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1964-03-26 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            岡崎 真一君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            日高 広為君            堀  末治君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君            鈴木 市藏君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    北海道開発庁総    務監理官    小島要太郎君    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房長 谷村  裕君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局次    長       中尾 博之君    大蔵省主計局法    規課長     相沢 英之君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省関税局長 佐々木庸一君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    国税庁長官   木村 秀弘君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   参考人    一橋大学教授  木村 元一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○相続税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○物品税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○揮発油税法及び地方道路税法の一部  を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○食糧管理特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査) ○自動車検査登録特別会計法案内閣  送付予備審査) ○国立学校特別会計法案内閣送付、  予備審査) ○とん税法及び特別とん税法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○関税定率法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○日本開発銀行法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○地方自治法第百五十六条第六項の規  定に基づき、税関支署及び税務署の  設置に関し承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○北海道東北開発公庫法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  本日は、三案につきまして、参考人として一橋大学教授木村元一君の出席をお願いいたしております。  木村参考人には、御多忙中のところ御出席をいただきまして、厚く御礼申し上げます。本委員会におきましては、所得税法の一部を改正する法律案ほかただいま申し上げました二案の法律案審査中でございますが、本日はこれら三案につきまして御意見を述べていただき、委員会審査に資したいと存じ、御出席をお願いいたしました次第でございます。  委員会の議事について申し上げます。初めに木村参考人から三十分程度三案について御意見を述べていただきまして、そのあと木村参考人に対して御質疑がございましたら、委員各位から質疑をしていただくというふうに進めたいと思います。  それでは、まず木村参考人から御意見をお述べ願います。
  3. 木村元一

    参考人木村元一君) それでは、私、いま紹介にあずかりました木村元一でございます。三つ件——所得税法人税特別措置法三つの件について意見を徴ぜられまして、順序に従いまして、所得税から少し意見を述べていきたいと思います。  もう御案内のとおりでございますが、所得税につきましては、初年度六百五十億ばかり、平年度七百三十七億ばかりの減税の案が出ておるのでありますが、内容の点で税制調査会答申と違っている点が、特に給与所得控除についてはっきり出ておるのであります。御案内のことでございましょうが、給与所得控除につきまして、税制調査会のほうで出しました案は、定額控除を一万円から二万円に上げる。それから、五十万円までの分について二割の控除を認める。五十万円以上のところでは一〇%ですが、最高給与所得控除額を十五万円まで認めてほしいという答申を出したわけでありますが、これが実際に政府原案になって出ておりますところでは、定額控除の二万円に引き上げは認められておりますが、四十万円までしか二割の控除を適用しない。したがって、最高限度のところで昨年までの十二万円が十四万円に引き上げられておるんですが、税制調査会答申の十五万円に比べますと、ここで一万円、俗なことばでいえば、値切られておるというかっこうになっております。金額で申しまして、初年度、わずかでありますが、四十七億、平年度で百十四億ばかり、この結果減税額が少なくされておる。こんなような点が一つ目立つのでございます。  所得に対する課税につきましては、私ども、単に所得税自身のみならず、これに関連して地方にあります住民税、こういうものも一緒に含めて考えるべきだということを主張しておるのでありますが、所得課税については二通りの考え方がございまして、特に地方の財政を預かっておられる方々のほうでは、あまり基礎控除なり扶養控除なり、その他の控除額を上げていかないことをむしろ基本にしたいという考え一つございます。そんなことで、従来、地方住民税につきましては、本文方式課税するものと、ただし書き方式課税するものとがありまして、今回本文方式に近づけていくという答申を出し、またその方向で御検討が続けられているのでございますけれども、ここで地方税の場合と国税の場合とで原則を変えていいかどうか、たいへんむずかしい問題がそこにあるのでありまして、昭和三十五年の改正で第一次課税方式を廃止いたしました。つまり、国税所得税の二割何分という税額を地方で取る税金基礎にした課税方式というものを廃止いたしました。つまり、国税のほうで基礎控除その他の控除を上げていきましても、地方のほうにはこれは反映させない、遮断をするという原則が新たにとられていって、国税のほうではしきりに基礎控除も、配偶者控除も、あるいは扶養控除も引き上げていっておるのでありますけれども地方のほうは昭和三十五年のところで押えておる。したがって、国税のみについていえば、かなり減税ができていくのでありますが、地方のほうにそれが及ばない。及ばないということは、納税者数も非常に多くなることでありますし、国税だけが少しずつ手直しをしてまいりましても、地方を含めて考えたときには、必ずしも全般的な手直しができていないという問題があるのであります。  今度の場合、給与所得控除等をいくらか低目にしておくということが、地方と国とをあわせて考えたときには、不合理ではないという意味を持ってくる。つまり、国税だけがうんと減って地方税のほうが減らないといったような矛盾は、基礎控除などを上げない場合のほうが、かえって矛盾が出てこないという形があるのであります。したがって、税制調査会で出しました案を国税のほうで少しちびっておるということに対しては、私はその限りでは、つまり私も一般税制部会部会長をやっておりまして、そこでまとめておりましたときの立場で申しますというと、これは困ったことだというふうに感じるのでありますが、しかし、他方また書斎に帰って自分個人考えてみますときには、地方税との格差がだんだん大きくなるという形での改正というものは必ずしも妥当ではない、一緒に含めて、国税地方税両方含めた形で考えるということを、ひとつ将来の問題にしなくちゃならないのじゃないか。こんなふうに私は感じておるのでございます。  ただ、政府原案が出てまいります事情をそれとなく見ておりますというと、所得税減税の幅を縮めたというその理由でありますが、結果論でございますけれども、きょう諮問事項に出ております第三番目の租税特別措置法関係減税幅を大きくいたしますのに、財源上いろいろ問題があるというところから、所得税のほうの減税が押えられてしまったというふうに見られないこともない。その点につきましては、私も大いに異論があるのであります。しかし、まあ順序がありますので、その点はしばらくあとにさせていただきまして、次に法人税改正の問題でございます。  これは数字によりますと、平年度約五百億ばかりの減税をやる、初年度で三百億の減税中身は、法人税本文といいますか、税法自体につきまして申しますと、これは税制調査会のほうの答申とほぼ同じことが原案に載せられて御審議をしておられるようでございまして、特に申し上げることはないのであります。  法人税減税につきまして、三通りの内容が盛られているようでありますが、第一が、耐用年数の一五%ほどの短縮ということ、それに関連して、いままでは残存価額が一割になるところまでしか償却を認めなかったものを、残存価額五%まで認めようということでございます。それから、税率の適用の幅が従来は二百万円までの分について法人税軽減税率が適用されておった、これを三百万円のところまで適用する、これが第二番目。それから、第三番目に、同族会社留保所得の扱いを緩和して、所得の二割まで、または百万円まででありますが、控除していくということが改正の要点になっております。  一般に、所得税に限らず、また法人税に限らず、減税をやっていきすのにはいろいろなやり方があるわけでありますが、法人税の場合に、一番広く減税を及ぼすということで考えますというと、おそらくは税率引き下げということがその点で一番適用される範囲が広くなってくるかと思います。現在の三八%という税率につきまして、税制調査会のほうでも何度か議論があったのでありますが、これは動かさないで、耐用年数短縮を中心にするということが答申に出てきておるわけであります。ただ、この耐用年数短縮は、租税特別措置法に盛られておるようなやり方に比べますというと、かなり一般的な減税ということになるのでございますけれども、よく考えてみますというと、減価償却をたくさんやるということが実は収益のよけいあがっている会社ほどやれることなのでございまして、企業内容のあまりよくないところでは減価償却をやろうにもやれないという面がありますので、税率一般的に引き下げるのに比べますというと、減税の作用はその会社会社によって、企業企業によってかなり違いが出てくるわけであります。そういう点から申しますというと、企業負担軽減ということを耐用年数短縮に全面的によりかかってやるということについては問題があろうかと思うのでありますが、しかし、答申に盛られた線というものは、皆さんよくお考えの上でお出しになったものでありますし、政府原案のほうもこれとそれほど大きな差異がなく、そのまま原案に盛られておりますので、特別に申し上げる必要はいまのところないのではないかと思うのです。  第三番目の問題は、租税特別措置に関するものでございますが、これは項目にいたしまして幾つになりますか、十七、八の項目がございますが、おそらく皆さんのお手元にもそういう資料があることと思うのでありますが、税制調査会答申案政府原案とで大きな差ができておりますのは、何と申しましても、この第三の特別措置のところにあるのであります。項目別に一々こまかく言うことは適当かどうかわかりませんが、答申に出ていないのに原案に盛り込まれてきたというものが、数えてみますと七つ、八つあるのであります。  一つは、会社が払います配当に対する法人税軽減税率引き下げ、これが現在は配当に対しまして二八%の税率なんですが、政府原案ではそれを二六%に下げる。それにつれて若干ほかのパーセンテージも変えてきておりますが、このために平年度的百十二億円の減税を行なう。まあ金額からいって、所得税減税の出し惜しみとちょうどまあ金額的に同じくらいのものが、この支払い配当分に対する法人税軽減税率のまた軽減ということによって実現しているような感じを持つのであります。  それから、証券投資信託分配金源泉分離という方針を政府原案のほうで盛り込みまして、この分で平年度十二億円、初年度六億円の減税答申にない形で出てきておる。  それから、これは金額としてはほとんど言うに足らないのかもしれませんけれども損害保険控除所得税から控除する、最高二千円の控除を認める案が盛られておる。  それから、あとは小さなものでございますが、住宅に関連する割り増し償却とか、あるいは科学技術の振興のための国産第一号機というものについて償却を大きく認める。協同組合留保金控除をするとか、農地の贈与税延納等、そういうものが特別措置に新たに盛り込まれておるのであります。  支払い配当分について軽減税率を適用するということは、租税制度の上で大きな変化であったのでありまして、法人収益に対して、特に配当に対して課税いたしますやり方には、考え方二つあります。一つは、会社がもうけてそれを配当にして出す、その出す分については担税力が大きいと認めて、もっと大きな、普通の法人税以外に別に利潤税というような形のものを課税していこうという考え方。イギリスなどでやっておる制度でありますが、これは社外に出ていく利益を社外にあまり出さないようにして資本蓄積をやっていこうというたてまえに立っておる。もう一つやり方は、ドイツが特に強力にやっておる考え方でありますが、普通の法人所得に対しては、確かに五一%の税金をかける。しかし、配当の分に対しては一五%しかかけないという形で、資本蓄積を推進していこう。いずれも会社資本の充実に役立たせようという考え方なんでありますが、やり方がちょうど逆の方向に行っておる。  ドイツやり方は、会社民間から増資その他によって資金を吸収いたしますので、十分な配当を出さないために民間が協力をしない。また、株の値上がりということだけが問題になってくるので、むしろ配当をたくさんさせて、その配当のうちからまた増資資金を吸収するというふうな形で資本市場の育成といいますか、市場機構を通じて資金産業方面に流していくようにしたいというたてまえでドイツでは始めたのであります。その考え日本にも入ってまいりまして、ことに御案内のとおり、経営者立場からしますというと、増資その他自己資金を獲得した場合も、銀行から借り入れた場合も、いずれも資金コストという形で考える。配当を必要とするような増資でありますというと、税金がかかってくる。そのために、銀行から借りれば、言われたとおりの利子を、かりに一割なら一割払っておれば、それで済むのに、配当を一割やろうというと、どうしても二割もうけておらないというと、税金を引いた残りの配当としては一割ができない、こういうところから、資金コストの面でこの圧迫がかかるということ。これがおもな理由になりまして、配当課税軽減が実現したのであります。しかし、この場合には、所得税の計算をいたしますときに、配当控除率をいままでは二割であったものを一割五分に引き下げるという形でバランスをとっておったのでございます。  資本蓄積にとって二つの方法のうちどちらがいいかということについては、その国の事情がいろいろありまして、私どもも効果を正確に見分けることはできないのでありますが、少なくとも従来三八%の法人税率配当分について二八%に引き下げましたときには、所得税で見ております配当控除率を二割から一割五分に引き下げるということによってバランスをとっておったのであります。ところが、今度の政府原案では、二八%を二六%に引き下げますけれども、それとバランスをとるような意味配当控除というものを引き下げるかというと、それはおやりにならないということでありますので、金額として平年度百十二億の減税分は、まるまるどこかに減税になってしまっているように見えるのでありまして、この点は、理屈の上から申しまして、いかがかと疑問に思っておる次第でございます。  それから、税調の答申になかったことでお取り上げになりました第二の、信託投資分配金源泉分離の問題、これは昨年から、あるいは一昨年から非常にやかましく問題になっておったものでございますが、御案内のとおり、わが国税制で公平に見てはなはだおかしい措置といいますのは、利子源泉分離ということでございます。利子所得に対する源泉分離ということでございます。利子課税方式についてもいろいろなやり方があるのでありますが、租税特別措置をもしやめるとしますと、利子については二割の課税源泉課税が行なわれるというたてまえになっておりますものを、何年か前に特別措置でこれを一割に減らして、さらに昨年でございましたか、それをさらにまた五%に下げている。したがって、利子所得でありますというと、かりに何十万円、何百万円の所得がございましても、五%だけ納めれば済むという形になっておる。これはわが国税制の上で私は非常にゆがめられたものだと感じておるのでありますが、その利子に対する税金引き下げが現に行なわれておるがために、利子所得とよく似たような配慮を加えていかざるを得ないというような事情が出てきております。それが昨年度から問題になっております株の配当についても源泉分離をしてほしいという主張となってあらわれ、一時は非常に大きな運動にまでなってまいったのであります。これに対しまして、税制調査会のほうといたしましては、あるべき姿としましては、利子もやはり総合課税をすべきである。しかし、一ぺんにそこまでいけないにいたしましても、少なくとも源泉選択制度というものをとるべきではなかろうかという意味答申をしたのでございます。その意味は、願くば現在とられております五%源泉分離という特別措置を改めていくのがほんとうの筋であるから、それに従ってほしい、こういう意味合いをこめた答申であったのでありますが、不幸にしてこの特別措置が一方投資信託分配金にまで拡大されるという形になって出てきておるのであります。この点は、私どもことしの十二月でございましょうか、税制調査会委員の任期が来年の六月ごろまででしたか七月までかあるのでありますが、それまでにいろいろ検討しなければならない問題の一つとしまして、利子配当に対する課税のしかたの問題、広くいって企業課税根本の問題などが実はあかっておるのでありますが、できることならば、あまり広げない形で、特別措置のこういう広げ方はなるべくしない形で、われわれの検討の材料にさしていただきたかったのであります。  そのほか、損害保険につきまして新たに所得税からの控除を認めることが原案に出てまいりました。理由といたしますところは、特に建物更生共済保険と申しますか、一種の貯蓄的な意味合いを込めた新しい形の保険が出てまいりましたことが理由でございます。これも生命保険について相当の控除を認めているという点からいえば、建物更生共済のようなものについてある程度控除を認めることも理屈がないわけではないと思います。けれども生命保険に比べますと、損害保険のほうは、やはり相当余力のある人がかけている保険だということが言えるということがありますし、それから、そもそも所得税をかける場合に、いろいろな特別控除というものをつくっていくこと自体は、制度のたてまえからいって私は好ましくないと考えておるのでありまして、もしどうしても所得税が重いということであれば、どんな所得者にも及ぶような形で一般的に負担軽減をはかっていくということが望ましいのであります。それを逆に、今度の特別措置法の場合のように、数々の特別措置つけ加ってまいりまして、制度自体がきわめて複雑なものになってくると。これは毎回税制調査会の席で特別措置整備する方向検討する確認を求めてやってきておって、なおかつ整備ができない。税制調査会答申におきましても、それほど大きな整備案は出していなかったのでありますが、しかし、こんなにたくさんのものがつけ加ってくるということは、これまた予想していなかったことでございまして、何とか真剣に整備考えていかなければならない、私の考えはそういう考えでございます。  審議もだいぶお進みになっておりまして、全般的な問題につきましては、きょうは特に申し上げなかったのでございますけれども、最後にひとつ、日本税制根本の問題としてひとつ考えていただきたいことがあります。それを申し上げたいと思います。それはしばしば、税制考えますときに、直接税か間接税か、直接税の比率間接税比率ということで議論が進められておりまして、大筋としては、私はそれでよろしいと思うのでありますが、同じ直接税にも二通りある。同じ間接税にも二通りある。つまり、直接税でも、所得税ことばの真の意味における直接税であります。ところが、直接税の中に含められておるにもかかわらず、法人税というものは一体どのような意味で直接税なのか、若干疑問があるのであります。これは御案内のとおり、会社が納めます税金負担しているのは一体だれかという問題、従来の考え方では株主負担しているのだ、したがって、これは直接税であるというふうに考えられていたのでありますけれども法人税負担帰着の問題は、必ずしも明確ではないのでございまして、私の考えでは、景気の状況のいいときには、製品価格に転稼されていく一種の間接税的な役割りを持っており、必ずしも株主負担しているとは限らない。しかし、不況になってまいりますと、製品価格に転稼させることが困難になってまいりまして、株主負担になる傾向が強く出てくる、そういう性格を持っているように思うのであります。それから、同じ間接税でございましても、逆進性の強い間接税とそうでない間接税とがあるのでありまして、いろいろな指標で見まして、逆進性の強いものとしては、たばことか酒というものはかなり逆進性が強い。しかも、ものによりましては、物品税のある一部のものなどは所得に比例した負担が行なわれるように見えるのであります。そういうわけでございますので、直接税を五五%、間接税を四五%といういまの直間両税の割合というものをもとにしまして考えます場合でも、法人税が多くなってきますというと、所得税の多い場合に比べて意味が、中身が違ってくる。  そういう点を頭に置いて日本税制考えてみますというと、最近では、昭和三十二年からでありますが、所得税以上に法人税税収が上がってきておるという、これはどうも世界にもあまり例のない事情なんでございます。どうしてそういうことになっているかということを、またさかのぼって考えてまいりますというと、一つは、戦後非常に法人企業というものが盛んになってきたということでありまして、経済の成長に従って企業活動が盛んになってきておる。それから、もう一つは、よくいわれます法人成りという問題であります。従来ならばとても会社という形態をとらなかったであろうと思われるような企業が、続々法人に変わっていくということ、こういうことが二つばかりの原因で、まあほかにもありましょうが、そういうことで法人税税収のほうが上がってしまっているのであります。これは私は、税法というものは特に法人を優遇するとか、特に個人形態の企業を優遇するとかいうことがないのが理想の姿ではないかと思うのでありますが、そういう立場からいたしますというと、いまの税法は何か根本的に法人に対して非常に有利になっているような感じがするのであります。  そこで、所得税減税問題につきましても、所得税だけを取り上げて各国と比べて重いとか軽いとかいうことを考えるのではなしに、やはり国内にありますいろんなほかの税金、特に法人税との関連でもってひとつ所得税のあり方を考えていくことが必要ではないかと思うのであります。  ほかにも申し上げたいことがありますが、いずれ御質問があることと思いますので、一応私の意見の開陳はこれでとどめたいと思います。
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ありがとうございました。以上で参考人の御意見の陳述を終わりましたので、ただいまの御意見に対し御質疑がございましたら、順次御発言を願いたいと思います。
  5. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先生に二つの点についてお尋ねしたいと思うのです。その第一は所得税法の問題、二つ目は租税特別措置法の問題であります。  所得税関係では、私は臨時答申及び、何というのですか、その審議内容と経過というのですか、税制調査会のお出しになりました本を参考にしてお尋ねしたいと思いますが、最低課税限の問題については、それは国内的にも、あるいは国際的にも、いろいろ御検討になってお出しになっておりますが、一体今度の改正をあなたのほうの答申どおりやったとしたら、これは一体国民の総平均に対して何%くらいにおさめようとしておいでになるのか、また何%くらいになっておるのか、あるいは生計費との関係もいろいろ御調査になっておやりになっておりますが、エンゲル係数の一つの例が十六ページに引いてございまして、これを拝見をいたしますと、一人世帯、二人世帯とずっとありますが、五人世帯のほうがエンゲル係数が高くなっておるということは、ほかの資料にもございますけれども、結局家族の多いほど生活が苦しいという、そういう結果になっております。これを今度の改正では是正をしようとしておやりになっておると思いますが、もし答申どおりでしたら、どのくらいのかっこうに大体おさめようとしておいでになるのか。あるいはまた、給与所得者と他との負担のアンバランスの点についてもいろいろ数字をあげておやりになって、実は答申をお出しになっているわけですが、こういうような点に関して、一体これほど給与所得者のアンバランスが多くなってきておる、これはいかぬじゃないか、こういうこともあって私は答申を出されたと思いますが、そこで、問題でお尋ねしておきたい点は、政府は卸売り物価が〇・五%上がって物価が四・二%上がると、こう見ておる。しかし、こんなことでおさまるとはお考えになっておらぬだろうと思います。政府の言うとおりで計算されたかもしれませんけれども、少なくとも今日の常識からいえば、物価が四・二%でおさまるというようなことはないと思います。そうしますと、何としても給与所得者の生活というものはえらい。しかし、他面ベースを改定というようなことも私は予測されておるのじゃないか。もし予測されておるとするならば、その数字はどのくらいの立場に立って、税制改正にそういうものを織り込んでやったのか。いや、ベース改定というものは全然考えておらぬとおっしゃるのか。その辺のところを答申をされた場合にお考を承っておきたい。  そうして最後に、あなたのおっしゃったように、給与所得者の受けておる控除限度額を一万円値切った、非常にけしからぬことだと思っておみえになっているから、そういう御発言もあったと思いありますけれども、われわれも同感でありますけれども、これを値切たことによって税制政正の答申根本的に狂っちまうかどうかということ、いわゆる画竜点睛を欠いたものなのか、一部修正的なものなのか、その辺のところを明確にひとつお教え願いたい。それが一つ。  あと続けて、二つ目の問題についてはあらためて御質問したいと思います。
  6. 木村元一

    参考人木村元一君) 少しことばを強く申し上げますと、画竜点睛を欠いたほうでございますね。それも、たとえば基礎控除の引き上げをやるとか、ほかのほうへ持っていくなら、まだいいのでございますが、政府原案のほうでやっている仕事というのは、こちらで削ったものはどこへ行っているかというと、先ほどもるる申し上げましたような方向へ行っておる。その行き方の問題にも関係があると思いますが、私は非常に遺憾だと思っております。  それでは、いまのお話の、それではどこまであれしたらいいか。あれといいますのは、下げれば最低生活費との関係からいっていいのかということでございますが、ことに物価の値上がりの問題などはどういうふうに考えたかと言われるのでありますが、どうも税金のこういうデータを出していきますときに、私どもも将来の物価の問題を頭に入れないわけにはいかぬわけでありますが、さればといって、それでは四.二%ではなくて、七%上がるはずであるということもわれわれとしては言えない。もちろん、物価の問題は自然的な現象でもあると同時に、一つの政策的な現象でもありますので、われわれといたしましては、四・二%の物価の上昇ということを言われますれば、それを一応はのんでいって議論を進めていくということしかないんじゃないかという、はなはだお答えにならないかもしれませんが、そういう立場考えております。  それから、もう一つは、エンゲル係数の観点で、今度一つ改正に入れておりますのは、従来は扶養控除につきまして、十五歳以上と十五歳未満というような分け方をしておったのでございますが、こういういま御指摘の事情などを見まして、これは十三歳以上と十三歳未満に区分をすべきではなかろうか。つまり、もとは高等学校に入るころからという考えであったのですが、中学校に入るころからの子供たちの食い盛りの問題といいますか、学費の問題といいますか、そういうものを考えるということで、今度の原案では、いままで十五歳未満が三万五千円でありましたものを、十三歳未満を四万円、十三歳以上は五万円というふうに、そこで少し引き上げをはかり、両々相まちましてある程度までは負担軽減に役立つんじゃないか、十分これで満足がいくというふうに考えたわけではございませんけれども、まあまあ二百万円以下までの所得者のところには全部かぶっていって、ある程度負担軽減になるという線を出して答申をしたような次第でございます。
  7. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、重ねてお尋ねして恐縮でございますが、家族の多いほど生活がえらいという点は、あなたのほうの税負担のほうからもえらいということが出てくると思う。  もう一つは、給与のほうのことは、ベースアップの問題はお答えにならなかったのですが、給与の順から見ましても、初任給はある程度上がってきたわけです。しかし、あなたのほうの資料で出てきた、たとえば課税最低限の推移(給与所得者の場合)で、ページ八にお出しになった表第五を見ますと、昭和九年——十一年ころのところは、大体独身者はいまのベースに引き直すと五十八万九千二百円が課税最低限になっている。それが昭和三十八年では十五万一千八百九十円、まあ約四十四万と開いている。夫婦と子供で四人の場合でいうと、これが大ざっばにいって二十万かそこらになると思いますけれども、そういうことは別として、何としても最低限の問題があります。そして給与体系から見れば家族の多い者ほど中だるみになってきておる。給与体系でいえば中だるみになってきて、であるから、給与体系のほうからもこの問題は大きく議論される。しかも、税のほうから大きく中だるみの——つまり成長盛りあるいは学校に進学さして親としては負担の多いときに一番生活が苦しい。しかし、社会では一番働いてもらわなければならない国家的に大事なときに、一番何というか恵まれないところに押し込めておるという点は不合理だと思うのです。ですから、税の答申をなされる場合には、少なくともこれだけの資料をいろいろと検討されてベース改定等も織り込んでおやりになったら、それはこのくらいの程度になるというようなことも率直にお聞かせ願えれば非常に幸いだと思うわけです。
  8. 木村元一

