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1964-03-24 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十四日(火曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            津島 壽一君            林屋亀次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    通産省鉱山局長 加藤 悌次君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  前回に引き続き、三案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 柴谷要

    柴谷要君 予算委員会審議が多忙な時刻に、大蔵委員会に時間をさいて大臣の御出席をいただきましたことを、冒頭にお礼を申し上げたいと思います。  まず、第一にお伺いいたしたい点は、聞くところによるというと、所得税法は本日衆議院の本会議によって可決をされるという見通しにあることを聞いております。それが本院に送られてまいりまして、これから本格的審議ということになりますと、あまりにも日数が短いのではないかという感じがまず第一にいたします。同時に、一月の二十九日に衆議院提案をされた所得税法が、あるいはその他の税法が、衆議院に非常に長期にわたって審議をされておる。ところが、参議院送付されてきまするや、すでに時間的に余裕のないという重大な法案が相当あるのではないかと思うのです。一体こういう審議国会の正常な審議であるかどうか。これにはいろいろな国会審議過程においての事情もあると思いますし、また政府のこれに対する態度といいますか、法案取り扱いについてもかなり疑問の点があろうかと思います。こういう点を勘案いたしまして、私は、まず参議院立場から、こういう短い期間で重要法律案審議をしなきゃならぬ、こういうところに追い込まれた事態、こういう問題に対して大蔵大臣はどのようにお考えになっておられますか、所見を承りたい、かように考えます。
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 衆参両院二院制度でございまするので、私はかねてから衆議院参議院で同日ぐらいの審議日数があることが望ましいという考え方でおるわけでございます。でありますから、衆議院先議のものは、この法律案の成立を予想せられまして、そのめどになる日をおおむね半分ぐらいに考え衆議院で御審議がいただけますことが望ましいというふうに考えておるわけでございます。また、参議院でも同じことでございまして、参議院先議のものも、衆議院にこの間外為法などを送っていただいたわけでございますが、こういうものも参議院衆議院が同じ日数ぐらいで御審議が願えるということが望ましいというふうに考えております。  政府は、法律提案の時期等に対しましては十分努力をいたしておるわけでございます。今度非常に重要な税法、特に所得税法につきましては、御承知のとおり、付表に誤りがございまして、これを訂正するかのその方法で、衆議院において一週間以上も、十日近くも参議院送付がおくれたということに対しましては、大蔵省に責任がございまして、本件に関しては事情を御了解いただきましてお許しいただきたい、このように考えておるわけでございます。  いずれにしましても、二院制度の妙を発揮するためには、ひとつ衆参両院で、各党でも十分お話し合いをいただきまして、二院制度の妙が事実発揮せられるようにお願いをいたしたい、このように考えます。  もう一つは、法律両院提案をすることになっておりますので、その意味では、先議院法案付託をせられた場合には、他の議院にはできるだけ早い機会予備付託制度もあるわけでございますので、その間に十分御審議がいただけるようにお考えいただければ幸いだと考えます。また、近時重要法案につきましては、本会議提案理由説明をするという方法がとられておりますので、その間一週間も二週間も、場合によっては三週間も、本会議提案理由のために委員会への付託がおくれるというようなこともございまして、こういう問題に対してはひとつ皆さんのお考えで、十分審議ができるように合理的な方法を御勘考いただければ幸いだと考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、所得税法等につきましては誤りがございましたことに対して、参議院の御審議の時間を短くしたという問題に対しては、心からおわびを申し上げます。
  5. 柴谷要

    柴谷要君 参議院審議の問題については、いろいろ担当大臣としてお考えをいただいているようでございますので、深くこれ以上追及しようとは思っておりません。しかし、国民感情として、一月二十九日に衆議院提案をされ、三月二十四日に衆議院を通った。それから参議院審議に入って、四月一日実施の法律案だから、三十一日に参議院はこの法律案を通したのだ、こういう現実の上に当面いたしました場合に、国民参議院をどのように見るか。これが一番私は参議院としての立場を苦しめる状態にあるのじゃないか、かように考えまするがゆえに、特に所得税の問題につきましては、いろいろな問題があって衆議院審議がおくれたという特殊な事情はありますけれども、そのような事情を知らない国民参議院に対する批判というものは非常におそろしいものがあるのじゃないか、こういうふうに考えるがゆえに、政府としても今後大いに研究をしていただきたい問題であるということを申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、時間の関係もございますし、大臣の都合もございますので、率直に税の問題について御質問をいたしたいと思いますが、今日まで税金の問題については軽く、公平に、わかりやすく、こういうたてまえで税というものは取り扱わなければいかぬということが長くいわれてきておるのでありますが、今日の税の問題については、これは意見はあると思いますけれども、重い。公平という面については、少なくとも片寄った不公平な徴税が行なわれているのではないか。わかりやすくという点においては、非常にわかりにくい徴税のしかたではないか。こういうふうに考えるわけでありますけれども、一体軽く、公平に、わかりやすくという徴税方法はいつごろになったら実現されるものであるか、これについての御見解を承りたい。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御説のとおり、税の軽く、公平に、わかりやすくという三原則は守らなければならぬということは、政府もそのように考えております。私が大蔵省に参りましてから一年有半の月日が過ぎるわけでございますが、私は、この大蔵省に入りまして一番初めの問題として、この税の三原則を貫きたいという思想をもって当局を督励をいたしておるわけでございます。同時に、三十七年につくられました税制調査会に、特にわかりやすく、税を納める方々が税法をよく理解できるように、税法自体を平易な文章に書き改めるという考え方を強く税制調査会にも申し上げているわけでございます。税制調査会では、答申も一部行なわれておりますので、所得税等につきましては、できるだけ早い機会に、所得税法人税等につきましては全文書き改めまして、わかりやすい税法にいたしたいという考え方でございます。なお、その他の税法につきましても、できるだけ早い機会に新しい立場、新しい角度から見た税法としまして、専門家以外ではわからないというような税法でないものにしたいという考え方でございます。  また、税は軽く公平にという基本的な姿勢に対しましても、これを守っていきたいということを考えておるわけでございます。
  7. 柴谷要

    柴谷要君 二月の二十六日に衆議院大蔵委員会で御答弁になっております内容について、ちょっとお聞きしたいと思うのであります。税の問題については、高い安いということはなかなか申し上げられないわけでありますが、所得とそれに対する税負担の状況を考えますと、必ずしも高くない、大体先進国並みになりつつある、こういう御答弁をなさっているわけでありますが、その発言は今日でもお変わりございませんですか。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 税が軽くという問題に対しては、いろいろな角度から議論の存するところでございます。私は常識的に考えますと、西欧先進国と比べて税負担が一体重いのか、軽いのか、こういえば、確かに重いと言わざるを得ないと思います。が、しかし、戦後の無資本状態から立ち上がってきた日本の戦後十八年間の状態を見ますときに、歳出要求もございますし、また社会資本の不足や、また社会保障充実等、戦後新しく取り上げなければならない財政サービス重要性もございますことを考えますと、現行の、現在の日本財政、その他を考えますときに、この程度税金はある意味でやむを得ないという考え方もうらはらの問題として言い得るわけでございます。でありますから、そのような発言をしておるわけでありますが、私自身も中小企業の出身であり、無一物から事業を行ない、生計を立ててきた過去を振り返ってみましても、税負担がより軽減されることが望ましいということは十分感じておるわけでございまして、国力の充実と相まちまして、税負担の軽減につきましては、将来とも前向きで積極的に対処してまいりたいという考え方でございます。
  9. 柴谷要

    柴谷要君 同じく二月二十六日にやはり衆議院大蔵委員会で、議事録を読ましていただいたのでありますが、大臣は、独身者夫婦者外国並みになりつつあるが、夫婦及び子供二人という扶養家族を持っている者には税負担が非常に重い、これは確かであります、こうお答えになっておるのでありますが、この御答弁に間違いはございませんですか。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは前とあとときっとあると思いますが、ただ、今度の課税最低限四十七万一千円という数字と、今度の減税案による四十八万五千円という数字との質疑応答の中で、そう答えておると思います。これが最低生計費基準生計費の問題に対していろいろ御質疑があったと思いまして、数字で見ますと、独身者、それから夫婦夫婦子一人、夫婦子二人までというように、だんだんと基準生計費との差額が小さくなりまして、大体夫婦子供三人という標準家族で見ますと、一万四千円くらいしか差がないということでありますので、数字の上から見ますと、現行税法、または改正案につきましても、五人家族という面から見ますと、重いと言わざるを得ない、こう答えておると思うわけであります。
  11. 柴谷要

    柴谷要君 実は私がこのような御質問を申し上げますのは、税は軽く、公平で、わかりやすくと、こういう意味において大臣がどのような今日まで答弁をされてきたかということを、実は議事録によっていろいろ調べて、まだまだたくさんの大臣の御答弁をいただいたことの記録があるわけでございますが、今回の減税についてはもう少し、大臣見解のように重いとお考えになっておられるならば、もう一段とこの階層に対する減税というものが強く押し出されていかなければならぬというふうに考えましたがゆえに、かく質問を申し上げた。大臣の重いという認識が、さらに来年度、続いて翌々年度等にこういう問題がさらに取り上げられて改善をされていくならば、税を軽く、公平に、わかりやすくという方向に順次近づいていくのではないか、こういうふうに期待をいたしまして、本問題についての質問を終わりたいと思います。  その次は、衆議院できょう所得税法の一部改正に伴う修正案可決を見たと聞いておるわけであります。そういうことがおありになるのでございますか。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 衆議院におきまして、損害保険料控除の問題につきまして、政府が、長期のものに対しましては、原案五千円という案を御審議いただいておったわけでございますが、審議過程におきまして、十五年以上のものが農業協同組合等のものであるという理由をもって、一万円に引き上げるという修正案が出されましたので、政府としましては、事情やむを得ないものとして、国会法に基づく政府意見を申し述べて、修正可決せられたわけでございます。
  13. 柴谷要

    柴谷要君 私どもは、予備審査の段階で政府提案の税の改正案について十分検討してまいったわけであります。大蔵省減税内容についての立場といいますか、また国会に対する説明というようなものも、非常に克明に調べてきておるわけであります。そうなりますというと、衆議院修正で五千円が一万円になり、二千円が三千円になる、こういうことになるというと、根本から理論がくずれてくるのじゃないか。五千円が一万円に値上げになり、二千円が三千円に値上げになった理論づけというものは一体どういうふうにつけられておるのか、これをこの際、大臣に御質問は無理かと思いますけれども、担当の係のほうからひとつ詳しく、われわれが今後審議にあたって十分に資料になるように、答弁最初お願いをしておきたいと思う。
  14. 松井直行

    政府委員松井直行君) お答え申し上げます。損害保険料控除の二千円と申しますのは、普通の住宅家財につきまして、これは営業者は別でございますが、営業者以外の例の平均をとってみますと、大体保険支払い料が二千円でございまして、担保されます財産といいますか、保険金が大体七十万円くらいが平均のところでございます。平均のところを採用いたしまして、特別な控除を認めるということにいたしたわけでございますが、農家の場合の五千円、これは十五年の建物の場合でいきますと、やはり保険金が大体その半分の三十五万くらいに当たります。五千円控除といたしましても三十五万くらいに当たりますので、これを普通の損害保険料控除と合わそうといたしますと、大体倍くらいに持っていく必要があるのではないかというのが一つの根拠でございますと同時に、農家経営といいますか、農家社会保障充実の一環として、この方面を一そう拡充する必要があるという理由がもう一つございまして、更生共済を中心といたします長期のものにつきましては十五年契約というものを十年に圧縮いたしまして、五千円控除を一方円控除ということに引き上げることによりまして、普通の保険の場合の二千円控除と均衡をとろうとしたものでございます。
  15. 柴谷要

    柴谷要君 そうしますと、はっきりした理論づけをしてもらわないと困ると思うので、それを伺うわけですが、長期の場合の五千円の決定を見たのは、建物更生共済基準として共済平均額は三十五万一千円と、しかも掛け金は九千三百二十三円といたしておる。ところが、農家作業場事業場建物農業所得課税から経費として差し引いているので、これを対象にすることは合理的でない、だから現在の住宅、これを対象にすると、どうしても五〇ないし六〇%の掛け金でなければいけない。だから、五千円というものが正しいということで大蔵省は出されたのでしょう。それを一万円に上げるというからには、これこれの理由であるから一万円だと、こういう理由づけがなければ、なお大蔵省としても承認ができないわけです。予算通過をしておる。このことをひとつ明らかにしてもらっていきませんと、最初からつまづきますと、ずっと審議をしていくのに非常な障害になりますので、明確にひとつしてもらいたい。決してこの修正したのが悪いというのじゃありません。裏づけがきちっとされていかないといけない、こう思いますので、明確にひとつ御答弁いただいて次に入ります。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 技術的な問題に対しては政府委員から答弁いたさせますが、この間の事情につきましては、衆議院から修正案が出ましたので、こちらへ送付をいたしてまいりますと、修正案についても御説明質疑があるわけでございます。私たち政府原案のとおりなるべくお認めいただきたいということでございますけれども、大蔵委員会においては全会一致でこの修正案をきめたいということでございました。で、なお問題はございますが、事実を申し上げますと、関税定率法の問題の中でもうすでに五〇%に引き下げるように時期的にきまっておりましたバナナ関税を当分の間七〇%に据え置くと、こういう修正が行なわれたわけでございます。これはリンゴその他国内果樹に対しての問題がございまして、これも全会一致でやろうということでございます。私たちは、歳入欠陥が生ずるような問題に対しては、ことに税法に関してはできるだけ将来に問題を残していただいても政府原案通過を願ったわけでございますけれども、どうもざっくばらんな御意見を申し上げて恐縮でございますが、大蔵委員会としては、片一方ではバナナ関税を七〇%に据え置くことによって二十億の増収ができるのじゃないか、しかも一方においては建物共済の問題を五千円を一万円に引き上げても二億程度の減収しか立たないのだから、国会でもってやれるのだから政府はこれをのめ、こういう高度の政治判断でございますので、政府としても一日も早く参議院に御審議をいただくためには一日も早く送付をしなければならないという事情もございましたので、御修正やむを得ずと、こういう状態になったわけでございます。
  17. 松井直行

    政府委員松井直行君) 先ほど申し上げましたとおり、保険業法に基づきます保険契約に入っている場合、それから共済掛け金の場合、いずれも加入者加入実績平均をとりまして、そこをめど控除額を算定したわけでございます。先ほど申し上げましたとおり、普通の保険契約の場合の二千円に当たります保険金が六十九万九千円、大体七十万円になるということは先ほど申し上げたとおりでありますが、長期の場合には三十年満期、それから二十五年満期、二十年満期、十五年満期、十年満期、いろいろございます。そこで、共済金が七十万円——六十九万九千円に当たります保険料の払い込みの平均をとってみますと、大体一万円に当たる、そういう別の観点から一万円に引き上げるということにいたしたわけでございます。
  18. 柴谷要

    柴谷要君 そういう説明だと、農家作業場事業場一切含めての掛け金ですね、それは。しかも、農家作業場事業場は、農業所得課税から経費としてすでに差し引かれている。そうするというと、またそれに対して控除するということで、二重の恩恵に俗するということになるわけです。そういう説明じゃ納得がいかない。
  19. 松井直行

    政府委員松井直行君) もう少し詳しく申し上げますと、共済金が六十九万九千円に当たります保険掛け金は、三十年満期の場合は八千九百円でございます。二十五年満期で一万一千円、二十年満期で一万五千円、十五年満期で二万一千円、十年満期で三万五千円でございます。いまおっしゃいました事業用財産がございますので、それを省きまして家財住宅だけにいたしますと、六割五分というところで平均考えまして、二万円と相なったわけでございます。
  20. 柴谷要

    柴谷要君 そうしますと、そういう修正案内容説明参議院にも送り込んでくるのですか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、これはもう全会一致議院修正でございますので、私たちはこの問題に対して国会法上の規定に基づく政府意見を聴取されたわけでございまして、これに対しては事情やむを得ず、こういうことを申し上げたわけでございまして、修正事情その他に対しては、衆議院側からこちらへ参りまして、修正案提案はいたすものと、このように考えます。
  22. 柴谷要

    柴谷要君 衆議院から修正案が来れば説明が聞けると思うのだが、しかし、われわれは今日のいまの時点では予備審査ですから、そういう先のことまで伺っておきませんと、なかなか議事進行しませんので、お伺いしたわけであります。そこで、後ほどそういうことが十分聞けると思いますから、この問題はそれでは終わっておきたいと思います。理由の明確でないものが国会通過したということにさしたくないために、きちっと理論づけをしておきたい。  いま高度の政治性と言っておられましたが、参議院全会一致で議決をした、これ以外の問題で。その場合にもやはりそのような取り扱いをしていただけますか、政府見解をひとつ伺っておきます。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まさにやむを得ない状態があった場合にはこのようなことになると思いますが、なるべくひとつ御修正いただかないようにお願いいたしたいと思います。
  24. 柴谷要

    柴谷要君 これは後日ゆっくり伺うことにいたしまして、次に進んでまいりたいと思いますが、大臣戦前と戦後の税に対する国民認識というのがたいへんな違いがあると、こう思うのであります。端的に申しますというと、戦前は早く納税者になりたいという国民感情があった。ところが、戦後は何とか税からのがれたいという国民感情がほうはいとしてあると思うのですが、この点お認めいただけますか。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 遺憾ながらそういう事実が、風潮があることは私も感じております。
  26. 柴谷要

    柴谷要君 そういう風潮が生まれたということは、一体どこに原因があるのか、それからこのような風潮を取り除くためには一体どうしたらいいか、それはやはり政治だと思う。その政治をどう扱われるか、大事なことだと思いますので、ひとつ大臣見解お願いしたいと思います。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 戦前は、御存じのとおり旧憲法のもとで、納税国民の三大義務一つであったわけでございます。兵役の義務納税義務、教育の義務、こういうことでございました。でありまするから、税に対してのしっかりした国民的な感じがまずあったことは事実でございます。それから、もう一つは、納税者に対して国家制度上相当の優遇もいたしておったわけでございます。御承知のとおり、多額納税議員制度がございました。同時に、人間の信用をはかる場合の一つの尺度といたしまして、納税実績ということが相当生計を営む上に必要であったわけであります。特に官公需等に応札する場合には、御承知のとおり、直接国税を何円以上三カ年間納めている者に限って入札資格を与える、こういう制度があったわけでございます。  でありますから、納税ということに対しては、一つ国家に対する大きな奉公であるという気持ちの上の一つの拠点がございましたし、もう一つは、やがては多額納税議員にもなろうという国民的な希望も存したわけでございますし、もう一つは、税を納めるということが自分の社会的な信用、地位を確保する一つのゆえんであるというふうに考えましたので、税に対しても非常に納税実績をあげるということに対して前向きであったと思うわけであります。まあその上に、なお、柴谷さんが次にきっと言われることだと思いますので申し上げれば、税が比較的安かったということも言えると思うのであります。  戦後はその逆だということが言えるわけでございます。多額納税議員もないし、税金を納めないで、なるべく多くの仕事をしておっても、会社は赤字欠損でございますと言ってもあまり恥ずかしくないような風潮も出てまいりましたし、そういう意味で、また、納税を全然しなくても看板さえ大きければ官公庁では幾らでも応札できるという戦後の乱れた状態になりましたし、そんな意味からいって、戦前とは税に対する気持ちが全く変わっているのではないかというふうに考えられるわけであります。  しかし、納税というものは、政府がこれをかってに使うものではなく、政府が預けられた金をより豊かな将来の生活を築くために、これを効率的に運用して国民の利益をはかるのが税の目的でありますので、これから政府も前向きで、新しい角度から納税に対するひとつ関心を高めていただくように十分PRもしていかなければならないだろう、また最終的には、税負担が軽くなるように、国民が喜んで納めなければならないと、また納め得るような体制を招来することも大きな目的でなければならないというふうに考えられるわけであります。
  28. 柴谷要

    柴谷要君 その端的なあらわれとして、けさの新聞に、所得の非常に低い人たち税金が高くて困る、こういうようなことを言っておるのは、これは一般的なあれでありますけれども、けさの新聞で、いまをときめく歌舞伎名優の市川団十郎氏が俳優協会を脱退した、その理由は何かといったら、税金問題だということで、けさの新聞に出ているわけです。しかも、この市川団十郎氏がどれくらいの年収があるかというと、一千万円以上のたいへんな高額所得者だ。こういう高額所得者が税金の問題で協会を脱退し、税務署にいま真剣な、何というか、闘争をいどんでいる、こういう姿が新聞に出てきているのでありますが、この内容について、これは大臣にお尋ねするのは御無理かと思いますので、国税局からでもひとつ、お願いでさましたら、一体こういう立場の人が新聞に書かれるような税問題をやっているのかどうか、これをひとつ伺っておきたいと思う。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 市川団十郎氏から私に対する会見の申し入れがございますので、時期をみてお会いして事情を聞きたいというふうに考えます。  この問題につきましては、事情をいま御承知だろうと思いますが、申し上げますと、いままで文士、芸能人等に対しては、必要経費として約五〇%の基礎控除を行なっておったわけでございます。ところが、税負担の公平という意味から、実質的な支出というものがあるのかないのかということで、昨年から、サンプル調査だと思いますが、東京国税局でやったわけでございます。これら芸能人の高額所得者は全国にはないのでありまして、東京、大阪の国税局管内にほとんどその九十何%もいるということがいわれるわけでございます。でありますから、東京国税局でそのように実例をひとつ調査をいたしました。そうしてみましたところ、税負担の公平の原則から見て、五〇%程度では少し高いようだということで、まあその基礎控除——必要経費というものの控除額をもう少し下げてはどうかという議論が存在しておることは事実でございます。  ところが、まあ作家とか芸能人とかいうのはなかなかむずかしいのでして、必要経費の算定は非常にむずかしいわけでございます。これはもうりっぱなお宅があっても、あるものを書くには、どこか深山幽谷に行かなければいかぬ、また銀座のまん中で二、三日泊まってみなければ書けないとか、また銀座の異を毎日何回か飲んで歩かないと感じが出ないとか、なかなかむずかしいものであります。こういうものに対して、確かに、私もまあ文化的センスがないわけじゃありませんから、よくわかります。事情もよくわかるので、あまりにしゃくし定木に、あまり文化的センスのない感じで国税局の職員がいろいろなことをやると間違いが起こるから、十分注意をしなさいというようなことで、四、五カ月前から私もよく注意をしておったわけでございます。まあよく調べてみますと、御自分が出費したであろうというような旅館や、また料亭等のその支出が、新聞社や雑誌社から出ておったとか、いろいろなものが出てくるわけでございます。  でありますが、まあこまかいことから申しますと、国税当局では、相当のところまで基礎控除額を引き下げられるというような意見もありますが、しかし、国税当局等がうかがい知れないむずかしい問題もあるわけでありますから、そういうものも十分加味をして、必要妥当であるものはひとつ控除しよう、こう考える。しかも、先ほど申された税の三原則——負担の公平という問題もありますので、まあ気負い立って何か判例をつくるような気持ちでやってはならないということを十分国税当局に指示をしながら、まあ適切妥当な率に押えたい、こういうことでございまして、この問題はただ国税庁の一部長だけの問題としてではなく、国税庁の問題として取り上げまして、私もお話を十分聞きながら遺憾なきを期してまいりたいという考えでおりますので、どうもこの方々が税の問題で脱退をするとか、そういう問題とは少しこの内容が違うように理解をいたしております。
  30. 柴谷要

