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1964-05-12 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十二日(火曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————   委員の異動 五月七日   辞任      補欠選任    牛田  寛君  中尾 辰義君 五月九日   辞任      補欠選任    中尾 辰義君  牛田  寛君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            櫻井 志郎君            森 八三一君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            岡村文四郎君            北口 龍徳君            仲原 善一君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            小宮市太郎君            矢山 有作君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 檜垣徳太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○土地改良法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 矢山有作

    矢山有作君 今度提案になりました土地改良法の一部改正案に直接触れる問題に入ります前に、ひとつお伺いしておきたいと思うのですが、御承知のように所得倍増計画、それから全国総合開発計画が策定されまして、全国的に地域開発ということが言われるようになったわけですが、その場合、地域開発というときには、工業誘致政策というのが御存じのように中心になって取り上げられてきた。特に工業誘致政策の中でも、臨海性装置工業建設ということが中心になって、そのための基地づくりをやるということで、地域開発が行なわれてきたわけですが、それを農業という立場から見た場合に問題になりますのは、第一には、農業政策というものが、そうした地域開発政策として完全に無視されておったんではないかということ、ただそれだけでなしに、さらに工業のために、農業で使用しておった土地や資本や労働力、そういった諾資源農業の側が提供することになった、こういう結果が生じておるんではないかと思いますが、そういうところから見ますと、農業として開発政策上独自の立場を主張するということは、いままで何もなかった。農業というのは地域開発政策からは取り残されてしまっておった。むしろ地域開発ということの中で、農業被害をこうむることのほうが大きかった、こういうふうに私ども考えておるわけです。そういうあらわれというのは、いろいろと出ておりますが、まず第一に出てきた現象というのは、工業用地造成されるのにつれて、農地壊廃が進んできた。したがって、経営規模零細化傾向というものが一そう強まってくる可能性が強い。このことは、農地壊廃状況というのは、いただいた資料にもございますし、それからまた必ずしもそういう中で、農業経営規模が拡大という方向をたどるということばかりも考えられぬで、零細化傾向も一部考えられるんじゃないかというようなことは、年次報告にも出ているわけですが、そういう問題が一つ起こっております。それからもう一つは、工場の進出それから宅地の需要の増大ということが、農地価格を非常に高騰さした。そうなるというと、自立経営なり、共同経営といったものをやっていく場合の非常な障害になる、こういうことが一つは言えると思う。  それからもう一つは、兼業化一般的な進行によりまして、農業技術導入の意欲が失われてきた。むしろ導入のテンポが低下してきた こりいうことも指摘できるんではないか。それからさらには、農業外の賃金が上昇する。それに引きずられて農業労賃も非常に上昇してくる。それが農業経営を圧迫することになる。したがって、その結果としては、農家の所得率というものが生産量に比較して非常に低下する。このほか、工業化に伴って煙害や汚水の問題が起こったり、あるいは農作物に被害を与えるというようなことがあるし、また工業用水が増大すれば、既存の農業水利との間に非常に大きな問題を起こしておる。こういうように、工業化進行の中で現実農業経営近代化への条件を阻害しておる現象が起こっておるわけです。しかも、そういうような地域開発をやろうという地域では、長期的に見まして、農業発展を困難にするような開発計画というものがつくられる場合が多い。これは、今度の新産都市建設基本計画なんかを見てみましても、そういうような心配があるわけです。また、事実これまでにもそういうような実例があると思います たとえば、干拓農地工場敷地転用されていったり、農業用水のダムが工業用水のほうに転化されて使われていくと、こういうようなことがたくさんあるわけですが、そういう点から考えまして、私どもとしては、今後地域開発を進めていく場合に、その中で農業というものをどういうふうに考えていくのか、このことは、今後ますます地域開発が促進されるにつれて、農業側からは真剣に考えておかなければならぬ問題だと思うのですが、そうした点から、現在までの地域開発政策上におきまして、農業政策というものが無視されてきておった、そのままでは済まぬわけで、今後そういう中で、どういうふうに農業政策というものを展開していこうとするのか。これは、やはり土地改良法審議に直接入らしていただく前の段階で、重要だと思いますので、大臣のほうからお考えを承りたいと思うわけです。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 地域開発、ことに工業面中心とした開発につきましては、いま御指摘のような、農業に対する影響が種々あると思います。新産都市等の指定につきましても、農林大臣が協議を受けて、発言の機会はあるのでございますけれども、なお、具体化計画につきましては、県当局等におきまして、農業面を相当重視してもらわなければ困ると、こういうふうに通牒を出しますとか、そういう形で地元の計画に参加するようにいたしております。  なお、いま御指摘のような面もございますので、本年度予算等におきまして、新産都市周辺、あるいは工業都市周辺、あるいは内部における農業あり方、あるいはその調整等についてなお調査を進める、こういうことで予算の計上もいたしておるわけでございます。  なお、その土地改良法の中で、再再御指摘ありまするように、長期計画を立てることに相なっております。でありますので、長期計画につきましては、特にこの新産都市関係、あるいは工業都市関係等について、十分農業が成り立つように計画面に織り込まなくてはならぬと思います。なお、長期計画とは別に、御承知構造改善事業を行なっております。その構造改善事業等におきましても、新産都市周辺における農業あり方が、あるいは零細化せざるを得ない面があって、零細化したといたしましても、あるいは集約的な農業経営が成り立つように、あるいは、いわゆる兼業にいたしましても、兼業が、いま御指摘のように、非常に技術導入がおろそかにされているということでございますけれども、あるいは共同化において、あるいは技術導入し、あるいは機械等共同で使うとかいうような、いろんな面におきまして、構造改善の面におきましても、特に新産都市、あるいは工業地帯につきましては、一般と性質の違った意味におきまして、性格が違った意味におきまして検討を加えていかなければならぬ、こういうふうに考えて、そういう措置を講じつつあるわけでございます。
  5. 矢山有作

    矢山有作君 いま地域開発の中で、農業政策をどう展開するかということで、研究をされつつあるということですが、これは、やはりそれぞれの地域の特性というものがありましょうし、総合的な立場から農業政策というものをどういうふうに位置づけていくかということを考えていただかなければならぬと思うのです。しかしながら、私どもが、特に農業の場合に、最近の傾向として非常に心配しておるのは、いわゆる地域開発ということの中で、農用地壊廃が非常に進んでおると、いわゆる工場用地住宅敷地への転用中心にして壊廃が進んでおる、しかも農用地造成のほうは壊廃に追いつかない、こういう姿が出てきておるわけです。しかも最近いろいろと政府で、宅地不足、あるいは土地価格高騰対策として、検討が行なわれておりますが、その結果として、たとえば産業合理化審議会産業立地部会で、工業用地確保対策に関する答申が出され、それからまた建設省のほうでは、宅地制度審議会が第一次、第二次、第三次にわたって宅地造成に関する答申を出す、こういうような状態になっているわけです。その中で顕著にあらわれておるのは、何とかして農地転用をやりやすくしよう、その考え方基本になっておるのは、工場用地住宅地不足、あるいは土地価格高騰の原因が、農地転用許可制度というものにあるのだ、こういうような考え方があろうかと思うのですが、そういう中で、いま言いましたようないろいろな答申をながめてみましても、農業の母来の発展のために、優良な農地をいかにして確保しておくかということが二の次になってしまって、いかにして容易に農地宅地化していくかということのほうが重点になって取り上げられておると思うのです。したがって、収用制度も今度は強化しようこういう線も出てきておる。土地収用法等の一部改正法律案という形で提案されておるようですが、そういう状況にあります。しかも一方では、御承知のように、三十六年には低開発地域工業開発促進法ができ、先ほど触れられた新産都市建設促進法ができ、これらの法律を見ても、またもう一つ、新住宅市街地開発法ですか、これらを見ても、先ほど指摘しました農地転用許可を、いかにこの制度を骨抜きにして転用がしやすいようにしていこうかということだけが中心になっているような気がするのですがね。したがって、それを反映して、最近の農地転用状況というのは全くひどいと思うのです。私ども出芽地であります岡山県の南部の状態なんかを見ても、大臣御存じだと思いますが、あそこは非常に優良な集団的な農地がたくさん広がっておる。ところが、最近の地域開発の中で、いわゆる住宅地工場用地にすれば最も適当じゃないかと思われるようななだらかな丘陵地帯が目の前にあるのに、そんなものはほっぽらかしにして、その下に広がっておる広大な優良農地をどんどんつぶしていっておる。これは個人が住宅地にしておるだけでなしに、地方自治体それ自体開発公社等をつくって、そういう農地転用を進めていっておる、こういう形が非常に強く出ているわけです。したがって、一体こういう状況の中で、優良農地、集団的な農地確保をいかにしてはかって、将来の農業生産力を増大していくかということは、これはもう口先だけでなしに、現実に起こっておる非常に重大な問題だと思うのです。そこで、そういう立場から、今後大臣優良農用地確保するという点について、どういうふうな具体的に考え方を持っておられるのかということをひとつこの際承っておきたいと思うわけです。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私ども立場といたしましては、農地転用がそう軽々しく行なわれては、まことに憂慮すべき問題だというふうに考えて、いままでもそういう方針をとってきたわけでございます。たまたま、やはり人口の集中している都会等における住宅難というようなことから、住宅地造成ということが非常に進んできております。そういう面におきまして、公営住宅地のような場合には、無条件で転用するというような形になっていますが、いま御指摘のように、公的なものでなくて、民間住宅等につきましても、転用について緩和するといいますか、幾ぶん厳重さを緩和するような形で、転用許可権は持っておりますが、そういう考え方針の中に入れております。これはやはり住宅難という一つ要請から、その程度は認めてもよかろうということから、そういうことにいたしておりますけれども優良農地あるいは農業地帯、どうしても農業として精進する人々のための農地等につきまして、その中間地帯等において、農地転換が許されるということになると、それを中心として壊廃が非常に行なわれやすいのでございます。でございますので、根本的には、優良農地確保して、質的にその農地効率をあげる、こういうことは十分考えていかなくちゃならぬ、その方針でおるわけでございます。たまたま、場所によりましては、いま御指摘のように、間にはさまれて、農地としてなかなか効率を発揮できないようなところもありますので、具体的に、そういう面につきましては慎重に検討いたしまして、許可する場合がありますが、全体といたしましては、既定の方針どおり優良農地確保維持していくという方針に変わりないわけでございます。
  7. 矢山有作

