○
国務大臣(
大平正芳君) 対外援助の問題、DAGを通じてのお話がありましたが、われわれの対外援助政策は一九六二年から六三年に後退したじゃないか、したがってそれに対する
指摘が今後行なわれるのではないかということでございますが、私
どもの対外援助政策の基調は全然変えていないのです。いままでは御
承知のように賠償支払いを軸としてやってきたわけでございますが、これは義務の履行としてやってまいりまして、順調に支払いは進んでおりまして、ベトナム、インドネシア、ビルマと非常に進捗しておりまするし、フィリピンのほうは
国内事情もございまして若干おくれぎみになっておりますけれ
ども、しかし、これは大体において順調に推移しておると見て差しつかえないわけでございまして、問題は賠償以外の
経済協力でございますが、これはDAG等でコンソーシアムの形でインドとかパキスタンなんかでやっているような円クレの
措置は応分のおつき合いをいたしておりますが、その他の面では結局そのいいプロジェクトが出てこなければならぬわけですが、いまのようなアジアを主にした地域地域においてわれわれがすぐミートできる、対応できるプロジェクトが先方の受け入れ
政府のほうにおきまして御用意が十分でないという事情もありますが、御
指摘のように多少一九六三年の成績が思わしくなかったということはいえますが、これは
日本がそのように対外援助政策を若干ネガティブに考えかけたのだということではなくて、私
どもはいつもポジティブな姿勢でおるわけでございますが、そういう条件が整いかけておるということでございます。
今後、DAGで
指摘されようがされまいが、私
どもといたしましては、総理もたびたび国会でも申し上げておりますように、軍事力でお助けするようなことはできない
立場でございますので、唯一の先進国として
経済協力を媒体にして友好国を助けていこうという姿勢は、これは強まりこそすれ弱めるつもりは毛頭ありません。
日本の生産力の現状から申しましても、やはり輸出を、
国内消費、財政需要にプラス私は
経済協力というものに市民権を与えてもらいたい。
日本の
経済の循環の中にちゃんと足場を持つようにしておいていただきたい。幸いに国会におきましても与野党も
経済援助政策にはそんなに考え方の差はありませんし、官民の間にもありません。したがって、
日本としては
経済協力をやる政治的な背景としては、環境としては比較的恵まれた環境にあると私は思うのであります。問題はすぐれた計画ができてくるということで、そのすぐれた計画を練り出すことができるように
日本は行政面におきましてもいろいろお力になってあげるという方向で施策すべきものと思います。
それから、第二点として、プレビッシュ提案の問題でございますが、これは国連の
貿易会議全体に対する考え方でございますが、これは衆議院でもずいぶんこの間から議論になっておるので、国連がこういう問題について、従来ガット等で、既存の機構でやっておったものを国連が大きく取り上げてくる段階になりました政治的な背景、あるいは政治的な意欲というものは、私
どもも理解できるところでありまするけれ
ども、しかし、これがあまり、南北に分けて、南のほうの側の独走に終わるようなことがあったら、あまり効果があがらぬのじゃないか。やはり先進諸国のコントリビューションがなければ動かないことが遺憾ながら現実ですから。したがって、この
貿易会議が、南北が政治的に対立するというか、労使の間の団体
交渉みたいなかっこうになったのでは、あまり生産的でなくなるのじゃないか。したがって、私
どもとしては、漸進的にかつ建設的にやっていこうじゃないかと、基本の観念としてはそういうようなものをもって臨みたいと思っております。
したがって、プレビッシュさんの御提案、非常にラジカルな提案で、みごとな提案でございますけれ
ども、たとえば特恵制度を勇敢に打ち出しておりますけれ
ども、あれも手放しであれをやったりしたらたいへんなことだと思うのでございまして、相当現実の制約を加えた上で、しかし特恵制度をやってはいかぬなんと言ったらいかぬと思うのです。やはりできるところから特恵制度をぼくは認めるべきだと
結論としては思いますけれ
ども、ああいう野心的なものにすぐ
日本が同調するというわけには、私はなかなか参らぬだろうと思う。
それから、たとえば機構の問題にいたしましても、膨大な機構をひとつ国連
貿易会議自体が持っていきたいと。ガットでもこういう問題いろいろ苦心して、ガットの実行計画というものをみんなつくり上げてきて、それが先進国のほうでは大体プラクチカルなものとして支持しておるような状況において、そういう機構のいままでの努力と無
関係にこれだけが独走してしまうというようなこともあまり賢明じゃないのじゃないか、いまの段階においては、という気持ちで、ただしかし、この
