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1964-03-06 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月六日(金曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————   委員異動  三月四日   辞任      補欠選任    鳥畠徳次郎君  上林 忠次君    佐野  廣君  西郷吉之助君    栗原 祐幸君  井川 伊平君  三月五日   辞任      補欠選任    西郷吉之助君  佐野  廣君    上林 忠次君  栗原 祐幸君    井川 伊平君  鳥畠徳次郎君    渋谷 邦彦君  中尾 辰義君  三月六日   辞任      補欠選任    中尾 辰義君  渋谷 邦彦君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君    委員            栗原 祐幸君            佐野  廣君            田中 茂穂君            津島 壽一君            鳥畠徳次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君            鈴木 市藏君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省為替局長    事務代理    鈴木 秀雄君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    通商産業省鉱山    局長      加藤 悌次君    中小企業庁長官 中野 正一君    運輸省海運局次    長       沢  雄次君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第二課長   川村博太郎君    通商産業省企業    局次長     乙竹 虔三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○印紙税法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○外国為替及び外国貿易管理法及び外  資に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四日、鳥畠徳次郎君、佐野廣君及び栗原祐幸君が委員辞任され、その補欠として上林忠次君、西郷吉之助君及び井川伊平君が選任されました。また、昨五日、渋谷邦彦君、上林忠次君、西郷吉之助君及び井川伊平君が委員辞任され、その補欠として中尾辰義君、鳥畠徳次郎君、佐野廣君及び栗原祐幸君が選任されました。本日、中尾辰義君が辞任され、渋谷邦彦君が選任されました。     —————————————
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 委員異動に伴い、理事が一名欠けておりますので、この際、理事補欠互選を行ないたいと存じます。互選方法は、委員長の指名に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。それでは、理事渋谷邦彦君を指名いたします。
  5. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 印紙税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明及び補足説明を聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 柴谷要

    柴谷要君 この法律案改正趣旨は、現行規定整備をはかる必要が生じてきたので改正をしたいと、こういう提案理由になっておるのですが、現行規定整備をすべき諸点、それからどうしても改正しなければならぬという理由、これらについて詳しくひとつ御説明いただきたい。
  7. 松井直行

    政府委員松井直行君) 現行法の第六条をごらん願います。「印紙税ハ証書帳簿印紙貼用シテ納ムルモノトス」、これが原則でございまして、その次に「命令ノ定ムル所二依リ印紙税額相当スル現金政府納付シテ税印押捺受ケ」、これが、現金税務署に持ってまいりまして、税印押捺を受けるという例外の第一の方法でございますが、その次に「又ハ命令ノ定ムル所二依リ政府承認受ケ印紙税額相当スル現金政府納付シ且一定表示ヲ為シ印紙貼用二代フルコトヲ得」、単に一定の「表示ヲ為シ」というだけの規定法律にございます。この運用を、昭和三十七年に印紙税法施行規則表示の書式を定める省令の第一条の二項の「表示方法は、印刷による方法大蔵大臣認可を受けた印紙税現金納付表示器(以下「表示器」という。)を使用する方法その他税務署長指定する方法とする。」で、ここで一定表示二つに事実上分けまして、印刷による方法、それから印紙税現金納付表示器使用する方法と、こう書いてございますが、印刷による方法は、これは株券を初め、非常に普及いたしておるのでございますが、この印紙税現金納付表示器というものを使います方法はまだ普及程度も非常に少なかったわけでございまして、省令運用いたしておったのでございますが、その後、事務用器械の著しい進歩がございまして、大会社等におきましての印紙税を大量納める必要があるという会社商社等におきまして、現金納付表示器を使う例が相当起こってまいりました。今後も、こういう事務用器械普及程度を考えますときには、こういう省令運用では監督上不十分な点がございます。そこで、現行の「一定表示ヲ為シ」というところを、新たに法律を変えまして、新しい六条の二号、三号に二つ書き分けてございます。二号が先ほど申し上げました印刷による方法でございます。それから、三号に新たに、いままでの省令により現金納付表示器を使って納めるという方法をここで明確にする意味におきまして、二つに分けて規定いたしまして、それ以下の条文におきまして、こういう器械使用するものあるいは製造販売業者等監督を十全にする意味におきまして、政府承認を得るということにいたし、かつ、それらの違反行為につきまして罰則規定整備するということで、新しい事務用器械普及に付随いたしまして、印紙納付の便宜を業者のためにはかるとともに、これの監督規定を明らかにいたす必要があったというのが、この改正理由でございます。
  8. 柴谷要

    柴谷要君 端的にいえば、省令である程度規制をしておったものが、今日の情勢では省令でなしに本法にして十分に処置をしたい、こういう考えというふうに了解をしたいと思うのです。  そこで、第二の問題をお尋ねするわけでありますが、この表示器なるものが一体どういう程度に使われているものか。まあ、その型の違うもの、あるいは形式の違うもの、いろいろあると思いますが、一体それは何種類くらいあるのか。それから、その種類がどこから輸入されておるのか、国産はどこでつくっておるのか。こういう点についてひとつお知らせを願いたい。
  9. 松井直行

    政府委員松井直行君) 現在使われておりますのは四つの外国会社製造したものでございまして、現在民間において使っておる台数は百十台でございますが、おいおい国産品も開発されつつございまして、近い将来には国産品も市中に相当出るということが予想されております。
  10. 柴谷要

    柴谷要君 これらの器械が今日まで使われておったのですが、これに対して違法というかあるいは取り扱い上に不備があった、そういう問題についてひとつお知らせ願いたい。
  11. 松井直行

    政府委員松井直行君) 現在におきましても、省令ではきめてございますが、使用承認税務署長から得るという制約はございます。そのほか、現実の使用状況は、主として信用のおける大会社が中心でございます。監督する個所といいますか、台数も非常に少ない状態でございますので、十分監督が行なわれておりました。その結果、違法、不当にわたる事案は一件もございませんでした。
  12. 柴谷要

    柴谷要君 取り扱いにも間違いはなかった、それから違法行為もなかったというのであれば、これから予想されるということになると思うのですが、違反行為が出てくるのではないかということから罰則を強化していこう、こういうようなたいへん準備を綿密にされているようですが、この罰則規定はあえて考える必要はないと思うが、ここに罰則規定が入っているようですが、いかがですか。旧法ではちゃんと十条、十二条でできるようになっておる、罰則が。それを細分化して、なお強めていこう、こういうような改正趣旨のように今回の改正を見たのですが、その点について。
  13. 松井直行

    政府委員松井直行君) 印紙税法の十一条、脱税犯自体につきましては、お示しのとおり罰則規定は現在もございますが、不当に器械を備えましたり、あるいは印影模造をしたり、それにまぎらわしいものをつくったりした場合の罰則規定がございませんので、こういう器械がどんどん普及してまいります事態を考えますときには、単にその結果として生じました脱税の結果を脱税犯として罰するのみならず、不当使用といいますか、違法使用といいますか、につきましても、相当規制を加え罰則整備をしておく必要があると考えたわけでございます。
  14. 柴谷要

    柴谷要君 いや、私の聞きたいのは、十条の検査を拒んだ者は一万円以下の罰金または科料に処すことができると十二条に規定しているでしょう。十条には、計器類一切の問題について検査をすることができる。だから、この検査を拒んだ場合に科料に処せられるというのだから、十分に検査が行き届いていくのではないか。にもかかわらず、この罰則を強めていこうという精神は、それはどこにあるかということを伺いたい。
  15. 松井直行

    政府委員松井直行君) お示しの第十条は「印紙貼用スヘキ証書帳簿ニシテ営業二関スルモノハ当該官吏ヲ検査スルコトアルヘシ」、結局、納税義務者が保持しております証書帳簿についての検査規定でございまして、こういう簡単な方法印紙税を納付いたします計器を使います場合に、その計器製造業者とか販売業者とかというものにまでわたって監督を十分にする必要がある、こう考えたわけでございます。
  16. 柴谷要

    柴谷要君 だって、十条の条文を全部読めば、そういうあなたの言われるようなことは書いてあるのです。そういうものを検査しょうとした場合に、拒否したりした場合には、ちゃんとできるようになっているのです。一万円以下の科料というものが存在していたわけです。だから、それを強めていこうというのは、これから多く、たとえば不良品が出てきたり、あるいは使用について間違いが起きるのじゃないかと  いうような予測事態があるからこそ、罰則というものを強化していくのじゃないかと、こう思うわけです。今日ま  で全然そういうものがなかったというのを強化していくのには、何か特定の理由があるかどうかということをお尋ねするわけですから、端的にひとつお答え願いたい。
  17. 松井直行

    政府委員松井直行君) いまお読み  になっております十条は、第一項しかございませんので、いまお示しになったのは、すでに販売業者とか製造業者  に対する監督権まで入れました新しい法律をお読みになっているのじゃないかと思いますが。
  18. 柴谷要

    柴谷要君 そうではない。古い条文、十条も十二条も読んできて言っているのです。
  19. 松井直行

    政府委員松井直行君) 新しい十条にこういう規定を入れたわけでございます。現在の十条は、「印紙貼用スヘキ証書帳簿ニシテ営業二関スルモノハ当該官吏ヲ検査スルコトアルヘシ」、その二項に、「現金納付計器納付印」それから「印紙税現金納付計器販売業者所持スル政府指定シタル計器ハ前条規定スル者所持スル同条ノ規定係ル物件製造、受入、貯蔵ハ販売二関スル帳簿書類其ノ他ノ物件ハ当該官吏ヲ検査スルコトアルベシ」、この規定はいまの条文には入っておりません。こういう計器普及いたしますことを考えますときには、それを使用する者、結局納税者のみならず、こういう製造、受け入れ、貯蔵販売という段階のものにわたりましても監督を厳重にし検討をする必要があるという事態が濃厚になってくるということを当然予想いたしまして、新しい第二項を入れたわけでございます。
  20. 柴谷要

    柴谷要君 いまの説明でわかったのだけれども、それを言ってもらいたかったのです。だから、旧条文の十条はごく端的に書いてある。それを細分化して、これからたくさんのものが、計器が使われるようになってくるだろうというから、そういう問題に対して不正が起きたりしてはいかぬから、事前に調査できたり検査できたりするようにしておかなければならぬから、十条の改正をする。いまの説明で事足りたのです。それを聞きたかったのです。  ところが、今回の改正内容というものは、たいしたことはないと思います。だけれども、五条改正が今回行なわれていないのはふしぎだと思うのですけれども、どうですか。あるはずですよ。大蔵省として、第五条改正をしなければならぬ問題が起きてくると思います。その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  21. 松井直行

    政府委員松井直行君) 五条は、非課税に関する問題でございます。この法律は、御存じのように、印紙税法をお読みになりますと、現行印紙税法明治三十二年法律第五十四号というものでできたわけでございまして、この前身はもっと古く、明治六年の受取諸証文印紙貼用心得方規則というものがございまして、それを受けて明治三十二年に現在の印紙税法になったわけでございますが、その後、社会経済情勢の変化、取引形態、新しい法人の設立その他の事態がございまして、全般的に印紙税法を見直すということなしに、そのつど非課税にすべきものを、そのときどきに考えられたものを単につけ加えられてまいったという形でございまして、お示しのとおり、これを全般的に根本的に見直したということは、いまだそういう大きな作業をやったことはございません。法律自体が非常に古いものでございまして、「印紙税納ムヘシ」と、かたかなで「納ムヘシ」と、こう書いてあるような古い法律でございまして、御案内のように、非常に一つ一つ説明のつけがたい、そのときどきにつけ加えたという形が歴然といたしております法律でありますので、御不満の点も相当あろうかと思いますが、われわれもその旨はよく承知いたしておりますので、近い機会に全面的に見直すことを考えております。それで、現在これが非課税になっているのに、こういうものはどうして非課税にしな  いかという注文——注文といいますか、問題点も若干われわれも聞いております。その機会に全面的に非課税規定というものを見直したい、こう思っておりますので、何ぶん御了承願いたいと思います。
  22. 柴谷要

    柴谷要君 確かに、五条の項目については、削除したりあるいは挿入しなけりゃならぬ問題がたくさんあると思いますが、ただ、政府として責任ある立場でやらなきゃならぬと思いますことは、国会法律案提案をしたと、これはすでに国会を通過をして効力を発生している、こういうものがあるにもかかわらず、この印紙税法改正のときに五条に挿入する処置をとってこない。それは端的に申し上げますと、鉄道建設公団などは、他の道路公団その他と全部同一のものだ。そういう法律案が出て国会を通過した、すでに発効したのです。こういう問題について、すぐ挿入するというような手続を改正と同町に提出したら、 これは簡単じゃな  いですか。それを行なう、やる意思があるかないか。
  23. 松井直行

    政府委員松井直行君) いまお示しのような大きな法律が出ましたときには、その法律附則でたいていこれに手をつけております。その後の改正は全部、新しい法律ができますと附則改正したものの継ぎ合わせというものが非常に多いのでございまして、印紙税法自体規定するということはいままであまりございません。したがって、新しい法律ができますときに、その附則で書くべきか、非課税規定に追加すべきかどうかということを、そのつど慎重に検討すべきであるという御意味、よく服膺したいと思います。
  24. 柴谷要

    柴谷要君 一方では法律出して、政府は、つくって国会を通過したと。しかし、また次の段階に、新しい国会改正をするなんというのは、愚の骨頂だと思う。当然私は、〈、回のこの法律印紙税法改正のときに一緒にやったらいいじゃないか、こういう見解を持ったものですから、お尋ねしたわけです。そこはよくわかりました。附則のほうでおやりになる、これは間違いないですね、附則で。その点についてひとつ。
  25. 松井直行

    政府委員松井直行君) いまお示し鉄道建設公団でございますが、これは附則に入っております。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは一体幾らぐらいするのですか、市価では。
  27. 松井直行

    政府委員松井直行君) 川村課長から詳しく説明いたします。
  28. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 現在輸入されておりますのは、外国製品ばかりでございますが、外国の約四社から輸入されております。大体価格は十八万から七十万程度でございます。
  29. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これに、販売業者のいろいろな何か許可基準というのですか、この人はやってもいいんだという何かそういうことに対してどういうような基準があるのですか。
  30. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 実際には、これは輸入業者はソール・エージェントになっておりまして、何といいますか、もっぱらそれの代理店をやるのが一社ございます。問題は、大蔵大臣が告示してこの器械認可するのでございますが、大蔵大臣認可いたします基準といたしましては、この器械機構性能、それに着目いたしまして認める。実際にはその器械を輸入する業者は、先ほど申しましたように単一でございますので、その法人についてどういうものは認可する、どういうものは認可しないということはございません。器械自体について認可基準をきめております。
  31. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今度、それじゃ国内で製造にとりかかったとしますね。そうすると、それはそのメーカーの人が登録をすれば無条件でそれの製造者にはなれる、こういうことですか。
  32. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 今後何といいますか、この表示器につきましては指定をいたすことになっております。で、その指定につきましては、いま申し上げましたような器械性能機構、それが印紙税の逋脱を可能にするものではないということが明らかになりさえずれば、その器械については指定をいたします。もちろん一これはまあ消費者が将来にわたって使うわけでございますから、たとえばインキの供給であるとかあるいはアフターケアであるとかいうことについて十分の能力のある者について認可をしていきたいと考えております。
  33. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その能力のある者と言われるのですがね、そのメーカーが、私はこういうことがやりたいのだ、こういって商売をやる場合は、何か基準とか、許可制になるとか、あるいは登録だけで済ませられるのか、あるいはそれに対して何か条件というものがあるのか、何か政令で定めるようになっているのか、その辺、私は不勉強でわかりませんが、その辺説明していただきたいと思います。
  34. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 器械につきましてはいま言ったような指定でございます。その器械製造するのにつきましては、製造を始めるという開業申告はしていただくことになっております。開業申告をいたしますと、その指定された器械製造は自由にできます。で、申告に基づきまして、国税庁、税務署では所要の監督をしていくということに相なります。ですから、その器械指定はございますが、いわゆる営業免許というような形はとりません。
  35. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはもちろん買うほうは自由ですね。買ったら登録する義務はあるのですか。
  36. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) その器械を使う者につきましては、所轄税務署設置承認申請をしていただくということになっております。
  37. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは将来、まあお聞きしたところでは、私はごまかすなんということはないと思うのですけれども、しかし、ごまかされるとたいへんだろうということで、罰金科料あるいは懲役という罰則があるわけなんですが、これは考えてみれば、有価証券偽造にも形はなるだろうし、にせ札ということにもなるだろう。そういうものとのバランスというものはわからないわけですが、当然提案された以上は、そちらのほうとにらみ合わされると、懲役罰金あるいは科料というもの、そういうものの調和はとれたことになるのですか。
  38. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 現在、印紙偽造変造等につきましては、印紙犯罪処罰法というのがございます。それから、模造につきまして、印紙等模造取締法というのがございます。この法律には刑法の特別法としての罰金あるいは懲役刑がきめられておりますが、この表示器を使いまして印影をつくる、この印影につきましては、その印紙犯罪処罰法あるいは印紙等模造取締法の対象にはなりませんので、したがって、そういった模造印影を生ずべき納付印をつくったという者につきまして、現在は罰則がない。そこで、この法律でその手当てをしたわけでございますか、その量刑あるいは罰金金額につきましては、その両法律ないし規則バランスをとってございます。
  39. 柴谷要

    柴谷要君 関連して。十八万円から七十万円というと、ばかに幅があり過ぎる。一体どういうメーカーから入れるものが七十万円で、十八万円というのは一体どこから入るのですか、ちょっとその内容を御説明願いたい。
  40. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 現在使われております表示器にはいろいろ性能の違いかございます。一番便利なのは、ある一定の一万円なり二万円なりの金額税務署にセットしてもらいまして、千円から十円まで自分の好きな金額をセットできる、こういうものから、単一のたとえば十円しかセットできないというようなものもございます。それから、これを順次自分の押したい印紙の額に応じて使っていくわけでございますが、最後まで使えるというものと、一定金額——たとえは二百円とか三百円とかの一定許容金額まで来ると自動的にストップしてしまう、使えなくなる。あらためて税務署に行ってセットし直してもらわないと使えないというような性能器械がございまして、その複雑性の度合いに応じまして値段の幅がある、こう御了承いただきたいと思います。
  41. 柴谷要