    参考人木村元一君) お答えします。戦前の統計と戦後の統計と比較いたしますときに考えなければならぬ問題が一つあるということ、それはこういうことでございますが、戦前では所得税というものの国税の中で占める地位というものは非常に小さかった。そうしてしかも、大所得といいますか、大きな収入を持っておる人が多かったということでありますので、課税最低限は非常高かったのでございます。私どもが大学を出たころには、相当年配の方が直接税を納めて苦しいですとおっしゃるものですから、私も直接税を納めるように早くしていただきたいということを言っておったことがございますが、それは他方から申しますというと、当時は間接税が非常に大きかった。それが下層のほうに実は強く響いておったという事情があるのでございます。それともう一つは、戦前の取り方にもよりますけれどもかなりたくさんの公債による財源があった——あったというのではなくて、インフレーションを起こしながらのことでございますが、それのしわ寄せが、どちらかと申しますと、下層のほうについておった。ですから、低額所得層の租税負担考えます場合には、所得税だけで比較するということは、どうも私は疑問があるのではないか。  その意味から申しますと、戦前に戻すということは、むしろ時代錯誤であって、私は課税最低限が現在五人家族で四十八万円のところまで来ておるのでありますから、これを六十万円にする、七十万円にするということは、私はむしろ慎重でなければいかぬ。という意味は、それだけ税金が減ってきて済むならよろしいのでございますが、財政需要のほうが変わらないとしますというと、所得税減税したものはどこかでまた取らなければならないじゃないかということで、ことしはあまり議論が出ませんでしたけれども、かりに売り上げ税といったようなものを設ければ、直接税の減税は簡単にできると思うのです。けれども、売り上げ税のような形式をとった場合の負担関係を考えれば、所得税で取る場合に比べてもっと不公平になりはせぬか。それで、先ほどの私の説明がまずかったのですが、四十八万円という最低限というものを国税のほうでは何か金科玉条のように守っておりますが、しかし、それは一体、同じ所得課税であるところの住民税はどうなったかということになりますと、相変わらず基礎控除は九万円にしかならないというような事情が一方にあるのでございます。それで、私は、これは個人的な議論になりますけれども、四十八万円以下の人は絶対にそれじゃ所得税を納める力がないのかというと、それに対して私は疑問を持っておるわけです。  ですから、それじゃおまえたちは、あるいは税制調査会としては何を基準に課税最低限を考えたらいいのかといわれれば、やはりそれはエンゲル係数と、それからマーケット・バスケット方式がいいかどうか知りませんが、食料費というものとエンゲル係数というものを考えて、大体ここらが最低限だろう、そこまではなるべくかけないようにしていきましょうということしか、いまのところ道がないものですから、その方式とっておるのでございますけれども、確かにいま御指摘のとおりでございまして、独身者にはいろいろな形がございます。どうもこういう資料で見て、まことにふしぎに思ったことは、逆進税の中で一番強い物品税は何かと申しますと、カメラなんでございます。よく考えてみますと、高等学校を出て親元から通っているような子供がすぐお金を、一万か一万二千円か知りませんが、もらいますと、買うものがどうもカメラらしいのでございます。そうなりますというと、所得が少さい人が担税能力がないかというと、それはそうじゃないという面があるわけでございますね。これに反しまして、四十八万円取っておりましても、子供が三人いて、独立に生計をかまえておるというような人は、かなり苦しいのじゃないか。  したがって、先ほども申しましたように、一方では課税最低限を上げていくということと、それから現在の日本所得税は、最低のところが八%から始まって、それからすぐ一〇%になり、一五、二〇、二五というふうに、非常に小刻みに所得階層に向かっていって、限界税率が上がっていくというような累進構造を持っております。そこで、考えられることは、その累進構造のブラッケットをもっと広げていくという、つまり一〇%で済む段階の人をいままでのようにもう所得が二十万円以上になったらすぐ一五%かかる、二〇%かかるというようにしないで、ずっと広く一〇%程度で課税していくという方式をとると、かなりその点緩和されるのじゃないか。  ただ、私どもの今度の答申というものは、将来の姿を頭に置きながら考えてはおるのでございますけれども、何ぶんにもことしの財政需要に見合った収入がほしいということがすぐに差し迫った問題として出てくるものですから、確かにおっしゃるとおりに、足りないといいますか、まだまだ苦しいところが多いということは十分認めておるのですけれども、ただ、そこを減らして、一体それじゃ穴をどこで埋めるかという問題として考えますと、重いからそこだけはというわけにもいかなかった。そんなふうなことで、特に将来四・二%の物価騰貴のほかに、なおかつベースアップというものまで考慮に入れてということまでは、十分取り入れることができなかったことは事実でございます。
  9. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは、もう一点。自然増を六千八百余億見積もっておるわけなんですよ。ですから、ここは、それは財源がないといえばないという言い方もあると思うのです。あるといえばあると思うのです。しかも、この六千八百億のほかに、まだ決算期になれば、どうせいままでも当初に対して何%かというものはいつでも伸びておるわけです。今度いわれておることは、約千億ぐらいまだあるだろう。そうでなければ次の二次補正等は組めぬじゃないか。だから、当然予想されておるわけなんですよ。ですから、やはり税が、あなたのほうの資料から見ましても、六ページの主要諸国における最低課税の比較を見ましても、日本は最低なんですね。だから、せめて、中進国か後進国か大国か知りませんけれども、もう少し引き上げていただいたほうがむしろいいじゃないか。税制調査会に私のほうからお願いしたい点は、もっと何か政府に、値切られてしまうのですから、もっと理想図というようなものも描いて私はやっていただくほうがいいじゃないか。これはお願いなり意見でございますから、私はやめますが、決してあなたの答弁は必要としませんですから。  次に、お尋ねしたい点は、租税特別措置法の関係でございますが、ごらんのとおり、ガットの関係で輸出控除の恩典がなくなりました。いままでは免税であったわけです。今度、もし免税になるとするなら、資産償却の圧縮の問題、いわゆる八割増の問題は免税になるかもしれませんが、あとは繰り延べの形になっておる。そこで、基本的な考え方として、いままで輸出恩典にあずかるものは大体商社とかメーカーであって、しかも非常に大きくて、ダイレクトでやっておるというところはいいですけれども、前渡金などを商社からもらってやっておるようなところは、輸出の証明をもらおうとしても商社も出さないわけなんですよ。そこで恩典がないというわけなんですね。  そこにもう一つ問題があるという点は、それをもっと推し広げますと、輸出を一切ささえておるのは、日本の国では中小企業だと思うのです。また、数字の上からも出てくるわけです。しかも、その恩典に浴するものは、アッセンブル・メーカーが恩典に浴して、それをささえるところの協力工場というものは全然恩典がないわけです。  ですから、いっそのこと、もし租税特別措置法というものがあるとするなら、中小企業を守っていくとか、あるいは農業関係の人を守っていく、いわける政策上から出たアンバランスなところを拾い上げていくというのですが、すくい上げていくという立場にある。だから、こういうような輸出の問題をもしおやりになるとしても、基本的には商社や大メーカーではなくて、それをささえておる底辺のところに恩典が行くべきだということを、まず第一に考えるべきではなかろうか、こういう意見に対してどういうふうにお考えか。  それから、二つ目は、答申に出ておるところは、最初に指摘しましたように、繰り延べなんですよ。免税じゃないわけなんです。ここに根本的な違いがあると言っている。それから、もう一つは、資産償却を対象にしておりますから、中小企業の人はそんなに機械設備が必要じゃないわけなんですよ。それから、あるいは木造でやっております、バラックでやっておりますから、資産償却はもうすでにしちゃってあるところがあるわけなんです。そういうところには恩典はゼロだということになる。そこで、いろいろと計算もしてみて、なるほど八割する。特別控除というものはガットの関係上いかぬということはわれわれもわかるわけなんです。とするなら、もう少しいまも申しましたように、もうすでに資産償却をしちゃっておるところ、あるいは協力工場、あるいはメーカーでも弱いようなメーカーに恩典が行くようなことが討論されて、いろいろなことがあったのだ、しかし、やむなくここに落ちついたと言われるのか。まあこれよりかしようがないから、ここら辺のところにやったのだよと、軽く片づけられちゃったのか。その辺のところが、私らも税制調査会のこまかい内幕のことはわかりませんから、何と申しますか、中身のことの御説明がひとつ承りたいと思います。
  10. 木村元一

    参考人木村元一君) これは私のまた個人的な意見になるのですが、繰り延べというのは、あと税金を出すのだから全然恩恵にならぬというふうな意見が一方にあります。しかし、また他方では、着実に企業が伸びていく場合、日本のいままでのような状況の場合には、準備金というものは絶えずふえていくわけでありますね。それで、毎年かりに五%なり六%なりに伸びていくということになりますというと、その会社が最後に結末をつけて解散して、株主に分配でもするというときになりますというと、いままでためておった準備金が初めて所得に回って、清算所得か何かになって税金が納められる。けれども、どの企業にいたしましても、自分の企業がだんだん伸びていくことをもって前提とし、また、事実伸びてきておるという状態を考えますというと、単純な繰り延べでないので、やはり相当の蓄積税法上認めているということになる。したがって、まあこれはどっちがほんとうに正しいのかということは、会計学者その他の間でも議論があります。しかし、私は国民経済学の立場に立ちますと、優秀な会社でどんどん伸びていく会社は、準備金がどんどんふえていくのでございますから、その分だけは実は免税をしたのとまず同じじゃないか。  それから、もう一つは、繰り延べに伴う利子といいますか、借りたとすれば、相当の利子を払わんならぬものが、税金を出さないがために利用ができるという面もありますので、繰り延べということが、直ちに税金の支払いをただ延べただけだというふうな考え方には、一考を要するのじゃないか、こういうふうに考えております。  それから、底辺の問題でございますが、これは税制調査会でずいぶん議論がございました。それで、今度の案にもありますように、組合をつくりましてそこで調査をするとか、市場開拓の準備をするとかというものについては、これはぜひひとつ認めなくちゃいかぬだろうということで、ああいう案が出ましたその背景には、その問題についての相当の議論があったわけでございます。ただ、これは税務当局のほうのお考えもあったのですけれども、どこまでを市場開拓準備金と見るか。向こうからバイヤーが来た、ごちそうしてどんどんあちこちあれしたというようなものまで——まてというか、認めなければならぬ場合が多いと思いますが、しかし、中には、それを理由にして脱税のために利用する人もないわけじゃない。そこで、一つ区切りをつけまして、客観的に組合で出すような形になったものだけを認めていこう、こういう妥協が行なわれたわけでございます。  最後に、根本の問題として、日本の中小企業に対する税法上の優遇といいますか、親切なあたたかい心持ちは、どうしたらいいかという問題。これは委員の中にも、そちらのほうの事情に詳しい方が何人もおられまして、絶えず発言されておられるのでございますが、ただ、税制調査会に限りませんけれども、税のことが問題になっているときには、中小企業を優遇するためには税金をどうしても下げなくちゃいけないのだということで、税にうんと集中した形で議論が出てまいります。けれども、よく考えてみますというと、税金というのは、利益があったところへあとから取りに行くという形のものなんでございまして、積極的に税金でもってあなたのほうの企業をうんとよくしましょうというような形にまで持っていくということは、本来はそれほど期待をできないものではないか。したがって、特に中小企業を助長せんがためにという形でこまかな配慮を加えるということは、税法ではなかなかできないということがある。つまり、こちらを優遇しても、問題は親会社と下請の関係に一つはなるのでございますが、結局そっちに吸い取られるということは、力関係でいつでも出てくるわけでございますね。したがって、この問題は、税法のみならず、金融とか、それから日本の産業構造というものをどういうふうに持っていくかという大きな政策の中の一環として考えなければならぬ問題なので、税法上できることだけは考慮し、また議論もしたのでございますけれども、十分じゃないところが出てきたのは、やむを得ない点があるのじゃないかと思います。
  11. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私が二、三知っておりますメーカーで試算をしてみますと、現行の輸出控除の恩典と今度の改正の恩典とでやりますと、七十一億くらいの輸出をしておって、もちろんこれは所得控除の恩典ですから利潤がなければできませんが、そこが今度の改正でやりますと、税負担でいいますと、大ざっぱに申しまして、そこは大体一割弱利潤をあげておるのですが、大体一億一千万くらい増税になるわけです。それから、これは一億ほど輸出をやっておるところで、資産償却は大体二百十万しかないところです。しかも、これは二、三年の資産償却を圧縮して、それだけになってきているということです。それで、これを平年度に引き直してみると、大体百万ちょっとくらいになる、これの増税分が。大体年に四、五百万円違うわけなんです。それから、五億ほど輸出しておるところを見ますと、これは幸いにして工場施設を新たに建てたばかりですから、しかし工場は、コンクリートのは償却が四十五年ですから、少し圧縮されたり、その他の恩典を入れても、そうたいした恩典がないわけです。そこでやはり五、六百万円の増税になっておる。  ですから、これは輸出控除特別措置というのは、西ドイツがやっておったが、今度はOECDに入ったためにこれはチェックされたということを承知しておりますが、これがべらぼうによ過ぎたといえばそれまでかもしれませんけれども、何か片方では、輸出振興ということが盛んにいわれておるわけです。きょうの経済懇談会のことに関連して、企画庁長官の新聞発表によれば、海運収支の問題は、四十三年まではこれはとてもだめだと、やはり輸出振興以外にない、こういうことがいわれておるわけです。これはわかり切った話なんですがね。ところが、そういうことがあるとするならば、私は何といっても、あなたがおっしゃるように、利潤があったらまけるものだと。中小企業は弱いものだから、利潤をなかなかあげないから、手は差し伸べられぬわいというだけで片づけずに、やはりだれが何と言ったって、減税というのは大きな政策なんですよ。これはやはりあたたかい手を差し伸べるという姿勢でなければならぬと思います。それには私はいろんな方途があると思うのです。たとえばアッセンブル工場に対して部品を納めておるところに、そこまで恩典が行くというようなことになるならば、これが非常に捕捉しがたいというが、何も捕捉しにくいわけなんてない。そういうところまで恩典が行くというようなことに税法上なれば、今度はその下請会社のほうが一生懸命で、その証明をとるならとるように努力しますよ。そういうことをやらずにおって、中小企業のことは捕捉しにくいというだけで押し流されては、これは幾ら熱心に討論したとおっしゃっても、出てきたもの見ると、そこまでどうも手が届いておらないような感じがしてならない。これは私の誤解かもしれません。いま先生は、熱心に討論したと、こうおっしゃるのですがね。  そこで、一つだけ御意見を承りたいと思うのは、いま申しましたように、アッセンブル工場に対してこれがダイレクトになっておるとすれば、輸出の恩典がある。それに部品を納めているところに対して、その協力工場で、ビス一本でも輸出が一〇〇%のところがあるかもしれません。あるいは五〇%になるかもしれませんが、いずれにせよ、協力工場がアッセンブル工場に対しての納入比率はつかめます。アッセンブル工場のほうが国内には二〇%出して外国へ八〇%輸出したとすれば、協力工場の輸出貢献の比率は押えることができるわけです。そうすると、アッセンブル工場は何もなくなってしまうかというと、そうじゃなくて、協力工場から納めたものがXならばYをプラスして、Zという形で恩典というものがあるわけです。それをXとYに分けたらいいじゃないか。何も徴税技術上にもそう困難はないし、国内的な収入からいってもない。ただ、いま言ったように、恩典が中小企業、零細企業に及んだという形になるから、そういうことは可能じゃないか、またやるべきじゃないかという考え方ですが、どうでしょう。
  12. 木村元一

    参考人木村元一君) 実情をあまり知らずにおりますものですから、もしそういう形でできるとたいへんけっこうだと思います。なお、今度調査会ではそういう方面の資料などももっと集めましてやっていきたいと思いますが、今度の措置というものは、実は個々の会社なり企業に対してどういうふうに影響を持つかというところまではデータをとらずじまいで、腰だめというと悪いのですが、それでやらざるを得なかったという点はございます。  それから、ただ部品の問題ですが、これはお答えにならない、私の不親切かもしれませんけれども、戦争中に軍需会社というものができまして、特別に資材の配給をやる、生産上において便宜を与えるというので始めたのでございます。ところが、いまのお話のように、それではそこに資材を提供している会社はどうだというので、軍需会社は初めは百くらいであったのが、とたんに三百にふえたが、そうすると、一体軍需会社といっても、小型部品をつくっても飯を食わずにはできないのだ、ほんとうの原料は何かといえば米ではないか、麦ではないかということで、またそれを広げるというようなことで、結局、輸出の全体をささえておるもの、それは国全体で、経済全体なんで、関連をたどってまいりますと、XプラスYになるが、そのYがまたY1ダッシュ、Y2ダッシュ、Y3ダッシュというふうに分かれていくということになりますので、どこかで区切りをつけなければならないかと思います。そうして下に下がっていけばいくだけに抽象的なものにいくかもしれませんが、その区別ができ、またそうすることによって事実下請のほうにも値切られないでやっていけるという道がほんとうにあるならば、考えていく必要が十分あると思いますので、今後の研究にまたしていただきたいと思います。
  13. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑ありませんか。
  14. 天田勝正

    ○天田勝正君 私も四点ほどお伺いしたいと思います。  第一点は、すでに成瀬委員が触れられた点と重複すると思いますが、利子所得の関係といいましても、何百万、何千万の利子所得があるという場合は、これは言うなれば所得の再配分をしなければならないのですから、そういうものは除きます。そこで、たとえばつとめ人がようやく百万円くらいの貯蓄をした、そうしていまの定期では五万円くらいのものですが、そういう利子所得がかりにある、それを二十年積み立ててみたところで、なかなか家はできないというのが現状だと思います。ところが、もともと貯蓄の目的というのは、一般的には先行きの生活のためということであって、そうすると、どうしても貨幣価値の変動ということを織り込んで考えなければならない。そういう場合に、貨幣価値のほうは年六・何%か下がってくる、最近の傾向を見れば。そうすると、五分か五分五厘の利息をもらっても、事実は一向……。それはまぼろしの所得みたいなものであって、その人の生活の将来のささえには何らなっていないのですね。ただ、将来にわたって、ゼロよりもあったほうがいいという程度のものだと思うのです。さっき言うように、利子所得を何でもかんでもという議論をしているのではなくて、多額の利子所得の場合は、所得再配分の意味で財産税的な課税内容になる。しかし、いま言ったように、少額の利子所得の場合は、話はやはり別に考えなければいかぬ。諸外国の例でいうなれば、おそらくスイスあたりへ行って、スイス・フランが二十フランあれば、いまだって二十年前とそう違わないのですね。ドルでいったって五十年間でようやく半分に値打ちが下がった。日本の場合をいうと、同じ五十年間にどうですか、学者先生方が集まっている税制調査会などではどういう計算をされているのかわかりませんが、大まかな見当で、五十年と見れば二十五分の一から三十分の一に下がっているのじゃないかと思うのです。それで、そういう織り込みをしないと、一般の国民はいつまでたっても家ができないというようなことで、もう夢を持つことさえもできない、こういうことになると思うのですが、そういうことについて検討をされたのでしょうか、されなかったのでしょうか、いかがですか。
  15. 木村元一

    参考人木村元一君) ごく低額の所得者が少しの貯蓄をした場合というお話でしたが、税制調査会では、元本が下がってくるということについてどうこうという議論はいたしませんでした。ただ、元本五十万円までは利子は免税になっております。それから、その人の所得が小さければ、かりに百万円貯蓄をしまして五万円の利子が入ってまいりましても、かりにその方が年額四十三万円しか取っておらなければ、税金はかからないわけでございます。元本に対する課税ということはもちろん考えておりません。利子金額がだんだん大きくなってきて、しかもほかにも所得がある人は、担税能力がほかの人に比べてあるだろうから、税金を取ったほうがいいのじゃないかという議論は出ております。ただ、現行では利子源泉分離で五%だけ納めればいいことになっておりますので、これでは大所得者利子の租税負担能力を考えた場合に、それこそほかに所得がなくて給与所得だけで暮らしている人に比べれば、担税能力が十分あるのに取っていないことになるだろう、そういう議論をしておったわけでございまして、百万円の金頭がだんだん減っていくということについて、特に税法考えるということはいたしませんでした。
  16. 天田勝正

    ○天田勝正君 それから先は議論になりますから、先生と甲論乙駁するつもりもありません。しかし、これは元本三十万円までのものが五十万円になった、そういうことは私も承知済みでお伺いしているのであって、四十三万円云々といってみたところで、その程度のものではとても家を建てるなんというわけには何と考えてもいかない今日だし、百万円という例をあげたのですけれども、別段これも百万円初めから親の金か何か降ってきたようにあるんじゃないんで、そいつをためていくにも、いまの率の統計で見ますと、せいぜい平均すれば年間三万ぐらいためている。それですから、そういうことをやれば、この夢自体も夢語りなんですよ。せめてそうなったものが幾らかでも夢を持てるということについては、ひとつ高額利子所得者の場合のごとく所得の再配分と考えてもいいのは別として、こういうものについては将来ひとつ考えていただきたいと思うんです。  次に移ります。今度の措置によりまして、貸し家建物償却、これが二十割増しあるいは三十割増しと、これ自体はけっこうなんですけれども、そういう場合に、一体個人の場合はどうなんですか。これは貸し家に対してですから。住宅公庫か何かで借りて、ようやくみずからの家を持った、そういう場合には、言うなれば、さっぱり恩典がない。こういうことについても議論されたのかどうなのか。貸し家をどんどん建てられる人は恩典があるけれども、みずからの家をようやく持ったというほうが骨が折れるのに、そのほうはさらさら恩典がない。これは、どうもロジックからいっても妙じゃないかと思うんです。  それから、もう一つ、これは現行制度ですが、ある不動産を売って別の不動産を取得した場合には、これは制度上いろいろ特典がある。ところが、実際わずかなものを持っいるがゆえに、未亡人になってしまっても生活保護も受けられない、そういう人は財産処分するほかない。そうすると、財産処分したことについては税金がかかってくるけれども、そういうありさまだから、別の同額にひとしいようなものを他に買うということはとても不可能なんです。そういうときは税金だけ取られて、一つもどこからも調整措置というものはない、こういうものも出てくるんですね。これは今度の改正とは別の例を引いたんですが、そういうことで、これまた今度のときはやむを得ないとかという結論でこうなったんじゃないかと思うんですけれども、こういう点についての御議論がなされましたか。
  17. 木村元一

    参考人木村元一君) 自家用家屋の償却ということは、所得をどういうふうに考えるかという根本の問題にひっかかるんでございまして、貸し家その他企業としてやっているものについては減価償却を認めるという制度があり、またそれを割り増しをするといった特別措置が今度出てきたわけでございますけれども、家を持ったその家の減価償却考えるということになりますと、企業とそれから家計というものとの区別がつけにくくなってしまう。で、まあ基礎控除であるとかあるいは扶養控除であるとかいうものは、最低生活費という形でもって課税所得から除外する。これは各国ともやっておるし、理屈の上からもわかるんでございますけれども、家を持ったその家の償却を給与なら給与の所得から引くという制度は、所得税考えておる所得というものに何か根本的な変革を加えないとちょっとできないんではないかと、かように考えております。  それから、未亡人その他家庭の事情で自分の財産を処分したときに何ら恩典がないということは、これはもう絶えず税制調査会でも議論が出ております。ただ、現行の制度では、株式の売買による利益、資本利得は課税の外にございますが、財産の売買については課税をしておる。そこに、二つの間に大きな差別的な方式がとられておる点については問題があるんでございますが、一般的に資産所得を免税にするということであれば別でございますけれども、資産所得課税するという前提に立って、未亡人の場合はどうだ、子供だけ残った場合はどうだというふうに、一々優遇を考えることは、私どもいまのところ考えておりません。ただ、かりにそういう場合の基礎控除なり免税点なりを引き上げるという形で考えることは、絶えずやっておりますけれども、個別的にその人の事情に応じた資産所得の取り扱いの差別というものは考えていないのでございます。
  18. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは議論になりますから、議論の部分はやめます。  それから、次は土地の問題についてですが、これは固定資産税の関係もありますけれども、また一面、所得税の譲渡所得というような関係にもなります。いま土地が非常に上がったといってみたところで、土地そのものは、本来工業製品のようにだれかが製造したものでもない。地球をつくったという人は一人も聞かない。そこで、値上がりになって処分しても、同一条件のところをまた別に取得する場合、どこにももうけが出ない。同一条件である限り、かりに同じ値段で買っても、登録税だけはどうしても損をする、こういうことになっているのです。これはえらい利益になるのだというものの考え方は、どうも私はおかしいじゃないかと思う、私個人としては。この間も予算委員会議論したのですが、固定資産の例をあげるんですけれども、たとえば赤坂あたり坪当り百六十二万円くらいします。固定資産の再評価というものは、徐々ではあるけれども、時価主義で持っていく、こういうのですね。それについては、政府税率調整をやるから増税にはならないのだ、こう言う。ところが、いま「ミカド」みたいにもうけている連中はいいだろうが、すぐそばで三十坪くらいの屋敷をかまえている、これは先祖伝来のものですから、それが再評価されようがされまいが、その人が使う上においては何も価値としては違わない。けれども、特価主義でやれば、これはたちまち五千万円の資産になってしまう。税率調整をやって十分の一に下げられてみたところで、ちっともつとめ人である限りその税金すら納められない、こういうことになる。これはいま一つの例ですけれども、だから、先生にこのことでどうという質問をするつもりはありません。  そこで、譲渡所得の場合なんかも、いまの極端な例でおわかりのように、私は埼玉ですから、みんな売ってえらくもうかったつもり、人もそう思っている、当人もそういう錯覚に落ちて、二年もたつと雲散霧消なんだ。あたりまえなんです。えらく高く売ったつもりだけれども、次三男をそこへ来た工場へつとめさせるために、今度屋敷を買う。これは千坪くらい売ったのが、五十坪くらいの土地を買えばなくなってしまう。あたりまえだ。売ったときよりも非常に高くなっている。ですから、私はこういう議論が少なくとも税制調査会あたりでは微細に出べきだ。このことは歴史にもないほどの変動だから、こういう妙なものが出てきたんですね。こういう点についても何か有力な御意見があれば、ひとつ参考に聞かしていただきたいと思います。
  19. 木村元一

    参考人木村元一君) 譲渡所得が普通の正規の所得とは違うということは、これはもう理論的にもはっきりしていることでございますが、経済の原則から申しますと、議論になるのかもしれませんけれども、赤坂で昔からの土地が五千万円になったということは、やはり一種の不労所得じゃないかと思うのでございます。ただ、それを売らないで、実現しないのに税金がかかってくるものとしては固定資産税というものがあるのでありまして、その固定資産税を時価まで一ぱいに持っていっていいかということについては、いま固定資産税を特に取り上げております地方税制部会でもって、この一年の間に結論を出そうというので、いろいろ議論をしておられるようでありますが、どのように考えていいものか、私もまあ私見はありますけれども、今後の検討を待つ段階にあるのであります。  土地がどんどん上がっていくという状況を考える場合には、他方では、同じ条件の土地でありながら、さびれてきて、だんだんだんだん値打ちが下がってきておる人も他方にはいるわけなんであります。こちらにおられる場合には同じ条件でございましょう、赤坂におられるといった場合には、同じ条件であるというのであれば、土地が下がっていくような条件のときには、あそこは同じ条件になるというのではございませんのでしょうか。私どもはそういう土地をお持ちになっておられる方と土地を持っておられない方との間の担税能力の違いということに着目するわけなんで、経済的にいえば、ある土地の状況が変わってきて、時価がそれだけ動いている、それはその時価を考えますのがいいのか、あるいは収益価格で考えるのがいいのか、居住地の場合に売買実例をそのまま適用するのがいいのか、つまり評価のしかたの問題については今後考えなければならない問題がたくさんあるだろうと思います。
  20. 天田勝正

    ○天田勝正君 これもお願いしておきますが、これから特価に固定資産を修正していくのがいいかどうかというお話でありますけれども、そうじゃなくて、評価をし直すということは時価に直すのだ、政府の方針ははっきりしている。これは仮定の議論ではなくて、そうなんです。ただ、今度の場合は、あまりそうなると差しさわりができるし、それから私が指摘したような混乱が予想されるために、実は暫定的に、極端なことばを用いるならば、ごまかしで二〇%評価がえ、こういうことになっている。ですから、やはり現実の問題としてひとつ御検討賜わりたいと思います。  最後に、もう一点、退職所得が従来よりもよくなっております。ところが、いままでずっと申し述べましたように、さてこれがささやかながら家を持つというような場合には、とうていこの程度のものでは、なおかつなかなか家を持つのが困難だ。ですから、私はこの問題ではやはりそういう人間の衣食住の中の住という最低限のものは、ちょうど生活費に税金をかけないという論理と同じように扱ってしかるべきだという考えを持っています。それで、これについては、税調等では将来ずっとまた別の意見を出していくという考えでおられるのか、もうこれは当分この程度にしておくということなんでしょうか、どちらでございましょうか。
  21. 木村元一

