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1964-03-03 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三日(火曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            櫻井 志郎君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            木島 義夫君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大河原一次君            小宮市太郎君            戸叶  武君            矢山 有作君            安田 敏雄君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林大臣官房長 中西 一郎君    林野庁長官   田中 重五君    水産庁長官   庄野一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    水産庁漁政部協    同組合課長   犬伏 孝治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小漁業融資保証法の一部を改正す  る法律案内閣提出)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それではただいまから委員会を開きます。  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続いて質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は、御発言を願います。
  3. 矢山有作

    矢山有作君 それではきょうは、この間お聞きした問題の中で、整理のついておらぬ分があるので、その際には大臣がお見えだったけれども長官中心になって御答弁をいただいたわけです。したがって、その問題についてだけ一応整理をしておく意味で質問をやらしていただき、あとは、いずれにしても大臣に出ていただかぬことには解決のつかぬ問題が多いのです。だから、それについては先ほど委員長からお話のように、できるだけ早い機会に大臣を呼んでいただいて、そうしてその問題について質問をさしていただく、こういう前提でひとつやらしていただきたいと思います。  この間の質問で、私が二番目に申し上げたのは、漁業全般をながめてみたときに、漁業全般といいますか、沿岸漁業中小漁業、その他漁業、つまり漁業全般ですね。これをながめたときに、沿岸漁業の伸びが一番悪いということ、そうしてまた、したがって、それらの所得状態、あるいはまた、生活水準等も非常に悪いということ、そういうことを申し上げて、その中でも漁船漁業が非常に経営状況がよくない、こういうことを指摘して、その漁船漁業がそういうふうな劣悪な条件に置かれている大きな原因一つは、無動力漁船漁家というものが非常に多い、こういうことで、それを中心質問いたしまして、そういうふうになっていった原因は何か、それに対する対策はどうか、こういうことをお聞きしたわけです。そこで、その際長官のほうから答弁をいただいたのは、無動力漁船漁家というものはだんだん減ってきて、三トン未満、さらに三トン以上五トン未満、あるいはまた、浅海養殖というようなものがどんどん伸びておるというようなお話があったわけです。  そこでひとつお伺いしたいのは、沿岸漁業等振興法ができ、そうしてそれに基づいて、いま施策が行なわれておるわけですが、一体、将来の沿岸漁業というものをどういう形にしようとしておられるのか。たとえば農業の場合には、私どもは大きな批判は持っておりますけれども農業基本法を受け、さらに所得倍増計画の中で一応の目安というようなものが、いわゆる二町五反程度の自立経営農家中心にしてそれを育成していくという形で示されております。ところが、沿岸漁業の場合には、そうしたビジョンというようなものが何もないのではないかと思う。したがって、その点を今後一体どういうふうな形態の、どういうふうな経営のものを沿岸漁業として考えておられるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  4. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 沿岸漁業の将来のあり方、こういう御質問でございます。非常に見通しの問題でございますし、また、指導方向でございます。われわれといたしましては、先般来沿岸漁業、その中におきましても漁船漁業というものが漁業収入なりあるいは漁業所得、あるいは生活水準というものにつきましての、他の漁業及び他の産業と比較して非常に低い、こういうことを申し上げたわけでございます。それで、動向においても、報告申し上げておりますように、沿岸漁業におきまする漁船漁業あり方というものについては、最近の動向でもおわかりのように、無動力船動力化し、その動力もディーゼル化しているということと、それから五トン未満の船におきまして、動力船におきまして、労働事情等が反映いたしまして、自家労働完全燃焼経営に移りつつある、こういうことを申し上げたわけでございます。それは、従来からの漁船動力化なり、あるいはこれの大型化、あるいは漁船経営形態指導、そういった面も反映しているかと思いますが、現在におきまして、そういった動向をさらに助長する、こういうことを考えております。なお、沿岸漁業全体につきましては、先般来お答え申し上げておりますように、全国を四十二の地区に分けまして、その地区ごとに二年間の調査をいたしまして、沿岸構造改善計画というものを立て、その計画事業に移して経営近代化をはかる、こういう事業を進めているわけでございますが、その構造改善目標というものは、大体現在におきまする沿岸漁家所得の増加、それは計画年次に対しまして倍増以上にこれをもっていく、こういうことを考え計画でございますが、それにのっとりまして、着着と事業化を進めていく。そうして沿岸漁業所得増大格差是正、あるいは生活水準向上、そういうものに資するということをはかっております。そういう沿岸構造改善事業を進めるという中におきまして、先ほど申しました漁船漁家動力化なり、あるいは近代化といいますか、省力的な機械を入れながらやっていくという考え方を持っております。欧米あたり沿岸の先例を見ましても、相当大きい漁船自家労働的な、四、五人の就業者でこれの操業をやっている。それだけ機械が導入されている。そういう点をわれわれも考えながら、産業等発展におきます就業者人口の流出というものを、契機としてつかんで、漁業条件にあわせた漁船大型化をはかっていくことによります省力的機械の導入をはかって、沿岸漁船漁業中心考えるという状況、それから漁業条件によりまして養殖事業を活発に開発していく、そういうような方法、両方のことを考え、あるいはその複合体ということを考えておるわけでございます。
  5. 矢山有作

    矢山有作君 いまの御答弁では、実にばく然としておるのですが、この年次報告で見ても、その三トン以上五トン未満のところが、労働力完全燃焼で一番いいというふうなお考え方でおられるのじゃないかと思うのです。ところがそういった三トン以上五トン未満漁船漁家というものが、じゃ農業やその他の産業に比較してどういう状況にあるかというと、その他の産業に比較すればもちろん劣悪というか、農業と比較してもやはり劣悪な状況にあるわけです。だから沿岸漁業振興という形で構造改善をやられるとか、あるいは漁場条件を考慮して、いろいろやられるとおっしゃるのですが、一体私の言うのはそういうようにお考えになっておるいわゆる沿岸漁業というものの将来の姿は、どういうふうに考えておられるのかというのです。というのは、沿振法の中に、はっきりうたわれておりますように、「沿岸漁業等生産性向上、その従事者の福祉の増進その他沿岸漁業等近代化合理化に関し必要な施策を講ずることにより、その発展を促進し、あわせて、沿岸漁業等従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、」というのです。したがって、そうすれば将来のいわゆる沿岸漁業のあるべき姿というものは、他産業従事者と均衡する状態でなければならぬということです。そこでどういうふうな具体的なものを、いわゆる経営像として持っておられるかということを言っておるのです。
  6. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、他産業と均衡する、こういう考え方でございます。他産業という標準のとり方にも、いろいろ問題があろうと思います。動向では、全都市勤労者を一応比較の対象として、その格差をお示ししたわけでございますが、まあ全都市勤労者と均衡するか、あるいはさらに農漁村と大体同じようなレベルの都市労働者と、就業者と均衡するか、そういう問題はあろうかと思いますが、沿岸漁業構造改善対策におきましては、そういった点を考えながら、現在におきまする所得を倍以上に持っていく、そういった目途計画を立てて、地区ごとにそういう計画達成のための事業化をはかる、そのためにはもちろん先ほどから申しましたような漁船漁業なりの機械化、あるいは大型化という問題もあるわけでございますが、さらにそれは漁場条件によって非常に制約されてくるわけでございます。むやみに大きな船をつくっても、漁場が狭隘なところ、あるいは資源状態との関連において、そういうことは考えなければならぬ。一方におきましては、構造改善の大きな柱になっておりますが、漁場改良あるいは大型漁礁の設置、これは非常に沿岸漁家から待望されているわけでございますが、漁場改良におきまして、築磯なりあるいは投石なりすることによって、あるいは大型魚礁を設置することによりまして、魚族が非常に繁殖し、あるいは資源が維持される、そういった面とからみまして、過剰投資にならないような範囲におきまして、これは漁場によりまして、地区ごとに違ってくると思いますが、一がいには言えないと思いますが、そういった面から漁船大型化にも一定の目途があろうかと思いますが、そういう点は地区ごと計画を立てるということで、われわれは進めております。だから一がいにそれが全国一本でどうだというわけにはまいりませんが、構造改善事業は四十二地区でやっておりますそういう計画を詳細に立てたやつを農林大臣が承認し、そしてそれも計画として漁船漁業なり、あるいは養殖業開発ということで現在の所得を上げていく、そして生活向上させる、こういう点でございます。実はわれわれといたしましては、他産業就業者に均衡し得をところまでもっていくということを考えております。
  7. 矢山有作

