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1964-10-29 第46回国会 参議院 予算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月二十九日(木曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————   委員異動  六月二十六日   辞任      補欠選任    重政 庸徳君  田中 啓一君    塩見 俊二君  寺尾  豊君  八月三十一日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  加藤シヅエ君  九月三日   辞任      補欠選任    加藤シヅエ君  亀田 得治君  九月二十八日   辞任      補欠選任    大谷藤之助君  田中 清一君  十月二日   辞任      補欠選任    田中 清一君  大谷藤之助君  十月十九日   辞任      補欠選任    須藤 五郎君  岩間 正男君  十月二十七日   辞任      補欠選任    基  政七君  田畑 金光君  十月二十八日   辞任      補欠選任    山本  杉君  井川 伊平君    櫻井 志郎君  白井  勇君    山本伊三郎君  大和 与一君    高山 恒雄君  向井 長年君    奥 むめお君  佐藤 尚武君  十月二十九日   辞任      補欠選任    豊瀬 禎一君  成瀬 幡治君    米田  勲君  小林  武君    亀田 得治君  松本治一郎君    小平 芳平君  二宮 文造君    向井 長年君  天田 勝正君   —————————————   委員長異動 六月二十六日太田正孝委員長辞任に つき、その補欠として寺尾豊君を議院 において委員長に選任した。   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     寺尾  豊君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            村山 道雄君            藤田  進君            瀬谷 英行君            鈴木 一弘君    委員            井川 伊平君            植垣弥一郎君            江藤  智君            太田 正孝君            木村篤太郎君            郡  祐一君            木暮武太夫君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐野  廣君            白井  勇君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            吉江 勝保君            加瀬  完君            木村禧八郎君            北村  暢君            小林  武君            戸叶  武君            羽生 三七君            松本治一郎君            成瀬 幡治君            大和 与一君            中尾 辰義君            二宮 文造君            田畑 金光君            佐藤 尚武君            岩間 正男君            市川 房枝君   国務大臣    外 務 大 臣 椎名悦三郎君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 愛知 揆一君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  櫻内 義雄君    運 輸 大 臣 松浦周太郎君    郵 政 大 臣 徳安 實藏君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 小山 長規君    自 治 大 臣 吉武 恵市君    国 務 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 小泉 純也君    国 務 大 臣 高橋  衛君    国 務 大 臣 増原 恵吉君   説明員    内閣官房長官  鈴木 善幸君    総理府総務長官 臼井 莊一君    外務省国際連合    局長      星  文七君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    中小企業庁長官 中野 正一君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君   —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○予算執行状況に関する調査   —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから予算委員会開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  私は先般、各位の御推挽を賜わりまして、予算委員長に選任いたされました。まことに不肖浅学非才でありますけれども委員各位の御指導と御協力によりまして、滞りなくその職責を全ういたしたい決意でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)   —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 委員の変更について御報告いたします。  去る十月十九日、須藤五郎君が辞任され、岩間正男君が選任されました。  二十七日、基政七君が辞任され、田畑金光君が選任されました。  翌二十八日、高山恒雄君、山本伊三郎君、奥むめお君、山本杉君及び櫻井志郎君が辞任され、向井長年君、大和与一君、佐藤尚武君、井川伊平君及び白井勇君が選任されました。  本日、小平芳平君が辞任され、二宮文造君が選任されました。   —————————————
  4. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、理事補欠互選を行ないたいと存じます。  現在当委員会におきましては理事が四名欠員になっております。本日は都合によりまして二名の補欠互選を行ないたいと存じますが、互選につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。それでは大谷藤之助君及び瀬谷英行君を理事補欠指名いたします。   —————————————
  6. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  本調査に関しまして、理事会において協議いたしましたので、そのおもなる内容について御報告を申し上げます。  本日及び明日の二日間にわたり委員会開会いたします。質疑の総時間は三百二十分として、その各派の割り当ては自由民主党及び社会党おのおの百二十分、公明会三十分、民主社会党二十分、緑風会共産党及び第二院クラブおのおの十分といたします。質疑順位は、社会党自由民主党社会党公明会民主社会党緑風会共産党、第二院クラブ社会党自由民主党社会党の順といたします。  以上報告のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  8. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 鈴木内閣官房長官より発言を求められております。この際これを許します。
  9. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 池田内閣総理大臣は、一カ月余の入院療養をいたしてまいりましたが、先般、二十五日の医師団総合診断の結果なお相当の期間療養を要するということに相なったのであります。総理大臣の重責にかんがみまして、党総裁及び総理辞任する決意をいたしまして、政府及び党の首脳後継者選考の依頼をいたしました。政府におきましては、政治空白を避けますために、後継者のきまるまで現在の体制におきまして政務を続けてまいる考えでございます。
  10. 藤田進

    藤田進君 ただいまの鈴木官房長官報告に対する緊急質問をいたしたいと思いますが、お許しいただきたいと思います。
  11. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 藤田君の緊急質問を許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 藤田進君。
  13. 藤田進

    藤田進君 私は日本社会党を代表いたしまして、総理の御病気関連してただいま官房長官より経過の説明がございましたが、これに関しまして若干の質疑を行ないたいと思います。  まず冒頭、総理のかようなまことに憂慮すべき病魔におかされた、このことにつきまして、心からお見舞い申し上げたいと思います。  さて御報告のとおり、総理総裁総理辞職を表明されたということを公式にただいま承りました。かかる上は各閣僚におかれても運命を共にされることだと思うのでございますが、そうだとすれば、このことはすみやかに事を運ばれ、新内閣を出現して、国政空白を一刻もゆるがせにしないで早急に事態を収拾すべきことが当然であると思うのであります。そこで、その第一の質問は、早急に新内閣発足をいたしますためには、現在の閣僚におかれても、総理以下その責任において総辞職手続をとられ、一方、政府はすみやかに臨時国会召集をせられ、新首班指名手続を終わることが当面の何よりも先立つ緊急事態収拾の方策であると信じて疑いません。これらについてどのように現在具体的にプロセスをお考えになっているのか、官房長官にお伺いいたします。
  14. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 総理はその声明にもはっきりと申し上げておりますように、後継者の円満かつすみやかな選考党首脳お願いをいたしておるわけであります。党の副総裁幹事長が中心になりまして後継者選考をいま急いでおる段階でございまして、一方、政府におきましては、後継者が党において御推薦があるまで現在の体制政務を見てまいる考えでございまして、総理もその間は病院におきまして十分閣僚諸君連絡をとりながら政務を見てまいる所存でございます。したがって、国政には渋滞を来たさない、そういうことに努力をしてまいる考えでございます。
  15. 藤田進

    藤田進君 各閣僚と緊密な連絡を保ちつつと言われますが、私の承るところでは特定の人——大平さんとか鈴木さんとか、ときに河野さんがお会いになっているというにすぎないと思います。だとすれば、辞意表明意味するものは非常に重大でありますし、このままの姿でいつまでも続けられるべき性質のものではない。そのためには臨時国会を早期に召集される必要がある。その間党内事情等は当然解決さるべきであります。党内事情をまず解決してしかる後に臨時国会と、そんな二段がまえではなくて——国政の引き継ぎ、政権授受を過去にさかのぼってみますと、吉田内閣から鳩山内閣へ、以来岸内閣から池田内閣への状態を見ますと、数日で首班指名がなされているのであります。そうして新憲法下片山内閣以来岸内閣に至るまであらかじめ総理代理するものが設けられている。池田内閣においては海外旅行、出張の際にのみ代理を置かれている。こういうことで実は今回こうして予算委員会をもちましても、説明員である官房長官から内閣を代表して答弁を求めなければならぬという事態になっていることはまことに遺憾であります。当然に置かれるべきであったと思う。しかし、この段階でそのことは議論いたしません。臨時国会は何月何日をめど事態収拾、新内閣発足考えられているのか、この点だけは明確にしていただきたい。
  16. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) せっかく準備を急いで努力をいたしている段階でございますので、準備ができ次第、早く臨時国会を開きたいと考えております。
  17. 藤田進

    藤田進君 しからば、角度を変えて質問いたしますが、召集しようとする臨時国会は、首班指名に限りこの際臨時国会をもつという考えなのか、引き続き追加補正予算その他の案件審議もあわせ行なう臨時国会考えているのか、お尋ねいたしたい。
  18. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 近く召集されます臨時国会におきましては、池田総理辞意を表明されておりますので、首班指名ということが一番重大な議案に入ると思います。なお、社会党さんから成規手続をもって臨時国会召集要求もございます。政府といたしましては、これらのことも念頭に置きまして臨時国会に対処すべきだ、かように考えております。
  19. 藤田進

    藤田進君 しからば伝えられるように、おそくとも来たる十一月十日をめど諸般準備をされるという一つめどがあるのか、ないのか。私はこれだけ重大な時期に際会して、政府としては一つの目標を立てて、それに集中して諸般準備を整えられるべきであると思う。すでに二十九日の今日の段階で先の見通しがつかないということはまことに遺憾であります。十一月十日ごろをめど臨時国会召集し、首班指名、引き続き他の案件審議を行なう、あわせては社会党の法的、成規要求もありということで処理なさるのが適当であろうと思う。いかがですか。
  20. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) できるだけ臨時国会は早く開くためにせっかく努力中でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  21. 藤田進

    藤田進君 くどいようですが、どうもつかみどころがないので、もっと議事進行協力していただきたい。いつごろまでの目途ですか。
  22. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、準備を急いでいるわけでございまして、準備ができ次第できるだけ早く開きたいと考えております。
  23. 藤田進

    藤田進君 どうも説明員である官房長官にこれ以上無理かもわかりませんが、何しろ現閣僚中に総理代理する人がないことは遺憾です。  そこで、副総理格ということで、これは全体を代表されることはむずかしいと思うが、河野国務相にお伺いいたします。  いずれにしても、内閣辞職ということは、これは時間の問題だと思う。そこで、そのことを確認されるかどうか。確認されるとすれば、少なくとも、新内閣昭和四十年度予算関連する問題その他重要な新政策についてはこれをゆだねて——閣僚の手において、赤城さんの考えているような消費者米価値上げとか、大蔵大臣も、どうも一緒に相談している運賃の値上げその他等々、大きな、国内外の問題があるわけですが、これらは少なくとも新内閣の手によって総合的に判断をし、政策の一環として行なわれるべきものだと思うのであります。河野国務相閣議にも出られて、そういった方面の意見も十分お聞きだと思うので、この際その御所信を伺っておきたいと思います。
  24. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御指名でございますから、私から、私の考えておりますことをお答え申し上げます。  ただいま鈴木官房長官から当面の問題についてはお答え申し上げましたとおり、われわれども、そういうことで最善協力をいたして御期待にこたえるように努力いたしております。早急に、なるべく早く、御要望のように時局を推移するようにいたしまして、いやしくも政治空白というような、また国民諸君の不安というようなことの絶対ないようにいたしていかなければならぬと考えておりますことは当然のことでございます。  なお、お話米価問題その他重要な問題につきましては、蛇足であるかもわかりませんが、総理がおやめになりまして、あとの内閣首班がどういうことになりましても、われわれどもといたしましては、あくまでも従来やってまいりました既定方針、その方針を踏襲してやっていきたいというふうに考えておりまして、したがって、この間におきましても、引き続き、現に米価問題その他につきましては、現内閣におきまして十分協議を続けておりまして、決して、一日も遅滞する、空白を生ずるようなことのないように努力いたしてまいっているわけであります。したがいまして、いま官房長官が申し上げました、総理病院におられますけれども、その間には緊密な連絡をとって、重要な問題につきましては時々御指示を受けてやっておるのでございます。われわれといたしましては、皆さんの御期待にこたえるように最善努力をしてまいる所存でございます。
  25. 藤田進

    藤田進君 河野さんに再びお伺いして恐縮ですが、お答えを判断いたしますと、池田内閣と全く同じ政策の、およそ新政策といったものが考えられない、池田内閣延長内閣を樹立するのであるから、米価その他、政権授受にかかわりなく政策は進めていく——本来ならば、ここに新しく内閣ができるということであるならば、いさぎよく総辞職をされる、閣僚におかれては、新しい問題は新しい内閣でという、時間的に、もう秒読みになっているこの段階では、そのことが国政全体にとって適当であると信じますが、池田内閣延長内閣ということを考えられての御答弁と思うが、間違いございませんか。
  26. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話のとおりでございます。これは、わが党党員のすべての人の御要望も、またそこにあることも御承知のとおりであります。したがって、われわれどもといたしましては、そういう所存で進んでまいりたいというつもりでおります。
  27. 戸叶武

    戸叶武君 関連河野さんの答弁は、いつになくさえておりませんが、それは、自分自身にも関連があるからだと思いますが、今度の問題は、一池田総理、一河野さんの問題ではないのです。国政空白をどう埋めるかという慣例関連する問題だと思うのです。池田内閣総理大臣病気療養長期にわたるという理由のもとに辞意を表明したのですが、それは、その任にたえないことを意味するものです。その任に総理大臣がたえないで辞意を表明したのにもかかわらず、その空白を避けるためというのが、党内事情まとめ上げのために、事実上の空白国政の中に置くということは、非常に間違いだと思います。いままでの慣例からしても、総理大臣海外旅行をされた際には、臨時首相代理を置いた慣例があるのです。今回の場合にそれがなし得られないというのは、これは池田内閣をささえる与党の党内事情によってできないのだと思います。もっと端的に言えば、河野さんという名前を指してはいけないが、だれかが臨時首相代理になるという場合においても、それがまとめ上げられないという政治的事情がこれを決定しているのが事実じゃないかと思うのです。それは自民党内の党内事情にすぎないのですが、それを理由として事実上の政治上の空白をここにつくり上げるという悪慣例を残すことは、今後において総理大臣が不測の事態あるいは病気というようなことにおいて倒れるような場合もあると思うのです。その場合に、今日のような混迷を繰り返すような悪慣例をつくっていったらば、政治空白というものを埋めることができないじゃありませんか。これは、自民党党内事情のためだけではない、日本内閣が、こういうよう空白状態が生まれたときにどう対処するかという一つ慣例をつくる上において、重大な問題がここにあると思うのです。鈴木官房長官並びに先ほど藤田さんに対しての答弁河野さんさえておりませんですが、歯切れのいいところがあなたの特徴ですから、もっと歯切れのいい明快な答弁を両者からお願いしたい。
  28. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私の考えておりますこと、もしくはこの問題についての私の関係いたしましたことについて御了解を得たいと思います。  いま、戸叶さんからお話しでございますけれども戸叶さんも御承知のとおり、鳩山内閣の次に政権を交代したときはどうであったかということも一つの例として御検討をいただきたいと思うのであります。池田総理入院はせられました、加療のために。しかし、その入院せられました加療段階におきまして、決して面会を一切謝絶しているわけじゃありません。また、必要あれば、だれにでも閣僚と会うる、もしくは会って指導できる状態でございます。健康でございます。したがって、官房長官なり、必要のある人は時々お会いして、病院内で直接政務について指導しておられます。  また、私といたしましても、いま党内事情で云々、いろいろお話しになりましたが、一切誤解でございますので、この際にひとつ御了解いただきたいと思いますことは、私自身も、入院せられます直前にお会いいたしまして、その問題についていろいろ総理の御意見も伺い、私も進言いたしました。その際私は、総理が直接院内から、健康の状態から考えて、指導されることができる状態である、したがって、現状のままでおやりになることがよろしい、そしていつでも、回復せられたならば、すぐ閣議にも御出席になるだろうし——承知のように、必要な宮中の行事、もしくはオリンピックの開会式等には御自身出席になっております。そういう状態でありますので、今後に悪例を残すのじゃないかというお話でございますが、私はその健康状態によると思うのでございまして、それが病気とはいいながら、御自身で御指導できるという状態であれば、いまのようなことで政務を指導してまいることは一向差しつかえない、あえて代理をつくる、つくらぬというようなところの段階まで、総理健康状態はそこまでいっていないのだという見解で、私は私の意見総理に進言して、そして今日までやってまいったのであります。  なお、非常に空白ができるじゃないかというお話でございますけれども、これは社会党さんでも、われわれ自民党におきましても、総裁総理になるということになっておりますので、まず総裁を選ぶことが先決問題である。こういう状態で、自分病気長期になることであるから、内外の情勢から見て自分はやめたほうがいい、交代したほうがよろしいという総理政治判断によって、そういう意思表示がございました。したがって、それを、いやしくも政治空白を起こさぬように、まず総裁のほうを選んでもらおうということで、総裁選考に入っておるのでございまして、現状は、従来と引き続き同様の意味において政府政治進行さしておるのでございますから、われわれは、その意思表示があって、なお党のほうにはなるべく早くその手続をするようにお願いしております。党の幹部諸君が非常に日夜努力しておられますことは皆さん了解のとおりでございます。したがって、われわれといたしましては、現在の事情からいたしまして、一日もすみやかに後任総裁を選んで、そしてその総裁後任総理という順序でいきたいというふうに希望いたしておるのでありまして、したがって、その間におきましては、従来同様の意味において政務をわれわれは処理してまいるということにいたしておるのでございますので、その点御了承いただきたいと思うのでございます。
  29. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) ただいま河野国務大臣から御答弁があったとおりでございまして、私からつけ加えることはございません。
  30. 藤田進

    藤田進君 当面重要な案件をお持ちの閣僚にお伺いいたします。  まず最初に、田中大蔵大臣にお伺いいたしますが、四十年度予算、これに関連する諸政策といったようなことを考えますと、新首相国会はすみやかに指名して、新内閣発足を見なければならない。河野国務大臣の御答弁によると、政務は見れるのだから、辞意は表明したが、現体制でしばらくいくという趣旨に聞こえますが、辞意内閣総理大臣が表明された以上、すみやかに新内閣発足に切りかえていくことが適当であろうと私は言うのであります。だとすれば、大蔵大臣の手元にある諸案件の問題を考えるときに、少なくとも首班指名をまず行なう、そして自後追加予算等々の審議をいたします臨時国会は、これは、伝えられるように、十一月十日くらいまでには開かれなければならないのではないか。閣僚の一人として、その御所信を伺いたいのであります。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、内閣全体としての御質問というよりも、閣僚個人に対しての御質問のようでございますから、私がお答えすることが適当かどうかわかりませんが、個人的な見解になると思います。  総理が引退を表明せられたということは、私たちといたしましては非常に重大に考えておりますし、また、総理の御決意に対して、われわれ自身もその線に沿って国民及び国会に対処しなければならないというきびしい考えに立っております。一日の、またいっとき政治的空白を招いてはならない、こういう大きな政治的責任の上に立って総理が御決意をせられたのでありますから、総理に、もう一ぺん、意思をひるがえしていただいて、もっとやっていただくということを考えない以上は、一日でも、いっときでも早く正式に後任国会で選んでいただき、国民に対しても瞬時の政治的停滞も招かないという姿勢はとるべきであるということは論をまたないことだと思います。しかし、現実問題として、河野国務大臣いまどう言われたか、私ちょっと欠席をしておりましたから存じませんが、円満に総理意思を具現し、その間、旬日の日がかかったとしても、政治的空白をもたらすような事態は起こさないということを十分配慮をしながら、できるだけ早い機会に総理意思に沿いたい、また、憲法上要求せられる内閣の義務を国民及び国会に対して遂行するということでありますから、事実問題としては暫時御猶予をいただく、しかし、当事者である自由民主党及び国会議員としてのわれわれ及び政府の閣員の一人としては、これはもういっときも早く正しい正常な状態をつくるということに努力をすべきであることは論をまたないと、こう考えます。
  32. 藤田進

    藤田進君 御田厚生大臣は、伝えられるところによると、医療費関係は自分の手で解決というか、処理をしていく、赤城農林大臣は消費者米価ないし——きょうもお会いになる予定のようですが、日韓会談の事柄について外務大臣も同様外交について、それぞれこの状態の中で、まあ唐突な処理をされるやにうかがうのでありますが、これらについては新内閣に当然ゆだねられるべき性質のものではないだろうか。全体の政策予算等の関連において行なわれるべきが当然であろうと思う。それぞれの大臣の、これに対する御意見を承りたい。
  33. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまのお尋ねでございますが、鈴木官房長官河野国務大臣からもお話がございましたように、また、いま田中大蔵大臣からもお話が出ましたように、政治空白をしないように、日常の仕事はそのままやっていくという考えのもとに、何も、辞意を漏らしたから特に急いでやろうという意味でなく、いままでやってきた態度でそのままやってまいる、問題の解決をそのために遷延しない、こういう意図でありますから、御了承願いたいと思います。
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お答えいたします。  消費者米価の問題は新内閣で解決すべきじゃないかというお問いでございますが、消費者米価の改定は、もう時期に来ておると私は考えております。でありますので、新内閣でやるのも一つの手だと思いますが、時期が来ておりますから、私ども責任において、できるだけ早い機会に解決していきたい、こういうふうに考えております。
  35. 藤田進

    藤田進君 日韓はどうです。
  36. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日韓の問題は、きょうも会いましたが、既定方針でやっていくと思いますが、これは、何もいま急ぐべき問題ではございませんから、そういう情勢をつくり上げながら、こういう問題は解決をすべく努力をするつもりでございます。何も、私の時代に、いまの事態で解決するというような考えは持っておりません。
  37. 藤田進

    藤田進君 椎名さんどうです。椎名外務大臣、先に。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外交の問題、特に日韓会談の問題に触れての御質問でございましたが、病気のために出て執務をすることができないというだけの故障なのでございまして、総理大臣の指導をあらゆる点において受けながら外交問題の処理をいたしておる現状でございまして、日韓問題に対しても、基調を変えず、既定方針に基づいて着々と問題の処理をいたしておる次第でございます。
  39. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連官房長官に答えてもらいたいのですが、先ほど臨時国会の問題については、藤田委員のほうから何日ころまでにという質問があった際に、準備ができ次第すみやかにということで日取りの見当がつきませんでした。すみやかに準備ができ次第なんということは、だれが考えたってそういうふうに答えざるを得ないだろうとは思いますが、私どもの聞きたいのは、日取りの点について何月何日の何時ということまで聞いておるのじゃないのですから、十一月の十日なら十日、十五日ごろなら十五日ごろといったような目安くらいははっきりつけてもらわないと困ると思う。池田さんの病状の問題でも、お医者さんのほうは何月何日ころまでは入院してなければならない、何月何日ころまでは休養しなければならぬ、こういうふうにある程度の日取りを明確にしておるのです。臨時国会召集について何日ころまでに、あるいは何月の上旬とか下旬とか、そのくらいの目安もつけられないということでは困ると思う。だから、その点を明らかにしていただきたい。すみやかにということはわかりましたから、すみやかにいつごろなのかということです。  それからいま一つ、きょうあしたの予算委員会でありますが、本来ならば総理大臣質問をすべき事柄、あるいはまた総理大臣答弁をすべき事柄は一体どなたがお答えになるのか、どなたに質問をしたらよろしいのか、そういう質問はしてもらっちゃ困るというのか、一体その辺はどうしたらいいのか、国会を開いても理由がはっきりしておって出られないならけっこうですが、一体その点、一々病院に伺いを立ててリモート・コントロールで答弁官房長官がやるというのか、そういうこともできぬと思います。だから、各所管の大臣に質問すべきことは大臣にやりますが、総理として答弁すべき事柄、この点は明らかにしていただきたいと思います。
  40. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 臨時国会の開催の時期でございますが、このことにつきましては、先般、衆議院の予算委員会におきまして、十一月の下旬を目途に準備を進めておりますと、かように御答弁を申し上げて御了承を得てあるわけでありますが、その後におきまして総理辞意の表明等もございましたので、これを繰り上げて、できるだけ早目に開かなければならないと、かように考えております。なお、御質問の問題によりまして所管の各大臣から御答弁があるわけでありますが、どうしてもこれだけは総理の御意向をお尋ねにならにゃいかぬと、こういうことがございますれば、あらかじめ問題点をお話をいただきまして、それによって総理の御意向を御答弁を申し上げたいと存じます。
  41. 藤田進

    藤田進君 いろいろの質疑応答をかわしましたが、私はこの重大な政局に際会する各閣僚なり官房長官の態度についてはまことに遺憾です。なぜもっと明確な努力目標を——すみやかに準備が終われば開くなんてあたりまえの話です。その準備をいつごろまでにやってのけたいという決意をなぜ持たないのか。また、各閣僚についても、抜けがけにもう何もかもやって逃げようというようなかまえを見受けることはまことに遺憾です。自由民主党内閣になるとしても、どなたがなるのか、あなた方自身でもまだわからないでしょう。そういうときに、新内閣に新政策があるのかないのか知らないけれども、そこのけじめを、せっかく総理決意をして、円満に、しかもすみやかに新総裁、したがって、まあ新総理という意味でしょうが、そういうことを党あるいは政府——内閣に対して指示があったとするならば、もっとまじめに、もっとすみやかにこれが処理をせられるのが国民に対する私は内閣責任だと思う。遺憾の意を表明いたしまして、質疑を終わります。(拍手)   —————————————
  42. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 羽生三七君。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、この二週間の間に起こったソビエトの政変並びに中国の核爆発、イギリスの労働党の勝利、あるいは来週に控えたアメリカの大統領選挙等、激動する世界情勢のもとにおけるわが日本外交のあり方についてこれから質問をいたします。ただいまもお話がありましたように、政局がこのように混迷を続けておるこの際、一体だれが最終的な責任を持たれての答弁をなさってくださるのか、はなはだ疑問に思いますけれども、しかし、各閣僚がそれぞれ現在の地位にあられる限り責任をもって十分な答弁期待いたしたいと思っております。  最初にお尋ねしたいことは、ソビエトの政変について何らかの変化があるとお考えになっておられるかどうかという、こういう問題もありますが、実は、非常に時間が制約されておりますので、これはもし時間があと余ればお尋ねすることにして、最初お尋ねしたいことは中国の核実験についてであります。私たちは、いかなる国の核実験にも反対をしているのでありますから、わが党としてもこれをきわめて遺憾に思い、また、これに対して抗議をしたことは言うまでもありません。ただ問題は、どうしてこの拡散を防止して、最終的には核実験はもとより、これが前面的禁止をどのようにして達成するか、こういうことであると思います。今日の世界情勢を見るときに、核保有国のみが国際的に発言権やあるいは大国の資格を持っているかのような風潮がしばしば見受けられておるわけでありますが、事実、中国以外にも新しく核保有を指向していると考えられる幾つかの国があります。いまこそ、この拡散を防止して核兵器の全面禁止をすることが今日の世界の喫緊の課題であると思います。この問題について単に反対やあるいは抗議をしているだけで問題の解決にはなりません。政府としては、いまのようなこの情勢について具体的にどういう考え方で対処しようとするのか、まず最初にこの問題についての政府見解をお尋ねいたします。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 部分的核実験停止の条約ができまして、大気の汚染がこれによって今後なくなったということで世界の人民は非常に安堵をいたしておる状況でございましたが、今回の中国の核実験は、これらの状況に一つの波紋を投ずるものでございまして、まことに遺憾であると申さなければならぬと思うのであります。われわれは、すでにこの問題に対しまして、鈴木官房長官談として、国民を代表して遺憾の意を表明しておるのみならず、すみやかに実験を停止することを希望し、さらにまた、これに関連して核保有国並びに保有せんとする国を糾合して、そしてこの問題に対する世界会議を開こうとする提案に対しても所見を述べたのでございまして、今日、日本としてこの問題に対する態度は、先般の官房長官談というものによって表明されておると思います。
  45. 羽生三七

