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1964-03-10 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十日(火曜日)    午前十時二十八分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            岡崎 真一君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            津島 壽一君            鳥畠徳次郎君            林屋亀次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            野々山一三君            野溝  勝君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    外務省経済局長 中山 賀博君    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   参考人    日本輸出入銀行    総裁      森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外国為替及び外国貿易管理法及び外  資に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出) ○日本輸出入銀行法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  先ほど理事会で御相談した結果を御報告しておきますと、午前中には大平外務大臣出席しておられまするので、外国為替関係法律案についての質疑をいたしまして、休憩の後、午後は二時半か三時ごろまで印紙税法、それから輸出入銀行関係法律案質疑の残りをしまして、大体三時ごろと思いますが、三時ごろから経企庁長官出席を求めて、外国為替関係法律質疑を続けて行なうということになっておりますから、御了承願います。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に続いて、本案の質疑を続行いたします。大平外務大臣出席しておられますので、質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣に伺いますが、二月十四日にこの外為関係法律改正案が本会議に上程されましたときに、総理大臣日米通商航海条約との関係質問したわけなんです。総理大臣の御答弁は、私の質問した要旨は、日米通商航海条約の十二条の二項によりまして、IMFの十四条国に指定されて十四条国である場合は為替制限をすることができる規定になっているわけです。通商航海条約の七条におきましては、御承知のように、内国民待遇を与える、アメリカ資本に対して日本資本と同じ待遇を与えていくことになっているわけですが、しかし、十二条で為替制限という項目ですが、「国際通貨基金が特定の為替制限を行うことを締約国に特に認め、又は要請する場合にその為替制限を行うことを妨げるものではない。」と、こういうことになっておりますね。ですから、通商航海条約七条で、アメリカ資本に対して日本資本同等待遇を与える、内国民待遇を与えることになっておりますけれども、十二条の為替制限規定を見ましても、IMFの十四条国に日本がなっておるから為替制限をすることを妨げることがないということになっておるわけです。さらにまた、いままで日本外資法があって、その外資法に基づいて為替制限をすることができていたわけですが、今度は八条国に移りますと、為替制限ができないことになるわけですね。また、直接投資につきましては、OECDに参加しますと、直接投資につきましてもあれは留保をいたしておりませんから、直接投資についても制限ができなくなる。そういうことになりますと、今度は国内産業保護立場から、日本企業アメリカ資本に支配されるのではないかということが憂慮されるわけです。これはもう大臣は前から御承知と思いますが、通商航海条約が昨年十月ごろ十年の期限が来たわけでして、あの当時も財界で非常に問題になったわけです。大臣も御承知だと思うのです。したがって、この機会に、八条国に四月一日から移行することになるわけです、あるいはまたOECDにも参加するわけですから、そういう機会日米通商航海条約をここで改定いたしまして、アメリカドイツ通商航海条約のようにはっきりと国内産業保護できるように改定されたらどうかということが私の質問趣旨だったわけです。この趣旨はおわかりですね。これに対して総理大臣は、日米通商航海条約で、十四条国であったならばいいけれども、八条国に移行した場合については問題があるのじゃないか、こういう質問であるが、これは多年われわれが検討してまいりました、またいま検討しているのですが、ただいまのところ別に支障はないと考えておりますと、こういう答弁なんです、ただいまのところ。  しかし、問題は、ただいま支障がなくても、今後支障があるのではないかということが問題なんでありまして、きょうの朝日新聞をごらんになりますと、株式譲渡制限につきまして、商法を改正して、外資法ではなくて日本商法を改正して、そうして株式譲渡制限をできるようにしてはどうかということが検討されているようであります。したがって、このままでいいというわけにはいかないのではないか、何らか措置を講ずる必要があるのではないか。また、この問題だけではなく、日米通商航海条約アメリカとよその国との、日本以外の国との通商航海条約と、いろいろ検討いたしますと、特にその中で米独通商航海条約日米通商航海条約と比較しますと、かなり有利な点はあるのですけれども——ドイツよりも有利な点もあります。しかし、やはり不利の点が多いように思われます。したがって、この際そういう点について対等の立場に立って少なくとも米独くらいの通商航海条約に改定する意思はないか、こういう点について大臣にひとつ伺いたいと思います。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結論としては、日米通商航海条約を改定しなくとも、いま木村先生が御指摘された日本産業保護していく上におきましてわれわれは支障はないと、こういう結論をわれわれは持っておるわけでございます。  で、御指摘のように、IMFの八条国に移行することになりますと、特認を受けた場合のほかは、国際収支を理由といたしまして為替制限を課せなくなる。このことは、いま御指摘になりましたように、日米条約の十二条二項の規定によりまして同一の義務を負っておるわけでございますが、ただ資本取引につきましては、IMFの問題ではなくて、これはいままさに御指摘のとおり、日米通商航海条約の問題になってくるわけでございますが、日米条約では、議定書の六項によりまして、通貨準備保護のため外資導入に対し必要な制限をすることができますので、八条国移行後におきましても、通貨準備保護目的のためであるならば外資導入規制は引き続き行ない得るわけであります。問題は、ここにいう通貨準備保護のため、保護の必要というのはどういうことかということでございますが、これは短期的な通貨準備保護のほかに長期的な観点からもわれわれは考慮ができると思っております。いま触れられましたOECD自由化規約に対して、わが国が直接投資につきまして、指摘いたしましたようなわが国経済に著しく有害な影響を与えるおそれのある例外的な場合にはという文句で指摘いたしておりますが、そういう場合にも長期的な観点から通貨準備影響するところが大であると認めることができますので、通貨準備保護目的をもって必要な規制を行ない得るとわれわれは解釈しております。したがいまして、いまの体制で別段支障はないと思います。  それから、第二点として、御心配OECD加盟した場合にどうなるのだという問題でございますが、OECD自由化コードというのは非常にこまかくできております。それから、日米通商航海条約というのはごく一般的な規定でございまして、私どもの見るところ、OECD自由化コードを積み上げていっているのは、日米通商航海条約でうたってある方針をマテリアラィズするようなものではないかというように考えられますることと、それからOECDはこれは一つクラブでございまして、別段、全部が満場一致でなければ規約は成り立ちませんし、こちらが反対することもできますし、また棄権することもできますし、反対すればその規約は成り立たないし、棄権をいたしましたらそれは日本適用にならぬ、こういうルーズな仕組みになっておるわけでございまして、ただいまの仕組みから申しまして、日米通商航海条約解釈によって、私どもは、いま先生が御指摘になった日本産業保護していく上において支障がある、というように判断いたしていないわけでございます。一応お答え申し上げます。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 心配がないというならば、この問題は財界等でそんなに問題にされないと思うのですがね。きょうの朝日新聞に出ておりましたが、御承知だと思うのですが、最近は日本の欧米における転換社債発行とか、そたから米国の預託証券発行などによって、企業の中で占める外資の率がかなり高くなってきている。そういうところから、転換社債を今度株式に振りかえる、そういうようになっているわけですね。ことに、大企業の場合も問題あるでしょうけれども中小企業の場合、資本金一億円以下の企業のような場合ですね、株の買い占めによって企業を乗っ取られるおそれもあるだろう、そういうことも指摘されているわけですね。それで、これは私もはっきり確かめたわけではないのですけれども、ひところ、日本企業合併が行なわれて、資本金を大きくする傾向が強くなったのですが、その一つは、解放経済体制に入って、そうしてアメリカ資本が入ってくるような場合に、国内資本を非常に大きくしておけば、外国資本が入ってきても、その全体の資本の中に占める外国資本の比率は小さいから、そこであまり心配ない、そういうこともあって合併によって資本金を非常に大きくする傾向が出てきたということも一時いわれたわけなんですよ。  ですから、現在は、いま大臣の言われるように、現在は心配ないとしましても、将来日本は八条国に移行しますと、あと戻りすることができないわけですね。できませんし、それからもう一つ、いまOECDのことでございますが、OECD勧告権があるわけですね。勧告があるわけです。勧告された場合に、それはどの程度拘束力を持つか。その点はやはり将来問題があると思うのです。いまは、大平大臣は、クラブみたいなもので、満場一致でなければならないし、反対することもできるし、留保することもできるというお話でしたが、しかし、勧告を受けたときに拒否できるのかどうか。そこもなかなかデリケートな点もあると思いますね。前にも質問したのですが、フランスに対して勧告して、フランスが非常に物価が高い、そこで物価抑制策について勧告をした。その中に一つわれわれ気になるのですが、OECDで非常に研究しております所得政策というのがあるのですね。ガイドライン政策というのがあるのです。いわゆる生産性向上以内に賃金の上昇を押えるべきだ、こういうガイドライン政策というものが研究されているのです、所得政策として。OECDの場合特に特別なものをつくりまして、そういうことをフランス勧告したということが新聞に伝えられているわけです。もちろんフランスはこれに対してすぐにその勧告をいれたというふうには伝えられておりませんけれども、そういう場合もあるわけです。  ですから、一つは、国内中小企業の場合そういうおそれもないといえないのではないかということと、それからもう一つは、いまの拘束力ですね、勧告を受けたような場合の拘束力についてどういうふうにお考えになるか。もちろん、OECDが、さっき大臣言われましたように、国内産業に非常に支障のある場合はこれは制限することもできることになっていますが、その判断ですね、どの程度国内産業に著しい障害を及ぼすのか、一応その判断も問題になってくると思うんです。将来の問題について十分検討しておく必要があると思いますので、質問しているわけです。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 将来の問題として念を入れて検討しておかなければいかぬということに対しましては、会く私も同感でございます。ただ、ポリシーの問題として、いま木村先生がおっしゃるように、まあ日本中小企業なんかの場合に、外資のほうが割合が多くなるということが、潔癖に絶対にいかぬのかどうか、こういう考え方ですね。それはまあ別な問題として、日本国民経済を守っていく上におきまして必要な手段がいま与えられた条約、法制の上で用意されているかどうかという点が問題の核心だろうと思うのでございますが、私ども商売柄その点非常に注意深くいろいろ検討総理大臣が言われたように検討をしまして、そうしてしたところの結論として、日米通商航海条約の面から申しましても、OECD条約規定から申しましても、その心配はないのだという結論であるということは、先ほど私も申し上げたとおりでございます。  それから、第二点として、しかしOECD勧告権を発動しておるじゃないか、そしてまた今後もそういうことがあり得るじゃないかという御懸念でございますが、いまの御引例のフランスの場合は勧告でなくて一つの意見の表明だということだそうです。しかし、勧告がかりにありましても、勧告はあくまで勧告でございまして、それが高度にクリスタライズされないと別に規制力は私は持たぬと思います。OECDの問題は私はこのように考えます。OECD目的自体が御承知のように三つございまして、経済を成長さそうということ、貿易は拡大さそうということ、後進圏に対しては援助は拡大していこうということ、この三大目的お互いメンバーがコオーディネートしてくふうしようじゃないかという集まりなんでございまして、問題はその目的に有効にお互いひとつ考えていこうじゃないかというのが仕組みなんでございます。したがって、どの国の経済政策をどのように規制して、そのように伸びるのを押えてやろうとか、そのような根性ではないのでございます。でございますから、その点は少しナーバスに過ぎるじゃないかという感じが私にはどうしてもするわけでございまして、この点はもう少しおおらかに考えていただいて差しつかえない問題じゃないかというようにぼくは思います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま大臣ナーバスに過ぎるじゃないかと言われましたが、私はなぜナーバスに考えるかといいますと、いろいろ事情を考えてみますと、OECDがいままではわりあいにルーズであった、だけれども、どうも最近かなり規定を厳格にというのですか、適用するような方向にあるということを聞いたわけです。それで、これはOECD加盟準備として向こうから日本に参りました。そのときいろいろ八十二項目自由化コードにつきまして、資本移動貿易経常取引についていろいろ日本側と事務的に折衝されたときに、意外に向こうが予想よりは厳格にコードについて、主張をされたというようなことも新聞等についてわれわれ知ったわけです。そういうことをわれわれは新聞で知ったり、あるいはまた聞いたりいたしますので、いま大臣がおおらかにと言われましたけれども、いままではわりあいにルーズだったというのですね。私も実態はよく知らない。これは資料で見たり聞いたりしているわけですから。しかし、今後はそうおおらかではないのではないか、わりあいに厳格に適用しようという傾向にあるということを聞いているものですから、そういう実情をどなたかよくおわかりでしたら、聞かしていただきたいのですが。
  8. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 昨年OECDから事務当局の方が見えまして、貿易外経常取引自由化契約等、それから資本移動自由化契約について、日本側がいかなる留保をするかというような問題について種々折衝いたしました。で、その結果は、この経常貿易につきましては、五十四項目のうち留保九、それから資本移動のほうにつきましては、項目数にしまして二十八でございますが、留保は八いたして、合計について見れば八十二項目中、わがほうは十七項目について留保をいたしたわけでございます。何ぶん向こう事務当局は役人でございますので、この規約解釈、あるいはそれに対するわがほうの留保要求に対して、ここはこう読むのだからその必要がないじゃないかというようなことで、相当事務的にはいろいろ議論いたしました。ただ、私は、非常に厳格に、いわば日本をやっつけてやろうと、日本のお行儀をこれで直してやろうというような感じはしないので、やはり友好裏に、また日本側経済実情がわかるにつれて、先方も非常に理解のある態度を示したように考えております。  それから、われわれも、このOECDというものがOEECから発展してまいったものでありまして、OECCの昔の方針あるいは当時のしぶりにつきましては、つまびらかにいたしませんが、最近例外的にOECDの幾つかの委員会に出てみまして、非常にOECD適用について厳格であるという印象は必ずしも持っておりません。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならばいいんですけれども、われわれが最近いろいろ新聞に出ておるところを見ますると、どうもそういうものではないのではないかという印象を強く受けるのです。たとえばOECD参加メンバーとして有力なEECですね、EEC六カ国が、これは三月一日の新聞の報道ですけれどもわが国との間に単一通商条約を締結しようとしているんですね、ということが報道されておるわけです。それで、EEC審議会エルンスト局長の、対日関係担当者からですが、非公式に申し入れがあった。これは前の委員会でも質問したんですけれども、もしEEC六カ国とわが国との間に単一通商航海条約EEC側主張に基づいて締結されるとなると、OECDに参加することによって得る利益がほとんどなくなってしまうといわれているわけです。つまり、OECD加盟国として同等待遇を受けるということが全くなくなってしまう、こういうこともいわれておるわけですね。そういうことになると、何のためにOECDに入るのかということも疑義も出てくるわけです。この点については政府のほうは、エルンスト局長申し入れに対して日本はいまのところ交渉に応じる態勢にない、拒否の態度を示した、こういうことが伝えられている。この前に通産省の山木通商局長ですかに伺ったときに、拒否した、こういことを言われていた。これはただ拒否したというだけで過ごされる問題であるのか、今後これは非常に大きな問題ではないかと思うのですよ。この点、外務大臣、どういうことになっておるんでしょうか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは先のことで、一九七〇年の目標で共通通商政策EECとして打ち立てていこうという準備をしていることは事実でございます。いままでは関税政策の面で相当の実績をあげてき、非常にむずかしい農業政策の領域でも、若干の前進を示しておることは御案内のとおりでございまして、通商政策といえども、これはEECとして共通のものを持っていこう。したがって、対日関係EECとしてまとまったものをつくり上げるべきだと。これはEECとしては当然のプロセスだと思うのでございます。したがって、私どもとしては、結局EECとの間に共通通商政策を持たなけりゃならぬ時期が来るだろうと思うのでございます。これは逃げられぬことだろうと思います。ただ、現在の時点が、それではそういうものの討議に入るタイミングとしていいかどうかという判断になりますと、これはよほど検討を要すると思うのでございます。  ただいま、御承知のように、たびたび国会でも御報告しておりますように、EECメンバー各国わが国バイラテラル通商交渉をずっとやってきておりますし、最近の例では、フランスを四、五日前に仕上げた経緯は御承知のとおりでございまして、ところが、これを見てみると、まあ足の長いのもあれば短いのもあるという状態でございまして、したがって、その出おくれた船にみんな右へならえされたんでは、せっかくわれわれがバイラテラル交渉においてかちとったものをみすみす譲らにゃいかぬという事態になることは、決して日本として賢明じゃないと思うのでございます。したがって、いまのままの姿ですぐ共通通商政策との討議に入っていいかというと、そういうものではないと思うのでございまして、したがって、討議に入る前には基礎の条件を十分固めてからかからにゃいかぬものだと思うのでございまして、いま直ちにひとつ話し合いに入ろうなんという姿勢じゃございません。十分の基礎固めをしてと考えております。  それから、EFCDとEECとの関係でございますが、EECとそういうまとまった関係に立つことになりますると、OECD加盟したことの利益が半減してきはしないかという見通しでございますが、これは向こうさんの側の問題でございまして、たとえばアメリカとカナダがOECDに入った——アメリカという国、これは一つの国旗のもとに一つの国を立てておりますけれどもEECを合わしたよりは大きいわけでございます。EECが結成されて、そうしてこれが共同市場としての実態をだんだん固めていくことはEECの本能でございますから、これが一つ固まりを見せてくるということは、OECDの問題とは私は別だろうと思うのでございます。OECDはそういう経済圏の中にそういう姿のものとしてかかえ込むものにすぎないのでございまして、そのためOECDの機能、役割りが半減するんだというようには私は見られないんじゃないかというように感じますが。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは将来非常に重要な大きな問題になると思いますが、ただいま外務大臣は、結局将来は単一通商航海条約の締結はこれは避けられないんじゃないか、将来はですね。そうなると、この単一条約の骨子として伝えられるところは、対日セーフガードと対日共通輸入制限品目の設定を前提とするということが第一ですね。それから第二が、セーフガード、つまり緊急輸入制限条項は、EEC加盟の一国に損害を与えるときもほかの五カ国を含む全域適用し、ネガティブ・リストは加盟六カ国の政府、民間いずれも反対しない最大公約数できめる、これが第二です。共通通商政策に関して、対日交渉中に日本に対し新しい措置や約束を結ばない、EEC全域共通する対日差別制度化、恒久化しようとするものである、こういうふうに伝えられておるのですね。そうしてEEC委員会理事会に提出した日本に関する共同措置の実施及び通商政策一本化の手続に関する理事会決定というものがなされておるのです。その内容はいまお話ししたようなことなのです。  