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1964-05-07 第46回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月七日(木曜日)    午前十時五十四分開会    ——————————    委員の異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      重政 庸徳君     鈴木 一司君      丸茂 重貞君     宮澤 喜一君  四月二十五日     辞任         補欠選任      古池 信三君     坪山 徳弥君      宮澤 喜一君     石原幹市郎君  四月二十七日     辞任         補欠選任      高橋  衛君     上林 忠次君      後藤 義隆君     近藤 鶴代君  四月二十八日     辞任         補欠選任      上林 忠次君     高橋  衞君      近藤 鶴代君     後藤 義隆君  五月六日     辞任         補欠選任      石原幹市郎君     宮澤 喜一君  五月七日     辞任         補欠選任      中村 順造君     岡  三郎君    ——————————   出席者は左のとおり。     委員長         中山 福藏君     理 事                 後藤 義隆君                 迫水 久常君                 稲葉 誠一君                 和泉  覚君     委 員                 植木 光教君                 大谷 贇雄君                 鈴木 一司君                 鈴木 万平君                 田中 啓一君                 高橋  衞君                 坪山 徳弥君                 亀田 得治君                 大和 与一君                 岩間 正男君    国務大臣        法 務 大 臣  賀屋 興宣君    政府委員        警察庁交通局長  高橋 幹夫君        法務省刑事局長  竹内 壽平君    事務局側        常任委員会専門        員        西村 高兄君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○鉄道公安職員職務に関する法律を  廃止する法律案中村順造君発議) ○商法の一部を改正する法律案内閣  提出) ○逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○刑法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○暴力行為等処罪に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)    ——————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、まず、理事補欠互選についておはかり申し上げます。  去る四月二十七日、理事後藤義隆君が一時委員辞任されましたため、理事に欠員を生じておりますので、補欠互選を行ないたいと存じます。互選につきましては、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認め、理事後藤義隆君を指名いたします。    ——————————
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、鉄道公安職員職務に関する法律を廃止する法律案商法の一部を改正する法律案逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案刑法の一部を改正する法律案及び暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  つきましては、まず、この際逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  速記をちょっとやめてください。   〔午前十時五十六分速記中止〕   〔午前十一時二十二分速記開始
  5. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは速記を起こしてください。  ただいま法務大臣がおいでになりましたから、先刻の議案について御質疑を願います。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣に……。逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案が出されて、提案理由説明書があるんですが、これは抽象的にいろいろのことが書いてありまして、このことはこのこととしてもわかるのですが、具体的にいま日本でこの法案提出するに至った事情としていろいろな例があると思うんですね。たとえば、日本人犯罪を犯して外国に行ってしまった、それで引き渡しを要求できなかったとか、あるいは、ドイツから犯罪を犯した者が日本に来てそれが日本で逮捕できなかったとか、そういう具体的な例があって、そうしてこの法案提案されるようになったんじゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  7. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いままで相手方と協定がございませんようなためにいろいろな事態が起こっておる。それで、お話しのような点がないわけでもないのでございますが、一般的に申しまして、従来では、何といいますか、足りないところがたくさんあった。一般的にこういう問題をどこの国の間ともできるようにしたいというほうがどちらかというと理由で勝っておるんじゃないかと思います。  なお、その点の詳細は政府委員より補足をいたしたいと思います。
