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政府委員(庄野五一郎君) 昭和三十八年度の漁業の
動向等に関する
年次報告につきましては、昨日参議院本会議におきまして、
農林大臣よりその大綱について説明があった次第でございます。なお、御要求によりまして、私から補足いたしまして説明いたしたいと存じます。
御承知のとおり、昨年
沿岸漁業等振興法が成立いたしまして、その第七条によりまして、政府は漁業の
動向等に関する報告を、これは
漁業動向と、それから訓じました施策、これから講じようとする施策、こういう三部になっておりますが、その報告をすることになっておりますので、それに基づきまして今回第一回の
漁業動向等に関する報告を提出した次第でございます。何ぶん初めての報告でございまして、過去におきまする統計の
不足等もございまして、そういう制約から、なお不十分な点もあろうかと存じますけれども、この点御容赦願って、今後とも
統計資料の整備その他に努力いたしまして、よりよき報告をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。この漁業の
動向等に関する
年次報告は、いま申しましたように、三十八年度を中心にいたしております。それで
漁業動向は、三十二年から三十七年までの
漁業動向を取りまとめた次第でございますし、また講じました施策は、三十七年度を中心といたしまして、戦後におきまする制度の状況、それから講じました
施策等に触れつつ、三十七年度を中心として、さらに三十八年度におきまして講じております施策を報告いたしております。講じようとする施策は、三十九年度の予算を中心にいたしまして、これから講じようとする施策の概要を記述いたした次第でございます。
まず、漁業の動向に関しまする
年次報告について御説明をいたしたいと思います。お手元に配付してございますが、漁業の
動向等に関する
年次報告という文書と、それから、それの要旨を書きました資料が配付いたしてございますので、本書のほうをお開き願って、その図表、あるいは
統計資料をまとめました表等について御説明いたしたいと思います。
漁業動向の
年次報告は、第一部が総論的に日本の
水産業の全体の動向を把握いたしまして、それの概要を説明いたしまして、そして第二部で、
沿岸漁業等について詳細な報告をいたしたわけでございます。
沿岸漁業等振興法に基づきますので、
沿岸漁業と
中小漁業というものに焦点を当てて、各論的に詳述いたしたわけでございます。
第一章の総論的なものといたしましては、
国民経済の成長と漁業がどういう関係にあったかということを記述いたしております。これは三十二年以降におきまする一般の経済的な成長というものの中におきまする漁業の
発展状況を響いたわけでございますが、この総論的に書いてございます中に、
鉱工業の
生産指数、これは
産業総合でございますが、それは三十二年以降、年率にいたしまして一四%の大きな成長を示しておりますし、国内の
実質国民所得の伸びも大体二%になっております。その中におきまして漁業の総
生産量、これは三十七年度が六百八十六万トン、これは鯨を除いております。
海面漁業及び内水面の漁業総
生産量でございますが、六百八十六万トンという総
生産量を示しておりまして、その三十二年からの年率の伸びは五%ということになっております。
鉱工業の一四%の伸びに比べますと、はるかに低うございますが、漁業の実質的な
国民所得というものは、年率九%伸びております。国内の実質総
国民所得の伸びが一一%で、漁業が九%の伸びということになっております。そういう点で、漁業の生産の伸びというものは、
国民経済の中におきましてこういう地位を持って、低いとはいいながら、順調な伸びを示している、こういうことになっております。
それから
水産物の需要の動向というものは、
国民経済の堅実な成長にささえられまして、また輸出も非常に伸びている、こういった点で非常に需要が旺盛であったということで、
生産者価格も非常に堅調に推移している、こういうふうに考えております。この需要も、
国民生活の発展に伴いまして
国民所得が伸びる、
生活様式が
高度化していく、そういうようなことで、
消費形態も非常に変わってきているということも言えると思います。
水産物に対する国民の需要というものは、
生鮮食料としてこれを消費するというよりは、
加工品として消費するという形態を示しておりますし、
加工品も低
次加工——これは
塩干物といったような加工、それが
