運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-02-13 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十三日(木曜日)    午前十時十分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君            森 八三一君    委員            岡村文四郎君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            山崎  斉君            大森 創造君            小宮市太郎君            矢山 有作君            安田 敏雄君            牛田  寛君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林大臣官房予    算課長     太田 康二君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農政局長 昌谷  孝君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 桧垣徳太郎君    農林省蚕糸局長 久宗  高君    農林省園芸局長 酒折 武弘君    林野庁長官   田中 重五君    水産庁長官   庄野五一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (農林水産基本政策に関する件)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  農林水産基本政策に関する件を議題とし、前回に引き続き、赤城農林大臣に対し質疑を行なうことにいたします。
  3. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 すでに私の党からは渡辺委員から総論について御質問がございましたので、私は少し各論といいますか、二、三の問題についてお尋ねしたいと思います。  まず、農業近代化ということ、あるいはまた農業生産性向上ということ、いずれもわが国農業の向かうべき方向としては、これは何人も基本的には異論のないところだと思うのであります。それはまた歴史必然性でもありましょうし、また当然の成り行きとも思います。しかし問題は、これをいかなる形で、どんな方法で実現していくことができるか、こういう点ではないかと思うのです。農業生産をどういう形にもっていくか、農業近代化をどういうイメージをもってやるか。農業基本法制定以来、自立経営農家近代化をはかることが基本になっておるように思うのでありますが、農地価格を見ましても、農業収益関係ではないのでありまして、全くないとは言いませんけれども、大部分重化学工業中心にした経済成長政策の中で、工場を拡張するとか、あるいは新設をする、または役所をこしらえる。特に新産業都市に指定された地区であるとか、あるいは工業開発地域に指定を受けたという、こういう事態の中で、農地価格が急激に値上がりをしておるのであります。それが自立経営農家をつくる政策とぶつかっているわけです。一坪幾らという高い地価になっておる今日の段階では、とても不可能ではないか。農地とはあまり関係がございません養鶏であっても採算がとれないと言っております。自立経営農家など観念論にすぎないと、こういうように思うのでありますが、大臣説明ことばじりをとるわけではございませんけれども、一町五反以上層の農家が近年着実に増加したという根拠を、もう少し詳しく説明していただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまお話しのように、近代化とか、生産性を向上するということにつきましては、何人も異論がないと思います。しかし、その方法論の問題だと、確かに私もそういうふうに考えております。そこで、一町五反以上の農家が着実にふえつつあるということを述べた根拠は何かということでございますが、私どもは、やはり自立農家の育成ということを基本として農業政策を進めていくというのが至当といいますか、妥当だというふうに考えていますが、これにつきましても、いまお話のように、しからばどういう方法によるかということがあろうかと思います。何といたしましても、零細で、自己の危険負担において農業経営をやっておるわけでございますから、零細であるということは、いろいろの面で不利であるという農家の立場があると思います。そういう面におきまして、農家自身零細を脱却したいと、こういう意図がある。そういう意図から農耕地等拡大をはかろうという意図があることも、一町五反以上の農家が出てきたという一つ理由だと思います。  それからもう一つは、ひとつの価格政策とか、そういう価格支持対策等をとりましても、一つ言えば、米の問題をとりましても、零細でありまするというと、結局米の価格が上がったとしても、政府へ売り渡す米の量がほとんどないということでございますから、政府へ売り渡すというようなことのためには、耕地拡大し、生産を上げていくという農家自体の気持ちもありまするし、そういう一つ政策面から多くの米を売りたいと、こういうのが結果いたしまして、耕地反別もふやしていく、あるいはまた、機械化等によりましても、政府のほうで機械化を進めていく、機械化を進めておるけれども、耕地が少ない零細農においては、機械効率というものが、大きい農地を耕している人よりは薄い、効率が薄いと、こういうことでやはり農地拡大していくと、こういうような傾向もあると思います。でありまするから、一町五反以上の農家が着実にふえていくという理由は、端的に言いますならば、農家自身も第二種兼業は別といたしまして、専業的な農家でやっていこうということにつきましては、耕地拡大していこうという意図があるということ、その意図に沿って零細人々を切り捨てるとか、あるいはこれを無視しているというわけでございませんけれども、いま申し上げましたような価格政策をとりましても、零細よりは耕地等が広いほうが、価格政策の影響がより多く自分のためになるというように価格政策が結果においてはなっておるわけで、支持価格政策というものにもなっているわけであります。あるいは機械化の点におきましても、あるいは選択的拡大方向を進める点におきましても、専業農家としてやっていく上においては、耕作地拡大したほうがより有利だと、こういう観点に立って、私は一町五反農家が、一面においては第二種兼業等がふえておりますが、一面においては一町五反以上がふえている理由であると、こういうふうに考えます。ですから農家自体意図及び政府で行なっておるところの政策の大きな効果ではございませんが、そういう効果に沿うて徐々にふえていくだろうと、こういうふうに私は見ております。
  5. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 農林大臣の言っていることは、大体わかるのです。しかし、私は森部さんと同じように福岡県の筑後農村地帯にいるのですが、大体米つくりではまあかなりの成績をあげているところです。しかし非常に優秀な農家ですけれども、一・二ヘクタールの水田をつくっておって、大体年間六万円くらいの赤字になる、どうしても二ヘクタールないといかぬ、こういうふうに言っておるのです。だから意図として上げるということについては、これはそういう方向にあると思うのですが、しかし、その近代的な農業自立農家経営でやる場合には、まず労働力を省くためには、おっしゃるとおり機械を導入するということになる。その結果、過剰投資にならざるを得ない。機械、石油、電気などの価格農産物価格を比較して考えると、とても個人の経済力経営単位として成長する環境はいまのところ私はないと思う。近所の工場などへ通勤いたすような農民土地を手放さないで、これを大多数老人女性がどうにかやっていって、今日の経済を保っていくというのが大体情勢である、これが兼業農家が残らざるを得ない環境であろうかと、こういうふうに思うのです。その中で農業生産を高めることを真剣に考えなければ私はならぬじゃないか、こういうように思うのであります。農業人口を減らしていけば、そのうちに農家の脱農化が促進していく、これに対応して自立経営農家を育成していけば、農家所得倍増が実現するというこういう考え方は、まあ劣等生をほうっておいて秀才教育をすれば、教育効果があがるというような学校の校長先生のような信念じゃなかろうか。農業近代化が推進されて農業が青少年の夢を託するに足る農業となり、また農民が良質な食糧を豊富に供給するという重要な使命を果たすことがはたしてできるであろうかどうか。こういう点についてベテランの農林大臣である赤城さんにその信念を私はとくと承りたい、こういうふうに考えております。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私も小宮さんと同じような観点には立っているわけでございますが、農業就業人口を減らしさえすれば、それで近代化になるという結論に近いような考えは、間違っておると私は思うのであります。農業人口が減るとか減らないとかいうことを別といたしましても、農業生産性をあげるのには、技術面等におきましては、いまのお話しのような省力栽培といいますか、労力を節約していく、こういうことが生産性をあげる一つの要素でもあると思います。そのほかにもたくさんあります。ですから、農業人口を減らしていけば、計算上は少ない人口で総生産と割りますから、生産があがったような、形式的というか算術的なそろばんは出ると思います。しかし、それは農業政策の本体ではない。ただ私がこの所信表明で申し上げましたように、農業人口が減るということは、これは減らすということではなくて、事実減ってもきておりまするし、世界的に見ても減る傾向は、これは阻止できないといいますか、ある程度は何といっても減っていく傾向にあるのです。でございますから、農業人口が減るか減らないかは別としても、いろいろな農業政策は行なわなければならぬが、減っていくという情勢に対応すれば、なおさら近代化等を進めていかなければ、農村そのものは持ちこたえられないという情勢判断から見まして、農業人口が減るということは、近代化契機というか、結果において促進する意味にもなるということで、結果的に申し上げるので、初めから農業人口を減らせば農業近代化という、そういう安易なそろばん勘定で、いかにも生産性があがったということで農業政策が非常によくいったというように誇示するとか、そういうことを言うような気持も持っておりませんし、それは間違いだと私は思っています。ただ、現状農業人口が減っておるという現状で、これに対して後継者とか、しっかりした者を確保していかなければならぬということ、あるいはもっと農業近代化して手間に合うといいますか、そういうような農業であれば、人口流出量も少ないだろうしということは考えられる。しかし繰り返して申し上げますように、一つの、近代化をより以上進めなくちゃならぬという情勢に拍車をかけておる。でありますから、契機というか、そういう契機とはなる、結論的には農業人口を減らせば近代化できるのだ、こういう考え方ではないつもりで所信表明では述べたのでございます。そういう意味におきまして、どの農家もやはり自立を進めていきたい、また自分の生業に安定したいという強い希望をこれは持っておると思います。しかし、それがなかなかできないものですから、第二種兼業とか、その他流出というような現象が起きておると思います。じゃどういうことをしたならば、農家が安定していくかということでございますけれども、これは農業政策全体から手を打っていくという以外には、一つの手でこれをすればという工業面合理化みたいな形で農業というものはやっていけない、農業政策全体から考えていかなくちゃならぬと思います。ただ、いまお取り上げになった小さい農家問題等につきましては、やはり自立方向へ持っていくべく、あらゆる政策をそういうところへ集中していくと同時に、やはり共同化といいますか、どうしても自立のほうへ向いていくだけの資力の面や、あるいは経営面において欠くるところがあるといいますか、十分にできないというような面は、やはり共同化といいますか、そういう方向へ進めていって、いまの少ない労働力、あるいは弱い労働力老人とか女性の弱い労働力共同によって補っていく、こういう方向に持っていくよりほかにないのではないかと、こういうふうに考えております。
  7. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大臣の御説明、いまの御説明にも、前の所信の御説明にもありましたように、農業人口の減少が、すぐさま農業近代化に通ずるというように事態が単純でないことは、率直にお認めになっておられると思う。しかし、最近この農業人口が著しく流出傾向にあることもまたこれ事実でございます。で、流出人口圧倒的部分若年層で占められてはおりますけれども、高度成長対策のもとで、わが国農業もおのずから近代化を進めるであろうといったようなそういう観念論といいますか、そういうものが近代化ムードを助成をしているんではないかと、私はそういうふうに考えるわけです。しかし実際問題として、一方においては世帯主世帯をあげて脱農しているが、安心して他産業に転業し得ないところのいろいろな諸条件がございます。また他方、家族生活水準勤労者生活水準以下に切り下げて存続するというような、いわゆる家族農業労働平均を三人としておる、こういう経常のあり方は農業基本法第十五条にいう、自立経営ではないことになるのじゃないか。こういうような矛盾を今後どうしようとお考えになっておるのか、私はお聞きしたいのですが、特に池田総理大臣農業の革命的ということばを使われますけれども、近代化を真剣におやりになると、こういうように私は思うのです。それなら農業経営を根本的に再検討する必要はなかろうか。特に自主家族農業経営中心構造改善事業は、私はある意味で壁にぶち当たっているんじゃないかという感じがするのです。この際大臣もおっしゃるように、協業化といいますか、共同化の問題を取り上ぐべきじゃないか。ただいたずらに共同化ということばを、何かきらわれるような関係があって何か共同化については失敗ばかりを拾い上げていって批判するばかりで、そういう方法をとらないで、もっと財政的な裏づけのある建設的な指導を重点に置くべきだとこういうように私は痛感するのです。大臣のお考えをもう一度ひとつお聞きしたいと思います。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 共同化の問題につきましては、私は共同化せざるを得ない。いまの零細というか第二種兼業人々が相当ふえているんですからやらざるを得ない、また進めるべきだと思います。これは自立経営と大きな意味で私は矛盾しないと思うのでありますが、自立経営というのを非常にかたく考えて、自分土地だけについてすべてを自分危険負担でやっていくとこういうのが、自立経営基本ではありましょうけれども、御承知のように、農地法改正いたしましたときも、自立経営においても自分労力だけ、自家労力を主としてということになっておりますが、やっぱりそういう点も自家労力ばかりでなくほかの労力を入れてもやっていける、いわゆる企業的農業といいますか、企業的な農業であってもこれは自立農家だと私は思うのです。ある程度。同時に、大きな他産業等におきましても、経済の発達について株式会社とかいろいろないわゆるこれは一つ共同でございます。そういう面も発送しておるのでございますから、全然農業というものと離れての問題でなくて、共同化をしていくということは、共同化の全体がやっぱりお互いの自立の、これは耕地面積自立ではございません、一つの何といいますか事業農業という一つの業態としてのやっぱり共同しての、共同単位としての自立的のものだと。こういうふうな、たとえば株式会社というようなものとは、これは商法上の株式会社的なものとは違いますけれども、そういう意味は違っても、一つ共同単位としての、耕地面積を広げるという意味ではないが、農家としてふところぐあいにおいて自立していくというような方向での共同化なら、私は非常にけっこうなことで、これを押える必要もなければ、むしろ指導していきたい。財政面やその他でやっていくかどうかということになりますと、現在財政面等で特にそういうものに財政的な力づけをしている面はございません。指導面等におきましては、まあ農地法の改正などもいたしましたし、また県当局とか、農業関係技術員とか、そういう方面におきましてそういう指導は進めております。ただ共同化する意味におきましては、やはり従来の自分土地所有観念にこだわっている農家が非常に多いので、非常によくいっている事例もございます。それと同時にやってみてもやはり自分の従来の土地に対する観念とか、自分だけでやっていくという観念が非常にございますので、せっかくの共同経営的なものが途中で中止するといいますか、そういう例もございます。またいい例もございます。でございますので、いい例等は私なども、ほかのほうにもこういう例があるのだということを引例しまして、共同化を必要とするものにつきましては共同化を実際進めていくような指導をしていく。まだ指導も十分ではございませんが、しているわけでございます。
  9. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 時間があまりないわけですけれども、とにかく大臣のおっしゃるとおり、もう少し財政的な裏づけのある、きめのこまかい御指導をひとつしていただきたいと思います。  次に移りますが、米をつくったり、あるいは酪農を進められて乳牛を飼う場合に、まず農民考えますことは、米の値段はどういうことになるのか、牛乳やチーズは一体どういうように先行きはなるのか、貿易自由化される、関税が引き下げられるということであるけれども、政府はどういう価格支持をするのか、これが一番農民には問題であるわけです。  ところが、政府はこの大事な点は避けておられるのではないか。経営の小さいことが日本農業の一番困る原因だから、これを大きくするために構造改善事業をやるのだ、これを非常に声を大にされておる、こう思っておる。確かにそのこともございます。それはもうおっしゃるとおりなんです。しかし、私はまず農業をやって安心できる環境をつくることが政府政策としてまず重要ではなかろうかとこう思う。米価はこういうふうに支持するとか、畜産物についてはどういう価格対策をすれば安心してやれるとか、果樹についてはこうする、蔬菜はどうすると、このことが農民として一番必要であり一番やってもらいたいことでございます。日ごろ食糧は世界的に過剰になっておるので、何も国内で無理をして国費をたくさん使って食糧自給しなくてもよろしいんじゃないか、もう戦争中でないのだから、幾らでも外国から安い食糧が入るのだ、日本工業の面で経済成長を強く進めることにしたらよろしい、これが政府農業政策の背景になっていたのではないかというように私は思うのです。ところが、今日は世界的に食糧が不足しているというのがこれはもう定説じゃなかろうか、こういうふうに思うのです。しかし、アメリカは余剰農産物を多量にかかえ込んでおって、その処理については頭を私は悩ませているんじゃなかろうかと思う。  そこで私が大臣の御意見を承りたいというのは、まず第一に、国内食糧自給するということを、農業政策根本目標として国の内外に対処していくお考えであるのかどうか、これが第一点。第二に、生産者米価消費者米価について、いままでのような二重価格制度を堅持していかれるかどうか。また公共料金は一年間は上げないと池田総理は言っておられます。赤城農林大臣もたしか米価公共料金としては取り扱わないけれども当分上げないと言明されているのじゃないかと、こういうふうに思っておりますが、公共料金が上がったら消費者米価は上げるお考えであるのかどうか。  第三に、畜産物果樹蔬菜について、非常に広範にわたりますけれども、その価格安定及び流通改善に抜本的な施策をどのように考えておられるか。この三点についてお尋ねしたいと思います。
  10. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本食糧自給するという方向を捨てて工業国にするとか、自給はしなくて輸入にたよってもいいんじゃないかという考え方が一部にあるが、農林大臣としてはどう考えているかと、こういうことが第一点かと思います。私は日本はやはり資源の少ないところですから、貿易等によって相当日本経済を成長させていくということは必要だろうと思います。したがって、工業化することも当然だと思います。ただ前提が、私が考えておるのに日本がこういうふうに工業化してきたり経済が成長してきたというのは、日本食糧自給されてきた、この基盤に立って工業が伸びてきた。これが日本食糧自給できないような形で輸入ばかりしていくということになったら、工業面などはこんな進み力はしなかっただろうと思うのです。そういう意味におきまして、やはり食糧自給するという方向、これは捨てるべきものじゃない。これは日本経済全体からいっても私は自給を進めていく。幸いに米等におきましては、自給率が九九%ぐらいにいまなっております。そこで日本零細性とか農業人口が多いというようなことを、私はかつて国際的な会議のときに言っておるのです。というのは、そういうような日本実態なんだから日本農業農業生産物というものが世界的な国際価格からいったらコスト高だ。その理由はいろいろありましょうけれども、零細性というようなことや、生産性があがっていない。だからこれを自由化にもっていくにいたしましても、一面においては生産性日本においては高めて、そして安いコストでできるような農業政策をやっていく、これはなかなかそう短日時にできるものではない、こういう実態から見て、米麦とか、あるいは酪農であるとか、でん粉等については、自由化については当分といいますか、当分よりももっと長くなるかもしらぬが、ちょっとできかねるのだということを説明するために、日本農業実態を申し上げておるのでございますので、私はそういう意味におきまして、自給というものは進めていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えています。  それから米のいまの管理体制でございますが、私から申し上げるまでもなく、もう御承知のことと思いますが、米については長い歴史を持っています。米のいままでの管理制度まで持ってくるには、御承知のように、自由の時代もありました、あるいはまた戦前等において米穀法というような法律でやっていこう、あるいは米穀統制法というような法律でこれを規制していこう。でありまするから、米に対して全く手放しということは、これはいままでの長い歴史にもないのでございます。またこれは非常に困難です。そういうことをすることは両面にわたって、生産者の面についても、消費者の面についても……。そうして戦争中に食糧管理法というのができましたが、戦争中の食糧管理法というものは、ひとつの米を供出させる、こういう意図が非常に強かったのでございます。しかし、いまの食糧管理制度というものは、よく食管の赤字赤字ということで、農林政策でないような指摘もございますけれども、これはひとつの生産者に対しましては価格を安定させる、価格支持されて安定していくということになれば、農業計画が立つわけです。ところが、始終変動しているということになると、農業経営計画が立たぬ、こういう面もありまするし、消費者の面にとっては、消費者価格をカバーしているといいますか、こういう作用をいたしておるのでございますから、軽々にこれを廃止する、やめるというようなことは、これはたいへんなことだと思うので、そういうことにつきましても、数年来農林省におきましても検討は続けてきておりました。ひとつの松村委員会などもつくって検討してきましたけれども、結論は出ません。でありまするから、これにつきましては、急にやめるとかどうかという考えは持っておりませんし、検討は続けていきますけれども、私はこの制度というものは守っていくのが当然である、こういうふうに考えておりますから、食管制度をやめるというような考えは持っておりません。  ところで今度は、その中で、ことしは公共料金は上げない、こういうことにつきまして、米はどうなんだ、米の問題はどうなんだという話がいまの中に出ました。米は私は公共料金でない、売ったり買ったりするもので、一つの料金じゃないと思う、法律的に公共料金というのは話は違うのじゃないか、こういうことを言いましたので、それでは公共料金のワクに入っていないのだから、消費者米価を上げるつもりかという疑いも一面に出てきて、しかし私はそうじゃないのだ、公共料金は別にいたしまして、米というものは、政府の規制といいますか、政府が関与して価格をある程度、ある程度というか、程度という問題は別ですが、関与してきめているのだ。だから生産者米価というのは、私はいろいろな事情から上がらざるを得ないのじゃないか、米が公共料金だから上げるな上げるなということになると、生産者米価は手をつけられないけれども、生産者米価生産者米価の上げる方式があるのだし、私はある程度は、どのくらいかしらぬが上がる。消費者米価については公共料金とは別だけれども、いまの物価対策その他からいって、本年中は消費者米価を上げない、こういう観点で上げないことにいたしたのでありますが、そこで、今度は公共料金が上がった場合には、一年後上がった場合には、消費者米価を上げるのかどうか。私は、これは公共料金とは違うから、上げるか上げないかというのは、やはり米の対策、あるいはまたいまの血管の趣旨に従って、生産者米価をきめ、生産者米価と違った消費者米価、安い消費者米価で配給をしているという制度ですから、そういうもの自体から考えまして、その関連においてまた考えなければならん問題だと思います。だから一律に、公共料金が上がるようになったら消費者米価は、上げるのかということは、公共料金とは離れて、いまの米の政策とか、あるいはまた生産者対策あるいは消費者全般の関係、そういうものを勘案して、この消費者米価に手を加えるか加えないかということは、検討してみる必要があろうと思います。でございますので、公共料金とは離して、日本農業政策の中における米の位置、あるいはまた食糧問題から見ての全消費者に対する米から見ての消費者米価のあり方、あるいは物価対策から見てのあり方、こういうものの観点から検討しなければならんと思います。できるだけ上げないつもりでおりますが、そういう観点から、どういうふうな結論に出るかということは、まだいま申し上げる時期ではございませんが、公共料金を上げたら上げるのかということでございますと、公共料金とは別個に上げるか上げないかということは考えます。これはことしのことじゃございません、将来のことでございますが、将来のことにつきましては、そういう検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  また価格対策でございますが、日本農産物に対する価格対策というものも一応はできておるのでございますが、これが十分であるとは私も考えておりません。米につきましても、麦につきましても、あるいはなたね、大豆、繭あるいは畜産振興事業団による価格の操作、いろいろありますけれども、これが十分であるとは私も考えておりません。野菜等につきましても、野菜の種類におきましては、安定の金を出すというような制度も道は開けておりますけれども、これまた御承知のように、野菜が上がったり下がったり、最近においては非常に暴落するというようなことで、生産者消費者両面において、なおさらに検討を加えていきたいと思っております。果実等におきましては、いま特に価格の面においてこれを支持しているというようなことはございませんが、流通対策、あるいは流通対策の一つでございましょうけれども、出荷の調整だとか、あるいはまた貯蔵とか、こういう面で安定をはかりたい。こういうふうに進めておりますが、果実においては、いま特に価格支持というような制度は持っておらないことは、御承知のとおりでございます。非常に関心を持っていろいろ検討をいたしておるのであります。
  11. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 次に、私は畜産問題についてお聞きしたいのでありますが、特に、なぜか根本にあるところの、畜産の問題の根本にある飼料問題について政府はきわめて冷淡ではなかろうか。これは私だけの感じじゃないと思うのですが、そこで飼料価格を値上げしなければならぬ理由というのは、一体、どういうところにあるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料に対して冷淡だと言われれば、どうも胸を張って冷淡でないといばるわけにもまいりませんが、何にいたしましても、選択的拡大という方面で畜産のほうは成長産業といいますか、そういう方面でありますが、いろいろな対策がおくれている、こういう事実は認めざるを得ないと思います。さっき申し上げましたように、米のように長い歴史を持っておるのと違いまして、最近における畜産の伸びというものは非常に大きい伸び方をいたしておりますが、歴史的に畜産を、農業における中心でもないけれども、そういうウエートを高めていこうという傾向を持ってきたのは、歴史が浅いものですから、そういう意味におきまして飼料対策についてもなおまだ、これから多くの問題が残っていると思います。  そこで、えさの問題でございますが、えさにつきましては、私なども非常に重要に思っております。現在、農家で使っている飼料よりもえさのほうのウエートのほうが大きいと思います。しかも、飼料につきましては、自給飼料を、非常に自給面が伸ばしていないという面がございますので、自給飼料、草地の造成等あるいは飼料作物に転換してそれを自給していくという方向へ、自給までいきませんが、自給飼料をふやしていくというような面を進めておるわけでありますが、大体、えさの大部分現状のところ、輸入飼料が濃厚飼料においてはずいぶん多いのでございます。これを鶏とか豚ばかりではなく、役牛、肉牛等においても必要としているものでございますので、非常にふえているのは御承知のとおりであります。そこで、えさの値段を上げなくてはならぬというような理由はどこにあるのかということでございますけれども、これは国内の飼料よりも国際的に安いし、また国内でそういうものはふえておりませんので、輸入しておる輸入価格の影響でございますが、これにつきまして食管のえさ勘定等もありますので、そういう点も十分勘案して価格をきめておるわけでございますけれども、値上がりというか、値上げをある程度諸般の事情からしておる。こういう事実は、やはり輸入関係からやむを得ず出てきておるというか、そういう事情でございます。
  13. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 わかったようなわからぬような格好ですけれども、乳牛は、酪農では乳価値下げをされている現状です。ところが、おっしゃるとおりえさは国際的な価格の変動に支配されている。輸入中心になっております。ところが、私は政府は飼料の需給価格を左右するだけの原料、飼料を保管しておるのじゃないかと思うのですが、そうすると、行政的に市場価格の引き下げの措置をとることが可能なはずだ。なぜできぬのかと、こう私は反問をしたいわけです。もう一点は、どうも貿易自由化について私が疑問に思いますことは、輸出をしたい、あるいは輸入をしたいと思う者は、だれでも輸出ができ輸入ができる。つまり自由に貿易ができるということが、ほんとうの自由化ではなかろうかと思うわけです。しかし、現在進んでおる自由化はそういうふうにはなってはいないような気がするんです。たとえばアメリカから飼料を入れる、そうするとマイロを入れる団体がございますね。また、タイから入れる場合にはトウモロコシにも一つの団体がある。その団体を通じてでないとタイから入れられない。この団体が中間にあって、窓口が一つで、向こうから入れる場合ここで値段などきめてしまう。ほんとうならタイのトウモロコシのほうが安くて品がよいので農民は非常に喜ぶんです。それは入れられなくてアメリカからのマイロのほうが輸入されてくる。マイロを入れてトウモロコシを入れないための一つの組織ができてしまう。これは自由貿易ではなくて貿易自由化を独占する会社か協会のようなものをつくるようなものであって、これはどういう基礎でああいう特権かできるようになったのか、私はその点お伺いをしておきたいと、こういうように思います。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) タイからトウモロコシならトウモロがだれでも買えるようなことになっています。そういう形に制度上はなっておりまするし、だれが買ってもいいような形になっていますが、まあ飼料会社といいますか、飼料業者が相当ありまして、買い付け競争というようなものを避ける、こういう意味で飼料業者等が自主的に協定してやっていると、こういうのが現状でございまして、政府が特にある飼料会社というものを指名して、それに買い付けさせるという、こういう実情ではございません。業者の自主的協定によって買い付けをやっておる、買い付け競争を避けるという意味でやっているのが実情と思います。それがどういう影響があるか、いい影響か悪い影響かということにつきましては、私どもなお検討して私どもの手が及ぶことにつきましては、そういう問題を検討してみたいと思いますが、現在は自主的に協定によってやってきている、こういう実情でございます。
  15. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 政管ふすまは去年も上げたのです。ことしも三十キロ以上ですか、一かます。これが四十八円ばかり高くなっておるのです。しかもそれにつれて暴騰しておる。これは酪農民を全く締めつけておるわけです。そこで、こういう価格の引き上げの措置を政府でもって押えるというか、そういうのは可能だというように思うのですが、一体それはどういうようになっておるわけですか。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの濃厚飼料の中で五百万トンぐらいのうち百万トンぐらいが食管で操作しておる量だというように聞いておりますが、輸入食糧につきましては、政府の管理といいますか、操作範囲が非常に少ない、一〇%ぐらいの率のようでございます。こういうことでございますので、政府の操作機能が非常に弱いということでございますけれども、なおこまかい点につきましては、お差しつかえなければ畜産局長から御説明申し上げたいと思います。
  17. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) それでは簡単に御説明します。現在日本の全体の飼料の中で、濃厚飼料は三十八年度の計画で約一千七十一万トンでございますが、そのうち国内産のものが五百七十六万四千トン、輸入が四百九十五万トン、実績は約五百万トンに達すると思います。そのうち政府が計画上百八万トン程度操作するということになっておりまして、ただいま大臣の申し上げましたような数字になるわけでございます。そこで、三十九年度の政府の管理市場の予定価格を予算上きめます場合には、輸入ふすまにつきましては、従前の方式に従いまして算定をいたしたのでありますが、その方式といいますのは、過去の一年間のうち十月以降の異常高騰の月を除きまして輸入されますトウモロコシ及び大豆かす等の飼料成分均衡価格をはじくことにしておるわけでございます。それで輸入ふすまの予定価格を予算上きめたのでございます。それから政管ふすまにつきましては、ただいまのような算定方式をとりますと、かなり高い価格になるのでございまして、三十キロ当たり七百七円というような予定価格を想定することになりますが、これを急激に値段の引き上げを行なうことになりまして、食糧管理特別会計の食糧勘定のほうで予定されております一般の小麦粉生産のために払い下げをいたします際のふすまの織り込み価格六百六十五円というものとの線で予定価格をきめておるということにいたしましたのが、三十九年度の予算の予定価格の経緯でございます。
  18. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 これは大問題ですから、酪農家にとっては死活の問題ですから、下げる方向にひとつ努力してもらいたいと思います。私はそういう飼料の問題についてもっと聞きたいのですけれども、最後に、飼料の自給については飼料自給安定法に基づく飼料審議会というものがありますね。この運営については、幾多の矛盾を私は感ずるわけですが、直接の価格を安定することを目的としておる審議会は現在ではあっても盲腸のようなもので、何の役にも立っていないのじゃないかと、こういうように思うのです。この際抜本的な自給計画を立てる制度を確立すると、こういう必要が選択的拡大に畜産をあげるというならば、当然これは必要じゃないかと思うのですが、簡単でいいから大臣の御所見を承りたいと思います。
  19. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料の審議会は、御承知のように自給安定法によって輸入のほうの関係の審議会でございますが、飼料全般について抜本的な構想あるいは計画的なものを樹立するために、審議会のようなものをつくったらどうかという御意見でございます。が、重要な問題でございますので、検討してみたいと思います。また、いまの審議会等につきましても、十分目的に沿わない面がありましたならば、そういう面につきまして、なおあらためて前進させていきたい、こういうふうに思います。
  20. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 酪農行政について若干聞きたいのですが、一昨年の秋、全国一斉に乳価の値下げの通告を酪農民は受けた、宣告を受けた。これが政治問題となったことは御承知のとおりであります。当時の重政農林大臣の乳価復元声明、こうい事態が出た。その後、この声明は、声明をやりっぱなしで、何ら効果ある措置が見えなかったように私は思うのであります。そこで畜安法というのがあるのですが、どうもその名のみでやぶ医者の役にも立たぬというようなかっこうで、かえって低乳価の維持に悪用されているんじゃないか、そういう声が強いんです。乳価値下げの口実であった乳製品の市況は、私の見るところではたいへん好転していると思うんです。いまなお、全国で酪振法に基づく知事の紛争に持ち込まれているという件数はかなりあると思う。ところが、一向に事件の処理は進捗していないというのが実情ではなかろうか。一体農林省はこのままそれをほっておく所存なのか、積極的に解決の方途をおとりになる考えはあるのか、どういうふうにそれをなさるのか、これをちょっと簡単にお答え願いたい。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) なま牛乳の値下げ通告につきましては、私も非常に深い関心を持っております。ただ、これは両当事者の自由契約というような形が基礎になっておりますが、業者の代表なども呼びまして、これを改めるような方途を講ずるように折衝は続けております。しかし、何といたしましても自由取引のような関係でございますので、実情から見ますと、話し合いがついたという面も——これは一方的に話をつけちゃったような面もありますけれども、ついたものもございます。しかし、話がつかぬというような面から、県のあっせん調停に付した。ところが、これもまだきまらぬというので、中央に上がってきているのがございます。そういう面で、できるだけ早くこの解決をやりたい。審議会ですか、そういうものもありますので、審議会にはかっていきたいということで、審議会のメンバー等にもいま話して、早く進めるようにいたしております。  それから乳価の事情でございますが、これは時間がとって私がかえってしゃべるというようなことになるかもしれませんが、何といたしましても消費をふやさにゃならぬということ、それからよけいなものを市場から引き上げようというようなことで、畜産事業団で去年の暮れにバターを相当買い上げ、またこれを安く学校給食のほうに売ったということで、市場の畜産の製品ですか、酪農製品等のストック等をなくして乳価を安定しようという方途もとったわけでございます。なお、学校給食が余剰というようなことでいままでやっていましたが、二学期、三学期——昨年等におきましても、なま牛乳の量をふやして学校のほうに回したのでございますが、三十九年度からは根本的になま牛乳を主体とした学校給食というものに切りかえるという方針で、逐次なま牛乳による学校給食のほうに切りかえていく、こういう予定を立てております。  現在の乳価対策につきましては、前段申し上げたように、いま中央の調停にかかっている件が数件あります。至急解決したい、こう考えております。
  22. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まあ学校給食については、お聞きしたいことはたくさんありますけれども、昨年ですね、たしか進められておったと思いますが、調製工場といいますか、たとえば、大分県酪連を中心にして計画を進められておったと思いますが、その進捗の状態ですね、これは一体どういうふうになっておるか、これが一つですね。学校給食については、いろいろ申し上げるまでもなく、もうたくさんの人がいろいろな点でお尋ねしておりますので、簡単にお聞きしたいのですが、おいおいだんだんなま牛乳を学校給食に振り向けていくというこういう考え方、ことしは四十万石程度だとおっしゃるのですが、大体まあ三百万石ぐらいあればできるのじゃないかと思う、全部に。そこで、これを酪農保護、乳価安定の上から、今後学校給食に国産牛乳を優先的に供給していって、三年ぐらいで輸入脱粉と切りかえていくお考えはないかどうか。脱粉については、もう非常にスキャンダルがたくさんあるのです。横流し等で。こういうものは、かえって毒するばかりでいいことはないと私は思うのですが、そういうお考えはないか、この二点をひとつ……。
  23. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 大分県の牛乳調製工場につきましては、畜産振興事業団から二億円の出資をすることになっておりまして、これは近くそれができることになると思います。地元のほうも二億円出資という計画でございます。学校給食をなま牛乳に換算すれば百五十万石あるらしいです。来年度四十万、三年間にこれを全部切りかえてみろということでございますが、考え方というか、方針といたしましては、なま牛乳に切りかえる方針でございますけれども、三年間にこれをやってしまうというのは、やはり設備あるいは輸送その他から困難であるので、三年間にはちょっとできません。できませんが、まあ逐次、いまそういう計画も検討中でございます。検討中でございますが、年年十五万石ぐらいがいまの状況でいうと私どもは限度じゃないかというように考えておりますが、そういうことだと、いまお話しのようにまことにほど遠いのでございますが、諸般の事情から見て、切りかえていくにしても、三年間に全部なま牛乳というのは非常にむずかしいと思います。逐次増していくことにはいたしていきたいと思います。
  24. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 二十年以上はかかりますな、これはどうも大臣のお話では、十五万石程度でいけば。まあ大分県酪を中心にした調製工場ですね、これはなかなかおっしゃるとおりいろいろな点でむずかしいと思いますが、もっと熱を入れてひとつやっていただきたい。ほかの状況は何カ所ですか、四カ所ですか、これも一体どういうふうになっているか、簡単にひとつ、ほかのところもあったと思いますが、調製工場、ほかのところはどうですか。
  25. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま目安を、逐次という目安をざっぱくに申し上げたのですが、何もそれにこだわっているわけではございません。もっともっと大きくやる熱意は持っておりますし、諸般の設備やその他輸送関係からできるだけ多くやっていきたい。しかしいろいろ各省等との話し合いでこういうものをもっとやろうと思ったのですが、四十万石でもスムーズに生産体制ができているかできていないかという問題、あるいは中途でやめられたりしては困るというような問題、いろいろなほかの要素もございますので、そういう要素を勘案いたしましてできるだけ熱意を持ってやりたいと思います。  それから調製工場のほかの部分の進捗状況はどうかということにつきましては、簡単に畜産局長から御答弁申し上げます。
  26. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 大分のほかに数カ所の希望が非公式に表明されたのでございますが、これはそれぞれ従来の農業団体、あるいは民間業者等との共同の調整工場でございますので、その土地生産消費の状況あるいは共同の出資関係等、体制がまだ十分ととのっておるところはございませんので、ただいまのところ、大分以外具体的に進捗しておるところがございません。
  27. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 関連して。熱意としてはそれ以上ということでありますが、しかし大臣は具体的に数字で示された目標は、ただいまの御答弁では三十九年度四十万石を基本として今後十万石ずつ増加するとこういうことであります。そうなれば、二十年ということではなくて三百五十万石が絶対量ということでありますから、私たちは千五百万人を二百二十日にこれを学校給食の対象といたしますと、三百三十万石と推定をいたしております。そういう点からいっても、三十年を経なければ国内産牛乳で学校給食はまかなえない。しかし熱意はそれ以上あるということでありますが、その熱意というのはもっと具体的にはどういうことであるか、あるいは施設その他の問題をその理由にあげておられますけれども、これは生産者団体に対するそれらの加工処理の施設、それはやはり政府によって積極的な財政援助を前提としなければ、また解決は至難であることはもとよりであります。それらを踏まえて、熱意というのは、いま言った三十年間を要するという、具体的に事務的に、目標からどこまでを大臣の熱意と伺っていいか、それは今後の具体的な法案の審議の際の参考に一応伺っておきます。
  28. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十万石以上はふやせるだろう、こういうことを申し上げたのでございます。熱意はどうかということでございますが、これは生産の状況によりますし、全体の需給状況にもよります。それからいまお話ししたような設備の状況もあります。それから主産地と主産地でないところの輸送の関係等もございます。でございますから、そういういろいろ関連したことが学校給食をとだえないで、なま牛乳によってとだえずに継続的にやっていけるという面が出てきますならば、まだ出させねばなりませんが、私はそれにこだわる必要はないのでどんどんやっていく。しかし全部をなま牛乳に持っていくのは、これは私はいまの見通しではちょっと困難ではないか、こういう見通しを持っております。それから財政負担の関係もございます。ことしも一合あたり三円七十銭ぐらいのやつを四円五十銭まで補助を引き上げたのでございますが、この引き上げ等につきましても実は非常に骨が折れたといいますか、骨が折れてここまで押してきたのでございますが、そういう財政面の問題もあります。でございますから、熱意を、諸般の学校給食はなま牛乳に進めるようなところに向けまして、できるだけ多く逐年ふやしていく、こういう気持でございます。
  29. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 次に、私、沖繩産糖についてちょっとお伺いしたいのです。本院において沖繩産糖の政府買入れに関する特別措置法案は、審議未了になっておることは御承知のとおりであります。その内容は、国内産粗糖の政府買い入れ価格及び沖繩産のサトウキビの生産事情、沖繩産糖の製造事情その他の経済事情を参酌して農林大臣が定めることになっておると、こういうように内容がなっておるが、そのとおりでございますか。それに間違いございませんか。
  30. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法案に書いてあると思いますが、それに間違いないはずでございます。法案のとおりでございます。
  31. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 沖繩サトウキビの生産事情については、私は第四十三回国会における農林水産委員会審議要録の参考資料でかなり詳細に聞いてありますから、これでわかりました。ところが沖繩産糖の製造事情については政府は調査をしておられるかどうか、その点についてまず伺っておきたいと思います。
  32. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 調査いたしております。
  33. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは私は先日沖縄から来られた、名前は明らかにしてもよろしいのですが、A氏ということにいたしておきましょう。このA氏の話によりますと、沖繩の農業協同組合連合会がこれは月産だと思いますが、三百トンの製造能力を持った精糖工場経営しておる。それを七百五十トンの能力を持つ工場に拡張するために開発銀行から百万ドルの融資を受けた。すでにそこで工事中だったというわけなんです。話によりますと、沖繩の高等弁務官から開銀を通じてNという精糖会社と合併したらどうか、合併せよと、こう言ってきたというのです。Nという精糖会社は本土といいますから、日本内地ですから、日本内地にあるYという精糖会社の系統で、七百五十トンの生産能力を持っておる工場をすでに沖繩に持っておる。農協運としては、その勧告を承知しなかったわけです。ところが合併をしないなら開銀の融資は取り消すというように強硬に出てきたわけなんです。そこで農協連としては、農民から集めた自己資金で開銀の百万ドルを返済したというのです。私はA氏の報告を信頼いたしております。その理由はいろいろございますけれども、去る二月六日の西日本新聞の夕刊のCの二面にございますけれども、アメリカの極東戦線のかなめである沖繩という見出しで岡本という論説委員の記事がございますが、それには、「軍事統治の独裁化を示すような事件が目だっている。琉球銀行はじめ主要な金融機関の全面的な人事刷新が断行された。これまで沖繩の金融界は占領下の荒波を知らぬ無風地帯のような存在だった。こんどの金融人事がキェラウェー局等弁務官の強い指令によって行なわれたものであることは、なかば公然たる事実である。不正融資の容疑か暴露されたからだというが、理由はなんとでもつく。」と、こういうように書いてあります。これが事実とすれば、沖繩に対する施政権は米国の手中にあります。日本の潜在主権があることは認めてはおるが、これは紙に書いた文字にすぎない。かつては、米軍の飛行場拡張のゆえをもって、農民のサトウキビ畑を火炎放射器で焼かれた沖繩農民の悲劇を、われわれは、この間のように聞いておるわけです。こういうように、血のにじむような自己資金で、農民の手に取り戻したはずではありましたが、この事件は、これで終わったわけではございません。やがて、本島のMという会社、あるいはNSという会社の駐在員が、農協の組合員の持ち株を、今度は、一株々々買いあさって、五ドルから十ドル程度で買い取っておるということでございます。現在、農協連合会は、工場解散のうき目にさらされておると、やがて、民間会社に明け渡さなければならぬと、たいへん嘆いております。そうすると、次には、農民生産したサトウキビは、安い値段で買いたたかれるのでないか、これは、まさに、沖繩農民にとって重大な問題であると、こういうふうに私は思うのです。そこで、沖縄産糖の政府買入れに関する特別措置法に大きな疑問を、私は持たざるを得ないわけです。沖繩農協連に対する措置は、何かないものであるかどうか、こういうものを、よく調べてあるかどうか。こういう点について、大臣にまず承っておきたいと思います。
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの、沖繩の農協連が砂糖会社をつくって、それが、ほかの、何か、M会社と合併するとかしないとか、あるいはこれに対して、弁務官が干渉したといいますか、口を出したというような、具体的な事件でございますが、私、その点は、よく承知しておりません。調べて、いずれ、御報告申し上げる機会を持ちたいと思いますが、いまのところ、調べておりません。しかし、あるいは事務当局で、そういうことを耳にしたかどうか、私は、それも承知しておりませんが、私の耳には、まだ達しておりません。希望的に言えば、やはり農協等が、そういう事業を進めていくということは、非常に好ましいことでありまして、それに対して、貸し付けについて、また開銀等につきましては、開銀等も、いろいろな条件をつけるというようなことも、これはあり得ると思います。農協が、そういう会社をつくって進めていくということは、私は望ましいことだと思います。それが、いまどうなっておるか、いまお話のような事情になっているかどうかというようなことは私はまだ耳にしておりませんが、調査をいたします。
  35. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 沖繩の農協連が、そういう工場を持っておったと、そういう製造をやっておったということだけは、事務当局は御存じでしょうね。
  36. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 全農連が日産三百トンの工場を持っておったということは聞いております。なおそのほかに十幾つか工場があります。非常に工場が多過ぎるというようなことで、できれば合併をしたらどうかというようなことが、金融機関等を通じて話があったとでお話しのような経過について、昨年来およその話は事務的に伺っております。なお、先ほどの法案そのものについてのお話でございますが、法案のたてまえは、沖繩でできた砂糖が日本の港へ入ってきたときに、日本の港でそれを買う指示をすることによって、沖繩で生産振興が行なわれる一助にしようというたてまえの法案でございます。向こうの本島とか、その他の島々における生産対策とか業界の指導をどうしていくかというようなことは、施政権の関係もございますので、あの法案では全然触れていないわけでございます。
  37. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういう工場があったという、月産といいましたが、これは日産で訂正をしておきます。あったということも御存じのようだし、合併を進められておったという、そういう話があったということも御存じのようです。そうしたらもう少し内容を私はお調べになっておるのじゃないかと思うのですが、内容を御存じですか。
  38. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) そういう何といいますか、日本の製糖業者で、向うに出資して工場をつくったというようなものも幾つか聞いております。で、そういう人たをち中心にし、さらに全農連の人たちも中心にして、協議会的なものもあって、いろいろな相談をして生産振興に努めておるというような段階でそういうことが起こってきたわけで、その後そのこと自体についての詳しい調査というようなのは、政府としてはいたしていませんが、向こうからの話としてはある程度承っておるわけです。
  39. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私はいまお聞きしているのは、さっきの調査しておるとおっしゃったし、私の聞いていることと大体一致した点があるのです。そうすると農協運がやっておる工場というのが拡張しておった、だからその経営も悪くなかったと私は想像するのですが、その点いかがですか。
  40. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 総じて国際糖価も上向きでございましたし、大体の工場は採算上そう悪いということはなかった。全農連も取り立てて経済状態がどうだったということはいまつまびらかに存じませんけれども、全体としてはそれ相当の収益もあげてきておったというふうに理解しております。
  41. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 時間が私はないので、突っ込んで質問できませんけれども、とにかく沖繩農民もわれわれの同胞ですから、しかも農協連がやっておるのをつぶされちゃたまりません。早急にひとつ調査になって明らかにしていただきたいと思うのです。  次に大急ぎでございますが、生鮮食料品の問題ですが、どうも物価が値上がりするのは、生鮮食料品が高くなったのだからという、たいへんどうも去年はその原因のようにいわれたわけですが、高くなったものもあると思いますけれども、野菜はこれはことしはたいへんな暴落なんです。同じ出身の森部先生が中央会の会長ですけれども、この間から福岡では、初めてでしょう、農協の野菜出荷ストというものをやられた。四千五百トンという野菜を廃棄するあるいは肥料にする、こういう事件が起こったのです。ですから、これは私は流通機構の問題であることは間違いないのですが、まず市場に持っていくと建て値をつけられる。卸、小売にいく。そうすると、農民は市場でたたかれる。そうすると、今度消費者のほうは、小売人がもうかっておるという。こういうようなことで、両方から生産者というものはいつでも締めつけられるというかっこうなんですね。だから、こういう点について、キャベツその他については、御説明を拝見すると、価格の補償についていろいろお考えがあるようです。こういう野菜などについて、一体どういうように今後お考えになっているか。主産地もだんだん形成されつつあるのですし、いろいろなものを取り入れて大型化してまいりました。大型化すればするほど豊作になれば、その被害というものもまた大型になるわけです。こうなると、野菜づくりももういなくなるというようなことになるおそれもあります。ですから、この際ひとつ農林大臣に、流通機構についての抜本的な方法を講じてもらいたい、こういうように思うのですが、その点について御所見を承りたいと思います。
  42. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 実情はいまお話し承ったとおりだというふうに私も思います。それに対してどういう対策を講ずるかということでございますが、言いわけを申し上げるわけではございませんが、流通対策は非常にむずかしい。自由経済下においても非常にむずかしい。統制経済下においても非常にやりにくい問題でございますが、いま考えておるのは、生産が需要に見合うような計画性を持たせよう、こういうことで、野菜の指定産地制度とか、いまお話のありましたようなそういう制度をなお拡充していきたい。それから生産そのものにつきましても、ある程度の計画といいますか、需要に見合ったものをもって、生産費なり労力等があまりかからぬように、畑灌とかビニール栽培とかを進めております。これといって一つの手というものもございませんので、生産から、流通から、消費、小売り段階まで、一連の過程において流通対策を合理化していく。非常に生産者のほうは暴落しております。それに引きかえて小売りのほうはそんなに下がっていないというのが実情ですから、中間の手数料等が合理化されて、生産者消費者とが密着するといいますか、密着するような形に流通対策を進める。生産者自体からいいますと、やはり計画的に生産をしてもらうような指導、それと、何といいましても出荷についての調整というようなことで進めていくのが適当であろうと思っております。  なお、価格安定制度等につきまして、野菜の種類によってそういうものができておるのもありますが、またできていないものもございます。そういう価格安定策ができる野菜等についてそれを拡充していく、カンランでしたか、等につきましても、東京近辺ばかりでなく、大阪、名古屋方面にもそういう制度を拡充していく、こういう方針を進めておるわけであります。要するに、生産過程及び流通の中間の市場関係及び小売関係消費者と、こういうものを合理化していくと、生産者面におきましては計画的な生産指導し、なお出荷調整等を強力に進めていきたい、こういう考えでやっておるわけでございます。
  43. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 これで最後ですが、私はまあ大臣がおっしゃるとおりだと思います。私希望を少し申し上げたいと思うのですが、とにかく生産者の消費動向に合わせて思い切った措置をまずやらなきゃいかぬ、こういうことが一点です。またその市場の機能を弾力化していくということ。それで市場は建て値をつけるだけでなく、貯蔵だとか加工と、こういう機能をつけて、いわゆる弾力性を持っていくと、こういうことをぜひひとつ強力に進めてもらいたい。  それから農協なんですが、農協は米に対してはなかなか労力を注入してやっておりましたが、今度の、まあ福岡県では野菜問題に本腰を入れたのは、今度が初めてであるということ、こういうように私は思うのですが、そこで、このさっきのお話のように、価格補給金制度というものを設けて保護しなけりゃならぬということ、これがまあ一点だと思う。ところが、農協はそういうことをやらぬで、最近は一般の商店と同じように、購買販売と、そういう面に力を入れ過ぎている。たとえば貯蓄にしても奨励はするけれども、利子マージンでかせいでいると言うと、言い過ぎかもしれませんけれども。そうすると、また米は倉庫に入れて、倉庫料でまかなっていくとか、肥料その他も、農機具その他もマージンで何とかやりくりやっていく、そうして今度は生活物資を出して、今度はスーパーマーケット式でやると、ところによると、婦人部がリヤカー持って御用聞きに歩く、こういうのがおいおい出てまいったわけです。そこで町の商店をこれはまあ圧迫して倒産をするという、こういう状態なんです。これはなかなかいろいろの問題もあると思います。それは商店において至らぬ点、いままでの従来の考え方一つ近代化していかないという、そういう欠点があって、そういうことになったと思うのですけれども、しかし、やはり何といっても農協の本来の使命というのは、これは明らかであります。そういう点でもっと政府の強力な指導といいますか、そういう本来の目的に返る農協にひとつ仕立ててもらわなきゃならぬと、こういうふうに思うのですよ。これは私の希望にもなりましたけれども、最後でございますから、そういう点について農林大臣の御所見を承って終わりにしたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話しのとおりで、農協の本来の使命を強力に達成するように一そう指導いたしたいと思います。農協もやはり時代の推移に沿うていくという面もありますので、そういう面である程度の摩擦といいますか、フリクションなどもあろうかと思います。そういう面で小売り関係につきまして、あるいは中小企業等の関係につきましても、それぞれその方面にも商店街の法律とか、そういうようなことを進めております。ともによくやっていけるようなふうに考えております。農協につきましても、いろいろ批判すべき面もあろうと思いますが、経済面に非常に進めておる面がありますけれども、あまり政治面まで進出して、少しくこれもオーバーな点も私は幾ぶんないわけじゃないと思います。もっとも農業そのものが政治に関係しないというわけじゃないのですから、もちろん、政治面に関連を持たなくちゃならぬのは、これは必然でございます。それからまた、農協が経済面に力を入れるのはけっこうでございますが、生産指導面、これは従来農協時代、あるいは農業会とか、あるいは農会という時代から比較いたしますと、非常に指導面というか、生産面、その方面の機能というものがなくなったというわけでもありますまいが、そういう方面に非常に一そう力を入れて協力してもらわなくちゃならぬ面があるのじゃないか。いろいろ考えさせる点もあるし、考えている面もありますので、よくこの辺検討して進めてまいりたいと思います。
  45. 牛田寛

