運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-03-10 第46回国会 参議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十日(火曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————   委員異動 三月五日   辞任      補欠選任    坪山 徳弥君  小林 武治君    佐野  廣君  西郷吉之助君    栗原 祐幸君  上林 忠次君    鳥畠徳次郎君  井川 伊平君    藤原 道子君  鈴木  壽君    赤松 常子君  基  政七君 三月十日   辞任      補欠選任    上林 忠次君  田中 啓一君    小林 武治君  後藤 義隆君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     竹中 恒夫君    理事            西郷吉之幼君            西田 信一君            松本 賢一君    委員            井川 伊平君            後藤 義隆君            沢田 一精君            館  哲二君            田中 啓一君            松野 孝一君            占部 秀男君            鈴木  壽君            千葉千代世君            林  虎雄君            松澤 兼人君            辻  武寿君            基  政七君            市川 房枝君   国務大臣    国 務 大 臣 早川  崇君   政府委員    警察庁長官   江口 俊男君    警察庁長官官房    長       浜中 英二君   事務局側    常任委員会専門    員       鈴木  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○警察法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  初めに、理事補欠互選についておはかりいたします。  去る三月四日の委員異動に伴い、理事に欠員が生じましたので、この際その補欠互選を行ないたいと存じます。先例により、互選方法は省略いたしまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、さよう取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) 御異議ないと認めます。それでは委員長から西郷吉之助君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) 警察法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。御質疑の方は順次御発言願います。
  5. 鈴木壽

    鈴木壽君 今度の警察法の一部を改正する法律案人員の増に関連をしまして、すでに交通関係警官増員の一万名、さらに今度刑事警察官あるいは麻薬関係警官を含めたものが五千名、これの増員計画があるわけなんでございますが、その二つについて年度的にどういうふうに増員を進めていかれるのか。これをひとつまず、お聞きしておきたいと思います。
  6. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 交通警察官増員計画でございますが、これは三十八年の一月の一日に二千人——東京千四百、大阪六百、二千名が入校いたしました。それから三十八年の四月一日には三千名の入校、三十九年の一月一日には二千名、三十九年の四月の一日に三千名、こういう年度別計画でございます。  刑事警察官増員計画につきましては、三十九年度は、昭和四十年の一月の一日に千五百名入校、これは東京大阪と合わせて千四百名の刑事警察官麻薬の百名でございます。それから四十年の四月一日に残りの三千五百名の刑事警察官入校する予定計画を進めてございます。
  7. 鈴木壽

    鈴木壽君 いまお答えのありました刑事警察官の四十年一月一日入校の千五百人のうち、東京大阪刑事関係人員を千四百人ふやす。この内訳東京幾ら大阪幾らと、こういうふうにした場合にどういうふうになりますか。
  8. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現在の予定では東京が九百六十名、大阪が四百四十名でございます。
  9. 鈴木壽

    鈴木壽君 現在のところ、交通関係警察官並びに今度四十年の一月から入校する刑事関係警察官、これらを各都道府県にどのように振り分けられるかについての計画は、お持ちでございましょうね。もしございましたら、あとでひとつ何かプリントしたものでも出していただけますか。
  10. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 交通警察官につきましては、すでに都道府県別振り分けがもうできてございますので、後ほど資料をもって御説明申し上げたいと思っております。刑事警察官増員計画の各府県別振り分けは、来年の四月一日のことでございますので、目下事務的に検討いたしておる最中でございます。まだ決定いたしてございません。
  11. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ来年の一月からでございますので相当期間がありますから、最終決定を見るまでには至らない、こういうお話であります。それは趣旨はわかりますが、しかし五千名の増員計画ということになりますと、これを立てられるときに、すでに考えておかなければならないのじゃないですか。最終段階になって多少の動きは出てくるとしましても、五千名というのは、つかみでやったわけでもございませんでしょうし、そういう意味での、現在におけるいわば予定表といいますか、振り分け予定表というようなものもあっていいと思うのですが、その点はどうでしょう。
  12. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そういう意味の事務的な内案というものはできてございます。なお予算要求考え方といたしましても、暴力事犯が非常に多発する盛り場を管轄する警察署全国で三百五十署以上ある。あるいはこれに準ずる署が二百二十四署ある。こういうところの刑事警察官夜間勤務体制をそれぞれ二倍ないし三倍にしていこうということで、各府県別の積算がしてございます。そのほかに機動捜査隊の設置といたしまして、七大府県にそれぞれ必要な人員を配付いたすことになっておりますので、そういう意味の素案はできてございますので、後刻御説明申し上げたいと思います。
  13. 鈴木壽

    鈴木壽君 昨年の五月に警察庁でも刑事警察強化対策要綱というものをつくっておられますが、今お聞きし、またお答えのありました刑事関係警察官増員というのは、これに対応して、はっきり申し上げますと、刑事警察強化の上で必要な人員として増員をはかる、こういうことでございましょうか、その点どうでしょう。
  14. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) お説のとおりでございます。
  15. 鈴木壽

    鈴木壽君 今回のこの法の警察庁増員関係十人でございますが、これの何といいますか、たとえば刑事関係何名とか、あるいは公安関係何名とかいうように振り分けがあるのだろうと思いますが、これはどういうふうになっておりますか。
  16. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 資料の一番最後に別表がございます。それに記載してありますように、増員内訳は、刑事警察関係が二名、交通警察関係が五名、警備警察関係が三名でございます。
  17. 鈴木壽

    鈴木壽君 この備考のところにあるカッコ書きですね、「警察官数で各数字内数である。」と、こういうことなんですが、事務的な人もおるということなんですか、交通関係なんか。どうです。
  18. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 交通関係につきまして二名というのが警察官でございまして、あとの三名が一般事務職員でございます。もう少し詳しく申し上げますと、刑事警察関係では、課長補佐警視二名、それから交通警察関係では課長補佐警視一名と係長の警部一名、そのほかに今申し上げました一般職員といたしまして、主任一、係員二名ということでございます。警備警察関係では警部が二名と警部補が一名、こういう考え方でございまして、増員理由といたしましては、刑事局関係は殺人、放火とか、誘拐、通貨偽造等重要事件捜査の万全を期するために、重要事件についての専門的な知識を有する指導官を置きたいと、それから運転免許関係では、わが国の運転免許制度は、運転免許の効力が全国に及ぶのでございますが、免許試験とか行政処分等がばらばらになっておる、これをある程度全国的に斉一を期する必要がございますので、この問題に対処して指導体制充実強化をはかっていきたい。警備一課関係の充員につきましては、最近の右翼の動向に照らしまして、右翼担当充実強化をはかっていきたい、こういう理由でございます。
  19. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、今度の警察庁における人員の増の考え方は、交通取り締まり——交通対策、こういう面からいって、まあいろいろお考えになっており、さらにまた、それに対応できるだけの警官の数もふやすということで、一万名増員計画されておると、それから刑事警察強化するために、先ほど述べたように、強化対策要綱というものをつくっておられますが、そういう計画を強く進めていくために、警察増員が必要だというので、麻薬もちょっと入っておりますが、五千名の増を計画したと、こういうことに関連して警察庁自体でもそれらのことに対処するための人員増が必要になった。こういうふうに皆さんのほうで考えたというふうに理解してよろしうございますか。
  20. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) お説のとおりでございます。
  21. 鈴木壽

    鈴木壽君 ただそれに今度の警備警察関係のものが三名入っておりますが、これはまた最近特に暴力団対策とかいうようなことで、皆さんいろいろ心配もし、あるいはまた対策も講じておるようでありますが、それに対応するため——対応ということばは少し悪いかもしれませんが、そういうことのために本庁でも人員の増が必要だ、こういうことでございますか。
  22. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) さようでございます。
  23. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ本庁人員関係のことは一応それで了解しますが、ここで警官増員等の問題を考える際に、最近交通事案といいますか、いろいろな問題がたくさんある。これに対して対策を練らなきゃならぬ、講じなければならぬと、こういうこと、あるいは刑事問題でいろいろ刑事警察あり方というようなものについても、問題があるということが指摘されておるし、また警察自身でもそういう反省を持っておるのじゃないかと思うのですが、そういうことに対処して刑事警察強化しなければならぬ、こういうようなこと、その強化なり対策というような場合に出てくるのは、すぐその警察官増員ですね。交通関係では一万名、刑事関係では五千名、この相当な数の警官がここ二、三年の間にふえるわけです。人間をふやすことが、あなた方が考えておる交通関係の問題なりあるいは刑事警察強化というものと切り離すことのできない問題として、これは取り上げられる。それがはたして、その強化のそれになるかということは、ちょっと私は疑問なような感じをするのですがね。何かこう一つあれば、これは人間が足りないからだと、じゃ人間をふやせば一体どう的確にそういう事件なり違反なり、そういうものがなくなるか、どうかですね。どうもちょっと、すぐ人員増と結びつけるのはどうかと思うのですが、そういう点について少し長官あたりから、最近のいろいろな犯罪、いろいろな事案についての対策というものと人間問題——人間をふやさなきゃならぬ問題、こういうことについての考え方をお聞きしたいと思うのですがね。
  24. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) お答えいたします。  交通刑事警察と両方に分けてお答えいたしますが、交通警察官の一万名増員というのは、ざっくばらんに申し上げまして、現在の交通取り締まりというのは事後の処理といいますか、事件に立てるためのデスク・ワークといいますか、持って帰って書類をつくる、あとの公判の維持のためにいろいろな証拠をそろえるというような、そういう仕事に没頭しているというような状況で、どうしても街頭に出ての取り締まりというものが手が足りないという声が従来高かったわけでございます。人間がふえたら事故が減るかという事柄につきましては、ほかに要素がございますから、すぐこの結果があらわれるというふうに断言することははばかりますけれども、いままでの実験に照らしまして、ほかの仕事をさいてでも交通の一斉取り締まりというようなふうに街頭取り締まり員をふやしてやりました場合には、現実に減っているわけでございます。だから、その方策として、一つはやはり人員の絶対数が足りないから絶対数をふやして、今度ふやす分はうちで仕事をするものじゃなしに、現実街頭に立っての取り締まりをするものに回すという考え方一つと、それから、そうしましてもやはり事故の数というものは多うございまするので、その処理のしかたをなるだけ簡素にして、事務量を減らすという考え方二つに立って、交通警察としての交通対策を立てているわけです。東京都におきましては、墨田簡易裁判所交通専門の簡単なやり方をやっている。そういうようなのを全国的に相当広くする、あるいは切符制等の採用というものを考えていくとかいうことで、事件処理そのもの簡素化というものが一つ方法でありまするが、同時にまた、そうやりましても現在の事故を取り扱うので精一ぱいでございまするので、街頭に立たせるためには、純増の警察官がなければならぬという考え方のもとに、この二本建てで従来から考えてまいったのであります。しかしながら、交通対策ということになりますと、御承知のように道路の整備をはかるとか、あるいは一般順法精神の高揚をうながすとか、あるいはどうしても、それに違反した者に対しては、また後ほど御審議を願うと思いまするけれども道交法等の改正で、もう少し制裁を重くするとかというような、いろんな面が相まちまして、うまくいく方向に参るのじゃなかろうか、こう思います。その中で警察が受け持っておりまする部面におきましては、先ほど来申し上げるように、やはり街頭取り締まり員強化というものが、この際事務処理簡素化と並んで、二つの大きな柱であろう。こういうふうに考え増員をはかっている次第であります。  それから次に、刑事警察官増員、これは刑事警察強化という、去年発表いたしました対策と、必ずしも同時に考えたものではございません。これは、刑事警察強化というのは、かねがね考えてはおりましたけれども、昨年におきまする特殊な事件続発等、それに対処しまする刑事警察あり方について反省すべき点が多いということから、こうきめたのでありますが、増員につきましては、刑事警察官負担という面を前から考えておったわけであります。先ほど官房長も申し上げましたように、今回の刑事警察強化の重点は、夜間における捜査能力充実ということを、まず第一の目標にいたしております。これは公表をはばかっておりまするけれども、昼間における警察力と、夜間における警察力というものには非常な差がございます。しかし犯罪発生状況を見ますというと、半々なり、あるいは六、四なりということで、昼間と夜間との差はそうございません。犯罪捜査は常識的に言いまして、まず初動捜査というものが、うまくいくか、いかないかで検挙につながることが大部分でございまするので、夜間における事件処理のために、昼間ほどにはどうしてもいかないにしても、それに近い警察官刑事警察官を常時置くという体制にしたいというのが第一の目標でございます。  それからもう一つは、言わずもがなのことでございましょうが、従来の刑事警察というものは刑事警察官の特殊な、いわゆる名人かたぎと言いますか、いつ何どきでも飛び出す、また継続的に休みがとれようが、とれまいが、とにかく事件の解決まではやっていくという、まあ何といいますか、従来のことばで言いますと、名人かたぎ的なやり方に期待する面が非常に多かったわけでございます。最近におきまする状況を見ますというと、やはりそういうことだけに期待をしていては、いい刑事警察官も育たない、募集もできない、教養もできないということで、やはりほかの警察官並みとはいかなくても、負担を軽くすることによって、その方面に優秀な人材を——そういうことなら自分もそのほうをやってみよう、大いにがんばろうというような者を養成していきたいというような意味が、もう一つ副次的にございます。説明の足りない点があろうかと思いますが、交通警察及び刑事警察についての増員に関する根本的な、私たち考え方といいますか、そういうことを思い立ちました動機といいますか、その両者につきまして率直に申し上げた次第であります。
  25. 鈴木壽