    参考人木村元一君) 退職所得は、いまの税金が累進構造をとっているために、一時にもらった、そのもらったときの金額で非常にたくさんかかるということを緩和するという方針できているわけでございまして、現に分離課税方式をとっている。それから、今度の措置で十分かどうかは問題があろうと思いますが、いままで小刻みに基礎控除金額を出しておったものを、一律一年について五万円ですか、したがって五十年つとめれば二百五十万円までは免税にする、こういう方式に変えたわけでございます。それで十分かどうかということは、今後なお検討する予定になっております。
  22. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御発言もないようでございますから、参考人に対する質疑は終了いたしました。  木村参考人には、長町間にわたり、貴重な御意見を述べていたいだて、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼申し上げます。   —————————————
  23. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) この際、相続税法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案自動車検査登録特別会計法案国立学校特別会計法案、とん税法及び特別とん税法の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案日本開発銀行法の一部を改正する法律案、「地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件」、北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案、以上十一件を一括議題とし、本案につきまして順次補足説明を聴取いたします。  なお、関税定率法等の一部を改正する法律案及び北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案の両案は、衆議院において修正議決せられております。この際、あわせて政府委員から便宜衆議院の修正点について説明を求めることになっております。  それでは、順次御説明を願います。泉主税局長。
  24. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 相続税法の一部を改正する法律案につきまして、補足説明を申し上げます。  今回の相続税法改正のおもな点は三つございます。  一つは、相続税法第十五条に規定いたしておりますところの相続の場合の基礎控除額の引き上げてございまして、これは従来遺産に対する相続にあたりましては二百万円と相続人一人当たり五十万円との合計額を控除することとしておったのでありますが、その点につきまして、二百万円を二百五十万と五十万円引き上げました。したがいまして、二百五十万円と相続人一人ごと五十万円、この合計額を控除することにいたしたのであります。たとえば相続人が五人おりますと、二百五十万円と、一人当たり五十万円ずつでございますので、それが二百五十万円、合計五百万円までは課税にならないという制度にいたしたのでございます。  そうして、これに関連するわけでございますが、相続税が課税になるかどうかということはいまの控除額できめまして、その後に相続いたしました者あるいは遺贈によって財産を受け取りました者が、全体の相続税の額のうちで自分らがそれぞれ幾ら負担するかということにつきましての控除額、これは相続税法の十七条に規定しておりますが、これは相続または遺贈による場合には七十万円、被相続人からの相続人に対する遺贈以外の遺贈の場合におきましては四十万円を控除することにいたしておるのでございます。  改正の第二点は、贈与税基礎控除でございまして、これは従来二十万円でございましたのを四十万円に引き上げることにいたしておるのでございます。それと同時に、三年以内に同一人から贈与がありました場合、従来は十万円をこえる財産を取得した場合に、その十万円をこえる部分について三年間累積課税をいたしておったのでござ  いますが、今回贈与税基礎控除を四十万円に引き上げましたのと関連いたしまして、年々の贈与のうち同一の贈与者からの部分は二十万円をこえる部分だけ三年間の累積課税するということにいたしたのでございます。  その次に、改正の第三点は、民法の改正によりまして、相続財産の一部または全部が相続人がいないために被相続人の死亡の際看護等をいたしました者に特別に分与される制度が設けられたのでございますが、この制度につきましては、その実態からいたしまして、相続人から遺贈によって取得したものと同様に見ることが適当であるという考え方から、従来は一時所得といたしておりましたのを、遺贈によって取得するものというふうにいたしております。それが三条の二の改正でございます。それに応じまして、二十九条に、そういうことを知った日の翌日から六ヵ月以内に申告を要するということに規定いたしておるのであります。   —————————————  その次、物品税法改正につきまして補足説明を申し上げますと、これは内容二つございます。  一つは、昭和三十七年品に物品税の全面的改正をいたしました際、他の課税品目との権衡上、新たに課税することにいたしましたものが九品目でございます。そのうちステレオ、パッケージ型ルームクーラー、カークーラー、冷風扇、脱水式洗濯機、冷水器及び芝刈り機の七品目につきましては、暫定的に一〇%の軽減税率になっておるのでございます。それらの軽減税率期限が本年の三月三十一日限り、あるいは九月三十日限りで到来いたしますので、検討を加えましたあげく、七品目のうちステレオ及びパッケージ型ルームクーラー、カークーラーのこの三品目につきましては、それを二年間暫定軽減税率を続け、その他の四品目につきましては、期限到来と同時に本来の税率に復するということにいたしておるのでございます。  第二点は、従来物品税の場合におきましては、未納税移入をいたしました場合には、その移入をしました日から十日以内に税務署長に移入をしたことの申告をしなければならないことになっておるのでございますが、未納税移入の回数が多うございますと、納税者にとっても手数でございますので、そういう回数の多い場合におきましては、一カ月ごとに取りまとめて未納税移入の申告をすればよいということにいたしまして、手続の簡素化をはかろうとするものでございます。   —————————————  その次に、揮発油税法及び地方道路税法改正内容につきまして、補足して申し上げますと、これにも二点ございます。  一つは、揮発油に対する揮発油税及び地方道路税を引き上げようとするものであります。揮発油税につきましては、従来一キロリットル当たり二万二千百円のものを一〇%、二千二百円引き上げまして、二万四千三百円にし、地方道路税につきましては、一キロリットル当たり四千円の税率を一〇%、四百円引き上げまして、四千四百円にするのでございます。その結果、揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の合計額は、一キロリットル当たり二万六千百円から二万八千七百円に引き上げられるのでございます。  第二点は、やはり物品税の場合と同じように、未納税移入をいたしました場合に、従来は移入した日から十日以内に税務署長に申告しなければならないことになっておったわけでありますが、これを事務の簡素化のために、月まとめにいたしまして、翌月十日までに申告すればいいということにいたしたのでございます。  以上をもちまして、三案の補足説明を終わらしていただきます。
  25. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 相澤法規課長
  26. 相沢英之

    ○説明員(相沢英之君) 次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明をいたします。  この特別会計の農産物等安定勘定は、提案理由説明の際にも申し述べましたように、本来、農産物価格安定法に基づき政府の行なう農産物等、すなわち、カンショでん粉、バレイショでん粉等の売買に関する経理を明らかにするために設けられた勘定でございますが、この勘定におきましては、従来、農産物等に関する経理のほか、さらに、暫定的に、旧てん菜生産振興臨時措置法の規定によるてん菜糖及び飼料需給安定法に規定する飼料需給計画に基づく輸入飼料の買い入れ、売り渡しに関する経理もあわせて行なってきております。  しかして、この勘定設置本来の趣旨にかんがみ、ただいま別途前国会から引き続き御審議をお願いいたしておりますところの甘味資源特別措置法案の中で、この特別会計法の一部を改正し、同法に基づいて政府の行なう国内産糖または国内産ブドウ糖の売買につきましては、昭和三十九年度からは、新たに砂糖類勘定を設けてその経理を行なうことといたしておりますが、さらに、輸入飼料につきましても、その売買数量及び金額が農産物等の数十倍に達しておる状況にかんがみ、この際新たに輸入飼料勘定を設け、その経理を行なうことといたした次第でございます。  次に、今回新たに設けますところの輸入飼料勘定の代組みについて御説明いたします。  まず第一に、輸入飼料勘定の歳入歳出については、輸入飼料の売り渡し代金、調整勘定よりの受け入れ金、一般会計よりの受け入れ金、その他付属雑収入をもって歳入とし、輸入飼料の買い入れ代金、輸入飼料の買い入れ、売り渡し及び交換に関する諸費、業務勘定及び調整勘定への繰り入れ金、その他付属諸費をもってその歳出とすることといたしております。  第二に、この勘定における輸入飼料の買い入れ代金の財源に充てるため必要があるときは、食糧管理特別会計の負担に属する一年以内に償還すべき証券を発行しまたは借り入れ金の借り入れを行なうことができることといたすとともに、輸入飼料の買い入れのため当該年度内における資金繰りに充てるため必要があるときは、この会計の負担において、当該年度内に償還すべき証券を発行しまたは一時借り入れ金の借り入れを行なうことができることといたしております。  第三に、この勘定において、損益計算上利益が生じた場合には、この勘定の積み立て金として、積み立て、損失が生じた場合には、この勘定の積み立て金を減額してこれを整理し、整理できない部分については、これをこの勘定における損失の繰り越しとして整理することといたしております。  第四に、この勘定において売り払う輸入飼料については、飼料需給安定法第五条第三項において、その売り渡しの予定価格は、その原価にかかわらず、国内の飼料の市価その他の経済事情を参酌し、畜産業の経営を安定せしめることを旨として定めるべき旨が規定されておりますので、コストを割った価格で売り払うことがあり得るわけでございます。このように損をしてまで売り払うこととするのは、畜産振興のための国の施策としてこれを行なうがためでありますので、それにより生ずる損失については、一般会計からこれを補てんして埋めることができるようにする必要が考えられるわけでございます。  このため、本特別会計法第六条ノ二ノ三第二項に規定を設けまして、輸入飼料勘定に生ずる損失を補てんとするため、予算の定めるところにより一般会計から繰り入れができることといたしております。昭和三十九年度におきましては、一般会計から三十六億円を繰り入れる予定にいたしております。  第五に、以上のほか、輸入飼料勘定の設置に伴って必要な規定の整備をはかるとともに、農産物等安定勘定から分離して新勘定を設けるのに伴って必要な経過的な取り扱いについて規定をいたしております。  以上が、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明でございます。   —————————————  次に、自動車検査登録特別会計法案の提案理由の補足説明をいたします。  さきに、提案理由の説明において申し上げましたとおり、政府におきましては、近年における自動車の激増に伴い、自動車の検査及び登録事務が増加したことにより、その処理体制の改善をはかる必要があると考え、所要の予算を計上して別途御審議をお願いしておりますが、その経理につきましては、特別会計を設置して一般会計と区分して経理することが適当であると考え、ここにこの特別会計法案を提出した次第であります。  御承知のように、自動車を運行の用に供するには、道路運送車両法の規定するところにより、自動車登録原簿に登録し、また検査を受けて自動車検査証の交付を受けなければならないこと等の規制をいたし、自動車の所有権の公証、安全性の確保をはかること等により、公共の福祉の増進に資することといたしておるのであります。一方、これら道路運送車両法の規定による検査及び登録を受けようとする者は、同法の定めるところにより所定の手数料を納付しなければならないこととされておりますが、その収入は従来からおおむね検査及び登録事務に必要な経費をまかなう程度の額になっておりました。そこで、これら検査及び登録手数料の収入をもって特定の歳入とし、自動車の検査及び登録を行なう陸運事務所の人件費、施設整備の改善等のための特定の経費に充てることとし、一般会計と区分して経理するため特別会計を設けることが、自動車の検査及び登録事務の円滑なる運営を確保する上において効果的であると考えたのであります。この会計の歳入の大宗は、言うまでもなく、自動車の検査、登録の手数料でありますが、この手数料は従来すべて収入印紙をもって納付され、一般会計の収入となっていたのでありますが、今回、別途提案して御審議をお願いしております道路運送車両法の一部を改正する法律案によりまして、この手数料は特別の印紙をもって納付され、この特別会計の歳入となることとなっております。昭和三十九年度におけるこの会計の歳入予算額は十五億円余となっており、一方、業務取り扱い費等の歳出予算は予備費を含めて同額となっております。  この特別会計は、運輸大臣が管理いたしますが、検査及び登録事務は、具体的には全国九カ所の陸運局及び六十一カ所の陸運事務所において行なわれるわけであります。  その他、この特別会計法におきましては、この会計の予算及び決算の作成及び提出、決算上の剰余金の処分、余裕金の資金運用部への預託等、この会計の経理に関し必要な事項を規定いたしております。  以上、自動車検査登録特別会計法案の提案理由を補足して説明をいたしました。   —————————————  次に、国立学校特別会計法案の提案理由の補足説明をいたします。  さきに提案理由の説明において申し上げましたとおり、政府におきましては、教育の重要性にかんがみ、国立学校の施設の整備及び内容の充実につきまして、従来から特段の配慮をしてまいったのであり、昭和三十九年度におきましても、同様の方針のもとに所要の予算を計上して、別途御審議をお願いしている次第でありますが、御承知のとおり、学校の管理運営は一般の行政事務とは異なる点が多く、一般会計の中において経理することは、実情に適したい面があり、学校の内容の充実について不利不便を生ずる場合も少なくないといわれております。  国立学校の会計につきましては、遠く明治二十三年に官立学校及び図書館特別会計が設けられ、その後大学についても特別会計が設けられ、自来数次にわたり制度改正が行なわれ、昭和十九年両特別会計を統合して学校特別会計が設けられ、終戦後、昭和二十二年に同会計は廃止されましたが、この間五十七年間の長きにわたり一般会計と区分して特別会計において経理されてきた沿革があります。  右のような次第で、種々検討いたしました結果、近年における教育研究の進展に対処するには、財政法、会計法の一般原則に対して特別の規定を設け、特別会計において経理することが一そう効果的であると考え、ここにこの法案を提出した次第でございます。  この会計の昭和三十九年度の予算規模は、歳入においては千三百九十四億円余でございますが、このうち千百四十五億円余は一般会計からの繰り入れであり、歳入の大宗を占めておりますが、付属病院等収入並びに授業料及び入学検定料等の自己収入も二百三十九億円余となっております。なお、このほかに、病院施設の整備の財源の一部に充てるため、十億円の借り入れ金を予定しております。歳出は、歳入と同額でございますが、その内訳は、国立学校経費八百一億円余、大学付属病院経費二百十五億円余、大学付置研究所経費百三億円余、国立学校の施設整備費二百七十三億円余、その他予備費を含め一億円余となっております。なお、歳出予算のほか、施設の整備の促進をはかる等のため、特に四十七億円余の国庫債務負担行為を計上しております。  次に、この特別会計の特色及び利点について御説明いたします。第一は、歳計剰余金のうち、一定額は積み立て金として積み立て、これを後年度において施設整備に充てることができることであります。第二は、この特別会計においては付属病院の施設整備の財源の一部に充てるため、長期借り入れ金ができるので、これによって施設整備の促進がはかれることであります。第三は、国立学校所属の財産で不用となったものを処分し、その処分収入を国立学校の施設整備費等に充てることができることであります。そのほか、この法律に規定されている事項ではございませんが、予算総則に弾力条項を設けることによって、歳入予算をこえる収入があった場合、病院等の事業費の増加に充てることができることとなる等、一般会計におけるよりも経理の弾力的運用ができるようになっております。  特別会計法案の内容につきましては、以上のほか、従来の特別会計法の例にならって所要の規定を設けることといたしておりますが、主として経理技術的なものでございますので、その説明は省略させていただきます。  以上、簡単でございますが、国立学校特別会計法案の提案理由を補足して説明させていただきました。
  27. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 佐々木関税局長。
  28. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 次に、簡単に、とん税及び特別とん税法の一部を改正する法律案につきまして、補足説明を申し上げます。  この法律案は、御説明申し上げましたように、現行の税率を二倍にしようとするものであります。この税率を二倍にすることによりまして、増収見込み額は二十六億三千二百万円を見込んでいるわけでございますが、このうち外国船主の負担増加見込み額は十五億七千八百万円と見ておるわけでございます。  とん税及び特別とん税の引き上げは貿易外収支の改善を目的といたしておるわけでえざいますが、いま申し上げました十五億円余はこの貿易外収支改善に役立つと思われますけれども、その金額は約四百万ドルと見込んでおるわけであります。現行の経済見通しでは、貿易外収支の赤字は三十九年度につきまして五億ドル余になっておりますので、そのウエートは小さいとは思いますが、小さいものを積み上げて改善しなければならぬような情勢になっておるものと考える次第でございます。  このとん税、特別とん税を三倍に引き上げ、ました倍率をきめた考え方は、外国に比べますというと、現在の同種のものに比べまして、日本の場合においてはかなり安いというところから来ておるわけでございます。現在のわが国で取っておりますとん税及び特別とん税を外国に比べますと、横浜港におきまして七千トンの船が入ったという想定でやりますというと、これが二百ドルということになります。これを一〇〇としまして、同じ船が外国の港に入りました場合を考えてみますというと、ニューヨークにおきましてはこれに対して約二割高でございます。ロスアンゼルスというようなアメリカの港は、横浜を一〇〇としますと、一二〇ぐらいになっております。ロンドンは三八二ということで約四倍になっておる。ハンブルグは一七九、ロッテルダムは二四七、低いところはシンガポールが七九、香港は一八というふうな数字になっております。調査いたしました主要な十二港を平均してみますというと、二〇三という数字になるように思います。そこで、二〇〇程度にすれば大まかに見まして諸外国並みであるというところ、また限度であると見られるところでございます。  また、提案理由説明におきましては本邦船の負担等御説明申し上げましたので、それを数字によって申し上げますというと、とん税及び特別とん税の引き上げによりまして、本邦船主にとりましては十億五千万円余の負担増を生ずるという見込みが出てまいります。これに対しましては、別途固定資産税の非課税措置がとられまして、十二億一千万円余りの負担減となりますと計算できますので、結果としては本邦船主の負担は一億六千万円ぐらいの減となると見込むものでございます。また、地方公共団体におきましては、固定資産税の非課税措置によりまして収入が減ることになります。さっきの数字十二億千六百万円というのが地方公共団体の収入減となるわけでございますけれども、特別とん税で譲与される額が十四億六千万円余り増加となりますので、これを全体といたしますれば、地方公共団体のほうも二億四千万円の収入増ということになりまして、こちらのほうの問題も解消すると見込んでおるのでございます。結局、外国船主の負担増十五億七千万余りが、外貨収入の増四百万ドルになっておる、こういうことでございます。   —————————————  次に、関税定率法等の一部改正法律案の補足説明を申し上げます。  この法律の主要な目的は関税率改正にあるわけでございます。関税率は、御承知のように、関税定率法と関税暫定措置法で定められておりますので、これらの法律の一部を改正することにお願いしておるわけでございます。  法律案そのものは、文書をごらんになりましても非常におわかりにくいと思われますので、参考資料をお手元まで提出してございます。この参考資料をごらんになりますと、引き上げになります品目は二十品目、引き下げになりますのは四十四、あと従量税率に切りかえるもの二、従量従価選択税率に変えますもの二、関税割り当て制度を採用するものが二つ、これを廃止するものが八つ、その他が四品目、会計八十二品目となっておるわけでございます。これは実際に徴収します税率が変わってまいりますものを取り上げて表にしてお示ししてございます。  また、暫定措置で、本年三月三十一日に適用期限が参りますものが八十四品目ありますが、このうち四十五品目につきまして適用期限を延長することとして資料に掲げてございます。四十五品目以外のもののうち、二十一品目は暫定税率を廃止いたしまして基本税率に戻すことになるものでございます。残りの十八品目は基本税率または暫定税率を変更いたしますもので、前の分に含まれておるものでございます。  ところで、内容的に申しまして、今回の関税率をいろいろ改正いたします際に問題になります点は、第一は、現在ガットにおきまして関税一括引き下げ交渉が討議されておりますこととの関係であろうかと思うわけでございますが、関税一括引き下げにつきましては、わが国としましても貿易拡大の見地から参加する方針をとっておりますので、関税率を引き上げることになります品目につきましては、特に慎重な配慮をいたしまして、やむを得ないものに限っております。将来関税一括引き下げによりまして関税が下げられることによる損失を見越しまして、前もって上げておくというようなことは、国際信義上いろいろ問題が起きますので、避けておる次第でございます。  それからまた、最近、低開発国産品の関税につきましても、ガット、国際連合等におきまして検討されておるところでございますが、今回の改正におきましても、カリン、ツゲ、タガヤサンその他の南方材につきまして、素材、製材、加工材の現行関税率二〇%を暫定的に無税とする措置等を提案いたしておりまして、このような後進国の産品につきましても、可能なものはできる限り関税率引き下げるように配慮した次第でございます。  さらに、最近の経済情勢の変化に応ずるために、関税率の調整という点から見ますると、自由化問題に関連したものが非常にウエートが大きいかと思うわけでございますが、自由化との関連でこの関税率改正を申し上げますと、近く自由化される予定のもののうち、現在の関税率でそのまま自由化いたしましては国内産業に著しい影響を受けることが明らかなものにつきましては、関税率を引き上げることにいたしておるわけでございます。映画用の天然色フィルム等がその例の一つでございますが、現行の基本税率三〇%を四〇%といたしました。また、ボイラー、蒸気タービン、発電機の税率につきましても、基本税率一五%を二〇%に引き上げることにいたしておるわけでございます。これらが自由化に対処するために引き上げた例でございます。また、しょう脳、重過燐酸石灰につきましては、近くこれも自由化する計画が立てられておるわけでございますが、その自由化後の衝撃を考えますと、現行の関税率では国内の企業の保護のために十分であるとは言えないものがあるわけでありますが、他方、需要者にとりましては関税率引き上げということがコストに影響いたしますので、この二品目につきましては関税割り当て制度を採用いたしまして、生産者と需要者との利害の調整をはかっておるわけでございます。しょう脳につきましては、現行の税率二〇%を、一次税率八%、二次税率三〇%の関税割り当てを実施することにいたしておるわけでございます。重過燐酸石灰につきましても、自由化の日から暫定的に関税割り当て制度を一次無税、二次一五%という形で実施する計画をいたしておる次第でございます。  一方、すでに自由化いたしております品目で、自由化後の衝撃を避けますために、すでに断定的に関税率を引き上げておったものがございます。自由化後のいろいろな情勢を見まして、それほど衝撃が出てこなかったものにつきましては、断定税率を引き上げておく必要がないと認められるものも出てきました。揮発油販売用ポンプ、コック弁等がそれでございますが、こういうものは基本税率に戻すことにいたしております。また、フェロマンガン、フェロモリブデン、腕時計のように、自由化後の情勢を見てまいりますというと、そう波乱はないけれども、この際直ちに基本税率に戻しますこともまた無理であると認められるものにつきましては、各産業の実情に照らしまして、現行断定税率を若干下げまして基本税率に近づける、すぐは戻しませんけれども、順次近づけるという措置を講じておる次第でございます。  なお、自由化に関連しまして、関税割り当て制度を採用いたしましたもののうち、シードラック、くえん酸カルシウム等、その後の推移を見ますというと、関税割り当て制度を存続する必要がないと認められるものも出てまいりましたので、これら八品目につきましては廃止することをお願いいたしておる次第でございます。  自由化に関連いたしますもののほか、国外の生産事情と申しますか、供給事情から見まして、国際価格が下がること、かどうも明らかだと判定されますものにつきましては、従量税率を採用いたすことにいたしたものがございます。また、ナフサ、ジイソプロピルベンゼンのように、消費量の増大または技術の進歩に伴いまして原料の輸入が必要となってきたものにつきましては、製品の価格の関係を考えまして、これらの原料の関税率引き下げるという措置もまたとっておる次第でございます。  なお、品目別におもだったものについて若干申し上げますというと、まず申し上げなければならないのは肉類かと思うのでございますが、肉類につきましては、従来一律に一〇%という関税を定めてまいっております。しかしながら、牛肉、豚肉及び家禽肉につきまして個別的に検討しますというと、それぞれの内容に応じまして新しく税率を変える必要を認めたものでございます。  まず、牛肉につきましては、国産の肉は土地の関係、牧草の関係等によりまして、オーストラリア、ニュージーランドに比較いたしますと、なおかなり割り高になっております。現在のところ農林省でいろいろ肉専用牛への改善や生産コスト低下のための諸方策を企図いたしておりますが、関税も国産保護にふさわしい税率を定める必要がある。一方、国内需要を満たすためには今後も輸入に依存しなければならないと考えられますので、消費者の立場、生産者の立場を考慮いたしまして、現行の基本税率一〇%を二五%にすることを提案いたしておる次第でございます。  次は、豚肉でございますが、豚肉価格はきわめて変動が大きいこと御承知のとおりでございます。ところが、これは国内価格が騰貴いたしましたときに国外価格もまた高いというふうな実情になっておりまして、輸入をしますと損をするというかっこうが出てきます。このような事態に対処しますために、国外からの輸入品の価格が高いときには、そうしてまた国内の豚肉の価格が高くて輸入せざるを得ないというときには、関税を減免する制度を提案いたしておる次第でございます。しかしながら、国内養豚農家の保護にも十分配慮をする必要がありますので、豚肉の国内価格が安定上位価格を上回った場合に限り発動する仕組みに提案いたしております。  次は、鶏の肉でございますけれども、これは御承知のように、アメリカとEECの問題におきまして、チキン戦争というものが行なわれたような経緯がございます。若干その影響かと思われますけれども、EECへの輸出が減退し、わが国への輸入がまた最近急速に伸びてまいりました。わが国の養鶏は、わが国の特異な廃業でもございますので、大企業としては経験も浅く、今後大いに伸びると考えられますので、これを保護しますために、現行の税率一〇%を二〇%にいたしております。  次に、問題になりますのは非鉄金属類かと思いますが、特に鉛亜鉛は問題であるかと考えられます。この二品目につきましては、通産省の鉱業審議会で合理化計画等を定める等、鋭意改善に努力をされておりますが、この審議会の結論等にかんがみまして、鉛につきましては、現行税率一〇%をキログラムあたり十三円に直すことを提案いたしております。そうしてこれにつきましては、国際価格の変動が激しいものでございますから、輸入価格が高騰した場合においては、需要者の立場を考慮いたしまして、関税が低くなりますように、輸入価格が安くなりました場合には、国内の産業保護の目的を達しますために、関税が高くなるというふうな弾力的な制度を提案いたしているわけでございます。現在のところ国際価格が高くなっておりますので、この制度を適用いたしますというと、関税は軽減されるという見込みでございます。  このほか、工作機械等につきましては、国産の可能になりましたものは、国産保護のために税率を上げるというような措置を講じております。  最後に、バナナの関税でございますが、お手元に資料が回っておりますように、政府原案では、現行暫定税率七〇%を、既定方針によりまして五〇%に引き下げることを提出いたしました。それを昭和四十年三月三十一日までということにいたしておりましたが、衆議院におきまして修正をせられまして、昭和四十年三月三十一日までの間現行暫定税率七〇%に据え置くことができるというふうに改められましたので、御報告申し上げます。  あと、端数計算等の点につきまして、関税法改正いたしたものでございます。よろしくお願いいたします。
  29. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 高橋銀行局長。
  30. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 日本開発銀行法の一部を改正する法律案の補足説明をさせていただきます。  日本開発銀行が、設立以来長期設備資金の融通を行ない、わが国経済の再建及び産業の開発に寄与してまいりましたことは御承知のとおりでありまして、昭和三十八年十二月末における同行の融資残高は八千二百五十九億円にのぼっております。二十九年度におきましても、産業基盤の充実強化、国際競争力強化のための産業構造の高度化、産業体制の整備、地域開発の促進等に寄与する企業を対象として千二百八十八億円の融資を予定しております。今後におきましても、わが国経済の長期にわたる安定成長をはかる上において、同行の業務活動に期待するところはきわめて大きいものがあると考えます。  次に、今回提案いたしました改正法案の概要を申し上げます。  第一は、同行の業務として土地造成資金の貸し付け業務を追加することであります。  近年、地域間の均衡ある発展をはかるため地域開発がますます重要なものとなっております。日本開発銀行におきましても、地域開発の促進に資するため、昭和三十四年度より地域開発融資を行なっておりまして、昭和三十八年十二月末における地域開発融資の残高は五百四億円に達しており、三十九年度におきましては二百八十億円の融資を予定しております。  この地域開発のためには、企業の進出等に対処するため用地の造成が必要でございます。現行の日本開発銀行法におきましては、自己の事業の用に供する土地の取得資金につきましては融資を行なうことができることとなっておりますが、このたびこれに加えまして、経済の再建及び産業の開発に寄与する専業の用に供する土地にあっては、譲渡を目的とする土地の取得造成資金についても融資の道を開き、一段と地域開発の促進に資することとしたいのであります。  第二は、同行の業務量の増大と業務範囲の拡大に対処するため、理事及び参与の現在の定数をそれぞれ一名増加して八名及び六名としようとするものであります。同行の融資残高は、昭和二十六年度末の九百六十一億円から三十八年十二月末には八千二百五十九億円と大幅に増加しております。また、その業務内容につきましても、設立当初においては基幹産業に対する融資を中心に運営されておりましたが、その後機械工業、輸出産業等融資対象も拡大し、さらに地域開発融資が加わるなど逐年多様化いたしております。このような事態に対処し、同行の業務の円滑な運営をはかるために理事及び参与の定数をそれぞれ一名増加しようとするものであります。  以上、この法律案について補足して御説明申し上げました。
  31. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 泉主税局長。
  32. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 「地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関した承認を求めるの件」について、補足して説明を申し上げたいと存じます。  本件は、まず第一に、横浜税関に小名浜税関支署を設置しようとするものであります。  福島県所在の小名浜港には、現在、横浜税関の出張所が置かれておるのでございますが、同出張所は、本関から約二百三十キロメートル離れております。また、同地区は新産業都市指定区域に属しておりまして、近年港湾造成一計画により小名浜港が整備されまして、今後相当の貿易量及び取り扱い事務量の伸びが予想されているところであります。したがって、この際、同出張所を福島県及び茨城県を管轄する支署として独立性を与え、現地における税関業務をさらに迅速から円滑に処理し得るようにしようとするものであります。  次に、税務署の設置について申し述べます。  東京国税局管内の墨田税務署の管轄区域である墨田区、江東税務署の管轄区域である江東区、川崎税務署の管轄区域である川崎市及び名古屋国税局省内の名古屋西税務署の管轄区域である西区、中村区は、いずれも最近の目ざましい経済的発展の中心地帯となっております。  これに伴いまして、これらの地域の納税者数、徴収決定税領等は著しく増加しておるのであります。最近十年間について見ますと、法人数は約一・七倍ないし四倍、徴収決定税額は約二・七倍ないし八・五倍と増加しておるのであります。税務署の事務量の限界に達し、税務指導等納税者に対するサービスの面でも、事務管理面におきましても支障を生じようといたしております。  このような事情に対処するため、墨田税務署を分割して、旧向島区を管轄する向島税務署、江東税務署を分割して、旧城東区を管轄する江東東税務署、川崎税務署を分割して川崎市北西部の中原地区、高津地区及び稲田地区を管轄する川崎北税務署、並びに、名古屋西税務署を分割して、中村区を管轄する名古屋中村税務署を新たに設置するものであります。  次に、名古屋国税局管内の昭和税務署の管轄区域である昭利区、瑞穂区及び千種区は、最近急送に発展いたしまして、これに伴いまして、納税者及び課税物件は年々増加し、最近十年間について見ますと、法人数は二・三倍、徴収決定税願は三・六倍の伸びを示しております。これまた税務署の事務量の限界に達し、納税者に対するサービスの面でも事務管理面でも支障を生じようとしております。  このようだ事情に対処するため、昭和税務署を中心といたしまして周辺の税務署の管轄区域を再編成いたしまして、署の規模の適正化をはかる必要があるのであります。この結果、新たに名古屋市の北区及び守山区を管轄する名古屋北税務署を設置しようとするものであります。  以上申し上げましたように、今回の五税務署の設置は、事務処理体制の確立をはかり、納税者の便宜と税務行政の円滑な運営を期そうとするものであります。  以上をもちまして補足説明を終わります。
  33. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小島監理官。
  34. 小島要太郎