  8. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 大臣のお答えに補足をいたしまして御説明申し上げたいと思います。  この法律案提案の当面の必要性というものにつきましては、外国との犯罪人引き渡しの問題で非常に困ったということから起こったわけではございませんで、法律規定が必ずしも明確でないために、明確にしておくことが今後国際協力を進めていく上に必要であるということから、法案の整備ということに主眼が置かれておる改正案でございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一般論としては説明はそれとして、具体的に、去年ですか、日本犯罪を犯してスイスかどっかに逃げてしまってシンガポールかどこかまで来て、日本のほうからそれを逮捕しようと思ってもできないので、何といいますか、在留期限が切れて日本に送り返すというような方法をとって、そうして日本で逮捕したような、こういうふうな例もあるんじゃないですか。それに類したものは二、三あるんじゃないですか。
  10. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 実例といたしましては、二、三にとどまらずあるわけでございますが、これをすべて逃亡犯罪人引き渡しという形で処理をしないで、入管令上の問題として処理をしたり、あるいは事実上の問題として処理をしたのでございますが、逃亡犯罪人という形で処理をいたしましたのは、スイス国に逃亡しておりました日本人の刑の確定者、これを引き取りましたのが一例ございます。これはまさしく逃亡犯罪人引き渡しということで、外交ルートを通じまして正式に引き取ったのでございますが、この際、当然のことでございますけれども国際慣行として相互主義にのっとって引き渡しを受けたわけでございます。したがって、将来、スイス国同種犯罪について引き渡し日本国に求めてきた場合には、これに応ずる国際慣例上の義務があると思うのでございますが、その義務に十分こたえてまいりますために、現行法をもってしても解釈上不可能ではないと思うのでございますけれども、やや条文の形が締約国というような形をとっておりますために、条約のない場合についてはこれを正面から適用することは必ずしも適当ではない、むしろはっきりとその点を条文のほうにあらわしておいたほうがいいということでこの改正案を打ち出したわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本人が、あれは刑が確定した人ですか、スイスに逃げてシンガポールかどこかに来たのじゃないですか。その間の経路を、どういう形であのときに日本身柄引き渡しになったのですか、その経過を御説明願いたいと思います。それとこの法律との関係ですね。
  12. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 昨年スイスから引き渡しを受けましたのは、橋本勇及び石川義夫の両名でございます。  まず、橋本でございますが、橋本は、名古屋高裁詐欺罪によって懲役十年の刑が確定しております。これは三十七年二月に確定しておるのでございますが、そのほかに詐欺罪、私文書偽造非等によって名古屋地裁岐阜地裁にそれぞれ五回にわたって起訴され、公判係属中でございます。さらに、同人につきましては、詐欺罪によって銚子の簡裁から逮捕状が発付されておるという状況でございます。しかるに、彼は昭和三十五年九月、池田新という偽名を使いまして旅券交付を受けて、初めフィリピンのマニラに一時滞在しておりましたが、昭和三十七年六月ごろスイスジュネーブに参りまして、そこに滞在中にまたかの地で詐欺罪を犯しましてジュネーブ警察に逮捕され、偽名による旅券を持っておるということも発見されまして、詐欺不法入国及び旅券不正行使という罪で起訴されて、昭和三十八年八月二十二日にジュネーブの裁判所で懲役九カ月、国外追放十年という判決の言い渡しがありまして服役しておったのでございます。  石田のほうは、静岡地方裁判所詐欺罪によって懲役十カ月と二年六カ月、二つの刑が言い渡され、これが三十六年十一月に確定しておるのでございますが、そのほか別件の詐欺罪によって東京地裁に二回にわたって起訴され、公判係属中のものであります。これも三十四年七月に旅券交付を受けて西ドイツのハンブルグにおもむいていたのでございますが、その後昭和三十六年三月ころからは、スイスのチューリッヒに滞在をして同地の貴金属商に勤務しておったということでございます。  かようなことから、スイスに両名がいることが判明いたしましたので、スイス連邦司法警察当局との間に両名の引き渡し方について数回にわたって予備交渉をいたしたのでございますが、スイス国では、相互主義に基づく精神から、逃亡犯罪人引き渡し請求があればスイス連邦政府としてはこれに応ずる意向であるということが判明してまいりましたので、昭和三十八年十月二日、日本大使館を通じましてスイス連邦政府に対し口上書をもって正式にこの両名の引き渡し請求をいたしますとともに、先ほど申した相互主義精神に立脚して日本側でもスイス請求に対してこれに応ずる用意があるという趣旨を明らかにいたしまして、交渉をいたしました結果、昨年十一月八日になりましてスイス連邦国内手続が終了いたしまして、正式に引き渡しを承認する旨の通知に接しましたので、東京地検の検事一名、検察事務官二名が空路スイスにおもむきまして、同月十三日ジュネーブ空港においてスイス官憲から両名の身柄引き渡しを受けまして、同時に、日本から持参しました収監状を執行いたしまして、空路コペンハーゲン、アンカレッジを通過して羽田に帰ってまいりました。羽田において直ちに刑の執行のために東京拘置所収監をいたしたのでございます。  かような事例が一件ございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは現行逃亡犯罪人引渡法でやったわけですか。
  14. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 現行逃亡犯罪人引渡法は、現行法をごらんいただきますとわかりますように、犯罪人引き渡しに関する条約前提とした法律でございます。ここで、「引渡条約」というふうに書いてございます。したがって、「締約国」という用語が使ってございますが、当時の解釈といたしましては、条約ではございませんけれども相互主義に基づく外交正式文書に基づいて国際慣行でやる場合も含めて立案をした形跡があるのでございますが、それで、私どもとしては、この法律を活用してできるのではないかということも一応考えて、そのように外務省にも説明してきておるわけでございますけれども、何と申しましても条文の文字からいいますとその点に疑念がないわけではございませんので、諸外国の実際の立法例について調べてみますと、いずれの国の国内法におきましても、やはり条約の場合と条約に基づかない相互主義の場合と両方規定してあるのが実情のようでございますので、日本国で持っておりますこの逃亡犯罪人引渡法につきましても、条約に基づく場合と基づかない場合と両方規定して国内法を整理しておく必要があるというふうに考えて、これはさしあたって将来どのものという意味ではございませんけれどもスイスから引き渡しを受けました例に徴しまして法律を整備しておく必要があるというふうにまあ考えているわけでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日米犯罪人引渡条約、これはずいぶん古い条約なんでしょう。