    矢山有作君 農地転用の問題にもう少し入っていきたいと思うのですが、大臣おっしゃるように、転用許可基準には、確かに第一種、第二種、第三種農地としてあって、原則としては、第一種農地転用許可しない、第三種農地中心にして転用許可していくのだ、こういう方針は出ておるわけです。ところが、いままでの現実あり方というのは、はたしてそれが守られているか、守られておらぬかということになると、私は、そういうことは守られておらぬのじゃないかと思うのです。だからこそ、現実にわれわれが見るように、非常に優良農地がつぶされていっている、こういうことがあるんじゃないか。ことに、御存じのように、農地改革あと、将来市街地化しそうなところは、売り渡しをやらないで、それを市街化していくような方向をとられたことがあったと思うのです。ところが、そういう場合には、そういうふうに意図しておるところに宅地化が進まないで、それよりも離れているところへどんどん宅地がつくられている、したがって、虫食い的な状況農地が蚕食される、こういうことが起こっておるわけです。ところが、現実にこれを規制しようという方向も、私どもが実際に見てみた場合には出ているような気がしない、そういうところに問題があるのではないか。この間の建設委員会との連合審査のときも、たしか農地局長は、宅造法の問題と関連して、第一種農地転用はやりません、第三種中心にしてやるのだ、こうおっしゃったわけですがね。実際、宅造法がつくられたりした場合に、三千坪以上くらいを考えておるようですが、三千坪以上のような集団的な宅地化をされていくようなところというのは、案外その第一種農地しかもうないんじゃないかというふうにも考えられるわけです。そこで、この剛局長が御答弁なさったような、第三種についてしか許さぬのだというようなことが今後守られていく可能性がはたしてあるのかどうか。言ってみるだけでの話で、結局は、そういう第一種農地は、こういう法律が通ればどんどん大っぴらにつぶされていくというような状態になっていくのじゃないか、私はそういう考え方がしてならんのですが、その辺に一体……。この前の質問のときには、第一種、第二種、第三種農地転用の中に占める比率はどうかということがわからないということで、答弁がお聞きできなかったのですが、その後あるいは調べておられると思うのです。そうすれば、いかに第一種農地宅地転用されておるかということが明確になってくるので、そういう過去の実績に照して見て将来を考えてみるときに、こういう法律ができてくると、宅造法のような、ますます第一種農地壊廃が進んでいくというふうなことになるのじゃないかと思うので、その辺を、その後もし農地局長のほうで調べられておったら、ひとつ数字を言っていただいて、それからそれを参考にして、大臣のほうのお考えを伺いたい。私は、転用許可基準を守って、優良農地確保していくことが非常に困難な情勢にあるのじゃないかということを特に申し上げておるわけで、そういう点から、優良農地確保するために、具体的にどういうふうな考え方転用許可基準というものを運用していくのか、そういうこにも触れながら、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  8. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 前回も、北条先生の御質問にお答えしたわけでありますが、・実は転用許可件数二十九万九千、約三十万件ございます。三十七年度でございます。で、まことに申しわけございませんのですが、それに関連いたしまして、業務統計をいろいろとっておるわけでございますが、一種、二種、三種集計項目を入れておりませんでしたために、現在、さかのぼって約三十万件のものにつき調査をするということが不可能でございます。御指摘の点は、私ども十分注意すべき点でございますので、三十八年度からの集計には、それを入れることに取り計らいましたが、過去の分につきましては、ちょっと再集計が困難な事情にございます。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 大開に答弁いただく前に、大臣がいまお聞きになったように、一種、二種、三種と分けて、転用許可基準次官通達で出ておってすら、はたして何種の農地がどれだけ転用になったかということすら当局ではつかめておらぬ。そのことは、農地転用許可というものに対して、肝心かなめ農林省自体が、何というのか、無方針であるというのか、そういうことを如実に示しておると思うのです。そういう反省の上に立って、今後の農地行政というものを考えていただかぬとまずいのです。そういう点を含めてひとつ御答弁を願いたいと思うのです。
  10. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 一種、二種、三種についての、いままで統計的なものをとっておらなかったので、あらためて御注意もありますので、三十八年度からはよくそれを分けていきたいとこう考えていることは、局長から答弁いたしたとおりでございます。  個々的には、審査をいたします場合に、申し上げるまでもなく、第一種につきましては許可をしないような、特に厳正にやっておるというふうに私は考えますけれども、総体的には、件数という点について、残念ながら統計を持っておりませんが、今後特に注意いたしまして、そういう統計的なものを、よく反省といいますか、監督あるいは注意をいたしていきたいと思うのであります。  繰り返して申しますように、農地の優良なるものは一朝一夕にでき上がるものではございません。また飛び飛びにそういうものが転換されていきますというと、隣接した優良農地も、優良農地としての効果が薄らいでくると、こういうことも御承知のとおりでございます。でございますので、優良農地につきましては、農地として維持保存をしていかなくちゃならぬという強い立場から、転換等につきましても、なお一そう次官通牒等を重んじて措置するように注意をいたしたいと、こう考えております。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 くどいようですが、もう一つこの点でお伺いしておきたいと思うのですけれども、今度できる例の宅造法ですね、これの二十条の二項を見ますというと、御承知のように、「当該住宅地造成事業が促進されるよう配慮するものとする。」と、こうまああるわけです。それから同じような趣旨規定というのは、新産都法にも一出ておりますし、それから低開発地域工業開発促進法にも大体同じような趣旨規定があるわけですね。で、そうなると、これと、現在の転用許可基準というものをどう関連づけて、実際に具体的には適用していくのかということが問題になってくるわけです。この点に関して、この間、質問連合審査会でやりましたときには、この転用許可基準と、それから転用が促進されるように配慮するという規定との具体的な関連については、まだ建設省話し合い中であって、固まっておらぬと、こういうようなお話があったわけです。ところが、そういう話し合いをしなければならぬ場というのは、すでに地域開発がどんどん三十五年から強く進められてき、そして三十六年の低開発地域工業開発促進法が生まれ、三十七年に新産都法が生まれたという経緯があるのですから、そうすれば当然これまでにある程度、転用許可基準の具体的な運営の基本方針というものについては、これらの法律との関係においても、すでに煮詰められておらなければならなかったはずだと私は思うのです。それがいまだに煮詰められておらぬということにも、一つ農地行政上からは問題があるのではないかと私は思うのですが、この点で、その後おそらく宅造法建設委員会審査されておりますので、当局では精力的にこの関係を明らかにするように折衝を進められたのではないかと、進められておるはずだろうと思うのですが、もしそれをやっておられるならば、その点について具体的に、もし大臣がおわかりにならなければ、農地局長のほうからお答え願いたいと思うのです。
  12. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 私からお答えいたします。  先生承知のとおり、三十四年の十月に農林事務次官から、「農地転用許可基準の制定について」というのを出しておるわけです。その中で、国民経済発展、安定上必要性の乏しいものとか、確実性のないものとか、許可しないという分を最初にうたいまして、「例えば下記に掲げるようなものは一般転用目的としては適当でない」と言い切っておるわけです。下記の二番目に、「宅地分譲目的とする宅地造成」というのがあるわけです。これはカッコいたしまして、日本住宅公団がやるものとか、公益法人がやるものとかというものを除いておりますが、「宅地分譲目的とする宅地造成事業」というものは、次官通達転用許可を適当でないと断定しておるわけです。そこで、今回の民間宅造事業に関しましては、この適当でないというものをカッコの中の除いております部分に、これはこれを除くという部分に入れる。したがって、本法に基づく民間宅地造成事業は、転用基準で適当でないと断言しておるものから抜くということが、転用基準上の一つ改正点であります。  それから、それより詳細な問題に関しましては、別紙農地転用基準というのがあるわけです。で、私どもはこの基準の中で、農地転用に関しまして地区計画調整のついたものと、つかぬものとを書き分けまして、計画のあるものはなるべくいろいろの計画に沿うように農地転用を誘導するということで、この地区におきましても転用許可をする。第三種農地、第二種農地、やむを得ない場合に一種農地というように転用許可はやれということが規定されております。それから土地利用計画調整のしていないところは、原則として三種農地でやれ、病院とか、真にやむを得ないものを除いております。そういう仕組みになっております。したがって、私どもは、今回、民間宅地造成法転用許可をはずせという御要請があったわけです。それをはずしますと、いま申しました別紙の2にありますいろいろの規制がみんなすっ飛んでしまいますので、転用許可ははずさないということをきめたわけでございます。この別紙転用許可は、許可制を運用いたします前に全部働くわけでございます。したがって、原則的にこのあと部分は、民間宅造のために直すということは考えておらないわけでございます。なお、建設省認可その他を行ないます場合に、十分わかっておるとは存じますが、私のほうに来たときに許可しないのでございますから、建設省民間宅造事業認可をいたします場合につきましても、集団農地優良農地等許可基準で保存しようというふうに規定をいたしてありますものについては、わしのほうも許可しないから、おまえのほうも認可をするなよという両省覚え書きをかわしたいということで、それ以上突っ込みまして、この中を、このことのためにいじくるということは考えておらないわけでございます。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうに集団農地優良農地については、保存すべきものとして転用許可しないという話し合いができておるということです。それはもう農地行政上の立場から、優良農地確保するということになれば、これはもう当然な話なんですが、ただ問題は、いままでの、われわれというか、実情の中から、それがいつまでも守り通せるのか、特に宅地造成というようなことがやかましく言われておる今日的な段階では、農林省側のそういうような態度というのが、外からのもろもろの情勢の中で押し切られてしまうというのが現実じゃないかと私どもは思うわけです。そういう点から私は優良農地確保ということのためには、農林省としてはよほどこの際腹をきめて、一つ方針というものを打ち出してがんばっていただかなければならない。それからもう一つは、そういうふうに優良農地確保するのだというふうにおっしゃっても、私は、宅地造成事業規制区域として建設大臣が指定をしてしまった場合に、その指定が、将来農地として残しておいてもあまり見込みのないというような地域に狭く限って指定をやればいいけれども、案外これからのこういう事業規制区域の指定というのは、広範囲な地域に対して行なわれてくるんじゃないかということが考えられるわけです。それを具体的に申しますと、この剛の連合審査会では、どうしても結論が出なかったわけですが、たとえば新産都市の指定が行なわれると、新灘都市の指定のときの建設基本計画などを検討してみますというと、大体平均して十五、六一町村の合併というものを予定をしておる。大きいところでは三十カ市町村、四十カ市町村が合併して新産都市建設するのだ、こういうようなことが打ち出されておるわけです。しかも、新産都市としてそういうふうに合併していくということになると、その新産都市建設のために、当然それを、全体を包含した建設計画というものがつくられてくると思う。それがずばりとこの宅造法による地域指定を受けるというおそれはないのかどうか、もしそういうふうな広範な地域指定がなされるとすれば、その中で、宅地造成がなされていくわけですから、はたして虫食い的な優良農地の蚕食というものを防ぎ得るのかどうか、これはひとつ大きな問題だと思うのです。そういう点では、いままでの建設省との打ち合わせの過程なり、新産都市の問題等と関連して、農林大臣はどういうふうに御理解になっておりますか。本来なら、これは経済企画庁から出ていただいて、考え方を聞かしていただくのがよかったのかもしれませんが、きょうは呼んでおりませんので、閣議等で、大臣のほうで、そういう問題に対して話し合いをして、意見がまとまっておれば、この際お聞かせを願いたいと思うのです。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 地域開発の中の、新産都市関係等の基本計画の内容等、これも御存じでございましょうけれども基本計画の中に、土地利用とか、あるいは工場用地、住宅用地、その他いろいろありますけれども、こういう事項をきめることに相なっておりますので、工場用地、住宅川地等に優良農地等がかわることのないように打ち合わせをしなくてはならぬと思います。そういう面で、優良あるいは集団的な農地の壊滅を拒否していく、押えていくという方針でございますが、さらに、いまお話のように、三千坪ばかり、何かこういうふうに非常に広い場所できめられた場合に、農地転換を許さないという方針がなかなか守り切れないのじゃないか、こういうことだろうと思いますけれども、これにつきましては、今度の宅地造成につきましても配慮するということになっておりますが、権限を全然捨てたわけではございません。初めは御承知のように、無条件で農地転換をするような案も実は出たのでありますが、私のほうといたしましては、それは容認できないということで、配慮するということになったのでございますが、配慮するということは、全然捨てておらぬばかりでなく、農地転換許可する権限は保留してあるのでございますから、これは十分目的考えまして、この権限を行使する。そういうことによりまして、優良農地の壊滅を防ぐということにいたしたいと、こう考えております。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっと大臣のほうに、私の質問に対する誤解があるようですが、私が申し上げたのは、新西都市の指定を受けた場合に、新産都市としての建設計画というものが出てくる。で、その建設計画が出てきた場合に、その全体が対象とされて、宅造法のいう宅地造成事業規制区域として指定されるおそれがないのですかということを申し上げておるわけです。もしそういうことを大幅に指定されるということになってまいりますというと、その中には、御承知のように、十五、六カ市町村も、三十カ市町村も一合併されるわけですから、非常に優良農地がたくさんある。その優良農地宅造法の指定を受けたために、虫食い的に荒されていく、こういう危険性があるのではないか。そういう点から、その指定というものの範囲が、一体新産都市全体を指定するという形で将来行なわれてくるのか、あるいは小さい地域の範囲で市街地化が予定されていくような、これが宅造法による指定が行なわれてくるのか、その辺が明確になっておりますかということなんです。
  16. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お話分けまして、民間宅地造成事業法の関係でございますと、御承知のとおり、都市計画の対象地域であるのかということがひとつ問題になりまして、都市計画が立てられた地域の中で、大きく住宅地造成事業を規制する区域をつくる。その区域の中でございまして、三千坪なら三千坪以上のもので民間宅造をやろうというときは、建設省認可にかかる、その際に、農林大臣農地転用のほうを配慮する、こういう法制になっております。そこでわれわれ、建設省といろいろ話し合いして、当初は、全部無許可にするということにしてくれというのが、許可制が残りましたわけで、今度二つの願書が出るときに、農林省のほうでは許可をしない、優良農地だから許可をしないということになると、建設省が大きくこの規制区域をつくりまして、その中で出てきたものは、特別のものでない限り宅造事業を認可するというときに、行政が混乱する。したがって、その規制の区域は、私のほうが許可しないという部分を頭に入れて区域をきめる必要があるということが、同省で非常に話し合われまして、そこで、先般もちょっと申し上げましたとおり、都市計画審議会の意見を聞く等の場合におきましても、メンバーである農地行政担当者が、ここで出てきても許可しませんよという地域が入っておりますと、この法律は、農林行政と建設行政で非常にちぐはぐになる。したがって、具体的な都市計画地域の中で、この規制区域を指定する場合には、建設省も、農林省がこの地域ならば大体許可してくれるという地域内にしぼっていきたいという気持は持っております。そこで、先ほどちょっと申しましたようなことを、だめ押し的にやっておるわけでございます。したがいまして、同様に新産におきましても基本計画方針を指示しまして、基本計画が出てくる、水島地区——岡山県南の十数町村の中で、計画で、ここを住宅地域にする、ここを工業地域にするという青写真がいずれ出てまいるわけでございます。これは建設大臣も各省に認可の相談をするわけでございます。したがって、かつ新産法でも農地法の転用許可をはずしておりません。そういうところを、私のほうとしては、願書が出てきたときに許可できないようなところを、住宅地域として基本計画で立てる案につきまして、一言なかるべからずでありまして、その段階でどうしても調整をいたすという法制なり、与え方をとっておる次第であります。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃこの点、今後の運用で非常に重大になってくると思いますので、重ねて、だめ押しと言ったらおかしいのですが、申し上げておきたいのですが、こう解釈していいのですか。要するに、これは一例です。新産都市にとってわかりやすいから話をしているわけですから、新産都心が、たとえば、二十カ町村が合併によって形成された。そうすると、当然その二十カ町村合併によって形成された新産都市というものを対象にした都市計画といりものが立てられてくると思うのです。建設計画といいますか、立てられてくるんじゃないか、あるいは都市計画と呼んでいいのか、あるいは建設計画と別個のものになるのか、そこのところは私もよくわかりませんが、もしその新産都市全体を含めての都市計画というものが自流体によって立てられた、それが都市計画審議会を通ってきたと、こうした場合に、その全体の宅地造成事業規制区域として指定されると、今度は、あとで個々の宅地造成事業認可の際に問題が起こってくるわけですね。おっしゃったとおりに、虫食い的な現象が起こりますから、問題が起こってくると。したがって、あなたのいまおっしゃった答弁は、その宅地造成事業規制区域として指定をする段階で、すでに優良農地壊廃をされるようなことのないように、将来市街地化するということがある程度見通せるような区域に限って地域指定をやるような、そういう話し合いというものを事前にやっていきたい、こういうふうな御趣旨に解釈していいわけですか。
  18. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 大体同じと思うのですが、ちょっと申し上げたい点がございます。と申しますのは、話が二つございまして、新産のほうの話から入りますと、非常に広範囲な地域が町村として指定される。いまの青写真を見ると、なぜ、このままで指定されたのかと見ますと、工場と、住宅との道路が引っかかるというだけの意味において指定されているような計画の村まで非常に入っている。それで、具体的に見ますと、その中の一部に工場地帯をつくる、ごく大きな三十数カ町村がこちらに工場をつくる、こちらに住宅をつくる、ここにグリーン・ベルトをつくる。しかし、いずれにいたしましても、そういう計画は、新産に関します限りは、基本計画書の内応として出てまいりまして、各省の審査を受けた承認になる。で、宅造法のほうは、新産のそういう基本計画とは関係なく、都市計画法の区域内でなければまずならない。そこで、そういう新産で、そういう計画のときに、都市計画法ができておるところもございましょうし、あるいは新しく都市計画を立てるところもございましょう。そこで、今度は都市計画が立ったといたしますと、その都市計画の区域内で、さらに小範囲に、民間宅造事業の規制をすべき区域を、この民間宅造法で指定することに相なります。その際に、三千坪というのは、われわれの行政のほうで申しますと、一町歩でございます。一町歩以上のものがばらばらに出てくるのを、どうしても両省関係の協議事項では手に負えないということで、許可ははずせないと、こういうふうにやったわけですが、そこで、いま先生の最後の御質問になってまいるわけでございますが、したがって、ここが市街地化するから、ここをこの地域に指定しようという形で、審議会等での議論は行なわれると思います。これには地方農政局長、県の農地担当部長が出ておる。しかし、私が先ほど来申し上げております問題は、その意味の問題とは別に、本来、許可権を農林省が持っておりますので、農地転用許可立場から、かりに審議会なり、都市計画の相談がございましたときに、明らかに優良農地を包摂いたしておりますれば、そういう地域の線を引かれましても、松川許可申請が出てきたときに、農地担当部局として許可するわけにまいらぬということを申し入れざるを得ない。したがって、向こうが許可してくれないようなところに地域を引いては、宅地行政といいますか、本法施行の立場としては、メンツといいますか、問題がございますので、おのずからそこに相談の余地が発生するということを申し上げたのであります。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 したがって、相談の余地が発生するから、そういう地域指定をやる事前の段階で、農林省としては言うべきことは一言って、そうして優良農地壊廃を防いでいくと、こういう方針でおられるということですね。
  20. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) さようでございます。
  21. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 関連して。ただいま新産都市内における耕地、ことに矢山委員から七地の松川等に関しまする問題について御質問があるようでありますが、ただ一点、私御意見を聞いておきたいと思うのであります。新産都市に一応指定されたところで、まだ確定をしておらない時期に、水利の関係、あるいは農道等でその地区新産都心に指定をされておるのだから、補助をする、いわゆる土地改良でございますが、それをもう取りやめてもらいたいという通知を受けたところがございます。で、これはまだ確定をしておらない、しかもその内容について、それぞれの土地利用区分がはっきりしていないときに、その地区新産都市に指定をされたということだけで、すでに内示があったものがストップするというような例まで、これは行き過ぎだと思いますが、出てきておる事例がございます。私は、そういうことについてては、いま少しく都市計画なり、あるいは住宅計画なり、あるいは道路計画なりというものが確立して後ならばよろしいが、そうでない、ただ新産都市に指定されたというだけで、その地区土地改良、それに付帯をする事業がストップされるということは、新産都市に指定されたということによってこうむる農民の不利益というものは相当はかりしれないものがある。これは一、二の例でございますが、その後そういうことでは困るということを、地方農政局に再陳情をいたしまして、考慮をするようにということをお願いしておりますので、私が聞いたときから時間がたっておりますから、その後どういうふうにこれが処理されたかはつまびらかでございませんけれども、そういう事例が地方にありまする現実に立って、ただいまいろいろ御質問なり、御回答なりがありますが、そういう点についてのつまりお考えについて、いま少しく御問答をいただきたいと思いますが。
  22. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 新産に関しましては、先般基本方針を指示した段階でございまして、それを受けまして、先ほど来お話が出ております基本計画をつくって、上がってきて、それを審査して判断をいたすという段階でございます。その前に、いろいろの御構想として、関係の県等から伺っておりまするものは、まだ構想のようなものが多いわけであります。しかも五十年目標のもとの、四十五年目標のもあとばらばらでございます。そこで、私ども新産土地改良事業の調整につきましては、実は今後も大いに検討しなければならぬ問題とは存じておりますが、現在の段階におきましては、五年先、十年先の計画でありまして、基本計画としても承継にもなっておりませんし、いわんやその具体化の問題について、非常に何と申しますか、判明いたしません点がございます。そこで軽々に、青写真の中に入っている地区だからやめたとか、変えるとか、こういうことはやるなということで、現在全く、具体的な段階になれば別でございます。いまの段階で軽々にこちらをいじくるなという指導をいたしております。ただ非常に大きな事業等で、その計画がほんとうに実現いたしましたときに影響が大きいというような問題につきましては、知事さんに責任は持つかと、わがほうは既定方針どおり進めるから、実態が変わった場合に、その負担関係その他について、県知事は責任を持つかということの確認は、これは知事との関係でございますが、やっております。
  23. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 ただいまのでよくわかりましたが、地方と、農林省との間に若干の意見の相違があったのではないかと思うのであります。まだ新産都市に指定されたという、いわゆる単なる声だけで土地改良の既定の方針が中止をされたり、あるいは延期をされたりするようなことがありますと、今後指定をされた後にでももっと大きい問題が起こりかねない様相を持っておりますので、農林省がお考えになっておるただいまの御答弁は、すみやかに地方農政局にそれぞれはっきりと確認をされるような通達をお出しになる必要があると思いますので、重ねて要望をいたしておきます。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いろいろ行き違いや誤解があるといけませんから、よく確認して、いまのような措置をとりたいと思います。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 農地局長のほうからは、宅造事業規制区域として指定をする段階でいろいろと話し合いをする、こういう考え方だと、そうしないというと、地域指定を受けた三千坪、四千坪という宅地造成事業認可が出た、その認可の出た段階で、農林省が認可するとか、許可せぬというたのでは、建設省としてもメンツがあろうかと、こういうことでおっしゃった。ところが問題は、私は最初この宅造法をつくるときに、建設省側の意見というのは、転用許可基準というものを適用しないようにしたいという腹があったことははっきりしているわけです。そういう腹があったのに宅造法には何らの法的な規定がなくて、はたして地域指定をやるときに、建設省のほうから協議されることを期待することができますか。私は、法にそのことが明示されておらぬので、建設省自体の腹で転用許可基準を骨抜きにしたいという意図があるのに、積極的に協議ができて、地域指定が行なわれるという情勢にはなかなかなりにくいのではないか、こういうふうな点を心配するわけなんですが、その点は、大臣のほうにお考えを伺い、なお、局長から補足していただければよろしいと思います。
  26. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そういう御心配もないわけではないと思います。でございますが、転用許可権は留保しておりますし、また次官の間で文書を交換して、先ほど局長答弁したようなふうに措置をしていきたいと、こういう内部的な措置はとっておるわけであります。
  27. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 一言補足させていただきますが、建設省は当初伝用をはずしたいという希望を持っておりました。それから審議会ではもつと強い御意見で、みなすという答申でございます。私、住宅局長と事情をよく話し合いまして、その次に法案として持ってきたものは、すでに許可を受けてけっこうですという形で建設省の原案が出てまいった。新聞紙等でずいぶん対立しているように出ておりましたが、実体論といたしましては、よく話し合いまして、建設省はやはりこういう形のものは許可を受けるのが至当だという判断に立って、法案をつくってまいったのでございますから、私はその間の関係は、当初の経緯が、はずしたいのだから、許可制にしても運用上許可はみんな素通りになるだろうというふうには考えておりません。と同時に、区域を指定いたしましても、がんとして、困るものは許可しませんからこそ許可制をはずしてくれという、そういう希望も出たわけでございます。本法案では許可制を残しておりますので、私のほうも住宅行政に協力することにやぶさかでございませんが、農地をそのためにめちゃくちゃにしていいとは毛頭考えておりませんので、農地転用のほうはあくまで農地行政立場で、きちっとやってまいる併存でございます。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 いまはっきりとお話がありましたので、私どものほうもその話を承っておくということしか、この委員会としては、面接宅造法がかかってきているのではないからしかたのない段階ですが、要するに、いまおっしゃったように、宅地行政は尊重しても、やっぱり農地行政立場から優良農地確保する、この一線だけはやはり堅持してもらって臨んでいただかぬと、先ほど話も出ましたように、地域開発のブームが起こってくるに従って、転用許可基準を骨抜きにしようというようないろんな風潮が出てまいります。それに農林省の側が押し切られていくということが心配されますので、こういう点については特に強い態度でひとつ臨んでいただきたいということをこれは要望申し上げておきます。  その次に伺いたいのは、要するに、こういうふうに今後地域開発が進んでくるに従って、土地だとか、あるいは水の問題だとかいうのは、農業工業、その他の問題で非常に重大な問題になってくると思うのです。したがって、これらの同順を根本的に解決をして、そして地域開発の中で農業がになうべき役割を来たしていけるようなそういう優良農地確保していって、それに対して十分な農業施策の手が打っていけるという状態をつくり出していこうとするのには、やはり根本的には、何といっても土地利用計画を策定する、それに基づいて土地利用区分というものをやっていかなければならぬ、こういうふうに私ども考えるわけですし、そういう立場から、われわれ社会党としては国土調査をやって土地利用計画を確立し、土地利用区分をやるべきだということを、すでにだいぶ前から言っておるわけなんですが、こういう点についてて、大臣としては今後どういうふうなお考えを持ってお臨みになるか、ひとつ御所見が承りたいと思うわけです。
  29. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに土地の有効利用ということが必要でございますので、そのためには、全国的に土地利用の効率化をはかるための調査研究等をしていくということは必要である、こう考えております。現に技術会議のほうにおきましても、土地利用に関しての調査をいたしまして、これは政治的とかなんとかでなくて、全く自然科学的に、土壌などの調査を主としたものでございます。まあ自然科学的な調査でございますが、こういう調査に、さらに経済的、政治的な画を加えての調査が必要である、こういうふうに考えております。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 そういう点で、はたして土地利用計画なり、土地利用区分というものを確立するための調査というものが具体的にい衣どういうふうに進んでおるのかということがひとつ聞きたいのです。というのは、土地利用調査研究報告書ですか、それが最近出されましたが、それによって見ると、要するに、地域計画ないし土地利用計画というものを介して科学的な基礎に基ついた土地利用区分を行なうのが合理的だというようなことをいって、そして土地利用区分をやっていく上についての方法論的な研究というのですか、私もちょっとざっと見ただけでよくわかりませんけれども、そういうことをやった調査研究報告書が出ているわけですが、それを読んでおりましたら、三十三年に農地行政白書というのを出されたようですが、その農地行政白書では、かなりこの農地の問題、土地利用区分の問題というのを前向きの形で当時考えられておったんじゃないかと思うのです。というのは、その心地行政白書で、国土の農業的な土地利用の高度化の計画的な処置として、徹底した科学的調査資料を基礎にして、全国的視野からする国家百年のための計画を樹立し、事業を計画的に、最も効率の高い工程で進める方法として、次のような一連の措置を講ずる必要のあることを指摘している。第一に指摘しておるのは、水系別農地整備基本計画の樹立。第二に、原野と粗放利用の林地について、農地、牧野、及び林地としての利用区分の確立。第三には、以上を科学的に推進するための土地と水の科学的調査の全国的実施。四、右に伴う市町村の側における農村総合土地利用計画の樹立。第五に、市町村における計画樹立と事業の合理的な実施に必要な技術的援助組織の確立。こういったことを農地行政白書で指摘しておるわけです。それは三十三年。それ以後こういう——まあ白書を出されるくらいなんですから、こういった方針に基づいてかなりの調査もなさっておるのじゃないかと思うのですが、実際問題としてどういうふうにこの調査を進めておられるのか。それともまだ全然調査を本格的にやるという段階までいっていないのか、そういう点はどうですか。
  31. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ちょうど三十三年には私が山林大臣のときで、農業白書を出したあと農地局は安田君が局長でしたが、農地局に、土地利用のそういう調査方針を立てろというわけで、謄写版刷りでしたが、だいぶ分厚の報告書をつくったわけであります。その後、それに基づいていまのような土地利用区分の調査をいたしましたが、その方針どおりにいっております。で、先ほど申し上げましたように、最近発表いたしました土地利用区分は、自然科学的な面で水利関係中心としたとか、いろいろ五項目をいまお述べになりました、そういう線には割合に沿っていなかった面だと思います。でございますので、その三十三年の土地利用区分の調査方針等になおのっとった面をやっていきたいと、いま私は考えております。いままでやっておった面は、純学理的といいますか、自然科学的な調査でございまして、経済利用面等からの調査はあまりやっておらぬと思います。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 おっしゃるように、土地利用研究調査報告書というのは、これは土地利用計画なり、土地利用区分をやる場合の方法論的な、基礎的な研究をやった書類のようですから、それはそれでいいわけですが、ただ、私どもは、三十三年に農地行政白書が発表されて、せっかく将来の土地利用の高度化ということをねらってりっぱな方針を立てられておるわけですから、それが実際に実施に移されなければこれは意味がないのじゃないか、そうしてまた、それを実施に移して国土調査をやり、利用計画を立て、利用区分を一やってこそ、初めて現在のような地域開発ブームの盛んな中で、宅地とすべきものは宅地として、農地として利用すべきものは農地、そういったような区分等もできて、農地行政の上から言っても、あるいは広く土地利用政策の上から言っても、混乱を防止することができるのじゃないかと思いますので、これは農林省がひとりだけでできる問題でもあるいはないかと思うのです。したがって、適当な機関というものを設置して、早急にこういうことについての手をつけていかなければならぬのじゃないか、そうしないと、ほんとうの地域開発と、農業政策の何というのですか、調和のとれた進展というものを期待することができないような感じがするわけです。そういう点から、この今後の国土調査、それに基づく土地利用計画なり、土地利用区分の確立ということについて、積極的に調査をやっていくお気持があるかどうか。また調査をやるとした場合に、いますぐお考えになってはおらぬと思いますが、どういう構想を持って調査をされようとするか、そういう点も、もしお考えがあれば承っておきたいと思います。
  33. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 国土調査の法が三十七年でございますか、できまして、「国土の開発及びその利用の高度化に資するため、国土調査事業の緊急かつ計画的な実施の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」こういう目的法律ができております。いまお話しの趣行にこれは合っていると思いますので、この法律に基づいて、お話しのようなことを推進いたしたい、こう考えております。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 この国土調査法は、実は二十六年から施行されているのです。二十六年から施行されて、もう十年以上たっているのに、たいして調査の進捗がみられないわけです。したがって、私どもとしては、一そう国土調査法に基づいての調査をやっていこうというなら、いままでのようなのろいテンポでは困るわけで、急速に地域開発というものが進んでいっているわけだから、それに即応した急速な調査をやっていく必要があるのではないか、こういうことで問題を出したのです。
  35. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) まことにごもっともでございます。そこで、国土調査促進特別措置法が三十七年にできまして、三十八年五月十日に閣議の決定がございます。それにつきましては、四つの方針をきめているわけでございますので、この方針ばかりではありませんが、国土調査十カ年計画というものをきめてあります。それに基づいてなお推進をいたしたい、こう考えております。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 次に、この土地改良法の一部改正案自体に関連する問題について一、二お伺いをしたいと思います。  それは第一条に、土地改良法目的及び原則というのがあるわけですが、これの説明で、土地改良法目的が、農業基本法に掲げられている政策目標の達成に資することを目的として改正をしたのだ、こういうふうにおっしゃっているわけです。この改正に伴なう今後の土地改良事業の基本的性格、それが生産政策にあるのか、あるいは構造政策にあるのか、そのいずれに力点をおこうとされるか、こういう質問は、これはすでにもう衆議院で行なわれているわけです。ところが、その衆議院での質問に対しての御答弁として、生産政策か、構造政策かというように一義的に物を判り切るわけではなくして、両者が当然土地改良事業の使命でございますから云々、こういう答弁をしておられるのです。で、その答弁の内容から推察すると、生産政策、構造政策のいずれに重点をおいているのかという点がはっきりせぬわけです。両方とも重視して、その調和をとってやっていくのだ、こういうふうにとれるような御答弁になっているのですが、私は生産政策、構造政策のいずれに重点をおくか、こういうことによって土地改良事業の政策内容というものが非常に違ってくると思うのです。したがって、現在の日本農業あり方というものから、それを将来近代的な経営による生産性の向上をねらっていこうという場合には、やっぱり構造政策に重点をおくということでなくてはならないのではないかと思うのですが、この点は、大臣のお考えはどうなんでし上うか。
  37. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 改正の法文そのものから御判断なさっても、いまの御趣旨のほうが重点的になってくるとお考え願っていいことだと思います。農業生産の、総生産拡大ということは、農業基本法にもうたってありますし、これをおろそかにすることは全然でき得ない問題でございます。しかし、土地改良そのものも、日本の農業の体質改善というような面から相当質的にも変更をきたさなければならないというような要請もあろうかと思います。そういう意味におきましては、「農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする。」ということで並列してはありますけれども、日本の農業構造改善の最も基礎的なものとして、基盤の整備であるとか、土地改良をしていくということは相当強く考えなければならぬ目的であるというふうに私ども考えております。
  38. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちょっと関連してお伺いしたいのでありますが、日本のこれまでの土地改良は、大臣よく御承知のように、長年食料増産というものがその根幹であり、基本的の性格であった思います。それを長年続けてまいりまして、戦後におきましても、その根幹にはかわりはなかったと思います。そういう根幹の上に、新しくといいますか、構造改善の政策が打ち出されてきて、そして生産性の向上ということに主眼がおかれ、そういう観点からの土地改良に相当の重点がおかれてきたことは、これは当然のことであり、現実の事実だと思います。ところで、新しく土地改良の長期計画をつくられるという場合の性格論については、過般来、当委員会でもいろいろ質疑応答がかわされました。ただいまも矢山委員から質問もあったわけであります。工場の敷地の関係、住宅の関係、これまた日本経済の進展の観点からいえば、必然的なひとつの何といいますか、必要性のあることは、これはもう否認できない、それと農地がぶつかることも現実の事実であります。しかし、最近の状況からみますというと、そういう観点から既耕地が壊廃しつつあることも、これ事実であります。従来は長年にわたって、その土地によって多少の出入りはありましたけれども、大体において、一方に壊廃があれば、それに相応するものが新しく造成されてきて、大体のバランスといいますか、がとれてきたと思います。しかし、はたしていまの状況でいけば、そのバランスが今後も維持されるかとなると、はなはだ私はむずかしいと思いますこの情勢でいけば、いかに農地を守るといいましても、住宅用地の需要とかいうものと照らし合わせますと、壊廃のほうが多くなりはせぬか、したがって、日本の全体の耕地というものが漸減していくであろうというふうに考えられます。それはそれでよろしい。しかし、反当の生産力を向上していって、その面で生産の増強をはかっていくのだ、この考え方も当然是認はされるのであります。しかし長期的な観望で言いますると、主食はもちろんのこと、蔬菜にいたしましてもその他各種の農産物の需要というものは、国内での自給体制というものを確保していくという考え方をとれば、やはり相当の農耕地というものを維持し、かつ伸ばしていかないというと、これは私は全体的に農耕地の減少を防ぐわけにいかない、ひいては全体の農業生産というものの総額というものは減少の傾向にいきはしないか。それはそれでいいんだ、それは海外からの輸入に待つんだという考え方も御承知のとおり現在あるわけであります。有力にあるわけであります。それでいいんであろうか、したがって、たとえば長期計画を立てられる上においても、どういうところに重点を置くんだ、構造改善に重点を置いていけば、全体の農耕地がかりに減りましても、たとえば非常に条件の悪いところはこれはむしろ放てき——放てきというと悪いですけれども、捨てていっていいんじゃないかという考え方も成り立ち、またそういう見解を持っておられる向きも御承知のように少なくない。はたしてそれでいいんであろうか、所得倍増計画のできましたときに、私はまだ中間の検討もよく検討しておりませんけれども工場敷地、それから住宅地等の見通しですね、計画埋め立ても入れまして、たしかあったと思うのであります。新しく住宅計画の拡充促進が計画されております。将来一体、構造改善の観点の農地計画、これははっきりわかります。面積的に。全体として農用地造成の面ですね。造成の面の計画というものは、どういう考えでやるんだという点に一つの疑問があるわけであります。これは従来の農耕地をふやしていくのか、これは減っていってもいいのか、そこに何らかの考え方を置かないというと、酪農関係の用地はこれは別でありますが、それ以外の農作物の、新しい耕地に対する計画を立てる基礎ですね。これは一体どこから出てくるのであろうかという点にも一つの問題があろうと思うのです。大臣お話しのように、あそこにあるいろいろの考え方が並立されてある、しかし、構造改善というものに重点があるんだというふうに結論を下していいんであろうかという疑問を私は待つのであります。これは、今後の情勢いろいろで、変化もあるかもわかりませんけれども長期計画を立てるという場合に、特に農用地の新しい造成というものが入って、それをどう考えていっていいんであろうかという点に関連いたしまして、もう二度大臣の御見解を承りたいと思います。
  39. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は、農業の総生産を増大するという趣旨を放てきして、一部で言われておりますように、自給度を減らしてもいいんだ、安いものなら外国から買ってもいいんだという考え方には賛成できないのでございます。やはり自給度を高めていかなくちゃならない、ただ、私は先ほど申しましたように、構造改善が相当重点化して考えられるべきだと申し上げましたのは、いま言われておる単なる構造改善事業というものではなくて、御存じのように、広い意味といいますか、日本の農業の体質改善という意味における構造改善ということを申し上げたのでございますが、そういうものを通じてやはり日本の農産物の生産を高めていく、こういうふうに理解して、構造改善に重点を置きたいという意味を申し上げたわけでございます。でございますので、土地造成等の問題等も、これはぜひ行なっていかなければならぬと思います。しかし、こういう面等も総合的な面でございますのでもちろんそうしなくちゃなりませんが、この農業就業人口等との関係、あるいは近代化、機械化等とのいろいろなにらみ合いというようなものもあろうかと思います。しかし、それは別といたしましても、土地造成を放てきするというようなことは考えられない面でございますので、十分調査の上、計画等につきましてもその面も織り込んでいかなければならぬと思います。繰り返して申しますと、土地改良法改正目的というものが並立してありますけれども、生産を増大し、自給化を進めていくということを放てきしたわけじゃございませんが、その自給化あるいは増産の面を、構造改善を通じてそういう面にも寄与しなければならない、こういう意味で、私は構造改善に相当重点が置かれているということを申し上げておいたわけでございます。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 まあいまの御答弁で、これからの土地改良事業の方向は、構造政策というものが重点になる、こういうお考えが述べられたわけですが、私どももそう思うのです。ただその場合、先ほど梶原委員のほうからも言われましたように、構造政策に重点を置くということが、いわゆる農地造成ということをゆるがせにしていいということではないのでして、御承知のように、大体農地壊廃というのは、最近では三十七年八月から三十八年七月ごろで、年次報告に出ておりますが、四万町歩をこえておるようですね。これに対して開拓あるいは干拓、これで大体二万町歩ですか、つくられておる。したがって、最近の農地面積としては減少傾向にある。で、大体現在六百十一万町歩程度と、こう言われておるわけですね、それが所得倍増政策では、大体四十五年を目途としてつくられておるわけですが、そのときの農地というのは大体六万町歩ぐらいを見ておるわけですね。おそらくまあ現在六百十二万町歩で、四十五年目標年次に六百万町歩ということから、農地壊廃のほうが進んでいくわけなんです。造成が追っつかないということなんです。こういう状態では、私はほんとうの意味の構造政策を推進していくということには非常に困難を来たすのじゃないかと思うのです。そういうところから考えて、一体構造政策というものの中味、それが一つ問題になってくると思うのですね。一体構造政策に重点を置くというのだが、その重点を置くのは、どういう点に重点を置くのかということを、ひとつこの際承っておきたいと思うのです。
  41. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 一口で私の考えを申し上げますならば、一つの経済原則に従い、少ない労働力でより多くの経済効果を上げられるような、何と申しますか環境をつくり上げていく、こういうことを言ったと思います。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 そのことは、えらいこう簡単に申されたんですがね、やっぱり農業構造政策というものを進めていく上において一番考えなけりゃならぬのは、じゃ日本の農業構造の上の最大の問題点はどこなのかという点を、把握がどう行なわれるかということが必要なんじゃないかと思うんですね。日本の農業構造の上の最大の問題点はここだということの認識ができてくれば、それに基づいて土地改良事業を推進される場合、構造政策に重点を置く。その場合の農用地の改良、開発造成、保全等の重点の置きどころというものは大体きまってくる、そう思うんです。そういう点から、もう少し、何というのか、具体的にお考えを聞いたほうがいいと思うんですがね。
  43. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ごく簡単に申し上げて失礼いたしましたけれども、もう少し具体的に言いますならば、農業基本法にもありまするように、政策の目標を達するために必要な施策を総合的に講ずるということで、八項目をあげております。その中の三の中に「農業経営の規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化その他農地保有の合理化及び農業経営近代化(以下「農業構造の改善と総称する。)を図ること。」と、これを農業構造の改善としておりますが、構造政策というものを、先ほど私が申し上げたのに少しく注釈を加えればこういうことだと、こう思います。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 この第二条の第一項第三号にあげられておるように、日本の農業の構造上の最大の問題点は、経営規模が、零細であるというところにあると思うんですね。そうすると、この経営規模を拡大していく。そうしなければ経営の合理化、近代化というものはとうていできぬわけですから、そういう点で、いまの大臣がお述べになった考え方というのは、私も賛成なんですが、ただ、それをやる場合に、現在ある農地を集団化すればいいんだということだけではまずい。やはり先ほど梶原理事が触れられたように、私は、いかに農用地を今後増大していくかという点にもひとつ大きな政策の重点が置かれぬと、ほんとの経営規模の拡大をやって、構造改善をやっていくということにはならぬのじゃないかと思うんです。そういう点で、農林省としては、今後の農地造成計画といいますか、開発計画といいますか、こういうことについて具体的に検討をされたことがありますかどうか。あればひとつお知らせ願いたい。
  45. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 構造改善に関連いたしまして、御指摘のとおり、農地保有の拡大、土地保有の状態から着目しまして、経営規模の拡大、これが一つの御指摘の問題であることは重々承知をいたしておる次第でございます。その次に集団化の問題、それからあとはやはり日本農業の特殊性として、資本の零細の問題を、家畜の導入、機械化というような表現でとらえておると私どもは理解をいたしております。そこで、土地のうちの一つ農地の集団化の問題は、これは零細性を分散性によってさらに激化さしておりますので、集団化の問題は、土地改良法の問題として今回特に法制的にも取り上げております。  そこで、御指摘経営規模の拡大の問題でございますが、どう検討したかという御質問で、先ほどの梶原先生のお話しにもからみますが、前回の所得倍増計画のときは、実は物別の需給も一作業やりました。つまり品目別に需給をやりまして、それに必要な耕地の確保という観点が一つ。それからもう一つ、やはり相当物の生産の増加をはからなければならないので、考え方として、少なくとも現在の耕地は維持するという二本の線で、当時壊廃を十年間に二十万ヘクタールと見込みまして、これをカバーするという立場で、前回の所得倍増計画の当時、需給見通しを立てました。そこで、いまやっておりますアフターケアの問題の問題点に、御指摘もございましたが、一つには、壊廃のテンポが、この十年間として見た年間二万ヘクタール程度の想定を、再検討する必要があるという面から検討をやっております。  それからもう一つは、やはり物の全体の需給度に関連いたそうかと存じますが、やはり物の生産バランスの観点の作業をひとつやって、これと耕地との関係を吟味しよう。こういう立場でいま検討をいたしております。問題は、そういう角度から検討いたしておりますが、実はそれにしても、耕地が足りなくなった場合の、耕地を外延的に集めます方法の問題でございますが、現在、旧開拓制度では、人跡未到というと大げさでございますが、相当の僻地を買って耕地をナショナル・ベースで拡大していく。こういう形だと、旧開拓ということになりまして、そこに人を持っていくという形になりまして、日本の現在おります農家に即した経営規模の拡大は、おおむね達観いたしまして、たんぼの所在地、現在ある生産の本拠地との結びつきが非常に困難になります。そこで、三十六年からは開拓パイロット方式と申しまして、本拠を中心考えまして、その周辺で利用し得るものは利用していくという形の外延的な拡張、農家の経営体のほうから見ました耕地の拡大という角度の開発方式を精力的にやっております。他面、耕地を開拓して人を持っていく、経営体をそこに創設するというほうにつきましては、むしろパイロット方式のほうに重点を置いている。これが構造改善立場からの開拓のあり方というふうに考えております。  そこで、私どもが耕地造成立場で、いま検討しなければならぬと考えております問題としては、既存の形態に着目しつつ、それが流動化による既耕地の売買という経営規模の拡大されるルートのほかに、開発による利用し得る土地の利用、パイロット方式による利用ということになりますと、供給力の面からいかがな問題が起こるだろうか。たとえば北海道等で、利用があまり行なわれてない土地を切り開くということは、供給力の面で可能なのでございますが、構造改善という角度から考えますと、なかなか既農家と結びつかない、こういう一つの難点、問題点がございます。さらに、いま私ども考え方としては、繰り返して申ますと、物のバランス、壊廃の見通し、それから既農家の経営規模を拡大するのに、売買といいますか、既耕地の移動関係から、経営規模の拡大のほかに、造成という角度でものを考えます場合に、供給力の面でやはり相当考えなければならぬ。以上大まかに申し上げまして三つの問題点につきまして、いろいろな角度から資料、計数その他を集めて、長期計画の問題点として、いま作業中でございます。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、私は、現在ある農地の流動化をはかって、それの集団化をはかっていくということだけでは、ほんとうの意味の構造政策にはたらぬと思う。私も農地の外延的の拡大というものを考えるべきだと思っております。そういう点から問題を検討されているようですが、農地の外延的な拡大をはかっていく場合に、やはり非常に重大な問題になってくるのは、地域開発政策というものと、農業というものをどう結びつけていくかということが非常に重大な問題になってくると思います。だから、もし地域開発というものがうまく行なわれていくならば、そして、それぞれの地方拠点都市をつなぐ交通網が整備され、その他いろいろなものが充実してくれば、私は必ずしも都市の周辺でなければ、あるいは現在ある農耕地の近くでなければやっていけないのだということにはならないと思うのです。だから、おっしゃったように、たとえば北海道のほうにいけば開発のできるところがある。しかしながら、そこに人を持っていくという問題があって、外延的な拡大の問題があるのだとおっしゃることはよくわかる。ところが、それを可能にするには、やはり地域開発政策というものが今後どう動いていくかということによってきまってくると思います。それだけに、私は、今後の地域開発政策を立てられる場合に、農林省としての立場が強く反映されてこないというと、農業というものが置き忘れられた形で地域開発政策が進められていく、これまでそういう欠陥が出てきておったんじゃないか、こういうふうに思うのです。したがって、農用地造成という問題については、特にこれを積極的に取り上げようとすれば、地域開発計画が進んでいくその中に、その農林省の考え方というものが、農業計画というものが積極的に持ち込まれていって、調整がとられるというような努力をしていただきたい。そうでないと、農用地の外延的な拡大というものはむずかしいと思います。そういう点に対して大臣どうです。
  47. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに地域開発が進められる課程におきまして、農業関係が赴き去りにされる傾向がありまして、私どもその点は気がついたといいますか、これじゃいけないというふうに考えてきたわけでございます。でございますので、農業の構造政策を行なうにつきましても、あるいは土地改良の実施面におきましても、地域開発計画の中に、農業の面を相当強く打ち出していかなければならぬということも一御承知のとおりでございます。そういう進め方をすべく、新産都市等におきましても、発言力を相当強くいたしておるわけでございますが、お話しのようなことをよく考えて進めていきたいと思います。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、私は、農地局上長に対してあるいは失礼なことになるかもしれませんが、申し上げておいて、さらに積極的な、前向きな姿勢でひとつ御検討願いたいと思うのは、衆議院で、土地改良長期計画の問題について質問があったときに、「土地改良長期計画は、計画期間に係る農業生産の選択的拡大、農業の生産性の向上及び農業総生産の増大の見通し並びに農業経営の規模の拡大等農業構造の改善の方向に即し、かつ、国土資源の総合的な開発及び保全に資するように定めるものとする。」として、計画を立てるに当たっての考え方がここに述べられておりますが、ここで、農業構造改善方向というのは、内容的にどういうことを考えているのか、こういう質問がなされたはずです。それに対して、農業構造は今後どの方向に持っていくかということについては、真剣に考えざるを得ない問題である。またいろいろの角度から検討を続けておる段階である。各方面の検討の結果、あるいは検討の過程を十分利用して、人間の知恵の可能な限りそれを取り入れて、この長期計画が四条の三の三項の要請に従ってできるよう最大の努力をしたい。いまこの法律の条文だけで、農業構造の改善をきめるという性格のものではない。土地改良計画を立てる際に、いま申しました諸方画の検討と総合されてつくらるべきものである、そういう義務を本法が土地改良計画をつくるものに課しておる、こうふうに理解をしておる、こういうふうにいわれておるわけですね。ちょっと私この項を読んでみて、一体何を言うておるのだろうかと思って考えてみた、何を言われようとしておるのか、よくわからなかったわけです。  そこで、私は農地局長に、だめ押しといっちゃ失礼なんですが、申し上げたいのは、先ほど、この土地改良法目的農業基本法の目標の方向に沿うべく改正されたとで、土地改良長期計画についても、いま、私が読んだようなことが手打ち出されたわけです。それらに関連して、大臣も今度の土地改良事業の考え方の重点というのは構造政策におくのだと、こういうことを育っておられるわけですから、そうすれば、土地改良長期計画の策定に当たっても、やはりその中には、構造政策というものの比重が大きくなってくるということになるのじゃないかと思うのです。はっきりと。で、その構造政策を遂行していく上には、集団化による規模の拡大の問題もありましょうし、あるいはまた、先ほどおっしゃった農用地の外延的な拡大というものも積極的に取り組んでいただかなきやならぬと思うのでして、この点を衆議院の御答弁では、どうもあやふやで私よくわからなかったので、いま大臣なり、あなたのほうの答弁で、むしろはっきりしてきたという感じがするのですが、そういうふうに解釈していいですか。
  49. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 言葉が足らないで御迷惑をおかけしました。実は農業構造を今後どの方向に持っていくかということについては、真剣に考えざるを得ない問題でございますと、私、率直に申し上げました意味は、特に申し上げさしていただきますと、先生指摘のとおり、日本の農業構造は、先ほど来のお話しのように、経営規模の零細性、分散性、資本の貧弱性、これをどういうふうにして改善するかということが構造改善だと、まあ存じておるわけでございますが、しからば、それを具体的にどういう方向でどのように持っていくかということにつきましては、先般来各方面の御意見もございました、十年間に二町五反の農家を百万戸つくるという前の倍増の考えもございます。あるいは協業という形におきまして、いま申しました欠点を是正していくというのも大きな問題であろう、それから再々お話しもございますように、そういう二町五反なら二町五反というものを、かりに相当数をつくるとして、どういう手段で農政を総合的にやっていくかということも、良心的に考えまして農林省内部で真剣にいま議論をいたしておる段階でございますので、こういう趣旨の言葉が出てしまったわけでございます。考え方としては、先ほど来申しておりますとおりでございます。その分野は金融、価格その他法制全分野が受け持つべき部門だろうと存じますが、土地改良法のほうの分野におきましては、やはり区画整理、これは集団化に連なるものです。それから草地の造成事業、ここで農用地造成関係規定の拡充整備を考える。それからやはり何といいましても、米を中心としての問題が大きい問題でございまして、土地改良の本命はやはりかん排事業であろうという立場から、かん排事業を少しでもこの線に沿って前進させるための改正を、土地改良としての分野として一応考えておるという趣旨のことで申し上げた次第でございます。やはり農業制度の全般の問題として頭にございますものですから、以上のような言葉を使ったわけでございます。先ほど来の趣旨で御了解願いたいと思います。
  50. 矢山有作

