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1964-03-13 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十三日(金曜日)    午後二時五十七分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            岡崎 真一君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            鳥畠徳次郎君            日高 広為君            木村禧八郎君            野々山一三君            鈴木 市藏君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    運輸省海運局次    長       澤  雄次君    運輸省港湾局長 比田  正君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労働基準    局賃金部長   辻  英雄君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    外務省条約局参    事官      須之部量三君    農林省農林経済    局参事官    森本  修君    食糧庁業務第二    部長      中島 清明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外国為替及び外国貿易管理法及び外  資に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、本案の質疑を続行いたします。質疑のある方は順次御発言を願います。  念のため申し上げますが、本日出席しております政府委員説明員の方々は、ただいまは外務省条約局参事官須之部君、大蔵省為替局長渡邊君、農林省経済局参事官森本君、食糧庁業務第二部長中島君、通商産業省通商局次長大慈弥君、運輸省港湾局長比田君、運輸省海運局次長澤君等であります。
  3. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最初に、農林関係でお尋ねしておきたいと思いますけれども、政府国際収支の特に輸入で大きく数量が一、二狂ってきたわけでありますが、その一つのものに砂糖の問題があるわけなんですが、私は農林委員会に所属しておらないので、あまり、甘味資源対策等の問題については勉強不足でございまして、本会議等で承っており、あるいは他の何かの資料等で拝見している程度ですが、農林省としては相当この問題については力を入れておられる。もっといえば、消費者の側からいえば、商い砂糖をなめさせられて、そうして、しかしそれは、長い目で見れば、国産である数量だけ確保していくのだ、だから消費者砂糖は高いけれどもしんぼうしておれ、甘い砂糖でないけれどもなめさせるぞ、そういうかっこうになっておった。それがどういう関係で、政府が予定をしておった数量を相当数上回る、あるいは額で上回ってきたか、数量のことは別として、額として上回ってきたということが起きてきたわけですが、どういうようにその情勢を把握しておられるか、それと、ついでに対策までお知らせ願いたい。
  4. 中島清明

    説明員中島清明君) 砂糖輸入の金額がふえました理由といたしましては、これは数量の問題と申しますよりも国際糖価高騰が非常に大きな原因でございます。実は国際的に砂糖需要相当急迫をいたしまして、特に昭和三十八年になりましてから、三十八年の一月には砂糖価格ポンド当たり五セントというような水準になりました。ここ三、四年は大体三セント、四セントというような水準で推移してまいったのでございますけれども、その五セントになりましたものがさらに騰貴をいたしまして、昨年の十月の終わりから十一月ごろにかけましては、ポンド当たり十二セントというような相当商い水準に相なったのでございます。  そこで、これは先ほど国際的に砂糖需給がタイトであると申し上げましたが、最近の国際砂糖理事会の発表によりましても、一九六四年の砂糖供給量は、これは輸出に向けられ得る供給量は千四百五十二万トン、それに対しまして輸入需要が千五百四十万トンでございます。差し引き約八十八万トンの不足というような予測を発表いたしております。  そこで、国内の実は砂糖価格につきましても、ただいま申し上げましたような輸入価格騰貴を反映いたしまして、相当価格が上がってまいりまして、一番最近におきまして、一番高い月で申し上げますと、昨年の十一月には、キロ当たり卸売り価格でございますが、百六十四円八十銭というような水準にまで上がったわけでございます。そこで当時政府といたしましても、糖価の安定という面に対しまして、何らか有効適切な手を打つべきであるというぐあいに考えまして、三十八年の十月の二十二日に、経済企画庁が中心になられまして、糖価安定対策というものを定めたのでございます。  そこで、その内容といたしましては、第一には、精製糖輸入につきまして、期間を限りまして三カ月の一応期間内に通関できるものについて、これをワクを、窓口をあけようということが第一点でございます。それから、第二点といたしましては、国内精糖業者なりあるいは卸売り業者に対しまして、溶糖の不当な規制でございますとか、あるいは販売量を押えるとか、そういういやしくも消費者の迷惑になるような行為はないようにという勧告をいたした点が第二点でございます。それから、第三点といたしまして、消費税引き下げにつきまして検討するということが第三点でございまして、この消費税につきましては、昨年の十二月の臨時国会で五円引き下げにつきまして法律の改正も御可決をいただきまして、去年の十二月二十日から従来のキログラム当たり二十一円の消費税が十六円に引き下げられております。  その後、砂糖価格につきましては、国際糖価もやや下向きでございまして、一時は十二セントというような水準でございましたが、最近はポンド当たり七セント程度に下がっております。そうして国内糖価のほうも、いろいろな消費税引き下げあるいは国際糖価がやや弱含みになった等の事情を反映いたしまして、最近ではキログラム当たり百三十七円程度に下がってまいりまして、やや安定した推移を示しております。なお、今後とも、国内砂糖価格動向等につきましては、これを十分注視いたしまして、今後とも異常な高騰等によって消費者の迷惑にならないように、そのときどきに応じまして措置をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  5. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 国際的に砂糖不足したというわけですが、そのよってくる原因、あるいはそういうようなことはいま少し早くわかるようなことはできませんでしょうか。ぐっと上がってから手をお打ちになるということでなくて。何か一歩態勢がおくれておる。しかも、これはFAでやっておるわけですね。ですから、そういうようなことについてもっと早く手が打てないものか……
  6. 中島清明

    説明員中島清明君) AAです。
  7. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 AAですか。
  8. 中島清明

    説明員中島清明君) 実は去年の秋以降、特にこの一月ごろからやや砂糖価格は上がったのでありますが、去年の秋以降に特に非常な勢いで暴騰いたしましたのは、キューバで実はハリケーンがございまして、そのためにキューバ糖が約百万トン以上の減産というような情勢がわかりました。そのために特に砂糖価格が上がったわけでございます。  なお、輸入の制度につきましては、八月三十一日からこれは自由化されまして、それまでは割り当て制でございましたが、それ以後は自由に入っておるということでございます。  なお、そのほかにいわれておりますのは、キューバの不作もございますが、最近では後進国等における生活水準向上等のために砂糖需要が伸びておるというようなことも原因であるように聞いております。
  9. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 砂糖の問題については、私はこれで……。
  10. 天田勝正

    天田勝正君 ちょっと、農林省経済局の参事官来ておりますか……。同じ問題について、農林関係の立場からお伺いいたしたいと存じます。それは政府はかねがね農畜産物についての自由化国際競争力がついたものからやると、大体はそういう方向で来た。ところが、いまの砂糖自由化につきましては、別段国内対策はとられないで、甘味資源二法もまだ通らない。本来は砂糖対策ができ、かつはそれが実効をあげた、こういう時点において自由化するならば、これはわが国の産業に重大な影響を与えない、こうなると思います。ところが、砂糖自由化については、さきに申し上げましたように、対策も樹立されておらなければ実効はもちろんあがっておらないという時点自由化した。それでも大混乱が起こらなかったというのは、かかって国際糖価が高かった、こういうささえなんですね。決して農林省施策よろしきを得た結果からじゃない。そこで、私はこの点は先般予算委員会においても質問したのでありますが、どうもわけのわからない答えが出されただけなんです。そこで、今後やはり従来農林省の言ってきた国際競争力をつけてからというこの線を堅持しながら、その観点農林物資についても自由化スケジュール、こういうものをきめなきゃならぬと思う。そういう観点スケジュールが明らかにあるならば、示していただきたい。
  11. 森本修

    説明員森本修君) 前段の砂糖自由化に関する御質問でございますが、従来から自由化をいたします方針として抽象的に言ってまいりましたのは、国際競争力があると思われるような品物、あるいは何らかの措置を講じれば国内産業に悪影響が及ばないといったような見込みのつくものというものについて逐次自由化を進めていくと、こういう言い方をしてきておったわけでございます。砂糖のことにつきましては、先ほど来、あるいはすでに説明があったかと思いますが、所要の対策を講じればほぼ見込みのつく段階ということで自由化をやったということであります。  これからのことにつきましては、この前の委員会でも大臣から御説明を申し上げましたが、具体的なスケジュールはまだできていない段階でございます。
  12. 天田勝正

    天田勝正君 どうも私の指摘した点も、あなたが前提として答えられた点も、その点は一致しているんです。問題は、将来の戒めのために私は言っているんです。それは、砂糖自由化の場合にやや対策見込みがついたとおっしゃるけれども、それは昨年の七月であります。昨年の七月、甘味資源も何も通っていない。いま現在でも通っていない。やや見込みどころか、さっぱりお先まっ暗だった。それをおやりになったんだ。それをおやりになって、そうして当然に混乱が起こるべきものが起こらなかった。というのは、キューバのほうであらしが吹いたということなんだ。まるきり風が吹いたらおけ屋がもうかる式のとんでもない予測せざる事態があったから、そこでいいあんばいに農林省に非難が集中しなかったというだけなんです。施策はゼロですよ、だれが考えたって、時点的に考えたって。これは、野党だから私が言うんじゃない。農林関係委員だったら、与党であろうと何であろうと、どうしたってこういう結論になるんですよ。もしあの事態に、キューバのほうでハリケーンでえらく減産し、そのために糖価がつり上がった、そういう事態がないとすれば、いまも通産省のほうから言われたように、十二セントくらいに上がったことはあります。大体ここしばらくは三セント、せいぜい四セントだった、これもそのとおり。もしそういう事態が続いたら、日本甘味資源というものは壊滅ですよ。その見通しがまるでつかないときにおやりになった。やってしまったのですから、この点幾ら繰り返えしてもしようがない。  しかし、そのことはやはり遺憾であったということでなければおかしいと思う、だれが考えても。遺憾であるから、今後、まだきまっていないならきまっていないで、さようなことのないように競争力がつくように対策を立て、かつその実効があがったときに、だんだんいたしていきます、こういう答えでなければならぬと思うのですが、どうですか。食糧庁企画課長も来ておりますが、私はどなたでもいいのですよ、扱っているほうの人ならば。いかがですか。一貫しないのだよ、いままで言ってきたことが。
  13. 森本修

    説明員森本修君) 砂糖のことにつきましては、先ほどお答えを申し上げましたようなことで、当時の事情等いろいろございましたが、ほぼ対策を講ずるという政府として段階でございましたので、先ほどお答えしたようなことをいたしたわけであります。
  14. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) もっと大きな声で願います。
  15. 森本修

    説明員森本修君) 将来のことにつきましては、御注意もございましたように、農林水産業に及ぼす影響、その他種々の点を考慮いたしまして、慎重に実施していくというふうに考えております。
  16. 天田勝正

    天田勝正君 どうも、私が立つというと、変なことになってしまうのですが、大体遺憾なことは遺憾だったと言えばいいじゃないかと思う。私自身も、過去に戻ってえらく追及するということよりは、こういう悪い例があるから、将来を戒めていきたい。そうでなければ、必ずどの部門かで日本経済混乱するわけですよ。そういう面から言っているわけです。これは党派の別はどうであろうと、いま私が指摘したように、対策がややつく見通しなんか、見通しは七月の時点ではなかった。あるならば、どういう見通しをつけどういう対策を立てたのか知りたい。ありっこありません。甘味資源二法だって通過していない。ましてや、その実効があがっているということは何人も言えない。見込みがないのですよ。だから、そのことはやはり遺憾であった、将来はそれを戒めとしてさようなことをしないようにする、こうなければならぬと思うのですが、他の委員諸君に、私だけ質問をしていると迷惑になりますから、繰り返したくないのですよ。だけれども、けじめはやはりはっきりしてもらいたいと思う。どうですか。人をかえて聞きますか、甘味資源対策を立てておられる業務第二部長はいかがお考えですか。
  17. 中島清明

