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1964-02-06 第46回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月六日(木曜日)    午前十一時十三分開会    ———————————   委員の異動  二月四日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  大矢  正君  二月五日   辞任      補欠選任    大矢  正君  亀田 得治君    ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事      後藤 義隆君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            鈴木 一司君            鈴木 万平君            高橋  衛君            亀田 得治君            中村 順造君            山高しげり君            岩間 正男君   政府委員    法務省刑事局長 竹内 壽平君    最高裁判所長官    代理者    最高裁判所事務    総局刑事局長  矢崎 憲正君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (四国放送及び徳島新聞事件に関す   る件)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、四国放送及び徳島新聞に関する問題について質疑を行ないます。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 本件は、前からずっと数回質疑を重ねてきておる問題でありますが、その後、徳島検察審査会職権でこの問題を取り上げ、審議して結論を出したわけでありますが、最初に最高裁のほうからこの審査会の経過並びに結果をひとつ御報告願いたいと思います。
  4. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) お答え申し上げます。  その前に一言御了承いただきたいことがあるのでございますが、それは、御承知のように、最高裁判所検察審査会に対しまして何らの監督権を持っておらないわけでございます。ただ、しかし、検察審査会法によりまして検察審査会事務局が設けられております。そこの事務官裁判所事務官の中から任命するということと、それから検察審査会に要しまする経費裁判所経費として国の予算に計上しなければいけないということが法律で定められておりまして、その関係裁判所検察審査会のめんどうを見ておるわけでございます。ですから、配置定員をよけいにふやしてくれとか、それからまた予算を増額してくれというような希望は、検察審査会のほうから最高裁判所のほうへ申しておりまして、それと同時に、議決がありますと、議決書の写しを最高裁判所のほうへ送ってまいるわけでございます。したがいまして、本件につきましても、そういう関係議決書が参っております。これからお答え申し上げます点は、議決書にありまする内容についてお答え申し上げたいと思いますので、その点について御了承いただきたいと思います。  まず、前川静夫さん、それから森田茂さん、それから岡田太郎さん、米沢新三郎さん、それから小幡義治さん、それから阿部滋さん、武市仁一郎さん、この七名のお方に対して業務横領等被疑事件につき捜査が行なわれまして、昭和三十七年十月三日に徳島地方検察庁天野検事が不起訴処分をなされたわけでございまするが、これにつきまして昭和三十七年の十二月六日の職権審査徳島検察審査会で開始いたしまして、三十八年の七月二十七日に議決があったわけでございます。  この議決趣旨、これは議決結論になるわけでございますが、それについて申し上げますと、ただいま申し上げました七名のお方の中で、米沢さん、それから小幡さん、阿部さん、武市さん、この四人のお方の不起訴処分については、はっきり結論は出ておりませんけれども、不起訴処分が妥当であるというような趣旨にうかがわれまして、残りの前川さん、森田さん、岡田さん、この三人の方について不起訴処分が不当であるという結論が出ておるわけでございます。  その趣旨について申し上げますると、まず前川静夫さんについてでございますが、前川静夫氏について行なわれました不起訴処分については、七つの事実をあげましてそれについて不起訴が不当である、これについては起訴すべきだという結論でございます。この事実は、徳島新聞社関係四国放送関係について分かれておりますが、まず徳島新聞社関係について申し上げますと、一番目に同社B勘定——すなわち秘密資産裏資産業務横領、それから二番目に徳島新聞社法人税法違反、それからさらに三番目に徳島新聞社所有空地横領、それから四番目に宅地購入に伴う金員業務横領、それから五番目に四国放送株式会社株式取得に伴う金員業務横領、この五つの事実についていずれも不起訴処分が不当であって起訴が相当であるという結論でございます。それから次にやはり前川静夫氏につきまして四国放送株式会社関係につきまして、一番目に同社B勘定繰り入れ分広告料金についての業務横領、それから二番目に同社特定社員に対しての裏給与支出業務横領、これらの二つの事実についてもいずれも不起訴処分が不当であって起訴が相当である、こういうことになっております。  