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1964-10-30 第46回国会 参議院 予算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月三十日(金曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————   委員の異動  十月三十日   辞任      補欠選任    井川 伊平君  日高 広為君    松本治一郎君  亀田 得治君    中尾 辰義君  北條 雋八君    天田 勝正君  高山 恒雄君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     寺尾  豊君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            村山 道雄君            瀬谷 英行君            藤田  進君            鈴木 一弘君    委員            植垣弥一郎君            江藤  智君            太田 正孝君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            佐野  廣君            白井  勇君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            日高 広為君            吉江 勝保君            阿具根 登君            加瀬  完君            亀田 得治君            木村禧八郎君            戸叶  武君            羽生 三七君            中尾 辰義君            二宮 文造君            北條 雋八君            田畑 金光君            高山 恒雄君            佐藤 尚武君            岩間 正男君            市川 房枝君   国務大臣    外 務 大 臣 椎名悦三郎君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 愛知 揆一君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  櫻内 義雄君    運 輸 大 臣 松浦周太郎君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 小山 長規君    自 治 大 臣 吉武 恵市君    国 務 大 臣 小泉 純也君    国 務 大 臣 高橋  衛君  事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君  説明員    内閣官房長官  鈴木 善幸君    総理府総務長官 臼井 莊一君    防衛庁防衛局長 海原  治君    外務省条約局長 藤崎 万里君    文部省管理局長 斎藤  正君    農林大臣官房総    務課長     安藤 敏夫君    食糧庁長官   斉藤  誠君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査   —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。本日、井川伊平君、松本治一郎君、天田勝正君が辞任され、その補欠として日高広為君、亀田得治君、高山恒雄君が選任されました。   —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 予算執行状況に関する調査を議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。田畑金光君。
  4. 田畑金光

    田畑金光君 私は、最初に政局問題についてお尋ねしたいと思いますが、官房長官から御答弁になりますか。
  5. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 私からお答えいたします。
  6. 田畑金光

    田畑金光君 池田総理が三選後わずか三カ月、病気のために退陣のやむなきに至られたことは、まことに遺憾に思います。しかし、内外情勢のきびしいときに政治の空白を許してはならぬ、こういうことで辞任意思を明らかにされたことは、政治家出所進退としてまことにりっぱであったと敬意を表します。そこで、昨日官房長官からもお話がございましたように、与党幹事長、副総裁中心後任総裁選考中と聞いておりまするが、その際、次期内閣池田内閣延長である、政策においても人事においても動かさない、こういうことが伝えられておりまするが、次期政権の性格について、この際明確にひとつ御説明願いたいと思います。
  7. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 池田総理大臣辞任表明に伴いまして、自民党総裁また後継首班につきまして、いま党の執行部におきまして後継者選考を急いでおるわけであります。その首班候補者がどなたになるかまだ予測がつかないのでございますが、その内閣は、自由民主党としての基本的な政策ワクの中で今後施策を進めてまいるわけでございますから、池田内閣がとってまいりました基本的な政策につきましては、変化はないものと考えておるわけであります。
  8. 田畑金光

    田畑金光君 池田総理辞任されたのは、病気のためであることは直接的な原因でありまするが、同時に、河野国務相新聞談話において言われているがごとく、内外時局情勢内政外交のこういう緊迫した諸情勢をかんがみまして辞任されたということも明確に言われておるわけであります。したがいまして、新しくできる内閣というのは、当然今日の内政外交について、それに即応する政策を遂行するのがその使命であると考えておりまするが、そういう面においては、当然池田内閣内政外交等についても動かすところは動かす、改めるところは改める、こういうことが前提とならなければならぬと考えておりまするが、どういうお考えでしょうか。
  9. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 昨日も当委員会におきまして河野国務大臣からもお話がございましたが、池田総理は病院におきまして政務を見ておるのでございますが、御指摘のように、最近における内外の大きな変化国際情勢の激しい動きというものにつきましては、深い関心を寄せてきておるわけであります。そういう内外情勢が大きく動いております際に、病床にあって政務は見ておるとは言いながら、内閣最高責任者として陣頭に立って時局の処理に当たるということができないことを深く遺憾とし、その政治的な責任を感じておられまして、今回辞任の決意をいたしたのもそういう政治に対する責任を深く感じておられるからでございます。したがって、後継者の円満かつすみやかな御選考を願って、そうして後継者の手によって国民に不安を与えないように時局に対処していただくということが総理の念願でございます。  で、私どもは、池田内閣政策を、後継内閣は基本的な線においては踏襲をし、そうして情勢に対処してこれを強力に展開をさせ、発展をさせていくものと、このように考えております。
  10. 田畑金光

    田畑金光君 私のお尋ねしておりますことは、総理の心境は、まあ昨日来お聞きしましてよくわかりましたが、次期内閣池田内閣政策踏襲する、これが選考の第一条件と、こう言われておりまするが、そのことは、新内閣もまるっきりいままでの政策をただ文字どおり踏襲するのかどうか。たとえば高度経済成長政策はいろいろなひずみを残したが、高度成長政策を今後とも続けるのかどうか。また、外交問題については、特に中共核爆発を契機に、アジアの情勢も大きく動いておるのでありますが、日本の外交従前どおりでよろしいのかどうか。内外政策について何らの変わりがないのかどうか。新総理は新総理としての政治的手腕に基づく内政外交の指導というものは、そのワク内で、池田内閣の従来のワク内で一歩も動くことができないのかどうか、こういう問題についてお尋ねしているわけであります。
  11. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 先ほど来申し上げておりますように、今日は政党政治でございまして、自由民主党の基本的な政策ワク内で内閣施策を行なってまいるわけでございますから、次期後継内閣におきましても、池田内閣がとってまいりました自由民主党基本政策にのっとっての政策を基本的に変えるものではない、このように考えるのでございますが、ただ、そのまま踏襲するかどうかという固定的なものではないと考えるのでありまして、情勢に即応して強力に発展、展開していくものと考えております。
  12. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、情勢発展によっては、従来の池田内閣政治路線から違ったものも当然、新総裁、新総理のもとにおいては出てくる、そういうことですね。
  13. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) そういう趣旨で申し上げて、おるのではございません、基本航政治の方向というものは変わらないであろう、ただ、情勢に即応して適切な施策を推進していく、こういうことを申し上げておるのであります。
  14. 田畑金光

    田畑金光君 しからば具体的にお尋ねしますが、七月総裁選挙のときには、いま総理首班の、総裁の本命といわれておる佐藤榮作氏は、次のことを約束されております。第一に、ソ連には南千島、アメリカには沖繩返還を要求する。二つは、国民負担軽減のため、初年度所得税中心とする三千億の減税を行なう。三、憲法については、国民世論の熟するのを待って取り組むが、自主的にこれを改正するという立党の精神に沿った姿勢で臨む。その他でありますが、かりに外交問題一つをとりましても、アメリカに対しては沖繩返還を求める、あるいはソ連に対しては千島の返還を求める、積極的な姿勢が出ておるわけです。こういうことは、いままでの池田内閣政策延長としては考えられぬことです。したがって、政策踏襲というのは、新総裁のもとにおいては、当然従来の路線発展があるとわれわれは考えるが、どうですかその点。
  15. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 総継首班にどなたがなりますかまだきまっておりませんし、したがいまして、私からその点を申し上げることは困難でございます。
  16. 田畑金光

    田畑金光君 冒頭に、政局問題については、あなたがお答えになる、こういうことで私の質疑は始まっておるわけです。私のお尋ねしたいのは、要するに、総裁、新総理ができるなら当然内外施策にも変わったものが出てくる、それはことばの表現では、ニュアンスということばでもいいし、しかし、国民の受ける側からいうと、もっと積極的な施策が展開される、当然そういうようなことが考えられると思いますが、そういうようなことも許されないのかどうか。いまの選考基準としては、前の池田内閣政策をそのまま踏襲すると、こう言っておられるが、政策踏襲ということになるならば、一歩もその外に出られないのかどうか。あらためてひとつ御答弁願います。
  17. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 後継者選考にあたりまして、池田政治路線踏襲する者というような厳密なワクをはめて選考しておるかどうかということは、党のほうからまだ何も聞いておりません。
  18. 田畑金光

    田畑金光君 あなたのお考えはどうです。
  19. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 私はそういう条件ワクというものをきめて、そのワク内で選考しておるということには考えておりませんが、先ほど来申し上げてきましたように、政党内閣でございますから、自由民主党のとっております政策ワク内において池田内閣外交内政一般施策を行なっておりますし、次期後継者もおそらくそうであろう。また、大きな政策上の失敗というのがなかったわけでございますから、おおむね池田内閣がとってきた施策踏襲をし、そして情勢に応じてこれを最も適切に展開し、発展をさせていく。こういうことであろうかと思います。
  20. 田畑金光

    田畑金光君 池田総理病気で退陣されることについては、国民一般同情の念を禁ずることはできないわけです。また同時に、総理がかわられたこの機会に、政策の転換を要求する声も強く国民一般の気持ちだと思っております。ことに財界等においても、従来の高度成長政策というようなああいうやり方だけでは困るのだ、この際安定成長政策をやるべきだ、こういうこともはっきり世論としてこれは出ているわけです。したがって、私は新しくできる政権は、当然こういう面に池田内閣の行き過ぎあるいはひずみの是正を積極的に進める内閣であろうと考えておるのですが、そういう点からすると、単なる池田政治路線踏襲であっては許されない。私は財政経済の重要な閣僚としての、そしてまた、いわば、かりに佐藤総理ができた場合の重要なそのブレーンである田中大蔵大臣から、ひとつ見解を承っておきたい。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 後継首班はどなたになるかまだ未定でございますが、言い得ることは、自由民主党の党員であり、自由民主党政策綱領を十分に守ってこれを実践し、国民に公約している政策実行する、こういう範疇の人であるということはこれはけだし当然であります。池田内閣もその範疇にあるわけであります。また、後継者もそうなんです。ですから、首班がかわったから、個人的なものの考え方ニュアンス、そういうものは確かに幾らか差はあります、また、何をやろうとするにも。しかし、それは、今年はAのものに重点を置く、来年はBのものに重点を置くというようなやり方は、過程における議論としてあるわけです。それは党と内閣との間に結論が出れば一致結束して政策の、実行に当たるわけでありますが、その最終案がきまるまでには幾つかの議論がある。同じことであります。皆さんの党の中でも決定するまでにはいろいろなものがある。決定しても、まあでき得れば、財源があればこれもあわせてやりたい、こういうことは当然あるわけでありまして、そういう範疇のものであるということでありますから、どうも総裁がかわるからといって、民社党の政策のようなものをやるわけでもございませんし、社会党の政見をとってこれをやるということでもないわけであります。ですから、外交内政に対する基本線は貫かれておるわけでございます。ですから、所得倍増政策ということに対しましても、何も急に転換する、縮小均衡論のようなことも先ほど言われましたが、そんなことはありません。中期経済計画というのは党も内閣も全部で、一体になって中期経済計画に取り組んでおるわけでございますから、中期経済計画を策定したらこの路線に沿って経済計画が推し進められるということでございます。また、いま沖繩のことも、いろいろなことを言われましたが、これも党と政府一体になって、いままでの状態はこうだったが、歴史のテンポも早いから今日はこうしようということになるかもわかりません。三、四千億初年度減税ということがございました。これは私がいま申し上げる立場にも、私は総理候補者でございませんからですが、まあしかし、初年度三、四千億直ちに減税をやる、ちょっとむずかしいような私は気がいたします。大体そんなことです。
  22. 田畑金光

    田畑金光君 私は佐藤榮作氏の名前を出しましたが、別に佐藤榮作さんが総理になるときまったという前提で申しておるわけじゃありません。候補者であるから申し上げたわけです。  また、藤山愛一郎氏についても、たとえば七月の総裁選挙のときにこういうことを申しております。寛容と忍耐について、寛容と忍耐一つの美徳である。しかし、自民党社会党ではよって立つ基盤が違っておる。話し合いがつかない場合には衝突することも、戦うこともあり得るのだと、こういうわけで藤山氏は低姿勢論について、寛容と忍耐という池田政治姿勢についても鋭く批判されたことは御承知のとおり。かりに藤山氏が総理になった場合には、当然そういう立場において政治路線がしかれると思うが、いま与党首脳部が進めておる、池田内閣政治路線政治政格をそのまま受け継ぐということになってくれば、新総理政治的な手腕、力量の発揮というものは著しく阻害される。ワクがはめられて動きがとれない、こういうことをわれわれは感ずるわけであるが、この点について官房長官から、総理意思も一番よく体しておられる、池田総理意思も体しておられるあなたのひとつ考え方を承っておきたいと、こう思うのです。
  23. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 田畑さんから、池田さんと藤山さんの政治姿勢についての隔たりがあるのではないかというお話がございましたが、話し合い政治ということは、これは民主政治原理であると考えております。したがいまして、わが党の後継者はどなたになりましょうとも、この民主主義根本原理話し合い政治と、そういう姿勢は私は変わらない。ただ話し合いを尽くしたあとでどうしてもまとまらなければ、多数決の原則というものが、当然議会政治として決定がなされなければならぬのでございますから、私はちっともその点については変わらないものと考えております。
  24. 田畑金光

    田畑金光君 これは鈴木官房長官にお尋ねしてどうかとも思いますけれども、質問する相手がいないものだから質問するわけですが、人事についても動かさぬ、こういうことですね。まあ閣僚皆さんこれで御安心だということでしょうけれども、こういうようなことはどんなものでしょうか。どういうようにお感じになっていますか。
  25. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 内閣の組閣は首班に指名された方に専属する権限でございまして、他からとやかく注文をつくべきものではないと考えております。また、現在後継者選考にあたりましてそういう条件とかワクとか、そういうものがあるとは全然聞いていません。
  26. 田畑金光

    田畑金光君 いい答弁を承りましたが、したがって、閣僚その他人事については、これは総理一身専属権限であるし、任命権でありますから、それすらもワクをはめて、閣僚は動かさぬなどということは、これは行き過ぎであるとお認めになりますか。
  27. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) ただいまお答えをいたしたとおりでございまして、後継首班になられた方が最善と思われる人事をなさることと確信いたします。
  28. 田畑金光

    田畑金光君 同時にまたけさの新聞を拝見しますと、解散権についても新総理、新内閣の編成にあたってはひとつやらないという約束のもとで新総裁が選ばれる、したがって、新総理はそれを受けて政局を運営すると、こういうことになりますが、この点はどうでしょうか。
  29. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 池田内閣政策の行き詰まり、政策失敗によって内閣を投げ出すものではないのでございまして、また、先ほど来大蔵大臣からもお話がございましたように、政策はわが党の自由民主党政策という大ワクの中で進められていくわけでございますので、政策を大きく変えるということでございますればまた格別でございますけれども、十一月行なわれました衆議院の総選挙にわが党が掲げてまいりましたところの政策基本線実行に移していくという立場にあります以上は、私は解散は必要ないものと考えております。
  30. 田畑金光

    田畑金光君 私は解散の時期がいいかどうかということを聞いているのじゃございません。ただ総裁選考にあたり、しかもその総裁は、今日の政治情勢は即新首班になるわけですが、その首班に対して解散はやっちゃならぬぞという条件をつけるということは、総裁選考条件として適当かどうかと、こういうことをお尋ねしておるわけです。
  31. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 後継者選考にあたってそういうような条件がついておるということは全然私聞いておりませんし、そういうことがあり得べきはずがない、こう考えております。
  32. 田畑金光

    田畑金光君 私はもっとこの問題についてお尋ねしたいのですが、時間の関係でやめますが、新内閣池田内閣の単なる延長であってはならぬし、また、そうではないと考えるわけです。同じ自民党の中のたらい回しであっても、過般の総選挙は、選挙の結果というものは党首の人物、識見、それが強く国民支持のいかんをきめておると見るわけです。したがって、新しく新総裁、新党首、しかも新総理大臣が出てくるとなれば、当然今日の内外の急変から見ましても、また、選挙における党首影響力から見ましても、当然解散によって国民の信を問うということは時間の問題である、こう私は判断することが政治的な判断として正しいと考えておりまするが、この点についてどういうお考えでございましょうか。
  33. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 解散の問題につきましては、ただいまお答え申し上げたとおりでございます。私どもは、昨年の総選挙に掲げて国民に信を問い、その大多数の国民皆さんの御支持を得たわが党の政策を忠実に実行してまいります以上、まだそれから数カ月を出ない今日の段階でございますから、後継者がかわりましても解散、総選挙をする必要はない、このように考えております。
  34. 田畑金光

    田畑金光君 次の問題に移りますが、私は中共の核実験問題について若干お尋ねしたいと思います。  その前に科学技術庁長官に……いないじゃないですか、ちょっと呼んでください。……最初科学技術庁長官にお尋ねしたいんですが、きょうの新聞を見ますと、科学技術政務次官菊池義郎代議士アメリカに渡って、ゴールドウォーター選挙応援をやっておるようですが、これは政府代表として派遣されたわけですか、それとも科学技術庁代表として派遣されたわけですか。
  35. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 菊池政務次官につきましては、九月から十月にかけまして、アメリカ等における原子力関係の諸施設の視察、その他の用務をもちまして出張をいたしておるわけでございます。その限りにおきましては、科学技術庁として派遣をいたしたわけではございますが、外電その他の報道するところによりまして、ゴールドウォーター選挙に関連した言動があったようでございますが、この限りにおきましては、全然政府科学技術庁も関与することではございません。
  36. 田畑金光

    田畑金光君 公務で行ったわけですね。
  37. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申し上げましたように、出張の用向きは公務で出かけておるわけでございます。
  38. 田畑金光

    田畑金光君 公務で行ったのが、公務か何か知らぬが、選挙応援をやるというのは、これはどういうことなんですか。これは法律には引っかからないかもしれませんが、政務次官、あるいは今後は大臣も行って応援するようになるかもしらぬが、そういうようなことは、どういうことなんですか、許されることでしょうか、政治的に考えてみてですね。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一に、その事実が、外電その他で報道されておるわけでございまして、的確な真相というものは十分にまだ調べておりません。とりあえず出張期間も切れることでございますので、ちょうどいまから三日ほど前に、至急に帰国するようにということで連絡をいたしましたし、またさらに、昨日は、直ちに帰国せられたいということを指示いたしております。そういうような状況でございます。  それから、これはどういうように考えるべきであるかということでございますが、いま申しましたように、とにかく直ちに帰国をしてもらいまして、当人につきましてもよく事情を調べなければ、その後でなければ何とも意見は申し上げることはできないと思います。
  40. 田畑金光

    田畑金光君 新聞の伝うるところによれば、帰国命令を出された、いまあなたのお話帰国命令を出した、こういうわけですが、帰国命令を出した以上は、具体的な事実も調査されて、ほんとうだからというので帰国命令を出されたと思うのですが、どういうことをやっていたのですか、向こうで。
  41. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そのどんなことをやっていたかということは、先ほど申しましたように、詳細にはわかりませんけれども、とにかく三日ほど前に一部の外電でも伝えられましたことで、ちょうど出張の期限も切れておることでございますから、直ちに帰国を指示したわけでございます。なお昨日は、さらにそういうような報道が繰り返されましたので、官房長官とも御相談いたしまして、官房長官からも念のため、かりにそういう事実があったとしても、これは政府並びに科学技術庁その他に関連のないことで、何ら関知するところではない、かりにそういう言動があったとしても、これは一個人立場においてやったものであろう、こういうふうに官房長官からも談話を出してもらっておるようなわけでございますから、それによりまして私どもの態度や見解というものを御了解願いたいと思います。
  42. 田畑金光

    田畑金光君 一個人といっても、与党のれっきとした代議士だし、しかも政府政務次官でしょう、一個人で済まされますか、こういうことが。しかも一方の、負けるにきまっておるといわれておるゴールドウォーターの応援をしておるわけです。こういうようなことは一体わが国の外交の上からいって、椎名外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま科学技術庁長官から御説明がございましたが、ああいう考え方でいいのではないかと思っております。
  44. 田畑金光

    田畑金光君 ああいう考えでいいのじゃないかというのは、どういう考えですか。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 新聞に伝えられるようなことがはたして真実であるかどうか、やはり当人について十分にただしてみなければこれはわからぬことでございます。かりにそういうことがあったにいたしましても、これは日本政府とは何ら関係のない、個人としての言動である、こういう考え方でございます。
  46. 田畑金光

    田畑金光君 私は中共の核実験についてお尋ねしたいのですが、これは昨日羽生同僚議員からも質問がありましたので、問題点だけをお尋ねしますが、今回の中共の核実験というのは平和に対する重大な挑戦であると私は考えます。この実験について米国はすでに九月の二十九日、ラスク国務長官が記者会見であらかじめ予告をし、このことはわれわれ国民もよく承知したわけです。ところが、日本政府はこれについて何らの予備的な国民に対する報告も予告もなされなかったわけでありまするが、これは予知し得なかったのかどうか。このことについてまずお尋ねしたいと思う。
  47. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共が核実験の準備をしておるということはかねてから世の中に喧伝されておったことでございます。その時期がいつであるかということに対して関心を持っておったのでありますが、政府といたしましては、これを的確に予知できる手段、方法を持っておりませんので、あの時期において行なわれるであろうというようなことは、遺憾ながらそういう情報を持たなかった次第でございます。
  48. 田畑金光

    田畑金光君 これは今後とも第二回、第三回と核実験が行なわれることは必至だと思いますが、そうしますと、日本政府としては何ら予知することはできない、万事アメリカの情報で知る以外ないわけですか。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 必ずしもそうではございません。第一回の事実に基づきまして、できる限りの努力をいたしまして、日本自身としてもこれを的確に予知したいという考え方で今後努力するつもりでございます。
  50. 田畑金光

    田畑金光君 今回の核実験の軍事的価値をどのように見ておられるか。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共の核実験は、あるいはプルトニウムでないかというふうなことが予想されておりましたが、これがウラニウムであるということはもはや疑うことができない事実でございます。そうしますと、予想したものよりも今後の製造の進捗の程度が早いということになるのでございます。しかし、製造の進度が早いということを前提といたしましても、諸般の情勢から、はたしてどの程度であるか。それからまた、運搬手段の開発をはじめといたしまして、いろいろな要素を考慮いたしますると、やはり相当の時日を経過して初めて核兵器としての力を持つに至る、その時期はやはり相当の時期がかかろうと考えておるのでございます。さような観点からいたしまして、この軍事力がどういう意味を持つか、こういうことになるのでございますが、中共は決して他に先立って核兵器を自分として用いる意思はない、こういうことを、だいぶこれは先の話でございますけれども、いまからそういうことをいっておる、またやればやられるという性質のものでございますから、いわゆる従来の先輩国に対してどの程度の抑止力を持ち、どれだけのこれに基づく国際発言力が高まっていくかは、今後の経過を見なければわからないと思うのでございますが、われわれといたしましては、いま直ちにこの問題に対して将来相当長きにわたって初めて出現するところの実力を予想して、いま軽々にこれに対して行動をとるという必要は、私はなかろうと考えております。
  52. 田畑金光

    田畑金光君 中共が実戦的な核兵器を持つようになるのは、一体何年ぐらいと政府は見ておるのか。また、運搬兵器を持つのはさらに何年後ぐらいを予想しておるのか。防衛庁長官からでもひとつお答え願いましょう。
  53. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) お答えを申し上げます。中共の今回の核実験につきましては、外務大臣の申されましたとおり、防衛庁におきましても、かねて予想しておったものよりも相当進歩のあとが著しいというような判断をいたしておるのでございます。また、アメリカ原子力委員会、その他の発表を見ましても、プルトニウムというのがウラン二三五であったというようなことで、アメリカとしても、予想以上の中共における核実験の核の研究が進んでおるということを認めておるように存じております。そこで、核実験をいたしましても、これが数次の実験改良を加え、さらに運搬手段等の開発には相当の年月がかかる、あるいは八年、十年というようなのがいままでの定説でもございます。しかしながら、そういう予想以上な進歩であると、そういうように核の研究というものが中共が進んでいるというような総合的な判断が行なわれましたので、私どもといたしましても、何年ぐらいというような明確な線を打ち出す何ら根拠ある情報を得ておりませんのですが、いままでのような八年とか十年とかいうような長い期間でなくて、数年と申しましても、これをあるいは二、三年とか五、六年とかいうはっきりした数字を申し上げる何らの根拠もありませんが、相当程度、非常に早くなった、数年の後にはこれが核装備をするに至るのではないかと、こういうふうに考えている次第であります。
  54. 田畑金光

    田畑金光君 いずれにいたしましても、何年か後には核兵器を持つ、あるいはまた、さらに何年か後には運搬兵器を持つ、こういうことになってきますと、それは具体化し、現実化するわけです。歴代の保守党内閣は、力の均衡即平和の維持という考え方に立っておられるわけで、昨日の外務大臣の御答弁でも明らかです。そのようにアジアにおいて中共が核武装し、ロケットあるいはミサイルを持つようになってくれば、力の均衡は明らかにくずれてくるわけです。そういう力の均衡論の上に立つ平和の維持ということを考えるならば、そのような力の不均衡に対して、その力の間隙を何によって埋めるのか、これは国民の一番知りたい問題だと思いますが、この点について政府考え方を承っておきたい。
  55. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 仰せの点はごもっともとは存じますが、わが国は外部の侵略に対しまして、日米安全保障体制によってこれを果たしていこうというのが国防の基本方針でございまして、ことに核兵器は抑制兵力としての意味をなすものであるから、これは安保体制によってアメリカに依存をしていく。また、日本としては核武装をしない、核の持ち込みに同意しないというのが、これまた政府の基本方針でございますので、中共が核装備を完成をいたし、核兵器を持つに至りましても、日本の防衛計画に何らの変更をしようとは考えておりません。これはあくまでも日米安保体制によって力の均衡は保ち得ると、かような考え方でございます。
  56. 田畑金光

    田畑金光君 アメリカの核抑制力に依存する、その方針はわかりましたが、しからば具体的には、アメリカの核兵器を日本に持ち込むことについてもそれは認めるという前提でなければ議論として筋が通らぬ、こう思うのですが、どうなんですか。
  57. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) アメリカの核兵器の持ち込みを認めるというようなことは毛頭考えておりません。これは日本は絶対さようなことはしないというのが基本方針でございまして、私がアメリカの核兵器に依存をするということは、いままでの日米安保体制、共同防衛体制に依存して、中共が核実験を成功をし、核装備をいたしましても、いままでの日米共同体制によって事足りる、さような考え方のもとにいままでの方針を全然変える必要はない、また変えられるべきものではないという考え方でございます。
  58. 田畑金光