かん詰め、
びん詰めハム、ソーセージといったような高次の加工に移っているということも言えますし、また、
生鮮食料の需要の中におきましても、
高級魚のタイとかヒラメとか
マグロとか、そういった
高級魚に対する一般のアジ、サバといったような大衆的な多獲性魚からそういう
高級魚に需要が移っている、こういったことが言えると思います。
また、漁業におきまする就業の状態も、
国民経済の発展に伴いまして、相当に他産業のほうに流出している、こういうようなことが言えると思います。そしてまた、流出の中心が若干
労働力を中心として他産業に移っている、こういうことが言えると思います。そういう点から
就業事情が非常に変化しておりますし、一部の漁業、特に
中小漁業といった面におきまして、
労働不足といったような面が出ておりますし、従来の経営なり、技術なり、あるいは労働の管理といったような面に大きな変化を生じつつあるということでございまして、また、これが農業でも言われますように、
沿岸漁業の
構造改善の一つの契機になっている、この契機をとらえて
生産性の向上につとめなければならぬということが言えると思います。そういうことが書いてございます。
その中で
漁業生産と
生産手段の動向がどうなっておるかということが書いてございます。
漁業生産の動向は、総
漁獲量が非常に伸びているということが書いてございます。これは四ページの表のIの1の「
漁業生産量の推移」というところに、
海面漁業が六百七十六万トン、これは内水面が十万トンございますので、総生産重六百八十六万トンのうち六百七十六万トンが
海面漁業の
生産量でございますが、その中で
沿岸漁業と
中小漁業とその他の漁業と、こういうふうに分けてございます。その他の漁業というのが、いわゆる大
資本漁業の
遠洋漁業を中心といたしたものでございまして、そういった
沿岸漁業、
中小漁業、それから大
資本漁業による
遠洋漁業、こういうふうに分け得ると思いますが、その中でも、
沿岸漁業が三十四年ごろまでは
停滞ぎみであった、三十五年ごろから伸び出して、三十七年度においては、前年比七%で伸びている、あるいは
中小漁業が順調に伸びて、前年比一二七%、それから、その他の
遠洋漁業というものは、三十二年が一〇〇でございます。前年比は間違いで三十二年対比でございますが、三十二年対比で二四〇で、二倍半に近い伸びを示しておる、こういうことが言えると思います。内
水面漁業も
停滞ぎみでございますが、三十二年と比べますと、約一〇九%に伸びておる。こういうように
生産量が順調に、それぞれにおいて格差はございますが、伸びておるということが言えます。
それから
生産金額も、三十七年度で総
生産額は四千五百三十二億八千五百万円ということになっておりまして、その中におきまする構成の
ウエートは、
沿岸漁業が四一%、
中小漁業が四七%、大資本によります漁業が一二%というような
構成比になっております。三十五年、三十六年、三十七年というふうに、
沿岸漁業の
ウエートが少なくなって、
中小漁業なり
国際漁業の
ウエートがだんだん高まりつつあるということが言えると思いますが、四千二百六十四億円といったような、順調な伸びを示しております。
それから五ページの表が、いわゆる漁業の、
海面漁業におきまする総
生産量の中におきまする
沿岸漁業なり
中小漁業なり、その他の国際的な大
資本漁業の
ウエートの変遷を示した図表でございます。ここで御注意願いたいのは、
沿岸漁業が三十二年は全体の中で四一%の
ウエートを占めておったのでありますが、三十七年には三四%生産が伸びておりますが、全体の中に占める
ウエートは、
沿岸漁業の
ウエートが低下しておるということが言えると思います。図のIの1でございます。
それから「
魚種別構成の
多様化」ということが次に書いてございますが、日本は諸外国の
水産国と比べまして、非常に多種多様な魚種を生産しておるということが言えるわけでございます。その表は、表のIの3に「
魚種別構成の変化」というものを書いてございますが、
イワシとかニシンとかいったようなものが、三十七年になりまして非常に
ウエートが下がってきまして、サバとかアジとか
サンマ、カツオ、
マグロといったものの
ウエートが上がっておる、こういうことが言えると思います。
それから
生産手段の動向でございますが、これは漁船の
動力化が進展しておる。無
動力船が
動力化しておるということと一緒に、
動力化の傾向、
ディーゼル化が非常に進んでおるということが言えると思います。漁船の総数としては大体
横ばいでございますが、無
