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1964-06-25 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第48号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十九年六月二十五日(木曜日) 午後一時五十二分開会 ――
―――――――――――
出席者
は左のとおり。
委員長
青田源太郎
君 理事 梶原 茂嘉君 森 八三一君 矢山 有作君 渡辺
勘吉
君 北條 雋八君
委員
植垣弥一郎
君
岡村文四郎
君 木島 義夫君 北口 龍徳君 櫻井 志郎君 仲原 善一君 温水 三郎君
野知
浩之君 藤野 繁雄君 堀本 宜実君 森部
隆輔君
山崎 斉君
大河原一次
君 大森 創造君 北村 暢君
小宮市太郎
君 中田 吉雄君 牛田 寛君 高山 恒雄君
衆議院議員
発 議 者
川俣
清音
君 発 議 者 稲富
稜人君
国務
大臣
農 林 大 臣 赤城
宗徳
君
政府委員
農林政務次官
松野
孝一
君
農林省農林経
済局長
松岡 亮君
林野庁長官
田中 重五君
水産庁長官
庄野五一郎君
通商産業省軽
工業局長
倉八 正君
事務局側
常任委員会専門
員
安楽城敏男
君 ――
―――――――――――
本日の会議に付した案件 ○
林業基本法案
(
内閣提出
、衆議院送 付) ○
森林基本法案
(
衆議院送付
、
予備審
査) ○
林業基本法案
(
衆議院送付
、
予備審
査) ○
肥料価格安定等臨時措置法案
(
内閣
提出
、
衆議院送付
) ○
漁業災害補償法案
(
内閣提出
、衆議
院送付
) ――
―――――――――――
青田源太郎
1
○
委員長
(
青田源太郎
君) ただいまから
委員会
を開きます。
林業基本法案
(閣法第一五一号)及び
林業基本法案
(衆第四四号)を
議題
とし、順次
提案理由
の説明を聴取することにいたします。
松野孝一
2
○
政府委員
(
松野孝一
君) ただいま
議題
となりました
林業基本法案
につきまして、その
提案理由
及び主要な
内容
を御説明申し上げます。
わが国
の
林業
は、今日まで、
木材
その他の
林産物
の
供給
、
資源
の
有効利用
、
国土
の
保全
、
国内市場
の
拡大等
、
国民経済
の
発展
と
国民生活
の安定に寄与してまいりました。しかるに、近時、
わが国経済
の
発展
に伴いまして、
林業
をめぐって大きな
情勢
の
変化
が見られるのであります。すなわち、
木材需要
の
増大
、
開放経済体制下
における
外材輸入
の
増加等
、
木材需給構造
の
変化
が生じ、また農
山村
からの
労働力
の流出が顕著となる等の趨勢がこれであります。申すまでもなく、
林業
は、本来、
生産期間
がきわめて長いこと等、他
産業
に比して不利な
自然的条件
を有するばかりではなく、
林業経営
の大
部分
が
零細規模
であること、
林業経営者
の
経営意欲
が一般的に低調であること等の
脆弱性
を有しております。 これらを克服して、諸
情勢
の
変化
に対応し、
林業
の総
生産
を
増大
させ、他
産業
との
格差
が是正されるように
生産性
を
向上
させるとともに、
林業従事者
の
所得
を
増大
させることにより、
林業
の安定的な
発展
をはかることが強く要請されているのであります。 その要請にこたえるには、従来の
資源政策
を基調として
林業政策
のみでは十分ではありません。さらに新たな角度から、
産業
としての
林業
の
振興
に関する
基本
的な
政策
の
目標
を明らかにし、これに基づいて諸般の
施策
を講じていくことが必要であります。このことは、
林業
のになう重要な
使命
にこたえると同時に、
国民経済
の
発展
と
国民化活
の
向上
を念願する
国民
の期待にこたえるゆえんであろうと
考え
るものであります。これがこの
法案
を
提出
いたしました
理由
でございます。 次に、この
法案
の主要な
内容
につきまして御説明いたします。 まず、第一章
総則
について申し上げます。第一に、以上申し述べましたような
趣旨
を明らかにして、この
法律
の
目的
を
規定
しております。次いで、国の
林業
に関する
政策
の
目標
は、
国民経済
の
成長発展
及び
社会生活
の
進歩向上
に即応して、
林業
の自然的、経済的、
社会的制約
による不利を補正し、次の
事項
の実現をはかることにあるものとしております。すなわち、
林業
総
生産
の
増大
を期するとともに、他
産業
との
格差
が是正されるように、
林業
の
生産性
を
向上
することを目途として
林業
の安定的な
発展
をはかり、あわせて
林業従業者
の
所得
を
増大
して、その経済的、
社会的地位
の
向上
に資することがこれであります。 第二に、この
目標
を達成するため、国は、
林業
に関する
政策全般
にわたって必要な
施策
を総合的に講じなければならないこととしております。それらは、(1)
林野
の
林業的利用
の
高度化
、(2)
林業構造
の
改善
、(3)
林業技術
の
向上
、(4)
林産物
の
需給
及び
価格
の安定と
流通
及び
加工
の
合理化
、(5)近代的な
林業経営
の
担当者
及び
技術者
の
養成確保
、(6)
林業労働
に従事する者の
養成確保
及び
福祉
の
向上
の六項目として明らかにしております。そして、これらについての
施策
が、画一的でなく、
地域
の自然的、経済的、社会的諸
条件
を十分考慮し、きめこまかく行なわれるべきものとしております。 また、これら諸
施策
を講ずるにあたっては、
林業従業者等
の自主的な努力を助長することを旨とすべきものとしております。さらに、
政府
は、これら諸
施策
を実施するため、必要な
法制
上及び
財政
上の
措置
を講じ、かつ、必要な
資金
の融通の
適正円滑化
をはからなければならないこととしております。 第三に、
国有林野事業
につきましても、最近の
社会経済情勢
の推移に即応して、
林業政策
上
適確
な位置づけを行なうこととしております。すなわち、国は、諸
施策
を講ずるにあたっては、
事業
の
企業性
の
確保
に必要な考慮を払いつつ、その適切な
運営
を通じて、重要な
林産物
の
需給
及び
価格
の安定に貢献し、
林業
総
生産
の
増大
に寄与し、
林業構造
の
改善
のための
積極的活用
をはかるようにするものとしております。その場合、
国土
の
保全
その他
公益的機能
の
確保
とともに、
農業構造
の
改善
その他
産業
の
振興
または
住民
の
福祉
の
向上
のための
積極的活用
をもはかるようにつとめるものとしております。 第四に、
政府
は、毎年
国会
に、
林業
の
動向
及び国が
林業
に関して講じた
施策
に関する
報告
並びにその
報告
にかかる
林業
の
動向
を考慮して講じようとする
施策
を明らかにした文書を
提出
しなければならないこととしております。 以上が第一章
総則
の主たる
内容
でございます。第二章から第四章までにおきましては、
林業生産
の
増進
及び
林業構造
の
改善
、
林産物
の
需給
及び
価格
の
安定等
並びに
林業従事者
について、必要な
施策
の
方針
をそれぞれ明らかにすることとしております。 すなわち、
林業生産
の
増進
及び
林業構造
の
改善
に関する第二章におきましては、第一に、
林産物
の
需要
及び
供給
並びに
森林資源
の
状況
に関する
長期
の
見通し
を立てることとしております。次いで、この
見通し
を参酌して、
林業
の総
生産
の
増大
と
生産性
の
向上
をはかるよう、
林野利用
の
高度化
、
林業技術
の
向上等林業生産
に関する
施策
を講ずベきこととしております。 第二に、
林業構造
の
改善
をはかるため、
林業経営
の
規模等
による
経営形態
の差異を考慮して、必要な
施策
を講ずるとともに、
小規模林業経営
についてその
規模
の
拡大
をはかることとしております。また、
林業生産
を
合理化
し、
林業経営
の
発展
に資するよう
生産行程
についての協業を助長することとしております。さらに、以上の
施策
を総合的かつ効率的に遂行するため、
林業構造改善事業
を推進することとしているのであります。
林産物
の
需給
及び
価格
の
安定等
に関する第三章におきましては、重要な
林産物
について
国内生産
を
円滑化
し、
外材輸入
にも期待しまして、その
需給
及び
価格
の安定をはかることとしております。また、
林産物
の
流通
及び
加工
の
合理化
をはかるため必要な
施策
を講ずることとしております。
林業従事者
に関する第四章におきましては、近代的な
林業経営
の
担当者
または
技術者たる
にふさわしい者の
養成確保
と、
林業労働
に従事する者の
養成確保
及び
福祉
の
向上
をはかるため必要な
施策
を講ずることとしております。 次に、第五章におきましては、
林業行政
に関する
組織
の
整備
及び
運営
の
改善
と
林業団体
の
整備
についての
方針
を述べております。 最後に、第六章におきましては、総理府に、
林政審議会
を設置することとし、その
組織等
につき必要な
事項
を定めております。なお、
林政審議会
は、この
法律
の
規定
によりその
権限
に属させられた
事項
を処理するほか、
内閣総理大臣
または
関係
各
大臣
の諮問に応じ、この
法律
の施行に関する
重要事項
を調査
審議
するものであります。
林業基本法案
の主要な
内容
は、以上のとおりでございます。このようにこの
法律
の
目的
は今後の
林業
の向うべき道を示すことにありますので、これに基づく具体的な
施策
につきましては、この
法案
の
趣旨
により、とりあえず本
年度
においてもその一部について
措置
することとするほか、今後にわたって、
法制
上、
予算上等
の
措置
を講じていく所存であります。 何とぞ慎重御
審議
の上この
法案
をすみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
青田源太郎
3
○
委員長
(
青田源太郎
君) 次に、
川俣衆議院議員
。
川俣清音
4
○
衆議院議員
(
川俣清音
君) 私は、
日本社会党
を代表いたしまして、ただ今議題となりました
森林基本法案
について、その提案の理由及び概要の御説明申し上げます。 現在
わが国
の
山林原野
は、
国土
総面積の約六七%を占めています。これを有効かつ高度に
開発
することにより、
国民経済
の
発展
と
国民
の福祉の増進に寄与することは、国の重要な責務であります。 しかるに現状をながめてみまするに、
山林原野
の三分の一を占める
国有林
は
特権的支配
を受け、健全な
経営
が行なわれず、
地元住民
の
利用
が阻害されています。
地方公共団体
の所有する
公有林
は、
地方財政窮迫
のしわ寄せを受けて過伐、乱伐におちいり、粗放な状態に放置されています。
私有林
はどうかというと、
山林所有者
の大部分は零
細山持ち
で、その
過小経営
と
資本不足
のためにその
山林
を有効に
利用
できず、
他方少数
の
大山林地主
は
地元住民
の
利用
から隔絶された大
山林
を独占しながら、多くの場合その
経営
がきわめて粗放かつ前近代的であります。すなわち、国有、公有、私有いずれの場合も、
森林
の
所有権
がすべてに優先して過度に重視され、その基盤の上にきわめて不適正な財産保持的な性格の濃い
経営
が行なわれています。このため
林業生産
の
発展
が妨げられ、
木材需要
の増大に対して供給が伴わず、
木材価格
が高騰し、しかもその
価格
の多くの部分が地代として
山林所有者
の不労所得に吸収され、
林業労働者
、
山村農民
、及び
中小産業者
の
所得水準
は著しい低水準に押えられています。
山村
における
産業
の
発展
が停滞し、
山村
と他の地域との
経済的格差
がますます拡大している根本的な原因はここにあります。このような事態を根本的に改めるべく、
森林
に関する新たな
政策
の目標と原則を示すというのが、この
法律案
の提案の理由であります。 次に、その内容であります。 第一に、私
ども
は、
国土
は
国民
に与えられた天然の
資源
として、何人もこれを公共の利益に合致するように最高度に
利用
しなければならないという義務をになっていると確信するものであります。そこで、まず全
国土
を科学的に調査し、合理的な
土地利用区分
と
土地利用計画
を定めるべしというのが私
ども
の主張であります。このためには、
国土高度利用促進法
という
法律
の
立法化
が必要となるわけであります。こうして、
農業
に
利用
すべき
土地
の区分と、
林業
に
利用
すべき
土地
の区分が明確になった上で、
農業適地
においては
農業基本法
を実施し、
林業適地
においてはこの
森林基本法
を実施する、こうして
国土
の
開発
と
高度利用
を行なうということ、これがこの
法律案
の前提となる
根本理念
であります。したがってこの
根本理念
を貫くためには、
土地
に関する
所有権
、
利用権等
の
権利関係
にも、それに応じた改革を加えなければならないというのが私
ども
の立場であります。 第二は、
森林
というものの
機能
をどう
考え
るかということであります。
森林
の
機能
は、一つは
国土
を保全して災害を防止するとともに、さらに積極的に水源を涵養し、
国民
の保健、福祉を増進することにあります。これを
森林
の
公益的機能
と呼ぶことができると
考え
ます。もう一つは、
産業
としての
林業
の
生産力
を高めて、
木材等
の
林産物
の供給を安定的に拡大し、
林業従事者
の所得と生活を
向上
せしめ、もって
国民経済
に奉仕し貢献することにあります。これを
森林
の
経済的機能
と呼ぶことができるでしょう。この二つの
機能
はともに重要な
機能
でありますが、中でも前者の
機能
をまず十分に発揮せしめ、その前提の上において後者の
機能
をも十分に発揮せしめる、これがこの
法律案
の目ざすところであります。この
法律案
の第一条においてこの目標を規定いたしております。最近
政府
の
林業政策
が、ややもすると
森林
の
公益的機能
を軽視し、
経済的機能
だけを重視しようとする傾向が顕著に見えることはまことに危険な傾向といわなければなりません。 第三は、
林政
の
計画性
の問題であります。ただいま申し述べました
森林
の
公益的機能
と
経済的機能
を効果的に発揮せしめるには、国及び
地方公共団体
の行なう
林政
の
施策
が具体的にそれに即した事項に向けられなければなりません。これを規定しているのが第二条、第三条、第四条であります。そして第五条では、
政府
が
林政審議会
の意見を聞いて、
森林資源
及び
林業
に関する
長期見通し
を立て、これに即して十年を一期とする
林政基本計画
を樹立し、国会に提出するということを規定いたしております。第六条では
政府
の実施した
施策
の結果の
年次報告
及び
基本計画
に基づいて、
政府
がこれから講じようとする
施策
の
年次計画
を作成して国会へ提出すべきことを規定いたしております。 また第十五条では、第五条の
林政全般
にわたる
基本計画
とは別に、現在も行なわれている
森林計画制度
を
強化改善
して、個別の
森林
の
所有者
または
森林
にかかる
使用収益
の
権利
を有する者の
森林施業
を
森林計画
に基づかせることを規定いたしておりますが、この場合も、各個別の
林業者
は
森林
の
公益的機能
と
経済的機能
を十分に発揮させるように施業する責任を負うことは当然のことであります。この責任が効果的に果たされるように、第十五条第二項では、
林業者
、
林業労働者
、
地方公共団体
の長、
学識経験者
の代表からなる
地域林業協議会
を設けて、その意見を十分に反映させるということを規定しているのであります。 第四は、
国有林
の
あり方
であります。
森林
の二つの
機能
を効果的に発揮せしめるに際し、
国有林
の果たすべき
役割り
、任務が特に大きいことは申すまでもありません。そこで私
ども
の
基本法案
では、第八条から第十三条にわたって
国有林野事業
の
あり方
について規定いたしております。 まず第八条では、
国有林
の
存在目的
について規定し、そして第九条では、この
国有林
の
存在目的
を果たすために、国が
経営
することが必要な
森林
、あるいは国が
経営
することが適当な
森林
を国が買い入れて、
国有林
に組み込むことを規定いたしております。こうして国の
林政
の基幹となる
国有林野
を十分に確保しなければならないと規定したのであります。その反面、第十条では、
国有林野事業
の使命の達成に支障を及ぼさない範囲内において、地元の
林業者
の
林業経営
の
規模拡大
に資するよう、
林業者
の
共同組織等
に
国有林野
のうちの適当なところを民主的に使用させることを規定いたしております。また第二十一条では、
農牧林混合経営
の
発展
を助長するため、
国有林
及び
民有林
のうちの
農用経営地
として適地である
土地
が、
農林業者
及びその
共同組織
によって取得あるいは
使用収益権
が設定できるようにするということを規定いたしております。
農業構造改善
のためとの名目で、
国有林
にのみ解放の要求を向けることは、
私有林
、
大山林地主
の
自己保全
の策としか
考え
られません。また解放される
国有林野
は、
地元民
の
共同組織
によって真に有効かつ民主的に
利用
されるべきであって、一部の者の利権に
利用
されることは許されません。こうした点について、
政府
もまたすみやかに適切な方針を明示すべきであります。 次に、
国有林野事業
の
経営
に関することでありますが、私
ども
は、その
経営
が最も効率的かつ民主的に行なわれるように、
国有林野事業
は原則として
直轄直営
を
基本
とすることとし、そして
国有林野事業
に従事する
労働者
の雇用の安定をはかるため、その常時雇用を促進することを規定いたしております。これは第十一条、第十三条に規定されております。また第十一条では、
国有林野事業
の
民主的運営
を促進するため民主的な
審議機関
を設置すると定めておりますが、これによって
国有林
の
立木処分等
を含めて
経営
の
民主化
をはからなければならないという
考え
であります。第十二条では、
国有野特別会計制度
の
改善
について規定しております。これは
企業的業務
と
行政的業務
を
勘定区分
をして、
企業的業務
については単
年度制
を
基本
としつつも、同時に会計の
長期的弾力性
を持たせ、この
勘定
において
剰余金
の生じた場合は、これを原則として
国有林
の
資源培養
のために還元してゆくという
考え
であります。
行政的業務
の
勘定
については、
国有林
、
民有林
にわたる
治山事業
の
勘定
、
民間林業
の
振興
をはかる
民間林業振興勘定
、
国有林所在市町村
の
振興事業
の
勘定等
が必要になろうと思いますが、これらは
公共負担
の思想によって
所要経費
を
一般会計
の資金によるべきだという
考え
であります。現状においては、
民間林業
への
林政協力
の経費をつくり出すため、
国有林野事業
で無理に
剰余金
をひねり出そうとして、
国有林
の伐採や
立木処分
がきわめて便宜的に操作されている傾向が見られますが、これはこの際根本的に改めなければならないというのが私
ども
の
法案
の規定するところであります。以上が
国有林野事業
についての私
ども
の
考え
の概要であります。 第五に、私
ども
の
基本法案
の中での重要な点は、
林業生産
を増大させ、そして
林業経営
の
共同化
を推進するということであります。この点では、第十五条で現行の
森林計画制度
の
強化改善
について規定しておりますが、これはすでに申し述べましたので省略いたします。第十六条では林道の整備について規定しておりますが、ここでは、林道は
森林資源
の
開発
はもとよりのこと、あわせて
山村
における
交通通信条件
の
改善
、及び
観光開発
、
産業開発等
のためにもきわめて重要な役割を果たすものであることは明らかなことでありますので、その意味合いにおいて、林道の開設、改良、
管理等
についてその費用の国の負担を明確にすべきだという
考え
に立っております。第十七条の造林の推進でありますが、ここでは、国の
施策
として造林の助成を強化するという
一般的施策
のみでなく、特に、
地方公共団体
の所有する
林野
及び
私有林
の
水源涵養林
に対し、国みずから
官行造林
を強力に実施するということを規定しております。この場合は、現在
森林開発公団
が単なる
トンネル機関
として行なっている分
収造林
の業務は廃止されることになるわけであります。 第十九条では
入り会い権
の
権利
の
近代化
、第二十条では
林業経営
の
共同化
を規定しております。これはいわゆる
零細林業者
の
切り捨て
であり、
農業
における
零細農切り捨て
と同じ思想に立つ
政策
であります。この
構造改善事業
のために、
政府
は、
金融政策
としては
上層山林所有者
に
山林買い取り資金
を融資したり、あるいは
部落有林
の
入り会い権
を解体し私権化して、
下層農民
の
入り会い権
の
上層農
への兼併を促進したり、あるいはまた
国有林野
を
上層農
に優先的に払い下げる等の方法で、
自立経営林家
及び
企業林業
を育成しようとしています。これは一言にしていえば、
弱肉強食
の原理を
林政
に露骨に導入しようとするものであります。こうした
林政
の方向に私
ども
は反対であります。そこで、私
ども
の
森林基本法案
の第二十条では、国が
林業従事者
の
生産共同組織
を育成して、
零細山林所有者
もひとしくこの
共同組織
の中においてその
経営
を
向上
させることのできるように援助しながら、しかも
共同組織
という単位で見れば、
林業経営
の
規模
が大
規模
化されて、進んだ技術や機械を導入して
生産性
の高い
林業経営
ができ、しかもその中で
共同経営
に参加している
林業従事者
の
所得水準
も大幅に
向上
できるという、そういう
経営
の姿を目ざしているものであります。また私
ども
の
森林基本法案
の第十九条は、
入り会い権
にかかわる
林野
の
権利関係
を
近代化
するということを規定いたしておりますが、これも、
近代化
された
権利関係
を直ちに
経営共同化
の方向へ誘導してゆくという
考え
に立つものでありまして、
近代化
された
権利関係
を分解させて上層への兼併と下層の
切り捨て
を進めるという
政府
の方針とは全く異なる方針であるということを特に申し上げたいのであります。 御承知のとおり、現在の
わが国
の
林業者
の大部分はきわめて零細な
山林所有者
であり、この
零細性
をそのままにしておいては
林政
の見るべき前進をはかることは不可能であると思うのであります。ところが、この
林業経営
の
零細性
を打ち破るには、二つの道しかあり得ないというのが私
ども
の
考え
方であります。一つは、
資本主義
の
弱肉強食
の法則を使って、数多くの零細な
経営
を
切り捨て
、その
山林
を兼併させることによって
規模
の大きな
自立経営林家
、もしくは
企業林業
を育成してゆく道であります。
政府
の
構造改善
の道がこれであります。もう一つは、零細な
経営
を
共同化
の土俵の中で生かしながら、しかも全体としての
経営単位
は大
規模
化されるという
共同経営
の道であります。私
ども
の
基本法案
の目ざすところがこれであります。この二つの道のどちらが
山村住民
の利益に役立つか、どちらがより民主的であるか、この対決がいま日本の
林業
の前に迫られていることを私
ども
は確信いたしているのであります。 なおまた、
林業経営
の
共同化
との関連で、本法の第二十一条の規定に注目していただきたいと思うのであります。
わが国
の
山村地帯
においては、
農業
、
畜産業
、
林業
は切り離せない
相互関係
にあります。大部分の
山村
の農家は、
農業
をやっていると同時に畜産もやり、また少しばかり
山林
も
経営
いたしております。この二つをあわせて
山村住民
の生計が維持されているのであります。そこで、この三つを有機的に組み合わせて
農牧林混合経営
を
発展
させることが、
山村経済
の
振興
のためにどうしても必要であります。第二十一条では、この
農牧林混合経営
の
発展
の
助長策
として、
国有林
及び
民有林
のいかんを問わず、
土地利用区分
によって農用地として適当ということに判定された
林野
は、これを
地元民
に取得させるよう、あるいは
使用収益
の
権利
を設定させるよう、国の
施策
を講ずるというように規定しているのであります。そして、この
農牧林混合経営
もまた、できるだけ
共同経営
の形態をとれるように、国の援助と指導を強めるべきであるということはもちろんのことであります。 第六に、私
ども
の
基本法案
の重点は、
木材等
の流通を
合理化
して、
需給
と
価格
を安定させることにあります。第二十四条では、
国内産木材等
の供給の
円滑化
をうたっていますが、この点では、この
法案
は特に
国有林
が一定の
木材
の備蓄を持って、
需給
の動向に応じて弾力的に市場へ供給できる体制を考慮しているわけであります。また同じ第二十四条で外国産
木材等
の輸入の
計画化
及び調整をうたっていますが、これは
国内需給
の状況に応じて、あるいは
外材輸入
を促進し、あるいは
外材輸入
を制限する、その計画と調整の権限はあくまで国の手に確保し、またそれに伴い、港湾や貯木場の設備を
政府
の責任で整備すべきだという
考え
であります。第二十五条では、
木材等
の流通につきまとう前近代的な
商慣行
を是正するというねらいから、公爵の
木材市場
を整備するということを規定いたし、それにあわせて、
森林組合
もしくは
製材業者等
の
協同組合
の行なう購買、加工、販売の
事業
の
発達改善
をはかることを規定いたしております。 第七に、私
ども
の
基本法案
は
林業従事者
の福祉
向上
と
山村
振興
を大きな重点といたしております。いままで私の申し述べました各条項の御説明でも明らかなように、いわばこの
基本法案
の全体を通じて、最終的目標は、
林業従事者
の地位を
向上
して、
山村
地域の格差を根本的に解消するというところに置かれているわけであります。具体的に申し上げますと、
国有林野事業
の
経営
、林道の整備、造林の推進と
林業経営
の
共同化
、
農牧林混合経営
の
発展
助長等について、私
ども
の
基本法案
で規定いたしている内容は、すべて
林業従事者
の福祉の
向上
と、
山村
の地域住民の所得
向上
を目ざしているものにほかなりません。それに加えて、いわば最終的な確認の形において、第二十六条で
林業労働者
の雇用の安定、労働条件の
改善
、労働関係の
近代化
、社会保障の拡充等のために、国は必要な
施策
を講じなければならないと規定いたしております。これは、現状におきまして、