    柴谷要君 私、この問題を特に大臣にお伺いいたしましたのは、非常に国民が関心を持っておる問題だけに、先ほどお伺いいたしました税は軽く、公平に、わかりやすくという問題に関連をして、やはり今日まで各大臣が手をつけられなかった場所に公平な見地から徴税をしようということで押し出された。これがたまたま新聞等に出たので、よけい国民に知れて、国民はこれがどのような解決をされるか、公平な徴税が高額所得者だから手ぬかりがあり、少額な源泉徴収者からはびしびし取り上げる、こういったような解決方法をとられたのではまずいということで、特にこの問題をお尋ねしたわけでありますが、国民が強い関心を持っているだけに、最も公正妥当な徴税を確立をしてもらいたい。  特に、この問題に触れて北条秀司さんが、問題は俳優自身の収入が幾らなんだか個人でわからぬと、ここに問題があるということを指摘しておりますけれども、これらの問題もやはり、団十郎さんが幾ら自分の金をもらえるのかわからぬ、しかし、まあいろいろ経費を差し引かれて手元へ来る金が少ないというので、だいぶいきり立ったような状態のようでありますので、こういうところに問題があるのじゃないか、こういうふうにも考えられます。このことについては十分関心を持っておりますので、名解決をひとつぜひお願いをいたしたい、かように考えてこの問題を打ち切りたいと思います。  過日、本会議で、私は所得税と租税特別措置については本会議質問をいたしましたが、法人税については伺うことができなかった。たまたま大臣も御出席でございますから、法人税の改正について二、三点お伺いをしてみたいと思うのであります。  まず第一に、法人税については政府は下げる必要はない、こういう態度で臨んでおられると思うんです。そのために税率の変更はしないけれども、企業の内部留保を高めることに重点を置いて今回の改正が行なわれた、このように私は思うのであります。その第一として考えられますことは、固定資産の耐用年数の短縮、こういうような問題、それから大規模な減価償却費を計上されるがゆえに私は価格の上に影響を与えてくるのではないかという心配があるわけでありますけれども、これらの点についてどうお考えになっておられますか、その点をまず伺っておきたい。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 方向といたしましては、まず所得税の基礎控除の引き上げとか、配偶者控除の引き上げとか、扶養控除の引き上げとかという方向で、まず前向きでこれからも対処いたしてまいるわけでございます。それと平仄を合わせながら、法人税率の問題に対しても私は、将来的な問題としてではございますが、できるだけ引き下げていきたいという考え方は持っておるわけでございます。これはもう現在の段階では諸外国に比べても税率は大体いいところへきているんだという議論もありますけれども、これからの国際競争力をつけなければならないという状態からも、また物価の抑制その他いろいろな政策的な目的を考えますときに、法人税の税率もできるだけ下げていくような方向で検討してまいりたいということを申し上げたいと思います。しかし、あくまでもそれは税目間のバランスもございますので、少なくともこの上になお法人税とか租税特別措置とか、そういう問題だけに重点を置くというような考え方で御批判を受けるつもりはないわけでございまして、必要な状態を十分国民各位に理解をいただきながら、将来バランスをとりながら、その範囲内で税率の軽減もはかっていきたいという考えでございます。
  32. 柴谷要

    柴谷要君 初めて大臣から聞くわけですが、法人税率の引き下げ等も考えているということでありますけれども、いままで政府は、法人税率は諸外国と比較をして非常に低いのだ、日本はまだ低い、こういうたてまえをずっととってこられたように思う。特に税制調査会の答申の中にも、所得税の負担が非常に重いからそのほうに重点を置きなさい、法人税は他と比較をして非常にうまくいっているのだから、これに重きを置くことはない、こういうような内容が盛られていると思うのです。そういう見解とただいまの大臣の御答弁とは少し食い違いがあるように思うのですが、昭和四十五年度までには税の負担率は二一・五くらいに押えていきたい、こういう、大蔵大臣はその方向に向かって努力するんだと、こういう御答弁をなさっておる。  ところが、泉主税局長さんのほうでは、どうも年々一%ぐらいはいまの状態でいくと上げていかなければならぬというようなことが、衆議院答弁の中にあるわけです。それは社会保障制度とか教育の振興だとか、文化の交流だとか、いろいろな問題があって、そういう方面に経費を年々支出をしていくので、その率だけ押えるというわけにはいかぬけれども、多少負担が上がっていくことはやむを得ないんだと、こういうような答弁をされているのを読んでいるわけです。  一体、そういう見解の違いがあることも承知をしておるのでありますが、いまの法人税も順次下げていくんだという大臣の御答弁は、これはもう終始一貫変わりがないのでありますか、その点をひとつ伺いたい。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が先ほど御返事申し述べましたように、所得税の軽減を第一に考え、将来の問題として考えるときに、法人税の税率に対してはもう先進諸外国と遜色がないという議論もありますけれども、私は将来税率が引き下げられるような状態が来た場合にはこれを引き下げる方向で考えてまいりたい、ただし税目間のバランスという、公平の原則というような問題は前提として考えております、ということを申し上げておるわけでございます。法人税の税率さえも引き下げられるような、特に中小、零細なものの法人税率には軽減税率を適用しておりますが、こういう問題に対しても特に重点を置いて将来考える方向というものは、これは正しいことだと考えておるわけでございます。ただ、何も優先をして法人税の税率を下げるということを申し上げておるわけじゃないわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。  しかも、主税局長と私との間にニュアンスの違いがあるようなお話でございますが、これは長い間何回も御答弁を申し上げておる過程においてそのようなことが起きておると思いますが、しかし、二人の意見は完全に一致しておるわけでございます。これは税制調査会が現在の状態においては税負担率は二〇%内外が望ましいと、こういう御答申でございますが、財政需要その他十分勘案をしてまいりますと、それはまあ二一、二%とお読みいただければはなはだ幸いだと、こういうことを申し上げておるわけでございます。四十五年二一・五程度というお考えでございますけれども、いまの状態から考えまして、やはり二〇%を二一、二%とお読み願わなければならないような状態でありますという観点に立って御答弁を申し上げておるわけでございますので、四十五年に二一・五%、税制調査会の答申どおりになるのか、二二・五%になるのか、それはそのときの財政需要及び減税その他の調子によって変わってくるわけでございますが、私はしかし、先ほどから申し上げておりますように、減税も年々やってまいりましたし、将来も税負担の軽減を第一番目に考えてまいります、こういうわけでございますので、そのときにおける税負担率というものと財政規模の問題等に対しては、国会でひとつ十分御審議をいただく問題だというふうに考えておるわけでございます。
  34. 柴谷要

    柴谷要君 法人税の見解についてはわかりましたが、今回の改正で、同族会社の留保所得税の特例ということで、大企業とは多少区別した考え方を持っているようでありますが、特に同族会社が脱税行為にわたらない限り大企業と差別をしなくてもいいじゃないか、こういう見解を持っておるわけでございますが、この点、大臣、いかがでございましょうか。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常にいい質問をいただきましてありがとうございます。私が大蔵省に参りまして、まずこの点を一番議論したわけでございます。主税局と初め意見が違うといえば、ここの問題が違ったわけでございます。現在は一つでございます。現在は一つでございますが、初めは違った。いままでの税制上のたてまえから、同族会社というものに対してはどうも脱税をしやすいという目で見られがちでありましたが、私は別の面からこの同族会社というものを考えた。国民が一人でもって事業を始めるときに、将来大きな企業になろう、優秀な企業になろうと思っても、信用のない場合には、好むと好まざるとにかかわらず、親類、縁者等から金を集める以外にはないのであります。どんな大きな会社でも初めはみんな、二人か三人工員を使いながら、そのときにはだれも大衆資本がその中には入ってきませんでした。だんだんと妻の金を使い、親の金を使い、兄弟縁者の金を使い、友人にまでワクを広げ、ある時期になるとその地方、県が単位になり、やがて全国的な大衆資本が集まるのでございまして、その事実に対しては着目しておらなかったようでありますので、私は同族会社というものはやむにやまれぬ中小零細企業の生々発展の過程における一つの形態であるから、そういう面からこの減税考えなければいかぬ、こういうことでこれを取り上げたわけでございますので、これからはひとつ識者の批判を十分待ちながら、同族会社というものは脱税をすることに一番かっこうのものであるという考え方から、同族会社がやがて大きな大企業になるのだという考え方に方向を変えて、同族会社に対する税制上の問題は将来とも別な面から優遇措置を構じていきたいというのが私の考え方でございます。まあいまの段階においては、主税局と税制調査会意見等を聞きまして、大体この程度におさまりましたが、こういう思想が前提でありますので、私は将来は、いままでのようではなく、前向きに税制上の施策も行なわれるというふうに考えておるわけであります。
  36. 柴谷要

    柴谷要君 同族会社の見解については大臣と全く同意見で、何かうれしくなったような感じがするわけでございます。そのように次の段階もぜひひとつ歩調を合わせていただきたいと思うのです。  それはほかでもありませんが、税制調査会の態度は、「租税特別措置は、負担公平原則や租税の中立性を阻害し、」こう言っておるのですね。し、なお、総合累進税率構造を弱めている、納税者にしかも悪影響を与えている、こうきめつけているのですけれども、この点、大臣どのようにお考えになっておられますか。これはまさしく私は税制調査会のきめつけ方は当を得ていると、こう思うのですけれども、この点でも私の見解と合わしていただきたいと思うのですが、この点いかがですか。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうも少しそれは意見が違うようであります。これは税制調査会の答申がない租税特別措置さえも政府は最終原案に盛ったわけでございますので、まあ税制調査会意見とは多少違うわけであります。これもいまの同族会社の議論でもって考えていただければ、政府考えていることが税制調査会で言っている議論と何ら変わらないのだ、究極の目的は一つである、こういうことがおわかりになっていただけると思うわけでございます。  租税特別措置などがなきにしくはありません。ないような国ができればいいわけであります。ないような国をつくるために、ある期間やむを得ざる措置として租税特別措置を行なう必要があるわけであります。これは議論をしてもしようがありませんから、私は一つの例を申し上げますと、いままで非常によかった石炭企業が悪くなれば、これは免税をしなければならない。すると、一般よりも財政資金を投入しなければならない。そうすることによって、石炭企業が安定企業になるために、国民の利益をそこによって確保できるのであります。また、中小企業もそのとおりであります。中小零細企業に対しては、三公庫に資金を入れる、税制上の優遇をする、こういうことをある時期しなければ、零細企業は中小企業にはならないのであります。中小企業が大企業にだんだんとレベルアップしてくるためには、ある一定期間租税の特別措置もやむを得ないわけであります。また、いま石油資本が外国資本に牛耳られそうになっておる、そういう問題に対しては、国産石油や国産の天然ガスの開発等に対しては、政府は一般会計からも財源を入れる、同時に租税上の特別措置も行なう、そうすることによって国際競争力をつけていかなければいかぬ、国内資源の保護確保をしなければいかぬ、こういうやむを得ない事態になるわけでございます。同じ学童ミルクであっても、また学童給食であっても、ある一定の水準に達しない家庭の人に対しては免除するわけであります。だから、これが免除しないで、租税の公平の原則一本でもっていけるような事態をつくるために、ある時期やむを得ざる事情として租税特別措置をやっておるのでございますから、まあこれはあまりにも広範になってしまって、毎年毎年所得税減税をやらず、租税特別措置ばかり、凡百の例ばかり出していくのであれば問題でございますが、これは一つ一つ事業を見ていただくと、どれもこれも必要であるという、こういう問題なのでございますので、私はこの戦後の日本の特殊な事情を脱却をして、将来国民がしあわせになるためのやむを得ざる措置であります。だから、税で特例の措置をやっておるということを財政支出に置きかえていただければわかるわけであります。  財政支出でもって全額負担をしなさい、また北海道は九割負担をしなさい、国道は直轄全額負担でなけりゃいかぬ、こういう議論がある。しかしながら、やはり政策目標を達成するために、財政支出をするか、税の租税特別措置でもってこれを救済するかという面でしかないわけでございますので、私はどうも、この税制調査会の答申は全部答申尊重という基本的な態度でございますが、ただ一点、租税特別措置はこれは廃止をすべきだ、直ちに廃止するべきだというような御議論は、もう少し世の中を見ていただけると、政治的な立場からより広範に、しさいにこまかく考えていただければ、租税特別措置も必要であるが、所得税に重点を置くべし、こういう書き方に変わっていただければ、それこそもう全条私は尊重する、こういうふうになると思っておるわけでございます。
  38. 柴谷要

    柴谷要君 私はここでひとつ国政調査で税の取り方の検討をしたのでありますが、昨年、利子所得改正を行ないましたですね。一件五十万円までは無税、それ以上のものについては一〇%課税しておったのを五%に引き下げた。それだから、私は利子所得徴税状態はどうかと思って調べてみましたら、驚くなかれ一〇%のときの徴税額が非常に少なく、一件五十万円の無税で、非課税で、それ以上のものに対して五%と引き下げた額のほうがたいへんな税金が納まってきた。一体これはどういうところから金が出てきたのか。これは国税庁長官にお尋ねしたほうがいいと思うのでありますが、どこの税務署へ行って調べてみましても、前年度から比較をして、税率が下がったほうがたくさん徴税が出てきた、実績が上がった、こういう結論が出ておるのですが、この点に対してひとつ理由をお聞かせいただきたいと思うのです。急に、一〇%のときの預金と、五%のときの預金ががらり変わったのはどうか。これはもう回ってきました税務署の実態全部を握っておりますから、間違いのないところをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  39. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 国税庁長官からお答えすべきかとも思いますが、私のほうで考えておる点を申し上げますと、これは御承知のとおり、昨年この少額貯蓄制度ができます前は、国民貯蓄組合の制度がございまして、これはまあ最初のうちは一人三十万円までは国民貯蓄組合にはいれる。ところが、法律のほうにおきましては一人一口ということになっておりますが、金融機関は方々にございますし、それからその名寄せをする制度になっておりませんために、一人の人がたくさんの国民貯蓄組合に加入できる、こういう実際的な内容になっておったわけでございます。ところが、少額貯蓄制度に変えましてから、一人一口で、その加入した名前を金融機関のほうに届けておきまして、税務署のほうでその名寄せができるという制度にいたしたわけでございます。そういうことから、従来国民貯蓄組合の乱用があったのが、減りまして、ほんとうの意味での五十万一口ということに変わってまいってきたのでございます。そのために従来まあ国民貯蓄組合を利用して非課税にたくさんなっておったのが、五十万円に限度を引き上げ、それをこえるものは五%だけの税率ということになったわけですが、税率が軽くなったからそれが出てきたのではなくて、国民貯蓄組合の乱用をやめて少額貯蓄という制度にしたということに基づいて、そういった少額貯蓄の対象にならない貯金が出てきた、こういう関係になっておるのでございます。
  40. 柴谷要

    柴谷要君 泉さん、実際にただいまの答弁だけですべて答弁は終わりですか。いままで三十万円ずつ何口か預けておいた、これが一口五十万円になってしまったから、だから税金がふえてきた、それだけであなた答弁、要約し切ったと思いますか。もっと克明に調べてあって、そんなものじゃないと私は思いますが、まあ政府としてはその程度しか言えないんでしょうから、それ以上は言いません。聞かずにおきましょう。(「言いなさいよ」と呼ぶ者あり)言わないほうがいいですよ。  とにかく一〇%の課税のときには金が取れないで、五%に引き下がったら驚くなかれ十倍以上にみんな上げていますよ。上がっていますよ。そういう結果が出ているのです。だから、一体これはどうしてこんなに出てきたのかと、こういうことを私は聞きたいのです。ところが、いま言ったような小口で幾つも預けていたのが一つになって、五十万円になって、もうこれだけしか非課税だ、あと全部課税したからこう出てきたというだけではないのですよ。しかし、まあ徴税率が上がったということは、これは好ましいことですから、これ以上のことは申し上げませんけれども、とにかくそういった今日までの税の体系の中でも矛盾があったわけですから、この源泉徴収という、黙っていても引かれるようなこの所得税の源泉徴収の問題については、もっと大臣、ひとつ真剣に考えてくださいよ、正直のところ申し上げて。  そこで、お伺いをしてみたいのは、やはり何といっても課税最低限の問題でございます。所得税法改正に、まず第一に言われておりますのは、課税最低限の引き上げを行なったという理由としては、生計費の動向を考え課税最低限が標準生計費を上回るようにしたんだと、こう言っておりますけれども、一体現在の生計費というものがどうふうになっているか。まあこれは人事院の調査でありますから、ある程度信用していいと思うのでありますけれども、標準生計費は、二人世帯で昭和三十八年度は二十九万一千百二十円、それから五人世帯では五十万七千四百八十円と出ているのです。一体その五人世帯でですね、いま非課税の金額は幾らになるのですか。これは泉さん、ちょっとお知らせ願いたいと思うのです。五十万円にはならぬでしょう。
  41. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 今度の改正案によりますと、五人世帯のところ、平年度で課税最低限が四十八万五千三百六十九円、三十九年度分は控除改正が四分の三しか行なわれませんために、四十七万千三百七十七円というのが三十九年の課税最低限でございます。
  42. 柴谷要

    柴谷要君 そうなりますと、やっぱり人事院調査の標準生計費から見ると低いわけですね。ですから、ここにも一つ努力目標があるわけです。まあ人事院というところは、御承知のようにいろいろの面がありますから、こういうようなあれが出ておりますけれども、実際に消費者の実態を調査をしますと、もっとこれより上がると思うのです。そういう実情にあるわけですから、どうかひとつ所得税の問題についてはより一そう、大臣の先ほどの御答弁もありましたように、年々この点に重点を置いたひとつ税制改正に向かって御努力をいただきたい、こういうふうに思うわけです。  特に、税制調査会の今回の減税案は、所得税を大体六〇%強、それから企業減税のほうは四〇%弱という答申でございましたが、この政府原案でいきますというと、どのような比率になるのか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、初年度で申し上げますと、所得税で六百四十九億円、法人税等で三百億、それから相続税の改正でもって二十六億五千七百万円、計九百七十六億でございます。租税特別措置で百十四億……。ちょっと数字の問題ですから、主税局長からお答えさせます。
  44. 柴谷要

    柴谷要君 パーセンテージだけ簡単に伺って……。
  45. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 今回の税制改正におきまして、まあ国税と地方税と全部総合して見るのがいいんじゃないか。国税で所得税を軽減し、地方税で住民税の不均衡の是正をはかる。それからまた、国税で法人税の課税を軽減しますと、それが事業税、法人住民税にすぐはね返ってまいりますので、国税だけの減収額で比較するのは必ずしも適当でない。また、今度の改正の中には、事業税にはね返らないものもございます。法人住民税にはみんなはね返るわけでありますが、事業税にはね返らないものもございますので、それらの点を考え合わせますと、全体の平年度の国税、地方税の減税額が二千二百五十六億でございますが、その二千二百五十六億のうち所得課税のほうが五五・四%、それから企業課税のほうが四四・六%、こういうふうになっております。
  46. 柴谷要

    柴谷要君 大臣予算委員会のほうにお出でになりましたので、今度はちょっとこまかいことになりますけれども、改正の第一条第三項、第三号に規定しておりますが、「生命保険契約その他これに類する契約」というのが今度新たに挿入されたわけですね。「その他これに類する契約」というものについて、ひとつ説明を願いたい。
  47. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは従来「生命保険契約」とだけ規定されておったわけでございますが、しかし、人の生死を保険の事故的なものにする制度といたしまして、生命共済制度が、農業協同組合、あるいは漁業協同組合、あるいは消費生活協同組合等におきまして、そういった生命共済制度があるわけであります。これはしかし法律的に申し上げますと、生命保険契約ではなくて共済契約なのであります。ところが、実体からいきますと、やはりそれは人の生死ということを事故といたしておりますので、当然生命保険契約と同一視すべきものでございます。ところが、そういう共済契約の中には、保険数理に基づいた制度になっておるものと、それから保険数理に基づかない制度のものとあるわけです。そこで、従来から取り扱いにおきまして、生命保険料控除対象になるのはこういうものだということにいたしておるわけでございますが、これはいかにもおかしいので、法律的にきちっとすべきではないか。それで、今度生命保険料控除の限度額を引き上げる機会でもございますので、法律的にきちっとしようということから、本来の生命保険契約、それからこれに類するところの農業協同組合の場合の生命共済、あるいは漁業協同組合の場合の生命共済、それから消費生活協同組合の場合の生命共済、これらのうち保険数理に基づいているものは生命保険料控除対象にしようということから、法律にこういう規定を置きまして、政令におきまして、ここにいう生命保険契約に類する契約というものはこういうものだということを規定することにいたしておるのでございます。
  48. 柴谷要

    柴谷要君 わかりやすくという原則に立つというと、「その他これに類する契約」なんというむずかしいことを言わずに、「生命保険契約等」と、「等」で片づけてしまっていいのじゃないですか。一体、農業共済の中における生命共済だってやっぱり生命保険でしょう。広義に解釈する場合に、生命保険でしょう。それを、「これに類する」なんというむずかしいことをいうから、ますます税法がむずかしくなっちゃって、わかりやすくというやつになかなかならなくなる。生命保険等、こういうことでいいのじゃないかと、こう思うのですが、そういう点はいかがでしょうね。
  49. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは法制局の問題でございますが、まあ「生命保険契約等」といいますと、その「等」の中にどの範囲まで入るかということがどうも明確でないということからいたしまして、生命保険契約、それと類しておるところの共済契約を入れる意味で「これに類する契約」と、こういうふうに規定いたしたのでございます。ただ、おことばのように、「その他これに類する契約」というふうにすると、いまの共済契約は入るけれども、それ以外のものが入ってくる可能性もありはしないか。そういう点で、何かこの生命保険契約以外にどれだけのものが入るかというと、これだけでは必ずしも明確でない。政令の規定を待たないとはっきりしないという点では、確かにおことばのとおりであります。したがって、こういう点をどういうふうに今後書きあらわしたほうがもっとわかりいいかということについては、法制局とも相談して、税法の全文改正をいずれ予定いたしておりますので、そのときまでに十分検討いたしたいと存じます。
  50. 柴谷要

    柴谷要君 それから、この十八条の一項ですね、第一項。これに、「利益の分配」の下に、「又は同項に規定する報酬若しくは料金」と、こういうのが挿入されたわけですね、今度。これはまあ「百分の十」を加えたと、こういうことになっているのですが、これは法人の特別税率百分の十をかけるわけですが、報酬や料金というのは、一体これは何をさしているのですか。
  51. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これはこの第一条の第五項に新しく——まあこの第一条の第五項と申しますのは、日本に本店または主たる事務所を有する法人に対して所得税を制限納税義務者として課税する場合の規定でございますが、その内容に新しく、「演劇の俳優その他命令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬若しくは料金で命令で定めるものの支払」を受けるときに所得税納税義務があるという規定が入るのでありまして、これが先般お話し申し上げました、いわゆる芸能法人がその芸能人の役務の提供を内容とする事業を憎んでおって、その役務の提供の対価として報酬または料金の支払いを受けるときに所得税の一〇%の源泉徴収を受けるということが、一条の五項と十八条のところから出てくるようになっておるのでございまして、いわゆる芸能法人がその芸能人としての役務の提供をさせてその対価として報酬または料金の支払いを受けるときの納税義務の規定でございます。
  52. 柴谷要

