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1964-06-09 第46回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)    午後一時五十六分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     岸田 幸雄君    理事            亀井  光君            徳永 正利君            大矢  正君            小宮市太郎君            牛田  寛君    委員            江藤  智君            大竹平八郎君            剱木 亨弘君            郡  祐一君            高野 一夫君            野田 俊作君            二木 謙吾君            堀  末治君            吉武 恵市君            阿具根 登君            大河原一次君            小柳  勇君            柳岡 秋夫君            田畑 金光君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    通商産業省鉱山    保安局長    川原 英之君    労働省労働基準    局労災補償部長 石黒 拓爾君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○鉱山保安法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ただいまから石炭対策特別委員会開会いたします。  まず、委員長及び理事打合会について御報告いたします。  本日は、鉱山保安法の一部を改正する法律案について質疑を行なうこととなりましたから御了承願います。なお、次回委員会は、十六日午後二時開会の予定でございますから、御了承願います。  では、鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法律案につきましては、すでに提案理由と、その補足説明を聴取いたしておりまするので、これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣がお見えになっておりますので、ひとつお尋ねしたいと思います。  最近の新聞で、五千五百万トンの出炭が非常に可能性が薄らいできた、五千三百万トンもいかがか、そのために新鉱開発考えねばならぬ、こういうのが出ておりました。もちろんそうだと思うが、その第一の原因は、今日、鉱山保安法改正案趣旨説明にもありますように、三池の大爆発があってから、特に人員の減少が目立ってきたというのですね。そして、もう実際三十九歳ぐらいの平均年齢炭鉱労務者はなっておらないだろうか。特に北海道の一部では、ビルド鉱でありながら、労務者不足のために閉山しなければならぬようになってきた、こういう実態になってまいりましたが、一体今後どういう政策をお考えになっておるか、通産大臣にまず最初にお尋ね申し上げておきます。
  4. 福田一

    国務大臣福田一君) 阿具根委員の御質問趣旨にもありますとおり、確かに今年度の石炭産出といいますか、出炭量は大体五千三百万トンを割ることはもう明らかになってきました。この原因を探究してみますというと、一つは、まあ労務者、特に若年労務者不足しておるということが根本の理由でありますが、もっとも、この若年労務者不足ということは、石炭産業だけではなくて、あらゆる産業を通じての問題でもありますが、特に石炭産業において著しいということは事実であります。また、こういうふうに減産をした大きな原因は、石炭経営というものに対して皆が希望をだんだん失ってきておる、そうしてほかの職に転業したり、いわゆる閉山する山でなくても、だんだん人が減っていく。また、そういうことになるために、その山々において配置転換をやらなければいけない、配置転換をいたしますと、しばらくの間はどうしても能率が下がる、こういうことになりますので、それがかなり影響をいたしておると思うのであります。一方、茅沼炭鉱のような事例もありますように、その結果として閉山をせねばならない、大部分のものを閉山せねばならないというような事態も起きておるわけでございまして、われわれとしては非常に遺憾に考えておるところでありますが、しかし、今年はそういう形でいきましても、来年になれば私はかなり安定した供給が可能になるのではないか。機械化合理化も順次進んでまいります。  一方、これはこれからの問題でありますが、石炭というものはやはり相当見込みのあるものだというような認識を一般に与えていくということが必要でありまして、今度石炭調査団——石炭といいますか、エネルギー調査団欧州のほうへ出ておりますが、欧州方面においては、石炭は非常な有望な産業として見ておるという空気が強いということをわれわれ承っております。その間の事情等をつまびらかにして、そうして今度帰国されました後にどういうふうな考え方を打ち出されますか、われわれはそういう調査の結果も十分見ながら問題の処理に当たってまいりたいと思いますが、要は、やはりあまり労働を強制しない、しかも、相当な生産性があがる産業にしていくということが、第一。もう一つは、そういうことと同時に、場合によっては石炭の将来は、私はこれは初めて申し上げるのですが、炭価の問題も考えなければ解決は非常にむずかしいのじゃないか。もちろんエネルギーでありますから、低廉にして、しかも、安定、こういうことでありますから、低廉でなければいけませんけれども、しかし、必ずしもある程度のことであれば、場合によっては考える必要は起きるかもしれないということまで実は頭の中に描いております。しかし、これはまだ四十二年までにスクラップ・アンド・ビルドを千二百円下げでやるのだという基礎的な方針がきまっておるところに私がこういうものに手をつけるというのは問題でありますが、今後私は研究課題としては持っていきたいという感触を実は抱いておるものであります。こういうこと等々を順次やることによって、石炭産業というものはやはり有望な産業であるという意味が各方面に徹底し、また、事実経営自体合理化され、りっぱな産業として成長するように指導をいたしてまいりたい、かように考えております。
  5. 阿具根登