貿易会議が事務局は全然持たないなんということもいかぬと思うのです。したがって、サイザブルな機構はつくっていいが、既存の機構の機能というものは尊重して、それとのコオーディネーションをうまくいくように
日本としても配慮すべきじゃないかというように思います。
それから、第一次産品の問題につきましては、一口に第一次産品と申しますけれ
ども、これは温帯産品と熱帯産品とありまして、温帯産品のほうはどちらかというと先進国でございまして、熱帯産品が南のほうで、ほんとうの問題になってくるのじゃなかろうか。その場合に、これは輸入需要の数量を相当引き上げられるという問題と、価格を安定してあげるという問題とございますが、これは従来、関税の引き下げとか、あるいは関税外の輸入
制限とかいうものを撤廃の方向、あるいは関税を特に南に対してはいままでの先例にとらわれないで考えてあげるというような原則に私
ども賛成です。そういう方向に努力をしたいと思いますし、その輸入
制限につきましても、現実的な配慮を加えていくべきだと、これは前向きに考えてあげていいと思うのでございますが、いままで御
承知のような商品協定というかっこうで価格安定をはかっている品物もコーヒーその他ございますので、ああいった努力をじみちに重ねて積み上げていき、それが足らぬところはさらに他の品目に拡充していくべきじゃないかという議論が先進国の側にじみちにあるわけでございますから、そういうのを全然無視して独走しちゃうというようなことはあまり生産的でないのじゃないか。
したがって、非常に
日本としては苦しい
立場に立つわけでございまして、
日本自身がもう第一次産品で
日本の農業と競合するものもたくさんかかえているし、AA圏の一員であるし、先進国の一員であるし、非常に微妙な
立場にあるので、いつもまあおたくの党のほうからおこられるわけですけれ
ども、しかし、これは非常に私
どもは、考えようによっては非常に
日本はユニークな国だと思うんです。こういう国を神さまがつくったということは、非常に天の配剤よろしきを得て、
日本でなければできない
役割りがぼくはあると思うんです。で、国連
貿易会議におきましても、先進国も
日本におたよりになるし、AA圏もおたよりになるし、両方からたよられて非常に困る局面がいろいろ出てくると思うんです。それは困っていいと思うんです。
日本しかできない
役割りがあると思うんでございまして、
日本はいままでの国連活動でもそうでございましたように、早急に走らぬで、じみちに建設的にいくんだ、そうして実効をあげるんだということでいきたいと思っております。全体として、
貿易の問題にいたしましても、援助の問題にいたしましても、いまのところ好むと好まざるにかかわらず、先進諸国の協力がないと何も動かぬのです。実際これはもう決定的なことなんで、それにかみついて実効があがらぬ方法よりは、ちゃんとそれとの橋かけて、そうして実効をあげていくように努力する
役割りが私は
日本にあると思うのでございます。
それから、ケネディ・ラウンドの問題につきましては、これは大きな関税圏として
EEC、
アメリカ、イギリス、
日本と、大きな四つの関税勢力があるわけでございまして、
EECと
アメリカとの間にもいろいろ問題がありますし、
日本の
立場もまたきわめてここに微妙なんでございます。そこで、
アメリカはハーター特使をよこしたり、この間ブルメンソールなんかよこしたり、事前の協議をいろいろやろうじゃないかということ。それから、イギリスや
フランスや
ドイツとも私
どもできるだけ事前に意思の疎通をはかっておいて、
日本の特殊な事情、あなたが冒頭に言われたいろいろな
貿易の関税外の制約、そういった面につきましては、十分もう先方の頭に入れてありますが、
日本がバーゲンする場合はそういうものとの事前の了解工作というのをずっと私は進めていかなくちゃいかぬと思います。これはいま順調に進んでおります。ただ、いつまでも首鼠両端を保っておれませんので、ある段階になりますと、
日本としても案を持たなければならぬと思いますが、ただいまのところ各関税圏の意向を十分聞いた上で、
国内各省たいへんやかましい問題でございまして、意見調整に念を入れている段階でございます。非常にこうクリアカットな、ドラマティックなことはできませんけれ
ども、の努力を拂っていきたい。
特に、仰せのとおり、いまの国際環境は非常にきびしいものがありまするし、これをどう判読していくかというのは頭が痛い問題ばかりでございますけれ
ども、しかし、総体として、
日本の
経済的実力は単なるリップ・サービスでなくて、事実として相当評価してきておりますし、信用ももってきておりまするし、
日本と協力していかなければならぬという機運も出てきておりまするから、ここは遠慮なくあらゆる問題について
日本側はどんどん発言をしていい環境に私はなっておると
判断いたしております。