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1964-02-12 第46回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十二日(水曜日)    午前十時十四分開会   —————————————   委員の異動  一月三十日   辞任      補欠選任    森 八三一君  加賀山之雄君  二月十日   辞任      補欠選任    市川 房枝君  林   塩君  二月十一日   辞任      補欠選任    基  政七君  天田 勝正君    高山 恒雄君  田畑 金光君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            加賀山之雄君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            佐野  廣君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            吉江 勝保君            阿具根 登君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            林   塩君            天田 勝正君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    臨時行政調査会    事務局次長   井原 敏之君    宮内庁次長   瓜生 順良君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    防衛庁参事官  志賀 清二君    防衛施設庁長官 小野  裕君    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    経済企画庁総合    開発局長    鹿野 義夫君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省社会局長 牛丸 義留君    厚生省年金局長 山本 正淑君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農政局長 昌谷  孝君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 桧垣徳太郎君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    中小企業庁長官 中野 正一君    運輸省海運局長 若狭 得治君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    労働省労政局長 三治 重信君    建設省住宅局長 前田 光嘉君    自治省財政局長 柴田  護君    自治省税務局長 細郷 道一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    憲法調査会会長 高柳 賢三君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和三十八年度一般会計補正予算  (第3号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十八年度特別会計補正予算  (特第3号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十八年度政府関係機関補正予  算(機第3号)(内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  一月三十日、森八三一君が辞任され、加賀山之雄君が選任されました。  本月十日、市川房枝君が辞任され、林塩君が選任されました。  翌十一日、基政七君及び高山恒雄君が辞任され、天田勝正君及び田畑金光君が選任されました。   —————————————
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、理事補欠互選を行ないます。  現在、当委員会におきましては、理事が二名欠員になっておりますが、本日は都合により、理事一名の互選を行ないたいと存じます。その互選につきましては、先例によりまして委員長の指名をもって行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。  ついては、加賀山之雄君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、以上三案を一括して議題といたします。  三案は、昨日、衆議院から送付され、本院付託となっておりますので、念のため申し上げておきます。  三案の取り扱いにつきましては、去る六日の理事会において協議いたしましたので、そのおもなる内容について御報告いたします。  一、補正予算は、本日及び明十三日の二日間で審査を終了いたします。  二、質疑総時間は三百分とし、その各会派への割り当ては、自由民主党及び社会党おのおの百十分、公明会三十分、第二院クラブ及び民主社会党おのおの二十分、共産党十分といたします。  三、質疑順位社会党自由民主党社会党公明会、第二院クラブ民主社会党社会党社会党共産党自由民主党社会党といたします。  以上御報告いたしましたとおり運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。  これより質疑に入ります。まず戸叶武君。
  7. 戸叶武

    戸叶武君 私は日本社会党代表し、池田内閣政治外交及び財政金融政策について質問をいたします。  最初に、天皇国事行為臨時代行に関する法律案を提出するに至った動機について承りたい。新聞では、天皇海外旅行とか軽微な御病気の際などをおもんぱかっての措置のように伝えておりますが、御説明を願いたい。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知のとおり憲法第四条の二項の規定によりまして天皇法律の定めるところによって国事に関する行為を委任し得る規定があるのでございます。私は、天皇事故のおありのとき、そういう規定を設けておくことが、いわゆる諸制度を整備する上におきまして適当であるというので御審議願っておる次第でございます。
  9. 戸叶武

    戸叶武君 私はその動機をお聞きしたかったのですが、海外旅行のためにというような伝え方を新聞はしておりますが、海外旅行に行かれるとするならば、第一に、いかなる国々を、いかなる目的でいかなる時期に御訪問されようとしているのか、それを承りたいのであります。私が天皇海外旅行に際して心配な一点は、旧憲法時代における天皇戦争責任について、海外人々がどのような受け取り方をしているか、こういうことの配慮なしには、軽々にこの問題はきめられない問題ではないかと私は思います。あるいは杞憂にすぎないかもしれませんが、海外旅行の際に突発的な事故でも起きた場合に、だれがその政治責任を持つか。戦争と無関係であった皇太子や美智子妃海外旅行とは同一視すべきことではないのでありまして、それともまた、天皇はもっと身軽になってから、厳重な警衛等を必要としなくなってから海外旅行をしたいという御内意をお持ちになっておられるのかどうか、その間の御消息を承りたいと思います。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、憲法規定がございますので、ただいま陛下が海外旅行とかなんとかという計画は一切ございません。ただ制度を整備しておく必要があると考えまして御審議願っております。なお、天皇海外旅行につきましていろいろ御意見があるようでございますが、海外におきまして天皇戦争責任というようなことは、問題になっていないと私は確信いたしておるのであります。したがいまして、いま御旅行予定がない、また、海外でそういうことも起こらないという気持を持っておりますが、単に制度を整備しておくという考え方で御審議を願っておるのでございます。
  11. 戸叶武

    戸叶武君 日本人の通念と、海外の何百万という戦争のために父を失い、夫を失った人々の感情というものは、総理大臣が簡単に見ているような感覚とは、私は違うものがあるんじゃないかと思うのであります。ケネディの例を引くのではありませんが、万が一にもという場合の政治責任というものを明らかにしないと、天皇は国の象徴といわれておりますが、あの戦争となった時代の、旧憲法におけるところの主権者としての立場というものは、日本人の受け取り方と海外人々の受け取り方というのは違うのでございまして、そういう点に対して、外務大臣なり何なりは、内閣総理大臣考えているような、その安易な考え方によって情報を集めているのでしょうか。私は今度外務大臣に伺いたい。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、海外におきましては、そういう空気はないと確信いたしております。また天皇陛下がただいま海外に御旅行になるという予定はございません。またもし、そういうような御旅行になるというような場合におきましては、事故の起こらない万全の措置考えることは当然でございます。
  13. 戸叶武

    戸叶武君 天皇海外旅行はないというように総理大臣が断言しておりますから、これ以上私はお尋ねはいたしません。この問題にも関連しますが、最近の憲法調査会の動きというものを見ますと、改憲ムードをつくり上げようというような印象社会に与えておるのであります。憲法調査会高柳会長は、この点では少数意見代表しながら、きわめて良心的にいろいろな苦労をされているように見受けられるのでありますが、調査会性格というものが、研究、調査、しかも内閣諮問機関的性格でございまして、憲法は国の基本法でありまして、憲法にも規定されているように、主権者である国民から選ばれて、国の最高機関として規定されているこの立法府以外のところで、憲法の問題に対して主権者が迷惑と思い、あるいは主権者に、要らないことをやり過ぎるというような印象を与えるときには、その運営の面において非常に私は問題が起きると思うのであります。最近においても、この憲法九条の問題をめぐってのああいう論議というものは、海外においては、日本の繁栄というものを一面において見ながらも、また経済的に復興してきたから、そろそろ軍国主義的な方向に日本がいくんじゃないかという恐怖感警戒性というものが出てきているのでございまして、そういうことを配慮しながら、今後憲法調査会をどのように運営していくか、内閣総理大臣及び憲法調査会会長にお尋ねします。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法調査会におきましては、独自の考えのもとにそれが運営されておると見ておるのであります。われわれがその運営につきまして、とやかく言う筋合いのものではないと思います。
  15. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法調査会は、普通の内閣諮問に答えるという、そういう調査会ではないのでありまして、日本国憲法及びこれに関連する重要な問題について十分に調査、審議して、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する、これが付託事項になっておるわけであります。したがって最終の報告書、まあことに憲法を改正するほうがいいのか、あるいは改正する必要がないのかと、そういう問題につきましては、調査会として一本の回答をしない、たとえば多数決によって調査会の意向をきめるというようなことはしないということが、もうすでに総会でもきまっておりまして、意見が分かれた場合には、各委員意見を十分その論拠を明らかにして公正に報告すると、こういう趣旨でやっております。したがって、両論意見が分かれた場合には、分かれたまま御報告する、こういう方針運営をいたしております。
  16. 戸叶武

    戸叶武君 会長がいろいろ苦労されているのはわかりますが、新聞等に出る記事等を見ましても、やはり学問的にはほとんど問題になっていないと思うような、暴論にひとしいものでも、その数によってそういう時代錯誤意見というものが非常に出されて、あたかも少数意見というものがその中で袋だたきにあっているような感じを与えているのであります。現委員中、改憲委員が三十一人で、非改憲委員が七人だというようなことから、社会党がこれに反対し、また革新勢力の学者がここに加わってないというので、ゆがんだ形において改憲ムードがつくられているのでありますが、今後におきましても、やはりこの憲法調査会の名によって改憲ムードをつくるという印象国民に与えないように、私は気をつけてもらいたいと思うのであります。今の会長の話だと、一本の内容にしぼるというような多数決的な運営はしないといいますが、あの表に出るPRの行き方というものは、多数の意見というものがはみ出して、少数意見がそこに圧殺されているという印象で、いかにもこの非改憲派がみじめな状態に置かれているような、当初から政府がそれをねらったのでしょうが、そういうことが心配だから、われわれは憲法調査会というものに反対だったのですが、運営の面において、なおこれは憲法調査会高柳さんだけでは何ともできない面があるかと思いますけれども池田総理大臣におきましても——憲法改正というものに対しては国民は非常な心配を持っているのでありまして、われわれは、ほんとうに憲法改正がなされるというようなときは、この国会をまくらに死を賭しても戦っていかなければならない、選ばれた国民としてのやはり私たち責任があると思うのであります。そういう点において、これは一歩あやまると、国内において非常にきびしい抗争の場が現出されるので、その根元が憲法調査会から出たという印象になるとたいへんだと思いますが、池田総理高柳会長から、あなたたち立場説明を簡単にお願いしたいと思います。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、憲法調査会は独自の考え運営せられ、審議しておられるのであります。われわれからとやこう言う筋合いのものではないと思います。
  18. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法調査会は、先ほど申しましたように調査機関でありまして、ここで結論を出すということを必要としないわけであります。もっとも、全員一致でもってやれば全員一致であるということを報告することになりますけれども、いまの状態憲法を改正するかどうかの問題について全員一致というようなことは考えられないわけであります。したがって両論がある、多数、少数ということは、これはまあ委員の構成によって多数になったり、少数になったりする。社会党が入っておらないということになると、また多数、少数関係が違ってくるわけでありまして、そういうことよりもむしろ国民が関心を持っているのは、改正するほうがいいのか悪いのかという論拠が一番大切である。したがって、論拠ということを中心として報告される。数の上で、改正論が多くても少なくても、まあどっちの論拠が正しいのかということが国民が関心持っている問題であろうと思いますので、多数、少数というようなことよりも、むしろ論拠ということに重点を置いて報告されることになるから、同時に調査会は、別に付託事項というのは調査であります。調査審議してその結果を報告するということにあるので、要するに政治的機能は何も持っておらない。あとそれをどういうふうに取り扱うかということは、内閣国会、最終的には国民考えるべきことだ、こういうふうにわれわれは考えております。
  19. 戸叶武

    戸叶武君 池田総理大臣並びに大平外務大臣にお尋ねします。開放経済体制外交基本方針は、近隣諸国親善関係を結ぶ善隣外交重点がかかっているというような打ち出し方を、今回の施政方針においては打ち出されておりますが、この善隣外交と申しましても、アジアにおけるいろいろな問題の解決にあたっては、六億五千万人の人口を要する中華人民共和国政府を除いてはアジア問題の解決はない。問題の焦点は中国の問題に注がれていると思いますが、池田総理はどのような御見解ですか。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう見解もございます。ただ、われわれは過去のとってきた外交方針というものもございますので、そういう現実を見ながら今後外交を進めていこうとしておるのであります。
  21. 戸叶武

    戸叶武君 フランス政府中華人民共和国政府承認について政府はどう思われるか。ドゴールについては、いろいろな批判、見方がありますけれどもドゴールの一つの外交攻勢を見ておりますと、やはりあの植民地問題に対する解決でも、国会とのトラブルに対する回答でも、在来の行き方と違いまして、国のために何が大切かというようなところに重点をしぼって、ブレーン組織を背景に見通しをつけ、計画性を立て、そうしてタイムリーに問題を片付けていくという方式でありまして、池田内閣のいまやっている外交とはおよそ違うスピーディな面を持っているようでありますが、フランス日本とは置かれている立場が若干違いますけれども、このドゴール攻勢というものが新ヤルタ体制への挑戦とも見られる。米ソによって、この大国によって世界がどうにでもなるという考え方に対して、イデオロギー的な立場は違うが、中ソ論争を一九五七年から続けている中華人民共和国人々及びこのフランスから、二つの矢が放たれているのですが、この反応に対して政府はこれをどういうふうに受け取っておりますか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ドゴール大統領外交方針をどう評価しているかという問題でございますが、これはこの間中共政府外交関係を樹立するにあたりまして、ドゴール大統領自身が内外の記者会見において表明されたところから、私どもは伺い知るほかに道はございません。仰せのように、戦後の世界に処する場合にドゴール大統領としては、大統領自身のフィロソフィをお持ちであり、そうして、ああいう姿において屋開されておるものと思うのでございます。私どもは、これが一体今後、戦後の世界を処理する上において、建設的な御提案として実を結ぶものであるか、それとも、そうでないのか、そういうことを今の段階において軽率に評価するというのは、まだ時期が尚早ではないかと思うのでございまして、ドゴール大統領が投じた波紋というものの影響をよく見きわめた上でないと、まだ論評はできないのではないかと考えております。
  23. 戸叶武

    戸叶武君 どうも相撲の勝負を見ていても、立ち上がりが一番大切だし、腰高だと負けるといわれておりますが、池田内閣外交立ち上がりはにぶいし、腰高だし、これはどこへ行っても勝負には負けるという外交姿勢だと思うのでありますが、この池田総理日華条約を結んでいる現在では、中共は認めない、朝鮮事変が起きたとき、国連は中共平和愛好国でないとした、それがまだ取り残されているから、日本政府中国を承認できない、こういうような論理の上に立っているようですが、この論理は私たちは納得できないのでありますが、特に日華条約の問題ですけれども昭和二十七年四月二十八日に結んだ日華条約問題点についてお尋ねします。日本国中華民国との間の平和条約において、中華民国統治地域主権の及ぶところを、台湾及び澎湖島諸島と限定しております。限定主権と申しますか、中華民国中権中国大陸にまで拡大して解釈していないところに、あの条約の特徴があると思うのであります。当時、中華民国から拡大解釈の要請もあったかと思いますが、その間のいきさつを明瞭にしてもらいたいと思います。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日華平和条約適用される地域は、仰せのように、中華民国政府現実支配する地域に限る意味でございます。台湾につきましても、中国大陸につきましても、本件交換公文中華民国領土権の問題には全然無関係建前をとっております。中華民国政府が現に支配する地域に限る、こういう建前でできております。
  25. 戸叶武

    戸叶武君 この現に支配する地域というものが、非常に明確化されていないところに中国問題の混乱があると思いますが、あの際に、日本国全権委員から、中華民国全権委員にあてた書簡の中に、「この条約条項が、中華民国に関しては、中華民国政府支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」というふうに、向こうが切り込んできておりますが、これに対して、すなわち「又は今後入るすべての領域」とは何を意味するか、今の大平外務大臣説明を聞いてもはっきりしないのですが、この間の日本側立場説明してもらいたい。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約条項は、中華民国に関しましては、中華民国政府支配、すなわちコントロールのもとに、「現にあり、又は今後入るすべての領域適用がある」、これはお示しのとおりでございますが、これらの規定は、国民政府がこれらの地域を施政している事実を前提としたものでありまして、これらの地域領土権を有することを意味するものではないことは明らかでございます。コントロールという文字を用いたのも、こういう趣旨をあらわすためのものであると私どもは解しております。
  27. 戸叶武

    戸叶武君 この両者によって同意された議事録を見ますと、「又は今後入る」という表現は、「及び今後入る」という意味にとることができると了解するかとの中華民国側問いに対して、日本国代表は、「この条約中華民国政府支配下にあるすべての領域適用があることを確信する。」と答えておりますが、どうもなかなか用意周到な表現のようにも見えますが、だれにもあまりはっきりわかりませんが、もっとわかりやすく説明してもらいたい。
  28. 中川融

    政府委員中川融君) ただいまの日華平和条約の条文の解釈でございますが、外務大臣が申されましたように、要するにこれは中華民国政府が現に支配し、または将来支配するかもしれない領域にだけ適用されるということになっておるわけでございます。そうしてその附属の合意議事録におきまして、「又は」とあるのは「及び」と読むことができると思うがどうかという先方問いに対して、わがほう代表が、そのとおりである、ということを答えておるわけでございますが、その意味するところは、要するに、現在支配している所はわかるわけでありますが、将来何かの機会にその支配する領域がふえるかもしれぬ、そんな場合には、そういう所にも及ぶという意味だと、そう解釈するがどうかという先方問いに対して、そのとおりであると答えたことをその合意議事録ではっきりしているわけであります。それでは、将来、この及ぶかもしれない地域というのは何であるかというお尋ねもあったようでございますが、これは別に何にもきまっていないのでございまして、もし万一将来何かの機会に中華民国現実支配する領域がふえるというような場合には、そこにも適用されるということを、いわば抽象的に書いたにすぎないものでございます。
  29. 戸叶武

    戸叶武君 これは何でもないと言うけれども中国大陸にいる人から見れば、危険きわまる条約だと思うのです。現に支配している台湾、澎湖島というだけに限定しているかのように見えて、解釈のしようによっては、大陸反攻を認め、そうして大陸に進攻していって、それを占領するなり支配したら、そのところも認めよう、何か、暴力は直接行なわないが、暴力行使を行なって、あげた成果はそれも確認するというような、暴力奨励のような一つの条約の要素があるようにも見受けられるのですが、外務大臣どうですか。あの段階には、やむなくこういうことがつくられたのかもしれませんが、ちょっと近所迷惑じゃありませんか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 全くそういう約束はないのでございまして、白紙であるということでございます。
  31. 戸叶武

    戸叶武君 今のお答えは、白紙ですか、白痴ですか。そういうナンセンスな答弁をやっていちゃだめじゃないですか。現に支配し、将来支配するかもしれないというような、こういうような表現というものは、白紙とは認められないじゃないですか。ナンセンスですよ。それは日華条約に貫かれているものは、徹底した現実主義で、現実中華民国が統治している地域、その統治者を相手とする条約と見られない向きもあるのですが、解釈のしようによっては、必ずしもそうでないというふうに受け取れるところに、との日華条約の私はくせ者のところがあるのじゃないかと思うのですが、この条約はこれでよいと思っておりますか。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、戸叶先生と条約解釈についての論議でございます。条約解釈といたしましては、適用区域外の問題は、現に支配する以外の地域の問題は白紙に残してあるということを、私は条約解釈上そう解釈するよりほかに道がないんじゃないかということを申し上げたわけでございます。それ以上の問題は政策の問題であると思います。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 どうも政策の問題のほうがほんとうなことを突き詰めることになるかもしれませんが、政府にあらためてお伺いします。  台湾、澎湖島を除いた中国大陸を統治しているのは中華人民共和国政府であります。台湾国民政府に対しては、台湾の、澎湖島の統治、これをコントロールしているところの国民政府とは平和条約が結ばれているのですが、その他の地域とはいまだに平和条約が結ばれていない、これが事実でありますが、この事実に対しては、外務大臣御確認できますか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども解釈といたしましては、日華平和条約の第一条は平和の回復、これは中国日本との間の平和が回復したことを認めたものであると思っております。個々の条章の適用は、現実支配しまたは将来支配することのあるべき地域に限られるという性格条約解釈をいたしております。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 私のお尋ねしたのは、政府外交方針というものがきわめてリアルな現実主義の上に立っているように見受けられるのですが、台湾、澎湖島をコントロールしている政府日華条約によって平和条約は結んだが、現実に大陸をコントロールしている中華人民共和国は、政府とは平和条約をいまだ結んでいないと思うがどうかということだけを聞いているですから、その一点にしぼってお答え願いたい。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、中国にある、中国本土にある北京政権とは何ら外交関係を持っておりません。
  37. 戸叶武

    戸叶武君 非常に正直な認識だと思います。ここで問題になるのは、今後の問題で、今まで池田総理大臣なり外務大臣衆議院段階その他の答弁を聞いておりますと、戦争をやった相手国の中華民国国民政府平和条約をすでに締結したのだから、問題はすべてこれによって片づいているかのような解釈にもとれるような答弁があるのですが、この辺をひとつ微妙な関係にありますから総理大臣からお答え願いたい。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他の機会にたびたび申し上げておりますごとく、われわれは中華民国と戦い、中華民国平和条約を結んだのでございます。したがいまして、第一条に言っております戦争終結の問題あるいは賠償を放棄した問題は、もう自由チャイナとの間にはっきりしておるとわれわれは考えておるのであります。
  39. 戸叶武

    戸叶武君 政府のリアリズムが、この辺になると未来派みたいに全くおかしくなってしまうのですが、日本中国との戦争で一番の被害を受けていたのは中国大陸であります。台湾、澎湖島をコントロールする国民政府が大陸からの亡命政権的な政権になって、それとの講和条約を結んだが、戦争の相手は中華民国政府であったのに相違ないが、日本政府が認めるように、台湾と澎湖島きりかコントロールできない相手と平和条約を結んで、それで中国全体を平和条約を結んだというような形式論というものは、十八世紀的の外交官の認識なら別ですが、よかろうが悪かろうが、現実をリアルに突き詰めて、その現実の上に外交路線をつくり上げなければならない現代においては通用しないのではないかと思いますが、外務大臣からお答えを願います。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、日華平和条約は、台湾と澎湖島という限定した地域適用があるという建前でつくられたものであるということでございまして、私どもはそういう性格平和条約として受け取っておるわけでございます。それ以上の問題は、いわばこの平和条約の条章からは出てこない問題でございまして、政策の問題であると思います。
  41. 戸叶武

    戸叶武君 政府外交政策の致命的欠陥がここに浮き彫りされておりますが、これ以上押し問答してもいたし方ありませんから、問題を展開していきます。  イギリス及びフランスが、中華人民共和国をすでに承認し、イギリスは台湾に領事館を置いておりますが、このイギリス及びフランス台湾国民政府との関係、こういうことを日本政府はどのように理解しておりますか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 北京政府との間に正規の外交関係が存在するというように承知いたしております。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 何だかたよりない答弁ですね。まあ、苦しいのでしょうが、結局日本は、アメリカの中国封じ込め政策の重荷を背負わせられて、身動きができない状態にあるような印象が深いのですが、それでは池田総理にお尋ねしますが、中国について、中国は一つか二つか、それとも一つの中国、一つの台湾考えているか、この中国観を率直に承りたい。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げましたごとく、われわれは、中華民国との間に友好関係を結んでおるのであります。中国は一つか二つか、あるいは一つの中国、一つの台湾とかいうことは、われわれは考えたことはございません。
  45. 戸叶武

    戸叶武君 中国の人民共和国政府も、台湾国民政府も、中国は一つであると断言しております。それにもかかわらず、二つの中国とか、一つの中国、一つの台湾とかということを言っている人は、まさにこれナンセンスだと思いますが、その点では、やはり池田さんの見解はわれわれに近いようにも見受けられるのですが、フランス政府は、一つの中国としての中華人民共和国政府を認めていったのでありまして、台湾中国に帰属するという考え方であります。イギリスも同様の見解と思いますが、イギリス、フランス日本は、利害関係その他において、若干異なるところがあるでしょうが、イギリスやフランスが自由国家群の中にありながら、これをあえてなし得るのに、日本がそれができないという一番の理由は、どこにありますか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の前提が違うようでございますが、フランスやイギリスは、台湾中国のものであると認めておるという前提でございましょう。私らは、そうイギリス、フランス考えておるとは思っておりません。
  47. 戸叶武

