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渡辺勘吉君 ところで、一応問題と思われるのは、あなたのいまの
答弁の中にもあったのですが、
パイロット地区というものの果たす
役割りが現実には
一般地区と何ら変わりのないような
スタートを切っておるということがまた問題なわけです。少なくとも、われわれが素朴に
考えて、
パイロット地域というものは、そこであらゆる
施策をまず投入して、いろいろな問題が出てくるわけです。そういう点を十分勘案して、
一つの誤りなき
構造改善の
方向づけが出た上で、
一般地区にこれを普遍化するというのが、われわれ
国民の
パイロット地域に対する期待である、そういうことを申し上げたのでありますが、どうも
パイロットというものが、そういう形ではなしに、ほとんど一般
地域と変わりのない
スタートを切っておる。だから、
パイロットだけで問題が、その範囲の狭いところで矛盾が整理さるべきはずのものが拡大し、一般
地域の中において普遍し、内在し、矛盾が表面化をしてきておるということについても、
パイロット地域という名ばかりの政策が一般的なものに溶け込んだという行政上の責任は免れない問題だと思うのです。そういう点を一体どう
考えるかということですが、もうすでに、これはそういうことで。
パイロットというものは名ばかりで、ほとんどそれとくびすを接するように、
一般地区の
計画実施の
指定が行なわれておる。こういう中で、共通的に見られる問題は、いま言ったように、たとえば
構造改善事業の中で、水田作経営、近代化施設、共同管理栽培、あるいは大
規模穀類乾燥
調整施設、こういうところに問題が非常に鋭く出てきているわけです。結論的に言えば、コンバインなり、大型トラクターなりというものを駆使して、生産技術体系が整備されるということが確立されない前に、大
規模圃場の区画整理が先行しておる、農道の拡張が進められ、せっかくの投資がある期間は遊休化せざるを得ない、そういう
事態が、
政府が
指定した
パイロット地域なりあるいは一般
地域の中に、矛盾が出てきておる。だから、
構造改善事業を進める前提としては、そういう農業技術の体系が整備された上で、この
事態が大
規模の区画整理というものが行なわれなければならぬのに、技術の体系というものが確立しない、そういう矛盾が、あなたがいま言ったように、三年で
事業を完成さすべきものが一年延期するという、
農林省としてはまことに不名誉な、面目も何もないような通達を出さざるを得なくなった、そういう点があると思う。これは抽象的に言ったのでは、なかなか具体的な御
答弁は得られないので、私は以下、具体的な問題についてお尋ねをいたしたい。
それは、特にこの
構造改善の中の水田の経営の近代化施設についてでありますが、たとえばコンバインの問題にしても、いま言ったように、具体的な技術の体系というものがまだ確立していない、そういうことが明らかに出ているわけです。これは私が
指摘するばかりではなくて、農業機械化審議会の答申にも出ておる。この会長は、かつて
農林省の事務次官をやった小倉さんがこの会長をしておる。そういう
政府みずからの農業機械化審議会が、そういう水稲作の栽培の共同経営というものに対する技術の未熟さを、各項目にわたって
指摘をし、
政府に答申をしておる。これが私はこの問題が解決されないままに、水田地帯における
構造改善が
一つの大きなデッドロックに乗り上げている大きな問題だと思うのです。その点を具体的に、この審議会の答申の
内容に沿うて私の伺うのは、三年間でやるべきものを一年くらい延ばすことによって完全にこれらが解決されないと思うから、私はその具体的な
内容にわたって、ここで
政府の見解を明らかにしなければならないということになるわけです。
非常に多彩な
内容にわたっておりますが、私のお
伺いする問題をしぼって、その審議会の答申を拾って
指摘をいたしますと、「コンバイン導入の条件」という
一つの項目がある。それには、「普通型コンバイン」というものが「農業
構造改善事業実施地区において、効率的に稼動し得るためには、その前提として、コンバインの稼動
予定地区が次のような条件を持ち得るものであることが必要である」、
構造改善事業実施地区において、前提として次のようなことがまず整備されなければならないということをうたっているのですよ。そういう前提条件に何を掲げておるかと言えば、「土地基盤の整備」ということを
考えており、その「土地基盤の整備」というものは、各項目に分類して整理をされておりますが、「当該
地区内の農道、連絡道、水路及び橋梁が、コンバインの走行に支障のないよう整備されていること」がまず第一の問題である。第二は、「農道から水田への出入りが容易であること」、第三点としては、「圃場区画が大きいこと、また少なくも畦畔の高さ及び幅が畦畔作業にさしつかえないものであること」、これはもう先行して区画再整理の中で解決している問題だろうと思います。第四点は、「排水が良く、特に地表水の排水を急速に行なうことが出来ること」、こういうことを「土地基盤の整備」の条件として出しており、こういう「土地基盤の整備」というものの次に、前提として
構造改善の
事業を進める要件なり、「栽培条件」というものを
指摘している。
この「栽培条件」としては、「極力収穫期の幅を大きくするような品種の組み合せや栽培法が行なわれるとともに、各品種について同一熟期のものが集団的に栽培され、少なくとも水稲で二百時間程度コンバインを稼動させることができること。」、こういう
一つの品種の改良、そういうものが一体一年の中に解決されるとは
考えられない。これは一体、
政府はどう
考えて一年延長ということを言うておるのか、これは技術的に御回答を願いたい。