  16. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この犯罪人引渡条約というのは、現在アメリカわが国との間ただ一つでございまして、仰せのようにこれは非常に古い条約でございます。最初は明治十九年十月八日勅令で出ております。その後、日米間追加犯罪人引渡条約というのが明治三十九年九月二十六日に出て、この二つ条約からなっているのでございますが、昭和二十八年四月に、アメリカ日本との間の平和条約第七条(a)の規定に基づきまして、右二つ条約昭和二十八年七月二十二日から引き続いて有効とするという通告をしてまいりましたので、当日から引き続いて有効となっている、まあ帰り新参みたいなものでございますが、昭和二十八年七月二十二日から効力をまた確認されて効力を持つ条約でございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣、ちょっと疑問に思いますのは、大臣は、明治十九年というと古いことをよく御存じだと思うのですが、これはどうしてこういう条約日本アメリカだけにできたのですか。ほかの国との間にはできないわけですね。これはどういう理由によるんですか。
  18. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ほかの国と現在までありません理由は、実はただいまちょっと承知しておりません。取り調べましてお答え申し上げます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 明治十九年に日本アメリカ犯罪人引渡条約ができたというのは、明治十九年というとどういう時代かぼくはちょっとはっきりしませんが、まだ憲法ができる前ですね。そのときにこういう条約ができた事情はどういうふうなものか、それが日本アメリカだけしかできなくて、ほかの国が全然ないわけでしょう。この点がどういう理由なのかと思うわけですが、それともう一つ逃亡犯罪人引渡法というのは、昭和二十八年七月二十一日法律第六十八号でできたわけですか。その前はこういう法律はなかったわけですか。
  20. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、先ほど申しましたように、日米国交回復いたしまして新しい時代を迎えましたので、当然国内法を整備する必要がありましたから法律に書きかえたのでございますけれども、それ以前に条約に基づきまして国内手続をどうするかという点につきましては、明治二十年八月十日の勅令第四十二号というので逃亡犯罪人引渡条例というのがございまして、この勅令によりまして引き渡し手続が定められておったものでございます。これは当然法律でやるべきことでございますので、国交回復後はこの法律に書きかえたと、こういうことだと思います。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国交回復というのは何ですか。
  22. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほど御説明いたしましたように、昭和二十八年、平和条約に基づきましてですね……。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 平和条約ですか。そうすると、引渡条約は日本アメリカの間しかないということになってくると、そうして、それに基づいて日本アメリカ犯罪人引き渡しを規律するものとして現在の逃亡犯罪人引渡法ができたということになるわけですか。
  24. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのとおり立法経過から見まして、日米犯罪人引渡条約を実施するための国内手続法としてできたと、こう思うのでございますが、しかし、この手続法は、将来また新たなる条約がほかの国との間に結ばれるということになりますれば、当然それをも予想してそれの適用を見る一つ手続法、こういうように考えられるわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、将来、日本政府としては、この逃亡犯罪人引渡法を改正してしまえば、ほかの国との条約を結ぶ必要はないのだと、単独の条約を。そういう考え方ですか。大臣、どうです。
  26. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 大体、この法律が出ますというと、事実上は条約がない国に対しても、一応は差しつかえなく行なわれると思いますから、そう近接犯罪人逃亡条約をすぐに結ばなければならないという必要はすぐにはそう近接には考えられないと思います。事態が変化したらどういうことになるかわかりませんが……。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、この前、日本西ドイツですか、どっかから強盗をして逃げてきたというのがありましたですね。その場合も、日本は全然手は出せなかったのですか。手が出せなかったというのは俗なことばですけれども、あれはどういう事情からですか。
