運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-03-04 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月四日(水曜日)    午後一時三十三分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            岡崎 真一君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            鳥畠徳次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            野々山一三君            鈴木 市藏君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房長 谷村  裕君    大蔵省主計局次    長       澄田  智君    大蔵省為替局長    事務代理    鈴木 秀雄君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省園芸局長 酒折 武弘君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件外国為替及び外国貿易管理法及び外  資に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本国会において御審議を願うべく予定いたしております大蔵省関係法律案等は、昭和三十九年度予算に関連するもの十四件を含め、三十三件でありますが、このらち、法律案一件及び承認案件一件につきましては、すでに御審議をいただきましたので、今後、法律案二十七件及び承認案件一件について、当委員会において御審議を願うことになるものと存じております。何とぞよろしくお願いいたします。  なお、この機会に、財政金融政策及び国際経済政策に関する所信の一端を申し述べます。  本年は、わが国が本格的に開放体制移行する年であります。OECD加盟IMF八条国移行等開放体制への移行こそは、日本経済国際経済社会においてさらに大きく発展していくために、みずからが選んだ発展への道であります。しかし、同時に、わが国経済世界経済影響をより直接的に受け、また国際経済上の要請に一段と積極、機敏に応じていかなければならないこととなるのも明らかなところであります。  私は、このような事態に即応し、わが国経済が堅実な発展を続けてまいるためには、日本経済に内在する成長力を、国際経済動向国際収支物価動き等内外の諸要因推移に応じ適切に調整しつつ、社会経済の各部面において所要体質強化を着実に進め、国民経済全体としての生産性をさらに高め、安定的な成長を実現してまいることが肝要であると考えております。  昭和三十九年度予算及び財政投融資計画におきましては、このような見地から、国際収支改善物価の安定を主眼とし、財政が景気に対し刺激的な要因となることを避けるため、健全均衡財政の方針を堅持することといたしております。支出内容におきましても、将来にわたる国力発展基盤充実し、経済部門の均衡ある発展に資するため、農林漁業及び中小企業近代化社会保障充実社会資本整備等重要施策に対しまして、資金を効率的、重点的に配分し、その着実な推進を期しております。また、税制面におきましては、国民負担軽減合理化をはかり、あわせて企業資本充実等所要体質強化を進めるため、中央地方を通じ、平年度二千百八十億円に及ぶ画期的な大幅減税を行なうことといたしております。さらに、財政金融とは一体となって運営さるべきものでありまして、今後の金融政策の運用にあたりましても、財政上の諸施策と相まって、経済安定的成長とその体質強化を期してまいる所存であります。  税制改正のうち、国税関係法案につきましては、いずれ当委員会において御審議を願うこととなりますが、主要な税制改正法案についてその概要を申し述べますと、所得税におきましては、国民生活の安定に資するため、広く基礎控除配偶者控除扶養控除引き上げるとともに、専従者控除及び給与所得控除改正譲渡所得課税適正合理化等所要改正を行なうことといたしております。法人税におきましては、企業経営基盤強化をはかるため、機械設備中心に、固定資産耐用年数を平均一五%程度短縮するとともに、中小企業負担軽減をはかるため、軽減税率適用所得限度額及び同族会社留保所得課税控除額引き上げを行なうことといたしました。さらに、企業国際競争力強化科学技術の振興、企業資本充実等、当面要請される諸施策に即応する特別措置を講ずることといたしております。  そのほか、相続税及び贈与税につきましては、基礎控除引き上げ等措置を講ずることとしており、また、道路整備財源の拡充をはかるため、道路整備計画の改定と見合って、国税としては、揮発油税地方道路税税率をそれぞれ引き上げることといたしております。  なお、関税率につきましては、経済の諸情勢に応じ、所要調整を行なうとともに、とん税及び特別とん税につきましては、国際収支改善に資するため、その税率をそれぞれ引き上げることといたしております。  金融政策につきましては、最近における国際収支推移生産及び物価動向金融機関貸し出し趨勢等に顧み、昨年十二月、日本銀行による準備預金の率の引き上げが行なわれ、さらに、本年一月以降、市中銀行貸し出し額に対する規制も行なわれているのでありまして、企業資金需要及び金融機関貸し出しの増勢は鎮静に向かうものと期待しておりますが、今後とも、経済動向を慎重に見守りながら、機に応じて適切な施策が実施せられ、資金需給調整を通じて経済活動が適正に保たれるよう意を用いてまいる考えであります。  その際、近代化合理化により、新たな発展への道を求めつつある中小企業等の真剣な努力が、これによって阻害されることのないよう、一そう細心の注意をいたしてまいる所存であります。  次に、開放経済への移行に伴い、企業自己資本充実長期安定資金確保必要性はますます強まり、金融及び資本市場重要性は一段と高まってきておりまして、この際、各金融機関に対しましては、国民経済的視野に立った、節度ある融資態度が、また、証券業者に対しましては、経営健全化投資勧誘態度適正化が一そう強く要望される次第でありますが、政府といたしましても、健全金融推進資本市場育成強化について、今後とも細心の配意を加えてまいる所存であります。  わが国は、近くOECDへ正式に加盟し、世界主要先進諸国との協力関係を一そう緊密化するとともに、四月一日を目途とするIMF八条国への移行に伴い、わが国の円は交換可能通貨として広く世界諸国から認められることとなります。このような事態に対処するための努力一環として、わが国がかねて進めてまいりました対外取引自由化につきましては、本年において外貨予算制度廃止渡航制限緩和等を行ない、経常取引に対する為替制限の撤廃を一応終了いたしたいと考えております。  また、国際金融協力につきましては、IMF借り入れ取りきめ参加十カ国蔵相会議の一員として、国際流動性確保のための対策の検討に、今後とも積極的に参加いたしてまいる所存でありますが、関税一括引き下げ、低開発国問題につきましても、これらの動きに積極的に対処しつつ、わが国産業界の実情をも勘案して、今後の関税政策を進めてまいりたいと考えております。  国際収支につきましては、輸出は順調な伸びを示しておりますものの、輸入が、国際商品価格高騰等一時的な要因もさることながら、生産の大幅な上昇から、顕著な増加を見せ、海運その他の貿易外収支における赤字幅の拡大と相まって、経常収支は、昨年年初来、一貫してかなりの逆調を呈するに至っております。政府といたしましては、基本的には、財政金融政策等各般施策において万全を期しつつ、貿易収支均衡回復貿易外収支赤字基調是正につとめてまいるとともに、当面は、国内資本の不足を補い国際収支の波動に対処する準備を手厚くするため、優良な安定外資の秩序ある導入をはかってまいる所存であります。  以上、財政金融政策及び国際経済政策について所信を申し述べました。私は、これらの施策を着実に推進してまいるにおきましては、国民努力にささえられて、わが国経済はますます発展し、より豊かな国民生活が築き上げられるものと確信いたしておるものであります。
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 田中大蔵大臣から所信の御披露がございましたが、これに対する質疑は後日に譲りまして、先刻議題といたしました法律案質疑を直ちに行ないたいと思います。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、ただいま議題になっております対外経済取引に関する二法改正案につきまして、二月十四日の本会議大蔵大臣にもう質問してあるのです。本会議では、時間がたった十五分でしたから十分な質問もできませんでしたし、また答弁答弁しっぱなしですし、非常に簡単でしたから、満足がいく御答弁が得られなかったのです。そこで、この際、大蔵大臣が二月十四日の本会議で私に御答弁されたことをもとにして、突っ込んで御質問をしたいわけです。  二月十四日の本会議で、この法律政府開放経済体制移行するその一環としての法制的な整備である、こういうことが提案理由になっておりましたが、そこで、開放経済体制移行するにあたりまして、従来のこの法律のたてまえは、原則として対外取引全面禁止、例外的な自由、こういうたてまえであったわけです。それが今度は、原則としては自由に、例外的に禁止するというたてまえに変わります。この法律は、全面的禁止、例外的自由というたてまえでつくられておった。ところが、今度たてまえが変わってくるわけですね。たてまえが変わってくるわけで、全面的に自由になり、今度は禁止を例外的にする、こういうたてまえになった。だから、たてまえが変わるのだから、部分的な改正だけでは足りないのではないか、たてまえが変わった以上は、別途新しい対外経済法とか、名前はどうでもいいのですが、そういう新しい法律が必要ではないか、こういう質問をしたのです。それに対して大蔵大臣は、もうすでに九二%の自由化を完成しているわけだ、IMF八条国移行及びOECD加盟実質的要件はほとんど具備しているわけだ、したがって、現在の制度の上では、外貨予算制度廃止とそれに伴う関連条項整備をすれば足りるというふうに考えている、こういう御答弁でございました。  そこで、伺いたいのは、もうすでにIMF八条国移行とか、あるいはOECD加盟実質的要件をほとんど具備している、こういう御認識なんですね。ところが、われわれはそういう認識を持っていない。それで、大蔵大臣だけでなく、総理大臣もそうですし、通産大臣も、この八条国移行とかOECD参加とか、こういうことによって日本経済への影響はたいしてないのだ、こういう御認識ですね。特に労働大臣は、昭和三十五年以来ずっと自由化をやってきているのだ、最初は海外依存度の高い原材料部門自由化してきた、その次には鉄鋼とか国際経済競争力の強い物資を中心として進めてきたから、特殊のものは別として、たいした国内産業への影響はなかった、労働問題への影響はなかった、こう答弁しています。総理も、全解禁に次ぐ重要な措置であるけれども、三、四年前からずっとやってきたのだ、だからたいした影響はないので、これはもう何というか、最後の締めくくりなんだ、こういう考えだ。それから、通産大臣も、何かここで八条国移行は突然変異が起こってせきを切ったようにざあっと影響がすぐに出てくるようなわけじゃないので、いままでなしくずしにずっとやってきているので、もう仕上げなんだ、こういう認識なんですね。  ところが、実際は、もう大蔵大臣も非常によく御存じのとおりに、開放経済体制移行段階になって、非常に日本国際収支なり物価なりその他に不利な経済条件が出てきているわけですね。いわゆる高度経済成長政策ですか、昭和三十六年を過ぎて、そうしてマイナス面が、破綻が出てきている。設備過剰の問題も出てきていますし、あるいは国際収支の問題、消費者物価の値上がり、そういうような問題が出てきている。そういう国内的矛盾が出てきているときに自由化をしなければならない、開放経済体制へ本格的に移行しなければならない、そういう段階にあるので、この実質的要件をほとんど具備していると言いますけれども、逆であって、それは逆なんですよ。実質的条件はむしろ逆の方向に行っている時期に自由化あるいは開放経済に入っていかなければならない、非常なむしろ不利な条件のもとで真の開放経済体制へ入っていくのだ、こういう認識に立たなければいかぬと思うのですよ。したがって、そういう認識に立って影響を云々しなければいけないのであって、いままで影響がたいしてなかったというのは、影響がないものをやってきたのですね。主として原料部門としてはかえって自由化したほうがこれはプラスになるのであって、したがって率先してやったわけですよ。しかし、これから自由化される品目は少ないかもしれぬ、あるいは自由化率としては少ないかもしれないが、今後の自由化されるものについては非常に重大な影響のあるものばかりなんですよ。だから、私の質問に対する答弁は、たいしたことない、たいしたことない、いままでずっとなしくずしにやってきたのだから、その総仕上げであって、たいしたことないという答弁が、みんな、総理も、通産大臣も、農林大臣も、労働大臣もそう。大蔵大臣もそうなんです。しかし、そういう認識でいいのかどうか、その点をまず伺いたいのです。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 木村さんが御質問になられたのが、そのような広範な立場での御質問というふうに理解をしなかったわけであります。外為法の御審議をわずらわすときに、IMF八条国に移行するに際して同協定第八条の義務に抵触をするものがあれば、これは当然改正をしなければならぬわけであります。そういう意味でこの八条国に移行するために整備をしなければならない法制としましては、外貨予算制度を持っておってはならないという規定がございますので、それをまず外為法改正でお願いをするということで、八条国移行に対しては法律上の体制整備をするわけであります。こういう御答弁を申し上げたわけであります。  しかし、広範の体制から考えますと、確かに九二・二%余の自由化が終わっておりますけどれも、残余のものは、これは大体一次産品が主になっておるものでありますけれども、この百七十品目に近いものは八条国移行までには国内体制整備しない、また二国間交渉等でいろいろな問題等もございますので、そういう観点から自由化ができなかったわけでありますので、八条国移行後といえども、これらの自由化に対しましては慎重な配慮をしなければならぬことは、これはもうあなたも申されたとおり言うをまたないところであります。その意味で、八条国移行が四月一日であるからといって、外為法改正というようなこそくな手段ではなく、ひとつ原則自由というような方向各般施策を盛った広範な対外経済法ともいうべきものを制定して八条国に移行したほうがいいじゃないかという御議論に聞こえるわけであります。もちろん、それも一つ考え方でありますし、通産省当局等も当初そのような考え方も持っておったわけでありますが、これは将来の日本国際経済社会に立っていくために、広範な高い立場で慎重に検討しながら、万全を期して必要な体制整備しなければならぬわけであります。一日一時といえどもゆるがせにできない問題であります。そういう状況でありますので、まず八条国移行に対して必要な、同協定の八条の義務に抵触する外貨予算制度というものを廃止いたしまして、八条国に移行し、残余の非自由化品目自由化に対しては格段の配慮をしながら、また法制対外経済法というべきものが必要であるかないか、必要であるとすればそれはどう規定すべきかというような問題に対しては、慎重に対処すべきだという考え方を御答弁申し上げたわけであります。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後の影響をどういうふうにお考えか。たいしたことないという御答弁なんですが、四月一日から八条国に入る。それから、ガットのほうはもうすでに十一条国になっているわけですね。それから、OECD、これはいつごろ、国会批准されればいつごろからOECD参加するのか。それによって現実にどういう影響が出てくるか。まず一つ残存輸入制限品目ですね、これは百八十二品目がまだ残っているというのですが、これは何品目くらいの自由化計画ガットに届けているのか、またそれをどういう段取り自由化していくのか。それから今度は、それは貿易面ですけれども、今度OECD参加した場合、直接投資の問題とか海運の問題、技術契約問題等、これは一番問題になってくると思うのですが、そういう点は一体どうなっていくのか。それから、新聞で伝えられております海外渡航の問題と韓国とのオープンアカウントの問題ですね、これは特別承認事項になるとかいわれておりますが、そういう今後の段取り影響についてお伺いしたいのです。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 八条国に移行いたしますために、残存百八十二品目のうち相当品目自由化しなければならないということはありません。これは九二・二%の自由化が行なわれておりますので、十分八条国移行の資格が整えられておるわけでございます。でありますから、残存百八十二品目の非自由化品目に対しては、国際競争力にたえるというような状態と、また二国間交渉等外国との交渉において自由化できるような体制が整ったものから、順次自由化を進めてまいりたいということでございます。現在百八十二品目の中で十品目くらいは、もう業界自由化をしてもしようがない、たえるんだろうというようなものもあるわけでございますが、しかし、この問題と八条国移行とに直接は関係はないわけでございます。  