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1964-06-04 第46回国会 参議院 内閣委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月四日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     三木與吉郎君    理事            石原幹市郎君            下村  定君            伊藤 顕道君            鶴園 哲夫君    委員            源田  実君            小柳 牧衞君            塩見 俊二君            林田 正治君            村山 道雄君            千葉  信君            山本伊三郎君            鬼木 勝利君            向井 長年君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    労働省職業安定    局失業対策部長 住  榮作君    労働省職業訓練    局長      松永 正男君    自治大臣官房長 松島 五郎君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    運輸省鉄道監督    局民営鉄道部長 岡田 良一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○自治省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○労働省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会開会いたします。  自治省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に続きこれより質疑を行ないます。政府側から、赤澤自治大臣松島官房長柴田財政局長皆川総務課長近藤公営企業課長松浦公務員課長岡田運輸省民営鉄道部長が出席しております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、自治省設置法について、この前二日間やりましたので、大体自治大臣地方公営企業に対する考え方、十分われわれも誠意あるところはわかりました。しかし、こう言ってはまことに失礼ですが、大臣はたびたびかわられますので、どうかひとつ、出席する事務当局も、大臣がかわっても国会で言ったことを変えないように特にその点お願いしたいと思います。財政局長、わかっておりますですね。大臣かわったら、また変えられては困るから、地方公営企業公共性を重点として、今後再建、合理化をしていく、しかもそれは、いわゆる従業員にはしわ寄せしないというひとつ前提でやっていくということについて、間違いなく事務当局大臣の意思を受けて今後努力してもらいたい。しかし、赤澤大臣ずっとやられると思いますが、念のためそれだけ冒頭にお願いしておきます。大臣、よろしいですね。  それでは第一に……運輸省の方お見えになっておりますか。実は姫路モノレールの問題で、私この間行きまして、相当いろいろ反対した側の方たち意見を聞いてきたのですが、それを前提にしておきます。私は、うそを言いませんから……。モノレール申請があなたのほうに来ておるらしいのですが、それで見ると、交通緩和のためだということが前提になっておるようです。しかもこれは地方公営企業として運営されることになるのですね。それで私関連があるから、この機会にひとつはっきりしておきたいと思います。  運輸省主管省としてこれを認可する権限を持っておられるので、自治省としてはあと始末はしなければならぬ、地方公営企業が非常に赤字で困難になってくると、自治省がそのあとをふかなくっちゃならない。認可するのは運輸省である、こういう一つの矛盾があると思うので、特にその点を考え答弁をしてもらいたい。そのモノレールを設置するについて運輸省はどういう考え方を持っておられるか、まずその点を伺いたい。
  4. 岡田良一

    説明員岡田良一君) この姫路市のモノレールにつきましては、現在免許申請書が出てまいりまして運輸審議会諮問をいたしております。現在運輸審議会で二、三回いろいろ審議会が行なわれまして、まだ結論は出ておりませんが、その途中において、やはりその地方公共団体財政との関係というふうなことも問題になりまして、自治省方面意見もよく聞いて、その上で審議を進めるべきだという現状になっておりまして、現在のところ、まだその内容についてイエスノーという段階まで至っておらない、自治省なりその他のいろいろな意見を聞こうという段階になっております。
  5. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もちろんあなたのほうにもまあいろいろと申請についてはいっておると思うのですが、あれの申請を出すという市会議決はなされたようであります。どうもこれは自治省のほうにも関係あると思うのですが、あと議員はだまされたというような感じを持っておるのですね。建設するという、そういう議決じゃなくして、申請する議決だと、こういうのですね。私はまあ市会議員の方にちょっと、何といいますか、注意をしておいたのですが、申請するという議決は、それをやるという議決に思われてもしかたがない。申請するということはやるという前提があるので。ところが、いや、ただ申請するだけであって、あと計画書とか予算なんかあとで出す、こういうきめ方をしておるのですね。こういう事情、運輸省御存じですか。
  6. 岡田良一

    説明員岡田良一君) その申請するという議決であったかどうか、その辺のことは、私ども地方手続、実はあまりよく存じないものですから、その辺のことはあまり徹底して聞いておりませんが、まあいろいろそういう問題がありましたけれども、結局何かモノレール特別委員会をつくって、そこでよく審議をして、その結果一回目の、その申請するという、まあ問題があった議決のほかに、もう一度三月の末ごろに、モノレール特別委員会審議の結果によって、市会として多数決でこういうことをきめたという話を、たしか四月の上旬ごろに姫路市のほうから聞いたのであります。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあそういう点も聞いてきたんですが、それも、その三月何日ですか、ちょっといま日にちをさがしてもわかりませんが、モノレール設置特別委員会ですか、そういうものの調査を経てやっておるんだが、具体的にまだそれの予算措置とか財源措置というものは考えておらぬ。ただ要するに、費用が七億幾ら、その財源措置を起債でやるか、あるいは一般会計から出すか、その他についてわからない。そういう、これはまあ市会権限に属する、われわれ批判はできませんが、どうもわれわれとしては理解しがたいような内容議決された。で、市会議決されれば、姫路市民がそれに同意しておるんだということで、運輸省は取り上げておると思う。また、運輸審議会陳情に行かれた場合でもそういう話をしておるらしい。ところが、地方自治全般から考えると相当問題がある。たとえば、現に三十八年度に学校の講堂の建て直しを三校が予算化した。ところが、膨大な地元負担があるのでそれができないということで、工事にかかっておらない。で、もちろんこれは地元負担でわれわれは反対なんですが、そういうことで、一般財源が非常に困っておるのに、赤字経営がはっきり見通せるのに、そういうものをつくろうというのは、われわれとしては考えられない。これは観光施設として、そういうことは一つのアイデアとしては考えられるのです、モノレールは。また、交通緩和に将来なるかわかりません。現在東京にも羽田にできていますが、私はモノレールそのもの近代性については反対しない。しかし、姫路市の、いまの一般市政から考えて、それに膨大な費用を使って、しかも、赤字があるのははっきりわかっておる。そういうものを運輸省認可をした場合に、運輸省認可してしまうとあとは知らない。あと地方財政関係自治省が困る、こういう点がもう少し、運輸審議会の中でも練達の士がおられるけれども、単に運輸機関ということから判断をして、そういう市の経営経済というものを無視しては私は困ると思う。その点どう思われますか。
  8. 岡田良一

    説明員岡田良一君) そういう点もありますので、運輸審議会審議の途中において、自治省意見を十分聞きまして、まあ自治省の御意見も反映するような形で審議を進めておるわけでございます。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 運輸審議会でそういう自治省意見を反映するというのですが、運輸省として、いま地方公営企業御存じのとおり相当問題がありますね、だから、意見を反映するのはけっこうだが、運輸省自体が十分自治省との間の意見を調整して、これを認可するなら認可するという形をとらなければ、われわれとしてはどうもその点がわからない。私は運輸省自治省に言ったけれども政府一本ですから、その点の連絡はとれておると思うのですが、最近聞くと、どうやら運輸審議会では認可に傾いておるやに聞くのです。認可すべきだという意見に。そういうことで、私は緊急質問というわけではないけれども、特に来てもらった。あれは相当大きな問題が出てくると思う。あれは一・四キロですね、駅から何とかいう遊園地ですか、山でしょう、しかも、交通緩和ということは全然いまは問題はない。ただ市長が説明していることを聞くと、将来延長するんだと言うけれども、それは将来の計画が立った後にそういうことをやってもいいが、われわれとしてはどうも賛成しがたい、その点運輸省として、どういう答申が出るか知りませんが、答申が出ても、相当責任を持ってもらわなければならぬ、その点どうですか。
  10. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 運輸審議会のほうで大体いま認可するような考え方だというお話がございましたけれども、昨日もこの問題で運輸審議会事務当局といろいろお話をいたしましたら、運輸審議会としては、まだそういう結論を出す段階ではなくて、いまの問題になっております姫路市の財政状況と、これに対する自治省考え方、そういうふうな資料をもう少しよく集めて、その上で審議をしようということで、きょうぐらい自治省のほうにとりあえず電話連絡なんかで連絡いたしまして、さらに詳細な打ち合わせをしてやっていきたいという段階になっておりますので、まだそういう最終的な段階にはまいっておらないようであります。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、具体的に聞きますが、一・四キロ程度の、いわゆるモノレール一つ交通機関としてやった場合の建設費、いわゆるそれの運営費経営費、そういうもののデータをあなたのほうに詳しく出しておるというのですが、それはどういうデータですか。
  12. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 建設費は全部で九億七千五百万、そのうちで土地買収とかそういうふうな金につきましては、直接姫路市で払うわけですが、モノレールメーカーに払う金は約八億くらいでありますので、メーカーに払う金は五年間の年賦で支払う、この八億を除きまして、一億七千万くらいのものを二年間に分けて一般会計から繰り入れると、そういう申請になっております。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この、業者に八億ですか、これは五年の割賦で払うというのですが、これは何ですか、相当利子もその間つくと思うのですが、そういう契約はどうなっているか、御存じですか。
  14. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 現在まだ正式に免許になっておりませんので、会社との契約は、仮契約並びに覚え書きという形になっておりますが、その覚え書きによりますと、年七分の利子を付すということになっております。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ大体聞いてきたことと数字は合うておるのですが、その場合一般会計から一億七千万を補てんするという、大体二年半か三年でこれを建設してしまうという考え方でおるようです。これは一般会計から繰り入れるということ自体も問題があるのですが、八億の金を借りて七分の利子を出して、それでこのモノレールから年間どれくらいの収益があがるように見ておりますか。
  16. 岡田良一

    説明員岡田良一君) ここに収支計画が出ておりますが、償却もいたしまして四年目から黒になるという計画であります。初年度は一千万の赤字、二年目は七百八十万、三年目は五十六万、四年目に四百九十一万、これは黒字、以後ずうっと黒字、そういう計画になっております。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはあなたのほうはまだ調査されておらないから言えないのですが、駅からいまのコースですね、神姫バスとそれから市営と二つが走っている。その年間輸送している人員に三倍、四倍かけても、あなたの出している申請書のそれだけの収益があがらないという結果が出ているんですが、そういう計算をあなたはしましたか。向こうから言うてきたやつを言うておられるのですか。一日にどれくらいの輸送をする計画になっておりますか。
  18. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 申請が一日当たり二千八百八十五人で、一応私のほうの査定は二千六百九十人ということになっておりますが、なお今後——この点、よく検討している段階であります。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは私聞いてきた数字ですが、現在、あの神姫バスが一日に四百二十人しか乗っておらない。それから市営バスがその倍の八百六十人を一日に輸送していると、こういうんです。ところが、神姫バスは、それでも赤字でもう路線を廃止しようかという考えを持っているようです。ところが、市のほうは八百人運んでおれば十分採算がとれるはずだと言っておるのです。これは神姫バス経営者が言っているのですよ。だから、市の出しているデータというものは、きわめて水増しをしているのではないか。  それで、これは民鉄部長に聞きますが、姫路市営も非常にバス赤字なんです。したがって、あの路線をもう廃止しようという考えでいるんですね。客がないんです。観光地にするというけれども、あんなところによそから行く人はない。お城であれば観光客はたくさんある。それで一体何のためにつけるかという理由もわからぬ。ただ、姫路市民の感覚としては、これは日本でも犬山のほか二、三しかないし、姫路モノレールができたら相当観光客が来るだろう、そういう甘い考え方でいま考えているようです。それは私非常に危険だと思う。したがって、そのデータが、そのもの自体基礎審議されたら私は困ると思う。地方公営企業がやかましく言われているときですから、認許可する主管省としては十分その点も調査をし、そうしてやるべきだと思う。  しかも、反対する市民の一部から、向こう公聴会を開いてくれという要請をしたけれども運輸省はそれに対して応諾を与えないという。そういうことは民主主義に反すると思う。一応市民の代表が決したから、市民が望んでいるということは、一応形式的にはわかるけれども、それだけではいけない。公聴会を開いて、しかも公聴会を開く場合には、あれは地方運輸局ですか、のあるところしかやらない。したがって、やるなら大阪で開く、地元ではやらぬ、こういうことを言っているようです。そういうことは私は運輸省として何を考えているのか。率先してひとつ地元へ行って市民の声を聞いてやるというくらいの積極性があってもいいと思うのですが、その点、どうお考えになりますか。
  20. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 公聴会を開くかどうかということにつきましては、これは運輸審議会のほうで審議会意見としておきめになるわけでありまして、運輸省からどうということは言えないわけでありますが、現在、公聴会を開くということもきまっておりませんし、開かないということもきまっておりませんので、これから資料をまとめまして、それをどうするかを審査する段階になっております。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは運輸審議会に入ったことはないからわかりませんが、やはり審議会といえども——まあ運輸審議会は相当権限を持った審議会です。他の調査会とか審議会と若干違うことはわかっておるのですが、しかし、運輸省がいろいろ諮問もしておると思う。したがって、運輸審議会がきめるのだから、運輸省はそんなことは知らないということにはならぬと思う。運輸省が、意見があればやはり公聴会を開くことが妥当である。認許可するのはあなたのほうでしょう。それが、運輸審議会が言うたらそのままやるというわけでもない。出たあとでやはり困るのは運輸省だから、運輸省自体が、こういう問題が出た場合には、積極的にやはりその点を意見を聞いて、しかも運輸審議会がやらなければ、運輸省自体でも調査をするくらいの積極性がなかったらだめです。その点どうですか。
  22. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 運輸省といたしましては、運輸審議会答申を尊重して処理をしなければならないということになっておりまして、運輸審議会のほうで相当内容的に突っ込んだ審査をされるわけですから、その際に、運輸省事務当局としてもいろいろな数字その他について十分な資料を提供して、まあいわば共同的審査をするということになっておりますので、その辺のことは運輸審議会ともよく打ち合わせてやっていきたいと思います。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこなんですよ。あなたのほうから資料を出すのでしょう。その資料を出すのが、あなたのところ自体が、かりに間違った申請資料で出すと、運輸審議会の諸公は、幾ら頭がいい人でも、基礎が間違っておれば、それによってこれは判断するのだから。その資料誤謬がないか。私聞いてきたら、誤謬があると思う。一日に二千八百八十四人というのは相当、まあいわゆるモノレールとして珍しいから乗るだろうということで、現在の輸送量をはるかに上廻ったものを一応推定しておるのですね、私が聞いたことですよ。だから、そういことをはっきり運輸省がにぎっておるかどうかということが、これはキー・ポイントだと思う。それがあなたのほうじゃまだやってないのでしょう。
  24. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 現在そういう点につきましても調査をしておるわけであります。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私が聞いたら、二回運輸審議会にこれは話しておるらしいのですよ、いままで。そうすると、いままで何を基礎にこれを審議したのですか。
  26. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 一回目は、こういう申請が出たのを、その重要事案として取り上げるかどうか——重要事案といいますのは、御承知かと思いますが、軽微事案重要事案とありまして、軽微事案につきましては、運輸審議会に簡単に報告をして、それで運輸審議会として軽微な手続イエスノーをきめるというのが軽微事案でありますが、この重要事案として取り上げるかどうかを初めに審査されまして、それで重要事案として取り上げられますと、官報に公示をしまして、二週間公告期間があります。その間に公聴会申請とか、そういうものを待つわけでありますが、その告示期間が終わりまして二週間たったあとで、これについてどういう結果が出たかということがまた論議をされたわけであります。それで、最近その内容的な審査に入ってきたわけでありますが、そのときに、いわゆる事務当局の、向こう申請内容説明運輸省事務当局からいたしまして、それについて先ほど申しましたような自治省意見であるとか、その他内容的なことをもう少し突っ込んでその点を知りたいという御要望運輸審議会からありましたので、現在それについて調査をしておる段階であります。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 運輸省としては重要な問題だという取り扱いにしておるようですが、どうですか、幾ら言ったところで、あなただけ責めてもしかたがないが、公聴会を開いてもらいたい、国会でそういう意見があったということを言ってもらったらいいのです。菊川君も入っておるでしょう。私はまだお会いしておりませんが、いろいろ運輸審議会のほうにも反対陳情がいっております。よく御存じのことだと思います。したがって、きょう要望したいのは、大阪出先機関があるところでなくて、地元ですね、直接調査をしながら私は公聴会を開くということは最も妥当だと思う。大阪から姫路までそう旅費はかからない。運輸審議会の方なら鉄道バスは出しているでしょう。あまり旅費はかからないと思う。それは出していますよ、知っています。だからなぜ姫路はいかぬ、大阪はいいんだという意見が出たかわからない。あなたのほうは幹事をやっているのでしょう、運輸審議会幹事役でしょう。すべての資料を整えたり何かそういうことをやるのでしょう。だからその点をひとつ十分運輸審議会に反映するようにしていただきたい。私はここで反対意見を述べているだけなんです。運輸審議会でいいというならそれに服しますよ。しかし、手続を踏みませんで、しかも、間違ったとは言いませんけれども、そういう申請された資料だけできめられたら、あそこの公営企業として行き詰まった場合にだれが責任を負ってくれるか、運輸省責任を負ってくれますか。そういうことになるのですが、どういうことですか。公聴会地元で持つということについてあなたが約束するわけにいかないでしょうが、それはひとつ運輸審議会に反映さしていただけますか。
  28. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 運輸審議会のこういう問題の審査につきましては審理官がございまして、審理官のところで事務的に審査をする。それを審議会にかけるというかっこうになっております。私のほうは審理官のほうから連絡を受けまして、こういう資料、こういう資料ということで出すわけでございます。こういう御要望がありましたことをよく運輸審議会に伝えておきます。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 審理官というのはなんでしょう、運輸省の一応の公務員になっているのと違うのですか。
  30. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 運輸省の職員でございます。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だから、運輸省からそうお伝えになってください。あなたは、大臣が来られないから運輸大臣のかわりに来てもらった。だからあなたのほうから審理官のほうにこういう地方公営企業の問題について、こういう意見があった……意見があったじゃない、地元公聴会を開く要望があった、その点をはっきり伝えておいてもらいたい。もしそれを開けなかったなら、地元で開けなかった理由を、国会開会中であれば、またの機会にお聞きいたします。この委員会でなくてもほかで言いますから、少なくとも三日か今週中くらいにひとつその点を、今週中は無理かもしれませんが、早急に開くか開かないかという、そういう意見がどちらにきまるかということを知らせてもらいたい。
  32. 岡田良一

