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国務大臣(
田中角榮君) 第一点の問題につきましては、御
承知のとおりいままでの超高度成長ではいけない。超高度成長の中に、ひずみとして、物価の問題、国際収支の悪化の問題、労働力の流動化が阻害されておる問題、都市の過度集中の問題、公共投資のアンバランスの問題、地域格差の問題あるいは業種間格差の問題、あらゆる問題が出ておるわけであります。これらの問題を解消しなければならない。解消するためにはどうするかという具体的な問題に対して、まあテーマとしては国際収支の
長期安定、経済の正常な成長、物価の安定と、こう三つの命題を掲げて、いまいろいろな
政策を行なっているわけであります。そのときにオーソドックスな議論としては、木村さんと専門家の御
意見としては、結局財政金融が経済を刺激してはならない。しかも財政が一番経済刺激の要因になっては困る。財政も、財政投融資も、もちろん対前年度比やっぱりできるだけ小さいほうがいい、経済の成長率も九%とか八%とか、所得倍増計画で七・二%年率といっておるけれ
ども、これでは少し高いんじゃないかというような、オーソドックスの議論をやっておられます。われわれも十分理解できますし、中期経済見通しをつくりますときに、
皆さんが言っておられるような数字でやれるのかどうか、そういう場合、財政のあり方、金融と財政との調整の
状態がどうなるのかというような、こまかい数字を検討してまいったわけであります。これはまあ正式なものは、まだ党、
内閣において結論が出ているわけじゃありませんが、第三者機関として
政府に答申を出される数字が、新聞等に散見をしておりますが、年率私たちが七%ないし七・五、名目でもって九ないし一〇%でなければ、四十三年までの中期経済計画の見通しは立たないんじゃないかと思っておりましたが、それよりも少し高い数字、八%くらいの平均成長率でないと、なかなかその過程においてひずみの解消はできない。どうもそれ以上に押えると、引き締めというよりも、内部に恥いていろんな問題が起きる、こういうような
考え方で、いま作業を進めておられるようであります。そういうことになりますと、これからの財政金融
政策、経済
政策のもととなるものは、四十三年まで、五カ年間に、大体
長期展望いたしまして、四十年度の
予算に対して、年率の伸びは大体どのくらいかということを想定されるわけです。私は大体できれば二〇%ぐらいということを
考えてきたわけです。ところが計算をしてみますと、五カ年計画とか、もうすでにいっぱいのものがあるのです。御
承知の年間七百五十億くらいの、厚生省だけでも医療費の増加、十月の一日から家族給付なんてやってますから、そうすると平年度化されると大きいものになる。それから公務員給与でもやはり一年間になる、全部。それから五カ年計画でいっても、二兆一千億の五カ年計画であった道路計画でも、初めの三年間小さくなっているのです。最後の二カ年間に六割持ってくる、その六割でも小さいから倍にしよう、鉄道もそのとおりでございます。あらゆるものが大きくなっておる、ことしは治山、治水、港湾、すべてのものが五カ年計画を改定しなければならない、医療費も答申だけでも八%の引き上げ、こういった既定の歳出増だけをそのまま引き伸ばしていっても、一〇%で一体おさまるだろうかという問題がいますぐ計算されるわけです。ですから、何も新規
政策をやらないにしても、相当な伸び率がないとこなせない、もちろんこれは数字の上だけではなく、内容のやり方によっては、一〇%でも、一三%でも、原資の繰り入れが、よしんば利子補給になるとすれば、十分の一になるわけでありますから、ワクだけでは言えませんが、いずれにしてもそんなに小さいものではおさまらぬ、大きなものではもちろんいかぬ、ですから、新しい
政策を行なうとすれば、既定経費の中の削減、合理化ということが前提になるのです。そうでないと新しい
政策はできないということでございますから、一般会計は一〇%を目標にしながら、可能であるもの、一二%になりますか、一三%になりますか、とにかくその財源が調整できる、調達できる範囲というものが、対前年度比の伸び率になると思うのです。そうすれば、一〇%というと財政投融資そのまま