林業労働者
が他の
産業
の
労働者
に比べて、労働行政、社会保障行政の諸
権利
を受けるべき水準がきわめて立ちおくれているので、これを国の責任において大きく引き上げるという趣旨であります。また第二十七条では、
山村
の生活環境の整備のため、
山村
における交通、通信、衛生、文化等の環境整備、生活
改善
の措置を国が講ずべきことを規定いたしております。こうして、
林業従事者
、あるいは
山村住民
を人間として尊重し、その福祉を
向上
させるところに私
ども
の
基本法案
の最大の目的があるのであります。 以上が、私
ども
の
森林基本法案
のおもなる内容であります。その他に、
林業行政
組織の整備へ
林業
関係の団体の整備、あるいは
林政審議会
の設置等についての必要な規定もいたしてございますが、これは
法案
を御一読いただけば明らかなことでありますので省略いたします。 最後に、この
基本法案
の関連法について御説明申し上げます。この
基本法案
が成立した場合、その中に盛り込まれております諸原則を実施するための各種の関連法の立法が必要となります。私
ども
の構想では次のようなものが必要と
考え
られます。 第一は
国土
筒度
利用
促進
法案
であります。全
国土
の調査に基づき、
国土
高度利用
の目的に従って
土地利用区分
と
土地利用計画
を定め、
土地
の
利用
をこの区分と計画に従わせる。またこのために必要な
土地
に関する
権利
の調整を行なうというのがこの
法案
の趣旨であります。 なおこの
法案
は、
森林基本法
の関連法というよりは、むしろ、
農業基本法
及び
森林基本法
の前提となるべきものであります。 第二は、
国有林野事業
法案
であります。その趣旨は、一、
国有林野事業
の目的、意義づけを明確にする。二、国による民有
森林
の買い入れと、及び
国有林野
の民間への売り渡し、
使用収益権
の設定等について規定する。三、
国有林野事業
の運営につき、直用直営の原則と請負導入の関連、立木売り払いの方法及びその他
国有林野事業
の運営の
民主化
に資するための中央、地方の
審議機関
の設置等を規定する。四、
国有林野
労働者
の福祉
向上
について規定する等であります。 第三は、
国有林野事業
特別会計法の改正であります。その趣旨は、
国有林野事業
特別会計の内部において、
企業的業務
の
勘定
と
行政的業務
の
勘定
を区分してそれぞれの経理を明らかにする。なお、
行政的業務
の
勘定
では、
国有林
と
民有林
を通ずる保安林
事業
を含くむ
治山事業
の
勘定
、
民有林
振興事業
の
勘定
、
国有林
所在農
山村
の
振興事業
の
勘定等
を設け、その経費は原則として
一般会計
からの繰り入れによるべきことを規定する。
企業的業務
の
勘定
においては、経理に弾力性を持たせ、その
剰余金
は原則として
国有林
の
資源培養
のために還元すべきことを規定する等であります。 第四は、
国有林
労働者
雇用安定
法案
であります。これは
国有林野事業
に主としてその生計を依存している
労働者
の常時雇用の促進と、降雪、積雪等により作業を休業する場合の特別休業手当の支給について規定するという趣旨であります。この
法案
は、すでにこの国会にわが党から提案の手続をとっております。 第五は、労働社会保障関係法等の改正であります。これは労働関係及び社会保障関係諸法規について、
林業労働者
も他の
労働者
と同じ
権利
を受けることができるような改正を行なうというものであります。 第六は、保安林
法案
であります。これは保安林制度を確立し、その整備、管理の手続について規定するとともに、国による
国土
保全上必要な
森林
等の買い入れについて規定し、これを恒久法とするという趣旨であります。 第七は、治山治水緊急措置法の改正であります。その趣旨は、治山治水の
事業
の計画的実施のための措置を規定するとともに、その
事業
費の負担についての責任を明確にするということであります。 第八は、
森林計画
法案
であります。これは現行
森林
法のうちから
森林計画
についての規定を独立させるものでありまして、一、全国及び地方
森林計画
の樹立について規定するとともに、その計画と
林業者
の個別の
森林施業
計画との有機的関連について規定する。二、全国、地方
森林計画
の樹立及び実施については中央、地方の審議会の意見を聞くべきことを規定する。三、
森林計画
に基づく
林業者
の個別の
森林施業
計画の樹立及び実施については、
地域林業協議会
の意見を聞くべきことを規定するという趣旨のものであります。 第九は、林道
法案
であります。この趣旨は、一、
林業
総
生産
の増大と
林業生産
性の
向上
をはかるための林道の整備
開発
について規定する。二、林道が、
林業生産
に対してのみならず、奥地農
山村
の
産業
開発
、
観光開発
、及び
交通通信条件
の
改善
に果たす
役割り
にかんがみ、その整備
開発
の
事業
費の負担についての国の責任を明確にするというものであります。 第十は、造林
法案
であります。これは、一、造林
事業
の促進をはかるための国の助成措置について規定する。二、
地方公共団体
の所有する
林野
及び
私有林
の水源林に対して国の行なう分
収造林
について規定するという趣旨のものであります。ことにこの第二の点は、
官行造林
を復活するという
考え
に立つものであります。 第十一は
入り会い権
近代化
法案
であります。これは、
入り会い権
にかかる
林野
の有効な共同
利用
をはかるため、
農林業者
の
入り会い権
を保障し、その
権利関係
を
近代化
する措置について規定するという趣旨のものであります。 第十二は、
森林組合
法案
であります。これは現行
森林
法のうちから
森林組合
についての規定を独立させてさらに拡充するものでありまして、一、
林業経営
の
共同化
を推進するため、
森林組合
等の
林業
法人の組織について規定をし、三、
森林組合
の行なう販売、購買、信用、共同
利用
施設等の
事業
を強化するための必要な事項について規定するという趣旨のものであります。 第十三は、
山村
振興
法案
であります。その内容は、一、
山村
における交通、通信、衛生、文化等の環境の整備、
山村住民
の生活
改善
等のため必要な
施策
について、国の責任を規定するものであります。二、
山村
における零細な
農林業者
の所得の増大をはかるため、
農牧林混合経営
の
発展
を助長する方策として、国有地、民有地を通じて、
農用経営地
として適当な
林野
を円滑に取得または
使用収益権
の設定を行ない得ることとし、その
開発
について国の助成を行なうことを規定するという趣旨ものであります。 第十四は、
林業
改良助長
法案
であります。その内容は、一、
林業
に関する試験研究機構の整備拡充、
林業
に関する技術及び知識の普及指導の機構と卒業等について規定をする。二、近代的な
林業従事者
としてふさわしい人材の養成及び確保のための教育、研修等の
事業
について規定するという趣旨のものであります。 第十五は、
木材
公党市場
法案
であります。これは、一、素材及び製材の流通の
近代化
をはかるため、
木材
産地及び消費地に公営
木材市場
を整備すべきことを規定する。二、輸入
木材
の流通についても公営
木材市場
を経由せしめることを規定するという趣旨のものであります。 第十六は、農林漁業金融公庫法、
林業
信用基金法等の改正であります。その趣旨は、一、造林等についての金融を
円滑化
し、その貸し付け条件を大幅に長期低利化する。二、
生産
森林組合
等の
林業
共同経営
に対して特別に長期低利な資金の貸し付け制度を新たに規定をするというものであります。 第十七は、狩猟法の改正であります。その趣旨は、有害鳥獣の駆除とあわせて、有益鳥獣の保護培養についての措置を規定するというものであります。 以上、私
ども
の
森林基本法案
の提案の理由、そのおもなる内容、及びこれに付帯して必要と
考え
られます関連
法案
について、御説明を申しあげた次第であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決決定されんことをお願い申し上げ、私の提案趣旨説明を終わります。
青田源太郎
5
○
委員長
(
青田源太郎
君) 稲富
衆議院議員
。
稲富稜人
6
○
衆議院議員
(稲富
稜人君
)
林業基本法案
の
提案理由
を御説明いたします。
わが国
の農
林業従事者
の
所得
が他
産業
従事者の
所得
と比べて著しい低位にあることは、各位の御承知のところであります。このため去る昭和三十六年、
農業基本法
が制定せられ、曲がりなりにも
農業
部門における
所得
格差
の解消と
農業
近代化
の
一つ
の
方向
が示されたのであります。しかるに農
林業
中、最も困難な立場に置かれている
林業
及び
林業従事者
については、今日に至るもその安定的
発展
の方策、及び地位の
向上
について何らの
方向
が示されていないことは、遺憾のきわみであります。
わが国
の
林業
はその大多数が零細
経営
であって、
生産性
が低く、投資と労働の投入の果実を長い年月を待って得られるようなゆとりはないのみならず、加えて、エネルギー革命の進行に伴って、薪炭の
需要
は急激に低下しつつあって、逐年収入はますます望み得ない状態になりつつあるのであります。一方、大
山村
所有のもとに働く
労働者
は、その
所得
が低く、不安定であるばかりでなく、名子制度、焼子制度等の封建的遺制はいまだ払拭されず、民主政治のもとにおいて人格の尊厳さえ侵されている事実が見受けられるのであります。かくて、
国民経済
の
発展
と
社会生活
の
進歩向上
に即応し得ない、これら農
山村
においてはみずからの
生活
に絶望して、部落ぐるみ村を捨てる事態さえ発生しつつあるのであります。 さらに経済の面から
林業
を見るならば、
国民経済
の
成長発展
に伴い、
木材
の
需要
はますます
増大
の一途をたどるものと見通され、近年外国産
木材
の
輸入
は著しく増加しつつあるのでありまして、三十八
年度
においては、その金額は四億ドルをこえる状態に立ち至り、国際収支に悪影響を及ぼすに至ったのであります。
わが国
の
山林
所有の
現状
は三分の一を占める
国有林
を除いては、ごく少数の大
所有者
を除いては、九六%の大多数がいずれも零細
所有者
で、どちらかというと資産保有の色彩が強く、したがって一般に
企業性
に乏しく、
山林
経営
はきわめて
生産性
が低いと言わざるを得ないのであります。かてて加えて、近年の農
山林
に於ける
労働力
の不足は、
山林
経営
にとってあらたな悪
条件
を付加してまいったのであります。かくのごとくして
わが国
の
山林
は、その全
生産
能力を発揮し得ないばかりでなく、ますます悪化する
傾向
にあるのでありまして、やがて国内
林業
は衰退におち入るばかりでなく、国内
資源
をみだりに放置する結果に相なるのであります。顧りみますれば、明治維新によって近代国家への道を踏み出した
わが国
は、その当初において、国家
財政
は
農業
及び
林業
の地租収入をささえとして工業を育成してまいったのでありまして、その結果、工業はいまや世界の驚異とさえ言われる発達を遂げた反面、農民や
林業従事者
の大多数は国家
政策
の犠牲者として、いまなお不振な原始
産業
の従事者として捨ておかれて今日に至ったのであります。 以上の事実に思いをいたすならばいまこそ国はその償いをする意味からも、
農業
や
林業
を
近代化
し、
林業従事者
の
所得
を他
産業
従事者のそれと均衡させ、
林業従事者
の地位の
向上
と
福祉
のために特段の
施策
を講ずべき
責任
があると思うのであります。 次に、
法案
の
内容
について御説明申し上げます。 まず第一章
総則
におきまして、
政策
の
目標
及びこれを実現するための国及び
地方公共団体
の
施策
について、七項目の列記によってその
責任
を明確に
規定
し、さらに
財政
上の
措置
に言及したのであります。すなわち第二条において、国の
林業
に関する
政策
の
目標
は、
国土
の
保全
を根幹とし、
国民経済
の
発展
と
社会生活
の
進歩向上
に即応して、
林業
総
生産
の
増大
と
林業
の
生産性
の
向上
により、
林業
の安定的な
発展
をはかり、あわせて
林業従業者
の
所得
を
増大
して、その経済的、
社会的地位
の
向上
に資することとして、国の
林業政策
の
目標
を明らかにしたのであります。なお、
財政
上の
措置
については、第五条において、特に
林業生産
の
長期
性及び
林業
の
公共
性にかんがみ、思い切った低利かつ
長期
の
資金
の円滑な融通
措置
を講ずるものとしたのであります。次いで第六条において、
政府
は
長期
にわたる
林業
基本計画
を樹立し、
国会
の承認を受けなければならないこととし、この
基本計画
には、
森林資源
の
状況
並びに
木材
その他重要な
林産物
の
需要
及び
供給
に関する
長期見通し
と、保安林の
整備
の
目標
、
木材
その他重要な
林産物
の
生産
目標
、
林業従事者
の
所得
の
動向
及びその
向上
に関する
施策
の
目標
等を定めることとし、この
森林
基本計画
を根幹としてすべての
林業
施策
を展開せしめていこうとするのであります。なお、この
基本計画
に基づき講じた年年の
施策
及び講じようとする
施策
は、毎年
国会
に
報告
することとしました。 次に第二章に、
国土
保全
に関する一章を設けましたのは、
林野
に関する
施策
はすべて
国土
保全
につながらなければならないという見地から特にこれを重視したからであります。まず第八条において、国は他の
法律
による
国土
の
保全
に関する
措置
と相まって、治山治水に万全を期さなければならない
国土
保全
の責務を明らかにし、次いで第九条において、
治山事業
に関する費用は全額国庫
負担
の
原則
を立て、また国及び
地方公共団体
の所有
林野
の払い下げもしくは使用権の譲渡にあたっても、いやしくも
国土
保全
に支障があってはならないことを
条件
とし、さらに第十条において、国は
国土
の
保全
上必要のある場合は、一般に
林野
の転用につき必要な規制
措置
を講ずることにしたのであります。 次に
国有林野事業
について一章設けました。
国有林野
は
わが国
山林
の三分の一を占め、
国土
保全
はもちろん、
計画
生産
、
木材
需用とその
価格
に対して
調整
的役割をも果たし得るものでありますから、鋭意これが
経営
に当たることといたし、さらに公益上必要な
林野
の買い入れ及び
土地
所有者
または
森林組合
において施業
計画
に基づく施業を実施し符ない場合は、これを
国有林野事業
として積極的に施業する等の
規定
を設けるほか、
国有林
所在
地域
住民
の
福祉
のために、
住民
もしくは
住民
の団体に
国有林
の
利用
権を大幅に与える道を講じたのであります。 次に
林業生産
について申し上げます。
わが国
の
林業
は、
国土
の約六七%に及ぶ広大な
林野
を基礎として存立しているのであるが、三分の一の面積を占める
国有林野
及びごく少数の
山林
経営
者を除いては、九六%を占める大多数の
山林所有者
はいずれも十町歩以下の零細所有であって、どちらかというと財産保持的性格が強く、その
林業経営
の非企業的、非近代性は、飛躍的な
発展
を見せる
国民経済
の要請にこたえることがとうていでき得ないのであります。
国土
保全
の指命を全うしながらあわせて
国民経済
の要請にこたえ、
林業生産
力の飛躍的な
増大
をはかることが、今日
わが国
の
林業
に課せられた課題であるが、このためには思い切った増産対策が必要であります。 このために国が立てた全国
森林計画
に即して、都道府県知事が
地域
森林計画
を立て、これに基づき市町村長が、当該区域内の
森林施業
に関する
計画
を立てるとともに、この
森林施業
の実施について、
森林組合
とともにその責めに任ずることとしました。なお、
森林
の
所有者
及び
使用収益
の
権利
を有する者は、この
森林施業
に基づいて忠実に施業を行なう義務を第十四条にうたったのであります。なお、この
森林施業
に関する
計画
の実施を
確保
するために、小
規模
な
森林
所有者
の施業の協同化を助長するとともに、必要なる場合は、
森林
の
所有者
にかわって
森林組合
が施業を行なうことができることとする等、必要な
施策
を講ずることとしたのであります。 さらに
林業
出産の
増大
のために、
林道
その他
林業生産
の基盤の
整備
、
公有林
野の分
収造林
の実施、
造林
に対する助成の強化、
林業
の機械化、
林業技術
の
高度化
等による
林業
の
生産性
の
向上
、
林業
に関する試験、研究機構の
整備
充実すべき
規定
を設け、次いで
林業
の協同化を推進するとともに、
山林
における
国有林野
その他の
林野
についても国において十分損失が補てんされるよう
規定
しました。 次に
林産物
の
需給
及び
流通
の章について申し上げます。第一次
産業
は総じて
流通
面において、不利を招くのでありまして、
林業
もその例に漏れないのであります。そこで
林産物
の
需給
及び
価格
の安定、外国産
木材
輸入
の
計画化
とその
調整
は国においてこれを行なうこととし、また
森林組合
、中小企業
協同組合
が行なう購買・
加工
・販売など
事業
の
改善
、
木材市場
の
整備
、取引の
近代化
についても、国において必要な
施策
を講ずることとしたのであります。 次に
林業従事者
の章においては、まず
技術者
の養成など教育
事業
の充実を
規定
し、
林業労働者
の
福祉
については、都市工場
労働者
の就業構造と全く異なるため、現行の社会保障制度ではそのまま適用することができ得ず、
山林
労務者にはまことに不
利益
であるから、これら
山林
労務者の就業構造に合うよう
法律
を改正し、
林業労働者
にかかる社会保障の特別
措置
を講ずることとしたのでありまして、これらの
措置
と相まって、その
雇用
の安定、労働
条件
の
改善
、労働
関係
の
近代化
など、必要な
施策
を講ずることとしたのであります。また
山林
の
生活
環境の
整備
についても、その置かれている地理的不利にかんがみ、交通文化衛生等の環境
整備
及び
生活
改善
に必要な
施策
を講ずることにいたしました。 次に
林業行政
機関、
林政審議会
等に関して八カ条にわたって
規定
いたしましたが、その詳細は省略することにいたしますが、
林業団体
については市町村長とともに
林業
施業者の責めに任ずることにかんがみ、
林業団体
の
整備
強化に特段の意を払い、特に必要な場合は
森林組合
と
農業
協同組合
が統合を促進する
措置
を講ずる等、
林業団体
の
整備
につき必要な
施策
を講ずることとしたのであります。 以上が
提案
の
趣旨
と
法案
の
概要
であります。何とぞ慎重御
審議
の上御賛成あらんことを希望いたしまして、私の
提案
説明を終わります。
青田源太郎
7
○
委員長
(
青田源太郎
君) 次に、
林業基本法案
(閣法第一五一号)の補足説明及び
提出
資料の説明並びに衆議院における修正点について、便宜
政府
当局から説明を聴取することにいたします。田中
林野庁長官
。
田中重五
8
○
政府委員
(田中重五君)
政府
提案
の
林業基本法案
につきまして、若干補足説明を申し上げます。 まず、この
法律
立案の
基本
的な
考え
かたについてでございます。申すまでもなく、
林業
の出産基盤としての
森林
は、同時に
国土
の
保全
等、
公益的機能
をも有するものでありまして、このため、今後とも
治山事業
等を推進していくことが必要でありますが、今日、
林業
が直面しております問題を解決していくためには、新たな見地から経済
政策
としての
林業政策
を確立することが必要であります。
林業
基本
法は、このような新しい
林業政策
の
基本
的ありかたを明らかにしようとするものでございます。また、今後これによって
林業
の
発展
がはかられるならば、ひいては
国土
の
保全
等にも寄与し得るとともに、さらに、
林業
が
産業
構造上重要な地位を占めている
山村
地域
の
産業
振興
のためにも貢献し得るものと
考え
るのであります。 次に、この
法案
の
内容
につきまして補足して御説明いたします。 この
法案
の全体の構成につきましては、
総則
、
林業生産
の
増進
及び
林業構造
の
改善
、林魔物の
需給
及び
価格
の
安定等
、
林業従事者
、
林業行政
機関及び
林業団体
、
林政審議会
の六章からなっております。 まず、第一章
総則
でございますが、第一条及び第二条では、この
法律
の
目的
と国の
林業
に関する
政策
の
目標
を定め、第三条におきましては、第二条の
目標
を達成するために国が講ずべき
施策
について
規定
しております。 第三条第一項各について御説明いたしますと、第一号では、
林業生産
の
増進
のため、
拡大
造林
を中心として
林野
の
林業的利用
の
高度化
をはかることを
規定
しております。 第二号では、
林業構造
の
改善
をはかることを
規定
しております。
わが国
林業
の特質としましては、
林業経営
についてみますと、一方では
零細規模
のものが多数存在し、他方ではごく少数の大
規模
のものもみられるのでありますが、いずれの場合にあっても、一般にはその
経営意欲
が低調なのが
現状
であります。これを
改善
するため、
林業経営
の
規模等
による
経営形態
の差異を考慮しながら、林地保有、
林業経営
の
あり方
を
近代化
し、もって
林業経営
の健全な
発展
をはかろうとするのが、この
趣旨
であります。 以上申し上げましたような
生産
の
増進
、構造の
改善
をはかる上に、
林業技術
の
向上
は不可欠の要件であります。また、特に
林業
におきましては、
技術
が立ちおくれているとも言われますので、第三号では、その
向上
をはかるべきことを
規定
しております。 さらに、
林業生産
、
林業構造
に関する
施策
が講ぜられましても、
需給
及び
価格
の安定と
流通
および
加工
の
合理化
がはかられなければ、
国民経済
の要請にこたえて、
林業
の安定的な
発展
をはかることは困難であります。よって、第四号では、これらに必要な
施策
について
規定
しております。 第五号および第六号では、
林業
をになう主体としての人の問題について
規定
しております。これは
林業経営
の
近代化
のためには、
林業経営
及び
林業技術
を担当する者に高い知識能力が要求されますとともに、特に最近におきましては、就業構造の
変化
によって、
林業
にこれらの人を
確保
していくことが次第に困難を加えてきているからであります。 また、
林業労働
に従事する者についても同様であります。 なお、以上申し述べました
施策
は、当然のことながら、
地域
の自然、経済、社会の各般にわたる諸
条件
の相違を考慮して講じなければならないものが少なくありませんので第二項にその旨を
規定
しております。 第四条におきましては、
国有林野事業
について
規定
しております。まず、第一項におきましては、この
事業
と前条の国の
施策
との
関係
及びその
方向
づけを明らかにしております。すなわち、国は、前条第一項の
施策
を講ずるに当たりまして、
国有林野事業
の企業的
運営
に十分考慮を払いながら、その適切な
運営
を通じて、重要な
林産物
の
需給
と
価格
の安定、奥地未
開発
林野
の
開発
、
林業構造
改善
のための活用等の
施策
の遂行に資するようにするものとしているのであります。 ところで、
国有林野
の
役割り
としては、国の
施策
の遂行に資する面のみでなく、
国土
の
保全
その他
公益的機能
の
確保
をはかることや、
地元
の
農業構造
の
改善
等のために積極的にその活用をはかることもまた重要なものでありますから、第一項によって
施策
の遂行に資する場合にも、このことについて十分配慮していかなければならない旨を第二項におきまして特に
規定
しているのであります。 次に第五条におきましては、
地方公共団体
が国の
施策
に準じて
施策
を講ずるよう努めるべき旨を
規定
するとともに、第六条におきましては、
政府
は、第三条の
施策
を実施するため必要な
法制
上及び
財政
上の
措置
等を講じなければならない旨を
規定
しております。さらに、第七条におきましては、
林業従業者等
の努力の助長に関する
規定
を、第八条におきましては、
林業
の
動向
に関する
年次報告
等に関する
規定
を設けております。 次に第二章は、
林業生産
の
増進
及び
林業構造
の
改善
についてでございます。 まず、
林業
は、その
生産期間
がきわめて長く、
需要
の
動向
に即応し
生産
を行なうためには、
長期
にわたる
適確
な
見通し
を必要とすることにかんがみまして、現在、
森林
法にこのような
長期
の
見通し
を立てるべき旨の
規定
が設けられておりますものを、今回、この第九条に
規定
することとしております。 次に第十条におきましては、
林業生産
の
増進
をはかる
施策
としまして、前条の
長期
の
見通し
を参酌して、
林道
事業
の拡充、
造林
の推進、機械の導入等の
施策
を講ずることとするとともに、
災害
による損失の合理的補てん等必要な
施策
についても
規定
しております。なお、
災害
の防止につきましては、
治山事業
等
国土
保全
政策
の推進にも期待しなければならないことはもちろんであります。 第十一条におきましては、
林業経営
を
近代化
してその健全な
発展
をはかることとしております。すなわち現在のように
林業経営
の基盤が脆弱でありますと、そのままで
林業生産
を円滑に行なうことは困難でありますから、それに対処して、
林業経営
の
近代化
のために必要な
施策
を講ずるとともに、
経営
規模
につきましても、継続的な
林業生産
を行ない、それによって
計画
的に
林業
所得
を
確保
していくことができるような
規模
まで
拡大
していこうとするものであります。 また第十二条におきましては、協業の助長について
規定
しております。
林業経営
の
脆弱性
を是正してその
発展
をはかっていく上に、個別
経営
のみでは高度の出産手段や
技術
を有することには限度があると
考え
られ、個別
経営
を補うものとして、あるいはさらに個別
経営
と並んで
生産行程
の協業がぜひとも必要であり、それがまた個別の
林業経営
を
発展
させるゆえんであると
考え
るからであります。 次に第十三条におきましては、
林業技術
の
向上
について
規定
しております。
林業
の
生産性
を高め、
林業経営
の
近代化
をはかるため、個々の
生産
技術
及び
経営
技術
を高めるとともに、その体系化を行ない、その成果をすみやかに現実の
経営
の中に導入することが肝要だからであります。 第二章の最後といたしまして第十四条は、
林業構造改善事業
の助成等について
規定
