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1964-10-01 第46回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月一日(木曜日)    午前十時十分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     村松 久義君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            天田 勝正君    委員            大竹平八郎君            太田 正孝君            岡崎 真一君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            田中 茂穂君            鳥畠徳次郎君            林屋亀次郎君            堀  末治君            木村禧八郎君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君            原島 宏治君            鈴木 市藏君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の経済情勢及び財政金融に関  する件)   —————————————
  2. 村松久義

    委員長村松久義君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  この際、おはかりいたします。  西川甚五郎君から、都合により理事を拝任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村松久義

    委員長村松久義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、理事辞任に伴い理事補欠互選を行ないたいと存じます。互選の方法は、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 村松久義

    委員長村松久義君) 御異議ないと認めます。それでは、理事日高広為君を指名いたします。   —————————————
  5. 村松久義

    委員長村松久義君) この際、参考人出席要求につきましておはかりいたします。  証券及び金融等に関する件につきまして、日本銀行総裁山際正道君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 村松久義

    委員長村松久義君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。   —————————————
  7. 村松久義

    委員長村松久義君) …中大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) IMF八条国移行、OECD加盟等本格的な開放体制移行の年にあたりまして、先般東京において、IMF世銀等総会が開催されましたことは、まことに意義深いものがございます。この総会には百をこえる世界の国々から大蔵大臣中央銀行総裁をはじめとする財政金融に関する各国指導者が多数参集し、内外の好評を得て非常な成功裏に終了いたしましたことは、関係者努力はもとより、広く国民皆さまの御協力によるものでございまして、御同慶の至りであります。  今回の総会においては、国際金融上の重要問題、特に国際流動性後進国援助の問題について真剣な討議が行なわれ、自由な経済交流の拡大と国際的な協力関係の推進に実り多い成果をもたらしましたが、さらに、世界各国指導者がこの機会わが国の実情をつぶさに見聞してその理解認識を一段と深められましたことは、国際経済社会における今後のわが国の立場に多大の好影響を及ぼすものと確信いたしておるのであります。  私は、この期間中、国際機関及び各国の数多くの指導者と親しく会談する機会を得たのでございますが、その際、わが国国力充実の結果、国際経済社会における地位が著しく向上し、同時にその責任も重くなっていることを実感をもって認識したのでありまして、今後は国際協調の線に沿いつつ、広い視野に立って健全財政金融政策運営につとめてまいりたいと、覚悟を新たにした次第であります。  さて、本委員会の御要望もありましたので、当面の経済動向財政金融政策基本的な考え方について所信の一端を申し述べたいと存じます。  わが国経済の最近の動向を見ますと、昨年末以来の調整過程において、物価は落ちつきを示しており、貿易収支は七月に、経常収支は八月に、それぞれ黒字に転ずるに至りました。しかしながら、このような改善を一時的なものに終わらせることなく、貿易収支黒字幅を今後とも着実に拡大し、国際収支の基調的な改善確保してまいるには、なお一そうの努力が必要であります。また、当面、設備投資にもなお動意が見られ、生産の増勢にも根強いものがありますので、現在の調整措置による慎重な気分を維持しない限り、盛り上がりつつある輸出意欲を再び後退させ、輸入需要の増加を来たして、国際収支を悪化させる等好ましからぬ結果をもたらす可能性が依然としてあるものと考えられます。したがって、今後の経済動向につきましては、十分な注意を払いながら一そうの安定化につとめるべきでありまして、早急な手直しを考え段階ではないと信じます。  わが国経済開放体制下にあって、国際的な波動に対処しながら、さらに着実に前進を続けるためには、国際的並びに長期的な観点に立って、財政金融政策を適切かつ慎重に運営しなければなりません。すなわち、今後の経済運営にあたっては、国際収支健全化物価の安定を目途として、適度な成長を持続せしめつつ国民経済全体としての効率を高め、もって世外経済発展に伍していける実力をつちかうことを基本とすべきであります。  次に、以上申し述べましたわが国経済現状並びに経済運営基本的的態度にかんがみ、当面の財政及び租税政策について一言いたします。  去る九月十八日の閣議において御報告いたしましたとおり、昭和四十年度一般会計概算要求額の総額は四兆一千七億円でありまして、その対前年度伸び率は約二六%となっております。各省庁の御協力を得まして、概算要求額を前年度予算額の三割増以内に押えることができましたことは、予算編成作業効率化に一歩を進めたものと存じておる次第であります。  しかしながら、さきに申し述べましたとおり、来年度においても経済安定的成長をはかることが経済運営基本的態度でなければなりません。このことを前提とする以上、財政面において租税その他歳入の伸びにあまり多くを期待できない上、他方において減税の諸要求をも考慮しなければなりませんから、来年度予算編成は従来にも増して一そうむずかしくなるものと考えられます。さらにまた、消費者米価引き上げ等、来年度予算編成前提として当面緊急に解決しなければならない重要な問題にも直面いたしております。  来年度におきましても、経済の諸情勢等から見て引き続き健全均衡財政の方針を堅持しつつ、限られた財源範囲内で農業、中小企業近代化社会保障の拡充、社会資本整備、文教の刷新充実等重要施策を推進するため、強い決意をもって経費資金効率的、重点的配分に一そう努力を傾注するとともに、予算編成作業合理化と相まって、ぜひ年内に予算編成を終えたい所存であります。  次に、今後のわが国税制あり方につきましては、一昨年来、税制調査会において基本的かつ体系的な観点から慎重に検討を行なっており、本年末には長期的視野に立った税制あり方についての基本的な方向づけが行なわれることになっております。来年度税制改正につきましても、この調査会の答申の線に沿って改正に当たりたいと考えておりますが、税負担の公平を期し、また今後における経済安定的成長をはかる見地に立って、国民税負担の軽減、合理化に一そう努力したい考えであります。  次に、金融政策につきましては、さきに申し述べましたような経済動向に顧み、当面は金融調整措置の結果生じておる慎重な気分を持続せしめることに意を用い、その間にあって真に必要な近代化合理化投資が効果的に行なわれることを期待したいのであります。なお、開放体制下にあって、金融界の秩序と金融機関経営態度をより一その適切なものとするよう配意する所存であります。  また、企業に対して長期の安定した資金を供給し、資本構成改善をはかり、もって国際競争力ないし抵抗力をつちかうため、資本市場育成強化をはかることも今後ますます肝要でありますので、証券行政の一そうの充実につとめ、特に業界の体質改善市場環境整備に意を用いたいと考えております。  なお、国際金融並びに対外経済政策の問題でありますが、さきに申し述べましたとおり、国際経済社会におけるわが国役割りが重大一となるに伴って、今後とも国際協調の線に沿って政策を進めていくことがますます必要になってくるわけであります。八条国移行契機として、従来の為替管理中心とした体制から、財政金融政策の適切な運用によって国際収支均衡を保ちつつ、貿易並びに資本取引を拡大する方向へ進まねばなりません。  次に、近年後進国経済開発とこれに対する先進工業国援助が重要な問題となっており、さき国連貿易開発会議契機に、一そう積極的に討議する方向に進んでおります。今回のIMF世銀等総会におきましても、この問題は最も真剣な討議の対象となり、幾つかの具体的決議の成立を見るに至ったのであります。わが国といたしましても、特にアジア諸国開発に大きな関心を払いながら、欧米先進諸国と協調して、この問題に国力の許す範囲で貢献してまいりたいと考えております。  さらに、わが国輸出の振興のためには、諸外国における関税障壁を除去、緩和することが必要であるとの観点から、ガットにおける関税一括引き下げ交渉につきましても、これに積極的に参加することといたしております。なお同時に、諸外国わが国商品に対する差別的取り扱いにつきましては、その撤廃または大幅な緩和を引き続き強く要請する所存であります。  以上、わが国経済現状と当面の財政金融政策について、若干の考え方を申し述べました。  今般の東京総会世界財政金融指導者実感をもって認めましたように、わが国経済は戦後十九年、目ざましい発展を遂げてまいりましたが、われわれの今後解決すべき課題も多く残されております。われわれはこの際、わが国経済の将来に自信と希望を持ちつつ、地道な努力を重ねて、当面の課題を一歩一歩着実に解決していくべきであります。私も大蔵大臣として最善を尽くしてまいる所存でありますので、皆さま方の一そうの御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。
  9. 村松久義