    矢山有作君 それでは次の質問に移らしていただきますが、衆議院の審議の際に、参考人の陳述の中で、土地改良事業の公共性ということが非常に強く述べられておるようです。たとえば水利事業、保全事業、こういったものに例をとると、その公共性というものは河川とか、道路とかいうものと本質的に違わないではないか。それであって、土地改良事業にあっては、受益ということを農耕地に限り、農業者に限り、非常に狭く考えていくということに大きな問題点があると考える、こういう指摘が行われておるわけです。そこから農民が不当な負担を受けることのないように、その公共性という立場から考えたならば、今後は土地改良事業というものについて考慮していくべきではないか、こういう参考人の意見が述べられておるわけですれ、したがって、これは私は参考人の考え方のとおりだと思うのです。将来そうした意見に対して、農林省としては土地改良事業の負担金、あるいは補助率といったようなものをどういうふうにお考えになっておるか。私は、現在の分担金にしても、補助率にしても、事業によって非常にまちまちで複雑多岐、しかも同じような性格を持った事業でありながら、その負担の度合いが迷うということになっておるわけですが、土地改良事業の公共性という面から言ったら、できる限り国営、県営というような大事業については、農民に負担をかけない。私は一つの社会資本の充実だと思うのです。そういう立場をとるべきじゃないか。また団体営というものに対しても補助率を大幅に引き上げていって、これを整理する必要があると思う、こういう感じがするわけですが、そういう点で衆議院で指摘されているので、今後の方向としてどういうふうなお考えを持っておられますか。
  51. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに私も土地改良が公共事業であり、公共性を強く持っていると思います。ただ御承知のように、土地の所有は私有でございますので、そういう土地の所有者から見れば、土地そのものが生産手段に相なっているわけでございます。そういう点で、全部国が持つというようなことまでいくのはどうかと思いますけれども、公共性を重く見て、農民の負担のできるだけ軽減をはかっていきたい。したがいまして、補助とかその他につきましても、均衡のとれた整備を逐次していきたい、こういうふうに考え検討を加えている次第でございます。
  52. 矢山有作