    ○羽生三七君 このように、この重大な国際的な激動の続けられておる際に、いまの椎名外務大臣の御答弁のように、官房長官の談話で片づいておるというようなことはまことにたよりない話で、内政の混迷もさることながら、全くこれでは日本外交いずこにありやということを疑いたくなります。たとえば、あの談話の中で部分的核停条約に中国の参加も求めたいというようなこともうたわれておりますが、中国を国連の外に置いてどうして部分的核停条約に参加させることができますか、お尋ねいたします。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の参加と部分的核停条約の加盟とは、これはおのずから別問題でありまして、必ずしも国連加盟をしなくても核停条約への参加は可能であります。私はそう考えております。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは俗論であります。それは一応、国連とは無関係に部分的核停条約の進行を一そう進めることは不可能ではありませんが、現実の問題として、国連の外に置いて、しかも中国がいままで最もきびしく攻撃してきた部分的核停条約に国連のワク外において参加を求めるということはできるはずはないのであります。ですから、この日本外交が、いまの問題一つとってみても、いかに明確な見解を持っておらぬかということがよく明らかになると思いますけれども、そこで、いま外務大臣からもお話がありましたが、この時期に際会して世界首脳会議を提唱されておるのでという、こういうお話がありましたので、私はこれに関連をして中国の提唱しておるその首脳会議についてお尋ねをいたします。私は中国だけを問題にしておるわけではありませんが、質問の順序として、最初に中国が提唱している世界首脳会議の問題についてお尋ねいたします。  この提唱は核兵器の全面禁止ということを中心にして言っておるわけでありますが、本来ならこれは中国でもアメリカでもソビエトでも、またどこでもいいんですが、世界最初の被爆国である日本が、そのくらいな提唱をする見識を日本外交の上に持ってもらいたいと思います。それはとにかく、この提唱を見た場合に、外務省の一部には、この中国の提唱は、査察、管理等の技術的な問題の討議を経ないで、一足飛びに全面禁止を持ち出すのは飛躍があり過ぎるのではないか、こういう見解も外務省の中にあると聞いております。もちろんこの場合の技術論議にいたしましても、中国をいま申し上げましたように国連のワク外に置いて効果的な成果を期待できるはずはございません。また、中国の言っている首脳会議の提案も私なりに検討してみまするというと、たとえば、この声明の中で次のように言っております。必ずしも飛躍とは思えない節があります。その声明はこう書いてあります。「世界各国の首脳会議を開き、核兵器の全面禁止と決定的な廃棄の問題について討議すべきである。」、こう言いまして、そのあとに続いて、その第一項として「各国首脳会議は、核保有国と早急に核保有国となる国が負うべき義務について取りきめを結び、核兵器の不使用を保障すべきである。」、こう述べております。でありますから、現在核兵器を保有している国、また早急に核兵器を持つであろう国、その国が負うべき義務を明白にうたっておりますので、必ずしも一部にある見解のように飛躍した論議とも思えません。そういう意味で、自国の責任を明らかにしながらの提案であると思いますが、私はさきに述べましたように、中国の提唱だけを問題にしているわけではありません。たまたま中国がこういう提唱をしておりますので、この機会に、この提唱に対し外務大臣としてどういうお考えを持っているか承りたいと思う。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お答え申し上げます。かような基本的な問題に対しまして、もしも世界会議を開くということをするには、従来の慣例から申しましても、また実際の手順から考えてみましても、いきなり首脳会議を開くということではなしに、それ相当の根回しをいたしまして、そしてその準備階梯を経た後にこの首脳会議が開かれるのが従来の慣例であり、実例でございます。そういう意味において、ただ、いきなり首脳会議を開け、あるいは核兵器保有国、将来保有せんとする国、そういうものに対していきなり呼びかけても、それの実現性はまことに乏しいのでありまして、ただ一種の国際的宣伝であるというふうに一般にとられている現状でございますから、わが国といたしましても、これににわかに賛成しがたい、かような見解を持っている次第でございます。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、中国の言う世界首悩会議の提案は実現性に乏しいということですが、では同じ立場で、ウ・タント国連事務総長が五大国間の話し合いということを提唱しております。これについてはどうお考えですか、これも非現実的ですか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 新聞で私はその提唱を見たわけでございまして、どの程度の準備をもって発言されたものか十分にまだ詳しくは存じておりません。国連の総長でございますから、おそらく事務的な検討を十分にした上で、かような提唱をしているのかもしれませんけれども、ただいまのところは、その事情を詳しく存じませんので、何とも申し上げかねます。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは世界がこれだけ激動して核兵器問題についての多くの関心があるときに、先ほど来の御答弁を承っておって、一体日本外交がこんなことでいいのかどうかというその関心を、そういう疑問を持つのは、ひとり私だけではないと思います。しかし、この問題は、私はイニシアチブをどこの国がとろうとも、いま外務大臣は根回しが必要だと言いましたが、十分に根回しをする必要があります。いきなりすぐできるはずはありませんが、しかし、そういう根回しをするにしても、そういう努力、たとえその五大国の中に日本が入らなくても、日本自身としてもそういう国際的な局面打開に何らかの寄与をするというそういう熱意のほとばしりというものがほとんどない。ここに日本外交の問題があるんじゃないか。  そこで、それはさておいて、中国が核爆発を行なったことから、これはもちろん遺憾なことでわれわれも抗議したわけでありますが、与党の一部には日本自身も核武装すべきであるとか、また、そこまでいかなくても、アメリカの核兵器の持ち込みを許すべきであるとか、さらに進んでは、そういう立場から憲法改正を一そう推進すべきであるとか、いろいろな議論が出ております。それで、政府としては、この中国の核爆発の問題と関連していまの私が申し上げたこういう問題について、外務大臣としては一体どうお考えになっているのか。本来ならば、ここへ池田総理がおいでになれば、本来総理自身にお尋ねすべき問題であります。自民党の中には確かにそういう意見が出ている。外務大臣としてはどういうお考えをお持ちになりますか、伺います。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の中共の核爆発によって日本も至急核武装せよ、あるいは核兵器の持ち込みを許すべきであるというような所論がなされておることは、新聞等あるいはその他においても多少承知しておるのでございますが、これらの問題については全く当たらざる議論であると私は確信するのでございます。われわれは憲法によって、国際紛争に対し実力をもってこれを解決するという手段をみずから捨てたのは御承知のとおりであります。この大方針を破る必要は毛頭ない。核兵器の持ち込みにしましても、しばしば国会等において歴代の総理大臣が声明しておるとおりでございまして、この大方針を変更するいささかの理由も一ないと私は考えております。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 防衛庁長官としては、この事態で防衛庁の中の何か防衛力の計画とか、あるいは作戦計画というのがあるかどうか知りませんが、そういう問題について何らかの変更とか、この事態に対処する具体的な新しい動きというものがあるのですか、お伺いします。
  54. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) お答えいたします。  中共が核実験をしましたその後において、わが防衛庁として何ら新しい方法と申しますか、情報は聴取しておりますけれども、検討をいたしておりません。それと申しますのは、御承知のとおり、核実験が行なわれましても、これが核として装備されまするまでには、なお数次の実験改良が加えられていかなければならない。また輸送手段等の開発についても、相当の年数がかかるといわれております。核装備が行なわれましても、わが日本の防衛の方針といたしましては、従来どおりの方針を堅持する。それは核が本来抑制兵力としての意味を持つものであり、日本としては安保体制による日米共同防衛の体制によりまして、核はアメリカに依存をするという方針でまいっておりますので、今後といえども、たとえ将来中共が核装備をするようなことになりましても、日本としての防衛計画の方針は何ら変わるものではないという見解をとっておる次第であります。
  55. 羽生三七

    ○羽生三七君 あの核爆発の直後、放射能からその規模とか性能とか、いろいろ測定した資料が新聞に出ておりますが、科学技術庁ではそういうことについてどういう事情をキャッチされておるのか、さらにその開発のテンポというものについても一応の想定があるのか、この点をお伺いいたします。
  56. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 中共の核実験が行なわれましたのは十月十六日でございますが、この影響でありますが、かねて政府といたしましては、放射能対策本部というものを二、三年前からつくっておりますので、関係各省庁が協力いたしまして放射能の検出を行なったわけでございますが、十八日以降、東京において一日一平方キロメートル当たり数十から百数十ミリキュリー程度の放射能が降下いたしております。で、これらの値は、中共の核実験以前に放射能が一カ月当たり二十ないし三十ミリキュリー程度降下しておったことに比較いたしますと、明らかに高い値になっておるわけでございます。しかし、その後この値は漸減いたしまして、二十八日現在では一ないし五ミリキュリー程度に低下いたしておるわけでございます。これが放射能の検出の結果でございます。  中共の核実験というものがどの程度のものであるかということについては、的確に調査をする方法がございませんので、アメリカの原子力委員会の発表、調査その他があるようでございますが、現在のところ、新聞報道等によってこれを知るだけでございまして、特に的確な情報は持っておりません。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 問題を少し具体的に進めてみたいと思いますが、さきにもちょっと触れましたが、中国を国連のワクの外に置いて効果的な軍縮が実現できるかどうかという問題であります。問題は、この中国の核爆発に単に抗議をしたり反対をしておるだけで解決する性質のものではありません。だから、問題は、このような拡散防止を全面禁止まで持っていくにはどういう努力が必要かということになると思いますが、そういう立場から、来たるべき国連総会に臨む日本の対中国政策はどのようなものであるのか、これをお尋ねしたいと思います。  というのは、若干、きょうの新聞によりますというと、国連総会の時期が延期されるようでありますが、それにしても近く開かれることは、これは間違いありません。これは内閣が近く交代しようとも、いまから準備しなければこれは間に合わない、喫緊性を持っておる問題でありますので、少なくとも外務省でも何らかの検討、作業をなさっておると思う。ですから、本年度の国連総会に臨む、特に中国問題を中心としての外務省の国連対策をお伺いいたします。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の中共の核爆発によって中国国連加盟の論議が盛んになることは、ほぼ予想されるところでございますが、それは一方においては、これをワク外に置くということよりも、ワク内に入れて、そうしてこの核実験の抑制をはかったほうがいいではないかという議論、それから一方におきましては、やはり今回の核実験はいわゆる中共の好戦的な性格を一そう如実に示したものである、であるからして、国連加盟などとはそれは思いもよらぬというような意見、両方きわ立ってきているのでございます。したがって、この加盟問題の論議がやかましくなるということは、これはもう当然認めざるを得ない事実でありますけれども、さればといって、中共の加盟問題に対して従来と著しく違った分野がここに生まれるというようなことは、まだ私は決定することは即断である、かように考えております。わが国といたしましては、中国の国連加盟ということは、同時に中華民国政府の問題にも関連いたしますので、従来きわめて慎重にこの問題に対処してまいったことは御承知のとおりでございます。いずれにいたしましても、国連総会に対する態度といたしましては、やはりこの問題は重要問題であるという見解をもって来たるべき総会に対処したい、かように考えております。
  59. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、いまのお話は、具体的にいうと、今度の国連総会で、日本は中国問題については今回もまた三たび重要事項指定の当事国になろうとするのか、あるいはその同調者になろうとするのか。いずれにしても、重要事項指定という従来の方針を今回の国連でも継続するということですか、具体的にお答えいただきたい。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 重要事項問題として取り扱うことに賛成する側に立ちたいと考えております。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 これだけ世界が大きく変化して新しい局面打開の道を求めなければならないときに、いま明白に重要事項指定の当事国にはならないと思いますが、その同調者ということではっきり言われたのですが、これはまことに遺憾であります。  そこで、お尋ねしたいことは、この重要事項指定ということを二つに分けて考える必要があると思います。その一つは、中国問題が重要である、重要な問題であるということと、国連における重要事項指定ということとは、本質的に意味が違います。なぜならば、この日本政府考えておる、あるいはまたこれに同調しておる諸国の重要事項指定というのは、特に国連の場における、これは実質的に中国の国連加盟のたな上げを意味しておる。先ほど大臣がお答えになったように、台湾、中華民国の関係もあるので重要だと言われましたが、そういうことが非常に重要な問題であることは私たちも知っております。いきなり、おいそれと簡単にいくものでないことは、それはわれわれもよく承知しております。したがって、中国問題が国際政局の中でも非常に重要視されておるということと、国連の場において重要事項指定の当事国あるいは同調者となることとは、本質的に違うんです。ですから、その重要事項指定という場合には、当然中国の国連加盟をたな上げにすることを前提にしておる。そういう場合でも、やはりこの見解をお変えになることはないのですか。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の規定に従いますと、手続問題以外はすべて重要事項としてこれを取り扱っておるのであります。そこで、手続問題以外はすべて本質的に重要であるかどうかということと、取り扱い上重要事項であるということとは、おっしゃるとおりその内容において軽重の差があることはもちろん了解できるのでございますが、取り扱いの問題としては、手続上の重要事項、取り扱い上の重要事項一それから実質的の重要事項、これは一様に取り扱われておるのでございます。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういう技術的な問題を質問しておるんではなく、日本の基本的な考え方をお尋ねしておりますが、もう一つ技術的な問題を、これは大臣がわからなければ外務省のだれかでもよろしいのですが、重要事項指定というのは、前回のは生きておるという解釈ですか。つまり継続しておる。前の国連で討議された重要事項指定ということはそのまま継続されておると考えるのか、あるいは新たにこれを新しい問題として提案をするのか、その辺は今度の場合はどうなりそうですか。関係説明員からお答え願います。
  64. 星文七

    説明員(星文七君) 第十六回総会で決定されました中国代表権を変更する問題は重要事項であるとして、いまなお有効であるという立場をとっております。
  65. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、私がさらにお尋ねしたいことは、この重要事項指定という場合に、いい悪いは批判をいたしません。そういう方針で、いままでどおりの継続という形で対中国問題を国連の場で進める場合、次の問題があります。日本自身が自主的にどういう外交政策をもって臨むか、これが非常に重要なことであります。というのは、中国問題は重要であるから、世界各国が大いに討議してもらいたい、その討議できまれば日本はそのあとについていきます、こういう方針一つあります。中国問題は非常に重要であるから、大いに世界各国が国連の場で討議してもらいたい、討議した結果何か結論が出れば日本はそれに同調します、これも一つ方針です。もう一つは、重要問題であるから、日本はかくかくの方針をもって国連対策を進めるという、つまり私の表現をも一つてすれば、国際情勢待ちなのか、あるいは日本自身が独自の外交方針をもって、国連の場でこの局面打開はこうすべきであるとか、そういう何らかの具体策を持って国連に臨む場合と、日本には何にもない、いい知恵がないから、世界がいい知恵を出してくれれば、きまったことに日本は従っていくという二つがあるわけです。でありますから、具体的に一体日本としてはどういう方針をもって——お隣の国で、しかも長い歴史的な関係を持っておる。その主義や体制をここで言っておるわけじゃありません。外交というものはそんな感情や主義や体制の問題で片づける性質のものではありませんから、そういう意味で、特にお隣の中国に対して日本自身としては具体的にどういう方針をもってそれで国連に臨もうというのか、これは技術論じゃありませんよ、基本的な姿勢の問題ですから、外務大臣にお伺いいたします。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来、重要問題として取り扱うという立場において、日本が国連において対処してまいったのでございます。これは要するに、ただ技術上の問題でなしに、日本の実質的外交の方針がこれに合致するからさような態度をとってきたものとわれわれは了解しておるのでありまして、従来の日本のこの外交方針にこの際変更を加えるべき理由は何もない、かように考えております。
  67. 羽生三七

    ○羽生三七君 ただいまの御答弁はまことに私は遺憾と思います。というのは、おそらく、私の想像では、アメリカもにわかに態度を変えることはないでしょうが、ジョンソン大統領が圧倒的な勝利を得るようなことにでもなれば、またその国際外交上に若干の変化が起こらないこともないと思う。まあ国連でかりにたとえ重要事項に指定しようとも——私は指定には反対ですが、かりに指定しようとも、大多数の国が賛成して中国が国連加盟を認められた場合に、その場合に日本が実質上の中国の国連加盟を阻止する、たな上げ方式に賛成をする、つまり実質上は中国の国連加盟には反対ですね、裏返しをすれば。そうはやったが、世界の大勢は中国の国連加盟を認めるようになった。その場合に、あとからついていくのと、日本が積極的にやはり国連加盟についての賛意を表することというのは、根本的に意味が違う。しかも、長い将来を私は考えた場合、日本と中国との長い将来を考えた場合に、私は、そういう優柔不断で、しかも棄権をするならまだいい、重要事項指定の当事国にならない場合でも、投票の場合に棄権をするならまだいい、それが積極的に投票をして実質上のたな上げをねらうなんていうことは、非常な私は拙劣な外交だと思う。なお御見解を変えることはないんでありますか。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまの段階においての方針を申し上げたのでございますが、もし将来の問題でございますれば、もちろん情勢は絶えず流動するのでありますから、外交政策もそれに従って適当にかじをとってまいらなければならないと考えるのであります。ただいまの段階におきましては従来の方針を変更する必要はない、かように考えております。
  69. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういうやり方で、私は、池田外交というものが三本の柱と言いましたが、実際一本欠けて、文字どおり二ホン外交になってしまう。もうはなはだ遺憾であります。こんなことで重要なアジアAA諸国との親善関係を強化できるはずがない。まことに遺憾であります。  そこで、私はさらに質問を続けたいと思いますが、先ほども触れましたように、中国の核爆発から国内にいろいろな論議が起こっておる。特に一部には、これを契機に、日本の安全保障ということから、日本の安全保障という立場での論議がかなり活発になると思います。ところが、私が先ほど申し上げましたように、外務大臣はそういうことはないとはっきり言われましたけれども、しかし、与党の一部にはこれを契機に日本の防衛計画をさらに前進させようという計画があることは、考え方があることは間違いありません。ところが、私はこの場合、緊張や危機を拡大するような考え方は一切これをとりません。  そこで、申し上げたいことは、アメリカのいまのアジア政策は問題の解決を促進するどころか、その解決を一そう困難にして、矛盾を拡大しておる。際限のないどろ沼と迷路に入っているのがいまのアメリカの外交、特にアジア外交であります。したがって、安全保障の論議も、従来のようなただ単純に軍備の増強に求めるという、こういうことで解決される問題でもないし、またそういう時期でもないんです。そういう段階でもない。  かつて池田総理も、また椎名外務大臣も、日米安保条約があったから日本は安全だと言われたことがあります。私はそうではないと思う。安保条約があったから安全なのではなくて、安保条約を発動するような客観的条件がなかった。問題はそこであります。安保条約の発動を、日米安保条約の発動を必要とするような客観的情勢が存在しなかった。これは日本自身の問題を取り上げた場合であります。これを具体的に申し上げますと、日本それ自身を対象として、日本自身を対象として他国から理由のない攻撃や侵略が加えられるような条件は、今日私は日本に存在していないと思う。私は将来、永久ということばは使いませんが、今日ただいまのところ、日本がいわれなく他国から攻撃、侵略を受けるような条件は存在していない。もし日本に何らかの危機があるとすれば、それは何でありましょう。それは日本にかかわりのない他国と米国との紛争に日本が基地を提供していることです。ここから危機が起こる。でありますから、この実態を認識しないこの安全保障論議というものは、私は無意味だと思う。昔ながらの、一世紀前、何世紀前からの防衛、祖国安全、自国の安全保障、こういう問題で、単に自衛力を増強すればそれで安全だ。相手が核爆発をやったからこっちも持たなければいかぬとか、あるいは一そう防衛力を増強しなければいかぬとか、そういうことが安全保障につながる道ではありません。危機の実態はいま申し上げたとおりであります。日本にかかわりのない事態日本が介入したときに起こる。今日ただいまアジアのどこの国を見ても、理由なく日本に攻撃、侵略を加えるような条件はほとんど存在しておらないと思う。そういう事実を認識して日本の安全保障というものを考えるべきだと思う。この問題について外務大臣はどうお考えになりますか。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安全保障条約の存在が危機の発生を未然に防止しておる。しかし、そうではなくて、基地の提供がむしろ今日以後の危険を招来する原因である、こういう御議論でありますが、はなはだ遺憾でありますが、根本的に所見を異にするものでございます。
  71. 羽生三七

    ○羽生三七君 では、具体的に——外務大臣、それは抽象論ではそういうことは成り立ちますよ。具体的に日本に何か危機が存在しておるのですか。他国が侵略を、日本に攻撃を加えてくるようなそういう実態が日本にありますか、日本を取り巻く国際情勢の中に。具体的にお答え願います。
  72. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その論議には私は入りたくございません。ただ、安全保障条約体制というものが一切の危機の招来を未然に防止しておる、かように考えております。
  73. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう全然、何というか、本質的に外交なり防衛の考え方というものが、今日の、従来のいろいろな核兵器の発達あるいは各国の最近の動向等を総合的に判断しての日本外交というものはほとんどないということを私ははなはだ遺憾に思いますが、そこで、私が申し上げたいことは、日本は世界でただ一つの被爆国であります。日本政府はただ消極的に、先ほどお話のあったように、核兵器は持たないというだけでは全然問題の解決になりません。積極的に今日の核兵器、人類破滅兵器のもとにおける新しい安全保障のあり方というものを考えなきゃいかぬと思います。その場合には、まずどういうことが考えられるのか。私は具体的に申し上げます、抽象的なことを言っておっても始まりませんから。一つ一つ申し上げます。  日本と中国との国交正常化と中国の国連加盟の促進、これが一つであります。さらに、日本と中国との相互不可侵条約の締結、さらにソ連との平和条約の促進と相互不可侵条約の締結、中国とソ連、その次に、これはかなり理想論的なことになるかもしれませんが、日本、アメリカ、中国、ソ連、日米中ソの四カ国による太平洋集団安全保障体制の確立であります、とりきめであります。これらの条件をつくり上げるために積極的な外交的努力が望ましい。これは武力にかわる、武力のみの安全保障を考えている、そのお考えに対する私たちの対案です。ですから、そういう具体的な政策をもって、そしてこの世界の緊張の緩和にどのような寄与をするか、これが問題なんであります。  この場合に、たとえば日本国会なり政府自身が非核武装の宣言をしてもいい。核非武装地帯の設定ということも、私は非核武装の宣言なりを日本政府なり国会がまっ先にやって、それから中国に抗議したら、はるかに有効になる。でありますから、この国際緊張の緩和ということが軍事力の増強や力の均衡の拡大で達成される問題ではないのであります。逆であります。これは、だから、力の均衡の拡大ではなしにこれを縮小しなきゃいけない。力の均衡を縮小していかなきゃならぬ。池田さんの経済は拡大均衡ですが、この問題は縮小均衡でなきゃいけない。だれでも、わが社会党も祖国を愛する点において自民党に劣るとは思いません。われわれも祖国を愛しております。だから、いままでの古い防衛観念だけが愛国者という考えはやめていただきたい。われわれは祖国の平和と安全を願うためにこそ、いま私は具体的な提案をしておる。そんな抽象論じゃありません。でありますから、こういう立場に立っていままでのような戦略体制あるいは防衛観念、これは完全な曲がりかどに来ておる。曲がりかどどころではない、そういう時代は去っておる。したがって、私はいま抽象的な平和論を述べたのでなしに、具体的な提案をしている。そういうことを積み上げていって初めてこの核兵器や武力を持たないで日本の安全保障が保たれるのではないか。どうでありますか。
  74. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまの世界の平和は何によって成り立っておるかと申しますと、私はやはり力の均衡であると考えます。永世中立国であるスイス等の状況を見ましても非常な国防費を使っておるのでありまして、全く力の均衡による平和維持ということが今日において、はなはだ遺憾ではありますが、現状であると考えます。でありますから、この現実から漸次前進をして、そして理想的な平和世界を建設するということは大いに考えなきゃならぬところでございますけれども、この現実を非常に飛躍して一がいに平和機構をつくり上げようとしても、これはなかなか困難ではないかと私は考えるのでありまして、そういう意味から申しますと、やはり軍縮、全面軍縮というものに向って着実に前進するという道筋をたどる以外にはないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 何かというと必ず現実的ということばを使われるのですが、既成事実を固定化して、合理化して、それが現実的だという考え方を私はとりません。それから、国連における軍縮会議の軍縮の促進はもちろん賛成であります。ところが、日本は十八カ国軍縮委員会にも参加できない。それから、日本が積極的に具体案を国連で示したという事実も聞きません。ただ、世界の平和のために早く軍縮ができればけっこうでありますというきまり文句を、そのつどの国連総会で言うだけで、何ら具体的な提案をしておらない。なぜ具体的に、たとえば国連でもこういうふうにやったらどうか、また国連でできない場合はわが日本は、いま私が申し上げたように、アジア地域において具体的にこういう考え方で進むという、そういう積極性が何も日本の外交にない。私どもの求めているのがその積極性であります。  そこで、この日本は経済的には確かに、格差やひずみがありますけれども、かなり高度な経済成長を遂げたことは事実であります。ところが、先ほど申し上げたように、経済的には日本は非常な発展はしましたが、ある意味においては日本外交は不在である、存在しておらぬ、こう言っても私は決して過言ではないと思います。  これは私の最後に申し上げることは、時間がありませんから結論いたしますが、いささか意見にわたるかもしれませんけれども、私は、アメリカの軍事資本家は平和共存をおそれているのではないか。アメリカの軍事資本家は平和共存をおそれておる。なぜなら、平和共存や軍縮、核停はアメリカの軍需産業を脅かすからであります。アメリカ経済の中に構造的にまで深く根を下したこの軍需生産を、平和産業に転換することはなかなかできない。そういう背景のもとで私はケネディ大統領は暗殺されたと思う。私はそう信じております。でありますから、この世界平和のためにいまこそアメリカは良識を取り戻さなければいけない。日本自身も古い防衛観念から脱却して、率直にアメリカに直言して、軍事力だけによるこの国際紛争の解決というものを変えさせるような努力をすべきであると思う。私はこの場合、主義としての資本主義、あるいは経済上の自由主義、その問題を云々しません。池田総理あるいは椎名外務大臣がアメリカを好きであろうと、アメリカの資本主事、自由主義を正しいと思おうと、それは自由であります。個人の自由であります。われわれがかれこれ容喙すべき問題ではない。しかし、それにもかかわらず、問題はアメリカの軍事政策と世界戦力、そういうアメリカのいまの際限ない、ベトナム問題一つ見ても、これは解決できません、際限のない泥沼です。いよいよ危機を拡大するだけです。そういう場合、もっと日本の外交が自主性を持ってアメリカに直言をする、そういう意味の自主性が望まれるのでありますが、どうでありますか。
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカの軍事関係の資本家が軍縮あるいは核停条約を望んでおらぬというような御所見は別といたしまして、他の御所見については全く賛成でございます。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間が来ましたので、もう一問で終わりますが、いま申し上げたような諸問題を、特に対中国の核爆発に抗議する場合でも、私はやはりアメリカの原子力潜水艦の寄港を日本が認めて、それで中国に核爆発をやってはいかぬと言っても、これはなかなか真実性を持たぬので、寄港するのはこれは核弾頭を装備していない通常の潜水艦だ、こう言われますが、日本国民は非常に疑っておる。昨日の学術会議では安全性はないと言っている。疑わしいと言っている。だから、私は日本に寄港するアメリカの潜水艦、原潜がみな核装備しておるとは毛頭申しません。そうでないやつもくるでししょう。しかし、それにもかかわらず、みな疑っておる。でありますから、そういう事態の中に置いておいて、この問題の解決になりませんので、日本がやはりアメリカ原子力潜水艦の寄港を断わりながら、同時に、中国に、日本はこうするからあなたのほうもやめたらどうかというなら、より合理性が出てくる。もう一度アメリカ原子力潜水艦の寄港についてお考え直す意思はありませんか。  それともう一つ、香港に寄ったアメリカの原子力潜水艦シー・ドラゴン号、それから近く佐世保その他に寄港するように聞いておりますが、最近の実情について承りたい。
  78. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもうたびたび申し上げているように、原子力潜水艦はただ推進力に原子力を用いているというだけにすぎないのでありまして、核爆発の問題とは全然性質を異にするものでございますから、これと引きかえに交渉するというようなことは、これはナンセンスだと、私は考えます。  それから香港云々のことでございますが、私はまだそれは存じません。日本の佐世保、横須賀に対するいろいろな事前調査につきましては、そろそろ完了するばかりになっております。完了いたしましたならば、直ちにアメリカに報告いたしまして、向こうの行動の参考に供したいと、こう考えます。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの点は、この前の外務委員会で、大体完了したという通報をするので、近く原子力潜水艦の寄港を積極的に期待すると、あなたはおっしゃいましたが、アメリカの決意を促す、寄港することに決意を促すと言っておられましたが、あのときは、二十七、八日ごろのように想定されておったようですが、その点は、先に通告して、もう日取りはおよそきまっておるんじゃありませんか。
  80. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ことばがへたなものですから、決意を促すと、こう申し上げましたが、言い直しまして、来たいというならいらっしゃいと、こういうふうに言おうと、こう言い直したのでございます。  それから大体予定された事前調査は完了しているはずでございましたが、たまたま中共の核爆発の問題がありましたので、その点も、この際事前に調査いたしまして、そして事後の調査と正確に比べる必要がございますので、これを追加的にただいま実行しております。ほぼ今月一ぱいくらいには完了する見込みでございます。
  81. 藤田進

