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1964-03-05 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月五日(木曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            櫻井 志郎君            森 八三一君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            木島 義夫君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大河原一次君            大森 創造君            小宮市太郎君            矢山 有作君            安田 敏雄君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    公正取引委員会    委員長     渡邊喜久造君    農林政務次官  松野 孝一君    水産庁長官   庄野一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小漁業融資保証法の一部を改正す  る法律案内閣提出)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまより委員会を開きます。  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は、御発言願います。
  3. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 一般中小企業といいますか、漁業でなくてそういう方面についての保証制度の中で、地方信用保証協会というのを設立して、大体地方自治体中心になってこれはやっていると思っておりますけれども、これには個人の何といいますか出資、あるいは組合出資等がないように考えておりますが、これは直接水産庁とは関係はないと思いますけれども、それはどういうようになっておりましょうか。
  4. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 中小企業融資保証関係でございますが、これはただいま御指摘のように会員制をとっていない組織でございまして、それにつきましては、信用保証協会というものをつくって、そこには地方公共団体が大体九〇%程度出資、それから金融機関その他であと一〇%程度、そういうふうにいたしておりまして、そこにはやはり中小企業という資格があれば、だれでも申し込みができる、そのかわり選別される、こういうような関係になっております。
  5. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 一般中小企業商店等の場合には、組合あるいは個人出資がなくて、地方公共団体あるいは銀行が一部出資をして保証をする、こういうようになっているのですが、漁業の場合もそういうような方途はとれないものか。まずそれからちょっとお伺いいたしたいと思います。
  6. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これは制度出発の当時議論されたところでございますけれども、これにつきましては、会員制出資制をとる。それにつきまして、地方団体それから利用する団体、あるいは個人出資ということで、いわゆる助け合いの制度、こういうことになっておるわけでございます。地方公共団体がこういうものに出資するにつきましては、やはり協会管轄区域を所管いたします県がそういう負担軽減という意味もありまして、地方公共団体出資する。で、地方公共団体は都道府県と町村、こういった形になっております。助け合い制度というシステムでございまして、それにつきまして国が保証債務保険するという、国の援助といいますか、そういったシステムになっておるわけでございます。そういう関係におきまして、やはり助け合い制度というたてまえをとっておりますので、会員出資制、こういう制度をとったわけでございます。
  7. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 国が保険債務をとったという点については、これはけっこうだと思うのですが、しかし、やはり地方的に沿岸漁業の業態というのは、さまざまだと思うのですが、もっと、この御趣旨のように円滑に金融の道を開くということになれば、中小企業における信用保証協会のような制度を十分これに取り入れて、決していまの中小企業に関する保証協会そのものが、保証制度そのものが万全とは私は思っておりません。非常に保証料も高いという非難もあります。万全とは思いませんけれども、しかしそういう制度を取り入れて、さらに沿岸漁業という零細性といいますか、そういうものを考慮されてやっていくというようなお考えはございませんですか。
  8. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 農林関係におきまするこういう信用保証制度は、農業関係もございますし、あるいは林業関係もございます。また、開拓の関係もございます。いずれもやはり会員出資制度、こういう制度制度が設立されておるわけでございます。御指摘のような点、非常にこの制度の根幹に触れる問題でございますし、またせっかく軌道に乗って動いておりますし、ただいまも御審議願っているように、零細漁民には、出資しなくても、そういった組合出資会員であれば、保証利用者となり得るというような道もこれから開いていくわけでございますので、そういう面でさらに運用して、そうして事故率等も勘案しながら、保証料引き下げ、それから保証ワクの拡大、そういうものをはかっていくのが至当じゃないかと私は考えております。
  9. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 保証料の点については、ちょっと私も資料なしで申し上げたから、少し高いと言いましたけれども、資料によるとそう高いようでもないようです。そこでこれは訂正いたします。  そこで、金利の差ですね、金利差は一体どうなっているのですか。いまの保証協会と今度政府で出してある、保証される基金協会金利差といいますか……
  10. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 金利差という御質問でございますが、これは協会ごと保証料の差の御質問でございしょうか。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっと、お聞きしたいのですが、中小漁業融資保証制度によって借り入れをやった場合の金利と、その保証制度によらないで借り入れた場合との金利の差というのは、実際にはどのくらい出ておりますか。
  12. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この保証制度によりまして金融を円滑にいたす趣旨は、法の目的に書いてございますように、やはり中小業者特に零細な漁業者等で、人的担保物的担保に乏しい、そういう関係でなかなか金融ベースに乗りにくいような面に信用の補完をするというのがシステムでございます。そういう意味から言えば、金融機関の側からいえば、危険な率の多い相手金融するその場合にこの制度保証するということになるわけでございます。それで一面この保証をいたしますれば、そういう面においては、金融機関は安心ができる、こういうことになるわけでございまして、純粋に言えば、そう金利に差は設けられないというのが通常でございますけれども、やはりこういう国が保険までいたしている制度保証するのでございますから、指導といたしましては、その保証をつけた場合には、多少でもそのもとの債権金利を下げるように、こういう指導をいたしております。それで系統資金等では、農林中金では、プロパー日歩二銭三厘程度になりますが、これについては五毛程度引き下げる。二銭三厘でございますから、二銭二厘五毛というふうに大体引き下げられております。それから信漁連あたりが貸します場合は、プロパー日歩が二銭五厘というのが、これはいろいろございますが、二銭三厘程度になるのがまあ一番多い、こういうふうに聞いております。あるいは二銭六厘で貸しているところは二銭四厘になったりしているところもございますが、大体信連関係は二厘程度引き下げられる、こういう状態でございます。地銀についてもこれはいろいろ差がございますし、先般も私が申しましたように、私の経験では、県のあっせんによってできるだけ引き下げるという指導をいたしております。佐賀あたりでは二銭八厘程度、二銭四、五厘、こういったように引き下げられるところもございます。そういうことで今後もこの保証制度に乗るものについて、本来自体がやはり相当信用力の薄い相手でございます。なお負担のほうから申しまして、やはり信用制度債権保証されているわけでございます。安全だという面から、こういう引き下げ指導を今後とも進めていきたい、こういう考えでございます。
  13. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 関連して。いま伺ったことによるとですね、単位漁協ですね、プロパー融資が二銭三厘という御答弁でしたが、二銭三厘といえば、年利は八分四厘、プロパー融資としてはきわめて理想的な貸し出し平均金利だと思うんです。最高最低がどうなっているのか。平均の二銭三厘の内訳をぜひ伺いたい。というのはですね、漁業よりも先駆的な機能を発揮しているというはずの農協が、プロパー融資は三銭前後にまだ低迷している実態です。これは村の農協貸し出し金利ですよ、三銭程度である。指導的には三銭八厘あるいは二銭五厘の農業手形融資を基準としてさらに組合員金利の低率によるサービスを指導しているのが実態ですが、それが漁業協同組合信用事業において、日歩二銭三厘というのは、これは非帯に注目すべきすぐれた機能を発揮しておるわけですから、その平均値の二銭三厘を中心として最高最低プロパーでどういう貸し出し金利になっているか、 これをちょっともう少し詳しく伺っておきたいと思う。
  14. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) いま御質問になりましたのは、信漁連でございますね。
  15. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いや、村の場合が二銭三厘と言ったでしょう。
  16. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) いいえ、先ほど申しましたのは中金のプロパーが二銭三厘、それから信漁連県単位信漁連金利につきましては、これは全国でバラエティーがあるわけでございますが、プロパーで二銭五厘あるいは二銭六厘、で、二銭五厘が大体多いわけでございます。それから二銭六厘、それから高いところで二銭七厘、そういったのが信漁連貸し出しのマージンでございます。それから、これがさらに系統資金でございますから、町村漁業協同組合にまいりますと大体三銭前後ということに相なるわけでございます。
  17. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私は、最後になると思いますが、地方自治体水産行政ですね、これはたいへんいろいろな困難な問題を持っておるわけです。といいますのは、地方自治体で取り扱いますものは、ほとんど沿岸漁業といってもいいわけですが、しかし、従来から政府沿岸から沖合いに、沖合いから遠洋にというようなことで漁業政策というものが行なわれてきた。ところが、最近は特に外交的な問題もありましょうし、特に福岡県等では李ライン等の問題が非常な関連を持ちまして、これは福岡県のみではないと思いますが、かえって漁業は外から内のほうへという、沿岸漁業のほうへ逆に侵入しているという形が私はあるのではないかと思う。したがいまして、地方自治体水産行政というのは、そういう意味では非常に零細漁民からの求めが多いと、しかしながら、財政的には非帯に余裕がないと、こういうことで苦しい行政をやっておると、私はこう見ておるわけです。したがって、地方自治体等零細漁民をどう救っていくかということが、第一の重点にした水産行政になっている。しかし、最近は大漁業会社などがおかに上がってきて鶏を飼おうという時代です。漁業関係にいたしましても、まあ養業といいますか、養殖業等にいたしましても、大きな会社の進出が、侵入といいますか、そういうものが目に見えている、こういうわけです。そうしますと、零細漁民は、金融の点では円滑化をはかる、あるいはそういうものを救済するための措置が法律的にはとられたかのように見えるわけです。しかし、実際に借りたいもの、借りて経営を打ち立てていこうという人に対しては、なかなか円滑な金融が行なわれない。これは農業においてもそうと思うのです。かなりゆとりのある人のほうがもちろん担保力もあるし、余裕がございますから、そっちのほうには金融が円滑にいくけれども、ほんとうに借りたい人といいますか、そういう人にはなかなか回ってこない、こういう点がございます。かてて加えまして、終戦後水産業協同組合法が先に出て、そうしてそのあと漁業法が出ると、こういうようになってまいりまして、漁業協同組合民主化というものが完全に行なわれないで今日きているということから、再三私が当初御質問申し上げましたように、零細漁民というのはいつも締め出しを食うという傾向があるわけです。そういうものを公平に救っていくといいますか、漁業権を公平に与えていくという上では、漁業調整委員というものは非常な役割を果たす、そういう民主的な制度だと思うのであります。ところが、今年は八月ですか、全国一斉に漁業調整委員選挙が行なわれるのですね。たしか八月じゃなかったかと思いますが、八月に行なわれるようになっていますがこれが行なわれることに対して、水産庁長官のお考えですね、これを承りたいと思います。というのは、この昭和三十九年度における沿岸漁業等について講じようという施策の中の四ページに、漁業調整という項があるのです。それに簡単に二、三行ほど書いてあるのですが、それではあんまり簡単過ぎますので、私は、さっき申し上げましたような私は考えを持っているのですが、長官の御所見を承っておきたいと思います。
