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1964-04-03 第46回国会 参議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月三日(金曜日)    午前十時三十四分開議   —————————————  議事日程 第十五号   昭和三十九年四月三日    午前十時開議  第一 緊急質問の件  第二 漁業災害補償法案閣法第一   二三号)及び漁業災害補償法案   (衆第三五号)(趣旨説明)  第三 原子力の非軍事的利用に関す   る協力のための日本国政府とアメ   リカ合衆国政府との間の協定を改   正する議定書締結について承認   を求めるの件(衆議院送付)   ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一 緊急質問の件  一、日程第二 漁業災害補償法案   (閣法第一二三号)及び漁業災害   補償法案(衆第三五号)(趣旨説   明)  一、日程第三 原子力の非軍事的利   用に関する協力のための日本国政   府とアメリカ合衆国政府との間の   協定を改正する議定書締結につ   いて承認を求めるの件  一、国立学校特別会計法案   —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。上林忠次君から病気のため二十八日間、村上義一君から病気のため九日間、請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。    ————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、緊急質問の件  矢山有作君から、食糧確保自給度向上に関する緊急質問が提出されております。矢山君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。矢山有作君。   〔矢山有作登壇拍手
  7. 矢山有作

    矢山有作君 私は、甘木社会党を代表いたしまして、最近の米不足実情にかんがみまして、国民化活安定のために欠くべからざる食糧確保の問題について、政府にその所信をたださんとするものでございます。  三十八年産米は史上第三番目の豊作という政府宣伝にもかかわらず、国内米不足は、 いまや、おおいがたい事実となってあらわれてまいっております。すなわち、政府はこの一月から配給要綱を改正して、従来一カ月一人十キロのワク外であった準内地米徳用米を、ワク内に入れ、過去の配給実績をもとにして新基準米屋に割り当てたために、たとえば大阪では、内地米だけで一人一カ月五・六キロ、東京では六キロに減らされ、場所によっては配給量さえ確保することができないところも出てきております。一方、産地では、農協倉庫の米の出庫は例年より非常に早くなっており、ひどいところでは、倉庫に入れるひまもなく消費地に向けて貨車積みされていると言われております。その上に、協力米といって農家保有米超過供出運動が展開されております。また、やみ米値上がりも、食糧庁調査によりますと、二月十五日現在で消費地全国平均が一升百四十円で、昨年の同期に比べますと四円高と、こういうことになっております。例年なら五月ごろから値上がりを始めるのが普通だと言われておりますが、ことしは二月からもう値上がりを始めておる、こういう異例の現象を呈しているわけです。米不足国民生活にとって深刻な問題となってきたと言えると思います。  そこで、最近の内地米需給状況というものを見てみますと、三十六年では、九月一日現在、政府在庫量百三十万四千トンに対し、同月中の売却量四十八万五千トンで、差し引き八十万トン以上の余裕がありました。ところが、三十七年ではそれが二十六万八千トン、三十八年にはそれが十一万トンと、次第に逼迫してきているという実情が明らかでございます。これでは全国配給量の一週間分にも足りないという状態でして、このような危機をこれまでは新米早食いということで切り抜けてまいっておりますが、その新米早食い量も三十七米穀年度には四十万トンをこえ、三十八年度では五十万トンとなっており、時期別格差の引き下げその他の状況を考えてまいりますと、これ以上は困難だと言われるほどになってきております。一方、三十六米穀年度には四十五万トンをこえた古米の持ち越しも次第に減少してまいりまして、三十七年度では八万六千トン、三十八年度では五万一千トンとなっております。ことしの端境期はどうなるのか。食糧庁では、約一ヵ月分程度不足するので、この分は新米早食いで補うと言っております。しかしながら、三十九年産米の作況が思わしくなかったり、あるいはまた集荷が順調に進まなかった場合ということを考えてみますと、食糧危機になることは明らかであります。政府はこのような食糧窮迫を心配されてか、三月六日の閣議で、三十九会計年度輸入計画数量十三万トンの繰り上げ輸入をきめるとともに、さらに食糧輸入量を当初計画よりも少なくとも七万トン程度ふやす見込みであると言われております。そうしますと、外米輸入量は、三十三年以来六年ぶりで三十万トンをこえることになります。ところが、はたしてこれだけの輸入をしたことで端境期を乗り切れるのかどうかということについては、いろいろ問題視されておるようです。  このような、国民生活の上にきわめて深刻な影響を及ぼし、社会不安にも発展しかねない米不足実情に対しまして、以下数点にわたって御質問をいたしたいと存じます。  まず第一点は、農林大臣にお伺いしますが、三十九米穀年度の米の需給については、発表されている三十九米穀年度需給計画どおりにいくのかどうか。需要面で見ますと、最近の一人当たり港費量増加傾向、さらに消費人口急増が続いております。また、最近の政府買い入れ比率増大ヤミ米流通減少となってまいります。それだけ配給に依存することになるわけでして、これらの点を考えてみますと、需要量は当初の計画を大きく上回るのではないか。また、供給面から見た場合に、三月七日の食糧庁発表によりますと、二月末買い入れ総量目標量の六百九十万トンを四万四千トン下回り、買い入れ量目標に達しない見通しになったと発表しているのから見ても、需給計画に大きな狂いが生ずるのではないかと考えられますので、その実態を明らかにしていただきたいと存じます。  第二点は、十三万トンの繰り上げ輸入を決定し、さらに七万トン程度輸入計画されているということですが、はたしてその程度輸入端境期を乗り切れるのかどうか。一説によると、準内地米だけで四十万トン以上の輸入が必要とも言われております。実情はどうなのでしょうか。また、輸入につきましては、海外市場状況から見て、必要量確保し得る見通しがあるのかどらか。また、具体的な輸入買い付け交渉はどの程度進んでいるのか。聞くところによると、スペイン米三万トンの輸入交渉がまとまり、加州米六万トンの買い付け交渉中とのことでありますが、迅速に措置しなければ、先になればなるほど足元を見られ、まずいものを高く押しつけられるという結果になるおそれもあるのではないかと思われます。  第三点は、総理にお伺いをいたしたいと存じます。それは、現在のこの米不足実態総理はどのように見ておられるかということであります。政府態度を見ますと、米不足は本年の特殊事情として一時的なものと見ておられるような印象を受けるので、この点についての総理の御見解をお示し願いたい。とともに、私は、米不足実態は一時的なものでなく、もっと長期的な構造的なものであるということを指摘したいと思います。  その一つは、農業基本法体制のもとでの米麦疎外生産政策に基因するものであります。すなわち、農基法食糧供給に対する政府の基本的な考え方を示すことなく、選択的拡大のかけ声の中で、米麦はすでに斜陽農産物であり、乳牛や、豚、鶏を飼い、果樹栽培をやるのが、新しい農業だという印象を強く農民に与え、米麦農業からの脱却が鳴りもの入り宣伝されたことによって、米麦軽視ムードが農村にしみ込んだ結果、惰性で米麦づくりが行なわれておる風潮があります。さらにこれに拍車をかけたのが食管制度の再検討動きであります。  また、その一つは、高度経済成長政策による農業基幹労働力大量流出と、それに伴う農業労働力量的質的低下による三ちゃん農業化出産力の絶対的低下であり、その結果は、農業近代化の声をしり目に、荒しづくり耕作放棄となってあらわれております。これでは農業生産増加を期待できない状況になっていると言わなければなりませんし、さらにまた、労働力大量流出は逆に政府米配給人口増大となってあらわれ、米の需給関係に大きな変化を生じたということであります。  またその一つは、生産者米価をはじめ、農産物出産者価格の相対的な低さ、加うるに、不安定ということが、農民をして農業への希望を喪失させ、それれが前にも指摘しましたような農業基幹労働力流出を促進し、農業衰退原因一つとなっているということであります。  