運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-05-14 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十四日(木曜日)    午後二時十八分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            森 八三一君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            木島 義夫君            北口 龍徳君            仲原 善一君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            森部 隆輔君            山崎  斉君            小宮市太郎君            戸叶  武君            矢山 有作君            安田 敏雄君            高山 恒雄君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 檜垣徳太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○土地改良法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行なうことにいたします。  御質疑のおありの方は御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  3. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記始めて。
  4. 矢山有作

    矢山有作君 じゃ伺いますが、政府のほうから出された畜産物生産費調査があるわけです。その生産費の内容を見てみますと、大体生乳の場合が、飼料費が五五・七%になっておりますね。しかもその中で三四・二%は購入飼料、だから自給飼料建二一・五%になっているわけです。それから豚の場合には 飼料費の占めるる率が五四・一%、このうち購入の率が大幅でして三五・一%、自給が一九%。それから鶏卵の場合で見ると、飼料が六六・七%占めている。そのうちの六五・六%が購入、わずかに自給飼料は一・一%、こういうようになっているのですが、いずれにしても、生乳の場合も、それから肥育豚の場合にも、あるいは鶏卵の場合にも、生産費の中で占めておる飼料、えさの率というのは非常に高いし、しかもその中で占めておる購入飼料の率というものが非常に高いわけです。そうすると、いずれにしても、先日のときにも別の面から触れましたけれども畜産の安定的な発展をはかるというためには、どうしても飼料問題を何とか解決しなきゃならぬというのが一つの大きな重点になってくるんじゃないかと、こういうふうに私ども考えるわけです。そこで、実は農林省で立てられておる家畜改良増殖目標というのがあるわけですが、それと、きのう簡単な試算という形で私のところへいただいた飼料需給見通し、これとは相関連する形の中でこの計画というものが立てられておると解釈してよろしゅうございますか。
  5. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 現在農林省としまして明らかにいたしております昭和四十六年における家畜改良増殖目標は、これは先般も御説明を申し上げましたように、昭和三十七年の十二月に公表をいたしたものでございまして、これは行政上の目標としてわれわれは公にし、またそれによるべきものと、それを目標とすべきものと考えているのでございますが、それに対しまして飼料の同じ四十六年度における需給見通しにつきましては、従来といいますか、この目標を立てました当時において、所得倍増計画における計画試算というようなことからも関連して、国内飼料供給量並びに要輸入量というようなものを試算したものがございますが、それが現実には相当の狂いがすでに出てきておりますので、私どもも新しい需給見通しのための試算を必要とするということで、現在飼料需給の長期的な見通しについて作業中でございますが、その作業段階におきまして、現在のところ、畜産局として試算をいたしました一応の結果がございまするものですから、それについて矢山先生の御審議参考になるということで、昨日お渡しを申し上げたのでございまして、その間に、この目標見通しの間には試算のベースとしては関連を持って計算をいたしたものでございます。
  6. 矢山有作

    矢山有作君 こまかい点はその試算資料にして出していただいてからお尋ねしたいのですが、大ざっぱに伺っておきたいのは、その試算の中で、大体飼料自給度ですね、国内自給度というのを、現在との関連でどういうふうに見ておられますか。
  7. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) いま私が触れました試算の結果と、三十九年度の飼料需給計画との対比における国内自給度の問題を御説明を申し上げますと、昭和三十九年度におきます飼料国内自給度は、これは粗飼料を全部含めて計算をいたしますと、約七二%になっているのでございますが、試算の結果につきましてもおおむね同様の自給度になるということでございます。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、大体全体としての飼料自給度というものは、現在の七二%をやはり四十六年度においても目ざしているということですね。
  9. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私ども試算としては、一応こういう目標のもとに見通しを立てていきたいということで作業をやっております。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 三十九年度の濃厚飼料状態を見ると、濃厚飼料輸入依存度というのは五八・三%ぐらいになっておりますね。それというのは、国内産の中で、輸入原料による濃厚飼料分を含めての数字ですが、五八・三%になっているように資料をいただいておりますが、この濃厚飼料の点は、どういうふうに将来お考えになっておられるか。
  11. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 濃厚飼料の点について申しますと、御指摘のように、五八・三%という輸入依存度は、飼料形態輸入されますものと、輸入された原料より生ずる飼料とを合計したもので表示をしておるわけですが、同様の計算に基づきます四十六年度の試算結果としては、約六〇%、二%ばかり輸入依存度が上がりそうであるという数字になっております。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、その次の問題は、現在の国内飼料のうちの粗飼料というのは、可消化養分総量で六百二十八万トンほど見ておられるようですが、これが千四十六万六千トンと、四十六年を見込むことになっておるわけです。そうすると、これの実際的な生産裏づけというのは、これはどうなってくるわけですか。
  13. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私どもが現在試算をしております昭和四十六年の粗飼料給源と申しますか、その基礎改良牧車地を四十六年までには約五十万町歩にするという目標考えておるのでございますが、実際の四十六年における生産面積は、これは当年度造成したものの効率等考えまして、四十四万町歩面積改良草地を持ち、別に約二百万町歩野草地からの野草給源考え、それから既耕地における飼料作物作付延面積を百万町歩程度を見込むということにいたしまして、ヘクタール当たり生産量を、改良牧草地で約四二・五トン、野草地で四・八トン、既耕地における飼料作物ヘクタール当たり四九・五トンというような程度生産水準を前提にして試算をいたしております。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 現在の六百二十八万トンの粗飼料の、これの生産のほうの関係は、いまどういうふうになっておるのですか。