    説明員中島清明君) 砂糖自由化につきましては、ちょうど当時国際的に非常に砂糖価格が、昨年八月ごろには非常に高い水準にございました。そうして高い水準というものが当分続くであろうというような情勢があったという事情一つございます。したがいまして、こういう見通しの上に立ちますならば、直ちに砂糖自由化が重大な影響を及ぼすおそれは少ないのではないかというような事情一つございましたのと、当時開放経済体制へ移行するという要請が非常に強くございまして、どうも法案の通るのはあと先になるというような事情はございましたけれども、法案につきましてもなるべくすみやかに国会でこれを御可決いただきますという期待もいたしまして、そうして自由化に踏み切りました際に、政府といたしましても、自由化する場合にあわせてとるべき措置といたしまして、甘味資源法案をすみやかに国会提出をいたしまして、してに成立をはかる、あるいは法律がございませんでも、甘味資源作物のいわゆる原料の価格等につきましては適切な指導をいたすとか、なお消費者物価対策を考慮して砂糖消費税引き下げ考えるというような、あわせてとるべき措置というようなものも、その際に閣議で御了解を願いました。その後、昨年の臨時国会あるいは特別国会におきましても、甘味資源法提出をいたしまして、なるべく早く御可決願うように努力してまいったわけでございますし、なお三十八年産の北海道のてん菜の取引価格等につきましても、法律はございませんでしたけれども、行政上いろいろ指導いたしまして、生産者保護に遺憾のないように努力をしてまいったところでございます。
  18. 天田勝正

    天田勝正君 まあ開放体制下における農畜産物の問題は、また次の機会質問いたしたいと存じます。いずれにしても、委員会の約束である労働大臣が見えましたので、通告者にこの際譲りたいと思います。
  19. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、労働大臣が出席されましたので、きのうに引き続いて労働大臣に対する質疑を行ないたいと思います。野々山君。
  20. 野々山一三

    野々山一三君 きのうはどうもお互いに多少誤解もあったようですけれども、事を整理するために、あらためてきのうの問題に対しての政府の見解を聞きたいので、私が申し上げています焦点をひとつ正確に聞いておいてもらいたい。  OECDの三十五の各委員会及びそのほかに民間団体としてのTUACBIACというものがあって、いま問題にするのは、そのうちのTUAC、つまり労働組合諮問委員会OECD関係、それからOECD条約規約施行上持たれている秩序といいますか、そういうものからいたしまして、必然的な結果としてOECD加盟各国労働団体はその諮問委員会に参加する結果になってくるのではないか。そういう性格を多分に持っておる。それが一つ。  第二に、この労働組合諮問委員会に選ばれる代表については、事務総長が主宰をした連絡委員会、これは閣僚理事会で四名の委員が選ばれるというようになっておるようでありますが、それと、そのほか一人の事務総長の五名で構成する連絡委員会と、TUACの二十名のメンバーとの間に連絡会議を持って、結果的にリストがきめられている連絡会議を持って、その連絡会議を通して諮問され、活動が始まり、その活動は、OECD目的である経済成長貿易拡大と低開発諸国開発援助、この三つの目的を達成するということに協力させるという関係になっておる。そこからいたしまして、日本OECD加盟することによって、日本加盟国としての責任において、日本政府が、そのTUAC日本労働団体がつながりを持つこと、そして必然的な性格を持っておる、それに対して何らかの労働政策という政策意図が生まれはしないか。それについて一体労働大臣はどう考えるのかということを聞いたのであります。  で、あなたの最初お答えは、日本がさらに伸びて、低開発国を十分に援助していけるような国柄になるためには、OECD参加をし、同時にまた、その目的を達成するための諸活動協力をして、そうしてその一分野である労働団体にもその目的達成のための協力を求めたい、こういうふうにあなたは答えられた。それをさらに、いま二つの焦点を申し上げましたので、そこから出発をして、それをどういうふうに具体化せられる準備構想、そういうものがおありなのかということを聞きたいのであります。  それで、そのことが私の質問焦点でないので、ちょっと補足をしておきたいのでありますが、私はその後、自由化体制と、つまりIMF八条国移行という問題と、OECD加盟ということ、つまりもっと深くいうならば、一九四八年のマーシャルプラン出発をしたOECDであるということに事を寄せて考えてみると、必然的な結果として、労働政策及び賃金政策貿易政策に及んでくるはずである、こういうふうに見ております。そこで、その前提となる、いま申し上げた点について質問をしておるのでありますから、ぜひその点をけじめをつけてお答えをいただきたい。
  21. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昨日は、準備不足のために十分なる答弁ができず、まことに申しわけない次第でございました。ただいまの御質問お答えいたすわけでございますが、TUACOECD関係について、まず申し上げます。  御承知のごとく、TUACBIACと相並びまして、OECD一つの外郭的な機構になっておるようでございます。というのは、本来OECDの組織の中にそれが最初から含まれていたものではなく、OECD成立に伴いまして、利害関係を有する使用者団体、また労働団体が、OECDに対して自分たち意見聴取機会を持ってもらいたい、また自分たちから自発的に意見を申し述べる機会をつくるようにしてもらいたいという希望がございまして、OECDにおきましても、それがために利害関係人が、使用者使用者労働団体労働団体として、何らかの機構をつくってもらいたい、そうしてそこでまとめられた意見自分たちとしては積極的にあるいは受け身の形で聞いていきたいということになりまして、労働団体に対しては、現実に成立しておる労働団体を対象にいたしまして、それを労働諮問委員会という形で意見を聴取することになり、また使用者に対しましては、商工業諮問委員会という形で意見を聴取することに相なった。これがBIAC及びTUACというものだそうでございます。  で、日本OECD加盟いたしまするというと、日本労働団体といたしましてもTUAC加盟することができるのでございまして、これはしかし日本労働組合加盟させるという義務が政府にあるわけではございません。これは日本労働団体の自由であることは、昨日申し上げたとおりでございます。  そこで、日本労働団体加盟するについて、TUAC代表として参加するためには、OECDにおいて何か資格制限、すなわちリストができているのではないかという御質問でございましたが、特にOECDがこのTUAC代表となる団体制限する、あるいは指定するという行為はないようでございます。ただ、TUAC自体が、OECDの発生がマーシャルプランを契機といたしておりましたる関係上、マーシャルプランに賛成しておりました国際的労働団体、すなわち国際自由労連あるいは国際キリスト教労連、こういうものがTUACの重要なメンバーになっておりまする関係上、その方面からこのTUAC目的に照らしていろいろ加盟についての話し合いがなされる。その場合に、いろいろ制限TUACとしてできてくるということはあるようでございます。しかし、これはOECD制限をしたということではなく、TUAC自体の行動としてそういう制限が出てきておるように聞いておるのでございます。したがって、現在加盟各国の中でもこのTUAC代表を出していない国もあるように承っております。  日本OECD加盟国となり、日本労働団体TUAC関係するということについて、将来いろいろな労働政策の上に日本政府としての政治的な意図が生じてくるのではないかという点でございまするが、これにつきましては、昨日も申し上げましたるごとく、今後日本OECD加盟国一つとして、その使命を達成いたすという方向日本労働組合TUACを通じてOECD目的協力していただくことを念願する以外には、特定政治目的というものはそのほかには日本政府は持っておるわけではありません。  以上一応お答えを申し上げまして、なお御質問に対してお答えいたすようにいたしたいと思います。
  22. 野々山一三

    野々山一三君 いまのお答えでさらにわかりにくいところがありますから、私の見方をまじえてただしたいと思います。  一つは、日本OECD加盟することによって、日本TUAC加盟団体になり得ることができる。しかし、それは自由だ。したがって、政府として特定意図をもってこれに処するつもりはないが、TUACを通してOECD目的達成のために協力をしてもらいたい、こういうことです。そこでTUACを通してというところが実は。ポイントとなるのです。かってだと言い、TUACに入ることを何でもないと言う。それがTUACを通してということは、何をとらえて通すことができるとお考えになるか。そこに必然的に政策的意図が出てくるということを、これは私の少し推測かもしれませんが、考えるのは当然のことだと。必ずそういう意図がそこから生まれてくる、こういうのは間違いがないように思う。これは一つの私の意見になりますが、お答えいただきたい。  それから、資格制限というものをした覚えがない、するはずはない、またそういうものはないのだというのでありますが、実行行動というもの、事実行為というものをひとつあなたに申し上げて、あなたの見解を伺いたい。それは去年の四月最終的にリストがきまったのでありますけれども、OECD閣僚理事会において選任をされた人をもってそのリストをきめるという決議が行なわれた。しかも、その前提として言われたことは、そのOECD理事会と、あなたが別にかってにできておったといわれますTUACとの間に交渉が行なわれたのだけれどもというのでありますが、実はその前に相当どの者を入れるかということで難航したのであります。なぜ難航したか。OECD考え方としては——考え方とあえて申し上げるのでありますが、考え方としては、あなた自身もお認めになりましたように、OECD加盟国のすべての労働団体はこのTUACに入り、それを通してOECDにその意見を述べ、またOECDの政策に諮問を受けるという地位を与える考え方になったのだけれども、全部にそれを認めるということにはなり切れなかったので、その交渉が難航した。しかも、閣僚理事会という機関がありますが、その機関が、そこでやむを得ず四名の委員をきめて、事務総長が主宰をしてジョイント・コミッティーというものをつくって、TUACとの間にリストをきめるということになった。そういう事実関係がありますから、規約上とか条約の上でとかいうものによって規制があるとは私も強弁するつもりはない。しかし、事実上OECDの閣僚理解会、非常な比重の高い閣僚理事会において委員メンバーがきめられて、リストがつくりあげられる作業が進められたということは、OECDが今日的な国際社会における高級クラブだと、あえてあなた方は説明されるのでありますが、高級クラブであるだけに、そういうことを一々こまかく規約できめないで、政治的意図を持ってそれを分断をしてリストをつくったというふうに考えるのは、私はあえて邪推ではない。そこで事実上その制限が加えられることになっていることだと、私は見るのです。というようなことになると、勢い次の問題に発展をするのであります。  あなたは、TUACの中に入っていない労働団体の国もあると言われるけれども、確かに私もあるときのう申し上げました。ポルトガルやスペインは、自由な国の労働団体ではない、自由な労働組合じゃないので、これは問題にしないのだというので、初めからリストから除外されておる、それが一つ。ユーゴスラビアというようなところあたりは、これはあなたのことばをもってすれば、当初からマーシャルプラン協力はしなかったのだからというゆえでありましょう、これは正規の構成メンバーとしてのリストにあげられていない。これまたやはり一定の国際的意図、国際政治に対する一つ意図、あるいは国際経済に対する意図を持って事をなしておるということが明確に考えられる。それが第二の私の言い分であります。制限を、加盟に対して制肘を加えるという結果をもたらしている、こう考える。  そういう事実からして、これはまあ規約じゃないと私も最初から申し上げておるのでありますけれども、規約じゃない規約、つまりOECDは、加盟国に対して勧告し意見を述べる、これをより高めていくことによってOECD目的を達成するというものであると、こう主張する限り、その目的作業というものは非常に鋭角的に進められていくというふうに考えたい。考えない限り高級クラブとしての性格はまさに何にもなくなって、お茶のみクラブになる。そんなものでは日本がえらく鐘と太鼓をたたいてOECD加盟するということも、実は目的がなくなってしまう関係にあるというふうに私は見るのであります。申し上げた二つの事実というものから見まして、あなたのもう一回の御答弁を願いたい。
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまの御質問に対するお答えは、特に新しい点を申し上げることもないのでございますが、ちょうど事務当局もきょう来ておりますので、まずOECDTUAC機構等から、さらに詳しく御説明をさしていただきたいと思います。
  24. 野々山一三

    野々山一三君 機構なんか、機構図を持ってきて説明してもらわなくても、私もわかっている。つまりOECDという、これはまあ少し話がそれるので、あまり議論したくないのでありますけれども、OECDの運営そのものが、規約や規則やなんかでやかましくがんじがらめにして、事をしているクラブじゃないのであります。それだけに、政策意図というものが非常に問題になるのでありますから、そんな事務当局に、何も機構説明してもらわぬでも私はわかっている。私の見方に対してあなたはどう考えるかということをお答えしてもらえばいいわけです。
  25. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私どもは、日本OECD加盟し、また日本労働団体TUACに参加するということは、そのことが結局OECD目的及び意図に対する日本協力である、それ以外には格別の政策的な意図はないと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  26. 野々山一三