    田畑金光君 昭和四十五年という年は御承知のとおり日米安保条約の再改定の時期に入るわけです。また、中共の核開発も、そのころはおそらく水爆も実戦用として保有するであろうという時期と想定されているわけです。また、わが国においては四十二年度から第三次防衛計画を立てるということになっておるわけです。こういうような諸般の情勢考えたときに、いまの防衛庁長官の答弁のように、すべて日米安保体制でやっていけるという考え方だけで、先ほどの力の均衡を維持するという平和の維持の立場から見た場合、あなた方のその平和の維持というものはそういう考えでいけるのかどうか、これを深く国民としては疑問として持っておりまするが、第三次の防衛計画等々との関連において、将来わが国の防衛、安全についてはどういうことを考えておるのか。
  59. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 第三次防衛力整備計画につきましては、いま各部局でそれぞれ研究をいたして、その方向、大綱の策定中でございます。また、昭和四十五年には安保条約の期限が切れる、そのころには中共の核装備というものも相当進むであろうというお話でございまして、もちろんそのとおりではございまするが、私どもはあくまでも国際連合が外部の侵略をば阻止するような機能を持つまでは依然として日米安保体制を堅持し、また、四十五年の期限が参りましてもこれを継続をして日本の防衛というものを進めていく、かような基本方針を堅持いたしておるつもりでございまして、また、これによって決して中共の核装備が進むことによってこれだけで事足りないというような考えはいたしておりません。日米共同防衛体制によって今日のような安全が依然として保たれるというような観点に立って、何ら防衛計画の変更というものを必要としないと考えておるわけであります。
  60. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣にお尋ねいたしますが、昨日羽生委員の質問に対する御答弁で明らかになったわけでありまするが、やはり私はあらためて申し上げたいのは、このような情勢になってくればくるほど、中共の国連加盟、あるいは同時に部分核停条約に参加を政府が呼びかけておられるが、そういう話し合いの場に持ってくるということが一番大事じゃなかろうかと思う。ことに、私は今度の新総裁選挙にあたって与党の三木幹事長は、しいて従来の池田内閣政策に加うるものがあるとすれば、もっとアジア外交を積極的に進めるべきだ、そうして中共とのアプローチをはかるべきだ、こういうことを申しておりまするが、そういう立場から見ましても、こういう事態に当面すれば、当然従来の外交方針でなくして、もっと弾力的な前向きの施策を行なうべきである、こう考えまするが、あらためて外務大臣の所見を聞いてみたいと思います。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共の今回の核実験によりまして、二つの説が従来にもまして、きわ立って対立してまいったのであります。すなわち政治的、心理的影響を各国に与えて、もはや中共をらち外に放置してはいけない、国連加盟をはかって、そしていま田畑さんのお話のように、その場においてこれを説得する、こういう方法をとるべきであるという説が一つ、もう一つは、すでに世界の大多数の国が部分核停条約に参加しておるそのさなかに、かような実験をするということは、いよいよもって中共は好戦的である、国連加盟などとはとんでもないという説と、この二つがきわ立ってきておるのであります。すでに御承知のとおり、国連に加盟しておる大国が核実験をすでにやってきております。国連加盟をはかっても、はたして中共はその態度を改めるかどうか、これはまことに疑わしいのであります。わが国といたしましては、したがって、さしあたってこの核実験のために中共の国連加盟に関する従来の態度を変更する理由はない、かように考えておるのであります。
  62. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣の御答弁まことに遺憾であり不本意でございますが、時間がございませんので、せっかく大臣を呼んでおりまするので、その他の人方に若干お尋ねしたいと思います。  最初に経済企画庁長官に。中期経済計画、そしてやがて十一月には答申になるといっております。中期経済計画のねらいは何ですか。
  63. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 昭和三十五年の末に所得倍増計画が策定された次第でございます。この所得倍増計画によりまして、非常に高度な経済の成長が行なわれ、雇用の機会が増大され、国民の生活水準も相当上昇してまいりましたことは御承知のとおりでございます。ところが、この実績が計画と相当乖離してまいっております。また、環境を申し上げますと、その後今年度から開放経済体制に入った。また、その間において、予想よりははるかに早く若年労務者を中心といたしまして労働力の需給が逼迫してまいった。また、低生産性部門の立ちおくれが目立ってまいっております。または、急速に行なわれました民間設備投資に対して社会資本の立ちおくれがある。そういうふうないわゆるひずみというものが相当出てまいったことは御承知のとおりでございます。そういうふうなところから、経済審議会におきましては昨年度それらのことを検討されたわけでございます。その結果、昨年末に報告を提出されたのでございます。その報告の趣旨を体しまして政府といたしましては本年の一月に経済審議会に対して昭和三十九年度を初年度とする五カ年にわたるところの中期経済計画についての諮問をいたしました。その諮問におきましては、ただいま申し上げましたような倍増計画におけるところの計画と実績との乖離、その他いろいろな面についての、いわゆる立ちおくれと申しますか、ひずみと申しますか、それらの点に重点を置いて、そして、これにもう一つ特に申し上げたいと思いますのは、国際収支の均衡を保ち、また、物価の安定をさせるというこの前提条件のもとに、五カ年間にわたるところの経済計画の策定を諮問いたしましたような次第でございます。それで、その作業はだんだんと進んでまいりまして、おそらくは来月末ごろには経済察議会あたりから答申があるかと存じますが、その中期経済計画を諮問し、または経済審議会においてこれをずっと策定しておられるねらいは、先ほど申しましたとおり、繰り返し申し上げますが、国際収支の均衡を保ち、物価の安定を期しながら、その間において社会質本の立ちおくれを是正する、また、農林漁業とか中小企業等の低生産性部門の立ちおくれを、もっと進み得るようにこれに重点を置くとか、または労働の需給が相当逼迫してまいりましたが、労働の流動性をもっと円滑にするというような問題、または流通過程における改善、または社会保障関係の充実、そういうふうな面にそれぞれ重点を置いてこの計画の策定を進行しておられるものと承知いたしております。
  64. 田畑金光

    田畑金光君 来年度の予算編成はこれに基づいておやりになるわけですか。
  65. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 来年度の予算編成の前提となるところの経済見通しを間もなく立てなければならぬ段階に参っておりますが、この中期経済計画は三十九年度を起点とするところの五カ年計画でございまして、これは全体としての計画はちゃんとできてまいると思いますが、この計画は各年度ごとにきちんとした数字が出てくるわけではございません。したがって、来年度の予算前提となるところの経済の見通しにつきましては、これからなおしばらくの実績の経過を十分に勘案しながら、また、今後あるべき姿を見ながら経済の見通しを立てたい、必ずしも中期経済計画と相一致するということには相なるまいかと、かように存じております。
  66. 田畑金光

    田畑金光君 ちょっとあなたの御答弁おかしいと思うのですけれども、時間がないからあれですが、中期経済計画は高度成長の行き過ぎを是正し、ひずみを改めるというのがねらいだと思うのです。われわれも中間の発表を見ましたが、あれで行けるのかどうか、目的は達成できるのかどうか、こういうことを深く疑問に思うのですが、その点どうですか。
  67. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 経済審議会から答申がありました後、政府としてはその答申についてどういうふうな態度をもってこれに臨むか、もちろん経済審議会の御答申は十分に尊重しながら、しかしながらその時に応じた政策を具体的にはきめていかなければならないかと、かように考えておる次第でございます。
  68. 田畑金光

    田畑金光君 時間が参りましたので、私この点はやめますが、最後に大蔵大臣に金融緩和措置について若干お尋ねしたいと思うのですが、金融問題ですね、去る二十六日に、山際日銀総裁田中蔵相との会談の後、金融引き締めの手直しの意向を明らかにしております。不況がようやく浸透してきたので、人心の緩和をはかるためだと、こう言っておりますが、銀行の窓口規制の緩和であるとか、オペレーションの操作であるとか、中小企業の融資、滞貨金融など、弾力的な運用をはかると、こう言っておりますが、一体、今日の国際収支の面、あるいは物価の面から見てこれは妥当かどうか、こういう第一疑問が起きるわけです。今日まで政府、日銀は、たとえば株式市場の停滞については、共同証券の大幅な増資によって、また来年二月以降の増資についてはストップして、これにもつなぎ融資を行なう、また、中小企業の金融については、そのつど不十分ながら政府の機関を通じ資金量の増大など、あるいは輸出金融などについてもそのつど金融措置をとってこられたわけでありまするが、今度の緩和措置というのは、緩和であるが、これはなしくずしに金融全体をゆるめていくんじゃなかろうか、こういう感じをわれわれ受けるわけであります。特に通貨の膨張を見ましても、銀行券の年末発行高等を見れば、たとえば昭和三十年を基準にとって一〇〇とすれば、昭和三十八年に銀行券の発行高は三倍以上にのぼっているわけです。これに対して国民総生産はどうかというと、昭和三十年と三十八年とを比べますと、国民総生産は二・四倍前後であるわけです。こうして、商品の動きに対し通貨の動きが非常に大きい。これが要するに銀行のオーバー・ローンであるとか、あるいは日銀信用の創出によるインフレ的な様相を示しておる、こう思うわけです。なるほど、国際収支は好転しているが、来年一−三月期というものは輸入増の来る時節である、こういうことを見た場合に、また、今年の末から来年にかけては、公共料金その他の物価の値上がりが予想される、こういうようなこと等を考えたときに、この金融緩和措置というものが経済界にどういう影響をもたらすのか、こういう問題も疑問に思っておるわけです。ことに財界筋では、特に大手企業筋が最近は手元流動資金が不足してきたというので、非常に金融緩和措置を強く求めている、こういうような状況をわれわれは見受けるわけです。ことに財界筋では、御承知のように、単なる量的な緩和だけではなくて、質的な緩和、すなわち公定歩合の引き下げ等もやるべきではないかという意見すらぼつぼつ出ているようにわれわれは見受けるわけであります。ことに、ここに新しい内閣が登場する。そこで私たちが心配することは、ちょうど昭和三十五年に池田内閣が登場して、低金利政策で、昭和三十五年の八月に一厘下げ、さらにまた昭和三十六年の一月に一厘下げて、公定歩合引き下げ、低金利政策を通じて岩戸景気を生み出して、とにかく池田高度成長政策の破綻がここに出発している。たまたま新内閣、新総裁の登場ということで、またまたそういうことをやられてはたいへんだ。こういう政治情勢から見ましても、われわれは不安を感ずるわけでありますが、一体、この公定歩合の引き下げあるいは金融緩和措置というものについて、いまの時期的な判断はどういうふうにお考えになっておられるのか。ことに私たちの心配するのは、金利のアンバランスの問題です。コール・レートの市場は、無条件ものが三銭、月越しものが三・五銭といわれておるわけで、公定歩合が一・八銭、公社債の金利も七・三%、こういうように、資本市場、金融市場そのものが非常に混乱している。こういう時期等を考えたときに、こういうような問題等も、どうすれば金融の正常化、あるいは昨日来お話のある資本市場の正常な発展を促すことができるか。こういうこと等を心配しているわけでありますが、こういう問題について実は逐一お尋ねしたかったわけでありますが、時間が来ましたので、総括的にひとつ大蔵大臣の所見を承っておきたい、こう考えるわけであります。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融問題につきましては、私と日銀総裁との間に意見の交換を行ない、意思の疎通をはかっておりますし、お互いに完全に意見の一致を見ているわけであります。なお、本日発表になります月例経済報告の最終の段階に金融に対する政府考え方を報告をしてございます。これは後ほどごらんになっていただくわけでございますが、確かにきめこまかく配慮をしなければならぬ部面もたくさんございます。しかも、貿易収支、経常収支もよくなってはまいりましたけれども、しかし、基調的に金融を緩和するような状態ではなく、引き続き在来の姿勢をとる、こういうふうな表現で発表をいたしております。この発表がありますと、日銀総裁と私が話をし、日銀総裁談話、また、私のこの議場を通じて御説明を申し上げました答弁との間に食い違いがないかというようなことをお考えになるかもわかりませんが、この文章を最終的に練りますまでの間に私との意見調整も十分行ない、見解の相違はないということでこの発表になったわけでございます。ただ、ここで申し上げておきたいことは、政変ということを契機として引き締め緩和を急ぐ、こういうことがあってはならない、まさにそのとおりであります。そういう考え方は絶対にございません。特に多小引き締め緩和ぎみのときであっても、政変などのある場合は、特に慎重を期さなければならない、こういう考え方に立っておりますので、御指摘になりましたように、人気取りだとか、政変というものが新たな低金利また金融緩和に拍車をかける端緒を開くものではない、これは非常に意識をいたしておりますので、そういう懸念は絶対にないように御理解をいただきたいと思います。  それから金融緩和と言うけれども、緩和をするには少し早いのではないか、こういうお話、私も緩和をするとは言っておりません。金融を緩和する時期ではない、こういうことを言っているわけであります。しかし、一律画一的な引き締めをそのまま過去の例のように長期的に続けていくという過程において考えると、非常にいろいろな問題がある。中小企業の問題、俗にひずみの問題があるわけであります。また、引き締めをしてまいりますと、金融引締めのしわが非常に資本市場に寄って資本市場が壊滅的なものになるとしたならば、これは金融の正常化、金融引き締め、金融調整も必要ではございますが、角をためて牛を殺すようなことになってはならぬわけであります。そういう面に対しましては、しさいに現実を把握しながら、観念的な一律画一的な締め方だけではなく、機に応じて臨機応変といいますか、十分実情に合う措置を行なう必要がある。倒産があります。倒産があっても、総体的に見て画一、一律的な引き締めをしなければならぬと言って締めていけば、将棋倒しのものになるわけであります。融通手形が出ている。出ているのだから、融通手形というものは不正常なものだから、こんなものにかまわず締める、黒字倒産も何のそのでは、これはまさに何にもならなくなるわけでありますから、事実融手が出ているならば、どのくらい出ているのか、これを出さないようにするにはどう措置するか、より短い期間に正常化をはかるための措置をとりながらやらなければならぬということは論を待たないわけであります。でありますから、日銀総裁と私との間に話し合いができましたのは、引き締め基調、いわゆる調整基調を大幅に緩和をするというような時期ではないということを前提にいたしております。しかし、去年の状態と比べて変わらないのは、アメリカの利子平衡税だけであります。貿易収支も均衡してまいりました。経常収支も均衡してまいりました。また、総合の上でも投資一億五千万ドル内外というようなものも好転しております。十二月までの輸出増は当然のこと、一−三月の輸入期を見ても経常収支のバランスもことしはとれるかもしれない、とれそうだというような状態であることも御承知のとおりでございます。しかし、輸入は高い、また生産も横ばいである、経済成長率も一〇%を越すというような状態。特に東京の卸売り物価、中小物価が多少上がるような気配、こういう実情を考えますと、ここですぐゆるめるという状態ではない。ただし構造自体が変わっておるのでございますから、このまま画一、一律的な引き締めをやってまいりますと、これはえらい混乱が起きる。しかも、いままで考えておるようなことではない。どうも金が偏在しておる、流れが正常を欠いておる、いろいろ具体的な問題があるわけであります。こういう問題。基礎産業などでもってどうしても要るというようなものであっても三銭六厘、三銭七厘のコールを取らなければならぬ。また、そのコールで非常に高い金利で利益を得ておるものもある。こういうものをもう少し正常化できないものか、こういうことを十分考えながら、大ワク、基本的な姿勢は調整基調をくずしませんが、こまかい配慮をしながら、弾力的といいますか、実情に合った配慮をしながら、そうしてこの過程においてひずみの解消をはかっていくということであります。それはしり抜けであるとは考えない。はっきり言えば、そうあるべきなんです。画一、一律的にやっていけば一番簡単なんです。少しぐらいつぶれようが画一、一律的にある時期引き締めていけば、確かに早く、総体的には経済は正常に戻ります。しかし、その間にあってえらいしわが寄ところがあるわけであります。回り道であっても……時期すでにおそいということを引き締めのとき言われました。十一月に引き締めをすればいいものを三月までだらだらかかった。三月までだらだらかかって、いろいろきめこまかくやったのに、中小企業はあの倒産になったではありませんか。あのように、過去のように引き締めてごらんなさい。もっとひどい倒産があったと思う。同時に、今度はあなたがいま緩和論、緩和の気配を出すのも非常に危険だと。私もよくわかります。が、しかし、新聞には引き締め緩和のようなことを日銀総裁大蔵大臣も言うけれども、こもごも時期もうおそいんだと書いております。私はおそいとは考えておらない。ちょうど三月公定歩合引下げのときと同じような考え、現在もなお基調的には何でも緩和していい時代ではないと考えます。ですから慎重ではありますが、具体的に現実に合った金融をやってまいりたい、こういうことであります。あなたもさっき、片りんでありますが、申された。引き締めなさい、引き締め緩和は早いと言いながら、中小企業対策に対してはわずかにしか金を出しておらないということでございますが、そうじゃないんですよ。わずかではないんです。引き締めはやっておるけれども、あなた自身中小企業にはもっと出せ、こう言っておられるじゃないですか。そういうことを現実と理想をちょうど調和さして、国民が喜ぶような、ほんとうに実際に合った金融をやろうということでございますから、御理解をいただきたいと思います。
  70. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 田畑君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  71. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、佐藤尚武君。
  72. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私は、まず第一に、国際情勢のもとにきわめて重要な問題が多々続発してまいりましたおりから、わが国におきましても池田総理病気のゆえをもって引退されるということに相なりました点、まことに遺憾に存ずるものであり、かつまた、御同情にたえないのでございます。願わしくは、十分に養生を加えられまして、一日もすみやかに本服せられ、そして再び政局に立たれる日の近からんことをお祈り申し上げるものでございます。  昨日来の予算委員会で、種々国際問題に関しまして重要な質疑が行なわれました。私も、本日は中共の国連加盟の問題にしぼりましていささか御質問申し上げたいと存じます。ただし、この中共加盟の問題を国連でもって重要問題として取り上げたということにつきましては、これは手続上の問題でありまするがゆえに、外務大臣をわずらわすことなく、事務当局の方に御説明を願いたいと思うのでございます。  国連憲章の第十八条によりますと、重要問題に関しましての決議の表決の方法が規定されてあります。その中に、新興国の国連加盟の承認という項がございます。新興国が国連に加盟する場合には、したがいまして、重要事項として三分の二の表決が必要であるということになるわけでございまするが、中共の場合はその条項に当てはまらないのでありまして、新興国として加盟するのでなく、すでに中国が持っておる国連におきましての地位、つまり安保理事会においての常任理事国であるというようなそういう地位を、自分、自国、すなわち中共自身が正当の主張者でなければならない、正当の加盟国として取り扱われねばならぬという、こういう主張を持っておるのでありまして、したがいまして、中共の加盟ということは、台湾の国民政府に取ってかわって、そして国連の常任理事国としての地位をかちえようと、こういうわけであります。したがいまして、この問題の取り扱いはどういうことになるかということについては、明確な規定がないために、何年前でございましたか、いまから三年前になりますか、二年前でありましたか、岡崎前国連大使の発意でもってこの中共加盟の問題を重要事項として取り扱うということに国連の決定を見たということであり、そして今日に及んでおると、こういうふうに私は理解しておるのでございますが、その点、私の記憶が間違っているかいないかについて御説明を願えればと存ずるのでございます。
  73. 藤崎万里

    説明員(藤崎万里君) 御所見のとおりでございまして、重要事項指定の決議は、第十六回総会、いまから約三年前に通過いたしております。
  74. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 そういたしまするというと、この問題の取り扱いは、国連に関する限り、重要事項として取り扱われるべき問題でありまして、中共加盟の問題は、したがって三分の二の多数をもって終始すべきものであり、日本といたしましては厳として三分の二の多数説を主張していかなければならぬ問題だと思うのであります。外務省としても当然そういう決意を持って臨んでおられることとは存じますが、念のためその点のお考えをお尋ねしたいと存じます。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お説のごとく、外務省といたしましては、重要事項としてこれを主張したい立場に立っております。
  76. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 先ほど来、外務大臣は、この問題に関しましての政府の態度を御説明になりまして、私も政府の態度に対して全然同感を表しておるものでありますが、しかし、それ以外に私は私なりにこの問題について非常な重要性を置くゆえんのものがありますので、一言意見を述べさせていただきたいと存じます。  私は、日本国内においての一部の意見とは違いまして、どこまでも台湾の国民政府支持していかなければならぬと主張してまいっておるものであり、それは単に本日申し上げるばかりでなく、従来とし何年越し参議院の本会議ないしは外務委員会でもって繰り返し私の意見を申し述べたことがございます。今日におきましても、私の意見は一つも変わっておりません。日本は台湾の国民政府をどうしても支持しなければならないのだ、最後まで台湾の政府を中国の唯一の代表者としてこれを受け入れていかなければならないのだと主張するものであり、また、その理由といたしましては、これはたびたび申し述べたところでありますけれども国民政府に対して非常な恩義をしょっておる日本であるというその点、私は非常に重きを置くものでございます。終戦当時、繰り返して申すまでもないことでありますが、終戦当時あの南京政府首班でありました蒋介石総統のとりました非常な大きな寛容な態度、これによりまして日本人は二百万、あるいは三百万とも称せられておりますこの大ぜいの人たちが無事に日本に、本国に引き揚げてくることができたという点、これはたいした問題でなければなりません。もしそうでなくして、ソビエトと同じような態度をとったといたしますならば、その二百万、三百万の人たちは、中国本土に依然抑留されておったでありましょうし、シベリアで半分以上の人たちが死んだと同じような、中国でもってその大ぜいの人たちの半分は命を落としたであろうと思われるのであります。それがなくして無事に日本に帰還を許してくれたということは、これはたいしたことでなければならず、東洋哲学の私はほんとうの珠玉だというふうに感ずるものであります。でありますから、その点において日本は非常な恩義をこうむっておるのみならず、もう一つ日本でほとんど問題にされていないのは、蒋介石総統が日本に対しての賠償の権利を放棄したということであります。満州事変以来のことを考えてまいりますならば、満州事変が六年、続いて起こりました支那事変の四年、そしてさらに大東亜戦争になって四年、つまり十四、五年の間、日本は中国に対して非常な大きな損害を与えた国に相なったわけでございますが、まことにこれは不幸な結果を持ち来たしたのであります。でありますからして、もし日本に対して賠償要求をする国がありといたしますならば、それは中国が一番大きな請求者でなければならなかったのでございます。しかるにその大きな請求権を放棄したということ、これが日本にとりまして非常に大きな支援を与えてくれたということに相なります。もしその支援がなくして、負担にたえ切れないような賠償を背負ってまいったとしまするならば、とうてい今日の経済復興などということは夢のような話に相なったわけと思うのであります。それなくして済んだということに対しましても、日本は非常なる大きな情義を感ずるわけであります。  したがいまして、中国の国連におきまする地位というものに対しては、日本は最後の最後までこれを支持していくという態度をとっていかなければならぬということに当然相なるわけでございます。私はたびたび申しまするが、この問題が緊迫を加えてくるにあたりましても、また、本年はどうか存じませんけれども、一両年のうちには新興国の国連加盟ということがだんだんふえてまいりますることも考慮に入れまするならば、この中共の国連加盟という問題が非常な圧迫を加えてくるようなことに相なりましょう。その際にも、日本政府といたしましては、最後までただいま申し上げましたような態度を堅持してくださるということを切に御希望を申し上げなければならぬのでございます。いつかの外務委員会におきまして私は前大平外務大臣にもその話を申し上げ、いやそんなことをしたらバスに乗りおくれるじゃないかというような諭が日本国内でありまするが、しかし、日本はき然としてバスに乗りおくれて一向差しつかえはないはずであります。願わくは政府においてその際き然たる態度をとっていただきたいということを申し述べましたら、大平外務大臣は苦笑しておられました。私は本日同じことを繰り返すので、椎名外務大臣も苦笑されるかと存じまするけれども、この問題は日本として真剣に考えなければならぬことであり、一両年のうちに政府も確然たる態度をおとりにならなければならないようなことに相なると思うのでございまするので、あえて再びこれを繰り返したわけでございます。私は、その点に関しまして大臣答弁を要望いたしません。これはその必要がないと思いまするので、その点は差し控えます。  最後に、一、二分拝借いたしまして政府当局の注意を喚起申し上げたいと思うことがございます。それは、来年の十月の二十四日をもって国連は満二十年を迎えることに相なります。その記念の年にあたりましてニューヨークの国連本部においては全世界的に行なうべき種々の行事について考究していると聞いておりまするが、それは当然そうでなければならぬことと思います。しかして、全世界にわたりまする国連加盟国は、それぞれその本部において決定される行事の筋に従いましてそれぞれの行事をやることに相なることと信ぜられます。日本におきましては、当然国連支持者として、また国連の中でも大国の中に入っておりまする日本といたしまして、当然その趣旨に従って行事をさるべきであろうと存じます。これは国の行事としていただきたいのでありまして、民間の協力もさることながら、こういう問題について国が国連を支持しそうして国連とともに二十年の間平和を保ってきたというそのことを明らかに表章すべく、国が適当な行事をやるということにお考えを願いたいのであります。したがいまして、政府におかれまして、外務大臣をはじめ、関係閣僚におかれましては、早きに臨んでその点の検討を始めていただきたいということをつけ加えてお願いを申し上げたいと存じます。  私の質問はこれで終わります。
  77. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 佐藤君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  78. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、岩間正男君。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、中国の核実験問題を中心に質問します。  周恩来中華人民共和国総理は、今月十八日に池田首相に対して書簡を送り、中国の核実験に関する立場を明らかにするとともに、核兵器の全面禁止と完全な廃棄を実現するために、世界各国首脳会議の開催を提唱してきました。これに対して、政府は、鈴木官房長官談話の形式で非公式な意見を述べて、結局はこれに反対したのであります。  そこで、まずお聞きしたいのでありますが、なぜこの中国の提案に対して正式な回答をしなかったのか、また、なぜ反対したのか、この理由を明らかにしてほしいと思います。
  80. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、まだ中共とは正常な国交を回復しておりません。それで、ただ意のあるところを声明した。これはいわば回答に相当するものであります。  それからなぜ反対したかということでございますが、御承知のとおり、国際会議を首脳部間において開催するまでには、真剣にこの準備を整えまして、いやしくもから回りをするようなことのないように、もしから回りをするというようなことになると、何もやらない以前よりも状況が混乱するので、その点は慎重にしなければならぬ。全面禁止ということになりますと、これに対する査察の方法でありますとかその他諸般の研究が十分になされて、そうして十分そのものの裏打ちをして、しかる後に首脳部の会議を開くというのが従来の慣例でございます。ただ何にもなしにいきなりこういうことを言うことは、むしろ実効をねらうというよりも、つまり宣伝効果をねらったものであるということに解釈せざるを得ないのでございまして、したがって、これに反対をしたわけであります。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 第一に、中国とまだ正常な国交を回復してないから正式な回答をしなかったという御答弁でしたが、そんならどうですか、韓国とは正常な国交を回復してないのに、どんどん書簡の往復をやっている、駐日代表部を日本に置いている。こういう点はまことにこれはけしからぬということになると思うのです。しかも、周恩来総理の非常に丁重な意を尽くしたあの書簡に対して回答しなかった、こういう点はまことに話にならないと思うんですがね。それから第二の問題についてはあとで質問しますが、いまの問題はどうなんです。
  82. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国政府は日本はこれを承認しております。中共は承認しておりません。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたさっき正常な国交を回復しないからということを言ったでしょう。国交回復していますか。現に、日韓会談を何回やっても、何回もこれは日鮮人民の反抗にあってうまくいっていないでしょう。そういうような答弁では、全くこれは日本の国際的地位、その上に立っての外交を推進するということにはならない。そんな答弁ではこれは話にならぬ。  それから、先ほどいろいろこれに反対した理由を述べました。そこで、私はお聞きしたいのです。今度の中国の核実験によって国際情勢はどういうふうに変化したか。これはたいへんなものだと思う。最近の国際情勢変化について外務省はどうつかんでおるか。外務大臣はこの現実にどう対処しようとしているのか。最初国際情勢の把握について見解をお伺いしたい。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど国交正常化と申しましたが、適当な表現ではないかもしれませんので、これを訂正いたします。まだ未承認国であるというふうにいたしたいと思います。  それから、今度の中共の核実験の意義をどういうふうに見ているか、こういうお話でございます。思ったよりも早かった。それからまた、プルトニウムの核実験が行なわれるだろうという予想がもっぱらでございましたが、あけてみるとウラニウムであるということでございますので、今後の製造の速度は相当早いものであると、こう考えます。しかし、これが核兵器として力を持つまでにはなお相当の期間を要する。のみならず、運搬手段の開発には相当また長きにわたる年月を要するものと考えるのでありまして、この時点においてそういまから何と申しますか騒ぐ必要もないということになるのでありますが、しかしながら、今後の発展状況を予測いたしますというと、これはやはり重要視すべき問題であると考えております。この核実験を契機として二つの意見が非常にきわ立ってきておる。中共に対して同情的と申しますかそういう側に立った諸国とおきましては、ますます従来の主張を強めておる。反対の側は、従来の主張をまた強めておる。こういうような状況が見られるのであります。  なおまた、国連加盟の問題を中心にいたしまして、これは国連の外に置くとかえって世界全般の平和維持のためにとらない、国連の場にこれを取り込んでそうして話し合いをするということによって平和の維持に努力しなければならぬと、こういう考え方と、また、これに反しまして、中共の実態は非常に好戦的である、国連加盟はもってのほかであるというような考え方と対立をしておる。こういう状況でございますが、日本といたしましては、やはり従来の方針を変える必要はない、中国代表中共に認めて中華民国からその代表権を剥奪するというような考えはこの際は毛頭とらない、こういうのであります。  それから国の安全の問題でございますが、従来の日米安保条約というものの堅持ということによって十分に対処できる、かように考えております。
  85. 岩間正男