  15. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 三十九年度の自給計画におきますバックグラウンドとしての飼料、われわれの考え方といたしましては、改良牧草地十三万五千町歩、それから野草地二百三十六万五千町歩既耕地における飼料作物延面積五十二万七千町歩ということで、これのヘクタール当たり生産量は、改良牧草地で三十七トン、それから野草地四・四トン、飼料作物三三・八トンというような数字基礎にして計画を立てております。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 私、牧草のことは専門的な知識がないからよくわかりませんが、先日の堀本委員質問と、それからあなたのほうの答弁を聞いておりまして強く感じたのは、改良牧野五十万ヘクタールですか、実際には四十四万ヘクタールを考えているという話でしたが、実際にあの質問からみて、こういうふうな計画どおりの粗飼料を確保することができるのかという点で、土壌のことで問題になっていたわけですが、非常に不安な感じを抱いたけれども、そういう点はどんなですか。やはり御答弁になったとおりの不安な状態があるわけですか。
  17. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私は、先日の堀本先生の御質問に対しまして、草資源の乏しい西日本においてといいますか、土地制約の強い西日本の地帯においては、特別なところを除いて、自給資源の開発でかなり問題があるということを申したのでございますが、四十六年までに改良草地を約五十万町歩程度目標にいたし、かつ四十六年には四十四万町歩、あるいはこれは多少計算まだ詰めなければならない点もあるかと思いますが、その程度改良草地について生産を上げていく、また既耕地について、延べ百万町歩程度飼料作物生産期待をするということについては、手放しでこれが容易に行なわれるというふうに申し上げるわけにはいけないと思いますが、政府誘導施策というもの、また畜産経営における粗飼料供給重要性ということを、生産農家においてもよく理解をしました上で、農家の共同的な力を結集して、将来の酪農、あるいは肉牛生産等経営の中で、粗飼料給源をふやし、飼料自給率を高めていくという努力をするならば、それほど困難な目標ではないというふうに考えております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 西日本で、飼料自給を高めていくというのは、確かに困難な点があるわけですが、それを、いまのお答えになったような粗飼料自給度を高めていくのには、相当な予算的な裏づけがないと、私、実際問題としてやれないのじゃないかと思うのですがね。そういう点で、今度のこの改良増殖計画に対応する飼料計画を立てられる上においては、そこまでの検討までされておる必要があると思うのです。いまおっしゃったように、農民の共同的な力を結集して、給源を高めようといってみたところで、現在、御承知のような、そうでなくても低乳価のもとで、西日本でははっきり酪農の頭打ちが見えてきている。そういう状態の中で、飼料給源を高めるのに、農民の共同の力で一生懸命やってみてくれといったところで、問題は、国がそういうような飼料給源を高めるための財政的な措置をどれだけとるかということできまってくるわけです。そういう点についてははっきりした見通しを持って、計画を立てていただく必要がある。見通しを持ってというと語弊がありますが、計画を立てた以上、それを財政的な裏づけによって実施に移すという決意を持っていただかぬと、いままで酪農をさらに進められ、やってきて、しかも最近では、西日本地区でも多頭飼育化を盛んに奨励しておる。ところが、先日の答弁を聞いておると、あるいはまた、質問を聞いておると、多頭飼育化ということは、西日本地区では非常に困難な点もあるような節もうかがわれた。そうなると、多頭飼育化を進めて生産コストを低下させるようにする、そのためにはやはり国内飼料自給度を高める、それには粗飼料給源というものを開発するということになるわけでしょうから、それが計画倒れになっては困るので、予算の投資、財政的な裏づけをしていくということにならないと、ただ計画倒れになってしまうということではいけないので、西日本地区においては、酪農は相当の打撃を受けざるを得ないということになってくるので、その点についてははっきりとした腹をきめて、飼料自給源を高めていかないといかぬと思いますが、そこまで考えて、御検討いただいておりますか、どうですか。
  19. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御質問の御趣旨のとおり、これだけの事業を推進いたしますためには、国の財政支出、あるいは財政投融資という問題を関連して検討し、またそういうことについての腹をきめて臨むべきであると考えておりますが、今回の土地改良法の改正の中で、土地改良長期計画ということを、政府として決定をするということに相なっておりますので、畜産局としましても、少なくも草地の造成改良事業につきましては、土地改良法に基づきます長期計画の策定に加わりまして、その計画化に万全を期したいというふうに考えておる次第でございます。  五十万町歩ということは、実は現在までに、やはり三十七年に八万二千町歩、三十九年では十三万五千町歩改良牧草地考えておりますので、自余の事業を推進するための財政投融資に関する見通しは、現在のところ、実はそれだけの作業が終わっていないのでございますが、これらの点についても、いろいろ具体的にいま、むずかしいという面はございますが、検討をしてまいりたい。また飼料作物作付の増収に対する誘導措置につきましても、本年度の予算にも、既耕地における飼料作物生産誘導のための助成、補助の予算措置を講じておりますが、今後も計画的にそういうことを進めてまいりたいというふうに思っております。なお、飼料作物既耕地における作付は、最近、大体年間五万町歩程度ずつの統計上の増大を見ておりますが、先ほど申し上げましたような面積を確保いたしますのには、さらに積極的な方策を講ずる必要があろうというふうに思っております。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 この問題に関連して、国内飼料自給度を高めるという問題は、もっと資料が出てまいりましてから、詳しくお伺いしたいと思いますので、あすは資料を出せますね。
  21. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) あすは出せると思います。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃその資料を出していただく際に、これはもちろん言うまでもないことですが、全委員の人に出すようお願いします。  それから次にお伺いしたいのは、いささか活がちょっと横へそれてくると思いますけれども、この機会にお伺いしておかぬとぐあいが悪いような気がしますのでお尋ねするのですが、国内生乳生産者価格ですね。これは諸外国と比べてみた場合に、必ずしも日本のが非常に高いということにはなっておらぬように私ども考えておるのですが、どうでしょう。国内生産者価格が非常に高いというふうな考え方をしておられますか。