    ○牛田寛君 初めに、三十九年度農林予算の規模について一点だけ大臣所信をお伺いします。  それは、特別国会におきまして、総理は、農業の振興について画期的な対策を講ずるといういろいろなお話があったわけでございますが、今年度の農林予算を見ますと、三十八年度補正後の予算と三十九年度と比較したときにおいて考えてみますと、農林予算の一般会計予算総額に対する割合が、三十八年度では一〇%、三十九年度では一〇・三%、若干前年度よりは上回っている比率を示しておりますが、食管会計の繰り入れ額を除きますと、除いた額で今度は割合をとってみますと、私の計算では、三十八年度が七・四%、三十九年度が七・二%というふうな数字になってまいりまして、結局、食管会計繰り入れ額を除いて考えますと、実質的には、農林予算というものは縮小していると、こう見なければならぬ。そういたしますと、総理大臣の非常に強力な発言がございまして、しかも、所得倍増計画の手直しの形の段階に達したときに、特に農林関係に力を入れなければならないということになったときに、その点について、同じ池田内閣の閣僚でありまた農林行政の責任者である赤城農林大臣所信をあらためてお伺いしておきたいと思います。
  46. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 予算の比較の数字はいまお話があったとおりでございます。そこで、食管の特別会計への繰り入れ一千二十六億円ですが、これを除いて計算するのがいいか、あるいはそれも入れて計算するのがいいのかという点については、いろいろの考え方の違い、見解があろうと思います。私なども予算を要求しているときには、率直に言って、食管会計のは別だ、ほかのほうで農政を進めていくのには、予算を大幅に裏づけしなきゃいかぬじゃないか、こういうことで財政当局などとも大いに折衝したわけであります。しかし、私は食管の赤字赤字というものですから、何か不始末でもして借金が出たようなことですが、私はそういう意味には解釈していなくて、あれも一つの大きな政策だ、いまの食管法に基づいて、生産者に対しては価格支持をするし、消費者については、生活を脅かさないような低物価の線に沿うて消費者米価をきめておるということでございますから、全体的に見て米麦等に対する大きな価格支持制度でありますから、私はこれを除いて、これが農政でない、ほかのものだけが農政だから、これを除いてほかとの比較だけでは減っているではないかという見方はいかがかと思うのでございます。そういう意味におきましては、昨年度の当初予算に比較いたしまして三三%の増でございますから、初めは食管会計を入れてほかの平均一四・七%ですか、各省の平均、その程度に農林予算もいかざるを得ないのではないかというような心配があったのでございますけれども、しかし三三%ですから、私は大幅にことしの予算は、農林予算としてはことしはできていると、こういう考えを持っておるのでございます。もちろん十分ではございません。また食管会計を除いても一七%ですから、各省所管の平均は一四・何%ですから、こういう比率から言いましても、あるいは全予算の中に占める割合も一割以上をこすということが非常に困難であったのでございますけれども、一〇%をこしております。そういう面で十分とはいきませんけれども、私はことしとしてはまあまあ、まあ総理が全力をあげてと、こういうことでございますが、私はこれはこれとして非常にいいと思うのです。実は率直に言って、農業関係軽視のような傾向所得倍増計画の進行中に出てきておったんですから、私はそういう考え方を切りかえる意味におきましても、その革命的というのはちょっとオーバーなことばだとこの間申し上げたのですが、オーバーでありますが、選挙前でもあったから、革命的とでも言わないと、少し農業に対する力の入れ方が、転換が足らぬというような気持で言ったんだろうと思いますが、そのことは私はいいと思うのです。そういうことを言ったんだから、少しやれやれと言って、私のほうでも農業面に力を入れさせる一つの材料にもなりますから、非難するどころか、そういうことを言ってくれてよかった、そのために農業関係にも重視していくという傾向が非常に出てきたという意味におきましては、あながち公約とかなんとかいう意味から言うとどうかと思いますけれども、あの表現も決して悪くはなかった、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 牛田寛