    矢山有作君 まあ確かに従来の考え方というのは、やはり個人に所有されておる生産手段であるとかいう面の点が非常に強調されて、したがって、公共的な面がむしろその中に埋没するといううらみが多分にあったと思うのですね。これは実際に考えてみると、土地改良事業を促進して食糧の自給度を高めていく、食糧を確保する、こういうような立場からものを考えたら、これは全く土地改良事業というのは非常に大きな公共性を持っているわけです。もし土地改良事業が行なわれないで、生産力が上がらないで、食糧不足といったようなことになったら、一番だれが困るのか。むしろ極端な言い方をすれば、最小限度食糧をつくっておる農民は困らないけれども、国家として、国民全体として非常に困る。そういうふうな考え方をすれば、これはすこぶる公共性が強いわけなんで、そういう点で、従来いわゆる個人の所有であったからという考え方が強く出過ぎておったと思いますので、やはり今後の土地改良事業の進め方としては、やはりそういう公共性が非常に強いという面に注目をして、やはり事業を進めていくべきではないか、また、それをやらないと、現在の農民の状態から見て、画期的に——農民に重い負担をかけて、そうして画期的に農業生産力を増大していくようなことをやろうといったって、なかなかできぬと思うのです。したがって、私どもは最初に申しました大規模な土地改良事業というのは、むしろこれは思い切って国が全額をもってやるべきじゃないか、こういう考え方を打ち出しておるわけです。また団体官等の問題については、補助率を上げろ、上げてやるべきだ、こういうふうに考えているわけなんです。そういう点は大臣の意見と多少食い違うようですけれども、少なくとも土地改良率業が非常に公共性の強いということだけは、考え方は一致したわけですから、そういう点から、今後国の財政的な問題もあると思いますが、しかし、農業の重要性という立場考えていただいて、ひとつ農民負担の軽減という面には全力をあげて取り組んでいただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私もかねがね公共性については深く考えておりますので、農民の負担は軽減できるような方向でいろいろ検討を加えていきたいと思っております。
  54. 矢山有作

    矢山有作君 農民負担の軽減という問題では、補助率等の問題だけでなしに、これも衆議院でもうすでに論議されておりますから、もう繰り返しませんが、融資の問題にしても、やはりこの間、農林漁業金融公庫法の一部改正がありましたが、あのときにも問題になりましたように、決して農民の負担力という点から見て、あれで私どもは十分だとは考えておりませんので、金融の面もあわせて、衆議院等でもいろいろと論ぜられたように、さらに金利の引き下げ、あるいは償還期限の延長ということで、条件緩和の手を検討していただきたい、これもひとつ要望としてつけ加えておきたいと思うのです。
  55. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 土地改良の効果があがってくるのは完了後数年たってからでございます。したがいまして、金融面等におきましても、長期低利でないとなかなか負担にたえかねるという実情は私よく承知しております。そういう面で、その方面もさらになお検討を加えていきたいと思います。また今度の改正の中でも、負担の問題でも市町村が負担する。市町村が一部負担しまして、それを受益者にまたかけていくという場合がございますが、受益者全部にかけないで、市町村が負担するというような面も出てくると思います。そういう面につきましては、国といたしましても、交付税等との関係を自治省と話し合って、受益者あるいは農民の負担を少なくしていくというような措置をいささかとっているわけでございます。御趣旨のような線に沿うてなお検討を加えるべき問題があろうと思いますが、そういう方向検討を加えていきたい、こう思います。
  56. 矢山有作

    矢山有作君 もう一つお伺いしたいのは、土地改良法の第一条の目的のところで、旧法——旧法といってはぐあいが悪いですが、つまり現行法でも、「この法律は、農業経営を合理化し、農業生産力発展させるため、農地の改良、開発、保全及び集団化を行い、食糧その他農産物の生産の維持増進に寄与することを目的とする。」というふうにあって、食糧の生産の維持増進ということが明確に打ち出されているわけですね。これは土地改良法が制定されました当時の状況からして、食糧増産ということが非常に政策的に重く取り上げられておりましたので、こういう点がはっきりと打ち出されたのだろうと考えております。ところが、その後、農業生産力も上がる、それから食糧需給もだんだん安定し、緩和してくるに従って、この食糧生産の増大というような面が世論としてもあまり重視されなくなってくる、そういうようなことから、今度の改正案の中には、それが抜けておるわけですね。ただ、農業の総生産の増大という形では、なるほど生産を上げるんだということは出ておるわけです。しかしながら、食糧の生産の維持増進ということで、どんずばりとはあらわれてないわけです。これを考えてみると、私どもがつかむわけじゃないんですが、食糧供給に対する政府基本的な考え方というものが変わってきた、その一つのあらわれじゃないかという感じがするわけです。たとえば西ドイツの農業基本法、これは日本の農業基本法の参考にしたというのですが、それらにおいては、食糧の自給を確保するというようなことが明確に打ち出されておるというのですが、日本の農業基本法にはそれはない。食糧の総生産の増大ということばはあるけれども、食糧のはたして自給政策というものを重く見るのかどうかというようなことについては、農業基本自体すら、何らの規定もしてない。そういうようなところから、案外食糧を国内で確保しようという考え方が薄れてきた、その一つのあらわれが、この土地改良法改正の中にも出てきておるんじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。で、そういうような一連の考え方が、結局現在のように選択的拡大という面が非常に強く取り上げられて、その半面で米麦の軽視、こういう風潮というものを醸成をしたんじゃないか、その結果の端的なあらわれが、この間の緊急質問で申し上げました米の需給の不安定、こういう状態になってあらわれてきたんじゃないかと思うのですが、そういう点で、私は、一体政府は食糧を国内で自給をするということを基本方針として今後やっていこうとされるのかどうか、この点がやっぱり非常に重大な問題になってくると思うのです。食糧自給態勢をとっていくんだということになれば、これは当然農業政策というものが国政全体の中で非常に重視されるし、またそれに合わして土地改良事業というものも、食糧の国内自給確保という線に従って、これは打ち立てられていくわけであります。この点がやっぱり基本的な一つの問題点になると思いますので、そういう立場から、ひとつ大臣のお考えというものをお聞かせ願いたいと思います。
  57. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、戦前等におきましては、戦争にでもなるという場合に、食糧の自給ができないということではたいへんだということで、食糧の自給ということが非常に強調されましたが、しかし、いま戦争というものは遠のいた、こういうふうに考えられておりますけれども、そういう戦争というものは遠のいたから、自給の必要はなくなるというふうには私は考えません。やはり食料の自給があって初めて総合的に経済の発展もするものだ、こういう観点に私は立っておりますので、食糧の自給政策をなお遂行することは当然しなければならぬ問題だと思います。  そこで、この間御質問もありましたが、ことしの米の需給状況は前よりも窮屈でございます。これは食糧自給政策を捨てたというよな感じを持たれたからではないかという御意見でございますけれども、あるいはそういう点も幾ぶんあるかと思いますけれども、これは、一つは高度経済成長において、非常に他産業、ことに工業面、第二種、第三種産業等のほうへ人口移動等があったというような面が大きな面ではないかと思います。  そこで、農業基本法でございますが、農業基本法で、農業生産の、総生産の拡大ということを条文の中にいっておりますけれども、しかし、この前文の中に、やはり「国民食糧」ということが書いてあります。すなわち、あまり長く読む必要もないと思いますけれども、「わが国の農業は、長い歴史の試練を受けながら、国民食料その他の農産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等国民経済発展と国民生活の安定に寄与してきた。」それから「われわれは、このような農業及び農業従事者の使命が今後においても変わることなく、民主的で文化的な国家の建設にとってきわめて重要な意義を持ち続けると確信する。」と、こういうふうに、前文で書いてありますので、国民の食糧その他を、自給度を減らしていくというような考え方ではないというふうに私は理解いたします。こういうふうな前文がございまして、条文の中には、「農業総生産の増大」といいますか、そういう表現がとられておりますので、土地改良法の第一条の目的の中にも、「農業総生産の増大」ということをうたっておりまして、現行法のように「食糧その他農産物の生産の維持増進」ということばは抜けておりますけれども、当然農業総生産の増大の中の、何といたしましても、食糧が中心であり、食糧の中でも、日本の国情からいいましたならば、米、麦につきましては深い関心を持って自給度を維持増進していかなければならぬということは放てきしたわけではなく、法文から「食糧」というものが抜けておるからといって、それを捨てるという考え方は私は持っておりませんし、またそういうふうに御理解願いたいと、こう考えます。
  58. 矢山有作

    矢山有作君 いま、大臣の御答弁よくわかります。食糧自給確保という問題は、私は戦争のあるなしということにかかわらず、むしろ国民生活の安定的な発展、さらにいえば、戦争を防ぐという面からも、このことは非常に重大なものじゃないかと思うのです。むしろ、戦争があるから食糧自給を確保しなければならぬのではないので、食糧の心配がないということは、一つは戦争を防ぐという契機にもなる。そういうふうに考えていったら、食糧自給確保ということは非常に重大な問題であって、そういう点で、いまお述べになったお考えというものは、私は今後も堅持していただいて、食糧自給確保ができるように、生産政策、流通政策、価格政策と、その他万般の政策をやはり打ち出していただかなければいかぬ。私ども現在の状態を見ていると、むしろこのままで推移すれば、食糧自給度は低下していくのではないかということが逆に心配になってくるわけです。そのことは、御承知のように、米の作付け面積にいたしましても、最近は作付け面積が減少する傾向が出てまいっております。麦作については、私がもういまさら言うまでもなしに、非常な作付け放棄が起こっておる。一面、それじゃ米や麦がそういう状態になって、では、選択的拡大というので、畜産や果樹が非常に大きく安定的に伸びていける見通しがあるかというと、そういう見通しは私はあまりない、非常に暗いのではないか。特に最近の状況を見てみました場合に、畜産などの先行きというものは非常に不安定な要素が強い。飼料基盤が薄弱で、外国飼料に依存しなければ、日本の畜産は成り立たない。したがって、その価格変動によって畜産自体の盛衰が、死命が制せられるというような姿にもなっておるわけです。そういう点からして、私どもは口先だけでない、ほんとうの自給体制を確立するための政策面における充実というものがはからなければならぬと思いますので、こういう点についてはひとつ真剣に御努力を願いたいと思うのです。特に選択的拡大といいましても、現在のような価格政策のもとで、選択的拡大という道がスムーズに開けるとは私ども考えられぬわけです。やはり米、畜産、果樹、麦、そういったものをずっと労働報酬等から考えてみましたとき、やはりまず価格政策というものが先行していって、そして選択的拡大というものが安定した姿で行なわれていくんじゃないか、そういう道を開いておいて、それから生産性を高めていくようなもろもろの構造政策というものが打ち出されていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えられるのです。それがともすれば、とにかく先に構造改善をやって、何とか生産性を高めるような方策をとれば、選択的拡大ができるのだ、畜産が伸びていくのだと、こういうふうに逆にお考えになっている面があるんじゃないかという感じがしますので、私どもは、やはりまず所得確保、それから構造政策を打ち出していって、生産の合理化をはかっていくということではないと、選択的拡大というのは円滑に進んでいかぬ、こういう感じがしますので、そういう点での大臣のお考え方なり、また政策の今後の展開というものに対して、強い決意をもって臨んでいただくようにお願いをして、お尋ねしたいと思うのですが。
  59. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私はいまの価格対策非常に大切な問題だと思いますが、価格対策を先行すべきだということでございますが、やはり私は価格対策と、生産性向上面と、並行といいますか、両面相待っていきませんといかぬじゃないかと、こういうふうに考えます。もちろん、所得がふえまするならば、機械を入れるということもできまするし、生産性を向上するような助けにもなるわけでございますけれども、やはり政策といたしましては大事な価格政策でもございますが、生産性向上をし、コストダウンといいますか、そういうものもできるようなことも講じつつ、両面から進めていきたいと、こういうふうに考えております。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ次にお伺いします。ただ、価格政策その他の生産政策、流通政策、どちらを先行させるかさせぬかという問題については、私とは意見の多少の食い違いがあるようです。私は価格政策というものがある程度先行して、所得確保をはかる、そういう中から、さらに生産政策なり、流通政策というものが確立されてくることが必要じゃないか、こういう考え方をしておるわけですが、それは考え方の相違ですから、それはけっこうです。  次にお伺いしたいのは、先ほどちょっと食糧の自給確保の問題で触れたのですが、この間、本会議でも御質問申し上げましたように、米の需給不安が生じておるということは、いま私が申し上げぬでも、本会議の質問でも、こまかい事例をあげて申し上げましたので御存じだと思うのです。ただ、その際非常に私が残念だったのは、米のこの需給不安定という現象は、一時的な現象なのか、それとも長期的、構造的な現象なのかということをお尋ねしたわけです。これを一時的な現象と見るか、長期的、構造的な現象と見るかによって、今後の政策の展開というのが非常に大きく違ってくる。これに対しては、残念ながら池田総理からは御答弁がいただけなかった、逃げられてしまった。それで、農林大臣としては、米の需給不安の現状というのを一体どちらに見られておるかということをひとつお伺いしたい。
  61. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 一時的な面といたしますれば、一昨年よりも昨年は収穫が減っておりますし、あるいは麦類は、長雨のために非常に減収であったと、こういう一時的な面は、そういう面がございます。  それからまた長い目での観点といたしますならば、ここ二、三年、端境期に新米を食い込むというような現象が続いて、ことしで三年目くらい続く、こういう面からいたしますならば、部会への人口の移動等に伴う食糧の消費の増加という面もございますので、一時的とばかり見られない面もございますので、そういう対策を、それに対処して対策を講じていかなければならぬと私は考えております。
  62. 矢山有作

