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1964-04-09 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月九日(木曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————   委員異動 四月八日   辞任      補欠選任    小平 芳平君  牛田  寛君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            櫻井 志郎君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            北口 龍徳君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            小宮市太郎君            矢山 有作君            安田 敏雄君            高山 恒雄君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農政局長 昌谷  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業改良資金助成法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○農林漁業金融公庫法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  委員異動について御報告いたします。  四月八日付をもって委員小平君が辞任され、その補欠として牛田君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 農業改良資金助成法の一部を改正する法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案一括議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は発言言を願います。
  4. 安田敏雄

    安田敏雄君 局長にお尋ねしますが、今度の改正法案昭和二十七年ですか、法律第三百五十五号で制定されまして、今回初めての改正ですか、これは。
  5. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 初めてではなくて、ほとんど毎年改正をやっております。
  6. 安田敏雄

    安田敏雄君 そこでお尋ねしますが、役員ですが、役員のいまの構成及び職員の数はどのくらいになっていますか。
  7. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 役員は九名でございます。そのうち総裁が一名、副裁総が一名、理事が五名、監事が二名でございます。それから職員は七百五十三名となっております。
  8. 安田敏雄

    安田敏雄君 当初、出発したときには、総裁、副総裁が一名ずつ、理事は四名だったですね。五名になったのはいつごろですか。
  9. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 当初は副総裁はたしかなかったかと思います。理事が四名でございます。理事一名が増員になりましたのは三十六年の改正でございます。副総裁もその際に改正したのでございます。
  10. 安田敏雄

    安田敏雄君 副総裁は三十六年ですか。
  11. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 三十六年です。
  12. 安田敏雄

    安田敏雄君 職員は当初五百四十名ぐらいだろうと思いますが、その後七百五十三名になった経過の中で、毎年どのくらいふえていますか。
  13. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 毎年若干ずつ増員いたしております。ちょっといま手元に毎年の増員の数は持っておりません。
  14. 安田敏雄

    安田敏雄君 あとでいいです。  そうしますと、職員は当初から見ると二百十名ばかりふえている、こういうことでいいですか。
  15. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) いま手元にありますのは実員でございますが、定員でなくて。これは二十八年度末が、職員の数が百二十四名でございますが、三十七年度末が六百十一名で、たしか三十八年度末の最近の状況が七百名ばかりになっております。
  16. 安田敏雄

    安田敏雄君 職員の数が当初は五百四十名ぐらいだったですね。
  17. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) いま申し上げましたように、百名を若干上回る程度です。
  18. 安田敏雄

    安田敏雄君 当時ですか。
  19. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) そうでございます。
  20. 安田敏雄

    安田敏雄君 私の調べですと、昭和三十五年ですか、そのくらいのときに、職員が五百四十三名、現在七百五十三名というと、その当時から三年間に二百十名ふえているわけですね。この採用総裁責任でもちろん行なうのだが、それはあらかじめ農林省当局のあなたのほうに、そういうことの連絡というのですか、事後承認というのか、あらかじめ打ち合わせをして行なうことになっているわけですか。
  21. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 定員増加につきましては、農林大蔵両省承認を要することはもちろんでございますが、実際に採用する場合に、だれを採用するとか、あるいは本年の卒業生を何名採用するというようなことは一々承認を受けずに、総裁限りで決定されるわけでございます。調書はございます。
  22. 安田敏雄

    安田敏雄君 これは職員定員数というものはきまっているのですか。
  23. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 予算上の定員がございます。
  24. 安田敏雄

    安田敏雄君 それは何名ですか。
  25. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 先ほど申し上げましたように、三十九年度におきましては七百五十三名でございます。
  26. 安田敏雄

    安田敏雄君 三十八年度は。
  27. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 三十八年度の定員は七百五名でございます。
  28. 安田敏雄

    安田敏雄君 その前は、三十七年度は。
  29. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 三十七年度は六百二十三名でございます。
  30. 安田敏雄

    安田敏雄君 三十五年度の五百四十三名……。
  31. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) ちょっと三十五年度の数は確認いたしかねますが、あとで調査いたしますが、実員としては五百二十九名おりますが、大体定員は五百四十三名くらいの数字ではないかと思います。
  32. 安田敏雄

    安田敏雄君 この定員農林省できめるというのだが、毎年かなりの、五十名以上のこの四年間増員をしておるわけですね。そういう増員ももちろん必要があるのだろうけれども、その定員を毎年わずか千名足らずのところを、五十名ずつ始終ふえていくという、そういうような問題がはたして妥当かどうか、こういうことが出てくるわけですね。一般のよそを見ますとふえ万が激しいのですね。そうすると、その激しい原因は一体どこにあるのか、業務量が多いという問題もあるだろうし、ふえるという問題もあるだろうが、いわばこういう公庫関係などは給与の待遇がいい。したがって、本省のほうへ入りたがらないで、そちらのほうへ志願する。こういうような問題も考えられるわけなんですね。ですから、定員を毎年々々こういうようにふやすだけ業務量が激しくなっておるのか、そういう点についての経過を聞きたいと思うわけなんです。
  33. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 業務量増加は非常に多いわけでございます。具体的に数字をもって申し上げますと、三十六年度は融資ワクとしまして六百億でございます。それが三十七年度におきましては七百十億、二割近くの増加でございます。それから三十八年度におきまして八百七十億、二割以上の増加になっておるわけでございます。さらに、三十九年度は二百億の増加で千七十億になるわけでございまして、最近において、特に年々の業務量増加は著しいものがございます。そのほかに、増員を要する事情としましてはいろいろございます。貸し付け件数が非常に増加してまいります。これは一件当たり貸し付け金額の小さなもので、個人に貸すようなものが非常にふえてあることでございます。従来は、近代化資金に移りました共同利用施設というようなものが相当多かったわけでございますので、農協貸し付ける、団体に貸し付けるというようなものが多かったわけでございますが、最近では、土地取得資金自作農維持資金、一件当たり二十万とか三十万で、各農家に貸し付けていくというような資金が非常にふえてまいりました。それから同じ土地改良の中でも、非補助小団地土地改良というような小規模の土地改良貸し付け金額は比較的少ないが、件数が非常にふえる、こういう実情にあるわけであります。そういった関係貸し付け業務においても非常な増加をいたしておりますし、貸し付け後における債権の管理、回収の業務もまた非常にこれは一そう困難化する、事務量としてもふえておる、こういうのが実情であります。
  34. 安田敏雄

    安田敏雄君 七百五十三名の職員はこれは支店を含めてですか。
  35. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) そのとおりでございます。
  36. 安田敏雄

    安田敏雄君 そこで、職員給与ベースといいますか、それは本省関係とは平均どのくらい違うのですか。
  37. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 農林省と比較いたしますと、大体給与平均水準としまして二割くらいの差があると思います。
  38. 安田敏雄

    安田敏雄君 どっちがいいんですか。
  39. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 農林公庫のほうがいいのであります。
  40. 安田敏雄

    安田敏雄君 私は与党側のある議員に聞いたんだが、農林省でせっかく農林省関係のほうへ、養成のために、公庫あたり金融関係仕事も知っておらなければならぬというので、一時そういうところへ養成関係で見習いにやったところが、いざ採用するときになりますというと、本宅のほうが給与ベースが低いので、公庫のほうへみんな行ってしまう。こういうことがしばしばあるというお話を聞いたんですが、こういう問題について局長はどういうようにお考えですか、この点は。政務次官、そういうようなことがありますと、今後農林省当局へは優秀な人が入ってこないというそういうことも出てくるわけなんです。したがって、農政に影響することは非常に大きいわけなんですけれども、どういうようにお考えですか。どちらでもいいです。
  41. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) その点につきまして、ちょっと最初事務的なことを申し上げますが、農林省人事当局採用する際に、一番最近痛感しておりますのは、確かに事務系統法学士にしましても、技術系統農学士あるいは林学の人にいたしましても、最近なかなか昔のようにうまく採用ができないということは痛感しておるのでございます。しかし、これは何も農林公庫だけとの問題でなくて、一般に非常に好況の産業相当ございますので、従来農業経済を出た人などは、農林省と、府県の県庁というのが重要な就職先であったわけでございますが、そのほかに、最近では証券業などに至るまで、あるいは一般金融業に至るまで農業経済出の人が採用されるというような状態にまでなってまいりました。これはいいか悪いかということよりも、やはりそれぞれの人に対しては非常に雇用の機会がふえておりますので、それだけを見れば非常にけっこうなことじゃないかと思いますが、農林省当局としては豊富な人材の中から優秀な人を採りたいわけでございます。その点は多少困っておりますけれども、特に農林公庫に優先して採られるということは、いまそう感じていないのでございます。
  42. 安田敏雄

    安田敏雄君 最近の雇用状態の中で、農林省給与関係が非常に低いから優秀な人材を集めることに骨が折れる、こういうお答えがあったわけですね。これは政務次管どう思いますか。農林省給与が低いために優秀な人材が集めにくいという答弁がいま局長からあったわけですよ。そうすると、これは農林省の、公務員全体の問題かもわからぬが、非常にこれは憂慮すべき事態なんですね。そうすると、政府当局としても、これらの待遇問題については相当深甚な考慮を払わなければならない。ただ考慮を払うだけでなくて、具体的な初任給の問題を考えるとか、ベースアップの問題を考えるとかということは、これは政府行政上の責任になるわけですよね。そういう点について政府当局としてはどういうように、政務次官考えられておりますか。
  43. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) 民間給与が比較的よくて、官庁のほうが……公庫もいま局長お話によると二割方高いというお話でありますが、そのとおりだろうと思います。つきましては、官庁方面公庫に限ったわけではないと思いますが、とかく官庁方面給与公庫あるいは民間給与と比較してよくない。ことに技術関係相当採用に苦労しておる状況であると聞いております。これらについては、毎年人事院において調査して、勧告を受けておるのでありますが、われわれも十分この点は検討していかなければならない問題かと思っております。
  44. 安田敏雄

    安田敏雄君 検討では済まされない問題だろうと思うのです。少なくとも本省よりも公庫のほうが二割方平均して給与関係がいい、こういうことであります。なるほど業務量もふえるかもしれないが、最近の複雑な経済の中では、特に政府農業基本法以来、農業構造改善事業を中心に、諸般の近代化のための農業を推進しているときに、したがって、本省でも相当人がほしいわけです。本省ふえ方よりもおそらく公庫人員増加が多い。公庫もなるほど業務が非常に多岐にわたって人手も要るだろう、しかし、本省もそのとおりだろうと思う。そういうことになって、本省のほうはそういうことから考えると、公庫人員増加が多い。七百名程度のところ毎年五十名以上ふえているわけですね。これはふえ方が多いですよ、本省から見ますと。そうすると、やはり業務量の問題はさることながら、これは当然ふえるのはあたりまえですが、しかし、やはり給与が二割方いいというところに、どうせ入るならそちらのほうがいいじゃないかという一つの魅力があるんじゃないかと思うのです。これは政府はこんなことやっていたのでは将来たいへんですよ。特にこの点は今後深い考慮を払って具体的な対策を打ち出すことが私は必要ではないかというように考えておりますが、その点どうですか。
  45. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) いま直ちに、そういう農林省のほうに人員採用に支障を来たしているかどうか私ははっきりわかりませんが、至急検討いたしまして、これは適当な対策考えていきたいと思っております。
  46. 安田敏雄

    安田敏雄君 先ほど局長の御答弁では非常に憂慮される状態に至っている、雇用問題については。したがって、そういう答弁があったわけですね。ですから、政務次官としては、検討というようなきわめて消極的なことでなくて、もう政府答弁はいつでも検討に終わるのですよ。そういう見当違いのことでなくて、やはり善処するというようなことでないと、われわれとしてはちょっと納得ができないですよ。どうですか。
  47. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) これは農林省だけの問題ではない。ことに技術が特に重要な部門になっている建設省とか、あるいは通産省とか、それらの問題とも非常にこれは密接な関連があるものと思いますので、いま御指摘の点をもとにして至急検討して善処したいと思っております。
  48. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあその点はおきまして、それから局長にお尋ねしますが、支店は現在、私の知っておるのは八つですか、札幌、仙台、金沢、名古屋、京都、岡山、高松、福岡、それ以外に増加しておるのですか。
  49. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 支店は現在までは十ございまして、三十九年度に一カ所増加する予定でございます。いま御指摘の中で漏れたのは東京が漏れたかと思います。それから熊本が漏れておると思います。そのほかに新しく関東信越支店というものを一カ所設ける予定でございます。
  50. 安田敏雄

    安田敏雄君 関東はどこですか。
  51. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 関東東京に置きますが、現在東京支店管轄区域が非常に広いのでございます。それで管轄を二つに分けて仕事をやらせるということにいたしたいと思っております。
  52. 安田敏雄

    安田敏雄君 それじゃよろしゅうございます。そこでまあ十の支店——新しく十二になるわけですが、本店を含めて。この中で、たとえば総裁とか、副総裁とか、理事とか、また監事を含めて、こういうような役員の中で、就任に当たって金融経験のある人は何名ぐらいあるのですか、数は。
  53. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 大体三分の二ぐらいは直接金融業務あるいは行政にタッチした経験がある人でございます。
  54. 安田敏雄

    安田敏雄君 民間出身の人はどのぐらいいますか、役員の中で。
  55. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 農林中金等から入っておる人がおります。
  56. 安田敏雄

    安田敏雄君 民間はいないのですね。
  57. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 民間としましては、農林中金それから前には勧銀からの出身者もおったのでございます。
  58. 安田敏雄

    安田敏雄君 それから一般に言って、特に純粋な民間ですね。いわば金を借りる立場の、非常に苦労した人という人はないのですか。
  59. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) そういう人は入っておりませんが、しかし、直接に、公庫貸し付け業務受託金融機関が行ないますので、信連とか、あるいはものによってはさらに信連事務委託を受けて農協がやるわけでございます。末端で借り受ける側に直接触れる窓口になる人々は、そういう人々は多いわけでございます。
  60. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあ私、こんな愚問をするのは、公社公団が発足の当時は、いわばどうも官庁でものごとを、公共事業にいたしましても、その他の関連する事業にいたしましても、これを推進するときには非常に能率が悪い、こういうことで、公社公団ですね、もちろん公庫も含まれるのです。趣旨としては。そこで、これはできるだけ公社公団をつくって、そうして民間人を登用して、それで能率的に運営をしていくのだ、あわせて経費の節約も含めまして、そうしてやっていくのだ、そういうことで発足したわけで、ところが、その後、公社公団公庫はみんな官庁相当局長級以上のような人たちが退職後に派遣されておるというこういう現象は、非常に強く、これは報道関係によって指摘されておるわけですよね。したがって、そういう立場から考えましたときには、やはり特に農林漁業金融公庫の使命というものは、日本の農業面において、比較的地方銀行だとか、その他の信用金庫だとか、こういう相互銀行というようなところから金の借りられない人たちが、きわめて困っている人たちがこれを利用するところです。制度金融として。しかも系統資金はこれは短期資金だからなかなか借りられないのですよ、利息も高いし。したがってそういう面からいきますというと、やはり金を借りた立場のような人たち金融の問題で苦労して実情のわかっている人たちが、これはやはりその役員とかというところに就任して、そしてその民主主義的ないわば金融体制を講じたりあるいは方針を立てたりするということでなければ、これは完全な運用はなかなかできがたいものになる。ですから、結局官庁出身者が多いから、先日どなたかの質問があったかと思いますが、非常に手続が繁雑なんです。手続をしているうちに、いやになっちゃうのですね。それで三カ月も四カ月もかかりますから、たとえば最近の事例のように、ことしはこれがまあいいだろうということで、促成キュウリをやってみる。金がないからすぐ行って借りるというと、一カ月や二カ月じゃ借りられないのですよ。そのうち促成キュウリが値下がりしちゃって、遂に諦めざるを得なくなる、こういうような問題があるわけなんですね。特に観光地付近農業なんというものはもうこれは一発勝負ですから、時期をおくらしたらだめなんですよ。そういうことを考えましたときには、やはり能率的な運営という問題、さらには、その手続簡素化ということは絶対に必要だ。貸すのを何か——これは末端機関へいきますとそうですよ。委託のほうだって、委託を受けたたとえば信連あたりにいたしましても、独自に決定できませんから、本店の言うことを聞かなければならぬから、結局はその手続が煩瑣になって、しかも貸すに恩義をかけて貸しているのだね。何か代償がないかというようなことによって貸しているわけなんです。これでは農林漁業金融公庫の本来の設立趣旨に反すると思うのです。ですから、そういう意味合いにおいて、役員の中には、少しは金融の問題で御苦労なさった、しかも借りる人の気持を十分わかっている人、そういうような人たちをむしろ入れるべきじゃないか。しかもこれは農業関係についての、農業行政に明るい人も必要でしょう。ですから、いたずらにお役人のおえらい方が横すべりしたり、あるいはどこかの名のある人を持ってきたりしても問題の解決ははかれぬと思うのですね。こういう点は将来どういうように改革をしていくつもりですかな。
  61. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 非常にごもっともな点でございますが、まあ公庫がお役所風になって能率が悪くて、あるいは不親切になるというようなことは絶対に避けてまいらなければならぬと思います。それは人事面で、役職員の面でも、採用なりあるいは人事管理の上でもよく考え改善してまいらなければならぬ点でございますが、ただ申し上げる必要があります点は、農林公庫はちょっといろいろな公庫公団の中で多少他のいろいろな機関と異なっておりますのは、設立当初は特別会計運営しておったのでございます。それが非常に業務がふえてまいりましたので、独立させて公庫といたしたわけでございますが、その際に、貸し付け業務、そのルートは、既存の適当な金融機関を使ってもらうという考え方にいたしまして、すでに渡辺委員からも御指摘があったわけでございますが、公庫法が成立いたしますときの附帯決議においても、その事務所を地方に設置することについても制約があったわけでございます。しかし、やはり業務もふえ、また貸し付け事務を促進する必要から、支店受託金融機関業務の重複のない範囲内でできるだけ能率化するというようなことで、支店を設置してまいるというような経緯もあるし、組織上の性格もございまして、他の公庫公団とやや趣きを異にしておるのでございます。  それから公庫業務の、特に貸し付けがどうも円滑でなくておくれがちである、非常に迅速を要する場合に間に合わないようなおそれがあるという御指摘でございまして、私どもも一番その点につきましては留意し、また常にその改善に苦慮しておるわけでございますが、その原因の大きなものは、まず第一に、公庫貸し付け資金のいろいろな条件なり、そういったものが非常に複雑である。最初に表で御説明いたしましたように、ものすごく複雑であって理解しがたい。それは借りるほうはもちろんのこと、貸すほうの事務の当事者でさえなかなか頭に入りがたいような複雑な条件である。それが大きな一つの欠陥であります。この点につきましては、今回大幅に簡素化いたしたつもりでございます。まだ不徹底だとは思いますけれども、相当簡素化をはかったつもりであります。  それからもう一つの大きな原因は、行政事務と並行して行なわれる。これが農業金融における特に政府資金貸し付けの場合に、非常に問題を複雑にして能率を悪くする一つ原因でございます。これは農業金融とか、農業行政一つの特質ではございますが、指導的に、また同じ資金でもこの資金は非常に安くて条件のいいものでございますから、その貸し付けにあたってはかなりいろいろな要件がつくということから、行政庁認定あるいは同じ町村の中でも市町村、農協農業委員会等とかあるいは改良普及員がタッチする、その上に、さらに県の段階では、信連なり、地方銀行なり、県庁がタッチするというような複雑な認定事務と、指導事務と、金融貸し付け業務があわせて行なわれる、いずれも並行しておるというようなことが貸し付け業務をおくれがちにし、不円滑にする大きな原因である。これはなかなか改善が非常にむずかしいことでございますけれども、すでにいままでに、申請書類などはだいぶ簡素化をはかってまいりました。それから支店長の権限の拡大をはかってやって、できるだけ支店限りで決定するように改めてまいりたいと思います。  それからそのほかに、今後はそういった行政庁とかほかの機関との関係においても、できるだけこれは法律の要請になっておるものがありますので、法律改正をするとか、要する面がございますから、必ずそのとおりいくとは申し上げかねますが、できるだけそういった面において簡素化をはかってまいりたい、そういったお役所式な面というものは、むしろそういった面に非常に強く現われておる、そういうことの改善をはかってまいりたいと思います。
  62. 安田敏雄

    安田敏雄君 現在の農業が他産業に非常におくれておるというその原因は、それぞれそれはいろいろの指摘がありますが、そのおもなるものは、農村に対して国の資金が非常に投下されてこなかった、きわめて少なかったというところに、今日いろいろのおくれをきたしておる原因になっておるわけですね。このことは学者も相当広範囲において指摘しておるところなんですよ。そういう観点からいくと、簡素化は確かに必要なんですが、そういう意味で、局長はもう相当簡素化していくんだ、手続その他についても簡素化していくのだということを言ってるわけですが、確かに書類を見ると複雑で、これはわれわれにもつくれないのです。実際。しかもその書類をつくるのは末端のほうの農林省の出先、公庫の出先機関だとか、あるいはまた代行機関だとか、地方銀行等がやりますが、それはたいへんなんです。しかもその中においては、書類がつくれぬからそういうところでつくってもらう。そうすると、なにかしら末端職員が、おれの権限によって貸してやるのだというような気持になって、しかもそのことのために手続が非常に長くなっていく、こういうことがしばしばあるわけです。ですから、この金を申し込んだら借りられるのだというひとつ安心感を農民に与えれば、それは多少手続の問題が長引いても、きっと三十万なり五十万借りられるという、こういうことになれば、他のほうの親戚からでも一心忙しい場合には金の融資ができるという場合があるわけです。ところが、どうも手続は、借りられるまでの期間が長くなっちゃって、そしてその間に借りられるのかどうかという不安感がありますから、よそから借りることもできない、こういう時期的なズレの問題があるわけです。ですから、そういう穴埋めをするためには、やはり必ず申し込んだら借りられるのだというひとつの安心感を農民に持たせるということが、私はまず必要ではないか、こういうふうに考えておりますが、そういう点についての方針といいますか、その点はどうですか。
  63. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 非常にごもっともな点だと思うのでございますが、必ず借りられるというようにするには、まず、資金量を豊富にする必要がございます。いまの場合では、ものによってはやはりワクの範囲内で貸すということで、全部申請に応ぜられるとは必ずしもまいっておりませんが、やはりできるだけ資金量を豊富にして、要請にはこたえるようにすることが第一だと存じますが、そのほかに、いま仰せになったような、早く必ず借りられるということを、教えてやるように、きめてやるようにということでございますが、これはできるだけやはり決定を早くしてやるということだと思うのでございます。それはいま御指摘がありましたような、公務員が長い間のあれでおちいりがちな、何か恩に着せるような態度というのは、これは改めさせる必要がございますけれども、そういうことよりも、やはり制度として複雑なものをできるだけ簡素にするのと同時に、できれば決定までの時間というものに何らか制限でも設けられればいいんではないか、私などはそういうことを考えておるわけでございます。行政庁認定は、これはものによって違うと思いますけれども、県では審査会のようなものが開かれます。審査会にかける場合には、一件ごとに三十万円の貸し付けを、たくさんのいろいろな申請を一々かけることができませんで、しばらくたまってからかけるというような弊もあるようでございます。そういうようなことを何とか改善していく、あるいは認定は申請があってから二週間以内にしよう、何らかそういった制約を加えて促進していくというような方法がないかと考えておるわけでございます。それらの点については、今後さらに検討してすみやかに決定いたすようにいたしたいと考えております。
  64. 安田敏雄