    柴谷要君 いままで、雨後のタケノコのごとく芸能法人ができましたですね。この法人ができたのも、一つは税の対策のためにできたような法人がたくさんあると思うのです。そういう見地からいって、この源泉徴収百分の十かけることによって、過去とこの法律改正後とにおいてはどのくらいの違いがあるのでございますか。あるいは脱法行為とかなんか明らかな行為が数多く見受けられたので、こういう制度にしたのですか。それとも他に理由があるのですか。その点をひとつお聞かせ願いたい、実際の業務の面から。
  53. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは先日お話し申し上げましたように、たとえば放送局で放送謝金を払おうというような場合でございますと、従来から、個人に対して払うときは源泉徴収の制度が規定されておったわけでございます。ところが、それは居住者に対して支払うときと、こうなっておりますために、それがたとえば、名前を出すことは必ずしも適当でないと思いますが、だれか歌手が法人をつくっておりまして、その法人の資格で報酬の支払いを受けるということになりますと、これは源泉徴収の、いまのままでは源泉徴収の規定が働かないのであります。しかし、歌を歌ったことの報酬の対価として支払うことには変わりはないわけです。そこで、放送局あたりで、歌手個人に払うものなのか、法人に払うものなのか、一々契約内容がそう明確になっているわけでもないし、したがって、個人に払うときは源泉徴収、法人に払うときは源泉徴収しないというような制度になっていることは、非常に繁雑であるし困る。したがって、放送局等で、芸能人の役務の対価として報酬または料金を払うときは全部一律の源泉徴収制度にしてもらいたいという要望があったわけであります。したがって、われわれもその要望が無理からぬことと思いますし、また芸能法人の中には、一体だれがどの芸能法人に加わって役務の提供をしているのか必ずしも明確でない場合もございますので、そこで、そういった芸能法人が報酬、料金の支払いを受けるときに源泉徴収をするのだということにしたわけでございます。  もっとも、これはもちろんこの源泉徴収ということによって課税を正確にするというだけのことでございまして、これによって従来脱税行為があったからその脱税行為をなくするというほどの強い性格は持っておりません。したがって、これによる増収としては予算上計上はいたしておりません。しかし、この結果、たくさん芸能法人といわれるのがございますが、これらについての課税関係が明確になるものと考えているのでございます。
  54. 柴谷要

    柴谷要君 今度所得税改正は、大体三つあると思うのですね。その一つは、負担軽減が九項目——基礎控除額だとか、配偶者、扶養、専従、給与所得、こういうようなもので、まあ九項目、それと税の合理化、それに新たに、源泉徴収の規定、この三つが柱であると思う。そこで、この税の合理化の点であります。短期保有資産の譲渡による所得に対する課税は、従来は半額のものにかけておった。ところが、短期保有の、思惑でもってやるような譲渡については、今度はまるまるかけるんだ、こういうのが税の合理化という形で出ている。これは三年以内の短期所有者がこれを譲渡する場合全額かげる。そういう法律改正を企図したのは、一体どういう目標があって、目的があって、そういう改正、合理化を行なったのか、これをひとつ御説明願いたい。
  55. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 御承知のとおり、ここ数年来、土地の値段が非常に騰貴いたしてまいっておるわけでございます。そこで、それにつきまして、土地増価税を設けたらどうかと、あるいは空閑地税を設けて、そういう広い土地をむだにして、使っていないような場合、課税をすることによって土地の利用をさせたらどうかというような、いろいろの御意見があるわけでございまして、私どももそれらの点についていろいろ検討をいたしているのでございますが、しかし、従来の制度のほかにそういう土地増価税とかあるいは空閑地税を設けることにつきましては、いろいろ難点がございます。  ところが、譲渡所得課税につきましては、各国ともいわゆるキャピタル・ゲインに対する課税をどうすべきかという点については非常に論議のあるところでございまして、これにつきましては、キャピタル・ゲインというのは、本米、長い間資産を持っている、土地にしましても、その他の資産にしましても、長い間持っている、それがあるとき売却するということによって、長い間徐々に生じた所得が一時に実現する、したがってそういうような場合には、全額課税することは適当でないということから、どこの国でも、そういった長期保有のキャピタル・ゲインに対する課税は、全額課税にしないで、それぞれ軽減税率を使うとか、あるいは日本のように半額課税するとか、いろいろの制度をくふうをこらしておるわけです。  ところが、どこの国でも、そういうキャピタル・ゲインの性質からいうと、短期の間に発生するようなキャピタル・ゲインは長期のキャピタル・ゲインとは全然性格が違うのだから、これに対しては長期のものと同じように扱う必要はないというのが、どの国でもとっておる制度でございまして、ただそれは国によりましていろいろ違います。たとえばアメリカでございますと、有価証券は、短期というのは六カ月以内の保有でございます。それから、土地等につきましては二年になっております。それから、ドイツはそれについて三年ということになっております。そういうふうに多少国によって違っておりますが、短期保有の資産につきましては、キャピタル・ゲインとしての怪減税率、まあ半額課税の方式をとらないというのがどこの国でもやっておることでございます。また、日本でも、従来、山林所得につきましては、山林を取得して一年以内に伐採または譲渡する場合は、山林所得の五分五乗の対象にしないという制度になっておったわけであります。  それらの点を考え合わせまして、また土地の値上がりということの要素の中には、まあいろいろ実例が伝えられるわけでございますけれども、やはり架空の需要が生じて値上がりするだろうから、いまのうちに買っておけばもうかるぞということから買いあさる、それが土地の値段をつり上げる要素もかなりあるのじゃないかということからいたしまして、まあ取得して三年以内に譲渡することによって生ずるような、そういう譲渡所得は、本来のキャピタル・ゲインとしての半額課税対象にすべきではないという考えをとりまして、それが同時に土地の仮需要を起こすようなことを防ぐのに役立ちはしないか、こういう考え方からいたしまして、今回のような制度を御提案申し上げた次第でございます。
  56. 柴谷要

    柴谷要君 短期保有の資産について、譲渡する場合全額ということに改正したのは、一つのねらいとしては、最近土地等が非常に値上がりしておる。だから、そういう思惑買いをしてもうけようとするものに対しては、これは一ぱいかけるのだ。これは確かにそういう理屈だと思うのです。ところが、地価のつり上げを抑制をするのではなくて、かえって地価の引き上げを増大さしていくのじゃないか、そういう反面が生まれてきやしないか、こう思うのですが、この点はお考えになったことはございませんか。
  57. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、三年以内の譲渡だと、その半額課税でなしに、全額課税になる。したがって、せっかくその土地を売れと言っても、いや、自分のところは買ってからまだ三年以内だ、したがって譲渡所得が全額かかるから、いまは売れないというようなことからいたしまして、かえって時期を遷延させる。そうして片一方に土地に対する需要は非常にたくさんございますから、そういったことから、土地の供給のほうがそういうことで抑制されて、かえって値上がりを来たしはしないか、こういう御意見もございます。また、私どももそういう点もいろいろ心配いたしたのでございます。まあやはり税制としてはこういうことでやっていきまして、他方において土地の造成その他によりまして土地の供給をやっぱりふやしていかなければ、いまの地価問題というのはなかなか解決されない、かように考えるのでございます。
  58. 柴谷要

    柴谷要君 実はこの法律改正に伴って、不動産業者と少し話し合いしてみたのです。これは税のねらいとしては全く逆ですよ。いま土地の需要というものは非常に多いのだから、税が重くなればそれだけ買う人が高いものを買うので、かえってこれは気の毒だ。決してこれによって三年以内だから手放さず、三年以後に手放せば得だという計算ではなしに、きょう買えば、あすうまい客があれば売るのだ、こういうことで、かえって高くつけるので、これはあまりいい法律ではないということで、大臣のお名前が出たようなわけですが、これはやっぱりやり通しますか。これはいかがです。参議院全会一致でもってこれを修正したいと思うところなんですが、どうでしょう。で、逆の面をひとつ考えてみた場合ですね……。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私もそれを十分考えたわけです。考えたのですが、ちょうど今度の筑波山麓など見ますと、これはもう一年間で、全くそれば短い期間で買いあさっているわけであります。公団等の団地ができるというと、それを先買いしてしまう。こういうものに適用すれば、相当効力あるという考え方であります。しかし、こういう再開発を要する東京や大阪の都市の内部というものは、まあこういうことをしても、あなたが言われるように、そう価値があるかないかは疑問だと言われるかもわかりません。しかし、全く、いままでは五百円か八百円であったものが直ちに三千円にはね上がる、それでもまだ買っても合うのだと、こういう土地あさりというような特定の業者に対しては相当な効果があるだろうという考え方で、この制度を採用したわけでありまして、まあ私は効果はあるだろうというふうに考えます。
  60. 柴谷要

    柴谷要君 先ほど泉さんにお尋ねしたのですが、今回の所得税改正の中では、負担軽減九項目、税の合理化、新たに源泉徴収の規定と、この三つあるのですが、この税の合理化だけはあまり適切であるというふうにはどうも考えない。かえって値をつり上げるのではないかと、こう思うのです。これはお互いに議論でございますから、これ以上議論申し上げようとは思いませんが。  これは事務当局でけっこうだと思うのですけれども、改正の附則第三条で読みかえということをやりますね、改正に伴って読みかえ。大体一月、二月、三月は旧法で納めている。四月から、これがかりに国会通過いたしますというと、実施されるわけでありますが、そういうものにもやっぱり読みかえていかれるのですか、それとも別な算式でいくのか、全部これはこの附則第三条で読みかえて計算されていくのか、この点をひとつお聞かせ願いたい。
  61. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 附則第三条の規定は、昭和三十九年分の所得税につきまして、まあ基礎控除、配偶者控除、扶養控除、給与所得控除、あるいは生命保険料控除、あるいは損害保険料控除の創設、こういった諸控除につきまして、それぞれ四月一日からこの改正は行ないますので、三十九年分の所得税につきましては、控除額の引き上げが平年度分の四分の三になる、こういう趣旨を規定いたしておるのでございますが、ただ、いまお尋ねのこの源泉徴収の制度なんかからいたしますと、一月から三月までの分につきましては、現行法によるところの月額あるいは日額で源泉徴収しますし、四月以降は新しい控除による、つまり四分の三にしない新しい控除によるところの源泉徴収で四月以降いくのでありまして、そして年末調整に際しまして、その一月から三月までは旧法でやっております、四月から十二月までは新法でやっておりますので、そのところを年末調整で、それには賞与なども支給がありますので、賞与なんか必ずしも、前月の給与を基準にしてやっておりますために、取り過ぎになったり、あるいは取り足らなくなっておりますので、そういった点を年末調整で調整するということで、年末調整の際に、いま申し上げました三十九年分の所得税の負担から来たところの年末調整の表ができるわけであります。したがって、この附則三条の規定は法律的な性格だけでございまして、源泉徴収の表は別でございます。
  62. 柴谷要

    柴谷要君 たいへんこまかいことの質問になってくるわけでありますが、所得税法の第一条に「納税義務者」というのがあります。この納税義務者の中には居住者、非居住者、こういうふうに分かれているわけでありますが、この居住者は所得税を納めなければならぬという義務づけがある。ところが、非居住者は施行地に源泉を有する所得に対してのみ所得税を納める義務があると、こういうふうに書いてあるわけです。一体、居住者以外の非居住者、あるいは非永住者という項があるんですが、この調べがしてあるかどうかわかりませんが、非居住者なるもの、あるいは非永住者なるものが一体何人ぐらいおるのか。それをお調べになっておられましたら、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  63. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 非居住者と申しますのは、日本に住所または居所を有しておらないもので、しかし日本から所得の源泉がありまして、それに対して源泉徴収によって所得税納税義務があるという場合でございます。それから、非永住者というのは、日本に居所あるいは住所を持っておるけれども、日本に永住の意思を持っておらない、したがって、日本に永住するものとして課税しないということになっておるものでございます。  で、非永住者あるいは非居住者が何人おるかということにつきましては、申告納税のほうで申し上げますと、非居住者が——これは申告納税するものでございますので、実際はこのほかに源泉徴収を受けるものが相当ございます。その点はあとで申し上げますが、申告納税したものだけで、三十七年度九月現在で調べてみますと、非居住者が四百四十人、それから非永住者が二千六百三十一人、それから非永住者以外で日本に居住しておるものが千四百三十八人、合計四千五百九人となっております。しかし、この非居住者あるいは外国法人につきましては源泉徴収税がございまして、総額にいたしますと、三十七年分で約七十九億一千万円源泉徴収いたしております。もっとも、そのうちで一番大きいのがロイアルティーと申しまして、そのロイアルティーの中でも映画のフィルムのあれが一番多いわけでございますが、これが六十五億八千万でございます。それ以外に利子、配当等において源泉徴収されるものがございます。このほうは非居住者あるいは外国法人ということで、非居住者が何ぼかということが正確にはわからないのでございますが、外国法人も含めた人員で申し上げますと、九万三千三百五十九人おります。これが源泉徴収を受けるものの累計でございまして、そのうち一番多いのが、何と申しましても配当の支払いを受けるものでございまして、これは八万三千二百二十二人ございます。この配当を受けるものの中には非居住者が相当多いんではないか、こう見ております。
  64. 柴谷要

    柴谷要君 大臣が手をこまねいているようですから、私はこまかい質問になりますので、野溝委員質問を譲りまして、私の質問はこれで終わります。
  65. 野溝勝

    ○野溝勝君 ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案に関連していますが、第六十六条の十、「石油資源開発株式会社の欠損金の控除の特例」で、「石油資源開発株式会社の昭和三十四年三月三十一日又は昭和三十五年三月三十一日に終了した事業年度における総損金が総益金をこえる場合には、そのこえる損金の額については、法人税法第九条第五項中「五年」とあるのを「八年」として、同項の規定を適用する。」、このことに関連して質問したいと思います。  通産省の鉱山局長お見えでございますか。
  66. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 鉱山局長の  加藤君が来ております。
  67. 野溝勝

    ○野溝勝君 まず、お伺いしたいことは、通産省では海外油田を積極的に開発するということで、大いにPRしておりまするが、まだ海外油田を開発したのは、カフジの原油探鉱だけが成功だとわれわれは承知いたしているのでございますが、そのほかに海外油田を開発された具体的な事例がありましたら、この際お知らせ願いたいと思います。
  68. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) ただいまお話しのアラビア石油のほか、現在民族資本の手で開発しまして、国内に持ってきておりますものは、北スマトラの石油開発協力会社、これがあるわけであります。三十七年度、こちらに持ってきております数量はわずかでございますが、三十四万キロリットル、本年度の見込みは大体四十四、五万、来年度は七十万程度見込んでいるわけでございます。
  69. 野溝勝

    ○野溝勝君 ただいまのお話ですと、相当石油資源が海外で開発されているようでございますが、その開発されました原油並びにその処理等に対しましては、どういうような条件でやっておられるのですか。
  70. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) 基本的な考え方といたしましては、国内の各精製会社とコマーシャルベースで話し合いをするということにしてあるわけでございますが、現状におきまして、特にアラビアの原油につきましては、御承知のように重質油の、硫黄分の多い原油でありまして、いま申し上げました業者同士のコマーシャルベースでは、なかなか引き取りの量なり価格の問題について十分な話し合いがつかないというふうな経緯もありまして、御承知のように、三十七年十月から原油は自由化になったわけでございますが、自由化後におきましては、私ども指導によりまして、アラビア石油と業界の話し合いをまとめる努力をいたしてまいったわけでございます。その結果、昭和三十八年度、本年度でございますが、一応業界との話し合いの結果は、年間八百万キロリットルを引き取りをするということであるわけでございますが、実績はこれを多少上回りまして、八百三、四十万キロリットルくらいになるのではなかろうかと考えております。  さらに、三十九年度の数量につきましては、実は三十八年度の引き取りの数字をきめます場合に、一応の目標の数字をきめておったわけでございますが、その後アラビアの現地の生産が順調に伸びてまいりました。大体私どもが本年度の量をきめましたときに考えておりました三十九年度一千万キロリットルの引き取りということが可能ということになりまして、一応現在の時点におきましては、一千万キロリットルを国内の特製業者で引き取りまして、この引き取り方につきましては、国内における石油精製業者がお互いに協調して、共同でこれを引き取ろうじゃないかという考え方でまいっておりまして、本年度も来年度も、全体の各精製会社の原油の処理量、この量に応じて、いわゆるプロラタ方式といいますか、これで引き取るという考え方でおるわけでございます。  北スマトラの原油につきましては、これは多々ますます弁ずと申しますか、油の性状もよろしゅうございますので、これは全くコマーシャルベースで円満に引き取りは行なわれておる、こういう状況であるわけでございます。
  71. 野溝勝

    ○野溝勝君 大体、海外の油田開発につきましては、概略はお聞きしましたが、そこで私はお伺いしたいことは、石油資源開発会社法が生まれたのは昭和三十年ですが、それ以来、特に国内資源の開発を帝石を通してやらせておるのですが、依然として二%程度でありまして、ほとんど九八%は外国依存です。輸入原油でございますが、一体資源開発法の制定当時におきましては、国内地下資源の開発に力を入れるといって、その当時の愛知通産大臣ですか、五カ年計画二十五億の予算を計上し、大いに馬力をあげたわけでございますけれども、依然国内の資源の開発がされておらない。特にアラビア、スマトラなど海外油田の開発につきましては大いに進み、準国産原油として貢献し、また日本の探鉱技術というものが非常に優秀であるということを通産省でも言うておるし、また立証されておる。しかるに、国内において油田の試掘未開発地帯もある、さらに有望地帯もあるにかかわらず、これに対してどうして力を入れないのか。それに対して先般来当委員会におきましても、総合エネルギー問題を取り上げ、わが国でガス資源は有望だと、田中大蔵大臣もこの点は大いに強調されておる。また、通産省も技術調査の上、それを大いに強調されておる。しかるに、国内資源の開発が遅々として進まないのはどういうわけなんですか。
  72. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) 全体の石油原油の国内処理量の中で占めます国産原油の割合でございますが、いま先生御指摘のように、だんだん割合が低下いたしておるわけでございます。昭和三十年ごろ、石油資源開発会社ができたときでございますが、全体の原油の処理量の中で国産の原油の占める比率が三・七%という割合であったわけでございますが、ただいま申し上げましたように、漸次この割合が低下いたしまして、昨年度、昭和三十七年度の実績を見ますというと、二%を切りまして一・九%、こういう割合になっております。おそらく本年度はこの割合がさらに低下してくるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  この理由は、御承知のように、国内の石炭が御承知のような状況になりまして、それにかわるべきエネルギー源として原油が非常に多く入りつつある。一方、エネルギー源の需要量が年々増大してまいり、私のほうで産業構造調査会という審議会の中にエネルギー部会というものをつくりまして、そこでいろいろと御審議をいただいたわけでございますが、エネルギー源の需要が非常に大きな割合で年々伸びていくほかに、その全体の中で占める石油のウエート、これが昭和三十七年度大体四三%くらいであったわけでございますが、これが四十二年度には五六%、さらに四十七年度には六七%になっていくということで、石油に依存する率がだんだん上がっておるということでございまして、具体的に申しますというと、先ほどお答え申し上げました三十年の輸入の原油の量が九百二十七万キロであるわけでございますが、これが昨年の実績は四千七百三十万キロであります。おそらく本年度は六千万キロ近くになるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございまして、ただいま申し上げましたように、全体に占める比率がだんだん低下していくというのは、いま申し上げましたような事情によるわけでございます。  したがいまして、原油の生産の絶対量を見てみますというと、昭和三十年には三十五万キロリットルくらいであったわけでございますが、昨年は八十七万六千キロ、八年間に倍以上の伸びをしておるということで、伸び率といたしましては相当成果をあげておるというふうに私ども考えておるのでございます。  それで、今後国内の原油の、あるいは天然ガスの開発をどういう方向で持っていくかということにつきまして、昭和三十六年の秋に、石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会というのが法律に基づいてできておるわけでございますが、そこの答申に基づきまして、通産省としては、石油天然ガス開発五カ年計画というものをつくったわけでございますが、この中で目標とされております数量の生産額、あるいは探鉱を今後計画的に行ないたい、こういうふうに存じておるわけでございます。簡単に実績を申し上げますというと、原油のほうの実績は比較的上がっておるわけでございますが、天然ガスのほうにおきまして必ずしも十分の計画に対する実績の成果が得られないというふうに相なっておりまして、この点につきまして私は遺憾に思っておるわけでございますが、今後探鉱等にさらに積極的に政府としても力を入れてまいりたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  73. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、大臣にお伺いするのでございますが、大臣は、前回の委員会で私が質問をした際に、特にエネルギーとして石油並びに天然ガスの資源開発については熱意を示されたのですが、どうも予算面を見るとぱっとしない。こういうことでは、政府は本気になってやる気があるのか、やる気がないのかわからない。特に、これは原局である通産省が、全く考え方がしかたなしなしやるような動きであって、実際の資源開発というものに真剣に取り組んでおるとは思えない。特に私心配するのは、いまも鉱山局長から話がありましたが、日本で六千万キロリットルの輸入量がある。これはアラビア方面からも開発されてくるが、ほとんどアメリカ等国際資本系の原油だと思うんです。ほとんど輸入原油です。そうなってくると、国際収支はますます悪化する。実に不安なんですが、こういうような点から見て、国内石油ガス資源の開発に対して大臣はどういうふうにお考えになっておられますか、その点ひとつお伺いしたいと思います。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、本件に関する野溝さんの熱意も十分過去から承知をいたしております。私も当時、この石油資源開発法がつくられましたときの衆議院の商工委員長でございまして、非常に熱意をもってこの法律を仕上げたわけでございます。こういう事態、いわゆる外国原油に非常に大きくたよらなければならない時期を想定しながら、当時東大の上床博士なども加わってこの法律案ができたわけでございますが、確かにその後の石油資源の状態を見ますと、必ずしも立法当時の成果をあげておるとは思わないわけでございます。ただ、この問題が新潟と秋田に片寄っておりますので、どうも私が声を大にすると、地元のためだから声を大にしておるようにとられやすいので、立場上言いにくいのでありますが、私たちが、この法律案がほんとうは御承知のとおり議員提案でございますが、政府がそのまま名前を変えて政府提案にしたということでございますので、外貨の節約の上から見ても、地下資源の開発ということに対してはもっと積極的でなければならないという考え方は持っておるわけでございます。  なぜ一体こんなことになってしまったのかというのは、石油資源開発は初めはもう試掘探鉱だけをする会社でございまして、できたものが全部帝石その他が事業を行なうということであった。にもかかわらず、いつの間にやら間口を縮小しまして、出た天然ガスや石油でもってちまちまと小さくぺイするというようなかっこうになってしまった。これはやはり私は大蔵省のそういう考え方も相当大きく作用しておるのだと思いますし、もう一つは、やはり通産省も、どう掘ったところで百万トンにも足りない石油であるというような考え方が、今日になったんじゃないかと私は思います。この三十九年度の予算のときもいろいろ私は熱意をもってやったわけでありまして、特に秋田の八橋油田が一時ストップをしたために、秋田市に対する、民間に供給しておる家庭用ガスさえも停止の状況になったということで、幾らか財政的措置もいたしたわけでございます。しかし、私は秋田とか新潟というだけでなく、全国的にその石油及び天然ガスの資源調査をやる、試掘探鉱をやるという、やはり法律制定当初の考え方をもう一ぺん想起して、新しい角度と視野に立って石油資源開発をどうすべきかという問題は十分考える必要があると考える次第でございます。  特に石油資源自体も、私はこの三十九年度の予算編成のときに会ったんですが、日本よりも海外に出て試掘探鉱をやりたい、こういう気持ちなんです。ですから、もう少しこの立法の精神というものをあなた方自体が検討して、もう少しちゃんとしなければだめですよ、こっちのほうからハッパをかけておるような状態でありまして、やはり地下資源というものに対しては、国民的にもう少し理解を深めて前向きな考え方で対処していくべきだというふうに考えておるわけでございます。三十九年度には、そのような状況から、おほめにあずかるほどの財政的措置や税制上のいろいろな措置等ができなかったわけでございますが、もっと国民の理解を得ながら、石油資源というもの、いわゆる地下資源開発というものがいかに必要であるかということに対しては、前向きで積極的な立場で対処していきたいというのが私の考え方でございます。
  75. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、先ほど鉱山局長からもお話がありましたが、天然ガス開発五カ年計画、あるいは石油資源の開発計画が示されておるんですが、この五カ年計画が打ち出されたならば、この計画案をほんとうに実現したい。そのためには積極的に大蔵当局とも折衝して、さらに大蔵大臣もいま申されておるとおり、国内地下資源の開発をやるということが資源開発法のときの基本でございましたから、その精神を生かし、ほんとうにやる気なのかどうか。また、やる気であるとすれば、この五カ年計画をただ計画倒れにするのでなくて、実際に実行に移す。また、それには資料に基づいた計画を出したと思うんですよ。だから、その資料に対しては当局は責任をとらなければならないと思っている。その考え方について、原局の心がまえをお聞きしておきたい。
  76. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) ただいま御指摘の第二次五カ年計画につきまして、先ほどお答え申し上げましたように、非常に権威のある審議会での詳細なデータ、検討の結果出た計画でございまして、私どもはいまの段階におきましては、これはやはり最も権威のあるものであるというふうに考えまして、この目標の線に沿っていままでもまいったわけでございますが、今後もそういう方向で進んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、先ほどもちょっと触れましたが、石油の探鉱なり、あるいは生産の実績を見ますというと、大体計画の線に沿うて実績があがっておるように見受けられるわけでございますが、天然ガスについて必ずしも十分の成果をあげておらないということがあるわけでございまして、最近秋田県あるいは新潟県におきまして必要とする十分のガスの供給ができないということで、関係方面に非常に御迷惑をかけておるようなわけでございますが、よくこの辺の事情が何に原因するかということを検討してまいりますというと、必ずしもこの五カ年計画で考えておりますところの探鉱活動が十分に行なわれておらないというところに原因があるのではないかというふうに感ぜられるわけでございます。特に、最近問題になりました帝石につきましては、そういった感じを非常に深くするわけでございます。たまたま同社につきましては、御承知のように、経営陣が今度一新されまして、新しい首脳のもとでこの再建をはかろうということになっております。私も新しい首脳陣の方のいろいろお話も伺っておるわけでございますが、いま申し上げました点についての謙虚な反省をいたされまして、今後の長期的な面から、いわゆる公共的な使命のある企業でございますので、そういった面から十分に探鉱の面についてのおくれをとらないようにという実は意気込みで努力をしておられるわけであります。そういう考え方が最終的に数字となってまいりました場合には、私どもとしても積極的に大蔵省にもお願いして応援いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  77. 野溝勝