    戸叶武君 どう考えているのか、どういうふうに見ているんですか、池田さんは。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ドゴールさんの気持ちは、まだはっきりしないようでございます。だから、あなたが言うように、台湾中共のものだとドゴールさんはまだ言っておられぬようでございます。また、イギリスは、台湾中共のものであるとは認めていない。講和条約によりまして、日本台湾、澎湖島を放棄しました。しかし、これは、イギリスも調印しております。放棄しただけで、帰属は中共政府のものとイギリスは見ていないと私は見ております。
  49. 戸叶武

    戸叶武君 しかし、イギリスやフランスが、台湾、澎湖島をコントロールしている中華民国を、唯一の中国主権者などという時代錯誤の認識からは離脱していると思うのです。そこにこの現実をリアルに見、将来に対して眼を向けている政治家と、うしろ向きの歩み方をしている池田さんとの相違があると思うのでありますが、日華条約を結んだ当時の責任者であるあなたの先輩の吉田茂元首相が、近く台湾を訪問するということであります。あなたの書簡を持っていくということでありますが、これは、何の目的で行かれるのですか。蒋介石の苦悩している心境打診のために行かれるのでしょうか。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 吉田元総理は、蒋介石氏と多年じっこんの間柄にあられるのであります。したがいまして、両者がいろいろアジアの問題、あるいは世界の問題につきましてお話しなさるようでございます。で、私は、けっこうなことだと考えております。したがいまして、せっかくおいでになりますので、久しぶりに、私の信ずるところを蒋介石氏にお手紙を差し上げるのもいい機会だと思いまして、私の手紙をおことづけする予定でおります。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 私たちは、日華事変の悲劇は、すなわち、近衛声明による、蒋介石政権は認めないというような、ああいう動きのとれない外交をやったところに、どろ沼に落ち込んでしまって、進むことも退くこともできなくなってしまった苦い経験を持っております。いま日本外交並びにアメリカの外交は、中国並びに東南アジア地域に対して、近衛声明が犯したと同じような、実体があるものを否定し、存在するものを否定するような、ザインとゾルレンの混乱、現実を無視した十八、九世紀的な形式外交の観念で事を律しているところに、私は、身動きのできない状態がつくり上げられるのじゃないかと思います。アメリカにはアメリカの立場があると私は思いますが、この行き詰まりを打開するというのが、日本外交の本義でなければならないと思います。中国の周恩来総理は、二月四日、ソマリアの中国大使館で、「アメリカ政府台湾台湾海峡を占領し、中国領域を侵犯することにより国連憲章を侵犯した。アメリカが台湾台湾海峡にとどまる限り、合意は不可能である」と、アメリカを非難しておりますが、しかしそのあとで、「われわれは、すべての国際問題が、武力によらず平和的に解決できるものと確信している」と、アメリカとも話し合いによって和解ができるというような呼びかけをしていると私は思うのであります。いま日本の置かれている立場というものは、中国とアメリカが憎しみの中に対立しております——キューバ事件前までは、ソ連とアメリカがあれほどの激しい抗争をしておりましたが、一たび話し合いの場を持ったときに、あのむずかしい問題を打開していったじゃありませんか。ケネディは殺されていきました。殺されていっても、ああいう危機を救った政治家として私は歴史に残ると思うのです。どろ沼にずるずると落ち込んでいくこの今日の状態を、池田さんは、いかように打開しようとするか。この隣国にあって、中国を一番理解しているのは日本のはずです。また、アメリカを中国以上に理解しているのは日本のはずです。この間に立って、ここにユニティーをつくり上げるという努力が、ほんとうの私は外交だと思うのですが、池田さんは、どのような御見解ですか。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見は承っておきます。お話のとおり、中国日本は非常な近親感を持っております。また、アメリカとも、外交問題につきましては、忌憚らく意見を交換することになっております。そうしてまた、この問題は重要な問題として国連でも取り上げられております。また、アメリカと中共の間におきましても、ワルシャワ会談等、百二十回もやる、いろいろな情勢はございます。われわれとしても、今後アジアの平和、世界の繁栄のためには、努力を続けていきたいと考えております。
  53. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカすら、ジュネーヴ、ワルシャワ会談を通じて、中国と接触しております。日本でも具体的に、中国とアメリカがワルシャワ会談をやっているような形において、会談の場を持つという意図はありませんか。接触していくといいますが、接触にもいろいろありまして、そで振り合うも何とかの縁といいますが、ただ接触ではわかりませんから、具体的な接触方法を承りたい。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民間におきましてはいろいろ経済交流をいたしております。御承知のとおり、昨年は一億二千数百万、一昨年は八千四百万、一昨年年は四千万、こう、幾何級数的とは申しませんが、両者の経済交流は非常にふえていっております。また、貿易額のみならず、昨年は、二ヵ所におきまして日本の見本市を開催しております。また今年も、五、六月ごろには、東京と大阪で中共の見本市を開く予定に相なっております。また、政治家の一部の人、財界の人も相当行き来をしておることも御承知のとおりでございます。私は、今後におきましても、郵便とか気象の事務につきましては、両者の間に密接な関係を樹立することにやぶさかではございません。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 いま池田さんが述べられたところだけを聞いていると、池田さんは若干前向きの姿勢で中国問題を解決しようとしているんじゃないかというふうに、好意的な見方もありますが、しかし、この台湾国民政府を承認している国々でも、中華人民共和国政府政府間貿易協定をやり、通商代表部を設置している向きもあるのに、日本政府では、民間貿易の進推だけにまかせておって、なぜ政府間協定なり通商代表部を置けないのか、そこいらの関係がはっきりしないので、その関係説明願いたい。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ヨーロッパとかアフリカ等の国と日本とは、置かれた立場が非常に違っております。ことに中華民国とは友好関係を持続しております。そうしてまた、中共とは歴史的、地理的ないろんな関係もございますので、ヨーロッパ諸国のように、何と申しますか、気楽にと申しますか、他に影響することが少ない立場とは、よほど違うことを考えなきゃならぬと思うのであります。私は、いま前向きとかいう言葉を言われましたが、昭和二十九年の自由党の幹事長のときにも、すでに中共との経済交流をすべきだということを私は言ったことを記憶しております。私の考え方は、前から中華民国とは正常の国交を結んでおるけれども中共との関係で、貿易は何ら差しつかえないということは、私の背からの考えで、その考えで進んでいっておるのであります。ただ、日本の置かれた立場というものは、ヨーロッパ、あるいはアフリカ諸国とは違うことをひとつお考え願いたいと思うのでございます。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 私は、政府が、衆議院段階の答弁でも、やむを得なければ、フラストレーションにしてもしようがないとまで思い詰めているのは、一つには、日華条約と、もう一つは、蒋介石との問題、すなわち、戦争の相手国の指導者であった蒋介石氏が、戦争が終わったときに、日本との憎しみを継続させないために、賠償その他を廃棄してくれた、このことの感激は、私たちでも忘れられないと思います。しかし、それとこれとをごっちゃにしては、私はいけないと思います。ヨーロッパでも、あれほど何百年にわたって独仏が血を流して戦いながらも、その憎しみを乗り越え、国境を乗り越えて、今日のEEC、経済的な政治的な統合がなされて、ソ連圏の圧力に、アメリカの圧力に対応しようという姿勢ができているときに、日本中国との関係というものを、あれ以上に、私は、イデオロギーや国の立場が異なっても、経済的な文化的な関係においても結びつけていかなければならないときだと思います。これは、中国人の指導者というものは、人柄としては、立場が違ってもおのおの偉いのです。毛沢東氏にしろ、周恩来氏にしろ、陳毅氏にしろ、私は、蒋介石と違わないと思います。それ以上の私は道義性を持っていると思います。毛沢東は、自分の故郷湖南の先輩であるところの屈原を一番尊敬しております。秦の大国に圧力をかけられて、六国が戦国時代に秦に滅ぼされたときに、斉の国と楚の国の悲劇というものは、中国史の中においても、涙なくしては読めないような歴史的記録が出ておりますが、そういう点において、日本中国との今後の関係を結ぶというのは、国民政府たりと、中華人民共和国の指導者たりと、憎しみをそこに刻んで、次のステップを踏もうという考えはないと思います。私は、やはり蒋介石に対する一つのわれわれの感激を忘れないと同時に、立場は違っても、しかし蒋介石はそうだが、中華人民共和国の指導者はそうでないというような間違った芽与え方を捨てなければ、前向きな姿勢で中華人民共和国との間の国交調整というものはできないのだと思います。現実において非常にむずかしい面があるということは認めますが、しかし、それというのも、ダレス以来のアメリカの間違ったコンテインメント・ポリシーといいますか、とにかく封じ込め作戦の一環として、日本外交が規制されているところに、今日、弁慶の立ち往生のように身動きができない。前に行こうという池田さんの意図はわかるが、現実は、足はあとのほうに行っている。頭ばかり突っ込んで、足はとにかくあとのほうにずれている。これじゃだめだと思うのですが、池田さんの前向きの姿勢は、どういうふうに行き詰まりを打開しようと考えておりますか。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共のほうでも、アメリカと話し合いを拒むものではない、また、アメリカの政府の方も、ヒルズマンも、中共との話し合いを全然断わるわけではないと言っておるのが、いまの実情でございます。しかし、現実の問題になりますと、なかなかむずかしい。したがってわれわれは、こういう重大な問題は、一応国連の場において十分審議して、適正な対策を得ようと努力しておるのであります。だが、国連の場だけで、ほかは何もないということになりますと、これは情勢の変化におきまして、先ほど申し上げましたように、中共におきましても、アメリカにおきましても、その他各国におきましても、いろいろ考えがあることでございます。われわれも、この問題につきましては、相当重要な地位にあるものでございますから、いろいろな考えをめぐらしまして、できるだけ早く全部の和解が達成するよう努力したいと思っております。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 日本の古い形の外交官が論議しているような、旧式の主権論というものを、今日では列国がそれほど問題にしていないと思います。きょうは十二日で、きのうは十一日でありますが、あの一九四五年二月十一日、十二日のヤルタ秘密協定、ルーズベルトチャーチル、スターリンと共産党のヘスの手引きによりつくり上げたあの秘密協定の制約によって、日本は南樺太、千島を戦争に敗れたために奪われ、中国は蒙古人民共和国の名において宗主権が失われ、フランスはフレンチ・チャイナからその後追い飛ばされている。アメリカ、ソ連、イギリス、フランス中華民国の五大国が、カイロ会談にしろ、ポツダムの宣言をしたときでも、表舞台には出されているけれどもフランスの戦力の低下なり、中国の戦力の低下なり、あるいは戦争中における秘密漏洩がするかもしれないという形で、舞台裏からシャット・アウトされて、勝てる国々のアメリカとソ連とイギリスが組んで世界を今日までコントロールしてきた中には、何といってもアメリカ第一主義のために、ソ連のために、不平等条約がわれわれの中に押しつけられていると思います。ヤルタの精神はポツダムにも生き、サンフランシスコ講和条約にも生きておると思います。そういう形においてこの中国側は、国民政府がどれだけ苦悩し、また中華人民共和国の指導者がどれだけ苦悩してきたかわからない。それがいま中ソ論争の形において新ヤルタ体制への抵抗としてあらわれ、ドゴールの一撃によってやはり新ヤルタ体制への痛撃となってあらわれてきておるところに、もはや戦後二十年をけみせんとするときに、敗戦国の外交の基調の中に抵抗の精神がなければならない。一切の不平等条約をこの段階においてわれわれが破棄し、清算していかなければならないという形において、やはり私は外交に一つの生命がかけられなければならないと思うのであります。何がゆえに日本が、国後、択捉が——文書だけでは取れません。軍隊でも取れません。それはアメリカの、日本がかつて大陸で失敗したような防衛政策——コンテインメント・ポリシーを捨てて、ほんとうにソ連とアメリカだけがうまいことをやろうというけちな考えじゃなくて、ほんとうに融和をつくろうというかまえができなければ、私は平和はつくり上げられない。そのむずかしい問題をほんとうに切り開く場が日本に与えられている。東西対立の中に、南北抗争の中のこの十字路に立って、大陸の燈台であり、太平洋の燈台であるような役割が、日本のいままで歴史に経験しない大きな役割がここに課せられているときに、日本総理大臣外務大臣も身動きができないで衣川のやかたで弁慶立ち往生の往生をするとは情けない。この打開を——日本の運命だけでなく、アジアの運命、世界の運命を打開するためにどう戦っていこうとするか、私は池田さんの見識と経綸を伺いたい。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれはヤルタ協定を認めておりません。サンフランシスコ条約によりまして、その平和的な気持ちで今後の外交をやっていこうとしておるのであります。アメリカ、ソ連がどういう考えで、またどういう気持ちでヤルタ協定をやったかということは、われわれは関知しないところであります。
  61. 戸叶武

    戸叶武君 私、のれんに腕押しで、はなはだ残念です。馬の耳に念仏と言うとおこるかもしれませんが、いまほんとうに世界にとって一番大切なときに、このターニング・ポイントに立っておるときに、このチャンスを失ったら、日本世界の場においてどういう機会が得られるのですか。ほんとうに、中国ももがき、アメリカも苦しんでいるのです。日本の、またアジアのほんとうの苦悩の声をアメリカの指導者や民衆にたたきつけるだけの見識ある人が出てこないことが、世界の不幸を救うことができないのです。私たちは、そういう意味におきまして、これは池田さんでしようがなければ、ほかの人でも何でもわかってもらいたいな、ほんとうにだれか。ドゴールの偉さは、政治家としての偉さでなくて、国のために死のうという、そうしてその衆知を集めて何が大切かの回答を持とうというところに、私は大きな一つの衝撃を与える源泉となっていると思うのです。技術の外交じゃないのです。解説の外交じゃないのです。魂の外交があの中にこもっているからです。魂のない人と話をするのはつらいな。(笑声)  そこで、今度は局面を展開します。いま一番問題なのは、日本の経済復興は、池田さんの話を聞いていると、全部池田さんのせいのようなことを言っておりますが、私はやはり、そうでなくて、戦争に負けたドイツなり、イタリアなり、日本というものの民族的なエネルギーというものが蓄積されていたので、それが戦争に敗れた荒廃から民族の目ざめによって復興していることは、これは西ドイツなり、イタリアなり、日本の奇跡を見ればわかると思うのです。ヨーロッパはマーシャル・プランによって復興の足がかりを持ちましたし、日本朝鮮事変において特需の恩恵をこうむりました。しかし、朝鮮事変のころ八億ドルの特需があったが、いまでは三億ドルを割っておると思います。貿易面のアンバランスを特需においてカバーした時代、それができなくなって外資導入によってこの数年来カバーしてきた時代も、開放経済体制の中に私はくずれつつあると思うのです。そのところにいまの外貨危機というものが叫ばれておると思うのでありますが、通産大臣に承ります。いまの貿易の状態、特に、今後指向しなければならないソ連、中国、北鮮等の貿易はどうなっておるか、チンコム、ココムの制約はどうか、それから外貨事情はどうなっているか、そういう点を承りたいと思います。
  62. 福田一

    国務大臣福田一君) 日本のいまの貿易の状態でございますが、これはもう戸叶さんのほうがむしろよくおわかりであると思うのでありますけれども、何といっても、国別に申しますならば、アメリカとかイギリスとかEECというような先進工業国との間の貿易と低開発国との貿易が、大体半々といいますか、まだ低開発国のほうが若干多いというくらいの姿であります。一方品物別に見てみますと、いわゆる重化学工業がだいぶふえてきましたけれども、まだいわゆる軽工業品のほうがウエートは多いというような段階になっておると思うのであります。一方世界の貿易の総額というものは千三百億ドルにのぼっておるのでありますが、日本がそのうちにおいて占めておる比率というものはまだ三−四%前後でございまして、非常にウエートが低い。こういうような段階にあって、日本としては、しからばどういうふうにしてこの日本の経済を持っていっていいかということになりますというと、資源の少ない日本のことでございますから、どうしても貿易にたよらざるを得ない、やはり何としても輸出にたよらざるを得ないということになってまいるのでありますが、しからば現実はどうであるかということになりますと、貿易のバランスは何といってもそれほど黒字が見込まれるという状態にはなっておりません。そうして、今後の姿を見てみますと、依然としてやはり、貿易外の収支でありますところの、いわゆる船の関係、あるいはまた観光の関係等々におきまして、赤字が相当累積をしておる。この傾向をどういうふうにして食いとめていったらいいかということに一番日本のいまの経済の問題点がしぼられておると思うのでありまして、私たちは、何としても、これを直していきますには、輸出を伸ばす、その輸出を伸ばすために産業に力をつける、こういう考え方ですべての政策を推し進めていくと同時に、一方において、赤字が累積しておりますのは、一つはこういうような船あるいはまた観光その他の面におけるものであります。こういうものをどういうふうにして減らしていくかということ、これが大きな問題であります。また、もう一つ考えていかなければならないことは、日本戦争の後におきまして非常に資源その他技術が劣っておりまして、これを海外から入れております関係上、その意味での今度は利払い、あるいは資本による利払いその他がやはりふえております。しかし、こういう技術を導入することによってはじめてやはり日本の産業に力がつくということを考えてみると、いましばらくこれも認めていかなければならないのではないか、こういうような感じでいまの日本の経済並びに貿易の問題を見ておるわけであります。
  63. 戸叶武

    戸叶武君 チンコムやココムとの関係、東西貿易の拡大の問題。
  64. 福田一

    国務大臣福田一君) チンコム、ココムの問題でございますが、これは私はやはり、ココムの問題は、日本がこれは国際的な関係において対象となっておりますし、いまにわかにこれを解決するということは困難かと思います。チンコムの場合は、特別いま私は日本として特に関係があると存じておりませんが、いずれにいたしましても、東西貿易の関係になりますというと、これはもう皆さんおわかりのことと思いますが、何といっても日本の経済力は非常に弱うございまして、延べ払いとかあるいはその他のそういうようなやり方で貿易の額をふやしていったのでは、日本の経済がもたないと思うのであります。また一方において、南北の問題といいますか、低開発国との問題も日本考えていかなければなりませんから、私は、中国やあるいはソビエトの貿易もだんだんふやすという前向きの形でやることには、これは賛成でございますけれども、しかし、そのほかの国−東南アジアとかアフリカとかあるいは南アメリカというようなところの貿易の関係等も十分頭に入れながら、あまり一方に偏することのないようにする、そうして全体としてのレベル・アップをしていく、こういう形で貿易を進めるのが至当ではないかと考えておるところであります。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 通産大臣が船の問題や観光収入の問題に触れましたが、イタリアは、ローマ・オリンピックを機会として、いままで移民な海外に送り出しておりますが、いろいろな方法によって、あのオリンピックを機会に、貿易面におけるアンバランスを観光収入においてカバーしようという考え方で、七億ドル以上の外貨収入を得ておりますが、オリンピック担当大臣の佐藤さんは経済関係のベテランですが、オリンピックの施設だけに夢中になっていないで、どうぞオリンピックを機会に、日本が、海外に行っているところの邦人や、それから日本のような気候もいいし景色のいいところもないんだから、こういうところにどうやって観光収入を増大させるかという何か考え方を持っておりますか。観光の問題は運輸省ともまつわっておりますが、ひとつオリンピックに関係のあることですから、特にこれはイタリアの例を引いて、説明を願います。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは運輸省がお答えするほうがいいかと思いますが、私オリンピックを担当いたしておりますので、関連があると思いますから、お答えいたします。  わが国の観光収入、それは三十七年度で約二十七万八千人くらい来ております。これは前年に比べて一一%九増、三十八年度も約一一%増、これが十月の現在でございます。しかしながら、イタリアなどに比べますと、その収入はまことに少ない。金額にいたしましてわずかに一億六千万、たぶん三十八年は二億ドル程度かと思います。この国際観光政策の審議会におきましてこれを取り上げて、四十五年には百二十五万人を誘致したい、こういうことでいろいろ計画をいたしております。オリンピックはたいへんいい機会だと思いますので、オリンピックを成功さすという、そういう意味においては、日本のよさを十分理解してもらう、そうしてこの長期観光計画に十分の効果をあげるように、かようにいたしたいものだと、かように考えております。
  67. 戸叶武

    戸叶武君 いま一番心配なのは信用インフレだと思いますが、日銀副総裁の佐々木氏は、一月二十九日の金融部会で、日銀の貸し出し増加は三十七年の一兆七千億円が三十八年には三兆億円にふくれているということを言っておりますが、シカゴ大学のM・フリードマン教授が、日本経済のインフレを、消費物価の値上がりの面からだけでなく、貨幣量の増大と、この二つの面から追求しておりますが、彼がかつて指摘したのは、日本銀行券の発行高が三十八年四月に一兆五千七百五十億円に達している、これが三十七年四月の一兆一千七十億円よりわずか一年間に三四・二%もの膨張をしているという点を指摘していますが、実情は今日、大蔵大臣、どうなっておりますか。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに通貨の膨張は御指摘のとおりでありますが、通貨の膨張は経済の伸びによって行なわれているわけでありまして、この通貨の状況が直ちに消費者物価に関連性を持つものであるというふうには考えておらないわけであります。
  69. 戸叶武

    戸叶武君 開放経済体制になると、金融策政のコントロールによってすべてをコントロールしていかなければならない段階でありまして、こういう物価の値上がりとか、この通貨膨張とかというものを、大蔵大臣のように簡単に考えておっては、とんでもないことになると思います。しかも、日銀の佐々木副総裁が、この法人預金の総額が飛び抜けて大きい理由を説明しておりますが、全体的に金融の問題がむずかしい段階に立っているのに、この貸し出し増三兆円が全部産業資金として使われたと仮定すると不可解だと首をひねっておりますが、日銀の副総裁が首をひねるようなこの不可解な問題はどこから起きておりますか。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに貸し出しが三年間で倍ぐらいに膨張いたしております。この問題に対しまして、いま大蔵省でも十分検討しておるのでありますが、端的に申し上げると、生産が少し高いということであります。同時に、製品の売りさばきに対して、現金決済よりも手形決済、割賦販売というような制度が急速に発展をしてまいりましたので、企業信用は相当膨張しているということは事実でございますので、金融の正常化をはかりますためには、これらの行き過ぎた貸し出しを押えたいという考え方で、昨年の十二月から日銀が各種の金融調整をとっておるわけであります。しかし、一律画一的なきめ方をやりますと、かかる膨張しておるものが急に引き締められるということになると、企業間に特にいろいろな問題が起きます。このために黒字倒産が起こったり、いろいろな問題が起きますので、これらの問題に対しては、一−三月十分事情を見ながら、また金融機関及び企業自身のオーバー・ボローイングを解消するような方向へ指導しながら、臨機応変の処置をとりながら、できるだけすみやかに収縮の方向に持っていきたいというふうに考えておるわけであります。  でありますから、一部、日銀が公定歩合の問題等に対しも考えておるのに、大蔵大臣がとめておるんだというような議論がありましたが、そんなことではなく、日銀自体や金融機関もこういう実際の状態を十分把握して、実際に合うように、緩急よろしきを得た金融政策を行なわないと、目的を達成するため弊害が非常に大きくなるということでありますので、時間をかげながら、国民生活やまた企業間のいろんな問題を起こさないような慎重な配慮をしながら、金融調節を行なっておるわけであります。
  71. 戸叶武