  18. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この沿岸漁業につきましては、県が行政の第一線といたしまして非常に御苦労願っていることは、十分承知いたしております。われわれといたしましても、水産業につきましては、御指摘のように、沿岸漁業の問題、国際漁業の問題、いろいろ問題が山積いたしております。中央においては国際漁業の問題が各国との漁業交渉等で日本の立場を主張すると、こういうことに相なりますし、またそういう面の解決のしかたいかんは、特に日韓漁業交渉等におきましては、沿岸漁業自体にも至大の影響を及ぼすわけでございます。そういう点については、十分われわれも覚悟をきめて交渉に当たっておるわけでございます。  なお、沿岸漁業に対しまして国際漁業的なもののしわ寄せがくるのじゃないかという御指摘でございますが、これについては各県とも、やはり国際漁業というふうではなしに、いわゆる漁業調整という形で遠洋に出まする底びきだとか、あるいはまき網といった沿岸漁業操業区域というものを調整いたしまして、底びきの禁止の線、あるいはまき網禁止の線というものを、調整の上において沿岸漁業を保護する上において設定いたしておるわけでございます。そういう面でも、沿岸漁業の安定というものは、今後とも漁業法の運用によりましてやっていかなくちゃならぬと思います。そういう場合に漁業調整委員会というものの果たす役割りというのは、非常に御指摘のように重要でございますし、また御指摘のように今年改選期を迎えているということに相なるわけでございます。われわれといたしましては、この調整委員職務重要性ということで、沿岸漁民の真の声が反映されるようなりっぱな人の選出されることを期待しておるわけでありまして、選挙については、公職選挙法によって厳正に行なわれるということに相なるわけでございますが、要はやはり沿岸漁民自覚して、自分らの意思を代表する人を出してもらうということでございますが、やはり繰業の実態から、その選挙日に出漁するとかなんとかいうようなこともございまして、そういう面の自覚をよく促したい、こう思っております。われわれといたしましても、県におきまする漁業調整委員会、それから中央にありまする中央漁業調整委員会のメンバーについては、その任務重要性にかんがみ、りっぱな人の出ることを常に期待し、またそういう点を要求しているわけでございます。
  19. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 海区における漁業調整委員というものは、相当さっきの紛争等があって、仕事は多いんじゃないかと思うんです。それで片方生業を持って、ひまのときにやるというような簡単な職務じゃないように思うんです。職務量から言って。ところが、その手当と申しますか、収入といいますか、そういうものは非常に少ないんじゃないかというように私は思っておりますが、この点について全国的な視野から考えてどういうようになっておりますか、ちょっとお伺いしておきたい。
  20. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、漁業調整委員任務は重要でございます。これにつきまして、非常にお忙しい中にこういった重要な任務をお願いするわけでございますが、現在におきましては実費弁償という形で、この委員手当というものを支給いたしております。なお、その手当の問題につきまして、非常に漁業が低かったというようなこともございまして、三十九年度はこれにつきまして是正していくという方向で、十分ではございませんが、委員会会長は七百五十円、委員は七百円と——一日当たりでございますけれども、前年は会長が四百五十円と非常に低いのでございますが、恐縮でございまして、四百五十円を七百五十円にする、それから委員の方は四百円を七百円に、三十九年度から多少でも引き上げるということをいたしております。まだ十分ではございませんが、農業との格差もございまするので、そういう点、今後とも努力していきたい、こういうように考えております。
  21. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かにいまおっしゃるとおり、予算面を見ますと、ほんとうにわずかこの漁業調整補助費というのが予算上ふえているようです。おっしゃるとおり四百五十円が七百五十円になった。しかしこれは一日ですから、これが幾日組んであるのか、これはまた問題なんですね。なかなかこの一日は七百五十円であっても、それが月に一回出るとかあるいは二月に一回出るとか、そういうわずかの日数では、これは平均すればほんとうにわずかなものになっちゃう。そうしますとね、どうしてもほんとうに声を反映するような調整委員が出るかというこういう心配があるのです。と申しますのは、当初私が質問したかと思いますが、漁業協同組合組合長がほとんど出るわけですね。で、あとは、組合長でないのは、ほとんど学識経験者だから、ほとんど一般雰細漁民の声というのが、なまで通っていかないというそういう心配を持つわけです。これは漁業者であればだれでも立候補できて、調整委員になることができまずから、法律上は間違っていないと思いますけれども、問題はおっしゃるとおり自覚に待って運営を民主的にやる、こういうことに尽きると思います。そういう点を啓蒙といいますかね、この講じようとする施策の中には、啓蒙ということを書いてあるのです。啓蒙指導を行なうというのは、一体どういうことを指摘されておりますかお伺いしたいと思います。
  22. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この委員あるいは会長手当というものの性格でございますが、やはりこれは十分支給できたにこしたことはございませんが、これで自腹を切るということのないようにはいたしたいと思っているわけでございますが、御指摘のように、やはりりっぱな人に出てもらうということのためには、この手当が多いから立つとかそういう性格のものじゃないと思います。まあ、自腹を切るとかいうことのないように措置して、りっぱな人に出ていただきたいと、こういうふうにわれわれは考えて、それについては農業並みにということで逐次これは引き上げていこう、こういう考えでございます。  なお、漁民啓蒙指導というものにつきましては、やはり協同組合自体考えなくちゃならぬことかと思いますし、まあ、県等を通じまして十分啓蒙指導はいたしております。私の経験で申しますと、私も府県の部長をやったことがございますが、私自身やはり船に乗りまして、漁村を回って、漁民に、近く調整委員選挙がある、いい人に出てもらいたい、選んでもらいたいということを、漁民を集めたり、あるいは船からマイクで呼びかけたりした経験もございますが、そういったようなことも十分県がやっているわけでございますが、なお、そういう点について足らない点があれば十分指導したい、こう思っております。まあ、その点が大体中心になろうかと思います。
  23. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かに収入が多いから委員になろうなんていうそういう人は、まず私はないと思いますが、収入が少ないから本業に打ち込まなければならぬという、それはまあ非常に零細な漁民の人は、結局生活に間に合うといいますか、生活が十分立つだけの収入を得られないので、つまり出てこない、こういうことを私は言っているわけです。そういう意味で、もう少しその収入を増してやって、出られるようにしたらどうかという意見を申し上げたわけです。  それから啓蒙指揮長官のおっしゃるような指導も確かに県の行政の上からやっていると思います。ところが、逆なことも私は例を持っておるわけであります。と申しますのは、組合長が立候補いたしますから、その組合員が立候補する場合には非常な問題といいますか、ややこしいことが起きてくる。中には自分の属しておる漁業協同組合運営を批判する、そういう意味で立候補する、そうすると漁協の内部を撹乱し、漁協に不利な行動をしたという理由のもとに除名ないし罰則を与える、こういう事例を私持っておるのです。はっきりしたものをお出ししてもよろしゅうございます。そういうことが逆に行なわれておる、非常に出にくいと、片一方、そういう啓蒙をなさっても、片一方において組合長が出るから、ほかの者が出られないというきびしさがあるわけです。そういう点は一つの例でございますが、そういうことを今後もっと民主的に委員が出られるように御指導願いたいと思います。  それから地方自治体等予算が足りない足りないと、これはどこでも言って水産行政がうまくいきませんのですが、予算の足りないということになると、結局監督行政というものが強められていく結果に私はなるのじゃないかと思うのです。もちろん、特に国の政策として沿岸漁業の振興に相当予算をつけていただいて、あるいは起債を考えていただいて、漁礁をつくったりいろいろやりましたのですけれども、しかしまだまだ零細漁民の要望というのを満たすだけのものになっておらない、そういたしますと、初めから私は何回も申し上げますように、監督行政というものが非常にきびしくなる、零細漁民締め出しを食うという、そういう悪循環が起きてくるわけです。そういう点について、特に今後水産庁といたしまして、地方水産行政に対する指導の強化といいますか、そういうものを十分やっていただきたいということを要望いたしまして私の質問を終わります。  最後に、水産庁長官の私のいままで申し上げましたことについての御所見を伺っておきたいと思います。
  24. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御質問のとおり、制度的には民主化される道が開かれておるわけでございますが、漁村実態から、なかなかやはりそういうふうに制度が十分動いていない、こういうような御指摘が再々あるわけでございます。われわれといたしましては、やはり今度の制度改正等も、やはりそういう零細漁民に均てんする機会を広く与える、まあそういう趣旨でございます。なお、水産業協同組合法なり、あるいは漁業法なりそれぞれ改正してまいっている点も、やはり漁業権等民主化なりそういう点のほうを主眼にいたしながらいたしておるわけでございますが、そういう制度運営面における法改正がねらった目的どおり動くように、そういう指導は、御指摘のとおり、今後とも各般のルートなりあるいは施策等を通じましていたしたいと存じます。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 いま御答弁いただいた中で、信漁連融資の場合二銭五厘、それを二銭三厘になるように指導していくと、こうおっしゃったわけですね。それに今度は保証料日歩二厘ないし六厘ついてくるわけですね、融資保証の場合には。そうすると、これは年利に換算すると九分から一割をこえてくるくらいな利子負担になるわけです。これと中小企業ですね、ということは、農林漁業中小企業でなしに一般の商工業関係中小企業、それの金利との差はどういうふうになるか、これをもうひとつちょっとお聞きしたいのですが。
  26. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 現在のところ、中小漁業融資保証制度におきましては、保証料は二厘ないし六厘ということで、大体平均いたしまして四厘のところが多いわけでございます。なお四厘より下がっているところもございますが、大体四厘前後と、こう御承知願ったらいいだろうと思います。それからそれだけ一般の親債権金利に上乗せになるわけでございます。そういう関係で、先ほどお答えいたしましたように、親債権のほうの金利を、保証制度のついたものについては債権保証されるという利益がありますので、金融機関も下げてやる、こういうことで下げる指導をいたしておるわけでございまして、先ほど申しましたように、二厘ないし三厘といったようなふうに下がっておるわけでございます。その点は今後とも指導してまいりたい、こう思っております。それから中小企業信用保証につきましては、一般的に大体五厘というふうに保証料は承知いたしております。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 私のことばがちょっと足らなかったかもしらぬと思うのですが、中小漁業融資保証制度を活用してやった場合に、保証料を加えていくと九分から一割と言いましたが、金利負担が一割近いかあるいは一割をこえてくるわけですね、そういうふうになっているわけです。それと商工業関係中小企業保証制度を活用した場合のその金利負担との関係がどうかということをちょっと聞いたわけです。それはそこへ資料がございませんか。