    鈴木壽君 交通関係事案が非常にふえておるし、それを取り締まる警官の御労苦を非常に私どもありがたいと思い、敬意を表するものでありますが、警官が足りないから、そういう面での取り締まりも徹底を欠くという事態は、これは一般的に私はやっぱりあると思う。その限りにおいては増員も必要だろうと思うのですが、ただしかし、交通関係警官増員事故をなくすることの根本的な対策では私はないと思うのですね。取り締まりの面において、あるいは警官がおるから、むちゃな運転をしたりなんかするというようなこと、これは一応あるいは避けられるかもしれませんが、やはりこれはいまの交通事故警官のあるなしではないんですね、根本的には。これは長官お話の中にもありましたように、道路の問題なり、あるいはその他いろいろいまの車のふえたことから、特に私は運転者の問題、こういうのが根本的な問題だと思うのです。もちろん、そういう問題をすぐ警察自体責任にしてしまうという意味ではございませんけれども警察の面は別の面に対策が向けられていることは私十分わかるのですが、しかし、これくらい増員すれば事故がこういうふうに防げるのだという、簡単な答えは出てこない問題だと思っているんです。ですから私、交通関係の一万名増という問題は、どういう考え方で、どういう根拠からそれを積み上げて出てきた数字であるのか。これはいずれあとでお尋ねする機会もあるかもしれませんが、私自身はちょっとまだそういうことについての、それはあまり的確なものじゃないんじゃないだろうかと思っているのです、これは失礼な言い方でありますけれども。がしかし、それはそれとして、一方刑事関係警察官の問題にしても、五千名というものの増員をしなきゃならぬ、ぜひそれが必要だと、こういうことについて十分に、いろいろな地方の、あるいは町のそういう実態を見、いまの警察官の数、配置状況、いろいろな活動のしかた、こういうものからして積み上げていって、そしてこれをやれば、従来の欠陥とされておる、少なくとも刑事関係事件についての人的な何といいますか、備えといいますか、かまえといいますか、それはもう足りるのだと、こういう確信を持てる数なんですか、どうなんですか、これは。
  26. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 五千人の積み上げにつきましては、後刻どういう基準で考えたかということにつきましてはお答えするように官房長からお約束をしたようでありますが、私たち考え方として端的に申し上げますれば、五千人あれば少なくとも数的には飛躍的に刑事警察成績をあげ得るかどうか、その確信があるかということになりまするというと、私たち自身が案をつくりましたときには、もちろんもっと多い。だから、これで何とかやっていきたいというのが本心でございまするけれども、少なくとも先ほど来申し上げているような重要な場所、従来の統計に照らして発生件数がどれだけあるというようなところにおいては、昼間に近い——昼間ほどにはもちろんいきませんけれども、それに近い警察力を少なくとも刑事につきましては置きたいというのがねらいでございまして、その分については必ずしも十分ではもちろんございませんけれども、いままでよりはずっとよくなるという確信は持っている次第でございます。
  27. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ、いままでよりはよくなるというのは何だかまだ心配ですね、長官。まだ足りないのだと、自分たちはもっと人員の増を多くしてもらいたいということを考えておったのだが、まあ五千人にとめられたので、この範囲でやっていくよりしようがないのだ、その意味ではいままでよりはいいのだと、こういうことでちょっと心配ですね。もっとほんとうにあなたがたの立場で、これくらいなければならぬ、どうしてもなければならぬと、こういう線があるなら、やっぱりそういうものは通してもらって、そして国民安心を与える。最近、生活上のいろいろな問題がたくさんあるのでありますが、そういう問題からくる世人の不安というものをやっぱり除くようなことまで責任を持ってやってもらわなければならぬと思うのですね。さて五千人の増員にはなったが、これではまだうまくないというと、何か私ども心配ですね。これはどうです。
  28. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 私のことばが足らなかったのかもしれませんが、もっと非常に多くのものを理想として考えて、そのうちのこれぐらいだから少しぐらいしかよくならぬだろうというふうな意味で申し上げたのじゃなしに、五千人といえども相当の数でございます。だから私はいままで欠陥になっておった夜間捜査夜間初動捜査ということについては画期的に成績が上がるだろう。こう思いますけれども警察官だけをかりに昼間、夜間を問わず飛躍的な増員をやりましても、まあ犯罪の予防というものが一〇〇%——もちろん努力はいたしますけれども、結果において防遏できるという性質のものではないのでございまするから、これで国民に絶対的な御安心を願いたいというのは、それは申し上げることは簡単でございまするが、正直に言って、こういうことまでしてもらうのだから、われわれも一生懸命にやるし、いままでよりもずっとよくなるから皆さんも御安心になると同時に、御協力を願いたいというような意味合いのことでございまして、ここで絶対よろしゅうございますと言い切っても、それはいいんでございますが、すぐうそだということになるといけない、正直に申し上げます。
  29. 鈴木壽

    鈴木壽君 私も正直にものを言っておるのですがね。何もあなた方をしかるような気持ちではないのです。まあ、あなたのお話、わからないでもないし、また現実の問題としても、すでに予算上あるいは計画として、政府の方針としてこうきまった以上、いまおっしゃったようなことをやるしかないと思うのです。しかし、私はさっきのお話の中に、五千名でなしにもっと多くの人員の増を考えておった、しかし、五千名に切られてしまったんだからと、こういうお話がありましたものですから、ほんとうにあなたが国民のそれこそ生活を守り、生命身体財産のそういうものを守るという、そういうたてまえに立って、現在の警察官の数からしてはどうしてもだめだと。数からだけではない、いろんな問題があるでしょうけれども、数の上からではどうしてもだめなんだ。これくらいはぜひ必要なんだと、こういうことでお考えになったそういう数字だと思うのです。しかし、それが現実には五千名しかないと、こういうことですね。まあ私、心配だということを申し上げましたが、やはりそういう場合には、あなた方もっと強く治安を実際にあずかる立場から、国民を守るという立場から、やはりがんばるところはがんばらなければいけないのじゃないかということを私は端的に言っておきたいわけなんですね。いたずらに私は警官の数をふやすことをいいということでなく、さっき申し上げましたように、交通関係でもはたしてどうかなという、これは心配はあります。しかし、事いまの国民ほんとうに直接の身体生命財産を守る、生活を守るためにだったら、私はもっとあなた方の立場の主張が強くあってほしいと思うのですね。そういう気持ちがあるものですから、どうもこれは五千人で少しましなんだと言われると、何かうすら寒いような、あとからどんどんいろんな事件が起こってきたら、国民を不安におとしいれることが絶えないのじゃないだろうかと。とすれば、さっき言ったように心配です。そういう意味で聞いたんですがね。ですから私はやはり今回の刑事警察官——刑事関係警察官増員というものは、もちろん交通関係警察官増員も必要でしょうし、それも私どもの毎日の生活につながる問題ですが、特に私は刑事関係のこういう問題というものは、毎日の私ども生活、それを守れるか守り切れないかという、そういうことにかかっていると思うのですね。ですから、私はいまこの問題は非常に大事な問題だと思うので、そういうことを申し上げておるわけなんですね。そこでその問題、完全じゃないですけれども、しかし、最大限の努力をし、国民の不安をなくすようにやっていくと、こういうことでございますから、よろしゅうございますが、ひとつ刑事警察強化対策について、私あなた方のほうでつくったプリントを持っておりますが、この機会に考え方、それだけをひとつこの席であらためて御発表いただきたいと思うのですが。
  30. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 刑事警察の刷新強化ということにつきましては、来年度の予算要求の際におきましても、一番重要な柱といたしまして強く要求してまいった次第でございます。ただいま御指摘のように、単に増員だけの問題でなくして、やはり予算の上から考えてみますと、増員のほかに刑事警察の機動化ということから捜査用車の四百七十台、あるいはまたモーターバイクを五カ年計画でそれぞれの刑事に持たしていくと、これが第一年度四百十六台、さらにまた刑事の個人装備といたしまして、携帯用無線機とか活動用無線機、携帯用受令機とか、そういったような無線機の購入、改修、あるいは刑事警察官の宿舎の問題がやはり大事な問題でございますので、待機宿舎のうち三分の二はこれを全部刑事警察官に当てようと、こういうことで緊急整備の予算を要求いたした次第でございます。また、活動経費につきましても、昨年と比べましてかなりの増額を見たような次第でございます。  そのほか、捜査装備の充実とか、電子計算組織の急速整備、刑事警察官の教養の徹底、科学警察研究の推進、こういうような項目を総合いたしまして、従来刑事警察には、いま申し上げました費目に盛られました予算が国費、補助金あわせまして二十一億ございましたが、今回の予算では三十二億と、約十一億四千万近くの増を見ておるわけでございます。  それからなお、刑事警察官の処遇の徹底、処遇の改善という問題がございますが、これにつきましても地方財政計画上の措置といたしまして、ある程度の前進を見ることができたわけでございます。まず給与面におきましては、三十八年度は特殊勤務手当の増類、大体従来の倍増という計画を、財政計画の上に計上いたすことができたわけでございますが、三十九年度の地方財政計画上の措置といたしましては、刑事を中心といたしまして、私服勤務の捜査係の超過勤務手当を三%増、警察官は従来九%でございましたが、一線の刑事等に三%の増、こういう措置をとることといたしたわけでございます。  そのほか、府県自体におきましても、自主的にそれぞれ中央措置と相まって努力中でございます。  また要綱にございます刑事警察官の教養というところに、上級幹部の指揮能力の向上とか、あるいは中級幹部の教養の徹底とか、初任刑事警察官の教養の徹底、学校教養における刑事教養の刷新とかいう項目を掲げてございますが、従来そういう点につきまして非常におくれておりましたが、今回管区学校に新しく刑事課程を創設いたしまして、捜査活動に必要な基本技術と、特に聞き込みとか取り調べ、尾行、張り込み、あるいは鑑識、通信、捜査装備等の取り扱い技術とか、こういう実習演練を中心とした教養を行なうことといたしております。また現任の刑事クラスに対しましても、いまのような教養のほかに、さらに応用技術を兼ねまして、実際の捜査に重点を置きまして、実例演習的な方法を取り入れる予定でございます。  また昇任の問題でございますが、これも刑事の士気に非常に関連のある問題でございますが、現在正規の競争試験によるものと、特別昇任というような二通りの方法が講ぜられておるわけでございます。正規の昇任につきましては、これも従来どおりの試験のやり方をいろいろと府県で検討を加えまして、科目にも刑事にウエートを置くというような措置をとっておるわけでございまして、最近の合格率もきわめて高い状態になりつつあるわけでございます。なお、昇任につきましては、全体の三〇%ぐらいが特別昇任という形で、いわゆる従来の筆記試験を抜いて特別の昇任をする、選考昇任するというようなやり方を進めてございますが、特に、刑事のように何年も第一線で働いておりますような、そういう専門的な能力なり技能を持っておるものにつきましては、この特別昇任のワクを広げることによりまして、刑事の士気の刷新をはかっておるわけでございます。特別昇任の刑事の割合も非常に高い比率になっておるわけでございます。さっき申し上げました、管区学校の刑事課程が九月から開設されることになっておりますが、こういうような課程を卒業いたしました者、これは巡査部長の試験の合格者とか、あるいはこれに準ずる能力とか適性がある者で選抜されました者につきましては、終了と同時に昇任試験合格者とみなすというような特別の措置も将来考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  以上、刑事警察強化対策要綱につきまして、教養とか、処遇改善、装備予算増員、こういうものを総合いたしまして、現段階におきまして着々努力をいたしておる最中でございます。
  31. 鈴木壽