    安田敏雄君 いま貸し付けのワクが予算関係で制約されておるから互々のことばがありましたが、去年までは八百七十億ですか、ことしは千七十億になったのですね。そうしますと、最近三カ年間の申し込み数のほうが総予算額よりもはるかに突破しているということですか。
  65. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 必ずしもそうではございません。若干オーバーした場合と、決定が必ずしも全額決定できなかった場合もございます。需要と供給という形、申請と貸し付けとの関係で見ますと、必ずしもいまの公庫資金のワクは不十分だとは言い得ないのでございます。ですが、特にものによっては相当残す場合があるようでございます。そういうことから、あるいはもう資金量はふやす必要はないのじゃないかという疑念も起きるのでございますが、一面は、いままでのとにかく複雑な制度で、なかなか理解しがたいめんどうな条件が一々の資金についてある。そういうことから、そういうめんどうなことなら借りないで、ほかのほうから借りるというようなことが相当あったのじゃないか。それからいまのようにおくれるということ、それがまたいや気をさそってしまうというようなことで、私どももいろいろ金利の引き下げなども必要であり、資金量を豊富にすることも必要だとは思って、いまこれを推進してまいったわけでございますが、まず第一が、そういったものを改善するほうが先決じゃないかとすら、少し誇張していえば感じておったような次第でございます。
  66. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまの手続に関連して、資料を補足要求いたしたいのですが、というのは、この前追加資料をいただきまして、たしか堀本委員の要請になるものだと記憶しておりますが、借り入れ手続の経路図というものをいただいたわけであります。御答弁にありましたように、非常にこの手続が繁雑なために、資金別にいろいろの長短はございますけれども、自作農維持資金の一例をとってみても、末端の借り入れ申し込み者が申し込みをいたしましてから、決定通知を受けて資金を入手するまでには、想像以上の時間的な経過がその間にあるわけでございます。そういう点を、たとえば監事の監査の中にあるかと思ってみたのですが、見当たらない。そこで、できないようなことをお願いするつもりは毛頭ございませんが、何か平均的にこの資金を四つに分けているわけであります。各部面なら部面で、これが借り入れ申し込み書が出てから、最終的に決定してその借り入れ申し込み者に資金がわたるまで、資金別にどれだけの日数がかかっておるかというような総体的な資料をまずいただけないかどうかということが第一点であります。  それからいずれこの制度のあり方についてお伺いをする資料として、直貸しと、受託金融機関扱いが一五%、八五%という説明があったのでありますが、過去五年のそれぞれの直貸しは、どういう資金を直貸しにしておったのか、資金別に、五年はむずかしければ最近の三年でもけっこうですが、そういう直貸しの資金名、件数、金額、年別の。それから代理店扱いの資金名、件数、金額というようなものをお出しを願いたい。  それから、公庫がその受託金融機関から意見書を受けて、受け付けた時点から決定通知を出すまで一体どのくらい滞留しておるかというデータを監督官庁はおとりになっておると思うのですが、この月別の動態を見たいのであります。と申しますのは、杞憂であれば幸いでありますけれども、私の経験をもっていたしますと、かなり資金の消化は年度末に集中しておるように考えられるわけでありますが、そういうときに、大量のものを完全に、その書類の審査が十分なされておるとは考えられないふしもあるのであります。そういう判定をすることが一体正しいかどうかというために、月別に、一体この公庫が意見書を受託金融機関から受け付けて、それが決定通知に至るまで、どのくらいの間滞留されておるか。公庫の中で、それを月別にひとつ、これは過去五年なんということじゃとてもできないと思いますが、三十七年なら三十七年の一年間についてのそういう実態というものを明らかに理解できる資料がほしいわけであります。  それから、この受託金融機関が約定によって代弁済をいたしておるわけでありますが、これは過去最新の三年間をとって、受託金融機関別に、どれだけ約定に基づいて代弁済をしておるか、その件数、金額というものを来週の火曜の審議に間に合うようにお出しを願いたいと思うのですが、その内容と、提出を願う時期について、具体的に御答弁を願いたいわけです。
  67. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) まず、第二の御要求の資料から申し上げますが、直貸しと代理貸しの量、割合を資金別に出せという御要求でございますが、これはできるだけきょうじゅうに提出いたしたいと思います。  それから第一点の日数について、どれだけの貸し付け手続きについての日数がかかったかという調査があるかという点につきましては、農林公庫が調査した結果によりますと、大体土地改良につきましては、平均しまして五〇・一日、約五十日、これは正式に申請を受理いたしましてから貸し付け決定をいたしたまでの日数でございます。それから林業関係資金につきましては五十八日間、それから漁業関係につきましては約六十六日、こうなっております。  それから第三の御要求の、まず、受託金融機関から意見書を添えて受け付けてから、決定までにどれくらいの日数がかかったかということについて、これは三十七年度だけを取り上げまして月別に集計いたすことは、相当の日数を要します。件数が非常にばく大でございますから、とても来週の火曜には、今月じゅうでもちょっと無理かと思いますので、お許しをいただきまして、ここで、その調査に基づいての日数を申し上げますと、受託金融機関から受理いたしまして平均したものでございますが、土地改良につきましては、支店において九・八日、本店において七日でございます。それから林業は、支店だけで一五・二日、約十五日、それから漁業が支店段階で約二十五日、それから本店で十一日、こういうふうになっているのでございます。  それから最後の、受託金融機関の代弁済の状況でございますが、これはきょうじゅうか、あすの朝までに提出いたします。
  68. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それはもっと集約して、月別の貸し出し決定といいますか、要するに、何月に貸し出しの審査が集中するかを見たいわけですよ。大体僕は、常識的には、年度末に集中すると思っておるのだが、それがどうかということで、三十七年度だけでいいですから、月別の消化のぐあいだね、貸し出しのその資料をいただきたい。
  69. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 公庫が受理いたしましてから決定までの期間を、月別に、三十七年度についてさっそく提出いたします。
  70. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、実は毎年の貸し付け計画額に対して、申し込みの総体でいいのですが、申し込みの総数と金額ですね。これはどちらが平均して背が高いですか、多くなっておるのですか。
  71. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 大体におきましては、従来は受理した額のほうが大きかったわけでございます。しかしながら、この二、三年は貸し付け計画額が非常に大きくなっておりますので、必ずしもそこまでは行っていない場合がございます。やや下回っている。で、特に資金によっては、最近停滞ぎみのものがございますので、そういったものもありまして、そういう結果が出ております。  それから、貸し付け計画額につきましては、一応年度当初の計画におきまして、予備費を見ても、予備費はこれはもちろん災害あるいはそのほかのやむを得ないときに引き当てるわけでございますが、災害の多寡によって若干の違いがあるわけでございます。三十八年度は施設災害が比較的少なかったために、予備費の使用がほとんど要らないというような状況でございます。
  72. 安田敏雄

    安田敏雄君 この貸し付け申し込みをした者の申請書類というものが、貸し付け決定をした者も、あるいは貸し付け決定のでき得なかった者もみんな申し込みの金額というものは本店に集約されるのですか。
  73. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 最終的に本店ですべて集計いたしております。ただ申し込みというものはかなり末端で審査を受けておりますので、その段階でふるい落とされたものがございますから、実態とはやや開きがございますが、公庫が少なくとも支店において受理したもの、それから決定したもの、これはすべて集計されております。
  74. 安田敏雄

    安田敏雄君 末端の農村にいきますと、実際のことをいうと、こういう公庫の金を借りられるのは比較的富裕農が多いのですよ。それで中農、貧農になると全然これは手がかりがない。しかもそういうのを救済しておるのは何かというと、いなかへ行きますと、政治的な恩恵——恩恵というか、政治的な圧力に常に屈するような形の中で、そして金融をお世話になっておるわけですよ。非常に不明朗だ。中農でもかなりの、金を借りなくてもやっていけるような人が——何も政治的に考えておられないような人には借りられないのですよ。そういう事例があるのです。ですから、農林漁業金融公庫の金が、末端のほんとうの山のほうへ行きますというと、何か政治屋に頼まないと借りられないというような風潮がある。こういう点はたしかに宣伝が足りておらないですね。だから最近は全購連あたりがテレビでよく宣伝しますが、十二チャンネルも新しくできるのだから、何かこういうようなもので、手続は簡単だよ、あるいは金も借りられるのだよ、こういうことをもう少し宣伝したらどうですか。これは不明朗なんですよ。どこかの県会議員さんか、代議士さんか、市会議員さんかにおすがりしなかったら借りられないというのだったら、これはそんな金融公庫だったら政府機関金融公庫じゃない。そういう事例がたくさんあります。しかもそういう人たちが口をききますと、末端農協でも、出先機関でもこれは貸してくれるのですよ。不明朗なんです。こういう点を改めない限りにおいては、多少の手続簡素化をしたって意味がない。広く金融の対象にならないと私は思うわけです。そこら辺のところは勇断をふるって断固としてやるべきである。むしろそういう政治屋は断わるようにしなければ、一般農林金融の役割をしないわけです。そこいら辺のところは十分考えてやってもらいたいと思うのですがね。とてもあんなもの借りられないだろうという人が借りて、当然と思われる人で借りられない人もあるわけですよ。そういう事例はたくさんあるのです。そこら辺のところはひとつ勇断を持ってやっていかなければならないだろうと思うのですね。ひとつ政務次官にその点のお考えを……。
  75. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) 全くごもっともであります。が、そういう政治屋が入って、政治屋に頼まなければ借りられないというのははなはだ遺憾と思います。それはあるいはお話のごとくPRが足りないという点もあると思います。それはさっそく金融公庫のほうを呼んで、よくそのPRの問題について十分話をして、あなたの御指摘のような説明をいたしたいと思っております。
  76. 安田敏雄

    安田敏雄君 局長、これは末端の一農民が申し込んだときに、その書類が決定をされない書類でも本庁へ上げなければ、絶対、国内の総体の農民がどのくらい金融に対して渇望しておるかということがわからないでしょう。末端で話し合っただけで、もうおまえだめだからといって、どんどん消えちゃって統計に出てこないものがあるが、やはりそういうだめなものでも一応書類化して、そして書類を、借りられないものでも上へ上げてこないと、一体公庫の金が十分であるかどうかということが的確にはわかりかねるわけですよ。したがって、そういう点も今後やはり統計資料として私は十分重要な参考資料になると思うので、そういう点もあわせて、ただ話し合いの中でおまえだめだ、代行機関がそういうことでなくて、そういうものを書類化して、それを統計へ乗せていくということでないと、何か資金量だけふやせば農林金融資金的には全部いいのだ、こういう誤った考え方になってしまうんではないかというようにおそれるわけですね。その点もひとつ今後特に配慮願いたい、こういうふうに思われるのでございます。
  77. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 確かにそうでございます。農林公庫に上がったものだけで需要を判断するというわけにはまいらぬと思います。ですが、すべて、申請のありましたものを全部上げるというわけにもまいらぬと思いますが、できるだけ実態を把握するように努力いたしたいと思います。
  78. 安田敏雄

    安田敏雄君 今度は金融公庫の一部改正法案手続上も、金融の面からも非常に交通整理せられました、あるいは簡素化せられました。これは一つの大きな前進だろうと思います。これは局長政務次官等の御熱意のしからしめるところだろうとこういうふうに思うのですが、そこで、資料の中でも近代化資金の問題の資料が出ておりますがね、実はこの間新聞に、近代化資金、これはあなたの局長関係ですが、近代化資金が七十億円も余っている、こういう新聞記事が出ているのですがね、これは事実であるかどうか、そういう点を——私読んでみましょうか、新聞を。実はこれは四月三日の「読売」ですよ。「農林省が三日まとめたところによると、農林漁業経営構造改善資金貸し付け予定額三百億円をついに消化しきれなかった。この資金農林行政の一枚看板である構造改善事業を、金融面からバックアップするものとしてスタートしたばかりである。国庫出資を中心に、低利(年三分五厘−六分五厘)で借りられるのが魅力だが、貸し付けの決まったのは三月十五日現在で予定額の五三・七%の百六十一億円。最終的には二百三十億円ほどにはなりそうだというがそれでも七十億円には借り手がつかない勘定だ。あまった金は別の貸し付け用途に転用して、帳じりだけは合わせたが、農林省にとっては全国的に高まっている構造改善事業の指定返上につぐ、第二の黒星である。資金があまった理由の一つ実情無視の融資基準があげられている。たとえば酪農家が借りる場合の基準をみると、乳牛頭数六−八頭、飼料自給率六五%以上といった、きびしい制限がある。これでは現実に借りられる農家はごく限られてくる。そのため酪農部門の貸し付け額は予定(三十億円)の二割にも達しない実情である。しかも借りた農家でも、実際には政府の決めた基準を守っていない場合がかなりあるといわれる。一方では自己資金を預けて、逆に国の低利資金を借りている農家もあるという。自慢の低利資金であっても官僚の作文(融資基準)を押しつけるだけでは効果はあげにくいといういい例だろう。」とこう書いてあるのです。これは非常に重大なことですね。
  79. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 読んでいただきましてわかりました。それは近代化資金ではなくて、昨年公庫法改正しまして、新しく設けられました農林漁業経営構造改善資金でございます。確かにこれはおくれたのであります。と申しますのは、新しく設けられました制度でございますので、その後、政令あるいは告示を定め、公布されましてから、さらに業務方法書を改正しまして、県の説明会、金融機関の説明会等にかなりの日数を要したわけであります。それで夏ごろようやく末端までおりてまいりました。  それから資金の割当があるわけでございますが、それも夏から秋の初めにかけて行なわれたようなわけでございます。だいぶ急いだわけでございますが、農業関係のいろいろな新しい制度は、末端までおりますにはどうしてもそのぐらいの期間がかかるわけでございます。その結果、最初のうちなかなか、かなりこれもめんどうな資金でございましたので、申請が出てまいらなかったわけでありますが、だんだんしり上がりにふえてまいりまして、特に二月−三月、御指摘のように年度末に至って非常に出てまいっております。その記事にございます。三月十五日以降においても相当のものが出てまいっております。現在集計中でございますが、新聞記事にありますように、なかなか三百億の全額というわけにはまいらぬと思いますけれども、相当程度までの貸し付け決定になると思います。ただ、特にお話のありました構造改善関係資金につきましては、そういった事情で、これは構造改善事業自身の認定事務関係もあります。地区の指定がいつ終わるか、それからさらに融資単独事業承認がいつ行なわれるか、そういった関係が融資申請の時間的な問題になってまいりますので、融資の面から選考するわけにはまいらぬわけでございます。その結果のずれが相当出ております。それと地区数が、昨年は新規地区が三百ございましたが、二百二十台だったかと思いますが、そういうふうに減っておりますことと、さらに融資単独事業を行なう地区が予定よりも減ったというようなことがございまして、若干そのために予定を下回るということが出てまいるかと思います。しかし、これは最終的な集計を見ませんと、まだ正確なことは申し上げかねるわけでございます。
  80. 安田敏雄

    安田敏雄君 近代化資金でないということは、この新聞にはそう書いてあったのですが、いまの局長の説明でわかりますが、去年構造改善推進資金として三十六億、畜産経営資金として三十億、農地取得資金として百五十億ですか、こういうようにそれぞれ、果樹経営改善資金三十億のワクを決定するなど、合計二百億になるわけですね。これが借りられないという事由については、いま局長の説明のとおりであろうかと思いますが、その問題は何といいますか、たとえば畜産経営拡大資金にいたしましても、ただわれわれが国会でこういうものを提示されてみると、末端へいくと、今度は借りられるのだというでしょう。そうすると、みんなそうかいといって飛びつくわけです。そうすると、そこへもってきて制限がある、やはり省令というか、政令というか基準があって、いやおまえのところは五頭でなきゃだめだとか、八頭でなきゃだめだとか、こういう基準があるから借りられないです。三頭の者は。こういう点は何とかやっていかなければならぬでしょう。その基準が悔いと、なかなかいま農家でもって酪農始めて、個人経営が、これはあんた、一挙にして六頭も七頭も八頭も飼えるわけないですよ。御存じのように、国の政策でいくと、あの富士ケ嶺の静岡県の開拓団、最初の入植をした時分には、国有林をだまって伐採してまきにしたような非常に困った生活をしておった。ところが、ようやくあそこで十五年営々として努力をして、やっとこ平均四、五頭ぐらいにしかならぬ。しかもあの開拓団が一番優秀だということになっているわけです。酪農では。ですから、そういうところでさえも容易でないものを、ようやくこれから何というか、ことしから百万円粗収入があるというような段階にまでなっておる、普通。それからあと農業基本法以来、選択的拡大の対象として畜産物を奨励してきて、それが一ぺんに六頭も八頭も飼えるものじゃないですよ。それで、そんな高い高水準の基準を設けるというところに問題がある。これは金を貸さない、見せかけの金は用意したけれどもこれは貸さないのだ、こういうことにならざるを得ないと思うのですがね。だからそういうところの原因をもっと考えて基準を下げる、国会では法律はさっさとやりますよ。あと基準だけはそっちのほうで勝手にしちゃいますから借りられませんよ。ここら辺のところをひとつ考えてもらいたいと思いますよ。いかがですか。
  81. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) ごもっともな点だと思います。昨年設けました畜産経営拡大資金は、従来近代化資金等で行なっていましたものでは、一、二頭飼いの少数飼育が非常に多く出て、また近代化資金が系統組織から貸し出されますので、まとまった額、一件二百万円とか、そういったまとまった金額の貸し付けがなかなかむずかしいというような実情から、多頭飼養の農家に、たとえば三年後において六頭にしようというような計画を持つ人々貸し付けよう、セットで、畜舎もミルクカーもあわせて貸し付けようというような趣旨で設けたものでございますが、多少御指摘のように条件がきびし過ぎるものがあったかと思います。これは多頭飼養農家を育成するという目的でございますから、三年後六頭とか、そういった目標を下げるのは適当でないと思いますが、その他いろいろなまあむずかしい条件がついておりますので、そういった面では若干緩和することを今後やりたいと考えております。
  82. 安田敏雄

    安田敏雄君 去年改正した農業構造改善推進資金ですね。事業の、融資単独事業ですけれども、これを三分五厘にしたわけですね。その他まあたくさんありますがね、こういうものの一つ貸し付け基準というものを、これを一ぺんわれわれにも教えてくれませんか。一々農林省へ行って、この課はたくさんあるし、たいへんですよ。やっぱりそういう資料をいただかないと、地方へ行って農民にも説明できぬ。五頭飼っているところがたくさんあるわけですよ。ところが、五頭も飼っているというと、地方じゃ優秀な農家だ、山ぎわへ行くと。だから借りられるぞと言ったところが六頭でなければ借りられないということになって、これは一頭分どっかから金を借りて六頭にしなければならぬ。無理に借金させることになるわけですよ。だからそういうことのないように基準を下げるということも必要なんだが、その基準がはっきりわかればわれわれももっとこれは下げるべきだ、具体的にこういう愚見が出るのですが、おそらく国会議員の中で、そういう基準を知っている人はいないでしょう、きっと。だからせっかく大まかなもとは、やりますけれども、あとがわからぬから、結局、われわれが地方へ行ったって、何だ、安田君の言うことは違うじゃないか、から手形じゃないかということにならざるを得ない。政治に対する不信という問題が出てくるのです。これはわれわれ基準を知らないから無理もないけれども、だから、こういう金融の問題とか、借りられる基準というものについてやっぱり論議をしないと、これは何ぼ資金量を多くしたって何にもならぬことになっちゃう。ですから、そういう点についても、大体の資料等は、質問はないかもしれませんが、一応見せて、また機会を見て、そういう基準を引き下げる問題について論議をしたいと思いますが、こういう新聞が出ることはこれは不名誉ですよ。もう中小企業でも、農民でもお金を借りたいときに、どういうわけでもって七十億円あまっているのだろうと不思議に思うでしょう。だから、それをそういう不信感を抱かせぬようにするためには、こういう記事を載せない、こういう万全の対策金融の問題については、特に政府資金的な問題については必要だ、こういうように思うわけです。
  83. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 十分御注意をいただきました点は、今後留意して心がけてまいりたいと思います。  それから、いろいろな基準を資料にいたしました、いわゆる構造改善事業関係のものもございまするし、金融の解説手引きもございますので、お届けをいたしたいと思います。
  84. 安田敏雄