そうなりますと、日本は、これまでEEC接近政策というものは積極的にやってきたようですけれども、対日差別が恒久化されるということになるわけでして、日本開放経済体制に直ちに移行するにあたりまして、その自由化する場合に、その前提として対日差別の撤廃を要求しながら自由化の段取りをきめていくという前提一つあったわけでございますね。そういうことが一つ、ずれてくるわけですね。そういうことも困難になってくる。それで、実質的にいえば、外務大臣はあまりこの影響を重大視されていないようでございますが、またOECDとの関係についてもそう重大視されていないようですけれどもOECD加盟国の中で有力なこの六カ国がそういう差別待遇を恒久化するということになると、OECD加盟国として同等待遇を受けるというOECD加盟の意義が非常に薄れてくると思うのです、実質的に。で、OECD加盟を前に控えてこういう問題が出てきておるわけですからね。こういう問題が出てきておる。これをどういうふうに措置するかは、これは今後の日本開放経済体制移行にあたって重大な一つの問題になってくると思うのです。そういう意味で御質問しているのです。これは非常に重大な問題じゃないかと思うのですけれどもね。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御承知のように、EEC日本との貿易は、去年は二五%伸びたわけです。非常に顕著な伸びを示しているわけです。それで、EECを結成することの利益というのはそのメンバー各国が一番よく知っていることでございまして、そうして彼らは、その経済圏の中に閉じこもってインワード・ルッキングをやっておったのでは自分たちの繁栄につながらぬという認識に立って、それで域外各国と果敢に貿易をやろうという、貿易を拡大しようという外向きの政策をずっととってきておる証拠なんです、これは。したがって、対日共通通商政策をとることによって対日貿易が縮小の方向に向くとかあるいは制限的になるとかいうようなことは、ぼくはEECの自殺だと思うのです。そういうことをEECが考えることは非常に愚かなことであって、そういうことは私はEECは考えないだろうと思うのでございます。つまり、現在のようにバイラテラルな形でもってやっておるよりは、ひとつ、まとめた形で対日関係を調整したほうが対日貿易は伸びるのだということにしないと、EECも手間かけてそういうことをやるのは私は損なことでありまして、決してEEC目的に沿うゆえんでないと思います。  そこで、木村先生の御心配のようないろいろな規制措置が一般に普遍化されたり、セーフガードが全部に適用されるようになったりするような懸念をいま御指摘になりましたが、どのような姿のものになるのかはこれはやってみなければわかりませんけれども、私は、そういう段階において対日共通通商政策をとるということは、双方が双方の貿易を拡大するのだという目的に沿って措置していくことによって、いま御懸念のような個々の規定をどうするかという問題は確かにあります、ありますが、しかし結果として対EEC貿易は対日貿易が伸びるのだということを生み出すようにやるべきだと思うのです。また、向こうもそうやらなければ損ですもの。だから、そういう点は、御注意がありましたような点も十分私どもも吟味しながら、貿易を拡大していくという方向に沿った措置を考えていくべきだと私は思います。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま外務大臣の言われるとおりならば心配ないのですが、しかし、まあ日本EEC接近政策を積極的にとりだした、このとりだしたこと自体については、御承知のように、アメリカとの貿易がまあ大体輸出入が全体の貿易の約三〇%を占めているのに対して、EECとの貿易は五%くらいであったわけですよね。ところが、EEC六カ国は世界から二百四十億ドルくらい物を買っているのです。アメリカは百八十億ドルくらいしか買っておらない。アメリカ以上に世界から物を買っているEECに対する日本の輸出比率が非常に少なかった。特にアメリカはドル防衛政策をとるようになってから対日制限をいろいろやりだしたけれどもEECに積極的に日本の輸出を伸ばす努力をするということはこれは私は必要なことであるし、当然のことであると思います。しかし、非常に大きくEECに期待をかけ過ぎたのじゃないかという気もしますがね。一時はEECづいちゃって、何でもEECといいましたが、これは、イギリスがEECに参加するであろう、参加が認められるであろうという想定もあったと思うのですが、その後、どうもEECはそれほど開放的ではなく、かなりEECの性格は閉鎖的な面があるということで注目されなければならないようになってきているのじゃないかと思うのです。  それで、いま外務大臣が、EEC側としては全体としてやはり国内のいろいろな通商制限を撤廃して、国内の開放をはかると同町に、やはり外国との通商貿易も拡大しようという意図なんだ、そうしなければEECも損だしと言われたのですが、しかし、特に日本に対してセーフガードと、それからネガティブ・リストを共通的に設定するということになると、これはガットの三十五条適用と同じ効果を持っていますし、特にネガティブ・リストは日本の低価格を理由に自由化を拒否する品目のリストですから、そういうものが共通的に強化されてくるということになれば、実質的には日本の輸出に対しての制限が強化されるということになるのじゃないですか。今後日本自由化するにあたりまして、対日差別をやっておるところに対しては日本自由化をやらぬ、しかし、日本自由化する場合には、対日差別をやっておるところに日本自由化をやるんだから、対日差別を撤廃しろ、こういう要求をして、全体として日本自由化をふやし貿易を拡大していく、そういう方針がとられておる。そういうところへこういう統一の通商条約の提案がなされたということは、これは実質的には日本にとってマイナスになると見られなければならないと思うんですね、実質的に。特に対日セーフガードと対日共通ネガティブ・リストの設定を中心にしておるというところに非常に問題があるように思うわけですがね。  ですから、それはいま外務大臣が言われたことは原則論としては確かにそうだと思うんですよ。しかし、EECはかなりそういう点については閉鎖的のような側面があるし、特に日本に対してこういう統一通商条約の締結の要求をしておるということは一体どこに原因があるのか。やはり日本の低賃金に基づく日本品の、何というか、攻勢ですね、そういうものに対してかなり警戒的になっているんじゃないかという気もするわけですね。そういう点はどうなのか。それから、今後はただ拒否しっぱなしでいるわけにもいかないでしょうし、どういうふうにこれに対処していかれるのか、その点をお伺いしておきたい。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはお説ごもっともでございまして、共通政策をつくるにおきましては、一応足並みをそろえなければいけませんので、非常に不利な面が確かに出てくると思うんです。ただ、EECとしてメンバー各国経済主権をEECにある程度譲っていく場合に、日本はどうしてもバィラテラルにいくんだといっても、向こうEECに譲ったことですからといわれては、どうしてもEECを相手にせざるを得ない立場日本はあると思うんです。ですから、イン・ザ・ロング・ラン逃げられない問題だと私が申し上げましたのはその意味でございます。  その場合に、いま御指摘のように、日本にとって不利な面も私は避けられない面が出てくると思いますが、いまあなたのほうで御指摘になったように、日本の商品の競争力から申しますと、たとえばオランダとかあるいはベルギーとかいう小さい経済区域に与える日本の商品の刺激ですね、というものはEEC全体で受けとめてくれるわけです。したがって、この広域経済圏になればなるほど、局部をたたく痛さというのは全体で受けとめるほうが非常に緩和されますから、したがって、どうなるということを計数的になかなか言いあらわせませんけれども、私は結局、EECというこういう一つ経済圏を相手にしたほうが日本としてはディールしやすいんじゃないかという感じがするんです。また、そうしてそこで有利なディールをするようにすることの分別を考えていかなければいかぬのじゃないかと思います。  そうして特に私がEEC各国の責任者に会っていろいろやっておりますけれども、われわれは徹底的にアウトワード・ルッキングだというんです。貿易制限するという方向は考えていないんだと。いわば固持というふうな態度です。それはうそとは言えません。それはていさいとも思えませんで、一つの信念としてやっておるように思います。それはそのまま受け取っていいんじゃないか、そういうものとしてわれわれが有利にディールするように考えるべきじゃないかと私は思います。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大体、外務大臣はそういうふうに認識されておるここともよくわかるわけですが、今後の問題としてこれは非常に重要視されなければならないし、また政府でも真剣に考えられると思いますから、この質問はこの程度にします。  最近こういう対外的側面におきまして、開放経済体制に移行するにあたっていろいろ困難な問題が山積してきておるわけですね。これは今後の日本経済外交としてよほどしっかり対処しませんと、国際収支がこういうように楽観を許さない情勢にもありますし、これはかなり重大な時期に直面しているように思うのです。そこで、いまの問題ばかりでなく、このDAGの問題につきましても、五月二十八日パリで日本経済援助の現状を審査するということが伝えられておるわけです。ところで、いままで日本の低開発援助額は減ってきているということが伝えられておるわけです。たとえば一九六三年の低開発援助額は六二年の実績を千二百万ドル下回って二億七千万ドル前後となる見通しだ。そこで、すでにDAGは昨年の対日審査で、日本経済援助は減少傾向にある共産圏に対する信用供与の比重は大き過ぎる、こういう二点を指摘したと伝えられているのです。今後、こういうことからDAGから日本の低開発国援助に対して新しい申し入れがあるだろうというようなこともいわれるわけです。それから、国連の貿易開発会議ですね、これは三月末から開かれる。この会議でも、御承知のようにこのプレビッシュ案とEEC案とガット案と三つ出てきておりまして、いわゆる第一次産品に対する低開発国の輸出について問題か起こっておるわけです。日本は大体ガット案を支持しているといわれておるのですけれども、こういう問題も起こってきております。あるいはまた、いわゆるケネディ・ラウンドの問題もあるわけです。これもかなり進んできているように伝えられておるので、アメリカEECとの間にかなり対立がありましたけれども、妥協的な話し合いが進められているともいわれておるのです。こういうような点を見ますと、開放経済体制移行にあたって、対外的側面についてかなり重大な問題が山積してきておるわけです。したがって、こういう点についてどういう対処のしかたをしていくのか、この際お伺いしておきたいわけです。  さっきの質問は、そういう一連の対外的側面における困難性の増大という、その一環としてこのEEC共通通商協定の問題も質問したわけなんですけれども……。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 対外援助の問題、DAGを通じてのお話がありましたが、われわれの対外援助政策は一九六二年から六三年に後退したじゃないか、したがってそれに対する指摘が今後行なわれるのではないかということでございますが、私どもの対外援助政策の基調は全然変えていないのです。いままでは御承知のように賠償支払いを軸としてやってきたわけでございますが、これは義務の履行としてやってまいりまして、順調に支払いは進んでおりまして、ベトナム、インドネシア、ビルマと非常に進捗しておりまするし、フィリピンのほうは国内事情もございまして若干おくれぎみになっておりますけれども、しかし、これは大体において順調に推移しておると見て差しつかえないわけでございまして、問題は賠償以外の経済協力でございますが、これはDAG等でコンソーシアムの形でインドとかパキスタンなんかでやっているような円クレの措置は応分のおつき合いをいたしておりますが、その他の面では結局そのいいプロジェクトが出てこなければならぬわけですが、いまのようなアジアを主にした地域地域においてわれわれがすぐミートできる、対応できるプロジェクトが先方の受け入れ政府のほうにおきまして御用意が十分でないという事情もありますが、御指摘のように多少一九六三年の成績が思わしくなかったということはいえますが、これは日本がそのように対外援助政策を若干ネガティブに考えかけたのだということではなくて、私どもはいつもポジティブな姿勢でおるわけでございますが、そういう条件が整いかけておるということでございます。  今後、DAGで指摘されようがされまいが、私どもといたしましては、総理もたびたび国会でも申し上げておりますように、軍事力でお助けするようなことはできない立場でございますので、唯一の先進国として経済協力を媒体にして友好国を助けていこうという姿勢は、これは強まりこそすれ弱めるつもりは毛頭ありません。日本の生産力の現状から申しましても、やはり輸出を、国内消費、財政需要にプラス私は経済協力というものに市民権を与えてもらいたい。日本経済の循環の中にちゃんと足場を持つようにしておいていただきたい。幸いに国会におきましても与野党も経済援助政策にはそんなに考え方の差はありませんし、官民の間にもありません。したがって、日本としては経済協力をやる政治的な背景としては、環境としては比較的恵まれた環境にあると私は思うのであります。問題はすぐれた計画ができてくるということで、そのすぐれた計画を練り出すことができるように日本は行政面におきましてもいろいろお力になってあげるという方向で施策すべきものと思います。  それから、第二点として、プレビッシュ提案の問題でございますが、これは国連の貿易会議全体に対する考え方でございますが、これは衆議院でもずいぶんこの間から議論になっておるので、国連がこういう問題について、従来ガット等で、既存の機構でやっておったものを国連が大きく取り上げてくる段階になりました政治的な背景、あるいは政治的な意欲というものは、私どもも理解できるところでありまするけれども、しかし、これがあまり、南北に分けて、南のほうの側の独走に終わるようなことがあったら、あまり効果があがらぬのじゃないか。やはり先進諸国のコントリビューションがなければ動かないことが遺憾ながら現実ですから。したがって、この貿易会議が、南北が政治的に対立するというか、労使の間の団体交渉みたいなかっこうになったのでは、あまり生産的でなくなるのじゃないか。したがって、私どもとしては、漸進的にかつ建設的にやっていこうじゃないかと、基本の観念としてはそういうようなものをもって臨みたいと思っております。  したがって、プレビッシュさんの御提案、非常にラジカルな提案で、みごとな提案でございますけれども、たとえば特恵制度を勇敢に打ち出しておりますけれども、あれも手放しであれをやったりしたらたいへんなことだと思うのでございまして、相当現実の制約を加えた上で、しかし特恵制度をやってはいかぬなんと言ったらいかぬと思うのです。やはりできるところから特恵制度をぼくは認めるべきだと結論としては思いますけれども、ああいう野心的なものにすぐ日本が同調するというわけには、私はなかなか参らぬだろうと思う。  それから、たとえば機構の問題にいたしましても、膨大な機構をひとつ国連貿易会議自体が持っていきたいと。ガットでもこういう問題いろいろ苦心して、ガットの実行計画というものをみんなつくり上げてきて、それが先進国のほうでは大体プラクチカルなものとして支持しておるような状況において、そういう機構のいままでの努力と無関係にこれだけが独走してしまうというようなこともあまり賢明じゃないのじゃないか、いまの段階においては、という気持ちで、ただしかし、この貿易会議が事務局は全然持たないなんということもいかぬと思うのです。したがって、サイザブルな機構はつくっていいが、既存の機構の機能というものは尊重して、それとのコオーディネーションをうまくいくように日本としても配慮すべきじゃないかというように思います。  それから、第一次産品の問題につきましては、一口に第一次産品と申しますけれども、これは温帯産品と熱帯産品とありまして、温帯産品のほうはどちらかというと先進国でございまして、熱帯産品が南のほうで、ほんとうの問題になってくるのじゃなかろうか。その場合に、これは輸入需要の数量を相当引き上げられるという問題と、価格を安定してあげるという問題とございますが、これは従来、関税の引き下げとか、あるいは関税外の輸入制限とかいうものを撤廃の方向、あるいは関税を特に南に対してはいままでの先例にとらわれないで考えてあげるというような原則に私ども賛成です。そういう方向に努力をしたいと思いますし、その輸入制限につきましても、現実的な配慮を加えていくべきだと、これは前向きに考えてあげていいと思うのでございますが、いままで御承知のような商品協定というかっこうで価格安定をはかっている品物もコーヒーその他ございますので、ああいった努力をじみちに重ねて積み上げていき、それが足らぬところはさらに他の品目に拡充していくべきじゃないかという議論が先進国の側にじみちにあるわけでございますから、そういうのを全然無視して独走しちゃうというようなことはあまり生産的でないのじゃないか。  したがって、非常に日本としては苦しい立場に立つわけでございまして、日本自身がもう第一次産品で日本の農業と競合するものもたくさんかかえているし、AA圏の一員であるし、先進国の一員であるし、非常に微妙な立場にあるので、いつもまあおたくの党のほうからおこられるわけですけれども、しかし、これは非常に私どもは、考えようによっては非常に日本はユニークな国だと思うんです。こういう国を神さまがつくったということは、非常に天の配剤よろしきを得て、日本でなければできない役割りがぼくはあると思うんです。で、国連貿易会議におきましても、先進国も日本におたよりになるし、AA圏もおたよりになるし、両方からたよられて非常に困る局面がいろいろ出てくると思うんです。それは困っていいと思うんです。日本しかできない役割りがあると思うんでございまして、日本はいままでの国連活動でもそうでございましたように、早急に走らぬで、じみちに建設的にいくんだ、そうして実効をあげるんだということでいきたいと思っております。全体として、貿易の問題にいたしましても、援助の問題にいたしましても、いまのところ好むと好まざるにかかわらず、先進諸国の協力がないと何も動かぬのです。実際これはもう決定的なことなんで、それにかみついて実効があがらぬ方法よりは、ちゃんとそれとの橋かけて、そうして実効をあげていくように努力する役割りが私は日本にあると思うのでございます。  それから、ケネディ・ラウンドの問題につきましては、これは大きな関税圏としてEECアメリカ、イギリス、日本と、大きな四つの関税勢力があるわけでございまして、EECアメリカとの間にもいろいろ問題がありますし、日本立場もまたきわめてここに微妙なんでございます。そこで、アメリカはハーター特使をよこしたり、この間ブルメンソールなんかよこしたり、事前の協議をいろいろやろうじゃないかということ。それから、イギリスやフランスドイツとも私どもできるだけ事前に意思の疎通をはかっておいて、日本の特殊な事情、あなたが冒頭に言われたいろいろな貿易の関税外の制約、そういった面につきましては、十分もう先方の頭に入れてありますが、日本がバーゲンする場合はそういうものとの事前の了解工作というのをずっと私は進めていかなくちゃいかぬと思います。これはいま順調に進んでおります。ただ、いつまでも首鼠両端を保っておれませんので、ある段階になりますと、日本としても案を持たなければならぬと思いますが、ただいまのところ各関税圏の意向を十分聞いた上で、国内各省たいへんやかましい問題でございまして、意見調整に念を入れている段階でございます。非常にこうクリアカットな、ドラマティックなことはできませんけれども、の努力を拂っていきたい。  特に、仰せのとおり、いまの国際環境は非常にきびしいものがありまするし、これをどう判読していくかというのは頭が痛い問題ばかりでございますけれども、しかし、総体として、日本経済的実力は単なるリップ・サービスでなくて、事実として相当評価してきておりますし、信用ももってきておりまするし、日本と協力していかなければならぬという機運も出てきておりまするから、ここは遠慮なくあらゆる問題について日本側はどんどん発言をしていい環境に私はなっておると判断いたしております。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ほかの方の御質問あるようですから、簡単にあと二つ質問いたしたいのですが、低開発国援助の問題ですが、OECD目的は御承知のように三つあるわけで、一つは世界全体の生産力を高める、それから第二は世界全体の貿易を拡大する、第三が低開発に対する援助、こういうことになっておる。それで、三つの委員会があるわけですが、その中で特にこの低開発国に対する援助につきましては、いままでの経過を見ますると、共産圏が、たとえば中国、ソ連が低開発国に積極的な経済援助をするようになった、これに対して西側でも積極的に共同してそれと競争的に低開発国の援助をしなければならないということが大きな目的であったように聞いているわけです。そうしますと、今後日本OECDに入る前にDACの前身のDAGに入っているわけですけれども、今後日本が低開発国に対する援助については、従来のような日本が考えている援助ですね、たとえばコマーシャルベースによる輸出とか、さっき大臣は賠償も援助の一つだと言われましたが、そういう援助以外に、かなりコーマーシャルベースを度外視した政治的な援助というものも要求されてくるのではないか。こういう点はいかがなもんですかね。  それから、開発援助委員会日本経済援助の現状審査によると、共産圏に対する信用供与の比重は大き過ぎる、こういう点を指摘したといわれるのですが、今後そのために共産圏に対する信用供与について何か制限するような方向にいくのかどうか。プラント輸出の延べ払い、中国に対する、等も問題になっておるわけですから、そういうことについてこれはまたいままでより後退する危険があるのか、こういうこの指摘を受けたことによってそういうことには影響ないのかどうかですね。  それと、最後にもう一点。一番最初に戻るのですが、日本商法を改正して株式会社の株式譲渡制限をかりにやるということになった場合、これは日米通商航海条約から見てそういうことはできるのかできないのか、違反になるのかならないのか。これは通商航海条約第七条によって内国民待遇を与えるということになっているわけですから、そういうことはできないのではないかというように思いますけれども外資法のほうはそのままにしておいて国内商法規定によってそういうことができるのか、この三点ですね。