    藤田進君 関連して。重要な問題についてその議論に入りたくないということの点について、まず第一に質問いたします。  それは、わが国がいま他国から政撃を受けるような状態にあるのかどうか。その議論に入りたくない。しかし、これは本年の、三十九年度の予算審議関連して、当委員会においても明確な政府から答弁のあった問題であります。原子力潜水艦の寄港あるいはラオス、ベトナム戦線等、なるほど三月以来かなり情勢の変化は認めます。したがって、当時の答弁と違った見解政府はお持ちであるがゆえに、これが内容に入りたくないというふうにも聞こえるわけであります。防衛庁長官並びに外務大臣に対して、この点、わが国が現在——遠い将来のことは論じません。他国から攻撃を受けるような状態にあるのかないのかお伺いをいたしたい。  第二点は、赤城農林大臣並びに外務大臣にお伺いしますが、当予算委員会は、先般八月十日、東京を出発いたしまして、李承晩ライン等に関連する対島等に調査団を派遣いたしました。私もその調査団に参加してまいりましたが、まことに李承晩ラインないし韓国のやっていることは遺憾にたえない。これに対する政府の対策は、保安庁等についての予算といい、巡視船の実態といい、何をやっているのか、ほんとうに遺憾であります。ところが、本日、農林大臣も一韓国の代表とお会いになったそうですが、経済援助等については若干——先般衝突してわがほうの漁船を沈めると、まことにわれわれこれを黙過することのできない事態が起こった。関連して、農林大臣は、暫時、世論等の動向もあり、漁業交渉とか、その他とても入れない。椎名外相も、世論という前提のもとに、交渉についてある種の態度が出たように私は思う。現状において、これらについてどのように交渉を進めるのか進めないのか等を含めて、態度を明らかにしていただきたい。
  82. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど、現段階において、国内に危険が存在するかどうかという御質問に対しまして、入りたくないというあいまいな表現を申し上げまして、まことに恐縮いたします。これは治安、あるいは防衛庁のせっかく所管でございますので、私はこういう問題について、入りたくない、こう申し上げたのであります。
  83. 藤田進

    藤田進君 じゃあ、いきなり武力でやっているんですか、日本の外交は。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それから李ラインの問題、たびたび漁船が拿捕されることはまことに遺憾でございます。これもわれわれは、李ラインというものは、国際法上、あるいは国際慣行上認めがたい不法、不適当なものである。しかるに、向こうは、これは当然の平和ラインである、こういう主張をしておるのでありまして、そこに根本的な食い違いがあるのであります。これらの問題は、やはりしんぼう強く漁業会談によってこれを打開する以外には方法はない、何となれば、われわれは実力を行使してこれを排除するわけにいかぬのであります。したがって、経済援助の問題とこの問題とは、おのずから性質を異にする問題でございますので、これらの問題にかかわらず、先般二千万ドルの経済援助をやった、こういうわけであります。
  85. 藤田進

    藤田進君 軟弱もはなはだしいじゃないですか、日本の同胞が……。
  86. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御指摘のように、韓国との間で、わが国の漁船及び漁民等を拿捕するというのはまことにけしからぬことと、私も考えております。でありますが、漁業の交渉というものは、これは原則的には進めるべきものだと思っておりますが、こういう拿捕の問題をしないということでなければ、入りにくいと、私は思っております。原則としては、漁業の問題を鮮決していくということは必要だと思います。ただし、いまのような状況では困りますから、そういう拿捕などをしないというようなことであれば、漁業の交渉に入っていきたい、こういうふうに考えております。
  87. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 現在、わが国が周囲から何らかの脅威を受けているということはございません。   —————————————
  88. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 井川伊平君。
  89. 井川伊平

    井川伊平君 北海道の冷害関係について質疑をいたします。  まず農林所管関係について、大臣または食糧庁長官等よりお答えを願いたいと思います。  北海道の本年の冷害については、食糧庁当局においてはすでに御調査になっておられまするし、また衆参両議院におきましても、災害対策特別委員会が、現地について、または関係当局と話し合って詳細な調査をしており、しこうして、去る十月の十六日の、参議院災害対策特別委員会は、その調査報告を受けておる次第であります。それで、秋は質疑の内容を簡素にいたしたいという観点から、次のような御質問を申し上げたい。  農林大臣または食糧庁長官におきましては、この参議院災害特別委員会報告内容について、十分御理解を願っておるとは存ずるが、その報告の内容は、食糧庁等においてなされましたる結果とほぼ同様のものである、こういうような御見解であられようと存じ上げますが、そのようにわれわれは理解してよろしいかどうか、お答えを願います。
  90. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十月十六日の、参議院におきまする委員長報告の被害額は、そのとおりであるかということでありますが、その時点においてはそうでございます。その後におきましては、御承知のように、統計調査部で、十月十五日現在で調査を目下とりまとめ中であります。そういうようなその後の状況がございますが、その時点においてはそのと、おりであります。
  91. 井川伊平

    井川伊平君 この報告に含まれていない二つの大きな、北海道におきましては農業被害が起きております。その一つは、九月二十八日の大霜の被害であります。その二は、去る十月二十五、六両日の大雪の被害であります。この二つの問題についてお伺いするわけでありますが、霜の降りました地域、雪の降りました大体の地域については、どのように理解していいか。それから雪の降りました雪の量、これは大体どの程度のものであるか、それから霜、雪の農業被害をこうむった作物の種類及びその程度等につきまして、お伺い申し上げます。
  92. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その後に、九月二十八日に霜がおりております。なお十月二十五、六の両日に雪が降っております。その被害の地域あるいは被害作物の種類、程度はどうであるかということでございますので、お答えいたします。  九月二十八日の霜による被害は、前に申し上げました十月十五日現在調査の中に含めて、目下取りまとめ中であります。十月二十五、二十六両日の降雪の被害については、次のように申し上げたいと思います。十月二十三、二十四日から二十五日にかけまして、北海道の西部地域にかなりの降雪がありました。主として地域的に見ますと、石狩、空知、留萌の日本海側及び上川地方、石狩、沼田では二十九センチ、滝川では二十六センチ、岩見沢では二十センチの積雪を見ました。この雪によりまして、農作物の被害につきましては、目下調査中でありますが、被害を受けたおもな農作物は水稲、豆類、てん菜、果樹、野菜、牧草、ゲントコーンとこうなっております。
  93. 井川伊平

    井川伊平君 次に、米価の時期別格差問題についてお伺いをいたします。言うまでもなく、最終早場米の供出の期日は十月二十日でございましたが、北海道は冷害のために、十月三十日まで十日間の延期をいただいておるわけであります。しかるに、その後の供出状況を見ますると、はなはだ供出状況はかんばしくないのであります。これを昨年の同時期に比べてみますと、昨年の十月二十日までには四百万俵が供出されておりましたのに、本年は、その時におきましては七・四%すなわち二十九万俵に過ぎない現状であります。このことは、被害の深刻を物語っておるとともに、時期別格差の最終期日の十日間の延長がはなはだしくもの足らぬことを意味するものであると考えられるのであります。そうした上に、ただいまお答えをちょうだいいたしたように、本月の二十五、六日の大雪によりまして、まだ刈っていないところの稲は横倒しになってしまいまして、収穫に非常な困難を生じてまいりました。また、刈って干してありました稲は雪の下に埋まってしまったのであります。御承知のことと存じますが、雪の解けた水は雨水と粒位が違うのでありまして、物質に対しまする浸透の度合いが違っております。したがって、雪にぬれたものは雨水等にぬれたものよりかわきにくいのであります。こうした関係から見ると、時期別格差の最終期日をさらに延長の必要があるように存じます。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕  農民の怠慢ではなく、天災の、天然の現象によりましてのこの被害に対しては、国が対策をすべきであると考えられるのであります。そして現在のところ、適当なる最終の期日はいつごろかと申しますれば、私はやはり十一月二十日ごろが最も適当であると考えておりますが、大臣はこの点につきましていかなるお考えをお持ちでございますか、お伺い申し上げます。
  94. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 時期別格差は、実はことしは二回にとどめようということであったのでございますが、今度の状況から見て三回、去年どおり踏襲したいきさつがございます。できることならば、時期別格差の延長は、延長したくないという方針で進んでおったのでありますが、北海道の冷害、東北、北陸等の状況もありましたので、最終的に最後のやつを延ばしたわけであります。十日延ばしました。ところが、その後雪が降りましたので、その十日の期間内になかなか米が出てこないという状況がございますが、いまお話しのとおりでございまして、さらにこれを延長するかどうかにつきましては、目下検討中でございます。いま直ちにどうこうということは申し上げられませんが、検討いたして事態に即するようにしたいとは考えておりますが、いま検討中であるというお答えをいたしておきます。
  95. 井川伊平

    井川伊平君 次に、種子の獲得及び補助の問題についてお伺いを申し上げます。本年の北海道の冷害が、来年度の種子入手にまで相当困難を生じておりますことはすでに御理解を賜わっておるところでありますが、入手代金の補助については、さらに一考をわずらわしたいと考えます。水稲種子については特に申しませんが、畑作物の種子入手の補助が三分の一となっておることはどうしても納得しかねる次第であります。その理由は、最も気の毒な農業経営の状態に置かれておる開拓農民はほとんど畑作でございまして、水田の側にはおりません。また、北海道のこの現状のほかに、これは一般的でございますが、畑作には農業共済の恩典がございません。こういうことを考えてみますると、この畑作農家のいわゆる貧農に対しまして、水稲の種子買い入れの補助率よりも畑作種子の購入の補助率を低くしておかねばならない、こういうような理由を納得しかねる次第でございます。私は、水稲種子入手の補助率の二分の一よりもさらに高度に、少なくとも三分の二の補助が必要であると考えるが、この点につきましての御見解を承っておきます。
  96. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 種子の確保につきましては万全を期したいと思います。補助率につきまして、いま申し述べられたような事情があると思います。稲作よりも畑作のほうが分が悪いという事情は私も承知しております。そこで、三分の一補助を三分の二にせぬかという御意見でございますが、水稲の二分の一ぐらいまではいま交渉さしておりますが、三分の二まではちょっと困難であると思います。
  97. 井川伊平

    井川伊平君 次に、本年度産米を考えますると、未成熟による青米の混入する規格外の玄米が相当生産されるであろうと、かように考えます。御当局のお見通しはどうでございましょうか。しこうして、ごれらの玄米に対しましては、何か特別の御試案があるやに承っておりますが、その点に関しまする御見解を承っておきます。
  98. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは事務当局から答弁さしたほうが適当かと思いますが、水分過多のものに、それに等級を設けてそれを措置したい。それから、青米混入のものにつきましては、試験をいたしましたが、試験をいたした結果、買い上げてよろしいというような結果が出ました。でありまするので、それを買い入れの対象にするということであります。告示をすでにしておるのもありますし、告示をいましょうとしておるものもあります。
  99. 井川伊平

    井川伊平君 次に、お返ししなくてはならない予約金の返還の問題でありますが、来年度幸いに平年作がとれましたといたしましても、来年一年で本年度返還すべき分全部を返還せねばならないといたしますると、営農に支障を生じてきます。よって、四十年、四十一年、四十二年度の三年ぐらいに返還せしめるような方法を講じてはどうかと存じますが、さような点につきましてのお考え方を承っておきます。
  100. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 米の予約金の延納の問題でございますが、これは御承知のように、集荷業者から一括して代位弁済をさしております。現実の農家についてはどうかというと、農家と集荷業者との約束でございますが、これは大体三年ないし五年延納をすることは、前にもそういう例がございますので、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 そういう指導をいたしております。そして三年ないし五年延納した場合の利子につきましては補給する、こういうことで措置をとりたいと思っております。
  101. 井川伊平

    井川伊平君 次に、現在わが国の産業発展の途上におきまして、低所得で悩み抜いておる農民に対する天災及び激甚の金融面においては、いま少し考え直す必要に直面しておるのではないかということについて御意見を伺う次第であります。すなわち、天災融資については、北海道におきましては、一戸が最高二十万円となっていますが、これは五十万円、弁済期限五年となっておりますのを七年ぐらいに、また、利息も一相当高いのでありますが、これらについても緩和する必要があるのではないか。激甚災害におきましては、一戸五十万円を七十五万円、期間七年を十年に、その他利率の問題につきましてもさらに考慮する必要があるのじゃないか。また、自農資金の貸し付けについても、災害対策の貸し付けにつきまして条件の緩和が必要と思われるが、これらについての御意見はどうか。いずれも法の改正をいたしまして、もって所得格差の是正に資せしめる、あるいは離農ムードの防止に資せしめる、こういうようなお考え方はないか。特に本年の冷害に直面いたしましてこういうような改正の必要を痛感するのでございますが、これを改正するとともに、その施行を遡及いたしまして、本年度の冷害対策の一環としてこれを行なう御意思はあるかないか、また、どういうようなお考えを持っておるか、お伺いいたします。
  102. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 天災融資法につきましては、これまでの政令の施行におきまする経験及び一般の農家経済事情の変化等を勘案いたしまして、被害農民漁業者等の実態に適した貸し付け限度額の引き上げ及び農業生産法人については、その経営規模が個人より大きいので、特別の貸し付け限度額を設けることにいたしたいと思います。また、貸し付け金利の引き下げにつきましては、金利水準の変遷及び他の制度金融におきまする金利とのバランス等も考慮し、償還期限の延長と据え置き期間の設定につきましては、貸し付け限度額の引き上げとの関連で検討いたしております。また、激甚災害法につきましても、天災融資法の貸し付け限度額の引き上げとの関連におきまして所要の変更が必要なものと考えております。これらを、できまするならば臨時国会に提案したいと、こう考えております。臨時国会で提案ができなければ通常国会でございますが、できるだけ臨時国会に提案いたしたいと準備いたしております。これらの法律が通過した場合に遡及して今度の冷害に適用するかどうか、私は適用さしたい、こう思って検討を進めているのでございます。  なお、自作農維持資金融通法を改正するかどうか、こういうことでございますが、この点につきましては消極的でございます。というのは、貸し付け限度額におきましては、本年度から災害資金を貸し付ける場合には、五十万円まで貸し付けできるよう限度額を引き上げたのでございますので、いまこれも限度額を改正しようという気持ちは持っておりません。なお、償還期限とか利率につきましては、本資金は、現行農業金融体制の中では比較的有利な条件のものと考えておりますし、また、本来、本資金は、災害のみならず、疾病その他を対象とする農業者の経営事情のための資金として制度化されていることでもありますので、償還期限、利率等はこの観点から検討する必要があるものと考えられますので、当面、現行の条件で対処していきたい、自作農維持資金はそういうことで考えています。
  103. 井川伊平

    井川伊平君 次にお伺いしたいことは、当然のことで念を押すようになるかもしれませんが、すでに農業経営者で借り入れておるいろいろの資金の弁済期の到来しているものがあります。その支払いのできない現状にありますことは冷害の結果当然でございますが、これらの支払いの延期についてはどういうような御考慮を賜っておるか、総括的な、かつ、具体的な御意見を承りたいと存じます。
  104. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 延期のできるものは延期をするし、延期のできないものは借りかえというような形で、できるだけ長くしていきたい、こういうふうに考えております。
  105. 井川伊平

    井川伊平君 総務長官に一つだけお伺いしておきます。  北海道における冷害のきわめて激甚でありましたことについては御了承賜わっておると存じますが、激甚災害の指定はいつごろになる見通しであるか、また、現在はどういうような過程の上にあるか、詳細に承りたいと存じます。
  106. 臼井莊一

    説明員(臼井莊一君) お答え申し上げます。  北海道の冷害がきわめて甚大でございまして、まことに罹災者の農民の方方には御同情にたえない次第でございます。私どものほうの手元にまいっております農林省の被害報告は、九月十五日の分が三百二十七億余でございます。十月十五日の分がまだ未着でございます。もうおそらくまいるかと思うのでありますが、そこで、できるだけすみやかに激甚災害法の指定をしたい、こういうことで、その後、松浦運輸大臣等も事情に詳しいので、あちらに災害見舞いにおいでになられた報告を承りましても、五百億をこすであろうといわれておりますが、農林省の報告がどういうふうに十月十五日にまいるかはこれからでありますけれども、そこで、予定としては、十一月二日に中央防災会議の主事会議を聞きまして、そして六日の閣議にはおそくもかけたい、できればもう少し早めたいと考えておりますが、おそくもそれまでには決定いたしたい、こう考えております。一応お答えいたします。
  107. 井川伊平

    井川伊平君 次に、今回の冷害の結果、中小企業関係に間接的な大きな被害を与えております。このことについて関係当局のお答えを願っておきたいと存じます。冷害の結果、農民が、商店その他中小企業に対する債務の支払いが不可能になりましたことは、これは申すまでもないことでございます。そして、それではいつまで不可能であるかといえば、来年の収穫を得て、それがお金にかわったときまでは返されない、こういうようなことでございます。ゆえに、債権者の立場にある商店等中小企業者は、この年の仕入れ関係に始まりまして、来年一年間は非常に経営に経済上困難を来たすということになったのでございますが、これに対しまする当局の中小企業者に対しまするお考え方はどうであるかということを承るのであります。なお、数字についても承りたいのでありますが、ちょうど昭和三十一年度北海道でこうした類似の災害がありましたときの被害総額は四百億であったと思います。その際にも一、市中銀行の御融通、公庫、金庫と合計して約十五億の特別な御配慮がなされておる。本年は、いま臼井さんのお話では、だいぶ少ない数字のようでございますが、道庁当局等と話し合い、また、私自身も目で見てまいりましたが、六百億に近いところの被害ではないかと考えられる次第であります。かようなことを考え、どういうような手を打ち、どのような程度の策を講ずるのか、こういう点についての御意見を承りたいと存じます。
  108. 中野正一

    説明員(中野正一君) お答え申し上げます。  冷害によりまする農業の不振に伴いまして中小企業に影響があり、売り上げ高の減少、売り掛け金債権の回収難等によりまして経営内容が悪化するというように、間接的な相当の影響を受けつつあります。その詳細については、目下調査をいたしておりますが、これが対策といたしまして、まず、政府関係金融機関におきましては、地方当局と緊密な連絡をとりながら、弾力的な配慮をする態勢をとらせております。今後そのような影響がはっきりし次第、政府といたしましても、既往の債権の貸し付け期間を延ばす、あるいは新しく運転資金を借り入れるものについては特別の配慮をするというような、弾力的な措置を講ずるようにいたしたいと思っております。  なお、政府関係の金融機関についての下期の貸し付け規模の増額につきましては、先般三機関におきまして八百億円の増加貸し付けワクを決定いたしましたので、各機関の地区別のワクを新しくきめる際に、北海道地方の実情を考慮いたしまして、中小企業の金融の円滑に配意するよう指導していくつもりでございます。  なお、先生から御指摘のありましたように、三十一年の冷害のときは農業被害が約四百億でございまして、三機関が七億五千万円、民間機関が七億五千万円、合計十五億円の特別融資というものが実行されております。したがって、いま道庁でも、過去のそういう例も勘案いたしまして融資の要望額等を検討しておられますので、十分連絡をとりまして、適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
  109. 井川伊平

    井川伊平君 時間の都合もありますので、以下、簡単に要領だけを申し上げてお答をちょうだいいたしたいと存じます。  厚生関係についてお尋ねをいたすのでありますが、問題は、世帯更正資金貸し付け国庫補助金の追加交付についての問題でございます。北海道庁の調べによりますと、大体一戸について十万円貸し付けなければならないというものが三百世帯ある。これの所要資金は言うまでもなく三千万円であるが、そのうち一千万円は北海道庁において負担するが、二千万円は国の補助にぜひお願いしなければならね、こういうような考え方を持っておるようでございますが、この問題につきまして当局のお考えのほどを承りたいと存じます。
  110. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  ただいまのお尋ねの世帯更生資金につきましてはできるだけ要望に沿うこういう考え方でおりますので、ご了承を願いたいと存じます。
  111. 井川伊平

    井川伊平君 次に国民健康保険事業の助成措置についてお伺い申し上げます。  被害者の保険税は、住民税の減免措置にスライドして減免されることになると思います。そういたしますると、市町村歳入欠陥の財源補てんの措置の問題が生じてまいります。適当にこれは措置すべきものであると考えますが、その必要及びその方途、これをお伺いいたします。また、国庫の負担になるものにつきましては繰り上げて交付する必要があると思いますが、この点についてのお考え、さらに、冷害地域の市町村としましては、国保事業の運営上、相当困難を生じてくると思われますが、これに対しては長期低利融資の方途を講ずる必要があると思います。これに対しまする具体的なお考えをお伺い申しておきます。
  112. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答え申します。  ただいま井川委員のお述べになりましたようなたいへん心配な点がございます。厚生省といたしましてもそれぞれ調査いたしております。そこで、減免額につきましては、いま御要望ございましたように、調査をいたしまして繰り上げ交付をいたしたい、こう考えております。ただいままでに繰り上げ交付申請の市町村は百四十八でございます。金額にいたしまして、これは十月二十八日現在でございますが、二億九千万円ほどの金額になっております。これは十一月の上旬に国庫補助金の繰り上げ交付をいたしたい、こういうことで大蔵省と御相談いたしております。  なお、また、そのほかの御指摘につきましては、十分検討いたしまして、善処をいたしたいと思います。
  113. 井川伊平

    井川伊平君 自治省関係につきまして大臣にお伺い申しますが、冷害地域の公共団体では、税の減免、減収等によりまする苦境の中にありまして、なおかつ救済事業の実施、その他特殊財政需要が増大してまいります。したがって、財政運営上窮乏におちいることは十分に考えられるところでございますが、こうした考えのもと、救農土木事業並びに市町村単独事業及び補助事業、こういう面につきまして起債の許可をすることと、その充当の率を高める、こういう点につきましてはどういう御考慮をお持ちになっておりますか、この際御発表を願いたいと存じます。
  114. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいまの北海道の冷害に対する固定資産税あるいは市町村住民税等の減免の補てんにつきましては、特別交付税をもちましてみていくつもりでございます。なお、御指摘になりました救農土木事業等も相当必要だろうと思っております。これにつきましても起債をできるにけ認めていく考えでおります。
  115. 井川伊平