    戸叶武君 総理の御都合の関係で、総理に一点だけ御質問します。  それは、臨時行政調査会の問題でありますが、時限立法で本年三月三十一日限りとなっておりますが、九月三十日まで六カ月延長を求めているようですけれども、総理はこの延長を認めるつもりか。総理の施政方針演説におきましては、行政改革をしっかりやろうという心がまえが出ているように見えますけれども、いま何か、臨時行政調査会だけが孤立して、たとえば太田委員のような人は、太田試案をひっさげて当たっておりますが、官僚の包囲攻撃を受けて袋だたきにあっているような状態でありますが、ほんとうに改革をやろうとするならば、総理大臣に相当の決意がなければこれはできないと思うのですけれども総理大臣並びに行管長官に、この間のいきさつを聞きたいと思います。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 臨時行政調査会は、わが国の行政制度につきまして再検討をお願いする必要がある、こういう考えのもとに法案を提出し、国会の御承認を得て、せっかくいま鋭意検討中であるのであります。まだ結論が出ませんので、時限の三月を九月まで延ばして、もっと研究いただくように、いまその法案を国会に提出いたしているはずでございます。したがいまして、十分御調査の上、りっぱな答申が出ることをわれわれ期待しているのであります。そうして、政府はその答申を尊重いたしまして、政府責任におきまして適正妥当な行政組織の改正をやりたいと考えております。
  73. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 臨時行政調査会におきましては、発足以来、非常に熱心な行政機構の改善につきましての検討を続けられている次第でございます。いよいよ最終段階になりまして、各部門の最終調整の段階にきているのでありますが、御存じのように、臨時行政調査会の発足は、国会関係がございまして、約七ヵ月ほどおくれて発足いたしました。そういう関係がございまして、今回六カ月の延長の法案を出した次第でございます。何ぶんよろしくお願いします。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣にお願いしますが、この間の日米貿易経済合同委員会においてはどういう成果があったか。前のいわゆるケネディ・ショックでありますか、利子平衡税の問題が問題になりましたときに、日米貿易経済合同委員会において何らか打開するかのような答弁が国会ではなされておりますが、私は、カナダと違って、日本におきましては、為替管理的な面もありまして、カナダが受けた一晩に二億ドルからのショックのような通貨危機を呼んでないのだから、これはアメリカの政策として、このことは日本政府が期待するような結果は導き出されないのだということを追及しましたが、とうとう日米貿易経済合同委員会まで引っぱられましたが、結果はどうなっておりますか、  もう一つは、そこで中共貿易その他の問題に対してはどういうことが問題になったかをお聞きしたいと思います。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一月末に開かれました日米貿易経済合同委員会は、第三回目の委員会でございます。今回の委員会の特色といたしましては、日米間の経済関係、貿易関係の改善拡大をはかっていく上におきまして、これは日米関係だけで解決できる問題もございますが、さらに高次の国際的な仕組みのもとで解決しなければならない問題が出てまいりました。関税一括引き下げ交渉にいたしましても、あるいは国連で近く持たれます低開発地域に対する貿易開発会議にいたしましても、そういった国際的な仕組みを通じて解決するということが、より実際的であり効果的であるという認識に立ちまして、今度の委員会の一つの特徴としては、そういう国際会議に臨む予備的な交渉、会談という性格を帯びておったことが特に印象的でございました。  それから日米間の経済問題といたしましては、従来から取り上げられているもろもろの問題が率直に討議されたわけでございます。ただいま御指摘の利子平衡税問題も、きわめて率直に意見の交換が行なわれたのでございます。あとの共同声明でごらんいただければおわかりになりますように、基本的な了解といたしましては、いま戸叶さんが申されたように、去年の八月の初めに私が参りましてワシントンで出しました共同声明を再確認する、そういうことになっているわけでございますが、利子平衡税法案全体の構造からまいりまして、その運用面にわたりまして、技術的に、日米間の起債その他についての問題につきましては、大蔵大臣がいろいろ日米合同委員会または合同委員会に並行いたしました個別の会談で強調されたことと思うのでございます。ただ、共同声明にあらわれましたとおり、基本的なことはこの前の共同声明を再確認したということに相なっておるわけでございます。  それから東西貿易の問題につきましては、今度の合同委員会が特別な課題として取り上げたという性質のものではございませんで、従来とも討議しておった問題を今度の委員会におきましても討議したということでございます。ただ一点指摘すべき点は、アメリカ、カナダが多量の小麦を共産圏に売り渡すということになりました場合の船腹の活用という点につきましては、わがほうの船腹の活用につきましても十分な配意を要望しておいたということでございます。
  76. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 戸叶君、だいぶん時間が過ぎましたから、簡潔にお願いいたします。
  77. 戸叶武

    戸叶武君 一つだけです。  前のジロン・大平共同声明を幾ら読んでみても、中身が何もないので、御苦労という儀礼的な共同声明ですから、その点は残念だと思います。  さらに一点、赤麻遊水池の問題ですが、防衛庁長官にお尋ねします。県の太田・大泉飛行場の返還問題に関連しまして、渡良瀬川の遊水池が一番の候補地だということを防衛庁側では言っておるので非常に迷惑しておるのですが、あの遊水池というものは深い因縁がありまして、大臣も御承知のように、田中正造が渡良瀬川の鉱毒事件で死命を賭して戦った古戦場でございます。一歩誤ると、これはいろいろな大問題が起きてくるのでありまして、泣く泣くあの谷中村の人たちは北海道の網走の刑務所に近いような、島流し同様な僻地に栃木部落をつくって移動させられておりますが、飛行場太田のほうは首都圏に入ったから、今度は、渡良瀬川のあの土地があいているから、あそこに持ってこいなんといっても、付近の住民というものは命がけでこれに抵抗すると思いますが、住民の意思を無視しても、あそこのところはちょうどいいからというような形で飛行場にするつもりですかどうですか。きのうあたりも陳情に来ていますが、だんだん私は不穏な空気というものが出てくると思いますが、御承知のように、渡良瀬川の鉱毒事件というものは、あの明治三十四年時代を震憾させたような一大暴動とも化したことがありますので、軽々卒々にそんなことをやると、えらいことになると思います。これはおどかしじゃありませんが、慎重な答弁を、防衛庁長官並びに施設庁長官ですか、そういう人たちに願いたいと思います。
  78. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) お答えいたします。  太田・大泉飛行場の返還問題は、御存じのとおり、三、四年前から懸案でございまして、昭和三十五年の十月に、日米特別施設委員会でわがほうから返還の要求を正式に出しました。翌年の四月に、アメリカ側から、返還には応ずるけれども、代替地をさがしてもらいたいと、一定の条件をこまかく付しまして申し入れがございました。自来、相模原から渡良瀬川遊水池、習志野、富士その他各所を調査いたしてまいっておるのが現状でございます。御指摘の渡良瀬川の遊水池は、御案内のとおり、約一千万坪でございます。アメリカ側の要求は、五%・五十万坪という条件、一つの候補地ではございますが、こういう演習場その他の問題は、あくまで地元の方の理解と協力を得て円満に話し合いを進めるということが当然でございますので、御指摘の点は十分注意して今後も処してまいりたいと考えております。
  79. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。  暫時休憩、午後一時に再開いたします。    午前十一時四十五分休憩    ————・————    午後二時二分開会
  80. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これから予算委員会を再開いたします。  再開の時間が、参議院本会議における総理大臣、大蔵大臣の出席要求のため延引いたしました。まことに遺憾に存じます。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。山本伊三郎君。
  81. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、ILO八十七号条約に関連しまして、冒頭に池田総理にお尋ねしたいと思います。  池田総理は、常に、本国会で、この第四十六通常国会でILO八十七号条約の成立をさすという意味のたびたび発言をされておりますが、現在もなおそういう考え方でおられるかどうか、まず冒頭にお聞きしたいと思います。
  82. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび言明しておるとおり、ぜひとも今国会で通過させたいと念願しております。
  83. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 しかるに、そういう総理の考えであるにかかわらず、自民党内にこの問題については相当いろいろ問題があるように聞いております。しかし、それは新聞紙上のことでありますので、どういう点が、この前の通常国会の過程で、自社両党において了解のできた倉石修正案なるものがどういう点で問題になっておるか、この点をひとつ明らかにしていただきたいのであります。
  84. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府案として御審議願うべく提案いたしておるのでございます。これを中心にいろいろ御議論願いたいと思います。そして妥当な結論が出ることを期待しております。
  85. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう通り一ぺんのことで言っておるんじゃないんです。もうすでにこの問題は国際的にも微妙な段階にきておると思うのです。すでにモースILOの事務総長も三人委員会の派遣すら腹をきめておるようでありまするが、この段階でありますので、できれば——もうすでにこの前の通常国会において話し合いが一応自社両党でついておると思うのです。それすらもいかないという。どこに問題があるのか私らでは実は理解ができませんので、できれば、この機会でありますので、国民に、こういうところが与党としては問題があるんだというところを明らかに実はしていただきたいというのが私の質問の趣旨であります。
  86. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会で御審議願うべく提案しておる政府案というものがございますので、これでひとつ御議論願います。与野党の間でと申しますか、わが党と社会党さんのほうでいろいろお話し合いがあったことも聞いております。しかし、いずれにしてもそういういろいろな問題、また、民社党さんのほうの意見もおありでしょうから、ひとつ国会という場所で十分論議をしていただきたい。私はいろいろな意見につきましても耳にしております。私の意見も持っておりますが、とにかく政府案というのを提案しておるのでございます。これを中心に御審議願いたいと思います。
  87. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうその通り一ぺんのことであれば、ここであなたに質問する必要ないのです。あなたはまあ総理大臣としての資格と同時に与党の自民党の総裁としてやはり責任があると思います。この問題はすでに過去四年間、国会でもう煮詰めてきた問題なんです。その問題が何か与党、いわゆる自民党内部の問題で進捗しないという感じを国民は持っております。あの倉石修正案なるものをわが党は満足をしてこれを受け入れておるものじゃないのです。譲るべきものは譲って、組合関係は相当反対がありますけれども、譲って、ああいう修正案という一つの協定というものができたのですね。これがいま与党内部の問題で、じんぜんこれが特別委員会すら開けないという。私は国の一つの恥じゃないかと思うのです。与野党間にあるいは話し合いをしてもらったらいいという総理の国会における表面的な答弁ではもう済ませない段階にきておると私は思う。この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。どういうところが政府としても、あるいは与党としても話に乗れないのだ、その点を私は明らかにしていただきたいというのが私の質問の要旨なんです。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どういう点が問題になっておるかということは、万般にわたって国会で御議論なさることが私は適当だと思います。政府案として出しておるのでございます。それにつきまして与野党批判があれば十分批判を、御論議願うことを国民は期待しておるのじゃないかと思います。
  89. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は冒頭に、あなたにこの国会で成立することをやはり希望されておるかどうかという質問に対して、熱望しておるという意味の答弁をされたのです。この国会で成立するということは、これはもうあなただけではないと思います。これはもう国際的な問題になっておるのでございますから、こういう点からいきまして、もうこの段階になれば、こういう点がひとつ問題になっておるのだが、政府としてはこういう考えでおるのだということをもう述べてもいい時期じゃないですか。それが国際的にどういう影響をするか、むしろ私はいい影響をすると思う。一体、日本国会は何をしているのだ、ILO八十七号の条約が早くから出て、もうすでに二回も三回も出て流れておる。その国会でまだ特別委員会の審議を一回もしておらぬじゃないか、こういうことを私は世界的に国際的に考えて、非常に日本の国辱とは申しませんけれども、いいことではないと思うのですが、そういう点において、きょうは、この点はどうしても政府としては困るのだ、こういう点を明らかにしていただければ私は一応納得したいと思う。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府案を提案しておるのでございますから、御議論なすって、国会としてはこういう考え方だが政府はどうかとおっしゃらないと、政府がもう出しておるのですから、それについて御議論いただくのが先じゃないか。出しておいて、これはこうだとか、ああだとかいうことは私は順序が違うと思います。
  91. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それなら言いますよ。それなら、あなた倉石修正案というものは全然知らないのですか。一応あれでいいじゃないかといって、この前の国会で一応了承したんでしょう。あなた、全然知らないんですか。あなたのは通り一ぺんの、国会の要するに議事の日程の方法を言っておるだけなんです。そういうものを聞いておるんじゃないんです。倉石修正案は、一応、自民党であれを受けたんでしょう。それが何がためにあなたの党で問題になっておるかということを私は明らかにしてもらいたいと、こう言うんです。私の言うのは無理ですか。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 倉石案なるものは一応は知っております。しかし、これに対して私は批判をすべきじゃございますまい。私はそう思います。十分、国会で論議してもらうべきで、そして、これは確定案だということとは聞いておりません。そういうことを話し合ってみて、そしてこの線でひとつ努力してみようかというぐらいに聞いておる。確定案とは私は聞いてはいないのであります。
  93. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう考え方、またそういう総理の態度ですね。あなたが冒頭に答弁されましたように、この国会でスムーズにこれが条約、あるいは関係法案が成立するという見通しを持っておられるかどうか、やはりあなたの責任だと思う。あなたがそれほど成立させる熱意があるならば、やはり政府の主宰者として、あなたのこれに対する努力のしかたというものはあると思うんですが、ただ国会にまかしたきりで、与野党の間で話をしなさい、こういう考え方でおられるのかどうか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前の通常国会におきましても、今国会におきましても、ぜひ通してもらいたいというので政府案を冒頭から出しておるわけでございます。これにつきまして、修正問題について私がとやこう言うべき筋合いではない、国会において一日も早く御論議を願いたい、こういうことであります。
  95. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それではお聞きいたしますが、すでにILO本部から、もうすでに理事会にかかっておると思うんですが、いわゆる三人委員会調査委員会政府に申し入れてくると思うんです。こういう事情の中で、政府はこれを受ける——受けなきゃならぬと思うんですが、あなたの考えはどうですか。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ詳しいことは聞いておりませんが、正式にそういう勧告とか、いろんなものが来たとは聞いておりません。具体的の問題につきましては、所管大臣から答弁させます。
  97. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILOにおきまして、ただいま理事会が開かれておりまするが、この理事会において、日本関係の問題を調査調停委員会に付託をして、その委員会の構成並びに審議の手続等につきまして、ILOの事務総長から理事会に提案が出ておることは承知をいたしております。そして、それが決定をいたしました場合におきましては、日本政府にこれを受諾するかいなか、照会をしてこられることになるのでございます。私どもといたしましては、ただいまこの問題はせっかく国会の御審議をお願いしておる最中でございまするので、これに対する諾否の態度ということに相なりますると、正式に先方から照会がまいりました場合に、できるだけ慎重に検討をして回答いたしたい、こういうふうに考えておりまして、諾否についての具体的な態度はまだ決定をいたしておりません。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ政府の諾否の決定ということは、それはいろいろ問題はあると思うんですが、私の考えを申しますと、ああいう、モース事務総長が調査あるいは調停委員会を派遣しなけりゃならないという、こういう事態を生んだことは、これは政府、あるいは野党も含めて私は非常に遺憾だと思う。単に受け入れるかどうかという問題よりも、ああいう問題が理事会で討議をされること自体が、私は日本のいまの国内事情としては十分反省しなければならぬと思うのです。労働大臣としては、この問題について、総理は先ほどいろいろ答弁されましたが、所管大臣として、この問題をこの国会で成立さすというならば、どういう考え方をすれば——考え方といいますか、努力をすればいくかどうかという所管大臣としての所信があればお聞きしたいと思います。
  99. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、御承知のとおり、今国会の冒頭に、関係法案とともに批准案件を衆議院に提出をいたしておるのであります。これの処理につきましては、昨年の通常国会以来の経緯から考えまして、先ほどお述べになりましたいわゆる倉石案と申しますか、自民党、社会党の双方のお話し合いがございまするので、今後の審議におきましては、この話し合いをされました諸点が論議の中心になるであろうということを予想いたしておる次第でございます。ところで、その予想されておりまする問題点につきましては、政府部内におきましても、各省それぞれの立場に応じましていろいろ意見の分かれておる問題もございまするし、また、自民党の中においてもいろいろ意見が帰一しないような現状だと承っておるのでございます。そこで、この問題を推進していただくようにお願いする私どもといたしましては、できるだけ政府部内の各省の意見を調整して、国会の御審議に並行して政府見解を取りまとめていくということが大切であると存じまして、政府部内においては、政府部内各省のこれらの問題点についての見解の統一という意味の調整作業を目下取り急ぎ進めておる状況でございます。自民党内におきまして、党としての見解をおまとめいただいておることと存じます。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体、政府のそういう何といいますか、いろいろ努力されておる形と申しますか、姿はわかるのですが、どうなんですか、これはもとへ戻る話かしれませんが、いま国際的に問題になっておるのは、ILO理事会で問題になっておるのは、八十七号条約自体が問題であると思うのです。国内法の改正については別に直接関連性がないのだから、いろいろ問題があるやつは一応別にして、八十七号条約を、まずこれを承認する、批准するという形で考えるということは政府としてはできないのですか。
  101. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国際条約の批准に当たりましては、その条約上の義務を履行いたしまするために、政府といたしましては、これに矛盾いたしまする国内法を調整しておくということが当然前提として必要であると思うのであります。そういう意味におきまして、国内法の改正を切り離すということは、政府としては考えられないと思っておるのであります。もちろん、それでは国内法の改正という場合において、その国内法の改正すべき範囲、どういう法律のどういう点を改正するか、これについてはいろいろ意見もあることを承知いたしておりまするが、政府といたしましては、御承知のように、提案いたしておりまする四法案の改正が必要だと、こういう考えを持っておるわけなのであります。そこで、批准案件と同時に国内法の改正案を提案いたしておるのでございまするが、ただいま御質問の、一応国際条約の批准を進めたらどうか、国内法と切り離しては考えられないのかという点でございまして、理論的に考えますると、ILO条約の批准の効力は批准後一年間猶予期間が定められておりまするから、まず国際条約を批准し、そうしてその後一年内に国内法の調整をするということで、完全に条約上の義務を履行するには差しつかえないと思うのでございますが、しかし、国内法の改正そのことにつきましていま非常な問題になっておりまするし、国会の審議をお進め願うにつきましてもいろいろ困難な諸点があると存じまするので、まず責任ある政府立場といたしましては、万全を期して、少なくとも国内法の調整を批准と同時に進めていくということが適当ではなかろうかと、かように考えておる次第でございます。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私の言っておるのは、まあ大体わかって答弁されておると思うんですが、なるほど条約関連条項がありますから、公企労法あるいは地公労法の五条、四条というものは、これはもう必然に変えなくちゃならぬ、これはわかるんですが、必要以上な改正というものがいま問題になっておるんですね。私は、そういうものは別にしてもいいじゃないかと。また、いま言われましたけれども条約批准後一年の間にやったらいいんだから。また、それはいろいろ与野党の間にも政府部内の調整する場もあるから、一応その八十七号だけ批准をして、そうして国際的に日本はこうだと、ILOの条約を守っておるというその日本の態度を世界に示さなければ、日本は何だ、まだILO八十七号——結社の自由ということすらもちゅうちょしておる国でなかろうかと、実情を知らない外国の人々はそう見ると思うんです。私はそれを言いたいんです。池田総理も先ほどたびたび申しておりますけれども、そういう点についてどう考えられるか。
  103. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは考え方の問題であろうと存ずるのでございまするが、この際、条約案と同時に公労法、地公労法だけを修正し、国家公務員法並びに地方公務員法の修正は切り離して考えられないかという御趣旨でございまするが、いままでの政府部内の見解といたしましては、公労法、地公労法を改正するにあたっては、これと同時に国家公務員法並びに地方公務員法を改正しなければいけないんだと、こういう考え方で進んでおるわけなのであります。このことは、もちろん単なる法理論からはそういう理論的な結論にはならないかもしれません。法理的には切り離していく考え方も可能かもしれませんが、何分これは現在の公務員制度並びに公務員関係の労働組合の実情というようなものに即しまして公務員の労働組合のあり方あるいは公務員としてのあり方、こういうものを考えてまいりました場合には、公労法、地公労法の改正と国家公務員法、地方公務員法の改正は切り離すことは困難である、これはどうしても一緒に考えなければならない、これがいままでの政府部内の考え方なのでございまして、政府といたしましては、ただいまでもさようなる見解を持ち続けているような次第でございます。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この問題はもう長年議論してきた問題ですから、ここで蒸し返す必要もないと思うのです。これは平行線をたどっていると思うのですが、私はこの段階で言いたいのは、そういう国内法の改正、整理と申しますか、そういう問題でILO条約そのものが批准できない、これは国際問題になっている。国内的な法律改正というものは、国会で、また政府でもいろいろ意見調整してやる期間があると思うのです。この段階になって、なぜ、いまなおそういう一緒にやらなければいけない。労働大臣はうまい言葉を使われましたけれども、いまの公務員の組合についてはあきたらぬのだと、それがためにこういう法律をつくるのだ、こういうことだと思うのです、政府としては。しかし、そういうことは、論議はまたあとで一年間でも、また次の国会でも、ゆっくりやれると思うのです。なぜそういう措置をとらないか。一応はこの条約の批准ということ、こうやれば社会党ももう別に反対はないし、大いに賛成ですから、池田さんが努力すると言っても、努力しなくっても、これは自然に成立するのです。こういう点はもう少し政府としては考える余地があるのじゃないかと思う。  おそらく三人委員会、これを受けるかどうかというところに政府は押し詰められると思うのです。その際には相当やはり国際的に批判されますよ。これはもう名与じゃないですよ。外国のいわゆる代表が来て、日本の要するに労働運動に対する、政府なり組合に対していろいろ調査をしようというのでしょう。独立国の私は面目というものは、それはもうILOの要するに決定でやるのですから、決してかまわないというものの、やはり日本としては一つの恥辱だと私は思っている。だから、私は、いまこの方法をとっても、先にILO八十七号条約を批准したら、あとはもう食い逃げだと、そういう考えでなしに、日本の国という立場からひとつ考えてほしいと思うのですけれども、この点について池田総理はどうお考えでしょうか。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来私から、またただいま労働大臣からお答えしたとおりでございまして、何もILOから調査に来るということは好ましいことじゃございません。したがいまして、早く関係法案とともに御審議、御通過を願いたい、こういうわけであります。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 池田さんと質疑応答していると、どうも焦点がぼやけてくるのですが、ぼくが言うのは、国会で審議しますよ、国会へ提案されたものは審議しなくちゃならぬでしょうが、審議する道を、池田さんが一応、総理大臣でありあるいは自民党の総裁であるから、審議をする道を開く努力をできないものか。そうしなければますます行き詰まってくる。そういうときに、これは単に政府だけではありません。与党も野党も、ともに外国に恥をさらすのじゃないかと思うので、何らかの方途がそこに見出されないものかという、これは私のきょうのILOに関する問題の質問の要旨なんです。それが、ひとつ国会にまかしたならば国会でやってください、これは私はあまりにも熱意のない、またそれしか言えない立場であるかもしれませんけれども、どうも私はいまの、最初冒頭に池田総理が言われた答弁とは——その答弁ととっておられる態度とは、全く合わないと思っているのですが、この点に関して、答弁というよりも、どこまでもやはり国会にまかして、自分は政府として原案を提案したのだから、ひとつやってくださいという態度でいかれるのかどうか、もう一ぺんこれだけ聞いておきます。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) だから、私の答弁並びに労働大臣の答弁によって御了承願いたいと。労働大臣の答弁では、政府部内の調整あるいは党においても審議していると、こう答えているのであります。私も、労働大臣に申しつけ、また党においても十分早く検討するようには言っております。ただ、内容についてどうかこうかとお聞きになりますから、内容についてのお答えをしないのであって、早く通すためのいわゆる政府与党内での努力は続けさしているということは、労働大臣から言っているとおりなんであります。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、労働大臣、もう一ぺん聞いておきます。与党内部のいろいろ問題ということは、あなたからこの席で言えないと思うのですが、私は政府部内で、関係各省においてもなかなか意見が合わないということも漏れ承っているのであります。どういう点が各省間で意見合わないのですか。
  109. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この問題はただいませっかく政府部内で調整中でございまして、いまここで申し上げることはお許しいただきたいと存じます。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも私はこれに対する政府の——まあ立場はよくわかります。しかし、国会で、また国際的にこれほど問題になっておるものが、この予算委員会で、せっかくいま調整中だから言えないのだと。私は、少なくとも政府は、こういう問題とこういう問題とこういう問題があるのだ、そういう点だけはやはり明らかにして、——国会でおのおの審議をしてもらいたいと言われておるのでしょう。政府部内の意見の相違くらい、国会でそれをしなければ審議できないじゃないですか。どういう問題があるかということを、それくらいは若干言えないですか。
  111. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、これらの諸点につきまして各省の意見が調整できない、最終的にまで調整できないというようなことはあってはならないことだと思っておるのであります。したがいまして、ただいま調整の努力をいたして必ず調整いたすつもりでございまするので、国会において表明いたしまするのは、政府としての責任ある統一的な見解でなければならぬと存じまするので、それがそのうちできまするから、それまでお待ちをいただきたい、こういう趣旨でございます。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、ぼくは前からの事情をずっと見ておりまするが、どうも解せないのがあるのです。この前の第四十三通常国会の際に、一応与野党間に話ができて、そうしてILO自体の問題でなくして、あの失対関係二法案のためにあれが成立しなかった。したがって、あのときにすでに政府部内の意見の調整もでき、与党間においても調整もでき、そうして与野党間に話ができてあれが協定されたと私は思っておるのです。それがあの国会で成立しなかったという理由で、今日その話をもとに戻すのだ、また倉石修正案に対して再修正しなければいけないのだという、そういうこと自体が与党内にあることは、これは政治的なことでわかりますけれども政府部内にそういうものが起こり得るということは私は少し判断ができないのですが、その点どうでしょう。
  113. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 当時の与党、野党の交渉につきましては、政府はこれに関係いたしておりませんでした。したがいまして、あの国会の御審議を通じて委員会としての修正意見ができ、それに対して政府意見を求められる、こういうことだと心得て進んでおったわけでございます。しかし、今回はまたあのときと事情が違いまして、ある程度具体的な話が進まなければ特別委員会が設置できないような事情にもなっておるようでございまするし、また、いよいよ審議が進むとなりますと、大体倉石案に指摘されておりまする問題点について、当然これが何らかの形であらわれてまいるわけでございまするから、政府といたしましては事前にこれらの諸点について、いよいよそれが具体的に問題となった場合に政府の態度をいかにするかということを相当各省間で話し合いをし調整をしておきませんと、そのときになって急にばたばたして国会の御審議を妨げるようなことがあってはならない、こういう味意で今回調整作業を進めておるわけでございます。この点につきましては、先ほど総理が言われましたごとく、総理の指示によりまして、ただいま各省極力努力をいたしておる次第でございます。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これだけで時間もあまりとれませんので、もう一つ質問しておきますが、政府はまあ努力しておると。それはもう努力するのは当然だと思うんですが、もうすでにILO理事会でも三人委員会の派遣をおそらく採択されると思うんです。それを受けるかどうかという、そういう決定をする前に、国会ではすでに審議のルートに乗っておるんだと、そうすればその問題も一応私は消えてくると思うんです。そういう点がありますので、一体政府としては、もう社会党は一歩も譲れない、あれで譲っておるんですから、譲った上で譲れというのは無理なんだから、こういう情勢に立って、いつごろそういう調整が政府として見通しとしてあるかどうか、この点をひとつお聞きしておきたいと思うんです。
  115. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 何といたしましても、この国会の会期も限りがありまするし、ことにILOの今回の理事会に引き続いて、今年の総会の前に議題もございまするし、また今回の理事会において調査の具体的な日程などもぼつぼつ始められるような状況でございまするから、これらに問に合うように極力急ぐつもりでございます。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、ILO関係は一応その程度にしまして、これはまた次の本予算のときに各委員からも、また私からも質問したいと思いますが、その前提として経済見通しについて若干私ふに落ちないところが二、三点ありますので、その点ひとつお聞きしておきたいと思います。  いろいろありますが、この「経済見通し」という予算説明の参考資料が出ておりますが、どうも政府は今度の経済成長、いわゆる国民総生産の率その他もあまり自信を持っておられないんじゃないかというような印象を実は受けるんです。それは策定の文言でありますから、それに拘泥するわけではございませんが、たとえば四ページの3の「昭和三十九年度の経済見通し」という項に、こういうことばでつづられておるんです。「三十九年度経済について、均衡基調を失わない望ましい成長の姿を想定すれば……成長率は実質七%(名目九・七%)」ということになっておる。随所にこういうものがあるんですが、もちろんいまの池田内閣は自由主義経済を標傍されるんですから、そういうことははっきりこうだと言えないけれども、消費者物価の上昇につきましても四・二%と言っておられるけれども、やはりこれに対して国民が危惧する点がありますが、この点を、この経済見通し、これについては当たらずとも遠からずということで、三十九年度の経済政策の基本であるこの見通しは正しいものとして自信があるかどうか、こういうことです。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前の国会にも申し上げましたが、私どもがこの「経済見通しと経済運営の基本的態度」というものをつくりますときに、一つは客観的にありそうな事実、またもう一つはそれに政策努力を加えることによってこれをよりよいものにしたいという努力、その二つのものがこの中に入っておるわけでございます。で、今朝戸叶委員が御質問の際にゾルレンとザインというおことばをお使いになりましたが、ちょうどそれに似たようなものがありまして、かくありたいということと、それにもかかわらずこの点はかくあるであろう、そういう二つのものが入っておるわけでございます。従来の閣議決定の経済計画の大綱と、従来作業をいたしました何年かはその二つのものがどうやら混在いたしまして、はっきり書き分けられておりませんでした。そのことをしばしばこの委員会でもお尋ねがございまして、で、私どもまことにそれはごもっともな御指摘であると考えましたために、このたびは一応政策努力を加えないときに、経済はどういうふうに行きやすいであろうかということ、そしてそれに対して、かくかくの政策努力を加えればこういうことになるであろう、それが望ましい、そういう二つの要素に書き分けたわけでございます。そこで、従来ございませんでしたような、ただいま御指摘のありました「望ましい経済の成長の姿を想定すれば」云々という文言が出てきておるわけでございます。しかし、他方でいかに望ましいことでありましても、客観的にどうもそれは可能ではないではないかといったような種類のことがございます。たとえば消費者物価は全然上がらないということが最も望ましい。場合によっては下がることが望ましいわけでございますけれども、しかし最大の政策努力をいたしましても、突然三十九年度に消費者物価の上がりがゼロになるということは、これは客観的にはなかなか予期できません。そこで、最大の政策努力をいたして、まず期待可能な蓋然性のあるところは四・二%ぐらいではなかろうか、こういうふうな考え方に立っております。そこで、いかに望ましいことであっても、できそうもないことを起こりそうでございますということは、この中には書いてございません。最大の政策努力をして達成可能な望ましい姿は、成長率ではこのぐらい、鉱工業生産ではこのぐらい、消費者物価ではかくかく、大体そういう書き方を今年はいたしたわけでございます。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これを策定された基本的な考え方はわかりましたが、それでは、望ましいと想定した数字だと言われますが、それなら一つの根拠が私はあると思うのです。  経済見通し全般について、私は質問する時間を持っておりませんので、特に日本の経済の最も重要な——朝の答弁で通産大臣が言われましたけれども日本の経済は、貿易構造によってささえられておるのだ、こういうことでありますから、貿易構造について具体的にひとつお聞きいたします。  この経済見通しの中で重要な部分を占めておるいわゆる国際収支の問題でありますが、輸出、輸入とも六十二億ドルということで押えられております。輸出の伸びについては、昨年と同様な大体伸び率を見ておられます。輸入については、相当下回った輸入率で押えておりますが、まず輸出の構造でありますが、一二・七%、昨年とほぼ同様な輸出の伸びを考えてこの六十二億をそれぞれ出しておられるのですが、具体的に各国のを言えというのは、なかなか時間かかりますから、地域別にどの地域に対する輸出の伸びがあるかということを、ひとつ御説明願いたいのです。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それでは私からお答え申し上げます。  ヨーロッパの市場に比較的期待を持っておりまして、一五%余りを考えております。それから数量は小そうございますけれども、アフリカなども二割くらいの伸びを期待できるのではないか。アジア、北米等は大体ほぼ平均値一三%見当を考えております。なお、共産圏については、数字は小そうございますけれども、伸びの率としてはかなり大きなものがあるようでございます。こういうことでございます。
  120. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま企画庁長官からお答えをいたしましたが、地域別に見まして、工業国向けは大体輸出が一九六〇年に四二%だったのが、いま四五%にだんだんふえてきております。それから非工業国向けの分は、一九六〇年が五六%だったのが五一%となっております。それから共産圏向けは三%が四%とふえております。いずれにしても、この地域別の観点から見ますというと、やはり低開発国向けの輸出が減っているということは、決していいことではないのでありまして、それをなるべく維持するようなくふうをしながら全体的に輸出を拡大していく、こういうふうに持っていきたいと考えております。
  121. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 さきに経企長官が言われましたがアフリカあるいはヨーロッパに対して二二%とか一二%とか言われましたが、絶対額はきわめていまのところ低いですね。三十七年の例を見ましても、アフリカ州では輸出はわずかに三億三千五百万ドルですか、その程度であって、ただ東南アジアの場合は、これは十億ドルをこしておる状態にありますが、この点について相当伸ばさなくちゃいけない。でなければ、六十二億ドルに達するというには相当、私自身いま実は計算をしておるのですが、すぐ出てこないのですけれども、どうも私は納得できないところがある。それと輸入との間のかね合わせから見ますと、ずっと三十六、三十七、三十八年度の十一月までの統計を見ましても、アメリカの貿易におきましては、これはもうすべて輸入超過になっていますね。そのほかの地域においては輸出超過ということで、若干バランスをとっておるのでございますが、政府としては、この六十二億ドルに達するには、いま言われましたアメリカよりも東南アジアあるいはアフリカ州、ヨーロッパ、こういう所に将来力を入れて輸出を伸ばしていくのだ、こういう方針考えられておるかどうか、この点ひとつ通産大臣……。
  122. 福田一

