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1964-05-14 第46回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十四日(木曜日)    午後零時五分開会    ——————————    委員異動  五月十二日   辞任      補欠選任    田中 啓一君  井野 碩哉君  五月十三日   辞任      補欠選任    井野 碩哉君  田中 啓一君  五月十四日   辞任      補欠選任    宮澤 喜一君  二木 謙吾君    ——————————  出席者は左のとおり。    理 事     後藤 義隆君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委 員            植木 光教君            大谷 贇雄君            田中 啓一君            高橋  衛君            二木 謙吾君            亀田 得治君            山高しげり君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君   政府委員    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○鉄道公安職員職務に関する法律を  廃止する法律案中村順造君発議) ○商法の一部を改正する法律案内閣  提出) ○逃亡犯罰人引渡法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○刑法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○暴力行為等処罰に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)    ——————————   〔理事後藤義隆委員長席に着く〕
  2. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) これより法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、宮澤喜一君が辞任され、その補欠として二木謙吾君が選任されました。    ——————————
  3. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 本日は、鉄道公安職員職務に関する法律を廃止する法律案商法の一部を改正する法律案逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案刑法の一部を改正する法律案及び暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案、以上五案を便宜一括して議題といたします。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 逃亡犯罪人に関する法律につきまして若干質疑いたしますが、その中で政治犯という問題につきまして若干お尋ねしたいと思います。  稲葉委員からもすでに相当この点は質問があったようでありますが、あるいは若干重複するかもしれぬと思いますが、まず第一に確かめたいのは、その前提として、人権に関する世界宣言、本件に関係があるのはその第十四条になるわけですが、この世界人権宣言というものについては、日本政府としてはこれはどういう立場でおられるわけでしょうか。これは国連決議であるわけでして、国連日本政府が後に加盟されたという立場にあるわけですが、人権宣言そのものに対する、かたいことばで言えばそれを承認してそうして諸般の問題を考えておるのだというふうなことがはっきりしておるわけでしょうか、どういう関係になるのでしょうか。
  5. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 人権宣言国際条約と同じような法律的効果を持つかどうかという点で申し上げますと、これは国際条約とは違って、国連における一つ決議であります。したがって、法律的な拘束力を待っておるとは私は解し得ないと思うのでございますが、これの決議が採択されるに至った諸事情というものは、これは日本国国連に加盟をいたしました際に十分承知しておるわけで、この人権宣言につきましては最大の尊重を払っていくという態度をとっておるものだと私は理解いたします。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 最後のほうで私は理解しておるというふうに言われたわけですが、何かもう少しその点ははっきり人権宣言そのものを対象にして日本政府として検討してそしてこれはひとつできるだけその趣旨を尊重してやっていこうといったような何か取りきめなりきめたことでもあるのですか、ないのですか。ともかく国連に加盟したんだから、国連決議だからその趣旨をひとつ頭に入れてやっていこうといったような軽い気持ちでおられるのか、もう少しこれを検討してやはりこれは正しい線だからひとつこの線ができるだけ実現できるようにやっていくんだというふうな、どちらの線になるわけでしょうか。
  7. 竹内壽平

    説明委員竹内壽平君) 国全体としての立場はちょっと私がお答えを申し上げる筋合いじゃないと思いますが、事法務に関します限りにおきましては、この人権宣言の線に沿いまして、たとえば法の支配という問題にいたしましても、それからまた私の省に人権局が御承知のようにございますが、この人権局運用精神というようなもの、また国連を中心とした人権セミナーどもすでに過去においてわが国においても会議をしたことがございますが、これらはいずれも人権宣言精神に沿って活動しておるものでございまして、この人権宣言は私どもとしては一つの指標として尊重し、その線に沿って発展し、具体的に実情に即してこの精神を発揚していくように行政運用をしておる、かように私は自分ながら考えておるわけでございますが、なお外務省等を含めまして国全体の立場でどういうふうに扱っておるかという点につきましては、私からお答えをすることは適当ではないかと思います。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、まあ法務省関係する部分については、世界人権宣言については積極的に評価をして進んでおるというふうに理解していいでしょうか。これは法務大臣、基本問題ですから……。
  9. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 人権宣言が法として確立しているかどうか、まだ問題があると思いますが、趣旨はいま刑事局長お答え申し上げたとおりでございます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 法務省がそうであれば、外務省にいたしましても日本政府全体としてそういうふうな理解で臨まれておるというふうに解釈していいんだと思いますが、総理大臣なり外務大臣がおられませんから、あるいは多少無理な質問かもしれませんが、それだけで来てもらうというのもなんですから、法務大臣からもしお答え願えたらお答えしてほしいと思います、法務省以外の部分ですね。