以上指摘したところから明らかなように、現在の米不足というのは米麦生産の長期的構造的な危機を示すものでありまして、これが解決のためには、食糧政策の根底からの再検討が加えられなければならないと考えます。  最近の乳価値下げ、豚肉の暴騰暴落、野菜の暴落米不足等々、これらは一連の政策的帰結であり、高度経済成長政策農業基本法体制下農業生産における矛盾の集中的な表現であります。池田内閣には農業をまかせておけないという機運は、生産農民一般消費者の中にはもちろんですが、保守党の内部にさえも起こってきております。総理は、この事態を認識し、米不足実態を正しく把握し、食糧政策に再検討を加えるべきであると思います。昨年の衆議院解放前の国会において、農業近代化のために革命的な方策を講ずるものとし、財政金融の総力をあげてこれに立ち向かう決意であると国民に向かって所信を表明された責任の上からしても、これは当然であろうかと思います。  第二点は、貿易自由化関連をしてお伺いをいたします。従来、政府はしばしば、農業については軽率には貿易自由化はやらないと言明してきました。ところが事実は、三十五年ころから農産物についても自由化は急速に進められ、その上に、形式的には自由化していなくても大量の農産物輸入が行なわれております。これがわが国農業に与える直接的な影響は、バナナの輸入によるリンゴの暴落学校給食用脱脂粉乳輸入や、バター、チーズの輸入国内乳製品市場を圧迫し、乳価値下げ原因になっていること、また飼料について見ても、 畜産拡大国内飼料自給体制の整備が伴わず、三十八年は農家購入飼料の六〇%は輸入飼料であり、三十九年度の需給計画ではこの割合は七〇%になっておりまして、わが国畜産における外国飼料依存度はきわめて高く、そのために飼料価格変動によって不安定を免れない。他面、国内においては、ここ数年来、麦作転換を奨励してきましたが、その結果として、転作のめどの立たないままに年々作付面積減少し、三十八年度は百十四万ヘクタールの作付で、戦後最高の二十五年百七十二万ヘクタールに対し三〇%以上の作付減少となり、昨年の四月のごときは不作地二百四十九万ヘクタールに上るといった状況であります。その結果、飼料用大麦不足を生じまして、三十八年度は二十二万トン、三十九年度は四十万トン以上の輸入計画しているということ等に見られるように、きわめて重大でありまして、日本農業発展を大きく阻害していると言えます。さらに、自由化の進行の中で注目しなければならぬのは、市場獲得競争の激化に伴い、国内において資本や企業の集中と独占化あるいは系列化が進むことはもちろん、外国資本日本資本との間にも、技術提携あるいは資本の導入が、急速に、しかもそれは巨大な外国資本に従属する形で進んでくるということでありまして、現実にその例はすでに発生をしております。これら大資本による直接的また市場支配を通ずる間接的な方法による農業支配が強化されてくるということであります。こうして農民は、自由化のもとで、農産物価格価の低落、また、高い農薬用資材の押しつけによって、低い農業所得に甘んぜざるを得なくされ、低い所得に耐えていくために、自由化で安くなった農産物にしがみつき、自家労賃を切り下げながら農業をやるということになるであろうと思います。そらして、このような農業経営の壊滅により一そう農業労働力流出し、低い農業所得と相まって安い労働市場を形成していくであろうと思います。まきに、自由化は、日本農業農民の犠牲の上に一部大資本の利益を保証するものだというべきであります。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、総理は、貿易自由化の中で、今後、日本農業の位置づけを国民経済全体の立場からどのように考えておいでになるのかということでございます。諸外国農業基本法には、食糧国民のために確保する、自国の農業食糧確保するということが明確にうたいあげられております。日本がまねたといわれる西ドイツの基本法の中にもこのことは実に明確に規定されております。そして、その基本原則の上に立って、国内農業保護育成に最大の努力を払っているということは、アメリカでもEEC諸国でも、みなそうでございます。われわれもまた、農業農民経営生活が安定し、国民食糧不安がなくなって、初めて健全な経済成長発展があることを考え、食糧自給体制の確立を農政の基本方針として、いたずらに自由化に走る前に日本農業保護育成をはかるべきであると考えております。  次に、農林大臣伺いますが、  第一点は、開放経済体制に移行するのに対応して、今後の農産物自由化の基本的な構想をお示し願いたいと思います。  第二は、畜産発展のためには飼料問題の解決は不可欠であります。しかるに、わが国畜産輸入飼料への依存度がきわめて高く、飼料自給度向上のための対策は皆無にひとしい状態であります。国内産麦作の問題とあわせて、山林、原野の開発、草地改良等飼料自給対策を強化すべきではないか。  第三点は、最初の米の需給の問題と関連してまいりますが、食糧管理制度の問題であります。政府与党内部、また財界に、米の統制撤廃しようとの動きが根強くあるし、所得倍増計画にも米を間接統制に移行させると明記されておりますが、さきに述べた米の需給逼迫状況の中では、食管制度を堅持こそすれ、米の統制撤廃統制緩和などはとうてい考えられないと思うが、この点については総理から御所見を承りたいと思います。  次に、かねて政府法案提出検討していた臨時食糧管理制度調査会の取り扱いはどうなさるおつもりか。  次は、米麦及び牛乳国民主要食糧の二本柱と規定するならば、米麦食管制度を堅持することはもちろんですが、牛乳についても国の管理制度を採用し、国内産なま乳の学校給食、妊産婦、乳幼児への牛乳無償給与等制度を確立して、酪農の安定成長に資すべきだと思うが、御所見を承りたい。  また、畜産拡大発展のために、その原料である飼料についても、輸入飼料及び政府管理食糧から生産される飼料等を一元的に国家管理し、これを畜産農民に直接かつ安定した価格で供給する体制をとるべきではないか。  最後に、価格政策についてでありますが、麦及び牛乳その他主要畜産物について、米と両様の出産費及び所得補償方式による価格で、その出産農民所得確保すべきではないかと思うが、御所見伺いたいと存じます。  次に、国際収支との関連においてお伺いをいたしたい。政府農産物国内自給度向上努力を放棄しているのに比例して、農産物輸入が激増し、国際収支赤字基調とからんで問題になっております。政府資料によると、三十八年の農産物輸入は十二億五千六百万ドルで、前年に比して六〇・五%の大幅増加となり、輸入総額に占める割合も一八・七%で、増加率輸入総額に占める割合とも三十四年以来の最高となった。この傾向はことしに入ってからも変わらず、農産物輸入増加の一途をたどっております。これは、所得倍増計面で、四十五年に、食糧輸入輸入総額の八・一%、約八億、農林関係原材料輸入を六・一%、約六億と見ているのと対比して、いかにその増加が激しいかがわかります。ちなみに、中央政策研究所試算によると、四十五年には農産物輸入は十八億ドルになると言っており、また、現在程度飼料国内生産状況畜産を伸ばしていくとした場合、四十五年には飼料輸入のみで七億ドル必要になるという学者の試算も行なわれているが、これに加えて、米の輸入量増加していかねばならぬということになれば、いよいよ国際収支悪化拍車をかけることになる。  しかも、こうした輸入依存政策をとる場合、FAOから公表された一九六三年農業白書及び第三次食糧調査によってみても……
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 矢山君、だいぶ時間が過ぎました。結論をお急ぎください。
  9. 矢山有作

    矢山有作君(続) 世界の食糧需給はきわめて不安定で楽観を許さず、いつでも、どこからでも思うように輸入できるといろ状態にはなく、相手側の思わざる事情変動によってわが国食糧需給が思わぬ混乱を受けるおそれがきわめて大きい上に、買い手市場に転落した場合、不利な取引を強要されざるを得ないこともまた明らかであります。
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 矢山君、結論をお急ぎください。
  11. 矢山有作

    矢山有作君(続) 農産物外国依存政策は、国民生活自体を不安にすると言わねばなりません。  そこで、まず第一に農林大臣にお伺いいたしますが、一つは、今後の農産物輸入の動向をいかに見ておられるか、わが国貿易全体の中で承りたい。次は、現在及び将来の海外農産物需給事情をどう見ておられるか、承りたい。  最後に、総理大臣にお伺いいたしますが、総理は、高度経済成長政策とその中での農業軽視政策の結果として、今日の農産物輸入増大国際収支悪化をもたらしているということを認識しておいでになるかどらか。最後でございますが、現在のように、農業問題が各方面論議の対象にされ、またそれについて多くの提案が出されていることは、農業基本法論議以来なかったことであります。このことは、一面から見れば、農業に多くの人々の関心が深く寄せられている証左でありまして、喜ばしいことでありますが……