    安田敏雄君 この間、梶原委員のほうから系統資金の金が系統外のほうへ出ておる、こういう質問がありました。その際、特に金融引き締めの現段階においては系統外へ流れる公算が非常にある、こういう質問がありましたが、その際局長は、これから若干そういうことがあるだろう、こういう答弁でありました。しかし、これもやはり新聞に出ておるところでございます。昨年末の十二月の統計によると、農林中金貸し付け資金量は五千百八十七億円、このうち、系統へは千百七十四億円貸し出しているだけで、残り四千十三億円、七七%は系統外への貸し出しである、こういうように出ておるわけです。しかも短期のコール市場への貸し出しというのは非常に多い。こういう状態は、金融引き締めになりますと、一般経済界がなおこの金を目当てにして、殺到と言わないまでも、相当の工作をしてくるということも、これは見通しとしては出てくるわけです。そういうような問題についてどういうふうに考えますか。若干じゃ済まされぬ。
  85. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 先般御質問に対しまして、コール市場等に流出するものがふえる可能性があるということを申し上げたわけでございます。これは引き締めの結果として、どうもコールレートは上がりますので、そういう傾向が出るわけでございますが、この間も申し上げましたように、最近においては系統の資金が非常に豊富になっておりますので、その結果として、農村にまで引き締めの影響が及ぶということは、金融的ないわゆるマネー・フローの面では直ちにはそういう影響はないと申し上げたわけでございますが、長期になりますとまた変わってまいると思います。で、いま数字をあげました面のことでございますが、これは御承知のごとく、これは毎年の傾向でございますけれども、食糧代金が秋に入りまして、米代金が十月ごろからどんどん政府から支払われるわけでございます。それが農林中金信連、単協へ大量に流れてまいるわけでありますが、その結果として、系統が十一月、十二月から一月ごろにかけまして資金の最も豊富なピークに達するわけでございます。季節的にそういう時期がまいるわけでございまして、そのときには、末端からは資金の需要がない。したがって、系統への貸し出しはどんどん低下する。逆に預金が農林中金に集まってきて、農林中金は系統貸し出しは減って、系統からの預金がものすごくふえる時期でございます。その時期には、どうしても系統外へある程度あれせざるを得ない。そういう季節的規制が非常にそこに強く働く時期でございます。その結果、あげられたような数字が出てまいるのでございますが、金融引き締めが行なわれた場合には、ほかのほうの資金の拘束が起こりますので、やはり系統の資金を要求する経済界の動きが活発になります。そのために、特利やあるいはコール市場に必要以上に出るというようなことがないように常々指導してまいっておるわけでございます。今後も推移によりましては、その辺についてはやはり打つべき手は打たなきゃならぬと考えております。
  86. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあそういういま説明のあったような事情によって預金が多いから、系統外へ貸さざるを得ない、こういうようなことでございます。そのことはよくわかります。しかし、それは日本の経済が平常化のときにはそういう問題も考えられますよ。しかし、いま国際収支の赤字を理由にして、政府金融の引き締めをやっているわけですね。窓口規制から、量的な資金の規制から、それからさらに公定歩合を二厘引き上げた。で、その経済の過熱を押えて、何とか国際収支を均衡化させようという、こういうことからやっておるだろうと思うのですよ。その影響の問題は別ですよ、影響が中小企業や農業に及ぶという影響のよしあしの問題は別ですが、そういうような時期に当面しておるときに、預金があるからといって、またあんた、どんどん系統外へ貸し出すということが、はたして政府としての金融の一貫したあり方かどうかという問題が出てくるわけですね。これは考え方、方針としてですね。ですから、そういう点から考えますと、よいとか悪いとかということは別問題として、金融関係の衝に当たっておる局長考え方が、従来どおり預金があれば放出してもいいんだというようなことであっていいのかどうか、それでは政府金融に対する考え方というものはばらばらなんですよ。そこはどうですかな。
  87. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 系統へまず系統資金を十分流して、農村の資金需要を潤していくことが系統の使命でございますから、まず、それを考えてまいらなければならない。特に引き締めの際は、農村への、いろいろな資金の何といいますか、集めるほうの動きも活発になりますし、それらの両に対しても、系統としては十分対応していかなければならぬと思うのであります。したがって、何といいましても、まず、系統の組織の全体を通じて、農村の需要をまかなうということを第一義にしてまいらなければなりません。金融引き締めの結果、系統外へ流出するものを放任して、農村の需要をまかない得ないような状態にすることは、これは絶対に避けなければならぬと思うのでございます。しかし、いまの系統の資金量は、まあそういう言い方は少し大ざっぱでございますけれども、非常に豊富でございます。実際にいろいろな問題がございますが、農村で利用されている資金に対しては、それはいろいろな障害があって、需要がほんとうに発揮されないという面もあるかと思いますけれども、とにかく豊富でございます。地域的な差もございますけれども、特に都市的な県における農協なり、信連資金というのは非常に豊富でございますから、そういう面でかなりの余裕金があるわけで、それで、金融引き締めの状態のときに、農村の需要に差しつかえを生じない限り、他の、特に関連産業、これは農業なり、漁業、林業の帰趨に非常に影響の大きい産業でございます。その方面が金融引き締めの影響を受けて沈滞するというようなことは、これはその面から農山村に影響を及ぼしてまいりますので、むしろ資金に余裕があれば、そういった農林産業に関連する部門に対しては、余裕金をできるだけ貸してやるという配慮が必要になってくると思うのでございます。  それから系統自体の問題として、これは必ずしも引き締めとか、緩和とか、そういったこととは別でございますけれども、最近において、特に系統の内部で、農村に対する還元融資に積極的な努力が、気運が盛り上がってまいっておりまして、これは説明でたしか申し上げたかと思いますが、最近、農林中金が自主的に、国の利子補給などを受けないで、従来の系統貸し出しの一部を、さらに金利を引き下げまして、構造改善事業あるいは近代化資金の原資等に積極的に融資をやろう、従来八分五厘くらいでありましたのを、一八分ないし七分五厘くらいで貸し出す。大体本年度の予定は、四百億程度資金を農村に流すということをきめておるようなことでございます。
  88. 安田敏雄

    安田敏雄君 それはなるほどよいことですよ。しかし、系統外へ——信用連等の資金量が豊富だということは、結局、系統外へたくさんのコール運用をするから、それたから資金量が豊富になる、こういうことになるのじゃないですか。実際地方の農民が、われわれの知る範囲では、自分の余裕金を農協へ預けるというのは、信連へ預けるというのは、これは利息がいいから預ける。もしこれが市中銀行や信用金庫よりも利息が安ければ市中銀行に持っていきます。そのほうが安全感が多いから。したがって、農民から預かった金については高い金利を、利息をつけなければならぬ。それのさや取りをするためには、これは系統外へさらに高い利子で貸さなければならぬわけです。そういうことを長年反復してきたからこそ資金も集まるだろうし、そうして循環資金の量もふえてくるわけですね。ここに問題があろうと思うのですね。農民から預かったお金が農村への融資にならない、これじゃほんとうに農民金融としての役目を果たしたことにならない。それは信用連とかその他の農林中金等資金量はふえて、営業の範囲は拡大したかしれぬけれども、農民の近代化とか、そういうことのためには役立っておらない。ですから、そういうような機構にあるというところに問題がありますよ。そういう運用しているところに問題がある。ですから、これを是正しない限りにおいては、これは系統外への融資というものをなかなか阻止することはできない。この点はですね、なおまあ大蔵省関係とも考えて、抜本的な対策をすべき時期ではないかと思うのですね。不正常です。これは。農林金融機関としては不正常なあり方なんだ。農民から集めたお金をですね、そうしてほかのほうへ貸してやっていくというだけでは、それは多少、一分や二分程度利息がよくても、農家にとって実際のために役立っておらない。窓口が拡大したって、これではただその金融機関にあるところの団体の職員役職員の、これはあんた、単なる運営だけに終わってしまう。本来の趣旨とは逆行してしまうわけですよ。ここらに問題があろうと思うわけです。  そこで、最近の金融引き締め事情にあって、農林省のほうと、大蔵省のほうで打ち合わしたことはあるわけですか。たとえば系統外への融資ワクをどの程度にするか、総資金量でどの程度にしていくかということ。
  89. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 大蔵省との間でまだやっておりません。これはそのうちやらなきゃならぬことになると思います。ことに、日銀との関係もありますので、おそらく近いうちに相談しなきゃならぬと思っております。まだ行なっておりません。  それから前段のほうで御指摘になりました点ですが、コール市場へ信連あたりが金を流す、あるいは系統外へ貸し付けて高く運用する。その結果、系統に資金が集まってくる。これは正常ではないという御指摘でございますが、ちょっと卵が先か、鶏が先かというような議論になりますけれども、まあ私どもの見方としましては、系統へ資金が豊富に集まってきて、農村の需要を一応まかなってなお余裕があるために、コールに運用する、あるいは系統外に、関連産業に運用して、できるだけこれはまあ高く運用して、農村にその利益を還元するという考え方、こういうふうにまあ私どもはみなしておるわけでございます。まあこの辺は究明を要するとは思いますけれども、やはりそう見たほうがすなおな見方ではないか。最近の、とにかく系統の資金が豊富になりましたのは、そういった金融面におけるまあいろいろな動きも多少は関係しておると思いますが、しかし、何といいましても、豊作が続き、米代金が上がり、農産物価格が上がってきたということから豊富になった、それが系統へ滞留するという形をとっておるわけでございます。やはり資金が豊富になったために、その系統外への運用を行なうと、こう見たほうが私はどうもすなおだというように感じておるのでございます。  それから農村から吸い上げるばかりで、貸すほうは不活発だ、これはまあできるだけ改めて農村への貸し出しを活発にするということが必要でありますし、近代化資金制度はそのためにも設けられたわけでございますが、最近、系統が自主的にやると、四百億円の新しく低利貸し出しをやるということもその具体的なあらわれでございますが、もっと基本的に考えて、戦前においても実はそういう傾向があったのでございます。一方交通的な。農村の必要とする耕地整理とかあるいは負債整理のための資金というものは、産業組合系統を通して政府が預金部資金を流した。組合は貯蓄を集めると、こういうような傾向がなきにしもあらずであったわけであります。どうも農業金融にはそういった傾向がどうも強くあらわれやすい。低利長期の資金というものは組合自体ではなかなか調達しがたい。これはもちろんいろいろな組織上の問題、コストがかかるというようないろいろ改善すべき点はあるかと思いますけれども、基本的にはそういった性格があるいはあるのではないか、こういう問題があると思います。まあそれらの点は、十分本年度において、特に基本的な検討を加えてみたいと考えておるのであります。
  90. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあ先ほどね、しばしば米の代金があるから預金がふえたのだというような御説明があったのですがね。実際秋田だとか、新潟とか、米どころはそんなに裕福ですか、農民は。米が少しくらい高くなったからって。そんなことはないでしょう。私も新潟へ行ってみたんだが、新潟の米どころでは、テレビの普及率うんと悪いですよ。テレビのある家をみんな聞いてみた。これは選挙の応援に行って聞いてみたのだが、それは純然たる農家じゃないのですよ。みんな息子さんが官庁へつとめておるとか、会社につとめておるとかいう、そういう家にテレビがあって、米だけつくっている家じゃテレビがないんですよ。ですから、それは一時的にはふえるかもしらぬけれども、これはほとんど生活資金になっちまうのだ。ですから、そう農民は豊かじゃないということなんですよ。ただ、まあ日本には社会保障制度がないから、老後の生活安定もできない、医療代も自分で払わなければならない、そういうことでもって、いま国民健康保険があるけれども、それも全額給付じゃありませんよ、会社や官庁みたいな。ですから、そういう自分が老後の安定だとか、そういう医療費の問題に、自己防衛に、自分の生活を切り下げてもこれは背に腹はかえられないという立場から預金しているわけです。そうすれば、その零細な金は少しでも安心感があって、そして利息の高いほうへこれは預けていく、そういう無理をしておるものですよ。ですから、それを土台にして——わずかでしょう、この何を見ても、資金量が、信用連については合計で四千四百五十三億円、このうち系統預け入れが三千六百七十六億円、系統外のものが六百七十五億円ですよ。それで、そのコール貸し出しというものは系統外二千億日、半分出ているわけですね。ですから、農業のほうをまかなってから、余ったものは系統外に貸すという、そういうあなたの答弁だが、そうじゃない、実際は。しかもその結果が最近の金融情勢を、政府がせっかく——いい、悪いは例だが、その批判は別にいたしましても、やっているやつと逆に、系統外がその系統資金を引っぱり出そうと、こういうことの工作が激しくなっているわけです。それじゃ何にもならぬということで、大蔵省はこれを前年同期の一〇%減にしていくんだと、できるだけ今度は共同利用施設近代化資金のほうへ低利でもって貸していくんだと、こういう基本的な方針を考えているわけなんです。農林省のあなたのほうが、大臣も、あなたもそうですが、大蔵省がこういうことを考えているのに、農林省当局は、まだそれは大蔵省と相談していないなんというのはおかしいですよ。あなた、新聞発表になってからでは手おくれなんです。ここら辺でやっぱり系統融資ということを、こういう時期に抜本的に考えていくことがやっぱり必要ではないか、こう私は申し上げているわけです。政務次官でもいいですよ。
  91. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) いまの安田委員お話はよくわかりました。われわれもただ漫然と農村がいいからとか、あるいは米代金が多いから、あるいは農産物の価格が高いから、預金が非常に上級の信連とか、あるいは中金に集まってくる、それがまあ貸し付けが非常に少ない。その半分あるいはそれ以下というので、余裕金は系統外に運営しておることは、ただいま局長答弁のとおりでありますが、われわれはそれをただすなおに、それがいいと思っておるだけじゃありません。何といっても、農業近代化するというには、資本総量を多くすることが必要な条件でありますから、なるべくこれを還元させるということを考えておるわけでありまして、いままではコストの関係上、なかなかそういうふうにいかぬ点がありますので、近代化資金政府が利息を補給しておる、また県もやっているということで、その金額をふやして還流させる方途を講じておるのです。その結果は御承知のとおり、だんだん還流が目に見えてきたわけです。しかし、今後においても、前は三百億、今度は六百億、さらにこれは増額していきたいというふうにわれわれは考えております。あわせてまた、これを呼び水として、中金なりあるいは信連なりも、ただいま局長答弁のように、みずからの力において、今度四百億も近代化資金と同じような利率で還元したいという方途を講じておるわけでございますから、まことにけっこうなことと思います。今後ともわれわれは中金とか、あるいは信連、あるいは末端の単協においてもその努力を払わせるように指導していきたいというふうに考えています。  それからまた、同時に、零細なる農協でありますので、コストがかかる、経費率が大きいので、これも御承知のとおり統合を進めておりますので、コストが低下する。そうすると資金コストも下がるのでありますから、農協自体、系統自体においても相当還元がすでに大きくなってくることと私は信じておるわけであります。ともかくも、いまは漫然としてただ系統が預金を吸収して、そして上級に出して、そうして系統外にやっておればもうかるぐらいに思っておってはいかぬ。積極的に還流して農村の近代化をはかるように、われわれは今後ともこの方面において御意見のとおりやっていきたいと、こういうふうに考えています。
  92. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあ私の質問は終わりますが、実はもっとしなければならぬのですが、私午後から党の用件で、ほかの会に出なければならぬのでしませんが、こういうような大蔵省の一方的な新聞が出たり、あるいはその新聞社評が出たりしたときには、少なくとも他産業と肩を並べさせようということで農業をやろうというのだから、そういうような問題に対処しては、その翌日かあるいはすぐ即刻、いやあれは違うのだ、農林省考えはこういう考え方だというような、誠意があるならそういう新聞発表をするようにしなくちゃタイミングが合わぬですよね。ただこれを一方的に出されたままで、省のほうではこう考えていますと言っても、世間では知らない、反駁文が出ないから。やっぱりそういうところにも農林行政の欠陥があると思うんですよね。しかも新聞紙上で、そういう大蔵省の考え方がこうだ、いや農林省考え方はこうだというところに一般の農民が関心をもって、農業の意欲が向上していくわけですよ。言われっぱなしではいけない。そういうことは、今後やはり対策を宣伝——宣伝というとおかしいのだが、やっぱり行政を強化していくという意味においては私は必要ではないかと思います。
  93. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 関連。いま、安田委員が引用した読売の四月三日の記事は、私にもかなりの反響がきておるわけです。というのは、大蔵省がこういう組合金融に対してかなり大胆な検討の発表をしておる。系外融資についても、前年に出校して一〇%系統外融資のボリュームを落す。都道府県の県信連がコールに回しておったものは特殊なものを除いては全廃する、そういうことを大蔵省的感覚で発表しておる。さらに、この大蔵省の検討の要綱には、所管外にもかかわらず、農政審議会に諮問して、農林金融の交通整理を基本的にやらせる方向にあるということの、大蔵省の銀行局長内見解を発表しておる。もちろん地方の農協信連は完全なる金融機関であるということはもとよりでありますけれども、少なくともその主管庁である農林省は、こういう大蔵当局の見解発表前に問題をもっと整理して、そのあるべき方向を示すべき当然のこれは責務があると思うのです。去年の四十三国会においても、金融機関の、農林金融の交通整理というものが過大になり、善処をするという答弁があった。しかしながら、その後一年経過しても、基本的な交通整理というものについては何らうかがい知るところがないわけです。私はもっと切実な問題については、直接その監督の衝にある農林省は、大蔵当局が云々する前に、もっと真剣に考えて、あるべき方向というものを打ち出すべきではなかったか。この記事を見てその大きな影響を私が受けておるにつけても、そういう感を深くするわけです。このことは、いずれ私が農林大臣にお尋ねする中にも取り上げて、具体的にこういう問題が出ておる系統外融資、それを大蔵省的感覚で出されたものに、組合金融をつかさどる農林省はどういう姿勢を持っておられるのか、また、交通整理の問題についても、どういう方向を一年も経過した今日おとりになっておるかをお尋ねいたしたいわけでありますので、いまの問題に関連して、そのことを大臣ともよく協議をされまして、いたずらに不安感をこれ以上醸成することのないような適切な措置を要請いたして、私の関連質問を打ち切っておきます。
  94. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 先般新聞紙上に出ました大蔵省の見解らしきものについてのいろいろの御意見が出たわけでございますが、実は私どももあの記事が出たときに、すぐどこから出たか調査したのでございます。しかし、どうも出所不明でございまして、責任ある見解であるとはみなし得ないのであります。したがって、農林省としてそれを取り上げて一々反論するほうがおとなげないという感じもありますし、農林省もかなりいろいろなことを、大蔵省に断わらずに見解を表明することもございますし、それぞれの立場でいろいろなことは言うことがあるわけでございますから、宣伝はへたなことは確かに御指摘のとおりで、申しわけないと思いますが、私どもはあまり問題にしていないのでございます。
  95. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ここでしばらく休憩して、午後一時四十分から再開いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後二時五分開会   〔理事梶原茂嘉君委員長席に着く〕
  96. 梶原茂嘉

