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1964-06-25 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十五日(木曜日)    午後一時五十二分開会     ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            森 八三一君            矢山 有作君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            木島 義夫君            北口 龍徳君            櫻井 志郎君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大河原一次君            大森 創造君            北村  暢君            小宮市太郎君            中田 吉雄君            牛田  寛君            高山 恒雄君   衆議院議員    発  議  者 川俣 清音君    発  議  者 稲富 稜人君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農林経    済局長     松岡  亮君    林野庁長官   田中 重五君    水産庁長官   庄野五一郎君    通商産業省軽    工業局長    倉八  正君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○林業基本法案内閣提出、衆議院送  付) ○森林基本法案衆議院送付予備審  査) ○林業基本法案衆議院送付予備審  査) ○肥料価格安定等臨時措置法案内閣  提出衆議院送付) ○漁業災害補償法案内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  林業基本法案(閣法第一五一号)及び林業基本法案(衆第四四号)を議題とし、順次提案理由の説明を聴取することにいたします。
  3. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) ただいま議題となりました林業基本法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  わが国林業は、今日まで、木材その他の林産物供給資源有効利用国土保全国内市場拡大等国民経済発展国民生活の安定に寄与してまいりました。しかるに、近時、わが国経済発展に伴いまして、林業をめぐって大きな情勢変化が見られるのであります。すなわち、木材需要増大開放経済体制下における外材輸入増加等木材需給構造変化が生じ、また農山村からの労働力の流出が顕著となる等の趨勢がこれであります。申すまでもなく、林業は、本来、生産期間がきわめて長いこと等、他産業に比して不利な自然的条件を有するばかりではなく、林業経営の大部分零細規模であること、林業経営者経営意欲が一般的に低調であること等の脆弱性を有しております。  これらを克服して、諸情勢変化に対応し、林業の総生産増大させ、他産業との格差が是正されるように生産性向上させるとともに、林業従事者所得増大させることにより、林業の安定的な発展をはかることが強く要請されているのであります。  その要請にこたえるには、従来の資源政策を基調として林業政策のみでは十分ではありません。さらに新たな角度から、産業としての林業振興に関する基本的な政策目標を明らかにし、これに基づいて諸般の施策を講じていくことが必要であります。このことは、林業のになう重要な使命にこたえると同時に、国民経済発展国民化活向上を念願する国民の期待にこたえるゆえんであろうと考えるものであります。これがこの法案提出いたしました理由でございます。  次に、この法案の主要な内容につきまして御説明いたします。  まず、第一章総則について申し上げます。第一に、以上申し述べましたような趣旨を明らかにして、この法律目的規定しております。次いで、国の林業に関する政策目標は、国民経済成長発展及び社会生活進歩向上に即応して、林業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、次の事項の実現をはかることにあるものとしております。すなわち、林業生産増大を期するとともに、他産業との格差が是正されるように、林業生産性向上することを目途として林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従業者所得増大して、その経済的、社会的地位向上に資することがこれであります。  第二に、この目標を達成するため、国は、林業に関する政策全般にわたって必要な施策を総合的に講じなければならないこととしております。それらは、(1)林野林業的利用高度化、(2)林業構造改善、(3)林業技術向上、(4)林産物需給及び価格の安定と流通及び加工合理化、(5)近代的な林業経営担当者及び技術者養成確保、(6)林業労働に従事する者の養成確保及び福祉向上の六項目として明らかにしております。そして、これらについての施策が、画一的でなく、地域の自然的、経済的、社会的諸条件を十分考慮し、きめこまかく行なわれるべきものとしております。  また、これら諸施策を講ずるにあたっては、林業従業者等の自主的な努力を助長することを旨とすべきものとしております。さらに、政府は、これら諸施策を実施するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じ、かつ、必要な資金の融通の適正円滑化をはからなければならないこととしております。  第三に、国有林野事業につきましても、最近の社会経済情勢の推移に即応して、林業政策適確な位置づけを行なうこととしております。すなわち、国は、諸施策を講ずるにあたっては、事業企業性確保に必要な考慮を払いつつ、その適切な運営を通じて、重要な林産物需給及び価格の安定に貢献し、林業生産増大に寄与し、林業構造改善のための積極的活用をはかるようにするものとしております。その場合、国土保全その他公益的機能確保とともに、農業構造改善その他産業振興または住民福祉向上のための積極的活用をもはかるようにつとめるものとしております。  第四に、政府は、毎年国会に、林業動向及び国が林業に関して講じた施策に関する報告並びにその報告にかかる林業動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならないこととしております。  以上が第一章総則の主たる内容でございます。第二章から第四章までにおきましては、林業生産増進及び林業構造改善林産物需給及び価格安定等並びに林業従事者について、必要な施策方針をそれぞれ明らかにすることとしております。  すなわち、林業生産増進及び林業構造改善に関する第二章におきましては、第一に、林産物需要及び供給並びに森林資源状況に関する長期見通しを立てることとしております。次いで、この見通しを参酌して、林業の総生産増大生産性向上をはかるよう、林野利用高度化林業技術向上等林業生産に関する施策を講ずベきこととしております。  第二に、林業構造改善をはかるため、林業経営規模等による経営形態の差異を考慮して、必要な施策を講ずるとともに、小規模林業経営についてその規模拡大をはかることとしております。また、林業生産合理化し、林業経営発展に資するよう生産行程についての協業を助長することとしております。さらに、以上の施策を総合的かつ効率的に遂行するため、林業構造改善事業を推進することとしているのであります。  林産物需給及び価格安定等に関する第三章におきましては、重要な林産物について国内生産円滑化し、外材輸入にも期待しまして、その需給及び価格の安定をはかることとしております。また、林産物流通及び加工合理化をはかるため必要な施策を講ずることとしております。  林業従事者に関する第四章におきましては、近代的な林業経営担当者または技術者たるにふさわしい者の養成確保と、林業労働に従事する者の養成確保及び福祉向上をはかるため必要な施策を講ずることとしております。  次に、第五章におきましては、林業行政に関する組織整備及び運営改善林業団体整備についての方針を述べております。  最後に、第六章におきましては、総理府に、林政審議会を設置することとし、その組織等につき必要な事項を定めております。なお、林政審議会は、この法律規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣または関係大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議するものであります。  林業基本法案の主要な内容は、以上のとおりでございます。このようにこの法律目的は今後の林業の向うべき道を示すことにありますので、これに基づく具体的な施策につきましては、この法案趣旨により、とりあえず本年度においてもその一部について措置することとするほか、今後にわたって、法制上、予算上等措置を講じていく所存であります。  何とぞ慎重御審議の上この法案をすみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 青田源太郎

  5. 川俣清音

    衆議院議員川俣清音君) 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただ今議題となりました森林基本法案について、その提案の理由及び概要の御説明申し上げます。  現在わが国山林原野は、国土総面積の約六七%を占めています。これを有効かつ高度に開発することにより、国民経済発展国民の福祉の増進に寄与することは、国の重要な責務であります。  しかるに現状をながめてみまするに、山林原野の三分の一を占める国有林特権的支配を受け、健全な経営が行なわれず、地元住民利用が阻害されています。地方公共団体の所有する公有林は、地方財政窮迫のしわ寄せを受けて過伐、乱伐におちいり、粗放な状態に放置されています。私有林はどうかというと、山林所有者の大部分は零細山持ちで、その過小経営資本不足のためにその山林を有効に利用できず、他方少数大山林地主地元住民利用から隔絶された大山林を独占しながら、多くの場合その経営がきわめて粗放かつ前近代的であります。すなわち、国有、公有、私有いずれの場合も、森林所有権がすべてに優先して過度に重視され、その基盤の上にきわめて不適正な財産保持的な性格の濃い経営が行なわれています。このため林業生産発展が妨げられ、木材需要の増大に対して供給が伴わず、木材価格が高騰し、しかもその価格の多くの部分が地代として山林所有者の不労所得に吸収され、林業労働者山村農民、及び中小産業者所得水準は著しい低水準に押えられています。山村における産業発展が停滞し、山村と他の地域との経済的格差がますます拡大している根本的な原因はここにあります。このような事態を根本的に改めるべく、森林に関する新たな政策の目標と原則を示すというのが、この法律案の提案の理由であります。  次に、その内容であります。  第一に、私どもは、国土国民に与えられた天然の資源として、何人もこれを公共の利益に合致するように最高度に利用しなければならないという義務をになっていると確信するものであります。そこで、まず全国土を科学的に調査し、合理的な土地利用区分土地利用計画を定めるべしというのが私どもの主張であります。このためには、国土高度利用促進法という法律立法化が必要となるわけであります。こうして、農業利用すべき土地の区分と、林業利用すべき土地の区分が明確になった上で、農業適地においては農業基本法を実施し、林業適地においてはこの森林基本法を実施する、こうして国土開発高度利用を行なうということ、これがこの法律案の前提となる根本理念であります。したがってこの根本理念を貫くためには、土地に関する所有権利用権等権利関係にも、それに応じた改革を加えなければならないというのが私どもの立場であります。  第二は、森林というものの機能をどう考えるかということであります。森林機能は、一つは国土を保全して災害を防止するとともに、さらに積極的に水源を涵養し、国民の保健、福祉を増進することにあります。これを森林公益的機能と呼ぶことができると考えます。もう一つは、産業としての林業生産力を高めて、木材等林産物の供給を安定的に拡大し、林業従事者の所得と生活を向上せしめ、もって国民経済に奉仕し貢献することにあります。これを森林経済的機能と呼ぶことができるでしょう。この二つの機能はともに重要な機能でありますが、中でも前者の機能をまず十分に発揮せしめ、その前提の上において後者の機能をも十分に発揮せしめる、これがこの法律案の目ざすところであります。この法律案の第一条においてこの目標を規定いたしております。最近政府林業政策が、ややもすると森林公益的機能を軽視し、経済的機能だけを重視しようとする傾向が顕著に見えることはまことに危険な傾向といわなければなりません。  第三は、林政計画性の問題であります。ただいま申し述べました森林公益的機能経済的機能を効果的に発揮せしめるには、国及び地方公共団体の行なう林政施策が具体的にそれに即した事項に向けられなければなりません。これを規定しているのが第二条、第三条、第四条であります。そして第五条では、政府林政審議会の意見を聞いて、森林資源及び林業に関する長期見通しを立て、これに即して十年を一期とする林政基本計画を樹立し、国会に提出するということを規定いたしております。第六条では政府の実施した施策の結果の年次報告及び基本計画に基づいて、政府がこれから講じようとする施策年次計画を作成して国会へ提出すべきことを規定いたしております。  また第十五条では、第五条の林政全般にわたる基本計画とは別に、現在も行なわれている森林計画制度強化改善して、個別の森林所有者または森林にかかる使用収益権利を有する者の森林施業森林計画に基づかせることを規定いたしておりますが、この場合も、各個別の林業者森林公益的機能経済的機能を十分に発揮させるように施業する責任を負うことは当然のことであります。この責任が効果的に果たされるように、第十五条第二項では、林業者林業労働者地方公共団体の長、学識経験者の代表からなる地域林業協議会を設けて、その意見を十分に反映させるということを規定しているのであります。  第四は、国有林あり方であります。森林の二つの機能を効果的に発揮せしめるに際し、国有林の果たすべき役割り、任務が特に大きいことは申すまでもありません。そこで私ども基本法案では、第八条から第十三条にわたって国有林野事業あり方について規定いたしております。  まず第八条では、国有林存在目的について規定し、そして第九条では、この国有林存在目的を果たすために、国が経営することが必要な森林、あるいは国が経営することが適当な森林を国が買い入れて、国有林に組み込むことを規定いたしております。こうして国の林政の基幹となる国有林野を十分に確保しなければならないと規定したのであります。その反面、第十条では、国有林野事業の使命の達成に支障を及ぼさない範囲内において、地元の林業者林業経営規模拡大に資するよう、林業者共同組織等国有林野のうちの適当なところを民主的に使用させることを規定いたしております。また第二十一条では、農牧林混合経営発展を助長するため、国有林及び民有林のうちの農用経営地として適地である土地が、農林業者及びその共同組織によって取得あるいは使用収益権が設定できるようにするということを規定いたしております。農業構造改善のためとの名目で、国有林にのみ解放の要求を向けることは、私有林大山林地主自己保全の策としか考えられません。また解放される国有林野は、地元民共同組織によって真に有効かつ民主的に利用されるべきであって、一部の者の利権に利用されることは許されません。こうした点について、政府もまたすみやかに適切な方針を明示すべきであります。  次に、国有林野事業経営に関することでありますが、私どもは、その経営が最も効率的かつ民主的に行なわれるように、国有林野事業は原則として直轄直営基本とすることとし、そして国有林野事業に従事する労働者の雇用の安定をはかるため、その常時雇用を促進することを規定いたしております。これは第十一条、第十三条に規定されております。また第十一条では、国有林野事業民主的運営を促進するため民主的な審議機関を設置すると定めておりますが、これによって国有林立木処分等を含めて経営民主化をはからなければならないという考えであります。第十二条では、国有野特別会計制度改善について規定しております。これは企業的業務行政的業務勘定区分をして、企業的業務については単年度制基本としつつも、同時に会計の長期的弾力性を持たせ、この勘定において剰余金の生じた場合は、これを原則として国有林資源培養のために還元してゆくという考えであります。行政的業務勘定については、国有林民有林にわたる治山事業勘定民間林業振興をはかる民間林業振興勘定国有林所在市町村振興事業勘定等が必要になろうと思いますが、これらは公共負担の思想によって所要経費一般会計の資金によるべきだという考えであります。現状においては、民間林業への林政協力の経費をつくり出すため、国有林野事業で無理に剰余金をひねり出そうとして、国有林の伐採や立木処分がきわめて便宜的に操作されている傾向が見られますが、これはこの際根本的に改めなければならないというのが私ども法案の規定するところであります。以上が国有林野事業についての私ども考えの概要であります。  第五に、私ども基本法案の中での重要な点は、林業生産を増大させ、そして林業経営共同化を推進するということであります。この点では、第十五条で現行の森林計画制度強化改善について規定しておりますが、これはすでに申し述べましたので省略いたします。第十六条では林道の整備について規定しておりますが、ここでは、林道は森林資源開発はもとよりのこと、あわせて山村における交通通信条件改善、及び観光開発産業開発等のためにもきわめて重要な役割を果たすものであることは明らかなことでありますので、その意味合いにおいて、林道の開設、改良、管理等についてその費用の国の負担を明確にすべきだという考えに立っております。第十七条の造林の推進でありますが、ここでは、国の施策として造林の助成を強化するという一般的施策のみでなく、特に、地方公共団体の所有する林野及び私有林水源涵養林に対し、国みずから官行造林を強力に実施するということを規定しております。この場合は、現在森林開発公団が単なるトンネル機関として行なっている分収造林の業務は廃止されることになるわけであります。  第十九条では入り会い権権利近代化、第二十条では林業経営共同化を規定しております。これはいわゆる零細林業者切り捨てであり、農業における零細農切り捨てと同じ思想に立つ政策であります。この構造改善事業のために、政府は、金融政策としては上層山林所有者山林買い取り資金を融資したり、あるいは部落有林入り会い権を解体し私権化して、下層農民入り会い権上層農への兼併を促進したり、あるいはまた国有林野上層農に優先的に払い下げる等の方法で、自立経営林家及び企業林業を育成しようとしています。これは一言にしていえば、弱肉強食の原理を林政に露骨に導入しようとするものであります。こうした林政の方向に私どもは反対であります。そこで、私ども森林基本法案の第二十条では、国が林業従事者生産共同組織を育成して、零細山林所有者もひとしくこの共同組織の中においてその経営向上させることのできるように援助しながら、しかも共同組織という単位で見れば、林業経営規模が大規模化されて、進んだ技術や機械を導入して生産性の高い林業経営ができ、しかもその中で共同経営に参加している林業従事者所得水準も大幅に向上できるという、そういう経営の姿を目ざしているものであります。また私ども森林基本法案の第十九条は、入り会い権にかかわる林野権利関係近代化するということを規定いたしておりますが、これも、近代化された権利関係を直ちに経営共同化の方向へ誘導してゆくという考えに立つものでありまして、近代化された権利関係を分解させて上層への兼併と下層の切り捨てを進めるという政府の方針とは全く異なる方針であるということを特に申し上げたいのであります。  御承知のとおり、現在のわが国林業者の大部分はきわめて零細な山林所有者であり、この零細性をそのままにしておいては林政の見るべき前進をはかることは不可能であると思うのであります。ところが、この林業経営零細性を打ち破るには、二つの道しかあり得ないというのが私ども考え方であります。一つは、資本主義弱肉強食の法則を使って、数多くの零細な経営切り捨て、その山林を兼併させることによって規模の大きな自立経営林家、もしくは企業林業を育成してゆく道であります。政府構造改善の道がこれであります。もう一つは、零細な経営共同化の土俵の中で生かしながら、しかも全体としての経営単位は大規模化されるという共同経営の道であります。私ども基本法案の目ざすところがこれであります。この二つの道のどちらが山村住民の利益に役立つか、どちらがより民主的であるか、この対決がいま日本の林業の前に迫られていることを私どもは確信いたしているのであります。  なおまた、林業経営共同化との関連で、本法の第二十一条の規定に注目していただきたいと思うのであります。わが国山村地帯においては、農業畜産業林業は切り離せない相互関係にあります。大部分の山村の農家は、農業をやっていると同時に畜産もやり、また少しばかり山林経営いたしております。この二つをあわせて山村住民の生計が維持されているのであります。そこで、この三つを有機的に組み合わせて農牧林混合経営発展させることが、山村経済振興のためにどうしても必要であります。第二十一条では、この農牧林混合経営発展助長策として、国有林及び民有林のいかんを問わず、土地利用区分によって農用地として適当ということに判定された林野は、これを地元民に取得させるよう、あるいは使用収益権利を設定させるよう、国の施策を講ずるというように規定しているのであります。そして、この農牧林混合経営もまた、できるだけ共同経営の形態をとれるように、国の援助と指導を強めるべきであるということはもちろんのことであります。  第六に、私ども基本法案の重点は、木材等の流通を合理化して、需給価格を安定させることにあります。第二十四条では、国内産木材等の供給の円滑化をうたっていますが、この点では、この法案は特に国有林が一定の木材の備蓄を持って、需給の動向に応じて弾力的に市場へ供給できる体制を考慮しているわけであります。また同じ第二十四条で外国産木材等の輸入の計画化及び調整をうたっていますが、これは国内需給の状況に応じて、あるいは外材輸入を促進し、あるいは外材輸入を制限する、その計画と調整の権限はあくまで国の手に確保し、またそれに伴い、港湾や貯木場の設備を政府の責任で整備すべきだという考えであります。第二十五条では、木材等の流通につきまとう前近代的な商慣行を是正するというねらいから、公爵の木材市場を整備するということを規定いたし、それにあわせて、森林組合もしくは製材業者等協同組合の行なう購買、加工、販売の事業発達改善をはかることを規定いたしております。  第七に、私ども基本法案林業従事者の福祉向上山村振興を大きな重点といたしております。いままで私の申し述べました各条項の御説明でも明らかなように、いわばこの基本法案の全体を通じて、最終的目標は、林業従事者の地位を向上して、山村地域の格差を根本的に解消するというところに置かれているわけであります。具体的に申し上げますと、国有林野事業経営、林道の整備、造林の推進と林業経営共同化農牧林混合経営発展助長等について、私ども基本法案で規定いたしている内容は、すべて林業従事者の福祉の向上と、山村の地域住民の所得向上を目ざしているものにほかなりません。それに加えて、いわば最終的な確認の形において、第二十六条で林業労働者の雇用の安定、労働条件の改善、労働関係の近代化、社会保障の拡充等のために、国は必要な施策を講じなければならないと規定いたしております。これは、現状におきまして、林業労働者が他の産業労働者に比べて、労働行政、社会保障行政の諸権利を受けるべき水準がきわめて立ちおくれているので、これを国の責任において大きく引き上げるという趣旨であります。また第二十七条では、山村の生活環境の整備のため、山村における交通、通信、衛生、文化等の環境整備、生活改善の措置を国が講ずべきことを規定いたしております。こうして、林業従事者、あるいは山村住民を人間として尊重し、その福祉を向上させるところに私ども基本法案の最大の目的があるのであります。  以上が、私ども森林基本法案のおもなる内容であります。その他に、林業行政組織の整備へ林業関係の団体の整備、あるいは林政審議会の設置等についての必要な規定もいたしてございますが、これは法案を御一読いただけば明らかなことでありますので省略いたします。  最後に、この基本法案の関連法について御説明申し上げます。この基本法案が成立した場合、その中に盛り込まれております諸原則を実施するための各種の関連法の立法が必要となります。私どもの構想では次のようなものが必要と考えられます。  第一は国土筒度利用促進法案であります。全国土の調査に基づき、国土高度利用の目的に従って土地利用区分土地利用計画を定め、土地利用をこの区分と計画に従わせる。またこのために必要な土地に関する権利の調整を行なうというのがこの法案の趣旨であります。  なおこの法案は、森林基本法の関連法というよりは、むしろ、農業基本法及び森林基本法の前提となるべきものであります。  第二は、国有林野事業法案であります。その趣旨は、一、国有林野事業の目的、意義づけを明確にする。二、国による民有森林の買い入れと、及び国有林野の民間への売り渡し、使用収益権の設定等について規定する。三、国有林野事業の運営につき、直用直営の原則と請負導入の関連、立木売り払いの方法及びその他国有林野事業の運営の民主化に資するための中央、地方の審議機関の設置等を規定する。四、国有林野労働者の福祉向上について規定する等であります。  第三は、国有林野事業特別会計法の改正であります。その趣旨は、国有林野事業特別会計の内部において、企業的業務勘定行政的業務勘定を区分してそれぞれの経理を明らかにする。なお、行政的業務勘定では、国有林民有林を通ずる保安林事業を含くむ治山事業勘定民有林振興事業勘定国有林所在農山村振興事業勘定等を設け、その経費は原則として一般会計からの繰り入れによるべきことを規定する。企業的業務勘定においては、経理に弾力性を持たせ、その剰余金は原則として国有林資源培養のために還元すべきことを規定する等であります。  第四は、国有林労働者雇用安定法案であります。これは国有林野事業に主としてその生計を依存している労働者の常時雇用の促進と、降雪、積雪等により作業を休業する場合の特別休業手当の支給について規定するという趣旨であります。この法案は、すでにこの国会にわが党から提案の手続をとっております。  第五は、労働社会保障関係法等の改正であります。これは労働関係及び社会保障関係諸法規について、林業労働者も他の労働者と同じ権利を受けることができるような改正を行なうというものであります。  第六は、保安林法案であります。これは保安林制度を確立し、その整備、管理の手続について規定するとともに、国による国土保全上必要な森林等の買い入れについて規定し、これを恒久法とするという趣旨であります。  第七は、治山治水緊急措置法の改正であります。その趣旨は、治山治水の事業の計画的実施のための措置を規定するとともに、その事業費の負担についての責任を明確にするということであります。  第八は、森林計画法案であります。これは現行森林法のうちから森林計画についての規定を独立させるものでありまして、一、全国及び地方森林計画の樹立について規定するとともに、その計画と林業者の個別の森林施業計画との有機的関連について規定する。二、全国、地方森林計画の樹立及び実施については中央、地方の審議会の意見を聞くべきことを規定する。三、森林計画に基づく林業者の個別の森林施業計画の樹立及び実施については、地域林業協議会の意見を聞くべきことを規定するという趣旨のものであります。  第九は、林道法案であります。この趣旨は、一、林業生産の増大と林業生産性の向上をはかるための林道の整備開発について規定する。二、林道が、林業生産に対してのみならず、奥地農山村産業開発観光開発、及び交通通信条件改善に果たす役割りにかんがみ、その整備開発事業費の負担についての国の責任を明確にするというものであります。  第十は、造林法案であります。これは、一、造林事業の促進をはかるための国の助成措置について規定する。二、地方公共団体の所有する林野及び私有林の水源林に対して国の行なう分収造林について規定するという趣旨のものであります。ことにこの第二の点は、官行造林を復活するという考えに立つものであります。  第十一は入り会い権近代化法案であります。これは、入り会い権にかかる林野の有効な共同利用をはかるため、農林業者入り会い権を保障し、その権利関係近代化する措置について規定するという趣旨のものであります。  第十二は、森林組合法案であります。これは現行森林法のうちから森林組合についての規定を独立させてさらに拡充するものでありまして、一、林業経営共同化を推進するため、森林組合等の林業法人の組織について規定をし、三、森林組合の行なう販売、購買、信用、共同利用施設等の事業を強化するための必要な事項について規定するという趣旨のものであります。  第十三は、山村振興法案であります。その内容は、一、山村における交通、通信、衛生、文化等の環境の整備、山村住民の生活改善等のため必要な施策について、国の責任を規定するものであります。二、山村における零細な農林業者の所得の増大をはかるため、農牧林混合経営発展を助長する方策として、国有地、民有地を通じて、農用経営地として適当な林野を円滑に取得または使用収益権の設定を行ない得ることとし、その開発について国の助成を行なうことを規定するという趣旨ものであります。  第十四は、林業改良助長法案であります。その内容は、一、林業に関する試験研究機構の整備拡充、林業に関する技術及び知識の普及指導の機構と卒業等について規定をする。二、近代的な林業従事者としてふさわしい人材の養成及び確保のための教育、研修等の事業について規定するという趣旨のものであります。  第十五は、木材公党市場法案であります。これは、一、素材及び製材の流通の近代化をはかるため、木材産地及び消費地に公営木材市場を整備すべきことを規定する。二、輸入木材の流通についても公営木材市場を経由せしめることを規定するという趣旨のものであります。  第十六は、農林漁業金融公庫法、林業信用基金法等の改正であります。その趣旨は、一、造林等についての金融を円滑化し、その貸し付け条件を大幅に長期低利化する。二、生産森林組合等の林業共同経営に対して特別に長期低利な資金の貸し付け制度を新たに規定をするというものであります。  第十七は、狩猟法の改正であります。その趣旨は、有害鳥獣の駆除とあわせて、有益鳥獣の保護培養についての措置を規定するというものであります。  以上、私ども森林基本法案の提案の理由、そのおもなる内容、及びこれに付帯して必要と考えられます関連法案について、御説明を申しあげた次第であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決決定されんことをお願い申し上げ、私の提案趣旨説明を終わります。
  6. 青田源太郎