    ○阿具根登君 石炭産業は、これはまあ年々歳々繰り返しておりますが、労働力不足したという場合は、一番最初石炭産業労働者が減るわけです。戦時中も、御承知のとおり、戦争に行っている者を一番最初に帰ってもらいたいというまでなって、途中から帰したのが石炭産業です。さらに、戦後ドイツ経済が非常に復興して、ドイツ労働力が足りない、そのためにイタリア、ベルギー、日本等から炭鉱労働者ドイツ炭鉱に派遣された。そのとき、私は通産委員会において、必ず日本も、経済が上昇してきたならば、石炭産業労働者が減りますよ、石炭産業労働者をかり集めなければいかぬようになりますよという質問をいたしました。そのとき本気で受けてはくれなかったのですが、産業が伸びる、景気がよくなる、そういうことになったら、一番最初炭鉱が減るということは、炭鉱危険性が一番大きいのと、待遇が悪いということです。事実各炭鉱を回ってみまして、坑内仕事をしておりながら、自分の妻を内職させて生活を守らなければならぬ。こういうことでは炭鉱に魅力はない。かてて加えて非常な災害が起こってくる。そうすると、千二百円はきめられた、四十二年までのコストダウンでございますが、そうしますと、人員の十二万名が、もうすでに十二万名を切ってきた。四十二年までに十二万名という線が調査団から出されている。コストは千二百円引き、石炭は五千五百万トン。ところが、コストの千二百円引きだけは、これは守られていくわけです。石炭の五千五百万トンがすでに五千三百万を切ってきた、労務者の十二万名がすでに今日十二万名を切ってきたというようになれば、調査団調査結果の答申が、もうすでに破綻してきた。もう一度調査団を編成して国内炭鉱調査せねばならぬ事態になってきたのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。いまの答申案どおりで四十二年までおやりになるつもりかどうか、お尋ねしたいと思います。
  6. 福田一

    国務大臣福田一君) これはもう少し推移を見ていきたいと思っております。いま四十二年までのいわゆるスクラップ・アンド・ビルドの計画が、お説のように、労働人員の面では確かに食い違っておりますが、それにはいろいろの原因があったと思うのです。私は、その原因が予期し得ないものが中にもあったと思いますし、また、若干は予期できたものもあったかとは思いますが、いずれにしても、この段階においてまたもう一ぺん根本的にあの考え方考え直すということは、すでにいろいろな手を打っておりますから、それじゃそういうこともやめてしまうのかというような誤解を招くおそれもありますし、一応もう少しまあ年度内ぐらいは私は見る必要があるのじゃないか、私はそう考えております。しかし、年度内において問題が解決しないというような場合においては、これはもう一ぺん考え直してもいいんじゃないか、そのときにはまたひとつ構想を新たにするなり、あるいは調査をもう一ぺんやり直すなり、いろいろのことを考えてみてもいいのではないかとは思っておりますが、いずれにしても、エネルギーという面からいいますと、私は、相願わわくは五千五百万トンという線だけはどうしてもエネルギー源の中に加えて、国内から出すエネルギー源として石炭の五千五百万トンというものだけは最小限加えておきたいというのが私の考えであります。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあエネルギー源としての国内炭を五千五百万トンという線だけはくずさないと言われる大臣の説には全く賛成でございます。  そこで、法律案の中に入っていきたいと思うのですが、三池災害が起きてからすでに半年を越しました。しかし、依然として直接の原因は何であったかということがわからないわけです。間接的に、あるいは必然的に起こり得るというようなことでものを申せば、確かに合理化が行き過ぎて、そして保安よりも生産が先行しておったということは、これは言えると思うのです。実際爆発が起きてからの三川坑の現状を見てみますと、あれだけの保安設備があったならば四百五十八名のあの生命は救われたかもしれない。いまあのままの爆発があったとしても、おそらくあれだけの大事故にはならない、こう思うわけなんです。そうしますと、日本国中の炭鉱を見て回りまして、あれだけ設備してあるところはどこにあるのか、一カ所もないです。そうしますと、何か事故が起こると、そこだけは監督官が非常にやかましく言って整備する。事故が起こらなければ経営者の言うとおりに、まあ皆しっかりやってくださいよというようなところでやっておる。まあ三池のようなことが二度あっちやいけませんが、もしも他の山でああいうことがあれば、三池以上の惨害が出てくるのじゃないか、私はそう思うのです。そうするならば、あの直接の原因は何にあったかということを早く科学的に真相をやはり突きとめていただかなければ、みんなの者が、いつガスが爆発するだろうか、炭じんが爆発するだろうかというような心配が非常に大きい。そのために若い人なんか、炭鉱であんな爆発するようなところで働くよりも、外で働いても炭鉱くらいの賃金はもらえるじゃないかということで、若い人は炭坑に下がる者はおらぬようになってきた。そこで、この爆発の真の原因、これは通産省が非常に力を入れて、そうして学者先生方調査を依頼されておりますので、もう結論が出たのじゃないかと思うのですが、一体ほんとうの原因は何であったか、それをひとつ教えていただかなければ、私ら地方に行きまして聞かれた場合に、やはりこれは合理化の行き過ぎで、それで生産が先行して、保安がないがしろにされたからこういうことになったんだと、こういう答弁しかできないわけなんです。で、真の原因はこれであった、間接の原因はこれであった、それがためにはどう対処をするかということをしっかり腹に入れておかなければ、私は、どこの炭鉱労働者も、非常にびくびくしておると思う。一体真の直接の原因は何であったかということがわかりましたならば、ひとつ教えていただきたいと思います。
  8. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のように、非常な危険、しかも、三池のようなところでさえ危険があるということが、いわゆる若年労務者人たち石炭産業に持ってくる場合に、非常に大きな障害になっておるということは、私そのとおりだと思います。したがいまして、われわれといたしましても、原因を明らかにするということに全力をあげてまいっておるのでございますが、ただいまはすでに御案内のように、司法捜査段階に入っておりまして、いろいろ司法当局、あるいは警密当局等関係において調べが進んでおります。われわれとしては、なるべくすみやかにその結論が出ることを望んでおるわけでありますが、まあいまの見込みでは、大体事実調査といいますか科学的な調査段階が六月中くらいに済んで、八月までにはその原因は明らかになるだろうと、こういうことで進んでおるようでございますが、何しろ司法関係に入っておりますので、私たちからこれ以上のことを申し上げることはできませんし、また、その内容も、われわれとしてははっきりはしかねるわけでございます。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 司法調査に入って、おそらくいろいろな資料等もそのほうの手で押えられておると思いますので、これ以上追及しても、それを政府自身がその調査の中に介入するというのですか、なにするということはなかなかできないことでしょうから、これ以上お聞きしてもだめですが、その司法調査の中において原因が明らかになったら、直ちにひとつ発表していただきたい、かように思います。  それから、いままでの保安管理者制度がなくなって、新しく保安統括責任者というのですか、これが設けられるようになったのですが、それも一つの道だとは思うのですけれども、その統括責任者鉱業所長であるか、あるいは鉱山長であるかをするようになりますと、この人は生産担当責任者でもあるわけなんです。そうすると、結局生産保安両方責任を負わされておる。そうしますと、これは営業でありますから、自然利益の多いほうに走るのだろうと私は思うのです。そうして三池のような問題が起これば営業どころじゃないけれども、少々のことならば、これは石炭を出したほうがいいのだということで、生産に片寄りはせぬか、同一人が、保安に力を入れれば生産がおくれるのだというような考えを持っておるこの鉱山所長さん方に対して、保安生産両方最高責任者という責任を負わしむれば、この人はやはり生産に重点がいくのじゃないか、私はこう思うのですが、これはいかがでしょうか。