    政府委員小島要太郎君) 北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を補足して御説明申し上げます。  第一は、資本金に関する条文の改正であります。従来、北海道東北開発公庫の増資のためには、政府の追加出資についての国会の予算審議とあわせて、そのつどこの法律資本金に関する条文の中の金額の改訂をお願いしてまいったのでありますが、このたびの昭和三十九年度予算で十億円の追加出資について国会の御審議をお願いするにあたりまして、今後は公庫の増資については政府が国会でお認めいただいた予算の範囲内において追加出資を行なえば、その出資額により公庫の資本金が増加する仕組みを法律で定め、もって増資のつどの金額の改訂のための法律改正はこれを要しないこととするため、この際所要の法律改正をお願いするものであります。  第二は、役員の職務及び権限に関する条文の中の監事に関する規定の整備であります。政府は、北海道東北開発公庫の設立の目的が十分達成されるよう常に努力いたしているところであり、そのため主務大臣が監事を任命して公庫の業務の監査に当たらしめているのでありますが、さらに公庫の業務が適正かつ能率的に運用されるよう監事の権限を明確にする趣旨のもとに、監事が監査の結果に基づき総裁または主務大臣に意見提出することができる旨を規定しようとするものであります。  なお、この改正点につきましては、内閣提出案では監事が主務大臣に意見提出するのは総裁を通じてするように規定しておりましたところ、衆議院内閣委員会審議におきまして、せっかく監事の職責を明らかにして監査事務の適正を期するという趣旨であるならば、直接主務大臣に意見提出することができることとしたほうがよかろうとのことで「総裁を通じて」の文言を削るという修正を受けました次第であります。  第三は、業務の範囲に関する条文の改正であります。従来、北海道策北開発公庫は、北海道及び東北地方の産業の振興開発に寄与する事業の用に供する土地の造成事業については、この法律の第十九条第五号に基づく主務大臣の指定によりこれをその業務の対象といたしておりますが、今後の当該地方の地域開発の進展に即応し、この際法律に土地構成事業を明記することがより適当であると考えますので、所要の改正をお願いするものであります。  何とぞよろしくお願い申し上げます。
  35. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして補足説明及び衆議院における修正点の説明は終わりました。  午後一時四十分まで休憩いたします。     午後一時十分休憩    ————・————    午後二時二十一分開会
  36. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 委員会を再開いたします。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案、とん税法及び特別とん税法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案、以上衆議院送付の八件を一括議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  37. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 所得税法のことについてお尋ねしたいのですが、けさの参考人の御意見もございまして、お聞きになったとおり、控除限度額の問題なんですが、どうして十五万という答申が出たことに対して十四万とせなければならない積極的な理由が承りたい。
  38. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは昨日も申し上げましたように、特に積極的理由というわけではないのでございまして、税制調査会答申が出ましたあと答申にない事項で配当軽課措置とか損害保険料の控除、あるいは証券投資信託収益分配金の分離課税、これらの事項を開放経済体制に移行するわが国として当面どうしてもやらなくてはならぬということになりますと、全体の減税財源との関係から、どうしても所得税のほうの改正答申案どおり実施できかねます平年度において約九十四億ぐらい答申の線をしぼらないと新しいこういった特別措置ができないという事態に迫られまして、やむを得ず答申の線が実施できなかったものでございまして、積極的にやるべきでないというような理由はなかったのでございます。
  39. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、何か開放体制に移行するために答申にないことをやる必要があったからやったんだ、だから、こっちを削ってこっちへ持ってきたというんですが、税制調査会答申をはかるときに、開放経済に移行するという前提に立って答申をしてもらっているわけではないでしょうか。
  40. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) それはお話のように、税制調査会答申にもございますように、法人税の特に企業課税軽減のところでは、税制調査会におきましても、関放経済体制に移行するわが国としてはこういう措置が必要だということから、耐用年数短縮といったような答申がなされておるわけでありますが、しかし、さらに税制調査会答申以上にこういうことをやる必要があるということになったのでございます。
  41. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたのほうにいろいろなことを言うと、そういうものは減税したほうがいいじゃないかと言い、こうやるべきだと言うと、すぐ、税制調査会に目下答申を依頼しておる途中ですからやれないと、こう言う。出てきたらかってに今度削っておいて、今度はそれは政策上必要だからこれをやりましたというような、大蔵省というのはそういうてまえがってな省なんですか。税制調査会の権威なんかないじゃないですか、必要がないじゃないですか、そういうことになる。税制調査会では、開放体制に移行するための税はどうあるべきかというのは一つ答申中の柱になっておると思う。いまお聞きすれば、開放体制のそのためでもないような、だんだんわけがわからなくなる。利子配当課税だとか、分離課税をやるために必要だったから、所得税のほうの減税をやめたというだけのことなんですか。政府委員(泉美之松君) これはこの前も申し上げたと思うのでございますが、一番理想的なことを申し上げますれば、それは税制調査会答申を全部実施いたしまして、かつて衆議院で中出税制調査会長が言われましたように、税制調査会答申を全部実施した上で、さらに政府においてこういう特別措置を必要とすると考えれば、税制調査会答申のワク外でそういうことをやるということができますれば、これはよかったと思うのでございます。ただ、歳出財源との関係からいたしまして減税のワクに限度がございまして、そういうふうに実現できなかったことにつきましては、私ども非常に遺憾に思っております。結果的には、新しい処置をとるために税制調査会のほうの答申から一部削らざるを得なかったという結果になっておることは、非常に遺憾に思っておるのであります。
  42. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 遺憾に思うのではなくて、大体税制認否会を無視したことなんですよ。あるいは給与所得者というものの生活をどう見るかといういろいろな問題、があると思いますけれどもあとで、鈴木さんや野々山さんがわざわざお見えになっておるようですから、私はこれでこの議論はやめます。  それでは、財源がないというんですけれども昭和三十八年度はもう決算期になりますね。三千百三十億ですか、当初予算に見積もっておるわけですね。一体決算になったら、当初予算に対して三十八年度分の自然増はどれだけあると見積もっておられますか。
  43. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 昭和三十八年度におきましては、お話のとおり、当初予算におきまして三千百三十億の自然増収を見込んでおるのでございますが、年度経過中に御承知のとおり補正予算を二回組みまして、それによって二千六十八億の歳入をすでに使っております。その二千六十八億を含めまして、現在の見通しでは二千三百五、六十億、したがって二千六十八億を使用した残りは三百億足らず——二百八十億から三百億近い間の自然増収が出るというふうに期待いたしております。
  44. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をやめてください。   〔速記中止〕
  45. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  46. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 この租税特別措置法ですね、三十九年度の予算ベースで国税のほうは出たんですね。で、地方税は合わせて一体どれだけになるんですか。
  47. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 租税特別措置によりまする地方税の減収につきましては、内容が二通りに分かれるわけでございますが、国税特別措置がそのまま地方税にはね返る分が相当ございます。で、この分が三十九年度で——もちろん国税と同じように平年度計算でございますが、五百四十九億でございます。それから、地方税独自でいろいろ特別措置を講じております。で、この分が六百四十六億でございます。したがいまして、両者合わせまして一千百九十五億ということになります。国税が、資料で差し上げておりますように、二千九十八億でございます。それに対応する数字がそうなっているのでございます。
  48. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 この租税特別措置法というのは、特別措置法としての制度上の本質を失いつつある。税制調査会も、これは整理すべきだと、毎年の答申の中にもそういうことを盛り込んできているんですが、年一年新設もしくは拡大という形で、もう特別措置としての制度的な役割りさえ失っていると思うが、こういう形で際限なくやられていったのではたまったものではないので、一体これは主税局のほうとしては租税特別措置法は全体としてこれを整理圧縮する、もしくはこれを廃止するといったような方向考えておられるかどうか。
  49. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 租税特別措置につきましては、お話のように、昭和三十二年以降あまり新しい特別措置がふえることは好ましくない、また従来から存する租税特別措置につきましてもその設置の目的を達成したと認められるようなものもあるから、そういったものは整理する、また特別措置のうちでも、いろいろそれによる特典が特に一部のものに片寄りがちなものはできる、だけそういった方向でないように整理、合理化する、こういう方針を打ち出されてまいっているのでございますが、遺憾ながら、その実積を見ますと、一部そういう整理、合理化を行なった面もあるのでございますが、なかなか十分な整理、合理化ができませんで、ことに三十九年度におきましては、先ほど申し上げましたように、開放経済に移行するといったようなわが国の現在の経済の特殊事情から、非常にたくさんの租税特別措置を設けるようになっておりまして、主税当局といたしましてははなはだ遺憾に存じているのであります。私どもといたしましては、租税特別措置につきましては、新設についてはできる限りそれを制限して、必要やむを得ないものに限るべきであるし、また、既存の特別措賢のうちでも、効果があまりないと認められるもの、あるいはそれによって相当効果をすでにあげたと思われるも第五部——大蔵委員会会議録第二十号の、そういういったものにつきましては、今後とも極力整理圧縮してまいりたいと思うのでございます。  ただ、本年におきましては、いろいろ新しい措置を講じている面もございますが、たとえば貸し倒れ準備金につきましては、これを企業会計原則あるいは商法の改正との関連からいたしまして、貸し倒れ引き当て金に直しまして、全額洗いがえの制度にする。したがって、評価性の引き当て金として、これは本来の租税特別措置ではないというふうに修正をしていくとか、あるいは重要産業用合理化機械の特別償却につきましては、その償却割合があまり大きいと、とかく設備投資の過剰を招来いたしまして、景気の変動を来たしやすいといったような点を考慮いたしまして、重要産業用合理化機械の特別償却初年度三分の一というのは四分の一の割合に圧縮する、こういったまあ若干の整理、合理化は行なっておるのでございます。  しかし、本年は、先ほどお話にも出ましたように、配当軽課措置を拡充するとか、あるいは証券投資信託収益分配金に対する分離課税を行ないますとか、あるいは損害保険控除を新設するとかいうような新しい特別措置が約九つほどふえております。こういつた措置が非常にふえることにつきましては、まあ現下の経済情勢上やむを得ないとも見られる面がありますけれども税制としては負担の公平という見地から見ましても、これらの新設につきましてはいろいろの問題がありますので、今後におきましては、租税特別措置のうち、先ほど申し上げましたように、効果のあまりないと認められるもの、あるいはすでにその目的とするところを達成したと思われるようなもの、そういったものは極力整理、合理化してまいりたい、かように考えておるのでございます。
  50. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 一たん租税特別措置という形でやると、それは既得権になる。そしてまた、他とのつり合い上、それも入れたらこれも入れろというようになって、果てしなく拡大していくものなのです。ですから、こういう今回新設は九つですか、そういうふうに拡大をしていくということになると、これば既得権化して、そして抜き差しならないような方向へ持っていく。まあいままでの実例がそうですから、こういうふうな租税特別措置法というような一種の政策にはとどまらない、租税特別措置法によって減免税を与えるということ、だけにとどまらずに、こういうものが幾つも幾つも重なっていくということは、やはり合法的な脱税が行なわれるという余地を残すと思うのですが、そういう面において私たちは租税行別措置を撤廃するという方向にいかなければいけないというふうに考えておりますが、これはまあ意見になりますので、後日、時期があったときにということにして、次に具体的な問題で質問に移りたいと思います。  今度の内容の中で、輸出の特別控除がなくなりますね。これについてはきっと同僚議員からも質問があったと思いますけれども、この輸出特別控除がなくなることによって、中小企業の受ける打撃ですね、これは一体具体的にどの程度のものであると押えておりますか。
  51. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、輸出所得控除が特に中小企業の場合従来相当の特典になっておりまして、ただ、これはこの前も御説明申し上げましたように、ガットの会議で公式に問題にはなってはいないのでござ  いますけれども、非公式に諸外国で、わが国の輸出所得控除制度はガット第十六条四項に規定する輸出補助金に該当するのではないか、こういったような批判がなされておりました。したがって、そういう関係からいたしまして、わが国は従来ガットのA宣言を受諾しておらなかったのでございます。しかし、先述工業国としてそういったA宣言を受諾しておらないのはわが国だけになりまして、諸外国から早くA宣言を受諾するようにといったような示唆もございまして、ちょうど輸出所得控除制度が今年三月三十一日限りで適用期限が到来いたしますので、これを機会に廃止をするということに相なったのでございます。  しかし、これを廃止するということになりますと、輸出関係、特に中小企業で輸出を行なっておるもの、あるいはみずから輸出を行なわないけれども輸出品を両社に販売して商社が輸出をしているという場合、御承知のとおり、わが国の雑貨類などの輸出におきましては中小企業が非常に大きなウエートを占めております。また、機械などにおきましても、部分品の製作におきましてはそういった中小企業が非常に大きなウエートを占めております。したがって、今回輸出所得控除がなくなるということは中小企業に対して相当大きな影響があるというふうに考えまして、今度新しい制度といたしまして、市場開拓準備金であるとか、あるいは輸出特別償却の拡充を行なうとかいうほかに、従来からあります技術輸出所得控除内容を拡充して控除率を上げる、あるいはこれはまあ中小企業にあまり関係ないと思いますけれども、新開発地域投資損失準備金といったようなものを設けることにいたしたいのでございます。
  52. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は具体的に聞いているのですよ。一体この特別控除がなくなることによって中小企業の受ける具体的な損失はどのくらいなのか。それから、もう一つ数字をお聞きしたいと思うのですが、今日まで中小企業が外貨獲得で果たしていた位置ですね、どの程度のものであるか。三つ目は、この輸出特別控除制度が今日まで日本の輸出増進に果たしてきた実績と役割り、この三つの点について具体的にひとつお答え願いたい。
  53. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 政府委員、数字がなければ次の機会にでも答弁したらいかがですか。
  54. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 委員長がそういうことをおっしゃっているけれども、非常にこれは問題が具体的に見てみないと、この制度が廃止されることによって受ける中小企業の打撃というものがいささか、先ほど主税局長が述べたようなことでほんとうにカバーできるかどうか問題だと思うんです。それでなくとも、いま金融引き締めその他の影響をこうむった中小企業の倒産が非常に多いわけです。そういうときに、この控除制度の撤廃によって一そう拍車をかけられる。これはだれもが考えられる非常に大きな心配種です。こういうことについては具体的な数字をもって、かくかくの事実ですと、それにもかかわらずいまのような措置が講じてありますから中小企業については心配ないということを、この委員会において説明しなければ、どうして国民のこの中小企業の不安を解消することができますか。数字がなければあとでもよろしいと言うが、ちょっと審議に差しつかえるので、私はこれからの審議の関係上、やはりそこを明らかにしておいていただかないとぐあいが悪いんです。
  55. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 輸出所得控除によりまする減収というのが二百三十五億考えられておるわけでございまして、その中小企業という範囲をどういうふうに見るかについてはいろいろ御意見があろうかと思いますが、一応中小企業基本法の考え方からいたしまして、資本金五千万円未満を中小企業と、こう考ますと、その二百三十五億の減収額のうち三十五億が中小企業、二百億が大企業というふうに考えられるのでございます。新しい輸出関係の特別措置でございます市場開拓準備金と輸出特別償却の関係、これで四十一億の減収になりますので、金額的に申し上げますと、従来の三十五億に比して六億だけ中小企業の場合には減収額はふえるという勘定になっておるのでございます。  ただ、この前も申し上げたと思いますが、従来の特別措置と、それから今回の特別措置とでは適用のしかたが、従来は輸出しておりますれば特別償却、輸出所得控除がございましたが、今度は輸出しておりますれば市場開拓準備金のほうはできますが、このほうは従来の特別控除よりも薄くなっております。輸出特別償却のほうはあるわけでございますが、これは償却資産がないとその恩典を受けにくいということがございますので、個々の中小企業者にとりますと、その間、従来よりも特典の減るものも、あるいはふえるものもあるということは、この前、野々山委員の御質問に対してお答え申し上げたとおりなんでございます。したがって、個々の業者については違いますけれども、総体的に見ますと、いま申し上げましたような関係に相なっておるのでございます。
  56. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 いまの数字の中で、あなたが説明された、つまり海外市場の開拓と償却の問題、この二つの問題は、むしろ中小でも小もしくは零細なものですよ。雑貨なんかほとんど適用されない、適用の余地がないといってもいいくらいじゃないですか。海外市場の開拓なんかにつきましても、そういうような零細なものはなかなかそれはできませんよ。どういう処置をとって、この零細な輸出業者を、いま言ったように、海外の開拓へ、そういう準備金に幾らかでも、つまり何といいますか、税制上処置を講ずるような方向に持っていくつもりなんですか。こういう点についてはどういうお考えですか。
  57. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) この海外市場開拓準備金と申しますのは、そういう輸出をいたしておりますれば、海外市場開拓準備金として一定限度額以下の所得を留保することができるというのでございます。これはみずから海外市場開拓を行なう場合取りくずす場合もありますが、市場開拓を行なわない場合には、五分の一ずつ取りくずしていくということで、その間、課税の延期が行なわれるわけでございます。それから、中小企業の場合におきましては、各自が積み立てるよりも、その団体が積み立てておきまして、たとえばアメリカのほうで輸入制限措置を講ずるといったような場合におきまして、その団体が弁護士を雇うとかなんかいたしまして、そういう輸入防遇措置がとられないようにやっていくといったようなことにも使えるわけでございまして、そういった団体で積む場合におきましては、本来の市場開拓準備金でございますと千分の十五までに限られておるわけでございますけれども、そういった団体ごとの場合におきましては、千分の二十五まで積めるということにいたしまして、団体でやっていける場合のほうを優遇いたしまして、中小企業は個々で積み立てることはなかなか困難だろうけれども、団体としてまとまってやっていけば、そういう措置も有効にとり得るし、役立つのではないかというので、そういう制度を講ずることにいたしております。したがって、個々の業者としてはなかなか積めないような事態が起きましょうとも、団体として積む場合は相当考え得ると、したがって、それによることができると思っておるのでございます。  なお、特別償却の場合は、お話のような償却資産を持っておりませんと、これはできませんが、しかし機械だけでなしに、事業用の家屋も償却の対象になりますので、事業用の家屋もないということはないと思います。そういった意味では、やはりある程度特別償却の適用はあるというふうに考えておるのでございます。
  58. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 零細な輸出業者というのが非常にたくさんあるわけですね。実例をあげてみますけれども、いまバイヤーが直接買いたたきしているようなのがずいぶんあります。で、一例をあげると、テープレコーダーのようなものですね。非常に精巧なもので、そうしていま輸出のバイヤーにたたかれておる金額は十ドルです。ところが、実際の費用は幾らかかるかというと、工賃を抜いて、材料費だけで全部合わせて九ドルかかる。工賃がわずか一ドルしか残らない。こういうような状態の中でも、今日までとにかくやってきたのは輸出控除があるからだ。これがあって、めんどうくさくなくて、とにかく右から左へ回るのだということでやってきたわけです。これがなくなりますると、そういうところはほとんどお手あげだ。それをあなたのほうは、いや、しかし、それにもかかわらず今度はこういうふうな中小企業の海外市場の開拓のこれができたとか、こうだとかいいましても、つまりそれがすべり出すまでの間の期間というものは、こういうつまり零細な中小企業においてはなかなか資金繰りは困難だし、やっていけないと思うのです。だから、こういうつまり輸出特別控除といったような手っとり早くいくような、こういったようなものがなくなるようなときには、私はなくなす必要はないと。本来これはどこまでもガットの場でも、OECDの場でも、どこまでもそうではないといってがんばり抜くべき性質のものだと思うのです。たたかれるものですから、何でもかんでもアメリカの言うとおりにして、OECDの言うとおりにならなくたっていいんだから。本来はこういうものはなくならなくてもいいものをなくしておきながら、しかも新設のもの、そういう実情に合わない、時期的にも、そうしていま金詰まりと並行してどんどん中小企業が倒産していく時期に、私はこのような措置をこういう形で税制の上からもやられてくるということは、非常に大きな中小企業泣かせだ。むしろこれは中小企業を輸出の面に太刀打ちできなくしていくような、実際上にはそういう形になるのじゃないか。そうして多くの中小企業は、倒産するか、しからずんば系列化に入っていくかといったような形で、そういう方向へ引きずり込まれていく。結局、中小企業の大きな整理に拍車をかけるようなものに追い込んでいく。私この問題についてはこの程度で質問やめておきますけれども、非常に重大な結果をもたらすであろうということだけを警告して、次の問題に移りたいと思います。  次は配当軽課処置と、今度の投資信託に対する受益金ですね、源泉徴収の方式をとりましたね。投資信託収益金の分配金については、これは税調でもこういう形をとるということは日本の今日までの租税体系をくつがえすものだという意見もあり、非常にいま問題になってきたところだと思いますけれども、一体特に証券投資、投資信託の受益金分配金の分離課税という問題ですね、これをひとつ具体的に数字をあげてみてもらいたいと思うのですよ。たとえばこれは数字の基礎をいいますと、五十万円これによって配当金を受ける者と、一千万円のこれによって配当金を受ける者とが、今までとこの制度ができてからどういう一体形になるのか、具体的にひとつこれは検討してみる必要があると思う。お答え願いたいと思います。
  59. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 投資信託配当所得だけ五十万の場合の標準世帯におきましては、従来の制度でございますと、所得税が一応一万四千四百円でございますけれども配当控除が三万七千五百円ございますので、したがって所得税は納めなくていいということになります。五十万円の配当所得につきまして源泉徴収されました、これは現在五%でございますので、五%の二万五千円部分は還付になるということになっておるのでございます。
  60. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そうすると、それは今度の改正によりますと、五%の天引き源泉徴収ですから、結局これは非常に計算は簡単です。二万五千円天引きされるわけですね。そうすると、五十万の所得の人は結局前のほうがよかったということになりますね。そうですね。今度は一千万円の所得の人を計算してください。一千万円のこの条項によって配当を受ける人を計算してみてください。どんなにひどいものであるか、バランスがはっきりします。
  61. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  62. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  63. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 先ほど、鈴木委員の仰せられました投資信託配当所得が一千万円の場合を申し上げますと、現行法によりますと、標準世帯で一応、所得税が三百九十六万一千二百円になるのでございますが、配当控除が七十五万円ございますので、結局三百二十一万一千二百円の税額になっておるわけであります。それが今度分離課税になりまして、五%だけということになりますと、この税額は五十万円で済む。したがって、三百二十一万一千二百円負担しておったものが五十万円で済むという点におきましては、大きな差があるわけでございます。
  64. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これはまあ、わざわざこの委員会で手間をかけて数字を計算したというのは、事実を明らかにしようという意味であって、決してむだではなかったと思いますが、五十万円というような少額な収益金の分配、投資信託収益金の分配を受ける人は現行法のほうがよい。今度新しく改正した源泉課税のこの方式でいくと損をする。一千万円の人はどうなるかというと、実に二百七十一万一千二百円以上の得をする、こういう不合理が起きてくるわけです。どうしてこういう不合理をわれわれが黙って見のがすことができますか。こういう不合理があらかじめあなた方も計算済みであったろうと思うんですが、どうしてこういう高額所得者になればなるほど得をするような、あえてこういうふうなものを出してきたのか、その真意を聞きたい。
  65. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、大所得者と小所得者との間におきましては、こういう源泉分離課税を行ないますと非常な不公平が出るということは明らかになっておるのでございまして、これはすでに利子所得につきまして源泉分離五%課税が行なわれたときにもそういうことを申し上げてあるのでございますが、ただ、従来、利子につきましては源泉分離課税が長年とられておりました。配当につきましては総合課税ということでやってまいっておりましたために、利子配当の間で不公平ではないかという意見が強いなりまして、ことに三十八年四月から利子につきまして従来一〇%の分離課税でございましたのを五%の分離課税にいたしましたことから、いよいよ利子配当との間では不公平だと、したがって配当につきましても利子並みの分離課税にすべきだという声が強く起こってまいりました。特に証券界を中心といたしまして、新聞、雑誌その他で強くそういう主張がなされたのでございます。しかしながら、私どもといたしましては、いま鈴木委員がおっしゃいましたように、源泉分離課税にすることは大所得者に特に有利になり、そしてまた配当所得の場合でございますと、大体百十万円以下くらいの者にとっては現行法のほうが有利なのであります。したがって、そういう配当の分離課税ということにはとうてい賛成できないということで反対いたしてまいっておったのでございます。ただ、そういう事態が長く続いておりましたあげく、結局配当所得のうち、配当全般については分離課税はしないけれども証券投資信託につきましては、それが比較的大衆によって買われておるということ、それから証券投資信託の場合におきましては配当所得の本質と考えられまする株主権の行使が伴っておらないということ、さらに、証券投資信託の場合におきましては、形態的に申し上げますと、現在利子所得とされておりますところの公社債投資信託、あれと、一口五千円出しまして受益証券を買って収益の分配を受けるという形態におきましては、公社債投信と変わりない、こういう点からいたしまして、配当所得全体に対して分離課税は行なわないにいたしましても、証券投資信託についてはその性格が他の配当一般とは違うということにかんがみて分離課税を行なうことにしたらどうかということになりまして、今回このような御提案を申し上げておるのでございます。
  66. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それは上つらな答弁で納得できませんよ。税調はこれは答申しなかったのでしょう。むしろ税調は批判的、反対的な意見が多いのですね。先ほどの木村参考人の御意見もそうでしたよ。どこで出たんです。あなたもさっき言ったじゃないですか、ずっと反対し続けてきたと。税調も反対だ、大蔵省も反対だ、じゃどこがこれ突っ込んだのですか。突っ込んだところをはっきりしてください。知らないですか。  これは、委員長、いま主税局長に質問しても無理な話だろうと思いますよ。  主税局長、答弁できなければ、その点けっこうです。だけれども、こういうことが社会的不正義だということは明らかなんです。ちょうど国税庁長官も来ておるけれども、こういう事実を零細企業やその他の税の負担の重い人たちが知ったときに、どういうことになるか。税の負担公平などということは全く紙の上のことであって、まことに高額所得者にだけはどんどん優遇措置を講じていく、そして零細な者についてはびしびしびしびし、税の取れないところからも税を取るといったような方向に行くと、こういった社会的不正義を拡大するような方向を今回の租税特別措置法が持っておるというのは、これは重大な問題だと思う。許されないですよ。それだけじゃないです。利子との関係がある。利子配当がいままで源泉徴収だったから、分離課税だったから、それとのつり合いで今度は証券投資を行使しよう。この次に出てくるものは何です。全株式配当を同じような形でやってこようと、つり合いがとれないからと、そういう理論に道を開くじゃありませんか。そういう圧力が当然かかってくるものと思わなければなりません。しかも、これは一年きりのあれのように見えますけれども、既得権となってこれはなかなか、四十年になったって、四十一年になったって、消えるようなものじゃありませんよ、いまのような情勢から見ると。こういうようなことになってくると、税の負担公平というものは根本からくずれ去るということについて、税のあれに当たっておられる主税局としてはどういうふうに一体考えられますか。
  67. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、租税特別措置、いろいろございますけれども、その中でまあ私ども、先般も申し上げましたが、特別償却のような制度は一応期首に償却をふやしますけれども、耐用命数が経過する間にだんだんと取り返しますので、長い目で見ますと、結局課税の繰り延べを行なうということになる程度のものでございますが、利子所得及び配当所得に対しまする分離課税はそれだけもう永久免税の形になりますので、税制としましてはそのようなことは著しく公平の原則に反するので、好ましくないという基本的態度は持っておるのでございます。ただ、全体の政府の方針といたしまして、そういう制度をとるということにきまりましたので、このような提案を申し上げておるのでございます。
  68. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これは悪税である、私はそう思いますけれども、あなたどうです。これもまたあなたにここでしかりという返答を聞こうとは思いませんけれども、これほんとにひどい。ずいぶん思い切った悪税ですよ、こういうものを突っ込んできたということは。これは大臣が来たときに聞くことにして、これは租税特別措置法の問題については、私は先ほどの輸出の問題と、輸出特別控除をアメリカやEECの圧力によってやめて、中小企業に対する打撃を与えておきながら、しかも、一方においてこのような全く税の負担公平をくずして、高額所得者だけを優遇すると、こういうことをやるというのはあまりにも片手落ち過ぎるいまのやり方ですね。これについては厳重にひとつ私たちの意見も申し述べて、これはもう反対しなければならないと思いますけれども……。
  69. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  70. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  71. 野々山一三