    説明員岡田良一君) そういう御趣旨の点、運輸審議会事務当局のほうによくお伝えいたしておきます。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも部長答弁は、伝える伝えるというのですがね。どうなんですか。運輸省では権限はないけれども審理官を通じてこうだということで、伝えるということは言いっぱなしですね。どうも責任を持ったような答弁だと私は聞けないのですがね。あなたじゃ、それ以上答弁できませんか。
  34. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 公聴会を開くかどうかということにつきましては、従来からよく事務当局——われわれのほうの意見よりも、むしろ運輸審議会自体が、委員さんが全部お集まりになりまして、そこで開くかどうかをいろいろきめられる慣例になっておりますので、私どものほうからいろいろ申し上げても参考程度になると思いますので、公聴会につきましては、やはり私としては、そういう御希望があったことをお伝えするということしか申し上げられないと思います。ただし、その資料の検討その他につきましては、われわれのほうで十分行ないますし、自治省との連絡、そういうことについては十分やりたいと思います。
  35. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は公聴会を開いてもらいたいという申請書運輸審議会に出しておるのです。御存じだと思いますがね。ところが、どうもあいまいなんです、運輸審議会がね。やるとも言わぬしね。その点私心配しておるのです。私は運輸審議会のことをここで批判しておるのじゃないのです。どうもそういう地元の意向があり、特に地方公営企業として問題になっておるときに、やはり公聴会を……自治省意見を聞いておることも聞いておりますが、どうも私としては変な決定をされたあとが困るというので発言しておるのですよ。もうすでにだいぶ前に公聴会を開いてもらいたいという申請を出しておるのですね。そういうものくらいは早く……そんなものは容赦なく開くべきだと思うのだが、それがまだはっきりしないという、その根拠がわからないのですがね。一体こういう問題を国会で取り上げて、運輸審議会がかってにやるのだから、運輸省向こうにまかすのだということになりますか、その点が私は解せないのですがね。
  36. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 官報に公示をいたしましたのは五月十一日、それから十四日間の期間をおいて公聴会開催の希望があれば申し出てこいということになりますが、五月二十五日に期間が満了したわけです。そこでその取り扱いにつきまして、運輸審議会として審査をしておるという段階でありますが、内容がもう少しはっきりしないものですから、公聴会を開くかどうかについての結論もまだ出ておらないというふうに聞いております。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ自治省側に聞きますが、大臣ちょっと採決に行かれましたが、あと大臣意見を聞こうと思うのですが、自治省意見を聞いたということですが、自治省としてはこの問題についてどういう考え方を持っておりますか。
  38. 柴田護

    政府委員柴田護君) 私ども姫路モノレールの問題があるということをかすかに聞いておった程度であります。いまこの席で相当詳しい状態を、進行状況を耳にしたのであります。事務的には運輸省から御連絡があったそうでありまして、この問題につきまして当然中身の問題について詳しい状態を聞きまして、私ども意見を持たなければならないというふうに考えております。ただ一般的に、先ほど来御指摘がございましたように、公営企業が非常にむずかしい状態に差しかかっております。そのためにまた調査会を設けて基本的なあり方について検討願う、こういう基本態度を持っておるわけであります。当面の問題といたしましては、私どもといたしましては収支経営の成り立つ見込みのないものにつきましては財源手当てをする気持ちはない。これは認可がいかようになりましょうとも、その事業を始めることについての行政上の措置がどうありましょうとも、財政的には収支採算の見込みのないものについては、特に借金を許可するということは適当じゃない。これは一貫してそういう方針をとってまいりましたし、今後におきましてもそういう方針をとっていくつもりであります。したがって、先ほど来御指摘ありましたように、公益性という観点から全然別個の配慮をしなければならぬという場合はまた別でございますが、さようなことがありません場合におきましては、その方針は堅持していきたい、かように考えております。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 運輸省部長さん、聞かれるように、自治省の当面の局である財政局、公営企業課を持っておる財政局長お話ではまだ十分その点が話をされていないようですね。そういう点が私はどうも解せないんですよ。私は別に運輸省を責めるわけじゃないんですが、路線認可にいたしましても、十分私は基本的な調査もせずに、何かあいまいな間にきめられるようなところがあるのじゃないかという気がする。私は運輸審議会そのものは信頼しております。しかし、そういう点が私はどうも運輸省としては努力が足らぬと思う。それは運輸省としては、一本でも多くできれば、それだけ交通機関が発達するんだからいいだろうという素朴な考えかもしれませんが、そういうものじゃないんですね。地元では交通機関であるとは見ておらない。観光施設としてやるんだ。観光施設なら観光施設としての収支がどうなるかということはこれまた問題だと思う。特に姫路市は御存じのように、いろいろ問題のあるところですが、そういう政治的な問題まで私は運輸省がタッチしろとは言いませんが、そういう点もやはりある程度知っておかなくちゃならぬ、少なくとも認許可する場合、それが全部市民に迷惑がかかるんです。市民は珍しいものができたら飛びつくという性格がまだあります。市が、経営がどうなるか、そんなことは考えていない。初めて自分に負担がかかってきたときに反対になる。そういうところも運輸省の行政的な措置というように、やはり姫路市政の全般についてもどうかということぐらい考えていかなくちゃならぬ。あなたのほうで認許可権がなければ私はこんなことは言わない。自治省は許可権がないのだからあなたがたがやる。あと財政局長がいま言ったように、そういうはっきりしたものはできないということになると、あと市民に迷惑がかかるわけなんです。地方公営企業そのものがまた非常に困ってくる。こういう状態があるのだから、あなたにそれ以上言ったところで苦しめるようなことになりますが、その点の事情をよくこの審議会に反映してもらって、しかも申請書はもう行っているわけです。したがって、これがいわゆる地元公聴会を開かない、しかもそれを認可をしたということになれば、これはいずれ運輸大臣にも言いますけれども、すべて運輸省あとの始末を持ってもらいたい。そうでなければわれわれとしてはもう阻止する。こういう考え方なんですが、その点大臣にはっきりと言っていただきたいと思う。その点どうですか。
  40. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 御趣旨の点よく関係の方面に伝えまして、御趣旨に沿うような形で努力をしたいと思います。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体何ですか、その公聴会を開くという申請が出ておるんですが、いつごろ運輸審議会を開いていく見通しですか。いまのあなたの見通しとして。
  42. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 公聴会を開くかどうかをきめるために、自治省方面意見であるとか、その収支内容についてのもう少し詳細なデータとか、そういうものを現在事務当局に要求されている段階でありますので、そういうものを一応全部見た上で公聴会を開くかどうかをきめる段階になると思います。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくはどうもわからないんですがね。あなたの言われるのは、そういう資料が出た上でもうこれは公聴会を開くまでもなくだめだという場合はいいですね。いわゆる申請認可するということが前提である場合は必ず公聴会を開かなくちゃいかぬ。そうするとあなたのことばを総合すると、一応調査をして、そうしてもうこれはどうも経営上から見てもいかないという見通しがつけばこれは公聴会を開くまでもない。しかし、何かやはりもう少しこれは可能性があるというような前提があれば公聴会を開く、こういう考え方基礎に言われているのですか。どういう意味ですか。
  44. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 私も運輸審議会のことを直接担当しておりませんので、はっきりしたことをちょっと申し上げかねるわけですが、昨日運輸審議会のほうから連絡を受けたところでは、そういうことをよく調べた上で公聴会を開くかどうかをきめたいというふうに連絡を受けておったわけであります。
  45. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 民鉄部というのは、ああいう何といいますか、モノレールとか、あるいは地方鉄道なんかを認可する部ですね。その主管部が何か運輸審議会ばかりに責任があるような発言と聞こえる。どうも私は運輸省はどういう機構になっているかわからないんですがね。大体いままで運輸審議会から答申されて、これは認可すべきであるというときには、それはもう無条件に運輸省としては認可されておるのですか。
  46. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 無条件というわけではございませんが、運輸審議会答申運輸大臣は尊重しなければならないということになっておりますので、よほどの運輸大臣として特別の理由がない限りは、原則としてそれを尊重しておるということだろうと思います。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はその点ではわかったような、わからぬような感じですが、運輸審議会に出す資料が、まだ向こうから言うてきたものだけを出している。もろもろの認可をする場合には、初めはみんなそうですか。申請した書類を基礎審議をする、そうして必要があれば調査をする、こういう手続になっておるのですか。これに限らずいままでのものは、そうなっておるのですか。
  48. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 申請書類は、これは陸運局経由で出てまいりますので、陸運局で一応内容をチェックいたしまして、それから運輸省のほうに参りますが、運輸省としては、内容に特に非常におかしい点がなければ、特別に再び調査をするということは、出てこないものについてなお調査するということはありますが、出てきたものについては、陸運局の調査も経ておりますので、もう一度調査をするということは原則としてございませんが、運輸審議会——時間を節約する意味におきまして、事務当局調査したものを、同じ調査をまた運輸審議会がするということは時間的に不経済でありますので、運輸審議会調査の途中にわれわれが共同調査というのですか、そういうかっこうの調査をいたすということにいたしております。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、申請は陸運局に申請されたから、陸運局は向こうであれば大阪の陸運局だと思うのですが、大阪の陸運局が、それの申請されたものが正しいかどうかということは一応調査するのですね。それは間違いないのですか。
  50. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 調査いたしております。
  51. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、いまあなたのほうに出されておった、この日に二千何ぼですか、二千四百人かの輸送人員があるということ、それから現在のバスが運んでおる輸送量幾らということは、あなたのほうにそういう調査が来ておりますか、陸運局のほうから……。
  52. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 陸運局のほうからは、申請数字で大体いいという書類が参っております。
  53. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 神姫バスですね。現在輸送している人員は、いまのところ手柄山まで現在幾ら輸送しておるかということは出ておりますか。
  54. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 神姫バスと市バス輸送人員を調査しております。
  55. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 幾らですか。
  56. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 神姫バスが一年間四千三百九十二回、市営バスが八千百二十七回ということになっております。
  57. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これを一日にしたら幾らになりますか、ちょっと計算しておるのですが……。
  58. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 一日は、神姫バスが四百十一人、市営バスが七百七十七人ということになっております。
  59. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 計画とはだいぶ違いますね。
  60. 岡田良一

    説明員岡田良一君) これは現在の輸送人員でありますが、今後新しい施設もするので、大幅に輸送人員がふえるということが、モノレール計画基礎数字になっております。
  61. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた数字神姫バスが一万二千五百人、三十八年四月から三十九年三月までの一カ年間輸送人員が、トータルで八万九千四百八十五人、大体あなたの言った数字と合っているのですが、この経営状態からいって、市営バスが私鉄のバス、いわゆる民有のバスよりも倍輸送しているということは、私は現実に六月の何日だったか、行ったのです。ほとんど乗っておらぬ。それは神姫バスのほうがはるか——はるかというわけではないが、これもあまり乗っていない。それを倍運んでおるということ、大阪の陸運局がそれをそのまま調査して、そのとおりだと、こう見ているのですか、それが私にはわからぬ。
  62. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 市バスにつきましては、何か催しものその他があったときに臨時便を出しますので、その人数が相当多くなっておりますので、人数が多くなっております。約半分近くは臨時便の客になっております。この数字姫路市のほうからもらった数字でありまして、私どもとしては、乗車人員について、この数字を信用しておるわけであります。
  63. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは向こうから言ってきた数字でしょう。ぼくは陸運局でその実態を調べて確認された数字か、それを聞いておるのですよ。
  64. 岡田良一

    説明員岡田良一君) これは陸運局を経由せずに、直接私のほうで姫路市からとった数字であります。
  65. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あまりあなたを責めるのも気の毒に思っておるのだがね。そういうことで私は、運審にそういうデータを出して、そして審議さすということ自体私はどうも解せないのですね。大体交通機関輸送人員、これがもう基本ですよ、データは。それが実際いまの数字を見ましても、向こうの言ったとおりですよ、ぼくが聞いたとおりですよ。市会でもそういう説明をしておる。今度モノレールができたら大体倍以上輸送人員があるからということでああいう計算をしておるのですが、実際できた当時はもの珍しさに乗りますよ。しかし、手柄山というのはそういう施設も何もないのですよ。ここに行かれたこと運輸省はあるかどうか。そんなところヘモノレールだけ乗りに地方から出てきませんよ。市民が日曜日にもの珍しさに初めは乗りますよ。しかし、そんなもの二へんも三べんも乗るというものじゃないですよ。しかし、あなたら交通機関としてこれを許可しようというのですね。観光施設でやるならこれは別の意味なんですが、交通機関としてやる場合には、もっと輸送人員を的確に把握して、そうして収支がどうであるかということくらいのことはやはり考え認可しなければ私は困ると思う。特にこれは民営でやる場合だったら会社が損するのだからいいというものの、いま議題になっておる地方公営企業のきわめて問題になっておるときに、こういう問題が出てきておるのだから、運輸省としてはそういうものを前提として、もっと確実な数字——向こうから言うてきた数字というのは、申請するほうはそんな悪い条件出しませんよ。これは釈迦に説法ですけれども認可してもらおうと思えばいろいろの数字をあげますよ。こう言ったらえらい悪いけれども、そういう前提に立って、やはり十分陸運局で申請の実態に合っておるかどうか、こういうことを私は調べて運輸審議会に出して、そして公平な第三者の判断によって答申をして、運輸大臣認可する、こうなければ私は間違いを起こすと思うのですが、私の言うておること間違いですか。
  66. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 現状の数字はこの数字でありますが、今後、見本市会館、婦人会館、市政会館、水族館、植物園、陸上競技場、博物館、そういうようなものの設備を拡充して、それによって相当輸送人員が増加するというのが、その基礎になっておりますので、その数字で相当、大いに人間が運ばれるというふうに考えております。なお、この点につきましては詳細に調査いたしたいと思います。
  67. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあこれ以上言いませんが、大体わかったと思うのです、向こうの言うたとおりですよ。水族館つくるとか、設備をするということは言っておるのですが、しかし、それはただできないのですよ。そういう施設をするという費用も何も予算持ってないのですよ。将来そういうものをやります、そうすれば輸送人員もふえましょう、そこでモノレールのこれの採算がとれますと、こういう説明なんです。しかし、そういうものは、余った金でやる場合、私はよろしいと言うのです。私は何も反対しない。近代的な交通機関モノレールというのは魅力がありますからいいんだけれども、すべて市民負担がかかる。八億、九億という金を投資する場合に、それが公共性だから、ただ乗せるんだったらそれでよろしい。それで私も財政局長に聞いたのですが、そうはいかないと思う。いかに公共性といっても、遊ぶ機関というやつに、公共性だといってそれを赤字で運営してもいいとは思わない。どうしても生活に必要な交通機関を動かさなきゃならぬ。不採算路線だけれどもやらなくちゃならぬ場合には、これは公共性があるから、これは不採算でも私はやりなさい、というのが私の趣旨なんです。この場合そうじゃないでしょう。何もこれなくたって、いまのバスさえ利用すれば十分運べる交通機関あるのですよ。それをなぜここでこういう問題が、何かこう運輸省はあいまいな態度をやられるかということを、ぼくは、き然たる態度をひとつとってもらいたい。そして運輸審議会へ少なくともかける場合には、もっと陸運局で、人手がないことはわれわれわかりますが、そういう調査をして、申請書に必要事項が間違いあるかどうか、現状はどうか、将来の計画は可能性があるのかどうか、こういうところまで調べて運輸審議会に出すのが私は妥当だと思うのですよ。それを向こうから来た書類だけ出して説明して、先入観を運輸審議会に与えてしまうということは私は間違っていると思う。こういう点はあまりしつこく私は責めませんが、私が無理なことを言っているかどうか、反対の立場から言っておるというだけではない、公正な立場から考えて、私の言っていることが間違いであるか、あなた個人の意見としてどう思いますか。
  68. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 輸送人員の数字につきまして、なお、調査不十分でありますので、よく調査をいたしたいと思います。おっしゃるとおり、私のほうも調査不十分でございます。
  69. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは輸送人員だけ言っているのではないです。このモノレールは、交通機関として、都市交通を緩和するという前提に立っております向こうは。したがって、それが事実であるかどうか、一・四キロ、手柄山までかけて、これが交通緩和になるか、それよりもっと姫路市としては交通緩和をする方法がある。そういう点まで認可をするときは調査をすべきです。私は単に輸送人員だけ例を取り上げたのですが、認可する前提である諸般の事情というものを運輸審議会によくデータを示さなければ間違いを起こす。先ほど言われましたいろんな観光施設をつくる、はたしてそれがいつどういうぐあいに具体的につくられるかということも、あなたの所管の事項ではないけれども、参考資料としてやはりそれを求めることはできると思うのです。しかも、あなたのほうで求められなければ、自治省連絡をして、はたしてそういう水族館をつくるその予算措置ができるかどうか、こういうことをやはり資料連絡して取ることもできるのです。そういうものを総合的に運輸審議会に出して、そして認可すべきものであると思っているのです。私は、輸送人員だけ言ったのは、特に問題があるから言ったのです。すべての問題を調査してもらいたい、こういうことです。あなたに権限がなければ大臣に言ってもらって、陸運局あるいはその他に命じて、もう一ぺんするならするということでやってもらいたい、あなたはここで答弁できないと思いますが、それくらいのことはやってもらわなければならぬと思います。どうですか。
  70. 岡田良一

