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1964-06-11 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十一日(木曜日)    午前十一時九分開会   ——————————   委員の異動  六月十日   辞任      補欠選任    温水 三郎君  沢田 一精君    小宮市太郎君  大和 与一君  六月十一日   辞任      補欠選任    沢田 一精君  温水 三郎君   ——————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            森 八三一君            矢山 有作君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            北口 龍徳君            櫻井 志郎君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大河原一次君            北村  暢君            牛田  寛君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農政局長 昌谷  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   ——————————   本日の会議に付した案件 ○農林漁業団体職員共済組合法の一部  を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付)    ——————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案議題といたします。本法律案は、衆議院修正され、去る五月二十六日に本院に送付されたものでありますので、まず、その修正点について、便宜政府当局から説明を聴取することにいたします。
  3. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 衆議院におきまして修正せられました内容の御説明をいたしますのに、その修正案趣旨説明が行なわれましたこの文書をお手元に差し上げておりますので、これを読み上げまして、それから修正点について御説明申し上げるのが便宜かと思いますので、そうさせていただきたいと思います。  ただいま議題となりました自民、社会、民社三党共同提案による農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案者を代表してその趣旨及び内容を御説明申し上げます。  農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案については、今日まで慎重審議を進めてまいったのでありますが、最近に至り、厚生年金制度をはじめ各種共済組合制度における給付内容等改正が具体化し、その改正案が本国会に提出されました。したがって、この際、農林漁業団体職員年金制度給付内容についても厚生年金制度給付内容均衡をはかるとともに、各種共済組合制度における給付内容の統一をはかる必要が生じてまいりました。そこで、このような情勢に対処するためその取り扱いを鋭意検討してまいったのでありますが、ようやく三党間において修正事項について協議が相ととのいましたので、ここに本修正案を提出した次第であります。以下、修正点概要について御説明申し上げます。  修正の第一点は、標準給与月額の上限を七万五千円から十一万円に引き上げ、これに応じて標準給与等級を二十八等級から三十五等級に改めたことであります。改正法案におきましては五万二千円を七万五千円に引きあげることとしておりましたが、共済組合制度における給付内容をできるだけ統一するという趣旨から、国家公務員共済組合制度における最高限度に合わせて十一万円まで引き上げることとした次第であります。  修正の第二点は、退職年金及び遺族年金最高限度額についてであります。改正法案におきましては、退職年金及び遺族年金最高限度額平均標準給与年額の百分の六十とされておりますが、この際、国家公務員共済組合制度におけるそれに合わせて、百分の七十に改めることといたしております。  修正の第三点は、国庫補助対象となる給付費についてであります。従来本制度厚生年金制度から独立した際に生じた整理資源率に見合った部分給付費については、国庫補助対象から除外されておりましたが、この際、これを国庫補助対象とすることといたしております。  また、五十五才以上六十才未満の者に支給する退職年金額相当給付費については、従来当分の間に限り国庫補助対象とすることとされていたのでありますが、この際、当分の間という期限の制限を取り除くことといたしております。  修正の第四点は、本制度に通算することとされた厚生年金保険期間にかかわる給付額調整措置を廃止したことであります。従来、本制度厚生年金制度から独立した際に通算することとした厚生年金保険期間に見合う部分給付額については、原則として、二割カット調整を行なうこととしてまいったのでありますが、この際、給付内容の改善をはかるため、これを廃止することといたした次第であります。  以上が修正案趣旨及びその内容概要であります。何とぞ、会員の御賛同を得られんことをお願い申し上げます。  以上が衆議院における修正趣旨説明でございます。  この修正の第一点から第四点までの個所について、若干補足して御説明申し上げます。  修正の第一点は、ここにも書いて。ございますように、現行農林団体標準給与月額最高が五万二千円でございます。最低が三千円でございます。それを、政府の提出いたしました改正案におきましては最低六千円、最高七万五千円ということで、御審議お願いいたしてまいってきたわけでございます。この最低最高額は、農林年金対象組合員給与現実分布から見て、まずまずのところであろうというふうに理解をして、原案としてお出ししたわけでございますが、他の類似の制度におきましては、それぞれが違っております。ここにあります十一万円というのが、従来の各種年金制度の中での最高額を定めた国家公務員の場合の限度でございます。私学は、従来は七万五千円、私ども年金は、私学足並みをそろえるところまでで改正をしておったのですが、各種年金制度で非常に意味のある、非常に特殊性があって、どうしても足並みのそろわないものは別といたしまして、まあそろえればそろえて別に差しつかえない事柄については、なるべくこの際そろえようというお考えがありますので、それが、この最高を十一万円に引き上げるということになって実現した次第であろうかと思います。おそらく私学共済制度についても、今後改正機会に、そういう手直しが行なわれてまいるものと期待をいたしております。  それから修正の第二点は、退職年金と、一時年金最高限度額でございます。御承知のように、現在の農林漁業団体年金につきましては、最低額がございません。と同時に、最低保障額もございません。出っぱなしでございます。それを、政府お願いいたしました改正案におきましては、最低保障額を設け、三万五千円程度だったかと思いますが、従来の国家公務員なり、私学最低保障額と見合う同額の最低保障額を新たに設けることといたし、その最低保障額を設けることと関連をいたしまして、最高額を百分の六十で頭打ちということで、原案ができております。この百分の六十はやはり私学最高額歩調をとったものであります。そこで、百分の七十と申しますのは、やはり国家公務員の場合の最高限度額、これも先ほどの標準給与最高額と同趣旨で、六十といい七十といい、あまり当面すぐには影響のない最高限度額ではございますが、あえてそう区別して、最高額差等を設けておくだけの積極的な理由も乏しいのではないかというのが、百分の七十に統一しようという御趣旨であろうかと思います。  最低保障額につきましては、政府が今国会お願いをいたしております厚生年金保険法の一部改正案におきまして、その附則におきまして、厚生年金定額給付部分が引き上げられますことに見合いまして、各種年金における現行最低保障額三万五千五百二十円、現在の厚生年金給付水準に見合った最低保障額としてお願いをいたしておりました。この額を、八万四千円に改めるということが、政府厚年法改正案附則においてすでに提案をせられております。そこで、厚年法改正法の成立と軌を同じくいたしまして、最低保障額のほうは、八万四千円まで引き上げられるということを予定をしておりますので、ここでは、その点の手当てはそちらに譲ってあるものというふうに理解をいたしております。  それから修正の第三点でございますが、これは農林年金に固有の問題として、厚生年金から三十四年に分かれますときに、いわゆる積み不足と申しますか、術語的に申しますと、整理資源率というものがあったわけであります。つまり過去にさかのぼって給付を改める、あるいは今後について給付がよくなる、そのよくなる給付に見合って、過去に積み立ててある額が不足する、それを将来、その不足部分をよけいに取って補っていくという趣旨のものでありますが、その部分が、料率的に申しますと一四・何がしあったわけであります。これを制度発足の際、何と申しますか、お互いにみずからの負担において給付内容をよくしようというものであるから、その部分についての国庫補助金を要求することは遠慮をしてほしいという趣旨議論がありまして、国庫補助対象部分としてその部分を除いたわけでございます。その点は、先般資料説明お話を申し上げたとおりでございますが、このことは、厚生年金に残っておれば国庫負担がふえないのに、厚生年金から独立して、よりよい給付をするために、よけいな負担国庫にかけるということを差し控えるという趣旨にも理解ができるわけであります。この際、厚年のほうの基本的給付水準も是正をされることでもありますので、こういった何と申しますか、特殊な扱いは穏当でなかろうという御趣旨であります。このことは、現行法が成立する過程におきましても、国会において種々御論議のあったところであります。その後改められるに至っておりませんでしたことを、厚年給付水準の引き上げに関連をいたしまして、やっとこの際改むべしということが、議論としても通るようになったということであろうかと思います。  それから、また書きで書いてございます、五十五才から六十才の者に支給する年金に対応する部分国庫補助対象からはずすという点は、現在本則におきましては、この部分国庫補助対象からはずすと書いてございます。附則におきまして、当分の間、本則にかかわらず国庫補助対象にすると書いてございます。これもやはり当時の厚年給付開始年令が六十才でありましたのに対して、独立の年金制度を仕組みますときに、五十五才以上を給付対象として、給付開始年令を引き下げたわけであります。その引き下げをはかったことを、先ほどの整理資源率と同じような趣旨で、本来そういうものは自まかないでやるべきものという論理で、いまのような一回本則ではずして、附則補助対象にするという手の込んだことが講じられておったものと思います。その点も、先ほどの点と同じような趣旨で、この際そういうことをやめて、正面から国庫補助対象として取り上げるということに相なったのであります。  それから第四番目は、やはり厚生年金から離れましたときに、厚生年金期間についての給付は、原則はもちろん現行農林漁業団体共済組合給付ベースでありますけれども、その整理資源率をばく大にしないため、また給付均衡を維持するためという理由で、厚生年金期間にかかる部分給付については、現行法で算定されます給付額から、給付額の二割カットをしたものが給付されるということが法律に書いてございます。なおそのほかに、法律では、当時の厚年対象としております最高給与一万八千円を上回る給与を持っておりますものについては、その上回る比例に応じてカット率を加重するということになっております。そのことも、現在の厚年が将来にわたっております場合には、一応のそういう制度の存在の理由が納得できるわけでございますが、厚生年金保険法が、今次考えられますような改正が行なわれるといたしますれば、その点の均衡ということを考えることが、本来あまり重要な意味を持たなくなってまいる、また整理資源率というものの考え方からしても、その部分を特にカットして給付することが必ずしも適当でないので、この点はカットをせずに、旧法ベース満額厚年期間についても支給をするということに、今回修正で取りきめられたという次第でございます。  以上が、衆議院各派共同修正点内容でございますが、その修正の行なわれます際、農林大臣から、衆議院農林水産委員会におきまして、御修正の御趣旨を尊重し、院議を尊重して、政府としては善処してまいりたいという趣旨の、政府側の態度の表明をいたしてまいった次第でございます。  以上が修正経過の御説明でございます。
  4. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) これより本法律案について質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は、御発言を願います。
  5. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林漁業団体は、わが国農林漁業はもとより、国民経済全体の中で果たす役割りはきわめて大きなものであることはいまさら申すまでもないことであります。それにもかかわらず、多くの農林漁業団体は、その劣弱な経営条件の中にあって、そこに働く職員待遇は、今日まできわめて恵まれない中に犠牲を強いられてきておる、そのために、将来に対する生活不安の見通しから、他の職域に転出するということが逐年増加の傾向をたどってまいりまして、農林漁業団体は有為な人材を長く組織陣営内に確保しておくということが至難な実態であります。このこともまた農林漁業団体機能を十分発揮することに少なからざる障害をもたらしておる、これもまた、いなむことのできない現実であります。しかし、一方、目を海外に向けますと、その国の農林漁業政策のにない手こそは農林漁業団体にありという、それぞれの国の基本的な政策のもとに、その身分保障なり、待遇なりというものは、国家公務員よりもむしろ優位に置く措置を講じておる国がかなり多く兄受けられることも事実であります。特に北欧のスウェーデンの例をとりますと、スウェーデンの場合においては、スウェーデンの国の農業というものは、スウェーデン農業団体運動と表裏一体の立場に立っておるというぐらいに、農業団体役職員立場を優遇し、またその果たす機能を高く評価しておる、こういう事実であります。わが国においては、農林漁業団体職員が、みずからの組織をみずからの手で守るというために、その身分の安定、将来に対する保障ということをかちとるために、さかのぼれば昭和二十六年から、最近においては三十一年から、いわゆる農林年金法の制定という運動を展開してきたことも、経過の中にあるわけであります。毎年全国農協役職員連盟の大会その他で決議をあげ、その他各般の運動国会に対してなされ、三十三年の四月に農林年金法が制定されて、翌三十四年一月一日に制度の実施を見たのでありますけれども、この法案国会審議されておる当時、国家公務員共済組合法が全面的に改正をして、給付水準公共企業体等職員共済組合法並みに大幅に引き上げることが審議中であった、そういう状態の中で、改正前の国家公務員共済組合法を骨子として制定された経過を考えますと、今回これらの動きの中で、国家公務員共済組合法並みに、農林年金法改正するというのは、むしろおそきに失した感をいなめないのであります。しかしながら、おそいといっても、その間におけるいろいろな、また関係者努力政府の配慮によって、政府原案衆議院段階で、ただいま政府委員から説明があったように、特に四点にしぼって、三党でこれが共同修正がなされたということは、われわれとしても、非常にその内容について高く評価するにやぶさかではございません。しかしながら、この修正された内容全体をふまえた上で、なおかつ衆議院段階で、十分審議尽くされなかった幾多の問題点が残されておることも事実であります。したがって、私はこれから農林大臣を中心として、約九項目にわたって、衆議院審議したこととの重複を避けつつ、提案された改正案の中における問題点を、審議を通じて明らかにしていきたいと思うのであります。  そこで、まず第一に、修正案趣旨説明の第四点についてお伺いをいたしたいのであります。これは法律に言うことばでいえば、更新組合員に対する経過措置についてであります。まさに修正の第四点は、この制度に通算することとされた厚生年金保険期間にかかわる給付額調整措置を廃止した、従来、いわゆる旧法で適用になっておった厚生年金を、二割足切りにしておった、これを廃止するということでありますから、確かにこの修正自体は一歩前進であることは事実でございます。しかしながら、従来の旧法部分の、厚生年金二割足切りというものを廃止をいたしましても、法律改正されるまで組合員であって、法律改正する以後も引き続き組合員である場合、いわゆる法律にうたうところの更新組合員については、新法部分旧法部分とを別別に計算して合算する、こういう法律内容になっておるのでありますが、この新法部分旧法部分をそれぞれ計算して合算するということによって、今回の法改正を最も強く要望した全組合員、概算およそ三十四万人、この全組合員は全く期待を裏切られたと、これは感じておるのであります。そこで、私は御出席政務次官にお尋ねをいたすのでありますが、政府は、このような点を一体どのように思想上の整理をされたのであるか、基本的な考え方をお伺いをいたします。