    柴谷要君 いまのはわかりましたが、これは国際収支の点からいっても、こんなものを輸入しなくても日本で幾らでもできるんじゃないですか。一体いま使っておる台数の、国産はどのくらい使っておるのか、輸入品はどのくらい使っておるのか、おわかりでございますか。
  42. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 先ほど松井財務調査官から御説明いたしましたように、現在百十社、百十台が使われております。全部輸入品でございます。従来は国産ではこれはできませんでした。全部特許がついておりましてできなかったのでございます、か、最近わが国でもこうした器械がだいぶ研究開発が進んでおりまして、場合によっては近い将来に出る可能性がございます。その場合には約四、五万円程度、場合によっては七万円程度になるかと思いますが、この程度で生産が可能であるというような状態になっております。
  43. 柴谷要

    柴谷要君 七十万もするものをその十分の一の七万円でできるとすれば、政府としても本腰を入れてつくらしたほうが国家的な利益になると思うのですが、次官はどんな見解を持っておりますか、この問題については。
  44. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) ただいままことにごもっともな御質問でございまして、政府としてもそういう方向に向かって極力努力いたしたいと思います。
  45. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 第六条の四の「政府ハ前項承認ヲ与フルに当り印紙税保全必要アリト認ムルトキハ当該印紙税現金納付計器設置及使用二村条件ヲ付スルコトヲ得」と、こうある。これはどんなことを考えておいでになるわけですか。
  46. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 現金納付計器と申しますのは、器械機構あるいは性能に信頼して認めておる、設置承認する性質のものでございます。この器械機構を簡単に申し上げますと、税務署現金を納付いたしまして、納付いたしますと、税務署で二万円という金額をセットするわけでございます。セットいたしましたあと、納税者がかってに器械使用部分をいじれないように封緘をしてしまいます。封緘をしてしまいましたものを営業所に持って帰る。十円、二十円と押してまいりますと、その金額が減額されていくわけでございます。最後にたとえでゼロ円になりますと、自動的にその器械が稼働が停止いたしまして動かなくなってしまう。したがって、それをさらに使うためには、現金税務署に持っていきましてさらにセットし直してもらわないと使えないと、こういうような機構になっております。その機構の精密度を信頼して、これの設置承認しておるわけでございますが、したがいまして、これを簡単にあけたてできないように封緘をもちろんいたすわけでございますか、さらにこれにはかぎ等がついてございます。そういったかぎを税務署に預ける、こういうようなこと等を税務署長指定するというわけでございます。
  47. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはまともにいけば私は心配ないと思いますが、かりに業者の人がやみで器械を一台流したとします。それが使われておるということは、ちょっとめっかりにくいだろう思います。それに対しての罰則はどのくらいございましたか。
  48. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 結局、お話のような危険性は納付印について起こるかと思います。納付印と申しますのは、表示器の中に一定政府の定めたる形式による表示ができるような、そういう形の、いわば何といいますか、印影判でございますか、それを納付印といっております。その納付印製造というものは、一応こういう専門業者がございまして、そこで彫るわけでございますが、これが簡単にできるという——簡単にてきるといいますか、そう簡単にはできませんか、それをかりに政府の認めたと同じ形式のものを承認なしにつくりまして、それを流すということになりますと十三条ノニの三号に「第六条ノ五ノ規定二違反シタル者」とありますが、六条ノ五では、納付印製造等につきましては承認を要するということになっておりますので、承認なしにそれをつくるということになりますと、一年以下の懲役または五万円以下の罰金ということに相なります。
  49. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっとよくわからないのは、納付印というのは、それが結局メーカーの一つの仕事でしょう、つくる。そこで私が心配するのは、悪く考えればですよ、一つ七万円か十万円なら、わしも買っておいてもいい。しかし、やみだということになるわけです。これは元を取るのはわけないことですね。そこで、そういうものをメーカーがやみ流しをするということに対して、それの罰則はいま言ったように一年以下の懲役または五万円以下の罰金、それは十三条ノ二ですか、二で罰せられる、こういうことになっておるわけですか。
  50. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) お話のような点は、指定計器製造と、それから納付印製造等について若干おわかりにくい点があると思うのでありますが、指定計器につけます納付印納付印自体はまだ印刷をしていない。いまの何といいますか、印判でございますか、これは指定計器製造業者がつくる。しかしながら、それに政府指定したる形式の印影を生ずるような彫刻をいたすわけでございます。その刻印は指定計器製造業者とは別でございます。これは特殊な技術でございますので、全国に四、五軒程度しかない。そこで、その指定計器業者はその納付印の印刻の製造業者のところに委託をすることになります。で、お話のように、指定計器自体を横流しと申しますか、設置承認を受けない者に販売するというようなことも考えられますので、そこで、第九条ノ三に、納付計器販売業者、これに記帳義務を課しまして、受け入れ、貯蔵販売に関する事実を精細に記帳させる。同時に、この販売業者は開廃業申告税務署に提出することになりますので、開業いたしますと、税務署はどこにその指定計器販売業者がおるかということがわかるわけでございます。そこで、その指定業者帳簿に基づきまして受け入れ、貯蔵販売の事実を押えれば、そうした不正な行為は防止できるという考えでございます。
  51. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 先ほどの説明にもあったようですが、予定使用金額をセットしてもらう場合には、そのつど税務署へこれは持っていくわけですか、この器械を。
  52. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) さようでございます。
  53. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これはこの案内書を見ると、小型で持ち運びに便利な電動式とあるので、これは非常に軽いのですね。
  54. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) たいした重さのものじゃないと思います。
  55. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これは耐用年数はどのくらいですか。それからもう一つ、おそらく器械ですから、故障が起きる場合、あるいは使用にたえなくなる場合が出てくると思うのです。その場合に、廃棄申請をどうするかという問題ですね。
  56. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) 納付印のついておりませんこの計器は、現実には印影を生ずることができませんので、納付印を廃棄するときには税務署にその旨を申告するということになっておりますが、指定計器自体がどの程度の耐用年数になるか、これはちょっと調べてからお答えいたしたいと思います。
  57. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 言ってみれば、これは一つの自動販売機みたいなものなんだね。やがてはこれはどこへでも御要望のあるところには据えつける、そういう趣旨のものですか。
  58. 川村博太郎

    説明員川村博太郎君) その普及程度がどの程度まで広がるかは一応予想はつきませんが、特にこれを制限するつもりはございません。
  59. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 この機会にひとつ疑問に思っている点を聞いてみたいと思っているのですが、直接これとは関係はないのですけれども、どうなんですかね、印紙と切手というのは一本にまとめるということはできないものですかね。そんなようなことは一度も考えたことはございませんか。
  60. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 答弁はありませんか。——この問題は、この次の機会までに研究した上御答弁願います。  ほかに御質疑ございませんか。——他に御質疑ないようですから、本案に対する質疑は本日のところはこの程度にとどめておきたいと思います。  しばらく休憩いたしまして、午後一時きっかりに開会いたします。外為関係法律案を議題にして、関係大臣の出席を求めて質疑に入りますから。   午後一時まで休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  61. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 午前に引き続きまして、委員会を再会いたします。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、本案に対する質疑を行ないます。福田通産大臣が出席しておられますので、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二月の十四日の本会議で、いま議題になっております対外取引に関する二法案の改正案について質問いたしましたが、通産大臣の御答弁があったわけですが、通産大臣の御答弁は、私は主として開放経済体制に移行するにあたっていろいろな産業、特に中小企業にかなりいろいろな影響が出てくるのではないか、こういう質問をしたわけです。それに対してどういう対策を持っているか、影響等について伺ったのですが、通産大臣の答弁は、自由化をしていない品目は百八十九——当時百八十九であったのでございましょうが、現在は百八十二と伺っていますが、こういうものをだんだん自由化していく場合に、一つ一つの産業について、それぞれしさいに検討した上でやっていくわけですから、産業に悪影響がない、あまりひどい影響がないというところで踏み切っていくというやり方をしていきたいのだ。しかも、OECDに入るとかIMF八条国移行ということをやれば、何か突然変異みたいな問題が起こってくるように世間の人は考えているが、そういうものじゃないのだ。いままでだんだんにやってきておるし、また今後もだんだんにやっていくのであって、悪影響がないというところで踏み切っていくと、こういうやり方をしていくのだから、心配がないのだと、こういう御答弁だったと思うのです。私も、もちろん大臣は、君はそういうようなことは考えていないだろうという注釈はありましたが、私も、せきを切ったように、ここでOECDに参加し、あるいはIMFの十四条国から八条国に移行したから、急に大臣の言われるような突然変異的な、ダムのせきを切ったように影響がここで一挙に出てくるというふうに考えておりません。それだからといって、この影響が軽いものと見るべきではない、こういうふうな立場から質問したわけです。  もちろん、これまで昭和三十五年以来ずっとやってきております。やってきておりますけれども、しかし、これまでやってきたのは主として原材料部門を最初にやってきて——原材料部門はむしろ自由化したほうが得なんです。その後製品についても自由化してまいりましたが、あまり影響のないものを順次やってきたわけです。しかし、その中には、まだ自由化されておりませんけれども、たとえば重油の自由化を前提として石炭産業の整理が起こっているわけです。これは決して影響がなかったとは言えないのです。非常に大きな影響ですよ。しかも、今後は百八十二品目の残存輸入制限がある。また、率にして九二・二%ですから、その残りを自由化するといわれますが、今後自由化するものが日本経済に与える影響というのは非常に大きいと思うのです。たとえば重油にしても、乗用車にしましても、非常に大きいですね。あるいは品目としてはたいしたことはないかもしれませんが、たとえばカラーフィルム一つ自由化したって、これはたいへんな影響ですよ。イーストマンのカラーフィルムに対抗できないというような状態ですね。ですから、その影響というものを簡単に考えるべきじゃないと思うのです。また、IMF八条国に入ったからといって全部が自由化されるわけじゃないことも、われわれ承知しているわけです。たとえば十一条とか、二十条とか、二十一条とか、二十五条、十九条等で、いろいろ例外規定が設けられておるわけです。そういうことも十分承知した上で質問しておるわけなんですから。そこで、何も突然変異的に変化があるというような、そういうような立場で質問をしているのじゃないのです。しかし、だからといって、この影響が軽いものとはいえない。  まず第一に、国際収支が悪くなってきているのに、そううい時点において一泊化しなきゃならぬという、この点がまず第一です。第二は、八条国に移ったらあと戻りできないわけですね。あと戻りできないのですよ。OECDの場合とまた違うのです。違うということは十分御承知だと思います。あと戻りできないのだ。それから、相手があるわけですね。大臣は、日本の鷹巣に悪影響がないというところで踏み切ると言いますけれども、しかし、相手があるのですから、相手からガットに自由化計画を出した場合、これによって向こうは協議を求められて、どうしても自由化しろという場合にはせざるを得なくなる場合もあるのですから、こちらのベースだけでいけるものでもないと思うのです。  そこで、伺いたいのですが、自由化計画というものは、これはもうガットに出してあると思うのですが、それはよく新聞なんかに出ておりますが、百八十二品目まだ残存輸入制限品目があるといわれておりますが、これだけか残存輸入制限品目としてガットに届けられているのかどうかですね。で、この品目の中には、さっき言いました、自由化しなくてもいいと認められているものが入っているのか入っていないのか、百八十二品目の中に。まず、それから聞いていきたいのです。
  63. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 木村委員から本会議で御質問がありましたのに対して、まあああいう御答弁を申し上げたのですが、私もああいうことばづかいが適当であったかどうかは、ああいうときはとっさ言っておるから。非常に、自由化をしたならば日本の産業に大きな悪影響を与えるのではないかというような御質問と誤ってお答えしたと思うのでありますけれども、それはまあ御質問なさるお方も事情をよくおわかりで、まあ木村委員は、これは専門家ですから、われわれと違って専門家でいられるのだから、どうも釈迦に説法をするようになってもちょっと困るのですけれども、しかし、あの申し上げた気持ちは、自由化をいままで、ここで二、三度やってきていますが、一つ一つの品目踏み切るときには、日本の産業でそれと同じものをつくっておる業者がどのぐらいおって、生産量がどのくらいで、従業員数がどのくらいだ、そこで、これが自由化をした場合にはどのくらい入ってきて、どう  いう影響があるであろうということを、これはもちろん推定でございますけれども、そういうことを考えながら実はいままでやってまいりました。しかし、お説のとおり、それをやったら全然影響がないのか。もちろんこれは影響がございます。事実また影響の出ておるものもあるのでありまして、これはもちろん影響がないという、全然ないとかいうような意味ではございませんが、やる場合には一応そういうやり方をして、おる。  なぜそういうことをするかという根本論にさかのぼれば、これは国際間で自由に貿易をして、貿易をしながらお互いの国々が繁栄していく、いわば国民が生活をよりよくしていく方法だ。こんなことももちろんおわかりのことと思います。私は、日本みたいな資源が乏しくて人が多いようなところでは、どうしても貿易を盛んにするということ以外は道がないと思うのでありまして、こういうところからも必然的にそういうことが要請されておる。しかし、といって、いま御指摘があったようないろいろの品目については、なかなか影響のあるものもありますから、これはわれわれとしては、ガットに対していわゆる数量規制といいますか、数量的にこういうことはまあ困りますという品目を出しておるわけでありまして、それは先ほどお話がありましたように、百八十九でとったのですか、この間、鉛と亜鉛のほうも自由化いたしまして、百八十二になったわけであります。  そのうちで、いま例外規定で適用を、最後までいわゆる自由化しないで済むものはどれくらいあるかということになると、大体私の記憶では三十七品目あると思います、百八十二のうちで。あとはやはり両国間でいろいろ話し合いをしながら、自由化してくれ、いや、こちらはなかなかそうはいかない、大体うちも自由化するなら、あなたのほうでも日本に対して相当な差別待遇をしておいでになる、そういうものをひとつ直してもらいたい、こういうような経済外交をやりながら、一方日本の産業の実態、それから力というものをよく認識しながら、順次自由化していく、こういうことに相なろうかと存ずるのでございます。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、ガットに残存輸入制限リストを出しているわけです。それはいま三十七を除いたものを出しているわけですか。
  65. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 全部ですよ。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十七を含めてですか。
  67. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 三十七を含めて百八十二あるわけです。その百八十二全部出してございます。実は百八十九で出したわけです。百八十九で出して、その後七つ減った。減った場合に一は、またすぐ関係国にはガットのほうから通告をしてくれることになっております。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところで、これは読売新聞の夕刊に出ていたのですが、二月二十三日の夕刊ですか、ジュネーブの特派員発電で、こういう報道があるわけです。「日本がさきに提出している残存輸入制限リストは」、ここでは百五十五となっていますね、この電報では。「百五十五品目におよぶため品目が多すぎるとの不満か高く、かなりの犠牲を払って一連の自由化計画を実施したばかりの日本にとって、これを機会に次の段階の自由化を強要されることにもなりかねない。」こういう報道がなされているのですね。そこで、残存輸入制限品目のリストを出してからのいまの現状ですか、どういうことになっているのか。その前に、これはウェーバーは日本は取りつけないで、残存輸入制限品目でいくわけですね。
  69. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) そうです。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 残存輸入制限品目でいくことになると、これは一応ガットの保障はないわけですね。つまり、ガット上の報復措置を行なう権利を保留されることになるわけですね。そこで話し合いになって、話し合いがつかない場合には報復をされてもしかたがないということになるわけですね。そこで、いまの実態はどうなっているか、制限品目リストを出してから現状はどういうふうになっているのか。いまお話ししたような報道もあるわけですから、どういうような各国との間に話し合いがあって、あるいは出したけれども、まだどこからも何の反響もないという状態なのかどうか。それから、今後の見通し等につきまして……。
  71. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) これは政府委員からあとで説明いたさせますが、概括的に申しまして、私は、それほど大きな、いま新聞報道にございましたようなそういう空気が濃厚であるとは思わない。現に向こうのほうでも、実はどこの国もウエーバーじゃなくて、大体はいろいろの例外的ないまおっしゃったような措置をとっております。そうして日本に対してはその上にまだ別に差別的な取り扱いをいたしております。そんな関係もありまして、あれを出して、むしろわれわれのほうでは相当日本は後進国のくせによくここまでついてきたものだ、こういうようなおほめのことばにあずかったという話を聞いておりますが、あまりそういうことは聞いておりませんが、具体的なことは政府委員から御説明申し上げます。
  72. 山本重信

