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1964-06-25 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十五日(木曜日)    午後二時五分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            大谷 贇雄君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            日高 広為君            堀  末治君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君            原島 宏治君            鈴木 市藏君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵省主計局法    規課長     相沢 英之君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    大蔵省証券局長 松井 直行君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    大蔵省証券局企    業財務課長   塚本孝次郎君   参考人    国民金融公庫副    総裁      酒井 俊彦君   —————————————   本日の会議に付した案件国民金融公庫法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○公認会計士特例試験等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をつけてください。  国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、本案質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 柴谷要

    柴谷要君 ただいま上程されました案件は、国民金融公庫法の一部改正でありますが、本法案の現在までの経過を振り返ってみますると、第四十回の国会から四十四国会まで経過をたどってきているわけでございます。その間、審議未了に及ぶこと四回、継続審議は第四十一回の国会で行なわれた、こういう経緯をたどっております。  数多くの法律案国会に上程をされて、審議をいたしておりますけれども、一国会審議が終わらないで、継続審議あるいは廃案になりましても、次期国会等においてはほとんどの法律案成立をしておるというのが現状ではないかと思うのであります。ところが、このように数多くの回を重ねておりますこの法律案には、相当問題点がある。この問題点がようやく今日の段階においてつまびらかになりつつあるのであります。  まず第一に、大蔵大臣お尋ねをいたしたいと思う点は、この法律案は、昭和三十九年度の国家予算の決定になる三月三十一日までにこの法律案可決をされておりませんと、予算裏づけがないのではないか、こう思うわけであります。今日昭和三十九年度の予算の中にない金を一般会計から二十億国民金融公庫に出そう、こういう法律案でありますが、この二十億という金が一体予算的にどのように処理されていくものか、これが一つの疑問点でありますので、最初にお伺いをしておきたい、こう思うのであります。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本案は、三月三十一日までぜひ通していただきたいという考え方、また今度は通していただけるだろう、こういう考え方で御審議お願いしたわけでございますが、御指摘のとおり、三月三十一日までは未成立でございましたので、現在予算的な裏づけはございません。しかし、本法が通りましてこれが確定すれば、何らかの処置をして財源的には処理をいたしたい、こういう考えでございます。
  6. 柴谷要

    柴谷要君 私ども日常大臣に接しておりますものは、何らかの処置によってということで了解はつきますけれども国民全般には何らかの処置ではわかりません。そこで、いかように処置をしようとお考えになっておるか、明快に大臣としての御答弁をいただきたい。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) このままの姿で通していただければ、予備費をもって支出をいたしたいという考えでございます。  しかし、何か附帯決議かなんかが行なわれまして、かかるものは予備費から出すことはよろしくない、補正予算等を組むときがあったら正々堂々と財源措置をすべしとでもいうような附帯決議を突きつけられるということになりますれば、院議尊重という立場で、別の財源措置をしなければならないわけでありまして、その意味で何らかの措置をいたしますと、こう申し上げたわけでございます。
  8. 柴谷要

    柴谷要君 本法律案国会を通過いたしますれば、予備費でというのが大蔵大臣のただいまの見解のようでありますから、その点はわかりました。  たいへん大事をとっているのかどうか知りませんが、先のほうに回って附帯決議のことまで言われておるようでありますが、二十億くらいのことで、補正予算を組んで出せなどというけちなことは本大蔵委員会にはあり得ないと、かように私は思います。  そこで、次にお尋ねいたしたいことは、大体、国民金融公庫資本金二百億でありますが、これが二十億ふえまして二百二十億、その二十億がいわゆる農地被買収者のもとに貸し付けられる、こういう法律案でありますから、至って内容は簡単なものであります。しかし、その意味するものは非常に大きいのであります。  そこで、今日まで国民金融公庫が扱ってきておりまする実情というものをひとつお尋ねをしてみたいと思うのでありますが、一般市中銀行から融資を受けられない階層が多く利用している国民金融公庫であります。これをたよりに申し込みをするわけでありますけれども、一体今日の貸し付け状態件数においてどのくらいあるのか、申し込みに対して貸し付け件数はどのくらいあるのか。それから、要求金額申し込み金額に対して、貸し付けてある金額はどのくらいなのか。それから、申し込みをしてから何カ月くらいで一体貸し付けされておるのか。こういう点について、これは大臣でなくてけっこうでございますから、担当者のほうからお答えをいただきたいと思います。
  9. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) まず、総貸し付け件数でございますが、毎年貸し付けます件数と、現在持っております件数貸し付け残高と二つございます。そこで、その両方につきまして現状を申し上げてみたいと思うのでございますが、御承知のように、国民金融公庫といたしましては、まあ普通貸し付けというのが一般的な貸し付けでございまして、そのほかに恩給担保貸し付けをいたしております。これは公庫だけがいたしておるものでございます。そのほか、従来やっておりましたものとしては、特別小口貸し付けとか、遺族国債担保貸し付けでありますとか、引き揚げ者国債担保貸し付けでありますとか、いろいろございます。そういうものも全部ひっくるめまして申し上げますと、はなはだごたごたいたしますので、一番中心であります普通貸し付けについて申し上げてみたいと思います。  まず、普通貸し付けにおきまして、申し込みでございますが、三十八年度におきましては、申し込み金額が三十八年度の合計で二千四百二十八億六千六百万円、件数にいたしますと大体五十万件であります。これは五十万件と申しましても、直接私のほうの店で貸しております、直接貸しと申しますが、これが三十八万五千八百件、代理貸しということで相互銀行、信用金庫、信用組合等お願いしておりますが、その件数が十二万一千六百三十三件、金額で申しますと、直接貸しのほうが千九百五十億、申し込みでございます。代理貸しのほうが、三百四十三億、こういう申し込みを受けております。——失礼いたしました。申し込みが、三十八年度は直接が二千七十一億でございます。さっきの数字は三十七年度でして、間違いました。代理貸しが三百五十七億。  それから、貸し付けいたしましたものを合計いたしますと、三十八年度で四十五万件、うち直接貸しが三十四万一千件、代理貸しが十万八千七百四十九件。金額が、直接貸しが千二百九十三億一千万円、それから代理貸しが三百二十一億、合計いたしまして千六百十四億という貸し付けをいたしております。  それで、申し込み金額の一件平均でございますが、これも三月で申し上げますと、直接扱いの分におきましては、一件当たり平均五十三万六千円でございます。これに対しまして、貸し付けましたものは、三十八年度の直接貸しにおきましては、一件当たり平均三十七万八千円、代理貸しのほうが二十九万五千円、この両者を合計いたしまして平均いたしますと、三十五万八千円というような金額になっております。  したがいまして、わりあいに金額は小さいのでございますが、このうち、これはよけいなことになるかもしれませんが、十万から五十万というところが一番多うございまして、三十九年度四月では四九・六%、五十万から百万円というところが四四・〇%、この十万から百万くらいのところが大部分を占めておるわけでございます。  大体、概況は以上のようでございます。恩給担保その他の件数も、一件当たり平均は低うございますが、もし御尋ねがございましたら、お答え申し上げます。  それから、いまちょっと申し上げるのを忘れましたが、さっき申し上げましたように、大体申し込みと受け付けて貸し付けたものとのこの比率可決率でございますが、件数におきましては、これは最近の三月末の数字におきましては九一%、金額は六七・二%。これは、申し込み金額が少し多い場合には、こちらで査定しておりますので、金額可決率は六七・二%でございますが、お申し込みになりましたもののうち、お貸し付けできませんというふうに申し上げますものは、三月においては九%、九一%は貸し付けをいたしております。  それから、処理日数でございますが、大体申し込みを受けましてから貸し付けまでに何日くらいかかっておるか、これは各地方に百カ所ばかり支店がございまして、支店によっていろいろ違いますけれども、全国平均してみますと、ことしの三月は二十五日、四月は二七・九日とちょっと延びておりますけれども、大体二十五、六日というところが最近の実情でございます。
  10. 柴谷要

    柴谷要君 いま御答弁いただいて、こまかい数字はわかりましたけれども貸し付け比率件数金額の問題のパーセンテージは、普通貸し付けと旧甲種貸し付け両者平均であろうと思う。普通貸し付けはそれよりはるかに上回っている。件数にして九四・二%、金額にして約七〇・二%ということで、普通貸し付けは非常に高い。しかし、申し込みをしたけれども、借りられないというのが、件数において五・八%あるわけなんです。五・八%という内容についてひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  11. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 御承知のように、私のほうは政府機関でございますから、一般金融機関から借りられない零細企業者に対してできるだけ資金のごめんどうを見たいということにしておりますけれども、やはり一種の金融機関でございます。法律の中にもございますように、適切な事業計画を有し、その生業資金貸し付けて、それが遂行する能力を持っていると認められるものに対して貸し付けるわけでございまして、計画がずさんで、とてもこれはこういう形ではお貸し付けできない、あるいはもう初めから回収見込みがないというようなものは、金融的見地から、やはり政府機関といえども回収見込みがないということでお断わりを申し上げるのが、その否決の実態でございます。
  12. 柴谷要

    柴谷要君 ただいま答弁の中に、回収見込みがないから打ち切ったのである、こういうお話金融機関でありますから、当然、貸したけれども返えせぬという見通しの立つものは、貸せぬと私は思うのですけれども、そこで、五十万金融公庫お願いをしたところが、最終的な査定でこれが三十万しか融資をされなかった、こういう事例があるのですね。しかも、五十万貸し付けを要求した人の資産を見ると、たいへんなもんなんです。そういう調べ方は一体どこでしているのですか。私は件数が幾つもある。事実、名前から住所から全部申し上げて、彼の持っている資産状態から何から全部御披露申し上げて、あんたの判断をここで仰いでもいいんだけれども、そんなことしたら時間がかかるから申し上げませんけれども査定が非常に辛いというか、極端に申し上げますと、調査を綿密にし過ぎて、人を疑って疑い抜いている、こういう結果が出ているように思うのですけれども、それらについてひとつ御見解をお示しいただけたら、お願いをしたい。
  13. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) この審査は、各所の窓口におきまして受け付けまして、各担当者がいろいろお話を伺い、また実際にも調べまして、その上で役席の決裁を得、金額が大きくなりますと、本所に稟申して決定するわけであります。  中にはいろいろ問題のあるのもございますが、ただ、資産が非常に多いという場合におきましては、私さっきちょっと申し上げそこねましたけれども、私のほうといたしましては、自己資金でもって何とかやりくりがつくということが明白にわかります場合には、なるべく自己資金お願いしたい。少ない政府資金でもって広くごめんどうを見たいのでございます。そういう場合には、余裕金がある場合にはお断わりする。それからまた、われわれの対象といたしまして、御承知のように、中小企業相手にしております。そのうちでも小の企業相手にしておりますので、業態が相当大きくなってもう私ども対象ではないというふうに認められるものにつきましては、政府機関におきましても中小企業金融公庫等機関もございますし、それから一般金融機関でも、その程度になりますと相当担保力があるということで、お断わりする場合もございます。ケース・バイ・ケース見ないとわからないのでございますが、おっしゃるようなケースがどこでどう発生したか、私つまびらかにいたしませんけれども、その辺は平素できるだけ訓練をいたしまして、余裕金のあるものはお断わりする。しかしながら、資金効果から見て、それを査定したのでは意味がないという場合には、なるべく査定しないで全額貸すようにということをいたしております。  それから、貸し付け限度が私のほうは二百万円までと限られておりますので、同一人に対する貸し付けがその金融をすることによって二百万をこえるという結果になります場合には、どうしても二百万におさめざるを得ないということになりまして、貸し付け金額査定されるということもございます。  いろいろな事由がございますのですが、先ほど少しお答えをはしょりましたので、おわかりにくかったと存じます。おわび申し上げます。
  14. 柴谷要

    柴谷要君 私は決して、担当者が日夜御苦心なさっておられることについて文句をつけようというのじゃありませんが、最近国民金融公庫利用者の中には、税金対策のために特に申し込みをする、こういう事例を実はあるところで知ったわけです。だから、そういうものを徹底的に調べまして、そうして貸し付け額を更正する、こういうことならばわかる。ところが、市中銀行には相手にされないけれども、小規模ながらも堅実に事業をやっておる、そこで運転資金融資お願いをした、唯一の金融機関として。まあ正しいことをやってきておるし、これならば金融公庫のほうでも適切に調査をされて、所定の要求額は大体認めてもらえるのじゃないかということで、たいへんな希望を持っておったところが、五十万申し込みをしたところが、三十万だと。これでは、五十万必要とするところで三十万で、まあまあ借りられないよりいいじゃないかといいますけれども、三十万じゃどうにもならぬ。どうしてもあと二十万不足すると、こういうようなことで実は事情を話された、訴えられた場面があって、そこでいろいろ金融公庫の皆さんとも話し合いをしたことはありますけれども、確かに今日とられております態度にそう間違いはないと思いますけれども、そういった金融公庫一本で、しかも、それによってりっぱに営業が継続できるし、またより一そうの前進が見られるということでたよりにしている人が、税金対策かなんかで借り入れする人と同じように扱われたのでは、これはやはりいかぬと、こういうふうに考えるわけです。こういう点について、長い間担当されておって扱われておられるというと、そういうことが何回か起きたと思うのですが、そういう事例がおありになりますか、ひとつお話しいただきたいと思います。
  15. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 先ほど申し上げましたように、直接扱いでも約四十万件近い貸し付け申し込み受けております。審査員の見落とし等もなかったとは申し上げられません。実は私のほうといたしましては、検査部というのを持っておりまして、毎年各支所に出向いて検査をいたしております。その中で、たまにでございますが、おっしゃるように、この貸し付けはこういうふうに査定したのでは効果がないではないか、少しきびし過ぎやしないかというものが若干見られないこともございません。これは要するに、審査員が未熟であるという点に基因するところが大きいと思うのでございまして、毎年審査に関しましては各職員の研修をいたしております。しかし、大ぜいの中、しかも毎日多くの件数を扱っておりますので、おっしゃるようなことは全然ないというふうには残念ながら申し上げられません。  余裕金があって、自分の手元金で何とか補充がつくという場合には、ぜひそちらのほうを御利用願いたい。まあ税金対策のために借り入れをするという、こういうことは論外でございますが、そういうことはしてはいかぬということは常々申しておるのでございますが、審査技術の未熟からそういうことが発見できないということも、たまには遺憾ながらあるようでございます。これはなおよく職員を訓練いたしますと同時に、そういうことのないように機会あるごとに役席等に指示してまいりたいと、かように考えております。
  16. 柴谷要

    柴谷要君 税金対策国民金融公庫申し込みをして借り入れたということはないとすれば、それに越したことはありませんが、事実ありますよ。ありますから、こういう点はやはり調査にあたっても一考を加えられて十分対策を立てられることが賢明だと、こう思うのです。  そこで、公庫貸し付けの中には、運転資金とそれから設備資金と分けてお貸し付けになっておられると思うのですが、その状況を少しくお話しいただきたい。それと同時に、三十五、六年ごろから三十八年度まで——まあ九年度はことしでありますから、三十八年度ぐらいまでに、その移り変わり、いわゆる設備資金がどういうふうな状態で増減されてきているか、あるいは運転資金がどういう経路で増減されてきておるか、それまでひとつお答えいただきたい。
  17. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) これは三十九年四月の現状でまず申し上げますと、運転資金が六〇%、設備資金が四〇%、金額におきましては運転資金が六一・八%、設備資金が三八・二%、かようなことになっております。この状況はたいして変わりませんで、前からありますけれども、それを三十五年から申し上げます。運転資金が、三十五年におきましては件数で六七・一%、金額が六七・〇%、三十六年におきましては運転資金が六四・六%、金額におきまして六五・二%、三十七年度が件数で六五・二%、金額が六六・六%。それから、設備資金のほうはその逆でございまして、三十五年が件数で三二・九%、それから金額におきまして三三・〇%、三十六年は三五・四%の件数金額が三四・八%、三十七年は三四・八%が件数、三三・四%が金額、かようなことになっております。三十九年の四月につきましては、先ほども申し上げたような数字になっております。
  18. 柴谷要

    柴谷要君 これは不勉強でよくわからないので、こういう質問をするわけですけれども貸し付け条件についての業務方法書というのが改正になったようでございますね。個人法人とも五十万円で、特定業種に対しては百万円から二百万円の限度と、これを一律に二百万円に改定をしたようでございますね。そういたしまするというと、個人で二百万円今度は借りられる。これは限度でございますけれども、借りられる、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  19. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) おっしゃるように、前には個人法人区別がございまして、今度は本年の二月から業務方法書を変えまして、個人法人とも二百万円までということにいたしましたので、個人でも二百万円まで貸せる。ただし、これは限度としてそこまで貸せるということでございまして、個々のお申し込み需要を拝見いたしまして、これは五十万円でいい、これは百万円でいいという査定はいたしております。ただ最高限そこまで借りられることになった。  これはなぜかと申しますと、御承知のように、われわれの対象としております相手は、法人と申しましても、いわゆる法人成りと申しますか、家族構成の会社でございまして、個人とそう区別する理由があまりないんじゃないかという点で区別を撤廃いたしました。それから、業種的にも別表業種が大部分でございまして、この別表業種以外のものというのはほとんどございませんで、あまり意味がないということで廃止いたしました。ただ、まあ不適当業種、非常に奢侈に類するようなものにつきましては、やはり政府機関金融でございますから、あまり適当ではないんじゃないかということで、貸付けを控えておるものが若干業種としてございます。
  20. 柴谷要

    柴谷要君 そこで、能力があっても、個人法人は五十万円しか借りられないという制限がありましたから、最高五十万の申し込みしかしなかった。ところが、これが二百万円になりましたから、三年なり五年なりの期間で十分償還ができるという人が、今度二百万申し込みをしたと。まあそれは実情によって百万になる場合もあるでしょう。しかし、それによって、いままでは限度がありましたけれども、これが引き上げられたということになりますというと、金融公庫における資金の量が相当ふえてくるのじゃないか、こういうふうに見るわけでありますけれども、一体どのくらいの増加率を今日お考えになっておられますか、その点をひとつ御答弁いただきたい。
  21. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) これは結果においてどういうことになりますか、二月に変えましてあまり実績をたくさん持っておりませんので、まだわかりませんけれども、私どもは、さっき申し上げましたように、限度といたしましては二百万まで引き上げるけれども査定と申しますか、見方は従来と全然変わっておりませんので、それほど大きく変動はないのじゃないか、かように考えてきたわけでございます。しかし、例外といたしまして、実は百万円以上の貸し付けになりますと、われわれは本所に稟申をすることになっております。個人の百万円超の貸し付けというものもある程度出てきております。そういう点で若干効果はありますが、この引き上げだけによってどれだけ資金量がふえるかということは、貸し付け態度を別に変えておりませんので、それから直接にどうこうということはまだ見当がつきませんし、あまり影響はないのじゃないかというように考えております。
  22. 柴谷要

    柴谷要君 そういう御答弁だというと、五十万を二百万に引き上げたって、意味がないのじゃないですか。やはり個人法人に五十万を二百万円に引き上げてやろうというのは、それ相応の需要があるからこそ、その限度を引き上げられたと思うのです。ところが、いまの答弁じゃ、引き上げてやったけれども、君には二百万円まで限度として貸せるのだぞ、しかしおれのほうで査定をするのだぞ、それで従来と何ら変わらない貸し付けだと言わぬばかりのことをあなた答弁されているのだが、それじゃちょっとこの質問に対して適切な答弁じゃないじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  23. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 申し上げようが悪かったかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、個人でも、百万超という貸し付けもあらわれております。ただ、先ほどちょっと、よけいなことでございますが、申し上げましたように、金額的に申しますと、十万円から五十万円までの貸し付け額が四九・六%、五十万から百万以下のところが四四鬼、百万をこえ二百万以下というところは金額にして四%、件数では一%でございます。その一%のところに個人の大きなものが食い込んでくる。ですから、その影響というものが、十万から百万のところが非常に多いものですから、それを個人を二百万に上げたらこれがどのくらいふえるかということは、件数で一%、金額で四%なんですから、従来の例から見まして、そのためだけでどれだけふえるかということはなかなかはっきりしない。  ただ、最近経済が大きくなっておりますから、その辺の問題で、法人個人を問わず、若干ずつ資金需要の一件当たりの額がふえている。申し込み金の一件平均、それから貸し付けの一件平均というのが徐々に伸びてきております。これは一年に一割とか一割五分ずつふえてきておるわけでありますが、それは別に五十万を二百万に引き上げたからそうなったということじゃなく、経済の実勢がそうなってきておるのじゃないか、かように考えておるので、先ほどのような御答弁を申し上げた次第でございます。
  24. 柴谷要

    柴谷要君 私などは大銀行を相手に金を借りるなんという資格もありませんし、またそういう経験もないのですけれども、まあ大体国民金融公庫あたりには困るときには拝借したいと、こう思っているものですから、関心が非常に高い。それだけに、零細な金額であっても、融資をされたときの喜びようは、大銀行から貯金を引き出して事業をやっておる事業主などと心境が違うのですね。なぜかというと、いわゆる政府関係機関である国民金融公庫から金を借りられたというので、一つの信用がついたという感情を持つ。それが事業の上に反映して、事業意欲も出てくるわけです。融資をされたときの顔を見ますると、たいへんな喜びようなんですね。あの喜びようを見まするときに、私は、貸し付けにあたっては金融公庫の皆さんがほんとうに実情に即した貸し付けをしてもらいたいという気持ちがいつも起きるわけなんです。そういう観点からこういう質問を申し上げるわけで、多少気にさわるようなことを申し上げたかもしれませんが、その点は誤解なきように願いたい。  そこで、償還期限は原則として三年、特定業種は五年と、こうなっておりますね。これを多少、今日の貸し付け状態の中から返済の状態を勘案した場合に、三年、五年でよろしいのか。もう少し延ばせれば、十分回収もできるし、また事業意欲も上そうかり立てることができる、こういうふうにお考えになっておるかどうか、この点をひとつお尋ねしたいと思う。
  25. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) ただいまお話のありました三年、五年の問題は、先ほど申し上げましたように、二月の業務方法書を変える際に、大体両年以内と書いてございます。特別災害等につきましては、さらに二年ぐらい延ばすこともございます。しかし、私のほうの金融といたしましては、やはり運転資金運転資金らしく、そのときどきの情勢を見て融資をするということでございますので、大多数が二年以下というところのあれが多うございます。場合によっては三十カ月、三十六カ月、それから設備資金等では五十何カ月というのもございます。  しかし、一方で、私ども専門語で現貸し決済と言っておりますけれども、まだ貸し付け金の残が残っておりましても、緊急に必要であるということの申し出がありまして、なるほど調べてみると実情はそうだということになりますと、借り入れ金が返済され切っていないうちにまた新たな貸し付けをする、それで前の貸し付けを一部決済して、あとは新しい資金として御用立てするという方法をとっております。それは原則として、貸し付けは三分の一になったときというようなことを言っておりますけれども、これはあくまで原則でありまして、実情に応じて、まだ半分も返してないけれども、非常な金融的な困難に際会して、ここで手を差し伸べなければこの事業はうまくいかないというような場合には、半分以上残っておってもまた新たな貸し付けをして、そして従来の貸し付けはそれで返していただくと同時に、上乗せしてお貸しするという方法をとっております。そういうことでございますので、年限の問題は一応、設備資金運転資金、両方にわたりまして、実情に即して期間をきめたい。なお、これは月賦返済でございますから、毎月の返済額がその企業にとって返済にたえ得るかどうかということも一応見まして、あまり無理な償還になるようであれば期限を少し延ばすというような適切な方法をとらしております。  そういう点で、先ほどからいろいろ御激励を受けましたように、非常に皆さんに喜んでいただいておりますので、なおこの上とも職員の訓練等に気をつけまして、実情に即しないような貸し付けのないようにぜひやっていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  26. 柴谷要