  6. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) ただいまの御指摘の点は、衆議院附帯決議の中にもあります。それで、政府といたしましても、そのとき申し上げているわけでありますが、いまの点につきましては、これらのほかの制度とも関連しておりますので、十分検討を加えて、すみやかにこれが実現をはかるようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  7. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 他の制度とも関連があるので、これらを検討した上で考えると言うのですか。
  8. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 旧法期間についての給付は、全部新法ベースでやるべし、そういうことを組合員は実は期待しておったのだ、こういう趣旨お話でございます。衆議院におきましても、そういった御議論がありまして、附帯決議の第一項目に、そういう要望が入れられているわけであります。  修正点の第四点と申しますのは、先生が区分して御発言なさいましたように、旧法期間についての給付について、これを旧厚年期間旧法期間との間に、給付差等を設けておりましたことをこの機会に改めまして、旧法期間は全部旧法期間旧法期間の中における旧厚年期間旧法期間との給付の差をこの際なくしたいということで、やはり現在御審議をいただいております改正法と、旧法との間の給付の点におきまして、現状では、まだ新法給付旧法期間全部にさかのぼって適用するというところまでは踏み込んでおりません。政務次官からお答えいただきましたように、これは国家公務員とか、私学その他各種政府管掌年金関係全部を通じての上の共通の、過去において法律改正をいたしました場合の経過措置の設け方を、そのままここで踏襲をいたしているわけであります。ただ事情が若干違ってまいりましたのは、御承知のように、今回の厚年法改正におきまして、過去にさかのぼってと申しますか、既裁定にまで新法改正後の給付を及ぼそうというかなり大胆な提案政府から出たわけでありますが、そういうことが厚年の場合には行なわれる、厚年は、それは過去の厚年給付があまり低きに失して、実情に沿っていないということが、そういう制度に切りかえたことの一つの重大な理由かと存じますが、いずれにしても、厚生年金がそういうやり方をとったというのが、最近での新しい問題であります。なるべく改正さるべき厚年との調整をはかった上で、私ども法律の姿を位置づけるのが好ましい、一番理想的なんでございますが、この問題については、あまりにも影響する度合いがひどくて大きく、各種年金に及ぼします影響があまりにも大きい、そこで、早急の間には?その問題についての最終的な結論を得られなかったというのが実情で、ございます。したがいまして、衆議院附帯決議にもありましたように、今後政府といたしましては、そういった考え方が実現いたしますよう十分の努力をいたさねばならぬわけでありますが、これは、そういった影響するところきわめて多い他の各種年金制度とやはり共同戦線で、共通のものの考え方整理をする必要があろうかと存じております。そのことでございます。
  9. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 三十四年から実施しておる現行法を大幅に改正をせよという関係者の要請というものは、すべて更新組合員であるということです。この旧法部分新法部分にまたがっておる三十二万の人たちは、二十年勤務して百分の四十の年金額をもらえると思えばこそ、この法律国会を通過した以後から、毎年のように完全通算内容として要求してきておるわけです。本法では、百分の四十という看板を掲げておきながら、中身であるところの附則では、実は百分の四十とは及びもつかないものが附則で規制をしておる、この辺を、本法で言うように、百分の四十という、看板に偽りのないように、附則整理することがこれは最も大事な点ではないかと思うんですが、その点は一体どうなんですか。
  10. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 率直に申し上げまして、他の国家公務員私学その他の年金並み制度にするようにという熾烈な御要望があったわけでございます。で、国家公務員私学並みと申しますことは、経過措置については、ただいまの政府原案におきますように、旧法期間旧法ベース新法期間は、改正後の期間についてだけ改正後の給付水準というのが、過去において国家公務員私学その他もろもろのこの組合員諸君が、それ並みでありたいということを熱烈におっしゃいました、各制度現実に対処してきた経過措置やり方でございますから、私どもとしては、その経過措置については、特に他の年金の先例にかかわらず、農林年金だけは、改正後の給付水準旧法期間に及ぼすべしということが、おっしゃいますほど具体的に強い要求であったということは、いささか認識を誤っておったかと思います。しかし、他の制度並みということで、私どもとしてはその点はもう御納得のいっておるものというふうに実は考えておりました。いろいろ詳しい中身が明らかになるに従いまして、そこのところは、そうではないように期待をしておられた組合員がおられたことも事実でございますけれども、その点は、先ほどから申しますように、この段階では他の制度並みになりたいと、一応目標として掲げました制度並みにはなったわけでございますから、一応ここでこしんぼういただき、ただ新しい事実として、厚年法が、既裁定部分にまで改正後の給付を行なうという新しい制度が、今回の国会を通じて生まれようとしておるわけでございますから、それが生まれた暁において、今度はその足並みのそろいました国家公務員私学その他もろもろ各種年金制度共同歩調で、本問題をいかに対処するか、結論を得るよう早急に努力をいたしたいというのが現状でございます。なお三十二万人の組合員の中で、厚生年金期間を持っております組合員の数は、先般資料のその二で御説明をいたしましたように、総体で十万でございます。その分布といたしましては、旧厚年期間を負っておる年数別に、その資料の十ページに掲げておりますので、三十二万の組合員全部がというようなことではない、十万人についての問題になるという、その旧厚年期間の問題というのはそういう問題でございます。  そういうことでありますのと、それから衆議院審議の過程を通じて、ひとつ申し上げましたことは、厚生年金法が改正せられますと、先ほど補足説明で申し上げましたように、最低保障額の三万五千五百二十円が八万四千円ということに相なります。最低保障額八万四千円に相なるということは、現在の農林年金対象者の給付水準なりから申しますと、この最低保障額というのは、かなり実質的な意味を持つ最低保障額でございます。で、むしろその最低保障額が加わりましたことによって、実質的にはかなりの部分が、その旧法期間旧法ベースで通算をして、計算をして合算をするという本則のものの考え方を、かなり大幅に、実質的に改善したと申しますか、最低保障額が八万四千円になったことによって算定された額以上に、正規に算定されました額が八万四千円に達しておらなくて、八万四千円によってかなり実質給付水準がよくなる。そういう組合員の数というのは、私どもの従来の経験的な判断で申しますと、おそらく八、九割はそういう組合員ではなかろうかと考えております。そのことは、先生の御指摘の点を、理論的に解決した問題でも、制度的に解決したことでもございませんから、あえて申し上げるのはいかがかと思いますが、実質論として、その点をあわせてお考えをいただければ幸いかと存じます。
  11. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この給付の要件については、少なくとも素朴な理解としては、組合員期間二十年以上の退職者で、五十五才より支給開始という国家公務員共済組合法現行給付要件及び給付標準としては、組合員期間二十年で俸給年額の百分の四十、こういうものが当然農林年金の場合においても、国家公務員共済組合法並みにという素朴な要求の内容につながっておるわけです。だから、この適用が新法を完全に通算する以外には、この国家公務員退職年金給付要件なり給付標準にこれは一致しないわけでありますから、いま、そこまでの要求があるということについては、いささか認識に欠けるところもあったという率直な答弁でありますが、そういう認識が欠けておるならば、あらためてそういう内容に触れた認識をされて、そうして、この看板に偽りのないような改正案にさらに仕上げるということが、私は非常に大きな課題ではないかと思うのであります。これは、抽象的にこれ以上言いましても、附則で、新法部分旧法部分をそれぞれ計算して合算するということとに、どれだけの差があるかという一つの標準例をとり、最高の場合と最低の場合の事例をとって、その期待感と、この提案された内容とではどれだけ違うかということをここで明らかにした上で、さらにこの問題についてお伺いをいたしたいのでありますが、いろいろな具体例となれば、計算の内容がそれぞれによって違うわけでありますが、完全通算という場合と、政府原案のように、旧法部分の計算と、新法部分の計算を合算するというこの内容とではどれだけ違うかという試算を、政府ではやられたと思うんですが、その試算を一つの具体的な例で御紹介を願いたいと思います。
  12. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) その具体例での試算の説明をいたします前に、私が先ほどお答えをいたしました趣旨は、国家公務員もなるほど百分の七十と書いてございます、最高額が。それから五十五歳になれば百分の四十で給付が行なわれると書いてございます。しかし、やはりその附則におきましては、百分の四十が適用せられる給付は、法律改正後の組合員期間に見合うものであるということもあわせて書いてあるわけです。この百分の四十で給付が行なわれるということだけ抜き出して読みますれば、国家公務員法の規定も、私どものいまお願いしております改正法律案の規定も、全く同様でございます。また附則のところを抜き出してお読みいただけば、これもまた国家公務員法で書いてありますことと、私どもお願いしております改正法律案で書いておりますこととは全く同じでございます。したがいまして、国としては、国家公務員並みということで、附則について特段の手当てをするということでなしに、国家公務員法の共済規定で書いてある経過規定をそのまま踏襲することで、大方の御要望と不一致でないものというふうに理解をいたしておりました。ところが、そういうふうに考えておられなかった方が現実にあることも事実のようにその後存じます。そのことは、国家公務員共済並みになるということではないんでございまして、国家公務員共済制度あるいは私学共済制度がとっております経過措置よりも、より有利な経過措置農林年金については講ずべしという御主張なんでございます。そのことは、私どもとしては今回の法律案を用意いたします前提として、予定をいたしておらなかったことでございますから、率直にそういう御要望として受け取りまして、今後、他の制度との見合いを考えながら対処していかなければいけないというふうに理解をいたしている問題でございます。  それから、具体例で御説明を申し上げますが、いろいろこれは前提をおきませんと計算ができませんので、まず前提から申し上げますと、各種年金制度と比較するんでございますから、一応ある特定の人がこの制度によった場合、あの制度によった場合、要するに同一条件の人が各種制度で算定したときに、どういう額を受け取ることになるのかという前提をまず置いております。初任給を——これは農林年金の場合実情にあまり適しませんが、一応計算を便利にいたしますために、初任給を一万円とした場合に、その後の昇給率を、最初の二十年間は五%、二十年をこえ二十五年までは四%、二十五年をこえ三十年までは三%、三十年をこえ三十五年までは二%、その後は四十年まで一%の昇給をしていくものと、それから扶養家族は一・五人と、それから後ほど申し上げます例で、農林年金をはじきます場合に、旧法組合員期間と、厚年期間とをどれだけ持っているかというふうに前提を置いたかと申しますと、旧法組合員期間を一応十五年と見ました。十五年と申しますことは、この十月から新法が適用せられるとして、昭和二十四年からの組合員ということになります。したがいまして、その十五年のうち、厚年期間は九年六カ月あるということに相なってくるわけでございますが、そういう一応の前提を置きまして計算をいたしてみますと、最終給与でと申しますか、二十年後の姿で想定をしてみますと、現行厚年法でいった場合に、そういう前提の方が、二十年後に幾らの年金額が計算されるかと申しますと、五万七千六百円ということになります。それから現在衆議院審議お願いいたしております厚年改正法で、この方が給付を受けるといたしますれば十一万一千百二十円ということになります。それから農林年金にこの方がおられるとして、まず現行法で、しかも厚年期間なし——と申しますことは、要するに仮定の計算でございますが、三十四年に初任給一万円で就職をされて、二十年たった昭和五十四年に、現行法改正にならぬままであったらどうなるかと申しますと、九万八千五百六十四円の給付を受けることになります。
  13. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ちょっと、厚年期間のない例じゃなくて、厚年期間を経て給付を受けて、新法になった場合の政府原案と、完全通算の場合の試算例があれば、それを伺いたい。なければいいですよ、それ以外のものは時間がかかりますから。
  14. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) そうですか、つまり新法だけ、つまり法律改正後に就職をされて、二十年たっておやめになる、先ほど前提を置いた方がそういう方だ、と想定した額が十二万三千八百十六円になります。このことは、新法期間のみの方でありますから、先生のおっしゃる何と申しますか、経過措置国家公務員並み以上にして、さかのぼった場合と同じことでございますから、結局、修正後の新法だけで二十年を経過した方の予定される年金額は十二万三千八百十六円ということになります。その方が、先ほどの前提を置きましたように、旧法期間が十五年あり、その中で厚年期間が必然的に九年六カ月伴うわけでございますから、そういう現実ではじいてみますと、つまり法律改正後五年経過しておやめになったと想定してみますと、その方が受けられる給付は十万四千八百九十円ということでございます。その五年後におやめになった場合でこうでございます。それが、新法期間が長ければ長いほど十二万三千八百十六円に接近いたすということに相なるわけであります。
  15. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも資料が手元になくて、ぺらぺら聞くだけですからよくわからぬですがね。私が試算したものをひとつ御紹介いたしましょう。これは、いまの三十四万人を一つの標準として取り上げれば、厚年期間が十四年で、旧法期間が五年で、新法期間が一年で、五十五歳で退職した退職年金というもので計算をいたしますると、いま提案されている政府原、案によれば、年金が八万一千七百六十円となります。これを完全通算で、附帯決議にもあるように、完全通算をするということで計算を置きかえますと、この人は十一万五千二百円になる。その差額というものは、年金額で毎年三万三千四百四十円の、期待よりは低い年金を受けざるを得ない、こういう数字です。いいですか。それから、これを平均のランクじゃなくて、高給を受けている職員に当てはめてみると、これもいろいろその勤務の時期その他によって違いがあるわけですから、これは仮定ですけれども政府原案では、旧法給与が平均して五万二千円である。新法給与が十一万円である。これは最高ですね。それにあてはめてみると、政府原案で計算しますと二十二万四千円です、年金が。それが完全通算をいたしますと五十二万八千円になります。ここで、高給者が期待しておった百分の四十というものが、完全通算をしないことによって、期待感がそがれる。額は毎年三十万四千円になる。これは最高の一つの例ですね。それから最低の例をとってみますと、計算の内訳は省略いたしますが、差額が毎年一万七千円になる。こういう数字の実態があるわけです。そういう点から見れば、この完全通算内容とした素朴な要求というものは、現実に私もその要求の場に何回も出ております。具体的に言えば、昭和三十七年に、岩手で全国の農協役職員連盟大会を開いて、このことの決議をしている中に、そのことが具体的に入っておる。そういう一つの期待というものが、新法に、どうつながるかということになると、いま言ったように、旧法旧法で計算する、新法新法で計算する。それを合算するという、この法案では大きな期待をそがれるという、これは重大な問題になっているわけです。もちろんこれらの対象者が、新しく今後どんどんふえてくる。そうして、新法期間が長くなればなるほど、この完全通算というものとの差額が圧縮されてくることは申すまでもない。しかし、いま差しあたりかなりの老齢に達している者が、ここで農林漁業団体を退職するという場合に、非常に大きな不利な年金額に甘んじなければならないという矛盾を、これをどう解決しようとするのかというのが、この問題点なわけです。その点を私は伺っておる。最高の場合は三十万も毎年違う、最低の場合でも毎年一万七千円の差がある。平均の場合をとってみて三万円程度毎年年金の支給額が違う、こういうことですね。なぜ、この農林年金考え方が、旧法新法の合算主義をおとりになったか、そこの根拠を伺いたいのです。