    政府委員(山本重信君) ただいま木村先生のお話がございました読売のニュースについてでございますが、言五十五品目という数字は、おそらくある時期に日本の非自由化品目の数が百九十二ございました。その当時ガット上自由化義務のない品目の三十七を除きますと、ちょうど百五十五という数字になるわけでございます。ちょうど、その後十品目自由化されておりますので、ただいまのところ百四十五になっておる次第でございます。  それから、この残っております品目につきましての各国からの反響でございますが、ガットの規定によりますと、第二十二条に協議という規定がございまして、どうしても異議のある国からは、この二十二条に基づき協議の申し入れができることになっております。しかし、ただいままでのところ、どの国からも日本に対してはそういうアプローチがございませんので、提出した以後全くそのままになっておるのが実情でございます。  それから、ただいま大臣からも申し上げましたように、ほかの国もかなり残花輸入制限の品目を持っておりまして、国によりましてその制限の対象国がいろいろ違っておりますが、日本の立場から見ますと、各国がやっております制限品目の中で対日差別をしておる品目も当然加えて比較したほうが公平だろうと思います。それも含めました数字をちょっと二、三申し上げてみますと、たとえば西独の残存輸入制限は百二ございます。それから、フランスが二百八ございます。少ないところでは、英国が四十八、ベネルックスが五十三というふうになっておりますが、かなり大きな数字をまだ残しておる国もございますので、ほかの国もおそらく、日本に対してだけこの百四十五を早く減らせというふうにあまり強く言ってくることも事実上できかねているんじゃないかというふうに推測いたしております。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはあれですか、十一条国に移行する場合、残存輸入制限リストを出して、それの承認を求めるということと、それから将来の当該品目の自由化時期を発表しなくちゃならぬのかどうか、そういう点について。
  74. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 実はガットの協定の厳密な解釈から申しますと、残存輸入制限という制度は多分に問題、疑問のあるところだろうと思います。したがいまして、たとえばアメリカのようにほとんど自由化をしております国にとりますと、そういう残存輸入制限はできるだけ早くなくしたいという気持ちを持つのは当然でございまして、ある時期にアメリカが残存輸入制限につきまして各国とも自由化計画を提出するようにお互いに申し合わせをしようじゃないかという提案をいたしたことがございます、しかし、各国ともなかなかそういうことはできかねる状態にございましたので、大部分の国が反対をいたしまして、そのままになっておるような実情でございます。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、別にこの将来の当該費目についての自由化の時期を発表しなくてもいいわけなんですね、今のところは。
  76. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) そのように考えております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に伺いたいのは、今後の自由化の段取りですが、これはいろいろ差しさわりがあるのですか、しかし、日本の経済にとって非常な影響があるであろうと思われているのは、乗用車、重油等、これは特定産業振興法の関係もからんでくると思うのですけれども、そういうおもに乗用車とか重油等の自由化の時期、段取り等は、どういうことになっておりますか。
  78. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) これはわれわれのほうでも、実は業界の実態も把握し、大体の計数、たとえばいま自由化した場合に、性能的に見て、また価格の面で、どういうことがあるかというようなことも、いろいろ調べております。それからやっております。  ことに自動車から申し上げてみると、そういうようなやり方をしておりますが、いまのところ、かなりだんだん外国車の輸入数量をふやしてきております。ことしあたりは二千三百万ドルぐらい入ってきておるのですが、どんどん入れても、そう需要がないのですね、実際に。二千五百万ドル程度にとどまるのではないかという見通しであります。これはあくまでも見通しでございますが、そういう見通しを一応持っております。それから、性能、価格等を勘案してみますと、大体、欧米の車は最近は値上げを少しせざるを得ないと、国内事情、賃金その他のいろいろな関係からいいまして、値上げをしなければならないという段階にあると見ておりますが、それを見ない前の数字で見ましても、だいぶ近寄っておりますね。価格の面で見ますと、実は関税とか輸送とかいう関係から見まして、ほとんど近づいてきておる。ただ、性能の面で若干劣ります。性能で二割削減してみると、まだ一割ぐらいは劣るのじゃないか、こういう感じがいたしておりますが、今度は向こうのほうは値上げをせなければならないというし、こっちは大量生産がきいてくると、輸出をもう少しやらなければいけませんが、だんだん、十万台ぐらいの生産量であったのが、三十万台、三十七万台というふうにふえてきております。そういう関係から見まして、まだ一側ぐらいは、場合によっては値引きができるのじゃないかということになると、格差はほとんど解消できると。しかし、絶対値における性能ということになると、まだ私は劣る面があると思いますが、日本内地でこれを使うということになったら、もうだいぶ近づいてきたという感触を持っております。したがって、いかなる時期に、どういう方法でこれを自由化するかということについては、これは慎重にいま考えておるところでありまして、ただ、いつ、どういう方法でやるかということについては、これは木村委員も御案内のとおりに、なかなか方々にいろいろな関係がありますので、ここでお答えをすることは差し控えたい、こう思うところであります。  それから、重油の問題でございますが、重油のほうは、先ほど仰せになったように、石灰との関係もいろいろございますし、これはいろいろの意味で、エネルギー源として非常にあれでありますので、すぐにどうしようというような考えはまだ持っておりません。しかし、これも適当な時期にはやはり自由化をすべきものであるという考え方に立って、実は検討いたしておるという段階でございます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 残存輸入制限品目から自由化しなくてもいいと認められている三十七を引いた残りは、これはいつまでもそのままほうっておくというわけにはいかないのでしょうね。やはりいつかはそれをやらなければいけない。向こうが黙っていれば、そのままほおかぶりで——ほおかふりということばは変ですけれども、そのままでやっていっていいのか。また、やっていいなら、これは十分に国内の体制ができるまで延ばしてもいいわけなんですけれども、そういうこっちの都合だけでいいのかどうか。そういうものが、その実態をよくぼくはわからぬものですから、その辺のところをちょっと聞いておきたいのですがね。
  80. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) それはいつまでもがんばるというわけにはいきませんが、先ほども申し上げましたように、ほかの国においても残存輸入品目というものを御案内のように持っております。そこで、少ないところでも四、五十ということでございますから、やっぱりそれに見合うように漸次持っていかなければいかぬと思うのです。しかし、持っていく場合に、こっちでは非常に困るというのに、すぐそれじゃ君のほうでやれ、こういうものでもない。だから、品目だけでものごとを考えるわけにもいかないのですね。たとえば、その品目は非常に自分のところの産業には悪影響があるとしても、しかしその産業自体が非常に産業経済全体、その国の経済全体から見て非常に小さい部門であるという場合と、一品目でも非常に大きいウエートを占めているものとでは、これは取り扱いについてやはり甲乙の差があって、対抗理由も十分立ち得ると思うのです。だから、そういうこともございますから、漸次やっていかねばなりませんが、日本の場合においても、私は漸次これをやるという姿で進めてまいらねばいかぬ、こう思っておりますが、じゃ、さしあたり非常に悪影響の伴うものも踏み切らざるを得ないようなことになっているかというと、私は情勢から見て、それほど急激にこれを求められておることはないと思っております。しかし、ここ一年、あるいはこの秋ぐらい、あるいは来年の春ぐらいの間に、だんだん、だんだん力をつけるようにはできるだけ努力をしていかねばいかぬ、こう思っておるわけであります。  それはなぜかというと、やはり向こうが五十ぐらいなのにこっちは百四十五というと、比率からいうと相当多うございますからね。その場合でも、フランスあたりの二百と比べればこっちは歩がいいわけですから、もっとお前のほうなぜしないのか、こういうことになるわけです。イタリアとかフランスとかいう国がありますから、全然、全体から見ると、日本の品目は一番多いじゃないか、おまえのところは一番多いじゃないかということをわりあいに言われないで済んでいるだけで、やっぱりこれは日本の国の貿易立国という姿から見れば、できるだけ自分のほうも窓口をあけるから、あなた方もあけてくれといって貿易量を盛んにする、こういう姿が望ましいわけであります。ただしかし、その場合において、個々の品目について、非常に日本が困るものを一挙に自由化させるこういう考え方ではございません。また、そういう考え方を持っておったときに、外国から強制的におまえのほうはけしからぬじゃないかと言われて、それを自由化しなければならないような情勢ではないと思っております。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この通産行政を立てる場合に、今後の開放経済体制に移行する場合、それに対処して、中小企業基本法とか、あるいは農業基本法とか、特定産業振興法とか、いろいろそういう法律もできて、それに応じて全体として開放経済体制を整えていこうとする場合に、ある一定の計画ですね、大体自由化計画というものがなくして、ただ向こうの様子を見てそれをやるというのでは、何だか行き当たりばったりのように見えますし、また業者のほうでも踏み切っていいのか踏み切って悪いのか、そういう点が絶えず不安定だと思うのですが、だから、何かやはりそこに開放経済体制移行に伴う自由化に対する何らかのめどとか計画というものを、たとえばこれは事務当局もまだ洗い作業だそうですけれども、農林物資については大体四つぐらいにカテゴリーをつくって、絶対自由化できないもの、それから自由化するには時期がかかるものとか、あるいはすぐ自由化しなければならぬものとか、いろいろカテゴリーをつくって大体作業をやっているようです。ことに通産関係は一番多いんですよ。百四十五のうち農林は七十三くらいですね。半分ですよ。大体そういうめどはあるんじゃないですか。
  82. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) それはあります。大体、工業関係の品物については今年内くらいにやれと。われわれとしちゃ、できるだけ自由化することによって諸外国も日本に対して窓をあけてもらうように努力をしなきゃいかぬということですから、こっちは窓をふさいでおいて、おまえのほうだけあけろという経済外交はありませんから、できるだけこっちも窓をあける。だから、そういう意味では、いまおっしゃったように、どうしてもできないものとか、あるいはできるだけすみやかにできるものとか、そんなことは言うとおかしいが、できるけれども相手かあまり制限されておるから、この分だけはとっておこうとか、それはいろいろありますよ、そういうことは。いろいろございまして、私が先ほど申し上げたのは、どうしても自由化できないようなものまで急にやるつもりはないというわけで、できるだけ自由化をするような  基本方針のほうは自由化をするというたてまえで日本の産業に力をつける施策を順次進めていくと、こういうことでございます。  したがって、どうしてもむずかしい、あるいはしばらくはむずかしい、あるいはさしあたりやろうと思えば何とかできる、こういうものにカテゴリーはもちろん分けて、分けようと思えば分けられるわけであります。ただ、個々の品目は、これはどうだ、あれはどうだということを申し上げることは、ちょっとこれはむずかしいと思います。それだけは差し控えさしていただきたい。自由化の時期を想定すると、いろんな問題がまた起きますので、これは差し控えさしていただきたいと思います。どっちにしても、百四十五のうちで七一三が農林ですから、七十二ですね、実際は。そのうちでやろうと思えばできるものもないわけじゃないんですがね。しかし、そういうものも、フランスあたりがさっぱり自由化しませんから、二百幾つも残しておいてがんはっておるから、こっちばかりが裸になる必要もないじゃないかというので、フランスに向かってもっとやれとか、まあいま交渉に入っていますがね。そういうような、いわば相手を見てやっているものもあるわけであります。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 乗用車については、さっきのお話ですと、かなり競争力が出てきているというお話だったんですが、これも新聞の報道ですが、乗用車の自由化については乗用車政策特別小委員会というのがあるんですか。
  84. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) ええ。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこでは一昨年末に答申して、それによると、四十年四月くらいに自由化しろという答申である。新聞の報道ですと、大臣のいまのお話もあり、それよりも早くなるんではないか、早めてもいいんではないか、こういうようなことが報道されているんですけれども、それほど日本の乗用車の競争力がついてきておるのですか。
  86. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 私は、あの答申が出たときにも、四十年の四月というのはおそいじゃないか、もう少し早くやったらどうかというような意見をちょっと発表したことがあるんです。私がそのときに言ったのは勘で言ったんですが、勘で言ったといったって、全然知らないで言ったわけじゃございませんけれども、かなり日本の自動車業界、トラックは完全にあれがあるんですから、乗用車がなぜおくれているかというのは、一部の部品においておくれておる。大量生産しても利益がないので、おくれておる。輸出さえきいてくれば、相当日本には対抗力がつくんだという気持ちを持っておったわけです。部品の面でも三つばかりおくれておるところがありましたが、そんなのは一年もたちゃできるんじゃないかという、私、あの答申が出たときに一年か一年半せいぜいあればできるという感触を持ったわけです。だから、いまの時期でいえば、ことしの暮れぐらいまでにはできるんじゃないかという感触があるんです。来年の四月まで延ばさずにいいじゃないかと感じを言ったところが、新聞で、通産大臣はえらい早くやろうという意向だということが出たわけなんです。私は、そういう感じはいまでも変えておりません。自動車についてはかなり力がついてきたと、こういう感触を持っております。  現に、この間もカナダから、トヨタだったか日産だったかと提携して、カダナダで細み立て——日本の自動車を逆に向こうへ輸出しようという話が来まして、それで調査に来たんだというのですが、これははたしてそういう意味で調査に来たのか、外国車を売るために来たのか、そこら辺のことはよくわかりません。そういうことがいわれるくらいで、一つでもそういう話が出てくるということは、かなり日本の自動車に力がついたということだと思う。  ただ、御案内のように、あなたに非常に御心配をいただいておりますが、自動車というのは、関係部門が非常に多いし、下請も非常に多うございます。これを軽々しくやって大きな影響を与えてはいかぬと思う。私自身は非常に慎重なかまえをしているわけですか、かなり力が出てきたということだけは、私は言えると思っております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それに関連して、この間、予算委員会で公明会の方が、フォードの日本に対する進出で質問がありまして、いわゆるノックタウン方式で部品を日本に持ってくる。この問題はOECDで直接投資について一応留保しなかったわけですね。
  88. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) できますからね。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなった場合、それから円ベースの投資の場合、これは制限できるかできないかということで、できないというような御答弁がありました。
  90. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 大蔵大臣が言ったのです。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなると、日米通商航海条約の関係もあると思うのですが、そういうアメリカの資本がどんどんノックタウン方式みたいな形で入ってきたような場合、とにかく日本の自動車に対外競争力かついてきた、だから海外は競争しにくいということになると、今度は日本の国内にそういう部品を持っきて組み立てるということか起こる。この問題は、将来非常に重大な問題になるんじゃないかと思うのですが、その点については、円ベースのあれですと、これが制限できないということになると、円ベースでいままで送金しないという約束で入ってきておりますものが相当あると思います。それがかなり自由に、そういうふうに制限できなくて投資されるということになると、問題だと思う。その点はどうですか。
  92. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 実は私、この前、委員会で答弁したときには、いろいろの姿がありますから、にわかにはお答えできないと、こう言った。それをあのとき大蔵大臣から、円ベースでやるからいいじゃないか、こういう話があったのですけれども、私の言っている気持ちは、それ以上私は申し上げませんでしたが、確かに、具体的な問題でわれわれ考えておりますから、四十億ほど土地を換価すれば金ができる。ところが、四十億でノックタウン方式の工場ができるかというと、できっこない、こんな資金では。ノックダウン方式で工場を一つつくるといってもそれは規模によります。三千台にするか五千台にするかという規模がございます。一応五千台くらいにしても、百七十億の資金はどうしてもかかる。これは調査の上で明らかになっているのです。そうすると、やはり百何十億という金を向こうから持ってくることになります。これは直接投資になります。やはり、だから、スクリーンにかかる、そういうことになる。だから、極端な例をいえば、円を持っている、その円だけでできるものもあり得るじゃないかという御議論であれば、おっしゃるとおりそれはできるということになるのですが、実際問題としてはやはり金を持ってくる。それから、持ってくる方式も、株式投資のやり方もあるのでしょうし、いろいろの形式に分かれてきます。ローンで来る場合、株式取得の場合、いろいろの場合があります。いずれの場合においても、スクリーンにかけられることになる。  そこで、そのスクリーンにかけたときに、これが日本のいわゆる産業にどれだけの影響があるかということは、一応われわれとしちゃ考えて決定ができるわけです。そこで、今度は、いま先生が仰せになったように、日米通商航海条約との関係がどうもおかしいんじゃないかということになるのですが、これはわれわれの、これは政府としての統一見解でございますけれどもが、日米通商航海条約によりますというと、第六条の規定がありまして、これちょっと間違えるといけませんからあれを見ますけれども——ちょっと御説明しましょうか。このIMF八条国移行後には、御案内のように、経常取引に対しては為替制限を行なえなくなる。日米条約の第十二条の二項には、日米条約とIMF上の義務と同一の義務を負う、まずこれが前提になります。それから、資本取引については、IMFの上では同協定の第六条三項によって、八条国へ移行した後も、資本移動の規制に必要な管理を行なえることになっております。したがって、資本取引に関しては、もっぱら日米条約の規定がここで問題になるわけですね。そうして日米条約では、議定書の六項によりまして、通貨準備の保護のため外資導入に対し必要な制限をすることができるということになっております。通貨準備の保護のため外資導入に対し必要な制限をすることができる。だから、八条国移行後におきましても、通貨準備の保護の目的のためであるならば、外資導入の規制ができるわけですね。この条文、この項から推してですね。通貨準備の保護のため外資導入に対し必要な制限をすることができる。  そこで、この通貨準備の保護とは何ぞやということがここに問題になるわけです。そうすると、通貨準備の保護ということからいえば、短期的に考えるというと、アメリカから外貨が入ってくれば、これはある意味でプラスですね。だから、これはチェックできないわけです。ところが、この解釈については、OECDの場合には、わが国の経済に著しく——わが国というか、その国の経済に著しく有害な影響を与えるおそれがある場合には制限ができるという規定があるんですが、日米条約の場合においては、その通貨といいますか、外資が入ってきて、そしてそれが将来長期的な観点から見て、かえって日本の通貨準備を減らすようなことのあるものは、これはやはり通貨準備に悪い影響を与えて通貨準備の保護の必要ということになるんだと、こういうことで、実はわれわれは見ておるわけであります。この点については大体こういう解釈で私たちはこの問題の解釈をしております。  そうしてこの間も、日米通商貿易経済委員会を開きましたときも、実はホッジスさんともいろいろ話をしたんですが、まあわれわれはこういう理屈は言わなかったのですが、順次資本の自由化をやっていくつもりなんだから、一挙にやるというわけにいかぬじゃありませんか。まあおいおいやるのだから、あまりあなたのほうも窮屈なことを言わぬでもらいたいという趣旨を述べまして、向こうも、順次やってくれるならばその問題にはあまり触れないと、こういう感触で実は別れておるという事情がございまして、われわれとしてはこの条文解釈上も当然できるんだという一つの理論的根拠も持っておりますが、しかし、そういうことを事荒立てて言わぬでも、アメリカのほうでも、順次日本が自由化するという意図であれば、そう一ぺんに急にやれということも無理であろうからという感触を持っていてくれますから、さしあたり問題にならないで済む、こういふうに考えております。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通商航海条約についてはあとで質問しようと思ったのですが、ちょうどいま大臣から御答弁がありましたので……。私が本会議でも質問した趣旨は、日米条約の第五条第一項後段の外資優遇規定というのがあるわけですね。これは資本とか、技能、技芸、技術というものの取得を不当に妨げてはならないという規定なんです。米独の通商条約にはこれないんですね。ドイツとアメリカとの場合はないんです。したがって、この第五条第一項の外資優遇規定というものからそういう制限は困難になるんじゃないかという考えを持ったのと、もう一つは、いまお話がありましたが、通貨準備の、これは通商航海条約の十二条なんですが、「通貨準備の水準が著しく低下することを防止し、又は著しく低い通貨準備を適度に増加するため必要な範囲内」の場合ですよ、その場合には為替制限してもいいけれども、それ以外の場合には為替制限をしちゃいけないという、そういう規定があるわけです。これは十二条の規定ですね。それから、十二条の四項に「他方の締約国の国民及び会社の請求権、投資、運送、貿易その他の利益又は競争的地位に対して不必要に有害な又は恣意的に差別的な方法で」為替制限を行なってはならない。こういう規定があるわけです。この十二条四項の規定は「不必要に有害な又は恣意的に差別的な方法で」為替制限を行なってはならないのであって、それ以外の場合は制限はできるということになるわけですね。そうしますとね、この通貨準備の問題と、相手国の競争的地位に対して不必要に有害な恣意的な差別待遇をするかどうかという判定が問題になるわけですよね、そこのところが。さっきのフォードの場合を想定した場合ですよ、いま大臣はスクリーンにかけられると言いますけれども、OECDに入りますとね、直接投資についてはあれは留保していないんですよ。留保してないんですね。ただし、了解事項として、たしか日本の産業に有害な影響を与える場合……
  94. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 了解じゃないんです。あれは条文にあるですよ。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 条文にあるんですね。その場合ですね。ただ、しかしあれは留保していないでしょう。条文にあるからしなかった。当然だからしなかった。そこの判定が問題なわけですね。  フォードについて、お話のように四一億ではノックダウンの工場はとてもできない。五千台規模の工場は百七十億かかる。その場合に、本国から金を持ってきますね。百七十億で五千台つくった場合、それが著しく日本の経済上の利益に困難をもたらすという、障害をもたらすものかどうかという、そこが問題になるわけですね。  私は、昨年十月に日米通商航海条約の期限が一応来たわけですね。こちらから通告しないでそのままでおけば、ずっとあれ続くわけです。そうまあ理解しているわけです。そういう機会に、特に米独の通商航海条約と日本の日米通商航海条約とを比較しますと、そういう点について非常に不利な点があるように思われるのです。米独の場合は、かなりそういう点は日本の場合よりすっきり国内産業を保護できるような規定になっている。そのほかにも、こまかい点ですけれども、もうあれ十年前ですか、十年前に結んだんですからね、いろいろ問題があると思うのですよ。  ですから、やはり今度はちょうど八条国に移行する、OECDに入るにつきましては、これまで十年間の実績を考え、実態をよく考え、それから今後の影響等を考え、アメリカと諸外国との通商航海条約等を調べて、そうして日本の不利な点、有利な点等を勘案して、それでここでやはり改定をするチャンスではないかと思う。これはこのまま続いてずるずるいっちゃうと、そういうチャンスがなかなかつかめない。ちょうどこの四月一日から八条国に移行するチャンスにそういう改定を交渉されてはどうか、こういうふうに思うわけです。
  96. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 私はそれは一つのお考えだと思います、そういうふうにするのも。ただ問題は、非常に、解釈の問題でございますから、その解釈が日本に不利なようなことを持ち出そうとする意図が向こうにあったり、また将来非常に日本としてやりにくいような面がございますれば、当然また考えなければならぬと思いますが、この間の閣僚会議においてもそれはたいした議題にならず、向こうからは何も言いません。それで、現実の問題として、われわれはこういう解釈をとって、向こうとしても、日本が非常に急テンポで伸びてきて、いろいろの国内事情もあるだろう、だから急にそうそうきつくそういうことを言う必要はない。私たち、日本の中小企業、下請企業の持っている弱体性の問題を、いままでも閣僚会議があるたびに非常に強くこれを説明いたしております。向こうもかなりわかっておるわけです、そういうことも。だから、あまりそういうことについては言わない。言わないのに、ここでそれを条約を改定するということをしないでもそれで済むのじゃないか。また、そんなことを言いだすと、寝た子を起こしたようになって、ああだこうだ言われるよりも、日本に非常に不利であれば、われわれとしてほうっておくわけに参りませんけれども、向こうはわれわれのやっておることに何も言っておらないのに、無理にしないでもいいだろう、こういう感触でありまして、適当な機会があれば、そういうことをいま何もやらぬでも、やり得る時期がないとは言えないと思います。  ただ、この段階におきましては、向こうも、それだからといって、表からわれわれのやっていることはいいことなんだからけっこうだというほどのことも言わないという感触は、向こうもあるわけです。それはまあまあ黙っておこうというときに、わざわざそれを言いだすと、問題を起こして、かえってこっちが不利になるということは、これはあまりおもしろいことでもないし、せっかく仲よくしているのを仲たがいするようなことをせぬでもいいじゃないかという感触で対処しているので、筋論をいえばいろいろのこともありましょうが、いまこれで特に不便なことも起きておらないわけでありますから、いまのところ、私どもは日米通商航海条約を改定しようという意図は持っておりません。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産大臣とぼくとの考えの違いがあるわけですね。つまり、IMF八条国の移行とか、OECD参加、開放経済体制移行というものの問題意識というのですか、ぼくはかなりこれを重要に考えておるのです。さっきお話ししたように、これはあと戻りできないのだ。したがって、かなり長期的に見なければなりませんし、いまなくても、たとえばアメリカとの話し合いでいま何にもそういうものが起きていない、寝た子を起こすのはかえって不利じゃないかというお話もありますけれども、現にフォードの問題が出てきているわけです。これは国内円資金だけではできないと言われますけれども、もしスクリーンにかけられないで、向こうから直接投資の形で出てきた場合も想定しなければならぬ。そういう点は、将来のことを考えますと、私は日本の経済をここで長期的に見て、非常に大きな転換期に入るわけです。それを見なければならぬと思います。いますぐに影響が、さっきお話のように突然変異的に出てくるわけではなく、ダムのせきを切るように影響が出てくるわけではないが、これは量的な変化ではなく、質的な変化だと思う。日本の経済の地位、そういう際に少なくとも、いますぐにおやりにならないとしても、そういう点については十分やはり検討されておく必要があるのじゃないかと思う。これは米独のほうを調べましたが、米独のほうはかなりそういうところは慎重に扱って通商航海条約を結んでいるし、そういう例もありますから。  それから、外貨準備だけで、それだけをたてにして、さっきのあれは六条——何条ですか。
  98. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 議定書の第六項です。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議定書の六項ですか。それだけでまかなえるかどうか、その点で。それから、大体、今後は原則として自由の段階に入っていくわけですが、そういうことから見て、そういう点についてやはり十分外務省ともいろいろお打ち合わせしなければならぬでしょうが、心がまえとしてはそういうことは私は必要じゃないかと思うのですがね、どうですか。
  100. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) ですから、私は何もあなたのお考えを頭から否定して、それは必要ありませんと申し上げておるのじゃないので、たとえば家を修理するときに、家と門がこわれているとき、どっちを先に修理するかといえば、家のほうを修理して、あとで門を直すということになるでしょう、必要のほうからやっていきますから。それでは、門はそのままなくなってしまってもいいじゃないか、住まいには関係ありませんから、ということかというと、そうでない。へ理屈になるかもしれませんが、いまさしあたりそういうこともないし、向こうも好意的ですね、こう私は見ておる。私の受けている感じですよ、感じでは、何も問題にする必要はないと思います、こういう感触で見ておるわけであります。  しかし、それには何らの理由なしにわれわれはそういう考え方をしているかというと、そうじゃない。こういう理屈がありますということを理屈で考えております、こう申し上げておる。いま、あなたのおっしゃったような条文を例に引いて、向こうが厳重に適用してくるという段階になっておれば、これはもちろん議題になるでしょう。しかし、お互いに仲よくしていこうということで、議題にはなっておらない、こういうことでありますから、われわれとしてはいま、そこまでは考えは持っておりません、こう申し上げたわけです。  いまあなたのおっしゃるような、そういうことを勉強しておけというのは、こういうことをわれわれがやはり勉強をして、かなりわれわれはそういうことに目を向けて研究をしておるということは御理解いただきたいと思いますが、なお、先生の御意見もございますので、十分われわれとしても注意してまいりたいと考えております。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に、ちょうど日米通商航海条約が昨年十月に満期になるときに、この問題は非常に各方面で論じられたわけです。アメリカ資本に対して国内資本と同等の待遇を与えなければならぬということになった場合に、日本の産業がアメリカ資本に支配される危険があるのじゃないか。したがって、株式の保有率等についても、やはりいろいろ制限をする必要があるのじゃないかという議論があったのですが、それで、いまの大臣の御答弁ですと、OECDに参加する、今後通商航海条約もいまのとおりであるとして、日本の産業は外国資本の支配を強く受けるようになる危険はない、そういうようにお考えですか。その点の影響が非常に今後の問題として各方面から注目されているわけです。たとえば日本の場合、五一%株を持っているのは東亜燃料が一つあります。あれは特殊の関係から……
  102. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 五〇%です。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 東亜燃料は五一%じゃないですか。東亜燃料だけは特殊なのです。お調べになったのですか。
  104. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 調べてあります。
  105. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) 従前は五五%の持ち株比率であった。五%減しまして現在は五〇%、こういうことになっております。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在では、外国資本のほうが半分以上占めておるところはないわけですか。
  107. 加藤悌次