    井川伊平君 終わりました。
  116. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 井川君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  117. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 委員の変更がございました。豊瀬禎一君、米田勲君、亀田得治君が辞任をされ、その補欠として成瀬幡治君、小林武君、松本治一郎君が選任されました。  午後二時に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩    ————————    午後二時十六分開会
  118. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。向井長年君が辞任され、天田勝正君が選任されました。   —————————————
  119. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。木村禧八郎君。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最初に大蔵大臣に伺いますが、これまで大蔵省は、四十年度の予算の編成を行なってきているわけですが、新しい内閣になりまして、いままで作業してきている予算編成に大きな変化があるかどうか。もし非常に大きな変化が生ずるならば、ここで大蔵大臣——田中さんまた大蔵大臣をやられるかどうか知りませんが——質問しても全く意味ないわけですから、その点、新しい内閣になって、いままで行なってきた四十年度の予算編成の作業に大きな違いが出てくるかどうか、あまり違いがないのかどうか、この点について、まずお伺いしておきたいと思います。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自由民主党内閣でございますから、政策綱領は明らかにお出ししておるわけでございますし、総裁総理がおかわりになることによりまして、多少のニュアンスの差はあったといたしましても、これは方向を変えるものでないことは言うをまたないわけでございます。ただ、三年間で減税ができると考えていたものが、よく考えてみたら二年間でできそうだということになるかもわかりませんし、二〇%のお米の値上げを必要とすると言っておりましたが、二二%必要だというふうな方向になるかもわかりません。いずれにいたしましても、自由民主党の基本的な政策綱領を変えるものではないということは、けだし当然でございます。大体、議院内閣制であり、また、政党内閣でありますから、何か個人にウエートを置くということ自体が間違いであって、やはり総裁総理自由民主党総裁総理でございまして、総裁機関説ということもございますので、やはり総裁総理のウエートよりも、明らかに何百万党員の積み重ねによって非常に明らかにされておる政策綱領が優先するものだということでございますから、予算編成の大綱が変わらぬということは、これは社会党さんに置きかえてみても、同じことでございます。そういう意味では、全然そういう大筋が変わるということはございません。しかも税収その他によって、増税ができるかというと、増税というのじゃなく、減税の方向でございますし、また米といっても二〇%……。私も農林大臣に言っておりますから、新しい大臣がきても五〇%上げるわけにもまいらぬと思いますし、まあせいぜいできるものは、既定経費三兆二千五百億の中で既定経費の節約がどの程度できるかということに対しては、これは四年間やってきた内閣には情も移りますから、なかなか……ということもありますが、新しい内閣が、ひとつ気負い立って既定経費の一大削減をやろうか、こういうことぐらいは変わるかもわかりませんが、これとても私は、なかなか自分考えてみても、そう簡単にいくことではない、こういうふうに考えられますので、私がかわってから御質問なさるということであれば別でございますが、まあ自由民主党選出の大蔵大臣ということで御質問いただければ、答弁いたします。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで田中大蔵大臣は、一般会計における公債発行ですね、これは行なわないと、いわゆる健全財政でいくと。この公債発行の問題についてはどうですか。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年度予算編成のときも公債発行は行なわない、インベントリーの切りくずしも行なわないということを申し上げまして、そのとおりいたしました。それでもなお予算規模が大きいというおしかりを受けたわけでございます。四十年度のいま概算査定をやっておりますし、政策要求もたくさんございます。歳出の自然増加もございます。五カ年計画が後年度に入っておるとか、また社会保障費の十月からやったものは平年度になるとか、御承知の九月一日から行なうといたしております公務員給与も、来年は四月一日から平年度化されるわけであります。そういうものをずっと考えますと、歳出の自然増加要因も非常に大きいということでございます。が、少なくとも公債を発行するというところまでは私はいかないだろうと、次の内閣はだれになっても、私はきっといかないだろうと思います。  佐藤さんの場合を木村さんはきりと言っておられるかもしれませんが、佐藤さんも、公債発行などということを考えたことがあるようでありますが、その後、公債は発行しないほうがいいんですよと私が言いましたら、ああそうか、まあ現実的に財政を処理しておる君のほうが正しいかなと言っておりますから、私もどういう場合でも公債発行は大体考えないでいいだろうと、こう思います。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま佐藤さんの名前が出ましたが、佐藤さんは六月四日、自民党総裁選挙を前にしまして、毎日新聞の記者に総裁立候補の決意所信を語っているのです。その中で、はっきりと公債発行を考えてよいということを言っているわけです。時間がないから詳しく新聞の記事を引用しませんが、これは大蔵大臣田中さんも御存じのとおりです。かりにまた藤山さんがなるにしましても、藤山さんも、六月の六日、同じく毎日新聞の記者との対談で、やはり公債発行を主張しております。外国からの借金政策はやめて、国民の資本力に合った公債なり社債の発行を考えていくべきであるということをはっきり言われております。また、かりに河野さんが総裁になりましても、前にこの委員会で羽生委員質問に対しまして四兆一千億円の新道路計画にあたって、道路公債の発行が必要であるということを述べております、大蔵大臣はこれに反対の御意見でありましたが。ですから、佐藤さんになっても藤山さんになっても河野さんになっても、池田さん以外は、みんな公債発行論者であります。したがって、一般会計において公債発行ということは、これは大きな予算編成方針の変化であります。また、財政政策の大きな変化であります。したがって、この点について質問しているわけです。ですから、自民党としての大蔵大臣ですね、これは個人がかわってもその方針は変わらぬと言うのですけれども、この点は非常に今後重大だと思う。で、実は来年発行しなくても再来年また公債発行の問題が出てくるかもしらぬ。ですから、かなり長期的展望をも含めて、この公債発行の問題について御意見を伺っておきたいですね。これは自民党のかなり長期的な、基本的な政策としても伝っておきたい。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十年度の予算編成に際しましては、いま御指摘のありました三氏のうち、いずれも公債論者のようでありますが、しかし四十年度の予算編成を担当する総理大臣としては、時間的に見ても、内国債の発行を行なって、それを一般会計の財源とするといった政策を行なうということは、かたいことだと考えます。これは私がやめて別な人が大蔵大臣になったらということでありますが、そのときは、前大蔵大臣として党内においての発言もやりますから、私はいまの状態考えて、三人のうちどなたがおやりになっても、四十年度に内国債を発行するという事態は起こらないだろうというふうに想定します。  それから四十年度以降の財源問題として、公債を発行するかしないかという問題に対しては、これは党ではまだ確定的な討議は決定いたしておりません。おりませんけれども、公債論に対しては、池田総理といえども例外の発言を国会でいたしているわけではないわけであります。「公債は現時点において発行する必要はない、経常収入をもって経常支出をまかなっていくという健全均衡財政の基本線を貫いてまいるつもりでございます。」こういうふうに明らかに答えているわけでございます。ただ、「将来内国債を発行しなければならないというようなことに対して、全然いなと否定しているわけではございません」と、こう池田総理も答えているわけであります。しかし、事実問題として、国際的に見て、日本の健全均衡財政というものに対する評価が、これによって相当変わってくるという問題もございますし、さなきだに一〇%に近い対前年度比増加額以上をこえては、財政が景気を刺激をするという絶えずの御議論がございますので、やはり一〇%に近い健全財政を守る、そういう状態においては、内国債を発行しなければならないという格段の変化は認められない。  第三点としましては、よしんば発行するとしても、起債市場というものが全然いま確立をせられておらないということでございます。これは金利問題とかいろいろな問題がございます。中には証券六十五条の問題が論じられたり、日本の起債市場を大きくするためにはどうすればいいのだという問題、たくさんございます。金融の正常化、それから公社債市場の育成、証券の民主化・強化という、絶えず口にされておりながら、現在オープンマーケットはほとんど皆無にひとしい状態である。ですから日銀が行なっているオペレーション制度も、マーケットオペレーションができる、いわゆるオープンマーケットが存在するという状態にないということで、政府保証債の発行もむずかしいといわれているのであります。ちょっと発行すれば、民間資金の圧迫に政府は資金投資をするのだ、こういうことを言われている状態で、はたして内国債が発行できるだろうかという条件の問題もあるわけであります。それだけでなく、信託銀行その他との金利の問題とか、国債、政府保証債、民間の社債の金利、発行条件の弾力化の問題とか、いろいろなむずかしい問題があることは、木村さんも御承知のとおりでございます。ただ、そういうもの全部の条件の整備をしたと考えて見ても、経常支出の財源として公債を使うべきか、それはそうじゃない、思い切った一大減税でも行なう場合に、財源がないから減税が行なえないということではなく、そういう場合にこそ一つ政策として公債が考えられる。これは佐藤さんも藤山さんも言っておられる。また河野さんも四兆一千億といっても、道路五カ年計画は半ばにも達しない。これを五兆円に、八兆円に先行投資がより必要だというならば、ガソリン税の税収入を財源として、五カ年の先食いということで、限度を付した道路公債の発行は考えられる。これは私も昭和二十七年、八年に、木村さん御承知の道路整備の財源等に関する法律の提案説明をいたしましたときに、同じ発言をしているわけであります。これは時の要請でそう答えているにすぎないのでありまして、これらの条件を全部整備をしなければ、内国債の発行には踏み切れないということであると、やはり一、二年の環境整備、将来内国債の発行が必要であるという場合を想定をしながら、前提条件を具備するに相当の時間が必要であるということは、もう専門家の木村さん十分御承知のはずであります。ですからまあ三人のうちどなたが出られても、私がいまここで答弁申し上げていることと、相当の差があるということはないように理解をいたします。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公債発行は当分行なわれることがないだろうという御意見でしたが、そうしますと、財源の問題、これは今後非常に重大化してくると思います。どういうふうにして財源を調達していくか、結局、公債を発行しないとなれば、財政投融資にしわ寄せしてきますね、そこで政府保証債を発行する。しかし、それを民間に引き受けさせれば金融を圧迫するから、結局日銀の買いオペという形になっていく。そういう形でのインフレ的な政策一つ考えられます。もう一つは、これから具体的に質問してまいりたいと思うのですが、ただ米価を引き上げる、あるいは鉄道運賃を引き上げる、消費者物価値上がりによって名目的に所得をふやしていく、そうして名目的な自然増収をふやす形で税の増収をはかる、こういう方法、二つ考えられます。そういう方向に行く可能性が非常にある。そうしますと、今後はこのインフレの傾向が出てくるのではないか、その点。それからもう一つ、ついででございますから。これは三十九年度の補正予算及び四十年度の予算編成とも関連ありますが、まあ一兆八百億、約三十億ドルも金を使ってオリンピック景気をつけましたが、オリンピックが終わって、今後、オリンピック後の日本の景気なり経済情勢がどうなるかということについては、非常に大きな関心が持たれているわけです。したがって、今後の景気なり経済の見通し、どういうふうにつけていくのか、その点についてお伺いしたい。
  127. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第一点の問題につきましては、御承知のとおりいままでの超高度成長ではいけない。超高度成長の中に、ひずみとして、物価の問題、国際収支の悪化の問題、労働力の流動化が阻害されておる問題、都市の過度集中の問題、公共投資のアンバランスの問題、地域格差の問題あるいは業種間格差の問題、あらゆる問題が出ておるわけであります。これらの問題を解消しなければならない。解消するためにはどうするかという具体的な問題に対して、まあテーマとしては国際収支の長期安定、経済の正常な成長、物価の安定と、こう三つの命題を掲げて、いまいろいろな政策を行なっているわけであります。そのときにオーソドックスな議論としては、木村さんと専門家の御意見としては、結局財政金融が経済を刺激してはならない。しかも財政が一番経済刺激の要因になっては困る。財政も、財政投融資も、もちろん対前年度比やっぱりできるだけ小さいほうがいい、経済の成長率も九%とか八%とか、所得倍増計画で七・二%年率といっておるけれども、これでは少し高いんじゃないかというような、オーソドックスの議論をやっておられます。われわれも十分理解できますし、中期経済見通しをつくりますときに、皆さんが言っておられるような数字でやれるのかどうか、そういう場合、財政のあり方、金融と財政との調整の状態がどうなるのかというような、こまかい数字を検討してまいったわけであります。これはまあ正式なものは、まだ党、内閣において結論が出ているわけじゃありませんが、第三者機関として政府に答申を出される数字が、新聞等に散見をしておりますが、年率私たちが七%ないし七・五、名目でもって九ないし一〇%でなければ、四十三年までの中期経済計画の見通しは立たないんじゃないかと思っておりましたが、それよりも少し高い数字、八%くらいの平均成長率でないと、なかなかその過程においてひずみの解消はできない。どうもそれ以上に押えると、引き締めというよりも、内部に恥いていろんな問題が起きる、こういうような考え方で、いま作業を進めておられるようであります。そういうことになりますと、これからの財政金融政策、経済政策のもととなるものは、四十三年まで、五カ年間に、大体長期展望いたしまして、四十年度の予算に対して、年率の伸びは大体どのくらいかということを想定されるわけです。私は大体できれば二〇%ぐらいということを考えてきたわけです。ところが計算をしてみますと、五カ年計画とか、もうすでにいっぱいのものがあるのです。御承知の年間七百五十億くらいの、厚生省だけでも医療費の増加、十月の一日から家族給付なんてやってますから、そうすると平年度化されると大きいものになる。それから公務員給与でもやはり一年間になる、全部。それから五カ年計画でいっても、二兆一千億の五カ年計画であった道路計画でも、初めの三年間小さくなっているのです。最後の二カ年間に六割持ってくる、その六割でも小さいから倍にしよう、鉄道もそのとおりでございます。あらゆるものが大きくなっておる、ことしは治山、治水、港湾、すべてのものが五カ年計画を改定しなければならない、医療費も答申だけでも八%の引き上げ、こういった既定の歳出増だけをそのまま引き伸ばしていっても、一〇%で一体おさまるだろうかという問題がいますぐ計算されるわけです。ですから、何も新規政策をやらないにしても、相当な伸び率がないとこなせない、もちろんこれは数字の上だけではなく、内容のやり方によっては、一〇%でも、一三%でも、原資の繰り入れが、よしんば利子補給になるとすれば、十分の一になるわけでありますから、ワクだけでは言えませんが、いずれにしてもそんなに小さいものではおさまらぬ、大きなものではもちろんいかぬ、ですから、新しい政策を行なうとすれば、既定経費の中の削減、合理化ということが前提になるのです。そうでないと新しい政策はできないということでございますから、一般会計は一〇%を目標にしながら、可能であるもの、一二%になりますか、一三%になりますか、とにかくその財源が調整できる、調達できる範囲というものが、対前年度比の伸び率になると思うのです。そうすれば、一〇%というと財政投融資そのまま考える必要はありませんが、常識的に見て、一般会計一〇%といえば財政投融資は一五%が限度だろう、一般会計が一三、四、一五以下であれば、財政投融資は二〇%が限度であろう、二〇%よりも一五に近いほうがいいとか、いままで議論をされてきた問題でございまして、ですから、ただパーセンテージだけで言うわけではない、内容によって、場合によれば倍にも、二分の一にも評価されるわけでありますが、そういう意味で財政、財政投融資、それから民間資金との一体化という考え方でまいりますので、経済運営に財源が支障をもたらすというようなことは考えないでいいだろう、考えないでいいだろうということではなく、やはり必要な資金は調達をしていく、しかも、それが国債を出すというような荒っぽいものをやらなくても、努力をして捻出をしていく、そしてその財源が景気刺激にならないということを限定にして考えていくべきであるというふうに考えられるわけであります。  それから、大蔵省の中では、御承知の主計、主税、理財、それから為替、いろんなものがございますから、なかなかうまくできております。これは税金でまかなうという場合には、一般会計は主計でやっておる、主計の財源がなければ財政投融資、理財でまかなっておる、主計、理財でもまかなえない場合は、税金でもって主税で検討してやろうと、それでもなおだめな場合は民間資金の調達ということで銀行局にいこう、それだけでもどうもいかぬというと、外債ということで国際金融局でまかなおう、なかなか明治からうまくできております。こういうものをすべて調整をとり、調和をとっていけば、必要な財源を確保してまいれるということであります。あくまでも景気の刺激要因にならないようにやっていくつもりでございます。  第二の、オリンピックが終わったら——この問題は確かにいろんなことがいわれております。私は、いままでが景気がよ過ぎる、少し超高度過ぎる、ですから賃金も急激に上がった、自由業などの賃金は、御承知のとおり四年間か五年間でもって約倍以上になっております。急激に伸びている、しかし、それはいままで低過ぎたから、ここではちょうどひずみが解消されたんだという議論もございます。まあ労働が非常に拘束されておる面もございますし、拠点的な投資が行なわれるために、当然合理化によって下がるべきセメントとかいろんなものが下がらない、下がらないで上がっているというものもあります。これが物価に対して、もっと下げられると思っているものもたくさんありますが、季節的にも場所的にも、集中的に工事が行なわれた、投資が行なわれたために、必要以上に物価に影響している面は指摘できます。こういうことがノーマルな状態に戻るのであって、景気がいいのが不景気になるんだというようには考えておりません。それで、またそう急激に転換してはいかぬというので、こまかい配慮をいたしております。それは地域的にも季節的にもバランスのとれた投資が行なわれ、労働の流動性も確保できるような状態を想定しながら、財政金融政策を進めるということであります。もっと端的に一つだけ申し上げますと、オリンピックは約三十億ドル、一兆七百億ぐらいが四年間に投資をせられました。しかしそのうちの約十億ドル、三千八百億の金は新幹線に使われたわけですから、ですからそう大きな投資ではありません。その間において道路は二兆一千億、五カ年計画でございましたから……。今度は四兆一千億、五カ年計画になっているわけです。ですから道路一つの例をとっても、二兆一千億と四兆一千億の差額は二兆円であります。二兆円を五カ年間で割ると四千億、四千億ベースでもってオリンピックの仕事がなされたわけではありませんから、まあ公共投資やいろいろな面を考えたり、都市改造を合理的にやるとか、いろいろなことを考えてまいりますと、不景気になるという要素はないというふうに考えるわけであります。しかし、急激なそういう不況感というものが起こってはならないということで、かかることに対しては、しさいな観察を行ない、こまかい配慮をいたしたいと、こう考えておるわけであります。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やはり大蔵大臣、いまでも来年度の自然増収は大体四千五百億ぐらいに見通されておりますか。
  129. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ十二月の初めにならなければ、これはさだかに申し上げるわけにいかないんですが、しかし、もう木村さんも十分御承知のことでございますから、率直に申し上げると、今年度は当初見通しは、経済成長率は七%であります。しかも名目成長率は九・七%。それが十二月から三月の十八日の公定歩合引き上げまで、まあ四つの引き締め政策といいますか、調整手段を行なって、ずっと約一年間今日に至っておるわけであります。で、まあ景気引き締め政策といいますか、調整政策も、大体浸透しておる。まあある場合には不況下にあるということも指摘をされております。そういう状態で一体どのぐらいの成長率になるだろうと考えますと、名目一〇%——一一%にはならない。一〇%から以下にもならない。こういう状態でございます。ですから、まあ一〇%ないし一〇%ちょっとぐらいだろうと、こういうことでございます。それで三十九年度の税収の実績がずっと出てきておりますが、関税以外は伸びておらないということでございます。そうすると来年度も、先ほど申し上げましたように、名目は大体一〇%、実質を七%ないし八%にするのか、先ほど申し上げましたように、中期経済計画で七%ないし八%余にするのかは別にしまして、名目成長率は一〇%こすわけにはまいらぬ。これは当然一〇%以下であります。まあ消費者物価を三%以内にして押えるという数字にはどうしてもならぬでしょう。そうなりますと一〇%現在で税収の合計が二兆九千余億であります。これに対して五百億ないし五百二、三十億の自然増収を見ても、大体三兆円と見ればいいわけであります。まあ一・五の財政超過率で四千五百億、これが全部財源になるわけではありません。御承知の前年度剰余金の減が約百億ばかりございますし、雑収入等を全部やりくりしても大体四千五百億と、まあ過去の数字から見ましても的確な見積もりに近い予想的数字だろうと、こう考えたわけであります。
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、先ほど大臣はかなり重要な御答弁をなさっているんです。いままで、大体来年度の一般会計の増加の規模ですね、増加の規模は大体一〇%と、しょっちゃう言われておったんです。ところが先ほどいろいろはじいてみますと、それは長期計画が出てき、また社会保障費その他の医療費の値上がり等々を考えると、一三%とか一四%ぐらいになるかもしれないというお話があったんです。そうしますとそれで計算してまいって、自然増収四千五百億ですと、減税の財源はほとんどなくなるのです。減税財源ありませんよ。たとえば一三%の場合ですと、減税財源は三百五十四億くらいしかなりません。また一四%になると、むしろ歳出の増加のほうが多くなっちゃいますから、自然増収より歳出超過が四千五百四十六億ですから四千五百億の自然増収となると、これは減税の財源全然ありません。そうなると、これまで減税については少なくとも千億とか九百億とか、いろいろいわれておったのですけれども、いまのお話ですと、それがほとんど減税財源はないということになる。そこで大阪で大蔵大臣は、この減税については単年度で考えるべきじゃない、数年間で減税を考えるべきだと。ですから、減税の可能性は非常に小さくなってしまってきている。そういうことになるのではないかと思うのですけれども、この点どうなんですか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから申し上げているように、どうも時期が少し早いわけであります。時期が早くてさだかに申し上げられないという数字をここで前提にして、さだかな減税論争をやろうということですから、なかなかむずかしいわけであります。しかし、まあ先ほど申し上げたとおり、木村さんも十分御承知のとおり、確かに私の言うような様相を呈していることは御理解いただけると思うのです。とにかく実質成長率が七%以上、しかし名目成長率は一〇%をこすわけにはいかぬ。事実もう相当理想的なバウンドの中に入ってきた。これが正常な経済成長だ。ですから補正予算財源とか、いろんなものが一体見積もれるのかどうか。とにかく減税もさることながら、いまの財政制度の中で非常に困る問題がございます。税金が入ろうとか入るまいとか、これは別にしまして、予算というものは、これは水増しで見積もってはならない。同時に、補正が出るかもしれないからということで、補正財源を残してはならない、的確に見積もれということでございます。これは全くそのとおりであります。ところが財政制度の中では、それではやれないようなものがございます。人事院勧告しかりであります。人事院勧告よりもっとはなはだしいものがございます。これは国が地方の義務教育費に対する負担額、または施設負担額でございます。この負担は、計算をすると期末に請求がくるわけです。これはいや応なしに補正しなければならないのです。これはちょうど日銀が都市銀行の交換じりをそのまま見ているような状態よりももっと手きびしいです。国が法律に基づいて補てんしなければならないのです。そういう制度になっているのですが、一体そういう制度そのものが、これからの正常な経済成長、正常な見積もり以外に自然増収ほとんどないというような状態で、一体どうしてこなすのだ、こういうような新しい問題とも対処しなければならぬわけであります。その次にくるものがいまの減税であります。この減税は確かにあなたが御指摘になったように、四千五百億の税収がありと仮定をしますと、対前年度比一三%ないし一四%になるわけであります。まあ現在の三十九年度の予算の内容そのままをずっと伸ばしていっても、一三、四%ではなかなかおさまらないような状態であるということも御承知のとおりであります。財政の硬直性ということをいつでも指摘されますが、確かに事実そうなってきているわけです。そうすると、全然何もかもできないじゃないかという御議論でございますが、四千五百億の財源、四千五百億近いものそのままということになると、確かに減税もせず生産者米価引き上げによった食管会計の繰り入れも行なわずということでは、二〇%以上消費者米価を引き上げるという前提で計算をして、すべての財源を使ったとしても一三・九%、一四%切れるくらいしか財源はないわけです。ですからだれがやっても来年度はたいへんだということは、私が言わなくても世間で言ってくだすっているわけです。確かにそういう状況であるということは、これは間違いない、数字でございますから、これは間違いはございません。ただその中にも、お互いにそういう議論を十分し尽くして十分研究をすれば、財政投融資とか、先ほど申し上げたようないろんなものとの関連性において、民間資金でやるべきものを一般会計でやっておったり、一般会計の中でもって補助金の整理合理化によって何百億浮くか、何百億かと思いますが、いずれにしてもそういう前向きの努力をいま続けているわけです。そうして、できるだけの財源をひねり出して、これをひとつ大きく減税に回したい、新規政策に回したい、新規政策はひずみ解消をやりますと、こう言っておるのですから、いやもおうもなくやるのです。ですから、そういう意味で、さなきだに非常に制約をされている財源のワクの中で、いい知恵をしぼって、いまよりも合理的な予算を組みたい、こういうことを考えておるわけでございまして、全然減税はしない、こういう考え方ではございません。どんなに無理でも減税はしようと、こういう気持ちでございます。まあそういうところでひとつ御了承願います。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも大蔵大臣は、何回も消費者米価二〇%二〇%と言っておるのですが、消費者米価の引き上げ——それじゃついでにこれを聞いておきます。農林大臣ですね、これはいつおきめになるのですか。先ほど藤田委員質問があったのですが、そのときに、消費者米価池田内閣のもとで早急にきめるのだということを言われました。いつおきめになり、何%ぐらいの引き上げを行なうのですか。それでそれを財源にして減税に回したりこの新規政策の財源にすると、こういうことなんじゃないですか、いまのお話ですと。まず消費者米価について、農林大臣どういうふうな……。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと誤解があると議論がまき起こると困りますので申し上げておきますが、先ほどは減税をしないということにして、それで消費者米価を二〇%上げるということに仮定をいたしましても、一四%以上の財源はございませんと、こういう話を申し上げたので、これは上げる上げないということは、国会でもってちゃんとお願いするわけでございますから、そういう上げることを全く押しつけがましく申し上げておるというわけじゃございません。ですから、そういう意味で、いつか消費者米価が上がれば財源はなくても減税をするということは楽になりますがねと、こうは申し上げましたけれども、米の値を上げなければ減税は絶対せぬと、こういうてんびんにかけた議論ではございませんから、減税は減税で別に考えている、消費者米価消費者米価の問題として、別な角度から御審議をわずらわしたい、こう考えているのであって、消費者米価に賛成をしないと減税はできませんよというような考えでは絶対にないということだけは、あらためて申し上げて御理解を得たいと思います。
  134. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 消費者米価をいつきめるかということでございますが、十一月の初旬中にはきめたいということを考えております。それにはいろいろな手続等もありまして、米価審議会にも諮問をしなければならないし、いろいろな調整がまだ十分できておりませんから、率等については未定でございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 率については、これは高橋企画庁長官が池田総理に会いまして、そうして何というのですか、了解を得たと言われるのは、生産者米価の引き上げ率の一三・六%から二〇%の間にきめるようにという指示を得たというのですか、そういうことですから、その範囲が二二・六%から二〇%に入るのですね。引き上げるということはおきめになったのですか。
  136. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) まだ政府部内できめてはおりませんが、引き上げる方針で私どもは進めています。率の点は、引き上げるとすれば、いまの一三・六%から二〇%の範囲という一応指示は受けておりますけれども、その範囲であろうというふうに考えています。
  137. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 米価の問題につきましては、去る二十二日に総理にお目にかかりました際に、いろいろ物価問題全般について討議をいたしました次第でございますが、公共料金の問題その他いろいろございます。そこで、米価の問題につきましては、御承知のとおり、来年の予算の編成上、財源の措置その他の関係から、米価のある程度の引き上げをしなければ非常に困難だという意見が強く出されておることは御承知のとおりでございます。それらの点についていろいろ御意見も伺ったのでございますが、米価の引き上げだけはやむを得まいかというような御意見であったのでございます。そして新聞には一三・六%から二〇%の範囲というふうに伝わっておりますけれども、一三・六%が下限なり、二〇%が上限なりという話は全然出ておりません。むしろ上げ幅、時期等について三つ、四つ具体的な案を考えてみてくれ、同時に、その場合においては、低所得者層に対する対策も十分考慮して案をつくってきてくれぬか、こういう話であったわけであります。したがいまして、これらの点については、政府内において十分御相談をいたしまして、そうしてその上でおきめ願うということにいたしたいと、かように考えております。
  138. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 米価問題につきましては、さらに具体的にお伺いしたいと思うのですが、いままで大蔵大臣に減税問題についての質疑がございましたから、なおここで減税問題についての質問を一応整理をして、処理をしておきたいと思うのです。  大蔵大臣は二十七日大阪行きの車中における記者会見で、四十年度の減税問題に触れて語っております。三つの点を大蔵大臣お話ししております。第一は、自然増収の二〇%を初年度減税に回すという税制調査会の考えを受け入れることができないというのが第一点。第二点は、所得税、企業減税を数年間の長期計画として減税をする、そうしてその所得税と企業減税は、比重五分五分にする、こういう御意見を述べております。第三は、預貯金利子と配当に対する税制上の不均衡、これは四十年度に解消したい。この三つの点を述べております。  ところで問題になりますのは、自然増収の二〇%を初年度に回すという税制調査会の考えを受け入れられないという考えですが、私は自然増収の二〇%を減税に回すだけでは足りないと思っておるのです。それは物価の値上がりにもよるのですが、いままで減税減税と言いましたけれども、実際政府の言っている減税と実際の減税とは非常に違い、むしろ増税になっておりますよ。そこで、私は具体的にここで伺いたいのは、三十九年度の所得税の減税は幾らでありましたか。
  139. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 平年度は七百三十六億九千五百万円、初年度で六百四十九億二百万円、こういう数字であります。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 所得税の自然増収は幾らと見積もられたのですか。
  141. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 六千八百二十六億の中で千百五十五億七千五百万円の所得税の自然増収でございます。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 約二千億でしょう。
  143. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 千百億です。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、物価の値上がりによる名目的な自然増収はどのくらいですか。
  145. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうはじき方をしておりません。おりませんが、数字を、三十八年度中に名目的に伸びたものが幾らであるから、それによって税収として見込んだもののうち幾らが物価値上がりといいますか、名目所得の伸びとして増収になったんだということを想定する数字を出せと言えば計算いたします。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはいま大蔵大臣に聞こうと思ったのは、前に大蔵委員会で泉主税局長から答弁があったわけです。それは三十九年度の所得税の自然増収は大体二千億、二千億ですよ。お調べになってください。そして物価値上がりによる名目的な自然増収はその三割、六百億であるとはっきり言っていますよ。速記録に残っています。そうしますと、六百四十九億の所得税の減税に対して、そのうち六百億というものが物価値上がりによる名目的な増収でありますから、これは物価調整としての減税であって、ほんとうの減税ではないのです。所得税のほんとうの減税は四十九億であります。そういう計算になるのです。ですから物価値上がりの場合、この自然増収のうち、私は三割ぐらいは——大体四、五%の物価値上がりの場合、三割ぐらいこれを減税に回して、そうしてこれは物価調整になるのであって、それでもこれは名目的な減税であって実質的な減税にならないのです。だから私は自然増収の二〇%の減税ではほんとうの実質減税にならぬと言うのです。これは物価の値上がりは大体三、四%あるいは五%に押えておるのですから。しかも私が増税だというのは、地方税はどうです。地方税は大体自然増収は二千億ちょっとこえておる。そしてその三割は名目的な自然増収なんです。だから六百億が名目的な自然増収で、これに対して地方税の減税は四百十億にすぎません。四百十億しか減税していない。そうすれば百九十億実質的増税ですよ。百九十億の地方税の実質的増税から所得税の実質減税四十九億を引いても百五十億くらい増税。そのほかに大蔵大臣が増税じゃないというところのガソリン税というのがあるのです。これを加えたら約百八十億ですか。加えたら二百億円以上の実質増税になっておるのです、減税々々と言うが。だから私は税制調査会で答申している自然増収の二割を初年度減税に回すという、これでさえ私は物価の騰貴との関連はありますけれども、少な過ぎるのです。それなのになおかつこれを考慮に受け入れることができない。これ以下の減税をしよう。しかも今後のこの減税については数年間の長期的な減税である。初年度、とてもそんなにできないというのでしょう。これは非常に問題ですよ。根本的に考え直さなければならない。物価値上げになったときに、名目的な所得の増加による累進課税がかかる。それで増税になる。この減税は実質減税じゃない。これは根本的に改めなければならない。これは私は泉主税局長に前にずいぶん言った。ところが、大蔵大臣がわからないのだと言うのだ。幾ら説明してもわからないのだ。これはわからないのですか、大蔵大臣、増税ですよ。国民を欺くものですよ。これは数字的にちゃんと計算出るのですから、そうでないというならば、その根拠を示してください、いま私の申し上げたことに対して。
  147. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 木村さんの言うことはよくわかるのです。非常によく理解できます。私のことをよく理解しておらぬというにすぎないのです。これは理屈でもって減税とは名目減税を減税というなんていうことを私は申し上げるつもりはございません。ございませんし、しかも木村さんが言われるように、物価が上がっていくような場合は実質的に減税が行なわれるように、物価が上がらなくても実質的な減税はしたいというのがわれわれの考えでございますから、それはもう十分理解できるのです。ただ財政バランスの戦後の状態日本人の状態を十分考えますときに、理想は高々と持ちながらやはり現実的には一歩々々バランスのとれた状態において政策を前進させていくという要請はどうしてもあるわけであります。ですから社会保障もやらなければいかぬ、また地域間業種間の格差解消もしなければいかぬ。また、一次産業に対するてこ入れもしなければいけない。公共投資のアンバランスも是正しなければならない、先行投資も必要である。あらゆるものを全部限られた財源の中でやらなければならないということでありますから、減税に対して私はいま木村さんが言われたように、基本的に積極的な姿勢を持つ、これは当然のことです。ですから自由民主党内閣も過去において一兆円余の減税を行なった中にその九〇%は御承知の所得税の減税をやってきておるのであります。やってきても外国と比べるとたいへんじゃないかと、これも現実なんです。この狭い国に九千何百万も住んでいる、これも遺憾ながら現実なんであります。物資もないということも現実であります。ですからやはり一歩々々先進国経済にさや寄せしていくように努力をする、努力をする実際的な手段として限られた財政の中でとにかく前進をしていくということでありますので、この間の事情をひとつ御理解いただきたいと思います。  それと私が大阪行きの車中談としていろいろのことを言ったということは事実でございますが、事実ですが、これだけを短い時間に端的に申し上げたわけではないのです。四時間の間——三時間半ぐらい、二十人ぐらい新聞記者諸君といろいろのことをやって、いろいろの質問に答えているうちに、せんじ詰めると大臣こうなりますねというときに、まあ、そうとも限りませんが、と言ったところで汽車が着いてしまったということでもって、そういう記事になってしまったわけでありますから、中間というものの理解——私はせんじ詰めれば確かにこういうことになります。しかし、前提がたくさんあったということだけはよく理解していただくように……。端的に簡単に申し上げますと、先ほどから申し上げたように、経済成長率というものが正常なものになってきておって、多大の大きな自然増収を見込まれるような状態ではない、非常にノーマルな状態になってきておるということが一つ。現実的に財源が乏しいという中にありながら財政はあなたから御指摘を受けるように硬直性を受けておって、法律その他で既定経費、既定計画でもって相当のものが縛られておって、予算の弾力性というものがない、これを何とかこの限られた範囲内でやるには、既定経費の削減とか合理化とか、こういうことを思い切ってやらなければできないという状態にあります。これも一時に思い切ってやるといってもそうできるわけではありませんから、おのずから限度がある。この中で考える場合、四千五百億の二〇%、初年度というと九百億、初年度減税をずっと続けてできるだろうか、次年度から二五%減税、一体これが可能であるかということになるとなかなかむずかしいのです。しかし、その前には税制調査会の答申を十分尊重する姿勢ですし、十分検討してやります。やりますが、財源もないし、財政の上から見ても多端ですな、こういうことでるる述べた結果でございます。しかし、この中で一番大きな、標準四人世帯六十万円までは免税だ、課税最低限を引き上げたい、わしもそのとおりだ、まあ来年参議院選挙もあるし、これはお互い超党派でもって六十万円にしたい。ほんとうにするのですか、こういう質問があって、いや、したいけれども、一ぺんにこれをすれば千五百億の財源を必要とする、とてもできませんね。こういうお話をやったわけです。じゃ何年にやるのですか。せめて長くとも三年以内ではやりたい。こういう非常に前向きな話をしたわけでございますが、記事になると、三年たたなければ六十万円までやらぬ、こういうふうにとられるわけであります。ですから、非常に苦しい中からも、せめて誠意は国民に見せよう、こういう考え方でございます。ですから、やらないというのじゃありません。非常に数字ばかり見ておるとたいへんだという前提に立ってただ申し上げただけでございますが、そういうことでございます。  それから第二の企業減税と五〇%五〇%というのも、ただ理論だけの問題ではなく、物の自由化だけではなく、金の自由化、資本の自由化というようなもので、自由世界の自由市場にさらされつつあるわれわれの現実の姿を見るときに、やはり資本蓄積、また物価の抑制という一つの妙手、いまイタリアなどが積極的に考え、フランスもこれに追随し、西ドイツもあえてこれをやろうといういわゆる貯蓄の増強、こういうものを思い切ってやはりやらなければ、安定的な物価の安定性というのはなかなかむずかしい、こういうこともひとつ大いに考えなければいかぬ。そういうことを考えると、やはり企業減税というものもやらなければいかぬ。まあ少なくとも四十三年度までに日本の経済が幾らになるけれども、産業資本をどう調査するかを一つも言ってない、ただ日銀信用ではいかぬ、オーバーローンの解消をしろ、オーバーボローイングの解消をしろ、ちょっと締めれば不景気だ、そうして何を言っているのか、少なくとも四十三年度までに八%ずつ年率伸びるならば、国民所得は幾らになり、国民総生産が幾らになるなら、この産業資金のうちの何%は正常化された金融によってまかなう、あとの残りは直接社債によって安定的な長期資金が得られる、残りは自己資金、自己責任の前提に立って証券市場から得るものである、そのうち外資は幾らを充てるか、このくらいの計画を立てないで第二次所得倍増計画を立てられるものじゃない、そうすればやはりその貯蓄減税とか税制だけでもってやれるとは思わないけれども、ある一定期間、貯蓄、資本蓄積に対して税制上の優遇策を講ずる必要はある、こういう話をしたわけです。じゃ七〇・三〇になるのですか、六〇・四〇になるのですかと言うから、そう答えるわけにはいかぬが、まあ理想的に言い得るとすれば、こうすることによって国民がよくなるのだから、ある一定期間やっぱりフィフティ・フィフティぐらいなことかね。フィフティ・フィフティというのは五割五割ですな、こういうことになったわけです。私はいや、五割五割というのはあまりにも激しいと、もう少し言おうとしたときに、先ほど申し上げたように終点になったというのであります。いろいろそういう事情がございましたから、いろいろこれからひとつこまかく御質問にも応じますし、また、あなたの御意見等も十分しんしゃくして、これはもう万全な態勢で四十年度の予算編成とか、また、税制改正に対処しなければならぬわけでありますので、まあひとつここらで御理解いただきたいと思います。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のさっきの実質的に三十九年度は増税になるということについて、何ら御答弁ないから、そういうふうにこれは了解したものと認めたのですがね。さっきあなた妙な数字言いましたね。三十九年度の自然増収は二千億でしょう、これはきちんとしておいてください、数字ですから、いいかげんな答弁でなくね。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) さっきの数字、千百五十五億七千五百万円は減税後の自然増収でございます。でありますから、御指摘のとおり、八千億と六千億ですから二千億、二千億のうちから減税分を引きまして千百五十五億、こういうことになっておるわけでございます。この減税された分と大体自然増収の三〇%が水ぶくれだ、こういうことを見た場合、二、三が六百億、大体減税された額に近いものが値上がりによるものであって、実質的な減税になっておらぬ、こういうことでありますが、これは確かに主税局長がそういう答弁をあなたにしたようであります。いまここのところでも言っておりましたから。しかし、必ずしもそれが的確な数字であるかということは計算のしよう、計算の立て方によって幾らか違うわけであります。違うわけでありますが、あなたのようなそういう減税をするときには健全な思想を前提にしてやはりやるべきであるということには同感であります。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ地方税を考えれば増税です。それはもういま認めたことになっていますから、ほかの一般の人がいまの御説明を聞けば、また速記録を読めばそれははっきりわかりますから。  それからもう一つ減税に関連して伺っておきたいのです。この預金利子とそれから配当に対する税制上の不均衡を四十年度に解消したいということは、結局預金利子の分離課税、これをやめることなんですか。それから配当のほうもまたこれは分離課税の要求ありますけれども、これはやらないということなのですか。やめちゃうことなのですか、ちょうど満期になりますから、それを機会にやめちゃうのかどうか。
  151. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ税制調査会の答申が出ておりませんので、あまり具体的に申し上げることは、相手の勉強を妨げるといけませんので私申し上げたくないのでございますが、まあしかしいろいろな方面から検討されておって、仄聞するところからいって三つのやり方があります。これは確かに資本蓄積と直接資本と間接資本とのバランスを考えたときにはアンバランスであるということは認められております。ただこれをバランスをとりたいということには二つのやり方がある。いま銀行預金等に対してとられておる優遇をやめてしまえばバランスはとれる、こういうことであります。これはひずみの是正も同じ議論があるわけです。成長率をとめてしまって不景気にすればみんな月給を払えなくなるのだから、だれでも同じになってしまう、こういう議論でありますが、そういうことではいかぬので、もう少し前向きにということを言いますと、現在の五%源泉分離を一〇%にする、そうすると、銀行預金はいままでの優遇から少し下がってくるわけです。そうして証券や社債に対しては何もしておらぬものを——いままで何もしておらぬわけではありません。少しやっていますが、これをもうちょっと上げる、そうすれば一方は下がり一方は上がるからちょうどバランスがとれる、こういう議論があります。しかし、物価などを押えてほんとうに国民生活の長期安定をはかるためには、貯蓄も資本蓄積もいまよりもなおやらなければならぬ、そのためには貯蓄のほうの五%はいままでのままにしておって、そうしてその全然アンバランスになっておる資本蓄積のほうをぽんとここまで引き上げてしまう、そういうことがどうか、その資本蓄積のやり方の中には法人税を三八を三五にすれば幾らか、これは九百億の減収になる、これはとてもたいへんな話であります。四人標準家族六十万円と同じことであります。それから源泉選択というのはできないか、一部源泉分離はどうか、源泉分離というのはこれはむずかしいとか、しかし、銀行預金はやっているじゃないか、銀行預金と配当とはどこが違うのだ、それからいま法人段階でもって利子は損金算入、損金になってしまう、配当というものは益金算入である、何でこれはアンバランスだ、銀行の利息を損金算入に認めなくするならばいいだろう、そんなことできるわけはないでしょう。まあまあなかなかできないだろう、どこでも損金算入は世界じゅうやっているのですから。ですからそれができないとしたならば、それじゃ逆に配当金も損金算入にするか、こういう議論もあります。それで幾らか、それも相当金額、まあ三千億の配当金に対して幾らといっても、これもやっぱりきっと九百億とか千億とか相当大きな減収になるでしょう。そういう問題がたくさん爼上に来っているわけなんです。どれがいいか、これをどれがいいかというのは私だけでもってどうにもなるわけはない。これは歴史の上の問題もございますし、学者がほんとうに税理論をおかさないようなものがいいということも言っておられますし、答申がどう出るかということもございますし、長期税制にするか、ある一定期間の時限法にするのか。しかしその時限法にしても、それは政策目的を達成するためにやむを得ないことであって、一部税理論とも完全にぶつかり合ってもいいというような立場をとるのか、しかし、それは長期税制の中でもやっぱり一部採用でき得る程度のものをとらなければいかぬというのか、非常にむずかしい問題があるのです。私も二年半にわたって取り組んできたわけですが、いよいよこれも、四十年度の予算編成をやるとき、四十年度の税制が、四十年度を初年度とするやっぱり四十三年度ぐらいまでの四、五年間の一環として行なわれるとしたならば、ここらでめどをつけなければいかぬのですな。こういう考え方でございます。これはできるかできないかいろいろな問題がございますが、しかし何びとかやらなければならない現実にぶつかっておることは事実でございますので、その事実をそのまま記者諸君に発表した、こういうことでございます。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、いまは、たとえば預金利子課税ね、預金利子の分離課税やめちゃうと。そうすれば配当のほうの分離課税の要求もなくなっちゃうから……。
  153. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が言っているのじゃないのです。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それだから、そういう議論は経済成長率とめちゃうのと同じことだと、こういうお話ですがね、しかし大蔵大臣ね、大蔵省でいままで長い間かかって預金利子に分離課税やって税制上の優遇を与えても、資本蓄積、貯蓄には何ら関係がない。それとの間は関係がない。むしろ預金利子に課税をしたときに貯蓄がふえている。そういう例もあるのです。減税したから貯蓄がふえるのじゃない。上がふえるのは、可処分所得が、税引き所得がふえたときに貯蓄がふえているという調査があるじゃありませんか、大蔵省にちゃんと。だから、資本蓄積に役に立たぬようなこういう預金利子に対する優遇措置をやめるべきですよ。何ら役立たない。大蔵省にあるでしょう、ちゃんと。事務当局からちゃんと御答弁していただけば、そのとおりですと言いますよ。ちゃんとあるのですよ。配当の優遇措置といったってただ資金が移動するだけで、株と銀行預金との間の資金が移動するだけであって積極的に資本蓄積に役立つのじゃないというちゃんと調査があるのですよ。大蔵大臣お聞きになったことがあるでしょう。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 知っています。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはそうでしょう、大蔵大臣よく御勉強されるからよく御承知だと思うのです。そんならやめちゃったらいいじゃないですか。なぜ資本蓄積に役立たないそういうものをやるのですか。そういうものをやめて、そうして、もっと一般の物価高その他社会保障不十分なために生活に困っている人のほうに、あるいは社会保障のほうに向けるべきですよ。減税とか社会保障の増額にね。そうすべきじゃありませんか。もうわかり切っているのでしょう。資本蓄積に役立つなら私はそう言いませんよ。役立たないのですから、そういう調査があるのですから、やめるべきですよ。おやめなさいよ。
  157. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も事務当局からあなた方に御説明をした資料を知っております。勉強もしました。しかし、必ずしもそれを信用しておりません。そこが違うのです。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 過去の調査がある。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過去の調査といっても、その調査が信憑性を一〇〇%かけ得るものとかけ得ないものがある。そこが経済のむずかしいところです。(笑声)経済が数字どおりいけばだれも苦労いたしませんとさえ私は申し上げられる。御承知のとおり、昭和二十三年から二十五年まで、占領軍政策のもとで極東軍の委嘱によって世界じゅうの経済学者が集まって、日本経済は復興するかどうかというレポートをつくったでしょう。絶対に復興しない。人間が九千万もおって、物資がなくて、これはどうして一体これできるのですか。そう言ったけれども、復興したじゃありませんか。数字は、私は確かに数字はごまかすことのできない事実であります。しかし、それに一〇〇%信頼をかけてやらなければならないか。政策であることをお互いに自認しながら——ほかにそれ以上のいい手があれば別です。——他に代替する的確な施策を行なわずして、これをやったってきかないからといって、みんなやめてしまう。転落の一途をたどる以外にありません。私は、少なくとも行政の責任者としてはそんな立場はとれない。少なくとも、いまどこの国でも、やはり貯蓄をやるときには、相当大幅な減税をやっておるんです。減税国債というものを出したことがあるじゃありませんか。少なくともですね、貯蓄というものをやらせなければ、物価は上がるし、コストは下がらぬし、国際競争力はとにかくつかないし、社会保障をしろとか、それから投資をしろとか、日本の円の交換性を強めるといったところで、何かといったら、日本の産業が国際競争力をつけて、そうしてドルをかせげる、自由市場において国際競争力がつく以外にないんじゃありませんか。大蔵大臣が紙幣を印刷することによって社会保障費が増すわけではないんです。この事実は何びとが考えてもおかすことのできない事実であります。そうであるならば、そのモーターを回さなければいかぬ。モーターを回すために必要なガソリンは資金である。資本である。これは海外から無制限に入れられない。明治初年は海外から入れたんです、確かに。鉄道も、道路も、すべてのものが外資によってできたんです。今日、外資は入りますか。入らないんです、事実。そうすれば、西ドイツがあの中で同じことをやりながら、いまの日本の貯蓄政策の何倍かの政策をとって、西ドイツでは、今日百億ドルに近い外貨を得たんです。何びとも西ドイツのまねをしろと言う。まねをしろと言いながら、貯蓄と資本蓄積に対しては、西ドイツと別の話をやれと、こういうこと、どうも私にはよくわからないんです。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃない。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そのほかに何かあればいいんです。貯蓄をするためにどうするか。可処分町得をふやす。これは確かにオーソドックスな議論です。可処分所得をふやしていかなければならない。可処分所得をふやしていくということは、これは結局減税をするということと、もう一つは実質賃金がふえていくということなんですが、この間においてちょっと間違うと物価と賃金との悪循環が起きるんです。事実、昭和二十二、三年から起きたんですから。現在、私はそういう状態にあるとは思いません。コスト・インフレの状態の危険があるとは、私は思わない。思わないけれども、そういう事実をじいっとお互いが考えるときに、やはりまず金を、投資をすれば必ず戻ってくるというよりも、まずこれをひとつ自分のほうに引き上げるということが幾らか先であるというような、これはもう経済理論の、ここは動かすことのできない真実であります。私はそういう意味で、どうも、かえって税制上優遇しないときのほうがその預金が集まったと、それはありますよ、いまでも、それはもっとうんと高い信託や何かに金が集まらないで——生命保険も相当高いんです——そういうところへ集まらないで、郵便貯金という、もう利息のないようなところは、一昨年千九百億、ことしは二千七百億、来年は三千八百億、これは約倍増に近いほど伸びている。これはなぜか。やはり政府が施策を行なって、五十万円の少額免税制度を持ち、百万円まで上げる、こういう施策がやっぱりきいていると私は思うんです。ですから、これはきいておらぬ、きいておらぬと言うなら、別に何かいい政策があれば別ですが、これは私は非常に危険だと思うんです。ほんとうに全然変わって、その国民の資本蓄積や貯蓄に回るような特別な施策を行なう反面において税制上の優遇をやめると言うなら、これはひとつの考えだと思いますが、何もそのメリットがない、やめろ、こういうことは、少し荒っぽ過ぎる。どうもそこが、木村先生の質問は私から見れば、経済学、財政学、先生と——私はまあずっと木村先生のいろんなものを読んだことがあるし、こう、二年半も聞いておりますが、これだけは少し…まあ、もう少し検討いたします。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、私は権威のある大蔵省で調査されたものを勉強さしてもらったんですよ。そこでそういう調査があったから、そういう結論に達したのです。われわれ個人でそういう資料はなかなか得られないんです。ちゃんと長い間ずっと歴史的に具体的に調べたものをやはり基礎にして質問したわけですよね。私は資本蓄積を何も否定しているわけじゃないんですよ。これはもうあたりまえのことなんですがね。否定したら、再生産というものができないんですから。ただ、いままで大蔵省のデータによれば、そういう不労所得ですね——利子所得あるいは配当等の減税と資本蓄積とは直接関係がないと、直接関連がないと、こういう実証があるんですから、そういうあれに基づいて質問したんです。  時間がなくなるといけませんから、次に消費者米価の問題に移りたいと思うんですが、先ほど、消費者米価はこれはもう引き上げる方針であるということは、まあはっきりいたしました。ただ、何パーセントということがまだ問題になっているということです。ところが、この消費者米価の引き上げの理由です。それとその家計に及ぼす影響ですね。どういうふうに考えておるか。また、物価に及ぼす影響をどういうふうに考えておるか。その消費者物価引き上げの論拠と影響ですね。家計と物価に対する影響をどういうふうに見ておられるか。この点をまず御答弁願いたいと思います。
  163. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私のほうから考えてみますと、米価は食管制度によって統制しておるわけであります。生産者から政府が買い上げて補償しておる、生産者米価も消費者価格も決定しておりますが、その間にあまり関連を持たずに生産者米価は天井を知らず——と言っては語弊がありますが、天井なしに上がっていくというような形である。消費者米価のほうはいつも現状維持ということになって、その間が非常に離れてくるということになりますというと、いわゆる逆さやにもなりまして、いまの供出といいますか、政府へ売って、あるいは買ったほうが安い米が買えるというような逆ざやの傾向が非常に強くなる。むろん事実はそういうことは行なわれてはおりませんが、そういう感じを受けることになると、食管制度というものをひとつやめてしまおうじゃないか、上がるほうだけは上がって、消費者米価はいつも上げないということでは、食管制度が破壊されるというような、あるいは自然崩壊するというような結果になりはしないか。そういうことになると、私は、生産者にとっても消費者にとっても、これは憂慮すべき方向に持っていかれる傾向があるから、生産者米価の価格が上がった場合には、ひとつ政府が負担するばかりではなく、一部消費者にも負担してもらう、こういうことが適当であるというふうに考えまして、現状から見ますと逆ざや傾向に相当なっておりますので、この際健全な食管制度に戻していきたい、こういう考え方から消費者米価の改定を行ないたい、こういうふうに考えている次第でございます。その他財政上の問題もあろうと思いますが、私はそう考えております。  それから、物価に及ぼす影響でございますが、いま家計に占めておる米価のパーセンテージは約七%程度でございます。六・四%という数字、あるいは七・一%というような数字などいろいろ出ておりますけれども、そういうような数字が出ております。で、いま消費者米価は三十五年から見まして、三十七年に改定を一度行なっておりますが、今日まで据え置かれておりますので、現在まで一二%の上昇であります。それで、御承知のように消費者米価は、物価それから経済事情を勘案して、家計の安定を旨としてきめるということになっておりますが、その間、家計費は四三%の膨張を示しております。その結果、消費者家計における米の支出の割合は、三十五年当時の一〇・三%から最近では六・四%、そういうふうに低下するに至っております。こういうような家計の急速な上昇等から見まして、家計の安定を害しない程度で消費者米価を引き上げるということは、食管制度の本質に適合をするものだ、こういうふうに考えておるものであります。そこで、六・四%あるいは七%が家計費の中で占めておる米価の割合でございますから、一般物価にどういう影響があるか。かりに二〇%といたしますと、七%に対する一〇・四%、〇・七%に対する一・四%物価のほうに直接には影響してくるわけであります。その他、自由米といいますか、やみ米等の影響等もありますが、そういうような観点から見ますというと、物価に対して一・五六%ぐらいの影響ではないか。しかし、これはいろいろ連鎖作用もありますから、必ずしもそういう数字が出るとは考えてないけれども、これは大きな観点からいえば、心理的といいますか、いろいろそういう影響はあろうかと思いますが、数字的に申し上げますれば、そういうふうなことになっております。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは家計に圧迫を加えない、家計を安定せしめる程度の引き上げ率というのは何%ぐらいと見ているんですか。
  165. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま申し上げましたように、二〇%としても家計の安定をそこなわないということだろうと思います。しかし、二〇%という率をいまきめているということじゃございませんが、そういうふうに考えております。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 企画庁長官、二〇%でも家計に圧迫を与えない、こういう御言明ですがね、農林大臣は。企画庁でもそう考えているんですか。
  167. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 御承知のように、米価の、配給米価格のウエートは、昭和三十五年の実績でウエートははじかれておりますが、それが千分の七二・五になり、したがって——これは私が賛成しているわけじゃございませんが、かりに大蔵大臣のおっしゃっておられるように、二〇%というこの引き上げをやると仮定いたしますと、ウエートとして上がるというか、七二・五でございますから、一・四五という消費者物価に対して影響を与えるわけでございます。それからなおほかに、配給米でございますが、配給米以外に、非配給米についても何らかの影響があると感ぜられます。そういうことで、それ以上になるのじゃなかろうかと、そういうふうに考えております。  なお、ただいまの御質問は、それが家計に与える影響はいかがと、こういう御質問でございます。これは三十四年のウエートによってただいま数字を申し上げたのでございますが、その後、御承知のとおりエンゲル係数はどんどん下がってまいります。昭和三十六年度のエンゲル係数がたしか四〇に相なっておりまして、それが三十八年度には三八・二、それから今年に入りまして、今年の最近の実績は大体三六から三七の程度、大体いままでの経過はそういうふうに相なっているわけでございます。なお、今年の一月から六月ごろの全世帯の——人口五万以上の都市の全世帯の一月から六月までの平均一カ月当たりの消費支出、それを見てまいりますと、消費支出総額は四万四千九百五十九円でございますが、これに対して米類の支出は二千八百八十二円ということでございまして、そのCPIのウエートであるところの割合でも相当下がっておりまして、六・四%ということに相なっております。したがって、これも三、四〇%上がるという場合を考えてみますと、これが家計に与えるところの影響は約四百五十円から四百六十円、したがって、約一考ちょっという数字に相なろうかと存じます。家計に与える影響はそのとおりでございますが、一方、しからば、それが現在のだんだん向上してまいりました食生活の内容または家計に対して耐え得る限度であるかどうかという問題は、相当検討を要する問題でございますが、私どもは、それのほかに、全体の物価水準の問題を非常に重要だと考えているわけでございます。御承知のとおり、昨年の下半期から物価は相当安定的な傾向を持ってまいりました。ことに今年の一月に物価対策要綱というものを十四項目にわたって決定いたしました。それを強力に実施してまいりました。そういうことで、せっかく安定したところの消費者物価の動向というものをこの際またもとのように相当な騰勢になるような事態になることを非常におそれておる次第でございます。そういうところから、この問題については今後上げ幅、リフトについて十分慎重に考慮いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この消費者米価の値上がりの問題は、単に食管会計の財政の赤字を埋めるというだけの問題ではないわけで、これが一般国民の生活全体の物価に及ぼす影響等も考えなければなりませんし、しかも食管法の四条二項によりますれば、「政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうになっているんですよ。いま農林大臣なり経済企画庁長官の説明を承りますと、二〇%上げても家計を圧迫しない。「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とありますが、もし事実において家計を圧迫する、安定せしめないということになったら、食管法第四条第二項にこれは違反することなんですよ。食管法違反。そこでこの点はわれわれ具体的に追及をしておかなければならないと思います。いままで家計についてお話しありました、たとえば米の家計の中に占める比率は七%だから二〇%上げても一・四%でたいしたことじゃないと言われますが、それから企画庁長官はエンゲル係数をあげた。おそらくエンゲル係数をあげてくると思ったのです。ところがこうしたいまの一・何%とか、それからエンゲル三〇何%とか、そんな数字なんかで家計に対する圧迫はわかるはずがないのですよ。もっと具体的に家計費の内容を調べる必要があります。あるのですよ。そこで家計の実態はどうなっているか。家計の実態を示してもらいたい、最近の。特に厚生大臣に伺いたい。いまの国民の栄養状態、栄養基準量からいって栄養状態がどうなっているか、厚生省にはお調べがあるはずです。それで栄養欠乏症による、栄養を十分とってないためにいろいろな病気があります。病気になっている人、どういう病気になっているか、これを具体的に御答弁を願いたい。
  169. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 家計費の内訳について御質問でございましたが、栄養関係につきましては、後ほど厚生大臣からお答えがあると思います。そういう数字については当てにならぬというお話でございますけれども、いま先生からその話を聞くことは不思議な気がいたしますが、とにかく内容の調査したところについてお答えを申し上げます。  食料費は、三十八年には家計費——これは三十八年の統計が一番最近の統計でございます。三十八年には平均一万六千七百円余でございます。これは三十七年に比べまして一一%の増加を示しております。それでその内容を見ますると、牛乳、卵類が前年に比べて実質で八・四%増、それから果物類が七%増、肉類が六・二%増、お酒の類が一八・三%の増となっております。大体内容的にはカロリーの数はそう上がっておりませんが、摂取するところの脂肪の量またはたん白の量というものが相当増加いたしておりますと同時に、そのたん白の量におきましても、動物質たん白が植物質たん白に比べて非常に増加が大きくなっているというふうに見ております。
  170. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  国民栄養の現状に照らしまして、たとえば米の偏重、動物性食品、油脂類の摂取不足等、栄養摂取のアンバランスが見えていることは事実でございます。そこで、それならば一体どのような身体症候が発生しているかということを統計で見てみますと、昭和二十四年以来昭和三十七年までの統計でございますが、健康者、有症者というようなのに分類いたしまして、そうこの表から見ると変わっておらないようでございます。大体統計的には似たようなパーセンテージになっております。しかし、厚生省といたしましては、いまお尋ねのございましたように、この栄養問題につきましては非常に重大に考えておりまして、国民健康増進のためにいろいろな施策をいま立てておりまして、そうして逐次実行してまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実態を明らかにしなければだめじゃないですか。身体症候発現率ですか、具体的に数字によって示してください。
  172. 神田博