    ○野溝勝君 先ほど大臣からの答弁一つ欠けておるように思います。のごとき海外原油の輸入の状況から見て、日本の国際収支というものの赤字は八億ドルをうんと上回るんじゃないかという不安さえあるんです。この点、大臣はどう考えておるかという点について、将来の国際収支の不安プラスアルファですね、海外原油の輸入がますます多くなるのですね、こういうふうな点について、大臣の御答弁がなかったので、それはあとであわせてお答え願いたいと思います。  そこで、鉱山局長、詳しいお答えはもうよろしゅうございますから、簡単にお答えを願いたいと思うんですが、とにかくあなたの先ほどのお話の中にも繰り返えし探鉱が重大だと言われておる。しかし、探鉱が重大だと言われておりながら、本年度の予算などを見ると、これは問題にならぬですね。三十九年度予算における純国産天然ガス開発関係は次のとおりです。天然ガス探鉱補助金が一億円。大体専門家見解によると、非常に探鉱技術は優秀だといわれておりますが、国内における探鉱の試掘ですか、それに対してはほとんど力を入れておらぬように思う。三千メートル級で約一億円かかるそうですが、この予算を見ると、いま言うとおり、探鉱補助金として一億円、天然ガス埋蔵量基礎調査費として層序試錐として一億七千七百万円、地域調査費として六千五百万円、これで何をやるんですか。さらに天然ガス開発融資の資金としては、開発銀行の融資ワクが十九億円、海外探鉱事業についてはSKに対する出資が二億円、これじゃあなた方の姿勢というものは疑わしいと思うのですよ。通産大臣もあなたもよく相談されて、資源開発法の精神を生かすためにどうしたらいいかということを、前向きで真剣に大蔵大臣と取り組んだらいいと思う。この点は通産大臣並びにあなたのほうにも私は忠告したわけです。特に私は、国内資源が足りないでしかたないでは済まされないと思う。それならこんな資源開発法というのはし廃止してしまったほうがいいですよ。こんな資源開発法なんというのは廃止してしまって、思い切って日本の国の産業としてこれを生かしていくのか。将来の国際収支の点から見ても、国内資源の開発、地域格差の是正の点から見ても、日本としては、これに力を入れるというならば、この採掘、試掘、これに力をどのぐらい入れるかということによって評価されると思うのです。  特に、その事業体としての帝国石油会社がありますが、帝町石油会社は、人件費を節約しようという、そんなけちな根性での問題じゃないのですよ。そんなところにおいては、決算の報告を見ましても、別にたいした赤字になったということじゃない。むしろ、深鉱にばく大の費用を要し、採掘が徹底的に行なわれないという点に、その事業資金のためにみな行き詰まっているんです。だから、こういう点は真剣に考えてもらいたいと思う。  特に租税特別措置法の一部改正で欠損金繰り越し期間の五年を八年にするというようなことでなくて、先ほど大臣が言われましたように、国の資源の開発ということならば、私は財投というそんなけちなことじゃなくて、むしろ単独立法によって予算を計上してやるべきだと思うんです。そういうことです。そういう点を私はほんとうに国のためを思っておるんですよ、真剣に。専門家意見をもとにし、探鉱をやれば、試掘をすれば、相当成果があがる見通しがあるのです。しかし、ボーリングをやる、探鉱試掘をやるのは、ばく大な予算がかかるわけですから、ここで通産省も本腰を入れ、大臣も先ほど言われたとおり、原局は腹をきめて、モデルケースをつくるため、新潟であろうと、秋田であろうといいじゃないか。国の資源の開発には地域が限られていたっていいじゃないですか。そんなけちな考え方は昔の政治家の考え方ですよ。そんなことは、大臣、心配ない。どこの県であろうと、日本の国の基幹産業の開発になれば、当然国民として喜ぶべきものと思う。どうかそういう点について、大臣の御答弁と同時に、鉱山局長も、大臣のいるところで、あなたは情熱を傾けての答弁を聞かせてもらいたい。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まず第一番目に、先ほどの御発言にございましたが、国際収支の問題、当然、エネルギー革命といわれておるような現状から将来を考えますと、外国からの原油の輸入は非常に大きくなるということは、もう言うまでもないわけでございます。私は、その意味で、とにかくアラビア石油の例にもございましたように、非常に成果をあげました。あの問題のときもたいへん及び腰であったのでございます。そんなものに投資して一体出るのかということでございましたが、非常に大きな成果をあげて一千万キロリットルも引き取れるようになったわけでございます。現在まだ北スマトラ石油の計画もございます。いろいろなものがございますが、やはりこういう問題に対しましても、日本人の手によって採掘されるものでありますから、非常に国際収支に寄与するということに着目して、アラビア石油に対してもう大体フル運転ができるように考えておりますし、また、その他の日本人の手による海外石油の仕事に対しても理解ある態度で積極的に支援するという考え方でございます。  また、その上に、これらの原油を運ぶ場合に外国の船によって運ぶという船賃の問題がございますので、これらに対しては、ひとつ十分邦船を使うように——邦船を使った場合の差額をどうするかというような問題もございますが、いずれにしても、国際収支に大きく寄与するという意味で、こういう問題に対しても取り組んでおるわけでございます。  まあ、この問題は非常に大きくなり、年間六億ドル、七億ドル、十億ドルという非常に大きなものになるわけでありますので、こういう問題に対しては着目をし取り組んでおるわけでございます。  それから、石油資源の問題、帝石の問題に対しては、確かに帝石は私企業で、戦時中は国の特殊会社でございましたが、戦後は大蔵省の株も公開してしまって私企業である。それから、石油資源もガスをなるべく配給して経営を立てるようにというような、まあ私どもが考えても、確かに問題の多い状態についになってしまったわけですが、第二の段階として、石油資源開発会社法ができましたときに、御承知のとおり、二十五億、五年間で百二十五億ということで、政府は大体その二分の一を出資するということでございましたが、当時の数字は、現在になりますと、まあ考えたとおりやったわけでありますが、いずれにしても、どうも夢が少し小さかったということであります。こういう問題に対しては、ただ地中に金をつぎ込むだけだという議論だけが横行しまして、私はあなたの先見の明に対しては非常に敬意を払っておる。私自身が、個人的にはそういう批判に耐えながら、こうすることが将来の日本のためにもなるんだという考えに立ってまいったのでありますので、それにしては、どうもことしはあまりよろしくないということもよくわかりますが、これらの問題は国民の理解を得なければならないわけでありますし、特に経済学者というような人たちが、このようなものに重点を置いておらぬ、ウェートを置いておらぬ。通産省の局長がおられて、非常に言いにくい話でありますが、通産省の行政の中でも、どうも輸入するほうは非常にはでであるけれども、鉱山局というような歴史のある、ほんとうに日本の経済再建に寄与してきたものに対しては少し冷淡な感じもいたします。こういうものに対しては、やはり国会でこういう議論を大いに出していただいて、政府をバックアップしていただくということにしていただけば、私のほうも命を出しやすいわけでございますので、私も出したいという立場に立っておるわけでございますから、そういう意味で、ひとつこういうことを機会に、やはり地下資源の開発、わが土地にある資源の開発を行なって、高度にこれを活用するということに対しては、新しい角度から取り組んでいかなければならぬ問題だ、このように考えております。
  79. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) 先ほど来大蔵大臣から非常に御理解ある前向きの御答弁を伺っておったわけでありますが、私非常に心強く感ずるわけでございます。ただ、私ども事務的には一応やり得る最大限の努力をいたしてまいったと申しますか、ただ、結果的に振り返ってみると十分の成果をあげていないんで、この辺の問題はさらに真剣に考えなければいけないという気持ちでおるわけであります。  こまかくなりますが、先ほど申し上げました探鉱が必ずしも十分でないという点について問題のございますのは、せんじ詰めると帝石の問題になると思います。五カ年計画の中でも探鉱に必要な資金はこれぐらい投入すべきだということで、国が直接御承知の地質調査所を用いまして調査をやっておりますが、それと石油資源開発株式会社その他一般企業ということで、分けて資金の量も掲げてあるわけでございますが、地質調査所が国の手で直接やる調査につきましては、この五カ年計画の数字を上回った実は予算をいただいておるわけでございます。本年も来年も二億ということでございますが、本年度の予算は、地質調査所の予算は先ほど御指摘の層序試錐その他地表調査を含めまして二億九百万円、予定では一カ所の層序試錐であったわけですが、現実には二カ所となっております。来年度も同じく二億の目標の金額に対しまして二億四千四百万という実は金額をいただいておりまして、やはり層序試錐も予定の一カ所を二倍の二カ所にするというふうな実はかっこうになっております。  それから、石油資源開発株式会社につきましては、ただいま大蔵大臣からも御答弁がございましたように、現在資本金が百五十五億ばかりになっておりますが、そのうちの百億が国からの出資ということでございまして、いままで設立以来この金を全部いわゆる探鉱活動に投入してまいったということでございまして、ここ二、三年来からようやくその効果があらわれまして、開発したものが売れて、だんだんと赤字が少なくなるというふうな実は傾向にあるわけでございます。この石油資源開発会社の今後の活動について必要な資金の面は、今後は財投の裏づけによりまして資金の面からの制約がないようにしたいという基本的な考え方で、実は来年度の財政投融資に五億の政府保証債ということを御審議いただくようなことに相なっておるわけでございます。  それで、その他の一般企業につきましては、御承知のように、ほとんど大部分を石油資源開発会社と帝国石油会社、二社でやっておるという状況でございまして、率直に申し上げて、ここ二、三年来の帝石の探鉱活動が必ずしも十分ではなかったということが言い得るわけでございまして、先ほど申し上げましたように、新しい経営陣のもとで再建計画なり今後の会社としての長期的な活動はどうあるべきかという御検討を現在いただいておるわけでございます。それができました場合に、ひとつよく拝見いたしまして、再来年度になりますが、大蔵省にもよくお願いして、帝石の活動に協力していきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  80. 野溝勝

    ○野溝勝君 では、意見だけ申します。責任を転嫁するようなことでは相ならぬと私は思うのです。もうそれは会社も反省しなければならないが、行政指導の責任者も真剣にならなければいかぬと思う。先ほど大蔵大臣が言われたように、通産省の中心局でした、鉱山局というのは。このごろは何だかどうも外国石油原料輸入局となっている。それが行政の中核みたいになっておる。これでは相ならぬということを申しておるんです。ですから、むしろ地下資源開発会社なりあるいは帝石なりに欠陥があったら、大いに反省せしむることは必要ですよ。ですけれども、基本的な考えの置きどころを間違っている。それこそ国家百年の計の信念のもと、国内資源の開発のためにはこれだけの金が要るんだと。特にあなたは権威ある審議会の答申もあることだからと言うんだから、権威ある審議会の答申があれば一そうやりいいじゃないですか。そういう意味において、むしろ積極的に取り組んでやってもらいたいと思うんですよ。要は熱情です。責任を負ったらどうです。もしその探鉱がうまくいかないという場合は、その場合は審議会がむしろ権威ある答申をしたんだから、それに基づいて行政指導するんですから、決してあなたの責任を追及するということに至らぬのです。だから、行政指導者はそれくらいの腹をきめてやってもらいたいということを希望して、打ち切ります。
  81. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 一時五十分まで休憩いたします。    午後零時四十七分休憩    ————・————    午後二時三十分開会
  82. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 大蔵委員会を再開いたします。  午前に引き続いて、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたしまして、質疑を続行いたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 柴谷要

    柴谷要君 午前に引き続きまして、こまかい点でございますけれども、御質問をいたしたいと思います。  第三条に非課税法人という項目がございますが、この非課税法人の中に、民法第三十三条で法人の届け出をしております団体の名が落ちておるようなものがありますので、お伺いをしたいと思うのであります。非課税法人に、全国モーターボート競走連合会、こういうふうなものが落ちておるようでございますが、これは非課税法人になっておらない民法上の法人でありますかどうですか、これをひとつ伺いたいと思うのです。
  84. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) いまお話しの法人は、民法三十四条の規定により設立した法人でございまして、したがって、所得税法第三条の一項八号に該当するのでございまして、そこで、この十号のほうには、それに似たような法人で、日本自転車振興会、自転車競技会、日本小型自動車振興会、小型自動車競走会、こういった類似したような法人が特掲されておりますが、いまお話しのモーターボートのほうは、特掲法人には入っておりませんけれども、民法第三十四条法人として非課税にはなっておるのであります。八号のほうでございます。
  85. 柴谷要

    柴谷要君 次は、三条の二にあります「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、当該収益を享受せず、その者以外の者が当該収益を享受する場合においては、当該収益については、所得税は、その収益を享受する者に対して、これを課するものとする。」、こう三条の二は規定をしておるわけですが、事実上そういう例があるのか、ひとつお教えを願いたいと思うのです。
  86. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは所得税、法人税を通じまして、実質課税原則と私ども呼んでおるのでございますが、所得の一応帰属すると見られておるものが、単にその名義だけであって、実質はほかのものがその所得から生ずる収益を享受するというのでございまして、法人税法のほうは七条の三に同じような規定がございます。この実例でございますが、これはまあたくさんあるわけでございますが、たとえば、これはまあ商法等の関係からいいますと、問題になろうかと思いますが、会社は自己の株を持つことは、例外はありますけれども、商法上禁止されておるわけでありますが、その場合に、しかし、会社経営上からいきますと、やはり相当、株を現在の経営者が持っておらないと経営を乗っ取られる心配があるということからいたしまして、重役名義で株を持っておる。ただ、実際は重役が金を出したのじゃなしに、会社が金を出しておって、実際は会社の株なんですけれども、重役が名義人というような場合があるわけでございます。しかし、これは商法のたてまえからいいますと、それは商法違反だからおかしいということになるわけですが、税務の実務の上から申しますと、なるほど重役名義にはなっておるけれども、その株を取得するために重役が金を出したのじゃない。金は明らかに会社が出しておるのだ。したがって、その配当も、重役の名前で一応配当を得ますけれども、それは重役が自分で取得するのじゃなしに、会社のものになってしまう、こういう事例が相当あるわけでございます。その場合に、商法違反だから、税法もそういったものについて、名義人たる重役に課税すべきか、それとも実質の収益の享受者たる法人に課税すべきかという問題になるわけでございますが、私どもは、そういった名義にとらわれずに、実質に従って課税関係を考えていこうということにいたしておるのでございます。  それから、こういったことは、特に資産所得であります株式とかという場合に非常に多いわけでございます。  それからまた、不動産所得、家屋、土地といったような不動産所得の場合におきましても、ほんとうの名義人と、それから実際の生ずる収益を受けるものとが違う場合、これはたくさんあるわけでございます。これは、たとえば土地でございますと、おじいさんの名前になっている土地なんというものはざらにございます。しかし、実はおじいさんが名義人だからというわけにいかないのでございまして、実際、現在そこから収益を受けている人に課税するのが当然だというようなことで、いわば当然のことを規定したにすぎないということとも見られるのでございます。  規定といたしましては、昭和二十八年に初めて入ったのでございます。問題は、この実質課税原則だといわれているのは、名義人に課税するのじゃなしに、その所得の、実際の所得を受ける者に課税するのだというのはあたりまえなんです。より以上問題になるのは、ドイツの租税調整法なんかにありますように、民法上の行為を仮装しておる場合、そういった脱税あるいは通税のために、民法上の行為を仮装をした場合に、どういうふうに扱うかというのが、本来の実質課税の問題ではないかといったようなことが論議されてはおるのでございますが、まだ、わが国の税法は、そこまではいっていませんで、一応、名義人と実質所得者という点だけで、事を片づけておるのでございます。
  87. 柴谷要

    柴谷要君 三条の二の説明は、確かに条文上からいいますと、いま局長のお述べになったような事実だろうと思いますが、それを逆に脱税のために利用するという方法考えられると思うのですが、そういう節までお考えになりませんか。
  88. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) それはお話のように、だれしも税の負担が軽いことを望みますし、また何とかして税を免れようという行為はよくあることでございます。したがいまして、三条の二の規定からいたしますと、名義人と実質所得者とが違うということをねらいにしてこの規定を入れておる、この規定が出ているわけでございますが、そこで、名義人をうまくつくって、そうして実際上はこれを利用して免れる行為がもちろんなきにしもあらずだと考えております。結局、そういったいろんな事例が出てまいります。それに対しまして、三条の二だけで実質課税が完全に行なわれるとは私どもも思っておらないのでございまして、そういった行為につきましては、国税通則法を制定する際に、いろいろ問題になったわけでございますが、ドイツの制度にならって、民法上の行為を仮装した場合はどうするとか、あるいはいやしくも脱税を免れる行為がある場合においてはどうするとかいうような規定も、規定としては可能かと思いますが、しかし、また、そういう規定を置きますと、その反面、またそれが行き過ぎますと、今度は人権の尊重という面から問題が出てくる。そういったいろいろむずかしい点が出てまいりますので、一応この程度でやっていこうというのでございまして、お話のように、裏から裏というような問題はあると存じます。
  89. 柴谷要

    柴谷要君 この問題で、ちょっと私もぶっついた事件があって、たいへんうまい条文があるな、じゃ、これをひとつじょうずに利用しようということでやったのをちょっと知っておるものですから、こういう質問をいたしたわけです。  次に、第六条の非課税所得の問題で、六条の十四にございますが、「公職選挙法の適用を受ける選挙に係る公職の候補者が選挙運動に関し法人からの贈与に因り取得した金銭、物品又はその他の財産上の利益で」、これは公職選挙法の第百八十九条の規定によって報告がなされたものは非課税所得と、こういうことになっておりますね。その場合に、これはまあ候補者がもらった金は、確かに所得されるわけでありますけれども、これは非課税になる。一体、これに法人が出した場合、あるいは個人が選挙に寄付行為を行なった場合、こういうものに対しては、法人税——あるいはこれは財産税法になるのですかな、そのほうで免税の処置か何か行なわれておるのでありますか。これについて説明をひとつ願いたいと思います。
  90. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 公職選挙法の適用を受ける選挙の場合、いろいろ問題がございますが、まず、その公職の候補者が選挙運動に関し金を受け取った場合のことを申し上げますと、個人から金をもらったという場合には、これは贈与でございます。そこで、贈与税の課税があるわけでございますが、これは相続税法の二十一条の三という規定の第一項第四号にございまして、「公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与に因り取得した金銭、物品その他の財産上の利益で公職選挙法第百八十九条の規定による報告がされたもの」は、これは贈与税非課税という扱いになっております。それから、法人から金を受け取ったという場合には、これは法人からの贈与というのは一時所得になっております。贈与税というのは本来相続税の補完税でございます。ところが、まあ法人の場合には、相続ということがございませんので、補完税たる贈与税はございません。したがって、受け取った人の一時の所得ということになるわけです。その一時所得につきまして、所得税法のこの六条の十四号におきまして、そういったもので公職選挙法の第百八十九条の規定によって報告されたものは非課税ということになっておるのでございます。両者パラレルに考えておるわけでございます。
  91. 柴谷要

    柴谷要君 法人は法人税、それから個人の場合には贈与税と、こういう形になって非課税になっておると、こういうことでありますが、それじゃ、一つの実例でひとつお尋ねしたいと思うのですけれども、かりに所得税を納めている者がある、いわゆる給与所得者が、かりに選挙の場合に分相応の寄付行為を行なった、特定の候補者に行なった、こういうものに対しては、所得税法からいきますというと、何らこれは控除対象にはなっておらない、こういうふうに思うわけです。そうするというと、いかに贈与税のほうに規定はしてある、こういっても、その個人には何らの該当がされていない、こういうふうに考えるのですが、この法律はかゆいところに手が届くような法律ではない、こういうふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  92. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) いま申し上げましたのは、公職の候補者が金を受け取った、受け取ったほうの側を申し上げたのでありますが、今度は金を出したほうを申し上げますと、出したほうが法人でございますと、これは法人の立場からいいますと、寄付金ということになります。そこで、その寄付金につきましては、法人が出した寄付金はすべて損金になるというわけではございませんで、寄付金を損金算入にするにつきましては限度がございます。資本金の千分の二・五と所得の百分の二・五との合計額の二分の一というのが寄付金の限度になっておりまして、その限度内でございますと、法人が出した場合に、その法人が出したものは法人の所得から損金として引かれます。寄付金の限度を越えておりますと、損金になりません。それから次に、出したほうが個人である場合でございますが、個人が出した場合に、これは贈与したほうの話になるわけでございますが、その場合に、御承知のとおり、所得税には寄付金控除という制度はございますが、この寄付金控除というのは学校とかあるいは教育関係のことなどに重点を置いておりまして、公職の候補者に金を出したから、それを寄付金控除するということはいたしておりません。そういう意味では、出したほうが法人であるか個人であるかによって、お話のとおり違いがあるわけでございますが、個人の場合、それではそういうのを寄付金控除対象にするということになりますと、まあこれは柴谷委員すぐおわかりのとおり、公職の候補者がそういう個人から金をもらって、出したほうの個人は税金がまかるのだということになりますと、公職の選挙に関連しておかしな事態も生ずることになります。金を出した者によって支配されるということもございますので、そういう点からいたしますと、公職の候補者に金を出して、それを寄付金控除するというのは適当でない。これはまあ外国でも寄付金控除制度はございますけれども、どこの国でも、そういった場合に、政党ないし公職の候補者に出したものを控除するという制度はとっておりません。これは結局、選挙とかそういったものの公正を守るという点からもきておるんじゃないかと思いますが、法人と個人で若干違いがあることは確かでございますけれども、個人の場合そこまでいくのは適当でないという考えに立っておるのでございます。
  93. 柴谷要