  16. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私が御説明いたしましたのも、一つの前提を置いての試算でございますから、先生御指摘のように、前提の置き方によってはいろいろ違った結論、数字が出ようかと思います。いずれにしても、新法期間が短かければ短かいほど、本則で書いております額は、新法期間の場合に初めて発動するわけでございますから、旧法期間があれば、その一〇〇%に遠ざかることはこれは当然のことかと思います。いまの法律の建前ではやむを得ざることかと思います。先ほど申しましたように、なぜ新法旧法期間をカバーするような措置をとらなかったかという御議論でございますが、先ほど、一つの理由はすでに申し上げたかと思います。つまり国家公務員私学並みという御主張をそのまま実現したつもりで、それ以上きわめなかったということでございます。  それからもう一つ追加して、じゃ、なぜそれが各種年金制度においても、いままでにとられておらず、またわが年金制度だけが他の制度にかかわらず、そういうよりょくなる方法での経過措置をとらなかったという、年金制度本来の意味合いからしての理由を考えてみますと、これはつまり、新しい水準に見合いますところの掛け金の積み立てば、新法施行後から始まるわけでございます。したがいまして、整理資源率ということで、かりに自後の保険料率に、そういう追加給付を必要とする追加給付財源の必要額を、整理資源率ということで付加して徴収を開始いたしますといたしましても、新法期間の短い方は、やはりその整理資源率積み立てに寄付する度合いが著しく短いわけでございます。組合員相互間における給付均衡論というのがやはりこの根っこにあるのだと思います。つまり新法期間が極端に短い方が、その整理資源率を含めて新法ベースの積み立て金を極端に短い期間しか積んでおられないにかかわらず、その方の大部分の積み立てた実績期間は、旧法ベースで積み立て金をちょうだいをしておる、そういう方に新法給付を割り引きなしに差し上げること。それから、今後新しく年金組合員として参加してこられる方が、それらの方々の積み足らず部分を全部引き受けて、新しい今後の積み立て金でそういう過去の積み足らず部分を全部引き受けてしょい込むということが、いかに相互扶助の原則に立つとは言え、断層があり過ぎて、組合員間の負担均衡という点からしていかがであろうかというのが、過去において国家公務員なり他の年金制度法律改正の際の経過措置が、そういうふうに段差を設けて合算主義をとらざるを得なくなった根本の理由であろうかと、私は想像いたします。したがいまして、この年金制度におきましてもその壁を突き破って、ほかの制度が行き悩んで、そういう処理をつけた問題を、この農林年金だけが違った解決法をとることが、やはりその壁をどういうふうな理解で突き破るかという点に、一番の理論上の難点があろうかと存じます。今後検討いたすとすれば、そういう方々がおやめになります場合に、新法ベースで全期間を計算する給付をどうしても確保いたしたいとすれば、その壁との調和としては、積み足らず部分を計算して、過去にさかのぼってと申しますか、さかのぼるわけにいきませんが、自分の掛け足らず部分についての穴埋めを、その退職年金からの天引きという形でやっぱりやらざるを得ないのだ、その掛け足らず部分を天引きする方法と、それから旧法期間新法期間を別個に計算をして合算する方法と、いずれが便宜であり、いずれが組合員の感情に合致しておるかという点は、今後私どもとして真剣に検討いたさねばならぬ問題だと、さように考えます。
  17. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、この完全通算を阻害しているものは、いまの説明からはそれておるけれども国家公務員共済組合法の一つの算出の形を踏襲したところに問題があると思うのです。まさに国家公務員共済組合法新法部分旧法部分とを計算して合算をしておる。しかしながら、この場合に具体的に指摘できることは、国家公務員の場合の旧法である恩給は、すでに百分の四十の一つの内容になっている。ところが、この農林年金の場合は、異質なものをそれぞれ計算して合算主義を、国家公務員とともにその合算主義だけをとるところに、大きな内容の相違が出てくるわけです。特にこれを頑強に、衆議院段階でも肯定しなかったのは、一つは財源の問題があると思うんですね。これは後ほど別な項目で、具体的に私は触れますけれども整理資源率というものは、これは全額政府負担すべきものであるという立場に立てば、これは解決ができるわけです。これは整理資源のところで具体的にお伺いしますから、問題だけを提起しておきますが、それから、いまあなたがおっしゃったように、いかに互助の精神とはいえどもという、その、いかにということであります。少なくとも、このような職域年金制度の宿命として、後代のものが先代のもののめんどうを見るという、ひとつの互助の精神、共済組合の精神というもの、あるいは社会保障なり社会保険なりというものに対する国の補助というものとが、両々相まって公的な年金制度を果たすことができると考えるわけです。そういうことから、私は冒頭に、一体この百分の四十というものを、本法そのもので具現するために、期待しておる対象者に対して旧法部分を計算し、新法部分を計算して合算するという思想的な整理というものが、どういう立場でなされて提案をされたかということを、政務次官にお伺いをいたしたのもこの点にあるわけです。その点は、完全通算をこの際、実施しなければ、この改正案も画竜点睛を欠くうらみがある。今度法律が通れば、完全にこの退職給付基準が、従来の最低五カ年平均というものが三カ年平均になった。なお給付要件が、二十年つとめて退職をすれば、五十五歳からは百分の四十もらえる。こういうものにならなければ、これは非常に、せっかく改正をしながら、対象者全体ではないにしても、十万人をこえる三分の一の組合員にとっては大きな問題を帯佩しておるわけです。実際、問題はありますけれども厚生年金改正には完全通算をしておる。厚生省所管の厚生年金完全通算という当然なことを法案にうたいながら、なぜ農林省所管の農林年金はそれを取り上げることができなかったのか。私はここに、農林年金改正に対する各省間の気がまえの相違があると思う。これはひとつ政務次官に重ねてお尋ねをいたしますが、どういう思想的な整理をして、こういう相違した内容で合算主義をおとりになったんですか。
  18. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) これは先ほど農政局長がお答えしたとおりでありますが、いまお話のことはごもっともでありまして、私も先ほどお答え申し上げましたが、他の国家公務員とか、あるいは地方公務員とか、私学とか、そういう関係にならって、そういう経過措置を設けたものと考えています。しかし、やはり衆議院附帯決議にもございます、いま御指摘の点は、ごもっともと私考えますので、ことに厚生年金がそういうふうにして提案されているということでもありますので、新法旧法組合員期間にも適用するということは、すみやかに検討を加えて、御期待に沿うようにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  19. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 補足して。厚生年金は、今回の改正でいま衆議院に願いをいたしておりますが、政府原案既裁定にまで及んでおる。それに対して各種年金の場合には、依然として旧法期間新法期間を、先ほど来申し上げたような思想で合算をしておる。なぜそういう扱いの差を設けたかということでございますが、率直に申しまして、厚年がそういうことになったということは、全く新しい一つの事実でございますから、時間的ゆとりがあれば、その間の調整をもっと詰めて、他の年金制度理解の行き届いた位置づけをする必要があろうと思いますが、その点は今後に遺憾ながら残されております。ところが、現段階で私どもが納得いたしております一番大きな理由は、厚生年金は御承知のように、報酬比例部分の持つ割り合いというものが非常に少ないわけでございます。定額部分というものが、厚生年金給付の中核をなしております。定額部分というものは、そもそも何と申しますか、報酬比例部分と違いまして、旧法であろうと新法であろうと、差を設けるということには、年金をもらう人の水準、あるいは世の中の消費水準等からくる定額部分でありますから、この部分については、新法旧法で峻別をすることの意義がやや乏しいのであろうと思います。それに反して、報酬比例部分につきましては、と申しますか、全部が報酬比例の思想で成り立っております。ほかの各種年金の中で、掛け金計算も、報酬に比例して掛け金が徴収されることとなっております。この制度と、ほかの制度との間には、やはり一線を画して理解をしなければいけないものがあろうかと存じます。現段階では、十分政府各省間の論議を尽くして、思想を統一しておるわけではございませんけれども、私は私なりに、厚年とこの種年金との、その点の相違点は、そこに大きな理由があるというふうに一応理解をいたしております。しかし、政務次官お話もございまして、今後なお、この点については、関係各省間の各種年金制度の位地づけについての吟味を含めなければいけない問題だとは考えております。
  20. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 局長にちょっとお尋ねしたいのですが、この理由説明の中の内容を見ますと、農林関係の、そうした優秀な青年もなくなっちゃう。そのために、この際こうした改正をして、ある程度優遇処置をとっていきたい、こういう基本的な考え方だろうと思うのです。その中で、三十五年に国家公務員改正をしておるわけです。で、私学職員共済組合は六年にやっておるわけです。三十七年の九月には地方公務員がやっておるわけです。いままでこれをやらなかったというその理由はどこにあるのか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  21. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) この制度を初めて法制化いたしましたのは、三十四年からでございます。当時、すでに他の年金制度には改正の動きがあったわけでございますが、当時の事情としては、その成り行きを見定める見通しがつかないから、とりあえずその当時の、現行国家公務員なり、私学なりと同じような制度を、とにかく一日も早く農林漁業団体職員についても、実現すべしという強い御要望が、本法旧法ベースで成立させた一つの原動力であったかと思います。したがって、そのとき肩を並べました国家公務員なり私学が遠からず追い越すであろうということは、当時から予想されておったにかかわらず、待てずにやったわけであります。したがいまして、わがほうの年金制度も、準備でき次第、追い越されたところをまたさらに追いつくという必要があったことは事実でございます。三十七年来そういった御要望が強く行なわれたことも、その結果であります。ただ、この種年金を仕組みまして制度改正いたしますためには、やはりある程度の経過期間を持ちませんと、非常に微細な計算に基づいて成り立っておる制度でございますから、つくったすぐその結果の実績の数値を全然使わずに、さらに次ということは、立法論としてはあり得るのかもしれませんが、私ども事務担当者としては、そういうことがなかなか困難でございます。そこで、組合員の皆さん方には不本意であったと思いますが、旧法期間の五年間の実績数値を待って、やっと今国会に、おくればせながら、追いつくところまでの改正案お願いするに足る材料がそろってお願いをしたという次第で、その材料が整う期間が、三十四年から三十八年度一ぱいかかったということで、やっとその追いつくところまでの修正お願いしたという次第であります。
  22. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一点。経過はわかりましたが、局長の、渡辺委員の質問に対する答弁の内容を聞いておりますとね、なるほど共済保険ですから、これは相互扶助の立場に立たなければならぬ、しかし、三十四年から五年間の経過を経て、今日に至ってようやく出す準備その他も整ったと、こう言われますが、個々の個人のいわゆる扶助を受ける格差というものは依然として、この国家公務員も地方公務員も、また私学のほうも、全部これは旧法新法に分かれておることは、あんたの御説明のとおりです。しかし、個々の個人の格差があるということは、それだけの優遇措置ができてないということに私は通ずると思うのです。したがって、せめて三十七年九月に、地方公務員にそれだけの改正を加えたというこの起点を、なぜ政府としてはとる気持ちにならなかったか、いわゆる新法旧法の境はあってもやむを得ないでしょう、いまの段階では。先ほどのあんたの説明を聞くと、一本の制度でないのですから。しかし、おくれた農林省としては、せめて三十七年度に、以前と以後の、新法旧法の起点をなぜとれなかったか、私はとるべきだと、こう考えるのです、その点どうお考えですか。
  23. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 何を基準に置くかということで、変わってくると存じます。国家公務員が切りかわったときか、あるいは私学が切りかわったときか、地方公務員が切りかわったときか、まあそういう立場をとって立案するとすれば、三通りの切りかえ時期が過去にある、それのどれをとるかということでございますが、やはりうちの年金はうちの年金なんでございますから、現実法律が改まったとき、また掛け金率が、新しい掛け金率が徴収可能になったときを起点とするというのが、やはり年金としての割算上の——そう申すと少しことばが過ぎるかもしれませんが、当然の措置というふうに私は考えて、疑問を持っておりませんでした。さかのぼった時点で画するということであれば、その時点以後の掛け金をいかに処理するかという問題を解決しなければならないという非常に困難な問題を伴います。そのことは、おそらく理由として薄弱かもしれませんが、やはりこの種の年金としてはかなり決定的な理由としての、現実的な処理不可能という問題に近づくわけでございます。そういうことが、新しい法律ができて、新しい給付水準に基づく掛け金率の徴収が開始されたときからの計算をする、切れ目をそこに求めざるを得なかったと申しますか、他のことを立法過程でちょっと想定いたせなかった実情でございます。
  24. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 厚生年金については、占める定額部分、比例部分年金との相違、そういうことも確かに完全通算を困難にする要因の一つであるかもしれない。しかしながら、同じ政府が出すところのこういう年金の中で、厚生年金がその改正案の中に、四十四条に新たに一条を設けて、完全通算をうたっておる。なぜ一体この農林年金というものが厚生年金というものから分離したか。それは厚生年金よりも給付をよくするために、職域年金として農林年金法を作ったのですよ、国会で。その趣旨から言ったならば、今回、政府厚生年金法の改正案を出すということと見合って、いま問題になっておる完全通算ということをやらなければ、農林年金法厚生年金法から分離した職域年金法のその給付内容において、意義が非常に軽減されてくることを遺憾に思うのです。給付内容改正するたびに、完全通算措置を講ずるということこそが、真の社会保障の目的に沿っておると思うのです。  それでは、この問題は、午前中は終わりますが、午後から大臣が出席されますから、あらかじめ大臣に御答弁を要求しておきたいのは、衆議院で、附帯決議にこのことをうたっておる、いろいろ審議経過を経てうたっておる完全通算について、うたっておるその国会の意思というもりを、いかに具体的に善処をされようとするのかを、これは午後、大臣に冒頭伺って、次の問題に入ります。午前の質問はこれで打ち切ります。
  25. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ここで午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩    ————・————    午後一時五十三分開会
  26. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案議題とし、休憩前に引き続き質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は、御発言を願います。