    柴谷要君 だいぶ前段が長くなりまして、これから本論に入るわけですが、そこで、農地被買収者の皆さんの問題が、政府の手によって調査会が設けられて、この三月三十一日までに十分調査をするということで、農地被買収者実態調査、その結果表が出ておるわけであります。大蔵大臣、率直にいって、今日国民金融公庫を利用しておるような実情の人、これと対比いたしまして、一体二十億という金で余るのか足りないのか。この点は、大体調査が完了した上ですから、あなたのお考えになっておるのは、この辺の人までに貸し付けていくというと、二十億じゃ足りない、いや、二十億あれば十分だ、こういう結論、いずれか出ているんじゃないかと思いますが、その辺お持ちでございましたら、お聞かせ願いたい。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国民金融公庫からどのくらい借りたいかというような数字は、総理府の調査でつまびらかにはなっておりませんが、何ぶんにも、御承知のとおり、二十五年統計で二百六万人、こういう多数の方々でございます。でありますし、また、政府に対して国民金融公庫貸し出しのワクをつくってくれという熾烈な陳情もございます。そういう意味からいいまして、常識的に考えまして二十億で足れりというふうには考えておりませんが、御承知のとおり、国民金融公庫も他にも貸し付けなけりゃならないところがたくさんございますので、そういう意味でバランスもとったりいろいろな意味考えまして、せめて二十億はワクをつくって貸し出し業務を始めたい、こういう考え方でございます。
  28. 柴谷要

    柴谷要君 どうも、根拠はないけれども、まあまあひとつ二十億くらい貸しつけて、多少不満がある人はがまんしてもらおう、率直にいってこういうことですね。そうでしょう。実際に実情を調べていったら、非常に困る人がいるから、こういう人たちに幾ら幾ら、こうすれば、この人たちがあるいは生業資金として活用し、運転資金として活用して、何といいますか、いろいろ考えておることがその融資によって実現をされていく、こういうようなことで、政府がこまかい配慮の上で貸し付けようという金額じゃなくて、まあまあその農地被買収者の皆さんが営営辛苦して持っておった土地が安く売られてしまった、それに対して何とかしてくれということに対して、政府が国民金融公庫法一部改正で二十億だけ融資しよう、こういうことでしょう。科学的に検討した結果、調査が完了した上で、適切な手を打つにはこれくらいの金が必要だ、こういうことで確信の上に立った二十億ではないと、こういうふうにわれわれは理解してよろしゅうございますか。まあ大臣ばかり責めるわけじゃありませんが、担当者の人でも、明快な答弁ができるなら、してもらってけっこうです。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、せめて二十億、こういうことでございます。せめて二十億という考え方を、あなたがおとりになると、まあ使い道にならぬ、こういうふうに御認定になるかもわかりませんが、この総理府の統計で見ますと、借り入れ金を必要とするという実情は明らかになっております。これは一般の人に比べまして、借り入れておる世帯というものが、事業資金一般平均から見ますと四九%しか借り入れ金をもってやっておらないということでございますが、被買収者は七一・三%の借り入れにたよらなけりゃならぬ、こういう数字は明らかになっております。そういう意味で、初めはとても二十億のようなものではなかったのであります。政府が二百六万人を対象にして金を貸し出すということになるなら、相当なもの、最低二百億くらいということがあったようでございますが、国民金融公庫は、御承知のとおり他の金融機関から借り入れられない者、こういうことでございます。しかし、まあそんなにとてもバランスの上からも資金の余裕もありませんので、先ほどから申し上げるように、せめて二十億は最低ワクをつくって、これら被買収者貸し出しに応じよう、こういう考えでございます。明確な、二百六万人のうち何万人要求しておって、それに貸し出しを予定しておる二十億が、平均五十万として何世帯というような計算はいたしておりません。
  30. 柴谷要

    柴谷要君 昨年度の調査会の調査の結果でありますけれども、生活状況調査ということで全国被買収者世帯一万を抽出をして調べられた、こういうことであります。ちょうど、朝日新聞がつい最近、池田内閣に対する国民の支持はどのくらいかなんて、いろいろ統計を出されましたね。あの朝日新聞の統計はたいへんな間違いがあると思うんです。それは抽出方法でやっておるから。それから、かつて社会党の問題も、朝日新聞が統計など発表したんだが、一つも当たっておらなかった。ああいう事例は、あれ当たっていないと思うのですよ。大蔵大臣、今回のあの朝日新聞の統計はやはり抽出方法でやっている。この一万人の抽出方法をもって実態がつかみ得たとあなたはお考えになっておられるかどうか、この点をひとつお聞かせを願いたい。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは絶対的な数字ではない、こういうように考えます。しかし、まあ全部が全部調べるということはなかなか不可能なことでございます。しかも、それを調べるということになれば、一億九千万円の金を出してあの程度のものしかできないのでございますから、これは全部やるということになれば百億出さなければならぬということになるのであって、いままでの統計は大体抽出方法をとっているわけでございますので、その在来の例に徴しての信憑度というものではかるという考え方をとっているわけでございます。
  32. 柴谷要