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一の援助の問題でございますが、共産圏の援助というのは、いろいろな情報が伝えられますけれども、いろいろ調べてみると、たいした実績がないのです。それで、むしろ私どもとしては、共産圏もどんどん南北問題に応分の貢献をしてもらいたいと思うのですね。リップ・サービスばかりではなくて、真剣に取り組んでもらいたという希望をむしろ持ちますね。  それから、商業ベースの援助と政治的な問題ということでございますが、日本は、木村先生も御承知のように、非常に金利の高い国でございまして、いつもアメリカとの間に問題になるわけでございますが、私はこう考えます。非常に低金利で援助資金が調達できる国は、それに相当したプロジェクトをおやりになったらどうですか。たとえば、鉄道にしても、道路にしても、港湾にしても。ところが、中小企業とか非常に資本が枯渇している、労働力は豊かだというようなところは、その金利よりもむしろ絶対的には資本の欠乏ですから、そこは何も金利水準が日本がいま輸出入銀行のやっておる業務方法書によってたとえば六分で出しても、それで十分そう長期にわたらぬでリターンがきくようなものがあるわけでございます。したがって、この商業ベースと政治ベースというようにはっきり分けぬでも、プロジェクト・べースでお互いにディビジョン・オブ・レーバーで考えて、分別を出してやろうじゃないかということを、いつもアメリカ側に提唱しておるわけです。アメリカも、それはもっともだと。同じプロジェクトでも、非常にアメリカが得意とする部分があり、一つのプラントならプラントでも、アメリカの技術が非常に得意とする、しかし日本がやったほうが安い、低開発国の利益からいうと全体としてコストが低いほうがいいんですから、このプロジェクトはおれのほうが全部やらなければならぬというふうにきめてかかる必要はないので、お互いに協力して全体として安くやるようにくふうをする、こういうふうにしたらいいんじゃないかということです。  しかしながら、政治的な借款が全然考えられないかというと、そうはいかないのでして、たとえば韓国の問題。いまわれわれが何しておる経済協力の低利でやらなければならぬ韓国、その韓国以上に広げるかどうかという問題があるわけです。早い話が台湾の問題はどうかという問題があるのですが、台湾というところはいま非常に資本の効率の高いところです。したがって、経済的にその必要は別にあるとは私どもは今のところ考えておりませんけれども、いまのところ私のほうでは韓国の問題だけは別だ。あとは商業ベースでやれるんじゃないか。特別な低利長期のものを考えなくても回るんじゃないかというように私どもは考えております。  それから、第二点として、共産圏に対する信用供与の問題でございますが、正直に申しまして、制約ベースでいいますと相当共産圏に対する信用供与がかさばってまいりました。したがって、いつも私申し上げておりますように、輸出金融というものも無限にあるわけじゃないから、金融能力は。したがって自由圏、共産圏——共産圏にあまり信用供与がかさばってまいりますと、ほかが泣くわけですから、ここはグローバルに考えて最も効率的にやってもらいたいという頭です。貿易ですから、どうせ結局バランスをとらにゃいかぬわけでございますから、したがって、この間きめました対ソ貿易協定でも、いろいろわれわれのほうの代表にがんばってもらって、多少輸出超過にもっていって、千二百万ドルでしたか、いままでの信用供与の部分をそれだけ少なくするように努力したわけです。それで、まあそれもソ連が理解してくれてそういうふうになったわけですが、つまり私どもが念願としておるのは、共産圏を押えるとかなんとかいうんでなくて、輸出能力が無限にあるわけじゃないんだから、これは有効に貿易の伸展のために使おうじゃないか。一つの地域に偏向するようなことはやめてくれよということでございまして、共産圏貿易についてはもう信用供与については制限的にいくんだとかいうように世間で一面とられていますけれども、そうじゃなくて、資金の使い方を効率的にやって輸出をふやすようにやりましょうということ。これは民間がやることでございまして、ただ延べ払いになる場合は政府の許可が要りますが、政府が許可をする場合は大体そういう感触でやってくださいよということを言っているにすぎないわけです。政治的に考えるとかいうことでは決してないというわけでございます。  それから、第三点の商法改正の問題点は、経済局長からお答え申し上げます。
  19. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 商法改正の問題につきましては、具体的にどういう形で、またどの程度どういう問題を取り扱っておるのか、私、つまびらかにいたしておりませんので、非常に一方的なお答えになるかと思います。ただ、一般的な考えとしては、御承知のように、日米条約では議定書の第六項によりまして、通貨準備保護のため外資導入に対し必要な制限をすることができると規定されておるわけでございます。したがって、IMF第八条国に移行をした後でも、必要と認める規制はこれでできると、かように考えられるわけでございます。  そこで、先生の御質問は、たとえば、そういうことで商法が改正になって、日米条約の第七条にある事業活動に対する内国待遇との関係はどうかという御質問が重点かと思いますが、その点につきましては、したがって、第七条の内国民活動は議定書第六項に従う。つまり、通貨準備保護のために規制措置がとられる限りにおいては、それだけへこむと申しますか、制約を受けると、かように解釈するわけでございます。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 商法で問題になっておるのは、現行商法では株式の譲渡は定款によっても禁止あるいは制限することができないとあるのを改めて、改正は、定款によって株式の譲渡を禁止あるいは制限できるようにしよう、こういうものらしいんです。そうしますと、いまの御答弁ですと、できると。それは日米通商航海条約第七条に抵触しないと。しかし、それは議定書の第六項ですか、その項で、そのことが通貨準備とどういう関係があるのか、そこのところ、よくわからぬのですがね。第七条を向こう主張した場合ですね、これは有効だということが言えるかどうかということなんです、お聞きしたいことは。で、外資法でやらないで、そちらの商法改正でやるという便法は……。
  21. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 実はその内容を全然、私、存じておりませんし、その内容が確定し、はっきりした上でお答えさしていただいたらいかがかと思いますか。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、内容はいまさっきお話ししたようなことなんです。ですから、それを前提として、いますぐ御答弁できなきゃ、もう少し研究されまして、私も資料をお見せしますから、それによって、いまはほかの方の質問もありますから、あとで御回答願いたい。
  23. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 承知いたしました。
  24. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 時間がございませんですから、簡単に伺いたいのですが、答弁を聞いておりますと、これは高級クラブです。で、拘束をする決定をすることもあるし、勧告をすることもある。しかし、そういうものについて不同意だと言えばそれでおしまいなんだ。まるで何のためにあるかわからなくて、雑談をするところであるというように思うわけです。しかし、それは私は相当な負担金もあるだろうし、加盟した以上は相当な人がそこに派遣されるから、相当な経費もかかると思うのです、どのくらいになるか私は知りませんが。あるいは委員会が二十二ですか、特別委員会あるいはその他の委員会等もあって、相当な人を派遣しなければならぬと思うのですが、利益はどんなことがあるかと聞くと、ドル防衛の利子平衡税は先にこういうところで話し合いをされておった、日本の国は早くからそのことは知っておった、こういうことです。  そこで若干お聞きしておきたい点は、たとえばそういうようなドル防衛の一環政策をアメリカがとろうとするようなときは、アメリカが好意的に事前に話したものか、そのOECD経済委員会ですか、そういういろんな委員会が入っていると思いますが、そういう委員会の義務に基づいて、アメリカがその情報を提供をし、皆さんに了解を得ておるのか、その辺のところがちょっとわかりかねるのですが、どんなふうでございましょうか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは先進国の間のクラブだと申し上げたので、私どもはいまの経済は非常に国際的になっておる、したがって国内経済政策というのも国際的な関連をすみずみまで持ってきておる段階でございますので、各国の間でまず第一に情報の交換、そういう点によく日本政府も精通しておらなければならぬということが第一に考えられるわけでございます。で、あなたの言われる情報を提供することは義務とか、そういうような規制は全然ございません。おそらくドル防衛政策などというのは、ドル防衛政策の必要性というようなことは、アメリカ側からそういう話があったかと思いますけれども、しかし、利子平衡税の措置があそこで討議されなければならぬということは考えられませんし、そういうことはアメリカ政府の少数の人間しか知らぬことであって、他国と相談してやるような、ああいう信用、非常に微妙な信用にかかわる問題は、あそこでやるはずは私は絶対ないと思いますが、ドル防衛政策全体についての情報の交換は私はあったと思いますが、しかし、それは義務づけられたものではない、そう思います。
  26. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちょっと、大臣の言われたことは、そうすると、アメリカはそんなことは言わなくてもいいようなことをしゃべっちゃった、こういうふうにとれるわけですね。ところが、私たちが、私のこれは聞き間違いかもしれませんけれどもOECD等に入って——クラブのようなものだけれども、役に立たぬものだけれども、入ったほうがいい。それなら何があるかというと、いい点は、たとえばアメリカの利子平衡税等やるような場合に、事前に実はOECDに話されておったし、これは日本加盟していなかったために知らなかった。今度これに入れば、事前にそういうことが察知できて、いろんなことができるのだから、こういうような説明を実は承ったわけなんです。あなたにいま聞くと、そんなことは言わぬでもいいと。そうしますと、大臣答弁するかどうか知りませんけれども、三条のことは、これは外務委員会でございませんから、私は条文審議がどうこうということは言いませんが、三条の(a)項等には、少し前を読むと、「加盟国は、第一条の諸目的を達成し、かつ、第二条の約束を履行するため、次のことに同意する。(a)相互の間で常に情報を交換し、また、機構に対し、その任務の遂行に必要な情報を提供すること。」というようなことが書いてあるわけなんですね。そうして、あなたのおっしゃる拘束をしないということは、第六条である。そうして加盟国に対する勧告権なり拘束を決定するというのは、その前の五条なんです。いまのようなのは、条文からいえば第二条にうたっておるわけです。ですから、そんなことをやらぬでもいいんだとおっしゃれば、それでは一体クラブで何を話をするのか。何を言おうとするのか。都合の悪いことは言わぬでおいてもいいということになれば、こんなものに入る必要はないと思う。どもうそこら辺のところがさっぱりわからぬのですよね。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たとえば利子平衡税をおれはやるのだというてOECDで発表したら、もうたいへんですよ。その日のうちにカナダのドルは崩壊してしまいますよ。そんなばかなことは、これは話をするはずはないと思います。それは、だれか間違っていると思います、あなたに御報告した人が間違っておったと思います。そういうことでなくて、私の申し上げたように、全体の国内政策——われわれは孤立した繁栄はないのですから、各国の情報を十分知り合っている、承知しているということが、国内経済の運営にとりましても、経済外交を進める上におきましても、もう当然心得て置くべきことじゃないか。OECDに入ることもその一つの手だてであるということのように承知いたしているわけでございます。
  28. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あのね、実は、この書類を持っていると、この本を持っていると言うといかぬから、私は実は遠慮しいしい申し上げるわけですけれども、「OECD加盟日本」昭和三十八年八月、外務省経済経済統合課という、これは責任ある文書として出されているのだと思うのです。その中の十九ページの(イ)項の中に、カッコして、七月十八日の米大統領の利子平衡税に関する教書等に見られる一連のドル防衛措置などについても、その前提となる諸問題につき同委員会討議が行なわれた。」と、こう書いてあるのです。それをひとつ見せてあげてくださいよ、外務省のものだから。そんなことは言うはずがない、カナダがあれだと、こういうことも私はわかるのです。わかるのだ。ただ、この書類であなたにそういうことを私が言うのはどうもおかしいことになるから、遠慮しいしい聞いているわけです。大臣に言ったところが、そんなことはない、そんなばかなことは言わぬと言うから、われわれも開き直らなければならぬけれども、これが間違っているならば間違っているでいいが、どっちが間違っているか、そこら辺をひとつ明らかにしてください。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは「その前提となる諸問題」ということだと思うんです。前提となる諸問題で、その手段について相談をしたらたいへんだと思うんですね。そういうことをやったら、それは信用機構は崩壊してしまいますよ。
  30. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 文書に、そんな「前提となる」なんて書いてない。「一連のドル防衛」と、そう書いてある。あなた、つじつまが合わなかったからといって……
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、そう書いてあるんです。つまり「一連のドル防衛措置」などについても、その前提となる諸問題につき同委員会で「諸問題につき」と。手段ということは書いてないわけです。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。実はあげ足とるようであれですけれども前提となるという場合には、ドル防衛というのは一応予定されておるわけですね。それがなければ前提ということにならぬ。やはりドル防衛に関連しているわけでしてね。ですから、ドル防衛と無関係の問題でないんで、ドル防衛というものの前提となる問題ですから、まあいわばドル防衛というものが予定されておって、その前提となる……。その点は少し、大臣、何か強弁されておるように思うんですがね。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) もしそういういまの成瀬さんの誤解をお招きするようなことであったとすれば、こちらは恐縮でありますが、私の言う趣旨は、OECDでの諸情報の交換というのは、これは一般的な情報の交換はしょっちゅう通じて、われわれが内外の経済政策を立てるためにも心得ておくべきじゃないかということを申し上げたわけです。たまたま利子平衡税の問題が出ましたので、それは私もそういう個々の具体的な手段、これはもう寸秒を争う、極秘のうちにやらなければならぬ性質のものでございまして、そういう問題が討議されるはずはないじゃないかということを申し上げたわけです。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そう言われますと、前に私一ぺんその問題で外務大臣に御質問したことがあるんですがね。当時の新聞は、あれが発表になって、ヨーロッパ、ロンドンあたりの市場は平静であったということは、事前に大体これが知らされておったんだ。だから、株式市場等でもロンドンあたりではそんなショックは起こっていない。日本の場合は非常に大きなショック。そういうことが当時の新聞には伝えられておったわけです。日本としましても、前に御質問したように、この問題はわかっていたはずでありますよ。非常に外務当局は研究不足だったと思います、その点についてはね。その点は、大臣、あまり強弁されますので言うので、もっと率直にお答えになれば、別にこういう御質問をしたくないわけですがね。関連ですから……。
  35. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はこういうふうに見方を変えて、たいへん失礼な言い方になるけれども、軍事同盟というのは昔のような軍事同盟ではなくて、これからは運命共同体、東西間の形として、そういう形になっていくと思う。しかし、片一方では国際分業というような形でやるには、相当な情報交換等もされる、そういうことはあるという前提に立って、いまの情報交換なり、あるいは資料を提供するというのは、お互いにざっくばらんに紳士的に語られるところに、こういう会議の意義があるんじゃないかと思っているんです。しかし、それじゃそれに対して入った以上は、私は相当の義務もあれば、それに対処する責任もある。あなたもOECDに入るための努力をわざわざしておられるし、池田さんもその他の大臣も、外遊のつどこれに入ろうと努力しておることはわかっておる。入られる以上は、それ相当の何かいいことがなきゃならぬと思う。ただ、どっかのライオンズ・クラブですか、そういうようなところの会員になっていればていさいがいいので入ったという、そういうものではないと思うんです。私はもっと重大なものだと思っている。しかし、そういうことは外務委員会でおやりになることで、私たちは直接これに関係がないじゃないかと言われれば、それまでですが、資本の問題、経済の問題と実はいろいろ関連を持っておりますから、大臣に私は率直にどういうポリシーであるのかという点だけは明確にして、私たちの判断を誤らせないようにしてもらいたいと思う。ひた隠しに隠して……。ということは、三百三十二のコードがあって、そのうち日本は相当留保するものが多いわけですね。それに対してEECの人たちはみんな賛成だ、あるいはOECDに入っておる人たちはどれだけの留保をしておるかということは私は知りませんけれども、わかりようがないのですが、そういう立場に立って私たちはものを見て判断がしていきたい、こう思って私は御質問申し上げておるわけですから、そう防衛してやらずに御答弁を願えれば、非常に幸いだと思います。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 決して隠すつもりは私は毛頭ないのです。私は率直にこう思っておるのです。先ほど申しましたように、日本経済が伸びていくためには、やはり世界の公道を堂々と歩まなければいかぬわけでございまして、日本だけが孤立してうまくやっていこうなんて、そういう分別はないと私は考えております。そうしてOECDにおきましては、御承知のように、これは貿易の問題ばかりでなく、経済成長政策の基本についても、あるいは海運政策につきましても、労働政策につきましても、農業政策につきましても、最近は国際流動性の立場から通貨政策につきましても、各国の中央銀行の協力問題につきましても、それから科学政策、サイエンスの問題につきましても、非常に広範な話し合いが行なわれておるわけでございます。そういう話し合いの中で、世界の先進国の大勢がどのように動いておるかということは、日本としては十分承知の上で日本の国策を打ち立てるばかりでなく、運営に当たってまいる必要があると思うのでございまして、しかし、OECD日本がいかに入りたいというても、いまあなたが御指摘のようにたくさんのコードがあるわけでございまして、その基準に照らしてあまりにバックワードじゃないかといわれるのなら、これは恥ずかしいところでございますけれども日本経済実態は、また経済政策とそしてその運営の実態は、もうOECDに堂々と入っていっていいだけの実態は持っておると思うのでございます。その証拠に満場一致日本に入ってもらおうというような決議をされたわけでございまして、日本はそれだけの国になっておると、それに仲間入りするだけの実態を備えておるのだと、そういう日本がアジアでたった一つしかないということでございますから、アジアから見ましても、日本OECDにいすを占めておるということは、これはむだなことではないと私は思うのです。  それから、しかし、OECDばかりでなく、世界ではいろいろな国際会議が行なわれておるわけでございますが、その国際会議に臨む場合に、決定的な実力を持った諸国がOECDのたまたまメンバーになっておりまするから、そこで事前に、今度の会議にはわれわれとしてはこうやろうという一つの予備的な準備会議が行なわれるわけでございまして、それを知らずにつんぼさじきで国際会議に出るよりは、ちゃんとした用意を持って、ちゃんとした打ち合わせのもとに日本が出るというほうが、私は日本のためにもなると思うのでございます。したがって、どういう利益がどのようにあるかということは、これはもう計数的に出しにくい問題でございますが、もうここまで来た日本というのは、もう当然これは入らないのがおかしいことじゃないかというように思っております。  それから、自由化コードでめんどうな約束を取りつけられておるという問題もありますけれども、しかし、これは世界の経済の歩み方といたしまして、当然日本も自主的にそうすることが日本のためじゃないかという意味で、日本が自主的に消化して、OECDに入ろうが入るまいが、とにかくこういうルールは日本として守っていくほうが日本経済のためじゃないかという自立的な立場で受け取って差しつかえないのじゃないかと私は考えておるのです。したがいまして、この問題は、理屈の問題と申しますよりは、そういう立場日本がなった、そうしてその立場になった日本はもうそういうかまえでいかないと、今後世界に伍して日本経済を運営していく場合にこのほうがよりベターな行き方じゃないかという判断でお願いしておるわけでございます。
