○
木村禧八郎君 これは、
大臣はパニック
状態じゃない、正常ならざる
状態だと言いますけれども、その
認識が私は問題だと思うのです。それで、いままでの
証券金融、あるいは金融と
証券との
関係、株式というものに対する株式金融、産業金融としての金融、あるいはまあ
資本市場等に対して十分な施策が行なわれなかった等問題がある。あるいは
証券会社の経営にも問題があると、いろいろ言われました。また、今後もそういう点についてやはり対策を講じなければならぬということも言われましたが、しかし、私はいまの当面の
実態をやはり明らかにしなければ、今後この対策を講ずるについてもこれは真剣な対策が出てこないと思うのです。私は、投資家の保護という立場からも、それから日本の
経済の今後の
健全な
運営ということにつきましても、まず当面の事態を明らかにする必要があると思うのです。
大蔵大臣言わなければ私申しますよ。それはそんな——私も新聞記者をやってきたから、
経済記者を長くやってきておりますから、そんななまやさしい事態ではありませんよ。
たとえば、じゃこれから
資本市場、
証券市場を育成するといっても、いまの
証券業者の
実態はどうなっておるのですか。大体
大蔵大臣は、いまの取引高が激減して——いろいろ資料をいただきましたが、大体
証券界では普通
証券業のペイ・ラインですか、
証券業が成り立つ程度の取引は一日一億五千万株といわれておるのですよ。ところが、いただいておるこの資料を見ましても、この一年間昨年九月からことしの八月まで、これは
証券会社は一カ年の
決算で大体九月末に
決算になるのですね。これを見ましても、昨年の十月が六千九百万株でしょう。十一月が七千八百万株、十二月が八千九百万株、三十九年の一月が一億四千万株、あとは六千五百万株、六千百万株、八千四百万株でしょう。ただ
政府がてこ入れをやった五月が一億五千万株で、あとはずっと下がって、九月、きのうあたりなんか四千万株だというのですよ。これで一体そういう
証券業がぺいするのかどうか。何も私は
証券会社の経営をここで云々するわけじゃないのです。この
実態を明らかにするという意味で、大体みんなもうずっと一億五千万を割っておるので、これで従業員が四大
証券で一社当たり約八千人といわれております。一人の
経費に大体十五万円といわれておるのです。これが一社、四大
証券で十五、六億円の
経費が要るのです。ところが、三分の一くらいになっておりますから、大体十億くらいの赤字が出ておるというのです。月に十億ですよ。さらに、この商品としての手持ちの株式の運用の値下がりがあります。ここに資料をいただきました四大
証券で大体千億ですね。九百八十億手持ちしております。これが二割大体評価が下がるとして、千億として約二百億でしょう。そうしますと、一カ月たとえば十億の損としますと、これは一カ年で大体百二十億、これに評価損を入れれば百五十億か六十億くらいになるのですね。資本金は野村が百二十億で、山一、大和が八十億程度、この資本金以上の赤字ですよ。これで正常ならざる
状態なんて言えますかね。これは四大
証券でそうですよ。中小
証券になったら、これは赤字の数字は少ないかもしれませんけれども、その経営の内容はもっと悪いのじゃないかと思うのです。こういうような
状態のもとで、どうして
健全なる
資本市場の育成、
証券市場の育成ということがいわれるでしょうか。まずこの
実態をはっきりさせる必要があると思うのです。
それで、きょうの朝日新聞を見ますと、日本興業銀行の頭取の中山素平氏が言っておるのですが、このままの
状態だと投資信託の解約が急増していく「
証券会社は解約金支払いのため投信組入れ株を大量に売りはじめる。そうなれば、株価はますます下がり、それがさらに投資信託の解約をうながすという悪循環をくり返す心配がある。」、こうなっておる。「ところが、
証券会社は総額約二千億円にものぼる「過剰株」をかかえ、身動きができない。」、そのほかに、またたとえば増資なんかする場合に会社間で持ち持ちの株がありますよね。そういうのも今後年末にかけてボーナスとか配当支払い金とかの
関係がみな出てくる。こういうふうなことになりますと、それはたいへんなことになるということを中山素平氏も言っておるわけです。素平氏は「
昭和初年の金融恐慌を経験した
金融界の取越し苦労かも知れないが、不安
気分が広がる恐れが少しでもあるのなら、大事をとって予防
措置を講じておくことが大切だ。」、こういうことを言っているわけなんです。これは素平氏なんかも、当時の、
昭和初年の金融恐慌の経験を持っているわけです。私も
経済記者としてそういう当時のことは知っているわけですよ。当時に比べ
証券会社の内容
実態はもうはるかに悪いですよ、これは。
何が原因でこうなったか、これは非常な問題ですよ。この原因を徹底的に追及していけば、これは池田内閣のこれまでの高度
経済成長政策に原因があるんですよ。また、それにつれて、これまで大蔵省の
証券行政に重大な
責任があると思う。ことに、昨年の七月の五日に大蔵省は
証券会社の財務比率に対する通達を出して、それ以来の
証券行政というのは支離滅裂ですよ。矛盾だらけですよ。あの当時にもっと抜本的な対策を講じておけば、私はまだこんなにはならなかったと思うんですけれども、その後の
証券行政は全く矛盾撞着ですね。支離滅裂ですよ。たとえば、会社の経営の
健全化として、なるべく自己資本の
充実をせよといいながら、増資を抑制する。増資を抑制すれば、どうしたって貸し出しが多くなるでしょう。そうしたら自己資本と他人資本との比率は
改善できません。そういう矛盾した——増資を抑制する。そうすると、今度は貸し出しがふえてくる。そういうような矛盾もありますし、それから、あるときは株を売っちゃいけないと言うし、あるときは株を売るようにすすめたりですね、その後は。昨年七月五日の