    理事(梶原茂嘉君) ただいまから委員会を再開いたします。  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案一括議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は、御発言願います。
  97. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 午前、安田委員の新聞記事に関する質問がございましたが、経済局長にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、内容は、どうもまた繰り返しになりますんで申しませんが、どうも農林省は宣伝がへただということをおっしゃったのですけれども、宣伝がへたということでは、これはおさまりがつかぬと私は思うのです。宣伝がへただからどうも、というようなことでは、本質的な問題の解明にならぬと思います。  私は、本質的な問題としては、農民はあの記事を見ると、農林省は大蔵省や経済企画庁に引き回されているのではないか、全然自主性がないのではないかと、こういう不信感といいますか、そういうものを抱かせると思う。まあさっきの宣伝というのは、どうも少し問題だと思うのですけれども、あれの記事をあなたのほうで出さなかった理由としては、気持ちはわかりますけれども、どうも適当なことばではないような気がいたしますが、いかがでしょうか。
  98. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 仰せのごとく、ことばはちょっと穏当でなかったかと思いますが、あの記事は、先ほども申し上げましたように、大蔵省から出たということで調査したわけでございます。ところが、どこから出たか、どうもわからないと言う。自分のところではないと言う。たとえば、それぞれ担当局が、まあ関係局は主計局、銀行局、理財局とございますが、そういうようなことでどうも出所不明の事件でありますし、一々それを取り上げて反論するということもおとなげない。大蔵大臣も金融の主管官庁として、農林金融にも農林大臣と同様の権能を持っておるわけでございます。農林省がやはり農林省立場で見解を出すこともございますし、大蔵省が大蔵省の立場で見解を出すこともございます。結論を出すまでには、それぞれ大いに論議を尽くして、お互い協議しまして、結論を出すわけでございますから、それに対してまだ政府のだれが言った言わぬかはわからないような状態でございますから、一々取り上げていないわけであります。
  99. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 反論をせいということは、われわれも言っていないわけです。一々新聞に出たからといって、今度は、農林省がこれに反論する、それにまた大蔵省が反論する。こういうようなことは、われわれも望んでもいないし、またそういうことはあり得ないというふうに思うのです。ただ、われわれが申し上げていることは、どこからニュースが出たか、ニュース・ソースの点については、なかなか言いもしませんだろし、わからないだろうと思う。しかし新聞に書いてある以上は、どこからか出ていることは間違いない。想像で書いたかわからぬし、どこからかニュースを得てそれを書いたと思うのです。しかし、農林省として一体どうなのかということは、やっぱり明らかにする必要があると私は思うのです。すでにさっきのお話では、四月三日に出されたというのですから、相当時間もたっていますから、検討はされていると思います。だからいつの機会かにはやっぱり最も早い機会に農林省はこうなのだということをお出しになる必要があると、私は思うのです。その点いかがでしょう。
  100. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) いろいろ係や課あるいは局によって意見を持っております。農林省の中でもいろいろ意見はあるわけでございますが、私どもああいった問題を含めて、実はああいう問題よりもさらに大きく検討いたしたいということをしばしば申し上げておるわけです。あれは問題の一局部で、基本的な問題はもっともっとございますので、そういった問題を、今年度はあらためて検討いたしたいということを、これは大臣もそう言明しておるわけでございますが、この一年ぐらいかけまして十分検討の上で、各界の意見も聞いた上で結論を出したい、こう考えております。
  101. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その問題はそれでやめたいと思います。  宣伝はへたとおっしゃるけれども、きょうの新聞に、緊急融資十五億円、農家への野菜暴落対策というのが出ている。これは過般来、野菜の暴落に対してそれに対する融資をしようという、こういう計画です。このこと自体については、非常にけっこうなことだと思います。ちょうどこれからまき付けをするというような農家にとっても、ある安定感というかそういうものを与える、こういうように思いますけれども、しかし、この内容を見てみると、利子は八分五厘、国が一分と都道府県が一分、それは利子を補給するというわけですね。そうすると農家の実費金利は、農家の年利負担は六分五厘ということになるわけですね。その六カ月というのですが、これはまことにサイトが短かいのじゃないかという気がするのですが、その点いかがでしょう。
  102. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) これにつきましては、実は園芸局の所管でございますので、私からどうもあまり責任があることを申し上げかねるのでございますが、いろいろ議論があったわけでございますが、野菜の暴落は、天災の場合とやや違う。これはいろいろな何といいますか、天災のようにどうも人為をもってはいかんともしがたい場合とはやや違う。特に野菜の生産というものは、普通の作物の場合よりも短期間で次の営農に移る。必要とする営農資金は短期のものでいいのじゃないか、こういうような考え方ではないかと思うのでございます。詳しくは私ども十分検討しておりませんので、ちょっと申し上げかねます。
  103. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは、これもまあ突っ込んでお聞きすることはできないようですが、ただこれに類するいろいろな問題がございます。たとえば特に地方自治体において利子補給をするという点ですね。これは農民の置かれている現状から考えて利子が高い、こういうことに尽きるわけですが、したがって、都道府県で利子の補給をしてくれ、あるいは市町村においても利子の補給をしてくれ、こういう要望が農民からは常に出てくるわけです。それはもう結論的に言うならば、それだけ貧困であり、返済ということが非常に困難であるということを具体的にあらわしているものだと思うのです。そういうのが相当地方自治団体には積もり積もって相当な負担になっていると私は思うのです。こういうのは、これは地方団体というのは、相当財政的にはでこぼこがございますし、特に農民をかかえている地方団体においては、特に財政的には困っている。非常に圧迫がひどいとこういうように思うのです。そういうところに、特にまた農民のこの利子補給等の要求がある、こういうように私思うのですが、そういうことは結局国で利子補給を全額みてもらう。割り勘制度でなくてあくまでも国が全額利子補給をみる。利子補給というのは、ちょっと制度的に私はおかしいと思うのですけれども、ほんとうならば金利そのものを下げていくというのが好ましいことだと思いますけれども、そういう利子補給の点についてどういうようにお考えであるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  104. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 県段階で県単独で利子補給をやっているケースが多い、これは地方財政の上からいっても問題があるという御指摘でございますが、県単の利子補給につきましては、農業近代化資金をつくりますときに、それ以前に県単独で非常に広範に家畜とか農業機械とか、そういうものに対する利子補給が行なわれている。そういうものを近代化資金制度にできるだけ吸収するということも、一つの大きなねらいにしておったわけです。最近はその結果としまして、県単の利子補給は、県数としてはかなり減っておると見ておるのでございます。これは私どものほうで調査したのでございますが、農業関係施設資金に対する都道府県単独の利子補給の推移でございますが、近代化資金制度発足以前の三十五年の六月の状態は、   〔理事梶原茂嘉君退席、委員長着席〕 三十四県で四十五種類であったようでございます。それが三十八年の六月、昨年には十一県で十二種類となってまいっております。そのほかに県がさらに近代化資金に対して国の利子補給のほかに、近代化資金制度本来で定まっておる利子補給のほかに、上のせして利子補給をしているケースがございます。これはそれぞれの県の独自な考え方によるもので、むげに県の自主性を否定するということもいかがかと思うのでございまして、やはり県の実情に応じて県自身の考え方に基づくものがあることは、これはある程度やむを得ないことではないか、財政の問題があるかと思いますけれども、県自体の考え方に基づくいろいろな奨励措置というものは、これはあってもやむを得ないのではないか、やむを得ないというよりもある面においてはあるべきものではないか、かように考えておりまして、近代化資金制度を通じましてできるだけ吸収はいたしましたけれども、全然県単の事業を否定するというわけにはまいらない、かように考えております。
  105. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その点はこれで質問をやめます。  次に、ほかの委員からもそれぞれ御質問がございましたが、特に私は農業後継者に関する点でお尋ねしたい。法案の提案理由の補足説明の中に、農村青少年が共同して能率的な農業技術を習得するに要する資金予定しておるとこういうように書いてありますし、資料をいただいたものにも、共同技術習得に対して六千万円の貸し付け金額があります。償還は三年というようになっておるようでありますが、一体具体的にはどういうことをおやりになるわけなんですか。
  106. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 後継者資金につきましては、大きく分けまして二通り考えております。一つは個別農家の後継者が経営主の下で、在来単なる補助者として働いておりました関係を改めまして、それらの後継者が自分の創意と責任とをもって、ある種の独立部門の経営と申しますか農業をやってみる、そういうことによって自分の一つの生きがいといったようなものをつくり上げると同時に、将来の経営主としての訓練あるいはそういったものを身につける、そういうことをねらいとしております。その場合に普通考えられますのは、たとえば果樹園を別に持ってみるとか、それから乳牛、豚、鶏等の部門を新規にやってみるとか、ビニール利用の蔬菜園芸をやってみる、場合によっては屋外条桑育をやってみる、そういうことが一応典型的な事例としては予想されると思います。  それから後継者資金の第二の範疇といたしましては、そういった個別農家の個々の後継者の独立部門の何と申しますか、モデルプラント的な試みのほかに、農村のそういった同年輩の人たちが数名集まりまして新しい技術の実地の習得をやる、これは従来の技術改良資金の中でプロジェクト促進資金という名前で試みとしては入っておったのでありまして、改良普及員が青少年指導という、そういったことで集団的に新しい技術を青少年に教え込むという趣旨のものはあったわけであります。それをさらに拡大をいたしまして、共同で新しい技術の習得をするというほうをこっちへ移しまして、第二の種類のものとして考えておるわけでございます。これは個別農家が、いろいろのことをやりますほかに、そういうことを考えましたのは、新しい技術に習熟するという本来のねらいもございますが、特に今後の農業の方向として、やはり協業経営あるいは共同化といったような方向も、当然あわせ考えなければいけませんので、いわばそういった方向への萌芽を育てるという気持ちも含んで、そういうものを新たに後継者資金の中でやることにいたした次第であります。
  107. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私はもっと具体的にお尋ねしているわけです。どうも抽象的で、たとえばいままで4Hクラブなら4Hクラブ等があって、そこで自主的に研究グループをつくる、そこへ普及員を招聘してさらに技術の向上あるいはその他研究する、あるいは青年学級のようなのを始めてそこで農事の講習的なことをやる、こういうようなことは従来もやっていたわけですね。そこで取り上げる共同技術習得というのは、一体具体的にどういうようにするのか、もっとモデルというか、こういうものにするんだということを私は聞いているわけです。そうしないと、いまおっしゃるようなことなら、やあそういうものがあったっけなあということになってしまう。だからそれをひとつ具体的にこういうものだという一つのモデルがあればお示しを願いたい。
  108. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 普及員の活動として一般的にやっておりますものに、一つの具体的な施設をてことして入れようというわけでございますが、たとえば養鶏の集団飼育、ケージ養鶏と申しますか、そういったようなものもありましょうし、あるいはまた桑園の集団飼育、山間部等では最近新しい意味合いで未墾地を利用した桑園の集団化、あるいは屋外条桑育というようなことが若い層にも十分興味を持たれております。そういった問題でありますとか、あるいは簡単なビニールを使った蔬菜その他の新しい試み、そういったようなものが当面おそらく対象の具体的な内容として浮かび上がる可能性の大きいものであろうというふうに考えております。
  109. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、いまお答えになったのを想像すると、一つのグループをつくってそのグループが共同で養鶏を経営していく、あるいはまた桑園管理をやって、屋外飼育を共同でやる、あるいは乳牛を共同で飼育してみるとか、そういう実験的なことをやるわけなんですか。一種の実験農場といいますか、実験経営といいますか、そういうものをやるというわけですか。
  110. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 経営というふうに申しますと、ことばが少し広くなり過ぎまして、適切でないと思いますけれども、農業のある特定部門を実地にやってみるという意味ではおっしゃるようなことになろうかと思います。
  111. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、それをどのくらいの個所といいますか、どのくらいの数といいますか、そういうものをどのくらいお考えになっているんですか。
  112. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) これはどのくらいそういった希望が出てきてまたまとまるか、正直なことを申し上げますと、現地の希望をまだ積み上げておりませんので、どの程度のことに結果として相なりますか、十分なそういった材料は持ち合わせておりません。ただ資金ワクとしては、独立部門共同部門合わせまして四億五千万円を一応の目安として予定をいたしておるわけでございますから、これは一応の目安は一普及場平均にいたしますと、おおむね五十万円程度の額になるわけでございます。それでどの程度のことができますか、平均してみますとそういう程度のものでございます。この間渡辺先生の御質問にお答えいたしましたように、初めての試みで、あまり大きなワクを設定するのもいかがかというようなことで、やや内輪目な資金ワクを一応予定しておりますけれども、今後の推移によりましては、各県の御希望によって調整をはかってまいりたいというふうに考えております。
  113. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうしますと、償還期間は三年ということをここで一応きめてあるようでありますが、いままでの共同経営その地われわれは視察をしたり、あるいはリポートなどで、見ているわけですが、共同経営というもののむずかしさというものは、私から申し上げるまでもなく、農政局長は十分御存じだと私は思うのです。そこでまだ試みで、海のものとも山のものともわからぬが、しかしこういう新しい試みをやってみて、うまくいったらこの次も考えてみようというような、ほんとうの何もかも試験的なお考えのように受け取れるのですが、その点償還期間とかそういうものについて、共同経営について御自信がございますか。
  114. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 独立部門の場合でも共同の場合でも、これによって新しい経営を育てていこうという趣旨のものではございません。いわゆる協業経営を育てたり、あるいは自立経営を育てたりという本来の農政上の目標とすべき資金措置につきましては、それぞれ補助なり融資なり、特に今度御審議いただいております農林漁業金融公庫資金なりが本筋のものでございます。これは経営主になる以前の、まだ代の変わらない、いわば部屋住みとでも申しますか、そういう経営主になる以前の、学校を出て数年たったかという人たちが、いつまでも父親の、あるいは経営主の補助者としてばかり働いておる状況を続けるのみでなく、その余暇にと申しますか、それと並行して自分自身でグループをつくって新しい技術の勉強をしてみるとか、あるいは新しい独立の付加部門を自分で実際に自分の責任でやってみるとか、そういう一経営の中の追加部門をまかせてやる、ちょうどこういうことと相関連をして、先進県で普及事業で取り上げられております。いわゆる父子契約とでも申しますか、親子の間で一部の土地をむすこに貸してやって、むすこの責任でやってみる、もちろん最終的な経営の責任者は、まだその段階では経営主たる父親でございますから、ほんとうの経済的な意味での経営という意味からいえば、その内部の専従者の一人がそういう余暇に勉強するわけでございますから、先生が御指摘のような共同経営、本格的な共同経営あるいは協業経営をつくることの困難さ、あるいはそういうものにかかる費用の多大なこと等とは一応切り離してと申しますか、そういう大それたことを考えて仕組んでおるものではございません。ただ青年諸君が従来普及員から指導を受けてグループでやるのに対して、私どもとしても改良資金の中で、共同で買う資材の購入代金がこういうものから出ることが、そういう普及活動をより活発にするであろうという趣旨でございます。  御参考までに申しますと、三十八年度は、先ほど申しました技術導入資金の中で、プロジェクト促進という名前でやっております。三十八年度の一応の予算と申しますか、計画のところでは、先般の資料にもございますが、約五百集団全国でやることにして、所要資金としては千五百万円ほどを予定しておったようでございます。一件当たりにいたしますと、約四万円の資材代等をこの資金から仰いだということでございますが、これをある程度幅を広げ、ワクを広げるというようなこととお考えいただいて、御了承いただきたいと思います。
  115. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 思いつきといいますか、何といいますか、その考え方ですね、趣旨はけっこうだと思うのです。ところが、いまお答えを聞いていると、試験と経営とのちょうど中間みたいなふうに聞こえるわけです。本格的な経営ではない、さりとて試験場でやるような試験とは若干違っているように思うのです。ちょうど中間にある。そこへ若い気持ちを投入して発展させていこうという気持ちは、非常によくわかるのです。ところが、そうすると無利子であるから、利子がつかんということはいいといたしましても、相当私は危険があるのじゃないか、返済の事故といいますか、それに対する、返ってこない事故というものをどれくらいに大体考えてございますか。
  116. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 従来改良資金が生まれましてから今日までの経過を見ますと、いわゆる試験段階が終わって普及段階に移す、しかし、一ぺんに普通の融資ベースにのせるには若干不なれな点があると申しますか、もう少し普及員が行き届いた指導を伴いながら入れていかないと入りにくい技術、そういった新しい技術の普及のためにこの制度が生まれたわけでございまして、そういう意味では、今度の後継者資金で対象といたします技術は、あるいはおとなのと申しますか、一般的な経営レベルからいえば、必ずしも新技術とはいえないと思いますが、そういう青年層に実習的な意味合いを含めて入れていくという意味では、やはり全く説得だけでは十分でない、やはりこういう物質的な裏づけがあったほうがよろしい。さりとて、いわゆる補助金等で行なうというのにもふさわしくないというような意味で、こういった制度を援用して、後継者養成にも使ってみたら有効ではないかというのが今回の改正でございます。  したがいまして、無利子でやることは従来と同じでございますし、三年という期限も、今回の技術導入資金のほうで新しく技術を入れます場合の償還期限も三年ということで在来あったわけです。おおむね三年程度で返せると思っております。もちろん、天災その他の特殊事情がございまして、お気の毒なことになれば、その償還期限は、制度上も猶予する規定がございますけれども、在米の実績から申しますと、大体ほぼ所期の目的どおりの年限で所期の目的を達して償還願えているというのが過去の実績でございまして、今後の後継者資金、生活改善資金についても、その点は、純粋のいわゆる融資という観念よりも返還条件づきの補助金といったような考え方に近い制度でございますので、比較的にその辺のところは順調に返していただいているのが実態でございます。
  117. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 十分な資料の持ちあわせがございませんので、お尋ねしにくいわけですが、農林省で後継者として考えられている対象の青少年の何割ぐらいに適当するでしょうか、そういうふうに当てはまっているでしょうか。そういう何か計算ございましょうか。
  118. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 計量的な基礎を持った資金計画ではございませんので、御質問のような趣旨でお答えする材料を持ち合わせておりません。もうしばらくいたしますと各府県の具体的な希望がブロック会議等を経て地力農政局から報告が入ると思いますので、そういったものを見ていくことによってだんだん具体的なものが御説明できると思いますが、当面のところは、ちょっとそういう趣旨での計量的な資料は持ち合わせておりません。
  119. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それではいまお話のように、余暇を利用して青少年が経営ないし試験的なこういう施設をやっていくということになりますと、やがて独立して自家の経営をやるということになりますね。そうするとそこへ残った施設というものは、一体どういうようにそれが移行していくものか、何かそういう点はお考えになっておりますか。
  120. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 施設と申しましても、特別に非常に耐用年数の長い固定施設といったようなものはおそらく鶏舎、畜舎ぐらいであろうと思います。これらにつきましては、自分である程度の期間実地にやったあと、自分が今度は経営主ということになった場合に、その一貫したおやじから引き継いだ本体の経営とあわせてやっていく場合に、それほど負担になるものでもないと思いますし、また場合によればさらに次代にも使えるものもあるかもしれませんが、大体は果樹、樹木でございますとか、家畜でございますとか、そういったようなものが主でございますし、その対象はそういう意味ではそう耐用件数の長いものはございませんから、あまりその辺のところは支障がなく引き継がれていくと思います。
  121. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 支障がなく引き継がれていくというのは、形としては共同で、五人なら五人でやるでしょう。そうしたらどういうような引き継ぎをされるのか、共同でやっているわけなんだから。ですからそこらに、新しい試みですから一つの型といいますか、そういうものはないにいたしましても、融資を受けるわけなんですから、あと始末はしなきゃいかぬということになるわけですね。普及員の指導よろしきを得て引き継ぎはするんだというようにおっしゃるかもしれませんけれども、具体的にはどういうようになるのでしょう。
  122. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 共同でやります場合には、先ほど申しましたようなビニール施設でありますとか、あるいは屋外養蚕のための簡単なおおいでございますとか、そういったような種類のものが予想されますけれども、耐用年数から申しまして、先ほど申しました、いずれもそう長いものでございません。大体青少年諸君が、その中に一、二入れかわってくる者があるかと思いますが、おおむね一耐用期間で使命を達して、また目的を達して耐用期間を終わるというような事例が多かろうと思います。なお御趣旨の点は、私どもも今後現地の指導に当たりまして十分問題の起きませんよう指導には万全を期したいと思いますが、それほど大規模な、また耐用年数の長い施設をこの資金によってつくるというようなことは、まずそうたくさんは例はないということで御了承いただきたいと思います。
  123. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 聞いていると、どうもあまりにもちゃちな、およそ青少年が魅力をもってやるような施設とは考えられない。養鶏をいたしましても何か四、五年でつぶれるような施設じゃどうもこれは話にならぬと思います。もちろん、この乳牛など飼うなんというなら、相当の施設をしなければ青少年というのは魅力ありませんよ。桑園で、外で屋外飼育でもするなんというなら、これはビニール・ハウスみたいなものをつくっていけばいい、あるいは蔬菜のトンネル栽培するなら、それは簡単な施設で一作終わればたいしたことありませんということになってしまうのですけれども、魅力を持たせるということならば、しかも選択的拡大という実のいったことをやらせるということになれば、そういう御答弁じゃどうも納得いきませんですね。
  124. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 本来の農業経営と、個別にせよ共同にせよ本来の農業経営の育成と違っておりまして、そういった青年諸君の余暇といいますか、余暇を活用して将来の経営主たるべき準備、心の準備なり腕前の準備なりをしていただくわけでございますから、そう大きな固定投資を伴うようなものを積極的におすすめするという気持はございません。在来の例から申しましても、そういった施設は、たとえば既存のものを借りてきて使わしてもらうとか、いろいろ村によって、くふうはあるようでございます。そういう意味合いで、もちろん本格的な自立経営なり、本格的な農業経営のあるべき姿を、この資金でモデル的にかくということとはかけ離れております点は、おっしゃるようにそういう意味でごらんになればはなはだ食い足りないものであろうかと思いますが、まあ学校教育の延長と申しますか、実地教育の問題でございますから、そういう意味で、私どもとしてはこれなりの効用が青年諸君に対してもありますし、また普及員諸君もこれによって非常に指導がやりやすくなるというふうなことを期待しておるわけであります。
  125. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まあこの問題はいつまで聞いてもきりがないようでこれでやめますが、まあ学校教育の延長というような意味のお話もありましがた、その学校教育ですね、特に農業高等学校の教育、これは文部省の問題でございますが、統計を見ましても、あるいは実際に学校等に当たっても、農業高等学校に入学した者が、農業技術その他習得して卒業すると、大部分の者が製造工業あるいはサービス業その他都市の産業に流出して、結局農家の後継者として残る者は非常に少ないわけですね。だから、いまの日本の農業教育というものは、これは大正、昭和の初めに向かってのあの当時と何ら変わらないようなかっこうで進んできて、学制改革に会ってから農業学校が農業高等学校になっただけ、ただそこに幾らかの新味を加えたのが農業高等学校に女子部を設けて、家庭科だとかあるいは若干の農業の履修をする、こういうようなのが普通でございますが、これは管轄は違いますけれども、本来は農業の後継者をつくる、農業を発展させるという意味の農業教育であったわけですが、一体農林省ではこの点についていかようにお考えか、参考までにお伺いしておきたいと思います。
  126. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) やはりこれは農業に限らないことだと思いますが、りっぱな経営者、あるいはりっぱな技術者として農業をやっていく人を養成する基礎をなすものは、何と申しましても学校教育だと思います。現在の農業高等学校の卒業者が農業に定着する者が少ないという実情は、御指摘のとおりでございまして、このことはあながち学校教育の内容のよしあしということだけでなしに、全体の就業構造の激しい移り変わりの中で一つの問題だというふうに思います。ただ、在来の農業高校の教育につきましても、むしろ将来応用のきく基礎をつくっていただくことが第一番であろうと思いますけれども、最近のような農業の激しい移り変わりの中で、従前の農業高校のような教育方法だけでは、どうも十分な人材養成ができないんではないかというような見地から、本三十九年度からは文部省のほうでもモデルといえばモデル的ですが、わずか全国で五校でございますが、特別に施設の整備をして、実際に大規模生産といったようなことを実地に身につけるのを高等学校の教科の中へ織り込むというような意味合いで、特別の農業高校を新しく発足させることにせられたわけであります。そのような意味で、学校教育はやはり基本的には人間の基礎をつくっていただく、具体的な実際の自分の経営の中で起こってまいります問題のすべてを、学校教育の課程で全部あらかじめ教え込むということは、これはとうてい望むべくもないことでございますので、やはり基礎になることを教えていただいた上で、あとは社会教育的な施設なり、あるいは農業改良普及員を通じての普及指導なり、そういったもので、そういった点を補ってまいるというのが、これは私ども農林省のほうの任務ではなかろうかと思います。なお、中等学校卒業後直ちに農村へ農家へ戻られる方々もまだおりますので、それらの方々については、いきなり社会教育と申しましても、なかなか十分でございません。そこで御承知のように、経営練習農場というようなものが、従来その間の方々の教育施設として働きをしておったわけであります。これもやはり施設あるいは教育内容等幾ぶん新しい今後のあるべき農業の姿を想定した場合には、いささか改善の必要もあろうかということで、目下そういった点での新しい新時代の経営者を、特に農業で働く方というよりも経営者を育てるために必要な訓練施設、教育施設としての練習農場のあり方等についても、私どもとしても検討を進め、逐次そういった方向に切りかえていっておる次第であります。
  127. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その練習農場についてはこれはもう目的が非常に明白でありますから、お説のとおりだと思うのです。まあしかし、農業学校はほとんど全国的にいって昔の郡に一つぐらいの割合でほとんど私は普及されている。それが日本の農業の中核をなしておったといいますか、技術その他の中核をなしていることだと思うのですが、今日においては、すでにもうそういう農業高等学校というものの存在というものの意味が相当変わってきたんだろうと私は思うのです。たとえて申しますならば、これは学校のことだから、あまり農林省には関係ないと思いますけれども、直接の問題ですからお尋ねしておきたいと思います。最近の高等学校の数が少ないために、都市から農村の子弟を押しのけてというとおかしいですけれども、農業高等学校に入り込んでくるわけですね。一般には普通の筒等学校に入るべきような人が、高等学校が少ないために農村に入り込んでくる。農家出身じゃない、農家の子弟でない人が農業高等学校に、試験制度ですから成績がよければ入ってしまうわけですね。そういうことが多いんです。これはもうお調べになると一番よくわかるわけです。そうすると、せっかく農業の後継者となるべき者が入れないという事実が、非常に多いわけです。というのは、農家は労力不足ですから、中学校の生徒も相当労働に引き回される。そういうわけで、農家でないところの子弟よりも学力的には劣っている。知能は劣っておらんにしても、学力的に劣るということで、後継者となるべき人が農業高等学校に入れないという例が非常に多いわけです。そういうようなことで、基本的にもう農業教育というものが変わっていかなければならぬというように私は考える。そういうものを、文部省が考えるからまあいいじゃないかといえばそれでいいと思いますけれども、しかし、これは産業というものを中心にして学校というものは、農業高等学校はできているわけですから、だから農林省が、農業のあり方はこうなんだということを方向を差し示したならば、当然文部省に対して、後継者の養成あるいはその他について十分連絡をするといいますか、希望を申し入れて、あり方をつくっていくべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、それに対してどういうお考えであるのか。文部省とそういうきめのこまかい話し合いをされたことがあるのかどうか、そういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  128. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 確かに御指摘のように最近では農業高校と普通両校との機能的な特色というものが十分でない。で、先ほどのように、都市の子弟が、非農家の子弟が農業高校に入るというお話でございます。逆に申しますと、農家の子弟で普通高校に入る力も相当あるわけでございます。農業の後継者として考えました場合、農業高校出身者であることが、必ずしも非常にいい条件と申しますか、望ましいというふうには言えませんので、場合によりますれば、何と申しますか相当多くの事例では、普通高校出身者の農家の子弟のほうがより積極的に農業後継者としての将来を持っている事例も多々ございます。そんなような意味から申しますと、御指摘のように農業高校という制度の教科内容なり、あり方について相当十分に考えていかなければいけないという御指摘は、まことに私どもも同感でございます。私どもといたしましては、文部省の職業教育課なり、あるいはそういった初等中等教育の担当の方々とは、農業基本法あるいは基本問題調査会の答申が出まして以来、向こうでもそういった新しい農業の方向をくみ取った教科の内容に、だんだん切りかえていきたいという熾烈な熱意がございまして、私どもの積極的な意見なり注意なりを受け入れたいというお話でございます。私どものほうも、機会あるごとにそういったことで連絡を密にしております。具体的な形としては、御承知の中央産業教育審議会というのが文部省にございまして、そういった各種学校のあり方をいろいろと御検討になっております。その審議会の一部門として、農業高校の今後のあり力についての部会のようなものが持たれております。そこへ私どもも担当の者が参画をいたしまして、今後の農業のあり方、あるいはビジョンといったようなものの討議から、またそれにふさわしい農業高校のあり方等、現在御熱心な御審議中でございます。所管は文部省の問題でございますが、私どもとしても文部省のなさることに対して、それ相応の御協力を申し上げて、好ましい方向を打ち出そうということで、そういった中央産業教育審議会といったような場を通じましても、積極的な会議をいたしております。今度の三十九年度の新しく発足する農業高校五校につきましても、それらの論議の過程を通じて生まれてきた一つのモデルケースというふうに承知をいたしております。
  129. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃひとつお伺いをします。三十九年度の農林関係予算の大臣説明から見ましても、それからまた予算内容を検討してみましても、今度の農林予算が、金融面の拡充強化にかなり重点を置いておるということはうかがえるわけです。そういう中の一環として、農林漁業金融公庫法等の一部改正も出されまして、金利の引き下げ、あるいは金利体系の簡素化、また償還期限、それから据え置き期間の改善簡素化等々のことが行なわれておると思うのですが、金利の問題あるいは貸し付け期間の問題等については、衆議院でかなり論議もせられておるようです。私どもも今度の改正案の内容を考えてみて、これでほんとうに画期的な金利の引き下げ措置が行なわれて、日本の農業の発展のために役立つあるいは貸し付け期間の画期的な延長が行なわれて、また非常に効果的な働きをするというふうにはなかなか考えるわけにはまいりませんので、諸外国の例を調べてみましても、金利にしろ、あるいは貸し付け期間にしろ、農業というものの性格からして、他産業に比べて非常に不利な点が多いわけなんで、そういう点を配慮して、非常に金利も安くされておる、貸し付け期間も非常に長い、こういう金融が行なわれているわけで、それらに比較すると、特に今度の改正案で画期的だというふうには、私には考えられぬわけです。まあしかしそれにいたしましても、今度先ほど言いましたように、農林金融の拡充強化には重点を置いておると言われておるのですが、その農林金融の強化拡充ということをやった。そのことをてこにして、いま進めておる農業構造改善事業というものも、さらに一そうこれを進捗させていこうという考え方があるのだろうと思います。  ところが、農業構造改善事業の進行の度合いを見てみますと、三十六年度、これは一般地域ですが、計画地域が五百で、三十七年度が三百で、三十八年度が四百、それに対して、実施地域は三十七年度が百七十四、三十八年度が二百二十九、計四百三、パイロットのほうは、当初の九十一地域が、十五地区が一般地域に変わって七十六地域がいま行なわれておる。こういう状態で、この事業の推進状況というのは、必ずしも当初の計画どおり順調にいっていない面があるというふうに考えるのですが、それらの問題については後ほどお聞きするとして、私がまず第一点として最初にお伺いしたいのは、いわゆる農業構造改善ということと、現在行なわれておる農業構造改善事業というものとを、どういうふうにその関係考えておられるのか、この点をひとつ、これはまあ政務次官のほうから御見解を承りたいと思います。
  130. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) 御指摘の点を十分私は把握していないかもしれませんが、したがって、十分な御答弁ができないかもしれませんけれども、農業構造改善事業と称するものは、これは農業基本法にもうたっておりますとおり、農業構造改善は、わが国の農業のいわゆる時代に即応した発展をはかるために、いろいろな項目をやらなければいかぬのですが、そのうちの一つ農業構造改善というのは、主としてわが国の農業経営として自営農業を中心と考えて適当な家族援助において十分労力が燃焼し得られるような農業形態にしておいて、そしてそれで他産業に従事している人々と所得の均衡のとれるようなものを考えて、それに向かって進んでいこう。それがためには、補助的に協業あるいは共同ということも考えていかなければならぬ。そういうのを経営の中心にえがいて、そして選択的拡大とか、あるいは農業の生産性の向上とかその他いろいろ項目があるわけでありますが、それに向かって、まずパイロット的なものの考え方が大きいと思いますが、農村とずっとなっておるべきと思われる三千百町村をまず選んで、それを十カ年計画で構造改善事業を進めていこう。それが大体そう大きな全体にわたる広いものは少ない、そういうものもあると思いますが、大体はパイロット的なものが多い。しかしながら漸次つくればそういう方向に進めていくということで、三十九年度の予算におきましては、金額の補正も考えられることになりましたし、またものによりましては、一地区を二地区にしていくこともできる、こういうふうにして漸次全体に広げていこう、こういう考えでいわゆる構造改善事業を今後やろう、こういうプランでございます。
  131. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はいまの御答弁でどうもよくわからないのですが、いまやっておられる農業構造改善事業というのは、先ほど政務次官もおっしゃったように、適地適産、いわゆる主産地形成、こういうことがあの内容を見ると一つの中心になっておるんじゃないか、もちろん基盤整備もありますが、それらの基盤整備なんというのは、あくまでも主産地形成というようなものに付随して、ああいうものが実際には行なわれておるような事業の内容になっておるんじゃないかと思う。ところが、その事業で、はたして日本の農業構造の改善というものがはかれるのかはかれないのか、そこに私は疑問を持っておるのです。というのは、もっとわかりやすくいいますと、現在の日本の農業の構造上の最大の欠陥というものを何と考えるかというところに問題がいくと思うのですね。そういう点から考えて、その基本的な日本農業の構造上の欠陥というものに直接手を打つような施策が行なわれないで、適地適産とか、主産地形成とかいうような考え方が中心になっておる構造改善事業を推進することで、はたして日本の農業構造改善ができるだろうか、こういう疑問が私にはあるわけです。その点どういうふうにお考えになっておられますかね。
  132. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) そういういろいろな御心配もあろうかと思いますが、われわれもこの農業構造改善については常に考えておるわけであります。私はしかし、これはそう短期間に、ものごとが進展していくものではなかろうというふうに思っておるのであります。一例をあげれば、適地適産の関係もありましょうけれども、まあ水田地帯を中心に作日の制限が中心である、そのほか何かを加えるというところを考えてみましても、やはり土地改良相当やらなければならぬし、それにはやはりその栽培方法、それから病虫害の防除方法あるいはまた収穫、コンバインの問題あるいは乾燥、そういう問題が一連のものがだんだんそろってこなければ、そう一度には成果があがってこない。私はそういうものがそろってくれば、急送度にこれは上がってくるものだと私確信しております。その他の面においても同様の点があろうというふうに考えていますが、そう楽観ということも言わないが、そう悲観もしていない。まあ相当長期間かかるというふうに考えております。
  133. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 政務次官からお話がございました点でございますが、構造改善事業、この促進対策事業を始めますにあたりまして、閣議できめていただいたときの趣旨の中に「国は農業基本法に基づいて農地等を流動化し、農地組合法人等の協業組織を育成する施策等農業構造の改善に関する施策と相まって、下記による農業構造改善促進対策措置を講じ、農業生産の」云々というように位置づけをしておるわけでございまして、日本の農業構造の改善と申します場合の一番の問題点は、いわゆる零細農耕なり零細土地所有という問題であろうと思います。零細土地所有といったような経営規模の拡大ということが、農業構造改善ということのいわば本筋的な課題であろうということは、先生も御異論のないところと思います。そこでそういった問題に接近をいたします手段といたしまして、なかなか経営規模の拡大という事柄は、農業内部だけでできることではございませんので、やはり他産業の就業構造でございますとか、他産業雇用条件でございますとか、そういったもろもろの環境条件の整備と相見合ってそういうことが可能になってまいると存じます。最近ではそういう意味合いで兼業農家がふえておるという状況は、はたして、短期的には非常に御心配をいただきますが、長期的な問題としては、やはり構造改善の可能性を示唆するものであろうというふうに私どもは考えるわけでございます。そこで当面の問題として、そういった構造改善をどこから手をつけて、どこから促進をしていくかという場合の着眼点でございますが、私どもとしては零細農耕、零細土地所有という中の、零細農耕のほうだけでも何とか切りくずしていく方法はなかろうかというのが、構造改善促進対策事業の具体的な一つの着眼点でございます。言いかえますれば、現在の経営規模はそう簡単に拡大はいたしませんし、共同経営もなかなか私どもが期待するほど順調に育ってまいりませんけれども、しかしその中にあって大規模生産、大規模販売という問題を、新しい技術あるいは新しい機械を導入することによって、そういった大規模生産、大規模販売の利点を農村に一日も早く実現していく、そのことが当面は経営規模の拡大あるいは本質的な意味での農業構造の改善と直にはつながっておりませんでも、いずれはそういう問題と相伴って日本の農業構造の改善の重要なきめ手にもなり、また先達にもなっていく。そういう意味合いで、当面この事業の中心的なねらいは大規模生産、大規模販売というところに、私どもはねらいを置いておるわけであります。抽象的に大規模販売、大規模生産と申しましても、具体的な作目の問題でございますから、そこで、いわゆる選択的拡大の線に沿って主産地というようなものを形成するということをあわせ考えていきませんと、そういった抽象的な大規模生産、大規模販売というものの具体性がないわけでございます。事業の内容としては、そういう意味合いで主産地あるいは基幹作物なるものを焦点を合わせて、なるべくそういう広い範囲でいまのような零細農耕からの脱却ということを当面の課題といたしておるわけでございます。その中心的な事業としては、当然土地基盤整備といったようなことが中心的な事業になることは申すまでもないことでございます。私どもは広義の構造改善と本事業とのつながりを、さようなふうに理解をしながら仕事を進めておる次第であります。
  134. 矢山有作