  27. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林大臣がお見えでありますから、午前中に審議をいたしました経過を踏まえて、まとめた一つのお尋ねをいたしたいと思っております。それは、この法律改正されるまで組合員であった者で、今後も引き続き組合員となる者が、法律では、更新組合員と称しておるのでありますが、この更新組合員、現在概数三十四万、そのうち厚生年金部分が通算対象になっている者が、その三分の一以上を占めておるわけであります。この更新組合員は、ひとしく今回の法改正によって、本法にうたっているように、二十年勤続して五十五歳で退職した場合には、国家公務員と同等に百分の四十の年金の支給があるものと、当然期待しておるのであります。しかるに、附則によって明らかにされていることは、旧法部分の計算と、新法部分の計算をそれぞれした上で合算をして、算出をすることになっておりますために、期待した百分の四十というものは、から念仏に終わってしまうということが非常に大きな問題となって、国会に対しても大きな不満の意が反映しておることも、大臣御承知のとおりだと思うのであります。もとよりこの合算主義は、国共法にとられている計算方式でありますけれども、大臣も御承知のように、国共法は、旧法である恩給法はすでに百分の四十の支給率になっておりますし、新法においてもこれを共済組合に性格を変えたことでありますから、この場合において、旧法の計算と新法の計算を合算しても、いささかもその間には計算上の不利益ということは出てこないわけであります。しかるに、農林年金といたしましては、この旧法の計算を分離し、新法計算をして合算をするということになれば、先ほども私は一、二の具体的な計数を算出して参考までに申し上げたのでありますが、最高額を取っておる者に、それぞれの厚生年金部分旧法部分新法部分の計算のしかたもいろいろあると思うのでありますけれども、極端な例として算出をいたしますと、政府原案と、完全通算をした場合とでは、毎年受け取る年金の額に、三十万円以上の不利益が計算上出てくるわけであります。また最低の場合に当てはめて計算してみましても、一万七千円の、完全通算をした場合から、この政府提案の計算の年金額との差が出てくるわけであります。また、大体現在の三十四万円の平均であると思われる厚生年金部分が十四年で、旧法部分が四年、新法部分が一年の場合も二万円、平均標準給与というものを出してみても、三万円以上の毎年受け取る年金に差が出るわけであります。こういう実態から、何としてもこの際に、改正をする機会新法をもって遡及をする、完全通算をするということが、かねての対象団体、対象役職員のこれは念願であったわけであります。いろいろこれには、午前の質疑を通じて明らかになった点もわかるわけでありますけれども、しかしながら、そもそも共済組合は互助の精神なり、社会保障なり、社会保険に対する国の補助というものが構成内容として織りなされている一つの制度であってみれば、これらの先代の者の受ける利益というものを、後代の者が受け継いでこれを処理していく、また後ほどお尋ねをいたす問題にも関連をいたしますが、少なくとも国共法にも出ておりますように、整理資源そのものは全額政府で持つというたてまえをとれば、これらの組合員負担も軽減されることも明らかであります。したがって、私は大臣にお尋ねをするのは、この法案衆議院を通過した際にも、附帯決議の第一にあげられておりますところの完全通算ということが、審議を通じて各党一致した附帯決議となっておるのでありますが、参議院でこの問題を鮮議するにあたりまして、大臣は、これらのきわめて重大な問題に対して、今後いかように対処される御所存であるのか、その点をお伺いをいたしたいのであります。
  28. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、農業団体共済組合法は他の共済関係の法律より立ちおくれておったのでございます。でありますので、他の法律に追いつくという意味におきまして、いろいろ内容をそろえていったのでございます。ところが、いまお話しのように、厚生年金のほうが今国会におきまして相当上がった、先へ進んだということでございますので、いま御指摘のような面が出てきておるわけであります。で、立法の私のほうの態度といたしましては、すでに旧法時代に年金等を支給された者がございます。そういう裁定されたものまでさかのぼるというのは、いかがなものであろうかというような面が一つございます。それからまた、この法律厚生年金時代までさかのぼらして計算するということについても、これからの負担の増しというような両も考えられますので、この案につきましては、厚生年金時代の旧法時代は旧法給与基準、この法律ができてからは新法の基準というような形で計算をすることにいたしておったわけでございます。しかし、その後御承知のように厚生年金のほうで非常に進んだ扱いをするように相なってきております。でありますので、私どもといたしましては、衆議院附帯決議趣旨に沿うて検討をしていきたいとこう考えておるのでございますが、それにつきましても、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合私学共済、これらと歩調を合わしていきたい。それで統一的にやっていきたいということで、それぞれの各関係当局とも実は協議検討を進めておるところでございます。でございますので、いま御趣旨のようなところまで話がまとまったという段階ではございませんが、そういう意味におきまして、附帯決議趣旨に沿うてその線へもっていきたいということで、いま検討を進めておる段階でございます。
  29. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 実は今度厚生年金の大幅な改正内容とする、厚生年金保険法の一部を改正する法律案政府から出されておるのでありますが、この改正案内容を伺がいましても、第四十四条等に完全通算のことをうたっておるわけです。ですから私は、この法案衆議院で、審議をされた際に、四項目にわたって政府原案が三党によって修正されたのも、厚生年金保険法改正案というものを踏まえて、これらの修正の原動力になっておるものだと理解をいたしておるのであります。であるといたしますならば、この際厚生年金では、完全通算というものをうたっておるのでありますから、まず農林年金が率先して、この完全通算という措置法案の中にうたい込むということは、同じ政府の閣僚として、農林大臣のとっていただくべき方向ではなかろうかという、期待をこめてお尋ねをいたしておるわけであります。御存じのように、厚生年金から、給付条件をよりよくするために、職域年金としての農林年金が分離をした歴史的な経過があるわけであります。そういう経過を踏まえて、この農林年金法をながめて見ますならば、基本法とでも言うべきこれらの厚生年法の大幅改正という中に、共通的に取り上げる問題は、かなり多くまだある。そのうちで、私は特にこの完全通算というものをとらなければ、期待した対象者に大きな失望を与える、このことは、またいろいろな職務におけるマイナス条件も生んでくるということは、否定のできない事実だと思うのであります。そういう厚生年金から分離して、給付内容をよりよくする目的で、三十三年にこの職域年金である農林年金が発足をいたしたわけであります。私も実はこの農林年金が発足した当時に、理事を政府から任命された一人でありまして、すでにそのときからこのことは、法の中に、不備であるということで、理事会でも私はしばしば問題を提起した一人でもありました。したがって、 この機会にこそ、この完全通算という措置をおとり願いたい。しかしながら、すでに衆議院原案が通過して、参議院でも審議日数に制約のある中で、この問題に限って、あまり私は時間をとりたくないので、せめて衆議院でつけた附帯決議を、どういうふうに大臣は積極的にお考えなのかということを納得がいくような、ひとつ、いわゆる前向きに御答弁をいただけませんと、なかなか次の質問に入りかねますので、大臣は、池田内閣の中でも最も実行力に富まれている方だと思いますので、他の年金はともかく、厚生年金である母体法が、こういう一つの改正案をひっさげてきておるのでありますから、農林年金については、できるだけ近い機会に、これを完全一通算の方向に踏み切るというような決意のほどを、重ねてお伺いをいたしたいのであります。
  30. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) この法律は、渡辺さんも前に理事になられ、私も前の農林大臣のときにこの法律提案して、また今度も改正案を出す羽目と言いますか、そういう立場に立っておるのでございますが、私といたしましても、渡辺さんと同じような、この改正につきましては、厚生年金に、せっかく厚生年金がそういうふうに踏み出したので、それにそろえていきたいという熱意を持っているのであります。でありますが、御承知のように会期も迫っておりまするし、財政的な問題も生じます。ほかの三つの関係の法律の担当の人々とも協議をしなくちゃならぬのでございます。でありますから、今回に私はそこまでいけるかどうかというふうなことについて疑問を持っております。しかし、この附帯決議趣旨は、私はたとえばほかのほうの法律改正を待たないでも、年金だけのほうはぜひこれは進めていきたい、こういう気持を持っております。でありますので、できるだけ早い機会に私はそれを提案していきたいと思っております。今国会には、ちょっと私もまだそこまでいけるかどうかということに、自分で疑問を持っておりますが、できるだけ早い機会に一つのそういう方向に進ませたい、こういう熱意といいますか、腹づもりといいますか、気持を持っております。
  31. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今国会には間に合わないが、できるだけ早急に他の同類の年金に率先して、農林年金については完全通算立場努力をする、善処をするという御答弁でありますから、私はこれは現時点では大臣のその答弁をそのまま肯定をいたします。できるだけ早い機会にといえば、次の通常国会であろうと思いますから、具体的には次の通常国会には、他の同類のこれらの年金制度をひとつリードする立場で、政府原案として完全通算法案を御提案になることを重ねて、これは質問ではありません、要請を申し上げておきます。  それから関連してちょっと伺いますが、大臣もだいぶん財政負担のことを気にされておるようでありますが、かりに私が——私というのは、これらの対象団体三十四万の総意として受け取っていただきたいのでありますが、これが期待する完全通算と、ただいま審議されている政府原案とでは、一体三十九年度分についてはどれだけ財政負担がふえるという試算をされておりますか。これは大臣でなくてけっこうです。
  32. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 財政負担という金額の形での試算は、十分にできておりませんけれども衆議院で本問題が、論じられましたときに、料率、掛け金率としてどのくらい反映するであろうかという試算をしてみたことがございます。それを御参考に供したいのですが、かりに改正法の線を全組合員期間厚年にさかのぼって全組合員期間に遡及適用したとするならば、おそらく整理資源率として出てまいりますのは千分の九であろうと思います。その程度が予測されます。国庫補助が百分の十五あることを頭に置いて考えますと、おおむね組合及び組合員負担にかかりますものは千分の八程度ではなかろうかというのが、大体の概算でございます。
  33. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは次の通常国会完全通算厚生年金保険法の一部を改正する法律案の思想そのまま農林年金法を御提案になる場合に参考になると思いますが、私が試算をいたしたのでは、いまの十月から実施ということを計算に入れて計算をいたしますと、政府負担増は約一億五千八百万であります。この一億五千八百万というものに支配されて、これらの期待を裏切るということがないように、十分ひとつそれらの内容を踏まえて次の通常国会には重ねて農林大臣の善処方を要請いたしておきます。  第一点の更新組合員に対する経過措置についての問題を打ち切りまして、次にお伺いをいたしますのは、最低保障額についてお尋ねをいたしたいのであります。お尋ねをする順序として、私は締めくくりに大臣にお尋ねをいたしますので、その間は政府委員から御答弁をいただけばけっこうでありますから、そういう意味でお聞き取りを願いたいのであります。  第一にお尋ねをいたしますのは、今回の新たなる設定された最低保障額というものが、政府案では三万五千五百二十円となっております。この三万五千五百二十円という最低保障額を算出されたその数字の基礎をお示しを願いたいのです。
  34. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 三万五千五百二十円と申しますのは、現在の改正前の現行厚生年金法の給付水準に基礎を持っておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、国家公務員私学等、現行の同種年金制度最低保障額として採用しておる金額でございます。その積算の基礎といたしましては、まず厚生年金標準給与最低を三千円でありますから三千円の給与者が受けるであろう年金額をベースにしております。厚生年金は先ほども申しましたように、固定部分が月に現行では二千円の固定部分がございます。年額にいたしまして二万四千円、この二万四千円の固定部分に三千円については現行厚生年金法が千分の六を乗じておりますので三千円掛ける千分の六、それに在職月数二十年、つまり二百四十カ月これを乗じましたもの、これが二万八千三百二十円となります。この二万八千三百二十円に平均扶養家族一・五人と見まして家族加給部分七千二百円を加えました金額が三万五千五百二十円ということに相なるわけであります。
  35. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 計算の根拠はわかりましたが、一体この三万五千五百二十円という最低保障額というものは現実離れしているとお考えになられないでしょうか、どうでしょうか。というのは、政府で出している資料を見ますと、生活保護基準というものが出ております。それの昭和三十七年の基準を見ますと、一・五人の扶養家族を持っておる者が、月——概算でありますが、七千五百円、これだけを生活保護基準として数字が示しておるわけです。これは年額約九万円になる。生活保護基準が、厚生省のこの統計が示すように、年額九万円というものである点から見ても、いかにこの三万五千五百二十円というものが現実離れをしたものであるかということは、この比較から見ても容易に肯定せざるを得ないと思うのですが、この三万五千五百二十円で最低生活が保障される、最低保障額であるとお考えになって御提案をされておるのでしょうか、どうでしょうか。
  36. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) この年金をもって全生活をささえるものというふうに理解をいたしますと、お説のような点も十分納得ができるわけでございますが、一応先ほども申しましたように、現行厚生年金が成り立っております最低額を下らないというのを、このその他年金の一つの最低保障額のきめ方のあり方として採用しております関係上、厚生年金のベースが直るまでの間は、この額がその他の年金最低保障額として採用されることもやむを得ないことだというふうに私は考えております。なお、御参考までに現在の農林年金年金受給者は比較的まだ制度発足早々で数がたくさんございませんけれども、農林団体の給与そのものが低いということも関係がございますが、三万五千円以下の年金額を支給せられることとなっております組合員が、過去の裁定実績から申しまして約二五%を占めるわけでございます。したがいまして、過去のこれは旧法ベースでございますが、既裁定者にあてはめて最低保障額がかりにあったといたしますれば、総体の年給受給者のうちの約四分の一はこの三万五千五百二十円が、もちろん額として非常に低うございますが、それにしてもこの三が五千五百二十円という最低保障額によってかさ上げされると申しますか、上げるという実情でありますことも、御参までに申し上げておきます。
  37. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あなたがいま何か引用したらしい、その三千円の待遇を受けているものが全体の二五%というのは、どういう調査ですか。
  38. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 農林年金年金を支給することとして既裁、定をいたしました総体の中で、その個人別の年金額がわかっておるわけでございますが、その年金額の多寡によって分けてみますと、三が五千円以下の年金裁定を受けましたものが、過去において総体の年金裁定受けました人数のうち約四分の一おるということの事実を申し上げたわけでございます。
  39. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それは従来のその法律に基づいて、いわゆる二割足切りをしたり、いろいろなそういう、私から見れば不当な悪条件の中で上既裁定を受けたもののデータでこれを反論するということは、私はきわめて適切ではないと思うんです。そういうこじつけではなしに、現実に厚生省では少なくとも生活保護基準としては一・五人の扶養家族をかかえているものは年間九万円は必要だというデーターを出しておる。そういうものから見て三万五千五百二十円というのは、これはナンセンスじゃないか。ナンセンスであるならば、いまあなたが言うたように、あるいは午前に多少触れたように、厚生年金で一応案の中に示している程度の最低保障額はこの際年金法の改正に明文化すべきものではないか、こういう質問につながる、その点はいかがですか。
  40. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) お説のように、現在の状況において三万五千円という年金額が生活を、それによって全生活をささえるに十分でないという点は、御指摘のとおりだと私も存じます。保護基準にあります額と年金の額との間の関連性をいかように理解するかということは、議論の分かれるところかと思いますけれども、三万五千五百二十円という最低保障額最低保障額としてきわめて満足すべきものとは私も考えませんけれども、ただ現在の客観情勢の中で年金最低保障額を仕組みますと、遺憾ながら三万五千五百二十円以上を打ち立てることが、非常に困難であったという事情に基づくものでございます。したがいまして、厚生年金のほうもそういう事情がありますからこそ、今回改正お願いいたすことになったんだと存じます。厚生年金が改まりますれば当然私どものほうも、それに応じて自動的と申しますか、同時にその最低保障額の三万五千五百二十円を八方四千円まで引き上げ得る規定を、厚生年金法の改正案附則の中でお願いをして今国会にすでに上程をいたしておるわけでございます。