  23. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) わが国牛乳生産者価格でございますが、これは外国資料が必ずしも新しいものばかりでもないという点で問題がございますが、私どもの客観的な見方から申し上げれば、日本の少なくとも市乳用原料乳価格国際水準から度はずれて高いものであるというものではないというふうに考えております。たとえば一九六〇年の数字を見ますと、わが国市乳用原料乳価格が、全国平均で一キロ当たり三十円二十銭、カナダは三十三円六十七銭、デンマークは非常に安くて十七円三銭、イタリアが二十八円八十九銭、アメリカは三十九円四十銭、この生産費を実はそのまま比較をしてよいか、取引場所その他が同一であるかどうか、それから乳脂肪率等に違いがございますので、この数字でもって直ちに比較すべきものとも思えないという節があるわけでございますが、参考までに申し上げれば、さような位置になっているわけでございます。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 私もおっしゃるとおりに、日本国内牛乳生産者価格というのは、市乳の場合には特にそうですが、外国と比べて、デンマークだとか、ニュー・ジーランドあたりは別格として、そんなに高いものじゃない、こういうふうに考えているわけです。ところが、それが加工乳の場合には、多少の差異があるようですが、しかし、それが製品になった場合には、非常に日本の場合高くつく、こういうふうその原因はどこにあるかということを私ども考えてみますと、諸外国牛乳価格構成割合の図表というのを農林省で調製していただいて、私の手元にいただいておりますが、たとえば日本の場合には、三割九分が大体生産者取り分、三九・四%くらいになっておるようですが、それが生産者取り分、それから加工段階で二五・六%、それから小売り段階で三五%、それからイタリアあたりが、生産者段階で六一%、それから製造業者段階で二八%、小売り段階で一一%、それからスウェーデンあたりは、生産者段階で五三%、製造加工業者段階で三三%、それから小売り段階で一四%、こういうようになっておるわけですね。これで見ると、日本の場合には、原乳生産者価格というのは、特に市乳の場合には、国際的に比べてそんなに高いものじゃない。ところが、それが製品になった場合には非常に高いものについてくる。しかもその中の配分の状況を見るというと、非常に生産者取り分が少なくて、加工段階と、それから小売り段階の比率が非常に高い、こういうふうな実態が出ておるわけです。こういう実態を見ると、私どもは、今後の酪農に対する政策中心といいますか、考え方中心というものが、生産者価格を押えさえすればいいんだという考え方は、これは取り去るべきじゃないか。たとえば私が畜産物審議会委員に出ておって驚くのは、とにかく生産者価格さえ安ければいいという考え方をした学識経験者の方が多い。生産者価格を上げるから消費者価格が上がるんだと、こういう単純な考えをしておられる。だから、生産者価格を上げるから消費者価格が上がるんだと、こういう考え方の人が多いわけです。だから、生産者立場というもの、あるいは日本における、たとえば牛乳なら牛乳の、生産者から消費者段階にいくまでの価格構成がどうなっておるか、そしてそういう価格構成になるのにはどこに問題点があるのか、そういうことを一切考えない委員の人が非常に多い。これは今後、私はあの審議会の運営をやっていく上において非常に問題が出てくると思う。だから、これは畜産局長に言っても何でしょうが、やはり学識経験者として審議会に選んでいただく人というのは、これはもっと生産者立場に立ってだけものを考えるんでなしに、生産者消費者も含めた広い立場に立ってものが考えられるような委員というものを選んでいただかなければならぬと思うのです。極端な人になると、国内消費者価格が高くなれば、その原因がどこにあるかということは全然論外にして、外国から輸入さえすればいいという、こういう暴論を吐く委員すら出てくるような始末。だから、この辺はやはり少なくとも権威のある審議会委員として選んでいただく以上は、十分その構成について今後御配慮願いたいと、こういうふうに思っておるんですが、これは畜産局長に御答弁求めるのは無理かもしれませんが、しかし、少なくとも直接の担当責任者ですから、そういう私の意見に対して、まさか反対ではなかろうと思うのです。どういうふうにお考えになりますか。
  25. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 行政機関に付置せられまして、行政機関の具体的な行政処理という問題についての意見をもとに、あるいは建議を受けます審議会の機構というものは、やはり公正な立場からの意見期待をいたしておるわけでございますから、何らか一方に偏したような見方、あるいはそういう主張のみで御審議を願いますことは、これは一般に、審議会における御議論、御意見としては適切ではないというふうに存じます。ただ審議会委員任命権は、矢山先生のお話に出ましたとおり、行政最高責任者であります大臣の掌握をせられるところでございますから、私から触れるべき問題ではございませんが、畜産物価格審議会ということにかりに限って考えますならば、畜産物価格についての構成なり、あるいはそのことについての評価なりということについて、十分御理解のある方が委員として選任されることが望ましいということについては、矢山先生の御意見に同感でございます。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 私の考え方に賛成していただきましたので、ひとつ来年学識経験者としてお選びになるときには、少なくとも生産から販売に至る全般を見通して公正な判断ができ、そしてその上に立って意見を述べることのできるような審議会委員というものを選んでいただくように、ひとつさらにお願いをしておきまして、次のことをお尋ねします。  私は、加工段階における経費が比較的高いという理由の一つは、この間もちょっと触れたところだと思いますが、工場が大きなメーカーだとは言いながら、収入ということを唯一の目標にして、勝手にあちらに工場を建て、こちらに工場を建てるという形で、非常に規模の小さい工場を勝手気ままにたくさん建てていく。そういうところから製造コストが非常に高くなってくるという問題があるんじゃないか。これは畜産局長もそういうふうに言っておられましたが、全くそのとおりだと思うのです。それで見てみると、乳製品工場というのが、私のところにいただいている資料で、二百五十四という数字が出ておりますが、その中で、六十二トン未満処理能力しか持っていない工場が百八、半分近くあるわけですね。三百十トン未満工場まで加えると、これで百五十四ですから、ほとんどの大多数が三百トンそこそこしか処理できない。そういう小さな工場ばかりだということになるわけです。それから牛乳処理工場の場合には、二千五百二十九のうち、六・二トンしか処理できないのが千五百八十七というのですから、これも半分以上がそんなわずかな量しか処理できない。こういうふうなところに、非常に価格を高めていく一つの大きな原因があろうかと思うので、生産者価格を、生産農民が成り立たないように低く低く抑えることだけが能じゃないので、やっぱり酪農政策全体としては、こういった加工処理段階にもかなり計画的な指導というものをやっていかなければだめなんじゃないかと、こういうふうに一つ考える。それからもう一つは、小売り段階で、非常に全体の価格に占める割合が多いというのも、この間も申し上げたような小売りがあまり規模が小さ過ぎるという点にも一つ問題がある。したがって、今後の酪農の問題としては、そういった製造加工段階小売り段階にまで手をつけて合理化をはかっていただくということを、同時に生産に対しての御配慮を願うとともに、お考えをいただきたい、こういうふうに思います。特に製造加工段階合理化をはかるのには、これは相当な決意をもってかからなければならぬと思う。というのは、日本の悪い習慣として、官庁の首脳部が横すべりで大メーカーの幹部に入っていくという例がわりあい多い。最近の新聞でも、ある大乳業メーカーのところに、かつての農林省の非常に重要な地位におられた人が入られたような記事が出ておりましたが、あれらを見ておって、やはり私どもは一まつの心配なきを得ない。生産の面に対して、農民を保護するという立場から手を打っていただくと同時に、やはり加工処理段階にも思い切った合理化のできるような指導性を発揮してもらわなければならぬし、小売り段階でも同様にやってもらわなければならぬと、こういうふうに思いますので、その点で今後よほどしっかり腹をしめてひとつ御奮闘願いたい。どうですか。