    ○矢山有作君 農政局長がおっしゃったとおりで、私も日本の現在の農業構造上の最大の欠陥は零細経営、いわゆる過小規模の経営であるということにあると、こういうふうに考えているわけです。したがって、私は構造改善事業という中で、おっしゃるような考え方をもってやられたのだろうとは思いますが、一番肝心な零細性を打破するための、そこに政策の重点を置かなければ、なかなか局長がいま説明されたような調子にするすると、構造改善ができるとは私には思われぬ。それはもうここで私は繰り返して申し上げませんが、そちらでおつくりになった農業動向の年次報告がありますが、それによる農家人口の流出状況及びその態様、あるいは農地の移動の問題、あるいは耕地面積の推移、こういうものをずっとおつくりになったのだから、これはよく御存じだろうと思うのですが、考えてみたときにそう簡単に経営規模の拡大ができるとは思われぬのです。特にこの間、三十八年の八月ですか、総理府が農業についての農民の意識調査とかというのでやられた。その結果でも御存じでしょうが、耕地を積極的に売ってもいいと答えている農家は、何か六・七%ですか、非常に少ないわけですね。そうすると、日本の現状の中では、農地というものは極力手離さないという考え方が非常に強い。その問題を解決するのが、先ほどおっしゃったように農業の内部だけで解決できる問題でないということはわかります。わかりますが、そういうような状態の中で、はたして農業構造の基本的な改善というものがはかっていけるのかどうか。これをやるのには困難な問題だからと言って、一番中心的なところを避けて、いわゆる主産地形成だとか、適地適産だとかいうような構造改善事業に逃げてしまっているのでは、なかなか私は解決つかぬのじゃないかと思う。むしろ、ほんとうにあなた方が貿易自由化を控え、開放経済体制に移行するという中で、日本の農業の国際競争力をつけようというならば、これはもう一番肝心なところを避けて通るのでなしに、基本的なところにメスを入れるべきだ。またそういう姿勢で農政に取り組むべきだと私は考えるのですがね。そういう姿勢に農林省自体がなられぬというと、選択的拡大で、なるほど一方では構造改善事業が進められる。ところが、貿易自由化で選択的拡大で拡大されていく農産物か大きな打撃を受ける。そういうことで、そのままで進んでおったのでは、これは私は問題の解決はできぬと思うのですがね。そのこまかい問題はずっとあとで立ち入りますけれども、そういう点もう少し画期的な考え方に切りかえる何はありませんか。
  135. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 仰せのとおり、私も先ほども触れましたとおり、経営規模の拡大を、個別農家の拡大であれ、あるいは協業という姿であれ、経営規模の拡大ということを実現していくことは、農業基本法でも目ざしている基本的な課題でございますし、私どもも、それが基本的な方向であることは、確信をもって進めておるわけでございます。ただこの問題は、やはり個々の農家の問題でございます。と申しますか、六百万農家すべてがその自立経営農家たり得る可能性を持っておられるわけであります。次第次第に他産業の高度成長というようなことにも関連して、農業から離脱をなさる方々も出てまいっておりますけれども、しかしまだ、行政的に、あるいは補助等の具体的な助成等の方法を通じて拡大さるべき農家と、拡大のために縮小すべき農家を、助成等の直接的な行政手段で振り分けていくということをやっていくような時期ではないと思います。その点は農業基本法審議の過程におきましても、国会等でたびたび御論議のあった問題でございまして、私どもはそういったことを何と申しますか、外部的な一つの説得とか強制でやっていく問題ではないと思います。それで、やはりそれは農地法なり、あるいは金融制度なり、そういった間接的な、誘導的な政策が伴うことによって、逐次そういうような方向をたどっておられるその動きが、見ようによってはきちんとしておりますが、しかし見ようによっては、かつての日本の農村の状況から今日を比較いたして見ますれば、ずいぶん激しい動きというふうにも見られないことはないわけです。年々五万戸からの農家が離脱をしておるわけでありますから、かなり激しい動きということもって言えないことはないと思います。ただ今日の段階では、財産的な土地所有という問題がからみますので、問題が一そう複雑であって困難であることも、御指摘のとおりでございまして、そういった場合に協業組織等を通じての一つのアプローチというものもあり得ると思うのでありますが、なかなかそういったことは、そういった農家個々の人の問題でありますだけに、行政が立ち入りがたい一つの限界がある問題だというふう考えております。そういった中にあって、ただ客観情勢の熟するのを待って、あるいは制度を、そういうことで誘導するだけで待つという態度でおりますよりも、並行的にたとえ積極的には経営規模の拡大、個別経営の拡大ということには、直接的には結びつきませんでも、やはり耕作規模を拡大する、販売規模を拡大する、生産基盤、販売基盤を大型化し近代化するということが、当面御指摘の国際競争力といったを考えましても、やはり緊急にして、かつぜひやらなければならないことじゃないかと思うわけです。そういった生産規模の拡大なり、販売規模の拡大ということでございますれば、施設の面等の助成等を通じまして、行政としても十分御援助申し上げることも可能な行政分野でございます。私どもは、構造改善促進対策事業を通じて、もっぱらそういう生産規模、耕作規模を拡大すると、そうして次に経営規模の拡大が熟してくるのを待ち、本来のあるべき順序から言えば、論理は逆かもしれませんが、経営規模を拡大して、耕作規模を拡大するのが本筋的なあり方だと思いますが、しかし構造改善事業の促進ということで、あるいは客觀情勢かそういう自然的な成り行きに待つのを許さないといった認識のもとに、構造改善聖業をやっておる次第でございます。
  136. 矢山有作

    ○矢山有作君 問題は、なるほど三十六年十二月から三十七年十二月までを調べてみると、年次報告にあるように脱農家数は六万戸に達しておりますが、これはおっしゃるとおりだと思います。ところが、そこで一つ問題になるのは、脱農していっているものの状態というのがどうかということが一つ問題になると思うのですがね。それを調べると、御存じのように一反から三反までのものが四六%、三反から五反が一七%、合わせて六三%ですから、ですから脱農化していっている農家というのは、極端な言い方にはならぬと思いますが、どちらかというと、農業というものはもともと副業的にしかやっていなかった。そういうきわめて零細なものが大半脱農していっているわけです。それから一方でもう一つ注意しなければならぬのは、新設農家の戸数というものもかなりあるわけですね。三十六年十二月から三十七年の十二月までで一万二千戸、こういう年次報告が出ています。ところがそれを見ると、やはり七〇%が分家による新設のもの、しかもその中の六〇%が分家前の耕地が一町五反未満だというわけです。そうすると新設農家の大半というのは経営農地の分割、つまり一そうの零細化を伴った形で進んでいる、こういうことが言えるわけです。そうなると、私はあなたがいまおっしゃったように、いろいろと親切に説明してもらいましたが、構造改善事業によって脱農しておる一面だけを見ておると、これはやはり問題があるのじゃないか、分家によるいわゆる新設農家を含んだ零細化の方向も、やはり傾向として出てきている、こういう点が一つ注意しなければならぬ問題じゃないかと思うのです。そういうところから考えて、私はその経営、農業構造改善事業をやるその中の中心的なねらい、また農業基本法の中心的なねらいというのは、やはり自立農家の育成ということに置かれていると思うのですが、そういった場合に、一体、自立農家というものを今後どういうものと考えていくかということが、非常に重大になってくると思うのです。それは所得倍増計画との関連で二町五反程度だ、それを百万戸くらいつくるのだということも言われておりますが、しかし、今日の時点において自立経営農家というものを、どういうものを描いてこの構造政策というものを進めていくかということが、やはり一つの中心的な課題になってくると思うのです。その方向がきまらぬと、やはり農業構造改善事業にしても焦点がきまってこないわけです。そういう点から、自立農家というものを、一体どういうものだと考えておりますか。
  137. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 自立農家のものの考え方は、所得倍増計画でああいう一つの資産的目標と申しますか、形状的なものがあらわれたために、むしろ誤解を生じておる場合が多いと思います。私はやはり、自立経営の本来の意味合いと申しますか、内容は、農業基本法でうたっておりますように、正常な家族関係の中で、正常な技術水準で、農業だけで一人前の、あるいはしかく可能性のある生活水準が維持できる、農業生産性を上げ得る家族経営である、これがまさに自立経営の姿であると思います。したがいまして、必ずしも経営面積にのみとらわれて自立経営を論議することは、適当でないと思いますが、ただそういったことばかり言っておりましても、なかなか十分な姿が出てまいりませんので、かりに平均的な普通の状態で想定をすれば、当時の想定とすれば、まあ平均二町五反程度ではなかろうかということが、あの計画の中で論議されたのだと、さように理解をしております。したがいまして、要するに現状で申せば、年次報告でもいっておりますように、総所得で少なくとも百万以上上げており、しかも、家計費の相当部分が農業所得によってまかなわれているといったようなものが、まず自立経営という、私どもの基本法でいっておる自立経営というものの実質に比較的近いものではなかろうか。そういう意味で年次報告では、自立経営的農家という的という字を入れてやっております。あの的という字を入れた意味合いは、おそらく家族構成なり農業生産性あるいは能率なりの、この諸点から見て十分あの経営の内容にわたって吟味が済まされておりませんので、そこで自立経営的農家という、的という字を入れて、意味の十分でない点を補充したというふうに考えております。
  138. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところで私は、いまの説明なりそれから農業基本法十五条に規定しておる自立経営農家というものを考えたときに、これは非常な矛盾があるような気がするのですわ。というのは、これはこの前、たしか赤城農林大臣にも申し上げたのですが、大体、一戸三人程度の労働力を完全燃焼させるということで、二町五反程度の規模を想定して、いまおっしゃったように粗収入百万円くらいを考えておったわけですね。ところが問題は、そういうことによって他産業労働者と均衡させるとこういうのですね。他産業労働者の場合には単身給なんですね。一人の人が、おやじが勤務して、そして、家族を養っているわけです。ところが、産業の場合は一家三人の人が働いて、そしてその他産業労働者と均衡する生活水準、こういうのですから、そうすると一人頭の人間の労働の価値というのは三分の一しか見られておらぬわけですね。これは何というのか、企業的な将来拡大再生産の考えられるような、そういう経営体ではないというのですね、そういう経営体でないものを、農業基本法の中で一応基礎に置いて、農政を今後考えていくところに問題があるのじゃないか、こういうことを申し上げた記憶があるのですが、農政局長は専門家ですからその辺はどうなんですか。
  139. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 農業基本法で自立経営という行政と申しますか、施策の目標を掲げましたのは、先ほどもお断わりいたしましたように、したがって、固定的な観念ではないと思います。やはり、一般の生活水準が上がるに従って、高い農業能率を上げ得るようなそういう将来にわたって伸びていけるような農業経営でなければ、真の意味の自立経営というわけにはまいらないと思います。やっといまはそうなっても、将来にわたってついていけないような発展の可能性のないものであれば、農業基本法で言っているほんとうの意味の自立経営というにはふさわしくないように私も考えております。ただ、生活水準と生活水準で比較をするというものの考え方自身は、先生のおっしゃいますように所得源をばらばらにばらして比較をする立場から見れば、幾ぶん無理があろうかと思いますけれども、しかし、やはり家族農業経営というものがあって、そこで正常な労働能率と、家族構成で営まれておって、全体としての家族としての生活水準が、他の比較し得べき他産業従事者と同程度の生活水準が営まれておれば、それは一応自立経営というにふさわしい内容のものであるというふうに考えてよろしいのではないかと思います。
  140. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、そこは私どもの考え方と、あなた方との考え方の相違なんですが、じゃ、観点をひとつ変えて、零細性を打破するために、自立経営ということを中心に置いて、はたして、零細性が打破できるかということが、一つ問題だと思うのです。あなたは、経営規模を拡大することだけが、零細性の打破ではないと、こういうふうにおっしゃったのですが、やはり現在の日本の農業の経営の実態を見ていると、何といったって、経営規模を拡大していくということが根底になっておらなければ、実際問題として生産性を上げるとか、あるいは近代的な経営をやるとかいうようなことはできぬのじゃないかと私は思うのです。その前にあくまでも自立経営だと、自家労働によってやっていく農業というものを中心に考えるのだという考え方に立つと、おのずからそこにどうも経営規模拡大の限界が出てくるような感じがするわけです。そこで、私どもはやはり経営規模を拡大していく上にはいろいろな障害があります。先ほどあなたのほうからも指摘されたように、農業外の雇用の問題だとか、社会保障の問題だとかいうものもありますし、あるいは農地の移動の問題等もあります。だから、そういう制約のある中で、現在の段階として、経営規模を拡大するのには、私どもは共同化というものを今後の中心に据えて、やはり農業施策というものを考えていくべきではないか。そこにあらゆる施薬が総合的に集中されて、初めて経営規模の拡大が、可能性が出てき、さらにそれを踏まえて生産性の向上ということが考えられるのじゃないか、こういうふうに思っておるのですけれども、それで、私は、やはり日本農業の一番の欠陥はどこかということをあえてお尋ねをし、そして自立経営の問題をとやかく言ったわけなんですが、そういう点で現在の社会経済状態から、農業の置かれておる立場から考えてみて、この辺で何というのですか、池田さんも革命的な農業施策と言うたのですから、そうすれば農林省のほうでは、ひとつ革命的な立場に立って、経営規模の拡大ということをねらって、共同化ということを政策の中心に据えていこうと、こういうお考えはありませんか。
  141. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 基本法でも言っておりますように、経営規模の拡大あるいは耕作規模の拡大の一つの手順として、自立経営、家族経営の経営規模の拡大の方向と同時に、協業経営、協業組織という手段を通じての経営規模、耕作規模の拡大という道を開いておりますことは、御承知のとおりでございます。ただ、現実の日本の現状から申しまして、先ほど御指摘にもありましたように、脱農家が五万戸もある反面、零細化と申しますか、分家のような形での新設農家もまだ一万戸以上出るといったような実情があります。これらについては、相続あるいは生前贈与に対するいろいろの手段を講ずることによって、そういった新しい零細経営が止まれることについては、なるべくそういった環境を防ぎますような手だてを別途講じてはおりますけれども、しかし、現実の問題として、そういった動きがあることも、いなめない事実でございます。また同時に、財産的土地所有にささえられて零細兼業農家が相当長い期間継続するであろうこともやむを得ない事情だと思います。そういった中で、経営規模の拡大をなるべく早く実現をしていくという意味合いから、先ほど来私が申しましたように、構造改善事業では耕作規模の拡大というところに焦点を合わせた大型生産技術、大型販売技術を導入する方法を講じておるわけでございます。そのことは、完全な自給自足的な自立経営農家というものは、おそらく将来にわたって、この技術の進歩した現在においてあり得ないのだと思います。家族農業経営といえども、必ずあらゆる農作業の過程あるいは販売の過程におきまして、共同の力あるいは共同のサービス、しいて言えば、外部サービスの助けを借りて自分の経営を近代化していくことが必然要求されると思います。また、そういうものをとり入れなければ成り立たないことも明らかであります。そうなりますと、共同経営と自立経営というものは、必ずしも矛盾する観念では私はないと思います。ただ、自立経営であれ、共同経営であれ、そういう一定の土地に適当な就業人口が適当な生産手段と結びついて、きわめて能率の高い農業が営めるかどうかというところに問題があるので、今日のような農村の現状の中で、ただ共同経営という形を導入しさえすれば耕作規模が拡大し、あるいは非常に能率の高い農業が実現するのだというふうに考え込むことにも、若干問題があろうかと思います。やはりそういった相伴う土地の広がりと、それから技術の進歩と、それから資本の導入と、そういったすべての要素が最も効率的に結びついて現実の燃焼するところに、農業の生産性の向上があるのだと思います。したがいまして共同経営であれ、自立経営であれ、そういったことを妨げるような事情のもとで、ただ共同経営という名前のものを導入するだけでは、十分な能率のいい農業が実現されるとは思いません。しかし構造改善事業におきましては、御承知のとおりそういった能率的な大型技術を主として農家集団、しいて申せば協業組織の形で農村に導入しておるのが、現状の実情でございます。
  142. 矢山有作

