営でやってやろうと、企業自体の無理というものは結局どうなる、それは従業員にしわ寄せされるにきまっておる。従業員にしわ寄せされれば、それが事故の大きな原因になっておりますことは、過去の例ではっきりしておる、こういうところへ何ら配慮しないというのは、どうもいささかおかしいではないかと私は思いますが、時間がありませんから、まぜこぜで質問しましたけれども、これらの点について企画庁長官においては、ごく最近私が指摘した以外でも、公共料金の値上げという動きがあるならば、それらも説明していただき、いまのいろいろ申し上げた賛同に答弁願いたいと存じます。運輸大臣も同様です。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まぜこぜにお答えいたすことになりますが、まず公営企業の問題から申し上げます。公営企業法では片方で独立採算という建前をとりながら、したがって他方で従業員の給与については地方公務員としての立場ばかりでなく、同種の民営企業の給与とよく勘案しながらきめろ、この両方が合わさりまして独立採算という建前に、公営企業ということになっているわけでございます。従来独立採算制のほうはそのままとられておりますけれども、給与の決定にあたってはいろいろ無理からぬ事情もございますけれども、同種の民営企業との間にはなはだしい格差を生じているわけでございます。したがって、そういう現状において、はたして独立採算ということがなお可能であるかどうかということは、法律の建前そのものから考えて問題があるように思うわけでございます。それらの問題について従来も関係者が協議体をつくりまして、各省一緒に協議してまいりました。少なくともその辺に問題があるということまでは関係省も合意をしておるわけであります。これからは公営企業制度審議会におきまして正式にこの問題を検討するということでございます。当面の問題としましては、したがって、かなり無理なことをお願いしておることは、私ども自党をしておりますけれども、企業の経営合理化ということにやはりつとめてもらいたい。他方で私ども独立採算制という建前はいい建前と思いますが、その建前を貫く条件が一つ申しましたように現実に欠けておるわけでございますので、ある程度暫定的にその当該公共団体のその他の会計で、現在ありますところの赤字なり、あるいは必要経費なりを暫定的に背負って、もらうことはできないであろうかといったようなことを、ひとつこれは考え得る考え方だと思うわけでございます。なお、そういたしましても、しかし中央の援助なしには問題が解決しないという自治体もあるかもしれないということは考えます。それらにつきましては、ひっくるめまして公営企業制度審議会で結論を出してもらいまして、それに従うようにすべきかと思うわけでございます。  それから授業料の値上げの問題についてお尋ねがございまして、ちょうど文部大臣がおられませんが、現在値上げの決定を正式にいたしましたのは、これは公立の高等学校でございますが栃木県だと思います。そのほかに数県そういう可能性のある県がございますけれども、国の方針をひとつできるだけ御了解を願って、何とか再考をしてくれないかといったようなことを、私どもそういう折衝をいたしつつございますので、まあ何県かはそれにもかかわらずおやりになるところがあるかもしれませんが、大勢としてはそういうふうにいってくれるのではないか。なお、御承知のように、三十九年度におきまして高等学校経費の確保のために、地方交付税の単位費用の改定を予算に盛り込んでおりますことは御承知のとおりでございます。  それから閣議了解をいたしましてから、あとなおどういう案件を持っておるかということにつきましては、御指摘のように北九州市、浜松市、あるいは広島郊外バス等々三十件近いものを、私の役所でそれまでに運輸省から御協議を受けたものがございます。これにつきましては、引き続き検討はいたしておりますけれども、その中で特に閣議了解で、例外として考える経営困難云々といったようなものに当たるものはただいまのところはみつかっておりません。なお、そのほかに運輸省に対して料金の改定申請をしてきております案件がかなりあるように聞いておりますが、これは私どもの役所で協議を受けておりませんので、あるいは運輸大臣からお答えがあるかと存じます。
  89. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。公営バスについてのお答えはただいま企画庁の長官が言ったとおりでございまして、私どももはなはだ遺憾でございますが、国の物価対策に対する大方針に従いまして、事業経営者に勧奨いたしまして、すすめてぜひ協力してもらいたいということで、ただいま進めておる次第でございます。  それから公共事業のうち公営事業にあらざるバスにつきましては、これまた非常に経営が困難でありますが、前申しました公営事業と同様協力方を要請して、運輸の使命である安全の確保等につきまして、事業者にすすめて協力方を期待しておる次第でございます。ただ、そのうち中小企業等でどうしてもやっていけぬというものがあれば、経済閣僚懇談会に持ち出しまして最善を尽くしたいと思います。  それから運輸省にいま申請されておる料金の改定のものは非常にたくさんでございます。一々ここで読み上げるのも時間がかかりますの、で、あとで資料にして御提出申し上げます。さよう御了承願います。
  90. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 天田君の質疑は終了いたしました。  午後一時再開、暫時休憩いたします。    午後零時十分休憩    ————・————    午後一時十四分開会
  91. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。  ただいま委員の変更がございました。  中田吉雄君が辞任され、加瀬完君が選任されました。   —————————————
  92. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 午前中の天田君のILO一〇三号、母性保護に関する条約の政府委員に対する質疑につきまして、大橋労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大橋労働大臣
  93. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 休憩前の当委員会におきまして、天田委員から、ILO一〇三号条約の批准について御質問がなされましたので、これに対してお答えを申し上げます。  ILO一〇三号条約は、女子に原則として十二週間の出産休暇を与えるべきこと、また、新生児を保育する女子に対しましては、保育時間を与えるべきことなどを規定するものでありまして、その趣旨は、労働基準法において、原則的には、わが国でも実現されておるわけでございますが、しかし、産前、産後の休暇の期間、育児時間の取り扱い、ことに、その間の労働賃金の問題、かような点につきまして、ILO条約と現在の労働基準法との間には、若干の相違があるのでございます。また、社会保険制度におきましても、この条約の内容と現在の日本の社会保険とは、若干の相違がございます。したがって、現状では、直ちにこの条約を批准いたすわけにはまいりません。しかし労働基準法及び社会保険制度等につきましては、今後厚生省も十分連絡をとりまして総合的に検討を加えてまいりたい、かように存じておりまするので、この点をお答え申し上げる次第でございます。
  94. 天田勝正

    ○天田勝正君 さっき厚生大臣は、その用意ができましたら直ちに批准いたしますと、こういうお答えであったけれども、さっきの労働省の説明では、批准案のことには何にも触れておらない。そこで委員長にお願いしておったわけなんです。いまは、違いがあるからだという説明はありましたけれども、それは、批准するとかしないとかという私の質問にはお答えになっておらないのですが、いかがですか、何とかしてください。しなければしないでいいんですよ。
  95. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ただいまの私の答弁で簡単に触れておきましたが、現在の段階におきましては、労働基準法並びに社会保険制度との関係上、直ちに批准することは困難である、かような次第でございます。   —————————————
  96. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 質疑を続けます。瀬谷英行君。
  97. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 当面緊急を要する問題について、政府の見解をただしたいと思います。  第三次補正予算のうち、国鉄の財投百億でありますが、四百億の債務負担行為並びに財投百億の補正、これが非常に年度末の押し詰まったところで行なわれるに至った理由は一体何か、その経緯あるいは背景等について、大蔵大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  98. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御審議願っております三十八年度の第三次補正におきまして、国鉄に百億財投の追加を行なうことをお願いしておるわけでございます。御承知のとおり、三十八年度では新幹線に流用いたしましたもの二百五十億でございまして、前の補正で百億補正いたしまして、今回、その後鶴見事故等もございまして、国鉄、運輸省当局の要求もありましたので、これらの事情を勘案しまして、百億の財投補正を行なうということでございます。四百億の三十九年度における債務負担行為につきましては、国鉄側から、いろいろな事情御説明がございまして、当初二百七億の保安費に対しましては、全額これを認めて、なお、財投の許す範囲内において、国鉄に対する配意をいたしたわけでございますけれども、三十九年度以降、すなわち、四十年度にまたがる工事、四十年度以後に竣工をいたす工事等につきまして、なお、財政的な配慮が必要であるということでございましたので、四十年度以降に竣工する工事につきましては、債務負担行為を付することによりまして、合理的計画的に工事を進めることができるという事情もありましたので、四百億の債務負担行為の追加を行なったわけでございます。
  99. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今回のこの補正で、一体どれだけの仕事ができるのか。また、三十九年度予算等で、はたして国鉄が考えておるような安全計画等に支障がないのかどうか、どの程度五カ年計画が進捗をしておるのか、それらの点について、国鉄総裁からお伺いをしたいと思います。
  100. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 国鉄総裁は御病気で副総裁が御返事申し上げます。
  101. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 総裁が病気療養中で、失礼でございますが、私からお答え申し上げます。  ただいま御質問の本年度の補正予算の百億につきましては、私どもといたしましては、現在焦眉の急でございます保安関係の諸費用並びに一部工事が非常に進んでおります東北線、上越線その他の複線化工事等にこれを使わしていただくつもりであります。  それから、その次の御質問の昭和三十九年度で約千七百億の工事をさせていただくことになっておりますが、これが予定どおりできますと、第二次五カ年計画、すなわち、昭和三十六年度から始まりました第二次五カ年計画は四年目を終了いたしまして、約五八・四%——六〇%弱ということに相なるわけでございます。この中で直接、運転の保安に関係のございます踏切の問題とか、あるいは運転の安全を確保いたします車内の警報とか、こういった直接の保安対策費は、大体見ていただいておりますが、そのほかの複線化あるいは電化等につきましては、若干のおくれを余儀なくされるというふうに考えております。
  102. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄の諮問委員会が、鶴見事故に関する意見書を発表しております。それから監査委員会が、特別監査報告書というものを出しております。この諮問委員会の意見書の内容は、事故の根本的な原因は、過密ダイヤにある、こういっておりますし、過密ダイヤは、輸送需要に対する著しい投資の不足から来ているのだ。このことは、もう昨年の五月十日に発表された、国鉄経営のあり方について、の答申書でも、最高度の重点を置いて指摘をしている。こういうふうにいっております。監査報告書の場合は、列車ダイヤの調密状態緩和のために、国家立場からの強力な交通政策の確立を要望しているわけであります。それから、国鉄労働組合のほうから、国鉄安全白書というものが発表されております。おそらく各議員並びに閣僚各位にも、これらの報告書なり意見書なり、あるいは白書というものは渡っているのじゃないかと思うのであります。渡っていても、ごらんになってなければ何にもなりませんけれども、おそらくごらんになっていただけたものと私は思うのです。そこで、この事故の原因である過密ダイヤ、あるいは輸送力の増強を要する問題等について、三十九年度の予算あるいはまた補正予算等で間に合うのかどうか、どの程度にやっていけるのか、間に合わせられるのかどうかという点について、運輸大臣からお聞きしたいと思います。
  103. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 三十九年度の予算におきまして、保安対策の費用につきましては、国鉄の要求どおり認めて、そのもう一つの保安の根本遠因である過密ダイヤの解消につきましては、どうしても線路の増強をやらなくちゃいかぬ。この点につきましては、国家財政の見地の上から、さっき副総裁が申しましたように、遺憾ながら予算が認められなかった、しかし、根本問題について、今後政府におきまして、いかにすれば今日のような国鉄で輸送の安全確保と、それから経済に伴う輸送の増強に対処できるかということにつきまして、本年の予算に認められなかった、そして、その他根本の問題について内閣に調査——組織の問題を検討する委員会を置くことにいたしまして、今年度にやれなかったその他の問題について、十分検討いたしまして、来年度の予算に臨む態度をきめていって、この国民の切実なる要望にこたえようと考えておる次第でございます。