    野々山一三君 それはあまり子供だましで、日本のうちの中のことだけ言えば、それで事が済むというのですけれども、もっと日本は重要な発言国としてこれに参加することになります。外国は外国の話、うちはうちの話というふうに、あなたは子供だましみたいにお考えになるようなあなたじゃないはずです。そんなちっぽけな労働政策をお持ちでは絶対にないと思う。もっと高い角度から、大所や高所からあなたは労働政策というものをお考えになっている。何もOECD加盟がそれだけの問題じゃないから、私もそれだけをとやかく言うつもりはないのですけれども、私のようなことが起こると思うのですよ。  すでに日本国内において二つのできごとが始まっておる、労働団体に対して。これは御承知のように、ICFTUを通して日本労働団体に対してTUAC加盟することが望ましいという働きかけが起こっておる。そうなりますと、これは非常に飛躍した話に聞こえるかもしれませんが、勢い日本国内労働戦線に、AしからずんばBと、こういう道をたどらせるような労働者間の紛争が起こる、あるいは戦線に対立が起こる現象をもたらすことになると、こう考えるのは当然のことであります。それだけを議論すると労働問題になるから、私はつけ加えるのでありますが、その結果として、勢い国内の低賃金、長時間労働という問題、あるいは今日めぐっておる最賃に対する労働者の中における議論というものもまた、その中から必然的な結果として一つのポリシイが生まれてきて、それが対立的関係を生み出し、国内における低賃金体制というものを取り除く役目に実はマイナスの働きが起こっておると私は見るのであります。そういうように因果関係は、すぐ国内産業構造における、労働戦線における問題に結びついてくる関係を、OECD加盟ということは即それによって促進をされる要件を持っておる、これが一つ。  第二は、労働団体の中に、OECD加盟をめぐるTUACに対する体制を検討しなければならぬという動きが出てきて、これが即鈴木君が言っていた、この間から問題にしかけておるのですが、ICFTUとかWFTUという組合との関係を一そうこれは刺激して、ひいてはILOの舞台においては、あるいはILO条約批准という問題についてまでこの政策意図が移りつつある、反映しつつあるというふうに感じられてならないのです。  あなたは、いや、それは外国のことだから、外国は外国、うちのことはかってにうちのことといって、労働団体にかってにやらせるというふうに、ただ組織的関係だけを形式的にお考えのようです、いまのお話によると。けれども、いま申し上げた二つの事実をもってしても、必然的な結果としてそういう影響が出てきておるのでありますから、ということが一つ、同時にまた、そういう関係にあるのだということをあなたのほうもちゃんと計算に入れて労働政策というものがおありじゃないかという、非常にあなたのお答えしやすいように質問をしておるのでありますが、おありのはずであります。そのおありになるはずの考え方というものをひとつ知らしてもらいたい。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問の御趣旨もよくわかりました。このOECD加盟に伴って、特にTUACというものの過去において各加盟国労働団体加盟についてとってきた態度等に照らして、今後の日本労働政策の発展についていかなる影響を予想しておるか、またいかなる影響をねらっておるかという御質問であるかと存じます。  私どもは、OECDへの加盟、したがってまたTUACへの日本労働団体の参加ということによりまして、日本の労働条件というものも漸次西欧的な水準に近づいていくべき方向をたどるであろうし、またそうした方向にすみやかに進んでいくであろうということを意図いたしておるわけでございます。したがって、賃金の問題、労働時間の問題、あるいは雇用対策の問題、労働保険の問題、こういったものにつきましても、やはり各加盟国水準に向かって努力することになりますし、また努力することを当然国際的にも要請されるだろう、それが日本の労働行政の進歩発展に貢献してくれるものと期待をいたしておるわけでございます。
  28. 野々山一三

    野々山一三君 じゃ、この問題についての権威をつけるために、ひとつこの問題については最後に質問いたしますけれども、私が指摘をいたしましたように、事実行為としてTUACリスト閣僚理事会の決定において生まれたジョイント・コミティーのメンバーを通して加入を制限したようなことが行なわれたんです。今後日本加盟して、閣僚理事会などいろんな主要な機関を通してそういう問題が起こった場合、日本政府としては一切そのことに対して直接、TUAC加盟せいとか、させるとかいうような意思表示はしないで、全く日本としては自由な立場においてそれを処置するというふうに、今日、将来を通してあなたはお約束をここでされるということになるならば、この問題はここで一つの区切りをつけてもいい。  それから、第二の問題は、国内で申し上げたように、ICFTUの東京事務所を通して、あるいは労働四団体間でも加入のための作業が進められており、またこれはきのうの話ではBIACのほうでは相当なてこ入れが行なわれていると私は見ている。労働団体に対してはてこ入れを一切しない、全く自由な立場において労働省は労働者の意思で事を始末する、まして、それが日本の労働戦線に、あるいは結果として最賃だとか、そういったような問題にまで及んで困難が起こることは、一切国としてはそういうことをするつもりはない、こういうお約束をなさいますか。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本国内労働団体TUACへの代表参加の問題につきましては、政府といたしましては、この問題に政府が積極的に介入いたす考えは全然ございません。もちろん政府等が情報の収集その他に特別の便宜上の地位にございまするから、労働団体TUAC等について特に情報を求めるというような場合においては、手元にあります限り便宜上これを提示することは当然のサービスとして考えられますが、それ以上政府の意思によって労働団体の参加、不参加を左右するというような行動に出る考えは全然ございません。
  30. 野々山一三

    野々山一三君 前段のほう少しぼけているんで、私は確認の意味で申し上げておきますが、今後加盟したとして、閣僚理事会などを通し、ジョイント・コミティーを通して加入メンバーに対して規制が行なわれ、いまが第一次ですが、次は第二次の段階として日本もおそらく問題になると思うんですが、日本も入れるようにしなさいと。やれ理事会で日本を入れるようなことをきめて、ジョイント・コミティーを通してTUACに申し入れをしようとか、そういうような意見が出ても、それは全部断わると、こういうふうな立場で参加後も処置をする、こういうふうに先ほどの答えを理解してよろしゅうございますね。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働省といたしましては、国内の各労働団体に対しましては全く中立的な立場にあるわけでございまして、したがって、先ほども申し上げましたごとく、TUACへの参加、不参加について政府が積極的に関与する考えはございません。ただ、OECD等におきまして、将来この問題について日本政府に対して何らかの依頼がありました場合におきましても、あくまでその立場を堅持いたしてまいるつもりでございます。
  32. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、その問題はこれで終わります。  第二の問題は、国内における長時間労働、低賃金、あるいは労働基本権などが、国際的水準から見るならば相当以上におくれておる、こういうことが、大蔵大臣のことばをもってするならば、IMF八条国に移行すること、それはようやく日本は成人式を終えるようなものだということばで表現をされた。ようやくそこまで来たんだが、なおなお問題がたくさんあるというふうな意味を成人式が来たようなものだと、こう言われたと思うのであります。そこで、私はその低賃金ないしは非常な低い水準に置かれておる労働基本権というようなものが、八条国移行開放経済体制というものに立ち向かっていくにあたって、一つ国際競争力において弱い部面だと、こう見ざるを得ないのでありますが、その意味で次の問題についてどう見ておられるかということをお伺いをいたしたいのであります。  それは、一つは、去年の七月三十九日に、国際自由労連、ICFTUのベクー書記長が、日本のILO条約八十七号問題に関連をして声明発表した中に、OECDへの日本加盟について基本的な国際労働法規を無視することは許されない旨を述べておる。さらに、この問題に関連する国際舞台での議論のもう一つは、報告者の名前はちょっと忘れましたけれども、同じように報告として、「自由な団体交渉の結果でない賃金についても、その公正さを問題とすることも、自由な労働組合運動の義務の中に十分含まれておるように思う。このことはつまり結社の自由がなく団体交渉権のない国々の低賃金は疑わしいものであり、労働組合運動は貿易を取り扱う国際的諸機関に対し公正な労働基準のためのいい行動法典をつくり、その中によい行動の前提条件として結社の自由、団体交渉の自由、最低賃金というものが保障されていない状態においてOECD日本加盟するということは許さるべきものでない」という強い報告書を、先ほど指摘をした十五名のリストの中に加わっておる人間の公式な報告書として出されておるのであります。おそらく御承知だろうと思うのです。そういうことは即諮問委員会を通して非常な大きな抵抗、日本加盟に対して障壁的抵抗になってあらわれてくるだろう。この障壁を取り除くということは、国内的にいうならば、ようやく——まあ田中さんの言われるような成人に達したかどうか、私はまだ思いませんけれども、ようやく世界のおとなの国々に処して日本が成人に達した状態でIMF八条国に移行し、自由化体制というものをとって、OECDの一員として入るということに対しては、日本はそういうものを取り除いていらっしゃい、障壁を取り除いていらっしゃい。その中で問題としておるのは、国際労働条約でいうならば、八十七号、九十八号、そうしてその結果である百五号、あるいは二十六号、せめてこれくらいのものは取り除いて出ていらっしゃい、こういうふうに言っているものと読み取る。理解するのです。重要な日本OECD加盟に対して、障壁として思われるような国際機関の発言というものは、おそらくこれだけだ。幸か不幸か、あなたが労働大臣をやっておられて、一番やり玉にあげられておる障壁があなたの所管に関するもので、あなたはこの障壁を取り除くためにどういう具体的な対策をお持ちなのか、どういう処置をするつもりなのかということをお伺いをいたしたいのであります。それが一つであります。  さらに、ILO条約の問題で、ついでに指摘をしておきたいのでありますが、百十九のILO条約がいまある。その中で日本はわずかに二十四の条約をしか批准していないのですね。その中で一番根本的なものは、たくさんあるけれども、私は条約の第一号、つまり、工業的企業における労働時間を一日八時間かつ一週四十八時間に制限するという条約、二十六号の先ほど申し上げた最賃条約、四十七号の週四十時間に関する条約、五十二号の休暇に関する条約、もっというならば、農業における有給休暇に関する条約、百一号あるいは百二号の社会保障に関する条約あるいは商業及び事務所における週休に関する条約、あげてみれば、日本の国際経済社会における一番ダンピングとして指摘をされる重要なポイントをなす労働条約は、一切と言っていいくらい、実は批准されていないというふうに言わざるを得ないので、そういう状態において、一体OECD加入、そうして自由化体制として指摘をされる障壁を取り除くというものに対して、あなたは一体どういうふうに考えられるか。いま指摘をした条約そのものについても、あなたの考え方を聞きたいのであります。  私が第二の、労働条約の取り扱いについてお聞きをする意味を補足しておきたい。自由化によって農業生産物というものは非常な危殆におとしいれられるという問題があることは、あなたも御承知のとおりであります。バターにしてしかり、あるいはトマト関係、乳製品なんかにしてしかりであります。あるいはサービスにおける賃金の値上がりが、即コストの引き上げになるといってあなた方は騒がれるのでありますけれども、あなたもきっと御承知でありましょう、諸外国へ行ってみて、日曜日に商店があいている店が何軒ありますか。食いものを売っている店以外にはほとんど、食いものと飲みものを扱っている店以外にはほとんど店はあいていない。これはすべて労働条約を批准した条件のもとにおいて、なお国際競争にたえ得る経済基盤を持っておる。いま日本はそれがない。ない状態において、なおかつ、向こうから流れてくれば、すぐそれが日本経済に非常に影響をもたらすから、完全な自由化というものができない、その弱い体質改善ということにかんがみてみれば、一番柱になるその府庁、農業の労働者の労働条件、生活の保障、労働者の最低賃金というものについて手を触れないで、事を始末していくということになれば、勢い自由化の体制の中において、開放経済体制の中において、日本の底辺にある農業、商店、中小企業の企業者と労働者は、そのしわをまるっきりかぶることになる。そういう観点から、あなたの所管に関する国際労働条約のいま指摘をしたような問題について、一つ一つあなたはどういうふうにこれを取り除いていくかということについてのあなたの考え方を聞きたい。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ILO条約につきましては、百件以上ある中で、日本の批准いたしておりますのは二十四件でございます。まだまだ批准していないのがたくさんにあるわけでございます。中には、日本の特殊事情に、日本の国情に照らしまして、直ちに批准することがいかがかと思われるようなものもあるわけでございますが、ただいま御指摘になりましたような条約は、いずれもできるだけすみやかに批准をすることができれば、これに越したことはないと考えるものでございます。ただいま労働省といたしましては、できるだけ批准すべきものは着々批准していこう、こういう考えに立っておるのでございます。基本的には、開放経済へ入るに際しまして、できるだけ国内の労働条件を国際水準に近づける、そうしてそれによってできるだけ基本的な条約は批准するという態度をとっておるわけでございます。  そこで、まず八十七号条約でございますが、これは労働基本権の問題でございまするので、最も取り急ぎ批准を要するものでございます。すでに数年前から国会に提案いたしておりますが、この国会においてはぜひとも成立せしめたいと思っておる次第でございます。  それから、労働省といたしまして、さしあたって具体的に準備に着手いたしておりますのは、一号条約及び二十六号条約でございます。御承知のとおり、一号条約はすでに半世紀になんなんとする古い条約であるにもかかわりませず、まだ批准の運びに至っておりません。まあヨーロッパの各国の中でも、例外規定に多少の国内法とのそごがあります関係上、批准していない国もあるようでございますが、しかし、日本の現在の労働基準法の時間制限は、あまりにも野方図でございまして、これは少なくとも西欧並みに近づけていく必要がある。もとより御指摘になりました四十時間に関する条約等の問題もございますが、日本の現状といたしましては、四十八時間の一号条約の批准も済まないのに、四十時間制を云々するというのは、これは前後の順序をわきまえざる議論ではなかろうか。まず、われわれとしては一号条約の批准に進むべきだ、こういう考えのもとに、所定外の労働時間の例外規定の制限につきまして、真剣に討議を進めておるわけでございます。ちょうど本日基準審議会が開かれておりまするので、労働省といたしましては、この問題につきまして審議会が議題として正式に取り上げ、これについて審議会の意見を答申してくださるようお願いをいたしておるわけでございます。労働省といたしましては、これに基づきまして一号条約の批准に向かって具体的なスタートをいたす考えでございます。  次に、二十六号条約でございまするが、二十六号条約につきましては、現在の最低賃金法を制定いたしまする当時は、政府説明といたしまして、二十六号条約を批准いたしまするために現行の最低賃金法を制定するのだ、こういう説明でございました。しかし、最低賃金法が制定されたにもかかわらず、二十六号条約はまだ批准してございません。いろいろ調べてみますと、どうも現在の最低賃金法では二十六号条約の規定する要件を充足しない疑いがある。したがって、直ちに批准は困難であるというような状況なのでございます。どういう点が批准について問題になる事柄であるかという点を考えてみまするというと、結局、現行の制度における業者間協定というものが、労使対等の立場における話し合いを基礎とした二十六号条約の最低賃金の手続上の要件を満たしておらない、この点が疑問がございますわけでございます。したがって、最低賃金法につきましては、この業者間協定の制度というものについて再検討を加える必要があるのでございます。もちろん、現行制度においては、この業者間協定方式のほかに行政官庁の職権によって最低賃金を定める方式もきめてあります。しかし、立法の当時の了解によりまして、職権方式はみだりに用いない、原則として業者間協定によって最低貸金を制定していく、こういうことであったのでございます。これではどうも二十六号条約にひっかかるおそれがございますので、まず職権方式というものでもって最低賃金をきめていくというふうに改める必要がある。しかし、現在の国内情勢から見ますと、法律についてのかような改正は直ちには困難でございまするので、まず産業界に最低賃金についての職権方式をなれさせていく必要があると存じまして、昨年最低賃金審議会の答申を求めまして、今後は業者間協定と並んで職権方式による最低賃金を普及させていきたい、こういう方針を答申してもらったわけでございます。これによりまして職権による最低賃金というものは決して使用者にとってもおそろしいものではないという理解を使用者に深め、かつまた職権方式による最低賃金の決定について慣行を積み上げることによりまして……
  34. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、そこまで詳しく私はお話を求めておるのではないので、そういうものなら、もう一回やるなら別の機会に……。途中で恐縮なんですけれども、時間がお互いにないので、あなたに全然制約がなければ私はどれだけでも伺いますけれども。そうじゃなくて、私の言っておるのは、自由化というものが進められる際に、その間三つの日本における経済成長をささえてきた柱があるけれども、その中で一番国際競争にたえていく弱い点として指摘をされなければならないのは労働問題だ。低賃金、低労働条件、そうしてそこなわれた基本権というものがあるのだというので、いまこういうものが特に解決をされなければならないのではないか、それが一つの基準をなすものだという意味でお伺いして、えらい親切に答弁していただいてありがとうございました。けれども、それをえらくやっておられると困るのですが、一般的な考え方でいいのですけれども、お答えいただきたい。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま申し上げましたるごとく、一号条約並びに二十六号条約につきましては、お述べになりましたと同様に、私どももすみやかに制度を整備し、批准に進む必要があると考えて、その方針で進んでおるわけでございます。
  36. 野々山一三