    鈴木壽君 実は、私がお聞きしたかったのは、いまあなたからお答えになったことの前に、それ以前の問題として刑事警察強化対策そのものの考え方を、私は実は最初にお聞きしたかったんです。それに伴うあなた方のとられた新年度のいろいろな装備の問題なり、あるいはいろいろな刑事警察官の処遇の問題なり、それらをいまお話しになったわけなんですけれども、いま言ったように、その前に私は刑事警察強化対策そのものの考え方を実はお聞きしたかったんです。さっきも言ったように、私もプリントを持っておりますが、従来の警察あり方、こういうものの反省から、さまざまな最近出ておる事件、そういうものに対処して、警察がとられた——そういういろいろなことの反省から、こういう強化対策というものが生まれたと思うんですが、それについて、私はこの考え方を、この機会にもうちょっと警察庁長官あたりから聞きたい、こういうのでございます。私がお聞きしたいということ、話しておることは、わかりませんか。
  32. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) お気持ちはわかります。お答えします。ただいま鈴木委員からお話のありました点については、お気持ちは十分わかります。また、私たちもこの対策要綱をつくりまする際の気持ちとしては、とにかくいろいろな失敗をしたのだから、この際その結果がどこから生じたかということで、いろいろ論議をしまして、具体的なこともいろいろ出てまいりましたけれども対策として抽象化しますというと、このプリントに書いてあるようなものに落ち着いたというのが結論でございます。要するに犯罪の態様というものと、刑事警察あり方というか、能力というものがマッチしていない。いわゆる先ほど申し上げましたように、従来の刑事警察というものは、たんのうな刑事の従来の経験というか、自分の経験の積み上げによる職人かたぎ的な解決の方法というものを根幹としてやってきておった。ところが犯罪のほうは、最も凶悪な方法による犯罪というものが、広域的に、しかもスピード化されて行なわれている。捜査のほうは旧態依然としていままでのやり方というものを中心にやっているというのが——抽象的に申し上げればその食い違いがいろいろな犯罪の検挙が失敗に終わっている原因であるということは、私たちの分析というか、一致した意見になったわけであります。それではそれをどういうふうにして、そのギャップを埋めればいいかというと、二つしかない。警察がここまでしか進んでいないのだから、犯罪のほうも従来のようなやり方でやってくれと言ってみたところで、これは相手のことでございますから動かせない。そうすると、私たちやり方自身をその犯罪に適応したようなやり方に変えていく以外はないということで、一口に申せば科学的な捜査というものを根幹としてやっていくべき時期に来ている——来ているというよりも、すでにもうおそいぐらいにそうなっているということから、第一に警察官の教養とか、あるいは装備とかいう問題が出てきたわけでございます。ただ、やれやれという、そういうことだけでは済まぬものですから、それに付随して処遇の改善もしてやろう。処遇改善の一番いいのは、ただいま申し上げたような、手っとり早いのは浜中官房長から申し上げたようなことでございますけれども、先ほど述べた増員というようなことも、実質的には非常な処遇改善の根本的な問題になるわけであります。あくまでも刑事警察強化するためには、その処遇改善、増員というものが先であって、この技術的な改良というものがあとになるという考え方ではもちろんございません。このあとに申し上げた分が先にまいるものであって、それに付随して処遇改善、あるいは昇任というような問題が付随して起こってくる、こういう順序でございます。まあ言い方が抽象的でおわかりにくい、あるいは御了解しにくいかと思いますけれども、とにかく犯罪の趨勢と刑事警察の進歩の度合いがマッチしていないというところが、最近いろいろな事件に失敗している根本的な原因であるから、そのギャップをいかにして埋めていくかという検討をするというか、検討というよりも、その技術を科学的に習得せしめるということに、刑事警察強化の根本的な重点を置いているということが、一口に言えばお答えになると思います。
  33. 鈴木壽

    鈴木壽君 刑事警察強化対策を立てられましたのに、いまお話しのように、それまでにあったいろいろな事件、それに伴って起こったいわば不手ぎわと言っては少し酷になるかもしれませんが、そういうようなことですね、そういうものの反省から生まれたことだと思います。ですから今度こういう対策を立て、さらに必要な人員なりあるいは装備なり、あるいは人間の教育なり、あるいは捜査技術そのもの、そういうものをひっくるめて、いわば刑事警察体制——私いま言ったようなものを含めて申し上げますが、そういう体制を整備するということが、あなた方の当面の一番大きな問題だと思いますね。それによって三十九年度なり四十年度なりの予算の中にいろいろな要求が盛られておったりしておると、こういうふうに思うのです。したがって、私はこれによってさっきも触れたように、少なくとも国民安心を与える、そういうものでなければならぬと思うわけです。これはいま要綱をつくったから、あるいは人員の五千名増がきまったから、車がこういうふうにふえるからということで、あすからすぐ安心できるというものじゃございませんが、少なくともこういう対策を立て、対策に沿うたいろいろなことをやって、さっきも申し上げたように刑事警察体制というものを整備していくということによって、あなた方も自信が持て、さらにまた、国民安心できるというものを私は期待したい。そういうことについて総合的にあなた方は、やっぱり一つの大きな自信を持っておられると思うのです、その点はどうですか。
  34. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) もちろん、ただいまおっしゃったような考え方で着々これを実施しておりまするから、日ならずして国民に御安心を願えるような状態になる、こういうふうに思っております。
  35. 鈴木壽

    鈴木壽君 いままで国民は、警察に対してこういう問題について十分な安心感を持ち、信頼をしておらないというのが、私、偽らざる気持ちだと思う。特に最近出てきた——おととし、去年、いろいろな問題が出ております。そういう問題もいまだ解決をしない問題がありますね。世人の関心を深め、いわば耳目をそばだたせたという、そういう事件であっても、いまだに解決しないということから、極端に言えば一つの不信感というものも私は持っているのじゃないかと思うのであります。そういう事態でありますから、私は単に文章の上だけの強化対策とか、あるいは人員増とか、あるいは何といいますか、いろいろな設備、器材の点において近代化するのだということだけでは、私はすぐには国民の不安というものはぬぐい去られないんじゃないだろうか。私自身心配です。いままで起こっておる、たとえば直接これは人間の命とか何かに関係しない問題ですけれども、たとえばにせ札事件がいまだどういうふうになっておるのか、吉展ちゃん事件が一体どうなっておるのか、狭山の事件は何とかこれは解決したようでありますが、帝国ホテルにおける外人の殺害事件は一体どうなったのか、いろいろ問題がありますね。ですからそういう問題があって、警察は一体何しているのかという気持ちが、これは隠すことのできない気持ちとして私は国民のみんなにあると思うのですね。ですから、そういう際であるだけに繰り返して申し上げますが、あなた方の立てる対策なり、それに伴ってのいろいろな具体的な措置なりというものが、やっぱりそういう国民の期待を裏切らないような、そういうことで進められていかなければならないし、また、そういうあなた方の自信と確信を持てるようなものであってほしいと私は思うのです。いま私あげた二、三の未解決の問題がその後どうなっておるのです。もし、この席で差しつかえなかったらお聞きしてみたいと思うのですがね。
  36. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) にせ札事件につきましても、あるいは吉展ちゃん事件、そういうケースにつきましても現在御指摘のように事件が解決を見ておりません。警察といたしましては、いろいろな情報もなお現在入っておる段階でございますので、ぜがひでも事案を解決いたしたいということで、継続的に捜査を続行しておる最中でございます。まだここで、こういうふうに進展しておるというような形で御説明する段階に至っておりませんことは、まことに遺憾に存じております。
  37. 鈴木壽

    鈴木壽君 私はいまさら、さっき申し上げたように、私も不満は持っておると言ったけれども、それをあなた方にぶつけて、どうのこうの責める気持は実はないのです。しかし繰り返して申し上げますように、やっぱり私は警察あり方、根本の問題について、ちょうど大臣も来られておりますが、公安委員長も来られておりますが、警察あり方自体について、私は国民の望むような、そういう考え方なり体制なりというものが、いままでどうもとられてこなかったんじゃないか。その点において不十分だったのではないかということさえ、私は考えておるのです。もっとほんとう国民生活を守り、生命財産を守るという、こういうことで、いわゆる国民生活を守るということが警察あり方の第一義だと思うのですね。それに徹してやってこられたら、私は事件一つ二つが迷宮入りになったとか、こげつきになったとかいうことで、私は問題をどうのこうの言うつもりはありませんけれども、もっと刑事警察あり方というものは変わってきておらなければならなかったのではないだろうか。こういうふうな私見方をしておるのです。ですから今度刑事警察あり方についていろいろな反省なり、そういうものからして強化対策を立てていくということに対して私は大きく期待をしておるのです、実は。単にそれが人員とか装備とかいうことでなしに、私は考え方をそういうところに、警察あり方というものについての重点が、そういうところにいったのだなという一つの期待を持ちながら、このあなた方のそれを私はいま言ったように期待をしておるのですがね。ですから私そういう意味で、さっきから考え方としては、そういう考え方のもとにいろいろお尋ねもしておりますが、少し抽象的なことになってきていると思うのですが、警察あり方、さらにあり方ほんとうのものになるように、いろいろな体制を整備していくということが基本的なことでなければならぬと思うし、そういう点から、実は人員の問題なり、そういう問題を私は問題にしておるわけなんです。で大臣あれですか、大臣というより、きょうの場合は国家公安委員長としてでしょうが、私いま刑事警察強化対策の問題で、それと新年度からとられようとしておるいろいろな措置、そういうものから、あなた方の刑事警察についての考え方刑事警察あり方、こういうことをひとついま聞いておるところなんですが、どうです、ひとつここで本気になってやはり刑事警察あり方を本来のものにし、警察あり方を本来のものにするために、大臣いろいろお考えになっておられることがあると思いますから、その点について、ひとつ考え方をお聞きしておきたいと思うのですが。
  38. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 「刑事警察強化対策要綱」の具体的なことにつきましては、事務当局から御説明があったと思いますので、私はより根本的な問題につきまして申し述べたいと思いますが、結局この警察官の、私は責任感の強度だと思います。したがって、警察官の士気が鈍る、どうでもいいんだというような気持になってはたいへんでございまして、終戦直後、警察官の精神的な士気といいますか、責任感といいますか、かなり混乱した時代がございました。なぜならば、戦争前のように、戸口調査もできない、警職法による予防的な拘禁もできない。しかも国民のおまわりさんに対する信頼感も、尊敬もなかったわけであります。最近になりまして、私はそういう面で非常に——国家公安委員長になりまして、第一線の警察官諸君と親しく接触しているんですが、非常によくなったことは私は認めておるわけであります。十分ではございません。同時に、やはり私は処遇の改善をやらなければならぬと思いまして、この刑事警察その他で、犯罪捜査で命を落としたり、重傷を負った人に対しましては、二年間やっておりませんでした特別ほう賞の実施もいたしました。それから処遇の面では、私は先般東京都下を見まして、警察官の住宅というものはひどいものです。大体、平均一人二畳敷きくらいの状態で、危険な仕事に携わっておる。これではいかぬと考えまして、従来の警官の住宅を三倍に本年度の予算では増額を実現することになりました。また、勤務時間は平均して一週六十二時間ですが、一般公務員は四十四時間であります。これに対する超過勤務手当は九%で抑えられておるわけです。本来ならば三〇%もらわなきゃならないんです。こういった面でも、今回の地方財政計画では一二%まで一挙に超勤手当を引き上げまして、外勤に対しましては宿泊手当を出す。十分ではありませんが、そういった処遇をもあわせやりながら、大いにやってくれ、責任感を持ってやってくれというような方向に、国家公安委員長といたしましては、大いに並び行なうといいますか、責任をとらすとともに処遇も見ていくと、こういう方向でせっかく努力をいたしておるわけでございます。  なお、従来の刑事は昇進の面でいろいろ不遇でございました。そういった面につきましては、この要綱による改善をいたし、また、犯罪者は自動車で逃げるけれども自転者で行かなければならぬというような、あるいはバスで行かなければならぬ、そういったいろいろな装備の面、これも十分考えていきたい。しかしながら、同時に、何と言っても警官人員が不足でございます。諸外国では五百人に一人というのが、大体の欧米の先進帝国の警察の数でございます。日本は六百七十人に一人というような実情でございまして、そういう面から、交通警察とともに刑事警察も五千人増員をして、過重な負担を解消してあげたい。かく考えまして、今回の予算におきましては主として地方財政の面でございますけれども、五千人の増員ということを実現することになったわけでございます。御指摘のように、凶悪犯罪である吉展ちゃん事件その他がつかまらないのは遺憾でございますが、一生懸命現在引き続きやっておるわけでございます。その後の凶悪犯罪の検挙率は、非常に責任感を感じまして非常にいい検挙率をあげているように聞いておるわけであります。今後そういった面で一そうの士気を高め、責任感を高め、同時に処遇も改善していく。こういう二本立てで指導してまいりたい。かように思っておるわけでございます。
  39. 鈴木壽