    ○岩間正男君 外務大臣は私の質問に何一つ答えていない。私は、反対するに至った——反対の非公式の回答をしたというのですが、そういう意思表示をするに至ったその背景としての国際情勢変化をどうつかんでいるかと聞いたのです。これはたいへんなことでしょう。現にたいへんな変化があなたたちの足元に及んでいるのです。池田総理がやめた理由の中には、はっきりソ連の政変と中国の核実験があって、時局は重大になった、これをもう担当することができない、負担にたえない、だからやめるということを言っているでしょう。これはもうはっきりした事実だ。これだけの変化がある。しかし、これは日本のいまあなたたちの足元に及んでいる変化です。ところが、国際的な変化はこれはたいへんなものです。これをはっきりつかむかどうかということなしに、どうして一体外交的な対決ができますか。私は、国際情勢がどう変化したかということを聞いているのです。あなたは、いままで何回も繰り返した、中国の核実験の変化、それに対してどうだこうだということを言ったのですが、これは答弁が違いますから、あらためて国際情勢についてお伺いいたします。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核実験したとしないとの違いは確かにあります。それでこれの影響を私は申し上げたのでございまして、日本に対する影響は私が申し上げたように変化はないのであります。
  87. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう何といいますかその辺のいろり談義みたいな、したとしないと確かに違いはある、そういうことを言っていたのじゃ話にならぬ。外務大臣ですよ、一国のね。日本の外交をどうするか。特に池田退陣の大きな契機になった問題でしょう。それをそんな把握ではだめですよ。私が申してみましょう。  このたびの核実験によって少なくとも次のような大きな変化が起こっております。これは私の一つの把握をもってしてもこれだけのことは言える。  まず第一に、世界の核保有国が五カ国となった。ことに世界の四分の一の人口を持つ社会主義中国が核保有国になったことは、世界平和のために大きな力となっている。元来、社会主義国の核保有は帝国主義国のそれとは根本的にその性格を異にし、常に戦争に対する平和の力として大きく作用しているのであります。その結果、帝国主義者の核独占の野望は大きく打ち破られた。これが第一。  第二には、今日、中国の国際的地位は非常に高まっている。いまや人民中国の存在を無視して世界の政治を論ずることは不可能であり、その国連加盟も間近に迫っているといわれている。政府はこの目の前の厳然たる事実を一体どう見ているのか。  第三に、アメリカ帝国主義は世界至るところで敗退しているが、アジア、特にインドシナにおける核脅迫と侵略、圧迫、干渉の政策は完全に破綻しつつある。その結果、アメリカの核戦略は決定的な打撃を受け、目下その対策に苦慮しているのであります。  第四に、こうした中で世界人民の独立、平和の戦いは大きな高まりを示している。日本でも、原子力潜水艦の寄港阻止、沖繩復帰運動等、目下激しい勢いで盛り上がっております。これらの運動を通じて、核兵器の全面禁止とその完全廃棄を求める声は、いまや全世界人民の念願となっているのであります。  このような情勢を踏まえて中国は核兵器禁止のための世界首脳会議を提唱してきたのです。これこそ世界人民の心からなる念願にかなうものであることはもちろん、最も現実的で、その気になれば実現可能な提案です。それをなぜ一体賛成できないのか。アメリカに対する気がねから政府は賛成しないのか。一体政府は核兵器の全面禁止を心から考えているのか。もし考えているというなら、中国の提案に賛成し、これを支持し、進んで世界平和への道を切り開くべきであると思うのでありますが、これに対する外相の見解をあらためて伺いたいと思います。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共の一発の核兵器の実験に非常に大きな夢をゆだねていまお説きになりましたが、われわれはこれをあくまで現実的に直視をいたしましてこれに対処しておるのでありまして、その考え方はいまここで申し上げたとおりでございます。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは御答弁ができないんでしょう。うつらうつらと夢を見てるのはあんたのほうじゃないですか。もう目を開いてごらんなさい。そんなことではとてもいまの大勢に即応できないでしょう。  次に、鈴木官房長官にお伺いしますが、あなたの談話というものです。これは三点からなっている。第一は、中共核爆発を自分で行なった上で核兵器の全面的禁止のための首脳会議を提唱しているが、自家撞着、こういうことを言っておりますが、原子力潜水盤の寄港、F105Dの強制配備をやすやすと受け入れてアメリカの核戦争政策に協力を惜しまない日本が、自分のことはたな上げにしておいて、そうしてこれに対抗措置をとった中国を非難する、これこそ自家撞着じゃないですか。自家撞着はあんたのほうじゃないですか。この点をお伺いします。
  90. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 広島や長崎で原爆の洗礼を受け、世界における唯一の被爆国民として、いかなる国、またいかなる理由がありましょうとも、原爆の実験には反対し続けてまいりました。これは国民全部の共通の気持ちであります。こういうような日本国民の悲願をむざんにも打ちくだいてそして核実験をやったということに対しては、国民あげて憤激を覚えておるのでございます。この国民の気持ちを全く政府も同感でありまして、強く抗議をしたいということを申し上げておるのであります。中共の核実験は平和の灰であり、その他の国は死の灰であるというような片寄った考え方には、われわれは同調できません。いかなる国の核実験にもわれわれは反対であります。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたのような変な言い方をしているわけですかね。われわれも、放射能の危険について、十分にいままでこれを廃棄するために戦ってきたことは人後に落ちるものじゃない。しかし、自分のやってることはたな上げしておいて少しも問題にしない。相手だけを責める。しかも自家撞着ということを言っておるが、これは明らかに矛盾しております。  第二には、首脳会談を開いても一足飛びに核禁止が実現できる可能性はなく、査察、管理などの問題を技術的に研究を加え、その積み重ねの上でなければ実現性はないと。これは全く反対でしょう。まず首脳会談を開く。そこで会議を開くという意思が決定されて、査察、管理というようなものがそれに付随してくるのです。ところが、そのことを口実にしてあくまでも全面核停のこの問題をごまかそうとする、これはアメリカやり方と同じでしょう。どうですか。こんなやり方で、あんた、やっていけると思いますか。この点についての答弁を願います。
  92. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 部分的な核実験停止条約が不完全ではあるといいながら、全世界のたくさんの国々の支持を受けております。私どもは、この部分的な核停条約に調印をし、こういうことを一歩一歩積み重ねていくことによって全面的な核兵器の使用禁止へ進むことができる、これが最も現実的な方向である、こう考えておるのであります。中共も世界の平和を念願するのであれば、まず世界の国々が支持しておるこの核停部分協定に進んで参加すべきだと考えております。それを、こういうものを全然無視いたしまして、そうして首脳会談を提唱する、しかも日本国民の悲願である核実験反対——非常に日本から遅い、至近の距離でこれが行なわれておる。死の灰に日本の同胞がさらされることはわれわれは非常に心配をいたしておるのであります。そういうことをやっていながらあのような提案をしている、われわれは同調できないというのであります。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは死の灰死の灰と言っているが、死の灰の危険に比べれば、核戦争の人類絶滅の危険さえある危険のほうが何百倍も危険です。そのことを中心に問題にするかどうかということが当然政治家のなすべき道です。あなたはいままた部分核停に入るべきだ、核実験をやめて部分核停に入るべきだということを第三点に言っております。これは全く現実を無視した態度じゃないか。大体、部分核停条約は、今日では事実上すでに破綻に瀕している。部分核停条約が核兵器の禁止に何の役にも立たないことは、その後の現実が何よりもこれを証明しているじゃないか。  第一に、アメリカはその後地下実験を三十数回も行ない、無制限に核兵器を開発して、あのインドシナ戦争の拡大とアジア侵略の道を推し進めております。このことは、部分核停条約によって核戦争の危険は一向やまないどころか、かえって拡大されつつあることを明白に示しているじゃありませんか。  第二に、日本の現実を見てごらんなさい。部分核停条約のもとに、原子力潜水艦の寄港が強制され、新たなナイキ、ハーキュリーズが持ち込まれようとしている。さらに沖繩の完全核武装化によってアメリカのアジア侵略のための核基地化がますます進められている。しかも、その真のねらいが中国封じ込めにあり、そのほこ先が常に中国に向けられていることは、いまやあまりにも明白であります。このたびの中国の核実験は、これに対する自衛のための措置であり、やむにやまれぬ主権の発動であったのであります、かかる事態を無視して手放しでアメリカの核侵略体制に協力しながら、そのことはたな上げして核停条約への参加を求めることは、単なる言いがかりにすぎないではないか。政府はもし真に中国の核実験を禁止したいというなら、何よりも原子力潜水艦の寄港をはじめ、一切の核戦争協力政策をやめ、みずから進んで中国提案を承認し、核兵器の全面禁止と完全廃棄に努力する以外に道はないんです。はたして政府にその熱意があるかどうか、これは外交の衝に当たる椎名外務大臣のはっきりした答弁を願いたいと思います。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たびたび申し上げておりますが、いま世界の現状はまだ力の均衡による平和であると、かように考えておるのでございます。その意味において、われわれは日本及び極東の平和を日米安保条約というものの体制によってこれを達成しようとしておるのでありまして、現実を飛躍した論理にはただいまのところ耳を傾ける必要はないと、かように考えておるわけであります。  なお、原子力潜水艦の問題でありまするが、これは核兵器の持ち込みでも何でもない。だんだんには一般の商船もおそらく原子力にかわるだろうと思います。推進力として原子力を用いているというようなことは、これは新しい時代の趨勢である。普通の船水艦が推進力を原子力にかえておるにすぎないのであります。これをあえて核兵器の持ち込みというようなそういう曲解は当たらないのであります。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 原子力潜水艦の話、あなたのほうから出したのですけれども、これはきのうも羽生委員の質問で同じことをばかの一つ覚えみたいに繰り返しておりますが、そういうことが一体通ると思っておりますか。サブロックが積まれるということは、これはもう明らかでしょう。そうしてこれは学術会議でもこれに反対した。これも羽生委員からきのう言われた。安全性はとても保証できないと言っている。重大間町ですよ。何のためにいま佐世保で労働者をはじめ平和を守る人たちが集結をしてあくまでこれを阻止しようとして戦っておるか、この現実をあなたは見ていますか。いま全国的に起こりつつあるこの問題をどうして一体いまのあなたのようなごまかしの答弁で切り抜けるということができますか。  そういう答弁を繰り返して、結局あなたたちは中国提案に賛成したがらない。そういうことは一体何を意味するかというと、実際はあなたたちは安保体制を強化して、憲法改正と相まって日本の核武装を推し進めようとしている考えがあるからです。現に自民党内にその動きがあるじゃないですか。政府は核兵器の全面禁止に対して全くまじめさがないのもそのためです。アメリカの核脅迫を助長して、その片棒をかつぎ、国民の念願を全く踏みにじろうとしているのです。これでは、中国を敵視しないと言っていますが、全くのごまかしです。その結果がどうなるか、こういう事態についてあなたは考えてみたことがありますか。中国の核実験の問題については、独立を目ざすアジア・アフリカの諸国は核脅迫から核独占を突き破る道だとして大きく賛成しているのです。こういう方向にあなたたちは反して、あくまで日本をアジアの孤児にする、そういう方向の様相を深めようとしているじゃないですか。こういうことでは、いまの非常に重大な変わりつつあるこの変動期にある外交方針を池田内閣は担当することができないのじゃないですか。まあ池田さんは病気で休んでおられるけれども、外務大臣として、また次期政権として、はっきりこのような日本の平和をどうするか、アジアの中の日本としての体制をどうするか、そうしてその上での外交をはっきり確立するという方向に政権をつくっていかなければならぬのですよ。そうでしょう。あなたたち派閥の内部で、いま、この委員会さえ、けさ見ますというと、一時間もおくれている。空白がないなどといって、空白がどんどん起こっている。そういうことをやりながら、しかも次期政権をそのような池田内閣政策を堅持するのだとかなんとかいって、実は国民と国家を忘れて、しかも世界の平和というそういう観点に立たない政権をつくり上げたとして何になるか。そんなことではだめです。  私は、そういう点から、最後に日本の外交の行くべき道について申し述べたい。これは二つある。その一つは、戦争と民族破滅の道であり、他の一つは、独立と平和、民族繁栄の道です。政府一体この重大な時局に際してそのどちらを選ぼうとしているのか。日本政府は、いまこそ決断をもって新しい情勢に即応し、自主独立の外交を推進する立場に立って、中国の提案を支持、承認し、民族の独立と平和を目ざす外交方針を進めるべきだと思うのです。したがって、はっきり次期政権もそういうような方向に努力する。自民党内のワク内でまるで金魚鉢の中のような政権争いをやっておったって話になりません。世界と日本の情勢は変わっているのです。この現実に立ってはっきり対処すべきだと思う。しかし、これはおそらく椎名外相、つまり首なし内閣の外相として答弁できないと思うので、これは答弁されないでもけっこうです。はっきりこれは伝えておきます。これで終わります。
  96. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君の質疑は終了しました。  午後一時四十分に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩    ————・————    午後一時五十五分開会
  97. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。市川房枝君。
  98. 市川房枝

    ○市川房枝君 最初に吉武自治大臣に、自民党総裁選挙についてお尋ねしたいと思います。  大臣は、政治の常時啓発、公明選挙運動の施行、推進を担当しておいでになるわけですね。そのお立場で、この七月に行なわれました官民点の総裁選挙は、公明選挙であったとおっしゃることができますか、どうですか。それをまずお尋ねしたいと思います。
  99. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 市川先生のお尋ねは、自民党総裁選挙のことかと思いますが、これは、御承知のように、党内の総裁を選ぶ問題でございまして、公職の問題とは違いますので、お答えしにくいと思います。
  100. 市川房枝

    ○市川房枝君 なるほど、総裁選挙は、これはまあ自民党の党内の問題でございまして、これには公職選挙法の適用がございませんから、それは買収、供応勝手次第ということには、それはなるわけでありましょうし、そこには選挙違反というものはないわけでありましょうけれども、しかし、その総裁総理におなりになることが約束されておりまするから、国民としては、その総裁選挙に非常な関心を持っておる。そこで行なわれる選挙は、やはり公明選挙でなくてはならないということをみんな考えておるわけでございまして、この間の選挙、これはまあ新聞紙上に伝えるところでありまして、私どもも実際はまあ知らないわけでございますが、非常に遺憾な点がたくさんあったようでございます。私は、非常にそのことを心配しまして、ことしの三月の予算委員会のこの席で、池田総理並びに佐藤大臣に公明選挙でやっていただきたいということをお願いをしましたし、また、総裁選挙の直前に、婦人団体の代表として公明選挙でやっていただきたいとお願いしたんですけれども、結果は非常に悪い選挙であって、二十余億円の金が動いたといわれております。これは、公明選挙運動を、自治省としては、今年度も六億の予算でもって、国民の間にそれを推進しておいでになっておるわけでありまするけれども、自治大臣は、それはもう関係はないとおっしゃるかもしれませんけれども、 私は、やっぱり関係はないとは言えないと思うのですけれども、ずいぶんやりにくいと思うのですけれども、どうなんでしょうか。やはり公明選挙であれば、私は、ずいぶん一般の公明選挙運動も推進されるだろうと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  101. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 選挙は公明であるべきであるということは私も同感でございます。しかし、党内の総裁を選ぶ問題を公職選挙法と同じような法律で規制するとかいうことは、これは考えものではなかろうか、かように存ずる次第であります。
  102. 市川房枝

    ○市川房枝君 ちょっと、党の幹部でおいでになります自治大臣としては、この問題についておっしゃりにくいことはよくわかりますが、そこで、自民党では、いま、池田総裁辞任されまして、そのあと新総裁の選任の御相談がだんだん進められておるようでありますが、もし公選となった場合に、再び七月のときのようなことがあっては、ますます国民の信を失うことになると非常に心配をしておる次第であります。いや、話し合いによる総裁の決定が行なわれたとしても、その裏にやはり金の取引やなにかがあるのではないかという心配もされておるようでありまするが、やはり、このことに関しても、大臣としては何にもおっしゃられないのでございましょうか。
  103. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 去る二十五日、池田総理は、突如病気のゆえをもちまして、総理総裁辞任の決意をされました。その際に、先ほど官房長官からも御答弁がありましたように、総理は、特にひとつ後任の総裁は円滑かつすみやかに話し合いできめるようにしてくれろと、こういう強い御決意もございまして、目下党内におきましては、党の機関を通じ、副総裁なり幹事長中心となりまして、話し合いでいま進められておるような次第でございます。
  104. 市川房枝

    ○市川房枝君 その問題は、この程度にしておきます。  去る十月二十日の日に開かれました第三次の選挙制度審議会の第三回総会がございまして、私それを傍聴に参りました。その会合で、木下委員が腐敗選挙の実態調査の提案をしておられましたが、それを小委員会を設けて具体案を練るということにきまりましたようで、これは、傍聴しておりました私も、たいへんけっこうだと思いました。ところが、この実態調査について自治省は反対だと、いやこういう調査は公明選挙連盟にさせればよいんだといったような消極的な態度であると、こういうふうに伝えられておりますけれども大臣は、この調査会の設置について、どういうふうにお考えになっておりますか。
  105. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先般の選挙制度審議会において、木下委員から、選挙制度を考える上においては、まず選挙の腐敗の実態を見る必要があるんじゃないかという発言がございましたことは、ただいま御指摘のとおりでございます。この問題につきまして自治省が消極的な意見を持っておるということでございますが、そういう事実はございません。それは、せんだっての審議会でも、高橋会長が特に発言を求められまして、そういうことは私のほうに申したことも何にもないということを言明されているとおりでございます。ただ、審議会といたしましては、運営委員会を開きまして、この問題を取り上げて、今後どうしようかということで、運営委員会では、小委員会でどういうふうにしてこれをやるかということをひとつ相談をしようということで、小委員会へゆだねるようになっております。問題は、私もそれはけっこうだと思いますけれども、ただ、なかなか実際の方法といたしましては、むずかしい点が非常にあるんじゃないかということで、方法等をいま小委員会考えているということでございます。
  106. 市川房枝

    ○市川房枝君 それを伺って安心をいたしました。自治省もどうか積極的に御支持を願いたいと思います。  次は、水道の問題について、厚生大臣と自治大臣にお尋ねをしたいと思います。  ことしの夏の東京都内における水飢饉は、東京の都民、特に家庭の主婦にとりましては非常な苦しみでございまして、こんなことがまた繰り返されるのではないかというような心配をいまでも持っておりますし、一体これはどこの責任なのかという憤慨をいまでも持っております。厚生大臣は、水道法によりまして、水道の認可権あるいは監督権をお持ちになっておりますから、この水道の問題、東京の水飢饉の問題については、厚生大臣責任がおありになるということではないでしょうか。
  107. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  東京都の水道資源の確保につきましては、従来、水利権の調査が困難でございまして、そうして計画がおくれておった、これが一つの原因だと思います。それから、本年は特に降雨量が少なかった。四十年来の降雨量が少ない年にちょうど際会いたしまして、こういうことが相伴って、そうしてたいへん御迷惑をかけましたことを、私、水道行政の責任者として遺憾に思っております。
  108. 市川房枝

    ○市川房枝君 どうも、厚生大臣のいまの御答弁だけでは少し満足できないのですが、もう一つ進めて厚生大臣に伺いたいのですが、あの水飢饉の最中に東京都の水道当局が公表しておりました印刷物の中に、東京都の将来の水の需給表というのが載っておりました。それを見ますると、第一次、第二次の利根川系からの取り入れの施設が完成しても、四十四年度までは毎年不足する、四十五年度になってやっと過不足なし、こうなっており、さらに、四十六年からは水源が未確定であって、また不足する、となっております。そうすると、私ども東京都民は、今後も毎年毎年、ことしと同じようなことを繰り返さなければならない、いや、いまのおことばによると、天を向いて雨ごいばかりしておらなければならぬ、ということになるのでございましょうか。これでは非常に不安でありますし、保健衛生の面からいっても、私は非常に重大な問題だと思うのでございますけれども、この数字は厚生大臣は御存じでいらっしゃいましょうか。こういうことに対して、不足しないような対策というものは立てられていないのでございますか、それを伺います。
  109. 神田博

    国務大臣(神田博君) いま市川委員のおあげになった資料は、大体そのように私も承知いたしておるわけでございます。そこで、来年度以降の水飢饉の問題でございますが、いまお話ございましたように、雨待ちだというようなことでは心細いということは、まことにごもっともでございますが、御承知のように、先般、中川から四十万トン取り入れが元了いたしておりまして、また来年の三月には四十万トン、八十万トンになりますか、これが入ってまいります。利根川水系から取り入れますと二百七十四万トンになりますが、そういうことを見ますと、表の上では、ただいまお話もございましたように、問題があるようでございますが、ことしのような降雨量というものがまだ続くかどうかという問題、それから非常な水不足を経験しまして、都民が非常な節水をいたしておるようでございます。そういうわけでございまして、現状では、ずっと減ってまいりました水が、現在では八千二百万トンくらいの貯水量になっております。昨年のいまごろは五千三百万トンでございました。そういうことを勘案いたしますと、雨量が平均の雨量であり、そうして、いまのように東京都民が水を節水してまいれば、思ったよりも、そういうような水飢饉には襲われないのじゃないかという感じがいたしますが、しかし、いまお話もございましたように、お天気次第で、はなはだ心細いようでありますから、これはひとつ強力に水源地の発見等に力を尽くしまして、そうして工事にも十分ひとつ金もつけまして、そうして都民の心配のないように将来の体系を立てていきたい、こういう考えでございます。そのためには、来年度、四十年度にも、その調査費その他十分要求いたしております。
  110. 市川房枝

    ○市川房枝君 この問題は、その水道法の認可権と監督権は、それは厚生省におありになっても、これは非常に大きな問題でありましょうから、厚生省だけのお力では無理かもしれません。これはむしろ政府全体として、これは人命に関する問題でありますし、もっと徹底的にひとつ対策を考えていただきたい。やはり、いまの答弁を聞いていても、どうもはなはだ心もとなくて、安心がちょっとできないわけでありますが、時間がありませんので、次に進みたいと思います。  次は、自治大臣にちょっと伺いたいのですが、水道事業は、自治体の経営する他の自動車運送事業、あるいは軌道事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業などとともに、地方公営企業法によって自治大臣の監督のもとにあり、その経営は独立採算制となっておりますですね。で、水道事業は、いま申しましたように、これは住民の生命に関するものでありますので、他の鉄道だとか軌道だとか自動車、そういうものとは私は全く違うと思うのですが、いわゆる公益性が非常に強いのに、同様に、同じように扱われているということは、どうも私ども納得できないけれども、自治大臣いかがお考えでしょうか。
  111. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 水道は、バスなどと同じようにただの公営企業と見られないじゃないかというお説でございます。水は非常に国民生活に密接した大事な問題でありますから、必ずしも一緒とは考えておりませんけれども、しかし一つの公営企業でありますから、原則としては、その企業体の中において収支償うような経営をしていくべきである、かように存じております。
  112. 市川房枝