次に、森田茂氏それから岡田太郎氏の両氏につきましては、四国放送株式会社関係の分についてでありまして、すなわち同社勘定繰り入れ分広告料金についての業務横領、それから同社特定社員に対する裏給与支出業務横領、それから次に私的用途支出業務横領、この三点について、不起訴処分が不当である、起訴が相当であるという結論でございます。  この事件四国放送株式会社取締役戎谷利平氏の告発によって捜査が開始されたものである。だから、一般的には会社内部勢力争いというように見受けられないこともないかもしれない。しかし、被疑事実は認められるのであるから、これについて起訴猶予処分は寛大に過ぎるんだ。で、告発人戎谷氏も、本件関係がないというような状態にあるとすれば、それはそれで十分に捜査をなさるべきである。もしもかりにマスコミの実力者であるということで捜査が徹底的に行なわれないというような疑惑や誤解を少しでも社会一般に持たれるようなことがあってはいけないんだ。だから、検察当局はあらゆる障害を排除して徹底的に再捜査を行なってぜひ公訴を提起されるように重ねて強く要望する次第なんだ、というようなことが大体大まかな結論でございま、
  5. 亀田得治

    亀田得治君 非常に多岐にわたる報告であったわけですが、その報告の中で、前川に関する部分ですが、前川宅地購入のために新聞社B勘定から金が出ておるという御指摘があったわけですが、この点をもう少し差しつかえない程度に詳しく御報告願いたいと思いますが。
  6. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君)  これにつきましては、不起訴が不当であるというその理由といたしまして、このように掲げられております。前川静夫氏が徳島市弓町一丁目一番地の一の宅地自分社長をしている徳島新聞社から二百九十三万六千四百円で買い取って、その代金は、外遊中の給与や諸手当、せんべつ、手持ち金などによって支払い済みであって、だから業務横領嫌疑はないというようなことにはなっているけれども、しかしながら、外遊中の給与、それから賞与、これらは五十万円からないし六十万円くらいのものである、前川氏が残余の二百万円ぐらいをどこから支出しているのか、その二百万円の出所が明らかでない、こういう点からも推して業務横領責任は免れないんだと、こういうような理由に相なっております。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 それから、前川宅地に関する点ですが、ただいまのは一丁目の一の一ですが、一丁目の一の二の部分ですね、この点に関する何か説明等がないでしょうか。
  8. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) その点につきましては、先ほど申し上げました四番目の事実に関する点でございますが、これにつきましてはこのように述べられております。それは、前川氏が自分私宅建築のため弓町一丁目一番地の二の宅地購入するについて、徳島新聞社B勘定から代金六百八十二万五千円が支払われ、前川静夫名儀で登記されている事実が認められる。そして、その代金支払いについては業務横領が成り立つものと認められるから、したがって、不起訴は不当で、起訴がしかるべきだという結論でございます。  主とした理由とするところは、前川氏のもとにいた武市仁一郎さんが米沢に命じてB勘定からこの宅地代金を支出させまして、前川個人所有として、これを前川氏にそういうようにしたということを話している。そういう事実が認められるに加えて、前川氏はみずから固定資産税を支払っている。したがって、後日借用書B勘定に差し入れたというようなことがあったとしても、前川個人宅地購入B勘定から支出した業務横領刑事責任が解消するとは考えられない、こういう理由をつけておるわけでございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 何か、後日、いま御指摘の点について、前川氏が新聞社B勘定のほうに借用書を差し入れたといったようなことがはっきりしているのですか、報告書には。
  10. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) この点は、先ほど申し上げましたように、議決書でこうなっているのでございまして、私どものほうにはそれがほんとうに事実かどうか調査いたしておりませんのでわからないわけでございます。議決書にはそういうことがうたわれておる、こういう趣旨でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 問題になっている事柄につきまして一つ一つ説明を求めたのでは、これはたいへんな時間もかかると思いますので、代表的に私がいま前川宅地の点についてだけ若干補足説明を聞いたわけですが、そしてまた、この宅地の問題に関しては、当初この問題が徳島検察庁で取り上げられたときに、担当検事は、少なくともこの点に関する横領というものははっきりしておる、こういうことも言っていた問題なんです。また、徳島の市民の方々も、ほかの問題点というのはこれはなかなか形は見えないわけです。しかし、この空地の問題に関しては、ちゃんとみんなが目で見て、ああいうことをやっておるということを知っておるわけでして、非常にこれは注目をしておる最大の問題点なんです。そういう立場から若干補足説明をさしてもらったわけだが、この点は検察当局としては一体どう考えておるのか。これは前回の当委員会におきましても刑事局長説明を求めたわけですが、なかなかその点の説明を実はされなかったわけですが、ともかく検察審査会検察庁のお調べになった書類を基礎にしてそうしていまのような結論を出されてきておるのに、検察庁のほうはまるきり違った結論を出されておるわけなんです。どこが一体食い違ってそういうことになるのか、その辺をもう少し解明してもらいたいと思うわけです。