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 矢山君、時間です。
  13. 矢山有作

    矢山有作君(続) 反面から見ると、池町内閣農業政策の破綻とそれに対応していく施策の貧困を象徴するものということができます。総理はここのところをよく御認識になる必要があろうかと考えます。農業は、口先だけで事実を糊塗できぬ段階に立ち至っております。  以上で私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私に対する御質問の第一点は、米の需給の問題でございますが、お話のとおり、最近、米の需給は若干引き締まり傾向にございますが、内地米出産消費は、ここ数年間を達観すれば、大体均衡を得ておると思います。しかし、需給関係人口移動関係等から、今後におきましても米の出産には十分に意を用いていきたいと考えておるのであります。  第二は、農産物自由化でございますが、御承知のとおり、日本農業は、その規模におきまして、また生産性におきまして、非常に低いのでございます。したがいまして、わが国農業を維持しつつ、順次自由化に進めていきたい。そのためには、農業構造改善生産基盤強化等が必要でございまするので、政府はこの方面に力を入れておるのであります。  なお、米の統制撤廃につきましては、たびたび申し上げておりますごとく、私はいま米の統制撤廃する考えはございません。  第三に、農産物輸入につきましてでございますが、お話のとおり、だんだん農産物輸入はふえております。しかし、全体に輸入がふえておりますので、昭和三十三年を基準にして見ますと、大体総輸入額の一七くらいでございます。昨年度、昭和三十年度はちょうど一六%くらいでございますが、三十五、六年はそのパーセンテージが低うございましたが、大体一五、六%くらいは今後あるのではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、できるだけ農産物自給体制をとることがわれわれの政策の根本でございますから、農産物増産につきましては今後十分意を用いたいと思っております。ことに、輸入の大部分輸入増加相当部分飼料でございます。したがいまして、今後、畜産関係の将来を考えますと、飼料国内での自給度を高めることがわれわれの農業政策重要政策だと私は考えておるのであります。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳登壇拍手
  15. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 米の需給関係についてのお尋ねでございましたが、総理が答弁いたしましたとおり、あるいはまた、過般予算委員会等におきまして需給計画を発表いたしましたが、その需給計画どおりいく、こういう見通しでございます。お話のように、昨年度の米の収穫は、三番目の豊作でございまして、決して宣伝でもなんでもございません。それと同時に、政府手持ち米といいいますか、政府で買い入れた米が、一昨年より昨年度は多いのでございます。そういう供給量でございます。需要量はやはりふえてきておる傾向にございます。そういう傾向でございまするし、また、端境期新米を食い込んでいる、こういう事態が二、三年来続いておりますので、端境期におきましては、窮屈になるという見通しは持っております。そういう面で、輸入等につきましても十分に手を尽くしておりまするし、会計年度輸入量米穀年度に繰り上げて輸入する、こういうことも進めて、万全を期しておりますので、米の事情において暗いというような見通しは、全然ないと思います。  配給につきましての基準も変えておりません。実態に沿うたようなことをしておりますが、ただ去年、米の質がよくなかったので、そういう面で質の悪い米を配給の中に入れておる、こういう事情はございます。  第二に、自由化日本農業との関係、これは再々申し上げておりまするように、日本農業は零細でありまするし、国際的に見ましても、相当コスト高になっていますから、全然まる裸で自由化すると自由化の波にさらわれるということになりまするというと、国際競争力が非常に薄いわけであります。でありますので、自由化に際しましては、前もって財源的な措置をとる、あるいは関税の定率を考える、そういうものを前もってするか、あるいは同時というようなこともございますが、そういうことで、十分の配慮をしながら自由化を進めていく、こういう態度に変わりはございません。  策三は、飼料の問題でございますが、飼料の大部分輸入でございます。しかし、自給飼料等につきましては、自給化対策を講じて、着々進めておりまするし、また、濃厚飼料等につきましても、麦類等食糧としてのウエートは減ってきておりますが、飼料としてのウエートは高まっておりますので、そういう方面増産対策も講じていくつもりでございます。  牛乳価格の問題につきまして、牛乳等を米と同じような出産費所得補償方式というような形でやったらどうか、こういう御意見でございますけれども、生産事情とか、あるいは需給事情ということを考慮に入れないで、所得補償方式というようなことに進めるということには、需給のアンバランスを生ずるおそれもございまして、いまそれに踏み切るということは考えておりません。  それから、飼料全部に対しましての、国家でこれを管理するかどうか、それでなければまずいのじゃないかというような御意見であったと思います。現在、政府輸入している飼料数量は約五百四十万トンでありまして、その大部分自由化されております。こういう大きな、膨大な輸入飼料を前提としまして、飼料の全量を国家管理として流通の円滑を期するということは、行政技術的にも非常に困難でありますので、まだいま全面国家管理ということは考えておりません。三十九年度におきます政府の管理食糧から出る「ふすま」とか米ぬか、麦ぬかなども、合計百三十万六千トンと見込まれております。こういう糟糠類の飼料のおもな給源でありますが、これに対しましても、飼料需給安定法によりまして、政府が操作する「ふすま」がそのうち六十九万一千トン、この糟糠数が約三五%を占めております。この需給及び価格の安定をはかり得る量は、この三五%程度でございます。したがいまして、政府管理食糧の副産物であります「ふすま」、「ぬか」等につきましても国家管理することには問題があります。いま飼料需給安定法制定当時とだいぶん変わっておりますので、飼料につきましては、根本的に計画を立て、また需給安定法に基づく対策検討いたして、これを円滑にいくように進めていきたいと思います。値段の点あるいは量の点につきましても、十分検討を加えていきたい。また畜産価格安定法につきましても、いまの制度では相当壁にぶつかっております。根本的に検討を加えて、来年度におきましては、十分改革を加えた案が提案されるように配意いたしております。(拍手)    ————————
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、漁業災害補償法案閣法第一二三号)及び漁業災害補償法案(衆第三五号)(趣旨説明)、  両案について国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。赤城農林大臣。   〔国務大臣赤城宗徳登壇拍手
  17. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業災害補償法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  漁業は、申すまでもなく、自然の影響を受けることの多い産業でありますが、特にわが国の漁業は、その大部分が沿岸漁家等の経営基礎の脆弱な中小漁業者によって営まれております。これら大多数の漁業者の経営は、気象または海況の変化、漁業資源の変動等によりまして、常に不安定な状況に置かれているのであります。このため従来から災害対策、金融対策等の諸施策が講ぜられてきているのでありますが、これらの諸施策に加えて、漁業共済の事業による漁業災害補償の制度の確立が必要とされていたのであります。  政府といたしましては、昭和三十二年度から、漁業共済事業について試験実施調査を行なってきました。そして本制度の基礎研究調査、漁村に対する啓蒙普及、共済金の支払い財源の確保等について助成措置を講じてきたのでありますが、この漁業共済事業に対する試験実施調査は、このたびこれを打ち切ります。そして昨年施行されました沿岸漁業等振興法に規定している「災害による損失の合理的な補てん等」の具体的な施策の重要な一環として、ここに新しく漁業災害補償の制度を樹立することといたしたのであります。  