    政府委員(加藤悌次君) ございません。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後そういうおそれは一体ないのですか。それは何か規制できるのですか。
  109. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) いままでのあれからいって、私はそういう姿でやっていけるんじゃないかと思っておりますが、それをそんなことまでして、日本の国民の感情まで害して入ってきても、その仕事はうまくいきっこない。日本へはやはりこのごろよく各国の石油会社の社長連中が来ますが、これは石油だけじゃない。どこへも出てくるというふうなことで、日本の国の利益はどうしてもあれするから、ひとつ協力して仕事をやらしてもらいたいと、われわれのところに来るのはみんなそう言います。  私も、はっきり言う。あなた方に来てもらうのはいいが、しかし、日本の産業がいじめられるんじゃ困りますよ、実は私はそういうことをあらわに相手に言っておる。それはもちろんそうです。私たちが商売をする場合に、その国へ出ていって、その国の人がいやがる商売ができますか、そんなこと、あなた、できますかと、おせじかどうか知りませんが、一応言います。おせじだといえばおせじかもしりませんが、実際問題として日本でそんなことをされちゃ困りますよといって、無理して出てきて、五〇%まで株を持ったということになれば、やはりあまりいい気持ちがしませんから、われわれにしたって国民全部が。それじゃ仕事はうまくいかない。やはり日本の事情というものをよくわかり、日本の国民感情もよくわかった上で、もうけにくるのですから、向こうの資本が出てくるのは。向こうで何も日本へ金をやろうと思って出てくるわけじゃない。私は、商売の法則からいって、そんなことはあまり言うはずはない、こう思っております。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは見解の相違です。私は、もうけだからこそ、ときによってはやはりそういう日本産業の支配というものもあり得る。資本の論理というものは、それはきびしいものだと思います。自由化といったって、これはあれでしょう、市場争奪戦です。マーケットの争奪戦なんです。これは非常にきびしいものだと思います。ですから、フォードだって、日本の賃金がアメリカより安いですから、いろいろな条件がアメリカより有利とすれば、それでノックダウンされて、いろいろな形でやられないとも限りません。日本の株を五〇%保有しなければ、直接投資で自分会社をつくるということもあり得るわけですから、そこのところは見解の相違ですから。しかし、何か法制的にそういうものがないというのは、これからOECDに入って直接投資も一応留保していないから、その影響も出てくる。そういう時期に何ら手当てをしておかないというのは、どうも私は割り切れない。このままでいかれるわけですね。
  111. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) いまの考えでは、いままでのやり方で大きな悪影響が起きるとは私は思っておりません。したがって、大体このままでやっていこう。これは世界各国にもあまりそういう例は、問題のあるところは別ですが、こういうような日本の場合には問題はないんじゃないですか。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなら、そういう各国の例もよく調べて、何か資料としてそういう例がないならないというお示しを願いたいと思います。何か事務当局のほうで……。
  113. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 企業局次長でございますが、若干さっきの持ち株比率の点々説明さしていただきます。  先ほど鉱山局長から、五〇%以上の外資と申しますか、外資の持ち株比率の会社はございませんという答弁をされましたのですが、あれは事石油に関しての御質問ということと局長了解してそういう説明をしたわけでございます。したがいまして、石油以外につきましては、例外的に五〇%以上の会社がございます。  ただ、これは最近この数年間は、外資法の認可をいたします場合には、五〇%以上の持ち株比率のものは認可いたしておりません。と申しますのは、大体、持ち株比率等は、これは技術導入を受けようとする者、技術導入を受けようとする者、外資導入をしようとする者、受けようとする者との間で、彼我の間で自由に相談と申しますか、これにまかしておいていい関係でございまして、先ほど先生御質問のございました世界各国におきましては、日本のように技術導入をする先進国間におきましては、技術導入の際に、政府外国人の持ち株比率をチェックするといいますか、干渉するというような例は、先進国間では大体ないというふうにわれわれは承知しております。ただ、遺憾ながら日本におきましては、技術格差が非常にございますために、日本側において、技術導入について非常にまあある意味では過当競争があるというふうな点がございますために、そこの秩序をつけるという意味から政府におきまして五〇%以上のものは原則として認可しないというふうに現在運用いたしております。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 五〇%以上の持ち株比率の会社というのはどういうところですか、幾つぐらいあるのですか。
  115. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 全部網羅的に調べてございませんが、一例を申し上げますと、戦前のものにはそういう例は幾つかございます。たとえば日本ナショナル金銭登録機、これは外国の持ち株が七〇%でございます。それから東洋オーチスエレベーター、これあたりは八〇%でございます。それから日本IBM、これはまあいわば日本におきます支店みたいなものでございますが、これは九九%というふうな例になっております。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだそのほかにもあれば、差しつかえなければ、何か資料みたいにして出していただけますか。
  117. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 後刻、御要望どおり資料として差し上げます。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、ついでに、  できましたら、五〇%以上でなくても、大体日本の企業に外国の資本が入っているか見たいわけです、どのくらいの比率か。そういう御調査がおありでしたら、出して、いただけますか、包括的に……。
  119. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 承知いたしました。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、今度の外為法ですね、五十二条の改正があるのですよね。それは大臣御承知のように、外貨予算制度がなくなるわけですね。外貨割り当ての閣僚審議会がなくなる。しかし、まだFA制も残っている、AFAも残っている。それで、この間FAなりAFAのほうの割り当て関係についての予算等について一応大蔵省から伺ったのですけれども、今度は通産省が物の割り当てですね、物の面から割り当ての予算をつくるということになるのだというお話だったのです。しかし、FAなりAFAのウエートは、そんなに少なくないと思うのですね。二〇%、その程度のものがあると思います。この物のほうの予算をつくるということは、これは非常にまた毎年外貨割り当て、外貨予算と違った、このものの予算というのですから、そういうようなあれをつくることになると思うのですよ。これはどういうふうになっていくのですか、お聞きしたいと思うのです。物の予算といいますけれども、このFAの割り当ての場合、AFAの割り当ての場合、どうしてもこの裏にいわゆる資金というものがあるわけですからね。AFAにする場合にFAで割り当てて、また要求があった場合にそれ以上にふやす場合に、いわゆる外貨というものが一応裏づけがなければならないわけですよ。ですから、その点がどういうふうな、外貨予算制度がなくなって、それから閣僚審議会もなくなり、今度はFAなりAFAの割り当ての場合にどういうような形でやっていくものか、その辺がようわからないのですよ。
  121. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 政府委員より旧説明させます。
  122. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 御存じのように、今回の改正によりまして、為替制限と申しますか、外貨予算に基づいてその外貨の割り当てを行なうという方式をやめますかわりに、輸入制限を続けなければならない物資につきましては、輸入数量の割り当てをすることになるわけでございます。もっとも実際の方法といたしましては、比較的品質が単一なものは数量割り当てができますけれども規格とか品質にバラエティーがあるものにつきましては、場合によりますと数量が変わるという意味で、金額表示の割り当てをしなければならない場合もございます。しかし、その場合の趣旨は、貴重な外貨を割り当てるという意味ではございませんで、数量で表示するかわりに金額表示するという趣旨でございます。その場合に各物資につきまして、毎年おそらく上期、下期二回に分けまして、どのくらいの数量を輸入させるかということにつきましては、その物資のそれぞれの所管の官庁と相談をいたしまして、あらかじめワクをきめまして、その範囲で数量の割り当てをするということになる予定でございます。  なお、その場合に外貨の問題が当然背面にはあるわけでございますけれども、一応この制度といたしましては、外貨予算という考え方はこの制度からはずれてしまう。ただ、国際収支の問題がございますので、こうした割り当て制度を実施していきます場合に、一つの参考資料といたしまして、その結果、国際収支がどうなるかという見通しは事実上の問題としてつくって検討いたしたいと思っております。しかし、それはあくまでもそれを基礎にして割り当てをするというものではございません。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうものはどこでどういうように、まあ物の予算というのですか、今度は外貨予算ではないですが、これをつくるということは政令できめるのですか。
  124. 山本重信

