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政府委員(江口俊男君) お答えいたします。
毎日新聞に載りました日吉のいわゆる暴行事件でございますが、私のほうで早速神奈川県警本部につきまして調査をいたしました概要を御
報告申し上げます。
起こりました事件は、まず、日時は、六月の五日の午後十一時三十分ころから六月六日の午前零時十五分くらいまでの間でございます。場所は、横浜市港北区日吉町四百六十八、東横線の日吉駅前派出所及びその付近でございます。
関係いたしました
警察官は、神奈川署の外勤乙部古橋巡査と同じく
鈴木巡査の二名でございます。
事件の内容は、前記日時ごろ、東横線日吉駅前において、横浜市南区蒔田町東谷八百八十一のアンタ・タクシー運転手
鈴木という運転手と、横浜市南区堀ノ内一の二十四セントラル・タクシー株式会社運転手の森田という運転手と、それから横浜市保土谷区西谷町九百二十八新生タクシー株式会社の山崎という運転手三人が、それぞれ営業用自動車を停車させて客待ちの
状態でありました。
アンタ・タクシーの運転手である
鈴木は、
自分の車を置いたまま
自分の車から離れてセントラル・タクシーの運転手森田運転手のそばに行って
世間話をしておった
状態のときに、学生風の、学生風と申しますのは、これは高等
学校を出てそれから大学準備中の、まあいわゆる浪人をしておる間の少年Aと、それからその友人である学生のBとの二人が、この空車である運転手のいないアンタ・タクシーの車に乗り込みまして、運転手を呼んだわけであります。
呼ばれた運転手が
自分の車に近づきますと、田園調布まで行けということをAという少年に言われましたが、
鈴木運転手は、構内タクシーで行ってくれというふうに答えております。そのときに、御参考まででございまするが、構内タクシーは日吉駅前には三社あるそうでありますが、三社のうち一台が待機しておったそうであります。そこで、その少年A、Bは、アンタ・タクシーから、一たん乗り込んでおりましたけれ
ども下車をしてきて、乗車拒否だというふうに騒ぎましたので、
鈴木運転手
——これもまた参考というよりも重要な問題でありますが、この二人は
相当酒を飲んで泥酔をしておる
状態でございましたが、そういうわけでもございましょう、一たんおりましてから乗車拒否だというふうに騒いだのでございまするが、そういうことで、
鈴木運転手は、駅前におりました構内タクシーの配車係の長瀬という人に、東京へ行く客があるからお願いしますというふうに依頼をしております。あとで調べますというと、
自分は東京
方面じゃなしに横浜
方面に行く客なら乗っけていこうというつもりでおったようでありまして、田園調布は日吉から東京
方面に当たるものですから、東京
方面に行く客があるから配車してほしいということをあっせんをいたしておりまするが、配車係は、はい、引き受けましょう、こういうふうに答えております。
しかし、一たん断わられた少年Aは、乗車拒否だというふうになお騒いで、
鈴木になげりかかる
——鈴木というのはアンタ・タクシーの運転手でございますが、その
鈴木運転手になぐりかかる気勢を示したので、これを見ておりましたセントラルの森田運転手が
鈴木を助けようとして近づきますと、さらに少年Aは乗車拒否だと騒ぎ立てました。その際、その少年に左ほほをなぐられております。セントラル・タクシーの運転手だと思いまするが、その仲裁というか、アンタ・タクシーの運転手をかばいに行って、先ほど雑談をしておったもう一人のほうの運転手森田でございますが、これは少年Aに右ほほをなぐられたようでございます。
なお、この少年は、セントラル・タクシーの森田運転手に、まあ少年の言い分だと、そのときに森田運転手に足でけ飛ばされたというふうに申し立てておりまして、双方いずれが先にやったかということは、現在もちろん捜査しておりますけれ
ども、両方とも相手のほうが先だ、なぐったほうが先だ、けったほうが先だということを言っておりますけれ
ども、いずれにしても、双方の暴行が行なわれたのであります。
さらに、そのA少年は、とめに入りました
鈴木の、これはさっきのアンタ・タクシーの運転手でございます、乗車拒否をしたと言われるほうの運転手でありますが、それのみぞおちのあたりをけ飛ばしまして、
鈴木は胸が苦しいというので、みぞおちをけられたものですから、すぐに大仁病院へ診察に行き、六月八日に
自分がそのA少年に暴行を受けたという旨を神奈川署へ届け出ております。これはあとのことでございますが、そういう
状態でございます。