  28. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 中小企業信用保証制度は、先ほど申しましたように、一般的に保証料五厘、それで、それが大体中小企業につきましては市中銀行等から融資される場合に保証するということで、その五厘が上乗せになるわけでございますが、一般市中銀行の金利は、保証のためにこれを引き下げているというような特例はほとんど見受けられません。で、一般金利というと、やはり一割、大体一割程度と思いますが、それに上乗せになると、こういうふうに承知いたしております。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 それで、これは審議に問に合わなかったのでちょっと都合が悪いのですが、まあ次の何かの機会に審議に使いたいと思いますのでね、ひとつ資料として出していただきたいのは、いままで出していただいておる資料では各階層別に、階層別にどういうふうな保証がなされておるかという資料はないのです。
  30. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 階層というのは、どういうことですか。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 というのは、たとえばこの融資制度の対象になっているのは、「漁業を営む個人」、「漁業を営む漁業協同組合」、「漁業生産組合」、それから「漁業を営む法人であってその常時使用する従業者の数が三百人以下であり、且つ、その使用する漁船の合計総トン数が千トン以下」と、こうなっていますね。
  32. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 対象ですね。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 その場合には、保証対象の漁業経営の規模ですね。それによって相違があるわけです。たとえば無動力漁船漁家の場合、あるいは三トン未満の漁船漁家の場合、三トンから五トン未満の漁船漁家の場合と、あるいは五トン以上十トン未満の漁船漁家の場合と、こういうふうに分けることができると思うのですね。それに対する保証の実情ですね、実績。保証の実績を資料に——あるならばまあそこで説明していただいてもよろしいが、なお提出をしていただけたらと思うのです。  それと、それに合わせて、保証の申し込みをし、それに対してどの程度の割合で保証してやったか。いわゆる保証申し込み件数と、それから実際に保証した件数、こういったものも合わせて分類して出していただけたらと、こういうふうに考えます。
  34. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 資料のほうでございますが、現在までは、この協同組合からの転貸という形で、協同組合金融機関との問に保証をするということで動いておりますので、その転貸先がどういう階層だったかという資料はつかめないわけでございます。で、御要求のような資料は、現在は出せないと思います。今後の運用で、法改正になりましてから今度は協同組合金融機関になりまして、そこから組合員に貸していくということになりますれば、その階層別のものはいまから準備してかかれば、動き出しましてからとっていけると、こういうように考えます。過去の、現在の分につきましては、転貸だけでございますから、ちょっといまのところはそういうものを出すことは不可能だと存じております。それからもう一つ、申し込み件数に対して保証をつけた件数はどうかということは、渡辺先生から御要求があったわけでございますが、そのときお答え申しましたように、事前によく資格審査等をいたしますので、大体資格に合ったもの、業務方法書等で規定しております資格に合ったものということで、話し合いを中でやっておりまして、それで上がったものは全部保証がつく、こういうような形になりまして、拒絶したというものはございません。いわゆる中小企業のほうは、申し込んで、そしてその保証ワクとか、そういうものがたくさんございますので、そこでとると、こういう形になっておりますけれども、組合内のことでございますので、よくそこで、組合内で事務当局と話し合って、協会の業務方法書に適格したものならばそのままあげるということになって、それはみな協会保証がついてあるわけでございます。拒絶したものはない、こういうふうにお答えしたいと思います。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 それは漁業協同組合から転貸した分については、まあほんとうなら資料ができるのがほんとうだと思うのですが、それは非常に困難だということになりましても、出資をしている会員というものがありますわね、個人として……。それの階層分類というものはできるはずなんです。それから法人の場合も、これは階層に分けて分類して、保証の申し込みと、実際にどれだけ保証してやったか、これはつかめるはずなんです。
  36. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ついでに関連して。その答弁の前に、金融機関から転貸で出しているから間接的な保証という形ですからないといえば、ないでしょうけれども、私はこの融資制度というもを前向きに、今度法律が改正されるにあたって、そういうところの、いま答弁の中に触れたように受信力がきわめて稀薄な零細な漁船漁家、そういうものにこれらの保証機能をあまねく普遍的に拡大していこうというときに、実態把握なしに一体どうしてこれが前向きに機能が活用できるのですか。たとえば、これは私は午後に大臣にも伺うのですが、かなり精力的に一年もかけて調査をした漁家の負債調査を見ても、なかなか零細な無動力船を駆使する漁船漁家は、制度金融の対象の恩恵にあずかっていない。個人借りその他の、月三分というようなきわめて悪条件の前商業資本的な問屋資本の跳梁ばっこが、いまだ現時点においても漁村ではあるわけです。そういうときに、現状がどうなのか、したがってここで法律を改正するならば、それに一体保証制度をどう適用するかということは、科学的な現状分析の中から、私は生まれてこなければならぬわけで、そういう実態把握の資料がない。これからは個人にも出すし、漁協もこれから転貸から一本立ちの保証機関になるといったところで、現実というものは、それほどきびしい事態に置かれているわけですよ。そういう資料なしに、一体この法律が前向きに運用されるというふうな理解が今のところなかなか容易じゃないわけです。それから、私がいまの矢山委員が取り上げた問題をこの前伺ったのも、すでに保証条件に合うようなものが形の上で出てきて、保証拒絶というものはないわけです。しかし、そういう書類手続に至りかねる相当の前近代的な商業資本に搾取をされている零細な漁船漁家というものは、これは明らかに保証を受けたいでしょう。しかし、受ける資格もない。行けばけんもほろろのあいさつ。そういうものが一体どうなのかということなんです。これはいずれ水産庁で調べた資料で、私は午後質問をしますけれども、もう少しそれらの実態というものを科学的に分析していかぬと、せっかくの保証法の一部を改正する法律案も、単に対象をふやすとかそういうことだけでは、私は期待するような中小漁業融資の対象にこれを拡大するということは、なかなか容易じゃないと思う。それならば、その措置はどうあるか。これは大臣に、次元的に高い問題ですから伺いますが、ないとかそんなことじゃなくて、もう少し、いままでそういう間接に転貸でもいずれ融資を受けているのは、漁業協同組合という共同体が使う資金もあるでしょうし、その構成員である漁船漁家が使う金もあるわけです。それが一体いままで間接的な保証の恩恵をどう受けたか、概括的な情勢でも把握しなければ、この法律になかなかこれはわれわれは踏み切るわけにはいかぬです。そういうものも出ないですか。
  37. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 転貸でございまして、その内訳については、それはいままでそういう統計はとっていなかったものですから、現段階においては出せない、こういうことを申し上げたわけでございます。なお転貸の現行法を、漁業協同組合信用事業を営むについては、金融機関に指定して、そして金融機関から非会員でございまする組合員にも保証制度の均てんする道を開いていく、こういう趣旨でございまして、それは組合のやはり債権管理能力等によりますが、この直貸しするということは、やはり漁民にとりましてはそのほかの金融機関から借りるといったようなことよりは、自分が一番親しみの深い、また一番距離的にも近い、なじみの深い自分の協同組合から金を借りるということが、非常に便利でございますし、また漁民の実情も一番把握しているのは組合でございます。組合金融機関になって、会員でなくとも組合員に貸す場合に協会保証する、こういう道を開いたわけでございまして、転貸の面で残る面もございますが、そういう道を開いていくということは、零細漁民にとりましては非常に便利な制度になろう、こういう解釈であります。なお、御指摘の点につきましては、われわれもいろいろくふういたしまして、今後は資料を整備してまいりたい、こういうふうに考えております。
  38. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 関連質問はまた機会がありますから、そのときやってください。
  39. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 保証法の問題ですよ。
  40. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 保証法ですか、あなたの質問の機会がありますから。
  41. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまの問題あとやりませんから。
  42. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ひとつ簡単に、渡辺君。
  43. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は農林省が調べた漁家負債調査報告、これはいろいろ目的に書いてある。これは長官もわかっていると思うのだが、その中には中小漁業融資保証制度の整備改善等の資料にするためにも、そういう目的で調査をしているですよ。そういう大きな目的によって調査されておるその実態の中に、転貸等の場合に保証がどうなっているかということも、これはなければ、それでは一体いままでどういう程度転貸の場合に零細漁家が保証を受け、新たに法律が改正されれば、どれだけそれが拡大されるかと、そういう比較の見通しまで、これは踏まえて法律の改正の内容として説明を願わんと私は納得ができない。庄野長官はこれから資料を整備すると言うけれども、この保証法の一部を改正する内容にはもっと現状というものの把握というものがなしに、私はこの三つの柱の改正の内容だけでは、これがスタートしても依然としてあなたがいまおっしゃったように、漁業組合組合員であるということは、非帯に大きな法改正によって受信力を増すというけれども、それではなおかつこれは系統金融のベースに乗らない漁民、漁船漁家があるわけです。そういう実態というものが、私はなければ、今度の改正というものは一体どこまでその点を踏まえているのかという判断がつかないわけです。この問題に関連するものですから、非常に納得しがたいわけですね。どうなんですか、それは。
  44. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 現行の制度で転貸で貸しているものは、大部分がやはり組合員零細漁民といいますか、組合員の運転資金あるいは設備資金等が中心になっておるわけでございます。それで個人会員として融資を受けている、保証を受けているというのは、大体上層なりあるいは十トン以上といったようなものが多いかと思います。そういうことで今度法改正によりまして金融機関に指定した場合にどういうふうにこれが広がっていくかということは、われわれとしては非常に拡大するだろうと、こう確信を持っておるわけでございますが、数字的にそれはなかなか御説明はできないかと思いますが、従来の転貸方式と合せて直貸しの方式というものが採用されるわけでございますから、相当程度こういうものの利用を受ける範囲というものは広がるわけでございます。御期待に沿うような零細漁民融資円滑化というのには非常に大きなプラスになると、こういうふうに考えております。
  45. 矢山有作

    矢山有作君 いま渡辺委員指摘されたように、漁協からの転貸の実情というものがつかめておらぬということでは、確かに今後のこの融資保証制度を改正した、その運用の問題もなかなか問題は出てくると思うのです。しかし、それはあなたのほうでつかんでおらぬとおっしゃるのだから、しかたがないですがね。私はその資料まで要求しようとは思いませんから、だから、いま実際にやっておるものをひとつ階層別に分けて、そうして、保証の申し込み件数、金額、実際に保証してやった件数、金額、こういうものを一応整えて出してほしいのです。それは出ますか。
