○
参考人(川村一与君) このたび参議院の
石炭対策特別委員会におかれましては、
産炭地の問題について地元の
実情をなまの声としてお聞きいただくという
機会をいただきましたこと、まことにありがたく
感謝申し上げる次第であります。
私はまず
小野田市を
中心として申し上げますが、これはただ
小野田市だけでなく、山口
地域全体共通の問題もあるのでございますので、このようにお聞き取りをいただきたいと考えておるものでございます。なお説明の順序といたしまして、いろいろ御指示をいただいた点もございますが、一応私は
小野田市の現状を簡単に申し上げまして、御指示の順序に御説明を申し上げたいと考えておるものでございます。
小野田市の
産炭地としての現状を申し上げますと、本市の
炭鉱は
昭和三十三年ごろから
合理化のきざしが見えてまいったのでございますが、国の
石炭合理化政策が発表されました
昭和三十五年に至りまして、急激に表面化してまいりまして、
昭和三十七、八年の両年度において
中心的な主要
炭鉱は、ほとんど
閉山をするというような
状態に相なったのでございまして、この間の推移は
参考資料の一ページから以下の表にあるとおりでございます。要するに、過去におきまして二十七の
炭鉱があったのでございますが、これは現在ではわずか二つの
炭鉱を残すのみとなったということでございまして、この残っております二つの
炭鉱も、本年じゅうには
閉山をする予定でございます。要するに、本市は過去において市の主力
企業でございました
炭鉱が、全部姿を消してしまうというようなことに相なるのでございまして、こういう情勢の中におきまして市の
状態を簡単に申し上げますと、まず
人口の面でございますが、
炭鉱の
閉山によりまして
離職者が約五千人出ておるのでございますが、これは本市の
人口の約一割でございます。労働
人口、すなわち就業
人口から見ますと約二割五分に当たるのでございまして、その結果三十四年の
人口が五万七千でございましたのが三十九年には四万六千人という、一万人ばかりの人が、わずか一、二年の間に
減少をいたしたというような
状態でございます。
なお、
炭鉱離職者は、先ほど申し上げました五千人のうち約三千人は県外、県内あるいは市内に転職をいたしておりますが、なお二千人は現在失業の
状態にあるのでございます。しかもこの失業しておる者が、比較的高年齢層であり、また勤続年数が
平均七年程度でございまして、これらの点が再就職の非常な大きな障害になっておるのでございます。なお、この
炭鉱離職者のほかに、
炭鉱の下請
企業に就職をいたしておりましたいわゆる組人夫というようなものが、六百人ばかりが失職をいたして、これもいまだ職がないというような現状でございます。
こういう中で市の
財政を簡単に申し上げますと、
炭鉱の
閉山によりまして当然
住民税、鉱産税、固定資産税等が
激減をいたします。これに加えて逆に
生活保護費、
失業対策費あるいは学童の援護費という、いわゆる
産炭地であるがために要する特別の
財政需要が非常に大きくなって、非常に市の
財政を圧迫しておるというのが、現状でございます。
以上が大体
小野田市の
産炭地としての現状でございますが、以下御指示によりまして、
産炭地振興に関する
問題点を御説明申し上げたいと存じます。
第一に、われわれの
地域における
振興計画がどうなっておるか。またその進行
状態がどうであるかということでございますが、当
地域の
産炭地振興実施の
計画は、昨年の十一月に
産炭地域振興審議会におきまして、
基本計画が決定をされたのでございますが、その決定はお手元の資料の一六ページ以下に全文を掲げておりますので、ごらんをいただきたいと存じますが、これに対するこの要点を簡単に申し上げますと、要するに
石炭産業にかわる新しい
企業を
誘致することによりまして、
炭鉱離職者を吸収して、この
地域の
経済発展を期すること。その目標といたしましては、二万五千人の
雇用の
機会をつくって、
工業出荷額を
昭和三十五年の約一千億に対し
昭和四十二年には約二千三百億、すなわち約二・二倍に引き上げるということがこの
計画の想定でございます。そのためには、第一に当
地域の
立地条件を生かした
産業基盤の