    ○牛田寛君 食管会計の問題については、別の機会にまたお伺いするといたしまして、私も別に赤字々々と言ってこだわっているわけではございません。ただ、いま申し上げたいのは、現在の段階において、農業政策が画期的な強力な手を打たなければならないというときにすでに立ち入っていることは、これはもうだれでも認めているところでありまして、この点については、だれよりも農民がこれを期待し、また総理の言明に心から信頼している方々が多いのではないか、そういう国民の信頼に対して、ただ選挙のアドバルーンだからというようなことでは、私は国の政治をあずかるものとしての責任を果たせないのではないか、このように考えます。  私がお伺いいたしますのは、その次の問題でございますが、大臣もこのたびの所信表明の中で、農業が立ちおくれた理由について若干述べられております。農業生産性ないし農家生活水準は、順調に向上しておる。他産業との格差がなお大きいのは、他産業の成長度合が大きかったのであって、農業がこれと歩調を合わせることは困難であるので、こういう形になるのだという御説明だったように私は伺ったわけでありますが、農業が立ちおくれたのは、他産業の急速な経済成長という外的要因が第一の要因であるというよりは、むしろ非近代的な農業経済の内部構造、これが最も基本的な要因であると考えるのです。したがって、所得倍増計画の初年度においても、農業の振興ということはうたわれていた。それにもかかわらず今日まですでに大臣がただいま申し上げましたように農業をほうっておかれた。ですから、この農業の内部的要因を解決する農業の体質改善とか構造改善でありますが、言い方はいろいろありましょうけれども、そういう点についての抜本的な対策が強力に押し進められなければ、これは農業問題の解決にはならないと思います。で、これは表現のしかたかと思いますが、農業の立ちおくれを他産業の成長という、ただ単なる外的要因だけに転嫁するような表現はまことにまずいのではないかと思います。もちろん、他産業の急速な成長ということが一つのきっかけになって、今までの農業の立ちおくれた非近代的な構造が表面化したということはありましょうが、やはり農業それ自体にも問題がある。その点をもう少し国民の前に責任を持って明らかにしていただかなければならないんじゃないか、私はそう考えたいのですが、その点についてもう一度大臣所信をお伺いしたいと思います。
  48. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ごもっともであります。農業自体が前進しなければならぬことは、申すまでもございません。ただ、農業が前進すると同時に、他産業と均衡のとれた形に持っていかなくちゃならぬという意味で、生産性の格差の是正とか、あるいはまた農家生活水準の他方面との是正といいますか、幅を、格差を縮小していく、こういう比較をとっていますので、そういう意味におきましては、所信表明で申し上げましたように、三十七年度におきましては、引き締め政策で他産業の伸びが少し鈍ってきましたので、幾分格差も小幅ながら是正ができたと、こういう報告を申し上げたのでございますけれども、これから先、三十七年度のようなぐあいにいくという楽観的に見ておるわけではございません。そこで、農業自体が進まなくてはならぬ、これはまあ基本的な考え方でございます。ただ、農業には非常な、他産業と比較して、特に工業などと比較いたしましてのマイナス面が、よく自然的とか経済的とか、社会的とかということばで言われておりますけれども、これはまた事実ございます。近代化するといっても、一月や二月で近代化できるわけでもなく、収穫が一年に一回というようなこういう制約もありますし、災害等もありまするし、そういう制約がありますから、他産業と同じところまでいくということは、これは非常に困難だろうと思います。しかし、少なくとも他産業との格差を是正していく、こういうことはつとめなくちゃならぬ。そこでそういう面におきましては、所信表明で申し上げましたように、いまの農業の基盤というものが、近代化を進める点におきまして整っていない。こういう面がありますので、そういう面を整えて、そうしてその上を走る汽車や何かが走りいいようにレールをなお一そう整備していかなくちゃいけないのじゃないか、こういう意味から構造改善の事業なども取り上げられておるわけであります。同時に自然的、経済的、社会的制約がありますから、やはり農業に対しましては特段に、政府といいますか、国で力をつけてやるとか、力を注いでやりませんと、どうしてもおくれを取り戻すということが困難ではないか、こういうことで農業政策全体といたしまして、御趣旨の線に沿うように努力をいたして予算編成をいたしました。十分御納得のいくまでに、私ども自身もこれで十分とは思いませんので、そこまでは到達しておりませんけれども、その方向へはさらに一そう強力に進んでいきたい、こう考えております。
  49. 牛田寛

