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1964-02-27 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十七日(木曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            北條 雋八君            森 八三一君    委員            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            木島 義夫君            北口 龍徳君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大河原一次君            大森 創造君            小宮市太郎君            戸叶  武君            矢山 有作君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    水産庁長官   庄野一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和三十八年度の漁業動向に関  する件) ○中小漁業融資保証法の一部を改正す  る法律案内閣提出)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それではただいまから委員会を開きます。  昭和三十八年度の漁業動向に関する件を議題といたします。  まず、本件について水産庁当局説明を聴取することにいたします。庄野水産庁長官
  3. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 昭和三十八年度の漁業の動向等に関する年次報告につきましては、昨日参議院本会議におきまして、農林大臣よりその大綱について説明があった次第でございます。なお、御要求によりまして、私から補足いたしまして説明いたしたいと存じます。  御承知のとおり、昨年沿岸漁業等振興法が成立いたしまして、その第七条によりまして、政府は漁業の動向等に関する報告を、これは漁業動向と、それから訓じました施策、これから講じようとする施策、こういう三部になっておりますが、その報告をすることになっておりますので、それに基づきまして今回第一回の漁業動向等に関する報告を提出した次第でございます。何ぶん初めての報告でございまして、過去におきまする統計の不足等もございまして、そういう制約から、なお不十分な点もあろうかと存じますけれども、この点御容赦願って、今後とも統計資料の整備その他に努力いたしまして、よりよき報告をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。この漁業の動向等に関する年次報告は、いま申しましたように、三十八年度を中心にいたしております。それで漁業動向は、三十二年から三十七年までの漁業動向を取りまとめた次第でございますし、また講じました施策は、三十七年度を中心といたしまして、戦後におきまする制度の状況、それから講じました施策等に触れつつ、三十七年度を中心として、さらに三十八年度におきまして講じております施策を報告いたしております。講じようとする施策は、三十九年度の予算を中心にいたしまして、これから講じようとする施策の概要を記述いたした次第でございます。  まず、漁業の動向に関しまする年次報告について御説明をいたしたいと思います。お手元に配付してございますが、漁業の動向等に関する年次報告という文書と、それから、それの要旨を書きました資料が配付いたしてございますので、本書のほうをお開き願って、その図表、あるいは統計資料をまとめました表等について御説明いたしたいと思います。  漁業動向年次報告は、第一部が総論的に日本の水産業の全体の動向を把握いたしまして、それの概要を説明いたしまして、そして第二部で、沿岸漁業等について詳細な報告をいたしたわけでございます。沿岸漁業等振興法に基づきますので、沿岸漁業中小漁業というものに焦点を当てて、各論的に詳述いたしたわけでございます。  第一章の総論的なものといたしましては、国民経済の成長と漁業がどういう関係にあったかということを記述いたしております。これは三十二年以降におきまする一般の経済的な成長というものの中におきまする漁業の発展状況を響いたわけでございますが、この総論的に書いてございます中に、鉱工業生産指数、これは産業総合でございますが、それは三十二年以降、年率にいたしまして一四%の大きな成長を示しておりますし、国内の実質国民所得の伸びも大体二%になっております。その中におきまして漁業の総生産量、これは三十七年度が六百八十六万トン、これは鯨を除いております。海面漁業及び内水面の漁業総生産量でございますが、六百八十六万トンという総生産量を示しておりまして、その三十二年からの年率の伸びは五%ということになっております。鉱工業の一四%の伸びに比べますと、はるかに低うございますが、漁業の実質的な国民所得というものは、年率九%伸びております。国内の実質総国民所得の伸びが一一%で、漁業が九%の伸びということになっております。そういう点で、漁業の生産の伸びというものは、国民経済の中におきましてこういう地位を持って、低いとはいいながら、順調な伸びを示している、こういうことになっております。  それから水産物の需要の動向というものは、国民経済の堅実な成長にささえられまして、また輸出も非常に伸びている、こういった点で非常に需要が旺盛であったということで、生産者価格も非常に堅調に推移している、こういうふうに考えております。この需要も、国民生活の発展に伴いまして国民所得が伸びる、生活様式高度化していく、そういうようなことで、消費形態も非常に変わってきているということも言えると思います。水産物に対する国民の需要というものは、生鮮食料としてこれを消費するというよりは、加工品として消費するという形態を示しておりますし、加工品も低次加工——これは塩干物といったような加工、それがかん詰めびん詰めハム、ソーセージといったような高次の加工に移っているということも言えますし、また、生鮮食料の需要の中におきましても、高級魚のタイとかヒラメとかマグロとか、そういった高級魚に対する一般のアジ、サバといったような大衆的な多獲性魚からそういう高級魚に需要が移っている、こういったことが言えると思います。  また、漁業におきまする就業の状態も、国民経済の発展に伴いまして、相当に他産業のほうに流出している、こういうようなことが言えると思います。そしてまた、流出の中心が若干労働力を中心として他産業に移っている、こういうことが言えると思います。そういう点から就業事情が非常に変化しておりますし、一部の漁業、特に中小漁業といった面におきまして、労働不足といったような面が出ておりますし、従来の経営なり、技術なり、あるいは労働の管理といったような面に大きな変化を生じつつあるということでございまして、また、これが農業でも言われますように、沿岸漁業構造改善の一つの契機になっている、この契機をとらえて生産性の向上につとめなければならぬということが言えると思います。そういうことが書いてございます。  その中で漁業生産生産手段の動向がどうなっておるかということが書いてございます。漁業生産の動向は、総漁獲量が非常に伸びているということが書いてございます。これは四ページの表のIの1の「漁業生産量の推移」というところに、海面漁業が六百七十六万トン、これは内水面が十万トンございますので、総生産重六百八十六万トンのうち六百七十六万トンが海面漁業生産量でございますが、その中で沿岸漁業中小漁業とその他の漁業と、こういうふうに分けてございます。その他の漁業というのが、いわゆる大資本漁業遠洋漁業を中心といたしたものでございまして、そういった沿岸漁業中小漁業、それから大資本漁業による遠洋漁業、こういうふうに分け得ると思いますが、その中でも、沿岸漁業が三十四年ごろまでは停滞ぎみであった、三十五年ごろから伸び出して、三十七年度においては、前年比七%で伸びている、あるいは中小漁業が順調に伸びて、前年比一二七%、それから、その他の遠洋漁業というものは、三十二年が一〇〇でございます。前年比は間違いで三十二年対比でございますが、三十二年対比で二四〇で、二倍半に近い伸びを示しておる、こういうことが言えると思います。内水面漁業停滞ぎみでございますが、三十二年と比べますと、約一〇九%に伸びておる。こういうように生産量が順調に、それぞれにおいて格差はございますが、伸びておるということが言えます。  それから生産金額も、三十七年度で総生産額は四千五百三十二億八千五百万円ということになっておりまして、その中におきまする構成のウエートは、沿岸漁業が四一%、中小漁業が四七%、大資本によります漁業が一二%というような構成比になっております。三十五年、三十六年、三十七年というふうに、沿岸漁業ウエートが少なくなって、中小漁業なり国際漁業ウエートがだんだん高まりつつあるということが言えると思いますが、四千二百六十四億円といったような、順調な伸びを示しております。  それから五ページの表が、いわゆる漁業の、海面漁業におきまする総生産量の中におきまする沿岸漁業なり中小漁業なり、その他の国際的な大資本漁業ウエートの変遷を示した図表でございます。ここで御注意願いたいのは、沿岸漁業が三十二年は全体の中で四一%のウエートを占めておったのでありますが、三十七年には三四%生産が伸びておりますが、全体の中に占めるウエートは、沿岸漁業ウエートが低下しておるということが言えると思います。図のIの1でございます。  それから「魚種別構成多様化」ということが次に書いてございますが、日本は諸外国の水産国と比べまして、非常に多種多様な魚種を生産しておるということが言えるわけでございます。その表は、表のIの3に「魚種別構成の変化」というものを書いてございますが、イワシとかニシンとかいったようなものが、三十七年になりまして非常にウエートが下がってきまして、サバとかアジとかサンマ、カツオ、マグロといったもののウエートが上がっておる、こういうことが言えると思います。  それから生産手段の動向でございますが、これは漁船の動力化が進展しておる。無動力船動力化しておるということと一緒に、動力化の傾向、ディーゼル化が非常に進んでおるということが言えると思います。漁船の総数としては大体横ばいでございますが、無動力船が減って、動力漁船が非常にふえておる。それから小型漁船としては、一トンないし三トンの船が多少上がる傾向でございますし、一トン未満も横ばい程度でございますが、三トンないし五トンも横ばい程度、多少上がる傾向、こういうことが言えると思います。  それから機関のディーゼル化、その次の図表は、焼き玉が減って、それから蒸気機関というものが非常に減りまして、ディーゼルエンジン化が非常に進んでおるということが言えると思います。  それから生産手段といたしましては、漁具、漁業用機器近代化し、また非常に機械化しておるということが言えると思います。  また、漁船の大型化の問題といたしましても、二百トン以上が非常にふえておるということと、五トン二十トン、十トン——二十トンの漁船が減りつつある。三十七年、多少上昇傾向でございますが、大体小型漁船が減っておる。二十トン——五十トンは多少ふえておるということが言えると思います。  それから漁船の機械も、いままでは綿網等が中心でございましたが、合成繊維というものが非常に導入されてきておるということと、それから電探とか、あるいは無線とか、あるいはその他の機械、レーダーとかロラン、そういうものが非常に導入されて近代化されつつあるということが言えると思います。