  27. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 牛乳という商品を農家で生催し、乳業者加工し、販売業者がこれを消費者供給をするという一連の流れの中で、酪農というものが支配されるといいますか、規制されていくわけでございます。御指摘のように現在の現状における乳業実態というものがこのままでよろしいかということになりますと、私どもとしてはさらに合理化を要請し、また合理化を進めるための方策というものを検討すべきであるというふうに考えております。小売り段階につきましても、これは若干日本飲用乳消費の形といいますか、それが外国と異っているということから、特別の事情もございますが、現状小売り状態というもので今後放置してよろしいか、あるいは指導すべき、改善すべき余地はないかということになりますれば、これも十分検討に値するといいますか、検討すべき事項であるということでございますので、私ども生産から加工、流通、消費に至る問題について、われわれの力の及ぶ限り、また各方面の御示唆もあることと思いますが、その点を十分私どもも考慮といいますか、それを受け入れまして全体としての合理的な姿というものに近づけるような努力、方策を講ずるということにしてまいりたいと考えております。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 これ以上酪農なり畜産の問題で聞きよりますと、土地改良の何から全く離れたほうにいってしまって、土地改良に戻ってくれと言われるかもしれませんので、畜産の問題はまた日にちをあらためて、もっとたくさんの問題点がありますので、御質問もして考えをお聞きしたいと思いますので、きょうはこの程度でやめておきます。ただ資料としていただきましてから基礎飼料生産態勢の問題、さらには国内における飼料自給度の問題で草地の改良、造成等の問題がありますから、そういう点は資料を出していただいて、私ども気にかかる点が二、三ありますから、そういう点については質問させていただきたいと思います。  で、次に今度は農地局長さんにお尋ねすることになろうかと思うんですが、お伺いしたいのは、国民所得倍増計画を見ますと、計算基礎になる年次、三十一年から三十三年平均をとりまして、四十五年に一人一日当たりの栄養水準の見通しを発表されております。それを見ますと、熱量としては、カロリーで、計算基礎年次が二千二百七十三カロリー、それが四十五年には二千五百六十六カロリーになる、こういうふうに表示されております。その中身は米が千六十五カロリー、それが四十五年には千二十七カロリー、麦類は三百六十八カロリーが二百三十九カロリー、それから非主食としてありますが、これが八百四カロリーが千三百カロリー、こういう一つ目標が立てられておる。それからさらにたん白質の消費としては、動物性のものが、計算基礎年次には十六・二グラムだった、それが四十五年には三十三グラムになります。それから植物性が四十九・八グラムが四十九・六グラム、多少減ってくる。合計しますとたん白質は六十六グラムが八十二・六グラムになるのだ、脂肪のほうは計算基礎年次で二十四・一グラムが、四十五年五十三・七グラムになる、こういうふうに示されているわけです。で、このカロリーをとるということを目標にして、私はこの国民所得倍増計画なるものが立てられているのだと解釈しているのですが、そういう解釈がもし間違いでないとするならば、いま言いました栄養水準に達するために、目標年次の国内生産は米については一〇%の増だ、麦については一〇%の減だ、蔬菜については二〇%の増、果実は大体二倍だ、それから畜産物は大体三倍以上、特に牛乳は五・七倍だ、こういうふうに示されているわけです。するとこの栄養水準を達成するために、いま言いましたような目標年次における国内生産考えられているのだとすれば、これに伴う土地の利用といったらいいのでしょうか、そういう表現のしかたしかちょっとわからぬのですが、土地の利用というのか、それはどういうふうになると想定をされているのか。所得倍増計画を読んで見たのではちょっと出ておりませんので、その点がこういうりっぱな計画を立てる作業をおやりになる過程で、裏づけがあったのだろうと思うのですが、あるとするならばひとつこの際教えていただきたいと思います。
  29. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 農林省を代表しまして私からお答えするのが適当かどうかと存じますが、確かに先生のおっしゃるとおり、まず所得倍増計画を立てます際に、消費構造の変化と同時に、カロリー量の増加を前提にいたしまして、これに見合いますところの物の需給見通し作業をいたしまして、そうしてその結果米の反収を抑えまして水田何百町歩、それからローテーション——裏作の問題、畑作物につきましては夏作、秋冬作、それから永年作物も加味いたしまして、耕地の所要面積を算定をいたしております。その結果といたしまして前にも申しましたが、水田で六百二十一万六千町歩、それから夏作、永年作につきまして作付面積で五百九十四万六千町歩、これを土地利用率等の関係で畑地に直しまして全体で、——先ほど米六百二十一万六千町歩と申しましたのは間違いでございます。米が三百二十三万四千町歩、耕地田畑といたしまして六百二十一万六千町歩、その作付関係で耕地利用率は一二八・八%と見て、耕地の所要量を出しまして、壊廃等を考慮に入れまして造成面積を算定した、こういう一連の作業をやった次第でございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 その作業をやられた根拠になる土地の利用計画といったらいいのですかね、表現は。それがありますればこれもぜひ資料として御提出をいただきたいと思うのです。  それからその次にお尋ねしたいんですが、日本畜産というのは、いままで土地と、案外無関係な形で伸びてきたわけですね。つまり購入飼料にたよる、濃厚飼料に非常に大きく比重をかけて伸びてきたと思うのです。だから主知の結びつきが少なかった。ところが先ほど畜産局長が言っておられたように、現在の七二%ですか、自給度を維持していこうと思えば、改良増殖目標から見てかなりの国内生産体制というもの、飼料自給体制というものを強力に進めなければならぬと思うのですが、特に畜産物は三倍以上、牛乳については五・七倍なんていう膨大な計画なんですから、その飼料を具体的にどういうふうに確保していくかということは、これはもう土地の問題と関連して非常に重大な問題になってくると思うんですね。そういう中で私はこの間も触れたと思うのですが、いまはむしろ農地の壊廃のほうが造成よりも進んでおる、したがって四十、五年度の目標で見ると、むしろ現在よりも耕地は減少していく傾向が出てくるんじゃないかと思うのですが、そういう中でこの飼料自給度現状どおり、膨大な改良増殖目標を掲げておりながら保っていくというのは非常に困難な問題が出てくるのではないか、現在の土地の面積だけでそれを達成しようというのは、非常にむずかしい面があるのじゃないかと思うんです。