    矢山有作君 いまの御答弁は、前の繰り返しですね。私は具体的にそういうような沿振法の第一条の目的に沿うような沿岸漁業というものは、どういう形のものを考えておるのかということを問うたわけです。それに対してお答えがないところを見ると、私はおそらく沿岸漁業振興と口では言っておりますが、一体沿岸漁業としてどういうものを想定してやろうかという、一つの他産業との格差の解消を目ざしての沿岸漁業経営あり方に対する具体的なものというものが私どもはないというふうに、いまのお話を聞いておって印象づけられるわけです。したがって、その点を私ははっきりしておやりにならぬと、幾ら漁業構造改善事業をやるんだ何だと言っても、一つの目ざす目標というものが具体的に出ておらぬのだったら、なかなか私はそれをやるのは困難じゃないかと思う。しかも先ほどおっしゃいましたが、沿岸漁業構造改善だとか、あるいは養殖に向けていくんだとか言っておられますけれども、これには最近のいわゆる高度経済成長の問題もからんでおり、漁場荒廃という問題が非常にたくさん起こってきておる。そうすると、一体沿岸漁業構造改善を一方でやりまして、一方では地域開発関係漁場荒廃していく、さらに水質が汚濁していく、そういう問題を積極的に解決する姿勢がなしにそういうものをおっしゃっておっても、漁場を確保していくことすら私は困難になる、あるいは水産資源を確保していくことすら困難になるんじゃないかと思う。  そこで、もう一つ沿岸漁業構造改善の話が出ましたから申し上げます。実は私がある資料を調べておりましたら、府県別沿岸漁獲高指数というものの推移が出ております。それを見ると、昭和二十八年から三十七年までの統計なんですが、各地によって非常に大きな格差があるということです。昭和九年から十一年の平均を一〇〇として考えた場合に、一方ではたとえば宮城のごとく三二三・七というふうに伸びていっているところもあります。ところが、一方においては一三・一しかならぬ、あるいは九・四しかなっておらぬ、そういうふうな変化を示しておるところもあるわけです。そうすると、沿岸漁業構造改善事業というものは、いわゆる全国四十二地区に、長崎とそれからもう一カ所どこですか、は別として、各府県地域を指定してやっておるわけです。ところが、そういう各府県にばらまいてやっておる沿岸漁業構造改善事業というものが、一体沿岸漁獲高指数が非常にいま言ったように格差がある、そういうことを考えながらやっておられるのかどうかということです。幾らやっても伸びないところに、構造改善事業をやってみたところで、これは私はむだな投資になるだけであって、何らの効果もない、こういう結果を来たすんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。そういう点の分析までやられて構造改善事業を進めておられるかどうかということです。
  8. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 構造改善対策事業といたしましては、長崎県が海区が違いますので、玄海のほう、日本海側と有明海と、こういうふうに分けておりますし、それから北海道日本海なり、太平洋なり、オホーツク海なり、海区が違いますので、漁場事情が違いますので、海区を分けて全国で四十二地区といたしております。それで四十二地区の中の構造改善目標というものは、具体的にやはり所得目標をどれだけに上げる、こういう数字的に具体的な目標を立ててございます。具体化していないとおっしゃいますが、構造改善計画を承認いたしましたところは、そういった過去の実績で、大体の海区におきます沿岸漁家所得なり漁業収入というものを押えまして、これをどういう方向に伸ばすということで目標年次の五年後の経営近代化漁業が大体終了していく期間におきまして、これをどの目標までに上げる、こういった具体的な数字を一応目途にして、事業を進めておるようなわけでありまして、一がい全国一本、こういうわけにはまいらないわけでございます。その点はわれわれ具体的にやっておりますので、そうしてそれを緻密に積み上げたものを、農林大臣検討して承認する。そうしてそれに補助事業をやるなり、あるいは公庫の沿岸構造改善資金を導入するということで事業達成をはかっておるわけでございます。それで御指摘のように漁業というものは、やはり端的に申しますと、海況なり漁況なり、いま御指摘のような他産業発展による漁場変更なりで変動するものでございますが、そういう点は一応基礎に入れまして計画は立ててございます。たとえば一番漁況変化いたしておるものは、ニシンだとかあるいは最近におきまするイワシ漁業といったようなものが、非常に最近の動向としては、北海道でも変化いたしておりますし、また東北等でも、イワシ漁業というものの日本海でもウエートが非常に変わってきておる。そういう面を当然構造改善には基礎に取り入れて、そうしてそういう漁況なり、自然の変更の上に海区としてはどういった計画を立てたら、沿岸漁家経営を拡大し、あるいは所得を増大する、そういう感覚、感じでやっております。その点は御心配ないようにやっておるわけでございます。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、長官心配のないようにやっておるとおっしゃるけれども、四十二地域を指定して、まんべんなしにこの地域構造改善事業をやっておるのですが、二十八年以降のずっといま言った漁獲高推移を見ると、どんどん減っておるところがある。一方には伸びておるところがある。その非常に減っておる、たとえばいま言われました九——十一年の平均を一〇〇とした場合に、九・四の漁獲高しかない、あるいは一三・一の漁獲高しかない、こういうような極端なところがあるのです。そういうものに構造改善事業だといって、大型漁礁をつくったりいろいろとやられて、はたしてこれによってその地域沿岸漁業振興していくのかどうか、私はこれは非常に大きな疑問があると思います。そこに沿岸漁業構造改善事業あり方というものを、もう少し漁場条件だとか、あるいはその他一般の条件考えてやられぬというと、なるほど計画を立てるときに、その地域状況というものを考え計画が立てられて、構造改善事業をやっておられるのでしょうが、しかし漁業の場合には、自然的な要件というものが非常に大きいから、それを無視して構造改善事業でやられて、沿岸漁業振興をはかるのだと言ったところで、私は実際問題としてできぬと思います。そういうことをやるよりも、この際、徹底的に沿岸漁場状態というものを調査して、そうして沿岸漁業として伸ばせるところに対しては大きな投資をしていく。そうでないところには、別個の施策をもっていく、こういうような大胆な方針というものが打ち出されていいんじゃないか、私はそういうふうに思う。その点はもう少し御検討を願わぬと、漫然と漁礁をつくればいいのだなんといってやっておられるというのでは、どうにもならぬ地域が私は出てくると思います。
  10. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) お言葉を返すようでございますが、漫然とやっておるわけではございません。二年間、県を中心調査をいたしまして、そして構造改善対策事業計画を立てるわけでございます。二年間調査するということで、従来の漁場なり、漁況変化というものは、十分動向考えながら計画を立てるわけでございますし、また、事業計画遂行段階におきまして、そういいましてもやはり漁況海況というものの変更はあろうかと思いますが、そういうときには、やはりそれに対応する考え方なり、措置をとらなければいかぬと思いますけれども、二年間十分調査したところで、これの計画を実施し、そうしてその中間におきまするいろいろな変更というものは、また計画変更なり、あるいは延長なり、いろいろなものを考えなくちゃいかぬと思いますが、何ぶん事業化いたしましたのが、三十七年からでございまして、ただいま二年目、来年が三年目、こういうことになっているわけでございます。補助事業は大体三年間でやるわけでございますが、四十年の場合には、そういった計画のリバイスもやって、さらに手直しをするところがあればやる、そういうような考えでおります。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 まあこれは幾ら私が申し上げても、そういう御答弁繰り返しになるだろうと思うのです。私は、最近の各府県漁獲高推移というものを見て考えた場合に、沿岸漁業構造改善事業がはたしてどれほどの効果をあげるかということに対して大きな疑問を持っておりますので、その点については、さらに慎重な検討を続けながらやっていただきたいということを希望として申し上げておきます。  なお、この問題は、その他の問題とも関連をしてまいりますので、これはまた大臣見えたときに、その問題には触れさしていただくということにして、次の問題は、御答弁の中で無動力漁船漁家がだんだん減ってきたということを盛んに強調されておるわけです。ところが、無動力漁船漁家が減ってきたといいましても、地域的な相違というものがかなりあると私は思うのですね。ある地域においては無動力漁船漁家が減らない、ある地域では非常にそれが減ってきて動力化が進んでいくと、そういうようなところもあると思うのです。ところが、そういう地域に対する今後の方針、そういったものをひとつ伺うと同時に、ただ単に無動力漁船漁家全般傾向として減ってきているからという年次報告のとらえ方だけでは、私は次の対策というものを立てる上に非常に問題があると思う。やはり無動力漁船漁家が減ってきて、あなたのおっしゃるように、三トン未満、あるいは三トン以上五トン未満漁家がふえておっていい傾向にあるのだとおっしゃるのなら、それをやっぱり地域別にどういう状況かということも、年次報告の中には当然盛り込んで出されぬと、私は十分な今後われわれは審議をすることにはならぬと思うのですがね。そういう点で無動力漁船漁家地域状況、減少の状況、そういったものがちゃんとそちらでは御調査になっておりますか。
  12. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この動向報告にあたりまして、冒頭にお断わりいたしましたように、何ぶん統計資料の不備な点もあるわけでございまして、無動力漁船動力化していきまする段階におきまする地域別資料というものは、十分そろっておりません。全国一本のものがあるわけでございますが、今後は、やはりそういった御指摘の点は非常に重要でございますので、そういう統計資料整備につとめながら、地域的にやはり漁業においては格差が出ておるわけでございますから、地域的な格差階層間の格差、これが今後の大きな問題になろうかと思いますから、そういう点は資料整備を進めながら、明確な資料の上に立って施策をそういうところに施行するという態度をとらなくちゃならぬ、こう思っております。御指摘の点は、ごもっともと思いますので、今後も努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 いまの御答弁でおっしゃったように、地域別格差、あるいは同じ沿岸漁業でもその階層間の格差というものは、私は非常に激しいと思うのですね。それであなたが正直におっしゃったように、統計が不備だから、今後十分に充実させたいとおっしゃるのは、私は了とします。そういうものがなくて、ほんとうの沿岸漁業振興対策というものはその地域の実情にあわせて出てくるわけがない。だから私は、先ほど指摘しましたように漁獲高指数等についても非常に差異がある、ところがその点でもそれは私はそれを踏まえてやっているのだと、あなたはおっしゃいましたけれども、いま言ったような統計資料すら不整備状態では、私は表面的なとらえ方しかできていないのではないか。したがって沿岸漁業構造改善事業を一律的にやられておることに対して、その整備についても非常な不安感があるわけです。ですから、ぜひこれはそれぞれの地域あるいは同じ沿岸漁業の中における階層間の格差、そういったものを十分資料をそろえて、この次の年次報告では出していただく、そういったものの上に立って沿岸漁業振興対策考えていく、こういうことにやっていただきたい。このことは、ぜひひとつお約束をしていただきたいのです。そこまでもっていかぬと、また来年の年次報告でそういう肝心なところが残されて出されたのでは、これは問題になりませんから、お約束できますか。
  14. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 一年でそういう統計がすぐそろうかどうかということは、努力はいたしてみますが、私もまだここで十分自信を持ってお答えする段階までいっていないと思いますが、そういう方向に、御指摘のような方向に向かって努力をいたして整備して、来年の動向にはよりよきものを御報告を申し上げる、こういう努力はいたします。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、先ほど言いましたように、良識に従って、この辺でこの間の質問に対する結末をつけたことにさせていただいて、あと大臣がお見えになったときにお伺いしたいと思うんです。それは構造改善の問題もあります。さらにそれに関連する漁場荒廃の問題、さらに現在いささか年次報告には触れて出ておりますけれども、転業あるいは漁業転換、そうしたものを具体的にどういうふうにやっていくのか、こういうことについてもぜひお伺いしたいと思っております。それからさらに加えて魚価の安定、これについてもお伺いしたいと考えております。したがって、委員長にお願いですが、できるだけそういう重大な問題がありますので、これは大臣を早く出していただいて、ひとつ質問させていただく機会をつくっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  16. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私はこの前質問を残しておりまして、調査をしていただく事項ございましたが、それはそれといたしまして、引き続いて二、三点お伺いしたいと思います。  まず初めにお伺いしたいのは、次官にお伺いしたいのですが、私は特にこの前は浅海漁業地帯、特に有明海の沿岸中心にしてお聞きしたのですが、農協の信用事業漁業の信用事業とが同一組合員であるために、競合するといいますか、そういう点が非常に心配されたわけです。そこで、農協の諸君からこの点について特に農林省に陳情等があったかどうかですね、まずそれをお聞きしたい。
  17. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) ただいま小宮委員の御質問の点については、陳情は私は承っていなかったようです。
  18. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 受けていないのですか。特にノリ漁業においては、最近非常に収入がいいということで、漁協の信用事業がかなり預金の獲得等も激しく行なわれているという事実がたくさんありますが、特に私が福岡県のいろいろな事情を聴取いたしましたところ、一番心配になりますことは、この法律改正によると、不振組合も形式上の信用事業を開始されるのじゃないかという、そういう心配を持つわけです。  そこでまずお聞きしたいのは、信用事業をやるその基準といいますか、そういう基準について、何か政府としてお考えになっておるか。お考えになっておれば、どういう基準をもってこの指定をするか、そういうことをひとつお聞きしたいと思います。
  19. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 私からお答えさしていただきます。先般の委員会で御質問もありまして、重複するかと思いますが、お手元に配付いたしました横とじの、第一回にいたしました法律案参考資料の十ページに、指標別組合分布状況というのがございます。この表は千五百五十六組合、これは信用事業を営んでおります分が、前の九ページの表でごらになりますと、沿海の関係の漁業協同組合で、信用事業を営んでおりますのが二千百二十四組合ございますが、それを調査いたしまして、調査で回答等がありましたもの、これが千五百五十六組合ございます。この指標は貯金残高別組合数の指標と、それから貸付金残高別組合数の指標と、それから組合員の水揚高別組合数、それから常勤役職員数別組合数、こういう四つの指標をもとに信用事業を営んでいる千五百五十六の協同組合について調査した資料でございますが、こういった指標をもとにいたしまして、信用事業を営んでおります組合で、財務状況が健全で、しかも債権の管理能力のありますもの、こういうところから金融機関に指定する、こういう考えでございます。それで現在考えておりまする基準といたしまして、貯金残高別組合では、大体貯金の残高が少なくとも二千万以上なくちゃならぬ、こういうふうに考えておりますし、また貸付金の、残高におきましては、最低一千万円以上なければならぬ、こういうふうに考えております。また組合員の水揚高にいたしましても、五千万円程度以上あるほうが好ましい、こういうふうに考えております。また今度は金融機関になりますので、債権の管理能力等考えますと、常勤の役職員の数というものも、重要な指標となろうかと思います。少なくとも常勤役職員が五人以上、こういった中の組み合わせで金融機関を指定してまいりたい、こういうふうに考えております。まだ決定いたしたわけではございませんが、大体そういうことを基本に考えております。
  20. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連して伺いますが、あらためて伺うより時間的に合理的だと考えますので、いまのこの表の内容を少し関連して伺いたいのです。  説明にありましたように、調査対象が二千百二十四組合、これに対して回答を寄せたものが千五百五十六、その回答率が約七割にとどまっておる。それからもう一つは、七割のレポートした中でも、その約一割が最も大事な報告すら不明である、こういう実態です。そうなりますと、いま説明がありました基準というものも、一体、貯金残高で二千万円以上というものが適正なのかどうか、あるいは貸付残高で一千万が適正なのかどうか、その基準がいかなる根拠によってはじき出されたか、その点を少し具体的にお伺いをいたしたい。  それから、貸付残高というのは、プロパー融資だけをやるのか、転貸融資を含めるのか、そういう点と、単に貯金残高というものだけの取り扱い方ではなく、その他のデータにあるように、漁業関係の金融機関の系統利用率が低い、こういった点を保証の認定には要素とすべきではないかと思いますが、その点、いまの取り扱い方がないことは一体どういうことか、そういう点を関連してまずお伺いいたしたいと思います。
  21. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これは具体的に指定してまいります場合には、十分組合の財務状況なりを調べなければならぬと思いますが、これは三十七事業年度の末におきまする漁協の調査でございます。これを基本にいたしまして、ただいま考えておりますのは、先ほど申し上げましたような指導基準でまいりたい、こういうことでございます。それは、具体的にやってみてさらに是正する点があれば是正してまいるという方向で、固定的には考えておりませんが、指導基準としてそういうところをやっていく、こういうふうに考えております。なお、貸付金残高というのは、もちろん転貸等も含んで統計は入っておるわけでございます。やはりこういう自己資金がどれだけあるか、あるいは貸付業務をどの程度やっておるか、あるいは組合として経済的な組合員の水揚げ高というのは、やはり漁業協同組合の経済的な規模の大きさを示す指標でございます。そういうものを考えたわけでございます。一応のめどでございます。実情に即して是正するところを是正していきたい、こういうことで考えております。
  22. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 非常に事務的な質問には、次元の高い回答なわけです。私は、もっと計数的なバックがあるんじゃないかということを、事務的な角度から政府委員に尋ねているわけです。たとえば、この要素にはないが、こういう信用事業中心として保証という機能を与えるには、少なくとも、これ以外に、またいま取り上げた問題以外に、固定資本の比率が一体適正かどうか、あるいは経常損失が、結果的に正常な決算を営んでおるか、そういうことが私は基準に取り上げられなければ、これが運用される場合に非常に問題が出てくるということから、もう少しそこら辺を財政的に整備をする必要があるんじゃないかということで、たとえば貯金残高の二千かというのは、一体、そういう能力をミニマムとして押えるに適当かどうか、その根拠をもう少し具体的に計数的に伺いたいのであります。そういう点をひとつ弾力的に運用するなどという大臣答弁のようなことじゃなく、あなたは補助的に答弁するんですから、もう少し事務的な質問には事務的に答えていただきたい。そして、一体、それらをもう少しお答えを願った上で、結局、全体では何組合が一応対象になるかというところまで、それはまあ総体的な問題としてその点まで合わせてお伺いをいたしたいと思います。
  23. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) その基準をきめますにつきまして私たちが考えました点は、やはり全国的な信用事業を営んでおりまする組合の平均的な数字がどの程度いっているか、大体平均以上のものを金融機関に順次指定していくという考え方でございます。この全国平均では、三十六年度末の指標でございますが、貸付残高では、大体全国平均で千六百万円、それから貯金残高——順序は狂いましたが、貯金残高では全国平均で千四百万というのが大体平均になっております。なお、組合員の水揚げ高の全国平均といたしましては、組合別に七千万円程度というのが全国平均になっております。そういった全国平均の基準以上に大体該当するところは、金融機関に指定する資格がある、こういうふうに考えたわけでございまして、財務内容につきましては、御承知のように、財務処理基準で、そういうものに基づいて考えておるわけでございます。いま申しましたような基準で信用事業を営みますものにつきまして選びますと、さしあたり四つの条件を充足するものとしては、三百組合程度が金融機関としての指定をされ得る水準に達しておる、こういうふうに考えております。
  24. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いまの平均値をとって、少なくともそれを上回るというものをまあ踏まえてという御説明ですが、その平均をとるのに、この表には、三十七事業年度末のいろいろなデータがありながら、いまの口頭説明は、三十六年の平均の紹介があった。三十七年は当然のこととして、三十八年もごく最近時における具体的な数字もあるわけですから、そういうものをひとつ御紹介を願いたい。三十六年末で平均が千四百万であるとか、そういうような三年も前のようなことでこれらを策定するというのは、どうかと思われます。  もう一つ、財務処理基準令によると言われますが、それでは繰り返しますけれども、その漁協の持っている固定資産あるいは流動資産、そういうものと自己資本との比率が一〇〇%というところを守っておる組合以上の財務の堅実なものを指定するんですか、どうですか。
  25. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 三十七年度の平均のものは、いま調査中でございますが、これは三十六年度が確定いたしておりますので、一応それを基準にいたしておるわけでございますが、三十七年のそういうものが正確に上がってまいりますれば、三十七年度のそういう全国平均ベースというものを一応の基準にしてまいりたい、こういうふうに考えております。なお、財務処理基準令に合致するもの、そういうものは当然のことでございます。
  26. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうもしつこいようですけれども、この表には、三十七事業年度末の現在額で、そうして、その指定する基準たる組合を認定する平均が、三十七年度がまだ検討中とは、一体どういうことですか。
  27. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この三十七事業年度末の現在の指標は、こういう制度改正の準備といたしまして、直接本省からアンケート式にやったものでございます。ただいま三十七年の正確な基準というのは、府県を通じまして上がってくるものを取りまとめ中でございますが、これはさしあたりの調査として本省から各組合にアンケートとして出した分について回答のあっておるものが千五百五十六、こういうことになっておるのです。御了承いただきたいと思います。
  28. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 繰り返すようですけれども、三十七年度末というのは、三十八年三月末でしょう。そうですね。
  29. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) そうです。
  30. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうすれば、一年前のアンケートももうかくのごとし、その一年前の平均残高の把握もまだ調査中という。こういう不確かなところで三百組合というのがどうして出ますか。
  31. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この千五百五十六アンケートいたしました分について、この三十六年末の全国平均ベース以上に考えられるというものが三百組合、こういうふうに申し上げたのであります。
  32. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうもこういう非常に法律の基本になる該当すべき対象組合という把握が、いまのような不確かなことでいいんですか。一体アンケート調査も全体の七割しか報告が来ないでいいですか、これが第一点。それから報告が来たうちの一割は不明という。調査がきわめてずさんである。そういう中にこれを進めるという中には、もっと実態を農林省では把握して、客観的なデータをつかんで、その上にこの中小漁業の融資保証を十全の機能を負託させる、これは法律の審議ですよ。そういうときにアンケートは三十七年度末で七割はきました。これをずっと見れば、いろいろな点を勘案して三百組合くらいでしょう。具体的にその三百というのは県別に一体どういうものか、そういうことも聞きたくなるわけなんです。きょうはそんなことは聞きません。聞きませんが、少なくともこういう法律を出すには、運用する場合に、かくのごとき組合の実態だから、そのうちのこういう一つの線を引いたものに指定基準を置いて運用するのだ。もっと正確な、国民が納得するような資料がなければ審議のしようがないじゃないか、どうです。
  33. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この調査について回答率が七割程度、こういうことについては、われわれもさらにそういう点の完備は進めたいと、こういうふうに考えております。なお、これは昨年制度改正を準備いたします段階で調べたものでございます。そういう点で回答率も、まだ趣旨が徹底していなかった面もあろうかと思いまして、この面の完備は、先ほど申しましたように、進めていく考えでございます。なお、この基準は一応の基準でございまして、各県の協会がその基準に従いまして協会の会員でありまする組合についての信用事業を営みまする組合について金融機関として指定していくと、こういうことに相なるわけでございますので、やはり各県別に事情も特別にあろうかと思います。全国の基準といたしまして、われわれはそういう三十六年度末の全国平均ベース以上のものと、こういうふうにいたしております。各県別に協会が管轄内の会員の漁業協同組合金融機関として扱っていくという場合には、この基準に即して県内の事情等を十分勘案してきめる、こういうことに相なろうかと存じますが、そういう点について、今後ともやはり御指摘の点は、資料整備等は進めていきたい、こういうふうに考えております。
  34. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連ですのでこの程度でとどめますが、いずれこういう実態が、まず常日ごろこういう法律の一部を改正するに際してでなくて、絶えずいろいろ縦割りの組織があるのですから、常時実態を把握して、その必要の度合いによって、こういう法律の改正も出てきたものだろうと思うのであります。いまの話を返すようですけれども、どうもそういうこの法律改正の問題に対する認識もあまりないようだ。したがって調査も十分上がってこないというふうな説明にも受けとれたのですが、事実そうであったとすれば、これはたいへんなことで、私はこういう改正に対しては、客観的には非常に必要だという条件の中に政府は提案されたものだと思いますので、三十六年度末で、いろいろ指定基準を設定するなんということは、少なくともこの日進月歩の経済の変動の激しいいまでは、もの笑いになるだけのことですよ。三十六年度といえば、これは二年前のデータでしょう。それがまだ三十七年の一年前も実態把握が出ていない、そういう現状の把握が水産行政の実態である、そういうふうに理解せざるを得ない。だから、今後善処するということですから、私はこれ以上申し上げませんけれども、もう少しこういう切実な問題に対応するその態勢はどうであるか、そういうことをよくわかるようにあとで得た資料で明らかにして、はじめてこの審議というものが前向きに進むわけですから、とてもこういうふうなことではせっかく張り切ってこれを審議しようとしても気が抜けてしまうようですよ。これが水産庁の実態だと私は思う。年次報告についても、これは大臣にお尋ねしますけれども、そういうもっと基本的なものをまずつかんで、そうしてこういう状態だから、どうしても、融資保証法もこういう点を改正しなければならぬという、バック・データはもう少し勉強してやってもらわないと、水産行政の前進というものはますますおくれる結果にもなると思うのです。これは苦言だけ呈しておきます。もう少し新しい時点における現状というものを知らせてもらって、そういう実態の中で、この保証法が改正を必要とするのだというぐあいにひとつ説明のできるような姿勢をとっていただきたい。これ以上申し上げません。
  35. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 ただいまの平均水揚げでは、大体全国平均で七千万円、しかし基準としては五千万円程度ならばよかろうというような、そういう大体水揚げの点からはそういうお話があったのですが、実際に各県別にいま明らかでないのですから、ここでお示しはできないと思うのですけれども、私が福岡県のをとって見ると、筑前海、豊前海、有明海と、三海とあるのですが、漁船漁家がいかにひどいかということがわかる。と申しますと、筑前海で川十四の漁業協同組合があるのだが、信用事業をやっているのは、そのうちの三十四組合だけ、その中で三千万円以下の水揚げというのが十五組合あります。四四%ですね。これが三千万円以下の水揚げの組合です。行なっていないというのが十組合ありますが、これは全部三千万以下ですが、もちろん非常に貧弱な組合です。それから費前海は、金融事業やっているのが十六組合ありまして、三千万以下の組合というのが八組ある。これは五〇%ですね。行なっていないのが二組ありますが、これは三千万以上の水揚げになっておる。有明海は、先日質問いたしました中で申し上げましたが、二十三組合あって、十七組合が信用事業をやっておる。これは全部三千万以上。それから、信用事業をやっていないのが六組ありますが、三千万以下の水揚げというのは二組合ある。そういうふうに見てみますと、漁船漁家が非常に悪くして、いわゆる浅海漁業というか、特にノリ漁業が非常にいいということがここで明らかにしていると思います。  そこで、私、お尋ねいたしたいのは、こういうように非常に水揚げが少ないというところが、漁船漁家では五〇%になる、こう思うのですが、そういうようなのがありますと、相当保証の危険率が増大するのじゃないかというような、そういう心配を持つわけですが、その点についてどういうような措置をおとりになるか、どういうお考えであるか、まずお伺いいたしたい。
  36. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 組合事業といたしまして、信用事業を営みますものにつきましては、先ほど申しましたように、やはり組合員の水揚げ高というものの大きさというものも、この組合の財政の問題を反映するわけでございますし、また資金需要の面等においても、それは一応の資料になろうかと思います。そういう点で、根本的にはやはり漁船漁家振興をはかっていくということを考えなければならぬと思いますが、そういう点は、先ほど御説明申し上げましたように、構造改善事業等で漁船漁家として育成するもの、あるいはさらに養殖漁業としての開発の適格性が自然的にも経済的にもある面においては、そういう面を取り上げて、やはりその地区沿岸漁家として振興していく、こういう考えでございます。特に漁船漁家が多いから事故率が多くなる、そういう面につきましては、われわれといたしましても、御指摘のような点がございますので、協会といたしまして保証をつける場合のいわゆる審査ということにつきましては、十分注意をさせて、そういう面の配慮をなさねばならぬ、こういうように考えております。
  37. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 御答弁のとおりであれば、この本旨である中小漁業者、零細漁業者を救済するというその改正が、逆に、担保力の少ない漁民に対しては、貸し付けについては相当きびしくなるのではないか、かえってきびしくなるのではないかという心配一つある。そこで、ほんとうに救済するという政府のお考えであれば、この趣旨を十分生かすためには、国やあるいは公共団体で、自治体あたりの再保証の制度というのが必要になってくるのじゃないか、こういうように私は考えるのですが、その点について御所見を伺いたい。
  38. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この中小漁業融資保証制度の本来の目的は、御承知のようにそういう中小漁業者、沿岸漁家を含みまする中小漁業者に対しまする金融の円滑化をはかる、こういうことでございまして、そういう担保力のないものについて協会が保証するということによりまして金融の道が開かれるということが、主眼でございます。しかし、やはり協会といたしましても、この助け合いの、これは相互に助け合うというシステムでございますので、やはりそういう面の運用については十分配慮して、事故率が上がらないようにという配慮はしなければならない、こう思いますが、一面においては、やはり中小漁業者の金融の道を開くという面も考えなくちゃならぬ、そういうところの運用の苦心というものはあろうかと思います。まあ、そういうことで中小の漁業者を対象にいたしますので、協会が保証をいたしましたその保証につきましては、国の特別会計において保険するというシステムをとっておるわけでございまして、こういう国の特別会計で保証を保険するというシステムによりまして、そういった面の打開といいますか、対策は講じてあるわけでございます。
  39. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 特に今度の法改正によって、個人会員が単協の出資金を利用する方途がこれでできるわけですね。そうしますと、特に再三前から申しますように、個人の能力によって何といいますか、危険率がふえるといいますか、そういう心配もあると思う。さっき申しました担保万がないとか、非常に経済力の弱い人ですね。そうすると、単協の負担というのは、危険の負担を軽くするために地方自活体ですね、市町村あるいは県、こういうものが保証していくというそういう必要ができてくるのじゃないかと思う。まあ非常に小さいことになりますが、そういうことはないでしょうか。
  40. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のような点もございまして、県の保証協会には組合の会員、それから組合員である個人の会員、それから地方公共団体として県も協会に出資いたしておる。そういう出資を基盤にして保証を営む、こういうことになって、協会に対する県の出資ということで、御指摘のような点は目的を達しているわけでございます。
  41. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かにそういう出資の点が前から行なわれておると思うのです。ところが、最近の地方公共団体の財政というのは非常にすべて窮屈になってきていることも事実なんです。そうするというと、この出資というものがだんだん削られていくと、地方自治体において多額の出資があまり見込まれないということになる心配があるのですが、そういう点について何か御調査になったことはございませんか。
  42. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 初め御提出申し上げました配付参考資料の一ページに、「漁業信用基金協会の業務状況」の(1)会員数及び出資金額の推移というところに、会員別に昭和二十八年制度改正以来の出資金の推移を記載してあるわけでございます。これは、会員別には漁業協同組合、あるいは漁業生産組合、個人の会員、それから会社等の法人の会員、それから道府県、市町村等地方公共団体の会員数、出資金額というのがございます。それによりますと、道府県では大体、年度当初からほとんで全部が入っておるわけでございますが、四十府県、それから市町村については、四百八十四が五百四十七町村というふうに、出資する町村がふえておるわけでございます。金額につきましても、道府県では五億といったものが、十一億というふうになりますし、市町村では一億といったものが三億四千五百万円、こういうふうに増加いたしております。われわれといたしましては、道府県なり市町村なりの出資ということについても、今後ともこの出資金の増大ということにはつとめてまいりたいと考えますが、御指摘のように、これが減るとか、脱退するとかいう傾向は、全然ございません。
  43. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 また、この個人会員の保証額は、大体出資金の五倍から八倍程度だと、この前御答弁になったようですが、その最大と見て七倍か八倍、そのワク内で個人に保証する、こういうことになるかと思いますが、それではたいしたワクの拡大といいますか、そう恩典にはならぬと思いますけれども、個人会員の保証ができるというのならば、少なくとも出資金の十倍くらいにして、もっとこのワクを拡大して融資の保証をする、こうならぬと、たいしたありがたみはないと私は思いますが、この点いかがでしょう、ワクの拡大ということについて。
  44. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 現在におきまする一被保証人に対しまする保証金額の最高限度、いわゆる利用倍率といっておりますが、五倍ないし八倍ということで、平均が大体五倍になっております。その会員の個人なり組合の財政力等によりまして、これは協会で利用倍率を大体きめておるわけでございますが、大体が現在は、全国平均で五倍というふうになっております。基盤の確かなところは、八倍くらいにいっておるところもあろうかと思いますが、大体五倍、こういうふうになっております。御指摘のように、やはりこれは協会としての運営等で十分実績を勘案しながら、着実に増大していくというのが、手がたい方法でございます。で、従来の運営実績に照らしまして、三十九年度からは最高十五倍、最低六倍という範囲で、全国標準といたしましてこれを大体十二倍というのを基準にいたして、最高十五倍まで利用倍率を上げるということで、三十九年四月一日からはそういう方法で改正したい、こういうふうに考えております。
  45. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 わかりました。その内容運営の実績というのですか、それの明確な基準といいますか、そういうものを考えてあるのかどうか。と申しますのは、確かに平均は五倍と、ところが八倍まではいままで運営上やってきたところもあった、こういうお話でしたが、今度はそれを十五倍までやるというのですから、約倍になるわけですね。ですからその平均で十二倍といいますから、明らかに倍なんですね。そうすると、運営の実績という点で、これが内容といいますか、そういうものは一体どうなんですか。
  46. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 先ほど四月一日と言いましたが、いまのところでは七月一日からするということでございます。それで利用倍率を大体きめる方法でございますが、大体運営の実績と申しましたのは、事故率の問題でございます。やはり、むやみに保証金額を上げるということは、それは利用者側からは非常に望ましいことでございますが、そのために事故率が多くなって、協会の運営ができないようになるということでは、元も子もなくなるということで、先ほどから、手がたくこれは運営実績を見ながらということを申し上げたわけでございます。それは、現在の五倍ないし八倍、平均五倍といったところで下降傾向でございますので、そういう点から見て、現在のところ、十二倍まで上げても、事故率としてはだいじょうぶだと、こういうような運営実績にかんがみて自信を持ったわけでございます。利用倍率を七月一日から、先ほど申しましたような幅で拡大していく、こういうことを考えております。
  47. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 貸すほうの側としては、ごもっともなことだと思うのです。事故率の少ないということが基本になっておりますから。そうすると組合の預金率といいますか、そういう点がまず拡大されて、信用事業の健全ということが中心になってくる。そうしますと、どうしても前に戻りますけれども、農協と漁業協同組合とが競合する、競合するというのは、ちょっとことばが適当でないと思いますけれども漁業協同組合の組合員でもあれば、農協の組合員でもある、そういうところで漁業協同組合は水揚げの、たとえば一〇%とか二〇%とか強制的な預金が、かなり行なわれておる傾向があるのです。つまり事業の健全化をはかるために、そういうことが行なわれている。そうすると、農協に対する預金率といいますか、そういうものがだんだん低下していく。したがってその農協の信用事業漁業協同組合の信用事業と、お互いは預金の争奪戦が行なわれる、こういう傾向がかなりあるわけでございます。これと直接は関係ございませんけれども、そういう点で、同じ農林省内ですから、これをどういうように調和さしていくか、どういうようにこれをうまく運営していくかということは、かなり問題じゃないかと思うのですが、そういう点について、次官からでも御答弁願いたいと思います。
  48. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、兼業漁家というものが相当あるわけでございます。しかし兼業にも、漁業が主で農業が兼業の場合と、農業が主で漁業を兼業しておる場合と、様相は違うわけでございます。小宮先生が御指摘になっておりまする有明海あたりは、ノリなどは相当専業的にやっておるわけでございます。農業も兼業しておる面も多々あるわけでございますが、ノリ漁家というものは、非常に最近相当集約的に、また相当の資本を投下して積極的にやっておるわけでございます。そこで、そういうノリの生産物の販売も、最近のわれわれの指導等も相当きいたわけでございますが、七、八割は共販に乗っております。共販といいますのは、やはり所属の漁業協同組合を通じて卸屋と取引する、こういった形の共販でございますが、そういう面で、やはりどうしても生産物がどういうルートを通じて共同販売されるかという面が、どこに預金がされるかということと至大な関係があろうかと思います。農業が主であれば、やはり農業の生産物は農協を通じて共販されるという形になろうかと思います。そういう面におきまして、おのずから預金の無統制な争奪ということじゃなしに、やはり生産物をどういうふうに協同組合組織を通じて共同販売していくかという面で、おのずからその分野は分かれてくるのじゃないかと私たちは考えているわけでございますが、そういう点でやはり共販に乗ったものは、当然決済も組合決済をやりますので、一応預金振りかえをして、必要な場合にそれを生産資金なり生活資金に振り出していく、こういう形に相なるわけでございますが、そういう面で、生産物の共販ルートという形で預金というものが、おのずから農協にいくものと漁協にいくものと分れておるとわれわれは考えておるわけでございますから、そういう無統制な預金争奪運動というものは、御指摘のようにはわれわれ心配していないわけでございますが、もしそういう面が出てきますれば、それは十分県等を通じまして、そういったことのないようにしていかなければならぬ。これは森先生からも御指摘のあったような点で、全体的な漁村の経済としてそういうものをどうするかという、農林省としては最も大きな、これは山村でも同じことでございますが、そういう問題は別途十分検討するということにいたしたいと思いますけれども、現状におきましては、そういうような大体傾向をたどっております。そういった御指摘のような、農協と漁協が相当の摩擦を起こすという面は、あまりないのじゃないかと考えております。
  49. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かに長官のおっしゃるとおり、漁獲のものは漁業協同組合に、農産物は農協にいく、おっしゃるとおりだと思うのです。たてまえとしては。ところが、ノリ漁業を例にとりますと、初めはノリ漁業をやるについては、資金を貸し出したのは農協なんです。初め出発が。そして農協から金を借りて着業する。何回も何回も失敗したりして、いまやっと技術の革新その他で相当漁獲高をあげてきた。今度信用事業をやれば、農村感情として農協との対立というものは、初め出発するときにはおれのところの資金でやったのじゃないか。いまになったらその貯金を全部そちらへ積んでしまって、借りるときはいまでも借りているじゃないかという、そういう感情があって、私が最初申し上げましたように、中央には陳情がなかったかもしれませんけれども、相当深刻な農協もあるわけです。ですから、おっしゃるとおり、早急にそういう地域においては対策を立てて臨んでいただきたいと、かように考えます。
  50. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連して。さっき一被保証人に対する保証の最高限度の出資額に対する割合、この説明があったわけです。これは、いまの実態は、県によってまちまちですね。五倍ないし八倍。それから協会の保証債務の最高限度の出資額に対する割合も県によってまちまちである。四倍の県あり、あるいは六倍の県あり。保証料率も日歩二銭あり六銭あり、政府の保証に対する保証率も〇・七、〇・五というふうにあるわけですね。いずれ七月からですか、さらに保証の割合を高めるということがあったのですが、これは一体制度的なものとして考えた場合に、県のそれぞれの協会の保証の財務的な観点から高低あっていいというのか、あるいはこういう制度的なもので、政府もかなりこれはてこ入れして、この機能の発揮に大きな行政的なタッチをしているわけですから、でき得るならばこれは各県とも同じような歩調で、たとえば一被保証人に対する出資額に対する割合を、最高と称する十五倍を各県同じようにとらせるという、内容ともに整備させてそうさせることが望ましいのではないかと考えるわけです。したがって、各県も同じ保証料率を設定し、あるいは保証率を設定できるという考え方が私は望ましいと思うのですが、政務次官にお伺いしますが、たとえばあなたが掌握されている林業信用基金の制度にいたしましても、保証料は二厘と確定している。また保証金額の最高限度も、基金の払い込み出資額の十倍と確定している。各県のアンバランスをなくして同じ保証機能というものをやっているわけです。ところが一方、こうしたような漁業の場合は、最高あり最低あり、平均はこうだろうというような説明であるが、一体林業信用基金のような、そのそれぞれの県の内容を整備して、最高というものを全部各県が保証する一つの割合に設定するような行政指導をして、関連する保証料なりあるいは保証料率等も同一にこれを規定する。もちろん、県によってはいろいろな実態の相違はありますけれども、しかし制度としてはそういう望ましい機能を発揮させる、原案で考えている最高というものを各県のとるべき保証割合として強力に指導をし、足なみをそろえるいうことが制度を押し出していく上においては好ましいのじゃないかと思いますが、林業信用基金はそういう方向でスタートしている。これは次官はどうお考えになっておられるか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  51. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) ただいま渡辺委員の御指摘の点、私らもごもっともと思います。林業信用基金のほうにおきましては、これは全国一本でありますが、一律にやっているわけでございます。ところが、この漁業のほうの信用保証協会というのは各県に大体ありまして、その内容がいろいろ違っているのでありまして、出資金の大きさも違っており、またその漁業の種類もおのずから異にしているというような状況でありますので、いろいろまちまちな状況になっておりますけれども、漸次私どもも、急にはできませんけれども、いまお話しのようになるべく一律にしていくように指導していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  52. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ここでしばらく休憩いたします。午後は一時十分から再開いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時四十九分開会
  53. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。
  54. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 前に沿振法の中で、零細漁民に対しては、漁業を離れていくためには、職業の紹介あるいは職業に対する他の訓練をする、こういうようなことで漁村を離れていきやすいようにする、こういう御説明があって、その施策がなされているわけですが、それについて、この前、漁業者がどういう就職をやったのか、あるいは、どういう職業訓練等をやったのか、それを資料としていただきたいということを申し上げておきましたが、それはどうでしょう、できたでしょうか。
  55. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁民の転業を円滑化する措置といたしまして、三十九年度において講じようとする施策の中にも掲げてあるわけでございますが、これは労働省の所管でやっておる仕事でございまして、その中で、公共の職業安定所というもの、それから職業安定の協力員というものの協力を得て、公共職業安定研で遠隔の地等における職を求める求職者のためのあっせんをやる、こういう組織でやっております。  それから職業訓練所も、やはりそういう関係で、労働省の管轄下の中で全般的な問題としてやっているわけでございまして、直ちに労働省とも一連絡をとって、先生の御要望の、そういう内訳があるかどうか、確かめてみましたのですけれども全般的な、そういう中の一環として、漁民なり農民なりをやっているということで、まだ、漁民がどういうふうにやっているか、あるいは農民がどういうふうにやっているかというような内訳が十分出ていない、こういうようなことでございまして、御要望の、そういった詳細な資料が、まだ出し得ない、こういった状況でございます。
  56. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 労働省が一緒にやっているから、農業からどのくらい行ったのか、漁業からどのくらい行ったのか、石炭労働者からどのくらい行ったのか、中小企業からどのくらい行ったのかわからぬとおっしゃると、せっかく沿振法でもうたっているし、農業基本法でもうたっているのに、それが具体的に統計として出ていないということになりますと、一体、雲をつかむようで、どういう動態であるかわからぬと思うんですけれども、それがわからなきゃ、次の千が打てないのではないかと思いますが、いつごろになれば、それがわかるのですか。
  57. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これは労働省の所管の中に含めてやっていただいている問題でございます。私らのほうといたしましては、そういった機構が拡充され、そしてまた、私らのほうで就業構造改善対策協議会、こういうようなものを県ごとに設けまして、そこで漁業労働者の確保という問題、それから転出される場合のあっせんというようなものも協議会で——これは協同組合等が中心になるわけでございますが、その協議会で職業安定所の人も入ってもらって、いろいろやっておるわけでございますが、そういう面で、まだ十分漁村の分と、それから漁村でも、特に漁業に従事したものといったようなものの内訳は十分出し得ない状態でございますが、こういった問題につきましては、やはり先生の御指摘のように、そういう実態がわからなければ、施策を打つ手が、なかなか的確にいかないのじゃないかという御指摘のとおりでございますので、今後とも、労働省とよく相談いたしますし、また、私のほうで補助してやっております就業構造改善対策協議会のほうとも連絡をとりまして、そういう面の検討を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  58. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かに法律に基づいて、いろいろな施策が一応説明されますけれども、私は、農業にしても、特に漁業が、いま問題になっておりますけれども、後手後手で、いつもおくれておるのじゃないかと思うんですよ。石炭政策においては、いろいろな問題が起きましたから、これはもう社会問題として大きく取り上げられて、かなり進捗を見たわけですね。具体的に常に手を打たれていったわけです。  ところが、いまお聞きすると、まだ、漁村からどのくらいの漁民が出ていって就職をしたのやら、どういうような職業訓練が行なわれたのやら、数もつかんでいないというわけですよ。これは全く本気で考えているのだろうかという疑いさえ持つわけですよ。だから、この点、いつ、そういうあれを出してもらえるのか、ひとつ明確にしていただきたいと思うんです。いつごろになったら、それができますか。
  59. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) いつごろという明確な答弁は、なかなかしにくいと思います。動向でも、五年間に二十二万程度が漁村から流出した、こういう統計になっております。なお、昨年の十月一日の漁業関係のセンサスがありますので、その結果をいま集計中でございますので、そういうものが出ますれば、また新しい流出人口、就職者数というものが出てくるかと思います。なお、それがどういうところに就職し、また転職していっているかということについては、そういった調査は、やはりやらなくちゃならぬかと思いますので、そういう点につきましては、これから相当就業構造のいわゆる調査なり、あるいは漁村の経済調査の中などで、そういったものを設けながら、統計整備をはかっていくということをやらなくちゃならぬと思っておりますが、何分にもやはり従来、そういう点の関係がございまして、御指摘のような点はあろうかと思います。今後とも、そういう問題については、十分調査体制なりを整えてやっていかなくちゃならない、こういうふうに考えております。
  60. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 この漁業動向等に関する年次報告を見ると、いま数字を出された二十二万というのですが、それよりもはるかに少ない数で、十二万程度しか出していないようですね。どこから割り出されたんですか。
  61. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) ちょっと私、記憶違いで、答弁が間違ったと思いますが、十二万の間違いでございますので、その点御了承願いたいと思いますが、十二万でございます。
  62. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 あまりはっきりしている数字ですから、御訂正になったから了解いたしますが、これも海上労働者という大まかな数字で出ているわけですね。だから、実際に沿岸漁業に従事しておる漁民、そういう漁民を対象にして、一体動きがどうなのかという点は、今後漁業振興を進める上について非常に重要なことだと私は思うのです。いますぐ資料が出ない、はっきりしためどがつかないとおっしゃるのですが、これは今後の施策の上からも、まことに重要な問題じゃなかろうか、こういうふうに思うのです。早急にひとつ、早急と言うと、なかなか出しますなんて言われて、いつまでもかかるので、今度はほんとうに早急に、その点を把握をして出していただきたい。希望です。
  63. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 先ほど申しましたのは、漁業就業者が二十八年から三十三年の五年間に七十九万から六十七万へと減少しておる。これは十二万の減少になっております。これの内訳等についても、過去のことでございまして、まことに恐縮でございますが、中身が、どういう方法でどういうふうに就業したかという統計がございませんので、動向においても、ただまっ白の数字しか出せないと、こういうことでございます。御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、われわれといたしましても、そういう統計資料整備ということには、この動向報告の前にもうたってありますように、今後とも努力するつもりであります。
  64. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっきから保証の場合に問題になりました事故率の動きでございますが、直接この資料についてお伺いをいたします。  参考資料の三ページ、「事故率の動き」というところなんですが、三十四年度は三十三年度に比して、たいへん多くなっているようです。五・九六ですね。それから減っておりますが、三十四年の事故率の多いというのは、一体どういう点に原因するのか、この点が一つですが、これをちょっと御説明願いたい。
  65. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この三十四年、それから五年、六年と、こういうふうに事故率が、当年度の事故率が高くなっております。これは三十一年ごろから三十四年ごろにかけまして、西日本のまき網漁業が非常に不振であったわけでございますが、そういった不振の影響があらわれて、こういうふうに出てきた、こういうふうにわれわれは考えております。  なお、三十六年度等、までやはりこの債務の返還について、まき網漁業の不振の工合に影響しておる、こういうことが言えると思います。
  66. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まき網漁業の不振ということはわかりましたが、不振の原因が何かということが一つですね。  それからもう一点は、三十六年度から三十七年度はがらっと事故率が減っていますね。けっこうなことだと思うのです。一・三三。非常に急激に減っている。その減っている理由ですね、これをひとつお願いします。
  67. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) まき網漁業というのは、御承知のとおりアジ、サバその他の回遊魚を網で巻いてとる漁獲でございまして、時期的にも、また資源的にも非常に海況なり漁況といったものの変動が多い漁業でございます。で、この当時、三十一年ごろから、まき網漁業等につきまして、まき網に従事いたしまする漁獲努力といいまするか、そういったものが相当大きく、その反面やはり漁況が、資源的な問題もあって、あるいは海況の問題もありまして悪かった。こういう両面で、まき網漁業が不振だ。そういうことで、まき網漁業等につきましても整理といいますか、そういった道は、その当時の原因をもとにして講じてきたわけでございまして、これが立ち直りつつある、こういうことを三十七年度のあれは示しているのじゃないか、こういうふうに思われます。
  68. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういたしますと、これは天然資源を捕獲するわけですから、自然現象、いわゆる海況ですね、海の状況、そういう点が、常に左右するということはよくわかります。ところが、三十七年になったら一・三三に、どれをずっと見てみても、年次的に見ても事故率が非常に下がっているわけです。けっこうだとさっき申し上げたとおりですが、この点をもう少し御説明願いたいと思います。
  69. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この三十七年度の数字の一・三三と、こういう事故率でございますが、これは三十七年度全部のものが集計されているわけではございません。未経過のものがまだありまして、この問題は、確定的な問題じゃないわけでございます。三十七年度に保証したもので、三十八、三十九年度にやはり保証期間がわたるものもあるわけでございます。それは一年の債務を保証するものもあれば、三年の分もございますし、あるいはもう少し長い債務を保証する、こういうことでございます。そういうことで、三十七年の分は、そういうものがいずれもございますが、一二十七年は、それが相当、まだ未経過のものが多いということが言えるわけでございます。
  70. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、三十七年の資料としては、不満足なんですね。不満足というか、十分の資料としてはとれないわけですね。まだ相当、これはふえる見込みがあるわけですね。
  71. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 下に書いてありますように、「(事故率の算出)」というのがございますが、期間内の代位弁済額を分子にいたしまして、期間内に弁済した額と期間内に代位弁済した額を分母にしてやっておるわけであります。期間内ということで、三十七年度は三十七年度の期間内に代位弁済をやり、それを期間内の弁済額を割ったもので、除しておるわけでございますが、まだ、そういう点で三十七年度全部そろってないということもございます。これはどういうふうに動くか、まだ、そういう弁済状況を今後そろえていかなければならないと思いますが、それは時期の関係で、こういうことになるわけでございます。  なお、また三十七年度について低い傾向は、これは確かにございますが、それはいま言いましたように、まき網漁業等におきましても、三十一年から非常に不振であったやつが、整理等で立ち直ってきた、それからアジ、サバといったものにつきまする漁況等も立ち直ってきた面もあるわけでございますが、一面保証というものが、非常に最近急速に伸びてきつつあります。保証額が毎年、大体予算で特別会計の計画を立てて保証額をきめるわけですが、その保証額が伸びてきておる、また保証額が伸びるということについては、県の分も相当入ってくるということもありまして、三十七年は下がり傾向ということは言えるわけでございます。
  72. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その点わかりました。そうしますと、事故率の算出では、結局代位弁済がどういうように効いているかということが重要なものになるわけですね。きょういただいた参考資料の一ページに表が載ってございます。金融機関別、年度別代位弁済状況というのがありますが、これを、どうもごめんどうですけれども、ちょっと御説明願いたいと思うのですが。
  73. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) ただいまの資料につきまして御説明申し上げたいと思います。  この資料の一ページの表は、金融機関別に、また年度別に代位弁済がどのように行なわれたかという状況を示した表でございます。金融機関といたしましては、農林中金、信用漁連、それから銀行、その他、——その他といたしましては、信用金庫等があるわけでございます。それの昭和三十三年から三十七年までのそれぞれの年度におきます前年度末の保証残高と、それぞれのその年に保証をいたしました保証の額、で、それを合わせまして、当該年度の年度末の弁済額、この年度内の年度末までの弁済額をここではAといたしておりますが、その当該年度に弁済されました金額と、当該年度内に代位弁済をいたしました額とをもちまして、事故率を計算をいたしております。で、合計の欄で申し上げますと、昭和三十三年度におきましては三・六%、三十四年度におきましては五・九六%、三十五年度におきまして四・二八%、三十六年五・三一%、三十七年度一・三三%、先ほど当初に御提出いたしました事故率の動きの数字と合致をするわけであります。で、ここでこの資料といたしましては、金融機関別にその傾向がどのようになっておるか、ということを区別をして資料として作成をいたしたわけでございます。  これによりますと、全体の合計の事故率に対応いたしまして、農林中金からの貸し出しの事故率が、平均よりかやや低目に出ております。信用漁連の分につきましては、それに比べてやや高目に出ておる。銀行はおおむね、おおむねでございますが、大体平均の数字、その他の信用金庫につきましては、保証額が金額的に少のうございますが、全体といたしましては、事故が比較的少ないという状況になっておる次第でございます。
  74. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いま御説明を聞きまして、表を見てみると、信漁連が一番多いわけですね、事故率が。ひどいのは三十六年の一一%近いのがあります。信漁連がほかの金融機関よりも、こんなに多いという理由は一体どこにあるんですか。
  75. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) 農林中金につきましては、おおむねこの資金の性格が設備資金が主体でございまして、長期資金におおむねなっております。それに対しまして信漁連の場合は、運転資金が多うございます。したがいまして、先ほど長官から申し上げましたように、西日本のまき網のように資源的に変動があって、その影響があらわれる状況といたしましては、長期資金は比較的長期に、その危険がならされて分散されておるというのに対しまして、短期資金におきましては、それぞれ短期資金でございます関係上、当該年度あるいはその次の翌年に、その事故の状況があらわれてくるということでございまして、長期資金につきましては、長期にならされるのに比べて、短期資金はそれが短期にあらわれるということのために、このような数字が出ておるというふうに思われます次第であります。
  76. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連して。これはなかなか、非常に問題だと思うのであります。その前に、この資料を確認しなかったのでありますが、件数も要求しておったはずです。件数、金額。その件数がない。したがって、件数があれば、もう少し実態がよくわかるわけです。  それからもう一つは、保証の申し込みをして拒絶をしたものの資料を要求しておったが、それがないわけですね。それは一体どうなのか。あらゆる場合に、保証を申し込んだが、この保証を拒んだ事実が、なければない、あればその資料をいただきたいわけです。  で、さらにその内容に触れて関連してお伺いしますと、長期資金だから、リスクは長期に分割されて負担されるので事故率は低いという解釈ですけれども、それならば、なおさらこれは系統金融の中で頂点に立つ農林中金が、結果的に事故率が低いということの現状を是認されるべきかどうかということです。したがって、もちろん資金——ファンドは、信漁連は長期のまかないをする余裕は、中金に比較してないでしょう、ないけれども、こういう事故率の負担の不均衡を問題にして考えますと、これは長期であれ、あるいは短期の運転資金であれ、できれば転貸等で信漁連にこれをやらせることによって、中金の事故率が軽くて信漁連が重いという負担の問題から、これは解決されることが可能なわけですね。中金が信漁連に系統的に資金を転貸融資をして出すという措置を、もっと積極的にとれば、この問題が解決できるわけです。その点を行政庁としては、どういうふうに指導されておるのか。それをまずお伺いをいたします。
  77. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御要求になりました資料のうちで、漁業種類別の保証申し込みに対する拒否事例があるか、あればその数字を出せ、こういうことでございました。それにつきましては調べましたところ拒否事例はないわけでございます。大体、いままでは転貸が主でございます。それから大口になりますと、組合員が個人加入いたしまして、会員となってやるというような、承認を受けて、それを保証する、こういうのがございますが、大部分は転貸でございますが、そういう中におきまして保証の問題について、いままでは事前によく打ち合わせをしているわけで、ある程度の基準なり、あるいは適格性があるかどうか。保証を受ける適格性があるかどうかというふうな点で、組合を通して協会とよく相談するわけでございますから、申し込みをして、その申し込みからふるっていくというのじゃなしに、その申し込みがあれば、十分その前に、そういう保証を受ける適格があるかどうかという点を審査いたしておりますから、いわゆる申し込みによって何件集まって、その中から、ワクの中でなんぼとる。そういったふるい方はいたしておりませんので、拒否事例というのはございません。  それから件数につきましては、御要求があったのを失念して、出してございません。その内訳は出せますので、至急出します。大体、三十三年から件数といたしましては三千二百四十七件というのが、三十二年の保証件数でございます。それが三十七年になりますと三千七百五十五件、こういったふうに保証件数は出せるわけでございますので、御要求があれば至急とりそろえて提出いたします。
  78. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 これから件数を出してもらっても、あれですから、これはもういいです。きょう判断したかったので、もう間にあいませんからいいですが、私が伺った事故率のアンバランスが結果的に出ておる。本来ならば短期資金はリスクが低くて、長期資金がリスクが高いわけです。それが、しかし結果的には、いま説明があったように、金庫が設備資金に投資をしておる。それは現物担保もあるでしょう。リスクは非常に低いわけですね、事故率は。そうして信漁連が、運転資金を融資のを中心にしているがゆえに、事故率が平均を非常に高く上回っておるわけですよ。だから極言すれば、危険の少ない、担保力のある、いいところだけは、金融機関の頂点にある農林中金がやって、非常に危険の高いものを信漁連にやらせるという、結果的にはそうなっておる。そういうものをもう少し系統内部で行き届いた扱いをさせるには、信漁連自体では長期の資金を出す資金の構造にはなっていないことは明らかでありますから、中央金庫みずからが信漁連に転貸をして、そうしてこんなアンバランスがないような方法を講ずれば、あげて信漁連が、その融資の実態を総合的に掌握することもできるわけですから、私は系統金融としては、そうあるべきだと思うが、そういうことが行なわれていない現状からいえば、行政庁がそういう指導をまた加えるべきではないか、そういう措置をおとりになったのか、また、これについて、今後どういうふうにお考えになるのか伺っておるわけです。
  79. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のとおり農林中金あるいは信漁連等の事故率に差がございます。これは一応、それ自体の性格として農林中央金庫のほうから出る金は、設備資金的な性格のものが多いわけでございます。信漁連のものはおおむね運転資金が多い、それから信漁連から出ます分については、沿岸のやはり小口のものが多いと思っております。大体、そういう統計になっておるわけでございます。そういう面を反映して、信漁連等には事故率が高くなったわけでございます。これについては御指摘のように、やはり中金が事故率の低いものを引き受け、それから信漁連が事故率の高いものにしわ寄せされておるということも、結果的には言えるかと思います。そういう面については、中金と県信連、そういうところを指導いたしまして、よく協会ごとに話し合いを進めまして、それをどういう分担で貸すかということについては、すでに北海道とか、静岡とか、そういった進んだところでは、そういう話し合いを進めておりますが、今後もやはりそういう方向で、御趣旨の点を徹底して、逆にその事故率の高いものだけを信漁連にしわ寄せしないように、そういう措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  80. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと質問委員に連絡しますが、大体、三時に農林大臣が出席できるそうでございますので、そのつもりでひとつお願いいたします。
  81. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連ですから、簡単に質問しますが、実際事故率を数字で見ますと、各年度とも、事故の比率が二倍以上になっている。中金の負担している代位弁済の比率と信漁連の負担している比率は倍どころではない、三十三年は、倍であったけれども、三十四年は七倍、三十五年は四倍、三十六年は八倍、こういうことでは、いまここで、あらためて問題を出す前に、現状を把握しているはずの政府は、もっと行政的な配慮をここに加えないと、農業協同組合の系統でも、なかなかどうも、その農林中金に対して、そういう正当な系統金融のありかたを幾ら言っても、なかなか通らない実態に置かれている、いわんや信漁連は、設立が農信連よりも歴史的にも浅いし、力も弱い、弱いどころか、いつもこのしわをかぶって系統の中で、こういうアンバランスが出ておるということは、これは大きなやはり問題の一つとして、合理的な方向に、これは措置していかなければならないと思うのです。これからでもおそくないわけでありますから、いま申し上げたような点をひとつ、政府としても行政的な指導を十分やってもらいたいと思っている。  それで、その負担の経営に及ぼす影響というものは非常に大きいと思う。代位弁済をして、もちろんこれは求償権があるわけですから、代位弁済をした債権に対しては、優先的に回収する権利を持つわけですけれども、なかなか、この求償権の発動も、現実には、計数的には出てきていない、こういう実態であろうと思う。それが、いかに、代位弁済した債権が、その代位弁済債権者に回収になっておるか、こういう実態まで、政府は現状を確認しておられるのか、その点を、まずお伺いをいたしたい。求償権の成績はどうなっておるか。
  82. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これはまだ、お配りいたしておりませんが、私が持っておる資料に、年度末保証状況と、それから求償権の回収状況というのがございます。それで御指摘の点は、十分に把握いたしておるわけでございます。大体、求償権の回収実績は、四割程度ということでございます。未回収のものもございますので、大体、最終的には、六制ないし七制の間に回収、できるものと見込んでおります。
  83. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 求償権の実績は四割で、さらに、希望的な観測では六制を回収できると、かりに、そうだとしましても、四割は、完全に、受託金融機関の損失になるわけですね、そうですね、代位弁済でそれが入らないでしょう。六割までは回収できるという答弁ですから、四割は入らないと、そうなると、今の業務方法書等による業務の委託手数料はペイしないわけです。非常に、受託金融機関の自己負担が重過ぎるわけです。そういう点について、政府は、どういうふうにお考えになっておられるのか。
  84. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 保証債務の代位弁済をいたしましたときの求償権の権利主体は協会になっております。それで、求償は協会が責任を持って回収に努めておるわけでございまして、その求償されました分については、保険金支払いという面もありまして、政府に一部納める、こういうことになるわけでありまして、御指摘のように、この求償権が組合の経理に響くということはない。協会の負担ということになっております。求償残が残れば、これは協会の運営に及ぶと、こういうことでございます。
  85. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっきお尋ねをしたときに、三十四年の事故率の多いのは、西日本のまき網漁業の不振だと、こういう御説明があったわけです。私がしろうと考えで思いますのに、そういう不振の場合は、運転資金が、大体、中心になるのじゃないかと、こういうふうに思うのです。これはしろうと考えですから、御説明いただきたいと思うのですが、そうすると、三十四年が、日漁連あたりからの事故率が一番多くなければならぬと思うのです。ところが、この表を見ると、三十六年がものすごく多いわけです。こういう点は、どういうように解釈したらいいものですか。
  86. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 西日本のまき網漁業の不振の状態は、大体、三十一年ごろから三十四年ごろにかけて不振であったわけでございまして、その間に保証しました分でございますので、その弁済なり、あるいは保証に基づきます代位弁済なりは、時期的にずれて、年度がずれて起こってくる、こういうことで三十六年ごろに、そういう影響が強く出てきた、こういうことが言えると思います。
  87. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、そういう不振の影響がずっとずれて、三十六年に集中的になってきたと、こういうように解釈していいんですか。
  88. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) そういう傾向は、三十三年ごろから徐々に、三十二年は二・七四%でございますが、三十三年は三・六、三十四年は五・九六%、三十五年はちょっと下がりましたが、やはり高く四・二八、三十六年は五・三一、こういうふうにずれながら、三十五年だけが急に高いというわけじゃなくて、大体三十四年、ころから、そういう影響が強く出てきておる、こういうことが言えると思います。
  89. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私がお尋ねしているのは、信漁連の事故率の問題なんです。  で三十三年は四・八六、三十四年は八・六一、それからその次が下がって五・九六、三十六年が一〇・九六、こういうようになっているわけです。そこで運転資金が中心になっているというさっきの御答弁ですが、ここで非常に急激な変化がありますから、その点を御説明願いたいと、こう言っているわけです。
  90. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 信漁運は三十六年度一〇・九六、約一一%近い事故率になっています。三十六年に相当しわ寄せが起こったと言えるのじゃないかと思いますが、それはやはり弁済期がきましても、すぐ代位弁済するかどうかということも、今の運営では再建——、いわゆる返還計画というものを立てながらやるわけでございまして、どうにもならないときに代位弁済するということで、返済期を過ぎたら、すぐ代位弁済するというような運営はいたしておりませんが、そういったわけで、いわゆる再建計画を立てながら、それに即応して弁済計画を立てて、そうしてそれに、なかなかならない、あるいはそういうものが取れないといったものに、代位弁済の措置を講ずる、こういうことになっております。  そういうようなこともございますし、また三十六年度特に高いのは、一部の漁港等で非常に大きな設備資金といいますか、運転資金といいますか、漁網、そういった面の問題もありまして、信連から貸しているものでありますし、そういう面のやはり代位弁済が三十六年度にあった、こういうことで、三十六年は特に高くなっております。そういう事情と承知いたしております。
  91. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうもこれは、私まだ納得いきませんけれども、これはいつまでもやっていると、時間ばっかりとりますから先にいきますが、信漁連の利益金が出てくる場合がありますね。そういう場合に、これは税法とも関係があると思いますけれども、信漁連等では、内部留保した場合に、それに対する課税があるので、これを非課税にしてもらいたいという希望があるのです。こういう点について、農林省だけでどうという御決定はできないと思いますけれども、これに対する御所見を承っておきたい。
  92. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のような点は、漁業協同組合のみならず、一般の農業等にもあるわけでございます。内部留保に対しまする分についての、そういう御要望もありまして、ちょっといま、詳細記憶いたしておりませんが、三十九年度から、そういう点の改善を、これは協同組合一般として、そういうふうに改善をやる。こういう方向で、ただいま税制調査会等でも検討されている。こういうふうに聞いております。
  93. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 三十九年度から改善ということになりますと、三十九年度から、そういう改善をしていくというお考えですか。
  94. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のとおりでございます。
  95. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 質問を変えまして、ここにいただいた資料の、初めにいただいた資料の五ページの漁業信用基金協会の余裕金の運用状況、この表を見ますと、三十四年預金利回り年利六・二九%、こうなっていますね。ほかのところよりも、ここが一番多いわけですね。だから内容も、よくわかりませんけれども、これについて御説明願いたいと思います。
  96. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) 御説明申し上げます。余裕金の運用状況の表でございますが、預金の利回りといたしまして、その加重平均をいたしましたものが一番下の欄に集計をしてあるわけでございます。  それで三十四年につきましては、その加重平均の年利が六・二九%ということで高くなっておりますが、特に、この金利が高うございますのは、三十五年以降が、全体の金利の引き下げということで、引き下げを政府全体といたしまして指導されました。その一環で下げられてまいりました関係でございまして、三十四年当時が、そのときの実勢といたしまして、この程度の運用がされておる。その後、利下げの指導が行なわれまして、漸次、引き下げが行なわれた。こういう状況でございますので、このような結果になっておる次第でございます。
  97. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっきから、ずっとお尋ねをしたのは、三十四年というのは非常に不振を伝えられたと御説明がなされたわけですが、ところが、その三十四年に限って、三十四年が一番、利回りは大きいといって、私は非常に疑問を持ったわけです。ところが、いま、金利の引き下げ等で、そういう点を三十五年以降は考えられたという、金利の引き下げといって、どのくらいの引き下げですか。
  98. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これは政府全体の金利引き下げ政策があったわけでございまして、その中において信連等におきましても、できるだけ下げろという指導をしたわけでございますが、ただいま、どれだけ下がったかという点は、いま記憶がございませんので、調べまして申し上げます。
  99. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 では、簡単なことですが、この次に出して下さい。  それから、いまの余裕金の運用について、今度改正になるわけですね。四十二条の一号に、金銭信託を入れたというのが一つあって、それから二号に、今度改正になるのは「その他主務大臣の定める有価証券」を買い得る、こういうふうになっておる。  そこでお尋ねをしたいのは、金銭信託を入れた理由と、第二は、主務大臣の定める有価証券というのは、どういうものが予想されるのですか、それをひとつ御説明を願いたい。
  100. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 今度金銭信託を運用のあれに入れたわけでございますが、金銭信託といたしましては、やはり利回り等がいいわけでございまして、またこの点は、農業と同じように考えて、農業にも、金銭信託というものを入れておりますので、それと同じようにいたしたい、こういうことでございます。  なお、大臣の指定する有価証券といたしましては、やはりこれも、これを農業と同じ関係で運営したいということでございまして、特別の法律によって設立された法人の発行する債券及び社債券、それから貸付信託の受益証券、こういったものを予定いたしております。
  101. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは、次にお尋ねするのは、少しこれとは、直接に関係はございませんけれども、便宜聞いておきたい。できれば大臣にお聞きしたいのですが、まだお見えになる時間が十分くらいあるようですから、その前にお尋ねしたいと思います。特に、前々から浅海漁業、特に有明海を中心にしてお尋ねしましたが、有明海に限らず浅海漁業地帯は、産業構造が変わるといいますか、そういう構造の変化につれて、様態が非常に変わるわけですね。そうして、特に干拓が進められるということになりますと、漁場がだんだん縮小されていくということになります。お聞きすると、八郎潟の干拓、有明海の干拓というのが、これは日本では、まず最も大きい干拓になるのじゃないかというように思われるわけですが、そうしますと、干拓につれまして、漁業補償というのが非常な問題になってくるわけです。漁業補償について、どういうように基本的にお考えになるのか、これをひとつお尋ねをしたいと思います。これは大臣にお尋ねしたいのですけれども
  102. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁業補償につきましては、やはり漁業権の内容によりまして、その水揚げ高を資本還元する、それをどういうふうに水揚げを見るかというのが、これは統計資料で十分把握いたしまして、資本還元したところで、それにつきまして財産権としての補償、それから、やはり転換する場合の、そういう準備なり、生活補償なりといった面も考えまして、やはり一般の公共用地の取得等に関する補償基準がございますから、あれに準じて取り扱っておる、こういう状態でございます。
  103. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いままでに干拓によって漁業補償したというのは、全国多数にのぼると思いますが、全般的にお聞きすると膨大なものになりますから、有明海のいまやられておる大牟田地先、高田町地先というのですか、そこの補償は、一体どのくらいになっているのか、いまここに資料はございませんか。
  104. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) ただいま私も十分記憶いたしておりません。干拓いたします場合には、十分やはり国営ならば国が主体となり、県営ならば県が主体となりまして、漁業者の代表と十分話し合って、先ほど申し上げましたような公共用地の取得をする場合の補償基準といったものを準則にいたしまして、それで話し合いで、納得づくでやる、こういう方法でやっております。私も農地局長時代に、そういう面で、補償の話し合いをした経験もあるわけでございますが、高田町漁区の補償が、どれくらいだったかというような御質問でございますが、農地局に問い合わせまして、後刻また、お答えしたいと思います。
  105. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういう補償の分配といいますか、あとの取り扱いは、一体どういうようにされておるのか、おわかりであれば御説明願いたい。
  106. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 八郎潟等で補償いたしました事例で申しますと、国から補償いたします分につきまして、大体漁協単位に県があっせんしまして分配し、そして、その中で、漁業の大きさなり、あるいは漁業に関する資産なりを持っておる、そういう面を勘案して、適正に、自主的にやっておる。こういうように承知いたしております。
  107. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういたしますと、このいままで漁業をやっていた、いわゆる漁業権の所有者といいますか、それは適切な言葉じゃないと思いますけれども、そういう実態に即応して、個人にこれを配分するというか、支払われる性質のものじゃないかと思いますが、それはいかがでしょう。
  108. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 干拓等の場合、問題になりますのは、大体ノリとか、そういった区画漁業権が問題になるわけです。これは大体御指摘のように、組合で管理している性格のものでございまして、この前も御質問がありましたように、漁業権の行使の条件によりまして、それをやっていく、こういうようなことでございますが、そういうことで、組合で、そういう点は従来の、どういう規模の区割りで漁業をやっていたか、そういう点を基準にいたしまして配分をきめて、そうして総会で十分検討した上で、個人別のものを分けていく、こういうふうになっております。従来、そういう問題で、あまりいざこざが起こったことは承知いたしておりません。
  109. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 区画漁業権の共同管理の場合は、その漁協単位に配分されるということになると、補償金を配分しないで、漁業の何といいますか、預金といいますか、備蓄金といいますか、積み立て金といいますか、そういう形で、共同管理をしておるという事実はございませんか。
  110. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 全部を、そういうふうに共同管理するという事例はないかと思います。相当部分は、個人別に配分して、そして一部の共通的なものについては、組合で積み立てて、共同の施設なり、あるいはそういう漁場が喪失するわけでございますので、共同の施設をつくるとか、そういう面に使うという面もございますが、大部分は個人別に配分される、こういうふうに承知いたしております。
  111. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 原則としては、個人の権利を喪失したわけですから、あくまでも個人に支払われるべきものだと思いますが、それはいかがでしょう。
  112. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 原則は御指摘のとおりだと思います。
  113. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それは、いまお聞きしたのは、干拓等の漁場を失った場合の補償でございますが、二十八年に大水害がありました、その際に、相当水産物の被害があったわけです。それからまた、一昨年ですか、一昨々年ですか、農薬PCPの被害によって魚介類が相当死滅をした、これに対して漁協単位ですか、これに対して補償金が渡されたというのですが、そういう事実、御存じだと思いますが、どういうようになっていますか。
  114. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 二十八災では、これは水産のみならず、農業全般に大被害があったわけでございますし、また三十七年には、有明海にPCPの被害が起こっております。これに対しまして、補償金というのじゃなしに、国から災害によりまする損害に対しまして、再生産可能な状態に、これを持っていくというようなことで、災害復旧のための補助金なり、あるいは天災融資なりはいたしてあります。なお三十六年のPCPにつきましても、貝等の斃死がありましたので、稚貝の共同購入をする、そういった補助金が、漁協単位で国から補助したわけでございます。補償金という性格のものじゃないと承知いたしております。
  115. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私が聞きたいことは、PCPの例をとると、PCPの被害の場合に、これはノリには関係がないのです。ほとんど。いまおっしゃるとおり漁介類ですね。特に貝、これが相当な打撃があったわけです。それに対する補助金が出たわけで、これも私は知っております。  そういたしますと、例をいりも有明海にとって相済みませんけれども、組合員の大部分が、ノリの採集をやっているわけです。ところが、貝を取っているというのは、実際はだんだん零細化してしまって、組合員に入れられないというようなケースさえもあるわけなんです。被害の補助金としては貝類や——まあ特に、貝類が多かったわけですが、そうすると漁協単位で渡されると、実際に打撃を受けた漁民には、それがあまり渡されないで、漁協そのものに保管してあるというのですか、そういう補助金を共同で管理したような形で備蓄している。こういう傾向があるのですが、これについて、長官はどういうように考えられるか承っておきたいと思います。
  116. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) PCPの被害に対しましては、当時非常に問題になりまして、当委員会でも非常に御審議があったわけでございますが、当時の対策といたしまして、貝の被害が一番多く、斃死しております。そういうことで稚貝の購入補助と、こういうことで、そういう事業を行なったところに補助金を交付するということで、有明沿岸等は補助したわけでございます。また、PCP等の被害は貝に集中する。これは稚魚あたりも影響いたしますが、貝に影響するということで、ノリにはあまり影響はないということで、当時といたしましては、やはり採算性の高いノリのほうに採貝から転じたいと、こういう要望もありまして、そういった面の補助も出ておるわけでございます。御指摘のように、これを使わないで組合に積んでおると、そういう事例はないわけでございます。もしありとすれば、それは補助要綱違反ということに相なろうと存じます。
  117. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その点、たいへん問題だと私は思っておるわけです。私もPCPの被害のときには、近いものですから、有明海に入って調査いたしました。確かに相当の被害があるし、たいへんな騒ぎでした。それに対する手当てとしては、県では稚貝をそれに植える。それと同時に海のことですから、おかのようには参りませんけれども、土地改良みたいに土壌改良みたいに、これを耕すということで、表面の表土を耕すというようなことで漁民に作業をやらして、それに賃金を与えると、そういうことで当面の問題を片づけた事例を知っております。  しかし、貝をとっているというのが、前から何度も質問いたしますように、今日は、もう漁場が少なくて、ノリ一本というようなかっこうになっている。貝を取っておる連中たちは、漁協に入れられないという零細さにあるわけなんです。したがって、その漁協を通じてやると、そういう零細な諸君が結局救われていない。おっしゃるとおり、漁協でもって共同保管をして備蓄されておるというようなことは、全部がそうだとは思いませんけれども、実際に私の耳に入るのには、そういうのがあるということを聞いております。そういう点についてひとつ、十分調査をやっていただきたいと思いますが、調査をしていただけるかどうか。
  118. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) そういう補助金が、補助目的に適正に使われておるかどうかということにつきましては、会計検査院で検査もいたしておる次第でございます。  なお、三十七年度に起こりましたPCP被害につきましては、そういう事例が一、二件あった分については返還を命じた、こういう事例もございます。なお、そういう点があれば、具体的に御指摘下されば、端的に検査したいと思っております。
  119. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 ぜひ詳細に調査を願いたいと思いますが、さらに組合の運営について強調されておりましたことは、共販体制を強化していく、そうして漁協の運営を強めていく、こういうことをたいへん強調されておったのですが、これはかなり徹底して、今日は漁協の共販体制はある意味ではうまくいっておる、こういうふうに思うのです。  ところが、往々にしてノリ等のような景気変動が激しいもの、今日では、たいへんノリがいいということで、ノリ漁業の盛んな所では、思わぬブームがわいておるというのが実態なんです。その共販体制は私はけっこうだと思いますが、共販をやる場合に、荷受け機関のような中間会社といいますか、ができておることを知っておるわけです。と申しますのは、漁協の役員が、いわゆる販売会社のような会社を設立しておるわけです。そうして、この販売会社みたいなのが、それぞれ商人からも口銭を取る、それから漁民からも口銭を取る、二重の口銭を取って、いわゆるトンネル・マージン会社みたいなのがあるわけです。それを漁民は、こう言っておるのです。内口銭、外口銭と、こう言っておる。ノリ会社のほうから取るのを外口銭と言い、組合員から取るのを内口銭と言う。私の聞いたところでは、双方二分ずっといいますから、合計いたしますと四分の利益金を取っておる、それが蓄積されておる。そうすると漁協の財産ではない。しかし、漁協の役員が、そういうトンネル会社を組織しておる。ところが、ここで利益金を備蓄しておるという事実を聞いておるわけです。こういう点は、なかなか調査もしにくいと思います。実態はもっと深刻なものがあるかもしれませんけれども、そういう点も兼ねて、十分ひとつ御調査を願いたい、かように思います。そういう点はいかがですか。
  120. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 有明沿岸それから福岡県で申しますと玄海のほう、奥玄海のほう、それぞれノリの養殖業が急速に伸びております。特に有明沿岸のノリ養殖というのは、採算性が非常にいいというようなこともございまして拡張されております。これは福岡県のみならず佐賀とか熊本、そういう面においても伸びておるわけでございまして、そういったノリの養殖をやっておりまする漁協は三県だったと思いますが、昨年ノリ生産の協同組合の協議会というものをつくって、そこで入札の方法で共販する、こういうような体制を固めつつございます。  で、先生が御指摘のように、その間に、トンネル機関的なものが発生しつつあるというような御指摘でございますが、そういう点については、十分調査いたしまして、やはり組合の共販体制でもって、そして組合から流通機構に乗せていく、こういうような体制を十分検討しながら進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  121. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 再三お尋ねをいたしましたが、さっきの御答弁の中に、貝を採っているいわゆる採貝業の諸君は、ノリ漁業に転換するという、そういう点についても指導をしたいと、こういう答弁があったかと思います。まあそういうことで、零細漁民を救済する道は、適正な組合運営、民主的な組合運営というのが、最もこの点については重要じゃないかと、こういうように思うのです。  そこで、前にもお尋ねをいたしましたように、密漁の取り締まりを一斉にやったところが、相当な成績をあげているわけですね。これは成績をあげることは、まあ非常にいいことだと思うのですが、それについて、この間質問いたしました。漁業協同組合が巡視艇をつくって、海上保安庁に使ってもらう、警察に使ってもらう、県の水産試験場が、それを借りて使っている、これは無償貸与なんですね。こういうことがいい悪いは別問題として、漁民に与える影響というのは、いろんな意味で複雑なんです。そういう点、御存じであったかどうかお尋ねしたいのです。
  122. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、やはり漁業秩序というものは、十分これは守らなくちゃならぬものでございます。これは漁民が、それぞれ秩序ある漁業を営むということにおいては、漁民相互の監視ということも必要であろうかと思いますけれども、やはり国とし、あるいは県として、そういった漁業秩序の厳正な順守ということのためには、それぞれ監視艇を設ける、取り締まり船を設ける、こういうことで進めております。御指摘のように、有明沿岸のノリの組合で船をつくって、これを海上保安庁に提供している、そういった点、先般御質問がございましたので、県のほうに直ちに連絡して調査してもらっておりますが、まだ調査中ということで、これがどういうことになっているか、詳細判明いたしておりません。  ノリ漁業につきましては、やはり新しい技術を導入するとか、またその漁場条件に合った品種のノリを栽培するとか、いろいろ技術的な面がございまして、県の試験場等の指導は濃密に受けている状態でございますが、そういう面においてやはり組合所有の船等に、県の試験場がやはり利用するという面は、これは有明海のみならず、その他にもあるわけでございますが、そういう面が、強く主張されている面もあろうかと思いますが、海上保安庁に巡視艇をつくって提供するといった事例は、まだ聞いておりません。なお詳細取り調べを県に連絡しておりますので、詳細なことがわかりましたら、適当な機会に御説明したいと思います。
  123. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 お答えのとおり、漁業の改良あるいは技術の指導等について、地方自治団体の財政の関係から、あるいは直接の利害に関係することですから、漁業協同組合が試験船をつくって提供する、そして漁獲をさらに一段と向上さしていく、こういう点については、仰せのとおりだと思うのです。  しかし、私が特にお聞きしたいのは、警察と保安庁に、それぞれ船をつくって提供しておるということ、こういうことは、まあ金があるから、そういうのをつくってやって使わせているというように私は簡単に考えられぬと思うのです。そういう点について、まだはっきりした調査の返答がないからというのじゃ、どうも私も納得できないのですがね。どういうふうにお考えなのか、はっきり考え方をお聞きしておきたいと思います。
  124. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁業法に基づきまする取り締まりといったものは、国なり県がやるべきものだと思っております。ただ、どういう形態になっておりますか、実態を把握しなければわかりませんが、県の取り締まり官等がまいりましたときに、巡視する場合に、随時、船を一々県から回すというわけにいかない場合に、組合の船を短時間使用するといったような面もあろうかと思います。使用形態等によりましても、いろいろ問題があろうかと思いますが、本来、国なり県なりが、十分施設を整えて取り締まるべきものだと私は考えております。
  125. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私が調べたところでは、三池海上保安部の巡視艇として使われておるのは、五十八馬力の高速ディーゼルエンジンをのせて速力十三ノット、これはその目的のためにつくっているわけですね。それから警察で使っているのも、やはり十一ノットなんです。三十八馬力の高速ディーゼルエンジン、金額は三隻とも百七十五万円、進水はこの間あったのです。しかも強化プラスチックの十二人乗り、目的が初めから、そのために漁協がつくって提供している、こういうわけです。こういう点、どういうふうにこの後されようとするのか、その点をひとつ承っておきたい。
  126. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 取り締まりの面は、もちろん先ほど申しましたように、国なり県なり、公的機関がやるべきものだと思っております。ただ、取り締まりにつきましては、やはり地元漁協等の協力も必要であろうかと思いますが、そういう協力のしかたにおいて、いろいろ問題があろうかと思います。そういう点は十分実態を把握いたしましてから私としては意見を述べたいと思いますが、やはり地元の協力を得て漁業等の秩序維持ということはやらなくちゃならぬかと思います。取り締まりの実体は、やはり国なり県というところにあろうかと思います。なお漁業法では、警察権ももちろんその県の機関の中に入るわけでございます。そういう面におきまして取り締まりの権限はあるわけでございます。それに対して地元の協力がやはり度を過ごすかどうかという点でございまして、そういう点は十分実情を把握した上で、その度の過ぎるような点については、是正しなくちゃいかぬ、こう考えております。
  127. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まあ陸上の犯罪にしても、海上の犯罪にしても、これは一般人の協力が必要であることは当然なんです。地元の協力があることは当然なんです。協力のしかたなんです。私が問題だというのは。この前からいろいろ申し上げましたように、大体一方において暴力団がもう海に出てきておって、それでノリのこまを一括して漁業協同組合連合会とかからもらった、それを一こま幾らとして売りつけている。明らかに漁業組合の組合員でないものがもらうはずもないし、もらったら違法だし、また売るというのも違法である。そういう事実が実際にあるわけです。一方において。それからそういう暴力団の一味といいますか、若い者が海に入って、違反漁業と思われる落ちノリ等の採取をやっておる者を恐喝してそれから金銭を取っている、こういう事実もあるわけで、巡視でもって公式的な巡視はなされるけれども、一方においてそういうものが起きている、こういう複雑な状況があることを私は聞いているわけです。ですから、おっしゃるとおり地元の協力というのは、確かに必要でもあるし、いいことだと思いますけれども、その辺に割り切れないものがあるわけです。ですからこの前も申し上げましたように、こういう点については調査をしていただきたいと申し上げた。調査するとおっしゃったんですが、ただ、農林省、水産庁で文書やあるいは電話等でただお聞きになるような調査では、たいした効果もなければ、ほんとうのメスを入れることにはならぬと思いますけれども調査の方法をどういうようにお考えですか、これをお尋ねしておきたい。
  128. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 先般御質問がありまして、県に連絡をして県の実情等を伺ったわけでございます。調査は電話でやる、こういうような考えでございません。急を要する事案でございますので、先生に早くお答えしたほうがいいと思って県に照会したわけでございますが、いろいろと調査の方法にはあろうと思います。なお、その暴力団等の点でございますが、こま割り等につきましては、これは漁業権行使規則というものを協同組合ごとに定めて、そういう点で資格者を定める、これは協同組合の特別議決でそういう行使規則を定めるということで、そういう資格に合わなければ、こま割りを受けることはないわけでございますが、そういう面で暴力団が云々というのは、私も理解に苦しむわけでございます。また、落ちノリ等につきましても、やはり福岡県では漁業調整規則で固定網を使用して落ちノリの採捕を業として営む場合には、知事の許可を受けなければならぬということで、固定の漁具、固定の網具を使う場合には、県知事の許可ということになっております。この前御指摘のように、網じゃなしに、たこ糸みたいなものでやる、こういうものは固定しているかどうかという点が問題になるわけでございますが、そういう脱法的なものもあるというふうに伺ったわけでございますが、そういう点についても県に照会いたしましたが、まだ詳細わかりませんが、そういう事実はないという報告は、電話報告では参っております。なおそういう問題については、組合の自主的な統制ということももちろん必要でございますが、やはりそういう点について調査の必要がありますならば、県の報告で十分詳細が尽されないということになりますれば、現地調査という方法もございますので、そういう点も県の詳細報告を待って考えたい、こういうふうに考えております。
  129. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、まだ県にいろいろ聞いた上で調査の方法をこれからきめるというお考えでしょうか。
  130. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁業法に基づきまする漁業権の免許なりそれの執行等につきましては、全部県知事に委任してあるわけでございまして、県知事がそういう漁業権の免許等の仕事は一切責任をもってやるわけでございます。それでまず県知事がどういうふうにそういう点について取り締まりをやり、またどういうふうに執行しているかということは、県から詳細報告を求めるのが順当かと思いますが、それで十分な報告が得られない場合には、国の現地調査ということも考えられる、こう申し上げた次第であります。
  131. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大臣見えるまでもうちょっと聞きたいと思うのですが、長官はノリこまの一こまはどのくらいか御存じですか。
  132. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 全国的にいろいろ、ございますので、承知いたしておりません。
  133. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それじゃ話にならぬね。大体一こまと有明海で言っているのは三十間の十間三百坪で一反の広さ、これは御存じですね、一反であることは。
  134. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これもところによって違うようでございますが、大体一こま、今度漁業災害補償法で養殖共済としてノリこま……、ノリの分も引き受けるわけでございますが、そういう点で県別にやはり違うようでございます。災害補償法では一さくというふうに言っておりますが、一さくは千葉等を標準にいたしますと四尺の十間、こういうふうに承知いたしております。これも県によって非常に違うわけでございます。どこの……、大和町の地先はどうなっておるか承知いたしておりません。
  135. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは初めからなかなかそういう点で食い違っておったわけですが、私の一こまというのは、有明海の有明漁連の共同管理をいたしておりますその行使規定の中に、一こまというのは陸上で言う一反、三百坪、三十間の十間、これがどの程度が大体一世帯の漁民として適当であるかということが、基準としてたいへん問題になっておるのでありますが、こういう点についてはまだ詳細わかりませんですかね。
  136. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) これは個人差もありますので、一こまが、どれくらいがいいかということは、なかなか申し上げにくいかと思いますが、こういう点については標準的なものがあろうと思いますので、調べましてお答えいたしたいと思います。
  137. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっきお話しのように、取り締まりについても、あるいは漁業権行使の運営についても、県知事が許可をしたり、あるいは漁業調整委員等をまじえてその適正な配分をする、こういうようになっているのはおっしゃるとおりだと思う。ところが、その県その県によって状況も違っておりますから、指導方針あるいはそういうこま割り等の差異もあると思います。ところが、福岡県においては一世帯五こまというのが大体標準の基準だ、こういうふうに指導もされております。ところが、そういうようになってまいりますと、だんだん漁区の拡張ということが行なわれてきているわけです。最近は。漁区の拡張ということ。そうすると、一応配分がきまりますと、その区域以外のところはいわゆる禁止区域だということになります。農林省できめた以外のところは禁止区域ということになる。その禁止区域において操業をする場合も、やはりこれも違反漁業ということになるわけですか。そういう点もお聞きしたいのですが、大臣がちょうど見えまして、たいへんお忙しいおからだのようですから、これはあとでまたまとめてお聞きしますから。
  138. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 簡単でございますから、お答えしますが、ノリは区画漁業権によって行使をいたしております。それで区画漁業権は区域をきめて認許するわけでございます。区域外でやることは違反になります。
  139. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 さっき申し上げましたように、大臣がお見えでございますから、私のはあと若干ございますけれども大臣に対する質問をしていただいて、そのあとにしたいと思います。
  140. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  141. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記を起こして。  赤城農林大臣が御出席になりましたので、この際、大臣に対し質疑を願うことにいたします。  大臣に対し質疑願う方は、御発言を願いたいと思います。
  142. 矢山有作