    柴谷要君 私は、同僚議員の質問もありますから、もう少しでやめたいと思うのですが、無作為的抽出でなくて、作為的抽出の調査である、こう私は断定せざるを得ない、こう申し上げたい。これは見解の相違だと大臣おっしゃるだろうから、これは答弁要りません。私は、あくまでもこれは作為的な調査である。  そこで、この前後五つの国会を通らなかったような法律案が今日ここに出ているわけでありますけれども、それがようやく私どもの目についたのはこれが初めてなんです、こういうような調査結果というのが。これは最初から、最初この法律案を出すときにこういう実態調査というものが出て、そこで議員に、実態を知らしめて、しかも、これが国民の支持を得て国会を通過するという法律案でなければならぬ。ところが、五回も審議未了になってきて、今日いよいよどたんばになって——通過させようという、こういう熱意はわかりますよ。その段階になって初めてこの調査が出てきた。しかも、それが無作為的な抽出であればいいけれども、作為的な抽出などを出されて、さようごもっとも、この法律を通しましょうというわけにわれわれはまいらぬ。  そこで、もっと欲をいえば、ほんとうに無作為的な抽出調査をやられて、そうしてこれは世論の上に立って、農地被買収者実情というものは気の毒だという国民世論が上がってくれば、百五十日の国会のうち初日から十日もあればこれを完全に通る法律ですよ。それが百五十日の国会がたち、四十日延びて百九十日もたった最終のこの段階でこれを議論しなければならぬということは、非常に私たちとしてこれは悲しい現象だと思う。こういうことはあげて政府の責任ですよ。毎回毎回りっぱな資料を出してくれと言ったって、出てこない。どんぶり勘定のように、二十億大体要るであろう。これでまあ大体がまんしてもらおうという二十億なんですよ。根拠ありませんよ。もっと実情に即して、これらの気の毒な人たちを救済するためにはこれだけのものが要るのだ、だからこれだけの金が必要だということなら、三十億でも四十億でもかまわぬと思う。しかも、国民の世論の背景に立っていかれるならば。ところが、ようやくこの段階にきて実態調査なんというものが出てきている。私どもこれを読ましていただいておる。それではやはり法案を通すという誠意が政府当局にあるのか疑わざるを得ない、こういうことなんです。  それはどんな法律案だって、反対党であれば一応反対という論拠もありましょう。しかし、反対の中にも、政府と話し合っているうちに賛成になって、どうです、国有財産法の一部改正なんか賛成で通している。りっぱな賛成討論。最初は反対だったのですよ。衆議院は反対なんですよ。修正案だけ賛成ですね。ところが、参議院の良識をもってすれば、ちゃんと賛成してあげる。  そのように、大蔵大臣、今後政府は考えられて、あすに迫った終末国会のきょうこの審議をするにあたって、ぜひ強行採決というようなことをあなたのほうで考えないで、より一そう資料をたくわえて、世論の背景の上に立って、農地被買収者の方々がもっと喜ばれるように世論が支持をするような内容にして、そうしてお出しなさい。再提出をしなさい。それを私は望みまして、同僚議員にバトンを譲りたいと思います。この点は、池田総理にもお伝えをいただきたいと思います。
  33. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣お尋ねいたしますが、この前たしか栗原委員質問にも少し出たかと思いますけれども、土地の問題なんですが、特に農地にも関連してくるわけですが、あるいは閣議等におきましても、地価の騰貴に備えていわゆる地価対策というようなものをいろいろお考えになっておる。一体土地を私有するということですね、片一方の自作農創設法、ああいうものについては農地は農地そのものでなければならぬという、占有というようなものの考え方もあるわけなんです。そこで、土地の私有と申しましょうか、もう一つは、片一方でいえば、原則的に私有、これは異議のないところ、ところが、片一方には公共性というようなことも十分考えなくちゃならぬ。しかも、それが国の発展、もろもろの条件によって、そのときどきにも私はまた一つの考え方もあろうと思います。が、一体こういう問題についてどういうふうにお考えになっておるのか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 土地はもう私有で、侵すことができない原則ということは、そのとおり考えております。が、この侵すことのできない私有権に対しましても、公共のため、公益優先論から考えましても、公益のためにこれを使う場合には、土地収用法等の規定にもありますとおり、私権はおのずから制限をせられるこれも議論のないところでございます。でありますから、土地に対する私有権と公共性による使用権、私権制限という問題に対しては、法制上も明らかになっておるわけでございます。  ただ、問題は、新憲法、現憲法における私権尊重というものと、それから日本の特殊性——世界じゅうで相当小さい国でありながら、人口は非常に多い。しかも、在来の用途から新しい要請によるものに転用せられるということが非常に激しい。で、大東京のように非常に過密都市というか、世界に例のない状態、こういう現実に即して、憲法でもっていう、また法律論からも当然の議論としていわれておる私権と、それからその私権の制限というものを考えますときに、やはり公益優先という、ちょうどロンドンでもってニュータウン法をつくりましたときに、ニュータウン法というものが国としてどうしてもやらなければならない事情である以上、私権は制限をせられる、本法は公益を優先するというたてまえを明らかにいたしましたように、やはり私は日本の土地というものに対しては、公益性という問題をいままでの考え方よりもより拡大していく方向にあるだろう、こういう考え方でございます。
  35. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 日本の民主化というようなことは、一つの国家的な民主化というのは、非常な私は高い意義のあることだと思うんです。あなたがおっしゃるように、私有というものに対する一つの公共性あるいは公益性、これが私有を上回らなくちゃならぬというものの考え方からきたときに、その公共性といっても、道路を広げるのも一つの公共性なんです。あるいはここにダムをつくるというようなときも一つの公共性である。そういうような点、それじゃ当時の時価としてはこれは適正な値段であろう、片一方の売る側からいえば不当に安い値である、こういう争いがいろいろありまして、事が解決しておる。農地の問題は、日本の封建制を打破するのだというその上に立って、民主主義を確立するのだという大前提、大使命、今日持っておる憲法の一本の大きな柱を建てるための一つの立法措置であったというふうに了承をしておるんです。この点は大蔵大臣もお認めになっておると思います。  そこで、こういうことに対する補償の問題にからんでまいりますが、これはたとえば東京都に例をとって、銀座の道路を広げるということになる、これも公共性のためだということになります。君はそこのところ悪いけれども立ちのいてくれ、そのためにいま時価三百万なら三百万で売ったとします。ところが、十年たてばあの土地は三百五十かから四百万、五百万、六百万と上がっていくわけです、土地の地価は。これも、しかし、土地収用法と公益性の問題についてやられたのだ。そういうときの矛盾というものは、私たちも認めなければならぬと思うのです。しかし、それはいま育った一つの大きな国という、民族という大きな立場から、そういう問題について泣き寝入りと申しましょうか、運が悪かったというのであきらめているというのでしょうか、そういうような形で片づけられておる問題だと思うのです。こういうことについてどういうふうに、片一方では報償をやらなければならぬ、片一方のほうはもう捨てておけばいい、こういうお考えなのか。今後こういう問題は、特に今度のオリンピック等の問題についても、道路拡張の問題はたくさんあると思うのです。あるいは災害防止等の問題については、土地収用法等の発動は数多くなっておる。あるいは今後道路をたくさんつくらなければならぬということで、公共性の問題から道路開発ということが相当行なわれておるわけでしょう。みんな農民の人たちは土地を、安い値段ではおれのところはいやだと言っておるのに、取り上げられた。そこで道路が一本通れば、他の値段というものは、地価はうんと上がるわけです。そういうものに対するアンバランス、そういうことは妥当なのだと。片一方では強権を発動してやっておるそのさなかに、こういう法律が片一方に出てくるということは、私は何か矛盾を感ずると思うのですが、大臣は少しもそういうことについて疑義がないのか、どういうふうにお考えですか。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お説につきましては、最高裁判例も出ておりますとおり、また各国民自体ももうしごく割り切っておるわけであります。私権が制限せられる場合には、その一方において、あなたがいま御指摘になったように、集団生活、大多数の人たちの利益を確保するためにやむを得ず私権の制限が行なわれる、こういうことに対しては、これはもう明らかになっておるわけであります。だから、この問題に対してはあなたと全然意見の食い違いはございません。食い違いがありとすれば、その後の問題、非常にはっきりしておるにもかかわらず、農地被買収者に対してだけなぜものをやるのか、こういうことをいま御指摘になっておるのだと思います。そうですね。そうであれば、申し上げます。  政府はなぜ農地被買収者に対して報償などをやろうと、こういうことになたったかと申しますと、これは私はこの前も申し上げたとおり、これは地価が非常に上がったからその差額をよこせ、差額を払ってやろう、こういう考えではないわけであります。でありますから、報償ということを考える。なぜ報償か。これは私は率直に申し上げるが、二つの議論がございます。これはこれからも国会であの法案を御審議の過程において、非常に大きな点になると思いますので、明らかにいたしておきますが、二つあります。  それは、あの農地解放というものは確かに歴史的にも必要であり、また現在非常に、そのためにこそわれわれの生活の基盤は確保せられたという認識に対しては、だれも評価を変えるものではないと思うのです。  ところが、そのときに、あの農地解放というものは自作農をつくるということが法律の目的であります。自作農をつくるということでありますから、自作農以外に、法律の目的以外にこれを転用、転売せられるときには、これはもう当然憲法の規定によって、解放をせしめられた人に先取特権を与えるような法制であるべきだったと、私はそう思います。しかるにもかかわらず、この法律には解放だけを規定しまして、これを転用してはならないというだけであって、他に転売、転用をした場合の処置が書いてなかったということであります。  もう一つは、自作農創設のために政府が一時買い上げたものであるけれども、政府は、これを農地の用に供さないで他に転用をしておったり転売をしておった場合でも、その農地被買収者の要求があればこれを縁故払い下げをするような道を開いてなかった。これは法律的に農地解放を急ぐのに急であって、これはメモもそういうことであった。農地解放をやれと、こういうメモであったと思います。そういうために、その後の処置を全然考えていないで、自作農創設をやるのだと、こういうことでありましたから、法制上そうなったわけであります。  ところが、その後の状態によって、二十九年に、御承知のとおり、皆さんも審議に参加をされたと思いますが、私も審議に参加をしたのですが、当時、状況やむを得ず、他にこれを転売してもよろしいという法律をつくったわけであります。そこから農地被買収者問題が急速に起きてきたということは、われわれは自作農創設でもって安い値段で解放したのだ、それを他に売ってもよろしいというふうに二十九年の法律によって、しかもそれが都市周辺などは何百倍、何千倍になるという場合に、われわれに何らの処置もしないで、一体公平な処置か、こういう問題になるわけであります。  もう一つの問題、これは国会も政府も先取特権も与えず、縁故払い下げもせず、そういうことをした以上、政府も国会も何らの処置をとらない場合にこういうことが起こってきたわけであります。転売をした人から売買利得税を取る法律案を出そう、これが問題だったのです。皆さんも選挙のときにそういうテーマでもって国民に訴えたこともございますが、そういうことがある。これは法律がそういう万全でなかったということをもって国民の間に大きな争いが起きる、ここに大きな問題があります。  もう一つは、現に政府がいま持っておるものがあるのです。少なくともこれは売り払って財源としてそれは返すべきだ、こういう議論があるわけでありますから。  第二の問題は、政府対被買収者の問題でありますが、第一の問題は解放した人と解放を受けた人の争い。国民の中に大きな争いが起きるということは、政治的に、行政的に見ても、これは未然に阻止しなければいかぬ、こういうところに今度の農地被買収者に対する法律、いわゆる俗にいう報償法案なるものを提案したわけでありまして、これはただ圧力とか何かによってやったものではありません。非常に私は高度の政治的な感覚に立って、こういう争いというものは未然にちゃんと阻止しなければいかぬ、こういうところに政府の農地被買収者問題を円満に解決しようというほんとうの基本的なものの考え方があることを御理解いただきたい、こう思います。
  37. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そんな矛盾した話はない。第一のこれが占有権の問題について、大臣、いろいろこうなったということは、あげて自民党の責任なんですけれども、この点については、たとえばもろもろの改正が行なわれているわけです。われわれのほうは反対して通している。反対なんです。なぜ反対したかというと、いまあなたがおっしゃるようなことの意味合いにおいて反対をしているわけなんです。そういう点については、ここに野溝先生がお見えになりますから、こちらのほうでいろいろお話し願えますれば一番いいわけですから、そういう問題は別として、値段が安いというお話がございましたが、判決でも値段の問題については正当だというようなことを言っておりますから、値段のことはとやかく言いたくありませんけれども。  それならば、私が先ほど例を引きました、たとえば銀座等の道路拡張のために値がうんと違ってくるわけです。これはインフレでどうこうという問題じゃないですよ。そうじゃなくて上がっておるわけです。そういう問題については矛盾をお感じになりませんかどうか。やむを得ないのだと一言で割り切っちゃっているわけです。それは数が少ないか多いかということは別ですよ。声があるかないかということは別ですよ。人が言うとか言わないとかということじゃなくて、それを安く強制収用された人は絶対にいいとは言っておりませんよ。不満でしょう、いい場所を立ちのかされたということについては。あるいはあのときに持っておれば、いま何億、何百億になったと、こう勘定されておると思うのです。数は少ないかもしれない。やはりそういう人たちが営業の場所すら失って、生活にも困っておることは私はあると思います。そういうようなことについて、法律があるからこれはあたりまえなんだと、こういうふうに大臣は割り切っておられるかどうかということがお聞きしたいのです。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もうあなたと同じように割り切っております。これはもう最高裁判例のあるとおり、割り切っておるわけであります。
  39. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あとは議論になりますから、その次の問題にここで進みます。そういう点がわかれば私はいいわけです。あなたが、公共のために、あるいは国策上と申しましょうか、国のゆえにおいてそういうことはやむを得ないのだ、大きな国家目的のためには、土地収用法等でやる、あるいは農地法等でもそういうことはあり得るのだ、こういうことを確認されたということについては、それは全く意見一致ですから……。  その次に、それからもう一つ、次に今度は、法律ではなくて、いわゆる戦争中等における、あるいは戦後、戦中、戦前、いろいろな問題がございますが、こういう人についてはあなたはどういうふうにお考えになっておるか。公職追放ということがあったわけですね。これはいろいろな意味合いにおいてあった。生活を全くこれがために失わされた人があるのですね。こういう人に対してはどういうふうにお考えになりますか。これまたやむを得なかったというふうにお考えになるのか。こういう人にも生業資金貸し付けてやらなければいかぬが、報償も出さなければいかぬというふうにお考えになっておるのか。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公職追放とか、それから戦犯として抑留せられた者とか、戦犯として処刑をせられた者、こういうものに国家賠償を行なうという問題に対しての御質問でございますが、これは、こういう人たちは国家賠償のようなそういう訴えを起こさない、こういう現実であることは事実でございます。私たちはたいへんこの方々はお気の毒である、民族再建のためのやはり大きな犠牲である、こういうふうには考えておりますが、いかんせん、憲法に優先せられる占領軍最高司令官の占領下にあったことでありまして、法律上これらの方々に賠償をする、国次賠償の責任ありという法律論のたてまえには立っておらぬわけであります。でありますから、他の一般の処刑された方々についても、抑留された方々についても、一般のように、軍人恩給とか扶助料とか、そういう制度の中で処置いたしておるだけでございまして、こういう問題に対して、いま国家賠償をしようというような考え方には立っておりません。
  41. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたは先ほど、農地被買収者についてはいろいろと、三つ、四つほどの理由をおあげになりましたが、こういう理由はこういう人たちには適用はできませんか。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはやはり法律でやったわけではないのでございます。占領軍最高司令官のメモランダムは日本憲法に優先するものである、こういう前提に立って行なわれたわけであります。でありますから、どうもこういうものと農地被買収者に対するいわゆる自作農創設法に基づく措置というものと同一なものではないというふうに考えております。
  43. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 農地解放は、出てきた理由は、これはあなた御案内のとおり、当時田中さんも国会におみえになったと思うのですが、出どころは、どこから出ているかということは、私が言わなくてもおわかりだろうと思うのです。だから、片一方は至上命令的なものでしょう、これは。ですから、違うということは、なるほど国内の形式的な違いはあったろうと思うのです。しかし、追放令も一つのメモランダムであって、これもあってそうして日本政府の指令として出ておるわけですよ。その意味なり——戦犯の問題は別ですよ。裁判ですから。そうじゃなくて、公職追放の問題は話は違うとおっしゃるが、私は、技術的な小手先細工の、しかも小指の先のというような話じゃなくて、もとは同じなんですよ。それは小手先の、小指の先だけの違っておるというような議論でこういう問題を解決をしていくことは間違いだと思うのですよ。矛盾があると思うのです。  なお、これについていえば、たとえば在外資産というものは、御案内のとおり、ヘーグの陸戦条約でちゃんと保障されているのですよ、私有というものについて。ところが、これも、これは条約ですね、日本は条約でもってこれは放棄しますということを宣言したわけなんです。だから、私有財産というものを法律と同じ条約のたてまえで放棄させられたんですよ。そういうものに対して、いわば別なことばでいえば、賠償の引き当てになったという関係にもなっているわけです。こういうものに対して、もうこれも法律でやったんだ、やむを得ないんだ、こういう一言でこの問題が解決していいものかどうか。  やるならやるということで、矛盾というものはなくて、筋が一本通っておらなければいかぬですよ。一番おそろしいことは、政治が、少数であろうと多数であろうと、声が小さかろうが大きかろうが、公平ということが一番大切なんですよ。いかにして公平に行なわれるかということが政治の姿勢として一番正すべき筋だと思うんです。そういう点について、そういう問題はどういうふうにお考えになっているか。  あるいは、戦争中に類焼があったらたいへんだから、おまえのところは建物強制疎開だといって、みずからの家をこわして、自分の家がなくなっちゃった人がある。こういう人たちの当時のものが、それじゃあなたがあとで、これもやむを得なかったんだ、これも泣き寝入りしてください、しかし農地のほうは考えますよということでは、それでは不公平じゃないかという点で例として出している。あるいは学徒動員で引っぱられて、あるいは学徒出動といって、自分の人生コースというものはある程度きめておったのが、そういうために人生がむちゃくゃになってしまった人がある。負傷をし、あるいはそういう機会を失ってしまって、人生が余儀なくゆがめられた人があると思うんです。あるいは危険だから、私はひとついなかのほうに疎開しようと思った。ところが、あなた家があるじゃないか、家を留守にしてくれると焼夷弾が落ちたら焼けてしまうから、おまえさんそこにおってくれろと言われた。簡単に疎開すら許されなかったのです。当時非戦闘員の人で、あるいは徴用の人でもいいのですよ、自分はこういう仕事をしておったのだが、おまえはこっちへ来いといって、徴用工ということになってやらされ、人生むちゃくちゃになった。あるいは非戦闘員で疎開しようとしたら、おまえ残れといって、そこで死んでしまったりあるいは負傷をしてしまったりした人がある。これもやむを得なかった、あの当時の情勢としてはやむを得なかったのじゃないかと、社会通念は私は割り切っていると思うんです。  ところが、片一方では、そういうものに対してやるということになれば、こういうような問題についてどうやろうとしているのか。一応私は、公平だということについてはあなたも異議がないと思います。そういうことについてどうやっていこうとするのか。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地被買収者の問題につきましては、私からお答えするよりも、総務長官の担当でございますから、総務長官のほうがいいと思いますけれども、せっかくの御質問でございますから、お答えを申し上げます。  これはまあ、御承知のとおり、基盤が三つに分けられております。一つは、戦争中の疎開の問題とかいろいろな問題、これはもうこの当時の憲法、当時の総動員法に基づいて適法にやられたものであり、当時としてはこれはだれも異議の申し立てられないような法制の中にあったわけであります。  それから、もう一つは、あなたが御指摘になったような外国の問題であります。これはヘーグの陸戦法規等に明定のあるものは別にしまして、無条件降伏という世界の歴史にない新しい戦争終結方法をとられたということによって、非常にいままでの世界史にないいろいろなものがあったわけです。その中で最も大きなものは、一体戦犯裁判というものが有効かどうかという問題さえもあるのでありますから、こういう新しいケースのものが矢つぎばやに行なわれた。こういう問題は、やはり戦争の当事国同士の関係及び外交上の問題は別にして、被害を受けた国民と政府との関係に分かれておるわけでありますが、いままでは、戦争に基因するものに対しては政府は責任は負わない、こういうことで政府としても統一見解を出しておるわけであります。まあしかし、引き揚げ者の問題等でいろいろな議論も流れておるかたわら、しかし、絶えず負けたり勝ったりしておる歴史を持っておる西ドイツやイタリーは、国民がそのよりよい生活を享有する前に、今日の基盤をつくる前に、犠牲になった人たちに対する処遇をまずやれ、こういうことで現にやっているじゃないか、こういう議論もございますが、現在の日本の状態からいいますと、いずれにしましても、戦争に対しては政府に財産権その他に責任はないという統一見解を出しておることは御承知のとおりであります。  第三の問題は、さっきあなたが言われたとおり、農地解放の問題に対しては追放と同じメモランダムケースのものじゃないか。これはそうでございます、確かに。そのとおりのこと皆さんも御存じですし、私も審議に参加したことでございますから承知をいたしておりますが、そういうことをいうと、憲法もメモランダムによって直したんじゃないか、こういう問題いろいろあるのであって、やはりそういう戦後のメモケース、メモだけで処断された、処理されたもの、そのメモを受けて国会で立法をして、新しく国会でもって議決をしてやったもの、こういうことに対しては最高裁の判例をまつまでもなく法律上は処理せられておる、こういうことになっておりますから、法律的には明らかな結論を出しております。  明らかな結論を出しておるにもかかわらず、なぜ一体新しいものをやるのか。新しいものの中には、この間処置をしました未亡人加給の問題がございます。第二の問題として出てきたのが農地被買収者に対する交付公債を交付しろ、こういう問題になったのですが、これは未亡人の問題に対しては御異論がなくて現在施行せられたわけです。あとは新しくここで提起せられた農地被買収者の問題、未亡人に対して加給をしたという問題とどこが違うか、こういう問題だけが残るわけでございますが、その問題に対しては、先ほどから申し上げましたように、国民の中にこのまま何らかの処置をしないと争いが起きる、好ましいことではない、また立法上もなすべきことをもう少し手を入れればよかったじゃないか、こんなことを政府があえてやらなければならないようなことはなかったのだ、というようないろいろな議論がございますが、政府としての立場から見ますと、農地被買収者に対しては何らかの処理をしなければならぬ、こういう結論に達したわけでございますが、最終判断は国権の最高機関である国会の審判にゆだねる、こういういま立場をとっておるわけであります。
  45. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣ね、あなたはいろいろなことをおっしゃるけれども、私はこういう例をあげましたけれども、こういうことは裁判で争えば、最高裁その他でやれば、結論はどちらが勝つか負けるかというようなことはわかっておるから、だから、そういう結論は農地の問題と同じだと言いたいのです。だから、その点はおわかりと思うのです。  憲法の問題、あなたお出しになりましたがね、憲法はこれは降伏の条件で、これはメモランダムと同じじゃないのですよ。これは降伏の条件ですから。これは明らかにしておかぬというと、あなただけしゃべって私がしゃべらないでおくと、認めっぱなしになるから、これは一言言っておかなくちゃならぬですが。  貯金とか保険の問題すら解決されていないのですね。御案内のとおり、外地等でやったのは。ですから、もしやるとするなら、私は公平の上原則でやっていく。もしやるという場合は、あなたのいろいろな御意見をお聞きすれば、これもまたやらなくちゃならぬという理屈も一つのものとして出てくるだろう。それなら、私はそれにはおのずから順序というものがあると思うのです。それは政治献金が多いとか少ないということでやるべきことではないと思う。どういう人たちが一番筋が通っておるかという順序があると思うのです、おのずから。それは政治的な判断ではなくて、すなおにやったら、私はすなおな答えが出てくると思うのです。そういうもので言うならば、まあ保険とか貯金というようなものは最初に取り上げられてこなくちゃならぬ問題だと思うのです。これが全然未解決だというのはおかしいと思うのです。あるいは在外資産の補償というようなものが取り上げられる、あるいはもっといえば、学徒動員なんかというものは実際気毒なんですから、こういうようなものがすなおに取り上げられてこないということはどういうことなのか。  国会が判断したらけっこうだなんて言わずに、政府が判断してまず最初に出してきたんですから、そういうことについてあなたは矛盾を感じられないのかどうか。ものごとには順序があるのじゃないか。こういうことについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ取捨選択をし、順序をだんだん踏んできておるつもりであります。御承知のとおり、軍人恩給などはなお復活しちゃいかぬとか、いろいろな問題はございましたが、そういうものはやはり、あなたがいま御指摘になりましたように、優先順位をつけてここ十九年間で、徐々にではございますが、国力の回復と相まちながら並行して処理をしてきたわけでございまして、十何年間叫び続けてきた農地解放が最後の段階になっておるということでございますので、順序に対しては取捨選択は相当しておる、こういうことはひとつ御理解いただきたいと思います。
  47. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先ほど、まだ政府が持っておるのを——たとえば飛行場等を拡張をするために、農民が当時ほんとうに憲兵、いわゆる軍力でおどかされて調印をして、そうして基地に——基地といってはおかしいですが、当時の飛行場等になった土地がありますね。そしてそれはいまだに国有財産になっておるわけですよ。それがたとえば飛行場だとすると、民間飛行場に変わっていったり、あるいは軍需工場をつくるためにそれをやって、それが民間に移行してしまったというような例がたくさんあるわけです。こういうものについては、なるほど政府が持っておるんだから、それは今度返せ、こうおっしゃるかもしれないけれども、いま言ったように政府自身が持っておるものもあるわけですね。しかし、それは使用はしておるんです。使用はしておりますが、それが民間に移行してしまった。政府が一ぺん取り上げて軍需工場としてやった、それが今度民間組織になってしまった。ちょうど地主でいうと、小作に売って、それがまた第三者に転売されてしまったということがある。そういうケースと同じなんですよ。こういうことについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私権が制限をせられた場合、しかもそれが政府が対象の場合は、その用に供しなくなった場合には縁故払い下げをするということになっておりますが、あなたの言うように、もう縁故払い下げが出てこないうちに他に用途が変更されて民間になり、ついに全く別のものに転用されておるという例は確かにあります。大蔵省にもいまそういう陳情もあります。  私も、この間ある婦人から、あなたがいま御指摘になったように、憲兵が来ていやおうなしに調印をせしめられた、今日それがその用に供されておらない、私の目の前にある、何とかして筋を立ててもらえないかという陳情書に対して、一晩静かに考えました。考えまして、いろいろな法律上の問題等も検討いたしてみましたが、こういうものもしいて国が持っておらなくてもいいというような場合は、そういう事情を加味しながらやはり払い下げたほうがいいだろうというふうに考えたわけであります。しかし、もうすでに他に転用せられてしまっておるものは、政府としては適法に処分しておるわけでありますから、どうもどうすることもできない。  まあただ一つの問題、これは例からいいますと、伊豆七島等の農地になっておりますものが、当時飛行場として収用せられた。まあ坪一円にも満たない金額で、何十銭というものでやられた。しかし、いまの国有財産法の規定からいいましても、特価でやらなければならない。このごろは御承知のように観光ブームで、坪一万円という評価になります。これがもうたんぼにも畑にもならないわけであります。こういうものに対してはやはり実情に即しながら違法性のない妥当な裁量をしなければならぬということで、地元農民にこれを売り払うというような方向をきめておりますし、岡山の場合でも大きな地域がございますが、地主に一つずつ払い下げられないというので、地方公共団体に払い下げるというようなことも、個別の問題としては実情に合うように、国民と国との間に争いのないように、より合理的な処分を考えておりますが、すべてがそういうふうにうまくいくというようなものではないのであって、まあ御指摘のように、他にもう転売をせられておるものについてはいかんともしがたい、こういう実情でございます。
  49. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 土地がそういうかっこうで取り上げられたものは、今度それが被買収者だね、その対象になりますか。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 被買収者ということ、農地被買収者ということばを、国に、飛行場等の用地に買い上げられたものも被買収者である、これはことばの上では、日本語からいえば被買収者であることは間違いありませんが、農地被買収者ではない。飛行場用地被買収者、何かそういうことで、やはり被買収者であるということはそのとおりであります。
  51. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今度の法律の、あなたのほうから二十三日に出されたその対象の中に入っていないわけですね。そういう人たちが今度除かれた理由はどこにありますか。そういうものとなぜ差をつけたかという、その理由は。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、先ほど申し上げました農地の問題に対しては、自作農創設ということで、またそういいますと、あなたも、飛行場をつくるということで同じことじゃないかという、こういう御議論だろうと思いますが、それはよくわかりますけれども、あの当時は、飛行場をつくる場合というのは、国家総動員法に基づいてどんどんそういう処置ができるという憲法下にあり、そういう法制下にあり、国民もやむを得ず、本心は納得しないでもやむを得ずこういうことでやられたわけであります。  農地被買収者の問題は、自作農をつくるからと、こういうことで法律処置をしたわけでありますが、二十九年に法律改正を行ないまして、自作農用地であっても他に転売することができる、他の用途に供することができるという法律改正をやりましたから、そのときからの問題であります。他に転売するならば、少なくとも返してくれ、返してもらえないならば売買利得——売買利得というのは、いわゆる解放を受けた人との間に争いが起こったわけであります。当然売買、転売する場合にはそれに国が税金をかけ、その税金を財源としてこれを被買収者に与えよという問題が起きてきました。そういう問題だったら非常に困るのです。国民の中に争いが起きては困る、こういう立場がありまして、今度の被買収者処遇法案というものをつくったわけであります。  国に土地を収用されたものは、国に対して返還訴訟を起こしておるものもあります。また、賠償請求をやっておるものもあります。しかし、御承知のとおり、大阪周辺の被買収者とそれから解放を受けた人との間に、何千件か何百件か、長いこと法律で争われておる。こういう問題は、やはり政治の上からは何らかの処置をしなければいかぬ、こういう立場から今度の被買収者処遇法案になった、こう理解いただきたいと思います。
  53. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、これは転売をした面積が対象になる、転売した人が対象になると、こういうふうに理解していいですね。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) なかなかむずかしい御質問をいただいたわけでありまして、どうも答弁に困りまするが、政府は今度の処遇法案はそのようには考えておらないわけです。それはどういうことかといいますと、補償ではありませんから。報償といえば、転売をしたものを対象にして、何百何十万坪何合というものまで対象にしているわけじゃないのです。それは一反歩に幾ら、頭打ち百万円、こういうふうに、全く最高裁判例に違反するような立場ではなくて、社会保障的な意味でも、また大業をなし遂げてあえて静かに黙っておる農民に対しても、いろんな立場から総合判断しまして報償法案なるものをつくったわけでありまして、計算をして、他に転売をされ売買利得を得ておるものだけを対象にしたというわけではないのであります。
  55. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 何かあなたの話を聞いていると、おかしいのです。利得があるのだ、だからそこで争いが出てくる、こういうわけだ。それを転売したからこそそこに問題が起きてくる。政府が持っておったら……。そうでなくて、御案内のとおり、国家総動員法に基づくところの軍需工場等のためにやったものは、しかもこれは完全に第三者に転売され、またそれが転売されておる、こういうことになる、そういうものと、今度そこで利得があって、利得は転売したから利得が出てくる。お話を聞いていると、転売せぬ面積まで対象になるとか、転売されたんだからそこで問題が出てきたからやるのだとか、どうもそういうところに差をつけておって、これだけ抜き出してやるのだというならまだちょっと筋が通るところもある。そうでなく、片一方だけはむちゃくちゃに対処しておいて、片一方は何にもないのだからやるのだという点がわかりかねる。  あなたもいろいろな説明を……。長たらしい説明でなくて、ずばっと言ったときに、割り切れぬでしょう。ということは、事ほどさようにこの法律は矛盾を持っているということなんです。間違っているということなんです、逆にいえば。すきっとした説明ができないところに苦しさがあるのです。これは誤っておるのですよ。それをあなたが何か針のみぞみたいな小さいところを大きく言って、正当性をやろうとするから、話がおかしくなるのです。ですから、もう少しいろいろな意味合いで勘案していただきたい。まあこれは私は意見になりますから、これでおきまして、またあとで問題にします。
  56. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は質問をあまりしたくない。是非のわかり切ったこんな法律案は、もう撤回されるのではないかというふうに思っておったのですが、またまた出てきて、いま審議の最中なんですが、国民金融公庫法という法律を見ますと、第一条にも明記してありますごとく、どうもおよそ農民を対象にということは書いてないのであります。第一条には、「国民金融公庫は、庶民金庫及び恩給金庫の業務を承継し、銀行その他一般金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金の供給を行うことを目的とする。」、かように示してありますので、特にかような一部改正法律案をつくるときには、当然問題になったようでございます。もっともだと私は思うのであります。しかし、自民党のほうでは、関係議員といいましょうか、それらの諸君の強い要望から、かようなものが出されておるのでありますが、私はこの法案が、もちろん反対でございますが、この法案がもしかりに通るというようなことになりますると、いま論議された被買収農地の報償の問題がすぐここでまた具体的になってくるわけであります。それと関連をした法案であるという点におきまして、大臣はどういうふうに一体考えておられるのか。どういうふうに考えておられるかということは、この融資ワクにしては二十億でございますが、それがいまのような関連にあるという意味において、とりあえずこの法案を成立させて、さらにその先考えておるのではないか、この点を一点お伺いしておきたいと思います。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律案は、御承知のとおり、二十三日に国会に提案をいたして御審議を待っておるわけでございます。この問題と国民金融公庫の問題は全然別に考えております。これはただ昭和三十七年から提案をしておるということだけではなく、三十七年の五月二十二日に内閣に設けられました工藤調査会なるものの答申がございます。この答申の四ページに、「生活上又は生業上困難な状況にある者に対し、生業資金の貸付の措置を講ずる」こと、こういう答申をいただいておるわけでございます。でありますから、そういう意味で本法の御審議をいただいておるわけでございまして、少なくともこの法律案はぜひ通過をせしめていただきたいと、こういう考えでございます。  もう一歩進めて申し上げますと、その当時には農地被買収者に対する給付金の支給に関する法律考えておらなかったんだから、今日それが具体的に国会審議にゆだねられたときにおいてまだその必要があるかということであると思いますが、私はまあきょうの新聞を見ましても、この国会では委員会にも付託もできないというような状態のようでございますし、まあなかなか大法案だと思います。そういうものとまあ関連はないわけでありますが、いずれにいたしましても、二十億の貸し付け金のワクはつくってやるべく、それが政府の現在においても変わらない立場でございます。
  58. 野溝勝