    国務大臣福田一君) これは何といっても、特に日本はアメリカに対する輸出が相当大きいウエイトを占めておるのでありますから、やはりアメリカに対する輸出がふえるような姿でないというと、私は六十二億ドルというものを期待することは、なかなか困難であろうと思います。全体的に見まして、どこの国ということなしに、われわれとしては輸出努力を続けていくのでありますが、いままでの三、四年の間の統計を見てみましても、日本の輸出の潜在的な能力といいますか、それは世界貿易の伸びに対しまして、大体倍の比率を持っておるのであります。そういう点から考えてみますと、来年度いわゆる昭和三十九年度の世界貿易の伸びの比率は、大体七%くらいあるだろう、こういう想定でございますので、そういう七%というものを基準にしますと、日本の場合はそれの倍伸びる力がある、こういうことになりますから、そうすれば大体一四%前後ふえることになるであろう、その一四%というものを、ことしの年度の昭和三十八年の五十五億ドルに加えてみますというと、これが大体において、六十二億ドル前後に到着というかなるのでございまして、そういういわゆるどこに対して特に力を入れるという形ではなくて、どこへも力を入れて伸ばしていかなければいけませんが、そういうような日本の輸出能力、いわゆる力というものが大体世界貿易の場合の伸びの倍の力がある、こういう観点から見て、いわゆる六十二億ドルという輸出を期待しておる、これは一つの見方でございます。  それからまた、今度は商品別に見、また地域別にいろいろやってみましても、大体そのような数字が出てくるので、一応六十二億ドルの輸出は可能である、こういうような計算をいたしておるわけでございます。
  123. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 通産大臣は、いわゆる通産行政の責任者として言われておるのですが、各国のいわゆるこの貿易・経済政策と申しますか、それらには、やはり国内産業の実態というものを踏まえて考えなければ、どの国にも向くように努力するということは、これは一通り言えますよ。しかし、やはり日本が置かれておる工業水準あるいはその経済の発展状態から、どういう国に対してやるのが日本の産業としては適当であるかということが、私はあると思うのです。どの国にも、いわゆる低開発地域いわゆる南北貿易もあるいは東西貿易もあわせてみなやるのだということについては、私はその努力はすべきであるけれども、各国のいまの事情から見ると、私は日本の通産大臣としてもう少し検討する余地があるのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  124. 福田一