    鈴木壽君 国家公安委員長警察の士気を高め、責任感を強くしていって、さらにまた一方、処遇の改善あるいは装備の面におけるそういう充実によってやっていきたいと、こういうふうで、それはそれなりに私はけっこうだと思うのです。どうです、これでやっていって、いまの計画でやっていって国家公安委員長としていわゆる国民の不安をなくし、あるいはまた、あなた方も自信をもって安心をせいというふうに言い切れますか。どうですか。
  40. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 率直に申しまして、言い切れるかといいますと、なかなかむずかしい問題でございますが、やはり若干の立法的な裏づけも私は必要ではなかろうか。なぜなれば、現在国会に政府として提案いたしておりまする暴力処罰法というのは、それを裏づけしようというのでありますが、特に暴力団犯罪のときに、いわゆる単純殺人、単純傷害、単純恐喝、そういう単純暴力傷害的な犯罪に対する判決があまりにも軽過ぎるわけであります。人を殺しても単純殺人では平均七年の懲役で、三年ぐらいで出てくるわけであります。傷害事件をとりますと、せいぜい体刑になるのが三%、暴行はほとんど体刑にならんでしょう。で、イギリスあたりに比べますと——単純殺人であろうとイギリスでは刑罰が非常に重くて、暴力団の殺人でも死刑または無期というのがほとんどであります。したがって、そういったいわゆる悪人の人権を尊重するあまり、被害者である善良なる人権が侵されて、お礼参りをおそれあるいは殺され損だ、警察にうっかり脅迫されたものを持っていっても、あとでひどい目にあうという社会風潮は、やはり立法面でそういう常習暴力、ピストルやその他を持った悪質な暴力、殺人、傷害というものに対しましては、やはり妥当な刑罰の強化をして、権利保釈というものが簡単にできないようにするという裏づけがなければ、いかに警官がこれを検挙し逮捕いたしましても、ハエを追うようなことでなかなか暴力団というものは減らないで、ふえてくる。ここに問題があるわけであります。しかし警察当局としてはそういった立法が現在成立しておりませんので提案中であります。それはそれとして、新聞その他でも御承知のように本年度は交通事故の防止と組織暴力といいますか、いわゆる暴力団犯罪の約半数近くを占めておる職業暴力団というものの根絶に警視庁以下本気になってといいますか、真剣に現在取り組んでおるような姿でありまして、私はこれは二年、三年と粘り強く徹底的にやるということで、国家公安委員会としても警察当局を大いに激励をして成果を期待しておる実情であるのであります。何ぶんにも十分かと言えば私は不十分と言わざるを得ないです。ベストを尽くしておるということははっきり言えるのではなかろうか、かように存じておるわけであります。     —————————————
  41. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) この際委員異動について報告いたします。  三月十一日付、上林忠次辞任田中啓一君選任、小林武治辞任後藤義隆君選任、以上であります。     —————————————
  42. 鈴木壽

    鈴木壽君 いま国家公安委員長から法的な裏打ちといいますか、裏づけがないと完全にはいかぬというお話がございました。もちろんそういう面もあるかもしれません。しかし私いまお聞きしておりますことは、あなた方が立てられましたいわゆる刑事警察強化対策というようなもの、こういうものによって人員の問題なり装備の問題なり、あるいは警察官の処遇の問題等々を含んだいわゆる刑事警察体制というものを整備していくこと、これをいま考えていると思うのですが、それによって私は国民安心を与えるようなものであってほしい。そういう意味で、あなた方はこれは一つのやはり——少なくとも現在の時点において、これでいいんだということでしょうから、そういう意味において、あなた方は自信があるかと、こういうことを私は聞いているのです。暴力団の問題をあなたはおっしゃっていますが、それは確かに暴力なり単純殺人なり暴行なりというものを取り締まることも必要ですし、あるいは刑をもっと重くするということも必要でしょう。しかし暴力団の問題はああいういわゆる単純な殺人とか傷害とか、そういう問題でなくして、もっと根本にまでメスを入れないと、これはいわゆる対策としては不十分なものだと思うのです。一体いまの暴力団の組織、その組織の背後にあるもの、一体どうなのか、どういうことをお考えになっておるのか。ああいうものを暴力団として存在せしめているものは一体何か、こういうことまでさかのぼってやらないことには、暴力団の対策ということなんか、これはもう表面のそれだけをとらえることであっては解決しない問題だと私は思う。まあ、それはそれとして、いま私がお聞きしておりますことは、あなた方が考えておる今後の対策なり、対策に伴って打ち出した方針に沿って、いろいろな具体的な措置が予算的にも講じられておるのですが、そういうことで国民諸君安心をせいというような自信をお持ちなのかどうか、こういうことなんです。妙な抽象的なことを聞くようでありますけれども、そういうことでないと、国民のどうするのかという、そういう気持を私はぬぐい去ることはできないと思うのです。まあまあ、ないよりはましだから、せいぜい努力をしていくという程度であるのか。こういうことを進めることによって、少なくとも、当面は国民諸君に安心してもらえるのだ、こういうことなのか、どうです、その点は。
  43. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) この要綱並びに予算面で五千人増員ということによりまして、少なくとも刑事部門につきましては、現在よりも飛躍的に刑事部門が充実できるものと確信しておることは、もちろんでございます。したがって、これによって国民安心感を与えることができると確信を持っておるわけでございます。ただ、ここにひとつ御理解いただきたいのは、警察はあくまで起こった事件について迅速的確に犯人を逮捕するというところまでが限界で、そして予防するというところまでが限界で、人間の意思、犯罪を犯す者の意思までは取り締まり当局は力が及ばないわけでありまして、そういった面では、政治全体の問題として、誘拐とか、あるいは強盗とか、殺人とか、強姦とかいうような意思を持つ国民が少なくなるようなことについては、政治全般として考えていかなければならない。警察としては、そういう犯意を持った者を未然に防ぎ、起こったものは、これは一〇〇%犯人を逮捕するという面におきましては、御指摘のように、この要綱その他を完全に実施することによって、飛躍的に増強ができると確信をいたしておる、こういう意味であります。
  44. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなたは警察官の士気を高め、それから責任感をもっと強くしてもらうことがまず第一だ、こういうふうにおっしゃっております。確かにそのとおりだと思うのですが、私は警察官の士気、あるいは責任感を取り上げる前に、さっきもちょっとあなたのおらないところでも触れたと思いますが、いままでの警察あり方、そういうことに対する現場の一人々々の警察官自身の問題と同時に、さらに政府として、あるいは警察の上層部として、あるいは国家公安委員会等において、やはり考え方が少し明確にされておらなかったというところに、現在のようなことになってきておると思う。という意味をもっと申し上げますと、あくまでも警察任務はあなたがおっしゃるように、一人々々の国民の意思を左右するというようなことは、これはとてもできることでなし、ただ、犯罪が起こらないように予防的なこと——さらに起こった犯罪に対して的確に処置される、こういうことなんです。しかも、それはあくまでもわれわれ国民の一人々々の生活を守っていくのだ、守ることなんだ。生命財産を守ることなんだということ以外に私はないと思う。これ以外にないというと、少し言い過ぎになるかもしれませんが、それが中心だと思う。ところが、従来のそういう警察のいろいろな動き、やってきたことを見ますと、私はそこに焦点を合わせて、体制の整備なり、強化なりということが行なわれてきておらなかったと思う。その結果が、もうここ二、三年前からいろいろ指摘されるようなこと、あるいは問題が起こって、反省されるようなことが出てきている。ですから私は、そういう問題をはっきりさせることが、とりもなおさず、そういう指導者といいますか、上層部といいますか、あるいは政治の根本においてそういうふうにはっきりさせることができれば、警官の人たち責任というようなこと、こういうことは自然と出てくる問題だと思うのです。もちろん、なまけるとか、何とかと言われちゃ、これはいろいろまたあるかもしれませんが、とにかく自分たちの任務というものをはっきり自覚せざるを得ない、警察全体の考え方体制あり方、こういうことになってくると、これは当然個々の現場の警官責任感がどうの、やれ士気がどうのということを、あまり私はあげなくともいいことなんだと思う。むしろそういうことを言うのは、現場の警官諸君に対しては酷だと思うのです。そういう点で、私は何べんも申し上げますが、去年の刑事警察強化対策というものは、警察自体あり方、使命というものの一つの明確な自覚がそこに出てきているんじゃないか、こういうふうに私は期待をしておるところなんです。ぜひそういうふうになってほしいし、それに徹してやってもらいたい。少ない人員の中にあっても、私はそういうふうに方向が、あるいは使命がはっきり自覚された場合には、不十分な人員なり装備の中でも私はやり方がいろいろあると思うのです。そういうことの気持ちから、特に公安委員長として、いまの立てた対策なり、あるいは対策に伴って今後いろいろ出てくる施策なんというものが、あなた方の自信の持てるようなものであってほしい。それを私は国民に、よしこれでやるのだ、安心せいというようなところまでいくべきものであるというふうに考えておるから、どうだ、そういうふうに言うだけの自信があるのか、ないのかということを聞いておるわけなんです。何か予算面なり、いままでの重点の入れ方というものは、あるいはちょっと偏した見方かもしれませんが、公安関係なり、いわゆる警備関係等に非常に大きなウエートが行っておったんじゃないかというふうな感じがしますが、公安委員長としてはどうです、その点は。
  45. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 公安関係人員比率にいたしましても、金額にいたしましても、そういうことはございません。さらにここ一、二年は特に警備関係人員増員をいたしておりませんし、交通刑事警察に主力をそそぎまして、人員の面におきましても、装備の面におきましても、いわゆる庶民の人権を守る、平和を守るという面に重点を指向して、この二年間は人員も装備も充実している、これが実態でございます。御指摘のように公安のみを重視して、公安優位という考えは現在ございません。
  46. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあこれは、あるいは私の見方が偏しているかもしれませんが、私は従来は、いまとは言わぬ、ここ一、二年は、公安委員長のおっしゃるように、だんだん考え方が私は変わってきているというか、少なくとも刑事関係なり、あるいは交通関係、特にいわゆる国民のお互いの生活を守るというようなところに重点が指向されてきているように感じますけれども、少なくともそれ以前は、私はいまいったような感じをしておったのですね。まあそこで、それはお互いの見方ですから、ここでどうのこうのと、これ以上やらなくてもいいと思いますが、私はやっぱり警察あり方というものを申し上げ、また委員長がお答えになっておられるように、やっぱりお互い国民一人一人の生命財産生活を守ると、こういうことに徹したやり方をぜひとってもらいたいということを思うし、これからのいろいろないわゆる対策というようなものも、これを中心にやるべきだというふうに考えるのですが、くどいようですが、重ねてその点はいかがですか。
  47. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 全く同感でございます。
  48. 鈴木壽

