○亀田得治君 私は、
日本社会党を代表して、新暴力
法案に対し
質疑を行ないます。
御承知のとおり、本
法律案に関する
法務委員会の
審議は、先ほど来御承知のとおり、途中で強引に打ち切られたわけであります。ただすべき事項がたくさん残ったままになっているわけであります。私は、それらの中で特に重要な問題につきまして、やや詳細に具体的にお尋ねすることにいたしたいと思います。したがいまして、
答弁も明確にお願いをする次第であります。
で、本論に入ります前に、昨日、東京地裁において言い渡されました六・一五事件に関する民事判決について、総理の所信を承りたいと存じます。
この事件は、
昭和三十五年の新安保条約反対運動のさなかに、ちょうど六月十六日午前一時過ぎに、警視庁第五機動隊が、無抵抗の大学・研究所・研究
団体の教職員に対し攻撃を加えたばかりでなく、逃げる者をわざわざ追いかけまして、警棒をふるって負傷させた事件であります。当時、
被害者の方々は
検察庁に告訴をしたのでありますが、遺憾ながら、個々の加害者と負傷者を
特定することができないので、不起訴になりました。しかし、無抵抗の教職員の
皆さんが、機動隊の
不法な攻撃によって負傷したこと自体は、明白な事実なのでありまして、昨日の民事判決におきましては、その点さえ明確になれば、どの警官がだれに負傷させたかを一々明らかにしなくとも、国家賠償法による
責任があることを認めまして、東京都に対して賠償の支払いを命じたのであります。
私は、都がこの一審判決に服従いたしまして、人権擁護の立場から、研究のかたわら長い法廷闘争をやってこられたこの
被害者の人たちに対して、陳謝すべきであると思うのであります。暴力を取り締まるべき
警察が、
不法な暴力をふるいながら、加害者たる
警察官個々の人が明白でないことを
理由として争いを長引かすというようなことは、決して暴力を憎む
態度とは言えないと思うのであります。(
拍手)賠償を命ぜられたのは東京都でありますが、総理、
国家公安委員長の適切な行政指導を私はお願いをいたしますとともに、この際、総理並びに
国家公安委員長の所信を承っておきたいと思います。
次に、本論に入ります。
現在の暴力法は、過去においてしばしば労働運動などに適用され、弾圧法規としての色彩を強く持っているのであります。本来ならば、労働運動に随伴して不幸刑事事件が起きたといたしましても、それは一般刑法で扱えばよいのでありまして、特別法たる暴力法によってことさらに重く扱うということは、たとえ一件たりとも許すべきでないと考えます。このような立場からいたしますならば、私は、もし
政府に、池田総理もたびたび言われましたように、労働運動等を弾圧をする意図がないということがほんとうであるならば、いさぎよく、色のついてしまっている現行暴力法を廃止すべきであると考えるのであります。そして、
暴力団に対し一般刑法よりも重い特別法を必要とするというのであれば、そのような立場で、はっきりしたものをつくればよいと考える次第であります。しかるに、そういう作業をしないで、主として
暴力団相手の
法律だと、表ではそういうことを言いながら、ときどき労働運動に対してもこの
法律を適用していることは、はなはだ不明朗であると言わなければならぬとともに、そのようなあいまいなことでは
暴力団対策としても私は不完全であると考えるのであります。(
拍手)この点につきまして、基本的な問題として総理の所信を伺いたいと思います。
暴力団対策として現在何よりも重要なことは、私は次の諸点に要約できると考えます。
第一は、まず上に立つ政治家が
暴力団に対し正しい
姿勢をとることであります。
第二には、違法
行為を扱うところの
警察、
検察、裁判所、刑務所などが、
暴力団に対する
姿勢を正すことであります。
第三は、
暴力団の
資金源に思い切ったメスを入れること。
第四は、
暴力団がときどき使いますところの
銃砲刀剣類の所持、との規制を強化すること。
第五は、ラジオ・テレビ等の殺傷の場面を何とかわれわれの目から見えないようにできないものだろうか、これを
検討すること。
第六は、
暴力団の