  46. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 申し込み金額というのは出ないと思いますが、実際に貸し付けいたしました分については、出せる範囲はよく調べまして出したいと思います。件数、金額は十分出ると思います。
  47. 矢山有作

    矢山有作君 どうしてその保証を申し込んだ件数金額がつかめないのですか。
  48. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 保証を申し込むといいましても、いままでは転貸でございますから、協同組合単位に出ていくわけであります。それで組合員が転貸の場合は、組合にこれだけほしいと、こういうような形で出るわけでございますから、そういうところでいろいろ組合との関係調整して、組合から金融機関に借りる場合に保証がつくということで、そのところでは出てくるわけです。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 私の言いおるのは、漁協から転貸した分についてはつかめぬとおっしゃるのだから、それをつかめぬものを出せと言ったって資料出ぬです。出ぬから、それはよろしいから、個人会費あるいは法人で会員になっているものがありますね。その保証の申し込み件数、金額、それを保証してやった件数、金額、これだけはできるはずだと言っているわけです。
  50. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この制度では、個人会員についての御質問でございますが、いまの制度のたてまえといたしましては、協会個人会員はよく事前に話し合いをして、そうして申し込み書を出して、それを協会が査定すると、こういう方法じゃないわけでございます。で、話し合いがついたところで申し込み書を出して、それがそのまま保証をやるという形になっておりますので、その前の希望というようなものについては、出てこないわけでございまして、申し込み書即保証契約の内容、こういう形になっております。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 それだから、最初渡辺さんが要求した保証申し込みに対する拒絶件数はどうなっているかという資料ができないわけなんですね。
  52. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) それは、協会の業務方法書で、これに保証を受け得る資格等について規定がございますが、そういう資格に合うかどうかというようなことは、当然、申し込みといいますか、保証を受けてもらいたいという交渉をやる場合には審査されまして、そういう資格があった場合に初めて融資を受けることについての保証が、契約が成立する、こういうことになります。だから、中小企業融資保証法のように、申し込み書を出してそれを査定すると、そういった制度と違うわけでございますので、その点御了承願いたいと思います。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 それはもうそれで出ぬのならしかたがありません。ただ、そういうようなずさんなことでは、今度この法改正をやられたところで、なかなか、先ほど指摘されておったように、運用というものが私はいろいろな点で問題を起こしてくると思うのですが、まあそれはそれとして、もう一つだけ聞きたいのです。  ただ、沿振法によって、年次報告出ておりますので、その点で融資保証法にいう中小漁業者という定義とある程度食い違う面があると思うのです。沿振法では漁業の分け方を、沿岸漁業というものと、それから中小漁業というような形で、何というのか、妙な分け方になっているわけですがね。だから多少食い違いが出てくると思うのですが、年次報告で見るとこういうことを指摘されておるわけですね。中小漁業の場合で自己資本の蓄積の可能なのは二百トン以上の層だと、こういわれておるわけです。中小漁業経営には個人企業体が多くて、会社組織になっているのは上層の経営の一部である。百トン未満の経営の比率が八五%、小規模経営の比重が非常に高い。また、使用漁船数が少なく、特に中下層では単船経営者が多い。したがって、経営基盤が劣弱であり不安定である。で、先ほど申し上げたように、自己資本の蓄積が可能なのは二百トン以上の層だ、こういうことが指摘されておるわけです。しかも、さらに、中小漁業では総資本に対する自己資本の割合というものが一一・六%、それから中小規模の製造業では二一・四%、かなり漁業のほうが低い。つまり、借り入れ金の依存度が高いということですね。そのことは、支払い利子の負担が重いということになるわけです。で、年次報告で示されておるのでは、漁業の場合は利子負担が五・三%、製造業の場合には二・三%、これは三十六年度で出ております。したがって、総資本に対する純利益というのは、三十六年度で漁業は一・三%、製造業は七・三%と、はるかに低いわけですね。そう考えてくると、中小漁業の振興というために、一つの問題は自己資本を充実させるということと、それから低利の資金融資が必要だ、こういうふうになってくると思うのです。で、そうなると、今後の対策として考えなきゃならぬのは、各種の漁業対策事業に対するいわゆる地元負担といいますか、受益者負担といいますか、それを軽減するということが一つ問題になってくると思う。それからそういう金融の場合の貸し付け条件の大幅な緩和、これが一つ問題になると思う。それから融資保証制度では、保証料をもっと引き下げていく、さらに先ほどおっしゃったように、金利自体引き下げ考えなきゃならぬでしょう。そういう問題が出てくると思うのですがね。それともっと根本的に考えた場合には、出資制度というものを廃止したほうがいいのじゃないか、こういうことも出てくると思うのです。ただ出資制度の問題の場合には、前に漁業権証券を出して、それを出資に充てさせておるというような経緯もあるようですけれども、しかしいずれにしても、中小漁業者の借り入れ依存度が高い。したがって純利益率が非常に低い。こういう点を解決していくためには、いま言ったような施策というものが必要になってくるのじゃないかと思うのですがね。ひとつこの際、出資制度というものにメスを入れてみられる、つまり廃止をしてしまうというような方向で考えられませんか。
  54. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えいたします。先ほど水産庁長官からもお答えがありましたが、なるほどいまは一口当たり五万円という出資をさせておるのであります。その五万円についても五万円が大きいじゃないかという話もあるわけでありますが、大体中小企業融資保証制度といわゆるやり方が違いまして、こっちは会員制度というので、会員が出資をして、そうして政府あるいは府県あるいは市町村というものも出し合って、そうして基金をつくっているというような関係でありますので、したがって、保証する額というものも、おのずから出資額の何倍というふうにきめておるわけでありまして、この点は中小企業とちょっと違う。したがって中小企業は小口金融一般的にやるのでありますが、こっちはそうでなく、会員がただ資格においてやっておるというやり方で、やり方がちょっと違うのであります。しかしながら、あらかじめ出資をしておるということは、出資する利子負担というものはあるのでありますから、なるべくならばそれを少なくしたほうがいい。あるいは、もういま矢山委員のお話のように、ないほうがいいという御意見もごもっともだと思います。われわれもよく検討してみたいと思いますけれども、いまでき上がっておる制度でありますので、協会の基金というものもそういうふうに切りかえると相当動いてくることも、動揺することも考えられますので、よほど検討してみたいと思っております。いまのところは現制度をもとにして、そうして先ほどお話のありました、いわゆる零細沿岸漁民等で融資を受けたくとも受けられないというものは、出資をせずに、組合が入っておればその組合員出資を受けられる、融資を受けられるという道を開いて、全然出資なくして融資を受けられるという道が一部開かれております。また一面、われわれとしては、さらにまた、保険料率の低減を今度はかりましたから、それに相応して保証率の低減も考えられると思っております。そういうこともありますし、また先般来申し上げましたとおり、これをきっかけにして事故率も漸次安定してきておりますので、さらにまた保証倍率というものも高くして、そうしてできるだけその要望に応ずるようにしたいと、いまそう考えております。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 農業信用基金のほうを見ても、出資は一口一万円ですね。それから中小企業の場合はあなたのおっしゃったように制度が違うから出資を取ってない。ところが、農業に比べてみても、まして製造業に比べてみても、漁業のほうが利益率にしろ、あるいはまた所得にしろはるかに低いんですからね。そこで金融円滑化をはかって、そうした中小漁業の振興をはかろうというのなら、やっぱり思い切って出資制度なんというものは廃止してしまうというような、根本的な制度の改正まで考えていかぬと、ほんとうの中小漁業の振興ということにはほど遠いんじゃないかと、こういう感じがするわけです。ただ、先ほど指摘されましたように一部、会員でなくとも、漁業協同組合組合員であれば借りられると、その点は前進だと思うんです。前進だと思いますが、やはりその制度のあり方自体まで掘り下げて、今後保証制度のあり方というものを、ぜひ御検討願いたいと思うわけです。
  56. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) まあ、いま直ちにというとちょっと、現在の制度で動いてきたものですから、すぐ切りかえるというのは困難だと思いますけれども、御趣旨の点は十分検討して善処したいと考えております。
  57. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は資料について最初に質問し、あと法律問題について質問したいと思うのであります。いままで各委員から、あらゆる方面で詳細に質問があって答弁があっているのでありますから、できるだけ重複を避けていきたいとは考えております。  まず第一に質問したいと思うのは、水産庁から出しておられる中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案の参考資料の二ページです。この二ページを見てみまするというと、漁業種類別保証額の推移ということで、三十七年度分を見てみまするというと、遠洋沖合い漁業に対する融資は七十三億円、沿岸漁業に対する融資は二十一億円、このパーセントを調べてみますというと、沿岸漁業が一であれば遠洋沖合い漁業は三・五になる。いまいろいろと質疑応答があったのでありますが、私などは沿岸漁業を将来においてはできるだけ振興していかなくちゃできないと思うのでありますが、この沿岸漁業に対する融資が、一方の三・五に対して一というように非常に少ないということは、これはどういうふうな理由によるのであるかということを、まず第一にお尋ねしたいと思うのであります。
  58. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 保証額で比較いたしますと、ただいま御指摘のように、遠洋沖合い漁業三・五に対しまして沿岸関係は一と、こういうふうに相なります。御指摘のとおりでございます。ただこれにつきまして、もう一つの観点から申し述べてみますと、遠洋沖合い漁業に対しまする融資残高と保証残高の割合、これは三十七年度末の統計がございますが、それで申しますと五・一%になります。いわゆる親債権に対しまする遠洋沖合い漁業保証をつけました割合は五・一%、それから沿岸漁業に対しまする融資残高に対する保証の割合は五・七ということになっております。それで融資残高に対する保証の割合から比較いたしますと、多少でございますが、沿岸が多く保証されているという結果に相なっているわけでございます。で、今後におきまする沿岸漁業保証の伸び方というのは、今度の御審議願っておりまする法改正によりまして、沿岸漁民に最も近い漁業協同組合金融機関に指定するということによりまして、沿岸漁民への融資はさらに容易になるわけでございます。その率はさらに上がってゆく、こういうふうにわれわれは考えております。
  59. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 沿振法も実施されており、かつ今後の漁業構造の改善というような方面からも考えて、沿岸漁業の振興ははからなくちゃできない。沿岸漁業の振興をはかるのには、いろいろありますけれども、まずそれに必要な融資を十分に供給するということであるのでありますから、この点については政府一般の御努力をお願いしまして、次に四ページの漁業信用基金協会の概況、この表を見てみまするというと、保証料率がいろいろあるのであります。いま例をとってみまするというと、北海道は二厘、静岡県が二厘、愛知県が二厘、石川県は六厘日本遠洋底びき網は二厘五毛、日本カツオ・マグロは三厘五毛、こういうふうに、二厘あり六厘あり、二厘五毛あり、三厘五毛あり、また一方のほうにおいては政府保険に対する付保率は北海道は〇・七、静岡県も〇・七、愛知県が〇・五、石川県が〇・七、日本遠洋底びき網は〇・七、日本カツオ・マグロは〇・五、こういうふうに保証料率も政府保険に対する付保率も、二つを対照して見るというと、私らのようなしろうとでは、どうしたって解決ができない数字がここに並んでいるのであります。こういうふうに保証料率が二厘あり、六厘あり、二厘五毛あり、三厘五毛ありというのは、どういうふうな理由であるか、それが保証協会にいかなる影響を及ぼすのであるか。また、政府保険に対する付保率が、保証料日歩と並行しておらずして、逆になっているのもあるが、それは一体どういうふうな理由か、これをお尋ねしたいと思うのであります。