    ○野溝勝君 ざっくばらんにいえば、大体農地被買収者の救済というようなところにねらいはあるんでして、その序の口として一応国民金融公庫法の一部改正をして——一般庶民の金融問題は、こんな特に農地被買収者ということを明記しなくてもできるわけなんですよ、これは。それを特に農地被買収者で銀行その他の一般金融機関から生業資金の融通を受けることが困難な者に対してという、ちゃんと明記してあるんでございますから、これが関係がないとは申されぬと思うのでございます。しかし、かようなことで私はあなたとここで論争したくない。もうすでに論議の過程におきましても、蔵相は非常に苦しい答弁をされておるのでございまして、論理が一つも立たないんですよ。これは自民党の諸君といえでも大体は感じておると思うのでございます。  そこで、今日までにもう五回も流産をして、被買収の農地の報償案が出るというこの前にあたって、五回も流産したものをまたこの際出して、ここでもってまたがんがん論争をするということは、私は政治感覚としてもまことにおかしいと思うのであります。特に自民党では進歩的といわれる、自民党では比較的率直居士であり、大衆性を持っており、前向きの姿勢でおられると見られておるところの田中大蔵大臣のもとにおいて、五回も六回も審議未了になったかような法案をまたまた出して、特に額面においても二十億ばかりの予算のものを、それも筋が通っておるならいいが、これは事務当局でさえもずいぶん悩んだ問題なんであって、まことに理解のしがたいところです。このようなものをこの際あえて出さなきゃならぬということは、どう見てもおかしいのでございます。私は、かような意味においてその点を質問しておくんでございますが、良心の上からどうですかと言えば、ぜひ必要だというお答えになるから、私はこれ以上は論争になりますから申しません。どうか、こういうようなものを出すということは将来の政治の歴史の上に非常な汚点となりますので、これは反省を促しておきたいと思います。  この点を一つ申し上げ、次に、さらに旧地主補償とうらはらであるので申し上げておきたい。先ほども同僚委員がいろいろと詳しく話をされましたが、大体日本の政治というものは、まあモンテスキューの三権分立を出すわけじゃないが、やはり立法、司法、行政というものに大体うまく配分されておるわけなんです。それで、被買収農地に関する違憲訴訟については、すでに最高裁による合憲判決がでていることは、御承知のとおりであり、わが国の民主政治の上から当然、政府、与党はこれを最大限に尊重しなければならないはずであります。特に先ほど来大臣はいろいろと言われましたが、対価の算定方法というものは、一体自作農創設維持法に基づくその当時のあれから算定して、ちゃんとつくったのでございまして、この三権分立でできたわが国の政治を否定するようなことにもなるのですね。これは憲法がいいとか悪いとか言ってみたところで、あなたたちだって賛成したんじゃないか。  特に私、おかしいと思うのは、先ほどのお話の中で、二十九年に転売ができることに自作農創設維持法を変えたと言うのですが、確かにそうですよ。そのときには立案者は山添君だと思いましたね。私どもはこれは反対した。賛成したのは自民党じゃないですか。自民党政府じゃないですか。二十九年は自民党政府、吉田さん以来ずっとそうだ。それをいまとやかく批判しているのは、むしろ自分たちを自分たちでつねっているようなものだ。これは自己矛盾もはなはだしく、まことにおかしなことですよ、どう見ても。私はきょう文句を言うのじゃないのですけれども、私の言うことには真理があるということを、ひとつお聞き取り願いたい。あのときには事務次官をやっていたと思う、山添君は。さもなければ農地局長だった。私はこれは問題になると思っていたのです。それを転売することができるということになったので、旧地主の不満が年ごとに高まった。すなわち、農業経営に必要だということで農地解放をした。その後農地を解放した旧地主の諸君は、転用され、売買されるその農地価格を見て、しゃくにさわるでしょう。私はその気持ちはよくわかる。しかし、わかるけれどもですね、やはり政治あるいは法律というものは納得ができなければならぬのであって、特にこの農地被買収者を具体的にこういうところへ出すということは、これだけを対象にして考えているのでございまして、それは私は政治の公平にはならぬという点において、特にこの法律案は実に前後矛盾したものであると思うのです。  次に、私は申し上げておきたいのは、買収価格の点について、安かったとか、いろいろ言われておりますが、それでは戦争前長い間、数世紀にわたるあの高い小作料が換算し補償されたことがございますか。長い間にわたるところの小作農が、ずいぶん高い小作料を取られて、特に農地解放をするときにはですよ、われわれは長い間の小作料を換算してもらいたいということになりますよ。当時これじゃ安過ぎるとか言いましたから、合理的な算定により田は四十倍、畑は四十八倍ですか、そういう買収価格で解放させたのです。これが安いというならば、いま申したとおり、先祖伝来からの長い間の、永年小作の高額小作料を換算補償してもらいたいという話もして、GHQやその当時の政府とも折衝したのでございますが、結局最後の最高裁の判決というものは、妥当なものであるということが下された。しかし、転売したことから問題が起こったと申しますけれども、これは転売したそのことの、二十九年の自創法改正法律案を出したのは自民党なんだから、自民党がこの問題を出すときに、なぜ反省しなかったかと思うのです。  だが、まあしかたがない、今日のようになってきた。そこで、今日また反省もせずして被買収農地の報償と同時に、さらに国民金融公庫法の一部を改正いたしまして、二重三重の矛盾を重ねようというその気持ちが私にはわからない。これは田中大蔵大臣、ひとつ私は、もう理事の相談によりまして四時までということになっておりますから、これ以上こまかくいろいろ申しませんが、この点をひとつお聞きしておきたい。今後いかなる法律案が出るにいたしましても、私はこういう矛盾きわまるものを出せば、将来に非常な禍根を残すと思うのであります。この点、ひとつあなたに忌憚なくお聞きしておきたいと思うのです。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 野溝さんの御発言、非常によくわかります。あなたが二十九年に、改正をするとこういう問題が起きるぞ、こういうふうに御指摘になったことも十分承知いたしておりまするし、まあそういうことになったわけであります。しかし、ここでひとつお願いをいたしたいと思いますのは、農地被買収者の給付金に関する法律は、別に国会審議を仰いでおるわけでございますので、ひとつ今回のところはその問題は別にいたしまして、いずれまた国会に十分申し上げることもございますから、いわゆる三十七年から出ております国民金融公庫法改正の問題にしぼって申し上げたいと思いますが。  先ほど申し上げましたように、三十七年五月に工藤調査会の答申をいただきまして、その答申の中にも、政府は金融上の措置についてしなければならないと答申をいただきましたときには、相当大きな金額であるような期待もあったようであります。もちろん、二百六万人というような相手の人が対象でございますから、相当大きな期待もあったようでありますが、財政上の事情等もございまして、二十億ということで今日までずっとなっておるわけでございます。これは率直に申し上げれば、この法律をなぜ一体出したのだ、こういうことも考えられるわけですが、これはいまの業務方法書でもってできるということを、こういう法律を出して国会の御審議を願うということは、十分批判も受けながら、政府の所信も明らかにしながら御理解を得たい、こういう考え方で今日まで来ておるわけでございますので、あなたもあまり議論したくないという、こういうことでございますし、私もまた答弁申し上げるのも前と同じことを申し上げておるのでございますので、ぜひひとつ政府の苦衷をお察しくださいまして、なるべく御可決賜わらんことをお願いしたいと思います。
  60. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をやめてください。    〔速記中止
  61. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  62. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は、国民金融公庫の拡充ということについては、これは提案されるたびに力説して、特に庶民の金融機関としては、いまのこの政策の中で代表的なものだと私は思っているのです。庶民的な法律だと思っておるのです。ところが、このほうの予算がいつもふえる比率におきましては非常に少ない。こういう点について銀行局長から、どうしてこれにもつと力を入れる考えはないのか、特にこうした被買収者対象にするというようなことに力を入れるなら、もっと市民で困っておる方も相当あるのですから、国民金融公庫資金を借りたいという人は相当あるのですから、そういう点に対して銀行局長はどういうふうに考えられておるのですか。今後とも大いに尊重していくというだけでなく、もっと具体的に私はこの資金需要に対する答えをあなたからひとつ聞きたいと思うのですがね。きょうはこまかい数字のことは要りませんから。
  63. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) この二十億は、つまり出資をわざわざするといたしましたのも、一般の分とは違うのですという意味で、一般の分を食い込んで農地の被買収者に特別な貸し付けをするという趣旨ではございませんと、そういうことで提案いたしたものでございまして、一般の大衆のための金融のワクといたしましては、それほど、私ども冷遇どころか、かなりよく見ているつもりでございます。大体二一%くらいの貸し付けワクの増加を当初の計画においてやっておりますし、また事実上は、結果的になりますが、毎年引き締め等で中小企業等が困る場合には、随時資金ワクを追加いたしまして、その需要の増大に応じているわけでございます。  件数で申しますれば、申し込みはかなりいつもふえてくるわけでございますが、その九一%くらいは受け付けて貸し出しを行なっておるというようなことでございまして、今年も引き締め下にありますので、第一四半期にも繰り上げを行ないまして、第二四半期にもやはりある程度の追加をはかりたい。もっとも、これは財投を追加することになりまするのはもっとあとでございまするが、結果的には、やはりいまのままで参りますと、第三四半期等におきまして財投を追加せざるを得なくなるのじゃないかと思います。もちろん、これは国民金融公庫だけでなく中小公庫、商工中金も並べてそれぞれの需要考えながら追加をいたしております。その国民公庫が非常に大衆といいますか、比較的小規模の企業のほうに正視されておるという事実は、十分私どもも考慮いたしておるわけでございまして、今後におきましても、資金の充実にはとりわけ注意して努力してまいりたいと考えております。
  64. 野溝勝

    ○野溝勝君 副総裁にお伺いしたいのでございますが、資金申し込み額、それから現在までにどのくらい貸し出しをいたしておりますか、数字的におわかりでしたら、お聞きしたいと思うのです。
  65. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 先ほど柴谷委員からの御質問がありましたときにちょっと申し上げましたが、三十八年度で申しますと、申し込みが、直接支所の窓口へ参りますのと代理所を通じて参りますのと、合計いたしまして年度間、一年間に五十万件、金額にしまして二千四百二十八億何がしという申し込みがございます。そうしてそのうち貸し出されましたもの、直接支所から貸しましたものが三十四万一千三百件、代理所から貸しましたものが十万八千七百五十件ばかり、合計いたしまして四十五万件ばかりになりますが、それだけ貸しております。結局、金額といたしましては、大体申し込みに対して六六、七%が貸し出しになっておる。申し込み金額に対して、金額的には六六、七%くらいの額を出しております。ただし、可決しましたのは、先ほど申し上げましたように件数は九一%、否決になりましたもの、これは計画見込みがないというようなもの、回収見込みがないというようなもの、あるいはわれわれの対象としては少し多過ぎる、自分の手元に余裕金があって公庫の金をお貸ししないでも十分やっていけるというように認めましたもの、いろいろ含めまして、否決しましたものが九%、大体さような実情になっております。
  66. 野溝勝

    ○野溝勝君 前年度と比較してどんな比率になっていますか。
  67. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 前年度と比較して申し上げますと、貸し付け状況でございますが、具体的な数字を申し上げますと、三十七年度は直接貸しと普通代理所を通じて参りまする申し込みが五十二万四千三百件でございました。もっとも、この中には災害関係を含んでおりまして、御承知の北陸地方その他の、全国的に豪雪災害がございました。そういう申し込みを含んでおりますので、件数がやや高くなっているかと思います。その前の三十六年度は、合計いたしまして五十万二千件という申し込みがございます。これに対しまして、貸し付けを申し上げますと、三十六年度におきましては、件数で四十三万八百七十四件、これは直接貸しと代理所を通じて貸すものと、両方合わせた数字でございます。それから、三十七年度は、四十三万二千四百六十五件、三十八年度は四十五万百三十四件、ごくわずかなふえ方でございますが、金額的に申し上げますと、貸し付けました金額が、三十六年度は総計千二百三十八億八千六百万、三十七年度は千三百八十五億五千五百万、三十八年度は千六百十四億六千万、まあ大体かような数字になっておりまして、大体のパーセンテージで申し上げますと、まあ結果におきまして一〇%ないし一二、三%ずつふえておる、かようなことになっておると思います。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 時間があまりないようでありますので、簡単に一、二点についてお伺いしたいと思います。  その一つは、先ほどもちょっと私が申し上げる話に関連した内容が出たと思いますが、国民金融公庫法の条文の中には、国民大衆に差別をつけて金融を行なうことは趣旨とされていないと。これはもう当然だと思うのです。国民金融公庫それ自体の内容から見ても、当然といえば当然であります。しかるに、今回農地被買収者に特に恩恵を与える道を開いたということは、公庫法の精神からいいましても大きな矛盾があるのではないか。なぜしからばもっと、本質的には内容が違うかもしれませんが、戦争によって受けた被害者というものはまだほかにも相当の種類があるはずであります。これは何度も議論がされてきたところでありますが、いまここでお伺いしたいことは、その公庫法の精神に触ればしまいかということが一点と、それから、もし農地被買収者にこういう方法が考えられるとするならば、あるいは戦災者であるとかあるいは引き揚げ者等についても、また相当数が、やはり生業資金の不足から困っているというような人たちが非常に多いことを聞いてもおりますし、またそういうような陳情も受けております。こういう点について、別途考えをお持ちになっていらっしゃるのか。また、今日まで国民金融公庫においてどのような救済の方法を講じられてきたか、こうした点について、重ねてお伺いしたいと思います。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地被買収者貸し付けを行なっても、国民金融公庫法の精神をゆがめるというふうには考えておりません。もちろん、国民大衆であって、零細資金を必要とする方々、しかも、その他の金融機関から融資を受けられない方々を対象にしてつくられているわけでございますから、その中にいろいろなワクをつくって貸し出すということも、いままでもやっておるわけでございます。  御承知のとおり、特別給付金国債担保貸し付けもやっておりますし、引き揚げ者の国債担保貸し付け、恩給の担保貸し付け、更生資金の資し付け、それから遺族国債担保貸し付け特別小口貸し付け普通貸し付けと、こういうふうに分かれておるわけであります。これは業務方法書でいろいろなものをきめワクをつくるということはいままでもやっておるわけでありますから、こういう問題が国民金融公庫法の精神をゆがめるものではないわけでございます。  それから、もう一つは、先ほども申し上げたとおり、この措置は、三十七年度の五月に行なわれました工藤調査会の答申によりまして、生業資金貸し付けの道を講ずるとこういうことになっておりますので、これを新しく金融機関を設置するわけにもいきませんし、党側、自由民主党の中では、農地被買収者貸し付け金融公庫というようなものをつくれというような案もありましたし、また過去においてそのような立案もあったようでございますが、政府としてこれを行なう、政府関係機関の中で行なおうとすれば、やはり中小企業金融公庫、組合金融公庫である商工中金というわけにもまいりませんので、どうしても国民金融公庫ということになったわけでございます。  それじゃ、こういうことをやった場合に、他にも一体やるのか、戦災者貸し付けとか、またその他のこれに類するような方々に対する貸し付け、疎開者に対してどうするという問題でございますが、そういう問題がこれからやはりあって起こってきまして、どうしても特別なワクをつくらなければならないということになれば、資金量とも見合いながら、そういう窓口をつくるということはあり得るわけでございます。しかし、いままでは一般貸し付けの中でこういうものを処理されてまいりましたので、あえて今日までの段階では別に特別の措置を行なわなかったわけでございます。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次にお伺いしたいことは、今回の目的が生業資金ということでありますが、考えられることは、相当生活に困窮しておられる方が対象となると思います。そうしますと、この貸し付けの条件について非常にむずかしい問題点が出てくるのではないかということが想定されるわけであります。政府としてどういう今後の方向に立って、これらの困窮されている方に、いわゆる生業資金——金額にすればわずか十万から五十万円の範囲の方方が非常に多いのじゃないかと思うのであります。実質的に、それだけの生業資金を得て、はたして生業が思うように回転できていくかどうかというような疑問も出てまいりますし、そういうような条件等について、いままででありますると、国債であるとかそういうものを担保にいたしまして、公庫のほうで貸し付けているようであります。それも全くない、むしろそういう人に限って貸し付けを受けたいという欲求が非常に強いと思うのであります。そういう方々に対しては、どんな方法を講じて貸し付けをされようとするのか、基本的なあり方についてお伺いをしておきたいと思います。
  71. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) この融資対象となる被買収者は、すべての方でございませんで、お尋ねのように、どちらかといえば楽でないという方が対象になると思います。しかし、この国民金融公庫融資は、生活資金、いわゆる生活資金融資するという筋のものでないことは御承知のとおりでありまして、生業資金といいますと、とにかくその金を元手といたしまして何らかの営業を営み、それで生活の一助にするということであるのでありまして、五十万円までの金額について六分五厘とし、しかし、それ以上の金額を要する場合には普通金利で九分という金利さえ払えば、最高は二百万円まで貸し得るということになっておるわけです。ですから、五十万円で必ず打ち切るという筋のものではございません。ただ、それ以下の、五十万円以下のものを金利の面で優遇することになっておりますが、生活困窮者に対する施策としては、これは別個に考えなければならぬ問題でございまして、これはあくまで生業資金でございますから、もう全く生活に困窮して生活扶助を受けなければならぬというふうな方方の場合には、たとえば借金だけですべてをまかなわなければならぬという場合には、かなりむずかしい問題があることは事実でございます。  担保は徴求しなくても保証人で貸し出しはできるわけでございますので、かなり、一般金融機関から借りる場合に比べますれば、自己資金があまりないような場合でも、ある程度金額は融通を受け得る仕組みにはなっております。それらの点、また実際にこれを行なってみませんとはっきりしたものがつかめないと思いますが、いずれにいたしましても、私は、生活困窮者というのじゃなくて、とにかく何らかの生業を営む意欲があって、また能力もある、資金の面で不足するというふうな方々を対象にするということであれば、かなり一部の方々でありますけれども、この制度が生きて使えるのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういう御返事でありますと、おそらくごく限られた特殊な人に限定される、こういうことになりますと、せっかくこういう法律をつくりましても、公平に恩恵を与えるということができなくなるのじゃないか。むしろ、いろいろな陳情を受けたその人たちの意向を聞きましても、生活困窮ということは妥当ではないと思いますが、その困窮している中でもささやかながら仕事をしているという人も相当あると思うのですよ。しかし、将来において、能力がないとか、あるいははたして今後の見通しとして現在やっておる仕事が見込みがあるかどうかということの段階になりますと、その判定は非常にむずかしいのじゃないかと思うのですね。政府としてはそういう判定をどういう基準において、ただ外面的に、能力とか、または将来家族の構成等を考えてみても、十分現在の仕事を推進していくだけのものがあるというのでは、あまりにも平等性を欠くのじゃないか。せっかくやるならば、むしろもっと平等性をもって多くの人を救済するという方向に向けられるべきが至当ではないかと思いますが、その点はどうなんでしょう。
  73. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 公平という観点で取り上げるといたしますと、確かに二十億円程度の資金で多数の被買収者に対して漏れなく金を融通するということはとても困難でございますので、その点からはこの制度は全般の公平を期するものではございません。工藤調査会の報告その他の調査によりましても、被買収者の中で生業資金等に非常に困難を感じている者というものは、そう多数の大きな割合になるわけではない。さしあたり資金を必要とするという方々は、まあ全体から見れば一部の方ではないだろうかというふうなことがまあ言われておりますし、私もそういうふうに推測しているわけでございます。ですから、農地被買収者全員に対する公平な措置としては、この公庫法の改正はなかなかそのまま当てはまらぬものでございまして、ただいま提案されておりますところの特別の法律というほうが公平というふうなことになるかと思いますが、これはそういう非常に全般的な措置を行なうというものとはおのずから性質が異なるのもやむを得ないことではないかと考えております。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど大臣答弁の中に、一部の政治的な突き上げによって今回の法律案が提出されたのではないというお話を伺っておりまして、しかし、いまの銀行局長のお話を聞きますと、何かそういうにおいを非常に感ずるのですが、大臣としては、全くそういうような政治的な配慮に基づいた突き上げとか、そういうような一部の圧力団体によって今回の法律案が提出されたものではないということは、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全く政治的なものではなく、工藤調査会からの答申がございまして、せめてこの程度のことは最小限しなければいかぬ、こういう考え方でありましたので、政府もいろいろ検討しました結果、国民金融公庫にこういう資金を設けようということになったわけであります。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 時間もあまりありませんので、もう一点だけお伺いしたいことは、将来において、現在二十億では非常に足りない。なるほど総合的に考えてみた場合、確かに足りないと思います。別途また報償制度についてもいま考えられているようでございますが、それとは別に、将来においてさらにこのワクを設ける用意があるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これも、報償法案が通れば、担保金融ということは当然起こってくる問題だと思いますが、これは国会で通過をしなければ考え得ない問題であります。現在二十億の農地被買収者に対する貸し付けのワクをつくるわけでありますが、将来、これをつくると、もう少しよけいにしてもらわなければ困るであろうというような事態はきっと起こってくると思います。起こってくると思いますが、これは申請、また要望する人たちの数とか、内容とか、十分調べまして、国民金融公庫資金事情もございますし、また、いままでのように別に未亡人とかいろいろな担保金融をやっておりますので、こういう資金とのバランスをとりながらしかるべく処置をしてまいるということだと思います。
  78. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、この問題は過日大臣が来られた際にずいぶん質問しております。そこで、まあ反論の一つとしては、先ほど野溝さんから質問がありましたが、私はこう思うのです。まあ先ほど、報償問題とはまるで別にひとつこれだけで考えてほしいというお話がございましたが、かりにこれだけにとどめるといたしましても、私は政府自身がお困りにたぶんなるであろうとまあ察していることは、過日も引例いたしましたけれども、戦災者であるとか、ことに原爆の被爆者であるとか、そういう人たちに別段、若干このおあげになったような特別のワクはありますけれども、まあ特別小口だとか遺族国債とか、母子家庭とかいろいろありますが、純粋の戦争による被害者というものには、特別なものが、理屈をつければあるのだけれどもない、そこに平等の原則からはずれるということになった場合に、そうした人方からまた別ワク融資を要求してくるというのは当然であって、その際に、片方にはいたさない、こういうことになれば、必ず政府みずからがお困りになる、私はこう思うのですが、その点はいかがでございますか。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは渋谷さんにお答えを申し上げたとおり、そういう問題が出てくれば、いままでのワク、資金量、そういうものとの勘案をしながら、またバランスもとりながら、資金が許せば必要度に応じてこの種の問題は起こってくる可能性はあると思います。また、そういうものに対しては何らか対処しなければならぬだろう、こう考えます。
  80. 天田勝正

    ○天田勝正君 過日これに類することで他の観点から私論じたのですが、その際大臣が反論のごとくに言われることは、何分にもこの農地解放というものはきわめて意味があり、かつはそれが円満に行なわれた、ここのところがきめ手のように政府側は思っているようであります。ところが、円満にといってみたところで、他の戦争犠牲者のほうには円満というわけにはいかないのです。たとえば戦災で焼けた、こんなのは決して円満に焼けたということは言えないのでありまして、それから在外資産の問題にしましても、これは平和条約で日本政府が一方的に放棄して、言うなれば賠償の見返りのようなものなんだ、こういうものが円満にいったのではない。在外資産を持っている人たちと話し合いの上でさようなことにしたのではなくて、とにかく出先の講和条約の締結の場において行なわれた。同時に、引き揚げた人たちはそれらを捨ててくるよりほかしようがないのですから、とても円満ではございません。だから、あるいはまた前々からここで問題になっておりますように、生命保険の問題、いわゆる終戦時におけるインフレの高進にあらざる部分あるいは長い間の定期預金を切りかえてきた部分、これも千分の一かなんかされたって、それはちっとも円満ではないのですよ。みんな戦争の犠牲の部分は円満ではないのでありまして、これだけが円満だと言われると、ほかのものはまことに迷惑しごく、こうなります。こういう類似のものに対してはどうお考えですか。円満ではないほうの部分
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのう円満にウエートを置いて私が答弁を申し上げたとすれば、円満ということだけではございません。これは訂正いたしておきます。先ほどから申し上げたとおり、工藤調査会という内閣に設けました調査会の答申にございまして、農地被買収者の中で生業資金に困っておる者に対しては貸し付けの道を講ずること、こういう答申をいただいておりますので、また、ほかの問題、御指摘のあったような問題で、調査会等、また審議会等からそういうものが出て、政府が答申によって拘束を受けるというようなときになれば、またそのときの問題として検討さるべきだと考えます。
  82. 天田勝正

    ○天田勝正君 私も過日大臣にもお断わりしたように、話があまり広がると、これはとても政府側も困るだろうから、たいへん協力をいたしまして、そこできわめて狭い範囲にしようとして、いま在外資産の特別の審議会ができておりますから、その部分についてはあまり言及しないように配慮しておるわけです。  そこで、この際聞いておきたいのは、そうした類似の人たちについても、将来必要があれば考慮するという意味だったと思います。ところが、将来じゃなくて、過去のことをまだ解決されていないのがあります。それはずいぶん長い前でありまして、たぶん水田さんが大蔵大臣のときでありましたから、三年かぐらいになります。それで、その記録があるのです。ここにおられる大竹さんが大蔵委員長であった。その際に、この生命保険の問題、それからいま申し上げたインフレにならざる以前における貯金の処置、これは一たん千分の一だなんていうことで解決したようになっておるのですが、しかし、実際の解決じゃない。これはいま言った私の円満ならざるほうの解決なんで、それで全く解決しないのは、生命保険の問題。これは説明すると長くなりますけれども、とにかく民間会社の問題なんですね。そこで、政府側も、民間の問題だからどうしようもないというような形でありまして。しかし、政府の監督下に置かれておるのは事実でありますし、政府がやった処置に対して生命保険だって右へならえ、こういう大きな背景がそこにあったわけです。そういうことから各委員がこの問題を取り上げまして、なかなか水田大蔵大臣も返事をするのにも困ったようでありますけれども、結果は、しからば、そうした引き揚げ者の団体と生命保険会社というものと話し合いによって解決するために政府側も努力する、要約すればそういう落ちつきになったのであります。  おまけに、当時の保険会社の会長はきわめて、あれは何という人だったか名前忘れましたが、きわめて理解が深かった。それで、その後ああいうものをたなに上げたりなどをしたために、生命保険会社の業績というものは著しくあがった。その基礎は、要するに戦地における生命保険等の切り捨てとは言いませんけれども、たな上げだ。このことが基礎になって、いまのようなすばらしい業績になったということは、何らか報いなければならない、こういう主張であったわけです。ところが、その後政府もちっとも努力してくれませんし、その後何らか、会長がかわったら、今度は会長もわからずやで、まるっきり会いもしない。こういうようなわけで今日に来ておるのです。  一向政府は、そういう問題は——つまり、いまあげておるのは地主さんにこうするというのですけれども、その他同種のものには三年前にも解決に努力することになっていたのですが、そういう面はどうなっちゃったのでしょうか。行くえ不明のごとくでありますが、どうでしょう。
  83. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) ただいまのお尋ねが外地での保険契約者ということに限っておられますので、あるいはまあその他指定時というのがございますが、指定時前の契約者で、非常にインフレの犠牲になったとか。
  84. 天田勝正