動力船が減って、
動力漁船が非常にふえておる。それから
小型漁船としては、一トンないし三トンの船が多少上がる傾向でございますし、一トン未満も
横ばい程度でございますが、三トンないし五トンも
横ばい程度、多少上がる傾向、こういうことが言えると思います。
それから機関の
ディーゼル化、その次の図表は、
焼き玉が減って、それから
蒸気機関というものが非常に減りまして、
ディーゼルエンジン化が非常に進んでおるということが言えると思います。
それから
生産手段といたしましては、漁具、
漁業用機器が
近代化し、また非常に機械化しておるということが言えると思います。
また、漁船の
大型化の問題といたしましても、二百トン以上が非常にふえておるということと、五トン二十トン、十トン——二十トンの漁船が減りつつある。三十七年、多少
上昇傾向でございますが、大体
小型漁船が減っておる。二十トン——五十トンは多少ふえておるということが言えると思います。
それから漁船の機械も、いままでは
綿網等が中心でございましたが、
合成繊維というものが非常に導入されてきておるということと、それから電探とか、あるいは無線とか、あるいはその他の機械、レーダーとかロラン、そういうものが非常に導入されて
近代化されつつあるということが言えると思います。また二面漁業の
生産基盤となりまする漁港の整備も、第一次、第二次計画、さらに昨年から第三次
整備計画で
相当整備が進んできた。これは漁船の
大型化あるいは
近代化等に資するとともに、
生産物を水揚げして
経済面に結びつける接着点としての非常な効果をあげておる。なお今後とも漁港の整備は必要であろうということが書いてございます。
それから内
水面漁業の生産の動向といたしましては、
停滞ぎみであったのが、最近の需要の旺盛にささえられて
上昇傾向をたどってきた。特に内水面におきますところの
養殖漁業というものが非常に伸長を遂げた、こういうことが書いてございます。
それから漁業の
就業構造の変化でございますが、これは次の表の一−六に書いてございますように、無動力から動力というふうに
階層分けにいたしております。
就業者全体が二十八年は七十九万人であったのが三十七年には六十六万七千人、年率一・九%の割合で減少している。五年間におきましては、約十二万程度が減少したわけでございますが、そういうふうに
国民経済の復興と成長に伴って、漁業におきまする
就業人口も他産業に移動しつつあるということが言えると思います。その中でも
家族就業者の減少よりもむしろ
雇用者の減少が大きい、こういうことが言えると思います。
それから
労働力の
流出流入の状況といたしまして、
新規学卒者の動向を掲げてございますが、
新規学卒者の流出といいますか、あるいは他産業へ移るということが非常に顕著に目立ってきておる。それから流出の状況といたしましても、
就職離村といった面が離職して帰村するということよりも非常に上回っておる。それから出かせぎ離村というものは、非常に
減少傾向にありまして、
就職離村というものが
離村人口一万人について九十七人から百六十五人に大幅に増加しておる、こういった傾向を書いてございます。
それから
新規学卒者につきましては、やはり
中学校卒というものが非常に大きな割合で漁村から他産業へ流れておる、こういうことでございます。
それから
就業者の年齢の
高齢化、これは農業と同様にやはり漁業におきましても、
若年労働者といったようなものが他産業に移りやすいということがございますし、そういう面で漁業全体といたしまして
壮年化、老齢化しつつある。特に
沿岸漁業なり
養殖漁業といった面につきましては、機械の発展、あるいは
近代化等にささえられて、やはり高年齢の
就業者が就業し得る道も開かれておる。そういうふうな傾向で
年齢層が全体として
高齢化しつつあるということが言えると思いますし、また
養殖漁業におきましても、女子の
就業者がふえてきておると思います。
それから
漁業経営の構成の変化を次に掲げてございますが、これは表の一−八というところにございます。二十八年には、沿岸なりそれ以外のものが二十五万一千七百四十七
経営体でございましたが、三十七年には二十二万七千
経営体というふうに年率二・八%減少している、こういうことが言えると思います。なお図表にもありますように、
沿岸漁業の
経営数の
年次別の変化としては、
浅海養殖、三トン以上五トン未満の
経営層、三トン未満の
経営層というものが非常にふえております。五トン以上十トン
未満層なり、定置網、地びき網、これの
沿岸漁業、それから無