    政府委員(山本重信君) さようでございます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どの程度に……。どういう政令になるのですか。
  126. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 実は、ただいま外貨割り出てをいたしております場合も、貿易関係は通産省が一応窓口になりまして、全体の取りまとめをいたしております。物資の中には、通産省の所管のものと、農林省、大蔵省、厚生省、その他の所管のものとございますので、それぞれ関係官庁と協議の上で輸入のワクをきめて、現在のところ実行いたしております。したがいまして、今後もその官庁間の関係は現在と同じようなやり方を続けてまいりたいと、このように考えております。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、通産大臣に最後に一つ。これは一般的な質問なんですが、通産行政、特に貿易行政について伺いたいのですが、大体、日本の貿易行政として、従来後進国——まあ後進国という名前は適当でないかもしれませんが、開発途上にある国ですか、そういうところに対する輸出を盛んにするという方針があったと思うのですが、しかし、実際問題として、これはいろいろな文書、政府が発表した文書にもあったと思うのですけれども、ここ当分の間は先進工業国問の貿易を盛んにしたほうが実際問題として輸出をふやすのに実質的効果がある、そこに大きなウエートを置くということが大体の方針ではないかというように、政府の資料なんか見てそういうふうに感じたわけです。そうしますと、先進工業国間との貿易を拡大するということが実質的にやはり貿易拡大に役立つと、開発途上にある国との貿易についてはかなり長期に、五十年とか百年とか、そこまでいかないかもしれないけれども、非常に長期な観点に立たないと実質的に貿易拡大には役立たぬと、そういう観点からすると、これは前にも質問したことがあるのですけれども、日米貿易ですね、日米貿易は非常に輸入超過なんです。非常に片貿易ですよ。これを直すということがぼくは急務ではないかと思うのです。実際問題として。たとえば共産圏貿易を拡大するということも一つの重要な政策です。それからEECですね、EECに対してやはり輸出を伸ばすということも重要だと思うのです。  しかし、何しろ対米貿易につきましては、これは通産省からいただいている貿易統計月報ですか、これを見ましても、たとえば一九六三年、これは会計年度じゃなく暦年ですが、アメリカの輸入が二十億ドル、輸出が十五億ドルです。一番極端なときは三十六年ですが、輸入が二十億ドルで輸出が十億ドル、非常にアンバランスですよね。この改善ということはぼくは非常に重要じゃないかと思うのです。アメリカとの輸入超過をアメリカ以外の国の出超、輸出超過、あるいはアメリカの借り入れ金によってバランスをとっているということですね。これは非常に日本の国際収支の問題を考える場合にも重要な問題じゃないかと思うのですよ。それで、この点にあまり触れないのですよ。触れている人もあるかもしれませんが、この点にあまり触れないで、それでアメリカ以外のEEC接近とか、あるいは開発途上にある国に対する輸出とか、共産圏貿易とか、アメリカ以外の国との貿易拡大が強調されておりますが、日米間の貿易の片貿易、アンバランス、これをもっと改善する努力をしなければ——一時はちょっと改善されたのですよね。これは一番ぼくは実質的効果があると思う。ところが、ドル防衛政策をとられて以来、これは時間がございませんから一々指摘しませんけれども、もう非常にこまかいですけれども、いろいろ向こうは規制してきていますよね。通産省からも、アメリカから日本品に対して自主規制、どの程度規制をしているかというようなことの調査の発表ございましたですよ。ずいぶんしておりますよ。それから、最近ではまた、綿製品だけでなく、毛製品についても自主規制を要求するとか、 つまりバイ・アメリカン、あるいはシップ・アメリカンというように、いろいろ規制が強くなってきているのです。これはドル防衛政策の一環として、日米貿易経済合同委員会等で、こういうことに対してどの程度の話し合いをしておるのか。この点についてもっと積極的な打開策を講じられて——アメリカとの間に五億ドルの輸入超過の状態ですよ。それで、国際収支改善対策とか輸出振興策とかいろいろ言っていますけれども、この点が私は非常に重要な点じゃないかと思うのです。もっとアメリカはなぜ買わないのかということですね、この点、通産大臣、どうお考えですか。
  128. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) いまの数字は通関の数字だと思います。それは別にして、いずれにしても、こちらのほうがよけい輸入をしているということは事実でございます。そこで、基本的な態度として、こういう片貿易を是正したほうがいいじゃないかということも、ごもっともな一つの御意見だと思います。したがって、またわれわれは閣僚委員会をやったときにも、われわれは自主規制を受けている品目ごとに、なぜこういうことになったかという理由ですね、向こうの業界が反対したためにこうなったとか、あるいはストライキが起きてこうなったとかいろいろあるのですが、その事情は。そういうのをこまかく書きまして、こういうことをあなたのほうでやっておいでになるじゃないかということをちゃんと刷りものにして、一々こまかく実は説明して、こういうことでは困るじゃありませんかと、あなたのほうは貿易自由化とか関税引き下げとか言っておるけれども、恩典は少しも浴することにならぬじゃありませんかということは、実は二回の会議において、いずれの会合でも私たちは強く、私は少なくとも強く主張いたしてきております。  そこで、そういうことではありますが、しかし、今度はアメリカの政府の側はどういうことを言っておるかというと、それはまあしかし、確かにそういうあれはあるけれども、しかし、もし君のほうでこの制限を受け入れないということになれば、やっぱり向こうの業界の圧力というものは強くなって、全面的に日本から入れぬというようなことになって、これはたいへんじゃないか、まあこういうような意見も言うわけです。だんだんふやすという形でいくんだから、あなたのほうの輸出もよく認めて、輸出の事情も考慮しながらいかねばいけないけれども、しかし、アメリカの産業がそれによって壊滅的な打撃を受けるというようなときには、やっぱりある程度じわじわと伸ばすくふうをしてもらわなければ困る、こういうことが大体向こうの言い分であります。  それを、しかし、それでは貿易の自由化もなければ、あるいは関税の一括引き下げなんというようなことをやってもらっても、日本が自主規制をしていたのでは一つも恩恵に浴しないということで、ずいぶんしばしば反論いたしております。きょうの新聞にも出ておりましたが、今度日米の何か関係の団体でもって、片貿易の問題について政府に、アメリカの人と日本の人が入って調査をする会議があるわけです。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近できたのですか。
  130. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) ずっと研究しておったらしいですね、一年ぐらい。日米貿易協議会ですか、まあそういうもので、これはまあ日米の協議会という形だと思っておりますが、これが政府のほう、また民間団体のほうからも、アメリカのほうからも入って調査をして、これではおかしいじゃないかという意見も出しております。しかし、これは日本でも、自動車を向こうが自由化してくれと言っても、うちの産業に大きく影響を持つので、数量はだんだん入れるようにしますがというようなことを言っておりますが、これはまあいろいろ各国事情があるところで、それを全然無視して、そんなばかなことがあるものかといってけんかをしてみても、なかなかできるものではございません。そういうこともございますね。それはまあ向こうも入りますから、できるだけそういうことは少なくするように、また制限を撤廃するように努力しようということは言っておるが、何といってもアメリカという国は、木村さんも御存じのように、やっぱり民間の力というものかなかなか強い、政府の言うことをなかなか聞きませんというようなことであって、なかなか向こうもやりにくい面がある。気長に、やっぱり何度も何度もそういうことを言ってPRしたり、わかってもらうような努力をする必要があると思っておるので、私はそういう努力はいままでも続けておるし、今後もまた関税引き下げなどの場合には強く主張しなければならない点だと思っておるわけであります。  それから、片貿易になるもう一つの理由といたしましては、あなたもよく御存じでありますが、原料を買っております。原料は、安いアメリカから買わないで、一次産品を買うようにして低開発国から買ったらいいじゃないか。低開発国にはそういうりっぱな原料がございません。また、そういう原料を買った場合でも、わりあい支払いは安くて、延ばしてくれる、こういうようなプラスの面が相当あるものですから、その原料の買い先をなかなか転換することができない。実際いえば片貿易なんだから、転換できればほんとうは転換したほうが日本にとっては、低開発国の購買力がつくわけですから、そのほうがいいのですね。そういう利害関係といいますか、原料を安く仕入れるという意味でのプラス面がありますので、これを急に変えることはできない。綿花にしても、鉄鉱にしても、みんなそうであります。そういうことがございますので、どうしても片貿易を急に是正するということはむずかしいのであります。  しかし、むずかしいからといって、これを黙っておるわけじゃございません。われわれとしては常にこのことはアメリカに注意を喚起しながら、順次これを改善するように努力をしてまいらなければならないと考えておりまして、努力はいたしておるつもりでございます。ただ、これは昔から、戦争前からずいふんいわれた問題でございまして、あまり何度も何度も言っておるものだから、新聞等にも、今度言ってみてもあまり書いてくれないということで、皆さんの耳には入っておらないかもしれないが、政府としてはかなり努力はいたしておるつもりでございますが、今度ひとつ御趣旨を体して……。そういうことはわれわれとしてもおもしろくないことなんです。また、筋も通らないのです。自由貿易という筋からいえば、できるだけそれを緩和する。ただその場合にも、アメリカの業界で壊滅的な影響を受けるのに、そんなことかまうものか、そっちは死んでもかまわない、こっちは出すのだ、これではいけない。日本も同じことをやっておりますから、日本だけはそういうことをやって、アメリカに対しては、おまえのほうは死んでもかまわぬということではいかぬのじゃないか。そこはお互いに妥協といいますか、話し合い、よくお互いの事情も理解しながら貿易拡大を進めていく、こういうふうにせざるを得ないのじゃないか、こう思っておるわけであります。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産大臣、これで最後なんですが、結論なんですが、一つだけ。ただいまのお話は、通産大臣は今後お話しする場合、日本の国会でしょっちゅう問題になってしょうがないのだと、いつでもそれを責められるのだということはやはり強調していただきたいですね。アメリカに対しては非常にドルなんかたくさん預けておるのですよ、十四億ドルくらいの預金とか証券とか、安い金利でそういうもので協力しておるのに、なぜこんなに片貿易をやっておるのかということが、しょっちゅう国会で問題になるのですよ。また、われわれ問題にしなければいけないと思うのですが、そういう意味で御理解願いたいと思うのです。  それから、もう一つは、EEC六カ国が日本との間に単一の通商条約を締結しようという意向があって、一月にEEC審議会のエルンスト局長が日本政府に対して非公式に交渉に応ずる用意があるかと打診してきた。これは新聞報道によると非常に重大な影響があるように報道されておりますし、もし単一の通商条約がEEC六カ国との間に結ばれるようになると、OECDにせっかく加入しても何らプラスにならぬのじゃないか、それほどの打撃を受けるのじゃないかといわれておる。そういう向こうから打診があったのかどうか、これに対してどういう態度で臨むのか。何か日本としてはこういういまのところ交渉に応ずる態勢にはないとして、エルンスト局長の申し入れに対して拒否の態度を示したというふうに新聞に報道されておりますが、その間の事情をお聞きしたいのです。
  132. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) そういう事情もあるようでありますが、詳しいことはいま政府委員のほうから答弁させます。
  133. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 大体いまお話しのような事実がございまして、EECはかねてから日本に対して共通交渉をいたしたいという意向を、少なくともEECの事務局が持っておったようでございます。それで、ちょうどいまお話しのようなルートでエルンスト氏から出先の日本の公館に対して、ごく内々でございますけれども、かりにEECの理事会で対日通商交渉をしようという方針が決定された場合に、日本側ではそれに応ずる用意があるだろうかということを打診してまいりました。それに対しましては政府部内でいろいろ利害得失々検討いたしたのでございますけれども、ただいまの段階ではどうもマイナスの面のほうが多いと、特に日本が各国からかなり差別待遇をまだ受けていますので、これは先方が共通交渉としてまとまってこられるよりは、一対一で個別にもうしばらく差別待遇の改善をはかって、そしてある程度めどがついた上で共通交渉に応じたほうがいいのではないか、こういう考え方で、通産省といたしましてはいま共通交渉に応じないほうがいいという意見を外務省に申し入れました。外務省からそうした趣旨の回答が先方に行っておるはずでございます。
  134. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大臣も時間がないようでありますから、一点だけ確認の意味でお伺いしておきたいと思います。いろいろ論議もありましたが、今回の外貨予算制度の廃止に至るまでの経過にあたっては非常に論議が尽くされてきた。なかんずく、通産省においては国内産業の保護の効果をあげるために為替制限は残しておきたいと、こういう意向があったように伝えられています。それで、閣僚会議でもだいぶ問題になった。ところが、昨年秋に対日年次協議会ですか開かれたときに、フリードマンがやってきて、フリードマンはその制限を残しておくという、温存しておくということはまずいということで難色を示したことが、決定的な廃止への方向になったというふうに伝えられておりますが、それははたしてそうか。もし難色を示さなかったとするならば、従前どおりの方向でもって今後も施策を進めていこうという方針があられたのか、この点についてお伺いしておきたいと思うわけであります。
  135. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 基本的に申しますと、やはり日本は貿易立国でなければいけないんでございますから、できるだけ自由に貿易をして、そうして利益をあげるという姿でなければいけない。もちろん、通産省の中にいまおっしゃったような御意見がなかったわけではありません。しかし、それは主流というか、中心の意見ではなかった、そういう意見もあったということ、これは私は省内にいろいろの意見かあることは当然だと思う。しかし、当時フリードマンが来る前においても、やはり方向としては漸次自由化の方向でいかねば日本はいかぬじゃないかということは主たる意見であったと考えております。これは、反対なんというのはかえって新聞なんかにはよく出るものでございましてね、賛成のほうはあまり出ないけれども、反対のほうがよけい出ちまったりするものだから、いろいろあるんでございますが、しかし、考え方としては、日本としてはそれよりほかに生きる道はないじゃないか、というて、産業保護が全然できなくなったんでは困るんじゃないか、こういうことはもちろんございますよ、それは。だから、それができる姿でありながら、基本線はいま言ったような自由化の方向でいこう、こういうことであったわけであります。そのほうの例外のほうがときどきちらっちらっと出るものですから、それが大きく扱われて、誤解を生んだのじゃないかと、こう考えておるわけであります。
  136. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 通産大臣に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次に、綾部運輸大臣が御出席でありますので、運輸大臣に対する質疑に入りたいと思います。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  137. 野々山一三

    野々山一三君 主として運輸大臣に、国際収支の中で、貿易収支、特に貿易外収支の中における海運収支の問題及びこの赤字をなくするということに関する対策、こういった問題について伺いたいと思います。  そこで、最初に伺っておきたいのでありますが、運輸省が最近の極端な海運収支の赤字、伝えられるところによれば、四億二千七百万ドルという赤字がある。この海運収支の赤字解消策として、その考え方を昭和四十二年までに貨物の運賃収支をとんとんにするという計画を持っておるというように伝えられておるのでありますが、その真偽について伺いたい。あったら、その計画の大要についてまず伺いたいと思います。
  138. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 日本の外貨収支の上におきまして、海運の収支が非常に日本に不利であるということは、御趣旨のとおりであります。と申しますその原因は何かと申しますと、船腹がないということが一番大きな原因であろうと思います。そこで、運輸省といたしましては、何といたしましても、輸入物資の大宗である油と鉄鉱石、あるいは石炭等のような、大きなものにつきましての船を十分つくるということに力を入れまして、まあほかの不足の収支を改善するのは第二といたしましても、この運賃の収支だけは何とかやりたいと考えまして、私どもといたしましては、船腹の増強ということに主要なる眼目を置いて、予算その他の方法によってやっていこうとしておるのであります。  現在私どもの考えておるところによりますというと、四十二年までにせめて運賃だけでもとんとん、もしくは黒字にしよう、そのためにはどのくらいの船が要るかということを考えました結果、四十二年までに大体四百八十万トン、すなわち年間百六十万トンくらいの船を早急にふやす必要があると考えまして、資金の面、あるいは造船能力の面等について、大蔵省その他と協議をいたしておるというのが現段階でございます。
  139. 野々山一三

    野々山一三君 いま私が触れました、運輸省の運賃収支をとんとんにする、四十二年までの計画試算というものによれば、大臣のお話は、それまでに四百八十万総トンを建造すると言ったのですが、われわれが聞いておる限りでは、約六百八十万総トンあってどうにか数字が合うのではないかと思われるというふうな見解に立って試算がされておるというふうに聞いておるのですけれども、それはあなたが言われたことを疑うわけじゃないのですが、いかがですか。
  140. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 私どもは多ければ多いほどいいんですから、財政の現状、それから造船能力等々を考えまして、少なくとも四十二年までに四百八十万トン、すなわちまあ年に百六十万トンぐらいつくっていきたいと、かように考えております。
  141. 野々山一三

    野々山一三君 その四百八十万トンとよくいわれるわけですが、その四百八十万総トンがかりにできるとすれば、どういうふうなぐあいに年次的に海運収支のバランスがとれるという試算を出しておられるのか、詳細をひとつお聞かせいただきたい。
  142. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 数字でございますから、事務当局から……。
  143. 野々山一三

    野々山一三君 もしこまかい数字だったら、印刷物にしていただきたい。
  144. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) ただいま大臣の申されましたとおりに、三十九年度から四十一年度までに毎年大体百六十万トンぐらい、三年間に四百七十三万トンを建造いたしますと、中間年次のあれはとっておりませんが、昭和四十二年度におきましてIMFの国際収支の計算方法におきます貨物運賃の収支がゼロになる。そうして港湾経費の収支が二億五千二百万ドルの赤字でございます。計二億五千二百万ドルの赤、こういう計算になっております。
  145. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、結論として、さらにその年においてなお二億五千二百万ドルの海運収支において赤が出る、こういう計算なんでございますね。そこで、これはいろんな説があるのでありますけれども、業界をはじめとして主要な海運業界の言い分によれば、先ほどちょっと触れましたけれども、約三年間に六百万総トンつくらなければ貨物運賃収支においてさえなおとんとんになることは不可能だという計算になる。これは想定のされ得ない条件もあるでしょうが、的確には。多少の違いがあるとしても、二百が総トンの違いというものは、これはたいへんなものですね。いま実際に外航船に就航している船舶というのは六百八十万トンぐらいである。そういたしますと、大体三分の一の誤算というか、数字の違いというのは、現有量に対してもなおかつ三分の一の違いというのは、なかなかうなずけない数字でございます。どういうふうに説明をされるのですか。
  146. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 三十八年度末におきます外航船腹の保有量は約七百六十万トンになります。これはそれまでに竣工いたします船を全部加えますので、七百六十万トンになります。で、先生の言われました二百万総トンというのは、最初の試算の段階でそういうときもあったのでありますが、その後関係官庁と数字を詰めてまいりまして、大臣が申されましたように、百六十万トン、三年間で四百七十三万トンを建造いたしますと、四十二年度におきます貨物運賃の収支がゼロになるという計算に相なった次第でございまして、これは御承知のように、四十二年度の中間年次の荷動き量というのは日本船として確定した数字を持っておらないのでございます。いま政府として持っております数字は、所得倍増計画におきます四十五年度の数字がいわゆる法的に認められました長期計画の唯一の数字でございます。それでわれわれは、これを四十二年を推定いたしましたのは、四十五年と現在との間に線を引きまして、その中間年次の数字を求めて策定いたしたわけでございます。
  147. 野々山一三