    柴谷要君 私は、こういう質問を申し上げますのは、第八条の9に、特定寄付金というのがありますね。この寄付金の行為につきましては、「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与する寄附金で命令で定めるもの」と、こう規定してあるわけです。それでは、選挙を行なう場合に、まあ候補者になる人は別として、選挙候補者を心から支持し、ぜひ公益のために働いてもらいたい、こういうことで個人で出す浄財こそとうといものではないか、こう思うのです。そういう個人の考え方が「公益の増進に寄与する」という項目の中に入って、これが命令で定めることができるかどうか。これを実はお伺いしたいものですから、前段の御質問を申し上げたわけです。そういう考え方が特定の個人に結びついてと、こういうふうな、いわゆる公職の候補者が特定の個人に結びついてと、こう言われますけれども、むしろ個人に基盤を置いた候補者でなければならぬ。むしろ団体が、法人の背景のもとに立つというようなことではなくて、むしろ選挙というものは個人個人の上に立たなければいかぬ、そういう見地から、第八条の九項の「公益の増進に寄与する」というところで一考されないかどうか、こういう質問をしたいと思うのです。この点はいかがでしょう。
  94. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 「公益の増進」という場合に何が入るか、この解釈につきましてはいろいろ御意見があろうかと思います。と申しますのは、公益ということにつきまして、民法三十四条におきましては、公益ということについて宗教、学術、技芸といったような規定がございますが、それ以外どの範囲が公益に属するかということについて明確なる定義はなされておらないのでございます。そういったことからいたしまして、とにかくそれによって受ける利益が特定人に帰属するのでなしに、相当多数の人にそういった利益が生ずる場合には、公益に該当するのではないかといったような解釈もあり得るわけでございます。したがって、お話のように公職の選挙というものは、会社とか法人とかいったようなものに基礎を置くべきでなしに、個人に基礎を置いて行なわるべきだという考え方ももちろんあろうかと思います。したがって、そういう場合に、そういったものが「公益の増進」に当たるかどうかという点についての御意見はあろうかと思いますが、私どもとしましては、公職選挙法の規定をそういうふうに解して、個人が寄付をするということが、公職の選挙を明朗にし、そしてそれが「公益の増進に寄与する」のだというまでの解釈は困難ではなかろうかというふうに考えておりまして、従来から民法の規定にありますように、「宗教、慈善、学術」「其他公益」という、「其他公益」にはそれほど広いものは入らない。結局文化の向上、社会福祉の貢献、そういったものが公益ではないかというふうに考えておるのでございます。所得税法の施行規則の六条の三におきましては、そういった趣旨でいまの公益の範囲というものにつきまして、どちらかといいますと、学術あるいはせいぜいそれに関連しまして私立学校の学校の設置といったようなところまでは「公益の増進」に入れておりますけれども、それ以上は「公益の増進」に入れるのはいかがかというふうに考えております。  ただ、考え方によりまして、選挙に関連してだけは、法人から公職の候補者が金をもらうというのは好ましくないので、むしろ個人からもらうべきだ。したがって、法人から公職の候補者に金を出す分については、これを制限すべきだというようなことは、これはアメリカなどでも行なわれておりまして、そういった方向は今後検討すべきではないか。法人から寄付させるのでなしに、個人から寄付をつのるというのが望ましいのではないかということは、今後検討すべきだと思っております。
  95. 柴谷要

    柴谷要君 公益という問題については、多少見解が違うようでありますが、これはただ教育なら教育の部面に金をすぐ出す。これは直接ですから、確かに公益のためになるでしょう。これも公益です、確かに。ところが、選挙に立候補して大衆の代表としてやることは、これは公益のためにやるので——私益のためにやるとお考えになっておりますか。そうじゃないでしょう。公益でしょう。これ以上公益なものはないと思うわけで、ただ、それが間接になるわけです。選挙の場合には間接になるのです。この人が当選をしなければ公益のためにがんばっていただくということにならぬから、それはたいへんな公益の増進のためになると思うのです。だから、これを軽んじてもらっては困る。ただ、いろいろな選挙との関連性があり、当面の状態においてはできないけれども、将来公益の増進という面については高いものであるから考慮してよろしいというくらいの答弁があってしかるべきだと思いますが、それがないことは非常に遺憾だと思います。  次に移りたいと思います。第八条の十一項に、年度途中で納税義務者の配偶者が死亡し、それから納税義務者の再婚があった場合、それから四項の障害者、それから六、項二号の寡婦の範囲については命令で定める、こう規定してありますので、これは途中でなくなられたり、あるいは再婚された場合には、配偶者がなくなったり、あるいは配偶者が生れたりするわけですから、一項から三項までの該当の問題、それから四項の障害者、六項に二号にわたり寡婦の定義がきめてありますが、「寡婦の範囲は、命令でこれを定める」、こうあるのですけれども、この法律の八条十一項の内容について、少しく教えていただきたいと思います。
  96. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話の点は、所得税法施行規則の五条以下にそういうことが書いてあるわけでございますが、まず第一に、年の中途におきまして納税義務者の配偶者が死亡した場合には、施行規則の五条の二におきまして、その年中に納税義務者が再婚した場合におきましては、控除対象配偶者は一人だ、つまり死亡するまで一人配偶者がおって、それから死亡した後また再婚したから配偶者は二人じゃないか、という説もあろうかと思うのでございますが、しかし、それは前の配偶者のかわりになっただけで、配偶者を二人持ったのだというわけにはいかない。したがって、所得税の配偶者控除をするときには一人分だけしか引きませんというのが、五条の二の第一項の規定でございます。  それから、その次は、障害者の範囲でございますが、それは施行規則の六条に書いておりまして、これは非常にこまかいことでございますけれども、その身体障害の程度に応じまして非常に障害者というものの範囲をこまかくきめておるわけであります。これは非常に十二号までございますが、「心神喪失の常況にある」、これは当然でございます。それから「両眼の視力が全く喪失した者」、これも当然でございましょう。それから、両眼の視力が〇・〇六以下である者」、これは、非常にめくらに近いような人。それから「両耳の聴力が全く喪失した者又は両耳の聴力が耳かくを近接しなければ普通の話声を了解することができない者」、それから「言語機能を全く喪失した者又はその機能の障害に因り職業能力が著しく阻害されている者」、それからあとは手や足の機能が非常に喪失して職業能力が著しく阻害されている者、それから「せき柱、胸かく、骨盤、軟部組織の高度の障害、変形等に因り職業能力が著しく阻害されている者」、それから「常に就床を要し複雑な介護を要する者」、「半身不ずいに因り職業能力が著しく阻害されている者」、こういったような者を入れておるわけでございます。  それから、その次に、寡婦の範囲でございますが、普通は寡婦といえば、夫が死亡した場合、残った妻が寡婦に該当するわけでございますが、問題なのは、夫の生死が明らかでない場合に、どういう状態にあれば寡婦と呼ぶことができるか。そこで、まず第一は、太平洋戦争の終結の当時、もとの陸海軍におりまして、そうしてその後日本にまだ帰ってこない夫、その妻は、まあ夫が生きておるかもしれません、死んでおるかわかりませんけれども、まだ帰ってこないという状態において、これは寡婦と見ていこう。これは戦争のときのああいったことで、生死の必ずしも明らかでない人が相当おりますので、そういう扱いにいたしておるわけであります。それから、それ以外のもので、太平洋戦争終了の当時、日本でなくて外国におった者で、まだ日本へ帰ってこない。しかも、その日本に帰らないことについて特別の事情があって、自分はもう今後外国に住んでおりたいから帰りたくないのだということでなしに、日本へ帰りたいという意思があったと思われるけれども、おそらく危難に遭遇して死亡したかどうかして帰ってこないというふうに認められるもの、こういった、たとえば当時フィリッピンにおったとかいうような民間人なんかにつきましては、おそらくあそこに上陸作戦が行なわれたときに死んだであろう、しかし、死んだということのはっきりした証明はない、そういった場合、その妻を寡婦にしておるわけであります。それから、沈没した船舶に乗っていた者、それからそのほか死亡の原因となるような危難に遭遇した者で、危難が去った後一年以上生死が明らかでないもの、これは船が沈没しあるいは飛行機が墜落といったような場合におきまして、一年以内に帰ってこない場合をそれに入れておるわけでございますが、今度の改正におきましては、まあ飛行機などの場合におきましては、一年を待たずして、もう死亡したということが言えるのじゃなかろうかというようなことからいたしまして、一年たたなくても、まあ三カ月くらいで、飛行機事故の場合には寡婦と見ようということにいたしております。それから、それ以上、これは民法の規定にありますように、夫の生死が三年以上明らかでないような場合、これは失踪宣告をいたしまして、そうして寡婦になるわけであります。そういうことで、そういったものを寡婦ということに呼ぶことにいたしておるわけでございます。
  97. 柴谷要

    柴谷要君 こういう機会に伺うのはたいへんだと思うのでございますけれども、私はまあ参議院に、同僚議員に辻さんという方がいらっしゃる。この辻さんは生死不明というふうに今日の状況はなっておるのですが、しかし、家計を維持するだけの収入は今日得ておるわけです。これはまあ、たいへんな国会法なりに矛盾があると思うのでございますがね、三年以上生死不明ということになるのですから、辻さんの奥さんは寡婦だ、こういうふうに断定しておるのでございますか、その点ひとつ伺っておきたいと思います。これは日本国民の一人でありますし、徴税の上でも、いろいろこういう問題もあると思いますので、伺っておきたいと思います。まだ寡婦とは断定しておらないものですか。
  98. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話の場合、夫の生死が三年以上明らかでない場合におきましては、法律上はその妻を寡婦とすることになっております。ただ、その場合におきまして、寡婦としての申告が税務署になされませんと、税務署のほうで寡婦と認定して控除するというわけになかなか参らないかと思いますので、寡婦として申告が出ておりますれば、もちろん寡婦として扱って、寡婦控除対象にいたしておると思いますが、申告がそういうふうに出ているかどうか、私のほうもまだ存じませんので、国税庁を通じましてさっそく税務署のほうを調べたいと思いますが、おそらくまだ寡婦としては届け出ておられないのじゃないかと想像いたしております。
  99. 柴谷要

    柴谷要君 一体、こういう事例が日本国民全体の中で、辻さんを除いてはないと私は思うのでありますが、ほかにこういうような事例があったことがございましょうか。そういう点で、とにかく、いない人が生活のもとを礎いているわけです。これを受けているのは、家族が受けているわけですね。こういう場合に、その扱いは、正当な扱いとして扱う場合には、どういうのが一番正しいとお考えになるのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  100. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) まあ辻議員の場合は著名人でありますから、特に問題になるわけでございますが、日本全国におきまして、そういった事例は必ずしもなくはございません。かなりそういった事例が、もちろん非常に例外的なケースで、そうざらにあるわけではございませんけれども、ときどきございます。結局、まあ夫が何かの理由で外出したまま三年以上帰ってこない、しかも、夫がその所得の起因たる資産を残しておって、その資産から生ずる所得があって、夫がいなくなってもその家族としては生活はいたしておるけれども、しかし、夫の生死は不明であるといったような事例は間々ございます。そういった場合、まあ本来からいたしますと、何と申しますか、かゆいところに手が届くというようなことからいたしますと、さぞかしたいへんでございましょうから、税務署のほうに申告していただければ、それは寡婦控除をいたしますよということは、もちろんお知らせすべきであるし、またお知らせいたしておると思いますが、ただ、まあ遺族と申しますか、あとに残された人の心情を思いますと、もう自分の夫はなくなってしまったんだというふうにお考えになりたくないというお気持ちもあろうと思いますので、単に税法上の負担だけの問題から、そういうふうな扱いを受けたくないというお気持ちの場合もあろうかと思います。  そこで、これはなかなかデリケートな問題になるわけでございますが、何もそういう税法上の問題だけであって、事実問題として夫がなくなったというふうに考える必要はないわけなんでございますから、税の負担の問題としてだけお考えいただければ、申告していただければいい。しかし、まあそれだけのお気持ちにもなりたくないという方もございましょうし、そこら辺を無理にお出しなさいと申し上げるわけにもいかないという、かなりデリケートな問題になろうかと思います。したがって、残された方のお気持ちというものも、まず大切にいたして考えていくべきではないか、かように思っております。
  101. 柴谷要

    柴谷要君 よくわかりました。  それでは、続いて第二十一条の「予定納税額の納付」という欄がございますが、これは「居住者又は事業等を有する非居住者で前年分の総所得金額に対する所得税について第二十六条第一項の規定により確定申告書を提出する義務があったものは、予定納税基準額の三分の一に相当する金額の所得税を、左の二期において、それぞれ政府に納付しなければならない。」、こうなっております。予定納税基準額の三分の一、しかし、特別農業所得者の場合はこれは二分の一、こういうふうに規定されておりますね。この違いと、それから、一期、二期に分けておりますが、七月一日から同月三十一日まで、二期は十一月一日から同月三十日まで。ところが、そのほかに、総合所得申告を行なって、かりに不足額が総合所得申告で行なわれた場合には、三月十五日までに納めなければならない第三期の納入ですね、こういうふうになっておる。こういうものとの関連、それから特に、農業所得者の場合の二分の一と、非居住者の場合の三分の一の相違、これらについて、ひとつ説明をいただきたいと思います。
  102. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) この所得税につきましては、給与所得などのように源泉徴収される所得でない、いわゆる事業所得などを持っておる場合におきましては、予定納税をしていただくことにいたしております。と申しますのは、まあ昔は、ある年の所得につきまして、その年度が経過した後所得が確定して、それをその次の年度に納めるといったような制度もあったわけでございますが、最近は先進諸国におきましては大体、その年の所得をその年に納める。その年と申しましても、もちろんその年が経過いたしませんと、その年の所得の全体は確定いたしませんので、いずれにしても、最後の納税は翌年に延びるわけでございますが、しかし、その年のうちに納税を始めるというやり方をとっておるのが普通でございます。で、わが国におきましては、予定納税原則として、三回にする。したがって、七月と十一月と三月と、この三回に分けて予定納税をやっていくという考えに立っておるのでございます。したがって、前年確定申告を提出いたしましたそういう事業所得などをもっておる方は、七月と十一月と三月に、前年の所得基準として、当年の税法で計算される税額を一応三分の一ずつ、七月、十一月、三月に納めるという予定でやっていきなさい、そして前年の所得に対して当年の所得がふえた場合、その場合には、翌年の三月に第三期分を納めるわけですが、その第三期分のほかに、ふえた所得についてふえた税額分を納めていただくということになっておるのでございます。  ただ、農業所得の場合におきましては、御承知のとおり、米の収穫ということが秋になります。したがいまして、七月というころはちょうどまあ米をつくるために肥料も買ったといったような状態でございまして、まあ現金収入のあまりない時期でございますので、農業所得者につきましては、七月に納税していただくのは酷であろうということからいたしまして、十一月と三月の二回に納めていただく。したがって、予定納税額を二分の一ずつにしまして、十一月に二分の一、それから三月に残りの二分の一、そしてもしその所得がふえた場合に、所得のふえたことに対応する税額は三月にもう一ぺん納めていただく。もっとも、その場合におきましても、あとで申し上げたいと思っておりましたが、予定納税額に比べまして、その年の所得が非常にふえたために、たくさんの税額を三月十五日に納めなければならないというような事態が起きますと、これはふえた分についての納税のある割合を二カ月延ばすことができるような制度をとっております。そして三月に納税すべき税額が集中するのを避けておるのでございます。ただ、農業所得者の中でも、米作中心でないような農業所得者の場合におきましては、これはまあ七月ごろ、もちろん現金収入——野菜なんかをたくさんつくっておるような農家でございますと、七月に現金収入があるわけでございまして、これは別に差しつかえがございませんので、そういう年二回、予定納税を二回に分けて行なうものは、特別農業所得者ということに限っておるのでございます。
  103. 柴谷要

    柴谷要君 この第二十一条の「予定納税額の納付」というのは、これは先取りの精神で、そう悪い法律じゃない、こう思うのですが、この期間を経過をして延納の場合、それから源泉徴収で過払いの場合、税務署が今日取っております延滞料、これはその過払いについても同じ額をつけて納税者にお返しになるのですか。たとえば三月十五日までに幾ら不足しておるから納めろ、こういうことになりまして、それが三月十五日に納まらないで一日でも二日でもおくれますと、延滞料がつきますね。この延滞料。それから、総合確定申告を行なって過払いということが明らかになる、何万円かよけい税金を払った、これが後に還付されてきます。これについてくる利息と、それから延滞の場合の利息と同率であるかどうか。それから、一体、過払いをした場合に、三月十五日できちっと帳じりはわかるわけですから、あなたは余分に幾ら納めたということを税務署から納税者に通知をしてくれますか。それが何カ月たったら手元に来るのか、こういう点がおわかりでしたら、ひとつお願いしたい。
  104. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) まず第一に、税金を滞納した場合の延滞税と、それから税金が過払いになりました場合の還付加算金との関係でございますが、これは還付加算金は日歩二銭となっております。それから、延滞税のほうは督促状が発布されましてから十日を経過するまでは日歩二銭でございます。ただ、滞納になりましてから督促状が発布されまして、それから十日を経過した後におきましては、日歩四銭になりますので、その四銭になりますと、還付加算金のほうの二銭とつり合いがとれておりません。これは督促状を出して、さらに十日たっても、まだ納まらないという場合は、まあ多少懲罰的に高くなっておる性質のものでございますので、日歩二銭の場合までは、還付加算金と同じ率でございますが、督促しても、なおまだ十日たっても納めぬという場合には、これはやむを得ないことで四銭ということになっておるのでございます。  それから、ただ、ちょっとお話がございましたが、年の中途で、源泉徴収の給与所得の場合などにおきましては、本来の納めるべき税額というものが、そもそも幾らかということが問題でございますけれども、途中で取り過ぎたり取り足らなかったりすることは、これは源泉徴収義務者の徴収事務におきましては、よくあり得ることでございます。これはまあ、前月の分は翌月で調整するというようなことを措置でとりまして、年末までいって、年末調整で全部片をつけていただくということになっております。したがって、その途中で取り過ぎた、取り足らなかったという事態がありましても、これにつきましては、還付加算金といったような制度はございません。したがって、源泉徴収で取り過ぎておりましても、それは年末調整の際に、徴収義務者のほうで翌年の源泉徴収税額に充当するか、あるいは税務署のほうに話して還付してもらうかという手続をとるわけでございまして、その手続をとって還付なら還付することになって、初めて還付加算金がつくことになっております。  それから、そうでなければ、大体、三月十五日までに確定申告をしていただきまして、その確定申告によって還付になる。たとえば配当について源泉徴収をしておるし、原稿料について源泉徴収をしておる、あるいは生命保険などの外交員、集金人について源泉徴収をいたしておりますが、そういった場合源泉徴収税額が多過ぎて、還付しなければならぬ場合がございます。これは申告をしていただきまして、そこで還付するわけでございます。これにつきましては、これは国税庁のほうからお答えしたほうがよろしいかと思いますが、現在のところ、できるだけ早く還付をするようにという手続をとっておりますので、金額が一定額以下のような場合におきましては、かなり早く還付いたしておるはずでございます。しかも、三月十日から十五日ごろになりますと、非常にふくそういたしますので、なかなかすぐというわけにも参りかねますけれども、それ以前でございますと、税務署にそういった還付の申告書が提出されますと、おおむね二週間、あるいは二十日以内で還付ができるようになっておるはずでございます。ただ、金額が非常に多額のような場合におきましては、調査する必要がございますので、これは若干おくれるかと思いますが、普通の還付の場合でございますと、かなり早目に還付いたしておるはずでございます。
  105. 柴谷要

    柴谷要君 こまかいようですけれども、その還付の加算金、いわゆる還付金に対して二銭もつくというのは、三月十六日以降につくわけですね。かりに二月上旬に確定申告を行なって、そこでもうすでに過払いがあるということが認定されましても、それから手続をされて、二週間ないし二十日ぐらいで手元に来るかというと、来ないのです。三月十五日を過ぎて初めて手続をされてくる。ですから、三月十六日から多少のものがついて、二銭なら二銭のものがついてくるわけですね。そうでしょう。それで途中でもって、まだ来ないかと聞くのです。そうすると、もう近々に行きますといって、なかなか来ない。これは、いわば納税者のほうからいうと督促なんです。督促をされてからは、これは四銭に引き上げてもらわなければ間尺に合わない。ところが、うっかり失念しちゃって、源泉徴収で取られているから、これはいいんだなと思うと、過不足があって、延滞だといってどえらいやつが取られるのです、一通のはがきだけで。これは徴税の技術上からいって検討する必要ありと思うのですが、これは局長さん、いかがでしょうか。
  106. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、確定申告書を出しまして還付を受けたいという場合におきまして、三月十六日を過ぎないと還付加算金はつけないことになっておりますことはお話のとおりでございます。ただ、それだからといって、その前に返さないということはないのでございまして、先ほど申し上げましたように、申告は二月十六日から三月十五日までの間に行なうわけでございますが、その間に行なわれますと、できるだけ早く返すようにはいたしております。  ただ、お話のように、延滞税とのバランスからいくと、延滞税のほうは督促をすると、督促をしてからすぐじゃございません、十日たった後でございますけれども、四銭になり、還付加算金のほうは、税務署のほうが幾らおくれてまいっても、二銭のままで一向にふえないじゃないかと。これは確かに、そういったバランスの問題は十分検討しなければならぬ点があろうかと思います。税務署のほうも早く片づけるべきだという意味において、そのバランスを今後検討すべきだとは思います。ただ、この還付加算金をいつからつけるかということにつきましては、確定申告書を提出したときからつけるべきか、それとも法定申告期限である三月十五日まではつけないで、三月十六日以降つけるべきか、これは制度の問題としていろいろ論議があろうかと思います。  いずれにいたしましても、お話のように、国民感情からいたしますと、納めるほうからはきつく、延滞税も二銭がすぐ四銭になる。ところが、返すほうにつきましては、そうでないといったような点は、国民感情の問題として十分今後検討しなければならぬ、かように思います。
  107. 柴谷要