    説明員岡田良一君) 詳細について、なお、ただいま御指摘のありましたような点についてよく調べたいと思います。
  71. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょうはあなた突然来られて、ちょっときつい言い方をしましたが、まあいずれまた、あなたのほうも調査をするというのですから、今国会開会中の何かの機会にその点大臣に聞きますから、大臣は知らぬということを言わないように、十分伝えていただきたい。
  72. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  73. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をつけて。  佐久間行政局長が、出席いたしましたので御質疑を続けていただきます。自治大臣も間もなく参ります。
  74. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、佐久間行政局長に伺います。実はこの前にこの委員会ではなかったのですが、この問題を行政局長に言っておいたのですけれども、実は北海道の苫小牧の市の問題です。実は昨年暮れに、いわゆる国家公務員の給与法の改定に伴って、市長と前職の間、また、水道の組合との間に一応の市長との間で妥結されたのですね。ところが、市議会に提案すると、市議会はこれを否決しちゃった、こういう事実を聞いておられますか。
  75. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 先生からお話がございましたので、さっそく照会をいたしまして、概要電話連絡を受けました。
  76. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その内容をお聞きですか。
  77. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 概要伺っております。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どういうことを向こうは言っていますか。
  79. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 昭和三十八年十二月に支給をする期末手当の問題につきまして市労連と市長との話し合いの結果、二・五カ月プラス三千円を支給するということに口頭で了解がなされた。それに必要な補正予算を議会に提出をいたしまして、予算議決をされたのであります。一方議員提案によりまして、職員の期末手当を二・三カ月プラス三千円とする内容の条例を同日議決をいたしております。そこで市の当局といたしましては、この条例に基づいて二・三カ月プラス三千円の期末手当を支給した、こういうような事件と伺っております。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう点が単に北海道苫小牧だけではなしに、滋賀の瀬田町にもそういうことがあるのです。で、これは市政全般の問題です。地方自治法自体にもいろいろ問題があると思うのですが、公選市長である市長が一応組合と正式に地方公務員法による交渉の結果、これでやろうということにきまったのを、市議会がそれを否決をして、しかも減額をして決定をする。予算はそのまま認める。この点は私は市議会の権限とそれから執行機関の権限との点で問題があるが、こういう点について自治省はどういう考え方で指導をされますか。
  81. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 事件の具体的な内容につきましては、なお詳細取り調べたいと思っておりますが、一応一般職員の関係につきましては、これがたとえ予算議決されておりましても、条例の定めるところによって支給をすべきでございまするので、この点は、法律上は問題がないかと思います。企業職員の点につきましては若干問題点があるように思います。一つは、市の当局との間にはたして地方公営企業労働関係法にいうております協約が成立したものかどうか、どうも報告を受けた事件の概要だけではその点が不明なような感じがいたしておりますが、いずれにいたしましても、公営企業の場合におきましては、なお、この事件の経過につきまして詳細伺いました上で検討をしてみたいと思っております。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 先ほど言われた一般職員の年末手当ですが、企業職員については若干金額が違っている。これはまだ調べられておらぬということですが、金額は少し上回っております。ただ、そこで、私はこの企業職員、いわゆる地方公営企業関係労働法による立法の趣旨からいくと、一応団交権というものによって成立したものを市議会で否決をされてそのままいくということは、相当法律論からいって問題がある。これはまた国会とそれから公企労との関係がありますが、仲裁裁定は今度は尊重するということで、あれは国会で問題ないと思うんですが、ところが、ああいう地方へ行きますと、そういう労働立法関係の理解が、これは失礼なことばかもしれぬが、理解が少ないと思うんです。それと、聞くところによると、単に年末手当の金額が多いとか、少ないとかいうことでなくして、市長に対するいろいろの政治的な問題がからまって市議会が反対するという例が多い。この場合も、私は実際行っておりませんからわかりませんが、聞くところによると、やはり現在の市長に対する、何といいますか、反感というか、反対の空気が相当強くて、前の選挙からいろいろのわだかまりがあって、市長に対するいわゆる政治的な問題が、要するにそこに働いている労働者に迷惑をかけるという結果が出ていると聞いているんです。そういうことになると、私はそのもとに働いておる従業員なり職員は、きわめて迷惑だと思う。したがって、私は、自治省としてこうこうしろという権限がないことは私よく知っておりますが、こういう点においては十分よく指導してもらわなくちゃ困ると思うのです。あなたのほうは、あなたはそんなことないと思いますが、悪いことはあなた方は指導したがるけれども、住民にいいような指導はあまりやらぬように聞いておる。私そうでないと思うけれども、まあそう聞いておるのですが、こういう場合にはもっと積極的に、問題があるぞ、しかし、それにタッチする権限はない。ないと思います、これは地方自治体ですから。しかし、十分その点の指導をやってもらわなければ、せっかく市長と交渉して妥結したものが市議会で、しかもその実情を十分検討もせずに、感情的にそれを否決するということはゆゆしい問題だと思う。自治省としてはこれについて相当指導してもらわなければならぬと思いますが、その点どうですか。
  83. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) この事案につきましては、先ほど申しましたように、なお、私ども条例の規定がどういうふうになっておったのか、あるいは自労連と市長とが話し合ったというのでありますが、それが正規の協約を結ぶというところまで至っておったものかどうか、そういうような点が詳細なお聞きたいと思いまして報告をいま求めておりますので、それが参りましたならば、それらの点もよく検討をしてみたいと思っております。一般的に申しまして、先生の御指摘になりましたような、いろいろな法律に対する理解が足らないために無用の紛争が起こっておりますような事態に対しましては、今後よく注意をいたしまして、必要があればまた指導もいたしたいと思っております。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくはどうも文書でいろいろ報告を聞いたのですが、この予算措置がどうしてもできないとか、財政的にどうもいかないというならば、市長はそれは妥結しないと思う。執行機関の責任者である市長がこれでやるのだ、いけるのだというものを、市議会がはっきりした反対理由があるならば別です、それを否決してしまっていいのだということになると、今後労働問題の立場からしても相当問題がある。特に今度ILO八十七号批准に伴って、地方公務員法の改正も伴っておりますから、その点がもし誤った運営をすると、いま市長会とか町村長会から非常に、相当に私どものほうに陳情も来ておりますが、私はそれは杞憂だと言っておるのですが、そういう助成措置をするような一般従業員、労働者は、いわゆるそこは無理だ、あんなこと正当なことをやっているのにいけなければ、これは黙っておれぬというものが植えつけられる。私これを心配しておる。これは権限から言えば、私も地方自治法をいろいろ調べましたが、市長のいわゆる妥結したものでも、市議会は独自の立場の議決権があるからそれはできますよ、できるけれども、そこが要するに執行機関と議決機関の良識の度合いの問題ですね。しかもその中に市長に対する反感感情がまじってのこういう議決をされたということになると、その問題がどこにくすんでくるかといえば、労働運動の中に強く反感が燃えあがってくる。こういう点を私十分自治省考えてもらわなければいかぬと思う。あなたがいま十分調べて、その指導の措置をとるというのでありますが、どうも私としては納得できない。もしこれがそのまま押しつけてやるというならば、組合は一体だれを相手に交渉したらいいか。議会とやるか。議会の要するにやっているところへ行って、君らがわれわれの市長と交渉したことはいかぬと言うなら、議会と交渉しようと言われたときに議会はどうとるか。きわめて私はこの場合の市議会の態度というものは無責任だと思う。自分らが出ていって組合に、市長はやったけれどもこういう点がいけないから市議会としては反対して否決するのだということをやればいいけれども、自分らの殻にこもってしまって、市長がやってもわれわれは反対するのだ、これでは私は円満な地方自治の発展というものは期せられないと思うのです。自治省にもその権限がないからこれはやむを得ぬと言われるならばそれでよろしい。そのかわりに、われわれもそういうふうならばわれわれとしての考え方がある、それなら力と力の対決だと、こうなってくる。問題はそこに起こってくると思う。したがって、私は自治労出身ですからもちろんそういう問題いつも聞いておりますが、私は問題のあったところには一方的に悪いとは言わないけれども、やっぱりそこに無理があったところに私は原因があると思うのです。特に今度の場合、私は憤慨しているのですが、北海道ですから私飛んでいくわけにいきませんけれども、ただ文書の報告聞いているだけであるが、報告を聞いているだけでも私らどうしても理解できないので、自治省としてはひとつ早急に詳細にこの点の調査をされて、そして私らに理解のある説明をしていただきたい。そういう点はいいですか。
  85. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 御趣旨に沿うように善処いたしたいと思います。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣来られましたのですが、いま行政局長に話をしたのですが、かいつまんで言うと、苫小牧という市に、赤澤さんも主管担当者でやっておられるのですが、ぜひひとつお聞き願いたいと思うのですが、昨年暮れの年末手当で、実は水道の企業労働組合ですね、それと理事者の間で妥結したのです。ところが、市議会がそれを否決した。しかも減額をして決定をした。しかも予算はそのままですよ。妥結したままの予算を承認している。したがって、財政措置はもうしておるのに、組合と理事者の間で妥結したものはいかないという決定をしている。もう市長も困って、組合に泣きついて、もうしんぼうしてくれ、いずれまた次の機会に出す、それまで見合わすということになっておるそうです。  そういう点で、どうですか大臣、どう考えられますか、法律上の権限の問題は別として、常識上。
  87. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 一応はざっといま行政局長に聞きましたけれども、これは私は聞いたこともないことになっておるのです。大体、予算がちゃんと通っておりながら、そのあとでまた条例でそれと違ったことをきめておるようでございますけれども、まことに不可解千万でございますので、実態はさらに調査をいたしまして、結論を出したいと思っております。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実はね、これも私聞いた話ですから調べてもらっていいと思うのですが、そういう年末手当そのものが、市議会がどうこうというわけでなしに、市長に対する反対の感情だけではないと思いますが、前の選挙から引っかかってね、そういうことで困らせてやれという意味からやったとも聞いているのです。もしそういうことになると、もう常識の判断を越えておると思うのです。しかし、そういうことは私ここで言いたくない。これは地元の政治上の問題だから言いませんが、もしそういうことになると、今後ILO八十七号が批准されていろいろ問題が起こったときに、もし、それならいい、市長と話してもわからぬならいい、市議会が反対するなら市議会とあえてやろうということになってくると、私は市政全般に非常に問題が起こってくると思いますので、ひとつその点よくお調べ願って善処していただきたいと思います。
  89. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) ただいま申しましたように、まことに不可解な事件でございますので、理屈を言うならば、もちろん市議会がきめましたことは優先するわけでございまするけれども、しかし、これが労使関係の問題でもありまするし、そういうことが一つの感情問題から発展して随所に行なわれるなんていうことはたいへん悪例にもなると思いますので、事態をよく究明いたしまして判断いたしたいと思います。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一問だけ。先ほど大臣がおられなかったので、運輸省帰りましたのですが、議事録にとどめておきたいと思いますが、モノレールの問題、これは財政局長からも答弁を求めましたが、それで私いいと思うのですが、運輸省考え方に私は反対なんです。考え方というのは、いまやっておる措置について反対なんです。ということは、自治省としては、私は採算がとれるかどうかという問題、公共性ということから不採算路線もやらなくちゃならないということを私は主張しておるのですからそれはいいのです。今度の場合は全く市長の一つのもの珍しさの考え方から、観光施設ということでもない、あるいは交通緩和ということでもない、ああいうようなものを敷くと、あとから市の財政に大きく影響するのですが、現に三十八年の予算がかさむ場合に、要するに三校の講堂を建てるということを決定したらしいが、それがために地元負担を相当求めなくてはならぬということでやったのですが、地元は相当おこって、それはもう地元負担はやらぬということで反対して建っていない。それに九億の費用をかけてもの珍しいモノレールを敷いてやろう。私は交通緩和になるのならけっこうだと思うのです。モノレールという今後の交通機関として、これは一つの近代的な交通機関ですから、認めていいが、しかし、市の財政なり市の事情から考えてもやらなくちゃならぬ。しかもそれによって交通の緩和になるかというと、そうでない。採算もとれない。しかも出してきた数字をうのみにして運輸審議会にかけておる。相当強く追及しておきましたが、こういう問題に対して自治省の立場としてどうお考えになりますか。これだけ聞いておきたい。
  91. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 私、退席する前に山本委員の御質疑を承っておりまして、まことに良識のある妥当な御質疑であったと感じ入っておったわけでありますが、こういう問題は実は運審に諮問を、運輸省で専管するということは私は疑問があると思うのです。ただ同じ政府でございますから、私の場合は反対だとは申しませんけれども、御案内のとおりに、これだけ公営企業赤字問題で悩まされておる最中であります。しかも最近市町村長あたり、中には自分の在任中に、公約したのだからこれだけのことはやりたいなんていうので、しゃにむにやろうとする方があるやに見受けるわけでございまするけれども、やはり公営企業というものはもともと公共性がどれだけあるかということ、これが住民の福祉に真にどの程度役立つか、住民が全部これをあげて渇望しているかどうか、こういった点に重点が置かるべきであって、ただ観光の客引きにいいとか、ただこれをやれば五年目からは黒字になってくる。それほどもうかるものなら民間がやるはずなんであります。ところが、実際見ておりますと、そうでなくして、ときの勢いでやってしまい、また、一部には町がりっぱになるなら、どっかで損したって負担してくれるだろう、やれやれなんていうことでおやりになりますと、あとでそのこと自体は、自治省と申しますよりは、やはり住民にとって逆に負担となってはね返ってくるわけでございます。いろいろな意味ではね返ってくるわけでございますので、このことについてはよほどお考えになりませんと、私は逆なことになるのではないかと思うわけでございます。そこで、先ほど運輸省の人が言っておりましたが、十分自治省意見を聞くと言っておりますが、私どもといたしましては、また別に企業の実態を、また見通し等も検討いたしまして、そして意見を述べてこれを記録にでもとどめておきませんことには、あとでやりそこなってからめんどうはみんな自治省で心配してくれということではとても責任が負えぬわけでございます。私は公営企業について要らぬことを申すようですが、基本的には公営企業というのは、やはり民間ではやれないのだ、特に公共性の高いところ、住民の福祉につながっているから赤字は覚悟でやるのだ、しかもそれはただ赤字の出っぱなしではいけないのだから収支バランスがとれればいいんだといったことが本筋であって、それで大いにもうけて、そして市の財政、町村財政に寄与しようという思想なり根性というのは基本的には私はよくない、公営企業はそういう性格のものではないと思います。ですからいま私は具体的なことは知りませんけれども、たとえば競輪にせよ、競艇にせよ、これはもうかるかもしれませんが、これは公営企業ではないわけでございまして、こういったものを財源に充てて、そうして市町村がいろいろな計画を立てるということは、自体やむを得ない場合もあるかもしれませんが、自体やむを得ない場合に限りませんと、私は公営企業の観念に大きな間違いが出てくるのではないか、ややもすると、何か商売をやってもうかるように思って、今日の窮乏している地方財政に役立てたいという考え方を起こしがちだけれども、私は非常に危険で、かえって住民が困る。やはりもうかるという見通しがあるならどんどん民間にやってもらったらいいことであると思います。ですから、先ほど私、姫路モノレールのことにつきましては初めて耳にしたわけでございますけれども、私は基本的にそういう考え方を持っておりますので、やはり運輸省当局あたりでもよくよくそういった観点からもお考えを願いませんと、ただいろいろな陳情競争で最終的な判断をなさることもありますまいけれども、そういった点に思いをいたしていただきたいということを私どもかねがね考えているわけでございます。
  92. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  93. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をつけて。
  94. 向井長年