  104. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 調査の委員会を内閣に設置をして、十分に検討をされるということでありますが、今日ただいま、しからばこの過密ダイヤは幾らか緩和をされているのかどうか、その危険度は多少とも緩和され得る状況にあるのかどうか、その点、国鉄副総裁からお伺いしたいと思います。
  105. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いわゆる過密ダイヤの解消は、何と申しますか、一つの線路に走ります列車の回数を減らす以外にないわけでございます。その点につきましては、昭和三十六年度から、全国の主要幹線について、いろいろ複線化の工事をやっておりますが、現在の予算では、やはりそういった複線化工事は、三十九年度を終わりましても、計画の約六二%程度というふうに考えております。したがいまして、目下の問題といたしましては、そういった全面的な工事のできるのを待つゆとりがございませんので、ある程度のスピード・ダウンをするところ、あるいは、もう列車のこれ以上無理だというところは、ある程度通勤輸送等は残して、その他の一般の列車を削減するとか、そういった方法によりまして、とりあえず切り抜けてまいりたいというふうに考えております。
  106. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄の監査委員会で出しております特別監査報告書によりますと、国家立場から強力な交通政策を確立しなければならぬということを述べているのであります。「国家的な立場から」ということになると、これは、国鉄だけにまかしておいて、そして政府はあとは知らぬ顔をしているということでは、これはいけないという意味だろうと思うのであります。国家的な立場から強力な交通政策を確立せよ、という監査報告書に対しまして、総理としては、どのように考えておられるか、その見解をお伺いしたいと思います。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 交通問題は、ただいま最も重要な問題でございます。内閣におきましては、交通基本問題調査会を設けまして、単に交通ということでなしに、そのもとをなす、いわゆる都市の分散化あるいはその他、交通と直接の関係ある問題等につきまして調査をいたしておるわけでございます。
  108. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 事故の原因が、過密ダイヤにあるということがはっきりと指摘をされており、今日でも、その過密ダイヤの状態は続いておるということになると、いつ何どき、第二、第三の鶴見事故が発生しないとも限らないという危険な状態にあるわけであります。したがって、この問題は、慎重に検討をしたり調査をする段階ではないと思うのであります。非常に事は急を要すると思うのでありますけれども、内閣に調査のための委員会を設置して調査をするというふうに、先ほど運輸大臣からお答えがありましたが、それは、いつできて、いつまでに、どういうことをやろうというのか。具体的な構想がおありでしたならば、お示しをいただきたいと思います。
  109. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 来年度の予算編成までに、国鉄のあり方につきまして、一方内閣におきましては、交通基本問題調査会がありますが、これに対応いたしまして、国鉄のどうすればいまの過密ダイヤを解消し、それから輸送の安全を期すというようなことにつきまして、国鉄全体につきまして、あるいは運賃の問題までも、あるいは公共性と企業性をどういうように調和していくかというようなことを、専門の方々、その他に委嘱いたしまして、内閣にそういう調査会を置きまして、そうして来年度の予算に間に合わすように研究の結論を得たいと、かように考えております。
  110. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 運輸大臣のお答えですと、来年度の予算に間に合わせるようにということでありますが、四十年度の五カ年計画の残額は、四千百三十一億ということになると思いますが、それは一体どうやって支弁をしていくのか、捻出をしていくのか。公共料金の値上げはしないというたてまえになっている以上は、運賃の値上げはできまいと思うのでありますけれども、国鉄としてのやりくりはどうなのか、計画がありましたらお答えをいただきたいと思います。
  111. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 現在やっております五カ年計画の残が、三十九年度を過ぎましてもなお四千億以上あるということは事実でございます。ただ、現在のような国鉄に対する財政投融資、その他のスケールでまいりますと、これを短期間のうちに全部手当てしていただくことはほとんど困難というふうにも思います。ただいま運輸大臣が申されましたとおり、内閣におかれましても、国鉄問題を全面的に取り上げて、資金の確保及び輸送力の見通し等を、国家的見地からめんどうを見てやるというふうなお話でございますので、私どもといたしましては、一応、現在進行中の第二次五カ年計画は、三十九年度をもって打ち切りまして、昭和四十年度から、新しい構想に基づいた長期計画をつくってまいりたい、こういうふうに考えております。
  112. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 四十年度以降の計画については、そうすると、まだはっきりとしていないということになるわけでありますが、今後の国土計画を考える場合に、一体、鉄道をこれ以上延ばすとすれば、どういうふうな延ばし方をしたらいいのか。たとえば二つあると思うのです、問題は。一つは、地域開発といったような意味で、新線を建設するという方法が一つ。それからいま一つの方法は、逼迫をしておりますところの輸送力を増強する、現在の既設線に対して、輸送力の増強をはかるために、複線化をはかったり、電化をはかったりする、こういう方法の二つの方法があると思うのでありますが、一体、どちらのほうに重点を置いたらよろしいというように考えておるのか。その点について、運輸大臣からお答えを願いたいと思います。
  113. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 財政と見計らいまして、双方並行してやりたいと思います。新線の建設につきましては、ただいま御審議願っておる日本鉄道建設公団に、新線をもっぱらやらせまして、それから輸送力増強に関する複線化、電車化、ディゼルカー化等につきましては、従来の国鉄の財政の許す範囲におきまして、それを並行してやっていきたいと考えております。しこうして、その国鉄に対する財政投融資あるいはその他の問題につきましては、先ほど申し上げたように内閣に、基本的にどうすればよいかという問題点を一々解明いたしまして、それを国鉄の要求する安全対策、保安対策あるいは増強対策に、財政と見合ってやっていけるような予算措置をとるべく、その委員会の結論を待ちたいと考えております。
  114. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これからの国土計画なんでありますけれども、道路のほうは四兆一千億といったような予算が組まれております。ところが、鉄道のほうは非常に予算的な拘束を受けて四苦八苦をしているという現状にありますが、一体今後の国土開発のためには、道路の整備に重点を置くべきなのか、地域格差の解消等のためには、鉄道の新線を建設したほうがよろしいのか、道路か鉄道かという問題に直面すると思うのでありますけれども総理大臣としては、どのようにお考えになりますか、御見解を承りたいと思います。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来から鉄道か道路かということは、問題になっておりますが、これは、一がいに一方ばかりに走るわけのものでもないと考えております。したがいまして、私は、新産業都市等につきましては、これは道路のほうが重要性が多いかとも思います。しかし、物の運搬ということになりますと、鉄道というものも、これはないがしろにすることはできない。両々相均衡していくことが適当だろうと考えております。
  116. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 運輸大臣総理大臣も、どっちとも大事だという意味の結論でありますけれども、私は、予算的に限られた制約がある以上は、物事はやはり重点を置いて進めていかなければならないという気がするわけであります。建設費の面からいうと、道路も鉄道もどっちが特に高いといったような開きはあまりないと思うのでありますけれども、低開発地といったようなところの開発のために、一体道路をつくったほうがよろしいのか、鉄道をつくったほうがよろしいのかという問題は、慎重に考えなければならぬと思うのであります。いま鉄道を敷いてないというようなところというのは、大体において人間の数よりもクマとかタヌキの数のほうが多いようなところが多いのじゃないかと思う。そういうところにわざわざ鉄道を建設したほうがいいのか、あるいは道路を敷いたほうがいいのかということは、おのずから答えが明らかになってくるのじゃないかと思うのでありますが、運輸大臣はやはりこれらの問題についても、両々相まってというようなことになるのでありますか。
  117. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 日本の経済の発達の経路を考えてみますというと、ただいま瀬谷委員のおっしゃるようなクマや牛ばっかりおるようなところに鉄道を敷いたことによって経済が発展していくのであります。私は、日本の地理的条件、経済の発展の条件等を考えまして、地域格差を是正するためには、どうしても鉄道をやらなければいかぬ、かように考えております。したがいまして、さっき総理が申されましたように、発達してまいりましたところに新産業都市等を起こすような場合には、道路によることも必要と思いますが、あなたのいまおっしゃるような状態を開発いたしまして、人間が多くなるようにする基本は、やはり私は鉄道でなきゃいかぬと考えて、新線を促進いたしたいと考えております。
  118. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの考え方は、人口が片寄っちゃならないから、地域のほうにも人口の分散をはからなきやならぬという考え方から鉄道を敷くんだというふうに理解をしてよろしいんですか。
  119. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) あえて人口のみと申しません。いまの未開発の地域には非常な資源があるところもあるでありましょう。しこうして、その資源を開発することが日本経済の地方格差を是正する非常な手段になっておる。そのように考えまして申し上げたのであります。人口問題についてのみ申したのではございません。
  120. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 鉄道建設公団法等で新線の建設を計画しているようでありますけれども、いま国鉄が計画をしておりますところの新線予定路線というものは、赤字路線と黒字路線と大ざっぱに分けまして、どっちが多いのか、その割合はどの程度になっているのか、国鉄総裁からお示しをいただきたいと思います。
  121. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 現在、鉄道敷設法にきめらております全体の線路の収支計算はまだできておりませんが、現在着工中のもの、並びに近い将来に着工するであろうというもので、建設審議会において取り上げられた路線を全部運営いたしますと、大体運営上の赤字が約五十億前後というふうな計算をいたしております。
  122. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 よくいわれるんでありますけれども、赤字政治路線というものがいいかどうか、地方の代議士の人の売名のために、とんでもないところに鉄道を敷くというような話はよくありました。鉄道建設公団がもしその赤字政治路線の促進のためにこれが運営をされるということになると、国鉄にとっても、国家経済のためにも、まことにこれはマイナスになるんじゃないかと思うんでありますが、そのような懸念がないというふうに断言できるものかどうか。これは大蔵大臣に、予算上の措置としてお答えをいただきたいと思います。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鉄道と鉄道建設の問題に対しては、いろいろ議論のあるところでありますが、なぜ新線建設公団をつくったかということを簡単に申し上げますと、鉄道の発展史と日本の経済の発展史は、ちょうど平仄を合わしておるわけであります。しかし、戦後、道路の建設が必要であるということで、昭和二十七年から約十一カ年間、道路五カ年計画も三回ないし四回と改定してきて、今度五カ年・四兆一千億計画をやっておるわけであります。この道路と鉄道との比較は、財政上十分考えなければなりません。道路は、四兆一千億のうち二兆一千億は有料道路の制度をとっておりますが、もとより無料公開の原則に立っておるのが道路であります。鉄道は、鉄道の単独会計から見ますと赤字になるというけれども、国原財政の立場から見ますと、無料公開の原則に立っておる道路がより効率的であるのか、鉄道が財政的に有効であるのか、ということに対しては、効率計算をしなければならぬことは当然であります。でありますから、いま識者の間で計算をされておりますものは、一級国道一万三千キロ、二級国道一万七千キロ、俗に三級といわれる重要指定地方道の二万四、五千キロないし三万キロ、合計五万キロないし六万キロの道路整備は、これは当然しなければならない、所得倍増計画の上からいっても当然必要であるということで、四兆一千億・五カ年計画をつくったんですが、五万キロないし六万キロ以上の道路整備の費用と鉄道建設というものに対する国家財政立場から見ると、どっちが経済的なのか、こういう問題は当然考えられる。これは、識者の間では、鉄道のほうが安いと、こう言われております。おりますけれども、こういう問題は十分検討しなければならないので、鉄道基本問題調査会を設けて、四十年度の予算編成までに検討しよう、こういうことを言っておるわけであります。  アメリカやヨーロッパにおける鉄道はもう時代おくれになっておって、道路にかわるといいますけれども、これは地形、地勢上、特に雪が降る地方が五割あって、まん中に山岳があるというような国、イタリアと日本でありますが、こういう国は、鉄道を除いて地域開発とか、また国土の均衡ある発展を考えるわけにはいかないというのが過去の異論であります。そういう意味で、鉄道に対しましては十分検討しながら、これから四十五年度度でには、鉄道で運ぶものが一体幾ら、道路で運べるものが幾ら、内国港湾の整備によって運べるものが幾ら、というような目標を取って整備計画を進めなければならぬことは当然であります。  新線建設公団につきましては、これはもう鉄道で赤字路線の建設ができないということでありますから、新線建設公団によってこれをやろうということでありますが、政府が他の政策的目的をもって、地方開発とか、低開発地の開発とか、北海道開発とかいうような政策目的をもってつくる鉄道に対しましては、無償使用の道を開いておるわけであります。でありますから、新線建設公団がつくる新線が国鉄の経済的圧迫になるということは考えておりません。経営的に圧迫にならないために新線建設公団をつくったというのが政府趣旨であります。新線建設公団をつくらなければ、建議に基づく新線は国鉄がやらなければならぬ、こういうのが現在の法制の建前でありますものを、国鉄の負担から除いて、新線建設公団でやろうというのでありますから、事情は御理解願えると思います。