    ○天田勝正君 生命保険だけでもいいのですよ。
  85. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 生命保険だけに限ってと申しましても、大体指定時前契約者というのがございますが、それらの方にはたいへん御迷惑をかけたようなことになっているのです。これは一般的に申しますと、いまだに契約の続いている方も相当あるわけです。非常に零細な額でございますが、全部一万円以下の契約でございますが、これは生命保険協会といたしましては、それらの契約者の方々には満期を待たずお支払いすると、満期金額を期限前にお支払いするということで、現在手順を進めております。その場合に若干の、ほんの寸志という程度でございますが、二、三割の割り増し金をつけて支払うということになっております。  これはいまとなってみれば、当時の五千円というような金額は、現在の五千円の三割増しの六千五百円を払いましても、ものの数ではございませんが、しかし、民間の生命保険会社といたしまして、いまその後の契約者も非常に多数にのぼっておりますし、資力その他いろんな状況から申しまして、当時のインフレによる犠牲者の方に、その相当な割合を補償するというふうな仕組みで解決をすることは、きわめて困難といいますか、不可能なことである。しかし、満期を待たずして全額お支払いし、若干の寸志を差し上げておわびのしるしとしたいということで、解決をはかっておる次第でございます。
  86. 天田勝正

    ○天田勝正君 それは大蔵省にいま保険会社がそう言っておるかもしれぬのだが、そういう答弁があるのだから、たぶん言っておるかもしれない。それで、これが実情はまるでそういうのとは違うのです、生命保険の問題は。私みずからもありますけれども、数々あった中でたった一つだけ、この間もここで発言しましたが、通知が来ました。幸いに私がここにいるからきっとわかって通知したのだろうと思うのです。だから、いま明らかになった分を、インフレ貨幣価値の下落に基づいてスライドして払ったって、おそらくわかるものはその何分の一だろうと思うのです、実際の。私そう思うのです。私だって幾つかあったものの一つしか来ないのです。それは満期にならぬ前の満額払いなんというものじゃないのです。私はみずからもう全部放棄しているから、みずからのことでどうしようというのじゃないんですが、実情だから申し上げるのです。  それは、その一つが五千円。五千円といまあっさり言うけれども、当時は千両普請といえば三里四方から見物に来たような騒ぎですが、それが五軒もつくれるのですから、たいへんなんです。いや、ほんとうなんです。これは全部お役所の人だって一万円を目標に貯金した、当時。それが全部払ってないから、この間残る分をみな払えというわけだ。いや、そうすれば五千円やる、満期になれば五千円やるという。じゃ、どうにもしようがないから、もうすでにその後こうして、戦後国会に当選してきまして以来生きてきているから、いまここでしゃべっている。それで、生きてきた分だから、確かに命はもう補償できたのだ。だから、これを五十万円に切りかえて、五十万円に該当する分はもう生きてきてしまったのだから払うと、私は。五千円もらってもどうにもしようがない。せめて五十万円くらにしたら値打ちがありはせぬか。その間に払うのだ、そうしてくれぬかと言ってみたところで、それができないのですよ。ちっとも特別のことなんか何も、高橋局長、ありませんよ。私はこの問題でここでずいぶん議論をして、そうしてとどのつまりがそうなんです。  だから、私は類似のものに対してはしているがごとくにして一向していないので、そういう状態の中で、補償の問題は私は別にして論じたいと思うけれども、これを一つには別ワクでここで融資をする、一つには補償だ。そういうことのために結局他の類似の犠牲者とのバランスがくずれて、私ども野党がただただ反対するということではなしに、政府みずからがお困りになりはしませんかと、こう言うのです。いかがですか。局長だっていいですよ。いささか事務的なものになっていますから。
  87. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) その保険についてもそうでございますし、また当時の預金者でも、やはり封鎖その他によって引き出しが十分ならぬうちに、どんどん貨幣価値が下落いたしまして、当時としては相当な価値のあったものが、実際に受け取る段になると百分の一、二百分の一というふうな金額になっておるという点につきましては、これはまことにどうもお気の毒だとは思いますが、ただ、このいまわれわれのやっております経済というものがいつも安全価値計算でやっておらぬ、インフレになれば結局金の値打ちは下がるという、それを持っておる人たちは損失をこうむるというふうなことになっておる。それがゆえに、ああいったような非常な日本の歴史始まって以来の敗戦という事実の中で生まれたインフレでございますので、どうも避けがたい事情もございましたし、今後においてもちろんこの生命保険その他の順調な発展をはかる上におきましても、インフレは絶対に避けていきたいというのが私どもの念願でございます。また、そういうつもりでこれからやっていかなければならぬと思いますが、過去の戦争に基づくそういった民間人その人が受けた損失というものは、多かれ少なかれみなあるんじゃないかと思いますが、これは何といたしましても、政治的にも経済的にも、何とも解決しがたいものが幾つもあるように思います。それらの中で何か特別の措置をとったものだけについては、非常にこうきわ立って何か特別な配慮をしたというふうに受け取られるのもやむを得ないと思いますが、何か今回のこういった措置について、すべてを経済的な問題として割り切れないものがあるんじゃないか。多少そこに政治的なあるいは政策による犠牲者とかというふうな点についての配慮といったものがありまして、公平という見地からいえば、完全公平ということにおいてはだいぶはずれていることがあるかもしれません。しかし、すべてを経済価値その他の問題だけで律し得ないという点をひとつお認め願いまして、今後のいろいろな経済政策につきましては十分注意してまいりたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  88. 天田勝正

    ○天田勝正君 約束の時間が来ましたので、大臣をいつまでもここにくぎづけしておくわけにいかぬと思います。ですから、御自由にお引き取り願ってけっこうだが、こういうことの答弁はもう少し、大臣を助ける局長方においても実態を調べてもらわなければならないと思うのです。何よりも、そうでないと、いま言ったようなちぐはぐが生ずる。それで、むちゃくちゃな主張をしておるんではございませんので、生命保険にしても、これは極端にいえば戦争被害は全国民じゃないかというけれども、確かに千円の保険、当時多額でありましたが、こいつをもらって、インフレのためにサツマイモ二俵半になってしまったというのはあるんですよ。だけれども、高橋局長、それはそのまま使えたんですよ。そのときに要するというときに、かりに小麦二俵でも、使えたんですよ。だけれども、全国民平等じゃないんです。外地から引き揚げた人はそうでなくして、その低くなった値段でも使えなかった。それからさらに、その後における貨幣価値の下落というのはとほうもないことになってしまったんだ。だから、せめても命あれば、検査でこの人は契約しちゃならぬとかなんとか向こうはかってにきめるんですから、私はさっき引例したように、生きてきちゃったということは補償できるということですよ。そういうできるようなことだっても現実にしていないでしょう。ですから、全くインフレになってわずかな金になったとはいいながら、終戦直後飢えたときにそれが使えた。これはとうといのです。それさえも使えなかったんです、そんなもの払っちゃまかりならぬという政府のほうの方針で。だから、全然平等ではありません。だから、これで終わるわけじゃありませんし、かりにこの法案があがってしまったとしても、問題は続くんです。ですから、もう少し実態を私は調べてもらいたい。これを希望しておいて、きょうは質問をやめます。
  89. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本案に対する質疑は、一応この程度にとどめておきます。   —————————————
  90. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、公認会計士特例試験等に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続いて、本案質疑を行ないます。  ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止
  91. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。  本案に対し御質疑のある方は順次御発言を願います。
  92. 野溝勝

    ○野溝勝君 まず最初にお聞きしたいことは、公認会計士特例試験についてですが、計理士が特別試験に合格することで公認会計士の資格を与えることは、昭和二十四年から二十九年の間に一度、さらに昭和二十九年から三十二年の間には公認会計士第三次試験受験資格を与えるための特別試験を行いました。これは特は計理士を公認会計士にするためのものでした。そして当時、当局は大体もうこれ以上は法によりこのようなことをする必要はないであろうというようなことをお答えになっていたと思います。しかるに、今日またまた蒸し返しの特別立法、明らかに計理士に重点を置きました公認会計士特例法案を出してきたわけでございます。不可解というほかないのですが、この間の経緯についてひとつお答え願いたい。  大体衆議院における答弁においてあらかじめ承知しておりますが、本委員会におきましてもその間の事情、あるいは今回かような法律案を出すに至った経緯、考え方といったものをお聞きしたいと思います。
  93. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お答え申し上げます。御指摘のとおりに、公認会計士と計理士の問題は、公認会計士法が制定されました昭和二十三年以来の問題であったわけであります。    〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 昭和二十四年の六年から昭和二十九年の七月まで、解決の一つの方法といたしまして、特別会計士試験を十一回にわたって実施をいたしました。その後、昭和二十九年八月から三十二年の七月まで、公認会計士試験第三次試験受験資格検定をも六回にわたって実施をいたしました。こういう措置によりまして、大体公認会計士と計理士との問題は解決をすべきものと考えておったわけでございますが、事実はその期待に反しまして、常に計理士の側から公認会計士との問題について問題が蒸し返されまして、計理士の側から、公認会計士と同じような監査証明の資格を得たいという話、あるいは非常に安易な、簡単な試験で計理士を公認会計士にしてほしいというような要望が毎年繰り返されました。両者の間の紛争が絶えなかったのは事実でございます。  そこで、われわれといたしましても、何らかこの両者の問題を調整をはかり解決をはかることが、わが国の職業会計人制度の発展のために必要であると考えまして、大蔵省にあります公認会計士審査会に対しましてどうしたらいいかという諮問をいたしました。これに対しまして、かなりの日数をかけまして公認会計士審査会が昭和三十六年に答申を出してこられたのでありますが、その中に、ただいまのいろいろな点に触れてある答申でありますが、公認会計士と計理士との問題につきましては、この問題を調整するために計理士を論文試験で公認会計士にする方法が最も適当だという実は答申を得たのでございます。そこで、事務当局といたしましては、中立的な第三者であるこういう公認会計士審査会の答申に基づきましてこの問題の解決をはかろうといたしまして、関係業界といろいろ話し合いをしてまいったのでございますが、どうしても関係業界の賛成が得られない、話し合いがつかないということで、実は今日は至ったのでございます。  それが昨年あたりからかなり業界では、これは何とかしなければならないという空気が強くなりまして、解決の糸口ができてまいりました。特に去年の暮れからことしにかけまして、計理士会のほうで、計理士制度のもう廃止を前提として、公認会計士になるための試験を受けようではないかという空気が出てまいりました。計理士会といたしましては、計理士会全員に対してそういう意味の説得を続けまして、従来毎年計理士のほうからいろいろな陳情が繰り返されたのでございますが、昨年だけはそういう陳情がございません。計理士会が内部をそういう意見で統一するために努力いたしておったわけでございます。    〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 それがやっと計理士会としても、計理士制度の全廃を前提といたしまして、かつ公認会計士のほうで要望のあった論文試験というような安易なことでなしに、厳格な試験制度を受けようという踏み切りがついたのでございます。そこでわれわれといたしましても、そういう新しい事態が展開をいたしましたので、それを前提にいたしまして、いろいろ案を検討いたしまして、その結果、本日のこの改正案を提出するに至ったわけでございます。
  94. 野溝勝

    ○野溝勝君 質疑は当然現行公認会計士制度の実態と関連事項を明らかにするため、詳しくただすべきですが、私はこの際、衆議院におきまして一応論議されましたので、あまり詳細にわたっての質問は省略いたしまして、なるべく修正案を中心にして具体的に質問をしたいと思います。特に修正案については、私が従来指摘し主張してきた諸点が盛られているので、そのようにしてまいりたい。さて、ここで一言申しておかなければならないと思うが、これまで私はこの公認会計士制度の一部改正のあるたびに、質問をし、意見を述べてきたのであるが、日本の近代国家を形成する上におきましては、単に証券取引法に基づいた会計制度というようなことだけでなく、もう少し視野と角度というものを広められなければいかぬ。すなわち、大福帳的な、そうして経営者の言い分のみを聞き入れ、その経営の不健全というようなことに対しての責任ある警告なり事務処理などを監督できない、監査できないというようなことはよろしくない。だから、そういうあいまいなことを一掃するためには、会計士制度の充実、計理士制度の廃止というようなことを私は主張してまいりました。ただいま理財局長から聞きますると、会計士制度の充実ということを中心に置いてある、さらに長い間の公認会計士と計理士との紛争ということもひとつこの際これを解決したいという意図の、二つの基本的な要素からかような法案を出したというようなことをいま聞いたわけですが、私はその基本的な構想においてはよろしいと思うのであります。しかし、私は、単に、紛争があるから、その解決のため、どちらかの主張なり要請なりを取り入れて一本の法律案にするというだけの考え方では、内容的に不完全にならざるを得ないと思います。というのは、大体修正案等から見ても、もっと根幹に触れた考え方というものが打ち出されなければならない。でありますから、まず、こういうこと並びにこの修正案について具体的な内容をひとつお聞きしていきたいと思います。  そこで、現行公認会計士制度の充実と同時に、公認会計士と計理士との間の紛争を解消することに十分留意されたと思うのでございますが、その実態というものを把握されましたか。実態を明確にしてもらわぬと、私の質問も出てこないのでございます。  次に、あなたたちは公認会計士制度の充実ということをうたっておりますが、今日の公認会計士制度は現状で充実しておると思うのか、あるいはさらにこれをどういうふうにして充実していこうとするのか、その点をひとつお伺いし、さらに修正案を含んだ内容についてまた質問をしていきたいと思います。理財局長からひとつ。
  95. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 野溝先生御指摘のとおり、公認会計士制度全体についていろいろな問題があることは事実でございます。先ほど申し上げました昭和三十六年の公認会計士審査会の答申におきましても、この計理士問題の調整の問題だけでなしに、いろいろな答申があることを申し上げましたが、たとえば、公認会計士協会の特殊法人化の問題、あるいは共同組織体の推奨の問題、あるいは公認会計士の規律の維持の問題、あるいは会計士補の問題、その他いろいろな点についての答申があるわけでございます。そういう意味で、私どもといたしましては、公認会計士制度の全般につきまして、なお一そう充実しなければならない点が多々あることは承知をいたしておりますし、そういう意味での検討、努力を重ねるべきだと考えております。  今回の改正案におきましても、先ほど沿革的に申しましたので、多少計理士との問題に重点を置き過ぎた御答弁になったかと思いますが、この中にありますように、第三次試験に口述試験を加えたというような点は、計理士問題とは離れまして、やはり公認会計士制便を充実するために、従来の本来の試験制度についても合理的に、改革すべきものは改革すべきだというような見地から、会計士補の問題その他を考慮いたしまして、口述試験を加えるというような改正をいたしておるわけであります。そのほかに、いまの公認会計士協会の問題、あるいは共同組織の問題、その他今後もなおいろいろ検討をして、なお改善充実をはかっていかなければならないと考えております。ただ、それらの問題につきましては、なおいろいろ検討すべき点が残っておりまして、今回の改正案には具体化するまでに至っておらないわけでございますが、なお引き続き検討いたしまして、早い機会に再び具体案をもってお願いいたしたいと考えておるわけでございます。
  96. 野溝勝

    ○野溝勝君 それで、計理士が特例試験に合格して公認会計士になり得るというのが、この法案でありますが、大体、公認会計士第三次試験に合格して初めて公認会計士になれるということで今日の公認会計士制度が運営されておるのでございますが、この第三次試験というものが計理士にどういう影響を与えてきましたか。
  97. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) どういう影響という御質問で、あるいは答弁が多少まとはずれになるかもしれませんが、第三次試験は本来の試験の制度としてございました。もちろん現在の計理士の方はみんな受けられるわけでございますが、やはりかなり専門的な高度の試験であるということ、あるいはまた従来の筆記試験だけでは必ずしも合理的な判定ができなかったというような点もあったかと思いますが、非常に端的にいってむずかし過ぎる、計理士の方々がなかなか合格されないというような事情があったようでございます。そういう点から、何も計理士としての、こういう筆記試験と申しますか、暗記力がかなりの重要性を持つような筆記試験だけでなしに、一般的に計理士としてりっぱにやっておられ、識見もある方を公認会計士として採用する方法はないかということで、先ほど申し上げました公認会計士審査会の答申意見などで、論文試験でやったらどうだというような意見が出たようなことがあるわけでございます。第三次試験があって、これを計理士が受けられる制度になっておったにもかかわらず、やはり相当問題は残っておったということだと思います。
  98. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、証券局長にお伺いしたいのでございますが、なかなか、公認会計士に対しましては、法定監査において虚偽の報告をなした場合など罰則の規定が厳重になっております。すなわち、私は、証券民生化と大衆投資家の保護という点について当局は強く責任を感じて、今日の公認会計士制度の充実を考えてきていると思うのでありますが、単なる計理士の要望であるからというだけで、現行公認会計士制度の一角をくずすことは許されないと思うのでございます。しかし、この点は修正案におきましてお触れになりましたから、あまり深くは言いませんが、この点、理財局長並びに証券局長ともにいろいろと検討されたと思いますが、証券局長の見解はどうでございますか。
  99. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 企業経理の健全化をはかりまして、一そう投資家の保護をはかるということが、最近非常に重要なことになってまいったということはおっしゃるとおりでございます。しかるに、いま企業会計に関します財務処理の監査証明というものができる専門の職種といたしまして、公認会計士と計理士と二本立てになっておりまして、過去の歴史的な経過から見て、その間にいろいろ権限上、あるいは職能をふやしてくれという、なかなかこれが一本化できないことによって起こってくる争いがございました。したがって、職能会計人群といたしましても、あるいは監督官庁といたしましても、もっぱら最初に申し上げました基本的な目的に向かってこれに専念するということがややできにくい事情にあったという点に着目いたしまして、まずこの際は、公認会計士というものに一本化するということでもって制度の単一化というものをはかる。さらに、実質的な意味におきまする企業会計の健全化、それから、投資家の保護ということは決しておろそかにするわけでないわけでございまして、先ほど理財局長からのお答えにありましたとおり、本法案が成立しましても、なお引き続きまして、この公認会計士業務をどういうふうにして組織化していくとか、あるいは公認会計士が組織いたします団体の特殊法人化ということも、これらの職能会計人の機能をいかに国民的輿望にマッチする方向に引っぱっていくかということに関連した問題でございますので、答申にもいろいろ触れられておりますたくさんの問題に、これから引き続いて取り組んでいく義務と責任を負っておるものとわれわれは自覚いたしております。
  100. 野溝勝

    ○野溝勝君 私がどうしてこれに関心を持つかといえば、それは資本主義の社会におきましても、社会主義の社会におきましても、この制度は基本となるいわば経済と産業の秩序を保つ基幹的な制度であると思うからです。会計などの処理を昔のような大福帳的なことでいくならば、国家財政も企業経済も、時に家計においても健全に運営されないこと、言うまでもないことです。すなわち、国家の発展のため、そして経済の健全な発展のためになくてならぬ基幹的制度であると思う。外国におきましても、公認会計士制度というものは最大限に直視され、社会的にも非常に尊重もされ、信頼もされ、また期待もされております。したがって、制度としても、その内容は非常に整備されております。したがって、また公認会計士の社会的な地位も非常に高くなっております。こういうことでありますから、当然公認会計士そのものもやはり教養と知性をみがかなければならぬが、同時に、その監督に当たる大蔵当局はかような点を真剣に考えていかねばならぬ。  さらに、公認会計士そのものは証券業とうらはらの関係にあるわけですが、私はそれだけではいかぬと思うのです。もちろん、大衆投資家を保護育成するには厳重な会計監査がなされなければならない。最近の改源や古くは高野建設の例のように、公認会計士は正確に問題点を指摘し、限定意見等もはっきりつける必要があるわけです。一方また、不正監査については処罰規定があるわけですが、御承知のように、不幸にして旧高野精密の場合その他不正監査というようなことがあって、今日まで多くの企業が破産したり大衆投資家が迷惑と損害をこうむっております。そこで、法定監査の効果を実際的に完全なものにすること、不正監査をなくすこと、そのために現行制度の盲点をなくすことをはからねばならない。あげた事例のうち、後者は公認会計士の監査なりその報告なりが虚偽であったということであると思うのでございます。そして、この公認会計士を調べてみると、これらの方々はやはり正規の学問を経てきて公認会計士の資格を得たものではなくて、横すべりでなった方々が多いのであります。こういう例が多いのであります。私は全部がそうだとは言いませんが、一たびこの法案を通すにおきましては、十分この辺のところを配慮しなければならない。そうでないと、後日監督官庁は社会的に指弾を受けることになりますから、私はかように申すのでございます。こういう点については理財局長は十分承知の上だと思うのでありますが、この点につきましてどういうふうに考えているかを、ひとつこの際承っておきたいと思います。
  101. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 今回の法律改正によってお願いをいたしております公認会計士の特例試験によりまして、公認会計士の水準が下がると申しますか、公認会計士として十分な適格性を持たない人がこの試験によって横すべりになって公認会計士になり、全体の水準が下がる、この制度の改正のために落ちるということは、私どもといたしましても最も警戒をすると申しますか、排除すべきことだと考えております。従来、公認会計士審査会の答申にありました論文試験でという問題が、公認会計士側から非常に強い反対にあいました最も大きな理由もその点にあったと思います。非常に簡単な試験で、いわば横すべり現象を起こして公認会計士の水準を下げることは絶対に困るということであったのであります。私どもといたしましても、これによって公認会計士の水準が下がることは、野溝先生御指摘のとおりに、公認会計士の需要がますます高まってまいりました今日、非常に重大なことだと考えております。  したがって、今回の公認会計士特例試験も、本来の試験であります第三次試験と全く同等の試験、厳格な試験を期待をいたしております。したがって、法文におきましても、第三次試験に掲げました目的程度と全く同じ目的程度を掲げておりますし、公認会計士審査会が推薦をいたしました試験委員その他この試験の運用におきましても、そういう懸念のないような、公認会計士制度の水準を下げないような試験制度にいたしたいということを期待をいたしております。  ただいまお話のありましたように、事故を起こしました公認会計士の中に御指摘のような点があったかと存じますが、また逆に、現在の公認会計士協会の幹部をしておられる方々には、従来の、過去にありました公認会計士特例試験によってなられた方々が非常に多いわけでありますが、そういう方々はりっぱな公認会計士としての職能を果たしておられるわけで、今回の公認会計士特例試験による合格者も現在のそういうりっぱな公認会計士と同様な方がお入りになるということを期待しておるわけでございます。
  102. 野溝勝