そういう点でやはり積極的に農地の——いま農地といった場合は牧草地を含めておりますが、その拡大というものに積極的に取り組んでいかざるを得ないようになる、こういうふうな気がするわけなんですが、そういう点で草地の開発というものに、かなりの今後はウエートを置いて土地改良長期計画もこれは立てていただかなくちゃならぬと思うわけです。ところが、その場合に一つ問題点になって出てくるのは、これは例の土地利用調査研究報告書の中にも出ておりますが、草地を拡大していく場合の一つ問題点は、旧来の草地の多くが入り会い地の形で存続しておる、だからそれを改良して優良牧野にしていくのにはなかなかむずかしい問題がある。というのは具体的にいうと入り会い権者のうちで一人でも反対があれば、なかなか改良をやりにくいという問題のあるという点が指摘されております。それからさらに草地のほとんどが自然草地として旧来の利用管理、これは主として放牧と年一回程度の干し草をつくるという利用の程度ですが、それを前提として存在しておるのであって、部落からわりあい遠いところにあるたとえば山に例をとっていえば、山すそが耕地になっておって、中腹が山林になっておる、一番高いところ、一番奥のほうが草地になっておる、そういう配置になっておる。そこで考えられるのは、これから畜産の中で自給飼料を増加する、特に粗飼料自給体制を強化しようということになると、草地の再配置をやらねばならぬ、土地利用の再編成をやらねばならぬ、こういう問題に遭遇することになるという点が指摘されておるわけです。ところが、その際の障害についても指摘をしてありますが、人工草地造成の必要のあるような土地は、すでに他の利用に供されておる、所有権がしたがって確立をしてしまっておる、だから草地を造成するんだといっても、これはとてもむずかしい問題だ。したがって今後畜産飼料基盤というものを充実して、安定的な畜産の発展をはかろうというためには、この土地制度自体にまっ正面に取り組まなければならぬというふうなことになってくると思うんですが、それをやられぬ限りは、幾ら改良増殖計画を立てられて、そうして飼料自給率の現在の七二%を維持する、こういうことを言われても、特に粗飼料の増加の度合いが計画では非常に大きいわけなんですが、非常にむずかしいんじゃないか、こういうふうに考えられるんですが、それに対する対策というものをどういうふうにお考えになっておられるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  31. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほど来の畜産局説明にもございました草食性動物に対しまして、牧草なりあるいは飼料作物なりで購入飼料割合を低めてまいりたい、そういう立場でいろいろ試算等の過程におきまして、これを実行いたす手段として一つは永年牧草地の造成、これを一応五十万町歩に持っていきたい。それから飼料作物既耕地、畑地に植えられますところの飼料作物、青刈り用の飼料作物等を既耕地の中になるべく植える方向に持ってまいりたい、これが百万町歩、その両者をもちまして購入飼料濃厚飼料購入して、乳牛について申しますれば経営を営む立場を改善していきたい、こういう立場で、問題は永年牧草地の造成と既耕地の中にいかにして飼料作物を入れてまいるか、こういう立場から問題の解決がはかられているわけですが、まず初めに、先ほど来申しております六百二十万町歩の問題としては、いわゆる田畑を頭に置いて考えておりますので、その中で飼料作物をどの程度に位置づけていくかという立場考えておるわけです。これは競合作物が非常にございますので、非常に価格の相対関係等がございますので、いろいろの施策を講じますことによって、その方向を充実してまいる、現在のところはそういう形でやりますところには、セット的にいろいろ機械等を補助する、こういう形で誘導的にやっておるわけでありまして、これは明日でも畜産局につき御審議を願いたいところでございます。そして倍増計画におきましてはこの六百二十万の外で草地を、先般も三十万程度のものを造成しよう、こういう仕組みに相なっておる。しかし、いろいろ検討していきますと、それでは足らないということで、先般試算の過程におきましてはそれを五十万にふやした、こういう形で運んでいます。そこで草地の造成につきましてのネックの問題、いま御指摘になりました点は草地造成事業をやっていきます上の非常に大きなネックの点をいみじくも御指摘になったわけですが、確かに各地を見ましても、比較的人が放置をいたしましたところしかいま残っておらない。日本の牧野が木材価格の上昇と育林業の発達の結果、いいところはわりあいと木が植わっておる、したがって一山越したところに牧野がある、そこにいろいろと草地造成事業の手がつけられておる、こういう実態は御指摘のとおり。しかも、そういうところにおきましては、入り会い関係の複雑さのためになかなかできかねております。点々として草地ができておりますのは、この入り会い関係につきまして非常に現地の方々が市町村長等が御努力されまして、入り会い関係者の納得の上に一種の分解をやったところに、初めてできておる実例も相当多いようでございます。そこで入り会い林の問題をどうするかということが、やはり御指摘のとおり非常に大きな問題だと思います。私どもも先般も申し上げたかと存じますが、土地改良法におきまして、入り会い林の分解の手続の問題を法律的に取り組むことも試みたわけでございますが、御承知のとおり慣習法として成り立っております法制でございまして、なかなか行政法でこれを一挙に分解するということは、法律論的にも非常に問題がございますので、今回の改正におきましては、その部分は落としてございます。で、何といたしましても、実態としましては、やはり関係者一同がその入り会い権、古い形の入り会い権というものを、近代的な法制、つまり共有の姿なり、分割所有権なり、地上権に分解した上で、しかる後にどういうふうに使うかということが必要であろう。それを飛び越えて一挙に入り会い権を行政法規で崩壊させるということは、非常な問題がございます。そこで今回の土地改良法では非常に不満足でございますが、三条と五条を通じまして、考え方としてはその所有権を明確にさせる形を指導面で解決していく、その関係の法制を不十分ではございますが講じておるわけでございまして、やはり基本的には当面知事のあっせん、関係者の話し合いという形を通じてこの問題を近代的な法の関係に引き直して、しかる後に土地改良法のベースに乗っけて利用をはかる、こういうことがどうしても必要だという意味での改正はいたしております。しかし、これでまだ十分だとは存じておりませんで、現在林野庁が今度は中心に相なりまして、いろいろと入り会い権の近代化のための法制につきまして、農林省全体で協議中でございます。それらの手段を飛び越えまして一挙に土地利用を望ましい形に持っていくための非常に強力的なあるいは強権的な法制を土地利用法的に考えるかどうかという問題は、やはり非常に大きな根本問題でございますので、なお今後各方面から検討をして接近をはかっていきたい、現在のところはそういう形で問題を進めてまいりたいと、こういう立場に立っておる次第でございます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 いまおっしゃったように、なるほど未墾地を利用して草地を造成する点について一部の法改正が行なわれております。ところが、これは同意がなされないときには知事のあっせん調停を受けるということであって、あくまでも個人を中心としての了解がない以上は、どうにもならない。ただもうあっせん調停をするというだけに終わる場合も非常に多いわけです。それ以上の規制は何ら考えられておらぬわけですね。そうなると私は非常に草地造成という立場からすれば、なるほど多少は改善されたとはいいながら、実際問題としてこれが適用されていく場合には、私どもがいままで地方におって手がけてきた経験からすれば困難なんじゃないか。そこに私どもとしては、この草地造成のための未墾地に対する考え方としては、もっと思い切った考え方を打ち出すべきじゃないかと考えるのに、この法律では、逆にその未墾地等に対する権利を持っておる者が土地改良事業の地域の中に含まれておる場合には、その者の全員の同意を得なければならぬことになっているわけですね。未墾地以外の農地の関係者は三分の二の同意があればいい、ところが未墾地の事業参加資格を有する者については、これは全員の同意を得なければならぬ、そうすると、これはよけいやりにくいような形がこの面で出てきているのではないか、こういう感じがするのですね。どうしてそのただでさえ未墾地を利用しての草地造成、土地利用の高度化ということがやりにくい情勢にあるのに、それにますますやりにくい拍車をかけるような全員の同音心というようなことをなすったのか、この辺が私どもとしては了解に苦しむところなんですがね。