    野々山一三君 おとといの宿題になっていた、火災共済などについて今回の法改正に伴う協同組合をなしている火災共済に対する控除対象の団体の許可基準というものがあったら示してほしいということを申し上げておいたのでございますが、念のために記録にとどめる意味で、それは準備をされたようですから、それを御答弁で確認をしておきたいと思います。お答えを願います。
  72. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 一昨日野々山委員から御質問のございました、生命保険控除あるいは今回新しく設けます損害保険控除等の対象となりまする生命共済または火災共済の場合におきましては、大蔵大臣が指定するそういう生命共済または火災共済について生命保険控除または損害保険控除の対象にするということに政令で規定いたしておるのでございますが、その場合、大蔵大臣が指定する場合の基準として考えておるのは、項目が五つあるのでございます。これを順次申し上げますと、まず第一は、共済事業の監督が法律によって規定されており、かつその監督が確実に実施されているということ、これが第一点でございます。第二点は、共済の金額が共済の目的である建物等の時価をこえないものであり、その共済金の支払いにあたっては損害額の算定が特価主義に基づいて適正に行なわれているということが第二点でございます。もっとも、この点につきましては、先般申し上げましたように、火災保険事業の場合におきましては、従来は時価までしか保険を付することができないようになっておりますけれども、将来は時価をこえて保険を付することができるような制度考えようということになっておりますので、もしその制度がとられるようになりますれば、この点はその範囲において修正されることになるわけであります。第三点は、掛け金率の算定について確実な統計数字などに基づきまして、保険数理によって適正に定められており、かつ生命共済または火災共済に関する経理が他の事業と明確に区分されているということ、これが第三の要件に考えております。第四は、共済事業が特定の地域に偏しておらないということ。そして、たとえば全国的な共済組織によって行なわれるなど、危険の分散が行なわれておるということ。これは火災共済の場合のように、ある地域だけに片寄っておりますと、そこで大きな火災がありますと、共済事業として成り立たないというようなことがございますので、できるだけ危険の分散がはかられているということを要件に考えているのでございます。第五は、準備金の積み立てが法律によって定められ、かつその当該事業にかかる契約対象の危険度に応じて十分な積み立て金を持っており、その積み立て金に充てられる資産は流動性の確保されたものであるということ。これは事故が起きました場合におきまして、流動性のある資産でありませんと、共済の支払いができないということでは困りますので、そういうことを要件に考えているのでございます。  大体以上の五つの要件に該当いたしておりますれば、それを大蔵大臣がそういった生命共済または火災共済を指定いたしまして、損害保険控除あるいは生命保険控除の対象にいたすという考えを持っているのでございます。
  73. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。もちろん、これは法律でこれから施行される段階の問題でありますが、なお若干気にかかる点がありますが、それは今後の問題に残すことにいたしまして、きょうのところはこの点を確認だけしておきたいと思います。特にこの間申し上げておきましたように、本日の段階では、特定の団体が一、二しか考えられていないかのごとき印象を与えた点がある。こういう点については、そうでないように、この条件が特定の地域だとか特定の団体に片寄ることのないようにということでありますが、その趣旨を十分生かしてあやまちのないように施行してもらいたいということを要望しておきます。
  74. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、自動車検査登録特別会計法案を追加して議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  75. 野々山一三

    野々山一三君 運輸省が直接この検査登録業務をやっておられる立場から、今回この自動車検査登録特別会計というものを新しく設置するということにしようというのでありますけれども、いままでの一般会計で処理していた時代の状態にかんがみて、一体特別会計にしなければならぬという特殊事情があるのか、こういうことについては十分理由がわからぬけれども。つまり、政府当局から出ておる理由によれば、車がふえてきておるから仕事を少し能率的にやれるようにしたいんだということだけなのか。私の気持ちからするならば、これは何も特別会計にしなくても、車がふえるということは、もう初めからわかっていることであります。そうして、同時にまた、その結果として仕事をスピーディーにやるということは、当然国家行政機関として国民にサービスするという立場からいっても当然です。しかも、そのために金を取っているんであります。手数料というものを取っているんであります。なのに、一体、この理由からすれば、自動車の激増に伴い、増加する自動車車検登録事務の処理体制を改善するとともに、ということの理由だけで、経理を分散し、特別会計にしなけりゃならぬということは、どうもその理解がしにくいのであります。その点をまず、直接いままで所管をしてこられた自動車当局として特にあげたいという理由があるのですか。どうもうかがい知ることができないので、お伺いをいたしたいと思います。
  76. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 自動車の検査登録関係の業務につきまして、来年度これを特別会計で処理したいということで御審議を願っておるわけでございますが、自動車行政を扱っております責任官庁といたしまして、なぜそういう制度を特に必要としたかという御質問でございますが、実はただいま御指摘のように、自動車の数は毎年二割前後という非常なふくれ方をしてきておるわけです。終戦後今日に至るまで、そういう状況でふえてきております。自動車の検査と登録は、この自動車の数のふえるのに従いまして、全く物理的に申しますか、それと並行して業務量がふえるわけであります。それに対しまして必要な設備、それから必要な要員につきまして、今日まで毎年予算折衝の際に、この業務量の増大に伴う増加した予算の要求をしてまいってきたわけでございますけれども、国全般の予算関係から、今日までこの業務量の増大に対応しただけの予算が得られなかったのが、遺憾ながらいままでの実情でございます。検査登録を預かる者といたしましては、そのしわ寄せが年々たまってまいりまして、特に最近では自動車の性能の向上等によりまして、検査の機械化等につきましてもさらに設備の整備をしなきゃいかぬというふうな要求に迫られまして、そこで実は車両検査につきましても、登録につきましても、手数量を取っておるわけでございます。せめてこの手数量の収入の限度においては、これだけの金を検査登録の施設の整備に使いたい、こう考えてまいってきたわけです。  そこで、実は三年ほど前に、この業務が国の行政ではございますが、非常に現業的な仕事の一面を持っておりますので、これを独立さして、もっとサービス行政としての実をあげたいというふうなことで、公団方式にしたらどうだろうかということも実は考えたこともございます。しかし、それもいろんな障害で実現いたしませんでした。そこで、来年度の要求といたしましては、車検——車両検査登録の手数料の収入をもってここの業務に充てるという意味におきまして、一般会計とは切り離してもらって特別会計制度にしてもらう。そういたしますと、毎年の今後の年間の両方の手数料の収入についてある程度の見通しが立つわけでございます。この見通しのもとに車検場の整備あるいは車検用の機械の増設等にいたしましても、現在のところ全国で国が直轄して持っております車検場というものは、東京とか大阪は別といたしまして、大体一つの県に、県庁の所在地一ヵ所しかございません。あとは借り賃を払って民間の施設を借りて、検査員が日をきめて出張して検査に当たるというふうに、サービス行政としてははなはだ劣るわけでございます。そういう点を今後計画的に施設の整備もいたしたい、それから検査場もできる限り直轄検査場をふやしていきたい、それから検査の機械も整備をしていきたい、こういうことを長期の計画のもとに実施してこの実をあげたい。なお、今後とも車はさらにふえると想定しておりますので、これに見合う今後の車検場の整備も必要でございますので、車がふえますと手数料も増加してくる、この両方でもって特別会計という一つのワクをつくってもらって、この二つの行政の能率的な、あるいは合理的な向上をはかりたい、こういうふうに考えまして、特別会計として御審議を願うように進めたわけでございます。
  77. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、いままでのあなたの説明によりますと、これからは手数料収入が見込まれるので、仕事が計画的にやれて、設備の改善もでき、人もふやせるのだというのですけれども、一体いままでそれじゃそういう計画的なことというのはなかったのですか。いままではどういうことだったのです。いままでは、あなたの説明によると、大蔵省が認めてくれぬので、それも一つなんだ。それならば、かりに自動車のふえを見てみましょう。昭和二十七年に登録対象車両というものは五十五万六千、昭和三十年は九十二万両、昭和三十三年は百四十万両、昭和三十八年三百二十七万五千両、このままいくならば、あなたのほうで出しておられる数字をもっていけば相当どんどん伸びていって、ここ五年の間に約倍以上になる、こういうこと。こんなことはわかり切った話です。わかり切った話を、さもここで特別会計をやらなければそういう仕事ができないなんという、いかにも国会では説明ができて通って、大蔵省に説明して通らぬというはずはない。どういうことですか。大蔵省当局と両方に聞きたい。いまのお話は運輸省当局に聞くのでありますが、大蔵省当局の関係筋は一体おられるのですか。説明しつばなしで行ってしまわれたんじゃ、かなわない……。それでは、あなたの答弁から。
  78. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) いままでは一般会計でございましたので、毎年毎年、翌年度の一応の計画をもって予算要求をしてまいったわけでございます。しかし、これは車検登録だけではございません。国の予算全般といたしまして、所管の省で計画いたしまして予算要求をしておりますが、結局それが縮小を受けまして、国の全体の予算というものがきまっておるわけでございますので、車検登録についても当方の要求どおり最終的にはきまらないというのが実情でございます。そういうふうなことを申し上げたのでございまして、いままで計画を持ってもいなかったというのではないわけでございます。今後は登録車検の手数料の総ワクというものの推定が常につきますから、しかも、その額はあげて車検登録に使えるということになりますので、長期の計画も立つようになります、かように申し上げておるわけであります。
  79. 野々山一三

    野々山一三君 大体いまのたてまえから見ましても、私はこの特別会計というものを簡単につくっていいという考え方には必ずしも賛成できない。しかし、だけれども、つくらなければならないというのに、大蔵省当局の説明は、提案者の側の説明によれば、車がどんどんふえておりますからということで、あなたのほうの説明によると、いままでは一般会計との振り合いで予算もふえない、人もふえない、設備もふえない、だから特別会計をつくるという。一体そんなしごく簡単なことをもってして特別会計をつくるということは、これはどうも私は納得できない。そこへもってきて、あなたの説明によれば、この種の仕事は現業的要素もあるのだと言われるのでありますが、一体車検登録というのは仕事というものから見るのか、車を安全に、国が公益、人命損傷というそういう弊害を取り除くために完全なものとして使うことを許さなければいけない、させなければいけないということのために車検登録というものをやっておるのか、どちらですか。あなたの説明によると、何か車を見ておるからあれは修理工場と一緒なんだ、こういう考え方のようでありますが、どちらをとられるのでありますか。
  80. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) もちろん、車両検査登録の趣旨は、御指摘のとおり、車の安全整備をはかることであり、車の所有権の所在を明確にしておくというふうな趣旨でございます。
  81. 野々山一三

    野々山一三君 そうすれば、当然これは一つは警察行政的な意味における仕事である。車の所在を明らかにする、人命、財産を安全に確保する、これはもう明らかに警察行政的な仕事だと考えるのは間違いですか。あなたのおっしゃることからもってすれば、私も当然そういう解釈をとるのです。  そこで、時間が十分ありませんから、先に進める意味つけ加えて申し上げておきたいのでありますが、さような、私の申し上げているような意味合いにおける警察行政的な仕事、そういうものだとするならば、それを特別会計というものをもって伏せられたことになってしまいましたけれども、現業的なので特別会計という理由は、どうも私にはさらに一そう納得しにくい理由を並べられてしまったように思うのですが、もう一回整理をする意味で、運輸省としてはこれが特別会計にならなければ、会計法上も、行政的観点からも、将来の仕事を充実するという観点からも、特別会計にならなければならないと言われる積極的な理由を、整理をする意味でお答えをいただきたい。
  82. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 警察行政との関係はどうかということでございますが、交通警察行政は道路上の交通安全ということに主眼を置いております。車両検査というのは車両の保安、結局交通上の安全を終局の目的といたしておりますが、車の機構上の保安ということでございますので、これは運輸行政の所管になっておるわけでございます。  それから、現業的業務でございますと申し上げましたのは、仕事の内容が車の数がふえるとほとんど並行して業務量が増大する性質の仕事でございますので、その点で現業的な業務というふうな表現で申し上げたわけでございますので、御了解願いたいと思います。そういうふうに車がふえますのとほとんど並行してふえる業務量でございますので、それに対応して検査の設備の整備等をいたしたい。しかも手数料というものを取っておりまして、手数料収入がございますので、この手数料収入をあげてこの車両検査登録業務のために使っていきたい。そうすれば、業務量の増大、それに必要な経費もそれと並行してふえていきまして、行政の実もあがる、かように考えておるわけでございます。
  83. 野々山一三

    野々山一三君 二つの点でずばり伺っておきたいのですが、最近車検登録業務というものをこの特別会計によってやるということのために、この結果、将来この秘のものは広域的な行政に持っていく下準備ではないかというような議論がなされておりますが、私はおそらく、あなた方は、そんな考え方はないと、こうおっやるものと思うのでありますが、念のためにそのことを聞いておきたい。  それから、第二の点で伺っておきたいのは、長い間議論されておるのでおりますけれども、これは特別会計で上から下までずっとさっぱりするという考え方でありますから、その限りでは、確認の意味で申し上げることになるかもしれませんが、この種の車検登録業務というものは、県のほうの仕事に全部移すのがいいのじゃないかという議論が前々から、つまり地方行政的な意味のカテゴリーの中へそれを含めてしまおうじゃないかという議論があるのでありますが、おそらく、先ほど申し上げたように、こういう特別会計をつくってまでやるというのでありますから、そういう考え方はないものと、こう考えるのですけれども、そこらのお考えを伺っておきたい。
  84. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) この制度を特別会計にするということでの一つのねらいが、この行政を広域行政に持っていく考えではないかという御質問でございますが、この特別会計制度につきましては、先ほど申し上げましたとおりの趣旨でお願いをしておるわけでございまして、広域行政に持っていくというふうな、そういう面からの考慮は毛頭入れておりません。  それから、第二点で、現在検査登録の業務は地方委譲をしておりまして、府県知事のもとで事実上陸運事務所という機構でやっておりますが、将来これを名実ともに府県に移譲する考えではないかということでございますが、実はこの問題につきましては、現在の陸運事務所というものの機構のあり方が、占領中の中央権限の地方委譲という占領政策の一つとして当時つくったものでございまして、占領解除後の今日に至りましても、なおそのまま残っておるということで、われわれは非常に遺憾に思っておるわけでございまして、車検登録を含めまして、運輸行政というものは運輸大臣のもとにおいて縦に一本の機構でやっていきたいという考えをもって、その実現方を努力してまいっておるわけでございます。たまたま行政制度調査会もできまして、こういった問題がここで検討されておりますので、その結論を待っておるわけでございますが、運輸省といたしましては、運輸省の下部機構として、国の行政の一環としてこれをやっていく、こういうふうに考えております。
  85. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、次に、実際問題としてこの会計区分と業務区分がはっきりつくのかという点であなたに伺いたいのであります。会計上は、おまえは特別会計、おまえは一般会計、こういうことが同じ建て家の中で、陸運事務所の中で起こるわけです。しかし、実際に仕事をやっておる者から見ますと、特別会計の人間だけ宿直しろというわけにいきません。全部宿直、交代で宿直、夜になると、どこかで車を取られたから、あの車を正式に、何のたれ兵衛の車なのか、車検は何なのかということになって、しょっちゅう寝る間もないほど来るわけです。これは一般会計の人間であろうと特別会計の人間であろうと、寝ておったら運の尽きで、宿直しておったら運の尽きで、全然整理がつかないような実情にあるのだけれども、一体そういう点から見まして、明確なる区分がつくのかどうかということが一つ。  第二に、実情からいうならば、これは私が申し上げるまでもなく、あなた方いつももうおそらく心痛しておられるところだと思うけれども、統計上見るならば、おそらくここにいらっしゃる委員皆さんだって御存じないと思う。自分の乗っておる車が車検検査を受けて、登録をして、ハンコをもらってくるまでの間に、一台当たりが何と驚くなかれ三分四十五秒、平均でやらなければ、あなた方の車がこれは天下晴れて自分の車ですというわけにいかぬ。そのために、特別の人であろうと一般の事務屋であろうと、登録をやるということになってくると、全部あそこの中で登録作業をしてやらなければならぬという仕組みになっている。それを今度は、一般会計だとレッテルを張られたら最後、そこの区分がどうしてもこれは水と油になってしまって、そういう連帯一環作業はほとんどできにくくなってしまう。  さらにまた、おそらく、あとで聞こうと思ったけれども聞く機会がありませんから、ついでにそのことを申し上げて私は伺うのでありますけれども、たとえば特別会計の人間はそんなぐあいでありますから、相当程度超勤をやるでありましょうし、出張旅行もやるでありましょうが、それは特別会計の中でやればいいじゃないか、こういうことになる。日ごろ日常業務をやっておるときには、その人たちはAの会計、Bの会計にかかわらず、一般会計、特別会計にかかわらず、共同し合ってやっていかなければ、車検場に山ほど並んでおる自動車のお客さんのサービスにたえることはできない。ところが、手当なんかになると、いやいや、おまえは特別会計だということになる。一体そんなことがわずか三十人や二十人の陸運事務所の中で行なわれていくことが、一体人事管理上、さらにはあなた方が指摘をされる業務能率をあげるという観点からする前向きのいい効果が出るというふうに考えられるだろうかという点からながめて見て、特別会計、一般会計というものがその中で、同じ建て家の中で机を並べていながら、会計上の区分が即仕事上の区分になるような、簡単な机の上での仕事のようなぐあいにはいかぬのではないかという心配があるのです。  さらに、その心配は、お互い同士が仕事が違う、会計が違うということで、もう書類のやりとりだってたいへんなことになる。その実情として、たとえば一件の顕著な事例をもってすれば、旅客自動車にしても、トラック営業にしても、営業許可を申請してから公聴会に至るまでの間に、おそらく最も早いところで八カ月、へたまごついていれば公聴会に至るまでに一年、それから認可されるというようなことになるような、非常なおくれた仕事の状態がさらに複雑化してくるということは、これまた容易に予想されるわけです。一番運輸省の中で世間的に文句を言われているのはそういう点で、一体運輸省なんて壁の中に入ったら、自動車営業をやろうと思っても、なかなかめんどうを見てくれない。行ったところで、いつ公聴会やってくれるかわからぬ、一体何だというのが、運輸省に対するこれは世間的な猛烈な批判です。その猛烈な批判を一そう輪に輪をかけるようなことの結果を、この会計制度をつくることによって引き出しはしないかという心配は、ひとり私の心配だけじゃないと思う。  そういうような具体的な面に対しての、あなた方が会計区分を明らかにすることによって業務の繁雑さ、あるいは遅滞、職員同士間の業務分担の競合するものをはっきりさせていくようなことにできるかどうか。できないというのが私は実情だと思うのだけれども、できるかどうか、そういう点まで触れて、あなた方の考え方を伺いたい。
  86. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 一般会計と特別会計が一つの機構の中で併存しております場合に、その会計区分、実際日常の業務の処理上、いろいろ複雑な問題はあると思います。特に、これが認められましてスタートいたしますと、スタートの過渡期にはさらに一そうそれがあると思います。しかし、事前にそれらの問題もいろいろ目下研究いたしまして、できるだけスタートのときにそういう繁雑あるいは困難が起こらないように、目下具体的な経理の処理等につきまして研究を進め、指示もすでにあらかじめいたしております。で、これが軌道に乗りますと、そういうこともなくなりまして、能率はうんとよくなる、かように確信いたしてこの制度に踏み切ったわけでございます。  なお、ただいま御指摘の事案の処理がこのために、特に許認可の行政事務の処理がこれでかえっておくれはしないかという御懸念でございますが、許認可の処理につきましては、従来非常に時間がかかると非難を受けておりました。極力この促進に努力してまいっておりまして、最近では徐々にその実もあがっておりますが、まだまだわれわれの思うとおりにはいっておりませんが、今後さらに努力を続けてまいる決心でございまして、この制度のためにそれが阻害されるということは絶対にないように努力をいたす所存でやるつもりでございます。
  87. 野々山一三

    野々山一三君 では、人事面と、先ほど申し上げた、自動車の増車傾向、それから車検コースの強化というものを、一体いままでの実績から見てみて、どういうぐあいになっているかということを念のために申し上げるのでありますが、先ほど申し上げた二十七年には五万六千台に対して、人は二百六十人、昭和三十八年は三十二万五千両に対してつまり五八五という指数であります。一〇〇に対して六倍である。ところが、人の面は、昭和二十七年を一〇〇にして、わずかに一七六である。コースのほうを見てみましても、やはりほとんど変わらない実情にある、こう見る。一体あなたのほうは、設備、人、特に機械化というものを含めてやるというのでありますけれども、それではどういう計画をどういうふうに進めていったならば、いまあなたがおっしゃるように、絶対不便が起こらぬように、事務のふくそう化によるサービスの低下が起こらぬようにすると言われるのでありますけれども、どういう計画を持っておるのか。四十二、三年ごろまでのひとつの考え方があるのでありますけれども、しかし、年々二割ないし三割の車両の増加というものに対して与えられた、ふえている人の増加というものは、おそらくせいぜい五%なしい六%、設備及びコースの増加という傾向も、ほとんど見るべきものがない。それで、いままでがそうだったから、これからも心配だという単純な質問でありますけれども、しかし、いまあなた方が持っておられる計画を、私は非公式に承知はしておりますけれども、これをもってして、一体——先ほども指摘したように、東京、大阪などを中心とする、三分内外で一両の市を検査するようなことが解消できて、安全な仕事ができるようになるだろうかということは、なお私心配が取り除けない。   一例をもって申し上げると、去年の八月十二日に、茨城交通というバスがある個所で衝突をして、転覆した。そのときに直接私もその検査に立ち会った人間に直接会ってまいりました。二分や三分であの大きなバスを検査しようったって、それはできません。高さについても、それを一々ゲージではかるなんということはできません。結果として、検査が終わってから一週間か二週間で事故を起こしてしまう。まさに私どもの責任です。言うならば、検査をしようったってできないのだ。これで私どもが追及されていると言っても、幾ら人をふやしてくれと言ったって、全然それはめんどう見てくれないどころか、これも驚くべきことでありますけれども、それじゃその担当官は刑事事件に問われたかと言ったら、実はここでずばり申し上げるわけでありますけれども、君が検査をしようったってできなかったのだから、責任をとるわけにいかぬというわけで、もみ消したというのです。刑事事件としては当然これは訴追されるべき性質があるのに、これをもみ消した。そういうもみ消しをやって、受けた国民の損害というものは一体どうなるのです。国民が一体それで納得できるか。そういう事例はあなた方が出しておられる資料、資料はここにもありますけれども、名古屋と東京、大阪管内のものだけだっても、年々たいへんなものがある。十分な検査ができないでやってしまっておるという実情がある。これはお役所の仕事だから、刑事事件までもみ消した。  それがあとでも質問しようと思ったのでありますか、いまや一級の車両工場で車両整備をしたものについては書面審査で、まるっきり実物を見ないでもやっていけることになっている。そういう抜け穴をこしらえて、単の完全な検査整備というものをチェックすることがやられないでいくようなことの措置をとることによって、非常に仕事がふえているものを何とかごまかしてナンバーをつけてやっていく。今度これをどうして解決するかというと、単に私はいままでがこうだったから今後もこうだという心配だけでなくて、非常に具体的な問題としてあなた方の責任ある回答をしてもらわなければならない。先ほど申し上げたように、一そう事務が複雑化し、おまえは特別会計だ、おまえは一般会計だと申して、責任をのがれる人間ができないとは保証できません。それはむしろそうなるにきまっている、人間の根性は。そういうものをカバーできないで、いま言ったようなことが起こるとすれば、これはたいへんな責任を当局としては問われる。この会計制度をつくるにあたって、いま申し上げたような事例を、考慮に入れて、申し上げたように、先行きの改善計画、要員の補充、あるいは一車当たりに対する検査時間の割り振りに対する計画というものまで、緻密に私はあなた方の見解を伺っておかなければ心配だというわけであります。いまのような実例を前提にいたしてあなた方の考えを私は聞いておきたい。
  88. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 現在まで、車が非常にふえてまいっておりますにもかかわらず、検査の施設、要員等が常に足らないために、いろいろただいま御指摘のような欠陥もあったわけでございます。これが私どもの多年の悩みでございまして、何とかこれを解消いたしまして、いまお話しのような理想の姿に近づけていきたいという苦慮の結果が、今回の特別会計制度という考えに着眼したわけでございます。これによりまして、たとえば車両検査のコースの数も、さしあたって五年間の計画を持っておりますが、大体全国的に見まして、現状の倍にも近づけたい、かような計画を持っております。  それから、いままでもいろいろ苦慮いたしまして、仕事の簡素化ということもはかってまいっておりますが、これも保安に影響のない範囲内におきまして、極力仕事につきましては簡素化、合理化は依然としてやってまいりたいと思っております。先ほども御指摘のありました、一部優秀な民間整備工場を指定いたしまして、ここで保安基準に合致しているかどうかということを審査をさす制度も、前国会でございましたか御承認を得て、この制度を設けたわけでございますが、これにつきましても、その優秀な整備工場の設備いたしております機械、あるいは点検に当たる検査員の資格等につきましても、厳重な規定をつくりまして、国家公務員に準ずるだけの義務も与えて、この仕事に欠陥が起こらないように努力をし、監督をしてまいっております。今後ともこういう面の簡素化、あるいは合理化を続けてはかっていきたい、そうして検査業務をもっと迅速にやれるように努力いたしたい、いろいろそういう点を考えまして、今回の特別会計制度に踏み切ったわけでございますが、御指摘の点は十分私たちも肝に銘じまして、その目的達成に努力をいたしたいと考えております。
  89. 野々山一三