    野々山一三君 それで、伺いたいのでありますが、第二十次の計画造船六十四万総トン、それは一体どういうことなんでございましょう。片っ方では年間百六十万総トンつくっていかなければいかぬといい、そうしてこれを四十二年度までには貨物運賃収支のみひろって見ればとんとんになる、こういう計画を前提にしておられるわけです。そこでもって六十四万総トンという造船計画を持っておられる。それはいろんな理由があるのでしょうけれども、その違い、理由、そういうものをひとつつまびらかにしてもらいたい。
  148. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 二十次の計画造船六十四万二千トンは、これは船会社と荷主との間で確実に契約ができるだろうという予測を、これは実際にあたりまして予算の数字は正確であることを要しますので、六十四万二千トンを運輸省といたしまして大蔵省に要求いたしたわけでございます。大蔵省は、この六十四万二千トンを一トンも削らずにそのまま認めてくれたわけでございます。この数字はその後におきまして、六十四万二千トン・ベースで参りますと、自己資金船と申しておりますが、計画造船以外のいわゆる純然たる市中金融だけでやります船約二十万トン入れまして、大体八十万トンから八十五万トンのベースになるのでございます。それで参りますと、国際収支、これは先ほど先生が言われましたように、三十八年度において四億二千八百万ドルぐらいの赤字が見込まれておりますが、その赤字がそのまま横ばいするということがやっとの数字でございます。それで、大臣から、その後におきまして、これを少しでも向上するために何らかの方法を考えてみろと言われまして、試算しましたのが、ただいま申し上げました数字でございます。  しかし、この百六十万トンというのは、これは財政資金をつけただけではとてもできませんので、いろいろと、あるいは荷主の協力とか、あるいは日本の貿易形態にも一部FOBとかCIFとか、そういう形にも変更を来たさなければならないというような、いろいろな手を打たなければならないわけでございまして、一応の目標をこの貨物運賃収支を四十二年度にバランスさせるというところに置きまして、この試算に基づきまして、この実行は具体的にどの程度可能であるかということを、これから関係各省と詰めてまいりたいと思っているのでございます。
  149. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、去年もぼくは同じことを議論したので、あまり何べんも議論したくないので、とりあえず、あとにもありますけれども、四十二年までに貨物運賃収支をとんとんにするための建造計画資金割合、それから四十五年までの高度経済成長政策に伴う輸入の積み取り比率などの計画も、どうせあると思います。積み取り比率の問題についてはあとで伺いますけれども、そういったこと、それから建造計画、つまりとんとんにするための建造計画百六十万総トンに対して、八十四万二千総トンでありますから、半分であります。それにつじつまの合わない隘路は一体何であるかということを疎明する理由、材料を提供してもらいたい。いまここで大づかみに質問を進めるために、口頭でもひとつ、わかっている限りにおいて説明をしてもらいたい。実数については、一応資料で要求をいたしたいと思います。
  150. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 百六十万総トンは四十二年度に貨物運賃の収支をとんとんにするという一応の試算でございまして、この試算をそのまま実行いたしますのには非常に困難な問題がございますし、これから実行計画をつくらなければならないわけでございますが、これだけのものがかりにほかの条件がそろって実行できるといたしますと、財政資金だけでも、三年間二千二百四十億円という財政資金が必要になってまいるわけでございます。ちなみに、来年度の財政資金は二百四十七億円でございます。それから見ましても、非常に膨大なものになるわけでございます。  それから、日本船のために船台を確保しなければならないわけでございます。これは外国船の輸出も日本の重要な輸出政策の一つでございまして、外国船の輸出と日本船のための船台の確保ということをあわせて調整してまいらなければならないということが問題のあれであります。  それから、最近の船は非常に大型になりまして、タンカーで申しますと、九万トンから十万トンの重量トンでございますが、タンカーになりまして、その総所要資金は三十億にのぼるわけでございます。企業がこのような巨額なタンカーをつくりますためには、やはり五年ないし十年の長期の契約を荷主といたしまして、その一生のうちの少なくとも半分は保証してもらわなければ、企業として危険で、これをつくることに踏み切ることができないわけであります。しかし、一方荷主のほう、たとえば石油企業のほうといたしましても、十年の運賃の契約をするということは、今後の石油の運賃の見通しその他の関係から非常に大きな企業のリスクでございます。その辺調整ができた、お互いの見通しのついたものが出てくるわけでございます。それがどの程度出てくるか、出やすいか、また出やすくするにはどうしたらいいかということが問題点でございます。  それからまた、貿易の形態といたしまして、輸出CIF、すなわち向こうの、たとえばアメリカ向けでありましたらサンフランシスコ渡し、輸入はFOB、向こうで買いつけるという形が必要でございます。三十七年度をとりますと、輸出は六二%がCIFでございますが、輸入のほうは三五%程度がFOB輸入、これは価格による比率でございますが、このような貿易の形態がだんだんとFOB輸入建てが多くなってまいらなければなかなか契約がとれないという問題もあるわけでございます。  これらの問題を、単に財政資金の問題のみならず、これらを具体的にきめこまかに一つずつ手を打ってまいらなければならないわけでございます。
  151. 野々山一三

    野々山一三君 先ほど言ったような資料はくれますね。
  152. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) これは運輸省の試算でございまして、まだ政府の中で決定したわけではございません。運輸省の試算としてお届け申し上げます。
  153. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、次の問題として、一体今日の造船能力はどのくらいになっているのですか。去年の数字がここにあります、去年出してもらったのが。これによれば、四千総トン以上の船台というものは九十三基ある、稼働能力は七十基だということであります。相当の船台強化というものは考えられなければならない。実際の稼働能力及び船台強化計画、そういうものは一体どういうものになっておるのか、それを伺いたい。
  154. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 実は船台の造船能力のほうは運輸省の中で船舶局で所管いたしておりまして、私、ただいま詳細な数字を持ち合わせておりませんが、日本の建造能力は、三十九年度におきまして、通常のベースで参りますと二百六十万トンでございますが、残業あるいは船台のやりくりその他をいたしますと、約五割アップをいたしまして、三百九十万トンの建造能力が三十九年度にございます。
  155. 野々山一三

    野々山一三君 その場合に、一体稼働——これはあなた担当が違うといえば別の機会に聞くよりしようがないのですが、稼働の回転率、それはどのくらいに見ておられるのか。
  156. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 船台の稼働は年間三ないし四回転を見ております。
  157. 野々山一三

    野々山一三君 船の輸送能力をつけなければならない、それには船主あるいは荷主との間のいろいろな資金の引き当ての問題もあるわけですけれども、いままでの答弁では、これこれでございますのでこれこれですというような、つまり自然のことを流しておるだけなんです。そのままいくならば、私のいま聞いた限りの話によれば、船舶増強計画も実際は半分しか進まない。そうなりますと、貨物運賃収入を四十二年までにとんとんにするといってみたところで、その実はほとんど、これはあとの問題もありますけれども、効果は期待することができない。さらに、最近の造船所の事情などを見ますと、たとえば四千トンないし七、八千トン級の船会社では、ある個所では相当の生産サボをやっておられると見られる節がある。これは金融がつかない、あるいは延べ払いなどによる運転資金、特に運転資金の問題、将来に対して明るい希望が持てないからこんな船会社なんかやめたらどうか、こういうようなことが相当程度起こる。そこで、相当根本的な船腹量をふやすということと船台を増強するということについては、思い切ったことをやらなければ間に合わぬのではないか。  そこで、財政資金の話が先ほど出ましたけれども、これまたその面を見てみますと、二千二百四十億円の資金見積もりに対して実際可能な資金というものは二百四十七億で、一割、これではどんなきれいな試算をされてみても、政府が海運収支に対して情熱を持ってやっておるというような受け取り方は、これはよほど耳をつけ直してみても聞こえない。一体、運輸大臣、そのいま申し上げて並べただけの事実に対して、あなたの決意のほどを一ぺん伺いたいですね。疑いたくなる。どういうふうに始末をつけるおつもりか。この海運収支が特に国際収支のネックになっているのだということを考えてみれば、どうしても相当思い切ったことをなさる必要があると思うのでございます。あなたの意見を伺いたい。
  158. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 四百八十万トンをやるために所要の資金は、先ほど次長が申しましたように、三年間に大体二千二百数十億要るんですが、本年度は二百四十七億円でしたかの資金を確保して、さらに政府といたしましても、海運が外貨収支の非常に重要な部分を占めるポイントになっておるので、この点については大蔵大臣あるいは政府といたしまして、さらに三年間の間に相当の金を出すという方法大蔵大臣としては講じてくれると思いますから、三年間に大体所要資金は私どもは得られると考えております。  ところが、一番困るのは船台でございますが、船台は、ただいま海運局次長が申しましたように、ノーマルの状態で働いて、その造船所固有の能力であるならば、先ほど申しましたように二百六十万トンですかでありますが、これを労働時間を増し、ある部分は下請等に出していたすならば、大体三年間の間には所要のトン数の出るだけの船台は確保できると思っております。と申しますのは、現在拡張計画をやっておる三菱が、今年はたぶんもう一つできます。大きな十七万トンの船台。それから、さらに建造船の計画がここ一両年のうちにできると思います。そういうことを考えまして、今日の造船技術によりますと、半分ずつこしらえて、そして突き合わすという、そういう技術の進歩等々によりまして、金をかけるならば船はできるというわれわれは考え方を持って、政府もそのつもりで資金を出すという決意のようでございます。  ただ、一番問題なのは、いままで開銀の融資が十年間の荷物の確保がなければその造船計画を認めないとか、そういうことによりまして、実は計画造船の発注もおくれておるやに聞いておるので、その点は政府として開銀にやかましく言うて、われわれもやかましく言うて、十年間の荷物の確保なんていうことはなかなか言うべくして行なわれぬから、せめて五年程度にするとか、あるいは財界その他に要望いたしまして、何と申しますか、実力と見込みの数とを合わすように財界でも考慮してもらいたいということをわれわれは言うておるのでございます。そういうようにいたしますというと、非常に楽じゃないけれども、三年間に四百八十万トンは可能でないかと、また可能にせざればいかぬというように考えております。
  159. 野々山一三

    野々山一三君 ことばとしてはよくわかるのでありますが、私が承知しておる限りでは、名前は言えませんけれども、ある造船所が開銀の融資を受けたら、それに相当のけちがついたり、あるいは市中銀行の相当の融資を受けておったけれども、これを引き揚げるというようなことになって、ついに仕事をやめるということになった。ところが、これは大臣に直接私自身がことばを聞いたわけではないのでありますけれども、わが党の議員、ないしは私も間接的にはいろいろそれに関与したのでありますが、実際にいま、金をつければとおっしゃるのでありますが、全然金をつけない。もう三ヵ月も四ヵ月も船台はさびさびになったまま、すべての設備はみんな雨にさらされたままほったらかしにしておるものが相当ある。そう見ますと、それと先ほどの一割程度の——三年間に二千二百億にすればいいじゃないかと言われますけれども、そんなことは、あなた、ほんとうにそれはいまやっておられる実際から見て責任を持てるのですか。おやりになるというなら、私はそれで了承いたしますけれども、いまの流れから見て、そんなきれいごとで済まそうなんていったって、私も実際をよく知っておるつもりでおりますから、なかなかそれは引っ込みがつかない。私はいま、ある会社と言ったので、それはおわかりになっておると思うけれども、これらについては即座にあなたが手を打てば打てる問題です。いま言うように金をつける、こういうのでありますから、しかも運輸大臣がひとつあっせんしてくれればぞうさもなくつきそうだという話もある。そういうものを具体的に解決をしながら、あるいは財政資金の問題についても、それは年次別には、ことしはとりあえず二百四十何億だけれども、来年はどれくらいつける。あるいはネックになっておる引き当て金が一体どういう点にどういう障害があるので、こういうことについてひとつ善処するというように、具体的にお答えをいただかなければ、どうもいまの話は信用できかねるのですが、あらためて大臣から……。
  160. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 私は、いまここで、大蔵大臣の言うことを信用する以外に方法はないと思います。大蔵大臣の、船についてはOECDの加盟のとき、その他から考えまして、あるだけの金を不自由ないように心配をするという大蔵大臣の言明を信ずるより私はしようがないと思います。それで、今年はもう言うとおりつけてくれたのですから、過去の大蔵省の考え方からいたしまして、どうしてもこれが国の重要施策であるからということならば、ほかを削ってでも私は大蔵大臣が心配してくれるということを確信いたしておりますから、それで、それでもだめだと言われたら、これはそれまでなのですが……。(笑声)
  161. 野々山一三

    野々山一三君 そのだめだということを申し上げるつもりで言うわけじゃないのです。去年この委員会で、船舶局長は、十九次ないし二十次というものについては多少疑問があるけれども、運輸省としては七十五万総トンだけはぎりぎり一ぱいどんなことをしてもやる、こういうことを言明した。それはあなたが大臣のときなんです。ところが、いま六十四万二千トンじゃありませんか。ことしの建造計画は六十四万二千トンである。十万総トンは、去年明らかにあれほど言明したにもかかわらず、実行していないのです。その実行していないあなたが、さらに、私は運輸大臣だから、大蔵大臣に言ってあるので、信用するよりほかないと言われても、これはなかなかあなたの腹の底というものを疑いたくなる気持ちになるので、一例ですけれども、これはひとつ……。
  162. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 私どもはこの言明を、七十何万トンを今年度内にやるということを言明したことを、不幸にして聞いておりませんが、だれがそういうことを言ったんでしょうか。
  163. 野々山一三

    野々山一三君 だれがって、いまさっき具体的に言いましたよ。あなた自身直接言明されたのじゃないのですが、船舶局としての資料がありますよ。そのとき出したものです。この計画で今後進みますという、そのものがここにありますから。しかも、船舶局がわざわざ私のところに別のものを持ってきて、説明でもって、このとおりやりますと言っている。だから、私はこれを一例として……。あなたの腹の中はわかりましたけれども、ことばはわかりましたけれども、実際の実行性というものについては疑いたくなるので、実例をもって判断するよりない。これは船舶局長が答えたのでありますから。私がいま申し上げておることは、船台の強化、資金の引き当て、船舶の充実ということについては、あなたのほうの試算とはいえ、遠い話ではない。昭和四十二年までに少なくとも貨物運賃収入だけはとんとんにするという計画を持たれ、言明されたのでありますから、それに乗って、ここ半年たったら、あのときあんなことを言いませんでしたというような話にならないように、これは別な機会大蔵大臣にも私は申し上げるつもりでありますけれども、相当勇断をもって事を処するという決意をひとつぜひ持って進んでもらわなければ安心はできないということです。
  164. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) いま、あなたのおっしゃるのは、計画造船について七十万トンをやるということを言ったのじゃおそらくないと思います。というのは、自己資金船が二十万トンあるのですから、そうすると、計画造船となにしますと、大体八十万トンは本年度内にできるという、三十九年度にできるということを申し上げたのだろうと思います。計画造船だけを七十万トンなんということは、運輸省の当局としては言わぬはずなんですから。よくいずれ調べまして、私も…。
  165. 野々山一三

    野々山一三君 あなたが私と水掛け論をやるつもりで、けんかを売るつもりでおっしゃるなら……
  166. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) けんかを売るつもりはないですよ。
  167. 野々山一三

    野々山一三君 計画造船ということで私は話をし、自己資金の問題については別にそのときちゃんと扱って話をしている。これはひとつ、ぜひあなたも追って調査すると言われるなら、それはいいですが、これだけにひっかかっておってもしようかないので、問題は相当の熱意を持って事を始末しなければ……。くどいようですけれども、三年間に二千二百億をつける計画があるのに、第一年にこんなことを、CECD加盟ということを言われたが、OECD加盟の話は去年からちゃんと進められておったのです。わかり切った話です。いまそれこそ突然とOECD加盟ということが起こったわけでもないのです。それほど無計画な説明を議会でわれわれに答弁されるなら、われわれとしてもそれはもっとものの言い方を考えなければなりません。少しなめちゃおりませんかという話になりますよ。全くこんな子供みたいな話でね、いま突然異変が起こったような話を、いましらばっくれてしゃべるのは、一体どうかと思う。これはぜひあなたもよく反省してもらわなければいかぬ。そうして、くどいようですけれども、決意をもって実行、自分の手元で計画していることなんだから、自分……。私はむしろあなたを督励している、激励しておるのですから、その意味でひとつ受けてもらわなければ困る。  次に進めますけれども、積み取り比率の問題について、私はあなたの所見を伺いたい。運輸省の調べによりますと、戦前、昭和九年における輸出は七二・三%、輸入は六五・二%であった。ところが、昭和三十三年になりますと、この輸出は六〇・五%に減り、輸入のほうはこれまた五七・四%というふうに下がった。それだけではなくて、三十七年になりますと、さらにこの比率は悪化いたしました、輸出で五二・五、輸入で四七・七。こういうことでありますから、一体この傾向は将来どうなっていくのかという、あなたのほうのいまの船腹保有量と今後の造船計画、船腹の強化計画と見合わして、あなたは一体どのくらいを想定されるのでしょうか。あなたの見方をひとつ伺っておきたいと思います。
  168. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) われわれの試算によりますというと、昭和四十二年に輸出は五二%、輸入は六〇%。現在の六十四万トンベースで、いまの計画造船どおりいったときの見通しでございます。
  169. 野々山一三

    野々山一三君 何ですか、よくわからないけれども。
  170. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 数字でございますから、事務当局より説明いたさせます。
  171. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 現在の六十四万トン、それから自己資金二十万トンと仮定しまして、八十万トンのベースで参りますと、昭和四十二年度に輸出が五二%、それから輸入が約六〇%になる見込みでございます。
  172. 野々山一三

    野々山一三君 ことしは一体どうなりますか、どれだけを見込んでおられますか、比率の傾向は。私はつけ加えておきますけれども、あなたのほうの自己資金、計画造船も含めて八十四万トンの増強をやるといたしまして、運輸省が調べて発表いたしておる数字をいま使っておるのです。それによりますと、その計画でずっと進んできたとしてですね、三十八年度の見込みは、輸出が四八・八、輸入は四八・三ということになっておる。むしろ三十三年以降ずっと下がってきておる、積み取り比率が。そこで、八十四万トンのてこ入れをやっても、一体これほど急速度で、輸出のほうで五二、輸入のほうで——あなたが衆議院で言われたものによれば四五ないし六%という状況だと言われたのですが、それが一体六〇に上がっていくというその計算は成り立たない。のみならず、あなたのほうの数字をそのまま私は、いまここで使って申し上げているのであります。これは議論になるかもしれませんがね、公式に議会に提出したものじゃないから、知らぬと言われればそれまでかもしれぬ。それほど無責任なことをまさか運輸省はお言いにならぬと思うんです。えらい違いがあるので、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  173. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) いま先生の言われました数字が、ちょっと、どういうあれかよくわかりませんのですが、三十八年度の海運の貿易外収支四億二千八百万ドルを推定いたしましたときの輸出は約五三%、輸入は約四八%でございます。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。三十九年から四十一年、三ヵ年ですね、四百八十万新造船つくった場合ですね、その場合に貨物運賃の収支、バランスをとんとんにするという場合、これは事務当局から聞いたのでは、その場合積み取り比率は輸入が七二%、輸出が六一%、こういうふうに聞いたのですけどね。さっきのお話ですと、それより非常に低いんですよ。さっきは輸出が五二%でしょう、それから輸入か六〇%。これで貨物運賃収支、バランスとれるのですか。
  175. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 先ほど申し上げました数字は、輸出五二%、輸入六〇%と申し上げました数字は、大体年間八十万総トンの建造ベースで参りましたときに、四十二年度にこのようになるであろうという想定数字でございます。運輸省の試算によります貨物運賃収支をバランスさせますときの積み取り比率は、四十二年におきまして輸出六一%、輸入七二%、先生のおっしゃったとおりの数字でございます。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと待ってください。そうしますと、年間八十万総トンでいった場合、一応貨物運賃収支はとんとんじゃないんですね。
  177. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) とんとんではございません。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 マイナスは。
  179. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 四十二年度におきまして、約三億ドルくらいの貨物運賃収支の赤字がございます。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。
  181. 野々山一三