  28. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お話のケースは、西ドイツのドイスヴェルナーという者が、向こうで航空便の小包を盗みまして、もう一人のドイツ人ヘルストというのと共謀でそれをやったわけでございますが、犯行後オランダ航空日本に参りまして、昨年の十一月二日羽田空港に到着しまして、入管当局におきましては観光客として滞留資格を六十日認めて入国させたわけでございますが、その後、ドイツ連邦警察当局では、インターポールという国際刑事警察機構というのがございますが、そこを通じてわが国警察庁に両名の所在調査依頼してきたわけでございます。警察当局調査したところが、両名が新橋の第一ホテルに滞在しておるということがわかりましたのでございますが、ドイツ政府からは、もちろん引渡条約がございません、しかし、いまの条約がなくとも相互主義引き渡しを求めるという手続をやってやれないことはない、認めるか認めないかはこちらの自由でございますが、そういう手続西ドイツとしてはとりませんでした。それで、結局、事実上これは解決して帰ってしまったわけでございますが、私どもの聞いておりますところによりますと、十一月十四日の夕刻にドイス外一名が新聞記者説得によって自発的にドイツ大使館に出頭をいたしたようでございますし、ドイツ大使館員も両名に任意の帰国をすすめて説得をいたしたということでございます。両名の旅券につきましては、有効期間を十九日までというふうに制限をいたしましたために、両名は十一月の十六日の午前の羽田発エアフランス機で自発的に空路帰国をしてしまったわけでございます。この問題は、外交上の問題にはならずに解決をした、こういうことでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その場合に、日本法務省ですか、検察庁に、どういう依頼があったのですか。ただ所在を調べてくれというだけですか。
  30. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法務省検察庁には何らの連絡はございませんでしたが、先ほど申したインターポールという国際刑事警察機構というのがあります、その警察機構を通じて西ドイツ警察当局日本警察庁に対して依頼をしてきたわけであります。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう場合は、警察は何かするのですか、ただ所在を調べるだけですか。
  32. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 犯人日本にいるかどうか、いるとすればどこにいるかというようなことを調査をする程度でございまして、それから先の取り扱い方は何ら日本警察には権限がないわけであります。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま相互主義ということばが出てきたわけですけれども相互主義ということは具体的にどういうことを言うわけですか。これは具体的に事件が発生した場合にはじめて起こり得るんですか、あるいは、その相互主義という原則は、ある国とある国との間で結ばれるというふうな形になってくるんですか。
  34. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 条約の場合と違いまして、個々具体的なケースが発生した場合に、一方の国が相手国に対して要求をする、そのときにもし相手国から同種犯罪について犯罪人引き渡しを要求することがあれば、国際相互主義という立場でそれに応じていくという一つの具体的な、ケースバイケースの取りきめを相互主義の取りきめ、こういうふうに私ども理解をしておるわけであります。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、日本の国が外国を承認しておる場合に限るわけですか。未承認の場合でもそういうふうなケースバイケースによる相互主義というようなものがあり得るのですか。
  36. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 犯罪人引き渡し相互主義に基づいて行なうという趣旨は、国際間の友好関係、それから国際正義というものの実現に協力するという、こういう観点から起こってきた国際慣行であると私ども思うのでございまして、そして、その手続外交ルートを通じてなすべきことがこれは国際慣行上確立されたことだと思うのでございます。そういたしますると、あるいは国交が回復されていない国というような場合には、外交ルートというものはまだ確立していないわけでございますから、そういう点で相互主義に基づく引き渡しということはあり得ないというふうに考えております。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国連の人権宣言ですね、あの十四条の第一項との関連はどうなっておるのですか、これは。
  38. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 人権宣言の十四条の関係、これはまあ政治亡命と普通言われておるのでございますが、政治亡命政治犯罪人の不引き渡しということとがよく場合によりましては混同されて言われるのでございますが、まあ性質から申しますと同じ考え方に出ておるものだと思いますので、混同されるのも無理のないところがあるのでございますが、法律的な性格を申しますと、両者はすこぶる違ったものでございまして、わが国におきましては、政治亡命という考え方は、法律的に見ますると一つ入管令上の問題として考えられておるようなわけでありまして、政治犯罪の場合は、自国においてすでに犯罪を犯しておる、そしてその刑事手続が行なわれておるということを前提として、逃亡した犯人の現在地の国に対して請求し得ることでございますし、政治亡命の場合は、もうそういったようなことはございませんで、たまたま外国に来た者が、自国に帰れば危険にさらされるといったようなことから、自国に帰りたくないという意思表示、保護してもらいたいという意思表示をした場合に、それを受けた国がどう処理をするかという問題でございますので、法律的な性格は違っておる。政治犯罪につきましては不引き渡し原則を明確にいたしておりますが、政治亡命の場合につきましてはまだ確立した慣行というものはできておりません。まあいまの人権宣言などで一つの方向を示唆しておりますし、またその他の多数国の条約などにも政治亡命を認めていくという考え方が強くなりつつありますけれども、まだ国としてどうすべきかということは、そういう請求を受けました国が独自に判断して処置をしていくという態度を多数国がとっておるようでございます。日本の場合におきましては、入管令上の問題として処理すると、こういうことに相なっておろうかと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 政治亡命政治犯罪とは概念的には別個なものだと思いますが、しかし、いわゆる政治犯罪を犯して、そして亡命して来るということも当然考えられてくるわけですから、そこでダブる場合が相当できてくるんじゃないかと、こう思うんですがね。そういうふうな場合の、入管令では政治犯罪を犯した場合ですか、その場合にはどういうふうになっておるわけですか。