    ○市川房枝君 水道事業はじめ公営企業の施設の建設は、それこそ起債によってするわけでありますが、起債の許可は、これは自治大臣権限でございますですね。まあ、東京都の水道については、ここ一、二年は都の要求どおり許可されているようでございますが、その前は、都の申請に対して、だいぶ削られておる。したがって、都としては必要なだけの施設が建設できなかったのだと、だから水飢饉の責任は都でなく国のほうにあるんだと、こういうようなことを都のほうではちょっと言っておるようでありますけれども、自治大臣、その点はいかがお考えですか。
  113. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 東京都の水の問題は、ことしの夏もたいへん大きい問題になりまして、いろいろ御心配もかけましたが、東京都といたしましては、もう二、三年前からこの問題に取っ組んで計画も立て、そうして着々と工事も進めていたのであります。私も、非常に関係の深いことでございますから、東京都にも行き、現地にも行って、いろいろ調査をして進めてはおりましたけれども、何ぶん、毎年毎年二十五万人以上の人口が集中してまいり、また工場等もどんどんふえておる関係から、水の使用量が非常にふえて、まああのような状態になり、ことしは特に日照りが続いたという点もございますけれども、水の使用量が非常にふえたことが一つの原因でございます。  それから起債の点でおくれたというお話でございますけれども、起債の点も、ここ三年くらいは、もう東京都の申し出は全面的にのんで、いまでも私は申し上げておりますが、どんどんひとつ進めてください、起債は幾らでもおつけいたします、ということで進めておるようなわけでございます。目下のところ、先ほどお話もございましたが、利根川を中心といたしまして、いろいろな計画が進められております。すぐ来年度から全面的に水が十分であるというわけにいきませんが、いまの計画でいきまするならば、ここ当分の間は何とかなるのじゃないかと思います。しかし、いまのような人口の集中の状況がなお続くということになりますと、これは、利根川の水を全部引きましても、なかなか足りなくなるし、将来は山梨県のほうからも、あるいはまた富士の五湖あたりからも持ってこなければならぬというようなことも計画はされておりますけれども、さしあたりは、いま利根川の水系を中心としておそらくやっていけるのじゃないか、かように存じておる次第であります。
  114. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間が来たようでありますけれども一つだけ、お許しを願って、申し上げたいと思います。  起債を許可されて、そして公営企業金融公庫から自治体が金を借り入れるわけですが、その債券の利息が七分三厘で非常に高い。それから水道の場合に、耐用年数がたった十八年でありますか、非常に短いということで、まあ利息に追われておると、こういう実情もある、こういうふうに聞くのでありまするが、水道は、さっきの、公営企業であっても、やはり国民の生活に密着しておるので、もっと政府のほうからのお金をそっちのほうへ出す、あるいはその資金運用部の資金等、利息の安いのを、こちらの水道のほうへ回して、そして耐用年数なんかも、事実上五十年くらいは持つわけでありますし、何とかそういうふうな特別な扱いをするということにすべきだと思うのですが、これは自治省ではないのでございますか。そういうことをきめるのは、どこできめるのでございますか。
  115. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いまのお話の点でございますが、私もごもっともと思います。したがいまして、こういう、水道のような公営企業につきましては、資金を低利で、しかも長期に貸し出すような処置を講じなければならないと思います。現在公営企業は、バス、水道、病院等を含めまして、全国的に約四百億近い赤字を累積で出しておるようなわけで、目下、この問題は地方公営企業制度調査会へ諮問をしておりまして、一つは、水道料金が御承知のようにストップされておりまするためにも起こっておりますが、もう一つは、まあ内面の企業の合理化もはかる必要がございまするのと、もう一つは、御指摘になりましたような金融、金利の問題をあわして考えなければならぬと思います。まだ答申が出ませんけれども、私ども考えとしては、公営企業金融公庫に政府の出資をふやしまして、そうすれば金利がそれだけ下がってまいりまするから、それと貸し付けの期間を長期にしていく必要があるのじゃないかと、かように存じておるわけでございます。
  116. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 市川君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  117. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいま委員の変更がございました。  中尾辰義君が辞任され、北條雋八君が選任されました。
  118. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 瀬谷英行君。
  119. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日緊急質問で藤田議員から質問がありましたが、臨時国会の召集について、いつごろを目安にするのか、その内容はどうか、という質問に対しまして、官房長官から、準備でき次第すみやかにという御答弁がありました。きのうのところは即答ができないものと解釈をいたしまして、後々の質問では、問題によっては総理に伺いを立ててからまた御答弁を申し上げるということでもありましたので、きょうは十月の三十日ですから、十一月の下旬よりも早く臨時国会を召集しなければならぬと思うということであるならば、一体十一月の中旬に行なうのか、あるいは十日ころを目安にするのか、新聞に伝えられるように七日か八日ころに召集するようになっておるのか、これは、内閣の大番頭でありますから官房長官心得ておられると思うので、この際明らかにしていただきたいと思います。
  120. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 臨時国会の召集の時期でございますが、昨日藤田さんの御質問に対しまして、政府は当初十一月の下旬開会を目途に補正予算その他準備を進めておったのでございますが、総理の辞意表明というような新しい事態も起こり、仰せのとおり一日も早く後継首班を選ばなければならないというようなことで、党の副総裁幹事長中心になりまして後継総裁選考を急いでおりますことは御承知のとおりでございます。いろいろ円満にかつすみやかに選考をいたしますために話し合いをいたしておるのでありますが、きょうも、いわゆる候補者と目される方々と個別に、副総裁幹事長がお会いになりまして、せっかく話し合いをいたしておるような段階でございます。したがいまして、せっかくの御要望でございますけれども、いつごろという期日をいまの段階で申し上げることができないことをはなはだ残念に思うわけでありますが、十一月下旬というやつをできるだけ早く繰り上げて開くことができますように、政府与党一体となって努力をいたしたいと考えております。
  121. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いろいろとやっておられることはわかりますが、このことは、国会としても、別に多少ずれたからといって、責任を問うとかなんとかいう問題じゃございませんし、各議員ともそれぞれ都合のあることでありますから、自分たちの予定を組むためにも必要なことなんです。十日ころを目途とするのか、あるいはそれより早くできるのかできないのか、中旬になるのかくらいのことは、これは内閣の大番頭だったら、そのくらいのことは、あるじが入院中には明らかにしなければならぬと思う。それすらわからないで、なるべくすみやかにというのでは、これは番頭ではなくて、でっち小僧の弁解と同じだ。こういうところで番頭がでっち小僧の役しかできないのだということになると、あとあと、あなたのためにもよくないので、それ以上のことは言えなければ言えない、なるべく早くというのは十日前かあとか、それくらいのことも言えないのか——言えるのか、言えないのかどうか、もうその点だけを明らかにしていただきたいと思います。
  122. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) たびたび申し上げておりますように、事柄が後継総裁であり、首班候補者を選ぶことでございますので、政府だけの考えで臨時国会の召集をするわけにはまいりません。事情は瀬谷さんも十分御賢察のことだと存じます。せっかく努力をいたしておる最中でございますので、御趣旨を体しまして、一日も早く開くように努力をいたしたいと考えております。
  123. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 こういう問答であまり長い時間食ってもしょうがありませんから、それでは外交問題から先に質問をしたいと思います。  社会党の訪中使節団が中国に参りまして、北京政府といろいろと話し合いをいたしました結果、核実験等についての意見の食い違いはありましたが、核兵器の全面禁止並びに完全廃棄、あるいは非核武装地帯の設置といったようなことから、世界首脳会議を開いてこういう方向に努力をするといったような点については意見の一致を見ているわけであります。政府としても、中国で核実験が行なわれたというようなことは、何でもない問題ではないと思う。したがって、十二月に予定をされております国連の総会におきましても、新たなる事態として対処をする必要があると思うのでありますけれども、昨日までの外務大臣の御答弁によりますと、従来の態度を変更する必要がないということでありました。態度を変更する必要がないということであるならば、中国の核実験に対して遺憾の意を表明する必要もまたなかったのではないかと思うのでありますけれども、一方においては、ともかくこれに抗議をするという態度をあらわしながら、国連総会における態度は現状のままでいくというのは、ちょっとふに落ちないのでありますが、その点の見解を外務大臣より明らかにしていただきたいと思います。
  124. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 二十分間休憩いたします。    午後二時三十一分休憩    ————・————    午後二時五十九分開会
  125. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 再開いたします。瀬谷英行君。
  126. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 政治の空白あるいは政務の渋滞はないようにするというお話でしたが、予算委員会自体がどうも空白ができて、しりが落ちつかないように見受けられるのはあまり感心いたしません。身を入れてやっていただきたいと思います。  昨日の羽生議員の質問の際に、外務大臣のお答えで、国連に加盟しなくとも部分核停に参加させることはできると、こういう意味の御答弁がありました。先ごろの中国の核実験に際して官房長官談話を発表したのですけれども、部分核停条約に参加をさせたいというふうに政府としては考えているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 部分核停条約に参加してもらいたいという希望を持っております。
  128. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そういう希望を持っているならば、国連に加盟をさせるという努力もあわせて行なわなければならぬわけです。部分核停条約には参加してもらいたい、しかし国連には入れたくないというようなことでは、これは話が進みっこないわけです。もう一度お伺いしますが、部分核停条約には参加してもらいたいと思うが、国連加盟には日本としては反対をするという態度で国連総会にも臨むのかどうか。
  129. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 昨日も申し上げましたとおり、部分核停条約の加入と国連加入とは別問題でございまして、現に国連に加盟しない東西両ドイツ、それから韓国、スイス、南ベトナム、こういったようなところも部分核停条約に加盟をしておるような状況でございまして、核停条約の加入は国連加盟とは関係ない、こういうふうに存ずる次第でございます。
  130. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 なるほど国連に加盟しなくとも部分核停条約に加わるということはできるかもしれません。しかし、事柄の性質から考えてみて、国連に加盟させまいという努力は、仲間に入れまい、つまりもっと露骨に言うならば敵対行動をとる国として見ていきたい、こういうことなんです。部分核停条約に参加をさせたいということは、できるならば核兵器の全面禁止という方向までいきたいのだけれども、その前の段階として、とりあえず部分核停条約には入ってもらいたいという気持ちなんだ、これは平和の方向に一歩進めてもらいたいということを意味するわけです。それならば、部分核停条約にも加盟させたいということであれば、国連加盟にも日本が努力をするからということでないと、話のつじつまは合わなくなるのじゃないか。仲間には入れたくない、しかし会費だけは取る、こういうふうな行き方は相手が承諾すまいと思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  131. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現にそういう国が存在するのでございますから、これは別に考えて一向差しつかえないと思うのです。のみならず、国連加盟ということは、すなわち中国代表権問題でもございますので、この問題が単に中共を国連に入れるか入れぬかという問題でなしに、同時に中華民国の国連からの追放という問題と関連するのでございまして、国連加盟をしなくとも部分核停条約に加入できる、また現にしておる国があるのでありますから、一向私は矛盾がないと考えております。
  132. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 現にそういう国があるからということは理由にならぬわけです。しかしいまの外務大臣考え方からするならば、あくまでも中国の国連加盟には反対である、反対をしていくんだという方針のように受け取れるわけであります。国連という舞台においては、日本が自主性をもって行動するならば、事実上のたな上げのほうに回るよりも、この際、国連に加盟をさせるための積極的な役割りを果たすということが、アジアの平和のためには一歩前進であるというふうに考えるのが当然であると思うのです。ところが、いままでのお話を聞いておりますと、あくまでもアメリカに追随をするように聞こえるわけです。とかく日本の外交というのは、アメリカに追随をする、金魚のふんのようにあとからくっついて泳いで回るという印象を与えているわけです。そういう自主性がないという印象をこの際一掃するためには、アメリカの意向を考えずに、日本政府独自で、現実のアジアの事態に即応するような方針を打ち出すということが必要ではないかと思います。核実験が中国で一回行なわれる、一回行なわれれば、ほうっておけば、野放しにしておけば、これが二回、三回と重なるということも考えられるのではないでしょうか。そういうおそれはないと思うのか、またそういう事態になっても別に意に介しないというふうに理解をしてよろしいのかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共の国連加盟は日本にとってきわめて重大な問題でありまして、従来の方針を変えて、一方において中華民国にとってかわらせる、こういう考え方は、今日のところ絶対にわれわれはとらないのであります。この考え方は決してアメリカ追随でも何でもない。日本の独自の立場においてさように判断いたしまして、そういう態度を持しておる次第であります。このことがつまりアジアの平和を保つゆえんである、日本の安全のためにとるべき道である、かように独自の考え立場からかような方針をとっておるのであります。  それから、これを放置すれば二回、三回と繰り返すのではないか、むしろ中に取り込んでおいたほうが得策ではないかというようなお話でございましたが、国連加盟国が核実験をしないということにはならぬのでありまして、現に数カ国の核保有国はいずれも当初から国連に加盟しておる、こういう状況から見て、国連加盟を唯一の問題の解決方法と考えるのは誤りである、かように考える次第であります。
  134. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの外務大臣考え方は、あくまでも力には力をもって対抗するのだという対抗意識だけを前面に出しておって、平和的な話し合いを呼びかけようという意図が全然ないということを証明しているような感じを受けますが、それならば、社会党の訪中使節団が北京に参りましていろいろと論議をかわした結果、核実験の問題等についての意見は一致をみませんでしたが、核兵器の全面禁止、あるいは完全廃棄、非核武装地帯の設置といったようなことについて意見が一致をしておるわけであります。これらの点について、外務大臣としてはどのようにお考えになるか。つまり核兵器の全面禁止、世界じゅうの核保有国が相談をして全面禁止の方向にいこう、こういう動きに対してはどのようにお考えになっておるのか。賛成なのか、あるいは反対なのか、御意見を伺いたい。
  135. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 部分核停のみならず、全面禁止をやるということはまことに、もとより大賛成であります。ただ、いきなりそういう問題を世界の首脳会議を開いてやるということについては、実行問題として、その目的の実現を期する方法として適当ではない、かように考えて、わがほうとしてはこれに、周恩来首相の提案に反対の意思を表明した次第でございます。
  136. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。昨年、当委員会それから外務委員会で、佐藤尚武議員それから私どもが、いまこの質疑に出ておったような問題もあるので、日本としては軍備縮小に関する日本外務省自身としての積極的な何らかの機関を持ってはどうかという話をして、外務省の大臣官房に調査室ができたはずであります。これは調査はしておるが、積極的にまだ仕事をしておりませんけれども、あのときの発言の趣旨はそういうことであります。でありますから、いまお話の問題も、理想ではあるが、すぐうまくいかない、根回しが必要である。では、根回しをするための日本外交が何らかの積極的な寄与をしているかどうかということ、世界じゅうがきまればそれはけっこうな話でありますという、全く人ごとのような話では、これは外交にならないので、そういう意味で、積極的にそういう姿勢を日本政府がとるかどうか。それがすぐ実現できるか、あるいはあしたになるか、あさってになるか、それは別の問題であります。そういう意欲があるかどうか。また日本の外務省における大臣官房の調査機関はそういうことについて何らかの軍縮推進のための研究を進めているかどうか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  137. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全面禁止の世界首脳会議を開く前に、その方向について適切な研究が進められておるかどうかという御質問であると思いますが、もちろんそういう問題につきましては、日本といたしましてもいろいろな情報、文献等によって調査研究は進めておるのでありますけれども、やはり現実にそれを保有する国が実際的な方法に対して一番適切な考え方を持ちやすいのでありますから、そういう方面の研究調査というものをやはり尊重していかなければ実効が上がらぬものと考えておる次第でございます。
  138. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの私の質問に対して、つまり訪中使節団が北京政府と合意に達したところの核兵器の全面禁止、完全廃棄という方向については賛成だというふうにおっしゃったわけです。しかし、それには準備があるから、その準備を十分やってからでないとできないから、現実問題としてだめなんだというのがお答えであったわけですね。羽生さんからの質問は、しからば、その準備を十分にやる用意があるのか、根回しをする意欲があるのかどうかということを聞いているわけなんです。私も、この理想的な結論まで一気に飛び込んでいけるというふうには思いません。十分準備をする必要があると思いますが、その準備をやっていこうという意欲が日本の政府にあるかどうかということ、意欲があるならば、それをどういう形で示そうとしているのかどうかということが大事なところでありますから、その点をはっきりともう一度お答えを願いたいと思います。
  139. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実に核を保有している国が実際問題としてこれを取り扱って初めて有効であり、また研究も調査も的確であると思うのであります。核保有というものと縁故がない、ただ被爆国としての経験はあるけれども持ったことはないという日本でございますから、そういう文献等について、あるいは情報等について研究はしておりますけれども、確信を持って身をもって呼びかけるというようなそういう自信はまだないのであります。
  140. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まことに自信のない返事で困るのですが、日本学術会議の秋の総会でも、原子力潜水艦の安全性を明らかにすることはできないという記事が新聞にも載っておりました。先ほどの質問では、これは岩間委員の質問に対するお答えは、原子力潜水艦の寄港の問題については、あれはまあ従来の内燃機関が原子力機関に変わっただけであって、これは核兵器の持ち込みにはならぬという意味の御答弁があったわけでありますけれども、何がゆえに原子力潜水艦が核兵器ではないのだというふうに断言できるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  141. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核兵器の定義でございますが、すでに国会において繰り返し説明をされたように、核分裂または核融合反応によって生ずるエネルギーを破壊力ないしは殺傷力として利用する兵器を言う、こういうことになっているのであります。そこで推進力に原子力を用いる潜水艦がはたしてこれに該当するかどうかということを考えますというと、まことに明瞭であって、これは核兵器ではないということになると考えます。
  142. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 防衛庁長官にお伺いしますが、潜水艦というのは昔は奇襲兵器であったわけであります。主力艦ではなかったのです。しかし昨今の潜水艦というのは昔とはだいぶ違っていまして、戦略的価値が大きくなったと思われます。今日の海軍における潜水艦の戦略的な価値、その役割りははたしてどういうものか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  143. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 仰せのとおり、最近における潜水艦の役割りというものは非常に大きく変化いたしておりまして、潜水艦から海上における敵の軍艦を攻撃するのみならず、あるいは陸上の基地をも攻撃するというようなふうに非常に大きな進歩を示しているのでございます。詳しいことにつきましては事務当局から説明をいたさせます。
  144. 海原治

    説明員(海原治君) お答えいたします。潜水艦の用途、任務でございますが、一般的に従来潜水艦として考えられておりますものは、敵の軍艦——その中には水上艦、潜水艦も入るわけでありまして、すなわち敵国の艦船を攻撃する、さらには商船を攻撃する場合でございますが、一般的にはこの艦船を攻撃するものでございまして、しかしながら原子力潜水艦の発明で、これに長距離を飛ぶミサイルを積み込むことができますために、新しい用法が潜水艦に加わってきたわけでございます。これがすなわちポラリス潜水艦でございます。したがいまして、一般的に潜水艦の用法いかんということになりました場合には、このポラリスミサイルを搭載いたしました潜水艦の用法とそれ以外の潜水艦の用法、こうはっきり二つ分けてお考えいただきたいと思います。従来しばしばの機会に申し上げておりますように、ポラリスミサイルを積載いたしました原子力潜水艦というものは、これは敵国の本土内、いわゆる戦略的な攻撃を果たすことが任務でございまして、したがいまして、従来の潜水艦のように敵艦船や商船、こういうものを攻撃するものとは全くその任務が違っております。この二つがございますことを御説明いたします。
  145. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 衆議院の内閣委員会あるいは参議院の外務委員会等において、この問題は何回か論議されておりますが、いま説明もありましたが、はっきりしていることは、潜水艦というのは戦争の攻撃力の最も中心的な部分をなすということを防衛庁長官は衆議院でも答えておられます。つまり昔の潜水艦といまの潜水艦が全然違うということなんですね。戦争の攻撃力の中心的な部分をなし、ミサイルを搭載をし、サブロックを装備をしているということなんですから、これは奇襲兵器とは違うわけです。これは完全な核兵器とみなし得るわけです。一方において核実験に抗議をするならば、日本の国内にこのような核兵器とみなされる原子力潜水艦の寄港を容認をするというようなことは、これはもうおかしいということになるわけです。もしこの原子力潜水艦が核兵器じゃないというならば、これはもう私は詭弁だと思うのです。ウイスキーは酒ではないというのと同じですよ。そういうふうな言いのがれで原子力潜水艦の寄港を認めるということは私は間違いだと思う。また、かりにサブロックを装備した潜水艦は入れないのだということを言ってみたところで、中に立ち入って調べるということもできないでありましょう。第一サブロックというものがどんなものかわからぬでしょう。おそらく閣僚皆さん方にしたところで、これがサブロックだと言われたって、サブロックだかハンモックだかそんなことは私はわからぬと思うのです。そうすれば、アメリカの言い分だけを、主張を聞いてそれを全面的に信頼するということは危険だということになる。アメリカ政府の言うことよりも、日本の学者の言うことに耳を傾けるということのほうが私は大事だと思うのですよ。学術会議の意向というものは、これは取るに足らぬというふうにお考えになっているのかどうか、心配ないというふうにお考えになっているのかどうか、この点も外務大臣にお伺いしたいと思うのです。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すべての潜水艦が核兵器である、あるいは原子力潜水艦は核兵器であるということは、これは初めて私が承る説でございます。核兵器では絶対にないと確信しております。  それから学術会議のお話でございまするが、原子力潜水艦の危険性に対する国民感情、これに対しましては、その権威であるところの原子力委員会の研究の結論に待って今回踏み切ったのでございます。学術会議が最近この問題を取り上げているようでございますが、それは私は新聞等で承知しているのでありますが、これが一体科学的な説であるのか、それとも政治論であるのか、はっきりしないような点がございまして、いまさらわれわれはこの原子力潜水艦の安全性について達した結論をひるがえそうとはいたしません。
  147. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 すべての潜水艦が私は核兵器とは言っているんじゃないんです。日本の潜水艦はまさかそうとは私は思いません。しかし、アメリカの原子力潜水艦というものが核装備をしているというふうに見るのが妥当じゃないんですか。つまり核兵器を持たない、核装備をしない原子力潜水艦などというものがあり得るか。切れない刀なんというものはだれも使わないわけなんです。刀には刃がついておる、しかしアメリカの刀は刃がついてないだろうという推論を下すことのほうがよっぽど私は軽率だと思う。したがって、いままでの国会の質疑の中で明らかにされておりますことは、政府が原子力潜水艦をあくまでもこれは心配はないんだ、こういうふうな印象を与えようとすることばかりなんです。それは的確な根拠があるわけじゃない、日本人によって立証されたことじゃない、アメリカの言うことだけをそのまま信用しているだけでありまして、まことに危険きわまりないことだと思います。また、そういう日本人が危惧をしておるものの寄港をなぜ認めなければならぬかということでありますが、伝えられるところによると、乗員の休息と補給である、別に核兵器の基地としてその足場を固めるために来ているんではないというふうに言おうとしているのであります。それだけであって、それ以外の目的はないというふうに了解をしてよろしいのかどうか、防衛庁長官にお伺いいたしたいと思います。
  148. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 原子力潜水艦がすべて核を装備しておるのではございませんで、核を装備しておるものもあれば、全然核を装備していない従来の潜水艦もあって、ただその推進力に原子力を利用しているという両方をアメリカにおいて持っておることは事実でございまして、私どもが解釈をいたしておりまする日本に寄港を、求められておる原子力潜水艦は核装備をしていない、推進力だけを原子力をもって利用されている潜水艦であると了承をいたしておるのでございます。
  149. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 何のために日本に寄港をするのか。
  150. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) それは先ほど瀬谷委員からお話がございましたとおり、補給、休養のために日本に寄港したいという申し出でございまして、私どももさように了承をいたしておるのでございます。
  151. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 休息と補給のために来るというならば、原子力潜水艦のように論議を起こしているもので来る必要はないわけなんです。乗員だけ飛行機かほかの船で来ればいいわけです。これは先ほども防衛庁長官自身が言っておるように、戦争の攻撃力の中心的な部分であるということをはっきり言っているわけなんですね、今日の潜水艦は。そうすると、いわば凶器のようなものなんです。それが凶器をぶら下げて人のうちへ遊びにいくなんというのは、やくざか、気違いでしかありゃしない。もしアメリカの潜水艦が休息だけに来るというならば、これだけ論議を巻き起こしておることを知りながら、あえて来るはずがないじゃないかという疑問も当然出てくるんじゃないかと思います。私はあえてそれを防衛庁長官に聞きたいけれども、休息やレクリエーションに行くならば、自衛隊の人間が戦車で料理屋に乗りつけることをお認めになるかどうか、そういうことは認められないでしょう。休息だったら、何もこういう物騒な兵器をやたらと行使する必要はないということになってくるわけです。何回も国会で論議をされたけれども、私があえて質問するのは、何回答弁されても国民を十分に納得をさせるようなお答えがないから、あえてこのことについて追及をしているわけなんです。香港からアメリカの原子力潜水艦が寄港するかもしれないというような話が出ておりますけれども、それらの問題についてアメリカ政府から何か事前の通告なり話し合いというものが行なわれているのかどうかも明らかにしていただきたいと思います。
  152. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 香港に停泊した原子力潜水艦が、日本に寄港する云々の事柄は、一切何も聞いておりません。  ついでに申し上げますが、第三次事前調査も、今月一ぱいぐらいで終わりますので、その終わったことをアメリカ側に通報いたします。その上で、二十四時間前の予告をもって、原子力潜水艦が入ってくることになっておりますが、その香港云々の潜水艦になるのか、それともどこの潜水艦になるのかそれは一切まだ承知しておりません。
  153. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 事ほどさように、一切が秘密のベールに包まれてしまっているわけですね。こういう秘密のベールの中で、アメリカの原子力潜水艦が核武装していないのだといったようなことは、どうやって証明できるのでしょうか、どうやって確かめるのでしょうか。そういう確かめる手段というものが、日本に許されているのかどうか、その点は防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  154. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) アメリカから寄港いたしました原子力潜水艦を、日本側で、核装備をしているかいないか、どういう物を積み込んでおるのかとうかということを取り調べるというふうな権限もございません。ただ、アメリカ側と日本との相互信頼に待つほかはない実情でございます。
  155. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 「原子力潜水艦の寄港問題」という外務省情報文化局のパンフレットでございますけれども、現在の日米安保条約を締結するに際して、米国政府は、核兵器の持ち込みに反対であるという日本政府立場を承知の上で、事前協議を約束した。岸・アイゼンハワー共同声明でも、日本政府意思に反して行動しないことが確約されておるというふうに出ております。しかし、これはかなり前の話なんですね。だから、今回あえて原子力潜水艦の寄港ということを日本に申し出てきたということは、こういう約束があるので、あらかじめ日本政府の了解を求めておけば、事実が原子力潜水艦であろうと何とかなるのじゃなかろうかというふうに向こうでは思っているのじゃないか、そういうふうに解釈をされないことはないのであります。しかし、その問題についてこれ以上論議しても、同じ答弁しか得られないと思いますから——農林大臣が見えたので、農林大臣に質問をしたいと思いますが、韓国の、日韓交渉の問題でありますが、韓国の大使が来て、日韓交渉の再開について話し合いを求めてきたということでありますが、その詳細はどういうものかお答えを願いたいと思います。
  156. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 韓国の大使が来ましたのは、大体儀礼だと思います。しかし、儀礼的な中でも話はありました。というのは、日本と韓国との間の漁業の問題を再開して進めたいとか、こういう話がありました。これは私としても従来その衝に当たっておったのだから進めたいことは同感である。ただし、いまのような状態で拿捕をして、あるいは人を拉致していくというようなことでは、日本の国民感情からいっても、この会談に入ることは非常にむずかしいから、そういうことがないようにお互いに虚心たんかいに会談に入れるような状況をつくっていきたいものだと、こういう話し合いをしております。
  157. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 韓国が日韓交渉について申し入れをする以上は、当然のことながら、いままで行なわれてきた日本の漁船の不当な拿捕、あるいはまたその漁船員の拉致といったようなことはやめなければならないし、連行した船員並びに船舶はすみやかに返還をするのが当然だと思う。のみならず、今日までのそれらの漁船捕獲等について陳謝をし賠償をするということすら、われわれのほうから要求していいはずだと思うのでありますが、それらの申し出が韓国側からあってのことなのかどうか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  158. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般新任の韓国大使が私を訪問いたしました。その際に、この日韓問題の取り進め方について大体の話し合いをしたのであります。もとより儀礼上の意味が半分以上ございますので、詳細な話し合いはできませんでしたが、何とか会談を再開したい、その前提としていわゆる地ならし工作として従来の懸案もこの際解決したい、というような話し合いがあったのであります。私のほうといたしましては、少なくとも国民感情を無視してこの会談を進めるということは、お互いできっこないのであるから、この際拿捕漁船の返還、抑留船員の釈放、こういうことがなければ話が進めにくいという申し出をいたしまして、大体こちらの言うことを了承したものと考えるのであります。しかし、それについての損害賠償であるとか陳謝であるとかいうようなこと底、円満に話を進める上において、あまり適当な事柄ではないと思いましたので、それは申しませんでした。なお、今後の進め方等については、事務当局間においていろいろ折衝を開始しようというようなことで別れたのであります。
  159. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 変なところで遠慮されては困ると思うのであります。前回の予算委員会でも、農林大臣から、李承晩ラインの撤廃、あるいは漁船の拿捕といったようなことはやらない、あるいは竹島の返還、そういうようなことはもう日本が譲れない線であるということを明らかにしておりましたが、それらの点について、今日でも方針というものは依然変わらないというふうに解釈をしてよろしいのかどうか、農林大臣にお伺いしたいと思います。
  160. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 李ラインというものは、当然これは撤廃しなければ交渉というものは成り立ち得ないということは、もう当然でございます。また竹島の問題は——私のほうは漁業交渉でございますが、当然日本のものとしていいことでございますが、その解決方については、いろいろ外務当局で配慮しているようでございますが、私はその点もどれは日本のものというふうに考えております。それでもう一つ何でございましたか、ちょっと忘れましたが、とにかく既定の方針に変わりございません。
  161. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 農林大臣のほうから、それらの点について、たとえば李承晩ラインであるとか漁船の捕獲、それから抑留船員の返還、それらの点についてはっきり言ってもらったような気がするのですけれども、外務大臣のほうが、どうもその点損害請求といったようなことは言わなかったということでありますけれども、私は漁船をかってに持っていって、船員を人質にして日韓交渉を進めようなどということは、これは許しがたいことなんですから、そういうことに対しては賠償を請求する、陳謝を要求するということはあたりまえだと思うのですが、そういう点は外務大臣として考えておられないのかどうか。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この間は、漁船が沈没した際には厳重にその点を、損害賠償の問題につきましても保留をしておきました。ただ、この間とりあえず着任のあいさつに見えたものですから、そういうことまで言わなかった、こう申し上げただけであります。
  163. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 着任のあいさつの儀礼としては、そこまで言わなかったとしても、基本方針としては農林大臣が言った線くらいは堅持をするというふうに解釈してよろしいかどうか。
  164. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはもちろんでございます。
  165. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、今度は李承 晩ラインに関連をしまして漁船が捕獲をされるというような不祥事があとを断たなかったのでありますけれども、これらの問題に対して、残念ながら海上自衛隊というのは、事実上何の役にも立たなかったのです。予算委員会調査等でもこのことは訴えられたことでありますが、海上保安庁の巡視船がもっぱら日本の漁船の保護、指導等に当たっておるということであります。防衛庁としては一切を保安庁にゆだねておって手出しをしない、近づかないという方針をとっておるのかどうか、また海上保安庁は現在の装備等で十分にこれら漁船の保護等ができるのかどうか、防衛庁並びに運輸大臣から御答弁を願いたいと思います。
  166. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 本問題につきましては、防衛庁にも九州の漁船の組合その他からいろいろ陳情もございました。また自民党の水産部会等でもいろいろと論議のあったことは、御承知のとおりでございます。しかしながら、防衛庁としては、海上自衛隊の本来の任務からいたしまして、これはあくまでも海上保安庁にまかしておくべき問題であって、この問題に海上自衛隊が警備に当たるとか何とかという世上言われておりますことについては、きわめて慎重を期さなければならぬという考え方でおります。
  167. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。何の役にも立たぬということでございますが、それはあまり酷な酷評でありまして、この間の事件のときに、わが方の漁船が一隻舷側に寄ったために穴があいたのか、激突、わざとしたのかわかりませんが、とにかく舷側に穴があいた。それを引っぱって向こうの警備艇が持っていく途中、わが方の船員は全部七人向こうの警備艇に乗りかえさして、向こうの警備艇員がわが方の曳航されておる船に四人乗っておったのです。それが途中で沈んでしまったものですから、海中にほうり出された。ところが向こうに三人警備艇に戻ったが、一人わが方の海上保安庁の船に救助された。そこでいろいろな問題になりましたが、ついに海上においてわが方の保安本部の努力によりまして七人とも漁民を取り返しまして、向こうの二人を返したのであります。常にそういう問題が起こると起こらぬにかかわらず、李承晩ラインには相当の隻数が集まっておりまして万遺憾なきを、自分たちの力の及ぶ許された範囲内における最大の努力はいたしておることは御了承願いたいと思います。
  168. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 防衛庁長官は、本来の任務ということをいま言われたのですが、それじゃ本来の任務というのは何か、お答えいただきたいと思います。
  169. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いわゆる自衛隊法に規定をいたしてありまする一口に申し上げれば、本土防衛という任務でございます。
  170. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 漁船も守れないものが日本の防衛ができるのですか。のらネコも追っ払えないものが、番犬の役目は私は果たせないと思う。私は別に自衛隊で出動してどうこうしてくれということを言っているのではない。海上保安庁の巡視船というものが、小さな船でわずかな隻数で非常に苦労しておるということを、予算委員会の派遣の際にも現地で聞いたから、それならばもし自衛隊のほうじゃ何にも近づけない、手助けができないというならば、海上保安庁の巡視船のほうに、むしろ予算を分けてやったほうがいいじゃないかということを言いたかったわけです。はたして運輸省としては、今日の海上保安庁の現勢力でもって、漁船の保護あるいは指導等が十分にできるというふうにお考えになっているのかどうか、その点を実際の体験に即してどうなのかということをお伺いしたいと思うのです。
  171. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 日本の漁船は、海国日本の姿を発揮いたしまして、七つの海に出漁しております。それに対して現在わが運輸省に預けられておる海上保安庁の力では、とても守り切れない。もう少し予算を多くいただきまして、そうして安心して漁業に従事するようなことを私は希望いたしております。
  172. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 海上自衛隊の場合は、もし韓国との接触といったようなことでいろいろ問題があるならば、海難救助その他で保安庁に対して積極的な協力をするということができないのかどうか。どうも現地の話を聞いてみると、そういう点は十分行なわれてないように聞いたのでありますが、その点の配慮はどうなっておるのか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  173. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 李ラインにおきましては、韓国側は海洋警察隊という艦艇をもって韓国側が警戒に当たっておるのでございまして、日本もそういうような関係から、ちょうど韓国の海洋警察隊に匹敵するような海上保安庁がこれを担当をして、警戒に当たっておるのが現状でございます。それに日本の海上自衛隊が警戒に当たるということは、きわめて不穏当であると考えますので、海上保安庁に一切をお願いをしておるというような実情でございます。
  174. 藤田進