しております。
小規模林業経営
の
規模
の
拡大
その他
林業経営
の基盤の
整備
及び拡充、近代的な
林業
施設の導入等
林業構造
の
改善
に関し必要な
事業
は、それぞれ個別に行なわれましても、それなりの成果があることは当然でありますが、
林業構造
の
改善
をはかる上で一層の効果をあげるためには、これらの
事業
が、一定の
地域
において、統一的に樹立せられた
計画
に従い、有機的連関をもって、総合的に実施されることが望ましいからであります。 続く第三章は、
林産物
の
需給
及び
価格
の安定と
流通
及び
加工
の
合理化
について
規定
しております。 まず、第十五条は、
需給
及び
価格
に関する
施策
についてであります。すでに申し上げましたように、
木材等
重要な
林産物
について、
長期
的には、
需要
の
増大
に応ずるように、今後
林業生産
を
増進
していくこととするのでありますが、ここではさらに短期的にもその
需給
及び
価格
の安定をはかるため、
国有林
材の
長期
安定的な
供給
及び必要な場合に応じた緊急の
供給
、
民有林
材の円滑な
供給
をはかるとともに、
木材
の
需給
事情からみまして、当分の間、外材の
輸入
もまた必要と
考え
られるので、それが
需給
及び
価格
の安定の見地から望ましい姿で行なわれますよう、その
適正円滑化
等の
施策
を講ずることとしております。 次に第十六条におきましては、
林産物
の
流通
及び
加工
に関する
施策
について
規定
しております。
生産
者から需用者にいたる
林産物
の
流通
過程を
合理化
するとともに、
加工
行程を
近代化
し、
利用
を
高度化
してその経済的
供給
をはかることとしております。 第四章におきましては、
林業従事者
について
規定
してございます。 まず第十七条におきましては、教育、研究及び普及の
事業
の充実等について
規定
しております。
林業経営
の
近代化
といい、
林業
の
生産性
の
向上
といいましても、要はそれをになう人の問題でありますので、これによって
林業経営者
及び
技術者
の
養成確保
をはかろうとするのであります。 次に第十八条は、
林業労働
に関する
施策
についてであります。
林業労働
に従事する者の養成及び
確保
をはかることもまた前条と同様の
趣旨
から強く要請され、またその
福祉
の
向上
をはかることが必要でありまして、そのための
施策
を
規定
しております。 第五章におきましては、
施策
主体である
林業行政
機関及びその活動が期待される
林業団体
について
規定
してございます。 最後に、以上の諸
施策
を講ずるに当たりましては、
政府
は
責任
をもってこれに臨むのは当然でありますが、さらに広く
学識経験者
の
意見
を徴し、その調査
審議
の結果を取り入れることも必要でありますから、第六章におきまして
林政審議会
を設けることといたしたのであります。これに伴いまして、附則で、
森林
法及び総理府設置法の一部を改正することとしております。 以上が
林業基本法案
の
概要
でございますが、この
法律
の施行は、
林政審議会
に関する
部分
にあっては昭和四十年四月一日から、その他の
部分
にあっては公布の日からといたしております。 なお、この
法律案
につきましては、衆議院におきまして数項目の修正が行なわれましたので、その修正項目につきまして、便宜私から御説明申し上げます。 修正の第一点は、第一条の
法律
の
目的
と第三条第二項の国の
施策
の講じ方について、
森林資源
の
確保
と
国土
の
保全
の観点をつけ加えた点であります。 修正の第二点は、第三条第一項第六号及び第十八条の
林業労働
に従事する者について、その
福祉
の
向上
を強調するとともに、
施策
の
内容
をより
整備
することとして、所要の改正をした点であります。 修正の第三点は、
林野
の
所有者
等の責務を、第七条の次に一条を設けて
規定
した点であります。 修正の第四点は、第九条におきまして、特に
森林資源
につきましては、「
見通し
」ではなく、「
基本計画
」を立てることとして、より明確に
森林資源
の
長期
的
確保
をはかるべぎこととした点であります。 修正の第五点は、第十条において、「
造林
の推進」という文言を明示した点であります。 最後の点は、第十二条におきまして、協業の「助長」とあるのを「促進」という文言に修正した点であります。 なお、以上の修正に伴いまして、第八条以下の条文を一条ずつ繰り下げる等所要の
関係
条文の整理をいたしたのであります。 なお、お手元にお配りしております、「
林業基本法案
参考資料」、これにつきまして、ごくかいつまんで御説明申し上げますと、この中身は、「総括」、「
生産
」、「
流通
」、「構造」、「
国有林野事業
」、この五項目にわたって整理をされておりますが、まず二ページをごらんになっていただきますと、「所有
形態
別
森林資源
の現況」というのがございますが、これによりますと、表の一番下の欄で、
森林
面積が約二千五百万ヘクタール、そのうち、次の欄で、人工林が七百八万七千ヘクタール。そこで全
森林
面積の、人工林面積は三割に満たない、こういうような
状況
になっております。 それから六ページをごらんになっていただきます。六ページは
木材
の
需給
量の
見通し
が掲げてございます。これによりますと、「実数」と「指数」ということになっておりますが、
需要
量の推移が、三十五
年度
――この数値は三十四
年度
、三十五
年度
、三十六
年度
の平均でございますが、――を一〇〇といたしまして、漸次ふえてまいりまして、約四十年後の昭和七十七年には約二倍半にふえるという
見通し
を示したものでございます。 それから八ページをごらんになっていただきますと、ここに
木材
輸入
の著しい
拡大
が表になっております。それで、この
木材
の
輸入
につきましては、昭和三十八
年度
で約千四百万立方メートル――最後の欄でございますか、総
需要
量の約二割を占めておる。まあそれだけに、次の表の九ページでは、
木材
の
輸入
題が三十八
年度
では約四億ドル、他の品目に比べまして非常に高い額を示しておるということになっております。 それから一六ページをごらんになっていただきますと、まあ今後、いまの
木材
供給
を積極的に推進していくための
造林
面積の
拡大
の
見通し
の表でございますが、現在、先ほど申し上げましたように、この二八ページでは、
造林
面積の全部が約七百万ヘクタール、これを四十年後には約千三百万ヘクタール。でございますから、全
森林
面積のほぼ半分まで
造林
面積を
拡大
しようという
見通し
の表でございます。 それから二三ページをごらんになっていただきますと、
木材価格
の推移を掲げた表でございます。この表にございますように、昭和二十七年を一〇〇にいたしますと、一般の卸売物価の平均はほとんど横ばい。これに対して、次の欄の「素材」は、二倍になっておる。こういうふうに
価格
の異常な高騰を示した表でございます。 その次は二八ページでございます。二八ページは「
山林
保有
規模
別
経営
指標」。そこで
日本
の
山林
保有状態がいかに上零細であるかということを示しておるわけでございまして、「保有林家数比率」、「保有面積比率」、この二欄をごらんになっていただきますと、一反歩ないし五町歩未満の比率を出しますと、五町歩未満の
山林
保有者は、全
山林
保有者の九割にも及ぶ。ところが、その保有している面積は、次の欄でこれを出しますと、三八%であるというような状態でございます。保有
規模
の、
零細性
を示したわけでございます。 次に、三〇ページをごらんになっていただきたいと思います。三〇ページは、この「構造」の中に整理をしておりますが、
森林組合
の推移を示したものでございまして、
森林組合
が大型化するにつれて数は減る。三十一年に約五千あったのが約千減りまして、三十七年には四千になったという表でございます。 それから三七ページをごらんになっていただきますと、
山林
労務者の減少ということに対応する賃金の増。これか、たとえばこの表によりますと、伐木と集運で、全体の平均賃金が三十年を一〇〇といたしまして、伐木が八割四分増し、集運で七割四分増し、そういうふうに賃金の高騰を示しておるわけでございます。 なお、以下
林業労働
に従事する者の社会保障の
現状
等を掲げてございますが、最後に、
国有林野事業
の整理の欄では、この
国有林野事業
の伐採量なり、あるいは
林道
、貯木場等の施設なり、それの一覧表、あるいは機械の保有台数、
地元
施設、そういうものを掲げておる表でございます。 以上でございます。
青田源太郎
9
○
委員長
(
青田源太郎
君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
青田源太郎
10
○
委員長
(
青田源太郎
君) 速記をつけて。 ―――――・―――――
青田源太郎
11
○
委員長
(
青田源太郎
君) 次に、
肥料価格安定等臨時措置法案
を
議題
とし、質疑を行ないます。 質疑のおありの方は、御発言を願います。
中田吉雄
12
○中田吉雄君 私は、
肥料価格安定等臨時措置法案
に対しまして若干御質問をいたしたいと思いますが、同僚議員の質問と少し重複するかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。 赤城農林
大臣
の
提案理由
の説明を伺いますと、現行肥料二法の制定当時と比較して著しく肥料事情が変わってきている。肥料工業の
合理化
によって
生産
能力が急速に
拡大
し、内需を満たした上で、なお四割以上の輸出をしている。だから新法でも間に合う、十分だ、こういう御説明ですが、昭和二十六年、七年当時の肥料二法を制定します前、制定しました当時と、私は国際的な事情を含めての肥料事情というものは、最近
政府
が肥料
計画
を改定された事情等にかんがみて、本質的には変わっていないじゃないか、むしろ
政府
かいわれたその
前提
がくずれてきて、むしろ肥料二法を延長する国際的な肥料事情になっているのじゃないかというふうに思うのですが、この点いかがでしょう。
赤城宗徳
13
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 国際的に肥料の
需要
がふえておるということはあると思います。同時にまた、各国とも、ことに共産圏等におきましては、肥料の増産といいますか、肥料工業を急速に発達させるというような
状況
はあろうかと思いしなす。しかしながら、全体として見まするならば、私は肥料も国際的には
生産
がふえておる。国内的に見ますならば、いま私が
提案理由
で申し上げましたように、現行二
法制
定当時と比較いたしまして、内需を満たして、四割程度の輸出ができるというふうな、
供給
面の相当な進み方をいたしておりますので、私はああいうような、現在のような形でなく、量におきまして、
価格
におきましても、
需要
者が安定的に
供給
を受けるということが適当であろうか、こういうふうに
考え
まして、
提案理由
にもそういうものを
前提
として申し上げたのであります。
中田吉雄
14
○中田吉雄君 この昭和二十六年の六月ごろから二十七年の二月ごろですか、肥料二法を制定します前に、非常に過剰で、ダンピングをやったりしまして、三十五キロ半、一かますですか、二百円等も上がりまして、そういうことで、内需
確保
を優先的にやるということを
前提
にした二法が制定されたわけですが、しかし、最近、東畑懇談会と称せられます肥料懇談会が二十八年の十二月二十三日に答申しました際には、内需
確保
についてはほぼ心配がないことという
前提
を受けられて、新法の立法に至ったと思うのですが、しかし、まあ最近通産省が発表したものでも、戦後最高の輸出で、八千六百万ドルぐらいの輸出をした、そして、非常な見込み違いの輸出景気で、もう肥料
年度
の半ばで
計画
の半分も越すというようなことで、引き合いをもう完全に成約することができぬというようなことになって、やはり肥料事情は売り手
市場
で、その点が非常に心配になるのですが、いかがでしょう。
松岡亮
15
○
政府委員
(松岡亮君) 肥料二
法制
定当時の
状況
と、三十八肥料
年度
の
状況
を比較しまして申し上げますというと、二十九肥料
年度
以前はこれより低いわけでありますが、二十九肥料
年度
におきましては、設備能力が三百七万、これに対しまして、三十八肥料
年度
においては六百九十七万と、約七百万トンの能力を持っている。それから
生産
におきましては、二十九肥料
年度
が二百七十三万トン、三十八肥料
年度
におきましては六百二十九万トン、これは工業用も含めております。で、肥料としましては、二十九肥料
年度
の二百五十四万トンに対しまして、三十八肥料
年度
は五百四十九万トンと、二倍以上の
生産
を行なっておるわけでございます。で、内需が、二十九肥料
年度
が百九十八万で、三十八肥料
年度
が三百十五万トン、それから輸出が、二十九肥が五十二万トン、三十八肥が二百三十四万、これは当初
計画
でございます。このように、もうすべてにおいてスケールが全然違っております。
生産
におきましても、能力におきましても、
需要
におきましても、輸出におきましても。で、これは輸出を
調整
いたしますならば、内需を
確保
するには絶対心配はないという
状況
でございます。二十九肥料
年度
におきましては、たまたま二割程度の輸出を企てております。
生産
に対しまして。しかし、それは
生産
の
規模
も小さく、内需量も小さい。その二割程度の輸出で実は内需を
確保
できるかできないかという点においては、必ずしも十分な
規模
ではなかったわけであります。したがって、多少ダンピングが行なわれたりしますと、国内
価格
が上がったという実態が生じたわけであります。いまはその点においては全く異なっております。
中田吉雄
16
○中田吉雄君 なるほど
生産
能力その他で、昭和二十九肥料
年度
に比べると飛躍的な
増大
はしていますが、しかし韓国等、最近の引き合いに対しても十分応ずることができぬということで、私はやはり
生産
設備とか、
生産
能力等が飛躍的に
増大
したということでなしに、問題は、内需と輸出の合計が、国際的な
規模
における全体の
需要
というものがもう能力をこえている、設備をこえているという意味からいえば、やはり非常に不足する状態、先日来、赤城
大臣
のお話を承りましても、当分こういう事情は続くであろうということですから、私はやはり売り手
市場
であって、全体不足ぎみだという事情においては、肥料二
法制
定当時といささかも変わりないのじゃないか。ただ四割、あるいはもっと四割以上も輸出ができるでしょうが、ことしはあるでしょうが、やはりただ量的にそうだからでなしに、質的に不足だということは、これは変わりないので、やはり肥料二法の、この東畑懇談会の、当分は心配はいらぬ、それに基づいて立法された
前提
条件
が、そういう答申があってから、実はわれわれも不明にして、ああいう引き合いがあるとは予想もしなかった大きな引き合いがあり、それに応ずることができぬというようなことで、量的でなしに、質的には不足という事情は、二
法制
定当時と私は、やはり変わりないのじゃないか。そういう意味では、やはり二法を延長する
一つ
の大きな肥料事情じゃないか、新法をつくられた
前提
が、すでに東畑懇談会があって、数ヵ月を出ずしてくずれているのじゃないか、こういうことを心配するわけですが、いかがでしょうか。
倉八正
17
○
政府委員
(倉八正君) 私は、いま先生の御指摘のありましたように、世界的に見れば、この間のOECDの会議でも出ましたのですが、この一年ないし一年半は肥料が売り手
市場
にあるということは、世界一般の常識としていま認められておるということは御指摘のとおりでございます。ところが、それから先にはどうなるかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、というのは、世界でいま窒素肥料を出産しておる国の八カ国ぐらいが、すでに自給自足を
目的
としまして、いま鋭意工場を建設しております。そういう問題が現在あります。ただ、私はさっき農林
大臣
あるいは経
済局長
の答弁にありましたように、
日本
の事情というのは、その当時とは非常に変わっておると思います。というのは、なるほど海外からはそれだけ引き合いがあることは事実でございますが、それは
日本
としましては、それを内需第一主義ということをあくまで貫きまして、外国からのオファーを選択しているというのが
現状
でございまして、国内事情を見ますれば、依然としまして大きい
供給
能力を持っておりまして、それを国内第一主義ということの
原則
を貫きまして、
供給
確保
という点におきましては万全だと、私は確信しますが、そういう意味におきましては、当時の
供給
不足ぎみという状態とは、私は状態がもう百八十度の違いをしておる、こう信ずるものであります。
中田吉雄
18
○中田吉雄君 これは見解の相違になるかもしれませんが、私は単に設備と
生産
能力が内需を四割以上こしているというだけでなしに、内需と、やはり引き合い等のある国際的な事情から見て、単純なそういう
生産
能力と国内
需要
のバランスだけでなしに、やっぱり見ると、私はあとで質問したいと思いますが、国内
価格
を上げたりする要因になりして、むしろ二法延長の、
政府
の言われた
前提
は、数ヵ月出ずして、東畑懇談会の答申があってからくずれたというふうにみるのですがね。
松岡亮
19
○
政府委員
(松岡亮君) 東畑懇談会が行なわれた覇時と、多少気分的にといいますか、ムード的に異なった確かに引き合いが活発になっていることは事実でございます。また現行二法と新しい
法律
とが、輸出を
調整
して内需を優先的に
確保
するという点においては、御指摘のとおり現行二法と同じ
考え
方をとっておるわけでありまして、その点は、内需を優先的に、第一に
確保
する、そのための能力といい、
供給
といい全然心配がないという、当時とはだいぶ違っておる、こういうことを私
ども
は
考え
ておるのでございます。
中田吉雄
20
○中田吉雄君 そういう点はあとでまあ御質問したいと思うのですが、五月二十六日ですか肥料
計画
を改定されて、四十四万トンの
供給
増にして、九五・五%ですか、そして
需給
調整
用として保留したやつも取りくずしたりして、やっと改定肥料
計画
で、中国に百二十万トン出せるというふうな事情というものは、やはり私は輸出をコントロールして、内需は絶対心配ないと言われても、やはり影響なしとしないのじゃないか。くどいようですが、そういうふうにとるのです。
松岡亮
21
○
政府委員
(松岡亮君) 逆ではないかと思うのでございます。まだ設備に余力がありましたから、
計画
を改定して、せっかくの引き合いがあり、値段も上がってきておりますので輸出をする、こういう
計画
改定をやったのでございます。内需に心配があるならば改定しない、もちろん改定はいたしません。まだ設備能力に余力があって、フル操業までの余力を発揮して輸出をし、しかも値段がいいということで、これは値段がいいことは、国内の
農業
にとってもけっこうなことでございますから、改定して輸出を増加した、こういうことでございます。
中田吉雄
22
○中田吉雄君 赤城
大臣
にお尋ねしますが、
提案理由
の御説明の中の、内需の優先
確保
、国内
価格
の低位安定、輸出
体制
の一本化をはかるというような点ですと、まあ
合理化
の推進とか、輸出赤字の国内不転嫁と、問題を別にすれば、肥料二法の中に流れる
基本
精神と同じように思うのですが、新法との
関係
はどうなんですか。
赤城宗徳
23
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 農民といいますか消費者に対する
考え
方からいたしまするならば、現行の
法律
を流れている
考え
方と、
提案
しておりまするものとは、同じような
考え
方の流れだと思います。その流れのやり方、方法におきまして、現行法のような強い統制的なものは必要としないという観点から書いてはおりますけれ
ども
、
考え
方につきましては、私は、変わりない
考え
方で進めている、こういうつもりでございます。
中田吉雄
24
○中田吉雄君 私が見ますには、内需の優先
確保
とか国内
価格
の低位安定、輸出
体制
の一本化、こういう
基本
目的
を達する手段と方法において、非常に問題がある。われわれとしては、二法のような形をとらぬ限りは、こういう
基本
方針
が貫けぬじゃないかという
前提
で、今後私質問したいと思うのですが、そこで、輸出
見通し
の策定なんですが、臨時肥料
需給
安定法の第一条には「肥料の
需給
の
調整
及び
価格
の安定を図ることを
目的
とする。」というふうに、内需
確保
の優先
確保
が
前提
で、それが勢頭にうたってあるわけなんです。ところが新法では、
価格
の安定だけ――これはやはり東畑懇談会その他を流れる、肥料は余っているのだというようなことで、心配がないという意味でそうなったんだと思うのですが、そういう点どうも不安なしとしないのですが、その点はどうですか。
赤城宗徳
25
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 確かに現行では「
調整
及び
価格
の安定」ということがございます。
法案
について、
価格
の面を重要視しているじゃないか、
供給
面はどうかという――これは第一条でなくて、別の方面の、再々申し上げておりまするように、輸出の認可ということによって内需を
確保
していくと、こういう、間接的といいますか、現行ですと直接に内需の優先にぶつかっていきますが、
法案
によりまするというと、
価格
の安定をはかる。
供給
面におきましては、非常に
供給
量がふえておる
現状
でございますから、輸出の面を押えて内需を充足していくということによって、現行の
目的
と同じような
目的
を達し得られると、こういうふうに
考え
るわけでございます。
中田吉雄
26
○中田吉雄君 まあ、全体の肥料の
生産
を見て、輸出の面から間接的に内需を
確保
するということもわからぬことはないのですが、新法では、八条の二項ですか、
法律
事項
とせず、これを政令に譲って、
需給
の
見通し
、政令の定むるところによりというふうになっているが、その辺をもっとはっきりしたほうが実際心配がなかったのじゃないかと思うのですが、これはいかがですか。
松岡亮
27
○
政府委員
(松岡亮君) 第八条の第二項、確かに政令で定めるところにより、
需給
見通し
をつくって、それに基ついて輸出承認をする、こういうことになっており、現行法では、
需給
計画
の
内容
として定めることは、
法律
に明記してございます。しかし、これは
基本
的な
法律
事項
では必ずしもないわけで、先般来
大臣
からも、私
ども
からも、御説明申し上げておりますように、
内容
そのものは
需給
計画
と、
需給
見通し
と、これは定められる数字の性質そのものは変更はございません。しかしながら他の要件、つまり
生産
指示とか、出荷指示、そういった統制的
規定
がなくなり、また
需給
計画
を――統制がございましたので、肥料
審議
会に諮問するというような手続をなくすことにいたしましたので、書き方としては
需給
見通し
として、その
内容
は政令で定める、こういうふうにやわらげたわけでございます。
中田吉雄
28
○中田吉雄君
需給
見通し
というものが、輸出承認の際のひとつの基準で、あるいは輸出に付随したような
見通し
にとれるわけですね、実際は……。 それではお尋ねしますが、
需給
見通し
の策定というものは、現行の臨時肥料
需給
安定法の第三条にいうような作業をやって――実際やるものであるか、たとえばその二項の一には、「前
年度
からの繰越数量」――第二、第二、第四、第五となって、第六「
生産
業者又は
輸入
業者の翌
年度
への繰越在庫見込数量」、推定というような作業をせねば実際はやれぬと思うのですが、そういう意味では変わりがないわけなんですか。
松岡亮
29
○
政府委員
(松岡亮君) そのとおり、
内容
は同様でございます。
中田吉雄
30
○中田吉雄君 ちょっと前後しますが、昭和二十六年の七月から、昭和二十七年の二月までの半年の間に、私の持っている資料では、二百円上がった。そのときも実は輸出の規制をやったわけなんですね。しかし、それはもう国内
価格
を安定できぬきっかけになったのですが、もう心配ありませんか、それは。
松岡亮
31
○
政府委員
(松岡亮君) 当時の事情は、朝鮮ブームが起き、またちょうど国内では、公団当時からの在庫がダブついておったというようなことで、輸出へ拍車をかけたというような事情があったわけでございます。それで非常に輸出が進んだために、輸出を押えようとしたわけでございますが、必ずしも的確な効果がなくて、国内
価格
が上がった、そういうようなことから、現行二法をつくる動きが出てまいりました。
政府
としても、現行二法を
提出
して、二十九年に成立をみた、こういう経緯をたどっているわけでございまして、現在におきましては、もう最初から輸出規制をやっておりますし、
計画
的な輸出規制が行なわれておりますので、当時のような事情は起こり得ないと、こういうように
考え
ておるのでございます。
中田吉雄
32
○中田吉雄君 まあたいへん自信を持っておられるから、狂うようなことはないと思いますが、
需給
計画
でやっている場合と、この
見通し
による場合とで、まあうまくいかなんだような際に、
政府
がとるべき
責任
というものは、変わりがないわけなんですか。その点はいかがですか。
松岡亮
33
○
政府委員
(松岡亮君)
政府
としましては、この
法律
に基づいて、肥料の
価格
の安定をはかる
責任
がございます。行政上の
責任
がございますので、そういうことが起こりませんように、輸出承認を与えます際にも、
計画
的に
需給
見通し
を立てまして、あらかじめ、大体内需というものはほぼ的確に予想できるわけでございますから、内需用の必要なものは国内に
確保
しますように、輸出承認を毎月行なっていくわけであります。その際には、在庫数量、
生産
数量も
報告
を徴して、
政府
は十分そういったものをつかんだ上で、輸出承認を行ないますので、その辺のことはまず心配はない、こう
考え
ております。
中田吉雄
34
○中田吉雄君 先般、大河原
委員
が、異常事態が起きた際に不足したら輸出をとめちゃうから心配ないということですが、成約をしておったような場合、大体その後に成約を破棄せねばならぬというようになったときはどうなりますか。
倉八正
35
○
政府委員
(倉八正君) それは、いまの成約破棄は輸出の成約破棄であると思いますが、輸出の成約の破棄は、いま貿易の国際慣習上は、
政府
の命令に、
政府
の指示によったという場合は、クレームの対象にならないというのが国際慣習の
原則
でございます。したがいまして、たとえば
日本
が逆にある国から何かを
輸入
しようという成約をしておった。ところが、向こうの
政府
の命令によってその船積みが禁止された、そしたら
日本