    国務大臣福田一君) 御質問のとおり、これは確かに一つ一つの産業について見てそれをとっていくというと、いろいろ個々の、たとえば豪州に向けてはどういうような品物が輸出されておる、あるいはまた東南アジアについてはどういうものがいま出ておるか、またアフリカについては大体どういう種類のものが出ておるかということは、もちろんございます。だから、その業種、業種別に応じてやはりそれは努力をいたさなければなりません。ただ、先生のおっしゃったのは、どういう国に対して力を特に入れていくか、まあアフリカとかあるいは、たとえばでございますが、南米というところに特に力を入れなくちゃいけないのだという、こういう御質問のように承ったのでございますので、先ほどのようなお答えをいたしたのでありますが、もちろんあなたが仰せになっておるように、やはりその地域地域別に応じての特徴というものを十分これは考えながら、またその地域が持っておる貿易能力といいますか、経済力というものも考えながら、われわれとしてはやはりこれを伸ばしていく、こういうことでなければいけないと思うのであります。でありますから、東西貿易のお話もちょっと出ましたが、東西貿易にいたしましても、われわれは前向きで伸ばしていきたいと思っておりますけれども、しかし、その場合においても、向こうの経済力というものまた日本の経済力というものも考えてみなければならないというようなことがあるのでありまして、そういう点を十分にらみ合わせながら、それぞれの問題について考えていこう、こうしておるわけであります。だから、いままでは国向けの商品を売る場合にどうしたらいいか、アメリカに対してはどういうふうにしたらいいか、あるいは先生の言われたようにアフリカに対してはどういうことと、こう言っておったのですが、今度はそれをもっと小さく砕いて、三十九年にはアメリカのうちでも南部のほうに対してどういう政策をとっていったらいいか、北部のほうはどうだ、あるいはシカゴはどうだとか、サンフランシスコの場合はどうだとか、アフリカの場合におきましても、それぞれアルジェリアとかタンガニーカとかいろいろございますが、すべての国に対してそれぞれすべて計算をしながら、しかもその国の中で、国がどういうものを買う能力があるか、その国の買う能力、それからまたその国から日本が買えるもの、こういうものを全部突き合わせながら、しさいに、実はきめがこまかいという表現が当たるかどうか知りませんが、こまかくやはり施策をやっていかなければならない。こういう考え方で、実はわれわれとしては産業界とも連絡をとり、また輸出商社とも連絡をとりながら事を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この問題は、また次の機会にゆっくりといろいろ聞きたいのですが、最後に一つ聞いておきたいのですが、現在の輸出の数字をもって見ますると、十億ドルを上回っておるのは北アメリカ、いわゆるアメリカとそれから東南アジア、朝の質疑の中でいろいろ言われましたけれども日本の立地条件からいえば、やはり中国を無視しては、私はこの貿易というものが、輸出というものは伸びないという、かたい考えかしれませんが持っておるのです。戦後の状態を見ますると、全く問題にならないほどの数字が出ております。こういう点から考えまして、政治的な形態は違います。そこにはいろいろ問題がありましょうけれども、少なくとも七億という国民を有する中国を無視しては、日本の国際経済というものは成り立たないと私は思っておるのですが、この点に対してもっと積極的に政府としては中国貿易と取り組んでいく意思があるのかどうか、こういう点で一つ、これは池田総理にお聞きしておきたいと思います。
  126. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) うんと貿易をふやしたいという気持ちは、これはあなたも私も同様でございます。しかし、この問題の中共の貿易全体を見ますと、一九五九年ぐらいまでは、中共からソ連への輸出は約十億ドル前後あったかと思います。中共の輸出入が、大体、片道約十億ドル、それがいま三分の一ぐらいになっております。で、中共が一番貿易しているのはソ連でございますが、輸出入がいま往復七、八億前後です。それから中共の自由国家群との貿易を見ますると、まあ三、四年前、イギリス、フランスが多くても両方で行き来で四、五千万ドルぐらいじゃございませんか。最近フランスがああいうふうになりましたが、フランスから中共へ輸出している分が二億五、六千万フランじゃございますまいか。そうして二億フランというのが小麦だったと思います。そうしますと、小麦を除いてからのフランス中共への輸出というものはほとんど千万ドルもないくらいじゃございますまいか。だから希望、いわゆるゾルレンということから申しますると、ますます多いにこしたことはございませんが、やはり戦前の夢はいまは通らない。向こうにそれだけの買う能力があるかということが問題でございます。七億の人口がありましても、生活程度がアメリカの十分の一、二十分の一ということになりますと、十分の一では七千万と同じことでございます、国際貿易から申しますと。でありますから、私は、人口の数によらないでやはりその国の生活水準、このごろ日本がヨーロッパから非常に高く評価されるということは、日本国民の生活水準が上がって、しかも人口が一億ほどあるということでございます。だから数によって貿易をどうこういうことはないと思います。数でこなすわけにはいかない。貿易というものは、やはりその国の力というものがものをいうのでございます。だから、いま中共との貿易を伸ばしたいと思いますけれども、ちょうどソ連と同じようにだいぶふえてきてはおりますけれども、ソ連の輸入力というものが問題でございます、幾らでも金を貸してやるというわけにはいきませんから。だから、その国の経済力というものを見るには人口も一つの標準かもしれませんが、その国の国力、生活水準というものが非常に問題でございます。だから中共に多くを望んでも、そうふえるものではない。いま自由国家群では、日本が一番中共との貿易が多いと思っております。イギリス、イタリア、ドイツの倍をこえております。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点の認識は、私とあなたと違うのですが、なるほど言いかえれば数よりも生活水準であり富である。しかし、私は経済の原則からいって、人が生活するのですからね。やがて私は、あの七億という中国の経済力というものは相当私は伸びてくるものと見なければならぬと思う。あの地下資源、あるいは労働力、そういうものから見れば、あなたの現段階における富の状態からいえば、あるいは生活水準は低いかもしれませんけれども、潜在的な経済力というものは大きく評価して今後の中国貿易というものを考えなくちゃ、私は日本は誤った道にいくと思う。私は、純然たる経済的な立場から、先ほど池田総理も、努力することには変わりないんだと言われておりますから、これ以上は言いませんけれども日本があの東南アジア、アフリカその他低開発国援助ということは相当努力されておる。私は、金額的にはどうか知りませんけれども、相当私は努力したあとが見えると思うのです。中国もいま言われたように低開発国の一つであるかもわかりません。そういうところにも、やはり日本政府としても力を将来入れていく必要があると思うのですが、まあ同意見だと思いますけれども、この点について通産大臣からでもひとつ答弁を願います。
  128. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいまのお説の点については、われわれ全く同感をいたしております。
  129. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そう言うとまた言いたくなる答弁なんですがね。同感であれば、どういう穂極的な措置をとっていくかという問題になるのですが、まあこれで議論しておったら時間がかかりますから、大体趣旨がわかりましたので、池田内閣もひとつ十分力を入れてもらいたいと思う。  もう一点だけ一つ心配になる点がありますので、この問題でただしておきたいと思うのですが、貿易外収支の問題なんです。三十六年から三十七年、三十八年と、赤字はどんどん累増していくような数字がここに出ておるのですが、三十九年度では五億五千万ドルといういわゆる赤字が出るということでありまするが、三十八年度の見込みが四億一千万ドル、三十七年度実績は二億二千五百万ドル、こういうことになると毎年累増していくのですが、これの打開策。貿易外収支というのは国際収支の大きなウエートを占めておるのですが、この点について政府の施策、所信をひとつ最後に聞いておきたい。
  130. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 貿易外収支につきましては、ただいま言われましたように、三十九年度五億五千万ドルと見込んでおるわけでありますが、この中で一番大きいのは海運収入でございます。海運収入につきましては、船腹の増強ということで、今年度六十四万二千トンの建造を考えておるわけであります。  なお、建造比率、建造に対する融資率等に対しましては、開発銀行融資が四%——利子でありますが。それから、市中が六%になるように利子補給等も考えておるわけであります。なお、融資比率につきましては、七対三でありましたものを、開発銀行を八%——八対二にいたしておるわけであります。  なお、集約化の行なわれた海運会社の再建等についても各般の施策を行なっておるわけであります。  なお、原油等の邦船の積み取り比率も、いま言いましたが、四〇何%から当回五二%程度に引き上げたいというような諸般の政策を行ないながら、できるだけ早い機会に貿易外収支の改善をはかってまいりたいという考えであります。  また、もう一つは観光面でございますが、観光に対しても、開発銀行からホテル等に融資をいたしましたりして観光収入の増大もはかっておるわけであります。  そのほかの利息等の支払いに対しては、これはもう本質的な問題でありまして、日本経済の力をつけて、より大きく輸出をするということによって、貿易収支でこれをカバーするようなために入れる外資でありますので、これは支払う利息よりも、これを受け入れる日本の利益のほうがより大きいというふうに理解しておるのであります。
  131. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろ言われましたが、貿易外収支の改善と申しますが、これがなかなかいかないような実情にあると思うのです。一番の問題は、やはり海運収支だと思いますが、これはいまの日本の海運の実情では非常に立ちおくれている。政府は非常に利子補給なんかされて、これの強化につとめられておりますけれども、なかなかいかない。そういう点で、一体貿易外収支がいつごろバランスをとるか、どこまでいきたいという計画があれば——海運五カ年計画があるかどうか、まだ私は知りませんが、そういう点がどうかということと、もう一つ、これは事務当局でもけっこうですが、観光収支がどうなっておるか。だんだん日本の観光事業も盛んにやられておりますから、伸びておると思いますが、日本人がそとに観光に行くそのドルの高と、それからこちらに落とす外国人の観光の差がどうなっているか、この点をちょっと。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 観光のほうから申し上げますが、大体経験的に見まして、毎年千万ドルか二千万ドルずつこっちの出が多うございます。三十九年度は、たまたまオリンピックなどがございますので、ほぼ千万ドルくらいのこちらの取りが多い、プラスを見ております。従来数年間を見ておりますと、とんとんないし千万ドル内外の出でございます。  それから、海運は、昭和四十二年度までに大型の専用船を二百六、七十万トンつくるという前提が一つございます。そうしてその上で、ただいま積み取り比率が輸出で五割二分くらいで、輸入で四割五、六分くらいでございますから、それを、相当努力が要りますけれども、輸出で六、七割、輸入でやはり六割近くというところまで持っていく。そのときの貿易量の想定が困難でございますけれども、これだけの条件が整いましても、なお多少の赤字があるというふうに考えなければならないのではないか。それは四十二年度の終わりないし四十三年ごろの姿ではないかと思います。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。いまの貿易外収支の改善に関して、海運対策の質問が山本君からされまして、それに対して、失礼ですが、非常におざなりな御答弁があったのです。しかし、日本の海運対策として、政府がいろいろな開銀融資やいろいろな税制面、あるいは金融面でめんどうをみておりますけれども、非常な矛盾があると思うのですよ。これを解決しなければ、ただ海運会社の助成をしただけでは、海運収入をふやして、そうして貿易外収支の改善をはかることはできないと思う。いま貿易外収支で三十九年度が五億五千万ドルの赤字、これを改善するのには、まず海運につきましても、船の輸出——非常な低コストで輸出しているんでしょう、非常な低コスト。しかも、政府が非常な援助をし、補助をして輸出をしている。そうして外国に安い船を輸出して供給しておいて、そうして外国がその船をもって今度は積み荷をする。したがって、そのために日本の積み取り比率が十分高まらない、こういう問題が一つあるわけですよ。この点をひとつ改善しなければ——船の輸出はけっこうですよ、輸出をふやすことはけっこうだけれども、それによって日本の貿易外収支、特に海運収入が圧迫を受けているという事実、この矛盾をどういうふうに調整するか。これは非常に重大な問題だ。積み取り比率が非常に低いのですよ。こんな低い比率でいいのか。これを改善するには、ただ助成をするだけではいけないのじゃないか。いまの政府はそれが中心ですよ。いろいろ会運会社に助成をするということだけでしょう。これが中心ですよ。この点が一つ。  もう一つは、OECDに参加して、この間、貿易外取引について、ことに用船の自由化につきまして、政府は、海運五カ年計画に対応して、五年猶予をしてくれと、こういうことを交渉したでしょう。ところが、五年ではだめだというので、三年にまで日本は妥協をして三年を主張したのですが、それもだめだ、そうでしょう。石油については二年だ、二年の猶予期間で、二年後は自由化しなければならぬでしょう。それから、石炭と鉄鉱については一年でしょう。一年しか余裕を持ってもらえない。一年後には自由化しなければならぬでしょう。そうしたらどうなりますか。鉄鉱石、石炭は一年しか余裕を与えない、石油については二年しか余裕を与えない、この問題をどうするか、こういう重大な問題があるわけです。  それから、もう一つは、アメリカのシップ・アメリカンです、あるいはエア・アメリカンですね、いろいろある。この問題とどうして取り組まないのか、もう少し積極的に。この間、日米貿易経済合同委員会でこの問題を一体持ち出したのかどうか。ソ連の小麦の買い付けの問題と関連して発言したような、さっき御答弁がありましたけれども、こういう大きなところに穴があいているのですよ。それを、ただ、助成だ助成だといったって、これで積み取り比率をふやし、そうして日本の貿易外収支の中の一番の赤字の大きなウエートを占めている海運の収入をふやすということは、これは私は根本の筋が抜けているのじゃないか。この点どういうふうにそれこそ前向きで取り組むのか、具体的な政策をお持ちになっているか、この三点についての海運政策についてお伺いいたします。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、貿易外収支の改善、特に海運収入の改善に対しましては、いまのような問題を十分検討いたしましております。  まず、海運会社に対する助成だけではいかんといいますけれども、戦前の海国日本であったものが、なぜ一体こんなようになったのかと、こういうことになるけでありますが、これは、一つは戦時補償の打ち切りということが大きな問題であります。もう一つは、率直にいえば、占領軍政策が、強大になる海運国日本というものに対して、これを押えた細分化式な強い政策に対して、日本人が何か観念的にそれに巻き込まれておったということもいなめないと思います。でありますから、海運会社に対して相当な助成を行なわなければならないということは事実であります。  もう一つは輸出船の問題でありますが、これは御承知のとおり、非常に相反する問題を含んでいるわけであります。一つは、輸出を行なうことによって、外貨獲得、輸出振興ということを考えながら、その輸出船が荷物まで持って船が船出をしていくという現状に対しては、何らかの処置を講じなければならぬということは当然であります。でありますから、いま三十九年度において六十四万二千トンの船をつくるときに、輸出船が船台を占拠しておるために邦船の建造ができないということに対しては、十分検討しましたが、六十四万二千トンの建造に対しては支障がないようであります。なお、総理からも新しい船台の増強等も言われておりまして、関係省で検討をいたしておるわけであります。あなたがいま言われたとおり、輸出船と国内船腹の増強ということに対しては、確かにどこかでひとつけじめをつけなければならぬ。輸出で外貨をかせぎたいということで強敵をつくっておるという実情等に対しては、どこかで線を引かなければならぬというふうに考えております。いままで輸出船に対して、材料その他に対して非常に優遇をしておったわけでありますが、これらの問題に対しては国内船と同じ条件にいたしたわけであります。でありますから、輸出が特に優遇せられておるということはないわけでありますが、より深く掘り下げて、この問題に対してピリオドを打たなければならぬだろうというふうに考えるわけであります。  それから、OECDの問題につきましては、確かに二年間の猶予期間がありますが、これが業界に対する一つの刺激にもなるだろうと思いますし、また、一つの国民自体が貿易外収支の改善というものに対して本腰を入れなければならないという、政府に対する鞭撻、理解にもなると思いますし、政府も、もちろん五年間が二年間に短縮せられるということに対して、そのような財政措置、金融措置、あらゆる立場からの貿易外収支改善に対して施策を立てなければならないわけであります。まあこの問題を、総合的な施策を行なうことによって、一日も早く貿易外収支が改善をされて、経常収支において黒字が出せるように、また、その黒字によって過去の資本収支の返済にも充てられるようになる日こそ望ましいのでありまして、これとまつこうから取り組んでいるわけであります。  それから、日米問題につきましては、これはもう十分検討いたしております。シップ・アメリカン、バイ・アメリカン、こんなことをいって一体いいのですかということを、去年九月のIMF総会に出たときに、非常に強くこの問題に対しては日本側の意思を申し出ております。向こうから申しますと、率直に申しますと、これはコマーシャル・ベースでやるものではなく、政府資金をもって海外に援助をするその品物を運ぶものにだけシップ・アメリカン、その品物を調達するのにバイ・アメリカン、こういっているんだから、日本を含めて、諸外国から文句を言われる筋合いはない、こういうことを初めは言っておったのでありますが、大体そういうそのようなものの考え方が、日米友好、また、日米経済協力という面からいっても支障があるんだ、こういうことで、少なくとも太平洋沿岸のものに対しては、日米がもっと専門的に話し合いをしながらものを詰めて、場合によっては、積極的に連帯感に訴えてでも、この問題に対して前向きに対処したいという考え方を強く申し入れてありまして、向こうも、むずかしい問題でありますが、大いにひとつ両者で検討いたしましょう、こういうことでありますので、具体的に対策を立てながら、前向きで対処いたしていきたいというふうに考えております。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連ですから簡単に。ただいまの御答弁では、ただそのいまのやっている事態を説明したにすぎないのですよ。何らその前向きの具体的になるほど、こうやれば事態は改善されるのではないかという、われわれに説得力のある、納得し得る御説明ではないと思うんです。たとえば六十四万何千トンの造船計画をやっている、それで大体いいと思うのだけれども、何かそこに船舶の輸出と、それから日本の海運が圧迫されるその点については、何か一線を画さなければならぬと思うというような、そんな事態じゃないでしょう、今は。今後その点についてはこういう線を引くんだ、この辺で大体線を引くんだというぐらいのことが御答弁できなければ、この貿易外収支対策が重大だ重大だといいながら、一体何をやっているんですか。ただ重大だというだけじゃありませんか。これは大きな構造的な問題で長期的にやるといっても、当面の一番重要な問題じゃありませんか、そこは。それから、OECDの問題についてもそうですね。こうこうこうしたからだいじょうぶだ。五年を主張したんでしょう。五年を主張したからには、その根拠があったはずですよ。それがくずれたわけですよ。そうして二年になった。それじゃ二年になったらどうするのですか。五年を主張したが、くずれて二年になったけれども、そのかわりにこうしたからだいじょうぶなんだ、こういう御答弁がなければならぬはずですよ。それから、シップ・アメリカンだってそうです。その日米合同委員会で話し合った。こっちから言ったって、何ら具体的な成果が報告されていないのです。利子平衡税についてもそうです。ただ、向こうに申し入れた、申し入れただけであって、一体、何の成果があったのですか。これではいかに御説明で、国際収支の問題は、先ほど山本さんが御質問したように、貿易外取引は一番重要なんだ、そのほうの赤字が一番重大なんだ、こういうふうに、ただ言われるだけであって、ほんとうに重大性を認識したところの対策、何らわれわれを納得させるものがない。そういう御答弁では非常に不満足ですよ。
  136. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府がいま真剣に検討いたしておるものに対しての御鞭撻でありまして、非常に意を強ういたしておるわけであります。いままで海運問題だというと、そんなぼろ会社に金を出してもというような議論も横行した時期もありますけれども、開放経済に対処して、やはり国民的な立場で、もっとより高い立場で、貿易外収支改善のために、より積極的になすべきだという御発言に対しては非常に敬意を払います。これにこたえるような立場政府も積極的な施策を行ないたい、このように考えます。事実は、いま国会にお出しをしようといたしております輸出所得控除の問題につきましても、ガットの問題がありませんので、海運収入に対しては現行法の規定を存続しようというような積極的な施策をいまやっておるのであります。  なお、五カ年が二カ年にOECDによって縮まったということは、私はある意味においては、先ほど申し上げたように、国民的な気持の中にも引き締まりも、また海運に対する真剣な気持も呼び起こしたことでありますし、また、統合等に対して右顧左べんしておった海運会社も、これじゃたいへんだというので、一挙に六グループになりましたし、また政府も、これに対して六十四万二千トンに対しては、運輸省の要請はそのまま、まるまる認めておるのでありますから、六十四万二千トンが来年は百万トンになるか、そういうものに対しては、今の御発言等は大いに刺激になって、いよいよ貿易外収支改善の策が生まれるわけでありますので、せいぜい御鞭撻をお願いしたい、政府もこれにこたえたい、こう思います。
  137. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 答弁残っているのですよ、観光収支の数字。
  138. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 観光収支につきましては、三十七年度こっちへきましたものが二十八万人、五千九百万ドル、それからこっちからいったものが九万五千人、六千百万ドル、支払いです。これはしりで二百万ドルの赤字であります。それから三十八年度はこちらへ参りましたものが三十二万人、受け取り外貨が七千三百万ドル、こちらから出ましたものは十二万五千人、支払った金が八千二百万、しりは九百万ドルの赤ということであります。このようなことではいけない、こういうことで、いま対策を考えておるわけであります。
  139. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大蔵大臣の説明を聞いておると、もう何だか自信のあるようでありますが、いつも、何といいますか、最後は、どうもつかみどころがないような印象を受けるのですが、もう時間もきましたので、この問題については、これで一応終りますが、貿易外収支の実情は、ずっと調べてきましたが、だんだんとふえていく一方なんです。改善すると言われた、改善するためにふえるということでは困る。したがってこの点については、先ほど木村委員も言われましたが、十分ひとつ、政府としては具体的な政策なり、そういうものを出していただきたいと思うのですが、その点、決意をもう一ぺん聞いておきたい。
  140. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから、るる申し上げておりますとおり、貿易外収支の改善という問題に対しては、重要な問題でありますので、皆さんから御叱正をいただかなくても、年次計画等を立てて、これに対応する施策もあわせて行なうことによって、できるだけ早い機会に貿易外収支の改善をはかって、経常収支の黒字を望みたい、このように考えます。
  141. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃいよいよこの第三次補正予算の問題で質問をしたいと思います。これについて、いろいろあるのでございますが、重要な点だけ三点ほど聞いておきたいと思いますが、まず最初に、産投会計の組み入れ六十億は、一応趣旨目的ははっきりしているのですが、三百億の資金への繰り入れについては、われわれとして若干異議があるのですが、どういうところに使う目的があるのかどうか、この点についてひとつ。
  142. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三百六十億の歳出のうち、六十億はいま御説のとおり、輸出入銀行の資金に充てるわけでありまして、三百億の資金は、資金に繰り入れまして、開放経済に対処して各産業基盤の強化、競争力の増強という面に弾力的に支出をいたしたいと、このように考えます。
  143. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこがわが党としては、この第三次補正予算に対して反対せざる一つの要点だと思うのです。三百億円というこの相当な額が、これは結局、税金の余ったやつだと私は考えておるのですが、それを産業基盤強化という、開放経済体制に即応するために、一応資金に組み入れるのだという以外に、やはり産炭地の問題とか、あるいはその他の福祉関係の問題、私は十分でないところが相当あると思うのです。その点をなぜ考えないか。一応開放体制の準備のために資金に組み入れるのだという、その趣旨が私は理解できないのですが、これがなければ、三十九年度の財政投融資に大きくくるいがくるのですか。
  144. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産炭地の問題その他につきましては、可能な限り財源一ぱいに歳出に見込んでおるわけであります。昭和三十一年から今年まで、約今回の三百億を含めまして千三百億ばかり資金に繰り入れておるわけでありますが、それが今日までの国際競争力の増強や、輸出振興にいかに役立っておるかということは、もう御承知のとおりであります。今年度の予算で資金取りくずしをいたしました残額は、二百億余しか残らないのでありまして、三百億を繰り入れることによって弾力的な産業政策を行ないたいと、こういうことであります。  いろいろ国内的な問題に対処して努力をしなければならぬことは、当然なことでありますし、政府も、そのような姿勢で対処をいたしておりますけれども、何しろ開放経済と一口に言いますけれども、戦前戦後を通じて約三十年間封鎖的な、鎖国的な経済をやってきた日本が、ここで八条国に移行するのでありますから、これはたいへんなことであります。まさに民族の将来をかけての再出発をするというときであります。また、先ほどからるる皆さんの御質問がありますように、輸出振興のために——輸出振興をせされば、われわれの生活は一体どうなるのだ。貿易外の赤字を解消するために、あらゆる努力をしろという御叱正がありますように、やはり貿易依存の日本であるだけに、これらの問題に対処し、万全な態勢を講ずるということは、国内の諸般の施策を行なうことと重要度を比べまして劣るものではないのであります。  でありますから、一般会計において諸般の、まあ一四・二%は多いとさえ言われておるほど国内的に、いろいろな三十九年度の施策を行なうとともに、三十八年度の税収でまかなえるものとして資金に繰り入れようとするのでありますから、その事情は、十分御理解いただけると思います。
  145. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それが理解できないのです。と申しますのは、産業基盤強化、それは必要です。それはわれわれはそれは必要でないと言っておらないのです。しかし、産業基盤を強化するには、民間の経営者が、やはり積極的に自力でやるということが、これはたてまえだと思う。政府がそれに対して、戦後相当の、私は援助をしてきておると思うのです。これはやむを得ないことがありましょう。しかし、いま産炭地とかその他の問題は相当やっておると言われますけれども、実際、その土地を歩いて来てみなさい、そういうことでないですよ。それはあなたは行かれたかどうか知りませんけれども、それはもう産炭地当該の市町村の財政から見ましても、きわめて困窮しておる。こういう点を考えれば、全然ほうっておるというわけではないのですよ、ないのですけれども、そういう方面にも考えられるのじゃないか、こういうことで言っておるのです。  そこで自治大臣に聞きますが、産炭地の問題で、いろいろ振興法もできてやっておられますが、その当該市町村は非常に困窮しておる実情を御存じだと思うのです、財政的に。そういうところについて、自治相としては当該市町村に対する財政的な援助として今日まで、どういうことを考えられておりますか。それを聞きたい。
  146. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) お答えいたします。  自治省としましては、産炭地域振興臨時措置法に基づき産炭地区における鉱工業等の、いろいろな振興の施策に納まってまいりましたが、同時に、この市町村が財政収入の面で非常に逼迫してまいっておりますので、失対事業費やあるいは生活保護費等の地方負担の面におきましては、特に起債、交付税、さらには、昨年度も実施いたしましたが、交付税その他に盛れない部分につきましては、特別交付税の増額によりまして措置をいたしてまいっております。
  147. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一体それじゃ、いろいろ言われましたが、特別交付税は、その産炭地に三十八年度にどれくらい行っていますか。
  148. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 特別交付税でございますが、ちょっとこまかくなりますが、三十七年度で離職者対策が一億二千五百万、それからそれの元利償還金五百万、鉱害復旧関係が千七百万、失対関係が二億四千万、生活保護関係が一億六千万、それから準保護児童関係、これが六千四百万、その他鉱業、市町村全般について、その他の理由に基づくものについて二億二千万程度、それからその他の産炭地関係の事業に対しまして一億八千万程度、それが市町村関係でございます。それから市町村の指導に当たります府県に関します特別交付税、これが離職者関係が五千六百万、鉱害復旧関係が六千万、失対関係が二億六千万、大体、以上でございます。
  149. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体、それはそろばん置いてないから目の子勘定ですが、全部合わせましても十七、八億程度でないかと見ておるのですがね。間違ったら、これは目の子勘定ですが、実際この程度で、あの広範囲な産炭地の私は振興どころか、この一般行政のいわゆる欠損と申しますか、足らないところを補うだけの私は特別交付金も行っておらないと見ておるのです。あれを振興するためには、相当私は、自治省も当該市町村に対する特別交付税なり、あるいはその他の補助金なり、そういうもので援助しなければ、毎日毎日衰微する一方だと思うのですね。この点に対して自治省としては、三十九年度にこの産炭地当該市町村に対する振興策として、特別な考え方をしておるのかどうか、三十八年度に引き続いたようなもので、そのままやって行こうという考えであるかどうか、この点ひとつ、お聞きしておきたいと思います。
  150. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 特別交付税だけではないのでありまして、生活保護費やあるいは失対事業費の地元負担分が非常によその市町村に比べまして多いのであります。これに対しましては、交付税がそれだけふえるのみならず、地元負担分に対しましては、起債の充当率を高め、さらにその元利償還に対しましては、五七%でありますか、これを特別交付税に持っていくとか、よその市町村に比べますと、格段の措置を講じておるわけであります。  しかしながら、根本はその地域の産業振興がなければ、永続的に補てんするということはできませんので、そのことにつきましては、産炭地振興臨時措置法によりまして、政府として振興をはかっておる。こういうのが現在の姿であります。
  151. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その産炭地振興特別措置法によるものが、現在われわれとしては、全く問題にならないということを言いたいんです。で、言われました特別交付税の対象となるのは、これは失対とか生活保護とか、これはその失業した人々とか、あるいはその生活保護者に対する給付の金を出しておるというにすぎないのです。その市町村の振興、それに対しては、市町村が全く手をあげた形なんです。水道すら経営のできないというところの市町村もある。いわゆる炭鉱が閉鎖され、閉山されたために、水道がそれによってやっていたけれども、それがなくなってしまったら、全くその水道はどうするかという問題。こういう問題に、もう少し自治省も、市町村の立場に立って、こういう市町村行政に対する援助なり、そういうものをやっていただきたいと思うのですが、その点についての今後の自治省としての方針をひとつ聞いておきたい。
  152. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 水道の面も、全額起債を引き受けてやっておりまするし、単に水道のみならず、学校の経営の面でも、給食費とか、あるいは学校の先生は、児童が減っておるにもかかわらず、生活保護のいろいろな事務までやらなければならない。したがって、四十五名に教室をされると、教員がその数が減る。しかし減らされたら人手がたいへんに困るというので、文部大臣にも御相談しまして、そういった部分は据え置く。しかし、それによって生ずる府県の二分の一負担がかさむから、それはひとつ特別に考えようとか、まあ特段のきめのこまかい施策を自治省としてはやっておるわけでありまして、なお、本年度の交付税配分時期になっておりますので、従来にも増した配慮を各般にわたってやりたいと考えまして、三十八年度特別交付税配分の重点柱の第一に産炭地域のことを掲げておるのであります。
  153. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 産投会計の質問がえらいところに飛んでいったんですが、今後ひとつ、十分に考えてもらいたいと思う。  そこで、次に追加更正の厚生省関係の問題をひとつ聞いておきたいと思う。どうもこの点、私、納得できないのです。社会保障関係の経費が、なぜここまで歳出欠陥が生じたのか。当初の見積もりがずさんであったのか、新規の問題が起こったのかどうか、相当高額な追加補正をしておるのですが、この点、ひとつ総括的にまず答弁をしてもらいたい。
  154. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 生活保護費は八十何億の補正をお願いしておるのでありますが、これの原因は生活保護人員が、ただいまお話のような産炭地等におきまして相当に増加したのであります。すなわち実人員で五万人余も増加した。こういうことと、もう一つは、医療費が内容的に非常に上がってきた。すなわち各人の医療を受ける機会が非常に多くなって、医療扶助が非常に大きくなった。すなわち大半は、医療扶助の増加である。もう一つは、老人福祉法というものが、四月から施行されるはずになっておったのを、国会の修正で八月になった。こういうことで、そちらの老人福祉による措置にかわるべきものがそのまま生活保護に残っておる。この三つの理由によってかような巨額な欠陥が生じた、そういうことになっております。
  155. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この追加された理由は一応総括的にわかりましたが、この医療費の場合、当初予算編成当時からいろいろ論議されておったのですね、その当時から見ると、この医療費の上がり方は相当大きいのですが、この点については当初こういうことを一応見込んでおられたのかどうか。それは決定しないから一応当初予算にはそうしておいたけれども、その後上がったものだからこれを追加したのだ。当初はそういうことは全然わからずに起こってきたかどうか、この点ひとつ聞いておきたい、将来の問題として。
  156. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 医療費が毎年自然増で五、六%ぐらいふえておる、これは予想しておったのでありますが、その後の状況が非常に変わりまして、この補正予算では大体一人当たりの医療費が予算よりか八%上がった、こういうことで組んでおるために、これだけの増高を来たした、こういうことであります。
  157. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その予想しなくて上がったという原因は、どこにあるのですか。
  158. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはまあだんだんと、要するに医療を受ける機会が大きくなった。すなわち各人の回数がふえておる、一年間に受ける医療の回数が増加してきた、こういうことが大きな原因になっております。
  159. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だんだんふえてきた、医療の回数がふえてきたと抽象的に言われますが、その実際のデーダがありますか。
  160. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ここに一応の受診率の比率を書いてありますが、まあ三十七年度が二六二、すなわちまあ一人が二回と六二、こういうことになっておるのを、当初でもって、それが二七〇、こういうふうな予算を組みましたところが、その後これがふえた。したがって補正では二九二、こういうふうな数字になっておるのでございます。
  161. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この医療費の増高ですがね、これは社会保険の短期給付では相当これが問題になっておるのです。小林厚生大臣も医師会との間にいろいろ苦労されておることは、これはもう知っております。しかし、実際これは社会保険関係だけではありません。公的扶助の問題もありますが、医療費の増高についてわれわれとしてもひとつやはりめどを持たなければいかぬと思うのですね。今の段階になれば健康保険も——国保もあるいは健保も、これによって実は破産はしないかしれませんが、国の出費もかさみます。これに対して厚生大臣が今言っているようにもうだんだんと受診回数がふえるというよりも、私が憂うるのは、医療費の増高のほうが大きく出ておるじゃないかと思うのです。そうじゃないですか。
  162. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 医療費の——医療の回数の増加も一つの大きな原因、もう一つは、薬等の質がよくなったと申しすまか、そういうふうな関係も相当にこの問題に入っておると、こういうふうに思っております。
  163. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、厚生大臣としては、医療費そのものは質的によくなったから増高するのだ、要するに注射とか、そういうものの質がそのままであれば増高しないと、こういう認識でいっていいんですね。
  164. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 今申すように、受診の機会が増高しておる、これと医療の内容すなわち薬品等がだんだんにいいものが出てきて、これが使われる、こういうことも一つの原因であると思います。
  165. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると何ですか、この受診料がかさまるということでなくして、薬品の内容が変わったから上がってきたと、こういうことですね。
  166. 小林武治