また二面漁業の生産基盤となりまする漁港の整備も、第一次、第二次計画、さらに昨年から第三次整備計画相当整備が進んできた。これは漁船の大型化あるいは近代化等に資するとともに、生産物を水揚げして経済面に結びつける接着点としての非常な効果をあげておる。なお今後とも漁港の整備は必要であろうということが書いてございます。  それから内水面漁業の生産の動向といたしましては、停滞ぎみであったのが、最近の需要の旺盛にささえられて上昇傾向をたどってきた。特に内水面におきますところの養殖漁業というものが非常に伸長を遂げた、こういうことが書いてございます。  それから漁業の就業構造の変化でございますが、これは次の表の一−六に書いてございますように、無動力から動力というふうに階層分けにいたしております。就業者全体が二十八年は七十九万人であったのが三十七年には六十六万七千人、年率一・九%の割合で減少している。五年間におきましては、約十二万程度が減少したわけでございますが、そういうふうに国民経済の復興と成長に伴って、漁業におきまする就業人口も他産業に移動しつつあるということが言えると思います。その中でも家族就業者の減少よりもむしろ雇用者の減少が大きい、こういうことが言えると思います。  それから労働力流出流入の状況といたしまして、新規学卒者の動向を掲げてございますが、新規学卒者の流出といいますか、あるいは他産業へ移るということが非常に顕著に目立ってきておる。それから流出の状況といたしましても、就職離村といった面が離職して帰村するということよりも非常に上回っておる。それから出かせぎ離村というものは、非常に減少傾向にありまして、就職離村というものが離村人口一万人について九十七人から百六十五人に大幅に増加しておる、こういった傾向を書いてございます。  それから新規学卒者につきましては、やはり中学校卒というものが非常に大きな割合で漁村から他産業へ流れておる、こういうことでございます。  それから就業者の年齢の高齢化、これは農業と同様にやはり漁業におきましても、若年労働者といったようなものが他産業に移りやすいということがございますし、そういう面で漁業全体といたしまして壮年化、老齢化しつつある。特に沿岸漁業なり養殖漁業といった面につきましては、機械の発展、あるいは近代化等にささえられて、やはり高年齢の就業者が就業し得る道も開かれておる。そういうふうな傾向で年齢層が全体として高齢化しつつあるということが言えると思いますし、また養殖漁業におきましても、女子の就業者がふえてきておると思います。  それから漁業経営の構成の変化を次に掲げてございますが、これは表の一−八というところにございます。二十八年には、沿岸なりそれ以外のものが二十五万一千七百四十七経営体でございましたが、三十七年には二十二万七千経営体というふうに年率二・八%減少している、こういうことが言えると思います。なお図表にもありますように、沿岸漁業経営数年次別の変化としては、浅海養殖、三トン以上五トン未満の経営層、三トン未満の経営層というものが非常にふえております。五トン以上十トン未満層なり、定置網、地びき網、これの沿岸漁業、それから無動力船に依存している漁業が大幅に減っておる、こういうような図表になっております。  それから沿岸漁業経営構成の変化といたしましては、家族集約経営に非常に移行しつつあるということが言えると思います。それはいわゆる雇用就業者が非常に獲得が困難であってむしろ流出していく。そういうふうな面から家族労働に依存するということで、三トン——五トン未満、三トン未満といったような経営層がふえておるわけでありまして、いわゆる家族労働完全燃焼というものをねらいにしているわけでございますが、漁船のディーゼル化なりあるいは省力化の傾向から、そういう家族労働完全燃焼してこの中で経営をはかっていく。雇用労働力の確保の困難、あるいは雇用労賃の非常な上昇傾向というものと見合って、いわゆる三トン前後の経営層を中心にいたしました家族労働依存の経営が、今後伸びていく可能性が非常に見えているわけであります。そういう面からこういう面の近代化あるいは省力化というものを考え、欧米先進国のように四、五十トンでも四、五人の家族労働十分生産性の高い経営をやっていく、そういう方向に指導すべきであろう、こういうふうに考えているわけであります。  それから沿岸漁業以外の経営数年次別変化といたしましては、これは大資本漁業による分が多いと思いますが、二百トン以上の経営層が非常に急激に上昇いたしておりますが、百トンから二百トンは下降傾向でございます。百トン未満の面も大体下降傾向にあるということが言えると思います。これも図表で示してございます。  それから組織別経営の動向というものがございますが、漁業経営を組織している九七%までが大体個人経営でございます。会社経営は近代的な企業経営として増加の傾向でございますが、まだまだその増加傾向はそれほど顕著でございません。今後ともこの会社経営による近代的経営というものが伸びていく、こういうふうに考えます。それから資本金が十億円以上という大資本的なものが七社ございますし、一億円以上のもので六社、五千万円以上のものが八社、資本金五百万円以下というものが七四%、こういうふうになっております。漁業協同組合なり生産組合、あるいは共同経営というようなものは減少傾向でございますが、構造改善のにない手として、やはり漁業協同組合によりまする、いわゆる新しい意味におきまする協業経営なり協業組織というものの効果が、瀬戸内海を中心にして各地に見られるわけでありますし、沿岸の漁船漁業でも、集団操業なり漁船の大型化、あるいは新しい漁法への転換という面で、今後も協業という面、いわゆる協業経営協業組織によるこういったものを伸ばしていかなくちゃならぬと考えるわけでありますが、その効果が見えつつあるということが言えると思います。  それから沿岸漁家兼業状況でございますが、大体先ほど申しましたような三トン未満前後を中心として家族労働依存沿岸漁業が非常にふえつつある。こういうようなことで、経営内容もそれは堅実であるというようなことで、大体漁業におきましては、主業漁家というものが二十八年三十三年を比べますと、二十八年が五四%のウエートであったものが六四%にふえつつあるということが言えると思います。そのためにいわゆる第二種兼業漁家というものが二八%も減少して、それぞれの主業漁家に移向しつつあるということが言えると思います。それからその中でも漁家所得に占める兼業所得といった割合が、無動力船層では五八%が六一%に増大している。あるいはそういう無動力船層では、兼業所得が非常にウエートが多いわけでありますが、三トン未満では大体兼業所得が三五%前後であまり変更はございませんが、三トン以上十トン未満層では、兼業所得が二七%が二四に減るというふうに、兼業所得が減っているということが言えると思います。それで沿岸漁業漁船漁家兼業状況は、下層は兼業化が進み、上層では専業化が進んでいるということが言えるわけでございます。  それから次は水産物の需要の動向でございますが、ここに表のI−13というところに水産物需給表を掲げてございます。これは国内生産で生産しましたものと水産物の輸入いたしましたものを総供給量といたしまして、それがどういうふうに需要に向けられたかという表でございまして、輸出向けというものがふえつつあると先ほど申しましたが、輸出向けが非常にふえているということと、国内のいわゆる非食用向けえさ等に向けるものが、また最近におきまする酪農の振興なり養鶏の非常な発展ということで、えさの需要が非常に高まっているということが言えると思います。それから国内の食料消費向けの需要というものも大体堅実に伸びているということを示してある表を掲げてございます。魚介類、鯨肉、海藻類、こういうふうに分けて書いてございますが、この魚介類のうちの利用配分というものについて、利用配分の変化というものがやはり三十二年から三十七年にかけまして、そこに掲げてございます。三十七年では三九%が生鮮のまま食料及びえさ等の消費に向けられ、四八%が食用加工品原料、一三%が飼肥料の加工原料に向けられている。これは図のI−11に掲げられておりますが、そういうものが最近の動向では、生鮮食用向けはあまり伸びない、えさ向けがやや増大しており、総体として加工原料にいくものの増が非常に大きいということが言える。それからその中でも食用加工向けでは塩干魚向けというものは非常に停滞し、練り製品とかかん詰、びん詰めといったような高次の加工品が非常に増大しているということが書いてあります。  その次は産地価格の動向でございますが、これは表I−14に掲げてございますが、魚種別に見ますと、高級魚が非常に最近の消費形態高度化ということにささえられて、産地でも大きい値上がりを示しておりますが、イワシ、アジ、サバ、サンマといったような多獲性魚というものは、これが時期的に生産が集中するとか、水揚げ地にやはり集中するといったような傾向で、やはり非常に不安定でございますし、また産地価格のほうも、横ばいないしは下降傾向のものを示している。これは消費においてもあまり伸びないというような面も反映いたしております。そういう産地価格の動向を示しておるわけでございまして、それは表I−14に掲げてございます。  それから水産物家計消費の動向ということで、消費内容高度化消費者価格の動向ということで、先ほど申しましたように生鮮食料として消費されるものは停滞ぎみでございますが、その中でも高級魚のほうは伸びて、大衆的なイワシ、アジ、サンマといった多獲性魚はより停滞しているということは甘えるわけでございますし、その傾向は都市農村を通じて言えることでございますし、また加工は低次加工塩干物から高次のびん、かん詰め、あるいは練り製品というものに非常に向けられつつあるということが言えると思います。そういうことを表I−15というところで掲げてございますし、また都市、農村における一人当たりの魚介加工品家計消費量の推移というものも、表I−16に年次別にその推移を掲げてございます。そういう意味で消費者価格高級魚に対するものは非常に上がってきておりますが、多獲性の魚種というものが停滞気味であるということが言えると思います。それから魚介類に対する支出の比重の低下ということで、国民経済の発展に伴いまして、国民のそれぞれの所得が増大いたしております。そういうことで生活内容高度化しているわけでございまして、エンゲル係数も下がるというようなことで、魚介に対する支出の比重は家計の中に占めるウエートが下がってきつつあるということが言えるということを掲げてございます。それは表I−17というところに掲げてございます。  それから次に水産物のえさ並びに肥料需要の増加ということ、それから水産物輸出の動向、これはいずれも先ほど申し上げましたように非常に強気で上昇傾向にあるということが言えますし、水産物輸出動向も図I−12というところに掲げてございますように、漁業生産の約一〇%が輸出に向けられている。輸出は三十七年は千百二十六億ということで、日本の総輸出額の六三%を占めているということが言えると思いますし、その次の表I−20で、水産物論出の額の推移の中で、それぞれの水産物輸出額冷凍水産物、あるいは水産のびん、かん詰め、塩干水産物あるいは真珠といったもののそれぞれの金額なりウエートを掲げてございます。  以上が大体水産に対する全体の比率でございまして、次が第二章の沿岸漁業等の動向ということで、その第一章が沿岸漁業の動向、第二章が中小漁業の動向ということでございますが、まず沿岸漁業の動向ということを御説明いたしたいと思います。沿岸漁業の生産の動向ということを次に掲げてございますが、表II−1をごらんになりますと、沿岸漁業生産量の推移ということで三十二年、二百十六万五千トンという総量が三十七年は二百二十九万七千トンということで七%の伸びになっております。