  10. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のような考え方ももちろんございます。しかし、また、一面から考えれば、保安責任も持つということになりますというと、直接自分責任がくるということになれば、幾ら生産をあげてみても、保安がまずかったということはなれば、その地位を保っていくということはできないでしょう。そういうことになれば両面に非常な注意を払いながらやっていく。むしろ少しぐらい生産が落ちても、保安責任が全部かかるということではたいへんだ、こういうことで、私はむしろ逆になるのじゃないか、これは私は鉱山事情を知りませんから、どうもそう申し上げて、かえってそれは実情と違うと仰せになるかもしれませぬが、私がもしそういう場所に入ったとすれば、どうもやはり保安を無視してやって、そうして事故でも起こせば、もうそれで十何年も二十年もつとめたのが全部ゼロになってしまうということになる。それならば、少なくとも生産のほうは五%や一割滅っても、保安のほうだけは一生懸命やろうと、こういうふうな感じになるのじゃないかと、これは私なりのものの考え方ですから、当たるかどうか知りませんが、そういう意味では、今度のやり方で、むしろ保安に力が入るのじゃないか、こういう感触を持っております。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 確かにいままでの制度よりもいいと思うのです。いままでは、率直に申し上げますと、保安管理者になる人は、将来所長などになれない人だったのです。所長なんかになれない人が保安管理者になっておった、これが各山の事実です。だから、今度は所長責任を持ったということは、これはいままでよりもいいとは思うのです。しかし、名目所長になったのであって、いままで保安管理者というのは、名目管理者であったけれども、会社直属であった、所長直属であったわけです。だから、管理者が、一番責任があるのじゃないかといいながら、鉱業所長は、三池のように、責任をとっていかねばならぬようになっておるわけなんです。だから、今度これが法文で明確になってくれば、いままでよりも責任の所在というものがはっきりしてきたことは事実なんです。そうなりますと、これは保安責任会社にあるから、会社生産責任者保安責任も担当するのだ、こういうことになってまいります。そうすると、生産が順調に伸び、保安が守られていった場合は、その人は順調にそれ以上のポストにのぼっていくでしょうが、今度は、保安の問題が一たん起こった場合に、この責任者というものは一体どういう態度をとるべきか。それは不可抗力ということもあるでしょう。しかし、不可抗力でない場合が多い坑内実情の中で、保安責任会社にあるから、会社生産責任者が、保安責任者だということになれば、生産が上がらなかった場合は、会社業績が上がらないから左遷される、これはわかりますが、保安の場合は、労働者が死んでいくわけです。会社業績が上がらぬどころじゃない、人間が死んでいく。人間が死んだ場合の責任はどうとってもらうか。この点はどういうふうにお考になりますか。生産が上がらなかった場合は、所長は、これは生産が上がらぬから、この人はまあひとつ違う会社にでも行ってもらうか、あるいは転勤してもらうか、そういうことになるでしょう。ところが、人間が死んだ場合はそれはどういうことになるか、こういうことなんです。私も諸外国のあれを全部知っているわけじゃありませんが、私の知っておる範囲じゃ、人間が死んだ場合の責任者というのは相当大きな処罰を受けておる。日本はいままでそういうことはほとんどあっておらない、こう思うわけです。こういう点その一つ責任に対する罰則といいますか、責任をとらせるというのはどういうことが考えられておるかという問題なんです。
  12. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、これはまた事故内容、それから、その山の経営者考え方、いろいろなことが影響してきますから、画一的にお答えをすることはできないと考えます。しかし、いずれにしてもそういう事故がなくて生産があまり上がらないという場合は、これはその人は左遷程度で済むかもしれません。しかし、少なくとも、そういうような不可抗力以外のことで、不注意であったということで事故が起きたという場合は、これは責任者責任をとるのは当然であります。その責任ということになると、単に罰則とか、いわゆる減俸とか、その程度では私はなかなかむずかしかろうと思うのであります。しかし、だからといって、人が死んだ、死んだからすぐにその人はもうやめさせられる、こういうのでもないと私は思う。もし非常な過失があったという場合には、これは刑法上の問題も起こり得ると思うのでありまして、私は、これは決して民法だけの問題ではないと思いますけれども、民法の問題として考えてみた場合でも、やはり不注意であったか、あるいは非常に過失があったか、あるいはもう全然無過失であったとかいうようないろいろな場合が想定できますから、そのときに応じてその管理者地位というものは変わっていくのじゃないか、こう思います。死んだからどうということではないと思います。死人が出たからどうということではないと思います。しかし、いずれにしても、いままでとは違って、直接に責任が及ぶということになったことだけは事実でありますから、非常に注意をしていわゆる石炭生産に当たってもらえるようになるだろう、こう私は考えておるわけであります。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は心配するにはその問題なんですが、これが過失であったか無過失であったかという問題が、はっきりするやつは別なんです。ところが、坑内爆発したというようなとき、何人か何十人か死んだというようなときには、ほとんど現場におる人は死んでしまっているんです。原因がほとんどわからないのです。ほとんど何のために爆発したのかわからないというのが坑内事故の大部分だと思うのです。そして、それがいつもうやむやになって、責任もとったかとらんかのようなかっこうで終っておるから、これははっきり責任がどこにあったのだ、いや、これはどうにもしようがなかったのだというな、はっきりしておるときは、わりかた私は結論が早く出ると思う。ところが、重大災害はほとんど原因がわからないのです。坑内のことですから、なかなかわからない。そういうときに、一体経営者としてどうあるべきか、保安統括責任者としてはどうあるべきかという問題を一応聞いておきたいと思います。