    委員長村松久義君) ただいまの大蔵大臣発言に対して、質疑の通告がございます。これを許します。木村委員
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣から今後の財政金融政策についての所信の表明がございましたが、これに関連して、当面の問題としまして、公務員給与改定、これは三十九年度補正と関連があると思うのですが、大蔵大臣も御承知のように、この公務員給与改定については人事院勧告がありましたが、あの人事院勧告をあの勧告どおりに尊重して実施するお考えでいま作業を進めておられると思うのですが、その点についての所見を伺いたいのですが。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 去る八月、人事院勧告をちょうだいいたしましたので、政府といたしましても、基本的にこの人事院勧告を尊重するたてまえに立ちまして、これが実施のもととなる財源の問題、また地方公務員及び一般会計における財源問題等、現在慎重な態度検討を進めておるわけであります。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一番焦点になるのは、実施の時期だと思うのですね。これまで、大蔵大臣も御承知のように、昭和三十五年から人事院勧告が行なわれるたびに、五月実施勧告されているにもかかわらず、これまで四回も十月にずらして実施しているわけですね。人事院勧告を尊重するという場合、実施の時期というものも、これは勧告の重要なる内容であると思うのですね。この実施の時期をずらしたら、全体の勧告趣旨がそこなわれてしまうと思うのです。ですから、これまで四回も実施の時期を、五月実施を十月にずらしておる。大体約二千億円くらいの何ですか、完全実施した場合に比べての賃金の引き上げの減少になる。ですから、今回こそはベースアップの率等についても、われわれとしては民間給与との関係、あるいは諸物価値上がり公務員生活実態等から見て、非常に私は適切ではないと、低過ぎると思うのですけれども、その点はさておいて、とにかく実施の時期についてはこれまでも何回も勧告を無視しているのですから、何のためにこれまで人事院というものを設けてきたのか、スト権を剥奪しておいて、そして人事院公務員生活を不安ならしめないようにするというのが趣旨なんですから、そうしませんとこれは公務員もすでに優秀な人は来ませんよ、こういうような実態でありますと。ですから、焦点をしぼりまして、私はこの実施の時期について、十月実施ということでなしに、五月実施に踏み切るべきだと思うのですけれども、この点、もちろん消費者米価問題等いろいろ財源上問題があると思うのですけれども、財源よりもむしろ人事院勧告を尊重するというたてまえこそが政治的に私は重要な問題だと思うのですよ。何回も無視してきているわけですね。ですから、これからそういういままでの悪例をここで一てきして正常なる形に戻すべきだと。そこで大蔵大臣、ぎりぎりのところ五月実施できるかどうか、その点伺いたいのです。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたとおり、基本的には例年、人事院勧告実施をいたすべく努力をし、これを尊重するたてまえをとっておることは事実でございます。ただ、五月が十月になったということでございますが、三十四年までは一月実施ということもあったわけであります。これは五月という期日を指定せず、できるだけすみやかにということでございましたが、財源問題その他諸般情勢上一月実施とか翌年の実施とか、こういうこともあったのでありますが、三十五年からは、できるだけこの趣旨を実現すべく努力を重ねました結果、十月一日実施となっているわけでございます。  今年度の問題につきまして、一体できるのかどうかということでございますが、私は率直に申し上げて、五月実施という人事院勧告は尊重いたしたい、また基本的には尊重いたしておるのでありますから、実施をしたいという考え方政府は一体的に持っておるのでございますが、財源の問題を中心にして考えますときに、五月実施は非常にむずかしいということを感じざるを得ないのでございます。一般会計で、大体五月実施にいたしますと六百八十億、特別会計で百二十億、地方財政において八百八十億、総計千六百八十億の巨額な財源を必要とするわけであります。年度中期においてかかる膨大な財源確保できるかどうかという問題で、いま地方税伸び、また繰り延べその他可能な財源の捻出、一般会計においては三税の伸びが一体どうなっておるか、そういう問題をいましさいに検討いたしておるわけであります。でありますから、地方税伸びと三税の伸びが大体確実に確保されない以上、地方公共団体における財源確保は想定できにくいわけであります。でありますので、国、地方を通じまして、財源問題を考えております。また、いまあなたが申されたとおり、本年度補正に関連する災害復旧の問題、米価改定の問題、その他義務的経費として当然政府一般会計でまかなわなければならない歳出要求、かかるものを十分総合判断をしますと、五月実施ということは非常にむずかしい。残念ながらそのような認識に立っておるわけでございます。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは今後のやはり税収、特に法人関係ですね、決算状況いかんによると思うのですけれども、しかし、財源財源と言いますけれども、それは財源は出す意思があれば出るものだと思うのですよ。財源というものは、これまで非常に政治的なものですから、ないといえばないし、あるといえばあるんだと思うんです。そこで、いま大蔵大臣財源についていろいろ検討しておられると言われていますが、それではいま十月実施として検討されているんですか。その五月実施が困難と、原則としては大蔵大臣は五月実施にしたいと、人事院勧告どおり実施時期にしたいと、こう言っておられるのですが、そこで、それじゃぎりぎりにいって五月ではだめだと。それならば、いまいろいろ財源検討して、いつごろに大体するめどをつけようとしているのですか。何か新聞等を見ると、十月実施がもう既定の事実のようなふうに報道されているのです。そうしていろいろ検討されているように思われるのですけれども、それじゃ非常にぼくは誠意がないように思うのです。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどからるる申し述べておりますように、五月実施勧告しておるのでございますから、基本的にこれを尊重したいという考えは、もういつも申し上げておるとおりでございます。がしかし、諸般情勢検討いたしますと、とても五月実施は不可能であろうという見通しは常識的に立つわけであります。それから、じゃ十月実施かというのでございますが、まず財源がどうなるかということを先行して検討いたしております。まあ言いにくい話でございますが、事務当局では一月実施をやれるかという問題も真剣に検討されておるのであります。  なぜかといいますと、交付団体そのものは、政府に何らかの財源処置をしてもらわなければ一月実施もむずかしいというところも多分にあるのであります。とにかく何とか自分でもって一月実施でもって踏み切る場合に、府県単独事業というものはほとんどオール・ストップになる、こういう計算も出ておるわけであります。でありますが、ある府県によっては、またある市町村等によっては、とてもできないと、こういう考え方もございますので、地方財政の中では財源調整ができることがないのか、そういう問題もひとつ十分自治省当局検討すべきであるということを強くこちらは発言をいたしておるわけであります。しかし、ここで非常に問題になっておりますのは、税収伸びないということで、不交付団体も何とかしてもらわなければとても自前ではできませんと、こういうものもあるわけであります。でありますから、地方財政状態から見ましても、非常に重大な点に逢着しておることは事実でございます。  また、政府といたしましても、一般会計歳出考えますときに、まあ災害の問題、それから必要やむを得ざる義務経費の補てん、それに公務員ベースの問題、それから食管会計の繰り入れの問題等々、当然予想さるべき歳出の要因を羅列をしまして計算をしますと、地方財政援助をするというようなところではなく、一般会計歳出をまかなう財源確保に困難を来たしておるという状態でございます。まあ現在では大体五百億の三税の自然増収を何とか見込めるかということでございますが、とても五百億や五百五十億でまかなえるものではないのでございます。  そういう状態でございますので、いま五月実施がだめであるから十月実施を目標にして作業を進めておるということではないわけであります。でありますから、とにかく早くこの問題に対して政府態度を決定してくれということでございますが、私は早く決定すればやはり渋い線しか出ない。でありますから、ようやくこの四日ばかり前から三十九年度政府が当初見通しました税収率までようやく上がってきておる。でありますので、九月決算状況を見ますと、十月一ぱいかかって財源というものを的確に把握して、これ以上余るというような状態ではないのでありますから、根っきり葉っきりというところまで見通して誠意をひとつ披瀝しよう、こういう考え方が偽らない姿勢でございます。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは私は政府が非常な責任があると思うのですよ。いままで三十五年から四回これはずらしましたが、ずっと私は予算委員として取り組んできましたが、いつでも政府が十月にずらすと、非常な自然増収、千億以上の自然増収がいつも出てきているのですよ、あとになってから。実施段階では財源がないと言いながら、実際には計算では千億あるいは二千億くらい自然増収があったこともあるのですよ。まるでぺてんにかけているようなものだと思うのですけれども、物価が大体こういうふうに上がってきておるのですから、当然人事院勧告がどの程度の勧告が出されるだろう、そうなれば公務員に対してこれだけの財源措置を行なわなければならぬということが、もう事前に大体わかるはずですよ。事前にわかるのですよ。わかるのですから、そういうものに対してどういう措置をするかということについて、これはやはり十分な対策をする必要があるのですよ。大体、政府政策によって物価がどんどん上がるでしょう。物価値上がりによる生活費値上がり、それによる人事院民間給与との関係あるいは生活費との関係勧告が出るわけです。これは財源財源政府は言いますけれども、こういうことは大体予想されたことなんでして、これを人事院勧告が無視されたことは非常に重大な政治的の責任の問題ですよ。民間では、たとえば公労協なんか裁定が下される、その場合裁定は守らなければならぬということになるでしょう。そういう場合、財源がない、それだけで逃げるわけにはいかないのですよ。人事院勧告についてはいつも、政府財源財源と言って、それで人事院勧告の重要な柱である実施の時期、これを一カ月くらい延ばすというならまだやむを得ないと常識考えられるかもしれませんが、五月実施勧告しているのです。十月にずらすということについては私は非常な重大な政府責任であると思う。  これは、大蔵大臣財源をいまさっき計算していると言われましたが、まだ私はわからないと思うのですよ。この下期について、八月も少し前年度よりは、税収率ですね少しいいですよ。それから、下期は景気情勢にももちろんよるのですけれども、今後の……。いつでも決算をやってみると、政府が予想したよりも必ず財源が出てくるのですから。その上に、伝えられるところによれば、不用分の早期繰り上げの使用ということも考えられているということもある。これはいろいろ問題があるのですけれども、とにかくそういうことにすれば財源は私はないことはないと思うのです。財源は出す意思があれば出てくるのであって、じゃ私に大蔵大臣やらせれば出しますよ。財源はつくるものですよ。財源はつくるものであって、出す意思があれば出てくると思う。だから、政治的に誠意がないから出てこないのであって、その点、人事院勧告をいままで全く半分は無視しちゃっているのです。それで尊重したとは決して言えません。  ですから、ここで、先ほど言われたように、地方公務員について一月実施ということになると非常な問題ですよ。来年一月実施ということも作業としては検討されているということを言われたでしょう。大臣、そういうことをほんとうに前提にして作業しているのですか。そうしたら重大な問題ですよ。ですから、ここで少なくとも、いままで十月にずらしましたが、今度はこれは一カ月あるいは二カ月くらいは、これは私は自分の個人の考えで、このくらいずらすなら財源上やむを得ないだろうと常識考えられるかもしれませんが、いつまでも五月実施を十月に延ばすということは、ちょっと非常識ですよ。公労協裁定のこともお考えになってほしいですね。もっとこの点については誠意を示されることを希望しますが、その点についてお答えを願いたい。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 木村さんの言われること、非常によく理解できるのです。私も精神的には大いに出したいと、こういうことであります。しかし、出すときにはつくるもんだと、こういうことでありますが、これはどうも木村さんの在来の議論とは違うので、一般会計のたとえば経常支出経常収入でまかなえと、健全をくずしてはいかぬと、こういう、私は議論をするわけではございませんが、そんなことを考えておるわけではないので、また一月実施をやろうとして考えているわけではなく、まず先入観を持たないで可能な限り財源を全部かき集めて、そしてその中でできる限りの誠意を示そうと、こういう姿勢でございますから、ひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。  三公社五現業とよく一般会計で問題になるわけでございますが、理屈の上からいいますと、まあ三公社五現業のものは、御承知のとおり合理化企業努力によりまして増収がはかれるということもございますので、仲裁裁定制度があり、裁定があった場合には、これは守らなければならぬ。ところが、一般会計はすべてがそのときの税収でまかなわなければいかぬ。国民税負担でまかなうというところに多少違うところがあるわけであります。しかし、人事院勧告の制度がある以上、また政府もこの勧告を尊重すると、こういう基本的な姿勢から考えますと、いつまでもこういうことを続けておることは好ましいことではないというふうに私も考えております。できれば予算の執行の過程においてこのような大きなものが出ないで、来年度予算考えるときに、今年度の差はこういうふうだから、来年度勧告の基準ベースでもってひとつ予算を組むべしと、こういう勧告が出ますと、私のほうではそれを天引きにして、あとで残りのものでもって政策費を組むということは可能なわけです。  そうすると、一年間ずれるじゃないかと、こういうことであります。一年間ずれる場合は、これは民間と一般公務員との特殊性からして、一体それをカバーするのか、そうでなくて、何年間でその一年間分のあれを取り戻すという合理的な方法をとるのか、いずれにしても、私はただ現行制度のままで議論をしていると、どうしても問題があるので、将来の問題としてでございますが、やはり前向きの検討を必要とするのではないか、そうも考えておるわけでございます。  いずれにしましても、十月実施か一月実施かという議論が確かに政府部内に事務当局ベースでございます。ございますが、初めから一月実施とか十月実施とかいうめどをつけないで、私どもとしましては、まず財源確保して、この上に、あなたがいま言われたとおり、誠意をもってかき集めればどのような知恵があるのかというようなこともいま検討をいたしまして、ひとつ最上な最良な努力をいたしたいと、こういう考えでございますので、御理解をいただきたいと、こう考えます。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの御答弁ではまだ不満足ですが、この問題は非常に重要な問題ですから、ほかの委員会、あるいはまた予算委員会等開かれましたら、その際に全体の三十九年度補正予算の問題とも関連して伺いたいと思います。  次に、証券対策について伺いたいのですが、先ほど大蔵大臣所信の表明の中で、証券市場の健全なる育成をはかりたいと言われておりますが、この十月九日号の週刊朝日にこの証券問題の特集があるわけです。「ルポ〃絶望〃に至る町・兜町」、こういう題で特集が出されて、この中で大蔵大臣が週刊朝日の記者と一問一答をやっているところがあるのです、最後に。これは週刊朝日の記者はこういう問いを発しているわけです。「兜町かいわいでは〃パニック〃という声さえ聞かれますね。」、これに対して大蔵大臣が、「このごろの日本では、大蔵大臣や日銀総裁よりもマスコミのいうことの方が信用される傾向があるんでね。」と、こういうことを言われているのですが、マスコミのほうが最近の資本市場、特に証券市場の実態については正確に、かなり正確に報道しておると思うのです。私はそれでもまだその実態が明らかにされていないと思う。多少私は調べてみたのです。調べてみましたら、この最近の証券市場の問題あるいは証券会社の経理の内容等を見ますると、私も前に新聞記者をやっておりました、十年時事新報の経済記者をずっとやっておりまして、そうしてこういう証券恐慌等も私も経験があるわけです。最近のこの証券恐慌、まさにパニックですよ。大蔵大臣日本銀行総裁は、まだいまの実態を把握されていないと思う。新聞のほうがまだ実態を把握されていると思います。  政府証券対策をいろいろまあ打ち出しております。証券会社に対する融資とか、あるいは共同証券の増資とか、あるいは増資の抑制とか、いろいろ出しておりますが、しかし、そんなこと——そんなことと言っちゃ変ですけれども、とてもそういう、いままで政府がやっている程度で解決のつくような状態ではないと思うのです。もう非常に深刻な状態であると思う。昭和二年の金融のあの恐慌、パニックに比すべき、また考えようによってはそれ以上の深刻なる事態に私はなっていると思う。大蔵大臣、こういう実態をほんとうに理解しておられるのかどうか。そうしてもうこの九月に証券会社の決算、この決算がわかるわけです。一カ年決算で、九月に決算来ます。この決算見ればわかりますよ。私はこの際実態をやはりこれは明らかにすべきだと思うのです。実態を隠して、政府が大体いま言いましたような三つの対策を講じていますが、そんなことで私は健全なる資本市場が育成されるような事態ではなく、この際もうはっきり事態を明らかにして、うみははっりきりここで出してしまって、そうしてここで根本的に再出発するくらいでなければ、これはもうほんとうに証券金融なりそういうものでは、私はここで今後育成されませんし、現在ではもう証券市場の機能、資本市場の機能は全く停止状態であるといってもいいと思う。この事態に対して、まず大蔵大臣はどういうふうに考えておられるのか、伺いたいと思うのです。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと御質問にお答えをする前に、その週刊朝日の問題を申し上げますが、週刊朝日の記事は私はまだ読んでおりません。おりませんが、そんなことを言った記憶がございます。そんなことは取り消そうかなと思っておったのですが、やはりそれがその締めくくりになっておるようでございます。それは私も、その意味は、大蔵大臣や日銀総裁が現状を不的確にとらえておるとか、国民がそれを信用しないとかということではなく、マスコミが非常に発達をしておりますし、どうもマスコミがある意味において、いいときはばかいいと、こう言うと、大蔵大臣や日銀総裁はあまりそう言わないけれども、まあ何を見ても、聞いても、みんなそうだから、株は上がるんだなということで、ずらっと千八百円ぐらいまで上がるときには、大体私たちの話を聞かないで、大体マスコミのことを信用するのだ。下がるときも、パニックに近いとか、そのマスコミのほうを聞く。そのタイトルはまずいなということで申し上げたんですから、どうぞそれはあしからず御了解いただきたいと思います。  証券市場の現状をどう考えるか、私はパニック的な様相を呈しておるとは考えませんがすなおに表現をすれば、遺憾ながら正常な市場とは言いがたい、こういう状態であることは事実でございます。それは、これからの開放経済体制に向かっての日本の資本市場、また物の自由化だけではなくて、やがては資本の自由化ということも自由化率の拡大ということを前提として考えていかなければならないわが国状態考えますと、日本の直接資本市場が小さい。それから、これを律しております証券取引法にもまだ不備がある。それから、その証券取引法によって営業を行なっておる証券業者自体にも問題が存在する。また、取引所等の問題に対しても、その権限、また上場基準とか、その他こまかい問題に対して完全無欠とは言いがたい。場合によっては法制上の整備を必要とする、こういう考え方。直接資本市場であるところの証券市場、公社債市場を育成強化するに必要な資金的なルートがいま確立せられておらない、こういう題問もございます。それから、政府自体も、間接市場である金融に対しては非常に積極的に長い歴史の上でも育成政策を行ないましたが、何かまだ証券市場、公社債市場、直接資本市場育成強化というものに対してはどうも跛行的な考え方前提にしておらぬか。ですから、同じく税制上の優遇をしようとしても、現在行なわれておりますように、金融市場の育成強化に対してやる場合でも、証券市場に同じようなものをやっては絶対いかぬ。これは理論的にもいろいろ問題もございますが、とにかくいろんなことを総合して見ますときに、これから国際競争力をつけながら自由市場に出ていかなければならない日本の産業の直接資本を求める場は理想的な姿ではない、こういう考え方は率直に申し上げられると思います。でありますから、今日とっております施策が万全のものとは考えておりません。長短期の施策を十分考ながら、相当長期な見通しをつけながら、着実に、かつ強力に各般の施策を行なう必要がある、こういう前提に立って、さしあたり二、三の諸施策を行なっておる、こういうことでございます。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、大臣はパニック状態じゃない、正常ならざる状態だと言いますけれども、その認識が私は問題だと思うのです。それで、いままでの証券金融、あるいは金融と証券との関係、株式というものに対する株式金融、産業金融としての金融、あるいはまあ資本市場等に対して十分な施策が行なわれなかった等問題がある。あるいは証券会社の経営にも問題があると、いろいろ言われました。また、今後もそういう点についてやはり対策を講じなければならぬということも言われましたが、しかし、私はいまの当面の実態をやはり明らかにしなければ、今後この対策を講ずるについてもこれは真剣な対策が出てこないと思うのです。私は、投資家の保護という立場からも、それから日本の経済の今後の健全運営ということにつきましても、まず当面の事態を明らかにする必要があると思うのです。大蔵大臣言わなければ私申しますよ。それはそんな——私も新聞記者をやってきたから、経済記者を長くやってきておりますから、そんななまやさしい事態ではありませんよ。  たとえば、じゃこれから資本市場証券市場を育成するといっても、いまの証券業者の実態はどうなっておるのですか。大体大蔵大臣は、いまの取引高が激減して——いろいろ資料をいただきましたが、大体証券界では普通証券業のペイ・ラインですか、証券業が成り立つ程度の取引は一日一億五千万株といわれておるのですよ。ところが、いただいておるこの資料を見ましても、この一年間昨年九月からことしの八月まで、これは証券会社は一カ年の決算で大体九月末に決算になるのですね。これを見ましても、昨年の十月が六千九百万株でしょう。十一月が七千八百万株、十二月が八千九百万株、三十九年の一月が一億四千万株、あとは六千五百万株、六千百万株、八千四百万株でしょう。ただ政府がてこ入れをやった五月が一億五千万株で、あとはずっと下がって、九月、きのうあたりなんか四千万株だというのですよ。これで一体そういう証券業がぺいするのかどうか。何も私は証券会社の経営をここで云々するわけじゃないのです。この実態を明らかにするという意味で、大体みんなもうずっと一億五千万を割っておるので、これで従業員が四大証券で一社当たり約八千人といわれております。一人の経費に大体十五万円といわれておるのです。これが一社、四大証券で十五、六億円の経費が要るのです。ところが、三分の一くらいになっておりますから、大体十億くらいの赤字が出ておるというのです。月に十億ですよ。さらに、この商品としての手持ちの株式の運用の値下がりがあります。ここに資料をいただきました四大証券で大体千億ですね。九百八十億手持ちしております。これが二割大体評価が下がるとして、千億として約二百億でしょう。そうしますと、一カ月たとえば十億の損としますと、これは一カ年で大体百二十億、これに評価損を入れれば百五十億か六十億くらいになるのですね。資本金は野村が百二十億で、山一、大和が八十億程度、この資本金以上の赤字ですよ。これで正常ならざる状態なんて言えますかね。これは四大証券でそうですよ。中小証券になったら、これは赤字の数字は少ないかもしれませんけれども、その経営の内容はもっと悪いのじゃないかと思うのです。こういうような状態のもとで、どうして健全なる資本市場の育成、証券市場の育成ということがいわれるでしょうか。まずこの実態をはっきりさせる必要があると思うのです。  それで、きょうの朝日新聞を見ますと、日本興業銀行の頭取の中山素平氏が言っておるのですが、このままの状態だと投資信託の解約が急増していく「証券会社は解約金支払いのため投信組入れ株を大量に売りはじめる。そうなれば、株価はますます下がり、それがさらに投資信託の解約をうながすという悪循環をくり返す心配がある。」、こうなっておる。「ところが、証券会社は総額約二千億円にものぼる「過剰株」をかかえ、身動きができない。」、そのほかに、またたとえば増資なんかする場合に会社間で持ち持ちの株がありますよね。そういうのも今後年末にかけてボーナスとか配当支払い金とかの関係がみな出てくる。こういうふうなことになりますと、それはたいへんなことになるということを中山素平氏も言っておるわけです。素平氏は「昭和初年の金融恐慌を経験した金融界の取越し苦労かも知れないが、不安気分が広がる恐れが少しでもあるのなら、大事をとって予防措置を講じておくことが大切だ。」、こういうことを言っているわけなんです。これは素平氏なんかも、当時の、昭和初年の金融恐慌の経験を持っているわけです。私も経済記者としてそういう当時のことは知っているわけですよ。当時に比べ証券会社の内容実態はもうはるかに悪いですよ、これは。  何が原因でこうなったか、これは非常な問題ですよ。この原因を徹底的に追及していけば、これは池田内閣のこれまでの高度経済成長政策に原因があるんですよ。また、それにつれて、これまで大蔵省の証券行政に重大な責任があると思う。ことに、昨年の七月の五日に大蔵省は証券会社の財務比率に対する通達を出して、それ以来の証券行政というのは支離滅裂ですよ。矛盾だらけですよ。あの当時にもっと抜本的な対策を講じておけば、私はまだこんなにはならなかったと思うんですけれども、その後の証券行政は全く矛盾撞着ですね。支離滅裂ですよ。たとえば、会社の経営の健全化として、なるべく自己資本の充実をせよといいながら、増資を抑制する。増資を抑制すれば、どうしたって貸し出しが多くなるでしょう。そうしたら自己資本と他人資本との比率は改善できません。そういう矛盾した——増資を抑制する。そうすると、今度は貸し出しがふえてくる。そういうような矛盾もありますし、それから、あるときは株を売っちゃいけないと言うし、あるときは株を売るようにすすめたりですね、その後は。昨年七月五日の証券会社の財務比率の通達以後の政府証券対策なり証券行政のやり方、足取りをたどってみたんですが、ただもう矛盾撞着ですよ。支離滅裂ですよ。こんなことで一体今後の証券金融、産業金融というものが順調にいくのかどうか。  本来なら、こういうことは自民党の諸君が質問すべき問題だと思うんですけれども、一向こういうことについて御質問されない。この資本主義の経済は株式会社を中心とする経済ですから、株、証券市場がこういうように動揺しているということは、資本主義の経済の矛盾を最も端的にあらわしたものなんです。これに対してどういう手を打つかです、今後。  それで、時間がございませんから、山際さん見えましたし、野溝さんも御質問があるようですから、これから項目的に御質問しますから、大蔵大臣に端的に御答弁願いたいと思います。  第一は、こういうような状態になった根本の原因は一体どこにあったか、これが一つ。  それから、当面、さっき私が証券会社の実態についてお話ししましたが、どうも聞くところによると、大蔵省は、あまり証券会社の赤字が巨額に計上されると心理的に動揺をするといけないから、なるべく決算においては赤字をあまり出さないように、九億程度の赤字にとどめるようにというような内面指導をしているように聞いているのです。そういうくさいものにふたをするようなことは私はいけないと思うのです。この際、もううみを出して、はっきり実態を明らかにする。そうしないと、また投資家を欺くことになります。この実態をはっきりさせる必要があると思いますが、そういうお考えがあるのかどうか。はっきりこれも九月決算に出てくるのですから、私は変な、ごまかし的な指導をすべきではない、こう思います。  それから、今後の対策としては二つあります。当面の対策があります。たとえば証券会社に対する融資とか、あるいは共同証券の増資とか、あるいは増資の抑制、増資を抑制した場合、今後、これも資料をいただきましたが、まだ相当の増資があるわけです。そうした場合、さっきも申し上げました企業体質改善との関係はどうなるのか。増資を押える、そのかわりに今度は日銀でめんどう見るということになると思うのです。増資をしなければ市中銀行が貸し出しをしなければならぬ。しかし、市中銀行はうんと金詰まりですから、とてもできません。これは日銀でめんどう見るということになるでしょう。そういう当面の対策、これについて具体的にどういう対策、手を打とうとしているか。  それから、最後に、長期的にこの産業金融、証券市場あるいは資本市場の育成についてどういう対策をお考えになっているのか。これについて、証券業法の改正とか、取引所法ですか、ああいうものの改正、いろいろ法的な改正、機構の改正等もお考えになっているように新聞で伝えられておりますが、そういうこと。  この三つについて伺いたいのです。  それから、最後に、意見として、七月五日の財務比率の通達を出して以後の証券行政を見ますと、財務比率の通達を出して株が下がった。株が下がると、大蔵大臣は、当時大体ダウで千四百円から千五百円台が妥当であろうというようなことを新聞記者に話している。これなどは非常な不見識だと思うのです。いまの株は、証券投資は、産業金融としての資本の実質的な蓄積としてのあれもありますが、多分に思惑的な、投機的な要素があるわけです。そういう場合に大蔵大臣がここで軽卒な発言をするということは、こういう投機に対して介入するということです。まさか大蔵大臣が株をやっているわけじゃないと思いますけれども、それは政府がそういう株に対する考え方を発表する、あるいはまた操作をいろいろやって、一日に二十何円と上がった場合、もし事前にそういうことをちゃんと知って株屋さんに買いなり売りなり注文しておいて、そういう操作をやれば、非常にそこに問題が起こると思うのです。一般の勤労者なり中小業者は汗水たらして働いているのに、そういう投機的な操作によってあぶく銭をうんともうけるというような、そういう事態を起こしたら、これはもうたいへんな問題だと思うのです。ですから、この株価の操作について、これは非常に慎重な態度を要するべきものだと思うのです。いままで私はずっと証券対策なるものの新聞を見ておりましたが、政府の対策が出ると、すっと株が上がるのです。それで、少したつとまた下がる。日銀が証券会社に融資するということになると、ちょっと上がる。そういう政策をきめる以前にそれがわかっていて、そして操作されたらどういうことになりますか。まさか大蔵大臣や日銀総裁がそんなことをするとは考えません。あしたそういう政策を決定する、きょう株屋に注文出しておいて、そして操作すれば、もうかることは明らかです。そんなことはもちろんわれわれは想像もしておりませんけれども、これは折り目を正しくしておかないと、前にはずいぶん問題があったわけです。投機的ないろいろな要素を持っているだけに、非常に国民に不安な感じを与えるわけです。そういう点について、今後私は、非常に不用意な言動等については大蔵大臣は十分慎重にされませんと、投機的要素を持っているだけに、非常な誤解あるいは不信というものを抱かれておる。本来なら、こんなにひどい状態にしました責任というのは重大ですよ。この証券行政は一体何をやっていたか、これは大蔵大臣の辞職ものだと私は思うのです。そのぐらいの深刻な問題だと私は思っています。これによって損害を受けた大衆というのはたいへんなものですよ。  それから、第二市場に対しては全然手を打っていないでしょう。第二部についてはどうするのですか。これは第一部と同じことですよ。第一部にはいろいろ手を打っていますが、第二部には全然手を打っていないでしょう。これはどうするのですか。みんな第二部の中小企業の増資等につきまして……
  21. 村松久義