  11. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 法務省以外といたしまして、ちょっといま申し上げますように、まだ国際法として確立したというところに参りませんので、大体同趣旨と存じますが、具体的な問題によりましてどう考えますか、ちょっとこれは問題によっては私どもからお答えができかねるかと思います。大体申し上げたとおりでありますけれども総理大臣外務大臣、ちっとも変わらないかということになりますと、これは問題によりまして直接お答えを申し上げたほうがいいと思います。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、まあ日本が加盟する前にできたこれは国連決議であるわけですが、その決議をこちらが加盟する以上は常識的に考えてそれを尊重していくということにこれはなろうと思うのですが、そのほかに法務省としては積極的にこれを評価してやっていくという趣旨お話があったわけです。そうすると、法務省に直接関する部分だけがそのように評価されるので、まあほかの省はどれとどれかという区別をいましたわけでもありませんが、それ以外の部分はあまり評価せぬのだと、一つ決議をそんなことはあり得ないと思いますね。だから、大体これは中身としては同じなんですから、法務省がそういう態度をとられる以上は、国全体としても政府全体としてもこの世界人権宣言については積極的な評価をしてそうして取り組んでいくというふうに、趣旨としてはやはり当然そういうことになるんではないでしょうか。
  13. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 気持ちとしてはお話のとおりでございますが、これはしかし条約として批准されておるわけでもございませんし、どんな場合でもそれじゃ一分一厘違わずにむしろ積極的にいくかどうかということになりますと、具体的問題によっては場合によってはどういう点があるかも存じませんが、一般的の趣旨としてはお話のとおりだと、こう思います。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 まあ大体その程度に承っておきまして、そこで、いわゆる政治犯概念の問題ですが、世界人権宣言の十四条で「何人も、迫害からの保護他国において求め且つ享有する権利を有する。」という規定が第一項にあるわけですが、これは第二項との関連で読めば、結局まあ政治犯の問題ですね、そういうふうに理解できると思うのです、主要なものは。したがって、こういうものを世界各国の多数の国が認めておるということである以上は、何かもう少しこの概念それ自身について国連なりの場において検討する必要があるのではないかというふうに思うわけですが、一体そういう討議の場というものがいままで国際的に持たれたことがあるのかどうか。まあ学者などでは学会等であるいは若干やったことがあるかもしれませんが、そうじゃなしに、機関としてですね、もしあればそういうものの会議中身をひとつ参考までに御紹介願いたいと思います。
  15. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この人権宣言第十四条第一項は、政治犯だけを規定したものとは言えないのでございまして、同じ精神から出ておるいわゆる避難民の地位に関する協定がございますが、そういったようなものをも含めまして規定されたものだと思います。そしてなお、この十四条で特異な点は、「何人も、迫害からの保護他国において求め且つ享有する権利を有する。」というふうに、権利としてこれを規定しているところにその十四条の意味があると思うのでございますが、私ども承知しておる限りでは、この庇護権というものは、何人もそういう権利を持っておるのじゃなくて、庇護を求められた国が庇護をする権利を持っておるというふうに理解されておるのでございまして、この点がまだ国際慣行にまでなっていないように承知をいたしておるのでございます。この人権宣言ができるだけ国際間の問題として通用するように国連におきましてもいろいろ努力をしておると思うのでございますが、資料によりますると、一九六二年第十七回国連総会の第三小委員会で、アッサイラムの権利に関する宣言案が採択をされておりまして、さらに一九六四年第十九回国連総会第三小委員会において、審議予定になっておったのでございますが、十四条との関係におきまして議論をされることになっておったようでございますが、その関係はつまびらかにいたしておりませんが、国連におきましても、人権宣言を単なる宣言にしておかないで、さらに一つの取りきめ、条約のような形にまで引き上げていきたいという努力が払われておることは事実でございます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 その十四条の第二項によりますと、非政治的犯罪者については第一項のようなワクからは除かれるということがあるわけですね。そこで、政治的犯罪かあるいは非政治的犯罪かということがやはり問題になるわけですね。で、そういう概念それ自身についての検討というようなものは、どの程度国連機関等で討議されておるわけですか。「非政治的犯罪」ということば自身が第二項にあるわけですから。
  17. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 国連事情につきましては、私もあまりつまびらかにいたさないのでございますが、国際法学会等におきまして、これはまあ国連のできる前からある学会でございますが、国連ができましてから後もこういう学会国連賛助団体として入っておると思うのでございますが、そういう場で議論をされておることは承知をいたしておりますが、国連機関そのもの政治犯罪とは何かというような問題を議論したということは、まだ私どもの手に触れておりまする資料では発見をいたしておらないのでございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 国際法学会等における議論傾向ですね、これは大まかに言ってどういう傾向でしょうか。私の聞きたいのは、なるべくやはり政治的犯罪というものを広く解釈していく、できるだけ広く、そうあるべきものじゃないかとまあ思っておるわけですがね。だから、そういう角度から見てどういうふうな傾向にあるのかということが知りたいわけです。