  7. 稲富稜人

    衆議院議員(稲富稜人君) 林業基本法案提案理由を御説明いたします。  わが国の農林業従事者所得が他産業従事者の所得と比べて著しい低位にあることは、各位の御承知のところであります。このため去る昭和三十六年、農業基本法が制定せられ、曲がりなりにも農業部門における所得格差の解消と農業近代化一つ方向が示されたのであります。しかるに農林業中、最も困難な立場に置かれている林業及び林業従事者については、今日に至るもその安定的発展の方策、及び地位の向上について何らの方向が示されていないことは、遺憾のきわみであります。  わが国林業はその大多数が零細経営であって、生産性が低く、投資と労働の投入の果実を長い年月を待って得られるようなゆとりはないのみならず、加えて、エネルギー革命の進行に伴って、薪炭の需要は急激に低下しつつあって、逐年収入はますます望み得ない状態になりつつあるのであります。一方、大山村所有のもとに働く労働者は、その所得が低く、不安定であるばかりでなく、名子制度、焼子制度等の封建的遺制はいまだ払拭されず、民主政治のもとにおいて人格の尊厳さえ侵されている事実が見受けられるのであります。かくて、国民経済発展社会生活進歩向上に即応し得ない、これら農山村においてはみずからの生活に絶望して、部落ぐるみ村を捨てる事態さえ発生しつつあるのであります。  さらに経済の面から林業を見るならば、国民経済成長発展に伴い、木材需要はますます増大の一途をたどるものと見通され、近年外国産木材輸入は著しく増加しつつあるのでありまして、三十八年度においては、その金額は四億ドルをこえる状態に立ち至り、国際収支に悪影響を及ぼすに至ったのであります。  わが国山林所有の現状は三分の一を占める国有林を除いては、ごく少数の大所有者を除いては、九六%の大多数がいずれも零細所有者で、どちらかというと資産保有の色彩が強く、したがって一般に企業性に乏しく、山林経営はきわめて生産性が低いと言わざるを得ないのであります。かてて加えて、近年の農山林に於ける労働力の不足は、山林経営にとってあらたな悪条件を付加してまいったのであります。かくのごとくしてわが国山林は、その全生産能力を発揮し得ないばかりでなく、ますます悪化する傾向にあるのでありまして、やがて国内林業は衰退におち入るばかりでなく、国内資源をみだりに放置する結果に相なるのであります。顧りみますれば、明治維新によって近代国家への道を踏み出したわが国は、その当初において、国家財政農業及び林業の地租収入をささえとして工業を育成してまいったのでありまして、その結果、工業はいまや世界の驚異とさえ言われる発達を遂げた反面、農民や林業従事者の大多数は国家政策の犠牲者として、いまなお不振な原始産業の従事者として捨ておかれて今日に至ったのであります。  以上の事実に思いをいたすならばいまこそ国はその償いをする意味からも、農業林業近代化し、林業従事者所得を他産業従事者のそれと均衡させ、林業従事者の地位の向上福祉のために特段の施策を講ずべき責任があると思うのであります。  次に、法案内容について御説明申し上げます。  まず第一章総則におきまして、政策目標及びこれを実現するための国及び地方公共団体施策について、七項目の列記によってその責任を明確に規定し、さらに財政上の措置に言及したのであります。すなわち第二条において、国の林業に関する政策目標は、国土保全を根幹とし、国民経済発展社会生活進歩向上に即応して、林業生産増大林業生産性向上により、林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従業者所得増大して、その経済的、社会的地位向上に資することとして、国の林業政策目標を明らかにしたのであります。なお、財政上の措置については、第五条において、特に林業生産長期性及び林業公共性にかんがみ、思い切った低利かつ長期資金の円滑な融通措置を講ずるものとしたのであります。次いで第六条において、政府長期にわたる林業基本計画を樹立し、国会の承認を受けなければならないこととし、この基本計画には、森林資源状況並びに木材その他重要な林産物需要及び供給に関する長期見通しと、保安林の整備目標木材その他重要な林産物生産目標林業従事者所得動向及びその向上に関する施策目標等を定めることとし、この森林基本計画を根幹としてすべての林業施策を展開せしめていこうとするのであります。なお、この基本計画に基づき講じた年年の施策及び講じようとする施策は、毎年国会報告することとしました。  次に第二章に、国土保全に関する一章を設けましたのは、林野に関する施策はすべて国土保全につながらなければならないという見地から特にこれを重視したからであります。まず第八条において、国は他の法律による国土保全に関する措置と相まって、治山治水に万全を期さなければならない国土保全の責務を明らかにし、次いで第九条において、治山事業に関する費用は全額国庫負担原則を立て、また国及び地方公共団体の所有林野の払い下げもしくは使用権の譲渡にあたっても、いやしくも国土保全に支障があってはならないことを条件とし、さらに第十条において、国は国土保全上必要のある場合は、一般に林野の転用につき必要な規制措置を講ずることにしたのであります。  次に国有林野事業について一章設けました。国有林野わが国山林の三分の一を占め、国土保全はもちろん、計画生産木材需用とその価格に対して調整的役割をも果たし得るものでありますから、鋭意これが経営に当たることといたし、さらに公益上必要な林野の買い入れ及び土地所有者または森林組合において施業計画に基づく施業を実施し符ない場合は、これを国有林野事業として積極的に施業する等の規定を設けるほか、国有林所在地域住民福祉のために、住民もしくは住民の団体に国有林利用権を大幅に与える道を講じたのであります。  次に林業生産について申し上げます。わが国林業は、国土の約六七%に及ぶ広大な林野を基礎として存立しているのであるが、三分の一の面積を占める国有林野及びごく少数の山林経営者を除いては、九六%を占める大多数の山林所有者はいずれも十町歩以下の零細所有であって、どちらかというと財産保持的性格が強く、その林業経営の非企業的、非近代性は、飛躍的な発展を見せる国民経済の要請にこたえることがとうていでき得ないのであります。国土保全の指命を全うしながらあわせて国民経済の要請にこたえ、林業生産力の飛躍的な増大をはかることが、今日わが国林業に課せられた課題であるが、このためには思い切った増産対策が必要であります。  このために国が立てた全国森林計画に即して、都道府県知事が地域森林計画を立て、これに基づき市町村長が、当該区域内の森林施業に関する計画を立てるとともに、この森林施業の実施について、森林組合とともにその責めに任ずることとしました。なお、森林所有者及び使用収益権利を有する者は、この森林施業に基づいて忠実に施業を行なう義務を第十四条にうたったのであります。なお、この森林施業に関する計画の実施を確保するために、小規模森林所有者の施業の協同化を助長するとともに、必要なる場合は、森林所有者にかわって森林組合が施業を行なうことができることとする等、必要な施策を講ずることとしたのであります。  さらに林業出産の増大のために、林道その他林業生産の基盤の整備公有林野の分収造林の実施、造林に対する助成の強化、林業の機械化、林業技術高度化等による林業生産性向上林業に関する試験、研究機構の整備充実すべき規定を設け、次いで林業の協同化を推進するとともに、山林における国有林野その他の林野についても国において十分損失が補てんされるよう規定しました。  次に林産物需給及び流通の章について申し上げます。第一次産業は総じて流通面において、不利を招くのでありまして、林業もその例に漏れないのであります。そこで林産物需給及び価格の安定、外国産木材輸入計画化とその調整は国においてこれを行なうこととし、また森林組合、中小企業協同組合が行なう購買・加工・販売など事業改善木材市場整備、取引の近代化についても、国において必要な施策を講ずることとしたのであります。  次に林業従事者の章においては、まず技術者の養成など教育事業の充実を規定し、林業労働者福祉については、都市工場労働者の就業構造と全く異なるため、現行の社会保障制度ではそのまま適用することができ得ず、山林労務者にはまことに不利益であるから、これら山林労務者の就業構造に合うよう法律を改正し、林業労働者にかかる社会保障の特別措置を講ずることとしたのでありまして、これらの措置と相まって、その雇用の安定、労働条件改善、労働関係近代化など、必要な施策を講ずることとしたのであります。また山林生活環境の整備についても、その置かれている地理的不利にかんがみ、交通文化衛生等の環境整備及び生活改善に必要な施策を講ずることにいたしました。  次に林業行政機関、林政審議会等に関して八カ条にわたって規定いたしましたが、その詳細は省略することにいたしますが、林業団体については市町村長とともに林業施業者の責めに任ずることにかんがみ、林業団体整備強化に特段の意を払い、特に必要な場合は森林組合農業協同組合が統合を促進する措置を講ずる等、林業団体整備につき必要な施策を講ずることとしたのであります。  以上が提案趣旨法案概要であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことを希望いたしまして、私の提案説明を終わります。
  8. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 次に、林業基本法案(閣法第一五一号)の補足説明及び提出資料の説明並びに衆議院における修正点について、便宜政府当局から説明を聴取することにいたします。田中林野庁長官
  9. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 政府提案林業基本法案につきまして、若干補足説明を申し上げます。  まず、この法律立案の基本的な考えかたについてでございます。申すまでもなく、林業の出産基盤としての森林は、同時に国土保全等、公益的機能をも有するものでありまして、このため、今後とも治山事業等を推進していくことが必要でありますが、今日、林業が直面しております問題を解決していくためには、新たな見地から経済政策としての林業政策を確立することが必要であります。林業基本法は、このような新しい林業政策基本的ありかたを明らかにしようとするものでございます。また、今後これによって林業発展がはかられるならば、ひいては国土保全等にも寄与し得るとともに、さらに、林業産業構造上重要な地位を占めている山村地域産業振興のためにも貢献し得るものと考えるのであります。  次に、この法案内容につきまして補足して御説明いたします。  この法案の全体の構成につきましては、総則林業生産増進及び林業構造改善、林魔物の需給及び価格安定等林業従事者林業行政機関及び林業団体林政審議会の六章からなっております。  まず、第一章総則でございますが、第一条及び第二条では、この法律目的と国の林業に関する政策目標を定め、第三条におきましては、第二条の目標を達成するために国が講ずべき施策について規定しております。  第三条第一項各について御説明いたしますと、第一号では、林業生産増進のため、拡大造林を中心として林野林業的利用高度化をはかることを規定しております。  第二号では、林業構造改善をはかることを規定しております。わが国林業の特質としましては、林業経営についてみますと、一方では零細規模のものが多数存在し、他方ではごく少数の大規模のものもみられるのでありますが、いずれの場合にあっても、一般にはその経営意欲が低調なのが現状であります。これを改善するため、林業経営規模等による経営形態の差異を考慮しながら、林地保有、林業経営あり方近代化し、もって林業経営の健全な発展をはかろうとするのが、この趣旨であります。  以上申し上げましたような生産増進、構造の改善をはかる上に、林業技術向上は不可欠の要件であります。また、特に林業におきましては、技術が立ちおくれているとも言われますので、第三号では、その向上をはかるべきことを規定しております。  さらに、林業生産林業構造に関する施策が講ぜられましても、需給及び価格の安定と流通および加工合理化がはかられなければ、国民経済の要請にこたえて、林業の安定的な発展をはかることは困難であります。よって、第四号では、これらに必要な施策について規定しております。  第五号および第六号では、林業をになう主体としての人の問題について規定しております。これは林業経営近代化のためには、林業経営及び林業技術を担当する者に高い知識能力が要求されますとともに、特に最近におきましては、就業構造の変化によって、林業にこれらの人を確保していくことが次第に困難を加えてきているからであります。  また、林業労働に従事する者についても同様であります。  なお、以上申し述べました施策は、当然のことながら、地域の自然、経済、社会の各般にわたる諸条件の相違を考慮して講じなければならないものが少なくありませんので第二項にその旨を規定しております。  第四条におきましては、国有林野事業について規定しております。まず、第一項におきましては、この事業と前条の国の施策との関係及びその方向づけを明らかにしております。すなわち、国は、前条第一項の施策を講ずるに当たりまして、国有林野事業の企業的運営に十分考慮を払いながら、その適切な運営を通じて、重要な林産物需給価格の安定、奥地未開発林野開発林業構造改善のための活用等の施策の遂行に資するようにするものとしているのであります。  ところで、国有林野役割りとしては、国の施策の遂行に資する面のみでなく、国土保全その他公益的機能確保をはかることや、地元農業構造改善等のために積極的にその活用をはかることもまた重要なものでありますから、第一項によって施策の遂行に資する場合にも、このことについて十分配慮していかなければならない旨を第二項におきまして特に規定しているのであります。  次に第五条におきましては、地方公共団体が国の施策に準じて施策を講ずるよう努めるべき旨を規定するとともに、第六条におきましては、政府は、第三条の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置等を講じなければならない旨を規定しております。さらに、第七条におきましては、林業従業者等の努力の助長に関する規定を、第八条におきましては、林業動向に関する年次報告等に関する規定を設けております。  次に第二章は、林業生産増進及び林業構造改善についてでございます。  まず、林業は、その生産期間がきわめて長く、需要動向に即応し生産を行なうためには、長期にわたる適確見通しを必要とすることにかんがみまして、現在、森林法にこのような長期見通しを立てるべき旨の規定が設けられておりますものを、今回、この第九条に規定することとしております。  次に第十条におきましては、林業生産増進をはかる施策としまして、前条の長期見通しを参酌して、林道事業の拡充、造林の推進、機械の導入等の施策を講ずることとするとともに、災害による損失の合理的補てん等必要な施策についても規定しております。なお、災害の防止につきましては、治山事業国土保全政策の推進にも期待しなければならないことはもちろんであります。  第十一条におきましては、林業経営近代化してその健全な発展をはかることとしております。すなわち現在のように林業経営の基盤が脆弱でありますと、そのままで林業生産を円滑に行なうことは困難でありますから、それに対処して、林業経営近代化のために必要な施策を講ずるとともに、経営規模につきましても、継続的な林業生産を行ない、それによって計画的に林業所得確保していくことができるような規模まで拡大していこうとするものであります。  また第十二条におきましては、協業の助長について規定しております。林業経営脆弱性を是正してその発展をはかっていく上に、個別経営のみでは高度の出産手段や技術を有することには限度があると考えられ、個別経営を補うものとして、あるいはさらに個別経営と並んで生産行程の協業がぜひとも必要であり、それがまた個別の林業経営発展させるゆえんであると考えるからであります。  次に第十三条におきましては、林業技術向上について規定しております。林業生産性を高め、林業経営近代化をはかるため、個々の生産技術及び経営技術を高めるとともに、その体系化を行ない、その成果をすみやかに現実の経営の中に導入することが肝要だからであります。  第二章の最後といたしまして第十四条は、林業構造改善事業の助成等について規定しております。小規模林業経営規模拡大その他林業経営の基盤の整備及び拡充、近代的な林業施設の導入等林業構造改善に関し必要な事業は、それぞれ個別に行なわれましても、それなりの成果があることは当然でありますが、林業構造改善をはかる上で一層の効果をあげるためには、これらの事業が、一定の地域において、統一的に樹立せられた計画に従い、有機的連関をもって、総合的に実施されることが望ましいからであります。  続く第三章は、林産物需給及び価格の安定と流通及び加工合理化について規定しております。  まず、第十五条は、需給及び価格に関する施策についてであります。すでに申し上げましたように、木材等重要な林産物について、長期的には、需要増大に応ずるように、今後林業生産増進していくこととするのでありますが、ここではさらに短期的にもその需給及び価格の安定をはかるため、国有林材の長期安定的な供給及び必要な場合に応じた緊急の供給民有林材の円滑な供給をはかるとともに、木材需給事情からみまして、当分の間、外材の輸入もまた必要と考えられるので、それが需給及び価格の安定の見地から望ましい姿で行なわれますよう、その適正円滑化等の施策を講ずることとしております。  次に第十六条におきましては、林産物流通及び加工に関する施策について規定しております。生産者から需用者にいたる林産物流通過程を合理化するとともに、加工行程を近代化し、利用高度化してその経済的供給をはかることとしております。  第四章におきましては、林業従事者について規定してございます。  まず第十七条におきましては、教育、研究及び普及の事業の充実等について規定しております。林業経営近代化といい、林業生産性向上といいましても、要はそれをになう人の問題でありますので、これによって林業経営者及び技術者養成確保をはかろうとするのであります。  次に第十八条は、林業労働に関する施策についてであります。林業労働に従事する者の養成及び確保をはかることもまた前条と同様の趣旨から強く要請され、またその福祉向上をはかることが必要でありまして、そのための施策規定しております。  第五章におきましては、施策主体である林業行政機関及びその活動が期待される林業団体について規定してございます。  最後に、以上の諸施策を講ずるに当たりましては、政府責任をもってこれに臨むのは当然でありますが、さらに広く学識経験者意見を徴し、その調査審議の結果を取り入れることも必要でありますから、第六章におきまして林政審議会を設けることといたしたのであります。これに伴いまして、附則で、森林法及び総理府設置法の一部を改正することとしております。  以上が林業基本法案概要でございますが、この法律の施行は、林政審議会に関する部分にあっては昭和四十年四月一日から、その他の部分にあっては公布の日からといたしております。  なお、この法律案につきましては、衆議院におきまして数項目の修正が行なわれましたので、その修正項目につきまして、便宜私から御説明申し上げます。  修正の第一点は、第一条の法律目的と第三条第二項の国の施策の講じ方について、森林資源確保国土保全の観点をつけ加えた点であります。  修正の第二点は、第三条第一項第六号及び第十八条の林業労働に従事する者について、その福祉向上を強調するとともに、施策内容をより整備することとして、所要の改正をした点であります。  修正の第三点は、林野所有者等の責務を、第七条の次に一条を設けて規定した点であります。  修正の第四点は、第九条におきまして、特に森林資源につきましては、「見通し」ではなく、「基本計画」を立てることとして、より明確に森林資源長期確保をはかるべぎこととした点であります。  修正の第五点は、第十条において、「造林の推進」という文言を明示した点であります。  最後の点は、第十二条におきまして、協業の「助長」とあるのを「促進」という文言に修正した点であります。  なお、以上の修正に伴いまして、第八条以下の条文を一条ずつ繰り下げる等所要の関係条文の整理をいたしたのであります。  なお、お手元にお配りしております、「林業基本法案参考資料」、これにつきまして、ごくかいつまんで御説明申し上げますと、この中身は、「総括」、「生産」、「流通」、「構造」、「国有林野事業」、この五項目にわたって整理をされておりますが、まず二ページをごらんになっていただきますと、「所有形態森林資源の現況」というのがございますが、これによりますと、表の一番下の欄で、森林面積が約二千五百万ヘクタール、そのうち、次の欄で、人工林が七百八万七千ヘクタール。そこで全森林面積の、人工林面積は三割に満たない、こういうような状況になっております。  それから六ページをごらんになっていただきます。六ページは木材需給量の見通しが掲げてございます。これによりますと、「実数」と「指数」ということになっておりますが、需要量の推移が、三十五年度――この数値は三十四年度、三十五年度、三十六年度の平均でございますが、――を一〇〇といたしまして、漸次ふえてまいりまして、約四十年後の昭和七十七年には約二倍半にふえるという見通しを示したものでございます。  それから八ページをごらんになっていただきますと、ここに木材輸入の著しい拡大が表になっております。それで、この木材輸入につきましては、昭和三十八年度で約千四百万立方メートル――最後の欄でございますか、総需要量の約二割を占めておる。まあそれだけに、次の表の九ページでは、木材輸入題が三十八年度では約四億ドル、他の品目に比べまして非常に高い額を示しておるということになっております。  それから一六ページをごらんになっていただきますと、まあ今後、いまの木材供給を積極的に推進していくための造林面積の拡大見通しの表でございますが、現在、先ほど申し上げましたように、この二八ページでは、造林面積の全部が約七百万ヘクタール、これを四十年後には約千三百万ヘクタール。でございますから、全森林面積のほぼ半分まで造林面積を拡大しようという見通しの表でございます。  それから二三ページをごらんになっていただきますと、木材価格の推移を掲げた表でございます。この表にございますように、昭和二十七年を一〇〇にいたしますと、一般の卸売物価の平均はほとんど横ばい。これに対して、次の欄の「素材」は、二倍になっておる。こういうふうに価格の異常な高騰を示した表でございます。  その次は二八ページでございます。二八ページは「山林保有規模経営指標」。そこで日本山林保有状態がいかに上零細であるかということを示しておるわけでございまして、「保有林家数比率」、「保有面積比率」、この二欄をごらんになっていただきますと、一反歩ないし五町歩未満の比率を出しますと、五町歩未満の山林保有者は、全山林保有者の九割にも及ぶ。ところが、その保有している面積は、次の欄でこれを出しますと、三八%であるというような状態でございます。保有規模の、零細性を示したわけでございます。  次に、三〇ページをごらんになっていただきたいと思います。三〇ページは、この「構造」の中に整理をしておりますが、森林組合の推移を示したものでございまして、森林組合が大型化するにつれて数は減る。三十一年に約五千あったのが約千減りまして、三十七年には四千になったという表でございます。  それから三七ページをごらんになっていただきますと、山林労務者の減少ということに対応する賃金の増。これか、たとえばこの表によりますと、伐木と集運で、全体の平均賃金が三十年を一〇〇といたしまして、伐木が八割四分増し、集運で七割四分増し、そういうふうに賃金の高騰を示しておるわけでございます。  なお、以下林業労働に従事する者の社会保障の現状等を掲げてございますが、最後に、国有林野事業の整理の欄では、この国有林野事業の伐採量なり、あるいは林道、貯木場等の施設なり、それの一覧表、あるいは機械の保有台数、地元施設、そういうものを掲げておる表でございます。  以上でございます。
  10. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  11. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をつけて。      ―――――・―――――
  12. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 次に、肥料価格安定等臨時措置法案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のおありの方は、御発言を願います。