それから、OECDへの加盟に対しましては、国会批准が済めばできるだけ早い機会加入をいたしたいという考え方をとっているわけでございます。これは一番の問題としては、OECDの第三作業部会等財政金融政策等あらゆる問題が議論されて、もうIMF国連で議論される前に主要国でもって議論しております。日本も現在オブザーバーとして非公式に出席しておるのでありますが、そういう意味で非常に重大な権能を持つものでありますので、OECDに対してはできるだけ早い機会加入したい。また、OECD当局は、初めはなかなか日本加入に対して異論があるようでございましたが、昨年の九月のIMF総会議題になって、十カ国の常設会議等でお互いに話をした結果、非常にスムーズに加入を認めるということで、できれば昨年の十二月初めに行なわれた総会でひとつ入ったらどうかというような気分もあったようでございますが、国会等関係で今日までに至っておるわけでございます。これはいつでも国会批准が済めば加入をいたしたいという考えでございます。OECDにいま加入するということに対してはいろいろな問題がございますけれども、日本が当面必要とする事項に対してはほとんど留保しておるわけでございますので、入って効力はありますが、そのために現実的な問題として非常に日本に大きな影響を持つというような問題に対しては、そう考えないでいいんじゃないか。ただ、海運の問題その他がございますが、これらの問題に対しても、急速に施策を進めて国際競争力にたえるような状態産業別にいたしたいということを考えておるわけでございます。  それから、IMF八条国に移行するに際して特認事項ともいうべき韓国とのオープンアカウントの問題、それから渡航制限問題等でありますが、OECD渡航制限の問題は、一回五百ドルということであります。でありますから、日本も、一年に一回五百ドル、こういう制限を、四月一日から海外渡航自由化をいたそうということでございます。一年一回ということでございますので、これは特認事項になると思います。しかし、これは特認事項になったからいろいろな問題が起きるということではないと思います。できるだけ早い機会金額制限を撤廃されることが好ましいという程度状態特認がされるものだと考えております。  それから、オープンアカウントの問題、これは特別なものでありまして、できるだけ早くやめたいという考え方であります。ところが、日韓間の特殊な事情に基づいて戦後かかる問題が残っておるわけでありますが、これも日韓交渉その他によって前向きに解決ができるような見通しでもありますので、特認事項としてIMF特認してもらえるということであります。かかる変則的なものはなるべくないほうがいいという希望が述べられるというふうに考えられておるわけであります。  でありますから、OECD加盟も、八条国移行も、日本のためには、国際経済社会の中にさおさしていく日本としては、当然こうあるべきだという考えを持っておるのでありまして、これからの段階において、これら二つの国際機関からいろいろな注文がつけられるというような状態にはないわけであります。しかし、国内的な産業体制整備する等の問題に対しては、あらゆる角度から努力をしていくべきだというふうに考えておるわけであります。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このOECDについては問題はたくさんありまして、時間がありませんから、その主たる点について伺っておくのですが、まずOECDは、加入した場合に、拘束力というのはどの程度のものなんですか。それが一つと、もう一つは、この資料によりますと、OECDの諸文書は原則として公表されないたてまえになっているのですね。これはどういうわけでそうなのか。公表されないというと、われわれ審議する場合にそれをすることができないということになるのですが、そういう点について。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) OECDというような機構は、国際情勢の新しい事態に対処して自然発生的に生まれた、必要があって生まれた機関であります。いままでの観念からいうと、非常に新しい時代に対処する高級クラブというようなものであります。高級クラブというようなもの、日本人の在来の観念からいうと、なあにたいしたものじゃないというような気もいたしますが、その実その持つ威力というものはたいへんなものであります。ここで国際的な流動性の問題、それから財政問題、それから貿易経済の問題、そういうものに対して、国際機関で、他のIMFとか国連とかいうような機関でもって発言をする前に、ほとんど主要国が案を練ってしまってそれを押し通すと、相当な威力を持つものであることは事実であります。  入るときは、これはなかなかむずかしい。入るときはたいへんむずかしい条件があるわけでありますが、日本は比較的すんなり、主要工業十カ国として日本が入らぬのはおかしいということで、すんなり入れてくれるという状態まできたわけであります。われわれも、OECDに入ったり第三作業部会に入る場合にはたいへんむずかしいということを聞かされておったし、事実そのような雰囲気であったのでありますが、さあ入るぞといってから、去年の九月からばたばたと入れよう、こういうことにもなったわけであります。その一番大きな問題は、この機会に申し上げておきますと、一つ貿易量が大きいこと、それから低開発国に対して援助の実績があり、将来とも相当援助できるということ、健全財政が貫ける、こういうような大きな問題があるわけです。そういうものに対しては条件整備しておるということで、日本加盟されるということになるわけであります。  これは入ってしまうと満場一致でありまして、これは例をあげていいますと、日本に不利になるような条項をきめようというときには日本が拒否権を発動する。そうすると、その会議の結論は出ない。入るまでは非常にむずかしいけれども、入ってしまうと、一人でも反対があると議決はできない、こういう新しい事態に対処しての新しい機構であります。でありますから、私たちも何とかして入ってしまえばと思っておったわけですが、案外早く門戸を開いてくれましたので、入れば満場一致が原則でございます。でございますので、閣議と同じような、そういうシステムになっているわけですから、日本はこれからの激動する国際社会に対しては、相当大きな権利を得、また地歩を固めることができるということが常識としていえると思うのであります。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 入るまでがたいへんだ、入ってしまうと満場一致だ、だからわりあい自由のように聞こえますが、他面相当な力を持っておるというお話です。  そこで、問題になると思いますのは、OECD加盟国の経済に対して年次審査というのをやることになっておるんですね。それはそうですか。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、お互いに加盟国の経済等に対しては、一つの検査というよりも調査をするということであります。これはIMFの対日コンサルテーションと同じことでございまして、これからは、お互いがそういう国際機関によって、加盟をした場合には、お互いが公平な立場経済財政その他に対して調査をするということは、当然そうなる趨勢であろうと思います。しかし、それによって日本が不当な拘束を受けたり、それから非常に損をするというようなための調査ではないということだけはいえます。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この年次審査ですね、全加盟国代表で構成する経済及び開発審査委員会で行なわれるということになっておるそうですが、そうですか。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そのとおりだそうであります。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、昨年、OECDのこの審査委員会で、フランスに対して、物価抑制の方法として、農産物の流通機構の整備と能率化、それから生産性を上回る賃金上昇率の抑制、こういうことを示唆して、フランスをはじめ物価上昇に悩む欧州各国に、経済政策を進める上で一つの指針を与えたということになっておるんです。この点、ただいま大蔵大臣が言われましたクラブ的なものだけれども、かなり力を持っておる。もちろん満場一致でなければならぬといいますけれどもね。そうなった場合、ここから勧告を受けた場合、かなり日本経済政策と賃金、われわれが問題になるのは、生産性を上回る賃金上昇率の抑制、これはいわゆる所得政策というものですね。ガイド・ライン政策とかいう、OECDで非常に研究しておるんですよ。生産性以上に賃金が上回らぬようにというガイド・ライン政策といわれて、所得政策を研究しておるんです。OECDが専門にやっていますが、そういうことを、OECD加盟したことによってそういう勧告を受ける。そうなると、それは罰則等はないでしょうが、かなり力を持っておる。さっき大蔵大臣言われましたが、それは無視するわけにいかぬことになってくる。そうなると、これは日本の労働運動にとってもずいぶん大きな問題になりますし、労働政策にとって、また日本財政経済政策等についても、自主性等の問題もありますし、これは非常に問題ではないかと思うのです。その点はどういうふうに……。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはクラブみたいなものですから、議論をします。議論はしますけれども、IMFの勧告のように、こういうことをやらないと八条国に移行させませんよというようなものでは絶対ないのであります。でありますから、いま御指摘になられたような事実、フランスに対してそういうことを勧告したというような事実はないようであります。また、これは勧告をするというような正規なものではないのであります。この機関そのものは、代表者を出しておって、いろいろ具体的な、専門的な問題に対して議論をして、国際経済社会に対してどう対処しようという基本的問題をいわゆる議論するわけであります。でありますから、その結果多数決で、日本国際収支がどうもうまくないからこうしなければいかぬとか、どうも春闘でもってあれだからさあこうだ、そんなことは絶対あり得る機関ではありません。また、日本は、そういうことに対しては、いやしくも国内干渉を受けるというような考え方には絶対立っておりませんから、OECD加盟によってそんなことはない。だから、日本に対して入るときに、まあ海運はこうあるべしとか、また資本に対しては、直接投資に対してはどうあるべきだとか、また海外渡航に対してはどうあるべきだというような考え方はございまして、それにも合格をして、批准が終われば入れるのでありますから、入ったら、これはもう判決的なものが出たり、結論が出て、日本経済日本人の行き方が拘束を受けるというようなことは絶対ないのであります。ここにもう入ってしまうと、まあこれからひとつ国連でもってこういう開発会議をやるような場合にどうしようとか、それから十カ国の大蔵大臣会議に出ておるところの国際流動性の問題に対しては、大体ここに加盟しておる国はこういうふうな考えとか、そういう大きな問題に対して議論をするわけでありますから、私は、入れば日本のために大きな利益こそあれ、日本が拘束を受けるというようなことは全然心配しないでよろしいというふうに理解しております。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも、このOECD加盟は、かなり唐突の間に急速に話が進んだ関係上、何か十分にその実態なりなんなり調査されていないのじゃないかと思うのですよ。いま大蔵大臣は勧告なんかないと言っておられたでしょう。ところが、新聞によれば、外務省筋がこれは二月十日明かにしたところによると、OECD事務局は日本加盟実現後日本に対する年次審査を実施して、経済の現状と経済政策に対する勧告を報告書の形式で取りまとめる意向で、その旨パリ駐在大使館を通じて申し入れてきた、こういうことになっているのですよ。勧告がないなんて、ちゃんとあるのですよ。この報告書というのは、対象国の経済情勢の分析と経済政策に対する勧告と二つからなっているのです。それについて、特にアメリカとかイギリス、 フランス、ドイツなんぞ主要国に対するいわゆる勧告を含む報告書は、毎年大きな反響を呼んでいるといわれているのですよ。それで、なるほどクラブ的なものだから、反対すれば反対し得ると言われますが、そういう勧告を受けた場合、それを簡単に無視できますか、実際問題として。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、その記事はこういうところから出ておるわけであります。日本OECD加盟をする意思を表明をしました。その加入条件として、日本に対してOECDから調査団が来たわけであります。その調査団の結果、まあ日本加盟をする、加盟をしてよろしい、加盟に対しては賛成をいたします、大体そのようになったわけであります。でありますから、国会に対して批准をお願いしておるわけであります。でありますから、日本に来ましたときの調査報告書を日本によこす、こういうことであって、これがどういう場合でも日本を拘束をする、少なくともIMF八条国に移行するときのように、これをしなければボイコットしますよとか、これをしなければ出ていきなさい、これをしなかったら制裁をしますよというようなものでは絶対ないのであります。お互いが世界の先進国として、いろいろな問題をここで議論するのでありますから、議論した結果、君のところでこういうものがあるね、こういうものはお互いにこういうところまで前進ができないかというようないろいろな議論はするわけでありますし、結論も出すわけでありますが、これはしょっちゅう勧告の形式をもって出るものであって、少なくともILO事務局から日本に来て勧告をする、そのような拘束力を持つものでは絶対ないということだけは、これは確かであります。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも大蔵大臣認識が少しおかしいですよ。これは加盟実現後となっているのですよ。さっきも質問しましたように、加盟すれば経済及び開発審査委員会によって年次審査を受けるということは、そのとおりだと言われたのですよ。ですから、その点は考え方認識が不十分ですよ、大蔵大臣は。加盟後なんですよ。加盟後この年次審査を受けるのです。そうしてその加盟国の経済情勢の分析と政策に対する勧告からなる報告書というのですね、そういうものが出される。それと関連して、フランスの場合、さっきお話ししたような示唆を受けた、こういうことがあるのですから、そういうことをふまえてやりませんと、何か非常に甘く考えておられるのじゃないか。  それから、もう一つ伺っておきますが、OECD八十二品目ありますね。自由化コードというもので、八十二品目について、資本取引と貿易外取引とありますけれども、聞くところによりますと、話によれば、これは自由クラブみたいなものだから、たいした拘束力はないように言いますけれども、だんだん調べてみると、かなりOECDはこれを厳格に適用しようとしている。そういう傾向にあるということを聞いておるわけですよ。だから、甘く考えて、たいしたことはないと言っていて、入ってみて、日本にプラスになる、プラスになると大蔵大臣は言っておりますけれども、それはもっとプラスの面とマイナスの面を十分に考えていきませんといけないのです。そう簡単なものではないと思うのです。ですから、その二点ですよ。いま申しました加盟後そういう審査を受ける、そういう点と、それから八十二品目自由化コードのうち十七は保留したといわれておるが、自由化義務を負う中で重要なものは直接投資、非常に重要だと思うのですよ。技術契約とか海運問題等かなり厳格に適用するような傾向になってきておる。いままではかなりルーズであったというのですよ。だから、いままで非常にルーズであったということを頭に置いて考えていたのでは、相当違うんじゃないかと思うのです。大蔵大臣、わからなければ事務当局でもいいですよ。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その加入後も調査が行なわれるということは、それはあります。お互いがいろんな問題を討議をしておりますし、年次の統計をつくるためにも、また適切なる資料を入手するためにも、お互い加盟国の経済状態等を調査するということはあるのであります。それは当然お互いがそういうことをやり得る、やり合うということであります。そういうことであります。その結果、日本が拘束を受けるということになるとたいへんでありますが、拘束は受けないのであります。でありますから、そこが全然、国際機関に入って決定をした場合にはその決定に服さなければならぬ、表決をする、表決をして服さない場合には除名をされるとか制裁を受けるというような観念ではないのであります。それは非常に重要な問題を討議をしますし、結論も出しますけれども、その結論を出したものに対しては加盟国が共同をしてそれが実現するように努力をする。その過程において経済調査もありますし、いろいろなこともありますけれども、それが会員国のいろいろな権利を拘束するというようなものでは全然ないのであります。でありますから、国際連合の理事会に入るか入らないかということと同じようであります。この問題は、非常に重要な問題を討議をして、ある程度結論を出して、これを国際場裏において実行するようにやるわけであります。  日本がなぜこれからここへ入るかというと、これから財政金融政策等に対していろいろむずかしい問題が議論されますが、それだけでなく、日本がいままで地域的に非常に遠かったために、ヨーロッパ諸国との貿易を急速に拡大をしたいといっても、取っかかりがないわけであります。非常に大きな時間的なブランクもあった。もう一つは、それだけではなく、低開発国の援助等に対しましても、DAGの機構だけを通じてやっておるよりも、まだOECD加盟諸国とのいろいろなつながりを持った総合調整ができるという問題もあります。それだけではなく、一番いいのは、これに入りますと、どんな問題でも非公開であるというだけに、深刻ないろいろな問題を討議をして、そうしてそれの結論を出すときには全会一致と、こういうことでありますので、二国間交渉等でいろいろな問題を時間をかけて片づけなければならぬ問題でも、OECD加盟をしておる国々の援助、協力、そういうことで相当片づき方が早いというような、いろいろな利点があるのでありまして、OECD加盟をすることによって日本が拘束を受けたり不利益を受けるということであると、これは問題でありますけれども、これはそうでなくIMF加盟をし、国際連合に加盟をし、それからOECDにも加盟をすると、こういうことで、国際的な上級機関といいますか、新しい時代に対処する合理的な機関加盟するわけでありますので、これから日本がいろいろなものに対して非常に損をして、日本の国内政策がゆがめられるというようなことにはならないと考えておるわけであります。