    野々山一三君 この問題はどうも、あっちで発表する数字、こっちで発表する数字が違いますので、私、申し上げておきたいんですが、経済企画庁長官が参議院の予算委員会で、この間の補正予算審議の際に言ったのは、こういう数字を使っているのです。将来——将来ということは、つまり四十二年ということをさしていると思いますけれども、これは非常に逆な話でしてね、輸出が六〇ないし七〇、輸入は六〇%ということで計画をしておりますと、こういうのであります。これは速記録に、ここにもありますけれども、載っていることなんで、一体政府部内でこれほど数字が違うというような話は、これは海運収支が非常な赤字をもたらす要因であるだけに、私はこの数字の扱い方について注目するので、非常な違いがあるだけに、これはひとつ政府として、経済企画庁長官はああ言う、運輸大垣はこう言う、運輸省はわれわれに非公式にはこうだと言う、そんなむちゃくちゃな話はないんです。統一した資料を出してもらいたい。説明をしてもらいたい。
  182. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 先ほど申し上げましたように、政府として確定した長期計画は、所得倍増計画があるだけでございます。これによりますと、昭和四十五年度におきまして、輸出六三・六%、輸入六二・六%になることになっております。政府といたしましては長期見通しによる積み取り比率は、これ一つしか持っておりません。ただいま申し上げました六一、七二という、これは昭和四十二年度でございます。積み取り比率は、運輸省だけの試算をしている数字でございます。政府としては、四十五年度の所得倍増計画の数字しかただいまのところは確定数字、公定数字はないわけでございます。これは経済企画庁が……。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一度言ってください、倍増計画の数字。
  184. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 倍増計一画によりますと、輸出は六三・六%輸入が六二・六%でございます。ですから、政府といたしまして確定した次の数字ができますのは、経済企画庁でこれから作業いたします中期計画でございます。中期計画ができまして、これは四十三年度がたぶん目標年次になると思います。そのときの積み取り比率、運賃収支というものが出ましたら、これが政府の確定数字になるわけでございます。
  185. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、いまそのお話が出たから、これはあなたでいいのかどうか知りませんが、伺っておきたいのは、その際には運賃収支はとんとんになる。六三に対する六二ですから、大体つり合いがとれるということでお考えなんでしょうか。倍増計画が進んだ結果としての収支比率。
  186. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 所得倍増計画におきまして、昭和四十五年度には貨物運賃収支は六千四百万ドルばかりの赤字でございます。ほぼとんとんに近くなっております。ただし、港湾経費のほうが五億ドルの赤字を見込んでおりまして、IMF収支では、昭和四十五年度の海運の国際収支では五億六千六百万ドルになっております。それから、中期計画におきましてどのように政府間で決定されますかは、これは運輸省といたしましては、われわれの持っております分野でなるべくよくするという方向で計画をいたしますが、政府全体といたしましては、経常収支の中の貿易収支、貿易外収支、それらを総合的に検討されまして、海運でどれだけまでやってもらいたいということは決定いたすと思います。
  187. 野々山一三

    野々山一三君 これはまださらに議論があるところですけれども、少し進みまして、積み取り比率を論ずるにあたって、いままでともう一つ変わった角度から見てみる必要があるのではないだろうかと思うのですけれども、考え方を聞きたいのです。  それは、いままで議論したのは金額によるものですね、IMFベースですから。ところが、量でこれを一ぺんはかってみなければ的確なものにならないと思うのです。非常に大きなごまかしがここに出てくる。それはこういうことなんです。昭和三十七年度における輸出量は千四百万トンである、大ざっぱにいうと。戦前の昭和十年における輸出量は量目にして千三百万トンで、大体同じである。ところが、これに対する輸入というものは、昭和三十七年度におきまして一億二千二百万トン、昭和十年のそれに比較をしてみると、輸入量は三千万トン。いいですか、量目で見ると、輸入量というものは昭和十年におけるそれと今日のそれと見ると約四分の一なんです。そういうふうに輸入がふえておる。ところが、国際収支改善策を考える場合に次の問題が一つ起こってくる。それは輸入の運賃と輸出の運賃との比率であります。これは大体三対一になっておる、輸出が一、輸入が三であります。そこで、いまの実情を見てみれば、輸出入ともにその積み取り比率は、先ほど金額で議論したように非常なアンバランス、量目においてアンバランスである。それは何かといえば、国際競争ができないような状態における運賃が安いということの問題から、この両面から私は問題を取り上げてみて議論をしてみなければ、正しい意味の海運収支のバランスということをとるための策というものは出てこない。今日までの議論というのは、主としてこれは金額——主としてじゃない、まるっきり金額だけを論じている。つまり日本の船は、働いて働いて働いて運賃をかせいだつもりだが、実は外国船によってまるっきり吸い取られて、しかも赤字になっている、こういう現象がある、まさに一対三が逆の一対三でありますから、一対六の比率に、六倍の稼働をしなければ対等にならない。その点における根本的な改善策を考えなければどうにもならない。  私は、先ほど次長の言ったベースでもう一つ議論をするのでありますが、意見を聞きたい。かりに昭和四十五年の六三・六の輸出、六二・六の輸入比率、つまり両者つり合いがとれたと言われるのでありますが、そのときにおける日本船の稼働というものはものすごいものにならなければならない比率になる、今日の状況からいえば。たとえばフィフティー・フィフティーであった場合にどういうことが起こるかというと、輸出運賃総額を日本船に見れば、輸入運賃総額を日本船で比較をすれば、これは約三倍、さらにこれを外国船があと五〇%を持ってくると計算するならば、ちょうど六倍になる。六三・六、六二・六という比率をもってした、わずか一%の違いでは、これは全然今日の運賃体系からもってするならば、あなたのおっしゃるようなぐあいに海運収支が収支とんとんになるという計算にはどうにもならない。これがいまの積み取り比率、量目から見るもの、それから運賃体系というものから見た計算になる。つまり六対一ということになる。この点について検討を加えた上で、いま次長が言われた答弁になったのかどうか。そこを、非常に問題があるところなんで、詳細に伺いたい。と同時に、また、その私の言う議論かうなずかれる——これはうなずかれないはずがない、今日の運賃体系をそのまま私はとってきたわけですから。一体、運輸大臣としてこの点についてどういう考えを持たれるかということを聞きたいのです。  さらに、それにつけ加える意味で申し上げたいのでありますが、あとから議論いたしますけれども、専用船の航行範囲というものは非常にふえてきている。しかも、日本船はピストン輸送をやったといたしましても、片方は空船航行をやらなければならない。そういうことを計算すると、十二倍の運航効率をあげなければその答えは出てこないという計算になる。  そういう貿易構造の根本的な変化というものが起こっている。原材料の生産地の異動あるいは相手国の変化というものによって、そういう非常な大きな決定的な戦前戦後の違いが起こっている。このことをながめてみなくて船をふやしてみたところで、これはからの船を走らかして、そうして十二倍の稼働効率をあげなければつり合いがとれないということになっている実情を御承知なのか。私は御承知のはずだと思うけれども、それにメスを加えて、いま次長が言った答えになったのか。どうするのかということを、ひとつ大臣のお答えをいただきたい。これは運賃政策そのものになりますから。
  188. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 大臣の御答弁の前に、数字的なことを御答弁申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりましたように、戦後におきます日本の貿易構造は、戦前と非常に変わってまいりまして、海運で黒字を出すということは、これは至難のわざと申しますとあれでございますが、非常に努力を、戦前以上の努力を要する時代になっておりますことは、先生の御指摘のとおりでございます。で、私たちが計算いたしました国際収支は、これは国際通貨基金の統計の作成方法によっておるわけでございますが、この場合には、日本船による輸出を受けに建てまして、それから外国船による輸入を払いに建てております。それから、日本船の三国間輸送を受けに建てております。これは為替収支のあれとだいぶん違っております。このような建て方に基づきまして、輸出、輸入、それぞれ貨物別にマクロ的に運賃の原単位をとりまして、これは先生がおっしゃいまするように、輸出の原単位は大体トン当たり三十ドルくらいであります。輸入のほうは、これはものによって違いますが、七ドルから八ドルのものがおもであります。これはいろいろな物資を突っ込みましてそういう数字になっております。これによりまして、これだけの船腹をふやした場合に日本船でどれだけの量が運べるか、それから、したがいまして、その残りは外国船でこれだけ運ぶという量をまず出しまして、それからそれに申し上げました運賃原単位を掛けまして、日本船による輸出運賃、それから外国船に払いました輸入運賃、それから三国間の日本船による三国間運賃というものを出しまして、昭和四十二年度に、もしこれから四百七十三万トンつくれば、運賃収支の面だけはとんとんになる、こういう数字が得られたわけでございます。先生のおっしゃいました、まさにおっしゃいましたように、輸出、輸入の貨物量の違い、運賃の違いというものをたんねんに計算いたしております。
  189. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、私が最後に言った、うんと働かなければ、たくさんつくってうんと働かなければ競争にならないということの結果になるでしょう。だから、四百八十万総トンつくって、あるいは六百八十万総トンつくってと、こういうことは、その財政投資そのものを考えてみなければならないし、それはできにくい。障害がある。そこで、私は運賃収入というものを、運賃政策というものをどういうように考えるかというところにきておりはしないかということを暗に申し上げた。大臣の考え方、運賃政策というものを——今度は運賃政策です。積み取り比率からくる運賃政策についてどういうふうに考えておられるか。これはうんど働かなければ、ピストン輸送しなければならぬ。から輸送をしなければならぬ。うんと働いて、しかもあれでしょう。運賃はそのまま据え置くというのか、上げるというのか、あるいはどういうふうに直すというのか。  日本の経済からいったら、石炭と船だけはべらぼうに国の資金をつぎ込んでおります。さらに四十二年までにどのくらい政府資金をつぎ込む予定でありましょうか、膨大なものをつぎ込まなければならぬ。その国の負担ですね、当然輸銀融資をするでしょう。逆ざやになるから、これはあるいは開銀融資をするから、金利負担の利子補給というような問題が必ず起こる。そこをで触れて、あなたの一体総合的な今日の事態に対処する改善策というものを聞いておきます。
  190. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) それはいろいろな要因がありまして、ここに端的にこれをやればできるということはなかなかむずかしいと思います。輸入につきましては、同盟の運賃のいろいろな問題があるし、あるいは輸出についても、ことさらにFOBを悪用するような輸出があるから、それをひとつ是正するとか、いろいろな施策を一緒にやって、とにかく、要は私は船腹をふやすことによって、あなたのおっしゃるように非常に稼働率が悪いといっても、その稼働率の悪いそういう船をふやしておかなければそういうこともできなくなるというような私は気がいたすのです。そこで、いろいろな、日本だけできめられないようないろいろな問題がありますから、そのときに応じて対策を講ずるよりいまここでしかたがないと申すより答弁の方法がありません。
  191. 野々山一三

    野々山一三君 ときに応じてといいますけれども、一体、外国の事情もあることでということもついておりますから、わが国のということを前提にして申し上げたい。いまでさえも六倍の稼働をしなければどうにもならない。そこへもってきて、そのままのベースでいっても、六百万総トンなり四百八十万総トンなんというものをつくらなければどうにもならない。しかも、そのために資金の引き当てがあるかといえば、ほとんど見るものがない。一割くらいしか計画に対してない。その事態で、わが国の海運収支そのものをどうするか。船腹量をふやすったって、それはなかなかそう、先ほどの議論じゃないけれども、あなたのいまの気持ちじゃどうなるかよくわからない。——これじゃどうも説明にならないのです。さらにごく大ざっぱな乱暴な言い方だけれども、十二倍の稼働率にしてまでも、なおかつやらねばならぬというところまでアンバランスな運賃政策、あるいは積み取り比率の現状というものを、わが国の国際収支というものを直すという観点からだけ見たら、一体どういうことがあってどういうふうに——的確なことは蓄えないとおっしゃるけれども、それはよくわかりますが、たとえばこういうこと、こういうこと、こういうことくらいは少なくともやらなければいけないという考え方があるはずだ。それがなくて、ただ——船をつくる話は先ほどよくわかりました。できるかできないか知れませけれども、わかりましたけれども、一そうの稼働効率を強化していくようなやり方をして、なおかっというところにはあなたの回答は全然ない。私を納得させるような回答がない。くどいようですけれども、さらにもう少し具体的に答えてもらいたい。きょうどうしてもだめだというなら、あとでまた別の機会に海運当局に聞いてもいいです。問い合わせる機会を持ってもいいと思いますけれども、少なくとも基本的な、原則的な考え方だけはあなたから示されてしかるべきだ。私の言っている議論がまるっきりむちゃくちゃな議論なら別問題ですが、いま次長も言われたように、同じようなベースに立っておられるので、対策がないはずはないと私の言うことは無理がないと思いますので、お答えを願います。
  192. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) たびたび申すようですが、私は、現時点におきましては、とにかく積み取り比率をよくして、船をたくさんつくることが一番先決の問題であると思って、その方針でやっております。
  193. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) 運賃の点につきましては、これは輸出運賃をなるべく高く維持することが、これは輸出政策は別として海運の国際収支の面からだけ申しますと、輸出運賃を高く維持することが必要でございます。これは運賃同盟を今日かして、そうして運賃くずれないように安定した運賃を維持するということを目標に、目下日本の船会社を指導いたしております。それから、輸入運賃につきましては、これは国際マーケットで決定いたしております。で、日本の船会社の運賃コストは、従来高かったのでございますが、これはいろいろと助成策を得まして、外国が出す運賃コストと同じもので競争し得る運賃を日本船も出すということで、日本の荷主に、外国船よりも日本船を少しでも多く使ってもらう、こういう競争力をつけることによって、日本船の積み取り比率を上げていく、このように考えて施策を進めておる次第でございます。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。いま運賃の関係が出ておりますが、先ほどの、貨物運賃の収支バランスをとんとんにする。そのためには、積み取り比率を何%にする、そのとんとんにするためには運賃のベースというものはきまっているわけですね。それをもとにして積算しているわけですね。その運賃はどういう計算になるのですか。
  195. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) これは、輸出運賃につきましては、大体大宗は定期船の貨物でございますので、過去三年間の平均の運賃を横ばいさせて考えております。それから、輸入運賃につきましては、これは船舶が大型化するに従いまして、運賃が漸次下がってまいりますので、将来の大型化の傾向も参考に入れまして、そうして四十二年における運賃を推定いたしております。  これは具体的に申しますと、たとえばタンカーの運賃でございますが、タンカー運賃は、昨年度、三十七年度に通産省が策定されました場合はたしかUSMCレートのマイナス四九、日本に入ってまいります石油運賃の総平均コストでございます。これはかりに約十ドルといたしますと、五ドルくらいの運賃になります。これは昭和四十二年度におきましては、船舶の大型化その他も計算に入れまして、これを約三ドル七〇か三ドル八〇くらいに計算いたしております。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは野々山君があとで質問するかもしれませんか、この積み取り比率を上げるために船舶をふやすということがいま問題になっておりますが、しかし、船舶をふやす問題だけでは足らないと思うのです。これは荷主のほうの問題があると思う。さっきお話に出たように、荷主としては、十年の運賃契約をするのは困るという話がある。これについては私はOECDの関係があると思う。OECDに加入する条件として、石油については二年でしょう、留保しているのは。それから鉄鉱、石、石炭は一年でしょう。それが今度は石油は二年たつ、鉄鉱石、石炭は一年たつと、今度自由化されるでしょう。そういたしますと、日本の運賃はノルウェー、北欧その他の運賃と比較して、あるいはアウトサイダー等もあるというわけでしょう。そうなった場合に、荷主のほうでは、そんな長期の契約をしておけば損だということになるでしょう。自由化されれば、安いほうと契約したほうがいいということもあるし、それからさっきも話がありましたように、景気の変動もありますし、特に海運不況なんかで運賃の安くなる場合もある。ですから、そんな長期に契約をしない。しかし、開銀のほうは融資の安全性をとって十年の荷主のほうとの契約がなければ困るというでしょう。その辺が固まらないと、ただ船をうんとふやした、そうして自由化したところが、外国の船と長期契約を結んじゃったということになると、今度は日本の船が過剰の問題が起こってくるのです。そういう点をどういうふうに考えているのか。もちろん不況の場合運賃が下がる、そういう点もあるわけです。そういう点も総合的に考えませんと、ただ船をふやしたからいいという問題ではなく、そういう問題があるのです。  それで、この間、企画庁長官にその点も質問したところが、いわゆる総合的に根本的にやはり考え直さなければならないのだというので、運輸省、企画庁で、各省が集まって総合的に根本的にそういう点を再検討する必要があるという話を聞いたのですが、そういうことについて具体的にいま作業しておられるのか、そういう点も総合的にどういうふうに、さっきの四十二年までに貨物運賃収支をとんとんにするためには、そういう点を含めて総合的に解決しなければならないわけですが、どういうふうな考えをお持ちか、どういうふうにいろいろな作業をしていくのか、これがなければ、ただ船をつくるつくるといっても、その問題が解決されないと実効がないのじゃないかと思います。
  197. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) お説のとおりでございまして、政府といたしましては、来たる次の経済閣僚懇談会におきましてそのことをよくきめまして、まず第一に、荷主に邦船を使うように勧奨を強くやろうということが一点と、それから、貿易商社その他に対しまして、なるべくこれまた邦船を使うように行政的に通産省とも協力してやっていこうということが一つ。それから、盟外船の活躍に備えて、同盟の強化をはかっていこう。現に昨日私どもがイギリスの同盟のニコルソンに会っての話も、そういう話に主として力を入れておりまして、すべての総合施策をいたしまして、日本の船を有効に使うようにするためにあらゆる施策をやろう。それをやるにいたしましても、とにかくそういうようなことをしても積む船がなければ問題にならないから、われわれとしては船を早くこしらえてもらいたい、こしらえなければいかぬという主張を持っている次第でございます。
  198. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまおことばですけれども、荷主に勧奨する、あるいは商社についてそういう日本の国際収支改善のために協力を要請するといっても、商売ですから、私企業でしょう、ただ、勧奨、協力を求めても。高度経済成長政策だってそうですよ。設備投資について自粛を求める、銀行に自粛を求めるといっても、だれもなかなか、業者は競争しているのですから、そんな抽象論あるいは精神的な協力を求めたって、それはなかなか困難だと思います。何かもっと、いまの資本主義経済のもとで、私企業をたてまえとして、どういう実効ある施策をするのか、その点がはっきりしなければ、ただ協力といったって、それはから念仏に終わってしまうと思うのです。その点、いかがですか。
  199. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 私どもは、こういう際であるからして、私企業といえども、国家あっての私企業と思いますから、私は協力してくれることを期待いたしております。と申しますのは、石油の割り当てとか、そういうことについて行政指導が十分に、一番おもなる輸入品は石油でございますから、原油でございますから、その原油については、行政指導によりまして邦船を使うことをあるいは条件にするとか、邦船を使うような輸入業者に割り当てをよけいするとか、いろいろな方法があるだろうと思います。そういう、これはほんとうに非常の場合なんですから、私は財界といえどもそれに協力してくれるということを期待いたして、とにかく積み取り比率をよくするためには、そうして外貨収支を改善するためには、船をつくるということが一番まず考えねばならぬことであると私ども考えております。
  200. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはたとえば石油なんか、いまFA制ですから、石油の製品等はできると思います。しかし、これもやがて自由化されますよ。そういう場合も想定されるのですけれども、これは議論してもいますぐにどうと  いう結論は出ないかもしれませんか、われわれ高度経済成長政策の経験で、よくそういうことが困難であることも承知しておるわけです。たとえば下村理論で、下村君が、私企業の場合、経営者というものは聰明なんだと、みんな採算をもとにしてそんな行き過ぎたりなんかしないと、ちゃんとあるところで、設備過剰になりそうになると、ちゃんと自粛して非常に聰明な計画を立てるのだということをもとにしてあの倍増計画についての理論化をしておりましたが、そんなもんではないと思うのですよ。これは意見になりますから、関連質問でもありますし、何か御意見がありましたら、その点ちょっと伺っておきたいです、大臣。
  201. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) もうありません。あなたのおっしゃるとおりでございます。
  202. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か御答弁ありませんか、いまの点について。ただ話をして、行政指導をやっていくということだけなんですか。それ以上はないのですか。  御答弁一つわかりました。一つは行政指導で、石油がFA制である間はそういう点からもできます。その他等々いろいろあると思うのです。それは事務当局の方でもいいのですよ、大臣でなくても。
  203. 沢雄次

