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木村禧八郎君 先ほどの御
答弁で、
保険の
経営をやる場合に、まだ
契約者のほうでそんなに
契約に不安を感じていないと、いままで
程度の
物価騰貴、つまり
通貨の
対内価値の
減価によってそんなに不安を感じていないので、
保険契約も順調にいっているから
心配ないのだ、また差しつかえないのだというような御
答弁があったわけですね。
しかし、それは
保険経営の
立場からそれで
心配ないという立論であって、被
保険者から言った場合に、これは問題があるのですよ。われわれはそういう
保険契約者を保護する
立場でやはり問題を見なければならぬわけであって、全然
保険経営者の
立場をわれわれ無視するわけじゃないのですが、現時点では
資本主義の
経済のもとですから、
保険経営者の
立場も全然無視してはおりませんけれ
ども、一%とか二%
程度の
物価値上がりなら、そう問題にならないでしょう。
物価値上がりか
経済成長か、どっちを選ぶかという場合に、そんなに実害がない場合は、
成長を犠牲にしてまでも無理に
貨幣価値の安定をはからなければならぬということは言えないと思うのです。その点はわれわれもそんなに
がんこには
考えておりません。それは
一つの
考え方として、ある
程度の、多少の
物価の
値上がりはあっても、
経済成長が順調にいく場合には、
物価値上がりを必ずしも否定するわけじゃありません。しかし、
物価が上がった場合、
所得の再
分配に及ぼす
影響というものを
考えなければならぬわけですよ。その
手当ては、やはりわれわれはしなければいけないという
意見です。そのまま放任していいというわけじゃないのですね、あるいは賃金なりその他の、低
所得層に対して損を与えるのでありますから。
ことに、
昭和三十六年以後を私は問題にしているのです。これは異常な
消費者物価の
値上がりといわれているんです。今後、じゃ、
物価は安定するかというと、私は安定しないと思うんです。三十九年は
政府が、
国鉄運賃その他の
料金類を一ヵ年間
ストップさせる、その他の
物価抑制策を講じておりますけれ
ども、それではたして
政府が
物価抑制の目標として
考えている四・二%に安定し得るかどうか、これは疑問でありますが、一応三十九年は四・二%に押えられるとしましょう。四十年はどうですか。四十年は
国鉄運賃だって、総裁は
値上げ不可避のように言っております。それから、来年やはり
公共料金のまた一年
ストップということは、これは非常に困難だろうと思います。それは
公共企業体を
考えてごらんなさい。もう
公営企業は軒並み赤字でしょう。
交通事業は一番ひどいでしょう。それから病院、
水道。
水道料金なんか、
千葉県で
水道料金値上げをやった。押える押えるといって、認めたでしょう。
千葉県で認めて、これはよその府県で値上げしても押えることはできない。また、
消費者米価についても来年はわかりませんよ。もう
赤城農林大臣は、
消費者米価については、
生産者米価引き上げをした場合、そのうち
管理費とか、
輸送費等については
消費者米価にスライドするような
米価の
算定方式を
考えていると言われているんです。いま検討しているというのです。私は、四十年は
公共料金の
ストップを続けることは実際問題として非常に困難な
事情があると思います。
そうすると、四十年もまた
物価は上がる公算が大きいと思います。そうなると、一・二%の
物価値上がりならいいのですけれ
ども、まあ三%、四%の
値上がりは
ヨーロッパでは異常な
状態ですよ。三十九
年度の四・二%だって、これは異常ですよ。そういう
物価値上がりが続く。つまり
通貨の
対内価値の
減価が続く。しかも、
池田さんは、いつまで
総理をやっているかわかりませんが、 この
成長政衆をやっていく場合に
物価値上がりが
不可避だと言っているわけです。
貨幣価値の安定よりは、やはり
成長のほうへ
重点を置いて、
物価値上がりは
不可避だという
考え方です。
そうなると、私は特に問題にしたいのは、この
