○鈴木
市藏君 私は、
日本共産党を代表して、
所得税法、
法人税法及び
租税特別措置法の一部改正法案に反対をします。
反対の理由の第一は、今回の
所得税法の改正案は、本質において
減税とは偽りであり、実際上の
増税であり、全くごまかしの産物であるということであります。
政府は、基礎、配偶者、扶養並びに給与
所得控除の額をわずかばかり引き上げることによって、勤労者の
所得税があたかも大幅に
減税をされたかのように宣伝をしておりまするが、勤労者の実際生活は高物価のためにその
内容が著しく低下しており、
生産費に大きく食い込んで
税金を取られているのが実態であります。全納税人口の八〇%をこえる勤労者の
税金が不当に重いことは、だれの目にも明らかであります。真に勤労者の
所得税を軽減するためには、いわゆる課税最低限を大幅に引き上げるべきであります。しかるに、
政府は、
勤労所得税に対する広範な勤労人民の
減税要求には一切耳をかさないばかりか、内輪に見積った
内閣税制調査会の
答申さえ値切って、四〇万円までは二〇%、四十万円超一〇%、最高十四万円の控除にとめてしまったのであります。こうして
所得税
減税の
答申から九十四億円もむしり取って、この
財源をまるまる一部の高額配当
所得者の
減税に振り向けるという処置をあえて行ったのであります。全く血も涙もない無慈悲残酷な措置と言わなければなりません。
政府の言う課税最低限には、今日何らの科学的根拠もありません。すでに何回も
質疑の中で明らかにしてきたように、マーケット・バスケット方式とエンゲル系数とを駆使してでっち上げた基準生計費なるものは、税収奪のための反動的なごまかしの理論にしかすぎません。われわれはあくまでも、課税最低限は労働力の再
生産に必要な経費でなければならず、それは社会的通念としてすでに確認され、かつ憲法が認めている文化的にして健康な生活を営む権利を保障するに足る必要な経費でなければならないものと主張します。現在、その一根拠をなすものは、言うまでもなく全国一律最低貸金制の確立でなければなりません。
また、
政府は、
中小企業者の
税負担を軽減すると言っておりますが、これもきわめて欺瞞に満ちたものであります。いわゆる開放
経済体制への移行を理由に、企業の集中合併、合理化の政策が全面的に進められている中で、
中小企業は
政府の政策と内外独占
資本の圧力で倒産が相次ぎ、新たな困難に直面しているのであります。中小業者に対する今回の
減税措置は、このような
状態にあえぐ中小業者にとっては何の役にも立たないことは明白であります。この
減税措置と称するものは、池田
内閣のいわゆる
中小企業近代化政策の一翼であり、決して
中小企業の独自の発展を保障するものとはなり得ないのみか、逆に合理化を早め、
取りつぶしへの道を早めるだけであります。
次に、
所得税制の整備合理化措置の一環と称して、芸能人、文化人等に対する
所得税の源泉徴収を新たに規定していることでありますが、これは独占
資本以外のところならどこからでも小魚一匹漏らさず
税金を
取り立てようとするどん欲な収奪政策を露骨に示すものであります。
すでに衆知のように、池田
内閣は民主的、自主的な団体である勤労者音楽協会、労働者演劇協会、また零細商工業者の団体、その他の大衆団体に理不尽な課税をし、あまつさえこれらに対して不当な弾圧を加えていますが、これらの事大は現
内閣の過酷な大衆収奪の税政策の本質を暴露しているものであり、それは今回の改正案によって一そう露骨に示されています。われわれは、このような民主的諸団体に対する不当保税と弾圧を直ちにやめることを
要求するものであります。
反対の理由の第二は、
租税特別措置についてであります。
租税特別措置は年々拡大し、新設して、
国税、
地方税合わせて三千二百億円という膨大な大
減税をもって独占
資本に奉仕し、既得権化していることであります。中でも支払い配当課税の軽減と、証券
投資信託の収益配分の分離課税新設の措置は、悪税中の最たるものであり、
税負担の公平の原則をじゅうりんし、あえて社会的不正義を拡大しているのであります。このことは独占への資金の集中、証券市場の育成のために勤労者階級及び少額
所得者の犠牲において行なわれるものであり、ここに今回の税制改正の基本的な特徴を見ることができます。そして今回のこの処置を突破口として、すべての配当にこのような処置を及ぼそうとする意図のあらわれであり、明らかに独占
資本本位の露骨きわまる政略的な
減税というべきであります。
われわれは、以上のような
租税特別措置法を撤廃し、反対に膨大な利潤をあげている大
資本家、大金持ちからは累進課税によってもっと多くの
税金を
取り立てるべきであると主張します。同時に、勤労人民に対する過酷きわまる税制としての源泉課税をやめ、真の自主申告納税制を確立するとともに、真の最低賃金制を確立することと相まって課税最低限の大幅引き上げを行なうことが、
所得税
減税の基礎であり、税制民主化の大前提であることを主張します。それはまた、すべての勤労人民の真実の
要求でもあります。しかるに、今回の租税三法改正はこの
方向とは全く反対であり、池田
内閣は税制それ自体を来日独占
資本本位の
財政、金融、
経済政策に完全に従属させようとしているものであり、その意図をはっきりと示したことに三法案の反動的特徴があります。
以上の理由によって、
日本共産党はこの三法案に反対であります。