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1964-06-22 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十二日(月曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————   委員異動  六月二十日   辞任      補欠選任    田中 清一君  日高 広為君    津島 壽一君  栗原 祐幸君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            大谷 贇雄君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            鳥畠徳次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            柴谷  要君            野々山一三君            原島 宏治君            鈴木 市藏君   衆議院議員    修正案提出者  木村武千代君    修正案提出者  渡辺美智雄君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵省主計局法    規課長     相澤 英之君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    大蔵省証券局長 松井 直行君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    大蔵省証券局企    業財務課長   塚本孝次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国民金融公庫法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○公認会計士特例試験等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○税理士法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十日、田中清一君及び津島壽一君が辞任せられ、その補欠として日高広為君及び栗原祐幸君が選任せられました。   —————————————
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) この際、参考人出席要求についておはかりいたします。  公認会計士特例試験等に関する法律案審査のため、参考人出席を求め意見を聞くこととし、出席を求める日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  5. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る六月十一日に提案理由説明及び補足説明を聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと、本案に入る前に緊急事態で……。  大臣等も、新潟に思わない災害が起きまして、現地等にもお出かけになっておる。そこで、現地を御視察になり、当然大蔵省としては全般的な、たとえば補正予算等をどうするかというような問題があると思いますが、その点についての意見もございますが、その前に、緊急に、まず大蔵関係としてどういう処置を講ぜられるようとしておるのか、新聞等ではたとえば保険の問題がどうだとかそういうようなことも出ておるわけでありますが、そういうような点について一応の処置をされておる、あるいはされようとすること、そういうようなことについての御抱負をお聞かせいただきたい。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新潟地震につきましては、本会議でも御報告申し上げましたように、相当大きな災害でございます。今日まで第四報として入りました現段階における公共災害等につきましては、総額三百五十億ばかりでございます。しかし、この中には、鉄道とか電電の問題とか、まだまだわからない問題がたくさんございますので、一応入りましたのは公共土木施設、河川、それから都市湛水排除とか、下水、公園、港湾、治山、漁港、農林漁業施設というような面だけで、約三百五十億ということがいまの段階でおおむね報告せられておるわけでございますが、実際は、学校の施設とか、民間施設、また民間企業等を合わせれば、相当膨大もない被害になると、こういうふうに考えておるわけでございます。  まず、大蔵省がとりました問題としましては、金がないために、また予算ワクにはめられておるというようなために、災害復旧工事制約が行なわれるようであっては困る、いわゆる予算ワクによって災害復旧救助等制約をせられては困るということで、予算等に対しては心配しないでどんどん救助及び災害復旧を行なうということにいたしまして、まず地方公共団体につきましては、応急の問題として資金運用部短期融資をいたしますから、必要なだけ使ってもらいたい、こういうことをいたしました。関東財務局からも現地係官を派遣いたしまして、措置をいたしておるわけでございます。  それから、金融面につきましては、日本銀行から、日銀支店長を中心にして地元金融機関との間に連絡会議をつくりまして、必要な資金はこれを貸し出すという態勢をとっております。また、資金に対しても十分な配慮をいたしておるのでございます。地元金融機関相当量資金財源を持っておりますので、現在、復旧工事その他民間資金需要に対して困るというような状態にはございません。  それから、税の問題につきましては、国税通則法等最大限に活用いたしまして、本省からも係員を現地に派遣をいたしまして、延納、減免、還付をするようなものは早急に還付をすると、こういうような税法上とり得る最大限措置をいたしておるわけでございます。  これらの被害がだんだん判明をいたしてきますと、本格的な復旧ということになるわけでございますが、今度の地震で、新聞でも御承知のとおり、民間施設、官公庁の施設公共事業等を問わず、非常に新しい現象が起きておるわけでございます。技術的に解決をしなければならない問題、要するにそのまま沈下をしておるような問題、新しい橋が三けたも四けたも落橋しておるというような問題、建物自体がそっくりひっくり返って裏を見せておるというような新しい事態がございますので、これらの問題に対しては学界その他あげて原因の究明、復旧する場合の工法、技術的な設計等を現在検討していただいておる段階でございますので、これらが判明し、また結論が出次第に、復旧工事は急ピッチで進められるということでございます。港湾施設などは、総体的に地盤が沈下をしたために、一体この上にかさ上げをすることによってなお自重がかかるというような工法でいいのか、その内側にコンクリートのウォールを下げなければならないのかというような高度な技術的な問題も現在検討いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、応急修理の後に事業計画がきまりましたときに、一体予算上どうするのか、こういうことでございますが、一般会計では三十九年度の予備費三百億、大体そっくりに近い金額が残っておるわけでございますので、まあ補正予算等を組まなくとも財源措置は可能であるという考え方をとっております。それから、電電公社とかそれから国鉄とかの問題も相当被害がございますが、まだ三十九年度年度初めでございますので、この復旧等に要する経費は移流用その他でもってまかない得るということでありまして、いま直ちに補正をしなければならないような、状態ではないのではないかというふうに考えております。しかし、これらの問題につきましても、先ほど申し上げたとおり、資金ワク制約をされることによって復旧作業等がおくれては困るということを言っておりますので、現地では現在の予算のやりくりによって現在対処いたしておるわけでございます。総理大臣もきのう帰ってまいりましたので、中央防災会議の開催も考えておりますし、おいおい復旧計画被害実情総量等判明をいたすと思いますが、この判明に対処しまして遺憾なきを期してまいりたいという考えでございます。  まあ結論的に申し上げて、補正予算というところまでいかなくとも私は財源的には措置していけるのではないかと、いまの段階では考えておるわけでございます。  特例法の問題をどうするかということでございますが、特例法につきましては、激甚災等を含めた恒久法制度が現在できておりますので、この法律活用等によって対処できるのではないかと判断をいたしておるわけでございます。  最後に、保険の問題でございますが、保険は、新潟地区だけを申しますと、新潟だけでは約二千数百万しか、保険料を支払うとしてもその程度のもののようでございます。がしかし、滅失、焼失等は戸数が少なかったと。これは総体的に地盤沈下したりこわれたりしたものは別でありますが、飛び火等で焼けたものは数が少ないということで、これら火災保険総額は二千万円ちょっと余であります。そして昭和石油のあの大きな問題につきましては、地震保険もかけておらなかったということでございます。シェル等で一部かけておるんじゃないかという声もございましたが、調べてみると非常に少ないものであるということでございまして、金額にしては少ないものでございます。  それから、なお、現在の法律の体系では、過去に地震等において損害保険会社保険金を支払った例はございません。福井地震に対しても、鳥取の地震に対しても、払わなかったわけでございます。しかし、一回だけ大正十二年の関東大震災には保険会社見舞い金を払いました。この見舞い金は当時の金で六千万円くらい、非常に大きな金でございます。この金は大きな金でございますが、政府がほとんどその八、九割も補助をして見舞い金を出したということでございます。現在のところ法律的にも、また前例も保険会社保険金を払ったということはありませんが、この間大蔵委員会でも附帯決議等もございましたし、また私たち保険会社意向等を十分に聞いて、何らかの処置をとるようにと言っておりましたら、一億円——二千万円などということにこだわらないで、一億円くらいは見舞い金として出さなければいかぬだろう、こういうことで、二千何百万円の保険金の五倍くらいに当たる金額をひとつ思い切って出そうかと、こういう考え方におおむねまとまっているようでございます。これに対して政府から補助をくれとか、再保険制度をつくってくれというような申し出はありません。  これからの地震保険災害保険等につきましては、大蔵委員会でも申し上げたとおり、国でもってやるようになるか、民間と国との合弁式なものでやるようになるか、国が再保険をするということになりますか、いずれにいたしましても、地震を含めた災害保険というものは長い間の懸案でありますので、これを契機に積極的に制度を確立するように努力をしてまいりたいというのが現在までのあらましの考え方でございます。
  8. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いろいろな問題がございますから、逐一拾っておりますと切りのないことになると思いますが、そこで特例法の問題でございますが、私はゆうべ池田総理のテレビを聞いておりますと、法の適用なんかは問題じゃない、金が要るならどんどん使ったらいいじゃないかというような、まことにはったりのきつい、ぼくらでもなかなか言えぬようなはったりでございますが、そういうことをおっしゃっておられるのでございますが、法の適用は完全にこれをおやりになりますか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、災害特例法がもう恒久法として現在ございますので、これを適用をいたしてまいるという考えでございます。
  10. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それは激甚地適用新潟市中ですか、範囲はどの辺まで激甚地になるというふうに大体想定をされておりますか。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在まだどこからどこまでというようなことは結論が出ておりませんが、少なくとも新潟市は適用されるだろうというふうな常識的な考えを持っております。ただ、新潟市に焦点が合っておりますけれども、蒲原平野とか、信越線の長岡から新津間、こういうところはもうほとんど揚水施設とか、樋管施設とか、広域水道とか、こういうものがもうほとんど壊滅的状況になって、水も揚がらないという状態がたくさんございます。これは新潟という拠点的な被害が非常に大きく出ておりますので、まわりの状態が報道されておらないということでありますが、私は幸い地元の者でございますから、私のところには各市町村からの被害状況、実際の写真等も来ておりますが、相当被害がございます。なおそのほかに、粟島のように島全体が一メーター半も隆起をしてしまって船もつけられないというところもございますし、それから山形県のように三百戸のうち二百戸倒壊してしまったというようなところもございますので、こういうところは可及的すみやかに被害実態調査をすれば、自動的に激甚地適用は決定されるわけでございます。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 なぜこういうことについて——私もいますぐここがこうだということは、なかなか調査等があって、後でなければ、基準もございましょうから、全部はなかなか言い切れないと思うし、すぐいま結論が出るとは思いませんが、しかし、片一方ではお金をどんどん使いなさい、やったらいいという、これは当然な処置だと思うのです。ところが、地方自治体立場に立ちますと、あとでやってみたら、これはおまえのところはだめだったといって、けられちゃって、それが地方自治体の負担と申しましょうか、しわ寄せになるというのが過去の実例なんですよ。ですから、そういうことの、何というのですか、事を起こさないだけの、私は事をするだけの親切さと申しましょうか、そういう行政的な指導というものがいいぐあいになされておらないとですよ、自治体ほんとうにこれがために赤字自治体になってしまう。これはもう地方行政の問題じゃないかといえばそうかもしれませんが、そうじゃなくて、やっぱりそういうような点については、慎重なこれは指導というものがなされてしかるべきじゃないかと思いますが、片一方じゃ、金は幾らでも使いなさいと、気前よう言い——それを惜しんだらまたたいへんなことになるから、これはいいと思います。しかし、片一方ではその適用がおそいと、いま申し上げましたように、とんでもないことになりますから、できるだけこれは早くそういう調査をおやりになって、地方自治体に少なくともしわ寄せがいかないようなことをやっていただこうということを、まあこれはお願いする以外にこの問題ではないと思います。  次に、短期融資等をおやりになる地方自治体のことについての問題はわかりますが、今度は個々の人たちが私は相当お金が要るだろうと思うのです。うちをどうこうしようとかなんとかというときに。そこで、日銀あるいは地元金融機関等関係者がいろいろ打ち合わせをしておやりになっているということですが、個人のこういう緊急の場合の、焼けているのじゃなくて倒れているのを直すとか、いろいろなことがありますが、そういうことに対しては、どういうような限度でどういうような場合に貸し出しをするのか。いや、もうこれは個人信用の問題だと言ってしまえばそれまでのことだが、地震とかそういうものは、これは金のない人が一番しわ寄せを食うわけです。担保のないような、あんまり信用のない人が、大体災害を一番ひどく受け、金も一番必要とするのですが、そういうような人たちにどういうような緊急的な金融の道を講じようとしているのか、伺いたい。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 個人災害には、御承知のとおり、現行では救助をするという方法がないわけでございますが、応急的には自衛隊その他公の立場でもって救助復旧をやっているわけでございますが、これから建物を直したり、それから個人的財産の修復をいたしましたり、商売を続けるためには、いろんな出費があるわけでありますが、こういうものに対しては、中小三公庫の、現地係官を派遣しまして、特別にこういう個人災害に対しては貸し出しを行なうようにという措置をいたしております。  それから、金融機関としましては、まあ地元に第四銀行、北越銀行等相当資金量を持っている地方銀行もあるわけでございますし、この両行とも資金は現在はそう枯渇しておりません。また、新潟支店を有するような金融機関もあげて、これらの人たちへ救済的な意味で、むずかしいことを言わず、当然払い出すことのできる定期等に対しましても、印鑑がないから、貯金通帳がないからということを言わず、簡便な方法でもって、確認したら直ちに払い出すように、貸し出しを行なうようにということで、金融機関も非常に前向きに、積極的にこれらのものに対処しようという考えになっているわけであります。  なお、農業系統金融というものもございますので、これらのものは、大体ある時期には吸い上げて都市に持ってくるというような状態もございましたが、こういうものに対しても、ひとつ地元貸し出しを行なうようにということでありますし、それから、いま米の予約というのがありますので、これもいま地方から石当たり二千円の前渡金を少しふやしてくれというようなものもありますので、こういうものに対してもできるだけのことをしようと、あらゆる角度から個人金融という問題に対しても考えておりますので……。伊勢湾台風というような面に対しましても、比較的にうまくいっておりますし、こういう例に徴して、四角ばらないで、現実に対処して貸し出しを行なうようにということで、民間自身も、救恤金とか、いろんな援助金を出そうというような状態にまでなっておりますので、まあ万全ということは言えないかもわかりませんが、可能な限り一ぱいの措置はいたしております。こういう状態でございます。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ国民金融公庫等がたいへん活用されると思うのですけれども、こういうものについて特例法等のいろんな運用等でおやりになっているだろうと思いますから、これらの点については、私も現地を見ておりませんし、また実情がどうかということはよくわかりませんが、十分ひとつそういうことについて、最初に申しましたように、被害というものは金のない、信用のない、生活の一番余裕のない人のところにしわ寄せがあるわけですから、そういう人たちが復興と申しましょうか、立ち上がれるようなことについて、手落ちがなくひとつやっていただきたいと思います。  次に、保険の問題について伺いますが、何か保険協会話し合いができて、これを出してもいい——一億くらいだというような話をおやりになったのですが、この一億というのは、たとえば昭和石油等のああいうもののことなのか、そうじゃなくて、一般の何と申しますか、火災で焼けたわけじゃなくて、地震でこわれた、そういうような人まで、いわゆる総合保険のようなものもあるわけですけれども、それに入っていなくても、火災保険に入っているけれどもこわれているような人までも見舞い金の対象にして出そうとするのか、どういうことなのか、ちょっとわかりませんが……。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 保険契約をしておりますのは、先ほど申し上げましたとおり、保険金にしても二千万円余ということでございます。しかし、今度はそのまあ四、五倍というものを出すわけでありますから、これはしかし出し方というのはいろいろあるわけであります。保険契約者に全額払ったあと八千万円を一般救恤金にするかということもございましたが、いろいろな問題がありますので、この一億円になりますか、一億五千万になりますかわかりませんが、少なくとも一億五千万円程度の金は一般救恤資金ということにして公の立場でこれを寄付をする、こういう考え方のようでございます。そうすると、保険をかけている人ばかりではなく、水の入った人とかいろいろな人たちもあわせてこれが使われるということでございます。  ただ、まあ今度保険金は払いませんけれども、実際加入をしておって被害のあった方々の名前も掛け金金額もみなわかっておりますから、そういうものはこの救恤金として出すときに参考書類としてつけてやれば、市はこれらのことに重点を置いて、まあこちらでもって条件をつけるわけにはいきませんが、まあ支払う、こういうことを私としては期待をいたしているわけでございます。
  16. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはもう保険協会話し合いが、政府の間にある程度できておって、そうして、しかしそれをじゃあどういうふうに出すかというような点については、まだこまかい話はつけていない。総額をまだ一億にするのか一億五千万にするのか、あなたも五千万なんて簡単な話ですけれども、もらうほうから見たりあるいは出すほうから見たら、なかなかたいへんなんですが、そこら辺のところまで話がまだできておらぬわけですか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはこういう話になっているのです。保険金総額を払っても二千万円ばかりだ。この保険金を支払うということは、これは金額にして二千万円です。しかし、地震に対しては過去に払っておらないわけです。ですから、今度この新潟地震だけにこれを払うということになると、この次、東京でも、大阪でも、どこかもし起きた場合に払えるかということは、なかなかむずかしい問題でありますから、保険会社はとにかく何もしないでほおかぶりというわけにいかぬぞ、もちろん受け取った保険料くらい返すというくらいのことは当然やるだろうと思うけれども、それだけじゃなく、二千万円な最低限払わなければならない。その法制上もいままでも払ったことはないのだということで、かまわないというようなことの線でなく、前向きに、将来どうあるべきかというようなことを考えないで、現実的な被害に対して何かしたらどうかという、こういうことに対して、火災保険金を払えば二千万円ぐらいですけれども、ひとつ一億も出しましょうかと、こういうような話し合いをしているわけです。これは私のほうでも、行政指導をしなさいという附帯決議がこの間大蔵委員会でございましたけれども、善処いたしますと、こういうことで、善処いたしているわけでございます。  そういうことで、向こうは、二千万円などにこだわらないで、大臣もそう言っているのだから一億も出そうか、こういうことでありますが、一億よりも多いほうがいいということで、二億も出そうかという議論もあるわけであります。ですから、私のほうは、まあその一億とか二千万円とかにこだわらないで、できるだけよけい出してくださることが罹災民も喜ぶでしょう、こういうことで、いま政治的にやっているわけでありますので、まあどんなに少なくても一億を下ることはないだろう、少しうまくいくと二億ぐらい出すかもしれない、こういうところでありまして、私のほうでも、まあ指示をするというわけにはいきませんし、向こうの自発的なものを待っております。  まあ、私がここで一億ぐらいになるかもしれませんという発言をしますと、二億になるかもしれませんが、向こうもなるべく、保険金とは関係なく、新潟山形や秋田の罹災民に対してほんとうに誠意のあることをしよう、こういうことをいまやっておりまして、少なくとも今週中ということを言っておりますが、こういうものは早いほうがいいのだということで、どうせ出す金なら早いうがいいということでありますから、土曜日あたりには一億ぐらいはきまるだろう。けさ聞くと、まあまあ一億では少し少ないかもしれない、二億ぐらいにしようかと、こういうようなことをいろいろやっておるようでありまして、私はきょう、あす、あさってには、出すなら一日も早く、出し惜しみしないで——出し惜しみしているというわけでありませんが、まあ相当なものが拠出される、こんな見通しであります。
  18. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それから、関東大震災の例をあなたは引かれましたが、それに対して政府は云々ということですが、国からそういうことをやってもらったら、あとお返しとして当然いろいろなことについて損保関係との間に何らかの、ひもつきというわけではないが、逆にバックペイするわけですか。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの問題に対して、君のほうで二億出せば一億出してやるよ、そういうことは全然ありません。全く自発的な問題でございます。ですから、私のほうでもって補助金を出すとか、それからあとから幾らか何とかしてやるとか、そういうことはございません。  ただ、関東大震災のときには非常に大きな金でありまして、七千万円ぐらいであったかと思いますが、七千万円といえば、いまの金にして五百倍としても何百億、こういうものでありますから、その八割ぐらいのものを国が金を出してやったのでありまして、その後は全然ないわけです。  それから考えるとすれば、地震保険、風水害を含めた災害保険制度をどうするかということを協会にも検討を願うとともに、政府としても前向きでその対策を考えるつもりでおります。しかし、今度出すものに対しては、一億であろうが、二億であろうが、五千万拠出しようが、政府のひもつきではありませんし、政府あとから何か考えてやるというようなことは絶対にありません。
  20. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そういうことになりますと、私は、特に市なんかでも、おそらく火災共済を地方自治体などでやっておるのではないかと思うのですが、そういうところも若干お見舞い金を出さなければならないということもあるかもしれぬという点が一つ。  まあ、これを議論をしておって時間がなくなるといけないと思いますが、あなたがおっしゃるように、火災保険は再保険等があってなかなかむずかしいけれども、補助金とか、そこで政府管掌がいいだろうとか、あなたもいろいろ御意見があるわけですが、こういう問題で何か特別委員会とか、調査会とかあるいは審議会とか何かを設けて、そこで検討され、今後の問題について検討される用意があるというのか。いや、そうでなくて、もう今度の臨時国会ですぐ——すぐということはないけれども、すぐ出すことを予定されている、あるいは通常国会等までには何らかの結論を得てやろうとされているのか。世界で一番地震の多い日本ですから、すでに国の何か対策があっておってしかるべきであって、おそ過ぎるわけです。ですから、緊急に私たちはやる必要があろうと思っているわけですが、そういうことに対しては、これらかどういう方向でそういう方法を定めようとされているのか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地震保険その他の災害保険という問題に対しては、保険審議会でずっといままでもやってきたんです。やってきたんですが、なかなかむずかしいということで、結論が出なかったわけでございます。三十二、三年ごろ、郵政省で簡保の面から考えまして、どうせ地震保険災害保険等はできないから、ひとつ郵政省でもやったらどうかというような案を私自身が考えて、事務当局に検討を命じたことはございます。私、当時郵政省におりましたから。その後ときどき問題になりながら、政府は幾ら金を出すかというような問題で、なかなかうまくいかないわけであります。  ところが、これだけの問題がありますれば、まあ正規の保険審議会でもう一ぺん検討してもらう。検討してもらって、龍頭蛇尾になって困るというなら、政府としてもこのような案があるという試案を提案して審議をしてもらうという手もあるでしょう。しかし、今度は、私の発言を契機にして、業界でも、どうも公社制度というようなものではなくて、もう少し検討をしてくれ、こういうように足元に火がついてきた。こういうことでありますから、私は、この次の国会にはどうするということは申し上げられないにしても、これは災害はあす来るかわからぬというものでありますから、やはりこれを契機にして成案を得るように、成案を得るためにはどうするかいえば、国会に特別委員会をつくるというようなことではなく、政府自身がどうあるべきか、また業界自身もどうあるべきか、これら二つの意見を調整しながら審議会でも検討してもらうということでいけば、何らかの結論を見出すことができるだろうというふうに考えるわけであります。
  22. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 保険審議会があるが、これは前にもいきさつがありまして、やろうという何かのときには非常に意気込みますけれども、またのど元過ぎればの調子になっちゃうわけですから、そこで、そういうことのないように、たとえばこの次の臨時国会には、あるいは通常国会をめどにして、成案を得て出すのだという気がまえが大蔵省にあるのか、ないのか、これをひとつ明確にしていただきたいと思う。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私個人からいえば、もう出したい、こういうことでありますが、なかなかこれだけの歴史のあるものでありますし、いろいろなことをしても結論が出なかった問題を、通常国会に出します、こういうことは申し上げられませんが、一日も早く成案を得るように、これは総理自身も、これはやらなければいかぬ、こういうことを公にしておりますし、私もこれから事務当局を督励しまして、何らかのめどをつけまして、いつごろまでに出せそうですという時期が来れば御報告いたします。
  24. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたは言を左右にされるわけなんですが、早くこういう問題だからやらなければいかぬ、こういう前提はおっしゃっている。ところが、通常国会ということになれば、これから半年ぐらい先の話になるわけです。それにお出しになるかというと、どうも出せそうにもない、そのときに出さぬでも済むような意見になってきている。個人意見じゃなくて、大蔵省としてどういうめどをもってやるかという心がまえは、まだ固まっておらないということかもしれません。だから、あなたは慎重な御答弁をなさっているのかもしれません。事務的にやらなければいかぬじゃないかという気持ちは大蔵省全体の中にある。しかし、歴史的に見てもなかなかむずかしい問題であったから、またいろいろな意見が起きてきてできそうもないのだ、どうもそこらあたり、やらなければいかぬ、やらなければいかぬということはあるけれども、尻が…。ちっとも根締めがないんですよ。それじゃ、私はことばのあやだけにしか受け取れないんです。そうじゃなくて、このときまでには少なくとも解決するというめどを私は聞かしてもらいたい、こう思っているんです。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたと同じ考え方で、非常に積極的なんですけれども、地震といえば、すぐ台風も入ってくるんです。津波も入ってきます。干ばつをどうするか。災害保険というもののむずかしさは、どうするかという非常にいろいろな問題がございますが、むずかしい、むずかしいといって、いつまでもできないということじゃ困りますから、ひとつ今度は一生懸命やります、こういうことでございます。  一生懸命といっても、いつまでにやるかと、こういうことになりますと、政府として申し上げられることは、できるだけ近い時期に保険審議会に、地震を含めた災害保険制度に対してひとつ早急に答申を願いたい、こういう諮問をいたすということは、一向差しつかえない、またそうあるべきだというふうに考えます。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最後に、きょう新聞を見ますと、どの新聞かちょっと記憶にありませんが、補正予算大蔵省は取り組んでいるということが出ているのです。あなたは、三百五十億だ、これは公共事業で、予備費は三百億ということで、また電電公社、国鉄等は移流用でやっていけばいいではないか、この間のあれで、電電公社、国鉄等は予備費は使いましたし、移流用相当やっているわけで、ほんとうにやっていけるのか。あなたはやっていけるというが、私はこれは数字をしっかり押えた上での議論ではなく、大づかみにいって、とてもやっていけないではないか。だから、いまここでこれはやれませんから補正予算を組まざるを得ないということをあなたが言われるということは、これはひとつ問題になりますから、そういうこともないようですが、大づかみの見通しをひとつ。補正予算を必要とするというのが常識じゃないですか。要らぬということが非常識であって、補正予算を組まざるを得ないというのが常識じゃないかと思うのですが、どうですか。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第三報は六月十九日でございますが、十九日のときは、総額二百七十五億五千万円、それからきょうになって、第四報になりますと、二十日、土曜日の場合は三百五十億六千百万円、こういうことで、いままだ調査中でございます。集計ができない状態でございます。しかし、これは電電も国鉄も入っておらぬ。それから、まだまだ公営住宅とかその他大きな官庁営繕物とか、いろいろなものが入っておりません。都市下水なんか掘り起こしてみなければわからない、ガスなどは通してみなければわからない。一般会計だけではやれるわけではございませんが、いずれにしても、被害額は相当大きなものだというふうに考えられます。  考えられますが、一般会計でまかなうものは、これは全額一ぺんに支出するわけではございませんから、災害は三、五、二で、公共事業については三カ年間でやっているわけでございます。しかし、三カ年は待てないで、どうしても一年でやらなければならぬという、下水等もございますから、そういうものは起債措置とか特別交付税の問題とかいろいろありますから、現在の状態補正予算を組まなければならないという数字は出てまいりません。  この国会もあと三、四日という状態でありますから、この国会が終わるまでに、この国会で補正予算を御審議願いたいということはちょっとむずかしいかと思います。国会が終わったころ、国会が終わって一−二週間、半月以内には総計がきっと出てくると思います。そうすれば復興の計画が出てきます。そうすると、どうにも補正予算を組まなければならなくなれば、補正予算をこれまた御審議をお願いするために臨時国会を開会しようということもあるかもしれません。これは現存の状態で自治省等、大蔵省一般会計でまかなえない場合等、その他の場合を、そういうことを考えますと、これは予備費その他の費用の移流用等で何とかまかなっていけるのではないかということをいまの段階では考えているわけでございます。  しかし、これは公共事業で八百億にも九百億にもということになりますれば、これまたたいへんな問題でありましょうから、その他の問題もありますから、私はこの間、新聞に直感的に申し上げたのですが、民間災害その他全部ひっくるめれば千億に近くなるだろう、こういうことを申し上げたわけでございますから、公共災害でありますれば、そのうちの半分としても五百億でありますから、いまの三十九年度のワクでまかなえないという数字ではないような気がいたします。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの災害関係で、簡単にこの際伺っておきたいのは、新潟市は新産業都市計画の指定地域でしょう。新産業都市のあり方につきまして、今度の地震の経験によっていろいろなことが、教訓を残したのじゃないかと思います。たとえば、先ほど大蔵大臣言われましたように、橋なんかにつきましても、新しい橋がくずれて、古いほうの橋はそう破壊されなかったとか、その他いろいろ地震というものを前提に考えないでいろいろな施設をやったと思うのですが、それが今度の地震によっていろいろな思わざる、予定しなかったと思うのですが、そういう災害が起こっているのです。いままでのところの調査に基づいては、そういう点について、どういうふうな点がやはりいままでの施策としては不十分であった、今後考えなければならない点であるかというようなことについて、大体わかった点おありでしたら、伺っておきたいと思います。私も現地を見ておりませんし、大臣は一番よく現地を見ておられるようですから、その点について伺っておきたいと思います。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公共建物につきまして申し上げますと、どうも全国一律、画一、一律的である。これは単価と設計、設計は公営住宅第何号設計ということで、単価幾らということになっておりますので、どうも山の手地区の地盤のいいところへつくったものと、それから埋め立てをしたところへつくったものということは、同じものをつくっております。埋め立てのものは非常に弱かった、こういうことでございます。ですから、やはり北海道に耐寒住宅法がありますように、やはり地域に必要な建物の構造、特に基礎構造等はやはり必要ではないかという問題が出てまいったわけであります。  もう一つは、新しいPSコンクリートなどを現場でもってつくらないで、現場ではなく、工場生産物を持っていってれんがづくりと同じような工法で非常に早く仕事をしている、こういうものがございますが、PSコンクリートのジョイント部分が弱いため、一ぺんに三けたも四けたも落橋してしまったという問題がございます。これは東京でも山の手と下町を同じくつくられている。高速度道路などでもいわれることだと思いますが、こういう意味で、やはり地震地帯というものは立体的な構造というものがいいのではないか、こういうようなことがいわれております。  もう一つは、港湾の一大被害がございましたが、港湾は御承知のとおり、新潟港湾は特に普通の港湾よりおもしろい工法でできているのであります。昔はちょうどいまの新潟飛行場のところが信濃川の河口であったわけでありますが、これを二回分水を行なっているわけです。ちょうど右に蛇行しておりますところに、石を両側に積みまして、自然流下でもっていまの新潟港をつくったわけです。ところが、根固めができておらない。石を並べてその間に水を通して旧川を締め切ってしまった、こういうことでありまして、それから地盤沈下のたびに上にものを重ねていきますから、自重が非常にかかる。そこへ戦時中十五メートル制限であったものが、現在三十五メートル、四万トンの船が着くように中をさらっておりますので、岸壁は底がないので、どんどん地盤沈下する。工法上の問題もあるようであります。  もう一つは、信濃川の大河津分水というものを三十年ばかり前にやったわけでありまして、信濃川の砂が絶えずつきまして、季節風や潮流の関係で根固めをして、新潟港は絶えず浚渫しなければならないものが、三十年前に締め切ってしまって、信濃川の上流の土砂は全部新信濃川に出ている。こういうことで、新信濃川は約三百万坪ばかりの砂がついているわけですが、この砂が普通であれば新潟港の根固めになった砂が、流域変更やったために、非常に地盤沈下が促進されるというような問題がございまして、結局港湾工法などは、上からどんどんと石を積んで自重をかけていくということよりも、相当深いところまでコンクリートを下げて、それから浚渫すべきだというような、工法上だれが考えてもわかることでありますが、そういうことを議論をしながら、ついに単価がなかったとか、予算が少なかったということで、安直な工法をやっておったために大災害が起きた。  ですから、やはり今度新工業法などは、そういう安直な工法よりも、公共施設を先にやっておいて、そうしてその上に工場を誘致する。工場誘致をしてばらばらに建ったものを公共投資でつないでいくという、都市計画の盲点が今度の地震で非常に大きく露呈したということでありまして、やはり公共投資が先行しなきゃいかぬ、こういう問題は強く今度の地震で強調されたというようであります。
  30. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それじゃ、国民金融公庫のことをお尋ねしたいのですが、実は農地報償制度のことがしばしば新聞に報道されておるわけです。賛否のことは別といたしまして、これは提案者に大臣がなられるわけじゃないんですけれども、これは所管の当局もいろいろともめたようでございますけれども、大蔵省じゃないことだけはわれわれは了承しておりますが、しかし、これとはこの国民金融公庫法は全然無関係とは言えないと思うのですが、一体、会期も余すところわずかになってまいりましたが、出すのか出さぬのか。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地被買収者に対する報償法案は提案をいたすつもりでございます。もう提案したのじゃないかと思いますが、この間の閣議で要綱だけ決定をいたしておりますので……。最終的には提案しておらないそうでございますが、この国会に提案をする、こういうことになっておるわけでございます。
  32. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣、そのときに閣議決定したと。手続上で残されておるだけであって、今国会に提案するということも動かすことのできないことだ、こういうふうに了承していいわけですね。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう内閣の案は決定しておりますし、閣議で決定いたしておりますので、国会の御都合によって提案をする、こういうことでございます。
  34. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そのときに、まあなかなか膨大な数字のようで、大臣個人的にはいろいろと御意見があったようにわれわれも新聞を通して知っておるわけです。うそかほんとうかは、これは別です、新聞のことですから。あなたがそういうことはないとおっしゃればそれまでですが、新聞を通しては承知しております。そういうときに、たとえばそういうものを出すとするならば、国民金融公庫法は、御案内のとおり、一応予算計上もしてございましたし、いろんな点がありまして、この間のときにはもう時間が切れて三月三十一日に落ちたわけです。こういうときにこの法律案は全然、国民金融公庫法の一部改正の問題については全然議論をされておらぬのか、それとも、かなりこれはまあそういうような問題もいろいろとあるから、この際そういうものも、この法律案のことは別として、こちらのほうもこういうことも織り込んでいけるのか、いろんなことが関連性があるから議論をされておると思いますから、どういうような議論が、されたとするならばされたのか、全然されなかったのか。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 相当深く研究をいたしました。この農地報償法案を通過さしていただくということになれば、結局担保金融という道も当然開かなければならないだろう、その場合この法律案との関係を一体どうするかというような問題も、十分検討いたしましたが、結論的に申し上げると、この法案はやはり通していただかなければならぬ、こういうことでありまして、われわれが国会に提案した当時の気持ちと同じものでございます。  なぜかといいますと、まああの農地報償法案をこの国会に提案するといっても、なかなかたいへんな法律案でございますから、とてもまあこれから会期二日か三日しかない、四、五日しかないときに、この国会で通していただけるという見通しもないかもしれません。常識的に申し上げておるわけでありますが、まあなかなか大法律案でありますので、相当御審議を、慎重に御審議をおやりになるであろう、こういうふうに見通されるわけであります。農地被買収者に対しては、とにかくこの法律案は生業資金を他から借りられないという方に対して二十億に限って金をお貸ししようということでありますので、農地報償法案が提案せられるせられないにかかわらず、これだけのものはせめてやってあげることが非常にいいことだ、政府が当初考えたこととそのままの考え方に帰一をいたしたわけでありますので、本法はひとつできればこの国会で御審議をいただいて通過をせしめていただくようにお願いを申し上げたいということになったわけであります。
  36. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これを審議していく上に参考にもなると思いますから、提案の当面の責任者でないからこまかいことは知らぬとおっしゃるかもしれませんが、農地報償制度の大づかみな柱になっているのはどういう点が柱になっているのですか。それで、なぜ報償としたかというような点ですね。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは提案すれば、提案理由でひとつ十分総務長官から御説明を申し上げるはずになっておりますが、私に対する御質問でありますから、私の知る限りのことを申し上げますと、農地被買収者に対して報償を行なうという根拠は、戦後農地の解放ということが行なわれたわけでございますが、これは世界の歴史に見ましてもたいへんりっぱな成績をあげておるわけであります。しかも、相当思い切った処置であります。農地の解放がうまくいくかいかぬかということは、その国の民主化、その国の再建というものに対して、どこの国でも歴史上の大きな問題になっておるわけでありますが、農地を解放せられた地主の皆さんは、そういうときに新生日本のために思い切ってこれが政策に順応をせられたわけであります。世界の歴史に例を見ないように円満にこれが行なわれたという事実は、何人も否定できないわけであります。  まあその中でなぜ報償の問題が出てきたのか、こういうことになりますと、やはりこういう画期的なことが円満に行なわれたために今日あるのだ、こういう考え方が一つございます。これはまあ私はだれでも異存はないところだと思うのです。あのとき農地解放ができなかった場合と円満に行なわれた場合と、非常に大きな、今日における大きな一つの功績であったと思う。  もう一つは、最高裁でもってもう補償する必要はない、こういう結論が出ているのに、なぜ一体報償などするのか、こういうことでありますが、これははっきり申し上げると、自作農創設法に基づきまして農地解放が行なわれたわけでありますが、あのときに自作農をつくるためにこそ農地解放をやったんですが、農地以外に転換をする場合には先取特権を認めておけばよかったのです。われわれの先輩がやったことですが、はなはだ遺憾であるとわれわれは思っておる。農地としてあるからこそ私権制限をやったわけです。これを農地以外のものに転用して、わずか十何年しかたたないときに、七百円で一反歩やったものが反三百万円になる、こういうことを許したのはやっぱり法律審議のときの間違いじゃないか。間違いというか、少なくとも親切味が足りなかった。だから、このときに、他にこれを売り払う場合には解放をした地主に先取特権を与えておけば、報償問題は起こらなかったと思うのですが、まあその後昭和二十九年でありますか法律改正になって、これを他に転売してもよろしいと。みすみす目の前にあるものが、国家のため民族のあしたのためにといって相当数泣いて祖先伝来の土地を小作に解放したにもかかわらず、これが目先でもって何千倍になっている、こういうものがあるわけです。こういうものに対して、ただ最高裁の判例がございますから何もしないでいいのだ、こういう考え方政府としてなかなかとれない。こういう考え方で、まあ報償しよう。  報償というものは金だけやるわけじゃございません。私もお答えしたように、勲章をやることも報償でございましょうし、いろいろな御意見もあると思いますが、なかなか過程においては、政府でも金杯をやったらどうか、銀杯をやったらどうか、いろいろな話が出ましたけれども、まあやはり金でひとつ、国会の御審議を得て、幾ばくかこの功績に報いることが一番いいことだと、こういうことになったわけであります、大ざっぱに申し上げて。  私は、理屈をつければいろいろな理屈はあると思いますが、大きな意味の政治的な立場から、なぜ農地報償を行なったかということは、やっぱりこの二つに帰一するのではないか、このように考えております。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 農地報償の問題が出ましたから、簡単に一つだけ伺っておきたいのです。新聞でいろいろ伝えられておりますが、この報償の金額ですね、全体の財源はどのくらいで、その財源は何でまかなうのか、この点について伺っておきたい。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和二十五年の農林省統計によりますと、解放を受けた者は二百六万人でございます。この対象になる面積は百八十二万町歩だと思います。数字は間違っておればあとで訂正いたします。そういう状態でございまして、この数字をそのまま当てはめますと、推算するわけでございますが、大体千六百十七億余、千六百十八億ぐらいかかるのじゃないかというふうに考えます。それから一割ぐらいは来ない、申請をしない人。それから、一反歩未満、それから一畝未満というようなものを切り捨てております。十一町一反九畝といえば九畝だけ切り捨てておりますから、そういうものとか、それから何度か均分相続をやっておりますので、もうずっと分かれてしまってとてもわからぬというようなものもあります。いろいろなものを入れまして大体九割ぐらい来る、二十五年統計で。昨年の十二月に総理府でやりましたときには八十五万人しか来なかったわけでありますが、まあ二百六万人の九割が申請があるだろう、こう見ますと、千四百五十六億一千八百万円、こういうことでございます。これが十カ年間均等でございますので、一反歩未満の一万円は五カ年間でございますが、大体年間百二、三十億ずつということになるわけでございます。  しかし、争いのあるところでございまして、自民党などではこの千四百五十六億一千八百万円が九百億ぐらいだろうという議論もございますが、私は、少なくとも政府は二十五年の統計を使わなければなりませんので、千四百五十六億一千八百万円、こう試算をいたしておるわけでございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、この財源です、財源は何ですか。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財源は国民の税金でございます。——税金だけじゃございません。税金とか、それから農地被買収着から国が受け取りましたものがまだたくさんあるわけでございまして、こういうものを売り払った代金なども国庫の雑収入になるわけでございますし、まあいろいろなものが入りまして、御承知一般財源の中から償還をするということになるわけであります。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 償還といいますと、現金で交付するんですか。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 無利子の交付公債で渡しまして、それを十カ年に均等償還をする、こういう考え方でございます。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、公債が財源でしょう。交付公債が財源になるわけでしょう。そういうことですね。そういうことでいいんですか、交付公債が財源であると。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 交付公債で交付をいたしますから、償還は一般会計から償還をすると、こういうことになります。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、直接には交付公債というものが直接の財源になるわけですよね。それは公債償還はもちろん国民の税金がこれは財源ですけれども、交付公債を発行することになるんですよ。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、発行じゃなくて、交付公債だから交付ですね。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 発行しなければ交付できない、そうでしょう。その点は大事な点ですから、確かめておきたい。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 記名の公債を交付するわけであります。ですから証文をやると、こういうことであります。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、もっと率直に。非常に慎重に、何かこだわって、答弁をされておるようですけれども……。ですから、結局公債です。それは交付公債という名でもいいですよ。公債です。つまり、政府の債務ですよね、債務証書ですよね、あとで償還するんですから。公債を発行することになるでしょう。
  51. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この公債を発行しまして、この公債を売り出して、その金を取って被買収者にやるというんじゃありません、ですから、まあ交付公債は未亡人のときもやったわけでありますが、こういうものは国庫債務負担行為を生ずるものを交付する、こういうわけです。公債論をいまやっておられますが、公債とは関係ない。交付公債とは……。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこ、はっきりしてくださいよ。政府が支払う場合、現金で払わないで交付公債で——一つの債務証書ですよ、政府の。そうでしょう。ですから、公債ですよ。実質的には公債でしょう。公債であるかないか、これははっきりさせてください。私は公債であると思いますが、公債じゃないんですか。
  53. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 今度の農地報償のために出しますいわゆる交付公債と称するものは、さきに引き揚げ者あるいは未亡人につきましても交付いたしました国債と同様に、財政法に言いますところの公債ではございません。これは、さきの未亡人の場合、あるいは引き揚げ者の場合にも、政府からしばしばはっきりと申し上げているとおりでございます。  で、それでは、今度出しますその国債は何だと申しますと、これは記名式でありまして、今度の場合で申しますと、十カ年間にわたってこれこれの金額を交付するということを約束いたしますところのものでありまして、これは国庫債務負担行為の一種であります。したがいまして、国債を発行して政府がそれを一般に売り、政府として借り入れを行ない、そしてそれを償還するといったような性質のものとは明らかに違うというふうに私どもは解釈しております。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはごまかしですよ。あとでつけた理由で、そんなばかな話はありませんよ。これはあとでまたもちろん問題になると思うんです。千四百五十六億、これは歳出ですよ。はっきり歳出でしょう。歳出になるわけでしょう。
  55. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) なりません。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 歳出にならない。——どうしてですか。
  57. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) これが歳出になりませんのは、他の国庫債務負担行為と同様でございまして、歳出になるには、その支払いの時期が到来しないとなりません。これは、たとえば一般政府の艦艇建造その他で、当該年度、翌年度、三年度とわたって国庫債務負担行為契約をする。しかしながら、それが現金化して支出に立つのはその翌年度、次年度。その支出に立つ場合に歳出になるわけですから、その全体を歳出と見ることはできないと思います。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、それはたとえば国庫債務負担行為、あるいは継続費みたいな形でもいいですよね。継続費も最初全部これは計上しないでしょう。一応国会で承認を得て、それで各年度に応じて歳出に計上するわけですよね。しかし、各年度に計上すれば歳出になるのでしょう。
  59. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 各年度に計上されました当該年度の支払い分は歳出になります。しかしながら、全体がその最初の年度の歳出になるということはございません。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国庫債務負担行為とこれとは全く違うじゃありませんか。あまりばかにした説明すべきじゃないですよ。国庫債務負担行為は、これはたとえば防衛費なんか国庫債務負担行為でやるでしょう。そのときに契約して、それで軍艦なり飛行機なり納入されたときに支出されるのでしょう。対価があるんですよ。これは対価がないじゃないですか。あとでつけた理屈ですよ。もしこれを歳出とみなしあるいは公債発行とみなせば、財政法第四条に違反するからですよ。だから、何とかかんとかいま言ったような理屈をつけておるが、それはあとで大きな問題になると思うんですよ。財政法第四条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」と、こうなっております。ですから、公債は公共事業費とか出資金及び貸し付け金の財源に充てる以外は発行できないのですよ。国の歳出をまかなう場合には、財政法第四条で公債が発行できる場合をはっきりと規定してあるんです。ところが、報償金については、これは公債と解釈すれば、国の歳出と解釈すれば、財政法第四条に抵触するから、何とかかんとか、国庫債務負担行為と同じだと。そんなばかなことがありますか。  国庫債務負担行為は対価があるわけですよ。契約でしょう。納入したときに支払いが出てくるんですね。だから、国庫債務負担行為はすぐに歳出には計上されませんわね。そうでしょう。それで納入という行為が出て、それで納入されたときにその年度に歳出の金額が国の予算に計上される、こういうことになるわけでしょう。これは対価がないじゃありませんか。それで、この裏づけは税金でしょうが。裏づけは税金でしょう。対価がなくて、そして裏づけが税金である。歳出であることは間違いないし、それは国庫債務負担行為とは非常に違いますよ。おかしいと思うんだ。
  61. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) それは私どもの解釈と違っております。私どもは、これは第四条にいうところの公債であるというふうには解釈いたしておりません。それは財政法の第十五条にいうところの国庫債務負担行為の一種であるということで、さきの未亡人の場合あるいは引き揚げ者の場合にも御説明をいたしております。  それで、この農地報償の場合におきましても、先ほど大臣が御説明申しました千四百五十六億全部が、たとえば法律が四十年度から施行になったといたしますと、昭和四十年度の歳出になるわけのものではありませんで、その四十年度においては初年度分である百四十五億か、あるいはそれよりも少ない金額が歳出に立てるわけです。その歳出が財政法の第四条にいうところの国の歳出になるわけでありまして、その歳出をまかなう場合に、公債または借り入れ金以外の歳入をもってその財源としなければならない、こういうところで第四条の適用があるわけでありまして、千四百五十六億全体がその昭和四十年度の歳出になって、それが国の借り入れになる、あるいは公債を発行した形になるといった性質のものではないというふうに解釈しております。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なぜ交付公債と呼ぶんですか。これは担保は全然きかないんですか。
  63. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) これは今度提出する予定の法案では、一般的には担保に提供することは禁止しております。ただし、政令で定める場合は別になっておりまして、この政令で定める場合は、まだこの政令を出しておりませんので確定はいたしておりませんが、たとえば国民金融公庫にこれを担保に提供して金を借りることができるようにするということを考えております。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やっぱり担保できる。では、交付公債という名前をちゃんとつけられたようになっていて、それではその名前をつけるのが私はおかしいと思うんですよ。なお、未亡人にも交付したから、それだから公債でない、そういうことは理屈にならないんですよ。もっと基本的にその性質をよく検討してから判断しなければならないんであって、これは議論になりますから、あなたのほうもまたいろいろ研究されると思いますし、われわれのほうでもまた研究し、専門の学者にもよく意見を聞き、そういう際にはまたおそらくここで参考人等も呼んで確かめる方法もあろうかと思いますから、きょうは、これは議論になりますから、この程度にしておきます。
  65. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 交付公債ということばを通例使っておりますけれども、交付公債ということばは法令上はないのでございまして、今度の法案にも、国債を交付すると、記名国債を交付するということだけが書いてあるわけでございます。で、国債をもって交付するということであって、その交付公債をやるとか発行するとかいうようなことばはございません。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなると、また問題ですね。国債ということばを使うんでしょう。国債というのはどういうものですか。
  67. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) また先ほどのこの報償金の性格になるかと思いますが、この記名国債は、財政法に申しますところの第十五条の国庫債務負担行為、第十五条第一項で法律上国が債務を負担する、そのことに該当するというふうに解釈しております。
  68. 天田勝正