  37. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後ですから、二つだけお聞きしたいのですが、野溝さんもありますですから。  私は、ここの場で討議されることは、世界的な私は重要な問題についてはあらゆる面で実は討議されるものと期待しておるわけです。ですから、私は早いほうがいい。あなたがおっしゃるような国際会議、あるいはIMF、あるいはガット、そういった重要会議出席する前にこういうところで討議されて出たほうがいいと思うのです。重要な問題は討議されると思うのですね。その場合に、端的に聞いておきたいことは、先ほど読み上げました三条の(a)項でいう「情報」だとか、あるいは「必要な情報」というようなものは、具体的にいうとたとえばどんなものがあるのか。日本でいえばどんなものがあるのか、あるいは世界的な視野に立つときにはこういうふうなという具体的なことがお聞きしたいというのと、  それから、もう一つお聞きしておきたい点は、これはいま、昨年、年末ですかに衆議院にかかっていますね。これはいつまでに上げねばならぬという期限はついておらぬわけですね。何かこう速記録で少し勉強したいと思って衆議院のほうに聞きましたら、あまり議論をされておらない。参議院に至っては何にもやっておらないということですから、一体、外務大臣は、この国会で大体成立すれば十分間に合っていく、CECDとの約束で大体けっこうだ、こういうような見通しでおいでになるのかというようなことです。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 具体的な問題は経済局長からあとから御説明させますが、御承認の時期の問題につきましては、私はこう考えておるのです。先ほど木村先生が御指摘のケネディ・ラウンドの問題がこの五月から、それから国際貿易開発会議は三月の末から始まる。最初の二週間ばかりは演説ばかりで具体的審議に入りませんにしても、三月下旬から始まれば、従来の例から見れば三月、四月、五月というようなところがかせぎどきなんです。比較的繁忙期なんです、OECDとしては。ですから、せっかくお認めいただくのなら早くしていただいて、そうしてフルメンバーシップをもって日本が参加しておいたほうがいいと思うわけです。それで、そのように衆議院のほうにお願いしておるところでございます。去年の七月二十三日に満場一致加盟招請を受けてなかなか国会が御承認にならぬというのもみっともない話だし、精一ぱい早くしていただきたいということで、いつまででなければならぬという何はございませんけれども、ただ国際信義上できるだけ早いにこしたことはないと考えておるわけです。
  39. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 三条に申しております情報の交換がどういう問題について具体的に起こっているか、また必要であるかというお話についてお答え申し上げます。  われわれがいまさしあたって非常に関心を持っておりますのは、国連の貿易開発会議に際しまして、OECD関係諸国、なかんずくEECがどういうような立場をとるかということは非常に興味がございます。そこで、OECDは数次すでに内部で会議をいたしまして、この問題について検討しております。たとえば、御存じと存じますけれども、半製品あるいは完成品等について、後進国から産出する産品についてどういう待遇を与えるかということで一つ心配なことは、たとえば、それが安値で先進国にダンピングされては困るという面と、それが高過ぎてどこにも売れなくても困るということをどう調整するかということで、たとえばベルギーの商務大臣のブラスールというものがブラスール提案というものを出しております。これなんかは今後の国連の貿易開発会議一つの大きなテーマになっていくのじゃないかと思います。そういうところで、OECD全体としてどういうように考えているか、それから後進国の強い要望に対して、先進国としてはできることとできないことがあるのだけれども、そのときにどういうような態度で臨むかというようなことは非常にわが国としてはさしあたって興味があるところでございます。  それから、その次にあげられますことは、いま、アメリカがシップ・アメリカンに基づきましていろいろな政策をとっております。そうしてたとえば同盟の運賃をチェックするために、たとえば外国の船会社に対して、アメリカじゃなくて外地にある、外国にある書類を提出しろというような問題が起こっていること、御存じだと思います。こういう問題につきましては、OECDで、ことにヨーロッパの海運国が音頭をとりましてアメリカに食ってかかっているわけでございます。こういう問題につきましては、日本としても、ヨーロッパと同調して、同じ利害を感じておりますが、こういう問題についても現実には具体的には参加しておりますけれども、これは正式のメンバーとして早くこういうものにも全面的に参加をしたい、こういうようなこともございます。  それから、もう一つ、やはりさっき大平大臣からも申されましたように、経済成長の問題がOECDでも非常に取り上げられて重点を置いておりますが、日本のたくましい経済成長、これをどういうように、いろいろ向こうも聞きたいし、それからこちらも世界の経済の動向に関連してこういう問題についても話してみたい。  こういうようなことで、緊急なものとそうでない長期的なものを例示的にあげましたが、そういうようにわれわれとしては非常に関心を持って、一日も早く加盟が成立するように希望しておるわけでございます。
  40. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そこで、 これでおしまいですが、意見の言いっ放しですが、いまお聞きしておりますと、相当具体的な話があり、そうして具体的にいろいろなことをおやりになっている。そこで、私は、利子平衡税でいえば、何月何日にやるなんということはそれはたいへんなことだから、言わなかったと思うのです。しかし、大筋は相当詰めた話をしておらなければならぬことになると思うのです。でこそ、私は意味があると思うのです。ですから、大臣みたいに、そういういろいろなことで日本が不利になるとかどうこうと、われわれはどうこういうわけじゃないのです。大勢はそういうことにある。しかし、それを、いま申しましたように、前提として新しい角度の軍事同盟のような動きが全度出てくるのだという観点に立てば、当然そうなっていくという判断で私は聞いているわけです。ですから、国会で、外交は秘密だ、秘密だとあまり隠さずに、もう少し私はざっくばらんに話をして、そうしてあなたらがよく言う世論のバックの上で国策が遂行されるようにしたらいいと思うのです。そういう心がまえを大臣に要望しまして質問を終わります。
  41. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は、木村、成瀬両君が言われたことに関連をしてお聞きします。  まず第一にお聞きしたいのは、外交といいましても、いまではやはり経済外交が重点になっていると思うのですね。その意味では池田総理も、経済外交が基点だと、こういうことを言われているのです。たまたまそんな意味で大平外務大臣経済的によく理解されておるところがら、あなたが外務大臣に就任されたと、私はそう思っております。人を得たと、こういうふうに思っております。いま日本経済で一番重要な課題は、何としても国際収支改善の問題だと思うんですね。外務委員会では、経済的な問題は扱われておらないようですね、速記録を見ても、衆参両方とも。機会があったら、委員長にお願いして私は連合委員会でも開いてもらいたいと思っているのです、日本にとって重要な問題ですから。  わが国国際収支は従来、経常収支の赤字を、これは借金政策による資本収支の黒字でカバーしバランスをとってきたが、ここのところ構造的な貿易外収支の赤字と輸入激増で大幅な赤字を示し、本年度は経常収支で八億ドルもの赤字になろうとしています。強成長による生産や需要を抑制しなければならない状態であり、公定歩合引き上げもやむを得ない、すなわち金融政策も転換せざるを得ない事態だと思うのです。これを、どうするのですか。まさにわが国経済の危機であり、これは重大な問題だと思うんです。特に通産、大蔵、外務三省は国際収支に関連を持っている省でございますから、十分に連携し真剣に考えていただきたいと思うんです。  そこで、経済外交を進めるについてちょっと述べておきたい。一体、日本は先進国だといっても、実際に国際収支の状態はこのとおりです。そうして外資依存の借金政策をとっている。IMF八条国、あるいはOECD加盟する先進国であるといっている日本実態はこういうわけなんですね。これは現象的、形式的近代性にすぎないのです。私は、先進国とか国の近代性というものは、もっと庶民大衆、国民大衆の生活が安定し、国家財政も、企業経済も、家計もバランスのとれた、しかも年々前進するものをいうと思うんです。すなわち、現象や形ムードだけで云々するようなものでないと思うのです。近代的な感覚と生活というものは、私は合理的な実態的なものでなくてはいかぬという信念を持っております。  先ほどから大臣はなごやかにお答えをされているようですが、まず第一にお聞きしたいことは、大臣経済外交を進めていく上におきまして第一に考えている点をひとつ聞いておきたいと思うんです。たとえば具体的にいえばですよ、アメリカを中心にして経済外交を進めていくのか、あるいは西欧諸国を中心にして経済外交を進めていくのか。もちろん両方だと、こう言われるでしょうけれども、その力の入れどころですね、それをどういうところに置くのですか。そこをまずひとつお聞きしておきたいと思います。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 世上では、私がアメリカへ行ったり、ヨーロッパへ行ったりするので、どうもハイカラな国におつき合いがあって、東南アジア方面を閑却していはしないかという批判があるのです。私はこう考えております。いまの日本貿易構造から申しますと、遺憾ながら、私ども先進国の関係において、いまや事態は改善の方向に向かっておりますけれども、依然として輸入超過の国です。それで、東南アジアをはじめとして低開発圏に対しては輸出超過の国なんです。これが逆でありますと、非常に日本のアジア外交というのはやりやすい立場に立つわけでございますけれども、それでなくて、むしろアジアに輸出超過で、先進国に輸入超過だという悲劇的な構造です。そこで、私は先進国にある貿易の障害を撤廃し、私どもは先進国より輸出をふやして、それを高度化していって、そうして少なくとも先進国に対しては輸入超過のいまの構造を是正しなければいけないと思うのでございます。そうしないと、アジアに対して真剣にアジアの先進国がお友だちになるといっても、そういう実力が日本にないと思うのです。したがって、対米、対西欧経済外交におきましては、この悲劇的なアンバランスを解消して、その余力をアジアに向けなければならないのではないか。すなわち、経済、外交は野溝先先が言われたとおり一体でございまして、われわれはアジアに対してよき友たり得るためにはいまの体制ではいかぬじゃないか、どうしても対先進国に対していまのような状態を是正していくべく、貿易制限の撤廃、関税の引き下げその他一連の経済外交を勇敢にやって、そこでわれわれがアジアに対してなし得る余力をつくり上げなければならぬと思っております。私どもが考えて一番大事な焦点はアジアでございまして、アジアで何をどれだけなし得るかという力をまず日本は養わなければならぬ。アジア外交を論ずることはやさしいですけれども、それを実行に移す、実力を日本は持たなければいかぬ。日本が持たなければいかぬ場合には、やはり対欧米の関係におきましては現在の状態を改善していく必要がある、そういう手順でいま考えておるわけでございます。
  43. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は大平さんの言うことはわかっています。私も微力ながら政治家として、日本経済がどんな状態にあるか、抽象的でなく、具体的によくわかっています。一応あなたのお説は私はそのとおりだと思うのですよ。しかし、アジア外交に中心を置くといえば、いまお話しのあったとおりに、わが国の対アジア貿易は、輸出が多くて輸入が少ない。しかし、輸出増進のために借款供与とかプラント類の延べ払い輸出というようなことにつとめたとしても、いまのような状況ではなかなか容易でないものがあると思うのです。  さらに、欧州あるいはアメリカについても、多くの成果をそう期待し得られぬと思うのですよ。たとえばOECD加盟することも悪いとはいいませんが、このOECD自身は欧州中心に傾くということがありますね。序論におきましてちゃんとそういうのをうたっていますね。何としても欧州中心だ。先ほど大臣がお話しになったとおり、対日差別が激しいのです、留保条項が。マーケットを広げるということはなかなか容易でないと思います。それから、アメリカにおきましても、昨年の綿製品交渉に見るように、また毛製品等繊維はじめ相当の対日制限や差別をやっておる。その上バイ・アメリカン、シップ・アメリカンなんです。ちゃんと教書にうたっておるのです。してみれば、なかなか容易でない。この間をどうしていくかという、この難問に対して、経済通の大平外務大臣でありますから、よほど考えておられると思うのですが、これをどういうプロセスでやっていきたいと思うかということについて相当のお考えがあると思うのです。これをひとつこの際お聞きしたいと思うのです。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そこで、先ほど申し上げましたように、まず第一にわれわれが取っ組んだ問題といたしましては、三十五条援用撤廃を求めまして、いま英国とかフランスとか、その他主要国は全部撤廃をいたしました。若干の小さい国は残っており、新興国が残っておりますが、主要国は対ガット関係日本と正式に入っているわけでございます七そういうことは一応成果をあげたわけでございます。  それから、第二点で、いま御指摘の対日差別、この輸入制限の問題でございますが、これも木村先生に対する御質問にもお答え申し上げましたように、二国間の折衝によりまして漸減の方向をとりまして、歴然たる成果はおさめておるわけでございます。ここ数日前にフランスともやりまして、八十四品目を六十四品目までにおろしていただいたわけでございます。そのように、さっぱりなくしてしまうところまではいっておりませんけれども、漸次これを輸入制限品目を減らすという方向にいっております。それから、輸入制限品目を落とすまで参らないが、年々歳々のクォーターはふやすという努力はいたしております。  したがって、今日までの経済外交はじみちながら相当私は前進をしてきたものと思います。したがいまして、対米関係におきましても、対ヨーロッパ関係におきましても、輸出が比較的順調に伸びておるわけです。問題は輸入でございます。御承知のように、いま九二%の自由化をやっておりますが、まだ百八十九品目が自由化されていないんです、日本では。しかし、これも国内の事情が許す限り、自由化の方向にもっていって、そうして日本のほうで自由化すれば、貿易というのはギブ・アンド・ティクでございますから、では私のほうも考えようということで、制限撤廃に有効に働くわけでございます。  したがって、自由化への努力もいま進めておるわけでございますが、ただ対アジア圏からもどんどん輸入してあげて、そうしてアメリカその他の輸入先をアジアのほうに転換がきくかどうかというような問題になってくると、事実非常にむずかしいのでございます。それは品質の上におきましても、値段の上におきましても、どうしても商売人が、アメリカから買う綿であるとかというようなものは、これは品質がよくて安いから買っておるのであって、これをほかに転換せよと政府が命令してできる性質のものではございませんで、これは買うべき理由があるから買っておるわけでございまして、いきなり輸入先の転換というわけには私は参らぬだろうと思います。問題はアジアの適地適産を考えなければならないので、たとえばタイにおきましてトウモロコシの生産について日本が技術援助をいたしまして、そうしてこれは成功いたしまして、非常にタイは助かっておる例もございまするが、アジアの風土に適合した産品、適産というものを培養していく。そうしてその技術援助もしていって、その品物がコンペティティブなものになるように指導していかなければならぬ。それは各地においてわれわれの技術者が入り込んでそういう計画も進めておることは、野構先生も御承知のとおりでございます。しかし、これは相当時間がかかる問題でございまして、いきなり今日の国際収支に寄与するとか、あるいはアジア政策にすぐ寄与するという性質のものではございませんけれども、方向としてはそいう方向にじみちな努力をいたしておるわけです。
  45. 野溝勝

    ○野溝勝君 外務大臣ね、私が心配しておるのは、大臣の実際面、行政としての考えは間違っておらぬと思うのですよ。しかし、国際政局あるいは国際経済は激動していますね。具体的に申せばEEC、欧州共同市場にしても、あるいは経済開発協力機構、OECDにいたしましても、あるいはバイ・アメリカン、シップ・アメリカンにいたしましても、私は、大体その地方地方の地域経済が中心になってきておると思うですよ、実際に世界は。そこで問題は、欧州の各国でもそう外貨の保有が十分だという国はないと思うですよ、私の調査した範囲においては。それであるにもかかわらず、とにかく面におきましては欧州防衛、一面におきましては積極的な手を打っておるわけですね。あるいは中国にしても、あるいはソ連にいたしましても、東欧諸国に対して積極的な貿易対策を講じておるわけです。さらに英国あたりは、いまのヒューム首相が昨年のいまごろ外務大臣当時、中国の貿易使節団の訪英やヒューム氏自身日本、香港へ出かけて、市場拡大に相当の努力をした。  で、私は大平さんに希望することは、ひとつ、先ほどあなたがおっしゃったように、それらの国々との貿易振興、アジア圏に援助をするという考え方は、それは私は間違っておらぬと思うが、ここはひとつもう少し積極的に乗り出してもらいたいと思うのです。そこで、結論を申せば、あなたは、通産省の貿易協力委員ですか、駐在員ですか、その設置に賛成された。それをもう一歩積極性をもって充実させるような考え方を総理あたりに進言して、むしろこの際、欧州の諸国がアジアに進出してきた、この経済的進出ですね、これと競争してはね返すような積極的な心がまえを特にお願いをしたいんです。どうでございます。竜にこれは中共と限ったことではございません。AA地域の問題です。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アジアばかりでなく、東欧圏、ラテンアメリカ、その他アフリカに対して、私どもも、いま現在貿易量が少なくても、政府貿易使節団を編成いたしまして逐次送っているわけです。東欧圏なんかも非常に日本に対する関心が高くなってまいりまして、先方から有力な使節団が続々やってきておりまするし、またそれだけの実績もあがってきております。最近私どもは北アフリカに使節団を出しましたけれども、これはいま貿易が一億ドルぐらいなんです。まだ取るに足らぬので、有力な人に行っていただくにはちょっとまだいかがかと思うのですけれども、しかし、将来を見越しまして、有力な使節団を編成して出しておることでございます。それから、いま貿易関係者は、ジェトロにいたしましても、それから大使館の貿易担当官にいたしましても、商社にいたしましても、メーカーにいたしましても全世界で要所要所に集めまして情報の交換をひんぱんにやっております。  で、いま、もう少し通産省関係の英才を登用してはどうかということを考えろというわけでございます。そういう方向に十分考えてみたいと思います。そうしてそういう方々と協力態勢をうまくとるのは大使館でございます。大使館自体が、諸外国に比べまして、日本のお役人というのは、ここにお役人がおって恐縮だけれども、私も役人の出身でございますが、あまり商売に関係したがらぬのです。それはいけないから、一つの商社が一つの問題をかかえて困っておるという場合に、かまわないから、日本の国の利益なんというのは観念的にあるわけじゃなくて、出先で苦心しておる方々、一生懸命友だちになってやってやろうじゃないかということをお願いしまして、そうしてそういう官民の協力態勢というものをいま相当ひんぱんにつくりつつあるわけでございます。今後もそういうことをもう少し拡充してまいるように努力したいと思うのです。
  47. 野溝勝

    ○野溝勝君 大平外務大臣は大事なことのお答えはないのですけれども、私はもっと積極的であってほしいと思うが……。いまのお話、これも、積極的経済外交の一つに違いありませんが。いま私はイデオロギーでものを申しているのじゃないですよ。まだまだ何といっても資本主義の国であるのですから、私はそんなにイデオロギーでものを申しているのじゃないのです。日本の現実の経済はどんな状態にあるかという点から、私は発言をしておるのですから、この点十分理解願って、あなたのお答えを願いたい、要点だけでけっこうですから。そういうことです。  特にいまのお説も私はいいと思うのですがそういうように経済的な進出といいますか、外交といいますか、それをやる場合は、私は少し大胆でいいのじゃないかと思うのです。ジェトロに対する指導なども悪いと思うのです。外国あたりでもっともっと貿易ができると思われるのに、海外にある日本商社等が非常識な競争をやって信用を落としているのです。日本貿易進出の上で非常な障害になったりします。こういう点は、役人だといって別世界のような感じを持ってはいかぬと思うのです。そういうのはジェトロに対して十分に注意を与えてたり、場合によってはそういう貿易の振興を妨げるようなものはどんどん押えるようにすべきです。通産省、あるいは大蔵省と相談をされて、そういうことのないよう、ぱしっとやる必要があると思う。その点をひとつ簡単にお聞きしておく、決意を、大臣から。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 官民の隔てなく、貿易振興というたてまえは、非常に困難な環境のもとにございますから、それぞれの機能もフルに日本のために活用するように十分配慮いたしたいと思います。
  49. 野溝勝

    ○野溝勝君 もう一つ聞いておきたいことは、先ほど、きょうの朝日新聞及び日経にも、その他出たのでございますが、先ほど木村君、成瀬君からも御質問がございました。新聞などは当然見ておるものと私は思ったが、外交面ばかりで、経済面を見ていないのですね。「問題化する株式譲渡制限」、この新聞に出ておりますから、帰ったらひとつごらん願って、各省と連絡をとってもらいたいと思うのだが、御承知のとおり、日米通商航海条約の第七条ではどおうもちょっとできないように思うのですが、ところが、これにはもうほとんど商法のような一般法の中にこの対策を織り込んである、こういう具体的な発表が出ておるのだね。これでは先ほどの経済局長答弁とは少し違っておる。七条はできないというが、商法ではできる、そういう点を先ほど聞いたわけでしょう。その点についてはお答えが非常に明確を欠いておるわけです。大臣、どう思うね。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ですから、日米通商航海条約とその商法改正の問題は、大事な問題ですから、ちょっと時間の余裕をいただきまして、私のほうで検討さしていただきまして、この委員会に御報告いたします。
