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参考人(
森永貞一郎君) アラスカ・パルプの事業は、
日本の森林資源の状況その他を勘案して、
閣議決定をしまして、この事業を
日本の官民が一致して推進するということで、いまから約十年前に着手されたわけでございます。工場の建設に着手しましたのは三十二年、三十四年には完成いたしました。その後
所要の改修等も行ないまして、設備それ自身といたしましては、また生産それ自身といたしましては、由し分のないような状態であるのでございます。ただいま
銀行局長からも申しましたように、売り上げに対して設備
資金がかかり過ぎている。それから、ただいま御指摘がございましたように、自己
資本比率が少な過ぎる。それに加うるに、これを計画いたしましたときの化繊の市況がその後非常に感化いたしまして、予定いたしました価格よりも二、三十ドルも製品価格が低落をいたしたというような事情でございまして、ただいま
銀行局長から申しましたような状態をいまだに脱し切れないわけでございますが、化繊の市況は昨年からやや持ち直しまして、
幾らか明るい希望を持たれておりますが、しかし、これだけではまだまだ困難が前途に横たわっておるのでございまして、
会社当局におきましても、現在
資本金三十五億でございますが、これを至急に倍額に増資をするという計画が進行中でございます。その増資を待ちまして、また合理化その他各般の対策を今後講ずることによりまして、いますぐには
配当もできないかもしれませんが、そのうち立ち直るということを私
どもといたしましては確信いたしておるわけでございます。
なお、お尋ねの二十億の
資本金に百二十億を貸すのは冒険に過ぎるじゃないかという点でございますが、これはいろいろな
考え方があるところだと存じますが、私
どもといたしましては、国策的な事業の遂行であるということにもかんがみまして、
資本金の少ない点を、化繊各業者、つまりアラスカ・パルプの製品を利用いたしまする化繊各社、この連中は
民間でこの事業を推進したわけでございますが、この化繊各社並びにその化繊パルプを取り扱いまする有力商社の元利保証で
貸し付けしておるわけでございますが、この元利保証につきましては、いつでも実行を迫り得る状態にあると思うわけでございまして、また保証人も資力は十分ございますが、しかし、そういうことをいたすことによりまして、せっかくここまで伸びてまいりました生産を混乱におとしいれるのはむしろ策を得たるものではないという観点もございまして、先ほど来申し上げておりまするように、とりあえず倍額増資を実行し、その他各般の合理化その他の強化策を講じまして、一日も早く業績が立ち直るようにということを期待いたしておる、というのが
現状でございます。