  19. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは広くというふうに言うのがいいか、ちょっとそこのところがわかりかねますが、純粋な政治犯罪といわれるものについては、これは国際慣行としまして不引き渡しということはもうこれははっきりしておるわけであります。それの外延的な行為で意図が政治目的に出たものであって犯罪そのものが普通の刑法犯であるという場合にまで政治犯罪と見て不引き渡し原則を強く主張することができるかどうかということにつきましては、これは争いがあるところで、確立した慣行というものはいまだないように思うのでございます。さらに、これも確立した慣行と言えるかどうかわかりませんが、ヨーロッパ条約などを見てみますと、いくら政治犯罪でありましても元首生命を奪うとか家族の生命を奪うとかいったような犯罪は、これは政治犯罪とはみなさないというふうな考え方が出ております。したがいまして、純粋なものからややその外延的なものに広がってまいりまして、一面また純粋な政治犯罪であっても殺人というふうな罪はこれは政治犯罪として扱わないというまた制約が内部的にある、こういったような傾向にあるように思うのでございます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、一面ではできるだけ政治目的と関連しておれば広げていく、ただし、政治目的と関連していても具体的な行動が特に人道に反するとかいったような場合には別な視野からそれをまた制約する、そういうことが大体そういう国際法学会等傾向と見ていいわけでしょうか。
  21. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 大体そういうふうな現状だというふうに見ておるわけでございます。これは広がっていくという傾向だというふうに見るのがいいかどうかは、先ほど申したように、多少疑問がありますが、現状はそういうところにあるのじゃないかというふうに思っております。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 それで、日本の場合にこの法律をつくって今後適用する際に、政治犯定義というものが法律上書かれておらぬわけですね。ところが、一方では相互主義という原則法律にちゃんと出ておるわけですね。そうなりますと、実際の法の運用というものはどうなるのかという点をお聞きしたいわけです。つまり、相手方が政治犯罪というものを広く解釈するか狭く解釈するかということによって日本政治犯罪適用も違ってくるんだ——本来予想される政治犯罪という概念は、刑事局長がおっしゃるようにあるのかもしれぬが、しかし、実際の適用ということになると、相互主義という立場から、ある国に対しては広く解釈したり、ある国に対しては狭く解釈したり、こういうことになるということになるのでしょうか。
  23. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 相互主義政治犯罪概念の広くなったり狭くなったりするおそれという点でございますが、政治犯罪というのを定義を掲げたものはどうもないわけなんで、どういうものを言うかということはやはりこれは積み上げによってだんだん発展をしてきておるのだと思うのです。そこで、各国とも政治犯罪についてあまり定義を掲げておらないわけでございますが、しかし、政治犯罪明き渡しという原則各国とも了承しておる事項でございまして、かりに政治犯罪人を引き渡せというような要求がありましても、これは引き渡されない。相互に、これは相互三役をまつまでもなく、もうこれはだめなものでございます。ただ、解釈として、請求国はそういうものは政治犯罪じゃないという解釈に立って日本国請求してきた、しかし日本国の場合ではこれは政治犯罪だという解釈があるかもしれない、こういう場合にその相互主義がどういうふうに響いてくるかということになると思いますが、これは被請求国判断をすべき事項でございまして、これはもう各国とも国際慣行としてもそれは確立したことでございます。したがって、相互主義であるから、こちらは政治犯罪だと思うのだけれども向こうが思わぬと言うから、それに応じて思わぬ形に取り扱いをするといったようなそういう意味影響は、私は受けることはないと思います。  ただ、その相互主義から来る影響というのは、これはやはり一種——われわれがよく法律解釈の基本になる態度として社会通念ということばを使いますが、まあこれは一種国際通念と申しますか、国際社会に通用する常識、こういうものがやはり私は解釈の基準になると思うのでございまして、そういう意味相互主義というようなことが影響があるということは、それはもちろんでございます。しかしながら、政治犯であるかどうかの認定は、被請求国の独自の判断でやれるわけであります。実例的に申しますならば、かりに向こう政治犯でないという見解であり、わがほうが政治犯であるという見解でありますれば、その答えは引き渡さないということにはっきりいたすのでございます。今度は、日本側政治犯ではないから引き渡せといって逆に持っていった場合に、日本側解釈が、今度は相互主義でおまえのほうはこの前そういうのは政治犯と言ったではないかという今度は向こうが断わる理由に使われるかもしれない。したがいまして、相互にそういうものはいま申した国際社会通念に照らして、良識のある解釈に到達して処置をしていかなきゃならぬと思うのでございまして、抽象的にきめかねる問題だと思うのでございます。したがって、各国の国内におきましても、政治犯罪とはかくかくのものを言うというような定義を掲げた立法例はほとんどない。結局それはケース・バイ・ケース慣行的に積み上げていく、こういう態度をとっていると思うのでございます。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 だけれども、たとえば、配付いただいた資料を若干見たわけですが、一番初めのフランスですか、フランスの「外国人引渡に関する一九二七年三月一〇日法」ですね。この資料でいうと二十ページですね。ここに若干定義らしいものが入っているわけですね。「第五条引渡は次の場合には許諾されない。」として、その第二号ですね、「その犯罪政治的性格を有するとき、または、政治的目的をもって引渡請求していることが諸事情によって認められるとき。」この「または、」以下などはずいぶん広いですね。これはまあことばどおりに読めば、犯罪行為それ自体は、刑事局長が言われる本来の政治犯でもない。または、その目的に関連した政治犯という広い意味政治犯でもない。普通の犯罪だ。しかるに、その普通の犯罪を取り上げて、そして政治的に相手を追及しようというふうな立場当該国が犯人の引き渡しを求めるというふうな場合も政治犯として扱うというふうにこれが読めるわけですね。そうすると、これは非常に広いですね、そうなると。だから、いま竹内さんはあまりこういう政治犯定義はないというふうにおっしゃったわけですが、これなど一つのやはり定義でしょう。しかも、日本よりも非常に広い。これはどういうふうな理解でしょう。