  40. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 政治犯罪と認められる罪を犯した者の他国に入管手続を経て入国しております場合、犯罪人引渡条約の面から申しますと、その外国はその犯罪人がおります国に対して引渡しを要求してくる場合があると思うのでございますが、その引き渡しを要求するということ、それを受け入れるかどうかということをきめる手続犯罪人引渡法関係でございまして、今度はその逃亡してきた国において、その人が引き渡されると自分は非常な危険な立場に立つということで保護を求めてくる、これが政治亡命の問題でございます。したがって、いまのような場合には、政治犯罪人政治亡命を申し出るということがあり得るわけでございます。その場合の取り扱い方につきましては、もし政治犯罪でありますならば、政治犯人引き渡し規定によりまして、受けておる現住地の国はこれを拒絶することになろうかと思いますがそのほかに、拒絶はしても、政治亡命を認めるかどうかということはその国の自由裁量によってきまることと思うのでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 出入国管理令の第五条、上陸の拒否ですね、この第一項の第四号、「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁止又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。但し、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。」、これはどういうふうな解釈になるわけですか。政治犯罪により刑に処せられた者は、この反面解釈として上陸の拒否ができないというふうに解釈するんですか。
  42. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 第五条第四号の関係におきましては、仰せのとおり、政治犯罪によって刑に処せられた者である場合には、同じ罪に処せられた者については拒否できるのでございますが、そういう犯罪である場合には拒否ができない、こういうことだと思います。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういうわけですか。どういうわけでこういう規定が設けられたんですか。
  44. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、やはり政治犯罪人引き渡しのこの原則の生まれてきた考え方と同じ考え方に立ってこういう規定が設けられておるのだと思うのでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、政治犯罪の場合は、この出入国管理令で上陸の拒否ができない、そういうふうに解釈していいのですか。そこまでは言っていないのじゃないですか。反面の反面の解釈として。そこまで言っていると見ていいのですか。
  46. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 入管令五条の関係、この条文については拒否ができないと思うのです、政治犯罪だということでありますれば。しかしながら、その他の理由で拒否ができるかもしれないので、その点は政治犯罪人の不引き渡し原則のような厳格なものじゃないものでございますし、その点は解釈としてはそうなるのではないかというふうに考えております。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは議論のあるところで、この前も亀田さんがだいぶやられておったと思うんですが、それと、逃亡犯罪人引渡法の第二条との関係はどうなんですか。政治犯罪だと上陸は拒否はできない。上陸しちゃった場合でも引き渡しの制限に、引き渡してはならないほうに入るわけですね。結局、引き渡しはできないということになるわけですか。
  48. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そういう犯人が、かりに入ってきたといたします。そうしますと、入管令上は請求国へ返すということはしないと思うのであります、この精神から言いまして。だけれども、ほかのほうへ退去を命ずることがあり得るかもしれません。しかし、犯罪人引渡法関係で申しますならば、引き渡さないということがはっきりするわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、政治犯罪というのは具体的に何を言うのかということがはっきりとした定義というか、そういうふうなものがないと非常に混乱するわけですね。そこはどういうふうになっているのですか。
  50. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 非常にその点がむずかしいわけなんで、政治犯罪とは何かということになりますと、やはり社会通念といいますか、法律常識によってきめていかなければならぬ問題だと思います。ただ、まあ従来一般的に世界各国の解釈として通用する政治犯罪という、狭義の政治犯罪と申しますか、そういうものは、ある国の政治的秩序を侵害する罪をこれをまあ政治犯罪、こういうふうに言われております。直接政治的秩序を侵害する罪を犯したのでなくても、そういう意図をもって一般の普通刑法犯のようなものを犯した場合、普通刑法犯といいましても、特に殺人とかそういったような罪を犯した場合に、なお政治犯罪と見るか、あるいは政治犯罪とは見ないか、あるいは見るのであるけれども引き渡し原則からは除外していくかという問題がもう一つあるわけでございまして、その辺は各国の取り扱い方がかなりまちまちになっておりますが、狭義の政治的秩序を直接侵害する罪を犯した罪が政治犯罪であるということにつきましては、ほとんど各国とも異論のないところだと思いますし、そういうものにつきましては不引き渡し原則は文字どおり適用されてきているというふうに思うのでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本刑法の各論でいうと、本来的に政治犯罪になるものは何なんですか。本来的には政治犯罪にはならないけれども、その態様によっては政治犯罪になるものと、こうあると思うんですが、これは何ですか。各則によってひとつ説明を願いたい。