漁船漁業はそのうち百五十八万八千トンで、それが百六十四万二千トンで、四%の伸び、それから定置網は三十二年に比べまして八二%に、マイナス一八%下がっているということ。浅海養殖は三十二年を一〇〇といたしますと、一四九と、約五割の増加になっているということで、沿岸漁業のうち漁船漁業、定置網漁業、浅海養殖と分けますと、漁船漁業は停滞がちでございますが、上昇はしているのであります。それから定置網漁業は非常に減っている。それから浅海養殖は急速に発展しているという動向がわかると思います。生産金額におきましては、これは次の表II−12というところ−に掲げてございますが、総計沿岸漁業といたしましては千三百二十六億七千六百万円というものが千六百六十八億三千六百万円ということで、十トン未満の漁船を使用する分でございますが、生産の伸びよりも生産金額の伸びのほうが大きい。これはやはり価格の上昇にささえられているということが言えると思います。  それから次の表が沿岸の漁船漁業生産量と着業統数の変化でございますが大体就業いたしております漁船の数というものは沿岸漁船漁業では下降傾向にありますが、生産量はふえているということが図表のII−1で示してございます。そういうことで、着業統数の生産量というものが上昇しているということが言えると思います。  それから図表II−2でございますが、沿岸漁船漁業の規模別の生産動向というものを掲げてございまして、三十二年と三十七年と対比したのでございますが、無動力船は三十二年六十万トンであったものが、三十七年はそれが四十四、五万トンに減っているが、三トン米満というものが非常に伸びている。それから三〜五トンも伸びているということが言えますし、それから五トンから十トンというものは大体横ばい、多少上昇傾向、こういうふうに規模別の生産動向を比較して、結局三トン未満と五トンから三トンの階層というものの生産量が非常に上がっているということが言えると思います。それから、図のII−3に、定置漁業の着業統数と生産量の変化ということで、大規模の大型定置着業統数が非常に減ってきている。それから小型の定置漁業は大体着業統数も、それから生産量横ばい傾向にあるということが言えると思います。そういうことで、定置漁業というものは非常な下降現象を示している、こういうことが言えると思います。やはり海況等に支配される消極的な漁法であるというような意味で、こういう定置漁業から漁船漁業なり養殖漁業に転換しつつあるということが言えると思います。  それから次は浅海養殖業の生産の動向でございますが、これはノリ、カキといったものを今後の中心に書いてございますが、ノリ養殖なりカキ養殖が、昭和三十二年と対比いたしますと、ノリが生産量では三十二年を一〇〇といたしますと二六九という大きな倍半以上に伸びているということが言えますし、カキ養殖につきましても四二%の増になっている。真珠についても二三%ということで二・三倍になっているということが言えるわけで、養殖業が非常に大きく伸びているということを示してございます。  それから、次に、浅海養殖業の種類別の生産金額を図表に掲げてございます。なお、この浅海養殖につきましては、埋め立てだとか、最近におきまする工場の発展で水質が汚濁する、そういった面で悪化の現象もあると思いますが、技術の進歩等でそういう面の克服をしなければならないだろうというようなことを書いてございます。なお、次にノリの養殖、カキの養殖、真珠の養殖、かん水魚の養殖といった点を四項目に分けて呈示してございます。それぞれ差はありますが、非常な上昇をたどっているということを書いてございます。  次が沿岸漁船漁家の経済動向でございますが、漁船漁家の一般的な経済動向という記述の中で、漁船漁家の所得、これはいろいろ補償金等もありますが、そういう臨時収入というものを除きまして、一般的に漁船漁業を営む漁家の所得ということで、三十七年に四十九が八千円ということになっております。表のII−5に掲げてございますが、絶対水準では農家や全都市勤労者世帯に対してまだかなりのへだたりがございますが、伸び率では三十二年から三十七年の間に五九%というかなり高い伸び率を示しております。しかも、三十二年〜三十四年度の間の伸び率はそれほど高くございませんが、三十五年度以降の伸びが非常に目立っているということが言えると思います。それで表のII−5に、漁船漁家所得というものが事業所得、労賃所得、その他の所得ということで、三十二年が三十二万二千三百円というのが、三十七年には四十九万七千九百円に伸びた、こういうふうに書いてございます。なお、三十一年度以前は、漁船漁家と都市勤労者世帯との格差は増大する一方でございましたが、三十五年度以降、ようやく格差が縮小しつつあるということが言えるようでございます。このような伸びは、主として漁業所得、水産加工所得の伸びによるということが言えるわけでございまして、そういう面においては非常に進歩しつつございますが、なお絶対額が都市勤労者全都市の所得よりも低い、農業者に比べても低いということが言えると思います。  それから次に、漁船漁家経営内容でございますが、漁業所得と経営規模の大小による格差がやはり目立っているということが言えると思います。漁業収入——これは漁業の収入でございまして、兼業収入でなくて漁業収入だけで見ますと、三十二年、三十五年の間は増加率が非常に低かったわけでございますが、三十六年度以降漁業収入が増加して、三十七年度には漁船漁家の平均で六十四万四千円、こういうふうになっております。これは図のII−5というところに示してございます。一方漁業支出というものは、同じ傾向で上昇してはおりますが、漁業収入の伸びのほうが支出の伸びより高かったということが言えるわけでございまして、そういう面で漁業所得は三十三年から非常に上昇してきているということで、漁家経済の内容は改善されつつあるということが言えると思います。図のII−5にいわゆる漁業収入、漁業支出をグラフに書いてございまして、そして漁業所得が非常に伸びているということと、いわゆる付加価値率というものも上界傾向にあるのでございます。このことを図表で示してございます。それで、その中で無動力船層と三トン未満の小型動力船層というふうに分けて、結局やはりその内容分析をいたしたわけでございまして、なお三トン以上十トン未満の経営層、そういうふうに同じ漁船漁業の中でも、階層間の格差が漁業所得の中であるということを示してございます。それは表のII−6というところをごらんになるとわかるわけでございます。  それから漁業収入の増加の原因ということを書いてございますが、これはやはり生産量というものは、停滞がちでありながら多少ずつ伸びているということを先ほど申しましたが、やはり経営体数が減っているということで、一経営当たりの生産量は約一一%三十二年に比べて増加しているということを書いてございますし、それから生産量の伸びよりも漁価の上昇というものが非常に大きいわけでございまして、いわゆる漁価の上昇にささえられて収入が非常に好転しているということが言える。その中でも沿岸の漁船漁家高級魚を漁獲しているわけでございまして、そういう魚価の上昇が、高級魚は高いわけでございます。そういう意味におきまして、生産量の伸びもある程度見られますけれども、魚価の上昇ということで漁業収入が非常に増加しているということが言えるわけでございます。  それから漁業支出等につきましても、表のII−7というところに書いてございます。  それから三トン未満層の支出の動向というところで、資材費は横ばいであるということを書いてございますが、労賃費が多少上昇しているというような内容を分析してございます。  それから沿岸漁船漁家家族労働力依存の傾向と今後の方向というのが書いてございますが、結局経済の高度発展に伴いまして雇用者が減っていくという傾向で、家族労働力を完全に燃焼しようということで、今後の漁船漁家の動向といたしましては、漁船の三トン前後を中軸にいたしまして機械化、近代化して、家族労働力に依存して生産性の高い高級魚をとって、そして経営を合理化していくという方向に向かうものであろう、こういうふうに考えております。  それから浅海養殖漁家(のり、かき)の経済動向、これも先ほど申しましたように非常に経済が好転しているということをうたってございます。  それから沿岸漁業者の所得及び生活水準でございまして、これはなかなか比較するあれはございませんけれども、先ほどの漁家所得が非常に好転しているということにささえられまして、漁家経済の中の生活水準も非常に好転はしてまいっておりますが、なお全都市勤労者なり農業所得に比べまして絶対数において低いということで、まだまだ今後そういう面の改善が必要であろうということをしるしてございます。表のII−13というところに漁家、農家、全都市勤労者の世帯所得という比較がございまして、沿岸漁家平均では、全都市勤労者を一〇〇といたしますと九一・九%、その中で分析いたしますと、漁船漁家は八〇・二、養殖漁家は一三二・四ということで、全都市勤労者よりもいい世帯所得を持っておりますが、農家が八九・五ということで、やはり漁船漁家沿岸漁家の大部分を占めます漁船漁家というのが農業の八九・五より悪い八〇・二ということで、非常に悪いということで、漁船漁家のこういう対策を講ずる必要があるということを申しております。  それから漁家、農家、全都市勤労者一人当たりの家計費の比較もいたして、これで大体生活水準を見たらどうか、こういうふうに考えるわけでございますが、全都市勤労者を一〇〇にいたしまして、漁船漁家は六七・八、養殖漁家は八九・九、農家は七一・五ということで、養殖漁家が農家以上を示しておりますけれども、いわゆる漁船漁家というのは六七・八ということで、農家より非常に悪いし、全都市勤労者に比較すると非常に悪いということを示してございます。なおエンゲル係数下降傾向にございますが、農家なりあるいは全都市に比べるとまだ悪いということが言えるわけでございまして、そういう面からまだ生活水準も低い、特に名目的にそういうことが言えるとともに、実質的にもやはり漁村はへんぴなところにありまして、いろいろな面で厚生施設なり、あるいは福祉施設なり、あるいは都市環境の施設なり悪いわけでございまして、実質的にはさらに悪いのじゃないか、こういうことが言える、こういうふうに考えております。  次に、中小漁業の動向でございますが、中小漁業につきましては、いわゆる経営十トン以上の千トン未満、あるいは三百人以下の従業者、こういった点でございまして、中小漁業の生産の動向は、表のII−17に年間の生産金額、それから主要漁業種類別の生産量の推移というものを掲げてございます。中型底びき、まき網あるいはサンマ、カツオ、マグロ、こういうふうに分けて書いてございます。いろいろサケ・マスを除きまして、それぞれ非常に上昇傾向にあるということが言えるわけでございます。サケ・マスは、これは日ソ漁業の関係で、毎年の生産量が削減されつつあるということを反映いたしておるわけでございます。  それから次に、漁業別に中型底びきとか、まき網、そういうふうに経営の生産量の分析をやってございます。  それから中小漁業の経営の動向につきましては、中小漁業経営の一般的性格といたしまして、これはいわゆる多獲性のものをとるというようなことで、先ほど申しましたように、海況なり漁況に支配される面が非常に多いということと、漁期が集中している、あるいは水揚げ地が集中している、そういう面からして無価が非常に変動しやすいという面で不安定な面があるということと、労働面では、やはり歩合制が支配的である、それから非常に雇用労働力に依存しておるという面で、最近の経済発展で労働力の確保がむずかしいという面から困難な面が今後も出てくるだろうというので、省力化近代化の道をたどらざるを得ないということを書いてございます。  