○野溝勝君 ざっくばらんにいえば、大体農地被
買収者の救済というようなところにねらいはあるんでして、その序の口として一応
国民金融公庫法の一部
改正をして——
一般庶民の
金融問題は、こんな特に農地被
買収者ということを明記しなくてもできるわけなんですよ、これは。それを特に農地被
買収者で銀行その他の
一般の
金融機関から
生業資金の融通を受けることが困難な者に対してという、ちゃんと明記してあるんでございますから、これが関係がないとは申されぬと思うのでございます。しかし、かようなことで私はあなたとここで論争したくない。もうすでに論議の過程におきましても、蔵相は非常に苦しい
答弁をされておるのでございまして、論理が一つも立たないんですよ。これは自民党の諸君といえでも大体は感じておると思うのでございます。
そこで、今日までにもう五回も流産をして、被買収の農地の報償案が出るというこの前にあたって、五回も流産したものをまたこの際出して、ここでもってまたがんがん論争をするということは、私は政治感覚としてもまことにおかしいと思うのであります。特に自民党では進歩的といわれる、自民党では比較的率直居士であり、大衆性を持っており、前向きの姿勢でおられると見られておるところの
田中大蔵大臣のもとにおいて、五回も六回も
審議未了になったかような法案をまたまた出して、特に額面においても二十億ばかりの
予算のものを、それも筋が通っておるならいいが、これは事務当局でさえもずいぶん悩んだ問題なんであって、まことに理解のしがたいところです。このようなものをこの際あえて出さなきゃならぬということは、どう見てもおかしいのでございます。私は、かような
意味においてその点を
質問しておくんでございますが、良心の上からどうですかと言えば、ぜひ必要だという
お答えになるから、私はこれ以上は論争になりますから申しません。どうか、こういうようなものを出すということは将来の政治の歴史の上に非常な汚点となりますので、これは反省を促しておきたいと思います。
この点を一つ申し上げ、次に、さらに旧地主補償とうらはらであるので申し上げておきたい。先ほ
ども同僚
委員がいろいろと詳しく話をされましたが、大体日本の政治というものは、まあモンテスキューの三権分立を出すわけじゃないが、やはり立法、司法、行政というものに大体うまく配分されておるわけなんです。それで、被買収農地に関する違憲訴訟については、すでに
最高裁による合憲判決がでていることは、御
承知のとおりであり、わが国の民主政治の上から当然、政府、与党はこれを最大限に尊重しなければならないはずであります。特に先ほど来
大臣はいろいろと言われましたが、対価の算定方法というものは、一体自作農創設維持法に基づくその当時のあれから算定して、ちゃんとつくったのでございまして、この三権分立でできたわが国の政治を否定するようなことにもなるのですね。これは憲法がいいとか悪いとか言ってみたところで、あなたたちだって賛成したんじゃないか。
特に私、おかしいと思うのは、先ほどの
お話の中で、二十九年に転売ができることに自作農創設維持法を変えたと言うのですが、確かにそうですよ。そのときには立案者は山添君だと思いましたね。私
どもはこれは反対した。賛成したのは自民党じゃないですか。自民党政府じゃないですか。二十九年は自民党政府、吉田さん以来ずっとそうだ。それをいまとやかく批判しているのは、むしろ自分たちを自分たちでつねっているようなものだ。これは自己矛盾もはなはだしく、まことにおかしなことですよ、どう見ても。私はきょう文句を言うのじゃないのですけれ
ども、私の言うことには真理があるということを、ひとつお聞き取り願いたい。あのときには事務次官をやっていたと思う、山添君は。さもなければ農地局長だった。私はこれは問題になると思っていたのです。それを転売することができるということになったので、旧地主の不満が年ごとに高まった。すなわち、農業経営に必要だということで農地解放をした。その後農地を解放した旧地主の諸君は、転用され、売買されるその農地価格を見て、しゃくにさわるでしょう。私はその気持ちはよくわかる。しかし、わかるけれ
どもですね、やはり政治あるいは
法律というものは納得ができなければならぬのであって、特にこの農地被
買収者を具体的にこういうところへ出すということは、これだけを
対象にして
考えているのでございまして、それは私は政治の公平にはならぬという点において、特にこの
法律案は実に前後矛盾したものであると思うのです。
次に、私は申し上げておきたいのは、買収価格の点について、安かったとか、いろいろ言われておりますが、それでは戦争前長い間、数世紀にわたるあの高い小作料が換算し補償されたことがございますか。長い間にわたるところの小作農が、ずいぶん高い小作料を取られて、特に農地解放をするときにはですよ、われわれは長い間の小作料を換算してもらいたいということになりますよ。当時これじゃ安過ぎるとか言いましたから、合理的な算定により田は四十倍、畑は四十八倍ですか、そういう買収価格で解放させたのです。これが安いというならば、いま申したとおり、先祖伝来からの長い間の、永年小作の高額小作料を換算補償してもらいたいという話もして、GHQやその当時の政府とも折衝したのでございますが、結局最後の
最高裁の判決というものは、妥当なものであるということが下された。しかし、転売したことから問題が起こったと申しますけれ
ども、これは転売したそのことの、二十九年の自創法
改正の
法律案を出したのは自民党なんだから、自民党がこの問題を出すときに、なぜ反省しなかったかと思うのです。
だが、まあしかたがない、今日のようになってきた。そこで、今日また反省もせずして被買収農地の報償と同時に、さらに
国民金融公庫法の一部を
改正いたしまして、二重三重の矛盾を重ねようというその気持ちが私にはわからない。これは
田中大蔵大臣、ひとつ私は、もう理事の相談によりまして四時までということになっておりますから、これ以上こまかくいろいろ申しませんが、この点をひとつお聞きしておきたい。今後いかなる
法律案が出るにいたしましても、私はこういう矛盾きわまるものを出せば、将来に非常な禍根を残すと思うのであります。この点、ひとつあなたに忌憚なくお聞きしておきたいと思うのです。