    ○向井長年君 大臣にお伺いいたしますが、特に直接この法案の、いわゆる地方公営企業には直接関係ない問題でございますが、特に地方自治の確立、いわゆる最近言われておる広域行政、この問題についてお聞きしたいのですが、池田内閣のいわゆる歴代の大臣、いわゆる篠田大臣、あるいは早川、赤澤と、こう三大臣かわられているんですが、かわるたびにこの方針というものは変わってきているんですよ。たとえば篠田大臣のときには合併論を非常に強く出されておる、それから早川大臣のときには府県連合方式ですか、この問題を強く提起されておる、現大臣赤澤大臣のときには地方行政連絡協議会ですか、こういう形で進みたい、次々とこういうように広域行政のあり方について歴代大臣で違いがあるのです。しかしながら、池田内閣は一本である。今後この問題についてどういうわけでこういうかっこうになってくるのか、ひとつ根本的の問題をまずお聞きしたいと思います。
  95. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 地方行政連絡協議会は、いまの合併連合とは全然違うのでございまして、そのことはこの地方行政委員会でもずいぶん御説明いたしまして納得願ったと思っておりますが、地方行政連絡協議会は、大体国が各省関係で行政の便利ということから自然縦割りに行政がなっていきがちだ、一面やむを得ない点もありますので、これと地方行政とどう関連させるか、そこで戦前のように全国を九ブロックに分けまして、そのブロック内で内部の都道府県の知事を会長として、そして国の出先の、建設省、大蔵省、各省にわたる出先の局というものがございます。こういったものもみな会議の場を持ちまして、そしてそこでいろいろな各省ごとの計画というものも出し、検討し、そして自治体がこれと歩調を合わせられるものは合わせようし、また合わせられないものはそういう結論を出す、そして、そこから出た結論は国のほうではそれを尊重する、こういう仕組みになっております。ですから、府県連合あるいは合併とは全然別のものでございまして、ですから、篠田大臣のころに出しましたものが連綿としていままで持ち越されておるわけでございまして、ただそれはいろんな反対があったということでなくて、国会ごとにこれがあと回しになって、ふしぎな事故にあって今日まで日の目を見なかった、こういういきさつになっております。それから、府県合併、連合は、御案内のとおりに、なかなかいろんな考え方がありまして、じゃ連合案がいいか、合併案がいいか、また、連合案自体を合併の一つのワンステップとして考えるか、いろいろわれわれの党のうちでも、また、政府部内においても絶えず検討してまいりました。しかし、前大臣考え方は、おそらくは合併への踏み切りはなかなかむずかしかろう。まあ財界方面は、いろんな点からいたしまして、そんな連合なんということでなくて合併してしまえということを経済団体が申しましても、住民感情として、じゃどの県とどの県が全部一本になるかという、議会で満場一致の議決を得るなんということは、まだなかなかそこまで機が熟しておらぬ。ただ、一番強くいわれておるのは、近畿、大阪中心だとか、あるいは中京、名古屋中心であるとか、あるいは東京中心、こういったところでは非常に合併への希望が強いわけですけれども、さあ、じゃ合併に踏み切る場合に、住民が全部こぞってそのほうがいいという判断を持つかどうかということになると、かなりいまの段階では疑問があるわけでございます。そこで、広域的に処理しなければならぬ行政がたくさんあるわけですから、前大臣はまず府県連合というふうにお考えになったのではないかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、こういう状態になってまいりますと、一県々々で独立してやっておるだけでは解決ができぬ問題がたくさんある。ですから、何らかの形でこういうものをつくらなきゃならぬと考えますが、ただ、いまの段階でどっちに手をあげるかということ、また、この二つの考え方をどう関連させるかということ、これが非常に大きな問題でありまして、いまやって、あとでまたもとに戻せるわけのものではございませんので、なおそれには近い将来の都道府県の姿というものを、やはり一応どういう形でおさまるのが一番正しいのか。つまりこれは単に行政の便宜ということだけでなくして、経済的におきましても、産業立地その他のことも勘案いたしまして、こういう姿が妥当であろうぐらいな結論を、それを決して押しつけるわけではございませんけれども、やはり自治行政の元締めをいたします自治省におきましても、百般——あらゆる面から考えて、そういったものも考えておかなければならぬのじゃないかと、いろいろ、とつおいつしておるわけでございます。今度は連合法案を出そうかという気がまえも一応ありましたけれども、党内でもそういった点も勘案いたしまして、もう一つ両案とも一応参考にして、そして根っこから検討し直していこうということにきまったわけでございまして、自治省としてもそういう考え方に立っております。ですから、御心配のような意味は私どもありませんし、池田内閣の自治大臣が一貫性がないような御指摘でございますけれども、そういうことはございませんので、ひとつ御了解をお願いいたします。
  96. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、大体広域行政はもちろん必要であるが、そのあり方について、特には合併もするという問題、あるいは連合方式あるいは連絡会議関係の問題ですね、こういう形のいろいろな種類があると思うのですが、結局これは合併をしようとしても、あるいはまた、連合方式をとろうとしても、やはりいろいろな地方実情なり一般世論、こういうところから問題点があるというところからこう変わってきておるのか、それとも根本的に、合併は自治省としてはいけないのだ、こういう考え方からいまのような形になっているのか、どちらですか。
  97. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 合併がいいのだとか、連合がいいとかということではございません。自治省が心配いたしますのは、じゃ、希望するところだけが連合、合併してしまって、じゃあとは一体どうなるのか。取り残されたところとしては、これはまあちょっとはなはだまずい立場に立ちますので、そういった方面からのいろいろな議論が出ておるわけでございまして、やはり私どもといたしましては、とにかく全般としてこういういい姿でおさまればいいがということを希望はいたしております。ですから、合併と申しましても、どこどこの合併をいま言っておるわけではないのでして、ただ合併の道を開く。いまの法律上、できませんから、合併への道を開くという法案も一案としてありますし、まあ連合は合併ほどきついものではありませんから、それは行政上の便宜に応じておやりになるということはまた一つの方策かとも考えまするけれども、この問題につきましては、これに反対だとか、賛成だとかという段階ではないというふうに考えております。
  98. 向井長年

    ○向井長年君 市町村はこれは戦後約九千ですか、これが大体三千、約三分の一ぐらいにもう合併をしつつあるのですね。これはやはり自治省の方針で、そういう方針に基づいて、各地域においての自主的な合併、こういう形であれだけ市町村が三分の一近くなったと思うのです。それから、府県の場合は、もちろんこれは実情も若干違うが、そういう方針を自治省として立ててきたのか。それともいま言うように、いろいろな意見があり、あるいはまた、問題点があって、そういうような市町村と同じような方針がとれないのか、この点はいかがですか。
  99. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) ただいま申しましたとおりに、町村合併はやはり自治省としては、自治行政上望ましいと考えまして、ああいう措置をとって現状に至っておるのでございます。いまでもまだ進行の過程にあって、これで終わったものではないと考えておりますが、ただ、都道府県の場合は、非常に面積が広いわけでございますし、なかなか町村合併みたいなわけにはいかぬわけでございます。しかも、この希望者だけ合併してしまって、あとはほうっておくという乱雑なことになりましては、やはりあとに禍根を残すことも考えられまするので、こういった点あわせて検討しておるわけでございます。ただ、広域行政をどう処理するかということにつきましては、何らかこういう方式をとらざるを得ぬと私ども考えておる次第でございます。
  100. 向井長年

    ○向井長年君 ただいま、これは参議院先議で地方行政連絡会議法案ですか、これを出されておるわけですね。この問題はこれはブロックですね、いうならば。近畿とか、中国とか、東北とか、こういうところで、画一的にそういうような連絡会議を持てという形になるのじゃないかと思うのですが、この問題についてはやはりそういう広域行政をやり得るいわゆる地域と、あるいはまた、そうしなくとも、そういう会議を持たなくてもやり得るというところと、これはいろいろ様相が違うと思うのですよ。そこで、この法案の出し方は、やはりブロック別に画一的に広域会議をやろう、こういうことになっているのじゃないかと思うのですが、こういう点いかがですか。
  101. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) そのとおりでございます。都道府県の合併などは、合併いたしましても、そのもの自体が事業主体になるわけでございますが、連絡協議会というのは単なる会議体でございまして、それでこのもの自体が行政を直接やるというわけではない。ただ、冒頭申しましたように、縦割り行政の結果が、結局この地方自治というものを何らかの形でくずすということはおかしいですけれども、やはりこの地方自治というものと離れて、縦割り行政が浸透していくということは、いかなる意味におきましても私どもは好ましくないという判断に立っておるわけでございまして、かといって、この国の各省の出先というものを、これを全部なくしてしまおうというわけにも参りませんし、その調整をはかるというだけの意味しかないわけでございます。これはさっき申しましたように、合併などとは全然意味の違うものでございます。
  102. 向井長年

    ○向井長年君 ただいま特別地方公共団体というものが設置されていますね。これは大体それに似通った広域行政をやり得る体制になっておるのじゃないかと思うのですよ。こういう、いまいう連絡会議法案というもの、ちょっとこれ重複するような感じがするわけです。少なくとも、一県なりあるいは一都道府県でできない、その他の府県にまたがる問題について、やはり考えられたことが、連絡会議の方式でもあるし、あるいはまた、公共団体設置であると思うのです。そういうことになると、去年ですか、これはできたのは。こういう公共団体設置と連絡会議との関係はどうなるのですか。
  103. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 似たようなものかもしれませんけれども、私どもは別と考えております。というのは、必要に応じて、御案内の事務組合だとかあるいは協議会だとか、こういうものは在来あったわけでございます。しかし、今度はそういう自発的にやるものではなくして、やはり一ブロックにこういう協議会を、そして、これこれが参加する。しかも議長は自治体側になるというような明確なものをつくっておる。そして、ここでいろいろな諸政策の調和をはかろう、こういう意味であります。
  104. 向井長年

    ○向井長年君 かえってそういうことが支障になるのじゃないかという考え方をするわけです。いうなれば公共団体の設置をして、一応道路とか、水道とか、干拓とか、こういう問題については、二県以上にまたがる問題として、そこでそういう会議をやる。少なくともこれは起債を仰ぐことができる。こういう一つの形になっておる以上、画一的に、ブロック別にそういう連絡会議というようなかっこうを持て。持たなくても、現在、自主的にその対策は持っているわけですね。そういうことが必要になっておるかどうかということ。この公共団体設置との関係でどうも重複し、かえって画一的に持たすということは何ら意味をなさぬじゃないかという感じがするわけなんですけれども
  105. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 私どもそういうふうに考えておりませんで、地方団体、自治体同士のことでなくて、連絡協議会は国の機関と自治体との連絡調整をはかるということでございまして、いままで先生が御指摘のほうは、やはり地方団体同士の近接しておるところ同士の話であった、地方行政連絡協議会はそうでありませんで、国の出先の機関と地方団体との調和をはかる。こういうたてまえになっております。
  106. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、連絡会議においては、一応これはそういう法案を通せば一つのブロック別において会議ができ得る。そこでは議題というものは中央から何かここでこういうことをやれというような指示をするのか。あるいは自主的に問題点があるやつをそこで協調する問題か、この点どうなんですか。
  107. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 国からは何も指示をいたしません。また、諮問をするようなこともございません。ただ、自発的にやっていただくものですし、そういう案件がたくさんあるわけでございますので、そのために特に設けるわけでございます。
  108. 向井長年

    ○向井長年君 そういうことは、現在自主的にやっているのじゃないですか。必要に応じて連絡会議において近畿なら近畿というかっこうでそれを法文化して、中央から指示はしないということになってくると、結果的には画一的にやれば必要でないところまでそういう会議を持たなければいかぬ。持ったところで何ら効果はない。こういうことに私はなってくるのじゃないかと思うのですが、これはどうなんですか。
  109. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) いままで問題ごとに個別には行なわれておりました。そうでなかったら、国と地方団体とはたとえば道路の問題、河川の問題、各面にわたってかってに連絡なくやっていたわけではないのでございます。しかしながら、今度協議会をつくりますのは、一つの制度をつくりまして、そして、ここでお互いに相談しあって、相互の意見を述べて、そして調和をはかる。こういうことでございます。やはりこれがあったほうが、やはり国の各省、地方団体各事業ごとの調整が便利になるということになると考えております。
  110. 向井長年

    ○向井長年君 まあそういうことでしょうが、われわれちょっとどうもこれは重複するような感じがして、公共団体設置においていろいろな事業をやる、二県にまたがったいろいろな事業をやる、あるいはまた、最近におきましては、いわゆる近畿圏整備計画とか、こういう形でそういうものは推進できるのじゃないか。根本的に広域行政をやるとするならば、先ほど言われる連合方式とかあるいは合併論とか、これが当然のことであって、そういう問題が過去において提起されておって、それが現在のような形に変わってきておるとなれば、これは有名無実じゃないかというような感じがするわけです。だから、やはり市町村を、町村合併とかそういう形を非常に推進されて、現在大きく、三分の一程度になったので、府県問題がそういうことがいいか悪いかは別として、そういう基本方針に基づいていろいろと立案し考えていくということになれば、これは若干一般の世論を聞かなければならぬと思いますけれども、いわゆる理屈が立つわけであります。そこで、いまの連絡会議というのは何らか画一的な責任のがれのようなかっこうに感じるわけですよ。そういう点、どうも明確じゃないように思うのですが。
  111. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 先ほどからるる申し上げますように、私たちの考え方はそうではないのでございまして、一府県の連合ができても、合併ができてもやっぱり地方行政連絡協議会は別に必要だという考え方に立っておるわけでございまして、あれこれ目先を変えて出しているのではないということをひとつ御了承願います。
  112. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、結局地方行政、広域行政に対する指導性を持つための機関だという程度ですか。自治省が指導性を持つ程度の機関だというのですか。
  113. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 国と地方の自治体との連携を密にするというわけでございまして、建設省や農林省や各省で出先を持っておりますが、それがやっておりますることは大なり小なりいままでだってやはり地方自治体とは連携はあったはずでございます。しかしながら、それをまあ水も漏らさぬ形と言えばことばが過ぎるかもわかりませんけれども、もっと公式的な会合を持って、そして調整をはかっていく、いま具体的に申し上げれば、たとえば今度は道路法の改正で国道の一級、二級の差をなくする、その論点の一つになっておりますのは、たとえば一級国道は別ですが、二級国道の場合には、これは建設省のほうで一つの道路政策の上から規格を示しましても、各都道府県においては財政の都合によって道幅を狭めてみたり広げてみたり、まるで支離滅裂なことになる可能性だってある。現にそんなことになって困っておるところもある、こういった場合にそれぞれ地方団体側の要求もありましょうし、また、建設省側の要求もある、こういうものを一々中央で解決するということだけにたよらないで、やっぱりブロックごとにそういったことでお互いに話し合える場を持つということは私は必要であると考えておるわけでございます。
  114. 向井長年

    ○向井長年君 時間がだいぶ少なくなってきましたが、もう一つ。これは質問じゃなくて、主要財源の問題について、特にギャンブルですね、これが相当地方財源のなにになっておるわけなんですが、こういう問題については自治大臣としてはやむを得ないと思っておられますか、それともこういうことは一日も早くなくすべきだという考え方を持っておられますか。
  115. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) いま聞けば、三百億もあるということですけれども、実は、先ほど山本委員質疑のときに申しましたとおりに、こういうものが地方財政に大きな関係があってこれにたよっておるということは、政治自体の間違いだと私は判断いたします。しかし、やむにやまれぬ事情があってやっておると判断いたしますので、こういうものを私ども地方公営企業とも考えておりませんし、それでは何だと言われれば、公営事業だと、事業と企業とどれだけ違うかと問い詰められましても私は答弁に困りますけれども、しかし、これはそういう地方地方の要請に応じてやむを得ずという判断を私自体は持っております。早晩こういったものは解消して、そしてもっと健全な財源というものを見つけていかなければならない、かように思っておる次第であります。
  116. 向井長年

    ○向井長年君 その三百億ですか、ばく大な財源ですが、もちろん基本的にはそうあらねばならぬと思うのですが、兵庫県においては、時の知事がですよ、坂本知事の時代だったと思いますが、あれを廃止してしまったと思うのですよ。あれは一つの経過だと思うのですが、地方によって財源措置、財源関係が非常に異なっておるから困難性もあると思うけれども、やはり自治省は、ただそういう形で、そうあるべきだというその大臣考え方を、いわゆるそういうことをなくしていく方向にいろいろな財源措置考えていかなければならないのじゃないか、ここはひとつ早急にそういう基本的な考え方と、それに見合う裏づけというものを考えつつ、これはやはり廃止の方向に持っていくべきだという、これはひとつその決意のほどをお願いしたいと思います。
  117. 赤澤正道

