○岡田宗司君 私は
日本社会党を代表して、去る五日、町田市において起こりました米軍飛行機の墜落事故の件について、ここに
政府に対しまして
質問する次第でございますが、
質問に先き立ちまして、不慮の災害にあい、尊い生命を一瞬のうちに奪われました四名の方々に、つつしんで哀悼の意を表するとともに、重軽傷を負われまして、いまなお
病院にて治療を受けつつある二十六名の方々に、心からお見舞いを申し上げ、一日も早く全快されることをお祈りする次第でございます。(
拍手)
今回の町田市繁華街への米軍機の墜落事故は、非常な椿事として社会の耳目を聳動させたのでございますが、かような事件は今回初めてのことではなく、三十八年五月には、埼玉県毛呂山町の
病院にB57戦術軽爆撃機が墜落、爆発、炎上いたしまして、
病院を焼き、多くの死傷者を出しましたことは、記憶に新たなところでありますが、この三ヵ年間だけでも、基地周辺において、米軍機の墜落により民家が燃え、死傷者を出しました事例は、実に八件を数える次第であります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
特に、厚木付近では、ここ三年間のうちに三十件近くの米軍機の墜落、不時着があり、基地周辺の住民はこれに非常な不安を感じているのであります。今回の墜落事故も、墜落機のガソリン積載量がすでに尽きておりましたから、火災を最小限に食いとめることができたのでありますが、もしガソリンが満載されているような事態でございましたならば、火災はあの密集地をなめ尽くし、人命及び財産に対する損害はもっともっと大きくなったであろうと想像いたしますというと、実にりつ然とせざるを得ないのであります。しかも、米軍機が日本上空を飛び回る限り、今後もかような惨事が起こらないと保障することは何人もできないのであります。われわれは、かかる事故の続発する根本の
原因は、日米安全保障条約に基づき米軍の基地が日本国内に散在し、米軍機が日本側の規制を受けることなく、自由自在に日本の上空を飛び回ることから起こっていると考えるのでありますが、
総理大臣は、今回の事故だけでなく、かかる事故の続発することの
原因がどこにあるとお考えになりますか、まずこの点をお
伺いしたいのであります。
われわれは、今後かかる惨事を発生させないためには、米軍基地を廃止し、米軍に引き揚げてもらうことが、根本的解決策であると考えるのでありますが、それはともかく、当面かかる事故発生の防止策として、
政府は、近く開かれる日米合同
委員会に次の諸点を要求し、これを確約実行させるつもりがあるかどうか、お
伺いをしたいのであります。
第一は、米軍機が、ひとり町田市の上空のみならず、人口、住宅の密集している市街地の上空を飛ぶことをやめてもらうことでございます。
第二は、緊急時にパイロットが脱出する際にも、墜落機が市街地に突っ込まないように、ふだん厳重に指導訓練し、それを義務づけること。このことは決してできないことではなく、現に米空軍パイロットでも、日本の航空自衛隊のパイロットでも、みずからそういう処置をとって災害を防止した賞賛すべき行為をしている人があるのでございます。
第三点は、事故発生の
原因と
責任を明らかにし、その
責任に応じて米軍側にパイロットその他
関係者に処罰を含む
措置をとらしめることでございます。
総理は、今後の事故発生の防止策として、かような点を米側に要求し、実施させる
方針を持たれるかどうか、お
伺いしたいのであります。
ところで、今回の米軍機の墜落がいかなる
原因によるものか。全く不可避のことであったのか。パイロットの過失か。さらに墜落機が市街地に突っ込むのを避けられなかったのかどうか。われわれは、事故発生の
責任の所在と今後の事故発生の防止に関連して、重大な関心を持つものでありますが、はたして日本側がそれらの事情を十分に納得できるように把握できているのかどうか疑わしいのであります。従来、事故が起こりました場合も、アメリカ側の調査
報告を受けるだけで、事故発生の
責任は、いつも、うやむやにされてしまい、
責任者がどう処置されたか全くわからずじまいになってしまっているのであります。日本
国民の生命財産を傷つけるかような事故は、補償金だけで片づけられてはならないのであります。日本
国民の生命財産に重大なる損害を与えるかかる事故の
原因、
責任の究明は、たとえそれが米軍によってなされたからといって、日本側で黙って引き下がっていていいものではありません。われわれは、日本
政府が米側に対して、当然その
原因、
責任の究明のための合同調査を要求すべきであると思うのであります。
アメリカ側は、事故の
原因について日本側に簡単に
報告するだけで、日本側が
原因並びに
責任を究明することができなかったことは、明らかに、アメリカ側が日本
国民の生命財産を傷つけたことに対して
責任をとらないことを意味するものであり、日本
国民を軽視し、ばかにしているものと言わなければなりません。日本側も、その
原因と
責任の究明を求めず、補償だけで、しかもわずかな金額で事件を片づけてしまおうという態度をとってきたことは、やはり
国民を軽視し、アメリカに対し主張すべきことも主張できない卑屈な態度であると申さなければならぬのであります。(
拍手)