動力船に依存している漁業が大幅に減っておる、こういうような図表になっております。
それから
沿岸漁業の
経営構成の変化といたしましては、
家族集約経営に非常に移行しつつあるということが言えると思います。それはいわゆる
雇用就業者が非常に獲得が困難であってむしろ流出していく。そういうふうな面から
家族労働に依存するということで、三トン——五トン未満、三トン未満といったような
経営層がふえておるわけでありまして、いわゆる
家族労働の
完全燃焼というものをねらいにしているわけでございますが、漁船の
ディーゼル化なりあるいは
省力化の傾向から、そういう
家族労働を
完全燃焼してこの中で経営をはかっていく。
雇用労働力の確保の困難、あるいは
雇用労賃の非常な
上昇傾向というものと見合って、いわゆる三トン前後の
経営層を中心にいたしました
家族労働依存の経営が、今後伸びていく
可能性が非常に見えているわけであります。そういう面からこういう面の
近代化あるいは
省力化というものを考え、
欧米先進国のように四、五十トンでも四、五人の
家族労働で
十分生産性の高い経営をやっていく、そういう方向に指導すべきであろう、こういうふうに考えているわけであります。
それから
沿岸漁業以外の
経営数の
年次別変化といたしましては、これは大
資本漁業による分が多いと思いますが、二百トン以上の
経営層が非常に急激に上昇いたしておりますが、百トンから二百トンは
下降傾向でございます。百トン未満の面も大体
下降傾向にあるということが言えると思います。これも図表で示してございます。
それから
組織別経営の動向というものがございますが、
漁業経営を組織している九七%までが大体
個人経営でございます。
会社経営は近代的な
企業経営として増加の傾向でございますが、まだまだその
増加傾向はそれほど顕著でございません。今後ともこの
会社経営による
近代的経営というものが伸びていく、こういうふうに考えます。それから
資本金が十億円以上という大資本的なものが七社ございますし、一億円以上のもので六社、五千万円以上のものが八社、
資本金五百万円以下というものが七四%、こういうふうになっております。
漁業協同組合なり
生産組合、あるいは
共同経営というようなものは
減少傾向でございますが、
構造改善のにない手として、やはり
漁業協同組合によりまする、いわゆる新しい意味におきまする
協業経営なり
協業組織というものの効果が、瀬戸内海を中心にして各地に見られるわけでありますし、沿岸の
漁船漁業でも、
集団操業なり漁船の
大型化、あるいは新しい漁法への転換という面で、今後も協業という面、いわゆる
協業経営、
協業組織によるこういったものを伸ばしていかなくちゃならぬと考えるわけでありますが、その効果が見えつつあるということが言えると思います。
それから
沿岸漁家の
兼業状況でございますが、大体先ほど申しましたような三トン未満前後を中心として
家族労働依存の
沿岸漁業が非常にふえつつある。こういうようなことで、
経営内容もそれは堅実であるというようなことで、大体漁業におきましては、
主業漁家というものが二十八年三十三年を比べますと、二十八年が五四%の
ウエートであったものが六四%にふえつつあるということが言えると思います。そのためにいわゆる第二種
兼業漁家というものが二八%も減少して、それぞれの
主業漁家に移向しつつあるということが言えると思います。それからその中でも
漁家所得に占める
兼業所得といった割合が、無
動力船層では五八%が六一%に増大している。あるいはそういう無
動力船層では、
兼業所得が非常に
ウエートが多いわけでありますが、三トン未満では大体
兼業所得が三五%前後であまり変更はございませんが、三トン以上十トン
未満層では、
兼業所得が二七%が二四に減るというふうに、
兼業所得が減っているということが言えると思います。それで
沿岸漁業の
漁船漁家の
兼業状況は、下層は
兼業化が進み、上層では
専業化が進んでいるということが言えるわけでございます。
それから次は
水産物の需要の動向でございますが、ここに表のI−13というところに
水産物の
需給表を掲げてございます。これは
国内生産で生産しましたものと
水産物の輸入いたしましたものを総
供給量といたしまして、それがどういうふうに需要に向けられたかという表でございまして、
輸出向けというものがふえつつあると先ほど申しましたが、
輸出向けが非常にふえているということと、国内のいわゆる非
食用向けの