  12. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御質疑の御趣旨はまことにごもっともでございまして、片や検察庁はその調べの職責を持っておる役所でございまして、その役所が全力をあげて調べた結果、この前も申し上げましたように、嫌疑不十分という結論を出しておるのでございます。これに対して、検察庁調べました全部の資料を検察審査会がこれまた慎重に検討をされました結果、これは嫌疑十分である、こういう結論でございますから、まことに相反する結論がここで二つ機関によって出されておるという現実に直面いたしました場合に、先生の御指摘のような御疑念が存しますことはごもっともでございます。私どもも、その点につきましては、さらにこれは何らかの一歩を進めて、そのいずれがさらに真相に適するのであるかということを明らかにすることが必要であろうと考えておるのでございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 まあ十分御検討、再検討を願いたいわけですが、その前に、なぜ徳島地検がいままでの段階においてこの宅地問題というものを不起訴にしたのか、その過去の事態ですね、そこを一応明確にしてほしいという意味なんです。
  14. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その点は、この前も申し上げたかと思うのでございますが、結論につきましては、先ほど申しましたように嫌疑不十分ということになっておりますが、その嫌疑不十分になりました証拠関係その他、そういう結論に至りました判断過程証拠評価といったようなことは、事柄が不起訴処分ということになっておりますので、これはまあ公にしないというのが検察庁建前でございます。おそらく、検察審査会におかれましても、結論は示されたのでございますが、なぜそういう結論になったかということの判断過程証拠評価というようなことを逐一詳細に発表する性質のものではなかろうかと思うのでございまして、これはそれぞれの機関において法規にのっとって正しい適正な判断、こういうことで、われわれはそれを信頼していくほかしょうがないのじゃないかというふうに考えているのでございます。私がここで検察庁判断過程を公にいたしましても、それは徳島地検判断でございまして、それがただいま述べております私もそう思うというのであるかどうかということは、これは別問題でございます。でございまして、この判断内容につきましては、公にこれをいたさないという建前がまあ不起訴事件取り扱いについての私ども立場でございますので、その点をひとつ御了承願いたいと思います。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 一般的には、刑事局長の言われるような建前で不起訴事件についての答弁をしぼるということは、これは一応通用すると思います。ただ、本件につきましては、徳島地区としては、非常に世論の注目を浴びた社会的な問題であった関係上、徳島地検が不起訴にするときに、わざわざ検事正がこういう分厚い談話——声明書をちゃんと原稿を用意して発表までされた問題なんです。ところがその声明書を拝見すると、その声明書自体の中に、新聞社B勘定から前川静夫私宅建築用宅地不動産購入のために金が出された、こう明記されているわけです。そうすると、個人私宅のために会社の金が出たということをともかくそこまで発表されているのであれば、一体それがどうして犯罪——横領に結びつかないのか、その点の付加的な説明を求めているにすぎない。徳島地検自体が不起訴処分だからということで、こういう詳細な発表すらも遠慮しておくというふうに扱われたのなら、別なんです。世間の目から見たら、これならば一応横領という結論が出るのがほんとうじゃないか、ここの部分だけを読むとそう思うわけですね。だから、それに対する付加説明程度のことなんですね。そういう立場で理解してもらって、できればその点をはっきりしてほしいと思います。検事正が声明したその声明文自体が普通やってならぬことをやったと書いておって結論が違うから聞くわけですから。それで、かたがた検察審査会のほうでは、それはやはり自分私宅のために会社の金を引き出したことは事実なんだから、これは起訴すべきだ、こう出てきているわけですから、それで説明を求めるわけです。B勘定からは出たけれども、これこれこれの理由法律的には結局は横領にならぬのだという見解を持ったに違いない、結論からみると。だから、なぜそういう理解を持ったかというそこだけの説明なんです。それを求みているんです。