それから漁業の収入、支出の動向というところで、漁業収入も非常に伸びております。支出が非常に横ばいで、漁業収入の伸びに比べまして支出経費が横ばいであるということで、経営内容は非常によくなっているということが言えると思います。  それから中小規模の製造業者と経営内容を出校いたしまして中小漁業はいいとは言えると思いますけれども、やはり設備資金に非常に多額の投資をしており、その設備資金を借り入れ金に依存しておる。そういうことで借り入れ金の支払い利子を非常に払わなければならぬという面で、経営の利潤率なり、利益率なりが低いということを申し述べてございます。そういう面で自己資本の蓄積といったものを、今後経営を近代化し合理化してやっていかなければならぬという方向を示してあるわけでございます。それとともに、中小漁業の経営の面におきましても、大福帳式のものから近代企業的な経営の記帳をやるというようなことで、もっと経営を計画的にやらなければならぬということと、やはり労働管理というものをもっと強化して、労働力の確保につとめなければならぬ、こういうような意味のことを書いてございます。  以上が大体三十八年度を中心といたしまする漁業の動向でございまして、そのほかに講じました施策というのは、これは三十八年度までの予算で講じたもの、それから漁業法の改正、水協法の改正というような制度的なもの、それは先刻御承知と思いますが、そういうものを記述したものでございます。  それから三十九年度のこれから講じようとする施策につきましては、三十九年度予算を中心にして漁業の施策の概要を記述したものでございます。これは予算審議等においてまた御審議願えると思いますので省略さしていただきたいと思います。  以上が大体年次報告の概要でございます。
  4. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまの説明に対し質疑のおありの方は、御発言を願います。
  5. 大河原一次

    大河原一次君 質疑じゃありませんが、これは重大な年次報告の問題だから一応、これはこの前、委員長・理事との間で何か検討されなかったのですか、質問の問題については当方ではやはり大臣を呼んだ上で質問をやるべきではないかという、そういうことを委員長のほうに伝えられておったと聞いたのですが……。
  6. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  7. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記を始めて。     —————————————
  8. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それでは次に中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は、御発言を願います。
  9. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私は初めに、いま御説明になった農業動向等に関する年次報告については、渡辺委員から本会議において質問があったのですが、なおさらにきょうその説明がございましたので、補足の意味で聞きたいところもたくさんあったわけですが、大臣もお見えでないし、この前に中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案が続いて質問されておりますから、大臣にお聞きしたいことは、またこの次に譲りまして、そのことについて御質問をしたいと思います。  直接入る前にちょっと関係がございますのでお聞きしたいのですが、この前、沿振法が通常国会で成立いたしますときに、この委員会で私は質問いたしましたが、その答弁の中で、和田政府委員から、職業紹介なり、職業訓練をやって、沿岸漁民の希望があれば措置をしたい、こういう御答弁があったのですが、特にその御答弁の中で、それでは予算的にはどうなっているのか、財政的にはどうなっているのか、こういうことをお聞きしたところが、これは成立してから各関係の省と話し合いをして、協議をした上で措置をしたい、こういう御答弁であったわけです。その答弁の中に、特に雇用促進事業団の事業として訓練手当等の支給については、運輸省、あるいは労働省と打ち合わせて話し合いがついておる、こういう御答弁をいただいておったわけですが、その後それはどういうように進展しておるか、どういうような職業あっせんの動向になっておるのか。訓練というのは、どういう種類のやつをやるのか、ちょっとこれはこれとは関係がございませんけれども、お聞きする中で若干参考になりますので、前もってお聞きしたいと思います。
  10. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 沿岸漁家等から他産業流出いたすわけでございますし、また転職希望もございます。また埋め立て等によりまして漁場がなくなるという点からの転職ということもあるわけでございまして、そういう面につきましては、沿岸漁業等の従事者及びその家族の離転職ということについて、水産関係といたしましては、都道府県及び市町村を主体といたしました県に協議会をつくっておりましてそこで指導をやる、沿岸漁業にやはり後継者を残さくちゃならぬなということと、それから出て行く先の状況等もよく知らなくちゃならないということもございまして、そこで十分そういった点の事情を調査して、転職、離職する場合の便益をはかって、沿岸漁家として残すべきものは残し、また離職希望者に対してはそういうものをあっせんする、そういう協議会なり指導会を持っておりまして、これは水産庁関係から都道府県に指示いたしてそういうような道を講じております。なお一般の対策といたしましてはやはり広域にわたる求人、求職と、その迅速かつ合理的な結合をはかるということから、三十九年度からいろいろ計画を立てまして、職業紹介及び職業訓練の充実、これは労働省の管轄になるわけでございますが、そういうところで一般農業と同じような関係にあるわけでございますので、そういった農漁村あるいは山村というものの離転職のあっせんというものは職業紹介所というところを通じてやるのが合理的であろう、一般のそういう職業紹介の中に組み入れてそこであっせんをやるということ、一方では労働省と連絡を密にしてやっておりますし、また職業訓練もその職業紹介の範囲内におきまして訓練を行なう、こういう道を労働省において講じ、拡充しつつあります。その中に組み入れていく、こういう話し合いがついております。
  11. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 詳細にはこの報告書にはございませんので、数字的にはわからぬわけでございますが、できますならば、漁業者から他に就職のあっせんをした数といいますか、それと職業訓練等で取り扱った数をひとつ参考資料として御提出願いたいとこういうふうに希望いたします。ございましょうか。
  12. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) そういう点につきましては、御報告申し上げました昭和三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策という中に、この職業紹介及び職業訓練の充実という項目で労働省等とも打ち合わせてそういう施策概要を書いてございまして、一般的に労働省の職業あっせんの中に組み入れていく、こういう方針でやっております。なお、漁村とか農村とかというふうにその区別をしてあるかどうか、資料ができますか、労働省ともよく打ち合わしてみまして、そういう内訳を書いたものがございますれば提出いたしたいと思います。
  13. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それではそれができましたら御提出願いたいと思います。  それでは融資保証法の質問に入りたいと思いますが、まず初めに、前の委員会で森委員から詳しく御質問がありましたが、まだ十分納得のいかない点がございます。その点は、農業協同組合を本制度の金融機関とすることで、はたしてここで言っているように沿岸漁業構造改善事業の円滑な推進を確保し、また融資が円滑になるかどうか、こういう点ですが、特に私はずっと焦点をしぼって、浅海の養殖業地帯における農業協同組合との関係をお聞きしたいと思うのです。いま大体漁業協同組合には信用事業をやってないというのが、さっきの質問にもありましたように、農協との話し合いによって開始してないというものが多いわけです。ところが、本法によって漁協の信用事業がその対象になるということになりますと、信用事業を開始するということになると、非常にその点心配されるわけなんですが、はたしてそういう心配はないのかどうかという点について、もう少しお聞きをしたいと、こう思っております。
  14. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 先般お答えいたしましたように、漁業協同組合で現在信用事業を営んでおります分につきまして、その中から預貯金の状況とか、あるいは債権の管理能力を持っている常勤役員がどれだけおるか。そういったようなファクターをとらえてまいりまして、そうして今度の一定の貯金残高がある、あるいは貸し付け金額の残高がどれだけある、組合員の水揚げ高がどれだけある、あるいは常勤役職員がどれだけある。そういうものを大体ファクターといたしまして、金融機関として指定するにふさわしい信用事業を営む漁協を指定していく。こういうことにいたしておるわけでございまして、信用事業を営むもの全部をすぐそのまま金融機関に指定するというわけにも、これは信用事業でございますので、経済的基礎の確立している、そして管理能力のあるという面から選んでいこう。こういう考え方でございます。いわゆる業兼漁家で農業等を営んでいるという面で、二重に漁業協同組合に入っているとともに農協にも入っている面もあろうかと存じますが、そういう面がございましても、信用事業を営む漁協を金融機関として指定するということは、やはり本来の主業が漁業である現状に即しまして本来やはり漁協を中心にやるべき漁協の資金の融通でございますので、そういう面については、漁協を中心にやっていくべきじゃないかとわれわれは考えるわけでございますが、漁協、農協等からも借りておるという面がございまして、その面の摩擦が起こらないように、われわれも具体的にその地区々々によりよく検討して指導してまいりたい、こういうように申し上げておく次第でございます。
  15. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 この年次報告を見ますと、浅海養殖業というのは、生産の向上といいますか、他の漁業と比べて非常に伸びが大きいと思うのです。特に浅海養殖業の中でも、ノリ、カキの中で特にノリの生産量も多いし、したがってこの生産額その他も非常に多い。だからその漁家の所得漁業所得が多くなっておるわけです。結局漁協の経済的なゆとりといいますか、従来は技術的にも非常に劣っておりましたし、あまりよくなかったのですけれども、最近の技術の向上によって漁協の運営というのは非常によくなり、しかも余裕が出てきた。したがってそういう意味から信用事業を開始したいという空気が相当これに刺激されて起こるんじゃないか、こういうように思うのですが、そういう点はどういうようにお考えですか。