    ○牛田寛君 次に、農家経営の問題について若干お伺いしたいと思います。  大臣は就任直後の初の記者会見で述べられたというように伺っておるのですが、農業近代化のためには、融資に力を入れる、補助金にたよらないで財政資金を借りて自分の力でやるのだという自主的な営農方針を強力に打ち出してきた。そのためには、融資資金によって経営を確立して、そこから得られる利益の中から元利ともに償還していけるようなそういう金利体系をつくっていきたいという、たいへん理想的なお考えを述べられたと伺っておりますが、これを具体策としてどのように実現なさるおつもりか、それをお伺いしたいと思います。
  50. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その新聞記者会見で申し上げましたように、国の力づけといいますか、助成というものをせなくちゃならぬことはもちろんだ、しかし、同時に借りた金は結局返さなければならぬが、自分の金でないから自分の力でやれと言ったって、資金を持っていない農家でありますからできません。ですから低利長期の金融を相当大きくして、金融面を広げて、そうして自分で借りたものは自分で返さなければならぬのですから、その心がまえといいますか、やっぱり自立的な気持ちの点におきましても、そういう面に助成とともに金融面の幅を大きくしていこう、こういう気持ちで財政投融資とか金融面に力を入れたわけでございます。具体的にどうかということでございますが、それにつきましては、法案等も提出いたすことになっていますが、制度金融といいますか、農林漁業金融公庫でたくさんの種類の金を貸し出しております。その利子等もまちまちでございます。いままでは三分五厘からずっと九段階に分かれておりますが、そういう九段階というよりも、低利でなるたけ四段階くらいに縮小するということで四段階に縮小いたしました。このうち例外のものが少しあります。四段階に分けると同時に、金利を安くするという面で三分五厘の金利の貸し付け種類といいますか、そういう面をふやして全部にわたって、一つか二つちょっと経過的に上げたのもありますが、全部にわたりまして金利を引き下げて、それから償還期限等でございますが、これは御指摘なさいますように、外国との比較をいたされまするというと、外国のように長い償還期間というものは、今のところありません。ありませんけれども、いままでの償還期間を長くした、こういう面で改正を加えております。金利の点におきましては、外国の例等によりましても、三分五厘なんというのは、まあ大体低いほうというか、同じような率であろうかと思います。償還期限の点につきましては、外国の二、三の例から比較いたしますと、そう延びておりませんが、延ばします。それからワクでございますが、これもこまかく申し上げればいろいろありますが、農林漁業金融公庫面の総融資ワクが、千七十億、近代化資金の系統資金が六百億、それから無利子の制度がありますので、無利子の農業改良資金のワクを四十五億、これはそれぞれ昨年と比較いたしますならば、相当ワクももう広がってきております。財政投資面でございますが、金融面もありますが、そういう、全力をあげてではございませんが、これは非常にまあいままでとは違い、画期的といいますか、そういう面では進めたつもりでございます。
  51. 牛田寛