    ○野溝勝君 まあ抽象的にはいまの局長の御答弁でいいんでございますが、私はいま申したとおり、かようなことを申したくないんでございますが、やはり事実をあげて特に質問をしておるんですが、ほんとうに今後の日本はやはり、国際収支の問題でも、資本収資、外資導入の点におきましても、公認会計士の任務というものは非常に重くなってくると思うんです。特に外国からの公認会計士も相当入ってきておる。その中で、その競争といいましょうか、そういうことも起こってくると思う。私はそういう展望に立っておる。これは単なる証券取引法に基づいたそういう部分だけでなく、将来日本の国際経済関係にも非常な影響を持ってくると思います。それだけに私は残念ながら、かようなことを言いたくないけれども、例をあげて申すわけです。たとえば今日日本の相当企業である丸善石油、日本不動産、高野精密、改源、日本製紙、不二越、後藤観光等、これらの実態からいって、当然その決算には公認会計士の監査において限定意見が付されておると思いますけれども、その状況をこの際ひとつ示してもらいたいと思う。
  103. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) ただいま御指摘ありましたように、日本不動産であるとか、高森産業であるとか、または過去において高野精密であるとか、いろいろな公認会計士の監査上の問題点相当あるわけであります。高野精密の場合は、もう新聞に発表いたしておりますので、先生十分御承知だと思いますが、当然公認会計士が十分知っておった、知っておったにもかかわらず、まあ間違って財務諸表が適正であるというように証明したわけでございます。したがいまして、公認会計士法の規定に従いまして、処罰をしたわけでございます。これは公認会計士の能力の問題というよりも、むしろ公認会計士の独立性に私は結びつくのではないかと思います。  アメリカの公認会計士の事務所の形態は非常に大規模なものである。それに反しまして、日本の公認会計士というものはほとんど全部が個人経営形態であるというような点に、まあ独立性の問題がからまってまいるわけであります。証券取引法上の監査会社というのは相当大規模な会社でございまして、これに対して個人形態の公認会計士が立ち向かうということになりますと、勢力関係からいきましても、独立性の問題があるわけでございまして、この点につきましては、先ほど局長からも御答弁申し上げましたように、公認会計士事務所の組織化というような問題が私は一番大きな問題として出てくるのではないか、こう思っております。  それから、もう一つは、まだ結論が出ておりませんので、まことに申しわけないんでございますが、日本不動産の場合と高森産業の場合があるわけでございます。まあ高森産業の場合は、これは決算期が七月でございまして、増資をいたしまして上場したのが十二月でございます。しかも、一月になって不渡りを出した、こういう現況でございますが、この場合に増資の届け出書につけられております公認会計士の監査証明というものが適正意見である。この点が問題になるかと思います。これは実情を目下調べておりますが、いままでの調べによりますと、高森産業のいわゆる業績が傾いてまいりましたのが、七月決算が終わりまして八月以降に徐々に悪くなりました。年末になって急速に悪くなったというような事態があるわけであります。ところが、十二月の増資の場合の公認会計士の監査は、七月前の、決算期前の監査しかやっていない。ここに監査制度のあり方に一つの問題があろうかと思います。したがいまして、言うならば一つの盲点がそこにあったわけでありまして、この点につきましては、今後証取法の第二章関係の検討を通じまして、今後検討をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。  それから、日本不動産の問題につきましても、これは目下調査中でございますが、若干やはり公認会計士が見のがしておる点が相当あるようであります。ところが、御承知のように、ああいう建設会社の経理というのはきわめてずさんでございまして、いわゆる何といいますか、収益の帰属が資料によって確定しにくい点がございまして、目下その点につきまして検討を加えております。  以上御指摘になりました点につきまして、簡単に御説明を申し上げました。
  104. 野溝勝

    ○野溝勝君 私はそれらの点についても実は詳しく聞きたいのでございますが、今後対策を練ってやっていくというのなら、これ以上は言いませんが、しかし、当然大衆投資家の保護をうたっておる一つの制度である以上は、私はこれから対策を練るとか、やるとかというようなことでは、これですますわけにはいきません。この点、私は当局にも少し手落ちがあると思うのです。この点、当局は十分注意し、対策を立ててもらいたいと思うのです。そうかといって、監督官庁であるから企業の自主性を押えても、強引に軍隊式に、上官が命令するような態度あるいは官権絶対的な態度は、これまた考えなければいかぬですよ。ここに非常にむずかしいめんどうなこともあり、この点のむずかしさはよくわかりますけれども、制度としての目的というものは十分生かしてもらいたいと思う。  そこで、法定監査について、その効果を実際的に完全化することについて、いまのような考えで今後努力すると言われますから、私はこれ以上はここでは言いません。  それから、公認会計士の現人員というものが絶対量が不足だと思うのですが、この点はどういうふうに考えられておりますか、理財局長……。
  105. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 現在の公認会計士は約千九百名いるわけでございますが、今後の日本経済の発展、それから監査制度の向上等を考えますと、現在の公認会計士の数で決して十分だとは考えておりません。ただ、現在の千九百人の公認会計士の方々が実際に会社を担当しておられる数は、また逆にある特定の方に片寄るというようなこともありまして、必ずしも全員が公認会計士の実際の監査事務をやっておらないわけです。その辺にもいろいろ根本的な問題があろうかと思います。そういう点は、なお先ほど来いろいろ申し上げました点等を含めまして、検討しなければならない問題かと考えておりますが、絶対数は今後これで十分であるとは考えておりません。
  106. 野溝勝

    ○野溝勝君 法定監査対象になっておるのが二千以上の会社です。公認会計士の人員というものは約千九百人、こういう状態では、なかなか監査の徹底を期し、完全なものとすることは困難であると思います。でありますから、それを徹底させるためにも、単に計理士の登用ということだけでなくて、ねらいは、制度の拡充、そこにあると思いますが、いかがでございますか。
  107. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御指摘のとおりだと思います。
  108. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうなってくると、理財局長は就任してまだ日が浅いのでございますから、あまり強くは申しませんが、大体、いままで大学を出て正規のコースで第一次、第二次試験に合格して会計士補となり、さらに第三次試験を受けて公認会計士になるということで、多くの有為の人材が一生懸命に勉強をやっているにかかわらず、第三次試験の合格率ははなはだしく底い。すなわち、昭和三十六、七年が一〇%台で、昭和三十八年になるとぐっと落ちて、第一回が八・七%、第二回が六・六%という底率です。これは私はどこかに欠陥があると思うのです。試験制度に欠陥があるとは思いますけれども、まだほかに何か欠陥があると思うのでございます。この点について検討され配慮されたことがありますか。
  109. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御指摘のように、第三次試験の合格率は約七・八%でございまして、国家試験の中でも非常に合格率の低いと申しましょうか、むずかしいと申しますか、そういう試験だということになっておるようでございます。  ただ、十分御承知のように、この公認会計士の試験はいわゆる必要人員に対する採用試験という性格のものではございません。資格試験でございます。公認会計士というものが非常に高い専門的な知識水準を要求されるという意味から、数が不足だから水準を下げてよけい採るという性質のものではないと思います。そういう意味で、大蔵省といたしましても、中立的な機関である公認会計士審査会に試験委員の推薦をお願いいたしまして、その試験委員の中の過半数は実は公認会計士の方がなっておられるわけでございますが、そういう試験委員におまかせをいたしておるわけでございます。そういう試験委員の方の御判断によって、やはりこの程度の専門的な水準は公認会計士として必要だということの結果がこういう合格率になっておるわけでございまして、むずかしい試験だという点は私どもも聞いておりますし、試験の制度自体にも問題があるのではないかというような点は、従来も検討をいたしてまいりました。今回、口述試験を加えましたのも、少しでも試験を合理的なものにしたいというような気持ちから改正お願いいたしておるわけでございます。
  110. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、さらに申しますが、大体計理士の方々は、先ほどあなたの答弁にありましたとおり、実務においては相当の経験を持っておられますが、いわば理論的なもの、あるいは学問的といいましょうか、こういう点について、やはり試験においては何らか考慮しなければならないということで、かような特例法案を出したという批判も聞かれるわけです。もし、そういうことで試験を軽くするというのであれば、私は必要ないと思うのです。それなら、第三次試験でよろしいのでございます、答申も出ておるのだから。そうすると、あなたの答弁の倫理というものは少し食い違ってくるけれども、私は、あなたのいま最後に答弁されたように、人員が少ない、試験は試験制度でやるが、その間やはり相当数ふやすために口述試験をやる、そこに合理性を考えておる、この点、私は従来の第三次試験と比べて明らかに緩和されるものがあると思う。しかし、私は、それを一がいに悪いと言うのじゃないですよ。悪いと言うのじゃないが、やはり論理は一貫して御答弁を願わぬとならぬと思うのです。  そういう点で、今度問題になってくるのはこの口述試験でございますが、口述試験の場合とかく誤解を起こす傾向があると思うのです。ない腹を探られてはいかぬので、ただしておきたいと思うのですが、特に今日公認会計士出の人が試験委員をやっておるというけれども、とにかく試験は非常にむずかしくなってきておる。しかし、今度は口述試験で弾力性を持たせる。すなわち、ことばは合理的でございますが、私から言わせるならば、弾力性だ。そこで、口述試験の場合に、その試験委員の認識といいましょうか、考えによるわけでございますが、そこが相当問題になってくると思うのです。そういう点で、口述試験に対してもよほど公平に、まただれが見ても納得のできるような人でないと、非常に誤解を起こすのでございますが、こういう点についてはどういうふうに考えておりますか。非常にめんどうなことでございますけれども、この点はある程度はっきりさせておかぬと、将来に問題を残すと思います。
  111. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) ただいまの口述試験の点でございますが、口述試験によって試験をやさしくしようという趣旨ではございません。やはり口述試験も、専門的な学科についての口述試験をやるたてまえになっております。学科についての専門的な知識を試験するわけでございますが、従来の筆記試験だけではやはり十分に専門的な応用力なりその他を測定しにくい。やはり口述試験を加えたほうがもっとより合理的に専門的な知識の判定ができるであろうということで加えたわけでございます。  したがいまして、いまお話しのように、非常に恣意的になると申しますかというようなことはないように、いろいろな点は御指摘のとおり注意していかなければならないと思います、これはこれから公認会計士審査会等の御推薦を得てやっていくわけでございますが、大体私どもの予想しておりますことは、従来の学科試験と同じように、公認会計士審査会が中立的な立場から公平な試験委員を選定せられまして、それによって口述試験も同じような形の試験委員によって行なわれるというようなことを期待をいたしております。お話のように、口述試験というものは、筆記試験のようになかなか判定がむずかしい点はあろうかと思います。そういう意味で、衆議院における修正案の際にも、非常に口述試験を受ける範囲を広げてはどうかという御意見もあったのでございますが、いろいろそういう点も考えて、やはり試験委員は全体について同じ人がやるべきであろうというような点も考慮されまして、ある程度口述試験を受ける資格をしぼったというようなことがあるわけでございます。御指摘のとおり、口述試験については筆記試験以上に、採点、判定についてむずかしい問題があろうかと思いますが、その点は十分に注意してやってまいりたいと考えております。
  112. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に、私はそれに関連してお伺いしたいのでございます。私はやさしくしろということを言うのじゃございませんが、他の場合、たとえば弁護士あるいは司法官でございますが、この試験制度あるいは資格取得条件と比べてみると、いまの公認会計士のインターン制度あるいは研修課程には、内容的に不均衡が見られ、この限りでは司法の場合は軽いということができよう。公認会計士の場合には、インターンを三年もやって第三次試験を受ける。大体は卒業論文でよくなっておるのでございますけれども、公認会計士制度はそうはいかぬわけです。この点、私は、反省、検討して、現行公認会計士試験制度の改善充実をはかる必要があるかと思うのです。  まじめにやって大学を出た若い人が情熱をもって勉強を一生懸命やっても、それが報いられずに、不幸にも落ちる。その場合に、どういうところが悪くて落ちたかということを知りたいと思っても、何も発表もされない。試験問題と正解等は公表さるべきものだ。私は、司法の場合と公認会計士の場合を比べてみてあまりにも、形が違っており、不分明であると思うんです。だから、公認会計士の場合も、司法その他の試験制度と比べて無理のないもの、大体同じ程度には考えなければいかぬのではないかと思うが、こういう点、どういうふうに考えておられますか。
  113. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お説のように、会計士補になりまして、あとインターンの期間を経て第三次試験を受けますが、その合格率が決して高くない。したがって、会計士補としてのままでおられる方はかなり多数あることは御指摘のとおりでございます。先ほど申しました公認会計士審査会においても、この問題につきまして、答申におきまして取り上げておられるわけでございますが、公認会計士補の方々のいわゆるインターン期間中の一切の実務補習と申しますか、研修が十分行なわれていないのじゃないかというような点から、もっとその間に十分な実務補習あるいは指導というものの充実をして、第三次試験にもっと合格をするような方策を講ずべきだというようなことも答申に出ております。  われわれといたしましても、会計士補の方々のそういう意味の点については、なお十分力を加わえていかなければならないと考えております。答申では十分そういう点について、公認会計士協会というものはもっと積極的に活動すべきではないかということも言っておられますが、そういう問題も含めて、インターンの期間をもっと充実させると同時に、御指摘のように試験制度自体にも問題があったかと存じます。これではまだ不十分だという御指摘があるかもしれませんが、そういう一つの反省のあらわれが今回の口述試験というものを加え、あるいはまた三党共同で修正をされました論文の試験を加えるというような点にあらわれているのかと考えております。
  114. 野溝勝

    ○野溝勝君 まあ当局はおわかりだと思うんですけれども、この際申し上げたいと思うんですが、司法の場合資格を取るためには、司法試験に合格してから、最高裁の面接と身体検査に合格して司法修習生として、二年間のインターに入る。この間、国費により、まず司法研修所に八カ月——前期四カ月、後期四カ月、裁判所に八カ月、検察庁に四カ月、弁護士会に四カ月、合計二年間の修習生としての研修をなすわけです。この研修を終われば、これでりっぱな資格を受けるわけなんです。これについては一応おわかりになっていると思いますけれども、私は十分検討される必要があるのではないかと思うのです。ただいまの答弁で理財局長は、試験制度につきましてもさように考える、または研修制度についても十分修正案にも出ているから考える、こう言いますから、これ以上は申しませんが、十分私は配慮していただきたいと思います。  そうしないと、公認会計士の不足を充足するということはなかなかできないし、実際に試験制度を改善することもむずかしいと思う。私はここらの例を参考にして、将来ある者にその努力に報い、その希望がかなえられるようにすることが必要だ、こういうことを強調したいのであります。  次に、現行制度をより充実し、紛争を解消するという実際の成果を期待できるかどうか、問題点を具体的にただしたい。まず、特例法案第四条の修正についてでございますが、「特例試験は、公認会計士となるのに必要な高等の専門的学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することをもってその目的とし、会計監査、会計実務(税に関する実務を含む)商法及び論文について、筆記の方法により行なう。」という、この論文を加えるということなんですが、この論文につきましては、ただ論文を加えるというだけではわからぬのでございますが、この論文は試験場において他の場合と同様筆記をするのですか、あるいは提出という形で作成さして提出させるのでございますか。どういうような考えでございますか。
  115. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 衆議院で修正をされまして、この論文の試験を加えられたときの趣旨でございますが、私どもはこういうふうに了承をいたしております。いまお尋ねのありましたように、その原案にありました会計監査、会計実務あるいは商法と同じように、試験場で問題を出して論文を書いていただく、修正をされました趣旨は、公認会計士というものは非常に高い専門的な知識と同時に非常に高い識見、一般的な識見、資質を必要とするはずである、したがって単なる専門的な知識のみでなしに、そういう一般的な識見を判定する試験科目を加えるべきであるという御趣旨でお加えになったものだと了承をいたしておるわけでございます。
  116. 野溝勝

    ○野溝勝君 それから、第九条にいきまして、「公認会計士審査会に、公認会計士特例試験の問題の作成及び採点を行なわせるため、臨時に、試験委員八人以内を置く。」ということですが、従来は七人でございましたが、一人ふえたわけです。私の考えでは、まあ一人ふえたといっても、別にどうということもなく、たいした意義はないのではないかと思うのです。  ただ、学識経験ということは、大体の場合委員構成にそういうことがうたわれているのでございますが、特に公認会計士試験委員の場合には、学識経験者というよりは、審査会の委員のように公認会計士に関して造詣の深い専用者、資格を持った人が適当であると思うのでございますけれども、八人とした意味は何ですか。どういう意味があるのですか、この一人ふやしたというのは。
  117. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御承知のように、従来の学科試験の科目の場合に七人という原案であったわけでございますが、修正によりまして論文が入りましたのに伴いまして、一名増加して八名ということにいたしたわけでございます。したがって、ただいま申し上げましたような一般的な識見なり資質なりを判定するための論文のための試験委員ということでございます。  実は修正の御意見が出ましたときに、端的に申しますと、単なる専門的な知識だけでなしに、人物試験をやれという御意見だったわけでございます。私どもは、公認会計士というものが専門的な知識の上に非常に高い識見と資質を必要とすることはそのとおりだというふうに考えてまいりましたけれども、ただ、おっしゃるような人物試験ということになりますと、逆に非常にまた恣意的な判定になるおそれもある。国家試験である資格試験において人物試験ということはまあ不適当であろうというようなことから、結局修正案がこういう意味一般的な識見を判定する論文試験ということになったわけでございます。したがって、そういう意味からいいますと、修正をされた趣旨を推測いたしますと、先生のいま御指摘のような専門的ないまの試験委員のような性質の試験委員とは多少違った、やはり一般的な教養と申しますか、一般的な識見を判定する論文試験になり、試験委員もやはりそういう性質の方になるかと考えますが、なおこれは公認会計士審査会等で御推薦を受けるわけでございまして、そのときのいろいろな論議の結果によってきまると思いますが、修正のときのいきさつから申しますと、私どもとしてはそういう感じを持っております。
  118. 野溝勝

    ○野溝勝君 ちょっとこまかくなりますが、いまの理財局長のお答えの中に、口述試験等もあるので、単なる専門家以外のことも考えなければいかぬということ、よくわかるのですが、その点はまた点数にも影響してくる、実際問題として。そしてこの口述試験ですが、この受験資格について、たとえば筆記試験の取得点数を四十点以上にするとか、あるいは筆記試験で五十点以上収得した者に対しては、その後二年、四回筆記試験を免除するとか、こういうような点について参考までにひとつお伺いしておきたいと思います。
  119. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) この点は、今後公認会計士審査会その他とも十分御相談してきめることだと思いますが、一応私どもが、公認会計士審査会の空気あるいはわれわれの考えておる点から、現在考えておる点を申し上げますと、従来は御承知のように筆記試験について六十点が合格点であったわけでございますが、今回口述試験が加わりますことによりまして、大体口述、筆記を半々と考えまして、筆記試験については従来の六十点の合格点が五十点でいいというふうに考えております。  それから、後ほどまた御質問があるのかもしれませんが、修正で変わりましたいわゆる五十点、ただいまわれわれの考えております筆記試験の五十点以上を合格者として、その人たちにはその後四回の口述試験を受ける際に筆記試験を免除するという制度を原案にとったわけでございますが、それ以外に、口述試験を一回だけ受ける権利は、五十点までならなくても、筆記試験が四十点以上の者には口述試験を受けさせたらどうかというような御趣旨での修正であったわけでございます。
  120. 野溝勝

    ○野溝勝君 さような意見は私の意見としてやはり衆議院の委員の諸君にも申し伝えておきましたが、私どもは同感でございますから、その意見に沿うように十分御協力願いたいと思います。いかがですか。
  121. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) この法律が通ります際に、三派共同の御修正でございました。修正の趣旨がそういう趣旨であることを私どもも十分承知をいたしておりますので、その修正の御意思を尊重して実行いたしたいと考えております。
  122. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に第十二条の二項中、「前項の認定を受けようとする者は、昭和三十九年九月三十一日までに、大蔵省令で定めるところにより、認定申請書を税理士試験委員に提出しなければならない。」というのがありますが、どういう内容でございますか。
  123. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) この趣旨は、いわゆる今回の法律の一番大きな目的が、計理士制度を廃止いたしまして、職業会計人を公認会計士一本にするというところにねらいがあるわけでございまして、そういたしますと、計理士の中で税理士資格を持っていない方が数十名おるやに聞いております。その方々が全部この公認会計士特例試験に合格すればいいわけでございますが、これは試験というものは資格試験でございますので、やってみなければわからないということで、そのようなものに税理士の資格を与える必要があるわけでございます。  したがいまして、まあ税理士資格を与える手続といたしまして、昭和三十九年の七月末までに認定申請書を大蔵大臣に出すわけでございます。その場合にどういうものが適格になるかというのが政令できまるわけでございます。いわゆる昭和三十九年の四月一日現在で、主として計理士の業務をやっておる者で、かつその者の実務経験年数及び、まあ何といいますか、その人が従来やってきた業務の内容、たとえばどういう会社に関与しておったかというような点を勘案いたしまして、現在の税理士と大体同等の学識及び応用能力を持っておるかどうかということを判定いたしまして、それによって税理士資格を与えるということになるわけでございます。
  124. 野溝勝