    委員長村松久義君) 木村さん、時間に御留意願います。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうして増資増資で大衆に株を買わして、増資した分は銀行に借金を返しているのですよ。それから、銀行のオーバー・ローン、貸し出し超過を増資によって大衆の肩に負担させちゃって、そして銀行の不当なる貸し出しを銀行はちゃんと回収して、大衆に転嫁している。株が下がって大衆のほうに犠牲を負わせる、こういう実態だと思うのです。  時間がございませんから、自分の意見はこのぐらいにしておきますが、いま申し上げましたこの根本原因と、それから当面の対策ですね、それから証券会社に対する実態についてのこれを具体的に明らかにするということ、当面の対策、根本対策、それから第二市場について、第二部についてどういう手を打つのか、これだけについて御答弁を伺います。  そして、私も時間がございませんから、あとで野溝さんが御質問いたしますが、私は重大な問題ですし、今後まだ続きますから、今後にこの質問を留保しまして、私の質問を終わります。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵大臣や日銀総裁等の発言は慎重にしなければならぬ。それは全く当然でございます。また、かつての新聞記事に散見したものに対してもう三回綿々の御質問でございますが、これは当時の予算委員会で当時の状況を明確にしてございます。これは全く雑談の中で、新聞の記事に表現をせられたような発言をしたわけではないのです。しかし、こういうことでございますということは記録に載っております。また、そのときにも申し上げたとおり、政府基本的な考え方としては、資本市場育成強化ということと国民大衆の投資家保護という立場で十分の施策を行ないます。しかし、あくまでも自由市場に対して関与したり、株価に影響のあるようなことに対しては、絶対に関与してはならないという考え方は、いま御指摘のとおり、私たちもそういう姿勢でやりますし、またやるべきであるということを答弁してございますが、現在でもそのとおりに考えております。これは明らかにしておきます。  それから、大体こういうふうになったことに対しては、証券行政が悪かったからだと、大蔵大臣責任問題だと。まさに私もそう考えております、はっきり申し上げて。だから、私は就任二年有半、前から自己資本比率はどんどん落ちておる、戦前六一%のものが二四%を割ってる、今日二三%を割ろうとしております。ですから、明治初年から百年の長きにわたって間接金融に重点を置いてきた、これも必要やむを得ずやってきたこともあるでしょうが、今度は開放経済前提として、直接資本と間接資本の調和ということを、——フィフティー・フィフティーということを考えるのじゃないのですが、当然考えなければならない。同時に、強力なる施策を必要とする。これは私も声を大にしてやってきたわけでございますが、なかなか先ほど申し上げたとおり、税制問題一つ取り上げましても、国民の一部の、金持ちの投資者の、というような問題もからんできつつ、なかなか的確のものを行なえなかった。行なえなかったというところに政治の微力があるのでありますから、責任は免れることはできない。どんな反対があっても、必要があるならば、職を賭してもやるべきだ。私は今日あなたの御発言に対して、ほんとうにそう信じております。でありますから、こういう問題に対しては、これからひとつ最善の努力をいたしたいということを申し上げて御理解を得たいと思います。  それから、原因につきましては、いろいろあると思います。いろいろございますが、急速に池田内閣が姿勢が悪くなったということもございましたが、とにかくどんどんと伸びていく経済の速度と比べて、資本がこれに追いついていかない。でありますから、その間の産業資金を調達をしておる金融機関はオーバー・ローンという状態になっておりますし、企業もボローイングに悩んでおるわけでありますが、同時に、自己資本比率は二三%に下がっておるという事実がこれを如実に証明しておるのでございます。でありますが、私は国民状態考えますときに、まだ日本の伸び行く産業の資金というものが、国民各位の協力を待って、これ以上は、もう貯蓄性向も最高であり、資本参加というものをもし行なうとしても、銀行預金が振りかわるだけだというふうには極端に判断をしておらないわけであります。施策適切を得れば、産業資金の調達はまだまだ国民各位の協力の中に求め得る、こういう考え方をとっておるところに——問題があるようなお顔をしておりますが、私はしかしそういう問題で、西ドイツが戦後十八年間に今日を築いておる状態考えてみて、また戦前の日本の数字を考えてみても、私はそういう施策は強力に進めるべきだと、こういう考え方を持っておるわけでございます。  それから、具体的な原因としては、証券業者の育成ということに対してもっと深刻に考えればよかったとか、規制をするものに対してはうんと規制をすべきだ、それから証券取引法の改正もおそかった、金融機関というものを全然持っておらぬ証券業者というものは、一体なぜ政府政策の上においても考えなかったのか、また中小業者のレベルアップというものに対してどうしてもっと施策を行なわなかったか。これはいろいろございます。でありますので、原因はこれだけでございますというような状態ではなく、総合的にやはり資本市場育成強化に欠陥があったことは認めざるを得ないというふうに考えて差しつかえないと思います。  それから、第二の、四大証券をはじめとする証券業者の決算等につきまして、出すものは全部出せ、うみは出すべきだ。これは私もよくわかりますが、これは事実を隠蔽したり、そうするところにほんとうに積極的な前進がはかれないということもございます。これはやっぱり現実に重きを置き過ぎるという考え方でありましょう。ですから、証券業者育成、また先ほども申し上げましたように、取引所その他の問題につきましても、上場基準の問題等いろいろの問題がございます。かかる問題に対しては、私はやっぱり長期的な見通しに立って、これに合うような証券取引所、証券業者を育成していくためにはどうあるべきかという立場で、ひとつ明らかにするものは明らかにし、国民の信をつなぎ得るような態勢、またあしたの証券市場のにない手になり得るような証券業者の姿にしたいということははっきりと申し上げておきます。これに対して必要な証取法の改正等、早急に立案をして国会の御審議を仰ぎたいと存じます。  ただ、どうもいままで、一つだけ申し上げますと、証券業者の金融ということに対しては、これは非常に積極的でございますが、どうもこれは金融などということでいままで賛成がなかったということは、どうも事実でございます。でありますから、これは整理する過程においては、もう左前になってどうにもならない、何とか整理をしたり、税制上優遇しても、これはそう国民の納得する税の公平論を乱すものじゃない、しかしいまやることはどうかというような考え方が今日まであったような気がいたします。しかし、私は、やはり整理をする過程にはどうしてもあらかじめ出すことによって少なくて事が済み、非常に合理的に推進をするというたてまえをとっておりますので、せいぜい証券業者の責任と自覚を待ちながら、行政を手きびしくやってまいりたい、こういう考え方であります。  対策につきましては、もう大体御専門でございますから御承知だと思いますが、まず証券を発行する企業充実企業の内容の充実、それから市場の拡大強化、当然業者の育成強化、第三には、国民が直接資本市場に参加しやすくなるようにするには施策上どうするか。どうも、これは前のやつを二点だけやっても、あとのやつを一点だけやらなければ、これはどうしてもだめなのであります。でありますから、最後の、国民資本市場に直接参加するためにどうするか、またあわせて、公社債市場の育成強化ということに対して必要な施策というものに対しては積極的な姿勢をとりまして御発言にこたえたいと、こういう考えでございます。  第二市場の育成の問題は何も考えていないじゃないか。これは確かに第二市場の問題は、御承知のように、いろいろな問題がありますが、中小企業資金調達の場という問題で考えておりますから、少し早まったとかいろいろな問題がございます。でございますが、強化に対しては必要な施策は当然やるべきだ、こういう考え方でございます。ただ、いままで第一部市場の日本の基礎産業が一割配当をしながら額面を割ったというようなときに、その基礎産業の下請会社の中小企業の株が倍額増資をしてきて、三年目に第二市場の単純平均株価が百五十円を割ったという状態、これは一体いいのか悪いのか。これは政府として、私は当時国会でも、こういう状態は不健全だと思いますという答弁をしておりますが、まあしかし、それに対して適切妥当な政策を欠いたという責めはこれは免れるわけにいかぬわけであります。しかし、こういう問題に対しても十分実情を把握しながら、適切な措置をとってまいりたいと考えている次第であります。
  24. 野溝勝