    ○牛田寛君 いま大臣からお話がありましたように、金融のワクにいたしましても、あるいは金利の引き下げにいたしましても、一段前進した形ではありますが、いままで農業金融の一つの問題点は、融資を受けた農家が資金計画なり、償還計画なりが立てられない状況になる。立てられない状況になるということは、客観的な情勢もそうでありますが、大部分農家が企業的な能力に不足している。金を借りるときは、金が手に入りさえすればいいので金を借りるが、どういうふうに返したらいいかという計画を立てる能力が不足しているという場合が多い。したがって、融資はけっこうでございますけれども、結局借金をふやしていくという形になることが非常に多い。現実に私は会っております。ですから、一例を言えば、農業近代化資金の融資を受けても、手に入る金は数十万のうち数万である。もう一度借りられれば何とかなる、そういう不都合な例もあるのでございます。これはほかにも例があると思いますが、農協あたりの問題があると思いますが、そういうわけで、融資が実際に農民の利益にならないという実情にございますので、農林大臣が申されましたような、元利とも償還できるというような、そういうような融資体系にするという理想論からはほど遠いのが実情ではないかと思います。そういう点を実際にどう克服していくか、これが実際問題ではないか。融資のワクをふやすのはけっこうでございますけれども、この点が改善されませんと、また新しく負債の重荷を背負うような農家がふえるのではないかという懸念もあるわけでございます。その点についてお伺いをいたしたい。
  52. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第一は、せっかく金融のワクが広がり、そういう金を利用しようということでも、借りる手続が非常に複雑だと、こういう面があります。また、借りるまでに長い期間を要すると、こういう面につきましては、このたびも簡素化するといいますか、そういう簡素化の方向をとってきたわけでございます。  それから第二の点におきまして、せっかく金を借りた、いろいろやろうということでも償還計画が立たないというようなことで、一面においては借金がふえたままで終わってしまうような例もありはしないか、また現にあるではないかということでございますが、この点につきましては、農協あるいはいろいろな指導員等もございますので、計画が十分立って、その資金を利用するということで指導していきたいと思います。
  53. 牛田寛