    矢山有作君 私も大体大臣と同じような考え方をしておるわけです。これはいままでの米の生産状況、それから消費の状況からずっと見た場合、それからさらに現在の労働力の流動の状態を見た場合、それからさらに全般の農業所得というものを見た場合に、これは一時的な要因よりも、構造的な、長期的な要因が非常に強いと思うのです。したがって、そういう観点に立って今後の農政というものを進めていただかぬというと、これは米不足という、米の需給不安定という現象は一時的なものとしてとまらないと、こういうふうに考えますので、その点については、いま多少のニュアンスの違いはありますが、同じようなお考え方のようですから、特に米の自給確保という線で、今後ひとつ御努力を願いたいと思うのです。  で、実はこの間「エコノミスト」を読んでおりましたら、こういう記事が出ているので私もびっくりしたのですが、中山誠記という人です。農業総研所得研究室長だそうですが、その人が計算しているのによると、日本人は現在、全体で百兆カロリー分の農産物を消費している。ところが、今後ふえる一日三百カロリー分をまかなうには、さらに五十兆のオリジナル・カロリー分の農産物をふやさなければならぬ、こういうことを言っておるわけです。一日三百カロリー分がふえるというのは、所得倍増計画で言われているその三百カロリーをもとにして計算したものだと思うのですが、なぜそれじゃ五十兆のオリジナル・カロリー分の農産物をふやさなければならぬほどたくさんふやさなければならぬのか、その理由としては、今後ふえるのは畜産物その他で、これまでの米に比較して、同じ単位カロリーを供給するのに必要な耕地が数倍から十倍にふえる食物だ、こういう見方をしておるわけです。これまでわが国は、八五%程度の比較的高い食糧自統率を維持してきた。これは中山さんに言わせると、生産力の高さによって支えられたものではなしに、むしろ食糧需要がもっぱら穀物に偏したからだ、農業の人口扶養力の高さは、その生産力の高さよりは、食生活の特質によって確保されていたのだ、こういう見方をしておるわけです。そうすると、将来この中山さんの試算に従う必要カロリーを獲得していくためには、先ほど持ち出しました農用地の外延的拡大というものが、これは不可欠だ、こういう感じが非常に強くするわけです。それと、もう一つ考えなければならぬのは、それだけのカロリーをとるために、全部それを飼料として輸入した場合にはどうなるかという計算をしておるわけです。それによると、トウモロコシ一千四百万トンに達すると、こう言っているわけですね。わが国の米の生産量が千三百万トンですから、それを上回る千四百万トンというトウモロコシが必要なんだ。金額にすれば、現在の金額でいって九億ドルだ、こういう見方をしているわけです。そうすると、これに、さらにいままでの食糧輸入の状態等ずうっと勘案していくと、昭和四十五年の農産物輸入というものは二十億ドルに達する可能性が強いんだ、こういう言い方もしているわけですね。そうなってくると、これはもう食糧自給ということが、私は、いかに国際収支の上、あるいは国民生活の安定の上から考えて重大であるかということが、まあこの論文にもいろいろ問題点はあるかと思いますが、そのまま受け取るとして、問題点があるということがうかがえますし、さらに、土地改良の中で、外延的農用地の拡大というものの重要性というものがうかがわれるような気がするわけです。したがって、そういう点から、やはり先ほど申し上げましたように、食糧官給という立場を堅持して、生産政策、流通政策、価格政策というものの一そうの拡充をやっていただきたいということをひとつお願いを申し上げておきたいと思います。
  63. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) よく私も御趣旨は理解できるわけです。先ほどから申し上げておりますように、そういう線を一そう検討して進めていきたいと、こう思います。
  64. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 暫時休憩いたします。午後二時から再開いたします。    午後一時二分休憩      —————・—————    午後二時二十七分開会
  65. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は、御発言を願います。
  66. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 水の問題、用水の問題について、土地改良に関係が直接ありますので、二、三御質問を申し上げたいと思うのですが、今度の土地改良法の提案理由の説明の中に、農業基本法のその趣旨を、取り入れて、あるいは畜産とか園芸、こういったような成長部門と称されている方面の事業を取り入れる、こういうようなことが提案の理由にも示されておりますが、御存じのとおり、採草地に多くの場合において、水田地帯のように用水が非常にやりにくい。これは地勢の関係もあります。私が申し上げるまでもなくこれは概算でありますが、乳牛一頭が一日にかりに出乳量、乳が一日に一斗出れば、やはり一斗くらいの水を一頭に要するのですね。そこで非常に青草でも多い時期であれば、その飼料の作物の中に相当な水分を持っていることは、これは当然なんですね。しかし冬分であるとか、あるいはそういうような水分の少ない作物の多い場合、特に濃厚飼料なんかを多分にえさとしてとるような場合には、どうしても地下水、井戸あるいは谷川の水というようなものに依存しなければならぬのですね。そこで提案の理由の成長部門である畜産や園芸を進めるということに対するお考え、したがって、この改正法案のうちにそういう意味を取り入れて事業の対象にするという構想そのものには、私は必ずしも反対ではない、非常にけっこうなことだと思うんですけれども、また一方、園芸の方面でも、かんきつでも、あるいはブドウでも、もしくはカキでも、五回、六回、七回、最も多く消毒する場合は、気象条件なんかによって、雨天なんかの続いたような場合には十回も一つの果樹園に、御存じのとおり近ごろでは大型な、つまり動力噴霧機で、動力によって病害虫の防除をやるんですね。したがって、非常にたくさんな水を要するんですが、そういう用水の問題に対しては、どういうようなことをお考えになり、またいかなる具体的な対策を持っておられるか、その点ひとつお尋ねを申し上げたい。
  67. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御承知のとおり、未墾地を切り開きまして果樹園をつくる、あるいは畑地をつくるという事業は、いまの制度といたしましては開拓の制度として取り上げているわけでございます。それで開拓の事業といたしまして、そこを切り開く、抜根、木を切りまして根をとりまして、土地をならしますほかに、水が要るという場合には、水源工事を行ないます。水を引っぱるという必要の場合には、水源、水路を一つくるのです。それらを全部含めまして開拓事業としてやっているわけです。したがって、樹園地をして水がどうしても要るというときには、その御計画が水源工事を含むものであれば、水源からつくり、水路をつくり、階段工をつくるのが農地造成要業として補助対象になります。それから飼料畑といいますか、畑をつくりますのにも、そういう関係で水源の工事をやる場合には、計画に取り入れて補助をいたしております。そこで、御質問の樹園地には、したがってそういう制度によりまして御質問の問題は処理できるわけであります。  それから草地、永年牧草地をつくる事業の関係でございます。それで永年牧早地をつくる事業は、御承知のとおり二十七、八年ごろから畜産局で草地造成事業というものをやってきております。これは経過的にみますと、切り開きまして、牧草の種をまいて、肥料を与えまして永年牧草地をつくる。これについても水を与えたほうがいいという見解も昔からございました。しかし、いままでのところでは、水を引っ張ってまで草地をつくるという事業が出ておりませんで、現在、帯地造成事業で水源、水路工事を取り込むということには相なっておりません。そこで問題が二つ分かれまして、畑をつくるという段階を経て牧草をまくというのならば、在来からの開拓制度で水源は可能でございます。それから直接草地造成事業で水源を造成しようというようなことが、具体的な計画として相当出てくるような実態でございますれば、草地造成事業の中には、現在、牧道と抜根、整地、播種、牧さく等が事業の内容になっておりますが、将来、必要によって水源工事も入れるということも、これは予算措置の問題でございますから可能でございます。いずれにいたしましても、樹園地の水源工事は補助対象、それから畑地をつくる場合には水源工事が補助対象、草地につきましては、畑地をつくらない場合には、現在、補助対象になっておりません。そういう必要が大いにあるということでありますれば、草地改良の現在の牧道、牧さくのほかに、水源造成事業というものを入れることは研究に値するものと考えます。
  68. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 いまの未墾地をいわゆる開畑あるいは開田ということで田畑に変換する、 いわゆる開拓する場合は、それは開拓補助事業であるが、もうすでに畑地であるものに果樹園をつくる、果樹を栽培する、こういう場合は、開拓であるとはいえないのです。
  69. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 現在の事業の体系から申しますと、すでに畑でありますところに水を引っぱる事業は畑地かんがい事業ということで、かん排事業として取り上げております。したがって、現在畑地のところに牧草を植えたり、したがって水が要るというのでございますれば、畑地かん排事業として計画されれば、その計画を採択いたしますれば、補助金が出る。そして水の措置を事業として、水を引っぱってくる事業が実施できる、これはもう既存の制度でございます。
  70. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 局長の話は抽象的で、実際に畜産を御経営になった御経験があるかどうかわかりませんが、この水源というものは、谷川の水にしても、森林が非常にまあ樹齢も古く、繁茂しておるいわゆる深山であれば、谷川の水も相当あるのですね。ところが、ただ、丘とでもいいますか、普通の水田よりかやや高い丘陵地帯ぐらいな程度のごく勾配のゆるやかなところなんかにおいては、それが果樹園にしましても、あるいはそれに牧草を栽培しても、そういうところには、たとえ助成金を補助金を出すと、ただ金の面だけを助成するといっても、具体的にその水源をどこに求めるかということが、実際の問題となると非常に困難なのですね。そういう点についてはひとつ何か名案があるか。
  71. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 現在畑灌にいたしましても、開拓にいたしましても、水が要るという場合に、いろいろ方法ございまして、そのもよりの谷川にせきをつくって、そこから引っぱるという方法、それから、そういうことでなくて、井戸を掘る、これも井戸を掘って池にためておくなどの方法で現にやっておるところもございます。それから、井戸を掘ってもない、もよりに谷川もない、こういう立地に相なりますと、これはちょっと実際問題として、じゃどこから水をもってくるかということは、ちょっとやっかいなことに相なります。むしろ水がどうしても要るという場合には、それは極端にやれば愛知用水のような遠くから引っぱってくるところもございます。いろいろな組み合わせがあると思います。もっと遠くの水路から引っぱるという例もございます。何もないときどうするのだという御質問でございますと、ちょっとこれ、私、具体的な地区につきまして、試掘をするとか、やはりいろいろ具体的にやってみませんと、水源を確保する、すべての場合で確保する方法があるかという意味でございますれば、ちょっと無理ではないかと、かように存ずるわけであります。
  72. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 そうしますと、結論的にこういうふうに了承していいんですね。未墾地の場合は、まあ開拓関係の対象として、それから既墾地の、既存の畑地であれば、これは牧草地にしても、あるいは果樹園にしても、井戸を掘るなり、あるいは谷川の水を引っぱってくるなり、これは補助の対象としてやってよろしいのである。それで、いまお話のありましたように、具体的に実際に水源はないのだ、こういう場合は、これは実際の個々の実地についてどうすればいいかということに私はならなくちゃならぬと思うのですが、まあ結局井戸を掘るか、谷川の水を引っぱってくるか、あるいは川にせきをつくってためて水路でもってくるか、そういうこと以外ないと思うのですね。いずれも補助の対象にはもちろんなるわけですね。
  73. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほど来申しておりますとおり、開拓パイロット事業でやる場合、未墾地でございますれば水源も補助対象になります。それから既墾地でございますればかん排事業でございます。それからそれぞれに調査の段階がございまして、調査の段階におきまして、どこに水源を求めるか、井戸を掘るか、川をとめるか、どっちが得か、あるいは掘ってみて水が出るかという段階は、調査段階できめておるわけでございます。
  74. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 いまのやはり水の問題に関連して、私の県内にも過去においてそういう例があったんですが、いま局長からお話のありました畑地かんがいですね、これが佐賀あるいは福岡地方にもある、他の地方にももちろんあると思いますが、地下水をポンプ・アップしてやるのですね。ところが新しく畑地かんがいをやるために、今度は先にやった畑地かんがいが地下水の水脈が同じである、たまたまそういうことに、ぶつかるかなんかで、前にやった、実際に施行しました畑地かんがいのほうに水がなくて困る、こういうことで新しくやるのには困るんだ、そういうことで少し騒いだことがあるんですがね。こういう場合における何か制約といいますか、あるいは何らかの対策というものが考えられておるんですか。
  75. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 畑灌にいたしましても、水田補給にいたしましても、いまもおっしゃいました点が水利権との問題で非常にむずかしい問題があります。川から水を引っ張るといいましても、ただ上流から引っ張ると下流の水利権を侵す、あるいは地下水に相なりますと、なかなかその関係はプリケートでございますが、明らかに上で掘れば下でかれるということが予想されます場合には、下の水利権の侵害の問題になる。そこでいま私どもがやっております土地改良事業と申しますものの相当部分は、いかにしてその下あるいは他の水利権者に影響なしに所要のところに水を引くかという計画段階で、非常に何といいますかいろいろと手を必要としているわけであります。一つの例でございますが、かりにせきをつくる、せきをつくらなかった場合には、そこで一トンの水をとれば下にひびきますが、せきをつくっておきまして、降水期にそこにためておきますれば、その下の水は侵さないで済むということで、土地改良を通じて水利権の——そのせきをつくるということが土地改良事業に相なります。そのせきをつくるということを通じて水の競合関係の解決をはかるというのが、実は土地改良のうちの相当の大きな仕事に相なっております。そこでいまお話のように、具体的な地区で井戸を掘る、そしたら下で水がかれるというような場合には、これは単純には井戸は掘れないわけであります。そこで今度はため池をつくって農閑期にためておくとかいうようなことがまた要る。そういうふうにいろいろ具体的な地区につきまして、どうしたら水利権を侵さずして、かつ水がそこに持っていけるかということを調査設計いたしますことが、土地改良事業の本体の非常に大きな仕事に相なっておる。方法としてはせきをつくる、ダムをつくる、ため池をつくる、あるいはもっと深い層をねらう、いろいろの方法が技術面から検討されておる次第でございます。
  76. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 そうしますと、結局実際の事業の実施の段階に入る事前におけるいわゆる計画設計の段階において、慎重なあらゆる角度から支障のないような技術的ないろいろな研究をやって遺憾のないようにやる、こう抽象的に答弁される以外の具体的な案はないんですね、またそういうことですか。
  77. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) そのとおりでございますが、制度的にも大きな事業に相なりますと、三年、三年の調査期間をおきまして、予算的にも調査費を組むという段階を、制度的に経ておるわけでございます。その調査段階で、なるほどこういう計画でいける、上下の水利権も侵さない、あるいは関係農民の土地改良法におきます同意関係も確認されるという見通しをつけまして、土地改良法の手続を片方でとると同時に、工事として、それをわれわれの用語で申しますと着工といっておりますが、の段階に初めて入る、こういうことでその問題は制度化されておるわけでございます。
  78. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 水の問題に関連して、これは農林省ばかりじゃなく、建設省がほとんどおもな役割りをつとめると思いますが、昨今の新聞にもそういう記事がある。私も県内においてそういう事例に実際ぶつかったことがありますが、近年建築ブームで、土木事業の非常に旺盛な進み方で、河川敷地内の砂利を相当乱暴といいますか採取して、それがために、あるいは河床、水位が下がりて農準用水に非常な迷惑がかかる、あるいは所によっては堤防の近くまでだんだん砂利をとっていって、洪水等のような場合には堤防の決壊のおそれさえないとはいえない。こういうような関係が、私も二、三実際にぶつかったこともあるんですが、大きな河川については、今度河川法が改正されるでしょうが、もとのいわゆる河川法の適用される大河川等については、河川監視なんていうものを置いて監視しておるようですが、これでは十分な監督も届かぬ、また実際上現場を押えてどうするということもできぬでしょうが、農業用水関係上、砂利の採取ということについては、相当これはお考えになって、あるいは建設省あるいは他の省にも関係があるかと思いますが、細心の注意を払い、農業の、ことに水田農業なんかに対して支障のないような措置をとってもらわなければならぬと思っておりますが、現在どういうようなことを建設省その他ではされておりますか。
  79. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 現行河川法は、御承知のとおり非常に明治法のスタイルで、行政庁がただ流水あるいは工作物の占用、土砂の掘さく、土地の掘さく等について許可するというだけの法律でございます。そこで実際問題としていろいろ問題がございまして、いずれ御審議になる新河川法におきましては、たとえば砂利採取に関連があります河川の区域における土地の掘さくの許可というものは、関係大臣の協議事項に一応明文化いたしております。それから二級河川等におきましては、県の中におきます土木部門と河川行政部門との協議で、覚え書き等できめる。で、ただ根本的には建築需要の旺盛のために砂利需要が非常に多うございます。そうして基本的に砂利の採取を、多摩川とか特定の著しくひどい河川について全面的に禁止するまでいっておりますが、一般的に砂利採取は禁止いたしておらないわけでございます。したがって、法律制度的には砂利採取の許可につきましての関係農業利水関係でいえば農林省、あるいは知判がやります二級河川については農林担当部門と十分の協議を遂げてから許可をするように今回一歩進めておるわけでございます。それにいたしましても、御承知のとおり、一雨降りますと掘さくしたあと状態が非常に変わりますので、なかなか運用上は非常にむずかしい問題があろうかと存じますが、ともかく一歩進めまして、協議事項にまで持ち込んでおります。こういう実態でございます。
  80. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 御存じでしょうが、河川の根本的の大改修をやる場合には河川法を適用して国がやり、平素の維持管理等については、知事がその権限を持っておるようですが、砂利採取の場合には採取の場所、量等を示して一定の料金を払って許可といいますか、認可というか、いずれにしても行政庁の承昭を経て取ることになっておるんです。現在。ところが、すべての業者が必ずしも全体そうだとは言えませんけれども、やはり取りやすいところから取るとか、いろんなことで、かなり願い出した土地と実際取っておる実情というものは、必ずしも一致せぬ場合が相当多いですね。そのために、ただいまも申し上げるように、あるいは農業川の場合には農業川水に非常な支障がある。あるいは、大河川であれば、かんがい川水になるその支川、本川から水が流れていく、流入する上に支障を来たす、こういうような場合があるんですねそこで、今度河川法ができて、あるいは大きな河川は国が全部管理すると、こういうことになりましても、実際上はよほど平素において、大河川としては建設省、あるいはその他の河川については県当局、それらの関係方面と密接な連絡なり、平素の実地における状況等も常に注意を払って遺憾のないようにしてもらわないと、とったあとでやれまた元のとおりに戻せといってみたって、事実上これは不可能なんですれそこがいろいろ問題が起こって、いま申し上げるような事態が起こるんですから、これから先は希望になりますが、ひとつ関係各省との間に、平素において、ただいま私が申し上げたような事実が各地にあるということを十分ひとつ御承知願って、私も現に直面しておる問題も持っておりますが、遺憾のないように農業の経営上、用水上の問題に迷惑のかからぬように御配慮を願いたいと思います。
  81. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 河川法の改正をめぐりまして、非常に大きな問題点がございました。御趣旨のとおり十分注意してやってまいりたいと思います。
  82. 森部隆輔