  124. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄自身がモットーとしておるところは、安全、正確、迅速と、こういうことであろうと思うのでありますが、最近は、まあ安全のほうも当てにならなくなってきた。それから過密、ダイヤで行き詰まっておるために、正確のほうも怪しくなってきた、それから安全、正確が期せられないから、迅速ということもはかばかしくいかなくなってきた、こういう現状にあると思うのであります。三十九年度総額は千七百五十四億に予算面で圧縮をされたということでありますけれども、保安対策削減のおそれはないのかどうか、投資不足がどういう影響を及ぼすのか、三十九年度予算から見た国鉄の運営の問題点等があれば、国鉄総裁から御答弁願いたいと思うのです。
  125. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 三十九年度予算につきましては、ただいまお示しのとおり、千七百億の改良費を見ていただきましたが、そのほかに、東海道新幹線につきまして、約六百五十億ほどいただいております。おかげさまで、東海道新幹線は、現在のところ、十月一日に開業できる予定で、工事がたいへん順調に進捗いたしております。  一般の千七百億の中の使い方でございますが、まず、何と申しましても、保安対策に最も大きな重点を置くことは当然でございまして、これに約二百億程度のものを使います。これは、いままでの過去の例から申しますと、五倍ないし六倍の巨額な金にのぼりまして、私どもといたしましては、踏み切り、その他の保安対策に最重点を置いて工事をしてまいりたいというふうに思います。その他の一般的な改良工事につきましては、先ほども申し上げましたとおり、相当大幅な削減をいたされましたために、主として電化あるいは複線化等につきましては、若干の遅延を免れないというふうに考えておりますが、三十九年度じゅうに完成予定のものにつきましては、極力工期をおくらせないようにいたしたい。しかし、四十年度以降に完成される予定のものにつきましては、若干の工事の遅延を免れないというふうに考えております。先ほど大蔵大臣から四百億の債務負担行為のお話がございまして、たいへん私ども喜んでおる次第でございますが、工事の進捗状況によりまして、ぜひこの四百億につきましては、この千七百億のほかに、これを年度内に予算化していただきたいという非常な熱望を持っておる次第でございます。
  126. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 熱望を持っておっても、なかなか予算のほうでは、ないということがはっきりしてきた。電化も複線化も進まないということになると、今日の過密ダイヤあるいは通勤地獄といったような現象は、当分解消されないんじゃないか、覚悟していかなくちゃならぬじゃないかということが考えられるのであります。これらの通勤地獄に対する対策としては、せいぜい時差通勤を呼びかける以外に手はないかどうか。  それから先般、湯河原——熱海間で脱線事故がありましたが、あの事故なんかは、貨物列車が脱線をして反対側の線路にころげた、たまたま反対側に電車なり列車が入ってこなかったからよかったようなものの、間が悪くて、あそこへ列車が飛び込んできたということになると、やはり鶴見事故の二の舞いになるところだったんじゃないかと思う。考えてみれば、非常におそろしいことなのでありますが、あの種の事故の予防対策というものは一体ないものかどうか、その点について、国鉄からお答えをいただきたいと思います。
  127. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 通勤輸送の緩和につきましては、非常に私ども頭を悩ましておる次第でございます。結局、根本的には、やはり線路をふやさなければどうにもならないのは明らかな事実でございまして、現在、御承知のように、中央線におきましては、中野と三鷹の間を複々線の高架にするべく工事を進めております。これが金額におきまして約二百億の巨大な金がかかるわけでございますが、何としてもこれはやらなければ、現在、中央線では二分間隔に十両編成の電車を走らせておりまして、ほとんど電車がつながって走っておるような現状でございます。したがいまして、これ以上電車を入れることは絶対に不可能でございますので、先ほど先生のおっしゃったとおり、時差通勤というこそくな方法によりまして、なるべくラッシュの山を切りくずしまして、お客さんの殺到することによって起こる不測な事故を防止する努力をしておるわけでございます。  過般の熱海事故につきましては、現在、原因その他を調査中でございますが、お説のとおり、あれは不幸にして上り列車が下り線側に転覆いたしまして、出会いがしらに列車が参りますれば、やはり鶴見事故に近いような結果が起こらなかったとは言えないと思います。幸いにして、乗務員その他の非常に機敏な措置によりまして、対向列車をすぐとめることができましたので、そういった災害が起こりませんでしたが、今後やはり、ああいう突発的な事故につきましては、何と申しましても、その場の機転によりまして、向こうから来る列車をとめる、それからあとから来る列車をとめるという方法以外には、さしあたりございませんが、やはり同じ線路の上を旅客列車と貨物列車と走らすということ自身に実は非常に問題があるようでございまして、東京付近の私鉄はほとんど電車輸送ばかりでございまして、同じ質の輸送をしておるわけでありますが、速度の違う、またいろいろな性質の違う列車が相当高速度で同じ線を走るということには、相当問題があると思います。したがいまして、根本的な解決策といたしましては、やはり高速列車につきましては、客車と貨車と分けるといったことが根本的な対策になるというふうに考えております。
  128. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、結論として、この間の熱海——湯河原間の事故等は、まかり間違えば鶴見事故の二の舞いになるところだったということなのでありますけれども、あの種の事故を予防するというようなきめ手は、今日ではないということになってしまうわけでありますね。それから通勤地獄を解消するにいたしましても、輸送力の増強というものが現在のように行き詰まっておれば、時差通勤といったこそくな方法以外に方法はないということになってくるわけであります。そうすると、ないないづくしになってしまう。昔、六無齋という人が歌をつくったことがありますけれども、国鉄もどうも「予算なく、対策もなく知恵もなし、安全・正確・迅速もなし——国鉄六無齋」ということになるのでありますけれども、こういう状態では、非常にわれわれは不安だと思うのであります。四十年度からということを言っておりますけれども、それじゃことしはどうなるかという点についての、安心できるものは何もないということですね。  それじゃ一体どうやって、事故を防止するかということになってくるのでありますが、この間の衆議院の予算委員会では、久保三郎議員の笠岡に対して、石田総裁は、事故の原因は過密ダイヤにある、軽わざ芸をやっているのだ、世界各国の専門家が見て、驚くよりもむしろあきれておる、といったようなことを指摘をされ、小さな事故大きな事故に発展する、こういう要因が潜在をしている、またこれからも起こりますよ、と言っている。またこれからも起こりますよということは、利用者にとってみれば、非常にこれはおそろしい話なんであります。こういう現状を一体どういうふうに見たらよろしいでありましょうか。これは総理大臣に、重大な問題でありますので、とにかく四十年度以降のことはさておくといたしましても、当面の問題についてどうしたらよろしいか、いかにすべきか、という問題について、お答えを願いたいと思うのです。
  129. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は、現在の設備で注意深く事故の起こらないようにつとめることが第一でございます。そうしてまた、この原因が都市集中ということからくることでございますので、この人口の都市集中ということをできるだけ防止すると同時に、これを分散する方向で考えていかなければならぬと思うのであります。そういう点につきまして、先ほど来申し上げておりますような交通基本問題調査会、あるいは全国の国土開発の調査会等を設けまして、鋭意検討、対策を練っておる次第であります。
  130. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 総理の御答弁によりますと、さしあたっては注意深く職員に注意してもらうほかない、それから乗るほうも気をつけてくれということになっちゃうだろうと思うのでありますが、それ以外手はない。そうすると、「注意深く」という話がございましたが、しからば、国鉄のこの直接運転に携わっておるところの労働者の労働条件が問題に触れてみたいと思うのであります。  国鉄の、現業の労働者の労働時間は一体週何時間くらいになるのか、それから一般の労働者の平均労働時間はどのくらいになるのか、これは労働大臣にお伺いしたいと思うのであります。まず、国鉄の労働者の労働時間の問題から、それからできれば各産業別に分けまして、一般の労働者の労働時間等について比較をしてお示しをいただきたいと思うのであります。
  131. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国鉄の職員の労働時間につきましては、職種によって異なっておるのでございますが、おおむね一週四十八時間ないしそれ以下を標準といたしておるのでございまして、この点については、労働省といたしましては、特に問題があるとは考えていないのであります。  そこで、他産業との比較でございまするが、ただいま私ここに手元に持っております資料は、各業種別はございませんので、全産業ということになっておりますが、一応申し上げてみます。  総労働時間、いずれも昭和三十七年の平均数でございまするが、国鉄は百九十四・七時間、これに対しまして、規模五百人以上の全産業の総労働時間の平均は百九十三・二時間となっております。次に、所定内労働時間を比較いたしますると、国鉄は百八十八・九時間、全産業が、同じ、五百人以上でありますが、百七十二・二時間、所定外労働時間といたしましては、国鉄が五・八時間、全産業は二十一・〇時間、これが労働省の毎月勤労統計に現われておる数字でございます。
  132. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最近私が調べましたところによると、国鉄の職員の志願者が非常に減ってきたということを聞いております。減ってきたということは、労働条件があまりよくない。給与も低い。その割りに責任が重い。総合してみるというと引き合わない。だから志願者が減ってきたのじゃないかと、こういう気がするのでありますけれども、要員需給の関係は一体どうでありましょうか。国鉄にお答え願いたいと思います。
  133. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 新しく私どもに職員を採用する場合、いまお説のとおり、現在大都市あるいは中都市におきましては、あまり志望者の数もございませんし、また、参りました者も、実は必ずしも成績が、成績と申しますか、身体あるいは学校の成績等を全部引っくるめまして、必ずしも昔ほどいい若い者が集まるというふうには思っておりません。やむを得ずいま考えておりますことは、中学卒業でも私のほうに採用いたしまして、私のほうで、それを直接一種の高等学校教育をしながら職業教育をするというような、子飼いから育成するということをやらなければならないほど、実は都会地域においては素質が低下いたしております。東北、九州等におきましては、まだ若干それほどではございませんが、東京、大阪、名古屋等におきましては、実は相当にいい職員の採用難におちいっておるということは事実でございます。
  134. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 聞くところによりますと、東京鉄道管理局の職員募集のポスターが青森県に張ってあったというようなことを聞くのであります。つまり東京周辺では、さがしても人が見つからないということになってしまうのであります。それで、はるばる東北方面へ行って人を募集するというようなことなんでありますけれども、もしも労働条件が悪くなくて、給与も一般に比較してよろしいということになってくれば、多少責任が重い仕事であっても、私は志願者は激減しないと思うのでありますけれども、この点、やはりつり合いがとれないから志願者がなくなってくるのだと思います。志願者がなくなってくれば、素質のある人間、適性を備えた人間をも今後は求めがたくなってくるのじゃないかと思うのでありますけれども、そうなった場合に、一体、事故の絶滅を期して、一生懸命教育をしても、指導をしても、訓練をしても、人間の面で非常な危険が出てくるのじゃないかと思うのでありますが、それらの配慮は一体どうなんでありましょうか。運輸大臣にお伺いしたいと思います。
