○
政府委員(泉
美之松君)
最初に、専従者
控除の問題について、いま
一つ申し上げておきたいと思う点がございます。これは、まあすでに御
承知のとおり、親族従業員、ことに
子供なんかに対する給与の支給制を認めるべきかどうかという問題が、もう
一つあるわけでございます。これにつきましては、
日本の現在のまだ社会の実態から申し上げますと、親子間などに給与の支給というものの事実はないのではないかというふうに
考えているのでございますが、しかし、一説によれば、税務のほうで給与の支給を認めないから払えないのであって、おまえのほうで認めれば払うのだというようなお話もあるのでございます。それはやはり社会の実態というものをよく
認識した上で、社会の実態が動いてまいりますれば、私どももそういった気持ちで今後検討いたしたいと思います。いずれにしても、社会の実態の
認識の問題でございますので、今後そういった点を千分気をつけてやってまいりたいと思っておりますことを御了承いただきたいのでございます。
それから、その次に輸出振興関係のことでございますが、お話のように、従来輸出
所得控除の
制度がございまして、これが
中小企業、直接
中小企業が輸出する場合はもちろんのこと、直接輸出しなくても、貿易商社を通じて輸出する場合の特典として、非常に大きな成果をもっておったことはお話のとおりでございます。しかし、御
承知のとおり、この輸出
所得控除の
制度は、ガット十六条の四項の輸出補助金と解される向きがございまして、公式ではございませんけれども、諸外国で非公式にいろいろと問題にされて、したがって、わが国は、従来輸出
所得控除の
制度がありますものですから、ガットのA宣言国にならずにB宣言国のまま今日に至っておったのであります。しかし、工業先進国としては、いつまでもB宣言国にいることは適当でないという外国の批判もございまして、今回適用期限到来と同時に、輸出
所得控除の
制度の廃止をいたしまして、A宣言国を受諾しようということになってまいったのでございます。
したがって、輸出
所得控除を廃止いたしましたその影響がどういうふうにあらわれるかということと、それから、ことばとしては、外国に対する関係もありまして、それにかわる措置ということは、なかなか言いにくいのでございますけれども、今回設けようとする、海外企業との国際競争力強化のための措置、これは御
承知のとおり四つございますが、この四つの措置と、従来の輸出
所得控除の
制度との関係いかんということになりますと、大ざっぱに申し上げますと、これは減収額からごらんいただけますように、輸出
所得の
控除の廃止による増収額は、平年度二百三十五億、それから今度の新しい措置によります平年度減収額は二百五十四億、したがって、今回の措置のほうが減収額としては大きいということになっております。
ただ、個々の企業について見ますと、その影響はいろいろ違っておりますこれを先般お話がございましたので、税務署について調べさしたのでございますが、一律な傾向は出ておりませんが、輸出
所得控除の
制度に比べまして九割になるという企業、あるいは一五三%、一一一%、一〇一%といったような企業がある半面、従来この輸出
所得控除の特典を非常に受けておったために、今度の措置によっては従来の軽減の三割七分にしかならないといったような企業もあるのでございます。影響は非常に差がございます。ただ、それでは、その差はどうして出てきているかという点について、いろいろまだ検討いたしているのでございますが、はっきりした
理由というのが見つかりません。ただ、この従来の輸出
所得控除の場合、非常な特例といたしまして、全般に対しまして、輸出金額がふえた場合に、
所得基準だけでやっていくという特例がございまして、その特例を受けておったものは——非常に例外な特例でございますが、その人は——その人といいますか、そういった法人はどうも従来特典を非常に受けておったものでございますので、今回の
制度による利益は比較的少ない。しかし、そういう特典を従来受けていなかった、従来普通の輸出
所得控除の適用を受けておった人は、概して今度の
制度によったほうが利益は大きい、こういうふうな
数字が出ております。
それから、いま申し上げましたのは、
租税特別措置法で新しく設けられました海外市場開拓準備金、輸出特別償却、それから技術輸出
所得控除及び、一般にはあまり関係はありませんけれども、新開発地域投資損失準備金、この四つの
制度でございますが、このほかにも、先般ちょっと申し上げたかと思うのでございますが、今回の耐用年数の改定にあたりましては、その製品が輸出に向けられているような機械につきましては、できるだけ耐用年数の短縮の割合を大きくするというような考慮も払っているのでございます。そういったように法人税、
租税特別措置法全体を通じまして輸出振興に力を入れたつもりでいるわけでございます。
ただ、個々の企業にとってみますと、その影響が従来のあれと違う面がございますために、そういった面からいろいろ従来より不利だというような声があることは
承知いたしております。ただ、従来より得になっている人は黙っているものですから、不利になる人のほうの声ばかりが強く出るという傾向があるんじゃないかというふうにも
感じておりますが、しかし、それらの点につきましては、なお今後十分検討していかなければならぬ点はあると存じております。