    ○森部隆輔君 それじゃまだ小さいこともありますけれども、いま申し上げた点は、水の問題で非常に重要な問題でありますから、ひとつ十分の御配慮を願いたいと思います。要望を申し上げておきたいと思います。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃお尋ね申し上げますが、午前中の最後のところは、七地改良法の第一条の目的及び原則ということの中から、食糧の生産の維持増進ということが抜けておると、それは要するに選択的拡大というものを進めていく一方では、米麦軽視の考え方からそういうふうなことになったんじゃないかということを申し上げて、現在の米の自給不安定な状態において、どういうふうにこれを見られるかということでお尋ねを申し上げたわけです。われわれの立場からすれば、米を中心にする食糧の自給を確保するということが、国民経済の安定的な発展の上からも、国際収支の上からも非常に重大だと、重要だという立場をとってお尋ね申し上げ、そして話が例の中山城記さんの議論を引っぱってきて、食糧自給確保のなかなかむずかしいという点等を申し上げてみたわけですが、さらにこの食糧自給度を向上し、食糧自給度を確保していくというためには、いろいろまだお聞きしなければならぬ問題があるわけです。特に米の自給の、不安定な状態においては、もっと突っ込んで、これをお聞きしなければならぬのですが、きょうは大臣はお見えになりませんし、それから食糧庁のほうも見えておりませなんだので、この問題はあと質問に残させていただきます。したがってこの次の機会には、大臣なり食糧庁から出ていただいて、米の自給見込みについてひとつぜひお聞かせ願いたいと考えております。  きょうは引き続いて農地局長にお伺いいたしますが、第一章の二で、今度土地改良法の一部改正で設けられる例の土地改良長期計画をつくるということになっているわけですが、その内容の論議は、先ほど少しばかり申し上げましたが、一体土地改良長期計画策定というものは、いつを目標にしてやれというのかわからないので、ひとつ教えていただきたいと思います。
  84. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いまの段階におきまして考えておりますのは、この七月の終わりごろまでに、先般来いろいろ御説明をいたしました個表、その他の調査のデータの、取りまとめ検討を終えて、計画案の樹立作業を十一月ごろまでを目標にやりたい。そして関係方面もいろいろございますので、それとの協議もあると存じますが、四十年の四月を目標に、公表に取りつけたいという心組みで、現在作業を進めております。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 その計画立案をされる際に、先ほど話が出ましたように国土調査法があって十数年やっているが、国土調査は進展しておらない。それからさらに三十三年の農地行政白書では、今後の土地利用の高度化のための調査をやらなければならぬということで、基本的な方針を示しておったわけですが、これに従っての調査もあまり進んでいない現状の中で、具体的にはどういうものを基礎的な資料として、土地改良の長期計画というものをお立てになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  86. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 長期計画には、先般申し上げましたように圃場整備事業、圃場に水を引っ張ったりするための基幹の施設に関する事業、それから防災に関する事業、農用地造成に関する事業というように分けて、これをつくる必要があろうかと考えております。そのうち御質問にかかわります農用地造成に関する部分でございますが、私ども考えといたしましては、きょう午前中にも若干触れた次第でございますが、一つは、やはり日本の耕地、すなわち田畑をどの程度その壊廃との関係において維持する必要があるか。またそれを維持するのは、その物の需給面等も考えて、どの程度の耕地を持つ必要があるか。それから別途畜産局関係におきます飼料、家畜の増殖計画にからみまして、えさをどういうふうに国内的に確保する必要があるか。それは草食性動物に対します草を、どの程度の割合で食わせていくかという角度からの草地の要造成量、こういうものがナショナル・ベースと申しますか、全国ベースでひとつ出てまいる、また出してまいりたい。それが一つでございます。それからもう一つ、この前配付いたしました要土地改良事業のほかにも、現在調査をいたしております総合土地改良事業で要開発開発すべき土地の広がりを調査いたしたい。これは県庁が市町村等々と具体的に相談いたしまして、具体的に当面十年間の間くらいに附発いたしたい面積を調査をいたします。そこで基本的にはそれらの用地を積み上げまして、比較検討いたしまして、国ベースにおきます総額をきめてまいりたい。総合土地改良調査におきましては、これは府県別に出てまいりますから、それで地方との関連もつけてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、けさ午前中お話のございました土地利用調査の問題でございますが、御承知のとおり、土地利用、確かに三十三年当時から農林省の中でも非常に問題に相なりました土地利用区分、特に林相の、林業の一定の土地を林地として使うか、草地として使うか、農地として使うかという問題が非常に議論に相なりました。そこに一つ計画的な科学性的な方法を確立すべきではないかということが、関係部局間で非常に議論に相なりました。その結果、技術会議を中心にひとつこの問題と取っ組んでみよう。こういうことで三年間技術会議が取っ組んだ次第でございます。お読みになって御承知かと存じますが、いわば土地分類、土地分級、それから土地利用区分という三つの段階を経て、土地に採点をしていくことはできないかという立場での方法論でございます。ところがこれをやりました結果といたしまして、いろいろ土地分類をやります場合の気象条件の一定の地域におきまして、たとえば気象条件のデータのある地域、ない地域等いろいろございますが、それと、最もこの技術会議の調査の方法論のまだ及びません点は、社会経済的要件に関する部分は、これは距離等につきましては、これは計数化し、市場等の距離等につきましてはこれを計数化して採点方法の区分まで取り入れているわけでございますが、問題は社会経済的に一定の土地を林にするほうがいいのか、たんぼにするほうがいいのか、草を植えるのがいいのかという問題は、必ずしもこういう社会科学だけから出るかどうかという非常に大きな問題に逢着いたしまして、現在、これをこのままで進めるのには少し問題があるということで、基礎研究といたしましては、ここで打ち切っておるわけでございます。それでこれから先は時の政策の判断というものも入れなければむずかしい問題も入ってまいろうかと思うのでございます。また、いかなる価値判断の上で、木を植えるか、あるいは草を植えるかということも、非常にむずかしい問題を含んでおります。そこで、私ども考え方としては、これを待って全国の土地を何か分類して開発をするという努力を否定するものではございませんが、まだ相当の研究を表する課題であるという立場に立ちまして、いま申しました、要土地改良調査、総合土地改良調査にいたしましても、あるいは現在のパイロット方式にいたしましても、地元の方がその土地をいかに利用するかという判断を尊重いたしまして、樹園地を造成したいという御要望のところは、それを受けて補助事業として取り上げるという、地元の御意見、価値判断を尊重してやる、もちろんその際に土壌とか傾斜とか気象とかいうものは、これは役人なり関係者が科学的立場で調べて差し上げなければならない部分が相当あるわけでございます。究極的にこの土地を何に使うかということは、当面あるいはしばらくの間は、やはり地元の考え方を尊重していくという立場に立たざるを得ないのであります。こういう立場に立ちまして、先ほどの総合土地改良におきます開発部門も、そちらの地元からの調査一つの大きな要素にいたしております。ただ、その結果と、先ほど申しましたナショナル・ベースにおきます。国としてこの程度は助成したいという部分とのギャップがありますれば、その辺をどういうふうに調整していくかという問題が今後の課題と、かように心得ております。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、現在の段階としては、いまおっしゃったように、総合土地改良調査なりあるいは要土地改良調査、それらのもの等、利用できる範囲のものを利用していくという以外にはないのだろうと思います。しかし、先ほどおっしゃっておるように、土地利用区分について社会経済的見地からの土地利用というものがこれは一番困難な問題でもあるし、それだけに今後解決を要する問題として残っているわけで、すね。これはおっしゃるとおりに、政策判断によっても動かされてくると思うのです。ところが、実際に農業というものを国の総合的な開発、また地域開発の中に取り入れて、そしてそれ相応の位置づけをやっていくというためには、やはり必要なのは、いま言った立場からする土地利用ということが、非常に大きなウエートを持ってくるのじゃないかというふうに私には考えられるのです。そういう点から、一応立てられる土地改良長期計画というものには、まだかなりの不備な点も出てくるのじゃないかと思いますが、一応改良計画を立てられても、それらの問題の何といいますか、将来の是正というか、補完というか、そういうことは積極的にやっていきながら、土地改良の推進というものをはかられることになるのだろうと、こういうふうに想像するわけなんですが、そういうふうに解釈していっていいわけですか。
  88. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 私どもも初めての試みでございますので、一挙になかなか、いわゆる四条の二の三項のむずかしい課題を負った土地改良長期計画というものが、一挙にできるとも考えておりません。ベストを尽くすつもりではございますが、いまおっしゃったように、たとえば同じ十年でございましても、前期、後期とに分けまして、後期におきましては前期の経過を待ってさらに修正をするという、不断の修正を必要とするべきものと、かように考えておりますので、おっしゃるような趣旨で処理をいたしたいと思います。  なお、ちょっと申し上げたい点が一つございます。というのは、これは土地利用区分に関連してでございますが、土地利用区分で、技術会議等でやっている問題としまして、農用地と林地をいかに土地利用区分をするかという課題と取っ組んでおるわけであります。今朝来の問題といたしまして、もう一つの大きな土地利用区分の問題としては、いわば広い意味農業用地、それから住宅、工業、この問題が一つ課題であろうかと存じます。ことに後者につきましては、どうも矢山先生もおっしゃっておりましたが、本格的に取っ組まないと、農林省だけではいかんともなりません。そういう内容を含んでおります。先ほど来、土地利用区分として技術会議やわれわれのやっておりますのは、農業及び林の部分としてやっておるということを申し添えておきます。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 私の質問のしかたが、ちょっと混乱するようなしかたをしたかと思うのですが、おっしゃるように農業技術会議でやっている問題と、それからそうでない農用地と、それからそれ以外の工業用地なり宅地造成の場合の造成両との調整、これはやっぱり二つ分けて考えていかなければならぬと、その点はおっしゃるとおりだと思います。ただ問題は、農用地としての技術会議でやっておるその利用区分だけでは、やはり不十分なものができてくる。だからそれと、それからさらに広い意味での総合開発といいますか、それとの場合における工場用地なり宅地造成とを含めての土地利用という問題と二つの面から、今後の問題をとらえていかなければならぬと思うのです。またそういうとらえ方をせぬと、ほんとうの意味の長期の土地改良計画というのは立ってこないのではないか。またそれが実施に移される中で十分な効用を発揮してくるということも期待できないのではないか。こういうふうに思うわけなんで、問題は二つに分かれますが、そういう点からさらに一そう広いとらえ方をして土地改良の長期計画というものが立てられ、それが実施に移されて効果のあがるような施策を考えていただきたい、こういうふうに思うわけです。  それから、その次にお尋ねしたいのは、これはまだいまのところとてもそこまではいっておらないかとも思うのですが、所得倍増計画では、農林水産関係の投資というのが目標年次において大体一兆円、こういうふうな目標になっておるようですね。そのうち土地改良が三千八百二億、開拓千五百三十億、干拓千百二十九億、計六千四百六十一億くらいになっておるのではないかと思っておりますが、この程度だとすると、この土地改良長期計画と、この所得倍増計画で出されておるこの数字といいますか、計画との関連というのがどういうふうにとらえられておるのか。もう少し申し上げると、長期計画を立てた場合、所得倍増計画考えられておるようなことでは、とてもその計画の遂行をやっていくという上には、不十分な点が出てくるのではないかと、こういう感じがするわけなんですが、その辺のところは、どういうふうにいままで財政部局と話し合いがなされ、また今後話し合いをやっていくお考えでおられるのか、もしそこまで考えておられるようだったら伺っておきたいと思うのです。
  90. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 財政部局との間では、土地改良長期計画をつくること自身が相当の問題点でございまして、いままでの話し合いで比較的はっきりしておりますことは、ちょうどこの法律を用意いたしました段階で、所得倍増計画のアフターケアの論が起こった時期でございます。所得倍増計画のせっかくアフターケアを行なわれている時期でございますので、これと無縁のものであっては困るという部分については、両者が、確認といいますか、いたしております。それからしたがって当時、まだ所得倍増計画のアフターケアというものがどのように進展いたしますかは、必ずしもはっきりいたしておらなかった、その後の進展といたしましては、中期の計画をもう一ぺんつくってみようかという段階になっておるわけであります。それからそれに関連して長期、長々期のビジョンというものも必要であろうというようなことが議論されておるようであります。で、私どもといたしましては、当然、土地改良事業も、農業も、国全体の経済の発展との関係考えていかなければならぬ面が相当あるわけであります。これらの作業を片目に見、また大いに参画しつつ考えていく、こういう立場をとる。そこで具体的な数字にはまだ入っておらないわけでございますが、かりに農業関係の国の行政投資七千三百数十億の数字が足りるか足りないかという問題については、実はいま申し上げかねるのでございますが、私どもいま作業をやっておりますが、継続の地区をできるだけ早く上げていこうという立場に立ちますと、この部分が非常に大きくなります部分になってくる。そういう関係がございます。短い期間で考えますと、継続部分が非常に金を左右する、ロング・ランになればなるほど、新しい事業をどれだけとるかがその行財政の規模をきめます因子として働きが違ってきます。私どもとしては、必ずしもこの前の数字を幾らにするというような数字から入る立場ではなしに、別な角度から入りまして、必要なものは入れるという立場で、いま下からの積み上げ作業をやっておる段階でございます。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 所得倍増政策で、農業近代化投資というので考えているのが行政融資で七千七百億、こういうような考え方をしておるようですね。この点で、衆議院の審議の過程で、参考人等の意見が徴せられたときの情勢では、何か、二兆円くらいに見込んでおかぬととてもやれぬのではないかというような話も出たのじゃないかと、ちょっと記憶しておるのですが、数字の点は、おっしゃるように、いまの段階ですぐ出てくるものではないと思うのです。ただ、私どもが重視したいのは、あなたがいまおっしゃったように、数字から入ってものを考えるというのでなしに、長期土地改良計画を立てる際には、農業というものを中心にし、それを将来どう持っていくかということを基礎にして長期土地改良計画を立てられるという考え方のようですので、私もぜひそうあってほしいと思うのです。で、その上に立って、やはり財政当局から財政上の裏づけをさせるということでなければ、とても現在の農業というものを、他産業との格差を縮小するという形で引き上げていくということは不可能と考えますので、その点はぜひあなたのほうでもそういう御努力を願いたいと思います。  それからさらにそれを実際に実行に移す場合に考えていただきたいのは、この長期計画では、年次ごとのいわゆる実施量というものをどうするかという年次計画の点にまでは入って考えておられぬようですけれども、いままでいろいろな長期計画が立てられたのを見て、実際にそれが計画どおりに実行されないというのは、やはり長期計画を立てそれを年次ごとに実行していく年次計画まで煮詰めておらないところに問題があるのじゃないかと思うのです。だからせっかくいまおっしゃったような考え方長期計画を立てられるならば、さらに一歩突っ起んで、年次計画まで掘り下げていくというぐらいな姿勢が私どもはほしいと思いますが、そういう点ではどうですか。
  92. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御承知のとおり予算単年度の原則がございますのと、毎年の予算を国会の御審議を願っておるという問題とからみまして、まあ五年なら五年、十年なら十年度の単年度の国なり地方の額を閣議その他で確定いたしてしまうということには、相当問題があるわけでございます。また事実そういう問題がございまして、治山にいたしましても、道路にいたしましても、閣議決定としては、大臣もこの席で先般申し上げたように、長期のトータルにつきまして閣議決定をする。そしてその相当長い間の目安を確定していく。それで毎年の予算編成におきましては、それを足場に、あるいはそれを前提に、単年度の予算を組むと、こういうことが行なわれてわるわけでございます。したがって事務的に、あるいはこの法にいう長期計画に伴うといいますか、付随いたしまして事務当局が年次計画を持つということは当然でございます。また、そういう立場で毎年の予算を編成すべきものだと、この趣旨のことは、大臣も衆議院も含めまして委員会でお答えいたしました。法に定めます。閣議で決定いたしますものは、単年度年次別に、たとえば今後五年、十年の毎年の分を決定するということには、他の立法例、前例等から見て困難であろうという立場に立ちまして、私どもも同様な処理をしたい、かように存じております。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 私もそういう考え方で申し上げたわけです。だから長期計画立てて、閣議決定をしっぱなしというのでなしに、事務的な段階においては、それが実際に実現するような年次計画なりを持って対処してほしいということで、お考えの線で御努力を願いたいと思います。
  94. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  95. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記始めて。
  96. 矢山有作

    矢山有作君 この際、局上長からお伺いできる点だけお伺いしておきたいと思うんです。というのは、農林省でも畜産の長期計画なり、あるいは改良増殖計画ですか、そういったものを立てられて畜産振興に御努力なすっておると思うんですが、日本の畜産を考えた場合の最大の問題点は、午前中にも触れましたが、飼料の自給基盤が弱いということなんですね。そういう点で、今度草地の改良開発保全に関する事業というものが、土地改良事業として制度化されたということは、畜産の基盤を強化するとい意味で私は一歩前進だと思うんですが、しかし、その畜産の長期計画なりあるいは改良増殖計画と、そして飼料の自給の関係、さらに飼料自給の中における草地造成関係というものが一応検討されておるかどうか、現在の段階で。その点はどうですか。
  97. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 私がお答えするのはいかがかと思いますが、実は昨年でございますが、私自身が作業をいたしましたので、その関係を申し上げますと、家畜改良増殖で家畜の頭数が出てまいります。五年なり十年の目標が出てまいります。それで草食性家畜につきまして、たとえば乳牛の草の割合を飼料換算で、養分量換算で八割なら八判にもっていきたい、肉牛は何判にもっていきたいということで計算をいたしまして所要量を出しまして、それに要しますところの面積を、現在の平均の草地の反収で割りますと、造成を要する面積というものが出てまいります。そういう意味での飼料自給計画というのは、畜産局でもいろいろ作業は続けているわけです。飼料自給という面を今度もう少し広げまして、国内自給という意味に拡大して考えました場合に、今度はそういうえさのほかに、国内におきまして、濃厚飼料を既耕地においてどこまでつくるかという問題に相なってまいります点から、これはまあ価格問題が相当からんでまいりまして、なかなかやっかいな問題がございますが、一応いろいろの作業はいたしているわけでございます。
  98. 矢山有作

    矢山有作君 それで、今度の草地の改良開発保全事業をやられる場合に、いまの先ほどの点はこれは畜産局のほうから承りたいと思いますが、草地改良開発保全事業をやられます場合に、畜産局と農地局との関連というのはどうなるわけですか。衆議院の審議の過程では、大規模の草地改良につきましては、農地局の担当といたしましてやる、それから小規模のものは畜産局でやるのだ、こういうふうなことを言っておられるようですが、そういうふうにばらばらでなされるところに、飼料対策としての草地区の改良開発保全事業というものの一貫性が欠けてくるというような問題が起こってくるのではないかということが心配なんですが、そういう点については、どういうふうに考えておられますか。
  99. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 実はばらばらにならないようにという立場で、いろいろ相談をいたしたわけでございます。そして農地局がかりに草地を造成する、畜産局と無関係造成するとかりにいたしますと、畜産立地の問題等をいろいろ無視するというと語弊がございますが、十分なる吟味の問題において欠くるところがないかという問題も起こります。そこでこういう整理をいたしております。基本調査、草地造成基本調査というものは畜産局に予算を計上して、畜産局が主宰する、つまりどういうところで、どういう開発計画を持ちまして、どの程度の家畜を置いてどうするという基本計画については、畜産局でお立てを願いたい。そして今度それに基づきまして、具体的に牧道をどうする、道路をどうするという分の調査段階につきましては、畜産局が主となって、土木に関する部分農地局に御相談を願うということで調査計画も、たてまえを畜産局にする。そこでその特定の地区の具体的な工事のやり方なりが決定をいたします。そこで着工ということに相なります。そこで着工という段階におきましては、大規模草地は、もう計画は、プロジェクトができているわけでございますから、大規模草地におきましては、道路を建設するとか、あるいは大大的に抜根、整地をするという土木のウエートが総体的に非常に高いものでございますから、それは農地局で請け負うという意味におきまして、農地局に予算を計上して農地局がやる、こういう整理を予算上もしております。問題は、小規模でございます。小規模につきまして、いろいろ具体的な地区に当たってみますと、まあ十戸、二十戸というような現に牛を飼っておられる方が、飼料基盤を拡大するために、もよりの山を切り開いて、草を得たいというような御計画部分が相当多いわけです。事業内容といたしましては、牧道を一本つくるとか、牧さくをつくるという程度の工事で、大部分はブルでかき回して種をまくという出校的簡単な耕種でございますので、これは畜産局で在来どおり、特に農地局が出てやらなければならぬほどの土木と考えられぬということで、畜産局でやる。大事なことは、基本計画なり、そこに草を植えるか植えないかという計画面は、畜産局の計画で進めていく、こういう整理でございまして、いろいろ考えました結果、畜産局の予期しないところに草ができて、牛が入って、乳価の問題なり、地域の乳の需給のバランス等の撹乱要素に相なってもいかがかという立場で、そういうような整理をいたしておる次第でございます。
  100. 矢山有作

    矢山有作君 もう二つだけ、ちょっとこれはあと戻りするようになるのですが、私もうっかりしておって聞き漏らしたのでお伺いしておきたいのですが、午前中に言いました問題なんですけれどもね、大体農地壊廃造成状況を比べてみると、壊廃のほうで造成のほうを上回っておる。したがって農地は漸滅傾向にある。現在は六百十一万町歩、所得倍増計画で見ると大体六百万町歩と、こう見ているわけですね。そうすると、農地はむしろ減っていくという傾向にあるということが、所得倍増計画自体でも考えておるわけなんですが、それに対して農林大臣は、現在の農地を維持するように努力をしたい、こういう御答弁があったと思うのです。私ども農地はできるだけ維持するだけでなしに、外延的な拡大もはかるべきだということで申し上げ、また御答弁もいただいたわけなんですがね。いわゆる草地を含めての農用地造成という立場からいって、この草地の開発というものをどの程度に考えておられるか。もし計画があったら、この際お聞かせ願いたいと思うのですが。
  101. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まず所得倍増の関係でございますが、前の所得倍増計画におきましては、三十五年の農地、耕地、田畑、水田、畑、六日十四万三千を、四十五年で六百二十二万六千、六百三十一万六千町歩にという計画に相なっておりまして、この前の計画では、農地が減る形には相なっておりますが、そのほかに、草地を三十万ヘクタールだと存じますが、別につくるという整理に相なっておるわけでございます。それから、そこで水田と畑というものに耕地を押えまして考え計画をいたしております。そうして草地というものを別に置きまして、草地は別の角度から三十万程度のものを別途造成をする、こういう計画に相なっております。それで、それから、今朝来大臣が申し上げております問題として、あるいはいままでの委員会その他で申し上げております問題としては、耕地つまり田畑という意味に限定いたしまして、これはできるだけ維持をしたい。私が先ほど補足をいたしまして、維持するという立場と物の自給的立場とをかみ合わせて、耕地の数字を、アフターケアの問題としては考えてまいりたい、こう申し上げた。そしてその場合に、いわゆる草地、純粋に永年牧草地としての草地をどれだけつくるか、これはいままだ決定は、長期計画の一環になるわけでございますので、決定はいたしておりません。  なお、先ほどちょっとお話が出ました飼料の自給との関係で一応試算いたしましたものとしては、草地をたしか五十万町歩程度という数字を考えたことがごごいます。これは畜産局のほうからお返事を……。
  102. 矢山有作