  33. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まずその前に、実は一挙に入り会い地を利用してしまう方法といたしまして、農地法によりまして四十四条買収で取っかかった経験がございます。これは強権的に国が買ってしまって耕してしまって、新しく人を募集して利用させるという法制であります。この運営にあたりましての長い間の経験によりましても、入り会い地の買収ということは、権利者の確認、権利の態様、補償の問題、非常に困難をきわめまして、入り会い地の買収というものがやや避けていかれたという実績があるわけでございます。やはり憲法下でございますから、強制買収するのにも権利を確認し、補償を正当にしてやるということは、これは動かせない事実でございます。入り会い地の場合は、集団規制の姿が濃淡ございます。あるいは所有と利用の関係が分離をいたしております。したがって買収補償という方式が非常に困難をきわめまして、避けた実例が相当多いわけでございます。したがって、根本的には入り会い地におきます権利、形式的には地盤が財産区であったり、市町村であったり、部落であったりしても実質は違う、あるいは地盤所有と利用の形態が非常に入り組んでおりまして、集団規制を受けて実体的所有権と認めがたいというような実例等も非常に多くございまして、金を払うにしてもだれに払ったらいいかわからないというような実例が多いわけでございます。そこで、私どもが基本的にはやはりその前近代的な法律関係をまず近代的な法律関係に入り会い地は直す、これが先決問題であるという立場で、入り会い地の共有化なりあるいは分解化なりを促進する、近代的な法制関係に促進するということから、やはり取っかかりたいという立場で、いまいろいろやってみておるわけでございます。  そこで今度の改正にからんでの第二点の御質問でございますが、第一回の際にも申し上げたと記憶するのでございますが、法律が一つのフィクションをとっておりまして、この手続が一定の地域を定めまして十五人発起人がそこで土地改良事業を行なう、その土地改良事業の中には、農用地の造成を含む、そうして三分の二の同意でかん排事業なり農用地造成事業が行なえる。まず地域をきめて関係の人が発起して同意をとる、こういう方式をとっております。そこで農用地造成の場合におきますと、その土地を所有者がそのまま自分の所有権、利用権に基づきまして利用する姿を前提といたしております。したがって未墾地におきまして、自分は木を植えていきたいと思っております人が、その地域を定められた範囲内において、この法律の三条で、地域内の土地の、未墾地の所有者として三条資格者ということに相なっておる。そこで植林をしてそこで仕事を続けたいという人を、それ以外の人の三分の二でその人の所有の姿のままでたんぼとして使え、たんぼとして使わねばならぬという強制はどんなものであろうか、これが買収してしまいましてたんぼにしてしまって、第三者に売る法制ならば別ございますが、これは一応その人が所有権に基づいて利用する姿を前提にしての話でございます。木を植えたいという人に、おまえは木を植えずにたんぼを耕せ、これからすきでもくわでも買ってこい、こういう強制はいかがかという問題が一つあるかと思います。そこで全員同意ということばが、ちょっと適当でなかったかとも思われますが、やはり土地利用の姿を本質的に変えるケースにつきましては、その人の同意の上でやる。そうでないと、木を植えたい人にたんぼを耕せと言うても無理だということで、同意を前提にとっております。同意ができなければ、最初に定めた地区を変更するという形によって仕事を進めるというのがこの法制の考え方でございます。しかし、それでは先ほど来申しておりますように不十分でございますので、六条の二項で知事のあっせんの規定を置いておりますが、実は一項のほうで、複雑な法文でございまして実は御理解願いにくいかと思いますが、資料、情報の提供、勧奨、所有権その他の移転、それから権利の設定等を発起人が中心になって話し合いをして、それでは参加しよう、こういう形にもっていく部分が、実は私ども法律的にも、実体的にも働かせたいと考えております。非常に大きな部分に自分が木を植えたいとがんばっておられる方に、発起人の方々が、おまえ一緒になってたんぼに使えというのではなくて、そのたんぼに使いたい他の三分の二の人に未墾地は売ってくれ、売らなくてもいいから、じゃあ利用権設定をさせろと、そういう関係を通じまして問題をほどいていくという必要がどうしてもあるということで、この六条一項にいろいろ書いてございますが、この協議、それから同意を得るための必要な措置というところに、行政的にもこの法文の裏づけの上で農用地外資格者のうちで未墾地を農地として使うことに同意しない方を取り込んでまいるという方向に努力をする。その裏づけとして知事のあっせん、調停をうしろに備えております。しかし、おっしゃるとおり、それでは不十分だ、これを強制してしまえという御見解も確かにあろうかと存じます。しかし、この法律は一応買ってしまう場合なら別でございますが、所有の状態のそのままで抱き込もうというわけでございますから、同意を前提にするこういう法制にいたしたわけでございます。後退をしたという意味ではないと申せるかと思います。いずれにしろ三分の二の人で強制することは、あまりにも根本的に自分の所有権に基づく土地の利用の変更でございますので、やはりこういう法制が穏当であろうというふうに判断をした次第でございます。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 この議論は衆議院でも行なわれておるようでして、私もあの議事録を読んでみて同じような御答弁をいただいたわけですが、私自身はどうも納得がいかない。たとえば畑であったものを田にしてしまうのだ、こういう土地改良もある。その場合は畑地として利用できなくなる、田にしてやるのだ、これも五十歩百歩の話だと思うのです。いまおっしゃったのも。そうすれば草地造成というものを、今後の畜産と合わせて非常に重大なる農政上の仕事として取り上げていく以上は、これはやはりあまり従来の不合理と言ったら語弊があるかもしれませんが、不合理な土地利用の上に組み立てられた私権というものを、あまりにも尊重し過ぎるということでなしに、この間も話に出ましたように、土地改良事業というものは、かなりの公共性を持った事業だという立場に立つならば、そこで多少の規制ということはあってもいいのではないか。したがって、六条の一項で言われましたような事柄にしても、これにしても、私は、なるほどこの「権利の移転、設定、変更若しくは消滅に関し、その者及びその交替をしようとする者又はその権利の移転、設定若しくは変更を受けようとする者と協議し、」云々という規定はありますけれどもね。これもあくまで個人の自由意思を尊重するという立場しかとっていないわけです。