  14. 福田一

    国務大臣福田一君) これはもう私は非常に常識論を申し上げるので、法律の問題ではございませんが、原因が全然わからないというのに責任をとらせるというわけにはいかないでしょう、すぐには。しかし、そういう事故が二度も三度も重なってくるということになれば、たとい原因がわからない場合でも、やはりその人は道義的な責任もあるし、すでに直接の責任者ということになっておりますから、やはりその人には何らかの処置を経営者としてはとるというのが私は姿だと思います。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう重大災害が何回もあれば、これは原因がわかっておっても、当然責任をとらねばいかぬのですが、問題は、人命という点から考えていく場合に、自分の所管しておるところで原因がわからないような事故が起こってたくさんの人が死んだというならば、これは当然責任をとらなければいかぬと思うのです。これは人間生命の問題で、損失の問題じゃないのです。人間生命の尊厳の問題です。損失の問題なら私はこんなことは言わない。しかし、坑内仕事をしておったことは事実である。その坑内で不幸にして爆発等で死んでしまった。そうすると、その問題については、私は当然責任をとるべきだと思うのです。損失の問題じゃない。人命の問題である。そこまでやはり私は人間的な責任を感じなければ、そういう危険な仕事に人を使うことはできないのじゃなかろうか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  16. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、どうもそれはちょっとそこまでは私としてもお答えはいたしかねると思います。無過失責任ということにどうしてもなりますから、無過失責任ということで人が処罰されるのだということになったら、そういう所長を引き受ける人もないだろうし、私は、それは今度は所長になる人の立場になってみたらどうかと思う。とにかく自分としてはできるだけ注意をした、そうして、また、過失もなかった、しかし、人命が損傷された、おまえ責任とれ、それじゃまじめに働いても意味がないじゃないかということに私は通じていくと思う。私はそこまでやるべきかどうかということについては、ちょっとお答えいたしかねると思います。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは刑法とか、いまの憲法から考えればそうかもしれませんが、しかし、無過失であったということがはっきりしないわけなんです。過失であったということもはっきりしない、無過失であったということもはっきりしない。そういう場合に、刑法では、それは過失であったということがわからない以上は無過失とみなすかもしれません。しかし、その現場自分が使用しているのです。自分保安責任者なんです。そうすると、そこでそれでは何人かの人がけがをしたとか何とかいうこともありますけれども、何人か何十人かが重大な事故のために死んだという場合に、私は、これは原因がはっきりしないからおれの責任じゃないのだというのは、これは通らないと思う。私とあなたの対立点はそこだと思う。人間が死んだという現実を前に、原因がはっきりしないからおれは責任とらん、これはそうじゃないと思う。人間生命はそういうふうに私は考えるべきじゃない、もっと尊厳に考えられるべきものだと思うのです。当然その最高責任者というのは、みずからがその責任を感じなければならん、私はこう思うのですが、大臣の答弁を聞いておれば、はっきりしなければ責任とる必要はない、たとい何十人死んでも、はっきりしなければ責任とる必要ないとすれば、一体死んだ人はどうなるのか。それこそ、もう坑内で働くのはいやだということになりはしませんか。所長になるのがいやだという人よりも、坑内で働くのがいやだという人が多くなりはしませんか。それは対象が大きいから、全部が全部じゃないでしょう。しかし、私は、こういう保安の問題について、そこまで突き詰めた考えを持っておかねば保安の完全というものは守れないし、炭鉱で働く人がなかなか集まらんのじゃないか、こう思うのですがね。
  18. 福田一

    国務大臣福田一君) なくなった人もありますが、しかし、また、生きている人の問題も考えなければいけないと思います。私は、正義というものは数の問題ではきまらない、やはり正しいか正しくないかということできめるよりいたしかたがない。もちろん生死の問題が正不正の問題できまっているものじゃありませんけれども、しかし、過失があったからこういう事故が起きたのだということであれば、これはもう責任をとるのは当然でありますが、その過失がはっきりしないのに責任をとらせるということであれば、これは私はその会社経営のすべての問題にだんだん及んでいくだろうと思う。そのこと自体が、いろいろな仕事をやっていく面においても、とにかく事が起きたら、上にいる人は無過失責任をとらなければならんということに相通じていくのじゃないか。私は、仕事のやり方としては、やはり最善の注意を払わなければいけない、また、そういうことがしばしば起きるということでは当然やめなければならん、責任をとるということはあるでしょうが、一度そういうことがあった。しかも、それが過失であったかどうかということが明らかでないという場合には、これはすぐにやめるということに通ずるかどうか、これは問題だと思います。しかし、そうは言っても、今度はその災害の規模が非常に大きい、何かそういうような世間的な一般的なことであっても、そういう常識的に見て、どうもこれはあれだけのことがあったのだから、所長としては責任をとるべきではないかというようなことも起こり得ると思いますよ、それは。そういう感じのときには、それは私は、いわゆる経営者にそういう責任をとらせるということも出てくるだろうと思いますまれども、それはそのときの事故内容事故の起きた場所、時、すべてを判断し、そういうことを判断した上でなければ、私はそういう措置はどうこうあるべきだ、とにかく人が死んだら責任をとるべきだ、こういう考え方には、私としては、にわかに賛成をいたしかねると思います。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは考え方の問題で、数の幅の問題になってくると思うんです。これは政治的にものを言えばまた別ですけれども、たとえばライシャワー大使がけがをされた。それで大臣がすぐやめていく、こういうことも言えるんじゃないですか。それは外国の非常に責任のある方ですから、これはまた当然かもしれません。しかし、やはりそれには反論もあるのです。何でそういうことに責任をとらないかという反論もある。