    柴谷要君 たいへんこまかいことのようですけれども、切実な身に迫った問題なものですから、こういうことをお尋ねするわけですが、還付金についてつけることは、やはり三月十五日締め切りで、三月十六日からでけっこうだと思います。それ以前からよこせということはいかぬ、こう思いますから、その点は別に配慮は要らないと思うのですが、二月一日なら一日に申告をしまして、明らかになってすぐ返します、こういうことでありますが、局長さんは税務署の実情を知らないから、そう言うのです。私は二月十五日に行ってみたら、これはたいへんな申告でして、税務署の職員の人員の中で仕事をやっておりますと、とてもできるものじゃない。ですから、一応三月十五日の最終の締め切りが終わりまして、できるだけ早くということで馬力をかけて、ようやく早く着いて一カ月、そういうことで、これは税務署の職員の諸君も努力をしているので、怠慢ではないのです。そのくらいの今日の、実情なんです、税務署の実情は。ですから、われわれは無理を言いません。そういうことは早く返せと無理は言わないが、あまりにも、あなたのおっしゃるように、確定申告をして決定したのだから、すぐこれを計算をして、すぐ返してやるという気持ちはありがたいが、現在の税務署の実情から、それはできません。ですから、現実から離れた議論をしたくありませんので、そういう点も、やはり認識をされておかれることがいいのじゃないかと思います。  それから、年々経験をすることでありますけれども、源泉徴収票を総合所得申告につけるのはけっこうです。これは当然その人の所得ですからつけてやらなければ、税務署も仕事がしにくいと思う。ところが、生命保険控除であるとか、医療控除であるとか、いろいろなものをつけるわけです。たとえば生命保険でいいますならば、九千円以上の一括掛け金については証明をつけろということです。ところが、最近、生命保険の領収書にひとしきものははがきで来ます。はがきで来ますから、それで途中から下が掛け金のあれになっている。このはがきを張ったりなんかして、たいへんな手数をわずらわすわけです。それが一つくらいならいいが、一万円のやつを三つ、四つ入っていると、これを張って申告するというのは容易なものじゃない。時間にいたしますと、一日はかかりませんが、計画的にやっても、相当時間がかかる。しかも、税務署ではそういうものが張られた書類を扱うのですから、たいへんなことだと思う。あれを何とか簡素化する方法はありませんか。毎年々々経験することです。  それで、申告の用紙ももう少し、知識の低い人でも一目見てさっと書き込めるような、もっと簡単なものにならないか。この点は検討されて今日のようなものができた、こういう回答になろうと思いますけれども、今日のでは、あまりいただけません。いまいろいろなものを添付しなければならぬという繁雑さ、こういうものを解消できる方法はございませんか。特に今度、損害保険の問題が出てきますと、またふえてしまう。そうなりますと、申告用紙一ぱいに紙が張られてしまう。こういうことについて、たいへんな申告に労力を要する。税金を取られるのに、あんなに苦しい思いをして申告しなければならぬと思うと、うんざりする。これは何とか大蔵省として、国税庁として大分検討するお考えはあるかどうか、これを聞かしてもらいたい。これは国民にかわって声を大にして聞くのだから、お願いいたします。
  108. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、現在の確定申告を出していただく場合におきましては、給与所得についての源泉徴収票、これはそれぞれ源泉徴収義務者が添付して提出していただきますので、これはつけていただかなければいかぬと思いますが、そのほかに生命保険料控除であるとか、それから今度損害保険料控除の新設をいたしましたが、そういった控除、あるいは原稿料の源泉徴収票、講演料の源泉徴収票、配当のほうは別に源泉徴収票はございませんが、そういったものをたくさんつけなければならない、これが非常にわずらわしいという点はおことばのとおりであろうと思います。  それで、生命保険の場合におきましては、九千円以上の場合は必要だけれども、それ以下の場合には必要でないというふうにいたしております。この九千円という限度は、保険金額と保険料とのかね合わせから、ひとつの保険としてはかなり大きな金額の場合というふうに考えて、そのようにいたしておるわけでございますが、この限度につきましては、もちろん今後とも検討して、国民にあまり手数をわずらわすことのないようにしなければならぬと思いますし、ことに給与所得者のように源泉徴収義務者がおりまして、そこで年末調整を行なう際に、生命保険料について申告をその源泉徴収義務者を通じて税務署長にいたします。そういった場合には、源泉徴収義務者のところで、もうすでに幾らの生命保険控除をすべきかということがわかっておるわけでございますから、そういった人がさらに申告するときにまでまたそういった資料をつけなければならないという必要はないようにしなければならぬ、かように考えております。  それからまた、今度損害保険料控除を新設いたしましたが、これにつきましては、限度内にすべてそういう領収書をつけていただくことにいたしておりますが、これはまだ、そういったことについて保険会社等と十分打ち合わせまして、いまお話しのように、はがきを張るというような非常に手数になるようなことでなしに考えなければならぬのじゃないか。これがある程度なれてきますと、お話のとおり、前年もあったわけでございますから、ことしまたつけ加えなければならぬというほどのこともなかろうというようなことで、簡素化すべき点も出てこようかと思いますが、損害保険料控除のほうは、何ぶん初めてのものでございますので、第一回は保険会社と十分打ち合わせまして、ごく簡易な保険料領収証的なものをつけていただきたいと思っております。  それから、申告書の様式でございますが、まあこの点につきましては、わかりにくいというおことばでございますが、まあいろいろ検討いたしまして今日に参っておることは御承知のとおりでございまして、どういう様式がいいかということで、いろいろ委員会なども設けまして検討いたしたのでございます。各国の所得税の申告書なども取り寄せて見まして、まあそれぞれその国の特徴がいろいろ出ておるのでございますが、今度の改正によりまして、数字ばかりを書くので非常に無味乾燥で困るというような御批判もいただくのでございますが、従来の申告書は、途中に文章がいろいろ入っておりまして、その文章を読まなければ、文章を読んでは書かなければならないという意味で、非常に何かわずらわしいという感じがある。今度は、文章は読まぬでもいいけれども、数字を書けということになりますと、数字をどうして書くのかということがなかなかわかりにくいというような御批判もございまして、なかなか申告書の様式はやっかいなものでございます。もちろん、私どもといたしましては、相当知恵を出してつくっておるつもりでございますけれども、しかし、今後ともできるだけ一般の方がおわかりいいように、一々だれかに聞かなければわからないということでなしに、普通の常識のある人ならば、大体、そういう複雑なケースは別といたしまして、普通のケースの場合には、自分でけっこう書けるという程度にまで持っていかなければならぬかと思います。しかし、それにつきましては、まず税法自体をもう少しわかりやすく直す必要が先決問題でありまして、そういう税法自体をもっと一般の人にわかりやすく書き改めまして、それにあわせて、申告書の様式というものをさらに検討すべきものと、かように考えておるのでございます。
  109. 柴谷要

    柴谷要君 なぜ所得申告用紙が不親切かということを、一つ例をあげて言いますと、生命保険料控除という欄のところで、九千円以上のものは紙を張ってください、こういうことになっている。一体、その欄が幾つあるか。欄が幾つありますか。必ず同じような紙を張らなければならぬですから、控えをもらってきては、その控えを切ってその下に継ぎ足さなければいかぬ。九千円としましても、五万円以上の保険金を書き出す場合には、あの三行欄だけでは書けませんよ。三行欄に書くならば、九千円ならば三、九、二十七、二万七千円ですよ。五万円以上は、一括五万円払っているならばいいですよ。そんなのはありませんよ。大体、九千円というのは、いまの保険金額にしますと三十万円ですよ。これは平均家庭において三十万円ぐらいの保険金に入っていないのはないのだけれども、それ以下のこまかいのがたくさんありますと、これはみんな書かなくちゃならぬ。だから、そういう点についてあまり親切な所得税の申告用紙ではない、こういうことを申し上げるわけです。こういう点も、あわせて研究する場合にひとつ配慮をいただければ幸いだと思う。  まだ時間もありますけれども、私は次回にまた御質問いたしたいと思いますので、最後に各年度の国税の自然増収に対する税制改正による初年度の減税額の問題、減収額の問題について御質問いたしたいと思います。  昭和三十九年度、いま討議いたしております三十九年度は、自然増収額は六千八百二十六億、減収額は八百三十六億と、こう見ておるのですが、しかもその割合は一二・二%、これは間違いございませんか、この点を伺っておきたいと思います。
  110. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、三十九年度の自然増収額は一般会計分で六千八百二十六億でございます。初年度の減収額、揮発油税などの増徴額を差し引きました後が八百三十六億円、自然増収額に対しましては一二・二%の減税額になっております。
  111. 柴谷要

    柴谷要君 この割合から見てまいりますと、いままで大蔵大臣なり、局長さんもそうでありますが、かつてない大型の減税だと、こういうことを言っているわけでありますけれども、それでは、いまのような状態よりももっと内容的に充実した減税案がとられたという年は、大体いつといつになりましょうか、この点をひとつ伺っておきたい。いまより上回った改正を行なった年次ですね。
  112. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、自然増収の額に対する率からいたしますと、本年度三十九年度は一二・二%でございますが、ただ、その場合に考えなければなりませんのは、過去におきまして行なった場合、その自然増収の額という自然増収の額の出し方でございますが、当初予算におきまして出した自然増収の額に比較するのがいいのか、それとも当初予算をつくった後に、その年度経過中に自然増収がだいぶ出てきております。本来ならば、自然増収というものは前年度に対して当年度の実際ふえた額が自然増収の額になるべきだと思うのでございますが、当初予算に計上した自然増収と、当初予算を編成した後に年度経過中に自然増収が出てきた場合がありますが、当初予算に計上した自然増収の率で見るべきかどうかは問題だと思います。そういう意味では、三十九年度の六千八百二十六億という自然増収は、かなり多い目の数字でございまして、多い目と申しますか、かなり一ぱいの自然増収を見込んだ数字でございまして、そういう意味では、年度経過中に従来のごとく非常に多くの自然増収を生ずるということはなかろうかと思います。そういう意味では、自然増収の額に対する率だけで減税の規模を判定すべきものではなかろうと思います。  お話のように、減税の額で申し上げますと、三十二年、これは御承知のとおり千億施策千億減税といわれた当時のあれでございまして、このときは、揮発油税の増徴がございましたけれども、その後、増徴後七百二十億の減税を行なっております。このときには、所得税におきまして平年度千億以上の減税が行なわれたのでございます。これは相当大きな減税であったと存じます。それからあとでは、三十七年度に、所得税につきましても、また間接税、酒、物品税、こういったもの合わせまして、相当大幅の減税を行ないました。このときは揮発油税の増徴はございませんが、所得税、法人税、間接税合わせまして九百八十七億円の減税が行なわれたのでございます。この二つが、まあ昭和三十年以降の減税としてはかなり大きな減税であったと思っております。  ただ、いま申し上げましたように、六千八百二十六億という自然増収を出しておるわけでございますが、三十九年度について考えていただかなければならないことは、前年度剰余金が千八百六十六億受け入れ不足になっておるという事情でございます。したがいまして、六千八百二十六億という自然増収は出しましたけれども、予算を編成する場合の増加財源といたしましては、いま申し上げました前年度剰余金の受け入れ減を差し引きますと、六千八百九十億の増加財源になるわけでございます。そういった増加財源に対する減税の願から申し上げますと、八百三十六億というのは一七・一%になっておるのでございます。そういった点から見ますと、この一七・一%というのは、ほかの年度で比較いたしますと、三十二年度は、これは先ほど申し上げましたように非常に大きな額でございまして、減税額が増加財源に対して四一・二%、これは千億施策千億減税でございますので、半分は減税しようというようなこと、それでも半分にまでなっておりませんけれども、相当大きな減税が行なわれております。それ以降におきましては、三十七年におきましては自然増収は四千六百七億、その上に前年度剰余金受け入れ増が今度は逆にありまして、増加財源が五千七百七十五億、したがって九百八十七億の減税を行ないましたが、率としては一七・〇%、本年と同じくらいになっております。  先ほど私、三十九年度の増加財源を四千八百九十億と申し上げたつもりでございますが、失礼しました。六千八百九十億と申し上げたのは間違いでございまして、四千八百九十億でございますから、八百三十六億は、その一七・一%に当たっておるわけです。
  113. 柴谷要