    ○野溝勝君 木村委員の質問と重複するところはなるべく避けまして、具体的に質問を進めたいと思います。  最初にお伺いしたいことは、大蔵大臣所信表明についてですが、その所信表明中、木村委員からも質問がございましたが、公務員給与ベースの問題です。これはやはり人事院勧告に対して誠意をもってこたえたいというようなお話でございましたが、これまで毎年実際の政府の動き、大蔵当局の動きを見ると、誠意を持っているとは見られないのであります。この点は指摘したとおりです。  そこで、十月に入って検討するというお話でございますが、大体十月にやるということは、災害の問題やら米価の問題の動きを見て、それから公務員給与を決定しようという腹じゃないかと思うんです。それではね、ほかのものがきまってお余りの予算をもってきめるというような印象を与え、公務員に対して非常にまずいですよ。ですから、そういう印象を起こさぬように、ひとつあなたが発表する際にも十分御留意を願いたいし、特に人事院勧告はいままでもやっているわけですから、速急にひとつ決定して公務員が安心するように示してもらいたい、この点を強く要望しておきます。  それから、問題は災害の問題ですが、この災害の問題については所信表明の中ではあまり深く触れておらぬようでした。従来からの災害対策に加えるに、過般の二十号台風についても、その災害は比較的に少なくて済んだというけれども、罹災者にしてみれば、まことにたいへんな問題であり、一日も早く罹災者が安心できるようにしなければならない、大蔵当局は急いでこれに対する予算措置を決定してほしい、そういうことを強く要望しておきます。その点についてお答えをひとつ。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 災害につきましては、既往災害が大体千億でございます。それから、二十号台風に対しては、いままだ公共災害等査定中でございますが、公共災害は比較的少ないようでございます。風台風であったということで、農作物災害とかそういうものは、農作物だけでも約二百億以上、三百億に近いものが概算されておるようでありますが、公共災害としての災害は非常に小さかったということで、御承知のように、今年三百億の予備費のうち、百億は災害のために特別に計上しておりますし、また二百億のうち一部災害にさけるものもございますので、既往災害に対する予備費支出は遺憾なき状態でございますことを申し上げておきます。また、いままでの災害の被害額が確定、それからさらに新しく起こり得る災害に対しましては、次の国会で補正要因として計上いたしたい、こう考えております。いずれにしましても、早急に被災者に迷惑をかけないように、一日も、いっときも早く施策を行なうように努力をいたします。
  26. 村松久義