この法案において定めている漁業災害補償の制度は、漁業協同組合等の協同組織を基盤とする漁業共済団体が行なう漁業共済事業及び漁業再共済事業により、中小漁業者の相互救済の精神を基調として、その営む漁業につき、異常の事象または不慮の事故によって受けた損失を補てんするための必要な給付を行ない、中小漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に資することを目的とするものであります。もとより、この制度は漁業者の十分な理解と自主的な努力が前提となっているのでありますが、その健全かつ円滑な運営を確保するためには、漁業共済団体の支払い資金の確保、小規模な漁業者の共済掛け金の負担の軽減等の措置を講ずることが必要でありますので、この法案においては国がそれらの措置を講ずることを明らかにしているのであります。  以上述べましたような漁業災害補償の制度の適切な実施により、中小漁業者の経営近代化及び高度化等、漁業経営発展をもたらす基礎的な条件の整備が期待し縛るのでありますが、政府といたしましては、この制度とともに、これまで実施してまいりました構造改善事業、漁港整備事業、金融対策その他の漁業施策をさらに積極的に進めながら、沿岸漁業等の振興を総合的にはかってまいりたい所存であります。  以下、この法律案の概要を御説明申し上げます。  第一は、漁業共済団体の組織についてであります。すなわち、都道府県の段階において漁業共済組合を、全国段階において再興済機関たる漁業共済組合連合会を設け、いわゆる二段階制の組織とすることとしております。漁業共済組合は、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会をその構成員とし、漁業協同組合系統組織の事業との相互連携を緊密にし、適正円滑な事業運営を確保することといたしております。また、漁業共済組合は、相互の危険分散をはかるため、漁業共済組合連合会へ当然に加入することといたしております。  第二は、漁業共済の事業についてであります。漁業共済組合は、その構成員たる漁業協同組合の組合員等のために、漁獲共済、養殖共済及び漁具共済の三種類の漁業共済事業を行なうこととしております。  漁獲共済は、海況の変化、資源の変動その他の事由により、中小漁業者の漁獲金額が減少した場合に、その損失について共済金を交付する事業としております。  養殖共済は、養殖業を営む者が養殖中の水産動植物または養殖の用に供する施設の流失、損壊等により受けた損害について共済金を交付する事業としております。  漁具共済は、中小漁業者が漁業の操業中に漁網等の損壊等により受けた損害について共済金を交付する事業としております。  以上の漁業共済事業につきましては、漁業共済組合と漁業者との間に共済契約が成立したときは、漁業共済組合連合会と漁業共済組合との間に、当然に再共済契約が成立することとし、その危険の分散をはかることとしております。  第三は、漁業共済基金についてであります。以上申し述べましたように、漁業共済の事業は、まず都道府県の段階で、次に全国の段階で二重に危険の分散をはかり、その事業経営の安定を期しているのでありますが、共済金または再共済金の支払いが円滑に行なわれるために、政府、都道府県及び漁業共済団体が出資する漁業共済基金を設置し、漁業共済団体に対する必要な資金の貸し付け、債務の保証等の業務を行なわしめることといたしております。  第四は、国の助成についてであります。漁業災害補償の制度につきましては、漁業共済団体の人件費等、基幹的な事務費について助成してまいる所存でありますが、特に共済掛金につきましては、小規模な漁業者の掛金負担の軽減のためとあわせて、加入の奨励という見地から純共済掛金の一部を補助するものとしております。この共済掛金の補助につきましては、特に規定を設け、本制度に対する国の助成の方針を明示いたしているのであります。  なお、この漁業災害補償の制度につきましては、政府は、今後における中小漁業者の漁業事情の推移と漁業共済の事業の実施の状況に応じて、共済掛金率、共済責任の負担区分等に関して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする旨の規定を特に設けております。これは、この法律により、まずもって漁業共済団体の組織の整備と漁業共済への加入の確保をはかり、今後、漁業共済の事業の実績等に基づいて、資料の蓄積とその分析につとめ、漁業災害補償の制度について検討を加える趣旨でありまして、これらの検討の結果に基づき、本制度をより一そう整備してまいりたいと存ずるものであります。  以上が漁業災害補償法案の趣旨でございます。(拍手
  18. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 衆議院議員角屋堅次郎君。   〔衆議院議員角屋堅次郎君登壇拍手
  19. 角屋堅次郎

    ○衆議院議員(角屋堅次郎君) ただいま議題に供されました漁業災害補償法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  漁業は、農業と同じく、自然に左右されることの大きい産業であり、不可抗力である自然災害によって事業が潰滅し、あるいは再起不能の損失を受ける危険に常にさらされているのであります。しかも、わが国の漁業においては、経営規模が小さく、これらの災害に対する抵抗力の弱いものがきわめて多いのであります。このため、災害によって漁業者がこうむる損失を補てんし、漁業の再生産を持続することのできる画期的な漁業災害補償制度を確立することは、漁業者の久しく切望し来たったところであります。こうした漁民の要望にこたえ、充実した漁業災害補償制度を確立し、漁業者を不慮の災害または不漁に基づく窮乏から解放することは、政府の責任でなければなりません。  しかるに、農業においては早くから災害補償制度が実施され、不充分ではあれ、農民農業災害から守っているにもかかわらず、それよりも一段と条件の悪い漁業においては、昭和三十二年から漁業共済が試験的に実施されているにすぎず、今日に至るも災害補償制度は確立しておらないのであります。  政府が今年から実施しようとしている「漁業災害補償法」は、単なる共済制度を規定しているにすぎず、災害補償制度としての実体を備えておらないのであります。もちろん政府漁業災害補償法の制定に踏み切ったことは、漁民のために多とするものでありますが、単なる共済制度の規定では無意味であると存じます。  災害補償と共済との関係は、同一平面において論ぜられるべきものではありません。これを意識的に混同せしめようといたしますならば、結果的には、羊頭を掲げて狗肉を売ることに相なると思うのであります。  以上申し述べました事態にかんがみ、画期的な漁業災害補償制度を確立、漁業の健全な発展をはかり、漁業者を災害に基づく窮乏から解放することは、目下の急務であります。これが本法案を提案するに至った理由であります。  次に、この法律案の大要について御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的でありますが、漁業災害補償制度を確立し、沿岸漁業者等が異常の事象または不慮の事故によって受けることのある損失を十分に補てんし、漁業経営の安定をはかり、もって漁業の発展に資することを目的とする旨を明記いたしました。さらに、この法律案において漁業災害補償制度とは、漁業共済組合が行なう漁業共済事業、漁業共済組合連合会が行なう漁業再共済事業及び政府が行なう漁業保険事業により、沿岸漁業者等の漁獲金額の減少または養殖水産動植物、養殖施設もしくは漁具にかかる損害に関して必要な給付を行なう制度であることをあわせて明らかにいたしました。これは、わが党が、この法案によって名実兼ね備えた災害補償制度の確立を願っているからにほかなりません。  第二に、漁業共済団体の組織でありますが、都道府県の区域によるものと全国の区域によるものの二段階といたしました。また、組合員たる資格を有する者は、県段階における漁業共済組合においては、組合の地区に住所を有する漁業協同組合及び漁業協同組合連合会、全国段階における漁業共済組合連合会においては、組合の地区内に住所を有する漁業共済組合とするとともに、両者とも当然加入といたしました。  第三に、漁業共済組合が行なう事業でありますが、共済組合が当面行なうべき事業としては、漁獲共済、養殖共済及び漁県共済の三つとし、漁船保険及び任意共済事業については、なるべくすみやかに、この法律に基づく漁業災害補償制度の対象とするための必要な措置を講ずべき旨、附則で規定いたしました。  第四に、契約の方法についてでありますが、義務加入及び任意加入の方法によることとし、それぞれ必要な条項を規定いたしました。  