たとえば国鉄で二百人も死んだ、それで国鉄総裁が涙を流して、かんべんしてくださいと言って終わるかといえば、終わるものではないと思うんですが、私は、やはりそういうもっと人間的な立場からはっきりすべきだと思うんです。それは一名死んだからどうだということではないけれども、やはり重大な過失で相当な人が死んだというのなら、その原因がどうであるこうであるという前に、まず自分の出処進退を明らかにすべきだと思うんです。これは炭鉱に限らず、国鉄の総裁もそうだろうと思うんです。それくらい上の者が責任を持たなければ、下がまた責任を持ってこないのです。それで、いま言うように、原因を探究するといっても、四百何十人死んで、一年にもなるのにまだ原因がはっきりしないんです。これはあまり事故が大きかったから所長以下全部おやめになりましたけれども、だから、私は、もっと人命ということについては真剣に考えなければならぬのじゃないか、こう思うんです。  それで、次の保安統括者は、それは保安会社責任であるからそれでいいとして、保安技術管理者及び副保安技術管理者、これを会社側にしておるのが私にはわからない。これが三人が最高の保安責任者なんです。そうすると、やはり統括者が会社最高責任者なら、やはりその二名のうち、一名くらいは働く人がおってもいいんじゃないか、こう思うわけなんです。三名のうち、二名まで会社側がおればいいんじゃないか、一名ぐらいなぜ働く人の代表を入れられないか、こういうことなんですが、この点はいかがでしょうか。
  20. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、三名のうち、一名ぐらいは労務者から出てもいいと思いますが、それを法律できめる必要はないと思います。やはり経営権というものがあるわけですから、経営者が、これが適当だと思えば、三名のうち、三名とも全部労務者から出してもちっともかまわないと思いますが、しかし、それは経営者考えでやらなければいけない。それを法律でもって一名は出さなければならぬということは、少し無理があるのではないかと思うのです。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそれがおかしいと思うんです。法律でそういうことをきめてやらなければきまらぬからこういうことになってくる。これは経営者だから、おまえらが何をやってもいいんだということなら、いろいろな法律をつくるのがおかしいと思うんです。これは自由競争の資本主義の世の中だから、おまえらが経営やるのだから、実際おまえらがきめろということになれば、何も法律でこんなことをきめる必要はない。所長最高責任者保安統括者ということもきめる必要はない。しかし、みずからきめることがなかなかできないからこの法律できめてやろうということなんです。それなら、保安責任者会社から一名置いておけ、技術者も最高の技術者を一名置いておけ、技術管理者にせいと、それはわかる。もう一人ぐらいは今度は働く仲間から一名置いておってもいいんじゃないか。三名のうち、一名ぐらい置いておって、そうして仕事をする人の気持ちも聞いたほうがいいんじゃないか、こう思うんですがね。
  22. 福田一

    国務大臣福田一君) いま御指摘を受けたような職というものは、仕事内容からいっても、会社の内部では相当幅の広い問題を処理しておるわけです。しかし、そういうことができる人がおれば、私は、経営者でもちゃんとそういうふうに裁をするだろうと思います。私だったらやります。やっぱりいい人がおれば。いい人がいるかどうかということは、自分とうまく腹が合ってやっていけるかどうか。腹が合わないのにそれを採れというのは無理と言うかもしれぬ。それでは経営ができやしません。自分と反する者を採用する、そうはいかない。これは給与の問題とは別だと思う。やはり経営の中心をなしておる者はコンビが必要と思いますから、だから、いい人なら全部三人とも労務者をお採りになってもちっともかまわぬ。自分と一緒になってやってくれるというならちっともかまわない。どうもうまくいかないと思うならしょうがないじゃありませんか。それまで法律できめるというのは、私は少し無理があると思います。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣、少しお考え違いになって御答弁になっていると思うんですが、いまの答えでいけば、次の補佐員制度を審議する必要がないんじゃないかと思います。たとえば補佐員は労働者の中から出さなければならぬということで、いまの答弁をそのまま聞けば、この法案は通らないです。率直に申し上げて。いまの答弁でいいとおっしゃるなら、もう保安の統括者を一人きめれば、あとは自分の気に入っているやつを全部入れるということになれば、この法律は要らないんです。保安の統括者を一人、所長がなる、それも要らぬ。おせっかいかいかもしれぬ、会社がかってにやるんだから。そういう答弁はお考え違いになって御答弁になったと思うので、私の言っているのはそういうことじゃないんです。私の言っているのは、当然会社責任を持って保安をやってもらわなければならぬから、統括者はそれでよろしい。しかし、統括者というものは二面の責任があるから、生産のほうにあまり重きを置かないでやってもらうということが一点あるわけです。それから一点は、その補佐として保安技術管理者、いわゆる所長は技術屋でないかもしれぬから、保安の非常によくわかる方、それもよかろうと思うが、副保安技術管理者ぐらいは労働者から出ておってもいいんじゃないか。おれの一言うことを聞かぬようなやつを置いておったらできぬじゃないかということは、これは保安の問題じゃなくて、企業の考え方です。営業考え方です。保安の問題はそうじゃないんです。これは保安をやる人です。石炭を幾ら出せばもうかるから幾ら出せ、それじゃそうしましょうというのは、これは企業なんです。営業なんです。保安というものはそうじゃない。この保安統括者がそこまでやるなら石炭が出ないじゃないか、これは保安上少々くらいだいじょうぶかいと言った場合に、いや、これはあぶないですよと言えないんじゃないですか。この保安の問題は、ただ一人の考え方自分に協力しろということでは、これは保安は守れないんです。だから、やっぱりそういう場合でも、いや、あの出炭は、ここを修理しなければいかぬ、こことあそこを修繕しなければならぬ、あそこはどうもガスが出ておるようだから、しばらく様子を見なければならぬ、扇風機を据えなければならぬという助言者が要るはずです。しかし、扇風機を据えたり現場を点検したり、そういうことをすれば、きょう百トン出る石炭が、あるいは七十トンになるかもしれません。そういう点をまあ話し合って、これならよかろうといってやったほうがいいんじゃないかと私は思うんですが、ただ、大臣考えられておるように、おれの言うとおりに協力してくれ、あそこを出してくれ、あそこを出しましょうというのなら保安は守れぬと思うんです。だから、一名くらいどうでしょう、それも、ただ労働者という感覚だけで一名だといっても、これは保安規則からできません。だから、国家試験にも通った、国家試験の上級試験にも通ったそういうりっぱな人が労働者の中におれば、当然その人はできるわけなんです。東大の法科を出ておっても、坑内石炭を掘れば石炭屋です。会社所長でも、うんと法律に詳しい人でも、石炭を掘るときは一従業員です。石炭を掘っているから何もできぬということではないのです。そうですね。それはりっぱな法学士でも石炭を掘れるのです。石炭を掘っておる人にそのまま法学士になれといっても、それは無理かもしれぬけれども、だから、労働者は何もできないのだということじゃなくして、そういうりっぱな国家試験に通り、上級試験に通ったならば、それだけの資格はあるのだから、そうしたらいいじゃないか、こういう私は考えなんです。