    ○天田勝正君 質問じゃないんですが、私は実は重大な問題を一つ確かめておきたいと思ったんですが、大臣は帰られましたが、来られるんですか。それとも、その報償金問題の提案者である総務長官がおいでになる、そうなればそれで、その時期でもいいんですよ。
  69. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記始めてください。
  71. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 齋藤さん、あなた、次官会議で、いつやるという日にちはわかりませんか。これ提案するという日にち、あなたの手元に……。どうもやったなんと言っておられるのに、まだやらぬという話も出てきてしまったのですが、あすになるのかあさってになるのか、あるいはそれともきょうおやりになるのか。
  72. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) ただいまのお尋ねの報償に関する法律案につきましては、閣議において提出することを決定いたしてございます。国会にいつ提出するかは、国会と御相談の上内閣でおきめになる、こういうことに相なっております。
  73. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩    ————————    午後一時四十一分開会
  74. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから委員会を開会いたします。  公認会計士特例試験等に関する法律案及び税理士法の一部を改正する法律案を一括議題といたします。  両案は、去る十九日衆議院から送付せられ、本委員会に付託せられました。両案は、衆議院におきましては修正議決せられておりますので、この際、衆議院における修正点につきまして、修正案の提出者から順次説明を聴収いたします。  まず、公認会計士特例試験等に関する法律案についてお願いいたします。衆議院議員木村武千代君。
  75. 木村武千代