  25. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) このフランス法の第五条に書いていることは、やはり定義じゃないので、定義が書けないものですからこういうふうにこまかく書いておるということがわかると思うのでございます。ことに、こまお読みになりました二号のような点でございますが、これは日本現行法にもあるわけでして、第二条の二号でございますね。一号は、「政治犯罪であるとき。」と書いてありますが、二号は、「引渡請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき。」は引き渡さない、こういうので、いまの五条の二号に書いてあるようなことは、わが国でもそういうふうに規定してあるわけなんで、これは定義そのものではございませんと思います。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 では、その次のドイツ犯罪人引渡法ですね、これは三条に相当詳しく書いておりますが、これは定義というふうにとっていいのじゃないですか。
  27. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まあこれは仰せのように一応政治的行為意味をここに書き上げておるわけでございますが、先ほど来申しますように、これ自体、掲げてはありますけれども中身をよく読んでみますと、結局、先ほど来申し上げておる純粋の政治犯、それに類するもの等が一応の形で整ってこう書いてあるというだけでありまして、中身につきましてはやはりこの規定があっても社会通念によって解釈する余地が多分に残っておるということが考えられるわけであります。まあドイツ式書き方、こういうふうに私どもは見ておるわけでございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 まあドイツ式かどうかわかりませんが、この程度に書いてあると、しかしだいぶ概念がはっきりしてきますわね、一項、二項あわせて読みますとね。で、ともかく政治犯というようなものはあまり内容的には突き詰めないでやっておるというふうに刑事局長が何か国際的にそういうふうになっているようなことをおっしゃるのだが、私はゆうべ少し資料を見て、そうでもないかなと思いまして聞いたわけですがね。  それからギリシャですか、その次にあるのは。これにもやはり何かちょっと書いてありますね。資料五十三ページですね。なるほどフランスのような場合の書き方ですと、これはまあ書いてあってもなくても同じような感じもするのですが、相当やはり具体的に書いておるものもあるわけです。だから、できれば日本の場合でもある程度明確にしておくということのほうがやはり立法としては進歩ではないかと思うのです。それは相手国日本法制ではどうなっているだろうと必ず、そういう問題が起きた場合には、お調べになることですから、それを雲をつかむようなもので日本政府がどう判断するかわからぬといったような漠とした状態に置いておくということは、国際的にもよくないんじゃないかと思うわけですが、このいま提出されておるような漠然とした書き方のほうがいいという考えでしょうか。
  29. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの問題は、非常に大事な問題と思うのでございますが、世界的の法制進歩段階がどうであるかという考え方から考えてみる必要があるんじゃないかと思います。いまお示しのように、相当定義めいたものが書いてある国もありますが、そうでない国もあるという際に、日本側法律ではっきり書きますと、かえって支障を生ずる相手国があります。すべての国が同じことをはっきり明瞭に書いてある場合には、それでいいと思います。ですから、やはりもう少し各国解釈というか、考え方がコンクリートになりましたような段階ではお話しのようなことが進んだ行き方じゃないか。現在の世界の全体の段階であると、大体政治犯という通念解釈していくということでいったほうがよろしいので、あんまり、まだはっきりしないとは言えませんが、はっきりこちらがし過ぎると、今度は相互主義といっても多少向こうも硬直して、考え方の違い、ちぐはぐの出る面もあるかもしらぬと思うのでありまして、私は全くしろうとですが、初めこの問題の説明を聞きまして、現段階ではまだこのほうがかえっていいんじゃないか。だんだん各国法制進歩して明らかになった段階では、お話しのように進むんじゃないか。日本だけかというと語弊がございますが、日本だけがはっきりしていくのはどうか。先ほどお話がありましたように、だんだん範囲が拡張されるとかあるいはされないとか、一体政治犯罪引き渡し原則というものはどういう法律で出てくるかという問題があろうと思います。これも、ある説によりますと、つまり世界じゅうのどんな人間、国の所属いかんにかかわらず、こういうものが犯罪であるという観念のものにはこれはみな引き渡す。ただ、ある国の主権とか権力に反抗するという場合には、その国としては犯罪でしょうけれども世界そういうものが何か共通の犯罪概念がなければならない。そこに疑問、区別があるんじゃないか。こういうふうな考え方から参りますと、いまのたとえば元首に対する殺人というのは、これをやった人はその国の権力に反抗して著しい行為としてやった政治犯罪だけれども、人を殺すということは、どんな世界じゅうのどの人間から見てもこれは犯罪とすべきだ。そういう特殊の国民にとっては犯罪であるが、一般人類にとって犯罪であるかないかわからないという面と同時に、一般人にとつても犯罪だという面が著しい殺人のような場合には、これは不引き渡し原則適用しない。政治犯罪と見ないというようになるのではないかと思うのでございまして、そういう点から参りますと、まあ私どもがそう言っちゃなまいきなんですけれども、少しく法令の発達の歴史的段階においてまだ明確な成文的な規定を置くのは早過ぎるのじゃないか、いまはこの程度でいくのがまず適当じゃないかというふうな考え方をこの原案をつくるときにも考えたような次第でございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 まあその大臣のお気持は、それなりによくわかるわけですが、そういたしますと、先ほど竹内さんのお答えになったことにまた戻るわけですが、実際上、国によって法の適用がやはり違ってくるという感じを持つわけなんです。で、日本のほうで政治犯罪をどう具体的に問題が起きた場合に解釈するか、それを広く解釈しあるいは狭く解釈すれば、その解釈がまた相手国と反対の立場になった場合には利用されることになるわけだから、そういう意味相互主義が働くというふうに言われたわけですが、それは日本とAという国の間ではそういう相互主義が働くでしょう。だけど、日本とBですね、Bの国との関係になりますと、AとBというものが各国考え方がみんな必ずしも同一じゃないですわね。ないですから、そういう同一でないものがたくさんあるときに、やはり日本解釈としてはいろいろ違ったものにやはり合わすようにするということがどうしても気持ちとして働いてくるのじゃないですか。で、解釈としては独自の解釈でやっておるのだといいましても、非常にあいまいですわね。政治犯と非政治犯の限界なんというのはあいまいなんだから、結果としては、Aとの関係、Bとの関係というものは、純粋に考えると、やはり違っておるのだ。私はまあそういうふうにうまく運用してともかくいろいろな国が納得するようにやっていくということなら、はなはだ妙味もあっていいと思うのです、場合によっちゃ。だから、そういうことに若干はなってもいいのかどうかというところをお聞きするわけですね。私は、まあ規定するとしても、なるべくそうかた苦しい規定ではやはり困るだろう、ともかくいろいろな政治犯についての論議があるわけですから、それらの論議をひとつ土台にしてある程度の具体的な規定を置いて、しかしそれだけで縛ってしまうようなことをしないで、多少ゆとりのある規定にして法律をつくっておく、そういう意味なんです。