    柴谷要君 まあ自然増収額なんというのは、先の先のことで、六千八百二十六億が大きいとか小さいとか議論を幾らしたって始まらないと思うのですが、これより少ないということはどうしてもないと思う。おそらく、それは何かというと、いままで政府が年々自然増収というものは安全圏を見て低く低くと見てきましたから、これより低いなんということはない、上回ることは明らかだと思うのですが、まあそういう内容を持っているにかかわらず、揮発油税とかあるいは取引税等を設定したために、こういう額になったということになるわけでありますが、そういう規模から見ますると、私どもが過去の計算をしてみると、いま局長が御説明になりましたように、多いときには昭和三十年の自然増収が四百二十五億しかないのに、当時の減税方針が、三百九十五億もやって九二・九%もやっておる。思い切ったことをやられた。こういう時代があった。ところが、三十九年の減税は、たいへんなスローガンを掲げて選挙戦を有利に戦い抜いて、さて国会が開かれて減税案が出されてみたらば、現実は少しく違う。こういうところに私ども社会党が、今後大いに政府としても検討し直してもらいたいということで、この法律案内容について討議しておるわけですが、私一人、きょう一日しゃべっていても、何か同僚議員に申しわけない感じがいたしますので、あらためて材料をそろえて、また再び相まみえたいと思いますので、きょうはこの程度でひとつ、質問を終わっておきたいと思いますが、この次は、少しく党の方針を加味した質問を展開をしてまいりたいと思いますので、よろしく御準備のほどをお願いして、たいへん御協力いただいたことをお礼申し上げまして質問を終わります。どうも委員長、ありがとうございました。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど関連質問で聞こうと思っておったのですが、先ほど柴谷委員からもお話がありました確定申告の問題でございます。これは私も全く同感でありまして、たしか私も昨年泉さんにお伺いして、善処するという……。そういう税法全般について、あるいは徴税方法だとか、いろいろな問題について私申し上げたと思うのですが、総理大臣の回答も、大蔵大臣の回答も、また主税局長の回答も、申し合わせたように同じであります。善処するといいましても、一体何年かかるのか、国民としては一番こうした問題が切実な問題であることは、先ほども申されたとおりだと私も思います。しからば、一体当局として、こういう問題について、われわれすらも、先般あの確定申告を出しますときに、だいぶ頭を悩ましたわけですよ。われわれすらそうでありますから、一般の給与所得者はなおさらじゃないかと思う。そうなれば、大体いやがって、めんどうくさい、もう多少税金を高くかけられてもしかたがないから、泣き寝入りする方のほうが多いんじゃないかと、こういうような感じすらするわけです。  そこで、特にこの大衆に密着する重大問題でありますので、局長としても鋭意、いままでもそうした問題を専門的におやりになったお立場から、いろいろ理想や、また今後の方向をお考えになっていらっしゃると思うのですが、一体、いつごろになればもっと明瞭にして簡単——明瞭簡単といいましょうかね、だれにでも了解ができて、快く納めるその体制がつくられるのかということについて、一応の、大体このくらいの期間があればできるとか、なかなかむずかしい問題かと思いますけれども、その点について、あわせて抱負をお聞かせいただきたいと思うのです。
  115. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、この申告書の様式はなかなかやっかいでございまして、そう簡単につくるわけにも参りません。これは先ほども申し上げましたように、税法との関連から参っておりますので、できることならば税法自体が簡素化される、それに基づいて申告書の様式もしたがって簡素化されるということが先決問題ではなかろうかと思うのでございますが、それでは、税法の簡素化はどうするかという点でございますが、これにつきましては、昨年の十二月に税法整備に関する答申をいただきまして、それに基づきまして、われわれも税法を——税法と申しましても、特に法人税と所得税租税特別措置法、この三法の関係を中心に考えておるのでございますが、この全文書き直しいたしまして法的に整備を行ないたい、かように考えておるのでございます。  しかしながら、この法的整備をいつやるかということにつきましては、私どもは、できますれば昭和四十年度の改正のときには所得税、法人税は全文書き改めたいと考えておるのでございますが、ただ、そういたしますと、いままで所得税は大体七十条余りの規定になっておりますが、今度は規定としましては、法律の条文の数はもっとふえると思います。と申しますのは、租税法律主義のたてまえからいたしますと、現存の規定では、政令以下に規定されていることできわめて重要な事柄がございますので、そういった事柄は法律にあげてこなければならぬ、こういうふうなことがありますので、条文の数はいまの七十条余りから倍以上にふえると思います。しかし、それにしても、今度は法律を見れば大体のことはわかる、計算のこまかい手続は政令を見なければわからないけれども、法律で大体の概念は得られるというような形にいたしたいと思っておるのでございます。  ただ、その際に考えなければなりませんことは、日本所得税制度は、いろいろな控除にいたしましても、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これは当然といたしまして、そのほかにいろんな控除所得控除にしましても、税額控除にしましても、非常にたくさんの控除がございます。これらの控除がある程度整理され得ないと、申告書の複雑性というものはなかなか変わらないのではないか、こういうふうに考えるのでございます。いずれにいたしましても、私どもは、まず税法を簡素なものにする、それを四十年度を目標に考えたい。その後、申告書につきましても、より簡素化する方向で考えたいと思うのでございます。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 お話の意味、十分了解いたしましたが、ただいまのお話ですと、控除項目ですか、たいへん複雑であるために、非常にむずかしい算定の方法になっておる、こういうわけでありますが、確かにおっしゃるとおり、控除内容を見ましても、それ自体は正当でありましても、何とかこれを整理されないものであろうかというような考えを深く持つわけです。そうした点なんかについても十分考慮されておると思いますが、いまお話しのように、昭和四十年度を期されて税法全般に対する改訂を試みられようとしておられるようでありますから、それに期待したいと思いますので、当局としては鋭意その方面に向かって力を固めていただきたい、このように思うわけであります。  次に、お伺いしたいことは、非常に連係のないような問題でありますが、大蔵省のほうから提出していただきました資料によりますと、今回損害保険料控除が決定を見る段階に至っているわけであります。これを見ますと、普通物件、工場物件、倉庫物件、こうありますが、今回の適用は大体普通物件、普通物件の中でも住宅物件がその適用になるのではないかと思うのであります。おそらくこの表にあらわれておる普通物件の昭和三十七年度に示された千円について四円二厘ですか、これは平均値を出された金額ではないかと思うのです。今日、一般給与所得層の生活環境を考えてみますと、団地その他アパートに住んでいる方が非常に多うございます。そうしてみた場合に、アパート割り増しとか、そういうものがつきまして、基本料率にそういうものが加えられていきますと、適用料率が相当またふえていきます。そうしますと、実際に、これは一つ一つの物件について当たってみなければわからないと思いますが、大体推算いたしますと、普通火災保険加入されるであろうところの人は、せいぜい三、四十万、多い人でも五十万程度くらいの金額にしかならないのじゃないか、二千円の控除額であれば。やはり今日のいろいろな物価高、そういうような経済的な客観情勢というものを考えてみた場合に、もし万が一のことがあった場合に、はたして五十万やそこらで生活をもとのとおり築いていくことができるかどうか、非常に疑問な点があるわけです。かりに、いまここで百万以上にしますと、二千円という保険料以上になると思うのです。二千円から二千五百円、三千円、これはもうおそらく今日の給与所得層にとっては最低限の保険金額であり、またあるいはそれに適合した保険料ではないか、こう思うわけでありますが、答申の内容を見ましても、二千円というふうになっておりますが、その出された根拠、おそらく当局としても十分答申の内容も御検討なさっていらっしゃると思いますが、どういうところからお出しになったのか、まずそれをお伺いしたいと思うわけです。
  117. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) この損害保険料控除は、実は政府に設けられておりまする税制調査会の答申にはないのでございます。自由民主党の税制調査会の税制改正の大綱にあるのでございまして、そのいきさつはともかくといたしまして、お話の普通の短期保険の場合の二千円の限度についてでございますが、これにつきましては、掛け捨てのいわゆる短期の火災保険につきまして、統計につきましていろいろ調べたのでございますが、お話のように、火災保険料というのは家屋と家財が中心に考えられているわけでございますが、その場合の保険料というものは、非常にその家屋のある場所によって違うのでございまして、都市の中心の過密住宅でありますと、危険性が多いということから保険料が高い。いなかのほうへ参りますと、類焼のおそれがないというようなことで、保険料は非常に軽いのでございます。その差が、実はいろいろ調べてみますと、十八倍の差があるのであります。したがって、保険料控除をいたします際に、どういう金額を控除すべきかということを非常に考えたのでございます。  ところが、地域と、しかも建物が木造であるかブロック建てであるか、あるいはお話のようにアパートのように鉄筋コンクリートでつくられているか、これによっても非常に差があるのでございまして、そこでいろいろ検討したあげく、われわれといたしましては、現在の火災保険平均額を見ますと、それが六十九万九千円になっております。その場合の保険料平均が二千百七十四円となっているのでございます。それらを考えまして、初めて制度を設けることでもあるから、一応二千円の控除として出発して、この保険料控除がどのように有効に使い得るかどうか、その事態を見た上で、将来引き上げを検討したい、こういう気持ちで実は創設いたしたのでございます。  創設にあたりましては、外国にない、わが国独特の制度でもありますので、いろいろそういった点と、それからこの話が起きましたのは、実は減税について、おおむねもう予算の編成過程が進んでいきまして、大体減税の規模が固まったころに、どうしてもこれをやるという話になりましたので、おのずから減税財減との関係もございまして、控除の額がそういうふうにならざるを得なかったのでございます。そういう点からいたしますと、今後これによって七十万円ぐらいで、家が焼けたから、あるいは家財がなくなったからといって、それで今度新しく家を建てたり、あるいは家財を買うには不十分ではないかということは、お話のとおりでございます。それらの点につきましては、今後検討いたしたいと思っております。  ただ、考えなければなりませんことば、こういう損害保険控除という制度につきましては、何と申しましても、生命保険と違いまして、それだけの財産価値がないと、それだけの保険にはいれないというのがいままでの制度でございます。したがって、今度は損害保険自体の制度につきまして、いまの建物は非常に古くなっておるけれども、今度建て直しする場合には相当の建物が建てられるだけの保険加入できるという制度にならぬといけないのでございまして、この保険料控除だけではそこまでは救えない、保険自体がかけられないようになっておってはいたし方ないのでございます。保険自体をそういうふうに直すのが先決であろうと思っております。これは銀行局のほうにおきましても、そういった積み増し保険と申しますか、付加保険と申しますか、そういった制度考えて、今年じゅうにそういった制度の発足が行なわれるようでございますので、そういった制度が行なわれますれば、それの保険料というようなことをも検討いたしまして、今後さらにこれについて検討したいという考えを持っておるのでございます。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、近い将来においては、二千円以上の控除考えていく、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  119. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) いま申し上げましたように、損害保険制度自体におきまして、いまの財産価額だけを基準にするのではなしに、将来建て直すということを考慮したような保険制度に直すということが行なわれます際に、それとの関連におきまして、保険料控除の金額を検討し直したい、かように思っておるのでございます。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 現在の保険関係の仕事を制度その他のいろんな方法について変えるということは、多分に問題が大きいだけにあるんじゃないか、このように思うわけですが、ただいまいろいろ地方や都市の例を引かれて話をされたことは、私も十分了解をしております。むしろ銀行局、担当局長がおりませんので、これ以上申し上げるわけに参らないと思いますが、やはり税制に関する問題がからんでまいりましたので、主管の局長ではないかもしれませんが、この点を検討されるにあたりまして、当然銀行局長と連携を保ちながらそれをきめていかれることであろう、こう思いますので、できるだけ早い機会にやはり、せっかくこういう損害保険料控除というものができたわけでありますから、その精神に沿ってもっとやはりあたたかみのある、内容の盛られた控除額というものが必要になってくるのではないか、かように思いますので、その点についても十分ひとつ御検討いただきたい、かように思います。  次にお伺いしたいことは、先ほどもお話の途中ちょっと出たようでありますが、公益法人と収益法人の問題についてでありますが、もう一度確認の意味で、公益法人と収益法人の厳然たる違い、また現在どういう団体についてそうしたものが適用されているか、これをお伺いしたいと思います。
  121. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 最初に、先ほどの損害保険料控除に関連して申し上げたいと思いますが、いま申し上げましたように、保険制度自体について積み増し保険ができるような制度改正を銀行局のほうで、おそらく今年じゅうに発足するだろうと思いますが、それを相談しながら今後保険料控除の問題を考えていきたいと思っておりますが、ただ、損害保険料控除につきましては、いま一つ考えなければならぬ点がございますので、それもあわせて申し上げておきたいと思いますのは、損害保険控除、わが国のような木造家屋の多い燃えやすい場合におきましては、確かに燃えた場合のあとの対策として、そういう保険に入っておることが望ましい。したがって、できるだけそういう保険に入るように奨励するという意味があると思いますが、ただ、えてして、こういう制度になりまして、あまり保険料の額を上げますと、今度は財産を持っている人だけが優遇を受けるという面になり過ぎても困りますので、その面はやはり考えて、財産をあまり持たない者と財産を持った者との間のバランスということをやはり考えなくてはならぬ問題だと思っております。したがって、あまり大きな金額にもできない。さりとて二千円が決していいとは思っておりません。今後の情勢を考えて検討しなきゃならぬと思っておるのでございます。それを申し上げておきたいと思います。  それから、お話の法人の、公益法人と収益法人と申しますか、収益事業を営む法人との関係でございますが、これは所得税法の規定よりも法人税法のほうの規定をごらんいただいたほうがよりわかりやすいと思うのでございますが、法人税法のほうを申し上げますと、法人税のほうでは、四条に非課税法人というのがございます。これは一切その法人に対しては税金をかけないものでございます。これは結局全額政府出資であるとかいうような特別の法人が多いのでございます。これは四条にございますのは、都道府県、市町村、その他の公共団体、それから専売公社、国有鉄道、電信電話公社、原子燃料公社、住宅公団、道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、こういった公団、それから年金福祉事業団、簡易保険郵便年金福祉事業団、労働福祉事業団、こういった全額政府出資の事業団、雇用促進事業団、産炭地域振興事業団、金属鉱物探鉱融資事業団、それから公庫でございます。国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、医療金融公庫、それから奄美群島復興信用基金、海外経済協力基金、輸出入銀行、開発銀行、そういった政府全額出資の金融機関、それから日本育英会、私立学校振興会、社会福祉事業振興会、日本貿易振興会、新技術開発事業団、海外技術協力事業団、日本蚕繭事業団、日本てん菜振興会、社会保険診療報酬支払基金、日本放送協会、日本労働協会、日本消防検定協会、国立競技場及び日本中央競馬会、まあこれは政府出資はございません。一部ありますけれども、政府出資でないものもありますけれども、その営んでおる事業の性格からいたしまして、全額非課税、それから国民健康保険組合及び同連合会、それから健康保険組合、同連合会、これは国民の保健衛生の考え方で非課税、そういった全然非課税法人と、それから五条法人と申しますのは、収益事業を営む——収益事業の範囲というのが問題でございますけれども、物品販売業であるとか、あるいは印刷業であるとかいったような収益事業を営んでおる場合に課税するというのでございまして、これが日本赤十字社、商工会議所、商工会、同連合会、民法三十四条の規定により設立した法人、社会福祉法人、郵便募金管理会、宗教法人、学校法人、それから私立学校法六十四条四項のいわゆる各種学校法人、それから弁護士会、弁理士会、税理士会、それからの連合会、それから労働組合法十一条一項の規定に基づく法人たる労働組合、それから国家公務員……
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 全部読むとたいへんですから、いいです。
  123. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) そういったようなものが載っておるのでございます。その考え方は、いま申し上げましたように、非課税法人というのは全額政府出資か、あるいはその営んでおる事業というものの性格が非常に公共性が強い、したがってそれについては一切法人税を課さない、それから、そうでない、ある程度公益性はあるけれども、同時に、物品販売業とか印刷業とかいうことによって収益を得ている面があれば、その収益を得ている面についてだけ課税して、公益的な分の所得には課税しない、そしてその場合、収益事業から得ました所得の三分の一は寄付金として扱って公益事業のほうに使っていいと、こういう制度によって、そういった法人が公益事業を営むかわり、その財源としてある程度の収益事業を営むことを認めておるのでございます。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、あくまでも政府より全額出資を受けているそういう団体については全額非課税であると、こういうお話でございますが、民間団体でこの適用を受けているようなところがございますか。
  125. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 民間団体と申しますか、非課税法人の中では、いま申し上げました日本放送協会、それから日本中央競馬会、それから健康保険組合、これは民間団体と言えると思います。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 民間団体の中で、いま中央競馬会というのが問題になったのですが、中央競馬会を非課税とした理由はどういうところにあるのですか。
  127. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これはまあいろいろ問題のあるところでございますが、結局、日本中央競馬会は、それによって馬匹の改良を行なうということが主たる目的になっておりまして、これが非課税法人として扱われてきておるのでございます。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もしそういうような趣旨のもとに非課税となったならば、そういう内容を含んだ団体においては全部適用になるんじゃないかというような考え方を持つわけです。たとえば、わずかな整理費でもって大衆のために音楽を聞かせてやろう、あるいは映画を見せてやろう、それにちなんだ講演会をやったと。ところが、実際問題として、その整理券として発行した何がしのわずかな金額、それに対しても課税されているという現実の問題があるわけです。大衆が非常に喜ぶ場合と馬匹の改良と、これ問題にならないと思うのですがね。これについてどういう違いがあってそういうような結果になっているのか、お伺いしたいわけです。
  129. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 中央競馬会があれに入ってくるものに対して入場券を売りまして、その入場税はもちろん納めていただくわけでございますが、この中央競馬会が営んだ事業から生ずる収益に対しましては納付金の制度になっておりまして、法人税のように所得のうちの一定割合でなしに、剰余金は全額国庫に納付すると、そしてその納付した金は政府の歳入になるというたてまえになっておるのでございまして、法人税のように税金を取って、なお残りを与えるというのではないのであります。これは先ほど申し上げました専売公社などにつきましても同様でございまして、納付金で納めていただく、そして法人税は納めないという形にいたしておるのでございます。  ただ、ここで非常に特異なのは、ここにはもちろん出ておりませんけれども、日本銀行が非常に特異な制度になっております。これは御承知のように、日本銀行は株式会社になっておるわけでございますが、これは日本銀行券を発行するという特定の仕事がありますので、これには法人税をかけた上でさらに納付金を取るというふうに二重になっていますが、それ以外のものは、ここにあげておりまする三十四条法人は、いま申し上げた中央会とか、専売公社といったようなのは納付金で処理することになっているのでございます。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、実質的にはまあ課税されているみたいなものだということになりますか。
  131. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 実質的には課税されている以上になるわけでございます。法人税を納めるなら、法人税を納めた残りは自分のものになるわけでございますが、残りが自分のものにならぬで全部国が召し上げるという制度になっているわけであります。
  132. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、もう一度、くどいようですけれども、念のために伺っておきたいことは、公益という定義でございますが、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  133. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) この公益ということにつきましては、先ほども申し上げましたように、民法三十四条に規定がございまして、その公益の範囲がどこまでであるかということにつきましては、なかなかはっきりした線というものはございません。したがって、民法三十四条法人を設立する場合、これは大体都道府県の知事がその設立の認可をする。ただ、その営む事業の種類によりましてその主管省がある場合がございますが、特別の場合を除いて普通は知事が行なうことになっております。そこで、その場合の公益の認定ということは、結局知事さんが公益法人を認可する場合になされるわけでございます。その認可というのが、いま先ほど申し上げましたように、特定の数人のものでなしに、それによって受ける利益が相当広範に及べば、まあ公益法人だといったような解釈で公益法人の設立が認可されておるようでございます。そこで、税法におきましては、そういう民法三十四条法人につきましては、どうしてもそれが収益事業を営んでいる場合には課税せざるを得ないということから、いまの四条法人には入れないで、五条法人に入れているわけでございます。
  134. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま民法第三十四条の規定に基づいてはっきりした区別といいましょうか、線をきめるわけにいかないというお話でありますが、そうしますと、この認定にあたっては各都道府県知事がやる、はっきりした線がなくて、都道府県知事はじゃ何を根拠として公益法人とするのか、収益法人とするのかという議論が出てまいるわけであります。この点はどうでございましょうか。
  135. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 公益法人と収益事業法人というのは、必ずしも相対立する概念ではなくて、公益法人でありながら同時に収益事業を営むということは当然あり得るわけでございます。したがって、各都道府県知事が民法三十四条の規定によって公益法人の設立の認可をする場合におきましては、先ほども申し上げましたように、その法人を設立することによって行なう事業によって社会一般の人が利益を受けるような場合には、大体設立の認可をいたしているようでございます。ただ、その設立をする寄付行為者などの特定の者だけしか利益を得ないというような場合でありますと、認可をしないということに扱われているようでございます。そうでない限りは、不特定多数の人が利益を得る場合におきましては、大体認可をしておると思います。
  136. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま不特定多数の社会  一般の人が利益を受ける場合というお話でございますが、現実ははたしてそうかといえば、そうじゃないというのが現実でございます。そういたしますと、確かに特定の者が利益を受ける場合、これは常識として十分考えられます。ですが、いま申し上げましたとおり、大衆一般を対象として利益を享受させる場合に、当然公益法人として認めることができる、これも常識として考えられます。ですけれども、いま特に、民間団体において見られる場合に、この適用を受けておるものがない。現にまた法廷で係争中のものもあるやに聞いております。こうした場合、法律的な解釈というものが一体どの辺でもってそれを基準とするのか、先ほど来からお話がありましたように、はっきりした線がないので非常に不明確だと思うのです。ですから、場合によっては、一県知事の裁量によってどのようにでもなるという、またいやな考えも浮かんでくるわけでございます。そういった誤解を受けないためにも、これもっと整理をして、公益あるいは収益の別をはっきり確立する必要がないか、このように思うのですが、現在、当局としてはこの問題について考えられているのかいないのか、それをお伺いしておきたいと思います。
  137. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、都道府県知事が民法三十四条法人として認可することによってこの法人税法五条の規定に入ってくるということは考えられることでございます。さりとて、民法の制度を私のほうでやるというわけにもまた参りかねますので、これはやはり都道府県知事さんが良識をもって処理をしていただくよりはかなかろうと思うのでございまして、私どもとしては、そういう民法三十四条法人ができましても、それを営んでおる事業が収益事業でありますならば、それに対しては課税をしますよという制度に残しておく以外にちょっと方法がないのではないかと思っておるのでございまして、もしそういうことなしに、そういう設立のことまで全部私どものほうでということになりますと、これはもうたいへんなことでございます。とうてい事務処理能力もございませんし、それはできないことでございます。そういったいろいろな法人ができる場合に、その法人のできぐあい自身は、その法人の監督官庁のほうでめんどうを見ていただきまして、私どもは、それができた法人の姿を見て、こういう姿ならば非課税法人にいたします、こういう姿ならば一応非課税法人にしますけれども、収益事業を営んでおられますと課税いたします、その分だけ課税いたします、こういうふうにやっていかざるを得ないと思うのでございます。
  138. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、公益法人としての認定を受けない場合には、あくまで収益法人として各税務署においては認定をされると思うのですね。そうしますと、当然課税対象になってくる、このように判断してよろしゅうございましょうか。
  139. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 先ほど申し上げましたように、公益法人ということと、その法人が収益事業を営むということは必ずしも両立しないことではないのでございまして、現に、民法三十四条法人でございまして、一応公益法人として非課税法人の扱いになっておりますけれども、その営んでおる事業の中に収益事業がございますと、その収益事業の分についてだけは課税を受ける。ただ、その収益事業から生じました所得の三割を公益事業のほうへ持っていく、同じ法人の中で会計を公益会計と事業会計とに分けまして、事業会計のほうの所得の三分の一を公益会計のほうに持っていくと、その分は有付金扱いにする、こういう制度でやっておるのでございます。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題はまだまだあらゆる角度から検討を加え、またここで論議されなけりゃならない問題だと思いますので、きょうのところは一応預かりにしておいて、いずれにしても、まあこの公益、収益というものがいまいろいろといろいろな角度から御説明がありましたけれども、たいへんわれわれとしては不明確さをぬぐい切れないという感じを抱きます。公益の概念にいたしましても、一体公益とは何だといっても、何だかわけがわからない。で、普通に課税されるということになれば、これは法の精神に反すると、そのようにも考えられるわけです。もちろんその主管が違えばそれ以上のことはタッチできないとされるわけでありますから、これ以上のことは申し上げるわけにもいかないと思います。まあいずれにしても、こういう不明確な問題が、別にこの問題に限らず税法一般に、先ほど来申し上げましたように見られるのが今日の欠陥ではあるまいかと、かように思うわけであります。ですから、税の公平という立場から考えてみた場合ですね、こういう点なんかにも十分留意してくださって、そうして大衆の納得できるその課税方法をつくっていただきたいと、このように要望いたしまして、私のきょうの質問は終わりにしておきたいと思います。
  141. 野々山一三

    野々山一三君 基本的な質問はあとでまた機会を得て願いたいと思いますけれども、その質問にあたってきょうちょっとお考えを聞いておきたいので、事務当局から御答弁をいただきたいと思います。  一つは、今度損害保険控除制度というものを設けるということになりましたですけれども、実は生活協同組合法人としての団体が、俗称相互共済という共済制度を設けて、一定の掛け金を掛け、それによってその家屋、物件の損害に対する保険をする、ないしは死亡傷害などに対しては保険を掛けておる。最近、これはまあ事務当局の話の中に、たとえば千円の掛け金に対して、それが幾種類もの給付がありますから家屋、物件などの損害についての保険に相当する部分は今度の法改正の中で当然非課税対象控除条件に該当するという考え方を示して、関係団体とお話をしておるようであります。  そこで、それはまあ当然の筋だと思うのでありますが、その考え方を伺っておきたいと思うのでありますが、もう一つは、生命、つまり死亡、傷害などによって、特に死亡などに対する給付相当額について保険料控除対象にすべきであるという議論が相当以前からあった。ところが、そちらのほうはまだ十分に燃焼しないまま、先ほど伺うところによればと、ただいま申し上げたのでありますが、家屋、物件に対する保険料相当部分については、手続を定めて、その一定金額に対していわゆる二千円の控除対象額に充てるという考え方があるやに聞くのでありますが、その生命に関する部分ですね、そちらの部分についてもその考え方を延ばしていくとするならば、よくつり合いがとれるということになるのじゃないかと思う。したがって、そういうものをやる考え方があるのかどうか、二つの、質問でありますが、お答えをいただきたい。
  142. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話の消費生活協同組合が火災共済を営んでおる場合、あるいは生命共済を営んでおる場合の扱いの問題でございますが、今回の所得税法の施行規則を改正いたします際におきましては、生活協同組合が生活協同組合法十条第一項第四号のそういった共済事業を営んでおる場合のうち、大蔵大臣が指定する生活協同組合につきましては、損害保険料控除及び生命保険料控除対象になる火災共済あるいは生命共済とするというふうに規定するつもりでおります。  問題は、お話の、それでは大蔵大臣が指定する消費生活協同組合はどういうものかということでございますが、これにつきましては、私どもの考え方といたしましては、まあ生命保険にしましても、火災保険にいたしましても、おおよそ保険数理というものがあるわけでございます。で、これはそれぞれの保険の成り立ちからいたしまして、そういった保険数理に基づいて保険というものが行なわれるわけでございますので、消費生活協同組合の行なっている生命共済にしましても、あるいは建物共済にいたしましても、それがそういった保険数理に基づいておるということの事実を確認いたしました上で、大蔵大臣が指定するようにしたい。したがって、消費生活協同組合の営んでおるそういった事業保険数理に基づいていないと、指定は困難ではないかと思っております。で、その事実を確認するまでに、そういった消費生活協同組合からいろいろ資料を出していただいて、若干手続を要するかと思っておりますが、その手続をとった上で確認をした場合には、指定をいたしてまいるつもりでございます。
  143. 野々山一三

    野々山一三君 よくわかりました。そこで、おそらくその指定するにあたっての考え方というものは、ある程度具体的なものがあるのじゃないかと思う。公式に委員会に出せるものならば出してもらいたいし、それでないならば別の機会に、ひとつ十分説明をする機会を与えてもらいたいと思う。これはもしやらないと、今度の法律改正で非常なアンバランスが起きるという問題で、規則でやるというなら、実際は同じだから、なぜ法律でやらないかという議論があるところでありますから、これはぜひ出していただきたい。これは委員長、確認をしておいてもらいたい。
  144. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 生命共済のうちでは、たしかいままでのところ消費生活協同組合で認めておるのは全国労働者消費生活協同組合だけだったと思います、現在のところ。それと、今度こういうふうな規定を入れましたことに基づきまして、消費生活協同組合のほうから資料を出していただきまして、それぞれの消費生活協同組合において営んでおる生命共済が、はたして保険数理に基づいてやっておられるのかどうか、それの点を確認いたした上で、その保険数理に基づいておる分については指定してまいりたいと思っておりますので、そのいま入れておる以外のものについてどれだけ入れるかということは、今後の手続を要しますので、まだ確定いたしておりません。しかし、お話のように、消費生活協同組合で生命共済なりあるいは火災共済を営んでおるものが相当ございます。それぞれから資料を今後出していただかないと、判定はすぐにはできかねると思います。判定いたします場合につきましては、御趣旨のような点を十分考慮して、いま申しました保険数理という点を考えてやっていきたいと思っておるのであります。
  145. 野々山一三

    野々山一三君 いまのおっしゃる言い方ですと、全国労働者消費生活協同組合だけがやっておる生命及び火災共済については、一応保険数理に基づいてなされておるものと考える。その他のものもあると思うけれども、審査の結果、まあ基準に照らして該当すればやると、こういうことでありますけれども、それならば、個々の具体的なもので話し合えばいいということになりますが、しかし、いまこうやや断定的に全国労働者消費生活協同組合だけがというようなニュアンスのことばが吐かれておりますので、そうじゃなくて、そういう一定の条件に適合するものであるならば、いずれもそれは適用するのだ、こういう前提なんだということを確認を願って、そうして先ほど私が注文いたしました目下検討中の基準案というものをこの委員会に示してもらいたい、こういうことを申し上げておる。
  146. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 私が先ほど申し上げたことばが足りませんで、誤解を受けたと思いますが、この消費生活協同組合が営んでいる生命共済のうち、現在行政庁が取り扱いで生命保険料控除対象にいたしているのは、現段階では全国労働者消費生活協同組合だけだということを申し上げたのでありまして、今度所得税法施行規則を直しまして、いま申しましたように、大蔵大臣が指定するものの締結した生命共済にかかる契約については、生命保険料控除対象にするということにいたしましたので、したがって、この規定に基づきまして、今後そういう生命共済を営んでいる消費生活協同組合から資料を出していただきまして、その上で保険数理に基づいてやっている生命共済であるということを確認しました場合には、これで指定してまいる、こういうことを申し上げたのでございます。したがって、御趣旨のとおりに考えておるのでございます。
  147. 野々山一三

    野々山一三君 生命も火災共済も同じでしょう、あなたのお話は生命生命と、生命ばかりにとらわれるから。
  148. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) それはお話のとおり、生命も火災も同じでございます。ただ、生命のところで申し上げておったわけですから。
  149. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、それの資料を出していただきたい。  それから、第二の問題は、税制調査会から出て、答申されていないもので、今度改正対象になる、租税特別措置の対象になる農協などの留保所得課税特例の問題と生活協同組合との関係です。生活協同組合は今度この対象に入っていないのでありますが、三十六年でありますか、それまではあったのですね。で、同じような歩調できた生活協同組合だけを今度取り除くということにしたのですが、均衡上一体取り除く積極的な理由があるのか、いや、理由はないのだけれども、それだけ除いたというのか、そこのところをはっきり伺っておきたい。
  150. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、今度農協、あるいは漁業協同組合、中小企業協同組合などが留保いたしました場合には、その留保した所得が出資の四分の一に達するまでは、各事業年度の留保額のうち二分の一は法人税の課税をしないという制度にいたしております。ところが、この中に消費生活協同組合が入っておらないじゃないかという点でございます。この点につきましてはいろいろ御意見があろうかと思いますが、私ども立案の際におきましては、およそ二つの点を考えたのでございます。  一つは、お話のように、消費生活協同組合につきましては、以前留保所得の非課税の措置をとられておったのでございますが、これにつきましては、消費生活協同組合が適正に運営されておる場合はそういうことはないかと思うのでございますが、員外利用がかなり行なわれるというような事態がありますと、付近の中小小売り商人との間に摩擦が起きやすくなりまして、中小商業者が、消費生活協同組合ができることによって自分らの営業に差しつかえがあるというような不満を持っている場合がございます。したがって、たしか三十六年だったと思いますが、消費生活協同組合につきましては、留保の場合の非課税の規定を削除いたしております。それと同じように、今度の場合におきましても、消費生活協同組合については、いろいろそういった問題があるので、これの留保課税の軽減を行なうべきかどうかについては十分検討しなければなるまいということから、それを取り入れるのに取り入れなかったということが一つでございます。  いま一つは、それでは今度のそういった留保した場合の課税について特別の措置を講ずる範囲をどのようにしてきめたかと申しますと、これについていろいろ考え方があろうかと思いますが、基本法のある協同組合についてだけやったらどうか、農業協同組合につきましては農業基本法がございます、それから漁業関係につきましては沿岸漁業振興法がございます、中小企業協同組合などにつきましては中小企業基本法がございますので、そういう基本法におきましてそれぞれそういった農業者であるとかあるいは中小企業者の組織する団体の整備に関して政府が特別の措置を講ずべきであるというような規定もございますので、そういった点からそういう基本法のあるものに限定したらどうか。こういう二つの考え方に基づいて、この範囲をきめることにいたしたのでございます。その関係からいたしまして、消費生活協同組合は、この点からいたしますと、基本法もございませんので、ここに入っておらないということになるのでございます。
  151. 野々山一三