    矢山有作君 非常にお忙しいところを御無理願いましたが、すわってやりますから、どうぞすわったままでお答え願いたいと思います。  午前中、庄野長官のほうにお伺いしたのですが、農林水産行政の最高責任者が見えましたので、一つ二つお聞きしてみたいと思うのです。  御存じのように、沿岸漁業等振興法の第一条には、その沿振法の目的というものがはっきり掲げられております。御承知のように、「沿岸漁業等生産性向上、その従事者の福祉の増進その他沿岸漁業等近代化合理化に関し必要な施策を講ずることにより、その発展を促進し、あわせて、沿岸漁業等従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、その地位の向上を図ることを目的とする。」、こうなっているわけですね。そこで、今後の沿岸漁業のあるべき姿といいますか、どういう形の沿岸漁家というものを目標に設定をされて、諸種の対策を講じていかれようとするのか、このことをひとつ具体的にまず冒頭にお伺いしたいと思うんです。
  143. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 他産業との所得格差を縮小する、非常に沿岸漁業家は零細でございまするので、むずかしい問題ではございます。でありますので、たとえば、漁船漁業等の漁家等につきましては、一つの方法としては構造改善をしていくということで指定等をいたしておりますが、その構造改善等におきましても、漁労というよりも養殖の方面に重きを置いて、養殖適地を開発して、それによって所得を増す、あるいはまた、それと兼業的に所得を増すというようなこと、あるいは大型魚礁等をさらにふやしまして、そういう漁場をつくっていく、こういう面等におきまして所得を増していくということを考えておるわけでございますが、非常にむずかしい問題でございますが、いろいろな面から方途を講じていきたいと思っております。
  144. 矢山有作