    ○国務大臣赤澤正道君) 同感でございます。
  118. 向井長年

    ○向井長年君 もうやめます。まだまだ一ぱいあるのだけれども
  119. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はございませんか。——他に御発言がなければ、本案の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言がなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  自治省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  120. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願います。  では午後は、労働省設置法の一部を改正する法律案について質疑を行なうこととし、委員会の再開を一時四十分として、それまで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩    ————————    午後二時六分開会
  121. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会を再開いたします。  労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、これより質疑を行ないます。  政府側から大橋労働大臣、和田官房長、三治労政局長、村上労働基準局長、有馬職業安定局長、松永職業訓練局長、住失業対策部長が出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  122. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に続いて二、三お伺いをいたします。  国内外の情勢から見て、全国一律最賃制の確立をはかることと、労働時間の短縮をはかって雇用の安定をはかることがきわめて大事な一つの問題だと思います。ただ、最賃制については、前回大臣からお伺いしてありますので、労働時間の短縮について大臣としてはどのようにお考えになっておるか、その点からまずお伺いしたいと思います。
  123. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 御承知のとおり、わが国も本年はOECD加盟が認められまして、いよいよわが国の経済も開放経済体制へ入ってまいることになったのでございます。つきましては、今後の日本の経済の将来ということを考えまするというと、商工業の発展のためには、労働政策の面においても諸外国の水準に近づけていくという積極的な努力が一段と必要であると考える次第なのでございます。——特に労働時間の点につきましては、労働条件の基本的な問題の一つでございまするので、これにつきましてもやはり国際的な水準というものを頭に置いて将来労働行政を進めていく必要があると考えるのであります。御承知のとおり、最近ILOにおきましては、一週四十時間労働制に関しまして勧告を採択いたしておるのでございます。締約国はできるだけ四十時間ということを目標として、これに近づけるようなスケジュールを組んでそちらへ進むということが期待されておるのでございまするが、ひるがえってわが国の労働時間の実情を見まするというと、労働基準法において一週四十八時間、一日八時間の原則が採択されておりまするにもかかわらず、実際労働統計の示すところによりまするというと、日本の労働者全体の平均労働時間というものが五十一時間以上というような実情でございまして、この実情のもとにおきまして、特殊の進んだ経営をいたしておりまする大企業は別といたしまして、一般的に四十時間の目標を打ち出すということは、あまりにも現実とかけ離れているような感じがいたすのでございます。しかしながら、何と申しましても、今後の開放経済体制に伴いまする日本の労働条件についての諸外国の使用者並びに労働組合の関心というものは、一段と高まると思うのでございまして、この機会においてできるだけ労働条件の向上をはかるということが、日本の経済発展のためにもなさなければならぬ大切な仕事だと思うのでございます。そこで、さしあたりの目標といたしまして、労働省では労働基準法の要請しておりまする一日八時間、一週四十八時間の範囲内において全体の労働統計の数字がおさまるようなそういう事態を早くつくり上げる必要があるであろう、こういうふうに考えまして、その方向に進めたいと思っておるのでございまするが、何と申しましても、労働条件の問題は労使双方の協力ということが必要でございまするので、さしあたり、労働省はこうした問題について労使の話し合いが行なわれ得ると考えられまするので、労働基準審議会の場におきまして、日本の労働時間の短縮について実効ある措置、しかして日本の労働時間を四十八時間以内におさめるには相当それまでには時間も必要だと存じまするが、できるだけ早くそれを実行するにはどういうふうなスケジュールを組んで、どういうふうな措置を講じながら進むべきか、こういう問題について労使双方でお話し合いをいただくような運びにいたしたわけでございます。私どもは、その話し合いの結果に基づきまして、労働基準法の改正その他必要なる措置も行ないまして、すみやかに労働時間の短縮に向かって進んでまいりたい。と同時に、四十時間の問題につきましては、当分の間、政府といたしましては、これは労使間の話し合いによって進めていただくべき事柄でありまして、行政の面におきましては、直接この段階でそこまでタッチすることは無理ではなかろうか、こういうふうに思っておる次第でございます。
  124. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 近ごろ特にオートメーション化がだいぶ進んでまいりまして、また、一方には膨大な数にのぼる失業者が存在しておる。こういうことからあわせ考えたとき、やはり何と言っても労働時間の短縮ということが直接これに結びついた一つの大きな問題だと思う。そこで、日本の法定時間である四十八時間、しかし、いま大臣がおっしゃるように、これすら、法定の時間すら守られていないで、五十時間を突破しておる。こういう困難な実情の中ではありますけれども、やはりそういういま申し上げましたような問題に直結した大事な問題であるので、やはり厚い壁を破りながらこの問題と真剣に取り組む必要があろうかと思うのですが、この点について重ねてお伺いしたいと思います。
  125. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) その点につきましては私どもも全く同感でございまして、先ほど申し上げましたような手続を通じまして、できるだけすみやかに理想に向かって進みたいと考えております。
  126. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ILOの採択された時間については四十時間とただいま御説明があったわけですけれども、これちょっと古い数字ですが、三十五年の調査によると、もうそのときすでにイギリスが四十四時間、ドイツ、スエーデン、ベルギー、デンマークが四十五時間、ソ連が四十六時間。しかし実際ソ連は四十六時間であっても、一日七時間ですから六七、四十二——四十二時間が実働労働時間だと思うのです。まあ、こういうふうにして、最近のこの時間が知りたいのですが、おわかりの程度でけっこうですが、政府委員のほうから最近の先進国の労働時間をお聞かせいただきたいのです。
  127. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 手元に総合的な資料を持ち合わせておりませんが、御参考までに一九六二年における製造業関係の週労働時間を申し上げますると、アメリカでは、四〇・四時間、カナダでは四〇・七、フランス四五・八、西ドイツ四四・七、スイス四五・六、イギリスが四六・二といった数字に相なっておりまして、わが国の場合は、同じ方式によりまして比較いたしますれば四五・八、こういう数字が製造業だけですが出ております。そういう実情でございます。
  128. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、ILOの資料によっていわゆる実働時間を調べてみますると、調べた数字がこまかくあるのですが、時間の関係もありますからいまは申し上げませんが、結論だけ言うと、この調べ上げた数字を検討してみると、実働時間が上向きにふえている傾向にあるのは、いわゆる先進工業国では日本だけだと思う。ほかの諸外国はみな下向きになっている。その上外国では賃金が日本より相当高い。生産性向上の成果として積極的な労働時間短縮が行なわれている。いま製造業についての発表がございましたが、そのように相当労働者の余暇をつくるということについては相当前進しておると思うのですが、日本の実情はいま大臣から御説明のあったように、いまだしの感が深いわけです。まあ、特にここでお伺いしたいのは、実働時間がふえつつあるのは日本だけだというところに問題があろうかと思うのですね。まあ、相当工業先進国近いレベルにある日本、その日本だけが増加の傾向にあるということは、一つの問題であろうと思う。こういう問題についても十分労働省としてもお考えでありましょうし、検討を進めておると思いますが、どういうふうなお考えでこの問題と取り組んでおられるか。その要点をお聞かせいただきたい。
  129. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 最近の月間労働時間の推移を見ておりますと、昭和三十五年がピークでございまして、調査産業総数として見ますと、月二〇二・九時間と相なっておったのでございますが、三十六年平均は二〇一・〇、三十七年は一九七・八というように、わずかではありますが、労働時間はやや減少しておるという傾向は認められるわけでございます。しかしながら、先ほど大臣から御答弁がございましたように、労働基準法の労働時間、原則としては一日八時間、一週四十八時間の制度がございますが、そのほかに例外措置が認められております。たとえば労働基準法三十六条の規定に基づきまして、労使協定による時間延長が認められている。その労使協定による時間延長制度がかなり広く行なわれておりますので、労働時間が一日八時間という大原則にかかわらず、かなりの長時間労働が行なわれている。こういう結果に相なっておるかと思うのでございます。そこで、三十六条協定方式の労働時間延長制度等の現状につきまして、そうむやみに協定があるからというて長い時間延長を認めるということは適当でありませんので、今後におきまする方向といたしましては、いわゆる三六協定の内容自体につきましても正すということが大事ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。そのような具体的問題につきましては、先ほど大臣から御答弁ございましたように、目下中央労働基準審議会におきまして労働時間問題についての審議を進めております。その過程におきまして、現在の日本の労働時間の実態及びそれにまつわるところのいろいろな問題点を洗っていただいておりまして、いま申しました三六協定の内容の問題等につきましても実態を明らかにし、そういった点からの時間の規制ないしは時間短縮の方向への改善案を考えたいということで目下検討いたしておるような次第でございます。
  130. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど来お伺いしておるように、諸外国では労働時間が漸次減少の方向に短縮されつつあるということははっきりしたわけです。ただここで問題なのは、ただ単に労働時間が短縮されるということだけじゃなく、賃金については切り下げを行なわないで、労働時間は短縮されておる。これがきわめて重要な要素であろうと思う。したがって、労働時間は短縮された、賃金は切り下げられたじゃ、全く意味がない。そういうところにポイントを置いて日本の今後の労働時間短縮の問題と取り組む必要があろうかと思うのですが、この点についてはいかがお考えですか。
  131. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) その点は全く同感に存じます。ただいま労働基準審議会において労働時間の短縮の問題を検討していただいておりまするので、それについては、労使双方の代表も入っておりますので、そうした問題を含めて検討されるものと考えております。
  132. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この労働時間問題のうちで労働時間の短縮の問題をいまお伺いしておるわけですが、ここで問題なのは、大企業は別として、中小企業、わけて零細企業について労働時間短縮という問題は、われわれが見ればきわめて困難な要素を含んでおると思う。大体、中小、特に零細企業にあっては、非常に低賃金である関係で、それでは生活できないということで時間をオーバーして居残りで相当やっている時間が多いと思うのです。そういうようなことで、先ほど御報告があったように、法定の四十八時間以上を相当こえておる。これは主として中小企業の面で特にそういう傾向が強いかと思うのですが、そういうことで、これはいまの現状をもってしては、中小、特に零細企業の労働時間短縮という問題はよほど慎重にやる必要がありましょうし、また、これは中小企業、特に零細企業の保護育成という面とからめてやらないと、企業者も成り立たないし、労働者も成り立たないということになろうかと思います。そこで労働時間短縮の問題については、中小、特に零細企業の面は非常に困難な要素を含んでおると思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  133. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私どもも全くそのとおりに考えておりまして、労働時間の問題は大企業の問題にあらずして、むしろ中小、零細企業の問題だ、こういうふうに思っております。したがいまして、日本の労働時間の問題を取り上げるにあたっては、中小、零細企業に対する振興策というものを前提としてはじめて考え得る、こう思うのでございます。最近、中小企業基本法の成立によりまして、中小企業に対する総合的な対策が進められる機運になってまいりましたので、そうした意味においても、中小企業が重点になっておりまする労働問題の労働時間の問題を取り上げるべき時期が参ったというふうに存ずる次第でございます。
  134. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 労働時間短縮の問題についての労働省の大体お考えのほどがわかりましたので、次の問題に入りたいと思います。  次に、臨時工、あるいは臨時職員、社外工、こういう臨時的な雇用の問題について二、三お伺いしたいと思いますが、こういう臨時工とか、臨時職員、社外工、こういう労働者は、最近特にふえてきておるようですが、これは、身分とか労働条件は、本工、同業労働者と何ら違うところはないわけです。しかし、この処遇については不当に差別されておる。ここに問題があろうかと思うのですが、この問題について大臣としてはどのようにお考えですか。
  135. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 臨時工、社外工の問題につきましては、かねてから当委員会においてしばしば問題としてお取り上げになっておるところでございます。私どもは、日本における臨時工、社外工の問題は、労働対策としての従来からの盲点の一つであり、やはり労働行政の近代化のためには、この点の是正が急がれねばならない、こういうふうに考えて、これが対策をしばしばお約束申し上げてまいっておったのでございまするが、その後、労働省といたしましては、労務管理の指導面を通じまして、社外工、臨時工の常用工的な——実質上は常用工である者が臨時工、社外工の形になっておる。これについてはすみやかに常用工の身分に切りかえるように強力な指導をいたしてまいっておるわけでございます。最近、その成果もだんだんあらわれまして、最近の傾向といたしましては、これらの数は、逐次減少の傾向を示しつつあるところでございます。詳しくは政府委員から御説明いたさせます。
  136. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 最近の傾向を見ますると、常用工的実体を有するいわゆる臨時工の数は、三十六年が最高でございまして、六十三万あったのでございます。いろいろ問題がございまするので、この問題解決のためにいろいろ手段を講じてまいりましたが、三十七年になりまして、四十八万というふうに減少いたしました。三十八年の数字については、目下集計いたしておりますが、大体の傾向といたしましては、さらに減少を示しておる、こういう傾向をたどっておるのでございます。先生御承知のように、臨時工と常用工との間におきます問題としましては、昇給、賞与、退職金等の制度がひとしく適用されないとか、あるいは福祉施設の利用上差別があるとか、いろいろ問題があるわけでございます。こういった問題は、労働基準法違反という角度よりも、むしろ労務管理の問題として非常に重要な問題でございますので、持に、労務管理近代化指導という観点から、労働省としてもいろいろ指導いたしておるような次第でございます。その間、臨時工が多い職種も大体わかっておりますので、そういった産業に重点を置きまして、臨時工の問題解決のために今後も重点的に指導いたしてまいりたいと思います。
  137. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ御説明によると、三十六年を最高としてだんだん漸減の方向に進んでいると、たいへんけっこうな傾向だと思いますが、試みに憲法十四条に照らして見ますと、「すべて國民は、法の下に平等であって、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、経濟的又は社會的関係において、差別されない。」、こういう平等待遇の原則が明記されておるわけです。それから同一労働、同一賃金は、日本の労働法のいわゆる骨格とも言うべき非常に根本原則であるわけです。こういう二つの点に照らしあわせても、同じ労働、同じ努力をしていながらそういう差別があるのは、どう考えても平等の原則に反する。まあ、繰り返し申し上げるように、年次的にだんだん漸減しておることは非常に望ましい傾向であるにしても、まだまだ相当数のこういう不公平な差別的な待遇を受けておる者も多い現実にかんがみて、さらに、これは一番いいのは皆無にすることですが、さらにそういう漸減の方向に向かって努力してしかるべきだ、こういうふうに考えられるわけですが、この点についてはどうお考えですか。
  138. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) ますます指導面を強化いたしまするとともに、特に職業安定機関等の協力をも得ましていままでの方針を一そう徹底してまいりたいと思います。
  139. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほどもお伺いしたように、この臨時工、臨時職員については、本工や常用工また本職員、こういう方と比べてほとんど仕事では差別できない同じ条件で働いておるわけですね。しかも、身分はきわめて不安定、労働省の白書を見ても、雇用労働者の大幅な増加が見られておるということですが、そのほとんどが臨時工あるいは社外工によって占められておるということも事実であろうと思う。まあ、こういうようなことからいって、臨時工あるいは社外工の増ということについては、大幅な雇用関係が解決されたということであっても、これは正常な雇用関係ではないと思うのです。こういう点にも問題があるので、この点についても具体的に何か努力されておると思いますが、どういうふうにお考えになっておるか、その点をお聞かせいただきたい。
  140. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の点まことにごもっともと存ずるのでございますが、ただ、産業別に臨時工の多いものを見てみますると、たとえば食料品製造業、これが最高でございます。その他、輸送用機械器具製造業、電気機械器具製造業といったような産業が、臨時工の比較的多い産業でございます。この中には、食料品製造業のように、仕事の内容自体がかなり臨時工的な労務に依存するというようなものもあろうかと思うのでございます。しかしながら、全体として常用工という雇用形態によって労務を遂行するという実態にある産業につきましては、今後の労働力不足の観点から見ましても、そのような不安定な雇用形態がはたして十分なる必要労働力を当該企業において確保し得るかどうかという労務対策上の問題もありますので、先ほど申し上げました労務管理近代化の問題、今後における当該産業及び当該企業における必要労働力の確保の問題といった問題も総合的に勘案しまして、やはり魅力のある職場、魅力のある雇用形態という観点から、できるだけ常用化されることが望ましいという観点からいろいろ指導しておるのでございます。繰り返しで恐縮ですが、産業別にその特殊事情に相応した指導を行ない、かつ、今後も行なっていきたいと考えておる次第でございます。
  141. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この臨時工等について、都市の面に限定して調べてみますると、これは推定ですが、昭和九年に三十万ないし四十万、三十五年に百万になっているのですがね。そこで、三十八年についてはまだ調査中であると思いますが、三十七年についてはどの程度であるのか。これは先ほど御答弁があった三十六年を最高として六十三万、三十七年は四十八万、漸減の方向にあるであろうという御答弁であったわけですが、その数字と私の調べた数字と合わせると、全く相いれない数字になっているわけです。どちらがどういうふうに間違っているのか。このこともあわせて御指摘いただきたいと思います。さらに、このことに関連して、これらの臨時工がどの面で働いているのか調べますと、鉄鋼、造船、金属、機械、化学、食品、紡績、陸運、あらゆる産業部門にわたっているわけですね。そこで、いま一つここで問題があるのは、戦後の特徴として、日本にも定員法がしかれてまいりました。その定員法の制定以来、官公庁労働者の中にも、いわゆる臨時工でなく、臨時職員が相当ふえていることも事実です。これは一つの戦後の特徴であろうと思うのですが、この臨時工、臨時職員の増減は、景気の変動に非常に左右されるものであって、景気がいいと非常にふえる、景気が悪いと減っていく、そういう傾向にあろうかと思います。これらの問題についてひとつ一括要点だけお答えいただきたいと思います。
  142. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) いわゆる臨時工という概念のもとに扱っておりますものには、幾つかの内容のものがあろうと存じます。先ほども申し上げました数字は、雇用の実態として常用的なものであるが臨時工と称せられる者の数が、三十六年は六十三万であり、三十七年は四十八万であるというふうに申し上げたのでございますが、それ以外に、日々雇用されるという、いわゆる日雇い的なものもあるわけでございます。あるいはまた、季節労務的な短期間の期間をもって雇用される季節工的なものもあるわけでございます。しばしば問題になります社外工といったようなものもございまして、私どもは、臨時工対策としましては、常用的な労務形態であるにもかかわらず臨時工であるものの対策という点につきましては、先ほど申し上げたところでございますが、本来季節工である、たとえば果実の採集、加工などという、そのシーズンに特に人手が要するというような季節工的なもの、あるいは日々雇い入れられるようなもの、これはそれなりにそういった労務形態を採用しておる理由があるわけでございまして、それを労働基準法の角度から扱うとか、あるいは労務管理の問題として取り上げるにいたしましても、本来季節工的な内容の作業でありますものも常用化せしめる。こう申しましても、非常に実態的に無理がございます。そういったそれぞれの必要性に即しましてとられている労務形態につきましては、あまり立ち入った指導は、率直に申しまして、いたしておらないのでございます。で、先ほど先生が御指摘になりました数は、いわゆる日雇い的なものの臨時雇用、こういう観点から総合的に扱った数字でございます。
  143. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまもお伺いしたわけですが、政府の直轄している各官庁に、これも数は最近の数をお聞かせいただきたいと思います。いま数十万に及ぶ非常勤職員が現実にいるわけです。この数は御指示いただきたいと思いますが、それで、非常勤職員の中で特に常勤的非常勤ですね、常勤的非常勤については、本職員と学歴においてもほとんど変わりがない、仕事の性質も量もほとんど変わりがないわけです。しかも、なおかつ、非常に不安定ないわゆる非常勤職員として同じ努力をしながら、同じ学歴を持ちながら、非常に不安定な毎日を送っているわけです。いつ首になるかわからない。しかも、この経費も手当も、人件費からではなく、おそらく事業費から支出されているんではなかろうか、そういう問題点があろうかと思うんです。こういうことは、先ほど来お伺いしておるように、憲法十四条とか、同一労働同一賃金の、いわゆる日本の労働法に一貫して流れておる基本的な原則にも相反する。特に常勤的非常勤を例にとると、こういうことが切に感じられるわけなんです。この点についてはいかがお考えですか。
  144. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 確かに政府関係機関の事業の中で、たとえば林業労働者などにつきましては、一方は定員化された職員、一方はいわゆる臨時職員というような取り扱いを受けております部面はあると私どもは承知いたしております。ただ、遺憾ながら、手元に資料がございませんので、その数を申し上げることはできないのでございますが、確かにそういう実態があり、かつ本年の春闘におきましてもいろいろ問題として取り上げられておることは十分承知をいたしておるところでございます。この点につきましては、ただいま先生の御指摘のございました、実は同一労働同一賃金という形に現在産業界全体がなってなくて、いわゆる年功序列型賃金になっておりまして、同一労働同一賃金の形にはなっておらないわけでございます。ここは賃金制度全般の問題になろうかと思いますが、一応法律上は、基準法では男女同一労働同一賃金と、こういうような考え方が出ておりますけれども、遺憾ながら必ずしも同一価値労働に対して同一賃金が払われるという形態にはわが国ではなっていないわけでございまして、これは法律問題は格別といたしまして、同じような作業内容のものについて著しい取り扱いの差が、特に賃金と申しますか、広い意味の賃金とか退職金とか、そういったものについての取り扱いが不十分であり非常に格差があるという点につきましては、先ほども申し上げましたように、そのような不安定な雇用形態であって、しかも、同じ仕事をしながら格差があるということでは、将来の労働力確保に非常な不安を生ずるであろう。現に林業労働につきましてはかなりの求人難という状態があらわれておるようでございまして、そういった労務形態におけるいろいろな問題が、ひいては将来における労務確保に非常な支障を来たすということが、企業体使用者においても漸次認識されておるように私どもは理解しておるのでございます。そういった面と関連いたしまして、法律論としては格別の問題は生じないかと思いますけれども、そういった点において十分指導を要するのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。たとえば国有林の関係労働者につきまして、これは労働基準法の適用があるわけでございますが、私どものほうにいろいろ申し入れがございまして、実態の調査と同時に、いろいろ指導面においても関係の方面に申し入れをしておるという次第でございまして、できるだけ改善につとめてまいりたいと思っておる次第でございます。
  145. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御答弁の意味はわかりますが、私がお伺いしておるのは、臨時工とか社外工といっても、いろいろ千差万別だと思うんです。各官庁あたりの臨時職員について見ると、学歴もりっぱな大学を出ておる、やられる仕事もほとんど定員内職員と変わりがない、にもかかわらず相当な処遇の上に差別がある。これは特に常勤的非常勤の方は、ほとんど作業が、いわゆる定員内職員と変わりがないと思うのです。常勤的非常勤、まあ営林局の出先の営林署、そのまた出先の出張所に季節によって労務者が相当入ってくる。これはあるシーズンだけおって、年間を通じては仕事がないわけです。こういう方も臨時職員の中に入るわけですから、ずいぶん中を見ると千差万別であるわけです。けれども、ここで特にお伺いしておるのは、常勤的非常勤については、そういう職員については文字どおり毎日出勤されて同じように仕事をされておる。しかも、学歴を調べてもほとんど定員内職員と変わりがない、にもかかわらず、いわゆる常勤的非常勤という名のもとに、処遇だけは差別される、これは不合理じゃないかと、そういうことを伺っておるわけです。これは早急に定員内にするという問題が一つありますし、いま一つは、当面処遇については当然公平にやるべきじゃないか、こういうことをお伺いしておるわけなんです。
  146. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) たとえば、政府委員の申しましたように、林野の関係職員等、あるいは建設省の現場職員等には、お話しのような常勤と何ら変わりない資格、また変わりない職務をとりながら差別されて待遇されておる人がおるようでありまして、これを定員に切りかえていく。いわゆる臨時職員の定員化ということは常に問題になり、各省としても努力をいたしておるわけでございまして、年々定員化が進められつつあるわけでございまして、人事行政の目標といたしましては、これをすみやかに全部定員化する、平等の待遇を与えて能率的な仕事をしてもらうということが理想であると考えております。
  147. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあお伺いしてきた臨時工、社外工あるいは臨時職員、こういうことについていかがですかとお伺いすれば、労働省はこれはむろん好ましくないと、定員内にいたしたいと、こういう御答弁であるわけです。ところが、現実に各官庁に、年々配慮はされておっても、現実の問題として、いま相当数の臨時職員がおるということも、これまた現実の姿であるわけです。そこで、年々問題にはなっておりますし、今後も問題におそらくなるでありましょうけれども、ひとつここでお伺いしておるのは、臨時工とか臨時職員については好ましくないと言うのであるならば、前向きの姿勢でどんどんこれを漸減して、ついには皆無にすると、そういう方向に努力されてしかるべきであるし、さらに、まず政府みずから箱を示して、官庁の臨時職員をなくし、そうして民間のいわゆる臨時工、社外工についても同じような指導をするのが、これ全く労働省の立場として当然なことではなかろうかと思うのですが、こういう点についてお伺いします。
  148. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 全くお述べになりましたとおりでございまして、労働省といたしましては、労働省自体の職員の定員化の問題もかかえておったのでございます。これにつきましては、特に努力をいたしまして、すでに三十七年度において大体全部の定員化が終了いたしておる状況でございます。各省につきましても、できるだけ側面的に協力いたしてまいりたいと思っております。
  149. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、この問題については大体お考えはわかりましたので、特に要望もかねてお伺いしたいと思うのですが、当面の問題として、まあ将来は皆無にするということが目標でなければならぬわけですが、当面就業時間とか、あるいは雇用条件、退職手当、こういうあらゆる労働条件については本と臨時の差別をまず撤廃する、当面の処遇をまず改正するということ、そして、第二段の目標として臨時工とか臨時職員をなくす。そういう二段がまえになると思います。なくすと言っても、ここで手のひらを返すように、一ぺんに現存の臨時工、臨時職員をなくすということは、これは技術的にはできないわけですから、将来に向かってこれを皆無にしなければならぬ。しかし、処遇の問題は政府にその熱意と決意があればできるわけですから、したがって、これを二段に分けて、当面の処遇の差別をなくすということ、そうして、二段としてはやがて臨時工、臨時職員を皆無にする。こういうことが最終的にこの問題についての最重要な問題であろうと思うので、この問題に関する限り最後の質問としてお伺いするわけです。この点要望申し上げるとともに、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  150. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましても、今日労働不足の実情から考え、しかも産業の発展に伴いまして、労働の生産性を高めていくということに思いを及ぼしまするというと、労働者全体が気持ちよく働けるような環境をつくるために努力しなければならぬと思うのでございます。そういう意味から申しましても、差別待遇の撤廃というものはこれは急務中の急務であると考えております。ただ、これらの処遇の問題につきましては、御承知のとおり、労使の話し合いできまっている点が多いのでございまして、労働省では、さしあたり使用者に対して指導を行なっておりまするが、これを実現いたしまするために、同時に使用者が労働組合の協力を得なければならぬという面もあるわけでございまして、われわれのほうからも、労働組合の全国組織を通じて今後は組合側にも協力を要請していくということも必要だと存じます。いずれにいたしましても、御指摘のような目標に向かって今後努力をいたしたいと存じます。
  151. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体この問題わかりましたので、次に進みたいと思いますが、次に、婦人と年少労働問題について二、三お伺いしたいと思いますが、この婦人年少労働問題というのは困難な問題の一つになっておると思うんですが、基本的には労働省としてこの問題どういうふうにお考えですか。基本的な対策についてお伺いしたいわけです。
  152. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) この問題は全般としましては婦人少年局で所管いたしておりますが、女子年少者のうちの労働条件に関する事項は労働基準局で扱っておりますので、私からお答えさしていただきます。  女子年少者の問題につきましては、労働基準法上も、労働時間その他の点につきまして特殊な規制を行なってきておるのでございまして、従来はそれらの特別規定の完全適用という面でいろいろ努力してきたところでございます。しかしながら、最近におきます情勢を見ますると、若年労働者の不足という点から、従来とは変わった形において問題が提起されておるのでございまして、たとえば、新聞配達の少年とか牛乳配達の少年の処遇問題につきまして、人手不足ということに関連いたしましていろいろ問題が起きてきております。したがいまして、労働基準法違反という点から問題を処理することは、これは当然でございますけれども、もっと若年労働者の給与面における合理性と申しますか、いわゆる労務管理の面と関連しました、法以前と申しますか、以上と申しますか、そういう問題が多々あらわれてきたように存じております。そういう観点から婦人少年局と労働基準局とは協力いたしまして、労働基準法上の問題のみならず、労務管理面についての指導も行なっているということでございます。  なお、婦人問題につきましては、風俗問題に関連した特殊な問題が提起されていることは御存じのとおりでございますが、その点につきましても、法律的には労働基準法違反の、たとえば女王の使用できないような事業に女子を使用しているとか、あるいは深夜業が禁止されているにもかかわらず、深夜業に従事しているとかというような面からは法違反の問題として取り締まる。それから、一方におきましては、いろいろ婦人の新たなる就職の問題というようなことで、職業訓練その他の問題もありますので、単に基準法だけの問題としてでなく、総合的な立場からの指導を行なう必要があるということで、処理をいたしておるような次第でございます。