生活自体を善導し、安定させること。
以上のようなことが、今日における
暴力団対策として一番大事な点であると思いますので、順次これらの点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
まず、第一に、
暴力団と保守勢力の関係についてお伺いいたします。こういう問題を抽象的に私がここでただしましても、水かけ論になるおそれがあります。そこで、私は、具体例を総理に示して、その見解を承ることにしたいと思います。
その第一は、去る五月二十五日、関東の
松葉会と関西の本多会が神戸の某料亭で縁結びの杯をかわしました。集まる者千五百人と言われます。この縁結びの仲介役をつとめたのは、元自民党代議士、元神戸市長をつとめた方であります。このことは、六月十七日の
法務委員会の
質疑におきましても、
警察当局の
答弁で確認をされました。こういう
地方の有力な方がこのような仲介役を行なうということは、きわめて重大であります。
一つには、これは
暴力団に対する大きな激励になります。
二つには、
国民は一体どう感ずるかということです。日本の支配層というものは、
暴力団をなくすることについて本気で考えているんだろうか、どうだろうか。表では適当なことを言っておりましても、裏ではつながっているのではないかという疑惑を与えることは、当然であろうと思うのでございます。総理の見解を明確にしてほしいと思います。
第二の事実は、昨年、関西の本多会の二代目跡目披露が行なわれましたが、その際、すでになくなられましたが、自民党の副総裁という重職にあられる方が出席をし、あいさつをされているのであります。私は決して故人を傷つけるつもりはございません。しかし、
暴力団対策が世間の注目を浴びているこのときに、このようなことが行なわれるということは、はなはだ遺憾であると言わなきゃなりません。(
拍手)元神戸市長以上にその及ぼす影響は強いと思うのであります。池田自民党総裁としての所信を承ります。
さらに私は、去る三月二十五日のこの本
会議におきまして、池田総理に、某
法務大臣が現職当時、
暴力団の行事に花輪を出した、こういう件につきましてお尋ねをいたしました。それに対して総理は、具体的事実は存じませんので、よく調べて、また適当の機会に答えますと言われているのであります。おそらく、総理はすでに
調査をしておられると思いますが、新暴力
法案審議の最後の段階でありますから、この際、その
調査の結果、及び、そういうことに対する総理の所信を伺いたいと思います。
以上のように、
暴力団は保守勢力とつながって育っているのでありますが、最近は、新しい問題といたしまして、
暴力団が積極的に政治への介入をしてくるという動向を示してまいりました。もし、こういうことがどんどんはびこってまいりますならば、日本の民主政治発達の上に、きわめて憂うべき現象であろうと思うのであります。池田総理もおそらく若干その
被害者であるかもしれませんが、こういう現状につきましてどうお考えになっているのか。また、どのようにこういう問題を処理しなきゃならぬと考えておられるのか、お伺いする次第であります。
さらに、公安
委員長に対しまして、
暴力団で
政治結社届けをしたもの、先だっての
委員会では約十五
団体と
説明されました。また、届けばしていないが、同じような方向をたどっているもの、これが五十
団体と
説明をされましたが、一体この十五
団体、五十
団体というのは、どういう
団体であるのか、この際、明らかにしてほしいと思うのであります。(
拍手)
次に、私は、
警察をはじめ
暴力団を取り締まる立場にある機関、これが必ずしも
暴力団に対して、き然とした
態度をとっておらない、その
姿勢を正すことが大事であると申し上げましたが、それらの点につきまして、若干お尋ねをいたします。
まず、
警察でありますが、
警察は、まる腰の労働者あるいは市民に対しましてはずいぶん強く当たるのでありますが、
暴力団に対してはわきめて低
姿勢であることがあるのでございます。
警察は、