    委員長村松久義君) なお、申し上げますが、日銀総裁は十二時までという出席要請をしておりますので、さよう御了承おきを願います。
  27. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に私がお伺いしたいのは、株式市場の問題でございます。先ほど木村君も言われましたが、これは資本市場の問題であるだけに、自由民主党の方で相当論議があると思いましたけれども、御質問がないようで残念でございます。そこで私どもが質問するわけですが、私どもはイデオロギーでものを申すのじゃなく、現時点でこれから質問をしたいと思いますから、さよう御了承を願いたいと思います。  まず、大蔵大臣と日銀総裁は、先般の記者会見あるいは衆議院大蔵委員会の答弁におきまして、証券対策を表明していますが、両者の間にニュアンスの違いというか、微妙な食い違いが見られます。まず根本的な点として、今度の証券対策の柱である共同証券の拡充強化について、大蔵当局は、日銀が直接かあるいは日本証券金融を通じて共同証券に融資しなければ実効があがらない、こういうことを強調していると解するが、日銀のほうでは、共同証券への融資は今後の情勢を見てきめるべきで、いまはその時期でない。要するところ、金融引き締めのしり抜けを警戒していると思われる慎重な発言であります。どうもこういうことで、まあいろいろな方面へ影響を与えておるようでございます。こういうことについては、金融市場、株式市場は非常に敏感ですから、表現により、こういう食い違いを感じさせることは非常にまずいと思うのでございます。この点について意思統一がとってあるのですか。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ私と日銀総裁の考え方は違うわけはございません。全く同一だと考えておるのですが、ただ、段階的な時点においての表現のしかたによって、多少違うような記事になり得るということは考えております。しかし、かかるものが非常に敏感な市場、投資者に影響を与えるということで、特に注意をしなければならぬこともお説のとおりであって、私もそう考えております。まあ、私は多少前向きなものでありますから、そういう記事のニュアンスで出るわけでありますが、どうも新聞記者諸君とやっても、また評論家とやっても、私よりかたい方々とやると、どうもかたい方方のほうは少し私よりも一歩おくれたような記事のニュアンスになるということは、過去二年何カ月そのとおりでありますから、大体その程度にひとつ御了解をいただいて御安心願いたい、こう思います。  これは、ただこの機会に、間違うと悪いから率直に申し上げておきますと、先ほど木村さんからも御発言ございましたように、政府が直接市場に関与するというようなことは避けなければいかぬ。まさにそのとおりであります。でありますから、株式対策などをやるにしても、当面する問題に対する具体策は、これはやはり政府が主導権をとったり、資金統制を行なったり、市場統制を行なったりするものではない。これは海外からの影響も非常に強いものでございますので、今度はその斯界の権威者が全部一堂に会しまして、そして大蔵省からも私も出まして、資本市場に対して政府はこのような長期、短期の見通しを持っておりますと、現在の市場必ずしも容易でない正常ならざる状態と言わざるを得ないと思いますので、皆さんひとつ自主的にいろいろの施策をお考えになられて、適切な施策を迅速に、最も効果あるような方法でやっていただけばはなはだ幸いでございますと、こういうふうに私も一歩線をおきまして、直接関与しないという態勢で、あの会議を持ったわけであります。  でありますから、相当長時間積極的な発言をしまして、任意な発言でございましたが、最終的には市場にダブついておるというような株式、これを少なくとも千億円くらいは——国会だから秘密のような状態でもみんな事情を全部わかるようにしゃべろと、こういう御質問が衆議院でございましたので、私も秘密会にお願いすればよかったかもしれませんが、いずれにしてもずっとるる申し上げた。こういう段階でこうなりました、まあ市場には、千億というような金額を明示するよりも、確かにダブついておるような株があるとしたならば、これを買い上げなきゃいかぬ、買い上げる場合には塩づけというような状態が必要だ、塩づけというと、期日は幾らだ、塩づけといえば一年間は最低考えなくちゃいかぬだろう、一ぺん買ったものをこれを売り出すときに株式市場の圧迫要因にならない、しかもこれは買った人の少数がもうけてはならぬ、これを売り出すときには必ず利益があがる、利益があがる場合には国民大衆にこれを還元するようにしなければならぬ、そうすると、何かいい取引業法に基づく会社であって、四大証券と何ら区別が法制上はないことではありますが、政策的な相当な性格を持つ共同証券にやらしたほうがよろしい、共同証券をしてやらせるということになると増資をしなければいかぬ、増資をするやつを待ってれないから金融をしなきゃいかぬ、金融をすれば、いま調整過程でありますから都市銀行その他がすぐさま間に合うわけではない、またクレジット・ラインがありますから、結局日銀に市場を見てもらわなければいかぬ、日銀はひとつ何とか見ていただけますか、じゃ考えましょう、こういうことで市場から株を買い上げる、それから共同証券の強化をする必要がある、その共同証券に対しては金融をつける場合、日銀がしりは何とか見ましょう、それがクレジット・ラインを越すとか越さぬとか、一体特別の金利を付すとか付さぬとか、そういうものをお互いがもっとその状態に合いながら考えていけばいいんで、日銀としては大体このような考えでいきましょう、こういうようなすなおな気持ちで結論にみんなが到達をしたわけであります。  あなたがいま指摘をせられておるのは、その共同証券に流れる金のルート、これは一体日銀から直接貸すのか、都市銀行を通じて貸すのか、日証金を通じて貸すのかという問題がございます。私は、共同証券だけでどうにもなるわけでありませんから、ですから、証券会社全部も総力をあげて共同責任のうちにやらなければならぬということと、ストレートに近い金融の方法をとらないとタイミングを失する。結局倍も三倍も金を貸さなければならないようになるかもしれませんので、せっかく開いた日証金に対するルートも活用されてはどうかということを申し上げたんです。こういうことだけ私はざっくばらんに申し上げているわけです。ところが、日銀総裁は、現在の段階においては都市銀行を通じて、都市銀行は手数料も取らずにストレートに出すということでございますし、都市銀行を通じた場合には、間違いなく四大証券の株を買い取る、その金は都市銀行に返させて、それを日銀に吸い上げるから、金は出さなくてもぐるぐる回って、共同証券には株は相当行くので、調整のしり抜けにはならない、日銀さんが考えられる最も合理的な考え方、こういう道が現段階においてはいいと思いますと、こうお答えをしているわけです。でありますから、私と日銀総裁の間に具体的な問題や考え方に相違があるということではないわけでありますので、御理解をいただきたい、こう考えるわけであります。
  29. 野溝勝