    国務大臣(神田博君) 具体的に数字を述べろということでございますから、有症者の最近十年間の症状ごとに申し上げますと、健康者が二十八年におきましては七七・四となっておりますが、十年目の三十七年をとりますと七九・五でございます。それから有症者を見ますと、二十八年は二二・六になっておりますが、これが三十七年では二〇・五となっております。貧血を見ますと、二十八年では二・五になっておりますが、これが二ということになっております。また毛孔性角化症を見ますと、二十八年では二・四でございますから、これはふえて三・三ということになっております。それから角膜乾燥軟化症というのは、これはゼロになっております。口角炎が二十八年が四・七が、減っておりまして三・二でございます。それから腱反射消失が二十八年が七・四、これがふえておりまして九・三ということになっております。浮腫が二十八年には一・七でございますが、これがふえまして二・七、こういうことになっております。あと、この表にあります慢性胃腸障害というようなのが四・一になっておりますが、これがずっと二十一年来統計に現われておらないようでございます。大体いま申し上げたようなことになっております。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 毛孔性角化症というのは何ですか。それと、三十五年、三十六年を言ってください。二十八年の比較ではわからないです。三十五年よりはふえてきているのじゃないですか。一番都合のいい数字を説明されたようですから、三十五年、三十六年…。
  174. 神田博

    国務大臣(神田博君) 十年前を比べたのでありまして、そういう意味で実はとったわけではないのでございまして、御了承願いたいと思います。  三十四年を例にとりますと健康者が七五・六が、三十五年を例にとりますと七八・九でございます。三十六年が七八・一、三十七年が七九・五、こうふえておりまして、有症者が三十四年が二四・四、三十五年が二一・一、三十六年が二一・九、三十七年三十七年になりますと減りまして二〇・五ということになっております。貧血も、三十四年が二・四、三十五年が二・三、三十六年は少しふえて二・七になっておりますが、三十七年は二、こういうことになっております。それからその次の毛孔性角化症というのがふえております。三十四年が二・九、三十五年が三、三十六年が三・五、三十七年が三・三、こうなっております。あとは大体口角炎等減っておりますし、それから腱反射消失のほうも変わりない。大体そんなところで、まだ、こまかくなりますから、この程度で。
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 毛孔性角化症というのは。
  176. 神田博

    国務大臣(神田博君) これはひとつ担当の局長から……。ビタミンの欠乏だそうでございます。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、どういう症状になるのですか。
  178. 神田博