    矢山有作君 いまの大臣の御答弁も、先ほどの水産庁からいただいた御答弁も全く同じなんでして、私ども沿岸漁家というものを、この第一条の目的に沿ってどういうふうに具体的につくるかということを聞いておるわけなのです。で、その際、養殖の問題や構造改善事業の問題が出たのですが、そういう施策をやっていく中で、具体的にどういう沿岸漁家というものを中心考えて、そのようないまおっしゃったような諸種の施策をやるのか、こういうことを私はお伺いしたところが、この問題については水産庁長官もはっきりしたことを言われません。あなたも同じようなことをおっしゃったわけです。だから質問と御答弁をいただいておるのが、全くかみ合ってこないわけです。そこで、私はそれをかみ合わせるようにせぬことには、議論が発展しませんので、ひとつお伺いしたいのですが、年次報告を読んでおりましたら、こういうことが書いてあります。  これは三十三ページをごらんいただきたいのですが、その中ごろに、「五トン以上十トン未満層は、三トン以上五トン未満層にくらべ、一人当たりの資本装備率が高く、したがって一人当たり付加価値も高いが、売上利益率、企業利潤等では逆に少なくなっている。」 云々とこうずっとあるわけです。あって、最後のほうにいきまして、「実際にはすでに述べたように、三トン未満層のうち一トン未満層が無動力船層に近いきわめて零細な経営であるため平均数値を低めており、三トン近くになると専業漁家として成り立つ漁家の割合も高くなっている。」——この最後のところですね、これをひとつ頭に遣いといていただきたいと思うのです。そういうことを言っておって、もう一つ三十五ページのほうの上の「漁家経営の今後の方向」というところを見ていただきますと、その中ごろに、「今後わが国の沿岸漁船漁業においても漁船、漁具等の技術の進歩により省力化をおしすすめ、拡大された経営規模により高い生産をあげるような家族的経営の育成を目標とすべきであろう。」と、こういうふうに言ってあるわけです。  これらから見ると、私は想像するのに、いわゆる沿振法で掲げられた第一条の目的に沿う漁船漁家として三トンないし五トン未満ですね、そこらのところの経営規模を一つ中心に置いて諸施策をやろうとしておられるのではないかと私は想像するのですが、その点はどうなんでしょうか。
  145. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) この分析、いまお読みになったとおりで、やはり三トン以上五トン未満程度が、三トン近くになると、専業漁家として成り立つ漁家の割合が高くなっておる。こういう分析でございますが、やはり沿岸漁業としては三トン以上のものにしていく、こういう資本装備をしていくということが、これはねらいであることはもちろん御指摘のとおりだと思います。そういう意味におきまして、その次の三十五ページにありまするように、結論的に「協業等の導入により生産性のより以上の向上を図る必要もあろう。」こういう分析でございますので、協業等の進め方もしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  146. 矢山有作