  21. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連して。これは外務委員会じゃないから、私たちも遠慮しいしい聞くわけなんですけれども、そうすると、OECD加盟することによって、日本も何らそれに対する義務というものはないわけなんです。ということは、逆にいえば、権利もないと、こういうことになるわけなんです。それじゃ、権利があるなら、ぼくは、逆にいえば、義務があるじゃないかと、こういうふうに考える。そこで、いま木村委員発言が、逆にいえば、日本が受諾せなければならない義務になると、そういうものが全部で三百三十二項目あると、それに対して日本の国は十六、七項目のものを留保しているのだということはわかるけれども、その項目はどれだけあるかわかりませんので、われわれはどうも雲をつかむような気がしているのですが、その辺はどうなんですか。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはあなたが言ったとおりでして、いわゆるOECDに入りますときには、OECDのコードにひっかかるものはみな、われわれは体制を整えまして、あとは海運の問題、それから技術提携の問題、直接投資の問題とか、そういう問題に対しては留保しているわけであります。留保をして、その状態において加盟が承認をされると、こういうことでありますので、留保しておりますものが、海運の二カ年というようなものに対しては、二カ年が切れれば自由化をしなければならぬという態勢にはなりますが、そういうことで、入るまでに条件を具備をして入ってしまえば、いろいろな問題に対して同じ立場でもって、同じ権利で討議ができる、決定に参画できると、こういうことでありますので、入るまではいいかげんに、安直に入るけれども、入ってからたいへんな責めを負うのだ、義務を果たさなければいかぬのだというような問題ではないのであります。
  23. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はここにちょっとした資料を持っているのですが、「日本政府による経済協力開発機構の加盟国の義務の受諾に関する同機構と日本政府との間の了解覚書」これの注を見ますと、一九六三年七月二十六日パリで署名したと、それに対してこういうことはやめるんだということが書かれてあるわけなんです。このやめるということは、私はわかるわけなんです。そこで、いま木村委員発言されておるようなことに対して、ここにも、「バターの市場の状況に関する理事会の決議」とありますから、これはバターの市場の調査だろうと思うのです。それは日本の国はやっては困るということを免責条項にしてあるのです。ところが、日本の国のたとえば外貨の問題等の問題について調査があるということは、そういうものに対して、かりに留保しておらないと調査があると思うのです。調査があれば、それに対して何らかの答えが出される。それがすなわち勧告ということになる、ということになれば、その勧告に従わなければならない義務があるのかないのかと、こう言っておる。それに対して、何も義務はないのだということになるなら、これまたおかしな話になるが、そこら辺のところがちょっとわかりかねるわけです。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際機関でありますから、勧告はありそうなものだと、こういうふうにみておりますが、そこがさっき私が申し上げたとおり、新しい時代に対処してつくられた新しい機構、ざっくばらんにいうと、高級なクラブのようなものでありますと、こう申し上げておるわけであります。でありますから、お互いが自由世界の中に対処しながら共通の利益を守っていこうと、こういう観点に立った機構でありますから、だから、いろいろな面に対して調査もしますし、報告書もつくるでありましょう。でありますが、これが普通の国際機関のように拘束力を持つものであるというように考える必要は何もない。また、加盟条件に、これから報告したものに対しては、採択したものに対しては、これは絶対にやらなければならないというような制度上の義務は何もないわけであります。  しかも、もしいろいろなものをよしんばきめると仮定した場合どうなるかと。これはほかの機関と違って、高級なるクラブ組織でありますから、入った、全会一致、全員が賛成をしないと国際強制力を持つようなものはできないのだということでありますので、ほかの国際機関とは全然違って、入ると、日本人の発言日本政府の持つウエートというものが非常に強くなって、それがIMFとか国際連合とか、あらゆる国際機関で議論をするときにたいへん役に立つと、こういうことを申し上げておるわけです。
  25. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、長期傭船契約は日本は五カ年を主張したわけです。それに対して向こうは、自由でなくちゃならないと。石炭は一年ですか、石油は二年ですか、妥協案ができた。そうすると、そこら辺のところは、何も義務がないということなら、そんなところで妥協しなくてもいいような気がするわけです。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 簡単な話です。入るときの条件なんです。OECDのコードにひっかかればいけませんということなんです、それは入るときには。入ってしまうと、全会一致ですから、だれでも入ってきまして、みんな反対だと言ったら、この会談はないにひとしいものになるわけであります。でありますから、入るときには条件はうるさいのです。非常にその条件がうるさくて、その条件を具備した場合入るから、その条件を具備するという仮定において、いま留保をするものは留保をしまして、それでよかろう、しかし海運等に対しては二年間でもって、もう二年間しか留保は許さないぞ、こういうことで、入学試験と同じことで、入学してしまえば悪いことをしない者は退学はしないということになって、入学をする前はいろいろな条件を出されて、その条件を満たして批准さえすれば入学できると、こういう次第になっておるわけであります。
  27. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は関連質問ですから、納得しませんけれども……。
  28. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 木村さんの関連質問ですけれども、いま大蔵大臣は、勧告があっても、満場一致制で、日本が入っていればどうということはないのだ、そのままになってしまうのだというようなことを言われましたけれども、六三年の九月にOECDがフランスに対して年次審査を行なって、フランスではコストインフレが起きているから、賃金が高いから、コストインフレを押えるべきであるという勧告がなされた事実、ご存じでしょうか。この勧告を、フランス政府はこのコストインフレの抑制を拒否して、一般的な金融引き締めによってやるのだということで拒否しているという事実が六三年の九月にあるわけです。そういう年次審査を受けて、その勧告が行なわれても、拒否するということは、満場一致制で事前に行なわれなかったということの証拠じゃないかと思いますけれども、これとの関係は、さっきのあなたの満場一致とどういうことになるのか。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは仮定論で悪いと思いますが、ちょうど大蔵委員会で、私も入れてひとつこういうことをやったほうがいいなということを話をして、そのときには私自身も承知をして、こうしていま勧告書なら勧告書みたいなもので、もちろんその結果直したほうがいいというときには、日本の代表もフランスの代表も、そういう勧告書を出そうということに対しては賛成をしておるわけであります。これは主権を侵すものではない。フランス政府が勧告をけ飛ばすということ、一向何ら差しつかえない話であります。ですから、フランス政府の代表が入っておって、こういう勧告書を出すことは絶対反対であると、こういう議論がもしありとすれば、その勧告書は出ないような仕組みになっているのであります。OECDは確かに、すべてのものに対して満場一致制でやっていこう、こういう高級クラブ式なもので、新しい組織であるから、大いに検討しよう、大いに調査して勉強するけれども、すべては満場一致制度をとろうと、こういう基本に立っておるのでありますから、フランスにそういう勧告が出たとしたら、フランスの代表が賛成をするということは、いいでしょうと、こういうことがあったことは事実であります。それをフランスが拒否をするかしないかということは、フランス政府の独自の問題であって、ここらは、OECDの中でフランスが拒否をしたにもかかわらず、フランス代表の意見をいれないでフランス政府に勧告が行なわれ、フランスが拒否をしたということではないのであります。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、一番心配になるのは、ことに満場一致ということでしょうけれども、OECDで、さっき言ったように、所得政策を専門的に研究しているんですよ。日本も最近は大体そのほうに傾斜してきているわけですよ。そうなれば、向こうでそういう勧告があれば、これは喜んで応ずるという可能性が出てくるんですよ。そういう点をあれしてるんですが、大蔵大臣、懇切丁寧に答弁していただいて恐縮ですが、なるべく簡潔に。こちらから答弁を求めてそういうことを言うのは、はなはだ失礼なんですけれども、実は時間がないものですから、その点ひとつ悪く思わないでください。  日本に対する審査は、おそらく六月ころまでには開かれるという新聞報道なんですよ。それなのに、さっきのお話だと、審査というのを受けるんだか受けないんだか、あまりそこのところがはっきりしなかったんですが、ひとつ明確に、事務当局のほうでけっこうですから。
  31. 鈴木秀雄

    政府委員鈴木秀雄君) OECD加盟いたしますれば、年次審査というものは各国ともやっております。それの資料を集めるために、ことに新しく入りました日本でございますから、相当いろんなデータを調べるという必要もあるので、だれかが来るということは今後もあると思います。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 六月ごろ、そのころですか、大体。
  33. 鈴木秀雄

    政府委員鈴木秀雄君) 日はまだ確定をしておりません。というのは、OECDに入るか入らないかという批准の問題がまだ固まっておりませんが、あるいはそのころに来るということも考えられます。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題は、まだもっと深めなきゃならないと思うんです。非常に疑問の点もございますし、さっきの成瀬委員もよく研究されているようですが、十分もっとこの点については、拘束力等の点については、もっとはっきりさせないと、われわれ承認する場合に非常にあとに疑点が残っていけませんから、この点についてあとでまた十分ほかの委員からも突っ込んでいただくようにしまして、次の私は質問に移ります。  IMF八条国に移行をいたしますと、御承知のように、OECDのほうは、これはやめようとすればやめることもできるんではないかと思うんです。しかしIMF十四条国から八条国に移った場合は、あと戻りはできないですね。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 特認をとらなければ十四条国に戻ることはできないということでございます。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それだけに、この措置は非常に重要性を持っていると思う。もちろん、いままでなしくずしにやってきて、一挙に、せきを切るように、突然変異みたいに八条国に移って、それで影響が出てくるというものではないですけれども、今後都合が悪いからといって、イージー・リーズンで、つまり国際収支を理由として為替制限等ができなくなる。もう背水の陣ですよ。ですから、これは非常に歴史的に重要なものだということになるわけですね。そこで、今後はそういう外貨割り当て等によって、外貨予算等によって直接統制できない。今後はそういう貿易調整とか、あるいは貿易外、あるいは資本取引等につきまして、資本取引のほうはOECD関係でしょうけれども、間接統制よりほかにないと思うんです。財政金融政策というものが非常に大きなウエートを持ってくると思うんです。  そこで、先ほど大蔵大臣が、三十九年度の予算編成にあたって、景気を刺激しないように伸び率については前年度より緊縮的な予算を組んだ、組んだと言われているんですよ。ところが、景気刺激的であるかないかというのは何を見たらわかるんですか。一般会計だけ見て言うのか、特別会計も含めているのか、財政投融資も含めるのか、地方財政も含めるのか。常識からいいまして、これはみなひっくるめて考えるべきじゃないかと思う。さしあたり、政府が出されております経済見通しの、政府の財貨・サービス購入、これは一つの判断の基礎になるのではないかと思うのです。一般会計だけで三十八年度は一七・四%、三十九年度は一四・二%、伸び率が少ないから景気刺激的でないと、こう言われないと思う。その点、何をもって景気刺激であるとかないとかと言われるのですか。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政金融は表裏一体となって慎重に運営せられるということで、八条国移行に対して対処しなければならないという考え方をとっているわけであります。いままでの御議論としては、一般会計も財投もふくらんでいる、こういうこともいわれているわけであります。しかし、あなたが言われたとおり、総体的に考えますときに、特別会計その他地方財政も入れて、一体この程度でいいのかという御議論が展開されるということに対しては理解できるわけであります。しかし、政府がいま御審議をお願いしております一般会計につきましては、一般会計は一四・二%では大きい、こういう御議論に対しては、いろいろ長い過去の対前年度に比べまして、そう高いことはないということを申し上げているわけであります。同時に、財政金融というものが、ほんとうに表裏一体となって運営せらるべきだということも申し上げております。もう一つは、財政の持つ固有な使命というものが、戦後日本が短い時間においてここまで復興してきた日本の実情から見ますと、財政を急激に縮小できるような状態にないし、また、現在のような予算を組んでいくことによって、日本自由化に対処できる、国際競争力が培養できるという観点に立っているわけでありますので、現在の状態では、一般会計、財政投融資等すべてを否めて、まあ適正——ということが悪ければ、まあまあだれがやっても大体この程度のものだろうという感触を持っているわけであります。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなたよりのない御答弁じゃ困るのですよ。地方財政と一般会計を寄せて、そうして重複勘定——交付税、補助金を差し引いた純計で見ますと、三十八年度の膨張率は一五・九%です。三十九年度は一六・八%ですよ。地方財政はものすごい膨張なんですよ。そういう見方をしなければならないじゃないですか。それから、国民生産国民総支出、経済企画庁の出しました政府の財貨・サービス購入、これを見ますと、三十八年度の伸びが一六・一%、三十九年度の伸びが一一・二%になって、伸びが少なくなっている。政府はこれから判断して、三十九年度は三十八年度より財貨・サービス購入の増加率は少ない。つまり三十八年度は一六・一%の伸び、三十九年度は一・二%の伸びですよ。ですから、前年度より財貨・サービス購入は少いじゃないか、これも一つの根拠になると思うのですが、どうですか。これは中央・地方財政両方を含んでいる。景気の刺激的であるとかないとかということは、ただ一般会計だけで、あるいは財投だけを見たのでは、これは正しくない、金融は別ですよ。地方財政についてもあなたは言われているのですから、その点はどうなんですか。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) おおむね地方財政は少し膨張し過ぎておるというような感じもありますけれども……。