  16. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのように、検事正がこの事件の社会的に注目を浴びた事件であるという観点から捜査の結果を現地において発表されたと思うのでございますが、これは、法益上そのほうが相当であるという判断に立ってなさったことだと思います。その際にいまのお言葉のように客観的にB勘定から出ているのだということを述べられたにもかかわらず、それは嫌疑なしという結論になっているということでございます。なぜそこはそういうふうになったのかということは検事正は述べておられないようでございます。だといたしますと、私どものほうといたしましても、それがなぜそうなのかということは聞いてみたいところでございまして、私は刑事局長としては聞いております。聞いておりますが、検事正もあえてそこは発表しておられないところを私が検事正にとってかわってこの公の議場で御説明をするということは、これはもう先ほど申しました事柄から申しましても私としての行き過ぎということになろうかと思うのでございまして、それはこういう趣旨でございますというお答えはできないのでございますが、ただ、私は客観的に一つの、これも全く事件を離れて、私の見解と申しますか、私も法律家でございますので、そういう立場からの意見を申し上げて差しつかえないものでございますならば、ただこういうことは言えるのじゃないか。なるほどB勘定から客観的にその金が出ておる。しかし、すべて犯罪は、故意、犯意がなければ、客観的に構成要件に該当しておりましても、それをもってすなわち犯罪であるといふうに断定できないことは御承知のとおりであります。したがって、そこに犯意関係等において証拠が十分でなかったというようなことになるのじゃないだろうか、こういうふうに想像をして申し上げる、これは法律家として一つ考え方を申し上げるわけでございますが、そういうふうに徳島地検判断をしたかどうかということは私として公に申し上げることは差し控えますけれども、私は法律家としてはそういうふうな考え方もあり得るのじゃないかということだけを申し上げたいと思います。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、刑事局長の推測としては、六百八十二万円というばく大な金が新聞社B勘定から出ておることを社長である前川自身は知らなかった、それで犯意はないのだということのようですが、そこら辺が私は検察審査会検察庁意見の非常に分かれてくるところじゃないかと思うんですね。それは幾ら知らないという言いのがれをしても、一般のしろうとは、第三者の人は、自分私宅の土台である土地の購入資金がどこから出たか知らなかった——それはまあ十万円や二十万円程度のものなら、これはまあ前川というのは徳島の大ボスですから、そんな程度の金ならそういうこともあり得るが、そのばく大な金を知らなかったということをこれは前川は言うに違いない。しかし、そういうことを一体言うたからといって通るものだろうかというところに私は一つ問題点があると思う。まあいわゆる陪審とか常識というものを裁判の中にもっと入れなければいかぬという意見が一方ではいろいろな意味ではあるわけですが、そういうところに検察審査会との分かれ目があるように思うんですね。だから、そういうことでしょうな。どうです、もうちょっと……。だいぶ中へ入ってきたような感じですが。
  18. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 抽象論としてお言葉がございましたので、抽象論をもってお答え申すわけですが、仰せのように、ある犯罪について自分は知らなかったというような弁解、そういう弁解さえすればすべて事件はつぶれていくというようなものじゃないということは、いままでの幾つかの過去のいろいろな事件を見ましても、そんな取り扱い検察庁がしているとは思いません。また、事実そういうふうになっていないと思っております。しかしながら、その弁解が真実に合うということがその他の証拠によって認められます場合には、それをしも犯意ありというふうに断定しないこともこれまた検察庁がやっておることでございまして、その点は検察庁としましては非常に慎重な態度で従来事件取り扱いをやっておると思うのでございます。  それから先生のただいま現地でこういうふうに発表しておられるというそのお言葉を私信じて先ほどもお答え申し上げておるわけでございますが、私どものほうへ発表した要旨というようなものを現地からいただいておりますが、それにはそういうことは書いてないわけでございまして、まあ私は書いてないことを——以外のことも発表しておると思いますので、ただいまの先生のお言葉を信じましてお答えしたようなわけでございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 わしが何か検事正発表文に少し付加しておるような感じのことをおっしゃったわけですが、これはここにあるわけです、ちゃんと。それで、その発表文の第三項、第三項のさらに内訳が(1)(2)とあるわけですが、(1)の中にきちんと書いてあるわけなんです。それは本文のその部分だけを申し上げますと、「B勘定から支出された主な費途として判明したものは、和歌山新聞増資株払込資金四国放送株式など諸株式買集め資金社屋建設費の一部、大阪支社長社宅前川静夫私宅建築用宅地などの不動産購入資金等、合計約六千三百二十万円に達している。」とこれはきちんとした記述があるわけです。だからこの発表文だけを見れば、どうしてこの点が問題にならぬだろうかと第三者が考えるのはあたりまえなんですね。だいいち、そういう声明文原文どおり発表文法務省のほうに送らぬというのは大体おかしいじゃないですか。そのままを送るべきでしょう。これは最高検でも法務省でもいろいろ検討されていた事件なんですから。その検事正は、何かこの発表文の中で上のほうの方に見られたら困るというようなことでもあってそういう簡略なものにされたわけですかな、どういうことなんですか、それは。