    野々山一三君 これは先行きのことですが、あたな、具体的な数字をもって、将来はこういうことをやっていくからサービスが改善でき、混雑が解消できて、コースも充実できるというものを示しなさい。三分四十五秒で八十人も乗れるようなバスを検査できるとあなたは確信を持てますか。私と一緒に行って検査をしてみますか。あの検査規定に定められただけの検査を的確にやれと命じたって、できやしませんよ。そういうものを解消するために、こうすれば解消ができるのだということを、いままでのことは私は申し上げませんから、数字をもってお示しになる気持ちはありませんか。あなたが何ぼ自動車局長でいばったって、三分四十五秒であのトラックを、七トン半だ、十トンだというトラックを検査できますか。あなたの気持ちはわかる。将来なくするためにというならば、どれくらいの計画をこれによって立てられ、そうすれば何分までぐらいまでは延ばすことができて、それならば完全に責任の持てる検査ができるというように説明してくれれば、あなたの今後そういうことのないようにしましょうという努力のほどを納得することができる。それが実は特別会計をつくる最大の理由ですというなら、その理由を説明する責任があるというのは、私の主張としてはそう無理な主張ではないと思う。時間を割ってやったのではなくて、一日に検査をした数を結果的に勤務時間で割ると、三分ぐらいになる。まるきり高いところから水を流すようなものだ。それで、日本じゅうの三百何十万台という車が人を乗せて走っている。だから、自動車事故がいつまでも絶えないということになる。きょう、いま数字をお持ちでないならば、私は別の機会にひとつゆっくりお伺いしましょう。特別会計をつくる理由がそこにあるのだというのだから、私が食い下がるという理由はおわかりでしょう。もう一回あらためてお伺いいたします。
  90. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 車の整備をよくして車の保安を維持するということは、まず第一に、車の所有者が日ごろから注意してやってもらわなければいけないわけでございまして、この検査も、平素から車の所有者がいかに車の整備をきちんとやっているかということを一定の期間をきめてトレースするというのが、この検査の趣旨でございますので、第一次的には車の保有者に定期に点検整備することを要請しているわけでございます。そうして期間をきめまして車検場で検査官が検査をするわけでございまして、その検査につきましては、ただいま非常に時間が短かいというおしかりもございましたが、確かにそういう点につきましては、押し寄せてくる車の数があまりにも多いために、また検査官が不足しておったり施設が十分でなかったために、どうしても早くなるということも確かにございまして、しかし、早いおそいは別といたしまして、的確なそこで検査が行なわれるように、設備の充実等もやっていかなければいけない、かように考えておるわけでございます。  先ほどちょっと申し上げましたが、検査のコースの数につきましても、五年間で約倍にする計画を持っておりますし、それから、その他の設備につきましても、相当な経費を投入して整備していく計画も一応立っておるわけです。この特別会計制度によりまして、ただいまのような御指摘の点もできる限りこれが実現につとめていきたい、かように考えております。
  91. 野々山一三

    野々山一三君 私はここで数字がなければ別の機会でもいいと言っている。あなた方はことばでごまかしていこうという。私はここにはっきりした図表がありますから、これを示してもいい。それの対策をきちっと計画的に措置をするようにしなさい。別の機会でもいいから、すみやかにその計画を、コースの増加、機械設備、人の配置、その他それに関連する計画をすみやかにお出しなさい、こう言うっている。そうして、かくかくすればそういった危険な事態が解消できるはずであると答弁するのは、当然のことじゃないですか。あとの都合もありますから、私は強くそれを要望して、来なければまた次の機会に要求しますから、さよう心得ていてください。  次の質問に入ります。次の点は、いままでたとえば二百円の手数料で、その検査を終えておったものを三百円にするというなど、五割の値上げをやるものもありますね。そういう大幅な値上げをやって、そうして年間に対して約十五億何がしの資金を見つけて、それで特別会計として発足するというのです。なるほど、自動車を持っている種族、国民にとってみれば、二年に一回か三年に一回、二百円が三百円になったということはたいしたことじゃないだろうと思います。しかし、特別会計をつくるにあたって、その手数料料金を五割になんなんとするものを上げて、それを出発にして今後処置をするという考え方の問題、私は根本的に納得ができないのでありますけれども、一体上げる理由というのは何ですか。このごろそうでなくても公共料金を上げないというのが政府の大方針。特別会計つくるために手数料をお上げになる。一体それを国民に納得させる理由はお持ちでありましょうかということになると、私は非常な疑問を持つので、あなたのほうのお考えを聞きたい。
  92. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 実は先ほど申し上げましたように、入ってきます手数料をそっくり今後車両検査関係の整備充実に使いたいということで特別会計をお願いし、そうしてそれを想定いたしまして、今後の整備の充実計画を立てるわけでございます。そういう点から考えますと、現在の手数料そのままでの毎年の収入ではどうしても、責任を持って考えますと、車検場の整備等が急速に行なわれませんので、そこでこれが所要経費の増加ということをどうしても考えざるを得ない。そういうことで、現在の手数料が、ただいま御指摘のように、車の価格等からすれば、かなり安いわけでございますので、この際手数料を値上げすることによりまして、しかも、特別会計でございますので、値上げした手数料の収入がこの業務より他に逃げるということもございませんので、手数料収入による収入をもってこれに全額投入できて、今後の施設の整備ができるということから、今回この値上げを考えたわけでございます。
  93. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連。講和条約当時から見ると、私は自動車の数が三十倍ぐらいふえていると思う。そうすれば、もともと手数料収入というものは値上げをしなくても、三十倍ふえれば自然三十倍になるのであって、国の収入のうち額が少ないかもしらぬけれども、いずれにしても、ちょっと十年ぐらいで三十倍にふえるというのはめったにない収入なんですね。だから、そこへもってきて、いま野々山委員が質問されておるのですけれども、どうも公共料金値上げ停止というおりからに値上げをするのは、何かちぐはぐのような気がするのですがね。その台数が増加した収入ではとうてい間に合わない何か確たる理由がそこにありますか。私は関連ですからくどくは言いませんけれども、ひとつ関連して一緒にお答え願いたい。
  94. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 講和条約当時から今日まで車は相当ふえておりますが、三十倍もはふえていないわけでございますが、いずれにしましても、ふえております。それだけ手数料も増加してまいっておりまして、この再検登録に関する予算も毎年ふえてはまいっております。しかし、それではとうてい十分な車両検査登録の事務を遂行するに足りないということから、先ほど申し上げましたように、これを手数料収入でもってできるだけやりたいということになりますというと、手数料の値上げをこの際いたしまして、そうして、これに充てて整備充実をはかる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  95. 野々山一三

    野々山一三君 大臣お見えでありますから、この問題について大臣のお考えを聞きたいのですが、よろしゅうございますか。
  96. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ちょっと待ってください。
  97. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、自動車局長に。  ことばじりをつかまえるようで恐縮でございますが、三百円であったものを四百円にし、あるいは二百円を三百円にするというように大幅な値上げをしても、この値上げによって手数料収入が逃げることはないので、上げてもかまいません。これが先ほどの御答弁。一体それならば、あなたに文句言うのだけれども、車検をとらずにそこらを歩いている車があったら、どうなりますか。車検をとらなければ勤かないことになっている。動かないことになっているやつを値上げしたからといって、それを百円、二百円の値上げがあったからといって、おれは自動車をやめたというやつはない。人を食った言い方もはなはだしい。そういう答弁というものはない。手数料を値上げしたからといって収入は減らないのだから、値上げをするのだ。そういう態度は、これは許せません。訂正しなさい。
  98. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 特別会計だから、手数料を上げても逃げないからという言い方がまずかったかと思いますが、要するに、手数料収入でもって今後の車両検査の整備充実をはかりたいという考えでございますので、手数料が上がりますと、それがすべてあげて整備に使用できるということを申し上げたわけでございます。  なお、検査をもぐった車が走っておるではないかという御質問でございますが、これは昨年から自動車損害賠償保険と車両検査と両方合わせまして、その有効期間をあらわすステッカーを自動車の前面に御承知のように張ることにしております。あれによって一見直ちに検査を受けていないかどうかということが路上で発見できるようにいたしましたので、これで無検査のまま道路を通行するというのもほとんど皆無になっております。さらにこの点は今後とも厳重にいたしたい、かように考えております。
  99. 野々山一三

    野々山一三君 大事な瞬間で、大臣もお見えですから、あれでしょうけれども、いまあなたが訂正をされたけれども、そのことばの端々に出てきたものというのは、まさに運輸省の官尊民卑という態度そのものですよ。これについては責任ある者からはっきり答弁をしてもらわなければ、私はあなたのいま言ったことでは許せないというふうに考えますので、機会をあらためてひとつ答弁をし直してもらいたい。  根本は、特別会計をつくるというために金が足りないから値上げをするということだろうと思うのです、正直いって。大臣、いま自動車登録の特別会計をつくるという法律に関連をいたしまして、特別会計をつくることによって、将来の設備充実、人員の増加、サービスの改普、あるいはことばには出なかったのですけれども、いままで人の建物を借りて車検場などをやっておった、そういうものを改めるということで、いままで手数料を三百円だったものを四百円にする、二百円だったものを三百円にする、そのものずばりをもっていえば非常な値上げです。特別会計をつくるために、そういう……。本来、先ほど来あなたがお見えにならぬとき議論してきたのでありますけれども、これは国が車というものに対して、完全に整備されたものをもって所定の道路を走ることによって人命、財産に損傷を与えない、こういう見地からそういう仕事をすることになっておるものでしょう。それを、いままであなたがお見えになる前に、設備は十分でない、人が足りない、サービスが十分でない、それは大蔵省が予算をくれなかった、今度特別会計にすることによってそれができるのですから、だから特別会計をお願いしておるのです、こう一面で言いながら……。これは非常な問題です。あなたにひとつ考えを伺いたい。  第二の問題は、公共料金などたくさんのものを値上げを押えるという政策をあなたのほうはおとりになっておるにもかかわらず、特別会計をつくるゆえをもって、申し上げたように三割、四割、五割という値上げをするという考え方は、おそらくこれは政府としてはおとりにならない策だろうと私は思うのでありますけれども、あえて出してこられたことの意味というものはどういうことなんですか。  第三の点は、こういうことが別な問題であります揮発油税の値上げと相関連をいたしまして、自動車には二重の上がりが起こる、結果的に。これが今日国民大衆の足となりつつあるタクシー料金なり、トラック料金なり、バス料金なりにすぐ響いてくる。私は、いままで政府当局がとってきた筋からいうならば、かような措置を特別会計をつくるがゆえにという理由でおやりになるというのはどうしても納得ができない。お考え直しする気持ちはないのかということを、結論としていま申し上げたようなことについてあなたの所見  を伺いたい。
  100. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあこの特別会計の設置と、値上げという問題は、関係ないわけであります。実際からいいまして、直接の関係はないわけです。こういう特定財源があるのでありますから、特別会計にしたほうが非常によろしいということで、この問題をお願いしているわけです。時あたかも、ちょうどいままで据え置いてずっとおったものだから、一緒に値上げになるということになりますと、どうもこれが全く一体に考えられるということで、その意味では、ちょうど時あたかもということで、こうなったわけであります。  自動車というのは、外国などでは検査をしておらぬ国もございます。大体おらぬというのが多いようですが、日本はやはりいま検査をしておってもあぶないということでございます。でありますから、やっぱり検査をやめて先進工業国並みにはできません。その事実はもう十分おわかりだと思うのです。幾ら検査をしても、整備が悪かったり、まあ道も悪かったりするから、いたみも早いということでありましょうが、いずれにしても、事故は毎日のように起きているということでありますので、人命尊重の上からも、やはり自動車の検査登録ということは制度としては必要であるということが考えられるわけであります。  いままでは一般会計の中にあって、なかなか予算も、他にいろいろな要求がありますので、誠意をもってやったにしては……。自動車を登録する人たち、検査を受ける人たちは、手数料は少しぐらい高くてもいいから早くやってくれないかというようなことは、われわれの車の検査そのものでも問題があったわけです。整備で、一年か一年半しか使っておらないものでも、整備点検に一日も二日もかかって、また二日もかからなければ乗れないというので、その間借り車をしていなければならぬというようなこともあって、実際業界の中でも、手数料を少し上げてもらってもいいから、もっと敏速に、もっとサービスよくと、こういうような気持ちもあったわけでありますから、ちょうどその特別会計に移すのと手数料の引き上げが一緒になったということでありますから、これはひとついろいろな事情考えられて、これからは別なんだ、時あたかも一緒になったのだ、こういうことでひとつ了解いただきたい。
  101. 野々山一三

    野々山一三君 私は、この問題はきょう大臣に質問する中心の課題ではなかったのですが、大臣、ひとつあなたは認識を新たにしてもらわなければならない。車検を受けるために二日も三日もというのは、車検を受けるための整備です。ところが、車検場へ持っていって実際に車検を受ける時間というのは、先ほどもここで言ったのですけれども、一台の車を三分四十五秒ぐらいで通すのです。あなたの乗っている車も、ぼくらの乗っている車も、全部三分四十五秒であなたの生命を保証しますと運輸省が言うのです。そういう実情をあなたはよく承知してもらわなければならない。その三分四十五秒のために、朝出ていって、順番をとって、ようやく番号をもらってナンバーをつけてもらうのは晩方です。そういう事情にあることについては、改善をするために処置をしてもらわなければならない。それは、私どもも機会あるごとに、運輸省に対しても、あるいは大蔵省に対しても、もっと必要な予算をとり充実をせよと言ってきたけれども、大臣、第二の問題は、これらの仕事を、本来これは現業的なという先ほどから自動車局長の話がありました。本来これは国が自動車を十分なものとして路面を走らせ、人命、財産の安全をはかるというためにチェックをする国民へのサービス行政なんです。それを、特別会計をつくるというゆえをもって、三割、四割、五割という値上げをしなければいけないということについては、やはりあなたも自動車などもおやりになっている人でありますから、よくおわかりになっていると思ったんだけれども、全然その実情が違う。いま御答弁を聞いて、どうもあなたもよく実情を知らない。そのために、この結果が三割、四割、五割の値上げになり、公共料金の値上げを押えていくという物価政策をつぶしていくという原因になっていることについては、再考をさらにされるように、あらためてもう一回答弁を聞いておきたい。
  102. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 日本が今度引き上げまして、一般が四百円、型式指定が二百円ということであります。西独では五百四十円、英国では七百五十円、フランスでは千四百六十円、米国では三百六十円、まあこれは比較するわけじゃありませんが、私も確かに車を、もういまは私企業に関係しておりませんが、大臣になる前は、千五百台ばかりバスや何か持っておりましたから、そういう意味でこういう問題は私も承知はしております。しておりますが、実際において検査というのは非常にむずかしい、うるさいということで、時間がかかるということで、検査前になると、会社はたいへんな状態であります。私たちの個人の車でもそうです。そういう意味で、施設も十分整備しなきゃいかぬし、実際検査場の数も増さなくちゃいかぬということは、もう事実であります。そういうものを一般会計から出せばいいじゃないかということもありますけれども、これはちょうど通関手数料等と同じような問題でありまして、まあこういう問題は、少しぐらい料金を引き上げても整備が十分できるほうがいい、こういう気持ちが、私は……。いろんな方々に聞いてもそういう気持ちであります。特に、御承知のとおり、今度の施設の整備費をごらんになってもわかりますとおり、一億四千三百万円のものが三億二千七百万円に、倍以上の計画をいまやっておるわけであります。検査場の新設として、神奈川の第二、厚木に一つつくりたい。また移設拡張として、栃木と東京第二、それから拡張として旭川、山形、高知、佐賀、兵庫の第二、これは姫路です。福岡第二、これは小倉、それから熊本、福井、函館、こういうことでありまして、何とかやはり処置してやらないと、また税外負担みたいで、車一台で幾ら出せと、こういうようなことは、自動車の教習所とか検査場とか、そういうことはすぐ起こりやすい問題でありまして、これはやはり一般会計で出すか料金を上げるかのいずれかでなければ片づかないわけであります。でありますから、車に対しては、いつでも税外負担とかいろいろなものがございますから、そういう意味では明確に経理ができるように、やはり手数料等を上げても合理的なものになるほうが、いいのではないかと、こういうふうに考えておるわけであります。  まあ、しかし、大蔵省が理解がないということであれば、まあそのとおりかもわかりませんが、私のほうでも、まだ新線建設公団とかいろんなところへ金を出さなきゃならぬので、こういう筋の立つものはやはりこの程度でひとつお願いを申し上げて、まだまだ税金の使い道はたくさん重点的にありますので、ひとつ御理解を願いたい、こう思うわけであります。
  103. 野々山一三

    野々山一三君 あと簡単でいいですけれども、自動車局長、自動車で非常な整備不十分のために起こっている事故というのは、いわば小型のものですね。これが車検を通していないから、チェックする機会がない。したがって、それが非常な事故を起こすという傾向がこのごろ出ています。あとの質問もありますから簡単でいいですけれども、私の気持ちからいうならば、そういう小型の軽自動車の、たとえば三百六十以上にするとか百二十五にするとかいうことはあるといたしましても、自動車を、できるならば、自動車損害賠償責任保険の対象になっている車種ぐらいまでは、その検査基準を検討するにしても、対象にすべき段階に来ておりはしないかということを考えるのです。簡単にひとつ御答弁願います。
  104. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 御指摘のように、検査の対象になっておりません車は、いわゆる軽自動車、これにつきましてはわれわれも今後どういうふうにしようかということをいろいろ考えておるわけでございますが、さしあたっては臨時に検査する制度、がございます。いままでは臨時にも検査できない——できないのじゃなくて、臨時にも検査の対象になっておりませんでした。それを先般法律改正いたしまして、臨時検査の対象にとりあえずしていこうということで、この情勢をまた見た上でさらに検討を加えたい、かように考えております。
  105. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。  それじゃ、次の本論に入りますが、去年、税法全体についてあなたに私は本会議で質問したときにも言ったのですけれども税制調査会答申というものですね、そういうものに対して一体政府はどういうふうに考えておるのだろうかということについて、私は非常に疑問を持つのです。ことに基本的な税制そのものに対するあり方について本答申を求めるということを先に予定をしながら、臨時答申というものを受けておるのですが、その際、なおさら、今度の法案を見てみまして痛感をせられるのは、税制調査会答申以外のことを非常にたくさん盛り込んでおられる。これでは一体人にものを頼んでおいて、ものは言うてもらったけれども、おまえの言うたのはどうでもいいわい、こういうふうにさえ受け取れた。非常に態度としては失礼な態度じゃないか。まあ態度の問題からいきましょう。本質の問題からいいますと、この間から数次にわたって議論になっていますが、たとえば有価証券の配当に対する分離課税なら分離課税をはじめとして、非常な低所得の人たちが期待しているようなものをむしろ無視して、新しい制度をつくって大きな金を持っておる人たちに得をするようなものあるいは政治的に非常に問題になるようなものを加えておられる。一体、税制調査会に対するあなたのほうのお考えというものはどういうところなのかということを、これは言い古されたことですけれども、念のために私はあなたの気持ちを聞いておきたい。
  106. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 税制調査会答申に対しては、基本的にこれを尊重するということは事実でございます。昨年度はどうか、こういうことを言われますが、それはまた今年度ちゃんと行なっておる、こういうことでございまして、とにかく税制調査会というものの答申政府は尊重いたしております。人事院勧告と税制調査会答申を一番よけい政府が尊重しておるということ言い得るわけでございます。これは他にも審議会、調査会はございますけれども、選挙制度などに対してはなかなか、いままでは全然採用しなかったというような問題がございますが、少なくとも税制調査会とか人事院の勧告とか、こういうものに対しては非常にまじめな考え方をとっておることはひとつお認めいただきたい。  しかし、税制調査会に頼んでおきながら、出てこないものまででたくさんやった、こういうことでございますが、これはやっぱり立場でございます。これは政府の最終的な減税案の決定権、国会の審議権、こういうものは税制調査会答申を尊重するということとは別に確立せられている権能でございます。そういう意味から、税制調査会に対してはあらゆる観点において御説明も申し上げ、審議の対象としてはあらゆることを提出をしておりますけれども、やはり政府立場で、より高い立場といいますか、毎日毎日陳情請願も受け付けておるし、いろんな広範な立場で政治をやっておる立場から見ますと、税制調査会でもってなかなか検討ができなかったものに対しても政府は知っておるという場合もあり得るわけであります。政府が国会に出した中でも、国会の立場でより高いお立場でこれを修正するという場合もあり得るわけであります。こういうことは原案を尊重しないということとは全然別でございまして、これはやはり憲法でもって定められた大権でありまして、やはり国民の立場考えて、よりよい日本人のあしたをつくるために各あれかしと、こういうつもりで、調査会の答申は尊重しながら、それにプラス・アルファを加えるということは政府として当然やることであるということでひとつお認めいただきたい。私はこういうことによってより広範な立場から全きを期しているのでございまして、政府は基本的には調査会の答申を尊重しているということはひとつあわせて御理解いただきたい、こう思います。
  107. 野々山一三

    野々山一三君 たとえば基礎控除、これを十五万を十四万に、答申よりも一万円下げて、それによって出てくる膨大な財源というものを租税特別措置、特に輸出措置などについて振り当てを考えなければならなくなったので、そういうことが行なわれたと考えられる、こういうことを先ほど主税局長はこの委員会で答えた。あげれば切りがないことであります。あげれば幾つもありますけれども、国民は税制調査会が出す答申というものに、いいにしろ悪いにしろ、非常な期待を持ってながめる。ところが、一般大衆に及ぼすはずの所得に対する減税というようなものに対しては、基礎控除をピンはねをして、そうして輸出所得のほうに、輸出などに対する振興策というものは一つの国家政策だとはいえ、それに引き当てる財源を見つける、こういう考え方はあなたのカテゴリーから、言い方からいうならば、政府の権限の範囲内だからしようがないということばに置きかえられたやに聞こえるのです。  そこで、私は次の問題に触れてあなたの意見を伺いたいのであります。  この間、主税局長に、租税特別措置に関する輸出振興のための減税措置というものについて伺ったのでありますけれども、いままでの輸出所得特別控除というものなどについてはガットの規定もあるので輸出補助金的な性格に見られるから、これは公式にB国からA国に転化するために、移っていくために必要だと考えられたので、きちっとしたものではないけれども、こうした話があったので、これは今度は廃止をすると、こういうのであります。一体、きちっとしたガットのその規定にひっかかる、絶対的にひっかかるという前提でこれを廃止するということなのか、私は主税局長の答弁から受けた印象からすれば、というようなクレームがつけられそうであるからこれは廃止をするのだという説明であったのですが、やや次の問題からして、政府の中小企業の輸出振興あるいは中小企業保護策という観点から見て、弱腰ではないかという意見を持つのでありますが、その結果、新しい租税特別措置四件を輸出に対してとられた、そのうちの一例をもって私は見てみますと、この間大蔵省当局から出された資料によれば、今度の措置は大企業に非常に恩典が高いので、中小企業についてはほとんど今度は、いままでの特別控除措置からいうと、もう月とスッポンくらいな、恩典を得られないような結果になると思われるような数字が出ている。たとえば貿易会社資本金一億円の会社の今度の新しい措置による恩典は四九三%、つまり五倍の恩典を受けておる。ところが、輸出商というようなもので資本金わずか二千二百万くらいの小さな企業になりますると、その恩典を受ける比率はわずかに三七%というんでありますから、三分の一、いままでよりも三分の一しか恩典を受けない。さらにまた、もっとひどいのになれば、二七%しか恩典が受けられない。片方は四九三%という非常な過大な感興を受ける、こういう事情になっていることが一例をもってして明らかになる。今日までの日本の輸出産業としての、輸出をささえておる企業の多くは、やはり中小企業にその度合いを依存しておるものが多かった。ところが、そういうふうに税制上はいままでとは非常に変わった比重になってしまった。  あげくの果てに、こういうことが現実に起こりつつある、予想される問題になっておる、実情は。いままでは税の面で減税措置があったので、親会社から相当たたかれた下請代金で仕事をいたしておったとしても、まあしようがないという計算をした。ところが、今度は輸出上の措置が、税制上その恩典を受けられる度合いが少なくなってしまったので、下請代金がいままでのベースではいかぬので、少し上げてもらいたい。ところが、親会社からは、そんなことを言うなら、君のところとの取引はしないぞということで、ボイコットをされるという現状にいる。すでにこの法案を見て予想され、そういう動きが出てきておる。これでは一体輸出振興策というものも、二つの面が中小企業に——一つは荒い風当たり、一つ税制上恩典が全く剥奪される、その結果が大企業にそのまま移り変わって非常な恩典になっておるということから見まして、いままでの制度を変えていくんでありますけれども、いままでの中小企業の得ておった恩典に匹敵するような中小企業に対する手当てがこの税制上なされているのかどうか。私は残念ながら、いままで出た数字からすれば、ノーと言うざるを得ない。一体中小企業に対する風当たりをどう処置されるつもりであるかということを、税制上の問題で他に策ありとすれば、具体的に示してもらいたい。
  108. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ガットで問題になっておりますものに対して、これを続けていくということになれば、非難せられるだけじゃなく、報復措置がありますので、これから新しい事態に対処して、新しい税制で何らかの輸出振興策をとらなければならぬという状態にあることは御理解をいただけると思います。  この中でもって数字で申し上げると、従来の輸出所得控除の場合は、大企業は二百億、中小企業は三十五億、合計二百三十五億、こういう数字でございます。今度の措置になりますと、大企業の二百億が二百十三億、十三億プラスでありまして、中小企業は三十五億が四十一億と、六億のプラスということで、合計で二百五十四億円の減税ということになっておるわけでございます。そうしてそのほかに中小企業につきましては、御承知のとおり、今年度から行なう税制改正で大体六百億以上の減税を行なうということで、これらをカバーできるという考え方に立っておるわけでございます。  しかし、中小企業の振興策、それから輸出振興におきましても、まあ数字の上でこう申し上げても、いままでの三十五億というものそのものが低いんだという議論もあるでありましょうから、中小企業基本法も出されておる現在、新しい角度でもって将来前向きで一検討しなければならぬことは言うをまたないと思います。特に今度のものが特別償却ということでありますから、結局大きな固定資産を持っておる者は償却率が大きい、固定資産を持っていない者は比較的少ないのじゃないか、こういう議論もあります。そういう問題に対しまして、やはり税制というものは一年こっきりのものではなくて、これから絶えず輸出振興というものに対しては最優先的に考えなければならない問題でありますので、いまあなたが言われた中小企業の振興対策とあわせまして、これからひとつ大いに検討を進めてまいりたいと、このように考えます。
  109. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、こういう問題があるのであります。いままででも同じこと、だといえば同じことでありますが、この間も議論したことですけれども、中小企業の下請などを見ますと、自動車なら自動車というものを輸出する。ところが、メーカーは、今度資産償却制度になるからと、一そうそのほとんどの品物を下請に出すということにいたしましても、その輸出恩典というものは、輸出に伴う税制上の恩典というものは、全部親会社の領域までしかない。かりに自動車のドアならドアを持っておる下請にドアを、シャシーならシャシーだけを、あるいはホイールならホーイルだけを下請に出す。これは明らかに下請自動車産業は、特に輸出産業としての輸出関連部門です。ところが、いま申し上げたように、大企業偏重の減税措置になることのほかに、さらにその度が加わって、こういうものに対して、部品などをつくっているものに対しては新しい投資をしなければついていけない、ついていけないけれども、これに対しては輸出上の減税措置というものは全然ないのです。普通の資産償却以外に許されないことになる。これは非常な不合理と言わなければならない。そういう面からも中小企業の受ける被害というものは、今後一そうひどくなる。先ほど申し上げたように、代金の問題にしてもしかりという要素がある。資産がなければ恩典というものはない。さらに、明らかに輸出産業の品物を、輸出物品を対象にする製造加工をやっておるにもかかわらず、それは全部親会社の段階にとまってしまう。これでは一体いまの中小企業が輸出をささえておるという度合いに対して、国家政策としての恩典というものはないということになる。二重、三重の被害を受けるということを言いましたけれども、まさにこれはその典型的なものだと言わなければならない。これはぜひこの際考えるべき問題じゃないか。いままでの措置より変わってきて、変わってたたかれて、さらにまた今度税法上たたかれるという税制、これを打開するということが、いま中小企業の輸出振興というものに協力を求めるという意味からいえば、非常に大事じゃないかというふうに考える。そういうことについてあなたは一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  110. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 輸出特別償却等の特例が、単に輸出の窓口業者や輸出物品の最終の製造業者のみでなく、そのほんとうの、ある意味では組み立て業者じゃなく全く部品をつくる者がほんとうの輸出業者である、こういうことが言えるわけでありますから、こういうものに対しての恩典を与えるべぎだという、こういうお気持ちはよくわかります。私もそういう考え方を理解できます。こういう問題などは、これはこうして国会の審議の段階で非常に意見が出ておるわけであります。また、政府もそれはよくわかる。ところが、そういう問題は税制調査会などではなかなか理屈一点ばりでありまして、なかなかわからないわけです。だから、やっぱり税制調査会答申段階と政府の段階と国会の段階というのは非常に必要であると、こういうことが証明されたわけであります。私は、そういう意味で、これは非常に、言われることはよくわかりますが、私もそういう感じを持っております。  ところが、西ドイツのように単一部品だけをつくっている、モーターならモーターばかり、それからナットならナットばかり、ボルトならボルトばかり、これは非常に精巧に分かれておりますから、これは非常に簡単にいくのですが、日本の中小企業というものは確かにその部品も扱っておるかわりに、他のものもやっておるということで、非常に千差万別なわけであります。そういうことで、理屈の上からいいますと、窓口業者や最終製造業者だけで——やっぱりこれは金融の問題でも同じ問題があります。しかし、これは理屈の上ではそうですが、実際問題として考えるときに実情に合わない。これを何とか割り切らなくちゃならぬというところに、主税局の苦しさがあるわけです。私もそういう意味で、主税局の言うこともよくわかるけれども、実情に徴してもう少し考えなさい、こういつも言っているわけであります。ですから、この問題に対しては、いま、すぐ御審議願っているものでどうするというわけにはいきませんが、こういう問題は事実検討せらるべき価値のある問題です。また、そうしなければならないという非常に深刻な問題もありますので、こういう問題に対しては、御発言を契機にしまして、前向きでひとつ検討をするということで御理解いただきたい、こう思います。
  111. 野々山一三