    ○牛田寛君 農業白書を拝見しますと、全国一戸当たり平均の農家経済の収支が表になって出ております。三十七年度では一戸当たりの平均の農家経済余剰が七万二千円、一農家平均当たり七万二千円の経済余剰があるけれども、大体赤字農家が三分の一ぐらいあるこういうようなグラフも出ているわけでございます。その上にやはり機械であるとか、あるいは畜産を奨励するとか、その他選択的拡大ということで、いろいろ設備をする、そのために設備資金の融資を受けるということになりますと、それに対する償還に荷がかかってくる。実際にはかなりそのために赤字農家が出ているんじゃないか。三十六年のこれは資料でございますが、農林中金の調査でございます。それは宮城県の古川市、大体米作の単作地帯だそうであります。大体豚を飼っているとか、あるいは鶏を飼っているとかいうような、戸別にそういうふうな畜産もやっている場所らしいんですが、その統計を見ますと、経済規模が二町五反以上のところでは何とか黒字になっているが、それ以下では全部赤字だという資料が出ております。ですから、農林白書に三分の一が赤字であるというようなことが出ておりますけれども、実際は、融資は受けたけれども、返済ができないで、負債を背負っている農家が非常に多いのじゃないか。そのあとに、白書にもありますが、負債の増加が前年度に対して約二割の増加になっているというような報告になっております。そういう点で融資一本にたよって農業の体質改善をやるということは、はなはだ困難ではないかという感じを持つわけであります。その点についてはいかがでしょうか。
  54. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話しのように、一町五反とか、二町とかいう大きいほうはよく、よくといいますか、赤字にもならないでありましょう。ずっと耕地面積などが少ないのは、農業収入は少ないのでありますけれども、兼業農家として第一兼業という形で、農業外収入というのがありますのでやっていける。中間の農業、専業的でありながら、なかなかやっていけないという面が出てきております。そういう面の人々が借金をしてなかなか返せなくなるのではないかという御心配だと思います。実は私は何も楽観的に見てませんが、昭和の初頭の農業恐慌時代等におきましては、お話しの東北、宮城県なども非常に悲惨な時代に際会しました。しかし、現在国がいろいろな手で経済面におきましても調整をいたしましたり、あるいは農業面におきますところのいろいろな制度が、不十分とは思いますけれども、その時代から比較いたしますならば、十分とは言えなくとも制度はできておりますし、手当てをするというようなことになります。ですから、昭和の初期のあの農村が借金で困って、農家の負債整理事業というものが非常に大きな問題として取り上げられたこういう時代とはよほど違ってきておると思います。とはいいながら、いまのようなお話しにありますそういう面につきましては、具体的にいろいろ指導していかなくてはならぬと思いますが、制度のほうといたしましては、償還期間を延長するとか、借りかえをするとか、こういう形で長期にわたって返済ができるような方途も講じておりますし、指導もしていきたい、こういうふうに考えております。
  55. 牛田寛

    ○牛田寛君 いま私がその借金の負担といって心配しておりますのは、前向きの形でございまして、結局農業体質改善をしなければならぬ。畜産の奨励にしても、果樹の奨励にしても、いわゆる農業体質改善のために金を借りていくという形になっております。結局それが負債を背負ったのでは、結論としては体質改善が不可能ではないか。農林大臣が言われるのも、結局は自己資金の蓄積によって体質改善をさせていこうと結論的にはおっしゃった。そういう意味でも私が申し上げるのは、単に融資一本にたよっていくのではなくて、もう一段階突っ込んで、いわゆる元利償還ができるような基盤を別の方法でつくってやる必要かあるのじゃないか。そういう意味で、私は価格変動の、価格の不安定な農業政策というものに対して、強力な価格支持政策を与えるべきではないか、かように考えるわけです。やはりこれも農家の人と話したことですけれども、よく言われますけれども、豚の問題、高いときに豚を飼う。それで売るとなると安い。しかもえさのほうがさっぱりよくならぬ。えさのほうも何とかよくしてくださいと言うと、えさは別と言われる。結局豚を飼うために金を借りたが、結局養豚はやめてしまったというふうな人に会っているわけです。ですから、結局そういうふうな企業としての採算のとれる一つの基盤をやはり国の力でつくってやらなければ、融資も生きてこないのじゃないか。そういう意味で、私は強力な価格支持政策が必要じゃないか、このように考えるのですが、この点についてはいかがですか。
  56. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 価格の面は、あとほど申し上げますが、まさにそのとおりでございます。借金が返せるような、融資であっても返せるような基盤をつくってやらなければいかぬ、これはまさにそのとおり。そういう意味におきまして、いかに骨折れて物を生産したから、その物を全部、幾ら高くかかっても政府価格支持していくという考えは、これはちょっと考えられないわけです。やはり生産性を向上して、平均的にだれでもやれるような、だれもコストが低下したような形で生産をしていく、こういう生産性の向上と価格支持というものが両々相まってやらなければならない。価格支持だけでやって、米をつくるのに一俵一万円かかったから一万円の価格支持するというわけにはまいりませんから、いままさにお話しのとおりに生産性が上がって、生産拡大するような基盤をつくっていかなければならぬのじゃないか。そういうことでありますから、たとえば今年の土地改良の予算等におきましても、いろいろ合わせれば八百億近い予算、去年から比べると非常に大きくなった。これは機械を買っても機械だけで借金がふえても困る。やはり共同的に機械を入れるということになれば、大型機械を入れる、大型機械になれば相当集団化したり、まとまったり土地改良もしていかなければならない、こういう意味土地改良なども取り上げていくが、草地改良なども飼料の関係から取り上げていく。それからそれと関連して総合的に体質を改善するということであれば、いろいろまた進め方においてはのろい面もありますが、構造改善事業等をなお強力に推進して基盤をつくっていくべきじゃないかというお説、まさにそのとおりに進めているわけでございます。同時に価格支持の面も、できるだけ価格支持していくという考え方でやっておりますが、何もかも高い生産費をかけたものにまで、そのまま全部補償するということは、農業政策としてまずい、基盤の整備ということによりまして、御意見と全く同じ方向に進めていきたいと思います。
  57. 牛田寛

    ○牛田寛君 その次に、先ほどもお話が出ましたが、飼料の問題でございます。輸入飼料が非常にふえまして、国内の飼料を圧迫している。と同時に、値上がりが非常にはなはだしいということで、それが畜産の発展に阻害しているようにも見えるのであります。今年度から食管会計の中でえさの勘定を設けられた。それに対して五十六億でございましたか予算を組んである。と同時に自給飼料ですが、自給飼料の確保のためというので、草地の造成その他飼料自給度の向上ということで予算が組まれてございますが、これは二十三億。一体政府国内の飼料問題、飼料の自給ということに重点を置いてお進めになるのか、あるいは将来とも輸入飼料に依存する方向でおいでになるのか。その点が非常に今年度の予算を拝見してもあいまいでございます。しかも、輸入飼料がこのように値段が高いということであれば、やはり畜産をこれからやろうという者に対して非常にブレーキになる。むしろ畜産の奨励を一方ではおやりになりながら足を引っ張ることになるのじゃないか、この点について今後どういう方針でお進めになるのか、その点をお伺いしたい。
  58. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料が高いために畜産が、伸びるべきものもスローな伸び方であるという点はあると思います。でありますので自給飼料の面を非常に広げていこうじゃないか、濃厚飼料等よりもそういう面で草地の造成とか、あるいはまた国内における飼料の自給等も少し進めていこうじゃないか、こう考えております。ただ、それじゃ輸入をやめちゃって、国内だけでえさの自給ができるかというと、日本の濃厚飼料の価格というものを比較いたしますると、相当高いわけです。いま外国から輸入している飼料を見ると外国のほうが安い、こういうことでございますので、輸入に相当たよらざるを得ない現状でございます。そういう面でございますから、全部輸入をやめてということになれば、かえってまたえさが高くついて、これは畜産の伸びを阻害することにも相なろうかと思います。そういうことでございますから、自給の飼料のほうの増産を進め、また輸入にかわるものも、かわるべきものは進めていますけれども、輸入を全然なくしていくということにいたしまするというと、これは畜産も伸びませんし、またかえって畜産農家が飼料高、飼料の入手不足というようなことで、企業的にやっていけない、こういう面があろうかと思います。そういう面でいまの方針といたしましては、自給飼料あるいはその他のえさの増産もはかっていきますけれども、輸入を全然やめていくとこういうわけにはまいらぬと思います。と思いますが、ぜひ自給飼料等をふやしていくということにいたしませんと、経営が成り立っていきませんので、そういう面は一そう力を入れていきたい、こう思っております。
  59. 牛田寛

    ○牛田寛君 ただいまのお話ですと、やはり国内自給飼料のほうに重点を置いてお進めになる、そのように伺います。そういたしますと、食管会計で五十六億も予算を組んでおる反面、自給飼料のための自給度の向上のための予算二十三億では、はなはだ貧弱なように考えます。特に貿易自由化となりましてむしろ安い飼料が入ってくるはずのものが、アメリカから値が上がって入ってくるという現状でございますので、自給飼料の自給度の向上については、まだまだこの程度の力の入れ方では不十分ではないかと私は思います。そういう点で、もう一段強力な施策をお願いしたいと思います。この点については、これだけにいたします。  次に、山村農家の対策について二、三お伺いしたいと思います。山村における農家の保護育成対策でございます。この点については、いままであまり強調されておられない状態です。都市周辺あるいは辺地農村等においては、零細農家が兼業化によってその生計を維持し、経済的にもかなり有利な面があるわけであります。山村の農家では、特に零細農が多く、しかも兼業化を行なおうと思ってもできない、そういう状況にあることは、これは言うまでもないことであります。兼業にも弾力性が少ないわけであります。また、すでに兼業として行なっておった林業関係、林業従事者にいたしましても、まきとか炭の生産が衰退したために、兼業収入を失って窮地に追い込まれているところがたくさんございます。このような山村農家に対してどのような対策をお持ちであるかお伺いしたいと思います。
  60. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 山村の実態につきましては、この委員会でも先般お話がありましたし、いま御指摘のあるとおりであります。まあ農家のうちでも山村が非常にひどいと思います。そして兼業の機会も少ない。そこでやはりこういう山村地帯に向いたような構造改善というようなことも進めておるのでございますけれども、特に山村等につきましては、専門的にもっと調査を進めて対策を講じていくべきではないか。こういう観点から、実は山村のほうに専門的調査費というものを予算でお願いしておるわけでございます。林道とか、あるいは林野の法律などもいま考えておりますが、林道等につきましても、相当実質上成果があがるように林道を開発する面も進めていきたいと思いますし、また、草地の造成等につきましても、これは山村に多いのでありますから、そういう面で進めていきたい。また、山村の人々の生活の問題につきましても、いろいろの問題を構造改善上についてやっていきたいと思いますけれども、一そう関心を深くいたしまして、専門的な調査を進めてこの対策を進めていきたい、こういう意図を持っておるわけであります。
  61. 牛田寛

    ○牛田寛君 山村における農家は立ちおくれた農業の中でも底辺にある農家であると考えますので、まず第一に、このような底辺にある農家に強力な政治の手が差し伸べられることを私は願うわけであります。すでに大臣からお話がございましたが、この林業地帯におきましては、薪炭生産いままでやっておりましたものがだめになるというわけで、これを育成林業へ変えていくというそういう方法をとられなければならない。また、山地酪農の可能な場所では、酪農振興のための草地を造成をして、直ちに計画的に実施さるべきではないか。また、現在でも山地酪農をやっておりますところで、高地において高地で飼料作をやっているということで行き詰っている面がある。これを早急に草地を造成する、自給飼料を与えられるようにすべきではないか、そういうふうに考えておりますが、その点についての強力な推進をお願いしたいと思います。
  62. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かにそういう面を進めることが適当であろうと思いまして、草地の問題、あるいは造林関係等にも相当予算を計上して、林野庁として林野関係から造林を進めていきたいと思います。それからもう一つ、いまの御指摘のように、諸外国の例なども、山地酪農といいますか、高地でも十分やっていけるのだ、山地でもできるのだ、こういう例もございますので、先ほど申し上げましたように、そういう面なども専門的に調査いたしまして、お話しのような線をさらに一そう進めていきたい、こう考えております。
  63. 牛田寛