    国務大臣(神田博君) ちょっと、専門家の公衆衛生局長にかわりますから。
  179. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 毛孔性角化症といいますのは、端的に申しますと、毛穴が少しささくれ立ったような感じのする、皮膚のざらざらした感じのものでございます。ビタミンA、Dの欠乏が原因であるということでございまして、それほど重篤な病気では決してございません。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの厚生大臣からの御答弁でわかりましたが、三十四年、五年、六年と多少ずつ——三十六年はちょっとふえましたが、また少し有症者は減ってきておりますけれども、しかし三十八年ですね、全体の国民の中で栄養欠乏による貧血、口角炎、毛孔性角化症、腱反射消失——これはかっけですね。それからひ腹の筋肉が圧迫されておできができる。こういう人が二〇・五%——五人に一人ですよ。これだけ大勢おりますと、統計学上だれか該当する人がいるわけですよ、五人に一人。こういう状態なんですよ。栄養基準量がとれてない、こういう状態です。それで、こういう十分栄養がとれてないところで、これで米価を上げた場合、どういう影響が起こるか。そこで、私はあらためて、先ほど企画庁長官がエンゲル係数をあげました。しかし、私は全部否定しているんじゃないんですけれども、そういうエンゲル係数だけでは家計の実態、栄養の実態、また消費者米価値上げによるほんとうの影響がわからない。正確ではないということを言いたい。一つの例をあげましょう。これは六月の二十八日、日本人口学会でお茶の水女子大の助教授の伊藤秋子さんが「家族循環と食費の時間的変動」という論文を発表しているんです。これによりますと、政府は、総理府の家計調査によって、エンゲル係数が昭和三十七年の三九%から三十八年の三八・五%まで下がっている、だから国民の生活水準は向上したというふうに言っているけれども、事実はそうではない。たとえば、伊藤秋子さんが調査したところによると、日本人に必要な栄養を完全にとる場合にかかる必要な食費をモデル家族をもとにして試算してみると、二人の子供がある場合は、父親が四十三、四歳の場合はエンゲル係数は四九・二%になっている。それから三人子供のある場合は六〇・五%、五人子供がある場合は八三・七%、これだけ家計費の中で食料費にかけなければ家族全部に十分な栄養がとれない。いまの三十七年の総理府の家計調査ですね、都市勤労者世帯の平均消費指数から割り出しているのです。これだけ支出しなければ十分な栄養がとれないのに、実際のエンゲル係数は下がっているのです。下がっているのですよ。これは十分栄養がとれてない証拠だ。なぜそうかと言うのです。教育費のために非常に貯蓄をしている、だから食費のほうにしわ寄せが来ている、これではいけないということを言っているのです。これは政府の社会保障の怠慢ですよ。十分な文教予算を組まないからこういうことになるわけです。そして栄養にしわ寄せしている。本来ならば二人家族で四九・二%、家計費の約半分を食費に当てなければ十分な栄養がとれない、栄養基準量がとれない。だから、さっき厚生大臣が答えられたように、五人に一人が栄養欠乏症なんです。そういう事実が出てくるのです。そればかりでないのですよ。もう一つあります。これは消費者団体連絡会で出している「消費者月報」という月報があります。そこで、熊沢高子さんという人が家計簿から家計費を調べて、昨年の八月の家計簿からこういう結論を出しております。大体四人家族で四万二千円ですから標準家庭です。四万二千円——標準家庭で、エンゲル係数が大体三十七%ぐらいです。そこで、主食は一応一〇〇%とっています。副食物は栄養基準量の六八・五%しかとれてない。副食の支出をカロリー、栄養に換算したのです。六八・五%しかとれてないのです。腹八分目というけれども、腹八分目とれてない。腹六八・五分目にしか過ぎない。ちゃんとこまかい数字がありますよ。必要ならお見せしてもいいですよ。なぜそういうふうになるかという理由が書いてある。それは、主婦は家庭ではまけてもらったり、支払いを延期してもらえないようなものを先に払っちゃう。電気料金あるいは学費なり水道料金とかガスとか家賃だとか、先に払っちゃうのです。残りで生活する。しかも、社会保障が不十分だから一五%も貯蓄しなければならぬ。自分で貯蓄する。どこへしわが寄るかといえば、食費にしわが寄る。だから、食費にしわが寄るから十分栄養がとれてない。栄養基準量の六八・五%しかとれてない。これは重大な問題ですよ。社会保障が不十分であるから、乏しい所得の中から貯金をしなければならない。これは余裕があって貯金しているのではない。こういう実態のもとで消費者米価を上げた場合、どういう影響が起こりますか。  また、時間がございませんから簡単に申しますが、これは政府から資料を要求しまして、調べてもらったのです。最近は米食率が非常に高くなってきているのです。昭和三十年以降の米食率——穀類総量の中で占める米の割合を調べてもらいましたが、昭和三十年は穀類総量のうち米が七二・三%であったのが、三十八年は八一・九%になっている。どうしてこうなっているのですか。これは米のほうが割り安なんです。これは昭和三十年の調査ですが、百カロリーのカロリーをとる場合、米だと三円九十六銭から三円七十二銭、パン食だと四円二十一銭から四円九十九銭、うどんだと四円四十六銭、米のほうが割り安なのです。たん白一グラムの単価を見ましても、米の場合は一円六銭ないし九十六銭、パンは一円四十二銭から一円六十七銭、うどんは一円二十銭です。ですから、米を食べたほうがカロリーでもたん白でも割り安なんです。ですから、米をうんと食べるようになってきておるのです。米食率が非常に高くなってきておる。だから、米がいままで安いから、かろうじて米を食べてこの生活困難を調整している、こういう実態が出てきておるのです、この中に。そういうところで米を上げたらどうなりますか。上げたら、また貧乏人は麦を食えと、こういうことになるのじゃないですか。ですから、家計に対する影響、それから栄養に対する影響ですね、こういうものはもっと具体的に実際に家計簿に基づいて、単なる平均数字だけではなく、具体的に調査をしなければ、さっきお話したような単にたいした影響がない、そんな数字的なことでわからないのです。たくさんいろいろな調査があるのですから。したがって、いまの米価は、消費者米価を上げた場合、これは家計を安定せしめると決して言えませんよ。家計を圧迫することです。だから、私は食管法の違反だと思う。食管法は厳然としてあるのですよ。これはその賛否についてはいろいろ議論があるでしょう。しかし、現にある。そうして、食管法の四条二項、これに基づいて消費者米価がきめられなければならぬ。ところが、消費者米価を上げた場合は、家計を不安定ならしめる、家計に圧迫を加えることは、これはもう当然でしょう。それで低所得者に対する影響を徳用米等で緩和する、そんなことで緩和措置はできませんよ。これは私はもっと根本的に考え直す必要があると思う。そうでなければ納得できませんよ。食管法の違反ですよ。この点について御答弁がありましたら伺っておきたい。
  181. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 木村さん一番よく御存じだと思いますが、総理府の家計調査はいわゆる無差別摘出法でもってやっておるのでありまして、したがって、この数字はやはり統計的に見て最も信憑性のあるものである。われわれはこれをよりどころにせざるを得ない次第であります。したがって、いま伊藤秋子さんの論文でございますか、その他の例示されましたものは私読んでありませんけれども、そういうふうな具体的な事例のあることもまたそのとおりであろうかと存じますが、都市生活者におけるところの家計の状態はやはり総理府の調査が一番標準的なものを表示しておると、こういうふうに私どもは解釈いたしておる次第でございます。したがって、その家計調査において食料費の占める割合が年々低下してきておるというこの事実、また、その食料費の内訳を見ますると、なるほどカロリーはそれほど大きな上昇はございませんが、内容的に見て、たとえばたん白がだんだんふえてきておる、脂肪の摂取量もふえてきておる、しかもその内容が植物性のものから動物性のものに移ってきておると、このような傾向はやはり食生活の内容がだんだん改善されてきていると、こう申し上げていいかと思うのでございます。もちろん、現在の日本人の食生活の内容がこれが十分であるというふうに申し上げておるのでは全然ございません。しかし、限られた日本の経済の範囲でできるだけわれわれの福祉水準を上げていきたい、生活水準を上げていきたいということの方向には年々改善が行なわれているのじゃなかろうか、こういうことを先ほど申し上げた次第でございます。  なお、家計に対してそれほど大きな影響はないということを申し上げたわけではございませんが、とにかく先ほど申し上げましたのは、この家計調査から見ますると、大体昭和三十五年のウエートによれば一・四五%の上昇になる。ところが、三十九年の一月から六月までの実際の支出金額に対する割合をとってみますると、かりに二〇%上げたと仮定いたしましてもその割合は約一%程度であろう、こういうお答えを申し上げた次第でございます。
  182. 藤田進

    藤田進君 関連。どうも企画庁長官が不明確な御答弁をされて、いままで伝え聞いていて昭和四十年度は少なくとも三%台以下に物価上昇は押えたいということをつとに企画庁は言っていた。ところが、消費者米価値上げということは、企画庁長官も触れたように、一連の値上げムードを盛り上げていくという可能性もあるので必ずしも家計数字云々というだけではないと答弁しながら、消費者米価に例をとるこの論争において企画庁はどういう態度をとるのか非常に不明確です。なるほど大蔵大臣はうんと国民から取りたいでしょう。農林大臣はかなり値上げ方向を明確に言われて、二〇%にきまったわけではないがきめたいというふうに受け取れた。企画庁は一連の物価対策としてこの問題のみならず物価についてどういう基本的態度をとっているのか、国民はいま知りたい。  それから官房長官総理大臣連絡役としてお伺いしたいのですが、先般の大蔵大臣のテレビ討論等から見ますと、どうも米価については慎重と総理が言われるのでというくだりがございました。ということは、池田総理はまだおやめになっているわけじゃありませんが、この消費者米価等を中心にいま何とか値上げしないでという苦心がうかがえたと思います。しかし、最近総理もこれら値上げについてはやむなしというふうに変わったやにも伝えられている。はたして総理の真意は何か。企画庁長官並びに官房長官からお伺いいたしたい。
  183. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その前に木村さんに御答弁申し上げますが、米食率が非常に向上しているんじゃないかと。実は私もそう思ったんですが、よく調べてみますと、木村さんの話のような米食率とは違いますが、私のほうの所得向上に伴っておりまする関係上、その中で米の需要がすでに充足されているという状況のもとで食生活が高度化しているので米の一人一カ月当たりの消費量はむしろ横ばいだ、こういうようになっておるのでございます。すなわち、全国民の食糧需給表によりますと、三十五年度は九・五キロ、三十六年度は九・七キロ、三十七年度は九・八キロ、三十八年度は九・七キロ、それから消費者世帯の家計調査によりますと、三十五年から三十八年までには八・三、七・九、七・五、七・二、農家世帯では、三十五年から一三、一二・五、三十七年一三というふうに米食率といいますか、これは横ばいだというようなことになっておりますので、念のために申し上げます。  それから消費者米価の改定は食管法違反じゃないか、こういう御議論でございます。食管法によりまするというと、物価その他経済事情を勘案して、そうして家計の安定を旨として消費者米価をきめろということでございます。でございますので、いろいろ物価その他経済事情を勘案して、その結果、家計の安定をそこなわないといいますか、旨としておるというような判定が下されるならば別に違反でない。その見方によってはいろいろこれはあると思います、そこなったかそこなわないか。人によってはそこなわれる人もあると思います。こういうものはやはり社会保障制度——御指摘のような欠陥があるといたしますならばそのほうで補うよりほかないと思います。大体において大部分に生計の安定を旨としての数字であるならば、これは食管法の違反じゃない、こういうふうに考えております。
  184. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 藤田さんの御質問に御答弁申し上げます。  御承知のとおり、昨年の暮れから金融の引き締めを実施してまいっております。これは、国際収支の均衡を得るということと、それから同時に物価の安定を期するということから出てまいっておるのでございますが、物価の問題につきましては、昭和三十九年度の予算を編成いたします際に、昭和三十九年度の経済見通しを立てまして、その際に、経済の成長を名目で九・七%、実質で七%、同時に、物価の上昇率を四・二%と一応見通しを立てたわけでございます。ところが、現実には、今年の情勢はどう見通されるかということを申しますると、実は八月までの実績は、前年度同月比において約二〇%近いところの鉱工業生産の伸びを示しております。さらに、八月は七月に対して前月比におきましては一・六%の減でございましたが、九月に入りますと、これがさらに前月比で二・九%の増というふうに数字が出てまいっておるのでございます。設備投資につきましても、当初見通しは四兆一千億円と考えておりました。ところが、それが現在の大体の見通しでは四兆五千億円ないし四兆六千億円になるというようなふうに予想される次第でございます。それらの点から勘案いたしてまいりますると、どうしても今年度のつまり三十九年度の成長率は実質において一〇%程度になるんじゃなかろうかということがただいま予想される状況でございます。藤田さんも御承知のとおり、物価は全体の経済成長率と無関係ではございません。総需要が相当向くなりますると、どうしてもそれに引きずられて消費者物価も上がっていくという傾向を持つことは、これは否定できない事実でございます。しかしながら、今年の実績を申し上げますると、四月から八月までの実績におきましては、今年度は消費者物価が三・二%の上昇率に相なっております。それで、前年度つまり三十七年度においてはこの同じ期間において七・八%上がっておりましたので、その点は相当改善になっておりますが、九月、十月の傾向はある程度上昇を見ております。したがって、今後一体どうなるかという見通しはただいま立てることが非常に困難でございまして、もう少し経過を見た上でその辺の見当をつけたいとは考えておりまするが、問題は、やはり全体、つまり経済に対するところの全体の金融引き締めの基調が変わらないということ、または財政についてどういうふうな態度をとるかというふうなことがやはり一つの大きなこれを動かす要因にも相なる次第でございまして、そういうような点を彼此勘案いたしまして、見通しの程度に何とかしてとどめたい、消費者米価を上げる場合においても見通しの程度に何とかしてとどめたいというふうに私ども考えて、そういう考え方のもとに消費者米価の問題も今後検討してまいりたいと思っておる次第でございます。  しこうして、来年度の消費者物価をどう考えているかというお尋ねでございますが、これは先般の衆議院の予算委員会におきましても御答弁申し上げたのでございますが、大体今年度の上昇率を上回らない程度にやっていきたいと、こういうふうに御答弁申し上げておる次第でございます。
  185. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 消費者米価に対する池田総理のお考えにつきましてお尋ねがございましたが、池田総理消費者米価の改定の問題につきましてはきわめて慎重な態度をとってまいったのであります。その後、大蔵大臣、農林大臣、また経済企画庁長官等の関係閣僚からいろいろ御意見を伺いまして、その結果、消費者米価値上げはやむを得ない、ただ低所得者層の方々に対しては十分な配慮をするようにと、こういうことで目下関係当局に命じて案を検討さしておる段階でございます。
  186. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一問だけで、これで終わります。  エンゲルの法則の停止状態ということがよく言われるんですが、家計の中でエンゲル係数が下がったから、その家計は楽になったというふうに、あるいはまた家計の内容が向上したというふうに、そういうように機械的にとれないのですね。最近はエンゲルの法則の停止状態というものは非常に問題になっているわけですから、こういう点も十分に踏まえて考えるべきだと思う。これは私の意見です。  最後に、一つだけ大蔵大臣に伺いたいのです。これは非常に具体的な問題ですが、震災で大被害を受けた新潟の昭和石油の新潟製油所の再建の問題です。この問題について十月二十一日の毎日新聞が報道しているのですが、シェルという外国の石油会社からのいろいろな干渉とか圧迫等があったやに聞いておるんです。で、非常にその再建はおくれていたんですが、この新聞によりますと、田中大蔵大臣が櫻内通産相に再建に協力してほしいと、そういう要望もあって、会社側も新潟で再建する方向に向かったようだというふうに報道されているわけです。この間の事情について田中大蔵大臣から最後に御説明お願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  187. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和石油の新潟製油所につきましては、御承知のとおり、新潟地震によって壊滅的の損害を受けたわけでございます。その後、これが再建につきましては、会社側からも大蔵省にも要請がございまして、再建資金等について協力方の要請がございました。昭和石油側の意向等も十分徴したわけでございますが、御承知のとおり、シェル石油との間に技術及び資本の提携が行なわれているわけでございます。新潟の工場は四万七千バーレルでございましたが、これをこの地震を契機として表日本に十万バーレルにして新工場をつくるというような動きのあったことは確かでございます。しかし、石油精製の問題につきましては、四十三年とか四十四年とかの長期計画をいま通産省を中心に検討いたしておるわけでありまして、とてもいますぐの問題ではないわけでございます。しかも、新潟には非常にたくさんの下請工場もございますし、それから技術工員とか、いろいろのことで現実いままでの新潟地点に再建をすることが経済的にも非常にプラスになるという面もたくさんあるわけでございます。そういう意味で、最終的には櫻内通産大臣からも話もございましたし、私もできるだけ協力体制を確立をするということで、先般、会社側も正式に新潟で再建をするということをきめたようでございます。また、私たちも会社側との間をあっせん等をいたしまして、大体再建資金は四十五億円必要でございます。このうち、五〇%ぐらいは、俗に言う財政資金といいますか、北海道東北開発公庫等でめんどうをみれるというような話も詰まっておるようであります。大体、今年度、来年度で二十二億五千万円という程度の融資が考えられておるようでありますので、会社側の意向さえ明らかになれば、これが再建は急ピッチに進むという考え方に立っております。通産大臣と私の話し合いでは、私も通産大臣もそれから会社側にも異議はないということでありますから、御指摘の時間がかかったわけでありますが、八月の末、九月の末、十月の末、ついに今日になったということでございますが、新潟で四万バーレルの規模で新しく再建をする、その再建の総額はおおむね四十五億、こういうことでございます。
  188. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 木村君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  189. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 鈴木一弘君。
  190. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、公明会を代表いたしまして、初めに政局の問題について、特に責任あるいは空白の政局という問題についてお尋ねしたいと思います。  今回、首相辞意を表明せられたことについて、これが病のためであるということについては非常に同情にたえないものがあります。また、空白を続けないため、国民に安心を与えるためということでこういう事態になったのでありますが、当然のこととはいえりっぱなものである、このように私どもは感ずるわけでありますが、そこで、空白の政局というものは、総理辞意表明からして早々に埋めなければならないわけであります。ところが、新聞の情報によるというと、目鼻のつくのは十日ごろであろう、総裁の決定されるのはその前後でなければ目鼻がつかないであろうというようなことがいわれておるわけでありますが、憲法によりますというと、六十八条で「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。」と、こういうふうにはっきりと責任の所在がしております。したがって、たとえ首相病気であろうとも、この病中におきまして閣僚の間に大きな事故が起きる、あるいはミスをしたというような場合には、これは条文からいけば病床の総理責任ということになるわけでありますが、まさか病床の総理に対して責任を負わすというわけにはいかないことになりましょうし、そういうようなことは気の毒なことでできるものではなかろうと思いますが、そういう際の責任というのは政治的には一体どこにあるかということであります。この点についてまず最初に官房長官に伺いたいと思います。
  191. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 総理病気のために入院加療を続けてまいったのでございますが、先般の総合診断の結果、なお相当の療養を必要とすると、こういう医師の勧告がございまして、直ちに元どおりの政治の陣頭に立って働くことが困難である、こういうことから、内外の重大な時期でもございますし、内閣総理大臣という重責にかんがみまして、この際いま御指摘の政治責任という立場から総裁及び総理大臣辞任決意をいたしたということでございます。ただいまの御指摘のように、総理みずからが政治責任を痛感をして善処をしたい、こういう決意をされた次第であります。
  192. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの御答弁はわかるのでありますけれども、実際問題として現在病床におられるわけであります。したがって、現在の政局においては、先ほどの御答弁からうかがえることは、たとえ病床におられてもよく指導を仰いでいくからして空白にはならぬだろうというような意見にとられたわけでありますけれども、それは表面上のことでありまして、実際直ちにここのところで御相談するとかあるいは緊急な場合にということになれば困ることも出てまいりましょうし、国民の目からすれば、明らかにすでに辞意を表明せられ、しかも病気療養中であられるということであれば、国民の目に映ることは政局の空白となってくるわけであります。そうなったときには、何か一つの間違った事態が起きたときには、責任の所在というものは、これは条文とか何とかという問題より、政治的あるいは社会的に国民の目から見れば、責任の所在というものはないんじゃないか、こういうふうにとられてくるわけであります。そういう点についての考えというものはどうなんでしょうか。
  193. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、内外の情勢を考えられて御自分病気療養のために陣頭に立って国政を見ていくことができないというような政治的な責任を感ぜられて辞意を表明されたわけでございますが、また、池田総理は、後継総裁の選任を党の首脳に対して円満かつすみやかに選んでもらいたい、それまでの間、政治空白を避けますために内閣の総辞職は行なわない、現在の体制政治を見ていく、こういう方針をきめまして、いま御指摘のように、後継総裁がきまり内閣首班指名がなされるまでは現在の体制政治を見ていく、空白のないようにしていく、こういう方針をとっておる次第でございます。
  194. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは私が申し上げているのは、いま官房長官答弁されたことはわかるのです。それは先ほども答弁があったけれども、実際問題として国民の目に映っているのは、現在の状態がもはや空白ではないか。病床の総理にすべての責任を負わせていく気なのか、それとも、道義的に見てこういう現在はやはり常識的に考えれば空白ではないかと認めていくのか、どっちなのかということを伺っているわけであります。責任の所在をはっきりしていただきたいということなのであります、道義的に見た。
  195. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 私ども一は、毎日池田総理病院におきまして緊密に政府の関係閣僚連絡をとりながら政務を見ておりますので、政治空白を来たしておるとは考えておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、健康上の理由辞任決意をいたしましたので、一日も早く後継者を選んでもらいたいということを党の首脳お願いをいたしまして、党首脳におきましてもその方針総理の意を体していま後継総裁の選任を急いでおると、こういう段階でございます。
  196. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 わかりました。  次に、同じく官房長官に伺いたいのですが——その問題はその程度にしておきますが、国民の目から見れば明らかに空白でありますので、これが来月の十日前後でなければ目鼻がつかない、それから首班指名臨時国会というような形でなく、終点をすみやかにきめられていかれるように政府としても対処するべきじゃないかということを申し上げておきます。  なお、ここで伺いたいことでありますが、現在、公務員給与の問題あるいは災害の補正の問題というような重要な問題が控えておりますが、一部には解散というような声も出ておるようでありますけれども、私どもとしてはその解散に感心できない。それより、すみやかに政局を安定させて、そうしていま申し上げたような事態というものをすみやかに解決していくようにするべきである、このように考えているわけでありますが、公式の席上において、官房長官から、どういう考えでおられるか、政府考えを聞かしていただきたいと思います。
  197. 鈴木善幸