  153. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この婦人年少労働問題は、労働問題の中でも一番早くから実は取り上げられていると思うのですね。一九一一年ですか、工場法が新たにつくられて、この工場法の中で、婦人年少労働者の問題が特に取り上げられたということは、裏を返せばそれだけ婦人労働者、そうして年少労働者が非常に労働条件が悪かったということの裏書きにもなるわけです。非常に劣悪であったので、何とかこれを改善しなければならない、こういうことで工場法がつくられ、その中で婦人年少者の労働問題が取り上げられたにもかかわらず、非常に困難な問題であるので、一番早く取り上げられた問題であるけれども、現在なおこの問題が問題となって残っている、こういうことではなかろうかと思うのであります。それだけに、いかにこの問題がむずかしいかということが裏書きされるわけなんですが、やはり何といっても非常に重要な労働政策の一環であろうと思うので、労働省の基本的な考え方をひとつお聞かせ願いたい。
  154. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) この点はお説のとおりであると存じます。そこで婦人、少年についての労働行政というものは、最も古いけれども、また同時に常に新しい問題として取り組んでいくという心がまえが必要であると思うのでございます。さしあたり労働省といたしましては、婦人、少年関係におきましては、婦人及び年少労働者の保護、福祉の向上をはかり、婦人の実質的な地位の向上、勤労少年については健全な育成を積極的に推進するということを目標にいたしております。特に婦人及び年少労働者の大部分の就業の場所は、比較的中小企業でございまするので、労働面におきましても中小企業対策を重視いたし、その労働条件の向上、労働福祉の改善を進めてまいりたいと、かように考えておるのでございまして、このためには、年少労働者福祉員制度の充実、年少労働者カウンセリング制度の普及、及び日常生活における福祉のよりどころといたしまして、勤労青少年ホーム、あるいは働く婦人の家というようなものを増設するようにつとめておるわけでございます。さらに、就職の困難な日雇い労働者、中高年婦人、未亡人等の職業対策の推進をはかりますとともに、内職に従事します者の一そうの保護を進めまするため、内職補導施設を増設し、その就業援助の強化につとめるというようなことをいたしておるわけでございます。もとよりただいま申し述べました施設、これはいわゆる労働基準法上の監督行政以外の問題でございます。これとともに、監督行政におきましては、重点を年少労働者及び婦人労働者の保護に置きまして、年少労働者及び婦人労働者の保護のための特別の規定の実効ある適用につとめておる次第でございます。
  155. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 戦後特に目ぼしいのは、婦人の労働者が盛んに職場に進出してきたわけですけれども、その前面には、依然として悪労働条件というものが横たわっておるわけです。そこで、試みに数字を調べてみますると、昭和二十二年で、女子の賃金は男子の四十三・四%であったわけです。八年たって三十年には、わずか〇・三%ふえて四三・七%。そこでまずお伺いしたいのは、三十八年でどのくらいの比率か。もし三十八年がおわかりなければ三十七年でもけっこうです。そのことと、こういう男女の平等ということは憲法で保障されておるにもかかわらず、現実にはこうやって格差が相当強いわけです。十年近くもたって、〇・三とか四しか上がっていない。こういう現実は、憲法の趣旨にもそぐわないものであるというふうに考えられるわけです。この二つの点についてお聞かせいただきたい。
  156. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 男女別賃金格差の問題でございますが、御指摘のように、女子であることを理由にして賃金に差等を設けるという場合には労働基準法上の問題になるわけでございますが、ただ、一般的に現実に男女にそれぞれ支払われておる賃金の額の比較をいたします場合には、経験だとか能力だとか、その他いろいろな条件がございまするので、法律的な意味の男女の差別取り扱いということには相ならぬかと思うのでございますけれども、格差があることは事実でございます。最近のその比率を見てまいりますと、これは製造業関係でございます、製造業の現金給与総額に関しまする男子労働者に対する女子労働者の賃金の格差を見ますると、三十七年におきましては、管理事務及び技術労働に従事する場合には、比較的格差が少のうございまして六二・七、こういう形になっておりますが、それ以外の技術的労働につきましては四〇・五、それから、生産労働につきましては四五・七というような格差になっております。この男女別格差の点につきましては、三十一年、三十二年、三十三年ごろの数字を見ますると、生産労働につきましては四〇%を下回っているというように、かなり差の激しかったこともあったのでございますが、やや好転を見せているということでございます。これも最近におきますところの労働力不足という問題とも関連いたしまして、今後漸次、こういった格差は是正されつつあるという傾向を認めることができるのではなかろうかというふうに判断はいたしておりますが、現状としてはかようなことでございます。
  157. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体この問題に対する労働省のお考えもわかりましたので、次、労働災害について二、三お伺いしたいと思います。  もう申し上げるまでもなく、三池とか、鶴見の大災害が相次いで起きまして国民に大きな衝撃を与え、労働者は職場で不安におののいている。国民も、交通機関などについても非常に不安の気持ちを持ちながら乗っいてるというのが現状であろうと思うのです。こういうような事態に対して、労働省としてもこの労働災害については重大な関心を持っておられると思うのですが、その基本的なお考えについては、どういうふうにお考えですか。
  158. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましては、すでに数年前に労働災害を減少させなければならぬという考えのもとに、災害防止五カ年計画というものを樹立いたしまして、これによって仕事を進めてまいったのでございます。この計画の実施はかなりの成果をあげまして、事故発生率におきましては相当なる減少を見ることができたのでございますが、ただ最近数年間における産業の発展に伴いまして、労働人員、人口が非常に増加いたしてまいっておりまするために、労働者千人当たりの事故発生率は減少したにもかかわらず、災害の絶対数はかえって増加するというような実情であったわけでございます。そこで、昨年、労働省としましては、この五カ年計画を再検討いたしまして、あらためて五カ年計画を樹立し、災害率の、発生ばかりでなく、絶対数においても五カ年間に半減させたいという意気込みを持って進んでまいったわけでございます。特にそのために災害防止に関する特別立法を行ないまして、使用者の災害防止のための団体をつくり、使用者の自発的な災害防止努力を組織化していく、あわせて特に事故の多い建設業等におきまする、何段にもなっておりまする請負制度、これにつきまして災害に対する責任の所在を明確にし、そうして取り締まりを厳重にすると同時に、災害防止の実効をあげよう、こういう趣旨で、昨年の通常国会に法案を提出いたしておったのでございますが、昨年これが昨年審議未了と相なったのであります。で本年もその法案をこの通常国会に提案いたしておったのでございますが、これに対する総評その他労働組合の方面からの要望といたしまして、災害防止の対策はこの法案だけでは不十分ではないか、ことに昨年の三池並びに鶴見の災害等が国民に与えた衝撃というものは非常に大きなものであり、これを契機として産業災害に対する国民の関心も非常に深くなってきておる、こうした新たな事態に対処する政府の新たな施策が必要ではないかという批判が出てまいったのでございます。私どもも、昨年の二大事故というものは日本の産業発展の上からぜひともこれに対して対策を講ずる必要がある問題だと思っておりました際でございますので、組合側の要望はまことにごもっともだと存じまして、つきましては、災害対策の実施については労使の協力が必要でございまするので、至急この新しい事態を基礎といたしまして、今後努力すべき災害防止対策について労働省としての考え方を取りまとめ、そうしてこれを労使双方に提示し、その意見を徴し、協力を得られるという確信の出た上でこれを具体化していこう、こういうふうに考えまして、先般、労働省の労働基準審議会に対しまして災害防止対策についての全般的な根本的な再検討、その結果労働省としての考え方を一応取りまとめましたものをお示しして御検討を願ったわけでございます。審議会におきましてはこれを検討されまして、大部分の点についてはさらに具体化の際に再検討するとして、一応現段階における根本対策についての考え方としてはこの程度でよろしいじゃないか、これで労働省が中心になって今後の取り運びを進めてもらいたいという趣旨の御答申がございました。労働省といたしましてはこの答申の趣旨に従いまして、今後各般の事項にわたりましてあらゆる角度から災害対策を根本的に掘り下げ、実施してまいりたいと思っておるのであります。もとより、これが具体化につきましては、予算措置はもちろん、立法措置も必要でございます。これらにつきましてはさらに一そう検討を進め、審議会においても各問題ごとに労使間の話し合いを進めて御協力をいただきたい。こう思っておるのでございますが、この線に沿うて今後努力をいたしたい。そうして今国会に提案いたしておりまする災害防止に関する法案の取り扱いにつきましても、その全般的な新しい災害防止計画の一部分としてこれを御検討いただきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  159. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 鶴見でも三池でもそうですが、偶発的な天災でないことは事実であって、やはり根本的には人命を守るところのいわゆる保安とか安全工作に手抜かりがあったことも事実であろうと思います。そうして、さらには、いわゆる生産第一主義、利潤第一主義のこうした政策に根本的な原因があるのではなかろうか。いわゆるもうけるためにどうしても保安、安全の面に手抜かりができてくるわけです。生産をふやそう、利潤をふやそうという、そういう合理化政策がこのような人災を繰り返しておる。そこに根本的な問題があるのではないか。私どもとしてはさように見ておるわけですが、この点についてのお考えはどうですか。
  160. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 基本的にそのとおりであると考えます。
  161. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういうことになりますと、先ほど労働大臣からるる御説明があったわけですけれども、そこに根本的な原因があるとすると、その根本的な原因をためていかなければならない。そこに基本を置いた政策を打ち出してしかるべきだ、そういう前提でいま大臣から御説明があったと思うのですが、そういうふうに理解してよろしいのですか、この点について。
  162. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 答申におきましても、そうした角度からは対策全般を網羅した答申がございました。これらを逐次具体化していくにあたりまして、さらに個々の問題についてあらためて掘り下げようというような考え方が示されております。
  163. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大臣のお考えはよくわかりましたが、ただ現実の問題として、これまでも合理化のために首切りとか賃下げ、労働強化、配置転換、こういうことがいろいろと行なわれてきたわけです。しかもなおかつ、合理化がどんどん進んでおる、こういう事態の中で合理化が、先ほど申し上げたようにいわゆる生産第一、利潤第一主義のほうへ走る限りは、この災害は防止できない、こういう基本的な考え方から現実を見たときに、現実は合理化をどんどん進めておる。こういうところに問題があろうかと思うのですね。その点はいかがですか。
  164. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 技術の進歩に伴いまして生産の合理化ということを私ども否定するわけにはまいりませんが、しかし、生産ということは人世の目的ではなくして手段でございまするから、この生産という人生の手段によって人生の目的を害するような災害を容認するということはとうていできないわけでございまして、私どもはあくまでも安全第一、生産第二という形でいくべきだと思いまするし、また、このたびの審議会答申の趣旨もそこにあるものと心得ております。
  165. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前に三河島の問題がありましたが、あの当時もそうであったように、何か災害が起きたその当時は、国民をあげて非常に関心を持つわけです。そこで直ちに抜本的な対策を講ぜられれば問題ないわけですけれども、そこまでいかないうちにいつか時間がたつとまたそのままになって、また忘れたころボーンと一つ問題が起きる。こういうことが繰り返されているんではなかろうか、過去の実績からですね。したがって、一応当時の事態をしっかりかみしめて、よほど抜本的な対策を講じないとあやまちが繰り返される、こういうふうに考えられるわけです。もちろん、所管の労働省としては十分その点も考えているでしょうし、他の官庁とも横の連携をとりながら問題に真剣に取り組まれておるとは思いますが、そういうことに対する心がまえはどうなっておるか、その点をお伺いしたいのですが。
  166. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 災害のときには世間も大騒ぎをし役所も大騒ぎをする。一わたり、七十五日も過ぎるというとそれなりになり、また次の機会に同じようなことを繰り返す。これはお示しのとおり、いままでの通弊であったと思います。私はこの安全の問題は労働政策の根本問題であると考えまして、こうした絶好の機会と申しまするとまことに犠牲者の方々にはお気の毒で申しわけないことばづかいでございますが、許していただければ、この絶好の機会をほんとうに日本の安全行政の前進に結びつけなければならぬという考えを強くいたしたのでございます。そこで、ただこれが議会で問題になったときに今後努力するというような口約束だけではいけない、やはりあとに続く仕事を基礎づけるような実績を残して、しっかりした土台をつくり上げておく必要がある、かように考えまして、私どもはこの労働災害防止についての対策をあらゆる角度から再検討をいたし、そうして、これを今後の行政に生かしていく土台といたしまして、中央労働基準審議会におはかりいたして、その答申を求めたわけでございます。十一月に災害が発生いたし、昨年中は労働省といたしましてもこの災害のあと始末に暮れてしまいました。ことに、御承知のとおり、三池におきましてはいままでにない一酸化炭素中毒患者の大量発生を見ました。これについての対策等に一月一ぱいかかってしまったのであります。それと並行いたしまして、基準局におきましては、今後の災害防止の対策として、さしあたって鉱山監督の強化について通産省と打ち合わせをいたしまするとともに、産業全体の安全計画についての全般的な今後行なうべき施策についての輪郭を検討いたさせまして、これに基づきまして三月早々に基準審議会を招集して諮問をいたしたわけでございます。五月の末になりまして、ずいぶん基準審議会もお忙しい方々でございますが、私どもの意のあるところを理解されまして、非常な犠牲を払って御協力くださいまして、五月二十日に答申をちょうだいすることができたわけでございます。いずれこの答申につきましては、適当な機会にごらんをいただきたいと存じますが、私どもはこの答申の各項目について、それぞれこれを具体化した上、さらに基準審議会で御承認を得て、予算措置、立法措置その他必要な措置を講じて具体化してまいりたい、かように存じております。決して線香花火的な一時の問題でなく、今後の労働行政のためにほんとうにしっかりした土台をこの機会につくりたい、かように真剣に考えております。
  167. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして私の質問を終わりたいと思います。  先ほどもお伺いしたところですが、やはり合理化の一環として、生産第一主義、利潤第一主義、こういうことは、ことばをかえて言うと、人命軽視であって、経済が人命に優先するということが、ことばをかえると、言えると思うのです。人命を尊重するならば、やはり保安とか安全対策に十分手が尽されなければいかぬ、こういうようなことで、いま大臣からるる御説明があったのでその点についてはよくわかりますが、ひとつ今後も労働省としては、いわゆる災害の防止、人命尊重という基本的な立場に立って、一段とひとつ災害防止には最大限の努力をしていただきたいということを強く要望申し上げながら、大臣に重ねての決意をお伺いして、本日のところ私の質問を終わります。
  168. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 先ほども申し上げましたるごとく、産業災害の防止ということは、これは経営以前の問題であると考えるのでございます。いかなる企業においても安全第一、生産第二という考え方をとるのはこれは当然のことであり、また産業災害の防止にあたり、行政庁の心がまえといたしましても、人命尊重ということをまずもって土台にして考えていくべきものである、かように考えておりまするし、また、先般の労働基準審議会答申におきましても、人命の尊重を軽視しておるということがいままでの通弊であり、今後の対策としては、人命尊重ということをまずもって打ち出すべきものだということが強くうたわれておるのでございまして、私どももまことにわが意を得たりと感じておるところでございます。
  169. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  170. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をつけて下さい。
  171. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 前回に引き続いて、時間があまりありませんけれども、少しお尋ねしたいと思うのですが、前回、この炭鉱労務者の実態を、某炭鉱の実態を申し上げたわけですが、前回の質問を蒸し返すわけじゃありませんが、私が申し上げましたああいう悲痛な現地の労務者の叫びが——それは一部でございますがね、私が申し上げたわけですが、局長さん方は事実ああいう実態を御存じであるか、あるいは御視察でもなさったか、そういう点をちょっとお尋ねをしておきます。
  172. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) この前の御指摘の点は、特に炭鉱の中で中小ないしは零細炭鉱におきますところの長時間労働その他労働条件の劣悪なる点についての御指摘があったわけでございます。この点につきましては、労働省としては、この前も申し上げましたように、できるだけ実態の把握につとめておるわけでございますが、私個人といたしましても、たとえば豊州炭鉱の事件がございましたあのような機会をとらえまして、現地に参りました際に、そのような中小、零細炭鉱におきますところの問題につきましては事情を聴取し、そのような現場についても、ごく一部ではございますけれども、そういった状況も拝見したというような経験がございます。しかしながら、先生御指摘のように、最末端におきますところのいろいろな問題につきましては、なお知らざる点も多々あるかということをおそれておるような次第でございまして、今後御叱正をいただきまして、さらに実態把握の完ぺきを期すると同時に、行政監督指導の点につきましても、できるだけの努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  173. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あなた方は労働基準監督署あたりのいわゆるまた監督指導をしていらっしゃると思うのですが、現地の基準監督署あたりの指導監督というようなものが適確に行なわれておるかどうかということを私は——それはこの前もそういう者を集めてよく指導をしておるというお話でございましたが、実際はそうじゃない。現にこういう炭鉱が放置されてそのままになっておるということに対して、私非常に遺憾に思います。御承知のとおり、エネルギー革命の甚大な影響を受けて産炭地は極度に窮迫しておるのです。全くこれは想像以上です。産炭地振興臨時措置法ですか、あるいはその他各種の施策は実施されておるけれども、その実効はまことに遅々たるものがあるのです。それに引きかえて、各地の炭鉱の閉廃山というものが急速に行なわれておる。そこで産炭地の衰微というものは、急降下で衰微していく一方である。民生の安定、労務者の不安というようなものは今日よりはなはだしきはない、私はこう言っても過言じゃないと思う。実際産炭地の模様を見るというと、私どもは現地の地元の者として見るに忍びないものがある。そういうときに、安定所とかあるいは労働基準監督署あるいは雇用促進事業団というようなものが、もう少し活発に積極的に離職者対策、労務者の対策ということに対して有効適切な仕事をしていただかなければならない。今回のこの法案の内容を見てみますというと、六百数名の人員増ということになっておりますが、ただ単に人員をふやすのみで実績があがるかどうか。今日非常に逼迫しておる離職者対策、その万全を期することができるかどうか。そういう点について順を追ってお尋ねしたいと思うのです。ただ単に人員をふやしたのみで、そして失業者の対策事務が万全に遂行されるかどうか。そういう点を基準局長さんあるいは安定局長さん方からひとつ御答弁願いたいと思います。
  174. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 炭鉱離職者対策につきましては、昨年の臨時措置法の改正法に基づきまして発生する離職者に対しましていろいろ対策をとっておるわけでございますが、まず離職者の再就職の促進、こういう観点から、県内それから県外を通じまして離職者の就職のあっせんをはかる、こういうことにいたしておるわけでございます。もちろん、その就職をあっせんするまでには相当の期間も必要とするわけでございますが、その期間につきましては就職促進手当を支給しながら職業の紹介を行ない、また、技能がないために就職が困難だ、こういう方に対しましては手当を支給しながら訓練所に入っていただきまして職業訓練を行ない、技能を身につけていただいて就職をしていただく。こういうことを考えておるわけでございます。さらに産炭地を離れまして他の地域に移住される方につきましては、移住資金なりその他の住宅の準備等をいたしまして、円滑に他の地域に移れるように、こういうことも考えておるわけでございまして、すべて離職者対策は当該年度の離職者数を考えまして、それを訓練にあるいは就職促進にということで計画を立てて、安定所の全力をあげまして就職のあっせんに努力をいたしております次第でございます。
  175. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 本年度の予算は、失業者就労人員が十九万人、三百九億四千万円ですか、予算を組んである、こういうことになっておるのですが、その中で炭鉱離職者とそれから炭鉱離職者も含んだ中高年齢者の数、はっきり的確な数がわからなければパーセンテージでもいいですが、どういうふうになっておりますか。
  176. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 御指摘のとおり、本年度の失業対策事業の対象人員といたしまして、十九万四千人、それから予算額で三百九億計上いたしておるわけでございますが、この中でこの事業の対象となります就労者の状況でございますが、大体年齢区分からいたしますと、三十歳未満が一・八%、それから三十歳から四十九歳までは四八%、それから五十歳以上は五二%程度になっております。それでこの中で、どれだけ炭鉱離職者が入っておるかという御質問でございますが、現在炭鉱離職者につきましては、先ほども申し上げましたような職業紹介を第一義といたしまして、なお就職できないものには炭鉱離職者のための緊急就労事業の制度をつくっております。今年度の予算の対象人員は六千四百人を計上しておりまして、これは全部炭鉱離職者でございますが、失対事業の対象となります人員の中で、炭鉱離職者の方もおられると思うのでございますが、その数ははっきりつかんでおりませんけれども、非常に少ないのではなかろうか、こういうように考えております。
  177. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 特別失対労務者は六千四百人とおっしゃったが、本年度の計画は八千人じゃないのですか。一万人というのを八千人に減らしたのじゃないですか。
  178. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 実は失業対策事業には、失業対策事業と特別失業対策事業とがございます。しかし、先ほど申し上げましたのは、たとえば石炭離職者が産炭地を離れまして他の地域に就職する。これはすぐ就職していただければ、これ以上のことはないのでございますが、なかなか求人がなくて現地にとどまらざるを得ない。そういう方に対しまして、失業対策事業よりも、あるいは特別失業対策事業とは別の、炭鉱離職者のための緊急就労対策事業を起こしまして、他の地域に就職するまでの間暫定的に就労していただく。こういうことで、特別失業対策事業とは別に炭鉱離職者緊急就労対策事業としまして六千四百人を対象としました予算を計上し、それに基づいて事業を実施しておるのでございます。
  179. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 その十九万人の中で、炭鉱離職者の数の的確な数がわからないというのはどういう意味ですか。
  180. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 実は三十四年に炭鉱離職者臨時措置法ができまして、特に炭鉱離職者に対しましては特別の失業対策を実施するということで、それ以来炭鉱離職者対策をやってきてておるわけでございますが、失業対策事業につきましては、昭和二十四年からずっとやっておるわけでございます。産炭地の失業対策事業の就労者の中には、もちろん炭鉱から離職されて失業対策事業に就労しておられる、こういう方は先ほども申し上げましたように、かなりある、地域によってはかなりあるというように考えておるのでございますけれども、特に失業対策事業の就労者の中で炭鉱からは幾らだ、あるいは駐留軍から幾ら、あるいは製造業からの離職者が幾らと、そういうような特別調査は現在のところいたしておりませんので、はっきりした数字をつかんでおらないのでございます。
  181. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それではどうも失業対策事業に、だから結局もぐりが多く入ってくるということになる。的確な数字をにぎらない、把握できないということは、どうも私はそういうとこは納付いかないのだが、それではもう一歩進めてちょっとお尋ねしたいのですが、これは三十七年度あるいは三十八年度でもいいが、離職者に対して安定所であっせんしたものの数、会社自体、事業主自体が就職あっせんしたもの、自己で就職したものあるいは未就職、そういう数を、それもわかりませんか。
  182. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 三十四年から三十八年度まで通算して申し上げますと、安定所で紹介いたしました総数は七万六百人でございます。このうち県内で再就職したものは四万五千五百人、それから他の県に就職された方が二万五千百人、合計七万六百人、こういうことでございます。それから、安定所のみならず会社が離職者の就職をあっせんされるのでございますが、その数が三万六千三百人でございます。それから、自分で就職先をさがしたというような方が三万三千四百人、それから、産炭地振興事業等に就職されておる方が二千九百人、合わせまして十四万二千五百人の方が何らかの形で就職をされておるわけでございます。その結果、それでもなおかつ就職してないで安定所に求職をされておられる方が三十九年の三月末で二万人、こういうことになっております。
  183. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 三十七年度、三十八年度に職業訓練所に入所して教育を受けた、指導を受けた、そして修業免状を持って社会に出たその数は。
  184. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま御質問の、炭鉱離職者で職業訓練所に三十四年度から三十七年度までに入所をいたしましたものが九千四百二十人でございます。修了をいたしましたものが、七千六百八十四人と七百三十九人の合計でございますが、八千四百二十三人でございます。そのうち就職をいたしましたものが八五・二%でございます。この八五・二%は訓練所修了後一カ月以内に就職をいたしました統計でございますので、実際数はこれを上回っておるわけでございますが、統計上一カ月間の統計が出ておりますので、その数は八五・二%の就職率というふうになっております。
  185. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 訓練所を修了して技術を修得して、そして再就職をされた。そうしまするというと、これは比較的私は年齢の高い、いわゆる中高年齢者に多いんじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうになっていますか。職業訓練を受けられた八千四百二十三人の三十四年から三十七年度までの平均年齢はどのくらいになっているのですか。
  186. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 炭鉱離職者の訓練所入所をいたしましたものの年齢別構成でございますが、ただいま平均年齢の御質問がございましたのですが、年齢の階層別が出ておりますので申し上げます。平均年齢も計算をすれば出てくると思いますが、ここには直接ございません。二十四歳以下が五・九%、二十五歳から三十四歳までが二八・六%、三十五歳から四十四歳までが三八・四%、四十五歳以上二七・一%、いわゆる中高年齢層と申します三十五歳以上のものが六五・六%という割合になっております。
  187. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 やはり中高年齢者がそのパーセンテージが多いわけですね。そうすると、賃金ですが、その賃金は、再就職であるけれどもやはりそれは初級賃金になっておりますか。——あるいはその初級賃金にプラス・アルファということで、待遇はどういう待遇になっておるか。そういう点もやはりよく押し合わせていただいているかどうか。
  188. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 昨年八月調査いたしました就職者の賃金について申し上げますと、たとえば東京都について申し上げますと、大体二万七千円ないし三万円が平均になっております。安定所別に申し上げますと、飯田橋では三万五百九十円、五反田では二万八千百六十円、渋谷では二万七千五百円、こういうのが再就職賃金の平均額になっております。
  189. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 この職業訓練を受けている期間中に対する生活の保障は、どの程度のめんどうを見てやるのですか。
  190. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 職業訓練所に入所しております期間は、失業保険の受給者でございますと、その受給額をそのまま継続して入所中受給できることになっております。それから、炭鉱離職者の就職促進手当を受けております者は、就職促進手当をそのまま継続して受けるということになっております。それから、保険も就職促進手当も受けられない者につきましては職業訓練手当といたしまして一万三千三百円の月額支給ということになっております。そのどれかに該当をして生活の保障を受けるということになっておる次第でございます。
  191. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 こうした再就職をした方々が実際に先方に行って就職をして、そして最初の契約と違う、待遇なんかも最初の話と違う、家族がたくさんおる、自分一人で行かなきゃならぬ、向こうには住宅はない、それで国元にも仕送りをしなければならぬ。結局、生活ができなくて、またもとの地に戻ってくる。そして第二会社あたりの組夫としてもぐり込んでいくというようなことがだいぶ行なわれているのですが、いまのお話ですというと、何も心配ないようなお話だが、実際現実とは違うのじゃないかと思うのですがね。再就職をした方々に対する賃金の改善、賃金体系の確立といいますか、あるいは退職制度というようなものをもう少し的確に、再就職をした人でも定年で退職する場合には、たとえ中高年齢者の中途採用者であっても最低の保障をするとか、生命保険制をつけるとか、そういうような生活の保障ということに万全の対策が立ててなくて、ただ職業訓練所で訓練をして、そうしてそれを送り出す。それで職業訓練は万事これ終われりというような私は感じがしないでもない。そういう点をひとつこれはだれですか、安定局長ですか、だれでもけっこうです。
  192. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 失業対策部長でございますが、再就職した離職者が就職後どのようになっているか。再就職をしてすぐ離職しては、その就職が意味のないものになりますので、再就職先の雇用条件等につきましては、安定所といたしまして最大の注意を払いまして、求職者の方々と職業指導官を中心にしましてよく相談して、納得していただいた上で再就職をはかっていく、こういう態勢のもとに努力をいたしておるのでありますが、その点法律改正後の状況を見ますと、炭鉱離職者で再就職した方で再び離職して炭鉱離職者の求職手帳を受けるという方は、就職者の一・五%程度でございます。そういう意味で、安定所といたしましては、できるだけそういう求人条件、求職条件の食い違いのないように、そうして、できるだけ安定した職場に就職していただくようにということで努力をいたしておる次第であります。
  193. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いろいろお尋ねすると、あなた方の御答弁はたいへん水も漏らさないようにおっしゃるのですが、事実は水ばかり漏っているのだから困っているのですが、実際はそういう職業訓練所というもの、あの訓練期間中の生活保障が十分でないから職業訓練所には入れない。それは失業保険をもらっていればそれ一本で、あとのものは全部それから差し引かれてしまう。結局一本だ。職業訓練法にはいろいろ手当がつくようになっているけれども、何か一つついたら、あとはもうだめだ。そういうことで、住宅なんかも、先ほど先般からのお話を聞くと、一万戸本年度は建てるとか言っておられた。いままで再就職——これは職業訓練のみならず、炭鉱離職者一般の場合、失業者の場合でいいんですが、県外就職なんかした場合に、住宅をいままで建設されて、その住宅に入って安定した生活をしておる、そういう数はどういうふうになっておりますか。
  194. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 三十九年三月末までに建設された戸数が一万二千四百五十六戸でございます。それで三十九年度の計画といたしまして、一万戸を計画いたしております。合わせまして、三十九年度末までに二万二千四百五十六戸と、こういう計画をいたしております。
  195. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それはわかっている。離職者がそれにどういう分布状態で入ったかということを聞いておる。
  196. 住榮作