    野々山一三君 私が第一に質問した点にはお答えがないのでございますけれども、つまり、OECD加盟にあたってTUACの発言というか、個人であるベクーか、あるいはもう一人の名前は忘れましたけれども、少なくともこういうものを取り除いてくれなければ日本加盟を容認するわけにはいかないという発言をして、非常な障壁になっているぞということ、それに対して、その障壁を取り除くためにどうするかということをお伺いしたことについては、お答えがなかったようですね。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ベクー書記長のそういう談話なるものは日本政府には伝えられておりません。したがって、はたしてどういうことを言われたか詳細に存じませんが、しかし、ベクー書記長の談話がなくても、日本の立場から考えましても、今後OECD加盟していくということになりますると、現在の日本のいろいろな労働の水準はどちらかというと非常に見劣りがする、これをすみやかに国際水準に高めることが必要なんです、こういう考えでございまして、そのためにはいろいろの問題について、個々にそれぞれ具体的な行動について階段的にすみやかに実現していく、その方法をいろいろ相談中であるわけでございます。
  38. 野々山一三

    野々山一三君 どうも質問がしにくくて困るのですが、こちらが聞こうとするところと全然違うところを答えられるものですから、聞きにくいのですけれども、たとえばTUACは、日本OECD加盟というものについては、そういう障壁があるので、もう容認しませんよと言っている。それを取り除くにはこれこれの始末をしますというなら、それも一つ考えです。それはしようがありません、こういうなら、それも一つ考えです。それから、これこれのものは少なくとも批准するという態勢で事を進めていって、相手との間に説明をしながら、国内にもそういう納得をさせて協力を求める、こうでも言うのか、いずれですかということが私の聞きたい焦点です。もう一回お答え願いたい。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ベクー書記長の御意見は御意見として承っておきますが、それによって日本政府労働政策においてどういう対策に出るかということを考えておるわけではなく、OECD加盟ということによる日本経済の将来、そういう見地から日本としての労働政策考えておるわけでございます。
  40. 野々山一三

    野々山一三君 じゃ、これはどうもさっぱりしませんから、別な機会にまた質問することにして進めてまいりますが、最近の問題に入るのでありますけれども、その一面を指摘するためにあなたの御意見をお聞きいたしたいのですが、これはあなたのほうから出しておられるもので、ここにつくられたお役人がお見えでありますから、私はずばりあなたのほうの考えを聞くことが、できると思うのでありますけれども、日本の中小企業の弱さ、それからその企業そのものの弱さ、しかし企業そのものの弱さについては私は別な所管の方から伺うことにいたしますが、その一つの面を持っておる労働賃金、労働時間、そういうものに対する弱さというものをどう克服するのかということについて私は考え方を聞きたいのですね。  それは、たとえば資本別、資本金別ですね、あるいは規模別ともいったらいいでしょう、そういうものの賃金比較というものを見てみますと、たとえば資本金二百万円以上ぐらいの企業、その程度のものをかりに一〇〇と見ますと、二十人、三十人というところの企業の賃金労働者というものは、時間にして大体三五%ぐらい長く、賃金にして大体五三ないし四三%ぐらいになっているわけです。もうこれは時間がないから一まとめに申し上げますが、あなたのところの出した資料によれば、一がいにいってそういうことなのですね。それをどう取り除いていくかということについては、やはりこれまた進めれば、コスト・インフレ論というようなものを持ち出して、あなたはきっと議論されると思うのでありますけれども、それはそれといたしまして、そういう状態にありながら、なおかつ自由化体制において、開放経済体制というあおりを受けて、言うならば、金融の引き締めだとかなどなどというあおりを受けて、戦後まれに見る企業倒産が起こり、やや一時上がってきた中小企業の労働者の労賃というものが、また傾向的に、あなたのほうの調査をもってしても横ばい状態、これぐらい、上昇をはばんでおるほどに開放経済体制影響が出てきておると、私は大ざっぱに見ていいのじゃないか。  企業がつぶれる、賃金は横ばい、そうして時間外労働がふえるという数字が出ている。その上昇率こそ、下のほうの若い高校卒業とか中学卒業の連中の貸金は、多少それは上がっていることは、雇用市場の現状から見て私はそれを認めますけれども、総体的に規模別に見ますと下がっておる。こういう状態を打開していくということに対しては、労働省としてもやはり相当の答えを持たなければならないと思うのです。先ほど最低賃金の問題であなたの意見を伺いまして、よくわかります。考え方としてはわかる。ポリシーとしてのそれがいい悪いということについては、私は必ずしもあなたの意見に賛成しないのですが、相当の底上げを積極的に政府はやるということをやらなければならない。業種間最低賃金という段階から飛躍的に伸びて前に進むという積極性が、たとえば最低賃金についてはなければならない。  あるいはこれはあなたの意見を伺いたいのでありますけれども、たとえば年功序列型賃金、あるいは雇用関係、つまり労働力の移動ができない状態において縛られている日本の雇用関係というものに対して改善するということが伴っていく。改善というよりは、むしろそれが可能になるような条件をつくり上げるという措置を講ずるということが、ひいては、そういった弱い面をてこ入れをして強めるということになるんじゃないかと思うんです。そういうことについて、いまは相当の努力を果たしていかなければならぬ時期じゃないかと私は思うのでありますけれども、あなたのお考えを聞いておきたい。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点は全く同感でございます。私どもといたしましては、中小企業を対象にいたしまして、特に実効ある最低賃金の支給をはからなければならぬと思いまするし、特に賃金全般の問題において抑制的な作用をいたしておりまするものは、中高年齢層の取り扱いでございます。若年労働者に対しては、非常に求人が多いのでございますが、中高年齢者の就職は伸びていかない。この階層が賃金の水準の上昇に対してはマイナスの作用をいたしております。これにつきましては、できるだけ職業訓練あるいは中高年齢者の就職対策等を進めまして、これが有効な労働力として吸収されるという必要があると思います。こうした点が賃金の問題についてのポイントとして、ただいまわれわれが取り組んでいる問題でございます。
  42. 野々山一三

    野々山一三君 たとえば年功序列型とか、ああいうものが中心的な雇用関係というようなものは取り除くという立場で——あなたはそれがいわゆる、何といいますか、中小企業の雇用関係及び低賃金の要素になっているので、それを取り除くような手段なり細工を機会を得て取っていく、こういう考え方なんだというふうにいまのあなたの御答弁を伺っておいたらいいんですか。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 特にいま中高年齢者の求職者が非常に多いということ、これに対して、労働市場においてできるだけすみやかに吸収されるような、そうしてそれが相当の賃金で吸収されるような方法を講じたい、こう思っております。何と申しましても、全般的な中小企業の賃金水準というものは、新規卒業者の初級賃金が底になります。これは、ただいまのところ、急速な上昇過程をたどっておりますが、これに対しまして、中高年以上になりますと、非常に上昇は鈍化いたします。これはやはり中高年齢者の労働力が非常に市場に停滞している、そのために起こっておりますが、これをできるだけ吸収するような方策を考えたい。  なお、年功序列型の賃金形態の問題、これもやはり中高年齢者の就職の困難な原因一つになるということは申すまでもございません。これにつきましても、いろいろ検討の必要があるわけでございます。それにつきましては、まだ労働省としては、おおよその方向の見当はつけておりますけれども、具体的な施策についてまだ考えはまとまっておりません。賃金研究会という機構を通じまして、いま学識経験者に真剣な検討をお願いしているところでございます。
  44. 野々山一三