暴力団と適当に連絡をし、情報を平素から取っているようでありますが、ミイラ取りが取られてしまうといいますか、いつの間にか、こう両方が親しくなって、何かこう抜き差しならぬようになっているようなところもあるのではないかと思います。世論がやかましく沸騰してまいりますと、放置できないものですから、最近は
相当手入れをされておりますが、しかし、なかなかその
暴力団の中心
人物まで及ぶということはないのであります。こういうところに、
警察がやるやると言いながら、本質的な弱点があるのではないかと思うわけでありまして、(
拍手)
国家公安委員長の忌憚のない所信を伺いたいと思います。
それから、次に、
警察庁や裁判所でありますが、これも、
暴力団に対してたいへん寛大過ぎるのであります。これはもうたくさんの事例がございますが、たとえば、私はいま、
昭和三十八年中に東京刑事
地方裁判所で判決の言い渡しがありました傷害事件の中で、
銃砲刀剣類を用いて行なったそういう事件の表がここにございます。その一番初めのものを申し上げてみますると、粟野某、傷害前科二犯でありますが、短刀を使って今回三回目の傷害事件を起こしました。これに対して、検事の求刑がわずか十ヵ月であります。しかも、裁判所は、求刑どおり十ヵ月の判決をしましたが、
執行猶予をつけているのであります。
皆さん、
法律をもっと強くしなければならぬとか何とか言っておりますが、傷害罪は法定刑最高十年であります。それに対して、前科二犯の傷害をやり、今回は刃物でもってさらに同じことをやっているのであります。それに対してわずか十カ月ということで、世間が一体承知をするでありましょうか。こういうところに、現在の
検察庁や裁判所が、世間とはまるっきり違ったことを考えているのではないかという点があらわれているのであります。
法務大臣にこういう点を確かめますと、
法務大臣は、
検察官や裁判官のおやりになったことについては、どんなに世間から批判がありましても、どうも批判をするのを好まれないようであります。私はこの際、こういう
検察庁や裁判所の
姿勢でいいのかどうか、
総理大臣の所信をひとつ明らかにしてほしいと思うのであります。
それから、次に、
法務大臣にお尋ねをいたしたいのは、今月の十六日から
法務省で
検察長官会同が開かれましたが、一体、
暴力団体対策としてどのようなことが論議され、決定されたのかを、ここで明らかにしてほしいと思うのであります。
次に、
警察、
検察庁、裁判所、もう
一つ残っているのは刑務所であります。ところが、刑務所におきましても、
暴力団はひそかに特別の便宜を与えられていることがないかという点であります。これも抽象的にお聞きをすれば、そんなことはないとおっしゃるでしょう。私は事例を
一つ申し上げてお伺いをいたします。先日、東京の
暴力団の林一家の手入れに関連いたしまして明らかになったことでありますが、元新潟刑務所長をしておりました西川某という人が、この林一家の顧問となりまして、毎月顧問料をもらっていたことが暴露いたしたわけであります。このことに関連いたしまして、
法務大臣に具体的に、以下四点を明らかにしていただきたいと思います。第一は、一体この西田某と林一家の関係というものは、いつごろから始まったものであるか、これが
一つ。それから、刑務所に入った林一家の
諸君が、西田を通じまして特別な扱いを受けていたのではないかどうか。第三には、顧問料をもらっていたというが、一体、毎月どの程度の額のものであったのか。それから第四には、こういうことはたまたま西田と林一家として発覚したわけでありますが、しかし、これ以外にもこのような類似の関係というものがあるのではないか。
暴力団は再々刑務所に出入りするので彫ります。常習犯が多いから、ことにそうなるわけであります。だんだん出たり入ったりしているうちに、刑務所の関係者といつの間にか親しくなりまして、そうして、
暴力団からいうならば、何かしばらく別荘にでも行ってくるような感じでいるものがあるのではないかということであります。公式にこういうことを聞きますと、そんなことはないと否定されるでしょう。しかし、私たちはそういう感じを受けるようなことが間々あるわけでありまして、そのことが、今回、林一家と西田某との間の関係で具体的に出てきたわけであります。そういう点で、一体、