  52. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ちょっと各論に入ります前に、世界を通じて政治犯罪というふうに政治的秩序を直接侵害する罪というのはどういう行為であるかということにつきましては、たとえば反逆行為ですね——トリーズン、その企画、それから革命またはクーデターの陰謀——コンスピラシーのようなかっこうでそういうものを言うと、こう理解されているわけです。そういう行為を直接罰している国と、日本ならば大逆罪とかそういったものはないわけでございますが、それじゃ外患罪とか内乱罪とかというものが入るかどうか、あるいは騒擾罪のようなものが入るかどうか、これはいまのような基準に照らして各罪を検討いたしませんと、これは政治犯罪だと頭からきめてかかることもできないと思います。両方かみ合わせまして政治犯罪かどうかをきめる、こういうことになるかと思うのであります。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから日本刑法の各論で言うと、原則的に政治犯罪になるものは、どれとどれなんですか、刑法の各論で。
  54. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いま申しましたような考慮で各論の罪をきめるほかないと思うのでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、条文に従って説明願いたいと思うんですが、刑法の各則のどれが政治犯罪……。だから、本来的なものと、態様によってなるものと、二つあるでしょう。
  56. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 日本刑法については、いま申し上げたようにしか言えないと思うのでございますが、いまここで問題になりますのは、外国で犯したのが政治犯罪であるかどうかを日本で検討するわけでございますから、いま申しましたような標準で、条文は——日本にはコンスピラシーというやつはないかもしれませんが、そういうコンスピラシーという罪になるもの、これは政治犯罪であるかどうか、これは外国の具体的な立法例といまの基準に照らしまして政治犯罪かどうかをきめていくほかないと思うのでございます。今度は逆に、日本が要求して、向こうに政治犯罪だから引き渡せといった場合には、今度は日本刑法が向こうの研究対象になると思うのでございます。これは各国の構成要件というものは国によってかなり——ねらうところは同じでありましても、構成要件の組み立て方というものは国によって違うのでありまして、どの条文どの条文というふうに指摘を申し上げて言うことはむずかしいので、いま申したような大逆的な行為とか、クーデターとか、革命とかいうような行為ですね、これは成立してしまえばもう犯罪じゃなくなるかもしれませんが、そういう行為は国の政治的秩序を直接侵害する行為であると、行為ですね、犯罪とは言いません、行為であります。その行為に直接適用される法律ということになるわけであります。ただ、先ほど申しましたように、それが殺人とかということになってまいりますと、直接であるか密接的な犯罪であるかという議論も存じますので、かなり具体的にきめます場合には、慎重に検討を要する問題だと思います。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはなかなか答えにくい点もあるし、むずかしいところもあると思うんですけれども、それがはっきりしていなければ、あとで紛争の種をまくだけじゃないかと思うんですがね。日本である人が犯罪を犯して外国に逃げて行ったと、それを日本引き渡し請求するわけでしょう。そういう場合には、一体、日本刑法政治犯罪になるかならないかということを日本政府なり法務省なりがしっかりしていなければ混乱してくるだけじゃないですか。当然法務省に統一的な見解がなければならないわけだし、その統一的見解になるものは、当然刑法の各別が基礎になるわけだから、だから、何といいますか、そのもの自体ですでに政治犯罪になる犯罪もあろうし、そのものとしては政治犯罪にならないとしても、態様いかんによっては政治犯罪になるものもあるから、この二つをはっきり分けて法務省としての見解がなければおかしいのじゃないかと思うんですね。日本では、いま局長の言われたようなことだと、本来的な政治犯罪はないのだというふうに承っていいんですか。ただ態様によっては、たとえば殺人なんかで政府を転覆しようと思って殺人をしたりする場合もあるというか、そういうやり方によっての政治犯罪はあるかもわからぬということなんですか。
  58. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 本来的なものはないというふうには私は言い切れないと思います。この判断は、仰せのように、はっきりしたものを持ちたいわけでございますが、この判断権は、国際慣行からいいますと引き渡し請求国にある、これが定説でございますので、日本にもし求められてきた場合には、日本側がこの判断をする権限を持っておるわけでございます。  そこで、その判断の材料といいますか、基礎になりますものは、これはまあ個々のケースによってきめていかなければなりませんので、一般抽象的に申し上げかねるのでありますが、しいて一般抽象的に申すということになりますと、やはり諸般の事情をしんしゃくいたしまして、健全な良識をもって考える、こういうことになると思うのであります。ただ、そうだからといって野方図なものじゃないことは、これはやはりもし逆に請求——条約のない場合が日本の場合に関しましては大部分でございますので、相互主義に基づいてやる場合で、もし日本が非常識な判断を下せば、同じ非常識な理由をもって相手方から拒否されるということも考えられるわけでございますから、そういう点は、私どもとしては視野を広くしまして、そういう事態に直面した場合には、十分説明のできる、外国の拒否をされた側から見ても相当であるというような理由がはっきりと示されなければならぬ筋合いでございますから、仰せのように、統一見解統一見解とおっしゃるけれども、統一見解がなくても、その場合によって、おかしいような結論を出さないように、私どもとしては考えておるのであります。一般抽象的にこうだということを申してもそのとおり行くかどうかはわかりませんので、やはり具体的なケースに即してきめるほかない、こういうふうに思っております。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、もちろんこの判断権は被請求国にあることは、これはわかりますが、その場合に、日本のほうでこれが政治犯罪になるかならないかということのしっかりとした見解がなければ、判断しようといったって判断できないわけだしね。  そうすると、具体的に聞きますと、刑法の各則の、たとえば内乱罪が一番先にありますね、七十七条以下に。内乱に関する罪のうちでも、政治犯罪になるものとならないものとがあるというんですか、あるいは、これは全部政治犯罪になるのだと、こういうことなんですか。