は非常に損するわけでございますが、そういう場合は、いわゆる保険法でカバーするというのがい京
原則
でございまして、国際貿易慣習上の
原則
でございますから、したがいまして、もしも
日本
に異常状態が起こって、しかもそれが成約して船積みの予定になっておったというような場合でも、それは差しとめ命令というのは、法規上できることに変わりはないのでございます。
中田吉雄
36
○中田吉雄君 この
需給
の
見通し
は、農林
大臣
と通産
大臣
が定められることになっているんですが、現行法ではその三条に、肥料
審議
会の
意見
を聞いてきめるようになっている。そのきめた
計画
でも、五月二十六日にかなり大幅な改定をせざるを得なくなって、変わったわけなんですが、私はやはり両
大臣
のほうでおきめになる際に、そういう
見通し
に
関係
のある人の
意見
を聞いたほうがいいと思うんですが、これでは肥料
審議
会というものがないんですが、それは実際上の手続としてはどういうふうにきめられますか。
松岡亮
37
○
政府委員
(松岡亮君) お話がありましたように、現行法におきましては、
需給
計画
を策定する際に、肥料
審議
会の御
意見
を承っておるのでございます。ただいままでのところは、変更する場合にも
審議
会の御
意見
を承っておりますが、大体
政府
で作業いたしました
計画
というものは、そのまま御承認をいただいておったわけでございます。これはもう
政府
としましても、すでに現行法ができましてから十年間の経験と実績を積んでおりまして、資料も十分に持ち合わせておるわけでございます。特に国内消費見込み数量というようなものは、ほとんど大きな狂いが出ません。問題は輸出の見込みでございます。これはどうにも
政府
として全く正確な見込みを立てるということは必ずしもできないわけでございます。しかしながら、たてまえとしましては、内需をまず
確保
するということを実行いたしますので、四割も余力があるわけでございますから、
需給
見通し
で輸出の
見通し
は異なっても、内需を優先的に
確保
しておれば、国内に影響を与えることはないということは確信が持てますので、
政府
自身がその
見通し
の作成を、
責任
をとって十分である、こういう
考え
でおります。
中田吉雄
38
○中田吉雄君 何か
需要
懇談会ですか、そういうものがあるやに聞くんですが、なかなか自信に満ちた御答弁ですが、それでも何十万トンという狂いがあって、改定せざるを得なかったんですから、あまり過度の自信もどうかと思うのですが、やはり
需給
懇談会というようなものに、正規のものでなくても、広く
意見
を聞いてみられるというのもむだじゃないと思うのですが、これはいかがですか。
松岡亮
39
○
政府委員
(松岡亮君)
見通し
の正確を期しますために――これはほとんど輸出の
見通し
でございます。狂いやすいのは。これはできるだけ専門家の
意見
を聞いたほうがよろしいと思います。現在肥料
需要
懇談会というのがございますが、これは
長期
的な
見通し
、たとえば何年後においてどういうふうに肥料の消費が
変化
するであろう、あるいは
林野
方面で使われる肥料というものは、どういうふうに消費が伸びるであろうというような問題について、専門的な
意見
の交換を行なってもらっておる会がございます。これはもちろんそういう専門家の懇談会でございます。輸出につきましては、特に特定の機関を設けなくて、むしろほんとうに輸出の事情に明るい専門家の
意見
を聞くことが大事であろう、こういうように
考え
ております。
中田吉雄
40
○中田吉雄君 内需なんですが、たしか衆議院ですか、あるいは参議院の
委員会
かたったのですが、年率大体三%ぐらい伸びているということなんですが、この部門別の
傾向
といいますか、その
傾向
は、大体トレンドは変わりはないのですか。そういう点どうですか。
松岡亮
41
○
政府委員
(松岡亮君) これは硫安、尿素、それから石灰窒素それぞれ違います。硫安はむしろ減退する
傾向
があり、尿素は伸びる、アンモニア全体としましては平均三%ぐらい、大体二%ないし四%程度の伸びでございます。年々の伸びが。で、おそらく今後は従来のような平均三%の伸びから二%ぐらいに低下するんではないかという
見通し
でございます。過燐酸石灰やそういったものにつきましては、また異なっております。
中田吉雄
42
○中田吉雄君 この輸出の
見通し
なんですが、私もいろいろ調べてみたんですが、これは農林省の肥料要覧あるいは肥料年鑑等を見ても、海外の肥料事情というものが、なかなか文献をあさってもないようなんですが、そういう点でもかなり、今度四十万トンも、共産圏のことですからこれはなかなか無理もない点があると思うんですが、もう少し海外の
需給
事情を正確に把握するというようなことはできぬものですか。また昨
年度
は、欧州の寒波で電力不足、あるいはその跡始末のために
需要
が増加したというようなことがあったりして、今度ああいうふうな輸出の伸びがあったというふうなことを聞くわけですが、たとえばベルギーなんかは
生産
の七〇、オランダは
生産
の五割、ドイツは四割三分、イタリアは四割一分の輸出をするというようなことがあるのですが、そういうところの事情も見て、大体いまのような輸出事情は続くと見ていられるのですか、通産省は。
倉八正
43
○
政府委員
(倉八正君) これは非常に専門家の間にも両論ございまして、さっきも申し上げましたように、この間の世界化学会議では、一年ないし一年半はいまのような
情勢
が続くということは出ておりますが、将来の問題になりますと、両論というのは、いわゆるいまやっております膨大な
規模
が三カ所ございます。これはたとえば工場で窒素肥料百五十万トンもつくる
計画
が、現にお聞きになっているように、トリニダッドというところで来年完成いたしますし、それからパキスタンとかあるいはインドあたりで、これも尿素工場が完成いたしまして、それから
日本
が最も長い間の
市場
であった台湾というのが、予定どおりいけば去年の十二月から自給自足できることになっておったわけでございますが、それが延びまして、それから隣の韓国も忠州、羅州の二工場が、これが合わせてたしか三十五万トンぐらいになったと思いますが、これも一工場は
計画
どおりいきましたが、一工場はすでにおくれておる、こういう自給自足の面から見まして、たとえば施肥の増量よりも
供給
態勢の完備が早かろうという見方をする人もございまして、いまのところはどっちに軍配が上がるか、これは人によって非常に違うと思いますが、
生産
を担当しているものとしましては、まあ大体
日本
の輸出というのはいまの程度、あるいはいまよりもちょっと増した程度が続くであろう、こういうことをいまの段階では
考え
ております。 それから前段の質問の、同じ窒素肥料を
供給
しておる、大体世界で八カ国だと思います。これの資料というのはなかなかわからないのでございまして、
日本
のように、何から何まで発表する国はないのでございまして、たとえばいま御指摘のありましたベルギーの資料なんかも、大体一年おくれて発表されますし、したがいまして、私たちとしましては、いま全公館を網羅しまして、それから使節団を出しまして、全公館を網羅してやっておるのが、今年の九月ごろでき上がってくると思いますが、そのほか、ヨーロッパ主要六カ国には人を派遣しまして、もっと掘り下げた接触をはかりたい、こう
考え
ております。 それから中共の問題につきましても、先般来たびたびミッションなんか行きまして、今年の
需要
なり、あるいは今後三年くらいの
需要
というのは、大体どのくらいであるということはわかっておりますが、いずれにしましても、今後もっと掘り下げて研究するということは今後の課題だと、こう
考え
ます。
中田吉雄
44
○中田吉雄君 私、昭和三十三年に、
国会
議員団として欧米各国を見証した際に、EECがたしか発足して一年ごろだった。まだ
日本
ではあまり問題にならなかったのですが、私はこれは大へんじゃないかというので、通産省の商務官ですか、出先き公館の外交官等に聞いても、説明のできる人はほとんどなかったのですかね。そういう意味で、どうもあまり肥料についても十分な、四十万トンも見込み違いが起きるというようなことを見ても、七千数百万ドルも、化学製品では一番の輸出のトップになるぐらいですから、もっと輸出
振興
のためにも
経費
をかけて、輸出
計画
の狂わぬような調査をやられることが必要じゃないかと思うのですが、あと先になりますが、東畑懇談会でも、
見通し
を立てても発達しないほうがいいというふうになっているのですが、外国がやはりそうなんですか、これはどうなんです。
倉八正
45
○
政府委員
(倉八正君) 外国の大体慣例というのが、イギリスでははっきり
法律
がありまして、一社で
生産
しているところは発表しないというのが、御承知のとおり統計法にございます。そのほかに、二社で
生産
というのも発表しないというのが、これも御承知かと思いますが、慣例になっております。したがいまして、肥料の
生産
というのもはっきり……、こういって何すれは、ちょっとおそいとお叱りを受けるかもしれませんが、
生産
なり、その出荷がはっきりしましたのは、昨年七月一日から、あの有名なニトレックスというのがチューリヒにできまして、これが肥料
生産
国六カ国を網羅しておるわけでございますが、これができましてから、だいぶんこの肥料のストックなり、あるいはこの
生産
なりというのがはっきりしてまいりまして、これも大体半年ぐらいおくれるのが
原則
でございますが、しかし、それなりにしても、できるようになったということで、今後としては非常にわれわれとしても
生産
なり、あるいは出荷、あるいは輸出
価格
の
動向
なんということがはっきり握れると思います。輸出
価格
の
動向
というのは、ニトレックスができましてから非常にはっきりわかるようになりました。
中田吉雄
46
○中田吉雄君 やはり発表されて、弊害があったのでしょうか。輸出のいろいろ商戦において、これは、どうなんですか。
倉八正
47
○
政府委員
(倉八正君) この一番典型的な例が、
日本
が一番競合しているインド、パキスタン
市場
でございます。これは入札のときに非常な支障がございまして、大体
日本
のいま余力というのはこれだけあって、不
需要
期だからどれくらいストックをしておる、そして
日本
の金利はどのくらいということも全部向こうが調べておりまして、それならいま、あのときはたしか尿素が七十何ドルだったと思いますが、そういう
価格
は、
日本
としては空オファーじゃないか、これはもっと狩りておれば下がると、こういう経験は、インド
市場
なんかでは、はっきり数回にがい経験を持っておりますし、あるいは一昨年から始まりましたインドネシアの
政府
入札、こういうのでも、そういう事例は幾多もございます。
中田吉雄
48
○中田吉雄君 では、次の
価格
の取りきめについてお伺いしたいのですが、肥料懇談会の答申を見ますると、肥料の国内
価格
については、二法なきあとも、
需給
の実勢から今後特別の
変化
かない限り、肥料
価格
の低位安定は維持されるんじゃないかと、こういうふうになっているのですが、今後特別な
変化
がない限りとなって、肥料懇談会が答申をした後において特別な事情が起きている、ああいう肥料
計画
を改定せざるを得ないような特別な事情が起きて、
価格
の低位安定が困難じゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
松岡亮
49
○
政府委員
(松岡亮君) たびたび申し上げますように、引き合いはいくら活発になりましても、輸出の承認は、国内の
供給
に差しつかえるような程度の承認は与えないわけでございますから、それは特別の事情の
変化
というわけではございません。輸出が不振のときも、このときは逆に売り込みをやる、非常に活発にやるわけでございます。そういうときは、まあこっちが積極的に売るということですが、いまは買い手のほうが積極的に買いにくる、その
変化
はあると思いますけれ
ども
、国内に対しては、いずれにしましても輸出をチェックして、三百万トンなら三百万トンは
確保
いたしますから、これは特別な
変化
ではないと
考え
ます。
中田吉雄
50
○中田吉雄君 私は、それは現行二法があって、税法の、あるいは
財政
投融資の、あるいはこのあとの
法律
でも百六億、百三億の赤字の融資の肩がわり、そういうような
政府
の、手厚いとは言いませんか、
責任
を持つ、発言権を持つ、そういう裏づけとしてのやはり国が
責任
を持つからには、そういう輸出をコントロールするからには、国が
財政
上の、あるいは税法上の、そういう
措置
をとるということがあるから、私はやり得ると思うのです。今度はなるべく不介入にして、やはり国がめんどうをみないというふうなことになると、なかなかそういうことが実際困難じゃないかと思うのですがね、その点はいかがですか。
倉八正
51
○
政府委員
(倉八正君) 私はその点は、これは中田先生にことばを返すようでございますが、毛頭心配はないと思っております。と申しますのは、この八条の御指摘がございましたのですが、あの八条では、
需給
見通し
を立てまして、そうしてそれに基づいて両
大臣
が、硫安輸出会社の譲り受けを承認するわけでございまして、輸出会社が勝手に、おれは輸出したいから、メーカーから勝手に買って、国内には幾ら、国内にはまああまり売らない、そういうことでは全然ないのでございまして、たとえば硫安輸出会社が、これこれの買い受け承認をしたいと、こういうことを出す場合に、農林、通産
大臣
がそれを査定しましてそれはいいという、あるいはもっと減らせとかいうような指示をして、承認をするわけであります。したがいまして、膨大な
生産
量をもちまして、輸出にはこれだけしかいきませんよということを、前もってちゃんと
確保
しておりますから、輸出のその引き合いがどんなに活発でございましても、硫安輸出会社というのは、結局両
大臣
の買い受け承認のワク内においてのみ、初めて輸出できるというたて支えになっておりますから、輸出が活発だから即国内を圧迫するというようなことは毛頭ないわけでございます。
中田吉雄
52
○中田吉雄君 私もその手続は、この
法律
を何べんも読んだからそらんじているのですが、ただ、そういうことをやり得るためには、国内
価格
と輸出
価格
とが違うのですから、そういうことが起きたときにはめんどうを見る、あるいは
合理化
のために開銀等の融資もつけてやるというような、そういう裏づけがない限り、私は、
財政
的なめんどうも見ない。輸出会社はFOB
価格
で買い取れというようなことになると、発言権をコントロールする裏づけがないじゃないか、だんだん
政府
の重味がなくなってくるじゃないかということを言っているわけです。
倉八正
53
○
政府委員
(倉八正君) 重味は十分あると思います。と申しますのは、いまの開銀の融資につきましても、
合理化
審議
会の
資金
部会の十三業極については、はっきり開銀の
資金
をつけるということで、御承知のように硫安というのは化学肥料、特に硫安というのは開銀の指定業種になっております。したがいまして、今後もそれが続きまして、毎年何億とか、ことしは大体両方あわせて三十数億出しますが、そういうことは今後も必ずそれは続く。それから税の問題につきましても、この
法律
があろうとなかろうと、こういう
農業
の
基本
資材をつくる硫安という重大な
産業
でございますから、そういう関税面の問題あるいは租税の問題についても、今後はずっと続けていくつもりでございますし、現に
法律
で特別償却なり、その他別の
法律
によって指定されておりますから、そういう行政の指導の面におきましては、従来と私は何ら変わらない、こう
考え
ております。
中田吉雄
54
○中田吉雄君 税法上の、このあと特例を設けて、九年ですか、特別償却を認めたり、あるいは百三億の赤字の穴埋めの融資をし、百六億の
合理化
資金
をつけるといいます。しかし、それもだんたんこれまでより少なくなってきているわけです。特にもう百三億で、これでけりをつけたというふうになると、やはり何も国がめんどうを見るのが非常に少ないのに、重要な
生産
資材だからといって、メーカーがそう裏づけのないことにやすやすと応ずるかどうか。海外の
需要
が非常に旺盛だというようなことは非常に心配するのです。 その点はその程度にしまして、赤城
大臣
にお尋ねしますが、私の本会議の質問に対しまして、話し合いが適当でないものには是正命令を出す、調停がつかぬ場合は裁定する。しかし、バルク・ライン方式はとらぬというようなことですが、一体どういう
価格
決定の
基本
方針
で、適当な
価格
に落ちつけられていくか、いろいろなやられる基準は、適当な
価格
というものを想定されて、それで是正命令を出したり、されたり、いろいろやられるのですが、一体
政府
はどういう尺度で、どういう定規でそういうことをやられるかというのが、社会党としては非常に不安に思っているわけですが、それはいかがですか。
赤城宗徳
55
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 経済
情勢
等にもよると思いますけれ
ども
、バルク・ラインにこだわらないという意味で申し上げたのでございまして、バルク・ラインではじき出す算定方法も、
一つ
の方法としては、調停などをする場合の
一つ
の根拠ということになると思います。しかし、バルク・ラインにこだわらず、バルク・ラインのみでなく、あるいは
需給
の
関係
とか、その他の経済
状況
等も勘案して
価格
の根拠を出すと思いますが、まあ要は
生産
費に対してどれくらいのマージンやその他で、配給を受ける者にいったらよろしいかということだろうと思います。ただ
一つ
の方式にこだわらないという意味で申し上げたわけであります。
中田吉雄
56
○中田吉雄君 その辺がなかなか含蓄の深い言葉で、どうもすっかり逃げられてしまうのじゃないかと思うのですがね。 そこで、お尋ねしますが、これはまあ経
済局長
でもけっこうですが、はたっぷり取る、こういうことを衆議院でたしか言っておられたように思うのです。たっぷり取られるのなら、そしてこれまでの
価格
より上げない、大体それを目安にする、赤字はしわ得せせぬというのなら、理論的にバルク・ラインをとってもいいのじゃないか、内需を一〇%ぐらい余分に見ますが、
調整
を見まして、そして内需をするのなら、その内需バルクのうちの最低のものから積み上げて、やはりそれではじき出すというのが、まあ理論的にいったら正しいのじゃないかと思いますが、どうなんですか。
松岡亮
57
○
政府委員
(松岡亮君) 現行の内需バルク・ライン方式が、いま
大臣
からもいわれましたように、
一つ
の目安であると私
ども
考え
ております。ただ、現行の内需バルク・ライン方式は、
合理化
されたメリットはすべて値下げに使っておるわけであります。で、そのメリットを全然見ないということが、赤字を転嫁しないということだと、そう言い切るのは無理があるのじゃないか、つまり
合理化
メリットを多少企業に帰属させるのは当然である、企業が
合理化
しようとするならば、
合理化
の効果は多少は帰属させられるのが当然であります。それをも認めないというのは少し行き過ぎではないか、でありますから、現行の内需バルク・ライン方式が赤字転嫁であると言い切るのは無理がある、それも
一つ
の基準としては、
考え
る基準としては必要であるけれ
ども
、それだけではきめられないいろいろな要素を
考え
るべきであると、こういうことでございます。
渡辺勘吉
58
○渡辺
勘吉
君 ちょっと関連。
大臣
にお伺いしますが、
価格
取りきめの第二条ですが、これには五項目あげておる。そういうものに適合するものでないと認めると、この五項目にわたるその認定の基準というものは、各項目別に具体的に明らかにすべきものだと思うが、それは一体どうです。これは
大臣
にお伺いしたい。
赤城宗徳
59
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) この五項目を具体的に話せというのですか。
渡辺勘吉
60
○渡辺
勘吉
君 どういう基準でこれを判断するのですか、その基準を具体的にわかるようにひとつ御答弁を願いたい。この基準があいまいであるから、疑心暗鬼が出るわけです。たとえば第一項の「
農業
又は肥料工業の健全な
発展
に支障を与えるものでないこと。」、これは
農業
の立場、肥料工業の立場、それに支障を与えるものでないことというものを適合しないという認可の基準、認め方の基準は、一体どこにあるのか、たとえば「不当に差別的でないこと。」、これは一体どういう基準をもって不当である、なしを判断されるのか、これは法の運用によって非常に大きな問題である。
大臣
はこれを一体どういうふうに御理解されておるかを伺いたい。
赤城宗徳
61
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) これを計算機にかけるように正確にやるわけにはまいらぬと思います。やはりこれは
一つ
の判定でございますから、不当に差別的であると、こういうふうに私
ども
認めれば、これに対して是正をする、あるいは
農業
または肥料工業の健全な
発展
に支障を与えたというようなことに対しての判定の問題でございますから、いま申し上げましたように、計算機で調べるようなわけには具体的にはいかぬと思います。そういう判定を下していくよりほかないと思います。
渡辺勘吉
62
○渡辺
勘吉
君 私は電子計算機的なお答えを期待しているわけじゃないですけれ
ども
、非常にあいまいもこたる、この認め方の基準というものがはっきりしない。
大臣
の答弁のように、不当に差別的でないこと、それからこの抽象的なところに、しからば裁定する基準をどこにおくか、一体どこまで
政府
は
責任
を持って調停をするのか、そういうきめ手がないわけですよ、計算機じゃないとおっしゃるだけに。それだけにこの
価格
のとりきめは紛争が起きる。独占資本の圧力に屈する結果にならざるを得ない。これをもっと科学的に証明してもらわぬと、この
価格
のとりきめについては、これは実需者である農民として納得がいかない。もう少し納得のできる答弁をいただければよし、いただけなければ、この
法律
自体がいただけない、こういうことになりますから、もう一回御答弁を願いたい。
赤城宗徳
63
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) これは両当事者の力の相違ということはありましょうけれ
ども
、相当両当事者がカルテル的な形で
価格
の話をする場合には、適当なところに私はきまると思います。もしきまらぬ場合には、十数年糊も
政府
では経験しておるのでありますから、
価格
はどういうふうにきておるか、どういう
価格
でいままで押えておったか、こういうような経験を持っていますから、そういう過去の経験といいますか、過去の数字、これは計算機じゃありませんが、数字はずっと出ていますから、そういう数字によって、この点があまり高く見積もり過ぎているとか、この点はもう少し安くできるはずだとかいうような、これは資料といいますか、そのとりきめのときの資料もありまするし、過去の資料もありますから、そういうものによって、不当であるとか、あるいはその他ここに掲げているようなことに該当するかしないかという判定を下していく、こう思います。
渡辺勘吉
64
○渡辺
勘吉
君 関連ですから、もう一点だけをお伺いしてやめますけれ
ども
、過去の実取引を十分考慮をして判断をされると申されましたので、私はお伺いをするのでありますが、過去の取引というのは、申すまでもなく現行二法によって最高販売
価格
が告示されて、その最高販売
価格
の中で、実需者団体とメーカー側とが話し合いによって取引をしておる経過があるわけです。そういうものが今後これらの
価格
とりきめにあたって、適合するとか、次の各号に適合するものでないと認めるという場合の認可の基準は、これは
意見
をまじえますが、現行二法のように内需優先を
法律
にもうたい、またそのたてまえからバルク・ライン方式をとって内需のラインを設定する、加重平均でやると、そうして出た最高販売
価格
の中で、お互いに話し合いをつけてやるということであればわかる。そういう最高販売
価格
というワクをなくして、そうして過去の実績の上でやるということは、ことばとしてはりっぱでありますけれ
ども
、その
思想
は、最高販売
価格
を設定をするということを肯定する
思想
にもつながるのだから、現行二法と同じように、最高販売
価格
を新法においても設定してしかるべきものだと思うのですが、その点はいかがですか。
赤城宗徳
65
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 当事者の話し合いというたてまえですから、最高販売
価格
というものを設定するこのたてまえから言えば必要ないと思います。しかし、私が申し上げました過去の経験というのは、過去におきまして最高販売
価格
を算出する資料というものを相当検討してきてあるわけであります。だから、そういうものも、こういうものに該当するかしないかというものについての、私
ども
の持つところの
一つ
の資料として、それに取引のいろいろな
状況
等を勘案して、この程度でなければこれは不当であるというようなことが指示できると思います。でございますから、最高
価格
はたてまえから決定はいたしませんが、そういういままでやってきた経験といいますか、資料等が十分ものをいうと、こういうふうに私
考え
ます。
中田吉雄
66
○中田吉雄君 ただいまも、また先日の本
委員会
でも、松岡局長は、バルク・ライン方式では
合理化
メリットを全部吸い上げてしまうように言われたんですが、バルク・ライン方式を中心としてやっているこの現行の臨時肥料
需給
安定法で、私はそうはなっていないじゃないかと思うのですがね。この第十三条の第二項には、「前項の販売
価格
の最高額は、政令の定めるところにより、
生産
費又は
輸入
価格
を基準とし、農産物
価格
、肥料の国際
価格
その他の経済事情を参しやくして定める。」というふうになっておりますから、バルク・ライン・オンリーだけでやればそうなるでしょうが、それを中心としてやっておるわけですから、全部
合理化
メリットを吸い上げていないのじゃないか。現に
利益
率や配当を見ても、零じゃないかと思うのです。他の製造業に比べては悪いわけですが、これはどうなんです。
松岡亮
67
○
政府委員
(松岡亮君) もちろん現行法におきましてもいろいろな事情を参酌するようになっております。今後ともそうあるべきだと思うのでございますが、現実には内需バルク・ライン方式で定めてきたわけでございます。だから今後も内需バルク・ライン方式だけで定めるということには無理があるのじゃないか。やはりいろいろな事情を参酌すべきである。それはまず当事者がいろいろな
条件
を持ち出してお互いに論議すると思うのでございます。初めは非常に広い範囲で論議してもらったほうが的確な値段が定まる、こういうように
考え
るわけでございます。 それから第二点の、いまでも企業利潤が少し出ているじゃないか。で、企業利潤と
合理化