    国務大臣小林武治君) おもなものは私が申し上げたように、受診の回数が多くなるということは、そのつど医療費——薬品、注射等において相当ふえると、こういうことになるのであります。
  167. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは厚生大臣の言でありますから、われわれは統計数字を持っておりませんから言いませんが、将来、医療費の増高というものの限界ですね、これはおそらくあなたの言われることになれば、これは永久的に無限大に大きくなっていくということですね。これは薬はますます改良されますから。そうすると医療費の限界、めどというものはどこにおいたらいいのですか。
  168. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話のように、無限というわけではありません。やはり回数にはおのずから限度がある。いままではあるいは受診率が低かった。ところが、国民の衛生知識あるいは医療の普及からふえてくると、こういうことでありまして、自然増というものは当然ある程度あるべきであって、この増を適当なところで把握するということがやはり大事なことと思います。
  169. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今日、社会保険の給付が改善されて医療費が上がることは明らかです。実際このまま医療費が増高していくと、健保でもあるいは国保でも、将来医療費の増高というものの一応のめどをつけておかなければ、これは政府の負担金もありましょうし、掛金もありましょう、保険料金にも影響してまいりますが、そういうものは厚生省として考えておられますか。
  170. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはいま申すような医療費が、自然増が多くなったというのはここ一、二年の問題でありまして、これらの動向というものは私は十分把握しなければならぬ。したがって、大体落ちついた医療費の自然増はこの程度になければならぬというふうなめどを当然つけなければならぬ。ただいま、たとえば去年あるいはことしは多少異常な状態ではないかという気がしておりますが、これらは今申すように、私どもも医療の実態調査等によりまして、相当な客観的資料を得なければならないと、こういうふうに考えております。
  171. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私がどういう意味で質問しているか、厚生大臣、わかっておると思うのですが、今後、この社会保険の経営上からいっても、医療費が中心になると思いますが、この点について、厚生省がはっきりしたデータを持って、今後の経営についての指針と申しますか、そういうものを、やはりはっきり持つべきであると思います。これは、これ以上尋ねません。  最後に、一つ聞いておきたいのですが、いよいよ、この国会で問題になると思いますが、厚生法の改正の問題、特に企業年金との調整の問題について、どうなっておるか、ちょっとお知らせ願いたい。
  172. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 厚生年金法の改正は、この国会で御審議を願いたいと、こういうふうに考えておりますが、ただいまの構想としましては、目標を、今の平均三千四百円を、平均月一万円までもっていきたいと、これが基本的な目標で、内容を検討しておるのでありまするが、これにつきましては、今まで定額分が二千円であったというのを四千円にふやす。あとの報酬比例部分もこれをふやして、両方合わせて一万円になるようにしたいと、そしてある程度、現在でも企業におきましては、企業年金というもので退職金を、あるいは企業年金化しつつあると、こういう情勢でありますので、企業年金も、いずれもこれは老後の保障という同じ目的のために行なわれておるのでありまするからして、この際の改正には、報酬比例部分に該当するものを企業年金でこれを代行させよう、こういうふうな考え方をいたしておりまして、それがどの程度のものになるか、すなわち何百人以上の従業者のものになるというようなことは、これからまた御相談してきめようと、また企業年金によって積み立てられる基金を、どういうふうな運用のしかたにするかと、こういうふうな問題があるが、これからも、今、検討、相談をいたしておると、こういうことでありまして、いずれにいたしましても、ある程度の企業年金を、この厚生年金の中に導入したい、こういう考え方をいま持っております。
  173. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ、これについては法律案が出れば、また、委員会でも発言さしてもらいたいと思うのですが、この企業年金は適格年金制度として、これを調整年金として認めるということは、これは年金制度としては、よほど考えなくちゃならぬと思います。私は、ここで私の気持は反対ですが、結局その趣旨というもの、年金制度そのものの本質というものを十分見きわめておかなければ、厚生年金が一定の水準まで、一応老齢年金というものが保障できる、または障害年金でもいいんですが、保障できるレベルまでいっておれば、これは付加年金としてやるところは諸外国にあります。しかし、いま言われておる一万円というのは、えらく大きく力を入れられますが、今日、月一万円では老齢年金としての機能は私はないとみておる。それを、その中に各企業年金を調整年金として認めることは、これは非常に問題がある。それ自体問題がある。また一方、賃金論からいきましても問題がありますが、これは時間がかかるので述べません。相当慎重に考えなければ、これは私は問題があると思います。時間がないので、私の意見だけにしておきますが、法律案ができておるかどうかしりませんが、この点、慎重に取り扱わなければ、また問題があるということだけ、厚生大臣に申しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  174. 藤田進

    ○藤田進君 関連して一つ。いま厚生大臣の御答弁のみならず、大蔵大臣でけっこうですが、補正予算の——今後もあることであるし、過去についてもいえることですが、補正予算に対する基本的な考え方を伺っておきたいと思うのです。非常の場合、あるいは予備金支出等でたえ得ないとか、あるいは財政法上の事情といったような場合に補正予算はするとして、一応会計年度間の予算というものは、当初予算で見込み得るものは当然見込んでいくべきであろう、今度の補正原因を見ましても、いろいろ書かれておりますけれども、これは当初予算のときに大蔵大臣のほうで査定をせられたところに問題があるのか、あるいは各省の要求自体に問題があるのかといいますと、むしろ当初予算にすでに問題がある。したがって、今度の補正予算に私どもどうも財政法上から見ても疑義を持つ点が多いのであります。当初予算の編成、ここにもっと将来の推定をされて、予算執行のいろいろな事情も加味されて、あるいは物価その他いま厚生大臣の言われたようなこともある程度予想のつく問題なんでありますから、補正予算をすでに三号として出されておりますけれども、せめて今後の将来についてどういうお考えであるのか、非常にイージーゴーイングのような気がするのであります。当初予算編成自体について。
  175. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補正予算につきましては、財政法二十九条の規定を厳密に守って、予算編成後に生じた緊急の事由に基づくものに限るべきことであるということは、もう当然そう考えておるのであります。しかし、この前にお出しいたしました補正第二号は、人事院勧告という新しい事態で歳出を要請せられたわけでありますから、やむを得ず補正をお願いしたわけであります。今度のものは財政法にも規定がございますように、事務的な必要やむを得ざる経費であります。この中で義務教育などは、学校の先生の数に食い違いがあったということでありますが、こういうものに対しては、地方の自治団体を通じて国が補助を行なうというものに対しては、なかなか予算編成までの短い時間に、八月から十二月までの間に正確な数字がつかめないという場合もあり得るわけであります。もう一つは補助率が変わったとか、それから産炭地の問題等、真にやむを得ない事態の発生等があるのでありますから、そういう問題に対してはもうやむを得ないと、財政法二十九条でお認めいただいていると思います。これを年度予算の当初に全部見積もるということになれば、相当上積みをして見積もらなければならぬというふうになるわけでありまして、予算はそのような程度ではなくて、その時点において最良な予算を組んでおるわけでありますので、やむを得ずその後生じた事由に基づくものとして御審議を願っておるわけであります。もう一つは資金の問題だと思いますが、これはいつでも問題になるのですが、そのために三十一年には資金の制度を設け、三十七年に法律第二十九条の改正を行ないましたわけであります。当該年度に支出を予定しないものを資金に入れておくということでありますので、財政法の規定に基づく当然なものとして今御審議をお願いしておるわけであります。しかし補正予算に対する態度に対しては、お説のとおり厳格な気持を持っておるわけであります。
  176. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山本君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  177. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次は、鈴木一弘。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕
  178. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は公明会代表して、二、三若干の質問をいたしたいと思いますのですが、初めに物価、特に公共料金の問題について伺いたいのですが、政府の物価安定策が一月十七日か、十八日でしたか決定いたしましたけれども、その当初予定では、公共料金についての値上げストップについて、適用の対象範囲をきめておきたいと、こういうような予定であったということであったわけでございますけれども、どうしてこれが行なわれなかったのか、なぜ適用対象、範囲が明らかにされなかったのか、この点からひとつ伺いたいと思うのであります。これをひとつお願いします。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、公共料金というものの範囲を定義してみようと試みたわけでありますが、本来、公共料金ということばが厳密な既成用語として法律的な意味をはっきり持っておりませんために、かなり定義づけがむずかしくなりました。しかし、その経緯を申しますと、たとえば国または公共企業体、公団などが経営主体でございますものは、これは明らかに公共料金だろうと考えます。それは国鉄の運賃とか郵便料金とかいうものでございます。それから地方の公共団体が経営主体である——それは地下鉄でございますとか、路面電車でございますとか、これもまず公共料金である。次に、民間企業が経営主体であるもの、それはたとえば私営の水道料金でございますとか、ガス料金、それから私営の地下鉄の運賃、航空料金、これなどははたしてどうであろうか。それからさらに、国あるいは公共企業体、公団などが経営主体あるいは生産流通の主体であるたばこでありますとか、アルコールの売り渡し価格でありますとか、それから民間企業が経営主体であるというもの、たとえば教科書の定価は文部大臣の認可でございます。しかし、これらを全部引っくるめて公共料金ときちっと言い切れるかどうかということで実は行き詰まりまして、そこで定義を下すことをやめまして、これに加えて政府が規制し得る価格というものをつけ加えたようなわけでございます。
  180. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、政府が規制し得る価格というのを、一応現在では公共料金——言い方は少しおかしいですけれども、というように考えているわけですね。そのように理解してよろしいか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大体そう考えていただいて間違いないと思います。
  182. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、これは総理に伺いたいんですが、公共料金の値上げ一年間ストップの問題について、本会議での総理の答弁では、抑制措置の結果、経営の維持等が著しく困難になるものについては、そういう中小企業の関係については例外規定を設けたい、例外規定として値上げのケースを考えるというようなことを言われたわけでありますけれども、そういうような例外規定が結局公共料金ストップという一つの物価安定策の突破口になるんではないかという心配をするわけでございます。あくまでもそういう企業を、非常に著しく困難を感じられるようなものにだけ限って値上げの検討をやるかどうか。それとも安易に、多少苦しいというようなものにまで値上げを検討するというようなかっこうにするのか。その辺について決意のほどを伺っておきたいと思います。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) できるだけ原則を押し通したい。ただ、政府の規制し得るもの、いわゆる認可、その他で規制しておるごく零細な中小企業、しかも特定のそういう企業が破産してあと回復できぬというようなことになりますと、しかもそれが物価の高騰に影響がない、そしてムードに毛ならないというようなものまでも画一的に押えるということはこれは政治ではないと、こう考えております。全体としてはできるだけ原則を通したいという考えでございます。
  184. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの御答弁から考えられることは、公共料金の値上げの抑制を阻害しない程度であるというふうに了解しておきたいと思っておるわけですが、そのように了解してよろしゅうございますか。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一年間ストップを阻害しないという意味ではなく、もっときついんです。できるだけやらない。阻害する、しないというよりも、阻害させない立場で、これが原則でございます。
  186. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、私、ひとつ非常におかしく感じられたことなんですけれども、この一月十八日に物価安定策が発表になりました。そのときに、運輸大臣の言明でございますけれども、六大都市以外の公営バス等の料金については、今後一年間値上げをしないという間であっても、その値上げを認めていくんである、こういうように私は了解したというようなことを運輸大臣が発言をしております。それが新聞に載っているわけでございますが、そうなりますと、いまの総理のできるだけ以上に絶対上げないというような決意を踏みにじるというかっこうになるように考えられるわけです。これはどういうことになるのですか。これは完全な公共料金抑制の穴抜けになるんじゃないかと思いますが。
  187. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。それは総理がただいま申されたような、それを貫くのでございますが、地方の六大都市以外のバス、それからその他のものの九八%が中小企業であります。中小企業は、そういうことがあっちゃならぬということから、そういう中小企業に対しては、経済閣僚懇談会でいま言ったように経営が著しく困難になるという場合には、相談してやるという趣旨を申したんであります。
  188. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、運輸大臣の例のとき言われたのは、公営バス等の料金と、こうなっている、六大都市以外の。そうすると、六大都市以外の公営バスとなりますと、ほとんどの公営企業の経営というのは、赤字のほうが多いだろうと思う。そういうものについて著しくということになりますと、どこにめどを置いていいかわからない。もし経営が困難で赤字があるということだけで上げるということになりますと、六大都市と、それ以外の地方都市というのを見ましても、バスの台数にしてもそう大きな差がない、利用人数においても極端な差があるわけではございません。そうなると、これは幾ら抑制措置をとられておっても、結局穴をあけることになるのじゃないですか。その点は、一体どういうふうに考えられますか。
  189. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。私の申しましたのは、公営バスという、地方公共団体がやっているバスという意味は、私は言わなかったつもりでございます。公共のバスという意味で含まれると解釈されるのは自由でございますが、私の趣旨は、総理の趣旨と全く同じで、公営バスと言っておらぬ、公共のバスという意味で言っているのでありまして、先ほど申し上げましたようなことでございます。
  190. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、公営バスの料金についてはどう考えられるわけですか。
  191. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それは総理がお答えになったように、私はやはり貫いていって、やらないという考えでございます。
  192. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 何だか多少運輸大臣にごまかされたような感じがするわけでございますけれども、地方の公共バス、いわゆる中小企業というのはかなりございますけれども、何といってもやはり公営バスが一番多いわけでございます。それを貫いて、いまお話のように、上げないという決意を今後貫いていっていただきたい。そうしなければなかなかむずかしいだろうと思います。  次に、問題を別に移しますが、中小企業の問題について、まず最初に通産大臣に伺いたいのですが、物価安定策が出まして、その中に特に中小企業等の低生産性部門の対策ということを打ち出しております。これは当然のことと思うのですが、そのやさき一月ごろにかなり中小企業の倒産が出ております。戦後最高であるとか、いろいろ言われているわけでございますが、これはどのくらいの数が出ておりますか。
  193. 中野正一

    政府委員(中野正一君) お答え申し上げます。  昨年の倒産の状況でございますが、これは負債総額で一千万円以上のものを調べたものでございますが、件数にいたしまして千七百三十八件、千六百九十四億円の負債総額になっております。それから最近いわれておりますのは、昨年の後半にかけて件数なり負債金額がふえているんじゃないかということでございますが、件数としては、昨年の十一月が二百九件、二百十七億でございますが、十二月に百九十四件、二百三十九億、一月に入りまして百九十八件、二百八十二億というふうな状況になっております。
  194. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その原因についてどういうふうに考えておられるのですか。
  195. 福田一

    国務大臣福田一君) 中小企業の倒産の問題でありますが、これはいつも金融引き締め等が起こった場合に起きておりますが、しかし、その根本の原因は、やはり中小企業が無理をして仕事をしておったようなのが、金融引き締め等の事情が起きた場合に、その病根があらわれて倒産をするというのがいままでの例でありますが、今回特に多かったのは、やはり暖冬異変といいますか、繊維産業に非常に多いのでございまして、あの件数のうちでも繊維産業の占める部分が多いと存じておりますが、いずれにしても暖冬異変で品物が売れなかったということから金詰まり、あるいは決済等がうまくできなくなって倒産が多くなったというのが大きな今回の特徴であると考えております。
  196. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、総理が衆議院の段階においても暖冬異変ということを持ちあげております。それは確かに商工興信所あたりも一月の倒産については暖冬異変の影響があるということを述べられておりますけれども、そのほかの、何といいますか、原因というものは考えられないわけですか。
  197. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほども申し上げたような事情もございますが、大体年末というのは決済期に当たりますので、年間を通じましてはどうしても年末にそういうような事故が起きる例が多いのでありますが、しかし、一月にふえたのは、私はかなりいま申し上げましたような暖冬異変の影響があったと、かように考えておるわけであります。
  198. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それに続いて二月もさらに未曽有の倒産があるのではないかというような観測が一部されておりますけれども、そうなりますと、これもやっぱり暖冬異変ですか、考えられることは。通産大臣。
  199. 福田一