    野々山一三君 一つだけ、この機会ですからあれしますが、どうも議論になってしまうから、議論でなしに、あなたにずばり聞きたい。それはILOの問題にいたしましても、あるいは低賃金構造というものを打開するための政策にいたしましても、ことばとしては早く批准をし、早くそのネックを取り除くというふうに言われるのであります。だから、私もそのまま聞いておいてもいいと思うのです。しかし、最近の、今月の四日ですか、経済閣僚懇談会で、ことしの春闘に対する賃金について政府考え方を示されたのですね。まあ多少閣僚間に意見の違いがあったようでありますけれども、大ざっぱに見れば、抑制をするという考え方である。  そこで、あなたの意見を私がきょう聞きたいのは、この間、経済企画庁の長官がこの委員会に出てきて答弁をされた中に、非常に大きなひっかかりを感ずるところがあるので、あなたの所見を聞きたい。それは、春闘を前にして、政府として労使間の賃上げについて干渉するつもりはないのだけれども、公共企業体などの機関の職員については、政府が監督をしておるので、ものが言える立場にある。したがって、政府としては春闘を前にして、公共企業体などの賃金の交渉が始められておる段階において、ことしは賃金は上げるべきではない、かくかくにすべきであるという立場でものを言ったのである、こういうのであります。つまり、経済企画庁長官の考え方の一つに私が非常な危惧を感ずるのは、公共企業体などの、あるいは公務員などの労賃の払いについて話が進められておるけれども、直接政府が監督する立場にあるのであるから、政府はこれに対して賃金はかくかくすべきであるという見解を出すのはあたりまえである、こういうふうに言われたのでありますけれども、あなたは一体所管の大臣としてそういう考え方をおとりになるのでありましょうか。そこのところをひとつ聞いておきたい。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は、賃金というものは労使間の話し合いによって自主的にきめられるべきものであって、この労使の団体交渉できめられるべき貸金について、政府政府の立場からどちらかの肩を持つような発言をすることはまずいと思います。ただ、しかし、一般的な問題として、物価政策というような立場で賃金の水準がいかにあるべきか、物価の水準がいかにあるべきか、こういう論議をすることは、これは当然なことだろうと思うのでございます。  が、しかし、これはどちらも抽象的にいえば簡単でございますが、先般の閣僚懇談会における論議は、個々の企業の賃金の問題ではございません。ことに公共企業体などの賃金についてどうこうという問題ではなく、春闘によって賃金が上がることが物価に影響するおそれがありはしないか、そうすると物価政策というものに照らして賃金を押える方法があるのかないのか、こういう議論でございまして、結局のところ政府としては、物価の政策はともかく、現在の機構のもとにおいて政府が一方的に賃金を押えるというようなことができないという結論になったわけでございます。それについて御指摘があったので、私はこの間の議論はそういう趣旨であったと了解いたしております。
  46. 野々山一三

    野々山一三君 一般論として、物価が上がるから賃金を上げたくないとかどうとかという話そのものについては、私は相当——相当というか、根本的に議論のあるところですよ。しかし、いまお伺いした話は一般論ではなくて、この間、経済企画庁長官が、閣僚懇談会で賃金について議論をした際のことに触れて答弁をされて、公共企業体などについては政府が直接監督する立場にある機関であるので、そういうものに対して政府が規制の意思を発言をすることは当然のことである。そこで、政府としては、公共企業体などの賃金がことしの春闘の相場をきめる役割りになるので、この賃金はできるだけ抑えるべきであるという意見を述べたと、こう答弁された。そこで、つまり公共企業体の賃金というようなものは政府が直接抑えもし、引っぱりもすることができるんだ、こういう認識が経済企画庁長官にあるし、おそらく閣僚懇談会の中の話を非常に正直に言われたのだと思う。正直に言われたのだと思うので、そのことは私はあれですけれども、根本的な労使関係のあり方として、春闘を前にして、政府関係の機関であるから国が抑制という具体的なことについても意見を述べることができるという考え方は、あなたはそれをとられるかとられないかということです。そういう質問のしかたに変えます。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のとおり、公共企業体の賃金の問題は現在交渉中でございまして、しかもそれが国交を打ち切って公労委の調停にかかっておる段階でございます。そうして公労委は性格的に労使、すなわち政府に対しても中立的な立場にあるわけでございまするから、そういう際に政府としてこれについて賃金を抑制するというようなことは公式の発言としては好ましくないことじゃなかろうか、慎むべきではなかろうか、そのように私は立場上考えておるのであります。
  48. 野々山一三

    野々山一三君 あなたは当然そう言われることだと思いますけれども、とにかくここで、この委員会で、政府関係機関のものについては、政府が直接監督をしておるものであるから、それに対して賃金のあり方について政府が一致した見解としてそれを述べることは当然のことである、というふうに言われたことについては、いまのあなたの答弁とはまるっきり違う。つまり、政府が労使関係に対して直接口ばしを入れる、特に公共企業体などについてはそれはあたりまえのことであるという考え方をとっておるんだと、こういうことになりますと、これはたいへんなことであります。いまのあなたの答弁からいって、まず政府は少なくとも国会の機関でそういうことを言われたことに対して取り消す——はっきりと、それは正しくないことだ、まずは取り消すということから始まらなければいけないことであり、所管大臣としてそれを内外に明らかにする義務があると思うのですね。宮澤さんのやったことをあなたに文句を言ったってしようがないけれども、それはあなた所管大臣だから、当然所管大臣として、そういうことがもし言われたとすれば間違いだ、労使関係の賃金についてはもう全く労使の自主的な解決に当たらせるべきものであり、労働委員会なりそういう機関が事を処しているのだから、もうこれに対して一切政府としては政府関係機関の労使関係であろうとも口ばしを入れるべきでない、こういう見解を明らかにされないと困りますね、これは、そうでしょう。いかがですか。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど、私は、政府関係機関を監督する政府の立場ということでなく、ただいまの私の立場、すなわち労働大臣としての立場からものを申したのでございます。政府には、労働大臣としての労使間に対する中立の立場と同時に、特に三公五現につきましては、経営者としての立場があるわけでございます。しかし、これは労働法上は公社、公団あるいは現業の理事者というものが完全に代表するたてまえになっておるわけであります。ただ、しかし、御承知のように三公五現におきましては、国会の議決を経た予算によってすべての支出を拘束されておりまするので、団体交渉等における使用者側の譲歩し得る限界というものが一応予算にあるわけでございまして、これを越える場合におきましては、当然財政当局であるところの大蔵大臣の了解を得なければならぬという事実上の制約があるわけでございます。したがって、そういう意味において、三公五現が団体交渉において組合側にいかなる回答をするかということは、交渉段階におきましては常に政府部内で協議されるのでございまして、その協議に際しましては、いろいろな政府の立場からいろいろな意見が出ることは十分にあり得ることでございまして、先般の閣僚懇談会の議論というものは、これは政府が外部に発表するための意見をつくり上げたものではなく、いかに考えるかといういろいろ議論の過程においていろいろの意見を名大臣が述べ合ったというのでございまして、これがいいとか悪いとかいうことになりますと、こうした閣僚間の話し合いというものが全然できなくなるのじゃなかろうか。いろいろな意見が出、それをいろいろな立場で論議しながら、政府としての一つのまとまった見解をつくり上げていくということが大事だと思います。
  50. 野々山一三

    野々山一三君 あなた、正直に政府部内の話を、政府がそういうことをやるのはあたりまえだというような意味を正直に言われたことは私はよくわかるのです。わかり過ぎるほどわかるけれども、しかし、この話は、労使関係のあり方をここで議論するつもりで私は言っておるのじゃないので、終わりにしますけれども、いやしくも労使関係を扱う所管の大臣として、それが公機関であろうと、民間の団体であろうと、特に公機関であるから、交渉の最中であろうともかくあるべきであるというようなことを言うのはあたりまえだという考え方を持ったら、労使関係というものは成り立たない。私は公労法十六条なり、地公労法の取り扱いについても、予算上、資金上の問題については、あなたが言われたことには私自身別の見解を持っております。それはあとの話です。仲裁裁定なりなんなりが出てからの処理の話です。それが交渉の段階でやってもあたりまえだということになると、それでは一体調停委員会なんかはどうなりますか。おそらく調停委員会なり仲裁委員会にあなたは権威を持たして、ここで十分やっていらっしゃるのだから、私がくちばしを入れるべきものでない、政府機関がその段階において押えるべきものであるということをもし言ったら誤りである、私はこの機関を信頼しますと、きょうお答えになってくれさえすれば、この話はすぐ済んでしまう。それがあたりまえの話だ。私はそう思う。そのことをお伺いして、正直に——おれたちは実はいつでもそういうことを抑えることになるのだという話をされると、これは労働法そのもののあり方について根本的な大議論をしなければならぬことになってしまうので、別の機会にやりますが、これは改めていただきたい。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ちょっといまのはとんでもない誤解でございまして、私は政府の立場としては、こういう調停のさなかに、そういうことを政府の行動として発表することは慎むべきだということを、先ほど申し上げたとおりでございます。それで、宮澤さんの言われたことについてどうだと言われますから、そこで、先般は、閣僚の懇談会でございまして、政府としての正式の行動ではございません。これは政府として、いかなる行動に出るべきか、あるいは出るべからざるかということを議論する過程において、各閣僚がいろいろな意見を述べ合うことは、これは当然のことではなかろうか。その結果、この間の閣僚懇談会におきましては何らの行動に出ないということに落ちついたのでございまするから、私はこれで何にも差しつかえないのじゃないか、かように考えておるわけであります。ひとつ御了解をいただきたい。
  52. 野々山一三

    野々山一三君 そうやって言われるなら、私はもう一ぺん聞くのですが、宮澤さんはこの間この委員会で、一般のことについては政府としてできるだけ慎しむことになったが、せめて相場をきめる三公社五現業について、政府は、かくあるべきである、賃金は上ぐべきでない、こういうことを政府として発言するのはあたりまえのことであると。何も閣僚懇談会の中での話をしたのじゃない。この委員会でそれはあたりまえのことであるという発言をされたことについて私は問題にして、あなたの所見を聞いておる。そのことだってよくないことでしょう。そこから取り除いてもらうということでないと、いまのあなたの補足された真意だって聞けないことになります。そのことについてお答えいただきたい。
  53. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は、宮澤さんが、閣僚懇談会におけるいろいろな議論は当然のことである、こう言われたのかと思いまして、これは私も当然のことであると思いますと申し上げたのであります。しかし、いろいろな官庁によって立場がございますが、私どもはあくまでも具体的な労働紛争に際して政府が一方的な立場から意見を述べることは適当でない、これはどうしても公労委という機関の、国としては、公労委という機関の権限に属しておるのでございますから、公労委にどこまでもまかせるべきだと、こう思います。それに対して当委員会における宮澤国務大臣の発言はどうかと言われますが、私もその発言の前後の経過、その他詳しくございませんので、ここで私の意見を申し上げるわけには参りません。十分にまた速記録その他を調査いたして、その上で考えをきめたいと思っております。
  54. 野々山一三