メリットとはちょっと問題が違うと思うのでございます。企業利潤はその企業の努力で、その当該
年度
において利潤が出ることは実際起きるわけでありますし、原価計算上も一定の利潤
部分
を見るわけでございますが、
合理化
メリットは
合理化
のための投資をやり、
技術
的な
改善
をやった結果起きたメリットでございます。そのメリットはやはり投資をする人にも若干の
部分
は残るようにというのが常識ではないか。それは消費者のための値下げとして使われる、これが最も公平な
考え
方ではないかと思います。だから全部消費者に帰属させるという
考え
方は、これではそれが赤字非転嫁であるということはちょっと無理がある、こういうふうに申し上げたいのであります。
中田吉雄
68
○中田吉雄君 私も
合理化
のメリットを消費者が独占すべきだという
考え
はとっていないわけであります。そうしますと、衆議院の速記録を読んでみますると、五月十四日の速記録ですが、バルク・ラインも
一つ
の参考にはなるように言っておられるのですが、の実勢も加味する、こういうふうにも言っておる。そうしますと、結局いただいたこの肥料
関係
参考図表というものがありますね。
需給
の実勢を加味するということになれば、内需と、海外の
需要
もトータルした
需要
になると思う。そうすると結局、それを満たす総平均
生産
費というようなことになってしまいやせぬですか、これはどうなんですか。
松岡亮
69
○
政府委員
(松岡亮君) まず
国内市場
は輸出の制限によって海外
市場
とは遮断されておるわけでございますから、
需給
と
考え
られますのは、
国内市場
における
需給
でございます。その
需給
の実勢を反映したというのは、国内
需要
の総平均という意味では必ずしもございません。これは議論になりますので恐縮でございますが、
価格
というものは何で成立するか、これは
計画
経済のもとにおいては別でございますが、
生産
費から割り出して、
生産
費できめるといういき方も確かにあると思います。しかし、
需給
の実勢、別なことばで言えば、
需給
均衡
価格
というものできまり得ることも、これは普通の自由経済の
原則
であろうと思います。
需給
均衡
価格
と
生産
費から割り出された
価格
と、どちらが高いか低いか、これは高くても低くても、この場合は単なる議論でございますけれ
ども
、通常の場合は常識として、
需要
よりも
供給
が超過しておるときは安目にきまる、逆の場合は高目にきまる。
生産
費が、現在のように労務費などが年率何%というぐあいに上がっておるときには、
需給
の緩和しておるときよりも高くきまりやすいという
傾向
がある。したがって、
需給
の均衡あるいは
需給
の実勢を反映した
価格
できめることも、農民にとっては、場合によっては必要ではないかと思うのでございます。
中田吉雄
70
○中田吉雄君 そうしますと、輸出を抑えることによって
需給
を
確保
する、そこで
需給
均衡の
価格
できまる、こういう
考え
ですか、つまり輸出を切っちゃう、内需を
確保
するわけですから切ってしまう、そうすると、実際は
需給
均衡で、ここできまる経済上の
価格
は、一体バルク・ラインを越すものですか、総平均の
生産
費に落ちつくものですか、一体作業してみたらどうなりますか。
松岡亮
71
○
政府委員
(松岡亮君) これは
需給
の実勢できまると思います。したがって、輸出の制限をどれだけやるかということは、それの強度によっても違ってくると思います。ただ輸出
調整
をやったからといって、国内
価格
を放任するというわけじゃありませんから、いわゆる自由経済で放任されたまま成立する
需給
均衡
価格
ではない、安定的な均衡
価格
というものをお互いに論じて差しつかえない、この
法律
の
一つ
の
目的
は、低位に安定させるということでございます。それを話し合いできめる、きめる際には
需給
の実勢も十分考慮してはどうであろうか、こういうことであります。
中田吉雄
72
○中田吉雄君 そうしますと、具体的に内需を三百万トンなら三百万トン、三百五十万トンなら三百五十万トンとして
確保
しますわね。そこで、
需給
均衡の
価格
は双方の話し合いによってきまる、こういうことを言っておられますね。そうすると、実際はどの程度に落ちつくものと想定されているか。
松岡亮
73
○
政府委員
(松岡亮君) 私
ども
は比較的低目にきまると思います。幾らにきまるということは私
ども
なかなか想定できませんけれ
ども
、お互いに専門家でございますから、
需給
実務を論議の中で加味していくということはできると思うのでございます。いまは十分あるじゃないか、少し安くしろ、こういうのか商談――商談とは言いませんけれ
ども
、協定の交渉だろうと思います。
中田吉雄
74
○中田吉雄君 私は、海外の引き合いも旺盛ですし、輸出をコントロールして切ってしまうといっても、それはやはり潜在的なといいますか、
一つ
の
需要
として作用して、やはり少し国内
価格
をてこ入れするような、引き上げるように作用するのではないかと思うのですが、それはどうでしょうか。
松岡亮
75
○
政府委員
(松岡亮君) その点はやはり
政府
の行政上の態度ではないかと思うのです。
需給
見通し
を立てて輸出承認を実行するときに、輸出のほうに少しゆるやかな態度をとるか、厳しい態度をとるか、そこのかげんの問題だと思う。やはり
政府
としては、低位安定を
目的
とし、内需優先
確保
をはかるということを、
法律
に基づいて実行する任務を持っておるわけでありますから、十分内需は
確保
してまいりたい、こう
考え
ます。
中田吉雄
76
○中田吉雄君 私は、このいただいた図表の、公定
価格
が五十一ドル三十セント、総平均
生産
費が五十三ドル十三セントになっていますね。新法に切りかえた当座直ちにそうはいかぬでしょうが、いまのようなことなら、この足して二で割るというようなことで、だんだんと輸出赤字が転嫁されるようなことになるのではないかと思うのですが、そういう心配ないでしょうか。
松岡亮
77
○
政府委員
(松岡亮君) その点は、
政府
としては
生産
費調査を行なっておりますから、
生産
費に常に査定を加えてきまった
価格
が、この
法律
の定めにありますように「
農業
又は肥料工業の健全な
発展
に支障を与える」という
規定
に抵触する、つまり赤字を転嫁しておるような
価格
であると認めるときは是正
措置
をとる、こういうふうにやっていくわけでございます。
中田吉雄
78
○中田吉雄君 これは議論になりますから何ですが、この
農業
並びに肥料業、両方の矛盾したような
二つ
を調和するように言っておられまして、松岡局長は農民サイドのような強いお立場でけっこうですが、実際この
法律
をやれば、メーカーサイドに私はきめられてしまうのじゃないかと思うのですが、これは議論になりますから、そういう心配を持っているということを申し上げておきます。 それから第二条の五号ですが、相当な比率を占めているものが交渉する相手方になるわけですが、実際中肥連というものはどうなんですか、それでもかなりのパーセントを占めておるのですが、相当額の、五割というような点にはもちろん達しないわけですが、これはどうなんでしょう、先度もはっきりしなかったように思う。
松岡亮
79
○
政府委員
(松岡亮君) 現在の実際の取り扱い高では、全購連が六、七割扱っております。残余を商人系統の中肥連というようなものが扱っておるわけであります。この
規定
によりますと、相当な比率を占めなければいかぬ。この相当の比率は五〇%といたしておりますので、交渉の当事者として単独に交渉ができる当事者は、いまのところ全購連だけでございます。一方の
需要
者側の団体としては。しかし中肥連も全購連と一緒になって当事者になることは、つまり一〇〇%になるわけですから、これは差しつかえない、中肥連だけでこの協定を結ぶわけにはまいらない、こういうことであります。
中田吉雄
80
○中田吉雄君 その点は私もよく知っているのですが、実際は双方が販売シェアの競争をやって、実際は不可能だと思うのですよ。どうなんでしょう。全購連と一緒にやれるというふうに実際は思われますか、その点はどうでしょうか。
松岡亮
81
○
政府委員
(松岡亮君) 私はやれると思っております。いまの事情のもとにおきまして。けんかすれば別でございますが、いまは一緒になってやろうという機運が出ておるそうでございます。その点は私もどうもほんとうの腹のうちを聞いたわけではございませんから、ここで確言するわけにはまいりません。一緒にやりたいということを聞いております。
中田吉雄
82
○中田吉雄君 私は別のようなことを聞いておりますが、まあいいです。 それでは次に第三条の資料の交付等――
価格
の取りきめに一番大事なのは、資料の交付だと思うのですが、これによりますると、第三条の二項ですか、農林大百と通産
大臣
は、締結を促進するため必要があると認めるときに初めて資料を交付するということになって、交渉を始めたとたんに要求するということは、この
法律
から大体いつごろから……もしこれがよくやってみい、既存の資料もあるのだしということになると、全購連は引けない戦いで、メーカーのほうはバルク・ラインで計算すればどうだ、総
生産
費の平均でいけばどうだということを知って、手のうちはお手のものだからわかっているのですが、この時期は、必要と認めるときというのは、一体いつごろを言っておられるのですか。
松岡亮
83
○
政府委員
(松岡亮君) 必要があると認めるときというのは、時期ではなくて、場合は、というような意味でございます。
政府
としては話し合いは円滑にいくことを望んでおるわけでございます。また公正な取りきめができることを望んでいるわけでありますから、できるだけ資料はお求めに応じて交付したいと
考え
ております。
中田吉雄
84
○中田吉雄君 そうしますと、促進するため必要があると認めるときというのは、場合だということですが、これは交渉を始めれば、すぐ要求をされれば出されるのですか。
松岡亮
85
○
政府委員
(松岡亮君) 必要があると認めれば、最初からでも交付します。
中田吉雄
86
○中田吉雄君 赤城
大臣
は、企業の機密にわたらないものは十分これを交付するということになっているのですが、
生産
費そのものではないというような衆議院でのやりとりもあるようですし、一体どの程度の資料をお出しになるのでしょうか。その点やはり迅速に、消費者の方がそう不利にならぬようにきめるかどうかは、
一つ
は交付される資料の
内容
によると思うのですが、これはどうなんでしょう。
松岡亮
87
○
政府委員
(松岡亮君) 企業の機密になるというのは、要するに個別の工場の
生産
費となりますと機密にわたりますので、この
委員会
にも遠慮さしていただいておるわけでありますが、そうでないものにつきましては、できるだけ出したい。それから
政府
が特定の判断を加えて、それで分析したり、
加工
した資料というものは、これは最初から当事者に出すべきではない。一定の資料をどう判断し、どう分析するかということは、まず当事者の
責任
においてやることであって、お互いに理論的にその点は論議すべきことでありますから、
政府
が最初からこの項目はこう査定すべきだ、こういうバルク・ラインを引いたらいいだろうというような
考え
方をとって、そういう判断を加えた資料は出すべきではない。それはまず当事者が議論をして、その資料を大いに分析すべきである、こう
考え
ます。
中田吉雄
88
○中田吉雄君 そうしますと、私どこから入ったのか知りませんが、昭和三十七
会計
年度
硫安実績原価と昭和三十八肥料
年度
硫安推定
生産
費というような形に、推定
生産
費というような形にまとまったものは出されぬのですか。その
生産
の諸要素の項目別の推移は出されても、そういう集計をして、推定
生産
費はこうなるというようなものは出されぬわけですか。
松岡亮
89
○
政府委員
(松岡亮君) 推定
生産
費というのは、
政府
がいろいろ査定を加えた数字でございますから、それは控えたいと思っております。
政府
が調停したり、あるいは是正命令を出します場合には、そういう資料をいろいろつくるわけでありますけれ
ども
、直接にはもう
一つ
のほうの実績のような数字を出して、それで当事者が分析し、お互いに論議してもらう、これが自主的な話し合いとして当然ではないか、こう
考え
ております。
中田吉雄
90
○中田吉雄君 その硫安原価項目別、年次別推定というようなのがありますね、
内容
は聞きませんから。こういうものを、たとえば推定年産費としてはB会社、L会社、A会社、H会社として十九、こういうふうに出せますか。それは全部をトータルしたような形で出されるのですか。推定
生産
費にはB、L、A、H会社として十九というふうなものが推定
生産
費が出ているのですが、硫安原価の項目別の年次的の推移は出される、それの会社別のまあ符号でもいい、そういうものは出されるのですか、それを合計した形で出されるのですか。
松岡亮
91
○
政府委員
(松岡亮君) 会社別の数字は出しません。要するに実績を総合計といいますか、総平均といいますか、そういった形で出します。
中田吉雄
92
○中田吉雄君 そうしますと、結局総平均
生産
費しか出ないということにはなりませんか。
松岡亮
93
○
政府委員
(松岡亮君) 実績で、そういうような形、総平均あるいはもっと別な形式があればそれでもいいかと思いますが、素材としてはそういうもので交付いたします。
中田吉雄
94
○中田吉雄君 どうも私は、会社別の硫安原価の項目別の年次別推移が出ぬと問題があるのじゃないか、総平均では、総平均の硫安原価の年次別平均では、交渉の資料としては少し不足じゃないか、こういうふうに思うのですが、まあそれで十分だとお思いですか。
松岡亮
95
○
政府委員
(松岡亮君) 年次別のほうはすでに持っているのですから、おそらくは
政府
がつくってやらなくても、そろばんと普通の頭でつくることができるわけですが、工場別はやはり記号でやりましても、だんだんこれはわかってくるわけであります。能力や何かの推定ができますから、年々そういうことをやってきますと、あの工場はこう変わってきた、この工場はこう変わっている、これは実際にどこの工場ということはすぐわかってしまう、これは少し行き過ぎではないか、こう
考え
ます。
中田吉雄
96
○中田吉雄君 たとえばフランスの国立窒素工業所が七十万トンぐらい
生産
能力を持っている、そういう所なら完全な
生産
費がつかめるわけですが、
報告
に基づいてそれをいろいろ修正なり、はたして妥当かどうかということを見られてやるのでしたら、やはり私は全購連が交渉するのには、いま松岡局長の言われたのは、なかなかさしあたってすぐこの会社はどう、この会社はどうというふうな、一番コストの高いもの等をえり分けて、差別をしたりしてやることができるだろうかと思うのですが、そういう心配はありませんか。
松岡亮
97
○
政府委員
(松岡亮君) 素材を提供しましたならば、これは場合によっては、最高とか最低とか、そういう程度のことは助言として与えることはできると思いますが、素材を提供すれば、年間
日本
の七割も取り扱っておる大きな団体でございますから、たくさんのすぐれたスタッフを持っておるわけです。これを分析することは、十分おやりになれると私は思っておるのであります。
中田吉雄
98
○中田吉雄君 次に、硫安以外の肥料の
価格
の取りきめなんですが、新法では、硫安に限定して
価格
を取りきめするようになっているのですが、尿素や
高度化
成等の占める比率が非常に高くなっているのですが、この点は衆議院でもだいぶいろいろやっておるようです。もう少しはっきりしてください。
松岡亮
99
○
政府委員
(松岡亮君) 新しい
法律案
では、硫安以外の肥料につきましても、
価格
取りきめができるという制度にしてございます。ただ、現在でもそうでございますが、さしあたり、いままでやってきましたように、合成硫安について取りきめをやり、その場合に、回収硫安とか、副産硫安についても取りきめをやることは一向差しつかえないわけですが、大体硫安の成分比価で、現在のように尿素の
価格
というようなものがきまってまいりますから、それでいいのではないか、こう
考え
ております。しかし、今後の推移を見まして、必要があれば尿素あるいは石灰窒素、その他の肥料につきましても政令で定めることは、将来
考え
られると思っております。
中田吉雄
100
○中田吉雄君 いま言われました硫安以外で、特に必要があると認める肥料については政令でということですが、その認定基準は、どういうことになっておりますか。
松岡亮
101
○
政府委員
(松岡亮君) 認定基準というのは、ここに書いてありますように、
価格
の変動が著しいと、どうもこれじゃ農家が迷惑するのじゃないかと思われるようなものにつきましては、やったほうがいいんじゃないか。いまのところはどれもまあ安定しておるわけです。硫安がきまれば尿素もきまる、大体そういうふうな
状況
であります。それほど必要はないのではないかと
考え
ております。
中田吉雄
102
○中田吉雄君 いまはまあ窒素の含有比で
価格
をきめているのですが、尿素その他はそういうことだけでいいものなのかどうかという点は、どうなんですか。
松岡亮
103
○
政府委員
(松岡亮君) これはまあ回収硫安とか副産硫安になりますと、いろいろ議論があるわけです。実際になかなかコストがつかみにくいために、どういう
価格
できめるかということは、非常に問題がございますが、尿素の場合は、使用者側に立って
考え
れば、成分比でやはりきめていって差しつかえないのではないか、こう
考え
ます。回収硫安、副産硫安も、成分比では合成硫安とほとんど変わりがないわけですから、値段は同じでいいと
考え
られますが、これはコストのほうが安くて、やや色がついているというような差がありますので、慣習上の
格差
というものが現在は行なわれております。それらはもう専門家がたくさんおるわけですから、もっともっと論議してもらったらいいと思います。
中田吉雄
104
○中田吉雄君 尿素につきましては、炭酸ガスというアンモニアの担体が無価値なものですから、ああいう尿素メリットというものを見て、それを、硫安のコスト引き下げにもいろいろな方式があるようですが、やっておるのですが、回収や副産については、ただ窒素比で計算し、十六円安と三十二円安というようなことで、大体矛盾のないものですか。
松岡亮
105
○
政府委員
(松岡亮君) これは確かに問題であります。回収硫安も副産硫安もちょっと色がついている。成分比価は同じなんですけれ
ども
、色がついて、まあ粒状が少し不整一だというような差がありますけれ
ども
、それだからまあちょっと
格差
をつけておるというのですが、一面においてコストの面からいえば、回収硫安、副産硫安はずっと安くできるのではないかと、こう
考え
られますが、いろいろこれは
考え
方があると思うのです。それで、現在は慣習上いま言われたような
格差
がついております。その辺は、私
ども
はもっと専門的に両方で追究してもらってはどうかと、こう思います。
大河原一次
106
○
大河原一次
君 関連して。いまの松岡局長の回収並びに副産硫安というもののコスト計算はなかなか困難である、こういうことを言われておると同時に、一面には、いわゆる合成硫安の一番安いものに基準を置いて、いま言われるような
価格
決定をやっておるというのですけれ
ども
、私はあなたの言われるようにおそらく新法においても今後
合理化
が進んで、
合理化
メリットの配分が行なわれたらもっと安くなるだろう、こういうことを言っておられるわけだから、その場合に、もっとしっかりした回収並びに副産硫安に対するコスト計算を厳格に行なって、ただ合成硫安に比較して、その一番安いものに基準を置いてつければいいのだというような程度だけでは、ちょっと納得できない。もっと厳格なコスト計算ということが全然できないわけではないと思う。今後の問題として、どういうふうに
考え
られるか。
松岡亮
107
○
政府委員
(松岡亮君) いまおっしゃいましたのは、硫安のコスト計算上の約束でございます。回収硫安を合成硫安の最低のコストのものと同じに見て、内需量を何万トンとやる場合にそこに算入する、これは
一つ
の肥料
審議
会で毎年やっている約束なんでございます。それと、実際の回収硫安なり副産硫安の
価格
というのは、違っております。合成硫安より安くなっているわけです。品質が、少し見かけが劣るとか、そういうことから、安くなっているわけです。私
ども
としては、その見かけや何かできめていくのには非常に問題がある。コストはなかなかつかみにくいのですけれ
ども
、できるだけその辺も究明して、今後その辺、まあなかなかむずかしい問題ですけれ
ども
、できるだけリーズナブルな値段が成立するようにもつていきたい、それは当事者もそういう
方向
に研究してもらいたいと願っておるわけでございます。
中田吉雄
108
○中田吉雄君 倉八局長にお伺いしますが、合成硫安の
生産
の全体の比率が下がってくるわけですね。二十九年に二百万トンぐらいあったものが三十八肥料
年度
では百四十三万トンぐらいにだんだん下がってきて、この改定した肥料なんかでは硫酸とガスの不足ですか、硫安は四万三千トンも減産になるということになり、だんだん全体の
生産
比率が少なくなると、これはだんだんとコストが上がってくることに――相対的に上がることにはなりませんか。
倉八正
109
○
政府委員
(倉八正君) 上がりません。というのは、ごらんになっておわかりになりますように、同じ合成塔から出てくるアンモニアをこの硫酸にそのままぶつけたのが合成硫安でございまして、それから同じアンモニアから出てくるのをラクタムというのをつくって、そのよごれたアンモニアを硫酸にぶつけるのが回収硫安でございますから、この合成硫安が減りましても、このアンモニアを
利用
する肥料が伸びてくれば、アンモニアのいわゆる操業率というのが下がりませんから、その点は合成硫安、回収硫安と、そういうふうに分けて
考え
られるべきものじゃなくて、アンモニアを総合的にどう
利用
するかという問題でございまして、合成硫安の減ったのが回収硫安にいくと、こういうことでございまして、私は合成硫安が減るから即位段が高くなるということはないと思います。
中田吉雄
110
○中田吉雄君 どうもその点が、たとえば回収硫安はラクタムその他の廃液からアンモニアをとり、あるいは都市ガス、製鉄等のコークス製造の副産物からアンモニアをとる、まあ副成ですかというようなものと、この合成硫安は直ちに結びついているのですか、その辺が私にはわからない。
倉八正
111
○
政府委員
(倉八正君) 合成塔から出たアンモニアというもの――いまなぜ合成硫安が減ったかということは一番大きい
理由
は、
需要
が減ってきているからということでございます。これは同じ窒素分なりあるいは無硫酸根だとかいうようないろいろな
理由
で減ってきたと、ところがそれを
生産
量的に見ますと、このアンモニアの能力というのが、二十九年の能力よりも現在は二・五倍ぐらいになっているわけでございますが、そのアンモニアの行くえが、どうどこにあるかと申しますと、尿素にいくわけであります。アンモニアに炭酸ガスをぶっつけさえすれば尿素になる。それでそれからまた従来は硫安のための硫安すなわち合成硫安をつくっておったのか、そのアンモニアをラクタムにもっていった、アクリルにもっていったということでございまして、その点では逆に下がるわけでございまして、アンモニアかそういうふうに非常に大
規模
になって、しかも多角的に
利用
されるということになりますと、むしろ上がるというよりも下げぎみな原因が多いのでございます。
中田吉雄
112
○中田吉雄君 時間がないから次に移りますが、この
合理化
について、まあ、今度の
提案理由
の説明でも、
法案
でも、内需の優先とか、
価格
の低位安定とか、輸出の一本の態勢はあるのですけれ
ども
、
合理化
についてはうたってないわけですが、うたってはないが、三十七年の十二月二十八日の閣議決定で、百六億の融資をする、これたけでもう十分だということなんですか。
倉八正
113
○
政府委員
(倉八正君)
合理化
という問題は、私は実はこんな開放経済の
日本
におきましては、
法律
以前の問題であると思います。
法律
で
合理化
をやれということも、
考え
ようによっては一理あるかと思いますが、それよりも
法律
があるなしにかかわらず、片や貿易の自由化をしてきた、それから片や
技術
の進歩によって、毎日毎日それを追っかけていかなければならないということで、好むと好まざるとにかかわらず、その
合理化
に追っかけられているということで、私は
合理化
ということは、今後もますます続けていかなければならぬということが
一つ
。それから、後段の百六億でお前たちは今度打ち切るかということでございますが、これは打ち切れるはずはないのでございまして、たとえば御承知のように、農林省の
見通し
にもありますように、今後肥料の
形態
というのが、硫安から尿素に移り、さらに
高度化
成に移っていく。
高度化
成もまあこれは何千という種類があって、いまからそのいわゆる本命というのをつくらなくちゃいかぬというようなことで、今後そういう面から見ましても、私はこの硫安というよりも、もっと広げた化学肥料の
合理化
資金
――たとえば
合理化
資金
とか
財政
措置
というのが今後ますます必要になってくると思いますし、また
政府
としましても、それを取り上げていく所存でございます。
中田吉雄
114
○中田吉雄君 このさきに申し上げました、三十七年の十二月にきまった閣議の決定では、肥料
形態
の転換、アンモニアの多角的
利用
ということなんですが、前にいろいろその
計画
をやって、たとえばメタノールとかホルマリンとか、関連する樹脂等がたくさんでき過ぎて、四〇%も六〇%も値下がりして、これがまあわれわれとしては硫安のほうにはね返ってきていると思うのですが、今度のは百六億を融資する、そういうアンモニアの多角的
利用
というようなことでは、そういう過剰
生産
とかいうような問題は起きぬのですか。
倉八正
115
○
政府委員
(倉八正君) せっかく貴重な国家
財政
資金
をつけるわけでございますから、何に転換するかというその転換先の
需給
の問題というのも、非常に大きい問題でございまして、いま御指摘になりました、いま花形になっておりますメラミン樹脂というようなものも、転換先のメラミン樹脂の
需給
が、どうなって、このくらいの
資金
つけて、このくらいの
規模
にしてもだいじょうぶだと、そういうこともちゃんと総合してきめている次第でございます。
中田吉雄
116
○中田吉雄君 第一次、第二次、いろいろ
合理化
計画
を立っても、
目標
に達しなかったのですが、今度は、どうもそういうふうに批判されるそしりを免れるためか、そういう
計画
もないのですね、一体
目標
はどうなんですか。およそそういう投資をする際には、
合理化
目標
ということはあるのですが、どこまでいくのですか。
倉八正
117
○
政府委員
(倉八正君) もう
合理化
ということは、これは一般の
産業
を通じて言えることは無限でございまして、どこまでいったら
合理化
を一切終わって、それから先は
合理化
