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政府委員(泉
美之松君) 御
承知のとおり、
衆議院の予算
委員会におきまして、大蔵
大臣から、四十年度以降農業用のガソリンの減免について検討したいという御発言をいたしているのでございます。
事務当局に対しまして、この点について減免の
方法等について検討するように命ぜられているわけでございます。この問題につきましては、すでに三十六年ごろから農業用の、特に圃場において使用いたします農業機械に使用するガソリンにつきましては、これを減免されたいという要望がありまして、私
どもとしましても、いろいろ検討をいたしているのでございますけれ
ども、現在までのところ、技術的に減免の
方法がむずかしいということで、今日に参っているのでございます。そのいろいろの問題点があるわけでございますが、その問題点を申し上げてみますと、まず第一は、減免の理由をどういう点に求めるか、揮発油税及び
地方道路税が道路財源として目的税的、あるいは
地方道路税は目的税でありますので、目的税としてあるという点からいたしますと、道路に使用する自動車用以外の用途に使用されるガソリンは免税するという趣旨で農業用機械のガソリンの免税を行なうとしますれば、ひとり農業用のみならず、漁業用、林業用あるいはそのほかの揮発油ライターあるいは溶剤用あるい窯業でたく場合、このういったいろいろな用途、かあるわけでございまして、どの範囲まで減免を行なうかという問題があるわけでございます。そこで自動車用以外に使うけれ
ども、農家とか漁業あるいは林業の場合には、その
所得が他の場合に比較して零細であるということにかんがみまして、その税負掛を軽減するのだという見地からいえば、農林漁業用という範囲が一つ出てくるわけでございますが、この場合、中小企業が使用するガソリンについてどう
考えるべきかという点が問題になるわけでございます。
次に、減免の額について問題が一つございます。これは先ほど申し上げましたように、揮発油税が道路整備財源として使用されるようになりましたのは昭和二十九年以降でございまして、それまでの税分は、これは本来の揮発油としての消費税としての性格から見て御負担順えるということになりますと、それ以後の増徴分ということになろうかと思いますが、そういたしますと、先ほど申し上げましたように、今回の増税分を加えますと、一キロリットル当たり揮発油税と
地方道路税を合わせまして二万八千七百円でございますが、昭和二十九年前は一万一千円でございましたので、二万七千七百円分を減税するということになるわけでございます。で、その金額が計算してみますと、農業用のみの場合におきましては約六十億円、それから自動車用以外の用途全部に及ぼすということになりますれば百億円になるわけでございます。大体これが道路整備五ヵ年計画の四兆一千億という計画に対していかなる影響を持つかという点も
考えなければならない点でございます。
その次に、それでは減免をするとすればどういうやり方があるか、技術的に検討いたしますと、大きく分けて
二つあろうかと思います。一つは減税切符発行方式と申しますか、たとえば農業用の耕うん機でございますと、その標準燃料消費量、それから耕作面積といったようなものを基礎といたしまして、減税によって揮発油を購入し得るといった切符を
税務署が発行いたします。農家はこの切符をもって販売業者から安い価格で購入する。そうして販売業者は
税務署の確認を得ました上で、これを卸し売り業者を通じて製造業者まで戻していきますと、その後製造業者が揮発油を出荷いたします際にその分だけ税率を安くする、減税切符を発行して玉がえをしていくというやり方でございます。まあこれについての問題点は、各人ごとの消費量の決定が、先ほど申し上げましたように耕うん機の標準消費量といったようなものからやっていくわけでございますけれ
ども、その決定はなかなかやっかいであるということ、それから減税切符の発給とか、減税確認のために
税務署の
事務量が
相当たくさんふえるのでございます。現在の見込みでは、計算いたしますと約千人
税務官吏を増加する必要があるというふうになっておるのでございます。
それからもう一つの問題点は、これによって購入いたしましたガソリンが耕うん機などに使用される場合には問題ないのでございますけれ
ども、子供がモーター・バイクに乗るというときに使用しても、これはなかなか取り締まるということは事実上できません。そういった意味でこの減税切符が売買などによって流通するといった点もありまして、揮発油税の取り締まり上いろいろ問題があるのでございます。
もう一つのやり方といたしましては、これはアメリカでやっているやり方でございますが、消費者へ税額を還付するというやり方でございます。これは消費者である農家に耕うん機でガソリンを使用した数量などを記帳させておきまして、その申告書を
税務署へ
提出させまして、その申告書に基づきまして減税額を還付するというやり方でございます。しかしこの問題につきましては、いまの農家の
実情からいたしまして、そういう記帳をしてもらうということは、非常に困難ではないか、それからまた還付の
事務が非常にたいへんなことになりまして、ことに還付の時期がおくれて一年たったときということになりますと非常に殺倒するということになりましょうから、非常な手数ではないか。それから還付を行なった後に、はたしてその記帳が正しかったかどうかというようなことを調べるということになりますと、無用のトラブルが起こりはしないかというような問題がございます。そういった点から見ると、この
方法はアメリカではともかく、日本としては実行困難ではなかろうかというふうに
考えるわけでございまして、したがって、これらの問題点につきまして目下検討をいたしておるのでございます。その検討の結果、四十年以後どうするかということを決定するわけでございますが、同時にこういう減免の
方法と同じような効果をそういった農家に与えるには、歳出のほうでそういったことはできないかといったような点もございますので、
大蔵省といたしましては、ひとり
主税局だけでなしに、
主計局その他も加わりまして、
大蔵省全体としてどのようにこの問題を処理するか、今後慎重に検討するという段階にあるのでございます。