  13. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、肥料価格安定等臨時措置法案に対しまして若干御質問をいたしたいと思いますが、同僚議員の質問と少し重複するかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。  赤城農林大臣提案理由の説明を伺いますと、現行肥料二法の制定当時と比較して著しく肥料事情が変わってきている。肥料工業の合理化によって生産能力が急速に拡大し、内需を満たした上で、なお四割以上の輸出をしている。だから新法でも間に合う、十分だ、こういう御説明ですが、昭和二十六年、七年当時の肥料二法を制定します前、制定しました当時と、私は国際的な事情を含めての肥料事情というものは、最近政府が肥料計画を改定された事情等にかんがみて、本質的には変わっていないじゃないか、むしろ政府かいわれたその前提がくずれてきて、むしろ肥料二法を延長する国際的な肥料事情になっているのじゃないかというふうに思うのですが、この点いかがでしょう。
  14. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 国際的に肥料の需要がふえておるということはあると思います。同時にまた、各国とも、ことに共産圏等におきましては、肥料の増産といいますか、肥料工業を急速に発達させるというような状況はあろうかと思いしなす。しかしながら、全体として見まするならば、私は肥料も国際的には生産がふえておる。国内的に見ますならば、いま私が提案理由で申し上げましたように、現行二法制定当時と比較いたしまして、内需を満たして、四割程度の輸出ができるというふうな、供給面の相当な進み方をいたしておりますので、私はああいうような、現在のような形でなく、量におきまして、価格におきましても、需要者が安定的に供給を受けるということが適当であろうか、こういうふうに考えまして、提案理由にもそういうものを前提として申し上げたのであります。
  15. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この昭和二十六年の六月ごろから二十七年の二月ごろですか、肥料二法を制定します前に、非常に過剰で、ダンピングをやったりしまして、三十五キロ半、一かますですか、二百円等も上がりまして、そういうことで、内需確保を優先的にやるということを前提にした二法が制定されたわけですが、しかし、最近、東畑懇談会と称せられます肥料懇談会が二十八年の十二月二十三日に答申しました際には、内需確保についてはほぼ心配がないことという前提を受けられて、新法の立法に至ったと思うのですが、しかし、まあ最近通産省が発表したものでも、戦後最高の輸出で、八千六百万ドルぐらいの輸出をした、そして、非常な見込み違いの輸出景気で、もう肥料年度の半ばで計画の半分も越すというようなことで、引き合いをもう完全に成約することができぬというようなことになって、やはり肥料事情は売り手市場で、その点が非常に心配になるのですが、いかがでしょう。
  16. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 肥料二法制定当時の状況と、三十八肥料年度状況を比較しまして申し上げますというと、二十九肥料年度以前はこれより低いわけでありますが、二十九肥料年度におきましては、設備能力が三百七万、これに対しまして、三十八肥料年度においては六百九十七万と、約七百万トンの能力を持っている。それから生産におきましては、二十九肥料年度が二百七十三万トン、三十八肥料年度におきましては六百二十九万トン、これは工業用も含めております。で、肥料としましては、二十九肥料年度の二百五十四万トンに対しまして、三十八肥料年度は五百四十九万トンと、二倍以上の生産を行なっておるわけでございます。で、内需が、二十九肥料年度が百九十八万で、三十八肥料年度が三百十五万トン、それから輸出が、二十九肥が五十二万トン、三十八肥が二百三十四万、これは当初計画でございます。このように、もうすべてにおいてスケールが全然違っております。生産におきましても、能力におきましても、需要におきましても、輸出におきましても。で、これは輸出を調整いたしますならば、内需を確保するには絶対心配はないという状況でございます。二十九肥料年度におきましては、たまたま二割程度の輸出を企てております。生産に対しまして。しかし、それは生産規模も小さく、内需量も小さい。その二割程度の輸出で実は内需を確保できるかできないかという点においては、必ずしも十分な規模ではなかったわけであります。したがって、多少ダンピングが行なわれたりしますと、国内価格が上がったという実態が生じたわけであります。いまはその点においては全く異なっております。
  17. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 なるほど生産能力その他で、昭和二十九肥料年度に比べると飛躍的な増大はしていますが、しかし韓国等、最近の引き合いに対しても十分応ずることができぬということで、私はやはり生産設備とか、生産能力等が飛躍的に増大したということでなしに、問題は、内需と輸出の合計が、国際的な規模における全体の需要というものがもう能力をこえている、設備をこえているという意味からいえば、やはり非常に不足する状態、先日来、赤城大臣のお話を承りましても、当分こういう事情は続くであろうということですから、私はやはり売り手市場であって、全体不足ぎみだという事情においては、肥料二法制定当時といささかも変わりないのじゃないか。ただ四割、あるいはもっと四割以上も輸出ができるでしょうが、ことしはあるでしょうが、やはりただ量的にそうだからでなしに、質的に不足だということは、これは変わりないので、やはり肥料二法の、この東畑懇談会の、当分は心配はいらぬ、それに基づいて立法された前提条件が、そういう答申があってから、実はわれわれも不明にして、ああいう引き合いがあるとは予想もしなかった大きな引き合いがあり、それに応ずることができぬというようなことで、量的でなしに、質的には不足という事情は、二法制定当時と私は、やはり変わりないのじゃないか。そういう意味では、やはり二法を延長する一つの大きな肥料事情じゃないか、新法をつくられた前提が、すでに東畑懇談会があって、数ヵ月を出ずしてくずれているのじゃないか、こういうことを心配するわけですが、いかがでしょうか。
  18. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 私は、いま先生の御指摘のありましたように、世界的に見れば、この間のOECDの会議でも出ましたのですが、この一年ないし一年半は肥料が売り手市場にあるということは、世界一般の常識としていま認められておるということは御指摘のとおりでございます。ところが、それから先にはどうなるかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、というのは、世界でいま窒素肥料を出産しておる国の八カ国ぐらいが、すでに自給自足を目的としまして、いま鋭意工場を建設しております。そういう問題が現在あります。ただ、私はさっき農林大臣あるいは経済局長の答弁にありましたように、日本の事情というのは、その当時とは非常に変わっておると思います。というのは、なるほど海外からはそれだけ引き合いがあることは事実でございますが、それは日本としましては、それを内需第一主義ということをあくまで貫きまして、外国からのオファーを選択しているというのが現状でございまして、国内事情を見ますれば、依然としまして大きい供給能力を持っておりまして、それを国内第一主義ということの原則を貫きまして、供給確保という点におきましては万全だと、私は確信しますが、そういう意味におきましては、当時の供給不足ぎみという状態とは、私は状態がもう百八十度の違いをしておる、こう信ずるものであります。
  19. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは見解の相違になるかもしれませんが、私は単に設備と生産能力が内需を四割以上こしているというだけでなしに、内需と、やはり引き合い等のある国際的な事情から見て、単純なそういう生産能力と国内需要のバランスだけでなしに、やっぱり見ると、私はあとで質問したいと思いますが、国内価格を上げたりする要因になりして、むしろ二法延長の、政府の言われた前提は、数ヵ月出ずして、東畑懇談会の答申があってからくずれたというふうにみるのですがね。
  20. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 東畑懇談会が行なわれた覇時と、多少気分的にといいますか、ムード的に異なった確かに引き合いが活発になっていることは事実でございます。また現行二法と新しい法律とが、輸出を調整して内需を優先的に確保するという点においては、御指摘のとおり現行二法と同じ考え方をとっておるわけでありまして、その点は、内需を優先的に、第一に確保する、そのための能力といい、供給といい全然心配がないという、当時とはだいぶ違っておる、こういうことを私ども考えておるのでございます。
  21. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういう点はあとでまあ御質問したいと思うのですが、五月二十六日ですか肥料計画を改定されて、四十四万トンの供給増にして、九五・五%ですか、そして需給調整用として保留したやつも取りくずしたりして、やっと改定肥料計画で、中国に百二十万トン出せるというふうな事情というものは、やはり私は輸出をコントロールして、内需は絶対心配ないと言われても、やはり影響なしとしないのじゃないか。くどいようですが、そういうふうにとるのです。
  22. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 逆ではないかと思うのでございます。まだ設備に余力がありましたから、計画を改定して、せっかくの引き合いがあり、値段も上がってきておりますので輸出をする、こういう計画改定をやったのでございます。内需に心配があるならば改定しない、もちろん改定はいたしません。まだ設備能力に余力があって、フル操業までの余力を発揮して輸出をし、しかも値段がいいということで、これは値段がいいことは、国内の農業にとってもけっこうなことでございますから、改定して輸出を増加した、こういうことでございます。
  23. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 赤城大臣にお尋ねしますが、提案理由の御説明の中の、内需の優先確保、国内価格の低位安定、輸出体制の一本化をはかるというような点ですと、まあ合理化の推進とか、輸出赤字の国内不転嫁と、問題を別にすれば、肥料二法の中に流れる基本精神と同じように思うのですが、新法との関係はどうなんですか。
  24. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 農民といいますか消費者に対する考え方からいたしまするならば、現行の法律を流れている考え方と、提案しておりまするものとは、同じような考え方の流れだと思います。その流れのやり方、方法におきまして、現行法のような強い統制的なものは必要としないという観点から書いてはおりますけれども考え方につきましては、私は、変わりない考え方で進めている、こういうつもりでございます。
  25. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私が見ますには、内需の優先確保とか国内価格の低位安定、輸出体制の一本化、こういう基本目的を達する手段と方法において、非常に問題がある。われわれとしては、二法のような形をとらぬ限りは、こういう基本方針が貫けぬじゃないかという前提で、今後私質問したいと思うのですが、そこで、輸出見通しの策定なんですが、臨時肥料需給安定法の第一条には「肥料の需給調整及び価格の安定を図ることを目的とする。」というふうに、内需確保の優先確保前提で、それが勢頭にうたってあるわけなんです。ところが新法では、価格の安定だけ――これはやはり東畑懇談会その他を流れる、肥料は余っているのだというようなことで、心配がないという意味でそうなったんだと思うのですが、そういう点どうも不安なしとしないのですが、その点はどうですか。
  26. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに現行では「調整及び価格の安定」ということがございます。法案について、価格の面を重要視しているじゃないか、供給面はどうかという――これは第一条でなくて、別の方面の、再々申し上げておりまするように、輸出の認可ということによって内需を確保していくと、こういう、間接的といいますか、現行ですと直接に内需の優先にぶつかっていきますが、法案によりまするというと、価格の安定をはかる。供給面におきましては、非常に供給量がふえておる現状でございますから、輸出の面を押えて内需を充足していくということによって、現行の目的と同じような目的を達し得られると、こういうふうに考えるわけでございます。
  27. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 まあ、全体の肥料の生産を見て、輸出の面から間接的に内需を確保するということもわからぬことはないのですが、新法では、八条の二項ですか、法律事項とせず、これを政令に譲って、需給見通し、政令の定むるところによりというふうになっているが、その辺をもっとはっきりしたほうが実際心配がなかったのじゃないかと思うのですが、これはいかがですか。
  28. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 第八条の第二項、確かに政令で定めるところにより、需給見通しをつくって、それに基ついて輸出承認をする、こういうことになっており、現行法では、需給計画内容として定めることは、法律に明記してございます。しかし、これは基本的な法律事項では必ずしもないわけで、先般来大臣からも、私どもからも、御説明申し上げておりますように、内容そのものは需給計画と、需給見通しと、これは定められる数字の性質そのものは変更はございません。しかしながら他の要件、つまり生産指示とか、出荷指示、そういった統制的規定がなくなり、また需給計画を――統制がございましたので、肥料審議会に諮問するというような手続をなくすことにいたしましたので、書き方としては需給見通しとして、その内容は政令で定める、こういうふうにやわらげたわけでございます。
  29. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 需給見通しというものが、輸出承認の際のひとつの基準で、あるいは輸出に付随したような見通しにとれるわけですね、実際は……。  それではお尋ねしますが、需給見通しの策定というものは、現行の臨時肥料需給安定法の第三条にいうような作業をやって――実際やるものであるか、たとえばその二項の一には、「前年度からの繰越数量」――第二、第二、第四、第五となって、第六「生産業者又は輸入業者の翌年度への繰越在庫見込数量」、推定というような作業をせねば実際はやれぬと思うのですが、そういう意味では変わりがないわけなんですか。
  30. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) そのとおり、内容は同様でございます。
  31. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちょっと前後しますが、昭和二十六年の七月から、昭和二十七年の二月までの半年の間に、私の持っている資料では、二百円上がった。そのときも実は輸出の規制をやったわけなんですね。しかし、それはもう国内価格を安定できぬきっかけになったのですが、もう心配ありませんか、それは。
  32. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 当時の事情は、朝鮮ブームが起き、またちょうど国内では、公団当時からの在庫がダブついておったというようなことで、輸出へ拍車をかけたというような事情があったわけでございます。それで非常に輸出が進んだために、輸出を押えようとしたわけでございますが、必ずしも的確な効果がなくて、国内価格が上がった、そういうようなことから、現行二法をつくる動きが出てまいりました。政府としても、現行二法を提出して、二十九年に成立をみた、こういう経緯をたどっているわけでございまして、現在におきましては、もう最初から輸出規制をやっておりますし、計画的な輸出規制が行なわれておりますので、当時のような事情は起こり得ないと、こういうように考えておるのでございます。
  33. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 まあたいへん自信を持っておられるから、狂うようなことはないと思いますが、需給計画でやっている場合と、この見通しによる場合とで、まあうまくいかなんだような際に、政府がとるべき責任というものは、変わりがないわけなんですか。その点はいかがですか。
  34. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 政府としましては、この法律に基づいて、肥料の価格の安定をはかる責任がございます。行政上の責任がございますので、そういうことが起こりませんように、輸出承認を与えます際にも、計画的に需給見通しを立てまして、あらかじめ、大体内需というものはほぼ的確に予想できるわけでございますから、内需用の必要なものは国内に確保しますように、輸出承認を毎月行なっていくわけであります。その際には、在庫数量、生産数量も報告を徴して、政府は十分そういったものをつかんだ上で、輸出承認を行ないますので、その辺のことはまず心配はない、こう考えております。
  35. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 先般、大河原委員が、異常事態が起きた際に不足したら輸出をとめちゃうから心配ないということですが、成約をしておったような場合、大体その後に成約を破棄せねばならぬというようになったときはどうなりますか。
  36. 倉八正

    政府委員(倉八正君) それは、いまの成約破棄は輸出の成約破棄であると思いますが、輸出の成約の破棄は、いま貿易の国際慣習上は、政府の命令に、政府の指示によったという場合は、クレームの対象にならないというのが国際慣習の原則でございます。したがいまして、たとえば日本が逆にある国から何かを輸入しようという成約をしておった。ところが、向こうの政府の命令によってその船積みが禁止された、そしたら日本は非常に損するわけでございますが、そういう場合は、いわゆる保険法でカバーするというのがい京原則でございまして、国際貿易慣習上の原則でございますから、したがいまして、もしも日本に異常状態が起こって、しかもそれが成約して船積みの予定になっておったというような場合でも、それは差しとめ命令というのは、法規上できることに変わりはないのでございます。
  37. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この需給見通しは、農林大臣と通産大臣が定められることになっているんですが、現行法ではその三条に、肥料審議会の意見を聞いてきめるようになっている。そのきめた計画でも、五月二十六日にかなり大幅な改定をせざるを得なくなって、変わったわけなんですが、私はやはり両大臣のほうでおきめになる際に、そういう見通し関係のある人の意見を聞いたほうがいいと思うんですが、これでは肥料審議会というものがないんですが、それは実際上の手続としてはどういうふうにきめられますか。
  38. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) お話がありましたように、現行法におきましては、需給計画を策定する際に、肥料審議会の御意見を承っておるのでございます。ただいままでのところは、変更する場合にも審議会の御意見を承っておりますが、大体政府で作業いたしました計画というものは、そのまま御承認をいただいておったわけでございます。これはもう政府としましても、すでに現行法ができましてから十年間の経験と実績を積んでおりまして、資料も十分に持ち合わせておるわけでございます。特に国内消費見込み数量というようなものは、ほとんど大きな狂いが出ません。問題は輸出の見込みでございます。これはどうにも政府として全く正確な見込みを立てるということは必ずしもできないわけでございます。しかしながら、たてまえとしましては、内需をまず確保するということを実行いたしますので、四割も余力があるわけでございますから、需給見通しで輸出の見通しは異なっても、内需を優先的に確保しておれば、国内に影響を与えることはないということは確信が持てますので、政府自身がその見通しの作成を、責任をとって十分である、こういう考えでおります。
  39. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 何か需要懇談会ですか、そういうものがあるやに聞くんですが、なかなか自信に満ちた御答弁ですが、それでも何十万トンという狂いがあって、改定せざるを得なかったんですから、あまり過度の自信もどうかと思うのですが、やはり需給懇談会というようなものに、正規のものでなくても、広く意見を聞いてみられるというのもむだじゃないと思うのですが、これはいかがですか。
  40. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 見通しの正確を期しますために――これはほとんど輸出の見通しでございます。狂いやすいのは。これはできるだけ専門家の意見を聞いたほうがよろしいと思います。現在肥料需要懇談会というのがございますが、これは長期的な見通し、たとえば何年後においてどういうふうに肥料の消費が変化するであろう、あるいは林野方面で使われる肥料というものは、どういうふうに消費が伸びるであろうというような問題について、専門的な意見の交換を行なってもらっておる会がございます。これはもちろんそういう専門家の懇談会でございます。輸出につきましては、特に特定の機関を設けなくて、むしろほんとうに輸出の事情に明るい専門家の意見を聞くことが大事であろう、こういうように考えております。
  41. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 内需なんですが、たしか衆議院ですか、あるいは参議院の委員会かたったのですが、年率大体三%ぐらい伸びているということなんですが、この部門別の傾向といいますか、その傾向は、大体トレンドは変わりはないのですか。そういう点どうですか。
  42. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) これは硫安、尿素、それから石灰窒素それぞれ違います。硫安はむしろ減退する傾向があり、尿素は伸びる、アンモニア全体としましては平均三%ぐらい、大体二%ないし四%程度の伸びでございます。年々の伸びが。で、おそらく今後は従来のような平均三%の伸びから二%ぐらいに低下するんではないかという見通しでございます。過燐酸石灰やそういったものにつきましては、また異なっております。
  43. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この輸出の見通しなんですが、私もいろいろ調べてみたんですが、これは農林省の肥料要覧あるいは肥料年鑑等を見ても、海外の肥料事情というものが、なかなか文献をあさってもないようなんですが、そういう点でもかなり、今度四十万トンも、共産圏のことですからこれはなかなか無理もない点があると思うんですが、もう少し海外の需給事情を正確に把握するというようなことはできぬものですか。また昨年度は、欧州の寒波で電力不足、あるいはその跡始末のために需要が増加したというようなことがあったりして、今度ああいうふうな輸出の伸びがあったというふうなことを聞くわけですが、たとえばベルギーなんかは生産の七〇、オランダは生産の五割、ドイツは四割三分、イタリアは四割一分の輸出をするというようなことがあるのですが、そういうところの事情も見て、大体いまのような輸出事情は続くと見ていられるのですか、通産省は。
  44. 倉八正