    国務大臣福田一君) 二月のことはまだ計数が出ておりませんのでさだかでございませんが、そういう事態が出ました上で、数字に基づいてお答えをいたすよりいたしかたないかと思っております。
  200. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、そういうふうに見る見方もありますけれども、暖冬異変というような……一つの傾向として。昭和三十二、三年のときの倒産、それに対して今回の、昨年一年間でも約二千件近い倒産が出ておりますけれども、これは昨年などは景気が上向いているのが十一月近くまで続いているわけであります。それなのに倒産しておる。そうすると、一月の件については先ほどのようなお話、あるいはその前については背伸びしたような行き方、無理をした仕事から倒産になったというふうに言われているわけですけれども、ここで前のときと、前の三十二、三年の金融引き締めとうんと違っているというふうに見れますけれども、長い目で見ますというと、私は逆にどんどんと中小企業に対しての融資といいますか、資金の流れというものが細まってきていることから起きてきているのじゃないかというふうに判断したくなってくるわけです。  そこでこれは大蔵大臣に聞きたいのですけれども、全国銀行の貸し出し残高、あるいは都市銀行、地方銀行と三つに分けて、中小企業向けの額、貸し出し率というものはどういうふうにこの一年間ぐらい変化してきているか、伺いたいと思います。
  201. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 都市銀行の貸し出し八兆円のうち、中小企業に対して二兆円、これは二五・三%、地方銀行は四兆円のうち二兆三千億、五七・五%が中小企業向けであります。それから信託勘定等も、これは中小企業は小さいわけでありますが、これが約九%、三千億、それから相互銀行では、御承知の中小企業向けでありますので、一兆九千億、一〇〇%、それから信用金庫一兆五千六百億、一〇〇%、信用組合、全信連が四千二百九十九億、一〇〇%、それに商工中金、中小公庫、国民金融金庫等を合わせますと、その上に開銀まで入れて計算をしますと、二十兆七千七百八十四億円という貸し出しのうち、中小企業向け九兆二千九百七十五億、四四・七%というところでありまして、中小企業に対する比率が減っておるというようなふうには考えておりません。
  202. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはいつのですか。
  203. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは三十八年十一月末であります。しかも、中小企業から抜け出したものが過去に非常にたくさんありますので、過去の例と対照してみまして四四・七%でそうたいして減っておらぬというふうに考えるのであります。
  204. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま言われた都市銀行八兆円の中で、二五・五%、これは十一月末だということでありますけれども……二五・三%ですか。
  205. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 二五・三%です。
  206. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 十一月末ですか。
  207. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十一月末です。
  208. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それは全国銀行じゃないですか。
  209. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そうじゃない。都市銀行です。
  210. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、昨年、三十七年の十二月は何%だったんですか。
  211. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十八年の十一月でいいと思いましたので、三十七年はまだ調べておりませんから、よく調べて御答弁申し上げます——相すみませんでした、ありました。三十六年の三月で中小企業に対します総貸し出し、都市銀行を申し上げますと、四兆八千七百四十六億のうち一兆二千九百十六億、二六・五%、三十七年の三月で五兆六千六百三億円のうち一兆四千八億で、二四・七%、三十八年の三月、七兆一千百二十八億のうち、一兆五千百十七億で、二一・二六%、三十八年九月現在で言いますと、七兆七千九百十一億のうち、一兆五千八百六十四億で、二〇・三六%ということでございますが、十一月末現在で、先ほど申し上げましたように、都市銀行においては二五・三%、これは資本金五千万円以下という中小企業であります。
  212. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大蔵大臣の示されたのは、資本金五千万円以下を示されたようでありますけれども、まあこれは商工金融ですか、中金から出ているのを見ますと、一千万円以下の分ではかなり下がってきておる。三十七年度末では大体三十七年十二月に二三%程度あったものが、今回は三十八年度十月、九月ごろになると二〇%台に下がってきている。こういうふうに一千万円以下というほうになりますと、かなりきつくなってくるわけでありますけれども、五千万円の資本と一千万円の間では五%程度の差がここについております。そのままずっといくとすれば、とにかく一カ年間で三%近くの融資額が減ってきている。言いかえると八兆円の三%ということになりますと、二千四、五百億ということになるわけでありますけれども、こういうことが中小企業が苦しくなって倒産していくという一つの原因になっていないかどうか、それに対しての考え方を伺います。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕
  213. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 午前中の質問にお答えを申し上げましたが、どうも多少このごろ貸し出しが多いという傾向にあることは申し上げました。企業間信用が非常に膨張の一途をたどっているということも申し上げたとおりでありまして、正常な経済成長を続けていくためには、ある程度金融調整の段階に入ったということも申し上げたのでございます。いまの都市銀行の八兆円のうちの二五・三%が低いということでございますし、また、都市銀行においても三〇%程度の中小企業向け融資をやるようにというような御意見も間々聞くのでありますが、御承知のように、地方銀行が五七・五であり、また、相互銀行、信用金庫、信用組合、また、政府三機関等、中小企業専門の機関が一〇〇%中小企業向けに出しておるのでありますから、先ほど申し上げましたように、総貸し出し二十兆七千億のうち、九兆三千億、四四・七%という数字は、まあ比較的正常な数字だというふうに考えておるわけであります。しかし、政府も非常に倒産ということに慎重でありますし、特に開放経済に向かっておるのでありますから、中小企業の善意な努力に対してできるだけ応援をしなければならぬということを考えておりますし、特に大企業の金融調整によって長期の手形貸し付けがふえたり、また、元業者の、親業者の倒産によって下請が黒字倒産になってはならないという問題も十分考慮しまして、暮れに行ないました全国の財務局長会議におきまして非常に新しいやり方でありますが、企業間信用の状態、それから不渡り手形の状態、それから大企業から中小企業に渡っているところの手形が一体どのように延びておるのか。また、三カ月、五カ月、六カ月というふうに期日別の手形の金額、枚数、それから倒産をしたものに対してどういう状態で倒産に追い込まれたのか。また、これに対してどのような部面が回収できるのかというようなこまかい問題に対して、たえず地方の金融機関別の調査を行なって即刻報告するようにと、それに対してはできるだけ金融機関の協力を求めるという非常に強い指示を行なっておりますので、特別な金融引き締め、金融調整というようなものが中小企業の倒産を早めているというようなことは全然考えておりません。しいて申し上げると、私もこういう倒産に対して非常に深刻に考えておりまして、いろいろな問題に対して検討しておりますが、どうも少し私たちから考えると乱暴だというような面も相当あるようであります。これはまあ設備投資というだけでなく、取引が年間に約倍になるというようなことや、また、いま一番困っておりますのは、御承知のように、融通手形の問題であります。商業手形と融通手形と見分けがつかない。企業間信用が膨張した中で融通手形がどのくらい横行しているか。この問題が非常に大きな問題でありますので、特に倒産した例の中で融通手形による問題がどのくらいあるのかということを手きびしく調べるようにという措置をやっておりますので、現在までの十二月、一月の倒産状況を見て金融引き締めによるものであるというふうには断定いたしておらないわけであります。
  214. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 金融引き締めによるものであるとは断定できない、いわゆる企業間信用の膨張による連鎖的なものもあるし、設備投資、あるいはそのほかの扱い量の二倍、三倍に年間なっていくというような、そういうことも原因だということになりますと、これは中小企業に対する対策というものが画一的なものじゃとてもだめだ。逆に今度は経済全体のことから言えば、中小企業の立ちおくれを直していこうという第二ラウンドというものが打ち出されておりますけれども、そういう経済の構造上の問題から言えば、金融引き締めということだけでもって、逆に物価の安定であるとかあるいは貿易の伸長、国際収支の改善であるとかいうようなことは見込まれないというふうに思われるわけです。その点についてはどう考えていらっしゃるか。
  215. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ輸出を振興し、国際収支をよくするということには、正常な金融状態を招きながら正常な経済成長を続けていくということが一番好ましい姿でありますが、いま申し上げましたように、中小企業の問題もありますし、また、金融自体の内部要因をよく見ていきますと、いまの融通手形の問題、企業間信用が急激に膨張していくというようなことがありますが、画一、一律的な引き締めをやると、まあ角をためて牛を殺す、まあ性急なために国際収支はよくなるけれども、国内問題が非常に困るということがあるので、第三四半期から非常に慎重かつしさいにわたってこれらの問題を検討いたしておるわけであります。でありますから、この間、日銀総裁も衆議院予算委員会で申されたように、やはり現実に目を十分注ぎながら、きめこまかく配慮しながら国際収支の改善という大きな目標を達成すべく努力をします、いわゆる相反する問題を同時に解決しなければならぬということでありますので、多少時間はかかっても、回り道であっても究極の目的は輸出を振興し、国際収支を改善するということでありますので、国内的な企業の状態に対しても十分な配慮をしながら大きな目的を達成したい、こういう答弁を申しておるのでありまして、政府、日銀、金融機関等、そういう大きな線で金融政策に対処しておるわけであります。
  216. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどの問題に戻るわけでありますが、都市銀行のいわゆる貸し出し比率が下がってきて、それだけでなくて、地方銀行の中小企業向け、特に一千万円以下についても下がってきている。それについての原因はどういうふうに考えておられますか。
  217. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も都市銀行に対してはまあ急激な状態ではいけないけれども国会において三〇%は中小企業に貸し出すべしという法制を行なえ、こういう議論さえあるのでありますから、都市銀行が法律を改定、制定しなければならないようなところまで追い込まれることを考えないで、中小企業の持つ日本の特殊性、または国際収支改善や輸出振興に果たしている大きな役目を考え、中小企業に対しては特別な配慮をするようにという強い要請をしておるわけであります。でありますから、できるだけ中小企業向けの金融が多くなることは望ましいことでありますけれども、比率が下がっておるからといって、直ちにこれが中小企業に対して熱意を欠いておるというふうにはなかなかならないわけであります。先ほど申し上げたとおり、昨年から今年に対して、企業間信用が非常に膨張して、また、貸し出しが非常にふえておるということもありますので、中小企業にもこまかく金融的に配慮もいたしますし、黒字倒産を招かないような、きめこまかい措置をするとともに、やはり一昨年の暮れに造船に金を流し、また、重電に金を流したことによって、中小企業は、非常に造船等に関しは関係者二百万人というような大きなものが金融梗塞を解かれて正常な金融状態に入ったという例もありますので、日本のやはり下請と元請との実際の状況をも十分考えながら、やはり金融梗塞というものを解いていくという方向へ行かなければいけませんので、やはり中小企業金融機関が発達をして、その扱う資金量というものが非常に大きくふえておるのでありますから、これらの貸し出しと、それから地方銀行との貸し出しの状態を十分バランスをとっていきながら、妥当であるか、よりどうしなければならぬというふうなことを検討しなければならぬだろうということで、都市銀行が大手筋を急激に一律、画一的に締めることによって、それに関連する相当大きな中小企業を黒字倒産にならないようにという指導をしておりますので、その意味では確かに千万円以下の貸し出し比率は幾らか下がっておるということはありますが、これは貸し出しの総額が非常に急激にふえておるという面もありますので、ただいまの御発言に対しては十分心して検討してみます。
  218. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私、こういう考え方をしているわけですけれども、結局今回のようにだんだん都市銀行あたりが中小企業向けに貸し出す比率は下がっているわけです。貸し出す比率が下がっていることは、今回のような金融引き締めがあると、結局大企業が自分のところの内部留保に残しておくとか、あるいは運転資金にしたり、設備資金にしようということで見込みの借りをやっているのじゃないか。そこを大蔵大臣が幾ら二〇%になったのを二%上げて二二%にしろ、あるいは五千万円以下の資本金のものに対して三〇%までいくようにしろと言ったって、そういうような原因というものを究明しないでは解決はしないのじゃないか、その点を考えるわけなんですけれども、それを伺っているわけなんです、はっきり言いまして。
  219. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融の内部に立ち入った本質的な問題を取り上げて御発言なさっておるわけであります。私も金融に対してはそのような考え方を持って金融の流れの実態というものをつかまなければいけない。いまの日本銀行と都市銀行との間の決済は一体どうなっているか、手形交換じりはそのまま日銀がめんどうを見るという、こういうような制度でありますから、いまはやはりしようがないから画一、一律的な引き締めをやって、解除するときには、一部において解除をやっては困るということから、やはりそういうオーソドックスなやり方でもって対処するというふうになっておるのですが、この内容に対しては専門金融の責任者もおりますし、中央銀行もおりますから、政府自体がこまかいことをとやかく言うととはありませんけれども、金融の最終責任はやはり政府にあるのだという考え方で、私が先ほど申し上げたように、こまかいものに対して、しさいに検討して、事前に対処できるものに対しては統計数字にだけたよらないで、こういうような状態において配慮すれば助かるのですというものは事前にやれるはずだからということで、地方にある財務局の職員を総動員してやろうという態勢をとっておりますのも、金融の流れ、いま統計に出た数字だけによって割り切らないで、事実、効率的に、また、金融の正常化をはかるためにはどうすればいいかということを政府自体の立場でも検討をやっておるわけであります。私は地方銀行に対しても、都市銀行に対しても、その他金融機関に対しましても黒字倒産等が起こった場合の責任は、これはその企業者自体だけではなく、いままでその人に金を貸しておりながら、倒産になってから初めて私のほうでは金融をとめますというような金融機関の責任自体もあるのだから、そういうことに対しては金融機関の自覚も促しておるわけでありまして、これは一朝一夕にいかない問題でもありますが、金融の流れ、金融の実態、こういうものをつかんで適切な配慮を行なうように努力をいたすつもりであります。
  220. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この問題は本質的なことですから、どうしても原因の究明も十分にいかないとは思いますけれども、積極的に中小企業向けの貸し出し率を増加できるようにいろんな方策をとってほしいと思うのです。  その次に伺いたいことは、今回の倒産についてですが、一部には大企業の急速な設備整備に追いつこうとして、先ほど話がありましたように、中小企業が設備投資をしたと、それが破綻の原因の一つだと、これに対しては政府のほうとしては、政府関係金融機関である商工中金の貸し出し金利を中期でもって年三厘減らすというようなことを考えているというような発表があったわけですけれども、そのほかの政府関係金融機関でもって、設備投資の破綻からくるとなれば、さらに長期のものを考えなければならない。さらに超低利のものを考えなければならぬということになると思うのですが、それに対し大蔵大臣と通産大臣の両方から考えを伺いたい。
  221. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お説のように、三十九年度の予算におきまして、三十億円の政府出資をいたしまして、商工中金の金利を引き下げたわけであります。これでは足らぬということのお説もありますけれども、前向きに対処するという具体的なあらわれとしてかかる処置をとったわけであります。同時に、中小企業金融公庫及び国民金融公庫に対しては長期低利、また、一歩進んで金利引き下げ等を行なえという議論も私の党内にもありましたし、皆さんの党内にもあると思うのですが、現在三行の金利年九分、二銭五厘という現状を考えますと、民間金融機関の金利に比してまあ妥当な金利体系にあると、それよりも中小企業関係三機関の問題ももとよりでありますが、地方銀行、いわゆる市中金融のほうが多いわけでありますから、ウエートの多いこれらの金融の実質金利の低下をはかるということが先だという考え方で、歩積み両建て等に対しては強い解消的な処置をしておるわけであります。そうすることによって、中小企業の実質負担、金利負担の重圧から解放しなければならないと、そう考えております。
  222. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま大蔵大臣から申し上げたことで大体尽きておると思いますが、しかし、われわれとしては、設備近代化とかあるいは協業資金とかいうようなものを今後ますます増高することによって、いま仰せになったような問題が大きな弊害をもたらさない、むしろ中小企業を育成するほうへ力を入れていくように努力をいたしたいと思っております。
  223. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは総理にここのところで伺っておきたいのですけれども、先ほどの話がありました実質金利の増大、歩積み両建てによる、あるいは手形のサイトの延長によるところの実質金利の増大ということが一つの大きな苦しみになっていると、逆に考えると、大企業のほうの景気のクッションの役割りを中小企業は負わされている。苦しくなってくると、少し詰まってくれば手形のサイトが延びるということで、かなり苦しい景気クッションの役目というものを持たされるわけでありますが、今回の預金準備率の引き上げから始まってきた金融引き締めがさらに一そう中小企業に対して苦しい状態をつくっていくのじゃないかということが考えられるわけですが、総理としては、先ほどからのお話のように、いろいろケース・バイ・ケースのような形で一律的な金融引き締めでない方向でいきたいという話があったわけでありますけれども、具体的にどういうように持っていこうと考えているか、中小企業に対して決意のほどを伺いたい。
  224. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣、通産大臣がお答えしたところで足りると思いますが、しかし、いまの日本の金融制度の状況を見ますと、最近は相互銀行、信用銀行が相当伸びてまいりましたが、日本の金融機関の実態というものが、商業金融でいくのか、設備資金を出す長期資金でいくのか、これがはっきりしておりません。ドイツ式のやり方でもないし、かといって英米式のやり方でもない。長期資金を出す興銀、長期信用銀行がございますが、これも長期資金の一部分でございます。債券が五千五百億円ぐらいですから、両方合わせて一兆一千億ぐらいであります。しかし、これも大企業の設備資金としては、興銀やあるいは長銀がやれば、大銀行もついていくので相当まかなっておりますが、中小企業の設備資金ということになると、これはどこが出すかといったら、いまのところでは中小企業金融公庫、あるいは組合金融をやっている商工中金ということになるのであります。しかも、中小企業金融公庫の相手とする中小企業の設備資金増加のためにどれだけの措置をとっているかといったら、私はどうも申しわけないと思っておるのであります。それは設備近代化資金として三億から始めていま四、五十億ぐらいになっておりましょうが、その程度じゃとてもいかない。私は実は力が弱くて思うとおりにいかなかったのですが、中小企業金融公庫の今度の債券の発行、これもなかなかいろいろ問題があったようでございますが、私はこれは大いにやるべきだ。十年前に長期信用銀行が発足いたしまして、そしていま五千五百億円の債券を発行している。これは中小企業に行かん。排他的ではございませんが、大企業になっている。中小企業金融公庫にもっとやらすべきではないか。今度出発したのは五百億円でございます。これはどんどんふやしていくべきだ。商工中金との関係もございましょうが、もっと中小企業の設備資金に対してわれわれは切実に、そして機構的に考えなければならぬという気持ちを持っております。今後私は中小企業金融公庫の債券の発行——何も政府保証債の必要はございません。興銀、長銀は、政府保証債ではなくていまや一兆一千億を集めておるのでありますから、私は政府保証債ももちろんですが、政府保証債でなくても、やはりこういうせっかくつくった中小企業金融公庫なんかもっと活動を大きくすべきで、そこで商工中金との関係もあるようでございますが、商工中金なんかも、私は組合金融を主とする場合において、もっとやはり発展的の方策をとるべきだと思う。三厘ぐらいの金利では、まだまだ十分ではない。なかなかこれがむずかしいのです。総理としてこれをどんどんやっていきたいと思っておるのですが、なかなかこれがむずかしい。まあ今度ようやく発足いたしましたが、やはり中小企業金融公庫の設備資金を大いに出す。のみならず、私は行く行くは手形の再割り引きもやる方向でいくべきじゃないかというふうな気持ちを持っております。そこで、とにかくいま大銀行、都市銀行あるいは地方銀行の中小企業に貸し出す率なんかよりも、もっと発展的に中小企業関係の金融機関をもっとふやす。そして、また片一方において、中小企業は信用が自分で確保しにくいから、いわゆる十二、三年前からありますところの保証協会、これをうんと拡大して、そしてえてして貸しにくい、信用の少ない中小企業の信用をもっと拡大する方向へ行かなきゃならぬと思います。  それから、私は歩積み、両建てということを前から非常にきつく言っておるのですが、だいぶこのごろは出てまいりました。歩積み、両建てのいけないことは、これは一千万円借りて三百万円すぐ預けておる。何も、これは三百万円預けるときに、借りた金利と同じことにしてくれればいいわけです。一千万円借りて三百万円預けるときには、これは定期預金かあるいは普通預金——安いです。借りた金は二銭五厘とか、あるいは三銭とか。だから、信用の確保の必要上、一千万円貸すけれども三百万円預けておきなさいと言うなら、預かった分については、預金利子も貸し付け金利子と同じことにすれば何でもないことです。私は、そういう意味において大蔵省が強く指導するように頼んでおります。だから、問題は、歩積み、両建てということは金利負担が困るわけです。だから、もう手っとり早い話が、両建てでよろしゅうございますが、金利はあなたのほうの銀行でお預かりの金利を貸し出し金利にしてくれと言えば、これは楽にいくことだと思いますけれども、なかなかいかんようです。しかし、いずれにいたしましても、この中小企業というものは、私は片一方の金融の面よりも、一つは心がまえの問題があると思う。いわゆる手形の不渡りを出すのがあたりまえだというようなことではいけませんので、中小企業の倒産のうちに、今度でも一番大きいのは、一億円の会社で四十億円の借金がある。これは普通の経営じゃございません。これは金融の道の度を越えております。こういう点は、まあ業者は業者としてお考え願わなきゃならないし、また、そういうふうにしたのは、四十億円を貸す銀行が公正なやり方かどうかということも金融機関は考えなくちゃならんと思います。で、金利をどうした、あるいは金融引き締めだ、さあこれだけ倒産が出た、それは政府責任だ。もちろん私は全部責任を負いますが、それよりも、どういうふうにしたらこれが改まるかということで、一億円の会社が四十億円の債務で倒れるということは、経営者もどうかと思いますが、貸すほうもどうかと思う。いろいろな点を私は考える。しかし、そういうこと言ったって切りはございませんから、やはり中小企業に対してはもっと抜本的に、中小企業に対する金融制度の拡大をひとつ合理的にやっていかなきゃならんのじゃないか。しかし、その意味において、今度中小企業の債券発行、そしてまた私は商工中金の割り商あるいは商工債券の発行についてもっと熱意を持って、片一方では商工中金、片一方では中小企業と手を握り合っていくことを考えないと私はいかんと思うので、しかし、ようやくその緒につきました。今後は中小企業に対する金融につきまして、やはり制度的に保証協会を発達さすとか、あるいは中小企業金融公庫の債券、商工中金の債券について特定のことをやる。いまなんかでも、前は商工中金が出している割り商なんてものが、割り興や割り長よりも金利が高かった。これを、この前金利を下げるときに一緒にしてしまった。昔のように、割り長のほうより高くすれば、もっと売れるかもしれない。まだいろいろくふうがあると思うのでございますが、なかなか私も、通産大臣、大蔵大臣ならばもっとやるのでございますが、総理となってみますと、気のついたことはどんどん言っておりますけれども、なかなかそう動かん点がございます。しかし、今後十分そういう点でやっていきたいと思っております。
  225. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理大臣の中小企業金融あるいは中小企業についての相当の決意を伺ったわけですが、まあ遠慮なさらないで、大蔵大臣でないから、通産大臣でないからと遠慮なさらないでやっていただきたいと思います。  それで、いま金利体系云々の問題がいろいろお話があったわけでございますが、大蔵大臣の構想で、銀行を一県一行、さらにそれ以下に少なくしたいという考えだということなんですけれども、先ほどの貸し出し率から言ってみても、地方銀行と都市銀行とがもしも——これは構想の段階かもしれませんけれども——まとまってくるようなふうになれば、中小企業向けの金融というものは、またさらに詰まっていくのではないか。むしろ今後こういうようなことが考えられるとすれば、将来には銀行同士のいわゆる中小企業向けの銀行というものが——まあこういうことを申し上げますというと、すぐ長期信用銀行があるじゃないかというような話になるかもしれませんけれども、これはほんのわずかでございます。現在の都市銀行、地方銀行が合併するなり、あるいはしないにしても、そういう分野調整というものを必要としないかどうか。大体一応地方銀行はなっておりますけれども、その辺の考え方はどうか、伺っておきたいと思うわけです。
  226. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 銀行合併を強行しようなどと考えておるわけではないのであります。これはまあいろいろの立場から、日本の戦後の金融が自然発生的な必要にかられて、いろいろな専門金融機関ができたわけでございます。まあ私はこういうやり方が悪いと言うのではなく、大蔵省としても金融機関に対する基本的な考え方を持って、それによって進めてきたわけでありますけれども、いまあなたが言われたように、中小企業金融公庫をもっと拡充するということも当然考えなければならんことでありますし、総理が言われたとおりでありますが、これからの新産業都市の建設とか、地方開発とか、産炭地振興とか、いろいろな問題が起きてくるときに、一体いまの地方銀行の制度のままでいいのかという問題は当然考えられるわけであります。しかし、地方銀行がその地域の金融機関としてその地域から乏しい資金を集めるという状態であれば、これが長期低利の備設資金を貸し得るかどうかということは、こういうことを言えば当然そこに限界が出てくるわけであります。また、専門金融機関にやりましたけれども、またアメリカなどでもそういう制度をとっておりますけれども、国際金利に、だんだんと開放経済に向かって下げていくのだということをまず仮定して考えた場合には、一体今の三銭のものが一銭五厘まで下がるには、それだけの力があるのか。歩積み、両建てを解消しろということで一生懸命になっておりますけれども、小さい銀行で一体歩積み、両建てをほんとうに解消して、総理が今言われたとおり、私も言っておるのですが、一千万のうち三百万円は両建てになってるから、当座貸し越しで一厘ないし一厘五毛を限度として金利を二重取りをするなと、こういうことを今すぐ実行すること自体、一体これに耐えるだけの金融機関の実態なんだろうかということは、まじめに考えなければならんわけであります。でありますから、そういう開放経済という大きな事態にぶつかるのでありますから、合同することにより、合併することによって、合併メリットがあり、それが中小企業のために大きく作用し、金利の引き下げに、実質金利の負担軽減にもなるとしたならば、あなた方もまじめに考えて下さい。海運会社だけに合併さして、金融機関だけは例外ですと、こういうわけにはいかんと思いますから、まじめに開放経済に対して金融機関のあり方を御検討願いたいと思います。いままでは銀行合併というのはタブーのような考えでおりましたけれども、そういう意味で、銀行合併が意義あるものであり一円満に行わわれるものであるならば、大蔵省が門戸を開きます、こういうことを言ったわけでありまして、これが都市銀行と一部地方銀行の合併があっても、いまよりもよくなりこそすれ、それによって中小企業が圧迫を受けるというような考えでは合同を許さん、こういうことになるわけであります。  いまいろんな議論がなされておる面から見ますと、中小企業センターにして、あなたがさっき言われた都市銀行の二〇%、二二、三%のものを三%に近づけるために、中小企業専門のセンターをつくるために合併ができればいいという申し出もあります。そういう意味で、地方開発のためとか、それから中小企業専門の業務を、興銀があのような状態でありながらも中小企業部を発達さしておるような状態で、好ましいものに対しては合併を許しますと、こう言っておるのでありますから、銀行合併というものの一つの案を持って強化しよう、戦後の銀行行政を徹底的に改めようというほど荒っぽいものでもありませんし、金融機関の自覚を促しながら、より合理的な金融機関の体制ができればいい、こう思っておるのであります。
  227. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまのお話、多少大蔵大臣は、私が合併を強行しろというように聞こえたかもしれませんが、そうじゃなくて、分野調整が必要じゃないかということを言ったわけです。  それとからめて、いま一つ新産都市のことがちょっと話が出たわけでありますが、話が出たついでに伺っておきたいのですが、新産都市ができたからといって、必ずしも地元の地場産業が伸びるというわけじゃない。一つの考え方として、社会資本としての投資がされ、また、産業が来たからといって、必ずしもそこにもともとあったところの中小企業というものを育成助長するという結果は生まれないわけであります。たとえば、群馬県のような機業が盛んなところに機械工業が来ましても、これはいままでの地場産業の育成にはならないわけであります。そういう点、二つの問題について効果を生ますといいますか、そういうことからもなお一そう分野調整ということが必要じゃないかと思うわけであります。これについてもう一ぺん伺っておきたい。
  228. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 専門分野の拡充ということに対してはお説のとおりであります。また、大蔵省もそういう意味でいままで相互銀行また信用金庫等、中小企業に対する専門業務を拡充してまいったわけでありますが、私が今申し上げたのは、それ以上に、また開放経済体制という新しい事態がありますので、これらの範囲に入れながら、広範に、そういう立場で将来の金融機関のあり方に対してやはり検討することもむだではないろうだという私の考え方を申し上げたのでございます。いまの新産業都市とか、地方開発とか、低開発地域促進、こういう問題に対しましては、これはもう一つの地方産業の開発というようなものではなく、東京や大阪に人口、産業、文化等が過度に集中して、これからの投資効率という面からいいますと、逆な投資を行なわなければならない。うしろ向きの投資ということになりますので、狭い日本のようなとろこでは、水のあるところ、電力のあるところ、人間が定着しておって労働力のあるところ、そういうようなところに、必然的に交通網ですでに発達した都市と結びながら、地方開発をやっていくというのはどうしてもやらなければならぬことであります。それに対して、一方この土地の取得の金融はどうするのかという問題に対して、いま開発銀行に対してワクを設けたわけでございますが、この程度のワクで一体できるのかという議論があります。でありますから、そういう新しい政策的要請に対して金融機関がどう対処しなければならぬかという問題も十分いま検討しておるわけであります。  いま、地場の産業に対して別の企業が来ても影響がないという議論がありますけれども、大体、やはり産業や人口が定着するということによってその地方、地域経済が大きくなるという問題もありますので、総合的に検討しながら、金融機関もこれらの政策に対応できるような方法を検討いたしておるわけであります。
  229. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 中小企業はそのくらいにしておきます。  次に、海運の問題について伺いたいのですが、今回の補正において六十億の産投が輸出入銀行にありまして、船舶の輸出についての需要が増大したからということになっておりますが、それに関連いたしますけれども、四月一日からいよいよ海運が集約化されたわけです。それについて、現在六つのグループの規模というものができたわけでありますけれども、非常にこの格差が強い。大阪商船と三井船舶のグループ、あるいは郵船のグループは二百万トンをこえている。ところが、昭和海運のほうでは百万トン程度である。こういうような格差が非常に強いわけでありますが、これでは再び、もう一ぺん再々編成といいますか、そういうことも起きてくるかもしれません。あるいは過当競争というものが、二大グループなりあるいは下のほうのグループで起きるかもわからない。そういう点について、今後一体どういうふうに考えて指導していこうとしているか、それを伺いたいわけです。
  230. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) いまお話しのように、日本の海運は去る十月の二十日をもちまして整備計画を、六グループにして出してまいりました。そうして、いまそれを審議中でございまして、四月一日におそらく整備計画が出るだろうと思っております。そこで、それでは、それをどういうふうに指導していくかと申しますと、もちろん三井船舶、大阪商船が一番大きいグループであります。以下大体、日本郵船を除きまして百万トン前後になりますが、両方の大きな三井グループと大阪商船グループは、相互いに協調するように指導していってまいりまして、また、その緒についております。最も競争の激しかったニューヨーク航路につきましては、すでに各社が共同して一つの会社をこしらえましてニューヨーク航路に当たって、そうしていろいろなダブっておる事務所、港の使用料、倉庫、そういうものを一つに統合していくようにやっていこうということで、それ以外におのおのシェアを持っておりまして、お互いに侵さないようにしまして、そうしていままで一つの場所で多数競争しておった船舶を、三国間の輸送、その他のまだ未開発のほうにそれを回すように指導して、私は少なくとも五年間には整備が進んでまいりまして、さらにさらによりよい状態に海運がなるように期待いたし、現在においては、過当競争とかお互いに競争し合うというような状態は見られないで所期の海運の再建整備が順調にいくものと確信をいたしております。
  231. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 協調策はこれからだということで、いろいろいま具体的に定期航路などについて一つ出ておりましたけれども地域的配分といいますか、定期航路について、欧州、米国あるいはアフリカ、こういうようになっておりますが、いまのニューヨーク航路に見られるような、これは共同配船方式ですね、このような形で全部いってしまうのですか、地域的配分を各社で分けるようにするのか、その辺の考え方はどうなっておりますか。
  232. 綾部健太郎