整備を
促進することであるということが要約されるのでございます。
それでは、その
計画の進行
状態はどうであるかということでございますが、この
実施計画は実は非常に抽象的に打ち出されておりまして、その
計画の細目決定等はなされておりません。したがいまして、具体的には何らこの
計画の進行はしていないということで、この点につきまして、
産炭地のわれわれとしてまことに遺憾に実は考えておるものでございます。いま少しこれを予算化できるような具体的な
計画に推し進めていただきたいということが、われわれの念願で、ございます。
次には、国の
施策並びに
産炭地振興事業団の
業務の進展についてということでございますが、国の
施策につきましては、先ほど申し上げましたように一応
実施計画はできておりますが、これがほとんど抽象的な
基本の方向づけだけをしておるにすぎないので、現実には何らの
施策もないといっても過言ではないのでございます。
産炭地のわれわれといたしましては、国の
産炭地振興のための積極的な
施策が、地元の
振興になって何らかの形で反映されることを、強く実は念願をいたしておるのでございます。
なお、
産炭地振興の中で、
産炭地の
振興事業団の事業でございますが、この中で
融資事業につきましては、実は
振興事業のカンフル的な役割りを果たしておりまして、山口
地域におきましても
融資を受けておるものが十一件、金額にして二億四千万円の
融資を実は受けておるのでございますが、この
融資の決定等につきましても、金額は最高が制限がございまして、ほんとうの
企業誘致をする場合の、特に大
企業等においてはこの適用がないというところに、非常な欠陥があるわけでございまして、将来は大
企業にも
融資ができるような方途を考えていただきたいということでございます。
また、土地
造成事業にいたしましても、ようやくわれわれの
地域におきましては、三十九年度、いわゆる今年度の事業としてようよう
実施の運びとなっておりますのでございますが、これが実現いたしますならば、工場
誘致の
促進に大きく前進することができるという確信を実は持っておりますので、工場
用地の
造成につきましても、あるいは先行投資的な面もあると考えますが、これを大きく取り上げて
推進をしていただきたいということでございます。
次に、地方
財政、特に
市町村財政との関係でございますが、先ほど現況説明の中で申し上げましたとおり、
炭鉱の
閉山による影響は、市民の生活と市の
財政に非常に大きな打撃を与えたのでございます。市の
財政の影響の度合いを
財政力指数で見ますと、三十年に一二五であったものが三十八年には六九、約五〇%に低下をいたしておるのでございまして、この点において市の
財政がいかに窮迫しておるかということは、御了承願えると考えるのでございます。この内容を実数であらわしますと、市民税、固定資産税、鉱産税等で約一億円の減収になっておるのでございます。
このような市税の減収に加えまして、先ほども申し上げましたように、いわゆる
生活保護、失対事業等、
石炭産炭地であるがゆえに
負担をしなければならないいろいろな経費が
増大をしてきておるということでございまして、これらの点について三十五年と三十八年を比較をいたしますと、約倍額に増額をいたしておるというような現状でございます。
こういったような
状況にありますので、市税だけでもって、市民生活に直結した生活環境の
整備、
企業誘致の
促進に必要な
産業基盤の
整備には、全然手をつけることができないというのが現状でございます。いかに
炭鉱の
閉山が市の
財政に大きな影響を与えておるかということは、ただいま申し上げた次第でございます。
次に、工場
誘致に伴う諸問題の件でございますが、本市は宇部市とともに山口県の西部臨海工業地帯に属しておるのでございまして、
用地も三百万坪、
用水、輸送その他の
立地条件につきましても相当恵まれた点があるのでございますが、しかし、現在までいまだ市外からの大きな
企業は
誘致することができておりません。ぜひとも、われわれは国の
施策によって
企業の
誘致の処置を進めていただくことを念願をいたしておりますが、全然これが行なわれていないというところに、非常に遺憾に存じておるものでございますが、どうか積極的に国の