  135. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 現状におきまして、若年労働者が不足しておることは一般現象でございます。国鉄に限ってそうということでは私はないと思います。ゆえに、われわれといたしましては、一般国民の生活をよくするようにいたしまして、そうして国鉄にもそういう人が集まるように努力するという以外にはないと考えております。
  136. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 人不足は一般現象だから、しようがないというふうに聞き取れるわけであります。しかし、志願者がなくなってくる、それから、素質を備えた人間、適性を備えた人間がなくなってくるということになると、非常にむずかしくなってくる。国鉄の仕事にとっては非常に重大な問題だろうと思います。ついこの間、大阪周辺で、ネズミが何かをかじったために、大量に列車がおくれたという事故がありました。そういうふうに、機械設備が進んでくればくるほど、ちょっとしたことで大きく支障を来たすということになってくるのであります。だから、そういうことを考えてみると、要員を確保するという配慮というものは、特にこういう重要な業種にあっては、必要欠くべからざることじゃないかと思うのでありますが、いまの運輸大臣のお答えですというと、特にそんなに心配することはないというふうに聞き取れるのですけれども、それでいいですか。
  137. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私の言葉が足らなかったと思いますが、何とかしてよい職員を得るべく、国鉄におきましては、あらゆる面で努力をいたしておるつもりでございますが、しかし、大勢といたしまして、日本の経済が急に発達したために、労働力の不足しておるということもまた現実の事実でございますから、私ども、それを国鉄に引っぱるように、国鉄当局にあらゆる努力をするよう指示いたしておる次第でございます。
  138. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先般の石田総裁の衆議院運輸委員会におけるまあ率直な答弁としては、現状では、事故はまた起こるかもしれない。こういうことなんですが、これは、私は別にこういう発言があっても悪いとは思わない。なぜかというと、監査委員会なり諮問委員会では、正直に、できないことはできないと言うべきであるということを指摘しておるのであります。そうすると、その諮問委員会なり監査委員会の報告どおりに、この予算では、できませんというふうに考えたならば、そのように答えるのが私は良心的なあり方だと思うのでありますけれども、こういう現状に対しまして、一体、運輸大臣としてはどうしたらよろしいか、どのようにあるべきかというふうに考えておられるかをお答えを願いたいと思います。諮問委員会並びに監査委員会の答申なり報告に対して、運輸大臣としてはどう考えておられるか。
  139. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 諮員委員会並びに特別監査委員会の監査に対しましては、私どもは敬意を表しまして、なるべくそれに沿うように努力すべく、国鉄当局にも、運輸省の事務当局にも指示いたしております。
  140. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、運輸大臣が諮問委員会なり監査委員会の答申は尊重をするということでありますから、尊重をした上に立って、今後の指導あるいは国鉄の経営というものがなされるものというふうに解釈をしておきます。  それから、先ほど総理大臣から、都市の集中を防止しなければならない。それから、過密人口を分散しなければならないという意味の御答弁がありました。過密ダイヤというのは、結局求めて過密ダイヤを作っているわけじゃなく、人口が過密だから過密ダイヤになってしまったんだろうと思います。そうすると、過密ダイヤのもとをなすところの過密人口を一体これからどうしていくのかという問題について、その御意見を承りたいと思うのであります。  つまりこれからの国づくりで、東京なりあるいは大阪、この近辺にだけ人口が集中をして、あらゆる問題が惹起をしているという現状をどう打開していったらよろしいかということ、それについての構想があるかどうかということをあらためて総理大臣にお伺いしたいと思います。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) すでに御承知と思いますが、政府関係のいわゆる研究所等につきましては疎開を考えております。また、都市の住宅もなるべく高層住宅にして、そのための租税の減免措置を講ずる。また、従来からやっております工場あるいは学校の東京への新設その他を排除していく。いろいろな方向で考えていかなければならぬ。広くいえば、新産業都市というものを設けまして、都市への集中を防止するという施策も必要でございます。いろいろな点から着々実行していかなければならぬと思っております。
  142. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは、去年の予算委員会の議事録にあるのでありますが、昨年は、篠田国務大臣から、土地の値上がりの問題についての質問に対する答弁がございました。その答弁によりますと、土地の値段がどんどん上がっていく、したがって、都会における土地というものは非常に少ないのであるから、東京なんかの場合には、都市計画というものの不備と相まって、非常に極端に土地が足りなくなり、値が上がってきた、こういうことを言っております。これは去年の話であります。首都圏の問題については、二つの面から考えていかなければならない。現在稠密であるところの東京あるいは大阪における都市の再開発、現在の姿をそのまま見ながらどうしてやるということが一番合理的であるかということが問題の一つと、それからもう一つ、思い切って、いわゆる首都の移転ということを考えたらどうか、国土総合開発特別委員長をしておったときに話題になったのだが、東京の人には悪いかもしれないけれども、このままじゃ中風になったようなもので、身動きがつかない。だから、東京から首都をどこかに移して、経済都市、政治都市、教育都市というものを分けたほうがいいのじゃないか、こういうことを述べておられます。いまの東京はまさにどうにもならない状態になってきておるのでありますけれども、このような思い切った施策というものが考えられていい時期ではないかと思うのでありますが、総理大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  143. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 直ちにきめ手の施策ということはなかなかむずかしい問題でございます。したがいまして、さしむき疎開し得るものから始めようというのが、いまの学術都市の新設都市であるわけであります。また、こういう状態でありましても、やはり東京に三十万の人口がふえるということは、やっぱりその原因は、教育学校その他の集中することもあるのであります。われわれは、こういう問題について今後検討を加えていかなければいかんと思っております。
  144. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 去年自治大臣がこういったようなことを言っておりますが、ことしの自治大臣は、これは建設大臣の分野かもしれませんけれども、篠田自治大臣が言われたような構想についてどういうふうに考えておられますか。そういう方針を踏襲するということになれば、これはいつまでも検討している段階ではない、もう焦眉の急であるというふうに思いますので、自治大臣からも見解をお伺いしたいと思います、ただいまの問題について。
  145. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 篠田前大臣の首都建設という問題は、問題が大き過ぎますので、私からそういう点はお答えできないと思いますし、もちろん、いまそういうことは考えておりません。ただ、多元的な国家、頭でっかちじゃなくて、産業の分散した国家という面では、御承知のように、新産都市構想というものをわれわれは支持して、すでに指定も進んでおるわけでありまして、こういった面で、集中化を若干でも地方分散できるかと思っております。
  146. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の本委員会では、鈴木委員から住宅問題についての質問がございました。その際お答えとしては、たとえば、三十八年度で九四%着工しておるけれども、竣工は二〇%である、住宅計画そのものは事実上四分の一ぐらいしかはかどっていないと、こういう意味のお答えがございましたけれども、住宅対策が思うようにはかどっていない原因は一体那辺にあるかという点について、建設大臣からお答えを願いたいと思います。
  147. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、建設の仕事は、ひとり住宅だけでございませんで、すべて住宅に伴います敷地、道路その他の事業にいたしましても、土地の問題は一番難渋であります。したがいまして、住宅の問題にいたしましても、公営住宅にいたしましても、むやみに高い所をどこでも買ってやるというわけにもまいりません。そういう関係で、いよいよ着手いたしますれば、おそかれ早かれ、そうおくれるものではないのでございます。着手するまでに、この程度まで踏み切って敷地に金を出すか出さぬか、この辺でよかろうかということで、とつおいつして、いつでも、毎年の例で、着工が実はおくれております。今年も、昨日もお話申し上げましたように、すでに着工はいたしておりますので、多少おくれることははなはだ遺憾でございますけれども、十分督励いたしまして、なるべく早く、非常に住居希望が多いのでございますから、これらの期待にこたえるようにいたしたいと思います。問題は、だんだんお話がありますように、宅地の問題が一番やっぱり問題でございます。
  148. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 着工をしましても、住宅ばかりは、竣工しなければ入れないわけです。だから、着工が何%であっても、これはあまり気休めにならないわけでありまして、問題は、竣工がおくれておることはなぜかということでありますが、土地の異常な値上がりということが指摘をされております。ところが、この土地の値上がりに対する適切な抑制策というものが今日までなかったような気がするのであります。なぜかというと、依然として土地だけは諸物価の値上がりの中でも群を抜いております。まさに異常な値上がりと言わなければならぬと思います。この異常な値上がりに対して、ただこれは、政治の力が及ばないために拱手傍観をしているというのが現状ではないかと思います。土地価格を抑制するということは、今日緊急の問題であるというふうに考えておりますが、土地価格抑制のための対策というものが具体的におありでしたならば、お示しをいただきたいと思います。
  149. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、いまの憲法のもとにおきまして、そのものずばりで法律で律するということがはたしていいか悪いか、そういうことは可能であるかどうか、検討はいたしておりますけれども、なかなかそこまで行きにくいのではないかという実は気がいたしております。  そこで、まず問題は、新たな宅地の開発だろうと思うのでありますけれども、利用できる土地をなるべく広くするということだろうと思うのであります。そうするためには、交通、つまりいままで山間地帯だったところに道路をなるべく深く入れて、そして土地の利用の半径を広げていくということだろうと思うので、これまでですと、従来あった道路を、その道路を広げるというようなことを、その道路を改修するというようなことでやっておりましたのを、最近の傾向といたしまして、全く新しいところに新しい道路を作るということにして、その方面の土地の利用度を高める。一例をあげますと、東京——高崎間というような道路をいま測量し、計画いたしておりますが、この東京——高崎間にいたしましても、従来の全然道路のなかったところに道路を作って、そしてその方面の土地の利用度を高めようということにいたしておるのでございまして、いま東京を中心にして考えております道路は、いずれも従来国道何号線というような道路を改修するということよりも、新しい道路を開発し、その新しい道路によって東京の周辺の利用度を高めていくということに意を用いているわけであります。
  150. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いろんな本にいろんなことが書いてありますけれども、それによって見ると、たとえば、都営住宅の申し込み回数が三十回、四十回という人はざらにいる。中には六十何回という人もいる。競争率は平均して二四・三倍だということが出ております。それから、これは住宅の問題と密接不可分でありますけれども、土地の価格にいたしましても数万円というのが現状でありまして、だんだんと都心には住宅、土地を求めがたくなったために、郊外へ郊外へと伸びていくために、それらの人たちが今度は鉄道を利用する、私鉄、国鉄を利用する。したがって私鉄、国鉄ともに輸送力が追いつかなくなって、さっきの話に戻りますけれども、過密ダイヤを組まざるを得なくなってしまうのであります。道路の麻痺、交通の麻痺、住宅難といったようなことは、土地政策が——土地価格を抑制するという策が立たない限りはどうにも解決のめどがつかないんじゃないかという気がするのであります。そうすると、これはゆっくりしていられる問題ではなくて、早急に土地価格を抑制できるための策を、ここに打ち出していかなければならないと思います。残念なことにはどこそこに何々を作る、団地をつくるとか、新産業都市を建設するという話が伝わっただけで、そこの土地価格が一ぺんに何倍かにはね上がってしまうというのが現状だそうであります。政府が発表しただけで土地価格が上がるなどというようなことは、政治のまずさを露呈しておるものだというふうに考えられます。これからの問題でありますが、それらの点について一体どうしていったらよろしいかという点について、建設大臣にお伺いしたいと思います。