    鈴木壽君 今度の法改正の第一点の問題の人員増のことにつきましてはお聞きしましたが、第二点ですね、これについてもう少しお話しいただけませんか、こういう改正を必要とするその考え方についてもう少し御説明をしていただきたいと思いますが……。
  49. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現在、具体的な事例をあげて御説明申し上げますと、一つの施設が二つ以上の都道府県の区域にわたって設置されておると、たとえば東京と神奈川県の間にあります現在建設中の中央児童厚生施設の子供の国とか、あるいは大阪府と兵庫県にまたがってございます大阪国際空港とか、また警察の山岳パトロール隊が職務に従事中に管轄区域外における遭難者を発見したと、または現場に到着して管轄区域外の遭難事故であることが判明した場合、こういう場合の事案処理の問題でございます。境界付近の事案は、境界という必然的に伴います特殊の性格から、どうしても形式的な県境だけにとらわれて事案処理するということでは不徹底になりがちでございます。現在、協定とか、申し合わせによりまして事実上の処理を行なっておるわけでございます。これはあくまでも応急的な処理でありますので、警察官としての権限は伴っておらない、常人、一般人としての活動をしておるような状況でございます。しかし、これでは事案処理がどうしても徹底を欠くと、住民感情にそぐわない現在やっておりまするそういうような事実行為に対しまして、法律的な根拠を明確にしよう、明確に法律的な根拠を与えることによりまして、相互協力体制を一そう推進して、住民の期待にこたえたい、また、これによって能率的な警察活動を実施して、公安の維持に万全を期したい、こういう考え方で六十条の二を新設いたしましたような次第でございます。御承知のように、同一の施設が県境にわたっておるような場合におきましては、管轄区域外の職権行使の法的根拠が現行法ではございませんので、警察活動が制約されることになるわけでございます。また、管轄区域によって二つ警察がそれぞれの措置をとるということが地形とか道路関係その他で非常に非能率な場合もあるわけでございます。こういう点を見ます場合に、単に管轄権を持たないという理由だけで、管轄権を持たない警察のほうがよりすみやかに適切な措置をとり得るのに、適切な措置をとらないでいるというのでは、何か社会の常識とか世間の常識というものにそぐわない、非常に不自然な場合があるわけでございます。住民は管轄区域と関係なく、もよりの警察に適切な措置を要求してくるわけでございますので、そういうような点を今回の改正によって解決していきたいというのがねらいでございます。あくまでも実際上やっておりますことに対しまして、法的な根拠を与えて、警察官が自信を持って事案処理に当たるということにいたしたいという趣旨でございます。
  50. 鈴木壽

    鈴木壽君 お話を聞いておって、たとえば両県にまたがっておる施設ですね、こういうものはいままではあれですか、たとえば東京、神奈川の境にある「子供の国」とか、あるいはそういうような施設の場合どうしておったのですか。もっと端的にお聞きしますが、いままではじゃどうしておったのですか。
  51. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) いままではお互いに申し合わせをしまして、応急的な処理をして、本来の管轄権を持っておる警察に引き継ぐ、こういうことで運営をしておったわけであります。その応急的な処理と申しますのは、先ほど申し上げましたように、常人としての活動の範囲を越えることができないわけでございまして、それを今回効果的な運営をはかろうというわけで改正をお願いをしておるわけでございます。
  52. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうすると、現行法のたとえば五十九条あるいは六十条、六十一条、こういうものでやはりどうしても扱えないということなんですか。
  53. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現行法の五十九条はお互いが協力をしてやれという協力の義務をうたったわけでございまして、特に権限を与えてございません。それから六十条の場合は応援要請の規定でございます。その県の警察力をもってしては処理し得ないというような騒乱とか災害が起こりました場合に、隣の県等からの応援を求めて、管轄警察の公安委員会の管理のもとに事案処理していくということでございますので、現在のような、いま申し上げましたような事例から見ますと、こういう規定にもどうもなじまない。また六十一条の規定は管轄区域内で起こった公安に関連する事案について管轄区域外に権限を及ぼしていくという規定でございますので、いま申し上げましたように、管轄区域外で起こった事案処理を六十一条で行なうというわけにはいかないわけでございます。そういうような点から、現行法でも管轄区域外の規定の例が四つ、五つばかり法定されておりますけれども、いずれもこの規定でじかに解決できるということが非常にむずかしいわけでございます。もう少し具体的に申し上げますと、たとえば隣接地域の住民から非常に挙動不審者の届け出があった、こういう場合には、届け出を受けた警察官は現場にかけつけてその不審者に質問等をすることになりますが、現行法のもとにおいては、この質問は法律的には一般人の行なう質問と異ならないことになるわけでございます。したがって、その不審者から暴行を受けた場合にも公務執行妨害罪が成立しない、こういうふうに解されることになるわけでございます。けんかの届け出があった場合の制止等の場合も同様でございます。また山岳遭難等の場合に、危険な山岳地帯に捜索救助に出かけるのでございますが、この場合に警察官が災害を受けても公務災害とは直ちに言えるかどうか。したがって、公務災害補償は支給されないことになるのではないかという疑問が残るわけでございます。実際におきまして、こういう事例が現在発生いたしておりませんので、具体的に起こった問題ではございませんが、将来こういう問題が当然起こり得るわけでございます。今回の改正によりまして、以上申し上げましたような場合における警察官の職権についての法律上の根拠を明確にする、その結果、警察官は自信をもって職務を執行することができるようになる。こういう考え方から六十条の二を新設いたしたわけでございます。
  54. 鈴木壽

    鈴木壽君 例にあげておる、たとえば山の遭難等の事故ですね、これはあまり問題じゃないと思うのですよ。遭難等の場合は何も法的なそういうものをやらなくても、それこそ遭難したあとのたとえば捜索なり、あるいはまあそれに伴ういろいろなこと、これは別に今の五十九条あたりにおいても私は十分とり得る措置なんだと思うのですがね。いま問題になるのは何かの事犯、いわゆる犯罪的なことに対してのことだと思うのです、直接のねらいは。そういうことじゃないですか。
  55. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現行犯罪につきましては、現行法の六十四条で境界に関係なしに行なうことになっております。やはりいま申し上げましたような事柄は、そういう災害とか、あるいは交通整理とか、雑踏の警備とか、人命の救助、そのほか警察官職務執行法にあります制止とか質問、こういうような諸点を考えておるわけでございます。
  56. 鈴木壽

    鈴木壽君 そういう場合には、いまおあげになったような場合、犯罪関係は、私は六十五条でも、あなたは六十四条とおっしゃったようだが、六十五条でも私はやれるのじゃないかと思うのです、特別なこういう法改正を待たなくても。警察官はいかなる地域においても刑事訴訟法第二百十二条に規定する現行犯人の逮捕に関しては警察官としての職権を行なうことができる。いかなる地域におってもやれる。ですから別段今回のような法の改正を行なわなくともできると思うのです。ただしその他の、いまあなたのおあげになった尋問とか何とか、あるいは交通関係の必要から区域を越えて出て行かなければならないことがある、こういうことなんですが、それはその区域の警察署警官の配置をさらに考える、あるいは駐在所をどこに置くか、こういうことによってその区域内の所管の警察の措置によって、いわば一般的にはひとりでもってやれるような体制をとらなければいけないのじゃないか。必要であればいま言ったように駐在所なりあるいは警官増員なり何かというものを、これを考えなければならない。それは、いま警察の区域を定めて府県警察というものがやっておる、いろいろ仕事をやっていく上での、そういう意味においての問題だと思うのですね。そうじゃないのですか。
  57. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) いま申し上げました事案は大きく見て二種類あるわけでございます。一つは遊園地のように、その施設内の事案については両県が一体になって運営したほうがいいという場合でございます。それからもう一つは、同じ県境と申しましても交通通信のたいへん不便な山奥のことを考えておるわけでございます。そういうところでいろいろなダムの建設工事が行なわれる。本来そこを管轄いたしております警察署交通なり通信を強化して、そういう体制をとるのが、これは申すまでもなく正攻法の道だと考えておりますが、しかし実際問題といたしまして非常に隣接しております住民がほんとうに数えるほどしかいない。しかし事案の起こらない警察のほうにたくさんの住民がいて、そこに警察官署がある。こういうような場合に、隣の県からいろいろな訴えがありました場合に、これをやはり応急的に受け継いでいくということが一番妥当なことだろうと考えております。そういう意味であくまでもこれは応急措置の問題に対して法的な権限を与えていこう。県境等におきましては、これを恒常的に管轄区域を変えるような仕組みでやっていくのでなくして、とりあえずの措置というものを警察官として措置できるようにしていきたいということでございまして、いわゆる職権行使の問題として六十六条と同じような考え方で規定いたしておるわけでございます。実際問題といたしまして、地形その他の事情から交通通信がどうしても不便で、隣の県でなければ連絡しにくいという場合もあるわけでございますので、そういうようなケースに適用してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  58. 鈴木壽

    鈴木壽君 それじゃ応急的なものだったら五十九条、六十六条でやれないのですか。そういうたてまえで五十九条なり六十六条なりというものが私はあると思うのですがね。  それからもう一つ、今度は応急的じゃない両県にまたがる一つの施設、これは応急的とはちょっと言えないでしょうね。何か事案が起これば応急でしょうが、いずれそういう施設内の事案についても云々ということになりますと、やはり恆久的なものとして考えていかなければならないのですね。こうなると、これはまた、ちょっと私いまのあなたのおっしゃるような応急的というものでは解釈しきれないものがあると思うのですね。ですから応急的だったら何もわざわざ——と言っては悪いけれども、こういう法改正をやらなくても、私は幾らも区域を定められた警察であっても相互に、援助したり援助されたり、こういうことはあり得るし、またやらなければならぬ。これはやれると思うのです。ただ、この施設等についても、これは施設がやや恆久的なたとえば「子供の国」とか、伊丹の空港とかいうものは簡単になくなるものでもないでしょうから、これはやはり恆久的なものとして考えていかなければならない。しかしその際であっても、その施設の中のいろいろの問題、これは双方の警察の話し合いによってどっちの部面をどっちが受け持つか。こっちのところはこちらの警察で受け持つというような、そういう私は話し合い、協議というものはやり得ると思うし、やらなければならない。そういうことで私はカバーできると思う。ただ現実に何か犯罪が起こって、犯人がその中へ入ってしまった。それを、おれのほうの区域ではないからとらえることをよすとか、ほうって置くということはあり得ないし、またそれぞれの規定によってこれは十分やれますから、何か私こういうことを法的なものとしてきめるためには、もっと考えていらっしゃるのじゃないかと思うのですが、どうなんです、これは。
  59. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) それ以外のことは何も考えておらないのでありまして、ただ、もともと昭和二十三年に国警を自警ができましたときに、これは境界五百メートルを区切りまして、相互に権限が行使できるという規定で二十九年まで運営してまいったわけであります。ただ、最近いろいろと山岳地帯その他が開発されてまいりまして、県境に非常に人が集まるような施設ができたり、どんどんと道路が開発されていく、こういうようなことでお互いの県の協力体制というものを単なる五十九条だけでは完全に果たし得ないというような事例が出てまいったのであります。人間の感情といたしまして、私どもは県境というものがあるなしにかかわらず、警察官として当然しなければならぬことは事実問題としてもどんどんやっていかなければならぬということはお説のとおりでございますが、先ほど最初に申し上げましたように、こういうような不審者の尋問について暴行を受けるとか、あるいは泥酔者の届け出があった場合の強制保護の問題とか、けんかの制止とか、こういうような問題につきまして、やはり警察官としての権限だけは正々堂々と自信を持って処理していくようにしていきたい。これが住民の期待にもこたえるゆえんであるというふうに考えておるわけでございます。ただもちろん、これからまた御説明申し上げますが、無制限にこれをやろうというのでなくして、一定の区域をお互いに協議をいたしまして、その中でまた事案を定めまして、具体的なやり方というものを相談して実施していこうと、こういう考えでございます。
  60. 鈴木壽