だから、六条の一項を適用する場合にも、ある程度これは強制力を持たすというたら、あるいは誤弊があるかもしれませんが、有効により高度に利用していくという見地に立つなら、適当な補償をすることによって、権利の移転を行なうとか、あるいは権利の設定を行なうとかいうところまで進んでもいいんじゃないか、こういう感じがするのが一つと、それからもう一つは、この土地改良法の一部改正だけで農用地の造成というものをどんどんやっていくということは、非常にむずかしい面がある。いまのこの六条の規定からしても、未墾地の買収等においてむずかしい問題があるのだから、そうすれば、ただいまおっしゃっているように、いままでやって非常にむずかしい面もあったということを言われましたが、農地法の四十四条の未墾地の買収の規定というものを、やはりある程度これは活用していく必要があるんじゃないか。農地法の四十四条というものを活用して、そうして農用地の造成をはかるという方向に向いていかぬと、この四十四条というものの活用を最近はほとんど忘れた形になっていると思うんですが、この活用を忘れておって、土地改良法だけの適用に頼って農用地の画期的な造成をやるというのは、非常にむずかしくなってくるんじゃないかと思うんですがね。その辺で農地法の積極的な活用をはかりながらやられるなら、これはまたこの土地改良法のこの六条の規定でもあるいはやっていけるかもしれぬ。その辺はどうですか。
  35. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いまおっしゃいましたように、ある未墾地の所有者がおる、そこに牧草を植えてしまう、しかし、その所有者がその牧草を利用しない、畜産なり、肉牛を飼う意思がない場合には、その土地に牧草を植えても使いようがない。したがって、私先ほど申したようなことに相なる。ところが、いま矢山先生おっしゃったように、そういうことじゃないのだ、ほかの人間がそのところに牧草を植えて、他の人間がそれを利用するのだ、そのために牧草を植えさせろ、こういうことだろうと思うんです。これはそれ以外に方法がないと存じますが、そこで私どもは利用権の設定なり、貸借権の設定なり、売ってくれるなり、そこを話し合いでほどいていこうというのが、六条一項でございます。しかし話し合いでほどくのでは足らないで、強制的な利用権設定の方式が考えられないか、あるいは農地法四十四条で、いっそのこと国が買って売ったらどうか、こういう問題が御意見としては確かに存すると存じます。実は利用権設定に関しては、農地法にもございまして、農業委員会を間に挟んで利用権設定の法制があったわけでございますが、現実には、これはなかなか動いておらないわけでございます。それから四十四条の問題でございます。四十四条も、これは実は先般御意見が出ました土地利用区分と非常に密接な関係がある問題なのでございまして、食糧が非常に不足なときに四十四条で買収をし、相手方が訴願をし、いたしましても、勝ってまいりました。その後食糧の事情が変化いたしまして、民地等の買収で訴訟の問題に相なりますと、これはなかなか裁判判例等におきましても、最近におきましては、どっちがいいのか疑問であるという判例が非常に出てまいりました。これは先般も私ちょっと申し上げた土地利用に対する何といいますか、国の意思の問題といいますか、価値判断の問題、一定のところに木を植えるほうが国民経済的にいいのか、あるいはその地域におきまする産業上いいのか、あるいは雇用の問題もございましょう。で、草を植えることが国策上必要なのだったら、四十四条で買収をして、いまの御承知の反四千数百円ベースでございますが、買収をしていくことが妥当なりやいなや。これはやはり土地をどう利用することが国民経済的にも、政策的にも一等正しいことかという問題に実は四十四条はぶつかりつつあるわけです。そこで、ことに四十四条買収にしまして配分をいたしていくという場合に、労働力の減少その他で、なかなか応募の状態もいろいろ変わってきております。したがって、現在は四十四条買収は継続地区にとどめまして、そうして地元増反的なものを、開拓パイロット事業として話し合いの上で調達させる、そしてそれを利用する、こういうふうに現実的に動いております。その線に沿いまして、実はこの六条も実態に沿って法制的に整理をいたしたわけでございますが、四十四条なり、あるいは新しい法制で権力的に草地造成をすべきかどうか、土地の他の利用にかかわらず、強制買収、強制利用権設定を行なうべきかどうか、これはいろいろ検討いたした次第でございますが、この法律案作成に当たりました私どもとしては、それだけの強制力を現在新しく法制的に作成することについては、なお検討を要するという立場で、不徹底という御批判もあるかと存じますが、あくまで六条一項及び二項の線で事態を一つでも是正していく、これから先はいろいろ御意見の存するところと、かように存じますが、そういうふうに整理をいたしておるわけでございます。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうになってくると、やはり一番根本的に大切なことは、土地利用区分を確立するということが、何といっても基本的な問題だということに議論が戻ってしまうわけなんです。それで、土地利用区分というものが確立しないから、その土地利用区分というものは、狭い範囲の農業用あるいは農林業の中での土地利用区分の問題もあろうし、この間話が出たもっと国民経済全体から見て、工業用地にするか、住宅用地にするか、あるいは農業用地にするか、そういった問題も含めて、やはり土地利用区分というものが確立されてこぬというと、いま言ったような問題に逢着してくると思う。しかしながら、それを繰り返してもしようがないので、それは繰り返しませんが、ただおっしゃるような問題がここから出てくるんですから、土地利用区分を確立する方向で、今後やはり当局として御努力を願わなければならぬという立場から、もう一度申し上げます。  それからもう一つの問題としては、なるほど、いまの状態の中で強制的に利用権を設定するというようなことが法制上むずかしいとおっしゃるんですが、しかし、法の解釈なり適用というのは、局長が先ほども言われたように、そのときのいわゆる社会情勢というものがかなり反映をしていくわけですね。食糧増産が非常に強く要望されておったときには、未墾地として買収をしてもしやすかったと、裁判で負けることはなかった。——そのとおりだと思う。ところが、今度は国民所得倍増計画というものを立てて、しかも四十五年を目標にして国民の栄養水準はここまでに持っていくんだという計画のもとに、その裏づけとして農産物の生産はここまで持っていくんだ、こういう計画を立てられているんですから、その計画を達成するために土地をこういうふうに利用するんだということになれば、これは何というんですか、戦後、食糧増産が強く叫ばれておったのと変わらないようなやはり情勢にあるんじゃないかと私は思われるので、そういうような未墾地の活用ということに対して、それほど憶病になる必要はないと思うのです。だから、私はやはり農地法の未墾地買収というものを最高度に活用しながら、さらに一方では、将来の方向として、いますぐ改正しなさいと言ったってできぬでしょうが、将来の方向として、強制的に利用区分を設定して高度の利用をはかっていくというようなことにも目を向けていただかぬと、実際問題として五十万町歩からの草地造成はやはり容易なことじゃないと思う。ですから、そこまで踏み切っていくだけの決心がないというと、やはり家畜増殖計画を立てても、裏づけになる飼料の側からせっかくの計画がくずれてしまう、そういうことになるおそれが多分にございますので、そういう点は、これは政務次官もおられるのだし、やはりよく御認識いただいて処理いただくように、将来の法制のあり方として御検討願いたいと思うわけです。