証券会社の財務比率の通達以後の
政府の
証券対策なり
証券行政のやり方、足取りをたどってみたんですが、ただもう矛盾撞着ですよ。支離滅裂ですよ。こんなことで一体今後の
証券金融、産業金融というものが順調にいくのかどうか。
本来なら、こういうことは自民党の諸君が質問すべき問題だと思うんですけれども、一向こういうことについて御質問されない。この資本主義の
経済は株式会社を
中心とする
経済ですから、株、
証券市場がこういうように動揺しているということは、資本主義の
経済の矛盾を最も端的にあらわしたものなんです。これに対してどういう手を打つかです、今後。
それで、時間がございませんから、
山際さん見えましたし、野溝さんも御質問があるようですから、これから項目的に御質問しますから、
大蔵大臣に端的に御答弁願いたいと思います。
第一は、こういうような
状態になった根本の原因は一体どこにあったか、これが一つ。
それから、当面、さっき私が
証券会社の
実態についてお話ししましたが、どうも聞くところによると、大蔵省は、あまり
証券会社の赤字が巨額に計上されると心理的に動揺をするといけないから、なるべく
決算においては赤字をあまり出さないように、九億程度の赤字にとどめるようにというような内面指導をしているように聞いているのです。そういうくさいものにふたをするようなことは私はいけないと思うのです。この際、もううみを出して、はっきり
実態を明らかにする。そうしないと、また投資家を欺くことになります。この
実態をはっきりさせる必要があると思いますが、そういうお
考えがあるのかどうか。はっきりこれも九月
決算に出てくるのですから、私は変な、ごまかし的な指導をすべきではない、こう思います。
それから、今後の対策としては二つあります。当面の対策があります。たとえば
証券会社に対する融資とか、あるいは共同
証券の増資とか、あるいは増資の抑制、増資を抑制した場合、今後、これも資料をいただきましたが、まだ相当の増資があるわけです。そうした場合、さっきも申し上げました
企業の
体質改善との
関係はどうなるのか。増資を押える、そのかわりに今度は日銀でめんどう見るということになると思うのです。増資をしなければ市中銀行が貸し出しをしなければならぬ。しかし、市中銀行はうんと金詰まりですから、とてもできません。これは日銀でめんどう見るということになるでしょう。そういう当面の対策、これについて具体的にどういう対策、手を打とうとしているか。
それから、最後に、
長期的にこの産業金融、
証券市場あるいは
資本市場の育成についてどういう対策をお
考えになっているのか。これについて、
証券業法の
改正とか、取引所法ですか、ああいうものの
改正、いろいろ法的な
改正、機構の
改正等もお
考えになっているように新聞で伝えられておりますが、そういうこと。
この三つについて伺いたいのです。
それから、最後に、意見として、七月五日の財務比率の通達を出して以後の
証券行政を見ますと、財務比率の通達を出して株が下がった。株が下がると、
大蔵大臣は、当時大体ダウで千四百円から千五百円台が妥当であろうというようなことを新聞記者に話している。これなどは非常な不見識だと思うのです。いまの株は、
証券投資は、産業金融としての資本の実質的な蓄積としてのあれもありますが、多分に思惑的な、投機的な要素があるわけです。そういう場合に
大蔵大臣がここで軽卒な
発言をするということは、こういう投機に対して介入するということです。まさか
大蔵大臣が株をやっているわけじゃないと思いますけれども、それは
政府がそういう株に対する
考え方を発表する、あるいはまた操作をいろいろやって、一日に二十何円と上がった場合、もし
事前にそういうことをちゃんと知って株屋さんに買いなり売りなり注文しておいて、そういう操作をやれば、非常にそこに問題が起こると思うのです。一般の勤労者なり中小業者は汗水たらして働いているのに、そういう投機的な操作によってあぶく銭をうんともうけるというような、そういう事態を起こしたら、これはもうたいへんな問題だと思うのです。ですから、この株価の操作について、これは非常に慎重な
態度を要するべきものだと思うのです。いままで私はずっと
証券対策なるものの新聞を見ておりましたが、
政府の対策が出ると、すっと株が上がるのです。それで、少したつとまた下がる。日銀が
証券会社に融資するということになると、ちょっと上がる。そういう
政策をきめる以前にそれがわかっていて、そして操作されたらどういうことになりますか。まさか
大蔵大臣や日銀総裁がそんなことをするとは
考えません。あしたそういう
政策を決定する、きょう株屋に注文出しておいて、そして操作すれば、もうかることは明らかです。そんなことはもちろんわれわれは想像もしておりませんけれども、これは折り目を正しくしておかないと、前にはずいぶん問題があったわけです。投機的ないろいろな要素を持っているだけに、非常に
国民に不安な感じを与えるわけです。そういう点について、今後私は、非常に不用意な言動等については
大蔵大臣は十分慎重にされませんと、投機的要素を持っているだけに、非常な誤解あるいは不信というものを抱かれておる。本来なら、こんなにひどい
状態にしました
責任というのは重大ですよ。この
証券行政は一体何をやっていたか、これは
大蔵大臣の辞職ものだと私は思うのです。そのぐらいの深刻な問題だと私は思っています。これによって損害を受けた大衆というのはたいへんなものですよ。
それから、第二市場に対しては全然手を打っていないでしょう。第二部についてはどうするのですか。これは第一部と同じことですよ。第一部にはいろいろ手を打っていますが、第二部には全然手を打っていないでしょう。これはどうするのですか。みんな第二部の
中小企業の増資等につきまして……