  41. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 衆議院では、審議の過程の中では、最低保障額八万四千円という内容質疑の中では出てこなかった経過がありますから、参議院でそれが明らかに八万四千円という数字を踏まえて厚生年金が通過すれば、そういうものを、また農林年金上も最低保障額に当然関連して附則でこれは扱いになるという経過はわからないわけではないのであります。しかし、私は厚生年金最低保障額を八万四千円にしたから、それにまあ便乗して八万四千円にするというだけでは、なかなか納得ができないのでありますが、いま引用いたしましたような生活保護基準というものから見ましても、社会党がこの農林年金法改正案の中に出しておりますのは、御承知のように最低保障額は年額九万六千、月額、八千円というものは、こういう具体的な数字を基礎にして社会党案の中に盛っております。この月額七千円、年額最低保障額八万四千円という根拠は、一体どこから算出されて、それを受けて農林年金は適用するという考え方をお持ちになっておるのですか。
  42. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 三万五千円が先ほど申し上げましたように、現行厚年法給付基準の最低を押えて仕組まれておりますのと同様、八万四千円という金額も今度お願いをいたしております厚生年金法の最低給付を基準として算定された金額でございます。詳しく申し上げますと、固定部分が月五千円で年額に直しまして六万円になります。それに報酬比例部分といたしましては最低標準給与七千円の千分の十、今度は千分の六が千分の十になりまして、それの二百四十カ月分加えました額、それに扶養家族一・五人の家族加給七千二百円を加えましたものが八万四千円ということに相なるわけであります。この額を厚生年金法の附則で、厚生年金法の施行期日と同時点でいまお願いしております、農林年金最低保障額三万五千五百二十円を八万四千円に修正するという趣旨のことを、厚生年金法の附則のほうへ書いておるわけでございます。
  43. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この数字をさらに掘り下げると、幾らでも問題が出るわけでありますが、何しろ制約された中でお尋ねをする問題がかなりありますから、私はこの月額七千円と八千円の算出の根拠についてこれ以上深く掘り下げることはやめますけれども、大臣にお尋ねをいたしたいのは、私は一歩譲って八万四千円の最低保障額というものを考えてみた場合に、それの実施はおそらく厚生年金法が成立をしたことが前提になるわけで、当然来年の五月ということが想定されるわけです。ところが農林年金は十月からこれを適用するということになるわけであります。そうしますと、一体この十月から厚生年金と同じく最低保障額を八万四千円にならすところの来年の五月までのこの七カ月間に退職する者の不利益というものを、一体どういうふうに大臣は対処されようとなさっておられるのか。この点をこれは事務的にじゃなくて、大臣のひとつ高い立場からこういう矛盾というものを、具体的に申しますならば、繰り返しますけれども、ことしの十月以降来年の五月までの間に退職する者が受ける最低保障額が三万五千五百二十円である、八万四千円でなければならないはずの者が受ける七カ月間の退職する者の不利益を一体大臣はどういうふうに救済される御意思がおありなのでありましょうか。
  44. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまの厚生年金のほうは、来年の五月から最低保障額が八万四千円、こういうことに相なるわけでございますから、そのときには農業団体の共済の最低保障額もそろうわけであります。その間は、三万五千五百二十円という最低保障額である、これは法律のたてまえからやむを得ないと思います。しかし、これは別に厚生年金もそういうかっこうなんですから、不利益ということではないんですが、五月以後の人と比較すれば最低保障額が足らない、低い、こういうことに相なると思います、比較的に見ますると。この面につきまして、私もどういうふうにしてその不利益を是正するかということにつきまして、いま的確な案は持っていません。くふうはしてみたいと思います。
  45. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ突然としてお伺いしたから、私の期待するような御答弁がなかなか得がたいものだとは思いますけれども、最後の御答弁の、何とかくふうしようと、これが私は大事な大臣のお考えだと思うのです。ことば数はわずかでありますが、明らかに来年の五月以降の退職者には、これは問題のないことでありますけれども、本改正案が成立して、そうして十月に実施されて、来年の五月までに退職する者の不利益というもの、これは動かすべからざる事実になるわけですね。だからそれを救済するには、最低保障額厚生年金法の改正を待たずに、この機会農林年金法改正の中に当然三万五千五百二十円などというものは、現実離れのした空文にひとしい実態であるにかんがみて、こういう空虚な最低保障額というものを、内容のあるものに置きかえるのが、改正だろうと思うのです。改悪ではないが、新たに最低保障額という要素を盛り込んだが、内容は空疎であるということでは、これは有名無実のそしりを免れない実態でありますから、この機会にこれは大臣の一つの積極的な考え方で、この法案の中に盛られておる最低保障額三万五千五百二十円を、これが現実離れしていないならば、私はあえてここで繰り返すつもりはないのでありますけれども、これが現実離れをしておるから、これを最低保障額という内容のあるものにするためには、すでに同じ政府によって出されている厚生年金保険法の一部改正には八万四千円というものをうたっているんだから、率先してこの審議の意見を尊重して、最低保障額を八が四千円にするということによって、私が指摘したそういう不利益を排除するというような、これは措置をとってほしいと思うのです、この機会に。これは衆議院段階でもきわめて問題になって、最後までもんだ一つの課題であります。参議院としてはこれをぜひとも法案の中に取りつけなければ、こういう空虚な最低保障額では納得いたしかねる。こういう立場から特に大臣の出席を求め、大臣の善処ある御答弁を期待して尋ねているわけです。いかがです。
  46. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど第一問といいますか、最初にお尋ねがありました厚生年金のときと新法のときとの関係で、これは新法で適用するというようなことを近い機会にそういうふうにしたいと私申し上げました。そのときに、既裁定、すでに裁定されたものにまでさかのぼるということまでも話がつけば、この問題当然解決するわけでございますが、そこまでいかない場合に、こういうのも一つのくふうじゃないかという、まあここでの思いつき的なものでそうするということをお約束するわけにもまいりませんが、たとえば、ことしの十月から来年の五月までの間に裁定された者は八万四千円というものになった場合には、その基準でいくというようなことなども法律の中に加えるか加えないかという問題、いまお約束はできませんが、一つのくふうと申し上げたのは、実はそういうものも考えられようじゃないかというような意味を盛ったのでございます。しかし、これは約束するわけにはまいりませんが、何らかのくふうという意味には、そういう意味もちょっと考えたんで申し上げたんですが、いろいろくふうをしてみたいと思います。
  47. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあくふうということでございますから、くふうをこらしてひとつこれらの埋没した、改正案からは利益を得られない者にも、最低保障額が実のある内容として年金が裁定されるのでなければ、私はこういう事態が出てくることが考えられるわけです。それはもうお互いに退職をする段階にきておる者までが、具体的に言えば十月に退職する者までが、それは来年の五月まで最低保障額現実の利益を享受するために退職が引き延ばされるということは、当然これは考えられる大きな問題なわけです。というのは、いろいろ個人的に退職の相談がある。今度新しい法律が出るから、待てと言って、かなりそれを待たしておる経緯もかなりあちらこちらにあるわけであります。そういう一連の動き等見ましても、そういう最低保障額が空文的な三万五千五百二十円であるために八万四千円が適用されるまで退職を引き延ばすということも、これは職場の中には該当者については出てこないとは、これは保証しがたいようなことになってくる可能性があるわけでありますので、これは何としても大臣のそのくふうをこらした上で、これらを救済する措置までひとつ発展的にお取り上げを願いたい。これ以上お伺いしても約束をとりつけるわけにもまいらぬようでありますから、できれば、今度の法律の中に八万四千円を修正することが最も望ましいと思うのでありますが、そういう措置を、この際参議院の質疑を通じて大臣は、こちらでそういう点をしぼって提案をした際には、お取り上げになる御用意がおありかどうかを、重ねてひとつお尋ねをいたしておきたいと思います。
  48. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま厚生年金のほうでそういうような措置をとるべくやっているときでありまするし、その時期が来年の施行期日というか、それが来年の五月ですか、そういうことになっていますので、第一点の御質問にも関連いたしますが、いまこちらで先に今年から、いまから八万四千円の最低保障額になるというふうに改めるのは、ちょっと差し控えなければならぬ、こう私は思っております。
  49. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ具体的に言えば、はなはだ失礼になるけれども、厚生大臣よりは私は農林大臣のほうが閣内においても発言も強いと思うし、やろうと思えばおやりになれる立場におありなので、それが厚生大臣が出している衆議院法案には八万四千円をすでにうたっておる。ただ実施の時期が来年の五月だ、それでは農林年金としては不都合が出るということであるから、これは何も遠慮をなさる問題ではない、当然のことだと思うのであります。この盛られた三が五千五百二十円は、繰り返すようでありますが、実態から申せば空文であります。したがって、その点から言えば、私は参議院の一つの審議の中心的な問題であると受け取られて、修正が全各会派一致しての要望であるならば、これを政府としても受けて立つにやぶさかではない、こう出てこなければうそじゃないですか、どうなんですか。
  50. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いろいろ激励をされておりますが、実はこのいきさつ、御承知のように農林年金のほうを先に出しまして、厚生年金のほうがあとからいろいろまあ進んだような形で出てきております。どうもそれに便乗するというような形は、いささか私の気持として進まないものですから、いまこちらで八万四千円というのをやるというのは差し控えたいと思っておったのでございますが、しかし全会一致で自民、社会、民社、その他公明会ですか、全部ということであれば、私のほうでも、これはまた考えなくちゃならぬ問題でございますが、先ほど御答弁申し上げましたのは、便乗的なのはちょっと考えものだと思ったものですから……。
  51. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 わかりました。参議院の与党である自民党、野党である社会党、民社党、公明会さん等が全会一致で、その最低保障額を八万四千円に率先して取り上げるということであれば、政府もこれを受けるにやぶさかではない。はたして一致するかどうかは、これからのまた話し合いにもよると思いますが、その際はひとつ政府もこれを修正していただけるというふうに理解をいたします。  そこで私、さらにこれは大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、この最低保障額における一つの事例が一つの問題でありますが、全体として今度の法律改正によって、今後年金者となるところのものの給付水準は、改正案によって改善されるわけでありますけれども、この法律改正以前に年金者となったものは、全くこれは対象外にさらされておることも、あらためて指摘するまでもないことであります。既裁定年金者は、この年金制度においてはすでにこの制度をおえて実施の対象になっておるものでありますから、この制度を国がその既裁定者に対しては保護していく私は責任があると思うのであります。これは後ほどお尋ねする物価スライドの問題とも関連するのでありますが、私の大臣にお尋ねするその問題点は、これらの既裁定年金者にも、この改正法律を適用するという措置を講じなければ、既裁定年金者の年金という社会保障的な、社会保険的な、この現実的な恩恵に浴しかねる実態に置かれているわけであります。繰り返しますが、したがって、これからの年金者の適用は、これは申すまでもないことでありますが、既裁定年金者に対しても、この際、国は遡及してこれを新法対象給付内容対象にしていくということをお取り上げになるべきだと思うのでありますが、その点に関するまず基本的な大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  52. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 厚生年金期間新法期間とを一緒にしてということにつきましては、私も努力してその実現をはかりたいと思っておりますが、既裁定の問題にまでさかのぼるということがはたして、まあ政策的には考えられないこともありませんけれども法律的にはあるいは他との均衡の問題で、新しく法律ができた、その法律ができた場合にすでにきまっているものにまで遡及することが適当であるかどうかということには、非常に法制的にも技術的にも疑問があるんじゃないかと思います。極端に、そういうことを言うと、またしかられるかもしれませんが、脱線するかもしれませんけれども、こういう制度がないものにまでそれではさかのぼらせるということも、波及というか、考えられないこともないと思います。そういう意味におきましては、その当時掛け金を出し、そしてその当時の標準額によって年金等を支給されて、それできまったというようなことにまでさかのぼらせるということについては、私はいかがかと思います。もっとも、恩給等につきましての改正などで、いろいろ特別の措置をとるということによって救済するような場合もないわけではございませんけれども原則的に申し上げれば、すでに裁定されたのにまでさかのぼってこれを救済するといいますか、するということは、いかがかと私はいまのところ考えております。
  53. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は大臣にその考えを思い直していただきたいのでありますが、私からいまさら申し上げるまでもなく、恩給についでも、あるいは国家公務員共済組合についても、既裁定者に対しては引き上げの措置を講じておるのです。特に最近のように諸物価のウナギ登りの高騰という経済情勢の目まぐるしい動きというものを考えますと、現在すでに受けておる年金額については全然考慮する考えがないということは、非常にこれは問題だと思うのであります。また、しばしば例に引用いたしますけれども、その他のものまで波及することも考えられるといいますが、厚生年金自体が既裁定年金も引き上げることに内容を盛り上げているわけです。私は午前にも多少皮肉めいたことを申し上げましたが、同じ政府の中で、厚生省所管のこういう厚生年金については、既裁定年金の引き上げということも考慮したかまえ方をしておる。しかるに農林省所管の農林漁業団体で働く職員及び常勤役員三十四万人に対するうちの既裁定者、これは遺族年金給付者まで入れてわずか三千人であります。既裁定年金と称する対象は、その既裁定年金対象者三千人を現段階では救済することが、客観的にこの包含された農林漁業団体年金制度を完ぺきなまでにその機能が充当する措置につながるわけであります。これは金額的にも試算をいたしておりますが、財政負担もいまならこれはきわめてわずかな負担措置できる、ほんの一握りの措置で済むわけであります。しかしながら、これの波及する効果というものは、そういう財政的な規模を乗り越えて、大きくその組織に働く者に対する感激を与える効果も大きいわけであります。厚生年金自体でこれらの既裁定年金引き上げということも内容としておる今日において、これらを勘案して農林年金も引き上げを行なわなければ、厚生年金の受給対象者であることは、この農林漁業団体職員の身分保証からいってはどうにもならないということで、厚生年金から分離して職域年金を樹立した。その当初の目的というものは、少なくとも既裁定年金者にとっては、この最近の、特に厚生年金改正案というものをふまえて考えれば、厚生年金よりも不利な年金受給に甘んじなければならないという矛盾が発生するわけであります。発生しつつあるわけであります。したがって、私は、大臣がこれをいまの段階ではあまりお考えにならないという御答弁でありますけれども国家公務員なり公共企業体等の共済組合では、別な法律を出して既裁定年金の引き上げというものを取り上げておるわけです。ひとり農林年金にそれができないはずはないと思うのであります。これもやはりやる気があるかないかということにつながると思います。法律技術なり、それらはまあ事務的な問題であります。大局的に、わずか、遺族年金その他も含めて三千人にすぎない既裁定年金に対して、この新法を適用するということが、どれだけ政府の愛情のある施策として受け取るか、はかりしれないものがあります。要する経費はごくわずかであります。私は、この既裁定年金に対する引き上げというものは、大臣に再考を促して、ひとつ善処を求めたいのでありますが、大臣の重ねてのひとつ御答弁をわずらわしたいと思います。