    ○矢山有作君 現在実際問題として協業的なもの、あるいは共同化的な経営のものというのは、農民の中から生まれてきていますね。ただ、農業基本法のたてまえというのは、自立経営農家というものを中心にして、さらに補足的に協業化というものを考えているわけです。それはそれとして、実際問題として協業の方向、共同化の方向というのは、農民自身の中から出てきているわけです。私どもはいろいろと農村を歩いてみても、やはり畜産をやっておる人間だとか、あるいは果樹園芸をやっておる人間だとかというような人たち、最近は米作地帯の人たちの中にも出てきましたが、労働力の流出というものをあわせ考えて、いままでのような経営じゃだめだ。何とかしていわゆる協業あるいは共同の方向に踏み切っていかなければならぬという考え方が出ておるわけです。それをどうして伸ばしていくかということが、今後私は非常に重要な農政上の問題になるのじゃないか。どうもいままでのところできてきた共同組織、あるいは協業組織が失敗した例がある。ところがその失敗したのは、どういうことで失敗したのかということを突きつめて検討し、そしてその上に立って、それを失敗させないように伸ばしていくのにはどうしたらよいのかという点の配慮が足らないのじゃないか。私はこういう感じがするのです。だから自立経営というものを中心に考えて、家族労働力の燃焼ということだけで、経営規模の拡大が一つの限界に来ているわけですから、それを打ち破って経営規模を拡大していく、それが協業の形になりあるいは共同化の形になる、いろいろの場合があると思いますが、その場合、そういった方向を推進するような施策か集中的に行なわれてくれば可能なんじゃないか、こういう私は考え方をするわけです。
  143. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私も同じことを考えておるように思います。協業経営が成り立ちにくい状況というのは、先生御指摘のとおりでございます。これは自立経営がにわかに育ちにくいことと同じことに根を発しておると思います。また同時に、もう一つ観点を変えて申せば、そういうことでございますが、同時に現在までの農家が利益の分配でありますとか、そういった面について家族経営内部でも、一つの近代的なそういう経済習慣と申しますか、生活習慣を身につけておりませんから、そういう方々がいきなり共同経営というような、より進んだ貨幣計算的なものを必要とする経営になりましても、なかなかその面で問題がいざ当たり、壁にぶち当たるというようなことがございます。その意味では、協業経営も自立経営も、同じような背景のもとに、同じような苦しみを味合わされておるのが現状だと思います。そこで、そういった中でただそれをこまねいていないで、せめて大型の技術を導入し、大型の販売細微を形成していくということになりますれば、協業組織というものを媒介として、そういったものを実現していくのが近道と申しますか、一つの手段だと思います。構造改善事業はまさにそういったことに、そういう当面の課題をそこにしぼってやっておりますと申しましても過言ではない事業なのであります。そこで、そういったもの、つまり協業組織は生まれた限りにおいては、そう簡単にくずれないと私は思います。もしくずれるといたしますならば、それは導入した大型技術技術としての未完成のまま、あるいは現地との適応の調整が十分ついていない。大型技術が入り込んだ場合には、その結果が思わしくないということで、壁にぶち当たる場合がございますが、しかし、大型技術そのものが、かなりの程度に現地に適応性を持ち、また農家の方々の技術水準がそういった大型技術をこなすに足るだけの水準に達しておられるようなところでは、十分長期にわたっての継続性の期待できるものを持っているように思います。たとえて申せば、最近各地に出ております水稲を基幹作物にした構造改善事業の場合には、技術の内容そのものからいえば、まだまだ不十分なものがございますけれども、先ほど政務次官お話がありましたように、受けます農家の側の技術水準が非常に高い、また農家の技術水準が非常に平準化しておる。したがって、導入された技術の十分でないところを農家が補って、適応性が非常に高いという点、そういう意味で水稲なり果樹なりの大型生産、大型技術体系はかなり地についたものとして今後も進展を見ると思います。そういう意味合いで協業組織という形を使っての大型技術の導入は、技術の内容のアジャストさえ誤らなければ、やはり今日のような困難な時代でも、協業経営が少なくなるような壁にはぶつかることなく、成果をあげていけるものというふうに考えております。構造改善事業がねらっておりますのも、まさにそこのところでございます。
  144. 矢山有作

    ○矢山有作君 農業構造改善事業が協業経営の方向をねらっておるのだということを盛んに強調されるのですけれども、私は内容を見て、あまり強く強調されるほど協業経営の方向が打ち出されているとは思わないのですが、まあそれはそれとして、要するに、家族経営を主体にした農業考え方というものは、もう限界に来たということは、これはもう意見が一致しておると思うのですね。限界に来ていませんか。
  145. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私が構造改善事業でるる申し上げておりますのは、協業組織でございます。協業組織というのは、家族農業経営を前提にして、それの欠陥を補うものとして私どもは非常に有効な手段として推し進めているわけでございます。これが自立経営につながるか、それとも先生のおっしゃるような協業経営にまで上がっていくか、これは今後の客観情勢と関係農家の意識の問題だと思います。これは政策がどちらときめつけていくべき問題ではないと思います。そのような意味合いで、家族農業経営が限界に来ておりますとか、あるいは協業組織が壁にぶつかっておるとかというようなことは私は考えておりません。
  146. 矢山有作

    ○矢山有作君 やじなんか気にする必要はない。いまの農業の置かれている状態というのは、真剣に考えたら、お互いが心配しておるとおりなんだ。家族経営労働にたよるという経営の形だけで、経営規模を拡大して農業近代化をやろうなんてとんでもない話だ、できない。だから、その点ではあなたがおっしゃったように、いわゆる家族経営というものを当面一つの中心にするにしても、その中で協業経営を推進していくのだ、それが共同経営の方向に発展していく、これでなければほんとうの意味の近代化はできないとわれわれは考える。だから、あなたのほうの指導は、それはいろいろな制約があるのかもしれぬ。しかしながら、ほんとうの近代的な経営にもっていこうというならば、やはり共同化という方向を最終的には考えていかなければならぬ。共同化が直ちに、この間赤城農林大臣が言うたようなソ連のコルホースにつながるなんということはとぼけた人の言うことで、そんなことは考える必要はない。共同化が直ちにソ連のコルホーズにつながるものではないのですから、その点はよく考えて進めてもらいたい。この論議をやっているといつまでたっても果てしがないので、ひとつ方向を変えて農業構造改善事業というものが、最初に私が指摘しましたように、なかなかはかばかしく進んでいないのです。この状態で、はたして計画どおりやれるのかやれぬのかということも、一つの問題になると思うのですが、農業構造改善事業が順調に進まない原因というのですか、その原因はどういうところにあると考えて、どういう手をいま打っておられるのか、ひとつお伺いをしたいのです。
  147. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 構造改善事業が計画どおり進まないというお話でございますが、私どもは必ずしもそうは思っておりません。なるほど予算で用意いたしました二百地区が実際にやりましたときには、百七十何地区かになっております。また二年目が二百二十九地区というようなことになっておりますから、その面だけをとらえて予定どおり進んでないという御指摘も、やむを得ない御指摘だと思いますけれども、しかし、私どもは必ずしも数をたくさんやるだけが、この事業趣旨ではないと思いますので、必ずしもその面からだけでは悲観をしてはおりません。ただ、御指摘のように予定どおりの地区数が進まなかった一番大きな理由は、やはりこれだけのと申しますか、先ほど大型技術あるいは大規模生産、大規模販売ということを協業組織等を活用して導入していくということを申しましたけれども、そのこと自体が、やはりまだ現在の農村では相当の困難を伴う問題でございます。で、具体的に申せば、そういったものを可能にするための基盤整備をとりましても、かなり広い範囲の農家がそういった意識を、共通の意識を持って、そういった新しい農業のやり方に進まなければいかぬわけでございますけれども、そういった面で土地基盤整備についての同意が当初計画したとおりに得られないとか、あるいは同意の得られる時限、日時が予定どおりの日時に同意が取りつけ得ない、そういったことでズレズレになるということは、これはやむを得ないことだと思います。したがいまして二百を予定しましたものが、当該年度にはそれだけの数に終わりましても、決してそこで計画を立て、構造改善の論議をしたことはむだには終わっていないわけでございまして、近い将来には、そういったところが新規地区として必ずや出てまいる時期があると思います。そういうことで今後の伸展ということ、そういった機運の成熟ということはやはり十分期待ができると思っております。そういう意味で土地基盤整備についての足並みのそろった同意が予定の期日までに得られがたいという点が、おそらくこの事業のスピードが思うように上がらない一番大きな原因のように思います。なお、大型技術そのものに対する不信あるいは危惧といったようなことも、原因をなしておると思います。それらは成功事例をごらんになっていただくことによって、逐次そういった不安感は解消しておるように思います。それからもう一つ、私どもがこの事業を広く全国の農村に進めていく場合の一つの難点は、やはり都市近郊と山村の特殊の事情でございます。平均的な平場農村でございますれば、いまの構造改善事業の仕組みで地方農政局がかなり弾力的な計画認定をやっておりますから、それほど特に問題がないように思います。やはり都市近郊なり農山村といったようなところになりますと、同じ平場で通用するのと同じ大型技術、同じ大型販売方法がそのまま当てはまらない。そこで、それらのところでは、やはりそれらのところにふさわしい大型技術、大型販売組織というもののあり方を検討する必要があるように思います。その点の検討を今後積み重ねていくことによって、都市近郊なり山村なりについての構造改善事業が地についていくんじゃないかと思います。やはり相当程度の地縁的な広がり、参加農家戸数を必要とする事業が、現在、構造改善事業でありますから、都市近郊とか山村とかいうことになりますと、すぐれた企業的は農家がおられる反面、全く生産意欲のない二種兼業農家が存在しておる。あるいは山村のように半自給的な農家が数多く点在しておられるとか、そういった事情がありますので、いまの構造改善事業の内容としております大型技術がそのまま適用しにくい、これらについては、本年度もう一回現地について十分調査をいたしました上で、あるべき姿を打ち出してまいりたい。現在の現状では、現在の実施基準の緩和と申しますか、手直し程度のものが現地からかなり強い要望として出ておりますけれども、私は単なる実施基準の手直し程度では、ほんとうにはそういった都市近郊なり山村なりの構造改善事業はむずかしいのじゃないかという意味合いで、慎重を期してもう一年研究させていただくことにしております。構造改善事業の伸展上当面しております困難な問題というのは、当面その辺のところではないかと思います。
  148. 矢山有作

    ○矢山有作君 どうも張り合いのない答弁をもらって、いささかこっちも弱っているのですがね。最初あなたの答弁の中に、数の多いことだけが能じゃないというような意味の答弁があった。これはぼくは農業構造改善事業というものを最初に計画されたときの農林省考え方というものと、選挙を控えて三千一百の町村にこれをばらまいたその行き違いがそこに端的にそのことばの中に出てきたと思うのです。私どもが聞いておるのは、農業構造改善事業を計画するときに、三千百の町村にばらまいて、一億一千万そこらの金でもって農業の構造改善なんてやれるわけがないというところから、そういうような計画は農林省では考えておらなかったというふうに聞いておるのです。それがたまたま選挙を控えて、これは選挙の票集めには三千百の町村にまるでばらまいておったほうがよかろうと、こういうことになって、最初農林省考え方がどこでどうなったか知らぬが狂って、三千百に総花的にばらまいたと、こういうことになった経過が、あなたのいまの答弁の中ではしなくもうかがえる。ところが、それはそれとして、いま農業構造改善事業が進まない理由としてあげられました、大きく分ければ三つほどあげられていると思うのですが、大型の技術になじんでいないとか、土地基盤の整備云々だとか、あるいは都市近郊と農村においては、いまの構造改善の実施基準をそのまま持っていくということには問題があるとか、こういう点があげられたと思うのですが、それもそうかもしれませんが、構造改善事業が進まないという理由はもっとほかにあるのじゃないですか。これは、私は農林省のほうへ、農林団体からも、いろんな方面からも、構造改善事業にはこういう欠陥があるのだ、こういうことで進まないのだということは言っておるはずなんで、御承知だと思うのです。たとえば資金の問題だとか、あるいは農産物の需給調整、価格安定の問題だとか、その他いろいろあるはずなんですがね。そういった肝心のところが整備されていないから、構造改善事業が進まぬのじゃないですか。大型技術になじんでいないから進まないというんじゃないでしょう。大型技術になじんでいく、あるいは土地基盤の整備が、大型機械を算入して、そして経営が能率的にできる、そういう基礎を整えるための手段、方策というものに不十分な点があるんじゃないですか。
  149. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私が先ほど数の多いばかりがと申しましたのは、若干説明を必要とするようでございますが、私どもが、申しました意味は、拙速をとうとばないという意味でございまして、あとで補充しても申し上げましたように、いずれはそれらの地域でも構造改善が行なわれるわけでございますけれども、やはり土地基盤の整備とか、個々の農家が納得した上でなければ効果を発揮しない事業でございますから、無理じいをしないという意味で、むしろ弾力的に現地に臨んだ結果がこうであった。しかし、その成果は必ず何年かには構造改善事業の計画の練り直しをし、また計画の同意を得直して、必ず実現してくるものと確信しております。その意味で、決してむだ足を踏んでおるというふうには考えておりません。それから困難な理由が、私が述べましたもののほか、たとえば資金量の不足でありますとか、価格、流通対策の不備があるのではないかというお話でありますが、それは確かにこの事業の推進のマイナス面としてある、数えあげれば。あるいはそういうものも一つかもしれませんけれども、私自身は、それは中心的なこの事業の障害というふうには考えておりません。と申しますのは、資金の面の問題にいたしましても、これはいずれにしても限りのあることでございます。そこで、一応こういった事業計画でやっていただいて、さらに本年度は第二次事業というようなこともあわせ考えたのも、それらの事情を緩和するための方法でございます。で、第二次事業をやるということにきめました関係上、その面の困難さは一応排除できたというふうに私は考えて、特に申し上げなかったわけでございます。また融資単独事業ワクを広げましたり、それらの点で昨年あたり言われておりました困難の問題は、今年度解決をした、完全な解決とは申しませんが、ある程度の解決をみたというふうに考えて、あえて申し上げなかったわけでございます。  それから流通関係、価格関係の問題というのは、これは構造改善事業地区であろうとあるまいと、私は今後の農政の課題として、当然その問題があるべき方向に前進をいたしませんと、日本農業全体の進歩発達ということは期待できない。その意味では構造改善事業にのみ限定された障害というふうに私は考えておりません。むしろ現在の乏しいなりの価格政策なり流通政策の中で、構造改善事業をやったところとやらないところと、どっちがいいんだろうかということで、従来どおりのつくり方、売り方を続けておられる村と、新しい大規模生産、大規模販売の手法を取り入れられた村では、現在の乏しいながらの流通政策、価格政策の対応としても、むしろ競争力がその構造改善事業で新しい手法を取り入れられたところがより強靱であることは、これは疑いのないところでございます。したがいまして、片方が整わなければ何にもしないというような態度でおられるなら別でございますけれども、両々相まって日本の農業をよくしていこうということでありますれば、当然現在の乏しい価格政策、流通政策の中であっても、つくり方、売り方を近代化していくことが当然必要なことで、またそれによって流通政策、価格政策の恩恵を強く受けるわけでございますから、その意味で構造改善にとっての特別の障害というふうに見るのは、いかがかと思います。また構造改善事業を通じて新しいつくり方、売り方が一般的になってまいりますにつれて、私どもがいま非常に困難をきわめております流通対策なり価格対策のあるべき姿を、またそういった生産基盤の上に組み立てることによって、ほんとうに有効な流通政策、価格政策を成立する基盤を持つのではないか、そういうふうにさえ思っておる次第であります。
  150. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ局長、あなたは私がいま言ったことは農業構造改善事業推進の中心的な障害ではないと言われたのですがね、中心的な障害は何ですか。
  151. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 先ほど申し上げたところで尽きておると思いますが、しいて観点を……。
  152. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまおっしゃったのが中心的な障害ですか。
  153. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 先ほど申し上げたことで尽きておると思いますが、表現を変えて申しますれば、やはり新しい技術と、それを取り入れて構造改善をしていくための主体的条件の成熟と申しますか、そういった自立経営なり、共同経営が成立するための困難な事情と同じ事情がやはり根本的には、構造改善事業にこれは限らないと思いますけれども、いろいろの農業政策を進めていく上での中心的な困難だと思います。
  154. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは本末転倒じゃありませんか。新しい技術を取り入れて主体的条件が整ってないから、農業構造改善事業が進まないというのは、本末転倒ですよ。いまの農民は、自分の農業を合理化し、農業の生産性を上げようということで、これは農林省からとやかく言われぬでも、自分自身でそれなりに苦労しているわけですよ。そうすれば、こんないまおっしゃったものが中心的な障害じゃないのですよ。いまおっしゃったものを農民はやりたいと思っている、新しい技術も取り入れたいと思っている、そして新しい技術を取り入れてその技術が十分生かせるような土地基盤整備をやりたいと、農民は思っているのですよ。思っておる。ところが、それができない条件がほかにあるのですよ。だから農業構造改善事業が進まない。そのことは、私が先ほど指摘した資金の問題であり、あるいは流通の問題、価格の問題だと言うのですよ。あなたは、構造改善事業が進んでいけば、価格の問題についても生産性が上がるから、より有利になるだろうと、こうおっしゃる。ところが、たとえば一例をあげて言いますと、いま農業構造改善事業、選択的拡大ということが一つの中心になっておるでしょう。だからその中で非常に大きなウエートを占めているのが畜産じゃありませんか。ところが、その畜産が、今日どういう事情にあるかということは、あなたは御存じでしょう。畜安法という法律ができても、豚の値段はその法律があった以前よりも、暴騰暴落を繰り返す、牛の乳はあなた御承知のように安定基準価格というものは、生産費をはるかに割ったようなことになっている。そういう問題がある中で、幾ら選択的拡大、構造改善事業をやるのだと言ったって、価格に安心の持てない農民が、自己資金の投資をやりますか。借り入れ金をやってそういう事業をやりますか。あなたのおっしゃるのは本末転倒なんです。われわれはたとえば価格の問題について言えば、価格政策を拡充して価格を安定さして、農民の所得を保証してやれば、何も太鼓をたたいて、米麦よりも畜産だ果樹だと言わなくたって、畜産や果樹は米麦並みに所得が保証されるということになれば、畜産や果樹を導入したらいいという地域では、これは導入していきますよ。ところが価格か非常に不安定、米をつくっているほうがはるかに有利だから、農業構造改善事業の中で、畜産だ、果樹だと言っても、あるいは米麦からの転換をすすめても、それが進まないのじゃないですか。それともう一つは、それじゃ構造改善事業をやっていって基幹作物として米を選ぶ、あるいはそれに組み合わせてミカンを選ぶ、あるいは乳牛を選ぶ、いろいろなやり方があるでしょう。ところが、それに対しての長期の需給計画がどうなるかということについても、農林省は確たる見通しを持っておられますか。構造改善事業がどんどん進んでいった場合に、はたして卵があり余って困るということは起こりませんか、あるいはまた乳があり余って困るということは起こりませんか。あるいは反対に足らないものが出て困るということはありませんか。そういう方向について、需給の長期の見通しというものが確固としたものがあり、さらに価格が安定されておれば、これは構造改善事業でやれと言えば、農民はやっていくと思うのです。ところが、その不安がぬぐい切れぬから、農民は幾らあなた方がすすめても、半強制的なところまでいかぬというと、構造改善事業をやろうとしない。資金が不足だから自分が金を出す、借り入れ金をする、そういうことをやってまでやろうとしない。これが実情なんです。あなたが農林省の机の上で考えられれば、いま言ったようなあなたの答弁が出てくる。われわれがいなかを歩くと、あなたとは反対の結論が出てくるのです。その辺をよく認識されぬというと、構造改善事業というものは進みませんよ。なるほど、今度の金融関係法の改正で、多少金利の下げられた点もありましょう。貸し付け期間の多少延長された点もありますけれども、それだけで問題は解決されていない。資金の問題一つとって見ても、たとえば土地基盤整備のような長い期間にわたって固定的な投資になる、そういったものは農民の中では、国でやってくれという声が強いわけです。一つのこれは社会資本の強化じゃないか、土地基盤整備は。だからこれは国でやってくれ、こんなに長期にわたって固定する金を、農民は出すわけにいかぬという声があるのです。価格の点については、先ほど言ったとおりです。だからあなたのおっしゃっているのは、その一番肝心なところをはずれちゃって、その次に出てくる問題だけを言っておられるわけですよ。
  155. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私ここで議論をするつもりもございませんしいたしますけれども、いま先生がお取り上げの問題は構造改善事業本来のねらいから始められまして、構造改善組織対策事業のねらいなり、それの機能なりについての範囲、角度からの問題の御提起であります。したがいまして私といたしましては、農業構造改善の問題のあり方と、その中での構造改善事業対策事業のになうべき役割り、そういう見地から、そういう行政の推進という見地からお答え申し上げているわけであります。で、価格政策について、よりよい価格政策がある種の農産物については、現状において必要なことは、私も先生のおっしゃるとおりだと思います。そういうことであれば、現在の構造改善事業はよりよく進むであろうことは疑いはありません。しかし、構造改善事業を進めるということは、価格政策が一歩前進しなければ、構造改善政策は何もやれない、そっちのほうができるまでは構造改善政策は足踏みをしておる、また足踏みをしておってよろしいわけのものではないと思います。したがいまして、それらのところは、それらの総合的な農業政策の一環として、それぞれ必要な進歩充実が行なわれる中で、構造改善事業、構造改善促進対策事業という事業を推進いたします角度からながめての中心的な障害なり何なりというものを、私は特に取り出してお答え申しておる次第でございます。そういう意味合いでございますから、議論がいささか食い違ったかと思いますが、その点は御了承いただきたいと思います。  なお、私も構造改善事業の初期の段階でかなり現地を歩いてみました。必ずしも農家の方々もほかの施策が伴なわなければ、構造改善事業の意欲を燃やさないというわけのものでないように感得して戻ってきております。その意味で、私どもはやはりそういった価格政策は価格政策でお進めいただくとしても、しかし、どんなりっぱな価格政策がかりにあったといたしましても、やはり構造改善促進対策事業農業の大型化、能率化をやっていかなければ、やはり農家としては将来にわたって十分な、日本に十分なりっぱな農業を打ち立てていくことは困難であります。その意味で、私どもはどうかこういった方向にも、十分農家の御理解をいただいて事業を進めてまいりたい、さように考えております。
  156. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは農業構造改善事業が初期の段階にあっては、局長がおっしゃったように、多分に農民の間に期待を持った向きがあったんです。これは事実です。ところが、それが実際に進行していく中で、幾多の矛盾が出てきた、それで足踏み状態が生まれたわけなんです。だから、私はじゃあそれなら価格政策その他が整うまで、構造改善事業をやるなともやれともそんなことを言っておるのではない。構造改善事業を進めていくそのことが、日本の農業近代化に役に立つというお考えでやられるなら、その構造改善事業が農民にスムーズに受け入れられるような施策というものが相伴わなければならぬのじゃないかと言っておるのです。ところが、現在の農業構造改善事業の受け入れの状態というものを、もう一ぺんあなた地方を歩いて調べてみることです。これは農林省が構造改善事業をやらせるといって府県に言う、府県は市町村を督励する、市町村の末端職員は百姓家を歩いて、どう言って歩いていますか、とにかく構造改善事業をやってくれ、やってくれなければ市町村が県に行っておこられるのだとこういって歩いています。つまり現在の構造改善事業というのはあなた方が期待しておるのと反して、現地の農民にはあまり喜ばれていないのです。その喜んでいないものをやらせようとするから、一番末端職員が農民を説得する、農民のところへ行って頭を下げて、とにもかくにもやってくれと歩いているのが現実です。そういうことになっている。だからそれは繰り返すようですが、スムーズにやるためには私が先ほど言いましたような、資金の面でももっと抜本的な考え方が出てこなければならぬと思うし、あるいは需給の見通し、価格の問題等についても、農民が安心して構造改善事業に取り組めるという態勢を、農林省が精力的につくり上げてやらなければいけないということを言っておるわけです。それを農林省はあたかもよそごとのような気持ちで考えられておったのでは、これはせっかくの構造改善事業も進みませんよ。それが証拠に見てごらんなさい、三十六年、三十七年、ずっとあなた方から出されている統計を。最初は畜産なんというのが構造改善事業の中で非常に大きな比重を占めておりますね。三十七年度には畜産の比重がものすごく大きいわけです。八六・二%、ところがそれが三十八年度になると五一・一%に落ちてしまった。これは畜産を選択的拡大で構造改善事業の中の基幹作物として取り入れようとしてやった、三十七年度にはそういう気持ちが非常に強かった。ところが、あの豚の肉の暴落で非常な衝撃を受けたあるいはさらに引き続く乳の値下がりで衝撃を受けた。だから畜産というものの比重が非常に目に見えるほど落ちてきているでしょう。だから私はあなたのおっしゃったことは、末のほうのことを先に取り上げていらっしゃるんで、もっと根本のほうを考えていただかぬといかぬ、こういうことを育っておるわけです。しかしまあ、局長を相手に議論しても始まらぬことで、こういった問題は、また農林大臣のほうから、どういうお考え考え方を私は承りたい。しかしながら、私は少なくとも大臣よりも農林省のあなた方のほうがより専門家だし、より農林省という立場から農民の立場に立って、ものをあるいは強く考えておられるかもしれないと思ったから、あえてこういう問題をきょう持ち出してみたわけなんです。ところが、私の受けた印象では、農林省のほうが案外そうした問題については御存じない面があるし、案外熱意がないということを私は感ぜざるを得ない。これなら農林大臣へハッパかけて、もう少し事務当局を督励してやってもらう以外にはないわけです。
  157. 松野孝一