  31. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの私がお答え申し上げました点につきまして、理論的に見まして政治犯罪の範囲で意見が違う議論が起こらないとは言えないと思います。しかし、それは起こるということは、しばしばそういうことが発生して非常に困るということまで発展して考えていいかどうかということは、これはまた私は少し違うのじゃないかと思います。具体的事実につきまして必要があれば刑事局長からお答えを申し上げますが、私は、理論的には、全然定義がないのだから、社会通念解釈する。社会通念がどうであるかということに論争が起こらないとは言えませんが、そういうことで非常に論争がしばしば起こって困るという実際のいま段階ではないのじゃないかと事実から思うのでございます。それで、お話しのような点は、決してわれわれ考え方として否定するわけではございませんが、いまの、国によって定義らしいものを書いたものがあるとしましても、すべての場合に書いてあるともいかないし、定義らしいものが必ずしも同じ文句できちんと言っておるわけでもないわけですから、いままでは政治犯罪ということばでいきましてそんなに始終論争を起こすと困るということを想像してもっとその定義を固めなければならないという段階にまでまだいっていないのじゃないか。その段階になれば、国際連合などがございますから、各国でもう少しはっきりしようということがだんだんと引き継がれていくんじゃないか。そういう意味ではむろんわが国でも協力していく立場になりましょうが、そういう意味で論争は起こらないということは決して申し上げられませんが、しかし、しばしば起こって困るという実際の段階かというと、必ずしもそうではない、この程度でまずまず運用はつくのじゃないかというふうな考え方である次第でございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 やはり世界国家なんというようなことがだんだん言われる時代ですから、私はこれからやはりそういうケースというものは多くなるのじゃないかという感じもするわけなんです。でお聞きしておるわけですが、やはりこの問題は、おそらく日本なんかよりも、いろいろな新興国といいますか、たくさんの独立国ができてきておるわけですが、そういうところには政治的ないろいろな変動等も激しいわけですから、ずいぶん問題があるのじゃないかと思うのですね。だから、ぜひこの世界人権宣言決議というものを前進させる意味で、日本どもひとつ積極的にこの問題についての議論を起こしていく、討議を進めるというふうな姿勢を国連等においてでもやはりとってほしい。そういう討議をしても、まあ現在の段階では各国のいろいろな事情がありますから、一年や二年で結論が出るということは考えられませんが、しかし、その討議自体というものが各種のそういう政治犯の問題が起きたときに非常に大きな参考になると思うのですね。そういうものが参考になって各国とも大体そういう線で実際上扱っていくということになれば、次はそれじゃ条約とかといったような段階に進むわけでしてね。そういう点をひとつこれは希望しておきます。  それからもう一つは、これは主として入管との関係になるかもしれませんが、出入国管理令の例の第五条ですね。第五条で本邦に上陸できない場合をここにずっと並べておるわけですが、その第四号で、「政治犯罪により刑に処せられたことのある者」というのが一つあって、これは例外措置になっておるわけですね。それで、この現在の取り扱いですと、たとえそういう例外の政治犯罪の者であっても、出入国管理令違反という点ではやはり処罰するわけですね。在留だけは認めておく、こういう扱いでしょう。そうですね。
  33. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そうだと思います。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、私はこれは前からどうもおかしいのじゃないかと考えているのですが、なるほど形式的にはそれは管理令違反ということは私は言えると思うのです。しかし、結局、在留を許す、外へは出せない、あるいはまた関係国からの引き渡しの要求があってもこれは政治犯として渡すことができないというふうな立場にある人を、形だけ、入口のところだけを処罰するという扱いですね。これははなはだ実はふに落ちないのですがね。そこで、世界人権立言のそれこそ十四条の趣旨からいいましても、入口のところだけは処罰するというのでは、人権宣言精神というものに積極的に取り組んでおるということにはならぬのじゃないかと思うんですね。何か非常にみみっちい感じを受けておるわけですが、これは大臣どうなんですかね。
  35. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それはなかなか重大な問題と思います。たとえば各国で移民条約というのがあって、どんどん外国人が入ってくると、無条件に入国することは、その国民の利益、それはもう生活とかいろいろな意味から困るというようなことは認められておるわけでございまして、外国人の入国については、刑事局長も申し上げましたように、その国は、難民なら難民というものが来たときに保護する権利を持っているが、絶対に保護しなければならぬと義務づけるというところまではまだなかなか国際慣例もありませんし、また、各国から見まして、おそらく五人や十人来たら保護できないということはございませんでしょうが、大量の者が入ってきた場合、保護しなければならぬと義務づけることは、まだ現在の世界各国の状況では相当困難ではないか。これはどうなるか知りませんが、まずわれわれの頭で想像すれば、世界連邦とか、あるいはいまの国際連合でも非常に発達しましてそういう際の国際的処置がとれると、いわば何方という難民を引き受けた場合には、その国が経済的に相当負担になる場合には緩和する方法もできる。やはりそういうふうに全体の機構が進んでまいりませんと、幾ら来ても引き受けるということは、強制するわけにもいまの国家じゃいかないのじゃないか。まあ問題は違うかもしれませんが、先ほどお話、いまの入国及び入国後の状況を見ますと、そういう点もやはり考慮しなければならぬので、現在の規定は、そういうときに義務づけてみんな入れてしまうというまでに行くのもまだ行き過ぎじゃないか。入れることはできるのだと思いますが、まずその辺がいまとしてはやむを得ぬ点じゃないかというふうな考え方をいたしております。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 まあしかし、入ってしまえばほうり出すわけにいかぬわけなんですね、政治犯ということが明確であれば。ほうり出すことができぬということは、入ってもいいということじゃないですか。それは表向きははっきりそうは言えぬかもしれぬけれども