    ○野溝勝君 わかりました。  さらにお聞きしたいことは、附則第二条第二項中、政令で定める口述試験受験の有資格基準は、筆記試験の成績が、先ほど申したとおり、大体三派の修正案では四十点以上、それから筆記試験免除の有資格基準は筆記試験の成績が五十点以上、こういうように政令で定めると先ほども言われたのでございますが、この点ははっきりしておきたいと思いますけれども、政令はいつごろ出すつもりなんでございますか。
  125. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 本法の公布と同町に政令を出します。政令の中にいまの基準が明確に規定されております。
  126. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に、衆議院における附帯決議についてでございますが、第一項で期限がうたわれていますが、これは、特例法案にある昭和四十二年三月三十一日という期限を必ず厳守するということであると思うのでございますけれども、この昭和四十二年三月三十一日にしたのはどういう理由でございますか。
  127. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 計理士制度全廃を前提といたしました案でございます。したがって、計理士制度全廃の時期をいつにするかという問題が、かなり法案をつくります過程におきまして重要な問題であったわけでございますが、計理士会のほうではなるべく長く残してほしいという要望がありまして、五年というような案もあったわけでございますが、これを三年にいたしたわけでございます。なぜ二年でなし四年でなしに三年かと言われますと、これはちょっと返答に困りますが、計理士会のほうからはなるべく長くという要望がありましたけれども、やはりこういう制度はできるだけ短期間に廃止ということに踏み切るべきだということで、三年ということにきめたわけでございます。
  128. 野溝勝

    ○野溝勝君 これは先ほどから私が申し上げておりますとおり、もうたびたびこういう問題が提起されてきました。そしていつもわれわれはこの渦中で論議をしてきたのでございますが、これからは、これをもってひとつはっきりしてもらわぬと困るわけです。この点は、お引き受けをしたというだけでなくて、大臣の言明をはっきりここで得たいと思うのですが、この点、私は委員長にお預けをしておいて、ひとつ大臣答弁をはっきりここで記録しておいていただきたいと思います。いつかの機会においてひとつこの点は発言をしてもらいたい。当局の考え大臣と打ち合わしたことだと思うけれども、間違いないかね。
  129. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御指摘のとおり、従来の例から申しますと、何回かこういうことを繰り返してきたわけでございまして、今回の法律改正につきましても、その点衆議院でも非常に問題にされまして、今度こそこれで終止符を打つようにという強い御要望がございました。大臣も衆議院におきまして、非常に明確に、政府といたしましてはこの制度で終止符を打つということを言明をいたしております。
  130. 野溝勝

    ○野溝勝君 大臣だっていつまでもやっているわけじゃないのだから、かなわぬのだ。だから、これは引き継ぎ事項として明確に、もちろんそういうことはうたわれればそれでいいようなものであるが、私は特に、大臣が間違いなく引き継ぐべく、ここでひとつあなたからお話しおきを願いたい。
  131. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御指摘の点は、私から必ず大臣に報告をいたします。衆議院におきましてその点問題になりまして、大臣と申しますか、政府がこれをもって最終的な解決とするという言明をいたしておりますので、これ以上に附帯決議をつけるのはどうかという実はお話もありました。ありましたけれども、なお非常に重要な問題だからということで、この附帯決議の第一項がついたわけでございます。これも三派共同の附帯決議でございます。もちろん、政府としてはこの附帯決議を尊重すべきたてまえでありますし、政府自体としても明確にそういう気持ちでおります。
  132. 野溝勝

    ○野溝勝君 実はわれわれの委員の仲間でも相談して、この点を明確にしておくべきだということだったわけです。  次に述べますが、研修上の点についても、ただ配慮をするというだけではいかぬから、具体的にと思っていたわけですが、あまり芸がこまかくなってもおかしいからというわけで、これは一応下げましたけれども内容におきましてはいま申したとおりでございますから、十分その点ははっきりしていただきたいと思います。  最後でございますから、もう一、二点申し上げておきたいのは、附帯決議の第二項は研修所というか、講習所等の構想を含むものであると思うのでございますけれども、司法官の研修所の場合すべて国費をもって充てておるのでございますが、こういう点はもちろん予算等の関係もありまして、いま、ここでこうするということ、すぐには申されぬとは思うけれども、先ほど理財局長から、他の純度を参考にして善処するというような答弁もありましたので、私はその答えを信頼いたしまして、国費支弁というような気持ちで努力されるというふうに解釈したのでございますが、そのいかがでございますか。
  133. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 私、先ほど御答弁申し上げましたのは、先生の御指摘のように、この第二次試験合格者がインターンの期間中に十分な実績をあげるように積極的に配慮をしてまいりたいということを申し上げたわけでございます。いまの国費という端的なお話になりますと、ここで必ずしもお約束できかねると思いますが、先ほどの公認会計士審査会の答申等でも、いろいろ積極的に配慮をし、公認会計士協会自体がもっと活動すべきではないかというような答申もあります。そういう点も考慮いたしまして、附帯決議がさらにありましたことでもございますので、附帯決議どおり、実務補習等の成果がさらにあがるように積極的に配慮をしてまいりたいと考えております。
  134. 野溝勝

    ○野溝勝君 私はこれで最後でございますから、質問になるかあるいは意見になるか知れませんが、一言申し上げておきたいと思います。三派共同による修正案は、先ほど来申し上げたようなことを慎重に考えて出されたものでありますので、私はその内容をいわば複写したような意味で、質問と意見を申し上げたのでありますが、とにかく公認会計士制度の確立ということは証券取引法に基づいた一つの制度というだけでなく、これからますますこの公認会計士制度の充実が必要であり、そのことが外国に対する日本の信頼、或は外国の日本に対する評価をより高めていくことになるのでございます。当局は、かような角度から、もう少し大きな眼を持ってやっていってもらいたいと思うのです。今回の公認会計士制度の充実、公認会計士の一本化ということで、当局は非常に努力されておるわけですが、私はそれと同店に、いまのように企業経済だけではなくて、法定監査の対象を広げるべきだと思うのです。私は、このことについてはこの委員会においてもたびたび申し上げてきております。すなわち、企業経済から公共的な財政面、県や市町村等地方自治体や公社、公団であるとか、あるいは農業協同組合とか、労働組合とかです。政府関係機関は、会計検査院という正式な機関があって監査をするのでございますが、こうした団体について、いろいろ問題が起きているように、現状は、少なくも社会的機能として会計監査が適正になされるような仕組みにはなっていないと思うので、私はこの点が是正され充実されなければならないと思っています。  公認会計士がまじめに仕事をやっていく上におきましては、もし間違ったこと、あるいは虚偽の不正監査等を行えば、これには厳重な処罰規定もあって失格するのでございますから、こういう点を考えますると、私は、この制度の改正とともに、もう一段と視野を広めまして、公認会計士の仕事の領域、範囲を拡大する必要のあることを痛感しています。このようにすることが、高い外国の公認会計士が日本に入ってきて日本の公認会計士のなわ張りを荒らす、あるいは会計士の領域を侵してしまうこれを防げると思うのです。むしろ、私は、国内のこういう領域を生かすという意味においても、当然政府は考えなきゃならぬ問題だと思うのです。そういう点について、理財局長並びに証券局長はどういうふうに考えておるか。もし考えておらぬとするならば、今後さようなことはひとつ大臣と相談されまして、善処する、努力するという考えでおるのかどうか。  これは非常に大事なことろであります。先ほど申したように、今後公認会計士競争が起こってきます。特に外資導入の点など、資本収支の点など、いろいろ複雑な問題が起こってきます。そのとき、外国が信用のものさしにするのは、やはり日本の公認会計士制度などであります。公認会計士制度というものは、これは近代国家の基礎をなすものである。そして日本の現行制度は非常にりっぱなものだといって称賛を受けておるようでございますが、称賛を受けておるだけでは意味をなさぬと思います。それを生かしていかなきゃならぬ。その意味におきまして、特に私はこの点をお聞きして質問を終わりたいと思うのであります。その点、最後にお聞きしたいと思います。
  135. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 今回お願いをいたしております法律改正によりまして、いわゆる法定監査の業務は公認会計士一本になるわけでございますが、御指摘のように、会計監査の仕事は非常に大事な仕事でございます。現在の証取法上の会社だけに限定をすべき性質のものでなしに、もっと広く監査対象を広げるということは、公認会計士制度のおそらく理想であろうかと考えます。アメリカのように、九十年の歴史を持って公認会計士制度が充実をし、公認会計士というものが社会的にも非常に認められてまいりますれば、先生の御指摘のようなことにだんだんなっていこうかと思います。そういう意味で、先生の御指摘のような点は、今後、われわれといたしましても十分検討をしてまいりたいと考えます。
  136. 柴谷要

    柴谷要君 公認会計士特例試験等に関する法律案、この改正内容は、まず第一に、計理士制度を、三年間の期間を置いて、昭和四十二年三月末日をもって廃止をする。これが一つ。それから二つ目には、計理士が公認会計士となるに必要な能力を有するかどうかを判定するために、計理士のみを対象とした特例試験を行なう。これが第二点。それから第三点は、試験に際しては経験年数等をしんしゃくをする。それから第四は、現に業務を営む専業計理士に対しては、税理士の資格を付与する。この四点が改正の中心であろう、こういうふうに思いますが、それ以外に何か重点的な改正内容がございますか。
  137. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) ただいま御指摘の点が重点的な点であることは、御指摘のとおりであります。ただ、ただいまの点は、主として計理士と公認会計士の調整の問題に関する重点でございますが、もう一つこの法案の重点として考えておりますことは、公認会計士の本来の試験制度であります第三次試験に口述試験を加えた点でございます。
  138. 柴谷要

    柴谷要君 そこで、一つ一つお尋ねしてみたいと思うのですが、計理士制度を廃止をしなければならぬ理由、三年間存置をする理由、それから五年を要求しておる計理士側の理由、こういうものについて伺いたい。
  139. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御承知のように、計理士制度自体はすでに廃止されておるわけでございます。ただ、暫定的に、計理士という名前を使って会計事務を行なってもよろしいという制度になっておるわけでございます。それを今回ははっきり廃止をしようということでございます。  そこで、御質問の、廃止をしようとする理由でございますが、公認会計士制度ができましたゆえんは、やはりわが国の企業の会計経理を明確にし、開放経済体制を迎えた日本の企業の強化をはかるために、会計監査の水準を上げようということであったわけでございますから、すべての監査は公認会計士一本にすることが理想であるわけでございます。したがって、計理士制度というものはなるべく早くなくしまして、公認会計士一本にすべきだという方向で進んできたわけでございますが、暫定的に、計理士がいますために、計理士の側から、先生十分御承知のように、毎年のように、公認会計士と同じような資格を与えてほしい、権限を与えてほしいという陳情と申しますか運動が繰り返されまして、わが国の職業会計人というものが、この二つの制度が併存しておりますために、両者の間のいろいろな紛争が起こりまして、きわめて職業会計人制度としては好ましくないような状態が続いてきたわけでございます。したがって、それをなるべく廃止したいということでまいったわけでございまして、先ほど御説明申し上げましたように、昭和三十六年に公認会計士審査会でもこの問題の解決をはかる方法を答申をされたのでございますが、その答申案の線に沿いまして、事務当局といたしましても関係業界とのお話し合い、説得につとめてまいりましたが、それが十分成功しなかったわけでございます。それが、昨年ごろから計理士会のほうでみずから、計理士制度を廃止して、試験を受けることによって問題の解決をはかりたいという機運になりまして、その機運を前提といたしましてこの法律改正お願いをしたわけでございます。  ただ、そういう全廃という決心をいたしますことでございますので、計理士会としてはなるべくその暫定期間といいますか、その期間を長くしたいという希望があるのは、まあ計理士会としては無理もないことであったと考えておるわけでございます。
  140. 柴谷要

    柴谷要君 公認会計士法ができたときに計理士法というものが廃止をされた。しかし、当時計理士をやっている諸君のために、業務をやってよろしい、こういうことで今日まで引き続いてきたこの経緯はよくわかります。しかしながら、その間において計理士諸君のほうから、公認会計士に何とかしてくれ、こういう要望の出ることもこれは当然だと思います。しかしながら、その要望だけではいかぬから、特に試験を受けて公認会計士に登用してもらおう、こういう気持ちになったことも、これまた計理士会全体の空気として賢明の策であると、こう思うのです。  それで、言うならば公認会計士になるための試験制度というものは今日厳然と存在をするわけであります。それをなぜ特例試験ということでやらなければならないのか、その理由について御説明いただきたいと思います。
  141. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お話のとおり、第三次試験というものがございまして、計理士の方々も第三次試験を受ける資格は当然あるわけでございます。それから、先ほど野溝委員からも御指摘がございましたが、従来の実績から申しますと、第三次試験というものは非常にむずかしいと申しますか、なかなか合格率が高くない、非常にむずかしい試験であったわけでございます。そういう点も含めまして、試験を受けられることにはなっておるが、現実の問題としてなかなか通らないというようなことから、計理士のほうからいろいろな御要望があったわけでございます。  試験の制度は、従来は御承知のように筆記試験だけだったわけでございまして、やはり相当の年齢になって、まあ暗記力が衰えると申しますか、そういう意味の筆記試験を受ける力は多少若い人に比べて落ちているけれども、いろいろな知識経験その他からいってりっぱに会計監査の業務ができるというような人が、どうも通りにくいというような点があったわけでございます。そういう意味で今回の第三次試験の改正として口述試験を加えましたのも、一つの反省であったわけでございますが、そういう意味からいいまして、やはり従来やりましたような特例試験と同じ程度の特例試験をすることが計理士問題の解決になるということで、こういう案をつくったわけでございます。
  142. 柴谷要

    柴谷要君 計理士諸君の実情考えるというと、相当経験年数は深いし、勉強もかなり進んでおる、そういうふうな実情を勘案して、現在計理士として携わっておる人たちのために特例試験をやろうと、この趣旨は私はまことにけっこうだと思う。まことに行政上からいっても情のこもった処置だと、こう思う。  ところが、そのような処置を一面考えながら、それならば特例試験に合格しない人を、今度は計理士をなくしてしまって税理士にする、その処置をもう少し——一面あたたかい配慮をしてやるんですから。で、今日計理士として資格を持ってやっておられるんですから、なぜ、これを三年と切ってしまわずに、かなりの限定した数字であり、年齢は高いんですから、この人たちの意向をもう少し入れてやらないか。そうすればたいへん情のこもった法律になるんじゃないか。ところが、三年間に区切ってぴたっと廃止をしてしまって、しかも今度はやはり一定の考査をして税理士にすると、こういう法律でしょう。公認会計士になれる人はいいですよ、特例試験で。ところが、年代の相違から、もしそれが落ちた、受からぬということになれば、今度は税理士さんになる、こういうことなんですから、その税理士にならないで計理士に置けないものかどうか。そのくらいの配慮が、上にも考えられるならば下にも考えるという方向でいくならば、きめのこまかい私は政治であると、それを織り込んだ法律であると、こういうふうに考えるんですけれども、その点についての配慮はどういうふうにお考えになっておられたか。
  143. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 御指摘の点はお話のとおりの事情があろうかと任じます。公認会計士の試験に通る方、これは過去の合格率その他からいって、決して非常に大きな数になるとは考えられないわけでございますから、したがって、その他の計理士の方がどうされるかということは非常に重要な問題であるわけであります。その点について、三年間の猶予期間だけで、あとは計理士という名前で仕事をすることはできなくなるという点は、確かに御指摘のような点はあろうかと思いますが、御承知のように、計理士の方方、いま登録しておられる方は約三千人でございます。実際に仕事をしておられる方が、そのうちの二千人程度かと考えているわけでございますが、大体九割以上の方が実は税理士としての仕事で、何と申しますか、計理士だけをやっておられるわけじゃない。むしろ税理士としての仕事をしておられるわけであります。したがいまして、まあ、やがてはなくなる運命である計理士の名前でいつまでも仕事をしているよりも、この辺ではっきり進退を決したほうがいいという計理士会の決意がございまして、これを前提にして、私ども問題を考えたわけでございます。  したがって、九割以上の方が税理士としての仕事をしておられ、税理士の資格がない方は今回の改正案で、先ほど経済課長から数十名と申しましたが、非常にごく少数の方は税理士の資格を与えようということにしているわけでございます。お話のように、多少その辺で踏み切ったと申しますか、そういう点があると思いますが、この辺は計理士会自体が最も深刻に考えられた問題でございまして、計理士会自体がそういうふうに踏み切っておられる問題でございます。
  144. 柴谷要

    柴谷要君 たいへんその、計理士会の要望もこれありということで、計理士会の要望は多分に一〇〇%いれたような御発言なんです。  ところが、この法律案改正にあたって、私どもは非常に迷惑をした。ということは、公認会計士の皆さんのほうからは、この法律案に対して反対をしてくれ。それから計理士さんのほうでは、協会という名前で、連合会という名前で、推進本部という名前で、ぜひ通してくれ。ところが、今度は計理士さんの有志としては、この法律案は困ると。一体困るところはどこだと聞いたら、特例試験で合格する人はいいけれども、あとに残されたわれわれは三年しか寿命がない、こういうことだから反対をしてくれという陳情もあった。  私は、この点は、大蔵省の担当の皆さんに特に強く言いたいことは、これらの階層にある方々は、これは知識層ですよ。これは知識人ですよ。国民のレベルから見て高い人たちが集まって、仕事もやられ、集団もなしている。これらの人たちと、なぜ行政官庁である大蔵省がもっと意見の調整をはかって、この法律案国会に提案をしないのか。ひいては忌まわしい事件が起きていくじゃありませんか。こんなことにわれわれは耳を傾けて大蔵当局を追及しようとは考えておりません。しかし、もっと大蔵当局自身が、この知識層を集めて、これは法律案だから、一〇〇%賛成できるということにはならぬと思いますけれども、少なくとももっとこれらの方々が、ある程度やむを得ないという程度まで法律案を練って、なぜ国会にも出せないものかと、私は痛切に感じた。それは国民の全部を対象にしてやろうという場合には、賛成、反対の猛烈なのろしがあがると思うのです。この法律案は、知識人でありながら、賛成、反対ののろしをたいへんあげられた。私ども会館において連日連夜、あるいは夜間十一時、十二時に、たいへんに電報が来た。地震だと、そう思って出てみたら、反対をしてくれ、賛成をしてくれという電報です。まことにひどい目にあった。それをもって、その腹いせをもって皆さんに注文するわけじゃない。この知識層の方々ですから、なぜもっと意見調整をして——こういうふうな国会の場でいろいろ議論させなければならぬような提案をしてきたかということです。この点、いささかなりとも皆さんのほうに反省の色があるかどうかをお尋ねしておきたい。
  145. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) この点、業界と申しますか、関係者の十分な完全な了解ができませんでしたことは、私どもといたしましてもまことに遺憾に存じております。そのために先生方にいろいろ御迷惑をかけた点、たいへん恐縮に存じております。  ただ、従来の経緯を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、公認会計士審査会といういわば第三者の中立的な方々が、非常に長い期間慎重に問題を検討された結果出されました答申は、この問題の解決のために、計理士に対して論文試験をして公認会計士にすればいいではないかという答申が、三年前に出たわけでございます。事務当局といたしましては、その答申に従って、関係界の話し合いをまとめるように努力をいたしたわけでございますが、その案につきましては、計理士会は全面的に賛成でございましたが、公認会計士協会は全面的に反対でございました。そういう意味で、調整がつかないままに、われわれといたしましても、この程度の反対がある間はとても法案をつくるに至らないという判断をいたしまして、審査会の答申をいただきながら、事務当局が二年間法律を出さないということは実はたいへん心苦しかったのでございますが、御指摘のように、関係業界の円満なる話し合いがつかないものは出せないということで今日まできたわけでございます。  それが先ほど申し上げましたように、昨年の夏以降、かなり解決の機運になりまして、計理士会自体もそういう決心をしようということで、これも先ほど申し上げましたが、毎年のように繰り返されておりました陳情と申しますか、運動が昨年一年間は計理士会からなかったわけであります。というのは、計理士会がそういう方向で計理士全員の説得にかかっておったわけでございます。その結果、計理士会としては約一年間を費やしまして会員の説得をいたしました結果、計理士会全体としてこういう制度に賛成するという決議をいたしたわけでございます。したがって、御指摘のように、計理士会の一部にあるいは反対の方があるかもしれませんけれども、計理士会としては一年間の説得期間を置いて、協会全体としては賛成だという決議をするまでに至ったわけでございます。  なお、公認会計士協会のほうは、一応反対の態度をとっておられますが、これはわれわれから言わせると、ある意味で多少の誤解がありまして、この特例試験によって非常に安易に計理士から公認会計士に乗り移れるのではないかという疑問と申しますか、疑惑と申しますか、そういう点が主たるものであったようでございます。その辺は、われわれいろいろこの特例試験等の性質を説明いたしました結果、協会全体として反対の決議を賛成に変えられるまでには至りませんでしたけれども、まあやむを得ないという感じで、その後公認会計士協会としては協会としての反対運動その他を一切やっておられないわけでございます。  そういう意味で彼此勘案をいたしまして、大体これで関係業界の円満な解決はできるという判定をいたしまして提出をした次第でございます。
  146. 柴谷要

    柴谷要君 公認会計士協会のほうが了解をしたと言いますけれども、事実は、衆議院の段階において修正をして、修正をするということになって初めてこの反対というものを、運動というものをやめたわけです。だから、あの程度の修正でしたら政府ものめるのですから、なぜもっと立案者自体が努力をされなかったかということです。そのことは国民が、ややもしますと、官庁で立案をするということになりますと、関係者と打ち合わせをすれば何か権力で押しつけられるのじゃないかという印象を受ける。その印象が反対、賛成ということになって出てくる。そういう印象を与えないで、この与えないような上に話し合いをすることが一番大事だと思う。それによって効果が得られると思います。わずかの修正で計理士協会も喜ばれ、公認会計士協会も承知をいたします、こういうことになったので円満にいったわけでしょう。その努力をなぜ、国会審議の過程でわれわれにやらせることなくして、あなた方がやり行なかったか。それはあなた方が権力をもって、言うことを聞かなければやるぞというような気持ちじゃないでしょう。今日の大蔵省にはそういう気持ちはないとは思いますが、それを相手方が受け取ったということが、この法律案の反対ののろしになってきたと私は思う。だから、今後こういう法律をつくるときにはそういう点の配慮をされて、ぜひ今回のような反対、賛成の連日行なわれることのないような法案が上程されることを希望したいと思うのです。  そこで、私は、これによって長年計理士会における計理士業務を担当してこられた皆さんが、いま局長のお話だというと九〇%も救われる、こういうことでありますから、まことにけっこうだと思うのです。さてそれならば、今日第三次試験が非常にむずかしい、しかも合格するには何回も何回も試験を受けなければならぬ、平均六年もかかってやるというようなむずかしい試験がはたして適正であるかどうか。  それから、審査委員として従来は七名、その七名の中に五名まで公認会計士の人がおられる。こういうことがはたして筋が通った行き方であるかどうか。これから若い人たちが希望を持って、公認会計士になろうとして、その難関を突破しようとして日夜努力されている方がたくさんおる。こういう人たちにやはり希望を与えてやるためには、どう考えられておるか。この点をひとつ明らかにしておいてもらいたい、こう思うわけです。
  147. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 第三次試験が、お話のように、非常に合格率が低い。したがって、試験自体に非常に問題があるのではないかという点でございますが、御指摘のとおりの点がございまして、今回の改正案で口述試験を加えましたのも、そういう反省の一つのあらわれかと考えます。なお、今後この試験制度について御指摘のような点も十分参酌をいたしまして、なお十分な検討を続けてまいりたいと思っております。
  148. 柴谷要