    ○野溝勝君 この際、日銀総裁の所見をお伺いしたいと思います。申すまでもありませんが、今日の株式市場なり投資は、昔と違いまして、相当に大衆化、社会化していますから、この点を十分考えに入れておいてもらわなければならない。たとえば、日銀はやはり引き締め論を主張しておる、一方、大蔵大臣は緩和論に傾いた、というように巷間では受け取るとすれば、これは重大です。この点について、お答え願いたい。
  30. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまの御質問でございますが、私と大蔵大臣とはしばしばお目にかかりまして、この問題についてのお話し合いをいたしておりまするし、また日本銀行当局と大蔵省当局も常に緊密な連絡をとりまして、十分な意思の疎通をいたしております。したがいまして、これらの問題につきまして私は意見の食い違いがないということを確信いたしております。  ただ、大臣がるるお述べになりましたように、まあおのおのの立場もございまして、私どもは主として現実の問題として日々の情勢を慎重に考慮しながら進めております。現に、国全体の問題といたしましては、日本銀行を中心として金融引き締め基調をとっております際に、何と申しますか、それに派生する一つの対策としてこういう問題を扱ってまいります関係におきまして、まあ私はそれを常に意識しながら、ただいま大蔵大臣がるるお述べになりましたような趣旨で同調を申し上げておるというかっこうでございます。その間に何らそごがございませんことをはっきり申し上げておきます。
  31. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は、この際ひとつ希望を申し述べておきますが、先ほど大蔵大臣は、長期、短期の計画を着々やっていきたいと思う、こういうお話でありました。それはけっこうです。しかし、いま申したとおり、これに関する大蔵・日銀当局首脳の発言の違いがあれば、その影響するところは非常に大きいわけです。そこで、株式市場を今後軌道に乗せるといってもなかなかむずかしいし、私は非常に困難だと思っていますが、それだけにこれから光の両当局首脳のいろいろな発表には十分慎重を期してもらいたいと思うのです。端的にいって、緩和といっても締めていくといっても、場合によってはいろいろな手を打たなければならぬときも私はあると思うのです。ですから、ひとつ大蔵大臣と日銀総裁は緊密な連絡をとって、発表にはあまり誤解や疑義を持たせぬようにしてもらいたい。これについてはお答えなくてもよろしゅうございます。  次に私がお伺いしたいことは、株式市場の現状や問題点あるいは正常化、安定策について先ほど来いろいろお話がありましたが、私は、今日の株式市場は全く機能麻痺寸前にあると思うのです。大体九月二十八日の東京市場は共同証券の買いささえがあった程度で、単純平均株価は三十三年一月以来の百円大台割れという惨たんたる状態ですからね。こういう状態にあるときですから、正常化対策あるいは安定対策といいましても、なかなか容易じゃないと思うのです。  たぶん大臣も日銀総裁も、こらんになったと思うのですが、九月二十九日の朝日新聞「声」という欄の投書をここで披露します。それは横浜の山田雄造氏の「取引所を本来の形に、株式市場に根本改革を」という投書です。私はこの投書は端的に問題点をついていると思います。読んでみますと、「株式市場不振について当局および業者が対策を協議しているが、現在の状態では小手先の対策や一時的な融資などで維持回復できるものではない。元来、取引所は財界の公器であるべきものが、投資信託資金を背景とする少数の証券会社に乗取られ、公器は私器と化してしまった。本来の公器たる取引所に還元しなければ、いくら太鼓をたたいても大衆はおどらず、不信は回復しない。わが国には現在、取引所という高等機能を有するものは存在しないと言えるのではないか。すべて市場にすぎない。そこでの価格は公正な競売買で自由に決定されたものとは言いがたい。価格を決定するさいの実際の売買数量と、価格が決定したあとから出される業者の付出しによるバイカイという形式の売買数量と、いずれが多いか。政府は、いまや取引所政策について基本的な検討と改革を考慮しなければならない段階だ。」、こういう投書です。この見解は一部の人たちだけでなく、株式市場に関心を持つ人はおそらくだれでもこのように見ているものと思う。われわれもそう思っています。だから、真剣に当局は考えてもらいたい。特に、当局は来たるべき国会に証券取引法の改正案を出す意向のようでございますが、これらの意見はよく取り入れて検討してもらいたいと思います。  そこで、次に具体的に質問いたしますが、過般示されました大蔵当局の株式需給安定対策について私は次のように解しております。先ほど大蔵大臣のお話にも出ていましたが、要するに日本共同証券の拡充強化、日銀からの融資、それと明年二月以降の増資抑制、こういうことだと思いますが、もちろん、これは当面の短期対策であり、先ほど大臣長期、短期の対策を立てると言いましたが、長期対策について所見をお聞きしたい。私はいま参考までに投書を読み上げましたが、こういう根本的な問題点も考え長期対策を立てようとしておるのか、どうなのか。この点は重大でございますから、御所見をお伺いしたいと思います。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、二、三きめましたものは、まず当面する対策としてでございます。しかし、この当面する対策に対して各界の御協力を得る以上、政府長期的な見通しに対しての基本的な姿勢を明らかにする必要がございます。その意味において、先ほども申し上げたとおり、自己資本比率を上げるために、直接資本市場の強化育成策としては税制上の処置を考えます。それから、証券取引法の改正をいたしまして、ただいまの新聞記事で御指摘になりましたが、それと同じこと、いわゆる市場と、その中の大きな構成要素である証券業者及び取引所の機能、こういうものと、それから金融問題、こういう問題に対してひとつ長期的な整備を行ないます、こういう基本的な考え方を申し上げて、政府もそういう姿勢でございますから皆さんもひとつ当面する問題に御協力いただきたいということで、当面する問題としていま御指摘になられたようなものが考えられたわけであります。同時に、先ほど木村さんが御指摘になったように、証券業者がその場を糊塗して済ますようなことではなく、ここでひとつ抜本的な組織の整備ということも考えなければいかぬ、このように考えておるわけでございます。  まあいまこの段階で申し上げるのはどうかと思いますが、いずれにしましても、いろんなこと——あれが悪い、かれが悪いという原因はたくさんございます。戦後の証券市場は非常に日が浅い。それから、占領軍が財閥解体でもって、持っておったものを少数の証券業者をして大衆にはめ込ました。これから、成長が高かったので増資増資というものでもって、株式の需給バランスが多少くずれつつある。政府はそれに対して税制上の措置などをやったかというと、必ずしもというよりも、まあそうやっておらぬ。こういうようないろんな問題がございますので、開放経済のベルを押すとすれば、こういうものを当然前提条件として具備さすべきであったというようにも考えておりますので、根本的な問題につきましては、来たる通常国会をめどにしまして、四十年度予算編成、四十年度税制改正、かかるものとも平仄を合わせながら、ひとつ根本的な長期対策を立てたい、かように考えております。
  33. 野溝勝