  20. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私のほうでは、いまおっしゃるように、こちらでも御審議を願っておりますので、関心を持っておるわけでございまして、新聞発表されたということを聞きましたので、直ちに、新聞発表したということだが、その内容を知らしてほしいという電報を打ちまして、その回答としましては、新聞発表したものを速達便で発送しましたという返事が来まして、その速達便が参っておるわけでございますが、それのほうに談話として一項から四項にわたって書いてございます。それからいま三項といってお述べになりましたことと私どものほうでいただいております談話報告に書いてありますことは違っておるわけでございますが、しかし、私はこれはうそを報告したとかなんとか言うのではございませんで、発表してございます談話でございますので、聞いた人が疑問があれば質問をいたすでございましょうし質問に答えて述べられて、談話の骨子はこれでございますけれども、それに付加して答えるということもあろうかと思いますので、別段これを私どものほうと違うからそんなことを発表しているはずはないなどとは私申さないわけでございますが、報告を聞いておるのとは違っておるということだけをここに申し上げたわけでございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 それははなはだ不可解なことを聞くわけですが、談話というのはこの紙一枚です。これは一、二、三、四項を簡単に書いてある。しかし、これではよくわからぬので、別に発表文という詳細な説明書がこれの数倍のものがついておるわけなんです。それを検事正がなぜ一体上のほうに送ってこぬのか、これを一ぺん調べてみて下さい。
  22. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さっそくその件を調べてみまして、なお、その発表文の中にすでに発表しております事柄につきまして、私はここで捜査秘密理由に申し上げないというようなそういう態度は絶対とらないつもりでございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 それでちょっと私わかりましたがね。刑事局長が不起訴処分だからあまり突っ込んで説明したくないとこうおっしゃる気持ちはわかるわけだが、私のほうはまたその地元検事正がちゃんと発表しておることについてその付加説明を求める程度のことなんだから、なぜ言えぬのか、こういう立場でいままで押し問答しておったわけだが、私は、この詳細な発表文があなたのほうに来ておる、こういう立場でいままでやってきたわけです。あなたのほうは、談話という前の簡単な要約したものしか持っておらぬものだから、あまり突っ込んで言うては困るという立場であったように思うわけですが、そういうことは私いままで想像していなかったものですからね。なぜそういうばかげた、ちゃんと地元発表しながらそれを上に送ってこぬのか、そこをひとつ究明してほしいと思います。  そこで、次に移りますが、検察審査会からそういうふうな結論が出まして、検察庁としては現在これをどういうふうに扱われておられますか。
  24. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 検察庁としましては、この謄本の送付を受けましてから、新しい検事正にもなりましたし、次席検事もかわっておりますので、陣容を新たにしておりますので、さらに疑点につきまして独自の立場でもう一回再検討をしてみようということで再検討を行なっておる反面、足らないところについては再捜査もするということで、ただいま再検討並びにそれに伴う再捜査を開始し、実施をいたしておるという報告を最近受け取っております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 これは徳島地検の前の係とは全然別個な検察官がやっておるわけですね。
  26. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 前の主任検事がそのまま当たっておるか、別の検事が当たっておるかは、これはちょっとつまびらかにいたしませんけれども、監督者である検事正、次席は全く前の方とは違っておりますし、その監督指導のもとにやっておることでございますので、全く第三者的な立場で客観的にものごとを見ていこうという態度であることは、私もそう信じていいと思っております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば裁判所等でも、上級裁判所で下級のほうに差し戻しになる、そういう場合には、前の裁判官と別な人がその事件を担当するというふうにやっているわけですね。これは理屈として当然だと思うんですね。で、検察庁の場合にはそういうことに関しての明確な規定があるわけでもないと思いますが、しかし、このやり方としてはやはりそういうふうにやるべきじゃないかと思うんですが、これは実際どうなっておるんでしょう。