    柴谷要君 私、これで最後です。いよいよこの法律案も、非常に長い時間を費やして議論をし、またそれだけにわれわれも勉強させていただきましたが、三党ですか四党ですかの修正が衆議院で可決されて、衆議院から送られてきたんですから、きょうはおそらく委員長は採決しないと思いますが、明朝採決ができると、りっぱな法律として出ると思うんですが、この運営にあたっては、ぜひこの法律が生まれてしまえば、この法律を今日までいろいろ議論をされた、いろいろな問題が出ましたね、出たけれども、こういうものは一切水に流して、公認会計士協会の幹部がけしからぬとか、あるいは大蔵省のだれだれがけしからぬというようなことは、一切水に流すという気持ちが大蔵省にあるかどうか。あすこの法律案が制定されれば、あとはこの法律の精神にのっとって皆さんが運営にあやまちのないようにやっていく、過去のことは追及しない、過去のことは水に流していく、過去のことは問題にしないという度量を持って、この問題に取っ組んでいかれるかどうか、お気持ちを聞かせてください。
  149. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 法律案の作成過程にいろいろな問題がございましたことは事実でございます。ただ、私どもは、法律案ができましたら、この法律改正案の趣旨を体しまして、また同時に、三派共同の修正の御趣旨も十分体しまして、この法律が十分公正妥当に運営されるように、万全の注意をいたしてまいるつもりでございます。
  150. 柴谷要

    柴谷要君 たいへん局長からりっぱな御答弁をいただいて、お礼申し上げたいくらいでございますが、この法律案ができましてから、何といっても会計士協会等と十分な連絡を密にしていかなければならぬ、こういうふうに考えますので、お互いに、まあいわば私どもがいろいろな点で入手しております問題等が再燃されないように、ぜひひとつ円満に遂行していただきますように希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  151. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重複すると思いますが、公認会計士の試験というのは、これはもう天下に知れわたった非常にむつかしい試験だ、こう言われておるわけですが、いままでの例から見ますと、大体合格率が一〇%。今回また特例試験であったとしても、おそらく総合すれば五〇%以下になる可能性が十分あるように思われるんです。いま同僚議員がいろいろそういう点について伺いましたので、重ねて聞こうとは思いませんが、ただ、先ほど善処されると言われた中で、試験官の問題がやはり非常に問題になるんじゃないかと思うんですね。学識経験者ということを若干うたわれてありますが、いままでどういうような人が試験委員の構成メンバーとしてやってこられたか、最近のやつを若干聞かせてください。
  152. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 現在の三次試験の試験委員の方の経歴を申し上げます。七名おりまして、公認会計士としましては、現在公認会計士協会の副会長をやっております鈴木貞一郎並びに津田六郎、それから近山仁郎、これは別に役員ではございません。それから太田哲三、それから井口太郎、以上五人が公認会計士であります。それからあとの二名は、興業銀行の常務をやっております梶浦英夫という方が一名入っております。それから税関係で忠佐市、それが帝人と調査役をやっておりますが、以上七名が第三次試験の試験委員になっております。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 第九条には、確かに「試験委員は、公認会計士特例試験を行なうについて必要な学識経験を有する者のうちから、試験の執行ごとに、公認会計士審査会の推薦に基づき、大蔵大臣が任命」する。そうしますと、試験のたびごとに試験官が変わることは当然でありますね。
  154. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) そのたびごとに任命をいたしておりますが、実際におきましては、大体数回同一人が連続をいたしまして、それから交代すると。任命は、その試験ごとに任命をいたしております。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ついでですから、もう一つ聞いておきたいことは、公認会計士の審査会のメンバーというのはどういうふうになっておりますか。
  156. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 審査会の会長は元専売局の長官、会計検査院長をやられました荒井誠一郎氏でございます。それから、委員といたしましては、慶応大学の教授の中西寅雄、それから都民銀行頭取の工藤昭四郎、東京大学の教授石井照久、三菱倉庫株式会社の相談役をやっております大住達雄、それから十条製紙株式会社の社長金子佐一郎、それから株式会社芝浦製作所専務西野嘉一郎、経団連の事務局長の堀越禎三、それから大蔵省の証券局長ということになっております。
  157. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、現在たしか公認会計士は千九百何名と記憶しておりますけれども、その千九百何名かの公認会計士がとり行なういわゆる第一条の趣旨の監査、いわゆる「財務書類の監査又は証明をすること」というその仕事の内容でありますけれども、十分仕事の量といいますか、いま申し上げた人数で的確な仕事の推進ができているかどうか、これを教えていただきたいと思います。
  158. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 現在は、千九百名のうち、監査の責任者としまして従事をいたしておりますのが約七百七十名でございます。それ以外の方は補助者等として監査に従事しておるか、または、税理士の資格をもらいますので、税理士の業務をやっておるか、いずれかだと思います。ただ、問題は、現在の、衆議院でも問題になったわけでありますが、監査日数というものがはたして妥当であるかどうか。たとえばソニーとか東芝あたりがアメリカでADRを出す場合、アメリカの公認会計士の監査を受けたわけでありますが、その監査は、現在日本で行なわれております会計監査と比較しますと、実に詳細をきわめておったわけであります。投資家保護という観点から見ますと、さらに現在の日本の公認会計士の監査日数というものを多くして、十分の会計監査をして、投資家保護を徹底するという必要があるわけでありますが、問題は監査報酬とのかね合いになるわけであります。したがいまして、その辺は今後じっくりと実業界ともいろいろ交渉をいたしまして、監査報酬を上げるということは監査日数を延ばすことになります。そういたしますと、現在の公認会計士で監査をやっていない方も監査に吸収されるということになろうかと思います。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、大体一人の公認会計士が扱う会社の件数といいますかはどのくらいになっていますか、平均。いろいろ差はあると思いますけれども平均でけっこうだと思いますが。
  160. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 二件弱ということになっておるようであります。
  161. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 一つで終わる予定だったのですが、ついでにもう一つ。  一人が二件弱というと、仕事の量によっても相当違うと思いますが、現状においては約二千名近くで十分業務の遂行ができると、こう見てよろしいですか。
  162. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 現在の監査の状況は、はたしてこれでいいか悪いかという判断にもからみつくわけなんでございまして、一般的な考えとしましては、現在の監査日数というものはきわめて少ない。したがいまして、先ほどいろいろ問題になりましたように、監査上いろいろな問題が起こると。したがって、投資家にも迷惑をかけるというような問題もございまして、現在監査日数を上げて監査報酬を上げるというような方向で、協会もいろいろ運動をいたしております。したがいまして、現在の監査というものを前提にしますと、現在の公認会計士の数というものは必ずしも足りないということはないわけでありますが、将来のことを考えますと、現在の公認会計士の数は必ずしも十分でない。  ちなみに、証券取引法に基づく監査会社というものは、年々二百ないし三百社ずつふえております。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ついでに、公認会計士のいまの報酬の件ですが、これは基準がありますか。
  164. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) これは対象会社の資産総額のランクによりまして、監査報酬が違うわけでございます。大体一億円未満である場合には十万円、一億円以上五億円未満の場合は十五万円、それから五億円以上二十億円未満の場合は二十万円、二十億円以上、百億円未満は二十五万円、それから百億円以上五百億円未満は三十万円、それ以上は四十万円というのが大体の基準になっております。ただ、これは一応の基準でございまして、たとえば非常にマンモス企業になりますと、監査日数も非常に食いますので、百万円以上の監査報酬を取っているという例もございます。
  165. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 二、三お聞きしたいと思うのですが、私は、公認会計士だとか計理士だとかいう問題がこじれてきた根本の原因は、シャウプ勧告——あなたたちそのとき知っていますか、シャウプ勧告、この昭和二十四年から五年にかけてのシャウプ勧告で、いわばアメリカ仕込みのにわか仕立ての会計検査制度というものをつくり出したところに、この問題が胚胎したと思うのですよ。つまり、自主性を欠いているのだね。問題は一番ここにあるのだよ。日本の公認会計士制度といわれているものは、日本自体の独自の要求に基づいてつくられたものではなくて、シャウプ勧告に基づいてつくられたという点において自主性を欠いているのだよ。ここに一番の根本の問題があるのだと私は考えるのだが、ここに至るまでの諸経過を、長々と言ったのでは委員諸君も迷惑だから、ひとつそういうことについて自主性を取り戻す必要があるかどうかという点について、はっきりとひとつ御答弁願いたいと思うのですよ。
  166. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 職業会計人制度としては、日本には従来計理士制度が戦前からあったわけでございます。終戦後、お話のように、占領時代にこの公認会計士制度というものができたわけでございまして、ある程度アメリカの制度を入れましてできたものであることは間違いございません。  ただ、非常に何か自主性がないかどうかという点につきましては、私どもとしては、やはり企業の財務経理を堅実にいたしますために、会計監査という制度は非常に水準の高いものであることが必要であると考えております。そういう意味で、従来から、戦前からありました計理士制度よりももっと高い資格、専門的知識を持った公認会計士制度によってこれを行なっていくということは、アメリカの影響その他を離れて考えましても、決して間違った制度ではないと考えております。ドイツその他ヨーロッパの制度等を考えてみましても、アメリカの公認会計士制度というものはかなり発達したと申しますか、すぐれた制度でありまして、決してこれが自主的に考えても間違った制度ではないと考えております。
  167. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は間違った制度だと言っておるのじゃないのです。日本のつまり独自の立場で発達してきた会計制度の上に立つ公認会計士制度でないという意味で、自主性に乏しいと言っております。間違ったということを言っておるのじゃないのです。だから、これはぼくらの考えでは、根本的にもう一度改めるべき本質的な弱点を含んでおりますよ。しかし、これは討論になりますから避けますけれども……。  では、聞きますが、ずいぶんむずかしい試験で公認会計士をやっておりますがね、おそらく日本で一番むずかしいといわれておるのですよ。これは有能な人材を集めるという意味でしょう。しかし、試験のむずかしさ必ずしも有能の人材を集めることにはならぬと思うのです。日本の公認会計士の最も基本的に堅持しなければならない立場というのは、一体どこにありますか。どこだと思います。これをひとつお聞かせいただきたい、堅持しなければならない立場……。
  168. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 現在の公認会計士制度は、十分先生御承知のように、投資者保護のために企業の経理を会計監査と申しますか、間違いないということを監査証明をするという立場にあるわけであります。したがって、最も根本的には、企業に従属した立場でない、企業と対等の立場と申しますか、公正な第三者として企業の経理を明確にするという点にあると考えております。そういう意味で、お話のように間違った制度ではないけれども、急激に輸入されましただけに、これを受け入れます日本の経済界全体といたしまして、必ずしも十分でなかった。したがって、アメリカのように公認会計士というのが九十年の歴史を持って非常に社会的な評価も高い、企業側も進んで公認会計士の監査を受けたほうが自分の利益であるというような習慣ができておるところと違いまして、日本の経済界は必ずしも非常にこれを歓迎しなかったという初期の事情がございます。そういう意味からいいまして、ややもすれば公認会計士が企業側の力に押されて従属的な立場になりがちだというような点が一番問題な点かと思います。そういう意味で、われわれとしては、公認会計士として一番の眼目は、やはり企業と対等の立場に立って公正な第三者として投資家保護のために十分に自主的な活動ができるような地位を確保する点にあろうかと考えております。
  169. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そこがまさにこの公認会計士問題の本質的なところだと思うのです。投資家保護の役目が果たされておるかどうか、事実において私は伺いますが、一体この公認会計士から提出されるところの、つまり最後判定の中に、おそらく三つの種類に分かれると思うのです。適正、おおむね適正、あるいは不適正。ひとつ事実の数字があったら、お聞かせ願いたい。
  170. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お尋ねの事実の数字は、いま調べて御報告申し上げますが、確かに御指摘の点が非常に重要な問題であったわけでございます。先ほど申し上げましたように、急激に輸入された制度でありまして、必ずしも財界全般としてこれに協力する立場になかったというようなことから、当初は先生のおっしゃったいわゆる限定意見と申しますか、会社の経理が必ずしも適正でないという意見を出すだけの権威と申しますか、力を公認会計士が持たなかったわけでございますが、やはり制度がだんだん充実してまいりますと申しますか、公認会計士の立場もだんだん強くなってまいりまして、最近に至ってはっきりと会社の経理に対して批判的な限定意見をつける件数がふえてまいっておる実情でございます。
  171. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 その経過をひとつお聞かせいただきたい。
  172. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 会社数が二千九十二ございますが、このうちで適正としまして全く問題のない、限定のないものが五百八十七社、それから結論は適正なんだけれども中には若干限定事項があるというものが八百二十六社、それから意見差し控えと不適正、両方合わせまして九十七社、こうなっております。
  173. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 この数字を見て大体見当がつくと思いますけれども、おおむね適正。あなたの申す、まあ若干問題があるけれどもおおむね適正というやつが、三者の中では一番多いわけだね。これはこうなると思うのですね。こういう方向にいっているところにいまの会計監査の一つの実態を示しておると思っております。  投資家保護の役目というか、立場というものが貫かれていない一つの実例を見てみますと、たとえば去年の実例を見ますと、リコー時計なんかそうでしょう。適正という判こをついてきた。そうしたら、どういう事態になったか。会社はつぶれてしまったでしょう。こういうことになってみますと、日本の公認会計士が適正なりと言ったって、信用できないということになるではありませんか。投資家保護の役目をほんとうに遂行するためには、私がさっき言った、つまり自主性を欠いている、自主性を十分貫いていないために、どうしても独占企業、大企業のつまり雇い会計士だという立場から脱却し得ない。どうしたらこれができるかという問題こそが、この公認会計士問題を論ずるときの最大の眼目でなければならぬ。このままで一体——いまあなたが出した数字で見てごらんなさい、不適というのがたった九十七しかない。事実はどうか。最近におけるところの中小企業の続出する倒産の事実を見ても、こういう数字というものがはたして真に投資家保護の立場に立って一体厳正中立なんという、そういうようなことはとうてい考えられませんけれども、一体いかなる立場で、どういう立場で大蔵省当局はこの真の自主性を持たせるためにやっていくのか。その拘負なり経綸なりというものがあったら聞かしてもらいたい。
  174. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 先生御指摘のように、公認会計士制度についての一番大きな問題点であろうかと思います。この問題につきましては、先ほど申し上げました公認会計士審査会の答申等においても、いろいろな問題に触れておられるわけでございますが、アメリカ等におきますいわゆるパートナーシップと称せられる相当大きな組織体で監査を行なう、あるいは公認会計士協会を特殊法人にいたしまして、強制加入と申しますか、もっと力のある団体にするというようなことも一つの方法かと考えております。個々の公認会計士が経済界といろいろな交渉をいたしましても、どうしても弱くなりがちでございますが、これが協会というはっきりした特殊法人と申しますか、力の強い団体になって、その団体として交渉を行なう、交渉が成立しなければもう公認会計士全体が監査を拒否するというような体制になってまいりますれば、公認会計士の地位も非常に向上してまいるのじゃないかと思います。  ただ、公認会計士協会の特殊法人化の問題については、それ自体の弊害と申しますか、懸念される点もございまして、そこに踏み切るまでに参っておりませんけれども、いろいろそういう方向で公認会計士の御指摘の根本的な問題についての強化を今後も検討し充実してまいりたいと考えております。
  175. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は、公認会計士自体の問題に対しては質問をこの程度にして、あなたたちが根本的にやると言っているから、それによってまたあらためてやる時期があると思いますけれども、いま出されているこの法案の問題ですけれども、計理士制度というものを廃止すると言っておりますが、先ほど同僚議員の質問もありましたが、いわゆる特例試験によって暫定期間を設けてもなおかつ残る者に対しては、これはどうするのです。あらためてまた残る人たちに対する暫定処置というものを講ぜざるを得なくなるのじゃないですか。この辺に対する何というか、懸念というか、配慮というか、いいことばでいえば配慮というか、そういうものについては考えているのですか。
  176. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お話の点が、法案をつくります過程において、あるいはまた衆議院の御討議の過程においても、非常に重大な問題であったわけでございます。御指摘のように、いまの計理士の方は、今回の特例試験によって公認会計士になる方以外は、計理士ということでなくなるわけでございます。そういう意味で非常に問題があったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、計理士協会自体としても、このまま何か計理士が死ぬのを待っておられるようなことでだんだん先細りになることよりも、この際思い切って試験を受けて公認会計士になろう、なれない者は、先ほど御説明いたしましたように、実は計理士の九割以上の方が税務代理をむしろ主たる職業としてやっておられるわけで、その税理士としてやっていこうということに踏み切られたわけでございます。
  177. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私はそこが非常に問題だろうと思うのですね。やっぱり計理士という一つの既得の権利が特殊な試験制度によって廃止される。制度として廃止されるだけでなくて、自分が持っていた一つの職業、身分というものまで強制的にその試験によって廃止されるということは、職業の自由の選択を規定しているところの憲法にも、あるいはまたこれらの人たちが現在それを生業としているという立場からいっても、いささか不穏当だということを感じるのですが、その点についてはどうお考えですか。
  178. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 確かに御指摘のような点があろうかと思います。しかし、これはまさに計理士会自体が最も深刻に考えられた点でございまして、それゆえにこそ、この法案に踏み切るために、計理士会としては一年間の説得を続けられたわけでございます。話し合いをされました結果、やはりここで踏み切ったほうがよろしいということになったわけでございまして、衆議院におきます参考人としての計理士会の会長である平木さんも、その辺は非常に明確に答弁をしておられます。  したがって、三年たったあとでまた何か考えるのではないかという点は、先ほどからたびたびお話もございましたように、政府といたしましてもこれをもって最終解決と考えておりますし、三派協定の附帯決議もついたことでもありますし、さらに衆議院におきまして平木会長に、非常に何といいますか、何度も念を押されまして、計理士会としてもそういう決意であるということを披瀝しておられる問題であります。
  179. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ぼくはそこが問題だと思います。しかし、いまとにかく再び金鵄勲章が復活する世の中で、とにかく自分たちの持っていたこの権利が、既得の権利が侵されるということについて、経過措置が終わったあとで、なおかつそういう者が残る場合に、何らかの意味でもこれらの人たちに対する地位保全の、あるいはその職業上の保全の道を講ずるべきだという声が必ずあがってくるだろうと思う、ぼくは。だから、いかに計理士会の会長さんがそう言おうと、おそらくは事実はそういうことになるのではないかしらということを懸念するわけです。これ以上あなたにこの点を念を押してもどうかと思いますけれども、そういうことになるのではないか。時日の経過としてなるのではないか。また、それは決して私は間違いではないというふうに感じますよ。そうしたからといって間違いではないと思います。それはどういう形をとるかは別ですよ。別ですけれども、事実問題としてそうなったからといって、それがいまの法のたてまえからいって間違いだということにはならないんじゃないかと思います。この辺のところにとどめておきます。  で、最後に、一つだけ聞いておきます。さっきあなただったか、課長の話だったか知らないのだけれども、東芝をはじめ云々ということがあって、アメリカの会計士が入って監査をしている会社がありますね。一体この日本の会社の中でどのくらいあるのですか。
  180. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) これは会社数は正確にいま数字を持っておらないかと思いますが、要するに世界銀行から借款をするとか、あるいはアメリカでADRを出すとか、どうしても向こうの制度にひっかかる会社に限られておりますので、会社数としてはそう数多い会社ではありません。
  181. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そうすると、その世界銀行の借款の条件ですか、これは。
  182. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 条件と申しますか、やはり世界銀行としては、金を貸す立場として、会社側の実態を明らかにしたい。ついてはアメリカの会計士を使いたいというようなことでやっておるわけでございます。はっきりした条件と申しますか、その辺ちょっと不正確でございますが、実情はそういうことになっております。
  183. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 だから、こういうことを私は自主性がないと言っているのです。日本の会社の会計の監査をアメリカの公認会計士に委託しなければならない、アメリカの会計士に委託しなければならぬ、こういう実情なんですよ。だから、私は、とにかくこの問題にシャウプ勧告以来のあの自主性のない問題に根本を発していると。事実そうなんです。さらにますます外資導入する会社がふえてくれば、勢いそういう形になっていくのじゃないか。この辺のところをどうして、そんなことはない、日本の会計士でやれるのだと、日本の独自の立場で会計監査をやるのだということで突っぱねるというか、そういう方向でやっていくと。これはつまらない外貨を取られることになるのですからね、おそらく。おそらく向こうの会計士が来たら、一つの会社だって一億円くらいじゃ足りないのじゃないかとさえ思っているのですよ。いかに東芝が大会社であろうとも、一人の会計士で一億円以上取られる。私の聞いたところでは一億円以上だということを聞いたけれども、そういうふうなことで、不当に日本の外貨が持っていかれるという事実もあるわけです。こういう外資導入の会社に対して日本の会計士がやれるのだという、そういうことに対して、一体アメリカの当局なりあるいは外資導入をしているところと話し合ってやっていくのだと、そういうあれは今後ありますか。
  184. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) これは公認会計士制度自体の問題と申しますよりも、やはり金を貸す立場になりますと、自分で審査をすべきなんですが、その審査にかえて自分の好みの会計士を使うということは、どうもいまの事態ではやむを得ないという感じがいたしております。ドイツ等の場合においても、おそらくアメリカは同じような立場をとっているかと思いますが、ドイツの公認会計士はアメリカでは公認会計士として認めておりません。そういう点からいったら、日本の公認会計士のほうを多少認めようかというような話もある程度あるようでございます。おっしゃるとおり、外貨の損失にもなりますし、日本の公認会計士制度の点から申しましても、日本の公認会計士の監査で世銀なりアメリカなりが納得するようなふうに今後努力をしていくということにつとめたいと思います。
  185. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私の質問は本日はこれで終わります。
  186. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本案に対する質疑は、本日は、この程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十七分散会      —————・—————