    ○国務大盤(綾部健太郎君) 従来のいろいろ勢力の分野がございますから、それに集中してまいるようにいたしたいと思います。
  233. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、勢力分野がぶつかっているところは先ほどのような共同配船方式をとられる、それ以外のところはおのおののグループにやらせると、こういう意味でしょうか。
  234. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えします。大体さような方針でまいるわけでございます。
  235. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今回の集約は、大手の十二社を中心に九十七社がまとまったわけでございますけれども、それに加わらなかったような小さな海運会社があるわけであります。そういうものに対しての対策は、運輸大臣として今後どういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  236. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 順次、その六グループにおのおの関係がございますから、それになるべく一緒になるように勧奨していきたいと思っております。
  237. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、いまの六グループにできるだけ集約、全部を集約化させると、こういう意味ですね。
  238. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 外航船舶は大体いまの六グループに集中させていくように考えております。内航につきましては、従来どおりであります。
  239. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に伺いたいのは、いままでと違いまして、海運業者が比較にならないほど大きい船会社になったわけであります。そういう大規模になってまいりまして、今度で第十九次の計画造船になるわけですね。その計画造船の行き方でありますけれども、大規模な集約化された海運業者ということになれば、建造計画というものもかなり長期的なものを考えるようになっていかなきゃならない、このように思うわけですけれども、そうすると、いままでの建造方式を変えて、一年間ごとの計画造船というのでなくて、長期的な計画造船ということを考えるべきではないのだろうか。この点についての建造計画方式についての考え、これをどうなさっていくつもりですか。どう対処するのかお伺いしたい。
  240. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 従来の計画造船はもちろんそれを続けますが、さらにさらに、あるいは予約と申しますか、来年度の船舶の需要に応じまして、需要は、もういま非常に海運が赤字の対象になっている、赤字の一番元になっているというのは船舶が足らぬからでありますから、そうして六大グループに分けまして、それに対しまして、いままでの年度計画をさらに長期的なものにしまして、今年の十九次なら十九次でもう一ぱいになっておる場合には、二十次分をもさらに考えまして、そうして所要の船舶を大体政府で企図しておる二百万トンまでふやす計画に順次沿うように、長期的な、しこうしてまた造船費を安くするように、同じ設計でいけるようなふうに指導していきたいと考えております。
  241. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの運輸大臣のお話から、答弁からうかがえることは、そうすると、その第二十次ですか、第二十次くらいまでの計画ができそうな感じを受けるわけですけれども、何かめどがおありですか、いつごろにどういうふうになっていくというような。
  242. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 荷物の動き方その他につきまして、おおよそのめどはありますが、海運政策の赤字を解消するためにおおよそこのくらい船が要ると、昭和四十年くらいまでに大体二百万トンふやさなければいかぬということにつきまして、それに合うようなふうに指導していきたいと思います。
  243. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いつごろということですか。
  244. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 昭和四十二年ごろまでに。
  245. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 四十二年ごろまでに二百万トンというのでなくて、計画ができるとすればどの時点で策定されるかということを伺っているわけです。そういう見込みはおありかと……。
  246. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 財政投融資の関係がございまして、とりあえず来年度におきましては、御承知のように六十二万余トンをやり、さらにその次の年次におきましてそれ以上をやりまして、大体四十二年までに二百万トンにするようにいたしたいと、かように考えております。もっとも、そのときの経済成長がそれよりはるかに上回る場合には、また考えますが、現在のところでは、さように考えております。
  247. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほど木村委員のほうから、積極的ないわゆる海運収支の赤字対策について出ていたわけでありますけれども、質問があったわけですが、これに対して積極的な施策を行ないたい、これは大蔵大臣そういう答弁があったわけです。その積極的な施策というのはどういうことを言うのか。たとえば、シップ・アメリカンに対して、あるいはそのほかの世界各国の保護政策がありますけれども、そういうものに対してわが国のほうとしてはどう扱っていくか。たとえば一例をあげれば、港湾費用の値上げというようなことは考えていかないのか。大体半分なり、ひどいところによれば、五分の一くらいの値段にわが国はなっているようであります。これも大きな一つの赤字をつくっておるようであります。その点についてはどう考えておるか伺いたい。
  248. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどの御査問もございましたように、貿易外収支の赤字という問題に対しても十分対処しなければならず、また、一日も早く経常収支がバランスするように考えなければならぬわけでありますので、これが外航造船の増強ということに対しては、いま運輸大臣が御答弁申し上げたように、六十四万二千トンそのまま大蔵省も認めたわけであります。それだけではなく、できるだけ近い機会にこれからの外航船舶をどういう計画で増強していくかということに対しては長期計画を立てる必要があると思います。特に国際収支の安定という面からもこれらの計画は必要であろう、こう思います。いろいろな問題がありますけれども、シップ・アメリカン、バイ・アメリカン、具体的な問題に対しては議論の存するところでありますが、やはり戦前日本が海運国であったということは、船腹量が多かった、こういうことに尽きるわけであります。戦後二十年間非常に困ったのは、戦争でみな沈没してあと保険ももらえなかったのでつくれなかった。四、五百万トンしかない、こういう説をなす人もあります。でありますから、船腹の増強ということに対しては積極的にやらなければいかんだろう。せっかく六グループに海運会社も集約されたので、そういうことに対しては、政府も次々と施策を考えていくということが必要だと思います。  港湾使用料等の問題でありますが、この問題に対しては、トン税、特別トン税、固定資産税の問題を御質問なさると思っておるわけでありますが、これは港湾使用料は……(「そこまで言ってないよ」と呼ぶ者あり)そういうことだと思うのです。いま改正案を出しておりますから、そういうものを含めて上げないのか、こういう御質問だと思うのです。しかし、いままであまりにも低過ぎることによって外国の船に有利になっており、日本が外貨を非常に損をしているというようなものに対しては、徐々にやはり正常に復していくようにしなければいがんだろう。その場合、日本の船にまで大きなしわが寄ってはならぬということで、外国からよけいいただいて、日本のほうは軽減する、こういうような考え方で進んでいくべきだというよう考えます。  もう一つ申し上げると、計画造船は、もうあまり計画にこだわっておりません。これは開銀が独自で資金の許す範囲内において繰り上げてどんどんやるということをやっておりますので、できる限り船舶は繰り上げてもつくっていくという前向きの考え方であります。
  249. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) ただいま大蔵大臣が説明されたほかに、外国に比例しまして非常に安い日本におきますブイの使用料、港湾の水先料であるとか、それから岸壁の使用料であるとかいうものは、順次値上げをいたしまして、大体現在の二倍程度にいたすつもりで、すでに第一回は九月に上げました。また続いて本年の九月に第二回を上げるつもりでございます。これによりまして大体四百万ドル近くの外貨を節約するようなことになっております。
  250. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと簡単に関連して。いま、運輸大臣、日本の船がアメリカに行って港湾を使用する場合と、アメリカの船が日本の港湾に来て使用する場合の使用料の比較ですね、どの程度の差があるのですか。ずいぶん上げていったといいますけれども、まだまだ非常に差があるのではないかと思いますがね。
  251. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それは非常に差がありますが、いま、事務当局に比較の表がございますから、お知らせします。
  252. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) お答え申し上げます。  運輸省におきまして三十七年八月現在で調査いたしました資料がございますので、それに基づきまして御説明申し上げます。  港湾経費の中には、水先料、引き船料、網取放料、繋船料、トン税、灯台料、入港料というようなものがございます。この費用を比較いたしますと、日本の横浜を一〇〇といたしまして、ニューヨークは二六七、ロスアンゼルスは二一二、ロンドンは九七〇、ハンブルグが四三〇、ロッテルダムは二一三、ボンベイが一九二、バンコックが一七〇、シンガポールが一六四、香港が四七、シドニーが三六六、平均いたしまして日本の三倍になっておるわけでございます。これ以外に、港湾の荷役料というものがございます。積み揚げの荷物の費用でございますが、これは揚げ荷につきましては、横浜を基準といたしまして平均三・二倍、それから積み荷の関係は、横浜を基準にいたしまして三・九というような状態になっております。ただ、先ほどの水先料その他につきましても、香港、バンコック等は日本より安く、ことに香港は日本の半額程度でありますし、また、荷役料にいたしましても、香港、バンコック、いずれも日本よりははるかに安いというような状況でございます。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料をあとで出して下さい。
  254. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの木村委員の質問で明らかになってきたわけでありますけれども、私の持っているこの資料によるというと、先ほど大蔵大臣はトン税など考えたようなことを話しておったのですが、トン税などはほかの港と変わりがないようでございます。それで、ずっとほかの水先料とか、繋船料とか、引き船料とか、そういうものについて積極的な値上げを考えていかなければならない。ロンドンのように非常に河口から奥へ入っている港は別でございます、費用がかかるのは。しかし、ニューヨークあたりと比較しても半分以下の港費であるということは、大きな損失だと思います。積極的に考えを改めていただきたい。それについてどうですか、決意のほどを何っておきたいと思います、念を押して。
  255. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) いろいろ考えて、ただいまも申しましたように、ブイの使用料、岸壁の使用料は昨年も値上げし、本年九月より二倍にするように値上げする。ところが、これを上げることによって、日本の船舶も何といいますかその影響を受けますので、輸出の増進の見地から申しますれば非常に考えさせられるので、極端に外国並みにするというわけにはなかなかまいらぬかと思いまして、適当なところで適当に取れるところを考えまして、順次上げていきたいと思っております。
  256. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、住宅について伺いたいのですが、建設大臣、昭和三十八年度分の公営住宅の建設状況はどんな工合でございましょうか。
  257. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 昭和三十八年度の全国の公営住宅の建設の進捗状況は、昨年の十二月末現在におきまして九四二一%が着工済みでございます。うち、二〇%が竣工いたしておるという状況でございます。
  258. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 非常に着工率は九四%ということでいいような感じがいたしますのですが、特にこれは東京都営の問題について新聞にも大きく発表になったわけでございますが、都営が公営住宅として七千五百戸を建設予定であったところが、現在の状況では、三月末までに千五百戸、千四百戸くらい程度しか入居可能でない、あとの六千戸余りが来年度に残るというような話なんでありますけれども、こういう状況かどうか。  それから、そのほかの府県では、こういうような年度が終わっても入居ができないというようなこういうものが残るかどうか、そういう状況がありましたら調べていただきたい。
  259. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 東京都におきましては、お話のとおり、七千五百戸のうち、現在すでにすべてについて着工は一応いたしております。しかし、用地の取得がおくれましたために、この工事が非常におくれております。それで、進捗状況といたしましては七三%程度で、よほど努力をいたさなければ期待どおりにいかないというような問題で鋭意督励をいたしております。
  260. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 東京都以外にはこういうような例はありませんか。
  261. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  東京都が一番悪いのでございまして、ほかにそういう例はないそうでございます。
  262. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 こういうような実際の進捗状況から見ていきますと、東京都の場合には、七千五百戸の建設計画がありながら、一月にはいまだ一戸もでき上がっていない。入居が一つもできない。こういうような状況というのは、これは非常にひどいと思うわけです。こういう原因は一体どこから起きたか。先ほどは用地取得難だということでございますけれども、さらにほかに原因は考えられないか。今後こんなふうな状態でいけば住宅について大都市、過密都市においては一番困っているわけでありますけれども、具体的な解決ができない。一世帯一住宅というようなことばも夢になっていくのじゃないかという感じがするわけなんです。それについてどういうように考えていらっしゃるか、建設大臣にお伺いします。
  263. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいまもお答え申し上げましたとおり、多少時期的に宅地といいますか用地の取得がおくれているということでございまして、やっていないわけではない。一応全部着工はいたしているということでございますから、急がせるようにいたします。
  264. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 着工しておることはよく知っております。問題は、こういうことが例になっていくと、今回新しい七カ年計画というのが出たわけでありますけれども、これも完全にできるかどうかということが非常に疑問になってくるわけです。それで、七カ年の住宅建設計画によるというと、何万戸一体政府施策住宅としてやる予定なのか、それが完全にできるかどうか、伺いたい。
  265. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今回の計画は、公約いたしました一世帯一住宅をめどに置きまして、昭和四十五年までにでかし上げたい。その初期の三カ年間について計画いたしているわけでございます。そこで、一応七百八十万戸の住宅を建設するのでございますけれども政府自身といたしましては、この初期の計画において三百万戸以上は一般の政府もしくは公営、公団等において建てていきたいという計画でございます。
  266. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは私は非常に危惧を持っております。総理にも伺いたいのですが、いままでの十カ年でもって一千万戸つくる。そのときに、政府施策住宅を四百万戸つくるという計画をされたわけです。ところが、その実績を見てみますと、三十六年の分からでございますけれども政府施策住宅が、公営から改良から公庫、公団その他厚生年金住宅まで入れて、三十六年が二十三万何戸、三十七年が二十六万五千戸、三十八年が二十八万戸、三十九年を入れても三十一万戸で、合わせてもまだ百万戸程度でございます。そうすると、十カ年のうち四カ年たったとしても百万戸しかできなかった。今後これから後を七百八十万のうち三百万戸と言われるのですけれども、このようなテンポで、三十一万七千戸——三十九年度というようなもの、こういうようなことで完全にできるのかどうか、一世帯一住宅ということを完全にやり抜いていく決意なのかどうか、これを伺いたいのです、はっきりと。
  267. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いまごらんのとおりに、三十六年度では二十三万戸です。そして二、三万戸ずつふえます。三十九年は三十二万戸と相なっておるのであります。日本の経済の伸長によりまして、ことしの三十二万戸は四十年度は三十六、七ぐらいに持っていく。こうだんだんやっていけば、三百万戸は四十五年度までにできる。そういうためにやっぱり経済を拡大し、そうして予算をそのほうにできるだけ持っていこう。そして、政府ばかりではいきませんので、民間のほうでも御承知のとおり七百八十万戸のうち四百八十万戸は民間で建ててもらう。そして、これには、やはり民間で建ちいいようにいろいろな財政、税制等をやっていく。私はでかさなければいかぬ、できるという確信を持っております。
  268. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理の確信はけっこうなんでございますけれども、前の十カ年で四百万戸を一千万戸のうち考えておられたのが、三十九年までを入れても約百万戸で、四分の一しかできない。年数は十分の四たっております。戸数は政府施策住宅の計画が四分の一しかできなかった、こういうような状態が続くのではたいへんなわけであります。いまのように民間をたよりにするのはけっこうでありますけれども、少なくとも住宅政策の中心になるものは政府施策住宅なんですから、一世帯一住宅と言われたのを確実にやっていただきたいと思うのです。このままでいったのでは、またおそらく二、三年たつと新住宅四カ年計画なんということをやらなければならないのじゃないか、そういうおそれがある。で、絶対にやり抜くというおことばでございますから、それを信用いたしますけれども、本気になって考えていけばこういう状態にはならないと思います。  公営住宅の標準建設費についてでありますけれども、まず用地費の関係ですが、時価と政府のほうで決定している標準建設費というのを数字をあげて言っていただきたいのですが。
  269. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 公営住宅の標準建設費につきましては、実際と適用するように年々率は大蔵当局と相談いたして引き上げをいたしているわけでございまして、昭和三十九年度におきましては、工事費は、木造において六・七%、引き上げをいたしております。簡易耐火構造平家建てにつきましては五・三%、簡易耐火構造二階建てにつきましては六・一%、中層耐火構造につきましては六・二%の引き下げをいたしております。用地費はおおむね一五・六%の引き上げを行なうことにいたして建設に努力するということにいたしております。
  270. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 実際との差はどのくらいになりますか。
  271. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 大体これで全国各地ででかし上げておるわけでございますが、なお、基本的な数字につきましては、もしおりましたら住宅局長から説明させます。
  272. 前田光嘉

    政府委員(前田光嘉君) お答え申し上げます。  三十八年度におきましては、坪当たり、構造別によって違いますが……。
  273. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 坪だけです。
  274. 前田光嘉

    政府委員(前田光嘉君) 用地費の耐火構造の住宅をつくる場合の地価は、坪当たり一万一千七百円を予定いたしましたが、実際は東京都の場合、これも地区によって違いますが、平均いたしました中層耐火構造住宅につきましては二万四千四百三十円になっております。
  275. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これについて大蔵大臣に伺いたいのですが、いまの資料からいきますというと、中層耐火に対して一万一千七百円、こういう標準建設費が、三十八年度は実際は二万四千四百三十円である。これが今回一五・六%値上がりになりましても、実際とははなはだ遠いものになる。これが地方団体が結局差額を持ち出すということになるわけですけれども、これを私ども心配するのは、家賃にはね返ってくるのじゃないかということです。それについてどうしてそれを合わせられないのか。むしろそういうふうに負担させたほうがいいのだという意見が大蔵省にあるのだというお話なんでございますが、その点について真実かどうか伺いたいのですが……。
  276. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一番最後の御発言がよく聞きとれなかったのですが、地方負担を多くしていくことが適当な家賃ができるということに大蔵省で一部考えておると、このようなことですか。
  277. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そういう意味です。
  278. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことは全然ございませんから、御承知おきを願います。  公営住宅につきましてはいつでもそういう議論があるのでありますが、これは、学校に対する補助金とか公共事業に対する補助金とか、みな標準金額で出しておるわけであります。いまこの差額を出すべしというのですが、これはなかなか実際と理論上ではむずかしいのであります。実際の単価が上がったからまた日本全国の公共事業その他に対して実際の単価の平均を出せといっても、なかなかむずかしいので、標準単価をきめてこれに対して補助をしておるということでございます。しかし、地方負担分につきましては、起債の率も、四〇%を四五%に上げたり、また、不交付団体の一八%を二〇%に上げたり、こういうふうにしておるわけでありまして、この法律で三分の二といえば、三分の二は実際にかかったものの三分の二でなければいかぬという議論は、いつでも国の地方に対する負担の問題で起こるわけでであります。これは物価が下がっているというような場合はこのような問題は起きないのですが、物価が上がってくるとそういう問題が起きますから、いまの財政のたてまえからいきましても、やはり標準単価に対する補助ということで、特にひどいものに対しては、先ほど建設大臣が申されたように、用地費については一五・六%引き上げて是正をしていくという方向にありますが、実際上の二万四千円と一万二千円との差額、ちょうど倍でありますから、こういうものに対して率をかけなければいかぬというふうにはならないと思います。しかし、公営住宅もだんだん土地がないので、平面的に、交通等を考えないでたんぼの中、山の中に団地をつくるということが一体いいのかという問題は、これはあります。ですから、都市改造というように、もっと地価は高くても高層等の方法によってやることによって、より安く土地が取得できるのではないか。各外国は全部そういうふうな都市の市街地の開発を行なっておるのでありますから、こういう方向もあわせて将来の問題は考えるべきだというふうに考えます。
  279. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 建設大臣に最後に伺いたいのですが、これは住宅建設を社会資本的な考え方でいくか、社会福祉的な考え方で公営住宅をもっていくかということなんですが、現在では公営の一種あるいは公団というように、これは比較的高所得者が入っております。二種以下ということによるというと、月収三万円以下ということになってくるわけでございますけれども、あるいはもっとそれ以下ということになっておりますけれども、この将来の方向としてあるいは一種住宅というような比較的高い給料をもらっているといいますか、そういう給料生活者、こういう人々にとっては、これはむしろ公団住宅のほうに向けていくべきではないか、そうして、二種以下の住宅をふやしていく、建物は一種でもかまいませんけれども、入居資格というものを、給料の上限を引き下げていく、社会保障的な考え方をするべきではないか。どうしても、極端な言い方をすれば、大企業につとめておるような高額所得者の人が一種住宅に入る、むしろこれは公団へ持っていくべきではないか、それ以下のむしろ低所得者に対して、そういう社会保障的な考え方で住宅建設をするべきではないか、こういう考え方があるわけでありますけれども、その家賃を下げて、また、入居資格を低所得に限って、二種に向けていくというような方向というものはお持ちでないか、どういうふうに考えられるか。
  280. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私もあなたのお述べになりましたとおりに実は考えております。建設大臣に就任いたしましてから、従来とかく大資本——百億以上の資本といいますか——というようなものに貸し付けをいたしておりましたものは、一応押えまして、なるべく資本の少ないものに優先的に金を貸してやるというふうに、金融公庫にも指導をいたしております。また、公団の住宅にいたしましても、なるべく安い家賃で入れるというものに重点を置くようにということで指導をいたしております。特に、最近問題になっておりまする公営住宅にいたしましても、これを初期のものを買い取りたいというような要望がだんだん強く出てきております。これに一体払い下げるのがいいか悪いかという問題があるわけでございます。初期のものは相当に家もいたんでおりますけれども、これは非常に安い家賃です。こういうものを比較的低額で払い下げていいか悪いか。できることならば、そういう買うだけの力のある人には、上級のものにかわって、安い家は安い人があらためて入るように指導したい。地方団体でもいろいろの要望がございますから、いちずにそうばかりとも言えませんが、なるべく、さしあたりとにかく低所得者に住宅を与える方面に優先的に指導するという考えで、指導をやっておるわけであります。
  281. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  今日はこの程度にいたします。明日十時開会。散会いたします。    午後五時四十分散会    ————・————