  24. 福田一

    国務大臣福田一君) あなたのおっしゃるとおり、私が先ほどから言っておったのは、まあ一定の資格をとらなければいけない、その点がちょっと私はよく質問を聞いておらなかったせいもあるのですが、それは一定の資格ということがどうしても条件になるだろう、それは仕事の性資上そうなると思うのです。その一定の資格をとった場合に、とった人が三人なら三人ある、そのうちで、労務者から出られた人が一人ある、ほかにもまた二人そうじゃないのでおるという場合、そういう場合を私を私は申し上げておるので、何も労務者から出た者は絶対採っちゃいかぬとか、それはいけないと、こういう意味じゃありません、私が申し上げているのは。そういう場合に、その三人あるうちで、だれを選ぶかという場合に、これは必ず一人でもあれば労務者から採らなければいけないというやり方がいいかどうかということになると問題があるのではないでしょうか、こう申し上げたわけなんです。私は、何も労務者の方が資格があるのにそれを採っちゃいかぬなんて、それはもちろん考えておりません。その経営者はどういうような考えでいるものかということによってこれはやっていきませんと、これはもう労務者に一人できたから、それは必ず採らなければいけないのだというようにしばるのがいいかどうかという問題に、これは議論が集約されるというか、私も焦点がくると思うのです。私は、その場合に、やはり経営者考えにまかせていいのではなないだろうか。大体労務者から上がられて試験でも通られるという人は、実地も知っておるし、力がある優秀な人で、優秀な人でなけりゃなれやしない。おそらくそういう場合に、私は、経営者に対して、変に素質が闘争的なというか、そりが合わぬような人であれば、これはやむを得ませんけれども、そうでなければそういう人も採用される場合が多いだろうと思います。実際問題としては。だから、そういうような勉強でもされるというような人ならばりっぱなお方だと私は思う。大学を出たからえらいなんてひとつも思っていない。大学出がえらいなんて少しも思っていない。そういう意味で申し上げたのではない。私は、同じ資格になった場合、どっちをどうするか、法定でやるのがいいか、どちらでやるのがいいか、自由にするのがいいという意味で申し上げておるのでありますが、やはりいま申し上げたようなところの人は、かなり会社の最高首悩部であります。それはやはりそういう人がいいじゃなかろうか、こういうふうな意味で申し上げたのであります。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりました。私が申し上げておるのも、いまおそらく従業者で上級試験に合格しておる人はほとんどないと思うのです。また、従業者で上級国家試験に通るような人だったら、よその会社でじっと見ていないと思うのですが、これはおそらく非常ないいポストに迎えられると思うのです。職員だって、これに通る人は少ないのです。だから、従業員の中で勉強してそういう試験に通られたなら、当然そういう道をあけてやっていいじゃないか、そうすれば法全体の構想から考えても、何も経営者だけが保安最高責任者なのじゃない。これだけの資格を持っておれば、それはあなた方も資格はありますよというような私は希望を持たせてもらいたいし、保安に対してはそれだけの熱意を持ってもらいたい、こういうことで結論は、いまの問題については大臣と同じようでございますから、ひとつそういうふうに考え方をしていただきたいと思うのです。  それから、これは局長さんがお答えになると思うのですが、今度新しく補佐員制度を新設されたのですが、その一人は鉱山労働者の過半数の推薦により選任されることになっております。そうしますと、炭鉱といっても、百人の炭鉱もあり、一万人の炭鉱もあるわけです。一万人の炭鉱も、組合の過半数の推薦により、たった一人なのか、百人の炭鉱も 組合の過半数の推薦により、一人なのか、まあ極端にいえば、大きな三井、三菱の一万人もおるような炭鉱労働者代表は一人しか出ない、百人の小さい中小炭鉱労働者代表一人おる、それでいいだろうか、坑内の規模の大きさ、あるいは坑道の長さ等を考えればずいぶん開きがあるのに一名ということで、これは一名以上ということになっているから、大体含みがあると思うのですが、大体どういうふうにその点考えておられるか。
  26. 川原英之

    政府委員(川原英之君) ただいま阿具根先生御指摘いただきましたように、法律上は保安監督員補佐員のうち、一人はその鉱山労働者の方、こううたっております。で、なお十五条の一項によりまして、「省令の定めるところにより」ということで、具体的にどの程度鉱山にどうするということは、今後省令の段階において、おそらく保安協議会の意見も徴しましてきまることだと思います。ただいま御指摘がございましたように、その「うち一人は」といっておりますのは、これは法律的に見まして、いろいろな各種の鉱山全部ここで綱羅いたします関係から、最大限の表現としまして、「一人は」と、こううたっておるわけでございまして、一人以上、少なくとも一人はという意味であります。したがいまして、実際問題として、いま御指摘がございましたように、非常に多い鉱山において一人でいいかどうか、これはこの補佐員の制度そのものが、補佐員制度を設けました趣旨も、現物のいろいろな保安実情が具体的に反映していくということをねらっておるわけでありますから、各鉱山実情に応じた形を当然今後とるように運びたい、かように存じておるわけであります。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、私も時間がないし、大体一時間の予定だと言っておりますからやめますが、具体的な例を示しますと、三井三池炭鉱ですね、これが問題になっておるこの法案がつくられるきっかけになった。三井三池は、第一組合、第二組合、職員組合と、三つあるわけなんです。御承知のように。職員組合だって百何十人いるわけなんです。二百人近い人がおるわけなんです。そうすると、第一組合だって四千人近い人がおる、第二組合だって七千人近い人がおる。ただ、過半数だときめて、一万二千人からおる炭鉱だから、一名の補佐員とは考えておりません、おそらく三名か四名できると思うのです。しかし、それを過半数だといえば、一番多い組合から推薦した人々が三名でも二名でも出てくる。そうすると、あの非常に微妙な空気のある中に、一方からだけ出たとすれば保安は守られない、そうすると、やはり少ないといっても四千人近くおる人だから、よその炭鉱から見ればこれは大炭鉱です。そのほうからも保安要員を当然出さなければいかぬ、こうなるのですが、その点いかがですか。
