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国務大臣(
田中角榮君) 金融問題につきましては、私と日銀
総裁との間に意見の交換を行ない、
意思の疎通をはかっておりますし、お互いに完全に意見の一致を見ているわけであります。なお、本日発表になります月例経済報告の最終の段階に金融に対する
政府の
考え方を報告をしてございます。これは後ほどごらんになっていただくわけでございますが、確かにきめこまかく配慮をしなければならぬ部面もたくさんございます。しかも、貿易収支、経常収支もよくなってはまいりましたけれ
ども、しかし、基調的に金融を緩和するような状態ではなく、引き続き在来の
姿勢をとる、こういうふうな表現で発表をいたしております。この発表がありますと、日銀
総裁と私が話をし、日銀
総裁の
談話、また、私のこの議場を通じて御説明を申し上げました
答弁との間に食い違いがないかというようなことをお
考えになるかもわかりませんが、この文章を最終的に練りますまでの間に私との意見調整も十分行ない、
見解の相違はないということでこの発表になったわけでございます。ただ、ここで申し上げておきたいことは、政変ということを契機として引き締め緩和を急ぐ、こういうことがあってはならない、まさにそのとおりであります。そういう
考え方は絶対にございません。特に多小引き締め緩和ぎみのときであっても、政変などのある場合は、特に慎重を期さなければならない、こういう
考え方に立っておりますので、御指摘になりましたように、人気取りだとか、政変というものが新たな低金利また金融緩和に拍車をかける端緒を開くものではない、これは非常に意識をいたしておりますので、そういう懸念は絶対にないように御理解をいただきたいと思います。
それから金融緩和と言うけれ
ども、緩和をするには少し早いのではないか、こういう
お話、私も緩和をするとは言っておりません。金融を緩和する時期ではない、こういうことを言っているわけであります。しかし、一律画一的な引き締めをそのまま過去の例のように長期的に続けていくという過程において
考えると、非常にいろいろな問題がある。中小企業の問題、俗にひずみの問題があるわけであります。また、引き締めをしてまいりますと、金融引締めのしわが非常に資本市場に寄って資本市場が壊滅的なものになるとしたならば、これは金融の正常化、金融引き締め、金融調整も必要ではございますが、角をためて牛を殺すようなことになってはならぬわけであります。そういう面に対しましては、しさいに現実を把握しながら、観念的な一律画一的な締め方だけではなく、機に応じて臨機応変といいますか、十分実情に合う措置を行なう必要がある。倒産があります。倒産があっても、総体的に見て画一、一律的な引き締めをしなければならぬと言って締めていけば、将棋倒しのものになるわけであります。融通手形が出ている。出ているのだから、融通手形というものは不正常なものだから、こんなものにかまわず締める、黒字倒産も何のそのでは、これはまさに何にもならなくなるわけでありますから、事実融手が出ているならば、どのくらい出ているのか、これを出さないようにするにはどう措置するか、より短い期間に正常化をはかるための措置をとりながらやらなければならぬということは論を待たないわけであります。でありますから、日銀
総裁と私との間に
話し合いができましたのは、引き締め基調、いわゆる調整基調を大幅に緩和をするというような時期ではないということを
前提にいたしております。しかし、去年の状態と比べて変わらないのは、
アメリカの利子平衡税だけであります。貿易収支も均衡してまいりました。経常収支も均衡してまいりました。また、総合の上でも投資一億五千万ドル
内外というようなものも好転しております。十二月までの輸出増は当然のこと、一−三月の輸入期を見ても経常収支のバランスもことしはとれるかもしれない、とれそうだというような状態であることも御承知のとおりでございます。しかし、輸入は高い、また生産も横ばいである、経済成長率も一〇%を越すというような状態。特に東京の卸売り物価、中小物価が多少上がるような気配、こういう実情を
考えますと、ここですぐゆるめるという状態ではない。ただし構造自体が変わっておるのでございますから、このまま画一、一律的な引き締めをやってまいりますと、これはえらい混乱が起きる。しかも、いままで
考えておるようなことではない。どうも金が偏在しておる、流れが正常を欠いておる、いろいろ具体的な問題があるわけであります。こういう問題。基礎産業などでもってどうしても要るというようなものであっても三銭六厘、三銭七厘のコールを取らなければならぬ。また、そのコールで非常に高い金利で利益を得ておるものもある。こういうものをもう少し正常化できないものか、こういうことを十分
考えながら、大
ワク、基本的な
姿勢は調整基調をくずしませんが、こまかい配慮をしながら、弾力的といいますか、実情に合った配慮をしながら、そうしてこの過程においてひずみの解消をはかっていくということであります。それはしり抜けであるとは
考えない。はっきり言えば、そうあるべきなんです。画一、一律的にやっていけば一番簡単なんです。少しぐらいつぶれようが画一、一律的にある時期引き締めていけば、確かに早く、総体的には経済は正常に戻ります。しかし、その間にあってえらいしわが寄ところがあるわけであります。回り道であっても……時期すでにおそいということを引き締めのとき言われました。十一月に引き締めをすればいいものを三月までだらだらかかった。三月までだらだらかかって、いろいろきめこまかくやったのに、中小企業はあの倒産になったではありませんか。あのように、過去のように引き締めてごらんなさい。もっとひどい倒産があったと思う。同時に、今度はあなたがいま緩和論、緩和の気配を出すのも非常に危険だと。私もよくわかります。が、しかし、
新聞には引き締め緩和のようなことを日銀
総裁も
大蔵大臣も言うけれ
ども、こもごも時期もうおそいんだと書いております。私はおそいとは
考えておらない。ちょうど三月公定歩合引下げのときと同じような
考え、現在もなお基調的には何でも緩和していい時代ではないと
考えます。ですから慎重ではありますが、具体的に現実に合った金融をやってまいりたい、こういうことであります。あなたもさっき、片りんでありますが、申された。引き締めなさい、引き締め緩和は早いと言いながら、中小企業対策に対してはわずかにしか金を出しておらないということでございますが、そうじゃないんですよ。わずかではないんです。引き締めはやっておるけれ
ども、あなた自身中小企業にはもっと出せ、こう言っておられるじゃないですか。そういうことを現実と理想をちょうど調和さして、
国民が喜ぶような、ほんとうに実際に合った金融をやろうということでございますから、御理解をいただきたいと思います。