    衆議院議員木村武千代君) 私は、ただいま議題となりました公認会計士特例試験等に関する法律案に対し、衆議院における修正部分について、その趣旨を御説明いたします。  修正部分の案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読を省略させていただきます。  修正の第一は、公認会計士は高度の一般的識見を持っていなければなりませんので、第三次試験及び特例試験に論文を追加することにいたしております。これにより、独立の職業会計人としての公認会計士の適格性が広い視野から判定されることになるものと思われます。  第二点は、原案によりますれば、第三次試験の口述試験は、筆記試験に合格した者についてのみ行なうこととされておるのでありますが、口述試験を追加したことが、会計実務の専門的応用能力を判定するためには筆記試験のみでは合理性に欠けるという理由に基づくことを考慮すれば、口述試験は筆記試験の合格者よりも広い範囲の者について行なう必要があると考えるのであります。したがって、口述試験の受験資格者を筆記試験の合格者よりも範囲を広くいたしたのでございます。  第三点は、技術的な理由による修正でありますが、その第一は、先ほど御説明をいたしましたように、論文試験を追加いたしましたことにより、特例試験の試験委員の数を一名追加いたしたことであります。第二は、昭和三十九年四月一日現在において主として計理士業務を営む者で税理士資格を有していない計理上は、税理士資格の付与に関する認定申請書を大蔵大臣に提出することになっておりますが、その提出期限が、原案によりますれば本年七月三十一日となっておりますのを、本法の施行が当初の見込みよりおくれたため、これを九月三十日に延期することにいたしたのであります。  以上が衆議院における修正の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げます。以上でございます。
  76. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、税理士法の一部を改正する法律策について御説明を願いたいと存じます。衆議院議員渡辺美智雄君。
  77. 渡辺美智雄