えさ等に向けるものが、また最近におきまする酪農の振興なり養鶏の非常な発展ということで、えさの需要が非常に高まっているということが言えると思います。それから国内の
食料消費向けの需要というものも大体堅実に伸びているということを示してある表を掲げてございます。
魚介類、鯨肉、
海藻類、こういうふうに分けて書いてございますが、この
魚介類のうちの
利用配分というものについて、
利用配分の変化というものがやはり三十二年から三十七年にかけまして、そこに掲げてございます。三十七年では三九%が生鮮のまま食料及び
えさ等の消費に向けられ、四八%が
食用加工品原料、一三%が飼肥料の
加工原料に向けられている。これは図のI−11に掲げられておりますが、そういうものが最近の動向では、
生鮮食用向けはあまり伸びない、
えさ向けがやや増大しており、総体として
加工原料にいくものの増が非常に大きいということが言える。それからその中でも
食用加工向けでは
塩干魚向けというものは非常に停滞し、
練り製品とかかん詰、
びん詰めといったような高次の
加工品が非常に増大しているということが書いてあります。
その次は
産地価格の動向でございますが、これは表I−14に掲げてございますが、
魚種別に見ますと、
高級魚が非常に最近の
消費形態の
高度化ということにささえられて、産地でも大きい値上がりを示しておりますが、
イワシ、アジ、サバ、
サンマといったような多獲性魚というものは、これが時期的に生産が集中するとか、
水揚げ地にやはり集中するといったような傾向で、やはり非常に不安定でございますし、また
産地価格のほうも、
横ばいないしは
下降傾向のものを示している。これは消費においてもあまり伸びないというような面も反映いたしております。そういう
産地価格の動向を示しておるわけでございまして、それは表I−14に掲げてございます。
それから
水産物の
家計消費の動向ということで、
消費内容の
高度化と
消費者価格の動向ということで、先ほど申しましたように
生鮮食料として消費されるものは
停滞ぎみでございますが、その中でも
高級魚のほうは伸びて、大衆的な
イワシ、アジ、
サンマといった多獲性魚はより停滞しているということは甘えるわけでございますし、その傾向は
都市農村を通じて言えることでございますし、また加工は低
次加工の
塩干物から高次のびん、
かん詰め、あるいは
練り製品というものに非常に向けられつつあるということが言えると思います。そういうことを表I−15というところで掲げてございますし、また都市、農村における一人当たりの
魚介加工品の
家計消費量の推移というものも、表I−16に
年次別にその推移を掲げてございます。そういう意味で
消費者価格も
高級魚に対するものは非常に上がってきておりますが、多獲性の魚種というものが
停滞気味であるということが言えると思います。それから
魚介類に対する支出の比重の低下ということで、
国民経済の発展に伴いまして、国民のそれぞれの所得が増大いたしております。そういうことで
生活内容が
高度化しているわけでございまして、
エンゲル係数も下がるというようなことで、魚介に対する支出の比重は家計の中に占める
ウエートが下がってきつつあるということが言えるということを掲げてございます。それは表I−17というところに掲げてございます。
それから次に
水産物のえさ並びに
肥料需要の増加ということ、それから
水産物輸出の動向、これはいずれも先ほど申し上げましたように非常に強気で
上昇傾向にあるということが言えますし、
水産物の
輸出動向も図I−12というところに掲げてございますように、
漁業生産の約一〇%が輸出に向けられている。輸出は三十七年は千百二十六億ということで、日本の総
輸出額の六三%を占めているということが言えると思いますし、その次の表I−20で、
水産物論出の額の推移の中で、それぞれの
水産物輸出額で
冷凍水産物、あるいは水産のびん、
かん詰め、塩干
水産物あるいは真珠といったもののそれぞれの金額なり
ウエートを掲げてございます。
以上が大体水産に対する全体の比率でございまして、次が第二章の
沿岸漁業等の動向ということで、その第一章が
沿岸漁業の動向、第二章が
中小漁業の動向ということでございますが、まず
沿岸漁業の動向ということを御説明いたしたいと思います。
沿岸漁業の生産の動向ということを次に掲げてございますが、表II−1をごらんになりますと、
沿岸漁業の
生産量の推移ということで三十二年、二百十六万五千トンという総量が三十七年は二百二十九万七千トンということで七%の伸びになっております。