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少しじゃないですよ。一二・五は二〇%です。少しどころじゃありませんよ。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方財政昭和三十八年に比べて急速に大きくなっておるわけであります。一般会計、地方財政を見ますと、御説のようないろいろな議論がありますけれども、この地方財政も一般会計も、財投もそうでありますが、歳出要求が非常に多い。また、そうすることによって将来の安定的な経済成長が築けるのだという非常な戦後の特殊な状態がありますので、私は、その在来のような数字をもってだけ、国際収支の問題、物価問題等に対処して、特に八条国移行に対して相当な引き締め政策をとらなきゃならないというその引き締め政策というものの中の限度というものは、やはり政府がいま御審議を願っておるという程度のもので妥当なものだというふうに考えておるわけであります。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、景気刺激的でないという指標として、衆議院、参議院でいつも、三十八年度の財政の膨張率は一七・四だ、三十九年度は一四・二だ、膨張率が減っているのだと、財投については三十八年度は二二・四、三十九年が二〇・八だから減っているんだと、だから景気刺激的でないと、こう言っているのですよ。私は予算の規模が大きいのはいけないとか、悪いとかいう議論ではないのです。とにかく政府はそう説明しているからですよ。その説明の根拠を聞いているのですよ。それだけじゃいけないんじゃないか。地方財政も含めて、とにかく政府の財貨及びサービス購入は、中央、地方を含めて、特別会計も含んでですよ、全体を含んでですよ。何でこれで説明されないのかと言うのですよ。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一般会計においては三十八年一七・四、三十九年が一四・二、財投でもって三十八年が二二・四が三十九年で二〇・八、地方財政において三十八年の一五・三が一九・二、政府の財貨・サービス購入は三十八年が一四・〇、三十九年が一一・二というような数字であります。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一四・じゃなくて一六・でしょう。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一四・〇。いまの数字、私はあとで調べてお答えいたしますが、このような数字が出てきた、わけであります。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 事務当局はちゃんと調べて答えなければいけませんよ。一六・一じゃないですか。われわれのほうの数字はこれですよ。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十八年は一四・〇……。いま調べてお答えいたします。
  48. 澄田智

    政府委員(澄田智君) ただいま大臣が一四・〇と申し上げましたのは、去年の一月に閣議決定をいたしましたときのそのときの伸び率であります。ほかの一般会計、財投、地方財政、いずれもその年の当初におきましてその年の見積もりを立てまして、そしてそれに対してどのくらいの伸び率であるかというのをいつも出しておりますので、当初ベースで毎年その年に比較をする、こういうことでもって去年の例をとって申し上げました。一般会計の一七・四に当たるものを求むれば、それは一四・〇と、こういうことになります。おっしゃっておりますのは、一六・のほうは、収訂いたしまして実績を見直したものが一六・と、こういうことだと思います。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、どういうんですか。それで、この数字をもとにしていうと、どういうことになりますか。
  50. 澄田智

    政府委員(澄田智君) したがいまして、ただいま大臣から申し上げましたように、地方財政計画を除きますと、ほかの指標はいずれも伸び率が昨年より減っておる、こういう形になります。そうして地方財政を加えました純計をとりましてみますと、これはいろいろその間に重複がございますので、それを差し引かなければなりませんが、それをとりまして国民生産と比較いたしますと、三十八年度の当初、当初の見積もりの段階、先ほど申しましたこの場合は政府財貨・サービスの購入は一四・〇%の伸びになっておりましたが、これを加えた昨年三十八年度の純計の総計は国民生産に対して三七・九%、こういうことになります。これに対しまして本年は、全部加えました純計、一般会計、特別会計、財投、地方財政、これ全部加えました純計は三六・八%、国民生産に対して三六・八%、一・一%ばかりやはり低くなる、こういうことでございます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃないですよ。なぜ、われわれに出したこれで説明できないんですか。国会審議のためにこれ出しているんじゃないですか、この経済見通しは。これですよ。三十八年度の経済見通しです。これが最後に閣議で了承されたあれでしょう。これに基づいてなぜ説明できないんですか。内輪の説明を聞いているんじゃないですよ。
  52. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 比較をいたします場合には、同じ基準で比較いたしませんと比較になりませんので、そこで先ほど、一般会計でいつも申し上げておりますような昨年は一七・四、ことしは一四・二と、こういう伸び率と、これと同じことをいたしますためには、三十八年度につきましては、その三十八年度のちょうどいまごろ国会に提出いたしましたこういう表でございますね、これの数字を並べませんと、予算と同じベースになりませんので、そういう意味で申し上げましたので、いささか混同を招くような申し上げ方をして、その点は恐縮でございますが、こちらの、いまのお手元のほうに載っております三十七対三十八のほうは、これは三十八が実績が出てまいりまして、その実績でもって計算をいたしますと三八でございます。したがいまして、同じベースで比較をするために、私は前年当初の数字を申し上げたわけでございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとね、三十八年と七年との比較は、これは実績及び実績見通し、それから三十九年と三十八年の一一・二は、三十八年が実績、三十九年が当初、そういうことですか。
  54. 澄田智

    政府委員(澄田智君) そういうことになります。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで比較になりますか。当初・当初で比較したらどういうふうになりますか。当初・当初で。実績と当初じゃ、しょうがないです。
  56. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 当初・当初で三十九年を比較いたしますと、したがって、それは昨年のいまごろ見通しておりました三十八年度の政府財貨・サービス購入の金額といまの金額とを比較いたしますと、一一・二になりませんで一七・九ということになります。しかし、三十八年も同様に三十七年の当初に比べてやはりそういう比較をいたさなければならないと、そうなります。そういたしますと、先ほど私が一四・〇と申し上げましたのが二三・一になりまして、もれも非常に違っている。結局、実績は非常に高くなっている、こういうことでございまして、分母が非常に大きくなってまいりますので、伸び率が、その実績と見通しと当初と比べますと、常に低くなっていると、こういうことでございます。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、なぜこういうような出し方をするんですか。これですと、三十七年はこれは実績と実績見通し。ところが、三十九年と三十八年は一七・九でしょう。これだけ見れば三十九年のほうが膨張しているんですよ。伸び率が大きいんですよ。それなら、なぜこいつも当初・当初で出さないんですか。当初・当初でこれ出せば誤解がないんですよ。なぜ出さないんですか。こういう比較で比較したって、比較にならぬじゃないですか。全然意味がない。しかも、さっきお話しのように、地方財政をひっくるめれば、これはいろいろな重複勘定とか、あるいは実際に財貨・サービス購入にならない振りかえ所得とか、その他いろいろ差っ引いて計算されるのでしょうけれども、景気刺激的じゃないないと言うけれども、一応、一般会計、財投、特別会計も、これは純計で、これは財政法二十八条によって出している純計がありますけれども、ああいうもので計算し、地方財政を加えれば、これはどうしたって膨張しますよ。膨張しないのがおかしいですよ。だから、景気刺激的であるかないか、ただ大蔵大臣は一般会計と財投だけで言っておったわけですが、それだけでなく、地方財政計画、あの段階では出てきていないわけですよ。だから、無理もないと思うのです、あの段階では。二月に入って地方財政計画出てきたのですから。地方財政計画を見ますると、三十八年が一二・六%の伸びに対して、三十九年は二〇・五ですよ、ぼくの計算では。ものすごい膨張なんですよ。しかも、財政規模はあまり変わらないのですよ。これは交付税と補助金も入れれば、大体あまり変わらないのですけれどもね。そうすると、景気刺激的であるかないかということを議論する場合、それは大蔵大臣は簡単に一般会計と財投だけ比較して言っていますけれども、どうも私は決してこの予算は景気刺激的でないとは言えないのではないか、こう思うのですよ。その点いかがですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ専門家であるあなたが言われることですから……。しかし、その議論ではなく、いままでの御質問が、一般会計一四・二%前年対比伸びておると政府は言うけれども、特別会計に移したもの等を入れれば一五・一%にもなるじゃないか、これでは非常に財政刺激的だと、こういう御質問でありましたから、一般会計の規模に対してはいろいろ御説明を申し上げて、財投も二〇・八%もふえておれば非常に大きいじゃないか、こういうふうに指定をされて御質問がございましたので、財投もいやもう昨年は二二・何%が二〇・何%になりました、こういうお答えをしたわけでありまして、時間があって、あなたのように御専門的に総括的に御質問になれば、まあ私もそのような状態でお答えをしたわけであります。  しかし、そこまで言いますと一つ議論が起きてくるわけでありますが、まあ財政演説、総理の施政方針演説でも申しましたとおり、一般財政及び金融が一体化して、少なくとも八条国移行というような時期に対して、財政がより刺激的であってはならぬということに配慮いたしまして編成いたしました、こう申し上げておる。しかし、財政は、いま予算委員会で申し上げておるとおり、固有の使命を持っておるのであります。でありますから、非常に不景気等が続いてやむを得ないというような場合に、財政でもって、かつて昭年六、七年に匡救土木工事というような制度を起こさなければならなかったというようなこともありますし、アメリカがTVAのようないわゆる思い切った財政投資をすることによって景気の浮揚力をつけようというようなことが、長期的にはあります。ありますが、財政というものは固有の使命を持っておりまして、まあ景気を刺激というよりも、特別な観点から財政に対しては御批判もしていただきたい。なかなかうんとつめるような状態予算を組めるかというと、この間組みかえ動議にもありましたとおり、ほとんどの議論が財政支出が足りない、こういうような現実であります。これにやはり財政は対処していかなければならないという特別な使命を持っておりますので、まあその間の事情もひとつ十分お考えの上御理解賜わりたい。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題はまた予算委員会でやることにいたしましょう。  それで、もう私の持ち時間はあまりございませんので、今度直接法案に即した質問をいたしますが、この改正によって外貨予算制度がなくなるわけですね。外貨予算制度がなくなります。そうしますと、これからの外為の運用はどうなるのか。外貨予算制度がなくなっても——外貨予算制度はなくなるわけですね、この法律改正によりまして。それから外貨割り当てをやった閣僚審議会というものもなくなるわけですね。しかしながら、まだFA制は残っているわけですよ。それからAFA制というものも残っているわけです。そのほうはどうなるのですか。閣僚審議会等はなくなる、外貨予算制度もなくなる、しかしFA制はまだ残っている、AFA制も残っている、その場合はどうするのですか。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 閣僚審議会はまあ廃止をいたしますが、しかし、産業政策、通商政策等の見地から輸入規制を行なう必要もあるわけであります。そういう場合は、通産大臣が検討いたしまして関係各大臣と十分連絡をとって、誤りなきを期する。いわゆる数量制限というような面に対しては、非自由化品目に対しては適切な処置がやれるわけであります。IMFの八条国移行に対しては、制度外貨予算制度を持っていてはならない、閣僚審議会というようなものもいかぬ、こういうことでありますので、これを廃止いたしますが、国内産業に対しての保護育成ということも十分考えなければいけませんので、この法律改正後もしかるべく非自由化品目に対しては措置ができるという考え方であります。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どういう根拠においてできるわけですか。この法律には何にも書いてないですね。しかし、実際問題としてまだFAが残るのですよ。AFAも残るわけですよ。ことにAFAの場合はFA——外貨割り当て以上に、輸入の申請があった場合はそれをふやし得るというのがAFAですね。ですから、それをむやみにふやせない。やっぱり予算がなければならぬですよ。だから、外貨割り当て制度がなくなった、外貨割り当てを扱っていた閣僚審議会もなくなった。しかしながら、やはりそういうFAが残っている以上、AFAが残っている以上、外貨予算的なものがなければならぬ。また、それがかってに大蔵大臣の裁量によって、おれの選挙区から頼まれてきたから、ではおれがつけてやろうとか、それから有力者が来たからつけてやろうというようなことでやることはできないでしょう。やはりある制度的にその割り当て等につきましてはきちんとしておかなければならぬわけですよ。それは法律に何にもないですよ。これを、外貨予算がなくなり、閣僚審議会がなくなったら、どういうふうに運用するのか。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御説の問題につきましては、外貨予算制度はなくなりますし、また閣僚審議会もなくなるわけでありますが、非自由化品目に対する問題については、通産大臣が主になりまして関係閣僚でもって十分打ち合わせをして誤りなきを期すようになっておるわけです。法律では五十二条に「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため、貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがある。」、こういうことになって、政令で規定するということになっておるわけであります。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは五十二条ですね。これはいままでと「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため」というところだけを変えるわけで、前は「外国為替予算の範囲内で最も有利且つ有効な貨物の輸入を図るため」、こうであったのを変えるわけですね。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうです。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは輸入承認義務ですね。「政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがある。」というけれども、その政令には外貨割り当ての仕方についての制度的な取りきめが何かなくちゃ、ただ大蔵大臣関係大臣と話し合いをすればいい。それできめていくのですか。なくなったとはいえ、外貨予算制度がなくなったとはいえ、実態としてはFA制が残っている以上はあるわけですよ、実態は。それをいいかげんと言っては何ですが、それを見つくろいしてやるようなものではいけない。ちゃんとやはり割り当てについては、これはいろいろな問題を、世間でも疑惑を持たれるのですよ。いままででさえそうなんですよ。たとえば砂糧の問題について、某砂糧会社にうんと割り当てがあったんで非常に大きくなったとか、これが自民党の政治資金のあれになるのだとか、いろいろなうわさがある。そういううわさがある。これはうわさですけれども、これは外貨予算制度がなくなり、閣僚審議会がなくなっても、FA制がある。これがどのくらい占めるか、まだかなりの部分を占めると思う。AFA制なり、AF制なり、これは全体の輸入の中でどのくらいの比率を占めるのか、またその手続について政令でどういう手続にするのか、これはきちんとやはりしておかなければいかぬと思う。