  60. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、保証料基金協会によりましていろいろ違っております。で、これは各協会の財務状況等から見まして、その健全性をそこなわない、かつ保証利用者に過重の負担とならない範囲でその自主的な決定にまかしておるわけでございまして、一般的に言いますと、協会収入は主といたしまして出資金の運用利子収入保証料収入に依存しておるのでございますので、それぞれの収入の大きさの程度に応じて異なっているわけでございます。しかし、御指摘のように、保証料と国の保険料が逆ざやになっているという現状もそういう関係である程度やむを得ない、こうも考えられますけれども、理論的には御指摘のように逆ざやというのは適当と思われませんので、協会の実情を財務の実情等を勘案いたしまして直していく必要があろうと思っております。また、そういう指導も今後は続けていきたい、こういうふうに考えております。付保率は法律にございますように七割と五割との二種が法第七十条に規定してございます。これは地方公共団体がなるべく出資して中小漁業の振興に積極的に協力することを期待する意味で、地方公共団体出資程度に応じて、程度の高いところは七割の付保率、それから低いところは五割の付保率、こういうふうにいたしておるわけでございますが、われわれの指導といたしましても、地方公共団体指導いたしまして、できるだけ出資を進めていくということで付保率を上げる指導をいたしておるわけでございますし、法律でそれを期待して差をつけておるわけでございます。
  61. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そこで具体的に私は例をあげたんだが、愛知県は保証料は二厘、付保率は〇・五、石川県は保証料は六厘、それから付保率は〇・七この二つを見るというと、一方のほうは二に対して〇・五、一方のほうは六に対して〇・七というようなことを考えるというと、常識的には判断ができないのだから、どういうふうな理由でこういうふうになっているのか、具体的にひとつ説明を願いたいのであります。
  62. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この保証料と付保率というのは、直接には関係ないわけでございます。付保率のほうは、都道府県の協会に対しまする出資の大きさによってきまってくるわけでございます。それで愛知県におきましては、愛知県の信用保証協会に対する出資の割合が少ないわけでございますので五割、こういうことになるわけでございますし、石川県は割合が大きいということで七割、こういうことになるわけでございます。保証料率のほうは、協会の財務の運営でございますから、保証協会自体の基金の大きさ等からきまってくるわけでございまして、石川県は六厘、愛知県は二厘、これは愛知県は県の出資等が多いということで運用益等で逆ざや等はカバーできる、こういうような形になっていると思います。
  63. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 いまの説明では具体的に明らかでないから、あとでひとつこういうふうになっていても差しつかえないという資料の提出をお願いします。
  64. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) いまのところでなおつけ加えて御説明申し上げますと、石川県等はやはり愛知県に比べまして事故率が非常に高いということが、過去の実績等から言えるわけでございます。そういう関係もございまして、この保証料というものが石川県は愛知県に比べて非常に高くなっている、こういうことが言えると思います。
  65. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は、八ページの漁業金融漁業融資保証制度のうちの(1)金融機関貸し出し残高と中小漁業融資保証残高との対比、これを見てみまするというと、一般金融機関貸し出し残高はどういうふうになっているかと申しますというと、千六百八十五億円、そのうちの資本金が一千万円未満に対するものが六百三十六億円、うち協会保証しているものは二十八億円、これは三十七年度です。それから系統金融機関貸し出し残高は千二百一億円、一千万円未満が九百四十九億円、うち協会保証しているのが五十六億円、これを調べてみまするというと、一千万円未満の金額をAとして協会保証をBとしてみるというと、A分のBは、一般金融機関は二十二分の一、系統金融機関は十六分の一、こういうふうになっているのであります。今回の法律改正によって、提案理由の二ページに説明があるように、「漁業者漁業協同組合から資金を借り入れることによって負担する債務を直接に漁業信用基金協会保証」することができるというように改正されるとしたならば、この系統機関の融資をどういうふうな目途のもとに、一千万円以下のが三十七年度で九百四十九億円あるのに、協会のは五十六億円であるから、これの少なくとも大部分のものというものは協会保証するようにしむけていかなくちゃできないのじゃないか、それによって初めて今度の法律の改正の目的を達するのじゃないかと、こう考えられるのであります。でありますから、そういうふうな目途をもって今後法律の運用をしていかなくちゃできないが、それに対する政府の心がまえをお伺いしたいと思うのであります。
  66. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、一般金融機関につきましては、貸し出し残高の二十二分の一、これは四・五%になろうかと思いますが、保証されておりますし、それから系統金融機関につきましては、十六分の一、大体六・二%程度保証の対象になっておるわけでございます。それで、この八ページの3の表は、総計貸し出し残高に対しまする協会保証の割合というのは四・五%、こうなっております。この貸し出し残高は保証対象になっておりません。いわゆる財政融資機関の分も含めて融資残高に対する保証残高ということになりますので低く出ますが、この農林金融公庫等の財政融資機関を除きますれば、もっと保証の率は上がってくると思います。われわれといたしましては、この制度が、資金需要に対しまして担保力の不足等のために正規の金融に乗りがたい、こういった沿岸漁業の漁家に対しましてこの保証制度を開いて、また今度の改正によりましてもその直貸しというようなことで、会員でない組合員にも保証の利益が広げられるということになりますので、今後の保証の伸びというのは、相当われわれは期待いたしておりますが、過去の保証の伸びの率は、大体前年対比で、三十五年が一一三%、三十六年が一〇四%、三十七年は一二三と、今後もこういう点の伸ばし方については、もっと伸ばしていきたい、こういうふうに考えております。今後ともこの制度の運用によりまして、そういった沿岸漁家に対する保証によりまする金融円滑化ということを御指摘のように強力に進めていきたいと、こういうふうに考えます。
  67. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そこで、この一般金融機関から貸し出されるところのものは、大目のものだと思っております。大口のものだから系統融資のものとするというと、金額的にはそちらのほうが将来においても大であろうと思う。しかしながら、少なくとも系統金融から融資されておるところのものは、保証の要求がなかったかどうかはわからないけれど、普通の場合においては保証の要求があるんではなかろうかと思われるのでありますから、保証の要求があるところのものは全部今回の改正によって保証して、資金の円滑化をはかられるように希望を述べておきます。  次は、九ページ。九ページの水産業協同組合の概況、その(1)が、組織及び事業状況、これによって見まするというと、備考で、三七年の三月三十一日現在における沿海漁業協同組合組合員数は約六千五百八十四人と、こう書いてある。そして、単位漁協を調べてみましたならば、単位漁協の総数は五千四百六十九なんです。そのうちに、基金協会に加入しているところのものは二千四十五なんです。そうしてみるというと、単位漁協であって基金協会に加入しているところのものは半分に足らない。今度の法律改正によって、この単位漁協金融機関となることができるというようなことになれば、すべての単位漁協というものは基金協会に加入をしていくべきものじゃないかと思うのであります。また、政府はそういうふうに奨励すべきであると思うのでありますが、一体いかなる奨励方法によって、単位漁協が現在半分以下の加入であるのを、協会に加入させるどんな計画があるか。また、加入することができないというようなものであったならば、経営不振であって、加入しても融資ができないというようなものであるかどうか。もし、そういうふうなものであったならば、経営不振の漁協はいかなる方法でやっていかれる考えであるか。また再建整備その他の報告も別冊で拝見しているのでありますが、漁協の再建整備を今後どうされるか。こういうような点についても、ひとつあわせて御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  68. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、漁業協同組合全体としてのこの協会の会員としての加入率は約六割未満というようなことでございます。しかしながら、信用事業を営んでおりまする組合数の加入率は、現在のところでは約八五%程度が加入している、こういうことになります。御指摘のように、やはりこの加入率を上げるということは、この制度の本来の運用のためには必要なことでございまして、今後とも努力をしてまいりたい、こう思いますが、特に今回の改正によりまして、信用事業を営む漁業協同組合金融機関に指定されますれば、今後この趣旨の徹底をはかって、信用事業々行なう組合で、まだ会員になっていないというものは、できる限り多く入るように指導してまいりたいとこう考えております。  なお、信用事業を行なっていない組合は非常に職員数も少ないのが大部分でございまして、小さい規模のものが多いというわけでございまして、いま御指摘のように、やはり組合自体の規模々大きくするあるいは財政状態を健全にして、規模を大きくしていくという道を講じなければならないと存じます。これには御指摘のように、再建整備法によります整備事業というものを予算を組んでやっておりますが、そういう面の強化をはかっていきまして、そういう組合の財政運営を健全化するということと、やはり規模の小さいといったような面につきましても、水協法の改正で御承知と思いますが、規模を大きくする道を聞き、また二面合併促進法というようなことで、促進の奨励金も出しておるわけでございますが、さらにそういうものについても、なかなか必然的なあるいは経済的な条件でむずかしい問題もあろうかと思いますけれども、できるだけ合併なども促進して、そういう規模の拡大というものをはかっていきたい、そういう指導は今後とも強力にいたしたい、こう思っております。
  69. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 資料については、その他にありますけれども、時間がだいぶん過ぎましたから、簡単に次は法律質問をいたします。  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案新旧対照表の二十九ベージ、これは改正ではないのでありますが、第二十四条の第三項、「投票は、出資一口につき一票とする。」こう書いてあるのであります。これは法律は改正されていないのでありますが、この点についてお伺いしたいと思うのであります。いま私の手元で調べたところによると、協会出資金を払い込んでおるのは、漁協個人会社地方公共団体と、いろいろあります。またその全体を見てみまするというと、全国いろいろの差がある。こういう出資の状況を調べてみまするというと、まず北海道は漁協が六億四千四百三十万円であって、出資総額の半分以上を持っているのであります。宮城県に例をとったらば、宮城県は漁協は七千十万円であって、個人が一億三千二百十五万円、会社が千二百三十五万円、こういうふうであって、総体に対する個人会社の比を見てみると、個人会社が多いのであります。福島県も両様に個人会社出資金が多いのであります。三重県も同様であるのであります。また茨城県、静岡県、愛知県、徳島県というようなところは個人会社出資はなくて、漁協地方公共団体であるのであります。これがいま申し上げた「投票は、出資一口につき一票する。」ということに重大影響を及ぼすと思っているのであります。それは何といっても、私などは一般漁業を振興すると同時に、いま法律案になっているのは、中小漁業の振興をはかるための融資保証法の改正であるのでありますから、この法律においては、できるだけ漁協の経営を健全化していかなくちゃできない。そうして将来より以上に発達させるようにしていかなければできない、こういうふうな観点からすれば、出資金が漁協地方公共団体のものを合わせて出資総額の半分以上にはなっておらなくてはできないのじゃないか、こう信ずるのであります。そうして、協会の経営の土台は役員の選挙にあるのであります。すなわち、役員が選挙されて、そうして、その役員が経営の任に当たる。その経営の任に当たる場合において、出資一口について一票ずつの投票権を持っているとしたならば、さっき申し上げたように、少なくとも漁協地方公共団体が半額以上のものを持っておらなくては心配にたえないのであります。あるいは個人会社も中小漁業の発達をはかるために協会に加入しておられるのでありますから、悪い影響はないとは考えますけれど、こういうふうに宮城であるとか、福島であるとか、三重であるとかいうようなふうに個人及び会社出資金が、個人のが出資総額の半額以上になっているというようなところに対するまず政府指導方針をお伺いしたいと思うのであります。