    説明員鈴木善幸君) 政府といたしましては、総理入院加療中でございますけれども、当面の重要な案件につきましては関係閣僚が一体になりまして政治に渋滞の起こらないように努力をいたしておるわけであります。いま御指摘の公務員のベースアップの問題につきましても、すでに御承知のとおり、非常に財政事情が困難な状況にございますけれども、人事院の勧告の趣旨を尊重いたしまして九月からこれを実施する、こういう方針閣議で決定をすでに見ておるわけであります。また、災害対策等につきましても、何ら御迷惑のかからないように行政措置を講じ、また近く補正予算を組みまして御審議を願うことに準備をいたしております。  衆議院の解散等は全く考えておりません。
  198. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのような前提のもとでこれから質問を続けたいと思いますが、初めに中小企業の問題について伺っていきたいと思います。  大蔵大臣に伺いたいのですが、三十九年度の予算編成に際して、今回は経済のひずみを是正するということを言われたわけであります。高度経済成長政策によるひずみが起きて、中小企業等についての是正をやるということが言われたわけでありますが、その効果についてはどのようにいま現在見ておられるか。
  199. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 効果……。
  200. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 結果です。効果がどのようにあらわれたと見ていらっしゃるか。
  201. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう少しこう具体的な御質問お願いできればよろしいのですが、効果というのは、中小企業に対しましていろいろの施策を行ないましたことは御承知のとおりでございます。それによって倒産がなくなったかというような御質問かとも思うのでございますが、もう少し具体的にお願いします。
  202. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 効果があったと言うと、中小企業が倒産したじゃないかと、こういうふうに言われるというように思われたようでございますが、実際問題としてだいぶ倒産が続いておるようでございます。効果は当然これはあげてこなければならなかったわけでございますが、ここで、通産大臣お急ぎのようですから、先に伺いたいのですが、今年度については、高度成長のひずみを是正するためということで、革新的といいますか、革命的な中小企業対策をとられるということでやったわけでありますが、すでに四月にも新記録をつくりまして、また八月、九月と倒産の新記録の更新が行なわれ、十月はすでに二十二日現在でもうかなりの件数にのぼっておって、また新記録ができるんではないか、オリンピック以上の倒産の記録になりそうでありますけれども、その具体的な状況、内容ですね、それについて伺ってみたいと思う。
  203. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 九月の状況で、件数のほうで申し上げますと、不健全経営で四十六件、これは一二・一%になります。それから過小資本で三十二件、これが八・四%、設備投資の過大ということでこれが三十一件、八・一%、それから企業の業績不振、これが非常に多いのでありますが百件ございます。二六・三%。それから売り掛け金の回収難、これが六十九件の一八・二%、在庫状態の悪化が百一件の二六・六%、こういうことで、九月の倒産件数が三百七十九件と、こうなっておるのであります。大体この九月までのただいま申し上げた件数の割合あるいはそれに伴う倒産額等の資料が出ております。後刻お手元まで差し上げて、全部申し上げてもどうかと思いますが、いかがでございましょう。
  204. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのように、九月には三百七十九件という未曽有の倒産があったわけでありますが、その具体的な内容、こまかい理由、倒産の原因についての御答弁があったわけですが、たとえばことしの一月ですかのときには、一月、二月、三月のころには、繊維あたりがいわゆる暖冬異変のために倒産が多かったと言われておるわけですが、最近の傾向というのはだんだんといわゆる小資本のほうに移ってきているということが言われているわけですが、その点の傾向についてどういうようにお考えていらっしゃるか。
  205. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御指摘のように、最近における倒産の状況は、いわゆるよく言われますように下部に浸透してまいったという形だと思います。従来、主として京浜かあるいは阪神かまたは名古屋地区の倒産件数が目立ったのでありますが、これが地方にだんだん及んでいます。また、倒産の額も次第に小さくなりつつあります。したがって、下部に浸透してきた、こう言われるような状況であります。
  206. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 通産大臣の下部に浸透したというのは、倒産が下部に浸透したという意味なのか、あるいは金融引き締めの効果が下部に浸透したという意味か、その辺がちょっとわからないのですが先ほどのような九月あたりにかなり倒産があったということは、まあ具体的にこまかい在庫の悪化であるとか業績不振であるとかいう理由はわかりますけれども、それをひっくるめてそういうような在庫の悪化や業績不振、そういうものを招くに至った原因というのは、あるいは、いまのように小さい資本であるとか地方にまで倒産が移っていったという原因は、これは金融引き締めによるものである、その効果が浸透した、こういうように考えてよろしいですか。
  207. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いろいろ申し上げる角度があろうかと思いますが、一言で申し上げていきますならば、確かに金融引き締めの影響がそういうふうにあらわれてきたと、こう申し上げるのが適当だと思います。
  208. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この金融引き締めの問題ですけれども、これは物価抑制という問題あるいは投資意欲というもの、それを押えて国際収支を改善するということが一つの大きなねらいであったろうと思いますが、これは当然その反動としては、今回のように中小企業にいろいろしわ寄せが出てくるのは考えられたわけであります。それについて、これが中間においていろいろ多少手を打たれたようでありますけれども、抜本的に思い切って手を打たれなかったという理由について大蔵大臣に伺いたい。
  209. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私にあまり御質問がなかったので、お答えをしなかったわけですが、私はこれは閣内不統一ということじゃございませんから、ここであらかじめ申し上げておきますが、金融引き締めが浸透したために中小企業の倒産があらわれたと、私はそういうふうには見ておらないのであります。これは確かに金融調整というものが中小企業の倒産の一つの原因である、きっかけである、これはいなめないと思います。しかし、私たちもいま東京商工興信所でもって調べておりますが、統計に対してはもう一年間にわたって非常にこまかく調べておるわけであります。特に大ざっぱな調べ方よりも、金融機関から一体内容はどうなっておるのか、財務局から一体なぜこのように倒産に追い込まれたのか、それから特にメイン・バンクとして資金の中心をなしておったものがなぜ倒産に追い込んだか、そのときにつなぎ融資はできなかったのか、再建融資はできなかったのか、できない理由、そういうふうになる運命にあったものにいつまでなぜ金を貸しておったか、そのときの考え方は一体どうなんだ、いつから一体こういう事実をつかんだのか、税の上から、これは一体いままで順調に税金を払ってきたものがどうして一体倒産をしたのか、税金というものからこまかく入ってみますと、これは架空な税金を払っておる。もうかっておらぬものをもうかるような状態をつくりながら税金まで払う、こういうことになればこれは倒産に拍車をかけるわけです。税の面からも非常にこまかくしさいに検討しておるわけであります。ですから、黒字倒産というものはなかなか起こらないようにと、こういうことでもって配慮をしておるのですが、相当大きなものが起こっておる。数は御承知のとおり、北九州の一つのブロック——ワン・ブロックで倒産したものはどういうものか、繊維とか、金属に関係したものが多いというのはどういうわけとか、四大工業地帯から地方の中小都市にも移っておるのは一体どういうことか、こまかく検討しておりますが、まあこれは責任は全部中小企業にありとはもちろん考えておりませんし、政府もこれからも補助しなければならぬし、これらの実態に対して十分配慮をしていかなければなりませんが、どうもいろいろな倒産の原因があるようであります。ところが、私は率直に申し上げますと、融通手形というものが思うよりもよけい回っておる、とにかく資本金千万円で年間約二十倍の二億四千万円の水揚げのある会社が倒産をする、六億ぐらいの負債を持っておる、これはどういうことか、よくわからないのです。ですからいろいろなことをやってみますと、まあこのごろは金属屋さんが旅館を経営したり、それから鉄鋼業者が土地造成をやったり、もうかる仕事は何でもやる、多角経営と称するもの、それで自分の会社の本業の設備投資の倍ぐらいのホテルをつくったが、お客は来なかった。いろんなものが、いままで考えられなかったものがあります。資本金の倍ぐらいの土地を買って、さて造成の金を借りようと思ったら造成の金は借りられなくなった、それでまあ不渡りが出る、これも金融引き締めの結果です、こういう状態では、私はどこまでいっても金融の見れるはずがないのであります。まあ融通手形などというものがどうして一体こんなに出ているのか、融通手形が出ないのがおかしいのです、こういうことを言うのも、私にはよくわからない。これに対しては、二カ年前から手形法の改正を明らかに打ち出しておるのですが、なかなか進まない。これは事実手形法の改正でもやって、ある時期までは何らかの手続でこれを解消する。実際これを解消して、ある時期を過ぎたら融通手形に対しては救済はしない。救済しないどころではなく、法律的なある意味の制裁を持たないで経済の秩序は保っていけないのであります。これは中には法的に規制をしなければ困るという人も——私たちが出したいわけじゃないんです。親企業が金ぐりのためにお出しなさいと言っていることがひっかかるのです。私はいろいろなものを考えてみますと、どうも正常ならざるものもあるようでございます。ですからひとつ統計もございますが、過去何年間も正常な金融、正常な事業の伸び方、こういうものと全然別な負債があり、何年分も短い間に一ぺんに倒産をした瞬間に負債になる。この実態をやっぱり解明していかなければいかぬ。私はそういう意味で中小企業の実態というもの、それから経営の自己責任、それから自己資本比率の向上、それからオーバー・ローンの解消とか、オーバー・ボローイングの解消なり、大手筋のものだけにやらせるのではなく、中小企業自体も、現在特に私が考えておりますのは、大蔵省などに陳情にまいりまして、どうして一体中小企業三公庫は金を出さないんだろう、こう言うのですが、資本金を聞いてみると、三百万円だ、もうすでに五千万円借りております、あと一億五千万円借してくれませんか、何か私は少しこういうものの考え方をまずただす必要がある。こんなことでは私は国際経済の波動に対処する、年率一〇%とか八%とか七%とかという安定成長の過程に追い込んでいくということは非常にむずかしいことがあると思うのです。ですから私たちも、そうかといってこれを画一、一律的にやったらたいへんなことになります。ですからこの間も日銀総裁とも懇談をして、窓口規制の中でやっぱり中小企業問題等は相当弾力的に考えて、それが放漫経営というものをなお助長するということであっては絶対にいけません。ある時期そういうものを十分きめこまかく配慮しないといけないのではないかというふうなことを、十分合意に達するまで議論をしておるというようなことは、まあいろいろこのような事実をもとにして考えているわけでございまして、どうも金融引き締めということで、当然配当を続けている会社が倒産をしたというのは、もっと根本的に内容を検討し、やっぱり強く通産省からも行政指導をしてもらうということも必要なんじゃないか、こう思います。しかし、これは閣内の不統一じゃございませんから、ひとつその意味でお聞き取り願います。
  210. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣は金融引き締めによるだけではない。それは現在労務倒産なんというような新しいことばも生まれているような時代でございますので、それだけとは言えないかもしれませんが、しかし、大臣の言われた連鎖倒産のような形も、いわば金ぐりに窮しての融通手形の代発行ということに考えられるわけです。実際問題として、ここのところでの全銀の貸し出し率においても、大企業向けに比べて中小企業向けのものがかなり減ってきているのではないか。このように考えられるわけですが、その辺の比率はおわかりになりませんか。
  211. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 倒産の中で連鎖倒産、それから親企業が非常に手形のサイトをうんと伸ばしたために倒産をした。これははっきり申し上げて、先ほどちょっと申し上げましたが、正常な年率、やっぱり一〇%から私がいままで非常にこまかく計算をした中では、少なくとも、二〇%、前年度の実績を二〇%程度ずつ倍増をやっておる程度のものには倒産はない。何か倒産としてぴしっと金融がとまるものは年間一億の水揚げに対して一億、その年間総事業費に匹敵するような新しい分野に投資をしたとか、そういうもの以外にはなかなかないのです。それで黒字倒産というのは、黒字ですということでもって、よく見てみると確かに黒字なんです。それは土地を持っておる。ですから土地を評価をしますと確かに黒字でありますが、売れない。売れないうちに不渡りが出る。それから関連産業との間に持ち合い株をやった。こっちのほうは配当しているけれども、向こうは配当しない。そういうものが積み重なって大体一年間ぐらいの赤字に匹敵する金額を負い込んだ。正常なものは私は二〇%程度の伸びで二〇%以内できておる。五カ年間で倍になるような中小企業で倒産をしたという例を私あまり——いままでも何十件何百件と調べてみましたが、そういう例は非常に少ないということだけは事実のようであります。ただ北九州のように一括倒産ということがありますが、これはまた再建の方法も地元銀行でもめんどう見ておりますので、一括再建できる、こういうこともございます。ですから、特に親企業が東発系などございます、ございますが、こういうものも力のあるもの、正常なことをやっておる人は救済融資で立ち上がっていける状態にあるわけであります。ですから、黒字倒産が何パーセントそれがふえる傾向にあるか、減る傾向にあるのかということは的確にいま申し上げられる段階ではない。ただ金額はだんだんと小さくなっていきつつある。逆に地方へいきましたので深刻になったのではないかとわれわれは考えておったのですけれども、そうではなく、私がいま指摘したようなものが親類までも、もうここらで手を放さないといかぬとか、そういうものの例のほうが私が見た目では多いような気がいたします。しかしこまかいものに対しては調査をしたものもございますので、また御報告申し上げます。
  212. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あとで貸し出し比率について、全銀協からの貸し出し比率のいわゆる大企業向けと中小企業向けとの減り方が大企業のほうが少ないわけであります。その数字あたりを……。
  213. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはあとから数字を渡してもよろしゅうございますが、中小企業向けの専門金融機関は非常に資金量も豊富でございますので、中小企業向けはふえております。政府三機関も御承知のとおり年末に対して八百億も資金を追加しよう、また運用部の買いオペレーションも考えております。日本銀行の中小企業向けの買いオペレーションも考えておりますし、都市銀行、地方銀行等三千億四千億という年末の融資も考えておりますので、例年に比べて少ないということはないと思います。ただ都市銀行の比率が二五%が二三%になり二〇%になったのではないか、こういうことをきっと御指摘だと思いますが、都市銀行に対しては確かに中小企業向けが減っておると思います。的確な数字はあとから申し上げますが、減っております。これはなぜかと言いますと、都市銀行の資金の状況が非常に悪くなっておる、こういうこともございます。しかし都市銀行が減っておっても関連の銀行では相当出ておる。また中小企業専門金融機関と政府三機関からは相当大幅な二〇%、二九%、三〇%程度のものは対前年度比よりもよけい出ておる。こういう事実は申し上げられるのであります。
  214. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしてもそういうようなルートの細まることについては、前もってこの前のここの予算委員会でも申し上げたことがありますが、積極的に今後とも考えていただきたいと思います。  それからここで通産大臣に伺いたいのですが、中央最低賃金審議会の答申が出まして、最低賃金についての引き上げということは、賃金の引き上げということは中小企業においては確実になってきますけれども、その影響はどのようにいま考えられているか。それからいま一つは、この点については企業の近代化のために相当強力に施策を行なっていかなければならないわけであります。そういうことに対しての構想といいますか、プランというものがいま政府にあるのかないのか、あれば概略言っていただきたいと思います。
  215. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御承知のように中小企業が労働力の不足で困っておる、そしてそのことはまた農民のほうも次第に高騰しておるわけであります。そこに最低賃金の答申がございますと相当影響がある。先ほど御指摘がありましたように、労務不足による倒産というような例も間々見られるわけであります。その点で私どもは非常に憂慮いたしておるのでございますが、なかなか大企業との競合におきまして労働力を確保することが至難だと思います。至難ではございますが、あらゆる知恵をしぼって苦労しなければならない。こういうことから一応考えておりますことは、この問題はどうしても労働省とも緊密な連絡を持ってやらなければなりません。すなわち就職のあっせん体制の強化であるとか、職業訓練の拡充であるとか、最低賃金制の指導であるとか、労働福祉施設融資の充実とか、こういうようなことで中小企業への雇用を促進いたしまして、また中小企業の労働条件及び労働環境の近代化によって労働力の定着を進めていきたい。これに伴う予算要求などにつきましては、先般八月末までに概算を要求いたしておるような次第でございます
  216. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは非常に労働大臣と関係があるわけでありますが、いま言われたようにいろいろな構想、プランを持たれても、しかもそれでも労働力の確保ということは容易でないだろうということが想像されるわけであります。実際に設備は近代化されたけれども、また親工場からの発注も多くなる、前途が明るくなったところへ持ってきて労働力の確保ができないために再び手工業に戻ってしまったというような企業さえあらわれておるような状態であります。そういうような労働力の問題ということになりますというと、これは本腰を入れて政府から労務管理問題等の指導というものがなされなければならない。この点について労務倒産を防ぐ意味から、また労働力を確保して、わが国の企業の中枢になっております中小企業に対してどういうように指導していかれるか、伺いたいのです。
  217. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 中小企業に必要な労働力を確保させるということの唯一の方法は、中小企業の労働条件が向上し近代化して、そして大企業に劣らないようになることであります。これ以外にない。現在までありました格差を、そしてその格差に頼ってきた中小企業のいままでのあり方をそのまま承認して、その上に立って必要労働力を確保させるということはこれは不可能であります。したがって、私どもはまず中小企業がその上昇した格差を縮小しつつある状態に耐えられるように生産性の向上をはかっていく方途について所要の施策をしてもらうということが第一点であります。しかしそれが急速に望めないというような場合、その場合においては、労働省が行ないまする労働者に対する各種の助成補助施策、たとえば住宅でありますとか、あるいは福祉施設だとか、そういうものについて特に中小企業に手厚くしていく、これはその方針を確立して進めてまいるつもりであります。それからすでにございます勤労者保護のための施策、失業、労災その他の社会保険あるいはまた中小企業退職金共済事業団についての加入の促進、労働基準法による労務管理の近代化の指導、そういうようなものをあわせてやってまいりたい。このたび答申を得ました最低賃金を実施すべき業種及びその金額の目安についての答申の実行にあたりましては、他の中小企業対策が進んでおりまする業種を選びまして、無理のないよう、実効があがるように指導してまいりたいと思っております。
  218. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 具体的に住宅等についてはどれくらいの戸数になるかは、いまのところは発表できませんか。
  219. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 中小企業の労働者に対する施策は、建設省所管の住宅公団の産労住宅あるいは厚生年金の還元融資、あるいは私どものほうの雇用促進事業団で行なっております住宅の建設等行なわれておりまするので、具体的な数については、事務当局から答弁させます。
  220. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) ただいま御質問の住宅の戸数でございますが、御承知のように、石炭の離職者対策を中心として発展してきました住宅が、ことし一万戸建設される予定でございます。これもほとんど全部が中小企業のための住宅に向けられております。さらに雇用促進融資という制度が二、三年前から設けられましたが、これもことし約六十億を融資の額として用意しておりますが、このうち五十二億二千万円を中小企業に向けて融資する予定でございます。この大半が住宅の融資に向けられるわけでございますが、戸数にいたしまして七千三百七十戸でございます。
  221. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いまの答弁は、私どもの所管のほうでやるものでありまして、そのほか建設省及び厚生省所管の融資及び建設が別にございます。
  222. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、労務倒産の声が起きてきたのは最近のことでありますから、これは四十年度の施策としてはかなり重点を入れなきゃならない。ことしは革新的な中小企業の予算であるといっておるのに、ことばだけの革新になったような感じもいたしますし、それにしても、積極的な予算というものを、これは大蔵大臣に、どう考えていらっしゃるか、今年度よりさらに革新的になさるのかどうか。
  223. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業対策につきましては、革新的、抜本的なものをやろうということでございます。しかし、実際においてなかなかむずかしい。これはもう世界にも例のない非常に広範な多様多種、むずかしいものを対象としておるわけでありますが、しかし、この現実に十分実際に対応できるような各種の施策を行なってまいりたいというふうに考えております。税制上の問題もありますし、それから金融問題がございます。それから企業指導とか、それから協業化の問題とか、なお研究とか、その他の共同でやれる道とか、また政府関係機関の資金量の増大、民間金融機関の一定限度の簡易な融資の制度の創設とか、また実際長期の設備資金を出しておりながら、地方銀行が出しているために、制度の上では百日とか六カ月で切りかえ切りかえで行なわれておるとか、こういうものを制度上認めなければならないとか、それから歩積み、両建てがございまして、これは制度上何とかしなければならぬというけれども、なかなかこれがうまくいかない。これはただうまくやろうということではなく、資本金の一体何倍くらいの融資限度、また、これに対してどの程度のものが歩積み、両建てとして認められ、それ以外のものは不当、過当といって排除されるのか。やはり一つずつ片づけなければならない。また下請代金支払遅延等防止法がございますが、あってもなかなかやらない。どうしてか私にもわかりません。幾ら言ってもだめなんです。いよいよになると、品物を受け取っておって手形を出さないどころでなく検査をやらない、あの部品は下請が黙って置いていっただけだ、こういうことだそうです。その間は融通手形でまかなっていけ、こんなことが行なわれていたとすれば、大蔵省だけの金融とか、そういう問題じゃない。こういうものを抜本的に正さないで、中小企業対策はできるわけではないのであります。私はこういう意味で、各省とも、ただ政府は金を出す、金利は安くする、無利息、無担保の融資をつくる、こんなことで私は中小企業の本格的な育成にはならないと思う。それよりも、もっともっとある場合には手きびしく、ある場合にはもっと基準をきめて、ほんとうに各省が一体になって、下請などに対しても勇気を持ってやる。弱い下請をそのままにしておいて、通達を出しましたから今度は払うでしょうという話ではどうにもならぬ。そういうことを総合的にやることが革命的であって、大蔵省だけが大いに金を出すことだけでもって革命的な施策ができるものではないと考えております。ただし、政府関係機関の資金量を大いにふやすことに努力をすることはもちろんでございます。いずれにしても、積極的な施策を行なってまいりたいと考えております。
  224. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣は、いわゆる制度上、そのほかの方面の革命的なことがなければということで、だいぶ予算の面においてはお逃げのようでありますけれども、もっとこれは積極的に取り組んでいかなければならない。中小企業の関係の予算書を見るというと、項目は実にりっぱでありまして中身は少ないということが一番の致命的な欠陥です。  通産大臣に伺いたいのですが、いま大蔵大臣からの下請代金の問題が出てまいりました。また長期支払い、手形や検査待ちということで、二百十日手形という、いわゆる台風手形というものまであらわれるに至っておりますけれども、その下請代金支払遅延等防止法をさらに改正して、市町村あるいは地方団体の権限でもって実態調査を行なっていく申請制というような弊害、そういうものを取り除いていかなければならない。強制的に適用されるようにする必要があるし、さらに代金それ自体については、最低価格制というものをつくっていかなければ真実の中小企業の保護ということはできないわけでありますが、その点についての考え方をお聞きしたいと思います。
  225. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 現在下請代金支払遅延等防止法でいろいろとやっておるんでありますが、最近におきましては、一四半期に大体二千の工場への立ち入り検査などもやっております。そしてある程度の効果もあがってきておるわけでありますが、私としては、さらにこれを効果あらしめるために、立ち入り検査の結果の集計なども考慮したい。また悪質な親企業につきましては、行政指導はもとよりいたしますが、さらには公取に対しましてそういうものを公表する、さようなことによって、効果をあげてみたいと思うのでありますが、いま御意見がございましたが、地方の通産局の立ち入り検査などを強化できるようにしたい。これにはやはり相当人手も要ります。いろいろ検査したくても人手の不足の場合もございますし、また通産局自体が管内の企業に対しまして、困難などをいたしながらもっと積極的な指導をする方法もあるのじゃないかというようなことで、いままでの調査の結果をもとにいたしまして、せっかくいろいろとくふうをしておる実情でございます。お話しの法律の改正についてはどうかということにつきましては、ただいまのところは私としては考えておりません。
  226. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最低価格制は……。
  227. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは鈴木委員一つのアイデアだと思うのであります。なかなかその最近価格を全産業についてきめていくというようなことについては、いま早急に具体化することは困難じゃないかと思います。
  228. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 特に下請の中でも業種によっては、最低価格制に踏み切ることもできるし、また、こういう声は実際に起きているわけでありますので、この点は研究を積んでいただきたいと思います。  それから今回の年末融資の問題でありますけれども、これについておそらく選別されるだろう。そうすると、選別されて融資に漏れた人、いわゆる選別されて融資に漏れた弱体中小企業に対しては、これはどういうような救済策というものを考えているのか。本来いえば中小企業はいま大蔵大臣の言うように、相当総力をあげてもたいへんだというのでありますが、中小企業自体にも責任があるような話だったわけであります。考えてみれば、むしろ社会保障的な意味で中小企業対策というものは臨んでいかなければならないのじゃないか、このように考えるわけです。そこで、今年の年末融資、先ほど発表がございましたけれども、それに対して選別融資に漏れたものについてどう救済するかということを、これは通産大臣、大蔵大臣、両方から伺いたい。
  229. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年末融資に対しては、選別融資をするということは考えておらぬわけです。おらないのですが、実際、金額は無制限にあるわけでないから、そうするのだろうという認定でお話しになっておるわけでありますが、これは御承知の三機関の直接貸し等もございますし、これによって代理貸しを行なうことになりますし、協調融資でやっておるところもありますから、政府が資金量を多くしたという金額だけでなく、おおむねその倍額くらいの大きなものが動くということでございます。全然無差別に、内容は悪くても見ますよということにはならぬと思いますけれども、少なくともこうして年末融資ということで出すわけでございますから、しかも、財政資金による買いオペレーション、売りオペレーションの時期調整をしようというくらいの配慮をしておるわけでありますから、あなたが言うように、選別融資をがっちりやり、金は出しても使わないというようなことは絶対にいたしません。できるだけすべての方々に融資が及ぶように、しかも、それをほかのものに対しては、民間企業も中小企業関係の金融機関は相当金を持っております。いままた米の納付代金等も相当入ってきておりますから、こういう資金的に潤沢であり、場合によってはコールに流しておるということもいわれておるような資金に対しては、政府はこれだけ努力をしておりますから、三公庫とつながりのある金融機関はより積極的に年末融資に応ずるようにという指導は十分行なってまいるつもりであります。
  230. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま大蔵大臣からお答えがあったのでありますが、私も一言所見を加えますならば、今回とられましたいわゆる年末金融対策によりまして、財投の追加の五百二十億円また自己資金等を入れての八百億円の三機関の融資の規模の拡大、五百億円の買いオペ、さらには市中銀行あるいはその他の金融機関等で六千五百億円くらいの貸し増しをするのでありますから、これだけの中小企業に対する一応の手配をいたしておりますならば、民間金融機関もとよりでありますが、この三機関におきましても、ケース・バイ・ケースで中小企業の実情に応じましてお世話をしていきますならば、まずそうその不安がないのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。特にいま御心配の、まあケース・バイ・ケースでもいろいろ金融機関が配慮をするのでありますが、それに漏れて倒産をするようなそういう不幸な事態が起きたらどうするかという御心配のようでございましたが、そういう不幸な立場に置かれるものは、やはり先ほど大蔵大臣も触れたように、不健全な経営をしておったとか、あるいは従来ともすれば過小資本であるとか、いわゆる金融引き締め以外の経営の不振と申しましょうか、そういうような原因の積み重ねの結果、いわゆる金融機関としてもめんどうを見かねるというようなところのものではないかと思います。私としては、そういう場合でもできるだけこの年末に倒産などが起きないように配慮をいたしていきたい。また、そういうふうに金融機関はしてもらいたいと思っておるのでありますが、まず、先ほど申し上げたような政府機関、民間金融機関の手配でそう深刻な問題にはならないじゃないか、こういうふうに見通しておるようなわけであります。
  231. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そう深刻にならないというお話でありますが、経営の内容がよくないとかなんとかということであるという、それが選別融資に漏れるようになるだろうというような考え方であるようでありますが、実際は中小企業に対しての指導というものの徹底が不十分だということも一つ責任だと思う。その点は十分考慮していただきたいと思います。  それで通産大臣お急ぎのようですから、ここで電力料金について伺っておきたいのですが、ここで一部の電力料金が上がってくるというような気配がありますけれども、それについてどのように考えていらっしゃるのですか。
  232. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 現在、通産省のほうに具体的に値上げの申請はまだ出ていないと思います。近く中部電力が申請をするのではないかという取りざたがされておるわけであります。また、私もそういうようなことを耳にいたしまして、公益事業局のほうで、どういう模様かと調べさせましたところ、最近における中部電力の業績が非常に不振であって、赤字が七十五億円くらいになっておるという一応の報告を受けております。しかし、この値上げの問題につきましては、もし申請がございますれば、その申請に基づきまして出されておる書類が適切なるものであるかどうか、そういうような点をよく検討をいたした後に判断をいたしたいと、こう思っております。また、御承知のように、政府としては、公共料金の一年間停止の措置もいたしておりますので、一応、事務的な結論が出ましたあとに、さらに、そういう政府の大方針に基づく政治的な配慮も必要ではないかと、かように考えておる次第であります。
  233. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在の九電力になったのは、発送電から、いわゆる発送、配電の一貫方式ということで九電力になって、安い、また良質な電気を地域住民との密接な関係で供給するということで始まったわけでありますけれども、実際問題が、このように経営内容が悪くて、そのために料金が上がるということになれば、もう一ぺん電力の編成を考え直す必要があるのではないか。再々編成という声が、この前も河野大臣からですか、出たことがございますけれども、その点についての考えはどんなものでしょうか。
  234. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御承知のように、最近におきましては、東北電力あるいは、ここ四、五年の間を顧みてみますと、東京電力というように、料金の改訂問題がございました。しかし私としては、ただいまのところ、いま御指摘のように、安い料金で供給をするんだと、それがこういうふうに値上げのような事態をかもしているじゃないか、だから、もう一ぺん再々編成をしたらばどうかということは考えておりません。まだ、電力会社の経営の方法次第では、大きく国民に対して影響を与えずに済むのではないか。私から言うまでもなく、物価が、それぞれ上がっておるのでありまして、また料金も上がってきておる。そして、そういうふうな影響を受けまして、経営をいかに健全にやっていくかということから、やむなく料金改訂なども起きておるのでありまして、いまの九電力の状況が、それが値上げにいったのだと、こういうふうに判断をいたすのはどうかと、かように考えておる次第でございます。
  235. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 九電力が、値上げの直接の原因でないかもしれませんが、経理内容、経営内容そのほかの問題からすれば、これは再び編成をし直したほうがいいんではないかと思う。いまの大臣の答弁からすると、上げないというような方向に了解をしていきたいと思うのですけれども、できる限り、基本的な料金でもありますし、上げないように努力をしていただきたいと思います。  次に自治大臣のほうに、小選挙区制の問題でありますが、現在、第三次の選挙制度審議会が開かれておりますけれども、この人選は、どういうもとに考えられたのですか。
  236. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 小選挙区制というわけではございませんが、今回、第三回の選挙制度審議会におきまして、政府といたしましては、選挙区制、その他選挙の基本の改善に関する対策を格間をしておるわけでございます。この選挙制度審議会の委員は三十人でございまして、そのほかに、衆参両院議員の特別委員がおられるのであります。この三十人の人選は、学者が九人、言論界から八人、それから学識経験者から九人、それから選挙管理委員会から代表が四人出ておられます。で、そのうち二十人は従来からの委員がそのまま残られまして、十人が新しくかわられたのでございます。で、この人選につきましては、先ほど申しましたように、まあ各大学、重ならないで、おも立った大学からそういう専門の先生方をお願いをし、言論界もおも立った各社の代表的な方々を選んでおるようなわけでございます。学識経験者からは、従来そういう方面の経験のある方、あるいはまた財界からおも立った方、それからあるいは弁護士会の方々というようなことで人選をしておるわけでございます。
  237. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 顔ぶれを見ますというと、政府のねらっている小選挙区制の賛成あるいは推進ということをなさっていくような、そういう人をわざわざそろえたとしか今回思えないわけです。そういうようなねらいで人選をするということは、審議会を悪く言えば、はっきりと隠れみのにして政府自分で手を出さないで、世論の反撃というものを、審議会をたてとしてそらす、そういうことのために行なっているように見えるわけであります。どうとっても、今回の審議会のメンバーというのは、片寄った人選である、こういうようにとられるわけでありますが、その点についてどう考えますか。
  238. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そういうふうな考えを持たれがちでございますけれども、実は人選にあたりましては、そういう意図は全く持っておりません。従来の委員の方で熱心な方々をもとにいたしまして、そうして三分の一だけをかえたわけでありますが、学者の中で二人だけ新しくかわられましたけれども、その方の一人は、明らかに小選挙区については反対をしておられます。実はまだ総会を開きまして三回でございますので、新しく入られました方々の御見解ははっきりはいたしませんのでございますが、せんだっての総会では、新しく入られました学者の方は、明らかに小選挙区は反対をされております。また言論界の代表の方は、そのままでございますが、その中にははっきりと小選挙区に反対されている方も、私どもは尊重してそのまま残っていただいておるようなわけでございます。大体従来の選挙制度審議会の委員の方は、お話しのように小選挙区論を唱えられている方が多うございます。小選挙区またはその小選挙区に加味した比例代表を唱えられておる方が多いのでございますが、人選にあたって特に小選挙区を考えて人選をしたということは全くございませんで、公正に私どもはおも立った方を集めておるような事情でございます。
