○
国務大臣(
田中角榮君) まあ
総理大臣の御
発言でありますから、
総理大臣からお答えをいただくほうが一番誤りがないと思いますが、私が推測してみますと、まあ
総理大臣も——ILO八十七号条約に対しましてはいま御
審議を願っておるわけであります。なお、その他の条項につきましても、
批准をするような
事態が来ることが望ましいという
考え方を持っておることは事実だと思います。そうなるには一体どうなるかというと、
日本の
経済が非常に強くなって、
日本人自体がより合理的な、理想的な生活環境、労働環境その他にならなければだめですと、こういう前提に立って御
発言になっておると思います。
まあこれよりうんとよくなるにはどうするかという問題ですが、
日本が鎖国
経済をやっておってはもう
日本はどうにもならぬということは、明治初年を見ればすぐわかるわけでありますし、
昭和二十年から二十五年までの時代を見れば、もう明らかであります。でありますから、
日本のように原材料を持たない、ただ人的資源を持つだけの特殊な国は、結局外国から原材料を入れて、これに
日本人のいい知恵による加工を加えて、これを逆に輸出する。それによって外貨をかせいで、それが
日本人自体の生活向上をささえておるというのは、これは百年の一歴史が実に如実に物語っておるわけであります。
でありますから、これからいよいよ八条国に
移行する、こういうことになりますと、国内的にもいろいろな問題はありますけれども、大局的に見まして、結局
日本の
経常収支をどうしても黒字にさせなけりゃいかぬということになるわけでありまして、
経常収支の黒字というのは、一番大きな問題は、
貿易を、輸出を大いにやらなきゃいかぬ。輸出をやるにはどうするか。こっちだけは
国内産業の保護があるので、君のほうからは入れられない、おれのほうのやつは全部自由に買えということでは、これは輸出は伸びないわけであります。でありますから、戦後相当なテンポで輸出は伸びてきましたが、これからも大いに伸ばすには、やはり戦前のように自由
貿易という
状態でもって対処しなければならない。しかも、いろいろな国々との間には、そのような鎖国
経済をやっていきましたので、対日差別待遇という問題があるわけであります。でありますから、どうしても対日差別待遇を撤回させなくちゃいけない。
いま、
ガット三十五条の援用の撤回に関する
交渉を続けております。おりますが、これも
一つずつでございます。二国間
交渉をやっておると、何年たっても片づかない問題があります。過去十年間、一国とやっても片づかない。そういう問題がどういうふうに片づくかというと、
IMFとか、それから国際連合における部会とか、
OECDとか、そういうところで
会議をやっているうちに、非常に先進工業国が主になってこれらのいろいろな
国際経済社会に対するいろいろな問題を討議をしますので、話がつけば、一国でもって十年もかかっているものが、ばたばたと話がつく。もう
一つは、国際
流動性の問題、円に対する問題、そしてまた外貨危機等の問題もあるでしょう、長い問題では。そういうような問題に対して、これからやはりお互いが国際的に連帯思想に基づいてやっていかなきゃ、もうより大きな進展は望めない。こういう
事態に立っておるところまでは何びとにも異論がないところであります。でありますから、国際連合に
加盟し、
IMFに
加盟し、ICFTUに
加盟し、あらゆる方面をやることが
日本のためにより合理的だ、こういうことも
考えておるわけでありまして、しかし、対米
貿易だけではどうにもならぬから、ヨーロッパとやれ。低開発国に対してはいろいろなことをやっておりますが、いますぐ外貨が入ってくるわけはない。そうすると、結局先進国同士の
貿易。このごろ急にふえておりますが、どうしてもヨーロッパとの
貿易等をやる。また、ヨーロッパはかつていろいろな国々を支配しておりましたから、それらの未開発、低開発
諸国との間にもつながりがある。
そういう
意味で、
OECDに
加盟をするということが、いかに
日本の輸出振興、
経済復興に対して
威力があるものかということを、ひとつ御理解賜わりたい。