    ○藤田進君 関連。どうも私ども聞いておりまして、いわんや李ライン周辺における漁民が聞くときに、不安きわまりないことであると思うのであります。海上保安庁を担当する国務大臣、運輸大臣はもう守り切れないとさじを投げている。防衛庁のほうは不穏当だからできないと、こう言う。第一線は二人と七人を交換してはなばなしくやっているとも言う。私どもは先般対馬に参りまして、ことしの八月十三日でしたが、まことにどうも日本に海上保安庁というものがあることは、予算審議その他で聞いていたが、あれほどまでにどうも放任されているものがあるものかという感じを受けたのは、社会党だけではありません、自由民主党代表の方も一緒でございました。機関銃を持っています。たまがあるのかというとたまはないのだそうですね。この前対馬にやってきて、いざというので行ってみたときは、もうときすでにおそい。船足が全然問題になりませんじゃないですか。かなり荒天の日は、あんな船ではどうにもならぬ。ピストルなり機関銃つきつけられて逃げている。この前の新聞に出た、あれが初めてではなさそうに現地では言うんですね。しょっちゅう来ている。現地の海上保安関係者は、いろいろ困難な任務についていることの実情を説明され、せめて船足の速い、そしてもっと居住性のある、その任務にふさわしい艦艇をほしがっているのであります。これらについて、きょう総理がおいでになりませんので、閣内水掛け論で私どもはここを過ごすわけにいきません。どうしますか、これから。だれが答弁しますか。大蔵大臣、まあ金出すところからでもやってもらうかしなきゃどうにもならぬ。実際現地はかわいそうです、そう思いませんか、もうほしいままにまかすならいいです。李承晩ラインはこれを撤廃しなきゃならぬといって赤城さんも言われるが、新しく赤城ラインができそうに見える、この前の国会から見ても。まことにこれは、私は看過することができない。各関係閣僚からひとつ御答弁いただきたいと思う。
  175. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 仰せになりますように、防衛庁に要求されることは、私は無理だと思います。ああいうところでもし発砲でもお互いにやり合ったならば、それは戦いになりますから、それはやっぱり海上保安庁、私どものほうに装備をしてもらいまして、そしてやはり円満におさめていくということでないと、お互いに撃ち合うということになったら、これはもう、李承晩ラインの中で撃ち合ったことが一つの戦争になってしまう。それはわれわれのとらざるところでありますから、隠忍自重しておるわけであります。それで今年の予算にも、おっしゃるような足の速い、もっと大きな船で、そして、いままで御指摘になりましたような船に、私もこの間乗りましたが、ああいうものでなくて、もっと足の速い大きい船を要求しておりますから、それを大蔵大臣のほうで容認していただけば、いままでの向こうの船とは全然足が違いますから、それは優位に立つことができる。もう一つの作戦としては、向こうのほうの警備艇がやってくるということはわかっていますから、その前にT字型にこうやっちゃうんです。そうすると、ぶつかれば、こっちの船が大きいんですから、向こうが痛む。そういう行き方をとる以外に、鉄砲で撃ち合うということは、これはできないというのがいまの現状ですから、どうかまあ隣国同士で鉄砲で撃ち合わないような方法において外交を進めていきたいというのが、現状の姿でございますので、御了承を願いたいと思います。
  176. 藤田進

    ○藤田進君 海上保安庁関係について検討され、所要の措置を講じられることについてむしろ主張しているととられてもやむを得ないし、そうなのであります。しかし、ここで考えなきゃならぬのは、防衛庁長官も言うように、防衛庁の海上自衛隊が出て撃ち合うということは、これは穏当でないし、われわれはそれをいまおすすめしておるわけじゃないんです。しかし、それほどの事情、ここで撃ち合いもできないということであれば、大蔵大臣と協議されて、海上保安庁に、いまの不要不急の艦艇のせめて一部の経費でもお回しになったらどうだろう。移流用はきかないんですか、これは。これは私どもよりも松浦さん、ひとつ防衛庁長官のほうにも大蔵大臣にも、移流用をして、とりあえず三十九年度でもう海上自衛隊のほうを削ってもらうとか、おやりになったらよろしい。移流用できなきゃ四十年度予算、これはもう防衛庁はたんまり取って、役に立たないものをつくる。そうして運輸大臣のほうはいつになっても新しいものはできないと、まあこれはいま言われた、相手に間違ってぶつけて向こうが沈んだ作戦というようなことは別として、予算的には私は瀬谷委員の言うように海上自衛隊あたりの、あってもしようがないということが明らかになったものですから、おさきになったらどうかと思うのです。大蔵大臣並びに防衛庁長官の御所信をお聞きしたい。
  177. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 足の速い船は、いま予算を要求しておりますから、いままでの船も足の速いのは一、二隻あるのです。それを一つ回しております。けれどもそれよりもっと優秀なのをいま回しております。しかし、それでも足らぬということになれば、ひとつ小泉防衛庁長官と話し合って、大砲をおろしてそうしてその船を回すということも一つの方法だと思います。それはまあこれからひとつ御提案がありましたから、研究してみたいと思います。
  178. 藤田進

    ○藤田進君 そうしてください。一部漁船にも回すんですよ、海上自衛隊。
  179. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 藤田委員からの御意見でございまして、海上自衛隊の予算を減らしてでもあるいは保安庁を増強する必要があるのじゃないか、かような御意見でございましたが、私のほうとしては、この李ライン海域の警備に対して、海上保安庁の力不足とわが防衛庁関係の海上自衛隊の年次計画というものとは、全然別個の問題と考えまして、計画どおりの推進をいたしたいと考えておるのであります。なおまた、よその所管でたいへん恐縮ではございまするが、私のほうの研究によりますと、まだまだ自衛艦の出動というようなことよりも前に、海上保安庁の巡視船の行動に対するいろいろな制約があることは、御承知のとおりでございます。この制約について再検討することがまず前提ではないかと、そういうことを十分にやって、しかる後一部の論者が言われる海上自衛艦の出動はどうかということが論じらるべきでありまして、先ほど藤田委員も言われたように、海上保安庁の船が機関銃を持っておってもたまを積んでいないと、そういうような無力の状態というものは、韓国側に当然わかっておるのであります。そういう面に海上保安庁の巡視船の活躍の範囲に対する再検討こそ、まずその前提ではないかと考えておる次第でございまして、御意見を申し上げておきます。
  180. 藤田進

    ○藤田進君 大蔵大臣どうですか、質問してあるのですがね、予算の要求ですよ。
  181. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 李ラインの問題については、先ほどから関係閣僚からお答えをしておりますが、予算の問題ではないのであります。船もあるわけでありますし。砲も積めば積めます。砲は積まないことにしようというので、一時閣議決定でおろしたんです。今度はまあ砲を積もうと、積んだらしかし、たままで積むことはよろしくないというので、たまは積まないのであります。それがいまの日韓の間の問題なんです。ですから、これは日韓の問題だけでなく、北方拿捕の問題もございますが、いわゆる武力解決ができない。武力解決をする前に、もっとむずかしい問題もあるし、そういうところが御承知のとおりのものでございます。でありますから、速い船をつくれと言うならば、速い船は幾らでもつくりますし、そういう問題ではなく、もっと根本的な問題がございますので、要は日韓交渉で国交の正常化を早くはかりたい。こういう戦後二十年も続いておる不自然な状態を、できるだけ早い間に解決をしたいということも、日韓交渉、日韓の国交正常化の中の一つの大きな問題であります。でありますから、予算だけの問題ではない。これも大蔵省がまあ予算さえ出すと言えば向こうもおとなしくなるだろうという政治的御配慮があれば、そういう御答弁を申し上げてもけっこうですが、いずれにしても、砲はあるが積まない、積んでもたまは積まない、なぜ積まんのか、これが戦後二十年間の両国間の問題であるということにも、ひとつ十分御理解をいただきたいと思います。政府部内でもひとつもっと前進的に、これによって拿捕されたり、毎日脅かされておる漁民もわが日本の国民でありますから、そういう意味からも政府自体も事態を直視しながら何らかの解決の方法を考えたいと、こう思っております。
  182. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今度はじゃ大蔵大臣に聞きますが、韓国に対して経済援助を行なうという話が出ておりますが、韓国に対する経済援助、一方において不法行為を行なわれ、たいへん迷惑をしておりながら、経済援助を行なおうというのは一体どういうわけですか。このくらい国民の気持にぴったりしないことはないと思うのです、その点について。
  183. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 韓国は隣国でございます。歴史的にもまた地理的にも一衣帯水、まさに隣国でございます。かつて三十数年間も同一国民でもあった。それが戦後分割をされて、つまり李承晩政権時代、まあほかの国の人よりは日本に、かつて植民地時代といいますか、非帯に手痛くやられたのだというような気持ちが非常に向こうにも強いようであります。私たちも訪韓をいたしましたときに、韓国側が日本に対していろいろな不満を感じておると同じように、日本でも韓国に対しては投資はしたけれども搾取をしたという考えではないというくらいのことはよく述べてきたのですが、なかなか向こうは向こうで適当に考えておるようであります。しかし、歴史の上の問題は、お互いが新しい立場から努力をし合うということによって、徐々に解決をしなければならないことは、これまた当然のことでございますので、両国民融和の立場で、できるだけ早い機会に国交の正常化をしたいということで日韓交渉を続けてきたわけでございます。昨年来非常に経済的事情も悪く、経済的な援助の要請もあり、行なわなければならないということが、外務省と先方との間で話があったようであります。最終段階において大蔵省にも協議がございまして、まあ大蔵省は前にも援助は二億ドル、三億ドル以外にはできないと、こういう強い立場に立っておりましたので、いろいろ難色を示したわけでございますが、最終的には隣国のことでもあるし、お互いこれから長い将来友好を結ばなければならないものでございますので、援助に踏み切ろうということで、閣議の議を経まして一億二千万ドルの援助のワクを決定をいたしたわけでございます。まあこちらもこういうふうにして非常に前向きであり、正しい姿勢をとりておるのでありますから、李ラインその他でもって両国の国民感情がより刺激をされるような好ましくない事態は、できるだけなくするように向こうに要望したいと、こう考えておるわけでございます。
  184. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 運輸大臣にまたお伺いしますが、国鉄の運賃の値上げについては、どのように考えておられるのか。国鉄基本問題懇談会等において、いろいろ論議が行なわれておるようでございますが、それらの結論は一体尊重されようとしておるのかどうか。経済企画庁長官は、運輸大臣と多少意見が違っておるようでありましたけれども、企画庁長官の立場から運賃値上げの問題についてはどのようにお考えになっておるのか、それぞれ御答弁いただきたいと思います。
  185. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。ただいまお尋ねになりました運賃の問題は、過密ダイヤ解消の問題、輸送増強、過密ダイヤ解消、事故防止の問題が一番の私は問題であると思います。ともすれば、国鉄は斜陽である、鉄道は斜陽であると言われておりますが、明治時代の姿そのままならば斜陽かもしれませんが、これに近代的な科学及び設備を加えましたならば、決して斜陽でないということは、新幹線で明らかになったのであります。したがいまして、この二分間ごとにラッシュアワーのときに走らせていることの現状、それでも客を運び切れないこの現状を何とか打開しなければならないというのが、御承知のような基本問題懇談会というものが内閣に設けられたのでございます。したがいまして、御承知のように、この総額は六年間に二兆九千七百二十億というものによって、まあ道路の六兆の計画その他港湾の計画等々と相まって、公共投資の均衡をとっていきたいということが、われわれの考えでございます。したがいまして、この基本問題懇談会におきましては、これらの事業は、どうしてもやらなければならない。二兆九千七百二十億の事業をやらなければならないということは、すでに中間報告が行なわれました。したがいまして、閣議にもこの中間報告を出しておきました。閣議においてこの報告は了承されております。しかし、いまどうするかという問題について、もちろん運賃の問題もこれに関連があります。その他財源問題について、懇談会でいま研究中でありますから、それが決定しなければ、何とも言えないのでありますが、ただいま、そのお話の中で、企画庁と意見が違うではないかという点であります。なるほど、まだ正式にはお話は聞いておりませんけれども、米の値段あるいは医療費、運賃というようなものが一ぺんに上がるということになれば、国民の負担というものが非常に重くなるという国民経済を思いやられて、その必要性は感じておるけれども、そう全部一ぺんに上げることは困難ではないかということを、企画庁では思いやられておることと思いますが、この問題は、すでに内閣において決定しておる問題でございますから、財源について、運賃を上げなければ、この基本問題懇談会において決定してくださった問題については、何とか財源を、財政投融資でやるか、あるいは国鉄は、従来の事業債とか、その他の公債の発行を認められております。あるいは外債によるか、何かそういう財源をしてくださるのではないか、まだ交渉はいたしておりませんが、いまの御質問が、そういう内容でございますから、そういうお答えをする以外に方法はないと思います。  この際、私はこの議会を通じて、国鉄の困難している状況を申上げてみたいと思うのです。ちょっとの時間を拝借いたしますが、昭和十一年を出発点にいたしまして、昭和十一年の運賃を一としますと、現在は百六十一倍であります。昭和十一年の総合物価、まくら木、レールその他のものが入っておりますが、それは四百八十九倍であります。百六十一倍に対して、施設費は四百八十九倍であります。また人件費は五百九十九倍でございます。同時に、卑近な例でございますが、昭和十一年は、もとは、もりそば一ぱいと、国鉄の一マイルの運賃が同じだったのです。いまは一キロの運賃が二円七十三銭かと思います。ところが、おそばは五十円です。それで、この勘定は約七百倍になるのです。そういう現状において国鉄が近代化におくれないで斜陽にならないようにしようとする努力というものは、こういう高い人件費、こういう高い資材をもっていくということになれば、どこかに穴があくのです。それで、この百六十倍の運賃と約六百倍の人件費でいけばこういうことになるのです。この空間を何で埋めたか。これは約八千億近い、七千七百億の負債をもって、年に大体四百五十億くらいの——こまかしい数字はあとで表を差し上げますが、金利を払っているのです。そういうことで、しかも今年は国鉄はもうかっておるじゃないかと、もうかっておるものを上げる必要はないじゃないかというのでありますが、そのもうかっているというものの考え方がまるきりおかしいのです。これはなぜかというと、(笑声)これは笑いごとではないのです。約五百七十三億ばかりもうかっておるというが、その中で、四十五万人人を使っていて、それで一銭も退職引き当て金がないのです。どんな会社だって退職引き当て金を持っていない会社はないのです。それから、まくら木やレールやバラスを入れる、それを全部消耗品に見てないのです。レールはある程度耐用年数はある。まくら木やバラスは問題になりませんよ。これは消粍品ですよ。それを加えると減価償却費は八百六十三億ということになります。それから、あたりまえの会社でやっているように退職引き当て金をやるとすれば、これは四百四十一億という積み立てをしなければ四十五万人に対する安全な経営ではないということであります。その他の資産勘定についてもいろいろありますが、ちょっと目につくところだけ見ましてもこの勘定は赤字五百億になるというようなことでございますから、国鉄に財政上援助してやらなければ借金がふえるだけ、その借金がふえれば、不健全な国鉄というものを、財政上脱線した鉄道を持つということになるのでございますから、その点を御了承の上に御審議をお願いいたしたいと存じます。
  186. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) お答え申し上げます。午前中田畑さんの御質問に対してもお答えいたしましたように、倍増計画が始まりましてから、その後民間の経済成長が非常に急速でありましたために、社会資本の立ちおくれが相当出てきておることは事実でございます。したがって、今後社会資本に相当重点を置いて充実をはからなければならぬ、これはまた当然のことだと思います。  ところで、ただいまのお尋ねは、国鉄運賃の引き上げをどう考えるかということでございますが、御承知のとおり、昨年の下半期から政府施策その他によりましてどうにか物価もだんだんと安定の方向に向かってまいったような次第でございます。今年の上半期と申しますか、四月から八月までをとってみましても、三・二%の上昇にとどまっております。昨年がこれに対して七・八%でございますので、ある程度改善されてきたという状況でございます。しかしながら、その後九月、十月に入りまして野菜等の値上がりもございますし、したがって物価の情勢は安心できるという状況ではございません。今日物価の問題に関して提起されておる問題は、消費者米価の問題、それから国鉄運賃の問題、その他一年間ストップをいたしました公共料金のストップが切れた後の措置をどうするかというふうな問題がございますが、これらの問題を相当慎重に扱いませんと、せっかく鎮静したところの、安定の方向に向かっておるところの物価をまた上昇に向かわせるということになりかねない情勢でございますので、その辺はなお今後の推移を見ながら全般的に判断をしていかなければならぬ、こういう段階でございます。
  187. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最後のところが何となくあいまいなんですけれども、企画庁長官の場合は上げたくないというふうに聞こえる。運輸大臣のほうは実情がこうこうだから上げなければやっていけないというふうに聞こえる。大蔵大臣としてはこの際どのようにしたらよろしいとお考えになるか。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま高橋長官から述べられましたように、四十三年までの長期経済計画を策定いたしておるわけであります。いままでもうすでに民間の設備投資と公共投資との間にアンバランスがありますから、それにプラスをしてこれからの五カ年間というものに対してアンバランスを是正できるような公共投資を考えなければならぬわけであります。その意味では、ただ現状どおり東京や大阪が自然発生的にいくんだと、ますます拡張するんだということでやっては、これは無制限な投資ということになりますから、一面においては都市の改造、都市の過度集中排除、均衡ある国内各地方の発展ということを描きながらの経済発展の計画をいま立てておるわけです。でありますから、全国的な輸送計画を立てて、鉄道で運ぶものは幾ら、四兆一千億の道路計画でもろて運べるものが幾ら、港湾によって運べるものが幾らというおおむねの数字は想定できるわけであります。これを基礎にして鉄通の改定計画が策定せられるということは当然であります。でありますから、五カ年間二兆九千億というのが正しいのか、また道路にウエートを置くべきか、港湾にウエートを置くべきかというのは、当然五カ年計画にあわせて考えなければならない。ただいずれにしても、総額はどうきまるにしても、いまの五カ年計画よりも大きくなることは当然であります。その場合、このとほうもない事業費をまかなっていくために何でまかなうか、公共負担をどうするか、その他いろいろなことがあります。財政投融資も、総額の一割以上国鉄が占めておるという状態でございます。でありますから、これだけの大きな投資をする場合、当然経常収入の増大をもってまかなうということが原則でなければ——独立採算制をのみ強調するわけではありませんが、そうでなければ公共投資はできないわけでありますから、投資の相当部分を値上げによってまかなうということは、これはもうだれが考えても論議としては当然だと思う。ですから私は、運輸大臣がいま述べられたように、運輸大臣が泣くように、非常にたいへんだということでございますが、よくわかります私も。御同情申し上げております。しかし、大蔵省も一割以上という大きな財政投融資の原資を国鉄にさいているわけです。ですから、やはり現状と将来との投資を十分考えながら、相当部分やはり値上げによってまかなうとか、値上げというよりも、いままだ八割五分、九割の値引きというのもあるのです。これを一体どこまで——まあ幾ら何でも五割以上まけるというのは正常なまけ方ではないと私は思う。そういう意味で、まずどういうところで財源を得るかということは十分検討すべきだと思います。ただ公共料金のストップがございますから、ここで鉄道をまける、何をまける、かにをまける、こういうこととは十分関係がございますので、その中で将来五カ年計画は相当部分の財源はやはり値上げによってまかなうべきだという考え方は申し上げられると思います。
  189. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。実は私は、ことしの三月の予算の分科会のときに、石田国鉄総裁に質問したのでありますが、いま運輸大臣お話、よくわかりますが、しかし、非常な経費の必要な事情は、過密ダイヤ解消ということだ。ところが、いまの大都市集中のこの人口の過度集中は、やはり無計画な政策の結果からきたわけですね。ところが、一般会計からの国鉄への繰り入れば、補てんは、本年度わずかに九億数千万です。ほかに何にもありません。だから、一般会計から国鉄に予算的な処置をしたということは、全然いままで皆無と言っても差しつかえありません。九億何千万というのが、これが一番過去において最高の額であります。三兆二千五百億の予算の中でわずかに九億数千万。だから、日本国有鉄道という名に値するかどうか、私鉄とどこが違うか、私はこういう質問をいたしました。だから財政投融資にウエートを置くわけですが、それは全投資額の一割をやっておる。しかし、今度もそれをどんどんふやしていって、はたして、いまですらたくさんの利息を払わなければならぬのに、どうして払っていけますか。それを全部利用者にしわ寄せするということは間違いじゃないですか。ただ、私は、理論的にはそう言っても、いまの日本の財政の事情から、大蔵大臣がいますぐそれじゃ一般会計から補給するということは答えができるはずがないが、理論的にいって、日本国有鉄道の名に値するなら、いままでの政府施策が全部財政投融資だけに依存して一般会計から何らの援助をしなかったということ、それから、いまの過密ダイヤの実情が無計画な都市集中からきているのだ、こういうことから非常に私は問題があると思う。結論は、一般会計から出せと言ったところでそんな余裕もなさそうですが、理論的にはそういうことじゃないですか、どうですか。
  190. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お説のとおりでございますが、数字は少しは違いますが、まあ一般会計、政府から出してもらったのは、終戦後これができまして以来、会社ができまして以来四十億ばかり政府から出資があります。それで、実は今度の計画の中にも六カ年に三千九百億ばかり出資してもらいたいという希望をしておりますけれども、うしろに大蔵大臣を置いてあれですが、事実そうしておりますから申し上げておるのでありますが、おっしゃるとおりだと思うのです。もう少し、国有鉄道である以上、こういう点が非常に困るのです。お話がありましたから申し上げますが、独立採算制であるなら、割り引きというようなものは、五割以上こえたのでは割り引きじゃないと私は思うのです。コストの五割までぐらいは割り引きしてもいいけれども、五割以上の場合はこれはやはり社会保障で持つべきではないか。いま九割二分というやつがあるのです。それで、今度乗客がうんとふえるんです。ふえるほうは割り引きのほうがふえて、一般のやつは横ばいなんです。これもまた経営上非常に困る問題で、いまに定期の割り引き切符を売りどめしなければ輸送ができないんじゃないか、朝の輸送が一ということになっております。それから、通勤切符は、これは大蔵大臣をうしろに置いて言っちゃ悪いですが、私は、所得税が減るだけであって、どうせ会社が払うんですから、これは割り引きしなくてもいいと思うのです、ほんとうは。けれども、学生の貧困のところから通っている人は割り引きしなければいかぬ。それは五割までは国鉄に割り引きさして、五割以上は厚生省で割り引きずるのを持つべきじゃいなか。それが私はほんとうの計算だと思うんですよ。それで、四十億しか出さずにおいて、国有鉄道から代議士皆さんにも切符を出しておるが、それも国が出したらいい、切符代は。それなら独立採算制と言えるけれども、あれもやれこれもやれとやらしておいて、それで最後の計算は赤字だ赤字だと言って責められても困ると思うのですが、まあその辺はよろしくお願いいたします。
  191. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過密ダイヤの解消というのは、国鉄の予算措置をどうするかということとは別に、至上命令だと思うのです、今日。したがって、オリンピックが終わって新幹線ができたからそれでいいというものじゃないと思うのです。過密ダイヤ解消のためにはどのように具体的な推進措置を講じようとしておられるのかということ、それと過密ダイヤの原因になっている過密都市の問題があります。この過密都市を解消するためには都市計画等について検討しなければならないのですが、ことしの六月には首都の移転といったような構想も建設省から出されましたが、それらの問題を含めて過密都市解消のために建設大臣としてのお考えがあったならばあわせてお伺いしたいと思います。
  192. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 過密ダイヤの問題は先ほど申し上げましたから、建設大臣から……。
  193. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 過密都市の問題はなかなかやっかいな問題でありまして、その原因がまた非常にやっかいであります。そういうことで、本来これには相当な長年月と非常な多額の資金を要すると思うのであります。東京や大阪のような産業人口の集中しておるものを、これを分散するということについては、相当な年月と投資が必要であります。したがって、直ちにというわけにはまいりませんが、まずわれわれの考えといたしましては、拠点都市というものをつくりまして、そうしてそこに公共投資を集中して、そうして工場やその他の立地条件を整え、東京や大阪というような過密な都市からできるだけ工場をそちらに移転するように持っていかなければならぬ。むろんそのためには、たとえば金融上の措置あるいは税制上の措置というものが必要でありましょうけれども、そういうことを目標としながら、いま逐次新産業都市あるいは工業整備都市というものをつくりつつあるわけでございます。
  194. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過密ダイヤの解消について運輸大臣にもお伺いをいたします。
  195. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 根本的には、先ほどのやはり三兆億近い金をかけてもらって複々線をつくり、しかも複線のないところには全線複線、電化をやりたいと思っております。やはり、津軽海峡のトンネルだとか、あるいはその中には四国の橋というものも入っておりますが、主として都市の過密の関係においては複々線をつくっていきたい。現在の応急措置といたしまして、何としてもやる方法がないのです。それでありますから、ホームから落ちないように、ホームに一ぱいになったら切符の売りどめをするのです。それで、ホームでもう入れてもいいというときに、また切符を売るのです。それ以外にやる方法はありません。いまはもうあれ以上同じレールの上を走らせることはできません。どうしても複々線をつくるか、地下鉄を延ばすか、そうでなければ他にその付近にもう一つ支線でもつくらせるか、何かそういうよりほかに方法ないのです。いまの応急策としては、切符の売りどめをやっております。
  196. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最後に、運賃値上げといったようなこともどうやら予想されるような口ぶりでありますけれども、公共料金、米価の引き上げ等に引き続いて運賃等も上げるかもしれないという状況で、物価の安定についてはたして成算があるのかどうか、大蔵大臣並びに経済企画庁長官にお伺いしたいと思います。
  197. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価問題は経済企画庁長官からお答えすることがいいと思いますが、私たちも、財源の上から見ますと、米価の値上げが必要である、また、膨大もない国鉄五カ年計画を改定をする場合、当然料金の改定ということも避けがたいと考えます。また、私鉄とかバスの問題地方公営企業の問題、こういうものももう何年間で何百億という赤字が出ておるのであります。これに対して、税制上の措置をしろとか、財政資金を回せとか、大体しごく簡単にいつでもそこにくるわけでございますが、財政の原資も非常に枯渇をしておるということは、毎々申し上げておるとおりでございますが、そういう意味から申し上げても、ある時点である程度の料金の改定ということは、これは避けがたいことだと思います。しかし、一月一日からせきを切ったようにやったならば、これはたいへんな問題になりますので、上げなければならないということであっても、五カ年計画の中で、どの時点でどのような配慮をするのか、また、他の引き上げなければならないものとの関連をどう調和するのかということを十分配慮をしながら、綿密な計画のもとに、公共料金の問題に対処しなければならないと考えます。少なくとも何年かの間には全部引き上げるというような方向にあって、どうして物価が押えられるかということでございますが、これは、しかし物価を押えなければならない。しかし、物価は、公共料金の抑制ということも一つの物価抑制策であることは、有力な抑制策であることは事実でございます。米価にしても、消費物価の中で米価の占めるウエートが七%ということでありますから、これが一体二〇%上がったら幾らになるかと単純に計算すると、〇・四五上がるというような、数字の上ですぐ影響するということがお答えできるわけですし、想定できるわけですが、この数字がそのまま全体の物価に影響するということはないわけであります。別に物価を抑制するような要因を他に求め得れば、引き上げるものは引き上げても物価は安定する、下降するということがあり得るわけであります。これは戦前において俗に不景気だと言われていたときに、公共料金を引き上げても物価は下がっていったという例もございます。また、戦後でも、吉田内閣のときだと思いますが、米価を大幅に引き上げましたが、消費物価は下がったという例もございます。ですから、物価の問題は、やはり貯蓄の増強とか、資本蓄積の状態とか、コストダウンができるような産業の合理化とか近代化が進むというような、あらゆる要素を総合して、初めて物価対策ができるわけであります。でありますから、各般の物価抑制策を十分慎重に進めながら、その過程においてなるべく物価に直ちに影響しないような配慮のもとに、公共料金の一部改定ということは考えられるわけであります。いずれにしても慎重の上にも慎重に考えながら配慮してまいりたい、こう考えます。
  198. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) ただいま大蔵大臣から大体お答え申し上げたようでございますが、私どもといたしましては、米価なりまたは公共料金なりその他のものが、それ自体として直接に影響を及ぼすことをよく承知いたしておりますが、しかし、何よりも根本的な問題は、総需要がどういう状況になるかという問題でございます。御承知のとおり、過去三年間個人消費の伸びは毎年一五%をこえておるような状況でございます。今年に入りましても、御承知のとおり、賃金の上昇率は一二%程度ということで、相当昨年よりも上昇の傾向が多くなっております。これが可処分所得になり、したがって、これが需要に転化することは、これまた十分に考えられるところでございます。したがって、政府といたしましては、昨年の末以来、金融の引き締めを通じて設備投資を押えるという方向で、全体の鎮静化をはかってまいっておるのでございますが、先ほども申し上げましたとおり、今年の経済の成長は実質で大体一〇%程度にいきはしないかというふうな、鉱工業生産並びに設備投資の模様でございます。そういうふうな観点から、私どもは、今後の物価の情勢に対して非常に慎重な検討を続けておる次第でございます。したがって、公共料金は一年間のストップということになって、来年の一月には、この一年間の期限が切れるわけではございますが、認可制度そのものは別に何ら変更のない問題でございますので、個々の企業または個々の業態というものをしさいに検討いたしまして、全体の物価とにらみ合わして慎重な態度でこれに対処していきたい、かように考えております。問題は、結局、経済全体に対するところの金融政策なり財政政策の基本的な態度と基調というものが相当大きな影響をするものと、かように考えまして、それらの点とにらみ合わせながら、各個々の、たとえば消費者米価の問題または公共料金の問題等をそれぞれ処理していくと、かようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  199. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  200. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、日高広為君。
  201. 日高広為

