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政府委員(齋藤誠君) ただいま提案理由の説明のありました甘味二法案につきまして、補足説明をさせていただきたいと存じます。
第一に、
甘味資源特別措置法案につきまして、補足御説明を申し上げたいと存じます。
第一章は、総則に関する規定でありまして、その第一条では、この法律の目的として、適地におけるてん菜及びサトウキビの
生産を
振興するとともに、てん菜糖工業、甘蔗糖工業及びブドウ糖工業の健全な発展をはかるために必要な
措置を講ずることにより、
農業経営の
改善と
農家所得の安定、
砂糖類の自給度の
向上及び
国内甘味資源の国際競争力の
強化に資することを目的とすることを定めております。
第二章は、てん菜及びサトウキビの
生産の
振興に関する規定であります。まず、第三条では、
砂糖類及び
甘味資源作物の
需要及び
生産の長期
見通しの策定について定めております。
農業基本法第八条第一項によりますと、
政府は、重要な農産物につき、
需要及び
生産の長期
見通しを立て、これを公表することとなっておりますが、この
甘味資源特別措置法第三条におきましては、
政府は、
砂糖類並びにてん菜及びサトウキビを
農業基本法第八条第一項に言う重要な農産物として、これらにつき、
農業基本法の規定により
需要及び
生産の長期
見通しを立て、これを公表すべき旨を定めているのであります。
次に、第四条から第十二条までにおいては、適地において、てん菜及びサトウキビの重点的な
生産の
振興をはかるための
生産振興地域の指定並びに
生産振興計画の策定及び実施に関する制度を定めております。第四条では、農林大臣は、一定の要件に該当する区域であって
農業経営の
改善をはかるためてん菜またはサトウキビの
生産を
計画的に
振興することが特に必要であると認められるものを、てん菜
生産振興地域またはサトウキビ
生産振興地域として指定することができることとし、その要件は第四条第一項の各号に列記しております。
第一号は、栽培に適する自然的条件が備わっているかどうかの点であります。第二号は、その地域における
農業経営の諸条件からみて、その
生産が安定的に増大する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、その判定にあたっては、その地域内の農作物の作付の体系、競合農作物の
状況、
農業労働条件その他の諸条件を勘案することとしております。これは、
甘味資源作物の
生産の着実な伸長のためには、単に自然的条件のみならず
農業経営上の諸条件が備わっていることが特に必要と
考えられるからであります。
第三号は、その地域におけるてん菜またはサトウキビの
生産数量が、てん菜糖または甘庶糖の製造
事業が安定的に成立するために必要な数量に達する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、てん菜及びサトウキビが砂糖原料作物であることから、これを原料とする製造
事業との結びつきを考慮しなければならないこと、また、第一条の目的に規定してあります
国内甘味資源の国際競争力の
強化という観点等から、その製造
事業も合理的な経営が可能となるものでなければならないこと等の理由により必要とされる要件であります。
なお、第四条第二項におきまして、農林大臣は、
生産振興地域の指定をしようとするときは、関係都道府県知事の
意見を聞くこととしており、さらに、第五条では、都道府県知事は、
生産振興地域の指定をすべき旨を農林大臣に申し出ることができることとしまして、
生産振興地域の指定につき都道府県知事の意向も反映され得るように配慮しております。
次に、第九条では、
生産振興地域の指定を受けた区域を管轄する都道府県知事は、毎年、関係市町村及び
農業団体等の
意見を聞いて、てん菜またはサトウキビの
生産振興計画をたて、農林大臣の承認を受けるとともに、その承認を受けたときは、その概要を公示することといたし、第十一条及び第十二条では、
生産振興計画の円滑な実施とその
計画の達成をはかるため、
政府は、
生産振興地域のある都道府県に対し、
生産振興計画の実施に要する
経費の一部を
補助することができることとするとともに、てん菜またはサトウキビの
生産者またはその団体に対して、助言、
指導、融資のあっせん等の援助を行なうよう努めることとしております。
第三章は、
生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造
事業に関する規定であります。第十三条では、てん菜またはサトウキビを原料として砂糖を製造する施設、すなわちてん菜糖工場または甘蔗糖工場を
生産振興地域の区域内において新たに設置するには、農林大臣の承認を要することとしております。この承認を必要とする製造施設の範囲は、政令で定めることとなっています。
この