漁船漁業はそのうち百五十八万八千トンで、それが百六十四万二千トンで、四%の伸び、それから定置網は三十二年に比べまして八二%に、マイナス一八%下がっているということ。
浅海養殖は三十二年を一〇〇といたしますと、一四九と、約五割の増加になっているということで、
沿岸漁業のうち
漁船漁業、定置網漁業、
浅海養殖と分けますと、
漁船漁業は停滞がちでございますが、上昇はしているのであります。それから定置網漁業は非常に減っている。それから
浅海養殖は急速に発展しているという動向がわかると思います。
生産金額におきましては、これは次の表II−12というところ−に掲げてございますが、総計
沿岸漁業といたしましては千三百二十六億七千六百万円というものが千六百六十八億三千六百万円ということで、十トン未満の漁船を使用する分でございますが、生産の伸びよりも
生産金額の伸びのほうが大きい。これはやはり価格の上昇にささえられているということが言えると思います。
それから次の表が沿岸の
漁船漁業の
生産量と着業統数の変化でございますが大体就業いたしております漁船の数というものは沿岸
漁船漁業では
下降傾向にありますが、
生産量はふえているということが図表のII−1で示してございます。そういうことで、着業統数の
生産量というものが上昇しているということが言えると思います。
それから図表II−2でございますが、沿岸
漁船漁業の規模別の生産動向というものを掲げてございまして、三十二年と三十七年と対比したのでございますが、無
動力船は三十二年六十万トンであったものが、三十七年はそれが四十四、五万トンに減っているが、三トン米満というものが非常に伸びている。それから三〜五トンも伸びているということが言えますし、それから五トンから十トンというものは大体
横ばい、多少
上昇傾向、こういうふうに規模別の生産動向を比較して、結局三トン未満と五トンから三トンの階層というものの
生産量が非常に上がっているということが言えると思います。それから、図のII−3に、定置漁業の着業統数と
生産量の変化ということで、大規模の大型定置着業統数が非常に減ってきている。それから小型の定置漁業は大体着業統数も、それから
生産量も
横ばい傾向にあるということが言えると思います。そういうことで、定置漁業というものは非常な下降現象を示している、こういうことが言えると思います。やはり海況等に支配される消極的な漁法であるというような意味で、こういう定置漁業から
漁船漁業なり
養殖漁業に転換しつつあるということが言えると思います。
それから次は
浅海養殖業の生産の動向でございますが、これはノリ、カキといったものを今後の中心に書いてございますが、ノリ養殖なりカキ養殖が、昭和三十二年と対比いたしますと、ノリが
生産量では三十二年を一〇〇といたしますと二六九という大きな倍半以上に伸びているということが言えますし、カキ養殖につきましても四二%の増になっている。真珠についても二三%ということで二・三倍になっているということが言えるわけで、養殖業が非常に大きく伸びているということを示してございます。
それから、次に、
浅海養殖業の種類別の
生産金額を図表に掲げてございます。なお、この
浅海養殖につきましては、埋め立てだとか、最近におきまする工場の発展で水質が汚濁する、そういった面で悪化の現象もあると思いますが、技術の進歩等でそういう面の克服をしなければならないだろうというようなことを書いてございます。なお、次にノリの養殖、カキの養殖、真珠の養殖、かん水魚の養殖といった点を四項目に分けて呈示してございます。それぞれ差はありますが、非常な上昇をたどっているということを書いてございます。
次が沿岸
漁船漁家の経済動向でございますが、
漁船漁家の一般的な経済動向という記述の中で、
漁船漁家の所得、これはいろいろ補償金等もありますが、そういう臨時収入というものを除きまして、一般的に
漁船漁業を営む漁家の所得ということで、三十七年に四十九が八千円ということになっております。表のII−5に掲げてございますが、絶対水準では農家や全都市勤労者世帯に対してまだかなりのへだたりがございますが、伸び率では三十二年から三十七年の間に五九%というかなり高い伸び率を示しております。しかも、三十二年〜三十四年度の間の伸び率はそれほど高くございませんが、三十五年度以降の伸びが非常に目立っているということが言えると思います。それで表のII−5に、
漁船漁家所得というものが事業所得、労賃所得、その他の所得ということで、三十二年が三十二万二千三百円というのが、三十七年には四十九万七千九百円に伸びた、こういうふうに書いてございます。なお、三十一年度以前は、