    日高広為君 時間が制約されておりますので、災害関係を主といたしまして御質問申し上げたいと思います。  先般、台風二十号の災害状況につきましては、その対策ないしさらにまた今後の問題につきまして、十六日の災害対策特別委員会で一応質疑応答をなされておりますが、その後の対策につきましてどのような処置がなされておりますか、まず厚生省関係につきまして御質問を申し上げたいと思います。  その第一点は、今回の台風はいわゆる風台風といわれる特殊な台風でございまして、その被災者というものがほとんどボーダーライン以下の被災者でございまして、いわゆる零細農家というものがその被害を受けておるわけであります。そこで、第一点としてお伺いいたしたいことは、先般厚生大臣は、応急仮設住宅及び被災住宅の応急修理については、現行の基準でありますところの三割を五割にしたいというようなことを御答弁いただいたのでございますが、その後、そのようなことをすでに各県、町村に指示されたかどうか。さらにまた、もしその配分がすでになされておるといたしますれば、その配分につきましての御説明をお伺いいたしたいと思います。  第二点といたしましては、世帯更生資金の国庫補助の増額とか、あるいは生活保護の家屋補修費の増額というものを考えておるということを言われておりましたが、その金額はどのようになっておるか。さらにまた、災害救助法を適用いたしました市町村に対しまして、国民健康保険国庫負担金の繰り上げ交付を考えておるということを言われましたが、その後どのような処置をされましたか、まずこの点につきまして御答弁をお願いいたしたいと思います。
  202. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  最も激甚な被害を受けました鹿児島、高知の両県につきましては、概略のところを申し上げますと、予定戸数の半分ぐらいがすでに建築済みになっております。鹿児島県におきましては、応急仮設住宅も応急修理も、ともに今月中に予定戸数の約半分が完了、約一千戸の予定でございますが、残りは十一月中旬に完了する予定であります。同じく高知県におきましても、予定戸数は約四百戸でありますが、七割程度が完了し、残りも近く完成の見込みでございます。  また、災害によって被害を受けた被保護者の家屋修理費についてでございますが、これは現在、都道府県知事限りにおいて一定の金額、約一万五千円ということになっておりますが、この範囲内で補修に必要な実費を支給しております。これが限度額を引き上げることについては、今後検討してまいりたいと思います。  それからお尋ねございました国保の問題につきましては、十一月上旬に繰り上げ助成いたしたいと、こういうように考えております。
  203. 日高広為

    日高広為君 ただいまの説明でよくわかりましたけれども、私が二、三日前に現地に参りました状況から承りますと、ただいま言われましたような、いわゆる被災者の住宅というものが建設されておりません。ということは、現地におきましては、一応そういうような方針は新聞、ラジオで聞いておるけれども、実際まだ一カ月たった現在におきましてほとんど応急措置ができておらないじゃないかということをきわめて強く言われましたので、この点につきましては、もう少し実態を把握して、積極的に御推進をいただきたいと思います。  それと、災害救助法を適用していない町村で、局部的には激甚な災害とほとんど同じであるというような場所があるのでありますが、これに対しましては、どのような処置をされたか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  204. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  先ほどお答え申し上げました被害戸数、また建設住宅戸数等につきましては、当該知事の報告を申し上げたのでございまして、いまそのようなことがありとしまするならば、これはたいへんなことでございますから、なお詳細調査いたしまして、適当の機会にまた資料をお届けいたしたいと思います。  それから、第二の点でございますが、世帯更生資金の貸し付け等によって処理いたしたいと思います。また、生活扶助等を受けている方々につきましては、これまた、先ほど申し上げたような趣旨で処置してまいりたい、こう考えております。
  205. 日高広為

    日高広為君 文部大臣のほうの都合があるようでございますので、次に、文部省の関係につきまして質疑を展開いたしたいと思います。  先般、私が全壊、半壊の基準というものにつきましてどのような処置をされておるかという御答弁をお願いいたしたのでございますが、その後、文部大臣の御答弁いただきましたような趣旨が、はたして現地まで徹底しているかどうか。この点につきまして私が承っております範囲におきましては、大臣意思とはやや違った形ができてきておるのじゃなかろうかというような印象を受けるわけであります。したがいまして、私ども現地を視察いたしました委員側からいたしますれば、やはり全壊、半壊につきましては、今後、将来性のことを考えまして、もう少し適用範囲の拡大というようなことを考えていただきまして、今後の措置というものを恒久的な措置で考えていただきたい、これが第一点。  第二点は、先般、公立学校施設災害復旧費国庫負担法の第五条によりまして、今後改良工事を含めまして永久施設というものができるというような御答弁をいただいておりますが、大体そのような処置をされました金額はどの程度になっているか。さらにまた、もしそのような処置がいままでになされなかったといたしますれば、現在の災害査定をいたしました結果、どのような数字が上がってきているか、これに対しましての御意見を承りたいと思います。  さらにまた、御承知のように、現在ほとんど雨漏りのするような校舎で授業をいたしておりますが、これに対しまして、先般、二部授業というものに対する対策とあわせて応急仮設校舎の建築というものを御考慮いただきたいというような質問を申し上げておきましたが、これに対しまして、どのような処置をされましたか。  以上、三点につきまして御見解を承りたい。
  206. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。  先般の災害対策特別委員会でお答えいたしましたように、まず第一の、全壊と半壊の問題につきましては、御案内のように、災害復旧事務処理要領というものの中に、全壊、半壊の扱い方等をきめて現地を指導するわけでございますが、その要領には、全壊、半壊の区別についていろいろのことが書いてありますけれども、最近におきましては、両者とも補助金算定上は全く同様に取り扱うことになっておりまするので、その趣旨が徹底いたしますように、各都道府県に書類その他を配付いたしまして措置を進めておる次第でございます。  それから、応急措置につきましては、ちょうど前回の災害対策委員会の直後でございますが、地方、県からの報告によりますと、災害によって二部授業等を実施しております学校は、小中学校合わせて六校でございますが、そのうちで二校は仮教室を建設しておりまするし、一校は屋内運動場を仮間仕切りをして教室をつくっております。また一校は特別教室の転用をいたしておりますし、二校は公民館を使用している。高等学校一校につきましては、仮教室をいま建設の予定として進めておるという報告に接しておるわけでございます。  それから第三点は、木造校舎等の災害がひどく、その復旧の場合におきましては、鉄筋校舎等をつくりたいという趣旨のお尋ねでございますが、これにつきましても、前回お答えいたしましたように、公立学校施設災害復旧費国庫負担法で、木造を鉄筋にするということは認められておりまするので、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えておるわけでございます。  なお、金額につきましては、現在鋭意査定中でございまして、ただいまはっきりした数字を申し上げる段階に至っておりませんので、場合によりましては、きまり次第、別に御報告申し上げることにいたしたいと思います。
  207. 日高広為

    日高広為君 適切な御指導をいただいておるようでございますが、この機会にお伺いいたしておきたいことは、応急復旧資金といたしまして、融資の措置を文部省みずからごあっせんいただいたかどうか、この点につきましてお伺いいたしたいと思います。
  208. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 文部省自体としては、自分のふところに金を持っているわけではございませんので、文部省として、できるだけ中に入りまして、財政当局その他のあっせんにつとめるということでやっているわけでございます。
  209. 日高広為

    日高広為君 次に、建設省関係につきましてお伺いいたしたいと思います。  先ほど仮設住宅の問題につきましては、御答弁をいただいたのでございますけれども、それ以外の、いわゆる仮設住宅の対象にならない被災者というものがきわめて多い。したがって、現在この住宅に対しましてどのような処置をされておられるか。いわゆる住宅金融公庫によるところの災害復旧住宅に対する建設資金の金をどれくらい融資されようとしているのか。さらにまた、いままで査定せられました数字というものがおわかりになりましたら、この機会にお伺いいたしたいと思います。  第二点といたしまして、すでに係官を派遣せられまして対策を講ぜられておるのでありますが、この中で緊急災害査定をされたはずでございますが、その緊急災害査定をせられました現在までの結果がおわかりでございましたならば、その査定額をお示しいただきたい。  さらにまた、建設省関係におきまして、応急工事あるいは建てかえ工事をされたと思いますけれども、これに対しまして、どれくらいの事業量になっておりますか。この点をお伺いいたしたいと思います。
  210. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。建設省としましては、第一には、罹災者の公営住宅を建設することになっておりまして、三十九年度中に三百二十七戸の建設予定、このうちには、いわゆる激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づく補助の特例措置の適用が予定されております例の鹿児島県西之表市、中種子町、南種子町、この地域における建設予定が、このうち二百戸ございます。そして政令の指定は——これには政令を出さなければなりませんが、これは十一月中旬には政令を出す予定にいたしております。  それから、公営住宅以外の問題としましては、住宅金融公庫でやるわけでございますけれども、有資格者として認定される戸数が千二百戸というふうに思っておりますが、現在までのところ、申し込み数は六戸でございます。  それから、これに対するわれわれのほうの、いわゆる災害融資のワクは十億円、これまあ全部建てかえるいわゆる新築として五十八万円とかりに仮定しまして、二千戸分を用意しておりますから、この災害融資については、十分の処置ができると考えておるわけであります。  次に、査定の状況でありますけれども、台風二十号による査定というふうな区分けをいたしておりませんので、三十九年度における査定額を申し上げます。  これは県からの報告によりますと、約八百億円となっておるわけでありますが、そのうち、現在まで査定を実施いたしました金額は三百五十四億五千万円であります。約半分ぐらいをただいま査定済みでございます。  それから、建てかえ工事というふうな仰せでございましたが、これは応急工事のことであろうと思いますけれども、応急工事は幾らやったかということの全国的のその集計をいたしておりませんので、まあ一例をとってまいりますと、たとえば応急工事としてやっておりますのは、鹿児島県で言うと、たとえば一億九千万円であるとか、宮崎県で八千万円であるとかというものが出ておるわけでございます。
  211. 日高広為

    日高広為君 先般建設大臣から御答弁いただきましてから、その後着々その実効を予算的にあらわしていらっしゃるようでございますが、この機会に、先ほど申し上げました問題でございますけれども、お聞き申し上げたいのは、今回の災害におきまして関連的な施行というものが出てまいります。御承知のように、小山建設大臣の出身地でございますところの宮崎県におきまして、どうしても港湾あるいはその他農林省と関係のある個所が出てきておると思いますが、このような個所に対しましては、将来のこともお考えになりまして、ぜひとも関連工事を建設省で主体性を持ってやっていただきたいということを御要望申し上げておきましたが、それに対してどのような処置をなされたか。  さらにまたもう一点、将来二級国道等で改良しなければならない予定になっておる個所、こういう個所に対しまして、今回災害のために堤防が決壊し、あるいは家屋が流失いたしましたような個所がありますが、このようなものに対しまして、その後どのような処置をされましたか。これはきわめて重要な問題であるということを私お聞きいたしておりますので、ぜひこの際、その後なされました処置をお聞かせいただきたいと思います。
  212. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。  具体的な場所としてこの間災害特別委員会で問題になりましたのは、宮崎県の串間市の堤防と港湾の問題でありますが、これは合併施行でやる河川区域に含めるという措置をとらせることにいたしまして、ただいま県と折衝中でございます。  それから、二級国道のほうは、合併施行が適当だと思われるところは、これは改良計画を立てまして、そのような方針で施行いたすことにいたしております。
  213. 日高広為

    日高広為君 一応、時間がございませんので、農林省の関係につきまして御質問申し上げたいと思います。  まず第一点は、先般私が申し上げました自作農維持資金の災害ワクの金額、これを増大してくださいということを申し上げておきましたけれども、その後どれくらいこれに対しまして申請があったのか。さらにまた、これに対しましてどのような処置をせられましたか。この点につきましてまず第一点として御質問申して上げる次第であります。  第二点は、農業共済資金の早期概算払いを要望するということで申し上げておきましたけれども、その時期はいつごろにお考えになっておるのか。さらにまた、そういうような要望なり、また概算払いをしようとする金額がおわかりになりましたならば、この機会に御答弁をいただきたいと思います。
  214. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局から御答弁いたさせます。
  215. 安藤敏夫

    説明員(安藤敏夫君) 自創資金のワクのことでございますが、目下、台風二十号の被害総額を、県からなり統計調査部から集めておりますので、その金額を待ってきめたいと思います。天災融資法並びに激甚災害法の適用は、十一月過ぎに政令を制定願いたいと思っておりますが、まあその前後に自創資金のワクもきめたいと思っております。  それから、農業共済金の概算払いにつきましては、できるだけ早くやるように指示いたしておりますが、これにつきましても、被害の金額が統計調査上まとまりましてからやることになりますので、これもおそくも十二月、年内にはやりたいと、かように考えております。
  216. 日高広為

    日高広為君 ただいま御説明ありました自作農維持資金の災害ワクの金額でございますが、まだその資料が整っておらないということにつきましては、ちょっとおかしいと思います。先般この問題につきましてはあれほど要望いたしておいた問題でございますし、北海道との関連もございますので、特に激甚法の指定の問題もございますので、できるだけすみやかな処置をしていただきたい。  そこで、もう一点お伺いいたしたいことは、先般私は農林大臣に申し上げたのでございますけれども、いわゆる南九州におきましては、防災作物といたしまして一番大事に栽培いたしておりますのはカンショでございます。ところが、今回の災害によりまして、せっかく政府支持価格をいたしましたけれども、でん粉質の低下とかその他の理由等によりまして、この問題につきまして政府支持をいたしました三十円というものを割ることはないかというような私は心配をするということの質問をいたしましたところ、これに対しまして、本日議事録を調べてまいりますと、食糧庁長官は、三十円の価格を決定いたしましてから漸次好転しつつあるというような話をされておりまして、二十五、六円程度でありますが、その後漸次好転しつつあるというようなことをこの前答弁をなされております。ところが、先般私が現地に参りまして調査いたしましたところ、ちょうど現在の状態は、これとは逆に二十円を割っておる、二十円以下に下がりつつあるということで、私は、これにつきましてどのような処置をなさるべきであるかということにつきましては、どうしてもこの祭、カンショでん粉につきましては政府のほうで買い上げをするということを言明されるだけではなくて、予算的な処置をしてもらわなければならないというようなことを要望申し上げたわけでありますが、これに対しまして、なまカンショの政府の制限買い上げというものを考えておられるかどうか。さらにまた、この支持価格以下で買ったところの製品化されたでん粉というものはもう買い上げないのだというようなところまで、強硬な処置をなされておるかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  217. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 実態はお話しのとおりで、カンショでん粉の市価は、本年五月以降、砂糖価格の低迷によって、でん粉糖化製品の需要が停滞しておりますし、金融が逼迫しておる、そういうために二万五千トンの政府買い入れを行なう等、十万五千トンのたな上げ措置を講じましたが、かつ、本年産カンショ価格については、農産物価格安定法に基づきまして価格を据え置く措置を講じてきたことは、御承知のとおりでございます。その後糖価及びでん粉市価の低迷が続いて、カンショでん粉市価は政府買い上げ価格を下回っておる、いまお話しのとおりでございます。したがいまして、その措置でございますが、政府といたしましては、生産者団体の保管しておりまする昭和三十八年産のカンショでん粉五万トン、この政府買い入れにつきまして予算補正の措置を講じたいと考えておりますが、なお、当面の本年産カンショの購入代金の資金手当てにつきましては農協系にあっては農林中央金庫から融資されることとなっております。全澱粉連傘下の工場については、商工組合中央金庫から融資することといたしたい、こういう措置をただいまのところ考えております。
  218. 日高広為

    日高広為君 この機会に、斎藤食糧庁長官にお尋ね申し上げますが、あなたは、この前の私の質問に対しまして、このような答弁をされております。「先般、本年産のカンショにつきましても、基準価格をきめたところでございます心取引価格が大体当時二十五、六円でありましたけれども支持価格をきめまして以来、若干取引価格に好影響を与えておるのではないかと期待しております。」、このような御答弁をいただいておりますけれども、先ほど私が申し上げたような事態でございますので、この点につきまして、斎藤食糧庁長官の御見解をさらに承りたいと思います。
  219. 斉藤誠

    説明員(斉藤誠君) お答えいたします。  ただいまお話がありましたように、当時政府の買い入れ価格がどのようになるかということで、産地におきましては、イモの価格について低迷状態であったわけでございます。当時そのような状態の中でいろいろ論議のあった結果、イモの価格につきましては、前年同様に三十円ということで決定いたしたわけでありまして、これらの情報が流れるに応じまして、やや明るい機運が出たようでありますけれども、しかし、先ほど農林大臣から御答弁がありましたように、でん粉全体の市況が低迷しているというようなことを反映いたしまして、現在のところにおきましては、遺憾ながら政府支持価格よりも割った価格になっておるようでございます。もちろん、これは地域によって違っておりまして、これは二十八、九円というようなところもありますけれども、厳密に言えば、イモの歩どまりによりまして、やはり価格に相違がございますから、比較は必ずしもできないかと存じます。  そこで、先ほど御質問の中にありましたこのようなイモの価格の低落に対して、これを安い価格で買ったものについてはでん粉買い上げ等の措置はやらないような何らかの指示をしたかどうかという点でございますが、もちろん、農安法につきましては、イモの価格の支持をねらってでん粉の買い上げという手段を通じて支持をしたいというのがねらいでございますので、その後、このような状態に対処いたしまして、イモについては、生産者団体の共販体制を強化する、でん粉につきましても、同様に調整販売計画を立てて、これで強力に指導するようなことを指示いたしておりますが、特にイモが安いがゆえに買いたたきをして、そして、その後においてでん粉の価格を支持するというふうな要望がありましても、これには当然応じられないわけでありまするので、現段階におきましては、イモの取引価格がどのような価格において仕切られているのか、支持価格以上に取引されているかどうかということにつきまして認定させるような措置をとって、これで今後におきまするでん粉等の買い上げのありました際に、十分裏打ちのある認定資料にしてまいりたい、こういう強い実は通達を私の名前で各団体に出した次第でございます。
  220. 日高広為

    日高広為君 そこでお伺いいたしたいことは、そのような処置はなされてけっこうでございますが、財源を捻出しなければならないと思いますけれども、その担当でございますところの大蔵省との折衝過程さらにまた、大蔵大臣にお伺いいたしますが、ただいま質疑応答でお聞きになりましたとおりに、きわめて災害と関連いたしました重要な問題だと考えております。したがいまして、このでん粉の買い上げにつきましての予算措置というものをどのように考えておられるのか。あるいは資金的な操作というものをどのように考えておられますか。この際、大蔵大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  221. 斉藤誠

    説明員(斉藤誠君) お答えいたします。  本年度でん粉の買い上げ予算につきましては、さきに農林大臣からお話申し上げましたように、全部の予算を使って二万五千トンの政府買い入れを行なったわけでありますが、それ以外のものにつきましては、実は農業団体等に調整保管させて、そして、それに対する金利、倉敷の補助をするというたてまえでたな上げ措置をとったわけであります。これがある程度荷もたれになっている。あるいはでん粉生産者、でん粉生産団体におきまして資金難、資金の手当てに多少の逼迫感を持っているというようなこともございますが、現在、買い上げるとしても予算がないわけでございます。農林省といたしましては、これをできるだけ早い機会に、補正等の機会がありますならば、政府買い上げの措置に切りかえていきたいということで、必要な予算補正措置について大蔵省に協議をいたしておる、こういう段階でございます。
  222. 日高広為

    日高広為君 大蔵大臣……。
  223. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま食糧庁から申し上げたとおりでございまして、また、十万トンの措置に対しては、あなたも御了承のとおり、大蔵省も大いに協力をしたわけであります。これだけの財源措置の問題は、農林省と当省との間でひとつ十分検討いたしてまいることでございます。
  224. 日高広為