  37. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) そういうところは、あまり論理が徹底し過ぎると、やはりここまでいったらここまでいかなければならぬといって国が事実上そこまで義務をしょわなければならぬと考えるのはまだ少しむずかしいのじゃございませんか。ここまでいったから、方向は必ずここまでいくと。理屈はそうかもしれませんが、そこはそうまでいくところにやはりまだ困難性があるのじゃないか。だから、引き受けたものは引き受けるが、引き受けるかどうかは判断の余地があるという点ではないのじゃございませんでしょうかね。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 だから、たとえば裁判にかけた場合でも、事実上判決自体は執行猶予にして、それも期間を短くしてともかく扱っていくといったようなことも実際的には私は一つの解決方法じゃないかと思いますね。しかし、実際現実にやられているのは、ほとんどそういうことはないので、ちゃんと罰金なら罰金を言い渡してそれを取っているわけですね。だから、一般の人から見たら、多少そこに矛盾を感ずるわけですね。そんなに刑罰の対象にまでなることなら、あとの処置との間の矛盾というものをやはり感ずるわけですよ。そこを感じないようにしてほしいわけなんですね。だから、感じないようにするのは、そう私は大臣が言うほどわんさわんさ政治犯がそんなに押しかけてくることはないと思うんです。そういう名目で来たところで、それは日本政府のほうで調べればいいことでね、そういう条件があるかないかを。だから、そうたくさん押しかけてくることは私はないと思う。しかし、実際にほんとうに政治的な迫害で来るという場合には、これはしかたがない、それは一時的にそういうことがあった場合には。だから、いずれにしても、もうそんなものは刑事事件として——まあ罰則から抜いてしまうということもなにでしたら、ともかく起訴便宜主義なんだから、そういう事情等を考えて、起訴しないとか、そういうことはしていいように思うんですがね。政治犯で入ってきたのは管理令の罰則を適用せぬと言うと、ちょっとこれは大臣が心配されるような秩序という点に触れるかもしれませんが、私がいま言うような実際上起訴をしないとかいったようなことはやっていいように思うんですが、どうでしょう。
  39. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私は、ある理由があるからといってどこまでも徹底するということは、世の中の実際生活じゃどうかと思うのでございます。それは犯罪に該当するから、捜査して、証拠はどうかといえば必ず起訴する、そこに起訴猶予とかいろいろのこともございましょうし、それから刑事の執行をもちろん認める場合も認めない場合もございましょうし、いろいろそういうふうにエラスティックにやる。悪いことはしたのだ、した者は必ず起訴しましょう、しないのはおかしいとばかりもいかない点もあるようでございまして、内に入った以上は保護するのだから、来た以上は必ず入れろ、そこはやはり私はものには段階があるので、そこまで保護することはどうか。それで、それは実際の運用はいろいろ適当にやる必要はございましょうが、法制上必ず入国せしめなければならぬとみずから縛るほどのことはないじゃないか。やはりそれでは万一困る場合もあるのじゃないか。たとえばいまの政治犯人にいたしましても、相手国引き渡し請求には応じなくても、別の理由で退去を命ずる場合もこれはあり得るわけで、法制が開けているわけですから、だから、お話の点は、こうだからこうじゃないかというような点は、決してわれわれはそうじゃないとは申しませんが、必ずそれだから認めなければならぬ、ここまでいくのも実際問題としてどうか。いまの法制でよろしいのじゃないかと現状は思う次第でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 その点、諸外国の立法はどうなっていますかね。そういう政治犯人が入国した場合に、一応その部分だけは形式的に処罰は処罰としてやるのかやらぬのか。
  41. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは諸外国のすべての入管令につきまして調べたわけではございませんが、一九五一年に難民の地位に関する条約というのがございます。その三十一条には、やはりただいま亀田委員の仰せになったような点を考慮した規定がございます。不正規な入国または在留ということの理由でそれだけの理由で刑罰を科してはならないという規定が置いてございますが、これには条件があるのでございまして、やはりその在留そのものが遅滞なく当局に出頭して不正規な入国または在留の十分な理由を明らかにした場合には刑罰を科してはならない、こういうことになっておりまして、その前提として、あいまいもこたる、ただ自分としては政治亡命をしているのだ、避難民であるというだけを言ってもいけないので、ちゃんと成規の手続を踏んで、かくかくの理由で不正規な入国になっているのですということを明らかにし、当局がそれを認められる場合には、そういう者に対して庇護する義務はないにしても、庇護する権利があることは当然でございますし、この難民の地位に関する条約に入っている国といたしましては、三十一条でそういう者に対しては刑罰を科さない、こういうたてまえをとっております。でありますから、お考え方は私もよくわかるわけでございまして、そうあらねばならぬと思うのでございますが、問題はその前提になっている政治避難民というようなものを扱う場合の避難民であるかどうかということを認定する手続、そうして、それに隠れておってつかまったら、自分は避難民だと、こう言うのでは、だめなんで、進んで出て行っていまのような事情を明らかにした場合には、そのゆえに刑罰を科さないというのが、こういうのが三十一条の規定でございます。  そういう規定もございますので、こういうものの将来への取り扱いというものはこういう方向に向かっていくのじゃないか。これこそ先ほど御指摘の人権宣言の十四条の趣旨を逐次明らかにしていった条約だと思うのでございますが、こういう方向にあることは疑いないと思うのでございます。しかし、わが国はこの難民の地位に関する条約には加盟いたしてはおりませんし、またそういうもの々認定する手続も日本にはございませんので、その辺は先ほど仰せのような運用よろしきを得て、また真実そういうものでありますならば、起訴にならぬとかなんとかいうような取り扱いも運用としてはできるわけでございまして、そういう点の過酷にわたるようなことのないような取り扱いということは、私どもも今後また考えていかなければならぬ点だと思っております。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、私が申し上げたような点は、やはり世界の趨勢にどうも合っているようなんでして、大臣、やはりそういう方向で検討してほしいと思うんですよ、この問題は。私が逆の趨勢を申し上げるわけではないんですからね。  それで、いま御指摘になった難民の地位に関する条約ですね。これは日本政府としてはどうして加盟しないわけでしょうか。加盟したほうがむしろさっぱりしていいじゃないですかね。