    野々山一三君 これは議論になるんで、きょうはもうあまり深いところまで言おうとは思いませんけれども、あげられた第一の理由である農協と漁協などの場合と消費協同組合の場合とは、その利用において不適正だという前提で違いがあるということを理論づけられたのでありますけれども、一体実際問題を見ると、農協に物を買いに行くとかいうような対象地域というものはほとんど商店も何もないというようなところで、しかも消費者が相当このごろ集中的に来ておって、実際問題としては、農協を相当利用するという度合いがふえつつあるのが都市周辺地域における農村の居住民の構造的変化なんです。したがって、むしろ指摘をされるような不適正な利用が行なわれているということは、事実このごろそういう農協などについてもその度合いは拡大しつつあるという傾向がある。しかも、農協にしても漁協にしても、ある程度そういういわゆる商業行為ですね、そういうような行為をすることも、またその財政基礎を強める要因だといわれて、こういう事業が順次拡張されている傾向を、あなた方は御存じなのだろう。おそらく私の指摘することも、実際腹の中ではそうだとお思いになっていらっしゃると思う。これはどうも議論になるけれども、理屈が弱いということをまず言わなければなりません。  それから、第三の点の、農協なりあるいは漁協なりというものは基本法があるからだ。一体、生活協同組合というものを法制的に許して、政策的にこれを許して、めんどうを見てきた根本というのは何ですか。おそらく国家政策としてこういうようなものを、消費協同組合を伸ばすということも、やはり労働者の福祉を増進するものであるという前提を持っている。私とあなたと、おそらく議論が離れるはずがない。たまたま、幸か不幸か、農協とか漁協というものの基本法がある部分において先行したということの理由をもって、今度のいわゆる控除対象要件からはずすということは、これはまさに不均衡でしょう。事実の点から見れば、経過の点から見れば、不均衡と言わなければならない。あなたの正直な話をひとつ聞かしてもらいたいですね。これはおそらく、私はあなたも私の言うことをそう頭から否定するような根拠はないと思いますが、いかがですか。ひとつ御感想をお聞きしたい。
  152. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のごとく、特定の協同組合について今回法人税課税上の特別の措置を講ずることを御提案申し上げたわけでございますが、その範囲をどこに限るべきかという点につきましては、いろいろ御見解があろうかと思います。で、私どもとしましては、一応いま申し上げましたような基準からこの範囲をきめているわけでございますが、消費生活協同組合につきましても、基本法こそなかれ、労働者の福祉の増進ということから、この組合がつくられている、これはお話のとおりだろうと思います。それからまた、したがって、この範囲をどういうふうに限定すべきかについては、いろいろの御意見があることは私も承知いたしております。また、ここに載っていないもので、過去に問題がありましたのは森林組合でございます。森林組合につきましても、同じような事例、事態があると思うのでございますが、この点につきましても、まあ森林組合につきましては、いずれ森林基本法というのができるそうでございますが、まだ森林基本法ができておりませんので、ここには入れないというふうに、いたしております。これはまあはなはだ形式論的なことを申し上げて恐縮なんでございますが、そういうことに一応なって、こういう制度を設けることにいたしておるのでございます。議論としてはいろいろ論議があろうということは、十分承知いたしております。
  153. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、この種のものについて税調にはからなかったのでしょう。はかれば否決される、その中で適当なものだけピックアップしてやる、理屈は全然ないのですね、落としたものに対して。全然というわけではないけれども、一生懸命理屈を述べられたから、かすかにそれらしいことを言ったかということはわかるけれども、本質的なものを十分つかまえると  いうことにはならない。これはあなた正直に言って、自民党の税調のほうで、これは対象にしろと、こう言ったからやったのだという、先ほどちょっと柴谷さんの説明に答えられたのですが、それならそれだということをはっきり言ってもらえば、これはこれからの質問審議にあたっても話がしやすいですよ。変な理屈をつけられると——変な理屈をつければ幾らでもつきますよ。あなたみたいに、正直にいって、東京のまん中におって、役所の中にいる者に、この実態がわかるはずがない。わからぬ者が理屈を並べて、公然たる理屈のごとくいたけだかになってものをしゃべるというなら、とことんまで議論をする。実情から出発しているのだから。で、あなたはそこのところをすぱっと言ったほうが、はっきりしていいのじゃないですか。
  154. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) この規定は、その前の租税特別措置法の五十九条、六十条にございますように、かなり沿革的な問題があるわけでございまして、今回の措置は、先ほど申しましたように、これまでの政府の税調の答申が出ましたあとで問題が生じてまいったのでございます。したがって、政府の税調の答申にはもちろん入っておりません。われわれが意識してかけなかったというのではございません。政府税制調査会が答申を出しましたあとで、総理の言われる農業及び中小企業に対して革命的な措置を講ずべしということになりまして、問題が浮かび上がってまいったのでございます。そこで、いろいろ検討いたしましたあげく、いま申しましたような次第に相なっているのでございます。
  155. 野々山一三

    野々山一三君 まあこの問題はどうも、あなたと議論しておっても、あなたも心にもないことを言わなければならぬ立場だろうと思うから、別な機会にもう少し突っ込んで話を聞くことにしたいと思うのですが、第三の点は、これは考え方を伺っておきたいのですが、専従者控除控除額算定の根拠というもの、これはまあ白色の場合は、農業従事者の年間所得というものをはじき出して、それを基準にしてやる、青の場合は同族会社の同居者の家族をやるというようなことになっているのですけれども、これは税調の考え方とも少し私はぶつかるのかもしらぬが、同族会社にしても、けさの田中大蔵大臣の話じゃないけれども、金のない者が女房、子供、親戚一同の金を集めて、その金を投げ出して仕事をしている、そしてそれが順次発展をしていくのだというものの考え方に立つならば、そうしてまた事実私もそうだと思うのでありますけれども、やはり身内だからというので、統計的に出てくる件数も非常に低いものになっていると思います。企業そのものが脆弱なものの上に出発している。同族といったって、たいへん大きなものもありますけれども、対象になるものは総じて低いものだ。そこで、十分な給与支払いというものを計算できないような状態において企業が成り立っておる。その数値を土台にして統計的に出てきた金額が幾らであるから、これだけしか給与を与えていないという計算をして専従控除というものをはじき出す。これならば、弱い者に対して、しかも身内であるということで、十分な支払いをしない。しないというとおかしいですけれども、しない。そういうものを種にしてはじき出す専従控除額の算定の考え方は、私は二重三重にその控除額というものを落とす傾向にある。そういう考え方は私はあってはならないと思うのです。なぜその片方を、たとえば同族であろうとも居住を一にしていないもの、あるいは一般の法人である場合には全額損金に計算をするもの、そういう片寄ったものの見方をするかということが疑問でならない。一体あなたのほうとしては根本的に四十年に改正をされるというのでありますけれども、そういうものについて新しい観点からものをながめるというお考えがあるのかどうか、あるいは私の言うような議論が不十分かもしれませんけれども、そういうよって立っておるということが、条件の違いというものをながめて再検討する考え方があるのかないのかということを、事務的に専門的な立場からあなたの考え方、持っている御意見を伺いたい。
  156. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話の専従者控除の額の計算につきましては、いろいろ考え方があろうと思います。私どもといたしましては、まあ個人と法人との負担のバランスということから、なぜ最近個人から法人になるかというと、結局親族従業員に対する給与が法人の場合には損金に認められる、個人の場合には損金に認められない、そこでどうしても法人になったほうが得だという観念があるんだと思うのです。税率の点からいいますと、法人の税率は少なくとも三三%でありますから、個人の場合に比べて税率は高いのでございますから、なぜ法人になるかというと、いま申しました給与の問題が大きいと思うのです。それにはもちろん、親族従業員の給与のほかに、事業主自身が会社の社長ということであれば、事業所得でなくて給与所得になる、これも大きいと思いますが、やはり親族従業員に対する給与の問題も相当大きいウエートを占めておると思っておるのであります。そこから同族会社の親族従業員に対する給与の支払いがどの程度になっているか、そこを基準に専従者控除の額をきめたらどうかということで検討いたしておるのであります。  ところが、これは税制調査会の答申にも出ておりますが、親族従業員に対する給与の支払いというのは千差万別でございまして、非常にいい企業になりますと、親族従業員に対しましても二十数万円払っている事業もありますれば、あるいはこう言っては何でございますけれども、女子の従業員に対しましては、比較的支払う額が少ないのが普通であります。これは現実にそうなっております。そういった点からいたしまして、この専従者控除の額は幾らにするかということにつきましては、非常に、実は苦心をしたんでありますけれども、なかなか思うような明確な根拠というものは出てまいりません。  そこで、今回の場合には、同族法人のうち個人換算にいたしました場合所得百万円くらいのところを基準にいたしまして、青色申告の場合に二十歳以上の人には十五万円、二十歳未満の人には十二万円というふうにいたしたのでございますが、これにつきましてはいろいろ意見のあるところでございまして、本来の筋からいたしますと、いまお話しのように、親族従業員のうちでも、生活を一にしているからその人の所得にならず事業主の所得になるのでありまして、生活を一にしていない場合におきましては、その親族従業員に対する給与は必要経費に算入されるわけでございます。生活を一にしているものですから、給与の支払いが認められなくて専従者控除という形になるわけでございます。そこで、考えられますのは、今度実態のほうから見まして、いまの住居の事情がありますのでやむを得ませんけれども、親族従業員でも配偶者のあるような人、こういうような人は住居の関係でやむを得ず生活を一にしておりましても、本来そういう人について限度額を設けるのはいかがであろうか、配偶者のあるような人については当然その人が独立した生計が営めるようにやっていくのが当然ではないか、そういう点からいたしますと、そういう人には専従者控除の限度額を設けないということも一つ考えであろうというふうにも考えられるのでございます。  そういった点をいろいろ取りそろえまして検討してまいりたいと思いますが、何ぶんにも、御承知のとおり、三十六年以降労働不足と申しますか、若年労働者の供給が非常に不足いたしてまいりまして、初任給の引き上げというのが著しく行なわれて、これが今日もなお続いておるわけでございます。そういった点からいたしまして、どうも統計にあらわれる数字は古い数字しか出てきません。したがいまして、私どもそういった点をさらに検討いたしまして、専従者控除の額につきましては、なお十分検討いたしてみたい。いま申し上げましたような趣旨を含めて検討しなければならぬ、かように考えておるのであります。
  157. 野々山一三

    野々山一三君 これはきょうのところは検討するという考え方を聞いておいて、あとはまた別な機会に議論をすることにしたいと思いますが、とにかく白色の場合は、非常におくれていると指摘をせられる農業の家族収入のところを土台にして、そして額を算定する、青色の場合は同族会社を基準にするということは、いわば非常な、私は底の面だけを見るわけじゃないんだけれども、底辺にあるものを土台にして、そうして控除額を算定するということになりますれば、これは勢い、あなたも指摘されるように法人になることを考える、そのほうが絶対的所得額が少ないから有効に税を免れることができるということになるほどの企業であるからだということが言える。そういう意味で、根本的にすみやかにこれは再検討されるべきじゃないかということは、あなたの言われたとおり、私どももそういう答えが早く出ることを期待して、きょうの質問を終わっておきたいと思います。  それから、第四点は、租税特別措置法のうちの輸出控除の問題、今度ガットの規定によりまして輸出所得の特別控除及び所得割り増し控除というものをなくする、そして四つ五つの措置を講ずることにする、これは一つ理由として、ガットの規定に基づいて、それが特別保護措置であるからという理由ですが、その理由のあることはわかるのでありますが、それと今度改正をして新しく設けようとする幾つかの措置との間に、特に中小企業などに及ぼす影響を考えてみますと、非常にアンバランスが起きはしないかということを私は考える。つまり、いままでの規定でありましたならば、輸出ということをもってする中小企業というものは非常に励みを感じて、そして税が免除されることのみをもってその仕事は拡大をして、しかもある程度下請代金などが安いものであったとしてもそれに耐えていく、自分を納得させる理由を求めてそれに耐えていく。ところが、今度の改正でいきますならば、そのほとんどは中小企業に対する恩典というものは薄くなってしまって、しかも税がかかるようになってまいりますから、下請代金にしてもある程度高くしてくれなければならぬという主張が中小企業者側から、下請側からメーカー、大企業に対して、親会社に対して、そういう主張が起きるようなほどの影響を私は持つと思う。ところが、いまの大企業の側からいうならば、そういうような下請の下請代金というものを上げろというならば、君のほうの会社とはもうつき合いはしないぞという傾向が出てくるのであります。  私は特定のどこということを申し上げるのではありませんが、たとえば一例をもってするならば、私どもの地域にはトヨタ自動車というたいへんに大きな企業がある。二次、三次、四次によって生きている下請企業というものが非常に多い。これがいま現に、そういう私が指摘をしたような、下請は設備投資をやらなければならないわ、片方はまた税金の面で免れることができなくなったわということで、下請価格の引き上げの要求をすれば全部——全部といってはことばが過ぎるかもしれませんが、多くの場合取引関係を切られるという非常に大きな課題に、ぶつかっている。  そこで、あなたにお伺いをしたいのは、今度廃止される二つの措置の結果響く中小企業の負担というものを、新しく設ける四つ五つの措置によってつり合いがとれるような、カバーできるようなものであるというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか。他に、これが直接輸出に対する所得に対する税控除方法としてはこうなんだけれども、別にそれにかわるべき中小企業に対する特別の保護措置というものがあるとでも言われるのか。その点をできるだけひとつ詳しく説明してもらいたい。  私の見るところ、非常にいままでのところは土俵がとられてしまって、その格差が大きくなってきてしまい、その影響が中小企業に響いてきている。税制上の措置としては孤立した別個のものになってしまっていると、こう見る。現にこの法律案が出されたことによって、ある貿易団体の間にそういう動きが活発になってきている。私どものところにも陳情とかそういう意見が出てきておる。そういう状況から見ても、敏感に響いてきていると見る。これ以上申し上げませんけれども、この税法上の効果、影響というものについてどうお考えになりますか、伺いたい。特別の保護措置がおありになるか。
  158. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 最初に、専従者控除の問題について、いま一つ申し上げておきたいと思う点がございます。これは、まあすでに御承知のとおり、親族従業員、ことに子供なんかに対する給与の支給制を認めるべきかどうかという問題が、もう一つあるわけでございます。これにつきましては、日本の現在のまだ社会の実態から申し上げますと、親子間などに給与の支給というものの事実はないのではないかというふうに考えているのでございますが、しかし、一説によれば、税務のほうで給与の支給を認めないから払えないのであって、おまえのほうで認めれば払うのだというようなお話もあるのでございます。それはやはり社会の実態というものをよく認識した上で、社会の実態が動いてまいりますれば、私どももそういった気持ちで今後検討いたしたいと思います。いずれにしても、社会の実態の認識の問題でございますので、今後そういった点を千分気をつけてやってまいりたいと思っておりますことを御了承いただきたいのでございます。  それから、その次に輸出振興関係のことでございますが、お話のように、従来輸出所得控除制度がございまして、これが中小企業、直接中小企業が輸出する場合はもちろんのこと、直接輸出しなくても、貿易商社を通じて輸出する場合の特典として、非常に大きな成果をもっておったことはお話のとおりでございます。しかし、御承知のとおり、この輸出所得控除制度は、ガット十六条の四項の輸出補助金と解される向きがございまして、公式ではございませんけれども、諸外国で非公式にいろいろと問題にされて、したがって、わが国は、従来輸出所得控除制度がありますものですから、ガットのA宣言国にならずにB宣言国のまま今日に至っておったのであります。しかし、工業先進国としては、いつまでもB宣言国にいることは適当でないという外国の批判もございまして、今回適用期限到来と同時に、輸出所得控除制度の廃止をいたしまして、A宣言国を受諾しようということになってまいったのでございます。  したがって、輸出所得控除を廃止いたしましたその影響がどういうふうにあらわれるかということと、それから、ことばとしては、外国に対する関係もありまして、それにかわる措置ということは、なかなか言いにくいのでございますけれども、今回設けようとする、海外企業との国際競争力強化のための措置、これは御承知のとおり四つございますが、この四つの措置と、従来の輸出所得控除制度との関係いかんということになりますと、大ざっぱに申し上げますと、これは減収額からごらんいただけますように、輸出所得控除の廃止による増収額は、平年度二百三十五億、それから今度の新しい措置によります平年度減収額は二百五十四億、したがって、今回の措置のほうが減収額としては大きいということになっております。  ただ、個々の企業について見ますと、その影響はいろいろ違っておりますこれを先般お話がございましたので、税務署について調べさしたのでございますが、一律な傾向は出ておりませんが、輸出所得控除制度に比べまして九割になるという企業、あるいは一五三%、一一一%、一〇一%といったような企業がある半面、従来この輸出所得控除の特典を非常に受けておったために、今度の措置によっては従来の軽減の三割七分にしかならないといったような企業もあるのでございます。影響は非常に差がございます。ただ、それでは、その差はどうして出てきているかという点について、いろいろまだ検討いたしているのでございますが、はっきりした理由というのが見つかりません。ただ、この従来の輸出所得控除の場合、非常な特例といたしまして、全般に対しまして、輸出金額がふえた場合に、所得基準だけでやっていくという特例がございまして、その特例を受けておったものは——非常に例外な特例でございますが、その人は——その人といいますか、そういった法人はどうも従来特典を非常に受けておったものでございますので、今回の制度による利益は比較的少ない。しかし、そういう特典を従来受けていなかった、従来普通の輸出所得控除の適用を受けておった人は、概して今度の制度によったほうが利益は大きい、こういうふうな数字が出ております。  それから、いま申し上げましたのは、租税特別措置法で新しく設けられました海外市場開拓準備金、輸出特別償却、それから技術輸出所得控除及び、一般にはあまり関係はありませんけれども、新開発地域投資損失準備金、この四つの制度でございますが、このほかにも、先般ちょっと申し上げたかと思うのでございますが、今回の耐用年数の改定にあたりましては、その製品が輸出に向けられているような機械につきましては、できるだけ耐用年数の短縮の割合を大きくするというような考慮も払っているのでございます。そういったように法人税、租税特別措置法全体を通じまして輸出振興に力を入れたつもりでいるわけでございます。  ただ、個々の企業にとってみますと、その影響が従来のあれと違う面がございますために、そういった面からいろいろ従来より不利だというような声があることは承知いたしております。ただ、従来より得になっている人は黙っているものですから、不利になる人のほうの声ばかりが強く出るという傾向があるんじゃないかというふうにも感じておりますが、しかし、それらの点につきましては、なお今後十分検討していかなければならぬ点はあると存じております。
  159. 野々山一三

    野々山一三君 時間もおそいですから……。いまあなたのほうで言われた、今度の制度改正によってこういうふうに得になる者と損する者があるというふうに言われたのは、調査をしてみたと言われたんですから、相当なものがおありだと思うので、でき得るならば、金でも何でもいいのですけれども、規模別に、しかもそれがアップされた、特典を多く受けられるようになった度合いがどのくらいで、ランク的にはどのくらいの比率になっているか、それからダウンされているものの規模別の度合いがどのくらいなのかということを示すもの、これをひとつ資料としていただきたい。そうすると、いまの議論は全部終わりますからね。それが一つ。  それから、もう一つは、耐用年数の短縮にあたってその種のことを考慮したというのでありますけれども、一体中小企業でそういう種類の耐用年数によってさじかげんができるようなもの影響受けて利益を得る——利益というか、その恩典を得るというものはほとんど私は考えられない。それが中小企業の特質だと思う。で、結局やっぱり大企業に将来そのしわというか、その効果は及んでいくんじゃないかというふうに私は思う。それが違うと言われるのでありますから、その違うと言われるものを数字的に示してもらいたい。それから耐用年数で、それをさじかげんをして措置をしておりますというのでありますから、その具体的な数字を、どういうふうなものについてはどういうふうにさじかげんをしているかということを示す資料をいただきたい。まあ、それさえもらえば、あとそれがどういうふうに響いておるかということは大体わかりますから、あとは本格的な議論になるんじゃないかと思いますから、その二つ、三つの資料を出していただきたい。早急にひとつ願いたい。いかがですか。
  160. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 主税局長、いまの資料は出せますか、早急に。できますか。
  161. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 従来の輸出所得控除と新しい制度——新しい制度と申しましても、海外市場開拓準備金と輸出特別償却、この二つで、技術輸出の関係あるいは新開発地域投資損失準備金のほうはちょっとわかりませんが、そういった資料は調べたのがございますので、ごらんに供したいと思います。  それから、いまの耐用年数の点でございますが、まああまり詳しい資料ではございませんけれども、天田委員の御要求の資料の一番最後に、おもな事業について耐用年数の短縮のおおよその数字が出ております。で、これをごらんいただきますと、このうち十三番目に、自動車製造設備というのが出ております。これは四輪車ばかりでなしに、二輪車——いまはやっておりまする、まあ外国に相当輸出されておりまする二輪車を含めまして、この耐用年数を十三年から十年に、まあ平均が、先ほど申し上げたと思いますが、耐用年数の短縮は一割五分でございますけれども、十三年のを十年に、二割二分以上軽減いたしておるのでございます。もちろん、この中小企業の場合におきましても、大企業の下請とかなんとかで機械を持っておらないと、それはもちろん償却の適用がございませんので、耐用年数の短縮の利益は受けませんけれども、しかし、先ほどお話もございましたように、現在の輸出品の下請をやっているのはほとんど中小企業でございます。したがって、そういった中小企業が、この自動車の製造設備の耐用年数の短縮によって大いに利益を受けるわけでございます。これは同時に、自動車の部分品の製造設備も入っておるわけであります。そういった点がまあこれからもうかがえるわけでございます。それから、綿紡績の設備、これも輸出に、まあ昔からでありますけれども、相当寄与しております。これも十七年というのを十四年にいたしております。ただ、年数が長い関係から割合はそれほどではございませんけれども、こういった点にも力を入れておるのでございます。これはまあ事業を大きく出しましたものですから、この事業の中で、さらにいま申し上げましたように、輸出に使われるものについて考慮している数字は、ここにはすぐにはあらわれておりませんけれども、そういった点は十分考慮したつもりでおるのであります。
  162. 野々山一三

    野々山一三君 種類別にはこの資料でけっこうなのですけれども、私の言うのは、事業規模別という角度から見てもらわないと、的確な中小企業の影響、効果というものは認められないので、そのことを申し上げておるのでございますから、その資料をいただきたい。  なぜそれを私が言うかということをちょっとだけ申しておきたいのでありますが、ある自動車メーカーから第一次の下請に来るときには、相当かたまったものを下請として出す。それで、その次に来ると、これだけのものになる。そのうちのごく一部です。さらに第三次の下請に来ると、さらにその中の一部。しかもここで議論になるのは、この品物、このキャップならキャップという品物は、こういうふうにくっつければ、一つにまあまとめれば自動車部品になる。けれども、これは、自動車部品ではないという議論がある。それは何にでも使えるかもしれぬから、こういう理屈がある。しかも、こういう第三次の下請をやっているそれらの諸君は、あなたのところからつくってもらったものが即輸出対象の品物に使われる自動車部品ではありませんと、こう言われる。いまはそういう議論が非常に深く起こってきておる。そういたしますと、二重三重にたたかれるという理屈になる。今度は、いままでの特別措置がだめになる。そうしてこの耐用年数の議論の段階に入ってきても、そういう議論が起こる。  でありますから、この規模別の影響、効果というものが、実は非常に第二次、第三次、第四次の下請業者にとってみれば、これはまるきり裸にされちゃう基礎をつくられてしまうのだという心配がある。そこで、日本じゅうに散らばっている輸出産業をとらえてみると、あなたがおっしゃっている二百三十五億に対する二百五十四億だ、これはわかるのです。しかし、一ところにばっとかためてしまえば、こんな数字の話は終わりなんです。したがって、できるだけ縦から横から、十分事実を調べてもらいたいというのが私の意見なんです。したがって、そういうものを証明する材料を出してもらうと、ほんとうの意味でいままでの控除と今度の新しい控除との関係において影響、効果というものがアンバランスになっているという私の主張がわかる。実は私はある程度材料を持ってきている。けれども、私の材料では、あなたと議論したってしようがないので、あなたのほうの見方というもの、ないしは説明する材料をひとつ示してもらいたい、こういうことを申し上げておきます。以上であります。
  163. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) いまの資料でございますが、私どもできるだけ調査した結果をお示ししたいと思いますけれども、輸出事業あるいはそれに関連した下請事業を営んでいる数は非常にたくさんございますので、その全部の調査というわけにはとうてい参りません。ごく一部の限られた資料でありますことは、御了解いただきたいと思います。
  164. 野々山一三

    野々山一三君 ある程度サンプル調査になることはやむを得ないけれども、できるだけ事実を正確に把握できる材料を出してもらいたい。
  165. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日はこの程度で終わります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十二分散会    ————・————