は要らない、こういうことは言えないと思います。しからば、それなら何年何月には何百何十何円になると、こういうことにつきましては、私たちのほうでも、いまはっきりした想定を持っておりません。と申しますのは、いまの、いつも責められます
合理化
に達しなかったという
理由
がたくさん数字的にございますが、そういう非常に不測ないま測定しがたい要素がございまして、今後下がるということは、これはもう確言できますが、何十何円いつまでに下がるということは、ちょっといま私
ども
のほうでは想定しかねます。
中田吉雄
118
○中田吉雄君 だんだんと合成硫安の比率が下がってくるのですが、これは不足するというようなことはありませんか。
松岡亮
119
○
政府委員
(松岡亮君) 先ほど申し上げました
需要
懇談会で、いろいろな
農業
の
技術者
あるいは
農業
技術者
もいろいろな人も加わっておりますか、そういった人々の
意見
を聞き、また過去の趨勢から見まして、今後の硫安設備の
見通し
を立てておるわけでございます。大体不足するということはあり得ない、しかも輸出もできる、こういう
状況
でございます。
中田吉雄
120
○中田吉雄君
合理化
の
目標
の中には、肥料の品目の転換とか、
形態
の転換とか、アンモニアの多角的
利用
があるのですが、肥料工業の国際的な
規模
を見ますと、さきに局長の言われたような百百十万トンというようなものもございますし、国際的に調べてみても、イタリア、オランダ、ノルウェー、西独、イギリスというように見ても、非常に大きな
規模
にあるわけですが、そういう
合理化
というものは、やられずに、非能率工場の整理というようなことをも含めてそういうことは、やらずに、
現状
の
規模
でそういう
合理化
をやっても、私は限界があるのじゃないかというふうに思うのですが、その点はどうなんです。
倉八正
121
○
政府委員
(倉八正君) それは一理、確かにあると思います。外国の工場が大きいことも事実でありますし、それからドイツあたりの工場が、合成硫安よりも回収硫安に主力があることも御存じのとおりでありますが、われわれとしましても、できるだけ
規模
の大きい工場をしかも安くつくりたいというのは、これは当然の要請でございますが、ただ、このように何十年の歴史を持った工場をいま急につぶしまして、どこかに
一つ
集めるということは、これはなかなか言うべくして行ないがたいということでございまして、したがいまして、われわれとしましては、
規模
を大きくするとか、おるいは系列化して、できるだけ専門
生産
を、集中
生産
をやらせる、そういう
方向
につきましては今後進めていきたいと思いますが、その場合にも、ある程度の時期を要するということを御了承願いたいと思います。
中田吉雄
122
○中田吉雄君 まだいろいろお触れしたいと思うのですが、五時まででしまいということですので、最後に、肥料輸出の
見通し
と国内に赤字の非転嫁の問題ですね。この問題について、社会党としては一番心配しているのですが、たしか先日の
委員会
で肥料の輸出で大体十億ぐらい赤字があるということですが、昭和三十八肥料
年度
の二法の対象になるアンモニア系窒素の輸出総額と、その赤字と、そうして実際それは一番大きな差はどのくらいかぶるものか、その点をお伺いしたい。
倉八正
123
○
政府委員
(倉八正君) これは大体いわゆる赤字というのか十億でございます。それでそれは硫安十七社の売り上げ右回が〇・二八%でございますか――〇・三%ぐらいということでございます。その一番目で大きいのは、御承知のように東洋高圧でございますから、その比率によりますと東洋高圧がこのうちで一番多かろうと、こう
考え
ます。
中田吉雄
124
○中田吉雄君 この輸出硫安売掛金経理臨時
措置
法によりまして、赤字の二百十五億ですか、百三億の赤字融資等を含めてもうけりをつける。そのときの
提案理由
に、今後は輸出会社に赤字をプールすることはまかりならぬというふうになって、硫安輸出会社はFOB
価格
で買い取りなさいということになっているのですが、やはりそういう赤字が出るとすれば、結局それは国内
価格
に転嫁せざるを得ないのじゃないかというふうに思うのですが、その
関係
はいかがですか。
倉八正
125
○
政府委員
(倉八正君) FOBを仕切りに、やりましたから、いま各会社も御承知のとおりに赤字を補償してくれとかどうりとかいうことは言っていないのでございまして、それから
政府
の態度も、従来の赤字を全部、俗なことはで言えばしりぬぐいしてやってそれから前向きの
資金
の百六億をつけてやるから、その
合理化
によって赤字というのはこれで終わったぞ、こういう態度を一昨年の十二月二十八日とったわけでございます。したがいまして、形式上は私は十億円くらいの差というのは、赤字は出ておりますが、それは会社の中において吸収しておるということでございまして、それをそのまま国内に転嫁して、国内の肥料の
価格
を上げるということは、今後の問題としても私はあまり心配も要りませんし、それからさっき農林
大臣
も、それから経
済局長
も先般から言っておりますように、その点は両省の
価格
のたとえばカルテルの認可の届け出の場合の審査、あるいはそれに対する是正命令等において十分監督ができて、心配は私はなかろうと思います。
中田吉雄
126
○中田吉雄君 先日のこの
委員会
で、いろいろやっても、
合理化
でも十分吸収できないというような場合には、赤城
大臣
は行政
措置
でやるというふうな、私は何かそういうことなしには、やはり韓国向けの一番高かったのでも四十四ドル五十セントくらいですから。国内か五十一ドル三十セントですから、まだ数ドルの差があるわけですから、やはり赤字は出ると思うのですよ。そうすると、結局転嫁せざるを得ないと思うのですが、この点は農林省としてはどうなんですか、実際。
松岡亮
127
○
政府委員
(松岡亮君) いま極端な場合に、どうも企業が
負担
し切れなくて、転嫁しなければ成り立たぬというような場合がないとは言い切れないと思います。しかし、そういうことは絶対に転嫁はしてもらっては困る、大胆が言いましたのは、そういう場合には従来やりましたように
財政
措置
等、投融資等によって赤字の
負担
の軽減をはかっていく、こういうことを
大臣
が言われたと思うのであります。
中田吉雄
128
○中田吉雄君 私は倉八局長の言われた
合理化
メリットを全部実際は吸収してしまうわけで、百姓のほうにも行かぬということになって、結局輸出赤字はかふってしまうのじゃないか、結果においてはそういうふうに思うのですが、そういうことになりませんか。特に私はいまの公定
価格
の、五十一ドル三十セントですか上げんでも、これは償却は九年ですか、設備の償却は九年として、初
年度
に三分の一も大幅な償却をするわけですから、急速に償却費というものがふえてくると思うのです。全購連からいただいた資料を見ても、主要な材料費と労務費と償却費を見ても、三十六年ごろが償却費がピークでもって、非常に下がって、そういう意味では上げぬでも、本来は全部メリットを消費者
価格
にいかずに、やるにしてもほとんど、そこに妙味があって実質的には上げぬでも相当転嫁されるというふうに思うのですが、そういうことはないんですか。
倉八正
129
○
政府委員
(倉八正君) 現行
価格
を上げなくても転嫁されるというような御
意見
でございますが、これはまだはっきりした、何十何円になるということは、いまわかりませんから、私はそこの点は明言できませんが、さっきからも申し上げているように、転嫁するということがある場合には、
政府
の是正命令なりその他の行政
措置
で救済できるという
措置
を立てておりますから、それがそのまま農民に転嫁するというよりなことは、私は
考え
られぬと思いますし、それから先生のことばを買ってしますと、いま四ドルの差があるじゃないかということか、先生の理論でいきますと、一かます。これは百円くらい上げなくちゃいけないわけでございます。それを転嫁させるということになりますと、そういう計算になりまして、私は転嫁論というのは結局現象問題であって、そこに両省が指導権を持っておれば、私は農民のほうをいじめる転嫁というのはあり得ないと、こう
考え
ております。
中田吉雄
130
○中田吉雄君 じゃ最後に
一つ
聞いておきますが、この硫安原価の中で、まあ大まかに分けて材料費、労務費、減価償却費とあるのですが、これをまあ今後百六億ですか、それにさらに足しての二百数十億の投資をして、償却費というのはどういうふうに年次別に曲線が下がってくるような、そういう計算をしておられますか。その材料費と労務費が変わらぬものとした場合には、償却費の占める比率というものの
傾向
はどういうふうになるのですか。
倉八正
131
○
政府委員
(倉八正君) 償却費は、大体一般的に言えば今後下がってまいります。したがって、その分がこの、いわゆるコストが安くなる作用に及ぶと思いますが、御承知のように非常にアンモニア工業の施設というものか変わりまして、現にもういまやっているのは時代おくれということになってまいりまして、ことしから例のナフサ分解法というのか世界に出てまいりまして、これが出たらまた取りかえるということになりますると、また、ばく大な
資金
が要る。そういうことで日進月歩の化学工業ですから、償却費か、そういう改造あるいは取りかえをしなければ、私は今後下がっていくと思いますが、そういう取りかえをすれば、今後償却費かいままで下がったと同じぐらいで下がっていくかどうか、非常に疑問だと思います。
中田吉雄
132
○中田吉雄君 私は、やはりこの
法律
は結局まあバルク・ライン方式にこりて、結局においてメーカー・サイドになって、輸出赤字がじわじわと消費
価格
に、国内
価格
に転嫁されるんじゃないか、そういう心配を持っていますが、いろいろお尋ねしたいが、まあ他の
委員
の人も質問されるので、これでやめます。失礼しました。
北條雋八
133
○北條雋八君 私は、いままでいろいろ質疑がありまして、二重になるようなきらいもあるかもしれませんか、この際一応確かめておきたいのは、現行二法がいままで肥料の内需優先、また低位
価格
の形成に非常に役に立ちまして、そうして直接これを使う農民にも非常に安心感を与えておりますし、しかも、肥料の
合理化
によるコスト・ダウンがこれからようやく実施してこようというそういう際に、特にこの二法をやめて、新しい新法をつくるということに対しましては、製造業者、また
需要
者お互いに
利益
が相反しておるのであります。どのようにそれぞれ
利益
を与えるのか、一方が
利益
になれば、必ず一方は不
利益
になるのじゃないか、こういうふうに思うわけですか、その点に対しまして、いままでの
法律
と比べて、新法がどのように両者に
利益
を与えるか、その点を伺いたいと思います。
赤城宗徳
134
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 御承知のように、いまの
法律
の期限が切れますので、それに対処するためにどうするか、こういう問題から、いま
提案
しておるような
法案
に相なっておるわけでございます。しからば、何といいますか、メーカー及び消費者が常にその利害が対立していて、片方によければ片方が悪いという見方はいかがかと思います。私は両方に適当に立ち行くような形のものがとれるものだと、いわゆる階級闘争的な、何といいますか、片方が
利益
すれば片方は不
利益
だ、こうはかりは私は
考え
られないと思います。しかし、それは御質問の点ではございませんか、しからば、本制度は、現行
法律
と比べて、どういう利害、
利益
等が、あるいは得失等があるかというお尋ねだと思います。私は、メーカーといいますか、業者のほうからいいますならば、依然として
合理化
を進めていくわけでございますから、その
合理化
のメリットのごく少
部分
かもしれませんか、幾ぶんかはさらに
合理化
に進めていく、あるいは
経営
面に帰属するというような点が利点といいますか、まあ利点と思います。また、消費者の面から
考え
ますならば、これは現在と別に変わりはないと思いますけれ
ども
、
見通し
といたしましては、
一つ
の統制下でなくても、
供給
面が
確保
され、また
価格
面においても下がってくる、こういうような
見通し
ができるという
見通し
があると私は思います。そういう
見通し
から見ますならば、現行法でなくても、この
法案
によっても、現行法の
目的
は達していけるのであるからして、あえて何といいますか、統制的なものを必要としないで、現行法と同じような
目的
が達せられる、こういうような、利点とまではいかぬでしょうけれ
ども
、そういう面において不利というようなことはないと、こういうふうに
考え
ております。
北條雋八
135
○北條雋八君 いまのお話でございますけれ
ども
、この肥料の
生産
業者が二法を撤廃するということを非常に望んでいるということは、これは事実だと思います。で、それを裏返して
考え
るならば、いままでよりも話し合いによって、きびしく押えられないで、そうして融通性がついてくる。それだけ
価格
を抑えられないということは、結局高くなるということに通ずるのじゃないかというふうに思われます。いま
大臣
がおっしゃいましたけれ
ども
、この小
産業
者からすれば、
合理化
メリットの配分は、今度の新法によれば話し合いで今度それだけ有利になりますから、そうすると結局有利になるのは
生産
業者である。消費者である農民にとっては、一向
利益
にならないということが言えるのじゃないか、こういうふうに思います。
赤城宗徳
136
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 私はやっぱり
合理化
メリットが幾ぶんメーカーのほうに帰し、またさらに
合理化
が進まる、こういうことになれば、これはやはり
価格
も安くなるというような結果になりまするから、これはやはり消費者のほうにも結果的には帰属する。一心的には
合理化
のメリットが
生産
者のほうに一
部分
帰属するというかっこうで
利益
になるというふうな見方もございましょうけれ
ども
、これ繰り返し繰り返し
合理化
がなお遊んでいくということにしなれば、私はこれは消費者のほうにも回ってくる結果に、まあすぐそのときとは言いませんけれ
ども
、回ってくる結果になる、私はこういうふうに
考え
ています。
北條雋八
137
○北條雋八君 それはもう確かに
合理化
が遊んできて、もっと国際競争力もつけなければなりませんし、
生産
者も消費者にも両方によくならないわけでありますし、またそうしなければなりませんけれ
ども
、現行法と比べれば、消費者のほうは割合が悪くなるということは言えるのじゃないか、こう思うのです。その点はいかがでございましょう。
赤城宗徳
138
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) そういう見方もないわけではなかろうかとも思います。これはやっぱり折衝の結果によりませんと、はたしてそういうふうにいくかどうかということは言い切れませんけれ
ども
、いままでより不利にならぬように、消費者の面におきましても折衝をするように私
ども
も十分配慮をいたしたい、こう
考え
ます。
北條雋八
139
○北條雋八君 次に、新法には直接肥料を使用する
生産
農民の
利益
を主張する道が開けておらないわけでございますが、全講連は一応は農民の
利益
を代表する団体ではありますけれ
ども
、いずれも手数料という販売権の執行に重点が置かれる団体でございますから、農民と同じような主張はできません。どうしてもまたこの肥料を使うほうの立場でありますから、現物を持っておる強みがあるメーカーの力に押される、話し合いするにしてもどうしても弱くなりますから、いいかげんなところで妥協してしまうということになるのじゃないかと思います。それで、そういうことを
考え
ますと、この話し合いに何か消費者である農民の代表とか、あるいは中立の立場である
学識経験者
みたいなものの
意見
も入れるような方法はないものかどうか。たとえて言うなら前の
審議
会みたいなものをやはり存続しまして、それによって
政府
の諮問機関として
価格
を公定するわけでもありませんけれ
ども
、やはりそういう
政府
としましても、やはり前以上にその
価格
については、厳正な計算の根拠というものは持っていなければならないのでありますから、何かそういう方法をとって二者だけにまかせないという方法はないかと思うのでありますが、これに対して
政府
で何かお
考え
になったことがあるかどうか、伺いたいと思いいます。
赤城宗徳
140
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) いま肥料
審議
会のような機関とかあるいは
学識経験者
に、
価格
の交渉に助力するようなものは、いま
考え
ておりません。私
ども
は、全購連というものは相当な力を持っておると思います。また
組織
も持っております。でありますので、折衝の一方の当事者としては、これは全肥連も一緒になってやる場合もあると思います。相当な
組織
及び力を持っておると思います。でございますので、それに対しての資料の提供とか、そういう面におきましての協力は、私のほうといたしましてもいたしますが、当事者としていろいろ
学識経験者
の
意見
を聞いたり、あるいはまたその方面のベテランの人の協力を求めたり、折衝をするということはあり得るし、またそういう場合があるかと思いますけれ
ども
、特に
政府
がそういう機関を設けるということは、いまのところ
考え
ておりません。まあ調停とか、是正命令というような場合に、そういう機関ではなくして、いろいろ調査の、あるいは資料収集の方法として
学識経験者
や、この方面の人々に
意見
を聞くということは、これはあり得ることでございますけれ
ども
、交渉の場合にどうこうということは、いまのところは
考え
ておりません。
北條雋八
141
○北條雋八君 結局この二者が話し合う問題点というものは、結局
生産
コストでありますが、特に
事業
者であります販売業者は、これを算出するための必要な資料というものは、必ずこれは
政府
に要求してくると思うのであります。ところが、第三条でそういう
規定
がありますが、おそらくこれはもう必ずといって、きまったものだと思いますが、
政府
としましては、もちろんそれを
前提
にしてどういう資料を用意しておく
考え
であるか、農林
大臣
または通産
大臣
は、「この
法律
の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、肥料の小
産業
者若しくは販売業者に対し必要な
事項
の
報告
を求め、」云々、そういうかうに書いてございますが、これはそのつど
報告
を求めるというよりも、もっと積極的に、定期的に必ずこういう資料は
提出
しろというぐらいにしておいてもいいんじゃないかというふうに思います。むろん従来の、先ほど来のお話で、バルク・ライン方式に使う数値の資料ももちろん必要であることは明らかであります。そういったものを政令できめて、そうしてもう出足期的にこれは
報告
させるというぐらいにしたほうがいいんじゃないかというふうに思いますが、その点いかがですか。
松岡亮
142
○
政府委員
(松岡亮君) この
規定
につきましては、大体現行法と同様に運用したいと
考え
ております。具体的に申し上げますと、メーカーからは
生産
数量、出荷数量を定期的に徴集いたします。それから在庫数量につきましてもメーカー、販売業者から定期的にとってまいります。それから出荷数量、これも同様にやってまいる。いずれも定一期的にとることにいたしております。それから
生産
費につきましては、大体現行法と同様にやってまいりたいと思いますが、最近は
生産
の構造も比較的安定してまいっておりますので、毎年同じような精細な調査をしなくても、ものによっては簡素化できるものもございますので、そういう面の簡素化はいたしますが、できるだけ
現状
と同じように
生産
費の調査もやってまいりたい、こう
考え
ております。
北條雋八
143
○北條雋八君 従来そういう
生産
費を
報告
させるのは、どういう手続によって、どういう資料をとっておられますか。
松岡亮
144
○
政府委員
(松岡亮君) 各企業から、各メーカーから
生産
原価に関する精細な資料を
報告
させております。必要によっては帳簿等の検査をすることもございます。
北條雋八
145
○北條雋八君 それは月々の
報告
をとっておられますか。
松岡亮
146
○
政府委員
(松岡亮君) これは年一回でございます。たとえば、三十八
年度
なら三十八
年度
に関する原価の一年分を一回
報告
させます。
北條雋八
147
○北條雋八君 次に伺いたいのは、この
生産
業者と販売業者が、先ほ
ども
お話がありましたとおり、利害が相反するものであると私は思うんですが、容易にその話し合いがまとまらない、こう思います。そこで第四条で、その場合、「双方又はいずれか一方から申請があった場合において、特に必要があると認めるときは、調停を行なうものとする。」、そういう
規定
がありまして、先ほ
ども
話がありましたとおり、「特に必要があると認めるとき」というのは、一体具体的にどういう場合をいうのでありますか。逆に言うなら、認めない場合とは一体具体的にどういう場合を言うのか。その点をお聞きいたします。
松岡亮
148
○
政府委員
(松岡亮君) 先ほ
ども
申し上げましたように、
政府
としては、話し合いが円滑に進み、また公正な取りきめができることを望んでおりますから、できるだけ差しつかえない資料は提供いたしたいと
考え
ております。ただ、相手出力の機密のようなものまで要求されても、それは差し上げられない。そういった場合はございますので、いま御質問に、逆にどういう場合には提供できないかというお話でございます……。(「提供でない、調停だよ」と呼ぶ者あり)どうも失礼いたしました。調停の場合は、これはできるだけ自主的に話を進めていただきたい。簡単に調停に持ち込んでいただくのでは、自主的な話し合いという精神が非常にまずい結果になるのではないか、安易に調停はいたしたくない、できるだけ自主的に十分論議を尽くしていただきたい、こういう
趣旨
でございます。
北條雋八
149
○北條雋八君 そうしますと、必要を認める場合と認めない場合と、どっちの場合が多いのでありましょうか。
長期
にわたり努力したにかかわらず、申請があった場合でありますが、大体は必要と認める場合が多いのじゃないかというふうに思います。
松岡亮
150
○
政府委員
(松岡亮君) できるだけ調停には持ち込んでいただきたくない、こう
考え
ております。自主的にできるだけ話し合っていただきたい。お互いに話し合ってもなかなかきまらない、肥料
年度
が開始されても、
現状
ではたとえば八月から肥料
年度
が始まりますが、九月ごろまできまらないことがございます。その場合に暫定
価格
でやっておるような場合がございますが、まあある程度の時期は過ぎてもどうしてもきまらないというような場合には、やはり調停をせざるを得ない、こう
考え
ております。
北條雋八
151
○北條雋八君 そういう場合には、先ほ
ども
お話がありましたけれ
ども
、調停をしなきゃなりませんけれ
ども
、これはまた万一この調停ができない場合はどうするかということについても、先ほどちょっと中田さんの御質問にありましたけれ
ども
、そういう場合があってはたいへんでありますけれ
ども
、そういう場合に、やはり全農民が安心できるような
責任
のある御答弁をお願いしたいのです。もう一回、これは
大臣
からお願いしたいと思います。
赤城宗徳
152
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) これがまあ調停の場合と別に、話し合いできめた場合に適当でないというときには、これは是正命令が出せます。それから調停の結論が出ないでおるという場合に、時期的にあるいは
価格
面についてどうするかということでございますか、きまった場合に是正命令が出せるくらいでございまするから、調停が長引いたり何かしていて、農民の入手に非常に支障を来たすというような場合には、これは行政的に私は、
価格
の面につきましても、あるいは出荷等につきましても、指示するといいますか、
法律
面にはなくても、当然そういう指示、勧奨を近めていくと、こういうふうに
考え
ます。
北條雋八
153
○北條雋八君 調停ができない場合には裁定ができるという
権限
規定
でもつくっておけば、一番いいと思うのですが、裁定ができるようなふうにならないものでありましょうか。
赤城宗徳
154
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 裁定というところまでは、私はちょっとたてまえからいきにくいと思うのです。しかし調停が長引くような場合、調停に応じないという場合に、ある程度の指示、勧奨、助言の
規定
もございますが、それを二歩進めて行政的な指示、勧奨、命令は出せる、こういうふうに私は
考え
ます。
北條雋八
155
○北條雋八君 そうすると、大体勧奨でもってそういう場合には片がつくという自信がおありになるというふうに承わってよろしゅうございますね。
赤城宗徳
156
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) そういうふうに
考え
ます。
北條雋八
157
○北條雋八君 あと一点簡単にお伺いいたします。この際私も、先ほど来いろいろお話がありましたことなんでありますが、
大臣
がおいででございますから、なお念のために伺いたいのは、この二法の現行法がなくなった場合でも、
わが国
の肥料工業が引き続いて国際競争力を強化しつつ、かつ国内においても農家により低廉な肥料を豊富に
供給
していくことができるかということが、われわれとしては、非常に
責任
も感じ、また心配でもあるわけなんでございますが、これまた、われわれが安心してこの新法に賛成できるような確信のある御答弁をいただきたいと思います。
赤城宗徳
158
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 私
ども
はいまの
法律
の期限が切れるので、その後どういう
措置
を講ずるかということで、種々研究いたしました結果、いまの国際的に見ましても、国際競争力が強まっていく、及び内需方面におきましても十分な
供給
ができる、
価格
面におきましても低廉に進めていき得る、こういう
見通し
がありましたので、実はこういう
法案
を出しておるわけでございますから、そういう点におきましては、私
ども
は
責任
をもってこの
法案
の施行を進めていきたい、こう
考え
ておるわけであります。
高山恒雄
159
○高山恒雄君 ちょっと私、この前要求いたしました資料のことでお聞きしたいのですが、この資料を出していただきました中で、
基本
的に内部まで入って調査のできる項目は何と何か、たとえば労務費なんかは簡単にできますね、これは平均賃金で出るでしょうから。材料費も、原料費も私は出ると思うのですが、一番問題なのは本社だとか、あるいはまた一般
経費