第五に、漁業共済連合会の漁業共済事業についてでありますが、連合会が行なう共済事業は、共済組合が漁業共済事業によって被共済者に対して負う共済責任を再共済する事業とするとともに、共済組合と被共済者との間にこの法律の規定による共済関係が成立したときは、これによって連合会と共済組合との間に、当該共済契約につき再共済関係が成立するものといたしました。また、連合会の再共済金額は、当該共済金額に通常責任共済金額の百分の九十をこえない範囲内で政令で定める金額といたしました。  第六に、政府の保険事業でありますが、政府が行なう保険事業は、共済組合が漁業共済事業によって被共済者に対して負う共済責任を保険する事業とし、共済組合と被共済者との間にこの法律の規定による共済関係が成立したときは、政府と当該共済組合との間に保険関係が成立するものとすることといたしました。なお、政府の保険金額は、共済金額のうち通常責任共済金額をこえる部分の金額とし、政府の負担する保険料率は、異常共済掛け金部分とするものといたしました。  第七に、漁業共済基金についてでありますが、漁業共済団体に対してその業務に必要な資金を融通することにより、漁業共済事業の過渡的な収支調整をはかることを目的として、資本金十億円(うち政府出資七億円)の漁業共済基金を設けることといたしました。  第八に、共済掛け金等の国庫負担についてでありますが、区画漁業等であって政令で定めるもの、及び総トン数十トン未満の漁船によって行なう漁業(区画漁業等及び政令で定めるものを除く)にあっては、異常共済掛け金部分の全額と通常共済掛け金部分の三分の二の合計額を、総トン数十トン以上百トン未満の漁船により行なう漁業(区画漁業等を除く)にあっては、異常共済掛け金部分の全額と通常共済掛け金部分の二分の一の合計額を、百トン以上千トン未満の漁業については、異常共済掛け金部分の全額と通常共済掛け金部分の三分の一以内で政令で定める金額の合計額を国庫で負担すべきことといたしました。養殖共済及び漁具共済においても、おおむねこれに準じて掛け金の一部を国庫で負担することといたしております。  また、漁業共済団体の事務費に対しても、その全額を国庫で負担すべき旨規定いたしました。  第九に、漁業共済団体の行なう損害査定の公正を期するため、学識経験者をもって構成する漁業共済団体に損害評価会を置くことといたしました。  第十に、漁業共済を漁民にとって一段と魅力あるものとするため、共済限度額を高め、特約制度によって限度額率を九五形まで引き上げることができることといたしております。いま一つは、豊漁年における余剰金の一部を不漁準備金として積み立て、共済事故が発生した場合は、その積み立て金を優先的に取りくずすことができるようにいたしました。この場合の積み立て金に対する課税及び契約者の共済掛け金率は、不漁準備金の積み立て額に応じて逓減することができるようにいたしました。また、無筆故優遇措置として無事故継続年数に応じて掛け金の一部を払い戻すことができるようにするとともに、零細漁民の掛け全払い込みを容易にするため、漁獲共済及び養殖共済にかかる共済掛け金は分割して支払うことができるようにいたしました。  第十一に、政府の漁業保険裏業の実施に伴う漁業保険特別会計の設置、基金の設立その他この法律の施行に伴い必要な事項及び関係法律の整理に関しては、別に法律で慰めることといたしました。  以上が、この法律案を提出した理由及び法案のおもな内容であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決くださるようお願いいたします。(拍手
  20. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。大河原一次君。   〔大河原一次君登壇拍手
  21. 大河原一次

    ○大河原一次君 私は、社会党を代表いたしまして、ただいま農林大臣より趣旨説明のありました漁業災害補償法案に対し、池田総理並びに関係各大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  わが国の沿岸漁業は、年とともに行き詰まり、漁民の生活はそれに伴って窮迫の度を加えている現状であります。政府は、口を開けば、日本は世界第一の水産国であり、あるいは日本漁業の生産性は世界有数であるなどと強調されております。しかし、その反面、沿岸漁業等がいかにみじめな地位に追い込まれているか、いかに低い生産性のもとにあえいでいるかは、さきに政府が報告されました漁業年次報告によっても明らかであります。これは、歴代政府が大資本漁業偏重におちいり、沿岸漁業等を軽視し来たった当然の結果であると言わなければなりません。総理は、最近中小企業や農林漁業に対しては革命的な施策を講ずる旨をしばしば強調されているようであります。また、自由民主党も、昨年の衆議院の選挙にあたりまして、漁業災害補償法案の提出を公約しております。ところが、ただいま赤城農林大臣が提案理由を説明された法案の中には、名称こそ補償法案となっておりまするが、実質は、あとで申し上げるように、単なる共済法案にすぎず、災害補償法としての実体を何ら持っていないということであります。  そこで、池田総理並びに赤城農林大臣にお伺いいたしますが、一体、政府は、沿岸漁業の今日の窮状と、そのよって来たった原因を、どのように認識されているかということでございます。また、政府の水産政策に社会政策的な要素を加味しなくても、沿岸漁業等の振興は可能だとの確信を持っておられるかどうか。確信しておられるとするならば、その根拠について率直にお聞かせ願いたいと思うのであります。  次に、法案の内容に即して若干の御質問を申し上げます。  第一点は、単に相互共済制度を規定したにすぎないこの法案を、 なぜ漁業災害補償法案としたかについてでございます。この法案が、真に災害補償法案の名に値するためには、少なくとも、国の再保険、共済掛け金及び事務費の国庫負担に聞ける規定を内容として含んでおらなければならぬのであります。しかるに、この法案は、最も肝心な国の再保険に関する規定を含んでいないばかりか、掛け金負担についても少額の補助を行なうにとどまり、事務費の負担に至っては、法案にその影すらとどめていないのであります。申し上げるまでもなく、漁業は農業と同じく、先ほど農林大臣も言われたように、自然の脅威を受けることの最も多い産業であることは、先般の衆議院本会議におけるわが党の角屋議員の質問に答えた池田総理の答弁の中にも明確にされているのであります。漁業こそ真に災害補償制度を最も強く要求されているものであります。今日、農業においてさえ、国の再保険、掛け金及び事務費の国庫負担を中心とする農業災害補償制度が、昭和二十二年以来今日まで引き続き実施されているのであります。しかるに、漁業においては、単なる相互共済を内容とする法案をかろうじて今日提出されたことは、政府の漁業軽視を示す以外の何ものでもないと言わなければなりません。総理によってさえ、農業よりもさらに自然条件に支配されることの大きいといわれるこの漁業において、漁民の期待と要望を踏みにじり、農業災害補償法からはるかに後退した内容のかかる法案を提出した真意は、一体どこにあるのか。かかる内容の法案をなぜ災害補償法案の名において提案したかの二点について、池田総理及び赤城農林大臣から卒直なる御答弁を願いたいのであります。  また、いやしくも漁民の利益を代表すべき農林大臣が、このような、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売るがごとき法案を提案せざるを得なかった裏には、大蔵当局の強い発言があったと聞いておりまするが、田中大蔵大臣がこの法案に補償法案としての実質を盛り込むことに反対した理由を承りたいのであります。  第二に、この法案には、漁民が強く、要望しておりまする国の再保険が規定されていないことは、先ほど申し上げたとおりであります。しからば一定期間、たとえば三年なら三年の後に、国の再保険を実現するための用意があるかについても、 この法案の中には、どこにもそうした規定が見当たらぬのであります。附則第二条の検討条項も、革に共済掛け金率、共済責任の負担区分等に関して検討を加えることをうたっているのみであり、国の再保険実現の方向で検討を進めるとの意味は全くくみ取れないものでございます。政府は、衆議院本会議における質問に対して、 今日までの試験実施によって得た資料によっては、国の再保険を行なうための前提となる異常災害と通常災害とを区別することは不可能だということを、再保険拒否の理由としてあげておるのであります。しかし、 去る三十八年の四月に、水産庁長官の諮問機関として設けられた漁業共済制度研究会の答申の中には、異常災害部分と通常災害部分とは明確に分けることが可能であり、異常災害部分については国の再保険を行なうことが望ましいと述べているのであります。再保険を行なうことができるかいなかは、政府が主張するように、資料が不足しているかいなかの問題ではなく、政府に再保険を行なう意思があるかどうか、災害補償制度の確立に政府がどれだけの予算をさく決意を固めているかどうかにかかっていると言わなければなりません。