  151. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話でございますが、御承知のように、たとえば東京都について考えてみますると、最近の五カ年間の統計によりましても、年々三十万人以上の人口増になっております。東京へ入っていらっしゃった人が非常に多い。東京で勉強をして、そのまま東京にとどまる人が非常に多いというようなことでございますので、一体東京の過密の状態がどこまで続いていくのか。やはりこれは私は国家経済の一つの現象として、こういうふうに日本が大都市を中心にしてそこに産業を求める、そこに産業が発展するというような新しい現象が起こってきておりまして、それを中心に人口の移動が起こっておるんだというふうにも見るのでございます。したがって、いまお話でございますが、ただ単に終戦直後のように、足りないものを——そこに従来からおられた人が、家がないから家を建ててあげるんだというようなことじゃないんであって、新しい日本のここに社会事情の変化が起こってきておる、それをどういうふうに充足していくかという問題であって、したがってこれは世界的に実はそういうふうな問題があり得るのであります。先年、私ソビエトへ参りましたときに、モスコーにおきましても、モスコーの人口を七百万で押えるということはモスコー市長の役目だ、どうして七百万にモスコーの人口を押えるか、これを押え切るか切らぬかということがモスコーの市長の政治的使命だというような話をしておりました。私も東京の人口をどの程度で食いとめるかということがやはり問題であって、それを入らなくするためにはどういうふうにしたらいいかというようなことでもなければ、今のまま道路を広げる、住宅ができる、どこまで人口がふえるかというような問題になってくるんじゃないかと思うのです。したがって、これを日本の国の構造、産業の分布等をどうするかという、あまりなまいきなことを申して恐縮ですが、将来の日本のビジョンをどういうふうに持っていくかというようなことを考えつつ、道路の建設にいたしましても、住宅政策にいたしましても、すべてのものを考えていかなきゃならぬのじゃなかろうかと思うのでございまして、ただ当面を糊塗する、処理するということだけでやってまいりますと、そこにはさらに一そう将来の悪い原因を生み出すようなことにもなるんじゃないかというような事態も考えられるような気がするのでございます。したがって、だからほうっておくわけじゃございませんけれども、及ばずながら、たとえば東京の周囲に百万都市をいま三つ想定いたしております。この三つの百万都市をおくればせながら順次整備して、そこに理想とは申しませんけれども、ある程度整った産業都市をつくっていこう。大阪でもそういうものを大阪の近畿圏整備委員会において考えていこう。そうして順次何か基礎のある、計画のあるものをやっていきたいというふうに思うのでございますが、言うは簡単ですが、なかなかしかし実行はむずかしい。なぜむずかしいか。これはあまり脱線することはどうかと思いますけれども、皆さんでそうお考えいただかなければ、東京にしても、政府だけ考えたってどうにもなるものじゃない。東京都の幹部もしくは都民の皆さん、この指導的立場に立っておられる皆さんが官民一体となって、そういう認識のもとに御協力いただく、お考えいただくのでなければ、政府だけいくら——首都圏整備委員長として私らがいくらあくせくしてみてもどうにもならないということじゃないかと思うのでございまして、これらについてひとつ各方面認識を得るということも相当に重大じゃないかと思っておるわけでございますが、まあお答えになったかならぬかしりませんが、ただ苦慮しておるばかりでございます。
  152. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 実力者といわれる建設大臣が苦慮しているのじゃ、これは国民にとってもたいへんに心もとないことになってくるわけです。まあ、しかし日本だけじゃないのだ。モスコーでも人口がふえ過ぎて困っているから、これを抑制しようとしているのだというお話がございました。しかし、モスコーの話はモスコー市で何とかなるという、その社会主義国としての一つの解決点があるのじゃないかという気がするのでありますけれども、東京の場合は天井知らずなんですから、これはまあ苦慮されておるだけに解決のきめ手も早く打ち出さなければ私はいかぬと思うのであります。今では土地が投機の対象になっております。この土地の異常な値上がりによって一体だれがもうかっておる、だれが困っておるかという問題がありますけれども、土地の値上がりでもうかっているのは土地ブローカーと一部の地主だけであって、大都市の国民というものは大いに迷惑をしておると思うのであります。特に鉄道にいたしましても、東海道の新幹線にいたしましても、あるいは名神道路あるいは東名道路といったような道路の建設にいたしましても、これらの建設計画が用地費に非常に食われてしまっておる。建設省の予算を見ましても、用地費の予算は公営住宅あるいは融資住宅の場合で、用地費が一五・六%ふえておるわけです。一五・六%もふえておるということは、もうすでに予算の中で土地の値上がりというものを計算に入れて——あるいは計算に入れざるを得ないから、そういうふうになっているのじゃないかと思うのでありますけれども、こういうふうな異常な土地の値上がり、しかも需要供給の関係でやむを得ず少しぐらい上がったというのじゃなくて、完全にいま投機の対象となっておるという現状は、私はゆるがせにできないと思うのであります。で、昨年の十二月十七日の予算委員会で稲葉委員から物価問題で質問がありまして、まあ時間がありませんから簡単に申し上げますが、宮澤企画庁長官は、六%とか七%とかいう消費者物価の値上がりが毎年行なわれるということは、私は疑いもなく経済の健全な発展と国民生活にとって害があると思います。こういうふうに企画庁長官が述べておられます。六%とか七%という値上がりが、国民生活にとって疑いもなく害があるということを認めておられる以上は、その六%、七%の値上がりをはるかに上回り、かつまた、それからの物価の値上がりの背景になっている土地価格の値上がりについては、もっともっと、これは深刻に考えるべきではないかと思うし、政治がよい方向に向いているのじゃない、この面では完全にこれは失敗だというふうに、私は認めざるを得ないと思うのでありますが、総理大臣は、この異常な土地の値上がりについて、どのように考えておられるのか。  それから、宮澤企画庁長官が答弁されたように、六%とか七%とかいう消費者物価の値上がりが毎年行なわれるということは、疑いもなく、経済の健全な発展と国民生活にとって害があるというふうなお答えについて、総理は、どのように考えておられるのか、最後にお伺いをしたいと思います。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 土地の値上がりの理由につきましては、いろいろあると思いますが、最近における、いわゆる道路あるいは住宅等の急速な整備拡充によりまして、土地収用その他が、完全に、また十分に行なわれなかったという点が相当原因であろうと思います。もちろん、経済の成長によりまする影響も忘れてはなりません。したがいまして、これは交通網を拡大すると同時に、また集団的に宅地の造成をするということが、その対策であることは当然のことでございます。  なお、消費者物価の値上がりが、六、七%も、毎年続くということは、もちろん不健全なことでございます。政府は、あらゆる対策を講じまして、一両年のうちに適正な上昇に戻そうと、いま努力いたしておるのであります。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。先ほど、瀬谷委員が、国鉄の将来の建設について質問いたしましたのに対して、昭和四十年度から、新しい長期計画を立ってやっていくというお話がありました。そのときに、資金の手当につきまして、国のほうでは、国家的見地に立って十分めんどうをみると、こういう話があったということでございますが、三十九年度は、公共料金の値上がりストップということになっていますが、しかし、四十年度になった場合に、その国家的見地に立った資金手当については、国鉄の運賃の値上げの問題が考慮されているのかどうか。三十九年度は一年間ストップでございますが、四十年度になったら、国鉄の運賃値上げについては考慮されるのか、されないのか、この点はっきり承っておきたいのです、総理に。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四十年から開始せられる、いわゆる計画の内容を見ないと、資金対策をどうするかということは、ただいまのところ申し上げられません。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、運賃です。運賃について言っているわけなんです。
  157. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それに対する費用等が年次計画に出ませんと、資金をどうやって調達するかということは、いま言えないと、こう言っておるのです。
  158. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ただいまのお話でありますけれども、四十年度で四千百五十三億というものが、これは五カ年計画でも必要となるということでありますから、四十年度以降については、これは非常に膨大な金額を要することになるのじゃないかと思うのでありますが、それについて、一体、運賃の値上げをするのかしないのか、しないで済ませることができるのか、あるいはまた、運賃を値上げしないという方針なのかという点は、これは、国民にとっても、非常に関心のあることであると思いますから、明らかにしていただきたいと思います。
  159. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四十年度を初年度とする計画ができ上がりまして、そうしてその計画を資金面で、どういうふうな方法で資金を集めるということは、計画ができてからの問題だと思います。したがいまして計画ができたときに、それが資金の調達につきましては一般の借り入れ金でやるか、あるいは運賃を上げなければならぬかということは、そこから出てくることであって、いまから運賃を云々すべきじゃないと思います。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に最後に……。それでは公共料金の値上げ一年間ストップということは、これはもう一年間であって、四十年の場合はいまの資金の都合によっては運賃の値上げもあり得ると、こういうように了承してよろしゅうございますか。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それはやっぱりそのときの状況によりまして、鉄道運賃はいかなる計画があっても一切上げないというふうなことは、いうべき筋合いのものじゃないと思います。やはり国民の納得のいくように、そうしてそれが一番国全体の利益になるような施策をとることが必要であると思います。
  162. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。    ————・————
  163. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤五郎君。須藤君に申し上げますが、外務大臣はよんどころない公務のため、ちょっとおくれるということでございますから……。
  164. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の質問は、最初外務大臣に対する質問になっておりますので、それじゃやむを得ませんから、外務大臣のいらっしゃるまで、お待ちするということにしたらどうですか。総理大臣が外務大臣にかわってお答えくださるなら、それでもけっこうですよ。
  165. 太田正孝

    委員長太田正孝君) お答えするとのことでございますから、須藤君質問を始めてください。
  166. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、共産党を代表しまして数点質問いたしたいと思います。  中国問題は、フランスが中華人民共和国を中国の正統政府として承認したことをきっかけにして、国際的重大問題となっております。さきの衆議院予算委員会で、また昨日、衆議院外務委員会で、穗積七郎君の質問に答えて、大平外相は次のように答えております。すなわち、国連において中華人民共和国が正当なメンバーとして祝福される事態になれば、日本として国交の正常化を考えなければならないのは当然のことである、 こういつております。もし、これが日本政府として公式な態度、考え方であるならば、政府は国連において中華人民共和国の国連代表権問題について、重要事項方式など、従来のようにアメリカのお先棒をかついで妨害しないということを、ここで言明できるかどうかを伺っておきます。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大平外務大臣が昨日答えたことにつきましては、私も同感であるので、私から衆議院の予算委員会でもそういう趣旨のことは述べております。しこうして、それはすなわち、国連において中共が加入することを認められるならば、われわれは国連中心に外交をやっているのでございまするから、中共との政治的関係を持つということは、これは当然のことだと思います。しかし、それだからといって、重要問題、これはアメリカのお先棒なんといっておられますが——、われわれはそう考えておる。日本自身がアメリカに追随しておるというわけではございません。したがって、これはアジアの平和並びに繁栄、また世界の平和に重要な関係のある問題だから、重要問題として取り扱うように日本は申し述べておるのであります。それから中共が入るということと、重要問題として国連で取り扱うということは、別個の問題であると御了承願います。