  66. 鈴木秀雄

    政府委員鈴木秀雄君) 現在の五十二条では「外国為替予算の範囲内で最も有利且つ有効な貨物の輸入を図るため」と申しますのは、いわゆる輸入外割り制というやり方をとっておる。すべて資金を先に割り当てて、その結果資金を割り当てた人が輸入できる。これはいまIMFの八条によります経常取引に対する支払いの為替制限である、こういう解釈に立つわけであります。ですから、私は観点を変えて申しますと、今後はそういった資金の外貨でもって統制するのではなくて、本質的には自動車が年間百台なら百台というようなことで、数量を主としてものを考えて、それをそのワクの中でもって輸入制限をするということでございまして、木村委員の仰せられましたように、外貨予算という総括的なものはできないわけでございますが、一つ品目についての輸入見積もりというものは、通産大臣が主となりまして関係大臣の協議のもとにきめる。その割り当ての範囲で運用をしていく、こういうことになるわけでございます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いいです。それは。あまりこまかく質問すると、実際にまた外貨割り当て予算制度が残っているような印象を与えるといけませんから、大体了解しました、その程度で。  ただ、その次に伺いたいのは、外為会計の資産の運用について若干お伺いします。この運用の実態について、ことに三十九年度の運用の実態については、大体調査してわかったんですけれども、そこで問題点を承りたいのです。運用の収入の見込み額が三十九年度百六十八億円。この運用はアメリカのドルの定期預金とか、あるいはアメリカの財務証券償還益とか、そういうもので平均利回りは三分八厘とかいうように承っていますが、これに対して今度は借り入れ金のほうの支払いですね、外貨を買うために円資金が必要であって、その円資金の借り入れ、これは外為証券を発行するわけですが、三十九年度二千五百九十三億、この利息が大体五分八厘、そうなるとこの場合逆ざやになる。アメリカには定期預金あるいは財務証券の運用利回りを三分八厘で預けておいて、そうして外為会計が外貨を買う場合日銀から外為資金を借りる場合は五分八厘で借りている。そうしますと、その利息が約百五十億、ほとんどまあとんとんのような状態です。これをカバーしているのはインベントリー、前にインベントリー・ファイナンスをやりましたが、国民から税金を取って、それが外為会計に入っているわけですが、それと国庫余裕金、それからなっている。これは大体わかっていた。  ところで、問題なのは、大蔵大臣もよく御承知のように、インベントリーの取りくずしの問題がしょっちゅう起こる。インベントリーは大体千億ちょっとこえたくらいあるといわれている。インベントリーは取りくずしますと、これは赤字になるでしょう。たいへんな赤字になると思うのですよ、なりませんかね。だから、その問題との関連ですよ。こういう逆ざやの運用をしていていいのか、それが一つと、アメリカの銀行に三分八厘で貸しておりながら、日本の銀行はまたアメリカの銀行から借りている。それは三分八厘以上だと思う、借り入れは。そうしますと、われわれしろうとから考えますと、日本のドル資金をアメリカに三分八厘で貸してやって、日本の銀行が自分が三分八厘で貸したものを、またそれをこっちでそれ以上の金利で借りると、こういう関係が出てくるんじゃないか。この点について、前に総理大臣にも質問したときに、この点は十分検討しなければならぬというので、改善をする必要があるということを言われておった、前に。前に赤字が出たことがある。外為会計は赤字が出たことがある。それを赤字が出たときに、なぜ赤字が出たかとぼくが質問したら、こういう問題が明らかになった。これは何か非常に、ぼくは、普通の人が見たら割り切れない運用のしかたじゃないかと思うのですが、どうなんですか、この点は。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 専門家である木村先生が言われるのだから、十分検討いたしますが、検討しましても、なかなかいい知恵が出ないわけであります。こういう会計というのは、大体こういう性格を持っておるということであります。これはもう輸銀でも、輸出振興のためになると思えば、どうしても一般会計から繰り入れなければ低利なものがなかなか出ないということと同じことで、外貨など一体必要なのかどらかという問題までさかのぼって議論しなければならぬわけであります。金にしておく場合はどらかというと、金は国際金水準が上がれば別でありますが、そうでなければ利息はつかない。いま、ちょうど日本国内で歩積み、両建てというような、いろいろな議論がありますけれども、財務証券を持ったり、預金をしたりすることによって、国際金融市場においては非常に日本の信用が上昇しておるのでありますから、この外為会計だけの運用利回りだけではなく、やはり外貨の持つ国の利益ということも計算に入れなければならないわけでありまして、非常にむずかしい問題だと思います。しかし、総理も御発言になっておるわけでありますから、何かこれ、いい、外為会計はかくあるべしというような御議論がもしあれば、十分尊重しながら、できるだけ検討いたしたいと思います。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ずいぶんもう前なんですよ。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) むずかしいのです、実際。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二、三年前のことなんですから、もう検討されていなければならないと思うのですけれども、あまり基本的なものになると、私もしろうとですからわかりませんけれども、とにかく常識から考えておかしいと思う、どうも。国民が納得いくような形に直す必要があるんではないか。こんなにアメリカさんにたくさんドルを預けていながら、こんなにアメリカにひどい仕打ち、中には利子平衡税をやられる。それは大蔵大臣、ずいぶん心外じゃありませんか。こういう問題も経済会議で持ち出して、あなたこれでも利子平衡税かけるのですか、こんなにあなたのほらに有利になっているじゃないかと言う必要もあると思うのですけれども、時間もございませんから、もう一つ低開発国に対する援助の問題をOECDと関連して質問したいのですが、野々山さんがあと質問されることになっておりますから、私はまたこの点について質問する機会もあると思いますので、私の質問はこれで終わります。
  72. 野々山一三

    野々山一三君 時間がないので、大づかみな話を伺いたい。この間OECD問題についてわが党の岡田宗司氏が本会議質問をいたした際に、総理大臣は非常に簡単な、言い方をしておるので、あなたにきょうはその中身について伺いたい。それは、私が申し上げたいのは、いわゆる経済開放体制というものを進め、自由化が進み、OECD加盟をしていくならば、総理答弁によれば、今後日本OECD加盟いたしまして、経済がだんだん上昇していくならば、問題のILO条約二十六号の最低賃金に関する条約というようなものも批准できるのです、こういうふうに言っている。私が指摘したいのは、日本経済の高度成長というものは、大ざっぱにいって三つの要因に基づいてささえられている。一つは、何といっても大資本に対する特別な保護措置金融・税制・財政上の保護措置、こういうものが高度成長一つの柱になっている。もう一つは、ことばは悪いのですけれども、極端なチープ・レーバーというものにささえられていることは国際的にしょっちゅう指摘されている。第三は、日本の産業構造の一つのネックになっておるいわゆる中小企業、ことに、しかも大企業に独占的に支配されている、大企業のもとにおける中小企業というものによってささえられている。そこで、これからさらに一歩進んだ経済開放体制というものを進めるというのが政府考え方なのです。その一環としてOECD加盟することができるならば、問題になっておるILO条約二十六号、最低賃金制という条約も自然に批准できる状態ができるのである、こう言われるのでありますから、前向きに言うならば、非常に大きな期待を持っていいのじゃないか。一体その総理が言うOECD加盟が、即、日本経済を上昇さして、これほど問題になっているILOの二十六号条約というものを批准可能ならしめるような経済体制はどこにできてくるのか、どういう具体的な効果があらわれてくるか、OECD加盟することによって、という質問であります。  で、いま木村先生の質問にあなたお答えになって、都合の悪いことは、何も日本はそれによって拘束されるはずはないと言うけれども、はずがない日本OECD加盟という、そのOECD加盟することによってこれほど政府がきらっておる最賃制などという条約がどうして批准できるのか。そこまでの道程を経済閣僚としてのあなたの答弁をお願いいたしたい。これは非常に大きな問題ですから、あなたの答弁によって私は別な機会にすぐ、総理直接にお答えになった問題ですから、総理の出席を求めて答弁を聞きたい。これは決定的な日本経済のネックになっております。そういう問題でありますから、そういう意味でひとつお答えを願いたい。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ総理大臣の御発言でありますから、総理大臣からお答えをいただくほうが一番誤りがないと思いますが、私が推測してみますと、まあ総理大臣も——ILO八十七号条約に対しましてはいま御審議を願っておるわけであります。なお、その他の条項につきましても、批准をするような事態が来ることが望ましいという考え方を持っておることは事実だと思います。そうなるには一体どうなるかというと、日本経済が非常に強くなって、日本人自体がより合理的な、理想的な生活環境、労働環境その他にならなければだめですと、こういう前提に立って御発言になっておると思います。  まあこれよりうんとよくなるにはどうするかという問題ですが、日本が鎖国経済をやっておってはもう日本はどうにもならぬということは、明治初年を見ればすぐわかるわけでありますし、昭和二十年から二十五年までの時代を見れば、もう明らかであります。でありますから、日本のように原材料を持たない、ただ人的資源を持つだけの特殊な国は、結局外国から原材料を入れて、これに日本人のいい知恵による加工を加えて、これを逆に輸出する。それによって外貨をかせいで、それが日本人自体の生活向上をささえておるというのは、これは百年の一歴史が実に如実に物語っておるわけであります。  でありますから、これからいよいよ八条国に移行する、こういうことになりますと、国内的にもいろいろな問題はありますけれども、大局的に見まして、結局日本経常収支をどうしても黒字にさせなけりゃいかぬということになるわけでありまして、経常収支の黒字というのは、一番大きな問題は、貿易を、輸出を大いにやらなきゃいかぬ。輸出をやるにはどうするか。こっちだけは国内産業の保護があるので、君のほうからは入れられない、おれのほうのやつは全部自由に買えということでは、これは輸出は伸びないわけであります。でありますから、戦後相当なテンポで輸出は伸びてきましたが、これからも大いに伸ばすには、やはり戦前のように自由貿易という状態でもって対処しなければならない。しかも、いろいろな国々との間には、そのような鎖国経済をやっていきましたので、対日差別待遇という問題があるわけであります。でありますから、どうしても対日差別待遇を撤回させなくちゃいけない。  いま、ガット三十五条の援用の撤回に関する交渉を続けております。おりますが、これも一つずつでございます。二国間交渉をやっておると、何年たっても片づかない問題があります。過去十年間、一国とやっても片づかない。そういう問題がどういうふうに片づくかというと、IMFとか、それから国際連合における部会とか、OECDとか、そういうところで会議をやっているうちに、非常に先進工業国が主になってこれらのいろいろな国際経済社会に対するいろいろな問題を討議をしますので、話がつけば、一国でもって十年もかかっているものが、ばたばたと話がつく。もう一つは、国際流動性の問題、円に対する問題、そしてまた外貨危機等の問題もあるでしょう、長い問題では。そういうような問題に対して、これからやはりお互いが国際的に連帯思想に基づいてやっていかなきゃ、もうより大きな進展は望めない。こういう事態に立っておるところまでは何びとにも異論がないところであります。でありますから、国際連合に加盟し、IMF加盟し、ICFTUに加盟し、あらゆる方面をやることが日本のためにより合理的だ、こういうことも考えておるわけでありまして、しかし、対米貿易だけではどうにもならぬから、ヨーロッパとやれ。低開発国に対してはいろいろなことをやっておりますが、いますぐ外貨が入ってくるわけはない。そうすると、結局先進国同士の貿易。このごろ急にふえておりますが、どうしてもヨーロッパとの貿易等をやる。また、ヨーロッパはかつていろいろな国々を支配しておりましたから、それらの未開発、低開発諸国との間にもつながりがある。  そういう意味で、OECD加盟をするということが、いかに日本の輸出振興、経済復興に対して威力があるものかということを、ひとつ御理解賜わりたい。
  74. 野々山一三

    野々山一三君 これはどうも始めたらとたんにやめろということで、次に機会を持ってくれるならいいが、ただ、もう一つだけ言っておきますが、いま私の質問は一般的に言ったけれども、具体的のものについて聞いておるのは、総理は、OECD加盟することによって、ILO条約二十六号が批准できるようになりますと言った。これは抽象論ではないので、具体的なことについて、あなたがだめなら、前に労働次官をやっていた斎藤さんがおるから、斎藤さんから答えるようにしてもらいたい。  それから、もう一つのことは、この一九五九年にICFTUの世界大会の経済社会問題委員会では、日本の、このたとえばILO条約二十六号あるいは八十七号、こういったものが批准されない状態がこれ以上続くならば、ICFTUとしては、世界の労働者に対して、ボイコットをするということを決議している。これは斎藤さんが次官の時代であるから、斎藤さんがよく知っている。それに加えて、昨年七月にICFTUの書記長のベター発言というものは、それをさらに前向きにICFTUの意思として、日本OECD加盟するにあたっての態度を表明したわけです。先ほど来の木村先生の質問にあなたがお答えになっている言い方は、加盟にあたってはいろいろな条件をつけられておるのでむずかしい、しかし、というわけです。世界じゅうの労働者を代表する者がそういう発言をしておる。そこへもってきて、この間大平外務大臣が、八十七号の批准がおくれるという事態日本経済的に国際社会において完全に孤立することで、国際信用を失墜することである、こういうふうに明言したのです。このこととOECD加盟というものは非常に結びついた問題で、重大な問題だと私は思う。それに対しても、いまの前の問題は非常に熱心に答えてくれたが、抽象的な希望的観測を述べたにすぎない。総理の意見は非常に具体的な答弁です。これと結びつけてひとつあなたの考え方を聞きたい。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 総理大臣発言でありますから、私がお答えをすることはどうかということを先ほど申し上げたわけでありますが、総理大臣は少し舌足らずであったと思います。その間にOECD加盟等によってだんだん日本の国力が上がってきて、そうしてILOの諸条約もぜひひとつ批准できるようにという前向きの立場を申し述べたと思いますので、その間の事情はひとつ御了解賜わりたいと思います。なお、専門的な問題は、斎藤政務次官がおりますから、お答えいたさせます。
  76. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 野々山委員に申し上げますが、大蔵大臣に対するあなたの御質問は、次の大蔵大臣の御出席のときにさらに御質問を願いたいと思うのです。いま予算委員会から呼んできておりますので、大体、お約束の時間になりますので、大蔵大臣予算委員会のほうにお帰り願うことを御了承願いたいと思います。
  77. 野々山一三

    野々山一三君 委員長がおっしゃったことは、この法案が上がるまでに、さらにそういう機会を与えるというふうに私は了解しておきたいのですが。
  78. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) そういうふうにおとりくださってけっこうです。  ちょっと速記をとめて。   〔午後三時二十四分速記中止〕   〔午後三時四十一分速記開始〕