    野々山一三君 どうも大臣、いまの問題は税制調査会などにはかるととんでもない反対の意見が多いという話ですけれども、けさほど調査会の小委員長木村先生に来てもらって、ほかの委員からその問題に対する考えを聞いたのです。そのほとんどはそういうことはいいという意見です。何か人がうんと言ってくれないからやらないという話では、これは困るのです。その点は、ぜひ、いまあなたがおっしゃった趣旨を下まで通すということをやることが、税制上からする中小企業へのいわゆる血の通ったきめのこまやかな措置だということが言えると思います。で、ぜひこれは、いまいかないという説もあるのでありますけれども、あなたがその気になれば、私はそれこそ、政策的にやるという権限がおれにはあるのだというのでありますから、おやりになることができる。ひとつあなた  の考えを伺いたい。
  112. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私も検討した問題でありますし、主税局でも検討させた問題であります。いままた、私は、そういうことはきっとよくわからないだろうと思いましたが、あなたのほうで調査会の諸君も賛成である、こういうことであれば、これはひとつ、ほんとうに前向きに対処できそうでありますから、これは税制調査会にもひとつおはかりをしまして、私たちも、ただこれをやらないというような考え方ではなく、ひとつ十分前向きで検討します。そういうことで理解いただきたい。
  113. 野々山一三

    野々山一三君 前向きに検討するということでありますから、ぜひ税捕捉上の観点からそれがやりにくいなどというような理由を述べられぬように、よく注文をしておきます。  特に私はこう思うのですよ。いままでは親会社がこういうことを言っている。輸出の品物を出す。それは自分のところでとめてしまう、下に対しては。それは明らかに輸出品だというプライドを持って下の業者はやっておるのです。ところが、一たん税上の問題になると、そういうことを言うならば、おまえのところ、そんなやっかいなことを言うならちょっと困るぞと、こういういわばおどしが加わって、下へ押してと考える。ところが、いまあなたがおっしゃったように、一〇〇のものをつくっている会社が明らかに三〇なら三〇の輸出対象物件を製造しておるところなら、上からずっと落としてくれば、これは下までずっと捕捉できる。これはむしろ系統的なものでありますから。制度上そこをきちっとすれば、それこそ税を逃がさないでつかまえるという保税上の観点からいっても非常に明白にいけるはずであります。そういう点も、私どもも私どもなりに十分検討したところであります。いまあなたがおっしゃった、前向きに処置をするということでありますから、きょうのところはそのことを期待をして、その問題は終わっておきたいと思います。  それから、他の委員から発言があるようでありますから、私は次の問題に、ごく断片的でありますけれども、次の問題にちょっと触れておきたいと思います。  ちょっと先ほどの問題に触れてもう一回申し上げておきたいのでありますが、税制調査会の諸君も賛成だというお話ならば、私も前向きにやる、前向きにそれを処置すると、こういうふうな話だと了解をしておきたい。ただ、あなたのほうは税制調査会にはかってというようなふうに、すぐこうそっちのほうに逃げてしまうが、それは今度はこの問題については困りますよということをつけ加えておきたいので、あとの答弁の際に答えてもらいたい。  次の問題は、ほかにもありますけれども、生活協同組合の問題できのうも——おとといでありますか、主税局長に聞いたのでありますが、農協だとか漁協については特別措置を加える、片方生活協同組合はかつてあった恩典をめくってしまいながら、今度もまたそのままこれは対象にしないということは非常に不公平である。これが一つの点。それから、農協などは再建整備法でいままで再建整備をしようという観点でやってきた。一体生活協同組合というのはこのごろどうなっているかといえば、むしろこれは国家政策に基づいてそういうものを奨励してやらしてきたわけでありますが、実情は恩典がめくられてしまって、しかもほとんど生活協同組合というものはいま非常な経営危機に真面しているという特徴的なものがあらわれている。法律的には非常にアンバランスな処置を講じておられる。私は、特別措置などは本来できるだけ削れということでありますが、しかし、やる以上は当然同じベースにある、同一条件にあるものについてはこれをおやりはなることのたてまえは貫いてもらわなければ、まさに、これは政策的ですよと言うよりは、政治的ですよと言わなければならくなってくるのであります。この生協の場合にも、農協や漁協に対する取り扱いと同じような処置を復元されるお気持ちはないか。これこそまさに非情に極端な、不均衡という面において極端な事例でありますから、あなたの所見をこの際伺っておきたい。
  114. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 農協等の留保所得に対する減税措置を生活協同組合にも及ぼせ、こういう御議論でございます。これは予算委員会において奥むめおさんから同じ趣旨の御質問がございましたが、いま、農業問題に対しては農業基本法あり、中小企業に対しては中小企業基本法あり、こういうことで政策方向が非常に明らかになったわけでございます。ところが、生活協同組合というものに対する政策目的というものがあまりはっきり、これらの問題と比べると明らかでないという問題が一つございます。もう一つは、消費者に対して非常に貢献はしておるということは認めますけれども、中小企業を育成するということからいいますと、これ対立関係にあるわけでございます。なかなかむずかしいところでございます。そういうことで、とてもいまむずかしいのです、こういう答弁はしましたけれども、これは大蔵委員会でございますし、こういうものに対しては非常にいろいろ御研究になっておる専門なところでございますし、私もここの発言は非常に慎重にまた誠意を持っておるつもりでございますので、一応お答えはしてみましたけれども、いま同じ国会の中で前と違う答弁をするということになると、えこひいきがあるようではございますけれども、いろいろ何回も聞いているうちに、むずかしい問題ではあるが、何か考えなければいかぬかなあという気持ちにはだんだんなるわけであります。そういう意味で、これは先ほどの問題のように、輸出所得控除を中小企業に対して及ぼす方向というものに対して前向きに対処するというか、はっきりは現在の段階では申し上げられないと思いますけれども、生活協同組合の実態調査もしなければならぬわけであります。そうして、まあ中小企業との競合問題等も十分勘案をしながら、将来の問題としてひとつ検討をして取り組んでみる、こういうことは、いまの段階においてはやはりその中小企業基本法のようなものがないのだからだめですというようなことだけではなくて、やはりこれから新しい立場における生活協同組合の社会に及ぼす、国民の生活等に及ぼす重要度というものも変わってくるわけでありますから、そういうことも十分勘案しまして、将来に向かって誠意を持って検討をいたしてまいりたい、このように考えます。
  115. 野々山一三

    野々山一三君 将来に向かってというやつがくっついているから、非常に……。
  116. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それは取っておきます。
  117. 野々山一三

    野々山一三君 それはとにかく将来といっても、時間的なものでございますからあれですけれども税制上からいえば非常に同種のものでありながら不均衡だということを、もう一言私はつけ加えておきたいと思います。このごろ都市周辺地域における農協というものは、この間も申し上げたのでありますけれども、だんだん新しい住宅団地ができて勤労者の生活というものがふえてきている。しかも、そのような土地というものはわりあいに新しい商店の開発というものがおくれているというような事情から、農協だっていろいろな物品とかなんとかいうものの取り扱いがふえてきて、その利用というものはうんと高くなっている。員外の利用ということで、主税局長は非常にやかましく申している。生活協同組合員外の利用があるから、これは対象にしない。基本がないから、それは対象にしない。この二つ理由である。これはいま申し上げたような生活の地域の開発事情というものから見ますと、そういう理由ではこれはなかなか納得ができない状態にきている。だから、私はいまあなたが言われる一面がわからないでもない。あるいは員外の利用をできるだけ規制をして、しかしこれは伸ばす、消費者の生活を豊かにするためにこういうものを伸ばすという観点から区切りをつけて、積極的な措置を講じてまいるということでなければ、生協というものはつぶれちゃうというような一面のあることを十分御勘案の上で、最も近い将来にそれを措置をするということなんだということを私はまああなたの答弁を受け取り方をして、次の問題に移りたいと思います。  それは有価証券の配当の分離課税の問題で、去年利子所街の分離課税をやって、これは特別の問題だというので、これは本会議で私の質問にも答え、その際に当然この配当課税というものについて今後そういうことになりはしないかという牽制を持っているから、そういうことのないようにしてくれなければ困るぞということを私は言っておいた。ところが、ちょうど一年たって、そういうことのないようにするのかと思ったら、実はそういうことをふやすような措置をした。先ほど鈴木君が主税局長との間に、実際は零細投資家の恩典というものはむしろ剥奪されてしまって増税になる、特別過大な投資をしている人たちには特別な恩典があるような結果になるということを、主税局長との間にやりとりをしても、数字の上では明確になっているが私は申しませんけれども、そこで今度のこの法律を見てみて、非常に特徴のあるのは、一年に限って、来年の三月末までに払われる配当についてだけ特別に分離課税をするという、この特殊な法律ということは、ことしはそれをぽいとのぞかしておいて、来年からはそれを恒常化する気持ちがあるのではないかと思うのであります。さらに株式の配当分課税というところまでそれを延ばしていく牽制があるのじゃないかというふうに考えるのは私のひが目か。あなたから、そういうことは絶対ない、株の配当の分離課税というようなことは絶対にない、どうしても一年やるというのだから、一年で終わるのだという答弁があるならば、時間だからすぐやめますけれども、去年の実績から見て心配なので、あなたの口から考え方を聞いておきたい。
  118. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この問題は、御承知のとおり、大口のものというよりも、いま投信を持っておられるような人たち、大体は未亡人とか、それから夫の退職金だとか、非常に零細な、国民大衆が持っておるのだということは、これはもう常識だと思うのです。これは株式の市場が非常に不安になったというよりも、特にその投信というものが大衆化されておるということで、まあ期末賞与のほとんどを入れあげておるというようなことから考えますと、私はやはりこういう問題に対して優遇をするということは新しい行き方だと考えております。が、しかし、特別な措置でありますから、初めから恒久的にするということに対しては、これはやはり国会の御意見も聞かなくちゃいかぬし、世論自身のおもむくところも聞かなくちゃなりませんし、こういうことは新しい制度でありますから、悪ければまた変えなければならぬわけでありますので、これは一年間、こういうことにいたしたわけであります。この一年間のうちにまた十分お考えになっていただいて、よく調べてみたら、大衆、零細な人が多いからこれは続けるべきだ、こういう議論になるかもわかりませんし、私たちはそういう意味では謙虚な立場で一年間、こういうことをやったわけでございまして、それはひとつよく国会等のこういう御議論も十分拝承するというたてまえに立っておるということを、ひとつ御理解いただきたいと思います。  これをひとつ突破口にして、将来は配当分課税までいくのじゃないかというような御懸念でございますが、これはまあ現在のところは考えておりません。おりませんが、まあイタリアなどはこの間源泉一〇%と三〇%の分離課税とどっちか選択しろ、こういうことでやったわけであります。これは私どもも研究しております。今日研究しておりますが、まだ結論が出るような簡単な問題ではないわけでございますが、こういうことをやっている国もあります。これから開放経済に向かって日本資本市場の育成ということを、いわゆる外国からの借り入れ金だけではなく、西ドイツが過去十五年にわたって今日を築いたように、大いに自己資金を、資本を拡充することによって国際収支の不安などということはもう全然考えないようになることがいいというふうになるか、こういう問題はやはり全国民的に慎重に検討しなければならぬ問題でありまして、私は将来のことをいま見越して申し上げることはできませんけれども、少なくともこの源泉分離課税をやりましたことは、株式の分離課税、俗にいう分離課税に直結しておるものだというふうには全然考えておりませんから、そういう意味ではひとつすなおにお取りいただいて、この今度の措置に対してはひとつやむを得ざる措置として御賛成いただきたいと、こう思います。
  119. 野々山一三

    野々山一三君 すなおに聞く意味で、すなおに私は確認をしておきたいのでございますが株式配当に対する分離課税というものとは性質が違うので、そういうものにまで及ぶ考えはない、こういうふうに答弁をされたものと了解してよろしゅうございますか。
  120. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 今度の措置は分離課税と全然関係のないものである、こういうことは株式の分離課税とは全然関係のないもの、こう理解していただいてけっこうでございます。株式に対する分離課税問題がもし起きるとしても、またお互いに議論するとしても、これは全然別の立場議論するものでありまして、いまの問題とは全然関係のない問題だということは御了承いただきたいと思います。
  121. 野々山一三

    野々山一三君 子供だましみたいだ。いまの問題は株式とは全然違う、そういうことはわかっておる。性質の違うもので、株式の分離課税というような措置は講じないつもりである、そういう考え方だというふうに言われれば、私はすなおに聞いて、そういうふうにひとつお答えをいただけるならば、あなたの答弁を了解して終わります。
  122. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いま御審議をいただいておるのでございますから、これ以上のことは絶対に考えておりません。これでひとつ御理解いただきたいと思います。
  123. 野々山一三

    野々山一三君 これ以上のことは考えておらぬ。
  124. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) はあ。いまちゃんと申し上げたとおり、あとの問題は、先ほど申し上げたとおり、分離課税の問題については、あとはもう自己資本の充実という問題で全然別個の問題が起きるかもしれませんが、これは私が起こすのではございません。これは全然いまのやつとは関係ございませんということは、はっきり申し上げます。
  125. 野々山一三

    野々山一三君 株式の配当の分離課税は全然別な問題であると。考えておらぬ、今後も考えないと、こういうふうにあなたは言われたものと私は了解をしておきたい。  それから、もつ一つは、先ほど言ったように、あなたも非常に強調されておりますけれども、零細投資家の多いのが投信だと、そういうことであります。その投資信託に零細投資家が期待をして投資をしている金、非常に大きな規模の金が集まっているのだが、その大衆投資家が分離課税によって、いままでは相当程度戻り税というものがあったのに、今度は取られっぱなしになるんだということを、あなたは承知しておられるはずだ。大衆投資家がそこに金を集めてくる。その金にささえられて日本の経済成長の役割りを果たしてきた。その金を投げ出した人たちが、分離課税によっては戻り税金どころではなくて、取られっぱなしで、永久取られっぱなしで、たいへんなこれは、むしろそういう意味で見るならば増税になる。損をする。これでは一体大衆投資家の投資信託などに対する期待というものはゼロになるということは、はっきり言える。ゼロとは言えないにしても、非常な猜疑心を持つようになることは明らかだ、こう見なければならぬ。そういう実情は御存じでしょう。数字の上でこのことをよくお考えになって、かような処置が一年限りということになっておるのであるから、次の段階ではぜひともそれを打ち切るというような方向にいかなければ、あなたの答弁されている趣旨からいったら逆な方向をたどるのだということを、あなたはよく考えて処置をしてもらいたい。今度のこの問題に対するあなたの答弁はややはっきりしておるので、次の段階を期待するつもりでありますけれども、あらためてそのことを申し上げて、私の時間がなくなりましたので、質問を打ち切りたいと思います。
  126. 天田勝正

    ○天田勝正君 大臣、何せ野党のほうが国会始まって以来の協力ぶりでありまして、税関係でも八つも並べて一ぺんにどれでも質疑をしてしまわないと、とてもあがらないし、一四もあるのですから。そういうわけで、私も他の委員と重複しないようにいたしますし、また重複すれば、大臣からも、先ほどだれだれに答えました、こういうことでよろしゅうございます。  ただし、一点だけはどうしてもいまの野々山委員質疑とどうも重複せざるを得ない。それは何かと申しますと、私は税制調査会答申必ずしも万全だとは思っておりません。午前中質疑もいたしましたが、われわれとしては、今度の答申に入らないにしても、かなりもっと庶民生活に密着した問題については、検討さるべき問題だというような点についても、私から見ても十分ではないということがあります。ただ、今度の税改正全体を見ますと、答申案があっても、それと変わったものを実施しておる。あるいはなかったものが十五も実施されておる。答申があっても、それはやめておるというようなものもいろいろあります。これは一つ一つ議論していったら重複になりますし、また時間がかかりますからやめますが、ただ、この関係は私は見合いの問題だ。見合いの問題で、この答申にないのを実際実施しているのを全部悪いなどと、そういう暴論を私はいたしません。見合いの関係からすると、給与所得者の分に対する答申は完全実施されない、そういうときに、一面からすると、いまも言われておりますが、支払い配当に対する法人税率の軽課措置、どうもこういうのは、見合いの上からも、額とすれば平年度九十九億ですか、そのぐらいだと思いますが、額の問題でなくて、見合いの点からいって変ではないか。  それから、もう一つ、確かに一面、投資信託については、大臣が言われたような向きもあることは承知しております。しかし、そのほうの見合いは、私は、かつて三十万円の貯蓄元本が、いま五十万円、こういうふうになっておるのであって、やはりこれを見合いで調整すべき問題ではないか。すなわち、投資信託にしても、一定の額を限ってこれこれにはこれこれしますよ、それをこえた分はこれは違いますよと、貯蓄の場合もそうなんであります。そういう見合いによってなさるべきだと思いますが、この二点について、いかがでございましょう。
  127. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 税制調査会の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、確かに結果的に見ますと、所得税等に対しまして答申どおりやらなかったという問題はございます。これはまあ主税局長が答えたのは主税局長が答えたことでございますが、実際の話を申し上げますと、これは主税局と税制調査会とはもう非常に緊密な連絡をとっておるわけでございます。私たちも私たちの考え方を随時申し上げておるわけであります。初めは、選挙でもって、二千億近いと、こういうことを言ったわけでございます、選挙前に。そうしましたら、まあ千七、八百億らぐいだと、こういうふうに見て、とても二千億などはできるものじゃないと、当時の国会でもそういう御議論でございました。それで、だんだんと詰めてきましたときには、大体こういうところだという報告を徴したわけであります。それには、十四万円だったんです。そういう問題を、いわゆる初めから十五万円に上げろと、こういうことでなかったわけです。ところが、選挙があって、二千億に近いというのが二千億になってしまったわけです。二千億、地方、国を合わせてできるならばというような話で、最終段階において、私たちと非常に円満に御調整願っておったのが、最後の十五万円に引き上げた。一万円は、何にも関係なしにぽんときたわけであります。そういう事情がございます。私たちも、だから、これを何とかしてやりたいということで、非常に努力をしたわけでありますが、御承知のとおり、税収見込みが非常に例年に比べて多いじゃないかと、こういうような状態で、適正だとはいいますが、いままでに比べますと相当高い見積もりをやっておる。また、その反面、経済成長率は押えなきゃいかぬ、物価問題がございますので。そういうことを考えました結果、将来の問題としては十分検討いたしますが、その部面に対してはまた将来にひとつ残していただきたい、こういうことで、時あたかも八条国移行という重大な時期でありますので、もう元も子もなくしちゃいかぬと、こういう考え方で他の特別措置も行なったわけでございます。  それから、投信の問題は、これは確かにあなたが言われたとおり、貯蓄の問題と平仄を合わせてやるべきであります。また、そういう考え方が前提に立ってこういう措置を行なったわけでございます。この内容、実態というものを全部つかんで、これはほんとうに零細な人が大多数であるという場合には、五十万円の場合、五十万円までほんとうに免税になるのか、その場合一体どうなるのかというような問題も検討したのでございますが、何ぶんにも税制調査会答申も相当おそかったわけでありますし、ときあたかも、もう選挙直後に、予算編成、税制改正案の決定と、こういうことでありましたので、まあつい御提案、御審議を願っておるようになったわけでございますが、将来の問題としては、貯蓄の問題とのバランス、そういう問題も十分検討し、その実態ももっと調査をして、より合理的な税制上の措置をすべきであろうというふうに考えます。
  128. 天田勝正

    ○天田勝正君 それでは、これは私の了解ですけれども、私は根本的には、貯蓄の関係にしても、いまの少額投資の問題にしても、やっと自分の家が持てるという程度のものは、これはえらい保護の措置を講じてもいいのだ。しかし、そういう人たちと、さらに当人は便乗のつもりじゃないけれども、名目が同じにしても、えらくやはり一家を合わせれば事実何十万円の投資信託というのもあり得るのですから、そういうものまでも同格に扱うということは、何としても解せない、国民も解せないということになりますので、これはいまの答弁で、もうこれ以上の答弁を求めませんけれども、私としてはとにかくそれはそういう少額所得者を守るという精神を貫くのだ、こう了解いたします。違っていれば、あとで別の答弁の際に答えてもらいます。  次は、貿易外収支の改善策の一つとして、とん税、特別とん税の改正、それから、一面からそれを刺激するという面から、海運収入に対する特別の措置、こういうことになっておると思うのです。ところが、これによっても改善はされるのでありましょうが、とん税、特別とん税についてはまだどうも改善足らずという議論もあります。しかし、それまでやっておると時間がありませんからやめますが、いずれにしても、こうした貿易外収支の改善の別の道というのは何であるか。それは別途食管特別会計を出しておりますけれども、それらのほうでいうと、今度飼料の輸入等は別勘定を設ける、こういう趣旨であります。このことは従来も食糧の輸入、飼料の輸入という部面におそろしい船舶を使って、たしか私の記憶が間違いなければ、その大部分は外国船舶であります。八〇%ぐらいたしか外国船舶であって、これを日本の船に切りかえれば、そこでおそろしく貿易外収支は改善される。そのほうがはるかにウエートとしては私は多いのじゃないか。この点は、だから、実をいうと、大臣に第一義的に質問するのは、どちらかというとおかしいのです。おかしいのですけれども審議を進めるために万やむなく質問する。今日アメリカでさえシップアメリカンをやっているときに、日本は一向そういう措置を講じないということになっては、とん税や特別とん税、少しぐらい刑の海運収入からの措置による刺激ということをやっても、どうもこれが国の経済の面にプラスになるということにはならぬのじゃないか。このことを心配しておるのですが、その点についてはいかがですか。
  129. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) とん税及び特別とん税の引き上げに対しましては、確かにこれをもっていいとは考えません。まだ諸外国と比べまして三分の一程度というところでございますので、だんだん引き上げていかなければならぬわけでございますが、これは国内船主に対する影響もございますので、十分それらを勘案しながら、まず今回はこの程度の是正を行なうということであります。  それから、そういうものもさることながら、食管会計などて八割も外国船使っておかしいじゃないか、まさにそのとおりであります。とにかく先年からそういうことを閣議でも経済閣僚会議でもずいぶんやりまして、けさの経済閣僚会議で農林大臣の協力を求めまして、少なくとも飼料とか小麦とか、食管会計において輸入するものは邦船を使うという原則をひとつ確立してもらいたい、こういうことを強く提議したわけございます。これに対しては、御承知の輸入商社がありまして、この商社のリベート関係とか、いろいろな問題があるようであります。しかし、そういうものに、じんせん日をむなしうしておって、みずからその食管会計、政府会計の中において外国船を使うということは、全くざるで水をすくっていると言われてもしかたがないのであります。私はそういう意味において、勇気を持ってこの問題に対しては解決をはかろう、こういう考え方であります。  昨年もタンカーを二隻ばかり改装いたしまして、開銀からも金を出しまして、そうしてこれでもって小麦の引き取り船ということで、まず第一陣をやったわけであります。二隻や四隻ではどうにもならないわけであります。こういう問題に対しては、ひとつ大きく国際収支の改善に寄与できますように、全部でやれば約五千万ドル程度の運賃でございますので、こういう問題を真剣に検討してまいりたい、こういうように考えます。  もう一つは、石油等でございますが、アラビア石油とかスマトラ石油とか、そういう日本の国内業者がやっておるもので外船を使うということであってはたいへんなことでありますので、こういうものに対しては、自社船をつくらせるということに対して、これを計画造船のように八割、二割というような開銀融資の対象にするにはどうするかという問題、また業者と海運会社との提携、そういう問題に対しても、少なくとも外国船を使わないようにという基本的な方向で、早急に結論を出すということをいま検討いたしておるわけであります。
  130. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは少々、大蔵大臣に対する質疑では、らち外のような形ですが、しかし実際、いま食管会計はあなたのほうから出しておるのですし、私の見るところ、今度食管会計の改正案を出した根本であるこの飼料の輸入というものは、おそろしい勢いでふえると思う。ふえなければ、所得格差などはとうてい解消できない。なるほど農林当局も一面、草地造成などをやっておりますけれども、まあ御案内かもしれませんが、本院議員であった松村義一氏などの農場などは、要するにいい畜産、酪農をやるためにはいい草が必要である。そのいい草を取るためには土質を改良しなければならないが、実に三十年かかる。これは世界の最高水準になっております。そういうことだから、草地を改良してもいきなりコンスタントによい乳を取っていくというわけにはいかない。ですから、そっちに力を入れても、なおかつ片方で、おそろしい勢いでこの飼料をふやさなければならない。うっかりすれば、いまの食糧と同じようなことにこの部面がなってくる。そうなってくると国際収支というのは、この面からめちゃくちゃです。ですから、大臣は勇気を出して大いにやるというのですから、まあそれ以上ものを言ってもしようがないが、こういうところから水が漏るのでありまして、この辺も大いにひとつ実力を発揮していただきたいと思います。  次は、昨日もたいへん各委員議論されたのですが、しかし結論が出ていない。その一つは、海外投資損失準備金の制度であります。これがまあ、なるほどこの低開発国を開発するためにわが国もとにかく努力をする、これは当然だと思うのです。ところが、どうも結局は、こうして最後は国民の税金で補償するような事柄に、それを実施するために一体調査機関をどうするのであるかということについては、何か大蔵省の一係でやるのだというようなお話のようであります。これはまあたいへんな話で、実際に第一義的には、この投資に対して準備金をやるのだといってみたところで、輸出入銀行の例でもわかるように、しかしそれが予定どおり返ってこなければ、最終的にはどうなるかというと、国の借款になる。そうでしょう。こちらはそういう気持ちはなくても、主要債権国から相談をされれば、日本だけがむげに断わるというわけにいきませんよ。だから、結果的にそういうふうになるけれども、投資の場合に非常に精査をしてやらなければならないと思うので、どうもこの面の大蔵当局の配慮はまるきり足らないのじゃないかという気がするのですが、この点はいかがですか。
  131. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあ投資に対しては、いままで通産省や農林省、外務省は非常に積極的でございますが、大蔵省はどうもうるさくてだめだ、このくらいいわれておるわけでございます。その程度非常にうるさくやっても、いまのような問題があるわけでございます。きのうも日韓の問題でもって、もし有償等やって返さなかったらどうするのだ、こういう御質問が衆議院においてもございましたが、まあ投資という問題に対しては確かに、債権確保のために万遺憾なきを期してまいらなければならないわけでございます。いままでは大蔵省におきましては、理財局、銀行局、為替局という三つが中心になり、それに主計局が入りまして、相当真剣に取り組んで、ケース・バイ・ケースで非常に慎重な投資許可を行なってきたわけでございます。まあこれからもどういう機関をつくるかということは別でございますが、慎重にして効果のある海外投資を考える場合には、やはり万全な体制をとるべきであるということを考えておるわけであります。
  132. 天田勝正