    矢山有作君 それでは確認をしたいと思うのですが、三十三ページのIIの9ということから割り出しても、三トンないし五トンの漁船経営というのが、他に比して非常に有利な条件にあると、そういうところの分析から、先ほど私が申し上げましたような方向というものが出てきたんじゃないかと思います。ところが、三トン以上五トン未満漁船漁家のいわゆる所得といいますか、それが他の産業と比べた場合にどういう状態にあるかということを分析したのが、三十八ページに載っております。残念ながら三トン以上五トン未満あるいは三トン未満動力船層あるいは五トン以上十トン未満、こういうふうに分類をして対比してありませんので、いま私が、中心になっているんだろうと言った三トン以上五トン未満のものと直接の比較ができないのが残念なんですが、その表のIIの13のところで見ると、漁船漁家というのは、全都市勤労者世帯よりも所得水準が低いことはもちろん、農家よりもさらに低いわけですね。そう出ているわけです。そうすると、そういうような状態からながめた場合に、はたして三トン以上五トン米満の漁船漁家一つ中心目標として沿岸漁業等振興をはかられる場合に、沿振法の第一条の目的に沿うたような私は沿岸漁家の育成は考えられぬと思うのです。そうすると、この沿振法を作られた以上は、政府の責任としてもそれらの点を十分分析検討しながら、その第一条の目的が達成されるよう漁船漁家のイメージというものがあってしかるべきじゃないかと思うのです。それがなしにやられているんでは、これは私は法律の趣旨に沿ってこない、こういうふうに思うのですが、その点の御見解は。
  147. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) そういう意味におきまして、三トン以上の漁船漁家を育成していく、こういうねらいでございますが、同時に、この冒頭にもありまする、養殖漁家勤労者との比較を見まするというと、非常にいいわけであります。漁船漁家と比較しましていい。三十七年度のごときは一三二・四、こういうふうになっています。そういう観点からも、先ほど冒頭に申し上げましたように、構造改善等におきまして漁業漁家養殖を兼ねる、あるいは養殖を相当導入していくというようなこと等によって、沿振法の第一条の目的に沿うように進めていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  148. 矢山有作