考える必要はありませんが、常識的に見て、一般会計一〇%といえば財政投融資は一五%が限度だろう、一般会計が一三、四、一五以下であれば、財政投融資は二〇%が限度であろう、二〇%よりも一五に近いほうがいいとか、いままで議論をされてきた問題でございまして、ですから、ただパーセンテージだけで言うわけではない、内容によって、場合によれば倍にも、二分の一にも評価されるわけでありますが、そういう
意味で財政、財政投融資、それから民間資金との一体化という
考え方でまいりますので、経済運営に財源が支障をもたらすというようなことは
考えないでいいだろう、
考えないでいいだろうということではなく、やはり必要な資金は調達をしていく、しかも、それが国債を出すというような荒っぽいものをやらなくても、
努力をして捻出をしていく、そしてその財源が景気刺激にならないということを限定にして
考えていくべきであるというふうに
考えられるわけであります。
それから、大蔵省の中では、御
承知の主計、主税、理財、それから為替、いろんなものがございますから、なかなかうまくできております。これは税金でまかなうという場合には、一般会計は主計でやっておる、主計の財源がなければ財政投融資、理財でまかなっておる、主計、理財でもまかなえない場合は、税金でもって主税で検討してやろうと、それでもなおだめな場合は民間資金の調達ということで銀行局にいこう、それだけでもどうもいかぬというと、外債ということで国際金融局でまかなおう、なかなか明治からうまくできております。こういうものをすべて調整をとり、調和をとっていけば、必要な財源を確保してまいれるということであります。あくまでも景気の刺激要因にならないようにやっていくつもりでございます。
第二の、オリンピックが終わったら
——この問題は確かにいろんなことがいわれております。私は、いままでが景気がよ過ぎる、少し超高度過ぎる、ですから賃金も急激に上がった、自由業などの賃金は、御
承知のとおり四年間か五年間でもって約倍以上になっております。急激に伸びている、しかし、それはいままで低過ぎたから、ここではちょうどひずみが解消されたんだという議論もございます。まあ労働が非常に拘束されておる面もございますし、拠点的な投資が行なわれるために、当然合理化によって下がるべきセメントとかいろんなものが下がらない、下がらないで上がっているというものもあります。これが物価に対して、もっと下げられると思っているものもたくさんありますが、季節的にも場所的にも、集中的に工事が行なわれた、投資が行なわれたために、必要以上に物価に影響している面は指摘できます。こういうことがノーマルな
状態に戻るのであって、景気がいいのが不景気になるんだというようには
考えておりません。それで、またそう急激に転換してはいかぬというので、こまかい配慮をいたしております。それは地域的にも季節的にもバランスのとれた投資が行なわれ、労働の流動性も確保できるような
状態を想定しながら、財政金融
政策を進めるということであります。もっと端的に
一つだけ申し上げますと、オリンピックは約三十億ドル、一兆七百億ぐらいが四年間に投資をせられました。しかしそのうちの約十億ドル、三千八百億の金は新幹線に使われたわけですから、ですからそう大きな投資ではありません。その間において道路は二兆一千億、五カ年計画でございましたから……。今度は四兆一千億、五カ年計画になっているわけです。ですから道路
一つの例をとっても、二兆一千億と四兆一千億の差額は二兆円であります。二兆円を五カ年間で割ると四千億、四千億ベースでもってオリンピックの仕事がなされたわけではありませんから、まあ公共投資やいろいろな面を
考えたり、都市改造を合理的にやるとか、いろいろなことを
考えてまいりますと、不景気になるという要素はないというふうに
考えるわけであります。しかし、急激なそういう不況感というものが起こってはならないということで、かかることに対しては、しさいな観察を行ない、こまかい配慮をいたしたいと、こう
考えておるわけであります。