    政府委員(住榮作君) これは離職者のための住宅でございますが、いま申し上げました一万二千四百五十六戸に対しまして、約七割は炭鉱離職者が入居されております。残りの三割が一般の中高年の離職者、こういうことでございます。
  197. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それでは本年、三十九年度は一万戸建設すると。どういう計画のもとに一万戸という数字が出たのか。予算でしぼられたのか、あるいは一万戸でいいということであなたたちが計算をされたのか。その算定基準を、一万戸でけっこうだと言われたのか。もし、一万戸でけっこうだということならば、どういう根拠のもとに一万戸建設ということにあなたたちはされたのか。あるいはもっと予算を請求したけれども削減されたと、労働大臣の政治的手腕がそこではっきりするから、その点をひとつ。
  198. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 本年度の炭鉱離職者対策を進めていきます場合に、住宅をどうして確保するか、それから確保すべき戸数はどのように考えるか、こういうお尋ねでございますが、私どものほうで、先ほど申し上げました一万戸のうち、五千戸、これを炭鉱離職者に充てる。そのほかに、炭鉱離職者を雇い入れます事業主の方が炭鉱離職者を雇い入れるにあたって住宅を整備すると、こういう場合に、住宅確保奨励金を事業主に支給いたしておりますが、その戸数が八千戸でございます。それからほかに、さらに雇用促進事業団のほうで離職者用の住宅に対しまして融資の制度をとっておりますが、これにつきましては、炭鉱離職者の分が七千戸と、合わせまして炭鉱離職者に対する住宅の手当といたしまして二万戸を予定いたしておるのでございますが、これは本年度の炭鉱離職者の計画に即応いたしまして、住宅のない率を私どもで推定いたしまして、これだけあれば炭鉱離職者対策としての住宅は十分である、こういう考え方で対策を立てておる次第でございます。
  199. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 本年度の、三十九年度の炭鉱離職者の総数はどれだけ見込んでいらっしゃるのですか。
  200. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 三十九年の末で一万九千九百、三十八年の全数といたしましては二万一千二百人でございます。
  201. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 三十九年度末が炭鉱離職者総数見込みが一万九千、三十八年度までで二万一千、計四万、間違いないですか。
  202. 住榮作