  28. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御指摘のように、検察庁にはそういう明確な規定はございませんのでありますが、実際の運用におきましては、裁判所のやり方等に準じまして、全く新たな立場でやるという場合には、全然その事件に関与したことのない検察官を選んで事に当たらせるという運用を実際問題としていたしております。でありますから、おそらくこの事件につきましてもそういう態度に出ておるものと思うのでございますが、この事件は重大事件でございましたので、次席検事が実質上の主任検事になってやっておったようでございますので、今度は次席検事がかわっておりますから、新しい次席検事の実質的な主任検事のもとにいまの再検討、再捜査ということを処理しておるのじゃないかというふうに思っております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、検察審査会から検察序とは違った結論を出してそうして回されてきたという場合の検察序の取り組み方ですね。人じゃなしに、今度は方針ですね。こういうことを承りたいわけなんです。本件だけじゃなしに、そういう事態になった場合に、一体、どういう腹がまえであるのか。
  30. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは私から申すまでもなく、起訴した事件につきましては裁判所という機関で公に処理されるわけでございます。不起訴になりましたものは、いろいろな事情でこれは公に中身をしないというたてまえをいっております。そうすると、検察官の不起訴の処分をした場合の中身について国民としては重大関心を持つ。そこで、検察審査会という民主的な機関によってその審査の機会をつくり、それによって審査をしてもらうということで、捜査秘密とそういう中身の公正とを担保しよう、こういう目的から生まれてきた制度でございます。でありますから、検察庁としましては、この民衆の意思を反映したと思われます審査会議決に対しましては全く虚心たんかいに耳を傾けるべきでありまして、また、その議決議決そのものにつきましてはこれを尊重して取り扱っていく、これはもう審査会発足以来ずっと検察庁がとってまいりました態度でございます。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 言葉ではそういうふうに言われますが、たとえばきょう配付を受けましたこの資料を拝見いたしますと、検察審査会検察庁意見を異にして、起訴すべきだ、あるいは不起訴にしたのは不当である、こういう結論を出して検察庁に回したものにつきまして、検察庁がこの審査会意見のとおり起訴に踏み切ったというものは、パーセンテージで言いますと一八・四%にしかなっておらん。八一・六%というものは検察審査会結論というものを無視しておるわけですね。これはどうもいま言われたことと実際にやっておられる仕事のやり方というものが違うんじゃないか。まあ質問をされますと、表向き検察審査会を非常に尊重するようには言われますが、実績というものは、いま申し上げたような逆ではないかというふうに思われるわけですが、尊重しておるのであれば、もっとこの数字というものは違ってこなきゃいかんのじゃないかと思うわけですが、どうでしょう。
  32. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは、いま御質問のことで尊重という意味結論をそっくりそのままのむというのが尊重であるということになりますと、事件検察官の専門家の目から見てとうてい証拠が十分でないというふうに考えましても起訴してしまうというやり方もございます。まあそういうやり方をしたほうがいいか、あるいは、自分らの気づかなかった点で指摘をされておる点があれば、それを十分またさらに捜査をしてみて、もう一回虚心たんかい判断をして、そうしてやはりこれは起訴をしないほうが相当だという結論になりましたならば起訴をしないでおくと、こういう態度がいいかという問題だと思うのでございます。自分らの意見と違った議決が来たら右から左へ不起訴と、こうやってしまっておるということであれば、これはもう尊重してない態度だと私は思うのでございます。しかし、どの事件につきましても、検察審査会結論として検事の処分と反対の結論が出ましたのは、検察庁取り扱いといたしましては、全部検事総長が自分で必ず見る書類の中に入れてあるわけでございます。そして、検察庁ではそういうものがあれば必ず報告を私どものほうにもよこします。そうして、それについてのすぐ再捜査を始めたとか、あるいは検討しておるとか、その経過を報告して、その結果慎重に検討したけれども起訴をしないほうがいいという結論になったから起訴をしなかったというふうに逐一報告をしてくるのでございまして、右から左に意見が違うというので検察庁意見どおりに処理をしたなんという事件は一件もないのでございます。そういう意見におきましては、私は非常に尊重してやっておるということを申し上げて一向はばからないのでございます。  