  168. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、この次の国連総会においても従来どおりの態度をとるということであり、中華民国を、いわゆる台湾を、国連における中国代表という考え方を変えないということですか。
  169. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、ただいまのところ、フランスのドゴール大統領がああいうことをやられましても、世界の情勢を十分検討していくつもりでおります。したがいまして、この秋に行なわれる国連において、日本の態度は、その後の情勢等を見て慎重に考慮したいと思っております。
  170. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、日本は積極的に中国の国連代表を認めるような方向に努力はしない、やはりアメリカのしり馬に乗って、代表権問題を中国が代表にならないような方向にアメリカと協力するということなんですか。どうなんですか。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世界の情勢を見ながら、日本独自の行動をとってまいります。
  172. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、いつどういう条件のもとに中国を承認しようというのですか。
  173. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは、中共が好戦国でなしに世界の平和に積極的に貢献する、そうして、各国の大多数がそれを認める、そうして、国連に加入を認めるというような場合におきましては、日本もやぶさかでないということを言っておるのであります。
  174. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総理は衆議院の予算委員会で、中国は、好戦国と認めないという意味の発言をされたと思うのですが、いまの発言を聞いていると、やはりあれでは中国を好戦国と認めているような発言になると思うのですが、その点明らかにしてもらいたい。
  175. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本が中共を好戦国と認めておるとは言っておりません。世界の人がこういう状態であるということを認めた場合においてと、こういうので、だから、国連の中共を好戦国と見るという決議が決議のままで残っておることは、御承知のとおりです。
  176. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは中国を好戦国と認めない。しかし、国連にそういう決議が残っているならば、あなたが中国を好戦国と認めないならば、進んで積極的な態度をとるのが当然ではないでしょうか。なぜそういう保守的な態度をとらなきやならないのですか。
  177. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 保守的でも何でもございません。われわれは、ただいまのところ、中国というものは、中華民国が中国を代表しておるものとして、これと友好関係を結んでおるのでございます。したがいまして、ただいまのところわれわれは、中国とは中華民国なりという、こういう考え方でいままで来ておるのであります。
  178. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、もう一度確めておきますが、中華民国台湾を従来どおり国連における中国代表という考え方、これはあくまでも変えないということなんですか。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまは、それでいっております。また、今後もそれでいこうと思っております。しかし、世界の情勢をわれわれは常に見ていかなきゃなりません。
  180. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間がわずか十分しかありませんので、あまり質問を続けることができないのは、はなはだ残念に思いますから、これでその問題はやめますが、次に、一昨日フランスと台湾との国交断絶につきまして、台湾政府は声明々発し、中華民国政府は大陸を回復し、中国国民を共産主義独裁から解放するという基本策政と、二つの中国の概念への断固たる反対を再確認したいと望んでいる、この中華民国の国策はいかなる情勢のもとにあろうと毛不変である、こう述べているのです。池田総理は、中国領土内である台湾にいまなお残存している蒋介石一派のこのような基本政策を支持することになるではありませんか、いまのような議論でいくならば。どうですか、明瞭に答えてください。
  181. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 台湾政府のおっしゃることは、台湾政府の自由でございます。私はそれを批判いたしません。われわれは、蒋介石政権を中華民国の代表として友好関係を結んでおりますし、今後とも結んでいくつもりでございます。
  182. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなた、外務省が非公式ながら見解を発表したことを御存じでしょう。一昨日非公式見解を発表して、国府とは友好的な外交関係を維持すると、こう言っているのです。およそアメリカ以外、世界にこんな非常識な政府見解を出したところはないと思います。これでは中華人民共和国と七億の人民を敵視するものであり、そうして、人民中国とは政経分離でいくというあつかましい方針をとっております。だからこそ、日中貿易でも日本人民、業界の要望にもかかわらず、今日の状況のもとで貿易は飛躍的に増大しないではありませんか。池田総理は口を開けば一億二千万ドルと幾何級数的に発展している、こう言っておりますが、これは、アメリカや政府の妨害にもかかわらず、人民と業者の血の出るような努力と中国側の好意でできたもので、現に関係者は右翼の脅迫にさえあっているではありませんか。これは池田総理の手柄でも何でもありません。中国側は、日本政府がその気にさえなれば直ちに五億ドルから十億ドルに貿易額を拡大することができる、支払能力は十分あるし、一度毛迷惑をかけたことはない、こう言っております。しかるに、政府は政治的に拘束し制限しているではありませんか。政府は、貿易に政治的拘束を加えないと、こうはっきり言えますか。どうですか。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の外交方針は、日本自身できめることでございます。あなたの批判は批判として受け取りますが、われわれがやはり蒋介石政権とは今後も友好関係を持続していくということは、われわれの従来からの方針で変える気持はございません。また、中共との貿易につきましても、たびたび申し上げておりまするごとく、政経分離の建前のもとの中共との貿易を増進することにやぶさかではございません。しかし、これが十分に伸びないということは、何も政治的関係があるわけではないのでございます。キャッシュでいくというならば、国府の関係以外に幾らでもお売りいたします。どうぞ買ってもらいたいものだと思います。
  184. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国府は、中国大陸反攻を忘れない、進攻するのだ、こういう見解を一昨日出したわけです。それに対して外務省が、台湾政府を支持する、こういう見解を出している。すなわち、台湾政府の中国進攻を日本政府が支持するという、こういう結果になるのじゃないですか。たいへんなことじゃないですか。外務大臣どうですか。
  185. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国民政府も主権を持つ政府でございますから、それ相当の外交政策をお持ちになることは自由だろうと思うのでございます。私どもが申し上げているのは、その国・民政府日本は友好的な関係を持続したい、そういうことを申し上げているだけです。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何を言っているかわからぬですよ。答弁にならぬですよ、それでは。台湾政府は中国進攻を叫んでいるのですよ。その声明の出た直後、台湾政府を支持すると言うことは、一体どういうことを意味するのですか。これを読んだ人はみな、日本政府は台湾の大陸進攻を支持するのだ、こういうふうに理解するのですよ。そういうことがあってはならないじゃないですか。日本政府ははっきりそういうことを言えるのですか、そこの点を私は追及している。
  187. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国民政府の外交政策は、国民政府がお立てになるわけでございます。私の申し上げているのは、国民政府とわが国との外交関係は友好的に進めますということを申し上げているわけで、きわめて明瞭だと思います。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は時間がないので追及したいが追及できないわけですが、しかし、台湾政府がこういう不穏当な声明を出したときにその台湾政府を支持するというようなばかげた声明を出すものではない。これは世界の疑惑を招くもとですよ。これは撤回すべきものだ、出すべきものじゃない、それを私は言っている。  それでは、時間がありませんから次に参りましょう。以下四点にわたって私は質問しますから、四点にわたって各関係大臣から答弁していただきたいと思います。  日中貿易についてココムの制限をやめるということをはっきり言えるかどうか。これこそアメリカの圧迫のもと、政治的拘束の最たるものであります。アメリカは相互防衛援助統制法でつくられているMDACの半次年報告でも、このココム禁輸品目を輸出している国の中に英、仏、独、伊の名をあげておりますが、日本の名はあげておりません。つまり、日本はヨーロッパ諸国とは比べものにならないほどココムに忠誠を誓っている、こういうことになるわけです。こういうことだから、電子機器、船舶、トラックさえ軍需用品として輸出できないではありませんか。日中貿易を人民の要求に沿って真に拡大すると言うならば、ココムの制限は取り払うべきものだと考えますが、どうですか。この点が一点。  二点は、政府は、中国貿易について輸出入銀行の融資額を三千万ドルに押えている。だから、プラント輸出を一度行なえばそれでおしまいという実情であります。これは昨年のビニロン・プラント輸出の際に、アメリカと台湾からおどかされて新しく制限措置としてつくられたものであります。この制限を即刻取りはずすべきだと思いますが、どうですか。これが二点。  もう一点。貿易の発展のためには技術者の交流が必要である。ところが、中国の技術者は、法務大臣の裁量という名目で通常三週間の制限を受けております。これは貿易にとってきわめて大きな障害になっている。一年半ぐらいの滞在を認めることが必要である。政府はこの政治的拘束を取り除く約束をなされますか、どうですか。これが三点。  もう一点。結局、池田内閣は、政経分離という名で貿易の発展にいろいろと政治的制約を加えているではありませんか。政府のとるべき態度は、貿易を制限するのでなく、政治的に保護することであります。政経分離などと言っているからこれができないのです。政府は、日中貿易の発展のためにも中国を認めることが必要であります。少なくとも政府間協定を結ぶべきであります。この決意がもりますかどうか、伺っておきたいと思います。
  189. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一のココム協定は、日本は参加いたしておりますので、これを順守してまいりたいと思います。ただ、これはずっと以前に結ばれたものでございまして、時代の進展に応じまして、老朽化したと申しますか、時代に合わない個所がございますれば、国際的に検討しようという議がのぼりますれば、そういう会議にわれわれも参加してよろしいと思っております。  それから、第二点の延べ払いワクの問題でございますが、今日、須藤さんも御承知のように、わが国の輸出金融能力と申しますか、これは無限でございません。わが国の資本市場が非常に強力でございまして、政府が何ら心配しなくても輸出金融がどんどんできるような状態であれば、輸出事情は違うのでございますけれども、戦争のために資本市場が破壊されてまだ再建途上にある関係上、輸出入銀行というような政府機関をつくりまして、これを補完しておるのが御承知のような今日の状況でございまして、きわめて限られた資金でもって輸出金融をファイナンスいたしておるわけでございます。私どもは、ひとか共産圏だけでなく、自由圏と、非共産圏との貿易も九五%もいたしておるわけでございますから、全体を見まして、輸出金融能力をわが国の利益のために最大限に活用してまいらなければなりませんので、そういう意味合いから、ある程度各地域別に、事項別に、ある程度の目安を立ててやってまいるということは、輸出金融の行政から申しまして当然のことと思うのでございます。それを撤廃するというようなことは考えておりません。  それから、第三の技術者の入国についてでございますが、私どもは、あなたが言われるような苦情は別に聞いておりません。入管当局は適正にやっておると思っております。  それから、第四点といたしまして、あなたは、何か対共産圏の貿易につきまして政府が妨害しておる、制限しておるというようなことを頭から前提に置いておるようでございますが、先ほどから伺っておりますと、私は、共産圏の貿易が伸びないのは、むしろ向こうさん側に輸出能力が乏しいからでございまして、先ほど総理からお示しのありましたように、先方がどんどんそれを購買する能力がおありになれば、ある程度貿易は伸びると思うのでございます。貿易というのは、対共産圏といえとも、これは貿易——商売でございますから、私どもが一方的に、無限に信用を供与して伸ばすというようなぐあいにはまいりません。また、あなたが最後にお尋ねになりました政府間の協定をやるという意思は目下持っておりません。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中国の人たちは、日本がほんとうに貿易をうんと、どんどんとやる気があるならば、五億ドルでも十億ドルでもできる、こういうことをはっきり言っておるのです。それを妨害しておるのが日本のいわゆる政経分離、この問題がいわゆる妨害しておるということを私は言った。  それでは、いま技術者の交流でどこからも文句が出ていないという御発言でしたが、もしもそういうことを業者から要求するならば、半年でも一年でも滞在を認めるようになさる意思があるのかどうか、それを伺っておきたい。