  28. 川原英之

    政府委員(川原英之君) いま具体的に三池炭鉱の事例をおあげいただきまして御質疑があったわけでございますが、法文の形といたしましては、これは保安要員の場合も同様の表現をいたしておりますが、「過半数の推せん」という表現をいたしております。ただ、実際に、先ほどもちょっと申し上げましたように、一人以上置くことができないわけではないわけでありまして、何人置いてもよろしいということでありますが、具体的な問題といたしましては、この補佐員の趣旨労働者の意見が十分に反映できるような形で、これは各鉱山実情によって違うと思うのです。今後の運用の問題になるかと思いますが、この運用におきましてそういう点を十分反映できるような形に——もちろんこれは双方のいろいろ話し合いその他もその間にあると思いますけれども、必要があれば行政的な指導も行なうというようなことで、その本来の趣旨が生きますように、これを設けました趣旨が、かえって、このために逆にトラブルが起きるというようなことはわれわれとしては非常に望ましくないと存じます。そういうような方向で配慮いたしてまいりたいと、かように考えております。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 局長の言っておられる意味はわかるのですけれども、ここでまあ法律のたてまえ上、なかなかはっきりと言うことができないような口ぶりでございますので、私からそのものずばり言いますから、そうなるように努力するのだとか、あるいはそういう趣旨のもとにやっておるのだというような返答をしてもらえば、私はこれ以上追及しないつもりなんですが、先ほど申し上げましたように、第一、第二組合があっても、一方は七千人、一方は四千人、四千人と言えば大炭鉱です。当然ここに二名ぐらいの補佐員を置くのはあたりまえですね。そうすると、やはりそれは何名になるか、それはわかりませんよ。何名になるかわかりませんけれども、そういう考え方から、二つ組合のあるところはやはり両方から出す、たとえば一方は百人であった、一方は二万人であった、あるいは一方は五千人であった、それは百人からも一名出せ、五千名からも一名出せというのも無理かもしれません。あまり飛躍しているかもしれませんが、四千名に七千名というならば、たとい相手が一万あろうと二万あろうと、四千名といえば大炭鉱の部類になると思うのです。当然その組合からも補佐員を出すのだと、法律にはそうは書いてないけれども、一名以上というのはそういうことも十分意味して、そうして、そういうことで保安がより万全に守られるようにするのだと、こういう考え方と解釈してよろしゅうございますか。
  30. 川原英之

    政府委員(川原英之君) 先ほどお答え申し上げましたように、この監督補佐員の制度は、全体の現場労務者の意見の反映ということを本来の目的といたしております。現在いわゆる保安委員会保安委員につきましても、実際法律では書いてないような形に実際には行なわれておるわけでありますが、そういったことも勘案いたしまして、この趣旨が十分生きるような方向に運用してまいりたいと考えます。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 これで終わりますが、総括してただいま御質問申し上げましたように、まあ現在までよりも一歩前進しておるということはわかりますけれども、基本的な線で非常なまだ不安がある。まあ保安の問題は、どこまでいっても、これで万全だということは考えられないと思うのです。たとえばその炭鉱からもう石炭を掘らないのだというなら万全かもしれませんが、炭を掘る限りにおいては、どんな好条件のところでも、地上よりも悪条件であるということは、これはだれが見てもわかることでございますので、この趣旨がほんとうに生かされるように、労働者の意見がほんとうにこれに反映できますように、特に御注意をお願いして私の質問をやめます。
  32. 大河原一次

    大河原一次君 せっかく大臣がおいでですから、一言だけお聞きしておきたいと思います。これは直接この法案には関係がないのですが、ぜひお聞きしておきたいと思うのは、御承知のように、例の第二会社の問題です。いわゆる経営が不振であるということで大きく縮小して、第二会社によって経営の再開をやるという、こういう炭鉱が各所に見られるのですが、この場合、結局われわれといたしましては、御承知のように、先般も国会の中で提起いたしました第二会社はわれわれは認められないのだということでやってきたのですが、しかし、実情といたしましては、山元においては、規模を相当縮小した中でも、第二会社によって今後細々としてもやっていきたいから、ぜひ第二会社を認めさせてくれというような労使双方からの御要望があったわけです。先般も、私の関係しております古河炭鉱においても、そのようなケースの中で、いわゆる第二会社を認めて発足させてくれという労使双方からの御要請がございましたので、原則的にはわれわれは認めるわけにはまいらないし、法のたてまえから言ってもそのとおりであるということでやってまいりましたが、実情やむを得ないということで認めてまいりました。そこで、第二会社が、人員の大幅縮小、三分の一なり、あるいはまた半分という形で縮小の形で、再開に入るわけでありますが、その場合、これは各所に見られる現象なんですが、第二会社によって発足はしたものの、たとえば必要とする人員坑内夫何名とか、あるいは坑外夫何名、全部で幾ら幾らということで発足してみたものの、とたんに事業再開、生産再開といったような時点におきまして、非常に先ほど阿具根委員が触れられましたように、炭鉱に対する魅力がなくなったというばかりではなくて、結局第二会社によって出発はしたものの、またうまくないということで、あるいは会社のほうから言うと、可採炭量はあるけれども、経済炭量がないというような口実のもとに、せっかく再開したとたんに、それでも結局一年間やそこらはやるのでしょうけれども、そういうようなことで、今度は全面的に買いつぶし、売山という形になるのではないかということで、会社側からの要請による人員が満たない場合、そういうケースが各所に見られるのです。私の関係しておる古河好間におきましてもそのようなケースがあらわれている。ですから、これはもちろん筋といたしましては、私は、労使関係の中で、たとえば団体協約という契約の中で、今後事業再開となれば、五年間なら五年間は継続してやります。あるいは十年間だけはこの人員でやりますというような、経営に対する方針を明確にすることによって、労務者の方々も安心して第二会社のもとにおいて生産再開に携わることができるのではないか。私は個人個人からそういう意見を聞いたから申し上げるのですが、これはいま申し上げたように、労使間の契約の中ではなかなかできない面もあるようなんですよ。これは私はこうやれということは、あるいは経営権の侵害だということになるかもしれませんが、こういう面は通産当局において、何か行政指導なり、あるいはその他の措置をもって、労務者が第二会社のもとに安心して今後五年なら五年、六年なら六年という期間にわたって、労働条件の問題については、一応労使間の交渉によって解決はできますけれども、経営再開は今後五年間やってくれという、そういう面についてはなかなか思わしくいっていないような様子なんです。こういう面に対しては、ひとつやはり通産当局のほうから、この経営の指導という面から何らかの行政措置なり何らかの対策をとってしかるべきじゃないかというふうに考えるのですが、大臣から、この点について、ひとつお考え方がありましたらお示し願いたい。