  16. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) ノリ養殖業等は非常に最近伸びておりますことは、御指摘のとおりでございます。特に千葉県を中心にした関東なり、東北地区、それから伊勢湾を中心にいたします三重なり愛知県それから瀬戸内、それから有明海、それから玄海、こういったところでノリ養殖が非常に大幅に発展を示しております。で、ノリ等につきましては、やはり従来なかなか共販に乗らないという点もございまして、特に有明海あるいは玄海あたりからこれを共販に乗せようと非常に努力いたしておりまして、いまそういう面で資金の融通等の必要も出てくるわけでありますが、そういう面の資金の確保というものは、信漁連なりあるいは農中から系統的に流していく、こういう建前になっておるわけでございます。そういう面でこれはやはり生産物を共販するという点、そうして資材は共同購入する、こういった点がやはり組合運動としては重要なことと思いますし、そういう面の助長ということは指導してまいりたい、こういうように考えておりますが、これが従来の農協とどういう関係にあるかということの詳細は、まだわれわれはつかんでおりませんけれども、農協からどういうような金融が流れておるかということをよく調査いたしまして、やはり共販なり共同購入という共同販売事業を伸ばすに必要なことは申すまでもないことでございますので、そういう面につきまして、それに必要な資金の手当てというものをいたさなくちゃならないと思います。これまでノリ等につきましての保証というものは、実績はほとんどなかったわけでございますが、今後そういう必要があれば、伸ばしていく、こういうことで進みたいと思います。特に農協等との摩擦というものは起こらないものとわれわれは確信しておるわけでございますが、具体的にはよく調整してまいりたい、こう思っております。
  17. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 農協というのは、だんだん合併が促進されて、かなりその一町村一組合というように非常に整理統合が進んできたわけですが、ところが特に有明海をとりますと、漁協は非常に細分化されてきております。特にひどいのは、一町に四つの漁協があるというような、そういうところさえある。したがいまして、まだノリ漁業が収益が非常に低かったときには、農協から資金の融通を受けて、それで着業していく、こういう例が多かったのですが、こういうことになりますと、農協との関係において、細分化されておりますから、それが、少し余裕が出てくると信用事業をやるのじゃないかという危険が考えられるわけです。  そういう場合に、漁協の整理統合といいますか、そういう指導と、そのいまおっしゃった信用事業を開始するのじゃないかという危険性、そういうものとの関連を、どういうように見ておられるか、どういうようにこれを指導していこうと考えておられるか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  18. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 漁業協同組合の合併状況は、本日配付いたしました資料の六ページに、これは渡辺委員の要求でお配りしたわでございますが、最近の分を掲げてございます。  これは漁業協同組合整備促進法が制定されて以来、同法によって合併奨励金の交付の対象になったものを掲げたわけでございますが、こういう合併奨励金の交付の対象にならなくても、自然的に合併を促進している面もあるわけでございますが、とりあえず整備促進法に基づいて合併をいたしたというのが、三十八年度までで関係組合数が三百三十、件数で百二十、三百三十の漁業が百二十の漁協に統合整備合併した、こういう表になっております。  こういうことで、われわれといたしましても非常に規模の小さい漁業協同組合があるということは、これは一面において、そういうものがやりまする経済事業あるいは信用事業といったものが、どうしてもやはり経済基盤が薄弱であるということで、購販売事業も不十分でございますし、なお、信用事業などということも、なかなかできないのではないか、こういうようなことで、まず基盤の規模の拡大、財政経済の基盤の確立ということが、協同組合運動を指導しますには大事なことだと思います。  そういう意味で合併の奨励はいたしておるわけでございますが、農業と多少、やはり漁業におきましては、魚種なり地区によりまして自然的な条件、それから、それがその組合で組合員が営んでおります漁業の種類別、そういったことで、農業よりも、やはり合併の困難な面も多いのじゃないか、こういうふうに考えられるわけでございますが、そういう障害を乗り越えて、でき得る範囲で合併を進めていきたい、こういうように考えておるわけでございます。そういう面で、やはり新しくそういう基盤が確立してまいりますれば、購販売事業をやります上におきましても、やはり信用事業もやったり、非常に、車の両輪ということで、組合活動が活発になるわけでございますので、信用事業も、そういう面から開始しようということについては、われわれとしても、もちろんこれは促進すべきものと思って指導しているわけでございます。
  19. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 前の国会の政府委員の方の答弁に、この農協を合併する指導について奨励金を出す、今まで五方円だったのを十万円にした、こういうお話があった。まあ倍増したって、わずかに十万円ですから、これで合併が急速に進展するとは思われませんけれども、私の見るところでは、たいした効果はなかったんじゃないかと思うのであります。  というのは、現実に、さっき御質問いたしましたように、有明海に、特に福岡県側をかりにとりまして、海岸線は四十キロ以内だと思うのですよ、その四十キロ以内のところに二十三の漁協がある、二十三ですね。その二十三の漁協が漁連を作っているのですね。これはまあ、ほかのところとちょっと違って、ひどいと思うのですけれども、なかなか合併の機運が起こらないわけです。なぜ起こらぬかというと、非常に有明海におけるノリ事業というのは近来いいんです。特に、まあこれは農業でも漁業でも、そうでございますが、一方において不作が起これば、一方では非常によくなると、こういう宿命的なものなんですね。したがって、今年は千葉県あたりのノリ漁業が非常に打撃を受けたと、こういうことになりますと、需要供給の原則から、有明海のノリというのは非常に景気がよろしいということになる。で、収入も多いと、こういうことで、なかなか合併ということが実現しないわけですね。かえって細分化をするという傾向さえ見えるわけです。  ですから、おっしゃるように、統合をして信用力がついたら信用事業させるということをおっしゃっていますけれども、すでに、その細分化された漁協が、かなりの経済力を持ってきて信用事業を起こすのじゃないかと、こういう心配を持つわけです。こういう意について、非常に、まあ特殊地帯というまではいきませんけれども、そういう地帯について、一体どういう御指導をなさっていかれるのか、その点、ちょっとお聞きしたい。
  20. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 先ほど合併奨励金としては、国から出すのが大体十万円でございますが、県から十万円ついて二十万円ということで合併の奨励金になるわけでございます。これは大体、農協の合併奨励金と同じ程度になっていると思いますが、これはやはり、この金がもらえるから合併するというのじゃなしに、やはり基盤として経済的にも考え、また、組合運動の精神にもやっぱり目ざめて、そうして組合を合併しようと、そういうときに、この合併奨励金が促進剤を果たすと、こういうような形でございますので、やはり基盤たる漁協の組合員の自覚というものが一番大事だろうと思います。そうして地理的なり経済的条件が合併に熟してくるという場合に、合併奨励金というもので促進していく、こういうことに相なろうかと存ずるわけでございます。  なお、御指摘のように有明沿岸のノリ養殖業というものは、近年非常な急速な発展を示しておりますし、最近のノリの価格の上昇という面もありまして、養殖漁家の経済は非常に好転しているということは言えるわけでございまして、その面を反映いたしまして、漁協の経済的な基盤も固まりつつある、こう思いますが、要はやはり、その今までのノリの取引形態というものが、個々にその問屋等を得るといったような面で、非常に不合理な面もあるわけでございますが、そういう面につきまして、われわれといたしましては、やはり共販体制を固めていくという指導をいたしておりまして、一括してこれを漁協なり、あるいは北九州のノリ養殖漁家の協議会という、漁連の協議会というものを作って、そこで問屋と入札の方式で共販体制を固めていく、こういう指導をしてきたわけでございます。やっとこれが、軌道に乗りつつあるという状態で、まず、やはり共販体制を固めていくということが先決だろうと思います。そういう面で指導もだいぶ徹底してきて、共販体制が固まりつつあるわけであります。  そういう面から漁協の経済力の育成というものもやっていこう。そうすれば、やはり資材の共同購入という面も徹底してまいりまして、いわゆる共販事業を中心にして漁協が経済体としていける。そういうことが言える。そういう面におきまして漁協の分散というよりは、やはりこういう面では統合して、経済がよりよいほうにいったほうが販売面でも有利でございます。それに即応して信用事業も考えなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
  21. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 お説はまことに、そういう方向にいけばいいと思うのですが、実際問題として、長い間かかっているのだけれども、なかなか統合、合併というのはできないのですよ。したがって、そういう意味から、一方において生産も上がってくる、技術も進歩していく。そういうことになると、だんだん従来からやっていた共同漁業権ですか、採貝業をやっていた連中たちは、やるところがなくなって、漁場がなくなっちゃって、そうすると細分化されておりますから、なかなかその採貝業をやっていた連中たちが、今度はノリ漁業に転換しようという場合に、そういう措置を組合がしてくれないわけですね。したがって、その結果としてノリの密漁というのが、直接の原因とは思いませんけれども、いろいろな複雑な条件が原因になって、そういう密漁というのが最近は非常に多い。そしてまた、そういう連中たちがノリがやれないものですから、さらにまた細分化して漁協をつくろうという、こういう動きさえあるのですね。ですから、こういう点については、抜本的な方法を講じてやらないと、かえって、いまの信用事業などを早く開始して、それでかえって政治的な、経済的な紛糾にまで発展するおそれがある。こういうように私は、事件のあるたびに痛感するのですが、そういう点、もっと抜本的な措置といいますか、方法というのはございませんでしょうか。