施策でもって工場
誘致を実現できるようにお願いをいたしたいと考えております。
この
産炭地の
企業誘致についての
問題点を要約をいたしますと、まず国のただいま申し上げましたような
基本的な
計画はできておりますが、実際の
施策が行なわれていないということ、これを早急に具体化していただきたいということでございます。次に、
産業基盤の
整備がおくれておるということ、これにつきましても、国の
公共事業等の
補助率の引き上げ等をぜひお願いをいたしまして、基盤の
整備ができるようにするということ、一面に
設備投資の抑制がある程度されておりますので、
産炭地に関しては、これらの抑制を解除してもらいたいということでございます。
その次に、特にわれわれが痛切に感じておりますことば、
企業を
誘致する場合に、
企業によりましては国の
企業の許可、あるいはまた認可が要るところの業種があるのでございますが、これらにつきましても、
産炭地に
企業がいく場合には、この
企業の認可等をひとつ例外的に取り扱って優先をしていただきたいということでございます。この点につきましては後ほどにも申し上げたいと考えておりますが、これらの点をぜひお取り上げ願いたいということでございます。次には、特に御指摘の商工業における売り掛け金の回収の問題でございますが、これは
炭鉱自体と
炭鉱に従事していた従業員にかかる売り掛け金とがあるのでございますが、これを合計をいたしまして、百四十一業者で一億七千万円の売り掛け金があるのでございますが、そのうち四千二百万円が回収不能になっておりまして、このことが関係業者の経営に非常な大きな影響を及ぼしておるのでございます。
その次は、労働の需給と
離職者の再就職の問題でございますが、本市の労働力は、資料の二六ページに掲げておりますように、以前より相当の余剰労働力があったのでございますが、それに加えて
炭鉱離職者の続出によりまして、さらに
増加をしてまいったのでございますが、本市にはこの労働力を吸収する
企業が、先ほど来申し上げますようにございませんので、これが市外あるいは県外に就職をいたしておるというような
状態でございます。したがいまして、
離職者として市内就職が困難であります。その理由といたしましては、特に高年齢層の者が多いということもございます。そういったことで現在
炭鉱離職者と潜在失業者を合わせますと二千五百名以上に及んでおるというのが現状でございまして、この再就職の
対策といたしましては、職業訓練所に入所させて、新しい技術の習得によって再就職をさせること、また
企業の
誘致によって地元に就職するの
機会を与えるということ。次は、婦女子や高年齢者につきましては、あるいは国の授産場等の設置によりまして、再就職の
機会を与えていただくような御処置がお願いをいたしたいということでございます。
次に、鉱害問題でございますが、本市の
炭鉱のうち陸上
炭鉱の鉱害は、全市にわたって起きておるのでございますが、今年までに約三億円以上の事業が
実施されましたが、なお
昭和四十年以降の鉱害復旧が、事業費としてなお四億五千万円残るということが推定をされておりますが、この四億五千万円の鉱害の復旧が実は無資力鉱害になることが予測をされるのでございまして、これが無資力鉱害になります場合には、復旧
事業団の現在の経費でもっては、これが完全復旧することが実はできないという現状でございまして、もしこれが鉱害復旧ができないということになりますなら、これは重大なる社会問題を惹起するおそれが多分にあるのでございまして、この無資力鉱害の復旧については、ぜひとも特段の御配慮をお願いをいたしたいと考えておるものでございます。
次に、教育に関する問題でございますが、
炭鉱の失業者が出ました関係上、いわゆるボーダーライン層の児童が非常に多くなりますために、これらの援護費等が
増加をいたしますが、この経費が実は三十年度に比較いたしますと約二十倍になっておるというような
実情でございますし、また
炭鉱離職者の家庭から、非行児童が非常に多く出ておるのでございまして、これも統計を出しておりますが、全校で一五%に当たるものが
炭鉱関係の家庭からの非行児童であるということでございまして、この