それから、第三点としては、「施設条件」ということをあげておる。前提条件として、これはみんな
政府の
一つの機関が答申していることですよ。「施設条件」としては、第一は「コンバインの能力に見合う乾燥
調整施設があること」が前提条件として必要である。第二点は、「収穫後の圃場の跡作業を行ないうる大型のトラクターを確保できること」、こういうことを「施設条件」としてあげておる。
それから、第四点としては、「社会条件」というものをあげております。これは第一に「コンバインの利用により従来雇用労務者に支払っていた費用が節約され、また浮き出した労働を他に転用することができる
地区であること。」、第二点としては、「品種の
調整や集団的な栽培のほか、もみの共同処理等協業体制ができる
地区であること」、これを社会条件の第二点にあげておる。「その他」としてあげておるのは、「優秀な運転
調整技術者が確保できること」、また「その他」の二点としては、「アフター・サービスや修理の便がいい
地区であること」、こういう技術者の習得ということが、一体
政府では一年の間に解決できるとお
考えになっておるか、これも具体的な
内容に触れて御
答弁を願いたい。
そういう
一つの前提条件がなければ、この水稲作の共同経営というものは踏み出すべきものじゃないということを答申しておる。
そこで、次は、「農業
構造改善事業におけるコンバイン導入
計画地区について再
検討を加え、さしあたり以上の条件を具備し、または早急に整備し得る可能性がある
地区に限り導入を認めるべきであって」云々と言っておる。そういう十分な、それぞれのまじめに
政府の振る旗に応じてやった
地域地域の実態に応じて、可能な条件というものをどこまで一体詰めておるのか。その結果、一年延長ということが可能であるかどうか、そういうことも伺っておかなければならない。
この審議会が答申をしておる——私は時間の節約上全部問題だけを提起して、総括して
答弁をまず求めますが、「コンビンの管理運営形態」について言うておるこれについても、「今後導入の具体的な実情に即して慎重に
検討を進めるべきものと
考える」というようなことで、これを「当分の間は、
原則として農家または営農集団に直接導入することはさし控え、公共的機関に管理運営させることが妥当と
考える」とある。この管理形態を
政府は一体どういうふうに
考えておるか。
また「コンバイン導入に伴う乾燥方法」について
指摘をしております。「コンバインを導入した場合、その能力に応じた生もみの乾燥
調整施設が必要となるが、この場合、次に掲げる乾燥方法のうちいずれかによる施設を当該
地区の条件に従い設置することが有利であると
考えられる。ただしこれらの方法には、実用化するに当り、さらに解明すべき点があるので、その
検討を早急に進めることが必要である」と。まあさしあたり当面をしのぐということもやむを得ないということでありますが、これは受益者である立場から見れば、そういう無責任な態度はこれは許すわけにはいかない。そういう大型乾燥機とコンバインの大型刈り取りの作業と
関連して、一体経済効率的にどう現在の乾燥共同施設に対して
政府は
考えておるのか。
第六は、「農業
構造改善事業実施地区以外の
地域における収穫の機械化」でありますが、これはきょうの問題には直接
関連がありませんから省略をします。
第七点としては、「コンバイン導入にあたりとるべき
施策」として、「コンバインの運転
調整技術者の養成」という問題を提起しておる。また「コンバイン導入のための実物教育」ということを
指摘しておる。
そうして最後に第八点として、「コンバイン導入に伴い研究、
検討すべき
事項」として、「機械化収穫に
関連する試験研究の重点的
実施」というものをあげて、大体次の五項目を
指摘しておる。第一点は「収穫適品種の選定と育成」、第二点は「機械化収穫に適応する作物の栽培法」、第三点は「コンバインによる収穫後の圃場におけるわら処理」、第四点は「耕起後作物の作付等の諸作業」、第五点としては「コンバイン収穫に伴う損傷粒、來雑物、枝梗等処理等についての試験研究を強力に推進すべきである」ということを試験研究の重点的
実施事項として
指摘をしております。そうして「国産機械の開発改良の促進」、いまだその技術が十分ではないというようなこと。それから最後に、「コンバイン導入に伴う米の流通形態の
検討」ということをあげておる。それは
農林省がすでに内部で
検討しておると思うのですが、コンバインによる収穫の
進展というものが普遍化することによって、もみ貯蔵バラ扱い、バラもみの
政府の受検買い入れ、そういうものが当然
政府の
施策としても対応するものが確立しなければならない。一体そういうバラもみ扱いというものを
政府では従来の扱いの中でどういうふうな
措置をとろうとしておるのか、そういう点について、まず総括的な問題を、私は、農業機械化審議会の答申の中にひとしく問題意識を
考えるわけです。こういういろいろな体系だてられた農業技術というものが確立されないままに、いたずらに、それらの大機械を駆使するところの前提条件である土地基盤の整備を、農民の負担を強要しながら進行してきた現在において、これらの技術的に取り上げられた問題、幾つかの困難な問題を、一体今後一年の間に完全に解決するという
見通しの上に立って、一年延長ということを出されたのかどうか。その審議会の問題について、いろいろ成案を得た上で、一年たてば全部解決ができるということで通知をされたのであるか。でないとすれば、一体それはどういう対応をして、われわれが納得するような、そういう近代化された農業技術というものの十分経済効率的な受け入れが可能であるか、そういう点をまず総括的に御
答弁を願いたい。