  70. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) ただいま御指摘がございました三重県、あるいは宮城県、福島県、そういったところは個人、法人の出資額が過半数を占めているわけでございます。なお四割以上のものも鳥取、岩手と若干あるわけでございます。これらの県におきましては比較的個別経営体の規模がそのものの所属いたしておりまする漁協に比べまして、比較の問題でございますが、大きいということもございまして、そういう関係で系統金融を系統外の資金で補完していくというような実情もありまして、こういうような形態が出されているということでございます。現状においてはやむを得ないと考えておるわけでございますが、なお、一部のものを除きましては、これらの会員になっておりまする個人、法人は一般経済事業におきまして、系統事業、組合に所属いたしまして系統事業を利用しているというので、基金協会運営に対しましては、特に系統に不利になるようなことはないと思いますが、やはり組合の規模というものと、その組合員の経営の大きさというものによって、組合を通じてはなかなか系統資金組合の規模では借りにくいというような場合に、個人会員となって信用の補完を系統外からも受ける。こういうような実情で、こういうことになっておるわけでございます。やはり御指摘のように組合の育成なり、規模の拡大というものは、これは当然やらなくちゃならぬわけでございますし、また、そういう個人会員も購販売事業等では組合を通じてやっておるわけでございます。そういう面からも、組合の規模の拡大というものを主としてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  71. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 この法律には、投票に対する委任規定がありませんね。それで、委任の規定がない理由、及び現在委任状がどういうふうに行使されておるかということを伺いたいと思うのであります。
  72. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 議決権につきましては、法の十三条に規定してございますように、議決権及び役員の選挙権は出資一口について一個とすると。第二項に、会員は、定款の定めるところによりまして、三十一条三項の規定によりあらかじめ通知があった事項については、書面または代理人をもって議決権または選挙権を行なうことができる、こういうことになっております。で、「前項の規定による議決権又は選挙権を行う者は、出席者とみなす。」、それから、「代理人は、代理権を証する書面を協会に提出しなければならない。」、こういうことになっております。
  73. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 代理人の制限なんです。普通の法律であったらば、あるいは定款で五人であるとか、二人であるとか、十人であるとか、制限があるが、これは無制限であるから、ある一人が全体の出席者以外の者の委任状をとったらば、その人の思うままになるという欠点があります。この法律では。
  74. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のとおりの規定になっております。これは、本制度におきましては出資口数に応じて議決権が与えられております。これは法十三条でいま説明したとおりでございますが、それで一会員一個の議決権、こういうことにはなっていないのです。そういうわけで、一会員が代理することができまする限度の規定も設けないで、すべて現状では基金協会の自主的な運営にまかしている状態でございます。現在のところ、代理の限度が設けられていないために不当な議決が行なわれたという事例は、われわれでは承知いたしていないわけでございます。また、円滑な運営がなされている、こういうふうに承知いたしておりますが、万一御質問のような事態が生ずるおそれが現実に生じました場合には、定款等において規制する方策を考慮したい、こう思っております。なお、農業信用基金協会におきましても、一会員の代理し得る限度の制限規定は設けられていたいように承知いたしておりますが、そういう不当な事態が起こるおそれがございますれば、定款等で規制する方策を考慮しよう、こういうふうに考えております。
  75. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それは、現在においては問題がないかわからぬけれど、いざという場合においては、ある心がけの間違った人が出てきて総会を撹乱するおそれがあるから、十分に前もって注意しておかれるほうがいいと思っております。  それからその次は、第四項ですが、「金融に関する学識経験を有する者を、総会の議決によって理事に委嘱することができる。」、こういうふうになっているのであります。各県とも大体において地方公共団体が一番大きい出資者です。それで地方公共団体は当然協会員として役員に出るんじゃなかろうかと思っている。そうするというと、今度は常識経験者を入れるということは、専門の知識を有する者だと、専門の知識を有する者だということだったら、これは常勤なんです。学識経験を有する者は常勤というようなことであれば、たとえば県から理事が一人出るし、あるいは会長に出る、理事の互選によって。それから専務理事も県庁から出ると、こういうふうなのが現在の実情であるかどうか。現在の実情の学識経験を有する者というものがあげられた場合において、専務理事が員外の準なる参考にする理事であるか、参与理事であるか、それをお伺いしたいと思うのであります。
  76. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) お尋ねの学識経験者たる理事を委嘱するという委嘱理事を置きました趣旨は、いま御指摘のように、金融に関しまする学識経験者をもってこれに充てることによりまして、金融に関する学識経験に、まあこう申しては失礼になるかもしれませんが、概して乏しい漁業者から選挙されました理事の学識経験を補完するという趣旨でございます。協会保証によりまして融資をする金融機関の役職員を理事にすることも、そういう点でございますし、また都道府県出身の者もそういう点で委嘱理事にいたしておるわけでございます。まあこういうことによりまして、金融機関協会の意思の疎通をはかるとか、あるいは保証による融資円滑化をはかる、こういう趣旨でございます。御指摘のように、こういう委嘱理事は、全部常勤かという御指摘でございますが、必ずしも常勤ということにはなっていないわけです。非常勤のところも相当あろうかと思いますが、必ずしも常勤あるは専務といったような形にはなっていないと思います。これはこの個々の保証を決定することは、非常に技術的な問題でございまして、協会の内部には保証審査委員会というものを設けて、その審査を経た後に保証の決定をするというような運用をいたしておりまして、協会の自主性を保持するということとともに、やはりこれまで再々御指摘がありましたように、保証が不当にわたらないような措置を、そういう委員会で公正に決定する、こういうことを考えておるわけでございます。
  77. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  78. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それじゃ速記つけてください。
  79. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は六十二条です。六十二条の第三項、これに、ただ政令で別段の定めをしたときにはこの限りにあらずと、この政令を入れた理由をお伺いして、私の質問を終わります。
  80. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 法第六十二条第三項ただし書きの改正でございます。清算時の残余財産の処分方法につきましては、基金協会の公益的な性格から見まして、任意にこれを処分することは認めていないわけでございまして、現行法では中小漁業融資保証保険特別会計の歳入として国庫に帰属することといたしておりますが、改正案では、これを原則といたしますが、例外的な措置といたしまして、政令でもって、適当な帰属先がある場合に、弾力的に対処し得るようにしようというわけでございます。したがって、このただし善きの政令は、他の立法例と同様に、一般的概括的にあらかじめきめておく、規定しておくというのではなくて、現実的に協会で解散するような事態が起こりました場合に、その基金協会について個別に実情に応じまして政令を制定いたしまして、たとえば、国庫全部に帰属しないで、もっと適当な帰属先があるといったような場合には、具体的に検討してきめていく、こういうような政令の改正でございます。概念的にはあらかじめきめておくという性格のものではございません。以上でございます。
  81. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ここでしばらく休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会
  82. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は、御発言を願います。
  83. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この中小企業融資保証法に関連してでありますけれども、間接的なことでありますが、大漁業資本というものと中小漁業との関連、あるいは前近代的な商業資本と漁船漁家の関連という究明なしには、基本的な中小漁業融資保証法機能も容易ではない問題だと思うわけであります。で、最近、私の申しますところの大資本漁業、それがいかに法を軽視とまあ一応表現しますが、軽視しておるか。その一例をあげて、主管大臣である農林大臣が行政的にいかにこれに対処されてきたのか、その点をまずお伺いをいたしたいのであります。  それは先月の十七日、大洋漁業、日本水産、日魯漁業、日本冷蔵、極洋捕鯨、いわゆる大手水産五社が、会合を内幸町の帝国ホテルで持って、そうして魚肉のソーセージについて価格協定等を協議をしておるという事実が伝えられておるわけであります。その内容は、この魚肉ソーセージの価格は、標準型三十番、百三十グラム一本について、メーカー出し値を従来の二十六円五十銭から二十九円、またこの小売り価格を従来の三十円から三十五円、一割以上の大幅な値上げを相談をしておる。また、この規格の三十番以外の魚肉ソーセージに対しても、これは値段は据え置くけれども、その容量を小さくするというようなことを、来たる四月一日から実施するという申し合わせをしている。これは明らかに独禁法違反きわめて濃厚な大手資本漁業の協議であります。政府ははね上がる物価対策として、みずから政府所管の物価についてはこれを規制するという立場に立って対策に腐心をされているわけでありますけれども、こうしたような法を無視してまで一割以上の大幅な値上げを相談をしている、こういうことに関して所管大臣である農林大臣は、行政的にいかにこれに対処されたのか。また四月一日というその時期を目前に控えて、どういう今後措置を業界に対してお示しになるのか。その御所信のほどを承りたいと思います。
  84. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) ハム、ソーセージの何か全国の展覧会等へ出席したこと最近ございますけれども、いま漁業の大手筋でハム、ソーセージ等の値上げ問題を協議しているとか、あるいはそういう問題があるということを、まだ私承知しておりません。まだ報告も部下から聞いておりません。そういうことが実現するということになると、いまの政府の物価対策からいいましても関心を持たざるを得ないことでございます。よく報告を聞き、あるいは調査をした上で御説明したい、こう思います。
  85. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣はまだそういう事態について報告も聞いていないということでありますが、すでにこのことは、新聞紙上に大きく二月十八日には各社一斉に記事に扱って報道されているし、また三月三日には、それに対するいろいろな政府のかまえ方等が出ているのでありますが、主管大臣がまだこういうことを御存じないということは、いささかどうもせっかく物価のはね上る傾向を規制しようという池田内閣のきわめて重大な政治課題の中でも、こういう動きをまだお知りにならないということは、どうもはなはだふに落ちないのですけれども、すでに報道等では大きくこれは流されている事実であります。新聞もごらんにならなかったのですか。