    政府委員(倉八正君) これは非常に専門家の間にも両論ございまして、さっきも申し上げましたように、この間の世界化学会議では、一年ないし一年半はいまのような情勢が続くということは出ておりますが、将来の問題になりますと、両論というのは、いわゆるいまやっております膨大な規模が三カ所ございます。これはたとえば工場で窒素肥料百五十万トンもつくる計画が、現にお聞きになっているように、トリニダッドというところで来年完成いたしますし、それからパキスタンとかあるいはインドあたりで、これも尿素工場が完成いたしまして、それから日本が最も長い間の市場であった台湾というのが、予定どおりいけば去年の十二月から自給自足できることになっておったわけでございますが、それが延びまして、それから隣の韓国も忠州、羅州の二工場が、これが合わせてたしか三十五万トンぐらいになったと思いますが、これも一工場は計画どおりいきましたが、一工場はすでにおくれておる、こういう自給自足の面から見まして、たとえば施肥の増量よりも供給態勢の完備が早かろうという見方をする人もございまして、いまのところはどっちに軍配が上がるか、これは人によって非常に違うと思いますが、生産を担当しているものとしましては、まあ大体日本の輸出というのはいまの程度、あるいはいまよりもちょっと増した程度が続くであろう、こういうことをいまの段階では考えております。  それから前段の質問の、同じ窒素肥料を供給しておる、大体世界で八カ国だと思います。これの資料というのはなかなかわからないのでございまして、日本のように、何から何まで発表する国はないのでございまして、たとえばいま御指摘のありましたベルギーの資料なんかも、大体一年おくれて発表されますし、したがいまして、私たちとしましては、いま全公館を網羅しまして、それから使節団を出しまして、全公館を網羅してやっておるのが、今年の九月ごろでき上がってくると思いますが、そのほか、ヨーロッパ主要六カ国には人を派遣しまして、もっと掘り下げた接触をはかりたい、こう考えております。  それから中共の問題につきましても、先般来たびたびミッションなんか行きまして、今年の需要なり、あるいは今後三年くらいの需要というのは、大体どのくらいであるということはわかっておりますが、いずれにしましても、今後もっと掘り下げて研究するということは今後の課題だと、こう考えます。
  45. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私、昭和三十三年に、国会議員団として欧米各国を見証した際に、EECがたしか発足して一年ごろだった。まだ日本ではあまり問題にならなかったのですが、私はこれは大へんじゃないかというので、通産省の商務官ですか、出先き公館の外交官等に聞いても、説明のできる人はほとんどなかったのですかね。そういう意味で、どうもあまり肥料についても十分な、四十万トンも見込み違いが起きるというようなことを見ても、七千数百万ドルも、化学製品では一番の輸出のトップになるぐらいですから、もっと輸出振興のためにも経費をかけて、輸出計画の狂わぬような調査をやられることが必要じゃないかと思うのですが、あと先になりますが、東畑懇談会でも、見通しを立てても発達しないほうがいいというふうになっているのですが、外国がやはりそうなんですか、これはどうなんです。
  46. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 外国の大体慣例というのが、イギリスでははっきり法律がありまして、一社で生産しているところは発表しないというのが、御承知のとおり統計法にございます。そのほかに、二社で生産というのも発表しないというのが、これも御承知かと思いますが、慣例になっております。したがいまして、肥料の生産というのもはっきり……、こういって何すれは、ちょっとおそいとお叱りを受けるかもしれませんが、生産なり、その出荷がはっきりしましたのは、昨年七月一日から、あの有名なニトレックスというのがチューリヒにできまして、これが肥料生産国六カ国を網羅しておるわけでございますが、これができましてから、だいぶんこの肥料のストックなり、あるいはこの生産なりというのがはっきりしてまいりまして、これも大体半年ぐらいおくれるのが原則でございますが、しかし、それなりにしても、できるようになったということで、今後としては非常にわれわれとしても生産なり、あるいは出荷、あるいは輸出価格動向なんということがはっきり握れると思います。輸出価格動向というのは、ニトレックスができましてから非常にはっきりわかるようになりました。
  47. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 やはり発表されて、弊害があったのでしょうか。輸出のいろいろ商戦において、これは、どうなんですか。
  48. 倉八正

    政府委員(倉八正君) この一番典型的な例が、日本が一番競合しているインド、パキスタン市場でございます。これは入札のときに非常な支障がございまして、大体日本のいま余力というのはこれだけあって、不需要期だからどれくらいストックをしておる、そして日本の金利はどのくらいということも全部向こうが調べておりまして、それならいま、あのときはたしか尿素が七十何ドルだったと思いますが、そういう価格は、日本としては空オファーじゃないか、これはもっと狩りておれば下がると、こういう経験は、インド市場なんかでは、はっきり数回にがい経験を持っておりますし、あるいは一昨年から始まりましたインドネシアの政府入札、こういうのでも、そういう事例は幾多もございます。
  49. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 では、次の価格の取りきめについてお伺いしたいのですが、肥料懇談会の答申を見ますると、肥料の国内価格については、二法なきあとも、需給の実勢から今後特別の変化かない限り、肥料価格の低位安定は維持されるんじゃないかと、こういうふうになっているのですが、今後特別な変化がない限りとなって、肥料懇談会が答申をした後において特別な事情が起きている、ああいう肥料計画を改定せざるを得ないような特別な事情が起きて、価格の低位安定が困難じゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  50. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) たびたび申し上げますように、引き合いはいくら活発になりましても、輸出の承認は、国内の供給に差しつかえるような程度の承認は与えないわけでございますから、それは特別の事情の変化というわけではございません。輸出が不振のときも、このときは逆に売り込みをやる、非常に活発にやるわけでございます。そういうときは、まあこっちが積極的に売るということですが、いまは買い手のほうが積極的に買いにくる、その変化はあると思いますけれども、国内に対しては、いずれにしましても輸出をチェックして、三百万トンなら三百万トンは確保いたしますから、これは特別な変化ではないと考えます。
  51. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、それは現行二法があって、税法の、あるいは財政投融資の、あるいはこのあとの法律でも百六億、百三億の赤字の融資の肩がわり、そういうような政府の、手厚いとは言いませんか、責任を持つ、発言権を持つ、そういう裏づけとしてのやはり国が責任を持つからには、そういう輸出をコントロールするからには、国が財政上の、あるいは税法上の、そういう措置をとるということがあるから、私はやり得ると思うのです。今度はなるべく不介入にして、やはり国がめんどうをみないというふうなことになると、なかなかそういうことが実際困難じゃないかと思うのですがね、その点はいかがですか。
  52. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 私はその点は、これは中田先生にことばを返すようでございますが、毛頭心配はないと思っております。と申しますのは、この八条の御指摘がございましたのですが、あの八条では、需給見通しを立てまして、そうしてそれに基づいて両大臣が、硫安輸出会社の譲り受けを承認するわけでございまして、輸出会社が勝手に、おれは輸出したいから、メーカーから勝手に買って、国内には幾ら、国内にはまああまり売らない、そういうことでは全然ないのでございまして、たとえば硫安輸出会社が、これこれの買い受け承認をしたいと、こういうことを出す場合に、農林、通産大臣がそれを査定しましてそれはいいという、あるいはもっと減らせとかいうような指示をして、承認をするわけであります。したがいまして、膨大な生産量をもちまして、輸出にはこれだけしかいきませんよということを、前もってちゃんと確保しておりますから、輸出のその引き合いがどんなに活発でございましても、硫安輸出会社というのは、結局両大臣の買い受け承認のワク内においてのみ、初めて輸出できるというたて支えになっておりますから、輸出が活発だから即国内を圧迫するというようなことは毛頭ないわけでございます。
  53. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私もその手続は、この法律を何べんも読んだからそらんじているのですが、ただ、そういうことをやり得るためには、国内価格と輸出価格とが違うのですから、そういうことが起きたときにはめんどうを見る、あるいは合理化のために開銀等の融資もつけてやるというような、そういう裏づけがない限り、私は、財政的なめんどうも見ない。輸出会社はFOB価格で買い取れというようなことになると、発言権をコントロールする裏づけがないじゃないか、だんだん政府の重味がなくなってくるじゃないかということを言っているわけです。
  54. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 重味は十分あると思います。と申しますのは、いまの開銀の融資につきましても、合理化審議会の資金部会の十三業極については、はっきり開銀の資金をつけるということで、御承知のように硫安というのは化学肥料、特に硫安というのは開銀の指定業種になっております。したがいまして、今後もそれが続きまして、毎年何億とか、ことしは大体両方あわせて三十数億出しますが、そういうことは今後も必ずそれは続く。それから税の問題につきましても、この法律があろうとなかろうと、こういう農業基本資材をつくる硫安という重大な産業でございますから、そういう関税面の問題あるいは租税の問題についても、今後はずっと続けていくつもりでございますし、現に法律で特別償却なり、その他別の法律によって指定されておりますから、そういう行政の指導の面におきましては、従来と私は何ら変わらない、こう考えております。
  55. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 税法上の、このあと特例を設けて、九年ですか、特別償却を認めたり、あるいは百三億の赤字の穴埋めの融資をし、百六億の合理化資金をつけるといいます。しかし、それもだんたんこれまでより少なくなってきているわけです。特にもう百三億で、これでけりをつけたというふうになると、やはり何も国がめんどうを見るのが非常に少ないのに、重要な生産資材だからといって、メーカーがそう裏づけのないことにやすやすと応ずるかどうか。海外の需要が非常に旺盛だというようなことは非常に心配するのです。  その点はその程度にしまして、赤城大臣にお尋ねしますが、私の本会議の質問に対しまして、話し合いが適当でないものには是正命令を出す、調停がつかぬ場合は裁定する。しかし、バルク・ライン方式はとらぬというようなことですが、一体どういう価格決定の基本方針で、適当な価格に落ちつけられていくか、いろいろなやられる基準は、適当な価格というものを想定されて、それで是正命令を出したり、されたり、いろいろやられるのですが、一体政府はどういう尺度で、どういう定規でそういうことをやられるかというのが、社会党としては非常に不安に思っているわけですが、それはいかがですか。
  56. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 経済情勢等にもよると思いますけれども、バルク・ラインにこだわらないという意味で申し上げたのでございまして、バルク・ラインではじき出す算定方法も、一つの方法としては、調停などをする場合の一つの根拠ということになると思います。しかし、バルク・ラインにこだわらず、バルク・ラインのみでなく、あるいは需給関係とか、その他の経済状況等も勘案して価格の根拠を出すと思いますが、まあ要は生産費に対してどれくらいのマージンやその他で、配給を受ける者にいったらよろしいかということだろうと思います。ただ一つの方式にこだわらないという意味で申し上げたわけであります。
  57. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 その辺がなかなか含蓄の深い言葉で、どうもすっかり逃げられてしまうのじゃないかと思うのですがね。  そこで、お尋ねしますが、これはまあ経済局長でもけっこうですが、はたっぷり取る、こういうことを衆議院でたしか言っておられたように思うのです。たっぷり取られるのなら、そしてこれまでの価格より上げない、大体それを目安にする、赤字はしわ得せせぬというのなら、理論的にバルク・ラインをとってもいいのじゃないか、内需を一〇%ぐらい余分に見ますが、調整を見まして、そして内需をするのなら、その内需バルクのうちの最低のものから積み上げて、やはりそれではじき出すというのが、まあ理論的にいったら正しいのじゃないかと思いますが、どうなんですか。
  58. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 現行の内需バルク・ライン方式が、いま大臣からもいわれましたように、一つの目安であると私ども考えております。ただ、現行の内需バルク・ライン方式は、合理化されたメリットはすべて値下げに使っておるわけであります。で、そのメリットを全然見ないということが、赤字を転嫁しないということだと、そう言い切るのは無理があるのじゃないか、つまり合理化メリットを多少企業に帰属させるのは当然である、企業が合理化しようとするならば、合理化の効果は多少は帰属させられるのが当然であります。それをも認めないというのは少し行き過ぎではないか、でありますから、現行の内需バルク・ライン方式が赤字転嫁であると言い切るのは無理がある、それも一つの基準としては、考える基準としては必要であるけれども、それだけではきめられないいろいろな要素を考えるべきであると、こういうことでございます。
  59. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 ちょっと関連。大臣にお伺いしますが、価格取りきめの第二条ですが、これには五項目あげておる。そういうものに適合するものでないと認めると、この五項目にわたるその認定の基準というものは、各項目別に具体的に明らかにすべきものだと思うが、それは一体どうです。これは大臣にお伺いしたい。
  60. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) この五項目を具体的に話せというのですか。
  61. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どういう基準でこれを判断するのですか、その基準を具体的にわかるようにひとつ御答弁を願いたい。この基準があいまいであるから、疑心暗鬼が出るわけです。たとえば第一項の「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」、これは農業の立場、肥料工業の立場、それに支障を与えるものでないことというものを適合しないという認可の基準、認め方の基準は、一体どこにあるのか、たとえば「不当に差別的でないこと。」、これは一体どういう基準をもって不当である、なしを判断されるのか、これは法の運用によって非常に大きな問題である。大臣はこれを一体どういうふうに御理解されておるかを伺いたい。
  62. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これを計算機にかけるように正確にやるわけにはまいらぬと思います。やはりこれは一つの判定でございますから、不当に差別的であると、こういうふうに私ども認めれば、これに対して是正をする、あるいは農業または肥料工業の健全な発展に支障を与えたというようなことに対しての判定の問題でございますから、いま申し上げましたように、計算機で調べるようなわけには具体的にはいかぬと思います。そういう判定を下していくよりほかないと思います。
  63. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は電子計算機的なお答えを期待しているわけじゃないですけれども、非常にあいまいもこたる、この認め方の基準というものがはっきりしない。大臣の答弁のように、不当に差別的でないこと、それからこの抽象的なところに、しからば裁定する基準をどこにおくか、一体どこまで政府責任を持って調停をするのか、そういうきめ手がないわけですよ、計算機じゃないとおっしゃるだけに。それだけにこの価格のとりきめは紛争が起きる。独占資本の圧力に屈する結果にならざるを得ない。これをもっと科学的に証明してもらわぬと、この価格のとりきめについては、これは実需者である農民として納得がいかない。もう少し納得のできる答弁をいただければよし、いただけなければ、この法律自体がいただけない、こういうことになりますから、もう一回御答弁を願いたい。
  64. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは両当事者の力の相違ということはありましょうけれども、相当両当事者がカルテル的な形で価格の話をする場合には、適当なところに私はきまると思います。もしきまらぬ場合には、十数年糊も政府では経験しておるのでありますから、価格はどういうふうにきておるか、どういう価格でいままで押えておったか、こういうような経験を持っていますから、そういう過去の経験といいますか、過去の数字、これは計算機じゃありませんが、数字はずっと出ていますから、そういう数字によって、この点があまり高く見積もり過ぎているとか、この点はもう少し安くできるはずだとかいうような、これは資料といいますか、そのとりきめのときの資料もありまするし、過去の資料もありますから、そういうものによって、不当であるとか、あるいはその他ここに掲げているようなことに該当するかしないかという判定を下していく、こう思います。
  65. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連ですから、もう一点だけをお伺いしてやめますけれども、過去の実取引を十分考慮をして判断をされると申されましたので、私はお伺いをするのでありますが、過去の取引というのは、申すまでもなく現行二法によって最高販売価格が告示されて、その最高販売価格の中で、実需者団体とメーカー側とが話し合いによって取引をしておる経過があるわけです。そういうものが今後これらの価格とりきめにあたって、適合するとか、次の各号に適合するものでないと認めるという場合の認可の基準は、これは意見をまじえますが、現行二法のように内需優先を法律にもうたい、またそのたてまえからバルク・ライン方式をとって内需のラインを設定する、加重平均でやると、そうして出た最高販売価格の中で、お互いに話し合いをつけてやるということであればわかる。そういう最高販売価格というワクをなくして、そうして過去の実績の上でやるということは、ことばとしてはりっぱでありますけれども、その思想は、最高販売価格を設定をするということを肯定する思想にもつながるのだから、現行二法と同じように、最高販売価格を新法においても設定してしかるべきものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  66. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 当事者の話し合いというたてまえですから、最高販売価格というものを設定するこのたてまえから言えば必要ないと思います。しかし、私が申し上げました過去の経験というのは、過去におきまして最高販売価格を算出する資料というものを相当検討してきてあるわけであります。だから、そういうものも、こういうものに該当するかしないかというものについての、私どもの持つところの一つの資料として、それに取引のいろいろな状況等を勘案して、この程度でなければこれは不当であるというようなことが指示できると思います。でございますから、最高価格はたてまえから決定はいたしませんが、そういういままでやってきた経験といいますか、資料等が十分ものをいうと、こういうふうに私考えます。
  67. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ただいまも、また先日の本委員会でも、松岡局長は、バルク・ライン方式では合理化メリットを全部吸い上げてしまうように言われたんですが、バルク・ライン方式を中心としてやっているこの現行の臨時肥料需給安定法で、私はそうはなっていないじゃないかと思うのですがね。この第十三条の第二項には、「前項の販売価格の最高額は、政令の定めるところにより、生産費又は輸入価格を基準とし、農産物価格、肥料の国際価格その他の経済事情を参しやくして定める。」というふうになっておりますから、バルク・ライン・オンリーだけでやればそうなるでしょうが、それを中心としてやっておるわけですから、全部合理化メリットを吸い上げていないのじゃないか。現に利益率や配当を見ても、零じゃないかと思うのです。他の製造業に比べては悪いわけですが、これはどうなんです。
  68. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) もちろん現行法におきましてもいろいろな事情を参酌するようになっております。今後ともそうあるべきだと思うのでございますが、現実には内需バルク・ライン方式で定めてきたわけでございます。だから今後も内需バルク・ライン方式だけで定めるということには無理があるのじゃないか。やはりいろいろな事情を参酌すべきである。それはまず当事者がいろいろな条件を持ち出してお互いに論議すると思うのでございます。初めは非常に広い範囲で論議してもらったほうが的確な値段が定まる、こういうように考えるわけでございます。  それから第二点の、いまでも企業利潤が少し出ているじゃないか。で、企業利潤と合理化メリットとはちょっと問題が違うと思うのでございます。企業利潤はその企業の努力で、その当該年度において利潤が出ることは実際起きるわけでありますし、原価計算上も一定の利潤部分を見るわけでございますが、合理化メリットは合理化のための投資をやり、技術的な改善をやった結果起きたメリットでございます。そのメリットはやはり投資をする人にも若干の部分は残るようにというのが常識ではないか。それは消費者のための値下げとして使われる、これが最も公平な考え方ではないかと思います。だから全部消費者に帰属させるという考え方は、これではそれが赤字非転嫁であるということはちょっと無理がある、こういうふうに申し上げたいのであります。
  69. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私も合理化のメリットを消費者が独占すべきだという考えはとっていないわけであります。そうしますと、衆議院の速記録を読んでみますると、五月十四日の速記録ですが、バルク・ラインも一つの参考にはなるように言っておられるのですが、の実勢も加味する、こういうふうにも言っておる。そうしますと、結局いただいたこの肥料関係参考図表というものがありますね。需給の実勢を加味するということになれば、内需と、海外の需要もトータルした需要になると思う。そうすると結局、それを満たす総平均生産費というようなことになってしまいやせぬですか、これはどうなんですか。
  70. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) まず国内市場は輸出の制限によって海外市場とは遮断されておるわけでございますから、需給考えられますのは、国内市場における需給でございます。その需給の実勢を反映したというのは、国内需要の総平均という意味では必ずしもございません。これは議論になりますので恐縮でございますが、価格というものは何で成立するか、これは計画経済のもとにおいては別でございますが、生産費から割り出して、生産費できめるといういき方も確かにあると思います。しかし、需給の実勢、別なことばで言えば、需給均衡価格というものできまり得ることも、これは普通の自由経済の原則であろうと思います。需給均衡価格生産費から割り出された価格と、どちらが高いか低いか、これは高くても低くても、この場合は単なる議論でございますけれども、通常の場合は常識として、需要よりも供給が超過しておるときは安目にきまる、逆の場合は高目にきまる。生産費が、現在のように労務費などが年率何%というぐあいに上がっておるときには、需給の緩和しておるときよりも高くきまりやすいという傾向がある。したがって、需給の均衡あるいは需給の実勢を反映した価格できめることも、農民にとっては、場合によっては必要ではないかと思うのでございます。
  71. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、輸出を抑えることによって需給確保する、そこで需給均衡の価格できまる、こういう考えですか、つまり輸出を切っちゃう、内需を確保するわけですから切ってしまう、そうすると、実際は需給均衡で、ここできまる経済上の価格は、一体バルク・ラインを越すものですか、総平均の生産費に落ちつくものですか、一体作業してみたらどうなりますか。
  72. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) これは需給の実勢できまると思います。したがって、輸出の制限をどれだけやるかということは、それの強度によっても違ってくると思います。ただ輸出調整をやったからといって、国内価格を放任するというわけじゃありませんから、いわゆる自由経済で放任されたまま成立する需給均衡価格ではない、安定的な均衡価格というものをお互いに論じて差しつかえない、この法律一つ目的は、低位に安定させるということでございます。それを話し合いできめる、きめる際には需給の実勢も十分考慮してはどうであろうか、こういうことであります。
  73. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、具体的に内需を三百万トンなら三百万トン、三百五十万トンなら三百五十万トンとして確保しますわね。そこで、需給均衡の価格は双方の話し合いによってきまる、こういうことを言っておられますね。そうすると、実際はどの程度に落ちつくものと想定されているか。
  74. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 私どもは比較的低目にきまると思います。幾らにきまるということは私どもなかなか想定できませんけれども、お互いに専門家でございますから、需給実務を論議の中で加味していくということはできると思うのでございます。いまは十分あるじゃないか、少し安くしろ、こういうのか商談――商談とは言いませんけれども、協定の交渉だろうと思います。
  75. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、海外の引き合いも旺盛ですし、輸出をコントロールして切ってしまうといっても、それはやはり潜在的なといいますか、一つ需要として作用して、やはり少し国内価格をてこ入れするような、引き上げるように作用するのではないかと思うのですが、それはどうでしょうか。
  76. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) その点はやはり政府の行政上の態度ではないかと思うのです。需給見通しを立てて輸出承認を実行するときに、輸出のほうに少しゆるやかな態度をとるか、厳しい態度をとるか、そこのかげんの問題だと思う。やはり政府としては、低位安定を目的とし、内需優先確保をはかるということを、法律に基づいて実行する任務を持っておるわけでありますから、十分内需は確保してまいりたい、こう考えます。
  77. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、このいただいた図表の、公定価格が五十一ドル三十セント、総平均生産費が五十三ドル十三セントになっていますね。新法に切りかえた当座直ちにそうはいかぬでしょうが、いまのようなことなら、この足して二で割るというようなことで、だんだんと輸出赤字が転嫁されるようなことになるのではないかと思うのですが、そういう心配ないでしょうか。
  78. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) その点は、政府としては生産費調査を行なっておりますから、生産費に常に査定を加えてきまった価格が、この法律の定めにありますように「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与える」という規定に抵触する、つまり赤字を転嫁しておるような価格であると認めるときは是正措置をとる、こういうふうにやっていくわけでございます。
  79. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは議論になりますから何ですが、この農業並びに肥料業、両方の矛盾したような二つを調和するように言っておられまして、松岡局長は農民サイドのような強いお立場でけっこうですが、実際この法律をやれば、メーカーサイドに私はきめられてしまうのじゃないかと思うのですが、これは議論になりますから、そういう心配を持っているということを申し上げておきます。  それから第二条の五号ですが、相当な比率を占めているものが交渉する相手方になるわけですが、実際中肥連というものはどうなんですか、それでもかなりのパーセントを占めておるのですが、相当額の、五割というような点にはもちろん達しないわけですが、これはどうなんでしょう、先度もはっきりしなかったように思う。
  80. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 現在の実際の取り扱い高では、全購連が六、七割扱っております。残余を商人系統の中肥連というようなものが扱っておるわけであります。この規定によりますと、相当な比率を占めなければいかぬ。この相当の比率は五〇%といたしておりますので、交渉の当事者として単独に交渉ができる当事者は、いまのところ全購連だけでございます。一方の需要者側の団体としては。しかし中肥連も全購連と一緒になって当事者になることは、つまり一〇〇%になるわけですから、これは差しつかえない、中肥連だけでこの協定を結ぶわけにはまいらない、こういうことであります。
  81. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 その点は私もよく知っているのですが、実際は双方が販売シェアの競争をやって、実際は不可能だと思うのですよ。どうなんでしょう。全購連と一緒にやれるというふうに実際は思われますか、その点はどうでしょうか。
  82. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 私はやれると思っております。いまの事情のもとにおきまして。けんかすれば別でございますが、いまは一緒になってやろうという機運が出ておるそうでございます。その点は私もどうもほんとうの腹のうちを聞いたわけではございませんから、ここで確言するわけにはまいりません。一緒にやりたいということを聞いております。
  83. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は別のようなことを聞いておりますが、まあいいです。  それでは次に第三条の資料の交付等――価格の取りきめに一番大事なのは、資料の交付だと思うのですが、これによりますると、第三条の二項ですか、農林大百と通産大臣は、締結を促進するため必要があると認めるときに初めて資料を交付するということになって、交渉を始めたとたんに要求するということは、この法律から大体いつごろから……もしこれがよくやってみい、既存の資料もあるのだしということになると、全購連は引けない戦いで、メーカーのほうはバルク・ラインで計算すればどうだ、総生産費の平均でいけばどうだということを知って、手のうちはお手のものだからわかっているのですが、この時期は、必要と認めるときというのは、一体いつごろを言っておられるのですか。
  84. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 必要があると認めるときというのは、時期ではなくて、場合は、というような意味でございます。政府としては話し合いは円滑にいくことを望んでおるわけでございます。また公正な取りきめができることを望んでいるわけでありますから、できるだけ資料はお求めに応じて交付したいと考えております。
  85. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、促進するため必要があると認めるときというのは、場合だということですが、これは交渉を始めれば、すぐ要求をされれば出されるのですか。
  86. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 必要があると認めれば、最初からでも交付します。
  87. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 赤城大臣は、企業の機密にわたらないものは十分これを交付するということになっているのですが、生産費そのものではないというような衆議院でのやりとりもあるようですし、一体どの程度の資料をお出しになるのでしょうか。その点やはり迅速に、消費者の方がそう不利にならぬようにきめるかどうかは、一つは交付される資料の内容によると思うのですが、これはどうなんでしょう。
  88. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 企業の機密になるというのは、要するに個別の工場の生産費となりますと機密にわたりますので、この委員会にも遠慮さしていただいておるわけでありますが、そうでないものにつきましては、できるだけ出したい。それから政府が特定の判断を加えて、それで分析したり、加工した資料というものは、これは最初から当事者に出すべきではない。一定の資料をどう判断し、どう分析するかということは、まず当事者の責任においてやることであって、お互いに理論的にその点は論議すべきことでありますから、政府が最初からこの項目はこう査定すべきだ、こういうバルク・ラインを引いたらいいだろうというような考え方をとって、そういう判断を加えた資料は出すべきではない。それはまず当事者が議論をして、その資料を大いに分析すべきである、こう考えます。
  89. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、私どこから入ったのか知りませんが、昭和三十七会計年度硫安実績原価と昭和三十八肥料年度硫安推定生産費というような形に、推定生産費というような形にまとまったものは出されぬのですか。その生産の諸要素の項目別の推移は出されても、そういう集計をして、推定生産費はこうなるというようなものは出されぬわけですか。
  90. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 推定生産費というのは、政府がいろいろ査定を加えた数字でございますから、それは控えたいと思っております。政府が調停したり、あるいは是正命令を出します場合には、そういう資料をいろいろつくるわけでありますけれども、直接にはもう一つのほうの実績のような数字を出して、それで当事者が分析し、お互いに論議してもらう、これが自主的な話し合いとして当然ではないか、こう考えております。
  91. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 その硫安原価項目別、年次別推定というようなのがありますね、内容は聞きませんから。こういうものを、たとえば推定年産費としてはB会社、L会社、A会社、H会社として十九、こういうふうに出せますか。それは全部をトータルしたような形で出されるのですか。推定生産費にはB、L、A、H会社として十九というふうなものが推定生産費が出ているのですが、硫安原価の項目別の年次的の推移は出される、それの会社別のまあ符号でもいい、そういうものは出されるのですか、それを合計した形で出されるのですか。
  92. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 会社別の数字は出しません。要するに実績を総合計といいますか、総平均といいますか、そういった形で出します。
  93. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、結局総平均生産費しか出ないということにはなりませんか。
  94. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 実績で、そういうような形、総平均あるいはもっと別な形式があればそれでもいいかと思いますが、素材としてはそういうもので交付いたします。
  95. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 どうも私は、会社別の硫安原価の項目別の年次別推移が出ぬと問題があるのじゃないか、総平均では、総平均の硫安原価の年次別平均では、交渉の資料としては少し不足じゃないか、こういうふうに思うのですが、まあそれで十分だとお思いですか。
  96. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 年次別のほうはすでに持っているのですから、おそらくは政府がつくってやらなくても、そろばんと普通の頭でつくることができるわけですが、工場別はやはり記号でやりましても、だんだんこれはわかってくるわけであります。能力や何かの推定ができますから、年々そういうことをやってきますと、あの工場はこう変わってきた、この工場はこう変わっている、これは実際にどこの工場ということはすぐわかってしまう、これは少し行き過ぎではないか、こう考えます。
  97. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 たとえばフランスの国立窒素工業所が七十万トンぐらい生産能力を持っている、そういう所なら完全な生産費がつかめるわけですが、報告に基づいてそれをいろいろ修正なり、はたして妥当かどうかということを見られてやるのでしたら、やはり私は全購連が交渉するのには、いま松岡局長の言われたのは、なかなかさしあたってすぐこの会社はどう、この会社はどうというふうな、一番コストの高いもの等をえり分けて、差別をしたりしてやることができるだろうかと思うのですが、そういう心配はありませんか。
  98. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 素材を提供しましたならば、これは場合によっては、最高とか最低とか、そういう程度のことは助言として与えることはできると思いますが、素材を提供すれば、年間日本の七割も取り扱っておる大きな団体でございますから、たくさんのすぐれたスタッフを持っておるわけです。これを分析することは、十分おやりになれると私は思っておるのであります。
  99. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 次に、硫安以外の肥料の価格の取りきめなんですが、新法では、硫安に限定して価格を取りきめするようになっているのですが、尿素や高度化成等の占める比率が非常に高くなっているのですが、この点は衆議院でもだいぶいろいろやっておるようです。もう少しはっきりしてください。
  100. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 新しい法律案では、硫安以外の肥料につきましても、価格取りきめができるという制度にしてございます。ただ、現在でもそうでございますが、さしあたり、いままでやってきましたように、合成硫安について取りきめをやり、その場合に、回収硫安とか、副産硫安についても取りきめをやることは一向差しつかえないわけですが、大体硫安の成分比価で、現在のように尿素の価格というようなものがきまってまいりますから、それでいいのではないか、こう考えております。しかし、今後の推移を見まして、必要があれば尿素あるいは石灰窒素、その他の肥料につきましても政令で定めることは、将来考えられると思っております。
  101. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 いま言われました硫安以外で、特に必要があると認める肥料については政令でということですが、その認定基準は、どういうことになっておりますか。
  102. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 認定基準というのは、ここに書いてありますように、価格の変動が著しいと、どうもこれじゃ農家が迷惑するのじゃないかと思われるようなものにつきましては、やったほうがいいんじゃないか。いまのところはどれもまあ安定しておるわけです。硫安がきまれば尿素もきまる、大体そういうふうな状況であります。それほど必要はないのではないかと考えております。
  103. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 いまはまあ窒素の含有比で価格をきめているのですが、尿素その他はそういうことだけでいいものなのかどうかという点は、どうなんですか。
  104. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) これはまあ回収硫安とか副産硫安になりますと、いろいろ議論があるわけです。実際になかなかコストがつかみにくいために、どういう価格できめるかということは、非常に問題がございますが、尿素の場合は、使用者側に立って考えれば、成分比でやはりきめていって差しつかえないのではないか、こう考えます。回収硫安、副産硫安も、成分比では合成硫安とほとんど変わりがないわけですから、値段は同じでいいと考えられますが、これはコストのほうが安くて、やや色がついているというような差がありますので、慣習上の格差というものが現在は行なわれております。それらはもう専門家がたくさんおるわけですから、もっともっと論議してもらったらいいと思います。
  105. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 尿素につきましては、炭酸ガスというアンモニアの担体が無価値なものですから、ああいう尿素メリットというものを見て、それを、硫安のコスト引き下げにもいろいろな方式があるようですが、やっておるのですが、回収や副産については、ただ窒素比で計算し、十六円安と三十二円安というようなことで、大体矛盾のないものですか。
  106. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) これは確かに問題であります。回収硫安も副産硫安もちょっと色がついている。成分比価は同じなんですけれども、色がついて、まあ粒状が少し不整一だというような差がありますけれども、それだからまあちょっと格差をつけておるというのですが、一面においてコストの面からいえば、回収硫安、副産硫安はずっと安くできるのではないかと、こう考えられますが、いろいろこれは考え方があると思うのです。それで、現在は慣習上いま言われたような格差がついております。その辺は、私どもはもっと専門的に両方で追究してもらってはどうかと、こう思います。
  107. 大河原一次