    政府委員(沢雄次君) これは、実はいま大臣の非常に高度の政治的な行政指導のお話がございましたが、事務的には行政指導はなかなか、国際的な問題その他がございまして、実際上むずかしい問題がたくさんございますので、これは昨年大臣から経済団体連合会のほうに要請されまして、これを荷主の団体と日本の船会社との間で、一体どうしたら日本船をもっと使うかということを詰めていただいたわけでございます。それで、そのときに、その荷主の団体の言われることには、これは外国船を使いますよりも日本船を使ったほうが種々の点で便利である。これは言語のみならず、クレームの処理その他につきまして非常に便利である。でありますから、日本船のコストと外国船のコストが大体同じであれば、われわれは日本船を使うということを、経済団体連合会で申されたわけでございます。それで、運輸省といたしましては、大蔵省といろいろ折衝いたしまして、これはOECDの加盟前からのあれではありますが、利子補給の強化、あるいは財政融資比率の引き上げ、それから返還条件の緩和、また海運に対します所得控除制度の存続、これらのことを通じまして、現在の段階におきましては日本の船会社外国船とほぼひとしい運賃をオファーすることができると思っております。
  204. 野々山一三

    野々山一三君 みんな帰っちゃったんだけど、帰したんですか。お帰しになったなら、私、まだ質問山ほどあるんだけれども…。
  205. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ほかの委員会に出席している方もあると思いますが、先ほどは大体定足数がそろっておりました。
  206. 野々山一三

    野々山一三君 先ほどはいいけれども、この状態じゃ。
  207. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  208. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  209. 野々山一三

    野々山一三君 大臣にもっとずばり答えてもらいたいけれども、わからないから、それでつい長くなって……。  もう一つ、貿易構造の面から見た改善策というものについて、ずばりと、——ずばりかどうか知らぬけれども、答えてもらいたい。  私はこういうことを考えるのです。昔の輸入というようなものは、主として軽工業中心のものであった。ところが、最近は重化学工業中心のものに変わって、しかも品目的に見ると石油とか鉄鉱石とか石炭というものが多くなった。加えて、その傾向は、かりに三十三年から今日まで見てみましても、わずか四年の間にいま申し上げたような品目は約三倍にふくれ上がっている。しかも、輸入の比率から見ますと七〇%。こういう点でも根本的に質が変わってきている。しかも、輸入原材料の比率というものが根本的に急速度に高度経済成長政策の陰にそれが伸びてきている、こういう特徴がある。第二の点は、昔はたとえば石油類なんかに  いたしましても、石炭にいたしましても、あるいは鉄鉱石なんかにいたしましても、東南アジアを中心にするものが相当強かった。最近はそれが中近東だとか、アメリカ、南米といったようなところへずっと延びておる。全然範囲が変わってきておりますね。輸送航行距離というものの変化を見てみましても、戦前のこれは運輸省の調べでありますが、昭和十一年には平均輸送距離というものは大体四千海里だった。ところが、三十年になると五千七百六十海里という数字が出てきており、さらに三十七年には六千三百海里というふうに変わってきておる。こういうように変わってきておることは、それは先ほど通産大臣の説明にもありましたように、原材料を持っておる国及び開発の度合いというものによって異動しておるということはわからぬでもない。それはそれといたしまして、そういうふうに変わってきておるのにかかわらず、さらに一方では思うように日本の船は使えない。たとえば極端な一例をもってすれば、鉄鉱石なんか、鋼管の例で見れば、その大きな比率を外国船によってやっておる。先ほどの木村先生の質問に答えてあなたは、行政的にできるだけ日本船をと言うのでありますけれども、しかし、原材料を買うときにそれにコネをつけられてしまって、いやおうなしにその船でもって運ばなければならない。しかも、それがコストの面で日本船よりも安いということであるから、そんな理屈を言われたところで、損益という面から見れば、そう簡単におまえたちの言うようにはならぬぞという、非常に何といいますか、原材料の性質が変わってきた、地域が変わってきた。しかも、コネをつけられて、それで運ばされる。そういう根本的に正反対な現象が起こっておる。これがさらにさらに、先ほど申し上げたような日本の船の稼働率は悪くなる状態になる、距離がふえて。  そういう面から見れば、これは念押しみたいな話でありますが、貿易構造そのものについて、私は何も中国大陸そのものを指摘して言うわけじゃないのでありますけれども、たとえばインドにおける鉄鉱石なんかは、鉄道技術者を持っていって開発をしてやっておるわけですね。ところが、どうもこれが中途はんぱになっている。鉄道技術者も帰ってきておるという状態で、とんと開発が、鉄道技術者まで持っていきながら中途はんぱになっていて、それが浮かばれない。こういうような面を実はしさいに検討して改善策を考えなければならぬ。行政的にあなたはやると言われるのでありますから、それはわかる。もっときめこまかな対策というものが必要な時期に来ておるということを一例をもって申し上げる。これは時間がないようでありますから、あなたもそういう事情十分承知の上でありましょうけれども、手を打つのであるというのか、そんなことを言ったって不可能だと言われるのか、そこらのところの見解をぜひ伺っておきたい。
  210. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 御説のとおりのような実情でございまして、輸出船を奨励したのがはたして国策に沿うやいなやという問題につきましては、非常に議論のあるところでございまして、私どもも通産省その他政府全体といたしまして、あなたのおっしゃるようなきめのこまかい指導を、きめのこまかい政策を立てまして、そうしてこの海運収支の赤字対策に善処いたしたいと考えております。
  211. 野々山一三

    野々山一三君 次に、輸出船の問題であります。この前はドル獲得策として輸出船の建造というものにどういう認識を持っておるかということを実は伺ったんです。それによりますと、相当輸出船は力を入れて資金手当てもして、さらに延べ払いというようなものにも緩和措置を講じてやるというような処置を講じられるということで、きょうは逆な話をしたい。全く相矛盾する状態になっておる。輸出船をどんどんつくれば、輸入船がその積み取り比率の問題で常に、しかも大型船化すればするほど、先ほど申し上げた例のごとく、輸入主と相手の原材料を持っておる者との間にコネがつくというような実情にあるわけですね。そこで、この矛盾解決策というものは一体どのように考えるか、どの程度に押えていくかということの考え方の画然としたものがなければならぬ段階に来ておるんじゃないか。なるほど日本の建造能力というものは技術的にもすぐれておるから、出せばいいじゃないかというような一面だけとらえていくわけにいかぬ情勢になってきていると思うのです。そこのところをひとつ、あなたのお考えを。これはあなたが他の委員会で議論されておるのも私承知しておるのであります。非常に抽象的な話で、何べん記録を読んでもわからぬ。ぜひそういうものに対する対策、所見というものを、この際もう少し明らかにしていただきたい。
  212. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) それは全く、われわれのほうといたしましても、船舶局と海運局と寄りまして、実はどうすればその矛盾が解けるか、輸出を伸ばさんとすれば、あなたのいまおっしゃるような積み取り比率なり、それからマイナスの面が非常に出てくる、その調和をどうするかということで、非常に私どもいま苦慮しておるのが実情でございます。そうして抽象的ではあるけれども、ある一定程度にいけば輸出を押えて、そして日本の海運収支の改善に主力を注ぐようにするのでなからねばいかぬという、われわれの運輸省の間におきましてはそういうことになったんでございますが、一方、通産省の側から言わせれば、やはり輸出を増進すべきだということで、非常に議論があるところなんでございます。その調和をいかにするかということを、経済閣僚全体といたしまして、来たる十五、六日ごろ経済企画庁、通産省みんな寄りまして、最終的の結論を出しまして、そして同時に、さっき申しましたような、経済団体なり、通産省関係の業者等にも通産大臣から呼びかけてもらうとか、あらゆることをやって、何とかしてこの海運の収支をよくしようということに努力いたすようなつもりでやっておるのでございます。その結論を得まして、別の機会に、結論を得次第にまた申し上げたいと思います。
  213. 野々山一三

    野々山一三君 もう二つやります。一つは、港湾諸経費の問題であります。これもまあわかり切った話でありますけれども、まあたとえば水先料あるいは岸壁使用料などというような港湾諸費が、簡単にいえば横浜とニューヨークの比較がよく指摘されるのでありますが、これは横浜一に対するニューヨークは五でありますね。六でありますか。しかもさらに、荷役費はあんたの言われるように一対六でありますね、これも。それから、ロンドンあたりは十倍であります。これは運輸委員会などでも非常に議論されたんでありますけれども、まるっきり、何といいますか、どん底の生活をしている港湾労働者の低賃金、そういうようなものにささえられて、そういう安いものでやっておる。今度何かトン税を倍にするということをやられるようでありますが、とにかくこの非常なアンバランス状態というものを一体どういうふうに考えるか。これもまた非常な大きな問題の一つであります。とにかく日本のいまのやっている何をぼくはいろいろ上げちまうというのじゃないですよ。全く不合理、不合理そのものであります。しかも、外から相当なワクをかけられて、不合理な状態に置かれているということを指摘しないわけにはいかないわけです。この問題に対する抜本的な解決策というものは、これは非常に簡単な、しろうと目から見れば簡単なのでありますが、政治的な大きな問題もあると思いますし、さらにはまた、港湾の環境なり条件なり、そのものに対する関係というものもあるでありましょう。港湾近代化五カ年計画というものも進められているんでありますけれども、なかなかうまくいかない、そういった諸条件を、パースを改善するとかなんとかいう、あるいは機械化による近代化ということなどには一応目をかけられているのでありますが、その底の問題についても日をかける必要があるというように思うのです。そういうことを総合的に、時間がありませんから総合的にあなたの所見を伺っておきたい。
  214. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 運賃のほかに外貨収支に非常に影響しておりますものは、御指摘のように港湾の使用料であるとか、荷役料であるとか、ブイの使用料であるとか、それから水先案内料であるとか、いろいろございます。それにつきましては、むしろ荷役料なんかは、非常な中小と申すよりむしろ個人的な零細企業のようなものでございますから、私はこれは当然ある程度値上げをいたしまして、そうしてその人々が安んじて重要な港湾荷役に従事するようにしてやってまいりたいと思っております。しこうして、その荷役料、港湾の使用料、荷役料を上げることが日本の物価に影響する度合いはどういうものであるかというようなものにつきましても考慮をいたしまして、できるだけ安心してその荷役労働者がその日の仕事につけるようにいたして、それと矛盾しないように、それとバランスをとりながら、いま言ったような運賃収入以外の収支につきまして順次改善して、海運収支の赤字をなるべく克服するように努力いたしていきたいと思っております。そうして現に港湾の使用料なんかは若干上げております。それよりさらにまた上げていくつもりでございます。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 港湾費について大体御意見はわかりましたが、私も数字を、計数について驚いたんですが、先ほどの昭和四十二年を目途とする運輸省の試算ですね、あれを読みますと、運賃のほうはかりにとんとんとしても、港湾費だけで四十二年に二億五千二百万ドルの赤字になる。このうち油の赤字、これはまだなかなか解決は困難で、一億二百万ドルだそうですが、残りの一億五千万ドル、それは先ほど運輸大臣が言われたことですね、港湾費とそれから荷物費ですね。これは私見なんですけれども、外国に比べて非常に低いのですから、思い切って上げる。そうすると、外貨は獲得できるわけですね。しかし、国内船もありますから。それから、トンで上げた場合、国内のほうの影響もあるわけです。しかし、外貨が今度はプラスになるわけですね。そこで、外貨はプラスになる。その面で今度は国内のほうも差別はちょっと困難でしょう。一律に上げると国内に影響がある。それを何か調整するしかたというものを考える必要があるのじゃないかというように、しろうと考えですけれどね。そうしないと、思い切って上げられませんですね、国内の影響がありますから。それを海運五カ年計画の何かああいう振興費の中に含めるか、何かそういう措置を講じて、やはりかなり思い切って引き上げませんと、一億二百万ドルはこれはなかなか解決しないにしても、油のほうは解決しないにしても、一億五千万ドルの赤につきましては、かなりいまお話ししたようなことで思い切って引き上げることができるんじゃないか。国内との調整を何か考えることによって、これは事務当局あたりいろいろそういうことを作業されて、そういうような何かやり方があるのじゃないかと思うのですけれども、運輸大臣、いかがですか。
  216. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) 実はあなたのおっしゃるとおりなことを考えまして、何か事務当局にそういう、何といいますか、外国と同じようにしておいて円で解決できる何か方法はないかということを、税制の面でやるとか、ないしょで——ないしょでといってもなかなかいきませんから、何か考慮を、何かいい方法はないかということを検討さしております。まあ一番うまくやれますことは、税制の面で措置をすることがいいのじゃないかということで、大蔵当局と相談いたしております。それで、全く私ども一番最初考えたのは、この海運収支以外の赤字解消策として一番最初に考えたのは、あなたのいまおっしゃるようなことを考えたのですが、ただいま申しましたように、どうすればいいかという研究、それにはだれも反対はしないのですが、いい方法がないということであるのであります。
  217. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あとから来ましたので、失礼かもしれませんが。私たちが心配することは、国際収支の上における貿易外収支は構造的なものであり恒久的なものであって、この前は宮津長官に対する木村委員の質問に対して、四十二年には解消することはできないということでお茶を濁しておいでになりましたが、私たちは端的にいって、ここ十年くらいで解決できない問題じゃないか。努力されるされないということは別ですよ。努力されても、できない問題じゃないだろうか。あなたのほうが努力しないという意味ではないのですよ。そういう見通しの上に立って今後いろいろな施策を進めていかないと、たいへんなことになるじゃないかということを心配しておるわけです。いやいや、そうでなくて、四十二年で解決する案をつくっている、あるいは四十五年で解決する案をつくっているんだからいいというようなことでは、何にしましても国際収支の赤字なんですから、そう借金ばかりやっているわけにいかぬと思う。そういう甘い見通しを立てておったら、これこそいつかは破産しなくちゃならぬ、そういうことになってくると思うのです。ですから、運輸大臣としては、現時点における展望として、これはとても赤字である、貿易外収支は赤字だ、だからどこかでこれをカバーしてくれるというならば、たとえば輸出のほうをうんとやらなければならないというようなことになってくると思う、話は。それを、いやいや、おれのほうは、貿易外の運賃のほうはこういうことをやっておるので、そのうち解決するので、まあまあ何とかなるということであったら、取り返しがつかないと思う。その辺のところに対する見通しといってはおかしいが、どういう心がまえでやっておみえになるのか、見通しと心がまえについて伺いたい。
  218. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) あなたと私は大体同様な見通しを持っております。それはもうとても、そんなことをしていっておっては、赤字というものは、なかなか克服できる問題ではないと思っております。それはそういう見通しは持っておりますが、それかといって、そのまま置いておくわけにはいきませんので、何としてでも、赤字を克服しようじゃないか、するという手段の一つとして、ただいま申した船腹の増強をまず考えまして、そうして海運の、昨年御賛助を得ました海運の企業整備の二法案による適用をやりまして、海運に力をつけるということ、この二つで一応やっていくつもりでございます。
  219. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 積み取り率は、これはふやすことができるかできないか、OECDとの関係でできるかできないか、これはちょっと見通しはわかりませんが、いままでの折衝の上で非常に困難なのかどうかわかりませんから、この点について話を聞かせてください、その一点だけ。
  220. 綾部健太郎

    ○国務大臣(綾部健太郎君) OECDとの関係といいますよりも、やはり日本の船腹の絶対量が足らぬということが非常に問題でございますから、それをまずやりまして、それから私どもは海運それ自体の力をつけて、各国との競争をやれるような力をつけて、盟外船の跳梁を押え、そうして同盟運賃の強化をはかって当面としてはいく考えでおります。
  221. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、運輸大臣に対する質疑はこの程度にいたしますが、次回の委員会は三月十日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会