  43. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) なぜ加盟しないかの理由は必ずしも明らかではございませんが、難民という問題が日本国にはあまりいままで例がないわけなんでございまして、主として戦後の東西の冷戦下において東側の者が西側へ避難して来る、こういうようなことが前提になって、これらの者をどういうふうにして庇護していくかといったような観点から、そういう者を受け入れる国、そういう者が多い国等が発起して、こういう条約になったと、かように思っている次第でございますが、日本は幸か不幸かそういう事例にあまり遭遇しておりませんのでこの条約には入っていないのだと、かようなふうに思っております。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、この条約には入っておらないけれども日本の場合でも、広い意味では政治犯一種の難民かもしれないわけです。まあ厳格な意味では多少区別して考えられるわけですが、政治犯等の扱いについては難民の地位に関する条約といったようなものがやはり考慮されるのが当然だと思うんです。それはそういうふうに理解しておいてよろしいですね。
  45. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 難民を受け入れることを義務づけられるということはまだ考慮の余地はあると思うのです。また、逆に言えば、権利国際法的にあるわけです。国際法的に義務づけられて必ず受け入れなければならぬ、ここにはまだいろいろ考慮しなければならぬ要点がたくさんにあるのじゃないか。人道的に考えていくということにはむろん方針上間違いございませんが、法的に義務づけられるということまできめるのにはまだ研究の余地があるのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 難民の地位に関する条約では、受け入れの義務までは条約においても明記しておるわけじゃないのでしょう。その点はどうなんですか。
  47. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 中身を私は詳しくは検討しておりませんで、いまの部分をちょっと抄録して持っておる程度でございますが、これはまあ無制限に受け入れる義務は規定してはいないようでございますけれども、限られた範囲である程度義務づけておる。まあそういう担保がなければやはりこの条約の効果がないわけですから、そうなっておるのだと思いますが、そういうふうに聞いております。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 いわゆる難民という場合には、相当多数の者が予想されるわけですがね、常識的に。で、日本の場合主として問題になるのは、いわゆる政治犯、もっと少数の狭いものですね。だから、そういうことですから、義務という考え方を持つ必要はないかもしれませんが、実際の扱いとしては難民条約というような線を踏まえて扱って少しも差しつかえないのじゃないか、義務の観念を排除しながら。それはできるんですね。
  49. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) しかし、実際問題としましてよほど研究は私は要する点があると思うのです。いろいろな密入国の問題で難民であるかどうかという問題も起こり得る場合もあるのじゃないかと思います。ですから、大体の方向は難民などは受け入れていくというふうな国際的な大勢になることが非常にけっこうだと思うのです。それはまた反面に、難民などを出すような国がそういう国際状況では大体なくならなければならぬことになる。しかし、それは双方思いどおりに進歩するわけにもまいりませんから、人道的にいくということはあれですけれども、たとえばいずれの外国人もよその国に入国は自由だとはなかなか規定できない。受け入れをなるべく人道的に考えるということはいいのですが、法的義務を承認するかどうかという点になりますと、これはよほど問題じゃないか。それから、まあ正直に申しまして、難民には、私も詳しく存じませんが、結局、刑事局長がいま申しますように、これが少数の者ならば国の経済的に考えましても受け入れる能力がないとは言えませんでしょう。それではどこまでが限界だということで限界の制限をつけるような性質のものであるいはないかもしれませんし、あるいはつけられては困るという点があるかもしれません。香港などが、一種の難民ですか、中共から何十万、あるいは百万以上になっているかもしれませんが、来ているような状況で、ああいうことを義務づけてみんなやらなければならぬかどうかということになれば、よほど問題があるのじゃないかと思います。日本では、そう現実の問題としてこれを考えなければならぬという状況はいまあまり起こっていないようでございますが、なおこれは将来の一つの研究課題にいたすべきものではないかと、こういう感じが御質問によっても起こっておる次第でございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 地球上の一定の地域を支配しておる責任者が、その地域の中に人間という生きた人が入った場合には、それはやはり大事にしていかなくちゃならぬというふうなことは、やはり非常に必要な考え方じゃないかと思うんですね。現に入ってしまっておるのだから。しかもそれらが生きた人です。そして、ともかくいろいろな事情で来る以上は、向こうへは行きたくない。行けば生活上困る。政治犯なんかの場合には生命にも影響するかもしれないといったようなことですから、これはまあ受け入れるほうも、ときに人数が多かったりいろいろすれば消極的な態度をとりたいような場合もあろうと思いますけれども、人類全体から見たら、やはりそこの地域を支配しておる機関がそのせわをする以外にないわけですからね。だから、そういう点はやはり大きく広く考えていくというふうな基本的な姿勢が要るように思いますが、どうでしょうか。お前の考えはちょっと広過ぎるということでしょうか。