漁船漁家と都市勤労者世帯との格差は増大する一方でございましたが、三十五年度以降、ようやく格差が縮小しつつあるということが言えるようでございます。このような伸びは、主として漁業所得、水産加工所得の伸びによるということが言えるわけでございまして、そういう面においては非常に進歩しつつございますが、なお絶対額が都市勤労者全都市の所得よりも低い、農業者に比べても低いということが言えると思います。
それから次に、
漁船漁家の
経営内容でございますが、漁業所得と経営規模の大小による格差がやはり目立っているということが言えると思います。漁業収入——これは漁業の収入でございまして、兼業収入でなくて漁業収入だけで見ますと、三十二年、三十五年の間は増加率が非常に低かったわけでございますが、三十六年度以降漁業収入が増加して、三十七年度には
漁船漁家の平均で六十四万四千円、こういうふうになっております。これは図のII−5というところに示してございます。一方漁業支出というものは、同じ傾向で上昇してはおりますが、漁業収入の伸びのほうが支出の伸びより高かったということが言えるわけでございまして、そういう面で漁業所得は三十三年から非常に上昇してきているということで、漁家経済の内容は改善されつつあるということが言えると思います。図のII−5にいわゆる漁業収入、漁業支出をグラフに書いてございまして、そして漁業所得が非常に伸びているということと、いわゆる付加価値率というものも上界傾向にあるのでございます。このことを図表で示してございます。それで、その中で無
動力船層と三トン未満の小型
動力船層というふうに分けて、結局やはりその内容分析をいたしたわけでございまして、なお三トン以上十トン未満の
経営層、そういうふうに同じ
漁船漁業の中でも、階層間の格差が漁業所得の中であるということを示してございます。それは表のII−6というところをごらんになるとわかるわけでございます。
それから漁業収入の増加の原因ということを書いてございますが、これはやはり
生産量というものは、停滞がちでありながら多少ずつ伸びているということを先ほど申しましたが、やはり
経営体数が減っているということで、一経営当たりの
生産量は約一一%三十二年に比べて増加しているということを書いてございますし、それから
生産量の伸びよりも漁価の上昇というものが非常に大きいわけでございまして、いわゆる漁価の上昇にささえられて収入が非常に好転しているということが言える。その中でも沿岸の
漁船漁家は
高級魚を漁獲しているわけでございまして、そういう魚価の上昇が、
高級魚は高いわけでございます。そういう意味におきまして、
生産量の伸びもある程度見られますけれども、魚価の上昇ということで漁業収入が非常に増加しているということが言えるわけでございます。
それから漁業支出等につきましても、表のII−7というところに書いてございます。
それから三トン
未満層の支出の動向というところで、資材費は
横ばいであるということを書いてございますが、労賃費が多少上昇しているというような内容を分析してございます。
それから沿岸
漁船漁家の
家族労働力依存の傾向と今後の方向というのが書いてございますが、結局経済の高度発展に伴いまして
雇用者が減っていくという傾向で、
家族労働力を完全に燃焼しようということで、今後の
漁船漁家の動向といたしましては、漁船の三トン前後を中軸にいたしまして機械化、
近代化して、
家族労働力に依存して
生産性の高い
高級魚をとって、そして経営を合理化していくという方向に向かうものであろう、こういうふうに考えております。
それから
浅海養殖漁家(のり、かき)の経済動向、これも先ほど申しましたように非常に経済が好転しているということをうたってございます。
それから
沿岸漁業者の所得及び生活水準でございまして、これはなかなか比較するあれはございませんけれども、先ほどの
漁家所得が非常に好転しているということにささえられまして、漁家経済の中の生活水準も非常に好転はしてまいっておりますが、なお全都市勤労者なり農業所得に比べまして絶対数において低いということで、まだまだ今後そういう面の改善が必要であろうということをしるしてございます。表のII−13というところに漁家、農家、全都市勤労者の世帯所得という比較がございまして、
沿岸漁家平均では、全都市勤労者を一〇〇といたしますと九一・九%、その中で分析いたしますと、
漁船漁家は八〇・二、養殖漁家は一三二・四ということで、全都市勤労者よりもいい世帯所得を持っておりますが、農家が八九・五ということで、やはり