    衆議院議員渡辺美智雄君) 税理士法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案の理由を御説明申し上げます。  私は、税理士法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分につきまして御説明を申し上げたいと思います。修正部分の案文はお手元に配付のとおりであります。  戦後、申告納税制度が実施をせられ、税務の民主化が推し進められるに及びまして、昭和二十六年税務代理士法にかわりまして現行税理士法が施行せられました。  税制調査会の答申に基づきまして、今回税理士法の一部を改正する法律案が上程をせられ、税理士制度全般にわたって検討された次第でございますが、税務の民主化、税理士業務の拡大、試験制度の合理化、近代化及び円滑なる徴税行政のあり方などにつきましては、徴税当局と税理士会側との主張は必ずしも一致をしてはおらない現状であります。  衆議院大蔵委員会は、それぞれ現行法及び改正案に対しまして検討をしてまいりましたが、税理士会側の要望する幾つかの問題点を認めながらも、現時点においては、それから全部について意見の一致を見るには至っていないのであります。したがって、残された問題点については、引き続き前向きの形で検討をすることとし、とりあえず意見の一致を見た二つの点について、修正案を提案することとした次第でございます。  まず、その第一は、第四十七条の税理士の懲戒の手続についての修正をしようとするものであります。  従来、国税庁長官が税理士の懲戒処分権を有していたのでございますが、いつから処分の効力が発生をするのか、いかなる手続を経て処分するのかが、必ずしも明確ではなかったのであります。したがって、今回の改正案は、懲戒処分の手続を定め、審査委員会の意見を開いて処分をすることといたしました。一方、処分の効力の発生については、旧法第四十八条「懲戒処分の公告」の条項におきまして、「処分が確定したときは、遅滞なくその旨を官報をもって公告しなければならない。」と規定をし、処分の確定とは、訴訟が提起された場合においては、まず裁判の終結、しかる後の公告をまたなければならないとの解釈をされていたのであります。  今回政府は、行政処分は、その旨の官報公告と同時に効力を発生せしめようとしているのでありますが、この際、手続の慎重を期するため、新たに税理士及び学識経験著をも交えた税理士懲戒審査会なる制度を設けて、この意見を聞いて後に処分をすることとしたのであります。  これに対しまして、一方、税理士会側の意見によりますると、むしろ多くの場合、税理士と争いの当事者となるべき国税当局の最高責任者である国税庁長官に懲戒権を行使されることは適当でない、税理士の自主性確立の立場から、懲戒権、監督権は、弁護士会のごとく税理士会自体に移譲すべきであるという主張をされておったのであります。  これに対して、衆議院大蔵委員会の大勢といたしましては、税理士会の主張はもっともだと見る人もありまするが、時期尚早という人が多いのであります。しかし、直接個人の生活権の活殺にかかわる懲戒権の行使は、一たんこれをあやまてば重大なる個人の人権侵害にもなりかねないことをもあわせ考えました結果、層一そうこれが慎重を期するために、懲戒権者たる国税庁長官は、改正法におけるごとく、「懲戒処分をしようとするときは、税理士懲戒審査会の意見をきかなければならない。」との規定を改めまして、「懲戒処分をするときは、税理士懲戒審査会の議決に基づいてこれをしなければならない。」と修正をし、懲戒審査会の議決が処分の有無、軽重を結論づけるように期待したものであります。それによりまして、税理士会側が心配をする国税庁長官の恣意を防止し、処分の慎重と公平を期さんとするのが修正の理由でございます。  第二は、従来の税理士試験は、一定の条件のもとに一部科目が免除をせられ、または一科目ずつの受験をすることができたのでございますが、今回の改正により、これを短答式による予備試験と短答式並びに論文式による本試験とに分けたため、それぞれ一皮に合格しなければならないこととなった。ところが、すでに従来の方法により本年十二月末までに一部の科目に合格した者及び一部科目の免除を受けた者から、試験が一度にむずかしくなり過ぎるという声が高いので、経過的措置として、附則四項において、これらの人たちには新法による予備試験を免除するとともに、本試験中短答式の試験を免除し、改正法にかかわらず向こう五カ年間従来と同様の方法により、合格していない残りの科目を一つずつ受験する方法を改正法による試験と並行して継続することとしたのであります。  この措置とのつり合い上、本年十二月末日現在において大学院に在学する者で、昭和四十年一月一日から同四十一年三月三十一日までの間において法律学、財政単または商学に属する科目に関する研究により学位を授与された者に対しても、予備試験を免除し、かつ昭和四十四年十二月末日までの間に行なわれる本試験中の短答式による試験を免除し、そのほか、学位を受けた日の翌日から昭和四十四年十二月末日までの間に法律学、財政学で学位をとった者に対しては本試験科目中税法を、商学で学位をとった者に対しては会計学を、その人の申請によって免除しようというものであります。これは、旧法によって税理士たるの資格を得ようとして大学院に入学した者に対し、既得権的立場を認め、これらの人たちを保護しようとする趣旨であります。  以上が修正の理由であります。
  78. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして、同案に対する衆議院における修正点の説明は終わりました。  引き続いて、両案の補足説明を順次聴収することにいたします。証券局長松井直行君。
  79. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 私、このたび新設されました証券局長に任命されました松井でございます。過去三年間にわたりまして、主税局在任中、税法改正につきまして皆さん方からたいへんいろいろ御指導御鞭撻をちょうだいいたしまして、どうもありがとうございました。新しい職務にこれから専心勉強いたすつもりでございますので、相変わらず御援助のほどをお願い申し上げたいと思います。  さきに提案理由を御説明いたしました公認公計士特例試験等に関する法律案につきまして、その補足説明を申し上げます。  公認会計士特例試験等に関する法律案は、わが国の職業会計人制度の整備統一等に資するため、計理士制度昭和四十二年三月三十一日をもって廃止し、それまでの期間五回を限って公認会計士特例試験を実施することとし、また本年四月一日現在において、主として計理士業務を営む者で税理士資格を有しない者に対しては、認定により税理士資格を付与するとともに、公認会計士第三次試験の実施状況等に顧み、実務補習等の成果がよりよく反映するよう口述試験を追加することをおもな内容とするものであります。これらの点につきまして、順次御説明申し上げます。  第一に、計理士制度の廃止に関して申し上げます。  昭和二十三年七月に制定されました公認会計士法の規定により、財務書類の監査または証明の業務は、原則として公認会計士のみが行ない得ることとされているのでありますが、例外的に同法附則第六十二条第一項及び第二項の脱走によりまして、計理士も証券取引法第百九十三条の二の規定に基づくいわゆる法定監査以外の任意監査は経過的にこれをなし得ることとされているのであります。したがいまして、財務書類の監査または証明を業とする制度は、現在、公認会計士と計理士の二本立てとなっているのであります。  実はこのため、公認会計士法制定以来、計理士に対する公認会計士の資格付与、法定監査権の付与等の問題をめぐりまして、長年紛争が絶えなかったのでありまして、このような状態が長く続く限り、財務書類の監査証明に当たる者の資質及びその監査水準の向上に専念することができないばかりか、投資家保護の重要な任務もおろそかになり、この制度に対する社会一般信用が漸次低下することがおそれられたのでございます。  あたかも、わが国経済は開放体制への移行に際会し、企業経理の健全化が一そう強く望まれ、また資本市場育成の見地から投資家保護の徹底をはかることが急務とされているのでございます。このときにあたりまして、社会的諸要請にこたえ、かつ、従来からの計理士問題の経緯を考えるとき、現在、経過的に残されている計理士制度は、これを廃止することが職業会計人制度の整備合理化に資するものと考えたのであります。その廃止時期は諸般の事情を考慮して、三年後の昭和四十二年三月三十一日としているのであります。この点につきましては法律案の附則第一条及び第五条に規定しております。  なお、この計理士制度を廃止することにつきましては、全日本計理士会の総意により、これに同意する旨の決議が行なわれております。これは長年未解決のまま残されていた計理士問題に終止符を打ち、職業会計人制度の整備充実をはかろうとする機運が計理士の間に醸成された証左であると考えることができるのであります。  さきに申し上げましたように、この計理士制度は、法律的には経過措置にしかすぎないのであります。したがいまして、これを廃止することについては、既得権の問題は特に生じないのであります。また、実際上も現業計理士の多くは税理士業務によって生活基盤がささえられており、計理士制度を廃止したからといって動揺を来たすものではないと考えるのであります。ただ、現業計理士で税理士資格を有しない者については、特にその点を考慮する必要がありますので、その生活権の保障等をかねて、その実務経験を尊重し、認定によって本年四月一日の現況により税理士資格を付与することとしているのであります。この点については法律案の第十二条に規定しているところでありまして、認定申請に関する諸手続は、政府原案におきましては本年七月三十一日までに行なうこととしておりましたが、衆議院の修正によりまして二カ月延長され、九月三十日となっております。  第二に、公認会計士特例試験の実施措置に関して申し上げます。  さきに申し上げましたように、公認会計士特例試験は、計理士制度の廃止に伴いまして臨時的に実施するものでありますが、これによって現在の公認会計士の質的水準を低下させるようなことがあっては、公認会計士制度の存在意義を失うことにもなると考えられますので、これらの諸点を考慮し、現行の第三次試験と同程度の厳正な試験を実施することといたしております。  まず、公認会計士特例試験を受けることができる者は、この試験が計理士制度の廃止に伴って実施されることにかんがみ、大蔵省に備えてございます計理士名簿に登録を受けている者と、計理士名簿への登録を受ける資格を有する計理士登録延期者に限定いたしております。この点については法律案第三条に規定しているところでありまして、その総数は約四千名であります。  次に、公認会計士の特例試験の質的水準に関して申し上げます。法律案第四条に規定されておりますように、公認会計士となるに必要な高等の専門的学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することをもって、その目的としているのでありまして、この規定は公認会計士法第十条に規定されております第三次試験と同一水準であることを意味するものであります。しかも、この特例試験の実施機関は公認会計士審査会であり、その試験委員は同審査会の推薦に基づいて任命し、その人選は第三次試験の試験委員と同じ見地から行なわれるものであります。  右に申し上げましたことから、試験科目は現在の第三次試験と同様であるべきでありますが、最近、商法の計算規定の大幅な改正等もありまして、その実務における重要性が増してきておりますので、商法を試験科目に追加することとした次第であります。この点につきましては、法律案の第四条に規定しているところであります。  なお、政府原案の試験科目につきまして、衆議院修正によりまして論文が一科目追加され、試験委員の定数も一名増加されております。  次に、公認会計士特例試験の合格者を決定するに際しましては、筆記試験の成績によりますほか、計理士の職にあった実務年数を政令で定める方法によりしんしゃくすることといたしております。この政令で定める方法は、過去に行なわれました特別公認会計士試験を参考にするとともに、その程度をこえない範囲内で次のような方法で実施するつもりであります。すなわち、計理士の職にあった年数三十年以上の者に対して、最高のしんしゃく点といたしまして、百点満点につき十五点を加え、三十年未満の者に対しましては、その年数に比例してそれ以下のしんしゃくを加えることとしております。  第三に、第三次試験に口述試験を追加することに関して御説明申し上げます。  現在、第三次試験は、財務に関する監査、分析その他の実務について筆記の方法により行なわれているのでありますが、筆記の方法のみによりますと、公認会計士業務を適切かつ有効に遂行する上において必要な専門的応用能力を有するかどうかを判定するのにおのずから限界がございまして、試験方法としては合理性に欠けるうらみがありますので、これを補完する意味において新たに口述試験を追加し、筆記と口述の両試験により公認会計士としての適格性を判定することとしたのであります。また、口述試験は筆記試験に合格した者について行ない、筆記試験の合格者にはその後行なわれる四回の筆記試験を免除することといたしております。この点については、法律案附則第二条に規定されているところでございます。  なお、衆議院の修正によりまして、第三次試験の試験科目に論文が一科目追加され、また、口述試験は筆記試験において政令で定める基準以上の成績をおさめた者に対して行ない、そのうちこの基準をこえる政令で定める基準以上の成績を得た者に対して、その後の四回の筆記試験を免除することとなりました。  最後に、以上の改正に伴い所要の規定の整備を行なうことにいたしました。  以上、補足説明を終わります。
  80. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 主税局長泉美之松君。
  81. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) ただいま議題となっておりまする税理士法の一部を改正する法律案につきましては、さきに提案の理由を申し上げておるのでございますが、補足して御説明申し上げたいと存じます。  現行の税理士制度は、御承知のように、昭和二十六年に公布施行されました税理士法に基づいておるのでありますが、この法律の施行後十数年間を経ております。その間社会経済情勢及び税制の上に著しい変化が加えられておるのでございます。これらの社会情勢の推移及び税制の変更に即応した税理士の制度を確立する必要があると認められるに至ったのであります。このため、政府といたしましては、さきに昭和三十六年に税理士法の一部改正の際の国会における附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、税理士制度各般にわたり根本的な再検討を加えることといたしまして、三十七年に設けられました税制調査会におきまして税理士制度につきまして鋭意検討を加えてまいりましたが、昨年末同調査会から税理士制度に関する答申を受けました。政府は、この答申を尊重しつつさらに検討を加えた結果、ここにこうした内容の法律案を提出することになった次第でございます。  この法律案の内容を申し上げますと、改正の第一は、税理士の職務が、中正な立場におきまして、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現に資するという重要な意義を有していることにかんがみまして、税理士の地位の向上とその業務運営の適正化をはかり、もって納税義務者から信頼されるりっぱな税理士として納税義務者の援助を一そう充実することになるよう、所要の改正を加えたことでございます。  すなわち、その第一点は、税理士の業務につきまして、その範囲を拡大することとした点であります。税理士業務の対象となる租税の種類につきましては、現在、所得税、法人税、相続税、贈与税、癖業税、市町村民税、固定資産税などの税目に限定されておりますが、これは昭和三十七年に物品税等間接税が申告納税制度に移る前に定められたものでございまして、現在の租税制度から考えますと、これは適当でないと考えられますので、今回登録税、印紙税及び地方税のうち法定外普通税、それから関税、とん税及び特別とん税といった特殊例外的なものを除きましては、広く国税及び地方税の全般を税理士業務の対象税目とすることといたしておるのでございます。  次に第二点は、税理士業務に新たに二つの制度を加え、納税者の信頼に一そうこたえることができるようにしたことでございます。  その一つは、税務書類の審査に関する書面添付制度の創設であります。すなわち、納税者の作成した租税の課税標準等を記載した申告書につきまして、納税者から相談を受けてこれを審査し、その中告訴が適正に作成されていると判断しました場合には、その旨を記載した書面を申告井に添付することができる制度を設けたのでございまして、これによって表明された税理士の専門的な意見を尊重するため、こうした書面の添付のある申告井につきましては、税務官公署において更正しようとする場合には、あらかじめ当該税理士の意見を徴しなければならないことといたしておるのでございます。  その二は、会計業務に関する規定の新設でございまして、税理士の業務は会計業務を基礎とするものが多いのでありますが、従来この点に関する税理士の地位が明確を欠いておりましたので、今回、税理士は、付随業務として、税理士の名称を用いて財務書類の調整、財務に関する相談等の会計業務を行なうことができる旨を明らかにいたしておるのでございます。  次に、第三点は、納税者が税理士に税務代理を委任した場合、税務調査に際しまして税理士が立ち会うことが納税者にとって望ましいわけでありまして、このために現在税理士に対する調査の事前通知の制度がございますが、今回、この通知の対象となる申告書の範囲につきまして、先ほど申し上げましたように、所得税、法人税、相続税及び贈与税の場合に限定されている点を改めまして、業務対象範囲が拡大されることに応じまして、すべての税目の申告書にこれを拡大することとし、納税者に一そうの信頼感を与えることといたしておるのでございます。  なお、計算事項等を記載した書面の添付制度の対象となる申告書の範囲につきましても、現行の所得税、法人税、相続税及び贈与税の確定申告書等に限定されている点を改め、申告納税制度による税目の申告書に拡大することといたしております。  次に、第四点は、いわゆるにせ税理士行為の発生を防止して、税理士業務の運営の適正化に資するため、税理士事務所の設置を一人一カ所に限定する原則を一そう徹底させることといたしますとともに、税理士事務所につき統一的な名称を付することといたしました。また、税理士の使用人に対する監督義務に関する規定を新設するなどの改正を行なうこととしておるのであります。  次に、第五点は、税法がしばしば改正されることとも関連いたしまして、税理士業務の適正な遂行に誤りなきを期するとともに、税理士の資質の一そうの向上をはかるため、日本税理士会連合会の統一的な管理のもとに、税理士に対し定期的に所要の研修を行なうこととするための改正をいたしておるのでございます。  なお、このこととも関連いたしまして、税理士業務に関する行政監督は、できるだけ税理士会の自主的運営を尊重しつつこれをはかっていくというあり方を一そう推進するために、まず、税理士業務に関する報酬につきましては、現在国税庁長官がこれを定めることとなっておりますのを改めまして、税理士会の会則においてこれを定めることとし、また、いわゆる通知弁護士につきましても、新たに税理士会に入会し得る道を開くことといたしております。  次に、第六点は、税務職員から税理士となった者に対し、税理士業務の一そうの適正化をはかるための改正を行なっている点であります。すなわち、現在は、税務職員であった者は、離職後一年間、離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件については税理士業務を行なってはならないとされておるのでありますが、今回この制限期間を離職後二年間に延長いたしますとともに、現在は国税庁長官の承認を受けた場合はこの禁止の例外措置が設けられておるのでありますが、この承認の基準が明確でありませんので、これを法律上明確にすることといたしております。  次に、第七点は、税理士に対する懲戒処分について、運営の適正化に資するための改正でございます。すなわち、懲戒処分の手続を一そう慎重にするため、新たに国税庁に学識経験者二名、税理士二名、国税及び地方税の職員二名の合計六名からなる懲戒審査会を設け、国税庁長官が懲戒処分を行なうに際しましては、あらかじめこの審査会の意見を徴することにいたしておるのでございますが、なお、この点につきましては、先ほど御説明がございましたとおり、衆議院におきまして、国税庁長官が懲戒処分を行なう場合には、懲戒審査会の議決に基づいてこれを行なうように修正されております。なお、懲戒処分の効力の発生につきましては、従来必ずしも明確でございませんでしたので、今回懲戒処分を知ったときから効果が発生することを明らかにいたしております。  次に、第八点は、税理士の自覚と自主性を一そう高めるための改正でございます。すなわち、税理士の職務につきましては、現在税理士の職責として第一条に規定されておりますが、これを「税理士の使命」として規定することといたしますほか、税理士が税理士業務に関して備えつける帳簿につきまして、記載事項を簡素合理化するとともに、その義務違反に対する刑事罰の規定につきましては、これを廃止することといたしておるのでございます。  次に、改正の第二の大きな眼目は、税理士業務の定義につきまして、誠実な納税運動の推進に支障のないよう配意しつつ所要の改正を行なうこととした点であります。すなわち、税理士業務は、税務代理、税務書類の作成及び税務相談の三つからなっておりますが、現行規定には必ずしも明確でない点がございますので、税理士の独占業務としての税理士業務の範囲に明確さが欠けておるのであります。そのために、業務の取り締まり及び納税者団体等による誠実な納税運動の推進に支障を来たしておるように見受けられますので、これら両者の調整をはかりつつ、規定の整備を行なうことといたしておるのであります。これによりまして、税務代理には代理及び代行を含むこと、税務書類には通常の決算書類は含まれないこと、また税務相談には申告に際しての個別相談をいうことなどを明らかにいたしておるのでございます。  次に、改正の第三の大きな眼目は、税理士となる資格についての改正であります。  現行の制度では、弁護士及び公認会計士のほかは、税理士試験を経て税理士の資格を与えることといたしておるのでありますが、税理士試験は、一般試験と特別試験とに区分されて行なわれております。一般試験は、まず受験資格を、一定範囲に限定した上、税法と会計学につき行なうものであります。また、特別試験は、一定の実務経験を有する税務職員等について、実務を主とした事項につき行なうものでございます。  このような現行の税理士試験のうち、一般試験につきましては、本試験一本で、しかも科目別に合格を判定することとなっており、かつまた、数多くの一部科目の免除制度がありますために、制度が複雑となっておるほか、受験者の数もきわめて多く、勢いその試験問題もいたずらに暗記力にたよるむずかしい試験になりやすく、反面、実務応用能力を十分に反映しがたい欠陥がありまして、職業専門家としての資格を判定する試験方法としては、必ずしも適切でない面が見受けられるのであります。そこで今回、他の立法例をも参考としつつ、まず一般試験についてその整備改善をはかることといたしました。  すなわち、まず、税理士試験につきましては、受験資格の制限を廃止いたしました。これを予備試験及び本試験に分け、予備試験は本試験を受けるのに相当一般的教養を有するかどうかを判定することを目的とし、国語及び社会について短答式によってこれを行なうことといたしております。もっとも、この場合、大学卒業者等一定の資格を有する者につきましては、その試験を免除することとし、また一度予備試験に合格した者につきましては、その後予備試験を免除することといたしておるのであります。  次に、本試験でございますが、本試験は、税理士となるのに必要な専門的知識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的としておるのでありますが、この場合実務応用能力の判定に重きを置くこととするため、まず、基礎的な素養の判定を、国税一般地方一般税理士法、民法及び商法並びに会計学の五科目について短答式よってこれを行なうこととし、この合格者に対しまして、所得税法、法人税法の二科目と、相続税法、酒税法、物品税法、国税徴収法、地方税法のうち道府県民税及び市町村民税に関する部分、地方税法のうち事業税に関する部分、地方税法のうち固定資産税に関する部分の各税法並びに簿記及び財務諸表論のうち受験者のあらかじめ選択する三科目の合計五科目につきまして、試験場に税法を備えつけた上、実務応用問題による試験を行なうこととしておるのであります。なお、一度短答式による試験に合格した者は、その後五年間は、短答式試験を受けることなく、実務応用問題による試験のみを受ければいいことといたしております。  この改正案による税理士試験は、準備の都合もあり、昭和四十年から実施することといたしておりますが、従来の試験による一部科目の合格者等に対する既得権を十分尊重するとともに、この試験制度の改正により受験者に与える影響を緩和する趣旨から、経過措置として、まず昭和三十九年十二月三十一日現在においてすでに改正前の税理士試験の試験科目の一部科目に合格している者及び改正前の税理士法において一部科目を免除されることとなっている者に対しましては、新税理士試験施行後五年間は、本試験のうちの実務応用問題についての試験のみを受ければよいこととするとともに、その受験すべき科目は、旧税理士試験の試験科目によることといたしております。なお、この場合、すでに合格しまたは免除されている科目については、その試験を免除することといたしております。さらに、この点につきましては、先ほど衆議院の修正がございます。ことを御報告されておりますが、十二月三十一日現在大学院に在学いたしておりまして、昭和四十一年三月三十一日までの間に、法律学、財政学または商学に関する研究によりまして学位を授与された者につきましては、試験科目免除措置として扱うように修正を加えられておるのであります。さらに、新税理士試験施行後三年間は、本試験のうち実務応用問題についての試験の合格者の決定方法は、新たな受験者をも含め従来どおりの科目別判定の制度によることいたしております。  次に、税務実務経験者に対する資格付与のあり方に関する改正であります。  税理士の業務は、先ほど申し上げましたように、会計業務が基礎になっておるのでありますが、税務官公署との税務折衝という点に特色を有する専門実務家としての業務でありますので、わが国の他の職業専門家に関する立法例や外国の税理士制度考えてみますと、行政庁に対する事務折衝を中心とする職業専門家の場合におきましては、通常の試験制度のほか、当該行政庁において一定の実務経験を積んだものを資格者の中に含めている例が多いのであります。また、現在の税理士制度におきましても、勤続十年ないし十五年の税務職員に対しましては、一般試験において税法の試験を免除することといたしております。またさらに、勤続三十年——地方税職員の場合には二十五年でありますが、勤続二十年以上の税務職員に対しましては、一般試験にかえて、会計に関する実務を中心とした特別税理士試験のみを行なうことといたしておるのであります。  そこで、今回、右のような試験免除に関する現行の特例等を整理いたしますとともに、職業専門家に関する他の立法例を参考として、行政庁における専門的実務経験を重視した改正を行なうことが適当であると考えたのであります。しかし、同時に、この場合、税理士業務の性質にもかんがみまして、その資格はかなりきびしく限定するのが適当であると考えられます。このような趣旨から、税務官公署における国税事務にもっぱら従事した期間が通算して二十年以上、または地方税事務にもっぱら従事した期間が通算して二十五年以上になる者であって、かつ、当該事務を管理監督する一定の責任のある地位にあった期間が通算して五年以上となる者のうち、税理士試験審査会により主として簿記に関する実務につきその必要と認める口頭試問によって税理士試験合格者と同等以上の学識を有する旨の認定を受けた者につきましては、税理士となる資格を付与することといたしておるのでございます。  そのほか、税理士試験の実施機関として、従来、税理士試験委員となっておりましたが、今回税理士試験審査会の制度に改めることなど、所要の規定の整備改善をはかっておるのでございます。  以上、税理士法の一部を改正する法律案につきまして、補足説明を申し上げた次第でございます。
  82. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして両案の補足説明は終わりました。  それでは、これから公認会計士特例試験等に関する法律案について質疑に入ります。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  83. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。  本案に対し御質疑のある方は順次御発言を願います。
  84. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 一番最初に、ぼくもこの問題については総括的なことをまず大臣からお伺いをせなければならぬと思いますが、しかし、次官もお見えですし、あるいはそうじゃなくて次官からということでなければ、事務当局からお答えされてもいいと思いますが、私のほうとしては、この国会が始まって、この公認会計士法と税理士法はいろいろな問題があるから、今国会には提案はひとつ見合わせてほしい、そういう書面を河上委員長名で出しました。それを私は、いろいろと種々検討をされて、そしてしかしそうであろうけれども出したほうがいいのだと、こういうように踏み切ってお出しになったと思うわけです。そこで、そういうことに対して検討しまして、それは実はかくかくの理由なんだ、こういうことは元来ならば大臣から御答弁願い、そうしてわれわれのほうからもそれに対しての意見を述べるわけだと思いますけれども、大臣なかなかお忙しいと思いますから、たいへん便宜的といっては失礼ですし、また大臣が御出席になれば私のほうもあらためて大臣に対して御質問を申し上げなければならないと思いますが、一応次官から、あるいは事務当局からでもいいですから、その点についてまずお答えが願いたいと思います。
  85. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お答え申し上げます。今回の公認会計士特例試験等に関する法律案につきましては、いろいろな問題があったことは事実でございます。まあ十数年来の非常な懸案でございますので、この際解決をいたしますにつきまして非常に問題がありまして、実は昭和二十六年に公認会計士審査会と申します公認会計士制度の根本的な運営についての審査会があるわけでございますが、そこからこの問題解決のための答申が実は出ておったのでございますが、その答申どおり事務当局としてはこの問題の解決をはかりたいということで種々検討してまいりましたが、なかなか各関係会の円満な話し合いができませんで今日に至ったわけでございます。  去年から、その中で一番問題になりました計理士会のほうが、計理士制度の廃止に踏み切ってもいいという議論になりました。この公認会計士制度ができましてから十六年間、毎年計理士会から実は各方面へいろいろな問題についての陳情があったわけでございますが、去年一年間はその陳情がなかったのでございます。そのなかった理由は、平木会長が衆議院でも申されておりますが、計理士会としては、計理士制度廃止に踏み切ろうということで、会員全体についての説得工作を去年から始めておられたわけでございます。そういう意味で種々の運動がなくて、ことしになりまして、計理士会としてもこの制度に賛成することに踏み切ろうというようなことになったわけでございます。そこで、われわれといたしましても、実は答申を受けましてから数年間、問題の解決ができておりませんでした一番の眼目であります計理士会の態度がはっきりしてまいりましたので、いよいよ踏み切ろうということで、本案の検討をいたし、一応の成案を得たわけでございますが、これにつきまして公認会計士協会としては反対である、依然として反対であるという態度であったわけでございます。  そういう意味で、いろいろ関係会の調整が完全にはいっておらないというようなことで、法案の提出自体が、実はこの通常国会に提出する法律案としては多少おくれたわけでございますが、ことしになりましてから、いろいろな話し合いの結果、公認会計士協会としては、形式的にはなお反対の態度でおられますけれども、実質的にはやむを得ないのではないかというところまできたという判断ができる状態になったわけでございます。そこで、われわれとしても、この問題は慎重に扱わなければならないということは十分承知をいたしておりましたし、いろいろ調整に努力をいたしてきました結果、大体まず調整の見込みがついたということで、この法案の提出に踏み切ったわけでございます。  その後の経過を申し上げますと、計理士会はそういうことで賛成をしておられます。それから、税理士会のほうも賛成をしておられます。公認会計士協会は、現在でも形式的には賛成をしておられないのでございますが、その後の公認会計士協会としての反対運動その他は、ほとんどやっておられません。公認会計士協会としては、会長もこの前の衆議院の参考人としては一応反対をしておられますが、われわれの判断いたしておりますところでは、まずまずこの案でいけば関係業界の話し合いはつくと、かように考えておるわけでございます。そういう経緯がございましたので、慎重に検討をいたしまししたのでございますが、この積年の懸案が解決いたしますのにはもっとも適当な情勢になったと判断をいたしましたので、お願いをいたしておるわけでございます。
  86. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 先ほど成瀬委員から、河上委員長から池田総理大臣及び大蔵大臣に申し入れしたのに、この税理士法の一部改正法律案の提案に至った理由と申しますか、趣旨についてのお尋ねがあったのでございますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、昭和三十六年の税理士法の一部改正の際に附帯決議が付されておりまして、税理士制度全般につきましてなるべくすみやかに検討を遂げて改正を行なうようにという御趣旨であったのでございます。  その後税制調査会が開かれておりますので、税理士の制度は必ずしも直接税制上のものではございませんけれども、しかし、税制を執行する上におきまして税理士制度がきわめて大きな意義を持っておりますので、税制調査会に税理士制度特別部会を設けまして、そこにおきまして慎重審議を重ねたあげく、昨年末税制調査会から税理士制度の改正に関する答申があったのでございます。この税制調査会の税理士制度特別部会には税理士業界から二名、それからそれぞれ関係業界がございますので、弁護士会、公認会計士会、計理士会、それぞれの業界から代表を加え、さらに学識経験者をも加えまして、十四人の税理士制度特別部会におきまして十数回にわたる会議を開きまして、また昨年夏には東京都下及び群馬県におきまして税理士制度の実態につきましての実情調査をいたしましたあげく、この答申がまとめられたのでございます。  もちろん、この答申の内容は、それぞれ関係業界の間にいろいろの要望意見があるわけでございますので、その全部を取り上げておりませんために、一部の業界におきましては、その取り上げられておらない点におきまして意見があることは事実でございますけれども、しかし、要望されておる点につきましては全部、検討のあげく、税制調査会としては、そのうちこれはとる、これはとらないというふうなことで答申をいたしたのでございます。私どもといたしましては、この税制調査会の答申をできる限り尊重しつつ、また広く意見を聞きまして、経過措置等におきましてはできるだけ緩和措置をはかるといったような趣旨で、今回の改正案を提案いたしたのでございます。  一部業界におきまして反対の向きの主張がございますが、これはその業界の意見を全部取り上げるということは、こういった制度の改正の性質上、なかなか行ない得ないことでございまして、この点はやむを得ないことでございます。また、税理士会の主張の中には、現在直ちに実施することは適当でないけれども、将来これを検討して時運の進展によってこれを改善していくということが望ましい点も見受けられますので、理想案に一挙に走るということよりも、逐次改善を施していくことが望ましい、こういう考え方から今回の提案をいたしておるのでございます。そのような趣旨でいたしておりますことを御了解いただきたいのでございます。
  87. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ざっくばらんに言って、党からお出ししたそれに対して、御返事はお出しになっておりますか、出していませんか。
  88. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  89. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  90. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私の勘違いで、私は公認会計士並びに税理士の両方だと思っておりましたが、いま承りますと、税理士法だけだということですから。それは議論をしたときには両方があったわけですけれども、文書にまとまったときにはそういうことになったので、どうも失礼いたしました。またあらためて、それでは税理士法が本審査になったときに、そういう点について御質問することにいたします。
  91. 天田勝正