  22. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) ノリの養殖は、区画漁業権によって営んでおるわけでございまして、これは協同組合が中心になって区画漁業権の免許を受けると、こういうような形になっておるわけでございますが、なお、漁場等の拡張というようなものにつきましては、地区の漁業調整委員会で、そういう面の調整をやるということがたてまえになりまして、十分そこら辺で調整いたしておるわけでございます。  なお、新しい漁場の開発というのは、技術が非常に進んでまいっておりますので、いままでの技術では、なかなかノリの栽培等が困難なところも、技術の進歩で新しい漁場が開発されていくという面もございます。そういうことを推進しようというのが、いわゆる沿岸漁業構造改善事業でございまして、その中で、養殖業の新技術の開発ということも取り上げて、いろいろ漁場の改良なり開発をやる。それからやはり同じ地先におきまして、技術の進歩によりまして、生産性の高いノリひびといったようなものの導入をはかって、新しいノリ漁業の進展をはかるという点もございますが、そういうような点の調整は十分とれるようにという指導はいたしております。  御指摘のような点がまま起こりやすいかと思いますが、そういう点については現実の問題といたしまして非常にやはり、たとえば有明海なら佐賀、熊本、福岡等との関係におきまして、問題の起こらないように処理いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  23. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうも地域的なことばかり申し上げて、おそれ入りますが、根本は漁協細分化を防ぐという名目で、従来漁民に与えられた固有の権利と見られていた各自が漁業を営む権利、これに制限を加えて漁協の共同管理にした、それが区画漁業だと私は思うのですね。特にノリ・カキの養殖業には、それを適用されておるじゃないかと一そうすると漁業法の骨になっております漁民の平等と民主化の思想というものは、ちょっと考えると、そういう方向に向いておるように思われるけれども、何か現実を見ると、それとは逆に零細な漁民を漁業から締め出しておるのじゃないかと思われる節があるわけです。  というのは、三十日以上九十日までですか、漁業をやるというのは、それが九十日以上百二十日となって、それを正組合員にする。こういうことに引き上げられたものですから、それで漁協に加入するという機会も、だんだん阻害されてきた。したがって、なかなか正組合員にしない、準組合員にしておく、こういう措置がとられますから、結局正組合員にならなければ、本法でいうところの組合員として取り扱いを受けないわけですね。そうすると金融の道を制限されておる。制限されておるというよりも、金融がこの法律によっては救われない、極端に言うと救われないということになるのじゃないか、こういうことになると思うのですが、そういう点がありますから、ちょっとくどく私はお聞きしたわけです。そういう点について今後どういうようにお考えか、もう少し聞きたいと思うのですが。
  24. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のように、先般の水協法の改正で組合員資格三十日というのを九十日以上、こういうことに引き上げましたわけでありまして、その際、非常に論議があったわけでございます。これは零細漁民の切り捨てになるのじゃないかというような御議論があったわけなんでありますが、われわれといたしましては、やはり漁業に専業する君をもって組合員にしていくというのが必要なんじゃないかと思います。特に、いま御指摘のありました有明等のノリ養殖の漁家につきましては、やはり先ほどから申しますように、漁場が非常に狭いというような画があるわけでございますが、そういう断は、やはり先ほど申しましたように構造改善事業等で防波堤をつくって漁場をつくるとか、あるいは沖合いに出す場合に係留施設をつくる、そういったような考え方でノリの漁場の開発、改良という面を進めていきまして、ノリ養殖漁家の経営規模を拡充していこう、こういう考えでございます。  なお、ノリ養殖漁家は、大体九十日以上はノリ養殖業に従事し得ることが確実でございますので、零細であるということだけで組合員資格がなくなるということはないように現実はなっているように聞いております。
  25. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 現実には、確かに御答弁のとおりだと思うんですが、しかし、浅海養殖漁業地帯のノリ地帯というのは、特に遠浅の地帯が多いわけですね。有明海は干拓の地先がノリ漁場、こういうことになる。したがって、農業兼業が非常に多いということですね。しかも陸地が平坦でありますから、農家においても、かなり広い範囲の農業をやっている。広い範囲といっても、かなりの水田を持った農家が多いわけです。そうすると、農業所得の多いものが、現在こう見てみると、統計等を見ていると、漁業所得も多い。こういうわけで非常に力が強くなっているわけですね。力が強いというと語弊がありますけれども、かなり経済力がよくなってきているんです。そうすると零細な、さっき申し上げましたような採貝だけを業にしてやっておった人たちが、全く締め出されちまうという結果になっている。で、ノリ業の、ノリ採取の労賃かせぎといいますか、賃金かせぎに転落しているというのもあるわけです。  そういうものもやはり、いまおっしゃるように、ノリ漁業期間は、九十日以上の就労ができますから、それまた、漁業に九十日以上の就労ができるというふうになるわけですね。そういうものをも加入しようといっても、決して加入させないという非常に締め出しが多いわけです。で、法律としては、そういう点についても、非常にいろいろな配慮がなされておって、民主化のためには漁業調整委員というものを選挙する。その漁業調整委員が、公平な分配などをやってくれる、こういうことになっているんですけれども、しかし、その漁業組合の組合長が調整委員にほとんど立候補するわけですね。当選する。ですから、学識経験者などが一人や二人おっても、そういう公平なことがあまり行なわれないという、こういう事態が現実なんです。そういう点をもっと注目されて、零細漁民というんですか、そういうものを救済するという方法を考えてもらわなくてはいかぬ、こういうふうに思うんです。その点いかがでしょう。率直に私は申し上げているわけなんですけれども……。
  26. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘の点、ごもっともだと存じます。有明海におきましては、干拓事業が非常に進んでおります。干拓地の配分ということになりますと、やはりその付近の農業者の規模の拡大ということに資するとともに、やはり漁場の喪失等によりまするその付近の漁民にも恩恵の配分をする、こういうふうな方針で、いわゆるノリをやっておったものも、土地を得て農業を兼業する機会を恵まれるわけでございます。  そういうことで零細な漁民等につきましても、農業に参加し得る機会を片っ方では開いておるわけでございますが、二面やはりそういう零細な漁民につきましても、このノリ漁に専業し得る道は、先ほど申しましたような構造改善等によって漁場の改良をやって、そういう機会をつくってやるということと一緒に、やはり組合の運営というものをさらに指導して、民主化して、そういうものを排除することのないような配慮を県なりとともにやらなくちゃならぬ、そういうふうに考えております。
  27. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私の言っておるのと、ちょっと御答弁と食い違いがあるわけです。というのは、今から干拓やって、それを与えて、それでやりながら漁業をやる、農業漁業と両方やって拡大していく、こういう直接のことを聞いておるのじゃないのです。もうすでに定着して農業をやっておるわけですね。その定着して農業をやっておる沿岸の兼業の漁民というのは、かなり農業所得も大きいわけです。したがって、経済力ももちろんかなり強いわけです。封建的なんですから、そういう意味で有力な力を持っておる。ですから、そういう人が漁協の組合長になる。そうしてまた、これが漁業調整委員に当選しておる。こういうことになりますから、零細漁民というのは、いつでも締めつけられる傾向にあるわけですよ。なぜかというと、御存じのように漁業調整委員というのは、待遇といいますか、収入というのが非常にないわけですね。ないわけじゃないでしょうけれども、非常にわずかなものなんです。したがって、零細漁民が調整委員等に立候補するということも、まことに困難なわけです。そういうむずかしい面も持っておるわけです。  したがって、お答えのようなことには、なかなかならないわけなんですね。この点は、いつまでもやりとりしておってもきりがないと思いますから、この辺でやめますけれども、もう少しあたたかい自で、そういう点をひとつ考えていただきたいと、こういうふうに思うのです。そういう点等、もう少しきめのこまかい御指導をお願いしたいのですが、何かいい方法をお考えでしょうか。
  28. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) われわれが配慮いたしております点は、すでに区画漁業でノリをやっておる養殖漁家について、これが細分化され、零細化されるということを防止するということが一つあるのでございます。これは先般の改正でも、そういった漁業権の行使について、組合でいろいろきめて、そういった零細化の防止に資するように、こういうように考えておるわけでございます。  すでに零細な漁民についても、その漁業権のいわゆるノリ区画漁業権の行使につきまして、さらに民主化するようには、組合、県等を通じまして、一そうの指導はやっていくように努力したい、こういうように考えます。
  29. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは先を急ぎますが、次に会員たる漁協の組合員の債務を基金協会が直接保証し得ることに今度はなっておりますね。そうしますと、いままでお尋ねしたことと非常に関係があるわけなんです。特に漁協の組合員の中で経済力もあるし、俗にいう有力なる組合員が、政治的に基金協会等と話をして保証を求めるという結果になりはしないかという心配を持つわけです。そういう点の心配はないわけでしょうか。
  30. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 有力な組合員に保証が傾向するおそれはないか、こういう御指摘でございます。保証制度というのは、そういった零細な漁民で普通の融資では担保力等の点で、なかなか金融ベースに乗りにくいという面に対しまして、協会が保証をして融資の円滑化をはかるという制度の趣旨でございまして、むしろ有力な方は、資力もあり、経済力もあるわけでございまして、保証の対象としては、むしろ後順位になろうかと存ずるわけでございますが、それはやはり運用面におきます協会等の指導よろしきを得なければいけないと思っております。そういう面の指導は十分いたしまして、ほんとうに資金を必要とする資力のない漁民に保証によりまして資金が融資されますように、そういうことをわれわれは指導の根本として進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  31. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 農業においても、中小企業においても同じでありますが、特に漁業においても大差はないと思うのです。借りたい人——借りてやれば経営ができて、助けられるのじゃないかという人には、なかなか融資が行なわれない、そういううらみがあるのです。というのは、おっしゃるとおり、担保力が大体ないというか、非常に少ないという人、そういう人には、なかなか安心して貸せないという点もありますから、保証もなかなか困難だ、こういうことになる。  そうすると零細漁民に対しては、漁協自体で保証を一括して求めて貸さないで、逆に、これは私も少しどうも考え過ぎではないかと思いますけれども、面接組合員から基金協会に保証を求めさせて、そして金を借りる。そうすると結果的に、いやあんたには、どうも担保万がないし、あまり安心して貸せないからというので、かえって金融を締め出す方法に用いられるのではないか、こういうように、ちょっと思い過ぎだと思いますけれども、そういうふうに考えられますけれども、いかがでしょう。