    鈴木壽君 たとえば、あなたのいまおっしゃっておるような事例ですね。泥酔者がいわば自分の境界外にあって、で、境界外の人から駐在所に来て何とかしてくれと、こう言われた場合に、そうしますとあれですか、いまのたてまえなりあるいは実際は、管轄外だからおれは行かぬと、手を出すわけにいかぬと——正式に何といいますか、向こうの警察のほうから協力要請がなければだめなんだと、こういうことなんですか、いまは。法的にいっても、あるいは実際上の取り扱いにおいても。
  61. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現在の運営は、そういうような場合がありました場合には、実際は出かけていって事実行為として処理をしておる。これは一般人としてやっておるということでございます。したがって、警察官としての権限は行使できないという形で運営をいたしております。
  62. 鈴木壽

    鈴木壽君 その場合に、これは原則としては区域内の警官でしょうし、区域内における権限の行使は許されるけれども、明らかな犯罪であるものであればともかく、いま言ったような事例の場合は、これはいわば犯罪とも言えないようなことであって、したがって権限の行使はできないのだと、だから一般人として出向いていってやっていると、こういうことなんですね。
  63. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そのとおりでございます。
  64. 鈴木壽

    鈴木壽君 一般人として出ていっても、やはり受け取る人は警官として受け取っておりますね、これは。まさか服をぬいで行くわけでもないでしょうし、ピストルをはずして行くわけでもないでしょうから。
  65. 基政七

    ○基政七君 ちょっと私も不思議に思うのですけれども、取り調べをされる場合にはどういう場合でも警察官の身分証明書をお出しになりますね、それで警察の行為が行なわれるのじゃありませんか。人を取り調べる場合には警察官の身分証明書を出さないではできないでしょう。その場合、一般人として取り締まるというのは、まあこれは例としてはまずいのですけれども、隣にいらっしゃる市川さんが何か間違って、そうしてそれは、市川さん悪いじゃないですかという注意事項に終わるということでもないと思うのです。ただ、あなたがいま言われたので一つ気がかりなのは、たとえば境界付近でいまの遭難か何かありますね。その際に何かその人が大きな負傷かなんかして非常に悪い。そういうことがあります際に、警察官がいまの法律では救済ができないということであれば、私はまた問題は別のような気がするのです。先ほどのお答えではどうも公務と見なされないというところに重点を置かれておるのじゃないかと思うのです。その辺のことがはっきりしないで、どうもわかりかねているんですがね。
  66. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 先ほど申し上げておりますことは、要するに現行法では、この警察官仕事が公務として保護されないと、こういうことなんでございます。
  67. 基政七

    ○基政七君 この場合は、どういうのがあるのですか。
  68. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) ですから、さっき申し上げましたように、たとえば挙動不審の者がある。そこで来てくれというわけで、「あなたどなたですか」という質問をしたが、急に不審者から暴行を受け、そこで格闘になると、こういう場合でも公務執行妨害罪が成立しない。これは手帳を見せても、見せなくても本来そこに管轄権を持っていない警察官の行動でございますので、そのことは公務として保護されないということになるわけでございます。いま、一般人として取り締まりをすると申し上げたわけではございませんで、一般人としてというのは、たとえば事実行為でございますから、実際に取り調べをするとかいうことでなしに、ただ事実上尋ねるとか、あるいは助けるとか、安全なところに連れていくとか、こういうようなことを任意でやる、権限を持った行為としてはできないのでございます。
  69. 鈴木壽

    鈴木壽君 都道府県警察相互のいわゆる援助ですね。これは何か事が起こってから、あるいは明らかに起こり得るという予想のもとに、そういうことによって初めて援助の要請なり、援助をするというようなことになるのですか。それともあらかじめ、これはたとえば場所を区切るとか、区域を限るとか、問題をひとつ設定して、そういうことに対してお互いに援助し合うというような、前もっての話し合いというようなことができるのか、できないのか、そこら辺どうですか。
  70. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 援助要請の条文の趣旨は、本来そのつど援助を要求するということをたてまえといたしておるわけでございます。したがいまして、ある事件が起こったとか、あるいは起こることが明らかである、しかも自分の県の警察力ではそれをとうてい処理し得ないというような場合に、援助要求をするというのがたてまえになっております。したがって、あらかじめ包括的にどんな事案についても援助をしていくというような考え方は、六十条の本来の趣旨ではないというふうに考えております。
  71. 鈴木壽

    鈴木壽君 五十九条の協力ということと、六十条の援助の要求という、この援助と、これはどういうふうに区別されるものか、あるいは同一のものか、これはどうですか。
  72. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 五十九条の協力関係を、さらに一歩前進させて具体化したというのが、六十条の援助要求の規定でございます。
  73. 鈴木壽

    鈴木壽君 すると、協力というものの中には、この六十条に規定してあるようないわゆる援助、具体化された援助、これ以外にはないということなんですか。
  74. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) もう一つ。それと六十一条の管轄区域外への権限行使という規定もございますが、その場合にはお互いが十分に緊密な連絡を保たなければならぬという規定がございます。さらに六十六条において、移動警察とかあるいは特定の道路の区域内におきまする権限の行使につきまして、それぞれ都道府県警察が協議して職権を行なうということがうたってございます。この協議というものもやはり一つの協力関係の変わった形のものだということが言えると思います。
  75. 鈴木壽

    鈴木壽君 具体的にお聞きしますが、両府県にまたがる施設、そこへ双方の警官が入る、そういう場合も私はあるのじゃないかと思うのです。一方の警官だけが話し合いによって入る。こういうこともあろうと思うのですね。そのいずれを予想されておられますか、双方を予想されているか、あるいはどっちかだけに限るというふうに考えておられるのか、その点はどうですか。
  76. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) その地理、地形によって違いますが、一つの施設内にまあ遊園地がある、両県の観光客がたくさん入ってくるというような場合の例をあげますと、考え方といたしましては双方の警察官がそこに入ってきて協力して仕事をやっていくということになるわけでございます。
  77. 鈴木壽

    鈴木壽君 たとえば遊園地とか、「子供の国」とかいうような、そういう施設の場合に、東京のほうの出入り口からも人が入れるし、また神奈川県側にも出入り口がある。実際そうなっているかどうかわかりませんよ。考え方として予想すればそういうことがあり得ると思いますが、双方の、東京の観光客も来るし、神奈川の行楽客も来る。そういう場合に両方の警察を入れるとすると、その区域、その施設全体として、東京警官も神奈川の警官も、どっちでも自由に——自由ということばは当たらないかもしれないが、とにかく施設の中は両県の区域にかかわらずパトロールしたり何かする、こういうことになりますか。
  78. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 具体的な施設の地域によっては違いますが、その公園のまん中に一つの川があると、しかも県境とは全然別個に川が流れているというような場合に、ある県のある部分をA県が持ち、B県はまたA県の一定部分を持つというような協議の定め方もあろうかと思いますが、具体的にそれはお互いの協議できまることでございます。ただ、もちろん全体を両県の警察が共同して、受け持っていくという考え方も当然起こり得るわけでございます。
  79. 鈴木壽

    鈴木壽君 そのときどきによって違うということでしょう、結論は。状況によって違うということでしょうが、伊丹の空港の場合どうなさいますか。
  80. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 伊丹の空港の場合は、現在は兵庫県側に連絡事務所があるわけでございます。そして大阪のほうに出口がある、空港の大部分は兵庫県側に、こういうような状況になっておりまして、大体兵庫県の警察のほうで管轄区域内の事案処理するということで、ある程度の目的が達せられておるわけでございます。ところが将来その事務所が移りまして、ちょうど大阪と兵庫の県境のところに総合事務所ができるという計画が進められておるやに聞いておるわけであります。そういうことになりますと、両方の警察官がその同じ派出所に共同して勤務していく、そしてそれぞれの分担地域を申し合わせをしてパトロールする、また突発事態に対しまする措置というようなものを申し合わせをしていくことになろうかと存じております。
  81. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうも私、変なこまいことばかり聞いているのですが、やっぱり一つ警察官の権限、警察権力の問題ですからね、やっぱりはっきりするところははっきりしておかないと、将来いろいろ問題が起こるのじゃないかと思うのですね。区域等についても政令であとから出されるというふうなこともあるようでありますけれども、何かすっきりしない。いまのような話だと、私は現行法の中でのいわば特殊的な一つの取り扱いとして、現行法の中で、それこそ協議し、協力し合うという体制の中から、その場所、施設、その地区ごとの話し合い、取りきめというものができるのじゃないだろうか。そういうふうにすることがいいんじゃないかというふうに思うのですがね。まあいまは、たとえばあなた方考えておる、私もいま例にあげたような「子供の国」とか、あるいは伊丹の空港とか、生駒山上の遊園地とかいうような、きわめてわずかなところだろうと思う。あと山岳地帯における遭難等の場合に備えて、何か一応の取りきめをするでしょうが、まあ限られた場所だと思いますね。しかしこれが、いまのように限られた場所だけで終わるというふうにも思えないことなんですね。相当そういうような場所がこれからふえていくのじゃないだろうか。あるいはそういうことで先を見通しながら、いわば警察官の権限というものを一体どう持っていくことが正しいことなのかというふうに考えてみなければならぬことだろうと思いますね。どうですかね、やっぱりどうしても今度の改正のようにしなければ事実上どうにもならぬという、こういうことがいままで起こっているのですか、どうですか。
  82. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 現行法で絶対に困るというようなことは、そういう意味の緊急性というものは必ずしもあるとはいえないと思います。ただいま鈴木委員から申されましたように、現行法で何とか協力してやっていくということがいいではないかというふうなお考えも、一つの御意見だと思っておるわけであります。ただ、しかし、私ども考えておりますのは、やはり両県の協力関係というものは、これは一そう推進していきたい。特に現在の警察制度はそれぞれの管轄区域内で権限を行使し、その中の治安維持の責任を負うというたてまえをとっておるわけであります。ところが警察の対象と申しますのは、最近非常に広域化してまいりますし、非常にスピード化してまいる、そういうふうな状況でございますので、六十条の応援要請の規定なり、あるいは六十一条の規定なり、昨年は六十六条の二項を新設いたしまして、こういう問題の解決に当たったわけでございます。ただいまお願いいたしておりますのも、六十六条の二項、この道路上のある一定の区域において交通の円滑化と危険の防止をはかるためにお互いが協議して、定めたところによって隣県にも職権を行なうことができるというような規定がございますが、これと考え方は全く同じでございます。いま直ちにどうということで、たいへん困るというような例が実際にあったわけでもございませんけれども、何とか運用でまかなってきたというのが実情でございます。しかし先ほど来申し上げておりますように、どうしても境界というものが警察官の職務執行の心理に微妙に影響を及ぼすものでもございますし、またやりました行為が公務として保護されないというようなことにもなりますので、どうしても消極的になりがちである。あるいは徹底を欠くというようなことがあっては警察としてはなはだ申しわけないと思っておりますので、お互いに自信を持って一そう協力体制強化していくということが、現在私どもに課せられた一つの責務であろうと痛感いたしておるのでございます。そういうような考え方から、六十六条のときに御審議を願いましたと全く同じ趣旨において、特殊な県境付近の事案におきまして、より合理的に問題の処理ができるように是正していきたいというのが、私どもの願いであるわけでございます。
  83. 井川伊平