  51. 野溝勝

    ○野溝勝君 では、次の機会に譲ります。  もう一つお聞きしますがね、大臣、私はほんとうに心配なのは、先ほどからくどく申しましたが、外務委員会ではほんとうに大事な経済外交を強く強調されておらぬですね。論戦も行なわれておらぬですね。これはひとつ、あなたもおっしゃるとおり、経済外交が重点だ、私もそう思っております。ですから、どうかひとつ、前向きということばを使いますけれども、あまりある国に気がねしたりせず、前向きでやってもらいたい。私は、東側や中国について、すぐには往年のような貿易はできないと思いますが、そうかといって、やはりチンコム、ココムにとらわれておってはえらいことになる。アメリカのホッジス商務長官が対共産圏貿易について、場合によっては延べ扱いもやるというようなことを発表しておりますよね。まごまごすると、これはとんでもない乗りおくれになりますからね、よほど日本としては気をつけなければならぬと思う。ですから、どうかそういう点を十分大平さん、御理解願って、そうしてあなた、台湾へ行くのでなくて中共やソビエト、その他いわゆる大国だけでなく、低開発国や新興国へ行く必要がある。正直なところ、いわゆる大国主義的な悪い面も目についてきている。大国だけでなくて、東欧諸国などへも行きしまて、この東欧圏といいましても、ブルガリアとかさらには中近東の方面のいろいろな事情も調べてくる必要があると思う。私は大体そういう態度が必要だと思うんですがね、この点、あなたどう考えますか。総理と相談をして、きょう私からあった意見を相談して、またそれも善処してもらいたいと思いますが、どうかひとつ、あなたまじめな外務大臣でございますから、私は正直にものを申しますが、あなたの気持ちを聞いておきたい。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども申しましたとおり、貿易につきまして、この地域あの地域という偏見を持っておりませんで、日本の与えられた輸出の能力、輸出金融能力というものをグローバルなベースで最大限に活用していくということを基本の方針にいたしたいと思っております。したがって、いま御指摘の共産間方面につきましても、私ども特に偏見を持って、これに対して貿易上の規制を加えるというような考えはございませんで、貿易貿易としてコマーシャル・ベースで、しかし、これは商売でございますから、きびしくやらなければいかぬと思いますが、進めてまいることに全然私どもは同感でございます。したがって、そういう方面において今後も努力するということを申し上げます。
  53. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は、平和条約もできておりませんそういう場所に大使を置くとか、外務大臣が行くということについては、これはいろいろ問題もあるでしょうけれども、もしできることなら、平和条約のできておるところ、通商条約のできておるところ、そういうところを中心に、共産圏であろうとなかろうと、特に後進地域に対しましてはより一そう力を入れてもらいたいと思う。それを総理とも、きょうの私の発言に対して御相談を願えるかどうかということの御回答がないんでございますが……。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 野溝先生の御発言の要旨は総理にも伝えまして、その方針を御協議申し上げて、御方針といたしまして私も異存はございませんし、そういう方向で進んでまいりたいと思います。
  55. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 一時半に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  56. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 大蔵委員会を再開いたします。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案に対する審議はあとに回しまして、便宜、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続いて質疑を続行いたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  57. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 政府にお尋ねするわけですが、そのつど出資はいままでやってきたわけですが、今回改めて、予算がきまれば自動的にそれが出資の形になる、こういうような改正がされようとしているわけですが、どういう経過、あるいは他との関係、こうしたほうが非常にいいのだというようなことについて御説明が承りたいと思います。
  58. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 出資につきまして、従来、増資に関する規定が欠けている政府機関が幾つかございます。最近の一般的な立法の傾向といたしましては、増資にあたりまして法律の改正を必ずしも必要とせず、予算措置だけで出資の増加ができるということになっているのが多くなっております。と申しますよりは、最近におきましては、原則としてそのような立法例になっているわけです。まだ残されている従来からの政府機関の中に幾つか法律改正を必要とするものがございますが、日本輸出入銀行もその中に入っております。今回、この輸出入銀行のみならず、たとえば政府関係機関のうちの金融業務を行なうものに例をとりましても、農林漁業公庫、公営企業公庫、北海道東北開発公庫、医療金融公庫、中小企業信用保険公庫、これらにつきましてやはり同じような改正法律案を提案いたしておるわけでございます。  このことによりまして、別段、私は実質的な利点というふうなもの、実際にそれが非常に業績にいい影響を与えるかというような問題は全くないと思います。ただ、法律上の扱いといたしまして、増資にあたりましては、それぞれの金融機関の予算関係処理等においてこれらの事項は明らかにされておりまして、予算審議におきましてその必要性等につきましては国会の御審議を得ることになっておるわけでございます。したがいまして、法律の上でそのつど改正をする必要がないのじゃないか。ただ、非常にきわめてまれにしか増資を行なわないというふうな政府機関でありますれば、これは納得できるわけでございますが、毎年その事業量の増加とともに当然のことのように出資の追加を必要とするものにつきましては、この際、ほとんど全部のものにつきまして同じような趣旨の、つまり法律を要しないというふうな、予算の範囲で出資ができるというふうに規定を改正するという、全体としての方針がそのようになっております。私どももそのほうが実情に沿うように考えます。これが今回の改正をお願いした理由でございます。
  59. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 開放経済になりますから、私は、輸銀がいろいろなことに果たされる役割は当然大きくなってまいりますし、当然なことだと思うのです。しかし、片方では、天田委員がしばしばおやりになりましたアラスカ・パルプに対する政治的な配慮によるものがあるようなことを心配しているわけです。一ぺん予算できまってしまったら、これは自動的にむしろチェックする個所が少なくなるわけです。そういうことについて、それじゃ、そういうようなことが万が一あったとするならば、どこでもチェックをすることができないわけですけれども、そういうような場合は輸銀のほうでそういうものはチェックができる、こういうことになりましょうか。どうですか、輸銀自身で貸し出しのときに。
  60. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 貸し出しにつきまして、アラスカ・パルプの問題は好ましいものでは結果的にはなかったといたしましても、ただ単に政治的な理由でそういう出資を行ない、また貸し付けを行なったというのではないわけでございまして、結果的にうまくもちろん成功したとは言えないものだろうと思います。ただ、そういう個々の事例につきましては、なるほど御指摘のようなことがあると思いますが、全体としての輸銀の必要資金量というものは、一応の余力を持ってこれは定めたわけでございますが、その全体の中の資金の中でどれだけを出資によるべきかということは計算上出てくるわけでございます。それはまあむしろ予算的な感覚になりますが、どういう採算であるかということですね、六分五厘の借り入れをして四分五厘の平均貸し出し利回りにしかならないとすれば、必ずある程度の無利子の金が必要だ。ですから、こういう機関に対する政府の出資は、いわゆる普通の会社における出資という観念よりは、資金コストを運用利回りに符合させるというふうな性質のものでござまして、ですから、総額二百何十億の出資が必要であるというふうなこと、これにつきましては、まあ個別の輸銀の貸し出しの個々の問題とは別個に必要額というものは計算上出てくる、そういうものをわれわれは予算の範囲で、予算でその金額を定めたい、こういうことでございまして、いまお尋ねのいろいろチェックをしなければならぬのじゃないかという問題につきましては、これはもうこの法律が提案される、毎年出資の改正の法律が出る出ないにかかわらず、大蔵委員会等におきましてさらに御審議をいただけばよろしいのではないか。私どもいつでも、法案審議の御都合もございましょうけれども、輸銀の個々の貸し出し等につきましては、好しまくないような事例がありといたしますれば、それについてそのつど呼んでいただきまして御審議くださればよろしいのではないかというふうに考えているわけでございます。
  61. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連。どうも、ただいまの銀行局長答弁は、過日の答弁と私は違うように思います。確かに今回の改正それ自体が事務的といえば事務的であります。そこで、過日アラスカ・パルプの問題を引き合いにいたしまして質疑いたしたわけですけれども、あの際に、いずれにしても二十億の会社に百十八億の貸し出しをする、そういうことは世間に例があるならばとにかく、ないのです。ですから、一時的なこの注文書によって、それを裏づけにして資本金をこえて貸し出すということはあり得ても、設備投資のごとき長期にわたって縛りつける資本は、資本金をこえて出すということはどんな機関だってあり得ない、そのことを指摘したのです。そこへもってきて、何ら利益もあがっていない、業績のないものに六倍も貸すということは不当ではないかということを申し上げ、結局いろいろ答弁がありましたけれども、最終的には、好ましくない、そういうことになったのであります。  これはいま聞いていると、またもや結果的に業績があがらないから好ましくないのだ、こういう話に転換してまいりました。業績があがろうとあがるまいと、業績があがれば一会社にその安い政府資金をどっとつぎ込めばいいのか、こういうことになるので、他にも渇望している会社はたくさんあるので、そういうこと自体が好ましくないのです。政府の金を使うについては、もっと困っているほうへ平等の原則に基づいて融資をしていくというのがしかるべきなんです。そういうことになると、どうもちょっとまた賛否の態度を変えなければならぬような始末にこっちが追い込まれたわけでありますけれども、その点、どうですか。
  62. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 私が申し上げたかったのは、当初から非常に政治的な配慮のみでそういった融資を行なったわけではなかった、やはり日本の当時の資源開発という、まあアラスカの資源を利用するというふうなことで、まあいわば経済的な動機からそういう案が採択されて、輸銀から融資が行なわれたという事情を、簡単に申し上げたわけでございまして、この間天田委員からいろいろ御指摘になった、非常に資本金に対する融資の率が高過ぎるのじゃないかというふうな点はまことにごもっともであります。私どもとしても、また輸銀当局としても、これの立て直しにはいませっかく努力しております。出資を相当額増額させて会社の成績を軌道に乗せるというふうなことで、努力をしておる次第でございまして、その結果幾ぶんかはその会社の資本金と借り入れ金との比率も幾らか改善にはなる、そういったことで、また出資は当分の間無配におくといたしまして、それだけ金利負担が軽くなる、特に市中から借りている市中金利による分などを先に返済するというようなことをいたしますと、会社の業績にもそれだけ影響するわけでございまして、そういった方向でやっておるわけでございまして、決してそうしたことが非常にやむを得なかった、適切だというふうに答弁するわけじゃございません。立て直しについて、せっかくその方向において努力しておる次第でございまして、どうぞひとつその辺の事情を御了解いただきまして、今後とも貸し出しにあたりましてあまりに行き過ぎではないかというふうな事例が生じないように、できるだけの監督を行ない、また輸銀にも注意をしていただくという気持ちにおいては何ら変わりはございません。
  63. 天田勝正

    ○天田勝正君 きょうは、過日だいぶ迷惑をかげながら私は質問しましたので、きょうは全然もう質問しない、こういうことを申し上げておったのですが、だんだんどうも困るような答弁になってしまって。先般私の申し上げたとおり、口幅ったいけれども、私も銀行につとめたことがありますから、知っておるのですよ。それで、結果を収拾するに努力するのだから御了解を願いたいというようなことであるけれども、国策といってみたところで、必ずしもアラスカからパルプを入れるようにしなければわが国の国損になるかならないかということは、論議をまだいたしておりません。ほかからでもいいかどうかわからないので、そういうことで結局国民全般に、しかもその生活につながる面において国民全般が利益を受けるというのじゃなくて、はっきり直接的にはこの化繊会社等が利益を受ける、これだけは明瞭なんだ。国全般が利益を受ける、いま私が申し上げた国民生活につながるという面ならば、他から輸入したっていいと、こういうことなんですよ。要するにアラスカ・パルプと化繊会社というものは、これはつながっておるのだ。これはだれも知っておることなんですよ。ですから、化繊会社も出資しておるのであって、ですから、そういうくどいことを一々あげないで、あっさり議論しているわけなんだ。でありますから、今後ああいうことはもうないと。あとの収拾をどうするのこうするのということは、そんなことは不当な貸し出しをしたから収拾しなければならないのであって、初めから正当な貸し出しをしておればそんなことはない。  この問題については、輸銀当局のほうがあっさりしておると思うのですよ。輸銀当局は、この前だって、とにかくさようなことのないようにいたすと言っておるし、むしろ今回だっても、政府側から必要に応じて自由に出資が予算で許す限りできると、こういうことになれば、いまからでもそれを部内において引き締める、こういう従業員の教育もしなければならぬ、というくらいな態度をとっておる。そうでなければならないのですよ、ならないのに、何かまたもとに戻って弁解がましくては、どうも私は納得いたしかねますね、そうでなく、あっさりと……。ともかく設備投資などが資本金をこえるもこえたり六倍もこえた。だから、私はこの前も言ったでしょう。そういう例がほかにもあるなら示してもらいたいんですよ。ないですよ。どんなところだってそういうことはない。そういうことなんでありますから、私は、その点はあっさりと遺憾であったと。遺憾であったがゆえに、あと盛んにあと始末をせざるを得なくなった。  そこで、今度はむしろ私はこれから先は輸銀にも聞きたいのでありますけれども政府側からその権能をまかされたら、輸銀のほうでも自粛自戒の決意がなければ、それは成瀬さんがおっしゃったとおり、一ヵ所でもチェックをする場所が少なくなる。予算予算というけれども、このごろの予算は実体的には本会議の小型になってきておることは、だれもが承知をしておる。ですから、一公庫の問題だけに長い時間をかけて、分科会といえども議論をされたということもないし、それだけの時間もない。両院の審議期間をそれぞれ三十日とみなしても、ないのです。ですから、そのチェック機関を、場所を置きたいという主張もしかるべき主張なんです。でありますから、ひとつ……。それは国政調査権というものがあります。あるけれども、それも休会中なかなか開けない。どっちにしたってチェック機関が、場所が少なくなるということは間違いないのに、それをしも手続的に簡便にしよう、こういう趣旨なんだ。だとすれば、部内においてのこの自粛ということこそ私は必要だと思う。銀行局においてもそういう見解に立ち、輸銀のほうでもそういう見解に立つことを私は望んでおります。ですから、あらためて公団については輸銀の意見も聞きたいと存じますよ。
  64. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) アラスカ・パルプの問題につきましては、先般も申し上げましたとおり、当初の資金計画樹立の際に、もっと自己資本の充実を期すべきであった。それが今日までおくれました点が、いろいろな災いのもとになっておる点も、私どもといたしましても深く反省をいたしておるわけでございまして、今後の案件の処理につきましては、そういう点を十分自戒自粛してまいらなければならないというふうに存じております。  なお、今後いわゆる開放経済下にありまして、いろいろな面で自由化が進展してまいりますと、私どもの取り扱っておりまする案件につきましても政府の許可を要しなくなりまして、私どもが自主的に判断しなければならないというような傾向が今後ますます強くなってまいろうかと存ずるわけでございますが、私どもといたしましては、そういう事態に備えまして、あやまちなきを期するよう今日から大いに心がまえを正してまいらなければならない、さように考えておる次第でございます。
  65. 天田勝正

    ○天田勝正君 前段のは銀行局長から答えがないのですか。
  66. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 輸銀の総裁から申し述べましたが、私のほうも、監督上も全く同じ考えで、今後十分過去のそういった事例を反省いたしまして、あやまちなきを期したいと存じます。
  67. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実は二町半から経企長官ということになっておりますが、まだここへお見えにならないようですから、私は、輸銀のほうは質問すれば切りのない話になってまいりますから、しまいと思っておったんですが、話が始まったので、若干関連してお尋ねしておきますが、輸銀はあくまでも商業ベースだと思うんです。そこで、いまのアラスカ・パルプの問題は、どんなにあれしたって商業ベースをこえた問題なんです。そこで、今後こういうことはないと、こういうふうに私はいまの銀行局長答弁なり総裁の答弁から受け取っておるわけですが、しかし片一方では、開放体制に移行いたしますから、相当私は国策上経済体制というものが必要になってくると思います。そこで、そのバランスは、たとえば経済協力基金ととるとか、あるいは海外技術協力事業団でそれはやるんだとかなんとかいう形にならなくちゃならぬと思うんですが、それらのことについては衆議院のほうで、輸銀と経済協力基金との統合の必要を唱えていたのを、今回は訂正して、統合の必要はありませんと、こういうふうに答弁が変わっておりますが、そういうようなことについてはどういうふうにお考えになっておるのか、承っておきたい。
  68. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) いまおっしゃいましたとおり、確かに輸銀は、一般的な商業ベースによるところの延べ払いの資金をまかなうというようなことが業務の中心になっております。それに対して協力基金のほうは、輸銀の業務にはやや適当でないが、しかし海外経済協力の必要上どうしてもある程度取り上げていかにやならぬという問題、たとえばやや公共事業的なものであるとか、農林漁業に関連するもの、そのほか資源開発が含まれますが、しかしそれも輸銀ベースでやるのには適当でないようなもの、そういうものを、それを補完して行なうという考え方に立っております。  ただし、それも非常に厳格に解しますと、その境目がはっきりしないような場合が出てくることはやむを得ないことでございます。たとえばインドやパキスタンに対する円借の問題、こういったものは、その資金の使途としてはいろいろなものが含まれますが、いわゆる商業ベースによる商品輸出というふうなものが先にあってそういう借款が行なわれるわけじゃない。向こうの事業計画というものがありまして、そうしてその総額において折衝が行なわれ、それがきまりますと、漸次あとから日本から輸出すべき商品が選ばれてそれを輸出するという、これは確かに、商品が輸出されるという点におきましては商業ベースであろということは言えましょう。しかし、いわゆる借款として先に総額が定められたりするような点を見ますと、いわゆる普通の商業ベースとは若干のニュアンスの差がある。こういうようなことで、しからばそれを協力基金でやるかどうかというような点、いままでの資金のあり方というふうな面から申しますと、やはり輸銀がやるのが適当じゃないだろうか。そういうことで、これはそちらのほうになっておるわけでございます。  現在、必ずしも明確な一線を引くことのできないケースが生じてきますけれども、そのときどきのいろんな事情を考慮しながら分担を定めていきたい、こういうふうに考えております。
