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野々山一三君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております
外国為替及び
外国貿易管理法及び外資法の一部
改正案に対しまして反対の
意見を申し述べたいと思います。
その第一点は、手続的なことでありますが、すでに本
会議並びにこの
委員会におきましても指摘をされましたように、かつての金解禁以来の
日本経済にとっては画期的なことであります。その画期的な、
あと戻りをすることの許されない
IMF八条
国移行という、そのことに対して
政府はすでに国会の審議に付する以前に、
IMFに対しまして四月一日から八条
国移行ということを通告して事を処してきたのであります。いま国をあげて最後の段階に来ておる
経済開放
体制というものに対して非常な大きな疑惑、心配、そうしてなさねばならぬ課題が論じられておるのであります。日を限って国会に問題を出し、しかも国際的に期日を限って通告して事を処するという、やり方は、きわめて問題が大きいだけに、たいへんな悪例を残すということを言わなければならぬのであります。これが、しかも、繰り返して申し上げますけれども、金解以来の画期的な
日本経済に
影響を与える問題であるだけに、かような取り扱いをすることに対して、まず根本的に
政府のその取り扱いを非難しなければならぬ、こう思うのであります。
その第二は、けさの
総理の発言によりまして明らかにされたように、
日本がOECD加盟、そうして八条
国移行ということは、今日的な世界
経済体制のもとにおいて戸籍を明らかにすることである、こういう
ことばを使われたのであります。私が論ずるまでもなく、このOECD加盟の
体制、その
経済連帯というものは、もとをただせばマーシャル・プランから出発したものであって、そうして事を一まとめにした表現をもってするならば、自由主義
経済陣営の中に
日本の
経済を加担せしめる、ないしはそれの中に突っ込む、こういうことであります。きわめて今日の激しい国際
経済社会の中において立ちおくれている
日本経済を、しかもつのグループの中にそれを加担せしめて、しかも
IMF八条国に
移行するということは、それ自体
日本の
経済のよりどころを、自由陣営の中に未成熟の
経済体制をそのままつぎ込んで加担をし旗あげをし、世界に宣言をするので、これは今後
予想されます日中問題やその他国際的な各般の
日本がなしていかなければならぬ課題に立ち向かうにあたって、国際
経済、政治、社会の中に非常な大きな課題を投げかけることになる。そのことに対して世界に宣言をするということになるので、まさにそういった事態にいま
日本経済があるのかという角度から見ますならば、なお時期早しと言わなければならぬと思うのであります。
その三は、
日本経済が激しい国際競争の中に埋没する危険性を持っているのではないかということを指摘しないわけにはいかぬのであります。その
一つは、
日本の著名な
経営者団体に属しておる
経営者群が口をそろえて、次の六点について指摘をしたのであります。その
一つは、
輸入フラッドによる
国内市場の撹乱、その二つは、
長期外資による産業支配、その三つは、前二つに述べたものと資本の流入による
国内産業秩序の撹乱、その四つは、短期外資の激しい移動による
国内金融市場の撹乱、その五つは、
国際収支の不安定性を増大する、その六つは、先進国という看板を掲げたものの、その課せられた国際的な負担が加重し、一そう
日本経済に重荷になる。この六点を
日本の
経営者団体に属しておる主要な
経営者が口をそろえて指摘をし、今日、
日本がいまにして
IMF八条国に
移行するにはなお時期早しと言ったのでありますが、私ども社会党も、本案の審議にあたって以上の観点から事こまかに
政府の所見をただしたのでありまするけれども、残念ながら確信のある答えを得たとは私ども受け取り得ないのであります。
以上の観点から見まして、
総理は、いま
日本はようやくにして
成人式に立ち至ったのであるから、幾多の困難なり難問題をかかえておるけれども、これから逃避することは
日本の将来にとって好ましことではないから、思い切ってここで八条
国移行をするのであるという趣旨の見解を明らかにしたのであります。しかし、
日本経済の個々の面を見てみないわけには参りません。そこで、
中小企業、
農業、あるいは先ほど議論をされた大
企業の集中合併というようなことや、金融機関の集中合併というようなことまで触れてながめて見てみましても、今日まで
中小企業基本法なり、あるいは
農業基本法なり、あるいは特振法なり、あるいは金属鉱山振興法なりというようなものによって、開放
体制に
移行することの
準備を整えてきたとは説明をするのでありますけれども、その結果が一体どういうことになっておるのかということを、つぶさに見てみないわけには参りません。私はここで、時間がありませんから、個々の問題についてはもう多くを申し上げませんけれども、
政府みずからが指摘をしておるように、立ちおくれた
農業、危殆に瀕しておる
中小企業というものに対しては画期的な処置を講じない限り、今日の
日本経済の体質を改善することはできないのだと自認をしておる。それはつまり、そのことをなさなければ
日本が今日国際
経済社会の中に伍して生き得る基盤をつくり得ないということに認定せざるを得ないわけであります。この点からも問題があるのであります。