生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造施設の設置の承認制を採用いたしましたのは、原料
生産の伸びに見合った秩序ある工場設置をはかり、その地域における
生産の
振興と
農家の利益の保護並びに製造
事業の健全な発展を確保する必要があるからであります。
したがって、承認の基準も、この必要性に即して設定しており、その主要点は、第十三条第二項第一号でありまして、その
生産振興地域におけるてん菜またはサトウキビの
生産の見込みと既設、新設をあわせた製造施設の原料処理能力との全体としてのバランスを見ようとするもので、その原料処理能力が、
先ほど御説明しました長期
見通し等から推定されますその地域における
生産の長期の
見通しに照らして著しく過大にならないことを要件としております。
なお、以上御説明しました第十三条第一項の承認は、
生産振興地域が定められた後に、新たに設置する製造施設についてのみ必要とされておりまして、既存製造施設については設置の承認を必要としないので、第十四条では、
生産振興地域の指定等があった際には、既存製造施設の設置者から必要な事項を届け出させることとしております。
第十五条では、第十三条の指定製造施設の新設についての承認を見合って、指定製造施設の変更についても農林大臣の承認を要することとしています。
次に、第十八条では、製造施設の承認制を採用したこととも関連いたして、
生産振興地域内における
農業経営の
改善と
農家所得の安定をはかるため、農林大臣は、地域内の製造
事業者に対し、てん菜またはサトウキビの買い入れの
価格その他
生産者との取引の条件及び方法、原料集荷区域等に関し必要な指示をすることができることといたしておりまして、これによる製造
事業の適正な運営の確保と、あとで御説明しますてん菜及びサトウキビの
価格支持制度の運用と相まって、
農家の利益保護に遺憾なきを期することといたしております。なお、この指示をしたときは、これを公表するものといたしております。
また、第十九条では、第一条の目的にも規定してあります
国内甘味資源の国際競争力の
強化という観点等から、地域内の製造
事業の
合理化を促進するため必要があるときは、農林大臣は、地域内製造
事業者に対し、経営の
改善、
事業の休止、経営の共同化等の
措置をとるべき旨の勧告をすることができることとし、その勧告に従い所要
措置をとる者に対しては、融資のあっせん等、必要な援助を行なうようつとめることといたしております。
次に、第四章は、
生産振興地域内におけるてん菜及びサトウキビの
生産者価格の支持とてん菜糖及び甘蔗糖の製造
事業の健全な発展を確保するためのてん菜糖及び甘蔗糖の
政府買い入れの制度を定めております。御承知のとおり、
政府は、従来より、てん菜
生産振興臨時
措置法に基づくてん菜の
価格支持及びてん菜糖の
政府買い入れの制度を実施してまいりましたが、この法律におきましても、同様の制度を取り入れますとともに、あわせて、サトウキビの
価格支持及び甘蔗糖の
政府買い入れについても同様の制度を採用することとし、これら
甘味資源作物の
生産の
振興と
国内産糖製造
事業の健全な発展に遺憾なきを期することといたしたのであります。
第二十条では、てん菜糖又は甘蔗糖の
政府買い入れは、砂糖の
価格が第二十三条第一項により定められているてん菜糖または甘蔗糖の
政府買い入れ
価格より低落した場合において必要があるときに行なう旨を定めております。これが
政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、当面の諸事情を考慮し、附則第二条第一項において、当分の間、本則第二十条による
政府買い入れのほか、地域内製造施設の新設の当初において、その
事業者が原料集荷等の面で受ける著しい不利を補正する必要がある場合その他政令で定める
特別の事由がある場合において特に必要があるときにも、
政府買い入れを行なうことができることといたしております。
次に、第二十一条では、これらの
政府買い入れの
対象となるてん菜糖又は甘蔗糖の範囲を定めており、
政府買い入れの
対象は、
生産振興地域内において
生産されたてん菜またはサトウキビを原料としていること、これらの原料は、最低
生産者価格を下らない
価格で
生産者から買い入れられたものであること、これらの原料から地域内製造施設により製造されたてん菜糖又は甘蔗糖であって、一定の種類、規格及び
生産年のものであることとされております。なお、先に御説明いたしました附則第二条第一項の
政府買い入れを行なう際の買い入れの
対象につきましては、同条第四項において、
生産振興地域外の農林大臣の指定する区域内において
生産された原料から製造されたもの及び地域内製造施設以外の農林大臣の指定する製造施設により製造されたものをも買い入れることができることといたしております。
第二十二条では、てん菜及びサトウキビについての最低
生産者価格の制度を定めております。すなわち、農林大臣は、てん菜及びサトウキビごとに、その出産者販売