法務当局も
反省すべきものはないのかどうか、この際、明確に答えてもらいたいと思います。
次に、私は、
資金源の問題についてお尋ねをいたします。この点については、たくさん問題があるわけでありますが、その中の常習恐喝という問題についてだけ総理の見解を伺うことにいたします。
暴力団が恐喝を繰り返して、市民に迷惑をかけていることは、世間周知の事実であります。たとえば一、二の統計をとってみましても、
昭和三十七年の恐喝による
検挙人員総数、二万五千三百三十名おるわけですが、このうち三四・八%の八千八百八名が
暴力団によるものであります。
昭和三十六年の同じ統計によりますと、二万六千九十九名の中で、三九・四%の一万二百八十七名が
暴力団によって行なわれているのであります。もし
暴力団対策を
政府が本気に考えているというのであれば、何ゆえにこの常習恐喝者を重く処罰することを考えないのでしょうか。
政府は、私のそういう
意見に対して、それは
犯罪の性質が違う、したがって、今回は取り上げなかった、こういう
法律技術論を言うのであります。しかし、世間が必要としているのは、そんな
法律技術じゃなしに、世間の望んでいることを、多少筋が通らぬでも早くやってくれというのが要望なんでございます。
政府にほんとうにその気さえありまするならば、たとえば刑法二百四十九条の二として、常習恐喝という規定を設けまして、前条の
行為を常習としてやった者は幾ら幾らにすると、簡単に書けるのであります。そういうことをやる気があるかないかの問題なんでございます。そういうものが出まするならば、これは
暴力団対策であることは明確なわけでありまして、われわれ
社会党としても反対するわけがありません。こぞって賛成することになるわけであります。なぜ一体こういうことをおやりにならないのか。区区たる
法律論を述べたって、世間では承知はいたしません。その
被害者がたくさんいるわけであります。池田総理は、もうこの
国会にはもちろん間に合わないわけでありますが、この常習恐喝を取り上げて何とか追及するということにつきまして、ほんとうに近く具体的に取り組むかどうか、この際明らかにしてほしいと思うのであります。
時間がだいぶたちましたが、再
質問の関係もありますので、その他の点につきましては、簡単にまとめて、池田総理に以下三点お尋ねをすることにいたします。
第一は、最近のラジオ、テレビなどを見ておりますと、簡単に人を殺傷する場面があります。報道の自由を守りながら、何とかこういう点について適正な措置がとれないものかどうか、どういうふうにお考えになっているか、承りたい。
第二は、
銃砲刀剣、ことに銃でありますが、これが簡単に
暴力団の手に入るようになっておりますが、何とかこういうことがもっと引き締められるように制度を
改正する必要があるのではないか、所信を承りたい。
最後に、私は、以上、
暴力団を追い詰める
ことばかり聞いたわけでありますが、しかし、彼らも同じ人間であります。彼らがまじめな
生活に入っていくためにはどうしたらいいのか、そういう面の積極的な考えというものを、
総理大臣としては当然持つべきだと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
それから、最後に一点、条文についてお尋ねいたします。
法務委員会におきましても、あるいはこの本
会議におきましても、いわゆる
銃砲刀剣類という概念は、
銃砲刀剣数等所持取締法により定義されているものと同一かと、こういう
説明をされたのでありますが、しかし、法制
審議会の第二十七回の総会におきましては、同じ
法務当局が、「両者は
法律の性質が異なるものであるから、その間多少の出入りはあると思う、」と答えているのであります。明らかにこの
答弁が食い違っているのであります。
法務大臣に明確な
説明を求めておきます。(
拍手)
〔国務
大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