    ○天田勝正君 公認会計士の部分について伺いますが、まず、今回の改正による特例試験を、これから四十二年三月末日までの間に五回行なうと、こういうことなんですね。そうして過去十三回か、やはり行なってきているはずです。そこで、試験を著しくやさしくしない、こういう方針を説明の中で強調されておったわけです。そのことは、やはり職業会計人というものの資質がどういう部面からでも落ちるということになりますと、それ自体が開放経済体制下における外国の信用もえらく落ちる、こういう配慮が私はあると想像するのです。ところが、そうするために、その一つとしては、今度、大蔵省に備える計理士名簿に登録を受けている計理士、こういうところまでは、まあ受験資格がすぐわかるのですが、そのほかに、登録を受ける資格があるけれども、それを延期している者、こういう二つのものを含めて、その資格がある者は全部と、こういうことになるわけで、実際にその仕事をしていても、していなくても、登録は延期しているのだからということで、やはり特例試験の資格者のうちに入っていく。そうならば、両方並べて書く必要はさらさらないような私は気がするのです。現に仕事をしていなくても、いままで実務で実力がそこについたという判定はできないのじゃないか。まず、その試験の結果とか、それについては、落ちるか落ちないかということについては、ほかに聞きますが、この受験資格というものは結局、旧法で計理士の資格を取得できる者はみんながとれる、こういうことになるのでしょう。いかがですか。
  92. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お話のように、この特例試験をいたしますことが、公認会計士の資質水準を低下させるようなことになりますと、非常に問題でございます。公認会計士協会が一応反対の立場をとっておりますのも、主としてそういう疑問に基づく点からでございます。したがいまして、私どもといたしましては、従来から御説明をいたしておりますように、この特例試験は第三試験と全く同水準の試験をするという趣旨でおりますし、そのために法文もわざわざ第三次試験と同じ文句を用いておるわけでございます。  そこで、お尋ねの、これの受験資格でございますが、お話のように、計理士は、現在登録をいたしております者が約三千人ございます。そのうち、実際に計理士の仕事をしておられると推定される方が約二千人、登録だけをしておられる方が約千人かと思いますが、そのほかに、御指摘のような、登録を延期している者が約九百名あるわけでございます。  そこで、今回の計理士の特例試験を受ける資格の中に、実際に計理士の業務を行なっております約二千人の人以外に、登録をしておる千人、あるいは登録を延期している九百人を加えた理由でございますが、御承知のように、今回の制度は、計理士制度を三年間をもって全廃するという前提と申しますか、それとからまって問題でございます。したがいまして、この際特例試験を受ける資格は全体に与えたいという気持ちで、こういう資格要件にいたしたわけでございます。ただ、お話のように、実際に業務をいたしておりません登録延期者九百人等につきましては、その特例試験にあります経験年数のしんしゃく点というようなものは、実際に業務を行なっておりませんので、そういうしんしゃく点の特典はないわけでございます。
  93. 天田勝正