  37. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) おっしゃることよくわかりまして、十分その線に沿って検討いたしたいと存じますが、私ども非常に考えさせられておる問題は、おっしゃるとおり、酪農を伸ばす、五十万町歩の草地を造成せねばならぬということ、あるいは片方におきまして、いずれ林業基本法等の御審議等もあるわけだと存じますが、その価値づけの問題が法制的な強制力にどこまで結びつけ得るか、ここがやはり非常に問題点であるということで苦慮をいたしておる点でございます。今後とも十分検討はいたしますが、土地利用区分ができればそれができるということではなく、逆に土地利用区分もその価値づけの上でどうなるかという問題に逢着をいたしておるという関係もございますことだけ申し添えさせていただきます。
  38. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) ただいま局長から答弁されましたが、いま矢山委員の御指摘の点、私も非常に考えておるところであります。この法制におきましては、未墾地を活用する、利用する、田畑、草地にするという場合、農用地にする場合におきましては、全員の同意を要するということになって、全員の同意を要するようないろいろな規定を設けておるのでありますが、大量に畜産奨励のために草地を取得するという場合に、この法制でいいかどうかという問題についてなお検討を要する点があろうと存じます。いまお話しのようないわゆる農地法の四十四条の強制買収の問題もありますし、また、このいまの法制も非常に妙味がある。何でも強制というよりも、話し合いでいくことのほうがいい結果をもたらすこともありますので、しかしながら、これだけでうまくいくかどうかという問題についても、私も考えておるのでありまして、いま局長がお話しになったように、いまの御指摘の点については十分検討いたしたいと思っております。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 土地利用区分が確立しなければ、未墾地の買収、草地の造成が積極的に進まぬという問題、さらに、利用区分を確立するために社会経済的な立場考えてやらなければならぬのだという問題、それはもうおっしゃるとおりなので、これはやはり土地利用区分をやろうとすると、社会経済的な立場からも判断しなければならぬでしょうし、まあ鶏と卵のようなもので、要はその土地利用区分が確立すれば、その上に立って未墾地の買収をやり、利用権の設定をやって、そうして高度の利用をはかっていく、こういうことになるわけで、私はそういう水かけ論は別として、要するに基本的には土地利用計画を策定していかなければいけないということが言えると思う。  それで、特にそういう作業をやる場合に重要なのは、いま御承知のように所得倍増計画のアフターケア等も企画庁あたりで行なわれておる。それから国土総合開発計画等もあり、それに基づいての地域開発計画等も立てられ、また、進んでいくと思う。ところが、それと、この間も言いましたが、計画との関連性というものがどこまで実際に検討され、組み込まれているのか、こういう点は非常に問題があると思うのです。その点についてはこれはもう御承知のように、そのことをちゃんと指摘した資料もあるわけです。私は、きょうここにもつてきておりませんが、地域開発問題とその対策ですか、あれを読んでみても、開発計画と農業計画との組み合わせというか、調整というか、それが積極的に行なわれておらぬのだ、そういう欠陥はこういうところにありますといって、指摘しているようです。で、そういう情勢の中から考えてみて、私は今後の国土総合開発をやっていく、それに基づいて地域開発が行なわれていく、さらに一方ではまた、企画庁あたりで所得倍増計画のアフターケアがなされ、そういう段階にやはり農業というものを将来どういうふうに日本経済の中で位置づけていくのかということを積極的に検討されて、農林省のほうが相当前向きの姿勢の中でその農業計画というものを組み込んでいく努力をしないと、私はだんだんとほっぽり出されてくるのではないか、こういう心配が非常にあるわけです。たとえば、自由化の問題にしても、うそかまことか私は知りませんが、漏れ聞くところによりますと、先般自由化が行なわれた、あの自由化の問題にしても、通産省が非常に積極的でレモンの自由化に踏み切らされた、こういうふうなことを聞いているわけです。そうすると、やはり問題は、私は最初に大臣と話をしたときに申し上げたのですが、日本農業というものを、現在の高度成長の段階では、その高度成長をやっていくための一つの踏み台にしようという考え方というものがはっきり出ているわけです。特に、産業がどんどん膨大な設備投資をやって、それがフル運転をやって、生産がどんどん軌道に乗っていく。そうしてそれをどうかしなければならぬ、国内でさばくのには、国民の消費水準があまりにも低い、そうして外に市場を求めなければならぬ。ところが、外に市場を求めるにしたところで、現在の国際市場争奪戦は非常に激しい。そうなれば、農産物というものを犠牲にしても、農業を犠牲にしてでも工業製品を売っていこう、こういう形になっているのが、いまの日本の経済の姿なんでしょう、端的に言うと。だから通産省あたりがかなり強腰なんです。一方的にレモンを自由化するといって、農林省は受けたんでしょうが、自由化させられてしまった、それも考えて、私は非常に消極的な態度をとっておったのでは、これからの日本の経済の中で非常に重要な位置を占める農業というものが、ますます片すみに追いやられてくることになりますので、ひとつ思い切って積極的な姿勢をもって、これらの問題に対処していただきたいと思うわけで、これはひとつ政務次官のほうから御見解を承って、そうして私の質問は、きょう農地局長にもお願いしました栄養水準の見通し、それに国内の食糧の生産見通し、それを裏づける土地利用の状況、これを資料にして出していただいて、それに基づいてもう一つ掘り下げてお伺いしたい、こう思っておりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  40. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) ただいまいろいろと御指摘の点、私も同感でありまして、ことに開放経済体制におきましては、御承知のとおり、自由化の問題、あるいは関税の一括引き下げの問題とか、いろいろな外部からの要請が強いのでありまして、これに対しましてわれわれは、農林省といたしましては、これは農民の保護という立場から常に検討を加えてまいっているのであります。米麦はもちろんのこと、その他の酪農畜産、この方面はことにそうでありますが、まず国内農民のいわゆる対抗力というものを養わない限り、とうていそれは自由化に応ずることはできない、こういう考えでわれわれは進んでいるのであります。レモンの問題は、これはまた、ケース・バイ・ケース、ケースによって違う問題がありますけれども農民の保護という立場に立っては、われわれは決して負けないつもりでやっているのでありますから、今後価格問題、あるいは流通問題等も十分これは農民の所得計画において考えなければならぬ、同時にまた、生産性の向上という点についても、十分力を注いで今後やっていきたいというふうに考えている次第であります。
  41. 矢山有作

    矢山有作君 資料は出ますか。
  42. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 耕地利用の資料の御要求でございますが、所得倍増のバック・データは用意いたしました。さきのもう一つのアフターケアのほうは作業中でございます。
  43. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  44. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をつけて。  本日はこれで散会いたします。    午後三時五十七分散会      —————・—————