    野々山一三君 もうそれじゃ、それはしようがないので、いま私が言ったようなことであれば——言ったようなことであればというか、宮澤さんはそういうふうなことはあたりまえだと言われたのですが、宮澤さんが言った言わないということよりも、本来あるべきこと、あるべき筋道というものについては、労働大臣としてはこう思うということを言われたので、その立場を貫いていくことが今日の事態に対して無用な議論を避けることになる。根本的な問題については私は別な意見を持っておりますけれども、それは別として、無用な議論を避けることになるから、ぜひとも自主的に、特に春闘もこれからあぶらが乗ってこようという段階でありますから、全体としてさような刺激的な発言は一切今後慎しんでいくという立場を貫いてもらいたいということを最後に申し上げておきたいと思います。  まだほかにも質問がありますけれども、少し議論めいたことになって時間を食いましたので、別な機会に私は議論をしたいと思いますが、ただごく散発的になりましたけれども、私はどうも自由化体制というものを進めていくにあたって、いつも議論になる焦点というものは、国際収支の問題、日本産業基盤の弱さ、そうして国際労働基準というものから見ても、日本の労働、産業というもの、労働者の置かれている条件なり雇用市場の状態というものは非常に立ちおくれておる。このままいくならば自由化、国際競争というものは激しくなってくればくるほど、その与える影響は非常に激しいものになってくるという私は心配をする。先ほどの議論の中でも、どうもぼくははっきりいたしません。ぜひともこういう時期を機会にそういうネックになっているものを取り除くための処置を積極的に、かつ勇気をもってやられるというようにしてもらいたいということを、ひとつ注文つけておきたい。それで、ほんとうはもっとこまかく議論をして、あなたとその認識について渡り合った上で締めくくりをしたいと、こう思ったのでありますけれども、それてしまいました。特に要望をつけて質問を終わっておきたい。
  55. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまの御結論につきまして、私もしごく同感でございます。努力いたします。
  56. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がなくなりまして、これはなかなか具体的に質問していることができないのは非常に残念に思いますけれども、いわゆる政府開放経済体制に移行すると言っておりますね。その開放経済というのはわかりますけれども、体制ということですね、この体制とは一体何をさすのか。制度的な問題あるいは機構的な問題、なかなかたいへんなことだと思うのです。ですから、この開放経済体制、その全体をあなたに聞いていない、この開放経済体制といわれているものの中の労働政策、これはおそらく私は根幹をなすだろうと思います。よく政府は、国際収支の問題が、これが乗り切れるかどうかがかぎだというようなことを言っていますけれども、事実はむしろ労働問題のほうがほんとうだと、むしろかぎは労働問題だと、これはおそらく腹の中ではそう思っておられるだろうと思うくらいきわめて重大なかぎをなしておる。この開放経済体制といわれるもののもとにおける労働政策、このことについてアウトラインでけっこうです、ひとつお述べ願いたい。
  57. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 開放経済に相なりますると、結局、生産の面におきましては国際競争が不可避でございます。したがいまして、すべての競争ができるだけ同じ条件のもとに行なわれなければならぬというふうな思想がありまするので、やはり諸外国におきましては、日本の生産条件について少なくとも国際水準の充足を要求いたしてくるだろうと思うのでございます。したがいまして、労働条件につきましても、日本の労働条件が国際水準に比して著しく劣悪なる場合においては、その劣悪なる労働条件を武器としての日本のいわゆるソーシァル・ダンピングというものに対抗していかなければならぬということに相なりまするので、これを避けまするためには、日本としても国際労働水準よりのおくれを一日も早く回復するような前向きの姿勢をとらなければならぬと思うのでございます。すなわち、労働基本権の問題につきましても、労働時間、賃金、あるいはまた休日、あるいは労働保険、安全、あらゆる面におきまして、労働基準を国際水準に近づけ、そうして日本の労働条件を改善する真剣な努力が要請される、かように考えております。したがって、今後の労働政策は急速にその方向に進むべきものではなかろうか、こう考える次第でございます。
  58. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それはあなたの希望的観測なのか、それとも労働大臣としての一種の、何といいますか、労働者向けの発言なのか知りませんけれども、そんなものじゃないと思うのですよ。これは日本OECD加盟するということは、これは国際的な経団連ですね、日経連も含めた、そういうものに入ることになるので、日本の労働条件の改善をOECD日本に勧告してくるだろうなどというような甘っちょろいことは事実とも反していますよ。六一年の十二月にこの条約が制定されてから、六二年、六三年、過去二カ年間のこの加盟国におけるところの労働事情はどのようなものになったであろうか、この事実について御承知ならばひとつお知らせを願いたい。
  59. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど申し上げましたのは、単なる希望的観測でもなく、また労働者向けのPRというものでもございません。この問題については労働者向けのPRをする必要は私は認めておりません。申し上げました趣旨は、労働省として、当然に進むべき方向、また進むための努力をしなければならぬという固い決意を申し上げたわけでございます。
  60. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 前段はあなたの御意見として承っておきます。あなたがそういう決意を持っていてやられるということは、それ自身けっこうかもしれませんけれども、事態はそういうことを許さない。おそらく、あなたのそのお考えなり態度なりで進んでいったら、これは別な意味で苦境に立つだろうということが予言されますよ。このOECDが一九六二年にイギリスの賃金ストップを非常に高く評価して、そのような報告を出して、OECD加盟各国に対してそういう方向でいくべきであるということを、そういうつまり勧告、あるいはまたそれを閣僚理事会で取り上げて共同声明を出したという事実などがありますが、あなた御存じですか。
  61. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そのことはまだ聞いておりません。
  62. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そのことは聞いていないって、非常に重要なことなんですね。それで、もし聞いていないとすれば、その勧告に基づいていかにすべきかという問題について、イギリスは、イギリスのつまりTUCのウッドコック書記長が参加をしておったんですけれども、去年の九月、TUCの大会で大問題になりまして、そうして四百二十八万対三百九十万という票によって、このイギリスの賃金ストップ政策を支持するような一切のそういう勧告については、いかなる形のものといえども拒否して戦うということが決定をされておる。そういう決議が去年の九月のTUCの大会できめられておる。  それからまた、フランスにおける事実、フランスが六三年の三月、OECDの第四作業部会だったというふうに記憶しておりますが、年次審査を受けて、コスト・インフレが進行中であるというので、賃金の抑制の趣旨を盛った勧告が出てきた。そのときにドゴール政府が一体どういう態度をとったか、御承知でありますか。
  63. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) イギリス、ドイツ、フランスなどもいろいろ、労働政策はその国の労働事情に即応してやっておられるようでございますが、日本労働政策といたしましては、先ほど来申し上げましたごとく、賃金その他の労働条件をできるだけ改善し、そうして西欧並みの労働基準をすみやかに実現することを目標としなければならないと考えております。
  64. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 大臣、ずいぶん甘いですよ。OECD加盟すれば引き返すことはできない。IMF八条国になるというようなことの持っている位置づけは、日本の国の問題は日本だけでやるというわけにはいきかねるのです。非常に強い形で押してきます。それで、大臣は具体的にフランスで一九六三年の九月ドゴールがこの勧告に対してどういう処置をとったかも御存じないらしい。大臣でなくてもけっこうですが、労働省の方の中でそのときの事情を知っておられる方があったら、ちょっと答弁してください。
  65. 大宮五郎