  86. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) まことに何といいますか、残念ですが、新聞も見ないで、実は豚の値段下がったことばかりよく聞いて、どういうふうにするかということにいろいろ思いをめぐらしておったのですが、実は新聞も見なかった、残念でしたが。
  87. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 畜産に非常に関心をお持ちだということは、それでわかりましたが、少なくとも水産所管の行政についても、特段にまたひとつ関心を持って大臣の行政上の責任を十分に発揮していただきたいと思うのです。これは非常に大きな問題だと私は考えて、緊急にこの問題を限られた時間の冒頭にお尋ねをいたすわけであります。そういう事実があれば、どういうふうにそれでは現時点から大臣は善処をされるおつもりであるか、そのことをお伺いいたします。
  88. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 事情をよく調べて対処していきたいと思います。事情をよく調べませんと、どういうふうに対処するか、ちょっと方針も立ちかねますので、よく調べてから対処いたします。
  89. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、事情が私がいま取り上げましたように、現実にこの三十円の小売り価格が三十五円になるという相談がなされて、四月一日から実施されるということになれば、どうされるのですか。
  90. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いろいろあると思いますが、相談した事実があるやいなやという問題も、ひとつ問題と思います。それからそれを上げた場合に、どれくらいの影響力があるか、そういうことも調べる必要があると思いますし、もちろん、上げただけ消費者はかぶるといいますか、それだけかぶるわけでございますけれども、その影響力、そういう点も調べてみなくちゃならぬと思います。政府の方針として、公共料金その他政府の操作するものは一年間値上げを押える、こういうことになっていますが、その中でもきのうでしたか、経済閣僚懇談会などがありまして、たとえば例をとりますと、水先案内の料金などというものは、影響があまり少ないから認めてもいいじゃないかというようなことなどもありました。そういう例もありますので、民間の問題で政府の操作する問題でもございませんけれども、消費者物価対策という観点からよく研究して、その上で方策を善処していきたい、こう考えております。
  91. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はことばを返すようではなはだ恐縮なんですけれども、大臣のいまの御答弁では、はなはだ不満足であります。この三十円の小売り価格を三十五円に上げることが、消費者にどういう影響を与えるか等も検討するということでありますけれども、これは大きく影響することは当然なことであります。また、規格以外も値段は据え置くが、容量を小さくするというようなことは、単に消費者価格自体をさらに引き上げることを誘発する一つの要因になるばかりでなく、問題はそういうこと以外に、少数の限られた独占企業者が価格協定をして、政府の方針とまた相反するような引き上げをやるということは、これは単に農林大臣という立場ばかりではなしに、閣僚としても、これは客観的にそういう動きに対して、事実であるとしたならば、これは政府としては強力な行政干渉をすべきものだと私は思うのであります。こういう少数企業がいま申し上げましたように、相談をして、そうして同時に価格をきめるということは、明らかにこれは私の解釈ではいわゆる独禁法の違反になるものと、法律の解釈上からいたすわけであります。しかも、この大手五社の食肉ソーセージは国内消費の八割を占めておる、きわめて独占資本によって、これが国内市場を支配されている実態から見ますと、政府の価格政策の上からいっても、また独禁法という法律の運用の点からいっても許すべからざる、これは措置であるというふうに明快なる所信をむしろお述べになるべきであると私は思うのであります。  大臣にはもうこれ以上お尋ねをこの問題ではいたしませんが、公取委員会としては、一体こういう少数の企業者が価格協定をしない場合でも、一定の市場価格を維持する目的のために生産制限をしたり、あるいはまた販売協定をすること自体も、これは独禁法のたてまえからは許さるべきものではないというふうに考えるのであります。いわんや、そういう販売協定あるいは生産制限というものから、さらに一歩ぬきんでて価格協定をし、四月一日から一斉に値上をする、値上げをしない三十番規格以外のものについては容量を小さくして、実質的なやはり一割以上の値上げをするということは、これは公取としても等閑視すべき問題ではないと思います。すみやかにこれらの措置に対して適正な措置をおとりを願うべきものと思うのでありますが、公取委員長のこの行為に対する御所信のほどを承りたいと思います。
  92. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) いま渡辺委員のお話になりましたような事実の一応嫌疑がございます。したがいまして、私のほうとしましては、過日来その事実の有無について捜査をもうすでに開始し、現在続行しております。結局まだ全体の証拠その他の整理はできておりません。したがいまして、この事実の有無ということについては、現在の段階で、私はそういう事実があるかないとかいうこと、責任のある立場にあるだけに、まだ申し上げる段階ではないと思います。ただしかし、かりに、そういう事実がもしありとすれば、独禁法に準拠しまして、当然排除措置がとらるべきものであると、かように考えております。
  93. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いま事実の認定をされておるということでありますから、仮定の上に立っての御答弁を期待をして伺うわけでございますが、問題は四月一日からもう実施するという話し合いが報じられておるわけでありますから、事前にそれらの事実の認定をされて、これらの協定の時期以前に排除勧告等をやっていただきたいのですが、その物理的な日程の点なんかはどうなんでしょうか。
  94. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 私も、もしそういう価格協定の事実があり、しかも、その施行の日が四月一日であるといったようなことが事実認定できますれば、できるだけそれの以前において排除措置をとるということが、効果のあるやり方であるということは同感でございます。ただ問題は、事実認定が、いま係の者が非帯に、私のほうなりに相当の力を使いまして、この問題に取り組んでおります。しかし、その過程にありますので、過程と申しますのは、経過の中にありますので、現在の段階におきましては、私も渡辺委員のおっしゃるような措置をとりたいと思っておりますが、現在の段階でとにかく事実固めが、私のほうとしてはまず第一の前提になりますので、それのまだできていない現在において、それ以前に云々ということを、はっきり申し上げる時期には私は来ていない。しかし、希望としてはお話しのように措置していきたい、そういう意味において事実認定をできるだけ急ぐということについては、今後とも努力してまいりたいと思います。
  95. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ではこの問題はこれで打ち切ります。  じゃ大臣にお伺いをいたしますが、政府からこの国会に御提案になっておる中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案でございますが、この法律案を審議するには、かねて三十七年の三月に水産庁から報告されております漁家負債調査報告書、これが非常に私は貴重な資料だと考えておるわけであります。この約一年にわたって政府が御調査になったこの資料は、その紹介にもありますように、大学から農林中金等の金融機関学識経験者及び政府の担当者を網羅して、十九名の責任ある分担をして精力的に調査をされた資料であります。私からそういうことを紹介的に申し上げる必要もないことでありますが、したがって、非常に客観的な事実の実態の調査をなさったわけであります。しかし、この報告書の目的には、現行の系統金融及び制度金融は、中小漁業の比較的上層部分に集中する傾向があり、沿岸漁家に対する金融は、必ずしも円滑に行なわれがたいといわれている、したがって不健全負債に依存する度合いも強いと思われるので、これらの実態を明らかにし、あわせて安定漁家として育成するため、系統金融円滑化並び中小漁業融資保証制度の整備改善等、長期低利の融資制度の確立をはかるために必要な資料とする、こういう目的でこの調査が行なわれたわけであります。しかるに、ただいままで審議をした過程では、この漁家の負債の実態というものを踏まえて、融資保証制度というものが一部改正の内容になっていないと断定せざるを得ないような、審議の経過では内容が明らかにされておるわけであります。いやしくも現状の矛盾を新しい法律の改正の中にどう取り組んでいくかということなしには、私は科学的な前進の方向というものは、出てこないと思うのであります。したがって、ごくその中で重要であると思われる部分を拾いながら、大臣のこれに対する御所信を承りたいと思います。ここに取り上げられております第一章には、漁家生産と前期的商業資本との結びつきの現状分析をいたしております。抜粋をしていただいた資料を、重要個所をさらに抜粋して、よく読んでみましても、その二ページの最初にあるように、「漁場には、所有権も占有権もない場合には同一漁場で競合が熾烈である。他に先んじて生産力を向上させたものは、時にはその資本投下に見合う以上の利潤さえ確保できる場合はある。この反面、新たな資本投下の源泉を求め得ない生産者は、生産場裡から駆逐されてゆく場合もありうる。」、「このように、生産力を向上させるためにはより多量の資本を要し、この新たな投下資本は常にそれに見合うたけの利潤をもたらさない。したがって、この新たな投資に対する金融の途は、市中銀行などの一般的な金融機関には求め難い。いきおい新たな所要資本は、漁業生産物の価値実現を司る問屋業(商業)資本ないしは高利貸などに求めざるをえない。この場合の金融が、いわゆる「前貸」、「仕込」と呼ばれるものである。これら「前貸」、「仕込」の本質は、漁業生産物の価値実現を問屋(商業)資本の恣意にねだねるという契約のもとに、一般的な利子率を大巾に上まわる高率な利子率による貸付金である。こういう「前貸」、「仕込」による金融は、たとえそのための生産力の向上、したがって生産量の増大があったとしても、生産者とは無縁の存在である。生産力の増大による利潤の増高も、生産者の懐へは入らないで、前貸資本に対する高率の利子として商業(問屋)資本などに帰属してしまうからである。こういう場合には、産業利潤から商業利潤が分割されるのではなく、利潤そのものは問掛(商業)資本がまったく掌握している。ここに前期的商業資本といわれるゆえんが存在する。」ということで、歴史的な経過を書いて流通過程についても触れております。しかし戦後におけるこれらの前近代的な関係が、逐次近代的な資本によって移りつつあるし、また漁業協同組合を通じて共販等の措置によって、これが前向きに前進している経過も触れておるのでありますけれども、そういう経過をここでは触れておりますが、この抜粋の九ページの下段にもあるように「しかし、今までこのようなことをしばしば」——ということは、この商業資本が前近代的にまだ漁村を支配しているということであります。そういうことを繰り返し何回も述べているのは、「漁業主席にはその生産過程、流通過程の特殊性によって規制されるがために、いまみてきたような性格が残存し易いからである。」——いまだそういう前近代的な資本に零細な漁村漁家が支配されているということを、この章では結びにしておるわけ、であります。現存しておる。こういうことをまず第一章ではうたっておる。そうして時間の関係上私は要約をいたしますが、この抜粋の三八ページの下段のところには、「漁家負債のなかで、とくに固定化率の高いものは、個人および買掛関係のもので、系統負債および銀行関係のそれは、相対的に流動的である。つまり負債の返済には、漁協および銀行が優先し、個人および買掛関係のものにしわ寄せが行なわれている」というふうに分析をしておるわけであります。この中で私は特にこの資料そのままを率直に活用して、政府にお伺いをしたいのは、これらの負債の中できめられた期日までに返せるものと、きめられた期日までには返せないというものと、返す見込みがないものと、こういう三分類をしておるのでありますが、この三九ページにある第三表を見ましても、返す見込みがないもののうち、個人及び買い掛けが全体の約半分を占めております。返す見込みのないものを、この調査報告書では固定負債と称しておりますが、私は、これは政府の報告書でありますから、固定負債と定義づけることも、まあそれなりにわかるつもりでありますけれども、これは返す見込みがないということは、完全な焦げつき債務だということであります。固定負債以上のこれは悪質な負債である。