ですね、こういう問題の突っ込み方というものをどういうふうにお
考え
になっておるのか、どこまで調べた経験もあるのか、またこれで十分突っ込めるという自信があるのか、あるならば、これの項目の中でどれとどれということをお聞きしたいのですか。
倉八正
160
○
政府委員
(倉八正君) ここに差し上げましたのは、まる公決定の資料の要約でございます。この資料のどの項目につきましても、はっきりした非常に細密にわたる資料を出させまして、そうしてそれを査定しております。したがいまして、いま御指摘のありましたように、どの項目もそういうことになっておりますが、たとえば本社費なんかということになりますと、これは
会計
学でもいろいろ問題があると思いますが、何を木社費と見るかということと、それとその割り掛けをどうするかという
二つ
の問題に尽きると思いますが、その問題につきましては、割り掛けというのは、当該会社の総本社費を当該肥料の数量で割ったものでございまして、本社費というのは普通いわれるように、ここで言っております研究費それから広告費、そういうものを含んでおります。
高山恒雄
161
○高山恒雄君 そうしますと、この資料は、
政府
でお
考え
になっております基準的なものを割り出す各社の基礎になった平均だ、そういう見方をしていいのですね。
倉八正
162
○
政府委員
(倉八正君) もうちょっと詳しく言いますと、各社から出しましたものを、
政府
の公式に従いまして、それで査定した額でございます。
高山恒雄
163
○高山恒雄君 そうしますと、この平均を出されるのに対して、あるいは製造原価というものについては、最高と最低とどのくらい違うのか、たとえばトン当たりでは一万二千九百四十八円ということになっておりますね。あるいは一かますでは五百十七円になっている。したがって十七社なり二十社なりありますが、その中の一体最高と最低はどのくらいの差があるか、これは
生産
コストの差だと思うのです。
倉八正
164
○
政府委員
(倉八正君) 今
年度
三十八肥料
年度
の差がたしか二千六百円ぐらい、二千五百円ちょっとだったと思います。一番安いところと一番高いところ。
高山恒雄
165
○高山恒雄君 そうしますと、先ほどから中田さんの質問なり北條先生の質問に対して、
生産
メーカーとあるいはまた全購連との間にかなり妥当な
価格
が出るだろう。と、たびたび自信のある回答をしておられるわけです。ところが、それならば、そういう方法でやられるならば、なぜ独禁法の除外例ということをこの際
考え
て、共同行為ができるような方法にどうしてしたのか。私が聞きたいことは、共同行為をする場合には、トン当たりにおいても二千六百円の
格差
があるわけです。そうしますと、一体これからの肥料の
あり方
というものは、倉八局長が言われるように、まだまだもっと機械化するだろう、オートメーション化するだろう、新しい製品も出るだろう、こういうふうにおっしゃっているわけです。そうすると、この共同行為をする場合に、一体メーカーがどの線をとるかということに問題が私はあろうかと思うのです。
政府
が
考え
ておられるのは、十七社の平均をとったと、こうおっしゃるけれ
ども
、メーカーが
考え
る場合には、将来
高度化
するこの事態から
考え
てみると、どうしてもやはり最低のところをとらざるを得ない、早く申し上げますならば、二千六百円の欠損をするような行き方はしたくない、それから最低のものを中心にして共同行為をやらざるを得ないと
考え
ますが、その点はどうお
考え
になりますか。
倉八正
166
○
政府委員
(倉八正君) 独禁法の例外
規定
を認めましたのは、
需要
者団体と協定をする態勢をつくれということを認めただけでございます。と申しますのは、全購連は最初から独禁法の適用除外でございまして、その点は独禁法の適用を受けません。ところがメーカーにつきましては、集まって話をするということ自体が、独禁法違反でございますから、肥料の
価格
安定という意味から、十七社がばらばらでやるよりも、相手の
需要
者団体と一緒になって、共同で話し合いをしなさい、そこだけ認めたのが今度の
法律
の
規定
でございます。 それから、
価格
の問題につきましては、いま非常に縮まりまして、三年前くらいは大体六千円くらい違っておったのでございますが、非常に
合理化
しまして、二千五百円ちょっとに縮まった、今後ますます縮まります。これは確実でございますが、その場合に、どういう
価格
で交渉するかということは、これは両当事者の話し合いにまかせるよりしかたがかなかろうと思います。その場合に、たとえば
需要
者団体も、こういう資料を全部持っております。かつて、十年分の厚いものを持っておりまして、それがどのくらい
合理化
して下がってきたということは、全部お持ちになっております。したがいまして、われわれが資料としまして、
合理化
でたとえば一番問題になるのは、労務費でございます。労務費が下がるということが、これが下がるということ、この労務費の中でどういうふうに配置転換になったか、あるいはどういうふうに原
単位
が上がったかということをみれば、大体経験を持った人なら、このくらいの
合理化
ができたということは、これはおわかりになるだろうと思います。また必要があれば、さっき農林省からもたびたびお答えしておりますように、われわれとしては必要な資料は、いつでも両当事者に差し上げるということで、私は話し合いはうまくいくたろう、こういうふうに
考え
ております。
高山恒雄
167
○高山恒雄君 それは私は詭弁だと思う。あなたは共同行為ということは、値段まで話し合いするということです。集まっただけで、みんながばらばらではいかぬ。集めるだけなら集めたらいい、
政府
の指示で。そうではなくて、共同行為をやるということは、少なくとも値段の、
価格
を協定するということです。そうでしょう、そうなれば、私がさっき申しましたように、最高と最低の場合には、これからますます設備投資も要るし、
政府
の助成金としても、そうやたらに出るわけではないでしょう。昭和二十九年の実態と違うのです。しかし、トン当たり二千六百円の
格差
があるならば、それを含めてその
格差
のあることを含めてそれが最低基準になる、こういうおそれが私はあるのではないか、そのことをどうお
考え
になっているかということを聞きたい。
倉八正
168
○
政府委員
(倉八正君) 観念的にはあり得ると思いますが、実際的に私は起こらないと思います。その最低、いわゆる限界
生産
費をとりますと、いまの
価格
よりも二千六百円上がるはずでございますから、それを四十キロかます、二十五で割りますと、いまの
価格
よりも百円も上がるという理屈になりますから、そういうことは、いまの限界
生産
費をそのままとるということは、私は事実問題としてはあり得ない、こう
考え
ております。
高山恒雄
169
○高山恒雄君 そうしますと、お聞きしますが、
政府
が出しておられますこの標準から上がるというようなことはない、大体これを標準にしておられるのかどうか、その点をお聞きしたい。
倉八正
170
○
政府委員
(倉八正君) いまの
価格
よりも絶対に上がりません。そうして、もしそういうことをしたら、われわれのほうは是正命令を出します。これははっきりいたしております。
高山恒雄
171
○高山恒雄君 それではもう
一つ
お聞きしますが、時間がありませんので詳しく申しませんけれ
ども
、あなたのほうでこういうことを言っておられるのです。全購連に売る場合と輸出会社に売る場合との
二つ
があるわけですね。その場合に、こういうことが書いてあるわけです。「ただし、第十四条の一号から三号までに該当する場合、すなわち不公正な取引方法を用いたり、是正等の命令に違反したり、第十五条第三項及び第四項の
規定
により公正取引
委員会
が農林
大臣
及び通商
産業
大臣
に対し是正等の命令をするよう請求し、かつ同条第五項の
規定
によりその旨公示してから一カ月経過してもなお是正等の命令がなされなかった場合には、適用除外されないこと」になる、こういうことになっているわけですね。しかし、私が御質問申し上げたら、あなたは絶対ないと言われるのです。絶対なければ、独禁法の適用を、これはつまり言うことを聞かぬ場合には除外しないぞということを入れる必要はないでしょう。私はその危険性があるから、この
法案
が入っていると思うのですが、どうですか。
倉八正
172
○
政府委員
(倉八正君) この
規定
というものは、これは一口で言えば、一種のこういう独禁法の例外をつくるときの例文でございまして、
趣旨
が
二つ
あります。
一つ
は、第二条のいわゆる農林、通産両
大臣
が
産業
上の要請から是正命令を出すということが第二条の五号です。それから公取がみずからの立場におきまして独禁法違反をやっているということになれば、それは独自の
権限
に基づきまして、ある場合は両
大臣
に要求して廃止命令を出させる。それでも聞かぬ場合には、自分みずからを
運営
するように要請しているというのがこの
趣旨
でございます。
高山恒雄
173
○高山恒雄君 そうすると、そういう危険性はないけれ
ども
、単なる牽制にすぎないのだ、こういう解釈でいいのですか、それにしてはちょっとおかしいと思うのです。
倉八正
174
○
政府委員
(倉八正君) こういう法をつくるときは、いろいろなことを想定して、それを網羅するというのが法のたてまえだと思います。したがいまして、観念的にもそういうことがあるというならば、これを法に盛りまして、アリの一穴もないというふうにするのが、法のたてまえだろうと思いますから、そういう意味において公取独自の
権限
をここにうたっているわけでございます。
高山恒雄
175
○高山恒雄君 相当自信があるようですから、この問題はそういたしておきますが、こういう場合はどうなりますか。たとえば、これは先ほど
大臣
も多少お触れになりましたけれ
ども
、全購連としてもかなり強い団体だ、業者団体も強い団体であろうと私は思うのです。そのときに、大体この資料を見ますと、三十八
年度
を見ますと、卸が七百五十八円、これはかますですが、小売りが八百三円と、こうなっております。そうなりますと、全購連との話し合いの中で、メーカーとの取引がなされると思うのです。そのときにメーカーが大体一割上げたい。それはきついじゃないか、しかし、そのかわりに全購連はいま大体六%ぐらいの手数料をとっているようですが、君のところもこの中から二%上げればいいじゃないか、うちが全部とろうと
考え
ていないのだ。したがって、君のほうでもそれを認めてくれ、こういう話し合いもあり得ると私は思うのです。取引ですから。そういう心配はせんでもいいのかどうか。先ほどのあなたの確信からいえば、そういうことはないとおっしゃるかもしれませんが、私はそこまでこの交渉に対してはやはり心配をしておくべきだ、こういう
考え
方を持つものですから、お聞きしたいのです。
松岡亮
176
○
政府委員
(松岡亮君) 両方の当事者はお互いに相手側の事情を理解し合うように、また、自分のほうの事情については説得して、相手側に理解してもらうように論議をすると思うのであります。その硫安の値段を幾らにすべきかということと、肥料のマージンをどうするか、取り扱いのマージンをどうすべきかということは、ちょっと問題の性質が違うと思いまするので、そのマージンについては、むしろ
需要
者団体の内部の問題でございますから、それは内部的に解決すべきことであって、相手側からこうすべきだということはちょっと筋違いではないかと思います。しかし、これはまあ話し合いでございますから、話の材料としてそういうことが出される場合はあっても差しつかえないと思いますが、しかしそれを要求するとか、筋としてそうあるべきだ、こういうことにはならぬと
考え
ております。
高山恒雄
177
○高山恒雄君 それは別個に分けることが問題であって、今日のような、つまり
流通
機構の
改善
を
考え
て、全く肥料の場合は、メーカーから直接
流通
機構の全購連にいくわけです。したがって安くしようというわけでしょう。しかし全購連としても、あらゆる諸経済の問題があろうかと思うのです。そういう場合にはその話し合いは別個じゃなくて、取引の中に当然起こってくる問題だと私は思うのです。そういうことから、私が先ほど言ったように、心配いたしますことは、業者は独禁法の除外例で当然
価格
の協定をすることができる、その交渉の相手は全購連は強いとはいえ
ども
、全購連自体の
運営
資金
も私は要ろうかと思います。おのずと農民に対する肥料代というものは上がらざるを得ないではないか、そういう理屈になるではないか、したがって極端に二
法案
から今日のような自主性を持たせた交渉は、なるほど企業の将来の
発展
にはいいように見えるけれ
ども
、現実はそうではないではないか、こういうことを私は
考え
るのですが、そういう心配はないと、これは確信持って言えるかどうか、その点ひとつ両局長にお聞きしておきたいと思うのです。
倉八正
178
○
政府委員
(倉八正君) これをもっと分析しますと、メーカーが十七社ありますが、何社入るか知りませんが、
一つ
のカルテルをつくって
価格
を操作するというときに、その値段の
一つ
の性格にもよると思います。どういう値段を立てるか、いまはもより駅貨車売り渡しというのが、さっきのこの表にあります。百三十八円でありますが、それを工場渡しで売るというようなことになれば、工場以降の口銭はメーカーの段階ではなくて向こうの段階になりますし、逆に今度は消費者庭先渡しという方法もありますから、そうすると消費者のところに持ってくるということになれば、全購連の手数料はメーカーの手数料になろうかと思います。そういうふうにいろいろ、取引の態様というのがあろうかと思いますが、私はその前に両方がなれ合いになって、ちょっとお互い一%ずつ手数料を上げようかというようなことは、事実問題としてはあり得ないというふうに
考え
ます。というのは、そうしたらば、結局最終値段というのが上がるわけでございまして、上がるということは、この一
法律
というよりも、
一つ
の大きい政治問題であるし、社会問題であって、そこまでたとえばきたない言葉で言いますと、なれ合いでするということは、現実の問題としてはこれだけ
国民
の目が光っているから私はあり得ない、かように
考え
ております。
松岡亮
179
○
政府委員
(松岡亮君) いま軽
工業局長
が言いましたとおりでございますが、値段の建て他のきめ方もあると思います。あると思いますけれ
ども
、かりにまあなれ合いで不当なマージンというようなものが協定の
内容
に入った場合、これはやはり是正命令の対象として
考え
てよろしいと私
ども
は
考え
ております。
高山恒雄
180
○高山恒雄君 今日の
日本
の
産業
は、伸びれば伸びるほど独禁法の除外例を認めてもらいたいというのがこれは業界の私は
考え
方だと思うのです。その独禁法を認めておいて、業者間だけのいわゆるメーカーと販売者との間に自主的に話をつけよう、そうしてきまったものに対してもし不当であるならば、あるいは通雄
大臣
なり農林
大臣
の勧告を受けることができるということになるわけですね。そこで、 これは皆さんの
意見
を私は尊重しないわけじゃありませんけれ
ども
、両局長は確信を持って上げないと、こうおっしゃっておるのです。それを私も望みます。そこで、もしこれが上がったとするならば、これは
大臣
に確認しておきたいのですが、今後の米価の決定なりあるいは麦、さらになたね、こういう支持
価格
の問題には値上がりは完全に織り込んでいくのだ、こういうことはここで確言できるかどうか、ひとつ
大臣
の御所信をお聞きしたい。
赤城宗徳
181
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 米価の算定等におきまして、肥料
価格
が上がった場合には
生産
費
所得
補償方式の形でやっていますから、これはその分だけ上がってきます。しかしこの問題は、いま肥料の当面している問題は、そういう肥料の
価格
を上げることにしないという
方針
でおるわけでございます。ですから、肥料――硫安
関係
ですが――硫安
関係
の肥料の
価格
か上がったからということで米の
価格
の話はちょっといま早過ぎると思うのですが、私は上げないというつもりでおりますから、まあそういうふうに
考え
ております。
高山恒雄
182
○高山恒雄君 いや早過ぎるといっても、私が御質問申し上げておることは、業者を守ることにきゅうきゅうして、農民に、いわゆる消費者に対する
価格
が上がらないという自信が持てると、こうおっしゃるのですよ。持てるならいいと思うのです。私は。そうでしょう。しかしメーカーと販売者との自主交渉というものは、これはおよそ常識で
考え
てみても、ある程度の全体的な自然増の物価の値上がりもあるわけです。したがって、また不当なやり方の値上がりもあるわけです。その不当の値上がりの場合を私たちは心配するわけです。基準がないから。そうでしょう。それで、当然消費者に迷惑をかけないというならば、私は米価の問題に織り込むのだ、自信をもって
大臣
も上げないとおっしゃるのだから、言っていただければそれでけっこうです。当然のことだと私は思うのです。
赤城宗徳
183
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) このカルテルの問題でございますが、
価格
形成のカルテルで、独占
価格
を決定するというようなカルテルでないことは御承知のとおりでございまして、折衝する場合に共同で折衝するということで独禁法の除外例になっておる。その場合に、先ほどお話がありましたが、一番問い
価格
で値を出すのじゃないか、しかしそれできまるわけではございません。独占
価格
を決定するカルテルではございませんから、交渉の相手方がそれは認めませんから、そういう場合はございません。また現在より、先ほど局長が答弁していますように、
現状
より問い、いまより高いというようなことであるならば、私
ども
は是正命令を出して現在以下にこれを引き下げる、こういうことにいたすつもりでございますから、したがって
価格
が上った場合に、上がっただけ米の
生産
費等の米の
価格
を上げていくかということは、
原則
論としてこういう
法律
がなくて自然
価格
として上がった場合には、当然これは米の
生産
費の
価格
等にも織り込んで米の
価格
を上げるということでございますけれ
ども
、しかしいまの
法律
のもとにおいては、この硫安
関係
の肥料は上げないということでございますから、したがって米の
価格
等については上げない
価格
で織り込めると思います。
高山恒雄
184
○高山恒雄君 終わります。
青田源太郎
185
○
委員長
(
青田源太郎
君) 本案に対する質疑は、これにて尽きたものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青田源太郎
186
○
委員長
(
青田源太郎
君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。
青田源太郎
187
○
委員長
(
青田源太郎
君) 次いで、
漁業災害補償法案
を
議題
とし、質疑を行なうことにいたします。 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
小宮市太郎
188
○
小宮市太郎
君 ずいぶん時間も迫ってまいりましたので、簡単に質問いたしたいと思いますので、非常によくわかるようにひとつ御答弁を願いたいと、かように
考え
ます。 まず、この
法案
に入る前にお聞きしたいと思いますことは、いままで漁業
災害
対策として現在行なわれておるものには漁船損害補償法だとか、あるいはまた李ラインに
関係
がございます漁船乗組員給与保険法あるいはその他農林水産等の天災被害等のいろいろの救済といいますか、
災害
対策としての
法律
があると思うんですが、私がこの
法案
の中身をお聞きする前にお尋ねをしておきたいと思うことは、韓国拿捕船の問題であります。これは水産庁から資料をいただいておりますが、三十九年の一月現在でこれに載っております最後のものは三十九年の一月二十九日の佐代丸、以西底びき、これが拿捕されている。これで終わりになっておりますが、その後新聞等で承知いたしますところによると、かなり悪質というと、どうも語弊がありますけれ
ども
、相当きつい拿捕の
状況
を聞かされております。その後どのくらいございましたか、そちらに資料がございますれば、庄野長官からでけっこうでございますから、お答え願いたいと思います。
庄野五一郎
189
○
政府委員
(庄野五一郎君) 韓国の拿捕漁船でございますが、三月末で三百十八隻、その後五月六日に一隻拿捕されまして三百十九隻、未帰還が百八十二隻というふうになっております。その後漁船が追跡されまして巡視艇がそれを指導、援護しておりますものにつきまして、船員は巡視艇に乗り移っているが、漁船を横抱きにして離脱しようとしたというものを非常に強制的に傘捕、連行した、そういうふうになりまして、先生のお持ちの一月現在の以後四隻拿捕されております。で、本日も一隻、午後以西底びきの船が拿捕されている、こういうことになっております。それで、四隻のうち一隻は洋上で釈放している、返還されております。それから二隻は船のみ連行して船員は巡視艇に乗り移って帰ってきている。それから本日拿捕されました一隻は、船員とも拿捕されておりまして、十三名、そういう
状況
になっております。
小宮市太郎
190
○
小宮市太郎
君 そうしますと、船員の数は何名になりましょうか。それから拿捕された船の隻数、トン数ですね、おわかりでございましたら……。
庄野五一郎
191
○
政府委員
(庄野五一郎君) ただいま抑留中の船員は、きょう抑留されました分だけの十三名でございます。なお全体のトン数につきましては、ただいま資料持っておりませんのでお答えいたしかねますが、御容赦願いたいと思います。
小宮市太郎
192
○
小宮市太郎
君 きょうのは初めていま長官からお聞きして十三名、船員並びに拿捕された船があるようですが、二十三日に第十一住吉丸が洋上で拿捕されてそれで船員が十二名、それから便乗者が二名いたと思います。これは直ちにというわけじゃなかったでしょうが、若干の時間を経て船員とも釈放された、こういうのがございますね。これについて私の知り得たところでは農林三百十七区の六、中国の沖で、しかも李ラインの外で漁労をやって博多港に帰途、済州島の南のほうの農林二百六十六区の六で韓国の巡視艇に停止をされ、そこで拿捕されようとした、こういう事件なんですね。この点は間違いないでしょうか。
庄野五一郎
193
○
政府委員
(庄野五一郎君) 先生御指摘の船は以西底びきでございまして、いわゆる東海、黄海で操業している分でございます。そこから帰航中に拿捕された、済州島の南の李ラインの付近で拿捕された、こういうふうに承知いたしております。なおこちらから厳重抗議いたしまして無害通行権というようなことを主張して抗議いたしました結果釈放された、こういうふうに承知いたしております。
小宮市太郎
194
○
小宮市太郎
君
政府
の抗議によって保釈をしたという御答弁がありました。非常に適宜な
措置
だと私は思うのです。ところが、もしこういうことがたび重なりますと、長官も御承知のように、船員の諸君も相当最近は激高していることがあるわけです。したがって昨年の三月、こういう事態が起きたならば、船員諸君が自分の船みずから体当たりしていこう、こういうことを決議している。こういう事件がもしあると、思わぬ事態が発生する、私はそういうふうに思うのです。ですからこういう点については、特に格段の
政府
の抗議というのが必要じゃないか、こういうふうに思いますが、
大臣
からこの点を承っておきたいと思います。
赤城宗徳
195
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) そのとおりでございます。
政府
といたしましては、厳重抗議いたしまして、できた事態を除去し、またこれからそういう事態を起こさせないようにいたしたいと思います。また
日本
の巡視艇等を増強いたしまして、そういう事態か起こらないようになお一そうの注意をしてまいっておる次第でございます。
小宮市太郎
196
○
小宮市太郎
君 新聞で承知しますところによると、漁業の問題について韓国と
政府
当局と打ち合せ等があっているということも聞いております。一方ではそういう話し合いがあっておって、一方において不法な拿捕事件あるいは不法な威赫事件、こういうものが起こるということは、まことに遺憾だと私は思うのです。そういう意味において、
政府
としては厳重にこういうことのないように抗議を強くやっていただきたい、こういうように希望いたします。
赤城宗徳
197
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) この間じゅう漁業
関係
の折衝をいたしておりましたが、その後何ら向こうから話もございませんので、漁業交渉は中断という形で現在おります。しかし、もしもそういう交渉が再開されるような場合には、私はそういう拿捕をやるようでは、これ以上続けないぞというようなことを、言うつもりでございます。それは別といたしまして、
政府
といたしましては、現地のこういう事態については、厳重に抗議を申し込んでおる次第でございます。
小宮市太郎
198
○
小宮市太郎
君 会談があろうとなかろうと、この問題はこの問題として別個に
考え
なければならない問題だと思います。船員等は、
政府
が日韓会談をやるので、それに気がねして弱腰でやるんじゃないかという
考え
方さえも持っている者もあるのです。それはそれといたしまして、保釈をいたしましたから、これについてはあとを申しませんけれ
ども
、いま本日拿捕された問題については、どういうようになされたのですか、どういうふうに今後なされるのですか。
庄野五一郎
199
○
政府委員
(庄野五一郎君) 本日午後一時ごろだと思いますが、拿捕されたという入電があったわけでございます。これもやはり以西底びきの船でございますが、先般の住吉丸と同じようにやはり東海、黄海で底びきをやりましてその帰航中だと思われますし、そういうこともございまして、直ちに外務省を通じて抗議して釈放方を要求い たしております。
小宮市太郎
200
○
小宮市太郎
君 それでは、その問題はおきまして先にいきたいと思います。ここ十年ばかりの間に沿岸漁業は最も深刻な問題の
一つ
であると私は思うのですが、これは私が申し上げるまでもなくすでにたくさんの人から御質問もあり、そういう
意見
が出ているわけです。現実もそうなんです。しかし、それはなお強くなる
傾向
にある、こう思うのです。特に経済の高度成長の過程では、その
格差
というものはますます開いておる。だから農林漁業
基本
問題等の調査会が設置されて、その中で漁業の問題が、特に沿洋漁業について集中された。こう思っておりますが、そのときに漁業の
基本
問題と
基本
対策という答申を
政府
に
提出
したことも私は承知いたしております。そういう中からこの前論議いたしまして通過しました沿岸漁業
振興
法案
というものが立案されて、現実に
政府
の対策として進行しておると思うのですが、その漁業の