価格の最低基準となるものとして最低
生産者価格を定めることとし、この最低
生産者価格は、
農業パリティ指数に基づき算出される
価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌し、てん菜及びサトウキビの再
生産を確保することを旨として定めるものといたしております。
第二十三条では、第二十条によるてん菜糖又は甘蔗糖の
政府買い入れの
価格を定めており、その
価格は、最低
生産者価格に標準的な製造、販売の費用を加えて得た額を基準とし、第十八条により
生産者取引
価格につき指示した場合には、その指示事項を参酌して、農林大臣が定めることとしております。なお、附則第二条第一項による
政府買い入れの際の
価格は、同条第二項により、最低
生産者価格に標準的な製造・販売の費用を加えて得た額を基準とし、その原料たるてん菜またはサトウキビの
生産事情、集荷事情その他の経済事情を参酌して定めることといたしております。
次に、第五章は、
国内産ブドウ糖の
政府買い入れの制度及びブドウ糖製造
事業者に対する勧告に関する規定であります。
御承知のように、
政府は、従来より、農産物
価格安定法によるイモでん粉の
政府買い入れを通じて、カンショ及びバレイショの
生産者の
所得の安定をはかるとともに、イモでん粉の新規用途としての結晶及び精製ブドウ糖の製造
事業を
育成するための諸
施策を講じてまいったところでありますが、今後におきましても、農産物
価格安定法の適切な運用をはかることにより、イモ作
農家の
所得の安定に遺憾なきを期してまいることは言うまでもないところでありますが、この際、糖価の変動に対処してブドウ糖の
生産を維持することにより、でん粉の原料となる
国内産のカンショ及びバレイショの長期的な
需要の確保をはかるとともに、あわせてブドウ糖工業の
合理化を促進するため、
国内産ブドウ糖の
政府買い入れの制度を設けることとしたのであります。
第二十四条では、
国内産ブドウ糖の
政府買い入れは、砂糖の
価格が著しく低落した場合において
国内産ブドウ糖の
生産を維持して、その原料でん粉の原料となる
国内産のカンショ及びバレイショの
需要の確保をはかるため必要があるときに行なう旨を定めております。これが
政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、附則第三条第一項において、当分の間、本則第二十四条による
政府買い入れのほか、
国内産ブドウ糖の製造
事業の
合理化を促進するため特に必要があるときにも、
政府買い入れを行なうことができることといたしております。
第二十六条では、第二十四条による
国内産ブドウ糖の
政府買い入れの
価格を定めており、その
価格は、農産物
価格安正法のカンショでん粉の買い入れ基準
価格及び運賃その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造・販売費用を加えて得た額を基準として、農林大臣が定めることといたしております。ただし、附則第三条第一項による
政府買い入れの際の
価格は、同条第二項により、カンショでん粉の買い入れ基準
価格及び運賃その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造、販売費用を加えて得た額を基準とし、でん粉の
需給事情その他の経済事情を参酌して定めることといたしております。
第二十七条では、
政府が買い入れた
国内産ブドウ糖は、随意契約により売り渡すことができる旨を定めております。
政府が買い入れた物資は競争入札により売り渡すのが会計法の原則でありますが、ブドウ糖はその保管の可能な期間が短い等の事情があり、買い入れ後すみやかに売り渡す必要がありますので、随意契約による売り渡しの規定を設けたわけでございます。
また、第二十八条では、第一条の目的にも規定してあります
国内甘味資源の国際競争力の
強化という観点等から、
国内産ブドウ糖の製造
事業の
合理化を促進するため特に必要があるときは、農林大臣は、ブドウ糖製造
事業者に対し、経営の
改善、経営の共同化等の
措置をとるべき旨の勧告をすることができることといたし、その勧告に従い所要の
措置をとる者に対しては、融資のあっせん等必要な援助を行なうようつとめることといたしております。
第六章は、
甘味資源審議会に関する規定であります。この法律の制定を機会に、広く学識経験者の御
意見、御協力を得て、
甘味資源に関する行政の適正を期するため、農林省に、
甘味資源審議会を設置することといたしております。
甘味資源審議会は、農林大臣の諮問機関として、てん菜及びサトウキビの
生産の
振興、てん菜糖工業、甘蔗糖工業、ブドウ糖工業及び精糖工業の
合理化その他この法律の実施にあたっての重要事項を
調査審議するとともに、これらの事項に関して、農林大臣及び関係各大臣に建議することができることとなっております。