  191. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) もしお話がございますれば、検討いたします。
  192. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もしゃもしゃと言ったので聞こえぬ。もう一ぺん、はっきり言ってください。
  193. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) もしお話がございますれば、検討いたします。
  194. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 昨日衆議院の外務委員会で、ココムの制限品目を発表なすった、リストをお出しになったということを伺いましたから、この予算委員会にもそのリストを提出していただきたい。  それからお尋ねしますが、飛行機はココムの制限品目の中に入っておりますか、どうですか。
  195. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) すぐ調査しましてお答えいたします。
  196. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 どうなんですか、入っておらぬですか、何ですか。
  197. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。詳しくはいま調べさしておりますので、いまわかっておるところで申しますと、ヘリコプター、それからエンジン、航空機というようなものが入っておるのでありますが、ただ、イギリスが五機、民間機を売っておる例がございます。それから航空機専用の遠隔測定装置とかあるいは遠隔制御装置とか、こういうものが入っておるのでありまして、航空機という項目を特にあげて軍用機がいいとか悪いとか、あるいは民間航空機はいいとか悪いとかいう形においては、いまここでは私が申し上げる資料を持っておりませんが、これは原本につきまして詳しく調べて正確なことをお答え申し上げたいと思います。
  198. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 飛行機は軍用飛行機でも民間飛行機でも全部電子機器が入っているわけです。電子機器はココム制限品目に入っているのですから、制限品目を売るということはいけない。飛行機を売るということはいけない。飛行機のボディだけを売るということはない、機械のない飛行機なんて役に立たないのですから。機械が全部備わっている飛行機を売ってはならぬというココム制限があるわけです。ところが、英国はバイカウント・ジェット大型旅客機を九台売っているのです。私が中国に行ったときにちゃんと中国の飛行場に着いておりました。だから英国はココムの制限品目を無視して中国に飛行機を売ったということは明らかなんです。中国で私は当局者に聞きましたら、当局者は特にこれを買うときに、英国の商人、その当局者にこう尋ねた。飛行機はココムの制限品目ではありませんか、それをあなたは売っても差しつかえないのですか、という質問をしたところ、英国の人はこう答えた。英国の労働者がつくって英国の船で運ぶのに何で他国に遠慮が要りますか、ココム制限なぞ私は問題にしておりません、と英国は答えたというのです。英国日本とココム制限について立場が違うのですか、どうですか。そこを私は聞いておきたい。
  199. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は英国の方が、またそれは英国の官辺筋が言われたんで、労働者か何か、どなたが言われたか知りませんが、英国英国立場でやっておられるので、日本日本立場で解釈してやっておる。私たちとしては、そういう疑義のあるようなものを、また、いままでそういうものを申し込まれたという覚えもありませんし、今後においてもそういう疑義のあるものについては十分に慎重にやったほうがいいと考えております。
  200. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何で英国が売っていいものが日本が売って悪い。日本英国もココムの制限については同じ立場にあるのです。何で日本がそういう卑屈な態度をとらなければならぬか。それがアメリカに従属しているということをわれわれ言う点なんです。だから日本も遠慮なしに、ココム制限品目であろうが何であろうが、どんどんと自主的に売ったらいいのです。そうしたら商売はもっとうんと発展するのです。それを言うのです。何で英国が売っていいものが日本が売って悪い。何で英国が堂々と売っているのに日本は小心翼々として売らぬのか、ここに問題がある。それを私は言うのです。そんなことで何ができますか。何もできませんよ。そういう態度をいつまでもとるならば。池田さんよく自主的自主的というが、ここらでほんとうに自主的な立場をとったらどうですか。あなたは言葉で自主的と言っているけれども、ほんとうに自主的な立場に立っていないのです。貿易一つ見てもそうじゃないですか、外交だって何だってそうですよ。だから私は口やかましく言うのです。池田内閣は中国貿易は前向きだと盛んに言っておりますが、結局やるべきことをやっていない。日台条約と安保条約に縛られてアメリカと一緒になり、中国敵視、中国封じ込め政策を行なっているのが実態ではないでしょうか。世界の大勢にさからい、日本人民の利益を無視して、日本の将来と経済の自主的、平和的発展、アジアの平和に貢献できると考えているのかどうか、全く反対ではありませんか。私は池田総理に日台条約を破棄して、中華人民共和国との国交を即時回復することを繰り返し要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  201. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどの調査ができましたからお答えいたします。軍用機はいけません。民間機につきましては、二年以上使ったもの。なお、軽量のものはよろしいということになっておるのであります。そういう意味で、おそらくイギスリはやったものだと思っております。  なお、あなたから自主的にやらないとおっしゃいますけれども、われわれは、方々の国と約束をした場合には、その国に対する約束を守るということのほうがよほど自主的なんで、相手の、ほかの、Aの国とは約束をして、Bの国とはその約束を破るというのが、はたして自主的と言っていいがどうか、これは私は問題があろうと思います。そういう範囲内において、われわれはやはり自分立場で、自分のなすべきことをやっていく、こういうことで少しも差しつかえないのではないか。もちろん私は日中貿易について、これはふえていくことを何も反対してこういうことを申し上げておるのではないことだけは御理解賜わりたいと思います。
  202. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は時間があれば、もっと暴露する問題をたくさん持っているんですよ。アメリカの対中国貿易政策なり、いろいろのことについては私は資料を持っておりますけれども、時間がないからきょうはやめまして、また、この次の委員会のときにやることにいたしましょう。あなた、いま軽量飛行機と申しましたけれども英国が中国に売ったというのは、大型飛行機です。バイカウントの大型ジェット機です。決して軽量ではありません。英国はそういうことを平気でやっているのですから、どうかあなたもやってもらいたい。自主的というのは他国の利益に奉仕するということではなくて、自国の利益を第一に考えるということが自主的だと思います。その点言い添えておきます。
  203. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。   —————————————
  204. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより討論に入ります。通告がございますので、順次発言を許します。賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。まず、藤田進君。(拍手)
  205. 藤田進

    ○藤田進君 私は日本社会党を代表いたしまして、本補正予算三案につきまして反対の討論をいたすものであります。  昨日、本日と質疑がかわされましたが、この答弁におきまして見られるように、非常に多くの外交並びに内政問題を持っているときに、問題の焦点を非常にぼかした形で、これを回避した形で、総理大臣ほか申し合わせたように答弁をせられて、事態が明らかになっておりません。特に今度の補正三号を見ますときに、特にその緊急性の点において、たとえばいま問題になっている、国民多くが非常に困っている物価問題、これに対する具体的予算的な措置というものがまことに不十分である。その物価の値上がり状況、これが及ぼす国民生活への影響等につきましては他の機会に譲るといたしましても、今度の緊急を要する補正予算の中に、当然考慮されるべきものであったと信じているのであります。  その第二は、特に、中小企業関係であります。これは一月の倒産だけを見ましても、約二百件、しかも一千万円以上の資本金においてもこのことが推定されております。こういう当面する中小企業に対する資金的な施策、裏づけというものがまことに不十分である。昭和三十九年度予算を待つまでもなく、当然この補正で考慮せられるべきものであったと思うのであります。  また、第三は国際収支についてであります。一月の貿易収支につきましても、すでに一億三千万ドル以上の赤字が見込まれている、こういうときに、総合的に、これら国際収支に対する対策としての問題がまことに不明確であり、不十分であると言わなければなりません。  また、第四には、いわゆる立ちおくれ、格差のはなはだしく立ちおくれて、大きく幅のついてきた農業関係、農業政策についてであります。当面暖冬異変その他問題が緊急にあるほかに、抜本的に今後の農業政策を、いわゆる革命的に池田内閣とされては施策を講ずるということであるならば、すでに本年度、三十八年度の補正でもって当然考えらるべき性質のものであったろうと思われるのであります。このように考えてまいりますと、結局今度の補正三案というものは、要するに当初の三十八年度予算で当然組み入れるべきものを、イージー・ゴーイングー年度末に近づくにつれて租税収入、自然増収等と見合って、そしていわば大企業を中心に、これが補正、産投会計への繰り入れ等々で見られるように、こういったきわめて偏在的なものであるということは、政府の反省を促さなければなりません。同時に三十七年度に、国会は政府提出にかかる財政法の改正を行ないましたが、その際に従来の予算作成後に生じた事由に基づき避くべからざる経費の支出、これが補正予算を出しますときの要因とされておりましたものを改正いたしまして、特に緊急となった経費にというふうに改めたわけであります。ところが、今回のこの補正三案を見ますというと、必ずしもそういうものでなく、つまり当時の審議過程の記録を見ましても、予算作成後に生じた事由に基づいて、避くべからざるという意味と、特に緊急となった経費という意味というものは、これは同義語である、変わらないのだということであったが、わが党といたしましては、補正、追加予算が非常にルーズになるのじゃないかという点を指摘していたわけですが、自来三十七年の改正以後、かなり追加、補正についてのルーズさというものは顕著なものがあるのであります。租税の自然増収というものは、今回もいわば政府施策、ある種のインフレ政策のもとに税収がふえて、これを財源にしてまかない、そして大企業を中心に、産投会計等を中心にこれが繰り入れをするという考え方でありますが、本来そのような国民の犠牲において税増収、租税収入の増収というものは、当然本年度、三十八年度においてすでに国民に還元される減税措置等も当然行なわれるべきものだと信じて疑いません。  かような大筋の点だけを指摘いたしましたが、以上の理由におきまして私どもは、本補正三案について賛成することができません。反対をいたすものであります。(拍手)
  206. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、村山道雄君。
  207. 村山道雄