    矢山有作君 畜産局長お見えになったので、ちょっとお伺いしておきたいのですが、今度草地の改良開発保全に関する事業が、土地改良事業として制度化されてきたわけですね。そこで畜産局のほうで立てられている畜産の長期計画なり、あるいはまた改良増殖計画ですか、そういった畜産の基本的な将来の政策と、それから飼料問題とをどういうふうに考えておいでになるのか。というのは、御承知のように現在の飼料の事情というものは、農家の購入飼料の七割まで濃厚飼料ですね、七割までは輸入に仰いでいるという状態で、畜産の輸入依存度というのは、非常に高くなっているわけです。そういう点から、このままでいくと、日本の畜産というのは、いわゆる輸入飼料の加工産業になり下がるんじゃないかということが言われているわけでして、そういう点から言うと、飼料の問題と、将来の畜産の振興計画といいますか、それとは非常に密接な関係があると思うのです。で、その関係がどうなっているのかということと、その飼料に対する基本的な考え方の中で、草地による飼料の供給というものを、どういうふうに考えておられるか。そういう点で案があれば、いままで検討されたものがまとまっておれば、ひとつお知らせをいただきたいと思うわけです。
  103. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御質問の畜産に関します計画と、飼料に関します計画なり、見通しについての御質問でございますが、畜産局としましては、昭和三十七年の十二月に、家畜改良増殖法に基づきます家畜の改良増殖目標を決定をいたしまして、公表をいたしているのでございます。この考え方の中に、家畜の性能といいますか、そういうものについての改良の目標も掲げると同時に、昭和四十六年度を目標にいたしました増殖の目標も掲げているのでございます。その目標を掲げました根拠といいますか、よりどころは、農林省が発表をいたしました農産物の需給と、生産の長期見通しというものに基づきまして、需要の幅が、畜産物については、かなり大きい幅がございますが、そのほぼ中庸の水準くらいまでは国内における供給、国内における自給をするという考え方で、改良増殖の目標を立てているのでございまして、乳川牛について言いますと、たとえば二百九十万頭を四十六年の目標増殖頭数にする。肉用牛については約二百五十万頭、豚七百四十万頭、鶏一億五千万羽ということを見通し目標として持っているわけでございます。この家畜の生産目標といいますか、生産の目標、生産増大の目標に応じまして、飼料の問題、当然検討を要するのでございますが、まず乳用牛、肉用牛のような単食性動物につきましては、現在のいわゆる粗飼料の自給率というものが五二、三%というふうに推測をされるのでございますが、粗飼料白統率をおおむね七〇%くらいに上げるということを目標にいたしまして、四十六年までに、先ほど農地局長から触れられましたように、改良草地について、約五十万町歩程度、五十が町歩の面積を確保するように考えたい。また、既耕地における飼料作物の作付面積をおおむね亘力町歩程度に考えたいという試算をいたしておるのであります。これを私どもとしては目標にいたしたい。濃厚飼料につきましては、これは乳用牛、肉用牛にも濃厚飼料が要るわけでございますが、主たる濃厚飼料を求めます家畜は豚、鶏でございまして、これらの伸びに応じて当然濃厚飼料の需要の増大が予測されるのでございまして、所得倍増計画当時に算定をいたしましたときには、四十六年に濃厚飼料の要輸入量約六百万トンというふうに見込んでおったのでございますが、その数字がかなり、かなりといいますか、現在の実情ではすでに昭和三十九年で、五百四十万トンというような輸入を見込まざるを得ないということでございまして、再検討を要する段階になっておるのでございます。ただ、この濃厚飼料問題につきましては、実は私ども畜産局だけで算定し切れない部面がございまして、つまり、国内における飼料穀物の供給の見通しをどういうことにするかということは、農業生産一般の見通しと関連をして算定を要する問題でございますために、私どものほうでは、どれだけの輸入量を要することになるかというようなことは、一つは省内における飼料問題を全省的な見地で検討し直すということで、現在その作業に入っておる段階でございます。でございますので、確たる要輸入量というようなものの算定が、現在の段階では申し上げる段階になっていない。また別に、これも試算といいますか、いろいろな経済計測を行ないます政府全般の立場からの中期的な作業等もいたしておりますが、これにつきましても、まだどういう時期にどのくらいの数量になるだろうという確たる数字が算定できてないという状況でございまして、現在、鶏が三十八年の頭羽数で約一億に近い数字、九千八百万程度、豚が三百三十万頭程度の飼有数でございますので、何らかの推定を加えますれば、推測ができないこともないのでございますが、そういう国内の供純量というものをどういうふうに見込むかという点に、まだ詰めができておりませんために、濃厚飼料につきましては、ただいま確たる数字を申し上げる段階ではないということでございますので、御了承願いたいと思います。
  104. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 ちょっと関連。畜産局長、いまの草地造成が熟地になった場合の一応の標準生産量、反当たりの、貫目当たりでも、カロリー計算でも、それから耕地に牧草をつくった場合の同じ目標、それはどの程度の計算目標で一応いっていますか、概略でいいです。
  105. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) いわゆる永久草地につきましては、大体十アール当たり四トン前後という実績の数字を平均値として用いております。それから既耕地におきまして四・五トン程度という数字を使って算定をしたと、私、記憶しております。
  106. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 カロリー計算にして。
  107. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) カロリー計算という意味では、実はそこまでこまかい資料を持っておりませんので、私のほうで算定いたしますのは、通常は可消化養分総量で計算することにいたしておりますが、こまかい数字は、後日、資料として提出いたします。
  108. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 既耕地に牧草をつくった場合に、いいところが反当貫にして六千貫程度の生産をあげているところが各地にあるというふうにいわれているのですが、それは米作にして、たとえば五石とか六石とかいう、そういう特定なものに当たるのか、あるいは普通の技術、普通の努力で反当三石ぐらい程度まではあがる程度の水準に該当するのか、その点はいかがですか。
  109. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 非常にむずかしい御質問でございまして、私も正確に申し上げる自信が、手元の資料でもございませんので、申し上げにくいのでございますが、反当六千貫の飼料を生産するというのは、かなり、かなりといいますか、相当高位の生産をあげているものと私どもとしては考えられます。その程度の生産をあげますならば、現在の乳牛経営というものを前提として一種の迂回生産になるわけでありますが、その土地収益性というものは、おそらく米四石に近い生産に相当するものと考えます。なお、実験的にも非常に高い生産をあげているところがございますがこれを一般的な水準として考えるのは、なお技術的に問題があるといいますか、それだけ高い水準のものが直ちに普及するということはむずかしいのではないだろうかというふうに考えております。
  110. 矢山有作

    矢山有作君 これはあとでひとつ資料がほしいのですが、いま言われた家畜の改良増殖計画、これと対比する飼料の需給計画というものは、大まかなものはあるのだろうと思いますが、これをひとつあとで資料として出してください。  それからひとつお尋ねしたいと思います。こちらの意見という形になるかもしれませんが、土地改良の長期計画を立てられる際の御説明で、地元の意見等も尊重して土地の利用についてはそうした計画を立てるのだ、こういうお話があったわけです。ところが、畜産の振興ということを今後相当強力にやっておいでになるのだろうと思いますが、そういう中で、飼料の問題を解決しなければ、日本の畜産というのは経営採算上も有利にならぬし、また、畜産自体としての安定ということははかれぬと思います。そういう立場から考えたときに、これは飼料についての国内自給度というものをどれだけ潤めるかということは、非常に重大な問題だと思います。というのは、現在までの状況を見ておって、昨年だってトウモロコシ、マイロは一年間にトン当たり三千円かそれ以上輸入したものは値上がりしているわけです。ところが、日本の畜産というのは、完全に飼料については買い手市場になってしまったわけですね。したがって、こういう調子でいっていると、私は将来安いえさを獲得するということすらなかなかむずかしい状態になってくるのじゃないか。それを考えた場合には、やはり畜産の安定的な発展をはかっていこうというなら、国内で自給をする態勢をとっていくということが、私は必要なんじゃないかと思います。それは当面たとえば麦の場合を取り上げていいますと、確かに輸入したものよりは高くつきます。しかし、それは現在の農業の生産構造といいますか、それ自体に問題があるわけですから、したがって、自給度を育めていくという立場に立ったら、そういった現在はなるほど輸入したものよりも麦の比較でいえば、麦は国内産のほうが高い。しかしそれは生産政策が展開されることにより、合理的な経営に移されることによって、どこまでこれが国際的な価格と比較してもっていくことができるのか、これもひとつ検討しなければならぬ問題でしょうし、それから草地の造成をやることによって飼料を自給していくということが、どういうふうになっていくのかというようなことも、やはり慎重に検討していかなければならないと思うのです。ところが、そういうようなこまかい検討がいまの話を聞くと出ていないというわけですね。だから畜産局というのは、とにかく改良増殖計画を立てて牛を飼え、豚を飼えということだけはやってきた。ところが、肝心かなめのえさのほうはあまり本気でやっていないじゃないか。そのことが、いまぼろが出てきたわけです。だから、やはりこれは畜産を選択的拡大の柱に立ててやろうというなら、もう畜産局としては早急に飼料の基本的な対策というものを持つべきじゃないかと思うのです。そういう点から現在持っておられる構想というものがあるならば、それをひとつまとめて私どもに資料にして示してほしいと思うのです。それからでないと、この飼料問題の論議というのは、私はできないだろうと思う。というのは、私は飼料の問題を調べておって、非常に不可解千万に感じたのは、飼料の輸入の面を取り上げて申しますと、日本飼料協会というのが三十六年にできた。同じころタイ・メーズの輸入協議会ができた。さらにそのころ飼料の設計基準転換をした。こういう問題があるわけです。そうして値段からすればかえって安いタイあたりのメーズの輸入量が減っていって、一時急激な減少を見せた。アメリカからのトウモロコシがばく大な量入ってくるようになった。マイロはこの一月までは自由化されておらないで、一月から自由化されたわけですが、マイロあたりにしても、自由化されないままで四十万トンからのものがどんどん入れられてきた。こういうところを考えてみると、全く日本の畜産というのは、畜産を百姓にやらすことによって、外国の余剰農産物をはいてやることばかりに本気になってきたのじゃないか、極端な言い方をすれば、そういう感じがするわけで、それではどうも困ると思うのです。だから、畜産の振興をやられる上においては、やはりえさの問題について基本的な姿勢というものを確立してほしい。これは早急にやらなければならないと思いますし、さらに土地改良法改正の問題に関連しては、草地造成というものについて、畜産局が今後どういうふうな取り組み方をするのか、特に先ほどのお話で五十万ヘクタール程度の草地改良を考えておられるということですが、実際に草地改良をやるとしたら、草地改良をやれる土地がどの程度あるのか。これも調査しておられるか、調査しておられないのか知りませんが、その点も私ども聞きたいところです。われわれの聞いておるのでは、開拓可能地の面積というのは五百万町歩からまだあるんだというような話も聞いておるわけです。そうすれば見地として改良していける面というのは、もっとあってもいいんじゃないかという感じがするわけです。だから、乳牛のような草食性のものについて現在の生産コストを下げようというならば、草による乳牛の飼育ということにかなり、ウエートを置いて考えていかなければならない問題だろうと思う。それだけに草地の造成という問題は、いままでの五十万ヘクタールというような検討されたことが、それで十分なのかどうかという反省も、この段階でしていただかなければならぬと思います。まあそれらの問題をも含めて、次の機会に畜産局長にもう一ぺんお伺いしたいと思いますので、きょうは私の飼料の問題に関連する質問はひとっこれだけで打ち切っておきます。  それから最後に、せっかくの機会ですので、一つだけ畜産局に伺っておきたい。というのは何かといいますと、この間、渡辺委員長からも話が出た市乳の値上げの問題なんです。これは二円値上げというところもあるし、高いところでは四円からの値上げだというところもある。地域によっては、実際に値上げをやったところもあるわけです。これは大臣もおっしゃっておったように、私的取引ですので、行政的にどうして抑えていくというようなきめ手はない、こうおっしゃるのです。それはおっしゃるとおりだろうと思う。ところが現在御承知のように、市乳の消費が伸びないということ、乳製品にたくさんの乳が回されるということ、したがって乳製品の滞貨がふえるということが、原乳の生産者価格を引き下げるための一つの口実にされてきたわけです。そういう状況の中で、その市乳の値上げが行なわれるということは市乳消費が伸びるということに害はあっても益ではないはずなんです。それが一つです。はたしてそれは労賃が上がったとかいろいろな理由から、あるいは原料乳の基準価格が上がったとか、そういうような理由から市乳価格を引き上げていかなければやれないのだということをおっしゃる、しかし畜産局としては、ほんとうにメーカーがどれだけ経費がかかっておるのかということ、メーカーの経営の実態というものを把握して問題を処理されようとしておられるのか、しておられぬのかということは、私は疑問だと思う。これは市議会のときにも私はちょっと触れた問題ですが、乳製品等について、いわゆる生産費調査を出してもらったわけです。そうしたところが、大手を中小企業と比べて、大手のほうの製造コスト、販売経費等が中小よりも上回っておる。われわれの常識からすれば、中小メーカーというのは設備も非常に近代化されていない。あまりいい設備を持っていないわけです。まあ能率の悪い製造をやっておる。で、大メーカーのほうは農林漁業関係等の融資を受けて、設備の近代化も大々的にやって相当生産性も上がっておるはずです。そういう中で大手のほうの製造コストが中小よりも高くつくというようなことは、私どもとしては全くふしぎな気がするわけです。それらから考えてみて、私は十分に現在のメーカーの実態を把握しておられないままに、畜産局は振り回されておるのじゃないか、農林省は振り回されておるのじゃないか、こういう感じがするわけなんです。ですから、ただ市乳の値上げをするのだとか、あるいは生乳の、原料乳の価格をどれだけにするのだとか、せんのだとかいうことも、もちろん大切なことで、特に生産者の立場からすれば、原料乳価を、少なくとも生産費だけは償うものにしろということは当然の要求ですし、またそうしてもらわなければならぬ。ところが、なかなかそこまではいかない。ところが肝心かなめの原料乳価をきめる場合でも、あるいは市乳の価格をきめる場合でも、一番に問題になってくとるいうか、大きなウエートを持ってくるメーカーのほうの製造経費が一体どれぐらいついておるかということは、全く向こうの言いなりほうだいで、農林省のほうはようつかんでおられないだろうと思うのです。そういうことでは、実際の行政というものは、私はやれぬと思うのです。そういう点から、どうして私は農林省がもっと前向きになって酪振法を活用し、あるいは畜安法を活用して、メーカーの生産の実態ということまでつかもうとする努力をしないのかということが、私はふしぎなんです。そういう点で畜産局長はもっと曲向きに考えてもらわなければならぬと思うのです。こりいう点についてのお考え方をひとつ承りたいのと、それから、一体市乳値上げをやらした場合に、一体どういう形で市乳の値上げというものが実現されてくるのか。つまり二月上げたとした場合に、メーカーとそれから、販売人とそれから生産者とそれらの、取り分というようなものが、どういうふうに話し合いが進んでおるのか。そういった点もあわせてひとつ聞かせていただきたいと思います。
  111. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 飼料の国内自給の問題等につきましては、後日資料を提出いたした上で説明をせよということでございますから、そういうことにさせていただきたいと思います。なお、これはその際にまた申し上げることになるかと思いますが、私どものほうで府県を通じまして、自然的な条件なり、あるいは畜産との関係から、大体草地としての利用可能な面積というものはどれくらいあるだろうということを、府県を通じて、非常に大ざっぱなものでございますが、調査をしたことがあるのでございますが、この集計を見ますと、約八十が町歩という面積が集計の上で出ております。これはいろいろな権利関係でありますとか、あるいは畜産経営との結びつきの問題とかいうような点がございますので、私どもが家畜の飼料の動向、草食性の家畜の飼料の動向というものから考えまして、四十六年までには五十万町歩程度の草地の造成をはかりたいということに対する一種のバックデータ的なもののつもりで調べたものでございますが、なおこれらの数字は、土地改良法改正に伴いまして総合調査というものがさらに綿密に行なわれるということになれば、この数字もあるいは変わってくる、またその数字に基づいた計画を立てるということも考えなければならないであろうというふうに思っております。  それから市乳の値上げの問題でございますが、それに関連いたしまして、メーカーの製造コストの把握ができていないのではないかという御質問でございますが、これは畜産物価格審議会の際にも、三十八年度中に直接政府価格に対して行政価格設定のために必要な乳製品のコスト調査については、従前よりは、サンプル調査でございますが、調査そのものには力を注いでやったつもりでございます。ところが出ました結果は、御指摘のように大メーカーのコストがむしろ高い場合があるということで、これは私ども自身もやや奇異に感じたのでございますが、調査結果としては、まさにそういう数字が出たということをそのままお示しをいたしたのでございます。これには多少の事情があるようでございまして、解説する必要もないかと思いますが、工場をアトランダムにつかまえましたときに、メーカーとしては大メーカーであるが、工場自身は必ずしも大工場に集中したものではないということで、これも御承知と思いますが、いわゆる四大メーカー等も外延的に工場をふやしていくという方向が、かなり最近著しいものですから、それぞれの工場については生産性といいますか、生産効率というものは必ずしも向くない工場があるというような事情もあるようでございました。それはともかくといたしまして、今後牛乳の流通行政というものをやってまいりますにあたりまして、メーカーにおけるコストのできる限り正確な把握ということが必要であるという御指摘につきましては、私どももさように考えておりますので、私どもとして、あるいは地方の出先なり、あるいは農林省内の他の機関等の協力も得て、メーカーのコストの把握ということにつとめたいと思います。ただ私は、過去の行政経験で、工場製品のコスト調査をやったことがあるのでございますが、何ぶんにも、たとえば化学肥料工場のごときは、二十数工場という程度のものに対して、農林、通産両省が、専門家によりまして相当長期にわたって調査を必要とする、またその分折を要するという事情でございますために、やはり——やはりといいますか、どうも全国三千数百の工場を持っております乳製品の工場のコスト調査という問題は、全面的には私はなかなか容易ではなかろうと思いますが、より正確といいますか、現在数字がやや他から与えられた資料として持っておりますものを、できるだけ正確なものに近づけるためのチェックといいますか、そういう努力をしていきたいというふうに考えております。現在の段階で、政府が有権的に調査をしたコスト調査というものが、まだきわめて不十分なものであるということは認めざるを得ないと思います。  それから、現在、御承知の新聞紙答で報道もされておりますように、市乳の値上げの動きが各地に見られるのでございますが、政府全体といたしましては、またわれわれとしましても、現在の消費者物価の事態のもとで、牛乳の末端価格が引き上げられるということは、決して好ましいことではない。したがいまして、理由のないといいますか、不当な値上げというものについては、われわれはこれを抑制する努力をすべきである、ただ大臣のお話にもありましたように、抑制するという手段というものを、有権的には持っておらないという点はありますが、われわれの指導の態度としては、さような態度をとっていきたい。で、各都道府県等に対しましても、非常に何といいますか、早急に起こってきた問題でありますので、電話連給等で農林省の態度を連絡いたしておりまして、文書による農林省から何らかの態度を徹底するまでは、市乳の価格問題については慎重を期するように指導してもらいたいということを連絡をいたしております。一方メーカー及び小売り商等につきましても、私どもにも若干の資料はございますが、値上げを必要とする理由についての聞き取りを終えた段階でございまして、一般消費者物価の行政の調整に当たっております経済企画庁と農林省畜産局との間で、牛乳の末端価格の引き上げという問題に対していかなる見解を持つかという意見の調整に入っておるのでございます。で、そういう段階でございますから、値上げを認めるかのごとき前提でお話しすることはどうかと思いますが、聞き取りをいたしました段階で、これは各社ごとにかなりといいますか、若干のニュアンスの違いがあるようでございますが、各メーカーは卸売り価格を一円二十銭ないし一円三十銭上げたいということを言っております。したがいまして、小売り価格については、あと小売り業者が幾らにするかということでございますが、暗示的にはこれは一円二十銭ないし二十銭の残りというのは、二円との差額が小売りにいってしかるべきであるという考え方をいたしておるのじゃないかと思われます。小売り商につきましては、これは東京都を通じて持ってまいりましたのでは、小売り高は、小売り商自身で一本当たり二円七十銭の値上げをしなければやっていけないというような、かなり過大な分け前の要求を出しております。一方、関西等では一円七、八十銭程度の小売りの手取りの増を要求するというような形の折衝といいますか、そういう話も起こっておるようであります。一般的には、一番多いケースとしては、市乳の末端価格を二円値上げし、小売り商が七十銭ないし八十銭という取り分を残して、メーカーが卸売り価格を一円二、三十銭引き上げるというような考え方を持っておるものが多いようであります。それから、メーカーと生産者の側との間の配分といいますか、還元の点については、これは取引価格として相互の取引契約によってきまることであるということからか、必ずしも明確にいってないところが多いようであります。多いようでありますが、聞き取りの段階では内意といいますか、こういう程度ということを言ったところは、生産に対して大体七十銭、二円のうち一円二十銭ないし三十銭というメーカーの卸売り価格の上昇に対して、引き上げに対して七十銭前後のものを農家に還元したいという考え方を示した社がございます。大体の大筋を経過として申し上げますと、さうなことでございます。
  112. 矢山有作