  32. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 小宮先生は、農協の運営に実際当たられた方で、われわれといたしましても、組合の運営という面においては十分配慮しなければならぬと思っております。  実は、今度漁業協同組合を金融機関に指定いたしまして、その組合員が、直接会員でなくても保証ができるという道を開きましたのは、結局零細漁民でございまして、従来のように、その組合員が出資して直接会員にならないと保証の利益に均てんし得ないという面があったわけでございますが、そういう零細漁民に、会員になるために出資させるということは、現実の問題として非常に困難な問題があるわけでございますので、今度の改正は、そういう漁民に対して、保証によって融資が円滑にいくという道を開くという趣旨でございまして、そういう意味で、組合が会員として出資をしておりますれば、その組合員に保証がとれる。組合といたしましても、自己資金なり、あるいは系統資金を組合員に貸す場合に協会の保証、さらに特別会計の再保険、こういう安全な道が開かれるわけでございますので、組合といたしましても、組合員に貸す場合には安心して貸せる、こういうことになるわけでございますので、御指摘のような脚はまあまあないと確信いたしております。
  33. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういうことがなければ、非常にいいと思います。さらにまた、水産加工業協同組合、その連合会、それからまた、組合員である水産加工業を営んでいる者、これにも、さっきと同じような方法をとられるわけですね。  そうすると、私がまた、これは思い過ぎかもしれませんけれども、資金に乏しい者、それから資金の調達に弱い零細な漁民、これはたくさんいるのです。そういう者は、いままでもやはり金融には縁がないというか、締め出されたといえばいえないことはないわけです。そういう者に対して、今度は、本法の改正によって恩典を与えて円滑にするという御趣旨だと私は思うのです。そのとおりにいけば非常によろしいのですが、しかし、そういう担保力というか、弱い零細漁民、この者には、前からもありますように、有力な人が金を貸すのです。資金の融通をしている。それからまた、前借をやるわけです。前借というか、金を先に貸して、仕込みのためにやっているわけです。そうすると、かえってそういうことで、本人が直接保証ができるという道は開かれたけれども、なかなかそういう円滑なことが行なわれないで、かえって逆用されて、零細漁民に加工業者等が金を融通して、だんだんノリ小作といいますか、小作者的な存在に零細漁民を追い込んでいくのじゃないか、こういうように、思い過ぎかもしれませんけれども、そういうようなことを考えるのですが、そういうことはないでしょうかね、絶対に。
  34. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 水産加工業者にも、今度制度を改正いたしまして保証の道を開く、こういうことは、結局水産生産者と加工業者が密着いたしております。あるいは自分で漁撈によりまして、とりましたものをみずから加工する面もございましょうし、あるいは漁村等におきまして、漁民から水産物を買い入れて加工する業者もあるわけでございまして、両面とも保証の道を開きたい、こういうふうに考えております。加工業者につきましても、従業者四十人以下といったような法人組織でございましても、小規模のものを対象にしていこう、こういう趣旨でございます。  御指摘のように、加工業者から、零細漁民が前渡金のような形でいろいろ融資を受けるという面もあろうかと存じます。それは先ほど私が申しましたように、やはり生産物は、漁民といたしまして生産物を処理いたします場合に、協同組合の組織を通じまして共販していくということが非常に大事なことでございまして、われわれとしては、組合を通ずる共販組織というものを確立して、そういった面の直接の加工業者とのつながりという面は改善していったほうがいいのじゃないか。これは農業においても同じことがいえると思います。ずっと戦争の前でございますが、肥料業者と農業者が結びついて、だんだん地主化していった。そういった面を農地解放で断ち切っていったわけでございますが、漁業においても、そういう面があろうかと存じますが、そういう面は、先ほどから申しておりますように、区画漁業権の正当な行使を組合によって自主的に定めていくというような規定の改正もありますし、また組合といたしまして、共販組織にのせて、そういう面のめんどうをみていく、そういう根本的なやはり態度で進まなくちゃならんかと存じますが、御指摘のような点は起こらないように、十分注意してまいらなければならぬと思います。
  35. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 お話しのとおり、ノリの場合は区画漁業権、したがって、零細漁民は漁業権管理者の支配を受けることが非常に多いのです。さらにまた、さっきお話しのように、共販体制をとっても、資金的に弱いのでありまして、零細漁民はどうしても前借金その他をやりたがるのです。したがって、そうなると、水産加工業者などに前借を受けて、だんだんそれが高じていけば、漁民が加工業者に支配されるという心配が非常に多いわけです。特にノリなどには、その感が深いわけです。そういう点は、いまお答えのように十分注意していただくということでありますから、今後、さらに御指導願いたいと思います。  次に、さっきもちょっと御質問申し上げましたが、ノリの養殖業がだんだん盛んになり、生産性が上がっていくと、共同漁業権だと思いますが、採貝業ですね。これがほとんどできないわけです。漁場がノリ漁場になってしまう。従来有明海においては、相当アサリであるとか、アゲマキ、タイラギ、赤貝、豊富な海産物があったわけです。それがほとんど最近はノリ漁場になって、採貝の漁場がないわけです。したがって、深海に行って、タイラギの養殖をやる。そうすると深海ですから、潜水夫を使わなければいかぬ。潜水漁業ですね。たいへんな資材と労賃が要るわけです。だから、零細漁民にはとてもできない。こういったような状況でございますが、そういう零細な採貝業等を今後こういう面で、どういうように救っていくか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  36. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この保証制度のほうから申しますと、そういう、業種によって保証するとかどうするとか、そういうことはないわけでございまして、出資をいたしておりまする協同組合の組合員であれば、保証が受け得る。そしてみずから出資して会員になるようなことのできないような零細漁民も、組合として会員になっておれば——私たちは、五十万円以下に最高限しぼりたいと思っております。非会員である組合員も、保証の道が聞けるということでございます。採貝、採草とか、ノリ養殖、そういう区別はいたさずに運用してまいるわけでございます。  なお、ノリの区画漁業権と、採貝、採草の共同漁業権の問題でございますが、これは免許に際しましては漁場計画を立てまして、漁場計画によって、その調整を進めていく、こういうことになりますし、漁場計画を立てますについては、知事が漁業調整委員会にその意見を聞いて、そういった面の調整をしながらやっていく、それによって免許する、こういうことになると思いますので、その段階で、十分そういう点の調整はしなくちゃならぬかと思います。  なお、一般的な傾向といたしまして採貝、採草と、ノリ養殖という点においては、同じ水面内を使用してやる事業といたしましての、生産性の高いものにだんだん移行するというのはやむを得ないわけでありますが、そういった場合におきまして、採貝、採草を従来やったものが、ノリの区画漁業権に参加できるような措置を県の調整委員会のほうでも配慮すべきものと、こういうふうに考えております。
  37. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 確かに、この法律では、そういう限定された、お話しのとおりだと思います。しかし、さっきから私が申し上げておりますように、零細漁民は金融に弱いのですから、組合員であるから、すぐさま基金協会にいって保証してくれといっても、なかなか困難です。そういう点で締め出しを食う、あまり利用の恩典にあずからないということになる、特にこの採貝業のタイラギでは、相当の資力が要るわけです。資金が要するわけです。だから、零細な採貝業をやっている者は、そういう資金の要る深海における養殖業というものは困難だ、ですから、これとかね合いに、ノリ漁業等に転換をしたい、そういう希望が非常に強いのです。  ところが、片一方において締め出しを食うというわけで、従来から採貝業者というのは、救う道がないわけです。救う道がないというと極端ですが、構造改善事業で近代化促進のための近代化資金があるじゃないかというふうにおっしゃっても、これもなかなか、担保力が弱いものですから、利用することができない、こういう面がある。こういう点は、もっと零細漁民にあたたかい手を伸べてもらわないと、ただ、制度はつくっていただいても、恩典にあずからない、また、漁業で食っていけなければ、どっかに転職をしろということになりましょうけれども、それもなかなか困難だ、そういう点をどういうように、総合的なかね合いもありますけれども、なかなか一言には答弁はできないと思いますけれども、何かいい考えはございませんか。
  38. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 制度の道は開かれても、零細漁民はなかなかそれに均てんすることが困難じゃないかという御指摘はごもっともだと思います。私どもといたしましても、やはり制度を改正いたしますれば、それを十分、そういう零細漁民にも均霑させるということで、制度の趣旨をよくのみ込ませて、そういう点についての零細漁民の要望が、組合に必ず上がってくるように、上がってきた場合に、組合としては先生がおっしゃるように、ボスがいてなかなか、そうはいかぬという面もあろうかと思いますが、それは、やはり組合の中におきます組合員の自覚が先決だと思います。組合意識に徹して、そうして組合は組合員の共同の利益のために経済行為等をやるといった組合運動の純粋な精神が、やはり自覚にあると思いますから、そういう面の指導というものは、従来以上にやりまして、制度の趣旨をよく零細漁民にも徹底させて、そうして組合の運営におきましては、いろいろと御指摘がありましたが、組合員が一部の有力者のために壟断されないように、指導をわれわれはかねてからやっておりますが、今後とも、そういう面に努力いたしまして、やはり組合それ自体が、制度的には民主化されてきましたが、運営も、事実上民主化されますように指導をしていきたいというように考えます。