    政府委員(大宮五郎君) OECDは、先生御承知のように、プロブレム・オブ・ライジング・プライス及びポリシーズ・フォア・プライス・スタビリゼーションという報告が出ておりまして、その各国がやはりそういう線でひとつ政策をやったほうが望ましいというような趣旨の報告になっておるわけでございますが、しかしながら、各国ともなかなか物価あるいは賃金その他労働事情等につきましては、歴史的にも、またその他いろいろな特殊事情がございまして、非常な慎重な態度をとっております。また、慎重な態度をとる中にも、イギリスのやり方、あるいはフランスのやり方、あるいはドイツのやり方、さらにはオランダのやり方等それぞれ相違があるわけでございますが、それらはすべてその国の経済の実情のみならず労働組合その他社会情勢を考慮してそれぞれの国の判断において独自なことをやっておるわけでございますが、しかしながら、ドゴールの場合につきましても、フランスでは最低賃金あるいは国家公務員の給与というものを通じて何かやろうという形で最近では進んできておるわけでございますが、しかし、これも経済情勢あるいは組合等との関係でなかなか複雑な問題がございまして、その辺のところは各国ともそう無理をしないで慎重にやっていこうという方向に進みつつあるのではないかと思います。
  66. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そんな抽象的なことは、労働学校へ行っているような組合員だって知っていますよ。OECDに参加をして、いま言うようにOECD労働諮問委員会にどうのこうのするといっても、さっき野々山委員質問にもあったようなそういう事態を迎えておきながら、この二カ年間におけるイギリスやフランスにおけるところの労働運動がこの問題をめぐってどういうような激突をしたかという事実を、はっきりあなたは把握もしていないようですね。それでどうしてこんなOECDに参加をするというような大それたことができるか。フランスにおいてはドゴールは一九六三年の九月に安定計画を出したけれども、この安定計画に対するところの中心的な問題はどこにきたかといったら、さっき同僚議員が質問したように、国有部門における賃金のストップということです。日本でいえば公共企業体等労働関係法に関係するところの部門におけるところの賃金ストップを中心にして出たものであります。物価の安定と賃金の抑制という問題で出た。そのときにフランスではFO、労働者の力、それからCFTCやカトリックの関係労働組合——もちろんフランス総同盟のCGTは参画しておりませんけれども、この参加しておったフランスの、つまり物価の安定第四次計画の委員会に参加しておったFOやCFTCのような組合でさえも、一斉に脱退した。それは御承知のように、十一月から十二月にかけてこの国鉄労働者を先頭として三十四時間のストライキが起きて、ついにドゴールの安定計画が実現することができなかったという事実がある。先ほど述べたように、イギリスのTUCの大会でもこの書記長のウッドコックの報告は圧倒的な多数によって否決された。こういうふうに、OECDがその国に、加盟国に向かって権力的な勧誘をしてきて、ああしなさい、こうしなさいと言ったところは、みんな失敗している。OECD労働政策はことごとく失敗している。これからも失敗するだろう。失敗することは当然です、労働者は反撃いたしますから。だから、そういうものだと。  それだけではない。これはいみじくもさっき大橋労働大臣も言いましたけれども、このOECDの前身は、御承知のように、マーシャルプランの計画を受け入れるかどうかということで始まったもので、若干その歴史的な経過において労働大臣は誤解があるようでございますけれども、何もOECD諮問委員会というのは、形態が先にできたものではない。むしろこれはあとからできて、実質はマーシャルプランを受け入れるかどうかといったときに、御承知のように、一九四八年から一九四九年にかけての世界労連が大論争をやって分裂した、マーシャルプラン受け入れで。国際自由労連というのはそのあとできた。私は当時ちょうど世界労連の評議員をやっております。だから、そういう事実から見て、この前身であるところのマーシャルプランの受け入れ、それからOECDの発展してきた事実を見ると、これはもう世界の労働運動においては分裂機関である。せっかくそうして彼らが鳴り物入りで入れた労働組合も、たとえばフランスのFOやカトリック系の労働組合も、このドゴールの安定計画に反発してこれから飛び出してしまうというような、そういう状況であった。この分裂主義的なOECD性格は今後も変わってこないだろう。こういうものだということを腹に入れて、先ほど野々山委員からも質問のあったように、これについて日本労働組合諮問委員会加盟することを、陰に陽に支持するかのようなことは、これはほんとうに慎むべきだと思います。そういうことのないように、ぜひひとつ、先ほどあなたもおっしゃったように、あくまでもそれはひとつ労働組合の自由な立場で参加をするかどうかを決定するのだという、この原則を堅持しいただきたい。これは私の希望ですから……。  それから、ちょっと質問を変えますけれども、ことしの日米合同委員会であなたはワーツ長官とお話をしたはずだと思います。そのときにワーツ長官は、労働政策の虎の巻を、かっこづきですが、虎の巻的なものを大橋労働大臣に話をしたかのようなことを伝聞しているのでありますが、お聞きになったことはありませんか。
  67. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働政策の虎の巻というものがあるのかないのか知りませんが、ワーツ長官とお話をいたしましたのは、二日目の午前約一時間でございました。食事をしながらいろいろ話をいたしたのでございますが、そうしたその虎の巻的なお話は当時話題にのぼりませんでした。
  68. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それは虎の巻的なことは話題にのぼらなかったということは、日本の労働運動についてはこれは幸いです。いわゆる一国の経済政策について、労働組合諮問委員会的な形で参加させようではないかという傾向は、いまいわゆる発達した資本主義国における労働政策の一種の何といいますか、一貫した、あるいはOECD自身が目指している一貫した政策です。こういうふうに私たちは考えております。で、そういう点で、日本においても政府の政策に労働組合協力させるように、何らかの形の、つまり委員会的なものを、イギリスの例をあげれば、国民経済発展会議だとか、いみじくもイギリスもいっていますよ、国民所得委員会だとか、こういうものに労働組合を参加させることによって、労働者もこの政策に一部の責任を持っているのだという、そういう方向でいくべきものだという話をワーツ長官があなたにされたということを承っておりますが、御存じありませんか。
  69. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういうことは私もかねてから承知をいたしておりまして、特にワーツさんから伺ったことではございません。
  70. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それで、時間がありませんので、私、最後にこれで質問を終わりますけれども、このOECD加盟は必ずや日本労働組合運動に分裂の要因をいまよりももっと激しく持ち込んでくるようになるだろう、また政府が介入をしてくるようになるだろう。これはまた、OECDの年次審査とか、年次報告とか、勧告とかという形をとってやってくるだろうと思うのです。その場合に、先ほどの大臣の話にもありましたけれども、労使の問題はあくまでも労使の団体交渉を基本的なたてまえとしてやるとさっきおっしゃいましたね。この立場を堅持して、どこまでも堅持していくということについて、ここでひとつ言明をしていただきたい。非常に重大なことです。
  71. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ILO八十七号の精神からかんがみましても、労働組合というものは自主的に運営されるべきものでございまして、その行動については使用者団体が干渉することができないと同様、政府としては干渉すべき事柄ではございません。それ自体が不当な行為であると思います。したがって、労働省といたしましては、OECD加盟の有無にかかわりなく、労働運動の自主性というものをどこまでも擁護することが自己の使命であると考えております。
  72. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 質問終わります。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働大臣に二つだけ質問いたしたいのですが、それは、この間の経済閣僚懇談会でですね、物価問題について、これは私は新聞で承知したのですが、物価と賃金の問題について話し合いが行なわれたのですね。そのときに経済企画庁長官の御発言と労働大臣の御発言との間に食い違いがあるということを新聞で見たのですが、前に一ぺん私は労働大臣に御質問したことがあるのですが、賃金インフレとかコスト・インフレの問題ですね、この問題は日本のいまの現状には当てはまらぬということを、労働大臣は前に御答弁になったことがあるのですが、最近国際収支もかなり悪化している、あるいはまた物価も上がっておる、この国際収支の赤字の増大を防ぐということと、消費者物価の値上がりを抑える、そのために賃金をやはり抑える必要があるというような議論が出てきておって、物価値上がりの原因は賃金の上昇にあるという考え方が一方にあるわけです。これに対して、労働大臣、この際、物価と賃金との関係についての御所見を明らかにしていただきたいということが一つ。  それから、もう一つは、賃金につきまして、こういう物価がどんどん上がってくる、そうして通貨の国内価値が低下してくる場合に、賃金というものに対して労働大臣はどういうふうにお考えですか。労働基準法に、賃金は通貨で全部直接労働者に支払わなければならぬというふうに規定してありますが、賃金を通貨で払う場合、何かここに実質賃金という考え方ですね、これをやはり何か織り込む必要があるんじゃないかと思うのです。ただ通貨で払うというと、どんどんインフレになった場合これは非常に名目的な賃金になるのですね。これは貸金を規定する場合、何か労働大臣は実質賃金ということをもっと明らかにするような賃金の規定のしかたですね、これができないものかどうか。私はどうしても必要だと思うのです。スライド制をね、理論的に私は必要だと思うのですけれども、それがスライドをやった場合、またこれが所得がふえる、それがまた物価値上がりの原因になって悪循環を来たすという、そういう議論もあるわけですね。しかし、労働組合の中で一時スライド制をとった例も、日本においてもありますし、諸外国においてはかなりあるのです。ですから、外国にもかなりあるのですから、日本でもそういうあれを取り上げてやる必要があるんじゃないか。公務員なんか一番気の毒なんですよ。しかし、それを個々の企業の団体協約の中にそういうものを入れるのがいいのか、あるいは労働基準法の中で賃金を規定する場合に実質賃金的な規定を何らかの形でやったほうがいいのではないか。何かこれまで、三年間六%以上消費者物価がどんどん上がっておる場合に、労働省としてこれに対して何か手放しでいるということは私はずいぶん不見識ではないかと思うのですがね。  この二点について伺いたい。
  74. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まずいわゆる賃金インフレあるいはコスト・インフレの問題でございますが、最近における賃金の上昇というものは、従来相対的に賃金の低かった中小企業、サービス業において顕著になっております。これは経済成長に伴う需要に見合った労働力を確保するためには避けることのできない結果でございまして、また、このことが賃金格差の是正という観点から申しましても、労働行政上はむしろ望ましい方向に進みつつあるというのが私ども労働省としての考えなのでございます。もちろん、中小企業、サービス業におけるこの賃金の異常なる上昇が、この方面における生産あるいはサービスのコストを引き上げる作用を持つものであることは、これは否定することはできません。しかし、そのゆえをもってこの賃金の上昇を抑えるということに相なりますると、それらの関係産業における必要な労働力の調達を不可能にし、企業としての運営をかえって混乱をさせる結果になるわけでございまして、いわばこの賃金の上昇というものが日本経済成長に伴う構造的なものであって、どうもやむを得ないんではないか。したがって、もしこれによるところのコスト高を引き下げるということを考えるといたしましたならば、それは賃金の面でなく、生産能率を上げる、あるいは過剰サービスを再検討するとか、そういった他の面においてコストの引き下げ考えていくべき問題ではなかろうか。そういう方面において価格政策の努力をすべきもので、賃金に責任を負わせて他の努力を怠るということは、これは本末転倒した結果になりはしないかというふうに考えておるわけなのであります。  それから、次のスライド制の問題でございまするが、これにつきましては、御指摘のとおり、各国団体協約によってそういう実例もございまするし、わが国においてもそういう実例があったのでございます。しかし、労働基準法によってそういう制度を確立しておるというのは、世界の労働界でもまだないようでございます。もちろん、日本の物価の上昇は世界各国に比べて異常ではないか、異常なところには異常な制度も必要だろうという考え方もあり得るかもしれませんが、しかし、私どもといたしましては、まだそこまでの考えを、法律でもって定めるというまでの考えを持っておりません。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 後段の御答弁ですがね、なるほど賃金だけについて物価との調整を考えるということは、これは困難かもしれませんですね。これは債権債務全体の問題になるわけですよね。ですから、これはもっと総合的な立場で考えにゃならぬと。やはり賃金については労使間の団体協約ですか。そういうものでやるのが適当であるように思いますし、大体労働大臣の御意見がいいのではないかというようには思います。  しかし、ただ前段の御答弁につきましては、これも労働大臣のお考え方は妥当だとは思いますが、政府としてはどうなんですかね、どうも労働大臣は少数意見のように見えるんです、新聞等を見ますと。閣僚懇談会ではどういうふうな大体意見に落ちついたんですか。労働大臣は少数意見で、やはりコスト・インフレ的な考え方、それによって所得政策とかガイド・ライン政策をやれ、とる必要があるという意見が支配的になって、大体政府の賃金と物価に関する考え方、政策は所得政策的な方向に向いているのかどうか。
  76. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先般の経済閣僚懇談会におきまする論議は、物価対策に強力な施策を必要とする現状におきまして春闘等によって大幅な賃上げが行なわれるということは非常に困った問題である、何らかの方法はないものかということでございます。で、それに対しまして、先ほど私の申し述べましたような、この賃金の上昇というものは全般が同じような足取りで上がっておるのではなく、むしろ中小企業、サービス業等、従来特に賃金の低かった部面が上がっておるわけであります。西欧の一部の諸国におきましては完全雇用がすでに国内で成り立っておりまして、したがって、労働組合の力による賃上げの実現ということがかなり強くなってきておる。そういうところにおいては、政府労働組合、あるいは使用者を含みまして、話し合いによってお手やわらかにお願いする、組合に対して。そういうことも処置として考え得るけれども、日本の現在の賃上げの実情は、労働組合の力を持っておる大企業の賃上げよりは、むしろ組織のない中小企業、サービス業などのほうが大きい。したがって、現状のもとにおいては賃上げの力になっておるのは、組合の力というよりは、現実的には労働力を必要とするむしろ使用者の立場が賃上げの推進力になっておるような状況で、こういう状況のもとにおいて賃金引き上げの抑制というようなことがかりに行なわれたとすれば、それは非常な労働の需給関係混乱させることの原因になりはしないかということを私としては申し述べたわけでございます。結局、政府としてこの際特別な行動に出る段階ではないという結論に落ちついたわけでございまして、少数意見とか多数意見というようなものではなく、結局そういう話し合いになっただけのことでございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで終わりますが、政府は労使間できめるべき賃金に対して何か干渉し介入するような印象を私は持っているものですから、そういうことは好ましくないと思うのですが、最後にその点について労働大臣にお伺いしまして、私の質問は終わります。
  78. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点、私も全く同感でございまして、ことにただいま春闘のまっ最中でございますので、労働省といたしましては、賃金問題について特別な発言を極力抑制することにいたしております。また、政府全般といたしましても、注意いたしている次第でございます。
  79. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 労働大臣に対する質疑はこの程度でとめて置きます。  次に、この際、先般の委員会におきまして答弁を留保せられました点につきまして、外務当局から発言を求められておりますので、これを許します。須之部条約局参事官
  80. 須之部量三

    説明員須之部量三君) 先日新聞に伝えられました商法の改正の問題につきまして、事実を承知しておりませんでしたので、調査の上回答を申し上げるということを大臣からお話があったようでありますから、さっそく主管官庁でございます法務省のほうに問い合わせてみたわけでございますが、法務省の法制審議会の商法部会におきましてこの問題を検討しているのは事実だそうでございますが、法務省といたしましては、まだ何ら具体的な成案を得ていない、したがって外務省のほうにも何ら具体的にいま示す何物もないという話でございますので、外務省としまして具体的に確定的な意見を申し上げる立場にないことを御了承賜わりたいと存ずる次第でございます。  ただ、あるいは御質問の趣旨が、具体的な問題を離れまして、一般的にどうなんだろうかという点の御質問かとも思いますので、その点、ほんとうに一般論といたしましてどんな点が問題となり得るだろうかという点だけを、御参考に申し上げたいと思うのでございます。  結局、かりに新聞紙上に伝えられますようなことが考えられているといたしまして、日米通商航海条約のどこにぶつかるか、抵触するかと申しますと、おそらく第七条の株式の取得に関する内国民待遇の点だろうと思います。その場合に、条約上の内国民待遇というのは具体的にどうなんだろうかという問題がまず第一に出てくるわけでございますが、この点、通例の考え方は、国内法制上国籍による内外人の差別を行なわないというのは、つまり法制上における無差別待遇というのは内国民待遇であるというのが、通例的の考え方と存ずる次第でございます。したがいまして、もし国内法制それ自体によりまして国籍差別を行ないますれば条約違反は明白なことでございますが、そうでなくて、内外人は差別しない、ある程度その残されたところを契約自由の分野に残すということになりまする場合に、文理解釈上内国民待遇となるかならないかという点は、一応文理解釈としてはならないという解釈も可能なのではないかというような感じもいたすわけでございます。ところが、ただ問題は必ずしもそればかりではないような気もいたしまして、他方、たとえばでございますが、日米通商航海条約もございますが、外国人がたとえば住居のために家を借りる、内国民待遇を持っておるというような場合に、だれも外国人には貸さない、現実には全然そういう住居もできないということになれば、またこれは別の見地からやはり問題にされるべき事態であろうと思うわけでございまして、かかる両面の点が考慮すべき点であろうと思うのでございますが、具体的には、一応成案ができまして、その運用方針等も一応はっきりしましてから、総合的に検討いたしたいと思うわけでございますが、問題点はかように考える次第でございます。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、一般論として、結論的には、こういう株式の譲渡制限をもしやったとしたら、商法の改正でやったとしたら、内国民待遇にならないという御意見ですね。
  82. 須之部量三

    説明員須之部量三君) 内国民待遇であるわけでございます。つまり、法制上何らそれ自体は区別しておらないわけでございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 だって、外国の資本に対してそういう差別をするわけですよ。
  84. 須之部量三