  33. 福田一

    国務大臣福田一君) 御質問の御趣旨はちょっとなかなかむずかしい問題でございまして、われわれは第二会社というのは原則的に認めておらないのは御承知のとおりだと思うのです。そこで、労使双方の間で話がついたときにこれは認める、こういうことにいたしております。その認める場合においても、一定のいろいろの条件に合わないような場合はこれも認めないわけでありますが、その場合に、その条件の一つとして、何カ年間はこれは必ず経営は続けなければならないというようなことを入れてはどうかというような御趣旨に私はとったわけでありますが、大体第二会社をやっておりまして、これは第二会社の中には、三年か五年しかあれがないけれども認めてやろうという場合もあれば、相当の炭量があるけれども、親会社がやめたから、これは続けて第二会社でやろうという場合もある、いろいろ条件が相違するのじゃないかと思うのです。したがいまして、こういう点を考えてみますと、何かそういう条件まで入れるということはなかなか困難だと思いますが、しかし、実際問題といたしましては、スクラップ・アンド・ビルドの形においてなるべくこれを円滑にやっていこうという趣旨から第二会社の問題も出ておるのでありますから、私は、あまり無理なことがなければ、できるだけ第二会社が存続できるように考えてあげるということはできると思いますが、それを行政の、しなければいけないとか、しなさいというような強力ないわゆる命令的なことはなかなかいいにくいのではないか、こういうふうに考えます。
  34. 大河原一次

    大河原一次君 石炭局長おられるようですから、いまの問題、大臣のおことばがあったのですが、これはただ単に経営権の侵害だというような考え方に立たずに、こういうケースは今日までもその他にもございますし、おそらく今後われわれとしては第二会社は認めないという立場に立っておりますので、やはり現地における労使の要請にも、ある程度そのケースによっては、これはこたえてやらなければならぬことがあると思うのです。ですから、第二会社が発足する場合においては、やはり十分に調査いたしまして、特に坑内外等の条件を考えてもらって、相当私は可採炭量もあれば、これはある程度経済炭量があるにもかかわらず、なかなか山元における労使間の中では、一体経済炭量はどの程度であるということの実態調査が山元自体においてはできないのですよ。したがって、そういう労務者の不安を取り除くためにも、やはり現地における条件を十分調査の上に立って、これだけの経済炭量があるではないかというような上に立って、いわゆる第二会社発足において、今後安心して生産再開に従事できるようなそういう措置をやはり一応とらせるように、命令や何かもちろんできないでしょう、経営権の侵害ということも、ある程度考えなければなりませんから。ですから、そういう範囲において指導をしてもらいたい、こういうことを御要望しておくわけです。  それから、同時に、この法案との関係もございますが、これは先般も私は保安局長とも雑談の中でお話を申し上げたのですが、やはり今後の第二会社に関して、事業再開をするということになると、やはりこの山に関する投資の面が十分できなくなってくるでしょう。同時に、また、優秀な保安監督者という方も、やはりこの事業縮小の中に巻き込まれてやめざるを得ない人もあるでしょうし、もちろん経営者のほうではやめてくれというようなことは優秀な保安従事者には言うことはないと思いますが、みずからやはり一般の労務者と同じような立場に立って、山に対する魅力がないというところから、いまのうちにということで、足元の明かるいうちにということで、優秀な保安人材もやめられるということも考えなくちゃならぬと思うのです。ですから、おのずとそういう条件の中から経営の面、あるいは、また、人的な面から、いわゆる保安に対する施設並びに、また、その他のてこ入れというものはおろそかになるという危険性が今後出てくると思うのです。第二会社の場合ですね、特に。ですから、特にいまこういう法律案が審議されておりますが、この第二会社発足によるところの炭鉱保安に対しては、現在ビルド炭鉱になっておる山以上にこの保安に対する対策を厳重にすべきではないか。だから、このような保安法の設定や、それだけではなく、ほんとうに現実において、現場面における保安対策というものは、もっとこの監督を重視しなければならぬのではないかというふうに考えるのですが、そういう点は、要請にもなりますけれども、ひとつ第二会社の今後の保安業務の面に対しては、局長のほうからも、あらためてひとつ明確な御答弁をお聞きしたいと思うのです。
  35. 川原英之

    政府委員(川原英之君) ただいま大河原先生から御指摘をいただきました第二会社災害に対する問題でございますが、御説のとおり、第二会社に移行いたしました場合に、従来までの経験によりますと、まず採掘の方法が相当変わってまいるような場合もございます。それから、人員の構成、ただいま御指摘ございましたが、そういう面で、どうしても従来の経験から申しますと、第二会社に移行いたしました直後に災害率がふえるということは御指摘のとおりでございます。われわれといたしましても、これまで相当九州と北海道において、若干の第二会社ございますが、いま御指摘のございましたような点は、特にわれわれとしても念頭にございますために、第二会社になりますと同時に、そのいろいろ保安の方法及び命令系統、あるいは保安の指揮系統についての監督、これを特に厳重にいたしますと同時に、従来、第二会社分離以前よりも巡回回数を少なくとも倍ぐらいにふやしております。その結果、これはまあ山によっていろいろございますけれども、一般的な傾向といたしまして、移行いたしました直後若干ふえまして、その後、現在までの経過から申しますと、逐次災害率はだんだんに減っている。これは山のほうでいろいろその採掘方法になれてまいる、あるいはいろいろな人的な関係がだんだんになれてくるという点もございます。また、新しい採掘方法に対する監督のやり方を相当きびしくやっておることもございまして、全般的な傾向といたしましては、移行直後にふえて、だんだん下がってくるという傾向でございます。ただ、先の御指摘のごとく、そういう問題につきましては、われわれといたしましても、これは通牒その他も従来出しておりますが、特に厳重に監督いたすように指導いたします。
  36. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 他に御発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時九分散会