  79. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。  農林大臣がお見えになりましたので、農林大臣に対する御質疑を願います。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 農林大臣も御承知のように、IMF十四条国から八条国へ移行するわけでして、いわゆる本格的な自由化段階に入ったということになる。その場合に、いろいろ広範に影響が出てくると思うのですが、二月の十四日に本会議で私が質問したときに、この自由化ないしはOECD等に加盟して開放経済体制移行していくのだが、いままで昭和三十五年ごろからなしくずし的にずっと自由化をやってきているのであるから、一挙にせきをここではずすように、影響が突然変異的に起こってくるものではない、たいした影響はないということを、総理も、通産大臣も、労働大臣も、大蔵大臣も一様に述べておられる。しかし、私は、そんな簡単なものではないのだ。農林大臣は御承知のように、最初は日本海外依存度の大きい原料品なんかの輸入自由化、これを最初やってきた。これは日本にとってプラスですから、その後製品段階での鉄鋼等海外競争力のあるものをどんどん自由化して、最後に九二・二%まで自由化し、百八十二品目残っているわけです。しかし、これから自由化するものについては、日本経済にとって非常に大きな影響のあるものが多いわけです。特にその中で農産物についてはかなり影響が大きいのではないか。  それで、大体諸外国の例を見ても、農産品の非自由化品目、従来からウエーバーというのがあって、フランスが七十から八十品目くらいの農産品の非自由化品目があると聞いております。イタリアが十七、イギリスが二十ないし三十、西独が四十七、これは新聞で見たのですから正確じゃないかと思いますが、間違っていたら御訂正願いたいと思います。  そこで、どうも農林省は、諸外国が農産品についてはかなり多くの非自由化品目を温存しているので、日本の場合もそうたいした影響がないのではないか、かなりウエーバー等で認められるのじゃないかと、こういうふうに楽観をしていたのではないかというふうに思われるのですが、今後どの程度ガット残存輸入品目として農産品については提出しておるのか、そうしてどういう段取り自由化をされていかれるのか、どういう影響があるのか。この間の本会議、二月十四日の本会議質問はたった十五分ですから、じゅうぶんな質問ができなかったのですが、そういう点等についてまずお伺いいたしたいのです。
  81. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにいまお話のように、農産物の非自由化品目というものが米麦を除いて七十三ほどございます。そうしてまた七十三の品目が、いまのお話のように、いままでのような原料品と違って、国際的に競争場裏に立つ品目が多くだんだんなってきております。でありますので、農産物の自由化につきましては、先ごろ本会議で申し上げましたように、相当慎重に取り扱わなくちゃならないと、こう思っておるわけでございますが、ガット会議などでもなかなかウエーバーを取りつけるということが困難な面が相当あると思います。しかし、いまお話しのように、諸外国でも残存輸入制限として残しておる農産物品目が相当あるのでございます。私どもといたしましても、ガットのたてまえから輸入制限を行なうことは本来できないのでございますけれども、いま諸外国、先進国等におきましても残存輸入制限が行なわれておる実情でございますので、農産物につきましては、各国の要請によって残存輸入制限に関する協議、二十三条でございましたか、二十二条ですか、二十二条の協議を行なっていきたい。その協議の過程におきまして、日本の農業の実態、ことに日本の農産物が国際的に見まするならば相当コスト高になっておるわけであります。自由競争裏にさらされることは、非常にまあ農山漁業にとって苦しいことに追い込まれる傾向が相当進んできて、協議をしていきたい、こう思っております。  その品目のうちで、米麦等でございますが、これは御承知のように、国家貿易として取り扱われておりますので、残存輸入制限品目には該当しない、こういうふうに私ども理解しております。これも各国の協議となし得る場合もありましょうけれども、その場合におきましても、米麦に関しては、日本としては需給算定によって輸入を行なっておるので、特に制限的に輸入を行なっていない旨をよく納得させる、こういうふうに思っております。  その他の品目等につきましても、この間申し上げましたように、国内的には関税定率の面、あるいはまた財政的な面の裏づけといいますか、そういうものを行なって、あるいはそれと同時に自由化方向へ持っていく、こういうことが大事であるというふうに考えて、そういうふうに進めていきたいと、こう考えております。  結論的に申し上げますと、いまお話しのように、楽観しているといいますか、漫然としているというわけではございませんが、いろいろな対策を講じながらやっていくというつもりでございます。そういう意味におきまして、全体として慎重に自由化を扱っていかなければならない、こういう態度でおります。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、七十六品目というのは、ガットに対する残存輸入制限品目の中には入っていないわけですか、自由化計画としてそれを除外しているわけですか。
  83. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 米麦を除いて七十三品目になっています、残存自由化品目
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは全体の百八十二残存輸入品目がある、そのうち農産品が七十三、そういうことですね。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) さようでございます。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは新聞で見たんですが、農林省は、開放経済への移行に伴う農林水産物の自由化に対するプログラムを作成して、大体三月末までに最終案をまとめて、経済企画庁とか通産だとか、関係各省庁と意見を進めたい意向だ、こういうことが伝えられて、その基本構想というのが新聞に出ているのですが、そういう段取りになっているのですか。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま自由化をやろうという品目は、消費者物価対策からいろいろピックアップして、これはどうだろう、あれはどうだろうというふうな協議を受けておるわけでございます。全体としてのどういう段取りでいくかということは、まだ煮詰まっておりません。ただ、大きい問題は、米麦とかあるいは酪農製品、でん粉、こういうものの自由化は、これは相当期間困難であるし、これはちょっと手をつけるべきものじゃない、こういう方針はきめておりますが、その他こまかい品目等につきましては、消費者物価対策からいろいろこの品目自由化したらどうかという協議を経済企画庁やなんかから受けております。全体として、まだ順序だとかそういうものについてのスケジュールといいますか、プランはまだ煮詰まっておりません。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。そうすると、新聞では大体の基本構想として四つのグループに分ける。それで一つは、ガットの規定によって自由化する義務を負わないもの、これは御承知のように、何条だかで国防上とか、それから専売的なものとか、あるいは衛生上とか、そういうことでこれは自由化しなくてもいいというのがございますね。それと、それから自由化困難なもの、それから近い将来一、二年の間に自由化するものと、四月から自由化すると、四つのグループに大体整理する、そういう基本構想を大体まとめたと。もちろん、これが固まったようには書いてないのですが、各省ともまだ意見調整をやるということは書いておるのですけれども、大体そういうような段取りで基本構想は進んでいるかどうか。
  89. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いつか、いまお話しのように、日本経済でしたか、新聞に大きく取り上げられておったのを私も見ました。考えている面で、先ほど申し上げましたように、まだ煮詰まっているとか、作業中でございますから結論が出ていないのでございますけれども、その中で合っている面もあるし合っていない面も——事務当局などで調べますと、合っている面、合っていない面等があると、こういうことを言っています。しかし、そういう選定とかいろいろな分類等も、どういうふうにして分類していったほうがいいか、その分類のワクへどういうものを入れていったらいいか、そういう整理等も実はいま作業中でございます。作業中の問題として、合っている面もあるし合っていない面なとも——新聞記事で見ると非常に見通しのいい記者が書いたような点もあるように事務当局から私は聞いております。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、すでに農産品で自由化されたもの、バナナとか、それから干しブドウですか、ああいうものによってかなり農家に影響を与えている。たとえばリンゴとか、それから山梨のブドウとか、われわれしょっちゅう聞くわけですよ。それから、最近伝えられるところによりますと、アメリカの何かフルーツ会社が日本で見本の展覧会ですかを開かれる。私はしろうとですからそういう専門の人から聞いたのですが、ことにジュースなんかで、ジュースはまだ自由化されていないそうですが、アメリカの場合は木からすぐとった新鮮なくだものをジュースにするので、非常に日本の場合より値段も安いし味もいい。日本の場合は、大体ミカンならミカンの悪くなったようなものをジュースにする、だから、いいものは、新鮮なものはミカンのまま市場へ出していくということで、もしジュースが自由化されるならば、かなり大きな影響があるだろう。それから、いろいろなフルーツについても、もしそういうアメリカのフルーツ会社がそういうものを持ってくることになったら、すでにバナナとかあるいは干しブドウ等によって影響を受けているのですから、選択的拡大等いろいろ農業構造改善事業をやっておりますけれども、非常に影響が大きいと見られるのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  91. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにバナナ等がリンゴの価格に影響しているということをいわれておりますので、あえて否定しようとは思いませんけれども、これは一面非常にリンゴのほうの増産があったというウエートのほうが大きいと思うのですが、一一四%くらいの増産でございますから、そういう影響のほうが大きいと私は見ています。それから、どうしても自由化した当時は、せきを切ったように一時どっと入ります。バナナ等も相当一時入りましたが、戦前に比較しますと、戦前ほどには入っていないように統計上出ておりますが、やっぱりいまのところくらいが頭打ちでないかというふうに思っておりますが、影響が必ずしもないとは申し上げられないと思います。あるいはまた干しブドウ等につきまして、これを醸造用に使う、こういう面などもありまして、そういう面からの抗議といいますかも来ておりますので、そういう面におきましての対策といいますか、行政的な指導等もいたしまして、現にブドウ等の栽培農家に影響をごく少なくするようにつとめております。あるいはまた、生産面等につきましての指導等もいたしておるわけでありますが、全然影響ないとは申しませんが、いままでのところは、財政的な措置とかあるいは関税率関係等で調整しながら、幾分影響を多く受けたもの、少ないもの等はあるといたしましても、対策を講じてまいってきたわけでございます。これからもそういう意味におきまして、農産物の自由化は私は慎重に扱うべきものだという原則に立って、ほかの関係筋とも協議をいたしておるのでございますが、同時に、自由化する場合には措置と並行してやらなければならない、こういう方針で進めておるのであります。同時にまた、生産性の向上といいますか、そういう面も農政として進めていきたい、こういう措置とにらみ合わせながら自由化をする場合にはしていくという、こういうような方針で進めておる次第でございます。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この低開発国の第一次産品につきまして、今後特に米麦なんかは非常に影響があると思うのですけれども、そういうことを低開発国から要求される可能性があるのかどうか。これは非常に今後重要な問題ではないか。ガット段階でも、国連段階でも、そういうことが問題になっておるようですけれども、こういう点についてはどういうふうに、これはかなり将来の問題でしょうけれども、お考えになり、対処しようとしておられるのか。
  93. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 低開発国等からわが国に輸出する品目につきまして、いろいろ要請がございます。米麦等にはありませんけれども、一次産品としてコーヒーとか、ココア、茶、バナナ、油脂及びその原料、熱帯産の木材、こういう熱帯産品が中心として、後進国が関税、消費税とかあるいは数量を多く入れろ、こういう、要請を受けておりますが、これは非常にこれから問題となると思いますが、ガットにおきましても、ガットの第三委員会でございますかにおきましてこういう問題を全般的に検討されております。後進国として国際貿易の拡大をはかるため、ガット等にも実行計画を提出して、昨年ですか、大臣会議がありましたときに、そういう問題につきまして一つの合意に達している面がございます。これによりますと、熱帯産品については早急に無税輸入を実現すべきこととされておりますけれども、わが国の場合、紅茶、バナナ、油脂等に問題が残されております。また、ガットばかりでなく、近く国連貿易開発会議が開かれますが、そこにおきましても、後進国貿易の問題が広く取り上げられる、こういう予想でございます。  非常に注目をいたしておるのでございますが、この後進国、低開発国の一次産品貿易拡大の要請に対しまして、わが国といたしましては、これら諸国の現状とわが国の置かれておる国際環境を考慮すれば、できるだけ前向きの姿勢で解決に努力する必要があるものとは考えられますけれども、低開発国の輸出する一次産品の中にはわが国農産物と競合するものがありますので、農林省といたしましては、できるだけ悪影響を生ぜしめないよう対処していく別意を持ちながら検討を進めておる次第でございます。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府の農業基本法に基づく農業構造改善事業というのは、一つの大きなねらいは、やはり自由化体制あるいは開放経済体制下における農業の安定、農業について海外との競争力を強めていく、そういうことが一つの大きなねらいになっていると思うのですが、そうでございますか。
  95. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにそうでございます。二つの点があろうと思います。農業と他産業との生産性の格差、所得の格差をなくしていくという意味におきまして、構造改善によって体質を改善していく。もう一つは、いまのように国際場裏にほうり出される日本の農産物は、いまのままではコスト高で競争力にたえ得ない。それがだんだん自由化して農産物が入ってくるということになるというと、そういう生産がつぶれていく。こういうことになりますので、体質を改善していくその一つの方法として、農業構造改善を推し進めていく。おっしゃるとおりでございます。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これに対して池田総理が前にも、総選挙のときも言われましたが、これまでの高度経済成長政策は大企業に偏して農業なり中小企業を立ちおくれさした、また農業と他産業との格差も非常に拡大してしまった、そこでこれから革命的な、画期的な近代化合理化をする、そういうことを言われた。そうしてその趣旨は、どうもその後国会等質疑を通じて説明されたところでは、やはり物価対策の一つとして、立ちおくれた中小企業あるいは農業の生産性を高めることによってコストを下げて低物価政策の一環としていく、こういう構想に立っているように見えるのですよ、総理考え方は。そっちのほうにかなりウエートがあるようにわれわれは受け取っているわけです。物価対策の一つとして、立ちおくれた農業の生産性を高めることによって農産物の価格を下げる。全体の物価対策の有力な一翼にしていく。その場合、どうも池田総理の言われている革命的な近代化合理化ということは、全体の中小企業あるいは農業について生産性を高めていく、こういうふうに受け取られるわけです。  そうなると、たとえ予算のつけ方にしましても、三十九年度の一般会計予算あるいは財政投融資等を見まして、それにしてはあまりに少な過ぎるじゃないかという批判があるわけです。予算の〇・七%ぐらいですかね、この農業近代化のための予算は。七十億ぐらいふえましたけれども、〇・七%程度。そういう批判があるわけですよね。この点がぼくは、先ほど農林大臣が言われた農業構造改善事業のねらいは、格差をなくすことが一つと、もう一つ自由化に対処するための合理化近代化。これは再編成ですよね、農業の。そっちのほうに重点を、ウエートを置いて農林当局は考えられているのじゃないかと思うのです。ですから、そういう観点からすると、この予算については、かなり重点的にこの予算をつけるということになると思うのです。ところが、池田総理のどうも考えが、もっと全体的に物価対策の一つとして農業の生産性を高めるという考え方だと、かなり総花的に、一般的にこの農業の生産性を高めるのだ。だから、予算ももっとより多くなければならないような感じがするのですよ。ところが、実際は革命的といわれるほどの予算はついていない。もちろん、これは総理は、すぐにやるわけじゃないんで、かなり長期的に段階を経てやるのだからという御答弁だったけれども、しかし、その底にはやはり食い違いがあるのじゃないかと思うのです。どうも私は、農林当局の考えておられるのは、格差解消と、それから自由化に対処するための農業の再編成ということが重点になっているように思うのですが、その点はどうも総理の言われる考え、これは中小企業についても同じだと思うのですよ、農業だけでなく。だから、これはまた通産省の人にひとつ聞いてみなければなりませんが、中小企業については中小企業基本法によるやはり自由化に対処するための合理化近代化というところに重点が置かれていると思うのです。農業のほうもやはり自由化に対処するための革命的近代化合理化というのも一つの大きなウエートになっている。この点はまあ微妙なところですけれども、ウエートの置き方ですね。ニュアンスの違いというのですか、しかしそれは、予算なんかをつける場合には、非常に違いが出てくると思うのですね。そういう点、ひとつ伺っておきたいのですがね。