と申しますのは、今回の事故において、パイロットが飛行機を脱出してパラシュートで降下しつつありますとき、すでに厚木基地から米軍のヘリコプターが飛んでまいりまして、パラシュートの回りを飛び回り、パラシュートが町田市の都営住宅団地内に着地するやいなや、間髪を入れず団地のさくのすぐ外の畑地に着陸いたしまして、数分の間にパイロットを収容し、厚木基地に飛び去ったのであります。これは、私が事故発生の翌日の朝、社会党調査団として現地に調査に参りましたとき、目撃者二名から聞いたところであります。これから推察いたしますと、脱出する前に基地に向かって無電で連絡する余裕があったことは明らかであります。とするならば、町田市から直線距離でわずかに八キロ、マッハ二以上の速度のジェット機ならば数秒で達することのできる厚木基地に、なぜ機首を向けて脱出することができなかったかどうか。この点は、はなはだ不可解であります。飛行機が市街地に墜落してあの惨事を惹起しながら、パイロットが悠々と脱出していることについて、町田市民は非常に憤っているのであります。さらに、事故の
原因を解く重要な「かぎ」となるF8U機のエンジンは、埋まってしまったまま、これは掘り出さないで、そのままにしてしまっておりますことや、ごく微小な破片までも急いで持ち出しましたことは、何か隠すべきことがあると、黒い疑惑が抱かされるのでございます。かかる事故の
原因と
責任を明らかにし、事故のあと始末を
国民の納得のいくようにするため、日米合同調査を行ない、早急に結論を出すことが必要だと考えますが、外務
大臣は、日米合同
委員会に対して、事件の日米合同調査を要求するつもりがあるかどうか、お
伺いしたいのであります。
この際、ついでに賀屋法務
大臣に対しまして、パイロットの過失、
判断、
措置の誤りによって、飛行機が墜落して人間を殺傷した場合、これは過失致死罪に該当すると思われますが、法務
大臣の見解を承りたいのであります。もし、パイロットに何らかの
責任があり、過失致死罪に該当する場合、日米行政協定によって、このパイロットに対して日本側に裁判権がないといたしましても、米側に対しまして、彼を裁判に付することを要求することができるものかどうか、外務
大臣の見解を承りたいのであります。
次に、この事故による死亡者、負傷者並びに物的損害に対する補償の問題についてであります。従来の例から見まして、支払われました補償金額は非常に少なく、被害者は、防衛庁によって押しつけられた金額によって泣き寝入りをさせられた形になっているのであります。たとえば、死亡者の場合、最高百五十万円といわれておりますが、それだけ支払われましたものは、ごくわずかしかないのであります。もしアメリカでかかる事故が起きました場合、アメリカ
政府は死者に対して幾らの補償金を支払っておりますか。おそらく十倍以上でございましょう。国鉄事故、飛行機事故の場合でも、これに比べますならばはるかに多額なのであります。たとえ幾ら補償金を出しましても、死者に対して償い切れるものではございませんが、遺族のことを考えるならば、当然もっと合理的な補償金額の算定がなされなければなりません。そうして一方的にきめるのではなくて、被害者側の要求もいれなければならないのでございますが、防衛庁長官は、この点どういうふうにお考えになりますか。この際、合理的な算定方法をとること、そして十分に補償するために至急
措置をとられるかどうか。また、そのうちの一部を、直ちに被害者に先渡しされるかどうか、お
伺いしたいのであります。
またこの際、アメリカ側はどの程度補償の
責任を負っているのか、お
伺いしたいのであります。私どもは、これはアメリカ側が全部
責任を負うべきものと考えているのでございますが、この点はどうお考えになっておりますか。
今回の事故は、日本全国の米軍航空基地周辺の住民に非常な不安と恐怖を引き起こしているのでありますが、ことに、同じ三多摩にある横田基地周辺の住民は、F105戦闘機の横田への配置に非常な不安の念を高めているのであります。地元の
市町村は、それぞれの
市町村議会において、自民党をも含めましてF105の横田基地配備に反対決議をするなど、強く反対しているのでありますが、防衛庁長官は、この反対運動を、ジェット機の騒音防止に、
政府から金を出させることで、何とかなだめようとされてこられたのであります。しかし、住民は今回の事件を見て、あらためて、何どき、かかる惨事がふりかかってくるかわからないということを思い知らされ、りつ然としているのであります。この際、
政府は、アメリカに対してF105戦闘機の横田配備を中止するように交渉するつもりはないか。
総理並びに防衛庁長官にお
伺いしたいのであります。
また、わが国の原子力センターであります東海村に隣接する地域に、米空軍の試爆場があり、従来しばしば事故を起こしていることにつきましても、あらためてその危険の大きなることについて考えさせられるのであります。もし、東海村の原子力センターに今回の事故のようなことが起こったら、その災害は、はかり知れないものがあります。原子力村付近で、ひんぱんに米空軍の飛行機が飛来し、しかも爆弾投下の訓練が行なわれるがごときことは、今回の事件にかんがみ、直ちに中止させなければなりません。
総理並びに防衛庁長官は、この問題につきましてどうお考えになっているかお
伺いしたいのであります。
これをもって私の
質問を終りますが、
政府は、この事件の
原因と
責任を究明して、
国民に明らかにするとともに、被害者に対する補償その他十分なる
指摘を、すみやかに、かつ、積極的に講ずること、また、かかる事故発生を防止するために、すみやかに具体的な方策を講ずることを、強くアメリカ側に要求し、それを実現させることを要望する次第でございます。
これをもって私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