    ○村山道雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする昭和三十八年度一般会計補正予算第三号案外二件に対しまして賛成の討論をいたします。  昨年十二月の第四十五国会におきまして、千二百四十一億円の追加補正が行なわれましたが、その後の経済情勢に応じて、今回提出されております第三次補正は、産業投資特別会計への繰り入れ、義務教育費国庫負担金の不足補てん等当面必要な経費について、さらに補正措置を講じようとするものであります。  一般会計補正予算の規模は、歳入歳出ともに八百二十六億円であります。歳出の内容の第一は、産業投資特別会計及び同会計資金への繰り入れでありますが、産業投資特別会計への繰り入れば、同会計が行ないます日本輸出入銀行への追加出資に必要な財源を繰り入れるのでありまして、今回、同会計に六十億円を繰り入れることによりまして、日本輸出入銀行の資金需要を充足しようとするものであります。  さらに、産業投資特別会計資金への三百億円の繰り入れは、経済基盤化並びに企業の体質改善を強力に推進いたしますために、将来の出資需要の増大に対処するほか、今後の産業投資を経済情勢に応じて弾力的に行ない得るようにするものでありまして、開放経済体制への移行期における国内産業の伸展、輸出の振興に寄与するものとして適切なる措置であると思うのであります。  第二は、義務的経費の不足補てんとして三百二十三億円の補正措置が講ぜられておりまするが、まず、義務教育費国庫負担金につきましては、前回の補正八十二億に引き続きまして今回六十二億円が計上されております。これは、義務教育費国庫負担法に基づきまして教職員給与費の実支出額の二分の一を国が負担するたてまえに従いまして三十七年度の決算の結果明らかとなった給与負担金の不足額と、三十八年度の不足見込み額とを補てんする必要経費であります。  生活保護費につきましては、八十四億円措置されておりますが、これは生活保護扶助の対象人員及び単価の増加並びに老人福祉法施行遅延に伴う保護費の支出の増加によりまして、既定予算における不足見込み額並びに三十七年度の精算不足額を合わせて補てんいたすものであります。  国民健康保険助成費につきましては、八十五億円補正措置が講ぜられておりまするが、これは国民健康保険の健全なる運営をはかるための補助金、交付金等の三十七年度精算不足額及び三十八年度の不足見込み額を補てんしようとする経費であります。そのほか、失業保険負担金五十三億円をはじめといたしまして、養護学校負担金、児童保護費、身体障害者保護費等の繰り入れにつきまして、所要の資金の補正措置を講じておりますが、以上申し上げましたような諸費用は、いずれも既定法律並びに対象人員の増等に基づいて国が負担するいわば義務的な経費でありまして、これらの不足額を補てんすることは、当然なる国の責務であります。さらに自衛隊の産炭地域への移駐経費、オリンピック東京大会実施準備費及び空港整備事業費に追加出資を行なっておりますことは、これまた時宜を得たるものであります。  また、地方交付税交付金百三十六億円の追加額は、今回の補正予算におきまして所得税及び法人税の増収分の二八・九%に当たる増加額でありまして、これを計上することもまた当然の措置でございます。  以上の歳出補正に当たる財源は、租税及び印紙収入の増収分でまかなうことになっております。補正後の一般会計の規模は、前回の補正を合わせて当初予算よりも二千六十八億円増の三兆五百六十八億円となります。これはわが国経済の実態に即応したところの適正なる予算額であると考えるのでございます。  次に、特別会計につきましては、産業投資特別会計、交付税及び譲与税配付金特別会計及び失業保険特別会計の三特別会計にそれぞれ必要なる補正措置が講ぜられておりまするが、これらはいずれも、さきに述べました一般会計の補正に伴います必然的なる関連措置でございます。  次に、政府関係機関につきましては、日本国有鉄道の行ないます改良工事の進捗をはかるために資金運用部より政府引き受け債百億円を追加いたしまして工事改良の支出に充てておりますることは、経済動脈としての輸送の使命並びに事故防止の見地から見ましてきわめて当を得た措置であると存じます。  最後に、財政投融資につきましては、さきに述べました日本輸出入銀行並びに日本国有鉄道の追加措置に関連して所要の措置がとられております。  以上、今回の予算補正は、国際収支の改善及び国鉄の安全輸送の確保と輸送力の増強に資するのみではなく、義務的経費の国庫負担を充足しようとするものでありまして、政府の原案は適正であると存ずるのであります。  以上をもちまして、昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)案外二件に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  208. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、中尾辰義君。
  209. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、公明会を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十八年度第三次補正予算三案に対しまして反対の意を表明するものであります。  今回の第三次補正予算は八百二十六億一千二百万円でありまして、当初予算及び第二次補正予算と合算いたしますると三兆五百六十八億七百十一万七千円という膨大な予算となるのであります。  申すまでもなく、政府のこれまでとってまいりました高度成長経済政策は、必要以上に企業を刺激し、本来弾力性を持つべき政策の基本的精神が失われて、大企業を中心とする設備投資の過当競争を招いたのであります。そして、その結果は、今日、産業構造の高度化、あるいは雇用の大幅な増大等の成果をもたらしたのでありまするが、その反面におきましては、計画発足当初から不安定な景気変動を伴い、毎年における消費者物価の高騰、農業や中小企業をはじめ、道路、港湾等の社会資本、生活環境の立ちおくれ、住宅難、国際収支の構造的不安、地価の暴騰等のひずみを生み出して、物価の高騰に賃金は追いつけなくて、国民生活を圧迫いたしておるのであります。特に最近における中小企業の倒産続出につきましては、政府当局の財政金融政策について全く不信を抱かざるを得ないのであります。そのような不安を除くためにも、政府は、全力をあげて当面の重要課題である国際収支の改善と諸物価の安定をはからねばならないのであります。  今回提出されました補正予算第三号も、倍増計画のひずみから来る諸経費の補正にすぎないのでありまして、その歳出の大半は義務教育費国庫負担金等の義務的経費の不足補てんであり、承認のやむを得ないものでありまするが、三百六十億円は産投会計及び同資金への繰り入れであります。うち三百億円は三十九年度財投計画で支出されるものであり、いわば財源の先取りであります。これでは、ますます膨大となる三十九年度予算膨張の欺瞞策にほかならぬものであります。むしろ、現在急務である物価の安定、中小企業の救済、あるいは住宅の確保等の施策に重点を注ぐべきではないかと考えるのでありまして、経済政策のひずみを直すのにはなはだ不十分な本補正予算案に対して反対をするものであります。(拍手)
  210. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 天田勝正君。
  211. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、民主社会党を代表して、政府提出の昭和三十八年度予算第三次補正三案について、反対し、その趣旨を明らかにいたしたいと存じます。  第二次補正は主として政策的な歳出補正でありましたが、今回の補正は義務的経費や既定費の不足補てんが主でありまして、政策的補正としては産投会計への三百六十億円の繰り入れ並びに国鉄に対する融資であります。  わが党は、政府案のうち、義務的経費十二項目、既定経費のそれぞれの不足補てん並びに不用額の削減の一項目については、これを是とするものであります。しかし、歳出補正のうち、産投会計へ三百六十億円繰り入れの政策上の補正については、遺憾ながら承認しがたいのであります。  財政法第二十九条の規定によりまして、補正予算の編成は、第一に、経費不足の補てん、第二に、当初予算作成後に生じた事由に基づく経費の支出または追加、あるいは予算の変更の場合に行なうことができるのであります。したがって、補正予算の編成は、単に経費不足の補てんにとどまるものではなぐ、財源の余裕があるならば、当初予算編成後の新たなる政策上の必要に基づく補正予算を編成すべきであります。この点では、すでに質疑を通じて各委員から指摘されたものでございます。  政府案の、産投会計への三百六十億円の繰り入れについて私どもが疑義を持つ点は、日本輸出入銀行に出資する分は別といたしまして、結局これは備荒貯蓄でありまして、これをなぜ行なわなければならないかというのは、それは、ガリオア、エロアの債務支払いに百五十八億一千万円を義務づけられているところにあると思うのであります。私どもは、すでに協定された対米債務の支払いをこの際やめよと主張するのではありませんが、しかし、債務支払いの窓口は会計上明確にすべきであると主張するのであります。  なお、その他この際政策上支出しなければならないのは、すでに質疑で明らかなように、現在は、昨年十二月以来の苛烈なる金融引き締めによって、中小企業の倒産、整理、不渡り手形の発行が激増いたしております。これに対し、政府は、若干の短期融資の方法を講じているにすぎないのでございます。ところが、一方においては政府の金融引き締めが相当長期にわたることが必至となっているのでありますから、このような短期融資で中小企業の金融難が解決されるものでないことは明らかでございます。今回の補正措置のうちで中小企業に対する財政投融資が計上されていないことは、まことに不可解千万であると言わなければなりません。政府の言う中小企業に対する革新的施策などは、まことに羊頭狗肉のたぐいと言うべきであります。  またも首相は、施政方針演説において、高度福祉国家の建設を声高く主張されているのでありますが、国民福祉の最低必要条件とも言うべき住宅、上下水道、し尿処理等の国民生活に密着した施策がまことに貧弱であるのであります。また、さきの質疑でも明らかになりましたように、ILO百二号、同百三号条約批准の準備もいまだ整っておらない状態でありますから、福祉国家建設も夢物語とも言うべきでございましょう。  わが党は、かねて政府に要望いたしてまいりました。その第一は、産投会計資金への三百億円の繰り入れを中止して、百五十億円は公営住宅建設費、残り百五十億円を国民金融公庫に対する出資に切りかえることであります。さらには、資金運用部資金よりの融資の追加を行なうことであります。  このような点を要請してまいりましたが、今回の補正予算にはこれらは全く無視されておるのでありまして、政府三案に対しては反対をいたさざるを得ないのであります。(拍手)
  212. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤五郎君。
  213. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、三十八年度補正予算に反対します。  総額八百二十六億円の一般会計補正予算の中身は、産業投資特別会計及び同会計資金への繰り入れ三百六十億円、義務教育費国庫負担費など義務的経費の不足補てん三百二十三億円、自衛隊の産炭地域への移駐経費二億七千四百万円、その他百三十四億円であります。  そのうち、まず、義務教育費国庫負担費、生活保護費国民健康保険助成費、結核医療費、失業保険負担金などの経費でありますが、これら国民生活に緊急な経費は物価上昇に追いつかず、必要経費に比べてはるかに少ない金額を補てんしたにすぎないのであります。それどころか、政府は、産炭地振興のための資金は押えながら自衛隊の移駐経費を計上し、産炭地域に軍国主義思想をあおるたねにしようとしているのでありますが、国民にとってかかる経費はなんで緊急な経費であるかと言わざるを得ないのであります。  このように、政府は、国民生活にとって緊急な経費を圧縮していながら、他方では、産業投資特別会計及び同会計資金に三百六十億円を繰り入れ、独占資本の資本蓄積に奉仕させようとしているのであります。しかも、政府のやり方は勝手気ままであり、三十八年度補正の名目で実際には三十九年度予算の先取りをやろうとしているのであります。開放経済と高度経済成長政策、そのもとでの独占資本の資本蓄積のためには、財政法を踏みにじってまでも独占資本に手厚い措置をとろうとしていることは、この予算がいかに独占資本本位のものであるかをはっきり浮き彫りにしているものであります。  また、財政投融資についても、国民の零細な預金を、輸出入銀行に四十億円、国鉄に百億円と、ただ同然で貸し与えようとしています。輸出入銀行の追加支出は海外進出のための資金であります。特に、国鉄については、国鉄改良費百億円の穴埋めをするという名目になっていますが、これは元来引き続く事故対策費を一般改良費を削って充てたその穴埋めにすぎないものであります。このように、政府は、頻発する事故を防ぐための経費を低く押えておいて、一般改良費を削って回すことによって、事故対策を真剣にやらず、一般改良事業をも押えるということをやっているのであります。こうして、結局は、事故は減るどころか、ますます増加し、一般改良事業も進まず、そしてそのしわ寄せは運賃値上げ、サービス低下、労働強化にならざるを得ないのであります。  このように、独占資本には至れり尽くせりの措置をとっていながら、その財源は勤労所得税、申告所得税及び中小法人税でまかなおうとしております。政府は自然増収と称していますが、実際には勤労者、中小商工業者からしぼった税金がその財源となっているのであります。  以上のように見ると、三十八年度補正予算は、アメリカに従属しながら独占資本のための高度成長政策を強行し、国民には減税どころかますます重税を押しつけ、国民の犠牲と負担と災害をふやすものと言わざるを得ないのであります。  よって、反対するものであります。
  214. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。   —————————————
  215. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいま委員の変更がございました。  塩見俊二君、河野謙三君、江藤智君、加藤武徳君及び小山邦太郎君がそれぞれ辞任され、野田俊作君、西田信一君、徳永正利君、高橋衛君及び高野一夫君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  216. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより補正予算三案の採決を行ないます。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、以上三案一括して問題に供します。三案を衆議院送付のとおり可決することに賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  217. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 起立多数と認めます。よって三案は衆議院送付どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、報告書の作成につきましては、先例によりこれを行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会