    ○天田勝正君 それはちょっとこまかいことになりますが、法律というものはこういうふうに書かなければならないものなんですかね。私も、どうもちょっとふしぎな気がするのだ、法律の専門家じゃありませんから。何もこの、計理士の資格を有する者と一ぺん書いてしまえば、すべてが含まれるのじゃないか。どうせ事実は含んでいるのだ。それをいま言ったように、一々、大蔵省に備える計理士名簿に登録を受けている計理士とか、及び何というようなことで、実際は全部含まれるのに、そういうことにしないと法律としては完備しない、こういうことですか。
  94. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お話のとうりでございます。実体的には計理士になる資格のある者全部に受験資格を与えようという趣旨でございますが、法文としては、法制局等とも相談いたしました結果、こういうような法文になったわけでございます。
  95. 天田勝正

    ○天田勝正君 その次に、要するに実力が落ちるか落ちないかという問題、これが第二条の改正と、こうなったのだろうと思うのです。それから、十条の筆記試験、口述試験、この方法を改めている。その改め方が、普通でいけば、旧高文の試験でもなんでも、筆記試験に合格した者でなければ口述試験は受けられない。これは普通の形ですね。ところが、今度はそうでなくて、必ずしも筆記試験に合格点を取らなくてもよろしい。しかし、まるきりできない者は困るという、その中間のところだろうと思うのです。それが、ここにいう「筆記試験において政令で定める基準以上の成績を得た者」、ここのところは修正者のほうに実はさっき聞きたかったのだけれども、帰られてしまったから、お答えを願いたいのですが、その政令で定めるというのは、百点満点というならば、どのあたりから上ならば一緒に口述試験を受けられるというのか。そうして、どうして普通の場合と違って、今度はこういうふうになったのか。そこのところを先ほども補足説明で言われておりましたがね、どうもちょっと理解ができないのですが、その点どうですか。
  96. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) ただいまの制度は、公認会計士の第三次試験について申し上げますと、いわゆる筆記試験だけになっておるわけでございます。そこで、この筆記試験の合格点というのは、百点満点で六十点ということになっております。それを今回は、筆記試験だけでは専門的な知識にしろ合理的に判断するにはどうも不十分であるということで、口述試験を加えたわけでございますが、これは最終的に決定しておるわけではございません。これから公認会計士審査会等でいろいろ正式に御相談を願うということになると思いますが、大体の方向といたしましては、口述試験によって合理的な審査を加えることになりますので、従来、筆記試験のときに百点満点で六十点を合格点といたしておりましたのを、大体、筆記試験は百点満点で五十点を合格点としようというような考え方でございます。そこで、筆記試験の点数が百点満点で五十点で合格をすれば、その後の四回の口述試験を受る権利と申しますか、特典を持つことにしようというのが、私どもの原案であったわけでございます。  それが、衆議院で三党共同の御提案で修正をされました趣旨は、なるほど筆記試験で五十点を取って、その後四回の試験にもう筆記試験を受けないで済むような特典を与えるというのは、その程度でいいかもしれないけれども、少なくとも一回の口述試験をもう少し広い範囲に受けさせたらいいのじゃないか。御趣旨は、やはり一般的な識見なりなんなり、口述試験で合理的に試験制度をやろうとする以上、なるべく大ぜいの者に口述試験を受けさすことが適当じゃないかという御趣旨から、ただいま申し上げました百点満点で五十点以上の者は、その後四回の特典を与えるけれども、大体四十点以上くらいの者は一回の口述試験は受けさせたらいいじゃないかという御趣旨での修正でございます。
  97. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうすると、ちょっと念を押しますが、資質を落とさないというのが、従来試験した方向と全く同じならどこにも疑惑はそこに生じないですね。今度少し違ったところに疑いが持たれる、こういうことになる。  そこで、これを私が整理して、それに違いないのかを答えてもらいたいのですが、従来は六十点で合格点であったから、今回も六十点取っておって、そして同時に口述試験を受ける。これは従来どおり。しかし、六十点以下四十点までの人、これは従来は合格者ではない。そこで、その場合の人たちは、あれですか、両方を含めて六十点になれば、今度は公認会計士試験を受ける資格を得られる。さきに例を引いた、今度もまず筆記試験に六十点取っておる、しかしこの六十点取っている人にはちっとも恩典はなくして、やはりその次の口述試験でも六十点を取らなければ、それは合格にならない、こういうふうになれば、そこでもう差ができてしまって、さきの総合で六十点取った人のほうが、初め六十点取り次の口述でも六十点とった者よりもさらに資質は低下と、こういうことになるわけですね。
  98. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 御説明申し上げます。現在の三次試験は、ただいま局長から御説明しましたように、筆記一本でやっておるわけであります。御承知のように、公認会計士となるための第三次試験は、会計実務の専門的な応用能力を判定するということが目的なんでございます。したがいまして、専門的な応用能力を判定する場合に、筆記一本でやるということに合理的な判定が欠くるうらみがあるわけでございます。  たとえば具体的な例を申し上げますと、会計監査なら会計監査の問題が二問出るわけでございますが、たとえば会計監査のうちの第一問は三十点ぐらいしか取れない、ところが第二問は同じ会計監査でありながら八十点とか九十点取るという者があるわけでございます。要するに、試験の範囲というのは、会計監査というのは非常に範囲が広いわけでございまして、その中から会計実務の問題が出るわけでございます。たまたま山が当たったといいますか、重点を置いて受験準備をやった方は、そのところが出ますと、非常に筆記試験はいい成績をとる。ところが、はたしてその筆記試験にいい成績をとった方がいわゆる専門的な応用能力において十分公認会計士としての適格性があるかどうかということについて、まあ若干問題があるという意味におきまして、今回口述試験を入れました。これは学科の口頭試問でございます。口頭試問を入れて、筆記と口頭、両方で能力を判定しようということにいたしたわけでございます。  したがって、口頭試問がやさしいということは毛頭ないわけでございます。むしろ口頭試問のほうがむずかしくなるという可能性もあるわけでございます。ただいま御質問がありましたように、過去において六十点筆記試験で取っておった者が口頭試問でかりに五十点しか取れなかった場合は、その人は両面から見ると能力において若干欠ける点があるということで、その人は落第になる。で、まあただいま局長が申しましたように、五十点以上の学科試験の成績をとっておれば、一応口頭試問を受け得る。しかも、学科試験は四回免除するということになっておりますが、これは結局五十点以上取っておって口頭試問で七十点取れば、平均点は六十点になるわけでございます。だから、口頭試問を入れましても、最終の合格者は全体で、筆記と両方合わせて六十点の平均点を取らなければ合格にならないわけであります。ただ、五十点以上の者は一応筆記試験については合格した者とみなして、今度は口頭試問においてさらに能力を判定しようじゃないかというところに、従来と違うところが出ているわけでございます。  いま申しましたように、筆記と口頭と両方合わせて初めて合理的な能力の判定ができるという見地から参りますと、受験者全員について口頭試問をやったらどうか、こういう議論になるわけであります。ただ、試験の技術的な問題がございまして、全員の口頭試問をやるということは技術的に困難であります。こういうことから、なるべく口頭試問の受験者数というものをふやす必要があるということで、五十点以上は筆記試験の合格になりますが、さらに十点下げまして、四十点以上の者については口験試問でもう一ぺん能力を判定するチャンスを与えてやる、こういうようなことでございます。したがいまして、六十点筆記試験で取っておれば、口頭試問で無条件に合格するということではないのでございまして、いわゆる口頭試問によってさらに本質的に能力があるかないかという判定をいたしまして、その上で合計点で六十点ということが合格点になるわけでございます。
  99. 天田勝正

    ○天田勝正君 この改正法の二条二項、三項というのが、何といっても会計士会の反対の一番大きなところへ関係するのです。それですから、しつこく聞くわけなんですけれども、総合点で六十点だ、そんなら合格だというなら、いままでの筆記試験が、筆記一本で六十点で合格なんですから、それでいいわけです。ところが、しょせんそれを含めて、やはり学術的な試験として口述試験をやるのだ、こうなれば、私の考えからすれば、そこを筆記試験について、何も五十点ということをしなくたっていいのじゃないかという、そこへどうしても疑問が出てくるのです。そこのところは一応六十点なら六十点ということにしておいて、そうして問題は六十点から四十点まで——いまの五十点じゃなくて四十点でしょう。四十点までをどうするかということで、そうしてそれが四十点であろうとも、同時に口述試験を受けた結果が総合で六十点だ、これならばもうそれは何もそれに越したことはないのですが、ところが、三項のところで、かりに筆記だけ受かった——受かったという意味は、六十点は取っていない、しかし四十点取っている、こういう意味の受かり方ですね。口述試験を受ける資格を取った、こういう受かり方をした者も、すてっぺんから六十点を取ってしまった者も、全く同じだというのは、どうも解せないのですね。解せない。六十点を取っているから、あと四回なり五回なりの筆記試験を免除する。これは四十点取っておっても筆記試験は免除する……。
  100. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 五十点以上……。
  101. 天田勝正

    ○天田勝正君 四十点ということは、私が想像しているだけかな。そういうお話を聞いたから、そういう先入観があるのですが。その点はっきり先に言ってください。
  102. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 申し上げますと、学科試験で五十点以上取った方は口頭試問を受けることができ、かつ、その後行なわれる四回の第三次試験において筆記試験を免除されるわけであります。四十点以上取った方は、当該試験において口頭試問を受けることはできるけれども、そこで落ちた場合には、その次の試験は筆記試験から始めるということになるわけであります。
  103. 天田勝正

    ○天田勝正君 それならわかる。それでは、その質問それでやめます。  それから、計理士制度を廃止するのですから、そこで、現に計理士を業としている者は何かの救済措置をとろうというのが、この改正第三点の税理士と、こういうことになってきたのだと思う。その税理士は、税理士法の十三条の税理士試験委員の認定を受ける、こういうことなんですが、それなら認定でもだめなことはあり得ますね、認定でやるのですから。これは認定の試験ですから、何か学科試験とかそういうことをしないのですか、するのですか。認定の方法はどうなんですか、大きくいって。
  104. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 過去におきまして税務代理士が税理士にかわりましたときに、税務代理士で計理士は、税理士の資格を持っておったわけであります。そのときにそれが、税務代理士が税理士制度に変わりましたときに、計理士であり、かつ税務代理士の資格を持っておった者は、認定によりまして税理士の資格を与えておる。昭和二十六年であったかと思いますが、そういうことの例があるわけでございます。  それにならいまして、今回はこういう規定を置いたわけでございますが、大体、主として計理士業務を営んでおる方につきましては、大体現在の税理士と同等の知識を持っておるであろうということから、主として計理士業務を営んでおる者に限って税理士の資格を与えることになります。ですから、形式上は税理士と同程度の知識を持っておることについて、試験理事会の認定を得た場合ということになっております。主として計理士業務を営んでおれば、そういう資格を持っておるというふうに、まあ理解をいたしておるわけであります。
  105. 天田勝正

    ○天田勝正君 この認定が、法十三条に規定する試験委員と、こういうことになっておりますから、それ以上あなた方が、ここまでは合格させますということは言いにくいんだろうと思うのですけれども、そうすると、現に計理士を営んでおるという者については、少なくともほとんどが救済される。そのまあ認定してもらえないのは、登録はしているけれども、業を営んでおらない、そういうような人は、結局落ちるんである、こういう認識ですか、
  106. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 先ほど局長が申し上げましたように、現在三千九百名の計理士資格を持つ者があるわけでありますが、そのうちで、計理士の営業をやっております者は大体二千名程度と推定をされます。したがいまして、今回の法律によって、税理士資格のない者に税理士資格を与えるというものの対象は、この二千名の中から選だれるということになります。まあ現在はっきり数字はわからないんでございますが、現在の営業しております計理士は、ほとんどが税理士資格を持っております。現実にこの条項によって税理士資格を与えられる人数は、きわめて少ない人数になろうかと考えます。
  107. 天田勝正

    ○天田勝正君 それは、この税理士の資格をほとんど持っておるというのは、数においてちゃんと、いまの資料でなくても、大蔵省にはわかっているのですか。どうなんです。
  108. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 現に営業しておる者の中で税理士資格を持っていない者の正確な数字はわからないわけでございます。わかりませんや、計理士会の報告によりますと、大体数十名程度であろうと言われております。
  109. 天田勝正

    ○天田勝正君 今度の特例試験をやって資質を下げないということには、やっぱり試験委員がきわめて重大な役割りを果たすと思うのですね、それには他の者がとやこうのくちばしをいれられないのですから。そこで、その試験委員というものは、どういう資格というか、どういう人方を選ぶか、予定があります。
  110. 塚本孝次郎