  54. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど御答弁申し上げたような考えでいまおりますけれども、なおいろいろ検討してみる必要はあろうかと思うので、検討してみたいと思います。
  55. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ検討するということでありますから、検討なしにそれをやるということは、なかなかきょうの質疑段階では無理だと思いますので、実態を少しく数字によって私は訴えたいと思うのであります。で、政府委員にお尋ねしますが、農林年金年金給付額を、他の制度厚生年金国家公務員、公共企業体、私学共済、こういうものと比較して検討されたことがもちろんおありだと思うのでありますが、私のところでは、昭和三十七年度末で、農林年金厚生年金国家公務員、公共企業体共済、私学共済、それぞれの比較を年金給付額についていたしておるのでありますが、政府のこの検討した資料はどういうふうになっておるかをお尋ねいたします。
  56. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 具体的な各種の個人についての年金額ということに相なりますと、その人の給与水準、在職中の給与水準ということが決定的な要因と相なりますので、制度自体の比較としては、あまり意味をなさなくなると存ずるわけでありますが、したがいまして、先ほど午前中の御質疑段階でお答え申し上げましたように、ある一定の同一条件の給与水準であった人が、それぞれの年金に所属していた場合に、同じ二十年でどれだけ違った給付をもらう結果となるかという比較をするのが、制度自体の厚薄の判断としては適当であろうかと思います。そういう意味で申しますと、国家公務員私学、それから地方公務員、それから今回のお願いをいたしております農林年金の間には、相違点はない。旧厚年期間の取り扱いにつきましては、むしろ他の制度はまだ改正がおくれておりますから、何割かのカットをそれぞれやっております。それを農林年金の場合には、二割のカットを排除いたしましたから、むしろ現時点でフラットに言えば、制度としては農林年金のほうが若干有利になっております。これはいずれ足並みのそろっていく問題で、経過的な問題と思います。したがいまして、厚生年金あるいは農林年金との比較だけを申し上げたら足りるのではないかと思いますが、先ほど午前中の設例で申しましたような、一万円の初任給の人の二十年後に受けるべき給付で計算をしてみますれば、現行厚年ならば五万七千六百円、改正後の厚年ならば、十一万一千百二十円、それが今度の改正後の農林年金の、全期間新法期間であるといたしますれば十二万三千八百十六円ということに相なるわけであります。
  57. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私がこの三十七年度末で計算をいたしますと、厚生年金年金額農林年金年金額は、ほとんど退職年金を計算しては変わりがない。三十七年度末で調べたのによりますと、農林年金が四万四千四百四十八円、これは既裁定年金であります、もとより、厚生年金は四万三千五百四十一円ということになっておる。国家公務員共済組合員の場合は十四万九千七百二十三円、公共企業体の共済組合は十二万三千七百七十七円、私学共済は十三万二千三百三十七円、こうなっておるのであります。繰り返しますが、厚生年金改正案では、これらの農林年金とほとんど同じ年金額既裁定年金額についても、新法を適用して引き上げをはかることとしております。が、もとよりこれはまだ国会を通った法案でもありませんが、政府原案として出されたものが、そういう既裁定年金の引き上げを大きな要素として改正案の中にうたい込んでおる。それを農林年金では、いまのところは検討するという段階では、あまりにどうもこのアンバランスに対する措置としてはいかがかと考えられるのであります。何としても、こうしたような年金のまあ基本法とでもいうべき厚生年金改正案には、こういう思想が織り込まれておるのでありますから、それを考えたならば、いま直ちに今国会でこれらをさらに修正してというところまで、私は問題を詰めてお尋ねをいたしておるのではないのでありまして、これも従来の更新組合員に対する完全通算措置と同様に、来たる通常国会では少なくとも既裁定年金に対する新法引き上げということを、この際大臣から、何らかのお考えを具体的にお伺いをいたさなければ納得ができない問題につながるわけでございますので、これをひとつ事務的な判断を離れて、こういう厚生年金法の改正の中に織り込んであるという現実を踏まえて、農林年金既裁定対象者にも、ひとつ次の国会には考慮をするというような方向を大臣から承りたいのであります。
  58. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) ちょっとその前に、比較の対照について、政府委員からちょっと申し上げたいと、こういうことでございますので、申し上げさせていただきたいと思います。
  59. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 先ほど私が申し上げましたのは、一万円の初任給の者が同じ条件の昇給きざみで二十年勤めたとして取得する年金の相違によって、どれだけ給付額に相違が出てくるかという、年金制度としての薄い厚いの比較として、そういう設例を前提に申し上げたわけであります。渡辺先生の御質疑の前提になっております先ほどお述べになりました金額は、既裁定年金の一人頭の平均水準を直に使っての御立論のようにうかがうわけです。これは、そういうことになりますれば、当然厚薄が出てくるというのは、あたりまえといいますか、当然、やむを得、ざることであります。と申しますのは、何と申しましても、年金の金額、実額の厚薄の出てまいります一番大きなもとは、平均給与水準の絶対水準でございます。その点を御参考までに申し上げてみますと、比較をいたしますためには三十六年の数値しかございませんが、農林年金標準給与は三十六年度末、つまり三十何万人の方々のそのときの平均給与の総体の平均では一万四千三百五十六円でございます。で、それに対しまして、私学は一万九千七百四十円、それから厚年が非常に広い範囲でやっております関係で、厚年ですら年度末の平均給与水準の平均は一万八千五百十八円、それから一般公務員が二万三千二百十一円、都道府県は二万八千二百七十三円、市町村が二万二千四百五十九円。そういうことでいわゆる年金のベースになります要するに何と申しますか、雇用期間中の給与水準に、これだけの大きなギャップがございます。したがいまして、年金制度としては肩を並べておりましても、遺憾ながら実際に年金をお受けになる方の年金額そのものを比較いたしますれば、それは本来の雇用期間中の給与水準の差が、やはり何といっても大きく反映をいたします関係上、御指摘のような絶対金額になることは、何と申しますか、年金の罪と申しますよりも、やはりやむを得ざる給与の絶対水準の問題として御理解いただく事柄で、ちょっと年金という手法をもってここを救済するということは、年金という技術の中でこれを解決いたしますことは、たいへんに困難な事柄のように考えておる次第であります。
  60. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私は法律は新しくきめた場合に、不遡及という原則がこれは原則としては考えなければならぬという意味で先ほど申し上げたのでございます。しかし、これも法律をもってきめる場合には、何か例外も原則であるという場合が非常に多いのであります。あえて固執はいたしません。でありますが、まだ厚生年金法律国会を通っているわけではございませんが、提案はされているいろいろな問題もございます。そういう問題等十分私も検討し、事務当局にも検討させまして、いまの既裁定年金の問題もいろいろ考えて、くふうをこらしていく、こう考えております。
  61. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これもくふうをこらすということですから、まあきょうの段階ではそれ以上どうも前進は、なかなか容易じゃないようでありますから、しかたがないとして、これ以上はあきらめざるを得ないわけでありますけれども、たとえば私学共済にいたしましても、あるいは府県の段階補助をするとかいろいろな措置を講じて既裁定年金者の不利益を除去する措置を講じている点もいろいろあるわけですね。いわんや厚生年金自体が今度の改正案には、既裁定年金新法によってこれを遡及適用するということがあるのですから、これも更新組合員に対する完全通算と同様に私は来たる通常国会には、ひとつ積極的な政府改正案として取り上げて、国会に臨んでいただきたいということを強く要請をいたしておきます。特に最近のように物価がどんどん上昇するという中では、特にこの問題は切実なわけであります。物価が安定するということであれば、またこの問題の要請というものも重点的に取り上げる要素としてもなりがたいのでありますけれども既裁定年金者を取り巻く経済事情の変化、物価上昇というものが、これをぜひとも厚生年金と同様に取り上げていかなければ不均衡を来たすということでありますので、その点はひとつ十分今後の施策、法案提案の中に織り込むように御留意を願いたいのであります。  それから次にお伺いをいたしますのは、いま取り上げました中に触れました諸物価の高騰に伴う生活費の上昇というものについてであります。年々大幅に消費者物価が上昇しておる。ことし一年は公共料金を据え置きという方針を堅持している中に、例外的な引き上げが、非常に秘密果敢にその根を出しておる。そういう中で老齢者で年金以外に生きるかてを持たない者の年金額は実質的な価値を喪失しているわけであります。で、この実質的な生計をささえる価値というものを維持していくためには、これらの農林漁業段階に働く者が受ける年金に対して、その生計費なり物価なりにスライドをさせるということは、これは当然農林政策を離れた大きな政策として確立されなければならないと考えるのであります。農林年金改正案では、この点は全然触れていないということは、これらの改正案が実施されても、そのことは客観的な物価のはね上がりということによって、実質的な年金価値が相対的に減少しておる。こういう事実を無視した年金であってはならないと思うのであります。ただいま問題に取り上げました既裁定年金の引き上げも、これは関連のある問題でありますけれども年金額を物価の上昇率に自動的にスライドさせるという制度を、この長期給付によるところの年金制度の中に織り込むということがあって、初めて実質保障が将来にわたって可能になると考えるのでありますが、こういうことを一体大臣はどういう観点から整理をされて、スライド・システムというものをこの改正案の中に織り込まれなかったのかということを、まずお伺いをいたしたいと思います。
  62. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまのお話しのように、生計費とか消費者物価水準を基準としてきめるのは、御承知のように国家公務員等の給与につきましては、これを基準にとっておるわけでございます。したがいまして、年金等につきまして、直ちに生計費あるいは物価を基準としてきめるということ、スライドするということには、相当に疑問があろうかと思います。しかし、この生計費とか物価水準ということでなくて、厚生年金のほうに広い意味において年金額調整について、「この法律による年金たる保険給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」というような訓辞的規定が載っております。でありますので、農業団体関係の共済の法律にこれと同じような条文を入れることは、入れないといたしましても、厚生年金等におきまして、この規定によって国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合に調整が加えられるということでありまするならば、自動的とは申しませんが、農林年金等におきましても、それに沿うた最低保障額調整といいますかをしていく、こういうことは当然やっていくべき問題だと私は考えております。
  63. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もう一回お尋ねしますが、厚生年金では第二条の次に一条を加えて、「年金額調整」として、いま大臣が引用されたような訓辞規定が出ておる。それで農林年金にはこれを取り上げないが、厚生年金のこの法律改正されれば、当然この厚生年金の訓辞規定というのですか、年金額調整というものを農林年金にも適用すると、こういうことですか。農林年金法には書かなくても、厚生年金法がこういう第二条に次の一条が入って、年金調整額という、この「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」ということが、当然農林年金に適用するということなんでしょうか、どうですか。
  64. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 当然適用するということではございませんが、適用させるべく当然措置をとると、こういうことで、ございます。
  65. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 当然適用させるべく措置をとるということは、行政措置としておとりになるということでありましょうけれども、少なくとも農林年金法という実体法にそれを取り上げることが、大きな運用上の拠点になるのじゃないですか。したがって、私は農林年金法にも、こういう訓辞規定だが抽象的な表現は、私はこれはまあ賛意を表する表現ではございません。御承知のように、社会党提案農林年金改正案には、物価の変動が五%以上の変動を生じた場合にはスライド・システムをとるということを、法文の中に明記しておるのであります。なぜ五%ということをうたっているかといえば、幾多まあそれらの根拠をもって法案を作成いたしたのでありますが、たとえば国家公務員法の第二十八条には次のようにうたっております。「この法律に基いて定められる給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」、第二項として「人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与を決定する諸条件の変化により、表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」。経過的には厚生年金保険法  一部改正がここの段階になる前は、物価の変動六%をこえた場合には云々という経過もありました。さらには物価の変動五%をこえた場合はという経過もあって、この訓辞規定に直された経過も私は知っておるのであります。少なくともそういう物価のスライドというものを、この際農林年金法律の中に明文化しなければ、相対的に下落する年金の価値によって、それらの対象者は生計の拠点を喪失していくという事態に対して、私は厚生年金保険法に示すように、少なくとも本農林年金法にもこれらのスライド制というものを明記する必要があると思うのであります。大臣ひとつ年金以外に生計をささえるかてがない者に思いをいたして、これらの経済変動のめまぐるしい情勢の中にそれらが必要だということは、十分御理解を順っておると思うのでありますから、重ねてこの点の取り扱いをお聞きをいたしたいのであります。なお、衆議院の農林水産常任委員会では、このことの重要性にかんがみて「物価変動等に対応する年金額のスライド制を実施すること。」、これは与野党完全にこれらを合意の上に附帯決議をいたしておるのであります。そういう国会の意思表示というものに対して、大臣の答弁は、何となくどうも十分尊重した立場での御答弁とは理解しがたいとまあ受け取らざるを得ない。これは私は非常に故意にこの問題をひねって理解したのであれば、こういう私の発言は撤回をするにやぶさかではございませんか、いろいろそれらを審議をした過程で出てきたこういうスライド制を実施せよという、少なくとも衆議院における附帯決議の第二に掲げておることに対する大臣の御理解というものは、いまの御答弁では、十分これらの院議を尊重した上での御答弁とは受け取りかねるのであります。どうぞ政府委員のささやきなんかはひとつ無視して、大臣に私は伺っている。事務的な立場でものを聞いているのじゃないから、ひとつ国会のこういう意思表示というものを、大臣はどういうふうに理解されてどう善処をされるかということを、私はお尋ねをいたしておるのであります。時間もないので、衆議院で十分、審議をしたことと重複を避けて、私は結論的にこれらの附帯決議の受け取り方その他を要約してお尋ねをしておるつもりであります。ひとつ大臣の愛情のある御答弁を期待します。