  60. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 七十七条の罪を見てみましても、すべて全部これは政治犯罪だとは私言えないと思います。まあ、なる場合が多いということは言えるかもしれませんけれども、「附和随行シ其他単ニ暴動ニ干与シタル者ハ」というのがありますですね。こういうものを政治犯罪だと見るのは、やっぱり常識的でないのじゃないかという気がいたすわけなので、これは具体的にケースバイケースできめるほかないと思いますが、抽象的に申しますと、大部分のものが政治犯罪的な性格を帯びておる罪だとは思いますが、だからといって、この七十七条に該当するからといって、すべてが政治犯罪だとは言えないのじゃないか。やはり具体的に考究してきめるほかはないというふうに思っております。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそこら辺の解釈もいろいろ疑義があると思うのですが、そうすると、外患に関する罪はどうなんですか、八十一条以下。
  62. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 外患に関する罪につきましても、内乱の罪と同様に非常に政治的犯罪の色彩を濃くしておるものでございますが、この当該条文に触れるものが全部政治犯罪であるかどうかということは、これもやはり具体的事件で慎重にきめなきゃならぬことだというふうに考えております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的事件で慎重にきめるのはけっこうですけれども、そうすると、この外患に関する罪のうちに、常識的に考えて政治犯罪になるものとならないものとがあるというふうにおっしゃるらしいのですけれども、どういうものかなってどういうものがならないんでしょうか。
  64. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 八十一条の罪はおそらくもうずばり政治犯罪と見られるもののように思われるのでございますが、八十二条の中に「之二与シテ其軍務二服シ」とか「其他之二軍事上ノ利益ヲ与へ」とかいうような者は、構成要件としてはそれに当たりましても、心ならずもやったという場合もありましょうし、具体的には情状によって非常に違うのじゃないかというふうに思うのでございまして、これを一がいに形式的に条文に当たるからといってすぐ政治犯罪だというふうにきめるのはやはりよくないので、政治犯罪かどうかをきめるのは実質に即してきめるべきものだというふうに考えておりますので、いま申したような抽象的には言いにくいということになると思うのでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは将来何かのことが起きた場合に、おそらく国会で刑事局長なり大臣が答弁したことが非常に問題というか、参考になると、こう思うんですよ。参考というか、それ以上のものになってくると考えられるので、これは刑事局としてもう少しいろいろ打ち合わせと言ってはたいへん失礼ですけれども、検討してこれはこの次にもう一ぺん私質問しますから、御答弁願いたいと、こう思うんです。これは外患に関する罪だけじゃなくて、国交に関する罪もあるし、騒擾罪の場合もあるし、ことに騒擾罪の場合なんか、政治犯罪になる場合とならない場合も相当あるのじゃないですか、ちょっといま考えただけでも。ひとつこういうふうな点についてよく、失礼な言い方かもしれませんけれども、ここですぐ答えるというのじゃなくて、よく持ち帰って研究してからお答え願いたいと、こう思うんですよ。そのほうがいいんじゃないでしょうか。
  66. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 研究せずにここへ参っておるわけじゃございませんで、仰せのように研究した結果、やはり、これはここで発言をいたしましたことは法解釈並びに運用上重要な意味を持つと考えておりますので、形式的にきめがたいものにつきましては実質的に判断するほかないので、個々ケースバイケースできめていきたいということを結論として申し上げておるわけで、研究の過程におきましては、いま仰せのような点も一々検討した上で、結論としましてはそれを条文の形であげて、これが当たる、これが当たらぬということは申し上げないほうが適切であるという結論になりまして、こういうお答えを申し上げておるわけでございます。要するところ、政治犯罪であるかどうかということをきめる基準と申しますのは、形式上の法律条文ではなくて実質であるというふうに考えます。その実質の根拠になりますのは、先ほど申したような反逆の行為とか、あるいはクーデターとか革命とかいったような行為が政治犯罪的な行為である、これは世界一般に通説として言われておる行為でございます。それを頭に置いて、そういう行為に該当するかどうかということを形式的な罪についてえり分けるわけでございますから、形式的な罪から逆に政治犯罪をきめるということは適当でないというのが私どもの結論でございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いろいろ議論があると思うんですが、この法律を立案するときに、日本だけで立案するのじゃなくて、世界的な一つの、国際的な何かの機構といいますか、そういうふうな会議でもやって、そしてお互いに連絡をとりながら立案したわけですか。たとえば、いまの政治犯罪云々だけの問題ではなくして、全体として。そこはどういうふうになっていますか。