    矢山有作君 おっしゃるように公共料金の抑制というのが、一つのいまの政府の大きな方針ですし、それについて消費者物価はできるだけ抑制しようというのでありますから、市乳の引き上げはできるだけ防止するという態度で、今度も臨んでほしいと思うんです。お話の中で、大企業のほうが中小企業よりも製造コストが高くついておる部面についてお話があったんですが、確かに製造加工の段階を現在はかなり規制をしなかったら、これはもう実際にどれだけの収益かというようなことの目安も立たないままに、どんどんメーカーが工場を勝手にぶっ建っていく、製造経費は高くつくんだと、それのしわ寄せを生産者のほうにかぶせてくる、こういう形がいま非常に強く見えるんじゃないか。だから、生産者の面に生産の合理化をどんどんやかましく言っており、生産の合理化をやかましく言うだけならまだいいんですが、安定基準価格を非常に安いところへ押しつけるということをやるんなら、それ以前にメーカーのほうの製造加工の段階というものを、かなりチェックしていくだけのこれからは覚悟をもって臨まぬと、生産農民というものは、いつまでたっても浮かばれないし、消費者も浮かばれないと思うんです。加工製造段階のチェックだけでなしに、流通段階にしたってかなりチェックしなけりゃいかぬ。その点で一ペンお話したことがあるかとも思うんですが、フランスでしたか、一軒の牛乳の販売店の販売件数が大体二十戸だというんですがね。そのことが非常に牛乳の消費者価格を上げている原因なんで、これを一軒当たり百戸の販売というぐらいにかなり厳しくチェックしていきたいんだというような話が、この間われわれが欧州へ行ったときに出ておりました。そういうように流通段階におけるチェックというものが、かなり必要じゃないかと思うんです。ところが、その製造加工段階における問題、流通段階における問題は案外目をつぶって、手放しにしてれいて、生産者の段階だけを問題にしておるところに、現在の非常な私は問題点があるんじゃないかと思うんです。そういう点は、今後ひとつ大いに注意して考えていただきたいと思うんです。この間、農林大臣は、新聞で見たんですが、消費者物価の抑制を言う場合に、生産者の価格さえ押えればいいんだというのは間違いだと、生産政策が確立していかなきゃほんとうの消費者物価の抑制にならぬということを閣議で言ったと出ておりましたが、私もやはりそうだと思う。やはり生産面を重視する、かかる施策をしないで、ただ消費者価格の上がることだけやかましく言って、それで消費者価格が上がるから、生産者価格を押えればいいというような能のないことを繰り返しておっては、いつまでたっても消費者物価の高騰の抑制はできぬと思うし、そういうようなことをやっておっては、日本の農業の生産なんというものは破壊されてしまう。こういうことをひとつお考えいただいて、今後の畜産の問題に対処していただきたいと思います。畜産の問題は、もっといろいろお聞きしたい点はありますが、しかしきょうは時間も時間ですから、これで一応和の質問は打ち切っておきたいと思います。
  113. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 もう終わりでしょうが、若干いまの問題について伺いたいと思うのです。草地に関する問題は、農地局と畜産局に関係があると思うのですが、面積その他飼料畑などをやるのは畜産局で、片方の農地局のほうでは、牧野改良という形でやっていかれると思う。私は、従来は、畜産局だけでこの草地改良はやっておったと思うのですが、土地というものは、やはり今後問題になる基盤を整備することによって、初めてりっぱな牧草もつくり得るのだという観点から、基盤整備に直接関係のあるような大規模の草地、牧野は農地局でおやりになるほうがかえって適当じゃないかということを申し上げたいと思います。その後こういうふうに行政的に二つに分けて変わってきたように思うのですが、そのことは別として、両局で関係を持っておいでになると思いますが、実態はどういうことですか。
  114. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 従来は、畜産の飼料生産基盤の整備につきましては、畜産局が主体となってやっておったのでございます。もちろん別に農地局におきましても、開拓パイロットというような開拓行政という姿で、畜産の生産基盤の整備が行なわれたのでございますが、草地の改良、造成の仕事は畜産局が主体となってやっておったのでございますけれども、現在及び将来の畜産の進展に対処して本格的な飼料基盤整備を行なうということになりますと、土地に対します技術的な問題あるいは他の事業との関連における問題等を考慮いたしますと、畜産局としては、畜産の立場から見た飼料の生産基盤としての飼養管理、経営という見地からの調査計画に参画すれば足れることであって、造成改良事業に対しては、専門の部局であります農地局が担当することが適切であるという考え方で、昭和三十八年からいわゆる二百町歩以上の大規模の草地改良事業につきましては、農地局系統において事業の実施をやる、二百町歩以下十町歩までの草地の造成につきましては、畜産局の系統において行なうというふうに、二つに分けて処理を、事業実施をすることに変更をいたしたのでございます。もっとも、事業を実施します前提の調査計画等につきましては、これは農地局における技術発展、畜産局における畜産側から見ました技術なり、あるいは経営なり、将来の利用に関する見地を入れる必要がありますので、両局共同で実施をするというたてまえにいたしております。
  115. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私はいま御説明になりましたように、二つに分かれたことが三十八年であったかどうかおぼろげでありますけれども、ともあれ二つの局で同じ問題を指導しておる。これは連絡をとっておやりになることは、まことにけっこうだと思いますが、十分にそこの連絡の欠けることのないようにお願いを申し上げたいのであります。  そこで、どちらでございますか、畜産局のほうでございますか、農地局のほうかよくわからないのですが、種苗、牧草の種を計画面積に従ってあわせて助成をしますか、そういうことがあると思う。一方ではないが、どちらかにあると思うのですが、それは違いますか。
  116. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 草地造成質業の歴史的な経過といたしまして、種を一緒に開発の際にまき込んでしまうという事業として発足、発展してまいりました。したがって、草地改良事業として取り上げますものは、小規模たると大規模たるとを問わず、種代が事業費の中に入って、したがって総合的に補助されておる、こういうかっこうに相なっております。
  117. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私は二つに分かれることもやむを得ないと思うのですが、それは一面われわれも希望したことがありますので、土地改良ということが草地改良の基盤になるということでございまするならば、やはり土地改良に比べて技術的にもまた指導的にも、いろいろな機関に通じておる農地局がやられることはけっこうだと思うのですが、同じ草地改良、飼料作目をつくろうとする段階に、種子配付をする事業と種子の配付をしない事業とが二つに分かれてくるということはどうかと思うのですが、そういうことはありませんか。
  118. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 永年牧草造成してしまう事業は、局が分かれるから種をつける、つけないという差はないわけでございます。その趣旨でいまお答えを申し上げたわけであります。
  119. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 そうですが。私は地方で聞きますのに、いま申し述べましたように、草地造成事業の中で、局でわかれておるというのでなしに、事業が分かれておるといいますか、あるいは規模別に分かれるのかしれませんが、同じ草地造成事業であるのにもかかわらず、種が配付をされるものと配付をされてないものとがあるが、どういうわけでしょうかという質問を受けておりますが……。
  120. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) わかりました。もう二つ開拓パイロット事業という事業が一つございます。これは開田、開畑を造成する事業としてやっております。そこでローテーションをいたしまして、畑地にある期間牧草が植わる。ぐるっと回りまして飼料カブが植わる、あるいはビートが植わるというような土地利用の形態、つまり永年牧草地として固定してしまわないで、飼料畑として造成するという事業が別途ございます。計画面では、これは飼料を植えるのだという御計画のものもございます。ただローテーション事業を前提にいたしておりますので、開畑事業については、その開畑で何を植えるかということの種までの補助はやらない事業でございます。それから永年牧草地にしちゃうという事業は、もう最初から抜根整地の段階で種を一緒にやってしまうという意味で、草地造成事業におきましては種が補助の対象に入っておる、そういう実態、経過でございます。したがって、ある一人の現地の方が見て、自分は開拓パイロットで飼料畑をつくったのだけれども、これは実は牧草をまきたいのだというときに、その牧草の種は自分で貰わねばならぬ。草地造成事業であれば種まで一緒にやっちゃって補助金が入っておるというのはおかしいではないかという御感想が出るかとも思いますが、考え方としては開畑事業としてやっておりますので、畑地に何を植えるかによって、その植えるものの補助金を出すという事業を、農地局の開拓パイロットのほうでは在来からもやっております。今後もやることはどういうローテーションをするかという問題でございますが、そこはあくまで土木工事で打ち切っておるという考え方で進んでおります。
  121. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私は日本における牧野というものが、計画どおり発展するかどうかということに若干の疑問を持っておる者ですが、疑問を持つことは、まことにこれは不謹慎な言い方だと思いますけれども、現に牧野改良をやり、その助成をして今日までまいりました。がしかし、日本のような酸性の強い土壌の中で、土壌改良というものを行なわないで外国の技術等を直ちに取り入れてやりまする場合には、私は牧草というものは日本では生い立たない、繁茂しないというふうに思っております。私自身もやってみてそういう感じを持つのでございますが、いずれにしても、農林省にそれを伺っても、お説のとおり、日本において牧草というものはできないと断定はできません、よくできますということでしょう。がしかし、その計画というものと現実というものとは相当違っておると私は思うのであります。しかし、それを詮議立てようとは思いませんが、かりに牧野改良をいたしましても、草地改良をいたしましても、当然土地に関する仕事でありますので、種を配付すると同時に、土壌改革というものが行なわれなければならぬと思いますが、それについての助成の方法については畜産局、農地局両方、双方同様でないと思うのですが、それについてお答えをいただきたいと思います。
  122. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 草地改良事業を進めます場合に、現在の私どもの補助の考え方としては、開墾をいたしますと同時に土壌改良資材を散布をいたす。牧草の種も同時に散布をするということで、草地の改良造成については、お話しのように、土壌の改良をしなければ草生は十分に伸びませんので、現在の補助体系の中でも土壌改良自体の助成をいたすことにいたしております。
  123. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 農地局も同じでしょうね。
  124. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 農地局のやっております開拓事業は、むしろ先輩でございまして、土壌改良を当然やっております。それで草地利用が入りましての違いは、土壌改良は当然入っておるわけでございます。種子が草地改良事業では飛び込んだ、こういう関係でございます。
  125. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 それでは、いずれこれは資料の要求をしてもいいのですが、かえってごめんどうだろうと思いますが、一アール当たりどのくらいなものを適当とされておられますか。
  126. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 土壌の、たとえば酸性の強さでありますとかあるいは燐酸の緩衝能の程度というようなもので変わってまいるわけでありますが、ちょっと私も、正確なことを申し上げる資料を手元を持っておりませんのですが、標準的な投入量としては反当で三トンないし四トン程度ということになっておるように記憶しております。
  127. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 この土壌改良というものをしなければ、絶対牧草ははえません。これは御承知だろうと思います。それが私は……。一アール当たりでしたね。
  128. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私が申し上げましたのは十アール当たりです。
  129. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 十アール当たりに三トン、四トン程度でとても土壌の改良には私はならないと思う。そして、広大な土地の中へ入れるわけですから、そのたびたびにやらなければできないと思います。これは技術者でないから、局長さんと問答しようとは思いませんが、私はこういうところに日本に牧草ができないだろう、こういうように心配をするものです。  そこで、今度飼料の問題もずいぶんありますが、いま濃厚飼料といいますものは、一事億にあまって一千二百億くらいですか、輸入をしているだろうと思うのですが、たとえばそれが内地でできる、自給のできるものと半々といたしましても、将来は六分を外国から入れなければならない、輸入をしなければならぬというふうに順次高まってまいるだろうと思うのです。将来国内産のほうが多くなって、それが六になり、そして外国から入れるものが四になり三になるというような、国内産にとってかわろうとすることが可能だとお思いになりますか、将来そういうふうにいくであろうというふうにお思いになりますか。
  130. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 現存飼料の形態心のままで輸入されております穀物その他のものは、わが国の流通飼料のうちのほぼ半数四八%視度、国内に輸入された原料から副産物として出るものまで含めますと、外国に依存する率は五七、八%までになるわけでございますが、この濃厚飼料の輸入依存度あるいは国内自給率というものが、将来転換をして国内日給率が半数以上のウエートになる可能性はあるかというお砧でありますが、現在の情勢のままで推移するとかりに仮定をいたしますれば、私はきわめて困難であるというふうに考えております。御参考までに申し上げますと、これは国内の食糧事情等の関係等むずかしい問題がございますが、御承知のとおり、日本の国内の麦類の総生産量が約百八十五万トンというような数字でございまして、これに対して輸入飼料の総量が五百四十万トンというようなことから考えますと、濃厚飼料の国内での増幅の問題は、相当思い切ったといいますか、相当徹底した何らかの方策を講じない限り、増大する飼料需要に対してその比率を高めていくということは、私は困難であろうというふうに考えております。
  131. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 全く私は局長と同感です。わが国において飼料を、今後頭数もふえるでありましょうし、いまの推移でいきまするならば、半々のところが、やがて外国から入れるものが六分になりあるいは七分になるという、まあそうなってはどうかと思いますが、やむを得ずさような方向へ向かっていくのではないかということを心配をいたしております。で、この一事をみましても、わが国における牧野改良、草地造成というものがきわめて貧弱だということなんですね。私はそう思うのですよ。そうして、それには土壌改良というものがもう少し高い立場で行なわれなければならない。これは、時間がございませんので、私は申し上げませんが、もう幾らペーパー・プランを繰り返しましても、私はこの畜産のえさの事情というものは、きわめて将来暗い方向にいく。東畑さんのことばではありませんが、片足は日本にあり、片足は外国にというようなことで、二本の畜産の安定がはかれるであろうかといわれておりますが、私は安定しない産業である、畜産であるというふうに申し上げたいのでございますが、そこで、そういうふうな比較的必ずできるという見通しがない立場に立って、なお今後の、たとえば酪農等をこのままで選択的拡大という名のもとに推移をしていくことができるであろうかどうかという問題が疑問になってくるわけです。少なくとも北海道東北地方の草地改良にきわめて適切な土地を所有しておるところは、地域的に別でございますが、関西、西日本等におきましては、原料乳というものをつくることは、決してとめる意味ではないが、飼料というこのトンネル畜産というようなものを今後、どこまでも繰り返すという前提に立っては、おやめなさいとは言えますまいが、将来無制限に進めていくわけにはまいらぬというような気がいたしますが、農林省においてはそういうようなお感じは持ちませんか。
  132. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) きわめて、畜産の問題に対します核心に触れた御質問と承ったのでございますが、先ほどもちょっと触れましたように、肉牛なりあるいは乳牛のような草食動物につきましては、これは私は国内の草資源の開発なり、あるいは既耕地における土地利用のより集約的な利用による飼料作物の生産ということで、私は決して望みないものではないというふうに思っております。ただ濃厚飼料については先ほども申し上げましたよりに、かなりむずかしい問題であるという、ふうに考えておるのであります。で、酪農を例に引かれましてお話ございましたが、酪農についていかなるあり方がしかるべきかということについては、私のほうでも前哨的な立場で現在検討を続けておるのでございますが、現段階における、私の感じから申しますと、お話しのように、草資源の乏しい地帯、あるいは土地制約のきわめて強い地帯において、原料乳生産に相当するような酪農の発展の余地というのは、私は非常に乏しいというふうに考えるのでございます。ただ、日本の酪農なり、他の畜産もさようでありましょうが、日本の畜産は、日本に置かれております条件のもとで発展考えなければならないという意味で、日本的な特色をどうしても持つということを念頭に置くべきであろうということで考えますと、西日本等の土地制約の強いところにおきましては、やはり主業的な畜産の発展の余地というものは、これは私は特殊のところを除いては考えにくいのではないかというふうに思いますけれども、耕種その他との混同的な経営といいますが、そういう形でやはり自給される飼料源の範囲内、あるいは経営の中で提供し得る労力の範囲内で一種の耕種との混同経営的な酪農の成立というのは、飲用向けの乳の供給源として私は考えられるのではなかろうか、断定的に申し上げるのには勉強が進んでおりませんが、さような感じを持っております。
  133. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私も局長と同じような考えを、実は最近抱かざるを得ないまことに不幸な事態に立ち至っておるのでありますが、これはいま少しく飼料政策というものを拡充強化をすることにおいて可能なのかどうかという問題がまだ残ります。残りますが、飲料乳いわゆる市乳と称せられるものについては、さほどに五頭、十頭と飼育しないでも、やっていける。農家の残滓物等あるいは若干の購入飼料等でやっていける経済的な飼育が可能なのであります。しかし、企業的ないわゆる酪農と称せられるような、少なくとも農林省がおすすめになっておられるような十頭以上というようなことになりますと、少なくとも、自家生産の飼料がないと、これはどうにもならないという結果が生まれてくると思うのであります。そこでなるべく農林省としては、こういうところを早く打ち出してきめ手をちゃんと終末をつけていないと、一部われわれにも一任がございますが、行政の立場も政治をやる人たちも、つい選択的拡大、畜産へ畜産へというあおりで農家を指導したのでは、私はまことに相すまぬといいますか、最後みじめな畜産家を、酪農家をつくるというような結果におちいることを、私はきわめて最近おそれるのでございます。農林省も、すみやかにこれらの問題についてお取り上げを願いたいと思います。このことについても私はまだお話をし、お聞きをしたいことがございますが、きょうはこれで一応閉じますが、ただ一言農地局長にお伺いを、農地局長というか、畜産局長になるのかもしれませんが、たとえば草地改良あるいは草地造成、いろいろな意味で開拓を行なった。そうして草地をつくるつもりであった。ところがいま申し上げまするように、必ずしも酪農というものがついてまいりません。ある地帯においてはついてまいらない。その場合に開墾開拓をいたしました土地を遊ばすわけにはまいりません。そこで何事か、何か作付けをしなければならないわけでございますが、その場合に助成は牧草をやるのだということで許可をした、助成をした土地であるから他のものに転用をするわけにはまいらぬということで、現実には困っている面があると思う。また、いま申し上げましたように、わずかの炭カル等をまきまして、土壌改良をやったのだというても、ことばの上では土壌改良になるかもしれませんが、現実の土壌改良にはならない。そういうことから、たとえば一部のものをたばこに三年間、二年間使う、あるいはスイカに一作、二作をやらしてもらうというようなことが、現実の農民としてはたいへん希望をするのでありますが、そういうものを許可にしますか、それは相ならぬと思いますか。
  134. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 草地造成事業は、御承知のとおり日本で草を利用する畜産についての知識、技術ともどものセンスがない、そこでいろいろの草を使いまして、永年牧草をつくって、家畜に食わせるという道を切り開いていくという意味で発生をいたしましたものでございます。ところが実態は先生が御指摘のように、なかなかうまくいかない面もあると同時に、草になれまして草を利用するという部面につきましてパイオニア的に非常に役割りを果たした面もあろうと私は存じております。そこで、なおそういう意味におきまして、草地造成事業として御計画をされるものについては、先ほども申しました計画面での畜産行政、畜産立地面からの計画問題が非常に重要だという意味におきまして、特に計画段階を畜産局にお願いをした。もう一つ制度として開拓方式がございまして、開畑をして、そこでいまお話のように草を植えてみたり、あるいはその間ほかのものを、やはり経営の態様に応じて植えていくという、実態に即した開発方式も必要であろう。こういう意味で開拓パイロット方式という形における、何をつくるかはあえて別問題であるという意味の、切り開きをして炭カルをまいて、利用できる状態まで持っていくという制度でございます。畜産局長からもあるいは意見があるかも、所見を申し述べるかもしれませんが、草地造成に関しましては、そういう趣旨制度として開いておりますものでございますので、いまの条件としては、やはりつくったものは最小限六年間はその草を維持してもらいたいという条件がついております。草地造成事業として今後も伸ばし、めんどうを見る分野におきまする制度としては、翌年やめてわしはイモを植えるという形は、やはりちょっと適当でない。そういうところに問題があるものは開拓方式の道をたどっていただいたらいかがか。とにかく草でやってみようという方がこの制度を使うという考え方で、この二つの制度を使い分けたらいかがか、かように私は存じます。
  135. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 いまの説明の、筋としてはそのとおりだと思います。私も質問の余地はないと思いますが、現実にたとえば構造改善の例をとって申しますと、構造改善は十頭いなければならない。そこで、それに見合うところの協業事業で、十頭以上で牧野を開いて補助をもらってやった。ところが、なかなか酪農の、その牛のほうがうまくいかない。そういうワンセットでありまするために、一つのほうが欠けても非常に都合が悪いものができ上がる。そこで、そういうものが出そろって、その土地が牧野として使われるようになったならば、もう六年間でも十年間でももとより牧草をやるでしょう。ところが、そういうふうにいかない場合があるのですよ。机の上で考えたようにきちっともの切ったようにいかない場合がある。これは二つも三つも、畜舎の関係があり、あるいは草の関係があり、あるいは牛の頭数の関係があって、いろいろのものが 一つのセットとなって、初めていけるわけですね。それが現実に六年間ほかのものをつくっちゃいけないぞということでは、私はいけんと思いますが、それなら、ここで、けっこうですよとも、なかなかおっしゃれないのではないかと思いますが、そういう現実の問題をとらえてきたときに、それがために地方農政局なんという地方に出先が出て、親しく指導をしようというシステムになってくる。そういう人たちが見て、なるほどこれは土地を遊ばすことはいかぬ、土壌の改良ということに必要だからほかのものを、ことにスイカなんというものは酸性でけっこう間に合う、荒地のほうがかえっていいわけであります。そこで、一作、二作たばこをやる、あるいはスイカをとらして、そうしてその土地を遊ばすことなく高度にその土地を利用せしめるというような親心があっても、私はいいと思うのですが、むやみに法律だとか規定だとか指導方式だとか言わないで、そこらが政治というものではなかろうかと思うのですが、そういう現実の問題が出たときには考慮をされますか。
  136. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 現在の補助制度のもとでの原則は、農地局長から御説明、お答えをしたとおりでございますが、原則として、草地として造成されたのが草地として利用され管理されていくということが、これは当初の目的でございますから、それと全く反する土地利用ということは、私は認められないと思いますけれども、経過的に、部分的に草地利用の全面的な利用に至る過程があるということは、これはお答えのしかたとしては、ばく然とさせていただきたいと思いますが……。(笑声)
  137. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 わかりました。
  138. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 本日は、これをもって散会いたします。    午後四時五十一分散会      —————・—————