  51. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 亀田委員お話しのようなことが正式に受け入れられるような世の中になることを私は非常に希望しますが、まだ現実の世界はそこまで行きにくいのではないでしょうか。個人でも、財産があり金がある者は、困った者が助けを求めにくれば助けるのがいいと思う。しかし、それを義務づけるまでにはなかなかいかないのがいまの世の中の状況じゃないか。国家といっても、大きい国家もございますし、そうでないのもありますし、それから治安上の問題もあり、大体そういうふうな気持ちでいくべきだということはむろんわれわれ同感でありまして、そういう気持ちを出してもそこに困ることが起こらないような社会、これがわれわれのいわば進むべき目標だと思うのです。現実の法制としてこれを、どうやるかということは、まだ少し理想味が勝ち過ぎて、そういかないから、どうも非常におくれているのだと断定するのには、まだそこまで私は踏み切れぬところがあるのではないかという感じがいたしております。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶ時間もたちましたから、結論に入りたいと思いますが、せんだって、引き渡しを求めたり引き渡しを求められたりした具体的な資料提出をお願いしたわけですが、その資料が来ておるわけですが、これによりますと、たとえば戦後韓国の李承晩政権時代に弾圧されて刑事裁判等にかけられ、そうして生命があぶないということで日本に来ておる韓国の政治家がおりますね、こういう人たちの名前がここに載っておらぬわけですが、これはそうすると韓国政府からはそういう者の引き渡しというものは求められておらないというふうに理解していいわけでしょうか。
  53. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この表に載っておりません者は、そういう引き渡しを求められていない、かように御理解願いたいんですが、この表の中でも三十五年度の崔チョン宇、それから三十八年の張キョン根などは、いわゆる犯罪引き渡しと言えるかどうかわからないのでございますが、もちろんその条件は満たしていないと思うのでございますが、いずれもいまお話しのような政治性を帯びた案件の人物だと思っております。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば韓国の、あなたのほうにいろいろ陳情もしておるわけですが、李栄根氏などはここに書いてないわけですが、公式にも非公式にもそういう引き渡しの要求というふうなものは来ておらぬわけでしょうか。
  55. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私どものほうはそういう引き渡し請求ということは事実上も受けておりません。私どものほうの事務は経由しておりません。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことなら非常にけっこうなわけですが、それならば、そういう人たちに対してはもう少し気軽に日本に在留できるというふうな法的な手続をとってあげるべきじゃないかというふうに思うんですが、韓国政府がやいやい言うてきておる、だから向こうのやはり立場も考えると、きちんと政治犯として在留許可するというのがなかなか刺激的になるので、ということがあるんなら、そういうことも一つの考慮すべき点でしょうが、そういうことがないのであれば、ちゃんと一年なら一年というふうな——現在ですと、たとえば李栄根さんの場合ですと、二カ月で切りかえております。当初一カ月だったんです。それじゃ普通の人の仮放免のような感じで困るじゃないかということで、これはまあ法務省の御理解のもとに二カ月に倍になったわけですけれども、二カ月というようなそんなみみっちいことじゃなしに、もっときちんとできぬものだろうか。相当政治犯であるということが明確な人なんですね。向こうの李承晩時代に裁判にかけられて、一審の判決が出て二審にかかっておるわけです。こういう材料は日赤にも法務省にもちゃんと行っておるはずなんです。私はまた向こうのいろんな関係等も考慮されておるのだと思ったのだが、この表には載っておらぬものですから、それならもう少し人権宣言精神に合うようにしてあげてほしいものだと、こう思っておるわけです。そういうふうに大臣いかぬもんでしょうか。
  57. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 実はいまお話しのことは私初耳でございまして、いまお話のありました名前もまだよくのみ込めないような次第でありますので、帰って調べさせていただきたいと思います。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 前の中垣さんでしたね、法務大臣のときに、ともかくこういうはっきりした政治犯であるようですから、前向きにひとつ検討しましょうというふうに李栄根さんの場合にはなっていたんです。私なりあるいは猪俣先生も一緒に陳情したりいたしました。しかし、そのときは、いろんな諸外国の例等も少し検討し整理してみたいというお話もあったわけなんです。それは当然なことだからということで待っていたわけですが、そのうちに、どうも一カ月というのはほんとうにこう普通の人と同じような感じを与えるのでということで、まあ二カ月に延ばされたわけです。それはそれとして非常に感謝しているわけですが、まあほんとうの私たちの実は気持ちは、やはり韓国政府とのいろんな関係があるのじゃなかろうかというふうな点を心配していたわけですが、どうもそういう点もなさそうであれば、もうちょっと政治犯として普通に遇してやってほしいものだと、こう思うわけです。で、大臣も初めてお聞きのようですから、ひとつ入管の富田さんは事情をよく、局長も私がいま申し上げたような事情はよく御存じですから、具体的にひとつ御検討願いたいと思います。これは、李栄根さんだけじゃなしに、その一味の方が若干名おられるわけなんです。で、裁判にもなっているわけですね、一部。きちんとした待遇が与えられぬというので、はなはだそういうのはおもしろくないので、もう許すものなら許す、さっぱりしたかっこうでひとつお願いしたいと思っているようなわけです。
  59. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ひとつ調べてみます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 あと条文等のことについては触れませんでしたが、一応政治犯の問題について確かめたいと思いました点は一応触れましたので、きょうはこの程度にいたしておきます。
  61. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 本案の質疑は一応この程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十九分散会