その二に、
国際収支であります。貿易
輸出の面から見てみましても、伸びるは伸びると見ても、今日の傾向から見れば、明らかに
輸入は増大するという予測を立てなければならぬというのであります。その二つは
貿易外収支であります。これまた先般議論をされたように、問題の
貿易外収支だけをもってしても、いまここで造船に四年間に二千二百四十億もの投資をしなければならぬのに、財政規模は一年間にして約二百四十七億という、見る影もないほどの遅々たるものであります。それに対して、いま四月一日から八条国に
移行するというのにかかわらず、具体的な
準備はないのである。先般運輸省から船舶建造計画などを土台にする試案が出されましたけれども、運輸省当局の試案、通産あるいは
経済企画庁などの持っているものとの間には激しい懸隔がある。まさに不十分と言わなければならぬのでありまして、
総理みずからが自認したように、ここ四、五年の間に国際
貿易外収支が黒字になるなどということは
考えられないというのであります。矛盾した状態で、しかも
考えられない状態において
国際収支の面を見てみれば、まさに慢性的な
赤字が今後続くことを
予想しなければならぬ。この慢性的な
国際収支の
赤字は、ひいては
日本の
経済を危殆におとしいれる危険性がありますと断じてはばからないところであります。この点については、むしろ与党の津島
委員でさえも強く心配をされ、指摘されたところであります。まさに国民的心配である、こういうことは申し上げていいんではないかと思います。
その三つは、
IMF八条国に
移行することによって、ごく今日的に
考えられる財政金融上の
施策についてであります。つまるところ極度な
引き締め基調をとっていかなければなりません。とってまいりました。その結果、すでに多く議論をされました、指摘をされたように、かつて見ないような
企業の倒産、そうしてその結果の吸収合併というようなことが急速度に起こっておることや、二重構造の底辺にある
中小企業などを救うにふさわしいような財政金融処置はなされないまま、むしろ
引き締めの結果が極度にこれらの産業を危殆のどん底におとしいれているということが
予想され、事実として指摘されるのであります。しかも、将来どうなるであろうかといえば、むしろこの速度はもっと過重な負担として速度が速められ、しかもきびしさがあらわれてくることは、先ほどの銀行
局長の
答弁によって具体的に示されたところであります。私は、その結果が、
企業に、そうして雇用に、労働条件に響くほどの締めつけ、
引き締めをやらなければ、この
引き締めの本来的効果はあがらず、
国際収支を改善する
意味における
引き締め政策とはならないと言われた
答弁に対して非常に注目するのであります。これが、われわれがかつて審議の際に、
中小企業、
農業、雇用労働市場における
影響として極度な激しいものになってくると指摘したところ、そのことをまさに
政府みずからが裏書きしておる点で十分御了承がいただけるものと思うのであります。そういう
意味で、底辺にある
中小企業、
農業、なかんずく極度に国際水準から立ちおくれている労働市場を改善するという賃金、労働時間、労働
基本権に対して改善するということが、おくれている上におくれている、放置されている
日本経済の現状から見ますと、まずは、むしろそれだけをもってして論ずるわけではないのでありますけれども、
国内の
経済体制を、むしろ国際的に堂々と伍していけるような体質に改善するための諸
施策が先になさるべきことを一そう強調しなければならぬのであります。
そういう
意味で、今後心配されるILO条約などの問題についても、具体的に国際水準に合わせるための
政府の所見をただしたのでありますけれども、御案内のように、
日本が百十八の条約の中でわずかに二十、
昭和三十五年以来
一つの条約も批准されない。しかも、国際舞台ではどんどん条約ができていくばかりであります。しかも、底辺にある
農業、商店の労働者の労働条件改善の条約はどんどんとできつつある国際的傾向にかんがみまして、
日本のこの水準の立ちおくれというものは、将来伸ばさなければならぬ
輸出振興策に対しても、国際的に
経済ボイコットを受けるという危険さえある。
自由経済の労働団体は、
日本のこういった、チープ・レーバーに対して、
経済ボイコットの方針をきめているということをもってしても明らかであります。
また、
政府が勢い込んでおりますOECD加盟に対しても、その背景に、労働諮問
委員会に属している労働団体は、すべて
日本がILO条約の
基本的条約を批准していない状態においてこれを歓迎しないと言っている。そのことをもってしても、この矛盾は、
日本経済が、国際的に、形はOECD加盟、あるいは
IMF条
国移行という状態に当面は形どることはできたとしても、そのネックになっているものを何ら解消できない非常な困難に直面することを指摘しなければならぬと思います。
以上数点を指摘いたしましたが、そういったような観点から見まして、今日、
日本が
IMF八条国に
移行すること、それに伴う
関係諸法案を
改正することは反対であり、また、その
体制をつくることそれ自体も、まさに不
準備な状態においてつくることはきわめて危険がある、むしろ
国内的な
体制を整えるということに力点置いた諸
施策が講ぜらるべきであるということを指摘し、わが党を代表して、本法案に反対の
意見を表明する次第であります。(拍手)