  66. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局のささやきによって答弁いたしたわけで  はございませんので、私はたてまえから言いまして、先ほども申し上げ、いまも国家公務員法の規定を御引用なさったのでございますが、公務員としての給与は、労働といいますか、労務といいますか、あるいは国家に対する奉仕といいますか、とにかくそういう労働に対する報酬として給与を払う、給与を出す、その給与は生計費等物価の五%上がったという場合には人事院が勧告をする、こういう基礎の上に立っております。しかし、その年金は労務を提供しているということじゃなくて、やはりすでに労務を提供してやめたものが生活がやっていけるようなことで、従来の労務提供に対する直後の何といいますか、保障的なものを出すというたてまえでございますから、私はそういう意味におきまして、生計費または消費者物価水準に直ちにスライドする、こういうたてまえではちょっとおかしいじゃないか、こういうふうに申し上げたのでございます。しかし、厚生年金改正案にもありまするように、「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合」、あるいはまた衆議院附帯決議等にも「物価変動等に対応する」と、こういうことになっておりますので、こういう意味においては、私は厚生年金等におきましての訓示規定に従って「生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきもの」であるということで、加える、加えたということになれば、これは農林の年金についても、当然そういう措置最低保障額等においては私は講ずべきであるし講じていく。でありまするから、この法律の中に、この厚生年金のような、第二条の二のような規定を置かなくても私は当然措置を講ずべきである、こういうことを申し上げたのでございます。でございますから、われわれは改正の場合に、厚生年金のような条項を入れても差しつかえないわけであります。あえて私は拒否しているわけではございません。あるいは入れても差しつかえないかもしれませんが、入れなくても差しつかえない。
  67. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 入れても差しつかえないし、入れなくても差しつかえがないということじゃなしに、やはりそのわれわれ立法府としての立場では、明らかにそういうことを法律の中に明文化をして、宣言立法というような、宣言規定ではあるが、経過的にはもう具体的に厚生年金改正案のいままでの経過、ここに至る経過には、六%スライド、五%スライドということも中にあったのですから、もっとそういうものを法律の上で規制できるような措置が私は講ぜられて、当然それを行政的に措置する。こういうふうになっていかなければならんと思いますから、これを重要視してお尋ねをいたしておるわけであります。ぜひともこれも関連する諸要素の手直しと同様にお取り上げになって、次の国会にはこういう点をあまり論議をしなくてもいいように、ひとつ改正案の中に盛り込んでほしいと、この問題も質問ではありませんが要請を申し上げておきます。  次に伺いますのは、掛け金負担の軽減措置についてお尋ねをいたします。いわゆる給付費に対する国庫補助のあり方であります。農林年金は申し上げるまでもなく比較をいたす場合に、私学共済と比較をいたしますと、給付水準農林年金の場合は低い。しかしながら掛け金は高い。こういう実態におかれております。今回の政府案によりましても、組合員及び団体の負担は大幡に増額されておる。この三十四万人、団体がまた非常に多くあるわけでありますが、それはまた後ほど事務費に対する国庫補助の際に詳しくお尋ねをいたしますが、非常に弱小な団体をかかえておる。こういう特殊な農林年金については、よその私学共済なりあるいは公共企業体なり、国家公務員なり、地方公務員の共済組合とは別して、国庫補助が私は高額であっていいと思うのであります。こういう点をはたして勘案した上で今回の負担、掛け金率というものを考えておられるのかどうか。これは大臣ではなしに政府委員から御答弁を願ってけっこうでありますが、そういう他の共済制度というものを十分実態を勘案検討した上で、掛け金率を一体どのくらいにしようとしておるのか。その具体的な例等、それに至る比較検討の経過をまずお伺いをいたします。
  68. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 農林年金の掛け金率につきましては、現行の場合、国庫補助を、整理資源率を除いたものの一五%の国庫補助が受けられております結果、千分の七十八というのが掛け金率、それを組合と組合員とで折半をいたしておるのが現状でございます。これに対しまして今回の改正案を実行いたしますといたしました場合、先般資料で御説明いたしましたのは、補助対象がかりに従前どおりといたした場合には、組合と組合員負担すべきものが千分の九十六程度に相なるかということを御説明申しました。その後修正点の第三点で整理資源率十四・六五に対しても国庫補助が出るということに相なりました結果、他の給付が改善せられますこととおおむね相殺の関係にありまして、まず掛け金率は当初予定をいたしました千分の九十六をそのまま踏襲をしていけるであろう。五月に最低保障額が引き上がります際に、もう一度根本的な再検討をして、恒久的な掛け金率の設定をいたしたいというように年金当局も考えておりますし、私どももそれでよろしかろうかというふうに考えております。大体、今回の改正案の御相談を関係者と始めましたとき、掛け金率がおおむね千分の百を上回らないということを一つの限界、めどとしてやらないと無理がいくであろうというような大方の御意見が強かったように思います。で、そういった事情もありまして、いろいろ今後掛け金率をこれ以上なるべく上げないように、かりに最低保障額が上がりましても、どの程度に相なりまするか、そこで再計算の必要があろうかと思っておるわけであります。と申しますのは、おっしゃいますように、他の年金制度それぞれ同じ計算方式で掛け金率を出しておるわけなのでございますから、その間そう大きな開きはないわけでございますが、やはり給与の現額等が、要するに分母のほうが非常に大きな保険団体と分母が比較的小さい保険団体とで若干掛け金率に差が出てくることが、この農林年金の場合にも影響を及ぼしておろうかと思います。いずれにいたしましても、いまのような程度の掛け金率に近い掛け金率を将来についても維持できますよう、なお再計算を重ねてみたいというふうに考えております。
  69. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 実は、標準給与二万円という計算で農林年金の従来の負担率——政府改正案になった場合の負担率というものを計御してみたわけです。それから私学共済、国公共済、地方公共企業共済、これを同じ標準給与二万円というもので比較をいたしてみますと、確かに現行は千分の七十八のうち千分の三十九を使用者、組合員が同額負担をしております。それで七百八十円、組合員負担が千分の三十九で。改正案になりますとこれが千分の四十八ですか、千分の九十六を折半とすると、政府案は。それで九百六十円となる。月百八十円の負担増になり九百六十円になる。私学共済の場合は、御承知のように千分の七十の折半で千分の三十五ですから七百円。ところがこの七百円にはこのほかに千分の八が軽減措置がある。これは御承知のとおり。国公共済は八百八十円、公共企業体は八百六十円。こういうふうに、その政府原案に比較いたしますと一番農林年金組合員負担が高いということになるわけですね、そういうことになる。それで従来も実は非常に問題があったのは、政府補助というのは整理資源に対して百分の十五、したがって、数理保険料と合わせた総財源率から見ると、従来の政府負担というのは百分比にすれば一二・四六%にすぎなかった。私もこの共済組合の最初の理事として、この点は問題だとしばしば主張したのですが、大体このわれわれの理解する政府負担というのは、総財源率に対する千分の十五と理解しておった。ところが実質は整理資源に対する百分の十五であって、したがって、数理保険料と整理資源率とを合算した総財源率からいえば、百分の十二・四六にすぎない。ここに従来のこまかしがあったと共済組合側では理解をしてきたわけです。で、今回この百分の十五を国が整理資源に対してみるということは、従来の点からいえばこれは確かに大きな前進でありますけれども国家公務員共済組合を例にとってみますならば、この国家公務員では恩給期間、いわゆる旧法ですね、恩給期間を通算したために生ずる追加費用は全額国が負担しておる。しかも農林年金については厚生年金期間とか、あるいは旧法期間ですね、その間の通算したために生ずる費用の一五%しか負担しないという差別待遇をするということは、一体どういう御事情なのか、なぜ農林年金だけが国家公務員共済組合と同様にまるまる政府負担すべき整理資源を負担させないで百分の十五というものに頭打ちをするのかと、これは一体どこからきているのですか。
  70. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 国家公務員の場合は、御承知のように出ました保険掛け金率のうち、在来でありますれば、五五%を国が持ち、組合員が四五%を負担してまいったわけであります。一応その理解としては、いわゆる国庫補助相当部分が一〇%で、雇用者としての国の負担が四五%、それは組合員と折半負担であるという理解に立って、結果的には五五対四五という負担割合を示しておるように聞いております。農林年金の場合には、国が百分の十五、残りの百分の八十五を組合と組合員が折半負担をするという負担区分をとっておりますことは、御承知のとおりでございます。ただ、現行法におきましては、成立の経過からやむを得ざることであったかと思うのでありますが、その国が百分の十五の負担をする部分というのを、数理的保険料率に限定をいたしまして、整理資源率相当部分の千分の十四・六五については国が国庫補助対象にしないという措置を貫いたわけであります。それは厚生年金にとどまることをいさぎよしとしないで飛び出した、その飛び出したものがみずからの負担において解決すべき問題であるという当時の理解であったように聞いております。そのことが適当でないという御論議は、現行法の当時の国会審議においてもかなり指摘をされ、附帯決議にも盛られた事柄であります。今回衆議院において修正を加えられました結果、その千分の十四・六五に相当する旧厚年から旧現行法に乗り移るときに生じました整理資源率一四・六五を含めて国庫補助対象にするということに変わりましたので、今度は何と申しますか、名実ともに総体の掛け金率の百分の十五が国の負担であり、残余が組合と組合員の折半になる。その結果かなり給付内容が手厚く直りましたけれども、組合で負担すべき掛け金率は、暫定的ではありますけれども、当初予定した千分の九十六を大きく動かす必要はなかろうという見通しを得ておるのであります。整理資源率そのものの整理のしかたとして、これはその整理資源の発生した結局要因がどういうものであるかという行政的、あるいはまた政治的な判断によって、その負担区分というものがそれぞれ定めらるべき筋合いのものなのだろうと私は思います。整理資源率発生の原因が、全く現在の組合員の責めに帰すべからざる原因によって生じたものである場合、先ほど大臣がお答えになりましたように、もしかりに既裁定年金にまでさかのぼって給付の手直しをする、その既裁定年金部分についても手直しをするとかりに政策決定が行なわれたその部分を、やはりいまの負担区分で負担区分をきめることは、政策的に適当でないというようなことがあれば、その区分を別の負担区分で配慮をするというような、その際の政策判断が当然あるだろうかと思います。わが農林年金の場合には、発足出時の整理資源率一四・六五は、はなはだ遺憾ながら、客観的には国が負担すべきでなくて、もっぱら組合及び組合員負担すべき発生原因に基づくものであるという決定があって、今日に至っておったように思うのでありますが、しかしその点は、当時の審議過程を通じて、そうあるべきでないという強い御意見の表明があり、今回改正を見たわけであります。したがって、単に、あらゆる場合に、整理資源率負担区分はかくあるべしという抽象的な基準は、なかなか困難であろうと思います。やはり整理資源率発生の原因をつかまえて、その原因に応じた負担区分を、国と雇用者と被用者の間で適当に配分をするというのがたてまえであろうかと思います。
  71. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、この法律が誕生した経過からいっても、整理資源というものは、これは全額政府負担すべきものである、職域年金の特性にかんがみて特にその主張を強く持っておるものであります。したがって、そういう点からいえば、いま政策決定が出たなら、既裁定年金あるいは更新組合員に対する完全通算というようなことによって生ずる整理資源も、これは政府負担すべきものである、そういう内容を踏まえた政策でなければならぬということだけは、いま答弁の中にちょっと異質な問題を出したことに関連して、この意見だけは明確に表明しておきます。大体この国家公務員整理資源に属する追加費用全額国庫負担も、実はこの法律が最初に発足をする三十三年のときの国会審議を読みましても、事業主たる国家及び政府というふうに使い分けをしておる。しかしいかに器用な使い分けをなされても、負担する財源は税金であることに間違いはない。そういう点から見れば、国家公務員共済組合については、整理資源に属するものはまるまる税金で負担をしておって、はるかに条件の劣弱な農林年金に対しては、頭打ちで整理資源の補助を打ち切るということは、これは肯定できない、こういうことです。一体この農林年金という実態をどう考えているかということにまた問題が出てくるわけです。で、従来も総財源率に対して一割五分の補助ということが、実際は一二・四六%にすぎなかった、こういう一つの補助の引き下げという中に置かれて、いままできておるわけですね。これは大きな政策の上から、私は農林年金に対しても、整理資源については政府がこれを全額みるというたてまえを貫いてほしいと思うのです。大幅な負担の軽減が、団体なり組合員双方にこれははかられるということにもつながるわけでありますが、一体こういうことについて、この意見について、大臣はどういうふうにお考えになられますか。
  72. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは御承知のとおりだと思いますが、実は農林年金厚生年金から分離するときに議論が、あった問題は、農業団体職員国家公務員でないのだ、民間の一般のあれと同じなのだ、こういう厚生省、あるいは大蔵省あたりの考え方が非常に強かったわけでございます。しかし私どもは、これは国家公務員に準ずるといいますか、そういう性格を持っているのだ、私学共済というのがあるじゃないか、こういうことで主張をして、農業団体の共済年金制度をつくっていったいきさつがございます。そういうまあ基礎的な考え方が、財政当局や厚生省と違っているというのが尾を引いているといいますか、そういうことで、整理資源率などを国庫補助の中から除いて、なるたけ国で補助するといいますか、出す金を少なくしようというような意図があったのではないかと私は考えておるのでございます。だんだんやはり認識が違ってきましたので、これを今度やはり国庫補助対象に入れるということになりまするから、実質一五%というものに復元するようなわけでありますが、前には、そういうことを政府のほうで言ってはどうかと思いますが、看板に少し偽りがあったようなかっこうで、実質は国庫補助一五%になっていない、こういうことであったと思います。そういういきさつから、こういうふうになっているのだと私は理解しております。
  73. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もう少し具体的に伺いますが、たとえば最低保障というものが、いずれ八万四千円というものに引き上げられる、そういうことになってくれば、いろいろ整理資源も変わってくる、またいろいろと給与の実態が変わってくる。将来は整理資源率がまたアップすることも当然予想される要素が幾多あるわけです。そういうものを踏まえて、一体補助というものを、国の態度として一五%というものを今後も頭打ちにお考えになるのかどうかということを、大臣にひとつお尋ねをいたしたい。
  74. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 一応は一五%と踏まえておりますが、これにつきましては、またやはりだんだん多くするようにしなければならぬと私は思っています。そういう方向でこれからも努力したいと思います。