    井川伊平君 関連。五十九条の規定及び六十条の規定は、他の都道府県警察なり公安委員会から具体的な個々の事件についての協力の申し出があったときにはこれに応ずるというように、個々の事件を対象として考えておる規定であるのではないか。それから六十条の二の規定は、そうではなくして、相互に協議してきめるのは地域をきめるのであって、その地域内の個個のことについては、地域をきめておけば協議をしないでも警察行為はできるのだという趣旨のようにもとれますが、場所を規定しておいて、個々の事案については協議の必要はないとする規定が六十条の二のようにも読み取れるのですが、そういうことではないのですか。
  84. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 協議の内容といたしましては、まず区域ということが第一でございます。それからどういうような種類の事案をやっていくかという、この事案の種別の問題、それから事案処理方法、こういうものを含めて協議の内容といたしておるわけでございます。以上のとおりで、必ずしも区域だけをきめて、あとはどんな事案でもというわけではないのでございます。
  85. 井川伊平

    井川伊平君 五十九条、六十条の協議に応ずる義務ですね、これは場所はもちろんありましょうけれども、個々の事件について、一つ一つ事件について義務を負うという意味でございましょう。したがって、協議はそのつど一つ一つ事件について、何々事件発生したから協議を願う、承知したという義務があるという趣旨でございませんか、五十九条と六十条は。
  86. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 五十九条のは協力の義務というだけでございまして、ただ抽象的にお互いに協力しなければならぬという規定をうたっただけでございます。ですから、別にこれによって法律的な効果が生じてくるものではございませんです。六十条の二の今度新設いたしました協議と申しますのは、もちろんこれは府県の公安委員会相互におきまして具体的な内容を相談することになっております。その対象は、どういうようなものがその協議の内容になってくるかということは、かかって府県相互間の自主的な判断にまかせておるわけでございます。
  87. 井川伊平

    井川伊平君 いまの点、同じ点でなお了解に苦しむのですが、新しいほうの六十条の二、これは一定の地域をきめておけば、そこで発生する事件については、一つ一つのことについては、この要求がなくても直ちに一方の県だけが任意にそこへ出張いたしまして、警察行為がとれるという趣旨ではありませんか。
  88. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そのとおりでございます。
  89. 井川伊平

    井川伊平君 そのとおり……。
  90. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) はい。
  91. 井川伊平

    井川伊平君 そうしますると、古いほうの五十九条及び六十条の規定は、個々のことについて御要求がなければ、何かのことでさきに協議したことがあるから、今度の事件にも出てきてやるのだということはできないのじゃないですか。そこに相違があるのじゃありませんか。条文を読んで見ますと、そういうふうにとれますが、個々の事件について協議をする場合と、そういうことはめんどうくさいから地域的に協議をしておいて、その地域的のことでは何でも派遣ができるのだというように、区別があるようにこれは読み取れますが、そういうような相違ではないのですか。
  92. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 六十条の規定と申しますのは、これは応援に出かけました県の公安委員会の管理に服するわけでございます。したがって警察官は、その管轄警察の指揮系統のもとに一元的に運用されていく……。
  93. 井川伊平

    井川伊平君 私の言っているのは——それは、あなたの言っているのはそのとおり。そういうものを、それは個々の特定した事件についてのことではないかというのです。一方は、地域の協定をしておけば、個々の事件についての、そうしたような協議は必要ないのだというようなのが、規定の設定の趣旨ではないかというのです。わかりませんか、質問の趣旨が。いまの趣旨は、将来事件発生するだろうという地域を見越して、この地域で事件が発した場合——事件発生前の考え方と、事件発生した後の考え方の区別なんです。そういう区別ではないかという質問なんです。それならきわめてはっきりしておる。
  94. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) よくわかりました。六十条は個々の具体的な事件の問題でございますが、今度の六十条の二は、個々の事件でなしに、事件の種類そのものを協議してきめましたならば、事前だろうが、あとだろうが処置する、こういうことであります。
  95. 井川伊平

    井川伊平君 了承。
  96. 鈴木壽

    鈴木壽君 一体、それじゃこの改正案にある事案というのは何ですか。事案について云々ということですが、事案というのは……。
  97. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 事案は、警察法の第二条で規定しております警察の責務の対象となる事柄全般を言っておるのでございます。したがって、刑事事件とか、またはこれに類した事柄について通常用いておりまする事件という意味よりも、広い意味で使用いたしておるわけでございます。
  98. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうすると、先ほどの御質問に対するそれとはちょっと違ってきましたね。区域と事件というものを区別して、あなたにお聞きしておる。事件についてはこうだけれども、区域についてはこうだ、こういうことになったけれども、これは、ここにあるのは区域でなくて、今度の法改正のそれは区域そのものじゃなくて、区域内の事案、違っていますかね、ちょっと。
  99. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 私が事件と申し上げましたならば、それは間違いでございまして、事案のことでございます。
  100. 鈴木壽

    鈴木壽君 先の方は、いわゆる協力とか援助とかというものは、区域の場合と事件の場合と、こう分けて、事件については協力できるんだと、区域については協力できないから、こういう新しい法をつくるんじゃないかというような、そういう意味じゃなかったんですか。——ああ、それじゃ私の受け取り方が間違いです。それじゃ、もう一つお聞きしますが、前もって協力というのは、これは一般的な規定だと思います。これについての特定の協議とかいうことでなくて、いわゆる警察仕事全般についての私は協力だと思う。その協力の中に特定の地域を限って、そして、そこに将来いわゆる何か事案があることを予想して、向のほうのところは、おれのほうのところより近いから、ひとつ常時、君のほうで受け持つようにしてもらえないか。受け持つということは少しことばが適当じゃないが、何かあったら警官に来てもらうというような住民の要請等があったら、やってもらうということが、できるかできないかというようなことが可能ですか、可能でありませんか。
  101. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 法律的には可能というわけには参らないと思います。ただ事実上の問題として、そういう応急措置の扱い方の相談はできると思っております。
  102. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、出てくるのはしょっちゅう問題があるので、何かあったら、それこそ、さっきあなたが例にあげたような道路工事あるいはダム工事に集まっておる人、従事する人、あるいはそれに関係する、そこにおる人方の間にいわゆる犯罪というようなものでなくとも、酔っぱらいとか、あるいは不審な人物がおるとか、何とかというようなことでも、これはいわば突発的なことが起こると考えられますね。突発的なことがあった場合に、出てきてもらうようにというようなことは協力の対象になりませんか。
  103. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 法律的な立場からは、協力の対象にならないと思います。
  104. 鈴木壽

    鈴木壽君 実際はやっておると言いましたね。ただし、その場合には、警官でなしに一般人としてということですね。どうもこれは警官が出かけていって一般人というのも、これはおかしな話だけれども、ちょっとそこら辺がわからないね。それはあなたのお答えはそれでいい。  それからもう一つ、施設に双方の、両府県の警官が一緒に入ってやる場合もあると、こうおっしゃいましたね。その場合何か事件が起こる、事件があったとする。これはどっちも一緒になってとらまえたと、これはどっちの権限になるんですか。これは両方ともということになりますか、それともそこら辺どうなんですか。
  105. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 権限は両方ともあるわけでございますから、その意味ではお互いの権限で協力して犯人を逮捕したという形になります。
  106. 鈴木壽

    鈴木壽君 そして、その事後の処理にあたるものはどっちです。この場合。
  107. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 本来管轄権を有する警察署にその事件を引き継いで処理していくという形になります。
  108. 鈴木壽

    鈴木壽君 本来管轄権があるといっても、そうすると、やはり前もって施設の中に線を一本想定しておくわけですね、区域なんかを。こうやっていかないとわかりませんね、これは。ここからここまでは——この線は両府県の境界だというような何かないと、どっちかの本来所管している警察といってもわかりません。極端なことを言えば、その線にまたがっておって、そこでころんだやつをつかまえたという場合どうなるのですか。
  109. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 私の申しましたのは、本来管轄権を持っておりまする県は、その管轄区域内の治安についての責任は依然持っておるわけでございます。したがって、この規定によって本来の管轄警察責任も、あるいは権限も何ら否定もされなければ、解除もされない。こういうたてまえをとっておるわけでございます。ただ御指摘のような場合に、お互いが隣の県の警察官も、協議するところに従って、権限を行使できるということだけを、まあきめておるわけでございますので、その協議の内容で逮捕までをきめるとか、その他のどこまでをやっていくかということは、それぞれ協議して定めていくことになります。これは管轄の問題でございますので、最終的には、それを管轄しているところのそれぞれの機関に手続を経て移送されていくという形になるわけでございます。まあ境界にころがっておったというような場合は、どちらもで先に認知したほうが、これを処理するということで行ないたいと思っております。
  110. 鈴木壽

    鈴木壽君 妙な聞き方をしているようですが、まず境界線にまたがるようなところでやったということは、予想としてはあり得るわけです。そういった場合にどっちなのかというと、それは話し合いによってきめるのですか。
  111. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) それは認知した警察官が……。
  112. 鈴木壽

    鈴木壽君 認知した……。たまたま両府県の警官が一緒になって、伊丹なんかそうですと、あなたそう言ったでしょう。
  113. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 共同して職務を執行するということは、何も大阪と兵庫の警察官が二人一組になってパトロールするという意味で申し上げたわけじゃございません。
  114. 鈴木壽

    鈴木壽君 双方でやっている場合に、そういうこともあり得る。
  115. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そういうことも、あるいは協定であり得るかもしれませんが、そういう場合はお互いの相談で、相談にまかせていいと思っております。
  116. 鈴木壽

    鈴木壽君 ばからしいことを聞いたようだけれども、何かあいまいなんですな、これは。まあ、それの一つの例として申し上げたのですが、何かどうも区域が一体どうなるのか。私、何べんも言うように、遭難等のあった場合に、それはそれなりにわかりますよ。それから施設なら施設においてやるといっても、どっちかでやるならばまた私はわかる。しかし、あなたのお話を聞くと、片一方の警察のほうでやる場合もあるし、両方一緒になってやる場合もある、ダブる場合がある。こういうのだから、実際問題としてはそういうこともあり得るでしょうが、とすればどうもすっきりしないものが出てくるんじゃないか、こういうふうに思うものですから、まず……。
  117. 西田信一

    ○西田信一君 六十条の二のカッコの中に、(政令で定める距離までの区域に限る。)、こうあるでしょう。これは一般的な距離規定をすると、こういう意味ですか。一般的に、つまり境界から何キロ以内に限る、こういう規定になるのですか。
  118. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 政令の距離といたしましては、一般的に境界から何キロというふうに定めたいと思っております。ただ、この場合におきましても、山岳地帯とか、そういう特殊な地域につきましては、若干キロ数を延長いたしまして、その取り扱いに差異を設けたいと思っておりますが、距離そのものは、すべての境界においてただいま一般的には二キロということを考えております。そういう線で政令を定めたいと思っております。
  119. 西田信一

    ○西田信一君 私は、いろいろ御質疑があって、お聞きしておって感じておるのですが、やはりこういう規定は必要だという感じを持っておるのです。ちょうど交通取り締まりでスピード違反の場合には何キロでしたか、四キロを限ってやるというのを——この前同趣旨のをつくりました。これは私も必要があるんじゃないかという感じでおるのですが、そうすると、県境の境界線から大体お互いに二キロずつということになり、両方合わせれば四キロの間はお互いに、その例外を除いては、協議すればそういう権限が及ぶ区域になるというふうに考えていいわけですね。
  120. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 四キロの間は、すべてこの規定が働くということではございません。
  121. 西田信一