漁船漁家、
沿岸漁家の大部分を占めます
漁船漁家というのが農業の八九・五より悪い八〇・二ということで、非常に悪いということで、
漁船漁家のこういう対策を講ずる必要があるということを申しております。
それから漁家、農家、全都市勤労者一人当たりの家計費の比較もいたして、これで大体生活水準を見たらどうか、こういうふうに考えるわけでございますが、全都市勤労者を一〇〇にいたしまして、
漁船漁家は六七・八、養殖漁家は八九・九、農家は七一・五ということで、養殖漁家が農家以上を示しておりますけれども、いわゆる
漁船漁家というのは六七・八ということで、農家より非常に悪いし、全都市勤労者に比較すると非常に悪いということを示してございます。なお
エンゲル係数も
下降傾向にございますが、農家なりあるいは全都市に比べるとまだ悪いということが言えるわけでございまして、そういう面からまだ生活水準も低い、特に名目的にそういうことが言えるとともに、実質的にもやはり漁村はへんぴなところにありまして、いろいろな面で厚生施設なり、あるいは福祉施設なり、あるいは都市環境の施設なり悪いわけでございまして、実質的にはさらに悪いのじゃないか、こういうことが言える、こういうふうに考えております。
次に、
中小漁業の動向でございますが、
中小漁業につきましては、いわゆる経営十トン以上の千トン未満、あるいは三百人以下の従業者、こういった点でございまして、
中小漁業の生産の動向は、表のII−17に年間の
生産金額、それから主要漁業種類別の
生産量の推移というものを掲げてございます。中型底びき、まき網あるいは
サンマ、カツオ、
マグロ、こういうふうに分けて書いてございます。いろいろサケ・マスを除きまして、それぞれ非常に
上昇傾向にあるということが言えるわけでございます。サケ・マスは、これは日ソ漁業の関係で、毎年の
生産量が削減されつつあるということを反映いたしておるわけでございます。
それから次に、漁業別に中型底びきとか、まき網、そういうふうに経営の
生産量の分析をやってございます。
それから
中小漁業の経営の動向につきましては、
中小漁業経営の一般的性格といたしまして、これはいわゆる多獲性のものをとるというようなことで、先ほど申しましたように、海況なり漁況に支配される面が非常に多いということと、漁期が集中している、あるいは
水揚げ地が集中している、そういう面からして無価が非常に変動しやすいという面で不安定な面があるということと、労働面では、やはり歩合制が支配的である、それから非常に
雇用労働力に依存しておるという面で、最近の経済発展で
労働力の確保がむずかしいという面から困難な面が今後も出てくるだろうというので、
省力化、
近代化の道をたどらざるを得ないということを書いてございます。
それから漁業の収入、支出の動向というところで、漁業収入も非常に伸びております。支出が非常に
横ばいで、漁業収入の伸びに比べまして支出経費が
横ばいであるということで、
経営内容は非常によくなっているということが言えると思います。
それから中小規模の製造業者と
経営内容を出校いたしまして
中小漁業はいいとは言えると思いますけれども、やはり設備資金に非常に多額の投資をしており、その設備資金を借り入れ金に依存しておる。そういうことで借り入れ金の支払い利子を非常に払わなければならぬという面で、経営の利潤率なり、利益率なりが低いということを申し述べてございます。そういう面で自己資本の蓄積といったものを、今後経営を
近代化し合理化してやっていかなければならぬという方向を示してあるわけでございます。それとともに、
中小漁業の経営の面におきましても、大福帳式のものから近代企業的な経営の記帳をやるというようなことで、もっと経営を計画的にやらなければならぬということと、やはり労働管理というものをもっと強化して、
労働力の確保につとめなければならぬ、こういうような意味のことを書いてございます。
以上が大体三十八年度を中心といたしまする漁業の動向でございまして、そのほかに講じました施策というのは、これは三十八年度までの予算で講じたもの、それから漁業法の改正、水協法の改正というような制度的なもの、それは先刻御承知と思いますが、そういうものを記述したものでございます。
それから三十九年度のこれから講じようとする施策につきましては、三十九年度予算を中心にして漁業の施策の概要を記述したものでございます。これは予算審議等においてまた御審議願えると思いますので省略さしていただきたいと思います。
以上が大体
年次報告の概要でございます。