    大河原一次君 関連して。いまの松岡局長の回収並びに副産硫安というもののコスト計算はなかなか困難である、こういうことを言われておると同時に、一面には、いわゆる合成硫安の一番安いものに基準を置いて、いま言われるような価格決定をやっておるというのですけれども、私はあなたの言われるようにおそらく新法においても今後合理化が進んで、合理化メリットの配分が行なわれたらもっと安くなるだろう、こういうことを言っておられるわけだから、その場合に、もっとしっかりした回収並びに副産硫安に対するコスト計算を厳格に行なって、ただ合成硫安に比較して、その一番安いものに基準を置いてつければいいのだというような程度だけでは、ちょっと納得できない。もっと厳格なコスト計算ということが全然できないわけではないと思う。今後の問題として、どういうふうに考えられるか。
  108. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) いまおっしゃいましたのは、硫安のコスト計算上の約束でございます。回収硫安を合成硫安の最低のコストのものと同じに見て、内需量を何万トンとやる場合にそこに算入する、これは一つの肥料審議会で毎年やっている約束なんでございます。それと、実際の回収硫安なり副産硫安の価格というのは、違っております。合成硫安より安くなっているわけです。品質が、少し見かけが劣るとか、そういうことから、安くなっているわけです。私どもとしては、その見かけや何かできめていくのには非常に問題がある。コストはなかなかつかみにくいのですけれども、できるだけその辺も究明して、今後その辺、まあなかなかむずかしい問題ですけれども、できるだけリーズナブルな値段が成立するようにもつていきたい、それは当事者もそういう方向に研究してもらいたいと願っておるわけでございます。
  109. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 倉八局長にお伺いしますが、合成硫安の生産の全体の比率が下がってくるわけですね。二十九年に二百万トンぐらいあったものが三十八肥料年度では百四十三万トンぐらいにだんだん下がってきて、この改定した肥料なんかでは硫酸とガスの不足ですか、硫安は四万三千トンも減産になるということになり、だんだん全体の生産比率が少なくなると、これはだんだんとコストが上がってくることに――相対的に上がることにはなりませんか。
  110. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 上がりません。というのは、ごらんになっておわかりになりますように、同じ合成塔から出てくるアンモニアをこの硫酸にそのままぶつけたのが合成硫安でございまして、それから同じアンモニアから出てくるのをラクタムというのをつくって、そのよごれたアンモニアを硫酸にぶつけるのが回収硫安でございますから、この合成硫安が減りましても、このアンモニアを利用する肥料が伸びてくれば、アンモニアのいわゆる操業率というのが下がりませんから、その点は合成硫安、回収硫安と、そういうふうに分けて考えられるべきものじゃなくて、アンモニアを総合的にどう利用するかという問題でございまして、合成硫安の減ったのが回収硫安にいくと、こういうことでございまして、私は合成硫安が減るから即位段が高くなるということはないと思います。
  111. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 どうもその点が、たとえば回収硫安はラクタムその他の廃液からアンモニアをとり、あるいは都市ガス、製鉄等のコークス製造の副産物からアンモニアをとる、まあ副成ですかというようなものと、この合成硫安は直ちに結びついているのですか、その辺が私にはわからない。
  112. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 合成塔から出たアンモニアというもの――いまなぜ合成硫安が減ったかということは一番大きい理由は、需要が減ってきているからということでございます。これは同じ窒素分なりあるいは無硫酸根だとかいうようないろいろな理由で減ってきたと、ところがそれを生産量的に見ますと、このアンモニアの能力というのが、二十九年の能力よりも現在は二・五倍ぐらいになっているわけでございますが、そのアンモニアの行くえが、どうどこにあるかと申しますと、尿素にいくわけであります。アンモニアに炭酸ガスをぶっつけさえすれば尿素になる。それでそれからまた従来は硫安のための硫安すなわち合成硫安をつくっておったのか、そのアンモニアをラクタムにもっていった、アクリルにもっていったということでございまして、その点では逆に下がるわけでございまして、アンモニアかそういうふうに非常に大規模になって、しかも多角的に利用されるということになりますと、むしろ上がるというよりも下げぎみな原因が多いのでございます。
  113. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 時間がないから次に移りますが、この合理化について、まあ、今度の提案理由の説明でも、法案でも、内需の優先とか、価格の低位安定とか、輸出の一本の態勢はあるのですけれども合理化についてはうたってないわけですが、うたってはないが、三十七年の十二月二十八日の閣議決定で、百六億の融資をする、これたけでもう十分だということなんですか。
  114. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 合理化という問題は、私は実はこんな開放経済の日本におきましては、法律以前の問題であると思います。法律合理化をやれということも、考えようによっては一理あるかと思いますが、それよりも法律があるなしにかかわらず、片や貿易の自由化をしてきた、それから片や技術の進歩によって、毎日毎日それを追っかけていかなければならないということで、好むと好まざるとにかかわらず、その合理化に追っかけられているということで、私は合理化ということは、今後もますます続けていかなければならぬということが一つ。それから、後段の百六億でお前たちは今度打ち切るかということでございますが、これは打ち切れるはずはないのでございまして、たとえば御承知のように、農林省の見通しにもありますように、今後肥料の形態というのが、硫安から尿素に移り、さらに高度化成に移っていく。高度化成もまあこれは何千という種類があって、いまからそのいわゆる本命というのをつくらなくちゃいかぬというようなことで、今後そういう面から見ましても、私はこの硫安というよりも、もっと広げた化学肥料の合理化資金――たとえば合理化資金とか財政措置というのが今後ますます必要になってくると思いますし、また政府としましても、それを取り上げていく所存でございます。
  115. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 このさきに申し上げました、三十七年の十二月にきまった閣議の決定では、肥料形態の転換、アンモニアの多角的利用ということなんですが、前にいろいろその計画をやって、たとえばメタノールとかホルマリンとか、関連する樹脂等がたくさんでき過ぎて、四〇%も六〇%も値下がりして、これがまあわれわれとしては硫安のほうにはね返ってきていると思うのですが、今度のは百六億を融資する、そういうアンモニアの多角的利用というようなことでは、そういう過剰生産とかいうような問題は起きぬのですか。
  116. 倉八正

    政府委員(倉八正君) せっかく貴重な国家財政資金をつけるわけでございますから、何に転換するかというその転換先の需給の問題というのも、非常に大きい問題でございまして、いま御指摘になりました、いま花形になっておりますメラミン樹脂というようなものも、転換先のメラミン樹脂の需給が、どうなって、このくらいの資金つけて、このくらいの規模にしてもだいじょうぶだと、そういうこともちゃんと総合してきめている次第でございます。
  117. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 第一次、第二次、いろいろ合理化計画を立っても、目標に達しなかったのですが、今度は、どうもそういうふうに批判されるそしりを免れるためか、そういう計画もないのですね、一体目標はどうなんですか。およそそういう投資をする際には、合理化目標ということはあるのですが、どこまでいくのですか。
  118. 倉八正

    政府委員(倉八正君) もう合理化ということは、これは一般の産業を通じて言えることは無限でございまして、どこまでいったら合理化を一切終わって、それから先は合理化は要らない、こういうことは言えないと思います。しからば、それなら何年何月には何百何十何円になると、こういうことにつきましては、私たちのほうでも、いまはっきりした想定を持っておりません。と申しますのは、いまの、いつも責められます合理化に達しなかったという理由がたくさん数字的にございますが、そういう非常に不測ないま測定しがたい要素がございまして、今後下がるということは、これはもう確言できますが、何十何円いつまでに下がるということは、ちょっといま私どものほうでは想定しかねます。
  119. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 だんだんと合成硫安の比率が下がってくるのですが、これは不足するというようなことはありませんか。
  120. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 先ほど申し上げました需要懇談会で、いろいろな農業技術者あるいは農業技術者もいろいろな人も加わっておりますか、そういった人々の意見を聞き、また過去の趨勢から見まして、今後の硫安設備の見通しを立てておるわけでございます。大体不足するということはあり得ない、しかも輸出もできる、こういう状況でございます。
  121. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 合理化目標の中には、肥料の品目の転換とか、形態の転換とか、アンモニアの多角的利用があるのですが、肥料工業の国際的な規模を見ますと、さきに局長の言われたような百百十万トンというようなものもございますし、国際的に調べてみても、イタリア、オランダ、ノルウェー、西独、イギリスというように見ても、非常に大きな規模にあるわけですが、そういう合理化というものは、やられずに、非能率工場の整理というようなことをも含めてそういうことは、やらずに、現状規模でそういう合理化をやっても、私は限界があるのじゃないかというふうに思うのですが、その点はどうなんです。
  122. 倉八正