    政府委員松野孝一君) 長々といろいろ御意見がありましたが、それはごもっともな点は多々ありますよ。農業基本法の第二条にも国がやるべき施策というものは、ずっと並んでいます。その点はみなあなたがおっしゃったとおり、われわれも全然そういうもの無視しているわけじゃありません。豚の価格だって、畜産事業団をこしらえて価格を考えております。それから乳牛のことについてもそうです。ただ、それが十分満足がいくほどにいっていないという点はそうです。それからビートの問題でも御審議をいただいたし、価格も重要な問題だということはよくわかっております。そう皆さんの十分満足のいくようにいっていないという点は、なるほどそうだと思いますが、順次情勢に応じて考えていかなければいかぬ。そうかといっていま局長答弁されたように、大型機械になじまないとかそういう点は多々あります。それから土地改良も十分していない、その資金の面も十分でないということもわかるし、融資の面も十分でないという点はわかります。価格面たいへん強調されるようでありますけれども、価格面だけでも、まだ十分でないと思いますけれども、しかし、われわれはその面も考え、また土地改良の面、あるいは大型機械を導入する面というような点についても努力して、構造改善事業をやっていきたいと思います。みんな反対であるとは私は考えておりません。われわれもしばしばいなかを歩いておりますけれども、秋田県の例を考えると、ことしは十以上の地区がやりたい、ようやくこう軌道に乗ったような形になっております。必ずしもそうばかりでもないように私は考えております。
  158. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは、私はほかに、まだ構造改善事業の問題については、実施基準の運用の問題だとか、あるいはまた農業構造改善事業を行なう地域の問題等について、いろいろお聞きしたい点があるわけです。しかし、いま松野政務次官が勢い込んで立ち上がられて、多分に日本の農業の将来について相当な意気込みを持って取り組もうとするような私はいま姿勢を、気概を感じたわけですよ。したがってそういう気概で、ちょっとずれたような感じのする農林省を督励していただいて、ひとつ構造改善事業がより進んで、そして日本の農業の基本的な弱点である零細性を脱却する方向にまで発展するように、私は松野政務次官のその気概に感心をいたしまして、質問を打ち切ります。
  159. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 きわめて常識的なことを二、三お伺いをいたしたいと思いますが、これは全く常識的なことで、私はあまり研究もいたしておりませんが、きのう渡辺君が改良資金の問題でいろいろお伺いをした中で、私もたまたま考えておったようなことを御質問になり、それに局長がお答えになったのですがね。私はこういうこの資金というようなものは、あまり規制をしないで、指定だとか特認だとかいう区別のつかない——どこに境があるのか、境はないんでしょう、ないはずなんですよ。しいて理屈をつければないことはないが、理屈とこう薬はどこにでもつくので、私はそういう言い方をするところに、何というか、行政というか、お役所式ということがうかがわれる。そこで地方の実情に応じて、最も農業の生産拡充のために、向上のために行なわれるようにという指示をしておいて、そしてそういうことをそれぞれの地方で違っているのですから、日本の農村、農民といえども、みんな形態が違っておるのですから、私は、それがために地方農政局というものをつくった。そうでないと、いつまでも農林省がそれを監督したり、引きつけていて、いいの悪いの行うて指図をするというなら、地方農政局というものはもう浮き上がってしまうのでありますので、一応法律をつくるためには、その根拠になるべき意見というものを規定しておいて、あとはもう自由に私はやっていただくように、ことに農政局にお伺いを立て、そしてまだまだ中央のほうまでお伺いを立てて、いいの悪いの机の上でおっしゃることは、少しおかしいのではなかろうかと思います。これは常識的なことですよ。理屈を言う意味ではございません。そこで理屈を言われたら、私らは負けるのです。局長ほどの理屈は知らぬ。しかし、常識的にはそういうことが必要なのではなかろうかと思うのですが、そのことについてひとつ御意見を伺いたいと思います。
  160. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私も全くこの種のものについては、御趣旨のように運用すべきものだと思っております。ただ予算の編成過程なり、法律の御説明の過程なりで、いま堀本先生おっしゃったような天衣無縫な答弁を私ども役人がやりますと、かえってまことに不見識なといいますか、思いつきの行政をやっているようになりますので、いろいろと意のあるところをおわかりいただく材料として申し上げてはおりますけれども、運用の本来の姿は、そうありたいものと思っております。また、改良資金につきましては、現地、県段階以下におきましては、やれ指定事業の特認事業のという区別はありません。ただそういうことで昨日渡辺先生に申し上げましたようなことで、県の事業計画ができますというと、それは特認であれ、指定であれ、区別のない改良資金でございます。おそらく今後もそういう運用をさらに強化していきたいと思います。したがって、地方農政局の権限も、今度の法律改正の機会にさらに強化をいたしまして、原則的には、中央へは何も御相談の必要がないようにいたしたいと思っております。そういった行政運営をやりますつもりでおりますので、私どもが本省で一々こまかいことまでわからなくなってまいると思いますけれども、その辺のところはまた御容赦をいただきたいと思います。
  161. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 いまのお答えで全く安心をいたしました。そういうふうにお取り扱い願わないといかぬ。そこでね、私はもう一つ飛躍をして、そこまでおいでになるのなら、こういうことに金を使ってはいけないのですよという、使っていけないもののほうをお示しになって、技術導入、生活改善、後継者対策というような大筋の荒々しいものは掲げておいて、旅行をしたり共同でバスを借り切って金を借りてよそへ見に行ったり、無利子だというのでそういうレジャー的なものに使ってはいけませんよというようなものを掲げておいて、むしろ良識に待った指導に移すべきものではなかろうかと思います。これは特認だとか指定だといいましても、昔の風呂屋と同じで、男湯と女湯と、のれんが別にかかっておるけれども、湯は一緒なんです。だからそういう入り込む口だけを別にのれんをぶら下げる必要はない、こういうのが私の理論でございますので、特に取り扱い、運用の面で、十分弾力的にやる。弾力も二、三べん重ねると何にもないことと同じです。それならば、最初からないほうが賢明でなかろうかと思いますので、申し上げた次第でございます。  それからもう一つ私はちょうど局長さんにお願いすることをかためてまとめて申し上げますほうがよかろうかと思います。人の話を聞いて、そして自分がそれに似たような話をするのは、まことに不見識なことだと思うのですが、構造改善の問題なんです。構造改善の問題を私はここで理論的に取り上げようとは思わないのですよ。特に日本の地勢からいきますと、大きい何十万の都市にもイノシシの出るところがございまして、都市という、いかにもはでなところのように見えますが、日本の地域をごらんになったらよくわかります。大体一七%程度、いまは一七%までないと思いますが、耕地であって、あとは山林原野あるいは宅地、河川その他になっていると思いますので、そういうようなところを対象として耕作をする農業というものを、土地基盤といいますか、生産基盤にのみ重要なポイントを置いて行なわれる構造改善というものでは、山村というもののほうに活用ができないわけであります。これはもう御承知のとおりそこにお気づきになって、政府は多額の調査費を出して、今回山村方面における構造改善はいかにあるべきかということを、いま御調査になることでございますので、私は若干おそいきらいはありましたが、まことによい考え方であると思うのでございます。そこでやはり幾ら調査してみても、調査で地帯が変わるわけではないのであります。これは。調査がおくれていままで山村というか、あるいは山ろく地帯の農業を見なかった人が見るのならば、よい発見になり、珍らしいものを見たということになるかもしれませんが、昔からある、三千年来続いて山村というものはあるので、いまさら調査してみても格別なことはないと私は思うのでありますが、この山村方面を別に切り離して、山村振興というような立場でこの構造改善事業を取り上げるというお考えでいま調査をしている段階だから、私がそう建設的なことを申し上げましても、それはよかろうと言われぬことは知っていますよ。またそうおっしゃってくださいという意味ではないが、そういう御調査をする段階に立って構造改善、構造改善、どこまでも構造改善という名前がつかなければぐあいが悪いというのではなしに、山村振興というような形で取り上げることのほうが、もっとスムーズだというふうに私は最近思っている。いろいろな事例がございますが、時間がございません、五時を過ぎますから、皆さんお帰りのようでお支度をしておられますから、もう重ねて申し上げませんが、そういうふうな説を述べる議員もおったということを、ひとつ御記憶をいただいておきたいと思いますが、それに関して何か御意見がございましたら。
  162. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) この改良資金の運用のしかたについては、御注意の点は私どもも十分注意して御趣旨に沿いたいと思います。実はこういった形で無利子の貸し付けを拡充いたします前の段階で、私どもが描いておりました一つのものの考え方は、まさに先ほど先生がおっしゃったようなものの考え方を実はしたことがあります。消極的ないわば使ってはいけないものだけをきめて、あとは農家の自主選択にまかすというような方向でやってみてはどうかと思った時代もございます。ただ、そういうふうにいたしますためには、県に一つ特別会計管理しているというのでは、いかにも無理なようでございます。今後この資金の拡充が年を重ねていくにつれて、私は将来この資金を県一本でなしに、町村ごとに分けて持つというようなゆとりが出てくる時期が、一日も早くくることを望んでおります。そういうことと相伴って、いま御趣旨のような資金の使われ方が、実現を見ることが可能なのではなかろうかというふうに考えておりますので、また御援助を賜わりたいと思います。  それから構造改善事業の調査を山村でやるにつきましては、確かに遅きに失する面もあるのでありますが、構造改善事業のいまの実施基準で、山村でも十分やりこなせていく場所もあるわけでございます。たとえば養蚕とかあるいは酪農とか、あるいは果樹とかいうものを基幹作物として、その山村の特種な条件をむしろ逆に生かして構造改善、いわゆる私の申し上げます大規模生産、大規模販売の利点を実現していかれる場所もあります。したがって、そういった趣旨を、そういった気運の熟している山村と熟していない山村といろいろあろうと思います。そういった面でやはり現在の持ち合わせの大型技術だけで、すべての山村の構造改善事業がうまくできるかどうかという点については、ここ一年時間をいただいて、さらに組み建て直しをやってみたいということでございます。なお、先ほど多くの山村の中には、非常に自給的色彩の強い、まだ商品生産というものになじまない山村もございます。そこらのほうでは大型技術、大型販売を説いてみましても、それの利点が那辺にあるかの理解も十分いただきかねるような場所もございます。そういう場所につきましては、構造改善事業以前の段階と申しますか、構造改善事業の利点、長所を申し上げます以前に、やはり山村の基礎条件の整備というようなことを先行いたしませんと、構造改善事業自体も生きてこない、また受け入れる基盤がないというようなところもございます。そういうようなところについては、御趣旨のような別の角度のそういう地帯の振興方策を、構造改善事業と並行あるいは先行させるべきではないかという点は、私も全く同感でございます。そういう意味で今後施策を進めていきたいと思っておりますが、そうなりますと、ひとり農林省だけの問題ではなくて、広く関係各省にまたがる非常に包括的な問題でございますので、そういう角度からの問題の提起もあわせて考えていきたいと存じます。
  163. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 もう一、二点、この機会にお伺いしたいと思うのですが、私は方向を変えて、経済局長さんが適当なのか、あるいは農政局長さんが適当なのか知りませんが、金融という面では、経済局長さんのほうが適当であろうと思います。あるいは無利子の金の運用ということでは、農政局長さんのほうに御関係が深いかとも思うのですが、どうぞひとつ自由な立場でわれわれの尊敬する両局長でございますので、どちらから御答弁いただいても、あえて気にするものではないのであります。そこで、中小企業の近代化のための施策と農業協同組合との関係についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。この中小企業近代化のための施策というものが近年いろいろな形で行なわれておりますことは、私が申し上げるまでもないのでございますが、これは三十一年に法律が出まして、これはちょっと名前が違っておりますが、もう時間もございませんので、私は詳しい経過を申し上げる必要はございませんから省きますが、最後に、三十八年の四月から実施をいたしております中小企業近代化資金助成法というものがございます。この助成法の中を若干見ますと、二つに分かれておるようでございます。その二つに分かれておるのは、どういうふうに分かれておるかといいますと、中小企業の高度化資金というものと中小企業設備近代化資金という二つの施策に、資金の内容が分かれておるわけです。法律は一本でございます。ところが、これは私は十分に中小企業のことでございますので、わからぬからお伺いをするわけでございますが、少なくとも農林省においては同じような無利子の金を出そうという形であり、現在中小企業、零細企業並びに農業というものは同じような形でこの生産性が低いということから、特別な施策を講じなければならないということでは、同じような観点で見られている業種、産業でございます。したがいまして、この二つに使われておるのは、無利子の金のように承知をいたしておるのでございますが、私の考え方が間違っておるのか。もし無利子の金であるとするならば、いま申し上げました中小企業近代化資金助成法で組んだ資金源、資金源といいますより、資金量は幾らくらいあるのか、もし御承知でございましたら、ひとつお知らせをいただきたいと思います。
  164. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私のほうで手元に調べた資料を持っておりますので、便宜私からお答え申し上げます。この資金は無利子でございます。それで資金の造成の方法は、国が半分、県が半分、農業改良資金の場合、国が三分の二、地方が三分の一でございます。これは半々で資金を造成しております。それで、三十八年度で申しますと、三十八年度の貸し付け実績で、中小企業高度化資金の合計は五十二億です。それから、それに対応して中小企業設備近代化資金のほうは百十四億円、このほうが歴史が古いわけでございまして、現在ではその程度貸し付け規模でやっているようでございます。
  165. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 そうすると、この百十四億と五十二億と、百六十六億、これは三十八年度でございますが、三十九年度には、たしか二十九億アップされて、追加されているのではないかと、私は思っているのでございますが、しかし、よくわかりません。そこでそういうことになりますと、その三十九年度でも追加されているはずでございますから、相当な額になるわけですね。農林のほうは四十五億何がし、若干端数がありますが、四十五億であったかと思います。これは、歴史が浅いと言えば養えるのでございますが、私は同じようにいまの生産性の低いという立場で、将来国が救済をしていかなければならぬ、画期的な、革新的な革命的な施策を講じなければならぬという範疇に、双方ともに入っている産業でございますが、そういうことからいくと、少し少ないように、農業のほうが少ないように思われます。しかし、少ないというても、多いというても、ここで議論する意味ではございません。そこで、私はその金が——ここが大事なところなんでございますので、ひとつようお聞き取りを願いたいと思いますが、その中小企業高度化資金というものは、どういうものに貸すのかということなんです。これは、もうお伺いせぬでも私よくわかります。生産、加工、販売、購買、保管、運送、検査等の事業に関する共同施設について高度化資金貸し付けるのである、こういうふうに法律が規定しているようでございますから、もうお伺いするには及びません。これはちゃんと法律が示しているのでございます。そこで、その中に、農業の協同組合あるいは協同組合連合会というものが入いれることになっていると、私は理解をいたしております。たとえば、中小企業等協同組合法の第八条第五項第二号の規定によりまして、中小企業等協同組合連合会が、その定款において他の法律に基づいて設立されたる協同組合であっても、会員たる資格を与える旨が定めてあると、この法律を読んでみると書いてある。ですから、他の法律で定められたつまり組合においても、この中へ入いれる、これは私はそうであろうと思うんですよ。ところが、現実にこの組合に加入をしているのか、あるいは加入してこの恩恵を、無利子の金、少なくとも百七、八十億になっていると思いますが、その恩恵を農業協同組合が受けているのかどうか。こういうことを聞きますことは、いま先ほど農政局長がるる矢山君とのやりとりでお話しがございましたように、私は重ねてオウム返しにこれを言う必要はないんですが、生産基盤の拡大あるいはそれ自体は経営規模の拡大に通ずるものである、あるいは流通制度の拡充は大型販売機構の整備である、こういうふうにおっしゃりそれが構造改善の中核をなすものである、こういうふうに理解してあやまちがないとするならば、たとえば商業的農業といわれるように、第一次製品を、つまり原始産業のままで、たとえば一つ例をとりましょう。イモをつくっても、イモをつくって販売するというのでなしに、それをあるいは結晶ブドウ糖につくって、そうして送り出しますとか、あるいはそれを第二次製品にして今度販売をするとか、たくさんございます。ミカンをつくりましても、ジュースに加工する、かん詰めに加工する。いままでの農業というものは、そのつくったままを販売するということが大部分の形態でございましたが、構造改善というものの示すところによって、いわゆる共同施設によって、弱い農業者が寄って共同加工をし、そうして共同販売をし、共同輸送をするということにおいて、農業の所得を増していこうということが、構造改善のねらいでなければならぬ、それが農業近代化であり、農業の合理化であると言われるゆえんのものだと私は思う。そういうふうに私の思うところに間違いがなければ、要するに商業的農業であり、そういうふうに企業的農業というふうに変わってきた今日、この協同組合のいま言う定款の中に入らせるのである、また入らすようになっているんですよ——なっているのだから、当然農業協同組合及び農業協同組合連合会はそれに加入して、金の恩恵にあずかることができると思うんですが、どういうふうにお考えになりますか。
  166. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 三十九年度の資金ワクは、先生のおっしゃるようにかなり拡大をしております。で、実を申しますと、確かに農業のほうの無利子の貸し付けは、新しい技術の導入というようなものに限定して実行しておりました関係上、それほど多額の金を必要としなかったというような事情もございまして、今度やっと四十五億円の貸し付け規模、それを直に比較してごらんになりますと、いかにも中小企業のほうが行き届いているかのごとくお考えになるかと思うのでありますけれども、この点はちょっと注釈を入れて御理解いただきたい。つまり中小企業のほうでは、これらの施設と申しますかは、すべて無利子の貸し付け金になっておりますが、農業の面では非常に相似たものが、まだいまの段階では補助の対象になっている。で、補助金が農業のほうではこれにかわると申しますか、これに先行する一つの有力な助成手段、より程度の高い助成手段として補助金という制度が使われております。構造改善事業で、たとえば大型の集荷施設でありますとか、農産物の加工貯蔵施設等、すべてこれ補助の対象として取り扱っております。それに反しまして、中心企業のほうでは、それらのものはすでにもう補助の段階を過ぎて、本来ならば融資の段階であるべきでありましょう。それを完全な金利のつく融資の段階に切りかえる過渡期の問題として、この出資金が年々、最近急速に拡充されてきたのが現状であろうかと思います。そういう意味で、この無利子の資金のワクそのものだけで、農業の施策と中小企業との施策とを直にお比較いただくことについては、いまのような観点をまじえて御判断いただきたいと思います。それから実際問題として、御指摘のように、農業協同組合の食糧品等の加工施設になりますと、中小企業の個別企業あるいは中小企業の協同組合が共同施設として持ちます共同施設と、外形的にはまた機能的にもなかなか区分のしにくいものがだんだん出てまいると思います。その場合、私どものほうは、いまのところまだ農業協同組合がこの中小企業の無利子の資金を利用して施設をしたというような事例は接してもおりません。また、特別の奨励もしておりません。このことは、農業協同組合の本来のねらいといたします使命と、中小企業協同組合なり、あるいは中小企業の資金が本来のねらいとしておりますところとに若干機能的な差があるということと、それからやはり現地におきましては、中小企業と農業協同組合との間には、歴史的な一つのまあみぞと申しますか、何か相いれないものが感情的にもある。そういったようなことが、中小企業の法制の整備等のつどまあ出てまいるわけでございまして、制度のたてまえ上は、中小企業の団体に農業協同組合が入って入れないわけではないのでありますけれども、入ろうとする農業協同組合もございませんし、また、積極的に加入を呼びかける中小企業も現在のところはあまりない。ただ、いわゆる何と申しますか、販売規制といいますか、最近あります中小企業のいわゆるカルテル的行為をやります場合に、農業協同組合もそういった中小企業の規制の中に含めて規制いたしたいということは、中小企業の関連立法が議論されるつど、その方面から持ち出される議論でございます。私どもは、むしろそういった際には、農業協同組合は、いわゆる中小企業とは異って、零細農家の利益擁護のために特に設立された団体で、特殊の機能と使命を持っているのであるから、中小企業の一般的な規制の対象とすべきでないということで、むしろ対象外とするべきであり、そういった場合のつど、施策をそういう方向でかじをとり、主張いたしてきております。したがって、そういった契機から申しまして、なかなか農業協同組合がこの資金を使うということは、なじみにくい問題のように私は思うのでありますけれども、御指摘の点は、ある意味では私どもの盲点でもあります。農業協同組合の皆さま方のものの考え方の盲点でもあります。また、私どもの農政担当者の盲点でもあったようであります。十分反省いたしまして、利用できるものなら、そういうことも十分検討いたしていきたいというふうに私は思っております。
  167. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 金融制度にも関係がございますので、少し補足して申し上げたいと思います。中小企業近代化資金助成法の対象となります中小企業者は、法律の第二条の第一項で定められておるわけであります。これでは、「中小企業者」とは、工業等「その他の業種に属する事業を営む中小規模の事業者であって政令で定めるものをいう。」、こうなっておりまして、政令ではいろいろな設例をあげながら、出資の総額が五千万円以下の会社及び従業員の数が三百人以下の会社及び個人、こういうようになっております。現在の法律のもとでは、農業協同組合はこの資金を借り受けられないのでございます。それから、まあいま農政局長が申しましたように、中小企業対策農業に対するいろいろな施策との体系がだいぶ違っております。基本的な補助金、それからいまの技術導入資金等は、これは全然別の体系になっております。この中小企業の設備近代化資金等に相当するものは、農業近代化資金がむしろ近いものでございます。で、その場合、条件といたしまして、農協がつくります共同利用施設農業近代化資金の対象になるわけでございますが、これは条件がたしか七分五厘でございます。ただ、中小企業の近代化資金は、無利子でございますけれども、融資率は必要な資金額の五割以内、五割以下でございます。農業の場合は八割以下、こうなっております。それから償還期限は、中小企業の場合は五年以内、農業の場合は、これはいろいろございまして、大体十年から十五年ぐらいでございまして、その間に、まあいろんな比較のしかたはあると思いますけれども、どちらがはたして有利かということは、この制度だけを比較するのでなくて、いろいろな税制上の措置もございまするから、必ずしもどちらがいいかということは言い切れないんじゃないか、これは相当検討を要することでございます。しばしば申し上げておりますが、そういったいろいろな制度のバランスの問題がございますので、これは、私どもとしてもよく今後研究さしていただきたいと思います。
  168. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちょっと関連して。農業協同組合と中小企業協同組合と、金融面の一つの関連性についての堀本さんの御質問でありますが、それにやや関連するんでありますが、農産物あるいはその加工品を対象にして二つの組織がある、その二つの組織にそれぞれの金融機関が特殊にある。そのほか一般の普通の金融機関があることはもちろんであります。実際問題として、農産物なりその加工品ですから、共通する面が多分にあるわけでございます。それで、もちろん性格が違うんですから、それを同じように考えるわけにはいきませんけれども、金融の組織機関が違っているために、やや不合理な状況が特に出てまいっておると思います。たとえてみますと、これに直接関係しているわけですけれども、例として申し上げるわけですが、米の流通面の金融があります。これは食管特別会計が中心でありますけれども、年間数千億の資金というものが米の流通に関連して要るわけなんです。ところで、その米の流通の資金が集荷から消費者までいって、それから回収されてくるわけなんですね、その一貫した流れの中で、農協系統は集荷の面を担当しているわけです。集荷だけの資金はそこで食管特別会計を通じて処理される。集荷だけで物が動くわけではなくて、最終消費の段階までそれがいって、そこで金が返ってくるわけです。で、返ってくる面の流通面の金融というものは、これは自分たちは知らないという、だれかめんどうを見るというふうな、いま仕組みなんです。これが一貫した一つ金融体系になりますというと、相半合理的にいくんじゃないかと私は思う。朝の御質問にも関連するんですけれども、農林中金には相当の余裕金があるが、なかなかいろいろ事情がありましょうけれども、系統の下のほうには流れない。コールで相当巨額の資金が外部に出る、なぜ農林中金のそういう余裕金を米の流通に使えないのか。君のほうは中小企業等協同組合だから、これはだめなんだ、相手にしないんだ、性格が違うんだ、本質論からいえば、組織論からいえばそうだと思いますけれども、米自体の流通という面から見ますと、一貫的に考え考え方のほうがむしろ自然なんです。片方においては資金が余る、一体その米の代金が相当余っているといいますか、余裕ができた資金源なんです。それをつくり上げている一つの流通面をバックしていく金、これは自分たちのたまったやつは、ほかへいくのだということもいかがであろうか、私は、何も中金の金を米の流通に回しなさいということを主張するつもりはありません。金利その他の関係でなかなか簡単な問題ではないこともわかっておりますし、したがって、そうあるべきだという主張をするわけでは毛頭ない。しかし、検討を要する、検討してしかるべき問題であろう。これはひとつ米だけではない、蔬菜にいたしましても、ほかのいろいろの流通の革命とかいっておられる、革新とかいっておられる。しかし、資金面については何ら考慮が払われておらない。集荷の面については、やいやいと相当の金をお出しになる。それは一部分であって、それから先はどうなるかということは非常に重要だと思うのです。それはどこか銀行とかほかでやるだろうということでは、ほんとうの流通の改善というようなことも、私はいい結果が期待できないのじゃないかという感じがする、そういう考え方をもっているわけであります。ここで御答弁を求めるわけではありませんけれども、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。答弁は要りません。
  169. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 いま両局長のお答えで、私は完全に私の意思なり主張なりが済んだというふうにはどうも、どう欲目に考えても私は思わない。それは、中小企業等協同組合法第八条第一項第四号の規定によっても、農業協同組合あるいは農業協同組合連合会は、会員になることができて、その会員には、共同施設資金というものを貸そうという制度が、一応道が、一方交通であるけれども開かれている。それを運用する定款というものの作成にあたって、農業協同組合あるいは農業協同組合連合会は、組合員の利益をはかる団体であって、組合自体が利益を求める団体ではないということに基づいて私は定款の中でシャット・アウトしているというふうに理解している。そういうことは、昔の時代ならば考えられますが、いまのように、農業の形態が急速に進歩していく、発展をしていく、あるいは変化が起こってきて、そうして共同施設でなければならぬときに、あるいは共同でいろいろな仕事をやろう、協業化していこう、こういうことが指導の中核にあるということは疑う余地がないということなら、たとえ金の大小があろうが、補助金の大小があろうが、そういうことがあるから、いまの高度化資金とこの農業資金とは違うのですという言い方は当たらないと思うのです。これは私は、もう重ねて言う必要はさらさらございませんが、とにかくよほどその点はお考えにならないと、農業の形態が変わってきているのだということであるならば、これはまさにとりもなおさず中小企業ですよ、企業の範疇に入るべきものなんです。しかし、従来からの歴史があって、農業協同組合あるいは連合会の加工部門として設立されている場合が非常に多いということだけなんです。ですからこれは少なくとも共同施設という構造改善立場からいっても、今後の自立農家の育成の立場からいっても、当然そういう形態が望ましいので、指導をしてまいっておるのでございますから、やはりそういう金が使えるように行政指導をすべきである。これは行政的に通産省と農林省とがよく相談をして、最近における農業協同組合の加工の面は、こういう発展の経過をたどっているのだというところに理解を深めていくことがよいと思うのです。そうでなければ、私は全く同じ政府で育成のしかたや考え方の違っているというところに、非常に矛盾があるのではないかというふうに考えざるを得ない。  そこで、私はお伺いをいたしますが、中小企業協同組合に加入することを、最後に問います。いろいろの段階があって、そうしてお答えをいただく間にわかってくることですけれども、最後のところで煮詰まったところで一つお伺いをしたいが、農林省は、私がいままで申し述べたこの趣旨に賛同をされて中小企業協同組合連合会に加入のできるように推進をしようとお考えになるのか、それは種類が違うんだと、同じジュースをつくり、同じブドウ糖をつくり工業化しておる、その中にあっても、それは事農業立場から初めて出てきた農業協同組合であるから、異質のものであって、あくまでその中の無利子の共同化資金というものは使うことはできないんだというふうに、種類が違うんだというふうにお考えになるのか。将来行政的処置を講じて、これが使えるようにすべきであるとお考えになるのか、そこをひとつ一点まずお伺いしたい。
  170. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 関連。私は資本金五千万円、三百人からの従業員を擁する蚕糸協同組合は入っていると思うのです。その点ひとつ回答してください。これは問題だから。
  171. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 農林省所管産業という見地から問題をとらえますれば、いま高山先生がおっしゃいましたような食料品加工業、あるいは製糸業等は、もちろんこの資金の対象となってこの資金を活用しております。私の承知しております限りでも、各府県にあります中小企業設備近代化資金相当の大口の利用者は、いわゆる製糸業者の近代化に活用され、自動操糸機の相当部分はこの資金を汎用して現に導入されております。したがいまして、いわゆる農林省所管産業がこの事業からシャットアウトされているかどうかという見地での問題としては、これはそうではございません。むしろ非常に積極的に使っております。ただ堀本先生が御指摘の問題は、農業協同組合がこの資金を中小企業者の一員として活用できるかどうか、あるいは直接活用ができないまでも、中小企業協同組合に団体加入をして、その団体加入者たる農業協同組合が、この資金の活用ができるかどうかということの御提議でございますので、その点にしぼって申し上げたいと思いますが、堀本先生のいまのお話は、先ほどの、私ども行政に携わる者にとっても、あるいは農協の担当者にとっても、一種の盲点というふうに申し上げたわけでございまして、何と申しますか、進歩的なと申しますか、進んだお考えなんだと思います。で、農業協同組合も広い意味でいえば中小企業ではないかというような問題のとらえ方は、確かにそうでございますけれども、従来の関係者なり行政当局のものの考え方は、どちらかと申せば個々の農民と中小企業との関係のまあ力関係の弱さを農業協同組合という一つの組織によって、個々の中小企業からの買い手あるいは中小企業への物の売り手としての弱体な農家を組織化してそれと対抗のできる、あるいはそれと十分競争のできるだけの集団にして、経済力を高めていこうというのが、農業協同組合運動の一つのねらいでもあります。そういう沿革的な問題のとらえ方からして、中小企業の同じことをやっておりながら、やはり使命観において何か一種違うものを持っておるように思い込んでおります。その点はやはり異なった使命があるんだということは、私先ほど申し上げましたように、将来にわたっても、おそらくそういう問題はそのとおりなんだろうと思うのですが、しかし、問題を産業能率という視点からとらえた場合に、やはり先生のおっしゃるような観点からの検討ということを、今後行政担当者もあるいは興業協同組合自身の皆様方も、もう一回考え画してみる必要は多分にあると思います。ただ盲点を申し上げたほど、まだそういった角度から問題を考えたことが、実は正直言ってございませんので、将来そういうふうに割り切ってものごとを進め得るものかどうか、その辺のところは私どもも十分の自信がございません。確かに非常にすぐれたと申しますか、進歩的なもののとらえ方なんですけれども、農業協同組合なるものの将来のあり方とも関連して、関係の皆様の御意向等もさらにとくと伺い、そういった方向といままでのようなものの考え方、使命観との調和がどの辺で得られるものか、十分検討さしていただきたいと思います。
  172. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 よくわかりました。どうかひとつ御検討をいただきまして、もう農業協同組合法という法律も昔できたのでだいぶ変わってまいっております。これはもう日々新しくなって、いわゆる開放経済に対処するための中小企業のあり方というものからとらえて、この法律改正されておるわけです。そういう時代に、かたくなな従来の考え方だけでいくわけにはまいりません。農業者も従来の農業の形態とは違ってきて、そうして第一次製品とまでいかないにしても、それをいかに半製品にするか、完成品にして出すかということが問題になっておる時期でございますので、十分に御検討をいただいて、そうして行政的な立場で私は共通の歩みができるように指導すべきものではないか、こう考えております。  そこで、もう一点最後にお尋ねをいたしますが、農業近代化、合理化を進め、そうしてそれがためには自立農家の育成をはかり、そうして協業の助長をするという大前提に立っておいでになる。ところが、一方では、設備資金近代化をはかるために、たとえば二分の一の資金量にいたしましても無利子で貸そうというのでございます。ところが、これは松岡経済局長にこれからはお尋ねいたしますが、どうも私は無利子に匹敵するいわゆる農林金融の場合を考えてみますと、共同利用施設というものが一番高い七分五厘になる、これはおそらく私は間違いに違いない、こんなはずはないと思ってずいぶん調べてみたんですが、私の目ではどうも七分五厘のランクの中にあるように思える。そうすると、どうしてその行くべき道の大悲願の光明が共同施設あり、共同化あり、つまり近代化であるのにもかかわらず、一番願いとすべきところに到達するのに、一番高い金利で貸そうというお考えが私にはわからない。いかにうまくお話しになりましても、現実の問題が今度はどうもしり抜けのような気がして、いままでの理屈は合っておっても、金利のところで合わぬようになるおそれがあるように思われるのでありますが、これは一体どういうわけでございますか。
  173. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 理屈や経緯等はあまり申し上げるとおしかりを受けるかと思いますが、どうも今回農林漁業金融公庫の金利体系を簡素化いたします際にも、これは農業関係共同利用施設は少ないのでございますが、私どもとしては七分五厘というところに据え置いたのでございます。で、共同利用施設でなくて個人施設、個人がやる施設についきましては、六分五厘、で、これは農業近代化資金の場合でも同じようにしてあるわけでございます。全体の金利のバランスというものをそういうふうにきめたと、こう申し上げたほうが率直だと思いますが、それからさらに公共的な施設については、五分とか、もっとそれより何といいますか、個人が借りて非常に長期を要する、そういうものは三分五厘、こういうふうなそれぞれ一応の理屈を持ちながらつけていったわけでございます。これは従来の経緯もございますけれども、それならなぜ共同利用施設を七分五厘にしたかと申しますと、いまの個人施設との関係もございます。負担力の関係、それからまあ農協はやはり何といっても組合員から金を集めて、自己資金相当持ち得るというような面も、これは中小企業協同組合とはよほど違うと私は考えますが、まあそういった面もございまして七分五厘にいたしたわけでございます。しかし、金融制度としましては、先ほど梶原委員からも御指摘がありましたけれども、また農政局長もなかなかうまいこと説明しておりましたが、関連産業の振興なり近代化ということは、農業に対する構造改善なり近代化と同様に進めなければならない。これを進めなければ、ほんとうの農業の繁栄もないわけでございますから、これは同じようにやらなければならぬということで、実は本年度予算におきまして、関連産業に対する新しい融資制度を創設することを実は考えかかったのでございます。しかし、ちょっと時間が足りなかった、率直に言いますと時間が足りなかったわけでございます。これは検討問題として実は懸案にいたしております。で、今回金融制度を再検討いたします際には、先ほど梶原委員から御指摘がありましたように、農林中金の制度、これは関連産業農業との一つの結接点でございます。その制度などもあわせまして、それからいわゆるそういった農産物の加工製造関係に対する融資制度等もあわせて再検討いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  174. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私は非常に暴論を申し上げて恐縮なんですが、農業者というものが金を借りて施設につぎ込み、それに引き合うような勘定が何かあるのか。七分五厘で払わぬ気で借りるんならいいけれども、払わなければならぬというのだから、どうして払うかということになると、私は七分五厘というような金で、そうして日常生活をしながら元利金を払っていくということは非常に困難だと思う。これは農家の実態の成長率、伸び率から考えても、私は非常に困難があると思う。そこで、個人というものには比較的手厚い金利がございますが、たとえば土地造成にいたしましてもあるのでありますが、共同施設へ向かわしめようということが、いろいろな施策の集中的ねらいであるということなら、私は共同施設、たとえば一つの例をとりますと、かんきつあるいはその他のくだものでも、カリフォルニアの一アールの耕作労働時間は平均九時間だと、この間統計を見ましたらありました。日本におきましては果樹園の平均の労働投下瞬間は、それの五十倍だといわれる。これは機械化ができ、共同施設があるからであります。ですから、そういうことをするためには、たとえば共同選果場をつくる。そうして五百人も六百人も一日かかって共同選果をしているのを、オートメーション化してわずかな人手で共同出荷ができるようにしていくというのが共同施設のいわゆる近代化農業近代化のゆえんなのであります。そういうことから言うなら、むしろ共同施設に対して金利が安くあるべきじゃないかと私は思う。それはいま局長お話しになりましたが、どうもずいぶん苦しい御説明で、これはきょうあなたと私のやりとりだから済みますけれども、私は何か機械で判定するものがあって、どちらが正しいか近代的施策であるかということをもし機械に問うことができるならば、私はこれだけは——ほかのことは知りませんが、これだけは私の主張のほうが、大かた正しいという自信を実は持っておるのであります。しかし、将来直す意思があるとおっしゃるから、これはあれですが、これはお直しにならぬと、さっきお述べになりましたような理論とこことではまるきり違った形のものが制定されようとしておると私は思う。これはたいへんなミスを、ミスじゃない、何かあるんでしょうが、とにかく表面的に言えば私はミスだとこういうふうに思うのであります。まあ、そういうことで、これについてももう少し述べたいが、皆さんお帰りになる時間があって、われわれはしまいのほうでなければ発言が許されませんので、まことにざんきにたえませんが、もう一つ、これは一言でいいからお答えをいただきたいと思いますが、特別会計というのがありますね。開拓者資金融通なんというのがある。特に開拓者なんという、あの弱い開拓者融資の特別会計資金ですね、特別資金、それについては今度金利を下げなかったという——私の勉強が不足なんでしょうが、少なくとも公庫の金利をこれだけお下げになるんなら、その方面の金利もお下げになったんだと思うが、今度どのくらいお下げになったのか、それをひとつお示し願いたい。
  175. 松岡亮