    矢山有作君 そうなると、まあ沿岸漁業あり方の重点を、私は養殖というものを取り上げていくことによって切り抜けていこうとされておるのだと思うのです。  そうすると、もう一つ問題が出てまいりますのは、同じく年次報告の三十六ページのところをごらんいただきたいのです。その上のほうに、「つまり、養殖漁家では漁船漁家とことなって漁業所得向上は価格上昇より生産性の上昇に強く依存しており、このような生産性向上は前述したような技術の向上によってもたらされたのである。」として、その次に、「付加価値率を養殖漁家平均で三十五年度以降についてみると漁船漁家とは逆に低下している。これは豊度の劣る漁場開発が進んでいるからでもあろう。」こういうふうに指摘されています。もちろん、そのほか物的経費の増大だとか、あるいは養殖資材の経費、人件費、そういったものの価格の影響というものもあるかもしれません。しかしながら、少なくとも、そういう指摘が行なわれておる状態の中で、養殖漁業一筋にたよって沿岸漁業振興をはかっていこうというのが、私は少し甘過ぎるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  149. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 一筋にたよるということは、確かにいまの分析から見ると甘いだろうと思います。そういう意味におきましては、やはり養殖との兼業というような面、それから一番先に申し上げましたように、大型漁礁等の設置によりましての魚族の保存といいますか、増殖、こういうようなことも考えなくちゃならぬと思います。そういう意味におきまして、養殖だけにたよる、こういうわけにはまいらぬのじゃないかと思います。
  150. 矢山有作

    矢山有作君 養殖の問題はあとでもう少し詳しくお伺いしたいと思います。もちろん、養殖一筋にたよるということであるなら、その次の柱としてお考えになっておるのは、私の想像するところでは、沿岸漁業構造改善事業だろうと思うのです。ところが、この点は午前中にも水産庁長官にお伺いしたのですが、私が昭和九−一一年の平均を一〇〇として、そうして各府県別沿岸漁獲高指数を調べたところによりますと、非常にでこぼこがあるわけです。つまり格差がある。伸びていっておるところ、どんどん減っていっおるところ、こういうところがあるわけです。ことに漁業というのは、自然的な条件に支配されることが非常に大きいという面も考え合わせたときに、こういう府県別漁獲高推移などを見ましたときに、いまやられておる沿岸漁業構造改善事業のように、一律に一府県に一地域を指定してこれを推進していくという形では、問題が出てくるのではないかと思うのですね。どういう問題が出るかといいますと、幾ら金をつぎ込んでも、自然的な条件その他からして、どうにもならない地域もあるかもしれない。ところが、一方には、そういうところにまで金をつぎ込むから逆の面が出てまいりまして、ここに金をつぎ込めば、沿岸漁業としてはどんどん発展していく可能性があるのだというところに金が回っていかない、そういう弊害も出てくるのじゃないか。したがって、沿岸漁業構造改善事業を推進していく上にも、そういう点の分析というものを十分におやりにならぬと失敗をする可能性がある、こういうことを私は考えておるわけです。そこで、そういう状態をお尋ねしましたら、まあ長官のほうからいろいろ御答弁があった。ところが、その構造改善事業を、はたしてそれでは各地域の実態、いろいろな漁業との間の関連等を考慮して、実際に統計の上できちっとしたものを整備して事業を進められておるのかというと、私は必ずしもそうではないという御答弁を午前中にいただいたのです。そうなってくると、この沿岸漁業構造改善事業というやりも、お考えになっておるような、また、法が目的としているような沿岸漁家を育て上げていくのには、あまりいまの行き方では役に立たないことになるんじゃないか。この点の心配が出てくるわけです。そういう点について、大臣はさらに一そうそうした地域間の格差だとか、あるいは各地域漁場条件、自然条件、あるいはまた漁業間の格差、あるいは実際の漁業状態、そういったものをしさいに検討されて構造改善事業というものも考え直していかれる、そういうおりもりかどうか、この点一つお伺いしたい。
  151. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) もちろん、構造改善そのものの着想というか、これは当然いい着想でございます。しかし、その着想を現実に移した場合に、いま御指摘のようないろいろな面がもちろん出てくると思います。農業構造改善等におきましてもそういう点が出てきておりますが、特に漁業構造改善には、いろいろ改めなくちゃならぬ面が、あるいは調査をもっとすべき面があると思います。私はぜひそういう調査をまた綿密にし、改めるべきところは前向きで改めて進めていきたい、こういうふうに思っております。
  152. 矢山有作

    矢山有作君 その際にもう一つ私は御注文申し上げておきたいのは、この前に農業の問題でお話しいたしましたときにも、農業基本法にいっておるあの農業と他産業との格差を解消して、農業従事者と他産業従事者との所得の均衡をはかるという大目的が出ておりますが、それと関連して所得倍増計画が立てられ、その所得倍増計画では二町五反というものを一つ目標にして、そうしてそれは家族労働力三人でやるんだと、収益が大体百万円程度を見込んでおる、こういう形のものが描かれておるわけです。ところが、それがすでに大きな間違いじゃないかということを申し上げたと思うのです。それはなぜかといいますと、普通の勤労家庭においては一人の者が働き、そして家族を養っているわけです。農業の場合には三人の労働でもって、そしてその勤労者と同一の所得水準にしようというのですから、すでに農民の労働力は一般の勤労者の労働価値の三分の一しか見られておらないという大きな矛盾がある、こういう点を指摘したと思うのです。ところが、そういう点からして、それよりもなお劣っておるのが沿岸漁民の実態だと思うのです。だから沿岸漁民をほんとうに沿振法にいうような状態にまで引き上げていくというのには、これはなまやさしい仕事ではないはずです。養殖の問題にしたところで、あとから申し上げますが、いろいろな問題がある。沿岸漁業構造改善事業でも、またあとで申し上げますが、いろいろな問題があります。だからほんとうに法律をつくったならば、その法の実現というものは真剣に考えていただいて、具体的にそれを裏づけていく制度なり、あるいは財政の面を考えていただかないことには、から念仏に終わると思うのです。それを一つ申し上げておいて、ぜひひとつ来年年次報告を出されるときには、政府として沿岸漁家というものはどういうものを考えておるんだ、そうしてその沿岸漁家をつくり上げるならば、他産業との格差は解消されていくんだ、そういう一つの目安というものを、やはり打ち立てていけるようなそういう年次報告をつくっていただきたいと思う。それでなくして、沿岸漁業沿岸漁業としてとらえ、中小漁業中小漁業としてとらえ、その中だけで問題点として取り上げてみたところで、真の問題点の所在というものは、そういうふうに個別的に取り上げるだけでは出てこないのですから、漁業全般として取り上げることで、初めて真の問題の所在が明らかになるのですから、そういうかまえで来年の年次報告には対処していただきたいと思います。  その次にお伺いしたいと思いますのは、養殖に非常に重点を置いておられますし、また沿岸漁業構造改善事業にも重点を置いておいでになるようです。ところが、最近は漁場荒廃が非常に激しいわけです。漁場荒廃の実態は、一体どういう状況にあるのか。このことは大臣からお伺いするのは無理ですから、水産庁のほうからお伺いをしたいと思います。
  153. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、法律そのものには、すでにきまっておるものを、権利関係としてあるいはきめるような法律もありまするし、また、ビジョンというほどでなくても、将来に向かってこういうふうにしたいと、こういうような目的を書いてある法律もございます。沿振法等につきましても、実態を考え、実態から前進させるべき目標といいますか、沿岸漁業漁船漁家等の所得が他産業と均衡のとれるようなものにしたい、こういう目標を持っておるわけであります。したがって、その目標を持って政策を行なう以上は、いまのお話のように、予算の裏づけとか政策面を打ち出して、その方向にもっていかなくちゃならぬじゃないかというのは、まことにごもっともでございます。ぜひそういたしたいと思います。同時に、ただ沿岸漁家あるいは中小漁家というだけ個々的にとって、それを分析したり、政策をとってみても総合的にならぬじゃないか、関連をもって年次報告等においても報告をするように、また政策面におきましても、ほかとの関連考えながら打ち出すべきではないか、これも私そう思います。いつかもこの席で申し上げましたように、ことしの漁業に関する年次報告その他は、最初の年でございまして、十分練ったつもりでございますけれども、いろいろまた報告の分析、内容等におきまして十分でない点が多いと思います。来年度からは御注意の点なども十分検討いたしまして、よりよい報告のできるようにいたしたいと、こう考えております。
  154. 矢山有作

    矢山有作君 水産庁長官あとからひとつお願いいたします。  私の意見に賛成していただいたのですが、賛成していただいて、それを具体化するためには、もちろん政策面、財政面から処置していただくのはもちろんですが、一番大切なのは、私が繰り返して申し上げておりますように、沿岸漁業のあるべき姿というものを頭に描きながらひとつやっていただきたい、このことをなおひとつ申し上げておいて、もうこれはそういうつもりでやっていただけば御答弁要りませんから、一つ目標が設定されるのに、いかなる政策を講ずるかといったって出てこぬわけですから、だから沿岸漁業あり方について一つ目標というものを、こういう沿岸漁家を育てれば、それによって所得格差が解消されていくのだという、そういう一つ目標というものを持っていただきたい。それでなければ私は政策の効果は出てこない、こういうふうに思います。
  155. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) その目標を持つべきだと思います。
  156. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁場荒廃状況でございますが、これは埋め立てなり干拓により漁業が不能になった状態と、それから都市下水とか、あるいは工場排水の水質の汚濁によりまして漁業が非常に被害を受けておる、そういう両面があろうかと思います。それで、ただいまわれわれのほうで推計いたしておりまする埋め立て、干拓に伴い漁業が不能になった面積、三十二年から統計が多少ございますが、それによりますと、大体二万二千四百ヘクタール程度に相なっております。なれ補償契約が締結してその後の工事がまだ進んでおりませんが、予定されるものは、ただいまの二万二千を含めまして約倍の四万四千ヘクタール程度で、そのうち半分が工事進行中で漁業が不能に近くなっておるものでございます。あとの二万二千ヘクタール程度は、本契約が成立しておりますので、今後の工事の進むにつれて操業不能になる面積、こういうふうにわれわれのほうでは推計いたしております。  なお都市下水なり、あるいは工場排水によりまする漁場の被害につきましては、これは内水面が特に多いわけでございますが、なお海面等におきましても、東京湾の重油の廃油によるノリの被害だとか、あるいは三重県の四日市の地先における廃油等によって魚に異臭がつく、そういったような面があるわけでありますが、そういった面を含めまして、報告されておりまする三十七年までの被害金額というものは、約五十八億程度というものが報告されております。件数は、三十七年度でございますが、千二十八件というようなものが報告されております。それで、この地先については、大臣が本会議等で御答弁になったいわゆる水質二法の水質基準というものによって工場排水を規制してその汚濁を防止するというようなこともございますが、漁場の埋め立て、干拓による喪失分については、やはり構造改善等の中で漁種の転換といったようなことを考えていくということと、それからまた、こういうところに工場ができます場合におきましては、そういう工場に転職していくという道もあっせんする、こういうような方向で進めております。  なお、こういう面につきまして、構造改善との調整においては、県のいわゆる産業開発計画と十分事前に打ち合わせ、優良漁場あるいは産卵場といったような点の喪失を最小限度にとどめる、そういう調整策を事前に講ずるように検討しておる次第でございます。
  157. 矢山有作

    矢山有作君 この間、衆議院の本会議で社会党の赤路議員のほうから質問をされたときの数字が出ておるわけですが、それによりますと、三十三年、あれは水質二法の制定された年だと思いますが、それから三十七年までの漁場被害件数四千二百三件というものが出ておりますね。三十七年が千二十八件。三十三年以来を考えてみると、四千二百件以上の水質汚濁の問題が起こっておる。これだけたくさんのいわゆる水質汚濁の問題があり、さらにまた埋め立てにしても、かなり膨大な埋め立てが行なわれる、こういうことになるわけですが、それに対する対策としていま御説明になりましたようなことで、私ははたして目的が達せられるのか、達せられないのか、非常に疑問な感じがするのです。というのは、これだけ漁場保全、そうして沿岸漁業振興させるために漁場を確保していくことが主要な問題だと思うのですが、それに対して年次報告で触れておるのは、九ページのところに、「内水面漁業の生産の動向」というところの終わりのほうでちょっと触れてありますね。「水質二法の制定によって、水質保全の措置がとられつつあるほか、内水面漁業生産のため積極的な対策としては、種苗の移植、放流等の措置が講ぜられる。」、こういうふうな触れ方をされておる。それからさらに六十五ページを見ていただきたいと思うのですが、六十五ページにもいささか触れておいでになります。「水産動植物の繁殖保護」という項の真ん中より少し下のところに、「沿岸および内水面における魚類の棲息環境の一般的な悪化の原因の大きなものは、工業化、都市化の進展に伴う水質の汚濁であるが、これについては、」云々といって、ずっと書いておいでになるわけです。ところが、実際に水質二法が十分に生かされて適用されておるか、あるいは水産資源保護法が十分に生かされて活用されて、そうして漁場荒廃を防止するという対策が真剣にとられてきたのか、こういうことを考えてみると、私は非常にその点においては真剣な努力が払われておらぬのじゃないかという感じがするわけです。特に公共用水域の水質の保全に関する法律等で水質の指定水域として指定されたものが、三十三年以来たった四水域しかない、こういうような状況になっているわけです。そうすると、私は長官答弁になったように、真剣にこの水質汚濁の問題なり、あるいは埋め立ての進行に対して、漁場を守っていくという努力が払われておるかどうかということに大きな疑問を持つわけです。それから、この漁場荒廃防止ということは、現在ある水質二法あるいは水産資源保護法というものを最大限に活用して真剣に取り組んでいただかないと、一生懸命一方では沿岸構造改善事業をやってたくさんの金をつぎ込んでいって、そしてまた養殖を進めていく、ところがそれが水質の汚濁でだめになる、あるいは埋め立てでだめになる、こういうようなことになったのでは、沿岸漁業構造改善事業の成果も上がらぬし、養殖幾ら振興させようとしても、そこにも限界が出てくるし、さらにそれによって沿岸漁業振興をはかっていこうということができなくなっていくのではないか。だから、この漁場荒廃防止という問題はもう少し前向きな形でひとつ取り組んでほしい、こういうふうに思います。あとで私ども考えておる考え方がありますので、それを申し上げて、そういった方策をとられるかどうかということをお伺いしたいと思いますが、関連質問があるそうでありますので、関連質問をやっていただいてからその問題に触れさしていただきます。
  158. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 関連大臣にお尋ねしたいのですが、前の重政農林大臣のときも申しましたが、八郎潟の干拓、それから有明海の干拓について、山林省と企画庁とで相当大幅な構想といいますか、農業改革の新しい手段として計画検討されているということをちょっと決闘しておりますけれども、これはどういうように進められておるものか。それともう一点は、干拓をしたりあるいは人工島ができれば、その帰属はどこの県につくのか、どこの村につくのかということが非常に問題になるわけです。農林省とは直接関係ないと思いますけれども、これは自治省との関係だと思いますけれども、そういうことで今度自治省は干拓についてその帰属を明らかにする、争いを避けるために特別立法を考えておるということを私は仄聞しておるのですが、干拓の点から農林大臣はどういう御構想がおありになるのか、ひとつ承っておきたいと思います。
  159. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 先の質問からお答えいたしますが、水質の汚濁、これは非常に工業化した点もありまして、陸においてはスモッグ、水においては汚濁という点が非常にあり、また区域の指定も三十七年から三十八年、四河川というようなことでございます。非常におろそかになっていた傾向があろうと思います。この水質の汚濁の町は日本ばかりでなく、アメリカ等でも、漁業面から非常に問題になっておるようです。アメリカが問題になっているからというわけじゃございませんが、水質汚濁に対しては、水産資源保護法、その他を活用しまして、積極的に前向きでやっていきたいと思います。  それからいまの干拓の問題でございますが、有明、中海のほうを私よく承知しておりませんが、八郎潟は、前に私の農林大臣時代に手をつけて、今度完成いたしました。これは学校も道も何もないところでございますので、一つの行政の村をつくるといいますか、村をつくって、役場から、その他行政機関等も全部をそろえていかなければならぬ、こういう形で自治省において、今国会に村をつくる法律といいますか、そういう法律を出すことに相なっておると思います。有明、中海等の帰属その他の点につきまして、経済企画庁と別に、私ども考え方が違っておる面があるというふうに私聞いておりませんが、事務的にいろいろ打ち合わせているかと思います。その点、私、いま承知しておりません。八郎潟につきましては、先ほど申し上げたようなことで、ひとつ村をつくっていく、そのために法律を出す、こういう運びをいたしております。
  160. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 八郎潟の点はよくわかりました。有明海の沿岸の干拓計画等を仄聞するところによると、新産業都市と一緒になるわけですね、沿岸ですから。まずその有明・大牟田地区といいますか、有明・福岡地区といいますか、熊本県の八代の近所から、ずっと筑後川の下流までです。あのベルト地帯といいますか、沿岸地帯です。これがまた干拓をやるという計画、それと新産業都市という計画、こういうものと一緒になると、これはもういろいろな問題が起きてくると思うのです。さっきの水質汚濁の問題も、もちろん出てきますし、漁場荒廃ということは、目に見えてわかってくるわけです。干拓と新産業都市との関係ですね、この点について明快な農林大臣方針がないと、これはたいへんな問題が出てくると思いますが、その点ひとつ、農林大臣農業の立場からひとつ所見をお伺いしておきたいと思います。
  161. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは岡山のどこでしたか、今度干拓するところは……、笠岡などにも例があるのでございますが、農林省といたしましては、耕地とすれば干拓するわけでございますけれども、近隣が非常に開けてきて、工業川地に中途から使いたいというような地元の要望なども強く出てくる場所がございます。そういうような面で、この間も話がありましたが、私は初めから工業用地として、何も農林省はやる必要ない、耕地としてやるのだけれども、近辺の発達上、どうしても工業用地等に必要であり、また水もそういうところに回さなければならぬ、また、そのことによって地元の負担が軽くなるといいますか、ほかのほうで負担するために、耕地を受け取るものの負担度が軽くなるという場合には、結果的に見て、そういうことを認めてもいい場所もあるじゃないか、そういうのは、まあ具体的に検討していくよりほかないというお答えを、衆議院のどこかで私いたしたことがあります。でありますので、目的といたしましては、たとえば、有明の干拓等におきましても、耕作地としての目的で埋め立てたのでございましょうけれども、回りが新産都市として、その一部を吸収するといいますか、一緒にするというような場合には、具体的に差しつかえない限りは、そのほうと協力していくという場合もあると思います。そういう場合に水質の汚濁の面や農業あるいは漁業に支障がある場合には、その支障を除去するような方法でやっていかなくちゃならぬと思いますが、方針ということを尋ねられますと、どういうふうにお答えしていいかわかりませんが、場所によって、やはり工業地帯になる場所があると思います。干拓した場合。その場合に農業のためや漁業のために支障のないように、これは補償を得るといいますか、それははっきりさせていかなければならない、こう思っております。
  162. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 関連ですから長く質問はできませんけれども、そこに住んでおる漁民、農民の願いというのは、将来農業はどういうように政府は考えておるのか、漁業はどう考えておるのか、それを新産業都市をどう発展さしていくかという、こういうことで目標がないわけです。いまのところ。つまり大きくいうとビジョンがないわけです。ビジョンというとおかしいですけれども、ビジンがないわけです。したがって、あるいは農業干拓だからこれには入植をして農業をやっていこう、そういう人もおりましょうし、あるいはこれは将来工業地帯として有望だから、だからそういうものを頭に描いてその配分等に向かっていく者もおりましょう。あるいは漁民については、漁民はまた違った意味の考え方でいきましょう。一つ目標というか、一つの姿というものが産業体の構造の姿というものがはっきりしていないものですから、それでもう非常に迷っておるというのが実態だと思う。いわゆる将来何をやろうという定着した考え方がないわけです。ですからその点を農林大臣が特に企画庁ではどう考えておる、通産省はどうだと、こういうような農業水産つまり企画、通産当局等の政府としてまとまった方針というものを、住民が安心して一つのものを描けるものを出していただきたい、こういうふうに思うのです。希望になりましたけれども、御所見をお伺いして終わります。
  163. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは干拓の場所ばかりでなく、新産都市の中に含まれる農業地、あるいは新産都市の周辺における農業地、これは特別にどういうふうに農業を持っていくかということについての方針を持たなくちゃいかぬと思います。同時に、新産都市のおもなる管轄庁であるところの経済企画庁等とも協議して進んでいかなければならぬと思います。そういう面におきまして、実は専門的の調査費というようなものを三十九年度の予算の中に計上しております。一つ方向をつける、そういう関連しておるところの構造改善その他についての方向づけをしていくために関係省とも協議し、また私どもの意見も申し述べまして方向づけをしていく、そういう考えを私も持っておりますし、御指摘のようにしていきたいと思います。
  164. 矢山有作