  39. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 組合員の自覚自覚とおっしゃいますけれども、それは政府の上層におられる方は、それで通ると思うのですが、何か修身教育みたいな趣意書でも送っていただけば、それで事足りると思いますが、実際問題として、そう簡単にいかないのですね。  私は農業出身でもありませんし、漁業に対しても、そう詳しいわけじゃありませんが、実はそこに生まれたものですから、その成り立ちをよく知っているわけです。ところが、非常に紛争が多いのです。さっき申し上げましたように、福岡県側の有明海に二十三の漁協がある。大和という町があるがここに四つの漁協がある。一町に四つですよ。それから大牟田市には、これも四つあるのです。柳川にも二つか三つあります。こういうように、とにかくあの海岸線四十キロはないでしょう、おそらく。そこに二十三の漁協がひしめき合っているといえばいえるわけです。そういうわけで、それは共同管理をやっているわけです。ノリ漁業については。ところが、いわゆるこま割りですね、ノリごま割りというのが、県の指導としては、いま一世帯について五こまを大体限度として、労働関係からいっても、その他資金、資材の点からいっても、一世帯に五こまというのが、大体標準的なノリ漁業だろうというので指導方針にしているわけです。ところが、なかなかこれが守られない。奥さんも組合員である、おやじも組合員であって非常に封建的ですからね、組合員の自覚自覚とおっしゃっても、なかなかそこらの自覚ができないわけですよ。相当長い時間をかけてやらないとできないんじゃないかと思うのです。  ですから、私はさっきから、非常に地域的なことでくどくどと申し上げておりますけれども、しかし、私は大なり小なり日本の漁村の実態ではなかろうか、こういうふうに思うのです。そこでことさら申し上げているわけです。そこで簡単なことを御披露しますと、組合の理事を選挙するでしょう。そういう場合に部落で推薦するわけですね。五人が理事だと五人選挙する。各部落で一名ずつ推薦してもらう。そうすると選挙というのは、型どおりに議事録に残す。こういうやり方ですね。ところが、あるときおれは何といっても、部落で推薦がなかろうとあろうと、おれは出るんだといって出ちゃった。そうしたら五つ部落があるのに、一人分ふえたわけで六人になった。定款によれば、民主的に選挙しなければならないから選挙したわけです。ところが、部落から推薦した人が落っこって、おれは何が何でもやるんだという人が当選してしまった。そこでたいへんになった。どういうことになったかというと、選挙管理委員会みたいなものを作りまして、それで同じ部落から一人出すということで、当選はしたけれども、得票数は最下位だった、最下位だから、部落から一名ずつという大体申し合せだから、お前引けといって引かしてしまった。そこで組合員から異議が出まして、それで県に異議の申し立てが行なわれたわけです。ところが、相当紛糾がありましたけれども、まあ漁協の平和のためにということで引き下がってその場はおさまったわけです。そのときに県の水産課等に、今後はこういうことをやりません、民主的な選挙をやりますと、こういう一札を入れておさまったのです。ところが、翌年選挙したときに、どうしたかというと、一人一人を無記名投票をやった、一名ずつ。それで結局、結果としては、各部落出身が一人ずつ、また出るという結果になった。理事を一名ずつ無記名投票で、五回やるわけですね。こういう方法でやった。こういう所があるわけなんです。  ですから、おっしゃるように、組合員の自覚を求めても、なかなか現実には、うまくいかない、こういうことになると思うのです。そういう点がありますから、私はくどくお聞きして、こういうりっぱな組合員に直接保証の道を開いていただいても、なかなかそういうわけにはいかないということをお聞きしておるわけです。こういう点について、もっと……法律じゃとてもできませんけれども、指導というものを、もう少し強めたほうがいいのじゃないかというふうに思います。その点、どうでしょうか。
  40. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 御指摘のの点は、現実の問題としてあろうかと存じます。やはり組合の根本的な問題は、そういった組合員の自覚にあることは申すまでもないと思いますし、またそれは、そう短兵急にはいかない、長い目で指導していかなければならぬということは私は感じておるわけでございますが、制度を改正いたしまして、それが零細漁民に均てんする機会がないというようなことのないように強力に、この点は県を通じまして指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうも時間がだいぶ長くなりましたけれども、もう少しですから、お聞きしたいのです。  そういうように非常に封建的で、組合員の自覚を求めても、なかなか民主的にいかないという面もありますが、その反面また、こまの配分について、実際は隠し田というのがあるわけです。その隠し田というと、ちょっと私説明に困るわけですけれども、配分をして残りごまができるわけです。その残りごまを、これを組合員に入札をさせるとか、そういう方法で、その金を組合の運営に使うと、こういうようなことがときどき暴露されるわけです。交際費に使ったとか、あるいはいろいろ活動費に使ったとかね、そういうように暴露される。そうすると、また、そこにいろいろな紛糾が起きてくると、こういうような状況があるわけです。それでこれはどこでも同じだと思いますが、そういうことによって有明海等においては、暴力団とのつながりというのが出てきておるのです。非常にややこしいわけなんです。これはひとつ、現実を御調査になっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  42. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) この漁業権の行使なり、あるいは組合の運営なり、われわれといたしましては、組合の監査なり、指導監査とか、あるいは経営の診断、そういう面も県を通じてやっておるわけでございます。そういう面で把握できる面は、十分把握したいと思います。また御指摘のような点が非常に起こっておるということでございますれば、われわれといたしましても調査して、そういうような面についての是正の措置は講じていきたい、こういうように考てえおります。
  43. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大体、切りのいいところでやめさしてもらって、また、あとこの次にしたいと思いますが、その暴力団とのつながりというのは、密漁をやる。そういうことをやりますから、その密漁を今度は取り締まる方法について、最初は暴力団に依頼して、それをやったわけですね。ですから、だんだん関係がついちゃうのですね、組合の幹部と。そうすると、その暴力団が、今度は逆に組合のそういう、いろいろなスキャンダルのようなものをつかんだり、いろいろなことをやって、逆に今度は、こまをおれによこせというふうに逆に出てくるわけです。それで零細漁民には配分されないで、今度は暴力団がこまをもらいとっておるわけです。そのもらいとったこまを今度は、零細な漁民に一こま三万円ないし五万円でこれを売りつけておる、こういう事実がある。これは私は有明海だけじゃないと思うのです。そのほかにも、そういうようなケースがあるのじゃないかと思うのですが、そういうことが行なわれておる。  こういう点は、いろいろな方法で密漁の取り締まりが行なわれておりますけれども、これは徹底していない。こういう点もやはりあわせて、ひとつ十分御調査をいただきたい、こういうように思うのです。ここにもありますように、漁業の取り締まりの指導ということが、ここに書いてございますね。漁業の取り締まりは、零細漁民を保護することを主眼としておるというようなことがありますが、あまり零細漁民は保護されていなくて、かえってそういうものに拍車をかけて締め出されておるという傾向がある。そういう点ですね。それから密漁の原因というのは、さっき申し上げましたように締め出しを食っているから、やむを得ず今度は許可を受けて落ちノリを採集するわけですね。免許を受けて落ちノリを採集しますね。——免許を受けて採集する場合はございませんか。
  44. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 免許ではない。
  45. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 許可ですか。
  46. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 落ちノリの点は、私もまだ明確に実態を承知いたしておりませんが、ひとつ調査してみたいと思います。落ちノリ採集について、あるいは県でいろいろな措置を講じている画もあろうかと存じますが、こういう点、気をつけたいと思います。
  47. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 これをこの次までに御調査をしていただきたいと思います。これをこの次に聞きたいと思いますが、その落ちノリは、県知事の許可を受けてやるのがあるのです。そうすると、そのこまとこまとの間の、これを潮通し、あるいは舟通しともいいますね、ここに網を張って、流れてくるノリをここで拾うわけです。この落ちノリ採集は、これを舟を持っていって張りますね。それですから相当な収穫をあげる場合もあるのです。ところが、九十日以上漁業をやっているという者は、漁民としての資格を一応認められておるわけですね。この連中たちが、今度はノリを拾うわけです。再開はできないわけですから、ノリを拾う。そういう場合に、網を使えば違反になるわけですから、それで糸を張るのですね。その糸は、たこ上げに使うようなああいう糸ですね。あの糸を六十センチあるいは一メートル幅くらいにずっと張る、その糸にノリがつくのですね。それを拾って漁業やる、こういうのがあるわけです。  ところが、さっき申し上げましたように、暴力団が漁場へ入っていくわけです。そうすると、そういう落ちノリを拾っておる者を恐喝して——一漁期三カ月以上ありますね、この漁期に、二万円なら二万円という金をとっているのですよ、こういう事実があるのです。いわばなかなか複雑怪奇な点がございます。そういう点、こま割り等について、あるいは落ちノリの採集については、もう少し詳しい点をひとつお聞かせ願いたいと思います。  それについて有明海においては取り締まりを警察、それから海上保安庁ですね、こういうのがやっているのです。それともう一つは水産試験場がありますから、その試験場が指導の意味で、これまた監視をしております。そういう三者でやっておりますけれども、これに漁協が船をつくってやっているのですよ。船をつくって、これを海上保安庁に貸したり、警察に貸したり、あるいは水産試験場に貸しているのですね。この間、その進水式をやったのです。百七十何万かかって、りっぱな船をつくった、それを漁協がつくって、それを貸して、これを取り締まる、こういうことをやっている。私は何か、そこらに割り切れぬものがあるわけです。ですから、もうちょっと内容について聞きたいこともございますから、いまの密漁の取り締まり、落ちノリの採集、こま割り、こういうものについて、もうちょっと御調査いただいて、この次、また開きたいと思いますが……。
  48. 庄野五一郎

    政府委員庄野一郎君) 承知いたしました。
  49. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは、まだ私の聞きたいところ、十分わかりませんから質問残しまして、この次の機会に聞かしていただきたいと思います。
  50. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 速記を始めて。  本日は、これをもって散会いたします。    午後零時四十六分散会