    ○牛田寛君 最後にもう一問、生産性の向上の問題で一点だけお伺いをしたいのですが、現在省力栽培、特に米について省力栽培ということが言われておりますが、いわゆる省力化による生産性の向上という点に努力が集中されているのでありまして、反当たり収量の増加についての努力は一応頭打ちになったような傾向が見られる。この点についてのお見通しはどうでしょうか。これ以上は反当たり収量は増加ができないという見通しのもとに省力化されておるのか、あるいはまたその余地がある、余地があるならばその方面についてどのような努力がなされておるのか、その点について一点だけお伺いしたい。
  64. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 省力化が、人手が不足だから反収を上げないでも省力化という意味での省力化ではございません。やはり労力を省くと同時に反収も上げる。両面でやっていかなければ、せっかくの労力を省力した効果があがりませんから、試験場等におきましてももちろん収穫を減らさないで、むしろ上げて省力をするということがどういうふうにやっていけるものか、その目的で試験研究などもやっておるのでございます。ですから増産はやめたんだ、労力の面だけで、労力を省いてやっていけばいいんだということではございません。労力を省いても増産ができるような両面からの試験研究もいたしておりますし、その研究を実地にも生かしていきたい、こういうふうにやっておる次第でございます。
  65. 牛田寛

    ○牛田寛君 最後に、もう一点だけ林業についてお伺いします。林業について基本施策の確立をはかる、こういうお話でございますが、農林漁業基本問題調査会と中央森林審議会の答申がございました。いわゆる大規模林業について育成するか、あるいは零細林業、小規模林業に対して育成するかということで問題があったように聞いておりますが、この点についてどういう方向に将来持っていくかお考えを承りたい。それで特に零細林家におきましては、農家の持ち山が非常に多い。農家自分の財産として持っている山がずいぶんあると思います。そういうふうな零細林家、それから企業的色彩を帯びた程度の規模のもの、また大規模のもの、幾つかの段階に分かれてまいりますので、画一的な行き方であると、いろいろとそこに摩擦が生ずるんじゃないか、そういう点でどういうふうなお考えをお持ちであるかを、この際お伺いしておきたいと思います。
  66. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまのお話ように、画一的にというわけにはまいらないと思います。農民所有者の面積というものは、統計上からいいますと非常に少ない面積です。でございますが、こういうものはやはり統合とか共同的なものにいたしまして、そして林業が成り立つようにしていきたいこう考えます。また、農家の中に散在する山というか、これはまだ農家農業経営上必要なものがございます。小さくても、やはり一つの燃料ということにしかならぬかしらぬが、堆肥の材料、あまり堆肥などはいまつくりませんけれども、そういう面で農業というものがやはり田畑、山林というものの均衡を得て初めて経営合理化もできると思います。そういう面はそういう面で指導していきたいと、こういうふうに考えておりますので、画一的にというような考えは持っておりません。それぞれの利用効果、こういうものを考えながら林野についての検討を進めていきたいと思います。
  67. 森部隆輔

    森部隆輔君 時間の制約がありますので、当面の重要問題の二、三の問題についてお伺いいたしたいと思います。大臣が非常に農村事情に明るいので答弁が非常に御丁寧であることはけっこうですが、私は簡明に要旨だけ、要点だけを、お考え中心だけをお答え願えればけっこうでございます。御所信を伺いたいと思います。  例の野菜が全国的に非常にことしは気象関係で、暖冬の関係で反収が多くて暴落しておる。いま一番騒いでおるのは福岡県ですが、福岡県では非常にいろいろな意味で騒いでおります。わかりやすい例で申しますと、白菜は去年のまきつけはほとんど反別は変わりません。大根は四割ぐらい反別はふえております。しかしながら、値段は一月の上旬の価格は、白菜の場合においては、前五カ年間の平均は一キロ十一円三十三銭が、ことしは二円六十一銭で七割七分ぐらいの下落ということになっております。つまり二割何分しか農家は従来よりとれない。これは極端な……日によって多少違うのですけれども、こういう数字があらわれております。大根は大体半分です。前年の価格の。そこで農協なり、あるいは他の農業団体としましては、消費者に非常な御迷惑をかけてはいけないというので、自主規制ということで、いま福岡市内の野菜は隔日に出荷する。一日一荷。その他の一日は市外から持ってくる。もっとも福岡市内に広範囲な野菜灯があるのでそういう関係をやっておる。北九州市は先般、農休日と称して一日出荷を停止したことがある。しかし全体の量が非常にふえたので、結局白菜、蔬菜あるいは大根等においては、少なくとも千トン以上ずつおのおの全然廃棄処分にしなければならぬ。廃棄処分というのは、大根とか白菜というものは焼かれるものでもないし……また消費拡大をするために加工するとか、あるいは農協の婦人部が白菜をつくっていない方に直接売るとか、あるいは市の婦人会に働らきかけるとか、そういうようないろいろな消費拡大はやっておるのですが、もうしかし、こういうような機運でありますと、だんだん大根あるいは白菜、春菊だとか、あるいはホウレンソウ、チシャというような非常な鮮度をとうとぶ蔬菜類のごときは、商品価値がほとんどなくなってしまう。ことしの間には私はなかなか合いかねると思います。しかし全国を見てみると、全国のうちで、県で生産団体あるいは農家、あるいは場合によっては市場が多少の金を出しておるところもありますが、白菜については価格維持、つまり前年何カ年間の三分の二以下に下がった場合にはどれだけの補償をするというようなことをやっておるのは御承知だと思いますが、白菜では七県あります。キャベツは十三県あるようであります。国としてもやはり重要なおもなる蔬菜については、やはりそういうような価格補償制度というようなものを、これはお考えになることが当然だと私は考えております。時間がありませんから要点だけ申し上げますので、この点をひとつなるべく早い機会にそういうようなおもなる蔬菜について、しかも主要な都市に対して、集まってくる集散地に対しては、共同出荷した分は明確でありますから、そういう措置をとられることが適当じゃないか。それが第一点。時間をなるべく短縮していろいろなことをお伺いする関係上、続けてなおお尋ねいたしたいと思いますが、いまの市場制度というと、御存じのとおり、全国の市制施行地がいま五百七十幾つか、五百七十七ですか、市制施行地がありますが、そのうち人口十五万以上の都会が六十八ですか、現在あるようですね。中央市場法によっていわゆる政府の補助を受けて、中央市場を現にやっているのが二十二あると私は思っている。中央市場は補助金の関係上、日々の出荷量、種目、種類、品目、時期等あらゆる出荷、取引された条件を一々報告することになっております。ところが、それは全国二十二の中央市場、県によっては条例でそういうような報告の義務を持たしているところもないではない。しかし全国的に見ると五百七十七の市制施行地のうち、少なくとも人口十五万以上ぐらいの、一応中央市場の設置基準である都市の大部分というものは野放しなんです。これは市場の設置は、御存じのとおり、認可も許可も要るわけじゃない。そこで何月にどういう蔬菜が何県から入ってきて、どこから入ってきたんだ、数量は幾ら価格幾らということを何も握ったものがない。で、私はかねていろんな機会に進言をいたしておったんですが、今回多少そういうような方面に対して調査されるような予算があるように私は考えております。それは非常にけっこうなことでありますが、その金額といい……主要都市というものも至って数が少ないようですから、もう少し手を広げなきゃいけない。それからもう一つは、少なくとも全国の二十かあるいは三十ぐらいの大都市には、農林省から直接専門の駐在官を年間常置させておいて、生産団体というか、荷受け機関である市場あるいは消費者というようなものと常に話い合いをいたして、そして前年のまきつけ、収穫高というようなものの実績をちゃんと握って、いまの本年に備えるということをやれば、これがいわゆる需給のもとになる、いわゆる生産と消費との計画性を持つゆえんです。今回の場合でも、福岡が一日出荷を停止をしても、あるいは福岡が出荷を自主的に規制をいたしましても、隣県からどんどん入ってくれば何にもならない。昨年でしたか、福岡の園芸連がキュウリやナスの計画出荷をやって、きょうは北九州に幾ら、あすは飯塚に幾ら、こういうふうに計画出荷を定めたのですが、私は園芸連の当局にそう言ったのですが、他県が無計画に持ってくりゃ何にもならない。そこでそういうような数県にまたがることは、一県の知事とか、あるいは全販連の支所というだけでは、管轄の区域も違うし、これはできない。そこでいまの少なくとも全国の二十ないし三十ぐらいの——戦争中は八大府県に統制会社ができたんですが、少なくとも二、三十の都市には、いまの職員を常置せしめて、常にそういう数字を把握し、過去の数字も把握し、今年の作柄等も見て、また日々のそういう腐れやすいもの、あるいは鮮度を非常にたっとぶような蔬菜に対しては、関係生産地と常に出荷を調整していくことが非常に望ましいことなんですね。そういうことに対して当然お考えになっておると思いますが、そのことも第二の質問としてひとつお尋ねをいたしたい。  それから第三は、中央市場は大体人口十五万以上の都市に、中央市場のいまの基準にいたされておるようでありますが、その他のいわゆる都市というものが、御存じのとおり五百何十とある。そこで中央市場法というようなものを制定して、いまの市場において取引する蔬菜、くだものの種類、品目、時期、価格というようなもの、あるいは出荷地というようなものを常に政府が把握して、少なくとも昨年から冬ブロックに農政局もできたんですから、そういうものから資金を出せばわけはないことなんです。それから、のみならずそういうような中央市場以外の都市にはただ報告の義務だけならば、必ずしも豊富な金を補助せぬでも、わずかの人件費か事務費を補助すれば報告はじきできる。そのくらいのことは農林省、やろうと思えばわけがない。金額でもごくわずかの金でできる。そこで必ずしも建設費の補助をやらぬでも、そういうような中央市場設置法により補助金を出してやる。主要市場はわずかに全国で二十二くらい、九洲では五つしかない。で、その他の都市に対しては、少なくともいま申したような事務費の補助でもやって、そういう市場における取引の種類、すべての問題を通じて常に数字を握っておく。そして生産者と荷受け機関、消費者、その動向を常に握って、関係者府県との間の調整をされる。そういうことが非常に必要なことなので、そういうことに対して格段の御配慮をお願いしたい。これに対する大臣の所見。  それともう一つ、青果物の問題に関係がありますのは、北九州市が人口百万以上になったのでありますが、これはまあ、聞くところによると、三十九年度は京阪あるいは名古屋両地区のようでありますが、北九州はただいま申しましたような福岡県の特異な現象、福岡県が特に今度騒いでおるのは、福岡県内における蔬菜の消費量の約七、八割というものは県内生産なんです。でありますから、しかもその園芸農協というのは非常に強力で、それで今度非常な盛り上がりがあって、ああいうような大騒ぎをして自主規制をやっている。そういう特殊性をよくお考えになって、北九州都市等も人口百万をこえておりますから、これに対してもやはり京阪神あるいは名古屋等のようにお考えくださることが、僕は適切だと考えるのであります。これに対する大臣の御所見も拝聴いたしたい。  以上が青果物の問題、まだこまかいことはたくさんありますが、さらに他日を期して御見解をお尋ねいたしたいと思います。  それから次に、これも時期が迫っておるのでお尋ねいたしたいのですが、これまたわれわれがかねて御進言申し上げ、また政府も今度は思い切って農業金融に対しては、ことに制度金融に対しては、公庫を経由していくところの金に対しては、金利の段階もいま大臣お話になりましたように階段をずっと減らし、事務の簡素化がされておることは非常に私は喜ぶべきけっこうなことだとわれわれは非常に感謝いたしております。しかしながら、私もこの間から間接に体験したり、また過去においてもそういう経験を持っておりますが、いろいろ政府関係の公庫がいま御存じのとおり六つか七つかありますが、他の公庫はほとんど金融機関の責任において貸し付けを決定する。行政庁の意見を参考に聞くことはもちろんであります。それからまた、国民金融公庫の貸し付け対象が九つかあるようですが、その中の幾つかは行政庁の承認と申しますか、認定が必要のようですが、農業金融に対しては公庫を経由していくいわゆる制度金融全体、それから近代化資金というものも、これは制度金融じゃありませんが、国が利子の補給をし、県が利子を補給するために、やはり事前に一件々々ごとに県の承認を経なければ、信連も単連も金を出さない。これはこっちで聞いてみると出すと言っておりますが、現地ではわれわれは実際に出していない。これが現状なんです。こういうために非常に日数がかかり、三カ月も四カ月も、半年もかかるというような実情なんです。で、私がこまかいことを数字は申し上げないでも、当局であられる政府のほうで十分御存じであると思いますが、おそらく三十八年度の公庫の資金ワクというものも、あとわずか一カ月か一カ月半ぐらいの間に少なくとも三割か四割は、いま貸し付けの決定しておる金額は、おそらくワクの五割か六割じゃないかと私は想像しているのですが、おそらくあと一カ月半ぐらいでは全部残りの四割というものは消化し切れないのじゃないか。われわれは昨年来いわゆる近代化資金といい、あるいは農業経営構造改善の資金といい、そのワクの増大を強く迫った。迫ってもいままでのようなやり方では、いまの実際において、農家が借りるのをめんどうくさがり、こんなめんどうくさいわずかな金であればもう借りない、こういうのが現状です。金を貸すほうの役人の方は、多くの場合において、金融の実際の責任者になられたことはない。また金をかつて借りられたこともないでしょう。だから、ほんとうに借りる人の身になってお考えになってやらなければいかぬと思う。ことに、先ほど申し上げましたように、農業金融に限っていろいろな制約をしている。ただいまも申しますように、一件ごとにこれは承認をとる。農業というものがその土地によって、また地方によって非常に違うから、あるいはまた果実にしましても、いろいろな種類があって、技術者の意見も軒重しなければならない点があることは、私は十分わかる。そのことに対しては私は決して異議を申し上げません。これは必要だと思います。しかしながら、決定権はあくまでも債権者にある。制度金融の場合は公庫が債権者である。ひっかかったときには、公庫がひっかかる。それから近代化資金の場合においては、債権者は農協なんです。何も県が回収不能の場合に金を払うわけではない。したがって、回収そのものの責任を負う債権者にいわゆる貸し付けの決定権を与えることは、当然のことなんです。こういうことで、農業金融の問題については、私はなお多くの改善をしなければならぬ点があると思う。  なお、まだもう少し時間がありますから、もう一つ金融の問題について触れますが、農業金融は、戦後においては戦前と変わって、公的な性格を持っている金は、いわゆる公庫を通じて全部農業者に出しておる。それから民間金融は農協の系統を通じて金を出す。この二本立てなんです。ところが、農協は臨時金利調整法によって、御存じのとうり、普通の金融機関よりは高く預かって、よろしいということなんです。単協の場合においては日歩一厘、年一分は高く預かってもよろしい。しかし、単協の余った金を信連に持っていって、信連の余った金を農林中金に持っていく。この三段制がいいか悪いかについてはきょう申し上げませんが、まず三段制があるものとして、その場合に、おいて、積み上げた金というものは、一番貯金の少ないのは米の代金のまだ入る前ですから、そのころの去年の九月三十日現在を見ると、その数字をあなた方はお調べになったろうと思いますが、去年の九月三十日現在を見ると、農林中金が預かっておる貯金の八割六分というものは、系統農協の貯金です。系統農協から持ってきた貯金なんです。しかも、農林中金が農協に貸し付けている金というものは、そのうちの一〇・七%なんです。一割しかない。そうして七割以上というものは関連産業と称して大企業に金を貸している。私は、肥料会社であるとか、乳業会社であるとか、あるいはその他農業関係ある会社に金を貸すことを、必ずしも悪いとは申し上げません。しかし本来普通銀行、地方銀行、相互銀行というものは、国民から金を預かって必要なものに金を貸す。その場合に何ら法律上の制限がない。銀行の頭取が炭鉱に金を貸そうと、株式を取得しようと、いまの現行法では何も制限はありません。ただ行政指導としてはいろいろ大蔵省やってますが、これ以上の制限はありません。ただ農協の場合におきましては、いわゆる財務基準令というものを設けて、信連の場合においては、その貯金に対して貸し付けた残りのいわゆる余裕金というものの運用は、証券を買う場合には、一割以上の配当を持つところの会社の社債ということに限定して、株式の取得は一切認めぬということになっている。あるいはまたその保有高も定期貯金の十五分の一でありましたか、そういうような、こまかい制限等がある。いわゆる国民の大事な金を預かっておる金融機関というものは、たとえそれが銀行であろうと、あるいは農協であろうと、信用金庫、信用組合であろうと、非常に違った制約をするということに対しては、私は多少何と申しますか、理解に苦しむ。もっとも、単協は総合農協でありますから、雑貨屋と銀行をデパート的にやっているものですから、やむを得ない。しかし信連以上になると、県の信連は金融のみを扱う独立法人なんです。ただ問題は、全国の各府県の信連を見ますと、非常に余裕金を持っておるところと、そうでないところとあって、一本の線で切ることはむずかしいでしょう。一本の命令とか、あるいは行政筋でやることはむずかしいのですが、これらに対しても、あるいは非常に多くの余裕金をかかえておるというようなところには、特に農林大臣が認めた場合にはその制限を、財務基準令による制限を多少緩和して、その信連の財政力というものをうんと強める、豊かにする。そうすると、もう安い金利で、あるいは国から利子補給せんでも低利で還元できる。いま利子補給をやられておりますが、利子補給というものは、なるべくできれば単協で利子補給したほうが、農村に還元したほうが一番利子が少なくていい。上に行けば行くほど金利が高くなる。そこで利子補給をうんとしなければ、実際の下部農民は、非常に低い金利では借り得ないという実情なんです。こういう点で、きょう時間がありませんから多くを申し上げませんが、少なくとも農業金融制度というものに対しては、いろいろな点から改善と申しますか、大いに考えなければならぬ点が、検討しなければならぬ点があるものと信じておりますが、政府において、ことに農林大臣においては、農業金融に対して何らかいわゆる前向きの姿勢をもって検討される御意思があるかどうか。あるいは、民間のそういうことに経験を持つ人あるいは学者をも加え、そうして適切なる調査検討をして、最もわが国のいわゆる実情に沿うような、しかも農業者から預った金をなるべく低利に農村に還元する、この原則をあくまでもいま貫くというような方針のもとに御検討なさる御意思があるかどうか、その点もあわせてお尋ねを申し上げたいと思います。いろいろまた足らざる点は、これは他日の機会にさらにお尋ねをいたしたいと思いますが、以上の点についてまずひとつお答えを願いたいと思います。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 流通対策、ことに野菜の流通対策等につきまして御経験やら、あるいは実態やらのお話を聞かしていただいたのでございますが、何から何まで御承知のことでございますから簡単にお答え申し上げます。何といたしましても、いまお宅のほうでもいろいろ骨折っていられる出荷の調整、こういうことが基本でございます。あるいは価格につきましても、野菜につきまして安定価格制度を持つものもありますが、この面でもいろいろ農協等におきましてやっている県が非常に多くまた効果はあると思います。こういう面も一そう進めていくべきだと思います。  それから情報でございますが、計画的に生産しあるいは出荷するということになれば、情報を終始流す必要があると思います。で、いま流通調査ということで約百八十人を出荷地あるいは消費地に駐在させよう、予算で約一億円でございますが、そういうことを考えております。  それから流通対策は非常に重大なので、流通全般を指導あるいは調査する人を置いたらどうか、これは各県にまたがる場合があるから、各県というわけにいかぬから、それを各県にまたがってやれるようなものを置いたらどうか。実は今年の予算におきましても、関東農政局と京都にはそういう人を置くことにきめております。二名あて置くのでございますが、今お話の九州地区の農政局にも設置したいということで、いま推進をいたしております。まだ決定はしておりませんが、そういう方途を考えております。  それから価格の安定の中で、野菜の種類によって行なっておるのですが、キャベツで価格安定制度、これにつきましても、九州の方面までやりたいという考え方で進めております。決定はいたしておりませんが、そういう考えで進めております。いまお話がありましたように、流通対策につきましては、なかなかむずかしい問題もありますが、それぞれお話のような措置をとっていることは、なお強化し、また足らない分を私ども補っていきたい。市場の問題もできるだけ大きな都市等に市場を設けて、市場の機能を流通対策に生かしていく、こういう方向で検討を進めております。  金融対策でございますが、金融も専門的なお立場から、いろいろ御苦労をなさっている、また今のお話なども、もっともな点が非常に多いのでございます。実際に手続が煩雑で、あるいは県の認可、その他によって、一人々々の手に渡ることが非常におそいということでございますが、資金によりまして、近代化資金等は御承知のように、利子補給がありますので、県の認可といいますか、そういう手続は存置しなくちゃならぬと思いますが、それにいたしましても、非常に複雑で、もう途中からいやになってしまうといって捨てちまうようなものもあるようでございます。でございますから、そういう近代化資金等につきましても、あるいは国の公的資金で公庫を通じていく資金等につきましては、一そう簡素化していくように研究をさせていきたいと思います。そういうような農業金融の問題でございますが、農業金融の問題は、ずいぶん昔からやかましい問題で、それだけでも一つの大きな問題でございます。実際にこれをどういうふうに運んでいくかということにつきましても、いまお話のございましたような問題がございます。これは調査会を置いてやるかどうかということは懸案にいたしますが、農協関係、その他農業金融に関係している人々の意見なども聞きまして、これを簡素化したり、合理化したりするようなことはいたしたい。十分その方面に検討を進めていきたいと思っております。
  69. 森部隆輔

