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岡田宗司君 私は
日本社会党を代表して、ただいま
外務大臣より
提案理由を
説明せられました「
経済協力開発機構条約の
締結について
承認を求めるの件」に関して、ここに
政府に対し若干の
質問をいたす次第であります。
わが国が
OECDに
加盟いたしますことは、
貿易の
自由化、
IMF八条国への
移行と相まって、いわゆる
開放経済体制への
移行を、一〇〇%とはいかないまでも、ほぼ完了することを意味するものであります。これは
日本経済にとりまして
一つのエポックを画するものと言わなければなりません。この
条約の
目的である、(一)
加盟諸国の
経済の
高度成長の
促進と、その
国民の
経済的及び
社会的福祉の
向上、これらの国の能力及び
潜在力の一そうの効果的な利用、(二)
経済的発展の途上にある国々に対する
援助のための
協力、(三)
世界貿易の
拡大、これらはまことにりっぱな事柄でございまして、
加盟国はもとより、何国といえ
どもこの点には同意しなければならないところでありますが、しかし、この
機構に
加盟するにあたりまして、
わが国が受諾しなければならない
経常的貿易外取引の
自由化に関する
規約、
資本の
移動の
自由化に関する
規約は、
日本経済の
構造と
発展に重大な
影響を及ぼし、ひいては
国民生活にも
影響するところ大であります。そういう
影響を
考えますとき、われわれは、
OECDへの
加盟には、多方面にわたって十分な
検討を加え、慎重な
態度をもって臨まなければならないと存ずるのであります。
総理は、
OECDへの
加盟に非常な執心を示されてまいりました。これによって、
日本は
世界の
大国の仲間入りができると誇らかに言明されてきたのであります。
総理の言われますように、
日本が
OECDに
加盟して、
大国として内外に認められたといたしましても、そのために、
日本の
経済、
産業の将来にわたりまして不利な
事態が起こるとするならば、それは虚名のために実を捨てることになるのでありまして、私
どもといたしましては、いま十分な用意がなくて
OECDに
加盟することは時期尚早ではないかと危惧の念を抱かざるを得ないのであります。この時期に急いで
加盟しなければならないという積極的な
理由はいかなるところにあるのか、また、不利な条項を受諾してまで
加盟することによって、
日本は実質的にいかなる
利益を受けるのか、具体的に
総理よりお示しを願いたいのであります。
次に、
わが国は、
加盟にあたりまして、
経常的貿易外取引の
自由化に関する
規約を受諾したのでありますが、たとえ若干の
留保がつけられてありましょうと、それが実施されます場合、
わが国の
国際収支中、
貿易外収支の将来はどうなるでありましょう。すなわち、三十四年度までは
貿易外収支は黒字だったのでありますが、三十五年には七千三百万ドル、三十六年には一億三千九百万ドル、三十七年度には二億二千五百万ドル、三十八年度には推定三億二千万ドルと、年々
赤字が激増の一途をたどっているのであります。この年々の
赤字の激増は、景気変動や他の偶発的要素によるものではなくて、
貿易外収支の
構造の変化に基づくものと言わなければなりません。
すでに、かような
事態に立ち至っておるときに、いま
貿易外取引の
自由化を一挙に押し進めることは、この
赤字を将来一そう激増させ、
日本の
国際収支の慢性的、悪化をもたらし、
日本経済の今後の
発展に重大な
影響を及ぼすものと言わなければなりません。
田中大蔵大臣は、この
貿易外収支の
赤字についてどうお
考えになっておるのか。これが激増を食いとめ、
国際収支の
改善をはかるために、いかなる恒久的
対策あるいは応急的の
対策を立てておられるのか、具体的にお示しを願いたいのであります。
また
政府は、
OECDの
加盟交渉におきまして、一年以上の長期用船契約について
留保期間五年を強く要請してきたのでありますが、ついにいれられず、結局、
日本側の譲歩によりまして、石油タンカー二年、鉄鉱石、石炭専用船各一年に限定されたのであります。
貿易外収支の
赤字の大きな部分を占める海運の
赤字、これから一そう
増加するこの
赤字を、いま
政府がとりつつある
政策で、はたして見込みどおりに減少させることができるかどうか、はなはだ疑わしいのであります。この点につきまして、
政府はいかなる
対策を持っておられるか、お伺いしたいのであります。
また、映画フィルムも
自由化されることになりますというと、
日本の映画
産業は外国の映画の激しい攻勢に押しまくられることは必至でありますが、特に、いままでも
日本の青少年に害毒を流していましたギャング映画、エロ映画等が容易に輸入されることになり、その害は一そう甚大になるのであります。これは、
総理の言う人つくりの方策をくつがえすものでありますが、
総理はこれに対しましていかなる
対策をもって臨まれるのか、お伺いしたいのであります。
次に、
資本の
移動の
自由化につきましてお伺いしたい。
IMF八条国への
移行とこの
規約の受諾によりまして、たとえ多少の
留保はつけられておりましても、外国
資本の
日本への流入は、短期
資本も長期
資本も、ともにきわめて自由になるのであります。外国
資本が単独または合弁の形で
日本に入りまして、
日本の同種の
企業をなぎ倒し、あるいはある種の
産業部門、市場を支配し、
日本の技術の開発を阻害し、また、ばく大な利潤を上げまして、それを本国にどんどん送金いたしますならば、