  97. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 少し、総理のほうが低物価というような観点だとすれば、私のほうとニュアンスが違うのでございます。私のほうとしては、いまの他産業、あるいは国際的な自由化、こういう問題に対処して体質を改善していかなければならない。いままで戦後、まあ私どものほうからいえば、農村の犠牲とはいえませんが、農村の基盤の上に立って日本経済成長してきた。もちろん、それは為替、貿易等のことによりますけれども、それから日本の食糧が安定した、それから日本の食糧の輸入というものが少なくなった、こういうところから工業方面の機械の輸入とか、そういう方面の金も回ってきて、そしてこの経済成長したのだから——成長した。今度は、農村は国際的な波の中に投げ込まれたが、国際競争力が弱い。しかし、その波に入らなければならぬと。そういうことになれば、どうしても農山漁村の体質を強化していくと、こういうことにならなければならぬというような基本的な考え方でございます。  でございますので、予算のつけ方等につきましても、私のほうといたしましては、近代化、まあ機械を使って——人も少なくなってきておるのだから、機械も相当使っていかなきゃ農民の軍労働からの解放もできないではないか。あるいは、選択的な拡大というようなことが、収入の面におきましても、米麦ばかりでなくほかの収入も得ないと、終始継続的に収入が得られない。一年に一回だけの収入というようなことでは、これは困るじゃないかというようなことで、選択的拡大という方向に行くということにすれば、その方向へ行くのについても、基盤がそれだけに整っていないじゃないか。たとえば機械化するだけの、土地がよく集団化しておったり、広がっておらないじゃないか。あるいは畜産を進める場合のも、草地の造成だとかが非常におくれているじゃないか。だから、基盤のほうに予算を相当つけたらいいじゃないかということで、補助の整理、その他土地改良等で七百八十億くらいでしょうか、それくらいの金をつけていく。  それからまた、いまお話がありました構造改善、こういうのも四百地区指定することになっておりますが、これにつきましても、いろいろ直さなければならぬ面もございますし、いままでやっておって、こういう点を改めろという要望等にも応じなければなりませんが、これにも予算あるいは単独融資のワクをふやしていく。同時にまた、今度は流通価格対策で、一般の低物価ということも考えなければならぬ。生産性向上もしなければならぬと同時に、やはり価格支持対策というものをしていきませんと、自由化に対しましてもやっていけない。こういう面で、価格対策もそういう面でひとつ実はやっていかなければなりません。  また、金融面で、財政予算だけではなく、金融面を拡大してやっていかなければならぬということで、実は私のほうといたしましては、いまお話しのような国際的な農業ということに対しての体質を改善していく。そういう面に予算も、いままでの土地改良を質的に改善する、そういう方面へ向くような、そういうことがやっていけるような土地改良とか、こういうところに力を入れる。こういうことで予算を、いま御審議願っている予算などもそういう考え方予算をつけている。そういう方針でやってきた次第でございます。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は農業のほうは専門じゃないのですけれども、専門の人に聞きますと、農業構造改善事業は、その後実施に移してみると、なかなか方針どおりにいかぬと。特にこれは予算委員会等でも問題になりましたが、離農したりあるいは脱農ですか、土地を手放す人が少ない。これは非常に問題だと思うのですけれども、結局土地を手放して都市にかせぎに行く場合に、たとえばはっきり、工場に行った場合なら本工として雇われるなり、生活の保障が十分でない。ないから、おやじさんは働いて、食いぶちぐらいは奥さんが、あるいはおじいちゃんとかおばあちゃんにやらせている。  これは刈谷市ですか、愛知県の豊田を中心に、前に調査された方から伺ったのですが、これは近藤康男先生から前にお聞きしたことがある。あそこがいい例だ。あの辺では豊田に農家の人がずっと働きに来るけれども、木工として雇われる人は非常に少ないのだそうですね。そうして臨時工とか社外工とか、そういう形ですから、十分な所得がない。どうしても奥さんに土地を耕させる、あるいはおじいさん、おばあさんというように。なかなか土地を手放さない。  そういう状態であるから、二町五反の農業だけでやっていく自立農家を百万戸育成することは、なかなか非常に困難ではないか。きょうの予算委員会で、羽生氏も質問されましたが、そういうことがあって、政府では大体土地改良のほうに重点を今後移しつつあるのじゃないか、こういうことをいわれているのですが、その点はどうなんですか。
  99. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いまのお話のような状態で、なかなか経常面積の拡大ということが困難でございます。御承知のように、兼業農家、いまのようにおやじさんが工場で働いて、奥さんが農業をやっていくということでないと、暮らしもよくやっていけない。でありますので、これは二つの面を考えなければならぬと思うのですが、一つの面は、やはりいまの臨時工みたいに雇用の安定がないものですから、どうしても土地を放すわけにはいかない、こういう面がございます。ですから、雇用の面が非常に安定化していけば、そのほうだけで専念するという人が相当出てくると思います。それからもう一つは、農業を振り切れないといいますか、やはり農業に戻りたいという考えでやっているものもございます。そういう人々に対しては、やはり協同化といいますか、共同作業等によりましてやっていくように指導してといいますか、それができるような裏づけをしてやりたい、こう考えております。  それから、一方において、もう一つは、いまの二町五反という目標を持っているのでございますけれども、二町五反層はある程度ふえております。ふえておりますけれども、なかなか二町五反の層が四十五年までに百万戸できるということは非常にむずかしい段階だと思います。もちろん、農地法なども御承知のように改正いたしまして、自分でやるならば、前には面積の制限がありましたが、しかし、制限をもう撤廃して、どれだけでも取得してもいい、どれだけ経営してもよろしいということ等に道は開きましたが、現実にその方面に進んでおりません。取得資金なども相当出しておるのでございますけれども、手放す人が少ない、こういうことでございますので、思うような面に進んでおりません。進んでおりませんが、やはり実態としては、経営面積が多い、こういうもののほうがいわゆる近代化もできまするし、所得もいいというようなことになりますので、その方面に進んでいきたい。  そこで、土地改良という問題でございますが、土地改良に重点を置くといいますが、私は、先ほど申し上げましたように、土地改良そのものが、経営面積などが広がるように、あるいは選択的拡大といってやっている畜産等に自給飼料などが調達できるような草地造成をする方向を農家の経営の拡大の方向に向けていく。ですから、土地改良法なども御審議を願うことになっておりますが、従来、国営の土地改良等おききましては、たとえばかんがい排水で、用排水の大きい面だけをやる、その下をまた県営でやる、団体営で区画整理をやるというようなことで、上から下まで一貫しておりません。今度の土地改良法などでは、一貫させるように、すなわち区画整理、換地処分までやるということになれば、土地改良区におきまして経営面積の拡大ということも、土地改良に伴ってでき得ることもありますし、また、集団化する、換地処分のときに一ところにまとめてやっていく、これは共同化にも非常に貢献するのでございますので、土地改良に力を入れておりますが、土地改良に力を入れていくことも、実は構造改善的な体質改善といいますか、そういう方向へ、よく近代化近代化といっておりますが、近代化がされるような方向への土地改良の重点化といいますか、そういう面を考えて土地改良も進めたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは社会主義国でも、農林大臣御承知のように、重化学工業を急速に進めますと、必ず農業の問題が立ちおくれて問題になる。かなり計画的にやっている社会主義国でさえそうなんですよ。日本の場合に、しろうと考えなんですけれども、高度経済成長政策で重化学工業に非常に重点を置いてやりましたね。そのために農業とのバランスが非常に深まったと思うんですよ。それで、これは将来私は非常に重大な問題を引き起こすのではないかというように思われてしようがないのですね。ですから、もちろん、この高度成長政策が行き過ぎたから、今度は農業なり、中小企業、立ちおくれた方面に今度は革命的な近代化なり合理化をやるというふうな方向をここで調整するようになってはきていますけれどもね。しかし、その問題意識としてどの程度、ちょうど社会主義国が重化学工業を重視し過ぎる結果農業に隘路が必ず出てくると同じようなことが日本にも起こっているような気がするんです。そういう点、農林大臣のお感じですね、私はこれは重大な問題じゃないか。農業とのバランスを考えないで重化学工業のほうが独走したと思うんですが、この調整というものは非常に長期にかかる、そういうやはり農林当局も問題意識をやはりお持ちにもちろんなっているんじゃないかと思うんですけれども、ちょっとしろうと考えかもしれませんが、どうもそういう感じがしてしようがないのです。社会主義国さえそうなんです。  この自由原則のもとでやってまいりますと、今後、農林大臣御承知のように、労働力につきましても、みんな若い人はどんどん都市へ出る。この間秋田へ行きましたが、ぼくは三ちゃん農業ということを聞いていましたら、三ちゃん農業でないんですね。おとうさん、おかあさんも出かせぎに行くというのですね。秋田の人口は毎月減っているんです。おじいさん・孫さん農業というようなことを聞いたわけですよ。そういうことですと、これはたいへんなことになってくるのではないかと思うんですが、そういう点についてどういうふうにお考えですか。
  101. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに、重化学工業に重点を置き過ぎて、この速度が速いという場合に、これと農業とのバランスがとれなくて、あるいは生産面等において非常に減収というか、減るということが出てくると思います。いまの労働力の問題、もしくは、また一面においては、こういう機会に変貌する農村がいい方面に変貌するということもあろうと思うのでございます。決して私は、そのいま言った農業人口というものを追い出すとか、首切りとかいうことは、これは考えるべきことではないと思いますけれども、世界各国を見ましても、やはり一〇%ぐらいの農業者でその国の食糧等をまかなっている。こういうふうな状況になるのに、三十年とかあるいは五十年とか百年というふうにかかっているのでございます。いまの日本の急速な農業就業人口の減というものが、そういう面で近代化を進めるきっかけとなるという面もありますけれども、非常に農業が危殆に瀕するというような面もあろうと思います。やはりそういう面を慎重に考えて、この変貌を何かいい方面に向けていかなくちゃならぬ、こういうような考えのもとに農政全体として進めておるわけでございますけれども、長年にわたって諸外国で解決された問題を、あまり急速に解決するということになりまするというと、それに対する何といいますか、傷といいますか、痛みといいますか、そういうものの傷の深さが出てくるというふうに考えています。非常に慎重に、しかしまたこの変貌をいい面に引きずっていくといいますか、そういうことが必要である、こういうふうに考えております。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 重化学工業がほとんど独走的に、急スピードで発展さした、そういうもとで農工間のアンバランスが出てきている上に、自由化ということを迎えるわけですが、事態は私は農業にとって非常に重要ではないかと思うのですが、これは予算委員会で羽生三七氏の質問に対する御答弁があったのですが、自由化対策の一環ですか。あるいは所得格差是正の一環として、不足払い制度ですか。イギリスでやっておりますね。これについては事務当局に調査を命ずるというお話でしたが、われわれも物価対策の一環として、物価対策のいろいろ研究やったときに、大内力氏あたりからも、イギリスでこれをやっていて、物価対策の一環としてそういうことが必要ではないかという御提案もあったのです。そういうことを聞いておりましたので、これは実行する、調査を命じられた段階かもしれませんが、立法に移される御意思がおありなのかどうか、この点を伺っておきたいです。
  103. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いまの大豆とかなたね等については、そういう不足払い制度をとっているわけでございます。しかし、イギリスなどは牛乳などにもやっているわけなんでございますが、そういうものまでやっていくだけに生産体制あるいはまた買い取りの体制なども整っておるかというと、どうも行く行くはそういう方向にはあるいはいかなければならぬかと思いますが、いまいくような体制が整っておらぬ、そういうふうにいま私は考えておるのでございますが、その他の農産物等につきまして個別的にいろいろ検討してみないと、はたして不足払いというようなことができるかどうか。価格支持対策はしております。価格支持対策を不足払いというようなものに切りかえていいかどうかという問題が相当ありますので、私は、考え方としては決して悪いどころか、いい考え方だと思いますが、現実に出てはめる場合に、それに踏み切れるものだろうかどうであろうかということにつきましては、私もまだ決断をするだけの材料を持っていませんので、実は検討を命じているわけでございますが、どうしてもこれは検討は進めて、そういうことができるものはやっていきたいというふうに考えておりますけれども、まだ結論を申し上げる段階でございません。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その他の価格対策とか、所得政策ですね。格差是正のための何かそういう調査とか、御研究されているか、不足払い制度以外に。
  105. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 不足払い制度以外には、いまの価格支持対策でございますが、たとえば野菜等、玉ネギとか、そういうものでございますけれども、たとえば最低価格といいますか、最低価格以下になった場合に、その差額を積み立てておったところの金から出していく、こういうようなこと、あるいはまた畜産事業団におきまして需給の調整で、安くなった場合に、市場のバターや何かを買い上げて価格の操作をする。あるいはまた、いまの支持価格になった場合に、買い上げたり売り払ったり、生糸など、価格対策がそういう一連のいろいろな価格対策がありますが、なかなか自由経済のもとでの価格対策はむずかしい問題でございますので、必ずしもよくいっているものばかりではございません。米のようなのは、まあ大体よくいっておりますけれども、よくいっているものがありますとばかりは限りませんので、そういう問題盛んに、これを強化したり、是正すべきものは是正する、こういうことの検討はいたしております。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、一つだけ伺っておきたいのですが、政府は三十九年度の消費者物価の一応の目標として四・二%の上昇率を見込んでいるわけです。消費者物価の騰貴は、農林大臣も御承知のように、食料品の値上がりが一番大きいわけなんです。いろいろ見通しですから批判があるわけですが、民間あたりは、民間の銀行等の見通しでは五、六%、あるいは三菱銀行など七%ぐらい上がるだろうという見通しもあるわけです。もちろん、政府の見通しはそこに政策的努力も加味されて四・二%という目標を立てていると思うのですが、ところで、消費者物価については農林水産品が一番値上がりについてウエートが大きいのですが、今後の見通しはどういうふうにお見通しになるのか。はたして四・二%で押えられるのか。それはもちろん、農林当局だけのいろんな技術対策とか生産対策だけでは、これはもちろんいけないと思うのですけれども、全体的な財政金融その他の総合的ないわゆる対策とあわせて考えなきゃならぬと思うのですけれども、特に農林水産品の値上がりがウエートが大きいだけに、どういうふうに見通されているのか、この際伺っておきたいのです。また、四・二%に抑えるためには、農林当局としてどういう措置をとられようとしているのか。
