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須藤五郎君
古池さん、私の姉に、
機関長の女房になっている姉が一人あったんですよ。
戦争前は
保険もかけました。それから
貯金もしました。ところが、
戦争後
——戦前十万円ほどの金があったわけですね。楽に
老後を暮らせるというので、安心しておったわけです。兄の船長が六十何歳まで船に乗って、そうしてこつこつためた金が十万円あった。ところが、
戦争が済んでしまったら、その十万円は何の
価値もなくなってしまったわけです。それで、非常に
生活に困って、私にいつも嘆いて話をするわけです。
この間、私は京都に参りまして、おもしろい話を聞いたんですよ。
蜷川府知事を訪問した。で、
蜷川さんのところに、この間
お寺からお墓の
掃除代二年間滞っているというので、千円
請求書が来たというんですね。それで
蜷川さんは、これはめんどくさいから十年分払っておけ
——一年五百円で十年間五千円。それを使いの者に持たしてやったというんです。そうしたら、その
お寺が言うには、未払いの二年分千円だけいただきましょう、
あとの四千円は受け取らぬ、こういうんですね。何で受け取らぬのだといったら、この
物価の
変動の激しいときに、十年後までもらったのではどうにもならぬじゃないか、だから二年分はいただきますけれ
ども、
あとの八年分はお返ししますといって返してよこしたという。この
池田内閣の
物価政策というもの、
インフレーション政策、これは
お寺の坊さんにも信用がないわけですよ。
これはおもしろい話じゃないかといって
蜷川知事が僕に話したので、これはおもしろいといって私は聞いていたのですが、
古池さん、いまおっしゃいましたけれ
ども、
物価指数は絶対下がらないですよ。
政府がいかに
努力しても、いまの高
物価政策——いわゆる
所得倍増政策を
池田さんがやめない限り、どうしても、これはやまないですよ。そのやまらないときに、今度百万円にして
保険金たくさんかけて、そうして死んだときはともかく
——それは得するかもしれませんよ。しかし、大体
満期で受け取る人が多いと思うんです、このごろは。それを受け取るときは、その金の
値打ちが下がってしまって何にもならぬ。そうして、いま百万円の
保険金かけて、そうしてその払い込んだ金は、やはり
財政投融資でずうっと
資本家のほうに流れてしまう。それで
資本金はふえ、どんどん太っていく。そうして金を貸した者が損をしていく。金を貸した者は、何のことはない、
自分の金で
自分の首をくくるようになって、
物価高を来たして、そうして
生活が困難になる、こういう
状態だと思うんです。ですから、それに対して何か
政府は
補償を
考えているかどうか。やはり
物価高になって
インフレーションになったときに、金の
値打ちが下がってしまったときに、それだけやはり
政府が
補償する義務があるんじゃないか、私はそういうふうに
考えるんですが、それに対して
古池さんどういうふうにお
考えですか。