    ○西田信一君 四キロの間ならば協議ができると、こういうことでしょう。
  122. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そうでございます。
  123. 西田信一

    ○西田信一君 その区域は、両方合わせれば四キロと、こういうことでしょう。
  124. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) さようでございます。
  125. 西田信一

    ○西田信一君 私のお聞きすることはそれだけですが、そのほかの例外があって、山岳地方とか、その他あるいは施設等によっては、それを越えることもあり得るという例外はあるわけですね。だからして、一般的には二キロとすれば、四キロの間は必要があれば協議してお互いに協力体制がとれる、協力体制というか、権限の及ぶ区域になる、こういうわけですね。だからちょうどスピード違反は四キロ追っかけてできるというのと同じような趣旨の法律で、機動力というようなこと、あるいは県境におけるいろいろな事件処理がむずかしいという立場からいって、両方がダブってできるという意味で、たいへんにけっこうだと思ってお聞きしました。よくわかりました。
  126. 辻武寿

    ○辻武寿君 二、三点お聞きしますが、最初のほうの警察庁職員十名を増員する点ですが、この中の三名は右翼対策のために増員する。そういうふうにお聞きしたのですが、そのとおりですか。
  127. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) そのとおりでございます。
  128. 辻武寿

    ○辻武寿君 最近の、人員をふやさなければならぬような右翼の著しい動きとか、そういうものがあったら知らしてもらいたいと思います。
  129. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 最近の右翼考え方でございますが、従来は、右翼事件の傾向から申し上げますが、量的には横ばいの状況でありますが、ただ、右翼の意識面におきましては、左翼革命に対する深刻な危機感を依然として奉持いたしております。このまま推移すれば、共産革命への移行は避けられないというような判断から、国家革新を強調する風潮が普遍化してまいっております。また、テロないし直接行動に走る危険性は少しも弱まっていない状況にあるわけでございます。昨年に起きましたいろいろな要人に対する暴行とか、襲撃の事案というものがこれを実証いたしておりますので、右翼の動向を見ます場合に、十分に体制強化いたしまして、これの警戒、警備に当たるということが焦眉の急の問題であろうかと考えております。
  130. 辻武寿

    ○辻武寿君 右翼は、いまふえる傾向にあるのですか、横ばいということが出たけれども、三名ふやしていくということは、ふえるから三名ふやすと……。
  131. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 右翼と称しますものにもいろいろな種類がございますが、現在、横ばいと申し上げましたのは、そういう事件そのものの量が横ばいでございますが、そういう一つの団体構成員等につきましては、漸次ふえつつある状況でございます。
  132. 辻武寿

    ○辻武寿君 右翼団体については、まあいろいろな新聞紙上その他世間の評判等を聞きますと、先ほども鈴木委員のほうから、暴力団云々で根本原因をなくさなければだめだというお話があったのですが、自民党の各実力者とのつながりがあるとか、それを支持する層で、右翼の中で派閥ができておるとかいうような、いろいろ不愉快なことを私は聞きますが、そういったことを大臣は聞いておるのかどうか、聞いておってどんな対策を講じておるのかどうか、大臣の見解を伺いたいと思います。
  133. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) そういううわさなり、週刊雑誌の記事は承知いたしておりますが、暴力団、右翼とかいうものとの密接な関係というものは存じておりません。
  134. 辻武寿

    ○辻武寿君 いま右翼がどんどんふえているという話を聞きましたけれども、それに対しては、大臣はどういう考えを持っているのですか、それに対する対策は。
  135. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 最近の右翼の特色は、いわゆる政治結社を名乗った暴力団というものも含めて考えますと、非常に危険な状態にございます。名目が右翼政治結社といわれる団体の中には、実際は暴力団というのがあるわけであります。しかし、御承知のように、新憲法におきましては、団体規制というものができません。自由に政治結社をつくることができる。そこでそういったものの取り締まりは、個々の暴力行為、個々の事件というものをつかまえる以外にないわけであります。不法行為、それに全力を警察はあげておる、こういうわけであります。
  136. 辻武寿

    ○辻武寿君 いままでの管轄区域の件に関してお聞きしますけれども、五十九条のほうは「相互に協力する義務を負う。」、これは援助を要請された場合に要るのだというふうにさっき私は聞きました。今度の六十条の二ですか、「相互に協議して定めたところにより、」とありますが、これもあれですか、援助の要求を受けたときだけ権限が及ぶことになるわけですか。
  137. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 五十九条の協力の義務は、援助の要求の有無にかかわらず、お互いに一般的に協力する義務を規定いたしておるものでございます。それから今回の六十条の二の「協議」でございますが、これは援助要求でなくして、協議を初めからして、そうして協議したところに従って権限を行使していくという規定でございますので、援助要求とはちょっと種類が違った規定でございます。
  138. 辻武寿

    ○辻武寿君 そういたしますと、五十九条のほうは、相互に協力するのは援助要求を受けなくても積極的にお互いに協力し合う。今度のは、前もって協力し合うということを約束すれば、積極的によその管轄のところへも入っていけることになるわけですね。同じことになるわけですね。
  139. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 五十九条の規定では、どんなに積極的に協力いたしましても、よその管轄区域に入ることはできないのでございます。管轄区域というのは、厳格にその都道府県の区域に限られておりますので、特に法律で例外を規定いたしました以外は、そのようなことが五十九条ではできない、こういうたてまえでございます。
  140. 辻武寿

    ○辻武寿君 管轄外において負傷や事故を起こしたのは、公務傷害と言えないというようなことをおっしゃいますね、あの点もう一ぺん説明してくれませんか。
  141. 浜中英二

    政府委員浜中英二君) 山岳遭難等の場合の例を申し上げたわけでありますが、管轄外の山岳地帯の捜索救助で、警察官が災害を受けたというような場合には、公務による災害とは言えない。そのことは、そこに警察官が本来権限を行使することができない地域でございますので、そういうような立場をとりますと、公務による災害とは直ちに言えないのではないか。したがって、公務災害補償というようなものも支給されないことになる。こう申し上げたわけであります。
  142. 辻武寿

    ○辻武寿君 今度のこの改正に対して、一部では管轄区域外において職権を行なうことになると、自治体警察の性格をくずしていき、昔の内務省に戻るのではないか、中央集権化ではないか。そういう心配をする者もありますが、そういうような心配は絶対にないかどうか、公安委員長
  143. 早川崇

    ○国務大臣(早川崇君) 自治体相互の境界だけの問題でございますので、そういう意図はもちろん持っておりませんし、そういう御心配もないかと考えます。
  144. 辻武寿

    ○辻武寿君 自信を持って捜査その他の警察官の職務を執行するためにやると言っておったのですが、私はだんだん自信が強くなって、変な自信を持たれては困る。非常に近ごろ警察官の方が、何となく権威をかさに着て、風当たりの強い取調べをすることが考えられる。私は実際申し上げれば、いろいろの犯罪等を見ておって、警察官はたいへんだ、非常に警察官には同情しておりますが、たいへんなんだなあと思うときと、もうひとつは、いやに権限をかさに着ているな、だんだんふやしていったら、一体またもとのように、いばり出すのではないかという心配を持つときとがある。この間、昨年の暮れですが、北澤署だと思いますが、そこにまあ悪いことをして、入れられた人がいた。詐欺だか、窃盗だかで入った。その家族の人たちは、暮れに入れられたまま、あと、うんともすんとも言ってこないから、一体暮れに帰れるのかどうか、主人は帰ってくるのかどうか、それもさっぱりわからない。警察に行ってもさっぱり教えてくれない。そういうような状態で、非常に若しんで嘆いておった。私は、どろぼうしたり、詐欺したりするやつは、悪いやつにきまっているのだから、それはそれとしておいて、家族に対してやはり警察官といえども、あたたかい目をもって見あげなければならない。それで、署長に電話をしたわけですよ。こういう方がおって、主人がいつ帰ってくるのだか、わからないらしい。どういうような事情で、いつごろ取り調べが終わって出られるのか、そういう見通しがわかりませんか。こういうふうな電話をしたのですが、こういうことを地方行政委員としてやってはまずいですか。
  145. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 地方行政委員として行政調査ということで、向こうが拒めば、やられても法律的には何でしょうが、そういう話は別に地方行政委員としておやりにならなくても、教えられることは教えますし、秘匿しなければならぬことは秘匿しなければならぬということで、私は適当ではないと思います。
  146. 辻武寿

    ○辻武寿君 私はこういう者である、参議院の地方行政委員をやっているのだということで、お伺いしたのですけれどもね。出してくれと言ったわけじゃない。それなのに、何のために聞くのですか、こういう署長の私に対する電話ですよ。私はさっき言ったとおり地方行政委員なんだが、家族がこういうわけで聞いているのだが、聞いてはいけないのか。こういうふうに聞いたらば、だんだんことばをやわらげて、家族を呼んでどうの、こうのと、言っておりましたけれども、多少なりとも議員の肩書きを持っている私が行ってさえも、そういう態度をとるとするならば、一般の人が行ったらば、どんな態度をとるかわからない。こういう心配を持ったわけです。私ども警察庁長官のような、りっぱな署長さんや、警察官ばかりならば、そういうことはないですけれども、そういう点に対して心配な点もあるのですが、警察官をふやすということですね。自信を持って職務に当たる、その自信の持ち方に対しては、重々訓戒、あるいは民主警察はこうでなければならないということを訓練しておられると思いますが、どのような訓戒または通達心がまえというものを警案官に対しては教育しておるのですか。
  147. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 私たち国家公安委員会の管理のもとに仕事をしておりまするし、ことに、現公安委員長がしょっちゅうおっしゃっておることを、そのままもっともでございますので、一生懸命私たちもその考えを普及するべく努力はいたしております。その骨子は、やはり職務の執行については、自信を持ってしっかりやるという一つの柱、同時に自信を持ってやる以上、どんな方法で、どういう態度でやってもいいという問題ではなしに、これは悪に対しては強く、善に対してはやさしく、強い力を持ちながら、やさしい態度で実効をあげるということを、かねがね指示をされておるのでございまして、私たちもそういう意味全国警察職員に対しましては、機会あるごとにその趣旨の普及に当たっているわけであります。したがいまして、ただいまのような事例で、私具体的なことは存じませんけれども、御無礼な点があったかもしれませんけれども、これは議員さんという肩書きでいってさえも、あの調子だから、そうでなければもっとひどいのじゃないかという御心配、それはあるいは事実としてはそういうことでございましょうが、私たちはそうでないように、議員さんとしておかけになった場合でも、まあ親切に応待すると同時に、議員さん以外の方が同じような電話をおかけになった場合も、同様に丁寧に応待するということを理想として訓育をいたしております。
  148. 辻武寿

    ○辻武寿君 私は、この法律の趣旨はわかるのですが、だんだんふやして自信を持ってという、さっきの話がありましたから、関連して申し上げたわけですけれども長官にお願いしておきたいことは、どうかそういうことが全国警察官にないように、この上ともくれぐれも行き渡った指導をしてもらいたい、それをお願いしておいて質問を終わります。
  149. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もないようでございますので、本案についての質疑は終了したものと認め、これより討論を行ないます。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) 別に御意見もないようでございますので、討論は終局したものと認め、これより採決を行ないます。  警察法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  151. 竹中恒夫

    委員長竹中恒夫君) 多数であります。よって本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案の審査報告書につきましては委員長に御一任願います。  次会は、十二日は休みまして、三月十七日(火曜日)午前十時、公営企業金融公庫法の一部改正案、調査事件として学校給食に関する件等の審査の予定でございます。  これにて本日は散会いたします。    午後一時三十一分散会      —————・—————