ただ、事件の処理としましては、刑事事件でおよそ嫌疑があればみんな起訴して、無罪率を二割、三割といったようなそういう事件の運用をするのがいいということでそうやっておる国も外国のほうにはあるようでございます。日本は、伝統的に、起訴しないほうが刑事政策に合うというふうに考えました場合には、極力起訴はしないで改過遷善をはかる。また、どうせ裁判所に持っていっても事件は立たないんだという見通しに検察庁としても十分検討した結果なる場合に、あえては起訴をしない。これは検察庁の長年の伝統でございまして、現在無罪率というものは〇・五%から六%というような非常に低い率になっておるのでございますが、検察審査会事件だけはもっと高く運用するのがいいかどうか、これは検討を要する問題でございますが、従来の取り扱いといたしましては、尊重して必ず再検討の余地を残しているわけでございます。しかも、その結果に基づいてさらに慎重に処理しているわけでございます。その処理の段階におきましては、検事総長までその処理の結果を見ているということになっているわけでございます。これは検察庁としては最大限の尊重の態度でいるというふうに申し上げていいと思うのでございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、手続としては、地検だけできめないで、高検を通じて最高検まで来て、そうして最終的に処理されるわけですね、この種の事件は。
  34. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これが稟請事件になるというのではございませんで、処理はもとより地検の判断でございますけれども、中身を検事長、検事総長まで知っておりますので、その捜査報告のいかんによりましては、検事総長からもさらに意見を求められることもありましょうし、指揮も出るでありましょう。検事長からもそういうことがあるというようなことで、つまり上級官庁の監視のもとにおいて再捜査が行なわれ、再検討が行なわれる、こういう形になっているわけでございます。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 その点はわかりましたが、そこで、もう少し検察審査会結論の扱い方について一歩深めて質疑をしてみたいわけですが、現在の検察官の立場は、一般事件の扱いの場合には、有罪の証拠がきちんとはっきりそろっていても、起訴するしない、その点の考慮を払うことができる制度になっているわけですね。そこで、検察審査会から回ってきた場合には、私はその点は相当変わらなければいかんのじゃないかというふうに考えているわけなんです。検察審査会から事件が回されてまいりましても、法律の解釈として無理がある、あるいは証拠をそろえるのに無理があるという場合は、これは別なんです。そうでない場合には、検察官のそういう情状の考慮というものは排除されなければいかんものだというふうに考えるわけです。そういう点はどういうふうにお考えでしょう。
  36. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは確かに私どもその点は同感でございまして、検察官が見てこれは認められるのであるけれども、いままで処理してきたいろいろな事件との比較対照において、事情くむべき情状として起訴猶予という結論をかりにいたしたとします。が、検察審査会は、そういう情状はやはり考慮する必要がないということで意見を述べられる場合があると思うのでございます。そういうものにつきましては、徹底的に排除するというかたい態度で臨むことは、これは私もいささか同意いたしかねるわけでございますが、そういう考え方につきましては、検察官は、何といいますか、十分その考え方を考慮に入れる必要があるというふうに思うのでございます。ただ、申すまでもないことでございますが、非常に一般の標準と違うような場合、検察官はたくさんの事件を見て、かなり大きな立場で情状を判断いたしますが、検察審査会におきましては、あるいはまた個々の裁判所におきましては、当該事件についてものを見るということが多いのでございまして、たとえば財政犯のごときものにつきまして、かつて一厘事件などと申して、検事は何でも有罪になるなら起訴するということで起訴した。しかし、起訴した以上は、有罪である以上、無罪とするわけにはいかないけれども、何と申しますか、いわゆる一厘事件でそんなものは無罪だという裁判があって、われわれも参考にしておる事例があるわけでございますが、それは極端な例でございますが、そういうような場合に、なお検察審査会起訴すべきだという意見であるから、検察官がそれに応じて一般の標準とはかなりひどい違いがあるけれどもなおやるべきであるかどうかというようなことになりますと、これは一がいに言えないのでありまして、そういう考え方について、いままで考えておるよりももっと尊重した態度で臨むべきだということは全く同感でございますが、それだからといって全部それを排除してしまってそういうものは考慮してはいかんのだというような見方は、これはとるべきでないというふうに考えております。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 私の意見を原則として認めながら、若干あまり厳格過ぎても困るというふうな御意見のようですが、その点はやはり踏み切っていいんじゃないか、情状の点は。