返す見込みがない、それが全体の負債の幾らを占めているかということを見ますと、五三ページにありますように全体の約一割三分を占めておる。五三ページの合計欄を見ても明らかなように、全体の債務のこれが一割三分を占めておる、こういう実態であります。なお、約定期限までに返せないものも、これはかなり——その中にはさらに返す見込みがないという性格に転位する要素の債務も多く存在しておるのでありましょう。こういう関係政府の調査の中に明らかに出ておる。ここの、五六ページのまん中辺で政府が述べておることを見ますと、「しかもここで注意を要することは、各借入先別に負債種類を調査した調査様式のため、これらの固定負債」——、返す見込みのないものであります。これは「同一経営体が重複していることである。いいかえれば、漁協に固定負債をもつものは、銀行にも、個人にも買掛にも固定負債をもつ場合がきわめて大きい、ということである。この点を考慮に入れれば、固定負債が、一部の経営体にきわめて多く集中している、ということは、第五表の数字以上に強調できるだろう。」、こういうふうに取り上げておるわけであります。したがって、一二・八%、さらにこれは比率が増していくということの分類をしておる。  七〇ページの下段を見ますと、「漁船漁業の諸階層の負債の特徴は、漁協関係のそれが大きいことにある。そしてその比重は、無動力→動力三トン未満→動力三〜五トン→動力五〜十トンと、階層が上になるほど、系統への依存率は高くなっている。」ということをここでいうております。そこでこの七二ページを見ますと、上のほうにこういうふうに要約しております。「つまり漁家の行なう漁船漁業では銀行融資の対象となることは至難であるように思われる。もう一つここで注目したいのは、個人関係の負債である。ここでは階層が上に傾くほどその負債は相対的な地位を減じている。このことは漁船漁業を行なう漁家では、その下層ほど、系統からも市中金融機関からも見放され、必然的に個人的な融資に頼らざるをえない現状をはっきりと認識させている。」、こういう現状分析を調査のデータの中からいたしておられるわけであります。  で、八二ページでは一応要約して次のようにいうております。「負債が流動しているか、固定しているかによって」——まあ流動しているかというのは、この調査の場合は、期限が来ても返せないというもののうち流動負債部分と固定負債部分があるという分析の上に立っておるようであります。それによって「各漁業階層の諸問題を論ずる場合三つのタイプに分けられる。第一のそれは養殖階層でその負債はきわめて流動的で、固定化しているものは例外的な存在である。」、これはわりあいに信用度が高いということであります。「第三のタイプは、動力漁船漁業階層で、負債の固定率は一〇%以下、流動率は四〇%以上で、養殖階層に劣るとはいえ、その負債は比較的流動的である。といえる。」、まあ中間層であります。「第三のタイプに属するものは、小型定置階層および無動力船階層である。このタイプでは負債流動率は三〇%以下、固定率は二〇%以上で、その負債はきわめて固定化している、こういうふうにまあ取り上げておるわけであります。  なお、抜粋外の各章にもさらに具体的な分析をやっておられるのでありますけれども、私はここで大臣にお伺いをしたいのは、こういう分析は、三十六年の実態で、七千七百戸の調査対象漁家を中心として零細な漁家を調べて出された数字でありますから、こういう実態は、その後年次を経過いたしまして、その動向値を見るわけにはまいりませんが、同じ状態に置かれておると見てもあやまちはないのではないかと思います。また、その後における現時点までのこれら漁船漁家の漁獲高、所得の伸びというものと、これは漁業の年次報告によりましても、たとえば多獲性大衆魚はこの五年間に、その金額と比率は五年前に比べて八割二分程度にむしろ価格が下落をしておる、値下がりをしておるということが年次報告にも明らかに示されておる数字であります。したがって見ますと、この零細な沿岸漁船漁家の立場からいたしますと、いまのソーセージの話でもありませんけれども、諸物価は軒並みにはね上がっておる。ここ三年の間で二割以上の消費者物価が値上がりがいたしておる。その多獲性大衆魚の値下がりは一割三分程度も値下がりを来たしておる。こういう状態の中では、現時点をとってこの対象漁家を調べますと、おそらくこの調査時点における負債の重圧以上の重苦しい数字に押しつぶされておることが想像されるわけであります。それでまず、こういう点を融資保証法の中では、そういう実態を通じていかにお取り上げになられたのか、またなる御方針があるのか、大局的な立場からまず御所信のほどを伺いたいと思います。
  96. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 渡辺委員にちょっと申し上げますが、大臣いま予算委員会のほうから出席を求められておりますので、いますから十分間以内にひとつお願いをしたいと思います。
  97. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 漁家負債調査報告書を出しました以後の動向につきましては、いま渡辺委員の御指摘のようだと思います。それに対してどういう措置をとり、またいま御審議を願っている法案に、どういう点が織り込まれておるかということでございますが、その後の対策といたしましては、端的に申し上げますと、簡単に申し上げますと、農林漁業金融公庫等におきまして、沿岸漁業経営安定資金、この資金につきましての金利引き下げとか、あるいはまた償還期限の延長、そういう方法をとっていることが一つ、それから沿岸漁業の構造改善を手がけておりますので、その方面の改善資金を回すというようなこと、その他の資金の拡充というふうな対策を講じております。なお、いま御審議を願っている法案につきまして、どういう点が織り込まれておるか、これはもうすでに御指摘になっておると思いますが、漁協系統組織の強化による漁民の利益の擁護を助長せしめる、こういう点を留意いたしております。あるいは金融の改善措置を講じるために、農林漁業金融公庫の貸し付け条件、貸し付けワクの改善、構造改善資金及び沿岸漁業経営安定資金、これはいま申し上げたとおりでございます。なお、中小漁業融資保証制度の改善、単位漁協を本制度金融機関にすること、漁協保証協会への出資を利用して組合員保証を受けられる道を開くこと等でございますが、なお詳しくは、水産庁長官からお答えいたします。
  98. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この調査でも出ておりますように、もうどうしても返せないというのは全体の漁家の一割二分八厘を占めております。なお、きめられた期日までに返せないというものも全体の四割七分を占めております。もうこれは延滞利息を払わせられる立場に立つ——その中にも返せないという負債がかなり多く占めておることは、これは予想されるわけであります。そこで、私はいまのような大臣の御答弁では、こういう実態に基づく改善の措置であるとは、どうひいき目に見ても理解しがたいわけであります。そこで私は、私の意見というよりは、この報告書の意見を、水産庁という資料でありますから、この資料中心として、大臣のこれは次元の高い政策的なひとつ方向というものをお聞きいたしたいのであります。  それは、第六章に漁家金融をめぐる諸問題というのがありますが、これは抜粋にはいただきませんでしたが、私のお伺いしたい点だけを拾い読みをして、大臣にこの水産庁で出した問題の点をどう大臣はお考えの上に政策的にお取り上げになるかを伺いたい。一二三ページの上のほうです。「最近の養殖漁家に見られるように、もし漁家の生産が比較的に安定的なものになれば、一般市中金融機関融資対象にさえなる。だがその生産力の基盤が弱いゆえに、漁家金融は系統にそれを求めなければ、不正規の金融に依存せざるを得ない。これが一般的な漁家漁業の姿である。」もう系統金融機関からも見放され、漁村のボスに首根っこを押えつけられて、そうして生きる権利すら十分にこれを主張することも忘れている。一般の零細な漁家はこういう系統金融機関からも見放されているということを、ここではうたっております。そうしてこの一二三ページの下のほうに、「融資を通して漁家の生産力を向上させるために、個々の例を見て計画的な融資がなさるべきである。そうして融資に乗り得ないものには、補助金による回収を目的としない資金が投ぜらるべきである」というております。そうして一二四ページの最後に、「前にも述べたように漁家は融資という産業政策の対象ではなく、補助金ないしは社会政策的な面からしか救い得ない経営体が存在することを否定するわけにはいかない」こういうておるのであります。そこで、これはこの報告書にあることも全体の一つでありますがこれは農家の場合にも当てはまる、あるいは森林経営者にも当てはまる部分があるでありましょうが、いかんとしても返し得ない、開拓農家もそうであります。そういう負債に対しては、この資料の調査の意見には、補助金ないしは社会政策的な面からしか救い得ない経営体が存在することを否定できない、肯定せざるを得ない、そういう政策を、沿岸漁業等振興法を政策は第四十三国会に通過させられた責任からも、この点を私は赤城農林大臣に、今後いかなる施策を具体的な内容として対処されるのかをお伺いしたいのであります。
  99. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまお読みになった結論の方向へ持っていくのが至当だと思います。しかし、それにつきましては、たとえば農村の負債が非常に多かった昭和五、六年ごろの農業恐慌時代、全国的に負債整理の問題が取り上げられました。そういうような一つの大きな問題として取り上げて、全体としてどういうふうに持っていくかということを検討する必要があると思います。結論としましては、いまお読みになった一二三ページから二四ページの方向へこれを進めていくことが至当だと考えております。
  100. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その至当だという再確認をいただきましたから、それをひとつ、革命的な施策という内閣総理大臣みずから取り上げておるそういう政策の中で、三十九年度はいかに具体的にその政策が打ち出されているかをお伺いします。
  101. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 三十九年度は、たびたび申し上げておりますように、そういう革命的なんて、どうもあまり見当たりません。革命的にしていこうという芽ばえは、ないわけではないのでございますが、再々申し上げているように、革命的というのは三十九年度の予算に……、見方によりますがね。
  102. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうしますと、これはひとつ今後に、ぜひ大臣、善処を約束していただきたいのですが、それはお願いできるでしょうね。
  103. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 善処は約束します。ただ立場が違いますので、私が一生懸命やっても、まだだめだと言われるかもしれませんが、とにかく、極力その方向にやることは善処してやっていきたい。
  104. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうしますと、それは実力をもって、ひとつ実力者大臣でありますからやっていただくことにして、さしあたり、この融資保証の線にも乗りがたきものは、そういう抜本的な措置を今後に期待するとしまして、これらの系統金融のベースに乗った保証によって、さらに受信力が高まって、漁業の近代化に前進できるという場合にも、いまのようなこういう中途はんぱな受信者から出資を求めたりするということでなしに、政府あるいは地方公共団体がもっと直接にそれらの受信力を高めるような行政措置を講じて、その保証をもっと前進させるという方向を、この法律改正の機会に、ぜひ具体的に打ち出していただきたいのですが、その点はいかがでしょうか。
  105. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いろいろな方法につきましては、私もいま、ごうごうというような考えは持っておりませんが、検討してみたいと思います。
  106. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それでは、時間が参りましたので、大臣に退席をお願いします。引き続いて長官質問に入ってください。——それでは御発言もなければ、これにて質疑は、尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 御異議ないと認めます。これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これをもって討論は終局したものと認めて御異議ございませんですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方は、挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  109. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、前例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時二分散会