  239. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 小選挙区制の前に腐敗選挙をなくせというようなことが、選挙制度審議会のほうで言われておりますけれども、いままでの選挙の実態というものを見てまいりますというと、買収とか文書違反というものが急増しているように見えます。この腐敗選挙についてそのような声が出ておるわけですが、政府考えとしては、どのようにお考えですか。
  240. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 選挙の公明ということは、政府といたしましてもできるだけ努力しなければならぬということで公明選挙連盟をつくりまして、政府もこれに予算町を入れまして、選挙のときだけでなく、常時啓発もやっておるようなわけでございます。私ども見たところでは、だんだんその公明化は徹底しつつあると思うのでありますけれども、しかしまだ違反があとを断たないということは、私どももまことに遺憾に存じておるわけでございます。先般の審議会の総会、三回いたしましたが、二回目から木下委員等がその点を取り上げられまして、まず選挙制度の改正をするには、現在の選挙の実態を見る必要があるのじゃないかという発言がございまして、目下この問題につきましても、小委員会を置いて、どういうふうにしてそれをひとつ見るか、実際言うことはまあ言うにいたしましても、なかなか実際にそれを実態を把握するということもむずかしいことかと思うのでありますけれども審議会の現在までの状況では、これを取り上げてひとつ検討しよう、こういうことになっておる次第でございます。
  241. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 公明化が進んできているという話でありますけれども、警察庁のほうの調べによれば、衆議院の選挙についても、昭和三十年のときには買収件数が一万件であったものが、三十八年には一万四千件になっている、あるいは統一地方選挙につきましては、三十年に一万八千件であったものが二万九千件になっているというように、公明化が進んでおるどころか、違反が激増しております。  ところで、こういうような状態になったのも、これは政府の姿勢に私はあると思うのでありますが、第二次選挙制度審議会のときに、選挙資金及び政治資金の規正等についての答申が出ております。ところが、その答申というものが用いられていない、具体化されてきておりません。都合の悪い答申は取り上げないというような傾向があるわけであります。こういう未執行な——いままでの答申で出ていながら、いまだに実現していないものについては、一体これは行なう気であるのか、それとも行なわない気であるのか、これは国民の前にはっきりひとつ言っていただきたいと思います。
  242. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お話しのように、第二回の審議会の際にも、政治資金の問題は確かに論議をされまして、ある程度の答申はなされております。したがいまして、これをもっと掘り下げていきたいということで、私どもは検討しておるわけでございます。また、今回第三回の審議会におきましても、一応選挙区制その他選挙の基本の改善に関する御答申を願いたいということで、審議会でも私が申し上げておりますることでありますが、選挙区制を中心にしては御審議願いまするけれども、それに限定しているわけじゃございませんので、それに関係して選挙の公明、選挙の改善をはかりたい、かように存じておる次第でございます。
  243. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ことしの六月の公選法の委員会で、前の自治大臣が、政治資金についてもっと掘り下げた答申をほしい、それによって根本的に手を加えるという予定である、こういうことを答弁しておるわけです。ところが今回は、まあいまのように、その他基本の問題、ということでは入っておりますけれども、はっきりと政治資金について掘り下げた答申がほしいというような言い方はされていないわけです。これはどういうわけでございますか。
  244. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 御承知のように、第一回の選挙制度審議会におきましては、選挙の方法、あるいは取り締まりというようなことを中心とし、さらに選挙区制あるいはまた政治資金の問題もあわせて審議されたのでございますが、そのときの答申は、主として選挙の取り締まり方法等についての答申でございまして、政府はこれを取り上げてある程度の改正をしたわけでございます。第二回の選挙制度の審議会におきましては、定員是正とそれからいまの政治資金の問題と、それから選挙区制の問題もあわして審議されまして、主としては定員是正の答申がございまして、政府もまたこれを取り上げて、御承知のように先般の国会で実施をしたようなわけでございます。そのときの二回目の答申の中に、政府は選挙区制についてひとつ考えよという答申がございましたので、それを受けて、今度第三回のいわゆる審議会に諮問をしたようなわけでございます。で、やるべきことはたくさんございますけれども、任期が一年でございまするから、どれもこれもというわけにまいりかねるので、主として選挙区制というものを表に出しまして、ただそれに限定しないでお考えを願いたい、かように考えて諮問したような次第でございます。
  245. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうことになれば、第三次選挙制度審議会の答申の中に政治資金の規正について出てくる、このように判断してよろしいのでしょうか。
  246. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) この間の審議会の際にも、私どもは、もっと掘り下げてこの問題はひとつ御審議を願いたい、かように申しておる次第でございます。
  247. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 小選挙区制の問題でありますけれども、これは結局は議会本位ということで、国民意思というものは、どうしても死票が多くなりますので第二になってくる。一つ意見には、国民意思が第一でない上に、これを強行するということになれば、一党独裁という反民主的な方向に向かわざるを得ないだろうということが言われているわけですが、現在のところどのように考えているか。
  248. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 今回の第三回の選挙制度審議会に、政府は小選挙区制をといって諮問をしていないのであります。いろいろ私どもは検討をし、また一般の方々の考えられている点も察しはしていますけれども、この問題はただ政府が勝手に小選挙区をいいからやるぞとか、あるいは党内でこういう意見があるからやるぞということでなくて、いわゆる一般の代表の方々、先ほど申しました学識経験者あるいは学者、あるいは一般の言論界の代表の方々、こういうふうな、つまり国民意見を公正に代表されるであろうと思われる方をお願いをいたしまして、そうしてこの選挙区制の問題はどうしたら一番よろしゅうございますか、こういうことで諮問をしているわけであります。先ほど申しましたように、小選挙区論者が多いじゃないかという御意見でございますが、これは第一回、第二回におきましても、委員の中にはそういう方が多いことは、私どもも認めているわけでございますけれども、また中には反対される方もございました。これらの方々の意見を公明に御審議を願い、また一般の世論の反響も見まして、そうしてその答申が出ましたならば、私どもはその答申をできるだけ尊重していきたい、かように存じている次第でありまして、私どもだけが勝手に考えて諮問しているわけじゃございませんことを御了承いただきたいと思います。
  249. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に行政改革について、臨時行政調査会の答申が出ております。これはかなり官僚の圧力で後退したものということになっておりますが、現在の行政機構が持っている問題、そういうところから考えてみますと、そのほとんどを解決しようとしている。この点は国民大衆という側から立ってみると、すみやかに実施を望むものでありますが、政府がこれを行なう決意というものはどの程度であるか、決断あることばを聞かしていただきたいのですが、行政改革本部長は、いつごろ具体化するめどを立てていらっしゃるのか、この点について伺います。
  250. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 臨時行政調査会から非常に広範にわたる、項目にして十六項、基本的な問題から相当具体的な詳細にわたる許認可事項の整理に至るまでたいへん質、量ともにりっぱな答申をいただいたわけであります。申し上げるまでもなく、政府として、これを尊重いたしまして実現を期するという態度を閣議においてとっているわけでございます。どういうふうにこれを実現をするかということでございますが、なかなかこれは質、量ともにたいへんなものでございまして、一応ただいまの段階では、行政改革本部を二度ばかり開きまして、そのほかに幹事会を二度ばかり開いているわけでございますが、各関係省において全面的な検討を自分の管轄、所管において全部やってもらう、そうして各省所管の立場における答申に関するその実施の意見を大体十一月の十五日を目途に取りまとめをしたいと考えております。まあそういう打ち合わせをしまする前提といたしましては、直ちに実現できるというふうなもの、これは閣議決定等の方法で措置ができるというふうなものを一グループより分けまして、その次に法律の改正、政令の改正——政令の改正は閣議決定というところへ入れておりまするが、単行法の改正でできるというものを次のグループに入れる、そうして幾つかの法律に関連しあるいは基本的な法律に関連をする相当複雑な事項に関するものを一つのグループに選ぶ、審議会等を設置をして検討をするという答申のものはこれを一つのグループに選ぶ、答申でもさらに調査をして、その徹底した調査の結果実施をはかっていくというものもあります。大体そうしたいまグループに分けまして、これによって各省で各省所管に応ずる改革案の一応のめどということでこれを十一月の十五日までに出してもらう、これに基づきまして、これを推進する案を行政管理庁で素案をつくるということにして、行政改革本部の一応場において推進の案をつくってまいる、こういう段取りにいたしておるわけでございます。ただ、すぐ取りかかれるという形でございまするが、許認可事項の整理など具体的にすぐかかれるもの、行政運営の面ですぐ改革案のできるもののほかに、基本的な事項について、内閣の機能であるとか中央省庁の問題であるとかいうふうなものについても、答申を検討をし、具体案をつくるという操作に取りかかりたいという考えをもちまして、本日の行政改革本部で一応基本的な条項は了解をつけたりしておりまするが、字句の整理等で、本日は正式決定というところに至らぬで別れました。そういう段取りで事務的に素案を早くつくる、そうして関係閣僚懇談会をできるだけしばしば開きまして案をまとめ、閣議決定に持ち込む、こういう段取りで事を進めてまいろうというふうに考える次第でございます。
  251. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在まで行政改革に関する答申が何回か出ていると思いますが、その実現の状況はいかがなものですか。
  252. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 現在までの行政改革実現の状況というのは、ちょっと私いまお答えをいたしかねるのでございまするが、最近の情勢は、今度の臨時行政調査会に、従来懸案になっておりましたようなものその他を網羅して、総合的にこのたびの答申に盛り込まれたのでございます。この答申を処理することで、従来の行政機構改革についてのいろいろな意見というものが盛り込まれ、これにより実現をはかっていくという段取りにできるというふうに考えております。
  253. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 本部長よく御存じないようでありますが、昭和二十三年の臨時行政機構改革審議会、昭和二十八年に答申のあった行政審議会、どちらも行政機構の簡素化とか統合化とかいうことをうたっているわけでありますが、一度も実施されておりません。そこで、こういうようにいままでは握りつぶされてきたわけであります。今度の答申については、これは必ず行なうということが総理からも言われたわけでありますけれども、ただそれはこのまま信用していっていいのかどうか。非常に国民全体としては、現在の官僚機構に対して、行政機構に対しての改革を望む声が強いわけでありますけれども、そういうふうに了解してよろしいかどうか。
  254. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御承知のように、行政機構の、ことに基本的な問題についての改革は、なかなか事実めんどうなものでございまするので、いままでいろいろ審議会等の答申が適確に実行をされなかったきらいがありますことは、仰せのとおりであろうと思います。したがいまして、今度の臨時行政調査会ができまする際は、御承知のとおり、アメリカのフーバー委員会にかたどるという、政府としてもたいへん強い決意でもって総理が諮問をいたしたのであります。七人委員会皆さんも、多くの専門員、調査員等を動員をされまして、二年有半にわたって非常に熱心に基本的にやっていただいた。しかもこれは、議会の附帯決議にもあることでありますが、実行可能ということを目途とし、委員のまあ全会一致と申しまするか——というたてまえをとり、いわゆる人員の整理、行政整理ということを目的としてやるのではないという、まあいつも実行がたいへん困難になる問題であるところは事前にこれを片をつけてやりまして、そういう意味で実行可能——これは反面から見ると多少妥協的で徹底をしていないというまた理論的な反論もできるような面もありまするが、そういう点を十分考慮をされて、二年有半にわたって努力をされた問題でありますので、この問題は政府も尊重をしてこれを実施をするということをかたく申しておるわけでありまするし、具体的に行政改革本部で一応これを受けとめるのでありますが、関係閣僚懇談会なり閣議にしばしばはかりまして、これの実現を期するという態度をかたくとっているわけでございます。
  255. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 民間に比べれば、タイムレコーダーもございませんし、労働に対するところの報酬というものも、実際には民間の場合の何倍にもなっている、こういうように言われているわけであります。それだけに、能率化の上から、国民の世論の上からも、勤務とかあるいは事務運営に関するところの項目についての実施ということが一番先決されるのではないか。制度を動かす前に、まず勤務状態、あるいは事務運営の問題、こういうものをまっ先に実施するということが必要だと思うのでありますけれども、第一にそれを行なうべきだ、この点についてはどういうふうに考えていらっしゃるか。制度のほうを先にいじられるのか、そういうような運営の問題について先にかかられるのか。
  256. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 理論的ないま仰せになったような問題と、やはりすぐ実行ができるものはこれはとりあえず実行をしていくという問題と、まあ両面が実は具体的にこれを実施する私どもにはあるわけであります。しかし、具体的にできるものからというだけで、これは答申にも書いてありますように、答申全体は有機的な関係を持っておるから、その点を考慮をして実施をしてくれということもあるわけでございますから、できるものから片っ端やるというように簡単にもいかぬと考えております。そうして、いまおっしゃるように、運営の面を先にやるか、機構の面を先にやるかと言われますが、これは私はどちらを先にやるというふうにいかないと思います。やはり機構の面でも、実行可能な面はこれを取り上げ、そうしてこれの案をつくる。実施に移しますのには、それぞれ所管において、内閣官房なり総理府を含めました各省庁それぞれの分担でやりまするから、何を先にというふうに必ずしも考える必要はないのであります。実現可能なものは、並行的に調整をとりながらやることができるわけでございます。したがいまして、運営の面、勤務評定をやるとか、勤務の実態をパンクチュアルにやるという問題は、もちろん大事でございまするから、そういう面でもこれを実現可能な観点から取り上げていきたいと思いまするから、機構改革の面も同時に、ことに申し上げましたように重要な基本的なもの、これはしかしなかなか実行は容易でないということもございまするが、そういう面も、早くこれと取り組んで、具体案を作成するということでいきたい。いわば重要なものについては、実現可能なものは並行してこれを取り上げる、しかし総合的な観点は忘れないようにしてやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  257. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 なぜそういうことを申し上げますかというと、現在、法律で定められている公務員の試験による昇任の問題にしても、実際問題は空文化されているわけです。形式的に空文化されてきております。そこで、本来ならば、公務員自体のためにも、綱紀のためにも、能力のある者を国のために起用するという意味からも、法律どおり運用するのが望ましいわけでありまするけれども、これが行なわれてこなかった。この点は、行政改革本部としては、当然、こういう綱紀の面、あるいは能率の面、昇任の問題等につきましては、正確を期していかれるということを基本にして考えていくべきじゃないか、このように思うわけであります。この点について、いまの問題をどう考えるか。姿、形あるいは機構というものが幾らできても、中にいる者が喜びをもって働けなければ、これは魂のない政府ということになってしまいます——行政機構になっていく、その点についての考え方をただしているわけです。二つの問題です。
  258. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 仰せの点、ごもっともでありまして、しごく同感でございまして、そういう点は、やはり早急に問題を取り上げて、具体的に措置をしてまいりたいと思います。
  259. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、これは自治大臣と大蔵大臣に伺いたいのですが、現在、知事であるとか、副知事であるとか、こういう地方団体の助役クラスというものがかなり大きな退職金を取っておられるようです。その功労に応じて出すのはいいのでありますけれども、機械的な出し方になっているという面が見られるわけでありますが、どういう基準を一体政府としては考えているのか、また指導をしていこうとしているのか。
  260. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 自治団体の三役竹寺の退職金につきましては、一定の基準というものはございません。自治体の自主性にまかせまして、条例によってその実体をきめていくというふうにしておるわけでございます。
  261. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、これは自治大臣の血管ですから、自治大臣のお答えのとおりでいいと思うのです。私も、どうもこっちでもって財源補てんをしてやっておるわけじゃございませんので、自治大臣の答弁でひとつ御了承を願います。
  262. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 条例どおりでよろしいというわけでありますけれども、実際問題が、ある知事の場合には、計算どおりいきますと四十八万円程度しかもらえない退職金であったということでありますが、加算金が千五百万円もくっついている。そういうような実態があります。その退職金総額を月割りにすると、知事の一カ月の月給より高いということが出てきている。こういうようなことは条例にはおそらくきまっていないだろう。そういう特別加算とか、そういうものについての考えであります、それをどういうふうに考えているのか。
  263. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いま御指摘になりましたようなことは、私おもしろくないと思います。で、先般来も議員の報酬等につきまして世論をわかしましたように、私ども、地方議会の議員の報酬も、できるだけ諮問機関のようなものを設けまして、そうして公正な機関の意見を聞いてひとつきめるようにというふうに指導して今日やってきているような状況でございます。退職金にしましても、条例できめることでございまするし、それはそれぞれの自治体の議決機関に住民を代表した方方がいらっしゃるのでありまするし、また一般の人も見ておるわけでありまするから、私は大体公正に行なわれるものだと思っておりますが、いまのような退職金とほかの名目でまた出すというようなことがございますることは、はなはだ遺憾でございまして、これは私適当な指導をしていくべき必要があろうと、かように存じております。
  264. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) さっき御質問がございましたが、あまり的確に答えませんでしたから、あらためてお答えいたします。いま自治大臣が言われたことでまあ運営されておるわけですが、これは各党とも頭を悩まして、より合理的なものがないかということになっておるわけです。前に内閣でこの問題を赤澤自治大臣を中心として検討したことがございます。このときの問題も覚えておりますし、まあ自治体でございますから条例でもってきめればいいのだ、こう言っておりますが、物議をかもしていることは事実であります。私のほうでまたいろいろなことを言えば、大蔵省のほうで出すわけじゃないじゃないか、出すつもりがあるのか、こういうことになるおそれがありますから、まあ控えておったわけでありますが、せっかくの御質問でございますし、あえて答えるとすれば、これはやはり私はけじめをつけなければならぬと思うんです。そうじゃないと、非常に問題が大きくなるし、どうも国民の不信を買うということになると思うのであります。ですから、今度の段階においては、報酬その他については委員会をつくって第三者がと言うのですが、なかなか同じようなことであります。これはやはり、知事とか、副知事とか、議員とか、こういうものは、法律、基準が必要なんじゃないかと私はこのごろ考えてきたのです。特に地方財政の健全化——今度の国家公務員と同じく、当然ベース・アップをする場合には国家公務員に準ずる、場合によっては国がめんどう見てくれなければということであるならば、そういうふうに——見るということでありません、見れないということでございますけれども、少なくともそういうことを考え事態があったならば、これはやはりもっと合理化する必要がある。しかし少なくとも、各関係機関でもどこでも、一カ年に対して二カ月とか、助役報酬でもみんなきまっているわけであります。ですから、二十万円の知事さんが四カ年というと、二百四十万円の四カ年というと約一千万の金額の、三、四、十二九月分——一年間に三カ月としても、四年ですから、十二カ月分をこえてはならない、こういう基準はどこにもあるわけでありまするから、それが正規に考えると、四十八万円というのは少ない、非常に安いは安いのですが、これに加算すること千五百万円、これも高い——高いじゃなくて、これは何かおかしい数字のような感じもいたします。何か大蔵省にまかしていただければ、参考なり基準を出してもけっこうだと思いますが、これはわれわれのことではなく、やはり制度の上で困っているのです、事実。ですから、私の友人も地方の長官になっておりますが、非常に困っている。こういうことこそ議員立法か何かでさっとおやりになれば、非常に合理的じゃないか。まあ少し行き過ぎかもしれませんが、申しあげておきます。
  265. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 四十八万は少し私の計算間違っているかもわかりません。  そこで、いま一つでありますが、すでに多くの退職金をもらっていながら、知事で、半年も二年もたっているのに、知事公邸を出ないというのがいるわけであります。そういうのを聞くんでありますけれども、これは非常識もはなはだしいわけでありますが、私として考えれば、これは自治体自身の持っている権能だから、向こうのかってにまかしておけばいいということかもしれませんが、住民の福祉ということから考えて、自治省としての監督も不行き届きじゃないか、このようにも考えるわけです。どのように考えていらっしゃいますか。
  266. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど大蔵大臣からも御意見がございましたように、この問題は自治体でございまするから、あんまり介入はしたくはございませんけれども、しかし、やはり住民の福祉に直接関係することでございまするので、自治省といたしましても適当な指導監督をいたすべきものであると、かように存じております。
  267. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 九月実施ということに、公務員のベースアップでありますが、踏み切ったんでありますけれども、これはいままでの例年の十月一日実施にさかのぼることに比べると、かなりの前進と思われますが、どうして勧告どおりに行なわれなかったのか、やろうとしないのか。行なわれなかったというより、やろうとしないのかということでありますが、そう考えるのでありますが、さらに前進するという努力をどういうふうに考えておりますか。
  268. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十月実施を九月実施にいたしましたのも相当な前進、というよりも画期的な前進だと思っているわけであります。なぜ一体やらなかった、こういうことでありますが、竿頭一歩も二歩も進めたという表現がございましたが、私どもは非常に前向きという、積極的なものであろうと考えます。五月の実施になりますと、一般会計が六百八十億、特別会計百二十億、地方公共八百八十億、合計千六百八十億の財源を必要といたすわけであります。九月実施になりますと、一般会計四百四十、特別会計八十、地方公共五百六十、合計千八十と、こういうふうに六百億の開きがございます。まあ六百億の財源だけの問題ではございませんが、財源の面からいってもたいへんなものである。こういうことは御理解いただけると思うのでございます。
  269. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 大蔵大臣から総括的な御答弁がございましたから必要がないようでございますけれども、地方関係についてちょっと申し上げてみたいと思いますが、実は五月実施にいたしますると、全体で一千七十二億要るのであります。うち、交付団体だけ、すなわち東京、大阪といったような富裕団体を除きまして、地方交付税を配付してまかなわなければならないような、その交付団体の分でも、一般財源といたしましては八百六十二億要るようなわけでございます。従来の十月実施にいたしましても、交付団体だけで約三百八十六億要りまして、これの財源をいろいろ考究いたしましたが、国の自然増収がことしは非常に少なくて、五百億くらいしかございません。そうしますと、それの地方交付税分としては二八・九%でございますので、百四十億、それに地方税の自然増収分が六十億しか入りませんので、二百億ほどしか財源がないわけでございます。したがいまして、十月一日から実施しましても、約二百億の不足をしておるときでございますし、しかし、尊重はできるだけ尊重しなければならぬということで、六人委員会の検討の結果、九月一日からということになったわけでございます。これによりましても、先ほど言った十月でさえ、約二百億足らずの財源不足、これが九月になりますと、約二百三十億の不足をいたしておりますので、これは目下大蔵当局とも相談をして、何かこの財源措置をしようということで苦心をしておる状況でございますので、完全実施をできなかったことは遺憾でございますけれども、そういう財政事情のあることを御了承願いたいと思います。
  270. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 給与担当国務大臣という立場で申し上げたいと思います。  仰せのように、人事院勧告を、実施時期を含めて、すなわち、五月から、内容はそのままにぜひ実施をいたしたいというふうに思いまして、まあずいぶん努力をしたのでございまするが、いま大蔵大臣、自治大臣から申されたような、これはまあ財政面でございまするが、実態でございまして、六人委員会も前後五回にわたりましてたいへん熱心に論議を尽くしていただいたわけでございます。従来の十月実施ということでも、私ども財政当局でございませんが、われわれの知る限りでは、財政のやりくりというものがなかなかつきかねるという実情でございましたが、しかし、この人事院の勧告というものは、労働権の規制を受けておる公務員に対するたいへん大きい一つの措置でございまするので、何とか人事院勧告の完全実施に近づくという意味で、まあ一カ月だけさかのぼるという、数字としてはたいへんみみっちいものになったようでございまするが、これを決定してもらいまする際の内容は、いま大蔵大臣が申されますように、これは私も画期的なことと言っていい、たいへんな勇断と決断をもって踏んばってもらったわけでございます。したがいまして、まだ財源措置が明確にどうできたということは言えない段階である。非常にいま御苦心を願っておる最中であるということでございまして、給与担当大臣としても、ぜひ五月からと主張をいたしましたが、これは、このたびの財政の実情から申してやむを得ざるところであり、また、相当に政府としては思い切った措置と申せるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  271. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの自治大臣の答弁等から伺っていくと、ここら辺で交付税率を再検討しなければならないときが来ているんじゃないかということも考えられるわけでありますが、その点については、根本的ないわゆる財源措置ということは、交付税率あるいはそのほかあると思いますけれども、その辺のところの引き上げというものは考えていかれないかどうか、伺いたいのですが。
  272. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、今度の給与ベースの改定につきましては、非常に財源が不足をして困っている事情でございます。しかし、今度の給与改定だけをとらえまして、交付税率を引き上げるということは、これはいかがかと実は思うわけであります。交付税率は国と地方との財源の限界、いろんな観点からきめられているのでございますので、ただ給与ベースが足りなかったからすぐその率を変更してやるということは、私も実は慎重に考えております。しかしながら、地方財政はだんだんと苦しくなっております。特に先ほど申しましたような交付団体、すなわち、いなかの府県とか市町村等におきましては、だんだん財政が窮屈になっておりまする上に、給与ベースは御承知のように、民間ベースと関連をいたしまして改定が行なわれ、改定が行なわれれば、政府といたしましては、できるだけこれを尊重していかなければならない。特にことしのように国の自然増収が非常に少ないということになりまするというと、給与ベースの改定に比例して国の増収がございますれば、昨年あたりのようにベースは上がりましてもできるのでありまするけれども、特にことしのような、国の自然増収が少ないということになりますと、そこにちぐはぐが出てきます。私は将来の地方財政のこの窮乏の点を考えて、また、地方財政の規模の上で、実は御承知かと思いますが、国は三兆二千億の予算の中で一割くらいが給与に当たっております。ところが、地方財政の三兆一千億の予算の中で給与関係が約四割以上を占めているのであります。これは人が多いというふうにすぐ考えられやすいのでありますけれども、そのうちの四割程度は学校の先生で、それから一割程度は警察官であります。ですから、学校の先生は多いとか少ないとか言いましても、学級を受け持っておるのでありまして、欠員を不補充にしておくわけにもいきませんし、また、警察官もそれぞれの担当の部署を、責任を持って守っておるわけでありますから、これも節約をするというわけにいかない。これがだんだんベースアップによって上がっていくということでありますから、なかなか節約も、今度ずいぶん私ども苦心してやろうと思っておりますけれども、そういう財政の構造の差異がございます。その上に地方財政は、先ほど申しましたように、交付団体はだんだんと窮屈になっていくという状況でございますので、これらをあわせ考えまして、将来交付税率というものは改定をしてもらわなければならない時期に来るのじゃないだろうかということで、まあこれは検討をいたしておるような次第でございます。
  273. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ベースアップの財源は、交付税率二八・九%を動かすというような考えは全然持っておりません。国も財源は非常に多難なおりからでございますし、既定経費の節約等、四苦八苦の状態でございますので、同じ苦労をひとつ地方にもやっていただきたい、こういう考えでございます。  なお、将来の問題として検討いたしますということでございますが、現在のところ、大蔵省としてはこれをどうしようというようには考えておりません。それよりもまず前に、地方財政の合理化とか健全化とか、それから地方財政間における財源の調整とか、いろんな問題があるわけでございまして、そういうものよりも一番安い二八・九を上げたほうが——まずそれからだというような考えにくみせず、国としてももっと合理的なものをやっていくという段階でございます。
  274. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 合理的な考えというものはどういうものか、これから先になってこなければわからないことでありますけれども、ここで大蔵大臣に少し給与問題のこの改定について、それから一般財源難ということから、だいぶ米価値上げに対する立場というものを大蔵省はとれたというような考えを持っておる、こういうことが一部に言われておるけれども、何か給与改定を奇貨おくあたわずという形で米価のほうにはね返らすのか、その辺のところについては、どういうふうな状態ですか。
  275. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 給与改定を行なうということによって米価改定問題を有利に解決しようというような下心は全然ありません。これは明確にしておきます。そういう転換はやりません。これはそんな問題と取りかえられたりすりかえができるほどの問題ではありません。非常に重要な問題であるということは十分理解いたしております。しかも、今度の人事院勧告の問題につきましては、御承知の池田・太田会談というようなもの等もありましたし、いわゆる労使の問題に対してはいろいろな問題があったわけであります。しかも、ILOの問題も国際的にもありましたし、お互いにまず、ただすべきものはただすということだけを言っておっては、これらの問題も前進しないということは、先ほど申し上げたとおり、非常に財政的には困難でありましたけれども、お互いが前進的な姿勢をまず出して誠意を披瀝することによって、将来の労使の関係、いわゆる公務員制度の中における問題等に対してはよき結果を得たいということを考えるわけでありまして、これを一カ月やるから百億ちょろっとやることによってひとつ三億もうけようという、そういう考えは持っておらないということだけは、ここで明らかにいたしておきます。
  276. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 企画庁長官に伺いたいのですが、経済審議会の中期経済計画の答申が十一月の下旬には出るというお話でありますけれども、その案はすでに新聞等にもちらほら報道されております。ここでいままでの中期経済計画について、政府のほうではこの答申をもとにしてやっていくのだと思いますけれども、現在考えていると思われる明年以降の方針ですね、片方においては昭和四十年から四十三年までを七・七というような成長率を考え、物価上昇率を二・五と考えているようでありますけれども、これよりも低目に考えていかれるのかどうか。それと現在のところの中期経済計画から見るというと、日本経済のこれからの伸びは、基調でありますけれども、かなり堅調に考えているようでありますし、また、需要の圧かも強いと見ているようであります。政府がここで積極的なかまえを見せれば、たちまちにして大幅成長ということになっていくのでありますけれども、手直しということから考えて、政府のこれからの経済計画に対しての考え方が非常に大事なところに来ているわけであります。どういうふうに考えていらっしゃるか。
  277. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 御承知のとおり、所得倍増計画が打ち立てられましてからその後の経過は、計画と実績との間に大きな乖離を生じてまいったのであります。そのような結果からいたしまして、昨年経済審議会からこの倍増計画の検討をすべきであるということで御意見が出され、さらにその後、昭和三十九年度を初年度とするところの中期経済計画を検討すべきであるという意見が昨年提出されました。その御意見に基づきまして、今年の一月に政府からこれを諮問いたしましたような次第でございます。  ところで、その中期経済計画におきましては、いままでと違った新しい計量経済学の手法を取り入れまして、各経済を動かすところの要素の間の相関関係等を非常に高次の方程式によって算出するというやり方をやってまいっておるわけであります。すなわち、大体四十二次方程式という非常に高次の方程式を立てまして、これを電子計算機にかけてその相関関係を算出し、計量モデルをつくって、そのモデルに基づいて新しいパターンを見出していくというやり方をやっております。  ところで、この目的はどこまでも、いままでの経過におきまして御承知のとおり、ときどき国際収支の不均衡が生じて、また、消費者物価の過度の上昇というような現象を生じてまいりますので、国際収支の均衡を保つと同時に物価の安定を期するということを一つの前提とし、かつまた、この期間において、たとえば農林漁業とか中小企業等の低生産性部門がなかなか追いついていけない、その間の格差が相当生じてまいっているというような状況、または、かつては相当労働力が豊富でございましたが、いわば労働過剰の経済であった日本の経済の姿が、最近は若年労務者を中心といたしまして漸次労働の需給が逼迫してまいったというふうな事情、または、先ほど申しました消費者物価の問題、または労働力の流動性をさらに進めなければならない情勢、さらにまた、その間民間の設備投資は非常に高度の拡張を見たのでございますが、それとバランスをとるような社会資本の強化というのができてなかったという面、または、社会保障の面において相当な立ちおくれがあると、そういうふうないろいろの点を、重要なポイントを政策目標として掲げながら、それらの要素を取り入れて中期経済計画をつくり上げていくというふうなことにいたしておったわけであります。  ところで、この取りまとめはだんだんと作業が進んでまいりまして、ただいま経済審議会の企画部会において大体の骨子がまとまり、わりに近いころにその企画部会におけるところの案がまとまるのではないかというふうに報告を受けておるわけでございます。その後さらに経済審議会の議にかけて政府に答申されることになろうかと存じます。  それで、その内容については、新聞に報道されておりますように、大体五カ年間におけるところの平均成長率は、これは実質でございますが、八・一%、それで大体そういうふうな消費者物価の上昇率は二・五%というふうな状況で大体案ができつつあるようでございます。  ところが、この案につきましては、これはいずれそのうち答申が出るでございましょうから、その答申を受けました後に、この計画をどのように政府として受け入れるかという問題は、その時点においてさらに十分に検討をしていきたいと存じますが、目標として当初から政策目標として掲げられたところの国際収支の均衡とか、または物価の安定その他の政策条件につきましては、それはもともと政府として従来考えておった点でございますので、その点に大きな差異はございませんけれども、ただ具体的にあらわれた計数というものが必ずしもわれわれの常識に合わぬ点も、あるいは結果として出てくる場合もあり得るのではないか、そういう点も勘案いたしまして、答申が出ました後において十分にこれを検討して、政府としてどういうふうにこれを政策の面に生かしていくかという点を考えていたしたい、かように考えておる次第でございます。
  278. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時より委員会開会いたします。  散会いたします。    午後六時二十二分散会