    政府委員(倉八正君) それは一理、確かにあると思います。外国の工場が大きいことも事実でありますし、それからドイツあたりの工場が、合成硫安よりも回収硫安に主力があることも御存じのとおりでありますが、われわれとしましても、できるだけ規模の大きい工場をしかも安くつくりたいというのは、これは当然の要請でございますが、ただ、このように何十年の歴史を持った工場をいま急につぶしまして、どこかに一つ集めるということは、これはなかなか言うべくして行ないがたいということでございまして、したがいまして、われわれとしましては、規模を大きくするとか、おるいは系列化して、できるだけ専門生産を、集中生産をやらせる、そういう方向につきましては今後進めていきたいと思いますが、その場合にも、ある程度の時期を要するということを御了承願いたいと思います。
  123. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 まだいろいろお触れしたいと思うのですが、五時まででしまいということですので、最後に、肥料輸出の見通しと国内に赤字の非転嫁の問題ですね。この問題について、社会党としては一番心配しているのですが、たしか先日の委員会で肥料の輸出で大体十億ぐらい赤字があるということですが、昭和三十八肥料年度の二法の対象になるアンモニア系窒素の輸出総額と、その赤字と、そうして実際それは一番大きな差はどのくらいかぶるものか、その点をお伺いしたい。
  124. 倉八正

    政府委員(倉八正君) これは大体いわゆる赤字というのか十億でございます。それでそれは硫安十七社の売り上げ右回が〇・二八%でございますか――〇・三%ぐらいということでございます。その一番目で大きいのは、御承知のように東洋高圧でございますから、その比率によりますと東洋高圧がこのうちで一番多かろうと、こう考えます。
  125. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この輸出硫安売掛金経理臨時措置法によりまして、赤字の二百十五億ですか、百三億の赤字融資等を含めてもうけりをつける。そのときの提案理由に、今後は輸出会社に赤字をプールすることはまかりならぬというふうになって、硫安輸出会社はFOB価格で買い取りなさいということになっているのですが、やはりそういう赤字が出るとすれば、結局それは国内価格に転嫁せざるを得ないのじゃないかというふうに思うのですが、その関係はいかがですか。
  126. 倉八正

    政府委員(倉八正君) FOBを仕切りに、やりましたから、いま各会社も御承知のとおりに赤字を補償してくれとかどうりとかいうことは言っていないのでございまして、それから政府の態度も、従来の赤字を全部、俗なことはで言えばしりぬぐいしてやってそれから前向きの資金の百六億をつけてやるから、その合理化によって赤字というのはこれで終わったぞ、こういう態度を一昨年の十二月二十八日とったわけでございます。したがいまして、形式上は私は十億円くらいの差というのは、赤字は出ておりますが、それは会社の中において吸収しておるということでございまして、それをそのまま国内に転嫁して、国内の肥料の価格を上げるということは、今後の問題としても私はあまり心配も要りませんし、それからさっき農林大臣も、それから経済局長も先般から言っておりますように、その点は両省の価格のたとえばカルテルの認可の届け出の場合の審査、あるいはそれに対する是正命令等において十分監督ができて、心配は私はなかろうと思います。
  127. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 先日のこの委員会で、いろいろやっても、合理化でも十分吸収できないというような場合には、赤城大臣は行政措置でやるというふうな、私は何かそういうことなしには、やはり韓国向けの一番高かったのでも四十四ドル五十セントくらいですから。国内か五十一ドル三十セントですから、まだ数ドルの差があるわけですから、やはり赤字は出ると思うのですよ。そうすると、結局転嫁せざるを得ないと思うのですが、この点は農林省としてはどうなんですか、実際。
  128. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) いま極端な場合に、どうも企業が負担し切れなくて、転嫁しなければ成り立たぬというような場合がないとは言い切れないと思います。しかし、そういうことは絶対に転嫁はしてもらっては困る、大胆が言いましたのは、そういう場合には従来やりましたように財政措置等、投融資等によって赤字の負担の軽減をはかっていく、こういうことを大臣が言われたと思うのであります。
  129. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は倉八局長の言われた合理化メリットを全部実際は吸収してしまうわけで、百姓のほうにも行かぬということになって、結局輸出赤字はかふってしまうのじゃないか、結果においてはそういうふうに思うのですが、そういうことになりませんか。特に私はいまの公定価格の、五十一ドル三十セントですか上げんでも、これは償却は九年ですか、設備の償却は九年として、初年度に三分の一も大幅な償却をするわけですから、急速に償却費というものがふえてくると思うのです。全購連からいただいた資料を見ても、主要な材料費と労務費と償却費を見ても、三十六年ごろが償却費がピークでもって、非常に下がって、そういう意味では上げぬでも、本来は全部メリットを消費者価格にいかずに、やるにしてもほとんど、そこに妙味があって実質的には上げぬでも相当転嫁されるというふうに思うのですが、そういうことはないんですか。
  130. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 現行価格を上げなくても転嫁されるというような御意見でございますが、これはまだはっきりした、何十何円になるということは、いまわかりませんから、私はそこの点は明言できませんが、さっきからも申し上げているように、転嫁するということがある場合には、政府の是正命令なりその他の行政措置で救済できるという措置を立てておりますから、それがそのまま農民に転嫁するというよりなことは、私は考えられぬと思いますし、それから先生のことばを買ってしますと、いま四ドルの差があるじゃないかということか、先生の理論でいきますと、一かます。これは百円くらい上げなくちゃいけないわけでございます。それを転嫁させるということになりますと、そういう計算になりまして、私は転嫁論というのは結局現象問題であって、そこに両省が指導権を持っておれば、私は農民のほうをいじめる転嫁というのはあり得ないと、こう考えております。
  131. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 じゃ最後に一つ聞いておきますが、この硫安原価の中で、まあ大まかに分けて材料費、労務費、減価償却費とあるのですが、これをまあ今後百六億ですか、それにさらに足しての二百数十億の投資をして、償却費というのはどういうふうに年次別に曲線が下がってくるような、そういう計算をしておられますか。その材料費と労務費が変わらぬものとした場合には、償却費の占める比率というものの傾向はどういうふうになるのですか。
  132. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 償却費は、大体一般的に言えば今後下がってまいります。したがって、その分がこの、いわゆるコストが安くなる作用に及ぶと思いますが、御承知のように非常にアンモニア工業の施設というものか変わりまして、現にもういまやっているのは時代おくれということになってまいりまして、ことしから例のナフサ分解法というのか世界に出てまいりまして、これが出たらまた取りかえるということになりますると、また、ばく大な資金が要る。そういうことで日進月歩の化学工業ですから、償却費か、そういう改造あるいは取りかえをしなければ、私は今後下がっていくと思いますが、そういう取りかえをすれば、今後償却費かいままで下がったと同じぐらいで下がっていくかどうか、非常に疑問だと思います。
  133. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、やはりこの法律は結局まあバルク・ライン方式にこりて、結局においてメーカー・サイドになって、輸出赤字がじわじわと消費価格に、国内価格に転嫁されるんじゃないか、そういう心配を持っていますが、いろいろお尋ねしたいが、まあ他の委員の人も質問されるので、これでやめます。失礼しました。
  134. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は、いままでいろいろ質疑がありまして、二重になるようなきらいもあるかもしれませんか、この際一応確かめておきたいのは、現行二法がいままで肥料の内需優先、また低位価格の形成に非常に役に立ちまして、そうして直接これを使う農民にも非常に安心感を与えておりますし、しかも、肥料の合理化によるコスト・ダウンがこれからようやく実施してこようというそういう際に、特にこの二法をやめて、新しい新法をつくるということに対しましては、製造業者、また需要者お互いに利益が相反しておるのであります。どのようにそれぞれ利益を与えるのか、一方が利益になれば、必ず一方は不利益になるのじゃないか、こういうふうに思うわけですか、その点に対しまして、いままでの法律と比べて、新法がどのように両者に利益を与えるか、その点を伺いたいと思います。
  135. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、いまの法律の期限が切れますので、それに対処するためにどうするか、こういう問題から、いま提案しておるような法案に相なっておるわけでございます。しからば、何といいますか、メーカー及び消費者が常にその利害が対立していて、片方によければ片方が悪いという見方はいかがかと思います。私は両方に適当に立ち行くような形のものがとれるものだと、いわゆる階級闘争的な、何といいますか、片方が利益すれば片方は不利益だ、こうはかりは私は考えられないと思います。しかし、それは御質問の点ではございませんか、しからば、本制度は、現行法律と比べて、どういう利害、利益等が、あるいは得失等があるかというお尋ねだと思います。私は、メーカーといいますか、業者のほうからいいますならば、依然として合理化を進めていくわけでございますから、その合理化のメリットのごく少部分かもしれませんか、幾ぶんかはさらに合理化に進めていく、あるいは経営面に帰属するというような点が利点といいますか、まあ利点と思います。また、消費者の面から考えますならば、これは現在と別に変わりはないと思いますけれども見通しといたしましては、一つの統制下でなくても、供給面が確保され、また価格面においても下がってくる、こういうような見通しができるという見通しがあると私は思います。そういう見通しから見ますならば、現行法でなくても、この法案によっても、現行法の目的は達していけるのであるからして、あえて何といいますか、統制的なものを必要としないで、現行法と同じような目的が達せられる、こういうような、利点とまではいかぬでしょうけれども、そういう面において不利というようなことはないと、こういうふうに考えております。
  136. 北條雋八

    ○北條雋八君 いまのお話でございますけれども、この肥料の生産業者が二法を撤廃するということを非常に望んでいるということは、これは事実だと思います。で、それを裏返して考えるならば、いままでよりも話し合いによって、きびしく押えられないで、そうして融通性がついてくる。それだけ価格を抑えられないということは、結局高くなるということに通ずるのじゃないかというふうに思われます。いま大臣がおっしゃいましたけれども、この小産業者からすれば、合理化メリットの配分は、今度の新法によれば話し合いで今度それだけ有利になりますから、そうすると結局有利になるのは生産業者である。消費者である農民にとっては、一向利益にならないということが言えるのじゃないか、こういうふうに思います。
  137. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私はやっぱり合理化メリットが幾ぶんメーカーのほうに帰し、またさらに合理化が進まる、こういうことになれば、これはやはり価格も安くなるというような結果になりまするから、これはやはり消費者のほうにも結果的には帰属する。一心的には合理化のメリットが生産者のほうに一部分帰属するというかっこうで利益になるというふうな見方もございましょうけれども、これ繰り返し繰り返し合理化がなお遊んでいくということにしなれば、私はこれは消費者のほうにも回ってくる結果に、まあすぐそのときとは言いませんけれども、回ってくる結果になる、私はこういうふうに考えています。
  138. 北條雋八

    ○北條雋八君 それはもう確かに合理化が遊んできて、もっと国際競争力もつけなければなりませんし、生産者も消費者にも両方によくならないわけでありますし、またそうしなければなりませんけれども、現行法と比べれば、消費者のほうは割合が悪くなるということは言えるのじゃないか、こう思うのです。その点はいかがでございましょう。
  139. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) そういう見方もないわけではなかろうかとも思います。これはやっぱり折衝の結果によりませんと、はたしてそういうふうにいくかどうかということは言い切れませんけれども、いままでより不利にならぬように、消費者の面におきましても折衝をするように私どもも十分配慮をいたしたい、こう考えます。
  140. 北條雋八

    ○北條雋八君 次に、新法には直接肥料を使用する生産農民の利益を主張する道が開けておらないわけでございますが、全講連は一応は農民の利益を代表する団体ではありますけれども、いずれも手数料という販売権の執行に重点が置かれる団体でございますから、農民と同じような主張はできません。どうしてもまたこの肥料を使うほうの立場でありますから、現物を持っておる強みがあるメーカーの力に押される、話し合いするにしてもどうしても弱くなりますから、いいかげんなところで妥協してしまうということになるのじゃないかと思います。それで、そういうことを考えますと、この話し合いに何か消費者である農民の代表とか、あるいは中立の立場である学識経験者みたいなものの意見も入れるような方法はないものかどうか。たとえて言うなら前の審議会みたいなものをやはり存続しまして、それによって政府の諮問機関として価格を公定するわけでもありませんけれども、やはりそういう政府としましても、やはり前以上にその価格については、厳正な計算の根拠というものは持っていなければならないのでありますから、何かそういう方法をとって二者だけにまかせないという方法はないかと思うのでありますが、これに対して政府で何かお考えになったことがあるかどうか、伺いたいと思いいます。
  141. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま肥料審議会のような機関とかあるいは学識経験者に、価格の交渉に助力するようなものは、いま考えておりません。私どもは、全購連というものは相当な力を持っておると思います。また組織も持っております。でありますので、折衝の一方の当事者としては、これは全肥連も一緒になってやる場合もあると思います。相当な組織及び力を持っておると思います。でございますので、それに対しての資料の提供とか、そういう面におきましての協力は、私のほうといたしましてもいたしますが、当事者としていろいろ学識経験者意見を聞いたり、あるいはまたその方面のベテランの人の協力を求めたり、折衝をするということはあり得るし、またそういう場合があるかと思いますけれども、特に政府がそういう機関を設けるということは、いまのところ考えておりません。まあ調停とか、是正命令というような場合に、そういう機関ではなくして、いろいろ調査の、あるいは資料収集の方法として学識経験者や、この方面の人々に意見を聞くということは、これはあり得ることでございますけれども、交渉の場合にどうこうということは、いまのところは考え  ておりません。
  142. 北條雋八

    ○北條雋八君 結局この二者が話し合う問題点というものは、結局生産コストでありますが、特に事業者であります販売業者は、これを算出するための必要な資料というものは、必ずこれは政府に要求してくると思うのであります。ところが、第三条でそういう規定がありますが、おそらくこれはもう必ずといって、きまったものだと思いますが、政府としましては、もちろんそれを前提にしてどういう資料を用意しておく考えであるか、農林大臣または通産大臣は、「この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、肥料の小産業者若しくは販売業者に対し必要な事項報告を求め、」云々、そういうかうに書いてございますが、これはそのつど報告を求めるというよりも、もっと積極的に、定期的に必ずこういう資料は提出しろというぐらいにしておいてもいいんじゃないかというふうに思います。むろん従来の、先ほど来のお話で、バルク・ライン方式に使う数値の資料ももちろん必要であることは明らかであります。そういったものを政令できめて、そうしてもう出足期的にこれは報告させるというぐらいにしたほうがいいんじゃないかというふうに思いますが、その点いかがですか。
  143. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) この規定につきましては、大体現行法と同様に運用したいと考えております。具体的に申し上げますと、メーカーからは生産数量、出荷数量を定期的に徴集いたします。それから在庫数量につきましてもメーカー、販売業者から定期的にとってまいります。それから出荷数量、これも同様にやってまいる。いずれも定一期的にとることにいたしております。それから生産費につきましては、大体現行法と同様にやってまいりたいと思いますが、最近は生産の構造も比較的安定してまいっておりますので、毎年同じような精細な調査をしなくても、ものによっては簡素化できるものもございますので、そういう面の簡素化はいたしますが、できるだけ現状と同じように生産費の調査もやってまいりたい、こう考えております。
  144. 北條雋八

    ○北條雋八君 従来そういう生産費を報告させるのは、どういう手続によって、どういう資料をとっておられますか。
  145. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 各企業から、各メーカーから生産原価に関する精細な資料を報告させております。必要によっては帳簿等の検査をすることもございます。
  146. 北條雋八

    ○北條雋八君 それは月々の報告をとっておられますか。
  147. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) これは年一回でございます。たとえば、三十八年度なら三十八年度に関する原価の一年分を一回報告させます。
  148. 北條雋八

    ○北條雋八君 次に伺いたいのは、この生産業者と販売業者が、先ほどもお話がありましたとおり、利害が相反するものであると私は思うんですが、容易にその話し合いがまとまらない、こう思います。そこで第四条で、その場合、「双方又はいずれか一方から申請があった場合において、特に必要があると認めるときは、調停を行なうものとする。」、そういう規定がありまして、先ほども話がありましたとおり、「特に必要があると認めるとき」というのは、一体具体的にどういう場合をいうのでありますか。逆に言うなら、認めない場合とは一体具体的にどういう場合を言うのか。その点をお聞きいたします。
  149. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 先ほども申し上げましたように、政府としては、話し合いが円滑に進み、また公正な取りきめができることを望んでおりますから、できるだけ差しつかえない資料は提供いたしたいと考えております。ただ、相手出力の機密のようなものまで要求されても、それは差し上げられない。そういった場合はございますので、いま御質問に、逆にどういう場合には提供できないかというお話でございます……。(「提供でない、調停だよ」と呼ぶ者あり)どうも失礼いたしました。調停の場合は、これはできるだけ自主的に話を進めていただきたい。簡単に調停に持ち込んでいただくのでは、自主的な話し合いという精神が非常にまずい結果になるのではないか、安易に調停はいたしたくない、できるだけ自主的に十分論議を尽くしていただきたい、こういう趣旨でございます。
  150. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうしますと、必要を認める場合と認めない場合と、どっちの場合が多いのでありましょうか。長期にわたり努力したにかかわらず、申請があった場合でありますが、大体は必要と認める場合が多いのじゃないかというふうに思います。
  151. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) できるだけ調停には持ち込んでいただきたくない、こう考えております。自主的にできるだけ話し合っていただきたい。お互いに話し合ってもなかなかきまらない、肥料年度が開始されても、現状ではたとえば八月から肥料年度が始まりますが、九月ごろまできまらないことがございます。その場合に暫定価格でやっておるような場合がございますが、まあある程度の時期は過ぎてもどうしてもきまらないというような場合には、やはり調停をせざるを得ない、こう考えております。
  152. 北條雋八

    ○北條雋八君 そういう場合には、先ほどもお話がありましたけれども、調停をしなきゃなりませんけれども、これはまた万一この調停ができない場合はどうするかということについても、先ほどちょっと中田さんの御質問にありましたけれども、そういう場合があってはたいへんでありますけれども、そういう場合に、やはり全農民が安心できるような責任のある御答弁をお願いしたいのです。もう一回、これは大臣からお願いしたいと思います。
  153. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これがまあ調停の場合と別に、話し合いできめた場合に適当でないというときには、これは是正命令が出せます。それから調停の結論が出ないでおるという場合に、時期的にあるいは価格面についてどうするかということでございますか、きまった場合に是正命令が出せるくらいでございまするから、調停が長引いたり何かしていて、農民の入手に非常に支障を来たすというような場合には、これは行政的に私は、価格の面につきましても、あるいは出荷等につきましても、指示するといいますか、法律面にはなくても、当然そういう指示、勧奨を近めていくと、こういうふうに考えます。
  154. 北條雋八

    ○北條雋八君 調停ができない場合には裁定ができるという権限規定でもつくっておけば、一番いいと思うのですが、裁定ができるようなふうにならないものでありましょうか。
  155. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 裁定というところまでは、私はちょっとたてまえからいきにくいと思うのです。しかし調停が長引くような場合、調停に応じないという場合に、ある程度の指示、勧奨、助言の規定もございますが、それを二歩進めて行政的な指示、勧奨、命令は出せる、こういうふうに私は考えます。
  156. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうすると、大体勧奨でもってそういう場合には片がつくという自信がおありになるというふうに承わってよろしゅうございますね。
  157. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) そういうふうに考えます。
  158. 北條雋八

    ○北條雋八君 あと一点簡単にお伺いいたします。この際私も、先ほど来いろいろお話がありましたことなんでありますが、大臣がおいででございますから、なお念のために伺いたいのは、この二法の現行法がなくなった場合でも、わが国の肥料工業が引き続いて国際競争力を強化しつつ、かつ国内においても農家により低廉な肥料を豊富に供給していくことができるかということが、われわれとしては、非常に責任も感じ、また心配でもあるわけなんでございますが、これまた、われわれが安心してこの新法に賛成できるような確信のある御答弁をいただきたいと思います。
  159. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私どもはいまの法律の期限が切れるので、その後どういう措置を講ずるかということで、種々研究いたしました結果、いまの国際的に見ましても、国際競争力が強まっていく、及び内需方面におきましても十分な供給ができる、価格面におきましても低廉に進めていき得る、こういう見通しがありましたので、実はこういう法案を出しておるわけでございますから、そういう点におきましては、私ども責任をもってこの法案の施行を進めていきたい、こう考えておるわけであります。
  160. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 ちょっと私、この前要求いたしました資料のことでお聞きしたいのですが、この資料を出していただきました中で、基本的に内部まで入って調査のできる項目は何と何か、たとえば労務費なんかは簡単にできますね、これは平均賃金で出るでしょうから。材料費も、原料費も私は出ると思うのですが、一番問題なのは本社だとか、あるいはまた一般経費ですね、こういう問題の突っ込み方というものをどういうふうにお考えになっておるのか、どこまで調べた経験もあるのか、またこれで十分突っ込めるという自信があるのか、あるならば、これの項目の中でどれとどれということをお聞きしたいのですか。
  161. 倉八正

    政府委員(倉八正君) ここに差し上げましたのは、まる公決定の資料の要約でございます。この資料のどの項目につきましても、はっきりした非常に細密にわたる資料を出させまして、そうしてそれを査定しております。したがいまして、いま御指摘のありましたように、どの項目もそういうことになっておりますが、たとえば本社費なんかということになりますと、これは会計学でもいろいろ問題があると思いますが、何を木社費と見るかということと、それとその割り掛けをどうするかという二つの問題に尽きると思いますが、その問題につきましては、割り掛けというのは、当該会社の総本社費を当該肥料の数量で割ったものでございまして、本社費というのは普通いわれるように、ここで言っております研究費それから広告費、そういうものを含んでおります。
  162. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、この資料は、政府でお考えになっております基準的なものを割り出す各社の基礎になった平均だ、そういう見方をしていいのですね。
  163. 倉八正