基本
問題と
基本
対策という答申の中身というものが忠実に生かされて、現在
政府
の対策としてどのように進んでおるか、こういうことをお聞きしたいのです。非常にばく然としておりますから、これをもう少しこまかに聞くわけですが、まず第一に聞きたいことは、沼津漁業の
生産
者の中でも、浅海養殖のみは
生産
量がかなり
増大
しつつある。これは統計で明らかであります。これもわかります。それから漁船漁業はほとんど横ばいだと、こういうふうに思うのです。定置網の漁業は、これは減少の一途をたどっておる、こういうふうに見るのですが、沿岸漁家の
所得
の上昇が今日見てみると、魚価の上昇に依存しておるというようなふうに私は見るわけです。ところが、これは決して正常な安定でないと思うのですが、特に沿振法の
審議
の際に、わが党の渡辺
委員
から強く要求され、
意見
を出されましたこの
価格
政策
についてどういうことを今日までやられてきたのか、この点ひとつまずお聞きをしておきたい。
庄野五一郎
201
○
政府委員
(庄野五一郎君) 昨年沿振法を御
審議
、成立をいただいたわけでございます。御指摘のように、沿岸漁業の
生産
は停滞的といいますか、三十七年の漁業
動向
で御説明いたしたと思いますが、多少の上昇をいたしておりますが、御指摘のように、魚価が強含みであるということもございまして、沿岸漁家の漁家
所得
といいますか、漁業
所得
というものは上昇の
傾向
をたどっております。しかし、やはり沿岸の漁業につきましては、
資源
の問題、あるいはこれをとります漁獲努力の問題等もございまして、こういう面の対策をとるということも当然必要でございまして、そういう面から沿振法にも盛られておりますような沿岸漁業の
構造改善
対策というものを強化し、また、その中におきましても、特に大型漁礁その他の漁場の
開発
というものをはかりまして、
資源
の維持、増殖をはかる、こういう道を講じ、さらに沿岸漁家の装備の
近代化
をはかって、そういうことで
生産性
の
向上
をはかって漁家
所得
の
増大
をはかる、そういう
措置
をとっております。また、そういう面に即応いたしまして、漁船漁業におきましても、その
近代化
をはかるという道を講ずるためにその
資金
の
確保
をはかる、またそういう大型化の
傾向
をたどる漁船につきましても、その
生産
基地として、あるいは
流通
の、水揚げをします消費者経済
市場
につながる結着点としての漁港の
整備
をはかるということをやっております。そういう
基本
的な対策をとりつつ、魚価の安定ということにつきましては、特に多獲性の漁業、サンマといったようなものにつきまして、あるいは冷凍イカその他の多獲性のものについて魚価安定の対策を講ずるわけでございますが、サンマについては
生産
調整
ということと、魚価安定基金からする魚価の安定、こういう道をとっております。その他のアジ、サバなりイカといったようなものにつきましては、
生産
調整
を自発的にやっている、こういうふうなことをやっております。なお、
価格
の維持という面もありまして、産地におきまする産地冷蔵庫の助成ということをやりまして、とれました魚をそこに貯蔵をして、
価格
の強調のときに
市場
に出す、こういった点も
考え
ております。また
流通
関係
におきまする
改善
というようなものもとりまして、
価格
の安定ということに資しております。
小宮市太郎
202
○
小宮市太郎
君 白書の
報告
を見てまいりますと、魚価の騰貴というのがもっぱら昭和三十六年以降の漁家の
所得
の上昇をささえておるというように見られるわけなんですが、しかしその
内容
は漁船漁家にしてようやく一世帯当たり都市の
労働者
の世帯に比べると八二%程度じゃないか、こういうように思うのです。ところが、いまお話しのように、対策をいろいろやっていられると思いますが、しかしまだ引き続いて魚価の上昇に期待しているという向きも私はあるんじゃないか、そういう
考え
方が残っているんじゃないか、こういうように思うのですが、しかしその漁家の諸君は、この前いろいろ論議になりましたように、ほとんど兼業を、やっておるというのが大多数である。したがってそういう兼業
所得
を含めての話であるのか、一本立ちで漁家が安定をしておるというのであるのか、そういうところが私は明確でないと、こういうように思うのですが、長官はどういうようにお
考え
でしょうか。
庄野五一郎
203
○
政府委員
(庄野五一郎君) 沿岸漁家のうちには、先生御指摘のように兼業面に依存するものが非常に多いわけでございます。なお漁船漁家等につきましては三十七年を中心にいたします漁業
動向
でも御
報告
申し上げましたように、三トンないし五トン総トンという漁船階層に大型化しつつありまして、それは非常に装備を
近代化
していく、そして自家労働をもって完全燃焼をするような操業をやる、そして大型化いたしますれば、いままでは操業区域が非常に近距離であったのが、操業区域も伸び、また操業日数も延びて終年操業に近くなる、こういうようなことでございます。でわれわれといたしましても、沿岸漁家の一番問題になりますのは、漁船漁家が中心になっておりますので、その問題に取り組んでおるわけでございますが、今後のやはり
構造改善
等の
方向
といたしましても、そういった自家労働を完全燃焼して、終年操業をやれるような態勢に持っていくというような
方向
で漁船漁家の指導をやるわけでございますが、また一方、そういう漁船漁家のみならず、その
自然的条件
が浅海養殖その他の養殖
事業
の適している、そして経済的にもそういった
開発
の可能性が非常にあるといったようなところにつきましては、増養殖の奨励もいたしまして、増養殖と漁船漁業の
二つ
を兼ねて漁家
所得
の、漁業
所得
の
増大
をはかる、こういうような指導をいたしております。それは先ほど申しました沿岸漁業の
構造改善
の中心の
方向
でございますが、そういった点で、われわれといたしましても、専業といいますか、漁業によって成り立つ
経営
を指導していく、こういうふうに
考え
ておるわけでございます。
小宮市太郎
204
○
小宮市太郎
君 無動力漁家から小型動力船、そういうふうに移っていく、そして自家労働あるいは省力でもって
経営
を安定させていくという点については異議はありません。そうなるべきたと思うのですが、しかしこの前も明確にならなかったことは、養殖漁家あるいは小型動力船漁家を育成していくということ、これはそれでそれなりの意味があると思いますが、しかし
構造改善
構造改善
とおっしゃるのは、ちょうど
農業構造改善
と同じように、そういうことをやっていて漁業という問題が片づくというように思うことは、これは私は悲壮な
考え
だと思うのです。もっと根は深いと思うのです。と申しますのは、養殖漁家や小型動力船漁家の中でも、特定の階層のみが自主的になっていくんであって、零細の者はほとんど問題にならなくなるんじゃないか、こう私は思うのです。それはこの間も、河野
大臣
が瀬戸内海を御視察になった船中で、はしなくも沿岸漁業についてお話になったようです。それは新聞に出ておりまして承知をしておりますが、一本釣りなんていうのは、これはスポーツだというわけですね。この前もスポーツという問題もいろいろ出てまいりました。レジャーの案内をしたらどうだというようないろいろな
意見
が出たんですが、河野建設
大臣
も一体釣りを行なうのは沿岸漁業としては問題でもないし、これはスポーツとしてなら一応
考え
られる、こういうような発言をされたんですが、しかし現実はその零細ではあるが、一本釣りをやってその日を暮らしているという漁民は非常に数多いわけです。ところが、
構造改善事業
と称される沿岸漁業
振興
法で、さてどれだけの漁民が救われるかということになると、非常にあやしいものだと私は思うのです。で私はこの前からしろうとながらいろいろな御
意見
を聞いておりましたが、しかし、
わが国
の沿岸漁業のあるべき姿というもの、こういう具体的な
経営
のイメージというものを描き出すのには、まことに貧弱ではないかというように思ったわけですが、長官は
わが国
の沿岸漁業のあるべき姿というものをどういうようにお
考え
でしょうか、ひとつ承っておきたいと思います。
庄野五一郎
205
○
政府委員
(庄野五一郎君) 沿岸漁業等
振興
法に基づきまして諸般の対策を講じておるわけでもございます。それは
資源
の維持、培養その他中小な沿岸漁家に対しまする
資金
の導入等によりまする装備
近代化
、こういったことでいろんな対策を講じておるわけでございますが、先ほど申しますように、いろんな対策を講ずる中でも、この沿岸漁業の
構造改善
というものを中心にして
振興
対策を盛っていきたい、こういう
考え
で進めておるわけでございます。それにつきましては、全国を四十二海区に分けまして、まあ一県一海区で――例外はありますけれ
ども
、一県一海区を
原則
として、二年間十分自然
条件
、経済
条件
といった全般にわたる調査をいたしまして、そしてその
地域
に適しました沿岸漁家の進むべき
方向
というものを十分把握し、それに向かって
資金
投下なり、あるいは低利
長期
の
資金
を導入するということでその実現をはかる、こういうことを強力に進めておるわけでございます。そういうことで、全国一本として沿岸漁業のあるべき姿ということは、なかなか一口に申し上げかねるかと存じますが、地区別に、海区別に、その地区においては漁船漁業を中心にして伸びていく、あるいはその海区においては漁船漁業と増養殖業を兼ね合わせて伸びていく、この
地域
は主として増養殖で伸びていく、まあそういったいろんな姿が出てくると思いますが、それをやはり漁家のその
事業
計画
におきまする
目標
としての
所得
の
増大
、他の
産業
と大体均衡するような形に衣で持っていく、そういう
目標
のもとに漁場造成なり改良なり、あるいは増養殖にかかる施設の導入なり、漁船なり、漁網に対する
資金
の導入、そういった各般の
施策
を講じたい、こういったことを進めておるわけでございます。
小宮市太郎
206
○
小宮市太郎
君 いずれにいたしましても、この沿岸漁業問題の現段階では、何か思考錯誤というものを繰り返しているような気がするわけです。こう言っちゃ何ですけれ
ども
、今度の漁災法にしても、何かモデル――何かこう
一つ
やってみよう、これでうまくいったならば何とかしょうというような、何かこうモデル的なものを打ち出して、何かやってみたら、そのあとは何とかなるだろうというような、何かそういう感じがしてならないのですが、いまのお話を聞いても、沿岸漁業の
あり方
というもののことを聞いても、何かぼんやりして、これというつかみどころがないような気がしてなりませんが、これはもう議論していると果てしがないと思いますから、これはやめたいと思いますが、この前、沿振法を議論していた場合に、その
法案
の中に、零細漁民で職を離れていく者というのは、離村して転業したい者が出てくるだろう、そういう者に対しては、職業訓練や職業紹介の
事業
を充実していくというような項目があったわけです。それをいろいろお尋ねしたが、どうも的確なものをつかみ得なかったわけですが、実際に沿振法が通過いたしまして、当時和田
政府委員
も説明されたのには、もう労働省やその他の
関係
の省とも話がついているのだ、金のほうも話がついているのだから、この
法律
が通りさえすれば、着々とやります。こういう御答弁があったのですが、どうでしょう、どのくらいうまくいっているか、ひとつ結果を御通知願いたいと思います。
庄野五一郎
207
○
政府委員
(庄野五一郎君) 経済の高度
発展
ということに伴いまして、一次
産業
から二次、三次の
産業
へ人口移動が行なわれるわけでございますが、これは
農業
においても同じような
傾向
をたどっておると思います。先般御
報告
申し上げました漁業
動向
におきましても、漁村よりの漁業従事者の流出というのが逐年ふえているわけでございます。そういうことで、この中には中学校あるいは高等学校卒業といったような若年
労働者
といいますか、青年等もあるわけでございますし、また一家全部が漁業をやめてほかの
産業
に移る、こういう場合もあるわけでございます。先般お答え申し上げましたように、そういった場合のあっせんにつきましては、労働省の職業の紹介機構を通じまして、そのあっせんをやるということをたてまえにいたしております。先般申し上げましたように、三十九
年度
はさらにその機構を拡充されております。また漁村とか、農
山村
の僻陬の地にはそういった出向の、特別にそういうあっせんをする者を派してそういう希望者の転職のあっせんにつとめる、こういうふうになっておりまして、そういう面からの転業の指導というものは進められているわけでございます。またことしの分につきまして、そういう面を通じました分、特に漁業といったような面でその分類がなされておりませんので、十分把握いたしておりませんが、今後それは先般お答え申し上げましたように、十分その中の分類も正確にして、そういった
動向
は把握しなくちゃならぬ、こういうふうに
考え
ておるわけであります。なお、その際職業の訓練等も行なわれるわけでございまして、そういうことについては、今後とも労働省とも協議いたしまして支障のないようにいたしたい、こういうふうに
考え
ております。
小宮市太郎
208
○
小宮市太郎
君 ぼくはどうもその辺がいつまでたっても、いつ聞いても同じ答えなんで、こちらのほうも参ってしまっているといえばおかしいのですけれ
ども
、長官も御存じのとおり、いま都市における
労働者
は足りないのですよ。その足りない
労働者
というのは、若年層なんですね。おっしゃるように、漁村においても農村においても中学を卒業した、あるいは高等学校を出てすぐに職業につくというような若年層というのは、もうすでに都会に就職していると、こう私は思うのです。長官もそうだろうと私は思う。したがって、漁村に残っておるという者は、困っている層というのは、中高年令層だと、この前も何回も何回もお尋ねをしたわけです。その中高年令層を一体、どういうように離村をさせ、あるいは離職させて安定する職業につかせるかという問題なんです。そういうものがここにうたわれておらなければ、この前の沿岸漁業
振興
法という中にある職業訓練をやったり、あるいは再就職をやるという、そういうことを充実するといっても何の役にも立たぬ、こう思うのです。ところが、いま聞くと、まだ把握されないと、いつも把握されない、把握されないとおっしゃるのですけれ
ども
、もうしかし、ここらでかちんとしたものがなければ、次の問題には移れないのじゃないですか、いかがでしょう、その点。
庄野五一郎
209
○
政府委員
(庄野五一郎君) 御指摘のとおりでございます。その点につきましては、先般もお答え申し上げましたように、その分類の
内容
がただ都市別になっておりまして、その中の分類が十分明確になっておりません。漁業から転出した、あるいは
農業
から転出した、その他の
産業
から転出したというものが明確じゃないわけでございまして、そういう面については、十分統計資料の
整備
をはかっていかなくちゃならぬと思いますし、また、そういうことをやらなければ、先化の御指摘のような対策は十分にとれないだろうと思います。そういう点は、今後われわれ努力するということで御了承願いたいと思いますが、なお、職業あっせんあるいは転業に伴う滞留といった面については、十分漁村においてもそれに均てんし縛る機会は十分あるわけでありますが、まだ十分その数はつかめないということでございます。 なお御指摘のように、中岡年齢届がどうしても他
産業
には転出しにくい。これは御指摘のとおりでございます。そういう点については、また問題のございますように
考え
ていかなければならぬ、こういうことになろうかと思いますが、なお漁業の内部におきましても、最近におきまする漁船の性能が非常に進んでいる。非常にディーゼル化して取り扱いも簡易になってきている。そういったことで、漁船の七割程度といいますか、動力漁船の七割程度はディーゼル化しています。最近非常に小型のディーゼル化が進んで取り扱いも簡易であるということと伴いまして、老年までもやはり漁業に従事し得ることができるように、
技術
なりあるいは漁船の能力等も進歩してきている、こういう点もあろうかと思います。そういう残り得る道なり、あるいは中高年齢まで漁業にも従事し得るというような
技術
の
発展
も、今後やっていかなければならぬと思っております。 なお、最近におきます。先ほど御指摘のありましたように、一本釣りというようなものは、やはり相当まだ沿岸漁業の中にはあるわけでありますが、そういうものにつきましても、やはり漁船がディーゼル化し、あるいは多少でも大型化していくという道を指導いたしますれば、さらに相当の区域まで出られる。あるいははえなわとか、あるいはその他の漁法も取り入れられる、こういうことになりましょうし、やはり最近におきますいろいろな御指摘のようなことでございますが、老年の漁業者等は、最近のレジャー・ブームということに乗りまして、いわゆる有料漁業といいますか、そういう面でも働く道が開かれている。これは兵庫県あたりでは、フィッシング・センターというものを県営でつくって、そこで老年の漁業者が都市の入場者の案内をやるといったような働き場所を得ている、こういうようなこともあるわけであります。
小宮市太郎
210
○
小宮市太郎
君 大体同じようなことを質問をしておるけれ
ども
、同じような答えをいつも得ているわけで、どうも問答しているようなものですが、しかし、私は思いますのに、
農業
においても
農業基本法
などを見ると、零細な農家の諸君は、やはり離村をして
労働者
になる、つまり離職をするというようなことがいろいろ述べてある。沿岸漁業
振興
法を見ても、そういうことが書いてあるわけです。ですからその具体的な
施策
が行なわれていないというようにしかいまの答えからはとれないわけです。だから、せっかくそういうものをうたう以上は、そういうものを実際にやってもらわないと、
法律
はできたけれ
ども
、何ら
国民
の
利益
にならなかったということになると私は思う。と申しますのは、ここで私はこの前の
審議
の会議録を持ってまいっておりますが、いまと同じことを聞いているようなものなんです。ですから、もっとあたたかい
施策
を十分やってもらいたい。当時私はこう言うことを言いました。炭鉱の離職者は、これは離職をするときには離職手当をもらって、あるいは訓練をするときには訓練手当をもらった、だから今度ほかの
地域
に就職をする場合は、あるいは住宅のための貸し付け金もするというように、かなり離職しやすいように、あるいはまた離職しても安定に近い方法がとられている。ところが、この漁村に対してはそういうことをうたっておるけれ
ども
、具体的なものがないから、もっと突っ込んでお聞きをしたところが、この点についてはこの
法律
が通ったならば、そういうことも十分お話し済みですというようなことなんです。そうしたら、相当な人が漁村を離れて職についているのじゃないか、あるいは訓練を受けているのじゃないか、こういうように思うから重ねてお尋ねをしておる、こういうわけなんです。まだおつかみになっておらぬわけですか。どのくらいそういうのが出ているのか。どうでしょう、その点。
庄野五一郎
211
○
政府委員
(庄野五一郎君) 残念ながら、まだ本年につきまして、われわれのお答え申し上げたようなそういう点を把握してやっていく、こういうことでございますけれ
ども
、ことしにつきましてはまだそういう点把握いたしておりません。
小宮市太郎
212
○
小宮市太郎
君 それでは農林
大臣
にひとつぜひ私は希望を申し上げておきたいと思います。どうも農民や漁民に対しては少しどうも冷淡じゃないですか。どうも冷淡というと言い過ぎかもしれませんけれ
ども
、まだそういう訓練その他についての把握もしていないということは、これは農民にあたたかい手を差し伸べると口では言いながら、一実際にあたたかい手など伸ばしていないのではないか、成り行きまかせにしているのじゃないかというような気がするのですが、もっといま一番頼りたいという、何にでもいいからつかんで上がりたいというのは、私は農民と漁民だと思うのですが、そういう点についてもっと
大臣
、口だけではなくて、あたたかい施薬をやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
赤城宗徳
213
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 私
ども
はお話しのように農民、漁民については、十分あたたかい
施策
をしなくちゃならぬと、こう
考え
ております。いまの離職の問題でございますが、実はジレンマにおちいっているわけです。御承知のように、
農業
等におきましても、
農業
者としての、何といいますか、
確保
していこうという強い要請がある、ことに社会党などからはそれが非常に多いわけです。また一方においては、出る者は出て行っていいのじゃないか、出る者について労働対策、あるいはいまのような離職の場合に、いろいろの
措置
をとったらいいじゃないか、こういう
二つ
のジレンマみたいなものを、右に行く馬と左に行く馬とのたずなをとっていくというかっこうになっているのが
現状
だと思います。私は端的に言いますと、少ない
労働力
で、
農業
でも漁業でもやっていけるような基盤をつくっていかなくては、
現状
に即しないと思いますし、またそうしたいと思うのでございます。ございますから、出るという、いまのような漁家等で離職して、新しい
産業
につきたい、こういう者については、私はこれは労働省とも話したのですが、労働訓練ばかりではなくて、いまの石炭の離職手当のようなものを出していくべきではないかというふうに私は
考え
ています。しかし、何しろ数が非常に多いものですから、そういう点でいろいろまだそこまで実現はいたしませんけれ
ども
、まあそういうこともひとつ進めていかなくちゃならぬ問題ではないかと私は
考え
ています。まあ根本的に御希望のあたたかい手をのべるべきじゃないかということでざごいますが、その点につきましては、私も十分、私としてはことに農林漁業、
林野
関係
等につきましては強く
考え
ている次第でございます。思うように満足といいますか、御期待に沿わない点はあるかもしれませんが、そういう
方向
で進むつもりで鋭意努力しておる次第でございます。
小宮市太郎
214
○
小宮市太郎
君 私は
大臣
のおっしゃるように、ジレンマということについて、
大臣
の
考え
ておられるジレンマと、私のジレンマというのと
考え
方が違うと思うのですが、そう思うなら、もういさぎよく
農業基本法
というものを根本的に
考え
直す、沿岸漁業
振興
法もやっぱり
考え
直さなければならぬのじゃないか、こういうように私は私なりにジレンマを解釈するわけです。私・は
大臣
のジレンマを理解することが、
大臣
の
考え
ていられるようなジレンマをそのとおりに理解することは私はできないかもしれませんか、私はそういうように思うのです。経済
政策
という、
日本
の経済
政策
の全般にわたっての
考え
方を根本的に
考え
直していく、そういう必要があるのじゃないかと私は思います。と申しますのは、これは寓話にありますようにカメをウサギが追い越そうといったって、これはなかなか追い越せるものじゃございません。漁業も
農業
も、ああいう独占企業から見ると全くカメよりもおそいのだと思う。そのウサギがカメを追い越すのは簡単ですけれ
ども
、カメがウサギを追い越すなんていうのは、とてもたいへんなことです。だからウサギが昼寝をするか、あるいはウサギが逆に走ってくるかしなければ、一緒にもならぬしどうにもならぬと、こういうことになるわけです。だからこういう寓話をそのとおりに
考え
て、だんだんこのままにしておくと、カメとウサギとの差というものは際限なく開いていくという感じが起こるわけです。どうでしょう、
大臣
、もうそういう全般的な問題について
考え
直す時期がきたのじゃないかというように、私はそう思うのですけれ
ども
、いかがでしょうか。
赤城宗徳
215
○国務
大臣
(赤城
宗徳
君) 私も全般的に
考え
なくちゃならぬと思いますが、
農業基本法
や沿岸漁業
振興
法を改めなくちゃならぬという
考え
ではごぜいません。いまカメとウサギの話が出ましたが、私が言っているジレンマというのは、お話の
農業基本法
なら
農業基本法
で自立
経営
農家をやるということだけでやっているのじゃないか、こう言いますけれ
ども
、私は自立
経営
というはかりでなく、やはり兼業農家なら兼業農家というものを認めて、兼業農家との
共同化
というようなことによって自立
経営
と同じような形にもっていくということならば、私は決して
農業基本法
の根本精神に背馳しているものではない、こう思うのでございますが、根本はこういうところにあると思うのです。いわゆる農本主義、企業的な合理主義で割り切るか、あるいは農本主義的なものを幾ぶん加えていくか、こういうことでございますが、どうも御議論を聞いていますと、どうも私の感覚では、どういうふうに
考え
られておるのか。まあ社会党のほうでは、いまの
現状
のままで、ウサギがカメに負ける、この負けるカメを
現状
のままでウサギに追いつかせる。それについては汽車にでも乗せて、速力を増さしてやれ、こういう
考え
方か、それともやはりどうも差というものはあるのだ、差というものはあるのだから、
農業
振興
でも漁業
振興
でも、外へ出るならば出る者はある程度出して、そうしてそのあとはあとでやっていくような態勢を整えるか、そうでなくて、全部をいまのままにしておいて、そうしてその速力を増させてウサギに対抗できるようにさせるというような
考え
方なのか、どうも私はこの席で聞いていますと、やはり
日本
の零細的な農漁業というものを
現状
のままで維持して、そうして速力を増させる方法いかんというようなことで、どうも詰め寄られているような気がするのでございますけれ
ども
、それが私の受け方が違っておるということならば、また取り消しますけれ
ども
、しかし私は現実の問題としてある程度これは出るものは出る、といってしいて首切りということじゃございません。どうもすぐに出るというと首切りとこうやられるものですが、そういうことでなくして、やっぱりこの
農業
というものあるいは漁業というものの体質
改善
の時期に来ていると思いますが、それをどういうふうな方法でやるか、
現状
のままでこれを維持していくというのか、その
現状
が相当変わっていく段階に応じてこれをよくしていくかという、こういうところに問題点があろうと思います。たいへんよけいなことをしゃべり過ぎましたが、そういう受け方も一部しておるということだけを申し上げます。
小宮市太郎
216
○
小宮市太郎
君 もう時間も相当過ぎましたので、あとありますけれ
ども
、この次に残します。
青田源太郎
217
○
委員長
(
青田源太郎
君) ちょっと速記をとめてください。 〔速記中止〕
青田源太郎
218
○
委員長
(
青田源太郎
君) 速記始めて。 ここでしばらく休憩し、今後の、取り運びについては、放送をもってお知らせいたしますから御了承願います。 午後七時八分休憩 〔休憩後開会に至らなかった〕 ―――――・―――――