    矢山有作君 漁場荒廃の問題については、私は早急に措置をされぬというと、いまのように非常に急速な速度で工業化が進み都市化が進んでおる状態の中では、それからくる圧力のほうが強くて、水質を保全しようというそういう力のほうが弱い。したがって押し切られてしまって、漁場荒廃の度がますます増大するというおそれがあると思うのです。この問題については、去年の沿振法の審議のときにも重政農林大臣に強く要望したんですが、その際重政さんも大臣がおっしゃると同じように御答弁なさった。ところが御答弁なさって、じゃ真剣に取り組んでそれをやろうという姿勢が出ておるのかと具体的にそれを考えてみると、私は具体的にそれが出ておると思えないのです。たとえば、これは通産省からもらった資料ですが、工場排水対策についてというのがあるのですが、水質保全の問題に触れておりますが、その内容を見ますと、昭和三十六年七月七日付で調査基本計画を公表し、昭和四十五年度末までの調査水域百二十一を示した、この百二十一水域の中から昭和三十九年度まで四十二水域が選定され、水質調査を実施または実施することになっている、こういう状態なんです。そしていままでやったのは、先ほど言ったように四水域にしかすぎない、こういうテンポでいっておったんでは、とても漁場荒廃を防止しようということにならない。しかももう一つ、「三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」、この中で、「生産対策」のところで、ちょっと水質保全のことを触れております。それを見ましても、全く軽く触れておるだけなんです。「工業化、都市化の進展に伴う水質汚濁を防止するため、「公共用水域の水質の保全に関する法律」および「工場排水等の規制に関する法律」により、水質基準設定のための調査をひきつづき七水域について実施するとともに、水質基準の設定を調査済水域のうち八水域について行ない、これにもとづいて水質保全の措置を講じ、工場排水等による沿岸および内水面における魚類の繁殖環境の悪化の防止に資する。」と、たったこれだけなんですね。そういうテンポののろいことでは、今日のような工業化の進展の速度の早い状態の中で、とても対処していくことはできない。したがって、昨年重政さんもそのことは十分認識されて、各機関と連携をとって、その点については万全を期する努力をすると、こうおっしゃった。その結果が「講じようとする施策」になって、たったこれだけで出てきた。これじゃ大臣がここで御答弁になったことが、一々施策の面に出てきておらぬということになるわけです。その点では赤城農林大臣は非常に力もおありになるし、また農林水産関係の人々からも非常な嘱望を受けておるのですから、やはりいまおっしゃったことが前の重政大臣のように言いっぱなしにならぬように、今年度から真剣にこの問題に取り組んでいただきたいと思う。そうしなきゃ、とても水質汚濁の防止なんといってもできるものじゃないと思います。そこで、私どものほうで考えております問題があるので、それをやっていただける気持があるかどうかということを、具体的にひとつ申し上げてみたいと思います。  その第一は、水質汚濁の防止をやるために、当面水質二法を強化してもらって、一つは水質調査着手前でも、漁場にとって重要な水域は指定水域にして、水質基準設定までの間漁場の水質を悪化させぬようにしてはどうか、こういう措置をとっていかれるおつもりがあるかどうか。  それから二番目は、そのために関係工場に排水処理施設を完備させる。特に新設工場については排水施設を完備してないものは許可しないという方針をとる。  それから三番目は、紛争のあっせん、調停、仲裁に関する規定を加えていって、弱い漁民が泣き寝入りにならぬようにひとつしてもらわなければいかぬと思う。そのことについてはこの問の衆議院の質問で見ますと、四千二百三件も被害件数があるのに、そのうちで仲介に付されたものは、わずかに十八件だということを赤路議員が指摘しております。したがって私どもはそういうようなことではこれは困るわけなんです。だから三番目としてそういう施策考えられるかどうか。  それからもう一つ大切なことは、被害漁民というのは非常に零細なんですからね、したがっていわゆる無過失賠償の規定というものを加えてほしいと思うのです。現実に水質をよごして損害を漁民に与えたときには、その賠償をたとえ無過失であってもやらせる。そこまでいけば、私は水質保全というものはかなりの効果をあげられると思う。  まず、水質関係の問題について、その四点をどういうふうにお考えになるかひとつお伺いしたいと思うのです。
  165. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 水質の汚濁除去につきましては、それぞれ四つの面とも適切な方途だと思います。これは私のほうだけできめ得ない問題も中にあります。たとえば関係の工場に排水設備等を完全にしなくちゃいかぬという、工場の許可条件といいますか、そういう条件どもありますので、ほかの大臣、ほかの省とも協議いたしまして適切なものは進めていきたいと思います。  無過失賠償等は、法律論いろいろあるかと思いますけれども、できればそういうことにしたほうが私はよりいいと思います。いずれにいたしましてもこれは検討いたしまして、各省とも連絡いたします。
  166. 矢山有作

    矢山有作君 無過失賠償の例は、ほかにもありますから、ですからこれは私は立法化していくのにそうむずかしい問題じゃないと思うのです。  それからもう一つ、他の省との関係等を考えておやりになっていただくのはけっこうなんです。ところが、どうも考えてみると、他の省で一番関係のありそうなのは通産省ですね、これは通産省にはなかなか強い力がひっついておりましてね。いわゆる会社の経営者の人たちは、水質がどうこうというよりも、とにかく自分たちが工場つくってもうけるのだということのほうが先に立つ、案外その意見に押されて、通産省の腰がわりあい強いわけです。それに農林省はとかく押されてくるおそれがありますので、事実押されているから、今まで水質二法がつくられても十分な施策ができなかったんだろうと、私は想像するんです。ですからそういう点については、零細な漁民を守るのだ、一本の沿岸漁業振興させるのだというかたい信念を持ってひとつ対処していただきたい。これはもう要望になります。ひとつそういう決意でやっていただきたいと思います。  それからもう一つ私が提案を申し上げたいと思いますのは、最近御存じのように、埋め立てによって漁場の喪失が非常にふえているということは、先ほど御答弁にあったとおりなんです。そこでそれに対して漁民の利益を守って水産資源を恒久的に維持する、そういう立場から、私どもはこういう考え方をひとつ取り入れていただいたらどうかと思っているわけです。  その第一番は、水産資源保護法というものを整備していただく。そうして資源保護上重要な水域及び沿岸漁業振興上重要な水域を資源保護水域として指定をし、その水域における埋め立て、汚水流入を禁示する、それだけの強い措置を水産資源保護法の中に盛り込んでいく。  それから二番目に、工業用地の造成、工業配置計画の作成の場合に、漁業振興計画をも考慮して行なうように、政府の中で特別な配慮が要る。これは先ほどの小宮委員指摘されたとおりなんです。その点をひとつ実行していただきたい。  それからもう一つは、漁場の埋め立て干拓を行なう場合、代替漁場を提供するということをひとつ真剣に考えていただきたいと思うわけです。で、そのことによって漁民の生活権を確保する、それを考えていただく。そのためには、漁民やその子弟の受け入れを埋め立てを行なう地方公共団体や業者に義務づけるということも必要なんじゃないか。最近は埋め立てをやって工業の誘致をどんどんやります。そして土地を買収し、あるいは漁業権を買収するときの約束は、一世帯から一人は雇ってやりましょうというようなことを言って案外安く買いたたく。ところが、実際に会社が発足してみると、なかなか雇ってくれない。雇ってくれたとしても臨時雇用です。そういうようなことでは、これは漁民というもの、また農民だって同じですが救われない。したがって、それに対しては私どもは国が責任を持ち、さらに地方公共団体や業者が責任を持って犠牲になった漁民の職を保障していく、こういうことをひとつ考えていただきたいと思うのです。これについてそういうふうな方向でやっていただけるかどうかお伺いしたいと思います。
  167. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま御提案になった三つの問題、事務当局に検討さして進めていきたいと思います。
  168. 矢山有作

    矢山有作君 それからその中でもう一つ気になる問題があります。それは何かといいますと、二月の二十九日の新聞を見ますと、土地収用法関係二法の改正案がまとまったと、こういわれておる。その中に、土地収用法の関係として、土地収用法の適用対象を広げ、海面の埋め立てなどに伴う漁業権などの収用ができるようにする、こうなっております。しかも、その収用の場合には、緊急裁決で二カ月以内にやれるということも考えられておるんじゃないか。そうなってきますと、これは漁場の喪失という問題は、これはたいへんな問題になってくるわけです。その点を大臣はいかにお考えになっておるのか。こういうような状態に対処して、早急に私がいま言いました七つの対策整備されなければ、手おくれになると私は思うのです。
  169. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) その新聞に出ている面、まだ私ども協議にあずからない問題でございます。しかしながら漁業権の問題は、なかなかやかましい問題で非常に長くかかります。いまのお話の代替地を見つける、あるいは職業の転換を確保するということが必要だろうと思います。その収用法によってどういうふうな方法を収用法で適用するかという問題につきましては、なお検討をいたしたいと思います。まだ私ども検討の範囲には、それはまだ来てなかったのであります。慎重に検討したいと思います。  水産資源保護法は、先ほども申し上げましたように、事務当局に検討いたさせます。死んだ法律でないようにしていきます。
  170. 矢山有作

    矢山有作君 それではひとつ死んだ法律でないように検討をしていただくために、いまできることをひとつさっそくやっていただきたいのです。これは本会議で渡辺委員のほうから指摘がありましたが、水産資源保護法の第四条の中に、「水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつその他水産動植物に有害な水質の汚濁に関する制限又は禁止」、こういう条文が出ておりますね。これをまずひとつやれということです。せっかく法律がありながら、これが実際に適用されておらない。実際にある法律を適用しないようなことで、私が言いましたような問題を真剣に私は取り上げていただけるということを信頼をしにくいのです。この点どういうふうにお考えになりますか。
  171. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 水質二法を中心にいたしまして、いまの水産資源保護法第四条の命令等につきまして活用するように検討いたします。
  172. 矢山有作

    矢山有作君 それから土地収用関係二法の問題については、よく御承知になっておらぬようですが、これは新聞の報ずるところによりますと、建設、大蔵両省が中心になって改正案を検討しておって、最近内閣法制局を加えて三者の間で意見が一致したということになっております。そうすると、これはただ漁業だけの問題じゃないので、農業にとってもたいへんなことになる。そうすると、ひとつ農林大臣は早くその内容というものを知っていただいて、処置していただきませんと、これは閣議決定になって法案になってしまいますと、たいへんなことになります。もしこういう法律をつくられるなら、それに対する対策というものが農林大臣としては十分にお考えになっていただきたいと思うのです。
  173. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) すぐ調べて検討いたします。
  174. 矢山有作

    矢山有作君 それからその次にお伺いいたしたいと思いますのは、沿岸漁業等振興法の第三条に、(国の施策)というのが出ております。その十号に、「職業訓練及び職業紹介の事業の充実、漁村地方における農業、工業等の振興等によって、沿岸漁業等経営に係る家計の安定に資するとともに、沿岸漁業等従事者及びその家族がその希望及び能力に従って適当な職業に就くことができるようにすること。」と、こういうふうに出ております。ところが、この問題について、一体具体的にどういうようなことが行なわれておるか。この問題については小宮委員からも御質問があったところなんですが、具体的なものというものはまだお聞きしておりません。さらにまたそういうふうの趣旨にのっとって、具体的にどういうふうにそれが実施され、どういうふうな成果をあげられたかということも年次報告に出ておりません。そこで沿振法の(国の施策)の大きな柱としてこの職業転換の問題を掲げられておると思うのですが、これを具体的にどういうふうに実現していかれる構想があるのか。いまのような職業訓練あるいは職業紹介の状況では、沿岸漁村という地理的な条件その他の特殊の環境を考えた場合には、なかなか私はこれは成果はあがらぬと思うのです。その点でこの第十号を生かしていって、ほんとうに安心して職業転換ができるという体制をつくり上げるための具体的な方策というものをお持ちであるならばお伺いしたいわけです。
  175. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局から御答弁申し上げます。
  176. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この件につきましては、午前中もお答え申し上げた次第でございますが、これは水産庁だけではなかなかできにくい仕事でございます。やはり関係の労働省とも十分連絡をとりながら職業転換の道を開いていく、こういう努力を払わなければいけないと思っております。まあそういうことで、労働省とも連絡をとっておりますが、労働省といたしましては、やはりその公共職業安定所というもの、これは全国にやはり四百五十カ所、州県約十カ所平均になっておりますが、そういうものを拡充して、そこでそういったあっせんにつとめると、そういうことでございますが、職安いわゆる職業安定所から非常に遠隔な地域があります。これは漁村や山村等に非常に多いと思いますが、そういうところも求職者のためということで職業安定協力員、これは全国で、いま拡充いたして、約二千人程度の職業安定協力員というものを設置してございますが、そういう遠隔の地に、職安から離れたへんぴな土地におきまする求職者の利便をはかるために、そういった協力員をさらに活動を強化して、そういうへんぴなところの求職者の利便をはかる、こういうふうに考えられております。われわれとしましても、そういう一環としてこの水産関係の求職者が他産業に転業する場合、あっせんにつとめたいということを考えておるわけであります。その際、やはり職業訓練というものが必要であろうと思います。職業訓練所につきましては、現在累計は三百カ所ほど設立されておりますが、そういうところに、やはり希望する職種によりまして必要な技能を与えるといった事前の訓練をいたしまして、そして転換の道を開いていくし、また安定した転換先をあっせんする、こういうことをいたしております。そういう面で、われわれのほうでも午前中お答え申し上げましたが、就業構造改善対策委員会といったもの、これは職安の幹部の方も入ってもらっておりますし、また漁協その他漁村の実態をよく承知している漁村側の人にも出てもらって、そこでよく労働の市場の状況、あるいは希望する側の漁村の状況もよく話し合って、実態に即するような職業紹介なり職業訓練が行なわれるように、意思疎通なり打ち合わせの場、そういう点で漁村からの転職について十分漁村の意思が反映されるような職業安定の運営なり、協議会の運営なり、あるいは訓練所の運営等に意向を述べるというシステムをとっております。御指摘のように、こういう問題はなかなか困難な問題でありますが、今後ともそういう点に力をいたしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  177. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、私は今度は大臣からお答えをいただきたいのですが、もう少し前進した考え方ができないかと思うのです。というのは、御存じのように、石炭産業労働者の問題について、いろいろな職業あっせんの、あるいは職業訓練のための施策が講ぜられております。それを見ると、失業保険の期間は失業保険をもらう。失業保険の期間が切れたら一日四百五十円、三年間は支給をしてくれる、失業保険の期間を合わせて。それからさらに職業訓練を受ける場合に、職業訓練手当というものも出される。それから職業訓練を受けて一年以内に就職をすれば、就職手当というものが七十五日分もらえる。一年以上、一年半以内に就職すれば五十日分もらえる。一年半以上の場合には、三十五日分もらえる。なお遠隔の地に就職して住宅が要るという場合には、住宅資金の貸与がなされる。さらにその遠隔地に行くための移住手当といいますか、そういうものも出る。こういうような方策が講ぜられておるわけです。ところが、今日沿岸漁民の問題、あるいは沿岸漁民でなしにさらに農業の問題を考えても、農業基本法の中でも、いわゆる農民を、過剰な農民の人口を削減するために職業転換ということを言っておったと記憶しておりますが、漁民にしても、農民にしても、農業なりあるいは漁業をやめていこうというのは、いわばこの石炭産業労働者と同じように、職から離れていくと同じことなのです。そうすれば、農漁民に対してそれぐらいな施策をやっていく腹がなければ、なかなか沿岸漁民を他に転業させようといっても、口では言えますが、実際問題としてできにくい。農業の場合でも同様だと思うのです。そういう点についてお考えになる御意思はありませんか。
  178. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 石炭労働者とは相当違うところもあろうと思います。雇用の安定ということは、もちろん考えなくちゃいけませんが、石炭労働者と同じように扱っていいものかどうかということにつきましては、さらに検討の必要があろうと思います。雇用の安定という面につきましては、一そう力を尽くしていきたいと考えます。
  179. 矢山有作