  69. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 経企長官お見えになったので、私はあと二、三お聞きしますが、いまの答弁にからんで、そういうようなことをどちらに振り割るかというようなことをきめるのは政府がきめる。だから、政府は輸銀に対して、おまえのほうの出資でやれ、こういうふうに押しつけてくると、先ほど総裁から、輸銀は商業ベースに立って、経済ベースで考えてやっていくのだから、そういうことはないのだ。チェックはそういう立場に立ってやるから、アラスカ・パルプの二の舞いのようなことはできない。しかし、いまの銀行局長答弁を聞いておると、また、政府のほうから押しつけてくれば、輸銀は商業ベースをこえて、経済ベースをこえてやらざるを得ないところに追い込められはしないかというところが一つあるから、このところを明確にしてもらいたい。特に一緒にしなければならぬというのは……。今度は二つは別にしておいてもかまわない、その点を明確にしてもらいたい、それが第一点。  二つ目は、今度は、日本の国も国際収支が赤字でたいへんなんですが、なおアジアの低開発の国はいろんな面で国際収支が赤字になる。その場合に、借款はその国に肩がわりを輸銀がする、こういうことになるのですね。現にそういう必要があって、もう申し込まれておるとか、あるいはこういうようなところで肩がわりしなくちゃならぬというところについて、ある程度数字をはじかれた上における出資金の増額であろうと思うのです。であるとするならば、いま現にそういうものがどのくらいおよそ予定をされておるか、そうしてその国はどこの国なんだということを、長官もお見えになったようですから、お答え願いたい。
  70. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 最初の問題につきましては、先ほど申しましたとおり、厳格な意味で一線を引きがたいものはありますけれども、これを輸銀に政府が一方的に押しつけるという考え方は従来もとっておりません。十分連絡を保ちながら、この程度のものは輸銀がいわゆる商業ベースとして取り扱っても差しつかえはなかろうというふうなものを輸銀に扱わせるという……。
  71. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 輸銀の自主性はないのですか。
  72. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) しかし、これは政府のほうでも十分考慮いたしますが、輸銀の性格として取り上げることができないようなものは、これは輸銀に扱わせない、輸銀も扱わないという態度でございますが、円借のようなものについては、ややそういう点から申しますれば問題はあろうかと思います。しかし、これを実際実行するやり方といたしましては、協力基金と違いまして品物が実際に出るわけでございまして、日本の品物か出て——相手国に輸出という形では出るわけです。それの延べ払いをするという形になっておるわけです。ですから、輸銀の性格に非常に沿わないということではない。問題は、相手国であるところのインドとパキスタンが、その後々において、厳密な意味で支払いを、延べ払いの期限が到来するものについて、きちんと支払っていくだけの資力がはたしてあるかという点にあると思う。ただし、これらの点につきましては、世界の主要な各国が、いずれも協調的な意味で、インドやパキスタンの経済開発を助ける意味におきまして援助を行なっておる、経済的な援助を行なっておる、輸出という形でやっておるわけでございますが、そういう国際的な動向に対しまして、わが国もある程度これを支援するというふうな動きが必要とされております。これを経済協力基金でやるかどうか、非常にむずかしい点がございますけれども、私どもは、いまの段階ではやはり輸出入銀行をして取り扱わしたほうが適当であろうというふうに思っておるわけでございます。  次に、肩がわりの法律改正の問題につきましては、具体的にこの法律を考えますときに、そういう必要が生じておったというふうな事情はございません。しかしながら、いまの段階で申しますれば、ブラジルあたりは非常に国際収支が悪く、外貨準備が非常に乏しいので、いろいろ期限の到来しますところの債務の返済に非常に不安があるということで、すでに債権国の会議を催すとか、そういうものを催さなければならぬのじゃないかというような動きがすでにあるようでございます。まだわが国は正式にその話を受け取っておるわけじゃございませんが、いわゆるパリ会議ですか、そういうところで、ブラジルの国際収支が非常に悪いから、繰り延べ、たな上げ等が必要となるのではないかということが言われております。それらの金額等については全く予測が困難でございます。すでにブラジル、アルゼンチンには、今度のような輸銀が肩がわりしていくという形ではございませんが、繰り延べを行なった実例はございます。今度の場合に、はたしてどの程度のものをブラジルが要請してくるのか、私どもまだ数字としては何らつかんでおりません。この輸銀の貸し出しワク千六百億円というものの中に、そういうものがどれだけ入っているかというふうなお尋ねでございましょうが、積算の基礎として格別にそういうものをかっちりとつかまえて予想して貸し出しのワクを予定したものではございません。大体まあそういったような投資に近いような、そういったもののあることは予想しておりますが、幾らどの国に対してあるというふうな計算をしているわけではございません。
  73. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあ時間ですから、私は議論をしたくないですが、いまの御答弁を聞いておっても、私はどうも、もっと何べんも質問を重ねていきたいんですよ。ということは、ブラジルのがパリ会議等で若干議論されたというようなこと、あるいは日本が何かそういうことをやってくれぬかのごとく期待をしながら、この法律改正をしておるというふうに受け取れるわけです、いまの答弁を聞いておれば。どうもその辺のところ納得がいかなくて……。たとえば事前にこういうような申し出があったと。あるいは日本国内から、実はこういうような問題で困っておるからこういうようにしてくれたらいい、というようなものがあったんじゃないかと思うんです。あるいは外から、あるいは中から。だからこそ、こういう改正が用意されたんだと思う。ところが、いま御答弁を聞いておれば、何か、何でもないんだけれども法律をせっかくつくっておくなら、まあ何かのときにでもいざとなったら役に立てばけっこうだとか、そのためにつくっておこうやといったような、まことに何というですか、優等生の答弁だろうな、そういう答弁は。答案としては、念のために書いておくというような、そういう改正に受け取れてしようがないわけです。必要じゃないわけです。将来も必要じゃないかもしれない、現にそういう音さたもないようなところで、と受け取るわけです。ですから、そんなことを議論しておってもいかないと思いますから、私はもう少しこういう点については、若干こういう法律改正をしなくちゃならない裏づけがあると思うのです。もしそういうことを、何にもないですとおっしゃるならば、まさになかったら、私はやめられたらいい。あるとするならば、こういう次第でと……。そういう答弁をしてごまかしていけば済むという、そういうやり方も、私はけしからぬと思いますというようなことを申し上げて、私はそれだけでいいです。
  74. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  75. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はあとから来まして、突然質問して、誤解した質問をするとちょっと困りますけれども、先ほど銀行局長の御答弁の中に、輸銀の資金計画の中にブラジル等に対する融資も含まれているような御答弁だったから、あれはブラジルに対する、ウジミナスですか、製鉄会社に対する出資ですか、あれは経済協力基金から出ていますね。それと民間からも出ているでしょう、日本の民間から。いや、出ているはずですよ。経済協力基金の、いま百十億円ぐらいあるのですか、それで。ないですか。ぼくは前に調べたときに、どうも入っているように思ったのですが、あれは政府が出資しているはずだと思うのです。経済協力基金の中にありませんか。
  77. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ウジミナスに対する日本側からの資金供給は、現在三百五十億円ぐらいございますが、その大部分は輸出金融でございまして、これは輸銀から日本ウジミナスを経てブラジルのウジミナスに出ております。そのほかに出資があるわけです。その出資は民間の製鉄関係その他の関係会社が出資をいたしまして、日本ウジミナスをつくりました。それが向こうのウジミナスに出ております。さらに、その会社がウジミナスに出資するために必要な資金を、私どものほうから四、五十億でございましたか、この会社に出資いたしております。現在のところは経済協力基金は、ウジミナスには関係はございません。ただ、将来どうするかという問題のときに、基金の問題が非常に大きく浮かんでくるわけでございます。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。ないのですね。じゃ、いいです。
  79. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案に対する質疑は、本日のところこの程度にとどめておきます。     —————————————
  80. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 再び、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  宮澤経済企画庁長官が出席しておられますので、御質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 長官に。私は、日本の国の国際収支がずっとこう赤字を続けざるを得ないとなれば、そうしてこの前あなたの答弁を聞いておりますと、四十二年に解消することは困難だと。これは貿易外収支をさされたのか、あるいは経常収支をさされたのか、あるいは総合収支を言ったのか、そういうことは別として、なかなか容易なことではないであろうと。まあ資本収支は別としてですね、経常収支でいえば非常に困難だと。そこで、あなたにお尋ねしたいのは、四十二年は困難だと、こうおっしゃるが、私らはもっと十年ぐらいなかなか困難じゃないかと思っている。いまの計画を完全に遂行されるとしても、なかなかできないのじゃないか。ずっと構造上の問題として赤字が続いていったとした場合に、円の国際的な地位と申しましょうかね、片一方ではやみドルの値段というものはないじゃない、あるわけです。その円の安定というような観点に立って、非常に実は今度のIMFに移行するという点に実は心配をしているわけです。そういうような点について、長官としては円の価値安定に対してどういうような基本的な姿勢をお持ちになっているのか、承りたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 過日、昭和四十二年に至りましてもなお困難かと思いますと申し上げましたのは、貿易外収支——船舶、海運を中心としたところの貿易外収支について申し上げましたわけでございます。で、総合収支あるいは貿易収支について申し上げたわけではなかったわけでございます。  で、やはり基本的な問題は、その四十二年になりましてもなかなかと申し上げましたのは、それだけの船舶をつくり、そうしてその船舶がみんな積み荷を持つということが、そもそもそう簡単なことではございませんで、積み取り比率が六〇%とか七〇%ということはなかなか簡単には参らないことでございますが、それと同町に、そのようにして船舶を持ちますと、必ず運賃収入以外の、いわゆるIMFで申しますその他の収支、つまり船舶用の油でございますとか港湾経費、こういったわけでございまして、わが国一国の港湾経費が世界各国に邦船が払います港湾経費とイコールになるということはなかなか考えられないことでございますし、いわんや、船舶用の油はこれは自給をするということがとうてい考えられません。それらのことから、かりにそれだけの船舶増強をし、そうしてかりにそれだけの積み荷がございましても、なおいわゆるその他の経費というものは赤になる公算が多いわけでございますから、それでああいうお答えを申し上げたわけでございます。  そこで、考えてみますと、本来、船舶用の油なんというものは事実上は私は輸入ではなかろうか、むしろ貿易収支で輸入に本来建っていい性質のものではなかろうかと、事の性質上そういうものではないかというふうに考えるわけでございます。そういたしますと、それならば、それを含めた姿での輸入というものをまかなうだけ輸出がなければならないのが本来の姿であろう。現在わが国の輸出は国民総生産の九%程度のものでございますが、ヨーロッパの先進国を見ますと、大体イタリーくらいまで含めましても、一一%から一三、四%は輸出があるわけでございます。それで、国民総生産が六百億、ドルでございますから、ざっと申しまして六百億ドルあるのでございますから、一%の輸入増になりますと六億ドルプラスになるわけでございます。そういうふうに考えていきますと、やはり基本的には輸出というものがもっと高い水準でなければならないということに帰着をいたすのではなかろうか。円の対外価値ということについてただいま別段心配しておりませんし、見通し得る将来心配な事態が起こるとは考えておりません。けれども、全体の構成で申せば、輸出の国民総生産に占める比率というものがもっと何%か高くならなければならない、こういうことが問題の一番の焦点ではなかろうかというふうに考えております。
  83. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、国際収支ということは経常収支に限っておることで、なるほど資本収支で借金をすれば総合収支で赤字にならないかもしれない、あるいは黒字になるかもしれない。そういうことではなくて、やはり借りたお金はいつかはお返ししなければならない。いや、むしろこれからは返す段階になり、利子ばかりじゃなくて、元本まで返さなければならぬようなことになりますから、なかなかたいへんなことではないかという点で、経常収支で……。  そこで、お尋ねしたい点は、四十二年までは貿易外収支は非常に困難だ、黒字にしていくのは困難だと。とするならば、いつごろ企画庁長官としては——これはしばしば私は狂うと思うんですよ。貿易の収支じりが狂うと思うんですが、それはやむを得ぬと思いますけれども、しかし、基本的にはこうあるべきものだという目標を立てるところの責任は、あなたの役所以外にない。したがって、いつこれを解消するかという目標を立てて、そうして年次計画、それに基づくところの、たとえばこういう政策はこの程度にやっていく、こういうものについてはこうやっていくと。いま一つ、油の問題は輸入のほうに入れておきさえすれば、経常収支の赤字は輸出のほうで挽回するというのも一つの案かもしれない。目のつけどころと申しましょうか、そういうこともものさしになる。そうすれば輸出振興には輸出はどれだけなければならぬか、どういう対策を立てるということに話がなって、進展していくと思う。ですから、そういうような立場に立って、経常収入はこうやって黒字にしていくんだ、そういうめどですね、いつやるのだ、そのときには輸出はこうなって、輸入はこうなるというような点をお聞かせが願いたいと思う。そのことが私は円の信頼性と申しますか、そういう問題に重大な影響がありはしないか。いまは心配ないとおっしゃることはわかる。しかし、将来の展望に立ったときに非常に心配を——心配だ、心配だということはあまりいいことじゃないけれども、しかし心配をしながら対策を立てていくのが私はあたりまえだと思う。一つの会社にたとえたら、全部赤字で、借金政策でやっているのと同じことでしょう。一つの会社だったら、会社がいつ不渡りを出すかわからぬことになってくると思う。ですから、そういう立場に立ってお答えが願いたい。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの成瀬委員の御質問はまことにごもっともだと思います。それにつきましては、過日木村委員の御質問にお答え申し上げましたように、今月中にでもそういう基本問題をみんな集めまして、政府経済閣僚の間でもとから問題を洗い直してみたいと考えておるわけでございます。で、その際に関係各省から提出いたします資料を、ただいまお互いに連絡をしながらぼつぼつつくっております。  で、それができませんと、ただいまの御質問に計数でお答えすることができないわけでございますが、大体の考え方は、四十二年なり四十三年なりを一応の目標に置きまして、そのときの貿易量が、輸出輸入おのおのただいまの様子でいけばどのくらいと推定されるであろうかということが一つ。それから、そのときまでにどのくらいの外航船、これはタンカーとバルク・キャリアがおもになると思いますが、どれだけが建造可能であるかということ。建造可能といいます意味は三つございまして、一つは船台があるかという問題、これはたいした問題はなかろうと思います。もう一つはどれだけ財政資金が要るかという問題、もう一つはそれらに背負わせる荷物が実際にどの程度確保できるか、この三つの問題でございますが、その上に立って、昭和四十二年なり三年までにそれらの外航船舶の建造が何トン可能であるか。で、さてそうしてそれらの船が輸出及び輸入についてどれだけの積み取り比率を持ち得るであろうか、及び第三国間貿易でどれだけのかせぎをかせぎ得るか、こういう計算をいたして、ただいま目下やりつつあるわけでございます。さて、そこでそれらの計数が整いましたときに、今度はそれぞれの船舶によるいわゆるIMFで申しますその他の経費、これは港湾経費と船舶用の油などでございますが、それがどのくらいになるか、これは当然マイナスになるわけでございます。そこまでの計算をいたしまして、IMF方式をとらずに、今度はそのマイナスになる、少なくとも油の分などは概念的には輸入のほうに入るという考え方をしてみまして、海運収支がそこでとんとんになるであろうかどうであろうか、その場合今度それだけ編入のほうがふえますから、それをカバーするだけの輸出が可能であるかどうか、大体そういう計数の整理をただいま各省共同で作業をいたしておるわけでございます。これはお説のように、まことに見通しの中でもはなはだ立てにくい見通しでございますけれども、一応その基礎的な資料の上で、この問題を海運のところから研究していきたい。できれは今月中にそういうことを関係の閣僚の間でやってまいりたいという気持ちでおります。  なお、それと同時に、積荷の確保ということは産業界の協力と申しますか、その気にならなければなかなかできがたいことでございますから、当然それらの人たちにも呼びかけなければなりませんし、また、呼びかけますと、今度は自社船をつくりたいという話がきっと出てくると思います。それらについてもどうするかということも考えなければなりません。ただいまそういったような作業の中途の段階にあるわけでございます。
  85. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 三月中にある結論が出ようとするのか、第一回の会合をお開きになろうとするのか。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはどう希望的に考えましても、第一回の会合を開くということになるのではなかろうか。ただ一つ、さしずめ急ぎますことは、各造船会社が将来の船台の状況を見まして、輸出船の契約をあいていればとるということになるわけでございます。で、さしずめ昭和三十九年度あるいは四十年度の早期にそのために国内船をつくる船台があいていないということではいけませんので、その点だけは比較的早くとりあえずめどを立てておかなければならないと、こう思っております。
  87. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 輸出は、この前の木村委員のときもお話がありまして、予定どおり伸びておる。そうして輸入もちょっと予定よりも期末的には狂って伸びることもあるわけです。そういうようないろいろなことがあると思いますが、基調としては、予算の説明等では健全均衡財政ということばを使っておる。しかし、財界で使われておることばは、御案内のとおり引き締めでして、この中にもしばしば引き締め政策ということを言われた経済関係の力もあるわけなんです。この成長政策の出てきたいい面もあるが、ひずみの面もあるということは認めておいでになると思うのです。そこで、そういうものをも直しつつ、なおかつ輸出を増強しなくちゃならぬということが一点と、それから、あなたがおっしゃる貿易外収支の問題で努力するのだ、こう二本立て——三本立てくらいになるだろうと思うのです、国内の問題を、ひずみの問題を入れれば。それから、貿易振興の問題、それからもう一つは、何といいますか、経常外とかいろいろな対策が各方面にわたってくるのですが、私は経済閣僚会議というのですか、これからつくられようとするのか、これから発足しようとするのか。どういうようなことを、全体のものをそういうようなところで、全部に日本経済に関する基本的なもの、あるいはこまかいそこら辺の資料を集め、そうして数字をはじいてやられるのか。もう少し、経済閣僚会議の主たる仕事というのですか、任務、それからどういうような構成メンバーでおやりになるのか。これからもしやられるとするなら、第一回は国会開会中で特に予算関係でお忙しいと思うのですが、その次三月やったら四月はやらずにおくものかどうか。月に何回くらいやっていつごろこういう問題は結論を出して、たとえば今年の八月末までには、次の予算に備えていくというようなことにもなるかと思うのですが、そういうような点についてはどういう心がまえですか。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済閣僚会議と申し上げたのではございませんで、経済閣僚懇談会というのが実は常時あるわけでございます。これは毎月定例的には、従来経済企画庁の月例経済報告というものがございますので、少なくとも一ぺんは必ず開いておるわけでございまして、大きな経済問題がございますときには必ず——必ずと申しますか、しばしば会議を開くわけでございます。構成員は総理大臣以下経済関係閣僚、それから日本銀行の総裁と、政府与党という問題がございますために与党の役員が三名入っております。この機関で討議をしようというふうに考えておるわけでございますが、今度の場合は事柄が海運に相当関係がございますので、開発銀行の総裁にも加わってもらうことのほうがよろしくはなかろうかと考えております。これはしかし私の私見でございまして、別に総理大臣の許可を得てそういうことをただいま申し上げているわけではございません。が、そういうふうに考えております。もちろん、何ヵ月もそこで議論をしておるわけに参りませんので、基本的な方針は一月ないし一月半、おそくてもその間にはきめてしまわなければならないと思います。…題は多方面にわたりますけれども、それだけの船を政府が財政援助をしてつくるということは、よほど積み荷をしっかりしておきませんと、ある意味では相当の不確定要素を踏み切ることになるわけでございまして、将来レートが相当下がった場合には、これはかなりの損失を日本経済自身が負うことになるわけでございますから、そこらのところをよほど慎重に考えてやりませんといけないと思いますので、問題はかなりむずかしい問題に取り組まなければならぬのだろうと思いますから、一ぺんや二へんですぐに結論を出すということにもならぬと思いますが、しかし、何カ月もかかっていいことだとは思っておりません。