    説明員塚本孝次郎君) 特例法の第九条に、試験委員の規定がございます。「公認会計士審査会に、公認会計士特例試験の問題の作成及び採点を行なわせるため、臨時に、試験委員七人以内を置く。」どういう人を選ぶかは、第二項にございます。「試験委員は、公認会計士特例試験を行なうについて必要な学識経験を有する者のうちから、試験の執行ごとに、公認会計士審査会の推薦に基づき、大蔵大臣が任命」する、こうなっておるわけであります。  具体的にどういう人間が試験委員になるかは、現在まだもちろんきまっておりませんが、現在の三次試験の試験委員は、三次試験の性格そのものが会計実務の試験であるということになっております。今回の特例試験も、商法を除いては会計実務の試験であるということは、全く同様でございます。現在の三次試験の試験委員は七名ございまして、七名のうち五名が公認会計士、あとの二名が会社の重役等で会計実務について十分の知識と経験を持っていらっしゃる方、こういう構成を示しておるわけです。特例試験の試験委員がどういう構成になるかということは、いまはっきり申し上げられませんが、試験の性格からいいまして、これに近いような構成をとるのではないかというふうに予想いたしております。
  111. 天田勝正

    ○天田勝正君 法律には資格が入っているけれども、あまりにばく然であり、かつ、広い範囲になるので、それで、さてそういうワクの中に入る人というのはあまりに多過ぎるものだから、かなり狭めて実は説明をお聞きしたいと思ったのです。しかし、あるいは言えないかもしれない。ただ、資質の低下があってはならないから、やはり、ことばは悪いですが、あまり利益代表者的な人では、どうも公正な試験ができてないのではないか。  というのは、おそらく局長も課長も知っておられると思いますが、たぶんもう八、九年前になりますか、これも名前をあげて例を引くというのはどうかと思いますけれども、三宅君が衆議院議員であった時分に、妙な試験のことを発明したと思うのです。私に言わせると。要するに、陪審試験とか、パネル・イグザミネーションというものをつくって、言うならば、自分の仲間で、試験というけれども、認定でやることにしょう、こういう試みをやって本院に持ってきたことがある。そのときに、一体陪という文字は、陪審とか、陪席とか、陪食とか、そういうことばに日本語として使うのであって、字そのものが、はた者ということを意味するんだ。ところが、君が持ってきた案というものは、はた者じゃなくて、自分の仲間でよろしくやろうというのであって、そんなものは陪審試験の名に値しない。これで大いに困って引っこんだことがあるのです。実際。  ですから、何か今度資質を低下しないといって、さっき示された法律規定の資格はあるけれども、やはり今度試験を受ける人方にあまりに密接な人は除くということが、公正を期する私はゆえんだと思う。ですから、さっきのお答えもありますけれども、そうばくたるものではなくて、少なくともそういうものは入れないのだ、こういう答えをいただいておきませんと、ちょっと困ると思うのです。いかがですか。
  112. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) お答え申し上げます。公認会計士の特例試験が、御承知のように、それによって資質の水準を下げるということがあってはならないことはお説のとおりでございます。したがって、公認会計士特例試験の目的等につきましても、現在の第三次試験と同じ文句を使って書いたわけです。第三次試験試験委員と同じように、公認会計士審査会が試験委員の推薦をすることになるわけでございますが、法文に同じように書いてあり、われわれとしても同水準の試験を期待しておるということは、公認会計士審査会としては十分御承知でございます。今後この特例試験の試験委員の推薦については、公認会計士審査会としては、第三次試験の試験委員と同じような方を御推薦になると期待をしております。その試験委員を同じようなものであるといたしますと、先ほど財務課長から御説明いたしましたように、かなりの部分の方が公認会計士の資格を持っておられる方であります。したがって、先生の御指摘のように、これを受けるほうの側の計理士というより、むしろ受け入れる側のほうの公認会計士の代表的な方が相当入られるということから、試験の水準を下げるような心配はまずなかろうと考えておるわけであります。
  113. 天田勝正

    ○天田勝正君 この問題は一応やめまして、大臣が見えられましたし、また忙しい身でありますから、早く帰っていかなければならぬと思います。そこで、先ほど委員長に申し上げておきました点を、わずか一点か二点でよろしいですから、聞いておきたいと思います。
  114. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと待ってください。議題を変えますから。  本案に対する質疑は、本日のところこの程度にとどめておきます。   —————————————
  115. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。  午前に引き続き、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  116. 天田勝正

    ○天田勝正君 先ほど、この国民金融公庫法の改正に関連いたしまして、それとまあ同趣旨といってもよろしい農地報償、こういう問題が議せられまして、まあこれにつきましては本来他の委員会において総務長官によって答弁をされるのがしかるべきことでありますが、非常に重要な点で、関連した点を大臣に伺っておきたいと思います。  それは、まあ従来農地補償といっておりましたものが報償というぐあいに切り変わり、かつ、それが内閣で決定されたと、こういう発表が行なわれてから後の新聞投書等であります。それによりますと、大臣も御存じでありましょうが、別に革新的とかそういう人方でなしに、違った意味の反対論が実は出ておる。それは私もすでに二、三回は少なくとも見ております。三回でありますか。まあ要するところは、同種の戦争犠牲者がたくさんいるではないか、ことに在外資産の問題を一体どうするのか、報償ということならばそれらも同時に解決するべきではないか、ことさらに解放農地の問題だけを相手にし、その旧地主だけを対象にするのはまず承服できない、意味するところは大体そういうようなことなんですね。  で、私もその点は、平和条約等によりましてそれぞれ在外資産等は権利を放棄した、こういうことになって、諸外国の例からすれば、それは国のために放棄して、いわば賠償見返りとでもいいますか、そういうような形でこれが処理されたのでありますから、そこで、そういうものについては何がしかの国が補償をする、こういうことがしかるべきじゃないかと考えられます。  さらには、もうこれも農地と同じことで、済んだといえば済んだことになっております占領地域における貯金あるいは保険、これも大臣よく御存じのことですから、時間の都合上そう詳しく説明はいたしません。ことにこのうち千分の一になったりなんかしているのがあるんですけれども、これがインフレが著しく高進したというのが——私はここへ資料持ってきていませんけれども、部屋にありますが、急速なるインフレになったというのが、終戦の年の実は六月の末から七月あたりから急速におそろしい勢いでインフレになり、かつは貨幣価値が下がった、こういう統計になっておる。そこで、それよりも二十年も前に貯金したのは、非常に貨幣価値が高かったときに貯金したのに、それが千分の一と、こういうようなことになっております。  そういうことで、報償ということになれば、おそらくこういうものもどうしても問題にせざるを得なくなってくるんではないか。こういうことが今度の報償問題を閣議で御決定になる際に必ず私は議論されたはずだと思うんです。そこで議論されたならばされたで、一体そういう方面の措置をどういうふうになされる予定であるのか、予定とまでいかなければいかないで、どんな処理をする方向にあるとか、そういうような面をこの際ひとつ伺っておきたいということなんです。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 在外資産の問題につきましては、御承知のとおり、内閣に審議会をつくりまして、各国の例とかいろんな問題をいまこれから調べるということになっておるわけでございます。しかし、引き揚げ者につきましては、五百億の引き上げ者に対する処置をいたしておりますので、政府考え方としては、一応済んでいるという考え方でございます。  それから、農地報償の問題といろいろな戦争中の問題とを一緒にして議論がされておりますが、政府が今度農地報償というものに踏み切りました直接の問題として考えましたのは、農地報償は、農地の問題は、戦争による、敗戦によるものということよりも、戦後の社会革命といいますか、再建日本のためにとられた一つの激しい政策であったということであります。もう一つは、どこの国の例から見ましても、農地の解放ということが行なわれたことによって、行なうということが一番大きな政治問題であり、この問題が円満裏に行なわれたということが今日の日本の経済復興の基盤をなしたという考え方、それからもう一つは、先ほども申しましたとおり、この農地解放が自作農創設という目的を持っておったわけでありますが、農地以外に転用せられる場合には当然解放した人が先取り——先買いといいますか、そういう法律上の問題があればまあこのような問題が起きなかったわけでありますが、その後法律が改正になったりして農地以外のものに転用されているというような問題で、いま社会的な問題となったわけでございます。  そういう意味で政府はまあ報償に踏み切ったわけでございまして、この問題を審議をしますときに、あなたがいま御指摘になりましたようないろいろな戦争に付随して起こった事態をすべて解決をするというような考え方で、この問題に踏み切ったわけではないわけであります。まあこの問題が起こってきました過程において、御承知のとおり、まだ、農地以外に転用したものに対して、別に売買利得に対して税金をかけるというような法律を出そうとか、それから、現に政府がまだ国有地として持っております農地解放当時の土地等を財源として、農地被買収者に対して補償措置を行なわせるというような議員立法を行なうというような状態であったことは御承知のとおりでございます。政府は、そういう事態に対処しまして、せっかくこれだけの大きな効果をあげております農地問題に対して、国民の間に相争うような状態が起きることは好ましいことではないわけでありますので、農地被買収者問題に対して何らかの処置をしなければならぬということで、鋭意調査も行ない、ようやくこの国会に、本問題に対する最終的な処理として、農地報償法案なるものを提出をいたしたいということになったわけでありまして、これを機会に終戦処理ともいうべき問題は何らかの形で片づけなければならぬというような意見も実は承知いたしておりますが、こういう問題をすべて解決をするということになりますと、国家財政の立場からいってもたいへんな問題でございまして、現在の状態において政府が農地報償以外のものに対してこの種のものをやろうという考え方は立っておらないわけであります。
  118. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ何せ音に聞こえた勘のいい大蔵大臣でありますから、なかなか答弁うまいのですがね。しかし、農地報償問題の経過というのは、たまたま解放を始めたのが終局は二十二年になっちゃった。それは時点は二十年の十二月幾日か、そういうことなんだけれども、しかし、やったのは二十二年だ。こういうところからおっしゃるような理屈も出てくるんです。ところが、われわれのところにも旧地主団体からずいぶん陳情が参りまして、それを見ると、一致して、われわれは戦争犠牲者なりと、そこから出発したんですよ。戦争犠牲者なるがゆえにその犠牲者に対して何とかせい、とうとうそれが最高裁の判定だとかなんとかというようなことで、うまくいかない、こういうようなことから、報償、こういうふうに変わってきたのでございますから、そういう意味の報償ならば、やはり一面においては、さっき申し上げた在外財産の問題も、それの補償ということでなくて、やはり報償という形で、権利の平等という面からすれば考慮しなければならない。これが一つで、その点はいまの御答弁で、内閣で研究されておるというのですから、それはそれで、この際は本来の国民金融公庫法の問題ではありまんから、私はそのまま了承しておきたいと思う。  ただ、よくこの委員会で本議論をしましたのは、生命保険とか貯金とか、そういうものについては、千分の一くらいに、場所によりますけれども、切り捨てられておる。このうちのインフレになってからの金ならば、それは貨幣価値が下がっておるのだから、国内円とはおよそ差があるのだ、こういう論理が成り立つのですね。ところが、生命保険にしても定期預金のごときものも、うんとむしろ、貨幣を使った場合に、日本国内で物を買えば安く買えた。安く買えたというのは、それだけ貨幣価値が高かったわけなんです。高かった当時に貯金したり保険にかけて、それを次々切りかえをしてきたというようなものは、まるで性質が違うじゃないかということを私は議論してきたのです。インフレになってから、じゃ国内のものだってそのお金を持っていたものはインフレのあおりを食ったんだと、こういう論理が成り立つのですけれども、しかし、それと事情がまるで違うので、こっちならばそれを物に変えるということの自由もあった。これこそ今度新円封鎖になったのは戦争が終わってからなんであって、ところがそういう自由があるものと、外地にあって自由のないもの、ほかにやろうたってどうしようもないまま、かけてあればかけっぱなしにしておくよりほかしかたがなかったもののうち、貨幣価値の高かりしときにどういう方法かで貯蓄した、そういうものは別途に考えるべきじゃないかということがやっぱり起こってくると思うのです。  だから、それを全部弁償するという形でなく、今回の農地方式のごとくに、それは百万円か百五十万円で頭打ちというのがあるのでしょう。そういう頭打ちがあっても、何かの処置を講ずるというようにきっと落ちつくべきものだと、こう思うのですよ。そういうふうに理解していただいて、それならば政府のほうじゃそういう問題をどうなさるかということになると思うのですが、いかがですか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう問題も承知をいた、しておりますが、そういうものはなかなかむずかしいことでございまして、政府としては統一的な見解で、戦前の貯金が非常に戦後少なくなった、それをまた新円封鎖をしたとか、外地におって年金にかかっておったものが、その後の、当時一万円でもらえる年金というものが今日の一万円とは一体どういうことだという問題がございますが、郵政当局等も一貫しまして、これらの問題に対して交渉を行なうということはできません、こういうことを言っておるわけであります。私のところへも陳情が来ております。十万円というもののすべての財産を預金にしておきましたものが、全部何分の一、実際の価額からいうと何百分の一になっておるので、何とかできないかというような陳情も来ておりますけれども、こういう問題はなかなかむずかしいことは御承知のとおりでございますし、法律のたてまえ上、物価が下がった場合、物価が上がった場合、特に戦争直後のようにインフレが非常に高進した場合、また特に戦後法律で新円の封鎖というようなことがございましたこと、また保険料で昔十万円の保険料をかけておったものがいまの金額でも何百分の一になるにもかかわらず、保険は全部切り捨てになってしまったというような悲惨ともいうべき問題が存在することは、私自身もみずからの体験で十分承知をいたしておるわけであります。なお、軍やその他と契約しておったものが、契約金は全部打ち切りになり、打ち切りどころではなく、一ぺん払ったものも返納を命じられたということがありますし、海軍やなにかに徴用せられておった船は戦時補償打ち切りということの海運界の状況であります。いろいろな問題がございますが、こういう問題に対して補償問題が起きることは非常に困るし、また法律上も国はこれを補償できるというような状態にはないということを統一見解として出しておるわけであります。  あなたがそういうことを言っておるのは、農地報償など出さなければそこに線を引けるかもしらぬ、農地報償というものを新たに出して来た場合に、一体そこに線を引けるのかという御質問のようであります。農地報償問題を取り上げる場合につきましても、今までの問題を確認をする、これだけはひとつ別にという考え方で御審議をいただくというようなことになったわけであります。
  120. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは問題本来じゃありませんので、あまりその問題で時間を費やすつもりも私はないのです。直接関連することは、金融公庫法の別ワクみたいな形で、形は二十億円操作するという形ですけれども、言うならば別ワク融資、こういうことなんですよ。それと、一方やがて出るときまっておる農地報償、こういうことになってきているから、そこで少し事柄を離れたようなことにもなっていくんですけれども、どうも私は、どう考えても……。  あなたといまこの問題を本来じゃないから議論して片づけようと思わないのですよ。思わないけれども、農地のほうだけは報償というふうに、補償からだんだん変えてきて何か処置をする。それで、ほかのことがまあ別に起こらない。起こらないったって、内閣で取り上げないとなれば、起こったって起こらないにひとしいことになるかもしれないけれども、起こらないではいない、これだけはね、何としても。起こらないといったって、押えること自体のほうが無理だから、そこのところにやっぱり起こらないだけのロジックを出しませんと、どうもおかしいじゃないか。  で、片方は報償もきまっておる。そうしてこれは本来からすれば、国民金融公庫のほうでいいますと、ここにもちゃんと調べがありますけれども、普通貸し付けとか恩給担保貸し付けとか、特別、普通、小口、遺族国債担保、引き揚げ者更生資金、その他いろいろのワク融資があるんです。それで、この普通貸し付けのほうでそういう困っておる人には地主といわず何といわず融資される、一般銀行から信用してもらえないという者がもう融資される道があるんですね。そのほかにここに特別のワクを設定する、そうなると、どうなんです。いま私があげたような例の場合、それじゃとにかく貨幣価値の下落分だけどうしろということの要求は引っ込めましょう。しかし、別ワク融資を私のほうへも設定してください、こういうささやかなる願いをされたときには、これまで拒否できなくなると思うんですよ。だから、そこで片方は来ないもの、これは現に衆議院からもう上がってきているもの、ですから、国民金融公庫法自体をいま論議すべきでありましょうけれども、どうしてもそういうものが起きてくることは間違いないんだから、そういう面からの何ですね、焼かれてしまった人、それはそれで別ワク融資しよう。引き揚げ者は引き揚げ者で若干のことをやっていますが、もともとあのために国民金融公庫法というものをつくったんです。そういう経過を経て、それじゃほかの金融機関でも、政府関係金融機関でそういうときには別ワク融資をつくりますか、いかがでしょう。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 別ワク融資をつくるかということでございますが、これは時代の要請がございまして、どうしてもつくらなければならないというような事態になれば、これはまた御相談を申し上げる、こういうことでございます。  ただ、これは率直に申し上げておきますと、このような法律をなぜ出したかと、こういうことをひとつよく御理解いただきたいと思います。御承知のとおり、農地被買収者に二十億の資金を貸し付けるワクをつくることは、これは法律を出さなくても現在の業務方法審でできるわけであります。なぜそれを法律を出して、しかも三十七年、三十八年、三十九年と、こう国会に御迷惑をかけるような、非常に審議の上でもむずかしく、われわれもなかなかたいへんな法律を出したかということは、政府の姿勢であります。これは農地報償という問題があったときに——これは農地報償とは直接の関係はございませんが、現在の業務方法律だけでできるからというようなことでなすべきではない。もちろんそういうことをやることによって他の一般貸し付けのワクが減ったりそういうことをしてはならないので、非常にイバラの道であっても国会で御審議をいただいて、国会で十分ただしていただいて堂々とひとつ法律をもってこの農地被買収者に対して他の機関から借りることのできない人たち融資を行なおうということにいたしたわけであります。  それは政府から二十億の金を出します。そうしてその二十億を限度として貸し出します。でありますから、ほかに一般に貸し付けるワクに手をつけたり、この農地被買収者に二十億のワクをつくってやることによって他に御迷惑はかけませんという姿勢を明らかにするために、この法律案をここに御審議をいただいておるわけであります。でありますから、三十七年度なら三十七年度に政府から黙って金を出資しまして、そうして業務方法書によって二十億は被買収者を対象にして貸し付けました、これは違法ではございません、こういう押しつけがましいやり方をやらなかったわけでございます。十分御論議をしていただいて、やはり二十億程度ワクをつくってやることが戦後のたいへんな革命的とも呼ばれた農地開放に対するやはり一つの行政的な救済だ、こういうような考え方をひとつ理解をしていただくということで、あえて国民金融公庫法の一部改正法律案としてお出しをしておるわけでありますので、この間の政府の姿勢の正しさということはひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  122. 天田勝正