日本の低
所得者層は、社会保障不十分ですから、非常に無理していろいろな
貯蓄をしているんです。無理な
貯蓄をしているんです。
生命保険なんかもその
貯蓄の
一つですが、その他
郵便貯金とか、それから
公務員では、それはもう
局長さんだってやはり
被害者なわけですが、
公務員だって共済の
年金もみんな
減価していくのでありますから、
基本は
物価を安定させれば一番問題ないのですけれ
ども、そういう
不可避であるという場合は何か
手当てをしなければ、私は
所得町
分配上非常に不公正ではないか。これは
一つの道義の問題として問題ですよ。そして今後の問題もさることながら、この三年間に二割も
減価したということですよ。これはもうたいへんな損失を与えていることなんですよ。
それで、大体
一般国民は
貨幣錯覚に陥っているのです。大体
貨幣錯覚ですよ。札には、一万円札には一万円と書いてある、千円札には千円と書いてある、百円札には百円と書いてあるから、値打ちは下がっていないように
錯覚を起こしていますけれ
ども。それで
保険契約なんか順調にいっていると思うのです、そういう
錯覚によって。しかし、
保険の
契約が支障がないから、それでいいのだというようにわれわれの
立場としては言えませんよ。
安定価値計算とか
ゴールド・
クローズ、そういうものをやれば、また
保険の支払いが多くなって、また
財政インフレに拍車をかけるという
意見もあるわけです。われわれは何か
手当てをしなければならぬ。ということは、
手当てをするのを
政府が怠るならば、
貨幣価値を下落さしてはいけないというもっと強力な
貨幣価値安定政策をとらなければならないのですよ。とらないで、ある
程度不可避だ
不可避だといいながら、私はこのままほうっておくことに対しては、これは許されることではないのですよ。これは
国会でももっと大きな問題として取り上げるべきですよ。全体の
債権債務に非常な、何ら本人の責任に帰すべきでない原因によってそういう
損害が与えられる、それからまた不当に
利益を与える、こういう問題が起こるのですよ。
これについては、これはあなたに言ったってしょうがないですが、
政府全体としてもっと、あなたはまた
長期のそういう
債権債務、
保険を担当しているのですから、そういう点についてやはり
意見を述べて、とにかく
物価対策については最も強力にあなたは発言しなければならぬのですよ、ほんとうは。そういう
主張を一体しているのかどうかについても、
保険行政をやっていく上に、ただ
保険会社の
立場で行政やってはいけないですよ。
保険会社の
立場でやっているじゃないですか、さっきの
答弁なんかそうじゃないですか。
保険契約が順調にいっているから
心配ない。われわれはそういう
立場ではいけない。
契約者にそういう
損害を与えておるのですから、
契約者の
立場を保護する
立場というものを
政府はとらなければならないのですね。ですから、今後やはり五、六%も
物価値上がりが続いていくという場合、これは何とかしなくちゃならぬと思うのですよ。そういう
主張をあなたはされなければならないし、それは
民間の
保険契約だけではなくて、
国民年金だって問題ですよ。いささか全般的な大きな問題ですが、とにかく特にまあ
長期の
契約である
生命保険についてはこの点が一番
重点が大きいものですから、問題にしているのです。これは愚見にわたるところは非常にございますが、もう二度そういう点に対する
当局の何といいますかね、
考えを一応伺っておきまして、また今後こういう点についてもっといろいろな何か検討をされ、
政府全体の問題としてこれを問題にするように心がけてもらいたいと思います。そういう
措置を講ずるのは困難であるならば、そんな
物価をどんどん上げてはいけない。
通貨の
対内価値をそんなに
減価さしてはいけない。どっちかをしなければならない。どっちも
保険契約さえ順調に伸びていればそれで差しつかえないというようなものではないと思うのです。この際、こういう点についてもう二度見解を明らかにしていただきたいと思うのです。