さらに、A少年及びB少年の両名は、セントラル・タクシーの森田運転手の腕をつかみまして、乗車拒否だ、交番に行こうということで、交番に森田運転手を連れ込みました。連れ込まれました森田運転手は、しゃくにさわるということで、交番内の折りたたみのいすで少年Aになぐりかかっております。
そこで、派出所におりました
鈴木巡査は、森田運転手の持っておるいすを取り上げ、双方を取りしずめようと両者の中に割って入りました。少年A、BのうちのB少年と、それから森田運転手は、それでしずまりましたけれ
ども、少年の一人、先ほどから相互暴行をやっておりまするA少年は、さらに威勢がしずまらない。威勢がよく、なおもあばれ、森田運転手の胸ぐらをつかんでけんつくを食わせたようであります。この騒ぎを聞きまして、休憩室におりました古橋巡査が出てまいりまして、ともにこの
状態を制止しようとしたのであります。
そこに、今度は、港北区下田町八百七十の三和木工所の西方という者と、使用人の日吉本町の田谷という両名が派出所の中に入ってまいりまして、騒いでおるものですから、何をやっておるのだと、こう言ったところ、少年Aは、この二人に対しまして、そのかっこうが一人は和服を着ておったのですが、まあやくざ風だったと見えまして、やくざなんかの出る幕じゃない、引っ込めと、こういうふうに少年Aが申しております。そこで、入ってきた二人のうち一人、田谷というのが、おれたちはやくざじゃない、ふざけるな、こういうことを言って、そこでまた相互に、第三者であるあとからきた田谷と初めの少年Aとの間に相互にけり合いを始めましたので、
鈴木巡査は田谷を休憩室に連れ込み、一たん両名の間は分けたのであります。
さらに、少年Aは、
警察官の古橋、
鈴木に向かいまして、きさまらは雲助の味方かということを言いまして、古橋巡査の腹部をけ飛ばし、五、六回なぐったということであります。
こういう
状態では収拾がつきませんので、酒に酔ってなおあばれておるA少年を古橋巡査が制止するために、やむなく戒具として手錠を用いることとしましたが、ますますA少年はあばれますので、これを組み伏せまして、
鈴木巡査をして少年Aに前手錠をかけさせようとしましたけれ
ども、
相当あばれますので、なかなかかからない。ようやく両手錠をかけていすにすわらせていた
状態になりました。
そこで、A少年は、まあ手錠がかかれば酔っぱらっておってもあばれることができない
状態になりましたが、A少年は、乗車拒否の運転手を交番に
自分たちが突き出したのに、届け人の
自分のほうを縛るとは何ごとだと、こう言って口では騒ぎ続けたわけでございまするし、同時に、周囲の見物人も、ちょうどそういう
状態を見ておりました者の中からは、その少年Aに同情的な
状態でございました。それで、十四、五人の見物人が交番に入って参りまして、その少年Aと同じような
意味の、
警察が雲助の味方をするのかということを、前後の事情というか前からのいきさつを知らないで少年が手錠をかけられているというときに参りました者の十四、五人が、やはり同じことを言っておるのであります。
そういうことで、その後少年Aはおとなしくなり、もうあばれないということを言いまするので、手錠はそこではずしました。だから、手錠をかけておった時間は十分ないし十五分ぐらいであったということであります。
そうこうしているうちにパトカーが応援に参りましたので、そのパトカーに少年二人を乗せ、今度あばれた相手方である運転手は国分の車で、これは
警察官がそれに乗って署のほうに連行したわけでございます。神奈川
警察署に着いた時間は六日の午前零時十五分でございます。
本署で、警視の雪江というのと、野口警部補、保坂部長の三人でこの
関係者を調べましたところ、少年Aとセントラルタクシー森田との間に相互の暴行事実というものがございましたので、これは書類送検することにいたしました。なお、あとから無
関係の第三者で入ってきまして少年Aに対して暴行しました田谷という者につきましても、暴行罪で送致する予定でございます。
なお、少年A及びBは、オンザロック四はいを飲んでおって、飲酒検知管で調べましたところ、呼気一リットルについて酒気一・五ないし一・二ミリグラム、これは専門的な
数字でございますが、一・五ないし一・二ミグラムを含んでおりまして、いわゆる泥酔の
状態であったわけでございます。
これがただいままで私たちのところに
報告を受けております事案の概要でございまして、間違って手錠をかけたというのじゃなしに、その暴行
状態というか、泥酔してあばれている
状態を制止する方法として、これはひどい酔っぱらいのあばれた場合しかもちろんやりませんけれ
ども、手錠を用いるということも皆無ではございませんので、そういう処置に出たということでございます。