    ○天田勝正君 これもどうも、質疑ですから、なるべく議論になることを避けたいのだけれども、大臣のほうから何か大いに正しさを主張されて論議を吹っかけられたようなかっこうになって困りますが、そうはおっしゃるけれども、他の人から見ましたときにどう映るか。これは正直のところ、旧地主さんだけには報償の道をここに開いた、その上に別ワク融資もここに開いたのだ、こういうことにしか映りませんよ、大臣。  やっぱり、だから、われわれは、さっきもお聞きしたのですが、同種と言ったっても、全部同種ではないでしょうが、いずれにしても、戦争犠牲的なものがあれば、そちらへも……。だから、そこを私は逃げ道式に実は親切に聞いているのです。この国民金融公庫について別ワク融資ということをお考えにならないまでも、他の政府金融機関において何かいまこれこれについて別ワク融資をやりますとか、これを予定していますとか、そのことはちょっといまきまっていないでしょうから言いがたいであろう。しかし、そういう要求が出た場合には、率直な要求は、さっき申し上げたように、われわれのほうへも報償してくれ、こう言うのにきまっているのです。しかし、ささやかな願いとして、しからば、せめても私のほうへも別ワク融資をしてください、こういう要求が出てこないなぞと想像するほうがおかしいのであって、想像で出てくると思えば、やっぱり政府側としても、別の金融機関であっても、この公庫でも何かの措置はとるのだ、こういうふうにならないと、それは世間の見る目は、あなたのおっしゃるように姿勢が正しいと、とてもほめるだろうなんという問題ではありませんよ。だれが考えてもそうでしょう。報償は片っ方はする、別ワク融資もするといえば、片っ方はないとしか映らないのだから、これはどうでしょうかな。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま御指摘のような気持ちでおるわけであります。でありますから、国民金融公庫の一般貸し付けのほかに、遺族が出ましたから、遺族国債が出ましたときには、遺族にひとつ貸し付けのワクをつくろう。引き揚げ者に国債をやった場合には、引き揚げ者国債担保の貸し付けをやりましょう。それから、恩給が今度できましたから、恩給担保貸し付けもいたしましょう。それから、更生資金貸し付けもいたしましょう。それから、更生資金の再貸し付けもいたしましょう。こういうことでだんだんと参りまして、この八月から例の未亡人交付公債をやりましたので、未亡人のひとつワクもつくりましょう。こういうことで、未亡人の前にひとつ被買収者にも二十億を限ってワクをつくろうと思いますので、しかもこの金は一般会計から出資をいたします、こういうことでお願いしたわけであります。  これからもこの種のものが出てくれば、いま御指摘がございましたように、やはり国民金融公庫でやるか、中小企業金融公庫でやりますか、また別のものをつくりますかは別にいたしまして、いま何らかの資金の許す限りにおいて、やはりそういう特に国家のために犠牲になられた方々に対しては特別手厚い配慮をするということは、そのとおりだと考えております。
  124. 天田勝正

    ○天田勝正君 大臣は何としても、私らの知っておる限りでも、三年間ぐらいは毎日大蔵省に行って研さんを積まれた、そういうときでありますが、国民金融公庫法がどだいできたのは。いまあなた、非常にパーセントが低くなっておりますけれども、この初めは、本院における引揚特別委員会でかかる処置をとるべきであるという、こういうことになりまして、実は概略の案を、妙なことには大蔵委員会でつくったのでなしに、引揚特別委員会でつくった。で、衆議院のほうの引揚特別委員会と相談をして、相談した場所まで私は知っていますが、そういうことから、しかし事柄は大蔵委員会であるというので、両者協議をして大蔵委員会に出した、こういう経過なんです。大臣も古いから御存じだと思うのです。  そこで、そのときの要請は、何といっても日本では引き揚げさせるということが、これはたいへんな、当時の一番の大仕事といっていいくらいですね。何しろ同胞が外国におるのですから。そういうことで、そのときの比重は、いまでいえばおそろしく落ちている引き揚げ者関係融資、こういうものがおそろしく高くて、しかも生業資金についてはたしか三万円だと記憶しますが、これはほとんど無条件で貸す、あと五万円ずつで、しかもそれが連名になれば、当時は五十万円だと私は記憶しております。それがだんだん上がって二百万円くらいまで借りられて、ふろ屋くらいはできる、こういう経過をとってきた。だから、そのときに一番困っておられるここへ重点を置いて、政府資金を他からは流れざる道へ流してやる、ここに政府金融の大きな意義があると思う。だから、今日になれば、それから十七年もたっちゃったんですから、引き揚げ者のほうが低くなっても、私はこれはしかるべきだと思う。だけれども、それを考えるときには、当時の引き揚げ問題といまの地主さんの問題とは、失礼ながらそんなにウェートが私はどうも高いとどうしても考えられない。  で、報償をやったり、この特別ワク融資もやったりと、これじゃどうも正直いってへんぱじゃないかという、どうしても主張になるのですがね。これは答えられるかどうか知らない。私の感じだから、ほかの人はむしろもっとやれという主張者もあるだろうけれども、これはむしろこれをやるのなら——大臣に要求すべきじゃない、ほかの大臣が出すのですから困っちゃうのですけれども、報償のほうは当分やめたと、これをひとつやるのだと。両方出すというのじゃ、何か大蔵当局としてもあれがあるのですか、つなぎ的にこれをやらなければならないのだというその目的でもあるのですか。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは御承知のとおり、農地報償というのをやろうときめられましたのは、この間のことで、この公庫法が出ましたのは三十七年から七、八、九年と、こうお願いをしておるわけでございます。しかし、その農地報償の法律案を出さなければならないという事態になりました今日でも、やはりこの法律案を提案御審議を願いました三十七年当時と比べまして、一体農地報償ができるならばこれだけのことはやらぬでいいのかと考えたときに、やっぱりこれくらいのことは、農地被買収者の皆さんで特に他から生業資金を借りられないという人が現にあるのでありまして、私はそういう意味でこの貸し付けの道はやはり開いてやるべきだろうという考えでございます。  それは農地報償とこの問題とは全然区別をしてわれわれは考えておるわけでございますが、しかし、農地報償法案をもし御審議をいただくといたしましても、公布後二カ年の間に権利を確定することになりますが、その場合にも、国から農地の売り渡しを受けた者等については、国に買収をされた面積と売り渡しを受けた面積との差し引き計算を行ない権利を確定することになります。こういうことでありますから、とにかくちょっとの間に合うようなものでもございません。こういうような事実を十分考えますときに、われわれが三十七年から今日までまる二カ年間、農地被買収者で生業資金に困っておられる方が何とかこれを通してくれ、また通らなかったらどこからでもいいから金をひとつ出せるようにしてくれというような事態を十分直視をいたしますと、やはり国会ですみやかに通過をしていただく。少なくとも三十九年度にこの二十億の貸し出しワクをつくるということが、やはり戦後の大きな問題を解決をした農地被買収者の特に困っておられる方々、引き揚げ者と同じような状態で現に生業資金にもお困りになっておるというような方々のために、こういう措置をとることはやはり必要だという考えに立ったわけであります。
  126. 天田勝正

    ○天田勝正君 当てもなくあるのだけれども、これ平行線だな、委員長
  127. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記やめてください。   〔速記中止〕
  128. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記始めてください。
  129. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 それでは、はんぱな時間ですけれども、ちょっとお尋ねいたします。先ほど大臣から、いわゆる農地報償をされる理由として、農地改革そのものがたいへん日本の再建のために役立ったと、そういう意味合いでも、当時の農地を放した事実に対して何らかの報償をすべきでないか。いま一つは、戦後の農地政策といいますか、そういうものに欠点があって、農地を手放した、地主が農地を売った、小作がこれを買い受けた、その小作がいわゆる高い値段で農地を宅地に転用して売り飛ばした、そのために地主のほうからするとえらいもうけを小作人がしておる。ところが、地主のほうは非常に気の毒なこともある。言うなれば非常に戦後の農地政策にへんぱな点があった、そういうことから、いわゆる先取特権でも認めておけばよかったじゃないか、こういうような意味のお話があったのであります。私はその点については同感なんです。  そこで、お尋ねしたいのですけれども、この農地の報償の問題といいますか、補償でもいいし報償でもよろしゅうございますが、とにかく今日までこの問題が地主の人たちから出されてから十年、あるいは十年以上でございますか、なっておるわけです、何とかしてくれろというのが。私は、そういう問題が、もう十年もたっておるのですから、その間に、いわゆる農地の転売等につきまして、地主が放した農地の転売等につきまして規制をする措置をなぜ講じなかったのか。あるいは、講じたのか講じないのか。あるいは、その農地を売ってもよろしいけれども、その場合にはやりは国へ返せとか、国で買い戻すとか、そういうようなことを考えたのか考えなかったのか。あるいは、そういう農地を転売する場合には譲渡所得をよけいかけるとか、いろいろのことが考えられるわけなんです。十年あるいは十数年も懸案の問題なんですから、もうそういう問題が起きたときに、それに対する一つの、政府全体として政策というものが考えられてしかるべきじゃなかったか。  私は寡聞にして、最近国会に出て来た者でございますから、その間の事情を明らかにいたしませんが、大臣は自民党の政調会長もやっておられた、そういうような意味合いから、自民党として、あるいは政府として——まあ自民党としてというのはこの場合は適当でないと思いますが、政府として、そういうことをいままで考えられたことがあるのかないのか。考えたけれども、それは実施はむずかしかったのか。そういう経過を、できるだけ詳しく時間がある限り承りたい、こう思います。
  130. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地報償問題がなぜ起きたかという原因については、いま御指摘がありましたが、大体そういうことであります。  もう一つさかのぼりますと、なぜかといいますと、農地解放ということが必要だと。これは御承知のメモランダム・ケースのものでございますが、ただこのときに、ほとんど追放と同じような状態で、末端では相当強く手きびしくやられたというところに相当な問題があります。これは、一つには、不在地主というものの定義の中で、学校の先生は出生地の学校には勤務しないという公平の原則で、隣村におった。こういう隣村におる学校の先生でも不在地主である。それから、このうちの五反歩未満の被買収者が五割二分存在するのですが、この中の大半は、戦争に行っておる、復員前であるということで、不在地主である。こういう事実が非常にたくさんあるという事実を見のがすわけにはいかぬわけであります。でありますから、当然自作農としてそういう人たちが農村の中核となるべきであったにもかかわらず、わずか復員がおくれたとか、また隣接地に勤務をしておったというようなものが、すべて不在地主として処断をされたということ。  もう一つ、中にいろいろ裁判などを行なっておる問題がございますのは、農業用の施設ということで住宅まで解放したというような、いろいろ、あの混乱時でございますから、私もむべなるかなとも思いますし、まあそうあったろうと思いますが、そういう事実がたくさんあります。  そういう中に農地解放というものが行なわれまして、あの当時の第一次農地解放、第二次農地解放、第三次農地解放——二十四年、二十五年、六年の選挙などには、第三次の農地解放まで、いわゆる山林解放を行なうということが背景になって争われたというくらいに、いろいろな問題があったことは事実であります。自作農創設というときに、あなたがいま御指摘になったように、これを他に転用する場合には政府にこれを返さなければならぬというか、それから解放した人に先取特権を規定するか、もしくは売買をした場合には税金を取る、特別な税を取る、こういうことを当然しておくべきでありました。まあこの問題は相当あったのです。  特に、本問題の処理が長引きますと、急いで売ってしまう、こういうことになるので、いろいろな問題がありましたが、当時農地法の関係もございまして、なかなか、農地法にも及ぶと困るのでというようなことで、なかなか踏み切れないできたわけであります。でありますから、ついには議員提案かなにかで、議員提案でもって、売買利得をひとつ徴収しようという法律案を出そうという動きがございました。しかし、そのときに、もうその法律が通る以前に一体遡及できるかどうか。これはなかなか遡及できません。  こういうぐあいに、ぐずぐずしているうちに、じんぜん日をむなしゅうしてしまって、逆に、二十九年までには農地以外のものに売ってはならないということだったんですが、二十九年には法律を改正しまして、他に転売してよろしい、こういう全く逆な法律改正が行なわれましてから、非常に強く農地被買収者の憤激を買ったことは御承知のとおりでございます。  そういうようないろいろな問題がありましたので、ようやく農地報償というものに踏み切ったわけでございますが、私がいま申し述べたような事実、その事実だけを見て踏み切ったわけではありません。私は、ここで率直に申し上げますと、これを政府が解決をしないで置いた場合どういう問題が起きるか。これは当然、いま政府が持っているものを——政府が、自作農として使っておらないそういうものを、まあ昔は田畑にならない谷地であったとか、荒蕪地に近いとか、そういうものが、いま都市の発達によりまして、そういうものが残っておったものが非常に高くなる、こういうものをもとの人に返しなさい。これは自作農創設法に基づいて、政府が使っておらないものを返せという場合に、これに対抗できる議論というものはなかなか少ない。  もう一つは、自分たちから、三百円から七百円、最高九百円で解放を受けた者が、これを他に売買をしたために、非常に高い利得を得ている。その利得を何とかして取り戻そうという動きが起きている、これはやはり社会的にも、政治の上から見ましても、かかる状態を看過するわけにはいかないわけであります。  そういう、やはり高い立場から見ますと、国民全体の感情とか、国民全体の姿を見ておりますときには、やはり政府が持っているものを財源としてこれを払い下げるというのが、その払い下げを受ける人はいいんですが、大多数の人は受けられないということになりますし、これから売買を禁止するといってもまた、利得税をかけるといっても、いままでにもうやった人との非常に不公平が起きる。この問題は何ぴとかがどこかで解決をしなければならないということを考えるときには、歴史的に大きな、大問題を解決をし、その犠牲になった人に、国民の中に争いを起こしてはいかぬ。何らかの立場で、このいがみ合いとか、こういうことが起こり得る可能性のあるものに対しては、政府の責任で処置をする、こういう考え方が、この農地報償をやった大前提になったというのが事実でございます。
  131. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 いろいろお話承って、私も同感なんですが、時間がございませんので、感想だけを申し上げたいと思います。  農地を転売することを規制する、何らかの意味合いで規制して、できるならば国がまた買い取るというようなことをしておったならば、現在、高速自動車道路にいたしましても、鉄道にいたしましても、ああいう敷地が非常な補償料を取ってですね、取られなければできないというようなことは相当緩和されたのじゃないか。また、その当時の地主というものも、そういうものに提供されるならば、これは非常によかったのじゃないか。それができなかったことは、はなはだ遺憾であるというふうに思います。  しかし、現実になりますれば、大蔵大臣の言われるとおり、ほんとうに国民の間で、多くの地主の方々の不平というものがあるのだし、不満があるんです。その不平不満には、私どもが常識上、謙虚に考えても、もっともな理由がございますので、こういう問題について積極的に取り組んでいただきたい、このことを要望いたしまして、本日は私の質問を終わります。   —————————————
  132. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) この際、おはかりいたします。  参考人出席要求についてでありますが、国民金融公庫法の一部を改正する法律案審議のため、同金庫の役職員を参考人として出席を求めることとし、出席を求める日時、人選等につきましては、それを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  134. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会は、明二十三日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会    ————————