そうしませんと、そういう専門家でない人がいろいろな世間の標準から見てこういうものを検察官が起訴しないのはけしからんというその常識を生かしていこう、できるだけそういう常識というものが検察運営の中に入ってくるようにということがこういう審査会制度のある根拠なんですからね。だから、私はほんとうは情状については厳格に、もっと欲を言うならば、そういう証拠の問題、あるいは法律解釈の問題等にしても、案外検察官というものが専門家であるだけにかたく考え過ぎておる点があるかもしれん。で、しろうととしては、どうも現実に起きておる事態を見ると、そういう解釈はふに落ちない。あるいはまた、証拠の問題につきましても、極端なことをいえば、多少証拠が足らんでも前後の事情でわかるじゃないか、多少証拠が足らぬといって逃げていくのは了承できない。ちょっと言葉の言い回しなどでのがれてしまうのは納得できない。こういうふうな気持を持つところに、しろうとの意見の参加というもののよさがあるわけなんですね。だから、法律解釈なり証拠の面につきましても、もっと私はこの制度の趣旨に沿ったような立場でやはり考えてほしいんです。決して私はあまり根拠もないのにどんどん人を起訴したらいいというようなそんな暴論を吐いているわけじゃないんですが、どうせこういう問題が起きている場合には、当事者間の非常なあつれきがある、あるいは社会的に注目を浴びている問題ですからね。やはりそういうことを背景にして審査会の皆さんも結論を出すわけですから、この感覚というものは、やはり法律解釈、証拠等の見方についても尊重されんといかんと思うんですがね。その点はどうでしょうか。
  38. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 全く同感でございます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 そういう立場でやっていただきますと、この徳島事件の最終の扱いというものはなかなか予断を私は許さぬと思うわけでして、まあひとつ今後ざっくばらんに検討してほしい。検察庁が一ぺん結論を出したから、何とかその筋を立てていこうというふうなちっぽけなことを考えないでやってほしいわけです。大きな態度でやってもらうことのほうが、結果においては検察庁のやはり信用も私は高まるゆえんだと思うわけです。  そこで、最後に付加してお聞きしたいのは、最高裁のほうにお聞きしますが、この徳島検察審査会の審査が始まりました後に、問題の前川静夫氏より徳島の地裁所長あるいは審査会事務官あるいは審査会長などに相当きつい手紙等が出されたように聞いているわけですが、そういう点について何か知っておられましたらお答えを願いたいと思います。
  40. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君)  ただいまの御質問でございますが、私どものほうは検察審査会の仕事についてあまり詳しい報告は従来受けておらない慣例になっておりまして、そのような抗議文のようなものが出ているということはまだつまびらかにいたしておりませんが、しかし、何らかの方法でそういうことがあったかどうかを確かめてみたいと存じております。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 これはぜひひとつ、突然聞かれてもわからぬかもしれませんが、お調べを願いたいと思います。といいますのは、こういう事件が起きたというのは、普通地方のどこの府県に行きましても、たいてい新聞社というものは二つくらいあるわけですね、有力な地方紙というものは。徳島県では徳島新聞一つなんですね。ほかにもありますが、いわゆる対立しているほどの大きな力のものじゃないんです。一つなんです。徳島市では、徳島新聞社長四国放送という放送機関社長も兼ねている。全くマスコミ関係というものを独占したわけなんですね。かってなふるまいを始めるというところから起きてきている問題なんです。で、そういうことがまた心ある人の批判の対象にもなる。したがって、検察庁の処分が出たときには、裁判所検察庁でもああいうマスコミを独占してがんばっているボスにはやはりだめなんだと、こういう批判がありまして、本来ならば、これだけ問題になったことですから、告発人が当然みずから審査会に持っていく案件です。ところが、もうむしろ持っていったってだめだというふうな感じを持っておるわけなんですね。そういう一般の市民から見れば、検察庁裁判所審査会もみんな一つにうつるわけです。それでまた、前川静夫氏のほうも審査会という独立機関に対して干渉するような文書を出したやに聞くわけなんですね。これはほんとうにそういうものが出ているとしたらけしからぬ行動だと私たち思っているんです。  それで、ぜひ今後の取り調べというものをひとつ既住のことにかかわらないで、公正にやってもらう。審査会の諸君なり市民の皆さんがやっぱり納得できるような結論を希望しておきます。  一応きょうのところはこの辺で……。
  42. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本件に関する調査は一応この程度にいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後零時二十二分散会    ————————