    ○野溝勝君 まあそういう考えのあることはけっこうでございますが、ここで見解を加えて、もう少しくお聞きしたい。前にも触れましたが、今日の株式市場は確かに大衆化しており、零細な人々も盛んに投資をし、そして今日の不振はこれら大衆投資から株式市場が不信をかって見放されていることによるわけです。そうであるだけに、私は当局に対して、この問題に真剣に取り組んでもらいたいというわけです。  そこで、いま長期対策についていろいろ考えておると言いますが、その対策の基礎として、当局は今日の株式市場の原因、問題点をどのように見ているか、これはじっくりと聞きたいとこです。今日、池田内閣はひずみ、ひずみというが、ひずみというのをどういうふうに解釈するか。私は穴があいたと解釈している。言い方をかえれば、ひずみでしょう。どちらとも解釈できるのだが、どっちかといえば、成長政策により穴があいた、私はこういうふうに解釈しておりますが、どうでしょうか、この解釈は間違っておりますか。穴があいた、こういう解釈はどうでしょうか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は野溝さんを非常に長く存じ上げておりますので、まあ非常にうまい表現であるし、私もよくわかります。
  35. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、大臣先ほどこれにはいろいろ原因があると言いますが、その原因は、私はざっくばらんにおもな要因として二、三あげてみたい。ひとつ参考に聞いていただきたい。  第一には、根本的なものはやはり自民党政府の強引な成長政策により穴があいたというところに原因がある。それを反省しなければならないと思う。大体、この三九年までの過去五ケ年、経済成長率実質九・二%、それに対して国家予算伸び率一般会計で二二・五%、財投で二一%、こういうふうに成長率を大幅に上回っており、明らかに政府政策的に過度に経済活動をおおっていますよ。このことから、経済活動全般を掘り下げれば、いよいよはっきりするが、とにかくこういうことだから、明四十年の財源不足や株式市場の危機到来は当然というべきではないか。こういう点も十分考えているかどうか。  次に、企業経済を見れば、企業企業で過度に増資、借り入れ、増資、借入れで、景気がよければよいで、そして悪ければ悪いで、どんどん設備増強をはかってきた。その結果が浮動株を急増さしたと思う。あの朝鮮動乱の当時、まじめにやっておった者はばかをみた、思惑をやった者はこのときにべらぼうにのし上がったというようなことがあって、企業家は何でもかんでも増資やら、あるいは借り入れを盛んにやったと思う。このこともやはり一つの原因になっていると思う。そこへもってきて、先ほどもお話がありましたけれども、政府は高度成長政策だ。朝鮮動乱のときのようにバスに乗りおくれたらいかぬぞという、こういう株式会社がよろしくない。さらにこれを証券会社があおってあおって、あおり立てる。私はこういうことが原因になっておると思う。とにかく浮動株が急増したが、次のことがこの事情を如実に示していると思う。三十五年、三十六年、三十七年の三カ年の法人企業設備投資というものは約十兆という巨額にのぼり、利潤もばく大な額にのぼっております。そして、これはほとんど大部分は増資、借り入れですよ。さらに三十年以降日銀−市銀、市銀−企業関係はオーバー・ローンです。そして最近の三十八年の自己資本比率はわずかに二六%しかない。これは政府統計ですから、間違いないでしょう。こういう具体的な事実をつかんでおられる当局でございますから、その上に立ってどうすればいいかということをやはり考えなければいけないと思う。  次は、証券業界の問題で、まず投資信託です。私の知人など投資信託を買って、いまひどい目にあっている。こういう人たちは、証券業者のPR——優良銘柄をみんなあれしてますからという、これを信用してやった。ところが、とんでもないことになった。これは証券業界、特に大証券に問題がある。さきにあげた朝日の「声」の欄にもあるように、「元来、証券取引所は財界の公器であるべきものが、投資信託資金を背景とする少数の証券会社に乗取られ、公器は私器と化してしまった。」といっているが、現実は全くそのとおりで、ここに問題があるわけです。こういう点を長期対策の中にも考えていかなきゃならぬと思うんです。実際、投信は、好調なときは浮動株を吸収してプール機関の役割りを果たしたから弊害を免れていたが、ここのところの不振で投信はプール機関どころか、逆に放出機関に変わった。今後償還期が来ればどうなるか。昨今巷間では、四大証券をはじめとして非常に苦しいために、ある会社は不動産を売っているとか、他の会社は預かり株を利用や二重売りをして資金繰りをやっているとかの話が耳に入る。まことに憂慮すべき事態があります。これらの点もやはりその対策の中に考えていかなきゃならぬ。  次に過剰株式について聞いておきたいと思いますが、私は、この過剰株式について、投資信託関係で二千億、証券会社の証券勘定で一千億、投資勘定のデッドストックで一千億、それに上場株式四兆のうち、第二会社などにあるもの四千億、これは二月以降増資抑制となれば放出せざるを得ないものと思うが、合計数千億にのぼると見るが、当局は二千億ぐらいのところを見て、共同証券への融資をするのだと言っていますが、おかしいじゃないですか。どういうように計算しておるんですか。  時間の関係もありますので、私は自分の意見を述べて、最後に大蔵大臣なり日銀総裁からお答えを願うことにいたします。そういう点をどういうふうに考えておるか。まず、その考えを持っておるかどうか。また、そういうことも考え長期対策を立てようとしておるのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私からお答え申し上げます。  まず第一番目に、成長政策をやったのがおおよその原因だということでございまが、成長政策の中で高度の成長を続けておって、これから安定成長に向かおうとしておるわけでございます。高度の成長政策を続けておりましたときは資本が過小であった。資本が、短かい時間に立ち直ってきたわけでありますから、資本過小ということがあったわけでございます。資本過小ということが一面にあるにもかかわらず、株式市場はだぶついておるじゃないか、増資抑制をして市場から株を買わなきゃいかぬじゃないか。それで、あなたいま二六%と言いましたが、事実現在の自己資本率は二三%に下がっておる。だから、一面においては自己資本比率を上げるために資本の増加に対しては特別な政策さえも必要である。増資促進の状態であるにもかかわらず逆な現象で騒いでおるということはまことに皮肉であるということは、まあそのとおりでございます。  ですから、成長政策が必要だったということはこれは論を待たないところでございまが、その中の一つのひずみと申しますか、一つの現象として、なぜ高度成長が行なわれて伸び過ぎてきたか。これは金融、社債、株式、この三つでもって資金調達を行なうわけでございますが、国民資本が小さいために資本市場から急激に吸い上げるわけにいかぬ。資本市場といっても金利題問とか、いわゆるオープン・マーケットというものもないわけでございますから、これは非常に弾力性がない。一番手つとり早いのは何か。銀行から借りる。銀行も金は無制限にありませんから、やはり政府という考え方から、政府一般会計財政投融資、そして一番安直なのは日銀から借りるほうが一番いい、こういうことでとにかく今日まで来たことは事実であります。でありますから、銀行はオーバー・ローンの解消、金融の正常化をはからなければいかぬ。こういうことが一つの大きな政策であります。同時に、企業はオーバー・ボローイングの解消、金融の正常化をはかって、オーバー・ローンを解消し、企業のオーバー・ボローイングを解消する。あとに道があるか。生産をやめるか。やめられない。そうすれば、公社債と自己資金の両市場から資金を調達する以外にないのであります。ですから、安定成長といえども、どうしても七%ないし九%の実質成長率を確保しなければならない。それ以上に下がれば大不景気になる、この事実も動かせないことでありますから、そうであるならば、資本市場、社債市場の確立が焦眉の急である。これも全く論のないところでございます。でありますから、こういう御指摘になった事実を十分踏まえて、長期、短期の両政策を立案しておるということを理解していただきたいと思います。  それから、投資信託のお話もございましたが、これは一時には投資信託制度というものをつくったために市場の拡大要因になったということは事実でございます。ところが、現在投信だけでも十二月までに百二十億の払い込みがある。こういう事実から考えてみても、また先ほどあなたが指摘をしたようにバイカイをしてつじつまを合わしている、こういうことからいいますと、今度逆に市場の圧迫要因になっているんじゃないかという見方もあるわけであります。でありますから、どうしてもこの四社が、投信十社が持っておる株のダブりがあるならば、それを共同証券や何らかのものでどんどん吸い上げなければならぬということがそこで起きてくるわけであります。  もう一つは、これは議論されておらないことでありますが、当然将来議論されなければならぬ問題と思いますから申し上げますのは、銀行から、日銀から金を借りたり何とかしてやってきた。ですから、自己資本比率の少ない中でだれが一体大株主かというと、銀行が中心になって、銀行とか保険会社とか、機関投資家というのが一番の大株主でございます。だんだん大きくなった。ところが、銀行が、投資を必要とする。この金は一体だれから増資をするか。自分が大株主であるところの産業が大きくなったんだから、今度は銀行の資本参加をせいということで、いま産業の大資本は銀行であり保険会社であり機関投資家であります。同時に、そのまた逆の銀行の資本家は大産業であります。ですから、相互持ちになっているわけです。これはほんとうからいえば、架空株であり水ぶくれ株であります。こういうものがもしやめられるとしたならば、市場から株を買い取る必要がないのであります。ですから、こういうものにもメスを入れたい。  だがしかし、これはいま言ったように、先ほど木村さんから御指摘がございましたように、金融調整などをやると両方から売ってくるのであります。金融機関もしょうがないから、三銭六厘のコールを四銭出しては買えないから、手持ち株を売ろう、不動産を売ろう。これは市場圧迫の要因になる。同じ時期に、銀行からオーバー・ボローイングをやめなさい、増資をやめなさい、こう言われると、土地を売る、持っている株を悪いけどまた買い戻しますといって換金をするということで、いつも十二月にはそういう措置で非常に株が下がるという事情があるのであります。これは日本の特殊性であります。これはだれが考えてもいなむことのできない事実であります。  十八、九年間に築き上げて、今日の状態をそのままに評価すると、そういう状態であります。ですから、いまの状態で金融調整を続けていく場合にはどうなるか。ある意味において自由資本市場にしわが寄る。ですから、一つずつの問題だけで今日の問題は解決できないのでありますから、あなたがいま御指摘になったような事実を大蔵省は十分勉強しております。ですから、各社別にいま勉強もしておる。一体水ぶくれ株というものは双方とも配当しないでいい場合によったら配当しよう、配当した場合は税制上は法人間の配当に対しては益金不算入の制度がございます。まあ至れり尽くせりでもって今日までうまくやってきている。こういう制度、こういう実態、これを全部机の上に並べて、将来の一体産業資本はどういう比率で、どういうふうにならすべきかというやっぱり青写真を書いて、これに合うような政策を進める、こういうことでございますから、案外大蔵省は何もしなかった、勉強しなかったとかいうことじゃなく、今日まで勉強して、少し策おくれと言われるかもしれませんが、いろいろの問題を勉強いたしておりますから、間違いのない政策を着実に進めてまいりたい、こういうわけであります。
  37. 村松久義

    委員長村松久義君) 野溝君に申し上げます。日銀総裁に約束の時間が来ておりますから、もし簡単ならば了承を得てひとつ質問していただきたいと、こう思います。よろしゅうございますか、参考人の方……。
  38. 山際正道

    参考人山際正道君) はい。
  39. 村松久義

    委員長村松久義君) もう一問だけ。
  40. 野溝勝

    ○野溝勝君 総裁、もう一問だけ。  これはひとつ大蔵当局並びに総裁にも十分御配慮願わなければならぬと思いますことは、証券界をよくするという、もちろん、政府で対策を練ることは当然でございますが、やはり投資家がなければ、幾ら政府で手を打ったって、限りのあるさいふでございますから、限りがある。そうすると、日本の経済というものがやっぱり前向きでないと、証券市場というものも私は発達しないと思うのです。救済、育成という受動的なものではなくて、自主的、能動的なものにさせなければならぬと思う。それには日本経済のやり方がどうかという政策になってくるわけです。  さきにも成長政策のもたらした穴であることを指摘しましたが、日本経済を全体として見て、特にいまの中小企業がこういうような倒産——木村委員要求で、ここに資料が出されておりますが、実際、九月だけで三百何十件もあるのですな、倒産が。これは平均月三百としてみて、年間を通ずれば三千何百件になるわけです、大ざっぱに見て。こういう事情では幾ら笛太鼓でもって宣伝をして、幾ら大蔵省と証券業者と日銀と三者が協議して案を出してみたところで  出すなというのじゃない、出してもいいのですが、とても投資をする気持ちになってこないと思うのですね。そうすると、中小企業対策をどうするか、あるいは農民対策をどうするか、問題はここだと思うのですよ。この点いまの予算を見ると、政府ではやれ中小企業対策とか、あるいは農業対策とかいっておるけれども、どうもぴんとくるものにはなっていないのだね。そうすると、大衆投資というものは出てこないですよ。特にオリンピックだといってオリンピック景気をあおっておりますけれども、これも私はたいして株式界には影響しないと思う。そうすると、中小企業対策——まあとりあえず具体的にいえば中小企業対策、これを一体どういうふうに具体的にするか。この点を見て、少しずつ中小企業がゆとりを持つような施策をしなければならぬ。  大体、私が調べたところによると、これは全部ではありませんが、三千万円の資本金を持っておるものが、量ですか、それが三億円、その利益を一〇%として、そのうち六、七〇%近くを税金に取られる。これは大蔵大臣、よく考えて、あなた官僚出身ではない大臣で、しかもあなた自身も経験されたと思うから、この点を政治としてぴしゃっと手を打たなければだめですよ。六〇%も七〇%も持っていかれ、それに金融の道が押えられておる。親会社からはひどい長期の約手を預づけられる。高くなるばかりの原材料や労働賃金と金利は払わなくちゃならぬ。これじゃどうしようもない。そういう点で貯蓄奨励だの、株式投資をしろだの、魅力を持ってやれといっても、持てない。ですから、こういう点に対して十分私は配慮する必要があるのではないかと思うのです。特に税制上、主要産業はほとんど大企業については租税特別措置があるが、小さいものには何にもないじゃないですか。税制の面から何とか考えなきゃ、取り立てばかりしておったのではだめですよ。自然増収が少ないからといって、中小企業のような弱いところへ行ってたたいたり、百姓のところへ行ってたたいたのじゃ、それはいい政治とは言えない。こういう点を考える。現に、倒産の事情を考えてもそうじゃないですか。さらに、不渡り手形というようなものはどのくらいあるのですか。想像以上ですよ。  こういう現実の姿というものを政府は正しく見なければいかぬと思う。見ておっても、ほおかむりするのかどうか知りませんけれども、こういう点にどのくらいあなたたちは配慮しておるのか。株を買っても、税金を取られる、あげくのはてには資産を調査されるというようなふうな状態では、株式投資をするという気持ちにはなれない。そうかといって思惑にまかすというのじゃない。株価も、統制するわけにはいかぬだろうが、やはり最低値と最高値、少し魅力がなければいかぬから弾力ぐらい持って、そうして下にはこれ以上下がらない、上はこのぐらいというようなところを見て、そうして金利も銀行金利よりは少し上回っているというような安定した状態のもたらされる政策がとられなければならないと思う。こういうふうに考えております。  それに、もう一つ聞いていただきたいのは、大衆投資家の保護についてです。業者の誇大宣伝とか過剰サービスとかいろいろあるが、今日証券取引法によって上場会社は法定監査を受けることになっている。このことについて、ちょうど証券局長も、松井君も来ておるし、その他関係当局も来ておるから、事務当局もよく聞いておいてもらいたい。従来、この法定監査において、公認会計士の限定意見のついたものが相当にあります。この法定監査というものは大衆投資家の保護の上から法律できめたものであります。しかし、現実には保護されていないのだね。公認会計士の限定意見のついたものが公示されるわけだが、事実は、しばしば単に監査がなされ、公示されたというだけで、結果においては何等の効果もなく、大衆投資家に損害を与え、企業はつぶれていく。この法定監査の実効は、現実に大衆投資家が保護されなければならないはずであるが、この点が制度上盲点になっている。この監査の実際化、完全化について何ら措置されておりません。ですから……
  41. 村松久義