    政府委員(住榮作君) そのとおりでございます。
  203. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それに対して二万戸の離職者対策の住宅を建設する、こういうわけですね。
  204. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 全数といたしまして、御指摘の四万人が離職者の想定になるわけでございますが、今年度におきまして二万一千二百人の方々につきまして就職促進その他の対策を講じ、三十九年三月末の求職者が一万九千九百人、それから三十九年度の新規求職者といたしまして二万一千二百人、で、合計いたしまして四万一千百人、これは離職者の総数になるわけでございます。これに対しまして、安定所によって就職のあっせんをしようとする計画が一万九千人、それから、会社あっせん等による就職が二千六百五十人、それから産炭地振興事業団による就職が二千七百六十人、その他三千二百六十人と計算いたしまして、就職者の合計が二万七千人、三十九年度中の就職者の合計が二万七千人、それで離職者の合計が、先ほど申し上げましたように、四万一千百人でございますので、未就職のまま年度を越すと推定しております求職者が一万四千百人、こういう計画になっておるわけでございます。
  205. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 結局そうしますというと、あとの約一万五千人の未就職者に対しては、家の準備もない。結局これから先翌年度回しになっていくわけですね。
  206. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 結局、就職者の合計が二万七千でございますが、その場合に、県内で就職ないしは自営業等で開業されたり、あるいは会社あっせん、あるいは自己就職をされる方もおられるわけでございますが、要するに、就職者の合計二万七千人に対しまして、私どものほうの推定といたしまして、先ほど申し上げましたような手段によりまして、一万五千戸の住宅の手当をすれば、住宅としてはまあまあではなかろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  207. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それは全くまあまあであって、事実いままで先方に行って就職して、家がなくて帰ってきている者を、あなた方は何と見ておられるのですか。
  208. 住榮作

    政府委員(住榮作君) われわれはこの住宅計画を立てるにあたりまして、従来の就職者の住宅を必要とする率等を計算いたしまして、先ほど申し上げました数あれば、いままでの経験からいきまして、住宅としては足りるのではなかろうか、こういうように考えて対策を立てておる次第でございます。
  209. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いや、だからお尋ねしている。いままであなた方のお世話で再就職した者が、先方に家がなくて、単独で、単身で先方に赴任している。そうして仕送りもしなければならぬから、二重生活をしている。だから困って、また現地に帰ってきているようなものがたくさんあるが、そういうものをあなた方は何と見られるか。計算では、たいへんあなたの計算はいいが、現実問題をお尋ねしている。これを何と見ておられるかというのです。
  210. 住榮作

    政府委員(住榮作君) 従来離職者に対する住宅対策は、御指摘のように、必ずしも十分でなくて、そういう例がございましたことは事実でございます。そういう経験にかんがみまして、他地域で就職される方は、まず住宅がない。こういう前提で、先ほど申し上げましたように、二万戸の住宅を用意いたしまして、他の地域に就職される方につきましては、必ず住宅を世話をする、こういう体制をとっている次第でございます。
  211. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そうしますと、いままではそういうことがあったということを認められた。これからはそういうことはない。御承知のとおり、炭鉱離職者なんかは社宅があって、住宅にはいささかの心配もなかった。だから、まずこれは、申すまでもなく、衣食住と申しまして、住がこれは一番大事なので、家があれば、住宅があれば、たとえ妻子があっても、そうして賃金体制がきちんと確立しておれば、私は皆さん喜んで行かれる。再就職をされる場合に、ただ事務的に、これはどういう職能を持っている人だからどういう会社に世話しようというような簡単なことでやっていただかないで、賃金体系、それから生活の保障状態はどういうふうになっておるか。住宅はどうだ。そこまではっきりして世話していただくのがいわゆる職業安定業務であって、失業対策である。私はかように解釈しておるのですがね。その点どういうふうにお考えになりますか。
  212. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 住宅問題につきまして適切なる御意見を拝聴いたしまして、敬意を表する次第でございます。  実は一昨年炭鉱離職者対策につきまして、石炭合理化審議会において根本的な対策を立てられますまでは、わが国の職業安定行政におきましては、住宅問題に対してまでは実際上手が回りかねておったような実情なのでございます。そこで一昨年合理化問題が深刻になり、離職者問題につきまして炭労の切なる要請に基づいて政府といたしましても離職者対策を組織的に立てようということになりまして、職業紹介についてあらゆる努力を尽してみようじゃないかということになったのでございます。それについて考えられましたことは、まず第一に、いわゆる広域職業紹介の組織化ということでございます。すなわち、産炭地においては失業者がたくさんある。これをどうしても需要地に向けて移動紹介をしなければならない。職業安定機構もこれに即応するように組織の整備をいたし、また機能もこれに伴って充実をはかったのでございます。ところで、これらの職業紹介機構の新機能を通じまして遠隔の地に就職させる場合において、まず必要な事柄は、新しい需要地に適応する技能の習得という面でございます。したがいまして、これに対応いたしまするために、職業訓練施設についてもいままでにない大拡張をはかった次第なのでございます。  次に、移動労働に伴いまして住宅問題が考えられたのでございます。これにつきましては、従来から、政府といたしましては、住宅行政は建設省に一元化をいたしており、大蔵省におきましても、予算査定の立場から、なかなか他省の住宅建設を認めることには難色があったのでございますが、労働省といたしましては、離職者対策に対してどうしても住宅問題の解決を伴わなければならないということを痛感いたしておりまするので、この点を力説いたしまして、幸いに合理化審議会におきましては、三十七年度において五千戸、三十八年度において五千戸、こういうものを認められたわけなのでございます。で、こうした新たなる構想に基づきまして、約一年半の間に一万戸の住宅建設をいたしますると同時に、建設省で建設をいたしておりまするいわゆる庶民住宅と申しまするか、これにつきましても建設省の好意的計らいによりまして移転就職者に対してはある程度のワクを認めまして、優先的に割り当てをしてくれるということに相なりましたし、また、従来から行なっておりました住宅確保奨励金制度等の運用によりまして、住宅問題の解決につとめてまいったのでございます。  これらの住宅対策は、職業安定行政の上から非常に効果的のものであり、今日においては、ひとり炭鉱離職者ばかりでなく、一般職業安定行政の上において必須のものであるというふうに認識をいたしましたので、今年においては一躍倍加いたしまして、一万戸の予算を計上することができた次第なのでございます。もちろん理論的に申しまするというと、先生の御指摘のとおり、離職者の人員が幾ら、そのうち住宅を要するものは幾ら、だから今年度においては何戸住宅を建てる、こうした考え方基礎の上に立った戸数を決定するのが筋合いでございまするが、現実の離職者発生前におきまして、離職者の出たときの対策ということでございまするから、ある程度の住宅の数は、見込みによって決定するほかはないわけでございます。まあ、それも多多ますます弁ずるのでございまして、私どもはできるだけたくさんの住宅を労働省の支配下において建設したい、こう思っておったわけでございまして、むしろ余るくらい建ててみても、今日の日本の住宅事情から申しますというと、決して多過ぎたためにむだになるということはないわけでございまして、ことに不燃のコンクリート住宅でございまするから、必ずや何らかの役に立つと、こういうつもりでできるだけたくさん建てるという考えでやっておるような次第なのでございます。ただ、財源といたしておりまするのが、失業保険の経済でございまするので、その方面から数がおのずから制約されているというような事情でございます。今後も住宅の建設というものは職業安定行政の能率上必要でございまするので、できるだけ努力をいたしたいと考えております。
  213. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 住宅建設については、大臣の御答弁で了解しましたが、失業者の発生したときにやるので見込みであると、将来は多々ますます弁ずべしという御答弁で大いに意を強くいたしましたが、時間がありませんので、本日はこの程度にいたしてまた次回にお尋ねをしたいと思いますが、要するに問題は、職業訓練所の問題も、これは私はまだだいぶ問題があると思うんですが、中高齢者の再就職にあたって繰り返し申し上げるようですけれども、これからははっきり住宅があるかないか、賃金体系の確立、妻子を養っていく上において十分とはいかなくても最低の生活の保障ができるか、退職制度はどういうふうにその会社はなっておるか、事業所はなっておるか、そういう点をしさいに検討していただいて就職のお世話をしていただかなければ、せっかく就職をお世話していただいても、また現地へ舞い戻ってくると、そういうことがあったのでは、ますます私は社会情勢は混乱におちいってしまう、こういう考え方を私はしきりに持っておるわけであります。  時間がありませんので、次回に引き続きお尋ね申し上げるということにしまして、まだ十分でないのですが、きょうはこの程度で私の質問は打ち切りたいと思います。
  214. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はございませんか。——別に御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  では、これにて本日は散会いたします。    午後四時三十二分散会