  89. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 たとえばアメリカにおいても、ああいう国ですらドル危機といわれている。イギリスでもポンド危機ということがある。日本で円危機というふうなことが実は出てきやせぬかということを心配して、いまおっしゃる非常な因難な問題だということは私もわかるのです。しかし、なさねばならぬ私は至上なことだと思う。至上命令にひとしいことだ。それについていまお聞きしますと、一回か二回じゃできぬとおっしゃる。もう何べんですかと聞けば、それでしまいなんですが、私は、予算編成等があるから、おそくとも八月というのが一つの最後にかかっておるかせ棒だと思うのです。したがって、そういう困難な仕事について取り組まれる、取り組まれなくちゃならぬ。元来ならば、私はもっと前に取り組まれておってしかるべきだと思うのです。もう少しその辺のところを御説明が願いたいと思うのです。もしアメリカのドル危機、ポンド危機といわれるようなことが、日本で円危機というようなことがいわれるとするなら、どういう状態のときにそういうことが起きると予想されておるのか。こういう形でいったらそうなってしまいはしないかということが、私は心配の点があると思うのです。長官としてはどういうような点を予測しておられるか。そうしてそれに対して対策というものをおのずから立てていかなければならぬと思いますが、いや、そんな円危機なんかないのだ、円は、というような点で万全に信頼をされるという点は、私たちもそれでいいと思いますが、しかし、片一方ではそういうような心配もされ、いろんな事態に私は対処されていく必要があると思いますが、その辺のところの腹づもりもあるなら、ひとつお聞かせを願いたい。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 八月ごろまでのんびり議論をしていくというつもりはもちろんございません。ただ、相田これは将来にわたって大きな影響のあることでございますから、ことに積み荷の点、それから長期にわたって積み荷契約をいたしますときに、するほうでいえば、将来のリスクをどうやってカバーをとっておくかというようなことが当然出てまいると思いますし、そこはよほど荷主の側ともよく話をつけておきませんと、あぶなくて船はつくれません。したがって、それらのことは一回あたり議論をしただけでは済まない、こう思っておるわけでございます。もちろん八月ごろまでのんびりやっていい問題だとは考えておりません。  それから、円の対外価値が非常に失われる、疑われるという事態はどういうときに起こり得るかということでございますが、円は、申し上げるまでもなく、管理通貨でございますから、基本的にその通貨管理の方針が非常に誤った、それが長期にわたるというときにそういう事態が起きるのではないだろうか。これは抽象的にしか申し上げられませんが、そういうふうに考えます。
  91. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まああまり……。しかし、長官はやみドルのことを、値段は大体御存じですね。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは私はちょっと別の事情があるのではないのだろうかという見方をいたしております。すなわち、海外渡航について為替管理をいたしております。自由化をいたしましても、なお一定の制限のもとでしか外貨が持ち出せない。それに反して円を持ち出しますことは、規則はございますけれども、いろんな関係から実際にはかなり楽に行なわれておるようでございます。そうしてそれらの円がヨーロッパ、ホノルル、香港等々にやや蓄積されまして、しかもそれが非常にたくさん蓄積されるのならばまた問題は別でありましょうが、ある、そう多くない量を蓄積されるという結果、需給が相当フラクチュエートするということが、成瀬委員あるいは私どもが聞いておりますいま円の相場が幾ら幾らというようなことになっておるのではなかろうか。で、そういう非常に小さい、それも正規でないマーケットで成立しますクォーテーションでございますから、それ自身が円の対外購買力を一般的に示すものだというふうには考えておらないわけでございます。  で、そういうことを防ぎますためには、もちろん出国の際に、円の持ち出しの限度はたしか二万円か三万円でございますから、そこをきちんと押える、また旅行者にも自粛をしていただくということでよろしいのではなかろうかと思っております。
  93. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後に、資本の問題についてこの前木村委員が系統的にちゃんと質問しておいでになりまして、国際収支の問題について残っておりますから、私も、木村委員からひとつ系統的にやっていただきたいと思いますが、最後に一つだけ伺っておきますが、輸出振興のためには何か必要かというならば、御案内のとおり低金利政策というものが必要になってくるわけです。ところが、いま国内で論議されておるところは公定歩合の引き上げというようなことになっておるわけです。ですから、国内問題としては、私は非常に、国際収支を議論するならば国内問題にも関連してまいる。そこで、新たに経済閣僚懇談会で、そうして日本の国の国際収支の赤字をなくするようなふうに話をされるということは、承っておりますと、何か貿易外収支の船舶関係を主としての答弁しかないわけなんです。私はそうじゃなくて、もっといろんなものを総合したもののことが議論されると、こういうふうにばかり思っておったのですが、そこら辺は私の受け取り違いか、それともそうじゃなくて、あなたのほうがそこに限って部分的な答弁をされたか。そうじゃなくて、全部の問題を、いわゆる国際収支の問題から議論をすれば、当然国内の問題にまでなるわけです。そういうことまであわせて作業をおやりになるのか、どうでございましょうか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは海運のことを主として申し上げましたけれども、それが当面焦眉の急だということを申し上げた意味でありまして、全体的な国際収支対策というもののそれはあくまで一つの部分でございます。そのほかにいろいろなことがございますが、たとえば飼料——えさでございますが、これなどはやはりひとつ考えなければならない問題ではないか。相当急激に飼料の輸入がふえておるということ、それから先般も木村委員からも御指摘がございましたが、自由化に伴いまして一応奢侈品だと考えられるものの輸入が相当ある。その辺のことは私ども消費を何もディスカレジするということではないのでございますけれども、虚栄心から何も外国品を買わなくても国内にいいものがあるというものについては、だんだん機会あるごとにそういうことは直していっていただくように国民各位にお願いをしなければならない。その他総合的な国際収支対策というものを、本来は、経済企画庁で昨年来検討をいたして、そのつど何か申しておるわけでございますけれども、そういう全体の総合的な姿をもとにしまして幾つかの問題を議論をしてみたい、こう思っておるわけであります。
  95. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、公定歩合の問題を一つ例にとりましても、これは日銀あるいは大蔵省との問題だと思うのです。しかし、いま申しましたような国際収支の問題を議論すれば、当然輸出振興のためには低金利が必要になってくると思うのですよ。そうとらざるを得ない。相反してくるわけです。そういうようなものまでこの中で議論を、あなたが言われる経済閣僚懇談会の中で議論をされるのか。いつ幾日に上げるとか幾ら上げるというようなことは、ぼくの言うのは、当然日銀の問題であり大蔵省の問題だと思いますが、そういうことはここで議論をされるのかどうかというようなことをお尋ねしておるわけです。それで、そのためには、輸出振興策にはまだほかに、低金利政策とか、そのほかいろいろ問題があると思います。そういうことをひっくるめて議論をされて、ある青写真というものを、こうやったら国際収支というものは改善するのだというりっぱな青写真ができるものなのか、何かこうちょいちょいと、何というのですか、こま切れに問題が出てくるのか、その辺のところがちょっとわかりかねますから……。構想がわからないのですよ。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう席でそういう場合に公定歩合の問題を、これは一例におあげになりましたわけだと思いますが、議論するか。そういうつもりは別段ございません。で、長期的に見れば、わが国の金利が高いということは国際競争にそれだけハンディキャップになっておりますことはそのとおりでございますけれども、ただいまの経済の各面は、過般の総理大臣の所信表明でもお聞き取り願いましたように、内需があまり高過ぎるということは困りますので、経済を引き締め基調に運営する、こういうふうに申し上げております。それが基本の方針でございます。したがって、そのこと自身は、長期的に見てだんだん金利を下げていくという長期的な私どもの課題と一応ここで必ずしも同じ方向を示しておらないということは認めなければならないと思いますが、しかし、当面の問題は、やはり長期的には金利をだんだん下げていきたいことはそのとおりでございますけれども、いまそういう事態ではないと。むしろ経済を引き締め基調に運営することによって、どちらかといえば内需をあまり大きくならないように、そうして多少金詰まりの状態の中から輸出がふえていく——皮肉なことでありますけれども、金が詰まってまいりますと、輸出の金融は比較的楽でございますために、その他まあほかの事情もございますけれども、輸出がふえていくということがいつもの傾向でございますから、さしずめここ半年とか何ヵ月とかいうものはそういう事態をつくっていくと。どちらかといえば、そういう基本的には情勢ではないだろうかと。経済閣僚懇談会でこま切れに問題を処理しようというのではございませんけれども、当面実益のある問題を議論していこう、こんなふうに考えております。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどからの成瀬委員質問と長官との質疑の経過を聞いておりまして、それから前に私が質問いたしましたことに対する御答弁等を聞いてみますと、日本国際収支の問題点がかなりはっきりしてきたと思うのですね。これをどう打開するかということは、また一応別問題として、それが非常に困難であるということがわかったということも一つの収穫だと思うのですけれどもね。とにかく非常にはっきりしてきたと思いますね。  先ほど企画庁長官が油の輸入については、これを港湾費の中で油の問題が輸入と見るべきだと。その着服はぼくは正しいと思うのですね。ただ、普通の輸入と違うところが、保税倉庫から使われますから、関税の問題かないということが違うだけなんですけれども、やはり国際収支としてはこれを輸入に立てて、そうして今度はそれだけ輸出をふやしていくと、こういう着想ですね、これはやはり正しいと思うのですが、それでこういうようないままでずっと特に貿易外収支について、特に船舶の、海運の収支について、非常にはっきりわかってきたことは、所得倍増計画を立てる当初においてはこれまではっきりと問題点が明らかになっていなかったと思うのですね。いままでまあ倍増計画をやってきた過程において、こういう問題が非常にはっきりしてきたわけですね。ですから、これから、いま中期計画というのですか、作業をしておるわけですが、そういうところにこういう問題も反映させていくわけだと思うのです。中期計画というのはやはり計数的に、いままでの倍増計画、あれを修正して計数的にやはり出していくのかどうか。そういう場合に、輸出の立て方、それから輸入のたて方もいままでとやはり違ってくるわけですね。特に貿易外収支の中で港湾費の中の油の問題、輸入と見て、そうしてそれを今度は輸出のほうにそれだけ上積みしていかなければならない。それで相当いままでの考え方と何かと違ってくると思うのです。その他農業の問題でも、羽生委員が予算委員会でいろいろ質問をしておりましたが、ああいう問題もありますし、当初予想されなかったいろいろな問題が出てきたわけです。いま中期計画については、どういうふうな作業をされて、そうしてどういうような形でこれを出されるのか、その辺のところを伺っておきたいと思うのです。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは仕事を始めましたばかりでござますから、あまり適切にはお答えができないかもしれませんが、ただいま木村委員の御指摘になりましたような問題は、大事な申でも大事な幾つかの問題だと思います。すなわち、これからの国際収支、ことに貿易外の国際収支の見通しをどういうふうにするか。そうしてそのためにはどのような施策が望ましいか。おそらく中期計画ができます前に、かような対策が立っていなければならないわけでございますが、それならば、それを織り込んで海運の収支はどうなるかということ、それから先刻申し上げましたような意味合いから、昭和四十三年度の輸出の目標はどのくらいでなければならないかといったようなこと、それらは当然問題になる大きな項目でありますし、そのほかに、国内の消費者物価の動向、あるいはただいま御指摘のありました農業の所得倍増計画との関連でのあり方、あるいはもう一つ労働の需給関係、これが四十三年ころにはもう逼迫し始めることはまことに明らかでありますから、そういったようなこと、あるいはいわゆる公害の問題それから民間設備投資政府の公共投資とのバランスが非常にずれているといったような問題、それらのことが、中期計画に、まだほかにもたくさんあると思いますが、いま思いつきましただけでも、すぐ頭に浮かぶ問題であります。ただいま御指摘のような問題は、当然その中で非常に大きな、よっぽど精力を結集して検討しなければならない問題だと思っております。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも私は、期待倍増計画を立てた当事と最近では、日本の内外の経済内借条件が非常に大きく変わっていると思うのですよ。ですから、中期計画というのは、ただ単に所得倍増計画の修正程度ではなくて、基本的な要件ですか、要件が非常に変わってきたのです。ですから、新しい着想で新しい要件のもとで、新しい計画を立てるくらいの気持ちでやらないと、私はまたそごがくると思う。ただ単なる手直し程度では済まない。たとえば、さっきの労働需給の問題でも、日本の高度経済成長の一つの大きな条件として労働力が豊富であった、低賃金が可能であった、よその国よりは。このことは、非常に経済成長を可能ならしめる一つの大きな条件であったと思う。それが弱年労働者の不足、初任給の引き上げ等で、こういう要件が一つ変わってきているでしょう。  それから、封鎖経済が開放経済になる。これが非常に大きな変化。それからあとでも質問をしたいのですが、アメリカのドルの危機の問題も、当時は予想されていなかったと思うこれだけ深刻になるとは。当時昭和三十五年マッカーサーが域外調達について節約の指令を出してきましたけれども、あのころ池田さんは、私が国会で質問をしたら、ワサビ論で、たいしたことはないと、こう言われておった。あの当時はそんなに深刻に考えておらなかった。それが非常に大きな変化をもたらした。  それからまた、防衛費についても、ドル危機のあおりで無償援助というものも打ち切られる情勢にあるでしょう。  そういう要件についての非常な大きな変化があるわけですね。ですから、単なる私は修正程度ではなく、またこれまで倍増計画を実行してきた過程において非常に大きないろいろなゆがみも出てきていることですから、これは新しい立場に立っての計画のやり直しというくらいの着想でやらないと、また私は狂ってくるのじゃないか。とにかく日本経済は非常に大きなここで曲がりかどに入ると、いろいろいわれますけれども、確かにそういう情勢にあると思うのですがね。そういう点、中期計画を立てるにあたってそういう着想が必要じゃないかと思うのですが、そういうことでおやりになっているかどうかですね。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お説のとおりであると思います。所得倍増計画を立てました当事といまと比べますと、第一、国際環境が非常に違っております。たとえば国際情勢が一般にかなり緩和しておって、大きな戦争というものはおそらくないであろうというふうに考えられるようになったこと、このことは非常にいろいろな見通しを立てますときに大きな要素になると思います。それから、それをも反映いたしまして、東西間の貿易量というものが相当ふえつつあるということ、また低開発諸国がもはや黙っておりませんで、相当いろいろな意味で先進国との間のものの行き来をいろいろな形で要求をしておるという問題、あるいはキー・カレンシーの国際流動性の問題、それから西欧各国のようにフル・エンプロイメントに実際上達したと思われる国が相当ふえてきたというようなこと、ちょっと考えましても、それだけ国際情勢が違っております。それらの中で、おそらく、しかし一つの国としてはやはりわが国などは一番この何年かの間に変化した国でございますから、内外ともにかなり基本的な条件が変わってきた、そのとおりであると思います。したがって、中期計画とは申しておりますけれども、そういうことを認めながらもう一ぺん検討し直すと、実際上そういう作業を当然いたさなければならないと思っております。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまにして考えますと、高度経済成長を可能ならしめた要件なり条件というものは、非常に、いまから考えれば、一時的であり、不安定的であったということになるわけです。たとえば労働需給の問題も非常に変わってきたわけでしょう。これもかなり長期的に変わってくることになりますね。それから、封鎖経済というものも、そう長期にできなかった。ドルの危機という問題が、これもいまの流動性と関連しまして、そうすぐに解決されるという問題でもありません。ですから、今後高度経済成長——高度経済成長とはこのごろ言っておりませんが、安定的成長ですか、七%あるいは八%程度の成長を持続させるためにも、ここでこれまでと非常に違った政策が必要であると思うのですね。そういう点ですね。  そこで、それは承認されましたから、次に伺いたいのは、先ほどのドルの流動性の問題ですが、これについては、もう御承知のように、最初はトリフィン案というものがだいぶ問題にされましたが、その後、パリの蔵相委員会というのですか、十カ国の大蔵大臣委員会ですか、そこで対策を検討していただくといわれておりますけれども、トリフィン案ではなくて、国際流動性の問題は、結局国際収支の、それぞれの国の国際収支の不均衡の問題であるわけですね。ですから、それぞれの国がその不均衡を是正するための努力を払うべきだという方向に向いているといわれているわけですね。トリフィン案ですと、国際的な管理通貨的な、インフレ的な処理だと思うのですけれども、しかし、そうではなくて、個々の国の国際収支のアンバランスの問題として理解する。アメリカの最近の政策はそういう考え方に変わってきていると思うんです。ですから、利子平衡税なんという問題が出てきていると思うんです。  そうしますと、アメリカのこのドル政策というものはトフリィン的ではないのですから、かなり強化されてくるのではないかというふうに考えられるわけですよね。ですから、アメリカ自身自国の国際収支の均衡をはかる努力をしなければならないという方向に向いてきている。その一環として利子平衡税というものを考えますと、それは大蔵大臣がよく、日米貿易経済合同委員会日本適用を免除してくれとか、こういうまあ申し入れをしたとか、いろいろ言われますけれども、そんな簡単にアメリカが譲歩する問題ではないと思うんです。というのは、いまの流動性の問題の理解のしかたですよ、理解のしかたが、トリフィン的ではなくなってきている。個々の国の国際収支の均衡ということが流動性問題解決の一番重要な問題であるというふうに国際的にも理解されてきている。そうなると、利子平衡税日本適用除外といっても、なかなかアメリカが応ずるわけもない。長官もこの点についてはいろいろ主張されたようですが、そう簡単にアメリカが譲歩するものでもないと思うんです。  そうなると、今度は資本収支の問題ですね、資本収支の問題は、いままでのようにアメリカから十分に資本を導入するということは困難になってくるのではないか、そう考えられるのです。ヨーロッパ市場に切りかえても、なかなか多額のファイナンスは困難であるといわれておりますが、そういう点はどうなんですか。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) アメリカがドルというものを依然として国際通貨である、キー・カレンシーであるということを片方で主張をし、しかも他方で国内通貨でもある、そういうドルの持っている二重の性格をそのまま保持したいというふうに考えております限り、つまりこれがキー・カレンシーであるということであるならば、利子平衡税といったものの考え方は私は間違いだというふうに思っております。いまでもそう思っておりますけれども、木村委員の御指摘のように、そういう基本的な、ドルが国内通貨であると同時にキー・カレンシーであるという考え方をアメリカは捨てそうに思えないわけでございます。つまり、トリフィンなどが言っておりますように、そういう解決策にはアメリカはやはり同意をしないというふうに考えられる私は何となく感じがいたします。  そうしますと、まあ十カ国蔵相会議の出してくる結論というのは、おそらくは、推測でございますが、国際通貨基金への出資額をふやすとか、あるいは中央銀行間のスワップをやるとか、依然としてそういう従来と質的には変わらないところの解決策になるのではないであろうか。  実はこの流動性の問題は、ここでこれだけ議論になりましたのですから、どこかのだれかが国際通貨というものを一ぺん考え直してみるぐらいの案を出したらよろしいと思いますけれども、どうもそういうことにならずに、現実にはただいま申しましたような解決になっていくのではなかろうか。そうしてそれによってドルの世界各国における分布、そのアンバランスを多少時間をかけても直していこう、こういうあたりに落ちつくのではないだろうかというふうに思っております。  で、そういたしますと、当然そういうときが来るまで利定平衡税的な考え方はやまないであろう、仰せになりますことは私もそのようにやはり考えるほうでございます。