    日高広為君 この機会に、農林大臣と自治大臣にお伺いいたしたいと思いますけれども、今回の災害に対しまして激甚法の指定というものを、天災融資法を適用するというようなことを先般農林大臣は言明されましたけれども、その後、これに対しましては、時期的な問題もございますので、いつごろ実施する見通しがついたのか。すでに町村ごとにおきめになりましたならば、その町村をひとつこの機会にお知らせいただきたいと思います。  さらにまた、自治大臣にお伺いいたしますことは、私は去る十月十六日の災害特別委員会におきまして質問申し上げましたところ、自治大臣は、台風第二十号関係の災害に対しましても、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第二章の適用を検討する旨答弁されております、検討したいというような意味の答弁をされておりますが、その後、政府はいかなる処置を講じておられるのか。私が試算いたしてみますと、現在の指数からいたしますと、この点はなかなか困難であるというような見通しを立てておるのでありまするが、これに対しまして自治大臣の御見解を承りたいと思います。
  225. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 北海道の冷害につきましては、今月——と言ってもあと一日でございますが、ほとんど被害の数字がまとまりますので、早急に天災融資法及び激甚災害法を発動する用意をしています。なお、台風二十号の天災融資法及び激甚災害法の適用につきましては、目下資料を整備中でありますので、十一月十日過ぎになるかと思います。整備をするということで準備を進めておるわけであります。
  226. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいま御質問ございました、先般の災害特別委員会における私が申し上げましたのは、北海道の冷害につきまして天災融資法の政令指定の方針及びこれに対する激甚法の適用について、農林大臣が適用をしなければなるまいという旨のことを申したわけでありますが、日高委員の御質問は台風二十号についてであったようでございます。その後、これらにつきまして検討しておりますが、目下、資料は総理府のほうで集められておりますが、いまお話のように、私も台風二十号につきましての激甚法の第二章に関する適用につきましては困難であろう、かように存じておるわけでございます。
  227. 日高広為

    日高広為君 最後に、農林大臣並びに総理府の総務長官にお伺いいたしたいと思いますが、それは激甚法の第五条並びに第六条に関連いたしましてでございます。先般、私はこれに対しまして要望申し上げておきましたけれども、台風二十号関係によりましての被害というものはほとんど施設災害ではなくて、農林水産業共同利用施設というような被害が甚大であるわけであります。ところが、現在の中央防災会議の指定基準というものは、農地等に対しまして激甚法の第五条を適用した場合に、農林水産業共同利用施設に激甚法第六条を適用することになっておる。ところが、先ほど申し上げましたように、今回の台風というものは雨量が比較的少なく、風台風であったので、農地等の公共施設の被害額というものがわりあいと少ないのであります。そのわりに農林水産業共同利用施設の被害がきわめて甚大でありますので、今回の場合に、農地等に対する激甚法第五条の適用がなくても、共同利用施設の被害のみについて激甚法を適用できるような、別途、激甚の災害指定基準を是正せられるようにしたらどうですかというようなことを御要望申し上げておりましたが、これに対しまして、その後どのような処置をしてこられたか、これが第一点でございます。  第二点といたしましては、第八条の天災融資法の関係についてでございますけれども、まず、この天災融資法というものは、すでに十年前の三十年八月に施行されております。したがいまして、その期間、災害のたびごとに問題になったのでございますが、この機会に、私は法律等の改正を要する問題ではなかろうか。と申し上げますのは、まず第一点の金利の問題についてでございますけれども、現行法によりますと、特別被害農家ですら年三分五厘以内の金利を負担しなければならない。開拓者にいたしましては、年五分五厘、その他六分五厘以内というようなことになっておりますが、この問題につきまして、さらにまたその据え置き期間、貸し付けの限度額につきましても是正される気持ちはないか。現行法の貸し付け限度におきましては、北海道のみは二十万円となっておりますが、ほかは十五万円ということになっております。したがって、南九州の災害常襲地帯のごどきは、しかも特殊土壌地帯でございますので、北海道並みの二十万円を適用したらどうですかというような質問を申し上げておきましたが、これに対しましても、今回さらにまた最も重要なことは、長雨または集中豪雨等の天災が麦、なたねとか、てん菜等のいわゆる裏作物に及ぼす影響がきわめて甚大でございます。したがって、この救済のための法律の附則において、次の特例を設けるべきであるということを主張してまいりました。すなわち麦、なたね、てん菜等の裏作物の減収による損失額の合計が、平年における当該裏作物による収入額の合計、すなわち裏作物の総収入額、表作、裏作おのおの別々合計いたしましたものの百分の五十以上であれば、特別被害農業者の認定を受けられるようにすべきであると要望してまいったのでありますが、これに対しまして、農林大臣並びに総務長官はどのような処置をいままでお考えになったか、この点についてお伺いいたしたい。  最後に、第三番目といたしましては、激甚法の指定の方法につきまして、先般質問を申し上げましたけれども、これは総理府の総務長官の答弁によりますと、地域指定につきましては、必ずしも防災会議の決定事項を待たないでその地域の指定はできるたてまえになっておりますということを答弁されておりますが、その後、防災会議を開かれたのかどうか。さらにまた、市町村の決定をされたところがありますれば、そのようなところをこの機会に御答弁いただきたいと思います。以上。
  228. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま御指摘のように、激甚災害法第六条の共同利用施設の災害復旧事業費の補助の特例を適用する基準は、激甚法第五条の発動があった場合に限られております。しかし、これもいまお話ありましたように、二十号台風のような水害を伴わない風台風の場合には、農地等の被害が少ないにもかかわらず、建物、有線放送等の共同利用施設に多大の被害が発生する場合もありますし、御指摘のとおりでございます。でありますので、第五条発動以外の場合にも第六条の発動ができるように中央防災会議の申し合わせを改訂するという方向でいま検討を進めております。  第二は、天災融資法の改正が必要じゃないか、災害があるたびにいろいろ政令を出しました経験、そのほか災害の状況等を勘案いたしまするというと、第一この融資のワクでございますが、このワクが少ないじゃないかということ、私どももそう考えておりますので、このワクを拡大していかなくちゃならぬと思います。また、金利とか償還年限等についても研究する余地が十分ございますので、この天災融資法を改正して、改正案をできるならば臨時国会に間に合わせたいというつもりで研究をさしております。間に合わなければ通常国会になると思いますが、そういう準備を鋭意進めておる次第でございます。  第三につきましては総務長官から。
  229. 臼井莊一

    説明員(臼井莊一君) お答え申し上げます。ただいま農林大臣もお答えを申し上げましたように、台風二十号による災害に対する激甚法の指定につきましては、いまこれはあとのほうの質問になりますけれども、いつ開いたかと、こういうお話でございます。これは十月の二十二日に中央防災会議の主事会議を開きまして、その結果、法第二十二条の罹災者、公営住宅建設事業に対する補助の特例については激甚法を適用することに決定いたしたわけであります。ただ、まあこの第八条の天災融資法の特例につきましては、まだ資料が整っておりませんので、その際結論のほうは出ておりません。これにつきましては、先ほど農林大臣から、あるいはまた自治大臣からもお答え申し上げましたように、十一月の十日ころ中央防災会議の主事会議を開きまして、それで中旬ころまでには激甚のほうの政令の閣議の決定をいたしたい、こういう予定でおります。  それから地域指定につきまして、お説のとおり、中央防災会議の決定を待たないでも政令でよろしいわけでございますけれどもそれもお説のとおりでございます。それで、なおもう一つのあれは、法第六条の措置でございます。これは農林水産共同利用施設、災害復旧事業費の補助の特例、これは御承知のとおり第五条の措置でありますところの農地等の災害復旧事業等にかかる補助の特例措置、これの適用がございませんと、これが第六条が適用になりませんで、これを過去のいろいろの事例等から見て、これではまずいではないか。そこで、第五条の適用がなくても第六条のほうが適用されるようにしたらいいだろうというようなお説かと思うのでありますが、これにつきましては、一昨年つくりました中央防災会議で制定した激甚災害指定基準でございますね、これを改正しなくちゃならぬ。これにつきましては、ちょっとむずかしい問題もありますが、しかしながら、お説のようなこともごもっともな点がございますので、関係方面とよく協議いたしまして検討いたして、できるだけその方向で努力はいたしたいと、こう考えております。
  230. 日高広為

    日高広為君 以上の質問を通じまして私が痛感いたしましたことは、一応、中央の方針は防災会議あるいはその他各省におきまして立案計画され、それを指示伝達されておるようでございますが、地方に参りました場合に、まだそのような措置が末端に徹底しておらないというようなことがありますので、その辺がどこに原因があるかというようなことにつきましては、今後検討していただかなければなりませんが、どうかひとつ、そのような措置ができるだけ早く災害地の被災民に徹底されるような措置を講ぜられんことを希望申上げまして私の質問を終わります。
  231. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日高君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  232. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 加瀬完君。
  233. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は先般の人事院の勧告の問題で地方団体の財源が問題になっておりますので、その点について質問をいたします。  まず自治大臣に伺いますが、人事院の勧告は、地方公務員におきましても国家公務員と同様に扱われるものだと了解してよろしゅうございますか。
  234. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいまの点でございますが、従来も地方公務員は国家公務員の給与に準じてやっておりまするので、今回もこれに準じて取り扱うつもりでございます。
  235. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣に伺いますが、人事院の勧告のベースアップの地方財源は国としてはまかなえない、こういうお話が伝えられておりますが、それではどういう措置を国としてはなされるのか、伺います。
  236. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり財源が非常に窮屈でございまして、国自体で財源をまかなうということは、たいへん困難な状態でありまして、これにつきまして国といたしましては、既定経費の節約、また政府の国庫補助その他財源をそのような状態において調達しながら、ようやく九月実施ということでございますので、地方の方々の分まで考えるという状態ではないわけでございます。その辺は国と同じように節約等をやっていただいて、地方自体でまかなっていただきたい、こういう考えでございます。
  237. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣は、いま大蔵大臣のおっしゃるような方法で地方財源のまかないがつくとお考えですか。
  238. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 実は今回の給与ベースの改定に伴いまする地方公務員の財源措置につきましては、実は非常に苦慮しておるところでございます。御承知のように、先般の勧告に従いまして十月実施にいたしましても約百八十六億からの不足を来たしております上に、今回はできるだけ尊重を、するということで、誠意を示し、九月一日から実施することに決定をしたわけでございまするので、これによりますると、交付団体分だけでも四百三十億は少なくとも一要るわけでございます。そのうち地方交付税として国の国税の自然増収に伴ういわゆる二八・九%は約百四十億でございます。それに地方税の自然増収額が約六十億ございますが、これは実は国のほうの法人税が非常に減収だということでございますので、その六十億の見込みはもっと下がるのではないかという心配がございますが、一応それにいたしましても二百億しか自己財源としてはないわけでございます。したがいまして、四百三十億から二百億引きまして二百三十億というものは、少なくとも不足をいたしております。私どもも国が非常に財政がことしは苦しくて、財源に苦慮し、節約をできるだけやってまかなっていこうということでありますから、地方におきましても極力節約させるつもりでございます。しかし、節約と申しましても、いろいろ検討いたしてみますると、約三十億ぐらいがせいぜいじゃなかろうかと思いますので、二百億は少なくとも財源不足ということでございます。いろいろこまかい数字を検討いたしますると、そのほかにいろいろなものがありまするので、もっと詰めますると二百億はこえて不足になるような状況で、この財源措置をどうするということで、まあ六人委員会でも相当検討をし、補正予算を組むまでの間に——国のほうの自然増収も一応五百億ということでございますけれども、これは十一月上旬になってみませんとはっきりいたしませんから、それを見まして、何とかひとつこの財政措置を講じたいということで、目下折衝を続けておるところでございます。
  239. 加瀬完

    ○加瀬完君 結局、自治大臣の御説明では、二百億程度はどのようなやりくりをしても足りなくなるという御説明でございますが、大蔵大臣予算計画における国家公務員と地方公務員の給与計画が同じ条件ではないということは御承知でしょうか。
  240. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どういうことですか。
  241. 加瀬完

    ○加瀬完君 結局、地方では財政計画でただしぼったわけでしょう。実際の予算計画とは違いますわね。財政計画をどんなに節約しようといったって、これはできない相談じゃないですか。その間の事情をどう御認識なさっていらっしゃるか。
  242. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国は、御承知のとおり、予算を国会の議決を経てきめていただいているわけでありますから、追加財源の必要な場合には、補正予算を提出をしまして国会の御審議を経なければお払いできないということでございます。いつも原価更正を行なうとか、節約を行なうとか、移流用を行なうとかという場合でも、法律に基づいて行なうもの以外は国会の御審議を願うということでございます。なお、三税の自然増収のある場合は、この二八・九は自動的に交付税として地方財源に回るということでございます。地方は地方財政計画だからということでございますが、これは国の財政と同じことで、国会に対しては地方財政計画ということでございますが、これは地方自治体においては自治体の議会の議決を経て当初予算を幾らと、国と同じたてまえで決定をいたしておるわけであります。そのほかにまいりますものとしては、国から、三税がふえた場合、その二八・九が交付されるということでありますから、たてまえの上からいうと全然変わっておるというふうにも考えられないわけであります。しかも、国にも財源がいままではございましたが、地方財政計画もひどいものでございまして、一時ここでもっていろいろ御指摘がございましたように、当初御審議を願った地方財政計画の六割も七割もこえるような大きな決算が行なわれたということでございます。しかし、国も相当財源が詰まってきたと同じように、地方も豊かならざる財政の状態であるということは御承知のとおりでございます。
  243. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣に伺いますが、大蔵大臣のおっしゃるように、地方財政計画をつぼめるといいますか、縮小をいたしまして、その中から不補充とか、節約とかいったような方法で経費を浮かすことが可能ですか。
  244. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 地方におきましても、私は国と同じように、できるだけの節約なり何かをしてくめんしなければならぬと思いますが、実は地方財政の規模が国の財政規模といいますか、構成とやや違っておりまして、国の三兆二千億の予算の中で人件費は約一割でございます。あとは事業費その他の点でございます。したがって、その中からある程度のくめんをするということも、節約するということもできるのでありますが、地方の三兆一千億の予算の構成を見ますると、その中の四割は給与費でございます。で、その給与費の五割、半分というものは、いわゆる教員の給与費であります。一割が警察官の給与費でありますから、この教員や警察官のいわゆる給与費の中からは節約ということはこれはほとんどむずかしい。欠員の不補充というわけにもまいりませんので、そのほかの四割近くの一般行政費としての給与、あるいは旅費その他の中からくめんしなければならぬということと、三兆一千億の四割が給与で、残る六割が一般の行政費や事業費その他でございますが、これも、もう年度半ばを過ぎておりますので、いまの段階において節約といいましても、なかなか困難じゃないかと思いまして、先ほど申しましたように、交付団体分だけについて見ますると、私どもは約三十億ぐらいがせいぜいじゃないか、こう思っております。しかし、これはもっと私どもも詰めて、できるだけ節約に節約をしてくめんをしたいと思いますが、先ほど申しましたように、全体として二百三十億余りの財源不足の中でありまするから、それを節約でまかなうということはこれはとうていできないととでございまして、何らかの財源措置を講ずる必要があろうかと、かように存じておるわけでございます。
  245. 加瀬完

    ○加瀬完君 二百億の不足というのは、財政計画上の計算で二百億の不足ということが出るわけですね。で、節約をするといえば、実際の予算から節約をするということになりますね。しかし、財政計画上の数字というものから、いま大臣の御指摘の教職員なんかを例にとれば、いつでもその翌年度の清算の上では初めの計画よりも上回るわけですね。そういうことになりますと、初めから財政計画そのものの中の給与費といったようなものは、節減の余地が非常に少ないですね。節減ではなくて、足しまえをしなければならないといういつも計算をしているのですね、財政計画。いつでも決算額のほうがふくれるわけですから、そうなってまいりますれば、当然これは別のおっしゃるような財源の補てんを考えていただかなければならないわけでございます。  そこで、大蔵大臣に伺うのですけれども、補てん財源として、適債事業についての起債を許可するということがうわさをされておりますが、そういう点をお考えになっていらっしゃるのですか。
  246. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 起債ということが話に出ておるようでございますが、大蔵省では考えておりません。これは人件費を起債でやるということはできないわけでございますから、結局適債事業のワクを広げて、その部分で財源調整をするというきっと考え方だと思うのです。ところが、そういうことをやりますと、御承知の、一つの起債には全部ルールがございまして、規格によってやっておるわけでありますから、それを乱るということでありますから、現在大蔵省はそういうことをやろうという考え方は持っておらぬわけでございます。
  247. 加瀬完

    ○加瀬完君 それを聞いて安心しましたが、適債事業を再起債をしても、地方団体によってはこの事業は当初から相当しぼられておりますので、給与改定には見合わないという点は自治省もお認めでございましょうね。
  248. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いまの起債の件でありますが、大蔵大臣からお答えしたとおりでございまして、起債の、地方財政法の中にもそういうふうな赤字の給与を起債でまかなうということは許されておりませんし、またがって起債で一時補てんをしたことがあったようでございますが、その後非常に地方財政が困難を来たしましたので、私どもといたしましては今回起債でまかなうという考えは持っておりません。
  249. 加瀬完

    ○加瀬完君 続いて、自治大臣にお答えをいただきますが、三十年度でございますか、臨時地方財政特別交付金という方法でこのベースアップ分をまかなったことがございますね。今度その方法がとれないのはどういうわけですか。
  250. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 例の地方交付税の中の特別交付金ではこれはまかなうつもりはございませんが、いわゆる特別交付金の会計に特別交付金を繰り入れてやるという方法を一時とったようでございます。今回そういう処置をとるかどうするかということは、まだこれからの折衝でございまして、いまここでお答えしにくいと思います。
  251. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう御意思はございますか。
  252. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) まあ何とかして財源措置は講じなければならぬということは考えておりますが、その方法等につきましては、まだいろいろ検討中でございまして、まだ具体的な方向は持っておりません。
  253. 加瀬完

    ○加瀬完君 いまの問題で大蔵大臣に。
  254. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう前例があるようでありますが、そういうことを今年度行なうつもりはありません。
  255. 加瀬完

    ○加瀬完君 その理由は何でしょう、行なえない理由は。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げたように、国の財源といたしましても、他にも補正要因が非常にたくさんあるわけでありまして、災害その他ございまして、国の財源そのものをまだ何とかしなければいかぬ、こういう状態でありますので、特別に二八・九プラス・アルファということで、特別の措置をする余裕は全くない、こういうことであります。
  257. 加瀬完

    ○加瀬完君 国の財源がないといいますけれども、結局、その原因は三十九年度の歳入の見積もりが過大であったということではございませんか。
  258. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過大ではなく、適正であったということでございます。
  259. 加瀬完

    ○加瀬完君 それならば、その適正というのは、いままで行なわれておったその適正とは標準が違うことになりますね。そこで、租税特別措置法というのがいろいろ問題になっておるわけでございますが、こういう新規財源というものをある程度考えるというお考えはございませんか。
  260. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 将来には一つ考えられるものではあるかもしれませんが、いま考えて、いまやめて、いまの間に合わせるというには間に合わないものでございます。
  261. 加瀬完

    ○加瀬完君 経費の節約でまかなえということでございますが、地方財政においてそれがおっしゃるように二百億を生み出すという可能性がございますか、大蔵大臣
  262. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ吉武さんの分野でございますから、人のさいふの中をあまりこう私のほうから申し上げるのはどうかと思いますが、二百億になるか、百七、八十億になるか、百五十億になるか、実際において詰めてみなければわからない数字でございますが、いずれにしても、そう地方財政も楽な状態ではないということは理解いたしております。いままでも、国も年間財政二千億に近い補正財源を擁し、補正予算が楽に組めたというような状態があったことは事実でございます。同時に、先ほど申し上げたように、地方財政計画も六割も七割も当初計画よりも大きくなって、一体これは地方財政計画なのか、このように当委員会でも御発言がございましたような事態があったことは事実でございますが、そういう状態ではないということもわかります。少し先食いをしているというようなことも聞いてはおりますが、しかし、何ぶんにも非常に大きいものであります。自治大臣先ほど言われましたが、ちょうど国の予算の中の人件費は一〇%、こういう数字でございますが、しかし、義務教育国庫負担のほうを入れると二〇%でございます。それから、地方が四〇%に近いものが人件費その他であるということもそのとおりでございます。しかし、四十年度の予算になると、国の予算よりも地方財政のほうが大きくなる、こういう事実も御承知のとおりでございます。たいへんなことはよくわかるのですが、国も節約をしてみて非常にたいへんなんです。ですから、地方もさぞたいへんであろうと思いますが、たいへんの中にもひとつ両方大いに努力をして、きめた以上九月一日実施のひとつ財源を確保しようということで日夜いま努力をいたしておるわけでございます。
  263. 加瀬完

    ○加瀬完君 御努力のほどはよくわかるわけでございますが、節約という点に限ってみれば、あるいは人員の不補充という点に限ってみれば、地方公務関係の教員、警察官というものは一体人員節約の余地がございますか。  それから、もう一つ、地方財政計画において初めから欠員というものは置かれておらないわけであります。必要最小限度の数字というものを押えて計画が編まれておるわけですから、その計画の中で節減といったって、これは不可能なことだと思うのですが、非常に形式的なようなことでございますが、節約の面というものは地方財政計画上の財政措置としては不可能だと思いますが、この点どうですか。
  264. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私、自治大臣のお答えのほうがいいと思うのですが、私に答えろと、こういうことでございますから、私から不十分ながらお答え申し上げたいと思います。確かに国でもたいへんでございます。国でも、ことしなどは、すでに四月になってからすぐ公共事業等執行を早めたような関係もございますし、なかなか節約もむずかしいということでございますが、しかし、九月一日ベース・アップの実施ということも、これも既定の事実でありますから、まあお互いがひとつ総力をあげて、九月分から捻出をするということでございます。まあ地方財政さなきだに苦しいといいますが、やはり事業の一部繰り延べもございますでしょう。それから教員もしくは警察官の人件費の繰り延べとか、人件費の節約ができるかというと、これはできないと思います。しかし、地方公務員の数というものも、これも相当膨大なものであることは御承知のとおりであります。これは、欠員は初めから見てはおりませんが、欠員があるということもありますから、国にも今年度欠員不補充の原則に基づいて、一万五千ございます。これも平年度といいますと、相当な金額になるわけでございます。これは予算でもって認めておりますものと全部で考えますと、四万五千人ぐらいの数になるわけです。ところが、年度半ばで新規の機構をつくったりして、どうしても採用しなければならない者、人間の断層はつくれないということで、どうしても採用しなければならない者、また現業その他もございますので、三分の二補充をして、残りの行政職を押えるといたしましても、一万五千になるわけでございますから、こういうものに対しては欠員不補充を完全にやると、国も閣議で決定をいたしているわけですから、各地方団体もそういう面に対してメスを入れる、また備品の調達を少しがまんするとか、いろいろなことがあると思います。この間などは、新潟あたりで、大臣、金を全然出してくれない、炭を少し少なくしなければいかぬというような話がありますが、まあいろいろな苦労をして各市町村、各府県でも考えておられるようでありますから、初めからできないというのではなく、できなければとにかくどうしてもこれは十月一日にまた戻るというわけにもいかないものでありますから、これは九月一日実施ということで、国も地方も総力をあげて財源を確保する、現在申し上げられることは、やはりこのことだと思います。
  265. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう場合、地方交付税交付金の制度というのがあるわけですね。この制度は、地方団体に対する財源保証制度と見てはいけませんか。大臣のお考えはどうですか。
  266. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財源保証制度というよりも、国と地方との財源配分ということで、二八・九の制度があるわけであります。これを三〇にしてはどうか、何をしておるか、まあ少なくともベースアップの人件費の問題を契機にして、交付税をどうするというようなことを考えることは、これはもう初めからおかしい、私はそう考えておりますし、この二八・九という問題も、地方と国との事業配分の問題、その他十分検討した歴史の上に立っての数字でございますから、軽々に動かし得るものではない、こういう考え方でございます。
  267. 加瀬完

    ○加瀬完君 交付税率を動かせとか、どうとかいう問題を、いま私は申し上げておるわけではありません。一応の財源保証的な役割りを果たしておるというならば、交付税には繰り越しの制度というのがあるわけですから、繰り越しがあるならば、足りないときには借り入れの制度が当然あってもいいと思うのですが、これは自治大臣どうですか。
  268. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 地方交付税の問題は、国の財源と地方の財源との分野として、二八・九%というものがきめられておるものでありますから、将来の問題として、地方財政が全体的に著しく苦しいということになりますれば、この国の財源と地方の財源との分野の問題として、考究する必要が出てくるかと思います。しかし、いま大蔵大臣も申しましたように、今度のベースアップで、金が足りないからこれですぐ交付税率を変えるということは、ちょっと困難でもあるし、また考慮すべきものではなかろうかと、かように存じておるわけであります。先ほど申しましたように、地方財政はだんだん窮屈になり、またその構成内容が、先ほど申しましたような状況でございまするので、このままではいきにくいのじゃないか。昨年あたりは国税の自然増収が非常に多かったために、たまたま給与ベースが自然増収の二八・九形でまかなってこれたのでありますけれども、ことしのように、国のほうの自然増収ががたっと落ちまするというと、急に困るわけであります。先ほど御指摘のように、地方交付税の改定で、金が少し余れば積み立て金をして、そしてそれをもって補てんをするという方法もとっておりまするけれども、いわゆる地方交付税の会計が、自然増収が非常に多ければそういう余裕もできまするけれども、その積み立て金は使ってしまうというような状況でございまするので、これは将来の地方財政の問題として根本的に考えていかなきゃならぬ問題だと思いますが、いまさしあたって、これで交付税率をどうしようということは、ちょっとむずかしいかと思っております。
  269. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は交付税率を言っておらないのですよ。地方制度調査会が交付税法の案を進言したときに、余ったときは繰り越しと、足りないときは借り入れという勧告もあわせてしたわけです。ところが、足りないことはあり得ないということで、繰り越しの形だけが、積み立て金の形だけが残って、借り入れの制度というものがそこで消されたわけです。しかし、現在は借り入れなければやりくりがつかない。交付税率は上げない、借り入れもできないといったら、どうやりますか。
  270. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私、初めのほうを聞いてお答えをいたしまして、最後の、いまの御指摘の点はお話のとおりでございます。財源措置をしなければ払うにも金がございませんから、払う道は講じなければならぬかと、かように思っております。
  271. 加瀬完

    ○加瀬完君 いままで、途中で財政計画が変更されたときは、どういう手続をおとりになっておりましたか。
  272. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いままで、途中でベースアップが行なわれましたときの処置は、先ほど申しましたように、たまたま補正予算で、国の国税の自然増収がよけい見積もられたものですから、その二八・九%で財源が出たわけであります。たまたま、ことしのように非帯に国の国税の三税の、自然増収が落ちてまいりまするというと、非常に困ってきたわけでございます。したがいまして、困ったでは済みませんから、その財源措置をいまどうしてやろうか、払えるようにだけはしなければならぬという考えを持っております。
  273. 加瀬完

    ○加瀬完君 結局、いままでは自然の成り行きで何とかなった。何とかならないということは結局、財政計画に誤まりがあったということですね。
  274. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 財政計画に誤まりがあったとまでは言えませんが、最初考慮いたしました財政計画には、ベースアップは予定して、なかったわけであります。若干は予定していたでありましょうけれども、それはまあ毎年の例として、途中で国の自然増収というものが相当あるから、その自然増収の二八・九%で財源が何とか出るであろうということは、おそらく地方といたしましても、ある程度の予測といいますか、予定があったかもしれませんが、私どもも八月のころには、まあ何とかかんとか言っても、補正予算のころには自然増収が相当出るだろうという期待をしておりましたが、先般来、六人委員会等で検討してみますと、大蔵大臣の話を聞けば聞くほど、ことしは非常に税の伸びが悪いのだ。特に法人税なんかが非常に減収をしておりますので、なかなか困難だなあという感じで、実は非常に苦労しているところでございます。
  275. 加瀬完