    政府委員松岡亮君) 前段の御意見、非常にごもっともでございますけれども、私ども流通加工面に対する対策ということで、金融対策の持ちます重要性ということをつくづく感じております。で、これは同時に組織論の問題もございますし、いわゆる総合農協、専門農協、それからものによっては会社組織にするとか、そういったいろいろな改善論があると思うのです。構造改善を進めるにあたっても、流通面あるいは加工面の近代化を進めて、農業構造改善を同時に進めるというやり方もないではないと思うのであります。そういう考え方も成り立ち得るのであります。確かに御指摘の点については今後十分に検討さしていただきたいと思います。  それから第二点の開拓者資金の問題、これは農地局の問題でございますけれども、今回は改正を確かに御指摘のように行なっておりません。で、昨年行なわれたわけでございますが、これは開拓者の負債の処理の問題もございまするので、それらも含めまして、なお検討いたしたいということにいたしております。
  176. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいまの問題に関連して最後に申し上げたいと思いますが、御答弁は要りません、ただ希望だけを申し上げておきます。今回の、ただいま議題になっております二つの金融関係のことですが、非常に御努力になって、貸し付け条件なり非常に緩和してけっこうだと考えておりますが、先ほどからお話を聞いておりますと、バランスの問題、金利の問題等でいろいろ問題になっているようでありますが、これも非常にわれわれ関心の的でございます。一番最後に堀本委員から申されましたこの二つの法律関係のない金融農林省でお世話になっているものがあります。具体的に申し上げますと、ただいまお話になりました開拓者資金融通の特別会計によるものもございます。これでも毎年、去年は三十億ですか、今年の予算では三十五億程度相当膨大な金が融資されますが、この二つの開拓者資金融通法に基づく融通金利というのは、ただいま問題になっている二つの改正法案のできる以前に開拓者の特殊性から見て、非常に安い有利な金融制度であったのであります。一方のほうは、こういうふうにだんだん改良されてくると、何だか取り残されるという気持がだんだん出てきますので、ある意味において農業政策のバランスの上に立たねばならぬと思いますが、これは先ほどお話のとおりに、予算編成のときに早々の間で十分手を尽くしておいでにならぬと思います。それから昨年の改正で一応金利は四分程度になりましたけれども、これも比較検討いたしますと、この二法案に比べてまだ不利だということが新事態として起こっておりますので、これは将来機会を見て、ほかの金融制度とバランスのとれる金利体系にお願いしたい。これは希望だけを申し上げておきます。
  177. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後五時十九分散会