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国務大臣(
池田勇人君) 大蔵大臣、通産大臣がお答えしたところで足りると思いますが、しかし、いまの
日本の金融
制度の状況を見ますと、最近は相互銀行、信用銀行が相当伸びてまいりましたが、
日本の金融機関の実態というものが、商業金融でいくのか、設備資金を出す長期資金でいくのか、これがはっきりしておりません。ドイツ式のやり方でもないし、かといって英米式のやり方でもない。長期資金を出す興銀、長期信用銀行がございますが、これも長期資金の一部分でございます。債券が五千五百億円ぐらいですから、両方合わせて一兆一千億ぐらいであります。しかし、これも大企業の設備資金としては、興銀やあるいは長銀がやれば、大銀行もついていくので相当まかなっておりますが、中小企業の設備資金ということになると、これはどこが出すかといったら、いまのところでは中小企業金融公庫、あるいは組合金融をやっている商工中金ということになるのであります。しかも、中小企業金融公庫の相手とする中小企業の設備資金増加のためにどれだけの
措置をとっているかといったら、私はどうも申しわけないと思っておるのであります。それは設備近代化資金として三億から始めていま四、五十億ぐらいになっておりましょうが、その程度じゃとてもいかない。私は実は力が弱くて思うとおりにいかなかったのですが、中小企業金融公庫の今度の債券の発行、これもなかなかいろいろ問題があったようでございますが、私はこれは大いにやるべきだ。十年前に長期信用銀行が発足いたしまして、そしていま五千五百億円の債券を発行している。これは中小企業に行かん。排他的ではございませんが、大企業になっている。中小企業金融公庫にもっとやらすべきではないか。今度出発したのは五百億円でございます。これはどんどんふやしていくべきだ。商工中金との
関係もございましょうが、もっと中小企業の設備資金に対してわれわれは切実に、そして機構的に
考えなければならぬという気持ちを持っております。今後私は中小企業金融公庫の債券の発行——何も
政府保証債の必要はございません。興銀、長銀は、
政府保証債ではなくていまや一兆一千億を集めておるのでありますから、私は
政府保証債ももちろんですが、
政府保証債でなくても、やはりこういうせっかくつくった中小企業金融公庫なんかもっと活動を大きくすべきで、そこで商工中金との
関係もあるようでございますが、商工中金なんかも、私は組合金融を主とする場合において、もっとやはり発展的の方策をとるべきだと思う。三厘ぐらいの金利では、まだまだ十分ではない。なかなかこれがむずかしいのです。総理としてこれをどんどんやっていきたいと思っておるのですが、なかなかこれがむずかしい。まあ今度ようやく発足いたしましたが、やはり中小企業金融公庫の設備資金を大いに出す。のみならず、私は行く行くは手形の再割り引きもやる方向でいくべきじゃないかというふうな気持ちを持っております。そこで、とにかくいま大銀行、都市銀行あるいは地方銀行の中小企業に貸し出す率なんかよりも、もっと発展的に中小企業
関係の金融機関をもっとふやす。そして、また片一方において、中小企業は信用が自分で確保しにくいから、いわゆる十二、三年前からありますところの保証協会、これをうんと拡大して、そしてえてして貸しにくい、信用の少ない中小企業の信用をもっと拡大する方向へ行かなきゃならぬと思います。
それから、私は歩積み、両建てということを前から非常にきつく言っておるのですが、だいぶこのごろは出てまいりました。歩積み、両建てのいけないことは、これは一千万円借りて三百万円すぐ預けておる。何も、これは三百万円預けるときに、借りた金利と同じことにしてくれればいいわけです。一千万円借りて三百万円預けるときには、これは定期預金かあるいは普通預金——安いです。借りた金は二銭五厘とか、あるいは三銭とか。だから、信用の確保の必要上、一千万円貸すけれ
ども三百万円預けておきなさいと言うなら、預かった分については、預金利子も貸し付け金利子と同じことにすれば何でもないことです。私は、そういう
意味において大蔵省が強く指導するように頼んでおります。だから、問題は、歩積み、両建てということは金利負担が困るわけです。だから、もう手っとり早い話が、両建てでよろしゅうございますが、金利はあなたのほうの銀行でお預かりの金利を貸し出し金利にしてくれと言えば、これは楽にいくことだと思いますけれ
ども、なかなかいかんようです。しかし、いずれにいたしましても、この中小企業というものは、私は片一方の金融の面よりも、一つは心がまえの問題があると思う。いわゆる手形の不渡りを出すのがあたりまえだというようなことではいけませんので、中小企業の倒産のうちに、今度でも一番大きいのは、一億円の会社で四十億円の借金がある。これは普通の経営じゃございません。これは金融の道の度を越えております。こういう点は、まあ業者は業者としてお
考え願わなきゃならないし、また、そういうふうにしたのは、四十億円を貸す銀行が公正なやり方かどうかということも金融機関は
考えなくちゃならんと思います。で、金利をどうした、あるいは金融引き締めだ、さあこれだけ倒産が出た、それは
政府の
責任だ。もちろん私は全部
責任を負いますが、それよりも、どういうふうにしたらこれが改まるかということで、一億円の会社が四十億円の債務で倒れるということは、経営者もどうかと思いますが、貸すほうもどうかと思う。いろいろな点を私は
考える。しかし、そういうこと言ったって切りはございませんから、やはり中小企業に対してはもっと抜本的に、中小企業に対する金融
制度の拡大をひとつ合理的にやっていかなきゃならんのじゃないか。しかし、その
意味において、今度中小企業の債券発行、そしてまた私は商工中金の割り商あるいは商工債券の発行についてもっと熱意を持って、片一方では商工中金、片一方では中小企業と手を握り合っていくことを
考えないと私はいかんと思うので、しかし、ようやくその緒につきました。今後は中小企業に対する金融につきまして、やはり
制度的に保証協会を発達さすとか、あるいは中小企業金融公庫の債券、商工中金の債券について特定のことをやる。いまなんかでも、前は商工中金が出している割り商なんてものが、割り興や割り長よりも金利が高かった。これを、この前金利を下げるときに一緒にしてしまった。昔のように、割り長のほうより高くすれば、もっと売れるかもしれない。まだいろいろくふうがあると思うのでございますが、なかなか私も、通産大臣、大蔵大臣ならばもっとやるのでございますが、総理となってみますと、気のついたことはどんどん言っておりますけれ
ども、なかなかそう動かん点がございます。しかし、今後十分そういう点でやっていきたいと思っております。