  68. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 国際会議があって、その国際会議で方向づけなどがあって、それを参考にしてというのではございませんで、これは国内法でございますから、国内法立場で私どもは立案に当たったわけでございますが、もちろん、この立案にあたりましては、諸外国国内法、つまり手続法を参考にいたしたのでございますが、外国の例を見ますると、国によってかなり取り扱い方も違っておりますが、最大公約数といいますか、広く世界の各国で共通して採用しております考え方、制度、そういうものをできるだけ取り入れまして、特に今回の改正では引き渡し条約のございませんものについて請求があった場合の手続を取り入れるというのがおもなねらいでございますので、その点の研究を各国の立法例についていたしました上で立案に当たったわけでございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この逃亡犯罪人引渡法という法律ができていないという国もあるんですか。
  70. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 文明国という言い方がいいかどうかわかりませんが、私どもは文明国と名の知れた国は大体国内法として引渡法を持っております。新興国の中で私ども資料が手に入らない国につきましてはわかりません。
  71. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと資料要求を……。政治犯の問題が非常に重要なわけでありますので、次回までに資料をひとつ出してほしいと思います。それは、いままでに日本政府として外国に対して引き渡しを要求した案件、それから日本政府が要求された案件、両方全部ひとつ一覧表にしてもらうと同時に、その中で、これは政治犯であるということでこちらが断わったのがどれくらい、まあなければないでいいわけですが、あるいは外国から断わられたのがあるのかどうか。さらに第三点は、そういう点について両者の見解がなかなか合わないで非常にもめた案件も多少あろうかと思うんです。その第三の件についてはどういう点で見解が合いにくくてもめたか、そういう点をひとつ明らかにしてほしい。刑事局長の御意見ですと、案件に即してというふうにさっきから数回おっしゃっているわけで、そういう立場からもひとつ具体的なケースについて、いま私が申し上げたような点を整理して資料を提出してほしいと思います。
  72. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いまお求めになりました資料は、私ども調整をいたしまして——現に私持っております。持っておりますので、差し上げるつもりでございますが、私ども調査したところでは、明治五年から大正十四年に至る間の事件については判明しております。それから大正十四年以降の統計につきましては、資料が焼失をいたしておりますために明らかではございませんが、昭和十年以降は一件もないということは、これは確認されるところでございまして、完全無欠な資料ではございませんけれども、私どもで入手できました資料は手持ちいたしておりますので、調整いたしましてお手元に差し上げることにいたしたいと思います。
  73. 亀田得治

    ○亀田得治君 何か最近のやつはあまりないような話ですが、たとえば韓国の関係者、あるいは台湾の関係者、台湾というが、広く中国との関係、そういったような関係で、相当数のものがあるのじゃないですか。それらについては、あるいはまあそういうような点については、犯罪人引渡法といいますかそういう法に基づいて、きちんとした請求、被請求関係になっておらぬかもしれぬが、事実上国として要求があれば、それは法律に基づかぬ要求であっても、やはり問題の本質は同じことになると思うので、そういうものも含めて資料の提出を願いたいわけなんです。古いやつだけじゃだめです。そういう政治犯の概念でも、多少は国際的にやはり流動していっているわけなんだから、むしろごく最近の扱いというものについて具体的に知りたいわけですから、新しいところを何とか……。
  74. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それはなかなかむずかしいのでございまして、と申しますのは、私どものほうは正式の手続を経たものしかないわけで、事実上おやりになったのは、先ほどたまたまドイツの例を新聞等で私も知っておりましたので申し上げたわけでございますが、ああいうふうにわれわれのほうへ全然来ないで処理されてしまって、新聞記者説得して事実上帰っちゃったやつなんていうのは、たまたま知っておったのですが、そういうものはなかなか私どもとしては得がたいものでございまして、やはり私どもは責任を持ってお答え申し上げるということになりますと、正式な資料でないとぐあいが悪いと思いますので、いまわれわれのほうで特に御要望のありました点は、私どもの所管外の、たとえば警察の段階あるいは入管の段階等で行なわれたのが多いと思いますので、そういう事件が事実上解決されたものがあろうかと思いますけれども、はたして私どもがうまく手に入りますかどうか、ちょっと研究といいますか、調査をしてみないと何ともお約束いたしかねるわけでございます。
  75. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう関係のものは相当あることはこれは事実なんです。だから、むしろ政治犯の概念を国際的に明らかにしていくという立場から考えると、こういう法の段階までの扱いに来ておらぬものであっても、非常に重要性はあるわけなんです。だから、そういう意味で入管並びに警察等とも御連絡を願って、そうして資料の整理をしてほしいと思う。
  76. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 関係機関とよく連絡をいたしまして、調整できるものは調整いたしましてお手元に差し上げるようにしたいと思います。
  77. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ、それを拝見した上で、私は相当質問しなければならぬと思っておりますが、ひとつ委員長のほうに……。
  78. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ほかに御質疑がございませねば、本案に対する質疑は一応この程度にいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後零時二十五分散会    ————・————