    ○加瀬完君 その財政計画の欠点については、あとで指摘をいたしたいと思います。いままでは、若干の変化は調整率を適用して、何といいますか、バランスをとっておったわけですね。いままでの調整率はどのくらいですか、今度かりに調整率をとるとすれば何%くらいになりますか。
  276. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いままでの調整率というのは、普通の場合のいろいろこまごましたものの調整でございまするので、三十九年度あたり予定しております調整率は〇・三九くらいでございます。三十八年度は〇・三四くらいの調整率で、金額といたしましては、三十八年度は三十四億、三十九年度は四十八億くらいをまあ見ておるのでありますが、今回は紛与ベースの改訂で、先ほど申しましたように、二百三十億ばかり不足をしてまいりますから、これと、いまの普通の場合の調整とを合わせまするというと、三百幾らかくらいの不足を調整しなければなりませんから、そうなりますと、率にして直せば二・六くらいの調整率になるわけでございます。いままでは、その給与ベースの分は、自然増収の補正で入ってまいりましたから問題はなかったわけでありますが、ことしのように突然出なくなりますというと、大きい調整率になりますが、これはなかなかちょっと普通ではまかない切れないという状況でございます。
  277. 加瀬完

    ○加瀬完君 いま二・七%という数字が出ましたが、大体四%くらいになるんじゃございませんか。いずれにいたしましても、三%前後ということでは健全財政とは言われませんね。
  278. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、地方財政は地方の独自の地方税以外に、国の国税に依存をいたしまして、地方交付税というものを合わしてまかなっておるわけでございまするから、そこにまあ健全財政といいますかどうか、依存をしておる度合いが多うございまするために、そういう狂いが出てくるわけでございます。
  279. 加瀬完

    ○加瀬完君 この財政計画で、決算が出た三十七年度の財政計画と、実際の決算額と、どれだけの違いが出ておりますか。
  280. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ちょっとこまかい数字は持ち合わしておりません。約六千億ぐらい違っておるように私存じております。
  281. 加瀬完

    ○加瀬完君 六千億の違いは、補助負担金の算定基準というものが適正を欠くことも重要な理由ではございませんか。
  282. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そういう問題もあるかと思います。
  283. 加瀬完

    ○加瀬完君 大蔵大臣に伺いますが、補助金制度を整理するというお話でございますが、今後、この地方に対する補助金制度はどういうようにいたしますか。予算単価が低過ぎるために、財政計画が実際の予算との間に大きい差額が生じて、それが節約をしたくも節約できない一つの原因をつくっておるわけでございますが、この点はどうでしょう。
  284. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補助金の整理、合理化ということに対しては答申もいただいておりましたし、四十年度予算から大いに合理化をしたいという考え方でございます。しかし、この補助金単価の適正化ということをいわれておりますのは、実際の市価と、大蔵省で考えておる国の補助単価というものに開きがあるということでございますが、これはもういつも申し上げておりますように、実質単価でもって補助するわけにはいかないわけであります。これはもう物価倍増というようなことを前提にしてやるわけにはまいりません。しかも補助金に対しては、これはもう標準単価ということでやっておるわけでありまして、仕上がり採算ということで実費弁償的な制度のものではないということも、これはこの制度が乱されるおそれがありますから、当然標準単価ということになるわけであります。しかし、地方自治団体によっていいものをつくったりする場合に、それに対して実費に対しての単価で計算をするというわけにもまいりません。でありますから、多少いままでが低きに過ぎるということもありましたので、三十九年度には六・六%、七%、七・何%ということで、工事費その他の単価の補正も行なっておるわけでありますから、まあいいところへ来ておると思います。これを変えるということはむずかしい思います。
  285. 加瀬完

    ○加瀬完君 農林大臣に伺いますが、いま大蔵大臣の御指摘になったようなものではなくて、人件費でございますが、農業改良普及員、それから生活改善普及員、それから農業委員会、これの地方の実質支出一人当たりですね。それから補助の基本額、どのようになっておるか、おわかりですか。
  286. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 調べておりますのでお答えいたします。農業改良普及員につきましては、昭和三十七年度の決算におきまして、一人当たり実質の実支給額でございます。本俸が二万五千九百十八円であります。これに対する国庫補助金額は九千八百七十一円となっております。補助率は三分の二となっておりますが、実質的には三八・一%に当たっております。それから生活改善普及員につきましては、昭和三十六年度決算で、一人当たり実支給額は本俸二万十円であります。これに対しまする国庫補助金は九千八百六十一円となっておりまして、補助率は農業改良普及員同様三分の二となっておりますが、実質的には四九・三%に当たっております。農業委員会の書記につきましては、農地主事のみを補助対象としておりますが、三十七年度決算は、実支給額、諸手当を含めまして約三万三千円に対しまして、国庫補助額は約二万一千円となっております。補助率は十分の十となっておりますが、実質的には六四%に当たっております。こういう状況でございます。
  287. 加瀬完

    ○加瀬完君 この手当まで含めますと、農業改良普及員は、四十八万七千六百九十五円に対して、補助は二十六万二千三百八十九円、生活改善の普及員は、三十五万六千八百八十六円に対して、二十三万二千三百八十九円、それから一番ひどいのは、最後にお話になりました農業委員会の書記でありまして、これは、実質が四十二万三千六百六十四円に対して、十万四千三百四十九円、二六・六%にしか当たっておりませんね。これは市の場合。これでやれといえば、地方に赤字が出るのは当然ではありませんが、法律どおり補助がいっていないのです。お変えになりますか。
  288. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 定員の問題や、俸給の支給表の問題で、実際にそれだけ補助しておるようなかっこうでも、補助額が少ないというかっこうで、地方の負担がふえているという実情は、私も認めます。
  289. 加瀬完

    ○加瀬完君 農林大臣、もうけっこうです。  建設大臣に伺いますが、公営住宅の二種ですね。これの単価と、補助領を御承知ですか。
  290. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。第二種のほうは、予算は三万七千円、三十八年度で。
  291. 加瀬完

    ○加瀬完君 三十七年度の決算で…。
  292. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 三十七年度はまだ調べておりませんが、三十八年度で三万七千円の、実績は四万四千円、三十九年度は三万九千四百円になっております。
  293. 加瀬完

    ○加瀬完君 三十七年度の決算で見ると、用地費が一番ひどくて、これは支出実額が三千三百十円に対して、補助単価は八百九十六円、二七・一%です。建てれば建てるほど、地方団体は赤字を背負い込むという形になっておるわけです。これはこの前にも私は指摘をしたのでありますが、これで住宅対策といったって、全部地方におんぶす。したがって、地方は赤字を出さなければうちが建たないということになるわけです。これが、大蔵大臣がおっしゃる合理的だとお考えになりますか。
  294. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 予算単価が実情に離れております点は、逐次是正したいということで、ただいま述べましたように、三十八年度よりも三十九年度は少しふえておりますが、四十年度はさらにこれを実質に近づけたい、こういうことでこれから折衝をしていくような次第でございます。
  295. 加瀬完

    ○加瀬完君 文部省にお伺いしますが、木造は、三十七年度は実質支出額が四万七千二百九十八円、補助は三万二千四百八十九円、六八・七%、坪の基準は、三千六百八十五坪というものに対して、二千二百六十五坪、六一・五%という補助しか認めないという地域もございます。これはお認めになりますか。
  296. 斎藤正

    説明員斎藤正君) 木造の実績単価は、三十七年度で私ども調査で申しますと、四万二千百九十一円ということになっております。
  297. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは平均でしょう。
  298. 斎藤正

    説明員斎藤正君) そうです。予算単価は当時三万二千五百円でございます。その間の開きは三〇%ということになっております。
  299. 加瀬完

    ○加瀬完君 坪数のおさえ方は。
  300. 斎藤正

    説明員斎藤正君) 三十七年度は、補助の実施率は原則として七・三で、こざいました。三十九年度は御承知のように八・二となったわけでございます。ただ、全体の工事量と、それから補助事業分との割合は、単に単価の問題だけでなくて、基準の問題は、構造敷地とかいろいろな要因が重なって開きが出ているかと思われます。
  301. 加瀬完

    ○加瀬完君 厚生大臣に伺いますが、国保事務員の支出額、それから補助額、それから国民年金の同様に保険者一人当たりの支出額、あるいは補助額、こういうものを御存じですか。
  302. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。三十八年度の予算から申しますと、国民健康保険の国庫負担金の基準単価が一人当たり百三十五円でございます。これは、被保険者交付割合は四割九分に相当いたしておりまして、逐年実は率が低下しておりまして、はなはだ遺憾に思っておりますが、来年度はひとつ相当増額したいと、こういうふうに考えております。それから国民年金のほうは被保険者一人当たりの金額は、三十八年度が百二十四円、三十九年度は百三十円ということになっております。
  303. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣に伺いますが、三十七年の決算で、支出額被保険者一人当たり二百五十五円、補助は百十九円、国保は、国民年金は二百四十五円に対して百二十二円、こういうことになっていませんか。
  304. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いま私の手もとにその数字がございませんので、あとで調べておきたいと思います。
  305. 加瀬完

    ○加瀬完君 とにかくこのように、国の委任事務のために独立財源というものを吐き出さなければこれが遂行できないという状態ですね。これでは一体地方から節約をしろの、地方の独立財源の余りがあろうといったって、余りがある余地はないじゃないですか。そういう形で財政計画がつくられておるところに矛盾はございませんか。自治大臣いかがでございますか。
  306. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お話のとおりでございまして、そういう点が非常に多いので、地方としては困っております。したがいまして、今後の問題でありますが、地方庁におけるいろいろな事務が非常に多すぎる、何とかこれを少し簡素化することはできないものかということを私ども考えておるわけであります。それからいろいろいま言ったような、単価が少ないために地方がそれだけ負担をせなけりゃならぬということもございますけれども、また一方、いわゆる自治体自身の一般の職員の数にいたしましても、年々増大をしておるような状況でございまして、これはいまお話のように、仕事がふえれば人もふやさなければならぬという点もございますけれども、したがって、仕事もできるだけ簡素化し、あるいは能率化していきまして、同時に、人員もできるだけ節約といいますか、していく必要があるのじゃなかろうか。私は、給与ベースというのは、御承知のように人事院がああいった形で勧告をしておりますので、われわれとしてはできるだけそれを尊重していかなければならぬ。しかし、財源は、国においても非常に財源のあるときはけっこうでございまするけれども、ことしのように、ないということになりますというと、なかなかそのくめんがむずかしい。これは年々大きな問題になってくるのじゃないかと思うのでございます。したがいまして、仕事をできるだけ簡素にしていくということと、人も節約をしていって、給与についてはできるだけ尊重していくというような態度をとりませんと、仕事はどんどんふえていく、そうして給与はどんどん増していく、そうして地方の財源がないから国からといっても、なかなかまかないきれないというような感じをいたしておるようなわけでございます。
  307. 加瀬完

    ○加瀬完君 それより前に、地方が国の委任事務のためにどれだけ財源を持ち出していますか。その超過負担額を概算お話し下さい。
  308. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それはどれくらいになりまするか、ちょっと資料がございませんで、これはやはり調べてみる必要があろうかと思いますし、また、またの機会にひとつお示しを申し上げたいと思います。
  309. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほど三十七年の財政計画と、決算額の差が六千二十四億、大体二七%ぐらいになりますね。それで、これが全部六千億が超過負担ということになりませんが、私の計算では、四百億前後は、これは超過負担の分だと推定できるですけれども、当たっておりませんか。
  310. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それがどれくらいになりまするか、私のほう、いま資料がございませんので、調べてみたいと思います。
  311. 加瀬完

    ○加瀬完君 財源要求をするということならば、国の当然やるべき事務の分を地方が負担をしておるわけですから、その四百億というものは、かりにあたらずといえども遠からない数字ということであるならば、四百億ならば、二百億の支出というのは易々たるものですね。ですから、当然その調査をして、これだけ国の分を地方団体が持ち出しているのだということは、大きな主張になるじゃないですか。この具体的な数字を示す、その作業というのは、自治省の当然の責任だと思いますが、これからおやりいただけますか。
  312. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そういう点のあることは、私ども気づいておりまして、国民健康保険でありまするとか、あるいは国民年金でありますとか、そういうふうな事務費にいたしましても、来年度において改定をして増額をしていかなきゃならぬというようなことで目下考えておるようなわけでございます。
  313. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういうように一応財政計画よりも決算額がふくらんで、その決算額がふくらむ要因は、地方が委任をされておる国の事務の膨張のために負担が重なる、こういった傾向はいままで行なわれてきましたし、将来もこの傾向というものはある程度認めざるを得ないとお考えにはなりませんか、このままでは。
  314. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いままでも気づいて、毎年の予算におきましては、そうした国庫の事務費の負担を増していくというようなことは試みておるわけでございますが、いま仰せになりましたように、いろんなところでこれが重なって事務が非常にたくさんになっておりまするので、いま申しましたように、事務の簡素化というものを考えて、それはもう自治体におろして仕事をしなきゃならぬ問題はやむを得ぬのでありますけれども、その仕事のやり方等におきましても、あまりに複雑過ぎる、したがって、人手を多く使うというようなことになりますので、事務の簡素化とあわせまして、能率化もあわせまして、その上必要なものは、やはりこれは国に負担してもらわなきゃならぬ、かように思っております。  それから、なお、これはよけいのことでありまするけれども、実際の決算額よりも六千億余り超過しておるという要因の中にはいろんなものがございます。で、私が特にそれを指摘するわけじゃありませんけれども、給与にいたしましても、地方の公務員の給与は、私ども国の給与に準じてやるという方針をとっておりまするけれども、実際はまあ富裕県が主体でございまするけれども、国の公務員より上回った給与が相当払われているという事実もあるわけであります。私どもはそういうもののめんどうまではみれないんでありますが、地方交付税を交付しておる地方団体の中でも、国家公務員の給与ベースよりも上回った支給をされておるところも相当あるわけであります。ですから、私どもは、それを基準にして、不足したからそれを地方交付税でまかなうぞという態度はとっておりませんで、国家公務員のベースをもとにして、不足分は地方交付税でもってめんどうみようと、こういうふうに言っておりますが、実際はそういう面もあるわけでありますから、これらの点は、やはり地方公共団体におきましても、国に準ずるということをわれわれは極力やりますると同時に、地方団体でも、国の公務員の給与ベースより上回るというのはできるだけひとつこれは自制をしてもらわなければならぬじゃないかという点も、実はしばしば地方長官会議、あるいは市町村長会議等において私は要望しておるわけでございます。
  315. 加瀬完

    ○加瀬完君 昭和三十一年か二年かにその調査があったわけです。そういうところもありますよ。しかし、それは数が少ない。国家公務員のレベルまでいっておらない町村段階の職員の給与ベースというのは非常に数が多い、問題にならないほど数が多い。こういう点をお見落しいただきまして、一部の富裕県だけを例にとりまして、大蔵大臣お話になるならばわかりますけれども、自治大臣がもう少ししっかりしてお答えいただかないと非常に困ります。  で、大蔵大臣に、いまお留守の間に、とにかく地方が国の委任事務で負担超過の分が四百億前後くらいはあるんじゃないかと一応推定されるわけです。これはあとで御調査をいただかなければわかりませんが、事実確かに国の委任事務を地方がやっておって、そのために負担過重が何百億にものぼっておるということが証明されましたら、これは補助金の合理化ということで事務を整理するなり、あるいはその財源を補てんするなり、そういう方法をおとりいただけますか。
  316. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これ以上複雑にして金をよけい出すという方向にはないと思うのです。ですから、そういう場合には事務の刷新、合理化を行なっていくということだと思います。
  317. 加瀬完

    ○加瀬完君 国にみんな返していいですか、事務を。
  318. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 返すのではなく、御承知のとおり、戦前、戦中、戦後、現在と考えてみますと、どうも少し別な意味の書類が合理化され過ぎている。あまりにも複雑な書類が多くて、この間話を一つ、極端な例でございますが、百円の増額補正をやるために一万円の事務費がかかる、こういうことが一体あるのかどうかと見ましたら、確かにそういうことはあるかもしれません。膨大もない書類を何百から判を押してやるとそういうことになるかもしれません。しかし、こういうものは、やはり公金を扱うから念には念を入れてというのだろうと思いますが、私は、こういうことはもう思い切った合理化ということが必要だと考えます。でありますから、そういう面もひとつ十分検討してまいりたいと思います。
  319. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはけっこうですよ。しかし、農林大臣もお認めになったように、農業委員会の書記というのは、これは全額国庫負担ということになっております。ところが、実支出は四十二万三千六百六十六円でありますのに、その全額負担をすべきはずの国からの補助は十万四千三百四十九円、二四・六%しか埋めておらない。あるいは国民年金の事務関係も、これは完全に国がみるべきことになっておりますのに、支出額が二百四十五円でありますのに、国の負担をしているのは百二十二円、五〇%にすぎない。こういう事実があるわけでございますから、これは適正に処置をいただけると考えてよろしゅうございますね、こういう問題は。
  320. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 適正にやりたいという気持ちはありますが、何ぶんにもお金がないという場合もあるわけであります。しかも、標準単価によって計算をしておる、こういうことが補助金全般に対して行なわれておるわけであります。また、先ほどあなたが御指摘になりましたが、実際、東京、大阪でもって相当高い公営住宅の土地を取得しておるのにかかわらず、それに対しては全く微々たる補助率にしかならないということでございますが、これは一律、画一的な補助基準によっておるわけであります。東京は坪三万円するから三万円の三割、三万円の五割、こういうわけにはいかない。北海道がやはり坪千円であるから千円の幾らということで、実際の実額に対して補助をするということにはなりませんので、やはり一律的なものということになっておる、かように考えております。そういうようなやり方が画一的な設計に基づくものをつくったので、信濃川の河畔の四階建ては地震で参ってしまう。今度は砂の上につくるのには別な工法でやらなければならぬということになりましたが、単価まで変えられるのかということになると、なかなかめんどうな問題があるのも御承知のとおりでございます。また、各府県、市町村によって、非常に熱心なところは数をよけい多くとか、いろいろな問題があることも御承知のとおりであります。こういうものは、しかし、お互いが論争をしないでいいように、なるべくお互いが理解できるような態勢こそ望ましいと考えますが、何ぶんにも一朝一夕に全部片づけられるという問題でもないということも御理解賜わりたいと思います。
  321. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は論争をしようとは思いません。適正に補助単価というものはきめられなければならないわけでございまして、それがはなはだしく合理性を失っておりますものもございますから、われわれの指摘に誤りがあるかもしれませんので、そういう問題にされておりますものは十二分に御検討いただきまして、適正化をはかっていただきたいと希望するわけであります。  それから、もう一つ、これは大蔵大臣、自治大臣、お二方にお伺いをいたしますが、交付税法の六条の三によれば、著しくいままでの財政状態と違った状態が生じれば、これは当然、先ほどから交付税率を上げるお考えがないと言っておりますけれども、自治省の大臣としてはおかしなことで、条件が変われば交付税率を上げる義務は自治大臣に当然ある。そこで、一体いろいろな問題から非常に支出がかさんできて、この傾向は今後も続くのかと言ったら、続くと、こうおっしゃる。それならば、今度のような場合は二百億も穴があくというのは著しい変化じゃないか。とにかく穴埋めが自治体そのものではできないということになれば大きな変化でございますね。それであれば、これは六条の三が満たされると解すべきではないか。上がる上がらないはともかくも、交付税率が変化を来たすという条件が当然生まれておるとお認めになりませんか。
  322. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私が先ほど申しましたのは、今回のこのベース・アップだけで交付税率を変えるということについては慎重に考えなければならぬということを申したのでありまして、先ほど申しましたように、地方財政は非常に窮屈になりつつございますので、これが一時的なものであれば、これは一時的な処置でまかなうということも考えられますが、将来これが引き続きこういう状態であるということであれば、お話のように、いわゆる交付税率の改定という問題も考えていかなければならない、かように存じております。
  323. 加瀬完

    ○加瀬完君 時間がありませんので、自治省関係の問題に限って質問を続けますが、昭和四十年度からは住民税は統一をされるわけですね。しかしながら、こういう収入が不足をする状態において住民税のいままできめられた原則というものが適用されますか。
  324. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) これはそのように法の改正をやったのでありまするから、続けていきたいと思います。その補てんは、国の財政処置、あるいはまた、地方交付税の処置等によっていわゆるまかなっていくということも起こってくるかもしれませんが、住民税のその改正の趣旨におきましては続けていく所存でございます。
  325. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはあわせてあとで大蔵大臣にもお答えをいただきたいわけでございますが、まず、国税の課税基準は一応正しいと認めるとすれば、地方税の場合は、国税における課税基準が保たれているかどうか、こういう問題が起こるわけですが、自治大臣はどうお考えになりますか。
  326. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいまの御質問の趣旨がちょっと私わかりかねますので、もうちょっと詳しくおっしゃっていただきたい。
  327. 加瀬完

    ○加瀬完君 国税の課税基準が正しいとすれば、その原則がある程度地方税の場合にも表に出ているかどうか。国税のかけ方の基準というものと地方税のかけ方の基準というものが非常に違うのじゃないか。
  328. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私どもは同じになっていると思っておりますが、それは違っておればもっと調べてみる必要があるかと思います。
  329. 加瀬完

    ○加瀬完君 ここは大蔵大臣にも聞いていただきたいわけでございますが、ある県で所得調査をいたしました。非常に所得の伸びているところをA、B、Cの三地区といたします。それから、所得の低いところをD、E、Fといたします。そうすると、国税に対しまして住民税がA地区は三二%、B地区は四〇%、C地区は四九%、これが所得の低い地域のD地区は一四五%、E地区は一二二%、F地区は一三二%というように、所得の低いところが住民税が非常に高い。しかし、こう高く取らなければ財政のやりくりがつかないという原因もあるわけです。来年これはA地区、B地区、C地区と同じようにして一体市町村の財政がうまくいくかどうかという問題が当然残ってくるわけです。心配ありませんか。
  330. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 従来そういう点が著しいので、例の本文方式に切りかえていったわけであります。したがって、お話のように、非常に財政の苦しいいわゆる農村の市町村等におきましては、私は、財源に困ってくると思います。で、そのために地方交付税の制度があるわけでありますから、これは当然地方交付税でもってまかなっていかなければならぬと思います。それが私まあ就任以来、格差の是正という点に力を入れているわけでありますが、まあいまの地方交付税の制度の中でいわゆるそれを是正しなければならぬというところに苦しい点はございます。でございますが、しかし、それは当然地方交付税でみるべきでございます。
  331. 加瀬完

    ○加瀬完君 昭和三十九年度の地方財政計画上の重点という中には、「地方独立財源の充実と地方税負担の合理化」ということをうたっております。交付税も確かにその独立財源と見られないわけではございませんが、交付税は、国の三税がしぼんでくれば当然しぼんでくる。そこで、独立税というものを、自主財源というものを何か与えなければならぬということになってくる。それを全部交付税にかぶせれば、いまの交付税では給与ベースの実施もできないという状態の中に、さらにその交付税というものを傾斜配分で低いほうへ流してしまったら、まん中のところがまた低いところへ落ちてくる。そこで、大蔵大臣にお願いをしたいのでございますが、交付税の税率を上げろといったようなばかの一つ覚えのようなことは私どもは申しません。しかし、一体地方財源というものをある程度自治体として、先ほどおっしゃるように、その水準より飛び抜けたことをやっている団体は別です。水準までいかないような、この給与にいたしましても、市町村ではまだまだ国家公務員までいかないところがたくさんある。そういう低いところをある程度の水準まで上げるためには、やはり特別の財源措置というものを考えていただかなければどうにも動きがとれないのじゃないか、これはただ地方の利益だけをいう意味ではなくて、国の財政もむろん大事でございますが、国の事務を地方はたくさんかかえているわけでありますから、それを遂行するためにも、もう少しこの財源措置を明確に考えていただかなければならぬではないか。この点について最後に大蔵大臣にこの御配慮のほどをお伺いいたします。
  332. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 戦後地方自治の制度がとられた結果、財源問題からいうと、思わざる結果が起こっておるということは御指摘のとおりでございます。これは地方財政の確立のないところに地方自治の確立はないわけでございますが、実際問題からしますと、地方自治の制度の中で財源があるかというと、ないものもございます。特に公選村長などは、学校をつくりたい、道路を直したい、何をしたい、こういっても、自分の村内、町内に何があるかというと、ない。結局間口幾ら、人一人に幾らということになりまして、豊かならざるものほど住民税が高い。北海道は一番高かった。固定資産税もそのとおりでありますが、三十一年でありますか、固定資産税に対して特別な繰り入れを行なったわけであります。今度も昨年から住民税に対して本文方式に統一をしようということでいろいろ議論がございましたが、元利補給債というような異例の措置を行なっても国がひとつ何とかしょうというような前向きの姿勢でやったわけです。私は、その次にすぐ交付税法の六条の三ですが、これをすぐ引き合いに出して、これを上げたらどうかということは、さすがにあなたは、こういうことは申しませんということでしたから、さすがにやはり専門家だと思っております。その前にやはりお互いにある程度考えなければならぬ問題があるんです。それは財源の偏在ということをどうして直すかという問題もあります。だから、地方団体間の財源偏在調整というものをどうするか。しかも、一面からいいますと、財源のある大都市などに対しては直轄事業が多い。直轄事業が多いということは国の負担、逆にいうと地方負担は少ない、こういうことなんです。ですから、ただ簡単に交付税法だけを修正するということでは片づかない問題であります。広範な面から国と地方との関係をもう一ぺん洗い直してみて、十分有料でもってペイするものに対しては起債を行なって金繰りをつけてやる。どうしても補てんをしなければ行政水準が上がらない、このような状態でもって五年も十年もほうっておいたら、だれも住む者がなくなってしまう。これは社会保障費の増大につながるとしたら、いやおうなしにやらざるを得ない。行政水準の平準化ということではなくて、これは緊急なものになる。われわれも財政当局者としてこういうものに着目をしておるわけであります。だから、あるものは出すが、すべては国だという考えではなかなかこういう問題は解決できませんので、補助金の合理化とか、いろいろな問題、特に地方開発とか、過度集中の排除とか、こういう問題とあわせて、いまの問題などをその過程において十分検討をして前向きに解決をしたい、こういう考えでございます。
  333. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいま御指摘の点は私どもも非常に考えておるところでございまして、お説のように、地方の農村県あるいは農村の市町村の財政はだんだんと苦しくなっております。独立の財源を何とかして見出したいと思っていろいろ検討しておりますが、なかなか独立の財源というのが見つからないのであります、現実として。というのは、財源を見つけましても、その財源は同時に富裕県もいなかの県も同じに入ってくるようになりまして、いま問題は、一つの地域的な格差の是正といいますか、農村県や貧弱県の財源を何とかして厚くしたいということになるのでありまするから、独立の財源を与えましても、それによっていなかなんかがよくなるわけではないわけであります。したがって、いまのところではこの地方交付税というようなもので調整をする、格差是正をするということよりどうもないのじゃないか。しかし、これは税制調査会等でもすでにこの問題を取り上げていま検討されておりますし、私どもも、何とか独立の財源でいま言ったような交付団体の財源ができれば、これは一番いいことでございます。しかし、なかなか現実になりますると、いま申しましたように、むずかしいという問題がありますることを御了承いただきたいと思います。
  334. 加瀬完

    ○加瀬完君 いずれにいたしましても、財源の問題はあとに残りますが、地方公務員におきましても、人事院の勧告は、九月一日に国家公務員と同様に遡及して実施されると了解をいたしまして質問を終わります。
  335. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 加瀬君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。   午後六時三十六分散会