    政府委員(倉八正君) もうちょっと詳しく言いますと、各社から出しましたものを、政府の公式に従いまして、それで査定した額でございます。
  164. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、この平均を出されるのに対して、あるいは製造原価というものについては、最高と最低とどのくらい違うのか、たとえばトン当たりでは一万二千九百四十八円ということになっておりますね。あるいは一かますでは五百十七円になっている。したがって十七社なり二十社なりありますが、その中の一体最高と最低はどのくらいの差があるか、これは生産コストの差だと思うのです。
  165. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 今年度三十八肥料年度の差がたしか二千六百円ぐらい、二千五百円ちょっとだったと思います。一番安いところと一番高いところ。
  166. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、先ほどから中田さんの質問なり北條先生の質問に対して、生産メーカーとあるいはまた全購連との間にかなり妥当な価格が出るだろう。と、たびたび自信のある回答をしておられるわけです。ところが、それならば、そういう方法でやられるならば、なぜ独禁法の除外例ということをこの際考えて、共同行為ができるような方法にどうしてしたのか。私が聞きたいことは、共同行為をする場合には、トン当たりにおいても二千六百円の格差があるわけです。そうしますと、一体これからの肥料のあり方というものは、倉八局長が言われるように、まだまだもっと機械化するだろう、オートメーション化するだろう、新しい製品も出るだろう、こういうふうにおっしゃっているわけです。そうすると、この共同行為をする場合に、一体メーカーがどの線をとるかということに問題が私はあろうかと思うのです。政府考えておられるのは、十七社の平均をとったと、こうおっしゃるけれども、メーカーが考える場合には、将来高度化するこの事態から考えてみると、どうしてもやはり最低のところをとらざるを得ない、早く申し上げますならば、二千六百円の欠損をするような行き方はしたくない、それから最低のものを中心にして共同行為をやらざるを得ないと考えますが、その点はどうお考えになりますか。
  167. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 独禁法の例外規定を認めましたのは、需要者団体と協定をする態勢をつくれということを認めただけでございます。と申しますのは、全購連は最初から独禁法の適用除外でございまして、その点は独禁法の適用を受けません。ところがメーカーにつきましては、集まって話をするということ自体が、独禁法違反でございますから、肥料の価格安定という意味から、十七社がばらばらでやるよりも、相手の需要者団体と一緒になって、共同で話し合いをしなさい、そこだけ認めたのが今度の法律規定でございます。  それから、価格の問題につきましては、いま非常に縮まりまして、三年前くらいは大体六千円くらい違っておったのでございますが、非常に合理化しまして、二千五百円ちょっとに縮まった、今後ますます縮まります。これは確実でございますが、その場合に、どういう価格で交渉するかということは、これは両当事者の話し合いにまかせるよりしかたがかなかろうと思います。その場合に、たとえば需要者団体も、こういう資料を全部持っております。かつて、十年分の厚いものを持っておりまして、それがどのくらい合理化して下がってきたということは、全部お持ちになっております。したがいまして、われわれが資料としまして、合理化でたとえば一番問題になるのは、労務費でございます。労務費が下がるということが、これが下がるということ、この労務費の中でどういうふうに配置転換になったか、あるいはどういうふうに原単位が上がったかということをみれば、大体経験を持った人なら、このくらいの合理化ができたということは、これはおわかりになるだろうと思います。また必要があれば、さっき農林省からもたびたびお答えしておりますように、われわれとしては必要な資料は、いつでも両当事者に差し上げるということで、私は話し合いはうまくいくたろう、こういうふうに考えております。
  168. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは私は詭弁だと思う。あなたは共同行為ということは、値段まで話し合いするということです。集まっただけで、みんながばらばらではいかぬ。集めるだけなら集めたらいい、政府の指示で。そうではなくて、共同行為をやるということは、少なくとも値段の、価格を協定するということです。そうでしょう、そうなれば、私がさっき申しましたように、最高と最低の場合には、これからますます設備投資も要るし、政府の助成金としても、そうやたらに出るわけではないでしょう。昭和二十九年の実態と違うのです。しかし、トン当たり二千六百円の格差があるならば、それを含めてその格差のあることを含めてそれが最低基準になる、こういうおそれが私はあるのではないか、そのことをどうお考えになっているかということを聞きたい。
  169. 倉八正

    政府委員(倉八正君) 観念的にはあり得ると思いますが、実際的に私は起こらないと思います。その最低、いわゆる限界生産費をとりますと、いまの価格よりも二千六百円上がるはずでございますから、それを四十キロかます、二十五で割りますと、いまの価格よりも百円も上がるという理屈になりますから、そういうことは、いまの限界生産費をそのままとるということは、私は事実問題としてはあり得ない、こう考えております。
  170. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、お聞きしますが、政府が出しておられますこの標準から上がるというようなことはない、大体これを標準にしておられるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  171. 倉八正

    政府委員(倉八正君) いまの価格よりも絶対に上がりません。そうして、もしそういうことをしたら、われわれのほうは是正命令を出します。これははっきりいたしております。
  172. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それではもう一つお聞きしますが、時間がありませんので詳しく申しませんけれども、あなたのほうでこういうことを言っておられるのです。全購連に売る場合と輸出会社に売る場合との二つがあるわけですね。その場合に、こういうことが書いてあるわけです。「ただし、第十四条の一号から三号までに該当する場合、すなわち不公正な取引方法を用いたり、是正等の命令に違反したり、第十五条第三項及び第四項の規定により公正取引委員会が農林大臣及び通商産業大臣に対し是正等の命令をするよう請求し、かつ同条第五項の規定によりその旨公示してから一カ月経過してもなお是正等の命令がなされなかった場合には、適用除外されないこと」になる、こういうことになっているわけですね。しかし、私が御質問申し上げたら、あなたは絶対ないと言われるのです。絶対なければ、独禁法の適用を、これはつまり言うことを聞かぬ場合には除外しないぞということを入れる必要はないでしょう。私はその危険性があるから、この法案が入っていると思うのですが、どうですか。
  173. 倉八正

    政府委員(倉八正君) この規定というものは、これは一口で言えば、一種のこういう独禁法の例外をつくるときの例文でございまして、趣旨二つあります。一つは、第二条のいわゆる農林、通産両大臣産業上の要請から是正命令を出すということが第二条の五号です。それから公取がみずからの立場におきまして独禁法違反をやっているということになれば、それは独自の権限に基づきまして、ある場合は両大臣に要求して廃止命令を出させる。それでも聞かぬ場合には、自分みずからを運営するように要請しているというのがこの趣旨でございます。
  174. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、そういう危険性はないけれども、単なる牽制にすぎないのだ、こういう解釈でいいのですか、それにしてはちょっとおかしいと思うのです。
  175. 倉八正

    政府委員(倉八正君) こういう法をつくるときは、いろいろなことを想定して、それを網羅するというのが法のたてまえだと思います。したがいまして、観念的にもそういうことがあるというならば、これを法に盛りまして、アリの一穴もないというふうにするのが、法のたてまえだろうと思いますから、そういう意味において公取独自の権限をここにうたっているわけでございます。
  176. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 相当自信があるようですから、この問題はそういたしておきますが、こういう場合はどうなりますか。たとえば、これは先ほど大臣も多少お触れになりましたけれども、全購連としてもかなり強い団体だ、業者団体も強い団体であろうと私は思うのです。そのときに、大体この資料を見ますと、三十八年度を見ますと、卸が七百五十八円、これはかますですが、小売りが八百三円と、こうなっております。そうなりますと、全購連との話し合いの中で、メーカーとの取引がなされると思うのです。そのときにメーカーが大体一割上げたい。それはきついじゃないか、しかし、そのかわりに全購連はいま大体六%ぐらいの手数料をとっているようですが、君のところもこの中から二%上げればいいじゃないか、うちが全部とろうと考えていないのだ。したがって、君のほうでもそれを認めてくれ、こういう話し合いもあり得ると私は思うのです。取引ですから。そういう心配はせんでもいいのかどうか。先ほどのあなたの確信からいえば、そういうことはないとおっしゃるかもしれませんが、私はそこまでこの交渉に対してはやはり心配をしておくべきだ、こういう考え方を持つものですから、お聞きしたいのです。
  177. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) 両方の当事者はお互いに相手側の事情を理解し合うように、また、自分のほうの事情については説得して、相手側に理解してもらうように論議をすると思うのであります。その硫安の値段を幾らにすべきかということと、肥料のマージンをどうするか、取り扱いのマージンをどうすべきかということは、ちょっと問題の性質が違うと思いまするので、そのマージンについては、むしろ需要者団体の内部の問題でございますから、それは内部的に解決すべきことであって、相手側からこうすべきだということはちょっと筋違いではないかと思います。しかし、これはまあ話し合いでございますから、話の材料としてそういうことが出される場合はあっても差しつかえないと思いますが、しかしそれを要求するとか、筋としてそうあるべきだ、こういうことにはならぬと考えております。
  178. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは別個に分けることが問題であって、今日のような、つまり流通機構の改善考えて、全く肥料の場合は、メーカーから直接流通機構の全購連にいくわけです。したがって安くしようというわけでしょう。しかし全購連としても、あらゆる諸経済の問題があろうかと思うのです。そういう場合にはその話し合いは別個じゃなくて、取引の中に当然起こってくる問題だと私は思うのです。そういうことから、私が先ほど言ったように、心配いたしますことは、業者は独禁法の除外例で当然価格の協定をすることができる、その交渉の相手は全購連は強いとはいえども、全購連自体の運営資金も私は要ろうかと思います。おのずと農民に対する肥料代というものは上がらざるを得ないではないか、そういう理屈になるではないか、したがって極端に二法案から今日のような自主性を持たせた交渉は、なるほど企業の将来の発展にはいいように見えるけれども、現実はそうではないではないか、こういうことを私は考えるのですが、そういう心配はないと、これは確信持って言えるかどうか、その点ひとつ両局長にお聞きしておきたいと思うのです。
  179. 倉八正

    政府委員(倉八正君) これをもっと分析しますと、メーカーが十七社ありますが、何社入るか知りませんが、一つのカルテルをつくって価格を操作するというときに、その値段の一つの性格にもよると思います。どういう値段を立てるか、いまはもより駅貨車売り渡しというのが、さっきのこの表にあります。百三十八円でありますが、それを工場渡しで売るというようなことになれば、工場以降の口銭はメーカーの段階ではなくて向こうの段階になりますし、逆に今度は消費者庭先渡しという方法もありますから、そうすると消費者のところに持ってくるということになれば、全購連の手数料はメーカーの手数料になろうかと思います。そういうふうにいろいろ、取引の態様というのがあろうかと思いますが、私はその前に両方がなれ合いになって、ちょっとお互い一%ずつ手数料を上げようかというようなことは、事実問題としてはあり得ないというふうに考えます。というのは、そうしたらば、結局最終値段というのが上がるわけでございまして、上がるということは、この一法律というよりも、一つの大きい政治問題であるし、社会問題であって、そこまでたとえばきたない言葉で言いますと、なれ合いでするということは、現実の問題としてはこれだけ国民の目が光っているから私はあり得ない、かように考えております。
  180. 松岡亮