  107. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 消費者物価対策から農林水産物の値上がりはどういうふうに見込まれるかということでございますが、実は最近におきましては御承知のように下がり過ぎて、いささか消費者物価対策よりも下がっちゃったほうに対して措置をとらなくちゃならぬ。ことに、御承知でございましょうが、豚なんかは非常に下がっちゃいまして、この原因もちょっとわからないのでございます。輸入した三千七百トンですか、これなども放出できないで、四月一ぱいまでストックにして置けということで、最低価格を割りそうな、安定帯価格の最低価格を割りそうな情勢でございます。野菜等につきましても、これは九州から愛知県、それから関東なども非常な値下がりでございます。でございますので、いままでのような私は消費者物価の値上がりというものにはならぬと思いますが、ただ心配なのは、こういうふうに値が下がってきますと、今度は作付が減るわけです。減るというと、今度はそれが上がってくる。豚などもそうでございますが、需給関係がそういうことになることをおそれておるわけであります。  当面の問題としては、生産者のほうの価格を支持する方策を講じていかなくちゃならぬと思いますが、その価格政策をしたあと、今度は作付やなにかが少なくて上がってくるということになるのを警戒しなければならぬ。でございますので、対策をどうするかということになりまするならば、やはり計画性を持たせる。需要と供給とに対しての計画性を持たせるように指導する。こういう面では農業協同組合等と連携いたしまして、作付等につきましても、あるいはまた出荷につきましても、あるいはまたものによっては加工、貯蔵等にいたしましても、計画性を持っていく、ものによっては、契約栽培的な形で安定さしていくというようなことを考え、また市場の操作、あるいは小売り段階におけるスーパーマーケットみたいなものでございますが、そういうものもつくっていって、生産者には生産に合うように、消費者には消費生活が乱れてくるようなことのないように安定的にしていきたい。こういうもろもろの政策をきめこまかということでもございませんが、いろいろな面に、予算面などもあげておるのでございますけれども、徹底的にもう自信を持ってこれならという実は案は持っておらないわけでございます。  しかし、価格の面につきまして、私はいままでのような消費者物価の価格の上昇はないと思います。四・二%という見込みでございますが、いままでのような、六%、七%、八%、九%というような値上がりはないという見通しを持っております。なお慎重な対策を講じなくちゃならぬと思っておりますけれども、そういう見通しを持っております。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま豚肉が非常に下がった、この一連の農産物の値下がり、単なる季節的なものではなくて、原因よくおわかりにならぬというお話でしたが、かなり長期的なものとして見ていいのか、その原因等を。これは非常に重要だと思いますよ。いまそういう長期的に安定傾向にいけば、なるほど消費者物価値上がりの問題も、これはまたわれわれ取り上げる場合角度が非常に違ってくるわけですね。もっと上がるのではないかというような予想をしておったわけです、われわれ。ところが、いまのお話ですと、むしろ下がるものをどうして安定させるかという、これは豚肉だけですけれども、いまのお話ではかなり長期的な要因に基づいてそうなってきているのだとしますと、これは作物等についてはいま作付が減るという問題もございますが、かなり長期的な要因に基づくものとなれば、われわれもやはり考え方を少し変えて見なければならぬと思います。その点、もしおわかりになったら、その原因等についてお聞きしたいのです。
  109. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ちょっと、ここに資料があるのですが、去年の十二月には芝浦で四百六十九円だったものがいま三百十円です。大宮で四百七十一円だったものが二百七十五円、浜横で四百八十円だったものが二百七十五円。  この下がってきた原因というものははっきりわからぬと申し上げたのでございますが、どうも消費者のほうであまり高かったので消費を差し控えたといいますか、こういうこともどうも原因じゃないかというわけで、いまのは卸価格でございますが、措置といたしましては、小売り価格が下がっていませんので、小売り価格を……
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 卸だけですか。
  111. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 卸だけです。小売り価格の引き下げを指導していかなくちゃならぬと思いましていま業界を呼んで小売り価格を卸価格に準じて引き下げろというふうに指導しておるわけであります。  今度は出荷のほうの地元のほうの調整でありますが、都道府県とか生産者団体を通じまして、適期出荷の指導を徹底させて売り急ぎを防止するようにこれはしていきたい、こういうふうに考えております。それから、さっきちょっとお話し申し上げました輸入豚が三千七百トンばかりあったのですが、これを放出したらなお今度最低価格割ってしまうので、実は輸入したままで持ちこたえておったのですが、なお自主的調整で保管期間を四月末まで延ばさなければならぬ、実は下がったほうの今度は対策を講じておるわけなんでございますけれども、今度の予算等におきましても、豚等について、子豚の価格ですが、下がるという場合には子豚はずっと下がる。上がるというときは、子豚が親豚よりもより以上上がってしまう。こういう投機的な傾向があります。それから、豚の値がよかったから、子豚を相当つぶしておる、こういう現状もございます。でありますので、子豚の安定資金というようなものも今度は設けることに予算に計上してあるんでございますが、非常にむずかしいことでございます。全体としては、私は、豚の価格はこういうふうに下がっておりますが、まあ戻したとしても、全体としては下がるといいますか、非常に高かったときまでにはいくことはない、こういうふうに見ております。
  112. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、お聞きしておりますと、非常に苦慮されておるようだ。しかし、逆にいえば対策が何もないように聞こえる。と申しますことは、高度成長政策の中で格差が開いた。しかし、今度は自由化に対してそれじゃどういう手が打たれておるかというと、何も特別なものはない。従前どおりやってきたということは、従前どおり対策を立ててきたのだ、こういうことに聞こえると思います。しかし、農村が持っておる悩みは、おっしゃるとおり、私たちは国際水準からいえばやはりコストが高い、しかし所得は少ない。そこで、所得はふやさなくてはならぬ、コストは下げなくてはならぬ。そういうようなことをやるには非常にむずかしい施策しかないのですが、どうやったらいいかということになると、非常に私どもは困難だ。一つは、作付面積等の問題については計画性を持たしてやる。片一方のほうでは、航空農法といいますか、土地をうんと大きくして、省力農業など取り入れて、あるいは共同化を進めていく。いろいろなことはおっしゃっておるんですが、どうも実効をあげていないわけです。あるいは予算面からいいましても、ぼくは率直にいって、企画庁あるいは文部脚や方々に含めたものを入れれば、農業構造改善事業あるいは近代化資金など見れば、私は農林予算は伸びておると思うのです。農林そのものではなくて、他のものも加えていけば、相当な、二七%くらいですか、たいへん伸びておる。だから、予算は相当伸びておる。努力をされておるということはわかるわけですが、きめ手になるものが一つ考え出されておらぬという点は、非常に残念に思うわけなんです。しかし、むずかしいということは私どもお聞きしておってわかるわけです。どうやって今後こういう矛盾に満ちておるようなものを乗り切ろうとされる心がまえがあるのか。特に、あなたが木村委員やなにかの質問に対して、本会議場で非常に楽観的なことを述べておみえになる、自由化に対する。私は、もっと自由化に対する、政府と申しましょうかの心がまえが非常に大切だと思う。ひいてそのことが国民の心がまえ、ひいては農民等の心がまえにもなってくると思う。そういうような問題。どうもたよりなくてしょうがない。ですから、基本的な農業に対する姿勢というものを私は聞かしてもらう。もう一つは、そういうことに対する心がまえをどういうふうに政府がやるかという点が非常に大切だと思っておるんです。そういうような点に対してどういうようなお考えか。いまお聞きしておっても、さっぱりわからないのですよ。
  113. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、御承知のように、工業のようにあしたからこうすればこういうふうに合理化するということはできませんから、非常に困難は困難であります。心がまえといたしましては、私は自由化に対しましても決して楽観というわけじゃございませんし、農業の前途につきましても楽観ムードを流しているわけじゃございません。しかし、確かに、農業につきまして、これから農業そのものが相当、期待といわなくても、非常にまずい波に打たれる面もある。しかし、こういう機会にやはりいい面も出ておるわけでございます。いい面もあります、経営の面等で。それでありますから、精神的な面になりますけれども、私はあまり悪い面ばかりを取り出して、これはもちろんころばぬ先のつえでございますから必要でございますけれども、何かじめじめとして、農村はいまにもつぶれていくんだというような、農業はやめちゃって、とても望みはないんだというような空気を私は出すことはやはり一考しなくちゃならぬじゃないか。やはりいい面もあるのですから、それに対してやはり農民みずからもひとつ立ち直る。政府自体といたしましても、そういういい面を育てていくということに熱意をもってやっていくんだと、こういうことが必要だろう。しかし、それにつきましては、工業のように、あしたから機械を入れればこういうふうになる、人を減らしてやれば合理化で少ない人で仕事ができるんだと、こういう面はいきませんから、やはり農業というのは長期的なものでございまするし、また総合的なものでございますから、農業政策全体としてやっていくほかないんじゃないか。きめ手で、この手をやればみんなよくなるんだ、こういうきめ手は私は非常に発見しがたい。そういう意味におきまして、どうも何だかたよりないと言われればたよりないのでございますけれども、私は、農業等におきましてもやはりたくましい体質改善をしようという面も相当出ておると思います。苦労しながらもいろいろな面で出ておりますから、そういう面を助長していくために諸般の政策を行なっていく、こういうつもりでございます。  ただ、本会議やその他におきまして、どうしてもお尋ねの点が悪い面ばかりでありますし、私も悪い面も幾らか知っておりますから、痛い面ばかりやるというと、こっちもすぐにそれをなおせる薬も、名医でもございませんので、とかく何か自信のないような面にもなりまするし、一面においては楽観的な面なども出たり、あるいはいろいろ複雑だと思いますが、複雑なる農村の事情を反映しまして、私も複雑な気持ちになっております。
  114. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 時間もたちましたし、農林委員会じゃございませんので、簡単に二つばかりお尋ねをいたしたいと思います。  それは貿易自由化に対しましてのお尋ねになるわけでございますが、これからの日本の農業をどう持っていくかという場合に、他産業との格差の問題と、それから外国との競争場裏に立って十分に日本の農業がやっていける、こういう二つの立場があるということを農林大臣はおっしゃったわけです。私も農業に関係しているのでございますが、農村から見ますと、他産業との格差ということのほうが強く出ておって、貿易自由化に対して日本の農業がたくましくどう体質改善をしていくかという点が非常に薄れておるわけなんです。これからいろいろ農業の問題は農業だけで解決できない。日本経済全般の中で解決していかなければならない。それだけに非常にむずかしいわけなんですが、少なくとも、これから残っていく農業というのは、これは国際競争に太刀打ちできる、そういうことを基本にしなければならない。そういう観点からいたしますると、どうも日本の農林省の農業政策というものは、もっと他産業との格差というよりも、むしろ国際競争に太刀打ちできるようにせいという面を強力にPRもし、また行政の上にもこれをあらわしていく。  たとえて申し上げますると、構造改善事業にいたしましても、成長の農畜産物をやる構造改善事業に対してもう少し補助がほしい、もう少し金融がほしいという場合に、一様のメニューで切られるわけですね。もう少しここで融資をする、あるいは助成をすればぐっと伸びるという場合に、それをやらないために伸びない。しかも、それをやる気のある、これから国際競争に太刀打ちできるものにやってやろうというような、やる気のあるものに対して帯に短したすきに長しというような政策が行なわれている。これではせっかくの意味の農業振興ということはあり得ないと思う。私は、農業一般を直ちによくするという方法は、そういう万能薬というものはないと思うのです。そういう特効薬というものはないと思うのです。ただ、問題は、ほんとうに国際競争に太刀打ちできるような成長農業をやろうというものに対して、どうも十分な措置が行政的に金融的にとられておらない。だから、そういうやろうというものに対しては、ほんとうにやる気のあるものに対してはどんどん助成していくのだという態度が出ておれば、希望を持って農業に残っていくという者も出てくると思う。そういう意味からいたしますると、いままでの農林省の農業政策の中で、もっと国際競争に対して強力に対処できるような行政指導なり、その他の諸措置をとるべきだと思うのでありますが、この点に対する農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  115. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この経済成長の過程におきまして、農村の人々も、他の産業の所得額が非常にふえて消費ブーム等がありますので、とかく他産業との比較で農村というものはつまらぬ、こういう感じを農村自体も非常に強く持っておると思います。しかし、根本的には、いまのおっしゃるとおり、農業の体質が改善されなければ希望が持てないわけでございまするし、また体質改善をせざるを得ない段階に入っていると思います。その体質改善というのは、やはり私は、国際競争力に相当たえ得るものもあるし、たえ得ないものもあると思います、作物によっては。しかし、たえ得るもの、それからどうしても助長しなくちゃならぬものについては、いまの帯に短したすきに長しの行政、あるいは金融措置ではいけないと私も思っております。そういう面におきまして、構造改善等の面におきましても、あるいは土地改良等におきましても、先ほどから申し上げましたように、少しそういう方向へ重点を置いて力づけるような予算の組み方などをやったのでございますが、十分だとは思いません。御説のような方向はなお一そう強化していかなければならぬと私も考えおります。
  116. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 もう一点、これは事務的になりますが、しかし基本的だと思うのでありますが、貿易自由化にあたりまして、農産物の自由化も漸次していかなければならぬ。いま八十何品目ですか、七十三ですか、ございますね、これらのものの貿易自由化する場合に、国内産業を守る場合に、数量を制限して守っていく、それからまた関税で守っていく、あるいはこの両者を並行して守っていく等、いろいろあると思うのでありますが、いま農林省が、いま七十三品目制限品目になっておるけれども、自由化になっていないけれども、近い将来においてこれは制限を解除してよろしい、自由化してよろしいという品目がございましたらば、お教えをいただきたいと思います。  それから、いま一点は、貿易自由化するけれども、しかし関税で、むしろ関税を上げる、あるいはむしろ関税は下げない、関税審議会等のいろいろ議論ございますけれども、農林省としては、この際関税はむしろ関税審議会の答申とは別に上げていくべきだ、あるいは下げるべきでないとかという品目がございましたらば、教えていただきたい。
  117. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いまそういうものを申し上げる一つの表は持っておりませんが、たとえばブロイラー——鶏ですが、こういうものなどは関税を上げるべきものだと、こういうふうに思っております。
  118. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 バナナはどうですか。
  119. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) バナナは適当に考慮することになっておるのでございますが、これはまだはっきり申し上げにくいような含みにおいて考えておるものでございます。  その他、四月ごろに自由化するというのには、まあ農林関係では一つか二つぐらいしかいま考えておりません、四月一日……。まだ最終的に決定しておりません。
  120. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会は明後六日午後一時開会の予定でございますが、確定次第御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会