外資の導入は、
日本経済にとりましては
利益になることよりもむしろ不利な
事態をもたらすものといわなければなりません。かように外国
資本が
日本の
産業のうちに深く根をおろしまして支配を確立してしまうならば、その
産業は外国
資本へ従属することになり、外国
資本の
動向に一喜一憂せざるを得なくなるのであります。すでに、かかる例は
日本の石油
産業に見られるのであります。石油
産業におきましては、外国
資本が単独または合弁の形で原油の輸入、精製、販売のあらゆる部面をほとんど押えてしまっているのであります。かような例は、ひとり
日本だけではございません。イギリスやドイツ、
フランスのような国におきましても、アメリカの
資本が入り込んでまいりまして、
企業を乗っ取り、あるいは国内
企業をおびやかして問題を起こしているのであります。今後
資本の
移動の
自由化に伴いまして、外国
資本、特に強大なアメリカ
資本が、
わが国にどんどん流入してまいりまして、石油
産業のように食い込み、支配をしないとどうして保障されるでございましょう。しかも、
日本の
資本家たちは、従来から競って外国
資本と、技術の導入をはかってきたのでありまして、今後、かかる
傾向は一そう助長されるでございましょう。
総理が
OECD加盟を急がれましたのは、よもや外国
資本の
日本への流入を
促進することが
日本経済の
発展に
利益であるから、無制限にどしどし入れてよいという方針から出ているのではございますまい。
総理は、外国
資本の導入ということに対してどういう方針をとられるのか。また、それが
日本の
経済や
産業に与える損害に対しまして、どういう方針をもって臨まれるのか、お示し願いたいのであります。
また、福田通産大臣、
田中大蔵大臣には、それぞれの所管の範囲におきまして、それに対する具体的な
対策をお示し願いたいのであります。
ことに、この機に乗じまして外国
資本のスーパーマーケットヘの進出が問題であります。さきにアメリカのセーフウェイが住友商事と提携いたしまして
日本に進出しようとしたことは、
日本の小売商に非常なショックを与えたのであります。激しい
反対運動が起こり、その進出が押えられたのでありますが、
資本の
移動の
自由化が実施されましたならば、この企てが再び行なわれるでありましょう。そればかりではなく、せきを切って落としたようにアメリカの大スーパーマーケット
資本が
日本になぐり込みをかけてくるでありましょう。そういう場合に、
日本の小売商たちは非常な被害を受けるでありましょう。かかる
事態の起こることと、流通秩序の混乱を避けるために、通産大臣はいかなる
対策を持っておられるか、お伺いしたいのであります。
総理は
OECDへの
加盟によって
大国への仲間入りができたと、大いに悦に入っておられるようでございますが、そんな虚名はどうでもよろしいのであります。
OECD加盟二十カ国の
国民一人当たりの所得と
日本のそれとを比較してみますというと、一九六二年度におきまして、この二十カ国のうち、
日本より
国民一人当たりの所得の少ないのは、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、トルコの四カ国にすぎず、
日本は十七番目という、まことに低い地位に位するのであります。また、最低賃金制については、ILO二十六
号条約を批准しておる国が十四カ国、批准しておらないでも実施しております国が、五カ国、計十九カ国でありまして、トルコのみが例外であります。問題のILO八十七
号条約につきましては、十四カ国が批准をし、アメリカ、
カナダ、スイスは未批准でありましても、労働者の団結権を十分に認めておるのでありまして、団結権を認めておらず、ILO八十七
号条約を批准しておらないのは、ポルトガル、スペイン、トルコの三カ国のみであります。この例を見ましても、
日本は
大国に肩を並べられるどころか、まことにお恥ずかしい
状態にあるのであります。
昨年七月末、
OECDと密接な
関係を持つ国際自由労連のペグー書記長は、
日本の
OECD加盟にあたりまして、「国際自由労連は、
OECDが社会問題の
分野において民主的水準を維持する組織であることにかんがみ、基本的な労働諸法規を無視する国の
加盟は許されない」と声明しておるのであります。
日本がいまのようなILO諸
条約の未批准の
状態で
OECDに
加盟いたしますれば、労働組合諮問
委員会等におきまして問題にされ、肩身の狭い思いをすることは必至であります。この点は、よく
政府においてもお
考え願いたいのであります。
日本が
OECDに
加盟をいたしますれば、
日本の
経済、
産業体制も国際標準化され、ひいては
国民の
生活水準もまた国際標準化を強く要請されるでございましょう。
政府はこの際、すみやかにILO八十七
号条約、二十六
号条約その他の基本的な労働諸法規を直ちに批准して、その実施をはかり、また、
国民一人当たりの所得も、せめて十番目くらいのところまですみやかに引き上げる方策を講ずべきであると思うが、
総理の御所見を伺いたいのであります。(
拍手)
OECD加盟は、
日本の
経済、
産業、
生活水準に
関係するところが大きく、なお
政府にお尋ねしたい問題は非常にたくさんございますが、いずれ
委員会におきまして、
関係大臣から詳しくお伺いすることにいたしまして、私の
質問をここに終わる次第でございます。以上。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