    政府委員(松岡亮君) いま軽工業局長が言いましたとおりでございますが、値段の建て他のきめ方もあると思います。あると思いますけれども、かりにまあなれ合いで不当なマージンというようなものが協定の内容に入った場合、これはやはり是正命令の対象として考えてよろしいと私ども考えております。
  181. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 今日の日本産業は、伸びれば伸びるほど独禁法の除外例を認めてもらいたいというのがこれは業界の私は考え方だと思うのです。その独禁法を認めておいて、業者間だけのいわゆるメーカーと販売者との間に自主的に話をつけよう、そうしてきまったものに対してもし不当であるならば、あるいは通雄大臣なり農林大臣の勧告を受けることができるということになるわけですね。そこで、 これは皆さんの意見を私は尊重しないわけじゃありませんけれども、両局長は確信を持って上げないと、こうおっしゃっておるのです。それを私も望みます。そこで、もしこれが上がったとするならば、これは大臣に確認しておきたいのですが、今後の米価の決定なりあるいは麦、さらになたね、こういう支持価格の問題には値上がりは完全に織り込んでいくのだ、こういうことはここで確言できるかどうか、ひとつ大臣の御所信をお聞きしたい。
  182. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 米価の算定等におきまして、肥料価格が上がった場合には生産所得補償方式の形でやっていますから、これはその分だけ上がってきます。しかしこの問題は、いま肥料の当面している問題は、そういう肥料の価格を上げることにしないという方針でおるわけでございます。ですから、肥料――硫安関係ですが――硫安関係の肥料の価格か上がったからということで米の価格の話はちょっといま早過ぎると思うのですが、私は上げないというつもりでおりますから、まあそういうふうに考えております。
  183. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いや早過ぎるといっても、私が御質問申し上げておることは、業者を守ることにきゅうきゅうして、農民に、いわゆる消費者に対する価格が上がらないという自信が持てると、こうおっしゃるのですよ。持てるならいいと思うのです。私は。そうでしょう。しかしメーカーと販売者との自主交渉というものは、これはおよそ常識で考えてみても、ある程度の全体的な自然増の物価の値上がりもあるわけです。したがって、また不当なやり方の値上がりもあるわけです。その不当の値上がりの場合を私たちは心配するわけです。基準がないから。そうでしょう。それで、当然消費者に迷惑をかけないというならば、私は米価の問題に織り込むのだ、自信をもって大臣も上げないとおっしゃるのだから、言っていただければそれでけっこうです。当然のことだと私は思うのです。
  184. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) このカルテルの問題でございますが、価格形成のカルテルで、独占価格を決定するというようなカルテルでないことは御承知のとおりでございまして、折衝する場合に共同で折衝するということで独禁法の除外例になっておる。その場合に、先ほどお話がありましたが、一番問い価格で値を出すのじゃないか、しかしそれできまるわけではございません。独占価格を決定するカルテルではございませんから、交渉の相手方がそれは認めませんから、そういう場合はございません。また現在より、先ほど局長が答弁していますように、現状より問い、いまより高いというようなことであるならば、私どもは是正命令を出して現在以下にこれを引き下げる、こういうことにいたすつもりでございますから、したがって価格が上った場合に、上がっただけ米の生産費等の米の価格を上げていくかということは、原則論としてこういう法律がなくて自然価格として上がった場合には、当然これは米の生産費の価格等にも織り込んで米の価格を上げるということでございますけれども、しかしいまの法律のもとにおいては、この硫安関係の肥料は上げないということでございますから、したがって米の価格等については上げない価格で織り込めると思います。
  185. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 終わります。
  186. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 本案に対する質疑は、これにて尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。
  188. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 次いで、漁業災害補償法案議題とし、質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  189. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 ずいぶん時間も迫ってまいりましたので、簡単に質問いたしたいと思いますので、非常によくわかるようにひとつ御答弁を願いたいと、かように考えます。  まず、この法案に入る前にお聞きしたいと思いますことは、いままで漁業災害対策として現在行なわれておるものには漁船損害補償法だとか、あるいはまた李ラインに関係がございます漁船乗組員給与保険法あるいはその他農林水産等の天災被害等のいろいろの救済といいますか、災害対策としての法律があると思うんですが、私がこの法案の中身をお聞きする前にお尋ねをしておきたいと思うことは、韓国拿捕船の問題であります。これは水産庁から資料をいただいておりますが、三十九年の一月現在でこれに載っております最後のものは三十九年の一月二十九日の佐代丸、以西底びき、これが拿捕されている。これで終わりになっておりますが、その後新聞等で承知いたしますところによると、かなり悪質というと、どうも語弊がありますけれども、相当きつい拿捕の状況を聞かされております。その後どのくらいございましたか、そちらに資料がございますれば、庄野長官からでけっこうでございますから、お答え願いたいと思います。
  190. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 韓国の拿捕漁船でございますが、三月末で三百十八隻、その後五月六日に一隻拿捕されまして三百十九隻、未帰還が百八十二隻というふうになっております。その後漁船が追跡されまして巡視艇がそれを指導、援護しておりますものにつきまして、船員は巡視艇に乗り移っているが、漁船を横抱きにして離脱しようとしたというものを非常に強制的に傘捕、連行した、そういうふうになりまして、先生のお持ちの一月現在の以後四隻拿捕されております。で、本日も一隻、午後以西底びきの船が拿捕されている、こういうことになっております。それで、四隻のうち一隻は洋上で釈放している、返還されております。それから二隻は船のみ連行して船員は巡視艇に乗り移って帰ってきている。それから本日拿捕されました一隻は、船員とも拿捕されておりまして、十三名、そういう状況になっております。
  191. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうしますと、船員の数は何名になりましょうか。それから拿捕された船の隻数、トン数ですね、おわかりでございましたら……。
  192. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) ただいま抑留中の船員は、きょう抑留されました分だけの十三名でございます。なお全体のトン数につきましては、ただいま資料持っておりませんのでお答えいたしかねますが、御容赦願いたいと思います。
  193. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 きょうのは初めていま長官からお聞きして十三名、船員並びに拿捕された船があるようですが、二十三日に第十一住吉丸が洋上で拿捕されてそれで船員が十二名、それから便乗者が二名いたと思います。これは直ちにというわけじゃなかったでしょうが、若干の時間を経て船員とも釈放された、こういうのがございますね。これについて私の知り得たところでは農林三百十七区の六、中国の沖で、しかも李ラインの外で漁労をやって博多港に帰途、済州島の南のほうの農林二百六十六区の六で韓国の巡視艇に停止をされ、そこで拿捕されようとした、こういう事件なんですね。この点は間違いないでしょうか。
  194. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 先生御指摘の船は以西底びきでございまして、いわゆる東海、黄海で操業している分でございます。そこから帰航中に拿捕された、済州島の南の李ラインの付近で拿捕された、こういうふうに承知いたしております。なおこちらから厳重抗議いたしまして無害通行権というようなことを主張して抗議いたしました結果釈放された、こういうふうに承知いたしております。
  195. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 政府の抗議によって保釈をしたという御答弁がありました。非常に適宜な措置だと私は思うのです。ところが、もしこういうことがたび重なりますと、長官も御承知のように、船員の諸君も相当最近は激高していることがあるわけです。したがって昨年の三月、こういう事態が起きたならば、船員諸君が自分の船みずから体当たりしていこう、こういうことを決議している。こういう事件がもしあると、思わぬ事態が発生する、私はそういうふうに思うのです。ですからこういう点については、特に格段の政府の抗議というのが必要じゃないか、こういうふうに思いますが、大臣からこの点を承っておきたいと思います。
  196. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) そのとおりでございます。政府といたしましては、厳重抗議いたしまして、できた事態を除去し、またこれからそういう事態を起こさせないようにいたしたいと思います。また日本の巡視艇等を増強いたしまして、そういう事態か起こらないようになお一そうの注意をしてまいっておる次第でございます。
  197. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 新聞で承知しますところによると、漁業の問題について韓国と政府当局と打ち合せ等があっているということも聞いております。一方ではそういう話し合いがあっておって、一方において不法な拿捕事件あるいは不法な威赫事件、こういうものが起こるということは、まことに遺憾だと私は思うのです。そういう意味において、政府としては厳重にこういうことのないように抗議を強くやっていただきたい、こういうように希望いたします。
  198. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) この間じゅう漁業関係の折衝をいたしておりましたが、その後何ら向こうから話もございませんので、漁業交渉は中断という形で現在おります。しかし、もしもそういう交渉が再開されるような場合には、私はそういう拿捕をやるようでは、これ以上続けないぞというようなことを、言うつもりでございます。それは別といたしまして、政府といたしましては、現地のこういう事態については、厳重に抗議を申し込んでおる次第でございます。
  199. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 会談があろうとなかろうと、この問題はこの問題として別個に考えなければならない問題だと思います。船員等は、政府が日韓会談をやるので、それに気がねして弱腰でやるんじゃないかという考え方さえも持っている者もあるのです。それはそれといたしまして、保釈をいたしましたから、これについてはあとを申しませんけれども、いま本日拿捕された問題については、どういうようになされたのですか、どういうふうに今後なされるのですか。
  200. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 本日午後一時ごろだと思いますが、拿捕されたという入電があったわけでございます。これもやはり以西底びきの船でございますが、先般の住吉丸と同じようにやはり東海、黄海で底びきをやりましてその帰航中だと思われますし、そういうこともございまして、直ちに外務省を通じて抗議して釈放方を要求い  たしております。
  201. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは、その問題はおきまして先にいきたいと思います。ここ十年ばかりの間に沿岸漁業は最も深刻な問題の一つであると私は思うのですが、これは私が申し上げるまでもなくすでにたくさんの人から御質問もあり、そういう意見が出ているわけです。現実もそうなんです。しかし、それはなお強くなる傾向にある、こう思うのです。特に経済の高度成長の過程では、その格差というものはますます開いておる。だから農林漁業基本問題等の調査会が設置されて、その中で漁業の問題が、特に沿洋漁業について集中された。こう思っておりますが、そのときに漁業の基本問題と基本対策という答申を政府提出したことも私は承知いたしております。そういう中からこの前論議いたしまして通過しました沿岸漁業振興法案というものが立案されて、現実に政府の対策として進行しておると思うのですが、その漁業の基本問題と基本対策という答申の中身というものが忠実に生かされて、現在政府の対策としてどのように進んでおるか、こういうことをお聞きしたいのです。非常にばく然としておりますから、これをもう少しこまかに聞くわけですが、まず第一に聞きたいことは、沼津漁業の生産者の中でも、浅海養殖のみは生産量がかなり増大しつつある。これは統計で明らかであります。これもわかります。それから漁船漁業はほとんど横ばいだと、こういうふうに思うのです。定置網の漁業は、これは減少の一途をたどっておる、こういうふうに見るのですが、沿岸漁家の所得の上昇が今日見てみると、魚価の上昇に依存しておるというようなふうに私は見るわけです。ところが、これは決して正常な安定でないと思うのですが、特に沿振法の審議の際に、わが党の渡辺委員から強く要求され、意見を出されましたこの価格政策についてどういうことを今日までやられてきたのか、この点ひとつまずお聞きをしておきたい。
  202. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 昨年沿振法を御審議、成立をいただいたわけでございます。御指摘のように、沿岸漁業の生産は停滞的といいますか、三十七年の漁業動向で御説明いたしたと思いますが、多少の上昇をいたしておりますが、御指摘のように、魚価が強含みであるということもございまして、沿岸漁家の漁家所得といいますか、漁業所得というものは上昇の傾向をたどっております。しかし、やはり沿岸の漁業につきましては、資源の問題、あるいはこれをとります漁獲努力の問題等もございまして、こういう面の対策をとるということも当然必要でございまして、そういう面から沿振法にも盛られておりますような沿岸漁業の構造改善対策というものを強化し、また、その中におきましても、特に大型漁礁その他の漁場の開発というものをはかりまして、資源の維持、増殖をはかる、こういう道を講じ、さらに沿岸漁家の装備の近代化をはかって、そういうことで生産性向上をはかって漁家所得増大をはかる、そういう措置をとっております。また、そういう面に即応いたしまして、漁船漁業におきましても、その近代化をはかるという道を講ずるためにその資金確保をはかる、またそういう大型化の傾向をたどる漁船につきましても、その生産基地として、あるいは流通の、水揚げをします消費者経済市場につながる結着点としての漁港の整備をはかるということをやっております。そういう基本的な対策をとりつつ、魚価の安定ということにつきましては、特に多獲性の漁業、サンマといったようなものにつきまして、あるいは冷凍イカその他の多獲性のものについて魚価安定の対策を講ずるわけでございますが、サンマについては生産調整ということと、魚価安定基金からする魚価の安定、こういう道をとっております。その他のアジ、サバなりイカといったようなものにつきましては、生産調整を自発的にやっている、こういうふうなことをやっております。なお、価格の維持という面もありまして、産地におきまする産地冷蔵庫の助成ということをやりまして、とれました魚をそこに貯蔵をして、価格の強調のときに市場に出す、こういった点も考えております。また流通関係におきまする改善というようなものもとりまして、価格の安定ということに資しております。
  203. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 白書の報告を見てまいりますと、魚価の騰貴というのがもっぱら昭和三十六年以降の漁家の所得の上昇をささえておるというように見られるわけなんですが、しかしその内容は漁船漁家にしてようやく一世帯当たり都市の労働者の世帯に比べると八二%程度じゃないか、こういうように思うのです。ところが、いまお話しのように、対策をいろいろやっていられると思いますが、しかしまだ引き続いて魚価の上昇に期待しているという向きも私はあるんじゃないか、そういう考え方が残っているんじゃないか、こういうように思うのですが、しかしその漁家の諸君は、この前いろいろ論議になりましたように、ほとんど兼業を、やっておるというのが大多数である。したがってそういう兼業所得を含めての話であるのか、一本立ちで漁家が安定をしておるというのであるのか、そういうところが私は明確でないと、こういうように思うのですが、長官はどういうようにお考えでしょうか。
  204. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 沿岸漁家のうちには、先生御指摘のように兼業面に依存するものが非常に多いわけでございます。なお漁船漁家等につきましては三十七年を中心にいたします漁業動向でも御報告申し上げましたように、三トンないし五トン総トンという漁船階層に大型化しつつありまして、それは非常に装備を近代化していく、そして自家労働をもって完全燃焼をするような操業をやる、そして大型化いたしますれば、いままでは操業区域が非常に近距離であったのが、操業区域も伸び、また操業日数も延びて終年操業に近くなる、こういうようなことでございます。でわれわれといたしましても、沿岸漁家の一番問題になりますのは、漁船漁家が中心になっておりますので、その問題に取り組んでおるわけでございますが、今後のやはり構造改善等の方向といたしましても、そういった自家労働を完全燃焼して、終年操業をやれるような態勢に持っていくというような方向で漁船漁家の指導をやるわけでございますが、また一方、そういう漁船漁家のみならず、その自然的条件が浅海養殖その他の養殖事業の適している、そして経済的にもそういった開発の可能性が非常にあるといったようなところにつきましては、増養殖の奨励もいたしまして、増養殖と漁船漁業の二つを兼ねて漁家所得の、漁業所得増大をはかる、こういうような指導をいたしております。それは先ほど申しました沿岸漁業の構造改善の中心の方向でございますが、そういった点で、われわれといたしましても、専業といいますか、漁業によって成り立つ経営を指導していく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  205. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 無動力漁家から小型動力船、そういうふうに移っていく、そして自家労働あるいは省力でもって経営を安定させていくという点については異議はありません。そうなるべきたと思うのですが、しかしこの前も明確にならなかったことは、養殖漁家あるいは小型動力船漁家を育成していくということ、これはそれでそれなりの意味があると思いますが、しかし構造改善構造改善とおっしゃるのは、ちょうど農業構造改善と同じように、そういうことをやっていて漁業という問題が片づくというように思うことは、これは私は悲壮な考えだと思うのです。もっと根は深いと思うのです。と申しますのは、養殖漁家や小型動力船漁家の中でも、特定の階層のみが自主的になっていくんであって、零細の者はほとんど問題にならなくなるんじゃないか、こう私は思うのです。それはこの間も、河野大臣が瀬戸内海を御視察になった船中で、はしなくも沿岸漁業についてお話になったようです。それは新聞に出ておりまして承知をしておりますが、一本釣りなんていうのは、これはスポーツだというわけですね。この前もスポーツという問題もいろいろ出てまいりました。レジャーの案内をしたらどうだというようないろいろな意見が出たんですが、河野建設大臣も一体釣りを行なうのは沿岸漁業としては問題でもないし、これはスポーツとしてなら一応考えられる、こういうような発言をされたんですが、しかし現実はその零細ではあるが、一本釣りをやってその日を暮らしているという漁民は非常に数多いわけです。ところが、構造改善事業と称される沿岸漁業振興法で、さてどれだけの漁民が救われるかということになると、非常にあやしいものだと私は思うのです。で私はこの前からしろうとながらいろいろな御意見を聞いておりましたが、しかし、わが国の沿岸漁業のあるべき姿というもの、こういう具体的な経営のイメージというものを描き出すのには、まことに貧弱ではないかというように思ったわけですが、長官はわが国の沿岸漁業のあるべき姿というものをどういうようにお考えでしょうか、ひとつ承っておきたいと思います。
  206. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 沿岸漁業等振興法に基づきまして諸般の対策を講じておるわけでもございます。それは資源の維持、培養その他中小な沿岸漁家に対しまする資金の導入等によりまする装備近代化、こういったことでいろんな対策を講じておるわけでございますが、先ほど申しますように、いろんな対策を講ずる中でも、この沿岸漁業の構造改善というものを中心にして振興対策を盛っていきたい、こういう考えで進めておるわけでございます。それにつきましては、全国を四十二海区に分けまして、まあ一県一海区で――例外はありますけれども、一県一海区を原則として、二年間十分自然条件、経済条件といった全般にわたる調査をいたしまして、そしてその地域に適しました沿岸漁家の進むべき方向というものを十分把握し、それに向かって資金投下なり、あるいは低利長期資金を導入するということでその実現をはかる、こういうことを強力に進めておるわけでございます。そういうことで、全国一本として沿岸漁業のあるべき姿ということは、なかなか一口に申し上げかねるかと存じますが、地区別に、海区別に、その地区においては漁船漁業を中心にして伸びていく、あるいはその海区においては漁船漁業と増養殖業を兼ね合わせて伸びていく、この地域は主として増養殖で伸びていく、まあそういったいろんな姿が出てくると思いますが、それをやはり漁家のその事業計画におきまする目標としての所得増大、他の産業と大体均衡するような形に衣で持っていく、そういう目標のもとに漁場造成なり改良なり、あるいは増養殖にかかる施設の導入なり、漁船なり、漁網に対する資金の導入、そういった各般の施策を講じたい、こういったことを進めておるわけでございます。
  207. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いずれにいたしましても、この沿岸漁業問題の現段階では、何か思考錯誤というものを繰り返しているような気がするわけです。こう言っちゃ何ですけれども、今度の漁災法にしても、何かモデル――何かこう一つやってみよう、これでうまくいったならば何とかしょうというような、何かこうモデル的なものを打ち出して、何かやってみたら、そのあとは何とかなるだろうというような、何かそういう感じがしてならないのですが、いまのお話を聞いても、沿岸漁業のあり方というもののことを聞いても、何かぼんやりして、これというつかみどころがないような気がしてなりませんが、これはもう議論していると果てしがないと思いますから、これはやめたいと思いますが、この前、沿振法を議論していた場合に、その法案の中に、零細漁民で職を離れていく者というのは、離村して転業したい者が出てくるだろう、そういう者に対しては、職業訓練や職業紹介の事業を充実していくというような項目があったわけです。それをいろいろお尋ねしたが、どうも的確なものをつかみ得なかったわけですが、実際に沿振法が通過いたしまして、当時和田政府委員も説明されたのには、もう労働省やその他の関係の省とも話がついているのだ、金のほうも話がついているのだから、この法律が通りさえすれば、着々とやります。こういう御答弁があったのですが、どうでしょう、どのくらいうまくいっているか、ひとつ結果を御通知願いたいと思います。
  208. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 経済の高度発展ということに伴いまして、一次産業から二次、三次の産業へ人口移動が行なわれるわけでございますが、これは農業においても同じような傾向をたどっておると思います。先般御報告申し上げました漁業動向におきましても、漁村よりの漁業従事者の流出というのが逐年ふえているわけでございます。そういうことで、この中には中学校あるいは高等学校卒業といったような若年労働者といいますか、青年等もあるわけでございますし、また一家全部が漁業をやめてほかの産業に移る、こういう場合もあるわけでございます。先般お答え申し上げましたように、そういった場合のあっせんにつきましては、労働省の職業の紹介機構を通じまして、そのあっせんをやるということをたてまえにいたしております。先般申し上げましたように、三十九年度はさらにその機構を拡充されております。また漁村とか、農山村の僻陬の地にはそういった出向の、特別にそういうあっせんをする者を派してそういう希望者の転職のあっせんにつとめる、こういうふうになっておりまして、そういう面からの転業の指導というものは進められているわけでございます。またことしの分につきまして、そういう面を通じました分、特に漁業といったような面でその分類がなされておりませんので、十分把握いたしておりませんが、今後それは先般お答え申し上げましたように、十分その中の分類も正確にして、そういった動向は把握しなくちゃならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。なお、その際職業の訓練等も行なわれるわけでございまして、そういうことについては、今後とも労働省とも協議いたしまして支障のないようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  209. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 ぼくはどうもその辺がいつまでたっても、いつ聞いても同じ答えなんで、こちらのほうも参ってしまっているといえばおかしいのですけれども、長官も御存じのとおり、いま都市における労働者は足りないのですよ。その足りない労働者というのは、若年層なんですね。おっしゃるように、漁村においても農村においても中学を卒業した、あるいは高等学校を出てすぐに職業につくというような若年層というのは、もうすでに都会に就職していると、こう私は思うのです。長官もそうだろうと私は思う。したがって、漁村に残っておるという者は、困っている層というのは、中高年令層だと、この前も何回も何回もお尋ねをしたわけです。その中高年令層を一体、どういうように離村をさせ、あるいは離職させて安定する職業につかせるかという問題なんです。そういうものがここにうたわれておらなければ、この前の沿岸漁業振興法という中にある職業訓練をやったり、あるいは再就職をやるという、そういうことを充実するといっても何の役にも立たぬ、こう思うのです。ところが、いま聞くと、まだ把握されないと、いつも把握されない、把握されないとおっしゃるのですけれども、もうしかし、ここらでかちんとしたものがなければ、次の問題には移れないのじゃないですか、いかがでしょう、その点。
  210. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のとおりでございます。その点につきましては、先般もお答え申し上げましたように、その分類の内容がただ都市別になっておりまして、その中の分類が十分明確になっておりません。漁業から転出した、あるいは農業から転出した、その他の産業から転出したというものが明確じゃないわけでございまして、そういう面については、十分統計資料の整備をはかっていかなくちゃならぬと思いますし、また、そういうことをやらなければ、先化の御指摘のような対策は十分にとれないだろうと思います。そういう点は、今後われわれ努力するということで御了承願いたいと思いますが、なお、職業あっせんあるいは転業に伴う滞留といった面については、十分漁村においてもそれに均てんし縛る機会は十分あるわけでありますが、まだ十分その数はつかめないということでございます。  なお御指摘のように、中岡年齢届がどうしても他産業には転出しにくい。これは御指摘のとおりでございます。そういう点については、また問題のございますように考えていかなければならぬ、こういうことになろうかと思いますが、なお漁業の内部におきましても、最近におきまする漁船の性能が非常に進んでいる。非常にディーゼル化して取り扱いも簡易になってきている。そういったことで、漁船の七割程度といいますか、動力漁船の七割程度はディーゼル化しています。最近非常に小型のディーゼル化が進んで取り扱いも簡易であるということと伴いまして、老年までもやはり漁業に従事し得ることができるように、技術なりあるいは漁船の能力等も進歩してきている、こういう点もあろうかと思います。そういう残り得る道なり、あるいは中高年齢まで漁業にも従事し得るというような技術発展も、今後やっていかなければならぬと思っております。  なお、最近におきます。先ほど御指摘のありましたように、一本釣りというようなものは、やはり相当まだ沿岸漁業の中にはあるわけでありますが、そういうものにつきましても、やはり漁船がディーゼル化し、あるいは多少でも大型化していくという道を指導いたしますれば、さらに相当の区域まで出られる。あるいははえなわとか、あるいはその他の漁法も取り入れられる、こういうことになりましょうし、やはり最近におきますいろいろな御指摘のようなことでございますが、老年の漁業者等は、最近のレジャー・ブームということに乗りまして、いわゆる有料漁業といいますか、そういう面でも働く道が開かれている。これは兵庫県あたりでは、フィッシング・センターというものを県営でつくって、そこで老年の漁業者が都市の入場者の案内をやるといったような働き場所を得ている、こういうようなこともあるわけであります。
  211. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大体同じようなことを質問をしておるけれども、同じような答えをいつも得ているわけで、どうも問答しているようなものですが、しかし、私は思いますのに、農業においても農業基本法などを見ると、零細な農家の諸君は、やはり離村をして労働者になる、つまり離職をするというようなことがいろいろ述べてある。沿岸漁業振興法を見ても、そういうことが書いてあるわけです。ですからその具体的な施策が行なわれていないというようにしかいまの答えからはとれないわけです。だから、せっかくそういうものをうたう以上は、そういうものを実際にやってもらわないと、法律はできたけれども、何ら国民利益にならなかったということになると私は思う。と申しますのは、ここで私はこの前の審議の会議録を持ってまいっておりますが、いまと同じことを聞いているようなものなんです。ですから、もっとあたたかい施策を十分やってもらいたい。当時私はこう言うことを言いました。炭鉱の離職者は、これは離職をするときには離職手当をもらって、あるいは訓練をするときには訓練手当をもらった、だから今度ほかの地域に就職をする場合は、あるいは住宅のための貸し付け金もするというように、かなり離職しやすいように、あるいはまた離職しても安定に近い方法がとられている。ところが、この漁村に対してはそういうことをうたっておるけれども、具体的なものがないから、もっと突っ込んでお聞きをしたところが、この点についてはこの法律が通ったならば、そういうことも十分お話し済みですというようなことなんです。そうしたら、相当な人が漁村を離れて職についているのじゃないか、あるいは訓練を受けているのじゃないか、こういうように思うから重ねてお尋ねをしておる、こういうわけなんです。まだおつかみになっておらぬわけですか。どのくらいそういうのが出ているのか。どうでしょう、その点。
  212. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 残念ながら、まだ本年につきまして、われわれのお答え申し上げたようなそういう点を把握してやっていく、こういうことでございますけれども、ことしにつきましてはまだそういう点把握いたしておりません。
  213. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは農林大臣にひとつぜひ私は希望を申し上げておきたいと思います。どうも農民や漁民に対しては少しどうも冷淡じゃないですか。どうも冷淡というと言い過ぎかもしれませんけれども、まだそういう訓練その他についての把握もしていないということは、これは農民にあたたかい手を差し伸べると口では言いながら、一実際にあたたかい手など伸ばしていないのではないか、成り行きまかせにしているのじゃないかというような気がするのですが、もっといま一番頼りたいという、何にでもいいからつかんで上がりたいというのは、私は農民と漁民だと思うのですが、そういう点についてもっと大臣、口だけではなくて、あたたかい施薬をやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  214. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私どもはお話しのように農民、漁民については、十分あたたかい施策をしなくちゃならぬと、こう考えております。いまの離職の問題でございますが、実はジレンマにおちいっているわけです。御承知のように、農業等におきましても、農業者としての、何といいますか、確保していこうという強い要請がある、ことに社会党などからはそれが非常に多いわけです。また一方においては、出る者は出て行っていいのじゃないか、出る者について労働対策、あるいはいまのような離職の場合に、いろいろの措置をとったらいいじゃないか、こういう二つのジレンマみたいなものを、右に行く馬と左に行く馬とのたずなをとっていくというかっこうになっているのが現状だと思います。私は端的に言いますと、少ない労働力で、農業でも漁業でもやっていけるような基盤をつくっていかなくては、現状に即しないと思いますし、またそうしたいと思うのでございます。ございますから、出るという、いまのような漁家等で離職して、新しい産業につきたい、こういう者については、私はこれは労働省とも話したのですが、労働訓練ばかりではなくて、いまの石炭の離職手当のようなものを出していくべきではないかというふうに私は考えています。しかし、何しろ数が非常に多いものですから、そういう点でいろいろまだそこまで実現はいたしませんけれども、まあそういうこともひとつ進めていかなくちゃならぬ問題ではないかと私は考えています。まあ根本的に御希望のあたたかい手をのべるべきじゃないかということでざごいますが、その点につきましては、私も十分、私としてはことに農林漁業、林野関係等につきましては強く考えている次第でございます。思うように満足といいますか、御期待に沿わない点はあるかもしれませんが、そういう方向で進むつもりで鋭意努力しておる次第でございます。
  215. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私は大臣のおっしゃるように、ジレンマということについて、大臣考えておられるジレンマと、私のジレンマというのと考え方が違うと思うのですが、そう思うなら、もういさぎよく農業基本法というものを根本的に考え直す、沿岸漁業振興法もやっぱり考え直さなければならぬのじゃないか、こういうように私は私なりにジレンマを解釈するわけです。私・は大臣のジレンマを理解することが、大臣考えていられるようなジレンマをそのとおりに理解することは私はできないかもしれませんか、私はそういうように思うのです。経済政策という、日本の経済政策の全般にわたっての考え方を根本的に考え直していく、そういう必要があるのじゃないかと私は思います。と申しますのは、これは寓話にありますようにカメをウサギが追い越そうといったって、これはなかなか追い越せるものじゃございません。漁業も農業も、ああいう独占企業から見ると全くカメよりもおそいのだと思う。そのウサギがカメを追い越すのは簡単ですけれども、カメがウサギを追い越すなんていうのは、とてもたいへんなことです。だからウサギが昼寝をするか、あるいはウサギが逆に走ってくるかしなければ、一緒にもならぬしどうにもならぬと、こういうことになるわけです。だからこういう寓話をそのとおりに考えて、だんだんこのままにしておくと、カメとウサギとの差というものは際限なく開いていくという感じが起こるわけです。どうでしょう、大臣、もうそういう全般的な問題について考え直す時期がきたのじゃないかというように、私はそう思うのですけれども、いかがでしょうか。
  216. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私も全般的に考えなくちゃならぬと思いますが、農業基本法や沿岸漁業振興法を改めなくちゃならぬという考えではごぜいません。いまカメとウサギの話が出ましたが、私が言っているジレンマというのは、お話の農業基本法なら農業基本法で自立経営農家をやるということだけでやっているのじゃないか、こう言いますけれども、私は自立経営というはかりでなく、やはり兼業農家なら兼業農家というものを認めて、兼業農家との共同化というようなことによって自立経営と同じような形にもっていくということならば、私は決して農業基本法の根本精神に背馳しているものではない、こう思うのでございますが、根本はこういうところにあると思うのです。いわゆる農本主義、企業的な合理主義で割り切るか、あるいは農本主義的なものを幾ぶん加えていくか、こういうことでございますが、どうも御議論を聞いていますと、どうも私の感覚では、どういうふうに考えられておるのか。まあ社会党のほうでは、いまの現状のままで、ウサギがカメに負ける、この負けるカメを現状のままでウサギに追いつかせる。それについては汽車にでも乗せて、速力を増さしてやれ、こういう考え方か、それともやはりどうも差というものはあるのだ、差というものはあるのだから、農業振興でも漁業振興でも、外へ出るならば出る者はある程度出して、そうしてそのあとはあとでやっていくような態勢を整えるか、そうでなくて、全部をいまのままにしておいて、そうしてその速力を増させてウサギに対抗できるようにさせるというような考え方なのか、どうも私はこの席で聞いていますと、やはり日本の零細的な農漁業というものを現状のままで維持して、そうして速力を増させる方法いかんというようなことで、どうも詰め寄られているような気がするのでございますけれども、それが私の受け方が違っておるということならば、また取り消しますけれども、しかし私は現実の問題としてある程度これは出るものは出る、といってしいて首切りということじゃございません。どうもすぐに出るというと首切りとこうやられるものですが、そういうことでなくして、やっぱりこの農業というものあるいは漁業というものの体質改善の時期に来ていると思いますが、それをどういうふうな方法でやるか、現状のままでこれを維持していくというのか、その現状が相当変わっていく段階に応じてこれをよくしていくかという、こういうところに問題点があろうと思います。たいへんよけいなことをしゃべり過ぎましたが、そういう受け方も一部しておるということだけを申し上げます。
  217. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 もう時間も相当過ぎましたので、あとありますけれども、この次に残します。
  218. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  219. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記始めて。  ここでしばらく休憩し、今後の、取り運びについては、放送をもってお知らせいたしますから御了承願います。     午後七時八分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      ―――――・―――――