    説明員須之部量三君) したがいまして、その点は先ほど申し上げましたとおり、具体的にどういう改正の案ができ上がるかによりませんと、その点判断のしようもないわけでございますが、先ほど申しましたとおり、法制上は全然内外人を区別しないで、それでそこを契約の自由にまかすという形式に徹底してかかる以上は、文理解釈上は内国民待遇にならない可能性もあり得るということを申し上げたわけでございます。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでしたら、また質問する必要もないわけですよ。ですから、問題は、いま考えられているのは、今度の自由化に移行するにあたりまして、いままで転換社債とかあるいは米国預託証券などによって、企業の中に占める外資の率が高くなってきているところで、外資法自体で押えられれば問題ではないのですね。ところが、外資法で押えられない。そのかわりに国内の商法改正で押えたらどうかという着想ではないかと思うのですよね。その場合、まあ議論が分かれてきて、ことに中小企業については非常に外国の株式保有率が高くなる可能性が大企業の場合よりも大きい。だから、中小企業というものに限ってそういうものをやっていいかということになるわけです。ですから、もちろん内容が具体的にわからなければ判断できないと言われますけれども、ただ、私の聞きたいことは、そういうことを外資法でできないものを国内の商法でそういうことが取り締まれるのかどうかということなんですよ。
  86. 須之部量三

    説明員須之部量三君) ただ非常に形式的な議論を申し上げますと、条約の内国民待遇に抵触する問題、それは特別法であろうと一般法であろうと、それは同じ関係であろうと思います。したがいまして、今度の法務省で考えておられますこの改正というのが何をねらいにしておりますのか、外資の支配を防ぐのか、はたしてほかの目的であるのか、その点は私どもとしてはまだ正式に承知しておらないわけなんでございますが、かりに商法の改正ということができました場合に、結局、先ほどの文理解釈の面からいいますと、規定のしかたいかんによっては内国民待遇は確保されたままでできるということも可能だということが考えられる。その点が一つ問題点として考えなければならぬ点だということを申し上げた次第でございます。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああそうですか。それじゃ、また法務省の人からもう少し具体的な内容を伺って、それからまた御見解を承わる、そういうことにしたいと思います。
  88. 天田勝正

    天田勝正君 私は、自分に回ってくる時間の予定から一時間も経過しちゃったから、長くしゃべれません。それで、一問だけでひとつ終えたいと思うのです。きょう港湾局長さんか海運局の次長、おいでになっていましたら、ひとつ前にお願いします。  この間、私が予算委員会において内航海運の問題を取り上げましたが、それを記録等で御存じになっておるならば、私の質問は非常にしやすい。ただ、一問で終えることにいたしますので、少しくその説明をいたしますと、私の取り上げ方というのは、要するに、いま内航海運は危機に立っておるが、これがとにかく償却もできないという状態になっておるので、もし壊滅をするということになれば、日本経済の発展それ自体がこの面から阻害される、こういう関係であります。すなわち、国内の輸送の面からいいますと、何といっても、まあ百トンかあるいは二百トン、そんな小さい船が多く集まっているけれども、この輸送量たるやとても国鉄をしのいでおるのであるし、私鉄なんぞに至ってはおそらくその六十五倍から七十倍ぐらいトンキロにして輸送している、こういうことなのです。  そうすると、まあ別にいまここにもありますけれども、大体いままでの政府の対外融資の関係考える場合に、普通の輸出入、こういうものと、この海運収入、その赤だ、黒だ、こういう経常収支のところで議論をされるのです。そっちへばかり政府もどうも目をやり過ぎておるのじゃないか。ところが、日本の貿易それ自体が、一口にいうならば加工貿易、向こうから原料をもらってこちらが加工して、そうしてまたさらに輸出をすると、こういうことなんです。そういたしますと、この内航海運というものは非常に重要になってきます。これをコスト安にやらなければ、輸出も伸びやしないな、事実は。陰に隠れているけれども、伸びっこない。ところが、内航海運はまことに危機に立っているというわけであります。それであるから、もうちょっと安かるべき内航海運が、実は割り高になるという原因も探求して、いまのところは国鉄が長距離逓減あるいは特別割引、こういうようなことになって、内航海運よりか幾らか割り安になっているようなところもありますけれども、しかし、国の経済というのを考える場合には、本来的な経費というものはこれは海運のほうが安いのです。ただ、国鉄がそれができるというのは、政策運賃をきめて、そのあとは税金でまあ早い話がまかなう。財政投融資を行なう。国民の立場からして、税金でいったものが無利子の金になってみたり、あるいは繰り入れたりと、こういうことと、そのかわり安い運賃で払われるのだと、差し引きしたら一体どっちかということになる。本来、国全体の経済考える場合には、本来的にコストの安いほうを育成する、こういうことが一番大切だと思う。これがすべて私は貿易の発展にかかるし、同時に、この日本の為替の問題にも大きな影響をする、こういう見方をしておる。  で、きょうは時間がありませんから、それをまず……。いま目の前で解決するものは何かというなれば、外航海運向きには日本の港湾施設はできているけれども、内航海運向きというならば、岸壁だってほとんどありはしない、積みおろし荷役設備なんというのは、これもまあゼロに近い、こういうわけなんです。そこで、その面でおそろしく金がかかってしまう。もう一つの問題は、皆さん方は大きな会社を対象にしていろいろのことを調べる。そうすると、日本郵船でもなんでも、内航のほうは黒で外航のほうは赤でございますと、こうなる。そこで、赤のほうを何とかしようと、こういうふうに自然になってくると思う。ところが、それは内情はまるで違うんであって、大きな海運会社というものは、内航といったって船は持ってやしないんです。幾らかあるけれども、ろくにない。これは下請にやるんですよ、小さい会社へ。そうでしょう。下請にやる。下請のさやかせぎでもうけるから、大きな海運会社というのは、日本郵船だなんというのは、内航は黒になっちまう。金は使っちゃいない。これは本来中小企業としても大きな問題なんです。この内航海運をささえている中には、親子で船に乗ってやっているというのがたくさんある。どうもこの面が政治の場であまり論じられないということは私は遺憾であったと思う。そういうことで、そのほうは、やはり大会社のほうが滞船料を一向払わない。そのほうもたいへん困難になっているし、港湾施設のほうは荷役なんかも一切ないにひとしい。そのほうに運輸省は何で力を入れないのか。これが危機に立っていれば、さっき言ったとおり、国内輸送、ことに重量物の中で、私の調べでは、少なくとも鉄道のほうが多く輸送しているというのは二品目しかないはずだ。木材と肥料である。この二つとも山のほうにあるものだから、場所が山のほうにあるから、これは鉄道をよけい使う。あとはセメントだって、コークスだって、石炭だって、何もかも内航海運のほうがよけいなんですよ。一問しか言えない時間ですから、どうしても私の説明が長くなりましたが、そういうことをもっと真剣に取り上げなければならぬと思いますけれども、これに対するいまのところは——  私ほかにも知っておりますよ。専用船なんかも言いたい。言いたいけれども石炭専用船というのは、別途予算を計上しているから、それをやめて、他のものを専用船化したほうがよほど安い、こういう問題もある。あるけれども、これを転換しろということを局長であるあなた方に質問しても、政府の方針であるから。そのほうが有利だというのは腹のうちでは実際よくわかっていると思う。わかっているけれども、そのとおりでございますとは言えないのです。だから、いま、そういうふうに転換しろと私は言いません。いままでずっと申し上げたことについて転換しろとは言わない。けれども、今後——いまのはいまとして、今後のは、私が指摘したように切りかえなければえらいことになる。その面から、とても輸出はたいへんな危機におちいるということを私は心配しているので、ひとつ将来の打開についてちょっと聞いておきたい。
  89. 比田正

    政府委員比田正君) ただいま御指摘になりました内航海運の重要性につきましては、私ども運輸省としては非常に痛感いたしておるわけでございます。実は海運局のほうからお話があるかもしれませんが、外航のほうは御承知のような状態で立て直しをやっておりますが、内航につきましては、内航海運懇談会というのが先般持たれまして、その結論といたしましても、内航関係の港湾施設を大いに整備してもらいたいという要望も出ております。  そこで、ただいま数字をもってちょっと申し上げますと、昭和三十七年の港湾統計によりますと、全国の港に出入りいたしました貨物の総量は五億六千五百万トン、それを外国貿易関係と内貿関係に分けてみますと、外貿関係は一億四千五百万、内貿関係は四億二千万トンでございまして、七四%が内貿関係の貨物でございます。  そこで、港湾設備についてはどういたしておりますかと申し上げますと、内航と申しましても、大きな汽船から先ほど御指摘がありましたような小さな機帆船までございます。地方の港湾は大体ごく小型の汽船あるいは機帆船というもので、特に瀬戸内等はそういった港の整備を従来もいたしてまいりましたけれども、一番問題となりますのは、大きな港の中の内貿施設は確かに御指摘のように非常に立ちおくれているわけです。そこで私どもは、小さい地方の港湾の整備はもちろんいたしますけれども、東京、大阪、神戸、横浜等におきますところの内国貿易の港湾施設も今後は大いにやっていきたい、かように考えております。  ただいま私どもは港湾の整備五カ年計画を改定の作業中でございますけれども、大体ただいま考えております内貿関係の施設整備としては、三十九年から五カ年間でございますが、その五カ年間に約一千百五十億ぐらいの投資をいたしたいという案をもちまして、これから財務当局ともいろいろ話を進めたいという状況でございまして、御指摘のとおり、内貿の港湾は大いに整備いたそうというふうに方針をきめております。  御指摘がありました中で、内国貿易の港湾はほとんどないと仰せられましたけれども、私どもはさようには考えておりませんで、小さい船の港は全国に約一千ぐらいございまして、これはそれなりの設備をいたしております。ただ、大きい港の中の内貿施設は、確かに外貿施設よりはるかに立ちおくれていることは事実でございます。そういうような観点から、大小合わせまして、内国貿易に対する港湾の整備は今後強力に進めたいと思います。
  90. 天田勝正

    天田勝正君 一問だけで終えると言ったのですから、約束を守って要望だけしておきます。実際ね、だれも、日本の海運のうち小型海運ですね、これが私鉄なんかの七十倍も運んでいるなどということは、おそらく案外知られてないのじゃないか。そういう実情にあって、しかも、これが中小企業の問題となれば、もっと皆さんも関心を示してくれると思うのです。ところが、私がさきにも指摘しましたように、実は大きい船舶会社の下請みたいなことになっちゃって、その支払い遅延たるやおびただしいものだけれども、これも陸の問題でないから、たくさんの量と額を扱いながら、やはりその関心が薄い、こういうことになっているのですね。ですから、大会社は下請で小型を雇って輸送させる。そうしてさあ船賃は、着船してみたところで、さっぱり支払わない。滞船料は、それは荷主、つまり大会社のほうが、あるいは石炭会社とか鉄鋼会社とか、そういうところなんですけれども、その荷主のほうが支払うべきのが、航行する普通大体八割ぐらいあれは払うはずです、そういうものもさっぱり払わない。みんなこれが、陸の中小企業と同じことで、小型舶船のほうへどんどんしわ寄せになっているのです。で、かかる状態を、どうもその改善するために、このほうの努力も私はまだ足らぬと思う。これは私は実はあなた方の立場にも同情している。というのは、相手がなかなか大企業ばかりで、そっちのほうからえらく圧力がかかってきますからね、これは現実問題として。ですから、確かにやりにくいと思う。しかし、そこをやはり、官僚組織の悪い面ばかりじゃなくて、いい面をひとつ発揮して、中正なる態度で臨んでもらわぬことにはしかたがない。これは別に答弁を求めるのではなくして。  みんな、外航船舶といえば、だれだって目をつけて、そっちをどっとやるし、まあ早い話が、われわれだってそっちのほうを議論したほうが、はででいいのですよ。ところが、内航船というようなことになると、たいへん重要なことになって、鉄道よりもよけい運んでいるということは、おそらくわかっていやしないと思う。それで、木材や肥料みたいに山のほうに生産地がある以外は、くどい話ですけれども、それ以外は全部やはり海運にたよっている。でありますから、ひとつ大いに、もうこれから来年度の計画でも早く策定をされて、当委員会あるいは運輸委員会等でひとつ報告を願う。皆さん方も世間の関心を高めるようにPRのほうもしていただく。いろいろなことを希望だけいたしておきまして、きょうはこれでやめます。
  91. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日はこの程度にとどめておきますが、次回の委員会は十七日(火曜日)午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十一分散会