  75. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 一五%は決して頭打ちとは考えない、いろいろな要素を勘案すれば。したがって、整理資源率も高くなっていくとともに、補助率も高く考えていかなきゃならないだろう——私は大臣の御答弁で納得をいたします。そういう方向で、ひとつ、今後も出てくるそういう問題には、期待に沿うような御配慮を特段にまた要請をいたしておきます。  これで四点ばかり伺ったのでありますが、次に、この国の補助関連いたしまして、事務費に対する国庫補助についてお伺いをいたします。これはこの法律が制定される際に、かなり衆参両院で論議をされた経過もあります。また、参議院でも多少触れた経過もありましたので、できるだけ要約してお尋ねをいたしたいと存じます。農林年金の事務費に対する国の補助というものは、三十三年の法制定の際の審議では、いろいろな、当時の渡部政府委員のかなり積極的な答弁等も、読んでみるとうかがわれるのでありますが、いずれにしても、法律が出て、設立当初の事務費に対する国の負担というものは、組合員一人について百五円というものがスタートになっておった、三十四年から。であったが、実際、三十四年度以降は百円ということで単価が補助されておる。そこで、新しい三十八年度の農林年金の事務費を見ますと、一億八千万円にのぼっておる、一年間の事務費が。間違ったらひとつ訂正してください。三十八年度を例にとれば、農林年金の事務費は総額一億八千万円を投じておる。このうち、国の補助はわずか三千二百十二万一千円にすぎない。これが実態であります。差し引き一億五千万円というものは、積み立て金の運用利益によってカバーをしておる。それが、三十八年の農林年金の事務費の、これは収入の実態ですね。こういうことになっておる。で、この農林年金に対する国庫補助については、設立当時の、法制定当時の国会では、かなりの時間をさいて論議をされておる。一様に百円ではきわめて不十分であるという意見が各委員から述べられておる。政府も不十分であるということを肯定しておる。その論議を受けて、三十三年の三月二十八日の参議院のこの委員会附帯決議は、「この制度に対する国の補助を拡充すること。」という決議を一項目つけておる。ところが、農林年金と類似の私学共済というものに対する国庫補助というものは、御承知のとおり、一人当たりに直せば百十一円の国の補助がなされておる。国家公務員共済においても、三十九年度から、従来百円であったものを引き上げて百二十円、こういう措置を講じておる。共済組合の中では、給付内容同様に、農林年金が他の制度から差別されてきたという事態に置かれておる。これは一体どういう理由によるものでしょうか。もっと具体的に質問の焦点をしぼれば、私学共済には一人当たり百十一円の補助単価をし、農林年金には百円の補助単価をして、それでバランスがとれておるということになっているんでしょうが、どういう根拠で、農林年金には百円、私学共済には百十一円——今後の問題はあとで伺いますが、まずその点を一つ伺っておきたい。
  76. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 事務費の補助金につきましては、法制定当時からなるべく手厚い保護をすべしという御議論が強く、私どももそれにつとめてまいったのでありますが、なかなか御要望に沿うところまでいっておりません。今後とも努力をしてふやしていきたいと思っております。ただ、御質問の現状を一体どう理解しておるのかという点につきましては、釈明めきまして恐縮でございますが、一応、私学の場合には、組合員の員数は十万人、農林年金は約三十二万あるいは三十三万といったような数でございます。そこで、組合員一人頭こちらは百円、向こうは百十一円でございますが、絶対額ではかなりの相違があるわけでございます。なぜそれが百円と百十一円とをきわめて合理的に説明し得るかどうかについては、私もいささか疑問を持ちますけれども、しかし、一応三十万人掛ける百円と十万人掛ける百十一円ということで、かかる費用がそう違うわけでない。ある程度固定費部分があるのだから、同じ額を主張するのは遠慮してほしいという主張に対しても、一応一理屈あるものとして考えざるを得ない点がございます。ただ、それが正確にそういうことを反映した結果であるかどうかという議論は、まだ今後私どもとして詰めてやるべき余地が多分にあると思います。一応現状ではそうなります。それからなお私学は、それだけでもなお足らずに、実は普通の掛け金のほかにおおむね千分の三と承知しておりますが、事務費を組合から別途掛け金徴収の形で徴収すらしております。うちのほうは幸いにして予定の運用利回りがかなり有利に実績が動いておりますので、それほどのことをしなくても、事務費の主体を御指摘のように運用利益の超過部分をもって充てることで、掛け金徴収を、別途付加保険料をとらなければならないほどの実態にはなっておりません。いずれにいたしましても、そういうことが一応の現状での御説明として、十分でないかもしれませんが、そういうことでありまして、今後この点につきましては、事務費の負担の実態等をよくきわめまして、さらに増額に努力すべきものというふうに心得ております。
  77. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣が米審の麦価のお打ち合わせで四時までということでありますから、そのことを私も考えて、きょうの大臣に対する質問はこれで終わりまして、あすまた午後から大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、きょうの最後に、私、大臣に質問というより、まあこれは願いにつながるものでありますが、いまの事務費に対しましても、国会では、かなり三十三年の審議では事務費が不足であるというようなことを、政府委員も肯定しておる。かなりこの点については政府は積極的な誠意を示しましたが、三十四年にこの年金が設立されまして、私がその施行者の一人になっていろいろ経過をその後見ておりますと、農林当局は、この事務費に対する補助に対しても、積極的な努力を払われた経過というものは、遺憾ながらうかがえないという私は事実の認識に立っておるのであります。幸い、最近に至ってはそうじゃないということであれば、それは非常にけっこうなことでありますけれども、この法律が制定された当時の論議を経て政府が答弁された姿勢というものは、国会審議の場においてはこの国庫補助というものに積極的であったけれども、その後なかなかどうもこの問題一つに限っても、積極的な御努力というものが、遺憾ながらうかがわれなかった経過が、理事会の中で明らかにされた経過があります。これは一体農林省の責任なのか、年金当事者の責任なのか、私はそういうことをとやかく言うつもりはございませんが、いずれあすまたこの事務費の点についても少しくお尋ねをいたしますが、国家公務員でやっておる共済組合の運営は、管理費というようなものはこれは政府負担しておるわけですね。それで、消耗品その他の、まあ管理費というようなものですか、そういうものが共済組合の費用になっておる。そういうものに対しても百二十円というような補助単価を引き上げておる。いま私学共済との比較で私はお尋ねいたしましたけれども私学共済はその対象十一万人、職域も散らばってるといいますけれども、農林共済の場合は、さらにそれよりも事務をやるのに不利な条件に農林年金は置かれておる。その対象員数は三十四万人でありますが、そのまた処理する団体が二万三千程度の職域にこれは分散しておる。しかもこの二万三千の職域のうち五人未満の事業団体というものが、私の調べでは全体の三三%に及んでおる。こういう事務処理にはきわめて不利な状態に置かれておるものに、依然として百円だというようなことでは、これは政府のこの法律当初の審議の公約にも反する問題だ。これも衆議院附帯決議をしておる。一体この附帯決議を大臣はどういうふうに善処されようとしておられるのか、その御所信のほどを承ってきょうの私の質問は終わります。
  78. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 前にこの法律ができてから、どうも事務費に対する補助予算の計上に対して熱意が足らなかったじゃないか、こういうことでございましたが、確かに熱意と申しますか、団体と政府との連絡が非常に不十分な点があったのじゃないかと私は考えております。それからまた、一人当たりの単価にいたしますると少ないということでございますが、これもさっき事務当局で御答弁申し上げましたように、私学なんかより数が多いので、逓減というような形で少なくなっているかとは存じますけれども、好ましいことじゃございません。でございますので、これからは衆議院附帯決議趣旨もありまするし、いま御指摘の点もございますし、連絡を密にしてだんだんとこの事務費の補助増額には努力していきたい、こう考えております。
  79. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  80. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記を始めて。
  81. 北村暢

    ○北村暢君  私は余裕金の運用状況のわかる資料を、あすの審議までにひとつ間に合わしていただきたい。運用状況と今後の計画、大体の見通しですね、どのくらい余裕金というものが出てくるか、四、五年の見通しでいいですから、そういうもののわかる資料をひとつ出していただきたい。  それからこの余裕金のところの改正案で、農林漁業団体への貸し付けで、農林省令で定める、この省令の案があったら出していただきたい。なければ方針でもいいですから出していただきたい。  それからもう一つは農林年金職員給与の問題ですが、他の政府関係機関との、全部じゃなくていいわけですが、給与の比較ができるようなもの、これを出していただきたいと思います。  それからあすの審議で、参考人の出席を要求しておきたいと思いますが、農林年金の理事長並びにこれは政府関係、参考人ではございませんが、大蔵大臣というのもなんですから、主計局局。実は給与のこと、それから余裕金の運用の問題について、お伺いいたしたいと思いますので、主計局長をお願いしたいと思いますが、これだけわれわれのほうでお願いしておきますから、委員長のほうでひとつ善処願います。
  82. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 参考人のことは別といたしまして、御要求いただきました資料でございますが、北村先生、実は四月の二十八日の日に、予備審査の段階で、いまお示しの点の資料は御説明をしたつもりでおります。多分それで尽きておろうかと思いますが、いかがでございますか。
  83. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  84. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それじゃ速記を始めて。  ほかに質疑がある方は、ひとつやってください。
  85. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでは局長にお伺いしたいと思いますが、先ほどこの問題が焦点になりましたから、渡辺委員が触れていられない点について私はお聞きしたいのです。  この各種年金制度の比較を見て、農林保険というのは、この年金額の基礎のとり方ですね、たとえば公務員の場合は、最終三年の平均の俸給年金というものをとっておりますね。それから公共企業体の場合は一年をとっております。そうすると、私学とこの農林のほうは五年または通算、全年ですか、それのいずれかの高いほうを基準にとっておるわけですね。こういう格差をつけた理由はどこにあるのか、それを一ぺんお聞きしたいのです。
  86. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 農林年金は、従前退職時のさかのぼる五年を原則として、例外的に六十分の一との比較をしております。でこれは、今回の改正国家公務員並みに三年に短縮するようにお願いしてあるわけでありますが、従前五年をとって——私学農林年金が五年で、国家公務員が三年であった理由としては、国家公務員のほうは給与規程が全国統一として、全組合員が一つの給与規程で律せられているということが一つの理由。それから給与規程が画一をしている結果、月々定期的に給与せられるものだけを対象として算入して、臨時の諸手当は対象の外におく。それも給与規程が全国画一であるからそういう操作ができるわけで、そのことは、直接関係はないかもしれませんが、やはり実際上三年平均にすることをきめるということの一つの有力な理由にされておったようであります。私学及び農林年金は、企業体としては個々独立をしておりまして、全国一律の、中央集権的なと申しますか、画一的な給与規程がない、それからせんだって資料説明で申しましたように、農協の場合でもまだ給与規程そのものがないものがかなりある。それからまた給与規程があっても、定額部分と申しますか、本俸と諸手当との区分のない給与規程がかなりあるというようなことで、私学農林年金は全部つっくるみの総体の支給額を対象とし、そのかわりというとおかしいんですが、同時に逆選択の行なわれる懸念ありということで、三年でなしに五年にしておるわけです。要するに退職時直前にベースをうんと上げるということが起こり得るという懸念がそこへ働いて、五年の期間を要求されておったものだと承知をしております。その点私どものほうは、今回の改正では同じ条件の中でやったわけですから、かなり抵抗があったわけですけれども、やはり五年でなしに三年にとにかくしてしまったわけでございます。問題は内在しておりますが、そうしてしまいました。そうなりますと、おそらく同様の事情にある私学だけが五年でよろしいというわけにまいりませんので、私学も、近く行なわれます改正では、当然この点は私ども制度に接近と申しますか、均衡をとって修正されるものであろうと思います。で厚生年金は、御承知のように、企業体が非常に個々ばらばらでございますから、常に全雇用期間の平均をとっております。全雇用期間の平均ということになりますれば、二十カ年勤めた方なら二百四十カ月ということになりますが、そういうことで標準給与と申しますか、年金の基礎になる額がそれを基礎にしてはじかれるということになります。
  87. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、何ですね、今度三年を基礎にしたということですね、それと同時に四割というのは、いままでの三分の一も四割にする、これはどうです。いままでは三分の一という非常な不利な条件にあるわけですね、それを四割にするということは間違いないですね。
  88. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) そのとおりでございます。今回お願いしておりますものが百分の四十をスタートとし、その後一年をこえるごとに一・五%の加算をする。その点は国家公務員私学全く条件をそろえたわけでございます。
  89. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それからもう一つお聞きしたいんですが、三者構成の審査会というのがありますね、この三者構成の中には、労働代表がいわゆる学識経験者ということで入っておるんですか。
  90. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 今回の改正では、手直しをしておりませんが、現行法の六十三条で「審査会」というものがあります。これは「給付に関する決定、掛金その他組合員若しくは任意継続組合員が組合に対して支払うべき金額の徴収又は通算年金通則法第七条第一項の規定による、確認に対する異議を審査するため組合に審査会を置く」、何と申しますか異議裁定機関という趣旨で設けられております。これの構成は委員が九人でありまして、九人の構成は、その第三項におきまして組合を代表する者、それから農林漁業団体等を代表する者及び公益を代表する者それぞれ三人ということで構成が定められております。
  91. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そのことは私もわかっておるから聞いておるのですけれども、その代表はそれには入ることになっておるはずと思うのですがね。つまりその組合代表が、現行の中には入っていないのじゃないかと、構成の中に。私はその点をお聞きしているのです。
  92. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 組合と申しますのが農林年金当局のことでございます、ここで言います組合というのは。
  93. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういう解釈に立っておるのですか。
  94. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) はい、つまり年金当事者とそれから年金受給者、それから公益代表者、そういう趣旨で、組合はここでいう組合員を代表するもの、これは組合員を代表するものですから年金当局は入っておりません。先生の御指摘は、年金当局が入ってないという御趣旨でございましょうか。
  95. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いえいえ、そうじゃないです。私は組合員のことを言っているのです。組合員がこの構成の中に入っておるかどうか、私は構成メンバーを見ますと入っていないのじゃないかと、こう思うのですが。
  96. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 組合員を代表する者と、それから農林漁業団体等を代表する者と、それから公益を代表する者ということで、ここでいいます組合員と申しますのは、年金組合員でございます。
  97. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いや、それはわかっておりますが、だから言うのはその組合員ですが、構成員の中に事実法的な定めのもとに入っておるかどうかということを聞いているのですよ。事実、その構成の中に入っておるかどうか。
  98. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) それは年金に加入しております団体の組合員という意味では、そういう構成で入っております。
  99. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私、以上で終わります。
  100. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 本日は、これをもって散会いたします。    午後四時二十五分散会