    ○天田勝正君 その万全が、きのうも各委員もどうも質疑してその万全がのみ込めないのですよ、実はね。まあ今度の投資損失準備金と、これは書いたとおりでさっぱりへんてつもないのです。それもいいなという程度になってしまう。だけれども、それぞれの国によってすべての情勢も違えば、民族意識という点ですか、そういう点までが違っておるのに、どう精査するかわからないけれども、まあ自然に集まったような資料ではとても足らぬのじゃないか。そうすると、ことごとくが、民間投資についても、その民間投資を準備金という形、それがやがて、輸出入銀行のとき議論したように、しまいには国の借款、こういうことになって納税者にかぶさってくる。一番初めによほど精査しても、なかなかそれがうまくいかないのだと。アメリカなんかではちゃんと民間会社でそれを引き受けてやっておりますけれども、あんな米州機構の中でも、アルゼンチンや、ウルグアイを見た場合に、ほとんど失敗の例ですよ。あんなに近い地域で、すでに資本主義体制というものも確固といってもいいですが、それくらい発達しておるところでさえ失敗しておる。ことにこれからの低開発地域といえば、まあおおかたそうなんですけれども、私らが見てきたところでも、これが日本人の技術者が指導していましたイランの製糸工場であります。蚕業から製糸まで指導しておる。それで、その工場で機械設備をかえるという場合に、三百人の工員がそれができるまで二カ月遊んでいて、その人は閉口してしまっておる。そろばんにも何にもならないのですね。それは自分たちが雇われたのはそういうことをやるべきものじゃないと。だから、せめて工場の回りの草でも抜いてくれぬかといっても、それはやらぬ。まあこれは一例ですけれども、それほど労働に対する認識というのですか、とにかく民族意識というものが違う。およそおくれているところはそのような例があるのですね。  こういうところにこれだけ投資をして、そうして何年かかって一年かかって建設して、それから次には何年になれば黒字になるといって計算してみても、てんで成り立つものじゃないのです。たとえばこの間も、イドンあたりからも日本に留学生が来ていますけれども、向こうで同じ紡織機械で、賃金が安いから日本商品と競争していますけれども、一台に五人です、一織機。日本では一人で二台か三台ぐらい、四台ぐらい、はなはだしいのになるとローラースケートで走り回る、そういうぐらいに違うのに、どうも精査というのがどういうふうに精査するのか、ちっとも機関もなければ専門家もいない。これはどうも大臣、不安ですがね。どうですか。
  133. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) とにかくウジミナスのようなことを例に引かれれば、確かに不安であるというような御発言になると思いますが、しかし、大体いままで相当な件数をやっておりまして、大体うまくいっておる、こういうことだけは、ひとつ事実で説明できるわけでございます。大体において投資であり、しかも最後には失敗すれば国民の犠牲になるのでありますから、これは慎重の上にも慎重でなければならぬということも事実でございます。  また同時に、世界の風潮は、御承知のとおり、二十世紀末になっておるわけでありまして、先進工業国が先進工業国同士でもって、貿易をしても大きくはならない。これは純経済理論から考えましても、結局二十七億とも二十九億ともいわれておる地球上の人類の中で、その大多数は低開発国でございますから、こういう諸君の生活のレベルアップをする、そうすることによってやはり先進工業国の輸出というものも伸びて、まだまだ何世紀かこう世界の発達発展というものが期せられるのだ、こういう考えに立っておるわけです。でありますから、その低開発国の開発援助ということが必要であるということは、地球上すべての国の問題であります。日本自体は特にそういうものよりももっとはっきりした根拠がありますのは、世界の各国と比べて非常に特殊性があります。それは、全輸出額の五割以上が低開発国向けである、こういう非常に珍しい貿易の状態でございます。そういう意味からいいましても、世界的に見ても、また日本の特殊な実態から考えましても、後進国援助、低開発国を援助して、将来日本がそれによってまた利益を得なければならぬ、その一つの手段として低開発国援助投資が行なわれるわけでございます。  まあ今度宮澤長官が参りまして、国連の貿易開発会議に出るわけでございますが、ここで一番問題は低開発国援助の問題でございます。インド等に対しましては、御承知のとおり、債権国会議を開きまして、またこちらから追加投資をする、前に投資したものはたな上げをするというようなことがございましたが、やはり世界の趨勢として低開発国に対しては共同の責任で援助を続ける。そうすることによってお互いも共通の利益を得るのだという考え方でございますので、中には間違いもございますが、しかし、それはまあ低開発国というのはなかなかたいへんなところでございまして、ブラジルとか、非常に物価が高くなってしまってどうにもならぬというようなところもございます。しかし、ブラジルにはわが同胞が何十万人か行っておるのでありますし、将来長い関係から見て、私はウジミナス投資が失敗ではない、またこれを失敗にしてはならない。お互いに両国の間でこれをよくやっていくことによって、一時的にマイナスの面があったウジミナスの問題も、私は両国将来のためには必ずプラスの面がある。そういう苦難の道をたどって将来の利益を確保できるという考えを持って、やはり末長い気持ちで見ていただきたい。  日本は十四、五年前は、戦争に負けて何にもなかったときに、アメリカの援助を受けてこうなったので、今度は投資をしたり援助をしたり、こういうようなことができるような事態になっておるのでございますから、私たちも慎重に効率を上げるように考えますので、ひとつ政府をどうぞ御信頼賜わりたい。
  134. 天田勝正

    ○天田勝正君 どうも大演説ぶたれちゃって、(笑声)まことに被害甚大なるものがあるけれども、野党側全部、きのう質疑した人たちも、低開発地域を援助するという基本論で何も対立しておるのではないのですよ。とにかく従来の例もあるし、先進国だってこの点は調査不十分で失敗しておる例がたくさんある。その結果はそれは長い目でというので、五十年も幾らもたてば、借款にしたってそれは返ってくるでしょう。返ってくるでしょうが、これはやはり何げない措置なんですよ。五年間準備して据え置いたって、これは五年たてば返ってくるのですから、いわば税金をちょっと一時停止しておく、それだけのことなんです。何げないが、しかし実際は、他の国からの何があったりすれば、これは国の借款と、こういうふうに切りかえて、初めは五年か十年で返ってこようと思ったのが、今度は国の借金、こういう形になって、それは何十年先になるかもしれない。こういうことがあるのだから、結局日本の経済全体にだって影響するのですよ。それだから、まあ十分な調査機関を設けたりしても、なおかつおそらくはその分は、先進国なるがゆえにかぶってもしかたないけれども、その準備段階において足らないというのじゃどうも困るじゃないかということなんですから、どうもなかなか大演説をぶたれてかなわないから、こっちは一方的に希望しておきますから、さようなことのないように、ひとつ大蔵当局でやるというならばそれでよろしゅうございますから、しっかりやってください。  その次は、これはただいますぐの問題ではありません。昨日も一応議論したのでありますが、法人に対して制限はあっても交際費を認めておる。そうすると、個人に対しても、直ちにでなくても、研究して、それに該当する世帯控除というようなものを考えるべきじゃないかということであります。それはいろいろ異論はあるけれども、ことに日本の生活というものは——幾ら革命が起きた国だってそうですよ。急に国民の生活の基準がひょいと変わってしまうということはあり得ない。日本の基準からすれば、すべて交際費というものは家単位なんです、五人働いていようが、一人働いていようが。きのうも例にあげたが、生活保護を受けたって、お祭りに一銭も寄付しないと、子供を遊びにやれない、こうなるのです。ですから、実際にやらざるを得ないようになるから、やはり別途家族の多い者にはまた減税される措置があるのでありますから、扶養控除とかなんとかあるのですから、やはり一つには、一人の世帯であってもやはり世帯は世帯なんであるから、世帯控除というものを考えるべきではなかろうか。そういう場合にそれに応じて、もちろん生活保護世帯といえども、やはり控除分だけは生活保護費の加給といいますか、増加ということになるかもしらぬ。なるかもしらぬが、そういうことを考えるべきじゃないかということをきのうも聞いたのですが、この点どうですか。
  135. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私もやはりそういうことを考えて、主税当局に話したことがございます。話したのですが、なかなか聞いてみるとむずかしい、こういうことになるわけです。まあ事業をやっております者は、事業に付随して交際質的な経費の支出が必要なんで、これはいま社用族とか社用消費とかいろいろなことがいわれておりますから、できるだけ少なくしなければならぬという方向であることは事実でございますが、一定のいま事業をやっておる者に対しては、個人においても控除を認めておるわけでございます。事業をやっておらない人についても、交際がある、それは私もそのとおり考えております。考えておりますし、お互い議員などは、事業などは全然やっておらなくても、交際費のあることにたいへんなものでございますから、それは事実わかるのです。わかるのですが、なかなかその限度をきめるというのが非常にむずかしい問題でございます。まあこれはやはり課税最低限というものをだんだんと上げていって、その中でもって包括して片づけていくということでないと、生きるための——特に学者の方々なとはそうでありますし、それから、特にいま問題になっておる芸能人とか、そういうものに対して、実際支出をするものに対してはこれを認めておるわけでありますが、定額控除ということが一体税制上できるのか、これは非常に技術的にむずかしいと、こういうことをいわれておるわけであります。まあ大体そういうところでございます。
  136. 天田勝正

    ○天田勝正君 ほかの議員の迷惑になりますから、変なそういうところだったけれども、別の質問に移りますが、この新築貸し家住宅に対する割り増し償却、これはその限りではけっこうですけれども、他の議員も例をあげられましたように、償却資産のないものはどうもしようがない。しようがないけれども、特に私はこの問題は、細々一軒の家を持つという場合に、これは自分の家だから、償却されようとされまいと、どうにもなったもんじゃないし、どうせ給与所得者、大部分は低額ですけれども、そういう人たちが細々持ったときに、これは税法じゃ償却はできない。ほかの資産がないんだから、償却はできやしない。けれども、やはり他の面でもよろしいのですが、何か考える必要があるのではないかと思っています。これはいま結論が出ているわけじゃありません。しかし、そうでないと、なかなか、おそらく機械設備なんかではそれぞれの事業者同士のバランス、こういうことになりますけれども、この場合は、低額所得者と家を貸せるほどの人と、こういう違いですから、ちょっと違い方も、質的にも異なっていなければいかないのじゃないか。ですから、もし税法でどういう処置もできないならば、ほかの処置も何か考えてしかるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  137. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 非常にむずかしい問題でありますが、しかし、通常議論されておる点であります。これは家を持っている人に対して、いまの税制では、住宅の建設を促進したい、こういう立場でひとつ税制上の措置をいたしております。それから、もう一つは、家を持たない人、家を持てない人に対して重点を置いて、社会保障その他をやったり、また公営住宅法によって住宅建設をやっておるわけであります。しかし、私は、ある時期に日本の国力は非常によくなって、家を持っておる人でもそういう維持修繕というものはかかるわけでありますし、間口に対してやはり税外負担というものはかかってきます。交際費でもやはりそうです。そういう意味考えられるかとも思いますけれども、なかなかそれは、技術上も、実際の財政の事情からいいましても、むずかしいと思います。だから、ただ、いまの農地のように、その評価がえによって収益を生まない、今度親からもらって、相続税を納めて、現に朽ち果ててきておるにもかかわらず、評価が上がるというようなものに対しては、相当やはり将来配慮していかなければならぬだろう、こういうふうに考えます。実際、うちを持っている人に対する税制上の優遇、こういう問題はむずかしい問題ではありますが、御発言に対しては、私もこういうことに興味もありますし、私自身がそういうことを研究したこともございますので、将来諸外国の例も参考にしながら、新しい問題として、私自身検討してみたいと思います。  しかし、やはりこれもいまの状態では、その前に、こういう問題を取り上げるにしても、相続税という場合に、親が死んだだけでもってむすこのものになるので、そういうときに相続税をもっと現行でもって、いま改正案を出して軽減しておりますが、そういうものに税金をかけること自体かおかしいというような議論がやはり先行していく問題だ、そのように現在の段階では考えられるわけです。
  138. 天田勝正

    ○天田勝正君 私も、いま困難なものだということは実は承知して、大臣に聞いているのです。それは一つの例を申し上げたので、実はきのうも言われたのですが、一面、ささやかな土地とうちを持っている未亡人世帯で、実際は、持っているがゆえに生活保護が受けられない、そういう場合に、しかたがないから食うためにそれを売る。売る場合には、税金がかかる。ところが、それを、金を持っていて、別に買いかえるだけの力がある人ならば、これは税金がかからぬと、こうなっておるのですね。いまのお話はその一例なんでして、こういうアンバランスの点を——私の言いたいところは、そういうアンバランスなところになかなか困難があるけれども、そこはきめのこまかい行政というのでありまして、やはりそういう面を今後考えていく姿勢になってもらわなければ困る、こういう意味で申し上げているのです。例をあげれば幾つもあります。  もう一問でやめますが、これもきのう取り上げた寄付金控除の問題です。これは改正してたいへんによくなったということで、主税局長からも聞いたわけですが、しかし、まだまだ日本は先進諸国から見れば非常に寄付が少なくて、学術団体あるいは研究団体、そういうものが帯付金によって維持されておるという例は少ないのだから、それを刺激するという面からいっても、要するに全額控除でもいいじゃないか。二〇%控除でも、実は七五%はほかの所得で取るべきものを、このなにだと、当人の分は二〇%とか二五%寄付したにひとしいのだという説明です。しかし、このままでいけば、どうも私学も容易じゃない。何とか大学株式会社みたいになっちまって、事実それで処置がない。そういうのも国の資金でやるのが望ましいようではあるけれども、一面、憲法との関係というようなことになる。それですから、大いにそういうものを振興するには、こうした寄付というものを活用する必要が一つあるのじゃないか。そこで、当人が幾らしか納めないから何だのといっていないで、どんどんそういう道を幅広く開いたほうがいいのじゃないかという意見を持っているんですが、いかがですか。
  139. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) その問題ももう長いこと議論をされていることであって、重要な問題でございます。私たち自身でも、御寄付をもし自分の母校等にできればという感じは、いまの御発言と同じように持つわけでございます。これが、アメリカだとか先進諸外国のように、非常に財政も豊かであり、個人的な尊厳、個人的な考え方、個人の財産処分に対する状態を十分認めて上げられるというふうになることこそ望ましいと思いますけれども、いまは御承知のとおり、財政多端のおりからでございまして、やはり一部しか認めず、あとはひとつ税金でお預かりをして高い立場から国恥のためになるような財政支出を行なっておるわけでございますので、現在の状態ではこれを一挙にアメリカや他の国でやっておるようなところまで持っていけないと思いますが、私はやはり、だんだんと国が豊かになってき、国民の所得が大きくなってくる、そうして財政というものが豊かになってくる場合には、当然こういう個人の意思に関するもの、しかもそういう社会公共のために協力をささげようというようなものに対しては、税制上も、現行よりも先進国でやっておるような状態にだんだんと進めていくべきものと、このように考えております。
  140. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がありませんので……。私のところに来たときにはいつも時間がなくなるのですが、十五分ですから……。  先ほど大臣が来ない前に主税局長といろいろ一問一答した中で、租税特別措置法の中で今度新しくつくられました投資信託ですね、投資信託収益の分配の問題です。これについて、源泉分離課税を新設したわけですね。五%の源泉分離課税。よろしいですか。これについて、先ほどちょっと野々山委員も質問いたしましたところ、大臣は何か考え違いをしているんじゃないかという印象を受けるのです。これは投資信託はつまり零細な投資家が多いから貯蓄の意味を含めてそれを優遇するかのごとき、そういう是正処置であるかのような発言をなさいましたけれども、これは、大臣、非常にあなた大ざっぱですから、何かワッとつかんで、そうすることが零細な投資家にも利益になるようにお考えでしょうけれども、事実においては全く違うんですな。これは百万円までのものは現行よりもこの改正案によっては損をするんです。百万円までのこの収益金の配当を受ける人は損をするんです。具体的な例を先ほども、五十万円の場合だといたしますと、独身者の場合ですと、改正までは七千二百円の税金でいいわけです、七千二百円の税金で。ところが、今度は、改正後は五%ですから、二万五千円取られるわけです。そうすると、結局一万七千八百円よけいに取られるわけです。しかし、一千万の場合を考えてごらんなさい。一千万円の場合になりますると、全くその反対に、改正前は、つまり現行でいけば三百三十一万七千四百円税金を取られるものが、今度は、改正後には五十万円で済むわけですから、差引二百八十一万七千四百円というふうに税金は安くなるわけです。そうすると、高額所得者ほどこの改正によってはもうかるけれども、よくなるけれども、実はあなたが先ほどお話ししたように、少額の所得者、百万円などのものはかえって現行法のほうがよくて、改正後はよけいに損をするという結果になるわけです。私たちも独自で計算をいたしました。こういう結果をもたらすということについて、おそらく私は大臣は大づかみで、ああ、よかろうというようなぐあいでやったんだろうと思いますけれども、この事実がほんとうにあらわれてきたということについて、あなたはどういうふうにお考えになっていますか。
  141. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私もあまり大ざっぱではありません。非常にこまかくものを考えておるわけでございます。これはまあ五十万円の場合を抽出してお話をしたわけです。配当金五十万円、一割配当で額面五百万、いまの市場価格でいうと千百万円、こういうことになります。こういう千百万円の市場価格の株式を持っている方の五十万円の場合を抽出してやっておるわけでございます。そういうことであります。そういうようなことで、確かに改正前七千二百円が今度五%ですから二万五千円払わなければならぬ、こういうことですが、これはこういう計数の問題だけではなく、昔からいわれておるんですが、住宅を建てたい、住宅を建設したい場合には、住宅の建設資金をあまりつついたら住宅は建たないのです。同町に、預金もそのとおりであります。貯蓄増強をするときには、貯蓄に対してはその源泉をつついたら貯蓄は増強できない。同じように、こういう資本市場を育成しながら資本の増強ということを考える場合には、もう金はよけい払ってもいいから突っ込まないほうがいいのだ、こういうこともあり得るのです。ですから、私は先ほど申したとおり、フランスは三〇%かどっちかをとりなさい……。
  142. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 さっきあなたはイタリアと言ったじゃないか。その例はイタリアと言ったじゃないか。そのように大ざっぱですよ。
  143. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ああイタリアですか、(笑声)私も神ならぬ身でありますから、私も間違いがございますから、ごかんべん願います。  そういうようなこともありますので、ただ金額——いまから考えれば確かにこういう問題に対しては、これは私の問題よりも、こういうものは主税局の問題で、これはどこかこう信託の制度考えたわけですが、いろいろ検討した結果、このほうがいい、こういう観点に立ったわけであります。私は、資本市場の育成、また非常にこう内容に対していろいろなことを心配されておる投信の将来に対する信用、また発展と、こういうことを考えて、よかれかしと思ってこういうことをとったのでありまして、いまあなたはそう言われますが、将来になると、これはやっぱりよかったなということに私は必ずなってくるだろうと、こういう考え方に立っておる次第であります。
  144. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は時間がないから、この問題であなたとほんとうは……。これはもうあなた、そうおっしゃいますけれども、事実はそうではないのですよ。考えてごらんなさい。現行法を改正して少額配当を受ける者ほど損をして、高額の配当を受ける者ほど得になる、そういう現行法改正のつまり理論的な、あるいは政治的な姿勢というものは何であるかということを考えてごらんなさいよ。これは決してあなたがおっしゃったようなふうにはいきません。あなたは先ほど野々山委員の質問に対しては、これは貯蓄的な意味もあるから、投資家の云々ということを言われましたけれども、いま株式市場育成、投信の信用云々ということになっていくのですから、私はやっぱりほんとうのところは、あなたがここで道を開いて、先ほどは否定をされましたけれども、実際は株式配当においてもこのような源泉分離課税方向へ道を開くことをむしろお考えになっているのではないかという懸念が深くなるばかりです。それだけじゃございませんよ。この一千万円の高額の配当を受けた人は、税金改正でとにかく五十万円だけで済みますから、あとはパーになりますから、それで税金は二百七十一万一千二百円ももうけて、いまよりももうけて、この人はこれでもって税のかかる他の所得は無収入になるから、地方税においてどういうことになるのですか。住民税だって最低の均等割りで納めればいいということになるのではありませんか。隣には五人家族でもってほとんど食うや食わずの労働者がいる、この人たちをあなたは——そうはいかないですよ、やっぱり。ですから、非常に社会的不正義というものが拡大することになるのです、こういう税を行なえば。一方において、こういうことをやっておいて、他方において、あなた、どしどし零細企業から税金を取るというふうなことは、筋道が通りませんよ。ほんとうに筋道が通りませんよ。ですから、このこと自体はそれは六億か八億程度の減税かもしれませんけれども、持っている内容からいって、その方向からいって、税の負担公平の原則を踏みにじるものですから、このような租税特別措置法の中に今度加わってきた処置は明らかにこれは悪税であると認めて、あなたもひとつ今回限り、あるいはいまできるならばこれは私は取り消してもらいたいと思うけれども、なかなかあなたの立場としてはそうはいかないでしょうけれども、少なくともこの事実が明らかになった以上、ひとつ取りやめるかもしくはこれは全く今回限りだと——これは今回限りということになっておりますけれども、厳重にひとつ、この点についてはお答えを願いたい。
  145. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 非常に前向きな御発言をいただきましたわけでございますから、一年間という期限つきでございますので、今回はひとつこれでお認めいただきたいと、こう存じます。将来の問題は、先ほど野々山さんにお答えをいたしましたが、これを延長するかしないかという問題に対しては、また政府でも十分検討いたしますし、また国会の審議の過程においてこのような御意見も受けたのでございますから、そういう場合には十分かかる問題に対しても、真の減税の恩典があまねく及びますように考えたいと存じます。
  146. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 もう時間がありませんから、最後に、この問題とは別な問題ですが、一つだけお聞きしたいと思いますのは、これはもう昨年からやっておりますが、一度もまだ大臣としての答弁を聞いておらないのですけれども、いわゆる課税最低限の問題です。午前中も木村参考人が来まして、課税最低限の問題についても述べられましたが、日本のつまり課税最低限というのは、理論的にも実体的にも筋道が通っていないんですね。マーケット・バスケット方式にエンゲル係数を乗じて云々というふうなことでありますけれども、マーケット・バスケット方式というのはすでに日本の実情に合わないのです。これは物資が欠乏している当時に、所要カロリーをどうとるかということで、大臣も御存じだろうと思いますけれども、イギリスで戦後発生して、日本にはこれは昭和二十五年に持ち込まれて、人事院が公務員の給与をきめるときに採用した方法なんです。もうすでに労働組合の賃金理論の中でも、マーケット・バスケット方式というのはとっくの昔に投げ捨てた問題です。これは日本のつまり低生活水準を基礎にし、低賃金を基礎にしてつくられたものだ。それと同時に、もう一つは、マーケットを歩いて必要なものを、必要なつまりカロリーを買い集めるための主婦の労働力というものが全く一銭の価値もないものとしてつくられたものなんです。こういうようなマーケット・バスケット方式というものを、いまなお課税最低限の基礎的な一つにしている、これ以外に道はないのだということを言っているのです、税調の諸君も。しかし、ずいぶんこれは芸のない話だと思う。私をして言わしむれば、この課税最低限というのは、理論的にも実体的にも日本に確立した社会的通念がない。ここに基本的な問題がある。  ですから、この課税最低限をどこにきめるかということにつきましては、私はこう思います、率直にいって。それは、労働力の再生産に必要な経費、具体的にはそれは何かといったら、いまはまだつくられていないけれども、いま多くの労働者が要求している全国一律の最低賃金制がこの課税最低限でなければならぬと思う。これがないんですよ、日本じゃ。だから、マーケット・バスケット方式なんというイギリスの借りものみたいな、日本の実情に合わないものを、いまだに後生大事にかかえているわけです。この課税最低限について、最低賃金制の実現こそが真に、先進国か中進国か知りませんけれども、もうそこまで来たといわれているいまの実情においては、どうしてもこれをつくっておかなければいけないんじゃないか、こう思いますので、賃金の問題にとどまらず、税制の面においても、この課税最低限の問題と最低賃金制の確立という問題は不可分のものとして私たちは考えておる、この点について最後にひとつ大臣のお考えを聞きたい。
  147. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) マーケット・バスケット方式で基準生計費を決定しております。これよりもいい方法があれば、そういうことを採用するにやぶさかではないわけでございますが、なかなかいい方法はないということで、税制調査会も言っておられるとおり、これを従来採用いたしておるわけでございます。これは御承知のとおり、最低生計費ではなく、基準生計費ということでございます。最低生計費、課税最低限というものは、私はやはりできるだけ上げなければいかぬ、こういう考えでございます。でございますが、これもただ急激に理想に直ちに近づけるわけではないので、昭和二十年時代から今日まで、だんだんだんだん国力の充実と相まちまして、政府も年々減税をやってまいりまして、とにかく四十八万五千円までこれを引き上げられるようになったわけであります。私たちも前に選挙公約等を考えましたときに、少なくとも五人家族六十万円までいくには一体いつまでかかるか、これを勇気を持って打ち出したいということを自民党の政調会でもずいぶん検討したことがございます。私が政調会長をやりましたのは三年ばかり前でございますが、そのときも六十万円になるにはどうすればいいかということで、結局検討した結果は、所得倍増計画を進めて日本全体がよくなって、そうして課税最低限もだんだんと、生計費などというものではなく、大体標準としてこの程度までは免税である、こうしたい。私はもう農村、漁村の出身でありますが、農村、漁村などからは税金を一銭も取らない状態をつくりたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。しかし、やはり事実は着々とその数字の上に立って前進をしておるのでございますから、そういう事情もひとつ御了解いただきたいと思うわけです。  最低賃金制の問題は、三年ばかり前は八千円の問題とか、いろいろのことがございましたが、全国一律ということ、そういう時代が私は来ると思います。また来なければならないと思いますが、私は農村の出身者であって、農村の実態を聞きますと、新潟県あたりは平均反別、全県を入れますと専業農家でもって七反ないし八反であります。多いところは二町歩やっておりますが、八反歩で八俵ずつでも八、八、六十四俵であります。六十四俵、四千円ずつにしましても二十四、五万円、こういうことでもって、一体、八反歩以上やっている家族というのはみな六、七人の家族を持っているわけです。こういう人たちが、日本は非常に戦後工業が発展を来たしているけれども、労働者が今日のわれわれの生活をささえてくれていることはわかるけれども、農村や漁村を一体どうしてくれるのだという事実も日本に存在するのであります。でありますから、やはり戦いに敗れて今日になっておるわけでありますが、やはり日本国民全部が上がっていくようにしなければならぬわけでありまして、その意味で中小企業対策、農村対策、漁村対策、こういう問題の財政支出というものの重要性があるのでありますから、やはり国民すべてに目をはせていただいて、できるだけその上に、なおあなたが言ったような最低賃金制度ができるような、そういういい国をつくるために所得倍増政策をやっておるわけでありますから、どうぞひとつその間の事情を御理解賜わりたい。
  148. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それは大蔵大臣、あんた力みましたけれども、最低賃金制はひとり労働者だけじゃないのですよ。それは漁業も、農業も、中小企業も、すべての自家労賃が最低賃金制を基準にしてはじき出すということで、最低賃金制というのは国民生活の最低のおけの底をはめる仕事ですよ。そういう意味で、あなたの言っていることのすべての問題を最低賃金制はまさに解決する一つのかぎだと、私たちは考えますので……。
  149. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。次回は明日午後一時から開会いたす予定でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十分散会