    矢山有作君 ぼくは変わったところがあるとは思わないのです。たとえばそういう労働者が今までおった職をやめて他に転業していく。農民や漁民がいままで職業としておった農業漁業を離れて他に転職していく。これは条件は全く同じなのです。そこまで問題を考えていかなかったら、第三条七号でこういうことをうたっていても、私は円滑な実施は考えられないと思う。私は昨年、ちょっとヨーロッパのほうに行ったときに、一つフランスの制度を見て、これはわれわれから言わせれば、いろいろ問題がありますが、あそこでは離農を促進するのにどういうことをやっているかというと、土地改良会社というものをつくって、そこが老齢者として農業や何かできなくなった人の土地を買い上げ、あるいはまた、若い人でどこかに農業をやめて転業したいという人に対しては、今度、職業訓練を国が責任をもってやって、その間の生活は保障する、そして、その人の土地や住居等は、その土地改良会社が全部の責任をもって買い上げる。そうして、農業専業でやろうとする人たちに対してそれを売り渡す、こういうことをやっています。このやり方には、日本ですぐこれを適用するということは問題があると思います。というのは、日本では雇用制度が不完全である、社会保障が不完全であるから問題はあると思いますけれども、そういう面を補完をしていきながら、なおかつ、こうした転業という問題をやろうとするならば、幾ら内輪に見ても、石炭産業労働者などにとられたくない政策は打ち出していかぬと私は不可能だと思う。そういう点で頭から大臣が、これはむずかしいからちょっとできそうにない、そういうようなあまり弱腰にならず、ひとつ強気でこの問題を検討していただきたいと思うのですがね。
  180. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 一つの御意見でございますけれども、私は違うという意味は、石炭産業の方だと、石炭産業に帰れない、背水の陣でどうしてもこれはほかに行くために保護していかなければなりませんが、農漁業等につきましては、農漁業に帰れないという者ばかりではないと思います。帰ってもいい者でも、外へ出たら収入が多い、収入がいいという面もいろいろありますので、そういう事情はよほど検討しませんと、石炭と同じようにやっていくことは悪いことではないけれども、現実に実行に移すという点についても、なお、相当検討してみなくては、実行に移し得ないと、こう考えておるものですから、さっき答弁申し上げたような次第でございます。
  181. 矢山有作

    矢山有作君 これは私は、そういう考え方では、いわゆる日本の農業にしてもu、沿岸漁業にしても、現在の規模で拡大して生産をあげて、他産業従事者並みの所得を保障するということは私はやれないと思う。というのは、いまの状態では、社会保障の面、雇用政策の面が不完全な点もありますが、同時に職業訓練や職業紹介の点でいろいろな不完全な点があるから、それで農民にしたところで、社会保障的な意味で、土地を持っていて出ていくという形になるわけですね。沿岸漁民でもそういうような事情だろうと思う。そうしますと、そのことを踏まえてものをお考えになるのでしたら、これはもっと突っ込んで言えば、景気が悪くなっていけなくなったら、また農業に、あるいは漁業に逆流していってもいいのだという考え方につながると思う。それではいままでの農業政策、漁業政策と同じように農民を踏み台にして、そうして一部の資本の金もうけの手助けをするという政策から一歩も出てこぬと思う。私はそういうふうに判断する。離村をしたり、漁業から離れて他に転換をしていくという人には、それができ得るような態勢というものをつくって、そうしなければこれはどうにもならぬわけです。だから、この問題はいまの大臣の御答弁ではこれは私はいけないと思う、もう少し前向きで考えなければ。
  182. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) それは雇用面、訓練面、そういう面はぐっと前向きに考えてやっていくべきだと思います。また、いきたいと思います。ただフランスの例なんかを御引用なさいましたけれども、フランスの例だと、買い上げてしまう。買い上げてしまうから、もうもとに戻さぬという形でやるから、そういうあとの政策も続いてできてくると思いますが、そういう前提のものができないのに、初めから外へ行くものには、訓練期間も、その他就業期間にも手当を出していくことのほうが、そのほうが先走ることはむずかしい。こういう意味におきましてもちろん前向きで検討いたしますけれども、前提が石炭山が閉鎖した、あるいはまたフランスの例だと土地は買い上げてしまった、こういう前提の上に立ってならば非常にいい、またそうすべきだと思います。しかし、これは非常に一つのいい御意見でございます。前向きで検討したいと思います。
  183. 矢山有作

    矢山有作君 いい御意見とほめられたが、しかしこれは誤解があったらいけないと思うので、もう一ぺん申し上げる。フランスの例をとりましたが、日本ですぐそれをやろうといったって、これはなかなかできません。それをおっしゃるような前提としての社会保障とか、あるいは雇用政策の確立がなければだめなんですから、これを踏まえて、それを完備しながら、一方では離職をしていきたいという希望者に対しては、離職ができやすいような、先ほど言いましたような職業訓練を受ける場合の手当あるいは離職をして出ていく場合の手当、こういうものも考えていいんじゃないか、というふうな意味で申し上げたわけです。したがって、前提条件を抜きに話をしているわけじゃない。社会保障の充実だとかあるいは雇用政策の確立だとかという前提条件は、これはもう政府全体として真剣に考えなければならぬ問題だと思います。これは私は農林大臣だけの問題でなしに、池田さんを中心にして真剣にこの問題を検討しなければいけない。だがそれをやっていただくと同時に、私は第三条の七号というものを実現していくために、ひとつ職業訓練、その他については、石炭産業労働者に対してとられたような方策を、前向きで検討されませんかということを申し上げた。
  184. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 関連してお伺いしますが、抽象的では非常にあれですから、いまの問題を私具体的な問題に直してお伺いをしたいのですが、というのは、農林省で号の実態を把握した結論として、開拓農家の中で第三類に分類をした農家は、農家としては成り立たないという結論を下して、そうして全国で約二万六千戸をこえる開拓農家は、自分らの努力をもってしてはいかんともしがたい、開拓農家としてはうちを捨て、村を捨てて離脱をしなけれてならぬという実態に置かれているわけです。ところが、彼らには組織的な力も弱く、その問題を訴えるすべも弱いために、炭鉱労働者のような反映なしに、わずか三十九年度予算では四十五かという離農手当で挙家、離村をしなければならぬ。そういう運命は、私は石炭産業の斜陽的な方向によるところの問題とその社会的な性格というものは同じだと思うのです。だとするならば、こういう開拓農家で、すでに政府によって分類されて開拓農家としては落第という判を押された二万数千戸に及ぶこういう農家には前例があるのですから、石炭労務者と同じような措置をとることが、これは政治の公平なあり方じゃないか。こういう点を前向きにお考えになれば具体的に石炭労務者の場合と当てはめて同じようないろいろな施策というものをおとりになる、そういう内容で前向きにお考えになるのか、そういう点を具体的な事例としてお伺いしたい。
  185. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 開拓農民で離農する者に離農資金で四十五万円を出すということにことしなっているのは、御指摘のとおりでございます。これは石炭産業の場合のような手厚いといいますか、そういうことにはなっていませんが、一つのステップだと思います。そういう方向への、ですからいろいろな面から検討してみたいと思います。
  186. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃひとつ大臣のおっしゃったことを、私どもは信用いたしますので、来年の通常国会ぐらいまでには、ぜひ重要な柱として掲げられておる漁民の職業転換ということが、漁民の犠牲において行なわれるのでなしに、円滑にいくような、いま申し上げたような制度等も真剣に御検討いただきたいと思います。  それから最後に、もう一つお伺いしたいと思いますのは、魚価の安定対策の問題なんです。これは沿岸漁業等振興法案の審議のときにも、私どもは魚価安定対策をどうするのかと、その対策というものを明確に打ち出してほしいということを強く主張してまいったんですが、それがいれられなかったわけです。そこで魚価の安定対策というものを具体的にどういうふうに考えられておるのか、特に多獲性大衆魚といいますか、その場合に価格変動が激しいだけにその必要があると思うのですが、それについていままで行なわれておる制度は、魚価安定基金法なり、それから漁業生産調整組合法、この二法があって、サンマについてはいささか手が打たれておるようです。しかしながら、それ以外においては何らの手も打たれておりませんし、またサンマに対して打たれておる施策にしても、不十分な点があるのじゃないかと思うのですが、この魚価安定対策というものを、具体的に今後どうなさっていくおつもりであるかということをひとつ伺いたいと思います。
  187. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま御指摘のような面を強化していきたいと思うのでございますが、加工の設備を拡大する、あるいは加工の面を広げる、あるいは貯蔵、これは産地及び陸揚げ地及び消費地、両方でございますが、そういうところの貯蔵、あるいは冷凍の設備、あるいはまた流通対策として、ことしの予算では金でできた何といいますか、何回も使えるようなものをまあ流通対策なんかの一助にしております。従来やっているようなものを強化するということでいきたいと、こう考えております。
  188. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、それでは私は魚価の安定対策、特に多獲性大衆魚の安定対策にはきわめて不十分だと思うのです。これは私の調べ間違いがあるかもしれませんから、もし間違っておったら、それを御指摘いただいて御説明をいただけばいいのですが、いまサンマに対して対策がとられておりますね、その場合のサンマの価格が十一円を割ったときにその施策が動いているようです。その場合に、十一円という価格はどういうところからはじき出されたのかということを、ひとつこれは専門の長官のほうからお伺いしたいと思う。
  189. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 魚価対策でございますが、いま無価対策としてとっておりますのは、いわゆる生産調整とそれから調整保管、こういう二つの道をとっております。それでサンマについては、御承知のように、非常に漁、不漁が不安定でございまして、また価格も変動しやすいということで、生産調整とそれからいわゆる調整保管による価格の安定、こういうことをやっております。なおそのほかに、イカなんかについても、やはり調整保管の道が講ぜられておりますけれども、幸いにして魚価が非常に強気で動いておりますので、発動はいたしておりません。  なお、生産調整の問題といたしましては、まき網等についても、やはり生産調整をやっているのはまき網三つ、そのほか二つということで、五組合について先産調整をやって、やはり、これは自主的な運営でございますので、調整組合で操業量とか、あるいは操業期間を短縮するとか、そういった調整をしながら価格の安定維持、こういうことをやっております。  なお、サンマの調整保管をやります場合におきまして、調整保管をする対象といたしまする分につきましては、サンマキロ当たり十一円以上というところで買いまして、そうしてそれを加工業者が魚かすにして、それを保管いたします場合に保管料といたしまして安定基金のほうから調整保管の費用を出す。こういう形でございますが、キロ十一円というのは大体採算ベースと、こういうふうに承知いたしております。
  190. 矢山有作

    矢山有作君 その採算ベースとおっしゃるのですが、それを割り出した基礎というのは、どういうところからこれを割り出されたのですか。
  191. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) まあサンマの棒受け網でございますが、それの船の大きさ等も勘案いたしまして、それの操業をいたしまして、そういう場合にキロ十一円以上ならば大体操業も採算が合う、こういうことで十一円ということを支持価格と、こういうふうに承知いたしております。
  192. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、いまの御答弁では、私はまだはっきりせぬところがあると思うのです。というのは、サンマ漁にしたところで、いろいろと経営の規模その他複雑でしょうから、十一円というものをはじき出した算定の基礎というものがあるはずですから、これはひとつ資料として出していただいて、それがはたして適当なものなのかどうかということを、私どもは魚価安定対策の中で今後も論議していきたいと思います。  それから、先ほどイカの価格はいまわりあい強気で動いておるので、これについてはやっておらぬと、こういうことですが、イカについて漁業生産調整組合ができておりますか。
  193. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 八戸の漁業協同組合が、生産調整組合として設立されて、予算も一応計上してございますが、現在は発動しないで推移しておる、こういう状態でございます。
  194. 矢山有作

    矢山有作君 その他の地区にはできておらないわけですね。
  195. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 現在のところは八戸だけでございますが、まあこれにつきましては、現実的な問題として、そういう面の必要なりあるいはそういう態勢がはたして適当かどうかということが問題でございます。まだ態勢も整わないところがあろうかと思います。というのは、やはりこれは組合員一同が一斉に休業するとか、あるいは操業を停止するとかというようなことでございまして、これはやはり一斉にやらないと効果が出ないし、またこれをもぐってやるというようなことでは、法の秩序がくずされる。そういった生産調整の組合の態勢というものもわれわれは熟知いたしておりますけれども、そういう点にはまだ達していないという面もございます。また、イカについては、現在そういった面で、発動しないで価格が安定している、上昇傾向にあろう、そういう面もあろうかと思います。
  196. 矢山有作

    矢山有作君 イカについて生産調整組合ができないというのには、どういう原因があるのですか。私が聞いておるところでは、イカ漁の漁民は非常に零細な人が寄り合ってこの調整組合をつくって、そうして安定基金制度の適用を受けるということが非常に困難な面があるのだ、こういうようなことを聞いておるわけなんですが、その辺のいきさつはどうなんですか。
  197. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) いま御指摘になった面も非常に大きな原因だと存じます。
  198. 矢山有作

    矢山有作君 そうした場合に私は問題になるのは、魚価の安定基金の状況を見ますと、大体基金は国が半額ということになっておるようですね。したがって、この基金というものを零細な漁民なんですから、もっと国の負担分をふやすということによって、なんとか零細なそのイカ漁の方々にしても、調整組合をつくられるという方向にもっていくことができませんか。
  199. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) サンマの魚価安定基金法によりますと、サンマの分についていま動いているのは、一億六千万円程度ですが、国が二分の一、道府県が四分の一、関係組合が四分の一、こういうことで動いております。サンマなりイカについてこれの魚族対象なり組合対象がふえてくれば、そういう問題が起ころうかと思います。  なお魚価安定というのは、相当むずかしい問題でございまして、やはりイカとかサンマとか、その他多獲性の大衆的にとれますものとしては、アジ、サバもございます。アジ、サバも魚価が最近非常に強気になっておりますが、そういう総合面からもわれわれも十分検討しないと、ただ一部だけではいけない。われわれとしても今後の問題としてアジ、サバあるいはイカ、サンマ、そういった点は検討しなければならない、こういうふうに考えております。
  200. 矢山有作

    矢山有作君 魚価安定の問題について現在行なわれておるこの安定制度では、私は十分な効果があがらない場合が多いのだということを聞いておりますが、時間がありませんので、それをくどくどやっておりますと次が進みませんから、ひとつお伺いしたいのですが、昨年の沿振法の審議のときにも、私は重政大臣にこういうことを申し上げたはずなんです。たとえば英国においてはニシン企業法というものがあって、最低価格を設けて、それ以下にニシンの価格が下がったときには、直接買い上げを行なって、政府が直営のフィッシュ・ミール工場で加工する、そういうようなことによってそうしたニシンの多獲性大衆魚といいますか、それの価格をささえているのだ、こういう例をあげ、さらにオランダ、ノールウェー、スウェーデン、西独それぞれにこういった魚価価格安定対策があるということを申し上げまして、だから日本でもひとつ非常に価格変動の激しい多獲性の大衆魚の価格を安定させていく、その場合非常な零細漁民という立場を考えて、価格を安定さしていく、そのためにはそうした諸外国の例もあるのだから、ひとつこれを取り入れて検討してはどうですかという話をしたわけです。そうしたところが、そのときの重政農林大臣答弁は、こういうふうになっております。「ところが、さらに一歩進めて、需給のバランスをとって、余ったときには政府直営の魚肥工場でも持って行くところまで進むべきではないかというような御意見のように受け取ったわけでありますが、だんだんには、そういうことにならざるを得ぬと私は考えております。」こうおっしゃっているわけです。「現在のところでは、こういうことも実は考えておるわけであります。サンマが非常に豊漁で出回りまして、これが非常に安くなるというようなことは、漁民にとってたえがたい苦痛でありますので、従来とも、これの生産の調整、出荷の調整というようなことを実行をいたしておりますが、なかなかこれはむずかしい。そこで場合によれば、その方面に母船を出して、そうして母船で搾油をやるというようなことを考えてはどうかというようなことで、今検討しておるようなわけであります。」こういう御答弁があったわけです。そうするとですね、重政農林大臣は、直接政府が買い上げをやってですね、そうして価格の安定をやろうとする意欲は、私はある程度持たれておったように思うのです。当面の対策としては、いま言いましたような母船で、サンマを買い上げて搾油をやる、そういうようなことも具体的におっしゃっておるわけです。そうすると、そういうような大臣答弁を路んまえて今度の施策というものをお考えになっておりますか。私はこの三十九年度において講じようとする施策というものを見たときには、そういう重政大臣考えておられたようなことは盛り込まれておらないような気がするのですが、その点はいかがですか。
  201. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 当時サンマの問題といたしましては、三十七年度相当問題がありましたわけでございます。そういうサンマについて、非常に魚況、海況によりまして不安定でございまして、また魚期が相当集中しておりまして、水揚げ港も集中して上がってくる、そういう問題がありまして、また三十七年度の豊漁といった面もありまして、われわれといたしましても、重政大臣当時、ミール工船を回すといった点は十分検討いたしまして、これはやはり北洋のミール工船が一隻休業しておりましたわけですが、それをその方向に回してみたらどうか、そういうようなことは検討いたしたわけでございますが、なかなかサンマだけでは採算も合いにくいということで、企業採算ベースでやらなければならないということで、そういう点で実現はできなかったわけですが、相当努力をいたした次第でございます。それで、その代案というわけではございませんが、陸上におきましては、いわゆるサンマ魚かすの共同製造施設、魚かす製造施設というものを国で補助し、また魚かすをつくりますときに、しぼって出ます魚油については、貯蔵施設を保有させる。それを三十八年度からも講じておりますが、それをさらに三十九年度も強化する。一面、やはり魚かすばかりではなしに、共同加工施設として、共同乾燥施設なり、あるいはカマボコ等の原料になります冷凍すりみ魚肉の製造施設をつくる、そういったことを、三十九年度で共同加工施設としてつくるという道を開いてまいろうと考えている次第でございます。  なお、その価格の安定ということは、直接価格支持対策で操作するという面もなかなかむずかしい問題もございますし、一面そういう面の対策としては、先ほど大臣お話になりましたような冷蔵庫、あるいは冷蔵運搬車、冷蔵運搬船、あるいは消費地においてもそういうものを貯蔵して、魚価の安定に資する、そういった冷蔵庫なり、あるいは冷蔵貨車については国鉄と相談をしまして、冷蔵車を三十九年度では相当車両つくるという話も進んでおると思いますが、そういういろいろな施策を講じて、やはり魚価安定に資さなければならない、こういう運営を考えております。
  202. 矢山有作

    矢山有作君 もう終わりにしたいと思うのですが、私は直接魚価安定対策のために有効な手段を政府が責任をもってやろうと思えば、よその国でやれることなんですからやれぬことはないと思うのです。ただ問題は、漁民なり、また農業の場合でもそうですが、農民なり——漁業なり農業なり、そういったものをどうしようかという腹がまえの問題だと思うのです。まあ、高度経済成長の中なら漁業が犠牲になってもやむを得ぬとか、あるいは農業が犠牲になってもやむを得ぬとか、そういう考え方が基本的に支配しておるような状態では、そういう英国で行なわれておるような、直接的な効果のある価格安定施策というものは、あなたがおっしゃるとおりなかなかむずかしうございますと、こういうことになるわけです。しかしながら、真剣に漁民の生活の安定をはかり、さらに沿振法にいうように所得格差を他産業との間で縮小し、さらには解消していこうというのなら、そこまでの前向きの施策が打ち出されてきてもいいのじゃないかと思うのです。したがって、こういう問題は真剣にひとつ御検討いただきたいと思う。この点については大臣のほうから御答弁をお願いしたいと思います。
  203. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 価格対策等を通じての問題でございますが、やはりその根本的には農、山、漁村をどうするかというたてまえに立って方策といいますかを立てろという御意見だと思います。その点につきましては御同感でございます。いろいろ各方面との関係もあります。各方面とは各省ということではございません。物価問題なら物価問題として各方面との関係もあります。農産物の関係もあります。検討をしてみたいと思います。
  204. 矢山有作

    矢山有作君 各方面、各省との関連もございましょうが、ひとつ沿岸漁民、中小漁民にとって非常に重大な問題である魚価の安定対策というものは、重政大臣が言われたように、政府の責任においてこれを安定させるという方向でぜひ御検討いただきたいと思います。そうしませんと、いまある魚価安定基金法や、あるいは漁業生産調整組合法でやっていくだけでは効果があがらないし、まして先ほど私がサンマの例で申しました、最低価格十一円というのが、はたして漁民にとってこれが引き合うものなのかどうかという点は、そちらのほうで今度資料を出していただかなければなりませんが、もし引き合わない低い価格できめられておって、いま行なわれておる安定対策でしのいでいこうというのであれば、これは大資本がその安い価格でサンマを買い占める、彼らは冷蔵庫も持っている、工場も持っているのでありますから、そういうしわ寄せを受けるのは、サンマ漁民だけだということになってしまうのです。だからその点は、これらありますので、ひとつ真剣にそちらで御検討願いたいと思います。  そのほかまだ聞きたいことは次々ときりのないほどあるわけでありますが、約束が五時までということでありますので、私も約束を守りまして、これで質問は終わらしていただきますが、しかし、そのほかにもいろいろと、ある部分については、これはさらに漁災法の審議、またその他の機会を求めてひとつ質問をさしていただきたいと思いますので、その点は御了解をいただいておきたいと思います。以上。
  205. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それでは、本日はこれをもって散会いたします。   午後五時十九分散会      —————・—————