そこで、池田総理にお伺いいたしまするが、沿岸漁民の所得を倍増させ、沿岸漁業等の革命的な発展をはかるための有効な施策の一つとして、少なくとも今後三年間くらいの間には政府の再保険を実現するよう、農林大臣を督励する御意思があるかどうか、お聞きしたいのであります。さらに、農林大臣は、水産庁長官の諮問機関として設けられておりまする漁業共済制度研究会の答申を尊重し、国の再保険を実現するため、閣内における努力をする決意があるかどうかを明らかにしていただきたいと思うのであります。  第三は、掛け金及び事務費に関する国の負担に関してであります。政府案によれば、わずかに掛け金に対して低率の補助が規定されているのみでありまして、事務費に関しましては、さきに述べたように、全く規定されていないのであります。しかも政府は、危険の分散をはかるため加入の促進に努力することを当面の目標とすると述べているのであります。このようなわずかな掛け金補助によっては、漁業者を大量に加入せしめることはとうてい困難でございましょう。したがって、この法案が最大の対象とすべき抵抗力の弱い沿岸漁民をこの法案によって救うことは、とうてい考えられないのであります。そこで、農林大臣にさらにお伺いいたしますが、沿岸漁業等の実態に即するように掛け金及び事務費に関する国の負担率を高め、かつ、事務的に対する国の負担について法文に明記する意思はないかどうか。もしそれができないとするならば、その理由が何であるかについてもあわせて御答弁願いたいのであります。また、その場合、積極的に予算措置を講ずる用意がおありかどうか、大蔵大臣の見解を承っておきたいのであります。  第四に、共済資金の資本金についてであります。  まず、これは第二、第三の質問関連するわけでありまするが、政府の再保険事業を予定した場合においてさえ、わずか五億円の資本金では、この運用に困難を生ずることは当然であり、これは少なくとも共済事業の何たるかをわきまえているものの常識であろうと存じます。しかも、政府案には、国の再保険がない関係で、異常災害部分をもこの資本金によってまかなわなければならぬのであります。したがって、この程度資本金をもってしては、とうてい円滑な運用を期することは不可能であると言わなければなりません。しかも、政府案によれば、五億円の資本金で不足を生じた場合の措置が何ら規定されていないのであります。たとえば昨年から今年にかけてのノリの被害一つを見ましても、八十億から九十億にのぼるものと見られているのであります。万一、このような異常災害が発生した場合、国の再保険がないままに、わずか五億円の資本金をもってしては、一体どれだけ働き得ることが期待できるでありましょう。結局、削減規定を発動して、支払うべき共済金額や減額する等の措置を講ぜざるを得ないでありましょう。これでは漁民は信頼して漁業共済に加入することはできないでありましょう。このような事態が十分予想されるにもかかわらず、なぜ資本金を五億円と定めたか。もしこれで十分やっていけるとするならば、その根拠を明らかにしていただきたいのであります。  次に、総理大臣にお尋ねいたしまするが、このような危険に備え、少なくともこうした事態に立ち至った場合、共済基金は政府から必要資金の借入れができるように改めさせる御意思があるかどうか。また、改めることができないとするならば、その場合の措置と危険分散の方法について明確な御答弁を願いたいのであります。  第五に、政府は加入者をふやすことによって危険分散をはかりたいと主張されているようでありまするが、これは単なる願望ではなく、具体的にこの制度を漁民にとって魅力あるものとする努力をなぜ払わなかったかということであります。もともとこの種制度の理想というものは、安い掛け金で、有事の際、多くの保険金がもらえるようにすることによって、加入率を高め、それを通じて危険分散をはかることであります。しかるに、政府案は、肝心の限度額を低く抑え、しかも魚価修正、引き上げ特約条項等についてはもちろん、無事戻し制度及び不漁準備積み立て金制度のごとく、むしろ安定した漁業の加入促進に必要な条項を何ら採用しておりません。これらの点は、不漁準備積み立て金制度を除いて、いずれも漁業共済制度研究会の答申において示されているところでございます。  さらに、農林大臣にお尋ねいたしまするが、研究会の答申が述べた、また、全国漁民がひとしお切望してやまないこれらの規定を、あえて法案に盛らなかった理由は何であるかを明らかにするとともに、先ほど角屋議員より述べられた社会党案の魅力ある、かつ、現実的な制度内容を取り入れるベきではないかと考えております。この点についても、総理大臣並びに農林大臣の御所見を承りたいのであります。  次に、大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、漁業のように所得変動の大きい産業を対象とする共済制度においては、不漁準備積み立て金制度を取り入れることを積極的に認められるべきだと思うが、大蔵大臣がこれに対して不可とする理論的な根拠を明らかにしていただきたいのであります。  以上、数点にわたって質問いたしましたが、総じて政府案は、沿岸漁業等の現状及びそのよってきたるところの原因に対する透徹した認識を欠き、漁民の期待と要望を踏みにじったものと言って過言ではありません、池田総理をはじめ関係各大臣が、少なくとも漁業者の立場に立って、国会の審議を通じ、法案の画期的な前進をはかる決意をもって、誠意ある答弁をされるよう強く御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 多岐にわたる御質問でございまして、もし答弁漏れがございましたら、関係閣僚から答弁させることにいたします。  まず第一に、沿岸漁業についてのお話でございます。お話しのとおり、沿岸漁業におきましても、内海漁業、近海漁業で区別はございますが、いずれにいたしましても、特に内海のほうにおきましては、乱獲の結果として不振の状態を来たしておることはいなめません。また、近代工業の廃液等によりまして、魚族のこれ以上の繁殖がむずかしい点もございましょう。また、漁民の過剰の就業、 あるいは経営の設備の零細等、いろいろな原因がございましょうが、われわれは、これに対しまして、沿岸漁業振興法を設けまして、今後沿岸漁業の振興につきまして、あるいは港湾につき、あるいは水産技術につき、あるいは流通、また金融方面で、 いろいろこの伸展をはかっていきたいと考えておるのであります。  次に、また、共済保険で再保険を認めていないというお話でございますが、私は、漁業というものは農業とはよほど違っております。その漁獲の種類が多種多様でございます。米麦というきまったものではございません。そしてまた、自然的条件も農業よりもっと複雑でございます。台風ばかりでなく、海流とか、あるいは温度とか、いろいろな点がございますので、われわれは、いま農業と同じような制度を設けることはこれは早過ぎる、いま過去六年間の試験実施によりまして、大体ここぐらいまではまずやらなきゃいかぬだろうというのが、 今回の法案提出の理由でございます。  すなわち、漁業が自然的条件によりまする損害をできるだけ補てんして、再生産の気持ちを上げるように、また経営の安定をするように、われわれは、国から共済掛け金の補助または基金への出資、これでやっていくのが、いまのところやむを得ぬことで、今後この実施状況によりまして、それは再保険制度が確立せられるようにしっかりしたデータができたならば、これは三年を待たずにやってもいいことだ。しかし、なかなかこの問題につきましては、再保険にいくのには三年間で確信のできる調査ができるかどうか。私は、その確信ができるならば、できるだけ早く農業と同じようなことにすることが、われわれの漁業に対する対策でございまして、決してやぶさかではないのでございます。  したがいまして、基金の問題でございますが、この今の政府の基金では足りない、こういうお話でございます。やってみまして、もし足りないようなことがあるならば、われわれはこれを増額することに何らやぶさかではないのであります。私らは、この漁業の、ことに沿岸漁業の重大性を考えまして、こういう法案を設け、そして漁民の方々が自主的に自分らも漁業を打ち立てていこうという熱意を出していただくよう期待いたしまして、法案を提出いたしておるのでございます。  他につきましては、関係閣僚から答弁いたさせます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳登壇拍手