第七章及び第八章では、報告徴取等及び罰則に関し所要の規定を設けております。終わりに附則でありますが、重要な規定もございますので、その主要点を御説明いたします。さきに御説明しましたてん菜糖及び甘蔗糖の
政府買い入れの特例とブドウ糖の
政府買い入れの特例につきましては、それぞれ附則の第二条と第三条で、
政府買い入れをすることができる場合と、その際の買い入れ
価格を定めております。
次に、この法律によるてん菜糖、甘蔗糖及びブドウ糖の買い入れ及び売り渡しの会計処理につきましては、附則第六条で、食糧管理
特別会計法の一部を改正し、同会計に
砂糖類勘定を設け、これら
砂糖類の買い入れ売り渡しは
砂糖類勘定において行なうこととして、
砂糖類の買い入れ売り渡しによる損益を明確にすることといたしております。なお、この食糧管理
特別会計制度の改正は、
予算の編成及び執行との関係もありますので、附則第七条で、
砂糖類勘定の設置は、
昭和三十九年度分の
予算から適用することとし、三十八年度分は、農産物安定勘定で処理することといたしております。
最後に、附則第八条の農林省設置法の一部改正は、
甘味資源審議会の設置に関連しての規定であります。
以上をもちまして
甘味資源特別措置法案の補足説明といたします。
なお、以上の補足説明に関連いたしまして
甘味資源特別措置法案に対します衆議院における通過の際、一部修正が行なわれましたので、便宜私から御説明いたしたいと存じます。
衆議院におかれては、
甘味資源作物の
生産振興に関する
施策の推進に資する趣旨のもとに、法案に都道府県
甘味資源作物
生産振興審議会に関する規定を追加修正され、
生産振興地域のある都道府県は、都道府県知事の諮問に応じ、
甘味資源作物の
生産の
振興に関する重要事項を
調査審議させるための機関として、条例の定めるところにより、都道府県
甘味資源作物
生産振興審議会を置くことができることとされたのであります。
以上が、衆議院修正の趣旨内容でございます。
次に、
沖繩産糖の
政府買い入れに関する
特別措置法案につきまして若干補足して御説明申し上げます。
現在国会において御審議を願っております
甘味資源特別措置法案におきましては、糖価が低落した場合において必要があるときは、
国内産糖保護のため所要の
政府買い入れを行なうことができることといたしておりますが、御承知のとおり、沖繩については、現在わが国に施政権が存しないため、同法案が成立いたしましても、これを沖繩に適用することはできないわけであります。そこで、今後における著しい糖価低落が沖繩のサトウキビ
生産者に及ぼす影響に対処して、その
農業経営の
改善と
農家所得の安定に資するため、
沖繩産糖につき
甘味資源特別措置法案による
国内産糖の
政府買い入れの
措置に準じ、
政府が買い入れる道を開くため、
特別立法を行なうこととした次第であります。
この法案の第一項におきまして、沖縄産糖が輸入された後において、その製造
事業者またはその者からの
委託を受けて、その
沖繩産糖を本邦に輸入した者から買い入れることといたしておりますのは、右のような施政権の問題を考慮して、このような方式をとったものであります。
現存沖繩におきましては、
昭和三十四年に制定されました糖業
振興法により、サトウキビの
生産振興、製糖業及び製糖施設の規制、サトウキビの最低
生産者価格の決定等の
措置が講じられておりますので、この法案による
政府買い入れ
措置と沖繩におけるこれらの制度の適正な運用と相まって、サトウキビ
生産者の保護に遺憾なきを期することができると存じます。
また、第三項におきましては、
沖繩産糖の
政府買い入れ
価格は、
甘味資源特別措置法本則の規定により定められている
国内産甘蔗糖の
政府買入いれ
価格および沖繩におけるサトウキビの
生産事情、
沖繩産糖の製造事情等を参酌して定めることといたしております。沖繩におきましては、その自然条件が奄美諸島等に比しサトウキビの栽培に有利であるところから、
昭和三十七−三十八年におきまして、サトウキビの平均反収は、奄美諸島等が六・一トンであるのに対し、沖繩は七・八トンであり、分蜜糖一工場当たりの原料処理量は、奄美諸島等が約二万六千トンであるのに対し、沖繩は約九万七千トンとなっている等、
沖繩産糖のコストは
国内産糖に比し著しく低廉であると認められますので、
国内産糖に対する保護との均衡の点をも考慮して、これらの諸事情をも参酌して
政府買い入れ
価格を定めることとしているわけであります。
なお、附則第二項及び第三項におきましては、
沖繩産糖の
政府買い入れは、
甘味資源特別措置法案による
砂糖類の
政府買い入れと同様、
昭和三十八年度においては食糧管理
特別会計農産物安定勘定において、
昭和三十九年度以降は、同会計
砂糖類勘定において行なうことと規定しております。
以上をもちまして、
沖繩産糖の
政府買い入れに関する
特別措置法案の補足説明といたしたいと思います。
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