これはちょっと抽象的な議論になっておるのだろうと思いますが、そういうふうに傾向としては考えられます。現実の事態ではそれではどうなっているかと申しますと、米国内でも経済活動が依然として活況でございますから、かなりの資金需要がただいま強いようであります。一年前に比べてかなり強いようでございます。ですから、おのずから外国に向かってくる金の量というものは、利子平衡税がありませんでも、やはり多少前よりは減ってきたであろうと思われるわけでございます。利子平衡税がございますから、ただいまのところはその三年に満たないところでもインパクト・ローンのようなかっかうで入ってくるものは入ってきておりますが、アメリカの資金需要が国内で相当強いということがおのずからやはりその量を制約しておる、こういう状況ではないかと思います。ヨーロッパでの最近起債がわが国でも行なわれましたが、やはりどうしても、三千万ドルくらいなものならば、ぼつぼつとできるわけだと思いますが、五千万ドルとなりますと、かなりつらいのではなかろうかというように、私見でございますが、見ております。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど長官が利子平衡税についての何か御意見持っておられるようですが、それはどういう御意見ですか。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御批判にたえ得るほどの意見ではないと思いますけれども、ドルがキー・カレンシーであるならば、その価値というものはアメリカ国内においても国外においても同一でなければならない。利子平衡税というものはその基本原則にもとるものである、こういう考え方でございます。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは日米通商航海条約に違反するというものはありませんか。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはおそらくどの部分、最恵国約款でございましょうか。たとえばカナダに対して免除をしておる、日本は同じ待遇を受ける資格があるという議論かと思いますが、ちょっと私つめておりません。考えられそうでございますが、何かまた反論があるのだろうと思いますので、つめておりません。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ぼくはこの外資法と外為法の改正案と日米通商航海条約との関連を調べているうちに、どうも利子平衡税というものが何か、これは差別的な待遇をすることでありますから、何か通商航海条約違反のように思われてくる。たとえば日本がやったような場合、かりに日本がそういうことをやった場合に、やはりこれも何か違反するような気もしますから、アメリカがやる場合にもやはり違反するのではないか。私も確信はないのですが、そういう気がするのです。この点はまた検討してみていただきたいと思うのです。  それから、次に伺いたいのは、具体的に三十九年度で一応外資の導入を財投計画で立てておりますけれども、地方自治体でも、たとえば東京都なんかも予定しておりますが、利子平衡税の関係で困難になると思うのですね、起債が。政府のほうでも予定している起債はやはりあの予定どおりいくかどうか。そうなりますと、これは国内債に切りかえなきゃならぬという問題も起こってくると思うのです。その点はどうなんですか、そういう心配はないのですか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは前の通商航海条約の問題とあわせまして、大蔵省為替局から答弁をしていただきたいと思っておりますが、東京都のような場合、これは三十八年度に予定いたしましたものがアメリカで出せなかったわけでございますが、それらのものの一部についてヨーロッパで考えてはどうかというような動きがあるようでございます。私、詳しいことは存じません。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、最後にひとつ物価問題について伺いたいのですが、これは四日の閣僚懇談会で物価安定策の一環として賃金と生産性の関係を取り上げた、これは新聞報道なんです。それで、これは新聞報道ですので、どこまで正確かわかりませんが、春闘による賃上げは生産性の向上に見合ったものとするという方針を打ち出したと、こういうふうに報じられているわけです。これに対して大橋労働大臣と宮澤企画庁長官、その他の関係閣僚との間に、物価と賃金の関係について微妙な見解の対立を来たしていることが明らかになった、こういうふうな報道なんです。それで、前に企画庁長官は、所得政策ということを言われたことがあるのですね。これは所得政策的なお考えではないかと思うのです。特に春闘を控えて、賃上げを抑制する方針を打ち出したといわれている。これは非常に寛大な問題だと思うのです。この物価と賃金の問題について、日本のいまの現状に即してどういうふうにお考えになっているのか、この機会に伺っておきたいと思うのです。それで、差しつかえなければ、この閣僚懇談会でどういうふうな議論がかわされたのか、お聞きできれば私も参考にお聞きしておきたいと思います。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 所得政策というものの考え方は、昨年から機会あるごとに申しておりますし、過般の物価問題についての閣議了解にも所得政策的な考え方を今後とも育てていくべきであるということを申しております。しかし、これは昨年申し上げましたように、何分にも労使間の相互信頼というものが先立たなければなりませんし、また西欧の幾つかの国がやっておりますのと同じことができるほどには、現在の賃金水準というものがそこまで上昇していないというふうにも考えております。したがって、ああいう同じようなことそのものが国民共通の現実の問題として考えられるのには、まだ少し時間がかかるのではないかというふうに思っております。けれども、先ほど申し上げましたように、労働の需給関係が昭和四十二、三年には相当逼迫するということが明らかでございますから、それまでの間にはそういう考えが熟していくことが望ましいと思っておるわけでございます。  それから、賃金と生産性の問題は、私もときどき機会をみていろいろなことを申しておりますけれども、実はこの生産性問題というのがもう一つ学閥的と申しますか、統計的に確かに主張できるほどの研究が、正直を申しますとできておりません。基準年次をどこにとるかというふうなこと一つで議論は幾らでも変わってくるというのが、ただいまの程度の研究でございますから、これをたてにして、とことんまでいかなる場合にも議論できるかというと、必ずしもそうではないように思います。  それから、もう一つ、私ども経済政策の基本の中に、やはり内需というものを高めていく、それによって国民生活の水準を上げ、また生産の基盤を強くする、そのことが国際競争力を養うゆえんだというふうな考え方を、ずっと池田内閣当初から考えております。したがって、賃金が低ければいいというような考え方には私どもはくみしておらないわけでございます。それにもかかわらず、ただいまの局面において、この昭和三十九年の経済の様子を見ますと、何ぶんにも過去何年間か毎年消費が一制二、三分上がってきておる。それは一割二、三分上がった上の一割二、三分でございますから、三年くらいすると、計算をすれば倍になるということになるわけでございます。そういうことが常にコンスタントに続いてよろしいものだとは考えておりません。  ことに今年あたりの経済は、先刻申し上げましたように、どちらかといえば引き締め基調に運営して、内需があまり大きくならないように、そうして輸出がふえるようにという考え方をいたしたい局面でございます。長期の考え方とやや異なりまして、ただいまはそういう局面だと思っておりますから、非常に商い賃金水準があらわれるということは、その企業のためにも、また労務を分け取りしなければならない中小企業にとってはなおさらでございますが、相当生産性との間で無理が出てくるということは確かに考えております。しかし、政府が、さればとて、春闘のベースがこれこれでなければならないということを申せるわけでございませんから、三公社五現業の回答を出しますときに、政府としてはこういう考えであるということは、これはものを言っていい場でございますからものを言うべきである、こういう主張はいたしました。また、そういう考えでおります。  経済閣僚懇談会でどういう議論があったかということは、概略傾向的に申しますと、給与水準、ことに賃金が上がることは、今後ともわが国の国民の福祉のためにも、経済のためにも望ましいことであるけれども、毎年棒上げに一割何分も上がっていくということは、やはり、ことにことしのような局面では困るという意見、他方で、それはそうではあるだろうが、依然として日本の労働の分配率というものは必ずしも高くはないのだ、消費者物価が上がってくるということであればある程度のことは考えなければならないのじゃないかという意見、おのおの重点の置きどころが多少違うわけでございます。そのような意見の交換があったわけでございまして、これといった結論があったわけではございません。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この日本の消費が非常に高い高いといわれますがね。しかし、政府が出しております経済見通しですよ。この中で国民総生産と国民総支出ですね、この数字から見まして、個人消費支出は、一ころから比べますと、ずっと下がってきているのですよね。大体もう六割以下。一町は五〇%ちょっと、五割くらいになりましたが、前の経済企画庁で出します経済白書にも書いてありましたが、個人消費が総国民支出の中で六割を割ったということは、戦前には、戦時を除いてはない。平時状態のもとでは個人消費が総支出の中で占める比率が六割を割ったことはない、こういうことが書かれておった。ところが、その後高度成長の段階へ入りまして、設備投資が非常にウエートが大きくなりました。その結果、個人消費の総支出に占める比率はずっと下がってきているのですよ。しかし、三十八年はちょっと上がりましたが、依然としてその五十何%、六割以下ですよ。ですから、個人消費が非常に高い高いといわれますけれども、総生産もふえておるんですから、その比率から見るとそんなに高くなっておらないのですよね。そこは一つ問題ではないかと思うのですが、その点いかがですか。まだまだ個人消費支出の総支出が占める割合は、むしろもつと高める必要がある、それくらいにわれわれは思っておるんですが。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる先進国と比べまして、個人消費支出が国民総生産の中に占める割合が、わが国の場合高過ぎるということは私ども考えておりません。それは木村委員の仰せになるとおりで、やはり六割のほうに向かって逐年近づいていくべきものだというふうに考えております。その年によりまして、これは設備投資がマイナスになったりいろいろな年がございますから、一様に申し上げられませんけれども、まあただいまのところ五十何%というものは、これは決してそれ自身として高いとは考えませんし、これからあともだんだん、やはり国民経済の成長を消費が主導権をとって伸ばしていくであろうということは、これはもう当然考えられるわけでございます。ですから、これも長期論、大局論としては、決してこれから消費を押えていかなければならぬというような考え方は私どもいたしておりませんのです。  ただ、ただい左のような局面を迎えますと、一心的にはやはりそう棒上げに上げてもらっては困る、ことしあたりは少し消費の伸びが多少鈍化することが望ましい、そういうことでございまして、長期的に、あるいは大局的に見て、わが国の消費水準が高過ぎるのだというような考え方はいたしておらないわけでございます。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は非常にはっきりしましたが、労働賃金と物価との関係ですね、それから生産性と賃金との関係、これについてははっきりした相関関係をまだ十分につかんでいないというお話。私もハンセンの、アメリカでも非常に問題になっておりましたから、これはハンセンのもこういう問題に触れておりますよね。で、ハンセンが歴史的にずっとアメリカの事例を具体的に研究、検討しているんですけれども、やはり相関関係はつかむことは困難であるという結論です。それで、あまりコスト・インフレ論、賃金インフレ論を重点に表面に出して論ずることはトリッカリであるといっておりますよ。ですから、日本でもどうもコスト・インフレ、賃金インフレを非常に強調されますが、まだはっきりした相関関係において具体的データがないのですよね。ただ、資本家のほう、日経連あたりは、それはなるべく賃金が安いほうが利潤が多くなるんですから、PRとしてそういうことを出してくると思う。あるいはまた、ヨーロッパの日本と事情の違った国の事例をそのまま日本にもってきて、すぐコスト・インフレ論とかあるいは賃金インフレ論を持ち出してきますけれどもね、日本はそういう実態にないですし、それから長官はまさかこういうことを言われたわけではないと思うのですが、新聞によれば、日本物価値上がりの原因は賃金が上がったからだ。昭和三十六年大幅な賃上げがあったことが日本物価騰貴の原因であると、こういうふうに長官が述べたように伝えた新聞もあります。しかし、これはですね、まだ賃金と物価との関係が科学的に、計数的に、また歴史的にもはっきりとつかめていない段階においてそういう議論は私はできないと思いますし、ことに三十六年以後の消費者物価の値上がりについては、ただ賃金が上がったからという問題ではないと思うんですよね。その点、はっきり伺っておきたいんです。そういう御発言はなさらなかったと思うんですけどね。新聞によりますと、そういう御発言したように報道されたのもございますよね。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう発言をいたしたことはないと思いますのは、そういう考え方をいたしたことがございません。そこで、賃金が物価を形づくる一つの要素であることは確かでありますし、賃金間の格差是正が急速に行なわれつつあるということは、したがって、ことにそういう労働集約的な製品あるいは労働そのもの——サービスてございますか、これらのものはどうしても上がっていくということは避けられないだろうと思います。でございますから、賃金が上がることがいいと、他方で消費者物価は一切上がってはいかぬのだというふうな御説問を受けますと、それはどうも、まあ程度によりますが、本来、条理上町方のことは無理なので、ある程度人間の労働力が高く評価されれば、それがコストの一部になるところの製品、あるいはコストのほとんど全部になりますところのサービス価格などは、これはその程度において上がることはむしろ理の当然であると、こういうふうに認識をしていかなければならないのではないだろうか。それをたまたま片方のほうだけきついおとがめを受けますと、つい前のほうのことについて言及したくなるような、そういう傾向がございますけれども、私はそういうただいま御引用になりましたことを申したことはない。そういうふうに考えたことはございません。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も、いま長官が言われたように、労働の占める比率の大きいもの、つまり労働の集約的なそういうもの、極端にいえば労働そのもの、その場合ですね、需給関係から賃金が上がると、それが料金なんか上がるということまでも否定しているわけじゃない。私は消費者物価水準を言っているんです。水準を言っているわけです。ですから、他方に、よく議論になりますが、今度独占価格の問題あるいは管理価格の問題、そういう問題もあるわけですよ。ですから、全体として水準を問題にしていって、それで労働の需給関係から賃金が上がり、それが価格に反映することまでもこれは否定しているわけじゃない。それはまた否定するのは、これは非論理的な考えだと思いますけれども、私はそういうことを、占っているわけじゃないんです。ですけれど、また極端に、賃上げが消費者物価の値上がりの原因だという極端な議論があるわけですね。ことに日経連あたりではそういうPRを賃金を押えるためにするから、そういう見方は一面的であると、こういうことなんです。その点はお認めになるでしょう。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、米国のように限界消費性向が九六であるというような国においてはそういうことがあると思いますが、わが国の場合それよりはるかに低いわけでございますから、賃金が上がったから物価が上がるんだというような簡単なことはなかなか申せないと思います。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、もう一つ伺いたいのですが、生産性と賃金を比較する場合ですね、とにかく生産性が——まあ所得政策について、ガード・ライン政策について伺うのですが、生産性が一割上がった場合賃金が一割上がれば、そこで企業は収益がなくなる。あるいは生産性が一割上がった場合賃金が一二%かりに上がるとしますね、そういう場合は企業が損をする。だから、生産性以内に押えるということは、生産性が一割上がったら賃金は九%か八%、その程度に押えるべきだと、こういう理解なんですか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先刻申し上げましたように、私はことしのいわゆるベースアップというものがあまり不当に商いものであってほしくない、なるべく今年はこの際は低目であってほしいという希望はこれは持っておるわけで希望するだけならばかってでございますから、希望を持っておりますことは、これは繰り返し申し上げたいと思いますが、さればとて、いま御指摘になりましたようなことは、生産性が一割上がったから賃金が一割二分上がってはいかぬということは、一体いつの時点に比べて一割上がったかということがそもそもはっきりしないわけでございます。で、非常に生産性と賃金との格差の高いときを比べましたらそういうことになりませんでしょうし、また両方の格差が小さいときを比べましたらそういう議論ができますでしょうし、どうもそれ自身は基準となるべき時点というものがそもそもはっきりいたしませんし、その時点において生産性と賃金が適当なバランスがとれておったという証明は全くないわけでございますから、どうもそういう議論は、そもそも、多少学究的というのでございますか、そういうことの批判には私はなかなかたえられないだろうというふうに考えます。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、私が質問しているのは、たとえば一カ年に生産性が一割上がった、その場合に賃金が一二%上がると、その場合は企業が成り立たなくなるという議論になるから——いわゆる所得政策の考え方ですよ。ですから、その場合、一カ年に一割しか土産性が上がらなかった、だから賃金はそれをこえてはいけない、こういうことなんですか。そういう比率で考えているのですか。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうことではないというふうに申し上げておるわけでございます。そういう議論をするためには、その一年前、つまり昨年の企業利潤がかりにゼロであったとか、あるいは労働の分配率がきわめて適正であった、したがってそれがくずれるのはよくないといったような、前の年の状態がまあいわば正しい適正な状態であったということを証明しない限り、そういう議論をしてみましても、これは学問的な批判には私はなかなかたえないだろうと思いますので、そういう考え方はいたしません。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはアメリカでも問題になったのですけれどもアメリカの自動車労働組合で、いわゆるコスト・インフレ論に対する批判として、かりに生産性が一割上がった場合賃金が一二%上がっても、そのコストの中に占める労働費の割合、これによって違ってくるのだ、こういう議論をしているわけです。そういう立場で私は質問しているのですね。ですから、たとえば生産が一割上がって賃金が一二%上がっても、その中で、三〇%しかコストの中で労働費が占めていないという場合は、これは一見すると賃金が生産性以上に上昇した、生産性以上になったから引き合わないとは言えないわけですよね。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そればもうそうなるだろうと私は思います。生産性が相当高い場合にはことにそうなるだろうと思います。ただ、アメリカでそういう議論がなされるときには、わが国でなされるときと背景がやはり違うと思いますのは、かなり労働の分配率かもうすでに高いと、そうして企業の利潤が相当詰まってきたといった場合に相対論としてそういう議論がなされることはこれはあるだろうと思いますし、それなりに意味をなすことがあるだろうと思いますが、わが国の場合にはそれだけの背景はまだないだろうというふうに考えております。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一般に賃金を生産性向上以内に押える、以内に押えるということをよく言うものですからね。それで、そういうこと正しくないのだと。長官はそれは学問的批判にたえられないのだとおっしゃられるわけですが、そういうことなら、私ども納得できるわけですよね。  ただ、長官よく御存じのように、賃上げを生産性向上以内に押える、以内に押えると、単なる比率論でよく行なわれるわけですよ。ですから、それは長官も言われるように、正しい議論ではないのだ、学問的批判にたえられない、そういう御意見ですね。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは先刻申し上げましたように、基準になった昨年が、とうてい企業の利潤がこれ以上もう低下し得ないところまで詰まって、あるいは配当が不可能であるとか、そういったようなことが証明されておらない限りは、私はそういう議論はなかなか成り立ちにくいというように思います。
  125. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑もなければ、宮澤長官に対する質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は明後十二日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会      —————・—————