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説明員(宮脇幸彦君) ちょっと私から補充さしていただきたいと思います。
稲葉先生の仰せの
規定は、
民訴の三百二十六条でございますが、ここで申しております「署名又ハ捺印アルトキハ」という「捺印」は、「署名」と並べて書いてございますことからおわかりになりますとおりに、判が本人のものであるということだけでなく、本人が捺印
行為をしたということまで含まれているわけでございます。でございますので、単に判が同じだけではこの推定
規定は働きませんで、本人の捺印
行為もそこで要求される。ただ、日本で
一般に行なわれております記名押印の代行の場合には、代行権限があったかどうかということが、すなわち本人の手足として
手形行為をやっていいかどうかの問題でございますので、それに当たるわけでございます。ただ、実際の訴訟におきましては、判の同じであるということは比較対照などによってわかりますけれ
ども、捺印
行為が本人または本人の手足の者によって行なわれたという
立証は非常にむずかしいわけでございます。で、そういった事情は、結局いろいろな状況
証拠の積み重ねによって推定していかざるを得ない。これは
法律上の推定ではなく、いわゆる事実上の推定になるわけでございますが、東京の地方
裁判所における
手形部の
実情を見ましても、そういう事実上の推定、さらには訴訟における弁論の全
趣旨を加えまして事実上の推定を働かしておられるケースが多いのではなかろうか。で、詳しいことは
裁判所の方のほうがよく御存じのように思いますので、不足でございますれば、
最高裁の
民事局長からなお御
説明を仰ぎたいと思います。