対策といたしましては、カウンセラーの設置等を要請をいたしておりますが、これもぜひ国の力によりまして完全に
実施をしていただきまして、非行少年の発生を未然に防ぐ手段を講じていただきたいと考えておるのでございます。
その他、
離職者の住宅等の問題もございますが、時間の関係がございますので、以上、大体
小野田を
中心とした山口
地区の
産炭地の
振興に関する
問題点でございますが、これらの問題を解決をしていただきますために、われわれがお願いをいたしたいことは三四ページ以下に要望事項として掲げておるのでございますが、その中で特に二、三の点について御説明を申し上げまして善処をお願いを申し上げたいと考えるものでございますが、それは先ほども申し上げましたように、国の
産炭地振興計画はできてはおりますが、これが非常に抽象的な裏づけのないものでございますし、またこれを行なう国の機関が実ははっきりいたしていないようにわれわれは受け取っておるものでございまして、これが
計画が進まない一つの原因であるとも考えておりますので、この
産炭地振興についての
行政上の機構の問題を、ひとつぜひ御検討をいただきたいと考えておるものでございます。
なお、
産炭地の
振興事業団が行なっております
融資の、貸し付けの額の問題でございますが、これは現在最高はパーセンテージで四〇%、貸し付け限度が一億になっておりますが、われわれ山口県
地区では、いまだこの額にも達していない、いわゆる
指定区域外でございますので、ぜひともこの
指定をお願いをいたしまして、せめて四〇%の一億円の限度までの
融資ができるように御配慮をお願いを申し上げたいと考えておるのでございます。特にこの
融資につきまして、地元の
中小企業の最も利用されております信用金庫等の機関を、この代理店の中にぜひ加えてほしいという切なる
地域の要望があるのでございます。
その他、土地
造成につきましても、将来の見込みのあるものだけに現在はしぼられておるようでございますが、将来大いに投資効果のあるものにつきましては、先行投資を認めていただきまして、この土地
造成も急速に
推進をしていただくようにお願いをいたしたいのでございます。
なお、
企業誘致対策につきましては、特に
企業が、先ほどもお願い申し上げましたが、
企業が
進出しようといたしましても、
企業の許可のできないものがあるわけでございまして、これをわれわれのほうでの現実のことを申し上げますと、
小野田市の場合は、すでに全部
炭鉱が
閉山になりまして、
石炭にかわる事業として、ぜひとも石油
企業を将来の
中心にしたいということで
誘致を試みておるのでございますが、幸い、ある会社が
小野田市でぜひ石油精製工場をやりたいという希望があるのでございますが、昨年来これが石油、
審議会の
審議にかかって、まだこれが決定されない、そのために
企業の
誘致ができないというようなことがございますので、こういう
産炭地の救済につきましては、
企業の
誘致等につきましても特別なお取り計らいを願いまして、ぜひこれが実現するようにお願いを申し上げたいと考えるものでございます。
それと、特に地方
財政の確立の問題でございますが、先ほども申し上げましたように市の
財政が非常に窮迫をいたしておりますので、
企業で申しますならば、まさに破産寸前であるという
状態でございます。したがいまして、
公共事業の
補助率等も大幅に引き上げていただいて、
地域の
立地条件の
整備等ができるようにお願いを申し上げたいということでございます。
なお、特に
産炭地の特別な事業といたしまして、
炭鉱離職者を使っております緊急就労
対策事業がございますが、この事業費の単価が非常に低いために、この事業が成果をあげることが困難でございますので、この単価の引き上げもぜひお願いをいたしたいというものの一つでございます。
その他いろいろまだあるのでございますが、時間の関係がございますので、われわれが特に重点的にお願いいたしたいという点を、御説明申し上げた次第でございますが、以下皆さま方の御質問によってお答えをいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げる次第でございます。長時間失礼をいたしました。