    委員長村松久義君) 野溝さん。
  42. 野溝勝

    ○野溝勝君 こういう点について……。これは最後ですから、委員長、許しなさい。こういう点について私は責任を持って大臣と総裁から御所見を承りますれば、私はこれで打ち切ります。
  43. 村松久義

    委員長村松久義君) 日銀総裁、お答えがあればお答えをして……。
  44. 野溝勝

    ○野溝勝君 お答えできるところだけしてください。
  45. 山際正道

    参考人山際正道君) 中小企業問題に関しましては、日本の全体の経済機構のうち占めている非常に重要な度合いにかんがみまして、私どもも平素から非常にその消長については心配をいたしております。  ただ、金融問題に関して引き締め態勢をといます場合においては、とかく現在の場合においては、中小企業にしわが寄りやすいということは、現実の問題としていわれておりますので、特にその点についての配意は、当初から実はやっておるつもりでございます。具体的には、各支店長に旨を含めまして、所在の金融機関と緊密に連絡をとりまして、できればそういう気配のあるものに対しては、事前に手配をするように、やむを得ず事を起こしたものについては、関係者が寄りまして、その再建についての十分の方途を尽くすようにということで、最小限度にその犠牲及び摩擦を食いとめたいということで、当初から熱心にやってまいっております。幸いにこの点は、各支店所在地におきまして支店長以下関係金融機関が全部協力をいたしまして、わりあいにその協力態勢はよくできております。  たとえば、最近では九州の地区において機械関係会社、鉄鋼会社等が相当まとまって倒産の憂き目を見ました。その際におきましても、この蔓延を防止するためにいろいろな関係機関が協力いたしまして、それは所在の通産局長や財務局長ともよく連絡をいたしまして防止をいたしました。利は最小限度これを食いとめたと考えておりますが、そのような例は所在にもちょいちょいございます。今回はなはだ犠牲者を出したことは遺憾でございますが、一そうその点については留意いたしたいと考えております。
  46. 村松久義

    委員長村松久義君) 参考人、どうもありがとうございました。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業の倒産が、けさの新聞でも戦後最大だということが書いてありますが、件数において最大ということで、負債総額においては非常に前月よりも少なくなって、九月、十月の状態を想定します場合にも、横ばいもしくは下降気味であって、まあ一時よりも負債金額においては小さくなったということは言い得ると思います。しかしこれが四大工業地帯の下請産業というのではなく、地方の零細企業に倒産が及んでおるという事実は看過することができませんので、かかる問題に対しては万遺憾なき態勢をとりたいということでございます。  中小企業に何もしておらぬということでございますが、御承知の支払い遅延防止法の問題、それから融通手形が非常に出ておりますので、場合によっては手形法の改正を早急にはからなければならぬ。歩積み・両建ての排除とか、それから財政資金、オペレーション、現在残額四百億ございます。また、御承知の信用保険制度の拡大とか、中小企業設備近代化合理化の推進とか、税制上の優遇、それから民間金融機関に対する窓口の配慮によって、黒字倒産等を避けなければならないというように、まあ政府としてもできるだけのことはやっておるわけでございます。なお、あわせて、政府三機関の融資率も前年対比四−六月でもって二九・何%、約三〇%増した次第であります。それからまた、七−九月に対しても二四%ぐらいであります。でありますから、昨年度は御承知のとおり非常に信用が膨張しまして、三機関も相当の資金量を出したわけですが、それに比してなおいま申し上げましたように大幡の資金量を出しておるわけでございます。ですから、まあ政府が当初考えました経済成長率が実質七%名目九%、これが一〇%をこすであろうという実勢で、その倍にしても二〇%ということで、その倍に近いくらいの金を出している。  なぜ一体このようになるのかという問題に対して、こまかく計数別に研究をしますと、親企業による連鎖倒産、それからもう一つは既往の債務の累積、それから事業が非常に単一企業であるために新しくこれにかわるような安いものができると根こそぎまいってしまうという企業の脆弱性、それからもう一つは、新規分野に投資をしたために、いままでは在来の企業だけを見ると非常に優秀なんですが、デパートはつぶれないが専門店はつぶれるというような勘定で、運送会社が観光バスに投資するのはいいですが、機械工業会社がホテルをやる、それがまるまるひっかかってしまう。こういう例をこまかく申し上げれば申し上げられますが、そういう特殊ないままでわれわれが考えられなかった倒産の内容もあります。  特に、いま日銀総裁が申されたとおり、融通手形というのがもうほとんど恒常化しておる。しかも、この融通手形を全部調べてみますと、それはおそるべき問題がございます。会社はちゃんと支払いはしているのです。ところが、支払いをするときには手形をよこせと、こういうことがあるようであります。なぜか。親企業の金繰りをつけるために、親企業と下請との間にいついつ融通手形を出し合おう。それが渡らなくなってくるものだから、だんだん融通手形の範囲が大きくなってくる。こういうことは会社の社長に聞いてみても全然わからない。だれが一体やったのだ。経理の担当者だけがやったのだ。経理の連中に聞いてみますと、それはあまりにも現在の法律によるいろいろな制度、報告書がむずかしいので、社長はひっかかってしまうので、社長はあまり経理を見ないのです。経理は経理の専門家であるわれわれがやっているものですから、金繰り上やむを得ずやったと。これは私は非常におそるべきことである。こういうことが原因で倒産件数がふえておるとすれば、一体どういう手を打ったらいいか。私はそういう意味で手形法の改正を早急に打ち出したわけであります。これはある場合法定処置で排除して、時を限定して一斉にこれをつぶすわけにはまいりません。取り上げるわけにはまいりません。一年間だったら一年間の間にこれを整理して、何月何日以降の融通手形に対しては法律何条によるものとするというくらいの制度にしないと、なかなかこれはだんだんと恒常化していくのではないかという特殊な問題もある。  これは私たちも通産省と合議をして、たいしたことはないとか、大体下降線をたどっておると、こういう考えではありません。開放経済に向かっておりますので、この実態をきわめて、排除すべきものは排除して適切な施策をやろう。その間においてはうしろ向きであっても救済的融資が必要であるならばそれも行なう、こういう考え方でいま施策を行なっておるわけであります。
  48. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私はきょうは実際は本格的な質問をしようと思っていたのですが、時間がないのでやめます。公務員の賃金問題だけについて……。  先ほど木村委員の質問に対する答弁に関連しておるのですが、先ほどこういう趣旨の答弁をあなたがなされたと思うのですが、もう予算編成期に勧告が出るならば、あらかじめその予算の中でかくかくのものは天引きするということもできるのに、いつも人事院勧告は後手ばかりに回っておるのだ、こういう趣旨の御答弁だと思うのですけれども、これは関心の深い私たちとしては、非常に関心の深い答弁なので、この点を確かめておきたいと思います。  現在も予算編成のシーズンに入っておりますので、来年度——ことしはともかく来年度公務員の賃金はいかにあるべきかということについて、何らかの形で人事院の意向を聞くのか、私は聞いたってたいしたこともないと思いますが、そういうふうに一体最小限政府自身、特に大蔵大臣自身お考えになっておるのか、この点が一つ。  それから、私はそういうことをしたってたいしたこともないと思いますが、ILO条約なんかの批准の問題と関連して、公務員賃金の真にあるべき姿というものは、やっぱり公務員労働組合と政府との団体交渉という線が一番正しいと思うのですよ。こういう方向に持っていくお考えがあるかどうか。  この二つの点を、あなたの答弁から関連して、ぜひひとつ聞いておきたいと思うのです。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうも、鈴木さんはじきそういうふうに非常にうまい解釈をされるので、どうもあれですが、真意はちょっと違うのです。これは二つの全く違う問題を一つにして議論されておりますから、ひとつはっきりいたしておきます。  これはいまの制度では、四月の民間ベースがきまりまして、これとの格差が出た場合に五%以上は勧告をする、こういうことになっております。しかし、制度上はそうでありますが、八月にとにかく勧告をされて、五月にさかのぼってやれ、こういうことになりますと、制度上これはしようがありませんが、実際問題として千七百億、千八百億というものを捻出することができない場合があり得る。一般公務員の分については、税金でまかなわなければならぬというやっぱり拘束を受ける。ですから、制度上やむを得ないとしても——現行制度はそうなっておりますが、せめていまの制度の思想を踏襲していくならば、今日、八月に勧告はしますが、これはさかのぼってではなく、来年の四月一日からの公務員給与は少なくともこれを下回らないようにしなさいという勧告があるならば、それは予算のときには最優先的にきめざるを得ない。その場合は、差はなくても、さかのぼって四月の賃金から計算したのだから、一年間の分はずれるじゃないか。というのは、この一年間というのは、公務員民間人と法制上、資格上いろいろな問題で特殊性の差を認めるか、これを何年間でもって償却をしていくということにするか、もう少し予算編成権というものと、国会における予算審議権というものと勧告との総合調和がはかれないかということを私は申し上げたわけですが、あなたはそれをもう一歩進めまして、そうではなく、今日これをやった場合には、これはのめ、臨時国会でひとつ出しなさい、今度は来年も幾らか上がるだろうから、それは何%か人事院の意向を聞いて予算の中へ少なくとも何百億か組んだらどうか、こういう問題と二つ一緒にされておりますが、これは財政法上から考えますと、予測できざるものを予測して組んだら、これは国会を通らなくなるわけですから、第一と第二の問題は全然画然とした定義上の区別があるということで、御了解賜わりたいと思います。
  50. 村松久義

    委員長村松久義君) では、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会