    森部隆輔君 あと五分だけあるようですから、あるいは答弁はなくても、私の希望を申し上げたいと思います。  一つは、この所得税の確定申告が三月十五日になっておりますが、先般来、福岡国税局管内において、佐賀、長崎、福岡三が福岡国税局管内の所管でありますが、水稲作付反別が非常にまちまちなんですね。そこで三県の農業会あるいは農協中央会で国税局といろいろ折衝したそうですが、結局、国税長官に要請書を出すなんかして、私もその間にちょっと中に入ったのですが、一例を申し上げますと、同じ農林省の、これは私の数字が間違っているかもしれませんから、資料として正式に要求いたしますが、最近の各府県の水稲作付反別及び陸稲作付反別の府県別の数字をひとつ資料としていただきたいと思います。ただ福岡県の例を申し上げますと、私が農協の関係の者からこれは聞いておる範囲においては、統計事務所は、福岡県の水稲作付反別は九万五千余町歩に及びます。ところが食糧事務所のほうの数字は、水稲作付反別は八万五千幾らである。約一万町歩くらいそこに差がある。それからまた農災は御承知のように、零細なものは一定面積以下は加入しないでいいのですから、この数字は正確なものとは言えませんが、引き受け面積が農災の七万一千町歩で、一反歩未満のものは推定一万三千町歩くらいあると思いますが、両方加えて八万五千町歩。そうするとやはり食糧事務所とほとんど変わりません。同じ農林省の出先である統計事務所あるいは食糧事務所は、わずか福岡県の水稲作付反別十万町歩を下っておる、それに一万町歩前後、二万町歩をちょっとこえておるようですが、差があるということは、調査の時点が違えばこれはもちろん違うことは多少あります。しかし、一割も違うというようなことはないのでありますが、御検討願いたい。  それからもう一言、これはあるいは苦言かもしれませんが、申し上げておきたいと思いますが、池田総理選択的拡大ということを言われて、いわゆる今後の日本農業を救うのには、農家経済を所得を増すには、園芸と畜産ということを盛んに言われることは、これはまあいいでしょう。何も反対すべき理由もなし。ところがこれは何かみんな酒に酔ったような気分で、何も酪農が適せぬところまで農家が乳牛をおいて、今日では困っておる。われわれの地方ですと、筑後川沿岸の平坦部では水田の裏作として飼料というものは限度がある。そこで今日では、去年の長雨で、すっかり去年の裏作はだめになったので、濃厚飼料に依存しなければならぬ。現在の乳価は安いから乳牛を売っておる。私も実は乳牛を、自分でも牛を数頭持っております。乳牛を私も戦後十数年置いておりますから、何も池田さんの説に従ってやったわけではないのですが、あまりムードを、土地の立地条件も何も考えないで選択的拡大、園芸と畜産というような空気を鳴り物入りで天下にびまんさせてするということは、これは私はよほど考えなければならぬ。為政者として考えなければならぬ。われわれ団体なんかに関係のある者は、一半の責任を負わなければならぬと思っておりますが、よほどその点考えないと、私は悔いを将来残す危険があると思うので、このことはひとつお考えおきを願っておきたいと思います。以上今の反別の問題とそれからいまの選択的拡大そのもの自体に反対はしませんが、あくまで適地適産でなければならぬのでございますから、こういうことの行政指導等の面、あるいはいろいろなPR等の面においても、よほど慎重なる御発言なり、これは農林大臣だけに申し上げるわけではありませんが、政府全体としてそういうふうにやっていただかないと、農業実態を知らぬ人までが、園芸と畜産さえやれば、日本農家は一ぺんで所得が倍増するというようにとんでもないことを考えてしまう。これはよほど考えてもらわないと、これはいま申しますように、立地条件に合わない農業をやって、そのために非常なかえってのちには迷惑をするというような現実がありますから、そういう事実を申し上げて御参考に供して、今後の御善処方をお願い申し上げたいと思います。  時間がちょうどきましたので、なお他の法案の際に足らざる点は、こまかいことにつきましては他の方にお尋ねをいたしたいと思います。希望をあわせて申し上げておきます。
  70. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの統計の問題でございますが、統計がいろいろまちまちだという文句を、私よく聞いております。九州の福岡のあれですと、食糧庁の農業関係の面積は申告に基づいておるので、統計調査部のほうの統計としては実測でやっておりますので、うしろのほうが正しいのではないかということを言っておりますけれども、まあいずれ……。
  71. 森部隆輔

    森部隆輔君 統計事務所だって一筆一筆実測するわけじゃないのですからね。これは統計事務所も何も根拠はないのですよ。台帳面積によると、とても何千筆、何千筆というものを実測するということはできませんから、よほどこの点はお考えくださらんと、それがためにいろいろな所得なんかの査定の上においても手違いができます。不平を起こしますから、御検討を願いたいと思います。
  72. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十分検討いたします。資料も提出いたします。  それから農政全般に対しての御意見もごもっともで、立地条件と、やはり経営のやれるかやれないかという、いろいろな面から、方向選択的拡大であっても、それを画一的にやったり何かすることはできないと思いますが……。
  73. 森部隆輔

    森部隆輔君 まあ大臣十分御承知でございますので、よろしくひとつお願いします。
  74. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二十二分散会      —————・—————