  23. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 沿岸漁業の振興につきましては、沿岸漁業振興法の趣旨等に沿うて強力に推進していきたいと、こう考えております。  第二番目に、いま総理からの御答弁がありましたが、今度の漁業災害補償法案に再保険の制度がないじゃないか、こういうことでございますが、やはり、ものには段階と実施可能かどうかと、こういうようなものがありますので、一気にそこまでいけるというような段階ではないというふうに私ども見ております。三十二年から試験実施をしてきましたが、それを打ち切りまして、ことしから本格的にこの制度をやっていこうということでございますから、共済団体の組織の整備とか、あるいは漁業共済の加入の確立、こういう段階を経ていかなければならぬというふうに考えられます。でありますので、この法案の附則等におきましても、共済責任の負担区分とか、共済掛け金の率その他についての検討を加えていく、こういうことが附則に掲記してあります。これはとりもなおさず、段階がきますならば、異常災害、通常災害等の区分をいたしまして、再保険のほうにも進んでいく、こういう前提と申しますか、そのもとに検討を加えることにいたしておるわけであります。  共済掛け金の国の負担が少ないじゃないか、こういうことでございますが、共済掛け金の補助につきましては、漁業者の負担の能力に応じ、かつ共済の加入を促進する見地と、こういう考え方から国庫補助の割合をきめてまいる考えであります。事務費の補助等につきましては、定額の補助をすることとしておりますが、いずれも本事業の円滑な実施に必要な範囲の国庫補助を行なうという方針でございます。この補助等につきましては、従来の試験実施段階に比べまするならば格段に充実されておりますが、当面はこのような補助で支障はない、こういうふうに考えております。  第四番目に、漁業共済基金の五億円の出資では不足ではないか、こういうお尋ねでございます。この額は、漁業共済事業におきまする事業収支の年ごとのフレ等から予想される最大の支払い超過が生じた場合に対処し得る所要額をきめたのでありまして、共済事業の運営に支障を生ずるということはないというふうに見ております。したがいまして、不足を生じた場合の具体的措置をいまのところは考えておりません。  その他いろいろ、審議会の答申等について十分配慮してない面があるじゃないかということでございますが、これは先ほど御答弁申し上げましたように、いままでの試験実施段階を打ち切って、新たにこの制度を確立するもでございますので、いままでの試験実施の実績等を勘案して、段階的に実施可能の範囲におきまして踏み切っていくという決意から出てきているのでございます。でありますので、これからなお推進しなければならぬ問題等につきましては、先ほど申し上げましたように、附則のほうにも、共済責任の負担区分とか、掛け金の率とか、あるいは異常災害、通常災害等の区分もできるようになりますならば、当然この制度も前進させていく、こういう考え方で、現状におきましては、御提案申し上げましたことが十分なものだという認識のもとに、御提案をいたしておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  24. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第一番目には、本制度が不十分である点に対する大蔵省の態度等についてであります。予算政府案決定の最終段階まで本件につきましては相当論議のあったことは事実であります。これは、本制度わが国の漁業にとって画期的な重要な制度である反面、実績資料等の不足によりまして、具体的制度の構想を決定することが困難であった事情から見て、当然のことでございます。  第二点は、事務費の問題でございますが、事務費補助につきましては、いま農林大臣が申し上げたとおりでございます。事務費の補助について、都道府県については二分の一、共済団体につきましては基幹的経費を補助することにいたしておるわけでございます。これらの補助は、従来の試験実施段階に比べますれば、格段に充実されておるわけでございまして、当面この程度で実行していくことに支障はないものと考えるわけであります。  第三点は、不漁準備積み立て金制度等についてでありますが、これらの問題につきましては、本制度実施の状況を見まして検討してまいりたいと存じます。(拍手
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  26. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員長黒川武雄君。   〔黒川武雄君登壇拍手
  27. 黒川武雄

    ○黒川武雄君 ただいま議題となりました議定書は、わが国原子力研究事業に必要とされるプルトニウム、濃縮ウラン等特殊核物質の需要増大にかんがみ、現行の日米原子力協定に基づいてわが国が購入し得る研究用特殊核物質の量の制限を撤廃し、両国間で合意される量だけ購入し得るように改めたものでございます。  委員会におきまする審議の詳細は、会議録によって御承知願いたいと存じます。  四月二日質疑を終え、野坂委員の反対討論の後、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  29. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本件は承認することに決しました。    ————————
  30. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 参事に報告させます。   〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書が提出された。国立学校特別会計法案修正議決報告    ————————
  31. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、  国立学校特別会計法案内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長新谷寅三郎君。   〔新谷寅三郎君登壇拍手
  33. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました国立学校特別会計法案について、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  本案は、国立学校の拡充整備を促進し、その円滑な運営をはかるとともに、経理を一般会計と区分して明確にするため、新たに特別会計を設けようとするものでありまして、同特別会計は、文部大臣がこれを管理し、一般会計からの繰り入れ金、授業料、入学料及び検定料、病院収入、積み立て金からの受け入れ金、借り入れ金、財産処分収入及び寄付金等を歳入とし、国立学校の運営費、施設費、奨学交付金、借り入れ金の償還金等を歳出とすることとし、病院の施設整備のため必要があるときは借り入れ金ができることとし、決算上の剰余は一定の計算のもとに積み立て金として積み立てることにするほか、奨学交付金の委任経理等の必要な事項を定め、さらに一般会計所属の財産を同特別会計に所管がえする場合等は、当分の間無償で整理する等の規定を整備しようとするものであります。  委員会におきましては、文教委員会と連合審査会を開く等慎重審議を行ない、特別会計を設置する基本的な理由は何か、また、国立学校の充実に資する上にいかなる利益があるか、特別会計を設置することによって独立採算制をしいることにならないか、学校財産の処分方針はどうか、 そのほか、本案立案までの経過等について、熱心へは質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して柴田委員より、本案に賛成するものであるが、法律の施行が予定期日よりもおくれたことに伴い、施行期日の「昭和三十九年四月一日」を「公布の日」に改めるとともに、一般会計に所属する資産及び負債で国立学校にかかるものの特別会計に帰属せしめる期日を「昭和三十九年四月一日」に改める修正案が提出され、日本社会党を代表して成瀬委員より、また、日本共産党を代表して鈴木委員より、原案及び修正案に対し、それぞれ理由を付して反対の意見が述べられました。  かくて討論を終わり、まず、柴田委員提出の修正案を採決の結果、多数をもって可決され、次いで、修正部分を除く原案について採決の結果、多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  34. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。成瀬幡治君。   〔成瀬幡治君登壇拍手
  35. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま緊急上程をされました本法律案に対して反対の討論をいたします。  まず、反対する第一の理由は、本案件審議が、議会政治を、議会民主主義を否定するという点であります。  本院に本案件が付託されましたのは三月三十日であります。大蔵委員会は、他に税法関係の法律案を多く付託されていて、審議に時間がないという状態であります。本案件は、さきに文部省が反動立法として企図いたしましたが、良識ある世論の反撃にあってついにつぶれました国立学校管理法案、七大学長認証官法案などの悪法に次ぐ危険なものであります。すなわち、人間形成の教育の場に、企業会計たるべき性質の特別会計制度を持ってきたことは、いかに合理化が好きとはいえ、教育を破壊こそすれ、発展させるものでは断じてありません。(拍手)この点につきましては、後刻指摘することといたしまして、問題は、本案件は施行期日を四月一日として、予算案と同時成立を期して提出されているという点であります。もし三月三十一日に成立せなければ、予算が一般会計にないのでありますから、支出もできません。収入の取り扱いもできません。入院患者を食べさせることもできません。注射や投薬もできません。暖房もできません。こうなってしまうことは人道上の問題であるから、ぜひ三月三十一日までに成立をということは、一種の強迫行為であります。かかる取り扱いは、議会そのものを否定する態度というべきであります。民主的議会運営は、たとえ意見の対立があったとしても、まず審議を十二分に尽くすべきであります。それだけの瞬間と余裕を見るべきであります。本案件について言えば、 たとえば本案件の施行期日を公布の日からとするとか、一定の期間を置くべきであります。予算で一般会計から特別会計に移すとともに、そのための法律案を同時に提出していることは、審議権を束縛していることでございます。本案件が三月三十一日に成立をせなかったために、一体、四月一日以降、本案件が成立するまでの歳入歳出は違法ではないか。「いや違法、合法の問題ではなくて、妥当かいなかの問題である」というような苦しい政府答弁ともなっているのであります。何といたしましても議会政治否定の態度であり、官僚独善の態度と言うべきであります。わが党の承服できない第一点であります。  反対の第二の理由は、特別会計制度は乱用すべきでないという点であります。なるほど現行の財政法は、第十三条で、「一、企業会計として、国が特定の事業を行なう場合。二、行政的事業会計として、特定の資金を保有してその運用を行なう場合。三、その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合。」の三つの場合は、特例として特別会計を設けることを認めていますが、財政法上の大原則は、単一予算主義と総計予算主義を二本の柱としています。しこうして、近代国家は若干の特別会計制度を認めることといたしておりますが、それはあくまでも特例としてであり、異例としてであり、その乱用は厳に戒めているのであります。参議院の大蔵委員の大方の意見もまたここにあるのでございます。  ところで、特別会計は、本案件を加えますと、実に四十三の多きに達することになるのであります。これでよいのでしょうか。特別会計は必ず何カ年計画を持っております。すなわち道路、住宅、港湾、治山治水、防衛などに見るように。このことは予算の先食いを意味し、約束をしているのであります。特別会計制度の乱用は、やがて予算が一般会計から特別会計に主点が移り、財政の運用に弾力性を失い、硬直化を来たすのであります。現に多くの経済関係の方々が、硬直性の点を指摘し、憂慮されている点でもあります。慎むべきは特別会計の乱用であり、守るべきは財政法の大原則であり、財政民主主義であります。わが党は、特別会計制度の乱用に反対であります。  反対の第三の理由は、本案件の経緯と政府態度についてであります。  中央教官審議会は、三十八年一月二十八日の答申の、「大学教育の改修について」の中で、「国立大学の財政は、教育研究上の必要に即して、自主性、弾力性を備え、かつ、長期的観点からの計画的運用を可能ならしめるものでなければならない。国立大学の財政のこのようなあり方の実現を、特別会計制度の採用に求める意見がある。過去の大学特別会計制度は、さきに述べたような趣旨も含んで設けられたものであるが、その後の経済事情の変化や大学の発展に伴って、必ずしも所期の目的を十分達成し得なかったことを省み、かつ、現在の国立大学が、内容、規模において急速な発展拡充の過程にあることを考えると、国立大学の特別会計制度については、なお慎重に検討する必要がある。」と述べています。また、国立大学協議会は、三十九年の一月二十三日の要望書の前段で、「今回提案された国立大学特別会計制度に関しては、われわれに十分検討するいとまが与えられなかったことは遺憾であった。」と述べています。  本案件審議の中で明らかになったことでありますが、本件につきましては、昨年七月ごろ大蔵省が検討をし、文部省へは十一月に正式に通達がされています。文部、大蔵両省間の話し合いが成立したのは、本年二月二十七日の内藤文部次官と佐藤大蔵主計局長との覚え書きが成立したときであります。しかし、そのときはすでに予算案は政府原案として国会に提出済みであります。全くばかばかしい話であります。大蔵省から話のあるまで、教育担当の責任者であります文部省は、一体何をしていたのでしょう。中教審の答申を踏みにじり、国大協にもはからず、大蔵省に屈したのは、何ゆえでありましょう。特別会計にすれば、できないことができると判断したとでも言うのでしょうか。大蔵省と文部省の関係は、金が人間を支配するという最も悪い面を示した姿であります。(拍手)文部省は、現に総額一千六十四億三千五百万の五カ年計画をもって、本年度はその四年目に当たりますが、計画遂行の残高は、本年度を含めて六百七十三億三千八百万円で、三年経過しているというのに、当初計画に対して残高のほうがはるかに大きいのであります。しかも、四十一年度は大学急増の年であり、新しい計画を本年八月に立てるというのでありますが、一般会計でできなかったことは特別会計になってもできないのであります。本案審議の過程の中で、田中大蔵大臣は、特別会計にすれば何でもできるような答弁をされております。まことに勇ましいラッパでございますが、特別会計制度は打ち出の小づちではありません。要は、教育に取り組む姿勢と情熱の問題であります。文部省は、三十八年十二月二十日、国立学校特別会計制度について十一項目をあげて大蔵省と折衝をしたというのでありますが、このこと自信、文部省が特別会計制度が独立採算制になるものと認めた何よりの証拠ではありませんか。中教審の答申を軽んじ、国大協の意見もしかと確かめない非民主的な態度、独善的な態度について、わが党は反対であります。  反対の第四の理由は、大学は企業でない。特別会計制度は教育を破壊に導くという点であります。国立大半は、教育と研究の場であります。その財政は、元来収支の均衡を期待することのできないものであります。企業会計、独立採算の考えは、教育、研究に対してブレーキにこそなれ、何ら益するところはありません。いや、妨害になるのみであります。  本特別会計の内容は、借り入れ金及び土地売却などを含めまして、一般会計に約八〇%を依存しております。一般会計の比重が非常に大きいのであります。このことは、経済事情を理由にして、あるいは政策的に、一般会計よりの繰り入れの減少にもなるでしょう。そうなりますと、付属病院の収益拡大、労働強化になるでしょう。授業料や検定料の引き上げになることでしょう。過去の実績が明示しているではありませんか。特別会計制度は、やがて、研究、学問の場から、収益をかせぐ場にさせることでしょう。学問、研究の進歩発展は望まれません。大学側が切に要望していました大学間の格差の是正、設備の拡充も、もうからなければできないことになるでしょう。現に国立病院は特別会計で、一般会計からの組み入れは約八〇%でありますが、その六〇%は老朽化しているといわれています。火災が続出して、そのたびに死傷者を数多く出しています。人命軽視であります。授業料の値上げはしない言明されましたが、だれも信用はしておりません。また、運用につきましても自主性を強く大学側は要望していますが、法律案は、これに対して何も保証していません。特別会計制度は、かつての誤りを再び繰り返し、教育の場を破壊して企業の場たらしめ、続いて官僚支配を樹立する結果となることでしょう。池田内閣の人つくりも、とんだところで馬脚をあらわしたというべきでしょう。  わが党は、教育、学問、研究を守る立場から本法に対して反対をし、私の討論を終わります。(拍手
  36. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。本案の委員長報告は修正議決報告でございます。  本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  37. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は委員会の修正どおり議決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会